説明

疼痛、片頭痛および尿失禁の処置における4−フェニル置換テトラヒドロイソキノリン類の使用

慢性および神経障害性疼痛の処置、片頭痛の処置および防止、ならびに腹圧性、切迫性および混合性尿失禁の処置のための、アリールおよびヘテロアリール置換テトラヒドロイソキノリン類である式(IA、IB、IIA、IIB、IIIA、IIIB)で示される化合物を使用する方法を本明細書に提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は種々の疾患の治療方法に関する。特に本発明は、該化合物が4-フェニル置換テトラヒドロイソキノリン誘導体である方法に関する。
【発明の開示】
【0002】
発明の要約
本発明は、以下の式IA、IB、IIA、IIB、IIIAおよびIIIB:
【化1】

【化2】

[式中、R1-R13は本明細書に記載の通りである]
で示される化合物の様々な治療用途を提供するものである。或る態様では、R1はC1-C6アルキルであり;R2はH、C1-C6アルキル、C3-C6シクロアルキル、またはC1-C6ハロアルキルであり;R3は、各存在毎に個別にH、ハロゲン、C1-C6アルキル、または1〜3個のOR8またはNR8R9で置換されたC1-C6アルキルであり;R4、R5およびR6は各々個別にHであるか、またはハロゲン、OR10、NR10R11、-NR10C(O)R11、-S(O)nR11、-CN、-C(O)R11、-C(O)2R11、C(O)NR11R12、C1-C6アルキル、C3-C6シクロアルキル、もしくはC4-C7シクロアルキルアルキルから各存在毎に選ばれ、且つ、C1-C6アルキル、C3-C6シクロアルキル、およびC4-C7シクロアルキルアルキルの各々は、各存在毎に所望によりC1-C3アルキル、ハロゲン、-CN、-OR8、-NR8R9およびフェニル[これは所望によりハロゲン、-CN、C1-C4アルキル、C1-C4ハロアルキル、-OR8、もしくは-NR8R9で1〜3回置換されていてもよい]から各々個別に選ばれる1〜3個の置換基で置換されていてもよく;または、R5およびR6は-O-C(R11)2-O-であってよく;そして、R7-R13、n、およびXは本明細書に記載の通りである。
【0003】
本発明において提供する化合物は、ノルエピネフリン、ドーパミン、およびセロトニンの再取り込みを特定の選択率で、例えばドーパミン輸送体(DAT)蛋白またはセロトニン輸送体(SERT)蛋白よりもノルエピネフリン輸送体(NET)蛋白に対して、より選択的に遮断する。本出願人は、このような化合物が慢性および神経障害性疼痛の治療(処置)に、および片頭痛の処置および防止に、そして切迫性、腹圧性および混合性尿失禁の処置に有用となり得る事を発見した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0004】
発明の詳細な説明
本発明は、a) 慢性および神経障害性疼痛の処置、b) 片頭痛の処置および防止、ならびにc) 切迫性、腹圧性および混合性尿失禁の処置、に対する、式IA、IB、IIA、IIB、IIIAまたはIIIB:
【化3】

[式中、
R1は、C1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、C3-C6シクロアルキル、C4-C7シクロアルキルアルキルおよびベンジル[これらは各々各存在毎に所望によりC1-C3アルキル、ハロゲン、-CN、-OR8および-NR8R9から個別に選ばれる1〜3個の置換基で置換されていてもよい]であり;
【0005】
R2はH、C1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、C3-C6シクロアルキル、C4-C7シクロアルキルアルキルおよびC1-C6ハロアルキルより成る群から選ばれ;
R3は、H、ハロゲン、C1-C6アルキル、C1-C6ハロアルキルおよびC3-C6シクロアルキル[ここでC1-C6アルキル、C1-C6ハロアルキルおよびC3-C6シクロアルキルは、各存在毎に所望によりOR8およびNR8R9から個別に選ばれる1〜3個の置換基で置換されていてもよい]より成る群から選ばれ;
【0006】
R4、R5およびR6は、各存在毎に、H、ハロゲン、-OR10、-NO2、-NR10R11、-NR10C(O)R11、NR10C(O)NR11R12、-S(O)nR11、-CN、-C(O)R11、-C(O)2R11、-C(O)NR11R12、C1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、C3-C6シクロアルキルおよびC4-C7シクロアルキルアルキル[ここで、C1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、C3-C6シクロアルキルおよびC4-C7シクロアルキルアルキルの各々は、各存在毎に所望によりC1-C3アルキル、ハロゲン、=O、-CN、-OR8、-NR8R9およびフェニルから個別に選ばれる1〜3個の置換基で置換されていてもよく、また、フェニルは、各存在毎に所望によりハロゲン、-CN、C1-C4アルキル、C1-C4ハロアルキル、-OR8および-NR8R9から各々個別に選ばれる1〜3個の置換基で置換されていてもよい]より成る群から各々個別に選ばれ;
【0007】
或いは、R5およびR6は-O-C(R11)2-O-であり;
R7は、H、ハロゲンおよびOR10より成る群から選ばれ;
R8およびR9は、H、C1-C4アルキル、C1-C4ハロアルキル、C1-C4アルコキシアルキル、C1-C4アルコキシアルキルアルキル、C3-C6シクロアルキル、C4-C7シクロアルキルアルキル、-C(O)R12、フェニルおよびベンジル[ここで、フェニルおよびベンジルは各存在毎に所望によりハロゲン、シアノ、C1-C4アルキル、C1-C4ハロアルキル、C1-C4アルコキシおよびC1-C4ハロアルコキシから個別に選ばれる1〜3個の置換基で置換されていてもよい]より成る群から各々個別に選ばれるか、または、R8およびR9は、それらが結合している窒素と合して、ピペリジン、ピロリジン、ピペラジン、N-メチルピペラジン、モルホリン、またはチオモルホリン環を形成し;
【0008】
R10は、H、C1-C4アルキル、C1-C4ハロアルキル、C1-C4アルコキシアルキル、C3-C6シクロアルキル、C4-C7シクロアルキルアルキル、-C(O)R12、フェニルおよびベンジル[ここで、フェニルおよびベンジルは各存在毎に所望によりハロゲン、-NH2、-OH、シアノ、C1-C4アルキル、C1-C4ハロアルキル、C1-C4アルコキシおよびC1-C4ハロアルコキシから個別に選ばれる1〜3個の置換基で置換されていてもよい]より成る群から選ばれ;
【0009】
R11は、H、C1-C4アルキル、C1-C4ハロアルキル、C1-C4アルコキシアルキル、C3-C6シクロアルキル、C4-C7シクロアルキルアルキル、フェニルおよびベンジル[ここで、フェニルおよびベンジルは各存在毎に所望によりハロゲン、-NH2、-OH、シアノ、C1-C4アルキル、C1-C4ハロアルキル、C1-C4アルコキシおよびC1-C4ハロアルコキシから個別に選ばれる1〜3個の置換基で置換されていてもよい]より成る群から選ばれ、または、R10およびR11は、それらが結合している窒素と合して、ピペリジン、ピロリジン、N-メチルピペラジン、モルホリン、またはチオモルホリン環を形成し[但し、R8とR9またはR10とR11のうち一方のみがそれらが結合している窒素と合してピペリジン、ピロリジン、ピペラジン、N-メチルピペラジン、モルホリン、またはチオモルホリン環を形成する];
R12は、C1-C4アルキル、C1-C4ハロアルキルおよびフェニルより成る群から選ばれ;
Xは、O、NR13およびSより成る群から選ばれ[但し、化合物が式(IA)で示される時、XはNR13ではない];
【0010】
Xを含んでいる環は、フラン、ピロール、チオフェン、ジヒドロフラン、ジヒドロピロール、およびジヒドロチオフェンから選ばれ;nは0、1、または2であり;そして、
R13は、H、C1-C6アルキル、ベンジルおよびフェニル[ここで、C1-C6アルキル、ベンジルおよびフェニルは各存在毎に所望によりハロゲン、-NH2、-OH、シアノ、C1-C4アルキル、C1-C4ハロアルキル、C1-C4アルコキシおよびC1-C4ハロアルコキシから個別に選ばれる1〜3個の置換基で置換されていてもよい]より成る群から選ばれる]
で示される化合物の用途を提供するものである。
【0011】
「アルキル」とは、明記した数の炭素原子を有する分枝または非分枝飽和炭化水素鎖を意味する。「アルケニル」とは、直線または分枝配置のいずれかおよび1またはそれ以上の不飽和炭素-炭素結合(これはこの鎖の任意の安定な点に存在することができる)を有する炭化水素鎖、例えばエテニル、プロペニル等を意味する。「アルキニル」とは、直線または分枝配置のいずれかおよび1またはそれ以上の炭素-炭素三重結合(これはこの鎖の任意の安定な点に存在することができる)を有する炭化水素鎖、例えばエチニル、プロピニル等を意味する。「アルコキシ」とは、酸素橋を介して結合した、明記した数の炭素原子を有するアルキル基を意味する。「シクロアルキル」とは、単環、二環または多環系を包含する飽和環基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル等を意味する。「ハロ」または「ハロゲン」とは、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードを意味する。「ハロアルキル」とは、1またはそれ以上のハロゲンで置換された、明記した数の炭素原子を有する分枝および直鎖アルキルの両者を意味する。「ハロアルコキシ」とは、少なくとも1個のハロゲン原子で置換されたアルコキシ基を意味する。
【0012】
「置換された」または原子の「置換」とは、指定した原子上の1またはそれ以上の水素が、明記した群から選ばれたもので置き換わっている事(但し、その指定原子の正常な価数を超えない)を意味する。「非置換」原子は、それらの価数が命ずる水素原子の全てを保有している。置換がケト(即ちC=O)である場合、その原子上の2個の水素が置き換わっている。置換基および/または変数の組み合わせは、係る組み合わせが安定な「化合物」を生成する場合にのみ許容できる。「安定な化合物」または「安定な構造」とは、反応混合物から有用な純度まで単離しても、そして有効な治療薬に製剤化しても、存続できるほど充分強固である化合物を意味する。
【0013】
本発明の一つの態様は、R1がC1-C6アルキルであり;R2がH、C1-C6アルキル、C3-C6シクロアルキル、またはC1-C6ハロアルキルであり;R3が、各存在毎に個別にH、ハロゲン、C1-C6アルキル、または、1〜3個のOR8またはNR8R9で置換されたC1-C6アルキルであり;R4、R5およびR6は、各々個別にHであるか、または各存在毎にハロゲン、
-OR10、-NR10R11、-NR10C(O)R11、-S(O)nR11、-CN、-C(O)R11、-C(O)2R11、C(O)NR11R12、C1-C6アルキル、C3-C6シクロアルキル、またはC4-C7シクロアルキルアルキル[ここで、C1-C6アルキル、C3-C6シクロアルキル、およびC4-C7シクロアルキルアルキルの各々は、各存在毎に所望によりC1-C3アルキル、ハロゲン、-CN、-OR8、-NR8R9およびフェニル[これは所望によりハロゲン、-CN、C1-C4アルキル、C1-C4ハロアルキル、-OR8、または-NR8R9で1〜3回置換されていてもよい]から個別に選ばれる1〜3個の置換基で置換されていてもよい]から選ばれ;或いはR5およびR6は-O-C(R11)2-O-であってもよく;そして、R7-R13、n、およびXは前記と同意義である、化合物である。
【0014】
これらの態様の中で、或る化合物の任意の1つの位置における特定の置換基の選択は、同じ化合物上の別の位置における置換基の選択に必ずしも影響を及ぼさない。即ち、本明細書に提供する化合物は、任意の位置に任意の置換基を有する。例えば、上記のように、R1は好ましくは例えばC1-C6アルキルであるが、R1をC1、C2、C3、C4、C5、またはC6アルキルのいずれに選択しても、それはR2の選択を、特にH、C1-C6アルキル、C3-C6シクロアルキル、またはC1-C6ハロアルキルのうちのいずれにするかという選択に制限を付すものではない。むしろ、C1、C2、C3、C4、C5、またはC6アルキルのうち任意のものであるR1に対して、R2は、H、C1、C2、C3、C4、C5、もしくはC6アルキル、またはC3、C4、C5、もしくはC6シクロアルキル、またはC1、C2、C3、C4、C5、もしくはC6ハロアルキルのうち任意のものである。同様に、R2の選択を、特にH、C1、C2、C3、C4、C5、もしくはC6アルキル、またはC3、C4、C5、もしくはC6シクロアルキル、またはC1、C2、C3、C4、C5、もしくはC6ハロアルキルのうちのいずれにするかという選択は、R3の選択を、特にその構成成員のうちのいずれにするかという選択に制限を付すものではない。
【0015】
別の態様では、R1は、メチル、エチル、プロピルまたはイソプロピルであり;R2はHまたはC1-C6アルキルであり、そしてR3はH、ハロゲン、またはC1-C6アルキル[ここで、C1-C6アルキルは所望により1〜3個のOR8で置換されていてもよい]であり;R4およびR5およびR6は各々個別にH、ハロゲン、-OR10、-S(O)nR11、-NR10R11、-C(O)R11、またはC1-C6アルキル[ここで、C1-C6アルキルは所望により上記のように置換されていてもよい]であり;そして、R7-R13およびXは前記と同意義である。さらに別の態様では、R1はメチルであり;R2およびR3はHであり;R4およびR5およびR6は各々個別にH、F、Cl、-OH、C1-C3アルコキシ、またはC1-C3アルキルであり;R7はH、F、-OH、または-OCH3であり;そしてR8-R13は前記と同意義である。
【0016】
或る態様では、化合物は、例えば下記の表I-VIAに開示する化合物を包含するがこれらに限定される訳ではない。即ち、そのような化合物は以下の式:
【化4】

[式中、酸素含有環は飽和または不飽和のいずれかであり、R4はH、ClまたはFであり、R5はH、FまたはMeであり、そしてR6はHまたはFである]
を有する化合物を包含する。別の態様では、化合物は以下の式:
【化5】

[式中、XはO、SまたはNであり、Xを含む環は飽和または不飽和のいずれかであり、R3はH、Me、EtまたはMeOHであり、R4およびR6は各々H、FまたはClであり、R5はH、F、ClまたはOMeであり、そしてR13が存在する時これはC1-C6アルキルである]
を有する化合物を包含する。さらに別の態様では、化合物は以下の式:
【化6】

[式中、XはOまたはNであり、Xを含む環は飽和または不飽和のいずれかであり、R4、R5およびR6は各々Hであり、そしてR13が存在する時これはHまたはC1-C6アルキルである]
を有する化合物をさらに包含する。
【0017】
さらに別の態様は、以下の式:
【化7】

[式中、XはOまたはNであり、Xを含む環は飽和または不飽和のいずれかであり、R4はHであり、R5はH、Cl、FまたはBrであり、R6はH、ClまたはFであり、そしてR13はHまたはC1-C6アルキルである]
を有する化合物を包含する。さらなる態様は、以下の式:
【化8】

[式中、XはOまたはSであり、Xを含む環は飽和または不飽和のいずれかであり、R4はHであり、R5はH、Cl、FまたはOMeであり、R6はH、ClまたはFであり、そしてR13はC1-C6アルキルである]
を有する化合物を包含する。さらに別の態様では、化合物は以下の式:
【化9】

[式中、XはOであり、Xを含む環は飽和または不飽和のいずれかであり、R4はHであり、R5はHまたはFであり、そしてR6はHまたはFである]
を有する化合物を包含する。
【0018】
本発明化合物の立体異性型の各々もまた本発明において提供する。即ち、この化合物は1またはそれ以上の不斉中心または面を有し得、該化合物の全てのキラル(エナンチオマーおよびジアステレオマー)およびラセミ型が本発明に包含される。該化合物にはオレフィン、C=N二重結合等の数多くの幾何異性体もまた存在し、これらの安定な異性体もまた全て本発明で企図されるものである。化合物はラセミ型で、または例えばラセミ型のキラルクロマトグラフィーもしくは化学的分割によって光学的に純粋な形で単離する。
【0019】
本発明化合物の薬学上許容し得る塩もまた本発明において提供する。この点に関して、「薬学上許容し得る」という句は、妥当な利点/危険性の比率と釣り合った、過度の毒性、刺激、アレルギー反応またはその他の問題もしくは合併症無しに人間および動物の組織に接触させた使用に好適である、健全な医学上の判断の範囲内にある、化合物、材料、組成物、および/または投与型を指すのに用いられる。
【0020】
「薬学上許容し得る塩」とは、該特許化合物がその酸または塩基塩を製造することにより修飾されている、開示化合物の誘導体を指す。
薬学上許容し得る塩の例は、アミンのような塩基性残部の鉱酸または有機酸塩;カルボン酸のような酸性残部のアルカリまたは有機塩;等を包含するがこれらに限定されない。薬学上許容し得る塩は、例えば非毒性無機または有機酸から生成された該特許化合物の四級アンモニウム塩または常套的非毒性塩を包含する。係る常套的非毒性塩は、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、燐酸、硝酸等から誘導した塩;および、有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、琥珀酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パム酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、蓚酸、イセチオン酸等から製造された塩を包含する。
【0021】
本発明化合物のプロドラッグ型もまた本発明において提供する。係る「プロドラッグ」とは、本発明化合物および該特許化合物に共有結合した部分を含む化合物であって、その結果、該プロドラッグを投与する対象における毒性に関わるであろうと思われる該特許化合物の部分が、係る作用の誘起から遮断されているものである。しかしながら、このプロドラッグはその対象内で開裂し、治療能力を不当に減ずることなく該特許化合物を放出する。プロドラッグは、ヒドロキシ、アミン、またはスルフヒドリル基が、哺乳動物対象に投与された時に開裂してそれぞれ遊離のヒドロキシ、アミノ、またはスルフヒドリル基を形成するような任意の基に結合している化合物を包含する。プロドラッグの例は、アルコールの酢酸、蟻酸、および安息香酸誘導体、ならびに式(I-III)の化合物中のアミン官能基を包含するがこれらに限定される訳ではない。
【0022】
放射標識化合物、即ち、1またはそれ以上の記載原子がその原子の放射性同位体に置き換わっている(例えば、Cが14Cまたは11Cに、そしてHが3Hまたは18Fに置き換わっている)化合物もまた本発明において提供する。このような化合物は、神経伝達蛋白に結合する推定的医薬の能力を決定する際の標準および試薬として、または、生物学的レセプターにインビボまたはインビトロで結合する本発明化合物の画像化に、といった様々な用途の可能性を有する。
【0023】
「治療有効量」とは、対象を処置しようとする特定の状態を軽減、低下、阻害または防止するのに有効な該化合物の量である。一般に、係る量は、それを決定および考慮するために本明細書に提示した説明を与えられた当業者の技術範囲内に充分ある、幾つかの因子に従って変化する。これらには、その特定の対象、ならびにその年齢、体重、身長、一般的全身状態および病歴;使用するその特定化合物、ならびに調合される担体およびそのために選択した投与経路;ならびに、処置される状態の性格および重篤度が包含されるがこれらに限定されない。治療有効量は最適用量と最適下限用量を包含し、当業者が知悉する様々な方法、例えば特定の状態に罹患した動物に特定物質を様々な量で投与し、その動物が受けた相対的治療利点を決定することにより、決定できる。その量は一般に、処置される対象の体重1kgにつき約0.001mg〜約1000mg/kg、より典型的には約0.1〜約200mg/kgの範囲である。これらの量を、その処置を監視する当業者が許容し得る投与計画に従って投与することができる。本発明の対象となる特定の疾患の処置に関連して、より具体的な用量を下に述べる。
【0024】
「薬学上許容し得る担体」とは、人間に対する治療化合物の投与のために、当分野で一般的に許容できる媒質である。一般にこのような担体を、充分に当業者の技術範囲内にある、決定および考慮のための幾つかの因子に従って調合する。これらは、調合される活性物質の種類および性質;該物質を含有する組成物を投与しようとする対象;該組成物の意図する投与経路;および、標的とする治療適応、を包含するがこれらに限定されない。薬学上許容し得る担体は、水性および非水性液体媒質の両者、ならびに様々な固体および半固体投与形態を包含する。係る担体は、活性物質に加えて幾つかの異なった成分および添加物を包含し、このようなさらなる成分を、当業者が周知の様々な理由、例えば活性物質の安定化のために製剤に添加する。好適な薬学上許容し得る担体およびそれらの選択に関係する因子についての説明は、容易に入手し得る様々な供給源、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, PA, 1985に見出すことができ、その内容は引用により本明細書の一部とする。
【0025】
本発明化合物は、水性デキストロースおよび生理食塩水のような種々の水性媒質中で例えば非経口投与でき;グリコール溶液もまた有用な担体である。非経口投与用溶液は、好ましくは活性成分の水溶性塩、適当な安定剤、および必要ならば緩衝化物質を含有する。単独または組み合わせた抗酸化剤、例えば重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、またはアスコルビン酸は、好適な安定剤である。クエン酸およびその塩、ならびにEDTAもまた利用できる。さらに、非経口溶液は、塩化ベンザルコニウム、メチルまたはプロピルパラベン、およびクロロブタノールのような保存剤を含有できる。
【0026】
或いは、該化合物は固体投与形態、例えばカプセル剤、錠剤および散剤;またはエリキシル剤、シロップ剤、および/または懸濁剤のような液体形態で経口投与する。活性成分および適当な担体、例えば乳糖、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはセルロース誘導体(但しこれらに限定されない)を入れるためにゼラチンカプセルが利用できる。類似の希釈剤を用いて圧縮錠剤を製造できる。錠剤とカプセル剤はいずれも、一定期間にわたり医薬を持続的に放出させるため、持続放出製品として製造できる。圧縮錠剤は、不快な味を隠すために糖被覆またはフィルム被覆することができ、または、活性成分を大気から保護するため、もしくは胃腸管内で該錠剤を選択的に崩壊させるために使用することができる。
【0027】
本発明化合物は、類似疾患を処置するために利用できる他の化合物に比して、特に優れた治療指数を提供する。理論による限定を意図する訳ではないが、これは、他の神経伝達輸送体よりもノルエピネフリン輸送体蛋白(NET)に対して選択的であるという能力に、少なくとも部分的に帰することができる。結合親和性は当業者が周知の幾つかの手段で証明できる。
【0028】
簡潔に述べると、例えば、該輸送体蛋白を発現する、例えばHEK293細胞由来の抽出物を含有する蛋白を、この蛋白の放射標識リガンドと共にインキュベートする。放射性リガンドと該蛋白の結合は、他の蛋白リガンド、例えば本発明化合物の存在下では可逆的であり、下に記載のように、この可逆性が、該蛋白についての該化合物の結合親和性(Ki)を測定する手段を提供する。化合物のKi値が高いほど、その化合物が、低いKiを持つ化合物よりも蛋白に対する結合親和性が低い事を示し;逆に、低いKi値は、高い結合親和性を示している。
【0029】
したがって、該化合物がより選択的である、その蛋白の低いKi、および、該化合物の選択性がより低い、その蛋白の高いKiは、蛋白についての化合物の選択性の相違を示す。即ち、蛋白Bよりも蛋白Aについて或る化合物のKi値の比率が高いほど、後者よりも前者についてのその化合物の選択性が大きい(後者はその化合物について高いKiを持ち、前者はその化合物について低いKi値を持つ)。本発明において提供する化合物は、NETとの結合についてのKiと他の輸送体蛋白との結合についてのKi(例えば、ドーパミン輸送体(DAT)およびセロトニン輸送体(SERT))の比率で示されるように、ノルエピネフリン輸送体蛋白に対する選択性の故に、治療的使用の際に誘起される副作用が少ない。一般に、本発明化合物はDAT/NETについてのKi比が約≧2:1である。さらに該化合物は一般にSERT/NET比が約≧5:1である。
【0030】
加えて、NEおよびDA輸送体に対する化合物の活性のインビボ評価は、例えばテトラベナジン(TBZ)の鎮静作用を妨げる能力を測定することによる(例えばG.Stille, Arzn.Forsch. 1964, 14, 534-537;この内容は引用により本明細書の一部とする)。無作為化および暗号化した被験化合物の用量をマウスに投与し、次いでテトラベナジンも同様に投与する。次いでテトラベナジンが誘発した探索行動の喪失および眼瞼下垂に対する拮抗について、薬物投与後指定した時間間隔で動物を評価する。探索活動は、例えば動物を円の中央に置き、しかる後動物がその円の外周を横断するのに要した時間を評価することによって評価する。一般に、動物がこの横断に要した時間が長いほど、探索活動の喪失が大きい。さらに、眼瞼が少なくとも50%閉じている場合、動物が眼瞼下垂を呈していると考える。対照(媒質処置)マウスの95%以上が探索活動喪失および眼瞼下垂を示すと予想できる。次いで化合物関連活性を、テトラベナジンチャレンジ用量に反応しなかったマウスのパーセンテージとして算出するが、治療上より有効な化合物は、探索行動喪失と眼瞼下垂の低減についてより優れていると予想できる。
【0031】
したがって、本発明において提供する医薬(薬用)組成物は、本発明において提供する薬用組成物の或る用量を対象に投与することにより、様々な神経学的および精神科的疾患に罹患している対象の処置に有用である。この疾患は、慢性および神経障害性疼痛、片頭痛の治療および防止、ならびに切迫性、腹圧性および混合性尿失禁を包含するがこれらに限定されない。本発明で提供する化合物は、他の神経化学物質のための輸送蛋白よりも或る神経化学物質のための輸送体蛋白に、より大きな親和性をもって選択的に結合する能力の故に(少なくとも部分的に)これらのそしてその他の疾患の処置に特に有用である。
【0032】
本発明化合物は国際出願WO02/04455に記載の方法、および合成有機化学分野で既知の方法、または当業者が認めるその変法を用いて製造できる。
【0033】
NE、DAおよび5HT輸送体に対する種々の化合物の相対親和性を評価するため、HEK293Eセルラインをこの3種のヒト輸送体を発現するよう発展させる。各輸送体の完全なコード領域を含むcDNAをヒト脳ライブラリーからPCRで増幅させる事ができる。pCRIIベクターに内包されるcDNAを配列決定してそれらの実体を確認し、次いでEpstein Barrウイルスに基づく発現プラスミド中にサブクローニングする(E.Shen, GM Cooke, RA Horlick, Gene 156:235-239, 1995)。ヒトの輸送体のうち1つのコード配列を含むこのプラスミドをHEK293E細胞にトランスフェクトできる。トリチル化NE、DAまたは5HTの取り込みを阻害する既知の再取り込み遮断薬の能力によってトランスフェクションの成功を確認できる。
【0034】
結合のためには、細胞をホモジナイズし、遠心分離し、次いでインキュベーション緩衝液(50mM Tris、120mM NaCl、5mM KCl、pH7.4)に再懸濁する。次に適当な放射性リガンドを加える。NET結合のためには[3H]Nisoxetine(86.0Ci/mmol、NEN/DuPont)をおよそ5nMの最終濃度となるまで加える。DAT結合のためには[3H]WIN 35428(84.5Ci/mmol)を15nMで加えた。5HT結合のためには[3H]Citolapram(85.0Ci/mmol)を1nMで加えた。次いで種々の濃度(10---5ないしIOA-11M)の被験化合物を加えて放射性リガンドを置換する。96ウェル平板中、室温で1時間のインキュベーションを実施する。インキュベーションの後、平板をハーベスター上に置き、(50mM tris、0.9%NaCl、pH7.4)で速やかに4回洗浄すると、結合した放射性標識を含有する細胞膜がWhatman GF/Bフィルター上に捕捉できる。このフィルターにシンチレーションカクテルを加え、次いでPackard TopCount(商標)で計数した。被験化合物の結合親和性は、GraphPad Prism 2.01ソフトウェア(商標)を用いる非線形回帰によって決定できる。10マイクロモルのマジンドールに置換することにより、非特異結合が決定できる。
【0035】
NEおよびDA輸送体に対する該化合物のインビボ活性を評価するため、テトラベナジン(TBZ)の鎮静効果を妨げる能力を測定する事ができる(G.Stille, Arzn.Forsch 14:534-537, 1964)。試験時体重18〜25gmの雄性CFIマウス(Charles River Breeding Laboratories)を、綿密に制御した環境条件下で最低6日間飼育する(22.2+1.1C;50%平均湿度;12時間の明周期/24hr)。試験に先立ちマウスを一晩(16-22hr)絶食させる。マウスは清浄なポリカーボネート製「靴箱型」飼育箱(17cm x 28.5cm x 12cm)に入れた。
【0036】
無作為化および暗号化した用量の被験化合物をp.o.投与する。テトラベナジン45mg/kg用量を採点時間の30分前にi.p.投与する。化合物は全て0.1ml容量/10gm(体重)を投与する。薬物投与後、明記した時間間隔で、テトラベナジンの誘発する探索行動喪失および眼瞼下垂に対する拮抗について動物を評価する。指定された時間間隔において、マウスの探索活動と眼瞼下垂の徴候を調べる。探索活動は動物を5インチの円の中央に置くことにより評価する。15秒間放置して、動物が動いて外周を横断できるようにする。これをテトラベナジンに対する拮抗と考え、評点0を与える。円を出なかったならば探索行動の喪失とみなし、評点4を与える。眼瞼が少なくとも50%閉じていたならば動物は眼瞼下垂を呈していると考え、完全に閉じている場合評点4を、全く閉じていない場合評点0を与える。対照(媒質処置)の95%以上のマウスが探索行動喪失と眼瞼下垂を呈すると予想できる。薬物活性はテトラベナジンチャレンジ用量に反応しなかったマウスのパーセンテージとして算出することができる。
【0037】
メジアン有効用量(ED50)および95%信頼限界30を、Thompson(1947)およびLitchfield and Wilcoxon(1949)の方法によって数値で決定できる。
【0038】
WHOによれば、適切なケアが欠けている結果、全世界で400万人の癌患者を含むかなりの数の人々が様々な形態の慢性有痛状態に冒されている。筋骨格または椎骨痛、神経痛、頭痛または血管痛といった他の幾つかの状態がある。神経系の損傷または組織損傷の状況で起こる慢性の疼痛状態である神経障害性疼痛は、異常な知覚経験(異痛症、痛覚過敏)ならびに中枢および末梢神経系で処理される異常な疼痛を特徴とし、神経障害性疼痛は処置が困難である。有痛性糖尿病性神経障害は、人間における最も頻発する糖尿病合併症の1つであり、ヘルペス後神経痛は帯状疱疹後の患者の10〜30%に発症し、幻肢および断端痛は切断術の一般的な後遺症である。慢性疼痛はまた、外傷、エントラップメント神経障害(例えば手根管症候群)、多発性硬化症、または、AIDS、アルコール中毒症、甲状腺機能低下症、または癌化学療法に随伴する多発神経障害によっても惹起される。
【0039】
疼痛の常套的処置は二つの範疇:1) 非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)(軽度の疼痛に使用されるが、その治療用途はGI副作用によって限定される);および、2) モルヒネおよび関連オピオイド(中等度ないし重度の疼痛に使用されるが、その治療用途は呼吸抑制、耐性、および乱用の可能性を包含する望ましくない副作用によって限定される)、に分類される。ところが、アヘン剤であれNSAIDであれ、常套的鎮痛薬は慢性疼痛症候群の管理においては限られた治療価値を有するに過ぎない。この事が、これらの状態の管理にアジュバント鎮痛薬の使用を導いた。例えば、三環系抗うつ薬は現在、有痛性糖尿病性神経障害の処置における第一選択である。しかしながら、あらゆる患者に全く有効な物質は殆ど無く、望ましくない副作用が一般的である。
【0040】
慢性疼痛または神経障害性疼痛の処置に使用するために、式IA、IB、IIA、IIB、IIIA、およびIIIBの化合物を、慢性疼痛または神経障害性疼痛の症状を軽減するに充分な量で経口または非経口投与することができる。式Iの化合物の実際の使用量は慢性または神経障害性疼痛の重篤度および性質、処置される動物、および求められる軽減のレベルと共に変わる。人間においては、必要に応じて投与される、約2〜約50ミリグラムの経口用量が適当な薬量学を表す。約1〜約25ミリグラムの筋肉内投与は、経口投与に明記した用量に匹敵する用量を与える。
【0041】
本明細書で使用する「慢性疼痛」とは、カウザルギー、神経障害性疼痛、糖尿病性神経障害、手術後または外傷性神経障害、ヘルペス後神経痛、末梢神経障害、エントラップメント神経障害、幻肢および断端痛、アルコール乱用により起こる神経障害、HIV感染、多発性硬化症、甲状腺機能低下症、下背部痛、癌の疼痛および癌化学療法に由来する疼痛から選択される疼痛を意味する。本出願人は特に、神経障害性疼痛の処置のための、式IA、IB、IIA、IIB、IIIA、およびIIIBの化合物の使用を選択する。
【0042】
「慢性疼痛軽減量」という語は、それを必要とする哺乳動物において慢性疼痛を軽減または低下させることのできる、式IA、IB、IIA、IIB、IIIA、およびIIIBの化合物の量を表す。
【0043】
片頭痛の疼痛は、頭蓋血管系の過度拡張に関連し、片頭痛の既知の処置は、エルゴタミンのような血管収縮性を有する化合物の投与を包含している。しかしながら、エルゴタミンは全身の血管を収縮させる非選択的血管収縮薬であり、望ましくない、そしてことによると危険な副作用を有する。片頭痛はまた、通常は制吐薬と組み合わせた、鎮痛薬の投与によって処置されることもあるが、このような処置は価値が限定されている。
【0044】
したがって、確立された頭痛を予防または軽減するのに利用できる、片頭痛の処置のための安全且つ有効な薬物に対する必要性があり、そして、選択的血管収縮性を有する化合物はこのような役割を実現するであろう。
【0045】
さらに、通常この薬物が患者によって投与される、片頭痛のような状態の場合、この薬物が経口投与できることが極めて望ましい。故にこれは、良好なバイオアベイラビリティーを持つべきであり、また、症状の迅速な軽減が起こるよう、胃腸管から効果的に吸収されるべきである。この薬物はさらに、経口経路で投与した場合に安全(即ち毒性作用が無い)であるべきである。
【0046】
一般に、片頭痛の疼痛は血管起源のものであり、総頸動脈床の枝の過度拡張によって引き起こされると考えられている(J.W.Lance, Mechanisms and Management of Migraine, Butterworths, p113-152(1973)。片頭痛の疼痛の管理におけるノルエピネフリン再取り込みの役割が、J.R.Couch, et al., Amitriptyline in the prophylaxis of migraine, Neurology 1976:26:121-127およびS.Diamond, et al., Chronig tension headache treated with amitruptyline: a double blind study, Headache 1971; 11:110-116に論ぜられている。
【0047】
片頭痛の処置のため人間(体重約70kg)への経口投与のために提唱されている本発明化合物の用量は、用量当たりの活性成分0.1mg〜100mg、例えば0.5mg〜50mg、好ましくは2mg〜40mgであり、これを1日当たり最大4回、より一般的には1日当たり1〜2回投与できる。患者の年齢および体重、ならびに処置しようとする状態の重篤度に応じて、用量に常套的な変化を施す必要があるかも知れないという事が理解できるであろう。別途記載の無い限り、用量は、遊離塩基としての化合物(I)の重量で言及する事を理解すべきである。
【0048】
さらなる態様によれば、本発明は、式(I)の化合物またはその生理学的に許容し得る塩もしくは溶媒和物を投与することにより、頭蓋血管系の拡張が引き起こす疼痛、例えば片頭痛または群発頭痛に罹患しているまたは罹患し易い人間対象の処置方法を提供する。この処置方法は好ましくは本発明化合物の経口投与を含む。
【0049】
尿失禁は一般に、不随意的な尿喪失として定義でき、小児、女性、高齢者、および神経疾患患者を包含する4つの患者群において最も一般的である。不安定膀胱は、痙性の膀胱収縮または小容量で誘起される膀胱収縮を特徴とし、しばしば失禁と頻尿を伴う。間質性膀胱炎は、その病理の構成要素として不安定膀胱をも包含し得る、特発性骨盤痛症候群である。
【0050】
夜間遺尿症は5歳以降の睡眠中の不随意的排尿として分類され、原発性または続発性形態で存在し得る。患者が睡眠中に排尿の随意調節を発現したことがないならば、原発性夜間遺尿症の診断がなされる。患者が一時的に睡眠中の排尿調節の期間があったならば、続発性夜間遺尿症の診断がなされる。夜間遺尿症は4歳の全小児の30%、6歳で10%、10歳で3%、そして18歳で1%に起こる。続発性夜間遺尿症は、小児遺尿症例のおよそ20〜25%を占める。幾らかの遺尿症の小児は昼行性遺尿症をも呈するが、遺尿症の小児の80%以上は夜間遺尿症のみを呈する。
【0051】
女性の失禁の顕著なタイプは腹圧性および切迫性尿失禁である。腹圧性尿失禁は、身体活動や咳のような腹圧上昇時に無傷の尿道を通って不随意的に尿が失われる事である。これは、尿道が、膀胱内圧の上昇を補償するに充分な出口抵抗のための圧力を生じさせ得ない事を意味する。この尿喪失は、排尿が必要であるという予感を伴わず、膀胱の膨満とは無関係である。切迫性尿失禁は、膀胱内圧の上昇による、無傷の尿道からの不随意的尿喪失である。腹圧性尿失禁とは対称的に、切迫性尿失禁は、尿道が生じさせる出口抵抗を超えたエピソード性膀胱収縮(不安定膀胱)によって引き起こされ、尿意促迫の認知を伴っている。
【0052】
腹圧性尿失禁は、若年女性における最も一般的な失禁の形態である。二つの長期的研究において、純粋な腹圧性尿失禁が17〜75+の年齢の女性の15〜22%に発症することが判明した。腹圧性尿失禁の最も高い発症(25〜30%)は、25〜45歳または出産年齢において起こる。初産の後、全体としての発症率および重篤な腹圧性尿失禁の発症率は倍増する。しかしながら、未経産女性の35〜50%もまた時折腹圧性尿失禁を経験する。17〜24歳の未経産看護学生の研究では、当該女性の17%に毎日の腹圧性尿失禁が報告された。切迫性尿失禁は17〜75+歳の女性のおよそ10%に発症し、年齢と共に次第に増加する。腹圧性または切迫性尿失禁に加えて、17〜75+歳の女性の7〜14%が切迫性および腹圧性尿失禁の両方の性格を有する。この「複合性尿失禁」の発症率は、出産年齢の間は倍増し、17〜75+歳で13〜28%の範囲である。
【0053】
高齢者に見られる失禁の種類には、切迫性尿失禁(不安定膀胱)、腹圧性尿失禁、複合性尿失禁(切迫性および腹圧性尿失禁)および全尿失禁がある。切迫性尿失禁は高齢の男性および女性における最も一般的な失禁の形態であり、膀胱の異常な神経筋反応で引き起こされる。発症率の点で切迫性尿失禁の後には、各々複合性、腹圧性、溢流および全尿失禁が続く。腹圧性尿失禁は高齢男性には比較的稀であるが、女性ではよくある。腹圧性尿失禁は骨盤手術、膀胱および尿道の向きの解剖学的変化、骨盤筋の緊張低下、エストロゲン分泌終了に続く尿道の劣化、およびtile尿道の神経筋反応の特発性低下によって惹起される。溢流尿失禁は、尿道の抵抗を超えた無反射膀胱の膨脹と横溢に起因する。全尿失禁は、痴呆症および括約筋または神経の損傷に随伴する。
【0054】
上に述べた失禁の種類に加えて、切迫性尿失禁は、神経学的疾患、例えば多発性硬化症、アルツハイマー病およびパーキンソン病にも随伴する。神経学的疾患により引き起こされる切迫性尿失禁は膀胱の機能亢進に起因する。多発性硬化症患者における失禁の発症率は60〜90%と見積もられている。パーキンソン病患者の初期の神経学的症状に尿失禁があり、しばしば抗パーキンソン薬による処置によって悪化する。
【0055】
間質性膀胱炎は、排尿頻度、尿意促迫、恥骨上圧力および膀胱膨満持疼痛の増大を特徴とする。この症候群は感染または細胞学的損傷を伴わない。この疾患の平均発症年齢は40〜50歳である。生活の質は、腎臓疾患末期よりも悪いと考えられる。間質性膀胱炎に関するNIHの報告によれば、米国にはこの疾患と診断された症例が20000〜90000例あり、非診断症例の上限は診断例の範囲の4〜5倍多い。この疾患はAmerican Interstitial Cystitis Associationの設立により、泌尿器科学の社会における認知が高まってきている。
【0056】
失禁の処置はその種類によって変わる。例えば、何ら治療を行わない場合、夜間遺尿症の自然治癒率は年におよそ15%である。動機付けカウンセリング、膀胱運動および遺尿警告といった非薬物治療の成功率は25〜70%の範囲である。三環系抗うつ薬が、夜間遺尿症を処置するための最も有効な薬剤である。イミプラミンは最も広く使用されている薬物であるが、ノルトリプチリン、アミトリプチリン、およびデシプラミンといった他の三環系薬もまた有効である。遺尿症はイミプラミンによる処置後に患者の50%以上が治癒され、別の15〜20%には改善が見られる。この治療に対する良好な反応は、通常、治療の最初の一週間、しかもしばしば最初の投薬後に観察される。夜間に時折排尿を抑制できる、正常サイズの膀胱を持つ小児において最良の結果が観察される。小さな膀胱を持つ小児および年長の青年では観察される結果は最悪である。しかしながらこの治療は、毒性という危険がある。三環系抗うつ薬、特にイミプラミンは一般に、毒性が特に高く、ことによると低容量で致死的であることから、5歳未満の小児への使用は認められていない。他の薬物治療は、排尿筋の無抑制収縮を低下させる鎮痙薬であるオキシブチニン、および抗利尿薬デスモプレシンの使用を包含する。
【0057】
失禁のある女性に対する主たる治療形態は、膀胱の再懸垂および/または尿道の強化を企図する様々な外科的処置;骨盤床の運動;および薬物治療を包含する。イミプラミンは腹圧性尿失禁のある女性に対する排尿抑制の回復における単一治療として有効である。切迫性尿失禁におけるイミプラミンの有効性は治験によって変動があり、抗コリン薬および鎮痙薬との併用治療として使用した場合、より高いように見受けられる。
【0058】
失禁を有効に処置するのに必要な化合物の量は、使用化合物およびモノアミン再取り込み阻害を奏効する相対力価に依存する。係る用量は一般に、例えば上述のようなインビトロおよびインビボ試験に基づき外挿して求めることができる。例えば成人患者のためには、本発明化合物を、一日に約20〜200ミリグラムの量で投与した時に有効であると予想される。しかしながら、実際に投与される該化合物の量は、処置される個々の状態、投与しようとする化合物の選択、および投与経路を包含する、全ての関連状況に照らして医師が決定するという事が容易に理解できるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
慢性もしくは神経障害性疼痛の処置、片頭痛の処置もしくは防止、または切迫性、腹圧性もしくは混合性尿失禁の処置、のための医薬を製造するための、式IA、IB、IIA、IIB、IIIAまたはIIIB:
【化1】

[式中、
R1は、C1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、C3-C6シクロアルキル、C4-C7シクロアルキルアルキルおよびベンジル[これらは各々各存在毎に所望によりC1-C3アルキル、ハロゲン、-CN、-OR8および-NR8R9から個別に選ばれる1〜3個の置換基で置換されていてもよい]であり;
R2は、H、C1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、C3-C6シクロアルキル、C4-C7シクロアルキルアルキルおよびC1-C6ハロアルキルより成る群から選ばれ;
R3は、H、ハロゲン、C1-C6アルキル、C1-C6ハロアルキルおよびC3-C6シクロアルキル[ここでC1-C6アルキル、C1-C6ハロアルキルおよびC3-C6シクロアルキルは、各存在毎に所望によりOR8およびNR8R9から個別に選ばれる1〜3個の置換基で置換されていてもよい]より成る群から選ばれ;
R4、R5およびR6は、各存在毎に、H、ハロゲン、-OR10、-NO2、-NR10R11、-NR10C(O)R11、NR10C(O)NR11R12、-S(O)nR11、-CN、-C(O)R11、-C(O)2R11、-C(O)NR11R12、C1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、C3-C6シクロアルキルおよびC4-C7シクロアルキルアルキル[ここで、C1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、C3-C6シクロアルキルおよびC4-C7シクロアルキルアルキルの各々は、各存在毎に所望によりC1-C3アルキル、ハロゲン、=O、-CN、-OR8、-NR8R9およびフェニルから個別に選ばれる1〜3個の置換基で置換されていてもよく、また、フェニルは、各存在毎に所望によりハロゲン、-CN、C1-C4アルキル、C1-C4ハロアルキル、-OR8および-NR8R9から個別に選ばれる1〜3個の置換基で置換されていてもよい]より成る群から各々個別に選ばれ;
或いは、R5およびR6は合して-O-C(R11)2-O-であり;
R7は、H、ハロゲンおよびOR10より成る群から選ばれ;
R8およびR9は、H、C1-C4アルキル、C1-C4ハロアルキル、C1-C4アルコキシアルキル、C1-C4アルコキシアルキルアルキル、C3-C6シクロアルキル、C4-C7シクロアルキルアルキル、-C(O)R12、フェニルおよびベンジル[ここで、フェニルおよびベンジルは各存在毎に所望によりハロゲン、シアノ、C1-C4アルキル、C1-C4ハロアルキル、C1-C4アルコキシおよびC1-C4ハロアルコキシから個別に選ばれる1ないし3個の置換基で置換されていてもよい]より成る群から各々個別に選ばれるか、または、R8およびR9は、それらが結合している窒素と合して、ピペリジン、ピロリジン、ピペラジン、N-メチルピペラジン、モルホリン、またはチオモルホリン環を形成し;
R10は、H、C1-C4アルキル、C1-C4ハロアルキル、C1-C4アルコキシアルキル、C3-C6シクロアルキル、C4-C7シクロアルキルアルキル、-C(O)R12、フェニルおよびベンジル[ここで、フェニルおよびベンジルは各存在毎に所望によりハロゲン、-NH2、-OH、シアノ、C1-C4アルキル、C1-C4ハロアルキル、C1-C4アルコキシおよびC1-C4ハロアルコキシから個別に選ばれる1〜3個の置換基で置換されていてもよい]より成る群から選ばれ;
R11は、H、C1-C4アルキル、C1-C4ハロアルキル、C1-C4アルコキシアルキル、C3-C6シクロアルキル、C4-C7シクロアルキルアルキル、フェニルおよびベンジル[ここで、フェニルおよびベンジルは各存在毎に所望によりハロゲン、-NH2、-OH、シアノ、C1-C4アルキル、C1-C4ハロアルキル、C1-C4アルコキシおよびC1-C4ハロアルコキシから個別に選ばれる1〜3個の置換基で置換されていてもよい]より成る群から選ばれ、または、R10およびR11は、それらが結合している窒素と合して、ピペリジン、ピロリジン、N-メチルピペラジン、モルホリン、またはチオモルホリン環を形成し[但し、R8とR9またはR10とR11のうち一方のみがそれらが結合している窒素と合してピペリジン、ピロリジン、ピペラジン、N-メチルピペラジン、モルホリン、またはチオモルホリン環を形成する];
R12は、C1-C4アルキル、C1-C4ハロアルキルおよびフェニルより成る群から選ばれ;
Xは、O、NR13およびSより成る群から選ばれ;
Xを含んでいる環は、フラン、ピロール、チオフェン、ジヒドロフラン、ジヒドロピロール、およびジヒドロチオフェンから選ばれ;nは0、1、または2であり;そして、
R13は、H、C1-C6アルキル、ベンジルおよびフェニル[ここで、C1-C6アルキル、ベンジルおよびフェニルは各存在毎に所望によりハロゲン、-NH2、-OH、シアノ、C1-C4アルキル、C1-C4ハロアルキル、C1-C4アルコキシおよびC1-C4ハロアルコキシから個別に選ばれる1〜3個の置換基で置換されていてもよい]より成る群から選ばれる]
のうちいずれか1つから選ばれる化合物またはその薬学上許容し得る塩またはその異性体もしくはプロドラッグの使用。
【請求項2】
R1がC1-C6アルキルである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
R1がCH3である、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
R2がH、C1-C6アルキル、C3-C6シクロアルキル、またはC1-C6ハロアルキルである、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
R2がHまたはC1-C6アルキルである、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
R2がHである、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
R3が各存在毎に個別にH、ハロゲン、C1-C6アルキル、または、OR8もしくはNR8R9のうち1〜3個で置換されているC1-C6アルキルである、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
R3がHまたはC1-C6アルキルである、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
R3がHである、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
R1がCH3であり、R2がHであり、そしてR3がHである、請求項1に記載の使用。
【請求項11】
R4、R5およびRが各々個別にH、ハロゲン、C1-C6アルキルまたは-OR10である、請求項1に記載の使用。
【請求項12】
R4、R5およびR6のうち少なくとも1個がHである、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
R4、R5およびR6の各々がHである、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
R4、R5およびR6のうち1個がハロゲンである、請求項12に記載の使用。
【請求項15】
R1がCH3であり、R2およびR3が各々Hであり、そしてR4、R5、およびR6のうち少なくとも1個がHである、請求項1に記載の使用。

【公表番号】特表2006−509783(P2006−509783A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−556654(P2004−556654)
【出願日】平成15年11月25日(2003.11.25)
【国際出願番号】PCT/IB2003/005455
【国際公開番号】WO2004/050629
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(504396379)ファルマシア・アンド・アップジョン・カンパニー・エルエルシー (130)
【Fターム(参考)】