説明

疼痛の治療に使用するための(ピロリジン−2−イル)フェニル誘導体

本発明は、Rは、(C1−4)アルキル、ハロ(C1−4)アルキル、(C1−4)アルキルオキシもしくはハロ(C1−4)アルキルオキシであり;Rは、H、(C1−4)アルキル、ハロ(C1−4)アルキル、(C1−4)アルキルオキシ、ハロ(C1−4)アルキルオキシもしくはハロゲンであり;Rは、H、(C1−4)アルキルもしくはハロ(C1−4)アルキルであり;Rは、H、(C1−4)アルキルもしくはハロ(C1−4)アルキルであり;Rは、H、(C1−4)アルキルもしくはハロ(C1−4)アルキルであり;またはRおよびRは、同じ炭素原子に結合している場合、該炭素原子と一緒になって、ハロゲンで任意に置換されたスピロ(C3−6)シクロアルキル基を形成してもよく;Rは、H、(C1−4)アルキル、ハロ(C1−4)アルキル、(C1−4)アルキルオキシ、ハロ(C1−4)アルキルオキシもしくはハロゲンである;一般式Iを有する(ピロリジン−2−イル)フェニル誘導体またはその薬学的に許容される塩、同を含む医薬組成物および神経因性疼痛または炎症性疼痛などの疼痛の治療のためのこれら(ピロリジン−2−イル)フェニル誘導体の使用に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(ピロリジン−2−イル)フェニル誘導体、これを含む医薬組成物および慢性神経因性疼痛の治療におけるこれら(ピロリジン−2−イル)フェニル誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
神経因性疼痛または神経損傷後に生じる自発痛および異常過敏は、通常は外傷、感染もしくは疾患または手術に起因し、元の損傷が治癒した後も長期間続くことがある。現在の治療の選択肢は、限られているまたは多くの人にとって充分なものではない。
【0003】
HCNチャネルは、I、Iまたはlとして知られる電流の分子基体である。過分極活性化型環状ヌクレオチド感受性(HCN:Hyperpolarization−activated,cyclic nucleotide−gated)チャネルは、心臓ペースメーカー細胞において最初に特定された、ペースメーカーチャネルとしても知られ(Di Francesco、1993年、Annu Rev Physiol.55:455−472ページ)、さまざまな末梢および中枢ニューロンにおいても見つかっている(例えば、Notomi & Shigemoto 2004年 J.Comp.Neurol.471:241−276ページ)。これらのチャネルは、過分極によってゆっくりと活性化されて脱分極性の内向き電流(心臓細胞においてIと呼ばれ、ニューロンにおいてIと呼ばれる)を発生させ、ナトリウムおよびカリウムイオンの双方を透過させる。視床、扁桃体、脊髄および一次感覚神経を含む神経系の疼痛処理領域には、4つのHCNチャネルアイソフォームが存在する。4つのサブユニットのすべては、脊髄後根神経節(DRG)に存在し、HCN1が高レベルで発現しているようであり、これは、DRGから記録されたI電流の活性化速度論と一致する(Tuら、J Neurosci.Res.2004年 76:713−722ページ)。
【0004】
電流は、脊髄の膠様質、脊髄後根神経節、扁桃体、帯状回皮質および視床を含む痛覚に関与する神経系の領域の多くにあるニューロンにおいて検出されている。I電流は、中型/大型DRGによって選択的に発現しているようであり、大部分のC−型(小型)DRGの細胞体には存在していない場合もある(Scroggsら、J Neurophysiol.71:271−279ページ;Tuら、J Neurosci.Res.2004年 76:713−722ページ)。さらに、ラット(Chungモデル)において神経損傷が大型DRGのI電流密度を増加させ、ペースメーカーを駆動させる、すなわち連結した神経において自発活動電位を生じさせることが報告されている。IチャネルブロッカーであるZD7288は、伝導ブロックを起こすことなくA−β線維およびA−δ線維における異所性放電の発火頻度を減少させた(Leeら 2005年 J Pain 417−424ページ)。
【0005】
神経因性疼痛モデルに対するIブロッカーであるZD7288の腹腔内投与は、用量依存的に機械的アロディニアを逆行させる(Chung/von Frey;Chaplanら、2003年 J Neurosci.23:1169−1178ページ)。さらにZD7288は、炎症性疼痛のCFAラットモデルにおけるアロディニアを抑制し、軽度の熱傷モデルのラットにおける自発痛もブロックする。別の研究グループは、手術の4時間後にラットの坐骨神経にZD7288を局所投与することにより、Brennanモデルの機械的アロディニアが低減されることを報告している(Dalle & Eisenach 2005年 Reg.Anesth.およびPain Med 243−248ページ)。
【0006】
慢性疼痛状態では、一次求心性線維が炎症後の末梢感作により過興奮になり、ニューロパシーを伴う神経障害の部位においてイオンチャネルの発現が変化すると仮定される。ZD7288によるIの抑制は、神経損傷した有髄DRGにおいて自発活性を低減し(Yagiら、2000 Proc 9th World Congress on Pain 109−117ページ)、それにより関連する疼痛を低減する。現在の前臨床データは、Iチャネルブロッカーが慢性神経因性疼痛の治療において有用であることを示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Di Francesco、1993年、Annu Rev Physiol.55:455−472ページ
【非特許文献2】Notomi & Shigemoto 2004年 J.Comp.Neurol.471:241−276ページ
【非特許文献3】Tuら、J Neurosci.Res.2004年 76:713−722ページ
【非特許文献4】Scroggsら、J Neurophysiol.71:271−279ページ
【非特許文献5】Leeら 2005年 J Pain 417−424ページ
【非特許文献6】Chung/von Frey;Chaplanら、2003年 J Neurosci.23:1169−1178ページ。
【非特許文献7】Dalle & Eisenach 2005年 Reg.Anesth.およびPain Med 243−248ページ
【非特許文献8】Yagiら、2000 Proc 9th World Congress on Pain 109−117ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、I−チャネルにより媒介される疼痛状態の治療に有用な化合物に対する需要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、本発明は、一般式I
【0010】
【化1】

(式中、
は、(C1−4)アルキル、ハロ(C1−4)アルキル、(C1−4)アルキルオキシもしくはハロ(C1−4)アルキルオキシであり;
は、H、(C1−4)アルキル、ハロ(C1−4)アルキル、(C1−4)アルキルオキシ、ハロ(C1−4)アルキルオキシもしくはハロゲンであり;
は、H、(C1−4)アルキルもしくはハロ(C1−4)アルキルであり;
は、H、(C1−4)アルキルもしくはハロ(C1−4)アルキルであり;
は、H、(C1−4)アルキルもしくはハロ(C1−4)アルキルであり;または
およびRは、同じ炭素原子に結合している場合、該炭素原子と一緒になって、ハロゲンで任意に置換されたスピロ(C3−6)シクロアルキル基を形成してもよく;
は、H、(C1−4)アルキル、ハロ(C1−4)アルキル、(C1−4)アルキルオキシ、ハロ(C1−4)アルキルオキシもしくはハロゲンである。)
を有する(ピロリジン−2−イル)フェニル誘導体またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
式Iの定義において使用される場合、用語、(C1−4)アルキルは、ブチル、イソブチル、第三級ブチル、プロピル、イソプロピル、エチルおよびメチルのような1−4個の炭素原子を有する分岐または非分岐アルキル基を意味する。
【0012】
用語、ハロ(C1−4)アルキルは、1つまたは複数のハロゲンで置換された(C1−4)アルキル基を意味する。好適なハロ(C1−4)アルキル基は、トリフルオロメチルである。
【0013】
用語、(C1−4)アルキルオキシおよびハロ(C1−4)アルキルオキシにおいて、(C1−4)アルキルおよびハロ(C1−4)アルキルは、上記のとおりの意味を持つ。
【0014】
用語、ハロゲンは、F、Cl、BrまたはIを意味する。好適なハロゲンは、Fである。
【0015】
式Iに従う(ピロリジン−2−イル)フェニル誘導体について、Rは、ハロ(C1−4)アルキル、特にトリフルオロメチルが好ましい。
【0016】
、R、RおよびRがHであり、RがHまたはFである、式Iに従う化合物がさらに好適である。
【0017】
式Iに従う(ピロリジン−2−イル)フェニル誘導体のS−立体異性体が好適である。
【0018】
特に好適な本発明の(ピロリジン−2−イル)フェニル誘導体は、
− 2−(2−((S)−ピロリジン−2−イル)フェニル)−3−(トリフルオロメチル)ピリジン;
− 2−(2−((R)−ピロリジン−2−イル)フェニル)−3−(トリフルオロメチル)ピリジン;
− 2−(5−フルオロ−2−(ピロリジン−2−イル)フェニル)−3−(トリフルオロメチル)ピリジン;
− 6−(2−(3−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)フェニル)−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン;
− 2−(5−メチル−2−(ピロリジン−2−イル)フェニル)−3−(トリフルオロメチル)ピリジン;
− 2−(2−(ピロリジン−2−イル)フェニル)−3−メチルピリジン;
− 2−(4−フルオロ−2−(ピロリジン−2−イル)フェニル)−3−メチルピリジン;
− 2−(5−フルオロ−2−(ピロリジン−2−イル)フェニル)−3−メチルピリジン;
− 2−(2−(ピロリジン−2−イル)フェニル)−3−メトキシピリジン;
− 2−(4−フルオロ−2−(ピロリジン−2−イル)フェニル)−3−メトキシピリジン;
− 2−(5−フルオロ−2−(ピロリジン−2−イル)フェニル)−3−メトキシピリジン;
またはその薬学的に許容される塩である。
【0019】
本発明の(ピロリジン−2−イル)フェニル誘導体は、一般に有機化学の分野で周知の方法によって調製することができる。
【0020】
がC(1−4)アルキルである式1の化合物は、N,N−ジメチルホルムアミドもしくはアセトニトリルなどの溶媒中においてトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンまたは炭酸ナトリウムなどの塩基性試薬を用いて、式RXの試薬によるアルキル化によって、RがHである式1の化合物から調製することができ、ここでRは、前に述べたとおりの意味を持ち、Xは、クロロ、ブロモ、ヨードまたはアリールもしくはアルキルスルホネート、例えばトシレートもしくはメシレートなどの脱離基を表す。RがC(1−4)アルキルである式1の化合物は、好ましくは0℃と100℃の間の温度においてギ酸、ホルムアミドなどの還元剤または水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウムもしくは水素化リチウムアルミニウムなどの金属水素化物試薬の存在下でRがHである式1の化合物をC(1−4)アルデヒドまたはケトンにより処理することによって調製することもできる。
【0021】
がHである式1の化合物は、式2の化合物を脱保護することによって調製することができ、ここで、R、R、R、RおよびRは前で定義したとおりの意味を持ち、PGはtert−ブトキシカルボニル(BOC)、ベンジルオキシ−カルボニル(CBZ)またはトリクロロエトキシカルボニル(TROC)などの保護基である。このような脱保護の工程は、当業者に周知である。Greene T.W.「Protecting Groups in Organic Synthesis」New York、Wiley(1981年)の方法を使用してもよい。
【0022】
【化2】

式2の化合物は、X’がハロゲン、好ましくはブロモもしくはヨードまたはトリフルオロメタンスルホネート(トリフレート)などのスルホネートである式3の化合物およびMがボロン酸、ボロン酸エステル、例えばピニコラトボラートもしくはネオペンチルグリコラトボラナンなどの金属種である式4の試薬から調製することができる。そのようなクロスカップリング反応は、炭酸ナトリウムなどの塩基の存在下、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミドまたは1,2−ジメトキシエタンなどの溶媒中で、高温、好ましくは100℃超において、遷移金属触媒、好ましくはパラジウム触媒、例えばテトラキス(トリフェニルホスヒン)パラジウム(0)または酢酸パラジウム(II)の存在下で行われる。この反応は、熱源としてマイクロ波照射を用いた加熱によって行ってもよい。
【0023】
【化3】

式4の化合物は、当業者に周知の方法によって式6の化合物から調製することができる。
【0024】
あるいは、式2の化合物は、式3および式4の化合物のカップリングについて上で記載したクロスカップリング条件と同じ条件を用いて、X’およびMが上記の定義と同じである式5および式6の化合物から調製することができる。
【0025】
【化4】

式5の化合物は、当業者に周知の方法によって式3の化合物から調製することができる。そのような方法としては、リチウム−ハロゲン交換に続き塩化亜鉛などの試薬によりトランスメタル化して、後の加水分解によりボロン酸をもたらすホウ酸トリイソプロピルなどのホウ酸試薬または塩化トリ−n−ブチルスズなどのスタンナン試薬によりリチウム化学種をクエンチする方法が挙げられる。Mがホウ酸エステルである式5の化合物は、1,1’−ビス(ジフェニルホスピノ)フェロセンジクロロパラジウム(II)などの遷移金属触媒および2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジ−イソ−プロポキシ−1,1’−ビフェニルなどの配位子の存在下、ジメチルスルホキシドなどの溶媒中で高温において、式3の化合物および以下に限定されるものではないがビス(ピナコラト)ボランまたはビス(ネオペンチルグリコラト)ジボラン[5,5,5’,5’−テトラメチル−2,2’−ビ(1,3,2−ジオキサボリナン)]を含む、適したジボラン化学種から調製することができる。
【0026】
式3の化合物は、当業者に周知の保護方法によって式7の化合物から調製することができる。Greene T.W.「Protecting Groups in Organic Synthesis」New York、Wiley(1981年)の方法を使用してもよい。そのような保護基(PG)の例は、tert−ブチルオキシカルボニル基である。この変換は、テトラヒドロフランなどの溶媒中で周囲温度において、式7の化合物およびジ−tert−ブチルジカーボネートを用いて容易に達成される。
【0027】
【化5】

式7の化合物は、テトラヒドロフランなどの溶媒に溶かした水素化ホウ素ナトリウムなどの適切な還元剤による周囲温度での還元によって、式8の化合物から調製することができる。
【0028】
【化6】

【0029】
およびRがHである式8の化合物は、水素化ナトリウムなどの塩基の存在下における式10のN−ビニルピロリジノン試薬による処理に次いで生成された最初の中間体の酸加水分解および基本的なワークアップを行うことによって、Rがアルキル基である式9の化合物から調製することができる。ピロリジン合成のこの方法は、文献(B.E.Maryanoffら、J.Med.Chem.、1987年、30、1433ページおよびP.Jacob III、J.Org.Chem.、1982年、47、4165ページ)に記載されている。
【0030】
式7の化合物は、テトラヒドロフランなどの溶媒中で−78℃と周囲温度との間の温度においてカリウムtert−ブトキシドなどの塩基による処理に次いで、Xが前で定義したとおりであり、X’’がハロゲンまたはトシレート基などのスルホネートであり、Xが式11のX’’と同じであり得る式12の試薬を添加することによって、Arがアリール環、好ましくはフェニルまたはハロゲンで任意に置換されたフェニルである式11の化合物から調製することができる。塩基および式12の化合物の添加後、反応物は酸性化され、その後中和され、塩基性化される。
【0031】
【化7】

【0032】
式7の化合物は、脱保護(すなわち、当業者に周知の脱保護方法によるPGの除去)および同時に環化をもたらす塩基性化によって、式13の化合物から調製することができる。式13の化合物は、トリエチルアミンなどの塩基の存在下、塩化メチレンなどの溶媒中において一般式RSOHalのアリールまたはアルキルスルホニルハロゲン化物による式14の化合物の処理によって作製できる。式14の化合物は、9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナン(9−BBN)またはテキシルボランによる処理、続いて緩衝過酸化水素による処理などの連続したヒドロホウ素化−酸化反応によって、式15の化合物から調製することができる。PGが上記の定義をもつ一般式15の化合物は、式3の化合物の生成について上に記載したとおりの保護手順によって、式16の化合物から調製することができる。
【0033】
【化8】

式16の化合物は、カリウムtert−ブトキシドなどの塩基による処理および一般式17のアルキル化剤との反応に続く酸加水分解によって、式11の化合物から調製することができる。一般式16の化合物は、当業者に周知の文献にある方法を用いて光学的に純粋な形態で作製することもできる。そのような方法としては、CAがキラル補助基である式18の化合物からのキラル補助基の除去が挙げられる。式18の化合物は、M’が金属種、好ましくはマグネシウム、リチウム、インジウムまたは亜鉛である式20のアリル金属を、式19のイミンに付加することによって調製することができる。式19のイミンは、式CA−NHのアミンおよび硫酸マグネシウム、チタンテトラエトキシド、四塩化チタンまたは硫酸ナトリウムなどの脱水剤による処理によって、式21のアルデヒドから調製することができる。そのようなイミン生成については、当業者に周知である。
【0034】
【化9】

式19のイミンの例としては、以下に限定されるものではないが、CA−NHがフェニルグリシンアミドであるアミンから誘導されたイミン(J.Dalmolenら、Eur.J.Org.Chem.2004年、1544ページおよびM.vd Sluisら、Org Lett.、2001年、3、3943ページ)、バリンメチルエステルまたはバリノール(A.Bacoumら、J.Chem.Soc,Chem Commun.、1993年、1542ページ)およびフェニルグリシノール(T.Valaivan、J.Org.Chem.、2005年、70、3464ページ)が挙げられる。式19のイミンの別の例としては、CAが硫黄を中心にいずれかの立体化学を有するS(O)CCHまたはS(O)tBuであるスルフィンアミン(sulphinamine)が挙げられる。CAが硫黄を中心にいずれかの立体化学を有するS(O)CCHまたはS(O)tBuである式17のイミンは、P.Zhouら、Tetrahedron、2004年、60、8003ページの方法を使用して調製することができる。
【0035】
およびRがHである式7の化合物は、K.M.BrinnerおよびJ.A.Ellman、Org.Biomol.Chem.、2005年、3、2109ページで報告された方法に従って、CAが硫黄を中心にいずれかの立体化学を有するS(O)CCHまたはS(O)tBuである式19の化合物から調製することもできる。
【0036】
およびRがHである式15についてのキラル化合物を生成する他の方法には、式21のアルデヒドから開始するエナンチオ選択的移動アミノアリル化反応(M.Sagiuraら、J.Am.Chem.Soc、2006年、128、11038ページ)が挙げられる。
【0037】
式Iの(ピロリジン−2−イル)フェニル誘導体およびこれらの塩は、少なくとも1つの不斉中心を含むこともあり、したがって、エナンチオマーおよびジアステレオマーを含む立体異性体として存在することもある。本発明は、式Iの化合物のその範囲内の前述の立体異性体および個々のRおよびSエナンチオマーのそれぞれならびにこれらの塩、実質的に遊離塩基(すなわち、5%未満、好ましくは2%未満、特に1%未満の別のエナンチオマーを含む)ならびに実質的に同量の2種類のエナンチオマーを含むラセミ混合物など、あらゆる割合の上記のようなエナンチオマーの混合物を含む。
【0038】
式1、2、3、5、7、13、14、15および16の化合物は、キラル塩形態の結晶化(cystallisation)、キラルクロマトグラフィー分離または酵素的な方法を用いた分離などの方法を使用して単一のエナンチオマーに分離することができる。そのような方法は、当業者に周知である。「Advanced Organic Chemistry」(March J.、New York、Wiley(1985年)および「Chirality in Industry」(A.N.Collins編、G.N.SheldrakeおよびJ.Cosby、1992年;John Wiley)の方法を使用してもよい。
【0039】
式18の化合物は、結晶化(cystallisation)またはクロマトグラフィー分離などの方法を用いて単一のジアステレオマーとして単離することができる。
【0040】
本発明は、同位体標識した本発明の化合物も包含する。同位体標識した本発明の化合物は、1つまたは複数の原子が通常自然に見られる原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子によって置き換えられているという事実を別にすれば本明細書中で挙げられたものと同一である。本発明の化合物に組み込むことができる同位体の例としては、それぞれH、H、13C、14C、15N、18O、17O、18Fおよび36Clなどの水素、炭素、窒素、酸素、フッ素および塩素の同位体が挙げられる。
【0041】
同位体標識した式(I)の特定の化合物(例えば、Hおよび14Cにより標識した化合物)は、化合物および/または基質組織分布アッセイに有用である。トリチウム標識した(すなわちH)および炭素−14(すなわち14C)同位体は、調製の容易さおよび検出性から特に好適である。さらに、ジュウテリウム(すなわちH)などの重同位体による置換は、より優れた代謝的安定性(例えば、長いインビボ半減期または必要用量の低減)から、特定の治療上の利点を提供することができるため、ある状況下において好適である場合もある。同位体標識した式(I)の化合物は、上で開示したおよび/または後述の実施例の手順と類似した手順に従って、同位体標識していない試薬の代わりに同位体標識した適切な試薬を用いることにより一般に調製することができる。
【0042】
薬学的に許容される塩は、塩酸、臭化水素酸、リン酸および硫酸などの鉱酸または例えば、アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、マレイン酸、マロン酸、フマル酸、グリコール酸、コハク酸、プロピオン酸、酢酸およびメタンスルホン酸などの有機酸により式Iの化合物の遊離塩基を処理することによって得ることができる。
【0043】
本発明の化合物は、非溶媒和形態ならびに水、エタノールおよび同種のものなどの薬学的に許容される溶媒との溶媒和形態で存在してよい。一般に、溶媒和形態は、本発明の目的においては非溶媒和形態と同等であると見なされる。
【0044】
本発明は、一般式Iに従う(ピロリジン−2−イル)フェニル誘導体またはその薬学的に許容される塩を、薬学的に許容される補助剤および、任意に、他の治療薬との混合物として含む医薬組成物をさらに提供する。用語「許容される」とは、組成物の他の成分と適合性であり、その服用する固体に対して有害でないことを意味する。組成物は、例えば、経口、舌下、皮下、静脈内、硬膜外、髄腔内、筋肉内、経皮的、肺内、局所、眼または直腸投与などに適切なものなど、投与のための単位剤形すべてを含む。好適な投与経路は経口経路である。
【0045】
経口投与のために、活性成分は、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、溶液剤、懸濁剤および同種のものなどの個別単位として提供されてもよい。
【0046】
非経口投与のために、本発明の医薬組成物は、単位用量または複数用量用容器、例えば、密封されたバイアルおよびアンプルに、例えば所定の量の注射液として提供されてもよく、使用前に無菌の液体担体、例えば、水を添加するだけですむフリーズドライ(凍結乾燥)された状態で保存することもできる。
【0047】
上記のような薬学的に許容される補助剤、例えば、標準的な参考文献、Gennaro,A.R.ら、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(20th Edition、Lippincott Williams&Wilkins、2000年、特にPart 5:Pharmaceutical Manufacturingを参照)に記載されているような補助剤と混合された活性薬剤は、丸剤、錠剤などの固体投薬単位に圧縮されてもまたはカプセル剤、坐剤もしくはパッチ剤に加工されてもよい。薬学的に許容される液体を用いた活性薬剤は、液体組成物、例えば、注入調製物として、溶液剤、懸濁剤、乳剤または例えば、鼻用スプレーなどのスプレーの形態で適用することができる。
【0048】
固体投薬単位を作製するために、充填剤、着色剤、ポリマーバインダーおよび同種のものなどの従来の添加剤を使用することが想定される。一般に、活性化合物の機能を妨げない任意の薬学的に許容される添加剤を使用することができる。固体組成物として投与可能な本発明の活性薬剤に適切な担体としては、適切な量で使用されるラクトース、デンプン、セルロース誘導体および同種のものまたはそれらの混合物が挙げられる。非経口投与については、薬学的に許容される分散化剤および/または湿潤剤、例えばプロピレングリコールまたはブチレングリコールなどを含む水性懸濁液、等張生理食塩水および無菌注入溶液を使用することができる。
【0049】
本発明は、上記組成物に対して適切なパッキング材料と組み合わせた、上記のとおりの医薬組成物をさらに含み、当該パッキング材料は上記のような使用ための本組成物の使用についての説明書を含む。
【0050】
本発明の(ピロリジン−2−イル)フェニル誘導体は、HEK細胞において発現するヒトHCN1チャネルを用いたパッチクランプ電気生理学(国際特許出願WO01/090142:「Full length human HCN1 I channel subunits and variants」−Akzo Nobel N.V.を参照)により測定すると、Ihチャネルの抑制物質であることがわかった。
【0051】
本発明の化合物は、Iチャネルの調節に媒介される疼痛の治療において有用性がある。この疼痛は、好ましくは神経因性または炎症性疼痛、例えば、三叉神経痛、ヘルペス後神経痛(帯状疱疹後の疼痛)、糖尿病性ニューロパシー、切断後の幻肢痛、多発性硬化症、化学療法後の疼痛、線維筋痛症(慢性の筋痛疾患)、HIV感染、アルコール依存症、癌(末梢神経の癌の直接的な結果としてまたはある化学療法の薬物による副作用として)および非定型顔面痛のような状態において生じる神経因性疼痛である。
【0052】
本発明の化合物は、他の薬物、例えば、オピオイドおよびCOX−2選択的阻害剤を含む非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)などの鎮痛薬、と併せて使用されることも考えられる。
【0053】
本発明の化合物は、症状を緩和するのに十分な量で、十分な時間、ヒトに投与することができる。例として、ヒトに対する投与量レベルは、体重1kgあたり0.001−50mgの範囲、好ましくは、体重1kgあたり0.01−20mgの投与量であり得る。
【0054】
実験用
化合物1
(S,E)−2−(2−ブロモベンジリデンアミノ)−2−フェニルエタノール
【0055】
【化10】

撹拌されている(S)−(+)−2−アミノ−2−フェニルエタノール(271mmol、37.2g)の塩化メチレン(350mL)中溶液に2−ブロモベンズアルデヒド(271mmol、31.8mL、50.2g)および無水硫酸マグネシウム(50g)を添加した。この混合物を3時間、室温において撹拌し、その後一晩そのまま置いた。デカライトを通して濾過し、蒸発乾固して淡黄色の固体を得た。この固体を乾燥エーテル(100mL)中で30分間撹拌し、次に濾過し、エーテルにより洗浄し、真空乾燥して(S,E)−2−(2−ブロモベンジリデンアミノ)−2−フェニルエタノール(65.1g)を無色の固体として得た。MS(ES):m/z[M+H]304および306。
【0056】
化合物2
(S)−2−((S)−1−(2−ブロモフェニル)ブタ−3−エニルアミノ)−2−フェニルエタノール
【0057】
【化11】

窒素下において撹拌されている亜鉛(70.8mmol、4.63g、<10マイクロメートル)のテトラヒドロフラン(35mL)中懸濁液に臭化アリル(70.8mmol、6.16mL、8.57g)を室温において1分かけて添加した。中程度の発熱があり、得られた灰色の懸濁液を1.5時間撹拌して、次いで氷/鹹水浴において冷却した。(S,E)−2−(2−ブロモベンジリデンアミノ)−2−フェニルエタノール(化合物1;23.60mmol、7.18g)のテトラヒドロフラン(20mL)中溶液を30分かけて滴加し、10分間0℃で撹拌した。この氷/鹹水浴を25℃の水浴に換え、灰色の懸濁液を室温において30分間撹拌し、次いで一度に水(50mL)を加えることによってクエンチした。塩化メチレン(100mL)を添加し、この混合物を1時間撹拌し、次にこの混合物に飽和炭酸水素ナトリウム(50mL)を添加した。この混合物をデカライトを通して濾過し、層分離させた。この分離した水層をさらに塩化メチレンにより抽出し、この有機抽出液を硫酸ナトリウムにより乾燥し、蒸発させて淡黄色の油にした。この淡黄色の油を酢酸エチル/ヘプタン(10−30%)を用いた200gシリカパッドにより精製して、純粋な(S)−2−((S)−1−(2−ブロモフェニル)ブタ−3−エニルアミノ)−2−フェニルエタノール(4.52g)を得た。MS(ES):m/z[M+H]346および348。
【0058】
化合物3
(S)−1−(2−ブロモフェニル)ブタ−3−エン−1−アミン塩酸塩
【0059】
【化12】

方法A
撹拌されている(S)−2−((S)−1−(2−ブロモフェニル)ブタ−3−エニルアミノ)−2−フェニル−エタノール(化合物2;124mmol、42.8g)のメタノール(500mL)およびメチルアミン(680mmol、71.1mL、33%エタノール中溶液)中溶液を、氷/水冷却して内部温度を25℃未満に維持しながら過ヨウ素酸(340mmol、77g)のメタノール(50mL)中溶液により滴下処理した。この混合物を室温において3時間撹拌して、その後一晩そのまま置いた。この混合物を2Mの水酸化ナトリウム水溶液(300mL)によりクエンチして、濃い沈殿物を得た。この沈殿物を1時間撹拌し、次いでメタノールを真空除去した。この混合物をデカライトを通して濾過し、ゼラチン状のケークを水(200mL)で洗浄し、次いで塩化メチレン(250mL)を添加した。層を分離させ、塩化メチレン(200mL)により水層を抽出した。混ざった抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥し蒸発させて粗製の(S,E)−N−ベンジリデン−1−(2−ブロモフェニル)ブタ−3−エン−1−アミン(31.65g)を黄色の油として得た。
【0060】
撹拌されている上記の粗生成物(15.37mmol、4.83g)のテトラヒドロフラン(80mL)中溶液を水(80mL)で処理して濁った溶液を得た。この溶液にヒドロキシルアミン塩酸塩(30.7mmol、2.14g)を添加した。45分後にテトラヒドロフランを真空除去し、この混合物を5MのHCl(10mL)により酸性化し、酢酸エチル(2×50mL)で洗浄し、次いで10MのKOHにより塩基性化し、塩化メチレン(3×50mL)で抽出した。この混ざった有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発させて淡黄色の油にした。この淡黄色の油をエーテルに溶解させ、エーテルに溶かした2MのHClにより酸性化し、濾過し、蒸発させて(S)−1−(2−ブロモフェニル)ブタ−3−エン−1−アミン塩酸塩(3.16g)を得た。MS(ES):m/z[M+H]226および228。キラルHPLCおよびラセミ物質との比較により、この物質が100%鏡像異性的に純粋であることが示された。
【0061】
方法B
窒素下、周囲温度において(1R,3R,4S)−3−アリル−3−アミノ−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オン(241mmol、50g)の1,3−ジクロロプロパン(400mL)中溶液に2−ブロモベンズアルデヒド(253mmol、46.9g)を添加し、次いでD/L−カンファースルホン酸(21.55mmol、5g)を添加し、この溶液を一晩50℃に加熱した。さらに0.05eqの2−ブロモベンズアルデヒドを添加し、この反応物を50℃においてさらに2時間撹拌した。50℃においてこの反応混合物に0.5Mのヒドロキシルアミン酢酸(1000mL)のメタノール溶液[メタノール(500mL)にヒドロキシルアミン塩酸塩(46.5g)を溶解させる]その後水酸化ナトリウムのペレット(20g)を添加して周囲温度において30分間撹拌し、次いで周囲温度において氷酢酸(30g)をゆっくりと添加し、さらに30分間撹拌し、次にメタノールを用いて1000mLに希釈することによって調製した溶液]に添加し、50℃においてそのまま3時間撹拌した。この反応混合物を10℃に冷却し、10Mの塩酸により(pH1に達するまで)ゆっくりと酸性化した。これを水(250mL)により希釈し、塩化メチレン(4×500mL)により抽出し、次にこの酸性水溶液を氷水冷却しながら水酸化ナトリウムのペレットによりpH14に塩基性化し、次いで塩化メチレン(3×500mL)により抽出した。混ざった有機物を炭酸ナトリウムで乾燥し、濾過し蒸発させて淡緑色の油を得た。この淡緑色の油を塩化メチレンとともにシリカパッド(400gシリカ)に充填し100%の酢酸エチルにより酢酸エチルに溶かした3%のメタノール(2Mのアンモニアをいくらか含む)に溶出して、キラルHPLCによって測定したエナンチオマー比が97.6:2.4の(S)−1−(2−ブロモフェニル)ブタ−3−エン−1−アミン(18.4g)を得た。MS(ES);m/z[M+H]26および228。この物質を、エーテルに溶かしたHClにより塩酸塩に変換した。
【0062】
化合物4
(S)−tert−ブチル1−(2−ブロモフェニル)ブタ−3−エニルカルバメート
【0063】
【化13】

(S)−1−(2−ブロモフェニル)ブタ−3−エン−1−アミン塩酸塩(化合物3;70.2mmol、18.44g)を周囲温度において乾燥塩化メチレン(200mL)に懸濁させ、トリエチルアミン(154mmol、21.49mL)を添加し、続いてジ−tert−ブチルジカーボネート(77mmol、16.86g)を添加した。この反応混合物を、塩化メチレン(200mL)により希釈し、その結果得られた溶液をアルゴン下においてそのまま2日間撹拌した。
【0064】
上記反応混合物を0.5%のクエン酸(200mL)でクエンチし、塩化メチレン(2×200mL)により抽出し、この混ざった有機層を水で洗浄し、硫酸ナトリウムにより乾燥し、濾過し、蒸発させて(S)−tert−ブチル1−(2−ブロモフェニル)ブタ−3−エニルカルバメート(22.2g)を得た。MS(ES):m/z[M+H]326および328。
【0065】
化合物5
(S)−tert−ブチル1−(2−ブロモフェニル)−4−ヒドロキシブチルカルバメート
【0066】
【化14】

テトラヒドロフラン(150mL)中に溶解させた2−メチル−2−ブテン(204mmol、21.68mL)の溶液を塩氷浴において冷却し、1Mのボラン−THF錯体(34.1mmol、34.1mL)をゆっくりと添加して、温度を0℃未満に維持した。添加を完了すると、この反応混合物を0℃においてそのまま10分間撹拌し、その後(S)−tert−ブチル1−(2−ブロモフェニル)ブタ−3−エニルカルバメート(化合物4;68.1mmol、22.23g)のテトラヒドロフラン溶液をゆっくりと添加して、温度を5℃未満に維持した。添加を完了すると、冷却浴を取り除き、温度を室温にまで温まらせ、そのまま60分間撹拌した。60分後、この反応混合物を再び0℃に冷却し、4Nの水酸化ナトリウム(80mmol、20mL)を5℃未満においてゆっくりと添加し、これに続いて27.5%の過酸化水素水溶液(68.1mmol、20mL)を添加して、温度を5℃未満に保った。添加を完了すると、冷却浴を取り除き、この反応混合物を温度を周囲温度にまで温まらせ、そのまま一晩撹拌した。この反応混合物をエーテル(500mL)で希釈し、次に水(500mL)で希釈し、この水様液を層分離させ、この水様液をエーテル(3×500mL)により再抽出した。この混ざった有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、蒸発させて白色の固体を得た。この白色の固体を塩化メチレンに溶かし、シリカパッドに充填し、40%の酢酸エチル−ヘプタンで溶出して(S)−tert−ブチル1−(2−ブロモフェニル)−4−ヒドロキシブチルカルバメート(8.08g)を得た。MS(ES):m/z[M+H]344および346。
【0067】
化合物6
(S)−4−(2−ブロモフェニル)−4−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)ブチルメタンスルホネート
【0068】
【化15】

氷浴において冷却した(S)−tert−ブチル1−(2−ブロモフェニル)−4−ヒドロキシブチルカルバメート(化合物5;59.4mmol、20.44g)の乾燥塩化メチレン(500mL)中溶液にN−エチルジイソプロピルアミン(119mmol、15.35g)を添加し、次いで窒素下において塩化メタンスルホニル(60.0mmol、6.87g)をゆっくりと添加して、反応温度を5℃未満に維持した。添加を完了すると、冷却浴を取り除き、この反応混合物を周囲温度にまで温まらせ、そのまま2日間撹拌した。この反応混合物を45℃において真空蒸発させ、塩化メチレン(500mL)に溶かした残留物を、0.5%のクエン酸で洗浄し、硫酸マグネシウムと活性炭で乾燥し、デカライト床を通して濾過し、蒸発させてわずかに油性の固体を得た。このわずかに油性の固体をヘプタンとすり混ぜ、(S)−4−(2−ブロモフェニル)−4−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)ブチルメタンスルホネート 23.25g)を淡褐色の固体として得た。MS(ES):m/z[M+H]422および424。
【0069】
化合物7
(S)−2−(2−ブロモフェニル)ピロリジン塩酸塩
【0070】
【化16】

窒素下において2L−フラスコ中の2Mの塩化水素のエーテル中溶液(700mL)を5℃に冷却し、メタノール(300mL)に溶解させた(S)−4−(2−ブロモフェニル)−4−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)ブチルメタンスルホネート(化合物6;55.1mmol、23.25g)をゆっくりと添加して、温度を20℃未満に維持した。透明でオレンジ色の溶液が生成され、この溶液を周囲温度においてそのまま撹拌し、薄層クロマトグラフィー(50%の酢酸エチル−ヘプタン)により出発物質がなくなるまでモニターした。エーテルに溶かした過剰なHClを45℃において取り除いてオレンジ色/褐色の油を得た。このオレンジ色/褐色の油に2NのHCl(200mL)を添加し、これをエーテル(3×200mL)により洗浄し、5℃未満に冷却し、氷による冷却により温度を10℃未満に維持しながら固体のKOHを用いてpH14にまで塩基性化した。水性の混合物を塩化メチレン(4×300mL)により抽出し、混ざった有機物を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、蒸発させて褐色の油を得た。これを乾燥メタノール(100mL)に溶解させ、冷却し、エーテル(150mL)に溶かした2NのHClをゆっくりと添加して、温度を10℃未満に維持した。この溶媒を除去してわずかに油性の褐色の固体を得た。このわずかに油性の褐色の固体をエーテルとすり混ぜ、(S)−2−(2−ブロモフェニル)ピロリジン塩酸塩(13.1g)を淡褐色の固体として得た。MS(ES):m/z[M+H]226および228。キラルHPLC解析により、100%鏡像異性的に純粋であると示された。
【0071】
化合物8
5−(2−ブロモフェニル)−3,4−ジヒドロ−2H−ピロール
【0072】
【化17】

水素化ナトリウム(977mmol、23.45g)をテトラヒドロフラン(700mL)に懸濁させ、氷水浴により5℃に冷却した。この冷えた懸濁液に1−ビニル−ピロリジン−2−オン(465mmol、51.7g)をおよそ20分間かけて添加して、内部温度を5℃未満の反応温度に維持し、次にエチル2−ブロモベンゾエート(437mmol、100g)を添加した。添加の完了後、この反応物を5℃において10分間撹拌し、次いで2時間還流し、室温にまで冷ました。この懸濁液に5NのHCl(600mL)を滴加して、反応温度を25℃と35℃との間に維持した。次に大量のテトラヒドロフランを真空下60℃の温度において留去した。得られた溶液を冷却し、さらに5Nの塩酸(600mL)を添加し、この混合物を一晩還流した。次いでこの溶液を塩氷浴により5℃に冷却し、水酸化ナトリウムのペレット(約250g)を注意深く加えることによって塩基性化して、内部温度を10と15℃の間に維持した。反応混合物がpH13であるときに、冷却浴を取り除き、温度を室温に到達させた。その後、この反応物を塩化メチレン(1L)により抽出して、水層をさらに塩化メチレン(2×1L)により抽出した。混ざった塩化メチレン抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、蒸発乾固して5−(2−ブロモフェニル)−3,4−ジヒドロ−2H−ピロール(92.2g)を得た。
【0073】
化合物9
5−(2−ブロモ−5−メチルフェニル)−3,4−ジヒドロ−2H−ピロール
この化合物は、化合物8と類似の方法でエチル2−ブロモ−5−メチルベンゾエートから開始して調製した。
【0074】
化合物10
2−(2−ブロモフェニル)ピロリジン
【0075】
【化18】

5−(2−ブロモフェニル)−3,4−ジヒドロ−2H−ピロール(化合物8;393mmol、88g)をメタノール(1300mL)に溶解させ、次いで酢酸(330mL)を添加し、この溶液を窒素雰囲気下において−65℃に冷却した。水素化ホウ素ナトリウム(589mmol、22.28g)を1時間かけて小分けで添加した。この反応物を−65℃において30分間撹拌し、その後冷却浴を取り除き、この反応混合物の温度を室温にまで上げた。大量のメタノールを真空除去し、次いで5NのHCl(950mL)を添加し、この溶液をエーテル(2×500mL)により抽出した。その後、氷浴冷却しながら、この水溶液を水酸化ナトリウムのペレット(310g)により塩基性化して、反応温度を30℃未満に維持した。次に、この塩基性化された水様液を酢酸エチル(3×800mL)により抽出し、混ざった有機物を鹹水(800mL)により洗浄し、硫酸ナトリウムにより乾燥し、蒸発させ、1Kgシリカゲルによるクロマトグラフィーをして19:1から9:1の塩化メチレン−エタノールにより溶出して2−(2−ブロモフェニル)ピロリジン(68.5g)を得た。
【0076】
化合物11
2−(2−ブロモ−5−メチルフェニル)ピロリジン
この化合物は、化合物10と類似の方法で化合物9から開始して調製した。
【0077】
化合物12
(E)−N−(2−ブロモベンジリデン)−1,1−ジフェニルメタンアミン
【0078】
【化19】

この物質は、G.Cainelliら、J.Org.Chem.、1996年、51、5134ページの方法を用いて、ジフェニルメタンアミンおよび2−ブロモベンズアルデヒドから調製した。
【0079】
類似の方法で以下を調製した。
【0080】
化合物13
(E)−N−(2−ブロモ−5−フルオロベンジリデン)−1,1−ジフェニルメタンアミン、2−ブロモ−5−フルオロベンズアルデヒドから開始した。
【0081】
化合物14
(E)−N−(2−ブロモ−4−フルオロベンジリデン)−1,1−ジフェニルメタンアミン、2−ブロモ−4−フルオロベンズアルデヒドから開始した。
【0082】
化合物15
2−(2−ブロモ−5−フルオロフェニル)ピロリジン
【0083】
【化20】

窒素下において化合物13(13.58mmol、5g)をテトラヒドロフランに溶解させ、−78℃に冷却した。1Mのカリウムtert−ブトキシドのテトラヒドロフラン(16.29mmol、16.29mL)中溶液を滴下し、その結果濃い紫色の溶液がもたらされた。5分後に1−クロロ−3−ヨードプロパン(136mmol、27.8g)を急速に添加し、その結果、色が紫からピンクに変化した。その後、この反応物を0℃にまで加温し、色が乳白色にさらに変化するまで20分間撹拌した。この反応物を水でクエンチし、塩化メチレンにより抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下において濃縮して液体を得た。粗製の中間体をアセトンに溶解させ、2Mの塩酸(20mL)を添加した。この反応物を室温において一晩撹拌し、次いでアセトンを減圧下で除去し、反応物を4Mの水酸化ナトリウム水溶液により塩基性化し、塩化メチレンにより抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下において濃縮して暗赤色の液体を得た。この暗赤色の液体をメタノールに溶解させ、10MのKOHにより処理し、室温において2時間撹拌し、塩化メチレンにより抽出し、水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下において濃縮した。この生成物をシリカ、塩化メチレンに溶かした2%メタノールによるカラムクロマトグラフィーによって精製して2−(2−ブロモ−5−フルオロフェニル)ピロリジン(1.7g)を褐色の液体として得た。
【0084】
類似の方法で以下を調製した。
化合物16
2−(2−ブロモ−4−フルオロフェニル)ピロリジン、化合物14から開始した。
【0085】
化合物17
6−(2−ブロモフェニル)−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン
【0086】
【化21】

化合物12および1,1−ビス(ヨードメチル)シクロプロパンから開始した。
【0087】
化合物18
tert−ブチル2−(2−ブロモフェニル)ピロリジン−1−カルボキシレート
【0088】
【化22】

水浴により冷却した2−(2−ブロモフェニル)ピロリジン(化合物10;257mmol、58g)の乾燥テトラヒドロフラン(870mL)中溶液にテトラヒドロフラン(150mL)に溶かしたジ−tert−ブチルジカーボネート(264mmol、57.7g)を約30分かけて滴加した。冷却浴を取り除き、この反応物を室温において2日間撹拌した。溶媒を真空除去し、残留物を塩化メチレン(1L)に溶かし、0.5Mのクエン酸(400mL)により洗浄し、鹹水(500mL)により洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。イソヘキサンからの結晶化により、tert−ブチル2−(2−ブロモフェニル)ピロリジン−1−カルボキシレート(42g)を得、800gのシリカゲルにより母液をクロマトグラフィーして、9:1から3:1のヘプタン−酢酸エチルにより溶出することによってさらにtert−ブチル2−(2−ブロモフェニル)ピロリジン−1−カルボキシレート(33g)を得た。
【0089】
類似の方法で以下を調製した。
【0090】
化合物19
(S)−tert−ブチル−2−(2−ブロモフェニル)ピロリジン−1−カルボキシレート、(S)−2−(2−ブロモフェニル)ピロリジンから開始した。
【0091】
化合物20
(R)−tert−ブチル−2−(2−ブロモフェニル)ピロリジン−1−カルボキシレート、(R)−2−(2−ブロモフェニル)ピロリジンから開始した。
【0092】
化合物22
tert−ブチル2−(2−ブロモ−5−フルオロフェニル)ピロリジン−1−カルボキシレート、2−(2−ブロモ−5−フルオロフェニル)ピロリジンから開始した。
【0093】
化合物23
tert−ブチル2−(2−ブロモ−5−メチルフェニル)ピロリジン−1−カルボキシレート、2−(2−ブロモ−5−メチルフェニル)ピロリジンから開始した。
【0094】
化合物24
tert−ブチル2−(2−ブロモ−4−フルオロフェニル)ピロリジン−1−カルボキシレート、2−(2−ブロモ−4−フルオロフェニル)ピロリジンから開始した。
【0095】
化合物25
tert−ブチル6−(2−ブロモフェニル)−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン−5−カルボキシレート、6−(2−ブロモフェニル)−5−アザスピロ[2.4]ヘプタンから開始した。
【0096】
化合物26
(S)−tert−ブチル2−(2−(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサボリナン−2−イル)フェニル)ピロリジン−1−カルボキシレート
【0097】
【化23】

予め炉乾燥したフラスコに入れた化合物19(6.13mmol、2g)、5,5,5’5’−テトラメチル−2,2’−ビ(1,3,2−ジオキサボリナン)(9.20mmol、2.08g)、酢酸カリウム(18.39mmol、1.802g)および1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンジクロロパラジウム(II)(6.13mmol、100mg)の溶液にDMSO(20mL)を添加し、アルゴン下で一晩110℃に加熱した。この反応混合物を水(200mL)中でクエンチし、酢酸エチル(3×100mL)により抽出し、混ざった有機物を鹹水により洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、蒸発させて暗褐色の油を得た。この暗褐色の油を120gのシリカカラムにより精製して、20%の酢酸エチル−ヘプタンにより溶出して標題の化合物(1.08g)を得た。
【0098】
類似の方法で以下を調製した。
【0099】
化合物27
tert−ブチル2−(2−(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサボリナン−2−イル)フェニル)ピロリジン−1−カルボキシレート、化合物18から開始した。
【0100】
化合物28
(R)−tert−ブチル2−(2−(5.5−ジメチル−1,3,2−ジオキサボリナン−2−イル)フェニル)ピロリジン−1−カルボキシレート、化合物20から開始した。
【0101】
化合物29
tert−ブチル2−(2−(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサボリナン−2−イル)2−ブロモ−5−フルオロフェニル)ピロリジン−1−カルボキシレート、化合物22から開始した。
【0102】
化合物30
tert−ブチル2−(2−(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサボリナン−2−イル)2−ブロモ−5−メチルフェニル)ピロリジン−1−カルボキシレート、化合物23から開始した。
【0103】
化合物31
tert−ブチル2−(2−(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサボリナン−2−イル)2−ブロモ−4−フルオロフェニル)ピロリジン−1−カルボキシレート、化合物24から開始した。
【0104】
化合物32
tert−ブチル6−(2−((5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサボリナン−2−イル)メチル)フェニル)−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン−5−カルボキシレート、化合物25から開始した。
【実施例1】
【0105】
2−(2−((S)−ピロリジン−2−イル)フェニル)−3−(トリフルオロメチル)ピリジン
【0106】
【化24】

2−ブロモ−3−(トリフルオロメチル)ピリジン(2.212mmol、0.5g)および化合物26のトルエン(60mL)およびエタノール(50mL)中溶液に2Mの炭酸ナトリウム溶液(40mmol、20mL)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)Pd(0)(0.087mmol、0.1g)を添加した。この溶液を加熱して一晩還流した。4Nの水酸化ナトリウム溶液の溶液を加え、この混合物を酢酸エチルにより抽出した。この有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、蒸発させて褐色の油を得た。この褐色の油を、120gシリカカラムにより精製して、25%酢酸エチル−ヘプタンで溶出して(2S)−tert−ブチル2−(2−(3−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)フェニル)ピロリジン−1−カルボキシレート(0.59g)を得た。この物質を乾燥ジクロロメタン(3mL)に溶解させ、これにトリフルオロ酢酸(1.5mL)を添加し、TLCにより出発物質がないことが明らかになるまでこの溶液を撹拌し続けた。この反応混合物を予め調整した20gのSCXカラムに充填し、メタノールにより溶出し、次いでアンモニア/メタノールにより溶出した。適切な画分を蒸発させて、マレイン酸およびコハク酸塩の両方として単離された(374mg)を得た。MS(ES):m/z 293 [M+H]
【0107】
(2−((S)−ピロリジン−2−イル)フェニル)−3−(トリフルオロメチル)ピリジンをラセミの(2−(ピロリジン−2−イル)フェニル)−3−(トリフルオロメチル)ピリジンを分離することによってさらに単離した。これには、流速40mL/分、検出器波長220nm、温度35℃および圧力100Bar CO2において調整剤として20%イソプロパノール/0.1%イソプロピルアミンを用いてChiralpak ADHカラム(25cm×2cm)によるBerger Multigram II SFC機器を用いた超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)を使用した。
【0108】
類似の方法で以下を調製した。
【実施例2】
【0109】
2−(2−((R)−ピロリジン−2−イル)フェニル)−3−(トリフルオロメチル)ピリジン、
【0110】
【化25】

化合物28からのもの。MS(ES):m/z 293[M+H]
【実施例3】
【0111】
2−(5−フルオロ−2−(ピロリジン−2−イル)フェニル)−3−(トリフルオロメチル)ピリジン、
【0112】
【化26】

化合物29からのものであり、溶媒として1,2−ジメトキシエタンを用い、マイクロ波照射を用いた。MS(ES):m/z 311[M+H]
【実施例4】
【0113】
6−(2−(3−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)フェニル)−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン、
【0114】
【化27】

化合物32から開始した。MS(ES):m/z 319[M+H]
【実施例5】
【0115】
2−(5−メチル−2−(ピロリジン−2−イル)フェニル−3−(トリフルオロメチル)ピリジン、
【0116】
【化28】

化合物30からのもの。MS(ES):m/z 307[M+H]
【実施例6】
【0117】
2−(2−(ピロリジン−2−イル)フェニル)−3−メチルピリジン、
【0118】
【化29】

化合物27および2−ブロモ−3−メチルピリジンから開始する。MS(ES):m/z 239[M+H]
【実施例7】
【0119】
2−(4−フルオロ−2−(ピロリジン−2−イル)フェニル)−3−メチルピリジン、
【0120】
【化30】

化合物31および2−ブロモ−3−メチルピリジンからのものであり、溶媒として1,2−ジメトキシエタンを用い、マイクロ波照射を用いた。MS(ES):m/z 257[M+H]
【実施例8】
【0121】
2−(5−フルオロ−2−(ピロリジン−2−イル)フェニル)−3−メチルピリジン、
【0122】
【化31】

化合物29および2−ブロモ−3−メチルピリジンからのものであり、溶媒として1,2−ジメトキシエタンを用い、マイクロ波照射を用いた。MS(ES):m/z 257 [M+H]
【実施例9】
【0123】
2−(2−(ピロリジン−2−イル)フェニル)−3−メトキシピリジン、
【0124】
【化32】

化合物27および2−ブロモ−3−メトキシピリジンから開始し、溶媒として1,2−ジメトキシエタンおよびマイクロ波照射を用いた。MS(ES):m/z 255 [M+H]
【実施例10】
【0125】
2−(4−フルオロ−2−(ピロリジン−2−イル)フェニル)−3−メトキシピリジン、
【0126】
【化33】

化合物31および2−ブロモ−3−メトキシピリジンからのものであり、溶媒として1,2−ジメトキシエタンを用い、マイクロ波照射を用いた。MS(ES):m/z 273 [M+H]
【実施例11】
【0127】
2−(5−フルオロ−2−(ピロリジン−2−イル)フェニル)−3−メトキシピリジン、
【0128】
【化34】

化合物29および2−ブロモ−3−メトキシピリジンからのものである。MS(ES):m/z 273 [M+H]
【実施例12】
【0129】
自動化されたパッチクランプ電気生理学を使用した生物学的試験
A:細胞培養
HEK−hHCN1−2H10細胞を、225cmフラスコ中、10%のFetalclone II+0.1mMの非必須アミノ酸+1mMのピルビン酸ナトリウム+10mMのHEPES+0.5mg/mLのG418を加えたMEM(アール塩を含む)において培養した。この細胞を、37℃、5%CO雰囲気、相対湿度100%において50%コンフルエントになるまで通常とおりに維持した。使用の24時間前に、細胞を30℃において温置してHCN1膜発現を増加させ、パッチクランプ実験の直前に採取した。増殖培地を真空吸引し、細胞を50mLのダルベッコリン酸緩衝食塩液(CaClおよびMgClを含まない;D−PBS)中で洗浄した。次に、5mLの0.1%トリプシン/0.04%EDTAおよび細胞解離緩衝液(CDS)の1:1混合液とともに37℃において2分間温置することによって細胞を分離した。細胞の分離は5mLの増殖培地を添加することによって止めた。その後、10mLのピペットを使用して3−4回穏やかにかき回すことによって細胞を機械的に分離した。血球計数器を使用して細胞を計数し、1分半212gの遠心分離により回収し、5mLの濾過した外部記録溶液(下記参照)に再懸濁した。上記のとおりの遠心分離によって細胞を再度回収し、濾過した細胞外溶液に1mLあたり2×10細胞の密度で再懸濁し、4−5回かき回した。これらの細胞を、直ちにIonWorksに移した。
【0130】
B:パッチクランプ記録
IonWorks Quattro(MDS Analytical Technologies)を使用して自動パッチクランプ記録を行った。IonWorks Quattroを細胞内(mM単位:グルコン酸カリウム、130;NaCl、10;MgCl、1;EGTA、1;HEPES、10、pH7.35)および細胞外溶液(mM単位:グルコン酸カリウム、104;NaCl、10;KCl、30;MgCl、1;CaCl、1.8;Hepes、10;グルコース、5;pH7.35)記録溶液で満たした。穿孔パッチクランプ記録を(0.36%のDMSOに溶かした)0.1mg/mLのアンフォテリシンBとともに細胞電圧を−40mVに固定して確立した。全細胞穿孔パッチクランプ記録を2回の別々の実施において、1秒間の−80mVおよび−120mVの電圧ステップで行い、チャネル活性化前の電圧パルス−10mVを用いてリーク電流を差し引いた。化合物を12の濃度(0.5log間隔;1%DMSO)においてテストし、各電流記録間の10分間温置した。全細胞電流が100pS未満である、シール抵抗が<50MΩであるまたは実験過程においてシール抵抗が>50%変化した場合、細胞を除外した。化合物添加前後のHCNが媒介する時間依存性電流の振幅は、テスト電圧への移行時の容量過渡電流の直後に記録された電流と安定状態振幅に到達した後に記録された電流との差として測定された。データをIonWorks Quattro System Softwareバージョン2を用いて処理し、XLFit 4.1を用いたActivity Baseで標準的な4パラメータロジスティック関数を使用して解析した。濃度反応曲線を作製し、hHCN1チャネルにおける化合物の効力をpEC50として適切な信頼区間で報告した。
【0131】
本発明の化合物のpEC50活性は、−80mVの電圧ステップにおいて4超であり、本発明の好適な化合物のpEC50活性は、−80mVへの電圧ステップにおいて5超である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I
【化1】

(式中、
は、(C1−4)アルキル、ハロ(C1−4)アルキル、(C1−4)アルキルオキシもしくはハロ(C1−4)アルキルオキシであり;
は、H、(C1−4)アルキル、ハロ(C1−4)アルキル、(C1−4)アルキルオキシ、ハロ(C1−4)アルキルオキシもしくはハロゲンであり;
は、H、(C1−4)アルキルもしくはハロ(C1−4)アルキルであり;
は、H、(C1−4)アルキルもしくはハロ(C1−4)アルキルであり;
は、H、(C1−4)アルキルもしくはハロ(C1−4)アルキルであり;または
およびRは、同じ炭素原子に結合している場合、前記炭素原子と一緒になって、ハロゲンで任意に置換されたスピロ(C3−6)シクロアルキル基を形成してもよく;
は、H、(C1−4)アルキル、ハロ(C1−4)アルキル、(C1−4)アルキルオキシ、ハロ(C1−4)アルキルオキシもしくはハロゲンである。)
を有する(ピロリジン−2−イル)フェニル誘導体またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
がハロ(C1−4)アルキルである、請求項1の(ピロリジン−2−イル)フェニル誘導体。
【請求項3】
、R、RおよびRがHである、請求項1または2の(ピロリジン−2−イル)フェニル誘導体。
【請求項4】
がHまたはFである、請求項3の(ピロリジン−2−イル)フェニル誘導体。
【請求項5】
立体化学がS−立体異性体の立体化学である、請求項1から4のいずれか一項の(ピロリジン−2−イル)フェニル誘導体。
【請求項6】
− 2−(2−((S)−ピロリジン−2−イル)フェニル)−3−(トリフルオロメチル)ピリジン;
− 2−(2−((R)−ピロリジン−2−イル)フェニル)−3−(トリフルオロメチル)ピリジン;
− 2−(5−フルオロ−2−(ピロリジン−2−イル)フェニル)−3−(トリフルオロメチル)ピリジン;
− 6−(2−(3−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)フェニル)−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン;
− 2−(5−メチル−2−(ピロリジン−2−イル)フェニル)−3−(トリフルオロメチル)ピリジン;
− 2−(2−(ピロリジン−2−イル)フェニル)−3−メチルピリジン;
− 2−(4−フルオロ−2−(ピロリジン−2−イル)フェニル)−3−メチルピリジン;
− 2−(5−フルオロ−2−(ピロリジン−2−イル)フェニル)−3−メチルピリジン;
− 2−(2−(ピロリジン−2−イル)フェニル)−3−メトキシピリジン;
− 2−(4−フルオロ−2−(ピロリジン−2−イル)フェニル)−3−メトキシピリジン;
− 2−(5−フルオロ−2−(ピロリジン−2−イル)フェニル)−3−メトキシピリジン;または
それらの薬学的に許容される塩
から選択される、請求項1の(ピロリジン−2−イル)フェニル誘導体。
【請求項7】
治療に使用するための、請求項1から6のいずれか一項の(ピロリジン−2−イル)フェニル誘導体。
【請求項8】
薬学的に許容される補助剤との混合物として請求項1から6のいずれか一項の(ピロリジン−2−イル)フェニル誘導体を含む医薬組成物。
【請求項9】
チャネルの調節によって媒介される疼痛、好ましくは神経因性または炎症性疼痛を治療するための薬の調製における請求項1の式Iの(ピロリジン−2−イル)フェニル誘導体の使用。
【請求項10】
治療有効量の請求項1から6のいずれか一項の(ピロリジン−2−イル)フェニル誘導体を、治療を必要とする患者に投与することによって、神経因性または炎症性疼痛などのIチャネルの調節によって媒介される疼痛の治療方法。
【請求項11】
神経因性または炎症性疼痛などの疼痛の治療のための、請求項1から6のいずれか一項の(ピロリジン−2−イル)フェニル誘導体の使用。
【請求項12】
神経因性または炎症性疼痛などのIhチャネルの調節によって媒介される疼痛の治療方法に使用するための、請求項1から6のいずれか一項の(ピロリジン−2−イル)フェニル誘導体。

【公表番号】特表2012−507490(P2012−507490A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533753(P2011−533753)
【出願日】平成21年11月3日(2009.11.3)
【国際出願番号】PCT/EP2009/064490
【国際公開番号】WO2010/052198
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(398057282)ナームローゼ・フエンノートチヤツプ・オルガノン (93)
【Fターム(参考)】