説明

疼痛を処置するための方法

本発明は、鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)の頭蓋顔面粘膜投与による疼痛の治療のための方法および組成物を提供する。N/OFQなどの特定の鎮痛ペプチドの鼻腔内投与は、広域鎮痛効果をもたらす。 一態様では、本発明は、それを必要とする個体にNOPアゴニストの有効用量を頭蓋顔面粘膜投与によって投与することを含む、疼痛の治療のための方法を提供する。一部の実施形態では、治療は、三叉神経疼痛、体性疼痛、神経障害性疼痛、処置の疼痛または内臓疼痛の治療を含む。一部の実施形態では、治療は、急性疼痛または慢性疼痛の治療を含む。一部の実施形態では、疼痛は頭蓋顔面疼痛または頭部疼痛である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2009年7月27日に出願された米国仮特許出願第61/228,946号(この開示は、その全体が参考として本明細書に援用される)に対する優先権を主張する。
【0002】
連邦政府によって資金供与された研究のもとでなされた発明に対する権利の声明
本発明は、一部、NIH助成金第1R43DE020816−01号の下でなされた。米国政府は、本発明に一定の権利を有し得る。
【背景技術】
【0003】
疼痛は、特定の脳構造の活性化によって媒介される認知である。疼痛は、皮膚または他の末梢組織に神経を分布させる、侵害受容器と呼ばれる専門化したニューロンが、物理的、熱的、化学的または他の有害刺激によって活性化されるときに通常開始される。疼痛の処理に関与する抹消または中枢ニューロン構造が、例えば外傷、虚血または炎症の結果として活動過多になるときにも疼痛を経験する。疼痛の他の原因には、疾患特異的過程、代謝障害、筋けいれんおよび神経障害性の事象または症候群の開始が含まれる。
【0004】
ほとんどあらゆる種類の疼痛治療は、一次非オピオイド、オピオイド、およびアジュバントとしても公知の共鎮痛薬の3群に通常分類される1つまたは複数の鎮痛薬を通常含む。非オピオイド鎮痛薬には、アセトアミノフェンおよび非ステロイド系抗炎症薬、すなわちNSAIDが含まれる。これらの薬剤は軽度から中等度の疼痛を治療するために効果的でありえるが、アセトアミノフェンの場合には肝傷害、NSAIDの場合には胃潰瘍などのかなりの副作用を有することがある。「麻薬」と呼ばれることもあるオピオイド薬には、アヘン、アヘン由来の物質、例えばモルヒネなどの天然の物質、ならびに半合成および合成の物質、例えばフェンタニルが含まれる。共鎮痛薬は、疼痛軽減以外の適用に一般的に対処する薬剤であるが、特定の疼痛状態のために鎮痛作用を有する。共鎮痛薬の例はガバペンチンであり、それは癲癇の治療のための一次適用を有するが、一部の種類の神経障害性疼痛の治療にも有効である。
【0005】
オピオイド薬は、中等度から重度の疼痛を軽減するために通常用いられる。しかし、長期治療によって通常発達する耐性および依存性によって、それらの有用性は制限される。モルヒネなどのオピオイド薬は、習慣性になることがあり、鎮静および精神的な変化、便秘、吐き気、誇張された疼痛感受性、ホルモン障害、および免疫系の変化に加えて呼吸抑制などのかなりの、潜在的に致命的な副作用と関連している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
広範囲の利用可能な医学治療にもかかわらず、疼痛は米国だけでも何百万人もの人々を悩まし続け、患者、ヘルスケアおよびビジネスに多大な重荷となったままである。インターベンションの効力を増加させ、臨床場面での疼痛管理に付随する副作用を低減するために、新しい方法が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
NOPアゴニストの頭蓋顔面粘膜投与、例えばノシセプチン/オルファニンFQ(N/OFQ)の鼻腔内投与による疼痛の治療のための方法および組成物が開示される。
【0008】
一態様では、本発明は、それを必要とする個体にNOPアゴニストの有効用量を頭蓋顔面粘膜投与によって投与することを含む、疼痛の治療のための方法を提供する。一部の実施形態では、治療は、三叉神経疼痛、体性疼痛、神経障害性疼痛、処置の疼痛または内臓疼痛の治療を含む。一部の実施形態では、治療は、急性疼痛または慢性疼痛の治療を含む。一部の実施形態では、疼痛は頭蓋顔面疼痛または頭部疼痛である。一部の実施形態では、頭蓋顔面疼痛または頭部疼痛は、顎関節障害(TMJ)、片頭痛または三叉神経痛によって引き起こされている。一部の実施形態では、頭蓋顔面粘膜投与は、鼻腔内投与、頬側投与、舌下投与または結膜投与を含む。特定の実施形態では、粘膜投与は、鼻腔内投与である。一部の実施形態では、NOPアゴニストは、鼻腔の下方の3分の2へ投与される。一部の実施形態では、NOPアゴニストは、鼻腔の上方の3分の1へ投与される。一部の実施形態では、NOPアゴニストは、鼻腔の下方の3分の2および上方の3分の1の両方に到達するように特に投与される。一部の実施形態では、NOPアゴニストは、頬側または舌下投与によって投与される。一部の実施形態では、NOPアゴニストは、結膜投与によって、または目の周囲の他の組織を通して投与される。特定の実施形態では、NOPアゴニストは、N/OFQである。一部の実施形態では、いずれの方法も、それを必要とする個体に少なくとも1つの追加の活性剤を投与することをさらに含むことができ、そこで、追加の活性剤は、NOPアゴニストの投与の前、後または同時に投与される。一部の実施形態では、それらの方法は、それを必要とする個体に少なくとも2つの追加の活性剤を投与することをさらに含むことができ、そこで、追加の活性剤の各々は、NOPアゴニストの投与の前、後または同時に独立して投与される。
【0009】
別の態様では、本発明は、それを必要とする個体に非オピオイド鎮痛ペプチドの有効用量を頭蓋顔面粘膜投与によって投与することを含む、疼痛治療のための方法を提供し、そこで、前記投与は広域鎮痛効果をもたらす。一部の実施形態では、治療は疼痛の緩和を含む。一部の実施形態では、治療は疼痛の予防を含む。一部の実施形態では、頭蓋顔面粘膜投与は、鼻腔内投与、頬側投与、舌下投与または結膜投与を含む。特定の実施形態では、頭蓋顔面粘膜投与は、鼻腔内投与である。
【0010】
一態様では、本発明は、それを必要とする個体にN/OFQの有効用量を鼻腔内投与によって投与することを含む、疼痛治療のための方法を提供する。一部の実施形態では、投与されるN/OFQの単位用量は、約0.2mgから約5000mgである。一部の実施形態では、投与は30%以上のVASの疼痛評価の低減をもたらす。
【0011】
別の態様では、本発明は、それを必要とする個体にNOPアゴニストの有効用量を投与することを含む、片頭痛の頭痛の疼痛の治療若しくは予防、または片頭痛の治療のための方法を提供し、そこで、NOPアゴニストは、頭蓋顔面粘膜投与、例えば鼻腔内投与によって投与される。一部の実施形態では、治療は、吐き気、光恐怖症および音声恐怖などの片頭痛に関連する1つまたは複数の症状を治療することを含む。一部の実施形態では、片頭痛は、前兆のない片頭痛、前兆のある片頭痛、または前兆はあるが頭痛のない片頭痛である。特定の実施形態では、片頭痛の治療のための方法は、それを必要とする個体にN/OFQの有効用量を鼻腔内投与によって投与することを含む。
【0012】
鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)を含む医薬組成物、および頭蓋顔面粘膜投与(例えば鼻腔内投与、頬側投与、舌下投与または結膜投与)を通してそのような組成物を投与するための方法も提供される。医薬組成物、および任意選択で投与のためのデバイスを含むキットも同様である。医薬組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤、アジュバント、希釈剤または安定剤をさらに含むことができる。一部の実施形態では、医薬組成物またはキットは、1つまたは複数の追加の活性剤、例えば少なくとも1つのさらなる鎮痛剤、血管収縮薬、少なくとも1つのプロテアーゼインヒビターおよび/または少なくとも1つの吸収促進剤を含むことができる。
【0013】
別の態様では、頭蓋顔面粘膜投与(例えば鼻腔内投与)による疼痛の治療のための医薬の製造のための、鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)または鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)を含む医薬組成物の使用が提供される。頭蓋顔面粘膜投与(例えば鼻腔内投与)による疼痛の治療に用いられる、鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、有害な熱に対するAδ頬逃避(withdrawal)潜伏時間を表す:i.n.ノシセプチン(0.2mg/kg、1.0mg/kgおよび5.0mg/kg)対i.v.ノシセプチン(5.0mg/kg)対i.m.モルヒネ(0.25mg/kg)対i.m.生理食塩水。データは、平均±1 SEMで示す。(n=ラット6匹/群)。
【図2】図2は、有害な熱に対するC線維頬逃避潜伏時間を表す:i.n.ノシセプチン(0.2mg/kg、1.0mg/kgおよび5.0mg/kg)対i.v.ノシセプチン(5.0mg/kg)対i.m.モルヒネ(0.25mg/kg)対i.m.生理食塩水。データは、平均±1 SEMで示す。(n=ラット6匹/群)。
【図3】図3は、有害な熱に対するAδ足逃避潜伏時間を表す:i.n.ノシセプチン(0.2mg/kg、5.0mg/kg)対i.v.ノシセプチン(5.0mg/kg)対i.m.モルヒネ(0.25mg/kg)対i.m.生理食塩水。データは、平均±1 SEMで示す。(n=ラット6匹/群)。
【図4】図4は、有害な熱に対するC線維足逃避潜伏時間を表す:i.n.ノシセプチン(0.2mg/kg、5.0mg/kg)対i.v.ノシセプチン(5.0mg/kg)対i.m.モルヒネ(0.25mg/kg)対i.m.生理食塩水。データは、平均±1 SEMで示す。(n=ラット6匹/群)。
【図5】図5は、有害な熱に対するAδ頬逃避潜伏時間を表す:皮下ノシセプチンアンタゴニスト(10.0mg/kg)プラスi.n.ノシセプチン(5.0mg/kg)対皮下生理食塩水プラスi.n.ノシセプチン(5.0mg/kg)。データは、平均±1 SEMで示す。(n=ラット3匹/群)。
【図6】図6は、有害な熱に対するC線維頬逃避潜伏時間を表す:皮下ノシセプチンアンタゴニスト(10.0mg/kg)プラスi.n.ノシセプチン(5.0mg/kg)対皮下生理食塩水プラスi.n.ノシセプチン(5.0mg/kg)。データは、平均±1 SEMで示す。(n=ラット3匹/群)。
【図7】図7は、有害な熱に対するAδ足逃避潜伏時間を表す:皮下ノシセプチンアンタゴニスト(10.0mg/kg)プラスi.n.ノシセプチン(5.0mg/kg)対皮下生理食塩水プラスi.n.ノシセプチン(5.0mg/kg)。データは、平均±1 SEMで示す。(n=ラット3匹/群)。
【図8】図8は、有害な熱に対するC線維足逃避潜伏時間を表す:皮下ノシセプチンアンタゴニスト(10.0mg/kg)プラスi.n.ノシセプチン(5.0mg/kg)対皮下生理食塩水プラスi.n.ノシセプチン(5.0mg/kg)。データは、平均±1 SEMで示す。(n=ラット3匹/群)。
【図9】図9は、雄ラットの唇へのホルマリン注射に対するモルヒネと比較した鼻腔内N/OFQの鎮痛活性を表す。グルーミングに使われた時間を45分間にわたって判定し、3つの小ビンに集めた。化合物は、以下の用量で鼻腔内に投与した:モルヒネ3.0mg/ラットおよびN/OFQ 0.3mg/ラット。各化合物またはビヒクルの曲線下面積(AUC)は、トラペゾイダル(trapezodial)法を用いて概算された。%減少=[(ビヒクルAUC−治療AUC)/ビヒクルAUC)]×100%。データは、平均±1 SEMで示す。(n=ラット6〜8匹/群)。
【図10】図10は、足切開から生じる点状異痛での、1、3、5および10mg/kg(i.n.)の術後N/OFQの用量反応を表す。データは、平均±1 SEMで示す。(n=ラット6〜13匹/群)。−ビヒクルと比較してp<0.05および**同p<0.01;#−術後の値と比較してp<0.05および##同p<0.01。
【図11】図11は、雄ラットの後ろ足の足底表面への外科切開後の静的点状刺激に対する応答への、N/OFQの抗異痛活性を表す。N/OFQは、切開から24時間後に5.0mg/kgで鼻腔内に投与された(図11)か、切開から24時間後に5.0mg/kgで静脈内に投与された(図12)。von Freyフィラメントを用い、上げ下げ技法を使用して、投与から30分ごとに50%閾値逃避を判定した。データは、平均±1 SEMで示す。(n=ラット5〜6匹/群)。ビヒクルと比較してp<0.05。
【図12】図12は、雄ラットの後ろ足の足底表面への外科切開後の静的点状刺激に対する応答への、N/OFQの抗異痛活性を表す。N/OFQは、切開から24時間後に5.0mg/kgで鼻腔内に投与された(図11)か、切開から24時間後に5.0mg/kgで静脈内に投与された(図12)。von Freyフィラメントを用い、上げ下げ技法を使用して、投与から30分ごとに50%閾値逃避を判定した。データは、平均±1 SEMで示す。(n=ラット5〜6匹/群)。ビヒクルと比較してp<0.05。
【図13】図13は、雄ラットの頬への外科切開の後の静的点状刺激に対する応答へのN/OFQの抗異痛活性を表す。N/OFQ(5mg/kg、i.n.)は、切開から24時間後に投与された。von Freyフィラメントを用い、上げ下げ技法を使用して、投与から30分ごとに50%閾値逃避を判定した。データは、平均±1 SEMで示す。(n=ラット4〜5匹/群)。−ビヒクルと比較してp<0.05。
【図14】図14は、頬切開から生じる点状異痛での、1、3、5および10mg/kg(i.n.)の術後N/OFQの用量反応を表す。データは、平均±1 SEMで示す。(n=ラット5〜13匹/群)。#−術後の値と比較してp<0.05および##同p<0.01。
【図15】図15は、雄ラットの温存された神経部分損傷(Spared Nerve Injury)後の静的点状刺激に対する応答へのN/OFQの抗異痛活性を表す。N/OFQは、手術から21日後に5.0mg/kgで鼻腔内に投与された。von Freyフィラメントを用い、上げ下げ技法を使用して、投与から30分ごとに50%閾値逃避を判定した。データは、平均±1 SEMで示す。(n=ラット4〜6匹/群)。
【図16】図16は、鼻腔内N/OFQ(5.0mg/kg)、鼻腔内モルヒネ(4.0mg/kg)または腹腔内モルヒネ(3.0mg/kg)後の、ビヒクル応答の%としての腸管通過を表す。化合物は、炭食餌(2mL/ラット)の20〜30分前に投与された。ラットは、食餌を与えられてから30分後に屠殺された。通過%は、炭マーカーの通過距離を小腸の全長で割って100%を掛けた比で計算された。データは、平均±1 SEMで示す。(n=ラット8匹/群)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、とりわけ、鎮痛性化合物の投与、例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質(例えばノシセプチン/オルファニンFQ(N/OFQ)または他の非オピオイド分子)の頭蓋顔面粘膜投与による、疼痛の治療のための組成物および方法を提供する。
【0016】
定義
最も厳密な意味では痛覚消失は疼痛の非存在であるが、本明細書で用いるように、「痛覚消失」は個体によって知覚される疼痛の減少を指す。
【0017】
「痛覚消失剤」、「鎮痛剤」または「鎮痛薬」は、疼痛を軽減または予防する任意の生体分子、薬剤または活性剤を指す。
【0018】
「急性疼痛」は、(慢性の痛みと対照的に)限られた期間持続した特定の原因(損傷、感染、炎症など)による急激な疼痛を指す。「慢性疼痛」は、疼痛の持続状態を指す。慢性疼痛は、長期の不治または難治性の医学的状態または疾患に多くの場合関連する。「処置の疼痛」は、医学的、歯科外科または他の処置から生じる疼痛を指し、その処置は計画されたものでも急性の外傷に関連したものでもよい。
【0019】
「頭痛障害」には、片頭痛、緊張性頭痛、群発性頭痛、三叉神経痛、二次的頭痛および雑多な種類の頭痛が含まれる。
【0020】
「片頭痛」には、片頭痛の頭痛、前兆のない片頭痛、前兆のある片頭痛、および前兆はあるが頭痛のない片頭痛が含まれる。
【0021】
「全身性副作用」には、それらに限定されないが、末梢血管拡張および圧受容器の阻害を含む心臓血管のもの;そう痒(かゆみ)、紅潮および充血した目を含む皮膚科のもの;悪心嘔吐、胃運動性の低下、胆管、膵臓および腸の分泌物の減少、ならびに食物消化の遅れ、便秘、胃部不快感または胆管での胆石疝痛に寄与する大腸での蠕動波の減少を含む胃腸性のもの;抑圧された呼吸努力を含む呼吸系のもの;ならびに尿意切迫および排尿困難を含む泌尿系のもの;および末梢肢の重苦しさが含まれる。
【0022】
「中枢神経系副作用」または「CNS副作用」には、昏睡状態、陶酔、眠気、無感情、精神病の観念化、精神的混乱、気分の変化、体温低下、弛緩の感情、神経不安(不安、うつ病または心配を特徴とする感情状態)、および悪心嘔吐(髄の化学受容器の直接刺激によって引き起こされている)が含まれるが、これらに限定されない。
【0023】
「広域鎮痛効果」は、体の任意の部分に対する効果を指す。広域鎮痛効果は、活性剤の全身循環の有無にかかわらず達成することができる。例えば、広域鎮痛効果は、N/OFQペプチドのかなりの全身循環をもたらさなくてもよいノシセプチンの鼻腔内投与によって達成することができる。
【0024】
「頭蓋顔面粘膜投与」は、鼻、鼻通路、鼻腔の粘膜表面;歯肉(歯ぐき)、口腔底、唇、舌を含む口腔の粘膜表面;ならびに結膜、涙腺、鼻涙管ならびに上または下のまぶたおよび目の粘膜を含む、目の、またはその周辺の粘膜表面への送達を指す。
【0025】
「鼻腔内投与」または「鼻腔内に投与される」は、噴霧剤、滴剤、粉末、ゲル、フィルム、吸入剤または他の手段による鼻、鼻通路または鼻腔への送達を指す。
【0026】
「鼻腔の下方領域」は、中央および下方の鼻甲介骨が突き出る鼻腔の部分を一般に指し、三叉神経によってかなり神経が分布している鼻腔領域である。「鼻腔の上方領域」は、嗅覚神経分布が位置する上の3分の1および篩板領域と定義される。
【0027】
鎮痛性化合物
ノシセプチン/オルファニンFQ(N/OFQ)は、オピオイドペプチドファミリーの分子量が1809の17アミノ酸ペプチドである。ヒトN/OFQのアミノ酸配列は、FGGFTGARKSARKLANQ(配列番号1)である。当初ORL1と呼ばれ、現在公式にNOP受容体と名付けられている、Gタンパク質結合受容体にそれは結合する。NOP受容体はオピオイド受容体ファミリーのタンパク質であるが、オピオイドはNOP受容体に高親和性で結合しない。N/OFQもオピオイド受容体に高親和性で結合しない。したがって、N/OFQは、非オピオイドペプチドとみなされる。N/OFQが最初に発見されて側脳室内(i.c.v.)投与経路によってマウスで試験されたとき、それは、マウスでテールフリックおよびホットプレート潜伏時間を低減することが見出された。これは、オピオイドペプチドと異なって、N/OFQが抗侵害受容性ではなく侵害受容性であることを示した。いくつかの群によるさらなる試験は、オピオイド受容体の各々によって媒介されるオピオイド痛覚消失をi.c.v.N/OFQがブロックすることを実証した。しかし、クモ膜下腔内(i.t.)に投与されたとき、N/OFQはモルヒネ痛覚消失を強化したか、それ自体で鎮痛性であった。N/OFQの投与部位がその究極作用に重要であることをこれは示す。最初のNOP受容体アンタゴニストが設計されたとき、それらはi.c.v.投与で試験され、抗侵害受容活性を有することが見出された。
【0028】
オピオイド受容体ファミリーの他の構成員のように、NOP受容体はGi/o結合性である。いかなる特定の理論によっても束縛されることを望まないが、NOP受容体の活性化は細胞cAMPレベルの低下へ導くことができ、それは、Gタンパク質結合受容体のカリウムチャネル(Girkチャネル)をさらに阻止する。これは、受容体が存在する細胞の過分極および細胞活性の低下へ導くことができる。N/OFQは脳でニューロン活性を低下させる作用を有することができ、それは内因性または外因性のオピオイドの作用の減弱をもたらし、それによって疼痛経路を逆抑制することができる。脊髄では、細胞局在化はオピオイドと同様にそれが鎮痛薬として作用するようなものであるかもしれないが、作用機構は異なるかもしれない。
【0029】
NOP受容体およびN/OFQは、脳全体の多くの領域で見出され、したがって多くの中枢神経系作用を有する。多数のNOP受容体を有する1つの領域は、三叉神経節である。これは、顎関節障害(TMJ)、片頭痛、三叉神経痛などを含む様々な状態による頭蓋顔面および頭部疼痛を媒介する脳領域でもある。
【0030】
N/OFQの鼻腔内投与は三叉神経節に集中して、それらのニューロンの活性を低下させるかもしれない。そのようなニューロン抑制の効果は試験なしで知ることはできないが、1つの可能性は領域性の抗侵害受容であった。或いは、それがN/OFQのi.c.v.投与で見られるような鎮痛薬応答を阻害するのに十分に高い濃度にN/OFQが脳の他の部分で到達するかどうかは公知ではなかった。N/OFQが多様な機能を有し、CNSの一部の領域で痛覚過敏でCNSの他の領域および末梢で鎮痛性であるとすれば、鼻腔内投与の後のN/OFQの全体の効果がいかなるものであるかは予測できなかった。
【0031】
ラットでの熱的侵害受容モデルでは、鼻腔内に投与されたN/OFQは、AδおよびC線維疼痛閾値試験の両方で顔での熱誘発疼痛に対して用量依存的な鎮痛効果を実証したが、静脈内投与されたときのN/OFQはほとんどまたは全く効果を示さなかった(図1および2)。鼻腔内N/OFQの鎮痛効果が全身循環の結果でないことをこれは実証する。熱誘発疼痛がラットの後ろ足に加えられた実験において、より驚くべき結果が観察された。鼻腔内N/OFQは、AδおよびC線維疼痛閾値試験の両方で、後ろ足の熱誘発疼痛に対して用量依存的な鎮痛効果を示した(図3および4)。静脈内ノシセプチンは、足実験でほとんどまたは全く効果を示さなかった。したがって、鼻腔内に投与されると、N/OFQは疼痛(例えば顔の)に対して領域性鎮痛効果だけでなく広域鎮痛効果も示すが、全身投与(例えばi.v.投与)された同じ用量はほとんどまたは全く鎮痛効果を示さない。i.n.ノシセプチンは広域鎮痛効果をもたらすが、全身のノシセプチンはそうしないという事実は、i.n.N/OFQが下行疼痛調節系を活性化しているかもしれないことを意味している可能性がある。したがって、本発明では、鼻腔内N/OFQを用いて疼痛を治療するための方法であって、鼻腔内投与は広域鎮痛効果をもたらす方法が提供される。
【0032】
ペプチドおよび非ペプチド化合物を含むNOP受容体のアゴニストまたはNOPアゴニストも、本発明の方法で有用である。ペプチドNOPアゴニストの例には、それらに限定されないがN/OFQ、トランケーションされたN/OFQ類似体(Reinscheid, R. K.ら、J. Biol. Chem.(1996年)271巻:14163〜14168頁)、N/OFQアゴニストペプチド、例えばUFP−102、UFP−112(Carra, G.ら、J. Pharmacol. Exp. Ther.(2005年)312巻:1114〜1123頁;Rizzi, A.ら、Peptides(2007年)28巻:1240〜1251頁)、およびNOPアゴニストヘキサペプチド、例えばSyn1020(Khroyan, T. V.らEur. J. Pharmacol.(2007年)560巻:29〜35頁)が含まれる。小分子NOPアゴニストの例には、ヘキサヒドロスピロ[ピペリジン−4,1’−ピロロ[3,4−c]ピロール](Kolczewski, S.ら、J. Med. Chem.(2003年)46巻:255〜264頁)および本明細書に記載される他の非ペプチドNOPアゴニストが含まれる。
【0033】
頭部および口顔の疼痛の治療方法として鼻腔内、経結膜および経頬側送達が様々な鎮痛性分子のために提案されている(米国特許出願公開第20070093420号、米国特許出願公開第20070054843号)が、現在まで、疼痛に対するNOPアゴニストの鼻腔内、経頬側または経結膜送達の効果の証拠となるものはない。
【0034】
多くのペプチドが鎮痛性であることが公知である。それらは、局所、領域性および/または広域の痛覚消失を提供するために様々な経路を通して投与される。「オピオイドペプチド」と呼ばれる鎮痛ペプチドの1つのクラスは、オピオイド受容体結合性部分およびオピオイド受容体に高親和性で結合する能力を有する。オピオイドペプチドは、天然に存在する内因性ペプチド、その断片、類似体または誘導体であってよい。オピオイドペプチドは、非内因性ペプチド、その断片、類似体または誘導体であってもよい。オピオイドペプチドの例は、エンドルフィン、エンケファリン、ダイノルフィン、デルモルフィン、デルメンケファリン、モルフィセプチン、エンドモルフィン、ダラルギンおよび他の合成ミュー、デルタおよびカッパアゴニストペプチドである。
【0035】
本明細書で用いるように、「非オピオイド鎮痛ペプチド」は、オピオイド受容体への高親和性結合以外の機構によって疼痛を軽減若しくは予防する鎮痛ペプチド、またはオピオイド受容体に対してアヘン剤若しくはオピオイドと一般にみなされる分子よりも低い親和性を有するペプチドを指す。例えば、μ、δおよびκオピオイド受容体に低い結合親和性(例えば約1μM未満または約10μM未満)を有する鎮痛ペプチドは、非オピオイド鎮痛ペプチドとみなされる。
【0036】
特記されない限り、本明細書で用いる「結合親和性」は、モル濃度(M)の測定単位で解離定数(K)として測定され、それは、特定のタンパク質上の結合部位が半分占められるリガンドの濃度、すなわち、リガンドが結合している受容体の濃度が、リガンドが結合していない受容体の濃度に等しいリガンドの濃度に対応する。解離定数が小さいほど、リガンドはより強く結合されるか、またはリガンドとタンパク質との間の親和性がより高い。例えば、ナノモル(nM)の解離定数を有するリガンドは、ミクロモル(μM)の解離定数を有するリガンドよりも強く特定のタンパク質に結合する。リガンドが受容体に対して1μM未満の結合親和性を有する場合は、リガンド−受容体間の結合の解離定数は1μMを超える。
【0037】
本発明の方法で有用な非オピオイド鎮痛ペプチドの例には、それらに限定されないが、ヒポクレチン/オレキシン、カルシトニン、オクトレオチド、ソマトスタチン、バソプレシン、ガラニン、リポトロピンのC断片およびAc−rfwink−NH、オメガコノトキシンGV1A、オメガコノトキシンMVIIA、侵害受容促進(pro−nociceptive)ペプチド神経伝達物質受容体CGRP1およびCGRP2のペプチドアンタゴニスト、例えばCGRP8−37およびCGRP28−3;N−アセチルトリプトファン、D−Pro9−[スピロ−y−ラクタム]−Leu10、Trp11−フィサレミン(1−11)、Tyr−D−Phe−Phe−D−His−Leu−Met−NH(センダイド)およびスパンタイドIIを含む、侵害受容促進ペプチド神経伝達物質受容体NK1のペプチドアンタゴニスト;PhCO−Ala−Ala−D−Trp−Phe−D−Pro−Pro−Nle−NH(GR98400)、[Tyr5、D−Trp6、8、9、Lys10]−NKA(4−10)(MEN10376)およびその誘導体を含む、侵害受容促進ペプチド神経伝達物質受容体NK2のペプチドアンタゴニスト;VIP(6−28)、ACHis(1)[D−Phe(2)、K(15)、R(16)、L(27)]VIP(3−7)/GRF(8−27)を含む、侵害受容促進ペプチド神経伝達物質受容体VPAC2、VPAC1およびPAC1のペプチドアンタゴニストが含まれる。
【0038】
米国特許第7,220,725号は、疼痛の治療のための軟膏、クリームまたは膏薬での、トリペプチドおよびテトラペプチドを含有するピログルタミン酸の使用を開示する。疼痛を治療するための米国特許第7,220,725号に開示されるトリペプチドおよびテトラペプチドの鼻腔内投与が、本明細書で提供される。鎮痛効果を提供することができるタンパク質、例えば脳由来神経栄養因子(BDNF)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン−3(NT−3)、ボツリヌストキシンおよび抗炎症サイトカイン(例えばインターロイキン−4、インターロイキン−10およびインターロイキン−13)も、本明細書に提供される方法で役立つことができる。
【0039】
本発明の方法の実施で有用な化合物は、疼痛治療のためのヒト臨床試験および動物モデルでの試験などの、当技術分野で公知である適当な試験を用いて評価することができる。一部の実施形態では、本発明の方法で有用な化合物は、鼻腔内投与などの頭蓋顔面粘膜投与によって投与される場合に、広域鎮痛効果を実証する。一部の実施形態では、本発明の方法で有用な化合物は、静脈内投与と比較して鼻腔内投与によって投与される場合に、より強い鎮痛効果を実証する。一部の実施形態では、静脈内投与によって投与される場合、化合物はほとんどまたは全く鎮痛効果を示さない。一部の実施形態では、本発明の方法で有用な化合物の頭蓋顔面粘膜投与は、化合物のわずかな血液循環をもたらす。一部の実施形態では、本発明の方法で有用な化合物の頭蓋顔面粘膜投与は、化合物の特定の血液循環をもたらす。一部の実施形態では、化合物の頭蓋顔面粘膜投与は、有意なCNS副作用を引き起こさない。
【0040】
疼痛
疼痛は実際のまたは潜在的な組織傷害と関連する不快な感覚的および感情的な経験であり、またはそのような傷害によって記載され(http://www.iasp−pain.org/)、表1では、International Association for the Study of Painによる提案通りに分類されている。
【0041】
【表1】

本発明の方法を用いて治療できる疼痛には、表1に記載される属性の任意の組合せを有する疼痛などの、本明細書に記載される任意の疼痛が含まれる。
【0042】
一部の態様では、本発明は、鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)の頭蓋顔面粘膜投与(例えば鼻腔内投与、頬側投与、舌下投与または結膜投与)による、疼痛の治療のための方法を提供する。一部の実施形態では、疼痛は体性疼痛である。一部の実施形態では、疼痛は表面的な体性疼痛である。一部の実施形態では、疼痛は深部の体性疼痛である。一部の実施形態では、疼痛は筋骨格の疼痛である。一部の実施形態では、疼痛は内臓疼痛である。一部の実施形態では、疼痛は神経障害性疼痛である。一部の実施形態では、疼痛は頭部疼痛または頭蓋顔面疼痛である。一部の実施形態では、疼痛は術中/処置中の疼痛である。一部の実施形態では、本発明は、重度の鎮静、呼吸抑制および/または習慣性を引き起こすことのない、疼痛の安全かつ有効な治療を提供する。
【0043】
一部の実施形態では、本発明は、鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)の頭蓋顔面粘膜投与(例えば鼻腔内投与、頬側投与、舌下投与または結膜投与)による、急性疼痛の治療のための方法を提供する。急性疼痛の例には、それらに限定されないが、外傷の疼痛、処置(手術、歯科、皮膚科など)の疼痛、傷手当の疼痛、頭痛(片頭痛、群発性など)、筋骨格/脊柱疼痛(例えば、背部痛)、耳痛、歯痛、虚血性(例えば、心臓)疼痛、ならびに急性緑内障、GI疾患(胆嚢炎、腸捻転、虫垂炎など)、泌尿器疾患(結石、睾丸捻転など)、痙攣、感染、炎症(痛風、ループスなど)、毒素(昆虫、動物など)、咽頭炎、月経周期および出産によって引き起こされる疼痛が含まれる。
【0044】
一部の実施形態では、非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQは、運動と関連する鋭く、刺すような疼痛を軽減する。この種の疼痛はオピオイドによって十分にカバーされないが、術中場面では非常に重要である。一部の実施形態では、非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQは、手術中または手術後に(例えば腰および膝の関節形成などの重大な外科処置を受けている患者で)経験される疼痛などの、急性の処置疼痛の治療のために鼻腔内に送達される。
【0045】
一部の実施形態では、本発明は、鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)の頭蓋顔面粘膜投与(例えば鼻腔内投与、頬側投与、舌下投与または結膜投与)による、慢性疼痛の治療のための方法を提供する。慢性疼痛の例には、それらに限定されないが、線維筋痛、関節炎疼痛、癌疼痛、筋骨格/脊柱疼痛(背部痛を含む)、顎関節障害(TMJDまたはTMJ)、三叉神経痛、慢性頭痛、複合領域性疼痛症候群(I型およびII型)、神経性疾患に関連する疼痛(MS、糖尿病神経障害など)、神経腫、骨盤炎症性疾患、子宮内膜症、帯状ヘルペスおよびヘルペス後神経痛、ならびに感染症(例えば、HIV)関連の慢性神経病、化学療法誘発神経障害性疼痛、手術誘発神経障害性疼痛、外傷誘発神経障害性疼痛、慢性の外陰病変、非定型的な頭蓋顔面疼痛、神経根障害/座骨神経痛、幻影肢、歯痛および口内焼灼感症候群が含まれる。
【0046】
片頭痛および頭部疼痛
頭部疼痛は、それらに限定されないが、一次的頭痛、例えば片頭痛、群発性頭痛、緊張若しくはストレス頭痛、慢性の連日の頭痛、腫瘍および感染疾患、毒素摂取またはアルコールの過剰消費、および三叉神経痛などの特定の状態によって引き起こされている二次的頭痛を含む様々な医学的状態から生じることができる。本明細書で論じられるように、最も一般的な種類の一次的血管性頭痛は片頭痛であり、群発性頭痛はそれほど一般的ではないが等しく衰弱性である。緊張または「ストレス」型の頭痛は、最も多くの個体が影響を受ける点で全体的に最も一般的な頭痛の種類であると考えられている。これらの頭痛または頭痛障害の特性は、HISに記載されており、表2に要約されている。
【0047】
【表2】

頭痛疼痛および三叉神経痛は多くの場合現行の薬物投与で効果的に治療されず、疼痛軽減のための新しい方法が必要である。したがって、本発明の一部の態様は、NOPアゴニストの有効量の投与による頭痛疼痛または三叉神経痛の治療のための方法を含み、そこで、投与は頭蓋顔面または頭部領域の痛覚消失をもたらす。NOPアゴニストは、それらに限定されないが片頭痛、群発性頭痛、緊張性頭痛、二次型の頭痛および三叉神経痛を含む、頭痛障害を有する患者に投与することができる。
【0048】
一部の態様では、本発明は、それを必要とする個体に、鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)の有効用量を頭蓋顔面粘膜投与(例えば鼻腔内投与、頬側投与、舌下投与または結膜投与)によって投与することを含む、片頭痛または他の頭痛を治療するための方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、それを必要とする個体にN/OFQの有効用量を鼻腔内投与によって投与することを含む、片頭痛治療のための方法を提供する。一部の実施形態では、本方法は、片頭痛の頭痛、前兆のない片頭痛、前兆のある片頭痛、前兆はあるが頭痛のない片頭痛、脳底型片頭痛、家族性片麻痺性片頭痛、散発的な片麻痺性片頭痛、腹性片頭痛、無頭痛性片頭痛または月経性片頭痛の治療を含む。一部の実施形態では、治療は、片頭痛に関連する1つまたは複数の症状を軽減または予防することを含む。一部の実施形態では、症状は前駆相症状、前兆相症状、疼痛相症状または後発相症状である。一部の実施形態では、治療は、吐き気、光恐怖症および音恐怖症から選択される1つまたは複数の症状を軽減または予防することを含む。
【0049】
方法
一態様では、本明細書において、疼痛のために個体を治療するための方法であって、その個体に、鎮痛性化合物または鎮痛性化合物を含む医薬組成物の有効量を頭蓋顔面粘膜経路によって投与することを含む方法が提供される。本発明の一部の態様は、鎮痛性化合物が、それらに限定されないが、鎮痛特性を有するペプチド、アミノ酸、ポリペプチドまたは小分子化合物を含む方法を含む。一部の実施形態では、鎮痛性化合物は、非オピオイド鎮痛ペプチドである。一部の実施形態では、鎮痛性化合物は、オピオイド受容体への高親和性結合以外の機構によって疼痛を軽減または予防する鎮痛ペプチドである。一部の実施形態では、鎮痛性化合物は、アヘン剤またはオピオイドであると一般にみなされる分子よりも低い親和性をオピオイド受容体に対して有するペプチドである。一部の実施形態では、鎮痛性化合物は、μ、δおよびκオピオイド受容体に対して10mM未満、1mM未満、0.1mM未満、10μM未満または1μM未満の結合親和性を有する鎮痛ペプチドである。
【0050】
一部の実施形態では、鎮痛性化合物は、ヒポクレチン/オレキシン、カルシトニン、オクトレオチド、ソマトスタチン、バソプレシン、ガラニン、リポトロピンのC断片およびAc−rfwink−NH、オメガコノトキシンGV1A、オメガコノトキシンMVIIA、侵害受容促進ペプチド神経伝達物質受容体CGRP1およびCGRP2のペプチドアンタゴニスト、例えばCGRP8−37およびCGRP28−3;N−アセチルトリプトファン、D−Pro9−[スピロ−y−ラクタム]−Leu10、Trp11−フィサレミン(1−11)、Tyr−D−Phe−Phe−D−His−Leu−Met−NH(センダイド)およびスパンタイドIIを含む、侵害受容促進ペプチド神経伝達物質受容体NK1のペプチドアンタゴニスト;PhCO−Ala−Ala−D−Trp−Phe−D−Pro−Pro−Nle−NH(GR98400)、[Tyr5、D−Trp6、8、9、Lys10]−NKA(4−10)(MEN10376)およびその誘導体を含む、侵害受容促進ペプチド神経伝達物質受容体NK2のペプチドアンタゴニスト;VIP(6−28)、ACHis(1)[D−Phe(2)、K(15)、R(16)、L(27)]VIP(3−7)/GRF(8−27)を含む、侵害受容促進ペプチド神経伝達物質受容体VPAC2、VPAC1およびPAC1のペプチドアンタゴニストからなる群より選択される非オピオイド鎮痛ペプチドである。一部の実施形態では、鎮痛性化合物は、米国特許第7,220,725号に開示されるトリペプチドまたはテトラペプチドを含有するピログルタミン酸である。一部の実施形態では、鎮痛性化合物は、脳由来神経栄養因子(BDNF)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン−3(NT−3)、ボツリヌストキシン、または抗炎症性サイトカイン(例えばインターロイキン4、インターロイキン10およびインターロイキン13)などのポリペプチドである。
【0051】
一部の実施形態では、鎮痛性化合物はNOP受容体アゴニストである。一部の実施形態では、鎮痛性化合物は、N/OFQ、トランケーションされたN/OFQ類似体、UFP−102、UFP−112などのN/OFQアゴニストペプチド、およびSyn1020などのNOPアゴニストヘキサペプチドから選択されるペプチドNOPアゴニストである。一部の実施形態では、鎮痛性化合物は、ヘキサヒドロスピロ[ピペリジン−4,1’−ピロロ[3,4−c]ピロール]などの非ペプチドNOPアゴニスト、および本明細書に記載される他の小分子NOPアゴニストである。特定の実施形態では、鎮痛性化合物はN/OFQ(ノシセプチン)である。
【0052】
一部の実施形態では、それを必要とする個体に非オピオイド鎮痛ペプチド(例えばN/OFQ)の有効用量を頭蓋顔面粘膜投与によって投与することを含む、疼痛の治療のための方法が提供される。頭蓋顔面粘膜投与には、鼻腔内投与、頬側投与、舌下投与および結膜投与が含まれるが、これらに限定されるものではない。一部の実施形態では、非オピオイド鎮痛ペプチドの予防的粘膜投与は、疼痛の開始を予防するか、遅らせる。一部の実施形態では、非オピオイド鎮痛ペプチドの粘膜投与は、疼痛の重度を軽減または低減する。一部の実施形態では、疼痛は体性疼痛である。一部の実施形態では、疼痛は表面的な体性疼痛である。一部の実施形態では、疼痛は深部の体性疼痛である。一部の実施形態では、疼痛は筋骨格の疼痛である。一部の実施形態では、疼痛は内臓疼痛である。一部の実施形態では、疼痛は神経障害性疼痛である。一部の実施形態では、疼痛は頭部疼痛または頭蓋顔面疼痛である。一部の実施形態では、疼痛は、本明細書に記載される慢性的疼痛などの慢性的疼痛である。一部の実施形態では、疼痛は、本明細書に記載される急性疼痛などの急性疼痛である。一部の実施形態では、疼痛は片頭痛、群発性頭痛、緊張性頭痛、二次型の頭痛または三叉神経痛に関連する疼痛である。一部の実施形態では、疼痛は、TMJ、片頭痛または三叉神経痛によって引き起こされている。一部の実施形態では、疼痛は、運動に関連する鋭い、刺すような疼痛である。一部の実施形態では、疼痛は、手術関連の神経損傷によって引き起こされる神経障害性疼痛である。
【0053】
一部の実施形態では、本方法は、片頭痛関連疼痛、群発性頭痛疼痛または三叉神経痛疼痛の治療のために、鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)または鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)を含む医薬組成物を頭蓋顔面粘膜投与によって個体に投与することを含む。一部の実施形態では、本方法は、片頭痛または他の頭痛疼痛を経験している個体に鎮痛性化合物または鎮痛性化合物を含む医薬組成物を頭蓋顔面粘膜経路によって投与することを含む、片頭痛関連疼痛のための頓挫療法を含む。一部の実施形態では、本方法は、片頭痛の頭痛の開始を予防するために、個体に鎮痛性化合物または鎮痛性化合物を含む医薬組成物を頭蓋顔面粘膜経路によって投与することを含む、片頭痛関連疼痛のための予防的処置を含む。一部の実施形態では、本方法は、片頭痛関連前兆を経験している個体に、片頭痛の頭痛の開始の前に鎮痛性化合物または鎮痛性化合物を含む医薬組成物を頭蓋顔面粘膜経路によって投与することを含む、片頭痛関連疼痛のための予防的処置を含む。一部の実施形態では、本方法は、群発系が開始した後であるが群発系の連続した頭痛の前に、鎮痛性化合物または鎮痛性化合物を含む医薬組成物を頭蓋顔面粘膜経路によって個体に投与することを含む、群発性頭痛疼痛のための予防的処置を含む。一部の実施形態では、本方法は、三叉神経痛の発作の後であるが続く発作の前に、個体に鎮痛性化合物または鎮痛性化合物を含む医薬組成物を頭蓋顔面粘膜経路によって投与することを含む、三叉神経痛の疼痛のための予防的処置を含む。
【0054】
一態様では、本発明は、それを必要とする個体に、鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)の有効用量を頭蓋顔面粘膜投与によって投与することを含む疼痛治療のための方法を提供し、そこで前記投与は広域鎮痛効果をもたらす。動物での鼻腔内N/OFQペプチドの鎮痛効果の試験では、生理食塩水投与の対照と比較したとき、N/OFQの鼻腔内(i.n.)投与の後により長い頬逃避潜伏時間(A−δおよびC線維痛覚消失の両方を示す)が観察されたが、同じ投薬量でのN/OFQの静脈内(i.v.)投与の後には有意な痛覚消失が観察されなかった。足逃避応答に対する類似した鎮痛効果は、N/OFQが生理食塩水対照と比較してi.n.で投与されたときに観察されたが、i.v.投与の場合には観察されなかった。本発明の一実施形態では、広域鎮痛効果を達成するために、N/OFQなどの鎮痛ペプチドは鼻腔内投与によって投与される。一部の実施形態では、鎮痛性化合物(例えばN/OFQ)の頭蓋顔面粘膜投与(例えば鼻腔内投与)は、その化合物の静脈内投与と比較してより強い鎮痛効果をもたらす。一部の実施形態では、鎮痛性化合物の頭蓋顔面粘膜投与は、有意な全身的副作用を引き起こさない。一部の実施形態では、N/OFQなどの非オピオイド鎮痛ペプチドは鼻腔内投与によって投与され、そこでは、脳に到達する非オピオイドペプチド(例えばN/OFQ)の大部分は、全身の循環に入ることなく脳に送達される。
【0055】
一態様では、本発明は、口腔内、鼻腔内、目の中若しくはその周辺の粘膜の組織または上皮へ、或いは皮膚へ、鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、例えばN/OFQまたは別のNOPアゴニスト)を個体に投与することを含む、個体での疼痛の治療のための方法を提供する。口の粘膜組織には、歯肉(歯ぐき)、口腔底、唇、舌またはそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されるものではない。本方法は、結膜または目の周辺の他の粘膜組織に鎮痛性化合物を投与することを含むことができる。組織または上皮には、結膜、涙腺、鼻涙管、上下の眼瞼の粘膜、目またはそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されるものではない。結膜に投与されるが結膜粘膜を通して完全には吸収されない化合物または医薬組成物は、鼻涙管を通って鼻に流れ出ることができ、そこでは、鼻腔内の粘膜組織はそれを吸収することができる。一部の実施形態では、鎮痛性化合物は非オピオイドペプチドである。一部の実施形態では、鎮痛性化合物は、ペプチドまたは非ペプチドNOPアゴニストである。特定の実施形態では、鎮痛性化合物はN/OFQペプチドである。鎮痛性化合物は、鼻腔内の粘膜組織に投与することができる。適する領域には、鼻腔の下方の3分の2、若しくは上の3分の1、または鼻通路全体が含まれるが、これらに限定されるものではない。一部の実施形態では、NOPアゴニスト(例えばペプチドNOPアゴニスト、例えばN/OFQ)は、鼻腔の上方の3分の1に投与される。一部の実施形態では、NOPアゴニスト(例えばペプチドNOPアゴニスト、例えばN/OFQ)は、鼻腔の下方の3分の2に投与される。一部の実施形態では、NOPアゴニスト(例えばペプチドNOPアゴニスト、例えばN/OFQ)は、鼻腔の下方の3分の2および上方の3分の1の両方に特に到達するように投与される。
【0056】
鼻腔内薬物送達は長年研究開発の話題であったが、物質の送達を効果的にする担体系が考案されたのは過去10年の間に過ぎない。(SayaniおよびChien、Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems、1996年、13巻:85〜184頁。)鼻腔内送達は、比較的高い生体利用度、迅速な吸収動態および肝臓での初回通過効果の回避を含むいくつかの有利な特徴を有する。患者の薬剤服用遵守および使いやすさに関して、鼻腔内投与は、簡単、迅速および非侵襲性の適用様式を提供する。一部の態様では、鼻腔内投与は、鼻腔へのN/OFQなどの鎮痛ペプチドの送達を可能にすることができ、他の態様では、鼻腔内投与は鼻および/または脳の脳神経への標的送達を可能にすることができる。いかなる特定の理論によっても束縛されることを望むことなく、N/OFQなどの鎮痛ペプチドの鼻腔内投与は、嗅神経系または三叉神経系または両方とも標的にすることができる。
【0057】
経口および静脈内送達のように、投与されるペプチドの効果のために全身の循環が必要とされる場合、ペプチドの鼻腔内送達も劣る吸収および多大な加水分解という制限を有する。ペプチド吸収度を高めるために、酵素インヒビターおよび吸収促進剤が使用された。オピオイドペプチドのロイシンエンケファリンの経鼻投与は、マウス(特定の内臓疼痛のモデル)での酢酸苦悶試験で非常に限定的な鎮痛効果を示したが、ロイシンエンケファリンが混合された酵素インヒビターおよび吸収促進剤と一緒に経鼻投与されたときには高い鎮痛活性が報告され(Gawk H. S.ら、Journal of Pharmacy and Pharmacology、2003年、55巻:1207〜1212頁)、これは、全身吸収ならびに脳神経および/または脳への標的送達の両方を増強することができる効果である。
【0058】
口腔内では、ユーザーフレンドリーおよび非侵襲性であるので、頬側または舌下送達経路が薬物送達のための便利な選択肢である。利点のいくつかには、以下のものが含まれる。(i)一部の他の経路と比較して口腔内でのタンパク分解活性がより低く、それによってペプチドおよびタンパク質薬剤の酵素的分解の問題を回避する、ならびに(ii)肝初回通過効果を迂回する。目周辺の粘膜組織または結膜への薬物送達は、薬物送達のための非侵襲性の別の便利な選択肢である。
【0059】
本発明の一部の態様は、結膜または目周辺の他の粘膜組織にN/OFQなどの鎮痛ペプチドの有効量を投与することを含む、個体での頭痛疼痛または三叉神経痛疼痛などの疼痛の治療のための方法を含む。
【0060】
皮膚への治療薬の経皮薬物送達または投与は、この20年間で証明された技術になっている。経皮薬物送達は患者への薬剤の制御放出を提供し、経皮パッチはユーザーフレンドリー、便利、無痛であり、改善された患者の薬剤服用遵守を通常もたらす複数日投与を提供する。本方法は、鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)または鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)を含む医薬組成物を顔、頭または体の皮膚に投与することを含むことができる。NOPアゴニストは、顔、頭皮または側頭部の皮膚に投与されてよい。顔の適する皮膚には、あご、上唇、下唇、額、鼻、頬の皮膚、目周辺の皮膚、上眼瞼、下眼瞼またはそれらの組合せが含まれる。頭皮の適する皮膚には、頭皮前部、側頭部上の頭皮、頭皮の側方部またはそれらの組合せが含まれる。側頭部の適する皮膚には、こめかみおよび側頭部の上の頭皮ならびにそれらの組合せが含まれる。
【0061】
治療薬の皮内投与は、皮膚層の内部またはそれらの間と定義される。対照的に、皮下投与は皮膚の一次層の下と定義される。皮内または皮下注射による治療薬の投与は、当業技術者による薬物送達の一般的な手段である。
【0062】
一部の実施形態では、鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)または鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)を含む医薬組成物の頭蓋顔面粘膜投与は、局所麻酔剤または麻薬型の薬剤に関連する強い鎮静効果と比較して、麻痺のない疼痛の予防または緩和をもたらす。標的送達は、鎮痛効果を達成するために個体に投与される鎮痛性化合物の量を減少させることができるので、望ましくないCNS効果または全身的副作用の可能性を低減させることができる。
【0063】
一態様では、本明細書において、鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)または鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)を含む医薬組成物を頭蓋顔面粘膜経路によって個体に投与することを含む、個体での片頭痛の治療のための方法が提供される。一部の実施形態では、頭蓋顔面粘膜経路は、経鼻、結膜、舌下または頬側経路である。一部の実施形態では、本方法は片頭痛の頭痛の治療を含む。一部の実施形態では、本方法は前兆のない片頭痛の治療を含む。一部の実施形態では、本方法は前兆のある片頭痛の治療を含む。一部の実施形態では、本方法は、前兆はあるが頭痛のない片頭痛の治療を含む。一部の実施形態では、本方法は脳底型片頭痛の治療を含む。一部の実施形態では、本方法は、家族性片麻痺性片頭痛または散発的な片麻痺性片頭痛の治療を含む。一部の実施形態では、本方法は腹性片頭痛の治療を含む。一部の実施形態では、本方法は無頭痛性片頭痛の治療を含む。一部の実施形態では、本方法は月経性片頭痛の治療を含む。特定の実施形態では、片頭痛を治療するための方法は、それを必要とする個体にN/OFQまたはN/OFQを含む医薬組成物の有効用量を鼻腔内投与によって投与することを含む。
【0064】
別の態様では、鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)または鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)を含む医薬組成物を頭蓋顔面粘膜経路(例えば、鼻腔内投与、頬側投与、舌下投与または結膜投与)によって個体に投与することを含む、個体での片頭痛関連の症状の治療のための方法が提供される。一部の実施形態では、症状は前駆相症状である。一部の実施形態では、症状は前兆相症状である。一部の実施形態では、症状は疼痛相症状である。一部の実施形態では、症状は後発相症状である。一部の実施形態では、本方法は、吐き気、光恐怖症および音恐怖症から選択される1つまたは複数の片頭痛関連症状を軽減または予防することを含む。特定の実施形態では、本方法は、それを必要とする個体にN/OFQまたはN/OFQを含む医薬組成物の有効用量を鼻腔内投与によって投与することを含み、そこでは、投与は吐き気、光恐怖症または音恐怖症などの片頭痛関連の症状を軽減または予防する。
【0065】
一部の態様では、本発明は、鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)の頭蓋顔面粘膜投与(例えば鼻腔内投与、頬側投与、舌下投与または結膜投与)による、疼痛の治療のための方法を提供する。一部の実施形態では、疼痛は体性疼痛である。一部の実施形態では、疼痛は表面的な体性疼痛である。一部の実施形態では、疼痛は深部の体性疼痛である。一部の実施形態では、疼痛は筋骨格疼痛である。一部の実施形態では、疼痛は内臓疼痛である。一部の実施形態では、疼痛は神経障害性疼痛である。一部の実施形態では、疼痛は頭部疼痛または頭蓋顔面疼痛である。一部の実施形態では、疼痛は頭部および/または口顔領域以外の体の部分にある。一部の実施形態では、疼痛は、本明細書に記載される慢性的疼痛などの慢性的疼痛である。一部の実施形態では、疼痛は、本明細書に記載される急性疼痛などの急性疼痛である。一部の実施形態では、疼痛は、本明細書に記載される疼痛の1つまたは複数の組合せである。一部の実施形態では、疼痛は、運動に関連する鋭い、刺すような疼痛である。一部の実施形態では、疼痛は、手術関連の神経損傷によって引き起こされる神経障害性疼痛である。
【0066】
共投与(co−administration)
本発明の一部の態様では、鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)の全身への取り込みを減少させるために、血管収縮剤が用いられる。血管収縮剤は、鎮痛性化合物の全身への取り込みを減少させるために、医薬組成物に含まれてもよい。或いは、血管収縮剤は、医薬組成物から粘膜または皮膚の表面に別々に送達されてもよい。血管収縮剤は、血管および毛細血管を収縮させ、血流を減少させる化合物である。血流中への剤の移動を阻止し、それによって剤の全身への取り込みおよび分布を低減することによって所望の部位での剤の濃度を増加させるために、それらを用いることができる。血管収縮剤は、全身の分布を制限し、標的組織、すなわち脳神経およびCNSで剤を濃縮することによって、痛覚消失を達成するために必要な剤の有効投薬量を減少させるために用いることができる。したがって、血管収縮剤は、鎮痛ペプチドの投与の前に投与されてもよく、または鎮痛ペプチドと共投与されてもよい。血管収縮剤には、塩酸フェニレフリン、塩酸テトラヒドロゾリン、硝酸ナファゾリン、塩酸オキシメタゾリン、塩酸トラマゾリン、エルゴタミン、ジヒドロエルゴタミン、エンドセリン−1、エンドセリン−2、エピネフリン、ノルエピネフリンおよびアンギオテンシンを含めることができるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
一部の実施形態では、鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)の投与の前に血管収縮剤が個体の鼻腔に投与され、血管収縮剤の投与は鎮痛性化合物の全身への分布を減少させる方法が提供される。一部の例では、本方法は、個体の鼻腔に血管収縮剤および鎮痛性化合物を共投与することができ、そこで、血管収縮剤の投与は鎮痛性化合物の全身への分布を減少させる。他の例では、本方法は、鎮痛性化合物より前にまたは同時に個体の鼻腔に血管収縮剤を投与することができ、そこで、血管収縮剤の投与は鎮痛性化合物の全身への取り込みおよび分布を減少させ、それによって痛覚消失を達成するのに必要な鎮痛性化合物の必要有効投薬量を減少させる。
【0068】
一部の態様では、本明細書において、疼痛のために個体を治療するための方法であって、鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)または鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)を含む医薬組成物の有効量を頭蓋顔面粘膜経路で個体に投与することを含み、そこで、鎮痛性化合物は、少なくとも1つの追加の活性剤と併用投与される方法が提供される。一部の実施形態では、鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)は、少なくとも2つの追加の活性剤と併用投与される。追加の活性剤には、それらに限定されないが、モルヒネ、メサドン、フェンタニル、ブトルファノール、コデイン、アヘン、オキシコドン、ロペリミド(loperimide)、メペリジン(Demerol(登録商標))、ジフェノキシレート、プロポキシフェン(Darvon(登録商標))、4−メチルフェンタニル、ヒドロコドン、モルヒネ、ジアセチルモルフィン、ジヒドロコデイン、ヒドロモルフォン(Dilaudid(登録商標))、レボルファノール(Levo−Dromoran(登録商標))、デキストロメトルファン、オキシモルフォン(Numorphan(登録商標))、ヘロイン、レミフェンタニル、フェナゾシン、ペンタゾシン、ピミノジン、アニレリジン、ブプレノルフィン(Suboxone(登録商標))、スフェンタニル、カルフェンタニル、アルフェンタニルおよび非定型的アヘン剤、トラマドールおよびタペンタドールなどの非ペプチドオピオイド;エンドルフィン、エンケファリン、ダイノルフィン、デルモルフィン、デルメンケファリン、モルフィセプチン、エンドモルフィンおよびデラルギンなどのオピオイドおよびオピオイド様ペプチドおよびそれらの類似体;ケタミン、アマンタジン、デキストロメトルファン(dextrometorphane)、メマンチンおよびMK801などのNMDA受容体アンタゴニスト;局所麻酔剤およびエルゴタミンなどのナトリウムチャネルブロッカー;ベラパミルおよびニフェジピンなどのカルシウムチャネルブロッカー;プロプラノロール、メトプロロールおよびヨヒンビン(yohimine)などのアドレナリン作動性アンタゴニスト;GABA、バクロフェン、シス−4−アミノクロトン酸(CACA)、トランス−4−アミノクロトン酸(TACA)、CGP27492(3−アミノプロピル亜ホスホン酸)およびプロガビドなどのGABA作動性アゴニスト;グリシンおよびD−シクロセリンなどのグリシンアゴニスト;ネオスチグミンおよびフィゾスチグミン(physiostigmine)などのコリン作動性アゴニスト;エピネフリン、ネオシネフリン、クロニジンおよびデキスメデトミジンなどのアドレナリン作動性アゴニスト;ガバペンチンおよびバルビツール剤などの抗痙攣薬;ファスジル、Y27632、H−1152およびその誘導体などのRhoキナーゼインヒビター;ケレリトリン、Go6983、Go6976、N−ミリストイル−Ser−Ile−Tyr−Arg−Arg−Gly−Ala−Arg−Arg−Trp−Arg−Lys−Leu、ロットレリン、KAI−9803およびKAI−1455などのPKCインヒビター;SCIO−469、AMG548およびその誘導体などのp38−MAPキナーゼインヒビター;塩化テトラメチルピラジンケレリトリン、A−317491およびその誘導体などのATP受容体ブロッカー;BQ123、BMS182874およびその誘導体などのエンドセリン受容体ブロッカー;アナキンラ、インフリキシマブ、エタナーセプトおよびアダリムマブなどの、炎症促進性(pro−inflammatory)サイトカイン、ケモカイン、インターロイキンおよび腫瘍壊死因子ブロッカー;インターロイキン4、インターロイキン10およびインターロイキン13などの抗炎症サイトカイン;デシプリミン(desiprimine)およびアミトリプチリンなどの三環系抗うつ薬;フルオキセチン、ドラセトロンおよびオンダンセトロンなどのセロトニン様アンタゴニスト;ブスピロンおよびエルゴメトリンなどのセロトニン様アゴニスト;ジクロフェナク、イブプロフェン、ケトロラク、サリチレート、ロフェコキシブ、セレコキシブ、パレコキシブ、バルデコキシブおよびナプロキセンなどのNSAIDおよびCOXIB;アセトアミノフェン;カルシトニン、オクトレオチド、ソマトスタチン、バソプレシン、ガラニン、リポトロピンのC断片およびAc−rfwink−NHなどの鎮痛ペプチド;毒素、例えばボツリヌストキシン、その変異体および誘導体、コーンスネール毒素、例えばオメガコノトキシンGV1A、オメガコノトキシンMVIIA、サキシトキシンおよびフグ毒;カプサイシン、カプサゼピン、レシニフェロトキシン(resiniferotoxin)、SB−705498、A−425619、AMG517、SC0030およびその誘導体などのTRPチャネルアゴニストおよびアンタゴニスト;THC、CT−3、レボナントラドール、デキサナビノール、WIN−55、212−2、AM1241、ドロナビノール、ナビロン、大麻薬抽出物(CME)およびその誘導体などのカンナビノイド(cannabanoid);非ペプチドアンタゴニスト、例えばBIBN4096およびその誘導体、ならびにペプチドアンタゴニスト、例えばCGRP8−37およびCGRP28−3を含む、侵害受容促進ペプチド神経伝達物質受容体CGRP1およびCGRP2のアンタゴニスト;SR140333、CP96346、L−760735などの非ペプチドアンタゴニストを含む、侵害受容促進ペプチド神経伝達物質受容体NK1のアンタゴニスト; RP67580、WIN51708;MK869およびその誘導体、ならびにN−アセチルトリプトファン、D−Pro9−[スピロ−y−ラクタム]−Leu10、Trp11−フィサレミン(1−11)、Tyr−D−Phe−Phe−D−His−Leu−Met−NH(センダイド)およびスパンタイドIIなどのペプチドアンタゴニスト;非ペプチドアンタゴニスト、例えばSR48968およびその誘導体、ならびにペプチドアンタゴニスト、例えばPhCO−Ala−Ala−D−Trp−Phe−D−Pro−Pro−Nle−NH(GR98400)、[Tyr5、D−Trp6、8、9、Lys10]−NKA(4−10)(MEN10376)およびその誘導体を含む、侵害受容促進ペプチド神経伝達物質受容体NK2のアンタゴニスト;非ペプチドアンタゴニストベネクストラミンおよびペプチドアンタゴニスト(Ile−Glue−Pro−Dpr−Tyr−Arg−Leu−Arg−Tyr−NH、環式(2,4’)、(2,4’)−ジアミド(1229U91またはGW1229)、PYX−2、D−Tyr(27、36)、D−Thr(32)]NPY(27−36)(D−NPY(27−36)、3−(5,6,7,8−テトラヒドロ−9−イソプロピル−カルバゾル−3−イル)−1−メチル−1−(2−ピリジン−4−イル−エチル)尿素ハイドロクロライド(FMS586およびその誘導体)を含む、侵害受容促進ペプチド神経伝達物質受容体Y1−5のアンタゴニスト;ペプチドアンタゴニストVIP(6−28)、AC His(1)[D−Phe(2)、K(15)、R(16)、L(27)]VIP(3−7)/GRF(8−27)を含む、侵害受容促進ペプチド神経伝達物質受容体VPAC2、VPAC1およびPAC1のアンタゴニスト;非ペプチドアンタゴニストSNAP37889、SNAP398299、ガルノンおよびその誘導体を含む、侵害受容促進神経伝達物質受容体Gal1−3およびGalR1−3のアンタゴニスト。追加の活性剤には、バソプレシン、コルチコトロピン放出ホルモン(CRH)、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、黄体化ホルモン放出ホルモン(LHRH)、ソマトスタチン成長ホルモン放出抑制ホルモン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、神経膠由来神経栄養因子(GDNF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン−3(NT−3)、膵臓ポリペプチド、ペプチドチロシン−チロシン、グルコーゲン(glucogen)様ペプチド−1(GLP−1)、ペプチドヒスチジンイソロイシン(PHI)、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド(PACAP)、脳ナトリウム排泄増加性ペプチド、コレシストキニン(CCK)、島アミロイドポリペプチド(IAPP)またはアミリン、メラニン凝集ホルモン(MCH)、メラノコルチン(ACTH、アルファ−MSHその他)、神経ペプチドFF(F8Fa)、ニューロテンシン、副甲状腺ホルモン関連タンパク質、Agouti遺伝子関連タンパク質(AGRP)、コカインおよびアンフェタミン調節転写産物(CART)/ペプチド、5−HT−モジュリン、ヒポクレチン/オレキシン、オキシトシンペプチド、ノシスタチン(ocistatin)、プロラクチン放出ペプチド、セクレトニューリン、ウロコルチン、ならびにその誘導体および類似体のアゴニストまたはアンタゴニストを含めることができる。
【0069】
医薬組成物
鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)を単独で投与することができるが、医薬組成物の一部としてそれを提供することが有利な場合がある。したがって、本発明の一部の態様では、鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)は、医薬組成物として投与される。医薬組成物は、治療有効用量の鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)を、1つまたは複数の薬学的に許容される担体および任意選択で他の成分と一緒に含むことができる。適する担体とは、過度の副作用を引き起こさないが、鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)に体内でその薬理活性を保持させるものである。担体は、鎮痛性化合物の任意の望ましくない副作用を低減することもできる。適する担体は安定であるべきであり、すなわち、製剤中の他の成分と一般的に反応しない。適する担体は最小限の望ましくない匂いまたは芳香を有するべきであるが、望ましい芳香または肯定的な(楽しませる)匂いを含むことができる。適する担体は、粘膜、上皮、根底にある神経を刺激するべきではなく、健康リスクを与えるべきでもない。
【0070】
適する毒性のない薬学的に許容される担体は、医薬製剤分野の当業者に明らかになる。Remington: The Science and Practice of Pharmacy、20版、Lippincott、Williams & Wilkins(2000年)も参照のこと。代表的な薬学的に許容される担体には、マンニトール、尿素、デキストラン、ラクトース、ジャガイモおよびトウモロコシデンプン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、植物油、ポリアルキレングリコール、エチルセルロース、ポリ(ビニルピロリドン)、炭酸カルシウム、キトサン、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、安息香酸ベンジル、炭酸ナトリウム、ゼラチン、炭酸カリウム、珪酸ならびに他の従来使用されている許容される担体が含まれるが、これらに限定されるものではない。他の担体には、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリンおよびスフィンゴミエリンが含まれるが、これらに限定されない。
【0071】
適する担体の選択は、所望の特定の製剤の正確な性質、例えば、薬剤が溶液(例えば滴剤用として、注射用として、噴霧剤として、または鼻タンポンに含浸させて、または他の剤を含浸させた固体として)、懸濁液、軟膏、フィルムまたはゲルに製剤化されるかに依存する。所望により、徐放性組成物、例えば徐放性ゲル剤、フィルム、経皮パッチなどを容易に調製することができる。特定の製剤は、投与経路にも依存する。剤は、粉末、顆粒剤、溶液、クリーム、噴霧剤、ゲル剤、フィルム、軟膏、注入、滴剤または徐放性組成物として鼻腔に投与することができる。頬側投与のために、組成物は、従来の方法で製剤化される錠剤またはロゼンジの形をとることができる。舌下投与のために、組成物は、舌またはその下に適用される、生体接着剤、噴霧剤、粉末、塗料またはスワブの形をとることができる。結膜または目周囲の他の粘膜組織への投与のために、組成物は、軟膏、溶液または滴剤として適用されてもよい。皮膚への投与のために、組成物は、局所軟膏、局所ゲル、ローション、クリーム、溶液、噴霧剤、塗料、フィルム、ホイル、化粧品、パッチまたは生体接着剤として適用されてもよい。
【0072】
液体担体には、特に(等張性の場合)溶液のために、水、生理食塩水、水性デキストロースおよびグリコールが含まれるが、これらに限定されない。担体は、石油、動物、植物または合成起源のものを含む様々な油(例えば落花生油、ダイズ油、鉱油、胡麻油など)から選択されてもよい。適する医薬用の賦形剤には、デンプン、セルロース、タルク、グルコース、ラクトース、ショ糖、ゼラチン、モルト、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどが含まれるが、これらに限定されない。組成物は、滅菌などの従来の医薬工程に流すことができ、従来の医薬用添加剤、例えば保存料、安定剤、還元剤、抗酸化剤、キレート剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、ゼリー状にする剤、浸透圧を調節する塩、緩衝剤などを含有することができる。担体が液体である場合、担体は体液に低張性または等張性であってよく、4.5〜8.5の範囲のpHを有することができる。担体が粉末形である場合、担体は、許容される毒性のないpH範囲にあることが好ましい。ペプチドおよび/またはタンパク質に基づく組成物、特に医薬組成物の調製での添加剤の使用は、当技術分野で周知である。
【0073】
本明細書で論じられる担体および添加剤のリストは決して完全ではなく、当業者ならば、医薬用製剤で許容されている化学物質ならびに局所および腸管外製剤で現在許容されているもののGRAS(安全であると一般に考えられている)リストから担体および賦形剤を選択することができる。(Wangら、(1980年)J. Parent. Drug Assn.、34巻:452〜462頁;Wangら、(1988年)J. Parent. Sci. and Tech.、42巻:S4〜S26頁も参照のこと。)
投与のための組成物の他の形には、乳濁液、リポソームなどの粒子の懸濁液、または個体での薬学的に活性な剤の存在を長くする徐放形が含まれる。医薬組成物の粉末または顆粒形は、溶液と、および希釈剤、分散剤または表面活性剤と組み合わせてもよい。投与のためのさらなる組成物には、投与部位に剤を保持するための生体接着剤、例えば粘膜または上皮に適用される噴霧剤、塗料またはスワブが含まれる。生体接着剤は、親水性という呼称から水溶性であるか膨潤することができ、医薬組成物に適合する、天然のまたは合成された親水性ポリマーを指すことができる。そのような接着剤は、口腔または鼻腔の粘膜組織に製剤を付着させる機能を有する。そのような接着剤には、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、グアーガム(gaur gum)、ポリビニルピロリドン、ペクチン、デンプン、ゼラチン、カゼイン、アクリル酸ポリマー、アクリル酸エステルのポリマー、アクリル酸共重合体、ビニルポリマー、ビニル共重合体、ビニルアルコールのポリマー、アルコキシポリマー、ポリエチレンオキシドポリマー、ポリエーテルおよびそれらの組合せが含まれてもよいが、これらに限定されない。組成物は凍結乾燥された粉末の形であってもよく、それは投与の前に溶液、懸濁液または乳濁液に変換されてもよい。医薬組成物は好ましくは膜濾過によって滅菌され、密封バイアルまたはアンプルなどの単位用量または複数用量容器に保存される。
【0074】
治療される個体で活性剤の存在を長くするために、医薬組成物は徐放形で製剤化されてもよい。徐放製剤の多くの調製法が当技術分野で公知であり、Remington’s Pharmaceutical Sciences(上記参照)に開示されている。一般に、剤は固体の疎水性ポリマーの半透性マトリックスに混入されてもよい。マトリックスは、フィルムまたはマイクロカプセルに成形されてもよい。マトリックスには、ポリエステル、L−グルタミン酸およびガンマエチル−L−グルタミン酸のコポリマー、ポリラクチド、ポリ乳酸ポリグリコール酸、ヒドロゲル、非分解性エチレン−酢酸ビニル、分解性乳酸−グリコール酸共重合体、ヒアルロン酸ゲルおよびアルギン酸懸濁液を含めることができるが、これらに限定されない。適するマイクロカプセルには、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンおよびポリメタクリル酸メチルを含めることもできる。リポソームおよびアルブミンミクロスフェアなどのマイクロエマルジョンまたはコロイドの薬物送達系を用いることもできる。一部の徐放組成物は、投与部位に剤を保持するために生体接着剤を用いることができる。
【0075】
鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)を含む医薬組成物の粘膜送達をさらに強化するために、酵素インヒビター、特にプロテアーゼインヒビターが製剤に含まれてもよい。プロテアーゼインヒビターには、アンチパイン、アルファメニンAおよびB、ベンズアミジンHCl、AEBSF、CA−074、カルパインインヒビターIおよびII、カルペプチン、ペプスタチンA、アクチノニン、アマスタチン、ベスタチン、ボロロイシン、カプトプリル、クロロアセチル−HOLeu−Ala−Gly−NH2、DAPT、ジプロチンAおよびB、エベラクトンAおよびB、ホロキシミチン、ロイペプチン、ペプスタチンA、ホスホラミドン、アプロチニン、ピューロマイシン、BBI、ダイズトリプシンインヒビター、フェニルメチルスルホニルフルオリド、E−64、キモスタチン、1,10−フェナントロリン、EDTAおよびEGTAを含めることができるが、これらに限定されない。
【0076】
鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)を含む医薬組成物の粘膜表面への若しくはそれを横断しての送達および/または吸収を強化するために、吸収強化剤が製剤に含まれてもよい。これらの強化剤は、組成物の放出または溶解性(例えば製剤送達ビヒクルから)、拡散速度、浸透の能力およびタイミング、取り込み、滞留時間、安定性、実効半減期、ピークまたは持続する濃度レベル、クリアランスおよび他の所望の粘膜送達特性(例えば送達部位で測定される)を強化することができる。したがって、粘膜送達の強化は、様々な機構のいずれかによって、例えば鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)の拡散、輸送、残存性若しくは安定性を増強すること、膜流動性を増加させること、細胞内または傍細胞浸透を調節するカルシウムおよび他のイオンの利用可能性または作用を調整すること、粘膜構成要素(例えば脂質)を可溶化すること、粘膜組織の非タンパク質およびタンパク質のスルフヒドリルレベルを変えること、粘膜表面を越える水分流動を増加させること、上皮接合部生理を調整すること、粘膜上皮の上の粘液の粘性を低減すること、粘膜繊毛のクリアランス速度を低下させることならびに他の機構によって起こすことができる。
【0077】
粘膜吸収強化化合物には、界面活性剤、胆汁酸塩、ジヒドロフシジン酸、生体接着剤、リン脂質添加剤、混合ミセル、リポソーム、または担体、アルコール、エナミン、カチオンポリマー、NO供与体化合物、長鎖両親媒性分子、小さな疎水性浸透強化剤;ナトリウムまたはサリチル酸誘導体、アセト酢酸のグリセロールエステル、シクロデキストリンまたはベータ−シクロデキストリン誘導体、中鎖脂肪酸、キレート化剤、アミノ酸またはその塩、N−アセチルアミノ酸またはその塩、粘液溶解剤、選択された膜構成要素を特異標的にする酵素、脂肪酸合成インヒビターならびにコレステロール合成インヒビターを含めることができるが、これらに限定されない。
【0078】
これらのさらなる剤および化合物は、鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)と統合的に投与することができるか、または組み合わせて製剤化することができる。したがって、本発明の一部の態様は、鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)が、プロテアーゼインヒビター、吸収強化剤、血管収縮剤またはその組合せを含む医薬組成物として投与される方法を含む。医薬組成物は、鼻腔、口腔、結膜若しくは目周囲の他の粘膜組織または皮膚に投与されてよい。医薬組成物は、鼻腔内経路によって投与されてよい。医薬組成物は、頬側または舌下経路によって投与されてよい。医薬組成物は、経皮経路によって投与されてよい。医薬組成物は、複数の経路によって投与されてよい。医薬組成物は、少なくとも1つのプロテアーゼインヒビター、少なくとも1つの吸収強化剤、少なくとも1つの血管収縮剤またはそれらの組合せを含むことができる。医薬組成物は、血管収縮剤と共投与されてもよく、または血管収縮剤が送達された後に投与されてもよい。
【0079】
投薬量
鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)は、疼痛を起こしている個体に治療的有効量を提供するのに十分な用量で投与される。一部の態様では、鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)は、最小限のCNSまたは全身の副作用で広域鎮痛効果をもたらす用量で、頭蓋顔面粘膜経路(例えば鼻腔内経路)によって投与されてよい。開業医などの当業者の技術の範囲内であるように、鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)の治療有効用量は経験的に判定することができ、疼痛の種類および重度、投与経路ならびに患者のサイズ、体重、年齢および全体的な健康状態に依存する。
【0080】
単位用量として投与される鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)の量は、投与される医薬組成物の種類、例えば溶液、懸濁液、ゲル、フィルム、乳濁液、粉末または徐放製剤に依存する。一部の例では、経粘膜または経皮送達は頭蓋顔面および頭部領域内での鎮痛性化合物のより濃縮されたレベルを可能にすることができるので、有効投薬量は、経口、静脈内、筋肉内または皮下投与のために必要とされる投薬量よりも少ない。所望の用量を送達するために必要な製剤の量は、組成物中の鎮痛性化合物の濃度にも依存する。そのような決定は、当業者の技術の範囲内である。
【0081】
本発明の方法で用いられる医薬組成物中の鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)の治療的投薬量は、鎮痛性化合物の化学的組成および/または改変、選択される投与経路によるその生体利用度、その効力、製剤の所望の単一の投薬量と組み合わせられる投与の所望の頻度、ならびに鎮痛性化合物が他の活性剤(複数可)と併用投与されるかどうかなどのいくつかの因子に依存する。特に、鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)の投薬量は、治療される特定の疼痛の軽減を最大にするように選択される。薬理学的データは、当業者による動物モデルおよび正常なヒトボランティアまたは特定の疼痛を経験している患者での臨床試験から得ることができる。
【0082】
剤の鎮痛活性を試験する実験モデルは、当技術分野で公知である。動物モデルは、それらに限定されないが、酢酸苦悶、フェニルキノン苦悶、テールフリック、足逃避および頬/耳/顔逃避を含む試験を含み、そこで、疼痛受容体活性化は、酢酸、フェニルキノン、ホルマリン若しくはカプサイシンのような化合物、またはホットプレート若しくはレーザーなどの熱活性化物質によって誘発される。詳細には、カプサイシンの口顔送達、ホルマリンの口顔送達または頬、耳若しくは顔への熱の送達などの試験を利用する、頭蓋顔面または頭部疼痛のモデルが利用できる。場合によっては、鎮痛活性を試験するために、本明細書に記載される実施例に記載のモデルなどの、他のモデルを開発することができる。最小限のCNSおよび/または全身の副作用で鎮痛剤が所望の鎮痛効果をもたらす最適投薬量範囲を判定するために、モデルを用いることができる。さらに、鎮痛性化合物を特定の送達経路で、例えば鼻腔内に投与し、頬、耳または顔および後ろ足で鎮痛効果を試験するために、モデルを用いることができる。場合によっては、医薬組成物の投与の後に、鎮痛剤の鎮痛活性を試験するために、1つのモデルを用いることができ、そこでは、頬、耳または顔の逃避潜伏時間が領域性痛覚消失を判定することができ、後ろ足の逃避潜伏時間が広域鎮痛効果を判定することができる。
【0083】
上記のように、鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)の有効量は、その方法で用いられる形および組成に依存する。好ましくは、頭蓋顔面粘膜投与によって投与されるN/OFQペプチドの有効量は、効果を全く達成することができないか、または非常に高い用量だけで達成することができる他の経路(例えば経口、静脈内、筋肉内または皮下)によって剤が送達される場合に用いられる投薬量よりも低い。例えば、N/OFQペプチドの投与のために用いられる投薬量には、それらに限定されないが、約0.2mg〜約5000mg、約0.2mg〜約2000mg、約0.2mg〜約1000mg、約0.2mg〜約500mg、約0.2mg〜約200mg、若しくは0.2mg〜約100mg、または0.5mg〜約100mg、若しくは約0.5mg〜約50mg、若しくは約0.5mg〜約25mg、若しくは約0.5mg〜約10mg、若しくは約0.5mg〜約5mg、若しくは約0.5mg〜約1mg、または約1mg〜約100mg、若しくは約1mg〜約50mg、若しくは約1mg〜約25mg、若しくは約1mg〜約10mg、若しくは約1mg〜約5mg、または約5mg〜約200mg、若しくは5mg〜約100mg、若しくは約5mg〜約50mg、若しくは約5mg〜約25mg、若しくは約5mg〜約10mgの投薬量範囲内の有効量が含まれてもよい。
【0084】
投薬量は単一の用量または複数の用量で投与されてもよく、例えば、治療される頭痛疼痛の種類および重度ならびに個体の感受性に従い、投薬量は1日に2、3、4、最高10回で投与されてもよい。投薬量は、1週に6回、1週に5回、1週に4回、1週に3回、1週に2回、または1週に1回など、より低い頻度でN/OFQペプチドを投与することを可能にすることができる徐放製剤で投与されてもよい。
【0085】
したがって、本発明の一部の態様は、N/OFQペプチドの有効量を鼻腔内投与によって個体に投与することを含む、疼痛の治療のための方法を含む。N/OFQペプチドは、動物モデルでの試験および/またはヒト臨床試験などの当技術分野で公知である方法によって決定される投薬量範囲内で投与されてよい。例えば、単位用量は、約0.2mg〜約5000mg、約0.2mg〜約2000mg、約0.2mg〜約1000mg、約0.2mg〜約500mg、約0.2mg〜約200mg、若しくは0.2mg〜約100mg、または0.5mg〜約100mg、若しくは約0.5mg〜約50mg、若しくは約0.5mg〜約25mg、若しくは約0.5mg〜約10mg、若しくは約0.5mg〜約5mg、若しくは約0.5mg〜約1mg、または約1mg〜約100mg、若しくは約1mg〜約50mg、若しくは約1mg〜約25mg、若しくは約1mg〜約10mg、若しくは約1mg〜約5mg、または約5mg〜約200mg、若しくは5mg〜約100mg、若しくは約5mg〜約50mg、若しくは約5mg〜約25mg、若しくは約5mg〜約10mgの範囲であってよい。
【0086】
本発明の一部の態様では、鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)を含む組成物は、追加の活性剤をさらに含むことができ、そこで、鎮痛性化合物および追加の活性剤(複数可)は、混合物として、別々におよび同時に、または任意の順序で別々に投与される。一部の例では、N/OFQペプチドを含む組成物は、少なくとも1つの追加の活性剤と併用投与される。他の例では、N/OFQペプチドを含む組成物は、少なくとも2つの追加の活性剤と併用投与される。他の例では、組成物は、ジクロフェナク、オキシトシンまたはオキシトシンアンタゴニストと併用投与されるN/OFQペプチドを含む。
【0087】
鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)または鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)を含む組成物の治療効果を判定するために、鎮痛性化合物の投与後に疼痛の減少または軽減を評価するために、「視覚類似体スケール」(VAS)を用いることができる。VASは、各末端に「無痛」および「最悪の疼痛」などの単語アンカーを有する、10cmの水平線または垂直線である。対象または患者は、疼痛強度を表すために線上にマークを付けるように依頼される。このマークは、「無痛」アンカーからのセンチメートルまたはミリメートルでの距離に変換されて、0〜10cmまたは0〜100mmの範囲にある疼痛スコアを与える。VASは、0が「無痛」に等しく、10が「考えられる最悪の疼痛」に等しい11ポイントの数値疼痛評価スケールに類似し、代わりに用いることができる。VASを用いて、約30%以上の変化、例えば9から7、または5から3.5への変化がある場合、鎮痛性化合物、例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQペプチドは、特に関連する臨床鎮痛効果を有するとみなされる。
【0088】
送達系
鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)または鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)を含む医薬組成物は、それらに限定されないが急速融解錠剤、液体充填カプセル、液体噴霧剤またはロゼンジを含むいくつかの異なる製剤または剤形で頬側または舌下表面に一定量投薬されてよい。或いは、医薬組成物は、例えばゲル、フィルム、軟膏、ドロッパーまたは生体接着性の細片若しくはパッチによる口への組成物の直接設置によって、口腔粘膜に送達されてもよい。
【0089】
本発明の一部の態様では、方法は、口腔の頬側および/または舌下粘膜表面への投与が送達デバイスによる、個体に医薬組成物を投与することを含む。送達デバイスには、単位用量容器、ポンプ噴霧器、ドロッパー、スクイーズボトル、エアレスの防腐剤無添加噴霧器、ネブライザー、薬用量吸入器および加圧式薬用量吸入器を含めることができるが、これらに限定されない。口腔への正確な有効投薬量を投与するために(下記のように)、送達デバイスにメーターを付けることができる。一部の態様では、正確な有効投薬量は、口腔内に直接置かれるカプセル、錠剤、ロゼンジまたは生体接着性のパッチに含有される。
【0090】
鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)または鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)を含む医薬組成物は、液体滴剤、ゲル、フィルム、軟膏または生体接着性のパッチ若しくは細片などのいくつかの異なる製剤で、結膜または目周囲の他の粘膜組織に一定量投薬することができる。したがって、本発明の一部の態様では、方法は、投与が結膜または目周囲の他の粘膜組織に向けられる、個体に医薬組成物を投与することを含む。一部の態様では、正確な有効投薬量は、目周囲の粘膜組織に直接置かれる滴剤、ゲル、フィルム、軟膏または生体接着性のパッチに含有される。
【0091】
鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)または鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)を含む医薬組成物は、液体、噴霧剤、ゲル、フィルム、軟膏または生体接着性のパッチ若しくは細片などのいくつかの異なる製剤で、皮膚または頭皮に投与することができる。したがって、本発明の一部の態様では、方法は、投与が顔または頭皮の皮膚、例えば前頭皮に向けられる、個体に医薬組成物を投与することを含む。一部の態様では、正確な有効投薬量は、皮膚に直接置かれる滴剤、ゲル、フィルム、軟膏または生体接着性の経皮パッチに含有される。一部の態様では、医薬組成物は注射によって皮膚に皮内投与されてもよい。他の態様では、組成物は注射によって皮膚に皮下投与されてもよい。
【0092】
鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)または鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)を含む医薬組成物は、粉末若しくは液状の鼻内噴霧剤、懸濁液、点鼻剤、ゲル、フィルムまたは軟膏として、チューブ若しくはカテーテルを通して、注射器、パックテール(packtail)、綿球(小さく平らな吸収性パッド)、鼻タンポンまたは粘膜下注入によって、鼻腔内に一定量投薬することができる。鼻への薬物送達は、それらに限定されないが、単位用量容器、ポンプ噴霧器、ドロッパー、スクイーズボトル、エアレスの防腐剤無添加噴霧器、ネブライザー(液体薬剤をエアゾール粒子形に変化させるのに用いられるデバイス)、メーター付薬用量吸入器および加圧式メーター付薬用量吸入器を含むデバイスを用いて実施することができる。送達デバイスは、薬剤を汚染および化学的分解から保護することが重要である。デバイスは、溶脱または吸収を避けることに加え、保管のために適当な環境も提供するべきである。各薬剤は、どの経鼻薬物送達系が最も適当であるかを判定するために評価する必要がある。経鼻薬物送達系は当技術分野で公知であり、いくつかは市販されている。
【0093】
鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)または鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)を含む医薬組成物は、加圧パックまたはネブライザーおよびそれらに限定されないがジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、炭化水素、圧搾空気、窒素または二酸化炭素を含む好適な推進剤を用いるエアゾール噴霧剤の形で都合よく送達することができる。エアゾール系は、推進剤が医薬組成物に対して不活性であることを必要とする。加圧式エアゾールの場合、投薬量単位は、正確に計量した量を送達するためのバルブを備えることにより制御することができる。
【0094】
鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)または鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)を含む医薬組成物を粉末として鼻腔に送達する手段は、経鼻吹入デバイス(気体、粉末または蒸気を体腔に送るデバイス)または加圧式エアゾール容器で送達されるミクロスフェアなどの形であってよい。吹入器は、乾燥粉末またはミクロスフェアの微細に分割された雲状物を生じる。吹入器は、実質的に計量された量の医薬組成物の投与を保証する手段を備えることができる。粉末またはミクロスフェアは、乾燥した、エアー注入可能な形で投与されるべきである。粉末またはミクロスフェアは、粉末またはミクロスフェアのためのボトルまたは容器を備えた吹入器で直接用いられてもよい。或いは、粉末またはミクロスフェアは、ゼラチンカプセルなどのカプセル、または経鼻投与のために適合させた他の単一用量デバイスに充填されてもよい。吹入器は、カプセルを開くための針、または粉末状組成物の噴流を鼻腔に送達することができる穴を設けるための他のデバイスなどの手段を有することができる。
【0095】
経鼻送達デバイスは、鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)または鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)を含む医薬組成物を一定量投薬するように構築または改変することができ、そこでは、鎮痛性化合物または組成物は鼻腔の下方の3分の2へ主に送達される。例えば、ネブライザーまたは吹入器などの送達デバイスからの分散角度は、医薬組成物が鼻腔の下方の3分の2に機械的に向けられ、鼻腔の上方領域から離れるように設定されてもよい。或いは、鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)または鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)を含む医薬組成物は、例えばゲル、軟膏、鼻タンポン、ドロッパーまたは生体接着性細片で、鼻腔内への組成物の直接設置によって鼻腔の下方の3分の2へ送達されてもよい。或いは、鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)または鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)を含む医薬組成物は、鼻の上方領域へ、または上方領域および下方領域の両方へ送達されてもよい。
【0096】
したがって本発明の一部の態様では、本方法は、鼻腔への投与が経鼻送達デバイスによる、鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)または鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)を含む医薬組成物を個体に投与することを含む。経鼻送達デバイスには、単位用量容器、ポンプ噴霧器、ドロッパー、スクイーズボトル、エアレスの防腐剤無添加噴霧器、ネブライザー、薬用量吸入器、加圧式薬用量吸入器、吹入器および二方向性デバイスを含めることができるが、これらに限定されない。鼻腔への正確な有効投薬量を投与するために(下記のように)、経鼻送達デバイスにメーターを付けることができる。経鼻送達デバイスは、単一の単位送達または複数の単位送達のためであってよい。一部の実施形態では、医薬組成物の分散角度が鼻腔の下方の3分の2に機械的に向けられ、それによって嗅部への送達を最小にする経鼻送達デバイスを構築することができる。一部の実施形態では、医薬組成物の分散角度が鼻の上方領域に機械的に向けられる経鼻送達デバイスを構築することができる。一部の実施形態では、医薬組成物の分散角度が鼻の下方および上方領域の両方に機械的に向けられる経鼻送達デバイスを構築することができる。一部の実施形態では、経鼻送達デバイスは呼気だけによって作動させることができ、このように、吸入によって誘発され、潜在的に望ましくない医薬組成物の分布を制限する。一部の実施形態では、医薬組成物はゲル、フィルム、クリーム、軟膏であり、鼻タンポンまたは生体接着性細片に含浸され、それにより、組成物は鼻腔の下方の3分の2、上方領域または両方に置かれる。一部の実施形態では、本方法は、鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)または鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)を含む医薬組成物の鼻腔内投与を含み、そこで、投与は、剤を鼻腔の下方の3分の2へ機械的に向ける分散角度の経鼻送達デバイスを用い、鎮痛性化合物は、血管収縮剤の後、鼻の上方領域、または上方および下方の両領域に投与される。一部の実施形態では、本方法は、鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)または鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)を含む医薬組成物の鼻腔内投与を含み、そこで、投与は剤を鼻腔の下方の3分の2、上方領域または下方および上方の両領域に機械的に向ける分散角度の経鼻送達デバイスを用い、鎮痛性化合物は血管収縮剤と共投与される。
【0097】
キット
本明細書に記載される方法のいずれかを実施するためのキットが本明細書で提供される。疼痛の治療および/または予防で使用するためのキットが提供される。一部の実施形態では、キットは、適するパッケージに鎮痛性化合物(例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQ)を含む。一部の実施形態では、キットは適するパッケージにN/OFQペプチドを含む。一部の実施形態では、キットは少なくとも1つのさらなる鎮痛剤をさらに含む。キットは、血管収縮剤、少なくとも1つのプロテアーゼインヒビターおよび/または少なくとも1つの吸収強化剤をさらに含むことができる。一部のキットは、それらに限定されないが、鼻腔内投与のためのデバイスを含む送達デバイスをさらに含むことができる。他のキットは、本明細書に記載の方法のいずれか1つを実施するための情報を使用者および/または医療提供者に提供する説明書をさらに含むことができる。
【0098】
単一の構成要素、例えば鎮痛性化合物、例えば非オピオイド鎮痛ペプチド、NOPアゴニストまたはN/OFQペプチドを含むキットは、一般に構成要素が容器(例えばバイアル、アンプルまたは他の適する貯蔵容器)に封入される。同様に、複数の構成要素を含むキットも、試薬を容器に有することができる(別々に、または混合物で)。
【0099】
本発明を実施するためのキットの使用に関する説明書は、本発明の方法を実施するためにキットの内容がどのように用いられるかを一般に記載する。本発明のキットで供給される説明書は、一般的にラベルまたは添付文書に書かれた説明書(例えばキットに含まれる紙のシート)であるが、機械読取式説明書(例えば磁気または光学式記憶ディスクに書き込まれた説明書)も許容される。
【実施例】
【0100】
本発明は、例として提供され、制限するものではない以下の実施例を参照することによってさらによく理解することができる。
【0101】
(実施例1)
ラットモデルで鎮痛性化合物の活性を試験する1つの方法は、一般的に耳、顔または後ろ足を用いることによる皮膚の有害な加熱に対する逃避の潜伏期(時間)の、処理によって誘発される変化による。したがって、耳、顔または後ろ足への干渉性または非干渉性(非レーザー)放射熱の負荷は、急速な逃避運動を導き出す。逃避の潜伏時間は鎮痛薬治療に感受性であることが実証され、したがって鎮痛薬は逃避までの潜伏時間を延長させる。三叉神経関連の疼痛を低減するための三叉神経への鎮痛剤の経粘膜または経皮投与は、領域性および/または広域性の鎮痛効果について試験することができる。ラットの耳の吻の外部部分は、それ自体三叉神経の分岐である下顎神経の分岐によって神経が分布している。したがって治療の後、逃避時間までの潜伏時間の増加は、領域性痛覚消失を示す。同様に、後ろ足の逃避時間までの潜伏時間の変化は、広域性の鎮痛効果を示す。
【0102】
ラットを12/12時間の明/暗環境に収容し、食物および水を無制限に与える。不快を最小にし、用いる動物数を減らすように努力する。ラットは、ウレタンで軽く麻酔をかけ、体温を37℃に維持するために保温パッドの上に最小限の制約で置く。レーザー光線は、光ファイバーケーブルを通して両耳の吻の外部部分に誘導される。レーザー照射への特徴的な応答は、レーザーによる熱的刺激後の1〜3秒間の、刺激された耳のリトラクションまたは逃避である。レーザー刺激は、組織傷害を予防するために、刺激された耳の応答の後速やかに、または30秒の最大応答(カットオフ)潜伏時間の後に終了される。
【0103】
耳への潜伏逃避応答のベースライン試験のために、三叉神経が分布している各耳の部分へ3つのパルスを加える。各パルスの後に刺激部位を変更し、同じ耳の2つの刺激の間に少なくとも2分間をあける。後ろ足への潜伏逃避応答のベースライン試験のために、後ろ足へ3つのパルスを加える。各パルスの後に刺激部位を変更し、同じ後ろ足の2つの刺激の間に少なくとも2分間をあける。試験セッションは、オフラインの応答解析のためにビデオ録画される。オフライン分析は、レーザー刺激への逃避応答の潜伏時間を判定する、治療群に対して盲検化されている研究者によって実施される。
【0104】
ベースライン潜伏時間を測定した後に、鎮痛剤を鼻腔内に投与する。これは、ピペットによる鼻への5つの等量の10μlの適用を含み、20分間で合計50μlの容量になる。潜伏応答に及ぼす剤の異なる用量(例えば5mg/kgのN/OFQ)の効果が検査される。局所鎮痛効果を評価するために、剤投与の後の様々な時点で耳の潜伏応答を試験する。全身性鎮痛効果を評価するために、剤投与の後の様々な時点で後ろ足の潜伏応答を試験する。
【0105】
(実施例2)
鼻腔内ノシセプチンの熱的侵害受容に対する効果
熱的侵害受容齧歯動物モデルが、鼻腔内ノシセプチンの1)潜伏逃避、2)効果の持続期間との用量反応相関を判定するために、および3)i.n.ノシセプチンの鎮痛効果が中枢神経によって媒介されるという仮説の証拠または反証を提供するために用いられた。
【0106】
I.装置および材料
1テストランにつき9匹の雄SDラット(200〜300g)、生理食塩水中のノシセプチン(i.n.濃度:0.5mg/ml、5.0mg/ml、50mg/ml)、i.v.ノシセプチン(50mg/ml)、モルヒネ(1.25mg/ml)、生理食塩水、ウレタン、Aδ/C痛覚計、タイマー。
【0107】
II.参考文献文書
Yeomans, D. C. Pirec, V., and Proudfit, H. K. “Nociceptive responses to high or low rates of noxious cutaneous heating are mediated by different nociceptors in the rat: behavioral evidence” Pain (1996) 68:133−140.
Sherman S. E, Loomis C. W. “Morphine Insensitive Allodynia Is Produced By Intrathecal Strychnine in the Lightly Anesthetized Rat” Pain (1994) 56:17−29.
Thorne R.G., Pronk G.I, Padmanabhan V, Frey W.H. 2nd. “Delivery of Insulin−Like Growth Factor−I to the Rat Brain and Spinal Cord along Olfactory and Trigeminal Pathways following Intranasal Administration” Neuroscience (2004) 127:481−96.。
【0108】
III.試験品
生理食塩水中のノシセプチン、モルヒネおよび生理食塩水。
【0109】
IV.試験マトリックス/流れ図
(A)1テストランにつき6匹のラットの群をウレタンで軽く麻酔した(1.0g/kg、i.p.、刺激の非存在下で最小限の活性に滴定された)(ShermanおよびLoomisら、1996年)。均一な熱分布を可能にするために、左右の頬および右の後ろ足を墨で黒くした。
【0110】
(B)各200〜300gの雄のSDラットは、Aδ対C線維侵害受容の選択的試験のために、左右の頬および右の後ろ足を様々な熱強度に曝露させた(Yeomansら、1996年)。
【0111】
C線維試験については、9〜13秒の逃避潜伏時間が観察されるまで、焦点を合わせた映写用電球の供給電圧を変化させることによって熱強度を調整した。加えた強度(ボルトで測定される)を各動物で記した。組織傷害の可能性を低減するために、20秒のカットオフ潜伏時間が用いられ、その後には刺激が終了された。55ボルトの供給電圧まで応答しなかったラットは、試験から除外された。
【0112】
Aδ線維試験については、2秒から3秒の間の潜伏時間で逃避が起こるまで、熱強度を調整した。加えた強度(ボルトで測定される)を各動物で記した。潜在的な組織傷害を低減するために、6秒のカットオフ照射時間を用いた。85ボルトの電圧まで応答しなかったラットは、試験から除外された。
【0113】
(C)ラットは、以下の1つを投与された:
・48μl鼻腔内(Frey法、下を参照;Thorneら、2004年)生理食塩水またはノシセプチン(0.2、1.0および5.0mg/kg)
・50μl i.v.生理食塩水またはノシセプチン(5.0mg/kg)
・50μl i.m.生理食塩水またはモルヒネ(0.25mg/kg)
実験者は、与えられた物質の性質に関して盲検化された。
【0114】
(D)逃避潜伏時間は、左右の頬の放射熱刺激に対して測定され、その後、各後ろ足の応答潜伏時間の類似の測定が続いた。各動物は、ベースライン試験で確立されたその特異的な放射振幅(ボルト)を用いて試験された。測定は、投与の直後、ならびに投与から15、30、45、60、90、120、150および180分後に行われた。
【0115】
(E)ラットは、CO吸入によって安楽死させた。
【0116】
Frey法:
ラットを背臥位に置き、パッドを頸部背側の下に挿入して、頸部の上部表面が常に水平に保たれる支持面の方へ頭部を後ろに伸長させる。ペプチドを含有する6(6)μlの液体を、滴剤として鼻腔の両側に交互に(同じ鼻孔への投与と投与の間に4分間の間隔があく)小さなピペットで2分間おきに鼻腔内投与する。各鼻孔は、ペプチドを含有する6μlの液体を4用量分投与され、合計合わせて48μlの量になる。
【0117】
滴剤が上で記載されるものよりも速く麻酔下ラットに投与される場合、2つの問題点がありそうである:先ず、滴剤が完全に吸収される時間がなく、鼻いん頭を通して肺に吸引されることになるので、ラットは呼吸窮迫を有するかもしれない;第二に、それまでに送達された液体が鼻粘膜を既に覆っているという事実のために、薬物送達がより少ない。
【0118】
この実験では、ラットはウレタンで麻酔される。
【0119】
図1および3は、ラットのAδ疼痛閾値試験で、静脈内ノシセプチン、モルヒネの全身性投与、または鼻腔内生理食塩水ビヒクルと比較して、ノシセプチンの経鼻適用の用量依存的な鎮痛効力を実証する。図1のY軸は、Aδ線維侵害受容器−鋭痛を規定する疼痛系構成要素−を選択的に活性化する速度での頬の有害な加熱に対する顔(頬)の逃避までの潜伏時間を示す。図3のY軸は、Aδ線維侵害受容器を選択的に活性化する速度での後ろ足の有害な加熱に対する足の逃避までの潜伏時間を示す。X軸は、投与後どのくらい長く鎮痛効果が薬剤適用の後持続するかを示す。
【0120】
図2および4は、ラットのC線維疼痛閾値試験で、静脈内ノシセプチン、モルヒネの全身性投与、または鼻腔内生理食塩水ビヒクルと比較して、ノシセプチンの経鼻適用の用量依存的な鎮痛効力を実証する。図2のY軸は、C線維侵害受容器−灼熱痛を規定する疼痛系構成要素−を選択的に活性化する速度での頬の有害な加熱に対する顔の逃避までの潜伏時間を示す。図4のY軸は、C線維侵害受容器−灼熱痛を規定する疼痛系構成要素−を選択的に活性化する速度での足の有害な加熱に対する足の逃避までの潜伏時間を示す。X軸は、投与後どのくらい長く鎮痛効果が薬剤適用の後持続するかを示す。
【0121】
顔および足の両方の実験で、Aδ線維およびC線維侵害受容器の熱活性化に対する行動反応で、明らかな用量依存的な効果が鼻腔内ノシセプチン(N/OFQ)に関して示された。顔および足の両方の実験で、鼻腔内生理食塩水および静脈内ノシセプチン(N/OFQ)は、Aδ線維およびC線維侵害受容器の熱活性化に対する行動反応を実証しなかった。
【0122】
(実施例3)
熱的侵害受容の鼻腔内ノシセプチン誘発低減に及ぼすノシセプチンアンタゴニストの効果
この実験は、熱的侵害受容齧歯動物モデルで、ノシセプチン誘発痛覚消失の結合部位を検証することであった。
【0123】
I.装置および材料
1群につき9匹の雄SDラット(200〜300g)、生理食塩水中のノシセプチン(50mg/ml)、ノシセプチンアンタゴニスト(SB−612111{(−)−シス−1−メチル−7−[[4−(2,6−ジクロロフェニル)ピペリジン−1−イル]メチル]−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン−5−オール}、100mg/ml)、生理食塩水、ウレタン、Aδ/C痛覚計、タイマー。
【0124】
II.参考文献文書
実施例2の場合と同じ参考文献、および
Same references as in Example 2 and
Chiou LC, Liao YY, Fan PC, Kuo PH, Wang CH, Riemer C, Prinssen EP. “Nociceptin/orphanin FQ peptide receptors: pharmacology and clinical implications” Curr. Drug Targets (2007) 8(1):117−35.
Spagnolo B, Carra G, Fantin M, Fischetti C, Hebbes C, McDonald J, Barnes TA, Rizzi A, Trapella C, Fanton G, Morari M, Lambert DG, Regoli D, Calo G. “Pharmacological Characterization of the Nociceptin/Orphanin FQ Receptor Antagonist SB−612111 [(−)−cis−1−Methyl−7−[[4−2,6−dichlorophenyl)piperidin−1−yl]methyl]−6,7,8,9−tetrahydro−5H−benzocyclohepten−5−ol]: In Vitro Studies” JPET (2007) 321:961〜967。
【0125】
III.試験品
生理食塩水中のノシセプチン、モルヒネ、生理食塩水およびノシセプチンアンタゴニスト(SB−612111)。
【0126】
IV.試験マトリックス/流れ図
(A)1テストランにつき6匹のラットの群をウレタンで軽く麻酔した(1.0g/kg、i.p.、刺激の非存在下で最小限の活性に滴定された)(ShermanおよびLoomisら、1996年)。均一な熱分布を可能にするために、左右の頬および右の後ろ足を墨で黒くした。
【0127】
(B)各200〜300gの雄のSDラットは、Aδ対C線維侵害受容の選択的試験のために、左右の頬および右の後ろ足を様々な熱強度に曝露させた(Yeomansら、1996年)。
【0128】
・C線維試験については、9〜13秒の逃避潜伏時間が観察されるまで、焦点を合わせた映写用電球の供給電圧を変化させることによって熱強度を調整した。加えた強度(ボルトで測定される)を各動物で記した。組織傷害の可能性を低減するために、20秒のカットオフ潜伏時間が用いられ、その後には刺激が終了された。55ボルトの供給電圧まで応答しなかったラットは、試験から除外された。
【0129】
・Aδ線維試験については、2秒から3秒の間の潜伏時間で逃避が起こるまで、熱強度を調整した。加えた強度(ボルトで測定される)を各動物で記した。潜在的な組織傷害を低減するために、6秒のカットオフ照射時間を用いた。85ボルトの電圧まで応答しなかったラットは、試験から除外された。
【0130】
(C)ラットは、以下の1つを投与された:
・左右の頬および右の後ろ足に50μlのノシセプチンアンタゴニストの皮下注射(SB−612111、10.0mg/kg)。
【0131】
・50μlの生理食塩水の皮下注射
実験者は、与えられた物質の性質に関して盲検化された。
【0132】
(D)45分間の待機後、ラットは48μlの鼻腔内ノシセプチン(50mg/ml)を投与された(Frey法;Thorneら、2004年)。
【0133】
(E)逃避潜伏時間は、左右の頬の放射熱刺激に対して測定され、その後、各後ろ足の応答潜伏時間の類似の測定が続いた。各動物は、ベースライン試験で確立されたその特異的な放射振幅(ボルト)を用いて試験された。測定は、投与の直後、ならびに投与から15、30、45、60、90、120、150および180分後に行われた。
【0134】
(F)ラットは、CO吸入によって安楽死させた。
【0135】
図5および7は、Aδ疼痛閾値試験で、熱的侵害受容の鼻腔内ノシセプチン誘発低減に及ぼすノシセプチンアンタゴニストSB−612111の効果を実証する。ノシセプチンの経鼻適用の効力は、皮下生理食塩水ビヒクルで前処理されたラットと比較して、皮下ノシセプチンアンタゴニストで前処理されたラットで測定された。図5のY軸は、Aδ線維侵害受容器−鋭痛を規定する疼痛系構成要素−を選択的に活性化する速度での頬の有害な加熱に対する頬の逃避までの潜伏時間を示す。図7のY軸は、Aδ線維侵害受容器を選択的に活性化する速度での後ろ足の有害な加熱に対する後ろ足の逃避までの潜伏時間を示す。X軸は、投与後どのくらい長く鎮痛効果が薬剤適用の後持続するかを示す。
【0136】
図6および8は、C線維疼痛閾値試験で、熱的侵害受容の鼻腔内ノシセプチン誘発低減に及ぼすノシセプチンアンタゴニストSB−612111の効果を実証する。ノシセプチンの経鼻適用の効力は、皮下生理食塩水ビヒクルで前処理されたラットと比較して、皮下ノシセプチンアンタゴニストで前処理されたラットで測定された。図6のY軸は、C線維侵害受容器−灼熱痛を規定する疼痛系構成要素−を選択的に活性化する速度での頬の有害な加熱に対する頬の逃避までの潜伏時間を示す。図8のY軸は、C線維侵害受容器を選択的に活性化する速度での後ろ足の有害な加熱に対する後ろ足の逃避までの潜伏時間を示す。X軸は、投与後どのくらい長く鎮痛効果が薬剤適用の後持続するかを示す。
【0137】
ノシセプチンアンタゴニストによるノシセプチンの鎮痛活性の見かけの阻止は、ノシセプチンによって誘発される痛覚消失がNOP受容体への結合によることを示唆する。
【0138】
これらの実験からのデータは、以下のように分析することができる:逃避潜伏時間は、所与の群の中の動物全体で頬および足の応答について平均される。生理食塩水群とアンタゴニスト群との間でAδ線維またはC線維によって媒介される頬および足の逃避応答を比較するために、反復測定のための別々のANOVAが用いられる。
【0139】
(実施例4)
顔の緊張性疼痛の齧歯動物モデルでの鼻腔内N/OFQの抗侵害受容活性
推定上のおよび公知の鎮痛治療の緊張性疼痛効力を評価するために、足ホルマリンモデルが広く使われている。鼻腔内N/OFQの効果を評価し、鼻腔内オキシトシンならびに2つのベンチマーク、スマトリプタン(i.p.)およびモルヒネ(i.n.)のそれと比較するために、我々はこのモデルを顔に応用した。この試験の結果は、0.1mg/kgの鼻腔内オキシトシン(47.8%)または42mg/kgのスマトリプタン(43.8%)によってもたらされるものと同等の顔拭い動作の著しい(47.2%)阻害を0.1mg/kgのN/OFQがもたらすことを実証した。非常により高い用量であるが、3mg/kgのモルヒネはより大きな最大阻害(80.2%)をもたらした(図9)。したがって、N/OFQの鼻腔内適用は、顔の緊張性疼痛の齧歯動物モデルで確固とした痛覚消失をもたらした。重要なことに、N/OFQを投与されたラットで鎮静または他の明らかな副作用は観察されなかった。
【0140】
(実施例5)
切開性疼痛モデルでのN/OFQの効力
術後の疼痛でのN/OFQの有用性を実証するために、我々はラット足切開モデルで鼻腔内N/OFQの抗異痛性の活性を評価した(Brennan, T.J.、Vandermeulen, E.P.およびGebhart, G.F. Pain、64巻、493〜501頁(1996年))。ラットが後ろ足の足底表面に小さな切開を受けてから24時間後に、N/OFQ(5.0mg/kg)を鼻腔内に投与した。鼻腔内N/OFQの効果は、静脈内N/OFQのそれらと対比された。
【0141】
ラットを2.5%イソフルランで麻酔にかけ、その後、右後ろ足の足底表面をプロボディン−ヨウ素外科プレップで処置した。有毛/無毛皮膚通過部の近くの、足底表面の皮膚および下にある筋膜を通して5mmの切開を設けた。その後、5−0絹糸の2つの簡易結節縫合を用いて傷を閉じた。傷領域を次に3回の抗生物質の軟膏で処置し、動物は彼らのホームケージに戻された(別々に収容した)。物理的刺激への逃避閾値は、標準のvon Freyフィラメント(TouchTest;Stoelting Co.、Wood Dale、IL、USA)を用いて、手術の前およびその24時間後に右後ろ足で測定した。
【0142】
試験のために、ラットをメッシュ床のエンクロージャ(10×10cm)に隔離し、15分間慣らさせた。50%逃避閾値を判定するために、試験はディクソンの上げ下げ法(Dixon, W.J. Staircase bioassay: the up−and−down method。Neurosci Biobehav Rev、15巻、47〜50頁(1991年))を使用した(Chaplan, S.R.、Bach, F.W.、Pogrel, J.W.、Chung, J.M.およびYaksh, T.L. Quantitative assessment of tactile allodynia in the rat paw。J Neurosci Methods、53巻、55〜63頁(1994年))。全てのラットで、試験は4.31フィラメント(2.0g)で始まった。右後ろ足の足底表面は、切開部をvon Freyフィラメントで刺激し、逃避があったかどうかによって、次に最も低い(逃避)または最も高い(逃避なし)フィラメントを試験した。最初の逃避の後4つの応答がスコアリングされる(種類に関係なく)まで、試験はこのように続いた。50%閾値は、応答パターンおよび最後の試験フィラメントから計算された。用いたvon Freyモノフィラメント(3.61〜5.18)は、屈曲力(0.4〜15g)および直径(178〜483μm)の範囲をカバーし、3.92〜147mNの範囲の負荷力を与える。
【0143】
効果は最大可能効果百分率(%MPE)でも表され、それは以下の通り50%閾値(治療応答)から計算される:
%MPE=[(治療応答−切開後のベースライン)/(上限応答−切開後のベースライン)]×100%;
そこで、上限応答は15.0である。用量応答グラフは、図10に示す。
【0144】
熱的刺激試験の結果に類似して、5.0mg/kgのN/OFQの鼻腔内適用は強い抗異痛効果をもたらし(図11)、開始がわずかに遅れた(最大効力は60分後に到達された)。術後の異痛のそのような逆転は、N/OFQの同用量の静脈内適用の後には見られなかった(図12)。全身ではなく鼻腔内N/OFQが術後の疼痛場面で有用であるという強い証拠をこれらの結果は提供する。鼻腔内に適用されたN/OFQの効果が直接のCNS取り込みを通して媒介されることを、この二分法は再び示唆する。
【0145】
(実施例6)
頬切開疼痛モデルでのN/OFQの効力
図13は、術後のN/OFQ(5mg/kg、i.n.)の頬切開から生じる静的点状異痛に及ぼす効果を表す。剃った頬の単一の5mm経皮切開(下にある筋肉を含む)の24時間後、N/OFQを5.0mg/kgで鼻腔内投与した。2.5%イソフルラン麻酔の下で手術を実施し、5−0絹糸の簡易結節縫合を用いて切開を閉じた。投与の後30分ごとに、ディクソンの上げ下げ技法を使用してvon Freyフィラメント(TouchTest;Stoelting Co.、Wood Dale、IL、USA)を用いて50%閾値逃避を判定した。このモデルは、Broome拘束器にラットを置き、より軽い試験フィラメントを使用することによって、足底後ろ足切開モデル(Brennan, T.J.、Vandermeulen, E.P.およびGebhart, G.F.(1996年)Pain、64巻;493〜501頁)から応用した。頬試験のために用いられたvon Freyモノフィラメントは、屈曲力(0.008〜1.4g)および直径(64〜254μm)の範囲をカバーし、0.078〜13.72mNの範囲の負荷力を与える。
【0146】
効果は最大可能効果百分率(%MPE)でも表され、それは以下の通り50%閾値(治療応答)から計算される:
%MPE=[(治療応答−切開後のベースライン)/(上限応答−切開後のベースライン)]×100%;
そこで、上限応答は1.5である。用量応答グラフは、図14に示す。
【0147】
(実施例7)
神経部分損傷モデル
N/OFQの抗異痛活性は、ラットでの標準の神経損傷モデル、神経部分損傷モデル(Decosterd, I.およびWoolf, C.J. Pain、87巻:149〜58頁(2000年))を用いて評価された。片脚の座骨神経の3つの分岐のうちの2つの外科横切は、同側後ろ足の足底表面の過敏性をもたらす。モデルは、神経障害性疼痛状態の特性の多く、例えば疼痛への見かけの過敏性を再現するが、脊髄神経損傷と同様に、緊張性の継続する苦痛の徴候はない。
【0148】
方法:
手術は、イソフルラン(3.5%)麻酔下で行われた。平坦な深い麻酔が達成されたならば、腿の外側面の皮膚を剃り、プロビディン−ヨウ素溶液でプレップした。皮膚を切開し、大腿二頭筋を直接通して切断面を形成し、座骨神経およびその3つの末端の分岐、腓腹、総腓骨および脛骨神経を曝露させた。脛骨および総腓骨神経を次に切断して5.0絹糸で結紮し(軸索切断の近位)、腓腹神経を完全に残したが、遠位神経根の2〜4mmを除去した。完全な腓腹神経とのいかなる接触、またはその伸張を避けるために注意した。筋肉および皮膚を次に2層に閉じ、傷部位は抗生物質軟膏で処置した。手術の後、術後の鎮痛薬として、動物は0.05mg/kgブプレノルフィンIMを投与された。
【0149】
神経損傷の侵害受容感受性に及ぼす効果を評価するために、損傷と同側の後ろ足の底に適用されたvon Freyモノフィラメント(TouchTest;Stoelting Co.、Wood Dale、IL、USA)を用いて物理的異痛を測定し、損傷の前後、および鼻腔内N/OFQの前後に評価した。試験は、50%逃避閾値を判定するために、ディクソンの上げ下げ法を使用した。試験のために用いられたvon Freyモノフィラメントは、屈曲力(0.008〜15g)および直径(64〜483μm)の範囲をカバーし、0.078〜147mNの範囲の負荷力を与える。
【0150】
結果:
神経損傷は、手術から6日以内に、損傷と同側の足に劇的な異痛を起こした。N/OFQ(5.0mg/kg)は、神経損傷の21日後に鼻腔内に投与され、3時間の試験セッション全体にわたって、同側足で強い抗異痛効果をもたらした(図13)。翌日、化合物の投与から24時間後、これらの効果はもはや見られなかった。小標本サイズにもかかわらず(ビヒクル:n=4およびN/OFQ:n=6)、効力の明らかな傾向がなおあった。
【0151】
鼻腔内N/OFQが一次疼痛状態に加えて神経障害性疼痛の状態の治療で有用であるという強い証拠をこれらの結果は提供する。
【0152】
(実施例8)
胃通過時間に及ぼすN/OFQの効果
疼痛を制御するためにモルヒネなどのアヘン鎮痛薬を与えることに関連する重大な合併症の1つは、便秘である。ラットでは、この便秘は腸通過時間の増加として観察される。強いアヘン剤のそれに類似した鎮痛効力を有する鼻腔内N/OFQも便秘を引き起こすかどうか判定するために、胃通過時間に及ぼす鼻腔内N/OFQの効果を評価した。N/OFQ(5.0mg/kg、i.n.)で前処理され、炭食(12.5%アラビアゴム懸濁液に12.5%活性炭(Tavani, A.、Petrillo, P.、La Regina, A.およびSbacchi, M. Role of peripheral mu, delta and kappa opioid receptors in opioid−induced inhibition of gastrointestinal transit in rats. J Pharmacol Exp Ther、254巻、91〜97頁(1990年))を与えられたラットで、腸通過時間(ITT)を評価した。効果は、腹腔内(3.0mg/kg)または鼻腔内(4.0mg/kg)モルヒネの効果に対して対比された。簡潔には、ラットに一晩標準食物および水を自由に与え、その後翌朝に試験化合物を与えた。20〜30分後に、ラットに炭懸濁液(2mL)の経口栄養を与え、さらなる30分後に二酸化炭素吸入によって安楽死させた。胃および小腸を直ちに取り出し、小腸の全長および炭が移動した距離の両方を記録した。炭距離を小腸全長で割って100%を掛けた比として、通過百分率を計算した。試験の横断比較のために、化合物の効果は、ビヒクル処置群で観察された通過の百分率としても表された(100%−((平均ビヒクル通過%−薬剤通過%)/平均ビヒクル通過%))。モルヒネは投与経路に関係なく通過のかなりの減速(通過百分率の低下)をもたらしたが、そのような効果はN/OFQで前処理されたラットでは観察されなかった(図14)。モルヒネに匹敵する確固とした鎮痛効果をもたらすにもかかわらず、鼻腔内N/OFQは臨床場面で便秘を引き起こす可能性が低いという強力な証拠をこれらのデータは提供する。
【0153】
(実施例9)
鼻腔内N/OFQ投与の後の予備的行動評価
臨床上利用できる強い鎮痛薬は、時に著しい行動上の毒性作用(すなわち、鎮静)を有することが公知であるので、N/OFQが同じように重荷を背負っているのかどうかについて判定することが重要である。したがって、鼻腔内に投与されたN/OFQのために、予備的な行動上の毒性スクリーニングを開始した。簡潔には、4匹のラットに25mg/kgのN/OFQを鼻腔内投与し、彼らのホームケージ(単一の住み家)に戻し、麻酔から回復させた。最初の1時間は20分おきに、その後は1時間ごとに観察し、いかなる異常所見も記録した。N/OFQ投与から24時間後、いかなる後発性毒性応答についてラットを再び観察した。一般活動を主観的に判定し、以下の行動のいずれかの存在を記録した:緊張性/間代性運動、運動失調、常同症、発声、催涙、唾液分泌、立毛、眼瞼下垂および異常呼吸。さらに、動物の取り扱い、または動物への接近若しくは接触に対するいかなる異常応答も、刺激反応性としてスコアリングした。熱的加熱および切開後モデルで決定された有効用量(5mg/kg)よりも最高5倍高い急性用量に対して、いかなる異常応答も観察されなかった。
【0154】
上記の発明は理解の明快性のために例示および例として多少詳細に記載されたが、本発明から逸脱しない範囲で特定の変更および改変を実施することができることは当業者に明らかになる。したがって、記載および実施例は、本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきでない。
【0155】
本明細書で用いるように、単数形「a」、「an」および「the」は、特に明記しない限り複数形を含む点に留意すべきである。さらに、本明細書で用いるように、用語「含む(comprising)」およびその同じ語源の語はそれらの包括的な意味で用いられる;すなわち、用語「含む(including)」およびその対応する同じ語源の語に等しい。
【0156】
本明細書で引用される全ての特許、特許出願、文書および論文は、その全体が参照により組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
疼痛の治療を必要とする個体にNOPアゴニストの有効用量を頭蓋顔面粘膜投与によって投与する工程を含む、疼痛を治療するための方法。
【請求項2】
前記治療が三叉神経疼痛、体性疼痛、神経障害性疼痛または内臓疼痛の治療を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記治療が急性疼痛または慢性疼痛の治療を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記疼痛が頭蓋顔面疼痛または頭部疼痛である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記頭蓋顔面疼痛または前記頭部疼痛が顎関節障害(TMJ)、片頭痛または三叉神経痛によって引き起こされている、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記頭蓋顔面粘膜投与が鼻腔内投与、頬側投与、舌下投与または結膜投与を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記粘膜投与が鼻腔内投与である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記NOPアゴニストがペプチドNOPアゴニストである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記NOPアゴニストがN/OFQである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記疼痛の治療を必要とする個体に少なくとも1つまたは少なくとも2つの追加の活性剤を投与する工程であって、該追加の活性剤は前記NOPアゴニストの投与の前、投与の後、または投与と同時に投与される、工程をさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記追加の活性剤が、非ペプチドオピオイド、オピオイドおよびオピオイド様ペプチドならびにそれらの類似体、NMDA受容体アンタゴニスト、ナトリウムチャネルブロッカー、カルシウムチャネルブロッカー、アドレナリン作動性アンタゴニスト、GABA作動性アゴニスト、グリシンアゴニスト、コリン作動性アゴニスト、アドレナリン作動性アゴニスト、例えばエピネフリン、抗痙攣薬、Rhoキナーゼインヒビター、PKCインヒビター、p38−MAPキナーゼインヒビター、ATP受容体ブロッカー、エンドセリン受容体ブロッカー、炎症促進性サイトカイン、ケモカイン、インターロイキンおよび腫瘍壊死因子ブロッカー、炎症促進性サイトカイン、三環系抗うつ薬、セロトニン様アンタゴニスト、セロトニン様アゴニスト、NSAIDおよびCOXIB、アセトアミノフェン;鎮痛ペプチド、毒素、TRPチャネルアゴニストおよびアンタゴニスト、カンナビノイド、侵害受容促進ペプチド神経伝達物質受容体CGRP1およびCGRP2のアンタゴニスト、侵害受容促進ペプチド神経伝達物質受容体NK1のアンタゴニスト、侵害受容促進ペプチド神経伝達物質受容体NK2のアンタゴニスト、侵害受容促進ペプチド神経伝達物質受容体Y1−5のアンタゴニスト、侵害受容促進ペプチド神経伝達物質受容体VPAC2、VPAC1およびPAC1のアンタゴニスト、侵害受容促進ペプチド神経伝達物質受容体Gal1−3またはGalR1−3のアンタゴニスト、バソプレシン、コルチコトロピン放出ホルモン(CRH)、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、黄体化ホルモン放出ホルモン(LHRH)、ソマトスタチン成長ホルモン放出抑制ホルモン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、神経膠由来神経栄養因子(GDNF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン−3(NT−3)、膵臓ポリペプチド、ペプチドチロシン−チロシン、グルコーゲン様ペプチド−1(GLP−1)、ペプチドヒスチジンイソロイシン(PHI)、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド(PACAP)、脳ナトリウム排泄増加性ペプチド、コレシストキニン(CCK)、島アミロイドポリペプチド(IAPP)またはアミリン、メラニン凝集ホルモン(MCH)、メラノコルチン(ACTH、α−MSHその他)、神経ペプチドFF(F8Fa)、ニューロテンシン、副甲状腺ホルモン関連タンパク質、カルシトニン、Agouti遺伝子関連タンパク質(AGRP)、コカインおよびアンフェタミン調節転写産物(CART)/ペプチド、5−HT−モジュリン、ヒポクレチン/オレキシン、オキシトシン、ノシスタチン、プロラクチン放出ペプチド、セクレトニューリン、ウロコルチン、ならびにそれらの誘導体および類似体のアゴニストまたはアンタゴニストからなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記NOPアゴニストが医薬組成物として投与される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記医薬組成物が少なくとも1つまたは少なくとも2つの追加の活性剤をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記医薬組成物が、非ペプチドオピオイド、オピオイドおよびオピオイド様ペプチドならびにそれらの類似体、NMDA受容体アンタゴニスト、ナトリウムチャネルブロッカー、カルシウムチャネルブロッカー、アドレナリン作動性アンタゴニスト、GABA作動性アゴニスト、グリシンアゴニスト、コリン作動性アゴニスト、アドレナリン作動性アゴニスト、例えばエピネフリン、抗痙攣薬、Rhoキナーゼインヒビター、PKCインヒビター、p38−MAPキナーゼインヒビター、ATP受容体ブロッカー、エンドセリン受容体ブロッカー、炎症促進性サイトカイン、ケモカイン、インターロイキンおよび腫瘍壊死因子ブロッカー、炎症促進性サイトカイン、三環系抗うつ薬、セロトニン様アンタゴニスト、セロトニン様アゴニスト、NSAIDおよびCOXIB、アセトアミノフェン;鎮痛ペプチド、毒素、TRPチャネルアゴニストおよびアンタゴニスト、カンナビノイド、侵害受容促進ペプチド神経伝達物質受容体CGRP1およびCGRP2のアンタゴニスト、侵害受容促進ペプチド神経伝達物質受容体NK1のアンタゴニスト、侵害受容促進ペプチド神経伝達物質受容体NK2のアンタゴニスト、侵害受容促進ペプチド神経伝達物質受容体Y1−5のアンタゴニスト、侵害受容促進ペプチド神経伝達物質受容体VPAC2、VPAC1およびPAC1のアンタゴニスト、侵害受容促進ペプチド神経伝達物質受容体Gal1−3またはGalR1−3のアンタゴニスト、バソプレシン、コルチコトロピン放出ホルモン(CRH)、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、黄体化ホルモン放出ホルモン(LHRH)、ソマトスタチン成長ホルモン放出抑制ホルモン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、神経膠由来神経栄養因子(GDNF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン−3(NT−3)、膵臓ポリペプチド、ペプチドチロシン−チロシン、グルコーゲン様ペプチド−1(GLP−1)、ペプチドヒスチジンイソロイシン(PHI)、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド(PACAP)、脳ナトリウム排泄増加性ペプチド、コレシストキニン(CCK)、島アミロイドポリペプチド(IAPP)またはアミリン、メラニン凝集ホルモン(MCH)、メラノコルチン(ACTH、α−MSHその他)、神経ペプチドFF(F8Fa)、ニューロテンシン、副甲状腺ホルモン関連タンパク質、カルシトニン、Agouti遺伝子関連タンパク質(AGRP)、コカインおよびアンフェタミン調節転写産物(CART)/ペプチド、5−HT−モジュリン、ヒポクレチン/オレキシン、オキシトシン、ノシスタチン、プロラクチン放出ペプチド、セクレトニューリン、ウロコルチン、ならびにそれらの誘導体および類似体のアゴニストまたはアンタゴニストからなる群より選択される1つまたは複数の追加の活性剤をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記医薬組成物が1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤、アジュバント、希釈剤または安定剤をさらに含む、請求項12〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記医薬組成物が少なくとも1つのプロテアーゼインヒビターおよび/または少なくとも1つの吸収強化剤をさらに含む、請求項12〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記NOPアゴニストがペプチドNOPアゴニストである、請求項12〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記NOPアゴニストがN/OFQである、請求項12〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
片頭痛の頭痛の疼痛の治療または予防を必要とする個体にNOPアゴニストの有効用量を投与する工程を含む、片頭痛の頭痛の疼痛の治療または予防のための方法であって、ここで、該NOPアゴニストは鼻腔内投与によって投与される、方法。
【請求項20】
前記NOPアゴニストがN/OFQである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
投与される前記N/OFQの単位用量が約0.2mg〜約5000mgである、請求項9に記載の方法。
【請求項22】
片頭痛の治療を必要とする個体にN/OFQの有効用量を鼻腔内投与によって投与する工程を含む、片頭痛を治療するための方法。
【請求項23】
前記治療が、吐き気、光恐怖症および音恐怖症からなる群より選択される片頭痛に関連する1つまたは複数の症状を治療することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記片頭痛が前兆のない片頭痛、前兆のある片頭痛、または前兆はあるが頭痛のない片頭痛である、請求項22または請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記投与がVASの疼痛評価の30%以上の低下をもたらす、請求項1〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
疼痛の治療のためのNOPアゴニストおよび説明書を含むキットであって、治療のための該説明書は該NOPアゴニストを頭蓋顔面粘膜経路によって投与するための説明書を含む、キット。
【請求項27】
送達デバイスをさらに含む、請求項26に記載のキット。
【請求項28】
前記NOPアゴニストがN/OFQである、請求項26または請求項27に記載のキット。
【請求項29】
頭蓋顔面粘膜投与による疼痛の治療のための医薬の製造のためのNOPアゴニストの使用。
【請求項30】
前記頭蓋顔面粘膜投与が鼻腔内投与である、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
前記NOPアゴニストがペプチドNOPアゴニストである、請求項29または請求項30に記載の使用。
【請求項32】
前記NOPアゴニストがN/OFQである、請求項29〜31のいずれか一項に記載の使用。
【請求項33】
頭蓋顔面粘膜投与による疼痛の治療で使用するためのNOPアゴニスト。
【請求項34】
鼻腔内投与による疼痛の治療で使用するためのNOPアゴニスト。
【請求項35】
前記NOPアゴニストがペプチドNOPアゴニストである、請求項33または請求項34に記載のNOPアゴニスト。
【請求項36】
前記NOPアゴニストがN/OFQである、請求項33〜35のいずれか一項に記載のNOPアゴニスト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2013−500348(P2013−500348A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522979(P2012−522979)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2010/043430
【国際公開番号】WO2011/017122
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(510227160)トライジェミナ, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】