疼痛を治療するための方法
本発明は、外傷性、代謝性もしくは毒性の末梢神経病変、または例えば神経障害性疼痛、炎症性および侵害受容性疼痛を含む疼痛を予防、軽減、または治療するための方法および組成物を特徴とし、予防、軽減、または治療は、それを必要とする哺乳動物に対して、BH4の発現または活性を低下させる化合物を投与する段階による。本発明によれば、この低下は、GTPシクロヒドロラーゼ(GTPCH)、セピアプテリンレダクターゼ(SPR)、もしくはジヒドロプテリジンレダクターゼ(DFIPR)といった任意のBH4合成酵素の酵素活性を低下させることにより;BH4依存性酵素に対するBH4の補助因子機能と拮抗することにより;または膜結合型受容体に対するBH4の結合を遮断することにより、達成しうる。本発明の化合物は単独で投与してもよく、または第2の治療薬と組み合わせて投与してもよい。本発明はまた、生物試料におけるBH4またはその代謝産物のレベルを測定することによって、哺乳動物における疼痛または末梢神経病変を診断するための方法をも提供する。または、哺乳動物の組織試料における任意のBH4合成酵素のレベルまたは活性を測定することによって、疼痛または末梢神経病変を診断することもできる。さらに、疼痛の治療、予防または軽減のための新規な治療薬の同定のために、BH4またはBH4合成酵素、BH4依存性酵素、およびBH4結合受容体を利用するスクリーニング方法も開示される。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
疼痛の感覚はよくみられる症状であり、これは基礎をなす疾患もしくは損傷を示すこともあれば、または神経系内部における異常な働きの現れであることもある。疼痛はしばしば、治療が探し求められる最初の動機となる。
【0002】
疼痛は、その起源に応じてさまざまな形態をとりうる。疼痛は、初発損傷が神経の完全もしくは部分的な離断、または神経叢に対する外傷の結果として起こる場合には、末梢神経障害性と記載されることがある。または、疼痛は、脊髄損傷または脳血管障害といった中枢神経系に対する病変の後には中枢神経障害として記載される。炎症性疼痛は、組織の損傷または炎症(例えば、術後疼痛または関節リウマチ)によって引き起こされる疼痛の一形態である。末梢神経損傷の後は、諸症状が慢性的な様式で、損傷部位に対して遠位性に経験されることが一般的であり、これらは感覚過敏(自然刺激に対する感受性の亢進)、痛覚過敏(侵害刺激に対する異常な感受性)、アロディニア(通常は不快感を与えない触覚刺激に対する過敏性と関連性のある広汎性の圧痛)および/または自発性灼熱痛もしくは鋭い電撃性疼痛を特徴とする。炎症性疼痛において、諸症状は、少なくとも初期のうちは損傷または炎症組織の部位で明らかであり、典型的には関節炎関連疼痛、筋骨格系疼痛および術後疼痛を併発する。侵害受容性疼痛は、針刺し、または外傷もしくは外科手術の時などの侵害刺激に反応して経験される疼痛である。機能性疼痛とは、明らかな末梢性病態も神経系に対する病変も認められない状態のことを指す。
【0003】
この特有の形態の疼痛は神経系の異常な働きによって生じ、このような疼痛を特徴とする状態には、線維筋痛症、緊張型頭痛および過敏性腸症候群が含まれる。異なるタイプの疼痛が共存することもあり、または、ヘルペス後神経痛の場合のように、疾患の自然経過に伴って、疼痛が炎症性から神経障害性に移行することもある。
【0004】
疼痛の治療のための1つのアプローチは、原因または病因となる因子の除去(疾患修飾療法)であるものの、疼痛は往々にして初発原因の持続期間よりも持続する。このため、対症的なコントロールが必須である。疼痛の感覚が耐えられなくなった症例には、急速かつ効果的な鎮痛が不可避である(例えば、術後状態、熱傷、外傷、癌および鎌状赤血球クリーゼ)。現在、疼痛の管理のために有用な多種多様な鎮痛薬が存在し、これには例えば、非ステロイド性鎮痛薬(NSAID)、抗けいれん薬およびオピオイド鎮痛薬が含まれる。それらは有効であるものの、このような薬剤の長期的な使用は、胃の不快感、肝臓に対する毒性、呼吸抑制、鎮静、精神異常作用、便秘、悪心、耐性、依存性、および乱用のリスクといった消耗性の副作用の恐れがあるため、多くの場合には推奨されない。また、これらの薬剤は、特に神経障害性疼痛および機能性疼痛に対しては最適とは言えないことも時にある。
【0005】
このため、疼痛の治療および管理のための、より優れた治療戦略が求められている。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
一般に、本発明は、哺乳動物における、疼痛の、または外傷性、代謝性もしくは毒性の末梢神経病変をさらに増大させる内因性機構の、診断、治療、軽減および予防のための方法を特徴とする。本発明によれば、哺乳動物(例えば、ヒト)に対して、疼痛が軽減、予防または治療されるように、テトラヒドロビオプテリン(BH4)の生物活性を低下させる組成物(例えば、メトトレキサート)を投与する。または、BH4の合成に関与する酵素、すなわちBH4合成酵素のうちいずれか1つのレベルまたは活性を低下させることによって、治療される哺乳動物における疼痛を軽減することもできる。この点に関連して、BH4合成は、以下の酵素のうち少なくとも1つ、2つもしくは3つ、または3つよりも多くの生物活性を低下させることによって低下させることができる:セピアプテリンレダクターゼ(SPR)、ピルボイルテトラヒドロプテリンシンターゼ(PTPS)、GTPシクロヒドロラーゼ(GTPCH)、プテリン-4α-カルビノールアミンデヒドラターゼおよびジヒドロプテリジンレダクターゼ(DHPR)。このような活性は、治療を受けていない対照の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、またはさらには100%低下させることができる。または、BH4生物活性を、GTPシクロヒドロラーゼフィードバック調節タンパク質(GFRP)の発現またはGTPCH結合活性もしくはその他の生物活性を高めることによって低下させることもできる。GFRPの生物活性は、GFRPまたはGTPCH:GFRP複合体と特異的に結合するBH4またはフェニルアラニン類似体を投与することによって高めることができる。外傷性神経病変には、機械的傷害および圧迫性損傷によって引き起こされるものが含まれる。圧迫性損傷は、外傷もしくは外部損傷によって引き起こされることもあれば、または浸潤性腫瘍に起因する圧迫のように内的な状態および病態によって引き起こされることもある。本発明の方法の方法を用いる治療を適用しうる代謝性神経病変には、例えば、糖尿病性末梢神経障害、遺伝性神経障害、またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)などの感染因子に起因する神経障害が含まれる。毒性神経病変には、例えば、他の治療薬(例えば、化学療法薬)または化学物質および環境毒(例えば、重金属および有機溶媒)によって引き起こされるものが含まれる。
【0007】
本発明によれば、疼痛の軽減は、例えば、一次感覚ニューロン、または脊髄の後角内部、脳幹内もしくは脳内のニューロンの働きの変化に起因するものであってよい。このような変化は、例えば、BH4を補助因子として利用するさまざまな酵素の活性の低下、および、細胞からのBH4の放出後の膜結合型BH4結合受容体の活性化の低下を招く、BH4の合成の低下(例えば、一酸化窒素シンターゼ)に起因するものであってもよい。BH4結合受容体に対するBH4の作用は、BH4に類似した競合的または非競合的な受容体アンタゴニストによって阻害または低下させることができる。BH4を補助因子として利用する酵素に対するBH4の作用は、BH4に類似した競合的アンタゴニストによって阻害することができる。このような結合または活性を、治療を受けていない対照に比して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、またはさらには100%低下させることができる。
【0008】
さらに、テトラヒドロビオプテリン(BH4)、その前駆体またはその代謝産物のレベルを、哺乳動物から入手した生物試料(例えば、血漿、組織試料、脳脊髄液、滑液または組織滲出物)において測定し、それを続いて、疼痛または神経損傷の診断ツールおよびバイオマーカーとして役立てることもできる。BH4を測定するための方法は、例えば、Powers et al. (1988) J Chromatogr 432: 321-328;Blau et al. (1994) Clin Chim Acta 226: 159-169;Ponzone et al. (1994) Eur J Pediatr 153: 616;Zorzi et al. (2002) Mol Genet Metab 75: 174-177;およびShiraki et al. (1994) Eur J Pediatr 153: 616に記載されている。任意で、BH4合成酵素のうちいずれか1つのレベルまたは活性の上昇により、哺乳動物における疼痛を診断することもできる。
【0009】
本発明の方法は、したがって、さまざまな形態の疼痛、例えば、侵害受容性疼痛、炎症性疼痛、機能性疼痛および神経障害性疼痛(これらはすべて急性でも慢性でもよい)の診断、治療、軽減または予防のために有用である。すなわち、治療しようとする哺乳動物は、末梢糖尿病性ニューロパチー、圧迫性ニューロパチー、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛もしくは舌咽神経痛、外傷後もしくは術後の神経障害、腰椎もしくは頸部神経根症、AIDSニューロパチー、代謝性ニューロパチー、薬剤誘発性ニューロパチー、複合性局所疼痛症候群、クモ膜炎、脊髄損傷、骨もしくは関節の損傷、組織損傷、乾癬、強皮症、掻痒、癌(例えば、前立腺、結腸、乳房、皮膚、肝臓または腎臓)、心血管疾患(例えば、心筋梗塞、狭心症、虚血性もしくは血栓性の心血管疾患、末梢血管閉塞疾患または末梢動脈閉塞疾患)、鎌状赤血球貧血、片頭痛、群発性頭痛もしくは緊張型頭痛、皮膚、筋肉もしくは関節の炎症性疾患、線維筋痛症、過敏性腸症候群、非心臓性胸痛、膀胱炎、膵炎、または骨盤痛を有すると診断されたものでよい。または、治療が求められている疼痛が、外傷性損傷、手術、皮膚組織の熱傷(熱的、化学的もしくは放射線照射による刺激によって起こったもの)または日焼けの結果であってもよい。
【0010】
本発明によれば、治療しようとする哺乳動物に対して、例えば、以下の化合物のうち少なくとも1つを含む組成物を投与することができる:メトトレキサート、トリメトプリム-スルファメトキサゾール、2,6ジアミノヒドロキシピリミジン(DAHP)、テトラヒドロ-L-ビオプテリン、L-セピアプテリン、7,8-ジヒドロ-L-ビオプテリン、6,7-ジメチルテトラヒドロプテリン塩酸塩、8-ブロモ-cGMP、N-アセチル-セロトニン(NAS)、N-クロロアセチルセロトニン、N-メトキシアセチルセロトニンおよびN-クロロアセチルドーパミン。
【0011】
または、本発明の組成物が、式:
を有する化合物を含んでもよく、この際、R1はH、C1-6アルキル、ハロ、NO2、CN、CO2R4、CONR4R5、SO2R4、SO2NR4R5、OR4、またはNR4R5である。R4およびR5のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリール(alkheteroaryl)であってよい;R2はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであってよい;R3はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、C1-4アルクヘテロアリール、CO2R6、CONR7R8、SO2R6またはSO2NR7R8であってよく、式中、R6はC1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであり、R7およびR8のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールである。
【0012】
または、R3が上記の通りであって、R1およびR2が共に、
によって表されてもよく、式中、R1/R2連結のN、OまたはSはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11、R12およびR13のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールである。
【0013】
任意で、R3が上記の通りであって、R1およびR2が共に、
によって表されてもよく、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R12またはR13のそれぞれは上記の通りであり、R14はOR4、ハロ、NO2、CN、CO2R7、CONR7R8、SO2R7、SO2NR7R8、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであり、この際、R7およびR8のそれぞれは独立に、H、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、ヘテロアリール、C1-C4アルカリルまたはC1-C4アルクヘテロアリールである。
【0014】
もう1つの選択肢として、R1およびR2が共に、
によって表されてもよく、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11およびR14のそれぞれは上記の通りであり、R3は存在せず、R14を有する炭素とR2を有する窒素との間には二重結合が形成される。
【0015】
任意で、組成物が、R1がH、C1-6アルキル、ハロ、NO2、CN、CO2R4、CONR4R5、SO2R4、SO2NR4R5、OR4またはNR4R5であるような、式(I)の化合物を有してもよい。それに応じて、R4およびR5のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであってよく、R2はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであってよく、R3はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、C1-4アルクヘテロアリール、CO2R6、CONR7R8、SO2R6またはSO2NR7R8であってよく、式中、R6はC1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであり、R7およびR8のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールである。
【0016】
望ましい場合、組成物は、式:
の化合物を含み、式中、R1およびR2は共に、
によって表されてもよく、この際、R1/R2連結のN、OまたはSはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11、R12およびR13のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールである。
【0017】
または、組成物は、式:
の化合物を含み、式中、R3は上記の通りであり、R1およびR2は共に、
によって表され、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R12およびR13のそれぞれは上記の通りであり、R14はOR4、ハロ、NO2、CN、CO2R7、CONR7R8、SO2R7、SO2NR7R8、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであり、式中、R4、R7およびR8のそれぞれは独立に、H、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、C1-C4アルカリル、ヘテロアリールまたはC1-C4アルクヘテロアリールである。
【0018】
または、組成物は、式:
の化合物を含み、式中、R1およびR2は共に、
によって表されてもよく、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11およびR14のそれぞれは上記の通りであり、R3は存在せず、R14を有する炭素とR2を有する窒素との間には二重結合が形成される。
【0019】
組成物が、式:
の化合物を含む場合には、R1およびR2は共に、
によって表されてもよく、式中、R1/R2連結のN、OまたはSはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11、R12およびR13のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールである。
【0020】
または、組成物は、式:
の化合物を含み、式中、R3は上記の通りであり、R1およびR2は共に、
によって表され、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R12およびR13のそれぞれは上記の通りであり、R14はOR4、ハロ、NO2、CN、CO2R7、CONR7R8、SO2R7、SO2NR7R8、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであり、この際、R7およびR8のそれぞれは独立に、H、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、C1-C4アルカリル、ヘテロアリールまたはC1-C4アルクヘテロアリールである。
【0021】
任意で、組成物は、式:
の化合物を含んでもよく、式中、R1およびR2は共に、
によって表され、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11およびR14のそれぞれは上記の通りであり、R3は存在せず、R14を有する炭素とR2を有する窒素との間には二重結合が形成される。
【0022】
本発明の組成物の内部に含まれうる化合物の例には、例えば、以下のものが含まれる。
【0023】
さらに、本発明の組成物は、式:
の化合物を含んでもよく、式中、R15はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであり、R16はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、C1-4アルクヘテロアリール、CO2R17、CONR18R19、SO2R17またはSO2NR18R19である。R17はC1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであってよく、R18およびR19のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであってよい。
【0024】
望ましい場合、鎮痛薬などの第2の治療薬を、本発明の組成物と組み合わせて投与することもでき、これには例えば、以下のものが含まれる:非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)(アセトアミノフェン、非COX-2選択的薬剤またはCOX-2選択的阻害薬を含む)、オピオイド受容体アゴニスト(例えば、モルヒネ、コデイン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、レボルファノール、メサドン、メペリジン、ブトルファノール、ブプラノルフィン、ナルブフィン、アルフェンタニル、スフェンタニル、フェンタニル、トラマドール、ペンタゾシン、プロポキシフェンまたはオキシコドン)、三環系抗うつ薬(例えば、ドキセピン、アミトリプチリン、イミプラミン、ノルトリプチリン、デシプラミンまたはベンラフェキシン)、SSRI(例えば、パロキセチン、セルトラリン、フルオキセチンまたはシタロプラム)、抗けいれん薬(例えば、フェニトイン、カルバマゼピン、オキシカルバゼピン、ラモトリジン、バルプロ酸塩、プレガバリンまたはギャバペンチン)、電位依存性ナトリウムチャンネル遮断薬、膜安定化薬、神経遮断薬(例えば、リドカイン、ブピビカイン、プリロカインまたはメキシリチン)、N型カルシウムチャンネル遮断薬(例えば、ジコニチド)、5-HT1D受容体アゴニストなどのセロトニン受容体アゴニスト(例えば、スマトリプタム、ゾルマトリプタン、リゾトリプタン、ナラトリプタン、アルモトリプタンまたはフロバトリプタン)、ステロイド(例えば、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロンまたはメチルプレドニゾロン)。本発明によれば、第2の治療薬は、単一の薬剤として投与された場合には治療効果(鎮痛など)があってもなくてもよいが、本発明の組成物と組み合わせて投与された場合にはこのような効果(または相加的または相乗的な増大)をもたらす。本発明において有用な鎮痛薬のその他の例には、例えば、アセトアミノフェン、アセチルサリチル酸、イブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、インドメタシン、ケトロラック、ロフェコキシブ、セレコキシブ、バルデコキシブ、パラコキシブ、クロナゼパム、ジアゼパム、カプサイシン、ケタミン、クロニジンまたはバクロフェンが含まれうる。
【0025】
または、第2の治療薬が、以下の酵素のうちいずれかを含む、BH4を補助因子として利用する任意の酵素の阻害薬であってもよい:一酸化窒素シンターゼ(NOS)のすべてのアイソフォーム、例えばeNOS、iNOSまたはnNOSなど;チロシンヒドロキシラーゼ;トリプトファンヒドロキシラーゼI(非神経性Tph1)およびII(神経性Tph2);フェニルアラニンヒドロキシラーゼ;ドーパミン-β-ヒドロキシラーゼ;N-メチルトランスフェラーゼ;ならびにエーテル脂質オキシダーゼ。第2の治療薬にはまた、BH4の、その補酵素機能とは独立した直接的効果を阻害する薬剤、例えば、BH4の膜結合型受容体との結合を妨げる薬剤なども含まれうる。
【0026】
本発明の組成物および第2の治療薬は、一緒に投与してもよく(2つの別個の製剤または単一の製剤として)、または別々に(例えば、互いに1時間、2時間、3時間、6時間または24時間以内に)投与してもよい。
【0027】
もう1つの局面において、本発明は、哺乳動物における疼痛または外傷性、代謝性もしくは毒性の末梢神経病変を診断するための方法であって、哺乳動物の生物試料における(例えば、血清、血漿、尿、脳脊髄液、滑液、組織滲出物または組織試料)における、BH4、BH4の前駆体もしくは中間体(例えば、7,8-ジヒドロネオプテリン三リン酸および6-ピルボイルテトラヒドロプテリン)またはBH4の代謝産物(例えば、プテリン、ビプテリン、7,8ジヒドロプテリン、7,8ジヒドロキサントプテリン、キサントプテリン、イソキサントプテリン、ロイコプテリンまたはネオプテリン)のレベルを測定することによる方法を特徴とする。本発明のこの局面によれば、BH4、BH4前駆体、BH4中間体またはBH4代謝産物のレベルは、これらの分子のいずれかの増加によって哺乳動物における疼痛が診断されるような疼痛のバイオマーカーとして役立つ。または、哺乳動物において、疼痛の臨床診断を、哺乳動物における、BH4合成酵素のいずれか1つ(例えば、セピアプテリンレダクターゼ(SPR)、ピルボイルテトラヒドロプテリンシンターゼ(PTPS)、GTPシクロヒドロラーゼ(GTPCH)、プテリン-4αカルビノールアミンデヒドラターゼおよびジヒドロプテリジンレダクターゼ(DHPR))のレベル(例えば、mRNAもしくはタンパク質のレベル)または活性を測定することによって裏づけることもできる。同様に、疼痛の診断は、このような酵素の活性またはレベルの上昇を確定することによって裏づけられる。
【0028】
本発明はまた、哺乳動物における、疼痛、または外傷性、代謝性もしくは毒性の末梢神経病変をさらに増大させる内因性機構を、治療、軽減または予防するための候補化合物を同定するための方法も提供する。本方法は以下の段階を含む:(a)BH4を合成する細胞を候補化合物と接触させる段階;および(b)BH4のレベルまたは活性(例えば、補助因子として機能する能力、または膜結合型受容体と結合する能力)を測定する段階。化合物と接触していない細胞におけるBH4のレベルまたは活性に比してBH4のレベルまたは活性を低下させる化合物は、哺乳動物における疼痛または外傷性、代謝性もしくは毒性の末梢神経病変を治療、軽減または予防するための候補化合物として同定される。または、段階(a)における細胞が、BH4合成酵素のいずれか1つ(例えば、セピアプテリンレダクターゼ(SPR)、ピルボイルテトラヒドロプテリンシンターゼ(PTPS)、GTPシクロヒドロラーゼ(GTPCH)、プテリン-4αカルビノールアミンデヒドラターゼおよびジヒドロプテリジンレダクターゼ(DHPR))を発現してもよく、任意で、段階(b)が、候補化合物の阻害活性を評価するために、このような酵素の発現または生物活性を測定することを含んでもよい。必要に応じて、BH4合成酵素はタンパク質融合遺伝子であってもよい。好ましい態様において、段階(b)は、BH4のレベルもしくは活性の測定、または代替的には、BH4合成酵素のうち1つのmRNAもしくはタンパク質レベルまたは酵素活性の測定を含む。細胞は哺乳動物細胞(例えば、ヒトまたは齧歯動物の細胞)であることが好ましい。
【0029】
1つの関連した局面において、本発明は、哺乳動物における疼痛または外傷性、代謝性もしくは毒性の末梢神経病変を治療、軽減または予防するための候補化合物を同定するための代替的な方法を提供する。この方法は、(a)タンパク質(例えば、BH4結合受容体またはBH4依存性酵素)上のプテリジン結合部位または特異的BH4結合部位を同定する段階;(b)このようなBH4結合タンパク質(受容体または酵素)を候補化合物と接触させる段階;ならびに(c)候補化合物がタンパク質上のBH4部位と結合してタンパク質に対するBH4の結合または活性を阻害する(例えば、それ自体のBH4部位に対する結合により)か否かを判定する段階。BH4の活性または結合を阻害する化合物は、疼痛または外傷性、代謝性もしくは毒性の末梢神経病変を治療、軽減または予防するための候補化合物として同定される。任意で、この方法はさらに、候補化合物を、BH4を補助因子として用いる酵素(例えば、NOS)またはBH4と結合する膜受容体のいずれか1つと接触させる段階、ならびに候補化合物がこのような酵素または受容体と結合するか否か、および/またはその活性を阻害するか否かを判定する段階を含みうる。本発明はまた、哺乳動物における疼痛または外傷性、代謝性もしくは毒性の末梢神経病変を治療、軽減または予防するための候補化合物を同定するためのさらにもう1つの方法も提供する。この方法は、(a)GTPシクロヒドロラーゼ(GTPCH)、GTPCHフィードバック調節タンパク質(GFRP)および候補化合物を提供する段階;(b)GTPCHとGFRPとの結合を測定する段階;および(c)GTPCHとGFRPとの結合が候補化合物の存在下で増加するような、疼痛または外傷性、代謝性もしくは毒性の末梢神経病変を治療、軽減または予防するために有用な候補化合物を同定する段階。好ましい態様において、GTPCHおよびGFRPはヒトタンパク質である。この方法において、候補化合物は、好ましくは、GFRPまたはGTPCH:GFRP複合体のいずれかと結合しうる。
【0030】
好ましい態様において、本方法は、候補化合物が、細胞、例えば齧歯動物またはヒトの細胞といった哺乳動物細胞における、BH4合成酵素の1つまたはすべての発現を低下させ、BH4レベルの低下をもたらす能力を調べる。最も好ましくは、BH4合成酵素遺伝子はヒトのセピアプテリンレダクターゼ(SPR)、ピルボイルテトラヒドロプテリンシンターゼ(PTPS)、GTPシクロヒドロラーゼI(GTPCH I)、プテリン-4αカルビノールアミンデヒドラターゼまたはジヒドロプテリジンレダクターゼ(DHPR)である。
【0031】
本発明はさらに、本発明の方法を実施するためのキットを含む。例えば、本発明は、疼痛または外傷性、代謝性もしくは毒性の末梢神経病変を治療、軽減または予防するのに十分な量の、テトラヒドロビオプテリン(BH4)のレベルおよび活性を低下させる組成物、ならびに疼痛または外傷性、代謝性もしくは毒性の末梢神経病変の治療、軽減または予防を目的とする哺乳動物に対する組成物の送達のための使用説明書を含むキットを含む。
【0032】
本発明はさらに、哺乳動物の生物試料(例えば、血清、血漿、尿、脳脊髄液、滑液、組織滲出物および組織の試料)からの、BH4、その前駆体および中間体(例えば、7,8-ジヒドロネオプテリン三リン酸および6-ピルボイルテトラヒドロプテリン)または代謝産物(例えば、プテリン、ビオプテリン、7,8ジヒドロプテリン、7,8ジヒドロキサントプテリン、キサントプテリン、イソキサントプテリン、ロイコプテリンおよびネオプテリン)の測定のための診断キットも含む。例えば、本発明は、BH4に対して特異的な抗体、ならびに哺乳動物における疼痛を診断するための使用説明書を含むキットを含む。
【0033】
本発明はまた、BH4標的タンパク質を同定するための方法も特徴とする。その第1の方法は、(a)試料およびBH4を提供する段階;(b)試料タンパク質とBH4との結合を可能にする条件下で、試料をBH4と接触させる段階;および(c)BH4を検出することによってBH4の試料タンパク質との結合を評価する段階であって、BH4と結合する試料タンパク質がBH4標的タンパク質として同定される段階、を含む。1つの態様において、評価の段階(c)は、質量分析法、表面プラスモン共鳴顕微鏡法または原子間力顕微鏡法などの検出方法を利用する。BH4標的タンパク質を同定するために本方法に用いうる生物試料は、任意の源に由来しうる。好ましい試料は、例えば後角または後根神経節を含む神経組織のような哺乳動物神経組織から調製された抽出物である。試料は膜結合型タンパク質を含むことが好ましい。
【0034】
BH4標的タンパク質を同定するための第2の方法は、(a)BH4およびアレイを提供する段階であって、アレイが複数の固定化された精製タンパク質種からなり、アレイ中のタンパク質種のそれぞれが他のタンパク質種のそれぞれと空間的に分離される段階;(b)タンパク質種とBH4との結合を可能にする条件下で、アレイをBH4と接触させる段階;および(c)BH4のタンパク質種との結合を評価する段階であって、BH4と結合するタンパク質種がBH4標的タンパク質として同定される段階、を含む。
【0035】
前記の2つの方法のいずれの好ましい態様においても、BH4は検出可能なように標識される。有用な検出可能な標識には、例えば、放射性同位体(例えば、トリチウム)またはビオチンが含まれる。他の有用な態様において、評価の段階(c)は、BH4特異的抗体の使用を必要とする。
【0036】
最後に、本発明は、BH4の生物活性を低下させるための組成物を提供する。本発明の組成物は、式:
を有してもよく、この際、R1はH、C1-6アルキル、ハロ、NO2、CN、CO2R4、CONR4R5、SO2R4、SO2NR4R5、OR4またはNR4R5である。R4およびR5のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであってよい;R2はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであってよい;R3はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、C1-4アルクヘテロアリール、CO2R6、CONR7R8、SO2R6またはSO2NR7R8であってよく、式中、R6はC1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであり、R7およびR8のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールである。
【0037】
または、R3が上記の通りであって、R1およびR2が共に、
によって表されてもよく、式中、R1/R2連結のN、OまたはSはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11、R12およびR13のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールである。
【0038】
任意で、R3が上記の通りであって、R1およびR2が共に、
によって表されてもよく、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R12またはR13のそれぞれは上記の通りであり、R14はOR4、ハロ、NO2、CN、CO2R7、CONR7R8、SO2R7、SO2NR7R8、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであり、この際、R7およびR8のそれぞれは独立に、H、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、ヘテロアリール、C1-C4アルカリルまたはC1-C4アルクヘテロアリールである。
【0039】
もう1つの選択肢として、R1およびR2が共に、
によって表されてもよく、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11およびR14のそれぞれは上記の通りであり、R3は存在せず、R14を有する炭素とR2を有する窒素との間には二重結合が形成される。
【0040】
任意で、組成物は、R1がH、C1-6アルキル、ハロ、NO2、CN、CO2R4、CONR4R5、SO2R4、SO2NR4R5、OR4またはNR4R5であるような、式(I)の化合物を有してもよい。それに応じて、R4およびR5のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであってよく、R2はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであってよく、R3はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、C1-4アルクヘテロアリール、CO2R6、CONR7R8、SO2R6またはSO2NR7R8であってよく、式中、R6はC1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであり、R7およびR8のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールである。
【0041】
望ましい場合、組成物は、式:
の化合物を含み、式中、R1およびR2は共に、
によって表されてもよく、この際、R1/R2連結のN、OまたはSはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11、R12およびR13のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールである。
【0042】
または、組成物は、式:
の化合物を含み、式中、R3は上記の通りであり、R1およびR2は共に、
によって表され、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R12およびR13のそれぞれはは上記の通りであり、R14はOR4、ハロ、NO2、CN、CO2R7、CONR7R8、SO2R7、SO2NR7R8、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであり、式中、R4、R7およびR8のそれぞれは独立に、H、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、C1-C4アルカリル、ヘテロアリールまたはC1-C4アルクヘテロアリールである。
【0043】
または、組成物は、式:
の化合物を含み、式中、R1およびR2は共に、
によって表されてもよく、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11およびR14のそれぞれは上記の通りであり、R3は存在せず、R14を有する炭素とR2を有する窒素との間には二重結合が形成される。
【0044】
組成物が、式:
の化合物を含む場合には、R1およびR2は共に、
によって表されてもよく、式中、R1/R2連結のN、OまたはSはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11、R12およびR13のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールである。
【0045】
または、組成物は、式:
の化合物を含み、式中、R3は上記の通りであり、R1およびR2は共に、
によって表され、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R12およびR13のそれぞれは上記の通りであり、R14はOR4、ハロ、NO2、CN、CO2R7、CONR7R8、SO2R7、SO2NR7R8、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであり、この際、R7およびR8のそれぞれは独立に、H、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、C1-C4アルカリル、ヘテロアリールまたはC1-C4アルクヘテロアリールである。
【0046】
任意で、組成物は、式:
の化合物を含んでもよく、式中、R1およびR2は共に、
によって表され、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11およびR14のそれぞれは上記の通りであり、R3は存在せず、R14を有する炭素とR2を有する窒素との間には二重結合が形成される。
【0047】
本発明の組成物の内部に含まれうる化合物の例には、例えば、以下のものが含まれる。
【0048】
さらに、本発明の組成物は、式:
の化合物を含んでもよく、式中、R15はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであり、R16はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、C1-4アルクヘテロアリール、CO2R17、CONR18R19、SO2R17またはSO2NR18R19である。R17はC1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであってよく、R18およびR19のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであってよい。
【0049】
本発明の組成物を、上記の方法に用いるのに適した任意の第2の治療薬と組み合わせてもよい。組成物は単独で、または任意の第2の治療薬との組み合わせとして、薬学的に許容される担体または添加剤とともに治療組成物中に存在しうる。
【0050】
「BH4合成酵素融合遺伝子」とは、第2の異種核酸配列と機能的に結合した、BH4合成酵素(例えば、セピアプテリンレダクターゼ(SPR)、ピルボイルテトラヒドロプテリンシンターゼ(PTPS)、GTPシクロヒドロラーゼ(GTPCH)、プテリン-4αカルビノールアミンデヒドラターゼおよびジヒドロプテリジンレダクターゼ(DHPR))のプロモーターおよび/または全体的もしくは部分的なコード領域を意味する。好ましい態様において、第2の異種核酸配列は、レポーター遺伝子、すなわちその発現をアッセイしうる遺伝子である。レポーター遺伝子の例には、グルクロニダーゼ(GUS)、ルシフェラーゼ、クロラムフェニコールトランスアセチラーゼ(CAT)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、アルカリホスファターゼおよびβ-ガラクトシダーゼをコードする遺伝子が非制限的に含まれる。
【0051】
「候補化合物」とは、天然に存在するか人工的に得られるかにかかわらず、何らかの化学物質のことを意味する。候補化合物には、例えば、ペプチド、ポリペプチド、合成有機分子、天然有機分子、核酸、ペプチド核酸、およびそれらの構成要素が含まれる。
【0052】
「ドミナントネガティブタンパク質」とは、そのドミナントネガティブタンパク質に対応する野生型タンパク質の10、20、35、50、100、150個の、または150個を上回るアミノ酸に対して、少なくとも50%、70%、80%、90%、95%またはさらには99%の配列相同性を有する、任意のポリペプチドのことを意味する。ドミナントネガティブタンパク質は、失活性の変異に加えて、野生型分子の欠失体または切断体からなりうる。例えば、ドミナントネガティブBH4合成酵素が、BH4またはその中間体(例えば、7,8-ジヒドロネオプテリン三リン酸および6-ピルボイルテトラヒドロプテリン)を生成するようにはもはや機能しないような欠失を有する、切断型のBH4合成酵素変異体であってもよく、これには例えば、その触媒活性を失っており、それによってBH4合成経路を妨害するようなGTPCHが含まれる。
【0053】
「オピオイド受容体アゴニスト」とは、オピオイド受容体のμ、κまたはδサブタイプと結合して、これらの受容体でのオピオイドの機能を模倣する、任意の天然の半合成または合成の化合物のことを意味する。オピオイド受容体アゴニストは、ペプチドであっても非ペプチド性化合物であってもよい。好ましくは、オピオイド受容体アゴニストの、少なくとも1つのオピオイド受容体サブタイプに対するKdは1μM未満であり、より好ましくは100nM未満であり、最も好ましくは10nM未満、またはさらには1nM未満である。オピオイド受容体アゴニストには一般に、例えば、フェナントレン、フェニルヘプチルアミン、フェニルピペリジン、モルフィナンおよびベンゾモルファン系の化合物ファミリーのメンバーが含まれる。オピオイド受容体アゴニストには、例えば、モルヒネ、ヒドロモルフォン、オキシモルフォン、コデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、メサドン、メペリジン、レボルファノール、ナルブフィン、スフェンタニル、アルフェンタニル、ブプレノルフィン、ペンタゾシン、プロポキシフェンおよびブトルファノールが含まれる。
【0054】
「有効量」とは、単独で、または本発明による組み合わせの一部として、痛みの感覚を予防、軽減または除去するために必要な化合物の量のことを意味する。疼痛の治療を目的として本発明を実施するために用いられる活性化合物の有効量は、投与の様式、対象の年齢および体重、ならびに疼痛を引き起こしている基礎をなす病態に応じてさまざまである。最終的には、担当する医師または獣医が、適切な量および投薬レジメンを決断すると考えられる。このような量は「有効」量と呼ばれる。
【0055】
「疼痛」とは、すべてのタイプの疼痛のことを意味し、これには例えば、急性であるか慢性であるかにかかわらず、末梢神経および中枢神経障害性疼痛、機能性疼痛、炎症性疼痛または侵害受容性疼痛が含まれる。疼痛性状態の例には、術後または外傷後疼痛、慢性腰痛、関節リウマチの痛み、変形性関節症、線維筋痛症、群発性頭痛、ヘルペス後神経痛、幻肢痛、中枢性脳卒中後疼痛、歯痛、オピオイド耐性疼痛、内臓痛、骨損傷痛、陣痛、熱傷(日焼けを含む)に起因する疼痛、分娩後痛、片頭痛、緊張型頭痛、狭心痛および尿生殖路関連痛(例えば、膀胱炎)が含まれる。
【0056】
「テトラヒドロビオプテリン(BH4)の生物活性を低下させる」とは、BH4に起因する生物活性に伴う機能的結果を減じさせることを意味する。一般に、BH4生物活性の低下は、例えば、BH4分子の量(レベル)の減少の結果であってよく、これはデノボBH4合成の減少/阻害、BH4異化の増加/加速化、またはこの2つの組み合わせによって影響を受けると思われる。または、標的分子でのBH4の作用を阻害することによって、BH4の生物活性を低下させることもできる。例えば、エフェクタータンパク質(例えば、酵素)上のBH4結合部位と結合する競合的BH4阻害薬は生物活性を低下させると考えられる。非競合的BH4阻害薬もこの定義に含まれる。同様に、BH4を効果的に捕捉してそれがエフェクター分子と結合するのを防止するBH4結合分子にもBH4生物活性を低下させる効果がある。このような低下は、例えば、対照条件に比して少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%の低下、または100%を上回る低下であってよい。より詳細には、BH4レベルまたは活性は、例えば、GTPシクロヒドロラーゼ(GTPCH)、セピアプテリンレダクターゼ(SPR)およびジヒドロプテリジンレダクターゼ(DHPR)といった、BH4合成経路にかかわる酵素の酵素活性を低下させることによって低下させることができる。このような酵素活性を、対照に比して少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、またはさらには100%を超えて低下させることが好ましい。例えば、GTPCHは、GTPCHフィードバック調節タンパク質(GFRP)のレベルまたは結合活性を高めることによって阻害することができる。
【0057】
「疼痛を治療、軽減または予防すること」とは、対象における痛みの感覚を、それが起こる前、起こっている最中またはその後に予防、軽減または除去することを意味する。治療を受けていない同等の対照と比較して、このような軽減または予防の程度は、当技術分野で知られた任意の標準的な技法による測定で、少なくとも5%、10%、20%、40%、50%、60%、80%、90%、95%または100%である。本発明の方法に従って疼痛を治療するためには、治療は必ずしも、痛みの感覚の原因となる基礎病態に対する治療法を提供しない。疼痛の治療は純粋に対症的でありうる。
【0058】
「疼痛を診断すること」とは、末梢神経に対する障害を含む、哺乳動物における何らかの刺激によって引き起こされる疼痛を検出することを意味する。例えば、疼痛を、痛みの感覚と関連または相関する代用マーカーを検出することによって診断することもできる。本発明によれば、疼痛、または外傷性、代謝性もしくは毒性の末梢神経病変が、哺乳動物からの生物試料(例えば、血清、血漿、尿、脳脊髄液、滑液、組織滲出物または組織の試料)におけるBH4、BH4中間体、BH4前駆体またはBH4代謝産物のレベルの上昇を測定および検出することによって診断される。このようなレベルが対照よりも少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、80%、90%、95%、100%、または100%よりも高ければ、哺乳動物における疼痛が診断される。または、BH4合成酵素のいずれか1つのレベルまたは活性を測定し、BH4酵素のレベルまたは活性の上昇が検出されれば疼痛が診断される。このような上昇は、対照条件を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、80%、90%、95%、100%、または100%よりも上回ることが望ましい。
【0059】
抗体に言及して本明細書で用いられる「〜に対して特異的な」とは、特定のタンパク質または抗原に対する抗体の親和性が、同量の他のあらゆるタンパク質または抗原に比して高いことを意味する。例えば、BH4に対して特異的な抗体(例えば、ヒトモノクローナル抗体)は、BH4に対する親和性が、同量の他のあらゆる抗原(類縁性のある抗原を含む)に対する親和性よりも、少なくとも2倍、5倍、10倍、30倍または100倍の大きいことが望ましい。別のタンパク質または抗原に対する抗体の結合は、本明細書に記載したようにして、当技術分野におけるさまざまな標準的な方法の任意のもの、例えばウエスタン分析、ELISAまたは免疫共沈法によって決定することができる。
【0060】
タンパク質またはポリペプチドに言及する場合、「実質的に同一な」とは、参照アミノ酸配列に対して少なくとも75%、しかし好ましくは85%、より好ましくは90%、最も好ましくは95%、またはさらには99%の相同性を示すタンパク質またはポリペプチドのことを意味する。タンパク質またはポリペプチドに関して、比較配列の長さは一般に、少なくとも20アミノ酸、好ましくは少なくとも30アミノ酸、より好ましくは少なくとも40アミノ酸であり、最も好ましくは50アミノ酸であるか、または完全長のタンパク質もしくはポリペプチドである。このような「実質的に同一な」タンパク質またはポリペプチドをコードする核酸は「実質的に同一な」核酸の一例である;核酸には、遺伝暗号の縮重性のために、そのようなタンパク質またはポリペプチドをコードする任意の配列が含まれうることは認識される。さらに、「実質的に同一な」核酸配列には、ハイストリンジェンシー条件下で参照核酸分子とハイブリダイズするポリヌクレオチドも含まれる。
【0061】
「ハイストリンジェンシー条件」とは、高温および低イオン強度を特徴とし、0.5M NaHPO4、pH 7.2、7%SDS、1mM EDTAおよび1%BSA(第V画分)を含む温度65℃の緩衝液中で、または48%ホルムアミド、4.8×SSC、0.2M Tris-Cl、pH 7.6、1×デンハルト溶液、10%デキストラン硫酸および0.1%SDSを含む温度42℃の緩衝液中で、少なくとも40ヌクレオチド長のDNAプローブを用いることによって得られるものと同等なハイブリダイゼーションを可能にする、任意の条件のセットのことを意味する。PCR、ノーザン、サザンまたはインサイチューハイブリダイゼーション、DNAシークエンシングといった、ハイストリンジェンシーハイブリダイゼーションのためのその他の条件は、分子生物学の当業者には周知である。例えば、参照として本明細書に組み入れられる、F. Ausubel et al.,「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley & Sons, New York, NY, 1998を参照されたい。
【0062】
本明細書で用いる場合、用語「アルキル」および接頭辞「アルク-(alk-)」は、直鎖状および分枝鎖状の飽和基または不飽和基、ならびに環式基(これにはシクロアルキル基およびシクロアルケニル基が含まれる)の両方を含む。別に指定する場合を除き、非環式アルキル基は1〜6個の炭素を含む。環式基は単環式であっても多環式であってもよく、好ましくは3〜8個の環状炭素原子を有する。環式基の例には、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基およびアダマンチル基が含まれる。アルキル基は置換型でも非置換型でもよい。置換基の例には、アルコキシ基、アリールオキシ基、スルフヒドリル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、フルオロアルキル基、ペルフルオロアルキル基、アミノ基、アミノアルキル基、二置換アミノ基、四級アミノ基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基およびカルボキシル基が含まれる。
【0063】
「アリール」とは、炭素環式芳香族性の環または環系のことを意味する。別に指定する場合を除き、アリール基は6〜18個の炭素を含む。アリール基の例には、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フルオレニル基およびインデニル基が含まれる。
【0064】
「ヘテロアリール」とは、少なくとも1つの環内ヘテロ原子(例えば、O、S、Se、N、およびP)を含む芳香族性の環または環系のことを意味する。別に指定する場合を除き、ヘテロアリール基は1〜9個の炭素を含む。ヘテロアリール基には、フラニル基、チエニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、オキサジアゾリル基、オキサトリアゾリル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドール基、インダゾリル基、インドリジニル基、ベンズイソキサゾリル基、キノリニル基、イソキノリニル基、シンノリニル基、キナゾニリル基、ナフチリジニル基、フタラジニル基、フェナントロリニル基、プリニル基およびカルバゾリル基が含まれる。
【0065】
「複素環」とは、少なくとも1つの環内ヘテロ原子(例えば、O、Se、N、およびP)を含む、非芳香族性の環または環系のことを意味する。別に指定する場合を除き、複素環基は2〜9個の炭素を含む。複素環基には、例えば、ジヒドロピロリル基、テトラヒドロピロリル基、ピペラジニル基、ピラニル基、ジヒドロピラニル基、テトラヒドロピラニル基、ジヒドロフラニル基、テトラヒドロフラニル基、ジヒドロチオフェン基、テトラヒドロチオフェン基およびモルホリニル基が含まれる。
【0066】
アリール基、ヘテロアリール基または複素環基は、非置換型でもよく、または、例えばC1-6アルキル、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルチオ、トリフルオロメチル、C1-6アシル、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、ニトリル、C1-6アルコキシカルボニル、アルカリル(アルキル基が1〜6個の炭素原子を有するもの)およびアルクヘテロアリール(アルキル基が1〜6個の炭素原子を有するもの)を含む、1つまたは複数の置換基によって置換されていてもよい。
【0067】
「アルコキシ」とは、式-ORという化学置換基のことを意味し、式中、Rはアルキル基である。「アリールオキシ」とは、式-ORという化学置換基のことを意味し、式中、Rはアリール基である。「アルカリル」とは、式-RRという化学置換基のことを意味し、式中、Rはアルキル基であってRはアリール基である。「アルクヘテロアリール」とは、式-RRという化学置換基のことを意味し、式中、Rはアルキル基であってRはヘテロアリール基である。
【0068】
「ハロゲン化合物」または「ハロゲン」または「ハロ」とは、臭素、塩素、ヨウ素またはフッ素のことを意味する。
【0069】
全般的に、本発明は、疼痛の診断、治療および予防に関して、標準的な治療法を上回る明らかな利益を提供する。本発明者らの結果によれば、BH4のレベルまたは活性を低下させる治療薬(例えば、メトトレキサート)の投与は、疼痛を減弱させ、これは一部には、BH4を補助因子として利用する酵素、またはBH4と結合してニューロンの興奮性もしくは伝達物質の放出を調節する膜結合型受容体の活性を妨げることによる。本発明はさらに、BH4、BH4中間体、BH4代謝産物もしくはBH4前駆体のレベルを測定してその上昇を検出すること、またはいずれか1つのBH4合成酵素の活性もしくはレベルを測定してその上昇を検出することにより、哺乳動物における疼痛の診断も可能にする。さらに、本発明によって提供される候補化合物スクリーニング法は、損傷プロセスを調節し、症状をBH4の合成または作用を低下させることによって緩和する、新規な治療薬の同定も可能にする。
【0070】
詳細な説明
一般に、本発明は、哺乳動物に対して、テトラヒドロビオプテリン(BH4)のレベルまたは活性を低下させる組成物の治療的有効量を投与することによって、疼痛または外傷性、代謝性もしくは毒性の末梢神経病変を治療、軽減または予防するための方法および化合物を特徴とする。本発明はまた、哺乳動物から入手した生物試料(例えば、血清、血漿、尿、脳脊髄液、滑液、組織滲出物または組織の試料)におけるBH4、BH4中間体、BH4前駆体またはBH4代謝産物のレベルの上昇を検出することにより、哺乳動物における疼痛または外傷性、代謝性もしくは毒性の末梢神経病変を診断するための方法も提供する。または、疼痛を、いずれか1つのBH4合成酵素の活性またはレベルを検出することによって診断することもできる。さらにもう1つの一般的な態様において、本発明は、疼痛に対する新規な治療薬を、それらがBH4もしくはその合成酵素のレベルもしくは活性を低下させる能力、またはBH4のBH4受容体またはBH4依存性酵素との結合を妨げる能力に基づいて同定するための方法も提供する。
【0071】
本発明は、BH4の合成にかかわるいずれかの酵素(例えば、GTPシクロヒドロラーゼ(GTPCH)、セピアプテリンレダクターゼ(SPR)およびジヒドロプテリジンレダクターゼ(DHPR)、図2A参照)の生物活性を妨げることによってBH4の合成を阻害することが、疼痛の予防、治療および軽減(すなわち、鎮痛)をもたらすという本発明者らの発見に端を発する。これを目的として、本発明者らは、GTPCHの阻害薬である2,4ジアミノ6-ヒドロキシピリミジン(DAHP);DHPRの阻害薬であるメトトレキサート(MTX);またはSPRの阻害薬であるN-アセチル-セロトニン(NAS)の投与が、急性損傷後疼痛過敏性、末梢神経障害性および炎症性疼痛のさまざまなラットモデルにおいて著明な鎮痛をもたらし、しかも基礎的な疼痛感受性に対する影響、鎮静作用および運動機能の全体的な破壊は伴わない。疼痛のこの軽減は、少なくとも一部には、BH4が重要な補助因子であるさまざまな酵素との干渉またはその活性の低下によって媒介される。このような酵素には、例えば、一酸化窒素シンターゼおよびカテコールアミン合成酵素が含まれる。さらに、BH4のレベルの低下は、神経系の細胞からのその放出、または例えば、神経機能を調節する膜結合型受容体に対するBH4の結合によって媒介される神経伝達物質の放出またはイオンチャンネル活性に対するその直接的作用も低下させる。
【0072】
本発明の方法はこのため、さまざまな形態の臨床的疼痛、すなわち炎症性疼痛、機能性疼痛および神経障害性疼痛(急性であるか慢性であるかにかかわらず)の診断、治療、軽減または予防のために有用である。疼痛を伴う状態の例には、例えば、軟部組織、関節、骨の炎症および/または障害(例えば、急性外傷、変形性関節症または関節リウマチ)、筋筋膜疼痛症候群(線維筋痛症)、頭痛(群発性頭痛、片頭痛および緊張型頭痛を含む)、心筋梗塞、狭心症、虚血性心血管疾患、脳卒中後疼痛、鎌状赤血球貧血、末梢血管閉塞性疾患、癌、皮膚または関節の炎症性状態、糖尿病性ニューロパチー、および手術または外傷性損傷による急性組織障害(例えば、熱傷、裂傷または骨折)が含まれる。本発明はまた、筋骨格系疼痛(外傷、感染症および運動の後の)、脊髄損傷、腫瘍、圧迫、炎症に起因する神経障害性疼痛、歯痛、会陰切開術による痛み、深部内臓痛(例えば、心臓痛、膀胱痛または骨盤内臓器痛)、筋肉痛、眼痛、口腔顔面痛(例えば、歯痛、三叉神経痛、舌咽神経痛)、腹痛、婦人科的疼痛(例えば、月経困難症および陣痛)、外傷、圧迫、炎症、毒性化学物質、代謝性障害、遺伝性疾患、感染症、血管炎および自己免疫疾患に起因する神経および根の障害に伴う疼痛、中枢神経系疼痛、例えば脊髄または脳幹の障害、脳血管障害、腫瘍、感染症、脱髄疾患(多発性硬化症を含む)に起因する疼痛、腰痛、坐骨神経痛ならびに術後疼痛の治療、軽減または予防のためにも有用である。本発明による治療を適用しうる状態は、例えば、米国特許出願第10/348,381号、ならびに米国特許第6,593,331号および6,593,331号(これらはすべて参照として本明細書に組み入れられる)に詳細に述べられている。
【0073】
手短に述べると、本発明者らは、高密度オリゴヌクレオチドマイクロアレイを用いて、後根神経節における、発生過程および末梢神経損傷により調節される遺伝子の発現の変化に関するクラスター分析を行った。興味深いことに、本発明者らは、遺伝子の特定のクラスターが、発生過程における高レベルの発現、成熟期におけるダウンレギュレーション、および神経損傷後の誘導を特徴とすることを見いだした。このような遺伝子の例にはDHPR(BH4合成経路の要素)が含まれる。
【0074】
軸索切断(坐骨神経離断術)3日後の腰椎DRGマイクロアレイによる3回の分析により、アップレギュレートされた約200種の遺伝子のうち3種(例えば、GTPCH、SPRおよびDHPR)が、BH4合成経路の要素であることがさらに明らかになった。このような条件下でのそれらの誘導は、ノーザンブロット分析、ノーザンスロットブロット法、インサイチューハイブリダイゼーションおよびウエスタンブロット分析によって実証された。本発明者らはさらに、BH4合成経路の4種の要素のうち3種が、末梢神経障害性疼痛の少なくとも3つのモデルで末梢神経損傷後の一次感覚ニューロンにおいてアップレギュレートされること、およびこれが後根神経節におけるBH4レベルの上昇と同時に起こることを確かめた。さらに、DAHP(GTPCH阻害薬の1つ)ならびにBH4合成酵素のさまざまな他の阻害薬(例えば、NASおよびメトトレキサート)を用いて、本発明者らは、BH4合成経路の阻害が、さまざまな神経障害性疼痛モデルならびに炎症性疼痛および損傷後疼痛過敏性のモデルにおいて鎮痛を誘導することを示した。この鎮痛作用は全身送達後にも髄腔内送達後にも示された。後者はDRGおよび脊髄を含む神経系に対する作用を示している。マッチさせた(matched)、または坐骨神経部分損傷性の末梢神経障害性疼痛モデルの場合における鎮痛の程度は、モルヒネ、ガバペンチン、カルバマゼピン、アミトリプチリンおよびロフェコキシブを含む、鎮痛に従来より用いられているいずれの鎮痛薬によって得られるものよりもはるかに大きかった。
【0075】
治療薬
BH4経路の阻害薬
BH4は、2つの中間体、7,8-ジヒドロネオプテリン三リン酸および6-ピルボイルテトラヒドロプテリンを介して、グアノシン5'-三リン酸(GTP)から酵素的にデノボ合成される(図2A参照)。本発明によれば、BH4合成を低下させるための、図2Aに示されたBH4合成酵素のうち少なくとも1つ、2つ、3つまたは3つよりも多くの生物活性を阻害または調節する任意の薬剤の投与により、鎮痛が誘導される。このような酵素には、例えば、セピアプテリンレダクターゼ(SPR)、ピルボイルテトラヒドロプテリンシンターゼ(PTPS)、GTPシクロヒドロラーゼ(GTPCH)、プテリン-4α-カルビノールアミンデヒドラターゼおよびジヒドロプテリジンレダクターゼ(DHPR)が含まれる。BH4レベルの低下に起因する鎮痛効果は、少なくとも一部には、BH4が補助因子である酵素、およびBH4が結合する膜結合型受容体の生物活性の低下によって引き起こされる。
【0076】
この点に関して、BH4は、いくつかの酵素(例えば、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンという3種類の芳香族アミノ酸のヒドロキシラーゼ;エーテル脂質オキシダーゼ;ならびに3種類の一酸化窒素シンターゼ(NOS)アイソザイムであるeNOS、iNOS、およびnNOSなど)の必須な補助因子であり、このため、疼痛経路における神経伝達物質形成およびシグナル伝達を含む、数多くの生物プロセスにおいて重要な役割を果たしている。実際、BH4によって調節される数多くの酵素がこれまでに疼痛と関連づけられており、これには例えば、NOS(Meller et al. (1992) Neuroscience 50: 7-10;Minami et al., (1995) Neurosci. Lett. 201: 239-242;Yamaguchi and Naito (1996) Can. J. Anaesth. 43: 975-981;Aley et al., (1998) J. Neurosci. 18:7008-7014;Handy and Moore (1998) Neuropharmacology 37: 37-43;Levy and Zochodne (1998) Eur. J. Neurosci. 10: 1846-1855;Guhring et al. (2000) J. Neurosci. 20: 6714-6720;Levy et al. (2000) Eur J Neurosci 12: 2323-2332)、チロシンヒドロキシラーゼ(Ma and Bisby (1999) Neurosci Lett 275: 117-120;Lindqvist et al. (2000) Muscle Nerve 23: 1214-1218)およびトリプトファンヒドロキシラーゼが含まれる。
【0077】
本発明によれば、BH4経路の阻害薬とは、本明細書に記載したものを含む、当技術分野で標準的な任意の方法による評価で、BH4の産生または活性を、未処置の対照細胞に比して少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%低下させる能力を有する、任意の作用物質のことである。または、阻害薬は、哺乳動物に対して投与された場合に、疼痛を、未処置の対照に比して少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%治療、予防または軽減することができる。
【0078】
疼痛のこのような軽減または予防は、本明細書に記載したもののような、当技術分野で知られた任意の手法によって測定しうる。本発明の方法に従って用いうる化合物の例には、GTPCHの阻害薬であるDAHP;DHPRの阻害薬であるMTX;SPRの阻害薬であるNAS;テトラヒドロ-L-ビオプテリン、L-セピアプテリン、7,8-ジヒドロ-L-ビオプテリン、6,7-ジメチルテトラヒドロプテリン塩酸塩、N-アセチル-セロトニン(NAS)、N-クロロアセチルセロトニン、N-メトキシアセチルセロトニン、N-クロロアセチルドーパミン、さらには、本発明のスクリーニング方法のいずれかによって同定された任意の化合物が含まれる。用いうるその他の薬剤については以下でさらに述べる。
【0079】
任意で、BH4阻害薬は、BH4合成酵素のいずれかに対する低分子アンタゴニストまたはアンチセンスであってよい。RNA干渉(RNAi)は、本発明の一次感覚ニューロンなどの哺乳動物細胞を含む真核細胞における遺伝子サイレンシングの強力な方法となるため、BH4合成経路を標的とするためにこれを用いることもできる。RNAiの基本的な手法は、遺伝子機能の非遺伝的で後成的なノックアウト(これは標的遺伝子におけるヌル変異の表現型模写となる)を作製する目的で、配列特異的二本鎖RNAをニューロンに導入することを含む。RNA干渉については以前に記載されている(O'Neil NJ, et al., Am J Pharmacogenomics (2001) :45-53)。
【0080】
または、鎮痛薬が、BH4または何らかのBH4合成酵素の生物活性を妨げる、ドミナントネガティブタンパク質、またはドミナントネガティブタンパク質をコードする核酸であってもよい。ドミナントネガティブタンパク質とは、そのドミナントネガティブタンパク質に対応する野生型タンパク質の少なくとも10、20、35、50、100個の、または150個よりも多いアミノ酸に対して、少なくとも50%、70%、80%、90%、95%またはさらには99%の配列相同性を有する、任意のアミノ酸分子のことである。例えば、ドミナントネガティブBH4合成酵素は、それがもはやBH4を産生できなくなるような変異を有してもよい。
【0081】
本発明によれば、ドミナントネガティブタンパク質を、発現ベクターとして投与することもできる。発現ベクターは非ウイルス性ベクターでもウイルス性ベクター(例えば、レトロウイルス、組換えアデノ随伴ウイルスまたは組換えアデノウイルス性のベクター)でもよい。または、ドミナントネガティブタンパク質を、組換えタンパク質として、例えばマイクロインジェクション法を用いて後根神経節または脊髄に直接投与することもできる。
【0082】
GTPシクロヒドロラーゼI(GTPCH)の阻害薬
BH4デノボ生合成における律速酵素は、GTPを7,8-ジヒドロネオプテリン三リン酸に変換するGTPシクロヒドロラーゼI(GTPCH)である(図2A参照)。時間の経過に伴い、BH4の蓄積は、GTPCHフィードバック調節タンパク質(GTPCH Feedback Regulatory Protein)(GFRP)によって媒介される反応において、GTPCHのフィードバック阻害を引き起こす。フェニルアラニンの存在下では、GFRPは、GTP結合を増強することにより、GTPCH活性のフィードフォワード(feed-forward)活性化を誘導する(Maita et al., (2002) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 99: 1212-1217)。しかし、BH4の存在下では、GFRPはGTPCH酵素活性のフィードバック阻害を誘導し(Yoneyama and Hatakeyama, (1998) J. Biol. Chem. 273:20102:20108);Yoneyama and Hatakeyama (2001) Protein Sci. 10:981-878)、このためBH4生成は自律的に阻害される。
【0083】
このため、GTPCH活性を阻害する任意の作用物質は、BH4の生成を効率的に低下させ、その結果として鎮痛を誘導する。GTPCH阻害薬は、酵素の触媒中心との結合に関して基質GTPと競合してもよい(図20)。または、GTPCH阻害薬(例えばBH4類似体)が、GTPCH/GFRP複合体と結合し(図21)、それによってBH4のフィードバック阻害を模倣することによってBH4生成を阻害してもよい。GFRP mRNAは脳幹ニューロンに豊富に存在するが、これは中脳のドーパミンニューロンおよび青斑核のノルエピネフリンニューロンでは検出されていない(Kapatos et al. (1999) J. Neurochem. 72: 669-675)。このため、GTPCH阻害薬のGFRP依存性は、特異性を付与すると同時にドーパミンに伴う副作用を回避させる可能性がある。
【0084】
本明細書において、本発明者らは、例えば、特異的GTPCH阻害薬である2,4-ジアミノ-6-ヒドロキシピリミジン(DAHP)が、さまざまな神経障害性疼痛および炎症のモデルにおいて鎮痛を誘導することを示した(図8〜13参照)。DAHPにより媒介されるGTPCHの阻害は、GFRP依存的な機序(低濃度で)およびGFRP非依存的な機序(より高い濃度で)によって媒介される。したがって、DAHPは、低濃度での間接的なGTPCH阻害の機序という点でBH4を模倣する。より高い濃度では、DAHPは、触媒部位との結合に関して、生理的GTPCH基質であるグアノシン-三リン酸(GTP)と競合する(Xie et al., (1998) J. Biol. Chem. 273: 21091-21098)。
【0085】
GTPCHとGTPとの相互作用に関する生化学的および結晶学的な研究は、GTPCHの活性部位に存在する高度に保存されたアミノ酸とグアニンのピリミジン部分、すなわち、それぞれ1位、2位および3位の窒素原子ならびに6位の酸素との間に、水素結合が形成されることを明らかにした(図20)(Rebelo et al., (2003) J. Mol. Biol. 326: 503-516)。グアニン構造のこの特定の部分は、DAHPのピリミジン構造にも、この酵素カスケードの最終産物であるテトラヒドロビオプテリン(BH4)のプテリジン構造の部分にも厳密に一致する。
【0086】
DAHP、グアニンおよびBH4の間に構造的相同性があること(図18参照)は、これらの分子においてGTPCHとの結合にとって決定的である可能性が高いのはピリミジン部分であることを示している。これらの部位に修飾のあるさまざまなピリミジン分子の分析により、2位、4位および6位での変化はGTPCH阻害活性の低下または消失を伴うことが判明している(Yoneyama et al. (2001) Arch. Biochem. Biophys. 388: 67-73)(図19参照)。
【0087】
一方、グアニン自体(すなわち生理的基質の部分)および7位または8位に修飾のあるグアニン類似体は、より高い効力(DAHPの約10倍の高さ)でGTPCHを阻害する(Yoneyama et al., 前記)(図19)。したがって、グアニンのような五員環を含む薬剤(すなわちBH4との類似性も高い)は、高い阻害効果を有する。興味深いことに、BH4はグアニン類似体よりも約10倍(Yoneyama et al., 前記)(図19)、DAHPよりも100倍効力が高く、このことはBH4のC-6に結合した側鎖はさらなる効力および/または特異性を付与することを示唆している。このことは、6S-BH4鏡像異性体およびC-6に側鎖を有しないBH4の類似体の効果が、BH4よりも1桁を超えて下回ることによって裏づけられる(Harada et al. (1993) Science 260: 1507-1510)。したがって、DAHPの効力は、例えば、BH4に対するその構造的類似性を高めると同時に、それがBH4依存性酵素(例えば、チロシン、フェニルアラニンおよびトリプトファンヒドロキシラーゼ;グリセロールエーテルモノオキシダーゼ;ならびに一酸化窒素シンターゼ(これらは、N-(4-クロロフェニル)N'-ヒドロキシグアニジンなどの種々のN-アルキルおよびN-アリールヒドロキシグアニジンを、一酸化窒素の生成のための基質として利用する)(Moali et al. (2001) Chem. Res. Toxicol. 14:202-210;Renodon-Corniere et al., (1999) Biochemistry 38: 4663-8))にとっての補助因子として用いられることを防止する置換または修飾を保つことによって高めることができる。
【0088】
以上のことに鑑みて、本発明に従って治療される哺乳動物に対して、式:
を有する化合物を含む組成物を投与することができ、式中、R1はH、C1-6アルキル、ハロ、NO2、CN、CO2R4、CONR4R5、SO2R4、SO2NR4R5、OR4またはNR4R5である。R4およびR5のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであってよい;R2はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであってよい;R3はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、C1-4アルクヘテロアリール、CO2R6、CONR7R8、SO2R6またはSO2NR7R8であってよく、式中、R6はC1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであり、R7およびR8のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールである。
【0089】
または、R3が上記の通りであって、R1およびR2が共に、
によって表されてもよく、式中、R1/R2連結のN、OまたはSはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11、R12およびR13のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールである。
【0090】
任意で、R3が上記の通りであって、R1およびR2が共に、
によって表されてもよく、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R12またはR13のそれぞれは上記の通りであり、R14はOR4、ハロ、NO2、CN、CO2R7、CONR7R8、SO2R7、SO2NR7R8、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであり、この際、R7およびR8のそれぞれは独立に、H、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、ヘテロアリール、C1-C4アルカリルまたはC1-C4アルクヘテロアリールである。
【0091】
もう1つの選択肢として、R1およびR2が共に、
によって表されてもよく、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11およびR14のそれぞれは上記の通りであり、R3は存在せず、R14を有する炭素とR2を有する窒素との間には二重結合が形成される。
【0092】
任意で、組成物は、R1がH、C1-6アルキル、ハロ、NO2、CN、CO2R4、CONR4R5、SO2R4、SO2NR4R5、OR4またはNR4R5であるような、式(I)の化合物を有してもよい。それに応じて、R4およびR5のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであってよく、R2はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであってよく、R3はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、C1-4アルクヘテロアリール、CO2R6、CONR7R8、SO2R6またはSO2NR7R8であってよく、式中、R6はC1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであり、R7およびR8のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールである。
【0093】
望ましい場合、組成物は、式:
の化合物を含み、式中、R1およびR2は共に、
によって表されてもよく、この際、R1/R2連結のN、OまたはSはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11、R12およびR13のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールである。
【0094】
または、組成物は、式:
の化合物を含み、式中、R3は上記の通りであり、R1およびR2は共に、
によって表され、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R12およびR13のそれぞれは上記の通りであり、R14はOR4、ハロ、NO2、CN、CO2R7、CONR7R8、SO2R7、SO2NR7R8、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであり、式中、R4、R7およびR8のそれぞれは独立に、H、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、C1-C4アルカリル、ヘテロアリールまたはC1-C4アルクヘテロアリールである。
【0095】
または、組成物は、式:
の化合物を含み、式中、R1およびR2は共に、
によって表されてもよく、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11およびR14のそれぞれは上記の通りであり、R3は存在せず、R14を有する炭素とR2を有する窒素との間には二重結合が形成される。
【0096】
組成物が、式:
の化合物を含む場合には、R1およびR2は共に、
によって表されてもよく、式中、R1/R2連結のN、OまたはSはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11、R12およびR13のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールである。
【0097】
または、組成物は、式:
の化合物を含み、式中、R3は上記の通りであり、R1およびR2は共に、
によって表され、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R12およびR13のそれぞれは上記の通りであり、R14はOR4、ハロ、NO2、CN、CO2R7、CONR7R8、SO2R7、SO2NR7R8、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであり、この際、R7およびR8のそれぞれは独立に、H、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、C1-C4アルカリル、ヘテロアリールまたはC1-C4アルクヘテロアリールである。
【0098】
任意で、組成物は、式:
の化合物を含んでもよく、式中、R1およびR2は共に、
によって表され、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11およびR14のそれぞれは上記の通りであり、R3は存在せず、R14を有する炭素とR2を有する窒素との間には二重結合が形成される。
【0099】
本発明の組成物の内部に含まれうる化合物の例には、例えば、以下のものが含まれる。
これらの化合物は図19に示されている。
【0100】
さらに、本発明の組成物は、式:
の化合物を含んでもよく、式中、R15はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであり、R16はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、C1-4アルクヘテロアリール、CO2R17、CONR18R19、SO2R17またはSO2NR18R19である。R17はC1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであってよく、R18およびR19のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであってよい。
【0101】
化合物のそのほかの例には、テトラヒドロ-L-ビオプテリン(BH4・2HCl、GTPシクロヒドロラーゼIの非競合的阻害薬である還元型プテリンで、Kiは15.7μMである);L-セピアプテリン(GTPシクロヒドロラーゼI阻害薬としての効力が酸化型プテリンの12倍の高さである還元型プテリンで、IC50は12.7±1.8μMである);7,8-ジヒドロ-L-ビオプテリン(BH2、これはインビトロでのGTPシクロヒドロラーゼIの最終代謝産物であり、GTPシクロヒドロラーゼIの非競合的阻害薬として働き(Kiは14.4μM)、阻害薬としては酸化型プテリン、葉酸塩およびアミノプテリンよりも抗力が約12倍の高さである);および6,7-ジメチルテトラヒドロプテリン塩酸塩(GTPシクロヒドロラーゼIの非競合的阻害薬(IC50は76〜112μM))が含まれる。以上に考察したように、GTPCHの阻害を、GFRP非依存的にGTP競合様式でGTPCHに対して作用する阻害薬(例えば、図19に示されている上記のようなグアニン誘導体など)を用いて行うこともできる。
【0102】
GTPCHフィードバック調節タンパク質(GFRP)の活性化薬
GFRPは、GTPCHによるBH4合成に対する内因性阻害因子である。GFRPとGTPCHとの結合は、それ自体が、GFRPをBH4生成の負のフィードバック調節因子とさせるBH4依存的イベントである。BH4と構造的に類似した分子であるDAHPが、GFRPと結合してGTPCH阻害を促進することが最近見いだされた(Kolinsky et al., J. Biol. Chem., Manuscript M405370200, July 29, 2004)。このため、GFRPのGTPCHに対する結合を増強してBH4の生成を阻害することによってGFRPでのBH4および/またはDAHPの作用を模倣する分子は、本発明の方法において有用である。または、GFRPとGTPCHとの結合を促進するがGFRP上のBH4部位での結合は促進しない分子も有用である。このような分子には、例えば、二重特異性抗体または架橋剤が含まれる。
【0103】
セピアプテリンレダクターゼの阻害薬
セピアプテリンレダクターゼ(SPR)は、BH4経路における最終的な合成酵素として働く。本明細書において、本発明者らは、SPRの阻害薬の1つであるNAS(50mg/kg i.p.)が、炎症性疼痛のモデルにおいて鎮痛を生じさせることを示した(図15Aおよび15B)。効力の高いその他のセピアプテリンレダクターゼ阻害薬には、N-クロロアセチルセロトニン、N-メトキシアセチルセロトニンおよびN-クロロアセチルドーパミンが含まれる。
【0104】
ジヒドロプテリジンレダクターゼ(DHPR)の阻害薬
DHPRを含むBH4の回収機構により、デノボ合成を行わずに酸化型BH4の再利用が可能となる。神経損傷後にDRGおよび脊髄でアップレギュレートされるDHPRの阻害は、BH2からのBH4の再利用を阻害することにより、鎮痛を誘導する。例えば、メトトレキサート(MTX、アメトプテリン水和物としても公知(0.1mg/kg/dを髄腔内持続注入として、または0.2mg/kg i.p. 1日1回として)の投与は、BH4デノボ合成に直接影響を及ぼすことなく疼痛軽減をもたらす(図16A〜16F参照)。MTXはジヒドロ葉酸レダクターゼの阻害薬であり、免疫抑制薬としてヒトにおける使用が承認されている。これは通常、低用量で関節リウマチの治療のために用いられる(Weinstein et al. (1985) Am J Med 79: 331-7, Williams et al. (1985) Arthritis Rheum;28: 721-30、Weinblatt et al. (1985) N Engl J Med 312: 818-22, Hoffmeister et al. (1983) Am J Med 75: 69-73, Giannini et al. (1992) N Engl J Med 326: 1043-9)。全身的に投与されたMTXは主として末梢標的およびDRGに到達するが、脊髄性に送達されたMTXは脊髄およびDRGを標的とする。全身投与されたMTX(低用量で)は、ATP結合カセット(ABC)輸送体(プロベネシド感受性多剤耐性タンパク質(MRP)1-3)の基質であるため、血液脳関門を通過しない。その結果、MTXの全身投与には、MTXが確実に脊髄および脳に到達するように、プロベネシドまたはMRPもしくは有機陰イオン輸送体のその他の阻害薬の同時投与が必要なことがある。
【0105】
望ましい場合、鎮痛を、相加的な効果を得るためにBH4経路の両方の部分、すなわち生合成経路および回収経路を同時にブロックすることによって誘導することもできる。例えば、疼痛の軽減を、DAHPを用いてGTPCHを、さらにメトトレキサート(または中枢神経系において比較的高い濃度が得られる他のDHPR阻害薬)を用いてDHPRを同時に阻害することによってBH4合成をブロックすることにより、著しく増強することができる。
【0106】
プテリン-4α-カルビノールアミンデヒドラターゼ(PCD)の阻害薬
キノイドジヒドロプテリン産物は、プテリン-4α-カルビノールアミンデヒドラターゼ(PCD)の強力な阻害薬であり(KIはそれぞれのKmの約2分の1である)、このため、本発明に従って用いることができる(Rebrin et al. (1995) Biochemistry 34: 5801-10)。
【0107】
第2の治療薬
本発明の組成物は、単独で投与してもよく、または、侵害受容性、炎症性、機能性もしくは神経障害性の疼痛の治療に用いられる鎮痛薬といった第2の治療薬と組み合わせて投与してもよい。本発明によれば、第2の治療薬は、それ単独で投与された場合には治療効果を生じさせても生じさせなくともよいが、本発明の組成物と組み合わせて投与された場合にはこのような効果(例えば、疼痛軽減)をもたらす。
【0108】
鎮痛薬の例には、以下が含まれる:非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)(例えば、ロフェキソシブ(rofexocib)、セレコキシブ、バルデコキシブ、パラコキシブ、サリチル酸、アセトアミノフェン、ジクロフェナク、ピロキシカム、インドメタシン、イブプロフェンおよびナプロキセン)、オピオイド鎮痛薬(例えば、プロポキシフェン、メペリジン、ヒドロモルホン、ヒドロコドン、オキシコドン、モルヒネ、コデインおよびトラモドール)、NMDA拮抗性鎮痛薬(例えば、2-ピペリジノ-1アルカノール誘導体、ケタミン、デキストロメトルファン、エリプロジルまたはイフェプロジル)、麻酔薬(例えば、亜酸化窒素、ハロタン、フローセン)、局所麻酔薬(リドカイン、エチドカイン、ロピバカイン、クロロプロカイン、サラピンおよびブピバカイン)、ベンゾジアゼピン類(ジアゼパム、クロルジアゼポキシド、アルプラゾラムおよびロラゼパム)、カプサイシン、三環系抗うつ薬(例えば、アミトリプチリン、ペルファナジン、プロトリプチリン、トラニルシプロミン、イミプラミン、デスイミプラミンおよびクロミプラミン)、骨格筋弛緩性鎮痛薬(フレクサリル、カリソプロドール、ロバキシサル、ノルジージックおよびダントリウム)、片頭痛治療薬(例えば、エリトリプタン、スマトリプタン、リザトリプタン、ゾルミトリプタンおよびナラトリプタン)、抗けいれん薬(例えば、フェニトイン、ラモトリジン、プレガバリン、カルバマゼピン、オクスカルバゼピン、トピラメート、バルプロ酸およびギャバペンチン)、バクロフェン、クロニジン、メキシレチン、ジフェニル-ヒドラミン、ヒドロキシシン、カフェイン、プレドニゾン、メチルプレドニゾン、デカドロン、パロキセチン、セルトラリン、フルオキセチン、トラモドール、ジコノチド、レボドパ。
【0109】
望ましい場合、治療しようとする哺乳動物に対して、BH4の産生を阻害する複数の薬剤を投与してもよい。任意で、本発明の組成物は、複数のこのような阻害薬を含みうる。または、哺乳動物に対して、本発明の組成物に加えて、BH4の下流で働く酵素の特異的阻害薬を投与することもできる。このような阻害薬については以下に述べる。
【0110】
BH4依存性酵素
BH4は、いくつかの酵素、すなわちフェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンという3種類の芳香族アミノ酸のヒドロキシラーゼ;エーテル脂質オキシダーゼ;ならびに3種類の一酸化窒素シンターゼ(NOS)アイソザイムの必須な補助因子である。このため、BH4は、神経伝達物質の形成およびシグナル伝達経路を含む、数多くの生物プロセスに重要な役割を果たしている。
【0111】
一酸化窒素(NO)は、NMDA受容体刺激後に侵害受容性ニューロンから放出され、シナプス前ニューロンへと逆方向に拡散して、そこにおいてグアニリルシクラーゼ/cGMP/cGMP依存性キナーゼ経路を刺激することによって、さらなるグルタミン酸放出を引き起こす。さらに、NOはシナプス後ニューロンの興奮性も調節する。L-NAME(NG-ニトロ-L-アルギニン-メチルエステル)などのNOシンターゼ阻害薬は、さまざまなモデルにおいて炎症性痛覚過敏および神経障害性アロディニアを軽減し、このため、本発明の組成物と共にまたは混合して投与することができる。すべてのNOS酵素の活性をブロックする薬剤が、神経性NOS(nNOS)または誘導性NOS(iNOS)のいずれかの特異的阻害薬よりも一般に効果が高いことを考えると、この双方の酵素が疼痛に関与している可能性が非常に高い。nNOSはニューロンで構成性に発現され、末梢侵害受容性刺激後にアップレギュレートされる。iNOSは末梢侵害受容性刺激後に脊髄でアップレギュレートされ(特にグリア細胞において)、nNOSよりもはるかに高いレベルのNOを生じさせる。内皮一酸化窒素シンターゼ(eNOS)は主として内皮細胞で発現されるが、ノックアウトマウスにおける研究から、この酵素が疼痛調節にも寄与することが示されている。これらの酵素のすべてはBH4依存性でり、これを補助因子として用いる。鎮痛を誘導するために用いうる可能性のあるNOS経路の阻害薬には、NOS-1(nNOS)の阻害薬、例えば、N-メチル-L-アルギニン(M 7033)、N-ニトロ-L-アルギニン(N 5501)、7-ニトロインダゾール(N 7778)、1-(2-トリフルオロメチルフェニル)イミダゾール(T 7313)、L-チオシトルリン、S-メチル-L-チオシトルリン(M 5171)など;NOS-2(iNOS)の阻害薬、例えばアミノグアニジン(A 8835、A 7009)、S-ベンジルイソチオ尿素(B 9138)、1-(2-トリフルオロメチルフェニル)イミダゾール(T 7313)、L-N6-(1-イミノエチル)リジン(I 8021)および1400W(W 4262)などが含まれ;かつ、NOS-3(eNOS)の阻害薬には、N-メチル-L-アルギニン(M 7033)、N-ニトロ-L-アルギニン(N 5501)、N-イミノエチル-L-オルニチン(I 8768)および7-ニトロインダゾール(N 7778)が含まれる。
【0112】
チロシンヒドロキシラーゼは、カテコールアミンの合成における、すなわち、BH4の存在を必要とする反応におけるアミノ酸チロシンからのドーパミンの生成における第一段階である。トリプトファンヒドロキシラーゼはセロトニン合成において鍵となる酵素である。ノルアドレナリンおよびセロトニンは、それぞれ青斑核および大縫線核から生じる下行性の抑制性ニューロンにおける神経伝達物質として作用する。このため、これらの酵素にとっての補助因子の利用可能性の低下は疼痛の増大をもたらす。この潜在的な短所を克服するために、本発明の組成物を、5HT受容体アゴニストおよび/または中枢作用性α受容体アゴニスト(クロニジンなど)と組み合わせて投与してもよい。5-HT-1Bアゴニストであるm-トリフルオロメチルフェニル-ピペラジン(TFMPP)および7-トリフルオロメチル-4(4-メチル-1-ピペラジニル)-ピロロ(1,2-1a)キノキサリン(CGS 12066B)(Alhaider et al., (1993) J Pharmacol Exp Ther. 265: 378-85)または5HT-2AアゴニストであるFR143166(Ochi et al. (2002) Eur J Pharmacol. 452: 319-24)などのさまざまな5HT-1アゴニストが、単独で投与された場合に抗侵害受容性効果を有する。または、可能性のあるセロトニンおよび/またはノルアドレナリン合成の低下に対して、三環系抗うつ薬(例えば、アミトリプチリン)または選択的セロトニン再取り込み阻害薬(例えば、パロキセチン、上記参照)などの再取り込み阻害薬との併用療法が勝る可能性もある。
【0113】
BH4の直接的効果
BH4のR鏡像異性体(6R-BH4)は、その補助因子的な働きに加えて、脳のある特定の領域に対して微量透析によって送達された場合に、ニューロンに対してさまざまな直接的効果を及ぼす。例えば、6R-BH4は線条体におけるドーパミンの放出を増加させる。これらの効果がチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬(α-メチル-p-チロシン)の存在下でも存続することを考えると、これはおそらくはドーパミン合成の増加には起因しないと考えられる(Koshimura et al. (1995) J Neurochem. 65: 827-30)。6R-BH4はまた、海馬におけるアセチルコリン(Ohue et al. (1991) Neurosci Lett. 128: 93-6)ならびに線条体および前頭皮質におけるグルタミン酸およびセロトニン(Mataga et al. (1991) Brain Res. 551: 64-71)といった他の神経伝達物質の放出も増加させる。神経伝達物質の放出に対するBH4の効果は、カルシウムチャンネル拮抗薬によって阻害される(Koshimura et al. (1995) J Neurochem. 65: 827-30)。ラットにおいて微量透析灌流液に対する6R-BH4の添加は迷走神経の運動核におけるカルシウム流も増加させるが、L-DOPAまたは一酸化窒素供与体Sin-1の添加は影響を及ぼさないことから、これらの影響はそれぞれチロシンヒドロキシラーゼおよびNOS活性とは無関係であることが示唆される(Shiraki T et al., (1996) Biochem Biophys Res Commun. 221: 181-5)。BH4のS-鏡像異性体(6S-BH4)または前駆体であるセピアプテリンは神経伝達物質の放出に影響を及ぼさない。このため、6R-BH4は特異的「BH4受容体」を介して作用するように思われる。しかし、BH4に関してこのような膜結合型細胞外結合部位はまだ同定/特性決定が行われていない。
【0114】
新規なBH4結合部位の候補に関するスクリーニング
本明細書に記載した結果は、「BH4受容体」として働く、新規な膜結合型または細胞内のBH4結合分子の存在を示唆する。補酵素としてのBH4の特徴は文献に詳細に記載されているが、他のタンパク質との結合およびその輸送機構は調べられていない。BH4などの低分子の結合部位に関するハイスループットスクリーニングを可能にする、新規なプロテオミクスアプローチが開発されている。大規模タンパク質チップ、すなわち個別のタンパク質の二次元提示物が、多数の精製タンパク質をマイクロプレート上に固定化することによって構築されている。それらは例えば、タンパク質-タンパク質相互作用、薬剤標的または酵素-基質相互作用をアッセイするために用いられる。一般にそれらは、発現されたタンパク質をそれから精製して固定化するために、大腸菌、酵母または他の類似の発現系にクローニングされた発現ライブラリーを必要とする。例えばHisタグ付加を含む、当技術分野で公知の任意の適したタンパク質精製方法を用いることができる。リボソームディスプレイなどの無細胞タンパク質転写/翻訳は、タンパク質の合成のための代替的な選択肢である。ファージまたは酵母ディスプレイライブラリーを用いることもできる。
【0115】
BH4の結合は、例えば、以前に記載されているトリチウム(Werner et al., Biochem. J. 604: 189-193, 1994)で、または、BH4の一級アミノ基と結合しうるビオチンでBH4を標識することによって直接検出することもできる。トリチウムの取り込みは、合成酵素を過剰発現させ、基質として[3H]標識GTPを用いる細胞系システムで行わせることができる(Werner et al., 1994)。市販の6R-BH4塩酸塩をテンプレートとして用いて、BH4をトリチウムで化学標識することもできる。BH4標識のための代替的な選択肢として、新規な標的に対するその結合を、標識された捕捉性分子、例えばBH4が補助因子として結合する酵素の1つ、またはBH4抗体を含むペプチドを用いることによって検出することもできる。質量分析法、表面プラスモン共鳴および原子間力顕微鏡法を含む、標識を用いない検出方法を用いることもでき、これらではリガンドの変化が避けられる。大規模タンパク質アレイに加えて、後角およびDRGの組織または細胞のタンパク質抽出物の二次元ゲル電気泳動を、新規な結合部位のスクリーニングのために用いることもできる。続いてゲルをPVDF膜に対してブロットし、標識BH4に対して曝露させる。陽性タンパク質スポットは、マトリックス支援レーザー脱離イオン化-飛行時間質量分析法(MALDI-TOF MS)を用いる質量フィンガープリント法によって分析することができる。
【0116】
BH4経路を用いた疼痛または末梢神経病変の診断
本発明によれば、哺乳動物における疼痛または外傷性、代謝性もしくは毒性の末梢神経病変を、哺乳動物から入手した生物試料(例えば、血清、血漿、尿、脳脊髄液、滑液、組織滲出物または組織の試料)におけるBH4、BH4中間体、BH4前駆体またはBH4代謝産物のレベルを測定することによって診断することができる。当技術分野で公知の任意の標準的な方法を用いて、このようなレベルが対照に比して高く検出されれば(対照に比して少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%、または100%を超えて高い)、疼痛または末梢神経病変が診断される。または、いずれかのBH4合成酵素のレベルまたは活性の上昇が検出された場合に、疼痛または末梢神経病変を診断することもできる。このような上昇は、対照条件に比して少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%、または100%を超えて高いことが望ましい。本発明によれば、BH4経路は神経損傷および疼痛のバイオマーカーとして役立つ。
【0117】
本発明はさらに、血清、血漿、尿、脳脊髄液、滑液、組織滲出物および組織の試料といった生物試料におけるBH4、その前駆体および中間体(例えば、7,8-ジヒドロネオプテリン三リン酸ネオプテリンおよび6-ピルボイルテトラヒドロプテリン)または代謝産物(例えば、プテリン、ビオプテリン、7,8ジヒドロプテリン、7,8ジヒドロキサントプテリン、キサントプテリン、イソキサントプテリンまたはロイコプテリン)の測定を伴う、哺乳動物における疼痛または外傷性、代謝性もしくは毒性の末梢神経病変を診断するためのキットも提供する。例えば、本発明は、以上の化合物のいずれか1つ(例えば、ビオプテリンまたはネオプテリン)に対して特異的な抗体、および哺乳動物における疼痛を診断するための使用説明書を含む。これに関しては、疼痛の症状を伴う状態について検査しようとする、または外傷性、代謝性もしくは毒性の末梢神経病変が疑われる哺乳動物から血清を単離し、それを本発明の抗体を用いるELISAまたはRIAアッセイに供してもよい。哺乳動物における疼痛は、その哺乳動物の血清におけるBH4の血清レベル(抗体により検出される)が対照血清試料におけるBH4レベルよりも高いことによって診断される。哺乳動物における疼痛、疼痛のサブタイプまたは末梢神経病変の診断は、その哺乳動物から入手した生物試料で測定された化合物のレベルが、対照生物試料における同じ化合物のレベルに比して少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、または100%を上回って高い場合に下される。
【0118】
疼痛モデル
さまざまなモデルにより、強い刺激または有害刺激(生理的疼痛または侵害受容性疼痛)に対する正常動物の感受性が試験される。これらの試験には、温熱性、機械的または化学的な刺激に対する応答が含まれる。
【0119】
温熱性刺激は通常、高温刺激(一般的には42〜55℃の間)の適用を伴い、これには例えば以下が含まれる:尾部に対する輻射熱(テイルフリック試験(tail flick test))、後肢の足底面に対する輻射熱(ハーグリーブス試験(Hargreaves test))、ホットプレート試験、および後肢または尾部の熱水への浸漬。このようなモデルにおける評価項目には、痛みを伴う応答に関する潜時、応答、発声および肢舐めの持続時間が含まれる。冷水中への浸漬、アセトン蒸発または冷却プレート試験を、寒冷性疼痛への応答性を試験するために用いることもできる。
【0120】
機械的刺激を用いる試験では一般に、段階的な強度の単線維性フォンフライ毛(結果指標は、反射を誘発するために必要な線維の力である)または肢に対する持続的な加圧刺激(例えば、Ugo Basile社の無痛覚計)に対する後肢の逃避反射の誘発に関する閾値を測定する。標準的なピン刺激に対する応答の持続時間を測定することもできる。
【0121】
化学刺激を用いる場合には、皮膚、筋肉関節または内臓(例えば、膀胱または腹膜)に対する刺激性化学物質(例えば、カプサイシン、マスタードオイル、ブラジキニン、ATP、ホルマリン、酢酸)の適用または注射に対する応答を測定する。結果指標には、発声、肢舐め、身もだえ(writhing)または自発的屈曲が含まれる。
【0122】
さらに、さまざまな試験で、疼痛神経経路の末梢性または中枢性要素の興奮性の変化を測定することにより、疼痛感作が評価される。これに関して、末梢性感作(すなわち、高閾値侵害受容器の閾値および応答性の変化)は、反復的な熱刺激により、ならびに感作性化学物質(例えば、プロスタグランジン、ブラジキニン、ヒスタミン、セロトニン、カプサイシン、マスタードオイル)の適用または注射により、誘導することができる。結果指標は、行動する動物に上記の手法を用いた適用/刺激領域における温熱性および機械的な感受性、またはインビボでの、もしくは単離した皮膚神経標本を用いての、単一の感覚線維の受容野特性の電気生理学的測定である。感覚ニューロンの電気生理学的、神経化学的または細胞生物学的な特性を利用して、これらのパラメーターを間接的に調べることもできる(例えば、単離された感覚ニューロン(例えば、培養下にある後根神経節ニューロン)からの記録、感作性刺激(例えば、プロテインキナーゼCまたはA)によるシグナル伝達経路の活性化、または受容体もしくはイオンチャンネルのリン酸化の測定)。中枢性感作(すなわち、末梢疼痛線維での活性によって誘導される中枢神経系におけるニューロンの興奮性の変化)は、有害刺激(例えば、熱)、化学刺激(すなわち、カプサイシン、マスタードオイルまたはホルマリンなどの刺激性化学物質の注射または適用)または感覚線維の電気的活性化によって誘導することができる。結果指標としては、行動的(すなわち、適用領域の外側、すなわち二次痛覚過敏または触覚アロディニアの領域(通常なら無害な触覚刺激に対する疼痛反応)での温熱性および機械的な応答性)、電気生理学的(すなわち、単一の中枢性ニューロンの受容野特性)、神経化学的(すなわち、中枢性ニューロンにおけるシグナル伝達経路の活性化(例えば、ERK、p38、CREB、c-fosなどの前初期遺伝子、キナーゼ、PKC、PKA、またはsrc)またはNMDAもしくはAMPA受容体といった受容体もしくはイオンチャンネルのリン酸化)なものであってよい。機能的画像化法を、活性化のパターンの変化を評価するために利用することもできる。
【0123】
疼痛感受性に対する末梢炎症の影響を測定するためのさまざまな疼痛試験も開発されている(Stein et al., Pharmacol. Biochem. Behav. (1988) 31: 445-451;Woolf et al.,Neurosci. (1994) 62: 327-331)。炎症は、刺激物質(例えば、完全フロイントアジュバント、カラゲナン、テレピン油およびクロトン油)の皮内、皮下、筋肉内、関節内または内臓内への注射によって生じさせてもよい。または、制御されたUV光熱傷および虚血の作成、またはリポ多糖(LPS)もしくは神経成長因子(NGF)などのサイトカインもしくは炎症性メディエーターによって炎症の影響を模倣することもできる。
【0124】
炎症の誘導後の結果指標には、行動(例えば、温熱性および機械的感受性(以上に考察)、体重支持、内臓過敏性(例えば、膀胱内または腸内のバルーンの膨張)、自発的移動活動、または場所嗜好性タスクのようなより複雑な行動の成績)、電気生理学(例えば、一次感覚ニューロンおよび中枢ニューロンからのインビボおよびインビトロ記録、特に受容野特性、興奮性またはシナプス入力の変化に注目する)、神経化学(例えば、一次感覚ニューロンおよび中枢ニューロンにおける伝達物質、神経ペプチドおよびタンパク質の発現および分布、ニューロンにおけるシグナル伝達カスケードの活性化、転写因子の発現ならびにタンパク質のリン酸化)における変化、ならびに神経活動の変化を検出するための画像化法が含まれうる。
【0125】
さらに、さまざまな試験で、末梢神経系の病変を用いて末梢神経障害性疼痛が評価される。このような例の1つは「軸索切断疼痛モデル」であり、これは例えば、外傷性損傷または実験的もしくは外科手術的な操作によって1つまたは複数の末梢神経線維を切断する、末梢神経の完全離断を伴う(Watson, J. Physiol. (1973) 231:41)。その他の類似の試験には、脊髄分節神経の結紮を用いるSNL試験(Kim and Chung Pain (1992) 50:355)、神経部分損傷を用いるセルツァー(Seltzer)モデル(Seltzer, Pain (1990) 43: 205-18)、坐骨神経部分損傷(SNI)モデル(Decosterd and Woolf, Pain (2000) 87:149)、慢性絞扼性損傷(CCI)モデル(Bennett (1993) Muscle Nerve 16:1040)、糖尿病(ストレプトゾシンモデル)、ピリドキシン神経障害、タキソール、ビンクリスチンおよびその他の抗腫瘍薬により誘発される神経障害といった毒性神経障害を用いる試験、神経の虚血を用いる試験、末梢神経炎モデル(例えば、神経周囲に施されたCFA)、HSV感染を用いたヘルペス後神経痛のモデル、ならびに圧迫モデルが含まれる。以上の試験のすべてにおいて、結果指標は、例えば、行動(例えば、上記のような温熱性および機械的感受性、体重支持、自発的活動、または場所嗜好性タスクのようなより複雑な行動の成績)、電気生理学(例えば、インビボおよびインビトロでの一次感覚ニューロンおよび中枢ニューロン、特に膜興奮性、自発的活動、受容野特性およびシナプス入力の変化に注目する)、神経化学(例えば、一次感覚ニューロンおよび中枢ニューロンにおける伝達物質、神経ペプチドおよびタンパク質の発現および分布、ニューロンにおけるシグナル伝達カスケードの活性化、転写因子の発現ならびにタンパク質のリン酸化)ならびに神経活動の変化を検出するための画像化法に従って評価することができる。さらに、中枢神経障害性疼痛を模したいくつかの疼痛試験では、例えば脊髄損傷(例えば、機械的、圧迫性、虚血性、感染性または化学性)を含む、中枢神経系の病変を用いる。これらの個々の試験において、結果指標は、末梢神経障害性疼痛に関して用いたものと同じである。
【0126】
以上のモデル間には、疼痛のさまざまな特徴が共通してみられる。この点に関して、生理的疼痛は、機械的および温熱性刺激に対する閾値の高さ、ならびにこの種の刺激に対する急速な一過性応答によって特徴づけられる。炎症性疼痛および神経障害性疼痛は、自然発生的疼痛(自発的屈曲、発声、噛み付き、またはさらには自傷)、通常なら無害な刺激に対する異常な過敏性(アロディニア)、および有害刺激に対する過大応答(痛覚過敏)のいずれかを示す行動を呈することによって特徴づけられる。
【0127】
疼痛の測定
温熱性および機械的な閾値感受性は、例えば、℃、またはグラムもしくはニュートン単位での力の形で、または代替的には応答するまでの時間を指標として、量的に測定することができる。温熱性疼痛閾値に関しては、屈曲逃避応答を誘発する40℃を上回る高温刺激または寒冷刺激(<15℃)を測定することが一般的である。機械的閾値に関しては、屈曲逃避応答を誘発する点状機械的刺激の力(<100g)を測定する。刺激に対する応答の潜時、すなわち動物が応答するまでに要する時間の長さ、の短縮を測定することもできる(一般的には<10秒)。実際の値は、試験の性質および刺激を加える身体領域に依存する。
【0128】
疼痛感受性の増大を試験するためのやり方の1つは、閾値レベルに近い刺激を反復的に加え、この一定の刺激に対する陽性応答の割合の増加について調べることである。疼痛応答性に関して、測定値とは、針刺しまたは高温もしくは寒冷刺激の後に肢を屈曲位に保つ時間の量といった応答の持続時間または大きさである。
【0129】
スクリーニングアッセイ
本発明は、BH4の産生または作用を阻害しうる化合物を同定するためのスクリーニング方法を提供する。有用な化合物には、BH4または図2Aに示された酵素のうち少なくとも1つもしくは複数の生物活性を阻害すること、またはそれらの細胞レベルを低下させることができる、任意の作用物質が含まれる。このような酵素には、例えば、GTPシクロヒドロラーゼ(GTPCH)、ピルボイルテトラヒドロプテリン(PTPS)、セピアプテリンレダクターゼ(SPR)およびジヒドロプテリジンレダクターゼ(DHPR)が含まれる。以上に考察したように、本発明者らは、DAHP、NASおよびメトトレキサートが、疼痛の治療、軽減または予防のために有用であることを示した。例えば、このような薬剤をリード化合物として用いることで、本スクリーニング方法は、鎮痛を誘導するために働く、BH4合成経路の新規な特異的阻害薬の同定を可能にする。スクリーニングの方法にはハイスループット手法が含まれうる。
【0130】
このようなスクリーニングアッセイを実施するために、さまざまな方法を利用することができる。1つのアプローチによれば、BH4合成酵素のうち1つまたは複数を発現する細胞の培養液に対して、候補化合物をさまざまな濃度で添加する。続いて、BH4合成酵素の遺伝子発現を、例えば、BH4合成酵素の核酸分子から調製した任意の適切な断片をハイブリダイゼーションプローブとして用いる標準的なノーザンブロット分析(Ausubel et al.、前記)により、または適切なプライマーを用いるリアルタイムPCRにより測定する。候補化合物の存在下での遺伝子発現のレベルを、候補分子が存在しない対照培養物で測定したレベルと比較する。必要に応じて、候補化合物の影響を、代替的な選択肢として、同じ一般的なアプローチ、ならびに、BH4合成酵素またはBH4(またはその中間体もしくは代謝産物)に対して特異的な抗体を用いるウエスタンブロット法、免疫沈降法またはイムノアッセイなどの標準的な免疫学的手法を用いて、BH4産生のレベルで測定することもできる。例えば、イムノアッセイを、BH4またはGTPCHのレベルを検出またはモニターするために用いることができる。BH4、BH4前駆体またはBH4代謝産物と結合しうるポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を、BH4またはその前駆体もしくは代謝産物のレベルを測定するための任意の標準的なイムノアッセイ形式(例えば、ELISAまたはRIAアッセイ)に用いることができる。また、BH4またはその前駆体もしくは代謝産物を、質量分析、高速液体クロマトグラフィー、分光学的もしくは蛍光定量的な手法、またはそれらの組み合わせを用いて測定することもできる。さらに、総ビオプテリン(BH1、BH2およびBH4)含有量を以下にさらに述べるように測定してもよい。
【0131】
または、本発明のスクリーニング方法を、BH4の生物活性をBH4依存性酵素もしくはBH4結合受容体に対するその結合性を低下させることによって低下させる、または代替的には、いずれかのBH4合成酵素の活性またはレベルを低下させる候補化合物を同定するために用いることもできる。例えば、以下にさらに述べるように、候補化合物を、GTPCH活性を低下させる能力に関して、この酵素を天然に発現する細胞において、この酵素のcDNAのトランスフェクションの後に、またはその酵素を含む無細胞溶液中で、調べることができる。BH4依存性酵素(NOSなど)またはBH4結合受容体(または類似体)の結合または活性化に対する候補化合物の影響は、放射性および非放射性結合アッセイ、競合アッセイ、酵素活性アッセイ、受容体シグナル伝達アッセイによって調べることができる。
【0132】
具体的な一例としては、BH4合成酵素をコードする核酸を発現する哺乳動物細胞(例えば、齧歯動物細胞)を、候補化合物(例えば、ペプチド、ポリペプチド、合成有機分子、天然有機分子、核酸分子またはそれらの構成要素)の存在下で培養する。細胞はBH4合成酵素を内因性に発現してもよく、または代替的には、当技術分野で公知の任意の標準的な手法(例えば、トランスフェクションおよびウイルス感染)によってBH4合成酵素を過剰発現するように遺伝的に操作してもよい。これらの細胞におけるBH4合成酵素の発現レベルを、例えばウエスタンブロット分析によって測定し、続いて、候補化合物と接触させていない対照細胞における同じタンパク質の発現のレベルと比較する。BH4または中間体のレベルの低下を、その合成を低下させることまたはその合成酵素のうち1つのレベルもしくは活性を低下させることの結果として促進させる化合物は、本発明において有用であると判断される。BH4のレベルまたは活性を低下させるその能力から考えて、このような分子は、例えば、疼痛の治療、軽減または予防のための鎮痛治療薬として用いることができる。
【0133】
任意のBH4合成酵素の活性は、それらが基質(例えば、GTP)を消費する速度、または生成物(例えば、BH4)を生成する速度によって測定することができる(Werner et al. (1996) J Chromatogr B Appl 684: 51-58を参照)。放射分析アッセイは標識基質の消費に基づく。例えば、GTPCH活性は、GTPの標識水素原子を源とする標識ギ酸の放出およびチャコールによるGTPからのギ酸の分離を測定することによって評価することができる(Viveros et al. (1981) Science 213:349)。しかし、HPLCに基づく方法は、HPLCが生成物の決定を可能とするという点で、放射性方法よりも優れている。GTPCH活性を測定するためには、GTPCHを含む組織または細胞のホモジネートを、生成物である7,8ジヒドロプテリン三リン酸が、機能するためにMg2+を必要とする下流PTPSによってさらに代謝されることを確実に防ぐために、EDTAの存在下で、過剰量のGTP(基質)とともにインキュベートする。反応はHClおよびヨウ素の添加によって停止させる。これはまた、不安定な7,8-ジヒドロネオプテリン三リン酸の、より安定化なネオプテリン三リン酸への酸化へも引き起こす。ネオプテリン三リン酸は、イオン対HPLCおよび蛍光検出法によって直接分析することができる。または、混合物をNaOHおよびアルカリホスファターゼで処理してネオプテリンを生じさせてもよく、これは「純粋な」試料(インビトロキナーゼアッセイまたはCSFなど)の場合には、蛍光検出を用いる逆相HPLC、イムノアッセイまたは直接的な蛍光によって分析することができる。
【0134】
セピアプテリンレダクターゼ活性は一般に、セピアプテリンを人工的基質として用いて、BH4およびBH2のビオプテリンへの酸化後の総ビオプテリンレベルを測定することによってアッセイされる。
【0135】
PTPS活性の決定のためには、基質である7,8ジヒドロネオプテリン三リン酸を精製GTPCHを用いて新たに調製することが一般的である。インキュベーション混合物は通常、精製されたセピアプテリンレダクターゼも含むため、BH4およびBH2の酸化後のビオプテリンレベルを測定することによってPTPS活性を評価することもできる。
【0136】
BH4のレベルを低下させる、またはBH4合成酵素のレベルもしくは活性を低下させるその能力から考えて、このような分子は、例えば、疼痛の治療、軽減または予防のための鎮痛治療薬として用いることができる。
【0137】
代替的または補足的には、候補化合物を、BH4依存性酵素またはBH4結合受容体と特異的に結合する、またはそれを特異的に阻害する化合物に関してスクリーニングすることもできる。このような候補化合物の有効性は、それがBH4、BH4合成酵素もしくはBH4結合酵素またはBH4受容体と相互作用する能力に依存する。このような相互作用は、任意のさまざまな標準的な結合法および機能アッセイ(例えば、前記、Ausubel et al.に記載されたもの)を用いて容易にアッセイすることができる。
【0138】
例えば、候補化合物をBH4との相互作用および結合に関してインビトロで試験し、それが疼痛を調節する能力を、任意の標準的なアッセイ(例えば、本明細書に記載したもの)によってアッセイすることができる。
【0139】
1つの特定の例では、BH4合成酵素のいずれかと結合する候補化合物を、クロマトグラフィーに基づく手法を用いて同定する。例えば、組換えBH4合成酵素タンパク質を、BH4合成酵素を発現するように操作された細胞(例えば、上記のもの)から標準的な手法によって精製し、カラム上に固定化する。または、BH4をカラム上に固定化する。続いて、候補化合物の溶液をカラムに通過させ、BH4またはいずれか1つのBH4合成酵素に対して特異的な化合物を、それがBH4またはBH4合成酵素と結合してカラム上に固定化される能力に基づいて同定する。化合物を単離するためには、非特異的に結合した分子を除去するためにカラムを洗浄した後に、関心対象の化合物をカラムから放出させて収集する。この方法(または任意の他の適切な方法)によって単離された化合物を、必要に応じて(例えば、高速液体クロマトグラフィーにより)、さらに精製してもよい。
【0140】
新たな阻害薬に関するスクリーニング、およびリード化合物の最適化については、例えば、上記のようにGTPCH活性を評価することによって評価することができる。数多くの物質のスクリーニングのために、精製した組換えGTPCHを基質および阻害薬候補とともにインキュベートした後に酸化を行わせ、蛍光ELISA読み取り装置を用いてネオプテリンを測定するという、96ウェルを利用した酵素アッセイを用いることもできる。ネオプテリンは強い蛍光を示し、直接測定することができる。
【0141】
アッセイがBH4測定に基づいてもよい。BH4は、分子の環が完全に酸化された芳香族の状態にはないため、強い蛍光は示さない。この問題を回避するために、ジヒドロビオプテリンおよびBH4をそれらのビオプテリンへの酸化後に測定するという鑑別的な酸化方法を用いてもよく、この場合、蛍光を用いたビオプテリンの検出限界は0.3pmolである(Fukushima and Nixon, Anal. Biochem, (1980) 102: 176-188)。GTPCHの活性またはビオプテリンのレベルを測定するためのアッセイは、例えば以下に記載されている:Kaneko et al., Brain Res. Brain Res. Protoc. (2001) 8: 25-31;Ota et al., J Neurochem. (1996) 67: 2540-2548;Brautigam et al., Physiol. Chem. (1982) 363: 341-343;Curtius et al., Eur. J. Biochem. (1985) 148: 413-419;Stea et al., J Chromatogr. (1979) 168: 385-393;Werner et al., J Chromatogr. (1996) 684:51-58;Werner et al., Methods Enzymol. (1997) 281: 53-61;Nagatsu et al., Anal. Biochem. (1981) 110: 182-189;および、Geller et al., Biochem Biophys Res Commun (2000) 276: 633-41。
【0142】
さらに、これらの候補化合物を、鎮痛薬(例えば、本明細書に記載したような)として機能する能力に関して調べることもできる。また、このアプローチによって単離された化合物を、例えば、疼痛の治療、軽減または予防のための治療薬として用いることもできる。BH4、いずれかのBH4合成酵素、BH4依存性酵素またはBH4結合受容体に対して、10mMと等しいかそれ未満の親和性定数で結合するものとして同定された化合物は、本発明において特に有用と判断される。
【0143】
最終的には、本スクリーニング方法によって同定された任意の候補化合物の鎮痛効果を、上記のいずれかの疼痛モデルを用いて試験することができる。
【0144】
可能性のある鎮痛薬には、BH4合成酵素またはBH4依存性酵素またはBH4結合受容体のいずれかをコードする核酸配列またはポリペプチドと結合し、それによってそれらの活性を阻害または消失させる、有機分子、ペプチド、ペプチド模倣物、ポリペプチドおよび抗体が含まれる。
【0145】
可能性のある鎮痛薬には、また、このようなポリペプチドの結合部位と結合してそれを占有し、それによってこのようなポリペプチドの細胞結合分子に対する結合を妨げ、正常な生物活性が妨げられるようにする低分子も含まれる。可能性のある他の鎮痛薬にはアンチセンス分子が含まれる。
【0146】
BH4に加えて、BH4合成酵素のいずれかを発現させた上で、候補化合物のスクリーニングのための標的として用いることもできる。さらに、本明細書中に提示した化合物(例えば、DAHP、NAS、メトトレキサート、BH4、グアニン、または図19に示された化合物のいずれか)を、鎮痛性化合物の発見および開発のためのリード化合物として利用することもできる。
【0147】
被験化合物および抽出物
一般に、鎮痛を誘導しうる化合物は、天然物または合成(もしくは半合成)抽出物の双方の大規模ライブラリー、または当技術分野で公知の方法による化学物質ライブラリーから同定される。薬剤の探索および開発の当業者は、被験抽出物または化合物の厳密な源は本発明のスクリーニング手順にとって決定的ではないことを理解していると考えられる。したがって、事実上あらゆるさまざまな化学抽出物または化合物を、本明細書に記載の方法を用いてスクリーニングすることができる。このような抽出物または化合物の例には、植物、真菌、原核生物または動物を基にした抽出物、発酵ブロスおよび合成化合物、さらには既存の化合物の改変物が非制限的に含まれる。糖類、脂質、ペプチドおよび核酸を基礎におく化合物を非制限的に含む、任意のさまざまな化合物のランダムまたは定方向的な合成(例えば、半合成または全合成)を行わせるための、数多くの方法も利用することができる。合成化合物ライブラリーは、Brandon Associates社(Merrimack, NH)およびAldrich Chemical社(Milwaukee, WI)から市販されている。
【0148】
または、細菌、真菌、植物および動物の抽出物の形態にある天然化合物のライブラリーは、Biotics(Sussex, UK)、Xenova(Slough, UK)、Harbor Branch Oceangraphics Institute(Ft. Pierce, FL)およびPharmaMar, U.S.A.(Cambridge, MA)を含む供給業者から、商業的に入手可能である。さらに、天然のライブラリーおよび合成的に作製されたライブラリーは、必要に応じて、当技術分野で公知の方法に従って、例えば、標準的な抽出法および分画法によって作製される。さらに、必要に応じて、任意のライブラリーまたは化合物は、標準的な化学的、物理的または生化学的な方法を用いて容易に修飾される。
【0149】
加えて、薬剤の探索および開発の当業者は、デレプリケーション(dereplication)(例えば、分類学的デレプリケーション、生物学的デレプリケーションおよび化学的デレプリケーションまたはそれらの任意の組み合わせ)、または鎮痛活性が公知である物質の重複物もしくは反復物の除去のための方法を可能な限り用いるべきであることを容易に理解すると考えられる。
【0150】
粗抽出物が鎮痛活性または結合活性を有することが明らかになった場合には、観察された効果の原因である化学成分を単離するために、陽性であるリード抽出物をさらに分画することが必要である。したがって、抽出、分画および精製の工程の目標は、鎮痛活性を有する粗抽出物の内部にある化学的実体の特性決定および同定を慎重に行うことにある。このような異種混交的な抽出物の分画および精製の方法は当技術分野で公知である。必要に応じて、病原性の治療に有用な薬剤であることが示されている化合物は、当技術分野で公知の方法に従って化学的に修飾される。
【0151】
薬学的治療薬
本発明は、疼痛を治療、軽減または予防することが可能な化合物(ペプチド、低分子阻害薬および模倣物を含む)を同定するための簡易な手段を提供する。
【0152】
したがって、医学的意義を有することが本明細書に記載の方法を用いて見いだされた化学的実体は、薬剤として、または、例えば合理的薬剤設計による、既存の鎮痛化合物の構造的修飾のための情報として、有用である。
【0153】
治療的使用のためには、本明細書に開示された方法を用いて同定された組成物または薬剤を、例えば、生理的食塩水などの薬学的に許容される緩衝液中に配合した上で、全身投与することができる。投与は、例えば、(いずれかのBH4合成酵素の生物活性を妨げることにより)BH4の産生を妨げることによって、または、BH4を補助因子として用いうる酵素またはBH4と結合する受容体の活性化を阻止することによりBH4の生物活性を直接妨げることによって、疼痛を治療、軽減または予防する化合物を動物個体に投与することにより、直接的に行うことができる。好ましい投与経路には、例えば、連続的で持続的な濃度の薬物が患者に提供される、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内または皮内注射が含まれる。ヒト患者または他の動物の治療は、生理的に許容される担体中にある治療的有効量の鎮痛薬を用いて行いうると考えられる。適した担体およびそれらの剤形は、例えば、E.W.Martinによる「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記載されている。投与する鎮痛薬の量は、投与様式、患者の年齢および体重、ならびに疾患の種類および疾患の程度によって異なる。一般にその量は、疼痛の治療に用いられる他の薬剤について用いられているものの範囲にあると考えられるが、場合によっては、化合物の特異性が高いことから、より少ない量が必要であると考えられる。化合物は、疼痛を抑制する投与量で投与される。例えば、全身投与の場合には、化合物を典型的には0.1ng〜10g/kg体重の範囲で投与する。
【0154】
ここで、本発明の結果を、以下の実施例においてさらに詳細に説明する。これらの実施例は本発明を例示するために提供されるものであり、制限的なものとみなされるべきではない。
【0155】
実施例1:末梢神経損傷によるBH4経路の合成酵素の誘導
一次感覚ニューロンの末梢軸索の離断は、それらの代謝、再生能力、生存、興奮性、伝達物質機能、ならびに多様な外因性および内因性シグナルに対する感受性に重大な変化を引き起こす。これらの変化は、末梢標的臓器からの栄養的補助の喪失および損傷部位で生じる新規なシグナルの両方によって誘発される、転写上の変化によって媒介される。これらの転写上の変化は、損傷を受けても生存する能力および損傷を受けた軸索が再成長する能力といった適応応答に加えて、神経障害性疼痛の発生を含む知覚の変化を引き起こす恐れのある適応応答ももたらす。
【0156】
ラットの高密度オリゴヌクレオチドマイクロアレイは、坐骨神経離断(軸索切断)後の後根神経節(DRG)における遺伝子発現の変化を検出するために用いられている。DRGは、一次感覚ニューロンという1つの一般的な種類のニューロンの密な集合体である。その病変は細胞に対して均一な影響を及ぼし、調節性が判明している遺伝子の大規模プールの存在により、マイクロアレイによって同定された変化の質的管理が可能となる。
【0157】
AffymetrixラットU34Aオリゴヌクレオチドアレイを、胚でのDRGの成熟過程および坐骨神経病変後のDRGニューロンにおける遺伝子発現の変化に関するスクリーニングのために用いた。最初の検討で、本発明者らは、ジヒドロプテリジンレダクターゼ(DHPR)を含むいくつかの遺伝子の発現プロファイルが、発生過程初期における高い発現レベル、成熟期におけるダウンレギュレーション、および末梢神経損傷後の再発現を特徴とすることを見いだした(図1Aおよび1B)。続いて、Costigan et al.,(BMC Neuroscience (2002) 3: 16)(これは参照として本明細書に組み入れられる)によって以前に記載されたように、末梢神経(坐骨神経)離断(軸索切断、Ax)から3日後の遺伝子発現の変化を探る目的で、発現レベルを非損傷DRG(未処理、N)と比較することにより、より詳細な検討を行った。9つの生物学的に独立したアレイハイブリダイゼーションを行った(6つは未処理、3つは軸索切断後)。5匹の雄性Sprague-DawleyラットからのDRG組織(左側または損傷の同側側からのL4およびL5)を各RNA集団についてプールした。各RNA試料を別個に標識し、別々のアレイとハイブリダイズさせた。3連の2組のマイクロアレイを用いて2種類の比較を行った:未処理と未処理の比較、および未処理と軸索切断との比較。遺伝子は、それぞれの比較でアレイの少なくとも1つにおいて、存在する、または下限のコール(call)を受容した場合に、検出されたものと定義した。それぞれの個々の試料は、単一の供給元(Charles River)による齢数の類似した5匹の雄Sprague-Dawleyラットからプールされているため、生物学的な変動は非常に少ない可能性が高い。
【0158】
DHPRに加えて、この分析ではさらに、テトラヒドロビオプテリン合成経路の2つの他の要素(図2A)も、末梢神経損傷によって有意にアップレギュレートされることが判明した:GTPシクロヒドロラーゼ(GTPCH)およびセピアプテリンレダクターゼ(SPR)(図3参照)。
【0159】
実施例2:マイクロアレイ分析の検証
次に、軸索切断によるBH4合成酵素の誘導を、ノーザンブロット分析、ノーザンスロットブロット分析、インサイチューハイブリダイゼーションおよびウエスタンブロット分析といったさまざまな方法によって確かめた。各群からの試料を、動物アレイ用に用いたものとは異なる群の動物から抽出した、独立したL4およびL5 DRG RNA試料から調製した。図1Bは、軸索切断の前および後での、胚発生過程および成体におけるDHPRの発現プロファイルを示し、それによって本発明者らのマイクロアレイデータを裏づけた、ノーザンスロットブロット分析を示している。未処理DRGおよび損傷3日後におけるGTPCH mRNAレベルを検出するためのノーザンブロット分析により、3kbおよび1.2kbという2種類の転写物の顕著な誘導が明らかに示されている(図4A参照)。図3は、軸索切断後のDRGにおけるBH4合成酵素の誘導の程度をまとめたものである。インサイチュー分析により、末梢神経損傷3日後のDRGのニューロンにおけるGTPCH mRNAの誘導がさらに確かめられた(図4B)。図4D〜4Fは、軸索切断後のDRGにおけるGTPCH、DHPRおよびSPR mRNA転写物レベルの誘導が、少なくとも2週間にわたって持続することを示した3回のノーザンブロット分析を表している。本発明者らはさらに、神経損傷後のGTPCH mRNAレベルの上昇が、タンパク質レベル(図5A)および酵素活性(図5B)の上昇も伴うことを示している。図5Aは、軸索切断後のGTPCHレベルの顕著かつ持続的な上昇を示している、未処理DRGおよび軸索切断から1、3、7および14日後におけるGTPCHタンパク質レベルに関するウエスタンブロット分析を表している。DRGにおけるGTPCH活性レベルは、軸索切断7日後の方が対照に比して顕著に高い(図5B)。DRGにおけるBH4の量も軸索切断7日後の方が対照に比して増加している(図5C)。
【0160】
実施例3:神経障害性疼痛モデルおよび炎症性疼痛モデルにおけるBH4合成酵素の変化
3連のAffymetrixマイクロアレイ分析を、3種類の独立した末梢神経障害性疼痛モデルおよび末梢炎症後におけるDRGおよび脊髄後角での、BH4合成経路の要素(GTPCH、SPRおよびDHPR、ならびに6-ピルボイルテトラヒドロプテリンシンターゼおよびフィードバック調節タンパク質、GTPCHフィードバック調節タンパク質)の発現の変化の経時的推移を確かめるために用いた。3種類のいずれの末梢神経障害性疼痛モデルのDRGにおいても、GTPCH I、SPR、PTPSおよびDHPRはすべて、かなりの程度でしかも長期間にわたってアップレギュレートされた(図6A〜6J)。後角では、これらのすべての酵素に関するmRNAが検出された(すなわち、構成性に発現された)が、疼痛モデルにおける変化はわずかであった。DRGおよび後角の両方において、末梢炎症も、BH4合成酵素の恒常的な基礎的発現レベルの顕著な変化は引き起こさなかった(図7A〜I)。
【0161】
実施例4:神経障害性疼痛に対するGTPCHの阻害薬の影響
これらの所見に基づき、本発明者らは、BH4経路が、細胞生存応答の活性化、興奮性の変化、伝達物質機能の変化および成長状態の変化を含む生物応答において役割を有するとの仮説を立てた。特に、本発明者らは、この経路が、例えばBH4レベルの上昇の結果としてNOS活性を高めることにより、末梢神経損傷後の疼痛(末梢神経障害性疼痛)の発生に役割を果たすという仮説を立てた。
【0162】
BH4合成経路が神経障害性疼痛に関与するか否かを評価するために、本発明者らは、坐骨神経部分損傷(SNI)モデル(図8A〜8H)、慢性絞扼性損傷(CCI)モデル(図9Aおよび9B)、ホルマリンアッセイ(図10)およびCFAモデル(図11A〜E)といったさまざまな疼痛モデルにおいて、DAHPが鎮痛を誘発しうるか否かを検討した。
【0163】
SNIモデルを用いて、本発明者らは、手術後のDAHP(180mg/kg/day、腹腔内に注射)の投与が、投与を早期の時点(例えば、手術3日後、図8A〜8D参照)または後期の時点(例えば、手術17日後、図8E〜8F参照)のいずれに開始するかにかかわらず、媒体のみを注射したラットに比して、機械的感受性(フォンフライ閾値)および寒冷性疼痛(肢へのアセトンの適用による寒冷アロディニア)の軽減を生じさせることを示した。このように、DAHPの投与は、ひとたび神経障害性疼痛が成立した後であっても鎮痛を生じさせることができた。DAHP(6mg/kg/day i.t.)を腰椎カテーテルを介した髄腔内持続注入によって投与した場合にも機械的および寒冷アロディニアは軽減された。その有効性は腹腔内投与と同等であった。DAHPの鎮痛効果はさらにCCIモデルでも確かめられた(180mg/kg/d i.p.;図9Aおよび9B)。DAHP(180mg/kgの単回i.p.投与)はホルマリンアッセイにおける後ずさり行動も減少させた(図10)。
【0164】
図8の結果は、SNIモデルにおけるDAHPの鎮痛効果が、DAHPの用量を増やして用いることによって延長したことを示している。図22Aおよび22Bは、投与されたDAHPの量と機械的(フォンフライ試験)または温熱性(寒冷アロディニア)刺激に対する侵害受容性応答との間に用量依存的な関係が存在することを示している。この用量-効果相関は、検討した用量の範囲では直線的であった。最大用量である270mg/kg/dに至るまで、明らかな神経学的有害作用は14日間の投与を通じて認められなかった。これらの結果は、BH4経路阻害薬の薬理学的効果をさらに裏づけている。
【0165】
さらに、予想された通り、BH4の髄腔内投与は侵害受容誘発性であった。図23Aは、慢性的に植え込んだカテーテルによる腰髄へのBH4の髄腔内投与が、未処理ラットにおける温熱性刺激(ハーグリーブスモデル)に対する肢逃避反射潜時(paw withdrawal latency)を短縮させることを示しており、このことは熱に対する過敏性の増大を示している。同様に、CFA誘発性の肢炎症モデルにおける、熱過敏性がすでに存在するラットでは、髄腔内BH4投与は同側性に熱過敏性を誘導したが、対側性には誘導しなかった。
【0166】
本発明者らは次に、肢炎症を誘発させるために、完全フロイントアジュバント(CFA)をラットの右肢に注射した。本発明者らは、CFA疼痛モデルを用いて、DAHP(180mg/kg i.p.)が、投与をCFA注射の30分前(図11A、左側)または24時間後(図11A、右側および11C)のいずれに開始しても、温熱性痛覚過敏を低下させることを示した。DAHPは炎症のない対側肢の肢逃避反射潜時には影響を及ぼさず(図11B)、このことはDAHPが知覚機能および運動機能に対して明らかな全体的な阻害作用を及ぼさないことを示している。DAHP(1mg/kg i.t.)を腰椎カテーテルを介した髄腔内注射によって腰髄に送達した場合にも温熱性痛覚過敏は軽減された(図11D)。腹腔内および髄腔内へのDAHP投与の直接比較により、いずれの薬剤投与経路とも効果は同程度であることが判明した(図11E)。DAHPを髄腔内および腹腔内に投与したラットにおける鎮痛効果に差がみられなかったという事実は、DAHPが脊髄およびDRGのレベルで効果を発揮することを推測させる。
【0167】
本発明者らは次に、炎症性肢浮腫に対するDAHPの効果を計測した。図12に示されているように、CFAを注射した肢および注射していない対照肢における肢重量を測定したところ、DAHPを投与したラットと対照動物との間に肢炎症の程度の差は認められなかった。このように、DAHPの投与は炎症に対しては明らかな効果がない(抗炎症作用がない)ため、本発明者の結果は、DAHPの鎮痛効果は主として、神経系における知覚プロセスの変化の結果であることを示唆している。
【0168】
フォンフライ試験およびハーグリーブス温熱性疼痛試験を用いて、本発明者らはさらに、非損傷動物におけるDAHPの注射は運動活性の変化を引き起こさないことを示した。これらの結果、および移動に関して検出可能な変化がみられないこと(図13A〜13B)に基づけば、用いた用量でDAHPが全体的な知覚および運動活性に影響を及ぼす可能性は低いように思われる。さらに、活動の全体的なレベルに関して検出可能な変化はみられず、鎮静の明らかな徴候もみられなかった。
【0169】
本発明者らは次に、血漿およびCSFにおけるDAHPのレベルを調べるための薬物動態試験を行い(図14Aおよび14B)、i.p.注射後には血漿中濃度が急速に上昇し、続いて脳脊髄液中に急速に分布することを示した。さらに、本発明者らは、経時的な血漿DAHP濃度の上昇が、CFAモデルでのDAHP投与に反応したラットにおける行動に対する効果と相関することも確かめた(図14C)。
【0170】
実施例5:炎症性疼痛または神経障害性疼痛に対するその他のBH4阻害薬の効果
本発明者らは次に、N-アセチル-セロトニン(NAS)を投与することによってBH4合成酵素セピアプテリンレダクターゼを阻害することの効果を評価した。DAHPと同様に、本発明者らは、NAS(50mg/kg i.p.)がCFAモデルにおける温熱性痛覚過敏の軽減を引き起こすことを示した(図15A参照)。NAS投与もCFA誘発性の炎症性肢浮腫には影響を及ぼさなかった(図15B)。
【0171】
同様に、本発明者らは、DHPRの阻害薬であるメトトレキサートの投与が、機械的および寒冷アロディニアに応じたSNIモデルにおける疼痛の軽減をもたらすことができ、検出可能な急性毒性は伴わないことも示した。MTXは低用量で全身投与するか(図16Aおよび16B参照)、浸透ポンプを用いる持続的な腰椎送達(0.1mg/kg/day)によって投与した(図16Cおよび16D参照)。毒性は経時的な体重変化として計測した(図16Eおよび16F参照)。
【0172】
全体的にみて、本発明者らの結果は、DAHP、NASまたはMTXを投与することによるBH4合成の阻害が、例えば、温熱性、機械的および化学的な刺激に対する鎮痛をもたらすことを示している。これらの結果に基づけば、BH4合成酵素の生物活性を低下させることによってBH4の合成を阻害することは、例えば鎮痛を誘導し、それ故にこれは、それを必要とする哺乳動物における疼痛の治療、予防または軽減のために用いることができる。
【0173】
実施例6:神経障害性疼痛に対するDAHPの分子的および細胞的な影響
後角ニューロンにおけるc-FOS発現の測定を、疼痛強度の客観的な指標として用いた。図24は、後肢にホルマリン注射を受けてから2時間後のラットの同側性後角ニューロンにおいて、c-FOS免疫反応性が増大していることを示している。腹腔内にDAHP投与も受けたラットではc-FOSレベルの上昇の有意な抑制が観察された(p<0.O5)。このことは、DAHPが、前初期遺伝子c-Fos誘導の上流にあるBH4代謝性経路で作用し、脊髄におけるニューロンの活性化を低下させることを示している。
【0174】
後角ニューロンのアポトーシスは神経損傷後の神経障害性疼痛の発生の一因となる。神経障害性疼痛におけるBH4の細胞面での役割をさらに調べるために、L4/L5後角ニューロンのアポトーシスプロファイルをTUNEL染色を用いて評価した。図25は、SNIモデルにおける腹腔内へのDAHP投与によって後角ニューロンがアポトーシスから防御されることを示している。
【0175】
以上に考察したように、BH4は、神経系における疼痛シグナル伝達に寄与することが示されているnNOSおよびiNOSアイソザイムにとって必須な補助因子である。本発明者らは、DAHPの抗侵害受容性効果に関してnNOSノックアウトマウスと野生型マウスとの間に差がないことを見いだしたが(図26A)、このことはDAHPの鎮痛効果の発生にnNOSは必須ではないことを示している。本発明者らはまた、DAHPが、非特異的なNOS阻害薬であるL-NAMEの高用量全身投与よりも強い抗侵害受容性効果を誘導すること、および同時投与した場合にL-NAMEがDAHPの有効性を高めることもないことも見いだした(図26B)。
【0176】
したがって、DAHPの抗侵害受容性効果は単にNO産生の阻害だけを原因とすることはできず、BH4の侵害受容性誘発作用は単にNOS依存的な機序のみによって媒介されるわけではない。以上を総合して考えると、これらのデータは、BH4の侵害受容誘発作用は新規な標的分子を介して媒介される可能性が高いことを示唆している。
【0177】
実施例7:GTPCH-Iの局在
本発明者らはGTPCH-Iの局在について明らかにした。この酵素のアップレギュレーションは、末梢軸索損傷後(SNIモデル)には、病変のない個体との比較で、大きなサイズおよび小ないし中程度のサイズのDRGニューロンでみられる(図27Aおよび27B)。しかし、GTPCH-IのアップレギュレーションはCFA誘発性の肢炎症モデルでは観察されない。GTPCH-Iがアップレギュレートされるニューロンの40〜50%は、有髄軸索を有するニューロンのマーカーであるニューロフィラメント200(NF200)に対する免疫反応性もある(図29)。GTPCH-I mRNA陽性ニューロンの30〜40%は、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP;図29)に対する免疫反応性もある。CGRPは小ないし中程度のサイズの神経ペプチド陽性感覚ニューロン(そのほとんどは侵害受容器である)を標識する。GTPCH-I発現ニューロンはnNOSを発現せず、グリフォニア-シンプリシフォリア(Griffonia simplicifolia)イソレクチンB4(IB4;図29)による標識もされない。IB4は小さな無髄GDNF(グリア細胞由来神経栄養因子)応答性ニューロンを標識する。GTPCH-I発現ニューロンはATF-3に対する免疫反応性を示し、このことはこのアップレギュレーションが主として損傷ニューロンで起こることを示している(図31)。
【0178】
GTPCH-I転写物は対照動物およびSNI病変を有する動物のいずれの脊髄後角でも検出されない。単離された損傷運動ニューロンは、末梢軸索が末梢神経損傷によって離断された場合にGTPCH-I mRNAを示す(図28A)。
【0179】
GTPCH-Iフィードバック調節タンパク質(GFRP)のmRNA は単離されたDRGニューロンにおいて検出可能であり、その発現は神経損傷後にも変化しない(図28B)。
【0180】
実施例8:病変を有する後根神経節ではBH4代謝産物のアップレギュレーションが検出される
本発明者らは、SNI病変後のラットのDRGにおける、BH4の安定な代謝産物であるビオプテリンおよびネオプテリンのレベルを測定した。ネオプテリンはBH4の安定な代謝産物であり、BH4のリサイクル後に認められる。ネオプテリンの存在は新たなBH4合成の指標と考えられ、一方、ビオプテリンはBH4のリサイクルおよび再利用の指標とはなるが新規合成の指標とはならない。図30は、同側性の後角(DH)、DRGおよびScNにおけるビオプテリンレベルの、対側と比較しての上昇を示している。DAHPの投与により、ビオプテリンの増加はDHおよびScNでは低下するものの、これはDRGではみられなかった。これに対して、ネオプテリンレベルはDRGおよびScNのみで上昇し、DHでは上昇しなかった。これらの上昇はDAHP投与によって低下した。以上を総合すると、これらのデータは、安定なBH4代謝産物を疼痛の客観的指標として測定することの有用性を示している。さらに、これらのデータは、DAHPがBH4生合成をインビボで阻害すること、およびBH4生合成経路の阻害が鎮痛を誘導するための有用な機序であることも示している。
【0181】
以上の実験は以下の材料および方法を用いて行った。
【0182】
材料および方法
外科的手順
すべての手順は、Massachusetts General Hospitalの動物管理規則に従って行った。成体雄Sprague Dawleyラット(200〜300g)にハロタンで麻酔を施した。坐骨神経離断(軸索切断)のためには、左坐骨神経を大腿骨中位レベルまで露出させ、3/0号絹糸で結紮した上で遠位側を切断した。創を2層で縫合し、ラットが回復するまでおいた。SNIに関しては、坐骨神経の脛骨側および腓骨側への分枝を結紮して離断し、腓骨神経は残した。CCIに関しては、坐骨神経をdexon 4/0号で緩く結紮し(3つの結紮)、脊髄結紮モデルに関してはL5脊髄分節神経を結紮した。
【0183】
組織およびRNAの調製
ラットに対してCO2で終末神経麻酔を施し、L4およびL5 DRGを直ちに取り出して-80℃で保存した。ホモジネート化したDRG試料から、酸フェノール抽出(TRIzol試薬、Gibco-BRL)を用いて全RNAを抽出した。RNA濃度はA260測定によって評価し、その特性は1.5%アガロースゲルによる電気泳動によって評価した。各アレイのハイブリダイゼーションのために用いるそれぞれのRNA試料は、ラットL4およびL5 DRG(試料1件につき、5匹のラットからの10個の神経節)から調製した。
【0184】
マイクロアレイ分析
8799種の既知の転写物および発現配列タグ(EST)を提示しているAffymetrixラットゲノムU34Aオリゴヌクレオチドマイクロアレイを、製造業者の使用説明書(Santa Clara, CA http://www.affymetrix.com)に従って用いた。転写物の存在量は、それぞれの転写物のプローブセットのシグナル強度の分析およびミスマッチ対照との比較によって推測される。アレイを、Affymetrix社の標準的なプロトコールに従って調製したビオチン標識cRNAとハイブリダイズさせた。手短に述べると、DRGからの全RNA(8μg)を、T7 RNAポリメラーゼ結合部位を結合させたオリゴ-dTプライマーを用いて逆転写させた。二本鎖cDNAを作製し、ビオチン化cRNAをT7ポリメラーゼを用いて合成した。cRNAを16時間にわたりアレイとハイブリダイズさせ、その後に、ストレプトアビジンを結合させた蛍光マーカーと結合させ、続いて、増幅工程としてフィコエリトリンと結合させたポリクローナル抗ストレプトアビジン抗体とともにインキュベートした。洗浄後に、チップをHewlett-Packard GeneArrayレーザースキャナーを用いてスキャンし、データをGeneChipソフトウエアを用いて解析した。ハイブリダイゼーション効率および感受性に関する対照として外部標準物質を含めた。
【0185】
アレイ上で検出された各mRNA種に関するハイブリダイゼーションレベルは、Affymetrix社のソフトウエア(MAS 5.0、α1=0.04、α2=0.06)を用いて算出される、強度(シグナル)、および存在(present)(P)、下限(marginal)(M)または欠如(A)のコール(call)として表される。アレイデータの標準化のためにはAffymetrix社の標準的なプロトコールを用い、各アレイの尺度を、全プローブセットにわたる2500個の標的シグナルに対して調整した(MAS 5.0)。
【0186】
アレイを、未処理ラットのデータの3連のセットと軸索切断後の3連のセットとの比較用にグループ分けした。プローブセットは、比較に用いた6つのアレイのすべてにおいてAコールが得られた場合には、それが検出されないものと判定した。各分析に関して少なくとも1つのアレイMAS5.0により「存在」または「下限」とされた場合、「検出された」こととした。平均シグナルおよび標準偏差を、検出されたプローブセットのそれぞれに関して計算した。平均シグナルが3連のセット2つの間で等しいという帰無仮説を棄却するためのp値は、分散が等しくない独立した試料に関する独立両側t検定を用いて算出した(サタースウェイト法(Satterthwaite's method))。3連のセット2つにおける平均シグナル(AおよびB)間の差異の倍率は、最大(A,B)/最小(A,B)として算出し、未処理に比してのダウンレギュレーションは負として表した。
【0187】
cDNAプローブの作製
ノーザンブロットハイブリダイゼーション実験用の特異的プローブを作製するために、Affymetrix社により提供されたラットアクセッション番号に基づくプライマーを設計し、それぞれのアクセッション配列の内部の最も3'側にある1000ヌクレオチドから、Primer3ソフトウエアhttp://www-genome.wi.mit.edu/を用いてプライマー対を選択した。腰椎DRGから抽出した全RNAから逆転写させたcDNAに対して、ポリ-dTをプライマーとして用いるPCRを行い、cDNA断片を得た(141〜596bp)。これらの断片を続いてPCRIIベクター(TA cloning Kit, Invitrogen)中にクローニングし、両方向へのシークエンシングを行うことによってそれぞれの実体を確かめた。これらのcDNAをゲル精製し、32P標識したcDNAプローブの作製のために用いた(Prime-It kit, Stratagene)。
【0188】
ノーザンブロット分析
1.5%アガロース/ホルムアルデヒドゲル上での電気泳動(各レーンにつき10μgの全RNA)によって全RNAをサイズ分離し、Hybond N+ナイロン膜に移行させた。膜をExpressHyb(Clontech)中にて標識プローブ(上記参照)と65℃で一晩ハイブリダイズさせ、洗浄した上で、増感スクリーンとともに-80℃で用いてX線フィルムに対して露光させた。
【0189】
スロットブロット
Hoefer PR648スロットブロット装置(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて、全RNA(1.25μg)を真空下でHybond N+ナイロン膜に直接移行させた。ハイブリダイゼーションのレベルを、24450ホスフォイメージャーシステム(Molecular Dynamics, Sunnyvale CA)を用いて定量した。シクロフィリンをローディング対照として用いて、ブロットのプロービングを行った。各ブロット上の試料間のローディングレベルを、対照ブロットからのシクロフィリンレベルに対して標準化した。
【0190】
放射性インサイチューハイブリダイゼーション
DRGを直ちに取り出し、OCT(Tissue Tek)中に包埋した上で凍結させた。切片を6μm厚で連続的に作成した。放射性インサイチューハイブリダイゼーションは、G-C含有率が50%で、しかもAffymetrix社によりアクセッション番号が提供されたmRNAに対して相補的であるように設計した48塩基対のオリゴヌクレオチドプローブを用いて行った。プローブを、ターミナルトランスフェラーゼ反応を用いて35Sまたは33P-dATPにより3'末端標識し、ハイブリダイゼーションを行った。スライドをNTB2核飛跡検出用エマルションに浸漬させて暗所に4℃で保存することにより、オートラジオグラムを作成した。切片による露光を1〜8週間行い(転写物の存在量に依存)、現像し、固定した上で、光ファイバー暗視野ステージアダプター(MVI)を用いて暗視野で観察した。オリゴヌクレオチドプローブの特異性を確かめるための対照としては、切片の、1,000倍過剰量の非放射性プローブを伴った標識プローブとの、または1,000倍過剰量の長さが同じでG-C含有率が同程度である別の類似性のない非放射性プローブを伴った標識プローブとの、ハイブリダイゼーションを含めた。
【0191】
GTPCH活性およびビオプテリン濃度に関するアッセイ
新たな阻害薬に関するスクリーニングおよびリード化合物の最適化は、例えば、GTPCH活性を評価することによって評価しうる。この点に関して、種々の化学物質によるその阻害は、酵素をGTPとともにインキュベートすること、および、ビオプテリンまたはネオプテリンの生成のレベルを蛍光測定、放射性標識、イムノアッセイ、分光法およびHPLC法によって測定することによって決定しうる。
【0192】
好ましい方法を用いて、ネオプテリンおよびビオプテリンの組織レベルを、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析法により決定した。Fukushima and Nixon(Methods Enzymol. 66: 429-436, 1980)に従ったヨウ素による酸性pH下での酸化の後に、Oasis MCX抽出カートリッジを用いる固相抽出によって組織を抽出し、総ビオプテリン、ネオプテリンおよび内部標準物質であるラムノプテリンの濃度を、タンデム質量分析法と組み合わせた液体クロマトグラフィーによって決定した。HPLC分析は、Nucleosil C8カラムを用いる勾配条件下で行った。MS/MS分析は、Turbo Ion Spray源を備えたAPI 4000 Q TRAP三連四重極質量分析計により行った。MRMに関しては、前駆体から生成物へのイオン推移として、ビオプテリンについてはm/z 236 192、ネオプテリンについてはm/z 252 192、ラムノプテリンについてはm/z 265 192を用いた。較正用の標準物質、品質管理用物質および試料の濃度は、Analystソフトウエア1.4(Applied Biosystems)によって評価した。較正曲線の直線性は0.1〜50ng/mlについて実証された。測定したすべての配列に関する相関係数は、少なくとも0.99であった。日内変動および日間変動は10%未満であった。
【0193】
BH4を測定するための代替的な方法では、それぞれのプテリン種および/または酸化状態に対して特異的な別々で個別の抗体の作製を必要とする放射性酵素アッセイを用いる。プテリジンの分離は、クロマトグラフィー法およびHPLCによって行われる。蛍光検出を用いるHPLCは、ピコモル範囲で生体に存在する多くのプテリン(ビオプテリンおよびプテリンを含む)の、単回のクロマトグラフィー作業での迅速かつ高感度な決定を可能にする。
【0194】
組織ホモジネートを遠心し、その結果得られた上清を酵素アッセイおよびタンパク質アッセイの両方に用いた。
【0195】
GTPシクロヒドロラーゼI活性は、Duch et al.(Mol. Cell Endocrinol. (1986) 47: 209-16)による記載に以下の変更を加えた上でアッセイされる。反応混合物(500ml)には、0.1M Tris-Cl(pH 7.8)、0.3M KCl、2.5mM EDTA、10%グリセロール、1mM GTPおよび酵素を含めた。反応を暗所にて37℃で1時間行わせ、50mlのヨウ素溶液(1.0%I2、2.0%KI、1.0N HCl中)の添加によって反応を停止させた。混合物を室温に1時間保った後に、過剰なヨウ素を50mlの2.0%アスコルビン酸の添加によって還元した。この混合物に50mlの1.0N NaOHを添加し、続いて3.0単位(100ml)のアルカリホスファターゼとともに37℃で1時間インキュベートした。反応を100mlの1.0N酢酸の添加によって停止させた。遠心処理の後に、上清を、Cosmosil 10 C18カラム(4.6×3×50mm)を接続したWhatman Partisil 10 ODSカラム(4.6×3×250mm)に適用した。ネオプテリンは、0.1mM EDTAおよび5%メタノールを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH 5.0)を溶媒として流速0.8ml/分でイソクラティックに溶出させた。カラム温度は25℃に保った。溶出液を蛍光測定装置でモニターした(励起350nm;発光440nm)。タンパク質濃度は、免疫グロブリンGを標準物質として用いる色素結合アッセイキット(BioRad)によって決定した。
【0196】
細胞のビオプテリン含有量
還元型ビオプテリンのヨウ素による酸性酸化の後に、組織溶解物における総ビオプテリン(BH1、BH2およびBH4)を測定した。12,000rpmでの遠心処理(それぞれ5分間を3回)の後に、細胞溶解物を、2%KIを1N HCl中に含む1%I2により暗所にて37℃で1時間処理した。続いて試料を12,000rpmで遠心し(それぞれ5分間を3回)、残留性のI2を除去するために上清をアスコルビン酸(0.1M)で処理した。続いて抽出物を1N NaOHで中和し、その後に200mM Tris-Cl(pH 7.8)で処理した。ビオプテリンを、オンライン蛍光検出器を用いるC18逆相HPLCにより定量した。
【0197】
細胞のビオプテリン含有量の決定については、以下の参考文献に詳述されており、これらはすべて参照として本明細書に組み入れられる:Harada et al., Science (1993) 260: 1507-10, Kapatos et al., J. Neurochem. (1999) 72: 669-75, Maita et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2002) 99: 1212-7;Moali et al., Chem Res Toxicol (2001) 14: 202-10, Rebelo et al., J. Mol. Biol. (2003) 326: 503-16;Renodon-Corniere et al., Biochemistry (1999) 38: 4663-8;Xie et al., J. Biol. Chem. (1998) 273: 21091-8;Yoneyama et al., J. Biol. Chem. (1998) 273: 20102-8;Yoneyama et al., Protein Sci. (2001) 10: 871-8;Yoneyama et al. Arch. Biochem. Biophys. (2001) 388: 67-73。
【0198】
投与量
本発明の個々の構成要素または治療的配合物の投与量は、疼痛管理の当業者によって容易に決定されうる。例えば、本発明に従って投与される鎮痛薬の用量は、当技術分野で実際に用いられているものと同じであるかそれ未満であると考えられる。
【0199】
薬学的組成物の製剤化
本発明の任意の化合物の投与は、疼痛の治療のために有効な化合物の濃度が得られる任意の適した手段によるものであってよい。化合物は、任意の適した担体物質中に任意の適した量として含めることができ、これは一般に、組成物の総重量に対して重量比で1〜95%の量で存在する。組成物を、経口的、非経口的(例えば、静脈内、筋肉内または皮下注射)、直腸内または経皮的(局所外用的)投与経路のために適した剤形として提供してもよい。すなわち、組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤、丸剤、粉剤、顆粒剤、懸濁剤、乳剤、液剤、ゲル剤(ヒドロゲルを含む)、ペースト剤、軟膏、クリーム剤、硬膏剤、水薬、浸透性送達デバイス、坐薬、浣腸剤、注射剤またはインプラントの形態であってよい。薬学的組成物は、従来の薬学的行為(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(20th ed.), ed. A.R. Gennaro, Lippincott Williams & Wilkins, 2000およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technology, eds. J. Swarbrick and J. C. Boylan, 1988-1999, Marcel Dekker, New Yorkを参照)に従って製剤化することができる。
【0200】
本発明による薬学的組成物は、活性化合物(薬剤)を、実質的に投与の直後に、または投与後の任意の所定の時間または期間に放出するように製剤化することができる。後者のタイプの組成物は一般に制御放出製剤として知られており、これには以下のものが含まれる:(i)長期間にわたって体内に実質的に一定な薬剤濃度を生じさせる製剤;(ii)所定の遅れ時間の後に長期間にわたって体内に実質的に一定な薬剤濃度を生じさせる製剤;(iii)活性薬剤物質の血漿レベルの変動に伴う望ましくない副作用を最小限に抑えつつ、体内において比較的一定な有効な薬剤レベルを保つことにより、所定の期間にわたって薬剤作用を持続させる製剤(鋸歯状の動態パターン);(iv)例えば、制御放出組成物をを罹病組織または臓器に隣接または内在して空間的に配置させることにより、薬剤作用を局在化する製剤;および(v)薬剤を特定の標的細胞種に対して送達する担体または化学誘導体を用いることによって薬剤作用を標的に向かわせる製剤。
【0201】
制御放出製剤の形態にある化合物の投与は、化合物が単独または組み合わせとして、以下のような場合に特に好ましい:(i)治療係数が小さい(すなわち、有害な副作用または毒性反応をもたらす血漿中濃度と、治療効果をもたらす血漿中濃度との間の差が小さい;一般に、治療係数TIは、50%致死量(LD50)と50%有効量(ED50)との比として定義される);(ii)胃腸管における吸収域が狭い;または(iii)生物学的半減期が極めて短く、このため血漿レベルを治療レベルに維持するためには1日に頻回の投薬を必要とする。
【0202】
当該の化合物の放出の速度が代謝の速度よりも重要となるような制御放出を得るためには、さまざまな戦略のうち任意のものを用いることができる。一例としては、制御放出は、さまざまな製剤パラメーターおよび成分(例えば、さまざまなタイプの制御放出用組成物およびコーティング剤を含む)の適切な選択によって得られる。すなわち、薬剤を適切な添加剤とともに製剤化して、投与後に薬剤が制御された様式で放出されるような薬学的組成物とする。その例には、単数単位または複数単位の錠剤性またはカプセル性組成物、油性溶液、懸濁剤、乳剤、マイクロカプセル、ミクロスフェア、ナノ粒子、パッチ剤およびリポソームが含まれる。
【0203】
経口的使用のための固体剤形
経口的使用のための製剤には、有効成分を、毒性のない薬学的に許容される添加剤との混合物中に含む錠剤が含まれる。これらの添加剤には、例えば、以下のものが含まれる:不活性な希釈剤または充填剤(例えば、スクロース、ソルビトール、糖、マンニトール、微結晶セルロース、ジャガイモデンプンを含むデンプン類、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウムまたはリン酸ナトリウム);顆粒化剤および崩壊剤(例えば、微結晶セルロースを含むセルロース誘導体、ジャガイモデンプンを含むデンプン類、クロスカルメロースナトリウム、アルギナートまたはアルギン酸);結合剤(例えば、スクロース、グルコース、ソルビトール、アラビアゴム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、デンプン、アルファ化デンプン、微結晶セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドンまたはポリエチレングリコール);ならびに潤滑剤、グライダントおよび付着防止剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、シリカ、水素化植物油またはタルク)。その他の薬学的に許容される添加剤には、着色剤、香味剤、可塑剤、保湿剤、緩衝剤などが考えられる。
【0204】
錠剤はコーティングしなくてもよく、または任意には、消化管における崩壊および吸収を遅らせ、それによってより長期間にわたる持続的作用をもたらすために、それらを公知の方法によってコーティングしてもよい。コーティングは、活性薬剤を所定のパターンで放出するように適合化させてもよく(例えば、制御放出製剤を得る目的で)、またはそれを、胃を通過するまでは活性薬剤を放出しないように適合化させてもよい(腸溶コーティング)。コーティングは、糖コーティング、フィルムコーティング(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アクリル酸コポリマー、ポリエチレングリコールおよび/またはポリビニルピロリドンを基材とする)または腸溶コーティング(例えば、メタクリル酸コポリマー、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセテートフタレート、セラックおよび/またはエチルセルロースを基材とする)であってよい。さらに、時間遅延性の材料、例えば、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリンなどを用いることもできる。
【0205】
固体の錠剤組成物は、組成物を望ましくない化学変化(例えば、活性薬剤の放出前の化学分解)から防御するためのコーティングを含んでもよい。コーティングは、前記の「Encyclopedia of Pharmaceutical Technology」に記載されたものと同様の様式で固体剤形に対して適用することができる。
【0206】
複数の薬剤を同時に投与する場合には、薬剤を錠剤中に一緒に混合してもよく、または分配してもよい。一例としては、第1の薬剤を錠剤の内側に含め、第2の薬剤は外側に配置し、第2の薬剤のかなりの割合が第1の薬剤よりも前に放出されるようにする。
【0207】
経口的使用のための製剤を、チュワブル錠剤として、または有効成分が不活性な固体希釈剤(例えば、ジャガイモデンプン、ラクトース、微結晶セルロース、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムもしくはカオリン)と混合された硬ゼラチンカプセルとして、または有効成分が水もしくは油性媒質、例えば、ラッカセイ油、流動パラフィンまたはオリーブ油と混合された軟ゼラチンカプセルとして、用意することもできる。
【0208】
粉剤および顆粒剤を、上記の錠剤およびカプセルの項に述べた成分を用いて、例えば、混合機、流動層装置または噴霧乾燥装置を用いる従来の様式で、調製することもできる。
【0209】
制御放出用の経口剤形
経口的使用のための制御放出用組成物は、例えば、活性薬剤の溶解および/または拡散を制御することによって、活性薬剤を放出するように構築することもできる。
【0210】
溶解または拡散による制御放出は、化合物の錠剤、カプセル剤、ペレット剤もしくは顆粒剤を適切にコーティングすることにより、または化合物を適切なマトリックス中に組み入れることにより、実現することができる。制御放出コーティングには、上記のコーティング物質のうち1つもしくは複数、ならびに/または、例えば、セラック、蜜蝋、グリコワックス(glycowax)、カスターワックス、カルナウバ蝋、ステアリルアルコール、モノステアリン酸グリセリン、ジステアリン酸グリセリン、パルミトステアリン酸グリセリン、エチルセルロース、アクリル樹脂、dl-ポリ乳酸、セルロースアセテートブチレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリメタクリレート、メチルメタクリレート、2-ヒドロキシメタクリレート、メタクリレートヒドロゲル、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコールメタクリレート、および/またはポリエチレングリコールが含まれうる。
【0211】
制御放出マトリックス製剤において、マトリックス材料には、例えば、水和メチルセルロース、カルナウバ蝋およびステアリルアルコール、カルボポール(carbopol)934、シリコーン、トリステアリン酸グリセリン、メチルアクリレート-メチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、および/またはハロゲン化フルオロ炭素も含まれうる。
【0212】
また、本請求の配合物の化合物のうち1つまたは複数を含む制御放出用組成物が、浮遊性の錠剤またはカプセル(すなわち、経口投与後に一定期間にわたって胃内容物の上方に浮遊する錠剤またはカプセル)の形態にあってもよい。化合物の浮遊性錠剤製剤は、薬剤の混合物を、添加剤および20〜75%w/wの親水コロイド、例えばヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースと混合することによって調製することができる。続いて、得られた顆粒を加圧して錠剤とすることができる。胃液と接触すると、この錠剤はその表面の周囲に実質的に水不浸透性のゲル障壁を形成する。このゲル障壁は密度を1未満に維持することに関与し、それによって錠剤は胃液中で浮遊性を保つことが可能となる。
【0213】
経口投与のための液体
水の添加による水性懸濁液の調製のために適した粉剤、飛散性粉剤または顆粒剤は、経口投与のために好都合な剤形である。懸濁剤としての製剤は、分散剤または湿潤剤、懸濁剤および1つまたは複数の保存料との混合物にある状態で有効成分を提供する。適した分散剤または湿潤剤には、例えば、天然のホスファチド(例えば、レシチン、またはエチレンオキシドと脂肪酸、長鎖脂肪族アルコール、または脂肪酸に由来する部分的エステルとの縮合物)およびヘキシトールまたはヘキシトール無水物(例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなど)がある。適した懸濁剤には、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなどがある。
【0214】
非経口的組成物
化合物を、注射、持続注入または植え込み(静脈内、筋肉内、皮下など)により、従来の非毒性の薬学的に許容される担体およびアジュバントを含む、剤形、製剤として、または適した送達デバイスもしくはインプラントを介して、非経口的に投与することもできる。このような組成物の製剤化および調製は医薬製剤の当業者には周知である。製剤については、前記のRemington:「The Science and Practice of Pharmacy」に記載がある。
【0215】
非経口的使用のための組成物は、単位式剤形(例えば、単回投与用のアンプル)として、または複数回の投与用の薬剤を含み、適した保存料(以下参照)を添加することもできるバイアルとして提供してもよい。組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、持続注入デバイスまたは植え込みのための送達デバイスの形態にあってもよく、またはそれを、使用前に水または別の適した媒体によって再構成する乾燥粉末として用意することもできる。活性薬剤のほかに、組成物は、適した非経口的に許容される担体および/または添加剤を含みうる。活性薬剤を、制御放出のためのミクロスフェア、マイクロカプセル、ナノ粒子、リポソームなどに封入してもよい。さらに、組成物が、懸濁剤、溶解剤、安定化剤、pH調整剤、および/または分散剤を含んでもよい。
【0216】
以上に示したように、本発明による薬学的組成物は、無菌的注射のために適した形態にあってもよい。このような組成物を調製するためには、適した活性薬剤を、非経口的に許容される液体媒体中に溶解または懸濁させる。用いうる許容される媒体および溶媒としては、水のほか、適量の塩酸、水酸化ナトリウムまたは適した緩衝剤の添加によって適したpHに調整された水、1,3-ブタンジオール、リンゲル液および等張塩化ナトリウム溶液がある。水性製剤が、1つまたは複数の保存料(例えば、メチル、エチルまたはn-プロピルp-ヒドロキシ安息香酸)を含んでもよい。化合物の1つが水にほとんど溶けない、またはわずかしか溶けない場合には、溶解促進剤または溶解剤を添加することができ、または溶媒が10〜60%w/wのプロピレングリコールなどを含んでもよい。
【0217】
制御放出用の非経口的組成物
制御放出用の非経口的組成物が、水性懸濁液、ミクロスフェア、マイクロカプセル、磁性ミクロスフェア、油性溶液、油性懸濁液または乳濁液の形態にあってもよい。または、活性薬剤が、生体適合性のある担体、リポソーム、ナノ粒子、インプラントまたは持続注入デバイスに組み入れられてもよい。
【0218】
ミクロスフェアおよび/またはマイクロカプセルの調製に用いるための材料には、例えば、生体分解性/生体崩壊性のポリマー、例えばポリガラクチン、ポリ-(イソブチルシアノアクリレート)、ポリ(2-ヒドロキシエチル-L-グルタミン)およびポリ(乳酸)などがある。制御放出用の非経口的製剤の製剤化のために用いうる生体適合性担体には、糖質(例えば、デキストラン)、タンパク質(例えば、アルブミン)、リポタンパク質または抗体がある。インプラントに用いるための材料としては、生体非分解性(例えば、ポリジメチルシロキサン)または生体分解性(例えば、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)またはポリ(オルトエステル))のいずれも可能である。
【0219】
直腸用組成物
直腸適用の場合、組成物のために適した剤形には、坐薬(乳濁剤型または懸濁剤型)および直腸用ゼラチンカプセル(溶液または懸濁液)が含まれる。典型的な坐薬製剤では、活性薬剤を、カカオ脂、エステル化脂肪酸、グリセリン処理ゼラチン、ならびにポリエチレングリコールおよびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのようなさまざまな水溶性または分散性の基材といった、適切な薬学的に許容される坐薬基材と配合する。さまざまな添加剤、増強剤または界面活性剤を組み入れてもよい。
【0220】
経皮的および局所用組成物
薬学的組成物を、ミクロスフェアおよびリポソームを含む、従来の非毒性の許容される薬剤用担体および添加剤を含む剤形または製剤として、経皮的吸収のために皮膚上に局所的に投与することもできる。これらの製剤には、クリーム剤、軟膏、ローション剤、リニメント剤、ゲル剤、ヒドロゲル、液剤、懸濁剤、スティック、噴霧剤、ペースト剤、硬膏およびその他の種類の経皮的薬物送達システムが含まれる。薬学的に許容される担体または添加剤には、乳化剤、抗酸化剤、緩衝剤、保存料、保湿剤、浸透促進剤、キレート剤、ゲル形成剤、軟膏基材、香料および皮膚保護剤が含まれうる。
【0221】
乳化剤の例には、天然のゴム(例えば、アラビアゴムまたはトラガカントゴム)および天然のホスファチド(例えば、ダイズレシチンおよびソルビタンモノオレエート誘導体)がある。抗酸化剤の例には、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、アスコルビン酸およびその誘導体、トコフェロールおよびその誘導体、ブチル化ヒドロキシアニソールならびにシステインがある。保存料の例には、パラベン、例えばメチルまたはプロピルp-ヒドロキシ安息香酸、および塩化ベンザルコニウムがある。保湿剤の例には、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトールおよび尿素がある。浸透促進剤の例には、プロピレングリコール、DMSO、トリエタノールアミン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、2-ピロリドンおよびその誘導体、テトラヒドロフルフリルアルコールならびにAZONE(商標)がある。
【0222】
キレート剤の例には、EDTAナトリウム、クエン酸およびリン酸がある。ゲル形成剤の例には、CARBOPOL(商標)、セルロース誘導体、ベントナイト、アルギナート、ゼラチンおよびポリビニルピロリドンがある。軟膏基材の例には、蜜蝋、パラフィン、パルミチン酸セチル、植物油、脂肪酸のソルビタンエステル(Span)、ポリエチレングリコール、および脂肪酸のソルビタンエステルとエチレンオキシドとの縮合産物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンエステルモノオレエート(TWEEN(商標))がある。
【0223】
上記の薬学的組成物を、ドレッシング材または硬膏、パッド、スポンジ、ストリップもしくは他の形態の適した柔軟性材料といった特殊な薬物送達デバイスによって適用することもできる。
【0224】
制御放出用の経皮的および局所的組成物
薬剤の放出および経皮的浸透に対する速度制御を付与するためにはいくつかのアプローチがあり、これには以下のものが含まれる:膜による穏和化システム(membrane-moderated system)、接着性拡散制御システム、マトリックス分散型システムおよびマイクロリザーバーシステム。制御放出用の経皮的および/または局所的な組成物は、上述したアプローチの適した組み合わせを用いることによって得ることができる。
【0225】
膜による穏和化システムでは、活性薬剤は、薬剤不透過性のラミネート(例えば、金属-合成樹脂ラミネート)および微小孔性または非孔性ポリマー膜(例えば、エチレン酢酸ビニルコポリマー)といった速度制御性ポリマー膜から形作られた浅い区画内に完全に封入されたリザーバー中に存在する。活性化合物は、速度制御性ポリマー膜のみを通って放出される。薬剤リザーバー中で、活性薬剤は、固体ポリマーマトリックス中に分散しているか、またはシリコーン液などの粘性液体媒質中に懸濁化している。ポリマー膜の外部表面に対しては、経皮的システムと皮膚表面との密接な接着が得られるように接着性ポリマーの薄層が施される。接着性ポリマーは、活性薬剤との適合性のある低アレルゲン性ポリマーであることが好ましい。
【0226】
接着性拡散制御システムでは、活性薬剤のリザーバーは、活性薬剤を接着性ポリマー中に直接分散させ、続いて、活性薬剤を含む接着性物質を、実質的に薬剤不透過性の金属-合成樹脂製基材の平坦シートに対して塗布して、薄い薬物リザーバー層を形成させることによって形成される。
【0227】
マトリックス分散型システムは、活性薬剤のリザーバーが、活性薬剤を親水性または親油性のポリマーマトリックス中に実質的に均一に分散させ、続いて薬剤含有ポリマーを実質的に明確に規定された表面積および厚みを有するディスク状として成形することによって形成されることを特徴とする。接着性ポリマーを周囲に塗布し、ディスクの周囲の接着性ストリップを形成させる。
【0228】
マイクロリザーバーシステムでは、活性物質のリザーバーは、まず固体薬剤を水溶性ポリマーとの水性溶液として懸濁させ、続いて薬剤懸濁液を親水性ポリマー中に分散させて薬剤リザーバーとなる複数の微細な球体を形成させることによって形成される。
【0229】
その他の態様
本明細書で言及したすべての刊行物および特許出願は、それぞれの個々の刊行物または特許出願が参照として組み込まれるように特定的および個別に示されている場合と同程度に参照として本明細書に組み込まれる。
【0230】
上記の本発明は、理解しやすいように図面および実施例を用いてある程度詳細に記載されているが、当業者には、本発明の開示に鑑みて、その精神または添付した請求の範囲を逸脱することなく、ある種の変更および改変が可能であることは容易に理解されると思われる。
【0231】
その他の態様は特許請求の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0232】
【図1】図1Aは、末梢神経損傷の前および後での、発生過程および成熟期にある後根神経節(DRG)におけるジヒドロプテリジンレダクターゼ(DHPR)を含む23種の遺伝子のマイクロアレイ発現プロファイル分析を表したグラフである。図1Bは、末梢神経損傷の前および後での、発生過程および成熟期にある後根神経節におけるDHPRのmRNA調節を確かめたノーザンスロットブロット分析を表している。
【図2】図2Aは、テトラヒドロビオプテリン(BH4)合成経路の概要を示した概略図である。図2Bは、テトラヒドロビオプテリンの異化を示した概略図である。
【図3】マイクロアレイにより検出した、末梢神経損傷の前および後でのBH4合成経路の要素の発現レベルの変化を示した表である。
【図4】図4Aは、末梢神損傷の前(未処理)および後での、後根神経節(DRG)におけるGTPシクロヒドロラーゼ(GTPCH)のmRNA発現を示したノーザンブロット分析の画像である。図4Bは、末梢神経損傷の前(未処理)および後での、DRGにおけるGTPCH mRNAの非放射性のインサイチュー局在を示した一連の顕微鏡写真である。図4Cは、放射性インサイチューハイブリダイゼーションにより検出した、末梢神経損傷から3日後および3週後のニューロンにおけるGTPCH mRNAの増加を示したDRGの一連の顕微鏡写真である。図4D〜Fは、末梢神経損傷後の14日の期間にわたってDRGにおけるノーザンブロット分析により測定した、GTPCH、DHPRおよびセピアプテリンレダクターゼ(SPR)のmRNAレベルを表した一連のグラフである(*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001)。
【図5】図5AおよびBは、末梢神経損傷の前および後でのGTPCHのタンパク質レベルおよび酵素活性を示した一連のグラフである(*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001)。図5Cは、末梢神経損傷の前および後でのDRGにおけるBH4レベルを示した棒グラフである。
【図6A】3種類の神経障害性疼痛モデル(坐骨神経部分損傷(SNI)モデル、慢性絞扼性損傷(CCI)モデルおよび脊髄神経結紮(SNL)モデル)における、BH4合成経路のさまざまな要素に関する、3連のAffymetrixマイクロアレイ分析による実験時および未処理時の強度の読み取り値の経時的な比を示した一連のグラフである。DRGにおける発現プロファイルを示している。
【図6B】図6Aの続きであり、後角におけるBH4合成酵素の発現の変化が示されている。これらの酵素はDRGおよび後角のいずれにも存在する。
【図7A】足底部への完全フロイントアジュバント投与によって生じさせた末梢炎症後のDRGにおける、BH4合成経路のさまざまな要素に関する、3連のAffymetrixマイクロアレイ分析による実験時および未処理時の強度の読み取り値の経時的な比を示した一連のグラフである。
【図7B】足底部への完全フロイントアジュバント投与によって生じさせた末梢炎症後の後角における、BH4合成経路のさまざまな要素に関する、3連のAffymetrixマイクロアレイ分析による実験時および未処理時の強度の読み取り値の経時的な比を示した一連のグラフである。
【図8−1】神経障害性疼痛のSNIモデルにおける侵害受容性行動に対するDAHPの影響を示した一連のグラフを表している。左側の図は、フォンフライ毛を用いて加えた機械的刺激に対する閾値(フォンフライ閾値)を示している。右側の図は、寒冷アロディニアの指標としての、肢に対するアセトン適用後の肢舐め、震えおよび挙上の持続時間を示している。図8Aでは、ラットに手術3日後から開始する形でDAHP(180mg/kg/d i.p.)を3日間投与した(早期治療)。薬剤注射の前および後に侵害受容性行動を毎日評価した。図8Bでは、投与期間を手術から3日後に開始する形で5日間に延長し(180mg/kg/d i.p.)、疼痛行動を薬剤注射の前および後に毎日、さらに毎日の薬剤注射を終えた後にさらに1週間にわたり1日おきに1回ずつ評価した。図8Cでは、DAHPの投与(180mg/kg/d i.p.を5日間)を手術の17日後に開始し、すなわち早期には全く投与せずに慢性期に実施した。侵害受容性行動を薬剤注射から3時間後に毎日評価した。
【図8−2】図8−1の続きである。図8Dでは、動物に対してDAHP(6mg/kg/d)の脊髄内持続注入を14日間行った。注入は手術後直ちに開始した。侵害受容性行動を1日1回評価した。
【図9】神経障害性疼痛のCCIモデルにおける侵害受容性行動に対するDAHPの影響を示した2つのグラフである。図9Aは、フォンフライ毛を用いて加えた機械的刺激に対する閾値(フォンフライ閾値)を示している。図9Bは、寒冷アロディニアの指標としての、肢に対するアセトン適用後の肢舐め、震えおよび挙上の持続時間を示している。DAHPの投与(180mg/kg/d i.p.を5日間)を手術から3日後に開始し、疼痛行動を薬剤注射の前および後に毎日、さらに毎日の薬剤注射を終えた後は1日おきに1回ずつ評価した。
【図10】ホルマリン試験における後ずさり行動に対するDAHPの影響を示している。DAHP(180mg/kg)を腹腔内注射し、その1時間後に後肢にホルマリンを注射した。ホルマリン注射の直後から始めて1時間にわたって後ずさりを算定した。
【図11】炎症性疼痛のモデルであるCFAモデルにおける温熱性痛覚過敏に対するDHAPの影響を示した一連のグラフである。図11Aは、CFAを投与した炎症肢の、輻射熱に対する肢逃避反射潜時(ハーグリーブス(Hargreaves)試験)を示している。グラフの左端では、1回目は後肢へのCFA注射の30分前、2回目はCFAの4時間後(矢印D1およびD2で示している)という2回にわたってDAHP(180mg/kg i.p.)を注射している。右側では、CFA注射後の最初の24時間には何も投与せず、肢炎症の誘発から24時間後にDAHP(180mg/kg i.p.)を単回注射した(破線矢印D1)。図11Bは、炎症のない対側肢のそれぞれの肢逃避反射潜時を示している。図11C〜Dでは、全身投与したDAHP(180mg/kg i.p.、単回投与;11C)を、腰椎カテーテルを介して投与した単回髄腔内投与(1mg/kg i.t.;11D)と比較している。いずれの場合にも、投与は後肢へのCFA注射から24時間後に開始した。ベースラインレベルに幾分違いがあるため(11Cと11Dとの比較)、両方の投与経路の直接比較が可能となるように、i.p.およびi.t.投与後のDAHPの影響を、肢逃避反射潜時の変化率としてさらに提示している(図11E)。
【図12】炎症肢の肢重量の増加を対側肢と比較して示した棒グラフである。肢重量はCFA注射から48時間後に測定した。肢重量の増加は炎症肢の浮腫の指標であり、このため、肢の炎症の評価が可能となる。
【図13】未処理ラットにおける触覚刺激(図13A)および熱刺激(図13B)への応答に対するDAHPの影響を示した一連のグラフである。DAHP(180mg/kg i.p.)または媒体の単回投与注射を「ゼロ」の時点で行った。
【図14】DAHPの薬物動態上の特徴および薬物動態-薬力学相関を示した一連のグラフを表している。図14Aは、「ゼロ」時点での180mg/kgの腹腔内注射による単回投与後のDAHP血漿中濃度の経時的推移を示している。さらに、脳脊髄液(CSF)中のDAHPの濃度を、早期および後期の時点で測定した。図14Bでは、血漿中濃度を、投入速度が一次で消失速度も一次である1コンパートメントPKモデルに対して適合化させた。諸PKパラメーターを提示しているが、このうちCmaxは最大濃度であり、tmaxは最大濃度到達時間であり、k01は吸収速度定数であり、t1/2absは吸収半減期であり、k10は消失速度定数であり、tl/2elは消失半減期であり、Clはクリアランスである。図14Cでは、プール血漿中濃度およびCFAモデルの影響のデータを用い、標準的なシグモイド形Emaxモデルを利用してPK/PD相関を評価した。
【図15】CFAモデルにおける温熱性痛覚過敏に対するセピアプテリンレダクターゼ阻害薬N-アセチルセロトニン(NAS)の影響を示している。輻射熱に対する肢逃避反射潜時(PWL)(ハーグリーブス試験)は、熱感受性の指標の1つである。NAS投与(50mg/kg i.p.の単回投与)を、後肢へのCFA注射から24時間後に開始した。データは、炎症のない対側肢のPWLと比較したPWLの変化率として提示されている。図15Bは、対側肢との比較による炎症肢の肢重量の増加を示している。肢重量はCFA注射から48時間後に測定した。肢重量の増加は炎症性肢浮腫の指標の1つである。
【図16】神経障害性疼痛のSNIモデルにおける侵害受容性行動に対するメトトレキサート(MTX)の全身投与(図16A)および髄腔内投与(図16B)の影響を示している。図16Aおよび図16Bでは、左の図はフォンフライ毛を用いて加えた機械的刺激に対する閾値(フォンフライ閾値)を示している。右の図は、寒冷アロディニアの指標としての、肢に対するアセトン適用後の肢舐め、震えおよび挙上の持続時間を示している。図16Aでは、SNI手術の5日後から始めて、MTX(0.2mg/kg/d)を1日1回腹腔内注射した。薬剤注射の3時間後に侵害受容性行動を1日1回評価した。図16Bでは、SNI手術の直後に始める形で、MTXを髄腔内持続注入(0.1mg/kg/dを14日間)により投与した。侵害受容性行動を1日1回評価した。図16Cおよび図16Dは、MTXの全身投与(図16C)および髄腔内投与(図16D)中の動物個体の体重増加を示している。体重増加を、全般的な健康状態およびMTXの有害な影響について評価するために用いた。
【図17】さまざまなセピアプテリンレダクターゼ阻害薬を示している(Smith et al., (1992) J Biol Chem 267: 5599-5607)。
【図18】BH4、グアニンおよびDAHPの化学構造を示している。
【図19−1】可能性のあるGTPCH阻害薬を示した表である。
【図19−2】図19−1の続きであり、可能性のあるGTPCH阻害薬を示した表である。
【図20】GTPCHの構造およびその基質と酵素の触媒中心との結合を示している。GTPCHおよび基質GTPのアミノ酸同士の水素結合が点線として示されている。
【図21】GTPCH-Iとフィードバック調節タンパク質(GFRP)との相互作用、および双方のタンパク質の境界部におけるフェニルアラニンの結合部位を示している。BH4およびGFRP依存的GTPCH-I阻害薬の結合部位はフェニルアラニンのそれと類似すると考えられる。
【図22】神経損傷のSNIモデルにおける機械的刺激(図22A)および温熱性刺激(図22B)に対するDAHPの抗侵害受容性効果が用量反応相関を示すことを示した一連のグラフである。このグラフでは、▲印は媒体、i.p.を表し;▽印はDAHP、90mg/kg/day、i.pを表し;□印はDAHP、180mg/kg/day、i.p.を表し;○印はDAHP、270mg/kg/day、i.pを表している。
【図23】BH4の侵害受容誘発作用を示した一連のグラフである。図23Aは、BH4の髄腔内投与により、未処理ラットにおける温熱性(熱)刺激に対する肢逃避反射潜時が短縮することを示している。図23Bは、既存の温熱性過敏性(同側性)を有する動物におけるBH4の侵害受容誘発作用を対照(対側)と比較して示している。肢炎症のCFAモデルを用いて過敏性が誘導された。これらの実験では、ベースラインの肢逃避反射潜時の測定後に、BH4を「ゼロ」時点で注射した。
【図24】図24Aは、DAHPおよび媒体を投与したラットにおけるホルマリン注射の2時間後の同側性後角ニューロンにおけるcFos免疫反応を示した一連の顕微鏡写真である。図24Bは、各条件下で観察されたcFos免疫反応性細胞体の数を数量化した棒グラフである。
【図25】180mg/kg/dayのDAHPまたは媒体対照のいずれかを投与した動物個体のSNI手術から7日後のL4/L5後角における、TUNEL染色を用いたアポトーシス細胞特性の数を示した棒グラフである。アポトーシス性ニューロンをインサイチューTUNEL標識により検出し、盲検下にある観察者が算定した。
【図26】図26Aは、SNIモデルに対するDAHP投与の有無にかかわらず、機械的刺激または温熱性(寒冷)刺激に対する応答に関して、野生型マウスとnNOSノックアウトマウスとの間に有意差がないことを示した一連のグラフである。この図では、●印はDAHPを投与したnNOSノックアウトマウス;○印は媒体を投与したnNOSノックアウトマウス;▲印はDAHPを投与した野生型マウス;△印は媒体を投与した野生型マウスを表している。図26Bは、NOS阻害薬であるL-NAMEが、SNIモデルにおける機械的刺激または温熱性(寒冷)刺激に対するDAHPの抗侵害受容作用を増強しないことを示した一連の線グラフである。この図では、▲印はL-NAME投与;○印はLNAME+DAHP投与;●印はDAHP投与;△印は媒体投与を表している。L-NAMEは25mg/kg、i.p.で単回投与し、DAHPは120mg/kg、i.p.で単回投与した。この高用量L-NAMEの抗侵害受容効果(約50%)は中用量のDAHPのそれよりも弱かった。
【図27】図27Aは、SNI手術から3日後(上図)および14日後(下図)の同側性(病変あり)および対側性(対照)の後根神経節におけるGTPCH-Iのインサイチューハイブリダイゼーションを示した一連の顕微鏡写真である。図27Bは、SNI手術から14日後の、DAHPまたは媒体対照のいずれかを投与した上でのGTPCH-Iインサイチューハイブリダイゼーションを示した一連の顕微鏡写真である。これらのデータは、DAHPがSNIモデルにおけるGTPCH-I発現に影響を及ぼさないことを示している。
【図28】図28Aは、GTPCH-l mRNAは脊髄では通常は発現されないが、SNI手術の3日後には単離されたGTPCH-I発現性運動ニューロンが観察されることを示している一連の顕微鏡写真である。図28Bは、GFRPは単離されたDRGニューロンでは発現されるが、発現パターンはSNI手術の3日後には変化していないことを示した一連の顕微鏡写真である。
【図29】インサイチューハイブリダイゼーションによるGTPCH-Iの発現(左欄)および免疫蛍光によるNF200グリフォニア・シンプリシフォリア(Griffonia simplicifolia)イソレクチンB4(IB4)、CGRP、およびnNOSの発現を示した一連の顕微鏡写真である(中央の欄)。GTPCH-Iおよび特定されたタンパク質を同時発現する細胞の数を、GTPCH-Iを発現する細胞に対するパーセント割合として表した(右欄)。
【図30】DAHP投与の有無による、SNI手術後のDH、DRG、およびScNにおけるBH4代謝産物ビオプテリンおよびネオプテリンのレベルを対照と比較して数量化した一連の棒グラフである。
【図31】SNI神経損傷モデルに従う、インサイチューハイブリダイゼーションを用いたGTPCH-I mRNAの共存、および免疫組織化学を用いたATF-3タンパク質の局在を示した顕微鏡写真である。矢印は、GTPCH mRNA発現、さらにATF-3に対する核染色も呈する細胞を示している。GTPCH発現ニューロンのうち全体として80〜90%がATF-3陽性であり、このことは損傷ニューロンのほとんどでGTPCH-Iのアップレギュレーションが起こることを示している。
【背景技術】
【0001】
発明の背景
疼痛の感覚はよくみられる症状であり、これは基礎をなす疾患もしくは損傷を示すこともあれば、または神経系内部における異常な働きの現れであることもある。疼痛はしばしば、治療が探し求められる最初の動機となる。
【0002】
疼痛は、その起源に応じてさまざまな形態をとりうる。疼痛は、初発損傷が神経の完全もしくは部分的な離断、または神経叢に対する外傷の結果として起こる場合には、末梢神経障害性と記載されることがある。または、疼痛は、脊髄損傷または脳血管障害といった中枢神経系に対する病変の後には中枢神経障害として記載される。炎症性疼痛は、組織の損傷または炎症(例えば、術後疼痛または関節リウマチ)によって引き起こされる疼痛の一形態である。末梢神経損傷の後は、諸症状が慢性的な様式で、損傷部位に対して遠位性に経験されることが一般的であり、これらは感覚過敏(自然刺激に対する感受性の亢進)、痛覚過敏(侵害刺激に対する異常な感受性)、アロディニア(通常は不快感を与えない触覚刺激に対する過敏性と関連性のある広汎性の圧痛)および/または自発性灼熱痛もしくは鋭い電撃性疼痛を特徴とする。炎症性疼痛において、諸症状は、少なくとも初期のうちは損傷または炎症組織の部位で明らかであり、典型的には関節炎関連疼痛、筋骨格系疼痛および術後疼痛を併発する。侵害受容性疼痛は、針刺し、または外傷もしくは外科手術の時などの侵害刺激に反応して経験される疼痛である。機能性疼痛とは、明らかな末梢性病態も神経系に対する病変も認められない状態のことを指す。
【0003】
この特有の形態の疼痛は神経系の異常な働きによって生じ、このような疼痛を特徴とする状態には、線維筋痛症、緊張型頭痛および過敏性腸症候群が含まれる。異なるタイプの疼痛が共存することもあり、または、ヘルペス後神経痛の場合のように、疾患の自然経過に伴って、疼痛が炎症性から神経障害性に移行することもある。
【0004】
疼痛の治療のための1つのアプローチは、原因または病因となる因子の除去(疾患修飾療法)であるものの、疼痛は往々にして初発原因の持続期間よりも持続する。このため、対症的なコントロールが必須である。疼痛の感覚が耐えられなくなった症例には、急速かつ効果的な鎮痛が不可避である(例えば、術後状態、熱傷、外傷、癌および鎌状赤血球クリーゼ)。現在、疼痛の管理のために有用な多種多様な鎮痛薬が存在し、これには例えば、非ステロイド性鎮痛薬(NSAID)、抗けいれん薬およびオピオイド鎮痛薬が含まれる。それらは有効であるものの、このような薬剤の長期的な使用は、胃の不快感、肝臓に対する毒性、呼吸抑制、鎮静、精神異常作用、便秘、悪心、耐性、依存性、および乱用のリスクといった消耗性の副作用の恐れがあるため、多くの場合には推奨されない。また、これらの薬剤は、特に神経障害性疼痛および機能性疼痛に対しては最適とは言えないことも時にある。
【0005】
このため、疼痛の治療および管理のための、より優れた治療戦略が求められている。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
一般に、本発明は、哺乳動物における、疼痛の、または外傷性、代謝性もしくは毒性の末梢神経病変をさらに増大させる内因性機構の、診断、治療、軽減および予防のための方法を特徴とする。本発明によれば、哺乳動物(例えば、ヒト)に対して、疼痛が軽減、予防または治療されるように、テトラヒドロビオプテリン(BH4)の生物活性を低下させる組成物(例えば、メトトレキサート)を投与する。または、BH4の合成に関与する酵素、すなわちBH4合成酵素のうちいずれか1つのレベルまたは活性を低下させることによって、治療される哺乳動物における疼痛を軽減することもできる。この点に関連して、BH4合成は、以下の酵素のうち少なくとも1つ、2つもしくは3つ、または3つよりも多くの生物活性を低下させることによって低下させることができる:セピアプテリンレダクターゼ(SPR)、ピルボイルテトラヒドロプテリンシンターゼ(PTPS)、GTPシクロヒドロラーゼ(GTPCH)、プテリン-4α-カルビノールアミンデヒドラターゼおよびジヒドロプテリジンレダクターゼ(DHPR)。このような活性は、治療を受けていない対照の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、またはさらには100%低下させることができる。または、BH4生物活性を、GTPシクロヒドロラーゼフィードバック調節タンパク質(GFRP)の発現またはGTPCH結合活性もしくはその他の生物活性を高めることによって低下させることもできる。GFRPの生物活性は、GFRPまたはGTPCH:GFRP複合体と特異的に結合するBH4またはフェニルアラニン類似体を投与することによって高めることができる。外傷性神経病変には、機械的傷害および圧迫性損傷によって引き起こされるものが含まれる。圧迫性損傷は、外傷もしくは外部損傷によって引き起こされることもあれば、または浸潤性腫瘍に起因する圧迫のように内的な状態および病態によって引き起こされることもある。本発明の方法の方法を用いる治療を適用しうる代謝性神経病変には、例えば、糖尿病性末梢神経障害、遺伝性神経障害、またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)などの感染因子に起因する神経障害が含まれる。毒性神経病変には、例えば、他の治療薬(例えば、化学療法薬)または化学物質および環境毒(例えば、重金属および有機溶媒)によって引き起こされるものが含まれる。
【0007】
本発明によれば、疼痛の軽減は、例えば、一次感覚ニューロン、または脊髄の後角内部、脳幹内もしくは脳内のニューロンの働きの変化に起因するものであってよい。このような変化は、例えば、BH4を補助因子として利用するさまざまな酵素の活性の低下、および、細胞からのBH4の放出後の膜結合型BH4結合受容体の活性化の低下を招く、BH4の合成の低下(例えば、一酸化窒素シンターゼ)に起因するものであってもよい。BH4結合受容体に対するBH4の作用は、BH4に類似した競合的または非競合的な受容体アンタゴニストによって阻害または低下させることができる。BH4を補助因子として利用する酵素に対するBH4の作用は、BH4に類似した競合的アンタゴニストによって阻害することができる。このような結合または活性を、治療を受けていない対照に比して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、またはさらには100%低下させることができる。
【0008】
さらに、テトラヒドロビオプテリン(BH4)、その前駆体またはその代謝産物のレベルを、哺乳動物から入手した生物試料(例えば、血漿、組織試料、脳脊髄液、滑液または組織滲出物)において測定し、それを続いて、疼痛または神経損傷の診断ツールおよびバイオマーカーとして役立てることもできる。BH4を測定するための方法は、例えば、Powers et al. (1988) J Chromatogr 432: 321-328;Blau et al. (1994) Clin Chim Acta 226: 159-169;Ponzone et al. (1994) Eur J Pediatr 153: 616;Zorzi et al. (2002) Mol Genet Metab 75: 174-177;およびShiraki et al. (1994) Eur J Pediatr 153: 616に記載されている。任意で、BH4合成酵素のうちいずれか1つのレベルまたは活性の上昇により、哺乳動物における疼痛を診断することもできる。
【0009】
本発明の方法は、したがって、さまざまな形態の疼痛、例えば、侵害受容性疼痛、炎症性疼痛、機能性疼痛および神経障害性疼痛(これらはすべて急性でも慢性でもよい)の診断、治療、軽減または予防のために有用である。すなわち、治療しようとする哺乳動物は、末梢糖尿病性ニューロパチー、圧迫性ニューロパチー、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛もしくは舌咽神経痛、外傷後もしくは術後の神経障害、腰椎もしくは頸部神経根症、AIDSニューロパチー、代謝性ニューロパチー、薬剤誘発性ニューロパチー、複合性局所疼痛症候群、クモ膜炎、脊髄損傷、骨もしくは関節の損傷、組織損傷、乾癬、強皮症、掻痒、癌(例えば、前立腺、結腸、乳房、皮膚、肝臓または腎臓)、心血管疾患(例えば、心筋梗塞、狭心症、虚血性もしくは血栓性の心血管疾患、末梢血管閉塞疾患または末梢動脈閉塞疾患)、鎌状赤血球貧血、片頭痛、群発性頭痛もしくは緊張型頭痛、皮膚、筋肉もしくは関節の炎症性疾患、線維筋痛症、過敏性腸症候群、非心臓性胸痛、膀胱炎、膵炎、または骨盤痛を有すると診断されたものでよい。または、治療が求められている疼痛が、外傷性損傷、手術、皮膚組織の熱傷(熱的、化学的もしくは放射線照射による刺激によって起こったもの)または日焼けの結果であってもよい。
【0010】
本発明によれば、治療しようとする哺乳動物に対して、例えば、以下の化合物のうち少なくとも1つを含む組成物を投与することができる:メトトレキサート、トリメトプリム-スルファメトキサゾール、2,6ジアミノヒドロキシピリミジン(DAHP)、テトラヒドロ-L-ビオプテリン、L-セピアプテリン、7,8-ジヒドロ-L-ビオプテリン、6,7-ジメチルテトラヒドロプテリン塩酸塩、8-ブロモ-cGMP、N-アセチル-セロトニン(NAS)、N-クロロアセチルセロトニン、N-メトキシアセチルセロトニンおよびN-クロロアセチルドーパミン。
【0011】
または、本発明の組成物が、式:
を有する化合物を含んでもよく、この際、R1はH、C1-6アルキル、ハロ、NO2、CN、CO2R4、CONR4R5、SO2R4、SO2NR4R5、OR4、またはNR4R5である。R4およびR5のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリール(alkheteroaryl)であってよい;R2はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであってよい;R3はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、C1-4アルクヘテロアリール、CO2R6、CONR7R8、SO2R6またはSO2NR7R8であってよく、式中、R6はC1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであり、R7およびR8のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールである。
【0012】
または、R3が上記の通りであって、R1およびR2が共に、
によって表されてもよく、式中、R1/R2連結のN、OまたはSはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11、R12およびR13のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールである。
【0013】
任意で、R3が上記の通りであって、R1およびR2が共に、
によって表されてもよく、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R12またはR13のそれぞれは上記の通りであり、R14はOR4、ハロ、NO2、CN、CO2R7、CONR7R8、SO2R7、SO2NR7R8、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであり、この際、R7およびR8のそれぞれは独立に、H、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、ヘテロアリール、C1-C4アルカリルまたはC1-C4アルクヘテロアリールである。
【0014】
もう1つの選択肢として、R1およびR2が共に、
によって表されてもよく、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11およびR14のそれぞれは上記の通りであり、R3は存在せず、R14を有する炭素とR2を有する窒素との間には二重結合が形成される。
【0015】
任意で、組成物が、R1がH、C1-6アルキル、ハロ、NO2、CN、CO2R4、CONR4R5、SO2R4、SO2NR4R5、OR4またはNR4R5であるような、式(I)の化合物を有してもよい。それに応じて、R4およびR5のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであってよく、R2はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであってよく、R3はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、C1-4アルクヘテロアリール、CO2R6、CONR7R8、SO2R6またはSO2NR7R8であってよく、式中、R6はC1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであり、R7およびR8のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールである。
【0016】
望ましい場合、組成物は、式:
の化合物を含み、式中、R1およびR2は共に、
によって表されてもよく、この際、R1/R2連結のN、OまたはSはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11、R12およびR13のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールである。
【0017】
または、組成物は、式:
の化合物を含み、式中、R3は上記の通りであり、R1およびR2は共に、
によって表され、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R12およびR13のそれぞれは上記の通りであり、R14はOR4、ハロ、NO2、CN、CO2R7、CONR7R8、SO2R7、SO2NR7R8、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであり、式中、R4、R7およびR8のそれぞれは独立に、H、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、C1-C4アルカリル、ヘテロアリールまたはC1-C4アルクヘテロアリールである。
【0018】
または、組成物は、式:
の化合物を含み、式中、R1およびR2は共に、
によって表されてもよく、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11およびR14のそれぞれは上記の通りであり、R3は存在せず、R14を有する炭素とR2を有する窒素との間には二重結合が形成される。
【0019】
組成物が、式:
の化合物を含む場合には、R1およびR2は共に、
によって表されてもよく、式中、R1/R2連結のN、OまたはSはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11、R12およびR13のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールである。
【0020】
または、組成物は、式:
の化合物を含み、式中、R3は上記の通りであり、R1およびR2は共に、
によって表され、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R12およびR13のそれぞれは上記の通りであり、R14はOR4、ハロ、NO2、CN、CO2R7、CONR7R8、SO2R7、SO2NR7R8、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであり、この際、R7およびR8のそれぞれは独立に、H、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、C1-C4アルカリル、ヘテロアリールまたはC1-C4アルクヘテロアリールである。
【0021】
任意で、組成物は、式:
の化合物を含んでもよく、式中、R1およびR2は共に、
によって表され、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11およびR14のそれぞれは上記の通りであり、R3は存在せず、R14を有する炭素とR2を有する窒素との間には二重結合が形成される。
【0022】
本発明の組成物の内部に含まれうる化合物の例には、例えば、以下のものが含まれる。
【0023】
さらに、本発明の組成物は、式:
の化合物を含んでもよく、式中、R15はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであり、R16はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、C1-4アルクヘテロアリール、CO2R17、CONR18R19、SO2R17またはSO2NR18R19である。R17はC1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであってよく、R18およびR19のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであってよい。
【0024】
望ましい場合、鎮痛薬などの第2の治療薬を、本発明の組成物と組み合わせて投与することもでき、これには例えば、以下のものが含まれる:非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)(アセトアミノフェン、非COX-2選択的薬剤またはCOX-2選択的阻害薬を含む)、オピオイド受容体アゴニスト(例えば、モルヒネ、コデイン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、レボルファノール、メサドン、メペリジン、ブトルファノール、ブプラノルフィン、ナルブフィン、アルフェンタニル、スフェンタニル、フェンタニル、トラマドール、ペンタゾシン、プロポキシフェンまたはオキシコドン)、三環系抗うつ薬(例えば、ドキセピン、アミトリプチリン、イミプラミン、ノルトリプチリン、デシプラミンまたはベンラフェキシン)、SSRI(例えば、パロキセチン、セルトラリン、フルオキセチンまたはシタロプラム)、抗けいれん薬(例えば、フェニトイン、カルバマゼピン、オキシカルバゼピン、ラモトリジン、バルプロ酸塩、プレガバリンまたはギャバペンチン)、電位依存性ナトリウムチャンネル遮断薬、膜安定化薬、神経遮断薬(例えば、リドカイン、ブピビカイン、プリロカインまたはメキシリチン)、N型カルシウムチャンネル遮断薬(例えば、ジコニチド)、5-HT1D受容体アゴニストなどのセロトニン受容体アゴニスト(例えば、スマトリプタム、ゾルマトリプタン、リゾトリプタン、ナラトリプタン、アルモトリプタンまたはフロバトリプタン)、ステロイド(例えば、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロンまたはメチルプレドニゾロン)。本発明によれば、第2の治療薬は、単一の薬剤として投与された場合には治療効果(鎮痛など)があってもなくてもよいが、本発明の組成物と組み合わせて投与された場合にはこのような効果(または相加的または相乗的な増大)をもたらす。本発明において有用な鎮痛薬のその他の例には、例えば、アセトアミノフェン、アセチルサリチル酸、イブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、インドメタシン、ケトロラック、ロフェコキシブ、セレコキシブ、バルデコキシブ、パラコキシブ、クロナゼパム、ジアゼパム、カプサイシン、ケタミン、クロニジンまたはバクロフェンが含まれうる。
【0025】
または、第2の治療薬が、以下の酵素のうちいずれかを含む、BH4を補助因子として利用する任意の酵素の阻害薬であってもよい:一酸化窒素シンターゼ(NOS)のすべてのアイソフォーム、例えばeNOS、iNOSまたはnNOSなど;チロシンヒドロキシラーゼ;トリプトファンヒドロキシラーゼI(非神経性Tph1)およびII(神経性Tph2);フェニルアラニンヒドロキシラーゼ;ドーパミン-β-ヒドロキシラーゼ;N-メチルトランスフェラーゼ;ならびにエーテル脂質オキシダーゼ。第2の治療薬にはまた、BH4の、その補酵素機能とは独立した直接的効果を阻害する薬剤、例えば、BH4の膜結合型受容体との結合を妨げる薬剤なども含まれうる。
【0026】
本発明の組成物および第2の治療薬は、一緒に投与してもよく(2つの別個の製剤または単一の製剤として)、または別々に(例えば、互いに1時間、2時間、3時間、6時間または24時間以内に)投与してもよい。
【0027】
もう1つの局面において、本発明は、哺乳動物における疼痛または外傷性、代謝性もしくは毒性の末梢神経病変を診断するための方法であって、哺乳動物の生物試料における(例えば、血清、血漿、尿、脳脊髄液、滑液、組織滲出物または組織試料)における、BH4、BH4の前駆体もしくは中間体(例えば、7,8-ジヒドロネオプテリン三リン酸および6-ピルボイルテトラヒドロプテリン)またはBH4の代謝産物(例えば、プテリン、ビプテリン、7,8ジヒドロプテリン、7,8ジヒドロキサントプテリン、キサントプテリン、イソキサントプテリン、ロイコプテリンまたはネオプテリン)のレベルを測定することによる方法を特徴とする。本発明のこの局面によれば、BH4、BH4前駆体、BH4中間体またはBH4代謝産物のレベルは、これらの分子のいずれかの増加によって哺乳動物における疼痛が診断されるような疼痛のバイオマーカーとして役立つ。または、哺乳動物において、疼痛の臨床診断を、哺乳動物における、BH4合成酵素のいずれか1つ(例えば、セピアプテリンレダクターゼ(SPR)、ピルボイルテトラヒドロプテリンシンターゼ(PTPS)、GTPシクロヒドロラーゼ(GTPCH)、プテリン-4αカルビノールアミンデヒドラターゼおよびジヒドロプテリジンレダクターゼ(DHPR))のレベル(例えば、mRNAもしくはタンパク質のレベル)または活性を測定することによって裏づけることもできる。同様に、疼痛の診断は、このような酵素の活性またはレベルの上昇を確定することによって裏づけられる。
【0028】
本発明はまた、哺乳動物における、疼痛、または外傷性、代謝性もしくは毒性の末梢神経病変をさらに増大させる内因性機構を、治療、軽減または予防するための候補化合物を同定するための方法も提供する。本方法は以下の段階を含む:(a)BH4を合成する細胞を候補化合物と接触させる段階;および(b)BH4のレベルまたは活性(例えば、補助因子として機能する能力、または膜結合型受容体と結合する能力)を測定する段階。化合物と接触していない細胞におけるBH4のレベルまたは活性に比してBH4のレベルまたは活性を低下させる化合物は、哺乳動物における疼痛または外傷性、代謝性もしくは毒性の末梢神経病変を治療、軽減または予防するための候補化合物として同定される。または、段階(a)における細胞が、BH4合成酵素のいずれか1つ(例えば、セピアプテリンレダクターゼ(SPR)、ピルボイルテトラヒドロプテリンシンターゼ(PTPS)、GTPシクロヒドロラーゼ(GTPCH)、プテリン-4αカルビノールアミンデヒドラターゼおよびジヒドロプテリジンレダクターゼ(DHPR))を発現してもよく、任意で、段階(b)が、候補化合物の阻害活性を評価するために、このような酵素の発現または生物活性を測定することを含んでもよい。必要に応じて、BH4合成酵素はタンパク質融合遺伝子であってもよい。好ましい態様において、段階(b)は、BH4のレベルもしくは活性の測定、または代替的には、BH4合成酵素のうち1つのmRNAもしくはタンパク質レベルまたは酵素活性の測定を含む。細胞は哺乳動物細胞(例えば、ヒトまたは齧歯動物の細胞)であることが好ましい。
【0029】
1つの関連した局面において、本発明は、哺乳動物における疼痛または外傷性、代謝性もしくは毒性の末梢神経病変を治療、軽減または予防するための候補化合物を同定するための代替的な方法を提供する。この方法は、(a)タンパク質(例えば、BH4結合受容体またはBH4依存性酵素)上のプテリジン結合部位または特異的BH4結合部位を同定する段階;(b)このようなBH4結合タンパク質(受容体または酵素)を候補化合物と接触させる段階;ならびに(c)候補化合物がタンパク質上のBH4部位と結合してタンパク質に対するBH4の結合または活性を阻害する(例えば、それ自体のBH4部位に対する結合により)か否かを判定する段階。BH4の活性または結合を阻害する化合物は、疼痛または外傷性、代謝性もしくは毒性の末梢神経病変を治療、軽減または予防するための候補化合物として同定される。任意で、この方法はさらに、候補化合物を、BH4を補助因子として用いる酵素(例えば、NOS)またはBH4と結合する膜受容体のいずれか1つと接触させる段階、ならびに候補化合物がこのような酵素または受容体と結合するか否か、および/またはその活性を阻害するか否かを判定する段階を含みうる。本発明はまた、哺乳動物における疼痛または外傷性、代謝性もしくは毒性の末梢神経病変を治療、軽減または予防するための候補化合物を同定するためのさらにもう1つの方法も提供する。この方法は、(a)GTPシクロヒドロラーゼ(GTPCH)、GTPCHフィードバック調節タンパク質(GFRP)および候補化合物を提供する段階;(b)GTPCHとGFRPとの結合を測定する段階;および(c)GTPCHとGFRPとの結合が候補化合物の存在下で増加するような、疼痛または外傷性、代謝性もしくは毒性の末梢神経病変を治療、軽減または予防するために有用な候補化合物を同定する段階。好ましい態様において、GTPCHおよびGFRPはヒトタンパク質である。この方法において、候補化合物は、好ましくは、GFRPまたはGTPCH:GFRP複合体のいずれかと結合しうる。
【0030】
好ましい態様において、本方法は、候補化合物が、細胞、例えば齧歯動物またはヒトの細胞といった哺乳動物細胞における、BH4合成酵素の1つまたはすべての発現を低下させ、BH4レベルの低下をもたらす能力を調べる。最も好ましくは、BH4合成酵素遺伝子はヒトのセピアプテリンレダクターゼ(SPR)、ピルボイルテトラヒドロプテリンシンターゼ(PTPS)、GTPシクロヒドロラーゼI(GTPCH I)、プテリン-4αカルビノールアミンデヒドラターゼまたはジヒドロプテリジンレダクターゼ(DHPR)である。
【0031】
本発明はさらに、本発明の方法を実施するためのキットを含む。例えば、本発明は、疼痛または外傷性、代謝性もしくは毒性の末梢神経病変を治療、軽減または予防するのに十分な量の、テトラヒドロビオプテリン(BH4)のレベルおよび活性を低下させる組成物、ならびに疼痛または外傷性、代謝性もしくは毒性の末梢神経病変の治療、軽減または予防を目的とする哺乳動物に対する組成物の送達のための使用説明書を含むキットを含む。
【0032】
本発明はさらに、哺乳動物の生物試料(例えば、血清、血漿、尿、脳脊髄液、滑液、組織滲出物および組織の試料)からの、BH4、その前駆体および中間体(例えば、7,8-ジヒドロネオプテリン三リン酸および6-ピルボイルテトラヒドロプテリン)または代謝産物(例えば、プテリン、ビオプテリン、7,8ジヒドロプテリン、7,8ジヒドロキサントプテリン、キサントプテリン、イソキサントプテリン、ロイコプテリンおよびネオプテリン)の測定のための診断キットも含む。例えば、本発明は、BH4に対して特異的な抗体、ならびに哺乳動物における疼痛を診断するための使用説明書を含むキットを含む。
【0033】
本発明はまた、BH4標的タンパク質を同定するための方法も特徴とする。その第1の方法は、(a)試料およびBH4を提供する段階;(b)試料タンパク質とBH4との結合を可能にする条件下で、試料をBH4と接触させる段階;および(c)BH4を検出することによってBH4の試料タンパク質との結合を評価する段階であって、BH4と結合する試料タンパク質がBH4標的タンパク質として同定される段階、を含む。1つの態様において、評価の段階(c)は、質量分析法、表面プラスモン共鳴顕微鏡法または原子間力顕微鏡法などの検出方法を利用する。BH4標的タンパク質を同定するために本方法に用いうる生物試料は、任意の源に由来しうる。好ましい試料は、例えば後角または後根神経節を含む神経組織のような哺乳動物神経組織から調製された抽出物である。試料は膜結合型タンパク質を含むことが好ましい。
【0034】
BH4標的タンパク質を同定するための第2の方法は、(a)BH4およびアレイを提供する段階であって、アレイが複数の固定化された精製タンパク質種からなり、アレイ中のタンパク質種のそれぞれが他のタンパク質種のそれぞれと空間的に分離される段階;(b)タンパク質種とBH4との結合を可能にする条件下で、アレイをBH4と接触させる段階;および(c)BH4のタンパク質種との結合を評価する段階であって、BH4と結合するタンパク質種がBH4標的タンパク質として同定される段階、を含む。
【0035】
前記の2つの方法のいずれの好ましい態様においても、BH4は検出可能なように標識される。有用な検出可能な標識には、例えば、放射性同位体(例えば、トリチウム)またはビオチンが含まれる。他の有用な態様において、評価の段階(c)は、BH4特異的抗体の使用を必要とする。
【0036】
最後に、本発明は、BH4の生物活性を低下させるための組成物を提供する。本発明の組成物は、式:
を有してもよく、この際、R1はH、C1-6アルキル、ハロ、NO2、CN、CO2R4、CONR4R5、SO2R4、SO2NR4R5、OR4またはNR4R5である。R4およびR5のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであってよい;R2はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであってよい;R3はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、C1-4アルクヘテロアリール、CO2R6、CONR7R8、SO2R6またはSO2NR7R8であってよく、式中、R6はC1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであり、R7およびR8のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールである。
【0037】
または、R3が上記の通りであって、R1およびR2が共に、
によって表されてもよく、式中、R1/R2連結のN、OまたはSはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11、R12およびR13のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールである。
【0038】
任意で、R3が上記の通りであって、R1およびR2が共に、
によって表されてもよく、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R12またはR13のそれぞれは上記の通りであり、R14はOR4、ハロ、NO2、CN、CO2R7、CONR7R8、SO2R7、SO2NR7R8、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであり、この際、R7およびR8のそれぞれは独立に、H、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、ヘテロアリール、C1-C4アルカリルまたはC1-C4アルクヘテロアリールである。
【0039】
もう1つの選択肢として、R1およびR2が共に、
によって表されてもよく、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11およびR14のそれぞれは上記の通りであり、R3は存在せず、R14を有する炭素とR2を有する窒素との間には二重結合が形成される。
【0040】
任意で、組成物は、R1がH、C1-6アルキル、ハロ、NO2、CN、CO2R4、CONR4R5、SO2R4、SO2NR4R5、OR4またはNR4R5であるような、式(I)の化合物を有してもよい。それに応じて、R4およびR5のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであってよく、R2はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであってよく、R3はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、C1-4アルクヘテロアリール、CO2R6、CONR7R8、SO2R6またはSO2NR7R8であってよく、式中、R6はC1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであり、R7およびR8のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールである。
【0041】
望ましい場合、組成物は、式:
の化合物を含み、式中、R1およびR2は共に、
によって表されてもよく、この際、R1/R2連結のN、OまたはSはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11、R12およびR13のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールである。
【0042】
または、組成物は、式:
の化合物を含み、式中、R3は上記の通りであり、R1およびR2は共に、
によって表され、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R12およびR13のそれぞれはは上記の通りであり、R14はOR4、ハロ、NO2、CN、CO2R7、CONR7R8、SO2R7、SO2NR7R8、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであり、式中、R4、R7およびR8のそれぞれは独立に、H、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、C1-C4アルカリル、ヘテロアリールまたはC1-C4アルクヘテロアリールである。
【0043】
または、組成物は、式:
の化合物を含み、式中、R1およびR2は共に、
によって表されてもよく、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11およびR14のそれぞれは上記の通りであり、R3は存在せず、R14を有する炭素とR2を有する窒素との間には二重結合が形成される。
【0044】
組成物が、式:
の化合物を含む場合には、R1およびR2は共に、
によって表されてもよく、式中、R1/R2連結のN、OまたはSはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11、R12およびR13のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールである。
【0045】
または、組成物は、式:
の化合物を含み、式中、R3は上記の通りであり、R1およびR2は共に、
によって表され、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R12およびR13のそれぞれは上記の通りであり、R14はOR4、ハロ、NO2、CN、CO2R7、CONR7R8、SO2R7、SO2NR7R8、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであり、この際、R7およびR8のそれぞれは独立に、H、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、C1-C4アルカリル、ヘテロアリールまたはC1-C4アルクヘテロアリールである。
【0046】
任意で、組成物は、式:
の化合物を含んでもよく、式中、R1およびR2は共に、
によって表され、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11およびR14のそれぞれは上記の通りであり、R3は存在せず、R14を有する炭素とR2を有する窒素との間には二重結合が形成される。
【0047】
本発明の組成物の内部に含まれうる化合物の例には、例えば、以下のものが含まれる。
【0048】
さらに、本発明の組成物は、式:
の化合物を含んでもよく、式中、R15はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであり、R16はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、C1-4アルクヘテロアリール、CO2R17、CONR18R19、SO2R17またはSO2NR18R19である。R17はC1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであってよく、R18およびR19のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであってよい。
【0049】
本発明の組成物を、上記の方法に用いるのに適した任意の第2の治療薬と組み合わせてもよい。組成物は単独で、または任意の第2の治療薬との組み合わせとして、薬学的に許容される担体または添加剤とともに治療組成物中に存在しうる。
【0050】
「BH4合成酵素融合遺伝子」とは、第2の異種核酸配列と機能的に結合した、BH4合成酵素(例えば、セピアプテリンレダクターゼ(SPR)、ピルボイルテトラヒドロプテリンシンターゼ(PTPS)、GTPシクロヒドロラーゼ(GTPCH)、プテリン-4αカルビノールアミンデヒドラターゼおよびジヒドロプテリジンレダクターゼ(DHPR))のプロモーターおよび/または全体的もしくは部分的なコード領域を意味する。好ましい態様において、第2の異種核酸配列は、レポーター遺伝子、すなわちその発現をアッセイしうる遺伝子である。レポーター遺伝子の例には、グルクロニダーゼ(GUS)、ルシフェラーゼ、クロラムフェニコールトランスアセチラーゼ(CAT)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、アルカリホスファターゼおよびβ-ガラクトシダーゼをコードする遺伝子が非制限的に含まれる。
【0051】
「候補化合物」とは、天然に存在するか人工的に得られるかにかかわらず、何らかの化学物質のことを意味する。候補化合物には、例えば、ペプチド、ポリペプチド、合成有機分子、天然有機分子、核酸、ペプチド核酸、およびそれらの構成要素が含まれる。
【0052】
「ドミナントネガティブタンパク質」とは、そのドミナントネガティブタンパク質に対応する野生型タンパク質の10、20、35、50、100、150個の、または150個を上回るアミノ酸に対して、少なくとも50%、70%、80%、90%、95%またはさらには99%の配列相同性を有する、任意のポリペプチドのことを意味する。ドミナントネガティブタンパク質は、失活性の変異に加えて、野生型分子の欠失体または切断体からなりうる。例えば、ドミナントネガティブBH4合成酵素が、BH4またはその中間体(例えば、7,8-ジヒドロネオプテリン三リン酸および6-ピルボイルテトラヒドロプテリン)を生成するようにはもはや機能しないような欠失を有する、切断型のBH4合成酵素変異体であってもよく、これには例えば、その触媒活性を失っており、それによってBH4合成経路を妨害するようなGTPCHが含まれる。
【0053】
「オピオイド受容体アゴニスト」とは、オピオイド受容体のμ、κまたはδサブタイプと結合して、これらの受容体でのオピオイドの機能を模倣する、任意の天然の半合成または合成の化合物のことを意味する。オピオイド受容体アゴニストは、ペプチドであっても非ペプチド性化合物であってもよい。好ましくは、オピオイド受容体アゴニストの、少なくとも1つのオピオイド受容体サブタイプに対するKdは1μM未満であり、より好ましくは100nM未満であり、最も好ましくは10nM未満、またはさらには1nM未満である。オピオイド受容体アゴニストには一般に、例えば、フェナントレン、フェニルヘプチルアミン、フェニルピペリジン、モルフィナンおよびベンゾモルファン系の化合物ファミリーのメンバーが含まれる。オピオイド受容体アゴニストには、例えば、モルヒネ、ヒドロモルフォン、オキシモルフォン、コデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、メサドン、メペリジン、レボルファノール、ナルブフィン、スフェンタニル、アルフェンタニル、ブプレノルフィン、ペンタゾシン、プロポキシフェンおよびブトルファノールが含まれる。
【0054】
「有効量」とは、単独で、または本発明による組み合わせの一部として、痛みの感覚を予防、軽減または除去するために必要な化合物の量のことを意味する。疼痛の治療を目的として本発明を実施するために用いられる活性化合物の有効量は、投与の様式、対象の年齢および体重、ならびに疼痛を引き起こしている基礎をなす病態に応じてさまざまである。最終的には、担当する医師または獣医が、適切な量および投薬レジメンを決断すると考えられる。このような量は「有効」量と呼ばれる。
【0055】
「疼痛」とは、すべてのタイプの疼痛のことを意味し、これには例えば、急性であるか慢性であるかにかかわらず、末梢神経および中枢神経障害性疼痛、機能性疼痛、炎症性疼痛または侵害受容性疼痛が含まれる。疼痛性状態の例には、術後または外傷後疼痛、慢性腰痛、関節リウマチの痛み、変形性関節症、線維筋痛症、群発性頭痛、ヘルペス後神経痛、幻肢痛、中枢性脳卒中後疼痛、歯痛、オピオイド耐性疼痛、内臓痛、骨損傷痛、陣痛、熱傷(日焼けを含む)に起因する疼痛、分娩後痛、片頭痛、緊張型頭痛、狭心痛および尿生殖路関連痛(例えば、膀胱炎)が含まれる。
【0056】
「テトラヒドロビオプテリン(BH4)の生物活性を低下させる」とは、BH4に起因する生物活性に伴う機能的結果を減じさせることを意味する。一般に、BH4生物活性の低下は、例えば、BH4分子の量(レベル)の減少の結果であってよく、これはデノボBH4合成の減少/阻害、BH4異化の増加/加速化、またはこの2つの組み合わせによって影響を受けると思われる。または、標的分子でのBH4の作用を阻害することによって、BH4の生物活性を低下させることもできる。例えば、エフェクタータンパク質(例えば、酵素)上のBH4結合部位と結合する競合的BH4阻害薬は生物活性を低下させると考えられる。非競合的BH4阻害薬もこの定義に含まれる。同様に、BH4を効果的に捕捉してそれがエフェクター分子と結合するのを防止するBH4結合分子にもBH4生物活性を低下させる効果がある。このような低下は、例えば、対照条件に比して少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%の低下、または100%を上回る低下であってよい。より詳細には、BH4レベルまたは活性は、例えば、GTPシクロヒドロラーゼ(GTPCH)、セピアプテリンレダクターゼ(SPR)およびジヒドロプテリジンレダクターゼ(DHPR)といった、BH4合成経路にかかわる酵素の酵素活性を低下させることによって低下させることができる。このような酵素活性を、対照に比して少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、またはさらには100%を超えて低下させることが好ましい。例えば、GTPCHは、GTPCHフィードバック調節タンパク質(GFRP)のレベルまたは結合活性を高めることによって阻害することができる。
【0057】
「疼痛を治療、軽減または予防すること」とは、対象における痛みの感覚を、それが起こる前、起こっている最中またはその後に予防、軽減または除去することを意味する。治療を受けていない同等の対照と比較して、このような軽減または予防の程度は、当技術分野で知られた任意の標準的な技法による測定で、少なくとも5%、10%、20%、40%、50%、60%、80%、90%、95%または100%である。本発明の方法に従って疼痛を治療するためには、治療は必ずしも、痛みの感覚の原因となる基礎病態に対する治療法を提供しない。疼痛の治療は純粋に対症的でありうる。
【0058】
「疼痛を診断すること」とは、末梢神経に対する障害を含む、哺乳動物における何らかの刺激によって引き起こされる疼痛を検出することを意味する。例えば、疼痛を、痛みの感覚と関連または相関する代用マーカーを検出することによって診断することもできる。本発明によれば、疼痛、または外傷性、代謝性もしくは毒性の末梢神経病変が、哺乳動物からの生物試料(例えば、血清、血漿、尿、脳脊髄液、滑液、組織滲出物または組織の試料)におけるBH4、BH4中間体、BH4前駆体またはBH4代謝産物のレベルの上昇を測定および検出することによって診断される。このようなレベルが対照よりも少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、80%、90%、95%、100%、または100%よりも高ければ、哺乳動物における疼痛が診断される。または、BH4合成酵素のいずれか1つのレベルまたは活性を測定し、BH4酵素のレベルまたは活性の上昇が検出されれば疼痛が診断される。このような上昇は、対照条件を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、80%、90%、95%、100%、または100%よりも上回ることが望ましい。
【0059】
抗体に言及して本明細書で用いられる「〜に対して特異的な」とは、特定のタンパク質または抗原に対する抗体の親和性が、同量の他のあらゆるタンパク質または抗原に比して高いことを意味する。例えば、BH4に対して特異的な抗体(例えば、ヒトモノクローナル抗体)は、BH4に対する親和性が、同量の他のあらゆる抗原(類縁性のある抗原を含む)に対する親和性よりも、少なくとも2倍、5倍、10倍、30倍または100倍の大きいことが望ましい。別のタンパク質または抗原に対する抗体の結合は、本明細書に記載したようにして、当技術分野におけるさまざまな標準的な方法の任意のもの、例えばウエスタン分析、ELISAまたは免疫共沈法によって決定することができる。
【0060】
タンパク質またはポリペプチドに言及する場合、「実質的に同一な」とは、参照アミノ酸配列に対して少なくとも75%、しかし好ましくは85%、より好ましくは90%、最も好ましくは95%、またはさらには99%の相同性を示すタンパク質またはポリペプチドのことを意味する。タンパク質またはポリペプチドに関して、比較配列の長さは一般に、少なくとも20アミノ酸、好ましくは少なくとも30アミノ酸、より好ましくは少なくとも40アミノ酸であり、最も好ましくは50アミノ酸であるか、または完全長のタンパク質もしくはポリペプチドである。このような「実質的に同一な」タンパク質またはポリペプチドをコードする核酸は「実質的に同一な」核酸の一例である;核酸には、遺伝暗号の縮重性のために、そのようなタンパク質またはポリペプチドをコードする任意の配列が含まれうることは認識される。さらに、「実質的に同一な」核酸配列には、ハイストリンジェンシー条件下で参照核酸分子とハイブリダイズするポリヌクレオチドも含まれる。
【0061】
「ハイストリンジェンシー条件」とは、高温および低イオン強度を特徴とし、0.5M NaHPO4、pH 7.2、7%SDS、1mM EDTAおよび1%BSA(第V画分)を含む温度65℃の緩衝液中で、または48%ホルムアミド、4.8×SSC、0.2M Tris-Cl、pH 7.6、1×デンハルト溶液、10%デキストラン硫酸および0.1%SDSを含む温度42℃の緩衝液中で、少なくとも40ヌクレオチド長のDNAプローブを用いることによって得られるものと同等なハイブリダイゼーションを可能にする、任意の条件のセットのことを意味する。PCR、ノーザン、サザンまたはインサイチューハイブリダイゼーション、DNAシークエンシングといった、ハイストリンジェンシーハイブリダイゼーションのためのその他の条件は、分子生物学の当業者には周知である。例えば、参照として本明細書に組み入れられる、F. Ausubel et al.,「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley & Sons, New York, NY, 1998を参照されたい。
【0062】
本明細書で用いる場合、用語「アルキル」および接頭辞「アルク-(alk-)」は、直鎖状および分枝鎖状の飽和基または不飽和基、ならびに環式基(これにはシクロアルキル基およびシクロアルケニル基が含まれる)の両方を含む。別に指定する場合を除き、非環式アルキル基は1〜6個の炭素を含む。環式基は単環式であっても多環式であってもよく、好ましくは3〜8個の環状炭素原子を有する。環式基の例には、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基およびアダマンチル基が含まれる。アルキル基は置換型でも非置換型でもよい。置換基の例には、アルコキシ基、アリールオキシ基、スルフヒドリル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、フルオロアルキル基、ペルフルオロアルキル基、アミノ基、アミノアルキル基、二置換アミノ基、四級アミノ基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基およびカルボキシル基が含まれる。
【0063】
「アリール」とは、炭素環式芳香族性の環または環系のことを意味する。別に指定する場合を除き、アリール基は6〜18個の炭素を含む。アリール基の例には、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フルオレニル基およびインデニル基が含まれる。
【0064】
「ヘテロアリール」とは、少なくとも1つの環内ヘテロ原子(例えば、O、S、Se、N、およびP)を含む芳香族性の環または環系のことを意味する。別に指定する場合を除き、ヘテロアリール基は1〜9個の炭素を含む。ヘテロアリール基には、フラニル基、チエニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、オキサジアゾリル基、オキサトリアゾリル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドール基、インダゾリル基、インドリジニル基、ベンズイソキサゾリル基、キノリニル基、イソキノリニル基、シンノリニル基、キナゾニリル基、ナフチリジニル基、フタラジニル基、フェナントロリニル基、プリニル基およびカルバゾリル基が含まれる。
【0065】
「複素環」とは、少なくとも1つの環内ヘテロ原子(例えば、O、Se、N、およびP)を含む、非芳香族性の環または環系のことを意味する。別に指定する場合を除き、複素環基は2〜9個の炭素を含む。複素環基には、例えば、ジヒドロピロリル基、テトラヒドロピロリル基、ピペラジニル基、ピラニル基、ジヒドロピラニル基、テトラヒドロピラニル基、ジヒドロフラニル基、テトラヒドロフラニル基、ジヒドロチオフェン基、テトラヒドロチオフェン基およびモルホリニル基が含まれる。
【0066】
アリール基、ヘテロアリール基または複素環基は、非置換型でもよく、または、例えばC1-6アルキル、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルチオ、トリフルオロメチル、C1-6アシル、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、ニトリル、C1-6アルコキシカルボニル、アルカリル(アルキル基が1〜6個の炭素原子を有するもの)およびアルクヘテロアリール(アルキル基が1〜6個の炭素原子を有するもの)を含む、1つまたは複数の置換基によって置換されていてもよい。
【0067】
「アルコキシ」とは、式-ORという化学置換基のことを意味し、式中、Rはアルキル基である。「アリールオキシ」とは、式-ORという化学置換基のことを意味し、式中、Rはアリール基である。「アルカリル」とは、式-RRという化学置換基のことを意味し、式中、Rはアルキル基であってRはアリール基である。「アルクヘテロアリール」とは、式-RRという化学置換基のことを意味し、式中、Rはアルキル基であってRはヘテロアリール基である。
【0068】
「ハロゲン化合物」または「ハロゲン」または「ハロ」とは、臭素、塩素、ヨウ素またはフッ素のことを意味する。
【0069】
全般的に、本発明は、疼痛の診断、治療および予防に関して、標準的な治療法を上回る明らかな利益を提供する。本発明者らの結果によれば、BH4のレベルまたは活性を低下させる治療薬(例えば、メトトレキサート)の投与は、疼痛を減弱させ、これは一部には、BH4を補助因子として利用する酵素、またはBH4と結合してニューロンの興奮性もしくは伝達物質の放出を調節する膜結合型受容体の活性を妨げることによる。本発明はさらに、BH4、BH4中間体、BH4代謝産物もしくはBH4前駆体のレベルを測定してその上昇を検出すること、またはいずれか1つのBH4合成酵素の活性もしくはレベルを測定してその上昇を検出することにより、哺乳動物における疼痛の診断も可能にする。さらに、本発明によって提供される候補化合物スクリーニング法は、損傷プロセスを調節し、症状をBH4の合成または作用を低下させることによって緩和する、新規な治療薬の同定も可能にする。
【0070】
詳細な説明
一般に、本発明は、哺乳動物に対して、テトラヒドロビオプテリン(BH4)のレベルまたは活性を低下させる組成物の治療的有効量を投与することによって、疼痛または外傷性、代謝性もしくは毒性の末梢神経病変を治療、軽減または予防するための方法および化合物を特徴とする。本発明はまた、哺乳動物から入手した生物試料(例えば、血清、血漿、尿、脳脊髄液、滑液、組織滲出物または組織の試料)におけるBH4、BH4中間体、BH4前駆体またはBH4代謝産物のレベルの上昇を検出することにより、哺乳動物における疼痛または外傷性、代謝性もしくは毒性の末梢神経病変を診断するための方法も提供する。または、疼痛を、いずれか1つのBH4合成酵素の活性またはレベルを検出することによって診断することもできる。さらにもう1つの一般的な態様において、本発明は、疼痛に対する新規な治療薬を、それらがBH4もしくはその合成酵素のレベルもしくは活性を低下させる能力、またはBH4のBH4受容体またはBH4依存性酵素との結合を妨げる能力に基づいて同定するための方法も提供する。
【0071】
本発明は、BH4の合成にかかわるいずれかの酵素(例えば、GTPシクロヒドロラーゼ(GTPCH)、セピアプテリンレダクターゼ(SPR)およびジヒドロプテリジンレダクターゼ(DHPR)、図2A参照)の生物活性を妨げることによってBH4の合成を阻害することが、疼痛の予防、治療および軽減(すなわち、鎮痛)をもたらすという本発明者らの発見に端を発する。これを目的として、本発明者らは、GTPCHの阻害薬である2,4ジアミノ6-ヒドロキシピリミジン(DAHP);DHPRの阻害薬であるメトトレキサート(MTX);またはSPRの阻害薬であるN-アセチル-セロトニン(NAS)の投与が、急性損傷後疼痛過敏性、末梢神経障害性および炎症性疼痛のさまざまなラットモデルにおいて著明な鎮痛をもたらし、しかも基礎的な疼痛感受性に対する影響、鎮静作用および運動機能の全体的な破壊は伴わない。疼痛のこの軽減は、少なくとも一部には、BH4が重要な補助因子であるさまざまな酵素との干渉またはその活性の低下によって媒介される。このような酵素には、例えば、一酸化窒素シンターゼおよびカテコールアミン合成酵素が含まれる。さらに、BH4のレベルの低下は、神経系の細胞からのその放出、または例えば、神経機能を調節する膜結合型受容体に対するBH4の結合によって媒介される神経伝達物質の放出またはイオンチャンネル活性に対するその直接的作用も低下させる。
【0072】
本発明の方法はこのため、さまざまな形態の臨床的疼痛、すなわち炎症性疼痛、機能性疼痛および神経障害性疼痛(急性であるか慢性であるかにかかわらず)の診断、治療、軽減または予防のために有用である。疼痛を伴う状態の例には、例えば、軟部組織、関節、骨の炎症および/または障害(例えば、急性外傷、変形性関節症または関節リウマチ)、筋筋膜疼痛症候群(線維筋痛症)、頭痛(群発性頭痛、片頭痛および緊張型頭痛を含む)、心筋梗塞、狭心症、虚血性心血管疾患、脳卒中後疼痛、鎌状赤血球貧血、末梢血管閉塞性疾患、癌、皮膚または関節の炎症性状態、糖尿病性ニューロパチー、および手術または外傷性損傷による急性組織障害(例えば、熱傷、裂傷または骨折)が含まれる。本発明はまた、筋骨格系疼痛(外傷、感染症および運動の後の)、脊髄損傷、腫瘍、圧迫、炎症に起因する神経障害性疼痛、歯痛、会陰切開術による痛み、深部内臓痛(例えば、心臓痛、膀胱痛または骨盤内臓器痛)、筋肉痛、眼痛、口腔顔面痛(例えば、歯痛、三叉神経痛、舌咽神経痛)、腹痛、婦人科的疼痛(例えば、月経困難症および陣痛)、外傷、圧迫、炎症、毒性化学物質、代謝性障害、遺伝性疾患、感染症、血管炎および自己免疫疾患に起因する神経および根の障害に伴う疼痛、中枢神経系疼痛、例えば脊髄または脳幹の障害、脳血管障害、腫瘍、感染症、脱髄疾患(多発性硬化症を含む)に起因する疼痛、腰痛、坐骨神経痛ならびに術後疼痛の治療、軽減または予防のためにも有用である。本発明による治療を適用しうる状態は、例えば、米国特許出願第10/348,381号、ならびに米国特許第6,593,331号および6,593,331号(これらはすべて参照として本明細書に組み入れられる)に詳細に述べられている。
【0073】
手短に述べると、本発明者らは、高密度オリゴヌクレオチドマイクロアレイを用いて、後根神経節における、発生過程および末梢神経損傷により調節される遺伝子の発現の変化に関するクラスター分析を行った。興味深いことに、本発明者らは、遺伝子の特定のクラスターが、発生過程における高レベルの発現、成熟期におけるダウンレギュレーション、および神経損傷後の誘導を特徴とすることを見いだした。このような遺伝子の例にはDHPR(BH4合成経路の要素)が含まれる。
【0074】
軸索切断(坐骨神経離断術)3日後の腰椎DRGマイクロアレイによる3回の分析により、アップレギュレートされた約200種の遺伝子のうち3種(例えば、GTPCH、SPRおよびDHPR)が、BH4合成経路の要素であることがさらに明らかになった。このような条件下でのそれらの誘導は、ノーザンブロット分析、ノーザンスロットブロット法、インサイチューハイブリダイゼーションおよびウエスタンブロット分析によって実証された。本発明者らはさらに、BH4合成経路の4種の要素のうち3種が、末梢神経障害性疼痛の少なくとも3つのモデルで末梢神経損傷後の一次感覚ニューロンにおいてアップレギュレートされること、およびこれが後根神経節におけるBH4レベルの上昇と同時に起こることを確かめた。さらに、DAHP(GTPCH阻害薬の1つ)ならびにBH4合成酵素のさまざまな他の阻害薬(例えば、NASおよびメトトレキサート)を用いて、本発明者らは、BH4合成経路の阻害が、さまざまな神経障害性疼痛モデルならびに炎症性疼痛および損傷後疼痛過敏性のモデルにおいて鎮痛を誘導することを示した。この鎮痛作用は全身送達後にも髄腔内送達後にも示された。後者はDRGおよび脊髄を含む神経系に対する作用を示している。マッチさせた(matched)、または坐骨神経部分損傷性の末梢神経障害性疼痛モデルの場合における鎮痛の程度は、モルヒネ、ガバペンチン、カルバマゼピン、アミトリプチリンおよびロフェコキシブを含む、鎮痛に従来より用いられているいずれの鎮痛薬によって得られるものよりもはるかに大きかった。
【0075】
治療薬
BH4経路の阻害薬
BH4は、2つの中間体、7,8-ジヒドロネオプテリン三リン酸および6-ピルボイルテトラヒドロプテリンを介して、グアノシン5'-三リン酸(GTP)から酵素的にデノボ合成される(図2A参照)。本発明によれば、BH4合成を低下させるための、図2Aに示されたBH4合成酵素のうち少なくとも1つ、2つ、3つまたは3つよりも多くの生物活性を阻害または調節する任意の薬剤の投与により、鎮痛が誘導される。このような酵素には、例えば、セピアプテリンレダクターゼ(SPR)、ピルボイルテトラヒドロプテリンシンターゼ(PTPS)、GTPシクロヒドロラーゼ(GTPCH)、プテリン-4α-カルビノールアミンデヒドラターゼおよびジヒドロプテリジンレダクターゼ(DHPR)が含まれる。BH4レベルの低下に起因する鎮痛効果は、少なくとも一部には、BH4が補助因子である酵素、およびBH4が結合する膜結合型受容体の生物活性の低下によって引き起こされる。
【0076】
この点に関して、BH4は、いくつかの酵素(例えば、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンという3種類の芳香族アミノ酸のヒドロキシラーゼ;エーテル脂質オキシダーゼ;ならびに3種類の一酸化窒素シンターゼ(NOS)アイソザイムであるeNOS、iNOS、およびnNOSなど)の必須な補助因子であり、このため、疼痛経路における神経伝達物質形成およびシグナル伝達を含む、数多くの生物プロセスにおいて重要な役割を果たしている。実際、BH4によって調節される数多くの酵素がこれまでに疼痛と関連づけられており、これには例えば、NOS(Meller et al. (1992) Neuroscience 50: 7-10;Minami et al., (1995) Neurosci. Lett. 201: 239-242;Yamaguchi and Naito (1996) Can. J. Anaesth. 43: 975-981;Aley et al., (1998) J. Neurosci. 18:7008-7014;Handy and Moore (1998) Neuropharmacology 37: 37-43;Levy and Zochodne (1998) Eur. J. Neurosci. 10: 1846-1855;Guhring et al. (2000) J. Neurosci. 20: 6714-6720;Levy et al. (2000) Eur J Neurosci 12: 2323-2332)、チロシンヒドロキシラーゼ(Ma and Bisby (1999) Neurosci Lett 275: 117-120;Lindqvist et al. (2000) Muscle Nerve 23: 1214-1218)およびトリプトファンヒドロキシラーゼが含まれる。
【0077】
本発明によれば、BH4経路の阻害薬とは、本明細書に記載したものを含む、当技術分野で標準的な任意の方法による評価で、BH4の産生または活性を、未処置の対照細胞に比して少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%低下させる能力を有する、任意の作用物質のことである。または、阻害薬は、哺乳動物に対して投与された場合に、疼痛を、未処置の対照に比して少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%治療、予防または軽減することができる。
【0078】
疼痛のこのような軽減または予防は、本明細書に記載したもののような、当技術分野で知られた任意の手法によって測定しうる。本発明の方法に従って用いうる化合物の例には、GTPCHの阻害薬であるDAHP;DHPRの阻害薬であるMTX;SPRの阻害薬であるNAS;テトラヒドロ-L-ビオプテリン、L-セピアプテリン、7,8-ジヒドロ-L-ビオプテリン、6,7-ジメチルテトラヒドロプテリン塩酸塩、N-アセチル-セロトニン(NAS)、N-クロロアセチルセロトニン、N-メトキシアセチルセロトニン、N-クロロアセチルドーパミン、さらには、本発明のスクリーニング方法のいずれかによって同定された任意の化合物が含まれる。用いうるその他の薬剤については以下でさらに述べる。
【0079】
任意で、BH4阻害薬は、BH4合成酵素のいずれかに対する低分子アンタゴニストまたはアンチセンスであってよい。RNA干渉(RNAi)は、本発明の一次感覚ニューロンなどの哺乳動物細胞を含む真核細胞における遺伝子サイレンシングの強力な方法となるため、BH4合成経路を標的とするためにこれを用いることもできる。RNAiの基本的な手法は、遺伝子機能の非遺伝的で後成的なノックアウト(これは標的遺伝子におけるヌル変異の表現型模写となる)を作製する目的で、配列特異的二本鎖RNAをニューロンに導入することを含む。RNA干渉については以前に記載されている(O'Neil NJ, et al., Am J Pharmacogenomics (2001) :45-53)。
【0080】
または、鎮痛薬が、BH4または何らかのBH4合成酵素の生物活性を妨げる、ドミナントネガティブタンパク質、またはドミナントネガティブタンパク質をコードする核酸であってもよい。ドミナントネガティブタンパク質とは、そのドミナントネガティブタンパク質に対応する野生型タンパク質の少なくとも10、20、35、50、100個の、または150個よりも多いアミノ酸に対して、少なくとも50%、70%、80%、90%、95%またはさらには99%の配列相同性を有する、任意のアミノ酸分子のことである。例えば、ドミナントネガティブBH4合成酵素は、それがもはやBH4を産生できなくなるような変異を有してもよい。
【0081】
本発明によれば、ドミナントネガティブタンパク質を、発現ベクターとして投与することもできる。発現ベクターは非ウイルス性ベクターでもウイルス性ベクター(例えば、レトロウイルス、組換えアデノ随伴ウイルスまたは組換えアデノウイルス性のベクター)でもよい。または、ドミナントネガティブタンパク質を、組換えタンパク質として、例えばマイクロインジェクション法を用いて後根神経節または脊髄に直接投与することもできる。
【0082】
GTPシクロヒドロラーゼI(GTPCH)の阻害薬
BH4デノボ生合成における律速酵素は、GTPを7,8-ジヒドロネオプテリン三リン酸に変換するGTPシクロヒドロラーゼI(GTPCH)である(図2A参照)。時間の経過に伴い、BH4の蓄積は、GTPCHフィードバック調節タンパク質(GTPCH Feedback Regulatory Protein)(GFRP)によって媒介される反応において、GTPCHのフィードバック阻害を引き起こす。フェニルアラニンの存在下では、GFRPは、GTP結合を増強することにより、GTPCH活性のフィードフォワード(feed-forward)活性化を誘導する(Maita et al., (2002) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 99: 1212-1217)。しかし、BH4の存在下では、GFRPはGTPCH酵素活性のフィードバック阻害を誘導し(Yoneyama and Hatakeyama, (1998) J. Biol. Chem. 273:20102:20108);Yoneyama and Hatakeyama (2001) Protein Sci. 10:981-878)、このためBH4生成は自律的に阻害される。
【0083】
このため、GTPCH活性を阻害する任意の作用物質は、BH4の生成を効率的に低下させ、その結果として鎮痛を誘導する。GTPCH阻害薬は、酵素の触媒中心との結合に関して基質GTPと競合してもよい(図20)。または、GTPCH阻害薬(例えばBH4類似体)が、GTPCH/GFRP複合体と結合し(図21)、それによってBH4のフィードバック阻害を模倣することによってBH4生成を阻害してもよい。GFRP mRNAは脳幹ニューロンに豊富に存在するが、これは中脳のドーパミンニューロンおよび青斑核のノルエピネフリンニューロンでは検出されていない(Kapatos et al. (1999) J. Neurochem. 72: 669-675)。このため、GTPCH阻害薬のGFRP依存性は、特異性を付与すると同時にドーパミンに伴う副作用を回避させる可能性がある。
【0084】
本明細書において、本発明者らは、例えば、特異的GTPCH阻害薬である2,4-ジアミノ-6-ヒドロキシピリミジン(DAHP)が、さまざまな神経障害性疼痛および炎症のモデルにおいて鎮痛を誘導することを示した(図8〜13参照)。DAHPにより媒介されるGTPCHの阻害は、GFRP依存的な機序(低濃度で)およびGFRP非依存的な機序(より高い濃度で)によって媒介される。したがって、DAHPは、低濃度での間接的なGTPCH阻害の機序という点でBH4を模倣する。より高い濃度では、DAHPは、触媒部位との結合に関して、生理的GTPCH基質であるグアノシン-三リン酸(GTP)と競合する(Xie et al., (1998) J. Biol. Chem. 273: 21091-21098)。
【0085】
GTPCHとGTPとの相互作用に関する生化学的および結晶学的な研究は、GTPCHの活性部位に存在する高度に保存されたアミノ酸とグアニンのピリミジン部分、すなわち、それぞれ1位、2位および3位の窒素原子ならびに6位の酸素との間に、水素結合が形成されることを明らかにした(図20)(Rebelo et al., (2003) J. Mol. Biol. 326: 503-516)。グアニン構造のこの特定の部分は、DAHPのピリミジン構造にも、この酵素カスケードの最終産物であるテトラヒドロビオプテリン(BH4)のプテリジン構造の部分にも厳密に一致する。
【0086】
DAHP、グアニンおよびBH4の間に構造的相同性があること(図18参照)は、これらの分子においてGTPCHとの結合にとって決定的である可能性が高いのはピリミジン部分であることを示している。これらの部位に修飾のあるさまざまなピリミジン分子の分析により、2位、4位および6位での変化はGTPCH阻害活性の低下または消失を伴うことが判明している(Yoneyama et al. (2001) Arch. Biochem. Biophys. 388: 67-73)(図19参照)。
【0087】
一方、グアニン自体(すなわち生理的基質の部分)および7位または8位に修飾のあるグアニン類似体は、より高い効力(DAHPの約10倍の高さ)でGTPCHを阻害する(Yoneyama et al., 前記)(図19)。したがって、グアニンのような五員環を含む薬剤(すなわちBH4との類似性も高い)は、高い阻害効果を有する。興味深いことに、BH4はグアニン類似体よりも約10倍(Yoneyama et al., 前記)(図19)、DAHPよりも100倍効力が高く、このことはBH4のC-6に結合した側鎖はさらなる効力および/または特異性を付与することを示唆している。このことは、6S-BH4鏡像異性体およびC-6に側鎖を有しないBH4の類似体の効果が、BH4よりも1桁を超えて下回ることによって裏づけられる(Harada et al. (1993) Science 260: 1507-1510)。したがって、DAHPの効力は、例えば、BH4に対するその構造的類似性を高めると同時に、それがBH4依存性酵素(例えば、チロシン、フェニルアラニンおよびトリプトファンヒドロキシラーゼ;グリセロールエーテルモノオキシダーゼ;ならびに一酸化窒素シンターゼ(これらは、N-(4-クロロフェニル)N'-ヒドロキシグアニジンなどの種々のN-アルキルおよびN-アリールヒドロキシグアニジンを、一酸化窒素の生成のための基質として利用する)(Moali et al. (2001) Chem. Res. Toxicol. 14:202-210;Renodon-Corniere et al., (1999) Biochemistry 38: 4663-8))にとっての補助因子として用いられることを防止する置換または修飾を保つことによって高めることができる。
【0088】
以上のことに鑑みて、本発明に従って治療される哺乳動物に対して、式:
を有する化合物を含む組成物を投与することができ、式中、R1はH、C1-6アルキル、ハロ、NO2、CN、CO2R4、CONR4R5、SO2R4、SO2NR4R5、OR4またはNR4R5である。R4およびR5のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであってよい;R2はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであってよい;R3はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、C1-4アルクヘテロアリール、CO2R6、CONR7R8、SO2R6またはSO2NR7R8であってよく、式中、R6はC1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであり、R7およびR8のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールである。
【0089】
または、R3が上記の通りであって、R1およびR2が共に、
によって表されてもよく、式中、R1/R2連結のN、OまたはSはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11、R12およびR13のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールである。
【0090】
任意で、R3が上記の通りであって、R1およびR2が共に、
によって表されてもよく、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R12またはR13のそれぞれは上記の通りであり、R14はOR4、ハロ、NO2、CN、CO2R7、CONR7R8、SO2R7、SO2NR7R8、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであり、この際、R7およびR8のそれぞれは独立に、H、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、ヘテロアリール、C1-C4アルカリルまたはC1-C4アルクヘテロアリールである。
【0091】
もう1つの選択肢として、R1およびR2が共に、
によって表されてもよく、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11およびR14のそれぞれは上記の通りであり、R3は存在せず、R14を有する炭素とR2を有する窒素との間には二重結合が形成される。
【0092】
任意で、組成物は、R1がH、C1-6アルキル、ハロ、NO2、CN、CO2R4、CONR4R5、SO2R4、SO2NR4R5、OR4またはNR4R5であるような、式(I)の化合物を有してもよい。それに応じて、R4およびR5のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであってよく、R2はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであってよく、R3はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、C1-4アルクヘテロアリール、CO2R6、CONR7R8、SO2R6またはSO2NR7R8であってよく、式中、R6はC1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであり、R7およびR8のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールである。
【0093】
望ましい場合、組成物は、式:
の化合物を含み、式中、R1およびR2は共に、
によって表されてもよく、この際、R1/R2連結のN、OまたはSはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11、R12およびR13のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールである。
【0094】
または、組成物は、式:
の化合物を含み、式中、R3は上記の通りであり、R1およびR2は共に、
によって表され、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R12およびR13のそれぞれは上記の通りであり、R14はOR4、ハロ、NO2、CN、CO2R7、CONR7R8、SO2R7、SO2NR7R8、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであり、式中、R4、R7およびR8のそれぞれは独立に、H、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、C1-C4アルカリル、ヘテロアリールまたはC1-C4アルクヘテロアリールである。
【0095】
または、組成物は、式:
の化合物を含み、式中、R1およびR2は共に、
によって表されてもよく、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11およびR14のそれぞれは上記の通りであり、R3は存在せず、R14を有する炭素とR2を有する窒素との間には二重結合が形成される。
【0096】
組成物が、式:
の化合物を含む場合には、R1およびR2は共に、
によって表されてもよく、式中、R1/R2連結のN、OまたはSはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11、R12およびR13のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールである。
【0097】
または、組成物は、式:
の化合物を含み、式中、R3は上記の通りであり、R1およびR2は共に、
によって表され、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R12およびR13のそれぞれは上記の通りであり、R14はOR4、ハロ、NO2、CN、CO2R7、CONR7R8、SO2R7、SO2NR7R8、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであり、この際、R7およびR8のそれぞれは独立に、H、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、C1-C4アルカリル、ヘテロアリールまたはC1-C4アルクヘテロアリールである。
【0098】
任意で、組成物は、式:
の化合物を含んでもよく、式中、R1およびR2は共に、
によって表され、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11およびR14のそれぞれは上記の通りであり、R3は存在せず、R14を有する炭素とR2を有する窒素との間には二重結合が形成される。
【0099】
本発明の組成物の内部に含まれうる化合物の例には、例えば、以下のものが含まれる。
これらの化合物は図19に示されている。
【0100】
さらに、本発明の組成物は、式:
の化合物を含んでもよく、式中、R15はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであり、R16はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、C1-4アルクヘテロアリール、CO2R17、CONR18R19、SO2R17またはSO2NR18R19である。R17はC1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであってよく、R18およびR19のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリルまたはC1-4アルクヘテロアリールであってよい。
【0101】
化合物のそのほかの例には、テトラヒドロ-L-ビオプテリン(BH4・2HCl、GTPシクロヒドロラーゼIの非競合的阻害薬である還元型プテリンで、Kiは15.7μMである);L-セピアプテリン(GTPシクロヒドロラーゼI阻害薬としての効力が酸化型プテリンの12倍の高さである還元型プテリンで、IC50は12.7±1.8μMである);7,8-ジヒドロ-L-ビオプテリン(BH2、これはインビトロでのGTPシクロヒドロラーゼIの最終代謝産物であり、GTPシクロヒドロラーゼIの非競合的阻害薬として働き(Kiは14.4μM)、阻害薬としては酸化型プテリン、葉酸塩およびアミノプテリンよりも抗力が約12倍の高さである);および6,7-ジメチルテトラヒドロプテリン塩酸塩(GTPシクロヒドロラーゼIの非競合的阻害薬(IC50は76〜112μM))が含まれる。以上に考察したように、GTPCHの阻害を、GFRP非依存的にGTP競合様式でGTPCHに対して作用する阻害薬(例えば、図19に示されている上記のようなグアニン誘導体など)を用いて行うこともできる。
【0102】
GTPCHフィードバック調節タンパク質(GFRP)の活性化薬
GFRPは、GTPCHによるBH4合成に対する内因性阻害因子である。GFRPとGTPCHとの結合は、それ自体が、GFRPをBH4生成の負のフィードバック調節因子とさせるBH4依存的イベントである。BH4と構造的に類似した分子であるDAHPが、GFRPと結合してGTPCH阻害を促進することが最近見いだされた(Kolinsky et al., J. Biol. Chem., Manuscript M405370200, July 29, 2004)。このため、GFRPのGTPCHに対する結合を増強してBH4の生成を阻害することによってGFRPでのBH4および/またはDAHPの作用を模倣する分子は、本発明の方法において有用である。または、GFRPとGTPCHとの結合を促進するがGFRP上のBH4部位での結合は促進しない分子も有用である。このような分子には、例えば、二重特異性抗体または架橋剤が含まれる。
【0103】
セピアプテリンレダクターゼの阻害薬
セピアプテリンレダクターゼ(SPR)は、BH4経路における最終的な合成酵素として働く。本明細書において、本発明者らは、SPRの阻害薬の1つであるNAS(50mg/kg i.p.)が、炎症性疼痛のモデルにおいて鎮痛を生じさせることを示した(図15Aおよび15B)。効力の高いその他のセピアプテリンレダクターゼ阻害薬には、N-クロロアセチルセロトニン、N-メトキシアセチルセロトニンおよびN-クロロアセチルドーパミンが含まれる。
【0104】
ジヒドロプテリジンレダクターゼ(DHPR)の阻害薬
DHPRを含むBH4の回収機構により、デノボ合成を行わずに酸化型BH4の再利用が可能となる。神経損傷後にDRGおよび脊髄でアップレギュレートされるDHPRの阻害は、BH2からのBH4の再利用を阻害することにより、鎮痛を誘導する。例えば、メトトレキサート(MTX、アメトプテリン水和物としても公知(0.1mg/kg/dを髄腔内持続注入として、または0.2mg/kg i.p. 1日1回として)の投与は、BH4デノボ合成に直接影響を及ぼすことなく疼痛軽減をもたらす(図16A〜16F参照)。MTXはジヒドロ葉酸レダクターゼの阻害薬であり、免疫抑制薬としてヒトにおける使用が承認されている。これは通常、低用量で関節リウマチの治療のために用いられる(Weinstein et al. (1985) Am J Med 79: 331-7, Williams et al. (1985) Arthritis Rheum;28: 721-30、Weinblatt et al. (1985) N Engl J Med 312: 818-22, Hoffmeister et al. (1983) Am J Med 75: 69-73, Giannini et al. (1992) N Engl J Med 326: 1043-9)。全身的に投与されたMTXは主として末梢標的およびDRGに到達するが、脊髄性に送達されたMTXは脊髄およびDRGを標的とする。全身投与されたMTX(低用量で)は、ATP結合カセット(ABC)輸送体(プロベネシド感受性多剤耐性タンパク質(MRP)1-3)の基質であるため、血液脳関門を通過しない。その結果、MTXの全身投与には、MTXが確実に脊髄および脳に到達するように、プロベネシドまたはMRPもしくは有機陰イオン輸送体のその他の阻害薬の同時投与が必要なことがある。
【0105】
望ましい場合、鎮痛を、相加的な効果を得るためにBH4経路の両方の部分、すなわち生合成経路および回収経路を同時にブロックすることによって誘導することもできる。例えば、疼痛の軽減を、DAHPを用いてGTPCHを、さらにメトトレキサート(または中枢神経系において比較的高い濃度が得られる他のDHPR阻害薬)を用いてDHPRを同時に阻害することによってBH4合成をブロックすることにより、著しく増強することができる。
【0106】
プテリン-4α-カルビノールアミンデヒドラターゼ(PCD)の阻害薬
キノイドジヒドロプテリン産物は、プテリン-4α-カルビノールアミンデヒドラターゼ(PCD)の強力な阻害薬であり(KIはそれぞれのKmの約2分の1である)、このため、本発明に従って用いることができる(Rebrin et al. (1995) Biochemistry 34: 5801-10)。
【0107】
第2の治療薬
本発明の組成物は、単独で投与してもよく、または、侵害受容性、炎症性、機能性もしくは神経障害性の疼痛の治療に用いられる鎮痛薬といった第2の治療薬と組み合わせて投与してもよい。本発明によれば、第2の治療薬は、それ単独で投与された場合には治療効果を生じさせても生じさせなくともよいが、本発明の組成物と組み合わせて投与された場合にはこのような効果(例えば、疼痛軽減)をもたらす。
【0108】
鎮痛薬の例には、以下が含まれる:非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)(例えば、ロフェキソシブ(rofexocib)、セレコキシブ、バルデコキシブ、パラコキシブ、サリチル酸、アセトアミノフェン、ジクロフェナク、ピロキシカム、インドメタシン、イブプロフェンおよびナプロキセン)、オピオイド鎮痛薬(例えば、プロポキシフェン、メペリジン、ヒドロモルホン、ヒドロコドン、オキシコドン、モルヒネ、コデインおよびトラモドール)、NMDA拮抗性鎮痛薬(例えば、2-ピペリジノ-1アルカノール誘導体、ケタミン、デキストロメトルファン、エリプロジルまたはイフェプロジル)、麻酔薬(例えば、亜酸化窒素、ハロタン、フローセン)、局所麻酔薬(リドカイン、エチドカイン、ロピバカイン、クロロプロカイン、サラピンおよびブピバカイン)、ベンゾジアゼピン類(ジアゼパム、クロルジアゼポキシド、アルプラゾラムおよびロラゼパム)、カプサイシン、三環系抗うつ薬(例えば、アミトリプチリン、ペルファナジン、プロトリプチリン、トラニルシプロミン、イミプラミン、デスイミプラミンおよびクロミプラミン)、骨格筋弛緩性鎮痛薬(フレクサリル、カリソプロドール、ロバキシサル、ノルジージックおよびダントリウム)、片頭痛治療薬(例えば、エリトリプタン、スマトリプタン、リザトリプタン、ゾルミトリプタンおよびナラトリプタン)、抗けいれん薬(例えば、フェニトイン、ラモトリジン、プレガバリン、カルバマゼピン、オクスカルバゼピン、トピラメート、バルプロ酸およびギャバペンチン)、バクロフェン、クロニジン、メキシレチン、ジフェニル-ヒドラミン、ヒドロキシシン、カフェイン、プレドニゾン、メチルプレドニゾン、デカドロン、パロキセチン、セルトラリン、フルオキセチン、トラモドール、ジコノチド、レボドパ。
【0109】
望ましい場合、治療しようとする哺乳動物に対して、BH4の産生を阻害する複数の薬剤を投与してもよい。任意で、本発明の組成物は、複数のこのような阻害薬を含みうる。または、哺乳動物に対して、本発明の組成物に加えて、BH4の下流で働く酵素の特異的阻害薬を投与することもできる。このような阻害薬については以下に述べる。
【0110】
BH4依存性酵素
BH4は、いくつかの酵素、すなわちフェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンという3種類の芳香族アミノ酸のヒドロキシラーゼ;エーテル脂質オキシダーゼ;ならびに3種類の一酸化窒素シンターゼ(NOS)アイソザイムの必須な補助因子である。このため、BH4は、神経伝達物質の形成およびシグナル伝達経路を含む、数多くの生物プロセスに重要な役割を果たしている。
【0111】
一酸化窒素(NO)は、NMDA受容体刺激後に侵害受容性ニューロンから放出され、シナプス前ニューロンへと逆方向に拡散して、そこにおいてグアニリルシクラーゼ/cGMP/cGMP依存性キナーゼ経路を刺激することによって、さらなるグルタミン酸放出を引き起こす。さらに、NOはシナプス後ニューロンの興奮性も調節する。L-NAME(NG-ニトロ-L-アルギニン-メチルエステル)などのNOシンターゼ阻害薬は、さまざまなモデルにおいて炎症性痛覚過敏および神経障害性アロディニアを軽減し、このため、本発明の組成物と共にまたは混合して投与することができる。すべてのNOS酵素の活性をブロックする薬剤が、神経性NOS(nNOS)または誘導性NOS(iNOS)のいずれかの特異的阻害薬よりも一般に効果が高いことを考えると、この双方の酵素が疼痛に関与している可能性が非常に高い。nNOSはニューロンで構成性に発現され、末梢侵害受容性刺激後にアップレギュレートされる。iNOSは末梢侵害受容性刺激後に脊髄でアップレギュレートされ(特にグリア細胞において)、nNOSよりもはるかに高いレベルのNOを生じさせる。内皮一酸化窒素シンターゼ(eNOS)は主として内皮細胞で発現されるが、ノックアウトマウスにおける研究から、この酵素が疼痛調節にも寄与することが示されている。これらの酵素のすべてはBH4依存性でり、これを補助因子として用いる。鎮痛を誘導するために用いうる可能性のあるNOS経路の阻害薬には、NOS-1(nNOS)の阻害薬、例えば、N-メチル-L-アルギニン(M 7033)、N-ニトロ-L-アルギニン(N 5501)、7-ニトロインダゾール(N 7778)、1-(2-トリフルオロメチルフェニル)イミダゾール(T 7313)、L-チオシトルリン、S-メチル-L-チオシトルリン(M 5171)など;NOS-2(iNOS)の阻害薬、例えばアミノグアニジン(A 8835、A 7009)、S-ベンジルイソチオ尿素(B 9138)、1-(2-トリフルオロメチルフェニル)イミダゾール(T 7313)、L-N6-(1-イミノエチル)リジン(I 8021)および1400W(W 4262)などが含まれ;かつ、NOS-3(eNOS)の阻害薬には、N-メチル-L-アルギニン(M 7033)、N-ニトロ-L-アルギニン(N 5501)、N-イミノエチル-L-オルニチン(I 8768)および7-ニトロインダゾール(N 7778)が含まれる。
【0112】
チロシンヒドロキシラーゼは、カテコールアミンの合成における、すなわち、BH4の存在を必要とする反応におけるアミノ酸チロシンからのドーパミンの生成における第一段階である。トリプトファンヒドロキシラーゼはセロトニン合成において鍵となる酵素である。ノルアドレナリンおよびセロトニンは、それぞれ青斑核および大縫線核から生じる下行性の抑制性ニューロンにおける神経伝達物質として作用する。このため、これらの酵素にとっての補助因子の利用可能性の低下は疼痛の増大をもたらす。この潜在的な短所を克服するために、本発明の組成物を、5HT受容体アゴニストおよび/または中枢作用性α受容体アゴニスト(クロニジンなど)と組み合わせて投与してもよい。5-HT-1Bアゴニストであるm-トリフルオロメチルフェニル-ピペラジン(TFMPP)および7-トリフルオロメチル-4(4-メチル-1-ピペラジニル)-ピロロ(1,2-1a)キノキサリン(CGS 12066B)(Alhaider et al., (1993) J Pharmacol Exp Ther. 265: 378-85)または5HT-2AアゴニストであるFR143166(Ochi et al. (2002) Eur J Pharmacol. 452: 319-24)などのさまざまな5HT-1アゴニストが、単独で投与された場合に抗侵害受容性効果を有する。または、可能性のあるセロトニンおよび/またはノルアドレナリン合成の低下に対して、三環系抗うつ薬(例えば、アミトリプチリン)または選択的セロトニン再取り込み阻害薬(例えば、パロキセチン、上記参照)などの再取り込み阻害薬との併用療法が勝る可能性もある。
【0113】
BH4の直接的効果
BH4のR鏡像異性体(6R-BH4)は、その補助因子的な働きに加えて、脳のある特定の領域に対して微量透析によって送達された場合に、ニューロンに対してさまざまな直接的効果を及ぼす。例えば、6R-BH4は線条体におけるドーパミンの放出を増加させる。これらの効果がチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬(α-メチル-p-チロシン)の存在下でも存続することを考えると、これはおそらくはドーパミン合成の増加には起因しないと考えられる(Koshimura et al. (1995) J Neurochem. 65: 827-30)。6R-BH4はまた、海馬におけるアセチルコリン(Ohue et al. (1991) Neurosci Lett. 128: 93-6)ならびに線条体および前頭皮質におけるグルタミン酸およびセロトニン(Mataga et al. (1991) Brain Res. 551: 64-71)といった他の神経伝達物質の放出も増加させる。神経伝達物質の放出に対するBH4の効果は、カルシウムチャンネル拮抗薬によって阻害される(Koshimura et al. (1995) J Neurochem. 65: 827-30)。ラットにおいて微量透析灌流液に対する6R-BH4の添加は迷走神経の運動核におけるカルシウム流も増加させるが、L-DOPAまたは一酸化窒素供与体Sin-1の添加は影響を及ぼさないことから、これらの影響はそれぞれチロシンヒドロキシラーゼおよびNOS活性とは無関係であることが示唆される(Shiraki T et al., (1996) Biochem Biophys Res Commun. 221: 181-5)。BH4のS-鏡像異性体(6S-BH4)または前駆体であるセピアプテリンは神経伝達物質の放出に影響を及ぼさない。このため、6R-BH4は特異的「BH4受容体」を介して作用するように思われる。しかし、BH4に関してこのような膜結合型細胞外結合部位はまだ同定/特性決定が行われていない。
【0114】
新規なBH4結合部位の候補に関するスクリーニング
本明細書に記載した結果は、「BH4受容体」として働く、新規な膜結合型または細胞内のBH4結合分子の存在を示唆する。補酵素としてのBH4の特徴は文献に詳細に記載されているが、他のタンパク質との結合およびその輸送機構は調べられていない。BH4などの低分子の結合部位に関するハイスループットスクリーニングを可能にする、新規なプロテオミクスアプローチが開発されている。大規模タンパク質チップ、すなわち個別のタンパク質の二次元提示物が、多数の精製タンパク質をマイクロプレート上に固定化することによって構築されている。それらは例えば、タンパク質-タンパク質相互作用、薬剤標的または酵素-基質相互作用をアッセイするために用いられる。一般にそれらは、発現されたタンパク質をそれから精製して固定化するために、大腸菌、酵母または他の類似の発現系にクローニングされた発現ライブラリーを必要とする。例えばHisタグ付加を含む、当技術分野で公知の任意の適したタンパク質精製方法を用いることができる。リボソームディスプレイなどの無細胞タンパク質転写/翻訳は、タンパク質の合成のための代替的な選択肢である。ファージまたは酵母ディスプレイライブラリーを用いることもできる。
【0115】
BH4の結合は、例えば、以前に記載されているトリチウム(Werner et al., Biochem. J. 604: 189-193, 1994)で、または、BH4の一級アミノ基と結合しうるビオチンでBH4を標識することによって直接検出することもできる。トリチウムの取り込みは、合成酵素を過剰発現させ、基質として[3H]標識GTPを用いる細胞系システムで行わせることができる(Werner et al., 1994)。市販の6R-BH4塩酸塩をテンプレートとして用いて、BH4をトリチウムで化学標識することもできる。BH4標識のための代替的な選択肢として、新規な標的に対するその結合を、標識された捕捉性分子、例えばBH4が補助因子として結合する酵素の1つ、またはBH4抗体を含むペプチドを用いることによって検出することもできる。質量分析法、表面プラスモン共鳴および原子間力顕微鏡法を含む、標識を用いない検出方法を用いることもでき、これらではリガンドの変化が避けられる。大規模タンパク質アレイに加えて、後角およびDRGの組織または細胞のタンパク質抽出物の二次元ゲル電気泳動を、新規な結合部位のスクリーニングのために用いることもできる。続いてゲルをPVDF膜に対してブロットし、標識BH4に対して曝露させる。陽性タンパク質スポットは、マトリックス支援レーザー脱離イオン化-飛行時間質量分析法(MALDI-TOF MS)を用いる質量フィンガープリント法によって分析することができる。
【0116】
BH4経路を用いた疼痛または末梢神経病変の診断
本発明によれば、哺乳動物における疼痛または外傷性、代謝性もしくは毒性の末梢神経病変を、哺乳動物から入手した生物試料(例えば、血清、血漿、尿、脳脊髄液、滑液、組織滲出物または組織の試料)におけるBH4、BH4中間体、BH4前駆体またはBH4代謝産物のレベルを測定することによって診断することができる。当技術分野で公知の任意の標準的な方法を用いて、このようなレベルが対照に比して高く検出されれば(対照に比して少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%、または100%を超えて高い)、疼痛または末梢神経病変が診断される。または、いずれかのBH4合成酵素のレベルまたは活性の上昇が検出された場合に、疼痛または末梢神経病変を診断することもできる。このような上昇は、対照条件に比して少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%、または100%を超えて高いことが望ましい。本発明によれば、BH4経路は神経損傷および疼痛のバイオマーカーとして役立つ。
【0117】
本発明はさらに、血清、血漿、尿、脳脊髄液、滑液、組織滲出物および組織の試料といった生物試料におけるBH4、その前駆体および中間体(例えば、7,8-ジヒドロネオプテリン三リン酸ネオプテリンおよび6-ピルボイルテトラヒドロプテリン)または代謝産物(例えば、プテリン、ビオプテリン、7,8ジヒドロプテリン、7,8ジヒドロキサントプテリン、キサントプテリン、イソキサントプテリンまたはロイコプテリン)の測定を伴う、哺乳動物における疼痛または外傷性、代謝性もしくは毒性の末梢神経病変を診断するためのキットも提供する。例えば、本発明は、以上の化合物のいずれか1つ(例えば、ビオプテリンまたはネオプテリン)に対して特異的な抗体、および哺乳動物における疼痛を診断するための使用説明書を含む。これに関しては、疼痛の症状を伴う状態について検査しようとする、または外傷性、代謝性もしくは毒性の末梢神経病変が疑われる哺乳動物から血清を単離し、それを本発明の抗体を用いるELISAまたはRIAアッセイに供してもよい。哺乳動物における疼痛は、その哺乳動物の血清におけるBH4の血清レベル(抗体により検出される)が対照血清試料におけるBH4レベルよりも高いことによって診断される。哺乳動物における疼痛、疼痛のサブタイプまたは末梢神経病変の診断は、その哺乳動物から入手した生物試料で測定された化合物のレベルが、対照生物試料における同じ化合物のレベルに比して少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、または100%を上回って高い場合に下される。
【0118】
疼痛モデル
さまざまなモデルにより、強い刺激または有害刺激(生理的疼痛または侵害受容性疼痛)に対する正常動物の感受性が試験される。これらの試験には、温熱性、機械的または化学的な刺激に対する応答が含まれる。
【0119】
温熱性刺激は通常、高温刺激(一般的には42〜55℃の間)の適用を伴い、これには例えば以下が含まれる:尾部に対する輻射熱(テイルフリック試験(tail flick test))、後肢の足底面に対する輻射熱(ハーグリーブス試験(Hargreaves test))、ホットプレート試験、および後肢または尾部の熱水への浸漬。このようなモデルにおける評価項目には、痛みを伴う応答に関する潜時、応答、発声および肢舐めの持続時間が含まれる。冷水中への浸漬、アセトン蒸発または冷却プレート試験を、寒冷性疼痛への応答性を試験するために用いることもできる。
【0120】
機械的刺激を用いる試験では一般に、段階的な強度の単線維性フォンフライ毛(結果指標は、反射を誘発するために必要な線維の力である)または肢に対する持続的な加圧刺激(例えば、Ugo Basile社の無痛覚計)に対する後肢の逃避反射の誘発に関する閾値を測定する。標準的なピン刺激に対する応答の持続時間を測定することもできる。
【0121】
化学刺激を用いる場合には、皮膚、筋肉関節または内臓(例えば、膀胱または腹膜)に対する刺激性化学物質(例えば、カプサイシン、マスタードオイル、ブラジキニン、ATP、ホルマリン、酢酸)の適用または注射に対する応答を測定する。結果指標には、発声、肢舐め、身もだえ(writhing)または自発的屈曲が含まれる。
【0122】
さらに、さまざまな試験で、疼痛神経経路の末梢性または中枢性要素の興奮性の変化を測定することにより、疼痛感作が評価される。これに関して、末梢性感作(すなわち、高閾値侵害受容器の閾値および応答性の変化)は、反復的な熱刺激により、ならびに感作性化学物質(例えば、プロスタグランジン、ブラジキニン、ヒスタミン、セロトニン、カプサイシン、マスタードオイル)の適用または注射により、誘導することができる。結果指標は、行動する動物に上記の手法を用いた適用/刺激領域における温熱性および機械的な感受性、またはインビボでの、もしくは単離した皮膚神経標本を用いての、単一の感覚線維の受容野特性の電気生理学的測定である。感覚ニューロンの電気生理学的、神経化学的または細胞生物学的な特性を利用して、これらのパラメーターを間接的に調べることもできる(例えば、単離された感覚ニューロン(例えば、培養下にある後根神経節ニューロン)からの記録、感作性刺激(例えば、プロテインキナーゼCまたはA)によるシグナル伝達経路の活性化、または受容体もしくはイオンチャンネルのリン酸化の測定)。中枢性感作(すなわち、末梢疼痛線維での活性によって誘導される中枢神経系におけるニューロンの興奮性の変化)は、有害刺激(例えば、熱)、化学刺激(すなわち、カプサイシン、マスタードオイルまたはホルマリンなどの刺激性化学物質の注射または適用)または感覚線維の電気的活性化によって誘導することができる。結果指標としては、行動的(すなわち、適用領域の外側、すなわち二次痛覚過敏または触覚アロディニアの領域(通常なら無害な触覚刺激に対する疼痛反応)での温熱性および機械的な応答性)、電気生理学的(すなわち、単一の中枢性ニューロンの受容野特性)、神経化学的(すなわち、中枢性ニューロンにおけるシグナル伝達経路の活性化(例えば、ERK、p38、CREB、c-fosなどの前初期遺伝子、キナーゼ、PKC、PKA、またはsrc)またはNMDAもしくはAMPA受容体といった受容体もしくはイオンチャンネルのリン酸化)なものであってよい。機能的画像化法を、活性化のパターンの変化を評価するために利用することもできる。
【0123】
疼痛感受性に対する末梢炎症の影響を測定するためのさまざまな疼痛試験も開発されている(Stein et al., Pharmacol. Biochem. Behav. (1988) 31: 445-451;Woolf et al.,Neurosci. (1994) 62: 327-331)。炎症は、刺激物質(例えば、完全フロイントアジュバント、カラゲナン、テレピン油およびクロトン油)の皮内、皮下、筋肉内、関節内または内臓内への注射によって生じさせてもよい。または、制御されたUV光熱傷および虚血の作成、またはリポ多糖(LPS)もしくは神経成長因子(NGF)などのサイトカインもしくは炎症性メディエーターによって炎症の影響を模倣することもできる。
【0124】
炎症の誘導後の結果指標には、行動(例えば、温熱性および機械的感受性(以上に考察)、体重支持、内臓過敏性(例えば、膀胱内または腸内のバルーンの膨張)、自発的移動活動、または場所嗜好性タスクのようなより複雑な行動の成績)、電気生理学(例えば、一次感覚ニューロンおよび中枢ニューロンからのインビボおよびインビトロ記録、特に受容野特性、興奮性またはシナプス入力の変化に注目する)、神経化学(例えば、一次感覚ニューロンおよび中枢ニューロンにおける伝達物質、神経ペプチドおよびタンパク質の発現および分布、ニューロンにおけるシグナル伝達カスケードの活性化、転写因子の発現ならびにタンパク質のリン酸化)における変化、ならびに神経活動の変化を検出するための画像化法が含まれうる。
【0125】
さらに、さまざまな試験で、末梢神経系の病変を用いて末梢神経障害性疼痛が評価される。このような例の1つは「軸索切断疼痛モデル」であり、これは例えば、外傷性損傷または実験的もしくは外科手術的な操作によって1つまたは複数の末梢神経線維を切断する、末梢神経の完全離断を伴う(Watson, J. Physiol. (1973) 231:41)。その他の類似の試験には、脊髄分節神経の結紮を用いるSNL試験(Kim and Chung Pain (1992) 50:355)、神経部分損傷を用いるセルツァー(Seltzer)モデル(Seltzer, Pain (1990) 43: 205-18)、坐骨神経部分損傷(SNI)モデル(Decosterd and Woolf, Pain (2000) 87:149)、慢性絞扼性損傷(CCI)モデル(Bennett (1993) Muscle Nerve 16:1040)、糖尿病(ストレプトゾシンモデル)、ピリドキシン神経障害、タキソール、ビンクリスチンおよびその他の抗腫瘍薬により誘発される神経障害といった毒性神経障害を用いる試験、神経の虚血を用いる試験、末梢神経炎モデル(例えば、神経周囲に施されたCFA)、HSV感染を用いたヘルペス後神経痛のモデル、ならびに圧迫モデルが含まれる。以上の試験のすべてにおいて、結果指標は、例えば、行動(例えば、上記のような温熱性および機械的感受性、体重支持、自発的活動、または場所嗜好性タスクのようなより複雑な行動の成績)、電気生理学(例えば、インビボおよびインビトロでの一次感覚ニューロンおよび中枢ニューロン、特に膜興奮性、自発的活動、受容野特性およびシナプス入力の変化に注目する)、神経化学(例えば、一次感覚ニューロンおよび中枢ニューロンにおける伝達物質、神経ペプチドおよびタンパク質の発現および分布、ニューロンにおけるシグナル伝達カスケードの活性化、転写因子の発現ならびにタンパク質のリン酸化)ならびに神経活動の変化を検出するための画像化法に従って評価することができる。さらに、中枢神経障害性疼痛を模したいくつかの疼痛試験では、例えば脊髄損傷(例えば、機械的、圧迫性、虚血性、感染性または化学性)を含む、中枢神経系の病変を用いる。これらの個々の試験において、結果指標は、末梢神経障害性疼痛に関して用いたものと同じである。
【0126】
以上のモデル間には、疼痛のさまざまな特徴が共通してみられる。この点に関して、生理的疼痛は、機械的および温熱性刺激に対する閾値の高さ、ならびにこの種の刺激に対する急速な一過性応答によって特徴づけられる。炎症性疼痛および神経障害性疼痛は、自然発生的疼痛(自発的屈曲、発声、噛み付き、またはさらには自傷)、通常なら無害な刺激に対する異常な過敏性(アロディニア)、および有害刺激に対する過大応答(痛覚過敏)のいずれかを示す行動を呈することによって特徴づけられる。
【0127】
疼痛の測定
温熱性および機械的な閾値感受性は、例えば、℃、またはグラムもしくはニュートン単位での力の形で、または代替的には応答するまでの時間を指標として、量的に測定することができる。温熱性疼痛閾値に関しては、屈曲逃避応答を誘発する40℃を上回る高温刺激または寒冷刺激(<15℃)を測定することが一般的である。機械的閾値に関しては、屈曲逃避応答を誘発する点状機械的刺激の力(<100g)を測定する。刺激に対する応答の潜時、すなわち動物が応答するまでに要する時間の長さ、の短縮を測定することもできる(一般的には<10秒)。実際の値は、試験の性質および刺激を加える身体領域に依存する。
【0128】
疼痛感受性の増大を試験するためのやり方の1つは、閾値レベルに近い刺激を反復的に加え、この一定の刺激に対する陽性応答の割合の増加について調べることである。疼痛応答性に関して、測定値とは、針刺しまたは高温もしくは寒冷刺激の後に肢を屈曲位に保つ時間の量といった応答の持続時間または大きさである。
【0129】
スクリーニングアッセイ
本発明は、BH4の産生または作用を阻害しうる化合物を同定するためのスクリーニング方法を提供する。有用な化合物には、BH4または図2Aに示された酵素のうち少なくとも1つもしくは複数の生物活性を阻害すること、またはそれらの細胞レベルを低下させることができる、任意の作用物質が含まれる。このような酵素には、例えば、GTPシクロヒドロラーゼ(GTPCH)、ピルボイルテトラヒドロプテリン(PTPS)、セピアプテリンレダクターゼ(SPR)およびジヒドロプテリジンレダクターゼ(DHPR)が含まれる。以上に考察したように、本発明者らは、DAHP、NASおよびメトトレキサートが、疼痛の治療、軽減または予防のために有用であることを示した。例えば、このような薬剤をリード化合物として用いることで、本スクリーニング方法は、鎮痛を誘導するために働く、BH4合成経路の新規な特異的阻害薬の同定を可能にする。スクリーニングの方法にはハイスループット手法が含まれうる。
【0130】
このようなスクリーニングアッセイを実施するために、さまざまな方法を利用することができる。1つのアプローチによれば、BH4合成酵素のうち1つまたは複数を発現する細胞の培養液に対して、候補化合物をさまざまな濃度で添加する。続いて、BH4合成酵素の遺伝子発現を、例えば、BH4合成酵素の核酸分子から調製した任意の適切な断片をハイブリダイゼーションプローブとして用いる標準的なノーザンブロット分析(Ausubel et al.、前記)により、または適切なプライマーを用いるリアルタイムPCRにより測定する。候補化合物の存在下での遺伝子発現のレベルを、候補分子が存在しない対照培養物で測定したレベルと比較する。必要に応じて、候補化合物の影響を、代替的な選択肢として、同じ一般的なアプローチ、ならびに、BH4合成酵素またはBH4(またはその中間体もしくは代謝産物)に対して特異的な抗体を用いるウエスタンブロット法、免疫沈降法またはイムノアッセイなどの標準的な免疫学的手法を用いて、BH4産生のレベルで測定することもできる。例えば、イムノアッセイを、BH4またはGTPCHのレベルを検出またはモニターするために用いることができる。BH4、BH4前駆体またはBH4代謝産物と結合しうるポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を、BH4またはその前駆体もしくは代謝産物のレベルを測定するための任意の標準的なイムノアッセイ形式(例えば、ELISAまたはRIAアッセイ)に用いることができる。また、BH4またはその前駆体もしくは代謝産物を、質量分析、高速液体クロマトグラフィー、分光学的もしくは蛍光定量的な手法、またはそれらの組み合わせを用いて測定することもできる。さらに、総ビオプテリン(BH1、BH2およびBH4)含有量を以下にさらに述べるように測定してもよい。
【0131】
または、本発明のスクリーニング方法を、BH4の生物活性をBH4依存性酵素もしくはBH4結合受容体に対するその結合性を低下させることによって低下させる、または代替的には、いずれかのBH4合成酵素の活性またはレベルを低下させる候補化合物を同定するために用いることもできる。例えば、以下にさらに述べるように、候補化合物を、GTPCH活性を低下させる能力に関して、この酵素を天然に発現する細胞において、この酵素のcDNAのトランスフェクションの後に、またはその酵素を含む無細胞溶液中で、調べることができる。BH4依存性酵素(NOSなど)またはBH4結合受容体(または類似体)の結合または活性化に対する候補化合物の影響は、放射性および非放射性結合アッセイ、競合アッセイ、酵素活性アッセイ、受容体シグナル伝達アッセイによって調べることができる。
【0132】
具体的な一例としては、BH4合成酵素をコードする核酸を発現する哺乳動物細胞(例えば、齧歯動物細胞)を、候補化合物(例えば、ペプチド、ポリペプチド、合成有機分子、天然有機分子、核酸分子またはそれらの構成要素)の存在下で培養する。細胞はBH4合成酵素を内因性に発現してもよく、または代替的には、当技術分野で公知の任意の標準的な手法(例えば、トランスフェクションおよびウイルス感染)によってBH4合成酵素を過剰発現するように遺伝的に操作してもよい。これらの細胞におけるBH4合成酵素の発現レベルを、例えばウエスタンブロット分析によって測定し、続いて、候補化合物と接触させていない対照細胞における同じタンパク質の発現のレベルと比較する。BH4または中間体のレベルの低下を、その合成を低下させることまたはその合成酵素のうち1つのレベルもしくは活性を低下させることの結果として促進させる化合物は、本発明において有用であると判断される。BH4のレベルまたは活性を低下させるその能力から考えて、このような分子は、例えば、疼痛の治療、軽減または予防のための鎮痛治療薬として用いることができる。
【0133】
任意のBH4合成酵素の活性は、それらが基質(例えば、GTP)を消費する速度、または生成物(例えば、BH4)を生成する速度によって測定することができる(Werner et al. (1996) J Chromatogr B Appl 684: 51-58を参照)。放射分析アッセイは標識基質の消費に基づく。例えば、GTPCH活性は、GTPの標識水素原子を源とする標識ギ酸の放出およびチャコールによるGTPからのギ酸の分離を測定することによって評価することができる(Viveros et al. (1981) Science 213:349)。しかし、HPLCに基づく方法は、HPLCが生成物の決定を可能とするという点で、放射性方法よりも優れている。GTPCH活性を測定するためには、GTPCHを含む組織または細胞のホモジネートを、生成物である7,8ジヒドロプテリン三リン酸が、機能するためにMg2+を必要とする下流PTPSによってさらに代謝されることを確実に防ぐために、EDTAの存在下で、過剰量のGTP(基質)とともにインキュベートする。反応はHClおよびヨウ素の添加によって停止させる。これはまた、不安定な7,8-ジヒドロネオプテリン三リン酸の、より安定化なネオプテリン三リン酸への酸化へも引き起こす。ネオプテリン三リン酸は、イオン対HPLCおよび蛍光検出法によって直接分析することができる。または、混合物をNaOHおよびアルカリホスファターゼで処理してネオプテリンを生じさせてもよく、これは「純粋な」試料(インビトロキナーゼアッセイまたはCSFなど)の場合には、蛍光検出を用いる逆相HPLC、イムノアッセイまたは直接的な蛍光によって分析することができる。
【0134】
セピアプテリンレダクターゼ活性は一般に、セピアプテリンを人工的基質として用いて、BH4およびBH2のビオプテリンへの酸化後の総ビオプテリンレベルを測定することによってアッセイされる。
【0135】
PTPS活性の決定のためには、基質である7,8ジヒドロネオプテリン三リン酸を精製GTPCHを用いて新たに調製することが一般的である。インキュベーション混合物は通常、精製されたセピアプテリンレダクターゼも含むため、BH4およびBH2の酸化後のビオプテリンレベルを測定することによってPTPS活性を評価することもできる。
【0136】
BH4のレベルを低下させる、またはBH4合成酵素のレベルもしくは活性を低下させるその能力から考えて、このような分子は、例えば、疼痛の治療、軽減または予防のための鎮痛治療薬として用いることができる。
【0137】
代替的または補足的には、候補化合物を、BH4依存性酵素またはBH4結合受容体と特異的に結合する、またはそれを特異的に阻害する化合物に関してスクリーニングすることもできる。このような候補化合物の有効性は、それがBH4、BH4合成酵素もしくはBH4結合酵素またはBH4受容体と相互作用する能力に依存する。このような相互作用は、任意のさまざまな標準的な結合法および機能アッセイ(例えば、前記、Ausubel et al.に記載されたもの)を用いて容易にアッセイすることができる。
【0138】
例えば、候補化合物をBH4との相互作用および結合に関してインビトロで試験し、それが疼痛を調節する能力を、任意の標準的なアッセイ(例えば、本明細書に記載したもの)によってアッセイすることができる。
【0139】
1つの特定の例では、BH4合成酵素のいずれかと結合する候補化合物を、クロマトグラフィーに基づく手法を用いて同定する。例えば、組換えBH4合成酵素タンパク質を、BH4合成酵素を発現するように操作された細胞(例えば、上記のもの)から標準的な手法によって精製し、カラム上に固定化する。または、BH4をカラム上に固定化する。続いて、候補化合物の溶液をカラムに通過させ、BH4またはいずれか1つのBH4合成酵素に対して特異的な化合物を、それがBH4またはBH4合成酵素と結合してカラム上に固定化される能力に基づいて同定する。化合物を単離するためには、非特異的に結合した分子を除去するためにカラムを洗浄した後に、関心対象の化合物をカラムから放出させて収集する。この方法(または任意の他の適切な方法)によって単離された化合物を、必要に応じて(例えば、高速液体クロマトグラフィーにより)、さらに精製してもよい。
【0140】
新たな阻害薬に関するスクリーニング、およびリード化合物の最適化については、例えば、上記のようにGTPCH活性を評価することによって評価することができる。数多くの物質のスクリーニングのために、精製した組換えGTPCHを基質および阻害薬候補とともにインキュベートした後に酸化を行わせ、蛍光ELISA読み取り装置を用いてネオプテリンを測定するという、96ウェルを利用した酵素アッセイを用いることもできる。ネオプテリンは強い蛍光を示し、直接測定することができる。
【0141】
アッセイがBH4測定に基づいてもよい。BH4は、分子の環が完全に酸化された芳香族の状態にはないため、強い蛍光は示さない。この問題を回避するために、ジヒドロビオプテリンおよびBH4をそれらのビオプテリンへの酸化後に測定するという鑑別的な酸化方法を用いてもよく、この場合、蛍光を用いたビオプテリンの検出限界は0.3pmolである(Fukushima and Nixon, Anal. Biochem, (1980) 102: 176-188)。GTPCHの活性またはビオプテリンのレベルを測定するためのアッセイは、例えば以下に記載されている:Kaneko et al., Brain Res. Brain Res. Protoc. (2001) 8: 25-31;Ota et al., J Neurochem. (1996) 67: 2540-2548;Brautigam et al., Physiol. Chem. (1982) 363: 341-343;Curtius et al., Eur. J. Biochem. (1985) 148: 413-419;Stea et al., J Chromatogr. (1979) 168: 385-393;Werner et al., J Chromatogr. (1996) 684:51-58;Werner et al., Methods Enzymol. (1997) 281: 53-61;Nagatsu et al., Anal. Biochem. (1981) 110: 182-189;および、Geller et al., Biochem Biophys Res Commun (2000) 276: 633-41。
【0142】
さらに、これらの候補化合物を、鎮痛薬(例えば、本明細書に記載したような)として機能する能力に関して調べることもできる。また、このアプローチによって単離された化合物を、例えば、疼痛の治療、軽減または予防のための治療薬として用いることもできる。BH4、いずれかのBH4合成酵素、BH4依存性酵素またはBH4結合受容体に対して、10mMと等しいかそれ未満の親和性定数で結合するものとして同定された化合物は、本発明において特に有用と判断される。
【0143】
最終的には、本スクリーニング方法によって同定された任意の候補化合物の鎮痛効果を、上記のいずれかの疼痛モデルを用いて試験することができる。
【0144】
可能性のある鎮痛薬には、BH4合成酵素またはBH4依存性酵素またはBH4結合受容体のいずれかをコードする核酸配列またはポリペプチドと結合し、それによってそれらの活性を阻害または消失させる、有機分子、ペプチド、ペプチド模倣物、ポリペプチドおよび抗体が含まれる。
【0145】
可能性のある鎮痛薬には、また、このようなポリペプチドの結合部位と結合してそれを占有し、それによってこのようなポリペプチドの細胞結合分子に対する結合を妨げ、正常な生物活性が妨げられるようにする低分子も含まれる。可能性のある他の鎮痛薬にはアンチセンス分子が含まれる。
【0146】
BH4に加えて、BH4合成酵素のいずれかを発現させた上で、候補化合物のスクリーニングのための標的として用いることもできる。さらに、本明細書中に提示した化合物(例えば、DAHP、NAS、メトトレキサート、BH4、グアニン、または図19に示された化合物のいずれか)を、鎮痛性化合物の発見および開発のためのリード化合物として利用することもできる。
【0147】
被験化合物および抽出物
一般に、鎮痛を誘導しうる化合物は、天然物または合成(もしくは半合成)抽出物の双方の大規模ライブラリー、または当技術分野で公知の方法による化学物質ライブラリーから同定される。薬剤の探索および開発の当業者は、被験抽出物または化合物の厳密な源は本発明のスクリーニング手順にとって決定的ではないことを理解していると考えられる。したがって、事実上あらゆるさまざまな化学抽出物または化合物を、本明細書に記載の方法を用いてスクリーニングすることができる。このような抽出物または化合物の例には、植物、真菌、原核生物または動物を基にした抽出物、発酵ブロスおよび合成化合物、さらには既存の化合物の改変物が非制限的に含まれる。糖類、脂質、ペプチドおよび核酸を基礎におく化合物を非制限的に含む、任意のさまざまな化合物のランダムまたは定方向的な合成(例えば、半合成または全合成)を行わせるための、数多くの方法も利用することができる。合成化合物ライブラリーは、Brandon Associates社(Merrimack, NH)およびAldrich Chemical社(Milwaukee, WI)から市販されている。
【0148】
または、細菌、真菌、植物および動物の抽出物の形態にある天然化合物のライブラリーは、Biotics(Sussex, UK)、Xenova(Slough, UK)、Harbor Branch Oceangraphics Institute(Ft. Pierce, FL)およびPharmaMar, U.S.A.(Cambridge, MA)を含む供給業者から、商業的に入手可能である。さらに、天然のライブラリーおよび合成的に作製されたライブラリーは、必要に応じて、当技術分野で公知の方法に従って、例えば、標準的な抽出法および分画法によって作製される。さらに、必要に応じて、任意のライブラリーまたは化合物は、標準的な化学的、物理的または生化学的な方法を用いて容易に修飾される。
【0149】
加えて、薬剤の探索および開発の当業者は、デレプリケーション(dereplication)(例えば、分類学的デレプリケーション、生物学的デレプリケーションおよび化学的デレプリケーションまたはそれらの任意の組み合わせ)、または鎮痛活性が公知である物質の重複物もしくは反復物の除去のための方法を可能な限り用いるべきであることを容易に理解すると考えられる。
【0150】
粗抽出物が鎮痛活性または結合活性を有することが明らかになった場合には、観察された効果の原因である化学成分を単離するために、陽性であるリード抽出物をさらに分画することが必要である。したがって、抽出、分画および精製の工程の目標は、鎮痛活性を有する粗抽出物の内部にある化学的実体の特性決定および同定を慎重に行うことにある。このような異種混交的な抽出物の分画および精製の方法は当技術分野で公知である。必要に応じて、病原性の治療に有用な薬剤であることが示されている化合物は、当技術分野で公知の方法に従って化学的に修飾される。
【0151】
薬学的治療薬
本発明は、疼痛を治療、軽減または予防することが可能な化合物(ペプチド、低分子阻害薬および模倣物を含む)を同定するための簡易な手段を提供する。
【0152】
したがって、医学的意義を有することが本明細書に記載の方法を用いて見いだされた化学的実体は、薬剤として、または、例えば合理的薬剤設計による、既存の鎮痛化合物の構造的修飾のための情報として、有用である。
【0153】
治療的使用のためには、本明細書に開示された方法を用いて同定された組成物または薬剤を、例えば、生理的食塩水などの薬学的に許容される緩衝液中に配合した上で、全身投与することができる。投与は、例えば、(いずれかのBH4合成酵素の生物活性を妨げることにより)BH4の産生を妨げることによって、または、BH4を補助因子として用いうる酵素またはBH4と結合する受容体の活性化を阻止することによりBH4の生物活性を直接妨げることによって、疼痛を治療、軽減または予防する化合物を動物個体に投与することにより、直接的に行うことができる。好ましい投与経路には、例えば、連続的で持続的な濃度の薬物が患者に提供される、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内または皮内注射が含まれる。ヒト患者または他の動物の治療は、生理的に許容される担体中にある治療的有効量の鎮痛薬を用いて行いうると考えられる。適した担体およびそれらの剤形は、例えば、E.W.Martinによる「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記載されている。投与する鎮痛薬の量は、投与様式、患者の年齢および体重、ならびに疾患の種類および疾患の程度によって異なる。一般にその量は、疼痛の治療に用いられる他の薬剤について用いられているものの範囲にあると考えられるが、場合によっては、化合物の特異性が高いことから、より少ない量が必要であると考えられる。化合物は、疼痛を抑制する投与量で投与される。例えば、全身投与の場合には、化合物を典型的には0.1ng〜10g/kg体重の範囲で投与する。
【0154】
ここで、本発明の結果を、以下の実施例においてさらに詳細に説明する。これらの実施例は本発明を例示するために提供されるものであり、制限的なものとみなされるべきではない。
【0155】
実施例1:末梢神経損傷によるBH4経路の合成酵素の誘導
一次感覚ニューロンの末梢軸索の離断は、それらの代謝、再生能力、生存、興奮性、伝達物質機能、ならびに多様な外因性および内因性シグナルに対する感受性に重大な変化を引き起こす。これらの変化は、末梢標的臓器からの栄養的補助の喪失および損傷部位で生じる新規なシグナルの両方によって誘発される、転写上の変化によって媒介される。これらの転写上の変化は、損傷を受けても生存する能力および損傷を受けた軸索が再成長する能力といった適応応答に加えて、神経障害性疼痛の発生を含む知覚の変化を引き起こす恐れのある適応応答ももたらす。
【0156】
ラットの高密度オリゴヌクレオチドマイクロアレイは、坐骨神経離断(軸索切断)後の後根神経節(DRG)における遺伝子発現の変化を検出するために用いられている。DRGは、一次感覚ニューロンという1つの一般的な種類のニューロンの密な集合体である。その病変は細胞に対して均一な影響を及ぼし、調節性が判明している遺伝子の大規模プールの存在により、マイクロアレイによって同定された変化の質的管理が可能となる。
【0157】
AffymetrixラットU34Aオリゴヌクレオチドアレイを、胚でのDRGの成熟過程および坐骨神経病変後のDRGニューロンにおける遺伝子発現の変化に関するスクリーニングのために用いた。最初の検討で、本発明者らは、ジヒドロプテリジンレダクターゼ(DHPR)を含むいくつかの遺伝子の発現プロファイルが、発生過程初期における高い発現レベル、成熟期におけるダウンレギュレーション、および末梢神経損傷後の再発現を特徴とすることを見いだした(図1Aおよび1B)。続いて、Costigan et al.,(BMC Neuroscience (2002) 3: 16)(これは参照として本明細書に組み入れられる)によって以前に記載されたように、末梢神経(坐骨神経)離断(軸索切断、Ax)から3日後の遺伝子発現の変化を探る目的で、発現レベルを非損傷DRG(未処理、N)と比較することにより、より詳細な検討を行った。9つの生物学的に独立したアレイハイブリダイゼーションを行った(6つは未処理、3つは軸索切断後)。5匹の雄性Sprague-DawleyラットからのDRG組織(左側または損傷の同側側からのL4およびL5)を各RNA集団についてプールした。各RNA試料を別個に標識し、別々のアレイとハイブリダイズさせた。3連の2組のマイクロアレイを用いて2種類の比較を行った:未処理と未処理の比較、および未処理と軸索切断との比較。遺伝子は、それぞれの比較でアレイの少なくとも1つにおいて、存在する、または下限のコール(call)を受容した場合に、検出されたものと定義した。それぞれの個々の試料は、単一の供給元(Charles River)による齢数の類似した5匹の雄Sprague-Dawleyラットからプールされているため、生物学的な変動は非常に少ない可能性が高い。
【0158】
DHPRに加えて、この分析ではさらに、テトラヒドロビオプテリン合成経路の2つの他の要素(図2A)も、末梢神経損傷によって有意にアップレギュレートされることが判明した:GTPシクロヒドロラーゼ(GTPCH)およびセピアプテリンレダクターゼ(SPR)(図3参照)。
【0159】
実施例2:マイクロアレイ分析の検証
次に、軸索切断によるBH4合成酵素の誘導を、ノーザンブロット分析、ノーザンスロットブロット分析、インサイチューハイブリダイゼーションおよびウエスタンブロット分析といったさまざまな方法によって確かめた。各群からの試料を、動物アレイ用に用いたものとは異なる群の動物から抽出した、独立したL4およびL5 DRG RNA試料から調製した。図1Bは、軸索切断の前および後での、胚発生過程および成体におけるDHPRの発現プロファイルを示し、それによって本発明者らのマイクロアレイデータを裏づけた、ノーザンスロットブロット分析を示している。未処理DRGおよび損傷3日後におけるGTPCH mRNAレベルを検出するためのノーザンブロット分析により、3kbおよび1.2kbという2種類の転写物の顕著な誘導が明らかに示されている(図4A参照)。図3は、軸索切断後のDRGにおけるBH4合成酵素の誘導の程度をまとめたものである。インサイチュー分析により、末梢神経損傷3日後のDRGのニューロンにおけるGTPCH mRNAの誘導がさらに確かめられた(図4B)。図4D〜4Fは、軸索切断後のDRGにおけるGTPCH、DHPRおよびSPR mRNA転写物レベルの誘導が、少なくとも2週間にわたって持続することを示した3回のノーザンブロット分析を表している。本発明者らはさらに、神経損傷後のGTPCH mRNAレベルの上昇が、タンパク質レベル(図5A)および酵素活性(図5B)の上昇も伴うことを示している。図5Aは、軸索切断後のGTPCHレベルの顕著かつ持続的な上昇を示している、未処理DRGおよび軸索切断から1、3、7および14日後におけるGTPCHタンパク質レベルに関するウエスタンブロット分析を表している。DRGにおけるGTPCH活性レベルは、軸索切断7日後の方が対照に比して顕著に高い(図5B)。DRGにおけるBH4の量も軸索切断7日後の方が対照に比して増加している(図5C)。
【0160】
実施例3:神経障害性疼痛モデルおよび炎症性疼痛モデルにおけるBH4合成酵素の変化
3連のAffymetrixマイクロアレイ分析を、3種類の独立した末梢神経障害性疼痛モデルおよび末梢炎症後におけるDRGおよび脊髄後角での、BH4合成経路の要素(GTPCH、SPRおよびDHPR、ならびに6-ピルボイルテトラヒドロプテリンシンターゼおよびフィードバック調節タンパク質、GTPCHフィードバック調節タンパク質)の発現の変化の経時的推移を確かめるために用いた。3種類のいずれの末梢神経障害性疼痛モデルのDRGにおいても、GTPCH I、SPR、PTPSおよびDHPRはすべて、かなりの程度でしかも長期間にわたってアップレギュレートされた(図6A〜6J)。後角では、これらのすべての酵素に関するmRNAが検出された(すなわち、構成性に発現された)が、疼痛モデルにおける変化はわずかであった。DRGおよび後角の両方において、末梢炎症も、BH4合成酵素の恒常的な基礎的発現レベルの顕著な変化は引き起こさなかった(図7A〜I)。
【0161】
実施例4:神経障害性疼痛に対するGTPCHの阻害薬の影響
これらの所見に基づき、本発明者らは、BH4経路が、細胞生存応答の活性化、興奮性の変化、伝達物質機能の変化および成長状態の変化を含む生物応答において役割を有するとの仮説を立てた。特に、本発明者らは、この経路が、例えばBH4レベルの上昇の結果としてNOS活性を高めることにより、末梢神経損傷後の疼痛(末梢神経障害性疼痛)の発生に役割を果たすという仮説を立てた。
【0162】
BH4合成経路が神経障害性疼痛に関与するか否かを評価するために、本発明者らは、坐骨神経部分損傷(SNI)モデル(図8A〜8H)、慢性絞扼性損傷(CCI)モデル(図9Aおよび9B)、ホルマリンアッセイ(図10)およびCFAモデル(図11A〜E)といったさまざまな疼痛モデルにおいて、DAHPが鎮痛を誘発しうるか否かを検討した。
【0163】
SNIモデルを用いて、本発明者らは、手術後のDAHP(180mg/kg/day、腹腔内に注射)の投与が、投与を早期の時点(例えば、手術3日後、図8A〜8D参照)または後期の時点(例えば、手術17日後、図8E〜8F参照)のいずれに開始するかにかかわらず、媒体のみを注射したラットに比して、機械的感受性(フォンフライ閾値)および寒冷性疼痛(肢へのアセトンの適用による寒冷アロディニア)の軽減を生じさせることを示した。このように、DAHPの投与は、ひとたび神経障害性疼痛が成立した後であっても鎮痛を生じさせることができた。DAHP(6mg/kg/day i.t.)を腰椎カテーテルを介した髄腔内持続注入によって投与した場合にも機械的および寒冷アロディニアは軽減された。その有効性は腹腔内投与と同等であった。DAHPの鎮痛効果はさらにCCIモデルでも確かめられた(180mg/kg/d i.p.;図9Aおよび9B)。DAHP(180mg/kgの単回i.p.投与)はホルマリンアッセイにおける後ずさり行動も減少させた(図10)。
【0164】
図8の結果は、SNIモデルにおけるDAHPの鎮痛効果が、DAHPの用量を増やして用いることによって延長したことを示している。図22Aおよび22Bは、投与されたDAHPの量と機械的(フォンフライ試験)または温熱性(寒冷アロディニア)刺激に対する侵害受容性応答との間に用量依存的な関係が存在することを示している。この用量-効果相関は、検討した用量の範囲では直線的であった。最大用量である270mg/kg/dに至るまで、明らかな神経学的有害作用は14日間の投与を通じて認められなかった。これらの結果は、BH4経路阻害薬の薬理学的効果をさらに裏づけている。
【0165】
さらに、予想された通り、BH4の髄腔内投与は侵害受容誘発性であった。図23Aは、慢性的に植え込んだカテーテルによる腰髄へのBH4の髄腔内投与が、未処理ラットにおける温熱性刺激(ハーグリーブスモデル)に対する肢逃避反射潜時(paw withdrawal latency)を短縮させることを示しており、このことは熱に対する過敏性の増大を示している。同様に、CFA誘発性の肢炎症モデルにおける、熱過敏性がすでに存在するラットでは、髄腔内BH4投与は同側性に熱過敏性を誘導したが、対側性には誘導しなかった。
【0166】
本発明者らは次に、肢炎症を誘発させるために、完全フロイントアジュバント(CFA)をラットの右肢に注射した。本発明者らは、CFA疼痛モデルを用いて、DAHP(180mg/kg i.p.)が、投与をCFA注射の30分前(図11A、左側)または24時間後(図11A、右側および11C)のいずれに開始しても、温熱性痛覚過敏を低下させることを示した。DAHPは炎症のない対側肢の肢逃避反射潜時には影響を及ぼさず(図11B)、このことはDAHPが知覚機能および運動機能に対して明らかな全体的な阻害作用を及ぼさないことを示している。DAHP(1mg/kg i.t.)を腰椎カテーテルを介した髄腔内注射によって腰髄に送達した場合にも温熱性痛覚過敏は軽減された(図11D)。腹腔内および髄腔内へのDAHP投与の直接比較により、いずれの薬剤投与経路とも効果は同程度であることが判明した(図11E)。DAHPを髄腔内および腹腔内に投与したラットにおける鎮痛効果に差がみられなかったという事実は、DAHPが脊髄およびDRGのレベルで効果を発揮することを推測させる。
【0167】
本発明者らは次に、炎症性肢浮腫に対するDAHPの効果を計測した。図12に示されているように、CFAを注射した肢および注射していない対照肢における肢重量を測定したところ、DAHPを投与したラットと対照動物との間に肢炎症の程度の差は認められなかった。このように、DAHPの投与は炎症に対しては明らかな効果がない(抗炎症作用がない)ため、本発明者の結果は、DAHPの鎮痛効果は主として、神経系における知覚プロセスの変化の結果であることを示唆している。
【0168】
フォンフライ試験およびハーグリーブス温熱性疼痛試験を用いて、本発明者らはさらに、非損傷動物におけるDAHPの注射は運動活性の変化を引き起こさないことを示した。これらの結果、および移動に関して検出可能な変化がみられないこと(図13A〜13B)に基づけば、用いた用量でDAHPが全体的な知覚および運動活性に影響を及ぼす可能性は低いように思われる。さらに、活動の全体的なレベルに関して検出可能な変化はみられず、鎮静の明らかな徴候もみられなかった。
【0169】
本発明者らは次に、血漿およびCSFにおけるDAHPのレベルを調べるための薬物動態試験を行い(図14Aおよび14B)、i.p.注射後には血漿中濃度が急速に上昇し、続いて脳脊髄液中に急速に分布することを示した。さらに、本発明者らは、経時的な血漿DAHP濃度の上昇が、CFAモデルでのDAHP投与に反応したラットにおける行動に対する効果と相関することも確かめた(図14C)。
【0170】
実施例5:炎症性疼痛または神経障害性疼痛に対するその他のBH4阻害薬の効果
本発明者らは次に、N-アセチル-セロトニン(NAS)を投与することによってBH4合成酵素セピアプテリンレダクターゼを阻害することの効果を評価した。DAHPと同様に、本発明者らは、NAS(50mg/kg i.p.)がCFAモデルにおける温熱性痛覚過敏の軽減を引き起こすことを示した(図15A参照)。NAS投与もCFA誘発性の炎症性肢浮腫には影響を及ぼさなかった(図15B)。
【0171】
同様に、本発明者らは、DHPRの阻害薬であるメトトレキサートの投与が、機械的および寒冷アロディニアに応じたSNIモデルにおける疼痛の軽減をもたらすことができ、検出可能な急性毒性は伴わないことも示した。MTXは低用量で全身投与するか(図16Aおよび16B参照)、浸透ポンプを用いる持続的な腰椎送達(0.1mg/kg/day)によって投与した(図16Cおよび16D参照)。毒性は経時的な体重変化として計測した(図16Eおよび16F参照)。
【0172】
全体的にみて、本発明者らの結果は、DAHP、NASまたはMTXを投与することによるBH4合成の阻害が、例えば、温熱性、機械的および化学的な刺激に対する鎮痛をもたらすことを示している。これらの結果に基づけば、BH4合成酵素の生物活性を低下させることによってBH4の合成を阻害することは、例えば鎮痛を誘導し、それ故にこれは、それを必要とする哺乳動物における疼痛の治療、予防または軽減のために用いることができる。
【0173】
実施例6:神経障害性疼痛に対するDAHPの分子的および細胞的な影響
後角ニューロンにおけるc-FOS発現の測定を、疼痛強度の客観的な指標として用いた。図24は、後肢にホルマリン注射を受けてから2時間後のラットの同側性後角ニューロンにおいて、c-FOS免疫反応性が増大していることを示している。腹腔内にDAHP投与も受けたラットではc-FOSレベルの上昇の有意な抑制が観察された(p<0.O5)。このことは、DAHPが、前初期遺伝子c-Fos誘導の上流にあるBH4代謝性経路で作用し、脊髄におけるニューロンの活性化を低下させることを示している。
【0174】
後角ニューロンのアポトーシスは神経損傷後の神経障害性疼痛の発生の一因となる。神経障害性疼痛におけるBH4の細胞面での役割をさらに調べるために、L4/L5後角ニューロンのアポトーシスプロファイルをTUNEL染色を用いて評価した。図25は、SNIモデルにおける腹腔内へのDAHP投与によって後角ニューロンがアポトーシスから防御されることを示している。
【0175】
以上に考察したように、BH4は、神経系における疼痛シグナル伝達に寄与することが示されているnNOSおよびiNOSアイソザイムにとって必須な補助因子である。本発明者らは、DAHPの抗侵害受容性効果に関してnNOSノックアウトマウスと野生型マウスとの間に差がないことを見いだしたが(図26A)、このことはDAHPの鎮痛効果の発生にnNOSは必須ではないことを示している。本発明者らはまた、DAHPが、非特異的なNOS阻害薬であるL-NAMEの高用量全身投与よりも強い抗侵害受容性効果を誘導すること、および同時投与した場合にL-NAMEがDAHPの有効性を高めることもないことも見いだした(図26B)。
【0176】
したがって、DAHPの抗侵害受容性効果は単にNO産生の阻害だけを原因とすることはできず、BH4の侵害受容性誘発作用は単にNOS依存的な機序のみによって媒介されるわけではない。以上を総合して考えると、これらのデータは、BH4の侵害受容誘発作用は新規な標的分子を介して媒介される可能性が高いことを示唆している。
【0177】
実施例7:GTPCH-Iの局在
本発明者らはGTPCH-Iの局在について明らかにした。この酵素のアップレギュレーションは、末梢軸索損傷後(SNIモデル)には、病変のない個体との比較で、大きなサイズおよび小ないし中程度のサイズのDRGニューロンでみられる(図27Aおよび27B)。しかし、GTPCH-IのアップレギュレーションはCFA誘発性の肢炎症モデルでは観察されない。GTPCH-Iがアップレギュレートされるニューロンの40〜50%は、有髄軸索を有するニューロンのマーカーであるニューロフィラメント200(NF200)に対する免疫反応性もある(図29)。GTPCH-I mRNA陽性ニューロンの30〜40%は、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP;図29)に対する免疫反応性もある。CGRPは小ないし中程度のサイズの神経ペプチド陽性感覚ニューロン(そのほとんどは侵害受容器である)を標識する。GTPCH-I発現ニューロンはnNOSを発現せず、グリフォニア-シンプリシフォリア(Griffonia simplicifolia)イソレクチンB4(IB4;図29)による標識もされない。IB4は小さな無髄GDNF(グリア細胞由来神経栄養因子)応答性ニューロンを標識する。GTPCH-I発現ニューロンはATF-3に対する免疫反応性を示し、このことはこのアップレギュレーションが主として損傷ニューロンで起こることを示している(図31)。
【0178】
GTPCH-I転写物は対照動物およびSNI病変を有する動物のいずれの脊髄後角でも検出されない。単離された損傷運動ニューロンは、末梢軸索が末梢神経損傷によって離断された場合にGTPCH-I mRNAを示す(図28A)。
【0179】
GTPCH-Iフィードバック調節タンパク質(GFRP)のmRNA は単離されたDRGニューロンにおいて検出可能であり、その発現は神経損傷後にも変化しない(図28B)。
【0180】
実施例8:病変を有する後根神経節ではBH4代謝産物のアップレギュレーションが検出される
本発明者らは、SNI病変後のラットのDRGにおける、BH4の安定な代謝産物であるビオプテリンおよびネオプテリンのレベルを測定した。ネオプテリンはBH4の安定な代謝産物であり、BH4のリサイクル後に認められる。ネオプテリンの存在は新たなBH4合成の指標と考えられ、一方、ビオプテリンはBH4のリサイクルおよび再利用の指標とはなるが新規合成の指標とはならない。図30は、同側性の後角(DH)、DRGおよびScNにおけるビオプテリンレベルの、対側と比較しての上昇を示している。DAHPの投与により、ビオプテリンの増加はDHおよびScNでは低下するものの、これはDRGではみられなかった。これに対して、ネオプテリンレベルはDRGおよびScNのみで上昇し、DHでは上昇しなかった。これらの上昇はDAHP投与によって低下した。以上を総合すると、これらのデータは、安定なBH4代謝産物を疼痛の客観的指標として測定することの有用性を示している。さらに、これらのデータは、DAHPがBH4生合成をインビボで阻害すること、およびBH4生合成経路の阻害が鎮痛を誘導するための有用な機序であることも示している。
【0181】
以上の実験は以下の材料および方法を用いて行った。
【0182】
材料および方法
外科的手順
すべての手順は、Massachusetts General Hospitalの動物管理規則に従って行った。成体雄Sprague Dawleyラット(200〜300g)にハロタンで麻酔を施した。坐骨神経離断(軸索切断)のためには、左坐骨神経を大腿骨中位レベルまで露出させ、3/0号絹糸で結紮した上で遠位側を切断した。創を2層で縫合し、ラットが回復するまでおいた。SNIに関しては、坐骨神経の脛骨側および腓骨側への分枝を結紮して離断し、腓骨神経は残した。CCIに関しては、坐骨神経をdexon 4/0号で緩く結紮し(3つの結紮)、脊髄結紮モデルに関してはL5脊髄分節神経を結紮した。
【0183】
組織およびRNAの調製
ラットに対してCO2で終末神経麻酔を施し、L4およびL5 DRGを直ちに取り出して-80℃で保存した。ホモジネート化したDRG試料から、酸フェノール抽出(TRIzol試薬、Gibco-BRL)を用いて全RNAを抽出した。RNA濃度はA260測定によって評価し、その特性は1.5%アガロースゲルによる電気泳動によって評価した。各アレイのハイブリダイゼーションのために用いるそれぞれのRNA試料は、ラットL4およびL5 DRG(試料1件につき、5匹のラットからの10個の神経節)から調製した。
【0184】
マイクロアレイ分析
8799種の既知の転写物および発現配列タグ(EST)を提示しているAffymetrixラットゲノムU34Aオリゴヌクレオチドマイクロアレイを、製造業者の使用説明書(Santa Clara, CA http://www.affymetrix.com)に従って用いた。転写物の存在量は、それぞれの転写物のプローブセットのシグナル強度の分析およびミスマッチ対照との比較によって推測される。アレイを、Affymetrix社の標準的なプロトコールに従って調製したビオチン標識cRNAとハイブリダイズさせた。手短に述べると、DRGからの全RNA(8μg)を、T7 RNAポリメラーゼ結合部位を結合させたオリゴ-dTプライマーを用いて逆転写させた。二本鎖cDNAを作製し、ビオチン化cRNAをT7ポリメラーゼを用いて合成した。cRNAを16時間にわたりアレイとハイブリダイズさせ、その後に、ストレプトアビジンを結合させた蛍光マーカーと結合させ、続いて、増幅工程としてフィコエリトリンと結合させたポリクローナル抗ストレプトアビジン抗体とともにインキュベートした。洗浄後に、チップをHewlett-Packard GeneArrayレーザースキャナーを用いてスキャンし、データをGeneChipソフトウエアを用いて解析した。ハイブリダイゼーション効率および感受性に関する対照として外部標準物質を含めた。
【0185】
アレイ上で検出された各mRNA種に関するハイブリダイゼーションレベルは、Affymetrix社のソフトウエア(MAS 5.0、α1=0.04、α2=0.06)を用いて算出される、強度(シグナル)、および存在(present)(P)、下限(marginal)(M)または欠如(A)のコール(call)として表される。アレイデータの標準化のためにはAffymetrix社の標準的なプロトコールを用い、各アレイの尺度を、全プローブセットにわたる2500個の標的シグナルに対して調整した(MAS 5.0)。
【0186】
アレイを、未処理ラットのデータの3連のセットと軸索切断後の3連のセットとの比較用にグループ分けした。プローブセットは、比較に用いた6つのアレイのすべてにおいてAコールが得られた場合には、それが検出されないものと判定した。各分析に関して少なくとも1つのアレイMAS5.0により「存在」または「下限」とされた場合、「検出された」こととした。平均シグナルおよび標準偏差を、検出されたプローブセットのそれぞれに関して計算した。平均シグナルが3連のセット2つの間で等しいという帰無仮説を棄却するためのp値は、分散が等しくない独立した試料に関する独立両側t検定を用いて算出した(サタースウェイト法(Satterthwaite's method))。3連のセット2つにおける平均シグナル(AおよびB)間の差異の倍率は、最大(A,B)/最小(A,B)として算出し、未処理に比してのダウンレギュレーションは負として表した。
【0187】
cDNAプローブの作製
ノーザンブロットハイブリダイゼーション実験用の特異的プローブを作製するために、Affymetrix社により提供されたラットアクセッション番号に基づくプライマーを設計し、それぞれのアクセッション配列の内部の最も3'側にある1000ヌクレオチドから、Primer3ソフトウエアhttp://www-genome.wi.mit.edu/を用いてプライマー対を選択した。腰椎DRGから抽出した全RNAから逆転写させたcDNAに対して、ポリ-dTをプライマーとして用いるPCRを行い、cDNA断片を得た(141〜596bp)。これらの断片を続いてPCRIIベクター(TA cloning Kit, Invitrogen)中にクローニングし、両方向へのシークエンシングを行うことによってそれぞれの実体を確かめた。これらのcDNAをゲル精製し、32P標識したcDNAプローブの作製のために用いた(Prime-It kit, Stratagene)。
【0188】
ノーザンブロット分析
1.5%アガロース/ホルムアルデヒドゲル上での電気泳動(各レーンにつき10μgの全RNA)によって全RNAをサイズ分離し、Hybond N+ナイロン膜に移行させた。膜をExpressHyb(Clontech)中にて標識プローブ(上記参照)と65℃で一晩ハイブリダイズさせ、洗浄した上で、増感スクリーンとともに-80℃で用いてX線フィルムに対して露光させた。
【0189】
スロットブロット
Hoefer PR648スロットブロット装置(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて、全RNA(1.25μg)を真空下でHybond N+ナイロン膜に直接移行させた。ハイブリダイゼーションのレベルを、24450ホスフォイメージャーシステム(Molecular Dynamics, Sunnyvale CA)を用いて定量した。シクロフィリンをローディング対照として用いて、ブロットのプロービングを行った。各ブロット上の試料間のローディングレベルを、対照ブロットからのシクロフィリンレベルに対して標準化した。
【0190】
放射性インサイチューハイブリダイゼーション
DRGを直ちに取り出し、OCT(Tissue Tek)中に包埋した上で凍結させた。切片を6μm厚で連続的に作成した。放射性インサイチューハイブリダイゼーションは、G-C含有率が50%で、しかもAffymetrix社によりアクセッション番号が提供されたmRNAに対して相補的であるように設計した48塩基対のオリゴヌクレオチドプローブを用いて行った。プローブを、ターミナルトランスフェラーゼ反応を用いて35Sまたは33P-dATPにより3'末端標識し、ハイブリダイゼーションを行った。スライドをNTB2核飛跡検出用エマルションに浸漬させて暗所に4℃で保存することにより、オートラジオグラムを作成した。切片による露光を1〜8週間行い(転写物の存在量に依存)、現像し、固定した上で、光ファイバー暗視野ステージアダプター(MVI)を用いて暗視野で観察した。オリゴヌクレオチドプローブの特異性を確かめるための対照としては、切片の、1,000倍過剰量の非放射性プローブを伴った標識プローブとの、または1,000倍過剰量の長さが同じでG-C含有率が同程度である別の類似性のない非放射性プローブを伴った標識プローブとの、ハイブリダイゼーションを含めた。
【0191】
GTPCH活性およびビオプテリン濃度に関するアッセイ
新たな阻害薬に関するスクリーニングおよびリード化合物の最適化は、例えば、GTPCH活性を評価することによって評価しうる。この点に関して、種々の化学物質によるその阻害は、酵素をGTPとともにインキュベートすること、および、ビオプテリンまたはネオプテリンの生成のレベルを蛍光測定、放射性標識、イムノアッセイ、分光法およびHPLC法によって測定することによって決定しうる。
【0192】
好ましい方法を用いて、ネオプテリンおよびビオプテリンの組織レベルを、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析法により決定した。Fukushima and Nixon(Methods Enzymol. 66: 429-436, 1980)に従ったヨウ素による酸性pH下での酸化の後に、Oasis MCX抽出カートリッジを用いる固相抽出によって組織を抽出し、総ビオプテリン、ネオプテリンおよび内部標準物質であるラムノプテリンの濃度を、タンデム質量分析法と組み合わせた液体クロマトグラフィーによって決定した。HPLC分析は、Nucleosil C8カラムを用いる勾配条件下で行った。MS/MS分析は、Turbo Ion Spray源を備えたAPI 4000 Q TRAP三連四重極質量分析計により行った。MRMに関しては、前駆体から生成物へのイオン推移として、ビオプテリンについてはm/z 236 192、ネオプテリンについてはm/z 252 192、ラムノプテリンについてはm/z 265 192を用いた。較正用の標準物質、品質管理用物質および試料の濃度は、Analystソフトウエア1.4(Applied Biosystems)によって評価した。較正曲線の直線性は0.1〜50ng/mlについて実証された。測定したすべての配列に関する相関係数は、少なくとも0.99であった。日内変動および日間変動は10%未満であった。
【0193】
BH4を測定するための代替的な方法では、それぞれのプテリン種および/または酸化状態に対して特異的な別々で個別の抗体の作製を必要とする放射性酵素アッセイを用いる。プテリジンの分離は、クロマトグラフィー法およびHPLCによって行われる。蛍光検出を用いるHPLCは、ピコモル範囲で生体に存在する多くのプテリン(ビオプテリンおよびプテリンを含む)の、単回のクロマトグラフィー作業での迅速かつ高感度な決定を可能にする。
【0194】
組織ホモジネートを遠心し、その結果得られた上清を酵素アッセイおよびタンパク質アッセイの両方に用いた。
【0195】
GTPシクロヒドロラーゼI活性は、Duch et al.(Mol. Cell Endocrinol. (1986) 47: 209-16)による記載に以下の変更を加えた上でアッセイされる。反応混合物(500ml)には、0.1M Tris-Cl(pH 7.8)、0.3M KCl、2.5mM EDTA、10%グリセロール、1mM GTPおよび酵素を含めた。反応を暗所にて37℃で1時間行わせ、50mlのヨウ素溶液(1.0%I2、2.0%KI、1.0N HCl中)の添加によって反応を停止させた。混合物を室温に1時間保った後に、過剰なヨウ素を50mlの2.0%アスコルビン酸の添加によって還元した。この混合物に50mlの1.0N NaOHを添加し、続いて3.0単位(100ml)のアルカリホスファターゼとともに37℃で1時間インキュベートした。反応を100mlの1.0N酢酸の添加によって停止させた。遠心処理の後に、上清を、Cosmosil 10 C18カラム(4.6×3×50mm)を接続したWhatman Partisil 10 ODSカラム(4.6×3×250mm)に適用した。ネオプテリンは、0.1mM EDTAおよび5%メタノールを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH 5.0)を溶媒として流速0.8ml/分でイソクラティックに溶出させた。カラム温度は25℃に保った。溶出液を蛍光測定装置でモニターした(励起350nm;発光440nm)。タンパク質濃度は、免疫グロブリンGを標準物質として用いる色素結合アッセイキット(BioRad)によって決定した。
【0196】
細胞のビオプテリン含有量
還元型ビオプテリンのヨウ素による酸性酸化の後に、組織溶解物における総ビオプテリン(BH1、BH2およびBH4)を測定した。12,000rpmでの遠心処理(それぞれ5分間を3回)の後に、細胞溶解物を、2%KIを1N HCl中に含む1%I2により暗所にて37℃で1時間処理した。続いて試料を12,000rpmで遠心し(それぞれ5分間を3回)、残留性のI2を除去するために上清をアスコルビン酸(0.1M)で処理した。続いて抽出物を1N NaOHで中和し、その後に200mM Tris-Cl(pH 7.8)で処理した。ビオプテリンを、オンライン蛍光検出器を用いるC18逆相HPLCにより定量した。
【0197】
細胞のビオプテリン含有量の決定については、以下の参考文献に詳述されており、これらはすべて参照として本明細書に組み入れられる:Harada et al., Science (1993) 260: 1507-10, Kapatos et al., J. Neurochem. (1999) 72: 669-75, Maita et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2002) 99: 1212-7;Moali et al., Chem Res Toxicol (2001) 14: 202-10, Rebelo et al., J. Mol. Biol. (2003) 326: 503-16;Renodon-Corniere et al., Biochemistry (1999) 38: 4663-8;Xie et al., J. Biol. Chem. (1998) 273: 21091-8;Yoneyama et al., J. Biol. Chem. (1998) 273: 20102-8;Yoneyama et al., Protein Sci. (2001) 10: 871-8;Yoneyama et al. Arch. Biochem. Biophys. (2001) 388: 67-73。
【0198】
投与量
本発明の個々の構成要素または治療的配合物の投与量は、疼痛管理の当業者によって容易に決定されうる。例えば、本発明に従って投与される鎮痛薬の用量は、当技術分野で実際に用いられているものと同じであるかそれ未満であると考えられる。
【0199】
薬学的組成物の製剤化
本発明の任意の化合物の投与は、疼痛の治療のために有効な化合物の濃度が得られる任意の適した手段によるものであってよい。化合物は、任意の適した担体物質中に任意の適した量として含めることができ、これは一般に、組成物の総重量に対して重量比で1〜95%の量で存在する。組成物を、経口的、非経口的(例えば、静脈内、筋肉内または皮下注射)、直腸内または経皮的(局所外用的)投与経路のために適した剤形として提供してもよい。すなわち、組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤、丸剤、粉剤、顆粒剤、懸濁剤、乳剤、液剤、ゲル剤(ヒドロゲルを含む)、ペースト剤、軟膏、クリーム剤、硬膏剤、水薬、浸透性送達デバイス、坐薬、浣腸剤、注射剤またはインプラントの形態であってよい。薬学的組成物は、従来の薬学的行為(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(20th ed.), ed. A.R. Gennaro, Lippincott Williams & Wilkins, 2000およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technology, eds. J. Swarbrick and J. C. Boylan, 1988-1999, Marcel Dekker, New Yorkを参照)に従って製剤化することができる。
【0200】
本発明による薬学的組成物は、活性化合物(薬剤)を、実質的に投与の直後に、または投与後の任意の所定の時間または期間に放出するように製剤化することができる。後者のタイプの組成物は一般に制御放出製剤として知られており、これには以下のものが含まれる:(i)長期間にわたって体内に実質的に一定な薬剤濃度を生じさせる製剤;(ii)所定の遅れ時間の後に長期間にわたって体内に実質的に一定な薬剤濃度を生じさせる製剤;(iii)活性薬剤物質の血漿レベルの変動に伴う望ましくない副作用を最小限に抑えつつ、体内において比較的一定な有効な薬剤レベルを保つことにより、所定の期間にわたって薬剤作用を持続させる製剤(鋸歯状の動態パターン);(iv)例えば、制御放出組成物をを罹病組織または臓器に隣接または内在して空間的に配置させることにより、薬剤作用を局在化する製剤;および(v)薬剤を特定の標的細胞種に対して送達する担体または化学誘導体を用いることによって薬剤作用を標的に向かわせる製剤。
【0201】
制御放出製剤の形態にある化合物の投与は、化合物が単独または組み合わせとして、以下のような場合に特に好ましい:(i)治療係数が小さい(すなわち、有害な副作用または毒性反応をもたらす血漿中濃度と、治療効果をもたらす血漿中濃度との間の差が小さい;一般に、治療係数TIは、50%致死量(LD50)と50%有効量(ED50)との比として定義される);(ii)胃腸管における吸収域が狭い;または(iii)生物学的半減期が極めて短く、このため血漿レベルを治療レベルに維持するためには1日に頻回の投薬を必要とする。
【0202】
当該の化合物の放出の速度が代謝の速度よりも重要となるような制御放出を得るためには、さまざまな戦略のうち任意のものを用いることができる。一例としては、制御放出は、さまざまな製剤パラメーターおよび成分(例えば、さまざまなタイプの制御放出用組成物およびコーティング剤を含む)の適切な選択によって得られる。すなわち、薬剤を適切な添加剤とともに製剤化して、投与後に薬剤が制御された様式で放出されるような薬学的組成物とする。その例には、単数単位または複数単位の錠剤性またはカプセル性組成物、油性溶液、懸濁剤、乳剤、マイクロカプセル、ミクロスフェア、ナノ粒子、パッチ剤およびリポソームが含まれる。
【0203】
経口的使用のための固体剤形
経口的使用のための製剤には、有効成分を、毒性のない薬学的に許容される添加剤との混合物中に含む錠剤が含まれる。これらの添加剤には、例えば、以下のものが含まれる:不活性な希釈剤または充填剤(例えば、スクロース、ソルビトール、糖、マンニトール、微結晶セルロース、ジャガイモデンプンを含むデンプン類、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウムまたはリン酸ナトリウム);顆粒化剤および崩壊剤(例えば、微結晶セルロースを含むセルロース誘導体、ジャガイモデンプンを含むデンプン類、クロスカルメロースナトリウム、アルギナートまたはアルギン酸);結合剤(例えば、スクロース、グルコース、ソルビトール、アラビアゴム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、デンプン、アルファ化デンプン、微結晶セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドンまたはポリエチレングリコール);ならびに潤滑剤、グライダントおよび付着防止剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、シリカ、水素化植物油またはタルク)。その他の薬学的に許容される添加剤には、着色剤、香味剤、可塑剤、保湿剤、緩衝剤などが考えられる。
【0204】
錠剤はコーティングしなくてもよく、または任意には、消化管における崩壊および吸収を遅らせ、それによってより長期間にわたる持続的作用をもたらすために、それらを公知の方法によってコーティングしてもよい。コーティングは、活性薬剤を所定のパターンで放出するように適合化させてもよく(例えば、制御放出製剤を得る目的で)、またはそれを、胃を通過するまでは活性薬剤を放出しないように適合化させてもよい(腸溶コーティング)。コーティングは、糖コーティング、フィルムコーティング(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アクリル酸コポリマー、ポリエチレングリコールおよび/またはポリビニルピロリドンを基材とする)または腸溶コーティング(例えば、メタクリル酸コポリマー、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセテートフタレート、セラックおよび/またはエチルセルロースを基材とする)であってよい。さらに、時間遅延性の材料、例えば、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリンなどを用いることもできる。
【0205】
固体の錠剤組成物は、組成物を望ましくない化学変化(例えば、活性薬剤の放出前の化学分解)から防御するためのコーティングを含んでもよい。コーティングは、前記の「Encyclopedia of Pharmaceutical Technology」に記載されたものと同様の様式で固体剤形に対して適用することができる。
【0206】
複数の薬剤を同時に投与する場合には、薬剤を錠剤中に一緒に混合してもよく、または分配してもよい。一例としては、第1の薬剤を錠剤の内側に含め、第2の薬剤は外側に配置し、第2の薬剤のかなりの割合が第1の薬剤よりも前に放出されるようにする。
【0207】
経口的使用のための製剤を、チュワブル錠剤として、または有効成分が不活性な固体希釈剤(例えば、ジャガイモデンプン、ラクトース、微結晶セルロース、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムもしくはカオリン)と混合された硬ゼラチンカプセルとして、または有効成分が水もしくは油性媒質、例えば、ラッカセイ油、流動パラフィンまたはオリーブ油と混合された軟ゼラチンカプセルとして、用意することもできる。
【0208】
粉剤および顆粒剤を、上記の錠剤およびカプセルの項に述べた成分を用いて、例えば、混合機、流動層装置または噴霧乾燥装置を用いる従来の様式で、調製することもできる。
【0209】
制御放出用の経口剤形
経口的使用のための制御放出用組成物は、例えば、活性薬剤の溶解および/または拡散を制御することによって、活性薬剤を放出するように構築することもできる。
【0210】
溶解または拡散による制御放出は、化合物の錠剤、カプセル剤、ペレット剤もしくは顆粒剤を適切にコーティングすることにより、または化合物を適切なマトリックス中に組み入れることにより、実現することができる。制御放出コーティングには、上記のコーティング物質のうち1つもしくは複数、ならびに/または、例えば、セラック、蜜蝋、グリコワックス(glycowax)、カスターワックス、カルナウバ蝋、ステアリルアルコール、モノステアリン酸グリセリン、ジステアリン酸グリセリン、パルミトステアリン酸グリセリン、エチルセルロース、アクリル樹脂、dl-ポリ乳酸、セルロースアセテートブチレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリメタクリレート、メチルメタクリレート、2-ヒドロキシメタクリレート、メタクリレートヒドロゲル、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコールメタクリレート、および/またはポリエチレングリコールが含まれうる。
【0211】
制御放出マトリックス製剤において、マトリックス材料には、例えば、水和メチルセルロース、カルナウバ蝋およびステアリルアルコール、カルボポール(carbopol)934、シリコーン、トリステアリン酸グリセリン、メチルアクリレート-メチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、および/またはハロゲン化フルオロ炭素も含まれうる。
【0212】
また、本請求の配合物の化合物のうち1つまたは複数を含む制御放出用組成物が、浮遊性の錠剤またはカプセル(すなわち、経口投与後に一定期間にわたって胃内容物の上方に浮遊する錠剤またはカプセル)の形態にあってもよい。化合物の浮遊性錠剤製剤は、薬剤の混合物を、添加剤および20〜75%w/wの親水コロイド、例えばヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースと混合することによって調製することができる。続いて、得られた顆粒を加圧して錠剤とすることができる。胃液と接触すると、この錠剤はその表面の周囲に実質的に水不浸透性のゲル障壁を形成する。このゲル障壁は密度を1未満に維持することに関与し、それによって錠剤は胃液中で浮遊性を保つことが可能となる。
【0213】
経口投与のための液体
水の添加による水性懸濁液の調製のために適した粉剤、飛散性粉剤または顆粒剤は、経口投与のために好都合な剤形である。懸濁剤としての製剤は、分散剤または湿潤剤、懸濁剤および1つまたは複数の保存料との混合物にある状態で有効成分を提供する。適した分散剤または湿潤剤には、例えば、天然のホスファチド(例えば、レシチン、またはエチレンオキシドと脂肪酸、長鎖脂肪族アルコール、または脂肪酸に由来する部分的エステルとの縮合物)およびヘキシトールまたはヘキシトール無水物(例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなど)がある。適した懸濁剤には、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなどがある。
【0214】
非経口的組成物
化合物を、注射、持続注入または植え込み(静脈内、筋肉内、皮下など)により、従来の非毒性の薬学的に許容される担体およびアジュバントを含む、剤形、製剤として、または適した送達デバイスもしくはインプラントを介して、非経口的に投与することもできる。このような組成物の製剤化および調製は医薬製剤の当業者には周知である。製剤については、前記のRemington:「The Science and Practice of Pharmacy」に記載がある。
【0215】
非経口的使用のための組成物は、単位式剤形(例えば、単回投与用のアンプル)として、または複数回の投与用の薬剤を含み、適した保存料(以下参照)を添加することもできるバイアルとして提供してもよい。組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、持続注入デバイスまたは植え込みのための送達デバイスの形態にあってもよく、またはそれを、使用前に水または別の適した媒体によって再構成する乾燥粉末として用意することもできる。活性薬剤のほかに、組成物は、適した非経口的に許容される担体および/または添加剤を含みうる。活性薬剤を、制御放出のためのミクロスフェア、マイクロカプセル、ナノ粒子、リポソームなどに封入してもよい。さらに、組成物が、懸濁剤、溶解剤、安定化剤、pH調整剤、および/または分散剤を含んでもよい。
【0216】
以上に示したように、本発明による薬学的組成物は、無菌的注射のために適した形態にあってもよい。このような組成物を調製するためには、適した活性薬剤を、非経口的に許容される液体媒体中に溶解または懸濁させる。用いうる許容される媒体および溶媒としては、水のほか、適量の塩酸、水酸化ナトリウムまたは適した緩衝剤の添加によって適したpHに調整された水、1,3-ブタンジオール、リンゲル液および等張塩化ナトリウム溶液がある。水性製剤が、1つまたは複数の保存料(例えば、メチル、エチルまたはn-プロピルp-ヒドロキシ安息香酸)を含んでもよい。化合物の1つが水にほとんど溶けない、またはわずかしか溶けない場合には、溶解促進剤または溶解剤を添加することができ、または溶媒が10〜60%w/wのプロピレングリコールなどを含んでもよい。
【0217】
制御放出用の非経口的組成物
制御放出用の非経口的組成物が、水性懸濁液、ミクロスフェア、マイクロカプセル、磁性ミクロスフェア、油性溶液、油性懸濁液または乳濁液の形態にあってもよい。または、活性薬剤が、生体適合性のある担体、リポソーム、ナノ粒子、インプラントまたは持続注入デバイスに組み入れられてもよい。
【0218】
ミクロスフェアおよび/またはマイクロカプセルの調製に用いるための材料には、例えば、生体分解性/生体崩壊性のポリマー、例えばポリガラクチン、ポリ-(イソブチルシアノアクリレート)、ポリ(2-ヒドロキシエチル-L-グルタミン)およびポリ(乳酸)などがある。制御放出用の非経口的製剤の製剤化のために用いうる生体適合性担体には、糖質(例えば、デキストラン)、タンパク質(例えば、アルブミン)、リポタンパク質または抗体がある。インプラントに用いるための材料としては、生体非分解性(例えば、ポリジメチルシロキサン)または生体分解性(例えば、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)またはポリ(オルトエステル))のいずれも可能である。
【0219】
直腸用組成物
直腸適用の場合、組成物のために適した剤形には、坐薬(乳濁剤型または懸濁剤型)および直腸用ゼラチンカプセル(溶液または懸濁液)が含まれる。典型的な坐薬製剤では、活性薬剤を、カカオ脂、エステル化脂肪酸、グリセリン処理ゼラチン、ならびにポリエチレングリコールおよびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのようなさまざまな水溶性または分散性の基材といった、適切な薬学的に許容される坐薬基材と配合する。さまざまな添加剤、増強剤または界面活性剤を組み入れてもよい。
【0220】
経皮的および局所用組成物
薬学的組成物を、ミクロスフェアおよびリポソームを含む、従来の非毒性の許容される薬剤用担体および添加剤を含む剤形または製剤として、経皮的吸収のために皮膚上に局所的に投与することもできる。これらの製剤には、クリーム剤、軟膏、ローション剤、リニメント剤、ゲル剤、ヒドロゲル、液剤、懸濁剤、スティック、噴霧剤、ペースト剤、硬膏およびその他の種類の経皮的薬物送達システムが含まれる。薬学的に許容される担体または添加剤には、乳化剤、抗酸化剤、緩衝剤、保存料、保湿剤、浸透促進剤、キレート剤、ゲル形成剤、軟膏基材、香料および皮膚保護剤が含まれうる。
【0221】
乳化剤の例には、天然のゴム(例えば、アラビアゴムまたはトラガカントゴム)および天然のホスファチド(例えば、ダイズレシチンおよびソルビタンモノオレエート誘導体)がある。抗酸化剤の例には、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、アスコルビン酸およびその誘導体、トコフェロールおよびその誘導体、ブチル化ヒドロキシアニソールならびにシステインがある。保存料の例には、パラベン、例えばメチルまたはプロピルp-ヒドロキシ安息香酸、および塩化ベンザルコニウムがある。保湿剤の例には、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトールおよび尿素がある。浸透促進剤の例には、プロピレングリコール、DMSO、トリエタノールアミン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、2-ピロリドンおよびその誘導体、テトラヒドロフルフリルアルコールならびにAZONE(商標)がある。
【0222】
キレート剤の例には、EDTAナトリウム、クエン酸およびリン酸がある。ゲル形成剤の例には、CARBOPOL(商標)、セルロース誘導体、ベントナイト、アルギナート、ゼラチンおよびポリビニルピロリドンがある。軟膏基材の例には、蜜蝋、パラフィン、パルミチン酸セチル、植物油、脂肪酸のソルビタンエステル(Span)、ポリエチレングリコール、および脂肪酸のソルビタンエステルとエチレンオキシドとの縮合産物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンエステルモノオレエート(TWEEN(商標))がある。
【0223】
上記の薬学的組成物を、ドレッシング材または硬膏、パッド、スポンジ、ストリップもしくは他の形態の適した柔軟性材料といった特殊な薬物送達デバイスによって適用することもできる。
【0224】
制御放出用の経皮的および局所的組成物
薬剤の放出および経皮的浸透に対する速度制御を付与するためにはいくつかのアプローチがあり、これには以下のものが含まれる:膜による穏和化システム(membrane-moderated system)、接着性拡散制御システム、マトリックス分散型システムおよびマイクロリザーバーシステム。制御放出用の経皮的および/または局所的な組成物は、上述したアプローチの適した組み合わせを用いることによって得ることができる。
【0225】
膜による穏和化システムでは、活性薬剤は、薬剤不透過性のラミネート(例えば、金属-合成樹脂ラミネート)および微小孔性または非孔性ポリマー膜(例えば、エチレン酢酸ビニルコポリマー)といった速度制御性ポリマー膜から形作られた浅い区画内に完全に封入されたリザーバー中に存在する。活性化合物は、速度制御性ポリマー膜のみを通って放出される。薬剤リザーバー中で、活性薬剤は、固体ポリマーマトリックス中に分散しているか、またはシリコーン液などの粘性液体媒質中に懸濁化している。ポリマー膜の外部表面に対しては、経皮的システムと皮膚表面との密接な接着が得られるように接着性ポリマーの薄層が施される。接着性ポリマーは、活性薬剤との適合性のある低アレルゲン性ポリマーであることが好ましい。
【0226】
接着性拡散制御システムでは、活性薬剤のリザーバーは、活性薬剤を接着性ポリマー中に直接分散させ、続いて、活性薬剤を含む接着性物質を、実質的に薬剤不透過性の金属-合成樹脂製基材の平坦シートに対して塗布して、薄い薬物リザーバー層を形成させることによって形成される。
【0227】
マトリックス分散型システムは、活性薬剤のリザーバーが、活性薬剤を親水性または親油性のポリマーマトリックス中に実質的に均一に分散させ、続いて薬剤含有ポリマーを実質的に明確に規定された表面積および厚みを有するディスク状として成形することによって形成されることを特徴とする。接着性ポリマーを周囲に塗布し、ディスクの周囲の接着性ストリップを形成させる。
【0228】
マイクロリザーバーシステムでは、活性物質のリザーバーは、まず固体薬剤を水溶性ポリマーとの水性溶液として懸濁させ、続いて薬剤懸濁液を親水性ポリマー中に分散させて薬剤リザーバーとなる複数の微細な球体を形成させることによって形成される。
【0229】
その他の態様
本明細書で言及したすべての刊行物および特許出願は、それぞれの個々の刊行物または特許出願が参照として組み込まれるように特定的および個別に示されている場合と同程度に参照として本明細書に組み込まれる。
【0230】
上記の本発明は、理解しやすいように図面および実施例を用いてある程度詳細に記載されているが、当業者には、本発明の開示に鑑みて、その精神または添付した請求の範囲を逸脱することなく、ある種の変更および改変が可能であることは容易に理解されると思われる。
【0231】
その他の態様は特許請求の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0232】
【図1】図1Aは、末梢神経損傷の前および後での、発生過程および成熟期にある後根神経節(DRG)におけるジヒドロプテリジンレダクターゼ(DHPR)を含む23種の遺伝子のマイクロアレイ発現プロファイル分析を表したグラフである。図1Bは、末梢神経損傷の前および後での、発生過程および成熟期にある後根神経節におけるDHPRのmRNA調節を確かめたノーザンスロットブロット分析を表している。
【図2】図2Aは、テトラヒドロビオプテリン(BH4)合成経路の概要を示した概略図である。図2Bは、テトラヒドロビオプテリンの異化を示した概略図である。
【図3】マイクロアレイにより検出した、末梢神経損傷の前および後でのBH4合成経路の要素の発現レベルの変化を示した表である。
【図4】図4Aは、末梢神損傷の前(未処理)および後での、後根神経節(DRG)におけるGTPシクロヒドロラーゼ(GTPCH)のmRNA発現を示したノーザンブロット分析の画像である。図4Bは、末梢神経損傷の前(未処理)および後での、DRGにおけるGTPCH mRNAの非放射性のインサイチュー局在を示した一連の顕微鏡写真である。図4Cは、放射性インサイチューハイブリダイゼーションにより検出した、末梢神経損傷から3日後および3週後のニューロンにおけるGTPCH mRNAの増加を示したDRGの一連の顕微鏡写真である。図4D〜Fは、末梢神経損傷後の14日の期間にわたってDRGにおけるノーザンブロット分析により測定した、GTPCH、DHPRおよびセピアプテリンレダクターゼ(SPR)のmRNAレベルを表した一連のグラフである(*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001)。
【図5】図5AおよびBは、末梢神経損傷の前および後でのGTPCHのタンパク質レベルおよび酵素活性を示した一連のグラフである(*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001)。図5Cは、末梢神経損傷の前および後でのDRGにおけるBH4レベルを示した棒グラフである。
【図6A】3種類の神経障害性疼痛モデル(坐骨神経部分損傷(SNI)モデル、慢性絞扼性損傷(CCI)モデルおよび脊髄神経結紮(SNL)モデル)における、BH4合成経路のさまざまな要素に関する、3連のAffymetrixマイクロアレイ分析による実験時および未処理時の強度の読み取り値の経時的な比を示した一連のグラフである。DRGにおける発現プロファイルを示している。
【図6B】図6Aの続きであり、後角におけるBH4合成酵素の発現の変化が示されている。これらの酵素はDRGおよび後角のいずれにも存在する。
【図7A】足底部への完全フロイントアジュバント投与によって生じさせた末梢炎症後のDRGにおける、BH4合成経路のさまざまな要素に関する、3連のAffymetrixマイクロアレイ分析による実験時および未処理時の強度の読み取り値の経時的な比を示した一連のグラフである。
【図7B】足底部への完全フロイントアジュバント投与によって生じさせた末梢炎症後の後角における、BH4合成経路のさまざまな要素に関する、3連のAffymetrixマイクロアレイ分析による実験時および未処理時の強度の読み取り値の経時的な比を示した一連のグラフである。
【図8−1】神経障害性疼痛のSNIモデルにおける侵害受容性行動に対するDAHPの影響を示した一連のグラフを表している。左側の図は、フォンフライ毛を用いて加えた機械的刺激に対する閾値(フォンフライ閾値)を示している。右側の図は、寒冷アロディニアの指標としての、肢に対するアセトン適用後の肢舐め、震えおよび挙上の持続時間を示している。図8Aでは、ラットに手術3日後から開始する形でDAHP(180mg/kg/d i.p.)を3日間投与した(早期治療)。薬剤注射の前および後に侵害受容性行動を毎日評価した。図8Bでは、投与期間を手術から3日後に開始する形で5日間に延長し(180mg/kg/d i.p.)、疼痛行動を薬剤注射の前および後に毎日、さらに毎日の薬剤注射を終えた後にさらに1週間にわたり1日おきに1回ずつ評価した。図8Cでは、DAHPの投与(180mg/kg/d i.p.を5日間)を手術の17日後に開始し、すなわち早期には全く投与せずに慢性期に実施した。侵害受容性行動を薬剤注射から3時間後に毎日評価した。
【図8−2】図8−1の続きである。図8Dでは、動物に対してDAHP(6mg/kg/d)の脊髄内持続注入を14日間行った。注入は手術後直ちに開始した。侵害受容性行動を1日1回評価した。
【図9】神経障害性疼痛のCCIモデルにおける侵害受容性行動に対するDAHPの影響を示した2つのグラフである。図9Aは、フォンフライ毛を用いて加えた機械的刺激に対する閾値(フォンフライ閾値)を示している。図9Bは、寒冷アロディニアの指標としての、肢に対するアセトン適用後の肢舐め、震えおよび挙上の持続時間を示している。DAHPの投与(180mg/kg/d i.p.を5日間)を手術から3日後に開始し、疼痛行動を薬剤注射の前および後に毎日、さらに毎日の薬剤注射を終えた後は1日おきに1回ずつ評価した。
【図10】ホルマリン試験における後ずさり行動に対するDAHPの影響を示している。DAHP(180mg/kg)を腹腔内注射し、その1時間後に後肢にホルマリンを注射した。ホルマリン注射の直後から始めて1時間にわたって後ずさりを算定した。
【図11】炎症性疼痛のモデルであるCFAモデルにおける温熱性痛覚過敏に対するDHAPの影響を示した一連のグラフである。図11Aは、CFAを投与した炎症肢の、輻射熱に対する肢逃避反射潜時(ハーグリーブス(Hargreaves)試験)を示している。グラフの左端では、1回目は後肢へのCFA注射の30分前、2回目はCFAの4時間後(矢印D1およびD2で示している)という2回にわたってDAHP(180mg/kg i.p.)を注射している。右側では、CFA注射後の最初の24時間には何も投与せず、肢炎症の誘発から24時間後にDAHP(180mg/kg i.p.)を単回注射した(破線矢印D1)。図11Bは、炎症のない対側肢のそれぞれの肢逃避反射潜時を示している。図11C〜Dでは、全身投与したDAHP(180mg/kg i.p.、単回投与;11C)を、腰椎カテーテルを介して投与した単回髄腔内投与(1mg/kg i.t.;11D)と比較している。いずれの場合にも、投与は後肢へのCFA注射から24時間後に開始した。ベースラインレベルに幾分違いがあるため(11Cと11Dとの比較)、両方の投与経路の直接比較が可能となるように、i.p.およびi.t.投与後のDAHPの影響を、肢逃避反射潜時の変化率としてさらに提示している(図11E)。
【図12】炎症肢の肢重量の増加を対側肢と比較して示した棒グラフである。肢重量はCFA注射から48時間後に測定した。肢重量の増加は炎症肢の浮腫の指標であり、このため、肢の炎症の評価が可能となる。
【図13】未処理ラットにおける触覚刺激(図13A)および熱刺激(図13B)への応答に対するDAHPの影響を示した一連のグラフである。DAHP(180mg/kg i.p.)または媒体の単回投与注射を「ゼロ」の時点で行った。
【図14】DAHPの薬物動態上の特徴および薬物動態-薬力学相関を示した一連のグラフを表している。図14Aは、「ゼロ」時点での180mg/kgの腹腔内注射による単回投与後のDAHP血漿中濃度の経時的推移を示している。さらに、脳脊髄液(CSF)中のDAHPの濃度を、早期および後期の時点で測定した。図14Bでは、血漿中濃度を、投入速度が一次で消失速度も一次である1コンパートメントPKモデルに対して適合化させた。諸PKパラメーターを提示しているが、このうちCmaxは最大濃度であり、tmaxは最大濃度到達時間であり、k01は吸収速度定数であり、t1/2absは吸収半減期であり、k10は消失速度定数であり、tl/2elは消失半減期であり、Clはクリアランスである。図14Cでは、プール血漿中濃度およびCFAモデルの影響のデータを用い、標準的なシグモイド形Emaxモデルを利用してPK/PD相関を評価した。
【図15】CFAモデルにおける温熱性痛覚過敏に対するセピアプテリンレダクターゼ阻害薬N-アセチルセロトニン(NAS)の影響を示している。輻射熱に対する肢逃避反射潜時(PWL)(ハーグリーブス試験)は、熱感受性の指標の1つである。NAS投与(50mg/kg i.p.の単回投与)を、後肢へのCFA注射から24時間後に開始した。データは、炎症のない対側肢のPWLと比較したPWLの変化率として提示されている。図15Bは、対側肢との比較による炎症肢の肢重量の増加を示している。肢重量はCFA注射から48時間後に測定した。肢重量の増加は炎症性肢浮腫の指標の1つである。
【図16】神経障害性疼痛のSNIモデルにおける侵害受容性行動に対するメトトレキサート(MTX)の全身投与(図16A)および髄腔内投与(図16B)の影響を示している。図16Aおよび図16Bでは、左の図はフォンフライ毛を用いて加えた機械的刺激に対する閾値(フォンフライ閾値)を示している。右の図は、寒冷アロディニアの指標としての、肢に対するアセトン適用後の肢舐め、震えおよび挙上の持続時間を示している。図16Aでは、SNI手術の5日後から始めて、MTX(0.2mg/kg/d)を1日1回腹腔内注射した。薬剤注射の3時間後に侵害受容性行動を1日1回評価した。図16Bでは、SNI手術の直後に始める形で、MTXを髄腔内持続注入(0.1mg/kg/dを14日間)により投与した。侵害受容性行動を1日1回評価した。図16Cおよび図16Dは、MTXの全身投与(図16C)および髄腔内投与(図16D)中の動物個体の体重増加を示している。体重増加を、全般的な健康状態およびMTXの有害な影響について評価するために用いた。
【図17】さまざまなセピアプテリンレダクターゼ阻害薬を示している(Smith et al., (1992) J Biol Chem 267: 5599-5607)。
【図18】BH4、グアニンおよびDAHPの化学構造を示している。
【図19−1】可能性のあるGTPCH阻害薬を示した表である。
【図19−2】図19−1の続きであり、可能性のあるGTPCH阻害薬を示した表である。
【図20】GTPCHの構造およびその基質と酵素の触媒中心との結合を示している。GTPCHおよび基質GTPのアミノ酸同士の水素結合が点線として示されている。
【図21】GTPCH-Iとフィードバック調節タンパク質(GFRP)との相互作用、および双方のタンパク質の境界部におけるフェニルアラニンの結合部位を示している。BH4およびGFRP依存的GTPCH-I阻害薬の結合部位はフェニルアラニンのそれと類似すると考えられる。
【図22】神経損傷のSNIモデルにおける機械的刺激(図22A)および温熱性刺激(図22B)に対するDAHPの抗侵害受容性効果が用量反応相関を示すことを示した一連のグラフである。このグラフでは、▲印は媒体、i.p.を表し;▽印はDAHP、90mg/kg/day、i.pを表し;□印はDAHP、180mg/kg/day、i.p.を表し;○印はDAHP、270mg/kg/day、i.pを表している。
【図23】BH4の侵害受容誘発作用を示した一連のグラフである。図23Aは、BH4の髄腔内投与により、未処理ラットにおける温熱性(熱)刺激に対する肢逃避反射潜時が短縮することを示している。図23Bは、既存の温熱性過敏性(同側性)を有する動物におけるBH4の侵害受容誘発作用を対照(対側)と比較して示している。肢炎症のCFAモデルを用いて過敏性が誘導された。これらの実験では、ベースラインの肢逃避反射潜時の測定後に、BH4を「ゼロ」時点で注射した。
【図24】図24Aは、DAHPおよび媒体を投与したラットにおけるホルマリン注射の2時間後の同側性後角ニューロンにおけるcFos免疫反応を示した一連の顕微鏡写真である。図24Bは、各条件下で観察されたcFos免疫反応性細胞体の数を数量化した棒グラフである。
【図25】180mg/kg/dayのDAHPまたは媒体対照のいずれかを投与した動物個体のSNI手術から7日後のL4/L5後角における、TUNEL染色を用いたアポトーシス細胞特性の数を示した棒グラフである。アポトーシス性ニューロンをインサイチューTUNEL標識により検出し、盲検下にある観察者が算定した。
【図26】図26Aは、SNIモデルに対するDAHP投与の有無にかかわらず、機械的刺激または温熱性(寒冷)刺激に対する応答に関して、野生型マウスとnNOSノックアウトマウスとの間に有意差がないことを示した一連のグラフである。この図では、●印はDAHPを投与したnNOSノックアウトマウス;○印は媒体を投与したnNOSノックアウトマウス;▲印はDAHPを投与した野生型マウス;△印は媒体を投与した野生型マウスを表している。図26Bは、NOS阻害薬であるL-NAMEが、SNIモデルにおける機械的刺激または温熱性(寒冷)刺激に対するDAHPの抗侵害受容作用を増強しないことを示した一連の線グラフである。この図では、▲印はL-NAME投与;○印はLNAME+DAHP投与;●印はDAHP投与;△印は媒体投与を表している。L-NAMEは25mg/kg、i.p.で単回投与し、DAHPは120mg/kg、i.p.で単回投与した。この高用量L-NAMEの抗侵害受容効果(約50%)は中用量のDAHPのそれよりも弱かった。
【図27】図27Aは、SNI手術から3日後(上図)および14日後(下図)の同側性(病変あり)および対側性(対照)の後根神経節におけるGTPCH-Iのインサイチューハイブリダイゼーションを示した一連の顕微鏡写真である。図27Bは、SNI手術から14日後の、DAHPまたは媒体対照のいずれかを投与した上でのGTPCH-Iインサイチューハイブリダイゼーションを示した一連の顕微鏡写真である。これらのデータは、DAHPがSNIモデルにおけるGTPCH-I発現に影響を及ぼさないことを示している。
【図28】図28Aは、GTPCH-l mRNAは脊髄では通常は発現されないが、SNI手術の3日後には単離されたGTPCH-I発現性運動ニューロンが観察されることを示している一連の顕微鏡写真である。図28Bは、GFRPは単離されたDRGニューロンでは発現されるが、発現パターンはSNI手術の3日後には変化していないことを示した一連の顕微鏡写真である。
【図29】インサイチューハイブリダイゼーションによるGTPCH-Iの発現(左欄)および免疫蛍光によるNF200グリフォニア・シンプリシフォリア(Griffonia simplicifolia)イソレクチンB4(IB4)、CGRP、およびnNOSの発現を示した一連の顕微鏡写真である(中央の欄)。GTPCH-Iおよび特定されたタンパク質を同時発現する細胞の数を、GTPCH-Iを発現する細胞に対するパーセント割合として表した(右欄)。
【図30】DAHP投与の有無による、SNI手術後のDH、DRG、およびScNにおけるBH4代謝産物ビオプテリンおよびネオプテリンのレベルを対照と比較して数量化した一連の棒グラフである。
【図31】SNI神経損傷モデルに従う、インサイチューハイブリダイゼーションを用いたGTPCH-I mRNAの共存、および免疫組織化学を用いたATF-3タンパク質の局在を示した顕微鏡写真である。矢印は、GTPCH mRNA発現、さらにATF-3に対する核染色も呈する細胞を示している。GTPCH発現ニューロンのうち全体として80〜90%がATF-3陽性であり、このことは損傷ニューロンのほとんどでGTPCH-Iのアップレギュレーションが起こることを示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物における疼痛、または末梢神経病変の結果もしくは発達を治療、軽減または予防する方法であって、該哺乳動物に対して、テトラヒドロビオプテリン(BH4)の生物活性を低下させる組成物を、BH4の過剰産生に起因する疼痛、または末梢神経病変の悪化を治療、軽減または予防するために十分な量投与する段階を含む方法。
【請求項2】
哺乳動物がヒトである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
疼痛が、一次感覚ニューロンまたは後角ニューロン(dorsal horn neuron)におけるBH4レベルを低下させることによって軽減される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
一次感覚ニューロンが後根神経節内または三叉神経節内にある、請求項3記載の方法。
【請求項5】
後角ニューロンが、脊髄内、または脳幹の三叉神経脊髄路核内にある、請求項4記載の方法。
【請求項6】
BH4生物活性の低下が、BH4の合成または再利用の低下の結果である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
GTPシクロヒドロラーゼフィードバック調節タンパク質(GFRP)の発現、GTPCH結合性、または活性を高めることによって、BH4生物活性を低下させる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
BH4合成の低下が、セピアプテリンレダクターゼ(SPR)、ピルボイルテトラヒドロプテリンシンターゼ(PTPS)、GTPシクロヒドロラーゼ(GTPCH)、プテリン-4α-カルビノールアミンデヒドラターゼ、およびジヒドロプテリジンレダクターゼ(DHPR)からなる群より選択される少なくとも1つの酵素のレベルまたは生物活性の低下の結果である、請求項6記載の方法。
【請求項9】
BH4合成の低下が、セピアプテリンレダクターゼ(SPR)、GTPシクロヒドロラーゼ(GTPCH)、およびジヒドロプテリジンレダクターゼ(DHPR)からなる群より選択される少なくとも1つの酵素の生物活性の低下の結果である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
少なくとも2つの酵素の生物活性を低下させる、請求項8記載の方法。
【請求項11】
少なくとも3つの酵素の生物活性を低下させる、請求項10記載の方法。
【請求項12】
生物活性を少なくとも10%低下させる、請求項8記載の方法。
【請求項13】
生物活性を少なくとも40%低下させる、請求項12記載の方法。
【請求項14】
組成物がメトトレキサートを含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
組成物が、2,4ジアミノ6-ヒドロキシピリミジン(DAHP)、テトラヒドロ-L-ビオプテリン、L-セピアプテリン、7,8-ジヒドロ-L-ビオプテリン、6,7-ジメチルテトラヒドロプテリン塩酸塩、および8-ブロモ-cGMPからなる群より選択される少なくとも1つの化合物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項16】
組成物が、N-アセチル-セロトニン(NAS)、N-クロロアセチルセロトニン、N-メトキシアセチルセロトニン、およびN-クロロアセチルドーパミンからなる群より選択される少なくとも1つの化合物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項17】
組成物が以下の式を有する化合物を含む、請求項1記載の方法:
ただし、式中、
R1はH、C1-6アルキル、ハロ、NO2、CN、CO2R4、CONR4R5、SO2R4、SO2NR4R5、OR4またはNR4R5であり、式中、R4およびR5のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、またはC1-4アルクヘテロアリール(alkheteroaryl)であり、
R2はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、またはC1-4アルクヘテロアリールであり、かつ、
R3はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、C1-4アルクヘテロアリール、CO2R6、CONR7R8、SO2R6、またはSO2NR7R8であり、式中、R6はC1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、またはC1-4アルクヘテロアリールであり、かつ、R7およびR8のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、またはC1-4アルクヘテロアリールであるか;
R3は上記の通りであり、かつ、R1およびR2は共に、
によって表され、式中、R1/R2連結のN、O、またはSはピリミジノン環と結合を形成し、かつ、R9、R10、R11、R12、およびR13のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、またはC1-4アルクヘテロアリールであるか;
R3は上記の通りであり、かつ、R1およびR2は共に、
によって表され、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R12またはR13のそれぞれは上記の通りであり、かつ、R14はOR4、ハロ、NO2、CN、CO2R7、CONR7R8、SO2R7、SO2NR7R8、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、またはC1-4アルクヘテロアリールであり、ここで、R4、R7およびR8のそれぞれは独立に、H、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、C1-C4アルカリル、ヘテロアリール、またはC1-C4アルクヘテロアリールであるか;または
R1およびR2は共に、
によって表され、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11およびR14のそれぞれは上記の通りであり、R3は存在せず、かつ、R14を有する炭素とR2を有する窒素との間には二重結合が形成される。
【請求項18】
組成物が式(I)の化合物を含む、請求項17記載の方法:
ただし、式中、
R1はH、C1-6アルキル、ハロ、NO2、CN、CO2R4、CONR4R5、SO2R4、SO2NR4R5、OR4、またはNR4R5であり、式中、R4およびR5のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、またはC1-4アルクヘテロアリールであり、
R2はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、またはC1-4アルクヘテロアリールであり、かつ、
R3はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、C1-4アルクヘテロアリール、CO2R6、CONR7R8、SO2R6、またはSO2NR7R8であり、式中、R6はC1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、またはC1-4アルクヘテロアリールであり、かつ、R7およびR8のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、またはC1-4アルクヘテロアリールである。
【請求項19】
組成物が、式:
の化合物を含む、請求項1記載の方法:
ただし、式中、R1およびR2は共に、
によって表され、式中、R1/R2連結のN、O、またはSはピリミジノン環と結合を形成し、かつ、R9、R10、R11、R12、およびR13のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、またはC1-4アルクヘテロアリールである。
【請求項20】
組成物が、式:
の化合物を含む、請求項1記載の方法:
ただし、式中、
R3は上記の通りであり、かつ、R1およびR2は共に、
によって表され、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R12およびR13のそれぞれは上記の通りであり、かつ、R14はOR4、ハロ、NO2、CN、CO2R7、CONR7R8、SO2R7、SO2NR7R8、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、またはC1-4アルクヘテロアリールであり、式中、R4、R7およびR8のそれぞれは独立に、H、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、C1-C4アルカリル、ヘテロアリールまたはC1-C4アルクヘテロアリールである。
【請求項21】
組成物が、式:
の化合物を含む、請求項1記載の方法:
ただし、式中、R1およびR2は共に、
によって表され、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11およびR14のそれぞれは上記の通りであり、R3は存在せず、かつ、R14を有する炭素とR2を有する窒素との間には二重結合が形成される。
【請求項22】
組成物が、式:
の化合物を含む、請求項1記載の方法:
ただし、式中、R1およびR2は共に、
によって表され、式中、R1/R2連結のN、O、またはSはピリミジノン環と結合を形成し、かつ、R9、R10、R11、R12、およびR13のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、またはC1-4アルクヘテロアリールである。
【請求項23】
組成物が、式:
の化合物を含む、請求項1記載の方法:
ただし、式中、R3は上記の通りであり、R1およびR2は共に、
によって表され、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R12およびR13のそれぞれは上記の通りであり、かつ、R14はOR4、ハロ、NO2、CN、CO2R7、CONR7R8、SO2R7、SO2NR7R8、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、またはC1-4アルクヘテロアリールであり、式中、R4、R7およびR8のそれぞれは独立に、H、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、C1-C4アルカリル、ヘテロアリール、またはC1-C4アルクヘテロアリールである。
【請求項24】
組成物が、式:
の化合物を含む、請求項1記載の方法:
ただし、式中、R1およびR2は共に、
によって表され、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11およびR14のそれぞれは上記の通りであり、R3は存在せず、かつ、R14を有する炭素とR2を有する窒素との間には二重結合が形成される。
【請求項25】
組成物が、以下からなる群より選択される化合物を含む、請求項18記載の方法:
。
【請求項26】
組成物が、式:
を有する化合物を含む、請求項1記載の方法:
ただし、式中、
R15はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、またはC1-4アルクヘテロアリールであり;かつ
R16はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、C1-4アルクヘテロアリール、CO2R17、CONR18R19、SO2R17、またはSO2NR18R19であり、式中、R17はC1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、またはC1-4アルクヘテロアリールであり、かつ、R18およびR19のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、またはC1-4アルクヘテロアリールである。
【請求項27】
疼痛が急性疼痛である、請求項1記載の方法。
【請求項28】
疼痛が慢性疼痛である、請求項1記載の方法。
【請求項29】
疼痛が、末梢神経および中枢神経障害性疼痛、炎症性疼痛、機能性疼痛、侵害受容性疼痛、ならびに頭痛からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項30】
第2の治療薬をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項31】
第2の治療薬が鎮痛薬である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
鎮痛薬が、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、オピオイド受容体アゴニスト、三環系抗うつ薬、SSRI、抗けいれん薬、クロニジン、ナトリウムまたはカルシウムチャンネル遮断薬(blocker)、カリウムチャンネル開口薬、5-HT1D受容体アゴニストである、請求項30記載の方法。
【請求項33】
第2の治療薬が、以下からなる群より選択される酵素阻害薬である、請求項32記載の方法:一酸化窒素シンターゼ(NOS)、チロシンヒドロキシラーゼ、トリプトファンヒドロキシラーゼI(非神経性TphI)、トリプトファンヒドロキシラーゼII(神経性TphII)、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、ドーパミン-β-ヒドロキシラーゼ、N-メチルトランスフェラーゼ、およびエーテル脂質オキシダーゼ。
【請求項34】
テトラヒドロビオプテリン(BH4)のレベルを低下させる治療薬および第2の治療薬が、互いに1時間以内に投与される、請求項30記載の方法。
【請求項35】
テトラヒドロビオプテリン(BH4)のレベルを低下させる治療薬および第2の治療薬が同時に投与される、請求項30記載の方法。
【請求項36】
テトラヒドロビオプテリン(BH4)のレベルを低下させる治療薬および第2の鎮痛誘導性化合物が、同一の薬学的製剤中において投与される、請求項30記載の方法。
【請求項37】
哺乳動物における疼痛または末梢神経病変を診断する方法であって、該哺乳動物由来の生物試料におけるBH4、BH4代謝産物、BH4前駆体、またはBH4中間体の増加を検出する段階を含む方法。
【請求項38】
BH4代謝産物が、プテリン、ビオプテリン、7,8ジヒドロプテリン、7,8-ジヒドロキサントプテリン、キサントプテリン、イソキサントプテリン、ロイコプテリン、7,8-ジヒドロネオプテリン、またはネオプテリンである、請求項37記載の方法。
【請求項39】
BH4中間体が、7,8-ジヒドロネオプテリン三リン酸、ネオプテリン、または6-ピルボイルテトラヒドロプテリンである、請求項37記載の方法。
【請求項40】
生物試料が、血液、血清、血漿、組織試料、尿、脳脊髄液、滑液、組織滲出物、または組織試料からなる群より選択される、請求項37記載の方法。
【請求項41】
増加が、対照条件に比して少なくとも20%の増加である、請求項37記載の方法。
【請求項42】
哺乳動物における疼痛または末梢神経病変を診断する方法であって、該哺乳動物の一次感覚ニューロンまたは後角ニューロンにおけるBH4合成酵素の活性またはレベルの上昇を検出する段階を含む方法。
【請求項43】
BH4合成酵素が、セピアプテリンレダクターゼ(SPR)、ピルボイルテトラヒドロプテリンシンターゼ(PTPS)、GTPシクロヒドロラーゼ(GTPCH)、プテリン-4α-カルビノールアミンデヒドラターゼ、およびジヒドロプテリジンレダクターゼ(DHPR)からなる群より選択される、請求項42記載の方法。
【請求項44】
検出が画像化技術によって行われる、請求項42記載の方法。
【請求項45】
画像化がポジトロン放出断層撮影法(PET)である、請求項44記載の方法。
【請求項46】
増加が、対照条件に比して少なくとも20%の増加である、請求項42記載の方法。
【請求項47】
以下の段階を含む、哺乳動物における疼痛または末梢神経病変を治療、軽減または予防するための候補化合物を同定するための方法:
(a)BH4を合成する細胞を候補化合物と接触させる段階;および
(b)該細胞における、BH4、BH4中間体、もしくはBH4の安定代謝産物のレベル、またはBH4活性を測定する段階であって、該候補化合物と接触していない細胞におけるBH4レベルに比して該レベルまたは活性を低下させる該候補化合物を、哺乳動物における疼痛または末梢神経病変を治療、軽減または予防するために有用な候補化合物として同定する段階。
【請求項48】
以下の段階を含む、哺乳動物における疼痛または末梢神経病変を治療、軽減または予防するための候補化合物を同定するための方法:
(a)BH4合成酵素遺伝子を発現する細胞を候補化合物と接触させる段階;および
(b)該細胞における該BH4合成酵素遺伝子の発現または該BH4合成酵素の活性を測定する段階であって、該候補化合物と接触していない細胞における該発現または活性に比して該発現または該活性を低下させる該候補化合物を、哺乳動物における疼痛または末梢神経病変を治療、軽減または予防するために有用な候補化合物として同定する段階。
【請求項49】
細胞が哺乳動物細胞である、請求項48記載の方法。
【請求項50】
BH4合成遺伝子が、セピアプテリンレダクターゼ(SPR)、ピルボイルテトラヒドロプテリンシンターゼ(PTPS)、GTPシクロヒドロラーゼ(GTPCH)、プテリン-4α-カルビノールアミンデヒドラターゼ、およびジヒドロプテリジンレダクターゼ(DHPR)からなる群より選択される、請求項49記載の方法。
【請求項51】
遺伝子がBH4合成酵素融合遺伝子である、請求項49記載の方法。
【請求項52】
段階(b)が、BH4合成酵素のmRNAまたはタンパク質の発現を測定することを含む、請求項49記載の方法。
【請求項53】
細胞が哺乳動物細胞である、請求項49記載の方法。
【請求項54】
細胞が齧歯動物細胞である、請求項53記載の方法。
【請求項55】
BH4合成酵素がヒトBH4合成酵素である、請求項49記載の方法。
【請求項56】
以下の段階を含む、哺乳動物における疼痛または末梢神経病変を治療、軽減または予防するための候補化合物を同定するための方法:
(a)BH4依存性酵素を発現する細胞を候補化合物と接触させる段階;および
(b)該細胞における該BH4依存性酵素の発現または活性を測定する段階であって、該候補化合物と接触していない細胞における該発現または活性に比して該発現または該活性を低下させる該候補化合物を、哺乳動物における疼痛または末梢神経病変を治療、軽減または予防するために有用な候補化合物として同定する段階。
【請求項57】
BH4依存性酵素が、フェニルアラニンヒドロラーゼ、チロシンヒドロラーゼ、トリプトファンヒドロラーゼ、エーテル脂質オキシダーゼ、eNOS、iNOS、またはnNOSからなる群より選択される、請求項56記載の方法。
【請求項58】
遺伝子がBH4依存性酵素融合遺伝子である、請求項56記載の方法。
【請求項59】
段階(b)が、BH4依存性酵素のmRNAまたはタンパク質の発現を測定する段階を含む、請求項56記載の方法。
【請求項60】
細胞が哺乳動物細胞である、請求項56記載の方法。
【請求項61】
細胞が齧歯動物細胞である、請求項59記載の方法。
【請求項62】
以下の段階を含む、哺乳動物における疼痛または末梢神経病変を治療、軽減または予防するための候補化合物を同定するための方法:
(a)BH4依存性酵素を候補化合物と接触させる段階;および
(b)該候補化合物が該BH4依存性酵素と結合するか否かを判定する段階であって、該BH4依存性酵素と結合し該BH4依存性酵素の活性を低下させる候補化合物が、末梢神経病変疼痛を治療、軽減、または予防するために有用な候補化合物となる段階。
【請求項63】
BH4依存性酵素が、フェニルアラニンヒドロラーゼ、チロシンヒドロラーゼ、トリプトファンヒドロラーゼ、エーテル脂質オキシダーゼ、eNOS、iNOS、またはnNOSからなる群より選択される、請求項62記載の方法。
【請求項64】
遺伝子がBH4依存性酵素融合遺伝子である、請求項62記載の方法。
【請求項65】
BH4依存性酵素がヒトBH4依存性酵素である、請求項62記載の方法。
【請求項66】
以下の段階を含む、哺乳動物における疼痛、または外傷性、代謝性、もしくは毒性の末梢神経病変を治療、軽減または予防するための候補化合物を同定するための方法:
(a)GTPシクロヒドロラーゼ(GTPCH)、GTPCHフィードバック調節タンパク質(GFRP)、および候補化合物を提供する段階;
(b)該GTPCHの該GFRPとの結合、またはGFRPのフィードバック阻害作用を測定する段階;ならびに
(c)候補化合物を、疼痛または末梢神経病変を治療、軽減、または予防するために有用なものとして同定する段階であって、該GTPCHの該GFRPとの結合、またはGFRPの該フィードバック阻害作用が、該候補化合物の存在下で増強される、段階。
【請求項67】
GTPCHがヒトGTPCHであり、GFRPがヒトGFRPである、請求項66記載の方法。
【請求項68】
候補化合物がGFRPと結合する、請求項66記載の方法。
【請求項69】
候補化合物がGTPCH:GFRP複合体と結合する、請求項66記載の方法。
【請求項70】
以下を含むキット:
(a)疼痛または末梢神経病変を治療、軽減または予防するのに十分な量、テトラヒドロビオプテリン(BH4)の発現を低下させる組成物;および
(b)疼痛または末梢神経病変の治療、軽減または予防を目的とする、哺乳動物に対する該組成物の送達のための使用説明書。
【請求項71】
以下を含むキット:
(a)疼痛または末梢神経病変を治療、軽減または予防するのに十分な量、BH4合成酵素の発現を低下させる組成物;および
(b)疼痛または末梢神経病変の治療、軽減または予防を目的とする、哺乳動物に対する該組成物の送達のための使用説明書。
【請求項72】
以下を含む診断キット:
(a)BH4、BH4前駆体、BH4中間体、またはBH4代謝産物に対して特異的な抗体;および
(b)哺乳動物における疼痛または末梢神経病変を診断するための使用説明書。
【請求項73】
BH4中間体が、7,8-ジヒドロネオプテリン三リン酸および6-ピルボイルテトラヒドロプテリンからなる群より選択される、請求項72記載のキット。
【請求項74】
BH4代謝産物が、プテリン、ビオプテリン、7,8-ジヒドロプテリン、7,8-ジヒドロキサントプテリン、キサントプテリン、イソキサントプテリン、ロイコプテリン、およびネオプテリンからなる群より選択される、請求項72記載のキット。
【請求項75】
以下の段階を含む、BH4標的タンパク質を同定するための方法:
a.試料およびBH4を提供する段階;
b.該試料タンパク質と該BH4との結合を可能にする条件下で、該試料を該BH4と接触させる段階;および
c.該BH4を検出することによって該BH4の試料タンパク質との結合を評価する段階であって、該BH4と結合するタンパク質がBH4標的タンパク質として同定される、段階。
【請求項76】
BH4が検出可能であるように標識される、請求項75記載の方法。
【請求項77】
検出可能な標識が放射性同位体またはビオチンである、請求項76記載の方法。
【請求項78】
評価の段階(c)がBH4特異的抗体の使用を含む、請求項75記載の方法。
【請求項79】
評価の段階(c)が、質量分析法、表面プラスモン共鳴顕微鏡法、および原子間力顕微鏡法からなる群より選択される検出方法を含む、請求項75記載の方法。
【請求項80】
試料が哺乳動物神経組織由来の抽出物を含む、請求項75記載の方法。
【請求項81】
哺乳動物神経組織が後角または後根神経節を含む、請求項80記載の方法。
【請求項82】
試料が膜結合型タンパク質を含む、請求項75記載の方法。
【請求項83】
以下の段階を含む、BH4標的タンパク質を同定するための方法:
a.BH4およびアレイを提供する段階であって、該アレイが複数の固定化された精製タンパク質種を含み、該アレイ中の該タンパク質種のそれぞれが他のタンパク質種のそれぞれと空間的に分離される、段階;
b.該タンパク質種と該BH4との結合を可能にする条件下で、該アレイを該BH4と接触させる段階;および
c.該BH4の該タンパク質種との結合を評価する段階であって、該BH4と結合するタンパク質種がBH4標的タンパク質として同定される、段階。
【請求項84】
BH4が検出可能であるように標識される、請求項83記載の方法。
【請求項85】
検出可能な標識が放射性同位体またはビオチンである、請求項84記載の方法。
【請求項86】
評価の段階(c)がBH4特異的抗体の使用を含む、請求項83記載の方法。
【請求項1】
哺乳動物における疼痛、または末梢神経病変の結果もしくは発達を治療、軽減または予防する方法であって、該哺乳動物に対して、テトラヒドロビオプテリン(BH4)の生物活性を低下させる組成物を、BH4の過剰産生に起因する疼痛、または末梢神経病変の悪化を治療、軽減または予防するために十分な量投与する段階を含む方法。
【請求項2】
哺乳動物がヒトである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
疼痛が、一次感覚ニューロンまたは後角ニューロン(dorsal horn neuron)におけるBH4レベルを低下させることによって軽減される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
一次感覚ニューロンが後根神経節内または三叉神経節内にある、請求項3記載の方法。
【請求項5】
後角ニューロンが、脊髄内、または脳幹の三叉神経脊髄路核内にある、請求項4記載の方法。
【請求項6】
BH4生物活性の低下が、BH4の合成または再利用の低下の結果である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
GTPシクロヒドロラーゼフィードバック調節タンパク質(GFRP)の発現、GTPCH結合性、または活性を高めることによって、BH4生物活性を低下させる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
BH4合成の低下が、セピアプテリンレダクターゼ(SPR)、ピルボイルテトラヒドロプテリンシンターゼ(PTPS)、GTPシクロヒドロラーゼ(GTPCH)、プテリン-4α-カルビノールアミンデヒドラターゼ、およびジヒドロプテリジンレダクターゼ(DHPR)からなる群より選択される少なくとも1つの酵素のレベルまたは生物活性の低下の結果である、請求項6記載の方法。
【請求項9】
BH4合成の低下が、セピアプテリンレダクターゼ(SPR)、GTPシクロヒドロラーゼ(GTPCH)、およびジヒドロプテリジンレダクターゼ(DHPR)からなる群より選択される少なくとも1つの酵素の生物活性の低下の結果である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
少なくとも2つの酵素の生物活性を低下させる、請求項8記載の方法。
【請求項11】
少なくとも3つの酵素の生物活性を低下させる、請求項10記載の方法。
【請求項12】
生物活性を少なくとも10%低下させる、請求項8記載の方法。
【請求項13】
生物活性を少なくとも40%低下させる、請求項12記載の方法。
【請求項14】
組成物がメトトレキサートを含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
組成物が、2,4ジアミノ6-ヒドロキシピリミジン(DAHP)、テトラヒドロ-L-ビオプテリン、L-セピアプテリン、7,8-ジヒドロ-L-ビオプテリン、6,7-ジメチルテトラヒドロプテリン塩酸塩、および8-ブロモ-cGMPからなる群より選択される少なくとも1つの化合物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項16】
組成物が、N-アセチル-セロトニン(NAS)、N-クロロアセチルセロトニン、N-メトキシアセチルセロトニン、およびN-クロロアセチルドーパミンからなる群より選択される少なくとも1つの化合物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項17】
組成物が以下の式を有する化合物を含む、請求項1記載の方法:
ただし、式中、
R1はH、C1-6アルキル、ハロ、NO2、CN、CO2R4、CONR4R5、SO2R4、SO2NR4R5、OR4またはNR4R5であり、式中、R4およびR5のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、またはC1-4アルクヘテロアリール(alkheteroaryl)であり、
R2はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、またはC1-4アルクヘテロアリールであり、かつ、
R3はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、C1-4アルクヘテロアリール、CO2R6、CONR7R8、SO2R6、またはSO2NR7R8であり、式中、R6はC1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、またはC1-4アルクヘテロアリールであり、かつ、R7およびR8のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、またはC1-4アルクヘテロアリールであるか;
R3は上記の通りであり、かつ、R1およびR2は共に、
によって表され、式中、R1/R2連結のN、O、またはSはピリミジノン環と結合を形成し、かつ、R9、R10、R11、R12、およびR13のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、またはC1-4アルクヘテロアリールであるか;
R3は上記の通りであり、かつ、R1およびR2は共に、
によって表され、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R12またはR13のそれぞれは上記の通りであり、かつ、R14はOR4、ハロ、NO2、CN、CO2R7、CONR7R8、SO2R7、SO2NR7R8、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、またはC1-4アルクヘテロアリールであり、ここで、R4、R7およびR8のそれぞれは独立に、H、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、C1-C4アルカリル、ヘテロアリール、またはC1-C4アルクヘテロアリールであるか;または
R1およびR2は共に、
によって表され、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11およびR14のそれぞれは上記の通りであり、R3は存在せず、かつ、R14を有する炭素とR2を有する窒素との間には二重結合が形成される。
【請求項18】
組成物が式(I)の化合物を含む、請求項17記載の方法:
ただし、式中、
R1はH、C1-6アルキル、ハロ、NO2、CN、CO2R4、CONR4R5、SO2R4、SO2NR4R5、OR4、またはNR4R5であり、式中、R4およびR5のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、またはC1-4アルクヘテロアリールであり、
R2はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、またはC1-4アルクヘテロアリールであり、かつ、
R3はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、C1-4アルクヘテロアリール、CO2R6、CONR7R8、SO2R6、またはSO2NR7R8であり、式中、R6はC1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、またはC1-4アルクヘテロアリールであり、かつ、R7およびR8のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、またはC1-4アルクヘテロアリールである。
【請求項19】
組成物が、式:
の化合物を含む、請求項1記載の方法:
ただし、式中、R1およびR2は共に、
によって表され、式中、R1/R2連結のN、O、またはSはピリミジノン環と結合を形成し、かつ、R9、R10、R11、R12、およびR13のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、またはC1-4アルクヘテロアリールである。
【請求項20】
組成物が、式:
の化合物を含む、請求項1記載の方法:
ただし、式中、
R3は上記の通りであり、かつ、R1およびR2は共に、
によって表され、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R12およびR13のそれぞれは上記の通りであり、かつ、R14はOR4、ハロ、NO2、CN、CO2R7、CONR7R8、SO2R7、SO2NR7R8、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、またはC1-4アルクヘテロアリールであり、式中、R4、R7およびR8のそれぞれは独立に、H、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、C1-C4アルカリル、ヘテロアリールまたはC1-C4アルクヘテロアリールである。
【請求項21】
組成物が、式:
の化合物を含む、請求項1記載の方法:
ただし、式中、R1およびR2は共に、
によって表され、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11およびR14のそれぞれは上記の通りであり、R3は存在せず、かつ、R14を有する炭素とR2を有する窒素との間には二重結合が形成される。
【請求項22】
組成物が、式:
の化合物を含む、請求項1記載の方法:
ただし、式中、R1およびR2は共に、
によって表され、式中、R1/R2連結のN、O、またはSはピリミジノン環と結合を形成し、かつ、R9、R10、R11、R12、およびR13のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、またはC1-4アルクヘテロアリールである。
【請求項23】
組成物が、式:
の化合物を含む、請求項1記載の方法:
ただし、式中、R3は上記の通りであり、R1およびR2は共に、
によって表され、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R12およびR13のそれぞれは上記の通りであり、かつ、R14はOR4、ハロ、NO2、CN、CO2R7、CONR7R8、SO2R7、SO2NR7R8、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、またはC1-4アルクヘテロアリールであり、式中、R4、R7およびR8のそれぞれは独立に、H、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、C1-C4アルカリル、ヘテロアリール、またはC1-C4アルクヘテロアリールである。
【請求項24】
組成物が、式:
の化合物を含む、請求項1記載の方法:
ただし、式中、R1およびR2は共に、
によって表され、式中、R1/R2連結のNはピリミジノン環と結合を形成し、R9、R10、R11およびR14のそれぞれは上記の通りであり、R3は存在せず、かつ、R14を有する炭素とR2を有する窒素との間には二重結合が形成される。
【請求項25】
組成物が、以下からなる群より選択される化合物を含む、請求項18記載の方法:
。
【請求項26】
組成物が、式:
を有する化合物を含む、請求項1記載の方法:
ただし、式中、
R15はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、またはC1-4アルクヘテロアリールであり;かつ
R16はH、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、C1-4アルクヘテロアリール、CO2R17、CONR18R19、SO2R17、またはSO2NR18R19であり、式中、R17はC1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、またはC1-4アルクヘテロアリールであり、かつ、R18およびR19のそれぞれは独立に、H、C1-6アルキル、C6-12アリール、ヘテロアリール、C1-4アルカリル、またはC1-4アルクヘテロアリールである。
【請求項27】
疼痛が急性疼痛である、請求項1記載の方法。
【請求項28】
疼痛が慢性疼痛である、請求項1記載の方法。
【請求項29】
疼痛が、末梢神経および中枢神経障害性疼痛、炎症性疼痛、機能性疼痛、侵害受容性疼痛、ならびに頭痛からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項30】
第2の治療薬をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項31】
第2の治療薬が鎮痛薬である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
鎮痛薬が、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、オピオイド受容体アゴニスト、三環系抗うつ薬、SSRI、抗けいれん薬、クロニジン、ナトリウムまたはカルシウムチャンネル遮断薬(blocker)、カリウムチャンネル開口薬、5-HT1D受容体アゴニストである、請求項30記載の方法。
【請求項33】
第2の治療薬が、以下からなる群より選択される酵素阻害薬である、請求項32記載の方法:一酸化窒素シンターゼ(NOS)、チロシンヒドロキシラーゼ、トリプトファンヒドロキシラーゼI(非神経性TphI)、トリプトファンヒドロキシラーゼII(神経性TphII)、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、ドーパミン-β-ヒドロキシラーゼ、N-メチルトランスフェラーゼ、およびエーテル脂質オキシダーゼ。
【請求項34】
テトラヒドロビオプテリン(BH4)のレベルを低下させる治療薬および第2の治療薬が、互いに1時間以内に投与される、請求項30記載の方法。
【請求項35】
テトラヒドロビオプテリン(BH4)のレベルを低下させる治療薬および第2の治療薬が同時に投与される、請求項30記載の方法。
【請求項36】
テトラヒドロビオプテリン(BH4)のレベルを低下させる治療薬および第2の鎮痛誘導性化合物が、同一の薬学的製剤中において投与される、請求項30記載の方法。
【請求項37】
哺乳動物における疼痛または末梢神経病変を診断する方法であって、該哺乳動物由来の生物試料におけるBH4、BH4代謝産物、BH4前駆体、またはBH4中間体の増加を検出する段階を含む方法。
【請求項38】
BH4代謝産物が、プテリン、ビオプテリン、7,8ジヒドロプテリン、7,8-ジヒドロキサントプテリン、キサントプテリン、イソキサントプテリン、ロイコプテリン、7,8-ジヒドロネオプテリン、またはネオプテリンである、請求項37記載の方法。
【請求項39】
BH4中間体が、7,8-ジヒドロネオプテリン三リン酸、ネオプテリン、または6-ピルボイルテトラヒドロプテリンである、請求項37記載の方法。
【請求項40】
生物試料が、血液、血清、血漿、組織試料、尿、脳脊髄液、滑液、組織滲出物、または組織試料からなる群より選択される、請求項37記載の方法。
【請求項41】
増加が、対照条件に比して少なくとも20%の増加である、請求項37記載の方法。
【請求項42】
哺乳動物における疼痛または末梢神経病変を診断する方法であって、該哺乳動物の一次感覚ニューロンまたは後角ニューロンにおけるBH4合成酵素の活性またはレベルの上昇を検出する段階を含む方法。
【請求項43】
BH4合成酵素が、セピアプテリンレダクターゼ(SPR)、ピルボイルテトラヒドロプテリンシンターゼ(PTPS)、GTPシクロヒドロラーゼ(GTPCH)、プテリン-4α-カルビノールアミンデヒドラターゼ、およびジヒドロプテリジンレダクターゼ(DHPR)からなる群より選択される、請求項42記載の方法。
【請求項44】
検出が画像化技術によって行われる、請求項42記載の方法。
【請求項45】
画像化がポジトロン放出断層撮影法(PET)である、請求項44記載の方法。
【請求項46】
増加が、対照条件に比して少なくとも20%の増加である、請求項42記載の方法。
【請求項47】
以下の段階を含む、哺乳動物における疼痛または末梢神経病変を治療、軽減または予防するための候補化合物を同定するための方法:
(a)BH4を合成する細胞を候補化合物と接触させる段階;および
(b)該細胞における、BH4、BH4中間体、もしくはBH4の安定代謝産物のレベル、またはBH4活性を測定する段階であって、該候補化合物と接触していない細胞におけるBH4レベルに比して該レベルまたは活性を低下させる該候補化合物を、哺乳動物における疼痛または末梢神経病変を治療、軽減または予防するために有用な候補化合物として同定する段階。
【請求項48】
以下の段階を含む、哺乳動物における疼痛または末梢神経病変を治療、軽減または予防するための候補化合物を同定するための方法:
(a)BH4合成酵素遺伝子を発現する細胞を候補化合物と接触させる段階;および
(b)該細胞における該BH4合成酵素遺伝子の発現または該BH4合成酵素の活性を測定する段階であって、該候補化合物と接触していない細胞における該発現または活性に比して該発現または該活性を低下させる該候補化合物を、哺乳動物における疼痛または末梢神経病変を治療、軽減または予防するために有用な候補化合物として同定する段階。
【請求項49】
細胞が哺乳動物細胞である、請求項48記載の方法。
【請求項50】
BH4合成遺伝子が、セピアプテリンレダクターゼ(SPR)、ピルボイルテトラヒドロプテリンシンターゼ(PTPS)、GTPシクロヒドロラーゼ(GTPCH)、プテリン-4α-カルビノールアミンデヒドラターゼ、およびジヒドロプテリジンレダクターゼ(DHPR)からなる群より選択される、請求項49記載の方法。
【請求項51】
遺伝子がBH4合成酵素融合遺伝子である、請求項49記載の方法。
【請求項52】
段階(b)が、BH4合成酵素のmRNAまたはタンパク質の発現を測定することを含む、請求項49記載の方法。
【請求項53】
細胞が哺乳動物細胞である、請求項49記載の方法。
【請求項54】
細胞が齧歯動物細胞である、請求項53記載の方法。
【請求項55】
BH4合成酵素がヒトBH4合成酵素である、請求項49記載の方法。
【請求項56】
以下の段階を含む、哺乳動物における疼痛または末梢神経病変を治療、軽減または予防するための候補化合物を同定するための方法:
(a)BH4依存性酵素を発現する細胞を候補化合物と接触させる段階;および
(b)該細胞における該BH4依存性酵素の発現または活性を測定する段階であって、該候補化合物と接触していない細胞における該発現または活性に比して該発現または該活性を低下させる該候補化合物を、哺乳動物における疼痛または末梢神経病変を治療、軽減または予防するために有用な候補化合物として同定する段階。
【請求項57】
BH4依存性酵素が、フェニルアラニンヒドロラーゼ、チロシンヒドロラーゼ、トリプトファンヒドロラーゼ、エーテル脂質オキシダーゼ、eNOS、iNOS、またはnNOSからなる群より選択される、請求項56記載の方法。
【請求項58】
遺伝子がBH4依存性酵素融合遺伝子である、請求項56記載の方法。
【請求項59】
段階(b)が、BH4依存性酵素のmRNAまたはタンパク質の発現を測定する段階を含む、請求項56記載の方法。
【請求項60】
細胞が哺乳動物細胞である、請求項56記載の方法。
【請求項61】
細胞が齧歯動物細胞である、請求項59記載の方法。
【請求項62】
以下の段階を含む、哺乳動物における疼痛または末梢神経病変を治療、軽減または予防するための候補化合物を同定するための方法:
(a)BH4依存性酵素を候補化合物と接触させる段階;および
(b)該候補化合物が該BH4依存性酵素と結合するか否かを判定する段階であって、該BH4依存性酵素と結合し該BH4依存性酵素の活性を低下させる候補化合物が、末梢神経病変疼痛を治療、軽減、または予防するために有用な候補化合物となる段階。
【請求項63】
BH4依存性酵素が、フェニルアラニンヒドロラーゼ、チロシンヒドロラーゼ、トリプトファンヒドロラーゼ、エーテル脂質オキシダーゼ、eNOS、iNOS、またはnNOSからなる群より選択される、請求項62記載の方法。
【請求項64】
遺伝子がBH4依存性酵素融合遺伝子である、請求項62記載の方法。
【請求項65】
BH4依存性酵素がヒトBH4依存性酵素である、請求項62記載の方法。
【請求項66】
以下の段階を含む、哺乳動物における疼痛、または外傷性、代謝性、もしくは毒性の末梢神経病変を治療、軽減または予防するための候補化合物を同定するための方法:
(a)GTPシクロヒドロラーゼ(GTPCH)、GTPCHフィードバック調節タンパク質(GFRP)、および候補化合物を提供する段階;
(b)該GTPCHの該GFRPとの結合、またはGFRPのフィードバック阻害作用を測定する段階;ならびに
(c)候補化合物を、疼痛または末梢神経病変を治療、軽減、または予防するために有用なものとして同定する段階であって、該GTPCHの該GFRPとの結合、またはGFRPの該フィードバック阻害作用が、該候補化合物の存在下で増強される、段階。
【請求項67】
GTPCHがヒトGTPCHであり、GFRPがヒトGFRPである、請求項66記載の方法。
【請求項68】
候補化合物がGFRPと結合する、請求項66記載の方法。
【請求項69】
候補化合物がGTPCH:GFRP複合体と結合する、請求項66記載の方法。
【請求項70】
以下を含むキット:
(a)疼痛または末梢神経病変を治療、軽減または予防するのに十分な量、テトラヒドロビオプテリン(BH4)の発現を低下させる組成物;および
(b)疼痛または末梢神経病変の治療、軽減または予防を目的とする、哺乳動物に対する該組成物の送達のための使用説明書。
【請求項71】
以下を含むキット:
(a)疼痛または末梢神経病変を治療、軽減または予防するのに十分な量、BH4合成酵素の発現を低下させる組成物;および
(b)疼痛または末梢神経病変の治療、軽減または予防を目的とする、哺乳動物に対する該組成物の送達のための使用説明書。
【請求項72】
以下を含む診断キット:
(a)BH4、BH4前駆体、BH4中間体、またはBH4代謝産物に対して特異的な抗体;および
(b)哺乳動物における疼痛または末梢神経病変を診断するための使用説明書。
【請求項73】
BH4中間体が、7,8-ジヒドロネオプテリン三リン酸および6-ピルボイルテトラヒドロプテリンからなる群より選択される、請求項72記載のキット。
【請求項74】
BH4代謝産物が、プテリン、ビオプテリン、7,8-ジヒドロプテリン、7,8-ジヒドロキサントプテリン、キサントプテリン、イソキサントプテリン、ロイコプテリン、およびネオプテリンからなる群より選択される、請求項72記載のキット。
【請求項75】
以下の段階を含む、BH4標的タンパク質を同定するための方法:
a.試料およびBH4を提供する段階;
b.該試料タンパク質と該BH4との結合を可能にする条件下で、該試料を該BH4と接触させる段階;および
c.該BH4を検出することによって該BH4の試料タンパク質との結合を評価する段階であって、該BH4と結合するタンパク質がBH4標的タンパク質として同定される、段階。
【請求項76】
BH4が検出可能であるように標識される、請求項75記載の方法。
【請求項77】
検出可能な標識が放射性同位体またはビオチンである、請求項76記載の方法。
【請求項78】
評価の段階(c)がBH4特異的抗体の使用を含む、請求項75記載の方法。
【請求項79】
評価の段階(c)が、質量分析法、表面プラスモン共鳴顕微鏡法、および原子間力顕微鏡法からなる群より選択される検出方法を含む、請求項75記載の方法。
【請求項80】
試料が哺乳動物神経組織由来の抽出物を含む、請求項75記載の方法。
【請求項81】
哺乳動物神経組織が後角または後根神経節を含む、請求項80記載の方法。
【請求項82】
試料が膜結合型タンパク質を含む、請求項75記載の方法。
【請求項83】
以下の段階を含む、BH4標的タンパク質を同定するための方法:
a.BH4およびアレイを提供する段階であって、該アレイが複数の固定化された精製タンパク質種を含み、該アレイ中の該タンパク質種のそれぞれが他のタンパク質種のそれぞれと空間的に分離される、段階;
b.該タンパク質種と該BH4との結合を可能にする条件下で、該アレイを該BH4と接触させる段階;および
c.該BH4の該タンパク質種との結合を評価する段階であって、該BH4と結合するタンパク質種がBH4標的タンパク質として同定される、段階。
【請求項84】
BH4が検出可能であるように標識される、請求項83記載の方法。
【請求項85】
検出可能な標識が放射性同位体またはビオチンである、請求項84記載の方法。
【請求項86】
評価の段階(c)がBH4特異的抗体の使用を含む、請求項83記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8−1】
【図8−2】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19−1】
【図19−2】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8−1】
【図8−2】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19−1】
【図19−2】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公表番号】特表2007−511520(P2007−511520A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539848(P2006−539848)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/037621
【国際公開番号】WO2005/048926
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(505164025)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレーション (20)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/037621
【国際公開番号】WO2005/048926
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(505164025)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレーション (20)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]