説明

疼痛治療用薬剤製造のためのロキサピンまたはアモキサピンの使用

ロキサピン、アモキサピン、あるいはどちらかの塩またはプロドラッグは、疼痛を緩和に有効であり、特に、偏頭痛、群発性頭痛、緊張性頭痛などの頭痛に有効である。好ましくは全身に、最も好ましくは吸入によって、ロキサピンまたはアモキサピンを投与する。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
[0001] 本発明は、疼痛の治療または制御を要する対象に、ロキサピンまたはアモキサピンを、あるいはロキサピンまたはアモキサピンを体内で供給する物質を有効量投与することによる、疼痛の治療および制御に関する。より具体的には、本発明は、例えば吸入により、ロキサピン、アモキサピン、あるいはロキサピンまたはアモキサピンを体内で供給する物質を全身に投与することによる、疼痛の治療および制御に関する。
【0002】
[0002] ロキサピン[2−クロロ−11(4−メチル−1−ピペラジニル)ジベンゾ(b,f)(1,4)オキサゼピン]とは、統合失調症またはそれに関係する精神病の治療に特に有用な抗精神病薬である。これは、塩の形で、通常は塩酸塩またはコハク酸塩の形で市販されている。アモキサピン[2−クロロ−11(1−ピペラジニル)ジベンゾ(b,f)(1,4)オキサゼピン]とは、どちらも抗うつ薬と抗精神病薬の効力を有するという点で他の抗うつ薬と異なる既知の抗うつ薬である。したがって、アモキサピンは、他の抗うつ薬と異なり、主に精神病性うつ病の治療に使用される。
【0003】
[0003] 選ばれた抗精神病薬および/または抗うつ薬により、疼痛をある程度治療できることが、いくつかの特許および文献で示唆されている。しかし、この想定を裏付けるデータは散乱しかつ点在し、いくつかの薬剤が様々な程度の疼痛制御能を示すが、それと同じ薬理学的クラスの他の化合物は疼痛制御にまったく無効であった。したがって、実際の全体像は明らかでない。
【0004】
[0004] 例えば、米国特許第5,929,070号、第5,945,416号、および第6,258,807号は、様々なタイプの疼痛を治療するためのオランザピンを単独でまたは組み合わせて使用することを開示している。米国特許第6,444,665号は、疼痛治療における、特に他のいくつかの疼痛軽減薬とともに投与するときのいくつかの非定型抗精神病化合物、すなわちリスペリドン、クロザピン、クエチアピン、セルチンドール、ジプラシドンおよびゾテピンの使用を開示している。一方、他の研究[Schreiberら、(1999)Pharmacology Biochemistry Behavior 64:75]の記載によれば、同じクラスの薬剤(例えば、オランザピンおよびクロザピン)であっても、非定型抗精神病薬間で疼痛を制御する能力に差があり、それによって、鎮痛効果は抗精神病薬が通常有する種類の効果でないことが実証されている。
【0005】
[0005] 米国特許第6,290,986号は、局所疼痛を制御する様々な薬剤の、レシチン有機ゲルを含む特別な製剤の形での経皮投与を開示している。いくつかの抗うつ薬、特にアミトリプチリンおよびドキセピンの、このような製剤の形での使用が開示されている。しかし、この抗うつ薬は、それ自体で鎮痛効果を有することが知られている化合物グアイフェネシンと併用した場合のみ有効であるという主張があり、グアイフェネシンなしで投与したときにこの抗うつ薬の効力があることを示す示唆は存在しない。この特許の本文の終わりに、アモキサピンを含めた他の多くの三環系薬剤が類似の活性を示すであろうとの「意見」が述べられている。同じ系列のより最近の特許である第6,479,074号で、アモキサピンは、やはりグアイフェネシンと併用して投与される、局所疼痛治療のためのいくつかの経皮用組成物に有用であるといわれている三環系化合物のリストに含まれている。しかし、アモキサピンに関するデータは報告されていない。同様に、米国特許第6,638,981号では、抗うつ薬を含む組成物は、局所麻酔効果があるために、局所適用される組成物を使用する局所疼痛治療に有効であることが主張されている。しかし、全身投与後に抗うつ薬が鎮痛効果を示すことは、この特許中で示唆されていない。抗うつ薬のカテゴリーとして、その他の、または「その他すべて」のカテゴリーを含めて、10種が挙げられている。各カテゴリーは、おそらく疼痛に対する活性を有している化合物の非常に長いリストを含んでいる。アモキサピンは、このカテゴリーの1つに属する多くの化合物の1つに列挙されているが、やはりそれに関するデータは提示されず、実際、この特許中で個々に名称が挙げられたほとんどの化合物に関するデータも提示されていない。反対に、データは2つの化合物アミトリプチリンおよびケタミンに集中している。米国特許第5,900,249号および第6,211,171号でも、アモキサピンが、(例えば局所麻酔薬として)局所用組成物中に組み込まれたとき疼痛制御に有用であるといわれている化合物のリスト中に挙げられているが、やはりアモキサピンに関するデータは提示されず、全身投与後に抗うつ薬が鎮痛効果を示すことは示唆されていない。
【0006】
[0006] Lynch[「Antidepressants as analgesics:a review of randomized controlled trials」(2001)Revue de Psychiatre et de Neuroscience 26:30]は、抗うつ薬の鎮痛効果を調べた59の無作為化プラセボ対照試験の結果をまとめ、「三環系抗うつ薬群には鎮痛性がありトラゾドンにはないという有意な証拠が得られ、選択的セロトニン再取り込み阻害剤に関するデータは相反している。」と述べている。しかし、三環系抗うつ薬の場合でも、列挙された41の参照文献ではそのような化合物が5種(アミトリプチリン、ドキセピン、イミプラミン、クロミプラミンおよびデシプラミン)しか調べられておらず、作用機序の点で試験された化合物とかなり異なるロキサピンおよびアモキサピンについていかなる報告も含まれていなかった。
【0007】
[0007] 簡潔に述べると、少数の抗うつ薬が、主として局所用または経皮用組成物として適用されるときに、局所疼痛を制御する、または局所麻酔をもたらす鎮痛性を若干有することが示された。しかし、この化合物の有効性は、その抗うつ活性と関係せず、そのクラスのどんなタイプの効果を表すものとも示されなかった。さらに、他の研究[Hamonら、(1987)Neuropharmacology 26:531−539]で、動物モデルでアモキサピンによる長期治療後にモルヒネの鎮痛効果が促進したことが示されたが、この結果は、アモキサピン自体が疼痛に対する効果を有さないことを示唆するものであった。この参照文献の図1で、アモキサピン単独の長期投与後にテールフリックの持続時間が変化しないことが示され、それによって、アモキサピン単独では疼痛に対する効果を基本的に有さないことが示唆される。他の参照文献で、Pfeiffer[(1982)Geriatrics 27:67]は、アモキサピンを含めたいくつかの三環系抗うつ薬が、「うつの身体化として疼痛が現れている患者によい結果をもたらす」と述べている。実際の疼痛ではなく疼痛として現れるうつの身体化の治療にこの抗うつ薬を使用する点で、やはりこのことも区別することができる。
【0008】
[0008] 簡潔に述べると、アモキサピンは(上記に挙げた特許のいくつかで)いくらかそのような活性を有すると考えられている多くの化合物中に列挙されているが、それがこの能力を有することを確認するデータはまったく提示されておらず、ある研究ではそのような活性が欠如していることが示された。さらに、抗精神病薬を使用すると疼痛を軽減できることを示唆する参照文献と異なり、いくつかの抗精神病薬は、その反対の効果である疼痛の増強をもたらすことが実際に示されている[Frussa−Filhoら、(1996)Arch Int Pharmacodyn 331:74−93(ハロペリドール)およびGleeson et al.、(1982)、Psychopharmacology 78:141−146(クロルプロマジン)を参照のこと]。アモキサピンに疼痛を制御する能力、特に局在していない疼痛を制御する能力がたとえあるとしても、この情報不足からそれを確認することができず、ロキサピンが何らかの性質の何らかの疼痛抑制効果を有するかどうかについて、当技術分野における情報が存在しない。
【発明の簡単な概要】
【0009】
[0009] 本発明は、全身にまたは脳にロキサピンまたはアモキサピンを有効量投与することにより、疼痛を治療するまたは制御することを含む。好ましくは、ロキサピンまたはアモキサピンを吸入によって投与する。本発明はまた、上記のように疼痛を治療するためにロキサピンまたはアモキサピンを投与する方法、およびこのようにこれらを投与するための製剤をも含む。
【発明の詳細な説明】
【0010】
[0012] ロキサピン[2−クロロ−11(4−メチル−1−ピペラジニル)ジベンゾ(b,f)(1,4)オキサゼピン]とは、統合失調症またはそれに関係する精神病の治療に特に有用な抗精神病薬である。これは、塩の形で、通常は塩酸塩またはコハク酸塩の形で市販されている。アモキサピン[2−クロロ−11(1−ピペラジニル)ジベンゾ(b,f)(1,4)オキサゼピン]とは、抗精神病性を有する既知の抗うつ薬である。
【0011】
[0013] ロキサピンもアモキサピンも、疼痛の治療または制御に有効であることがこれまで示されていなかった。しかし、本発明者らは、疼痛の、特に偏頭痛、緊張性頭痛および群発性頭痛を含めた頭痛の治療または制御にこれらの物質が驚くほど有効であることを発見した。
【0012】
[0014] 本発明による疼痛の治療または制御は、そのような治療を要する患者または対象に、アモキサピン、ロキサピン、薬学的に許容されるこのどちらかの塩、またはこのどちらかのプロドラッグを、疼痛を軽減するまたは緩和するのに有効な量投与することによって達成される。この有効成分の塩またはプロドラッグの使用により、対象にロキサピンまたはアモキサピンをそれぞれ適切な量供給する有効な手段をもたらすことができ、有効成分の製剤、包装、あるいはその他の方法での調製および/または投与の際に利点を提供することができる。
【0013】
[0015] 本発明の一態様では、疼痛緩和に有効な量のロキサピンまたはアモキサピンあるいはロキサピンまたはアモキサピンの薬学的に許容される塩またはプロドラッグを投与して、患者または対象を治療する。「疼痛緩和に有効な量」とは、疼痛を抑制するまたは阻止する、問題の物質の量を意味する。本発明は、現在の疼痛の緩和にも、切迫した疼痛を引き起こす出来事の結果生じるはずの疼痛の抑制または阻止にも適用可能である。
【0014】
[0016] 「緩和」、「抑制」および「阻止」という用語は、症状の軽減および減弱、患者または対象にとっての疼痛の症状または状態のさらなる忍容化、疼痛の持続時間の短縮、ある出来事の後生じると予想される疼痛の開始の遅延など、客観的パラメーターも主観的パラメーターも含めて、疼痛の治療または緩和が成功したことの証拠を指す。偏頭痛を含めた頭痛の治療に関するとき、「緩和」、「抑制」および「阻止」という用語は、症状の軽減および減弱、患者または対象にとっての頭痛のさらなる忍容化、頭痛の持続時間の短縮、頭痛の前兆に引き続いて予想される頭痛の軽減など、客観的パラメーターも主観的パラメーターも含めて、実在するどんな頭痛または頭痛のどんな前兆の治療または緩和にも成功したことの証拠を指すが、疼痛(頭痛)の頻度低下または発生防止が特に頭痛の前兆の間にまたは頭痛自体の最初の徴候が現れたときに薬剤を使用することで達成される場合を除いて、疼痛(頭痛)の頻度のこのような低下、疼痛(頭痛)の発生のこのような防止はこれから明確に除外される。すなわち、頭痛の治療に関するとき、頭痛を防止する目的で薬剤を長期使用することは、「緩和」、「抑制」および「阻止」という用語から明確に除外される。
【0015】
[0017] 本明細書において、「疼痛」には、すべてのタイプの疼痛が含まれる。この用語に含まれるより具体的なタイプの疼痛には、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、侵害受容性疼痛、急性疼痛、慢性疼痛、局所疼痛、全身疼痛、術後疼痛、歯痛、偏頭痛、群発性頭痛、緊張性頭痛、神経痛、癌性疼痛、抵抗性の疼痛、熱傷による疼痛、陣痛および分娩痛、分娩後疼痛、過敏性腸症候群、線維筋痛、膵臓の疼痛、心筋梗塞による疼痛、ならびに一時的な下顎骨異常がある。有効量のロキサピンまたはアモキサピンあるいはそのどちらかの塩またはプロドラッグを中枢神経系に到達させることによる、特に全身投与による偏頭痛、群発性頭痛、緊張性頭痛、および他のタイプの疼痛の治療が、本発明に特に重要である。
【0016】
[0018] 「対象」または「患者」という用語は、脊椎動物、好ましくはヒトなどの霊長類哺乳動物、およびペット、家畜などの非霊長類哺乳動物を含む他の動物を含めた哺乳動物を指す。
【0017】
[0019] 「薬学的に許容される塩」という用語は、本明細書に記載の化合物上にある特定の置換基に応じて、比較的非毒性の酸を用いて調製される活性型化合物の塩を含むことを意味する。「薬学的に許容される」とは、問題の塩が、動物での、より具体的には、ヒトでの使用について、連邦政府、州政府または他の外国政府の監督官庁に認可されているまたはされ得る、あるいは米国薬局方または他の一般に認められている薬局方に記載されているまたはされ得ることを意味する。本発明の化合物が比較的塩基性の官能基を含むため、中性型のこのような化合物を十分な量の所望の酸と無溶媒でまたは適切な不活性溶媒中で接触させることによって、酸付加塩を得ることができる。薬学的に許容される酸付加塩の例には、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素硫酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸などのような無機酸由来のもの、ならびに酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p−トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などのような比較的非毒性の有機酸由来の塩がある。アルギニン酸(arginate)などのアミノ酸の塩、およびグルクロン酸、ガラクツロン酸などの有機酸の塩も含まれる(例えば、Bergeら、「Pharmaceutical Salts」、Journal of Pharmaceutical Science、1977、66、1−19を参照のこと)。
【0018】
[0020] 塩から出発すると、従来の方法で塩を塩基[または酸]と接触させ、親化合物を単離することにより、中性型の化合物を再生させることができる。親型の化合物は、極性溶媒での溶解性などの特定の物理的な特性が種々の塩型と異なるが、それ以外は、本発明の目的で塩は親型の化合物と等価である。
【0019】
[0021] 塩型に加えて、本発明は、活性型化合物をプロドラッグの形で提供する。本明細書に記載の化合物のプロドラッグは、化学的、生化学的または生理的条件下で化学変化を容易に受けて、ロキサピンまたはアモキサピンをそれぞれ提供する化合物である。例えば、ロキサピンまたはアモキサピンのプロドラッグには、生物学的条件下、in vitroまたはin vivoで加水分解され、酸化され、水素化され、切断され、またはその他の形で反応して、活性型化合物が生じ得る化合物が含まれる。ロキサピンのいくつかのホスホノオキシメチルプロドラッグが、Kriseら、J Pharm Sci.(1999)88:922および928、ならびにJ Med Chem.(1999)42:3094に開示されている。
【0020】
[0022] 疼痛の緩和のために対象の治療に、特に偏頭痛の治療に使用するとき、ロキサピンまたはアモキサピンは、それぞれ統合失調症およびうつを治療するという現在の目的で使用されるよりも一般に少ない投与量で使用する。
【0021】
[0023] Physicians’Desk Reference(第57版、2003)に記載のように、統合失調症の治療でのロキサピンの推奨初期経口投与量は10〜20mg/日であり、1日2〜4回に分けて投与する。しかし、この投与量は、一般に有効でなく、用量を徐々に増量し、通常の経口投与量は、20〜100mg/日、典型的には60〜100mg、最大で250mgである。典型的な単回急性投与量は20〜50mgである。ロキサピンの典型的な1日筋肉内投与量は、重度の精神障害(主として統合失調症)の治療で50〜150mgであり、経口投与の場合と同様に、通常、総投与量を2〜4回に分割して投与する。ロキサピン含有製品の製造業者[Lederle Laboratories]によって行われた研究に基づくと、経口投与後のTmaxは、2〜3時間である。経口投与後のCmaxについての情報は議論の余地があり、2つの研究報告が対立している。ある報告によれば、ロキサピンおよびその代謝物のCmaxは、25mg経口投与後で約0.35μg/mlである。しかし、異なる研究によれば、ロキサピン単独のCmaxは、25mg経口投与後で約10〜12ng/mlである。筋肉内製剤の明確なPK研究は存在しない。しかし、挙動観察を行えば、吸収が比較的遅いことが示唆されるはずである。
【0022】
[0024] しかし、本発明による偏頭痛の治療で、ロキサピンは、単回投与当たり約0.3〜約20mg、好ましくは約1〜約10mg、最も好ましくは約2〜約6mgの投与量で投与する。一般に、偏頭痛発作時に単回投与すると有効であり、1日に複数回投与する必要はない。本発明の特定の実施形態では、偏頭痛が軽減するまで、より少ない投与量の連続として上記の量を投与する。
【0023】
[0025] うつ治療でのアモキサピンの典型的な1日経口投与量は、200〜400mgである。治療は通常、経口投与量50mgで1日3回投与すること(すなわち1日総投与量は150mg)から出発し、投与量を徐々に増量する。経口投与後のアモキサピンのTmaxは、100mg経口投与後で約1.5時間である。同様の投与後のCmaxは、約50ng/mlである[Calvoら、Int J Clin Pharmacol Ther Toxicol(1985)23:180]。最も低量で使用される経口投与量(50mg)での投与後、Cmaxは、約30ng/mlである[Jueら、Drugs(1982)24:1]。アモキサピンの反復投与後、活性型薬物の蓄積が認められ、血中濃度は約30〜300ng/mlである(Calvoら、1985)。
【0024】
[0026] しかし、本発明による偏頭痛の治療で、アモキサピンは、単回投与当たり約3〜約100mg、好ましくは約10〜約40mgの投与量で投与する。
【0025】
[0027] ロキサピンまたはアモキサピンを含む組成物は、全身投与できる任意の様々な方法で患者または対象に投与することもできる。これには、吸入による投与、非経口投与、例えば注射による投与(例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、クモ膜下または皮下)、および粘膜投与(例えば、鼻腔内、経口、または直腸経路)がある。本発明の好ましい実施形態では、ロキサピンまたはアモキサピンを含む医薬組成物は、これらだけに限らないが、鼻投与、舌下投与(または他の口腔投与)、肺投与(すなわち、吸入器や噴霧器などによる肺への吸入)、直腸投与を含めた、吸入または注射、あるいは粘膜投与によって投与される。その有効成分は、単独で投与することもでき、例えば本節で記載するような他の生物学的に活性がある薬剤とともに投与することもできる。全身に投与することもでき、局所に投与することもできるが、全身に投与することが好ましい。局所の場合、薬剤を最初に全身循環に入れずに、鼻を介して直接脳に投与することが好ましい。嗅覚路内の細胞外空間に薬剤を通過させることにより、このように鼻を介して脳に薬剤を入れることができる。
【0026】
[0028] 本発明の医薬組成物は、上記のように、目的の投与経路に適合するように製剤化される。当技術分野で周知のように、異なるタイプの組成物は通常、異なる投与経路で使用するように調製される。一般に、組成物は、様々な賦形剤、添加剤、および安定に貯蔵する、投与を容易にするなどの目的で含まれる薬剤を含む。
【0027】
[0029] 例えば、静脈内投与または他の注射用の組成物は通常、滅菌等張水性緩衝液中の溶液である。必要な場合、組成物は、可溶化剤、および注射部位の疼痛を軽減するリドカインなどの局所麻酔剤をも含むことができる。
【0028】
[0030] 本発明の組成物を経口投与すべき場合、それは、例えば、錠剤、カプセル剤、カシェ剤、ジェルキャップ剤、液剤、懸濁剤などの形で製剤化することができる。錠剤またはカプセル剤は、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、充填剤(例えば、ラクトース、微結晶性セルロースまたはリン酸水素カルシウム)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ)、崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム)、湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)など、薬学的に許容される賦形剤を用いて従来の手段で調製することができる。錠剤は、当技術分野で周知の方法で被覆することができる。経口投与用液体製剤は、例えば、液剤、シロップ剤または懸濁剤の形をとることもでき、使用前に水または他の適切な溶媒とそれを構成する乾燥物として提供することもできる。このような液体製剤は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または硬化食用油)、乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア)、非水性溶媒(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコールまたは分画植物油)、保存剤(例えば、メチルまたはプロピル−p−ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸)など、薬学的に許容される添加剤を用いて従来の手段で調製することができる。この製剤はまた、緩衝塩、着香剤、着色剤および甘味剤を適宜含んでもよい。経口投与用製剤は、予防用のまたは治療用の(複数の)薬剤の緩徐放出、制御放出または持続放出に適するように製剤化することができる。
【0029】
[0031] 本発明の組成物はまた、注射による、例えばボーラス注射または持続注入による非経口投与用に製剤化することもできる。注射用製剤は、単位剤形で、例えばアンプルでまたは複数回投与用容器で、保存剤を加えて提供することができる。組成物は、油性または水性溶媒中の懸濁剤、液剤、乳剤のような形をとることができ、懸濁化剤、安定化剤、分散剤などの製剤上の薬剤を含むことができる。あるいは、有効成分は、使用前に適切な溶媒、例えば、発熱物質を含まない滅菌水とそれを構成する散剤の形でもよい。
【0030】
[0032] 鼻腔から本発明の組成物を粘膜投与すべき場合、組成物は、エアロゾル剤、スプレー剤、ミスト、または滴剤の形に製剤化することができる。具体的には、適切な噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切な気体を用いて、圧縮パックまたは噴霧器からエアロゾルスプレーとして放出する形で本発明の組成物を都合よく送達することができる。圧縮エアロゾルの場合、単位投与量は、一定量を計量して送達するバルブを用意することで決定することができる。吸入器または注入器中で使用する例えばゼラチンのカプセル剤および薬包は、化合物とラクトースやデンプンなど適切な粉末基剤との粉末混合物を入れて作製することができる。
【0031】
[0033] 本発明の組成物はまた、坐剤または留置浣腸剤など、例えばココアバターや他のグリセリドなど従来の坐剤基剤を含む直腸用組成物に製剤化することができる。
【0032】
[0034] 本発明の組成物はまた、経皮投与用に製剤化することもできる。当技術分野で一般に知られているように、経皮投与用に、活性型化合物を軟膏、ザルベ、ゲル、またはクリーム中に配合することができる。経皮投与に適合された医薬組成物は、表皮との密接な接触が長期間持続することが意図される不連続な貼付剤として提供することができる。本発明の組成物を局所に投与すべき場合、組成物は、例えば、軟膏剤、クリーム剤、経皮貼付剤、ローション剤、ゲル剤、スプレー剤、エアロゾル剤、液剤、乳剤の形、または当業者に周知の他の形に製剤化することができる。噴霧できない局所剤形では、局所適用に適合する担体あるいは1種または複数種の賦形剤を含み、好ましくは水より大きな力学的粘性を有する粘性ないし半固体または固体の形が通常使用される。適切な製剤には、それだけに限らないが、液剤、懸濁剤、乳剤、クリーム剤、軟膏剤、散剤、塗付剤、ザルベなどがあり、これらは、所望なら、滅菌され、または例えば浸透圧など様々な特性に影響を与える補助剤(例えば、保存剤、安定化剤、湿潤剤、緩衝液、または塩)と混合されている。他の適切な局所剤形には、噴霧できるエアロゾル製剤があり、その有効成分は、好ましくは固体または液体の不活性担体と組み合わせて、圧縮した揮発性物質(例えばフロンなどの気体噴射剤)との混合物の形で、またはスクイーズボトル中に詰め込まれる。所望なら、保湿剤または湿潤剤を医薬組成物および剤形に加えることもできる。このような追加の成分の例は、当技術分野で周知である。
【0033】
[0035] 本発明の組成物はまた、デポー製剤として製剤化することもできる。このような長期間作用する製剤は、埋め込み(例えば皮下または筋肉内)によって、または筋肉内注射によって投与することができる。したがって、例えば、適切なポリマー物質または疎水性物質を用いて(例えば許容される油中の乳剤として)、あるいはイオン交換樹脂を用いて、あるいはやや溶解し難い誘導体として、例えばやや溶解し難い塩として組成物を製剤化することができる。
【0034】
[0036] 特定の実施形態では、医薬組成物は、制御放出または持続放出システムで送達することができる。一実施形態では、ポンプを用いて制御放出または持続放出を達成することができる(Langer、Science、249:1527−1533(1990);Sefton、1987、CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:10;Buschwaldら、1980、Surgery 88:507;Saudekら、1989 N.Engl.J.Med.321:574を参照のこと)。他の実施形態では、ポリマー物質を用いて、有効成分の制御放出または持続放出を達成することができる(例えば、Medical Applications of Controlled Release、Langer and Wise(eds.)、CRC Pres.、Boca Raton、Florida 1974);Controlled Drug Bioavailability、Drug Product Design and Performance、Smolen and Ball(eds.)、Wiley、New York(1984);Ranger and Peppas、1983、J.Macromol.Sci.Rev.Macrol.Chem.23:61を参照のこと;Levyら、1985 Science 228:190;Duringら、1989、Ann.Neurol.25:351;Howardら、1989、J.Neurosurg.71:105;米国特許第5,679,377号;米国特許第5,916,597号;米国特許第5,912,015号;米国特許第5,989,463号;米国特許第5,128,326号;PCT公開WO 99/12154;およびPCT公開WO 99/20253も参照のこと)。持続放出型製剤に使用されるポリマーの例には、これらに限らないが、ポリ(2−ヒドロキシメタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、ポリグリコリド(PLG)、ポリ無水物、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)、およびポリオルトエステルがある。好ましい実施形態では、持続放出型製剤に使用されるポリマーは、不活性であり、濾過できる不純物がなく、貯蔵上安定であり、無菌であり、かつ生分解性である。他の実施形態では、治療上の標的に近接して制御放出または持続放出システムを設置することができ、それによって全身投与量のほんの一部しか必要としなくなる(例えば、Goodson、Medical Applications of Controlled Release、supra、vol.2、pp.115−138(1984)を参照のこと)。
【0035】
[0037] 本発明の特徴であるロキサピンおよびアモキサピンの好ましい投与方法は、吸入による投与または肺投与である。肺への薬剤送達は、液体噴霧器、エアロゾルベースの定量式吸入器(MDI)およびドライパウダー分散器を含めたいくつかの異なる手法によって達成される。このタイプの投与で使用される組成物は通常、ドライパウダー剤またはエアロゾル剤である。本発明の投与の好ましい方法であるエアロゾル剤の投与では、組成物は一般に吸入器によって送達される。いくつかのタイプの吸入器を下記で説明する。
【0036】
[0038] ドライパウダーは、有効成分に加えて、担体、吸収促進剤を含み、場合によっては他の成分を含む。担体は、例えば、単糖類、二糖類、多糖類、糖アルコールまたは他のポリオールである。適切な担体には、ラクトース、グルコース、ラフィノース、メレジトース、ラクチトール、マルチトール、トレハロース、スクロース、マンニトール、およびデンプンがある。ラクトースが好ましく、特に一水和物の形のものが特に好ましい。ポリペプチド、界面活性剤、アルキルグリコシド、脂肪酸のアミン塩、リン脂質などの吸収促進剤も含まれる。製剤成分は通常、微細な形でなければならず、すなわちその中央粒径は一般に、レーザー回折計またはコールターカウンターで測定して、約5〜10μmより小さくすべきであり、好ましくは約1〜約5μmである。当技術分野で周知の方法、例えば、粉砕、微細化または直接析出を用いて、所望の粒子サイズにすることができる。
【0037】
[0039] 吸入による投与では、本発明による化合物は、2003年5月20日出願の米国特許出願10/152,639で論じられているように、濃縮エアロゾルの形で都合よく送達される。同出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。エアロゾル剤形でのロキサピンまたはアモキサピンの吸入または肺投与が本発明での使用に好ましく、エアロゾル剤の空気動力学的中央粒径(MMAD)が約0.01〜約3μmであることが好ましい。このようなエアロゾル剤は、薬剤の薄膜から作成することができ、その薄膜自体は、適当な溶媒中の薬剤溶液または薬剤自体の溶融物を用いて作成することができる。その膜は、厚さ約0.05〜約20μmであることが好ましいが、このような薄膜からロキサピンおよびアモキサピンのエアロゾルを作成するのに特に適した装置は、2003年8月4日出願の、「Thin−Film Drug Delivery Article and Method of Use」という名称の係属中の米国特許出願10/633,877、および2003年8月4日出願の、「Rapid−Heating Drug Delivery Article and Method of Use」という名称の係属中の米国特許出願10/633,876に開示され、どちらの出願もその全体が参照により本明細書に組み込まれている。このようなエアロゾルの作成は、エアロゾル中で有効成分の回収率が少なくとも50%となるのに十分な気化条件下で実施することが好ましく、ここで前記エアロゾルに含まれる化合物分解産物は約5重量%未満である。
【0038】
[0040] アモキサピンおよびロキサピンを頭痛の、特に偏頭痛の発作の治療に使用するとき、好ましくは薬剤を投与してから30分以内に、より好ましくは15分以内に、最も好ましくは5分以内に最大血漿濃度が生じるように、アモキサピンまたはロキサピンを急速に送達することが好ましい。このような急速な薬剤吸収は、静脈内送達またはエアロゾル吸入を含めた経路によって達成されるが、やはりエアロゾル投与が好ましい経路である。
【0039】
[0041] より具体的には、偏頭痛治療に関して、本発明は、投与してから30分以内に、好ましくは投与してから15分以内に最大薬剤血中濃度に達する、ロキサピンの送達方法を提供する。こうすると、ロキサピンの血中濃度のピーク増加速度が少なくとも1ng/ml/分となり、投与してから15分以内にロキサピンの血中濃度が少なくとも5ng/mlとなり得る。
【0040】
[0042] アモキサピンを用いた偏頭痛治療に関しても、本発明は同様に、投与してから30分以内に、好ましくは投与してから15分以内にアモキサピンの最大血中濃度に達する、アモキサピンの送達方法を提供する。これを行うと、アモキサピンの血中濃度のピーク増加速度が少なくとも3ng/ml/分となり、投与してから15分以内にアモキサピンの血中濃度が少なくとも10ng/mlとなり得る。
【0041】
[0043] この薬剤濃度への急速な到達は、好ましくは、薬剤の薄膜からエアロゾル剤を作成することによって、最も好ましくは上記で述べた2つの特許出願に開示されている薄膜および急速加熱用の装置を用いることによって達成される。
【0042】
[0044] 併用して投与してもロキサピンまたはアモキサピンの疼痛緩和作用が阻害されず、あるいは望ましくない併用効果が生じないかぎり、本発明の組成物は、1種または複数種の他の治療用薬剤との併用療法で使用することができる。ロキサピンまたはアモキサピンと他の治療用薬剤は、相加的にまたは相乗的に作用することができる。好ましい実施形態では、本発明の組成物を他の治療用薬剤の投与と同時に投与する。この薬剤は、本発明のロキサピンまたはアモキサピンを含むものと同じ組成物の一部でもよく、それと異なる組成物中のものでもよい。他の実施形態では、他の治療用作用因子の投与の前にまたは後に、ロキサピンまたはアモキサピンを投与する。慢性疼痛の治療に関与する併用療法の一実施形態では、併用療法は、特定の薬剤に関係する毒性を最小限にするために、ロキサピンまたはアモキサピンを含む組成物と他の治療用薬剤を含む組成物を交互に投与する。片方の投与持続期間は、例えば、1カ月、3カ月、6カ月、1年、またはさらに長い期間でもよい。特定の実施形態では、毒性を含むがそれだけに限らない有害な副作用が潜在的に生じる可能性がある他の治療用薬剤と同時に本発明の化合物を投与するとき、有利には、有害な副作用が誘発される閾値より少ない投与量でその治療用薬剤を投与することができる。
【0043】
[0045] 例えば、ロキサピンまたはアモキサピンは、本発明の量または投与量で、剤形中で他の鎮痛剤、例えば、オピオイド、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)などと組み合わせることができ、それらには、ヒドロモルホン、コデイン、モルヒネ、ニコモルヒネ、ヒドロキシコドン、フェンタニール、アスピリン、イブプロフェン、ジクロフェナク、ナプロキセン、ベノキサポルフェン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、インドプロフェン、カルポルフェン、オキサプロジン、スプロフェン、チアプロフェン酸、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、ゾメピラク、アセメタシン、フェンチアザ、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、ニフルム酸、トルフェナム酸、ピロキシカム、イソキシカム、あるいはその薬学的に許容される塩、プロドラッグまたは混合物が含まれる。本発明の剤形中に含めることができる他の適切な鎮痛剤には、ステロイド性抗炎症剤が含まれ、例えば、グルココルチコイド、デキサメサゾン(DECADRON(商標))、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロン;プロスタグランジン類、トロンボキサン類、ロイコトリエン類などのエイコサノイド類;アスピリン、サリチル酸ナトリウム、トリサリチル酸コリンマグネシウム、サルサレート、ジフルニサル、サリチルサリチル酸、スルファサラジン、およびオルサラジンを含めたサリチル酸誘導体;アセトアミノフェンおよびフェナセチンを含めたパラアミノフェノール誘導体;インドメタシン、スリンダク、およびエトドラクを含めたインドールおよびインデン酢酸;セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、エテロコキシブおよびパレコキシブを含めたシクロオキシゲナーゼ2特異的阻害剤;トルメチン、およびケトロラクを含めたヘテロアリール酢酸;メフェナム酸、およびメクロフェナム酸を含めたアントラニル酸;オキシカム(例えば、ピロキシカムまたはテノキシカム)、およびピラゾリジンジオン(例えば、フェニルブタゾン)を含めたエノール酸;およびナブメトンを含めたアルカノンである。
【0044】
[0046] ロキサピンまたはアモキサピンはまた、アルピロプリド、ジヒドロエルゴタミン、ドラセトロン、エルゴコルニン、エルゴコルニニン、エルゴクリプチン、麦角、エルゴタミン、フォナジン、リスリド、ロメリジン、メチセルジド、オキセトロン、ピゾチリン、スマトリプタン、リザトリプタン、ナラトリプタン、エレトリプタン、フロバトリプタン、ドニトリプタン、ゾルミトリプタン、その混合物など、他の抗偏頭痛剤と組み合わせて医薬剤形に製剤化することもできる。
【0045】
[0047] ロキサピンまたはアモキサピンはまた、抗うつ剤と組み合わせて医薬剤形に製剤化することもできる。適切な抗うつ剤には、これらに限らないが、カロキサゾン、シタロプラム、ジメサザン、フェンカミン、インダルピン、塩酸インデロキサジン、ネフォパム、ノミフェンシン、オキシペルチン、パロキセチン、セルトラリン、チアゼシム、トラゾドン、イプロクロジド、イプロニアジド、イソカルボキサジド、オクタモキシン、フェネルジン、コチニン、ロリプラム、マプロチリン、メトラリンドール、ミアンセリン、ミルタゼピン、アジナゾラム、アミトリプチリン、アミトリプチリノキシド、ブトリプチリン、クロミプラミン、デメキシプチリン、デシプラミン、ジベンゼピン、ジメタクリン、ドキセピン、フルアシジン、イミプラミン、イミプラミンN−オキシド、イプリンドール、ロフェプラミン、メリトラセン、メタプラミン、ノルトリプチリン、ノキシプチリン、オピプラモール、ピゾチリン、プロピゼピン、プロトリプチリン、キヌプラミン、チアネプチン、トリミプラミン、アドラフィニル、ベナクチジン、ブプロピオン、ブタセチン、ジオキサドロール、デュロキセチン、エトペリドン、フェバルバマート、フェモキセチン、フェンペンタジオール、フルオキセチン、フルボキサミン、ヘマトポルフィリン、ハイペリシン、レボファセトペラン、ミナプリン、モクロベミド、ネファゾドン、オキサフロザン、ピベラリン、プロリンタン、ピリスクシデアノール、リタンセリン、ロキシンドール、塩化ルビジウム、スルピリド、タンドスピロン、ソザリノン、トフェナシン、トロキサトン、トラニルシプロミン、L−トリプトファン、ベンラファキシン、ビロキサジン、およびジメルジンがある。
【0046】
[0048] 同様に、ロキサピンまたはアモキサピンは、抗てんかん剤、例えば、バルプロエート、フェニトイン、フェノバルビタール、プリミドンカルバマゼピン、エトスクシミドまたはクロナゼパムと組み合わせることもできる。
【実施例】
【0047】
[0049] 以下の実施例は、本明細書に記載の本発明をさらに説明するものであり、本発明の範囲を限定するものではまったくない。
【0048】
実際の実施例
実施例1
マウスのもがき(ライジング)行動試験
[0050] 体重23〜28gの雄マウスをこの試験に用いた。マウスに酢酸を注射した(0.5%、腹腔内)。この処置により、対照動物に認識可能なもがき反応が誘発される。酢酸注射の5分後から10分間のもがきの回数をカウントする。1グループ当たり10匹のマウスを試験した。試験は盲検で行った。酢酸の30分前に腹腔内投与した、5つの投与量でのロキサピンおよびアモキサピン(0.2%ヒドロキシプロピルメチルセルロース中に分散し、次いで食塩水に溶解した)について評価し、これを溶媒対照(0.2%ヒドロキシプロピルメチルセルロースの食塩水溶液)グループと比較した。ロキサピンの投与量は、体重1kg当たり0.125、0.25、0.5、1および2mgであった。アモキサピンの投与量は、体重1kg当たり1、2、4、8および16mgであった。モルヒネ(8mg/kg、腹腔内)を同じ実験条件下で投与し、これを基準物質として用いた。マンホイットニーU検定を使用して、処置グループを溶媒対照と比較することによってデータを解析した。
【0049】
[0051] この結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
[0052] 表1に示すように、アモキサピンは、酢酸によって誘発されたもがき行動の回数を用量依存的に低下させ、2mg/kgから低下に有意性が認められた。4mg/kgから、効果が明確に認められた。ロキサピンは、酢酸によって誘発されたもがき行動の回数を用量依存的に低下させ、0.125mg/kgから低下に有意性が認められた。0.25mg/kgから、効果が顕著に認められた。アモキサピンでは2mg/kgから、ロキサピンでは0.25mg/kgから鎮静が認められた。モルヒネは、各実験で酢酸によって誘発されたもがき行動に対する顕著な拮抗作用を示した。
【0052】
実施例2
ビーグル犬におけるロキサピンの吸入型エアロゾル製剤の急性および5日反復投与毒性試験
[0053] この試験の目的は、イヌに5日間反復投与する試験で、個々の最大忍容量、および2つの臨床的に重要な投与量でのロキサピンの潜在的な毒性を調べることであった。
【0053】
[0054] この試験は、87 Senneville Road、Senneville、Quebec、Canada、H9X3R3にあるCTBRで、CTBRの標準処置手順(CTBR’s Standard Operating Procedures)に従って行われた。
【0054】
[0055] 試験物は、口咽頭吸入によって送達されるロキサピンエアロゾル剤であった。
【0055】
[0056] 使用した動物は、Route 2、Box 113、Cumberland、VA 23040にあるCovance Research Productより購入したビーグル犬であり、処置開始時に約7〜10カ月齢および6〜12kgであった。動物は、バータイプの床および自動給水バルブを備えるステンレス鋼製の檻の中でそれぞれ独立に飼育した。各檻は、計画、グループ、動物、入れ墨番号および性別を示した、色分けされた檻札で明確に分類した。各動物は、片方の耳介の腹側にある永久的な入れ墨番号および/または文字で一意的に識別した。
【0056】
[0057] 動物室の環境および光周期の条件は以下の通りであった。
【0057】
【表2】

【0058】
[0058] 指定された手順を行う間以外、すべての動物は、認定されている標準的な市販の小粒状イヌ用飼料(400g、PMI Certified Dog Chow 5007:PMI Nutrition International Inc.)を自由に摂取させた。
【0059】
[0059] 食餌中の混入物(例えば、重金属、アフラトキシン、有機リン酸、塩素化炭化水素、PCB)の許容最大濃度を制御した。
【0060】
[0060] 公共の水道水を軟水化し、逆浸透によって精製し、紫外線照射したものを自由に飲むことができるようにした(指定された手順を行う間以外)。
【0061】
[0061] 動物を実験環境に慣れさせるために、動物を受け入れてから処置を開始するまで約3週間の順化期間をおいた。
【0062】
[0062] 処置を開始する前に、すべての動物の体重を測定し、無作為化手順を用いて動物を各処置グループに割り当てた。無作為化は、体重をパラメーターに使用する層別化によって行った。雄と雌は別々に無作為化した。同腹仔が必ずすべてのグループに均一に分布しているようにするために、最終的な動物の割り当てを確認した。
【0063】
[0063] 動物を以下のグループに割り当てた。ロキサピン2mg/kgの反復投与(雄2匹、雌2匹)、ロキサピン0.2mg/kgの反復投与(雄2匹、雌2匹)、溶媒対照反復投与(雄2匹、雌2匹)、少なくとも48時間は間を置くロキサピンの単回漸増投与(雄1匹、雌1匹)。
【0064】
[0064] 注入チューブと排出チューブを取り付けた口咽頭顔面マスクを用いて、試験エアロゾル剤で動物を処置した。処置する間、動物を拘束用スリングに入れた。
【0065】
[0065] イヌに試験物質を吸入させることを可能にするマスクを使用した。このマスクはプラスチック製の円筒からなり、鼻が円筒の内側にあり、動物が短いチューブを介して口呼吸できるようにイヌの鼻口部に取り付けた。有機溶媒に溶解したロキサピン溶液にステンレス鋼箔を浸漬して被覆することにより、箔上に形成された厚さ約4ミクロンのロキサピンの薄膜をおよそ400℃まで加熱することでロキサピンを気化することによって、試験物を生成した。気化ロキサピンを濃縮することで得られたエアロゾル剤を、予め乾燥させた圧縮空気によって混合チャンバー中に導入した。排気路内に設置されたゲートバルブを用いて維持された微陽圧下で、混合チャンバーを操作した。真空ポンプを用いて、必要な流速で吸入チャンバーを排気し、この構造から空気を排出する前に5μmの粗いフィルターからなる精製システムを介して、汚染空気(過剰なエアロゾル剤および呼気)をくみ出した。送達チューブを介して得られた雰囲気をイヌのマスクに運搬した。
【0066】
[0066] 溶媒対照グループを、ロキサピン被覆箔の代わりに清潔なステンレス鋼箔が入っている薬剤加熱装置を通過した、予め乾燥させた圧縮空気にさらした。薬剤がないこと以外、空気を操作装置すなわち加熱装置中を通過させ、イヌ用マスクを介してしかイヌが呼吸できないようにし、同様にイヌを拘束し取り扱うという点で、2mg/kgの反復投与グループと同じ条件で空気にさらした。
【0067】
[0067] 必ず投与量が正確となるようにするために、それぞれの日の処置開始前に、試験物エアロゾル剤の雰囲気の特徴付けを行った。各目標エアロゾル剤濃度を確立するのに必要とされる、薬剤にさらすためのシステムの操作条件を、動物を薬剤にさらすための代表的なマスクから収集した片面だけのガラス繊維フィルター試料から、重量測定法で決定した。
【0068】
[0068] ロキサピンの投与量が0.2mg/kgおよび2mg/kgの際に、チャンバー内の雰囲気濃度が均一であることも判定した。これは、混合チャンバーの外周近辺に設置された、等間隔にある2つのイヌの呼吸用ポートから、重量測定分析用に2組のフィルター試料を収集するステップを含んでいた。チャンバー内での試験物の全体的分布およびポート内でのその変動を評価するために、追加の試料も基準ポートから収集した。この分析から得られた結果は、エアロゾル剤の分布が均一であることを実証するものであった。
【0069】
[0069] 各ロキサピン投与量でのエアロゾル粒子サイズの分布分析は、カスケードインパクターを使用して行った。この方法は、一連のサイズ範囲に分級し、その後重量測定分析を行うことからなる。Andersen Operating Manual TR#76−900016に基づいたコンピュータプログラムを用いて、重量測定データから、中央粒径およびその幾何標準偏差(MMAD±GSD)を算出した。試験中に測定された典型的な空気動力学的中央粒径およびGSDは、1.4μm±2.2であった。
【0070】
[0070] 動物が呼吸する区域の試料採取ポートから、実際のエアロゾル剤のマスクでの排出濃度を、重量測定法を用いて、薬剤にさらしたそれぞれの日に少なくとも1回測定した。
【0071】
[0071] 各処置レベルでの有効成分の実際投与量(mg/kg/日)は、以下の通りに決定した。
【0072】
【表3】

【0073】
[0072] Buxco Electronics LS−20システムを用いて、最初の薬剤処置の前に各動物について2回測定を行った。
【0074】
[0073] 試験の一部である漸増投与の特定の投与日において、有効成分の実際投与量の計算例は、以下の通りである。
【0075】
[0074] 平均チャンバー内エアロゾル濃度:0.489mg/L
【0076】
[0075] MMAD±GSD:1.1μm±2.2。Witschi & Nettesheim、Mechanisms in Respiratory Toxicology、Vol.1:54−56、CRC Press,Inc.1982に基づく。上記のMMADおよびGSDから、析出割合(D)は0.38となる。
【0077】
[0076] 平均BW:8.3kg
【0078】
[0077] 試験前平均RMV:7.86L/分(試験中変化しないと想定)
【0079】
[0078] 曝露時間:15分
【0080】
[0079] 上記の表中の式に上記のデータを適用すると、実際投与量は2.6mg/kgとなる。
【0081】
[0080] エアロゾル剤を送達し、送達投与量を算出する上記の手法を用いて、ロキサピンエアロゾル剤でイヌを処置した。最初に、雄1匹および雌1匹に投与量1回当たり1mg/kgでロキサピンを投与したが、動物の挙動に変化は認められなかった。数日後、同じ動物にロキサピンを2.6mg/kg投与すると、衰弱、振戦、および活動低下が認められた。
【0082】
[0081] これに続いて、上記のように、雄イヌ2匹および雌イヌ2匹に対照溶媒を5日間投与した。このイヌは、挙動の変化を示さなかった。さらに、雄イヌ2匹および雌イヌ2匹にロキサピンを0.2mg/kg(1日当たり)、5日間投与した。このイヌは、挙動の変化を示さなかった。最後に、雄イヌ2匹および雌イヌ2匹にロキサピンを2mg/kg(1日当たり)、5日間投与した。このイヌは、衰弱、振戦、および活動低下を示したが、咳などの呼吸についての有害な所見は認められなかった。特に、喘鳴、呼気相の延長、咳などの気管支収縮の徴候は認められなかった。飼料消費は、すべての動物でおおよそ正常であった。
【0083】
[0082] 処置期間の終了時に、ペントバルビタールナトリウムの静脈内注射による麻酔後に腋窩動脈または大腿動脈を切開して脱血することによって、動物を剖検した。動物を動物室から剖検区域に運ぶ前に、鎮静剤の米国薬局方(U.S.P)注射用塩酸ケタミンおよびキシラジンを筋肉内注射によって投与した。自己融解による変化を避けるため、安楽死させた動物すべてに対して直ちに、屠殺体の肉眼での完全な病理検査を行った。予定の剖検前の1晩は、すべての動物に飼料を与えなかった。剖検中どの動物にも、処置に関係する所見は認められなかった。肉眼的な病変があれば、それについて組織病理検査を行った。やはり、処置に関係する所見は認められなかった。さらに、喉頭、気管、主な気管支、気管支を含めた肺の組織病理学的検討を行った。処置に関係する異常は認められなかった。
【0084】
[0083] 試験の一部である反復投与(5日)の最初の日に、毒物動態分析のため、投与前、投与開始の2分後、投与直後、投与の20分後、1時間後、3時間後、9時間後、24時間後に血漿試料を収集した。ロキサピン血漿濃度分析まで、試料は−80℃で貯蔵した。ロキサピン血漿濃度は、LC/MS、LC/MS/MS、および/またはGC/MSなど、当技術分野で周知の分析法を用いて測定することができる。予測的な代表的なロキサピン毒物動態データを、図1および2に提供する。このデータにおいて、ロキサピン血漿濃度がロキサピンエアロゾル剤投与後非常に急速に上昇し、薬剤吸入終了2分以内に血漿濃度のピークが得られることに留意されたい。ロキサピン血漿濃度の上昇速度は、投与量2mg/kgで投与の最初の2分を超えたとき平均で少なくとも70ng/mL/分、投与量2mg/kgで投与の最初の10分を超えたとき20ng/mL/分であることが認められる。ロキサピン血漿濃度の上昇速度は、投与量0.2mg/kgで投与の最初の2分を超えたとき平均で少なくとも7ng/mL/分、投与量0.2mg/kgで投与の最初の10分を超えたとき2ng/mL/分であることが認められる。治療効果のある血漿濃度である、少なくとも0.5ng/mL、1ng/mL、2ng/mL、4ng/mL、8ng/mLは、または15ng/mLでも、どちらの投与量でも10分以内、5分以内に、また2分以内にでも得られる。
【0085】
予測実施例
実施例3
ロキサピン濃縮エアロゾル剤の第I相臨床試験
[0084] 2003年8月4日出願の「Rapid−Heating Drug Delivery Article and Method of Use」という名称の米国特許出願10/633,876に開示されている手持ち型濃縮エアロゾル発生装置を、患者の吸入によって装置が作動してから1秒未満の間にロキサピン濃縮エアロゾルを(被覆の厚さに応じて)0、2.5mg、5mgまたは10mgを放出するようにロキサピンで被覆する。
【0086】
[0085] 一般に、18〜45歳であり、重篤な精神疾患、神経疾患、肺疾患、腎疾患または心血管疾患にかかっていない健常志願者を募集してこの試験に参加させ、この志願者にロキサピン吸入の潜在的リスクを説明し、インフォームドコンセントを求める。同意した者をこの試験に登録し、その志願者に静脈内カテーテルを入れる。
【0087】
[0086] 次いで、志願者に手持ち型装置を与える。装置を与える前に、装置の使用に適した呼吸の技術を志願者に訓練してもよく、訓練しなくてもよい。最低限、息を完全に吐き出し、次いで装置を唇に付け、長く深い吸入を行い、息を吐き出す前にこれを数秒間保持することを、各志願者に教える。次いで志願者は装置を使用し、処方された量のロキサピン濃縮エアロゾル剤が投与される。志願者および試験を実施している医療関係者には、薬剤の投与量を知らせなくてもよく、薬剤がプラセボと置き換えられているかどうか(すなわち、ロキサピンが0mgである装置)を知らせなくてもよい。
【0088】
[0087] 投与してから約0.3分、1分、3分、10分、30分、60分、120分、240分、360分、500分、750分、および1000分後に、静脈血試料を得る。ロキサピンに関する文献に記載の確立された方法を使用して、血漿薬剤濃度を決定する。この分析から、Tmaxが10分未満であり、3分後の試料または1分後の試料でTmaxが通常出現することが明らかとなる。濃縮エアロゾル剤送達のバイオアベイラビリティは、35%より高く、しばしば55%より高い。
【0089】
[0088] 以下の表に、様々な投与量での例示的な予想Cmax値を提供する。
【0090】
【表4】

【0091】
実施例4
急性偏頭痛発作の治療に関するロキサピンの第II相臨床試験
[0089] この試験の方法は、二重盲検無作為化プラセボ対照投与量範囲設定試験である。18〜65歳の、その両端の年齢を含めた健常な男女であり、自己報告による中程度から重度の偏頭痛(前兆を伴うまたは伴わない偏頭痛)歴があり、過去3カ月の間に1カ月当たり1〜6回の平均頻度で発作を起こした被験者を募集して、試験に参加させる。参加基準を満たしている被験者を登録し、無作為化して以下の治療のうち1つを受けさせる。プラセボ投与、ロキサピン急速送達システムで約1.25mg投与、ロキサピン急速送達システムで約2.5mg投与、ロキサピン急速送達システムで約5mg投与、ロキサピン急速送達システムで約10mg投与。これより高い投与量のロキサピンはまた、第I相臨床試験で安全であると認められた場合に試験することもできる。ロキサピン急速送達システムとは、最大血漿薬剤濃度が1時間、30分、15分、10分、5分、さらに2分以下の時間内にでも得られるように、ロキサピンを偏頭痛患者に送達する手段である。第I相臨床試験に関して上記の濃縮エアロゾル送達システムは、そのようなシステムの1つである。他の急速送達システムには、様々な持続時間の静脈内注入または注射が含まれる。
【0092】
[0090] 無作為化した患者に治療する直前に、患者に自分の頭痛および悪心の重症度を4点スケール(0:無症、1:軽度、2:中程度、3:重度)で、光恐怖症および音恐怖症に関して2点スケール(光によって頭痛がひどくなりますかとの問いに、0:いいえ、1:はい;雑音によって頭痛がひどくなりますかとの問いに、0:いいえ、1:はい)で評価させる。あるいは、11点視覚アナログスケール(0:無症〜10:最も重症)を使用することもでき、他の適切なスケールを使用することもできる。治療の15分後および30分後の時点に、さらに治療の1、2、4、8、12および24時間後にもこの評価を繰り返すよう被験者に要請する。治療の120分後および24時間後に、治療効果についての被験者の包括的な評価(1:非常に不良〜5:非常に良好)を行うよう被験者に要請する。併用している薬剤がもしあれば、それも記録する。
【0093】
[0091] ロキサピン5mgおよび10mgを投与したグループは、1時間以内に薬剤の強い治療効果を示す。具体的には、1時間で、30分でも、時には15分でも、治療した患者の頭痛の重症度は治療前より顕著に低下する。1時間での頭痛の軽減の点から、5mgまたは10mg投与とプラセボ投与を比較すると、ロキサピンで治療した患者が顕著に優位であることが示され、これは、(適当な大きさのサンプルサイズを想定した場合)偏頭痛スコアが低い、悪心スコアが低い、光恐怖症および音恐怖症の出現が少ない、ベースラインの頭痛スコアから頭痛スコアが大きく低下する、頭痛が軽度でしかないまたは頭痛のない患者の割合が高い、かつ頭痛のない患者の割合が高いという点から、プラセボ投与に対して薬剤投与が統計上有意に(p<0.05レベルでの)優位であることによって実証される。プラセボ治療患者に救済薬剤を投与しない限り、2、4、8時間でも、さらに24時間でもこの優位性は存続する。同様の効果は、適当な大きさのサンプルを用いれば、投与量1.25mgまたは2.5でも認められるが、この投与量での適当な大きさの患者サンプルを集めるのが難しいことがある(その効果が強くないことがあるので、より多くの患者を必要とする)。また、1.25mgまたは2.5mgより低い投与量では、薬剤が有効となるのにより長い持続時間(例えば、30分の代わりに1時間)が必要となることもある。
【0094】
実施例5
急性偏頭痛発作の治療に関するロキサピンの臨床使用
[0092] 通常は良好な健康状態の35歳の女性が、家にいる間に頭の右側に局在する中程度の疼痛が生じ約10分間続いたことに気づく。その次の10分間に、その疼痛は、よりひどくなり、ズキズキすることを特徴とするものになる。その女性は、これを偏頭痛であると認識し、このような頭痛では、治療しないと、少なくともそれが丸一日持続する傾向があり、頭痛に伴い悪心が生じ、その疼痛が非常にひどいので眠ることが困難または不可能になることも分かる。その女性は、眼に入る明るい光によって生じる疼痛を避けるために居間の照明を消し、ラジオの音で頭痛がひどくなっているのでラジオを消す。彼女は、25mgロキサピン錠剤を口から1杯の水で飲む。その次の15分間に、頭痛はひどくなり始め、その女性の胃の調子が少し悪くなる。しかし、その次の1時間に、頭痛はゆっくりと軽くなり、その女性はだんだんと疲れてくる。胃の調子はもはや気にならなくなる。彼女は少しうたた寝をし、頭痛の何の徴候もない状態で目覚める。光および音は、もはや煩わしいものではない。彼女は、胃の調子が悪いこともなく通常の食事をとる。頭痛は、その次の72時間に再び生じることはなく、さらなる薬剤の服用は不要である。
【0095】
[0093] 本明細書に記載の実施例および実施形態が、例示的な目的のものに過ぎず、それに照らして、様々な改変形態または変更形態が当業者に示唆され、本願の趣旨および範囲、ならびに添付の特許請求の範囲に含まれるべきであることが理解されよう。
【0096】
[0094] 本明細書で引用したすべての刊行物、特許および特許出願は、本明細書によって、すべての目的で、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】ビーグル犬における、投与量2mg/kgでの吸入によるロキサピン投与開始後の各経過時間でのロキサピン血漿濃度(ng/mL)を示す図である。
【図2】ビーグル犬における、投与量0.2mg/kgでの吸入によるロキサピン投与開始後の各経過時間でのロキサピン血漿濃度(ng/mL)を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の疼痛を治療する方法であって、ロキサピン、薬学的に許容されるロキサピンの塩およびロキサピンのプロドラッグからなる群から選択される化合物の有効量を、前記対象に投与することを含む方法。
【請求項2】
前記有効量が、前記対象に存在する疼痛を軽減するのに十分な量である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化合物が全身投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記疼痛が、偏頭痛、群発性頭痛および緊張型頭痛からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記疼痛が偏頭痛である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記疼痛が群発性頭痛である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記疼痛が緊張型頭痛である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記化合物が吸入によって投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記対象がヒトであり、前記疼痛が偏頭痛であり、前記化合物が吸入によって投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ロキサピンを約0.3〜約20mg投与する、あるいはロキサピンを約0.3〜約20mg投与するのと同じロキサピン血中濃度が対象に生じる量の、ロキサピンの塩またはプロドラッグを投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ロキサピンを約1〜約10mg投与する、あるいはロキサピンを約1〜約10mg投与するのと同じロキサピン血中濃度が対象に生じる量のロキサピンの塩またはプロドラッグを投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ロキサピンあるいはその塩またはプロドラッグの対象への投与が、前記投与から約30分以内にロキサピンの最大血中濃度となるように実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
ロキサピンあるいはその塩またはプロドラッグの対象への投与が、前記投与から約15分以内にロキサピンの最大血中濃度となるように実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
ロキサピンあるいはその塩またはプロドラッグの対象への投与が、ロキサピンの血中濃度のピーク増加速度が少なくとも約1ng/ml/分となるように実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
ロキサピンあるいはその塩またはプロドラッグの対象への投与が、前記投与から約15分以内にロキサピンの血中濃度が少なくとも約5ng/mlとなるように実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記化合物が、急速加熱薬剤送達物品または薄膜薬剤送達物品を用いた吸入によって投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
エアロゾル中で少なくとも50%の前記化合物の回収率をもたらし、前記エアロゾルに含まれる化合物の分解産物が約5重量%未満であるように、気化され濃縮される前記化合物が、吸入送達装置によって投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
膜の厚さが約0.5〜20μmである薄膜として、送達装置中の基体上に前記化合物が被覆されている、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記化合物が、空気動力学的中央粒径(MMAD)が約0.01〜約3μmであるエアロゾル剤の形で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記化合物の回収率が少なくとも50%であり、含まれる化合物の分解産物が約10重量%未満であるエアロゾル剤をもたらすのに十分な条件下で、化合物組成物膜から気化される前記化合物が、急速加熱薬剤送達物品によって投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
疼痛を治療するための組成物であって、前記組成物が、(a)ロキサピン、薬学的に許容されるその塩、およびそのプロドラッグからなる群から選択される、鎮痛性を示す量の化合物と、(b)薬学的に許容される担体とを含む、組成物。
【請求項22】
1種以上の鎮痛剤、抗炎症剤または抗偏頭痛剤をさらに含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
疼痛を治療するための薄膜組成物であって、ロキサピン、薬学的に許容されるその塩、およびそのプロドラッグからなる群から選択される、鎮痛性を示す量の化合物を含み、膜の厚さが約0.5〜約20μmである、薄膜組成物。
【請求項24】
対象の頭痛を治療する方法であって、ロキサピン、薬学的に許容されるロキサピンの塩およびロキサピンのプロドラッグからなる群から選択される化合物を、前記対象に有効量投与することを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−514934(P2006−514934A)
【公表日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−555617(P2004−555617)
【出願日】平成15年11月20日(2003.11.20)
【国際出願番号】PCT/US2003/037415
【国際公開番号】WO2004/047844
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(503412296)アレックザ ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (15)
【Fターム(参考)】