説明

疼痛軽減方法

この発明は哺乳動物の無痛感覚を生み出す方法に関する。この方法は主題にωコノペプチド、好ましくはジコノチドを、モルヒネ、ブピビカイン、クロニジン、ハイドロモルホン、バクロフェン、フェンタニル、ブプレノルフィンおよびスフェンタニルからなる群から選ばれる鎮痛剤、またはその薬学的に許容される塩と一緒に投与することを含み、その際にω−コノペプチドはその効力を保持し、そして物理的、化学的にその鎮痛剤と相溶性がある。好ましい投与経路は、髄腔内投与、特に継続的髄腔内注入である。この発明はまた、ωコノペプチド、好ましくはジコノチドをモルヒネ、ブピビカイン、クロニジン、ハイドロモルホン、バクロフェン、フェンタニル、ブプレノルフィンおよびスフェンタニルから選ばれる鎮痛剤と一緒に含有する薬学的製剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はジコノチドなどのω−コノペプチドと他の鎮痛剤を併用することにより、侵害受容の、および神経傷害的疼痛用の鎮痛剤の提供方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、疼痛の知覚を制禦する脳の経路は、なお完全には理解されていないが、”侵害受容回路”と言われている脊髄への知覚導入シナプシス結合は、ある程度詳しく報告されている。そのような経路の最初の部分において、末梢部位から脊髄に突出しているC−およびA−線維が侵害受容シグナルを伝える。脊髄の背面角のポリシナップシス接合部が中脳水道周囲の灰白質部分を含めて、脳の種々の領域に疼痛感覚の中継と調整に関与している(μgeer, P. L., Eccles, J.C., and peer, E.G. (1987). Molecular Neurobiology of the Mammalian Brain, Plenum Press, New York)。無痛覚、即ち疼痛感覚の軽減は、そのような侵害受容経路に沿った伝達を減少させることによって、直接に影響されうる。鎮痛性アヘン剤は、エンドルフィン或いはエンケファリンペプチド−含有ニューロンの効果を真似ることにより作用すると考えられている。そしてそれがC−またはA−線維末端でシナプシス形成(synapse)し、サブスタンスPを含む神経伝達物質の放出を阻害する。脳からの下降性経路もまた、C−またはA−線維点火(firing)を抑制する。
【0003】
神経傷害的疼痛は、複雑で、可変性の病因を有する慢性疼痛の特有なタイプである。それは、しばしば神経の完全な、あるいは部分的横断、神経、神経叢またはソフト組織に対する外傷または傷害、あるいは癌、エイズおよび特発性原因を含む他の状態に起因する慢性状態である。神経傷害的疼痛は、感覚過敏(低下した疼痛閾値、増進した疼痛知覚)および異痛(無害な機械的または熱刺激からの疼痛)により特徴づけられる。その状態は自然と進行する。神経傷害的疼痛の感覚過敏の要素は、疼痛の一層一般化され、急性の型と同じような薬学的緩衝に応答しないので、有効な長時間処理様式の開発が問題視されてきた。
【0004】
モルヒネなどのアヘン化合物は、多くのタイプの疼痛に対して無痛覚を生み出す効果があるが、常には有効でなく、そして患者に耐性を誘発しうる。患者がアヘン性麻酔薬に耐性である場合、満足した鎮痛効果を達成するために、増加投与量が必要となる。高投用量では、これらの化合物は、生命を脅かす呼吸圧迫の様な副作用を生じる。更に、アヘン剤はしばしば、患者の肉体的依存性を引起す。依存性は、摂取されたアヘン製剤の量と患者がそれを摂取した期間に関係していると思われる。この理由から、慢性疼痛を処理するための代わりの療法が広く求められる。必要とする鎮痛化合物の用量を減少するために、アヘン処理の代替物か、あるいは補助療法のいずれかに、役立つ化合物が、疼痛、特に慢性で、処理しにくいタイプの疼痛、の処理に有用性を有する。
【0005】
沢山のL−タイプカルシウムチャンネル拮抗剤、カルシウムキレート剤を含む、様々なタイプのカルシウム阻害剤がモルヒネ無痛覚の補助療法として試験されてきたが、カルシウム自身が、あるアヘン化合物の鎮痛効果を減ずることが知られているので、陽性の結果はカルシウム利用性に基づく直接の効果に起因する(Ben-Sreti)。カルシウム拮抗剤である、EGTAはアヘン製剤の鎮痛効果を増加させるのに有効である。しかしながら、アヘン製剤の補助療法としてのカルシウム拮抗剤の試験からの結果は矛盾してきた。いくつかのL−タイプカルシウムチャンネル拮抗剤は、アヘン製剤の効果を増加することが示されたが、一方、他のこれらの化合物はアヘン製剤の効果を減少させることが示された(contreras)。
【0006】
ω−コノペプチドを疼痛処理に使用することは公知である。例えば、米国特許5051403には、虚血−関連神経細胞被害の処置に一定の結合性/阻害性性質を有するω−コノペプチドの使用が記載されている。米国特許5364832は、疼痛のいくらかの動物モデルでω−コノペプチド含有組成物の有効性を示している。特に、ω−コノペプチドMVILAおよびTVIA、および関連した阻害および結合活性を有するその誘導体は、モルヒネが標準ポジチブ対照である無痛覚の動物モデルで無痛覚を生み出したと報告されている。PCT/US92/11349には、そのようなコノペプチドは、また、モルヒネがポジチブ結果を出すことが期待されない神経傷害的疼痛の軽減を示すことが記載されている。米国5891849はω−コノペプチドが神経傷害的疼痛の進行を阻止するのに有効であると記載している。
【0007】
米国6136786は、(a)モルモットの回腸の電気的刺激による収縮を阻止し、そして(b)神経細胞組織に存在するω−コノペプチドMVILA結合部位に結合する活性を有するω−コノペプチドの有効量をほ乳類動物に投与することからなる、ほ乳類動物にアヘン製剤によって示される鎮痛効果を強化する方法に関する。
【0008】
WangおよびBowersox (CNS Drug Reviews, 61(1): 2-20, (2000))がモルヒネ、クロニジン、バクロフェン、ブピバカインと共に、ジコノチドをラットに髄腔内ボーラス注射したことを報告している。ジコノチドとモルヒネを併用した髄腔内ボーラス注射が、用量依存的に、ラットにおけるホルマリン−誘導−持続性(tonic)回避応答を抑制する。クロニジンとジコノチドを併用した髄腔内ボーラス注射が、用量依存的にラットの後ろ足のホルマリン試験において、持続性疼痛行動を抑制した。バクロフェンとジコノチドを併用した髄腔内ボーラス注射が、ラットの後ろ足のホルマリン試験で相加的無痛覚を示した。ブピバカインとジコノチドを併用した髄腔内ボーラス注射において、ブピバカイン(ナトリウムチャンネル阻害剤)が、ホルマリン試験でジコノチド誘導無痛覚を有意に変化させない。
【0009】
Wang 等(Pain, 84:271-281(2000))は、ホルマリンの皮下注に続いて、ラットへのジコノチドとモルヒネを髄腔内注射(1μgモルヒネ+0.1μgジコノチドおよび3μgモルヒネ+0.3μgジコノチド)が、急性期の回避応答をブロックし、それらは10μlの生理食塩水を髄腔内ボーラス注射を受けた対照と有意に異なっていたと開示している。この文献は、またジコノチド(0.03μg/hr)とモルヒネ(15μg/hr)をラットに7日間同時、髄腔内注入により、注入の最初の日の間に、熱板試験、尾部浸漬試験により測定して、侵害熱刺激に対し、顕著な抗侵害受容の応答を生みだしたことを開示している。その後の熱侵害受容閾値は、対照レベルに向かって減少した。
【0010】
ヒトの疼痛を軽減する改良された方法の必要性がある。その改良方法が、疼痛薬の副作用の減少、各薬剤の必要投与量の減少、或いは薬剤相互作用の減少である。
【0011】
発明の要約
本発明は、ω−コノペプチドと、モルヒネ、ブピビカイン、クロニジン、ハイドロモルホン、バクロフェン、クエン酸フェンタニル、ブプレノルフィンおよびクエン酸スフェンタニルからなる群から選ばれる鎮痛剤、またはその薬学的に許容される塩を含有する医薬製剤であって、該ω−コノペプチドがその効力を維持し、該鎮痛剤と物理的にも、化学的にも共存できる該医薬製剤に関する。該医薬製剤は髄腔内投与に適している。
【0012】
本発明は、また疼痛軽減方法を提供する。該方法は、主体にω−コノペプチド、好ましくはジコノチドを、モルヒネ、ブピビカイン、クロニジン、ハイドロモルホン、バクロフェン、クエン酸フェンタニル、ブプレノルフィンおよびクエン酸スフェンタニルからなる群から選ばれる鎮痛剤、またはその薬学的に許容される塩と共に投与するステップを含み、該ω−コノペプチドがその効力を維持し、該鎮痛剤と物理的にも、化学的にも共存できる。好ましい投与経路は、髄腔内投与、特に継続的髄腔内注入である。
【0013】
発明の詳細な説明
本発明は、ω−コノペプチドおよび1種以上の鎮痛剤を患者に投与する併用(combination)薬剤療法に関する。ω−コノペプチドおよびその他の鎮痛剤が、種々の投与経路のいかなる経路で、特に髄腔内投与、特に継続的髄腔内投与される。本発明は、鎮痛剤をω−コノペプチドと併用し、併用により各薬剤の必要な投与量を減らし、そして各鎮痛剤に付随する副作用を減少させる様に、該鎮痛剤とω−コノペプチドを組合せて投与する方法の必要性を満たす。該鎮痛剤とω−コノペプチドとの組合せ投与はまた、主体における疼痛軽減において、相加的効果、或いは相乗的効果すら提供する。
【0014】
本発明は、ヒトの患者の神経傷害(ニューロパシー)的疼痛を軽減するための処置法を提供する。本発明はまた、癌あるいはエイズに伴う疼痛のような慢性疼痛の処置に有用である。該方法は、ω−コノペプチド、好ましくはジコノチドの有効量を、アヘン製剤、局麻剤、アドレナリン作動性アゴニスト、グルタミン酸塩受容体アゴニスト、NMDAアゴニスト、および他の鎮痛剤のような1種以上の従来の鎮痛剤と共に、主体に投与することからなる。
【0015】
本発明に適したアヘン製剤は、モルヒネ、ハイドロモルホン、フェンタニル、クエン酸フェンタニル、スフェンタニル、クエン酸スフェンタニル、メサドン、ブプレノルフィンおよびメペリジンを含む。局麻剤は、ブピバカイン、ロピバカインおよびテトラカインを含む。アドレナリン作動性アゴニストはクロニジンおよびチザニジンを含む。グルタミン酸塩受容体アゴニストはデキストルファン、デキストロメトルファンおよびメマンチンを含む。NMDAアゴニストはケタミンを含む。他の鎮痛剤はアデノシン、アスピリン、バクロフェン、ドロペリドール、ガバペンチン、ケトロラック、ミダゾラム、ネオスチグミン、オクトレオチド(ソマトスタチン類縁体)、ミダゾラム(鎮静/催眠)およびバルプロン酸塩(抗てんかん剤)を含む。
【0016】
ω−コノペプチド
ω−コノペプチドは、ω−コノトキシンとしても知られており、コヌス属に属する肉食性の海産巻き貝に見出される低分子(24−29個のアミノ酸)のジスルフィドに富んだポリペプチドである。全てのω−コノペプチドは、特定のVSCCのサブタイプへの親和性が異なるが、N−タイプ電圧感受性カルシウムチャンネル(VSCC)に結合しており、それがニューロンにおいてもっぱら見出される。神経細胞膜脱分極に応じて、N−タイプVSCCsが、開いて、そして神経伝達物質の放出を来すカルシウムの進入を許容する。N−タイプVSCCsは、脊髄の背面角のRexed板 I and IIに豊富にあり、疼痛の1次球心線維は、初めてシナプシスを合図する。ω−コノペプチドはRexed板I and IIのN−タイプVSCCsに結合し、プレシナプシス末端へのカルシウムの移送を阻止し、それによって、神経伝達物質の放出を阻止する。この場所でのN−タイプVSCCsでカルシウムの進入を阻止することにより、末梢神経傷害後に発展し、末梢神経傷害を特徴づけるシグナルを含め、疼痛シグナルが容易に伝達されず、或いは完全に阻止される。
【0017】
本発明に有用な好ましいω−コノペプチドは、ジコノチドであり、PRIALT商標として市場で入手しうる。ジコノチド(SNX−111)は、25個のアミノ酸からなり、海産巻き貝、コヌス マグス(Conus magus)の毒液に見出される天然に生じるペプチドの合成版である。ジコノチドは特異的に、そして選択的にVSCCsに結合する。
【0018】
ω−コノペプチドと慢性および神経傷害的疼痛の処置
ω−コノペプチド、好ましくはジコノチドでの処置は、神経傷害的疼痛の進行の阻止に有用である。鎮痛性のω−コノペプチドは、allodyniaモデルの様な疼痛のアヘン製剤抵抗性モデルにおいてのみならず、ラット挙尾モデル或いはラットホルマリンモデルの様な神経傷害的疼痛の従来のアヘン製剤感受性モデルの双方において、鎮痛剤として有効である。
【0019】
ジコノチドは薬理学的作用のユニークな組合せを有する。特に、髄腔内投与されたジコノチドは、モルヒネやクロニジンの様な従来型神経傷害的疼痛指向薬よりも、その作用において、一層強力で、長時間持続し、そして一層特異的である。
【0020】
ジコノチドは、急性、慢性および神経傷害的疼痛の動物モデルでの髄腔内投与で有効である。モルヒネと異なって、ジコノチドは呼吸機能を抑制せず、潜在的耽溺性を有しない。治療用量が決まれば、アヘン製剤に生じるような耐性の進行は見られない。ジコノチドは、非神経傷害的(内臓の、体壁の)、および神経傷害的癌疼痛の双方において、そして非悪性神経傷害的疼痛状態に有効である。
【0021】
ジコノチドの安定性
ω−コノペプチドの希釈溶液は、メチオニン残基の酸化または還元或いは生物活性の消失で立証されるように、概して溶液中で不安定である。殊に12位にメチオニンを有するジコノチドは、そのメチオニンがスルホキシ体で存在すると、ω−コノペプチドMVIIA結合サイトへの結合において、約10倍強力でない。しかし、ω−コノペプチドは、ペプチド構造中に存在するメチオニン残基の酸化を防止することにより、溶液中で相当安定化される。例えば、ジコノチド酸化は、組成物に乳酸塩緩衝液を添加して阻止できる。更に詳細には、150mM乳酸塩緩衝液(pH4−4.5)は、ジコノチドの安定性をかなり改善する。ジコノチドペプチド濃度が約0.1mg/ml未満であるジコノチド溶液は、水、生理食塩水、或いはペプチド化学の分野で使用される種々の緩衝液のいずれにおいても、溶解させると、急速に酸化される。0.01−0.1mg/mlの範囲のジコノチド溶液は、乳酸塩(150mM、pH4−4.5)で安定化させると、45℃で数週間安定である。50μg/mlのメチオニンを含有する緩衝剤は、また150mM乳酸塩緩衝液または酸性生理食塩水(pH4−4.5)のいずれかがその溶液を緩衝するために使用されるとき、ジコノチドの安定化に有効である。
【0022】
ω−コノペプチドとその他の鎮痛剤との併用(combination)療法の利点
ω−コノペプチドとその他の鎮痛剤との併用療法は、単品薬剤投与に比べいくつかの利点を提供する。第1に、組合せ薬剤の投与は、個々の薬剤の投与量を少なくしうる。そしてそれは、どちらかか、或いは両方の薬剤耐性の進行を減少させ、そして薬剤相互作用の可能性を減少させる。各薬剤の減少した濃度は、また薬剤の用量依存性副作用を制限する。更に、各薬剤のより低い濃度が治療効果を達成するために必要とされるが故に、有効量(ED50)が減少される。
【0023】
第2として、難治性あるいは慢性の疼痛メカニズムを中断する異なったメカニズムを利用する2つの薬剤の組合せ投与は、相加的或いは相乗的形態で一方か或いは双方の薬剤の有益な効果を拡大する。
【0024】
第3としては、ジコノチドをもう1つの他の薬剤との組合せで、髄腔内投与することは、カテーテル先端での肉芽腫形成の様な、モルヒネとの慢性髄腔内カテーテル法の通常の余病を減らし或いは除去する。
【0025】
しかしながら、全ての薬剤は安定性、活性の点で共存できるとは限らない。ジコノチドは、μg/ml濃度で貯蔵されると、混合物の状態で、他の薬剤と特に相互作用する。継続的髄腔内注入のため、薬剤の混合物が、37℃で1週間から1ヶ月、それ以上貯蔵されるため、ジコノチドの活性を、貯蔵および投与期間において、80%以上、好ましくは90%以上に保持されることが重要である。
【0026】
他の鎮痛化合物
モルヒネ
モルヒネ((7,8-didehydro-4,5-epoxy-17-methylmorphinan-3, 6-diol)は、あらゆるタイプの疼痛にたいして強力な鎮痛作用を有するアヘンアルカロイドである。モルヒネは容易に耽溺性を引起し、従って、他の疼痛緩和剤が不適当とされた時の最終手段の薬剤である。INFUMORPH(登録商標)(硫酸モルヒネ)は、希硫酸でモルヒネを中和して合成された、かなり安定な塩である。硫酸モルヒネは、水和物の水を失い、空気、光に晒すと黒ずむ。このモルヒネ塩は、ガン患者の処置のために経口投与で、特にイングランドで使用されている。モルヒネ単独の代表的髄腔内投与量は、0.5−75mg/日の範囲、通常は2−20mg/日である。
【0027】
ハイドロモルホン(Hydromorphone)
DILAUDID(登録商標)(塩酸ハイドロモルホン、塩酸ジハイドロモルホン)は、モルヒネを多量の白金またはパラジウムを用い、酸性条件下、接触水素化と脱水素化により合成された、モルヒネの合成誘導体である。ハイドロモルホンは、モルヒネの代替物(5倍強力)であるが、殆ど同等の耽溺性と活性のより短い持続性を有する。ハイドロモルホンのモルヒネより勝る唯一の利点は、より少ない昼間鎮静あるいは眠気を与えることである。ハイドロモルホンの代表的投与量は、0.05−15mg/日である。
【0028】
ブピバカイン(Bupivacaine)
MARCAINE(登録商標)(塩酸ブピバカイン)は、初期局麻剤として、そして補助的脊髄鎮痛剤としての両方で、臨床的に使用されているナトリウムチャンネル阻害剤である。ブピバカインは、化学構造および性質において、メプリバカインに似たアミドクラスの局麻剤である。ブピバカインの作用持続時間はテトラカインの2−3倍である。ブピバカインの強さは、テトラカインに匹敵するが、しかし両者がメピバカインとリドカインの強さの約4倍である。ブピバカイン単独の代表的髄腔内投与量は、1−100mg/日の範囲、通常は5−15mg/日である。
【0029】
ロピバカイン(Ropivacaine)
ロピバカインは、運動性ロス無しの無痛覚の1つを選択とするA-beta 線維上のA-delta とC 線維への相対的親和性を持ったアミドタイプの局麻剤である。ロピバカインは、ブピバカインと比較して、効率的知覚遮断と共に運動遮断の親和性が少なく、そしてブピバカインより脂質溶解性が低い。ブピバカインと比較して、ロピバカインは、毒性が少なく、知覚および運動遮断間の運動神経に対する知覚神経に、より選択的であり、そしてより少ない溶解性を有し、より大きな脊髄体節の広がりを生じる。ブピバカインと比較して、ロピバカインは、作用の持続性は短く、2相性時間依存薬物動態を有する。(G. Bennett et al. (2000), Evidence-Based Review of the Literature on Intrathecal Delivery of Pain Medication, Journal of Pain and Symptom Management, 20: S12-S11).
【0030】
クロニジン(Clonidine)
DURACLON(ハイドロモルホン;2,6-dichloro-N-2-imidazolidinylidenebenzenamine)は、αアドレナリン作動性レセプター、Pプリン作動性レセプター、およびHヒスタミンレセプターのアンタゴニストである。クロニジンは、中枢性血圧降下剤として使用され、またたいていのアヘン性禁断症状を廃止させる。クロニジンは、急性(術後)疼痛と慢性疼痛症候群の双方を処置するために臨床で使用されている。疼痛の処置のために臨床で使用した時のクロニジンの公知の副作用は、高血圧と徐脈である。クロニジン単独の代表的髄腔内の1日の投与量は、10−400μg/日の範囲、通常は25−75μg/日である。
【0031】
バクロフェン(Baclofen)
バクロフェン(γ-amino-β-(p-chlorophenyl)butyric acid)は、GABAレセプターの選択的アゴニストとして作用し、そして中枢神経の神経伝達物質の放出を阻止するγ−アミノ酪酸(GABA)の4−クロロフェニル誘導体である。バクロフェンは、抗痙攣(筋肉弛緩)効果のために使用され、そして脊髄損傷や多発性硬化症が原因で起きる難治性痙直のために特に処方される。バクロフェンは、また鎮痛作用を有し、ラットに非経口で、或いは髄腔内投与したとき、抗侵害受容的である。バクロフェン単独の代表的髄腔内投与量は、20−2000μg/日の範囲、通常は300−800μg/日である。
【0032】
クエン酸フェンタニル(Fentanyl citrate)
SUBLIMAZE(登録商標)(クエン酸フェンタニル(N-(l-phenethyl-4-piperidyl)propionanilide citrate)は、ヒトでのモルヒネより50倍の鎮痛活性を有するアニリド誘導体である。クエン酸フェンタニルは、主に麻酔剤の補助薬として使用され、急速な開始(4分)と作用の短期持続を有する。他の強力な鎮痛剤と同様な副作用は、特に呼吸抑制と徐脈に共通である。クエン酸フェンタニルは依存性傾向を有する。クエン酸フェンタニルは代表的には、10μg/hour の用量で髄腔内投与される。
【0033】
クエン酸スフェンタニル(Sufentanyl citrate)
クエン酸スフェンタニル(N- [4-(methoxymethy)-l-[2-(2-thienyl)ethyl]-4-piperidinyl]-N-phenylpropanamide 2-hydroxy-1,2,3-propanetricarboxylate)は、強力なアヘン性鎮痛剤である。スフェンタニルは代表的には、0.1−1.5μg/hour の範囲の用量で髄腔内投与される。
【0034】
薬学的製剤
種々の濃度のω−コノペプチドと種々の濃度の1種以上の薬剤との組合せで含有する製剤は、想定され、その薬剤には限定的でなく、モルヒネ、メサドン、ハイドロモルホン、ブプレノルフィン、メペリジン、フェンタニル(クエン酸フェンタニル)、スフェンタニル(クエン酸スフェンタニル)、ブピバカイン、ロピバカイン、テトラカイン、クロニジン、チザニジン、デキストルファン、デキストロメトルファン、メマンチン、ケタミン、オクトレオチド、バルプレオチド、バクロフェン、ミダゾラム、ネオスチグミン、アスピリン、アデノシン、ガバペンチン、ケトロラック、オクトレオチド、ドロペリドール(またはそれらの薬学的に許容される塩)が含まれ、そしてその際にジコノチドがその効力を保持し、そして鎮痛剤と物理的、化学的に共存しうる。
【0035】
本発明は、ω−コノペプチドと、モルヒネ、ブピバカイン、クロニジン、ハイドロモルホン、バクロフェン、クエン酸フェンタニル、ブプレノルフィン、およびクエン酸スフェンタニルからなる群から選ばれる鎮痛剤またはその薬学的に許容される塩を含有する薬学的製剤に関し、その際にω−コノペプチドがその効力を保持し、そして鎮痛剤と物理的、化学的に共存しうる。好ましいω−コノペプチドはジコノチドである。該薬学的製剤は、薬学的に許容される賦形剤を含んでいてもよい。
【0036】
本発明の薬学的製剤は、髄腔内投与、特に継続的髄腔内注入に適している。好ましい製剤は、少なくとも7日間37℃での薬剤投与植え込み式ポンプ中で安定である。
【0037】
疼痛軽減法
本発明は、患者の疼痛軽減方法を提供する。該方法は、患者にω−コノペプチドの有効量と鎮痛剤の有効量を投与する方法であり、その際にω−コノペプチドとその鎮痛剤は共存性があり、投与の間に両者の活性を維持している。ω−コノペプチドとその鎮痛剤は互いに別々の製剤でよく、そして同時に或いは連続して投与されうる。別にω−コノペプチドとその鎮痛剤は、予め混合し、投与用の1つの製剤を形成しうる。
【0038】
その薬学的製剤は、様々な方法で投与され、局部的あるいは全身的に限らず、経口的、非経口的、皮下的、腹腔内、血管内、神経周囲的、硬膜下および最も特に髄腔内に投与される。薬剤の髄腔内投与はボーラス注射か、継続的注入のいずれかで行われうる。ボーラス注射は、一度で高用量の1種または複数の薬剤を注射すると定義され、静脈内注入のような漸進的投与の逆である。継続的注入とは、薬剤或いは組合せた薬剤の長時間に亘る投与と定義される。その製剤は導入の方法に従い、種々の方法で製剤されうる。製剤中の各薬剤の用量は、投与ルートに依拠する。一般には化合物の投与量と投与ルートは、標準的薬学の実際に従って、疼痛の部位、患者のサイズに応じて決定される。
【0039】
治療的有効量は、慢性、或いは神経傷害的疼痛の有意な減少を生み出すに有効な量である。新しい化合物の投与量は、時には、構造的に類似の公知の化合物の確立した用量と比較し、バイオアベイラビリティー、生体分布、および他の薬物動態的性質を考慮し、当業者によって経験的に決定できるように、推定される。組合せ薬剤療法に使用される薬剤の用量は、同じ投与ルートで単独で投与したときの各薬剤の濃度よりも少ないか、同じであることが考慮される。
【0040】
組合せ薬剤製剤は、神経傷害疼痛の開始後、或いは慢性または神経傷害疼痛の状態を引き出すと知られている事象前の何時でも投与できる。
【0041】
本発明の1つの態様として、疼痛を軽減させる方法は、ω−コノペプチドの有効量と、ハイドロモルホン、ブプレノルフィン、フェンタニルおよびスフェンタニルからなる群から選択される鎮痛剤またはその薬学的に許容される塩の有効量を、患者に投与するステップを含む。好ましいω−コノペプチドは、ジコノチドである。好ましい投与ルートは、髄腔内投与、特に継続髄腔内注入である。ω−コノペプチドとその鎮痛剤は互いに別々の製剤でよく、そして同時に或いは連続して投与されうる。別にω−コノペプチドとその鎮痛剤は、予め混合し、投与用の1つの製剤を形成しうる。
【0042】
他の1つの態様として、疼痛を軽減させる方法は、ω−コノペプチドの有効量と、ブピビカイン、クロニジンおよびバクロフェンからなる群から選択される鎮痛剤またはその薬学的に許容される塩の有効量を、患者に投与するステップを含み、その際の該投与法は継続髄腔内注入である。好ましいω−コノペプチドは、ジコノチドである。ω−コノペプチドとその鎮痛剤は互いに別々の製剤でよく、そして同時に或いは連続して投与されうる。別にω−コノペプチドとその鎮痛剤は、予め混合し、投与用の1つの製剤を形成しうる。
【0043】
他のもう1つの態様として、疼痛を軽減させる方法は、ω−コノペプチドと、モルヒネまたはその薬学的に許容される塩を含む薬学的製剤を、患者に髄腔内投与するステップを含む。好ましいω−コノペプチドは、ジコノチドである。好ましい投与法は継続髄腔内注入である。
【0044】
本発明は、また髄腔内アヘン誘導肉芽腫形成に敏感な患者の疼痛軽減方法に関する。その方法は患者の髄腔内にω−コノペプチドを投与することを含む。その方法は、更に、必要に応じて、ブピバカイン、クロニジンおよびバクロフェンからなる群から選択される鎮痛剤またはその薬学的に許容される塩の有効量を継続的髄腔内注入を介して患者に投与することを含む。
【0045】
本発明は更に以下の実施例で例示されるが、そこに記載の特定の手順に本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきでない。
【0046】
実施例
実施例1.ジコノチドの安定性
目的:ジコノチド製品は一般に生理食塩水(100μg/ml)に溶かし、pH4.3に調整される。遊離のメチオニン(50μg/ml)が抗酸化剤としてその溶液に添加される。この溶液は3年間2−8℃で貯蔵されると、勝れた安定性を示した。このものを臨床に使用するとき、医者がしばしば、生理食塩水を用いて、この製品を25μg/mlに希釈する。このことは遊離メチオニン濃度を4倍に減らし、そしてペプチドを更なる酸化的分解にさらす。この研究の目的は、メチオニン50μg/ml中のジコニチド25μg/mlの安定性を調べることである。
【0047】
メチオニン50μg/ml中のジコニチド25μg/mlの製造の可能性を調査するために、25μg/mlの安定性プロファイルが、予め決められた時点での25℃、40℃および60℃での加速安定性研究から始めた。25μg/mlのジコノチド溶液を調製するために、希釈は酸化剤無しの状態を確保するために窒素ガスボンベに結合したグローブ箱で行われた。255mlのL−メチオニン/食塩水(50μg/ml L−メチオニン)を秤り、500ml保管瓶に移した。85mlのジコノチドREE007(100μg/ml)をその保管瓶に加え、密閉し、最低5分間攪拌し、その後pHを測定した。pHが4.25−4.35の範囲外ならば、0.15N NaOH或いは0.15N HClを加えてpHをその範囲に調節した。その溶液をバイアル当たり20mlに分注した(aliquote)。バイアルをゴム栓とアルミニウムシールで蓋をした。バイアルは、5℃、25℃、40℃および60℃で保管した。
【0048】
ジコノチド製剤の安定性は、4種の温度(5℃、25℃、40℃または60℃)でのpercent label claim で分析し、0日、1月、2月および3月後の希釈で、各温度で、新たなバイアルで試験した。各試験で、外観とpHを評価した。更に、RP−HPLCが各資料の同定、濃縮、精製のために使用された。アレニウス(Arrhenius)の(直線と仮定し)分析が5℃での時間(time)の関数として安定性を評価するために、行われた。アレニウスプロット分析から、ジコノチド製剤(25μg/ml)が約4442月(約370年)間標識必要量(label requirements)(>90%) を満たすと評価される。
実施例2.ジコノチドの他の髄腔内投与薬剤との相容性
ジコノチドと7種の他の今日市販されている髄腔内投与薬剤(塩酸ハイドロモルホン、塩酸ブピバカイン、硫酸モルヒネ注射液、クエン酸フェンタニル注射液、クエン酸スフェンタニル、注射用バクロフェン、および注射用塩酸クロニジン)との物理的相容性が、混合前と混合24時間後の外観、色、pH、および特有事項を評価して、決定した。物理的相容性であるとみなされるためには、混合液は細粒に関して米薬局方(USP)基準を満たし、許容pH値に留まり、そして色、外観の変化を有してはならない。
【0049】
100μgのジコノチドを、各薬剤と、1:8と8:1の割合(容積比)で混合した。この研究のデータは下記表1に掲げる。
【0050】
【表1】

【0051】
化学的相容性
ジコノチドと5つの他の髄腔内投与薬の化学的相容性を高速液クロ(HPLC)で混合状態でのジコノチドの濃度を評価して決定した。調製混合物を37℃で60日間、ポリメチルペンテンバイアル中で保存した。注射用0.9%食塩水(USP)で、0.025mg/mlに希釈したジコノチドを、高濃度、低濃度の各薬剤と合体した。混合物中の他の組成の濃度は決定しなかった。この研究からのデータは下記表2に示す。
【0052】
【表2】

【0053】
実施例3.Medtronic SYNCHROMED(登録商標)Infusion System 中でのジコノチドとINFUMORPH(登録商標)(硫酸モルヒネ)の相容性
硫酸モルヒネと混合した時のジコノチドの相容性は、100μg/mlのジコノチドを硫酸モルヒネ(INFUMORPH(登録商標))と混合し、そしてその混合物をMedtronic SYNCHROMED(登録商標)Infusion System(薬剤分配移植ポンプ)に入れ、決定した。試料は特定の間隔でそのポンプの容器から得、混合物中の両薬剤成分の濃度を決定した。表3にジコノチドの安定性を、その最初の濃度の割合として表示する。
【0054】
【表3】

【0055】
平均して、硫酸モルヒネの濃度は、全ての混合物において、60日間最初の濃度の90%以上に留まった。
【0056】
混合物のpHは、4.2から4.8に亘る最初のpHの1.0pH単位以内に留まった。溶液の外観は、INFUMORPH(登録商標)500を含有する混合物に僅かな黄色化が認められたが、顕著な変化はなかった。
【0057】
実施例4.モルヒネとジコノチドの相互作用−モルヒネとジコノチドを一緒に投与した場合の鎮痛作用
モルヒネとジコノチドを一緒に投与した場合の相乗効果(熱板及び尾部浸漬試験法)
0.03μg/hrのジコノチドの継続的髄腔内注入によって、ラットの熱板及び尾部浸漬試験法において、熱応答時間に関して、せいぜい、適度の増加を示した。しかし、0.03μg/hrのジコノチドをモルヒネ(15μg/hr)の緩和な抗侵害受容量と共に投与すると、両試験における応答時間は、いずれの単独の場合に比べ遙かに凌がした。
【0058】
モルヒネとジコノチドを一緒に投与した場合の相加的効果(ホルマリン試験)
ラットの後ろ足ホルマリン試験において、1:10の一定投与率でのジコノチドとモルヒネの合剤の髄腔内ボーラス投与によって、ホルマリン惹起持続的回避反応を用量依存的に抑制した。測定されたED50値は、予想の相加的鎮痛効果で予見された値とは有意に異ならない。この結果からこのモデルにおいて、モルヒネとジコノチドとの併用投与は相加的鎮痛効果を示すことを示唆する。
【0059】
モルヒネとジコノチドとの併用髄腔内投与が急性熱侵害受容のラットモデルにおいて相乗的鎮痛効果を有するが、しかししつこい疼痛のラットモデル(ホルマリン試験)では相加的効果を有することを我々の結果が示している。
【0060】
ジコノチドおよび/またはモルヒネに対する耐性
ラットにおける研究の結果が以下のことを示している。
・ジコノチドは、モルヒネの鎮痛効果に対する耐性の進行を阻止しない。
・ジコノチドは、モルヒネ耐性ラットにおいてモルヒネ誘導無痛覚に影響を与えない。
・ジコノチドの亜急性髄腔内注入は、続いて起こるモルヒネの無痛覚に影響しない。
【0061】
モルヒネの鎮痛効果に対する耐性進行に影響するジコノチドの能力は、急性疼痛の2匹のラットモデルを使用して調査した:熱板試験と尾部浸漬試験。継続的髄腔内注入により投与したモルヒネ(15μg/hr)の鎮痛効果は亜急性投与の間、かなりの減少(耐性の進行)を示した;7日間のモルヒネ注入後5日後、引起された痛の挙動は生理食塩水処理対照で示されたそれに匹敵する。ジコノチド(0.03μg/hr)とモルヒネ(15μg/hr)の組合せ投与はモルヒネの鎮痛効果におけるこの目立った傾向を阻害しなかった。
【0062】
モルヒネ耐性を逆転するジコノチドの能力は、ラットの足のホルマリン試験で評価した。ジコノチド(0.03μg/hr)とモルヒネ(20μg/hr)を組合せて髄腔ボーラス注射されたラットは、7日間の継続的定量の髄腔内モルヒネ注入(15.18μg/hr)完了後3時間後、モルヒネ非投与、ジコノチドのみを与えた動物に見られるそれと同等な後ホルマリン注射回避カウントを持った。この知見は以下のことを示している。
1.ジコノチドは、モルヒネ耐性動物に投与したときに、モルヒネの鎮痛効果を回復しない。
2.髄腔内投与モルヒネの鎮痛効果に耐性のラットはジコノチドに交叉耐性を示さない。
【0063】
ジコノチドの亜急性(6日間)髄腔内注入は、ラットの後ろ足ホルマリン試験(Omote, et al.) におけるモルヒネ誘導無痛覚に影響しない。6日間ジコノチド(0.005μg/hr)の髄腔内注入により、持続的ホルマリン回避反応において、適当に、しかし統計学的に有意差がないが、減少を示した。6日間生理食塩水の髄腔内注入で前処置した動物に1μgのモルヒネの髄腔内ボーラス注射により、持続的回避反応を減少させた;同じ用量のモルヒネでは、モルヒネ投与の直前の6日間0.005μg/hrのジコノチドの髄腔内注入を受けたラットの持続的回避行動の僅かに大きな阻止を示した。この知見から、ジコノチドの亜急性髄腔内注入がモルヒネ誘導無痛感覚を減少または阻止をしない。更に、これらの結果は、ジコノチドとモルヒネの急性髄腔内注射がラットの後ろ足ホルマリン試験で相加的鎮痛効果を示す他の知見と一致する。
【0064】
実施例5.ジコノチドとモルヒネの組合せ投与に対する行動的と心臓血管の応答
皮下投与のモルヒネ(10mまたは30mg/kg)と髄腔内ボーラス注射で投与のジコノチド(0.1μg)間での急性相互作用は、慣例の機能観察の1組の装置および心拍と血圧の測定を用いてラットで調べた。皮下投与のモルヒネと髄腔内ボーラス注射のジコノチドの全体の行動的と心臓血管の効果が、それらが組合せ投与されたとき、増強もされず、減少もされなかった。これらの知見は、ジコノチドの鎮痛用量が、単独で、あるいは高用量の皮下投与モルヒネと併用して、髄腔内投与されると、よく耐えられることを示している。
【0065】
実施例6.ジコノチドとモルヒネの組合せ投与による呼吸器への影響
ジコノチドの髄腔内投与は、ラットでのCO吸入に対する呼吸分時量の応答を弱めなかったし、モルヒネの皮下注で引起された急性呼吸機能低下を悪化させることもしなかった。最少の副作用で顕著な無痛感覚を示すジコノチドの0.1μgの用量での髄腔内ボーラス注射がCOに対して呼吸分時量応答を弱めなかったし、モルヒネの皮下ボーラス注射(10または30mg/kg)により引起された急性呼吸機能低下を悪化させなかった。同様に、ジコノチド鎮痛用量、0.1または0.3μg/hrで継続的に髄腔内注入によって、亜急性的に投与されると、単独でも、あるいは皮下投与されるモルヒネの鎮痛用量(200μg/hr)と併用しても、呼吸機能低下を引起さなかった。
【0066】
ジコノチドは、モルヒネ耐性ラットをモルヒネの呼吸機能低下効果により敏感にさせなかった。CO吸入に対する呼吸分時量応答は対照値、即ち7日間、1日2回10mg/kgの皮下注射により、モルヒネの呼吸機能低下性質に耐性にしたラットがモルヒネ投与30分前0.1μgのジコノチド髄腔内注射したときに、対照値に匹敵した。
【0067】
これらの知見は、モルヒネ耐性動物に髄腔内投与したときに、ジコノチドが呼吸器機能低下も示さず、モルヒネの呼吸器機能低下性質に対する感受性を回復しないことを確認した。
【0068】
実施例7.ジコノチドとモルヒネの併用投与による胃腸管への影響
ラットにおいて、モルヒネを皮下ボーラス注で投与すると、用量依存的に胃腸管輸送阻害を示した。モルヒネを、それ自体胃腸管運動に影響しないジコノチドの髄腔内投与量(0.3μg)と組合せ投与すると、モルヒネの用量応答カーブが有意に左にシフトした。この知見は、ジコノチドとモルヒネが相互作用し、相乗的にラットでの胃腸管輸送を減少させる。逆に、マウスに、ジコノチド(1μg)の髄腔内投与量と共にモルヒネ(3mg/kg)の皮下注投与されたとき、胃腸管輸送は、モルヒネが単独で投与されたときに観察される程度と同程度に減少した。単独投与されたときに、胃腸管輸送は、どちらか一方の化合物により、最大に減少させられる可能性のために、この知見は2つの化合物間の潜在的相互作用を決定的に除外しない。
【0069】
実施例8.ジコノチドとバクロフェンの併用投与による鎮痛活性
選択的GABA受容体アゴニストであるバクロフェンは、脊髄損傷あるいは多重硬化症による治療しにくい痙直の治療の脊髄使用が指示されている。バクロフェンは、また、実験動物で非経口または髄腔内のいずれかにより投与されると、鎮痛作用を有し、抗侵害受容的である。ラットにバクロフェンあるいはジコノチド単独で、髄腔内ボーラス注射により、後ろ足の背面の皮下に5%ホルマリン注によって引起された持続性疼痛行動を用量依存的に減少に導いた。ジコノチドとバクロフェンの組合せが髄腔内ボーラス注射により投与されると、ホルマリン誘導持続的疼痛への影響は、各化合物を単独で投与したことによる効果の合計に統計学的に同等であった。これらの結果が、ジコノチドとバクロフェンの組合せ髄腔内投与がラットの後ろ足ホルマリン試験において相加的無痛感覚を示すことを示している。
【0070】
実施例9.ジコノチドとブピバカインの併用投与による鎮痛活性
ブピバカインはナトリウムチャンネル阻害剤であり、臨床的に初期局所麻酔剤として、そして補助的脊髄鎮痛剤としての両方で使用されている。ブピバカインの髄腔内ボーラス注射により、ホルマリン誘導急性あるいは持続性後ろ足回避行動を有意に阻止しなかったが、しかし300μgのブピバカインは、即座のそして1時的な後ろ足の麻痺を示した。ジコノチドを髄腔内ボーラス注射(0.03、0.1または0.3μg)すると、用量依存的に持続的疼痛行動を抑制した。ブピバカインを、完全神経ブロックを起さない用量で、ジコノチドと一緒に髄腔内ボーラス注射すると、ジコノチド誘導無痛感覚を有意に変更しなかった。その結果から、ブピバカインは、ラット後ろ足ホルマリン試験において、無痛感覚を引起さず、ジコノチド誘導無痛感覚を変更しなかった。
【0071】
実施例10.ジコノチドとクロニジンの併用投与による鎮痛活性
α−アドレナリンレセプターアゴニストであるクロニジンは、全身投与した場合に、中枢媒介メカニズムを介して無痛感覚を生みだす。クロニジンは急性(術後)疼痛および慢性疼痛症候群の双方を処置するために、臨床的に使用されている。ジコノチドまたはクロニジンを単独で、あるいは組合せて、髄腔内ボーラス注射すると、用量依存的にラットの後ろ足ホルマリン試験において、持続的疼痛行動を抑制した。薬剤併用の理論的相加ED50値は、観察された値と有意に異ならないし、また複合追加および混合ドーズレスポンス曲線のlog 直線部分に適合した回帰線間に有意な差がない。これらの知見は、ジコノチドとクロニジンは髄腔内経路で一緒に投与されると、相加的鎮痛効果を有するとの結論を支持する。
【0072】
実施例11.ジコノチドとクロニジンの併用投与による心臓血管の応答
クロニジンは、疼痛の処置のために、臨床的に使用すると、低血圧と徐脈の副作用が知られている。クロニジンをラットに、髄腔内ボーラス注射すると、用量依存的に徐脈を示し、動脈血圧の2元的効果を有した:低容量(1−3μg)でCNS介在低血圧を示し、一方高用量(10−50μg)で血管滑平筋における末梢α−アドレナリンレセプターの活性化による顕著な血圧応答を示す。クロニジン注射10分前に、ジコノチドの高鎮痛用量(0.3μg)を髄腔内ボーラス注射すると、意識のあるラットにおいて、髄腔内投与されたクロニジン(3μg)により引起された降圧あるいは徐脈応答を悪化させなかった。このことは、心臓血管系内において有意な薬剤相互作用が存在しないことを示している。
【0073】
実施例12.ラットと犬におけるジコノチドの継続的髄腔内注入
ジコノチドの潜在的毒性は、ラットにおいて、1500ng/kg/hrまでの用量と、犬において1200ng/kg/hrまでの用量(少なくとも患者の最大用量の30倍)で、28日間継続的髄腔内注入して評価した。
【0074】
ジコノチドに対する合計全身暴露は低かった(<4ng/ml)が、高用量投与ラットと犬で測定された薬剤の平均血漿濃度はヒトのそれに比べ、それぞれ約3倍、約10倍高かった。主に、しんせん、振るえ行動および/または失調からなるCNSにおける予期された処置−関連薬理学的効果が、4/16動物>600ng/kg/hrで、犬の瀕死の安楽死をえるに十分厳しかった。体重、摂餌量、または臨床病理学的パラメーターにおいて、処置関連変化が見られず、そして終末でのどちらの種においても同定できるいかなる対象器官毒性もなかった。
神経組織病理学的検査の結果、対照とジコノチド処理ラットおよび犬で、慢性炎症を伴う脊髄圧迫を示した。それはITカテーテルにより生じた圧迫のためである。この見解はジコノチド投入で悪化されなかったし、他の組織病理学的変化も観察されなかった。結論的には、ジコノチドを28日間継続的IT注入を受けたラットと犬で観察された行動的そして神経学的効果は、神経毒性または組織病理学を伴わないジコノチドの薬理学的活性に関連していると思われた。更に、ジコノチド処理犬には、注入部位を調べたが、ITモルヒネ投与に関して述べられているように(Yaksh, et al., Anesthesiology 2003; 99: 174-87)、カテーテル先端での肉芽腫の形成が観察されなかった。
【0075】
実施例13.ジコノチド(一定用量)とモルヒネ(増加用量)の組合せ髄腔内注入の臨床研究
患者の基準
患者はジコノチドの髄腔内安定投与量の女性と男性患者であった。全ての患者は、少なくとも0.2μg/hr(4.8μg/日)の投与量であった。更に、患者が痛み度合いの視覚のアナログ尺(VASPI) による40mm以上のスコアで表される亜最高疼痛リリーフを有する患者か、あるいはジコノチドにより解放されない残存疼痛やジコノチドで解放される疼痛と異なる性質の残存疼痛を有する患者のいずれかであった。
【0076】
ジコノチド
ジコノチドは100μg/mlの濃度の5mlの単用量バイアルで供給された。ジコノチドの用量は、少なくとも0.2μg/hr(4.8μg/日)であった。4週処理フェーズ間の平均用量は、1週での26.5μg/日 から4週での27.9μg/日であった。終末でのジコノチドの平均蓄積用量は731.1μgであった。患者は、4週併用処理フェーズの間、平均27日間(3から30日の範囲で)ジコノチドにさらされた。
【0077】
モルヒネ
Infumorph (保存条件無しの硫酸モルヒネ殺菌溶液;Elkins Sinn, Inc., Cherry Hill, NJ) がモルヒネ濃度10または25mg/mlのどちらかの濃度で20mlガラスアンプルで供給された。Infumorphの用量上昇スケジュールは個々の患者の全身アヘンの1日投与量に従い調節した。低用量レジメでは、100mg/日以下の経口モルヒネ相当量を受ける患者は0.25mg/日で開始し、2週、3週、4週とそれぞれ、0.5,1.0,2.0mg/日と上昇させた。中間用量レジメでは、100−300mg/日の経口モルヒネ相当量を受ける患者は0.5mg/日で開始し、2週、3週、4週とそれぞれ、1.0,2.0,3.0mg/日と上昇させた。高用量レジメでは、300mg/日以上の経口モルヒネ相当量を受ける患者は1.0mg/日で開始し、2週、3週、4週とそれぞれ、2.0,3.0,4.0mg/日と上昇させた。Infumorphの用量増加は、耐えられない逆のことが起こったとか、あるいは有意に改善された無痛感覚がえられたならば、中止した。
【0078】
患者が最初の診察時にITジコノチドと一緒にInfumorphで開始した。Infumorphは、研究の1週間は0.44mg/日 の平均用量で開始し、その後週毎に増加した。平均Infumorph用量は、2,3,4週処理の間、それぞれ0.80mg/日、1.41mg/日、2.06mg/日であった。終末においての平均蓄積用量は、31.1mg(1.3から71.0mgの範囲)であった。患者は平均合計27日間(3−30日の範囲で)Infumorphにさらされた。
【0079】
効果の分析
効果の測定は、VASPIスコア、Categorical Pain Relief Scale(CPRS), Clinical Global Impression (CGI) およびWeekly Systemic Opioid Consumputionを含む。
【0080】
統計的効果の分析
ジコノチドとモルヒネの組合せ髄腔内投与の効果を評価するために、VASPI (Handbook of Pain Assessment(2nd eddition) D. C. Turk and R. Melzack, Eds, Guilford Press, New York, 2001)を用いてその時点の疼痛強度を評価した。患者はベースライン(基準線)評価のために、疼痛の連続体(即ち、無痛から最悪な疼痛まで)を表す100−mmライン上の患者の現在の疼痛強度を評価した。連続体の左側は、スコア0に相当し、連続体の右側は、スコア100に相当する。各研究診察において、患者は上記と同じ連続体を用いて自己の現在の疼痛強度を評価するように要求された。試験の第1の疼痛効果の評価は、ベースライン測定で比較した併用治療の場合と単独髄腔内投与鎮痛剤(ジコノチド)の場合のVASPIにおけるパーセント変化であった。
【0081】
結果の要約
合計24人の患者がこの試験に参加した。22人の患者(92%)が4週処置フェーズを完了し、2人の患者(8%)は副作用のため早期に中止した。
【0082】
最初の診察で、VASPIスコアは42から100mm(n=24,平均=70.7mm)までであった。全ての患者は非悪性疼痛を患っていた。その疼痛が神経傷害的(n=20,83%)、侵害受容の(n=10,42%)、あるいは退行性(n=9、38.3%)であった。患者は4から40年に亘り、平均14.8年間疼痛を患っていた。全ての患者は疼痛処理に抵抗性であった(n=24,100%)。更に、10人の患者(42%)は外科的症候群をfail backしていた。
【0083】
最初の効果の測定(VASPI)は毎週、4週併用処置フェーズの間行った。Fig.1は、(a)VASPIスコアにおけるベースラインからの平均百分率変化(■)を示し、(b)4週併用処置フェーズ通しての各週の平均Infumorph の用量(〇)を示す。平均して疼痛強度の減少は、各週に観察された。週毎のVASPI減少は、4週処置フェーズ通して、増加したInfumorph の用量に相応した。VASPIスコアの平均百分率の減少は、ジコノチド単独処置のベースライン測定と比較して、併用療法の1週後11.3%であり、併用療法の4週後26.1%であった。
【0084】
実施例14.モルヒネ(一定投与量)とジコノチド(増量投与量)の組合せ髄腔注入の臨床試験
患者の基準
患者はモルヒネ1日2および20mg/日の範囲での髄腔内投与量の男性、女性の患者であった。患者のいずれかは、>40mmのVASPIスコアで表示される亜最高疼痛リリーフを有するか、あるいはモルヒネで緩和されず、モルヒネで緩和される疼痛と異なった性質(例えば侵害受容の疼痛)の残留性疼痛を有していた。
【0085】
ジコノチド
ジコノチドは100μg/mlの濃度の5ml単投与量バイアルで供給された。ジコノチド投与量は、ベースラインにおいて0.025μg/時(0.6μg/日)から出発して、研究の処理期間を通じ、毎週増量した。患者はその後毎週観察され、次のように増量したジコノチドが投与された;診察2(7日目)で0.05μg/時(1.2μg/日)、診察3(14日目)で0.10μg/時(2.4μg/日)、診察4(21日目)で0.20μg/時(4.8μg/日)、診察5(28日目)で0.30μg/時(7.2μg/日)。ジコノチドの増量投与は、耐え難い副作用が生じたとき、有意な改良鎮痛効果が得られたとき、あるいは最終投与量が0.30μg/時に達したときに、中止した。最終でジコノチドの平均蓄積投与量は、74.4μg(8.8から118.6μgの範囲)であり、そして第5週の平均投与量は0.197μg/mlであった。平均して患者は合計31.5日間(14から35日間)ジコノチドにさらされた。
【0086】
モルヒネ
Infumorph(保存料なしの硫酸モルヒネ滅菌溶液;Elkins Sinn, Inc., Cherry Hill, NJ)は10mgあるいは25mg/mlのいずれかのモルヒネ濃度の20mlガラスアンプルで供給された。Infumorphの用量は、研究の併用処理を通じて安定であり、そして2から20mg/日の範囲であった。
【0087】
全ての患者(n=22)は選択診察で平均用量(12.3mg/日(2.0から20.0mg/日の範囲)で髄腔内Infumorph治療を受けていた。続いて患者は、ベースライン診察で組合せ髄腔内Infumorphとジコノチド治療を受ける前の平均8.8日間平均用量12.4mg/日(1.8から20.0mg/日の範囲)での髄腔内Infumorph単独治療で固定化された。Infumorphの5週間処置フェーズの平均用量は、第1週で12.4mg/日から第5週の12.7mg/日の範囲であった。患者は、選択(screening)時および5週組合せ処置フェーズの間平均期間40.7日間(25から56日の範囲)Infumorphにさらされた。
【0088】
効果の分析
効果の測定は、VASPIスコア、CPRS、CGIおよび週単位全身アヘン消耗を含む。
統計的効果の分析
組合せ髄腔内投与のジコノチドとモルヒネの効果を評価するために、患者は実施例13に記載したVASPIを使用した現在の疼痛強度を評価した。試験の第1の疼痛効果の評価は、ベースライン測定で比較した併用治療の場合と単独髄腔内投与鎮痛剤(モルヒネ)の場合のVASPIにおけるパーセント変化であった。
【0089】
結果の要約
合計22人の患者がこの試験に参加した。16人の患者(73%)が5週処置フェーズを完了し、6人の患者(27%)は副作用のため早期に中止した。
【0090】
スクリーニングで、VASPIスコアは41から91mm(平均=66.6mm)までであった。平均して疼痛強度は選択診察時からベースライン診察まで増加した(平均=71.7mm)。全ての患者は非悪性疼痛を患っており、その疼痛が神経傷害的(n=16、73%)、あるいは混合(n=13、59%)であった。患者は2.5から40年に亘り、平均9.6年間疼痛を患っていた。更に、患者の大部分(n=91%)は外科的症候群をfail backしており、疼痛処理に抵抗性であった。
【0091】
最初の効果の測定(VASPI)は毎週、4週併用処置フェーズの間行った。Fig.2において、(a)VASPIスコアにおけるベースラインからの平均百分率変化(■)を示し、(b)5週併用処置フェーズ通しての各週の平均ジコノチドの用量(〇)を示す。平均して疼痛強度の減少は、5週間併用フェーズを通じて各週に観察された。週毎のVASPI減少は、5−週処置フェーズ通して、増加したジコノチドの用量に相応した。但し第5週での最終用量の増加を除いて(Fig.2参照)。VASPIスコアの平均百分率の減少は、併用療法の1週後2.7%であり、併用療法の5週後21.4%であった。
【0092】
実施例15.バクロフェン(一定投与量)とジコノチド(増量投与量)の組合せ髄腔注入の臨床試験プロトコル
患者の基準
患者はバクロフェン(bacrofenかLIORESAL(登録商標)のいずれか)を1日22および800mg/日の範囲での髄腔内投与量の男性、女性の患者である。患者は、選択診察およびベースライン診察時、最少40mmのVASPIスコアで表示される疼痛および亜最高疼痛リリーフを有する。
【0093】
診察1/ベースライン診察(0日)
全ての患者は、ベースライン診察の少なくとも7日間の間、LIORESAL(登録商標)(between 22 and 800 g/d)、全身投与アヘン、および他の付随的薬剤の安定用量でなければならない。
SynchroMed(登録商標)EL Infusion Systemの内容が除去され、PRIALT(商標)およびLIORESAL(登録商標)に置き換えられる。LIORESAL(登録商標)の用量はスクリーン期間中の最後の7日間と実験の最初の9週間を通じて、同じ用量を維持する。PRIALT(商標)の最初の用量は0.025ug/hr(0.6ug/日)である。
【0094】
PRIALT(商標)
最初のPRIALTの用量は、ベースライン(0日)から始め、1週間0.025μg/hr(0.6μg/日)である。処置1週間後ポンプを再充填し、用量を0.05μ/hr(1.2μg/日)に増量する。処置3週後ポンプを再充填し、用量を0.10μ/hr(2.4μg/日)に増量する。処置5週後ポンプを再充填し、用量を0.15μ/hr(3.6μg/日)に増量する。処置7週後ポンプを再充填し、用量を0.20μ/hr(4.8μg/日)に増量する。最終週の間、用量を0.20μ/hr(4.8μg/日)に維持する。用量の増加は、増量中止基準に遭遇するまで行う。
【0095】
LIORESAL(登録商標)
LIORESAL(登録商標)の用量はスクリーニングの間に確立した安定用量を一定に保ち、変えなく、そして少なくとも22μg/日で、800μg/日を超えない。
【0096】
ポンプ流量率
ポンプ流量率は一定に保たれ、少なくとも12mcl/hr(288mcl/日)で1または2日以内でポンプ量が空になるまで続ける。薬物の用量は、これは両者の化合物の注入率を変えるので、ポンプの流量率を変えることにより調整されることはない。
【0097】
疼痛の測定
VSPIは各臨床診察で決められる。CPRSは診察7/最初の終了診察および可能ならば延長フェーズの終了診察で決められる。CGIは、診察7/最初の終了診察および可能ならば延長フェーズの終了診察で決められる。
【0098】
他の臨床上の測定
痙直スコア(修正Ashworth Scale:0-4正常から強直状態;痙攣scale:0-4 痙攣無しから1時間10回以上;Penn Spasm Frequency Scale, VASS(Visual Analogue of Spasticity Scale) が各臨床診察で決定される。
【0099】
効果の変数
初期効果変数は、ベースライン診察から診察7/早期終了診察までのVASPIの百分率変化を含む。
【0100】
2次効果変数は、ベースライン診察から診察7/早期終了診察までのVASSの百分率変化を含む。
【0101】
ベースライン診察から診察7/早期終了診察までのVASPIとVASSの変化
ベースライン診察から各診察2−6までのVASPIとVASSのスコアの百分率変化と変化
診察7/早期終了診察でのCPRSの分布
診察7/早期終了診察でのCGIの分布
週毎の全身アヘン消費量の変化と百分率変化
週毎の経口バクロフェン消費量の変化と百分率変化
痙直scale の変化
【0102】
本発明、およびそれを作製し、使用する手段と方法が、当該技術分野に属する専門家が作製し、使用しうるに十分に、明確に、簡略に、そして正確な用語で今や記載されている。上記は、本発明の好ましい態様を記載し、しかも修正が、請求項に記載の本発明の範囲を逸脱しない範囲内でなされうると理解されるべきである。発明とみなされる主題を特に指摘しそして明確にクレームするために、前記の請求項はこの明細書の結びとする。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】(a)VISPIスコアにおける平均変化率(■)を示し、(b)は4週併用処理期を通して、各週の平均Infumorph の投与量(〇)を示す。
【図2】(a)VISPIスコアにおける平均変化率(■)を示し、(b)は5週併用処理期を通して、各週の平均ジコノチド投与量(〇)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ω−コノペプチドと、モルヒネ、ブピビカイン、クロニジン、ハイドロモルホン、バクロフェン、フェンタニル、スフェンタニルおよびブプレノルフィンからなる群から選ばれる鎮痛剤、またはその薬学的に許容される塩を含有する医薬製剤であって、該ω−コノペプチドがその有効性を維持し、該鎮痛剤と物理的にも、化学的にも共存できる該医薬製剤。
【請求項2】
該ω−コノペプチドがジコノチドである請求項1に従う方法。
【請求項3】
該医薬製剤が髄腔内投与に適した製剤である請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
該医薬製剤が継続的髄腔内注入に適した製剤である請求項3に記載の製剤。
【請求項5】
該医薬製剤が薬剤投与用植込み式ポンプ中37℃で少なくとも7日間安定である請求項1に記載の製剤。
【請求項6】
該鎮痛剤がモルヒネ、クロニジン、ハイドロモルホン、フェンタニルまたはスフェンタニルである請求項1に記載の製剤。
【請求項7】
該鎮痛剤がバクロフェンまたはブピビカインである請求項1に記載の製剤。
【請求項8】
ω−コノペプチドの有効量と、ハイドロモルホン、ブプレノルフィン、フェンタニルおよびスフェンタニルからなる群から選ばれる鎮痛剤、またはその薬学的に許容される塩の有効量を患者に投与することからなる患者の疼痛軽減方法。
【請求項9】
該ω−コノペプチドがジコノチドである請求項8記載の方法。
【請求項10】
該ω−コノペプチドと該鎮痛剤が患者に投与前に混合される請求項8記載の方法。
【請求項11】
該投与が髄腔内投与である請求項8記載の方法。
【請求項12】
該髄腔内投与が継続的髄腔内注入である請求項11記載の方法。
【請求項13】
ω−コノペプチドの有効量と、ブピビカイン、クロニジンおよびバクロフェンからなる群から選ばれる鎮痛剤、またはその薬学的に許容される塩の有効量を患者に投与し、その際に該投与法が継続的髄腔内注入することからなる患者の疼痛軽減方法。
【請求項14】
該ω−コノペプチドがジコノチドである請求項13記載の方法。
【請求項15】
該ω−コノペプチドと該鎮痛剤が患者に投与前に混合される請求項13記載の方法。
【請求項16】
ω−コノペプチドとモルヒネまたはその薬学的に許容される塩を含有する医薬製剤を患者に髄腔内投与することからなる患者の疼痛軽減方法。
【請求項17】
該ω−コノペプチドがジコノチドである請求項16記載の方法。
【請求項18】
該投与が継続的髄腔内注入である請求項16記載の方法。
【請求項19】
髄腔内アヘン誘導肉芽腫形成に敏感な患者に、ω−コノペプチドを該患者の髄腔内に投与することからなる患者の疼痛軽減方法。
【請求項20】
更にブピバカイン、クロニジンおよびバクロフェンからなる群から選ばれる鎮痛剤、またはその薬学的に許容される塩の有効量を患者に投与し、その際に該投与法が継続的髄腔内注入することからなる請求項19記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−507538(P2007−507538A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534206(P2006−534206)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/032559
【国際公開番号】WO2005/032556
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(399013971)エラン ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド (75)
【Fターム(参考)】