説明

疾患の処置方法に使用するためのBリンパ球ターゲティング剤

本発明は、心不全の処置方法または診断方法に使用するためのBリンパ球ターゲティング剤に関する。さらに本発明は、そのようなBリンパ球ターゲティング剤を含む組成物、および心不全を患う患者が、その処置のためのBリンパ球ターゲティング剤の使用に適するかどうかを判定する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心不全の処置方法または診断方法に使用するためのBリンパ球ターゲティング剤に関する。さらに本発明は、そのようなBリンパ球ターゲティング剤を含む組成物、および心不全を患う患者が、その処置のためのBリンパ球ターゲティング剤の使用に適するかどうかを判定する方法に関する。
【0002】
心不全(cardiac insufficiencyまたはheart failure)は、心拍出量が身体の必要性を満たすには不十分な生理学的状態を特徴とする疾患である。
【0003】
心不全のよくある原因には、心筋梗塞ならびに他の虚血性心疾患、高血圧、心臓弁膜症および心筋症の形態が含まれる。心筋症は、その中心血行動態および肉眼的病理学によって定義されている心筋疾患であり、五つの主要な形態、すなわち拡張型(DCM)、肥大型(HCM)、拘束型(RCM)、右室(RVCM)および分類不能型心筋症(NCCM)に分類されている。炎症性心筋症(DCMi)は、心内膜心筋生検(EMB)における心筋内炎症および/またはウイルス感染の証拠によって定義される、DCMの特定心筋症の一実体である。
【0004】
心不全は、息切れ(典型的には横になったときの方が苦しく、起座呼吸と呼ばれる)、咳、くるぶし腫脹および運動能力減退などの多種多様な症状を引き起こすことがある。心不全は、広く一般に意見の一致を見た定義の欠如および確定診断の問題が原因で、多くの場合に、診断未確定とされる。処置は、通例、生活習慣の対策(食塩摂取の減量など)および投薬、ならびに時には装置またはさらには外科手術から成る。
【0005】
心不全は、よく見られ、費用がかかり、身体に障害を引き起こし、そして致命的な状態である。先進国では、成人の約2%が心不全を患うが、年齢65歳を超える者の間で、この割合は6〜10%に増加する。心不全は、主に入院コストのせいで高い医療費を伴い、コストはイギリス国民保健サービスの総予算の2%に達し、米国では350億ドルよりも大きいと見積もられている。心不全は、身体的および精神的健康の著しい減退を伴い、生活の質の顕著な低下を招く。可逆的状態によって引き起こされた心不全を除いて、状態は、たいてい時間と共に悪化する。一部の患者は何年も生存するが、進行性疾患は全体で10%の年間死亡率を伴う。
【0006】
生活習慣療法とは別に、心不全を処置するための現行の薬理学的療法もある。
【0007】
心不全の処置では、エビデンスと診療との間に、特に、死亡率上の利益を与えることが示されている、ACE阻害剤およびβ−ブロッカーならびにアルドステロン拮抗剤の使用不足という著しいギャップがある。心不全の処置は、症状を軽減すること、正常血液量の状態(循環系における正常な体液レベル)を維持すること、および心不全の進行を遅らせて心血管リスクを低下させることにより予後を改善することを目的とする。使用される薬物には:利尿剤、血管拡張剤、陽イオン変力作用薬、ACE阻害剤、βブロッカー、およびアルドステロン拮抗剤(例えばスピロノラクトン)が含まれる。陽イオン変力作用薬ミルリノンなどの、心機能を高めるいくつかの薬物は、死亡率の増加へと導くことから禁忌である。
【0008】
したがって、本出願の基礎になる問題は、第一の局面では、心不全の処置に適した薬剤を提供することである。
【0009】
第二の局面では、本発明の基礎になる問題は、第一の局面に従って提供される薬剤に基づく治療法に、どの種の患者が適するかを判定するためにふさわしい薬剤を提供することである。
【0010】
本発明の基礎になる問題は、心不全の処置方法に使用するためのBリンパ球ターゲティング剤によって解決される。
【0011】
一態様では、Bリンパ球ターゲティング剤は、Bリンパ球によって発現される抗原またはBリンパ球によって発現されるように誘導可能な抗原をターゲティングしている。
【0012】
一態様では、Bリンパ球ターゲティング剤は、Bリンパ球によって発現される抗原またはBリンパ球によって発現されるように誘導可能な抗原に結合性である。
【0013】
一態様では、抗原は、CD19、CD20およびCD21を含む群より選択される。
【0014】
一態様では、抗原はCD20である。
【0015】
一態様では、方法は、Bリンパ球ターゲティング剤を、それを必要とする患者に投与する段階を含む。
【0016】
一態様では、患者は、心臓組織がBリンパ球を含有する患者である。
【0017】
一態様では、Bリンパ球は、細胞間隙中に、好ましくは心筋細胞と心血管系の細胞との間の細胞間隙中に存在する。
【0018】
一態様では、心不全は、心筋または心内膜の炎症によって起こる心不全、心筋または心内膜の変性によって起こる心不全、冠不全によって起こる心不全、心筋梗塞によって起こる心不全および損傷によって起こる心不全より選択されるものである。
【0019】
一態様では、心不全は、心筋梗塞によって起こる心不全とは異なる。
【0020】
一態様では、心不全は、心筋または心内膜の炎症によって起こる。
【0021】
本発明の一態様では、該心不全は、心筋症、好ましくは炎症性心筋症(DCMi)によって起こる。
【0022】
一態様では、Bリンパ球ターゲティング剤は、Bリンパ球を死滅させる能力があるか、またはBリンパ球の死滅に有用である。
【0023】
一態様では、Bリンパ球は、CD19、CD20およびCD21を含む群より選択される少なくとも1種の抗原を担持し、好ましくはその抗原はCD20である。
【0024】
一態様では、Bリンパ球ターゲティング剤は、ネイキッドなBリンパ球ターゲティング剤である。
【0025】
一態様では、Bリンパ球ターゲティング剤は、Bリンパ球の死滅に有用なさらなる部分を含む。
【0026】
一態様では、さらなる部分は、放射性同位体、細胞傷害性薬物および免疫調節剤を含む群より選択される。
【0027】
一態様では、Bリンパ球ターゲティング剤は、治療的に有効であるか、または治療効果を提供するためなどの量で投与される。
【0028】
一態様では、Bリンパ球ターゲティング剤は、抗体、アプタマー、シュピーゲルマー(spiegelmer)、抗原結合性ポリペプチドおよびアンチカリン(anticaline)を含む群より選択される。
【0029】
一態様では、Bリンパ球ターゲティング剤は、抗体である。
【0030】
一態様では、抗体は、ポリクローナル抗体である。
【0031】
一態様では、抗体は、モノクローナル抗体である。
【0032】
一態様では、抗体は、抗体フラグメント、好ましくは、該当する抗体が結合するのと同じ抗原および/またはエピトープに結合する抗体フラグメントである。
【0033】
一態様では、抗体フラグメントは、F(ab’)2、F(ab)2、Fab’、Fab、Fv、scFvおよびsFvを含む群より選択されるものである。
【0034】
一態様では、抗体は、類人猿抗体、マウスモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である。
【0035】
一態様では、抗体は、補体介在性細胞傷害作用および/または抗体依存性細胞介在性細胞傷害作用を仲介する。
【0036】
一態様では、抗体は、抗CD20抗体である。
【0037】
一態様では、抗体は、リツキシマブである。
【0038】
一態様では、Bリンパ球ターゲティング剤は、アプタマー、シュピーゲルマー、抗原結合性ポリペプチドおよびアンチカリンを含む群より選択される。
【0039】
一態様では、Bリンパ球ターゲティング剤は、Bリンパ球の死滅に有用なさらなる部分を含む。
【0040】
一態様では、さらなる部分は、放射性同位体、細胞傷害性薬物および免疫調節剤を含む群より選択される。
【0041】
一態様では、さらなる部分は、放射性同位体である。
【0042】
一態様では、放射性同位体は、198Au、32P、125I、131I、90Y、186Re、188Re、67Cu、211At、213Biまたは225Acを含む群より選択される。
【0043】
本発明の基礎になる問題は、また、上記と同義のBリンパ球ターゲティング剤および薬学的に許容されうる担体を含む薬学的組成物によっても解決される。
【0044】
一態様では、薬学的組成物は、心不全、好ましくは上記と同義の心不全の処置方法に使用するためのものである。
【0045】
本発明の基礎になる問題は、また、心不全、好ましくは上記と同義の心不全を処置する医薬を製造するために上記と同義のBリンパ球ターゲティング剤を使用することによっても解決される。
【0046】
本発明の基礎になる問題は、また、心不全を患う患者が、上記と同義のBリンパ球ターゲティング剤を使用した心不全の処置に感受性であるかどうかを判定するin vitro方法であって、以下の段階を含む方法によっても解決される:
a)患者の心臓組織試料を提供すること;
b)その試料を上記と同義のBリンパ球ターゲティング剤と接触させること;および
c)Bリンパ球がその試料中に含まれるかどうかを判定すること。
【0047】
一態様では、その試料中にBリンパ球が含まれる場合、患者を、上記と同義のBリンパ球ターゲティング剤を使用して処置することができる。
【0048】
本発明の基礎になる問題は、また、心不全を患う患者が、上記と同義のBリンパ球ターゲティング剤を使用した心不全の処置に感受性であるかどうかを判定する方法であって、以下の段階を含む方法によっても解決される:
a)その患者に上記と同義のBリンパ球ターゲティング剤を投与すること;および
b)上記と同義のBリンパ球ターゲティング剤によってターゲティングされるBリンパ球を可視化すること。
【0049】
一態様では、Bリンパ球が心臓中に存在するかどうか、より好ましくはBリンパ球が細胞間隙中に、好ましくは心筋細胞と心血管系の細胞との間の細胞間隙中に存在するかどうかが判定される。
【0050】
一態様では、Bリンパ球が心臓中に存在する場合、より好ましくは細胞間隙中に、好ましくは心筋細胞と心血管系の細胞との間の細胞間隙中に存在する場合に、患者を、上記と同義のBリンパ球ターゲティング剤を使用して処置することができる。
【0051】
一態様では、上記と同義のBリンパ球ターゲティング剤は、好ましくは試料、組織、器官または生物におけるBリンパ球ターゲティング剤の検出を可能にするラベルを担持する。
【0052】
一態様では、B細胞は、in vivoイメージングによって可視化される。
【0053】
一態様では、in vivoイメージングは、磁気共鳴イメージング、ポジトロン放出型断層撮影、単光子放出型コンピュータ断層撮影および光学イメージングを含む群より選択される方法である。
【0054】
本発明の基礎になる問題は、また、上記と同義の(in vitro)方法に使用するための、上記と同義のBリンパ球ターゲティング剤によっても解決される。
【0055】
本発明の基礎になる問題は、また、上記と同義の心不全を診断する方法に使用するための、上記と同義のBリンパ球ターゲティング剤によっても解決される。
【0056】
本発明の基礎になる問題は、また、好ましくは心不全を診断するための診断剤を製造するための、上記と同義のBリンパ球ターゲティング剤の使用によっても解決される。
【0057】
一態様では、心不全は、上記と同義のBリンパ球ターゲティング剤を使用した処置に適するものである。
【0058】
別の局面では、本発明は、上記と同義の心不全の処置方法であって、上記と同義のBリンパ球ターゲティング剤を、それを必要とする患者に投与する段階を含む方法に関する。
【0059】
本発明者らは、驚くことに、心不全を患う患者の心臓中にBリンパ球が存在することを見出した。さらに具体的には、本発明者らは、Bリンパ球が細胞間隙中に、好ましくは心筋細胞と心血管系の細胞との間の細胞間隙中に存在することを見出した。この種のBリンパ球は、1種または数種のBリンパ球ターゲティング剤の使用によって、治療目的および/または診断目的の両方で扱うことができる。この診断アプローチおよび特に治療アプローチの実行可能性についての実験的エビデンスは、また、抗CD20抗体のようなBリンパ球ターゲティング剤を使用した腎疾患処置の成功からも得ることができる。心疾患の場合と同様に、そのような腎疾患は、Bリンパ球の存在によって特徴づけられる。
【0060】
本明細書において好ましく使用されるように、Bリンパ球ターゲティング剤は、Bリンパ球の抗原をターゲティングする。本明細書において使用されるような、抗原をターゲティングすることは、好ましくは抗原と本発明によるBリンパ球ターゲティング剤との間の相互作用を確立することを意味する。好ましくはそのような相互作用は、そのような相互作用が起こる試料、組織、器官または生物中に存在している条件などの生理学的条件下で安定である。相互作用の特に好ましい態様は、Bリンパ球ターゲティング剤への抗原の結合である。
【0061】
本明細書において好ましく使用されるように、Bリンパ球は、任意のBリンパ球または形質細胞などの任意の前駆細胞である。好ましい態様では、Bリンパ球は、抗原を発現しているか、またはそのような抗原を発現するように誘導することができる。Bリンパ球は、B細胞とも呼ばれる。
【0062】
そのような抗原は、それがBリンパ球によって発現されるかどうか、またはそのような抗原を発現するようにBリンパ球を誘導することができるかどうかに関わらず、好ましくはCD19、CD20およびCD21を含む群より選択される。さらに好ましくは、そのような抗原は、本発明の任意の局面においてCD20である。
【0063】
CD20分子(ヒトBリンパ球拘束性分化抗原またはBp35とも呼ばれる)は、プレBリンパ球および成熟Bリンパ球上に局在する約35kDの分子量を有する疎水性膜貫通タンパク質である(Valentine、M.A., et al. J. Biol. Chem. 264(19) (1989) 11282-11287;およびEinfield, D.A., et al. EMBO J. 7(3) (1988) 711-717)。CD20は、末梢血またはリンパ器官由来のB細胞の90%超の表面上から見出され、初期プレB細胞の発生時に発現され、形質細胞に分化するまで残留する。CD20は、正常B細胞上および悪性B細胞上の両方に存在する。特に、CD20は、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)の90%超に発現するが(Anderson, K.C., et al., Blood 63(6) (1984) 1424-1433)、造血幹細胞、プロB細胞、正常形質細胞、または他の正常組織上には見出されない(Tedder, T.F., et al., J, Immunol. 135 (2) (1985) 973- 979)。
【0064】
CD20タンパク質のカルボキシル末端領域の85個のアミノ酸は、細胞質内に位置する。この領域の長さは、それぞれ3、3、28、15、および16個のアミノ酸の比較的短い細胞質内領域を有するIgM、IgD、およびIgGの重鎖または組織適合抗原クラスIIのα鎖もしくはβ鎖のような他のB細胞特異的表面構造の長さと対照的である(Komaromy, M., et al., NAR 11 (1983) 6775-6785)。最後の61個のカルボキシル末端アミノ酸のうち、21個が酸性基である一方で、2個だけが塩基性であり、これは、この領域が強い正味の負荷電を有することを示している。ヒトCD20のGenBankアクセッション番号は、NP_690605である。CD20は、B細胞の活性化過程および分化過程の初期段階の調節に関与する可能性があり(Tedder et al., Eur. J. Immunol. 25 Vol. 16 (1986) 881-887)、カルシウムイオンチャネルとして機能しうると考えられている(Tedder, T.F., et al., J. Cell. Biochem. 14D (1990) 195)。
【0065】
CD19は、濾胞樹状細胞およびB細胞上に発現される。実際にCD19は、認識可能になって間もないB系列細胞からB細胞芽球へと発生する間はB細胞上に存在するが、形質細胞に成熟すると失われる。それは、CD21およびCD81と共に主としてB細胞補助レセプターとして作用する。活性化すると、CD19の細胞質側尾部がリン酸化され、それがSrcファミリーキナーゼによる結合およびPI−3キナーゼの動員へと導く。CD19は、B4とも呼ばれる。ヒトCD19の配列は、uniprotデータバンクからP15391として、またはそのmRNA配列についてはNM_001770から、そしてそのアミノ酸配列についてはNP_001761から得ることができる。
【0066】
CR2またはC3DRとも呼ばれるCD21は、補体系に関与するタンパク質である。それは、iC3b(C3bの不活性誘導体)、C3dg、またはC3dに結合する。B細胞は、その表面にCD21レセプターを有し、補体系がB細胞の活性化および成熟に役割を果たせるようにする。成熟B細胞上のCD21は、他の2種類の膜タンパク質であるCD19およびCD81(=TAPA−1)と複合体を形成する。CD21−CD19−CD81複合体は、しばしばB細胞補助レセプター複合体と呼ばれるが、それは、膜IgMが抗原に結合するときに、CD21が、付属したC3d(またはiC3bもしくはC3dg)を介して抗原に結合するからである。これは、抗原に対する応答を大きく増強したB細胞をもたらす。ヒトCD21の配列は、uniprotデータバンクからP20023として、またはそのmRNA配列についてはNM_001006658から、そしてそのアミノ酸配列についてはNP_001006659から得ることができる。
【0067】
原則として任意の形態の心不全を処置できることが当業者によって了承されている。しかしながら、好ましい態様では、Bリンパ球が関与する形態の心不全を処置することができる。好ましく了解され、本明細書において使用されるような関与は、そのようなBリンパ球が因果関係を持ってか、または因果関係を持たず、心不全に関連する症状の発生または増悪へと導くかのいずれかで心不全と関連することを意味する。
【0068】
また、好ましくはBリンパ球の存在という必要条件が課される限り、原則としてそのような心不全が、その疾患の原因とは無関係に本発明に従って処置されうることも、了解されている。
【0069】
Bリンパ球により、直接的または誘導時のいずれかに、発現された抗原に対処するために適した多様なクラスのB細胞ターゲティング剤を産生できることが了承されている。そのようなクラスのBリンパ球ターゲティング剤は、抗体、アプタマー、シュピーゲルマー、抗原結合性ポリペプチドおよびアンチカリンを含む。
【0070】
Bリンパ球の抗原、さらに具体的にはCD20、CD19およびCD21に特異的な抗体の製造方法は、当業者に公知である。同じことがモノクローナル抗体に当てはまる。一般に、Kohler and Milstein, Nature 256 : 495 (1975); Coligan et al. (eds.), CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY(John Wiley & Sons 1991)を参照されたい。簡潔には、モノクローナル抗体は、例えばNCA−90を含む組成物をマウスに注射すること、血清試料を取り出すことによって抗体産生の存在を検証すること、脾臓を取り出してBリンパ球を得ること、Bリンパ球を骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを生成させること、そのハイブリドーマをクローニングすること、所望の抗体を生成する陽性クローンを選択すること、その抗原に対する抗体を生成するクローンを培養すること、およびそのハイブリドーマ培養物から抗体を単離することによって得ることができる。
【0071】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ培養物から多様な周知の技法によって単離および精製することができる。そのような単離技法には、プロテインAセファロースを用いたアフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、およびイオン交換クロマトグラフィーが含まれる。Coligan et al. (eds.), CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY (John Wiley & Sons 1991); Baines et al., pages 79-104, METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY(The Humana Press, Inc. 1992)を参照されたい。
【0072】
類人猿抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体の産生方法は、当技術分野において等しく公知である。それに関連して、「キメラ抗体」は、好ましくはげっ歯類抗体由来の可変ドメインおよび相補性決定領域を有するが、その抗体分子の残りがヒト抗体由来であるリコンビナントタンパク質であり、「ヒト化抗体」は、好ましくは、モノクローナル抗体のマウス相補性決定領域が、マウス免疫グロブリンの可変重鎖および可変軽鎖からヒト可変ドメインに転移されたリコンビナントタンパク質である。
【0073】
本明細書において好ましく使用されるように、「抗体フラグメント」は、F(ab’)2、F(ab)2、F(ab)、Fab’、Fab、Fv、scFvおよびsFvなどのような抗体の部分である。その構造に関係なく、抗体フラグメントは、完全なままの抗体によって認識されるのと同一の抗原と結合する。例えば、抗CD20モノクローナル抗体フラグメントは、CD20のエピトープと結合する。
【0074】
本明細書において好ましく使用されるように、「抗体フラグメント」という用語には、また、特異的抗原に結合して複合体を形成することによって抗体のように作用する、任意の合成タンパク質または遺伝子操作されたタンパク質も含まれる。例えば、抗体フラグメントには、軽鎖可変領域から成る単離されたフラグメント、重鎖および軽鎖の可変領域から成る「Fv」フラグメント、軽鎖および重鎖の可変領域がペプチドリンカーによって結合しているリコンビナント1本鎖ポリペプチド分子(「sFvタンパク質」)、および超可変領域を模倣するアミノ酸残基から成る最小限の認識ユニットが含まれる。
【0075】
「ネイキッドな抗体」は、治療剤または診断剤にコンジュゲーションしていない、抗体全体または抗体フラグメントのいずれかである。ネイキッドな抗体には、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両方、ならびにキメラ抗体およびヒト化抗体などのある種のリコンビナント抗体が含まれる。
【0076】
アプタマーは、1本鎖または2本鎖のいずれかのD−核酸であって、本明細書に記載されたようなBリンパ球の抗原などのターゲット分子と特異的に相互作用するD−核酸である。アプタマーの製造または選択は、例えば欧州特許EP 0 533 838 B1に記載されている。基本的に以下の段階が実現される。第一に、各核酸が典型的にはいくつかの、好ましくは少なくとも8個の連続するランダムなヌクレオチドのセグメントを含む、核酸の混合物、すなわち潜在的アプタマーが提供される。続いてこの混合物をターゲット分子と接触させるが、それによって核酸が、候補混合物と比較して、ターゲットに対する親和性が増大していること基づいて、またはより大きな力をターゲットに及ぼすなどして、ターゲット分子に結合する。続いて結合性核酸を、混合物の残りから分離する。場合によっては、そのように得られた核酸を、例えばポリメラーゼ連鎖反応を用いて増幅させる。これらの段階を数回繰り返して、ターゲットに特異的に結合する核酸の比が増大した混合物が生じさせて、次に場合によりそこから最終的な結合性核酸を選択してもよい。これらの特異的結合性核酸が、アプタマーと呼ばれる。アプタマーを産生または同定する方法の任意の段階で、個別の核酸の混合物の試料を採取し、標準的な技法を使用してその配列を決定してもよいことは明らかである。例えばアプタマーを産生させる分野の技術者に公知の、所定の化学基を導入することによってアプタマーを安定化できることは、本発明の範囲内である。そのような改変は、例えばヌクレオチドの糖部分の2’位にアミノ基を導入することであってもよい。アプタマーは、現在、治療剤として使用されている。しかしながら、そのように選択または産生されたアプタマーを診断目的に使用できることも、本発明の範囲内である。
【0077】
本明細書に記載されるようなBリンパ球の抗原を使用した、本発明に従って使用または産生することのできるシュピーゲルマーの産生または製造も、類似の原理に基づく。シュピーゲルマーの製造は、国際特許出願WO 98/08856 A2に記載されている。シュピーゲルマーはL−核酸であって、そのことは、アプタマーのようにD−ヌクレオチドから構成されるアプタマーと違って、それらがL−ヌクレオチドから構成されることを意味する。シュピーゲルマーは、生体系において非常に高い安定性を有し、アプタマーと同様にそれらが向けられたターゲット分子と特異的に相互作用するという事実によって特徴づけられる。シュピーゲルマーを産生させるために、D−核酸の異種集団が生み出され、この集団をターゲット分子の光学的対掌体と、この場合は例えば本明細書に記載されたようなBリンパ球の抗原の天然L−鏡像体のD−鏡像体と接触させる。続いて、ターゲット分子の光学的対掌体と相互作用しないD−核酸を分離する。しかしながら、ターゲット分子の光学的対掌体と相互作用するD−核酸を分離し、場合により決定および/または配列決定し、続いて対応するL−核酸を、そのD−核酸から得られた核酸配列情報に基づき合成する。ターゲット分子の光学的対掌体と相互作用する上記D−核酸と配列が同一なこれらのL−核酸は、天然ターゲット分子の光学的対掌体よりはむしろ、その天然ターゲット分子と特異的に相互作用する。アプタマーの産生方法に類似して、様々な段階を数回繰り返すことによって、ターゲット分子の光学的対掌体と特異的に相互作用する核酸を濃縮化することも可能である。
【0078】
好ましくは、アプタマーおよびシュピーゲルマーの両方は、それぞれアプタマーおよびシュピーゲルマーとターゲット分子との間のワトソン−クリック塩基対形成を介する代わりに、それらが取る三次元構造によってそれらのターゲット分子に結合することを了承されたい。
【0079】
本明細書に記載されたようなBリンパ球の抗原を用いて産生されうる、さらなるクラスの医薬および診断剤は、その抗原に結合するペプチドである。そのようなペプチドは、ファージディスプレイ法のような現況技術による方法を使用することによって、産生することができる。基本的に、例えばファージ形態などのペプチドライブラリーを産生し、この種のライブラリーを、ターゲット分子と、今回は例えば本明細書に記載されたようなBリンパ球の抗原と接触させる。続いてターゲット分子に結合するペプチドを、それぞれの反応物から、好ましくはターゲット分子との複合体として取り出す。結合特性が、塩濃度などの、特に実現された実験設定に少なくともある程度依存することは、当業者に公知である。より高い親和性またはより大きな力でターゲット分子に結合するペプチドをライブラリーの非結合性メンバーから分離した後に、そしてまた場合によりターゲット分子とペプチドとの複合体からターゲット分子を除去した後に、続いてそれぞれのペプチドを特徴づけることができる。場合により特徴づけの前に、例えばペプチドをコードするファージを増殖させることによって増幅段階を実現する。特徴づけは、好ましくはターゲット結合性ペプチドの配列決定を含む。基本的に、ペプチドはその長さに限定されないが、好ましくは約8〜20個のアミノ酸長を有するペプチドが、好ましくはそれぞれの方法で得られる。ライブラリーのサイズは、約10〜1018、好ましくは10〜1015種の異なるペプチドでありうるが、それに限定されない。
【0080】
特定の形態のターゲット結合性ポリペプチドは、いわゆる「アンチカリン」であって、それは、とりわけドイツ特許出願DE 197 42 706 A1に記載されている。
【0081】
治療剤として使用される場合、本発明によるBリンパ球ターゲティング剤は、治療的に有効であるか、または薬学的に関連する効果を達成するためなどの量で投与されることが、当業者によって了解されている。Bリンパ球ターゲティング剤は、ターゲティングされたBリンパ球、好ましくは本明細書にさらに詳細に記載されるような、心臓組織に存在するBリンパ球を死滅させることが意図されることは、当業者によってさらに了解されている。
【0082】
本明細書において好ましく使用されるように、「Bリンパ球の死滅」という用語は、本発明の様々な態様において以下の一つまたは数個の意味を有しうる:Bリンパ球の成長を停止させること、アポトーシス他などの生物学的過程を経由してBリンパ球の自己破壊を誘導すること、またはBリンパ球の溶解を直接的もしくは間接的のいずれかで仲介すること。
【0083】
本明細書に記載されたような任意のBリンパ球ターゲティング剤の使用によってBリンパ球に対処することができ、Bリンパ球のそのような死滅を引き起こすかまたは仲介する、任意のペイロードを該Bリンパ球に送達するためにBリンパ球ターゲティング剤を使用することができることが了解されている。そのようなペイロードは、当業者に公知のような放射性ラベル、細胞傷害性薬物または任意の適切な免疫調節剤でありうる。そのようなペイロードをBリンパ球ターゲティング剤に直接的または間接的のいずれかで結合させる方法は、当業者に公知である。
【0084】
Bリンパ球ターゲティング剤が、抗体、さらに具体的にはモノクローナル抗体である場合、細胞死は、補体介在性細胞傷害作用および/または抗体依存性細胞介在性細胞傷害作用によって仲介されうる。本明細書に記載された任意のBリンパ球抗原に特異的に結合するこの種の抗体をスクリーニングすることは、当業者の技術の範囲内である。
【0085】
好ましいBリンパ球ターゲティング剤は、補体介在性細胞傷害作用および/または抗体依存性細胞介在性細胞傷害作用を示す抗CD20抗体である。従来技術において、この種のBリンパ球ターゲティング剤の様々な種類が、記載されており、特に好ましいものは、RituxanまたはMabTheraの商品名で市販されているリツキシマブである。
【0086】
「リツキシマブ」抗体は、一般に、ヒトCD20抗体に対する、操作されたヒトγ1マウス定常ドメイン含有キメラ化モノクローナル抗体である。このキメラ抗体は、ヒトγ1定常ドメインを有し、1998年4月17日に発行され、IDEC Pharmaceuticals Corporationに譲渡された米国特許第5,736,137号(Andersen, et. al.)において「C2B8」の名で識別される。リツキシマブは、再発または抗療性の低悪性度または濾胞性のCD20陽性B細胞非ホジキンリンパ腫の患者を処置するために認可されている。in vitro作用機序の研究から、リツキシマブがヒト補体依存性細胞傷害作用(CDC)を表すことが示された(Reiff, M.E., et. al, Blood 83(2) 435- 445 (1994))。追加的に、リツキシマブは、抗体依存性細胞性細胞傷害作用(ADCC)を測定するアッセイにおいて著しい活性を示す。
【0087】
本発明によるBリンパ球ターゲティング剤の投与方式に関して、それらがこの種の薬剤を投与するために当技術分野で通常に使用される範囲内であり、最適薬用量を日常の実験によって決定できることは、当業者によって了承されている。
【0088】
本明細書に記載されたようなBリンパ球ターゲティング剤は、また、その様々な形態の、さらに具体的にはBリンパ球が本明細書に概略されたように関与する形態の心機能不全の診断にも適することも了承されている。それらを治療応用する場合に類似して、Bリンパ球ターゲティング剤は、そのBリンパ球ターゲティング剤によってターゲティングされるBリンパ球の検出を可能にするように、直接的または間接的のいずれかでラベルしなければならない。
【0089】
同様に、本明細書に開示されたような、本明細書に記載されたBリンパ球ターゲティング剤は、心不全を患うか、または患うリスクのある患者の群を層別化するために、そして該群が本発明に従ってBリンパ球ターゲティング剤の投与によって処置できるかどうか、もしそうならば該群のどのメンバーを処置できるかを判定するために適する。
【0090】
in vivoイメージング方法は、当業者に公知であり、例えば欧州特許出願EP 01114110.8に記載されている。
【0091】
本明細書に使用されるような「駆出分画(EF)」という用語は、心拍の度に心室からポンプ輸送される血液の分画である。健康な個体は、典型的には50%と65%との間の駆出分画を有し、ここで、正常値は駆出分画を計算するために使用される様式にも依存する。心筋梗塞の間または心筋症において持続する損傷のような、心臓の筋肉(心筋)への損傷は、心臓が血液を駆出する能力に障害を与え、従って駆出分画を減少させる。
【0092】
「左心室拡張終末期径(LVEDD)」という用語は、拡張期における中隔および後壁厚を含めた左心室断面の直径を意味する。
【0093】
ニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類は、心不全の程度を分類する簡便法を提供している。それは、身体活動時に患者がどれほど大きく制限されるかに基づいて、患者を4種類(クラスI〜IV)の一つに位置付ける。制限/症状は、正常な呼吸および様々な程度の息切れおよび/またはアンギナ痛に関する(クラスI:通常の身体活動に症状なく、制限もなし、例えば歩行、階段を昇るときなどに息切れ/クラスIV:重大な制限;安静時にも症状;主として寝たきりの患者)。
【0094】
脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は、心筋細胞(cardiomyocytes)の過剰伸展に応答して心室によって分泌される32個のアミノ酸のポリペプチドである。BNPは、生物学的に不活性な76個のアミノ酸のN−末端フラグメント(NT proBNP)と一緒に共分泌される。BNPおよびNT proBNPの両方が、心不全の診断のために使用される。それらの血漿濃度は、典型的には左心室機能不全を有する患者で増加している。
【0095】
以下の図を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】CD20抗体(倍率200×)で染色された、DCMi患者の心内膜心筋生検標本を示す図である。
【図2】>50%または<50%の駆出分画(EF)を有する、DCMiを患う患者の心内膜心筋生検における1mm2あたりのCD20陽性細胞数をDCMiを有さない患者(対照)と比較して示す図である。
【図3】心エコー法によって測定したときの、DCMiの73歳女性患者の2回投与のRituxan(リツキシマブ)処置に対する左心室駆出分画(LVEF、A欄)および左室拡張終末期径(LVEDD、B欄)の変化を示す図である。
【図4】DCMiの73歳女性患者の、2回投与のRituxan(リツキシマブ)処置に対するNT proBNPレベル(A欄)および6分間歩行試験の成績(B欄)の変化を示す図である。
【図5】標準/対照としてホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)を用いた定量RT−PCRによって示したときの、ベースラインおよびRituxan処置後(「フォローアップ」)の心内膜心筋生検におけるサイトカインTNF−α、IL−4、IL−10およびインターフェロンβのmRNA発現プロファイルを示す図である。
【0097】
これから、本発明のさらなる特徴、態様および利点が採用されうる以下の三つの実施例により本発明をさらに例示する。
【0098】
実施例1:心不全を患う患者におけるBリンパ球の検出
心内膜心筋生検を、RV中隔から採取し、液体窒素中で凍結させ、−80℃で保存した。標本をTissue Tec(登録商標)(SLEE, Mainz, Germany)中に包埋し、直ちに液体窒素中で冷却したメチルブタン中で急速凍結させた。包埋した標本を連続的に切断して厚さ5μmの凍結切片とし、10%ポリ−L−リシンで予備コーティングしたスライド上に載せた。冷アセトン中で10分間固定し、続いて風乾した後に、リン酸緩衝生理食塩水中0.3% Hで凍結切片を20分間インキュベーションすることによって、内因性ペルオキシダーゼ活性を消失させた。
【0099】
免疫組織染色のために、加湿チャンバー中でマウスCD20モノクローナル抗体クローン8J662(Fa. Biomol, Hamburg, Germany)を45分間使用した。加湿チャンバー中で二次抗体としてEnVision(商標)ペルオキシダーゼコンジュゲーション型ウサギ抗マウス抗体(DakoCytomation, Hamburg, Germany)を30分間使用した。3−アミノ−9−エチルカルバゾール(Merck, Darmstadt, Germany)を使用して免疫組織染色を可視化した。スライドにKaiser gelatin(登録商標)(Merck, Darmstadt, Germany)をマウントした。
【0100】
処理された切片の視覚分析時に、CD20陽性細胞の浸潤を観察することができた(図1参照、CD20陽性細胞を黒矢印により示す)。そのような細胞浸潤は、細胞巣を形成しており、その細胞巣は、心筋細胞と心血管系の細胞との間の細胞間隙中に局在した。
【0101】
図2に示すように、50%を超えるまたは下回る駆出分画を有する炎症性拡張性心筋症(DCMi)を患う患者におけるCD20陽性細胞数は、対照標本に比べて有意に増加していた。
【0102】
実施例2:炎症性拡張性心筋症(DCMi)を患う男性患者の処置
DCMi(末期DCM、重症DCMi;軽度心炎症、心臓でのウイルス残存なし、心生検種(cardiac biopsy species)においてCD20陽性、NYHA III、EF 20%;LVEDD 71mm)が原因の心不全の病歴を3年間もつ76歳男性を、Rituxanで、製造業者によって推奨される投薬方式を用いて処置した。Rituxanの最初の単回投与の24時間後にすでに症状およびLV機能が改善し(EF 29%)、プロトコールに従って2回目のRituxan投与後に安定を維持した。負荷心エコー検査によると、Rituxan適用前に行った検査に比べてLV機能予備力の追加的な増加が明らかとなった。
【0103】
実施例3:炎症性拡張性心筋症(DCMi)を患う女性患者の処置
患者は、心不全薬物療法および両室ICD刺激に関わらず持続し続けた、重症拡張性心筋症(EF 24%)が原因の心不全症状(NYHAクラスIII)の5年の病歴をもつ73歳女性である。
【0104】
この女性患者を、心不全薬物療法および375mg/m2体表面積のRituxan(リツキシマブ)の2回セッションで処置した。
【0105】
心エコー図から、左室駆出分画(LVEF)がRituxanの初回投与後に有意に増加し、Rituxanの2回目投与後にさらに増加したことが明らかとなった(図3A)。同時に、左室拡張終末期径(LVEDD)は減少した(図3B)。個別の測定値を表1に示す。
【0106】
BNPレベルは、Rituxan処置後にかなり低下した(図4A)。
【0107】
Rituxan処置は、また、6分以内に歩行した距離を評価する6分間歩行試験における患者の成績も向上させた(図4B)。
【0108】
続く心内膜心筋生検から、Rituxanを使用した処置が原因でBリンパ球の部分枯渇(データは示さず)、ならびにインターフェロンβなどの抗ウイルス効力を有するサイトカインのmRNA発現増加を伴う、TNF−α、IL−4およびIL−10などの炎症性サイトカインのmRNA発現の減少が明らかとなった(図5参照)。
【0109】
【表1】

【0110】
表1:Rituxanで処置後の、DCMiを患う73歳女性のLVEF/EFおよびLVEDDの個別の測定値(および結果としてのNYHAクラス)
【0111】
明細書、特許請求の範囲および/または図面に開示された本発明の特徴は、個別におよびその任意の組み合わせの両方で、本発明をその様々な形態で実現するための材料となりうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心不全の処置方法に使用するためのBリンパ球ターゲティング剤。
【請求項2】
Bリンパ球によって発現される抗原またはBリンパ球によって発現されるように誘導可能な抗原をターゲティングしている、請求項1記載のBリンパ球ターゲティング剤。
【請求項3】
Bリンパ球によって発現される抗原またはBリンパ球によって発現されるように誘導可能な抗原に結合性である、請求項1または2のいずれか一項記載のBリンパ球ターゲティング剤。
【請求項4】
抗原が、CD19、CD20およびCD21を含む群より選択される、請求項1〜3のいずれか一項記載のBリンパ球ターゲティング剤。
【請求項5】
抗原がCD20である、請求項4記載のBリンパ球ターゲティング剤。
【請求項6】
方法が、Bリンパ球ターゲティング剤を、それを必要とする患者に投与する段階を含む、請求項1〜5のいずれか一項記載のBリンパ球ターゲティング剤。
【請求項7】
患者が、心臓組織がBリンパ球を含有する患者である、請求項6記載のBリンパ球ターゲティング剤。
【請求項8】
Bリンパ球が、細胞間隙中に、好ましくは心筋細胞と心血管系の細胞との間の細胞間隙中に存在する、請求項7記載のBリンパ球ターゲティング剤。
【請求項9】
心不全が、心筋または心内膜の炎症によって起こる心不全、心筋または心内膜の変性によって起こる心不全、冠不全によって起こる心不全、心筋梗塞によって起こる心不全および損傷によって起こる心不全より選択されるものである、請求項1〜8のいずれか記載のBリンパ球ターゲティング剤。
【請求項10】
心不全が、心筋梗塞によって起こる心不全とは異なる、請求項1〜9のいずれか一項記載のBリンパ球ターゲティング剤。
【請求項11】
Bリンパ球を死滅させる能力があるか、またはBリンパ球の死滅に有用な、請求項1〜10のいずれか一項記載のBリンパ球ターゲティング剤。
【請求項12】
Bリンパ球が、CD19、CD20およびCD21を含む群より選択される少なくとも1種の抗原を担持し、好ましくは該抗原がCD20である、請求項11記載のBリンパ球ターゲティング剤。
【請求項13】
ネイキッドなBリンパ球ターゲティング剤である、請求項11〜12のいずれか一項記載のBリンパ球ターゲティング剤。
【請求項14】
Bリンパ球の死滅に有用なさらなる部分を含む、請求項11〜12のいずれか記載のBリンパ球ターゲティング剤。
【請求項15】
さらなる部分が、放射性同位体、細胞傷害性薬物および免疫調節剤を含む群より選択される、請求項14記載のBリンパ球ターゲティング剤。
【請求項16】
治療的に有用であるか、または治療効果を提供するためなどの量で投与される、請求項1〜15のいずれか一項記載のBリンパ球ターゲティング剤。
【請求項17】
抗体、アプタマー、シュピーゲルマー、抗原結合性ポリペプチドおよびアンチカリンを含む群より選択される、請求項1〜16のいずれか一項記載のBリンパ球ターゲティング剤。
【請求項18】
抗体である、請求項1〜17のいずれか一項記載のBリンパ球ターゲティング剤。
【請求項19】
抗体が、ポリクローナル抗体である、請求項18記載のBリンパ球ターゲティング剤。
【請求項20】
抗体が、モノクローナル抗体である、請求項18記載のBリンパ球ターゲティング剤。
【請求項21】
抗体が、抗体フラグメント、好ましくは該当する抗体と同じ抗原および/またはエピトープに結合する抗体フラグメントである、請求項18〜20のいずれか一項記載のBリンパ球ターゲティング剤。
【請求項22】
抗体フラグメントが、F(ab’)2、F(ab)2、Fab’、Fab、Fv、scFvおよびsFvを含む群より選択されるものである、請求項21記載のBリンパ球ターゲティング剤。
【請求項23】
抗体が、類人猿抗体、マウスモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である、請求項18〜22のいずれか一項記載のBリンパ球ターゲティング剤。
【請求項24】
抗体が、補体介在性細胞傷害作用および/または抗体依存性細胞介在性細胞傷害作用を仲介する、請求項18〜23のいずれか一項記載のBリンパ球ターゲティング剤。
【請求項25】
抗体が、抗CD20抗体である、請求項18〜24のいずれか一項記載のBリンパ球ターゲティング剤。
【請求項26】
抗体が、リツキシマブである、請求項25記載のBリンパ球ターゲティング剤。
【請求項27】
アプタマー、シュピーゲルマー、抗原結合性ポリペプチドおよびアンチカリンを含む群より選択される、請求項1〜17のいずれか一項記載のBリンパ球ターゲティング剤。
【請求項28】
Bリンパ球の死滅に有用なさらなる部分を含む、請求項27記載のBリンパ球ターゲティング剤。
【請求項29】
さらなる部分が、放射性同位体、細胞傷害性薬物および免疫調節剤を含む群より選択される、請求項28記載のBリンパ球ターゲティング剤。
【請求項30】
さらなる部分が、放射性同位体である、請求項29記載のBリンパ球ターゲティング剤。
【請求項31】
放射性同位体が、198Au、32P、125I、131I、90Y、186Re、188Re、67Cu、211At、213Biまたは225Acを含む群より選択される、請求項30記載のBリンパ球ターゲティング剤。
【請求項32】
請求項1〜31のいずれか一項記載のBリンパ球ターゲティング剤および薬学的に許容されうる担体を含む薬学的組成物。
【請求項33】
心不全、好ましくは前記請求のいずれかにおいて同義の心不全の処置方法に使用するための、請求項32記載の薬学的組成物。
【請求項34】
心不全を患う患者が、請求項1〜31のいずれか一項記載のBリンパ球ターゲティング剤を使用した心不全の処置に感受性であるかどうかを判定するin vitro方法であって、以下の段階を含む方法:
a)該患者の心臓組織試料を提供すること;
b)該試料を請求項1〜31のいずれか一項記載Bリンパ球ターゲティング剤と接触させること;および
c)Bリンパ球が該試料中に含有されるかどうかを判定すること。
【請求項35】
試料中に含有されるBリンパ球がある場合に、患者が、請求項1〜31のいずれか一項記載Bリンパ球ターゲティング剤を使用して処置されうる、請求項34記載の方法。
【請求項36】
心不全を患う患者が、請求項1〜31のいずれか一項記載のBリンパ球ターゲティング剤を使用した心不全の処置に感受性であるかどうかを判定する方法であって、以下の段階を含む方法:
a)該患者に請求項1〜31のいずれか一項記載のBリンパ球ターゲティング剤を投与すること;および
b)請求項1〜31のいずれか一項記載の該Bリンパ球ターゲティング剤によってターゲティングされるBリンパ球を可視化すること。
【請求項37】
Bリンパ球が心臓中に存在するかどうか、さらに好ましくはBリンパ球が細胞間隙中に、好ましくは心筋細胞と心血管系の細胞との間の細胞間隙中に存在するかどうかを判定する、請求項36記載の方法。
【請求項38】
Bリンパ球が心臓中に、さらに好ましくは細胞間隙中に、好ましくは心筋細胞と心血管系の細胞との間の細胞間隙中に存在する場合に、患者が、請求項1〜31のいずれか一項記載のBリンパ球ターゲティング剤を使用して処置されうる、請求項37記載の方法。
【請求項39】
請求項1〜31のいずれか一項記載のBリンパ球ターゲティング剤が、好ましくは試料、組織、器官または生物におけるBリンパ球ターゲティング剤の検出を可能にするラベルを担持する、請求項34〜38のいずれか一項記載の方法。
【請求項40】
B細胞が、in vivoイメージングによって可視化される、請求項36〜38のいずれか一項記載の方法。
【請求項41】
in vivoイメージングが、磁気共鳴イメージング、ポジトロン放出型断層撮影、単光子放出型コンピュータ断層撮影および光学イメージングを含む群より選択される方法である、請求項40記載の方法。
【請求項42】
請求項34〜41のいずれか記載の方法に使用するための、請求項1〜31のいずれか記載のBリンパ球ターゲティング剤。
【請求項43】
心不全の診断方法に使用するための、請求項1〜31のいずれか記載のBリンパ球ターゲティング剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−524037(P2012−524037A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505094(P2012−505094)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002362
【国際公開番号】WO2010/118890
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(505351108)
【Fターム(参考)】