説明

病原体、疾患若しくは医学的状態又はそのバイオマーカーの検出のための方法及び組成物

酵素活性分析を用いて病原体、疾患若しくは医学的状態又はそのバイオマーカーの有無を検出するための方法が提供される。ある実施態様においては、提供される方法は、対象中の病原体、疾患、医学的状態又はそのバイオマーカーを検出するための酵素の競合阻害を利用する。この方法には、内在性基質を含むか又は含まない対象から生体試料を用意することが具備されている。この試験反応は、病原体、疾患又は医学的状態のバイオマーカーを表す酵素及びシグナル部分を有する基質と生体試料とを接触させることによって提供される。酵素は、内在性基質及びシグナル部分を有する基質を改変する。酵素によるシグナル部分を有する基質の改変は、シグナル部分からシグナルを生じさせる。酵素とシグナル部分を有する基質からなるコントロール反応からのデータがさらに提供される。試験反応でシグナル部分によって生じるシグナルが検出される。病原体、疾患又は医学的状態のバイオマーカーの存在は、試験反応で生じたシグナルとコントロール反応からのデータの間での、生体試料中の内在性基質の存在により生じた違いにより示される。その他の実施形態では、対象中の病原体、疾患若しくは医学的状態又はそのバイオマーカーを表す生体試料中の酵素活性の有無を検出する方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2008年7月28日に出願した米国仮出願第61/129,887号、2008年8月12日に出願した米国仮出願第61/136,105号、2008年8月14日に出願した米国仮出願第61/136,143号、及び2009年3月12日に出願した米国仮出願第61/159,485号の利益を主張する。
【0002】
酵素活性分析を用いて、病原体、又は疾患、又は医学的状態を検出するための方法が提供される。
【背景技術】
【0003】
対象中の病原体、疾患若しくは医学的状態又は病原体、疾患若しくは医学的状態の存在を示すバイオマーカー(以下、「そのバイオマーカー」という)のレベルの直接検出は、イムノ分析又は核酸増幅方法(例えばPCR)を用いることで達成することができる。しかしながら、対象中の病原体、疾患、医学的状態又はそのバイオマーカーを検出するための迅速で精度の高い方法が引き続き必要とされている。
【0004】
多くの微生物は、成長、分化又は代謝の異なる段階と関連した特有の酵素活性を有する。同様に、病理過程はそれらの診断に採用できる特有の酵素活性、例えば癌マーカーや心筋酵素といったバイオマーカーを有することが多い。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
対象中の病原体、疾患、医学的状態又はそのバイオマーカーを検出するための酵素の競合阻害の方法が提供される。方法には、内在性基質を含むか又は含まない対象からの生体試料を用意することが備えられている。試験反応は、病原体、疾患又は医学的状態のバイオマーカーを表わす酵素及びシグナル部分を有する基質と生体試料とを接触させることによって提供される。この酵素は内在性基質及びシグナル部分を有する基質を改変する。この酵素によるシグナル部分を有する基質の改変は、シグナル部分からシグナルを生じさせる。酵素とシグナル部分を有する基質とからなるコントロール反応からのデータがさらに提供される。試験反応でシグナル部分によって生じたシグナルが検出される。病原体、疾患又は医学的状態のバイオマーカーの存在は、試験反応で生じたシグナルとコントロール反応からのデータの間での、生体試料中の内在性基質の存在により生じた違いにより示される。改変には、基質の開裂又は例えばリン酸基のような成分を基質に付加することが含まれる。この方法は、生体試料中の生物学的カスケードに関与する酵素によって改変された内在性基質を検出することによって、対象の生物学的カスケードの機能障害を検出するためにも用いられ得る。
【0006】
さらに、競合阻害分析のアレイを用いて対象の生物学的カスケードの機能障害を検出する方法が提供される。方法には、内在性基質を含むか又は含まない対象からの生体試料を用意することが備えられている。試験反応のアレイは、各試験反応において、生物学的カスケードに関与する酵素及びシグナル部分を有する基質と生体試料とを接触させることによって、さらに提供される。この酵素は内在性基質及びシグナル部分を有する基質を改変し、この酵素によるシグナル部分を有する基質の改変は、シグナル部分からシグナルを生じさせる。さらに、酵素とシグナル部分を有する基質を含むコントロール反応のアレイからのデータによる参照プロファイルがさらに提供される。試験反応でシグナル部分によって生じたシグナルは検出され、試験反応のアレイから生じるシグナルの試料プロファイルが作成される。試料プロファイルは参照プロファイルと比較され、生物学的カスケードの機能障害の存在は試料プロファイルと参照プロファイルとの間の違いにより示される。
【0007】
別の態様においては、生体試料中で生物学的カスケードに関与する酵素を検出する試験反応のアレイを使用して、生物学的カスケードの機能障害の有無を検出する方法が提供される。方法には、対象から、その酵素を含むか又は含まない生体試料を用意し、各試験反応においてシグナル部分を有する基質と生体試料とを接触させることによる試験反応のアレイを提供することが含まれる。その酵素が存在する場合には、その酵素はシグナル部分を有する基質を改変し、酵素による基質の改変はシグナル部分からシグナルを生じさせる。シグナル部分によって、生じたシグナルは、それから各試験反応において検出される。生じたシグナルは、対象の生物学的カスケードの機能障害の存在を示す。
【0008】
生物学的カスケードとは、例えば、凝固カスケード、線維素溶解カスケード、キニン・カスケード、シグナル伝達カスケード、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)カスケード及び炎症カスケードから選択されることができる。また、病原体、疾患又は医学的状態は、凝固障害、癌、炎症、神経変性障害、高血圧、血管拡張、糖尿病及びアレルギーから選択されることができる。
【0009】
また、対象の治療処置の有効性を測定するための方法が提供される。この方法には、治療処置の異なる時点で対象から得られた2つ以上の生体試料とシグナル部分を有する基質とを接触させることが備えられている。生体試料中に酵素が存在する場合、酵素は基質を改変し、酵素による基質の改変はシグナル部分からシグナルを生じさせる。シグナル部分から生じたシグナルは検出され、2つ以上の生体試料から生じるシグナルの違いが治療処置の有効性を示す。生体試料は、治療の前、治療の間、及び/又は治療の後に得ることができる。
【0010】
また、末梢白血球(WBC)の試料の酵素活性を検出するための方法が、提供される。この方法には、対象から得られる酵素を含むか又は含まないWBC試料とシグナル部分を有する基質とを接触させることが備えられている。この酵素は基質を改変し、基質の改変はシグナル部分からシグナルを生じさせる。生じたシグナルはシグナル部分から検出され、生じたシグナルは試料中の酵素活性を表す。この方法は、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)又はヒトTリンパ好性ウイルス(HTLV)を検出するために用いることができる。
【0011】
また、対象の真菌感染の有無を検出するための方法が提供される。この方法には、対象から得られる真菌によって産生された酵素を含むか又は含まないWBC試料とシグナル部分を有する基質とを接触させることが備えられている。この酵素は基質を改変し、酵素による基質の改変はシグナル部分からシグナルを生じさせる。シグナル部分から生じるシグナルは検出され、生じたシグナルは対象の真菌感染の存在を示す。真菌は、例えば、カンジダ菌(クリプトコッカス・ネオフォルマンス)カンジダ菌、クリプトコッカス・ネオフォルマンス、アスペルギルス・フミガーツス、コウマクノウキン門、ツボカビ門、ディカリア、グロムス門、微胞子虫類及びネオカリマスティクスから選択されることができる。
【0012】
また、対象の髄膜炎感染の有無を検出するための方法が提供される。この方法には、対象から得られる髄膜炎病原体によって産生された酵素を含むか又は含まないWBC試料とシグナル部分を有する基質とを接触させることが備えられている。この酵素は基質を改変し、酵素による基質の改変はシグナル部分からシグナルを生じさせる。生体試料は、非特異的プロテアーゼ活性又は髄膜炎プロテアーゼ活性の1つ以上の阻害剤にも接触する。シグナル部分から生じるシグナルは検出され、生じたシグナルは対象の髄膜炎感染の存在を示す。髄膜炎プロテアーゼ活性の1つ以上の阻害剤は、例えば、細菌性髄膜炎は阻害するが、ウイルス性髄膜炎は阻害しない。別の例として、髄膜炎プロテアーゼ活性の1つ以上の阻害剤は、肺炎球菌プロテアーゼ活性を阻害するが、ウイルス性髄膜炎を阻害しない。更なる例として、髄膜炎プロテアーゼ活性の1つ以上の阻害剤は、髄膜炎菌プロテアーゼ活性を阻害するが、ウイルス性髄膜炎を阻害しない。さらに別の例では、髄膜炎プロテアーゼ活性の1つ以上の阻害剤は、肺炎球菌及び髄膜炎菌プロテアーゼ活性の両方を阻害するが、ウイルス性髄膜炎を阻害しない。このように、細菌性髄膜炎は阻害するが、ウイルス性髄膜炎は阻害しない髄膜炎プロテアーゼ活性の1つ以上の阻害剤の存在下でシグナルが生じる場合には、その髄膜炎はウイルス性髄膜炎である。他方、肺炎球菌プロテアーゼ活性を阻害する髄膜炎プロテアーゼ活性の1つ以上の阻害剤の存在下でシグナルが生じる場合や、髄膜炎菌プロテアーゼ活性を阻害する髄膜炎プロテアーゼ活性の1つ以上の阻害剤の存在下でシグナルが生じない場合には、その髄膜炎は髄膜炎菌である。同様に、髄膜炎菌プロテアーゼ活性を阻害する髄膜炎プロテアーゼ活性の1つ以上の阻害剤の存在下でシグナルが生じる場合や、肺炎球菌プロテアーゼ活性を阻害する髄膜炎プロテアーゼ活性の1つ以上の阻害剤の存在下でシグナルが生じない場合には、その髄膜炎は肺炎球菌である。
【0013】
また、対象中の疾患、医学的状態又はそのバイオマーカーの有無を検出するための方法が提供される。疾患又は医学的状態は、例えば、内分泌系機能障害又は前立腺癌が含まれ得る。この方法には、対象から得られる疾患又は医学的状態を表す酵素を含むか又は含まない生体試料とシグナル部分を有する基質とを接触させることが備えられている。この酵素は基質を改変し、酵素による基質の改変はシグナル部分からシグナルを生じさせる。シグナル部分から生じるシグナルは検出され、生じたシグナルは疾患又は医学的状態の存在を示す。この疾患又は医学的状態は、例えば内分泌系機能障害でもよく、その酵素は例えばアロマターゼでもよい。さらに、この疾患又は医学的状態は、例えば前立腺癌でもよく、その酵素は例えば前立腺特異抗原(PSA)でもよい。
【0014】
提供される方法には、例えば分離工程をさらに備えことができる。それらの態様において、この基質は、分離部分と、(1)反応において加工される基質と加工されない基質との間で分離され、(2)加工された基質の検出ができるシグナル部分を備える。分離は、例えば抗体と抗原との間及び核酸間のような2つの部分の特異的な結合であるか、例えば膜、チップ及びビーズのような固定された表面との結合を通じて得られる。
【0015】
更なる態様において、提供される方法には、例えば、増幅工程を備えることができる。この方法には、病原体、疾患、医学的状態又はそのバイオマーカーを表す酵素によって、第1の基質の開裂に活性化される第1の酵素(チモーゲンと呼ばれる)と融合する第1の基質と、生体試料とを接触させることが備えられている。活性化された第1の酵素は、シグナル部分から成る2枚目の基質を改変して、シグナル部分からシグナルを生じさせる。チモーゲンの開裂は第2の活性酵素を生じさせ、それは第3の活性酵素等を生じさせるための別のチモーゲンを活性化できる。各々の活性化された酵素は、特異的な基質を改変する。各々の改変の結果としてシグナルが生じ、それゆえシグナルが増幅される。生体試料が第1のチモーゲンを形成するために用いる開裂配列と競合する基質を含む場合には、生じるシグナルは低減する。
【0016】
ある態様においては、シグナル部分は、酵素、フルオロフォア、発色団、タンパク質、ペプチド、化学発光物質、消光剤、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)対、プレ酵素及び放射性同位体酵素でもよい。
【0017】
提供される方法の一部には、1つ以上の非特異的酵素活性の阻害剤が、生体試料に加えられることが可能である。別の態様においては、酵素の1つ以上の活性剤が、生体試料に加えられることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】生物学的カスケードの分析例である。
【図2】生物学的カスケードの分析から検出されたシグナルに基づく参照(コントロール)プロファイル及び試料(患者)プロファイルの例である。
【図3】不活性酵素前駆体(チモーゲン)を利用した生物学的カスケードのための分析例である。
【図4】凝固カスケードの説明図である。
【図5】線維素溶解カスケードの説明図である。
【図6】キニン・カスケードの説明図である。
【図7】シグナル伝達カスケードの説明図である。
【図8】分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)カスケードの説明図である。
【図9】炎症カスケードの説明図である。
【図10】基質の構造の説明図である。
【図11】分離工程を有する本発明の方法の実施態様を説明する図である。
【図12】複数の基質の開裂を検出するための本発明の方法の実施態様を説明する図である。
【図13】動的な分離システムの説明図である。
【図14】オリゴ糖ビーズ及び蛍光標識リガンド(レクチン)に基づいてノイラミニダーゼを検出する方法の説明図である。図14Aは、ノイラミニダーゼによるシアル酸及びレクチンの開裂を示す。図14Bは、ヒト、鳥類及びイノシシ属のノイラミニダーゼを区別するためのオリゴ糖/シアル酸/レクチン組合せのさまざまな組合せを示す。SNA:セイヨウニワトコレクチン、MAL:イヌエンジュレクチン、WGA:小麦胚芽アグルチニン。
【図15】オリゴ糖ビーズ及び蛍光標識リガンド(レクチン)に基づくノイラミニダーゼ検出のための多重分析法の説明図である。
【図16】基質がCamb2であるエンテロウイルス3Cプロテアーゼの3D構造により作成された系統樹である。
【図17】プロカルシトニン(PCT)の構造の説明図である。
【図18】凝固カスケードの分析例を示す図である。
【図19】4μMの基質Bach1での200nMの組換えCMVプロテアーゼ活性を示すグラフである。
【図20】非特異的プロテアーゼ活性の阻害剤がある場合とない場合のWBC試料及びCMVプロテアーゼ活性に対する阻害剤の効果を示すグラフである。
【図21】図21は、標本プール中(図21A)及びWBC溶解液中(図21B)の組換えヒト・ライノウイルス3Cプロテアーゼ(3C)に対する阻害剤カクテルの効果を示すグラフである。
【図22】図22は、ウイルス性及び細菌性髄膜炎に対する阻害剤の作用を示すグラフである。図22Aは、エコウイルス3Cプロテアーゼには作用しないホスホラミドンの肺炎球菌6B及び23Fに対する作用を示す。図22Bは、エコウイルス3Cプロテアーゼには作用しない2,6−ピリジンジカルボン酸の髄膜炎菌に対する作用を示す。
【図23】エンテロウイルス3Cプロテアーゼ、肺炎球菌プロテアーゼ及び髄膜炎菌プロテアーゼ活性に対するI10、I9a及びI9bの阻害剤カクテルの作用を示すグラフである。
【図24】ブランクの曲線形状での非付着性(NB)プレートの効果を示すグラフである。図24Aは、通常のプレートに特有な波形のブランク曲線を示し、図24Bは、NBプレートではわずかに傾きがプラスの直線形状を示すことを示す。
【図25】エンテロウイルス分析において基質の調製のためのさまざまなタイプのチューブの効果を示すグラフである。図25Aは、アンバー及び低付着性(LB)チューブで調整された基質Camb2.3及びCamb2.4を用いたエンテロウイルス活性を示す。図25Bは、異なるチューブ及び異なる基質バッチを用いたエンテロウイルス分析のブランクのパラメーターを示す。
【図26】エンテロウイルス分析におけるアセトニトリルの効果を示すグラフである。図26Aは、1%のアセトニトリルの存在下、及びアセトニトリルのない条件下でのブランクの比較を示す。図26Bは、エンテロウイルス分析における0−5%のアセトニトリルの効果を示す。
【図27】異なる基質濃度(Camb2)及び時間間隔でのエンテロウイルス分析における反応率を示すグラフである。図27A:1.5−5分、図27B:5−12分、図27C:5−22分。データは3回の実験の平均値±標準誤差を示す(各実験は3つ組試験で行われた)。
【図28】図28Aは、エンテロウイルス分析における異なる基質濃度(Camb2)及び時間間隔での陽性対照とブランクとの割合を示すグラフである。データは3回の実験の平均値±標準誤差を示す(各実験は3つ組試験で行われた)。図28B及び28Cは、エンテロウイルス分析における異なる基質濃度(Camb2)及び時間間隔でのブランク及び陽性対照のCV値を示すグラフである。データは3回の実験の平均値±標準誤差を示す(各実験は3つ組試験で行われた)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ここで用いられる「生体試料」とは、対象から得られるいかなる試料のことをいい、特に限定されないが、羊水粘液、唾液、咽頭洗浄液、血液、白血球(WBC)、血清、プラズマ、尿、脳脊髄液(CSF)、痰、組織生検、細気管支肺胞液、膣液及び涙液が含まれる。ある態様においては、分析の前に生体試料中の赤血球は、例えば遠心分離処理により除去される。別の態様においては、試料を凍結させる前に、赤血球は遠心分離処理によって除去される。
【0020】
ここで用いられる「バイオマーカー」とは、通常の生物学的プロセス、発病過程又は治療介入に対する薬理反応の指標として使用される物質のことをいう。バイオマーカーには、例えば、抗体、ペプチド、タンパク質、核酸、外因性物質又は化学物質が含まれる。
【0021】
ここで用いられる「内在性」基質とは、生物、組織又は細胞から生じる基質であり、試験される生体試料に外から加えられていないもののことをいう。
【0022】
ここで用いられる「医学的状態」とは、例えば妊娠のように、医療援助から利益を得ることができるか又は医療的治療について重要な意味を持つ通常の生物学的状態のことをいう。
【0023】
ここで用いられる「コントロール反応からのデータ」とは、シグナル又はコントロール反応から生じるシグナル分析のことをいう。コントロール反応とは、生体試料からなる試験反応のための陽性又は陰性対照としての役目を果たす反応をいう。したがって、例えば、コントロール反応は酵素と、酵素によって改変されるシグナル部分を有する基質とからなり得るが、生体試料は含まれない。あるいは、コントロール反応は、酵素と、酵素によって改変されるシグナル部分を有する基質に加えて、試験されるバイオマーカーを欠くことが既知の生体試料とからなり得る。その他のコントロール反応は、当業者によって、容易に特定可能である。コントロール反応からのデータは、試験反応と同時に得られることが可能であるか、又は試験反応を実行する前か後に得られることが可能である。
【0024】
ここで用いられる「疾患」とは、身体機能を害する対象の異常な医学的状態のことをいう。疾患としては、特に限定はされないが、例えば、菌類、酵母又は細菌によって生じた感染症、癌、自己免疫疾患、神経変性障害、アレルギー、心臓血管障害及び凝固障害が挙げられる。
【0025】
ここで用いられる「酵素」とは、化学反応を触媒するいかなる生体分子のことをいう。酵素には、特に限定はされないが、プロテアーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、ホスファターゼ、エステラーゼ、ノイラミニラーゼ、イソメラーゼ、ヒドロラーゼ、ポリメラーゼ及びヘリカーゼが含まれる。酵素の特別な例としては、ウイルス・プロテアーゼ、ノイラミニダーゼ、前立腺特異抗原(PSA)及びSap2が挙げられる。
【0026】
ここで用いられる「阻害剤」とは、酵素の活性を失くすか又は低減させるいかなる薬剤のことをいう。
【0027】
ここで用いられる「改変」とは、基質におけるいかなる化学変化のことをいう。改変には、基質の開裂及びリン酸基の付加等の部分の追加が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0028】
ここで用いられる「病原体」とは、疾患又は宿主の疾患を引き起こす感染性因子のことをいう。病原体には、特に限定はされないが、細菌、ウイルス、酵母及び菌類が含まれる。
【0029】
ここで用いられる「プロカルシトニン」とは、全長116アミノ酸のプロカルシトニン(配列番号47)又は配列番号47の3−116アミノ酸から成るプロカルシトニンのような天然に生じる切断産物、アミノプロカルシトニン、未成熟のカルシトニン及びカルシトニン・カルボキシ・ペプチド−I(CCP−I又はカタカルシン)のことをいう。
【0030】
ここで用いられる「分離部分」とは、別の分析要素から分析の要素の分離を許容する部分のことをいう。ある実施態様においては、分離部分は、免疫学的結合物質、磁気結合部分、ペプチド結合部分、親和結合部分及び核酸部分から選択される。
【0031】
ここで用いられる「シグナル部分」とは、検出可能なシグナルを直接又は間接的に生じるいかなる部分のことをいう。例えば、シグナル部分は、蛍光、化学発光又は熱量測定のシグナルを生じさせる検出可能な標識であり得る。シグナル部分は、酵素、フルオロフォア、発色団、タンパク質、ペプチド、化学発光物質、消光剤、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)対、プレ酵素及び放射性同位体から選択されることができる。シグナル部分は、親和性対を備えることができる。
【0032】
ここで用いられる「親和性対」とは、互いの方への親和性を有するいかなる2つの部分を指す。親和性対の具体例としては、特に限定されないが、ビオチン−アビジン、抗体−基質/抗原、受容体−基質、シアロオリゴ糖/ガングリオシド類−レクチン、核酸ハイブリダイゼーションに基づくセンス−アンチセンスDNA/RNA鎖、核酸アプタマー/標的基質及びpH依存性色素分子が含まれる。
【0033】
ここで用いられる「対象」とは、いかなる人又は人間以外の動物のことをいう。対象は、健康でも、疾患、障害若しくは感染症の治療を必要としてもよく、又は治療が有益ないかなる対象のことをいう。人間以外の動物には、すべての家畜及び野生の脊椎動物が含まれる。
【0034】
ここで用いられる「基質」とは、酵素により改変されることができる分子のことをいう。基質は生体試料中にあってもよい。又は、基質は、試験分析に添加されてもよい。ある態様において、基質は一般式A−Bを備えることができ、Bには酵素によって改変され得る物質を備え、Aにはシグナル部分を備える。別の態様においては、基質は一般式A−B−Cを備えることができ、Bには酵素によって改変され得る物質を備え、AとCには各々シグナル部分を備える。シグナル部分は、酵素、フルオロフォア、発色団、タンパク質、ペプチド、化学発光物質、消光剤、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)対、プレ酵素及び放射性同位体から選択されることができる。さらに別の態様としては、Aはシグナル部分を備え、Cは分離部分を備える。基質は公知技術であり、国際公開2005/01791号公報、国際公開2007/029262号公報及び国際公開2007/049276号公報に記載されている方法、又はその他の公知技術に従って準備され得る。加えて、基質は、例えばその基質又は阻害剤と結合する酵素をモデル化することによる、酵素の3次元モデリングを用いて設計され得る。
【0035】
ある態様において、基質は、FRETベースの基質である。フルオロフォア及び消光剤(FRET対)は、基質の開裂配列の両側に取り付けられる。開裂にあたっては、FRETは蛍光を放出するようなフルオロフォアから分離される。
【0036】
基質は1つの酵素に対して特異的なものでもよい。基質は複数の酵素を認識するものでもよい。例えば、単一の基質はウイルスに関する血清型中では複数の酵素を認識することができるが、その他の血清型では認識することができず、それによって、血清型が区別される。
【0037】
ここで用いられる「白血球(WBC)」の試料とは、少なくとも70%v/vのWBC、さらに少なくとも80%v/vのWBC、さらに少なくとも90%v/vのWBC、又は95%v/vのWBCのWBCを含む血液由来試料のことをいう。したがって、WBCの試料は、例えば、細菌及び細菌性の成分といった他の成分を含むことができる。
【0038】
提供される方法は、周知の酵素及び/又は基質の濃度の限られた範囲を含むコントロール試料を用いることにより半定量的であってもよい。この方法は、周知の酵素及び/又は基質の濃度の全範囲を含むコントロール試料を用いることにより定量されてもよい。またこの方法は、定量的かつ試験試料とコンロトール試料との違いを検出することにより観察されるものであってもよい。
【0039】
(生体試料中の基質の有無を検出するための競合阻害に基づく酵素分析)
ある実施態様においては、提供される方法は、対象中の病原体、疾患、医学的状態又はそのバイオマーカーの有無を検出するための酵素の競合阻害を利用する。方法には、内在性基質を含むか又は含まない対象からの生体試料を用意することが備えられている。試験反応は、病原体、疾患又は医学的状態のバイオマーカーを表わす酵素及びシグナル部分を有する基質と生体試料とを接触させることによって提供される。の酵素は内在性基質及びシグナル部分を有する基質を改変する。この酵素によるシグナル部分を有する基質の改変は、シグナル部分からシグナルを生じさせる。酵素とシグナル部分を有する基質とからなるコントロール反応からのデータがさらに提供される。病原体、疾患又は医学的状態のバイオマーカーの存在は、試験反応で生じたシグナルとコントロール反応からのデータの間での、生体試料中の内在性基質の存在により生じた違いにより示される。
【0040】
(生物学的カスケードの機能障害の有無を検出するための酵素分析)
生物学的カスケードは、1つの反応の産物が次の反応で用いられる一連の化学反応である。生物学的カスケードの例としては、特に限定されないが、凝固カスケード、補体系、シグナル伝達カスケード、線維素溶解カスケード、アポトーシス・カスケード、MAPKカスケード、炎症カスケード、キニン・カスケード及びアレルギー・カスケードが含まれる。
【0041】
生物学的カスケードに関与している1つ以上の酵素の機能障害は、病的な医学的状態を導き得る。機能障害性カスケードと関連する病的な医学的状態のいくつかは、カスケードに関与している酵素の異常な酵素活性から生じる。異常な生物学的カスケードは、病的な医学的状態の発生を導き得る。このような病的な医学的状態には、特に限定されないが、凝固障害、癌、炎症、神経変性障害、医学的に高血圧の状態、医学的に血管拡張の状態、糖尿病及びアレルギーが含まれる。
【0042】
ある実施態様において、生体試料中の生物学的カスケードに関与する複数の酵素の酵素活性を、定量的に及び定性的に測定する方法が提供される。すべての試験された酵素の活性プロファイルは形成され、病的な医学的状態と相関し得る。そのプロファイルは、生体試料中の健康であるか、病的な医学的状態であるかの定性的な測定だけでなく、病的な医学的状態及びその機能障害の性質(例えば、活性の欠如、増加した活性、低い活性など)と関連する1つ以上の酵素の特定を可能とする。この方法は上述したような競合阻害に基づく。
【0043】
生物学的カスケードに関与している酵素の活性は、競合阻害分析を使用して決定されることができる。内在性基質を含むか又は含まない生体試料が用意され、カスケードに関与する酵素及びシグナル部分を有する基質と接触する。酵素は内在性基質及びシグナル部分を有する基質を改変し、シグナル部分を有する基質の改変はシグナル部分からシグナルを生じさせる。生体試料が酵素に対する内在性基質を含まない場合には、シグナル部分を有する基質との競合は生じておらず、シグナルはシグナル部分を有する基質の改変の結果として、このシグナル部分から生じている。生体試料が酵素に対する内在性基質を含む場合には、シグナル部分を有する基質との競合が生じており、シグナル部分から生じるシグナルが低減される。
【0044】
生物学的カスケードの機能障害は、競合阻害分析のアレイを用いて検出されることもできる。方法には、内在性基質を含むか又は含まない対象からの生体試料が用意されることが備えられる。試験反応のアレイは、各試験反応において、生物学的カスケードに関与する酵素及びシグナル部分を有する基質と生体試料とを接触させることによって、さらに提供される。この酵素は内在性基質及びシグナル部分を有する基質を改変し、この酵素によるシグナル部分を有する基質の改変は、シグナル部分からシグナルを生じさせる。生じたシグナルを検出するにあたり、各分析からのシグナルレベルからなる「試料プロファイル」が形成されて、参照プロファイルと比較され得る。ここで用いられる「参照プロファイル」とは、カスケードに関与する各酵素の活性プロファイルのことをいう。さまざまな酵素の酵素活性は、棒グラフや円グラフとして、又は酵素活性を表わすためのその他の方法によって、示すことができる。試料プロファイルと参照プロファイルの違いは、カスケード中の機能障害を示す。この違いは、対象の病的な医学的状態を示すこともできる。
【0045】
他の実施形態においては、生物学的カスケードの機能障害の有無は、生体試料中の生物学的カスケードに関与する酵素を検出する試験反応のアレイを用いて検出される。方法には、酵素を含むか又は含まない対象からの生体試料が用意され、各試験反応において、シグナル部分を有する基質と生体試料とを接触させることにより試験反応のアレイを提供することが備えられている。酵素がもし存在する場合には、シグナル部分を有する基質を改変し、酵素による基質の改変はシグナル部分からシグナルを生じさせる。シグナル部分により生じたシグナルは、それから試験反応中に検出される。生じたシグナルは、対象中の生物学的カスケードの機能障害の存在を示す。
【0046】
さらに別の実施形態においては、対象中の病的な医学的状態の治療処置の有効性を測定する方法が提供される。この場合には、少なくとも2つのアレイが用いられる。このアレイは、治療前、治療の間又治療後の異なる時点で得られる生体試料について、生物学的カスケード中の酵素活性の試験を行う。したがって、例えば、一方のアレイについては、試験される生体試料は治療を開始する前に得られ、もう一方のアレイについては、生体試料は治療の終了時点で得られることが可能である。他の例としては、生体試料は、異なる時点でなく、治療の間に得られることが可能である。さらに別の例として、生体試料は、治療前、治療の間及び治療後に得られることが可能である。
【0047】
各々のアレイのための試料プロファイルは、参照プロファイルと比較される。治療を行ったプロファイルの間の違いの減少が、治療の有効性を示す。
【0048】
その他の実施態様においては、生物学的カスケードは、図1にて図示したように試験され得る。各々のアレイのウェルにおいて、内在性基質を含むか又は含まない生体試料と、カスケードに関与する酵素とシグナル部分を有する基質とを接触させる。各々のウェル中の蛍光が測定され、活性プロファイルが図2に示すように作成される。
【0049】
他の実施態様においては、生物学的カスケードに関与する酵素の不活性前駆体が利用され得る。本実施態様の例が図3に示される。酵素を活性化するために、第1の不活性酵素を活性化する第2の酵素が添加される。活性化された酵素は、その後1つ以上の基質に作用し得る。
【0050】
(生物学的カスケードの例)
(凝固カスケード)
凝固は、血液が凝血塊を形成する複雑なプロセスである。それは、ホメオスタシス(傷ついた血管からの失血の停止)に関与している。凝固は血管内皮での血管の損傷後、ほぼすぐに開始される。血小板は、損傷部位に直ちに止血血栓を形成する。その後、凝固因子と呼ばれている血漿中のタンパク質は、血小板血栓を強化するフィブリン鎖を形成するために、複雑なカスケードで反応する。
【0051】
凝固カスケードは、接触活性経路(内因性経路と呼ばれる)及び組織因子経路(外因性経路と呼ばれる)のフィブリン形成に至る2つの経路を有する。図4を参照すると、経路はセリンプロテアーゼのチモーゲン(不活性酵素前駆体)と、カスケードで次反応を触媒する活性要素になるために活性化される糖タンパク質の補助因子との一連の反応であり、最終的には架橋フィブリンをもたらす。セリンプロテアーゼは、特異的部位で他のタンパク質を切断することによって作用する。凝固因子は不活性チモーゲンとして循環する。表1は、多くの凝固因子を一覧表にしたものである。
【0052】
【表1】

【0053】
(凝固プロテアーゼ・チモーゲンの構造)
凝固に関係するプロテアーゼのチモーゲンは、肝細胞により血流中に分泌され、小胞体に輸送される間に除去されるシグナルペプチドを含む。各チモーゲンのC末端端部の約200のアミノ酸は、トリプシンと類似しており、プロテアーゼの活性部位のSer、Asp、His残基を有する。それらのドメインは、プロテアーゼとそれらの基質、補助因子及び/又は阻害剤の間の特異的な相互作用に関係しているように思われる。
【0054】
(非酵素的なタンパク質の補助因子)
非酵素的なタンパク質補助因子には、第V因子及び第VIII因子、組織因子及び高分子量キニノーゲン(HMWK)が含まれる。下記の表2を参照。第V因子及び第VIII因子は、銅―結合性タンパク質であるセルロプラスミンと相同性を有する反復配列を含む大きな血漿タンパク質である。トロンビンは、活性化された因子(Va及びVIIIa)を得るために、第V因子と第VIII因子を切断する。第Va因子及び第VIIIa因子は酵素活性を有しない。その代わりに、それらは、それぞれ、第Xa因子及び第IXa因子のタンパク質分解の効率を増加させる補助因子として作用する。
【0055】
組織因子は、通常では血漿と接触していない細胞表面に構造的に発現する非酵素的なリポタンパク質である。それは、「活性化された」単球及び、腫瘍壊死因子のようなさまざまなサイトカインにさらされる内皮細胞の表面に発現する。組織因子は第VIIa因子のタンパク質分解効率をおおいに増加させる。
【0056】
【表2】

【0057】
(線維素溶解カスケード)
線維素溶解カスケード(図5を参照)は凝固系に反して作用し、フィブリン血栓がもはや必要でない時にフィブリン血栓の分解を引き起こす。さらに、損傷部位を越えて凝血塊が拡張を防止する役目も果たす。線維素溶解はtPA(組織型プラスミノゲン活性化因子)又はuPA(ウロキナーゼ型プラスミノゲン活性化因子)により開始され、フィブリンの存在下で、プラスミノゲンのArg561−Val562のペプチド結合を切断することにより、プラスミノゲンをプラスミンに変換する。プラスミンはフィブリン血栓及び無傷のフィブリンを分解し、可溶性フィブリン/フィブリノゲン分解産物(FDP)にする。プラスミンも第Va因子及び第VIIIa因子を不活性化する(プロテインC及びプロテインSと同様に)。tPAは内皮細胞によって産生される。プラスミノゲンの活性化は、フィブリン血栓の溶解の主要機構である。組換えtPAは心筋梗塞、脳卒中及び、場合によっては、急性血栓症を治療するために用いられる。uPAは尿及び血漿によって産生され、腎臓管を凝血塊がないように保つ。uPAはプラスミンの非線維素溶解活性を開始する役割も果たす。過剰な線維素溶解は、プラスミン阻害因子(抗プラスミン、かつてはアルファ2−抗プラスミンと呼ばれた)及びプラスミノゲン活性化抑制因子1(PAI−1)により調節される。PAI−1は、肝細胞及び内皮細胞により合成されて血小板及び血漿に存在し、そして、フィブリンと結合可能であり、プラスミノゲン活性化因子のtPA及びuPAを阻害することができる。PAI−1は急性期反応物質タンパク質であり、基準値の30−50倍に増えることができ、全身的に管理されたtPAをできる限り直ちに不活性化する。プラスミノゲンのホモ接合性欠損は木質結膜炎(珍しい型の慢性偽膜性結膜炎)に関連し、プラスミノゲンによる補充療法は治療的である。プラスミノゲンのヘテロ接合性欠損(血栓症患者の0.5〜2.0%)もtPA欠損も、増加した血栓症のリスクと関係しない。
【0058】
(キニン・カスケード)
キニン−カリクレイン・カスケード(又はキニン・カスケード)は、炎症、血圧コントロール、凝固及び痛みに関与する。図6を参照。それらの伝達物質ブラジキニン及びカリジンは血管拡張薬であり、多くの細胞種類で作用する。キニンは小さいペプチドであって、組織損傷はこれらのペプチドの活性化を誘導し、血管拡張及び増加した通過性をもたらす。カリクレインの機能は、凝固及び線維素溶解カスケードの活性化を増幅することである。さらに、カリクレインは、白血球動員の間、血管拡張をもたらす強力な炎症伝達物質であるブラジキニンを産生するために、高分子量キニノーゲン(HMWK)も切断する。
【0059】
(シグナル伝達カスケード)
アポトーシスは、多細胞生物のプログラムされた細胞死(PCD)のある型である。それは、一種のPCDで、特徴的な細胞形態及び死をもたらす一連の生化学的事象を含む。形態的な変化は、ブレブ形成、細胞膜の非対称性及び付着の損失のような細胞膜の変化、細胞収縮、核断片化、クロマチン凝集及び染色体DNA断片化を含む。生物に損傷を与えない細胞残屑の除去のプロセスは、アポトーシスをネクローシスと区別する。
【0060】
C.エレガンスのced−3と相同性を有するシステインプロテアーゼであるカスパーゼは、アポトーシスの細胞死のほとんどの場合に活性化されるアポトーシスのシグナル伝達カスケードに関連している。カスパーゼの触媒活性は、高度に保存されたペンタペプチドQACRG中のシステイン残基に依存する。カスパーゼは、それらの基質のAsp残基の後を特異的に切断する。
【0061】
図7において、カスパーゼを含むシグナル伝達カスケードが示される。外因性及び内因性の経路の両方がアポトーシスをもたらす。多くの病理学的過程において、アポトーシス・カスケードの機能障害は、抑制されない増殖及び癌をもたらす。
【0062】
(MAPKカスケード)
分裂促進因子活性化タンパク質(MAP)キナーゼは、細胞外刺激(分裂促進因子)に反応して、遺伝子発現、有糸分裂、発生、分化、発癌性シグナルの伝達及び細胞の生存/アポトーシスのような、さまざまな細胞活動を調節するセリン/トレオニン−特異的プロテインキナーゼである。
【0063】
MAPKは、大部分の非核癌遺伝子の作用に関係している。それは、脳由来の神経栄養因子(BDNF)又は神経成長因子のような、成長因子への細胞応答に関与する。細胞外刺激は、MAPキナーゼ、MAPキナーゼ・キナーゼ(MKK、MEKK又はMAP2K)及びMAPキナーゼ・キナーゼ・キナーゼ(MKKK又はMAP3K)から成るシグナル伝達カスケードを介して、MAPキナーゼの活性化を導く。図8を参照。
【0064】
細胞外刺激により活性化するMAP3Kは、そのセリン及びトレオニン残基上のMAP2Kをリン酸化し、そして、MAP2Kは、そのセリン及びチロシン残基でのリン酸化によりMAPキナーゼを活性化する。
【0065】
すべてのMAPK経路は、転写因子をリン酸化し、遺伝子発現を制御するための逐次的なリン酸化事象によって機能する。それらは、細胞内事象を制御するために、細胞質の標的をリン酸化することもできる。
【0066】
(炎症カスケード)
炎症カスケードは、病原体、損傷した細胞又は刺激物などの血管組織の有害な刺激に対する複雑な生物学的反応である。組織に対する治癒過程を開始するのと同様に、有害な刺激を取り除くことは、生物による保護の試みである。内皮細胞中の炎症カスケードのモデルの例が、図9に示される。
【0067】
(生体試料中の酵素の有無を検出するための酵素分析)
生体試料中の酵素活性を検出する方法は、よく知られており、国際公開第2005/01791号公報、国際公開第2007/029262号公報及び国際公開第2007/049276号公報に記載されている。得られた生体試料からの酵素活性の検出は、対象中の病原体、疾患若しくは医学的状態又はそのバイオマーカーの存在を示す。方法には、酵素を含むか又は含まない対象からの生体試料と、検出される酵素の基質とを接触させることが備えられている。酵素が生体試料中に存在する場合には、基質はシグナル分子を有しており、酵素は基質を改変してシグナル部分はシグナルを発し、対象中の病原体、疾患若しくは医学的状態又はそのバイオマーカーの存在を示す。ある実施態様としては、生体試料中の複数の酵素が、アレイを用いて検出され得る。
【0068】
提供される方法により検出される若干の非限定的な病原体、疾患及び医学的状態には、菌類、酵母、細菌、癌、自己免疫疾患、神経変性障害及びアレルギーにより生じるものが含まれる。加えて、提供される方法には、癌の医学的状態、遺伝病、心臓の医学的状態(例えば心臓血管障害)及び凝固障害の診断のためにも利用され得る。
【0069】
(治療の有効性の測定)
対象中の病原体、疾患若しくは医学的状態又はそのバイオマーカーの存在を検出することに加えて、提供される方法は、病原体、疾患又は医学的状態に対する治療の有効性を測定するのに役立つことができる。生体試料は、治療前、治療の間又は治療後の異なる時点で得ることができ、本発明の方法の酵素分析を受けることができる。ある実施態様においては、ある生体試料は治療の前に得られ、もう一方は治療の間に得られる。別の実施態様においては、ある生体試料は治療前に得られ、もう一方は、治療の終了後に得られる。さらに別の実施態様においては、2つ以上の生体試料が治療中に得られる。2つ以上の生体試料から生じたシグナルの違い(例えば、減少のような)が、治療処置の有効性を表す。
【0070】
(分離工程)
提供される方法のいずれかは分離工程を含むことができる。本実施態様においては、この方法は、1)反応において、処理される基質と処理されない基質の間での分離、及び2)処理された基質のみの検出とからなる。分離は、抗体と抗原の間及び核酸の間、又は膜、チップ及びビーズといった固定された表面との結合を通じた2つの部分のいずれかの特異結合によって得られる。検出工程は、親和性及び、シグナル部分を介したものに基づくことの両方可能である。
【0071】
分離ステップを含む本発明の方法で使用される基質は、A、B及びCの3つのパーツから成る(図10)。特異性断部位を有する中心部の分子(セグメントB)は、切断された基質を検出する役目を有するシグナル部分(A)の片端と結合している。他端で、部分Bは、処理された基質と未処理の基質との間を分ける分離部分(C)に接続している。分子Bの切断にあたり、基質は2つの断片:(1)A部分及びBの一部分を含むシグナル部分(TS)と、(2)C部分及びBの一部を含む分離部分(SS)を生じさせる。
【0072】
図11は、提供される方法の実施態様を示す。基質はその酵素と反応して開裂し、セグメントCが処理されたものと未処理の基質とを分けるために用いられる。この場合、セグメントAは、親和性対の一部である。処理される際には、処理される基質のセグメントTSだけが(タギング分子を含む)その親和性対と結合する。したがって、親和性結合処理は、切断された基質のみが検出される。このようにして、処理された分子だけを検出することが可能である。
【0073】
別の実施態様が図12に示される。本実施態様において、基質がこれらの分離部分(C)は類似しているが、これらの特異的切断分子(B)は異なる場合、上述の方法を用いて、複数の基質の開裂が検出されることができる。この場合、各基質は切断部位(B)を有する中心部の分子に結合できる特有かつ異なるシグナル部分(A)を有する。処理された及び未処理の基質間の開裂及び分離の後には、異なる(かつ処理された)基質のTSのみが、親和力により(上述した方法に応じて)、結合する。C(未処理の基質又は処理された基質のSS)を含むいかなる分子も、分離部分によって、外へ分離される。種々の基質の異なったTSは、膜、ウェル、又はチップのような固体表面上の予め定められた位置に、各位置は1種類のTSだけと結合できるように、その結合パートナーを固定することにより識別することができる。どのTSが予め定められた位置に結合するのか分かっていることにより、加工された基質を特定することができる。各基質が基質開裂を開始した酵素に特異的であるので、酵素が特定でき、そして、対象中に存在するという病原体、疾患若しくは医学的状態又はそのバイオマーカーの推論が許容される。
【0074】
さらなる別の実施態様としては、リバースpHシステム(RPHS)を利用する。本実施態様においては、セグメントCは、すべての基質に共通する分子である。さまざまな基質と関連するセグメントAは、異なるpHに感受性のある種々の色素を有する色素分子化合物である。開裂の後、反応混合物はセグメントCに親和性を有するカラムにろ過される。図10のセグメントCを含む分子(未処理の基質又は処理された基質のセグメントSS)は、カラムに保持される。処理された基質のセグメントTSのみ(セグメントCを含まない)は、各々が異なるpHを有する多数のセルを有するチャンバーへ移される。いったんセグメントTS(セグメントAを含む)が異なるpHを有するセルと接触すると、セルはセグメントAの特性に従って色を変化させる。このことは、どの基質が加工されたかについて示す。
【0075】
分離システムのその他の例は、以下の内容を含む。
【0076】
1.固定化分離システム(ISS)−本実施態様において、図10のセグメントCは、ビーズ、ニトロセルロース膜、ビオチン−アビジン又は他の親和性対を介して固定された表面に結合されたスペーサである。開裂の後、未処理の基質又は処理された基質のSSは、固定化表面を反応混合物から分離することによって除去されて(抽出、遠心分離、濾過等によって)、処理された基質のTSのみが残る。この方法も、各基質の動態をモニターすることを可能にする。
【0077】
2.動的分離システム(DSS)−本実施態様は図13に示される。このシステムにおいて、図10のセグメントCは、すべての基質に対して共通又は固有の特別な分子である。開裂の後、反応混合物は、膜やチップのような固体表面と接触する。膜は垂直であり、一番下にセグメントCに親和性を有する部分を備える。膜の他の部分は、異なる基質のセグメントAに親和性を有する部分を備えた異なる部分を含む。反応混合物は、毛管現象か電子力によって、膜又はチップの長さ方向に沿って進む。Cを含む分子(未処理の基質又は処理された基質のSS)も、膜の一番下に保持される。処理された基質のTSのみ(Cを含まない)が、膜を上昇することができ、それらの予め定められた部位に親和性により結合することができる。
【0078】
3.親和性ろ過システム(AFS)−本実施態様において、反応混合物は、Cに親和性を有するカラムにろ過され、それゆえ、Cを含む分子(未処理の基質又は処理された基質のSS)はカラムに保持される。カラムの流出物には、処理された基質のTSのみを含む。
【0079】
(検出システム)
基質の改変は、多くの方法により検出され得る。検出方法の例としては、以下のものが含まれる。
抗体/受容体−基質−免疫化学は、基質と抗体又は受容体との間の結合を検出及び測定するために用いられ得る。
リガンド/受容体−基質−免疫化学は、基質とリガンド又は受容体との間の結合を検出及び測定するために用いられ得る。
マーカー−図10のシグナル部分(A)は、色、蛍光、FRET又は他の測定可能な、可視若しくは容易に検出可能な分子を生じさせる分子であることができる。
DNA/RNAのハイブリダイゼーション−ハイブリダイゼーションは、例えば、蛍光又はカラープローブの使用により、検出及び測定され得る。
酵素反応−シグナル部分(A)は、色、蛍光又は他の測定可能な、可視若しくはその他の容易に検出可能な反応を触媒する酵素であることができる。
【0080】
(反応条件)
反応条件は、本発明の方法の特異性及び/又検出感度を上げるために最適化され得る。最適化され得る反応条件の例には、反応温度、反応時間、溶媒、バッファー、プレート及びチューブが挙げられる。したがって、例えば、反応は室温及び体温を含めた環境温度で実行されることができる。CSF試料中のエンテロウイルス分析のための最適化の実施例が、後述の実施例16−21で提供される。さらに、本発明の方法は、研究室環境において、又は現場条件において、実施され得る。
【0081】
(阻害剤)
本実施形態においては、酵素活性の検出を妨げるような、基質の非特異的な改変が高いこともあり得る。この活性源は、基質を改変することが可能な非特異的酵素の存在によるものである。ヒトゲノムは、何百もの酵素をコードしており、そのうちには明らかな特異性を有しないものもある。これらの多数は総合的なバイオマティクスに基づいて生体試料中で特定されており、各組織/器官源は多くのこれらの非特異的酵素と関連している。典型的な組織/器官源には、筋肉、泌尿器、呼吸器、消化器、神経系、生殖器、皮膚、循環器、骨格及び内分泌系が含まれる。各非特異的酵素は、それらの標的配列を分析されることができ、そして、関心のある基質の配列と比較され得る。関心のある酵素の活性に最小の影響を及ぼす範囲において、阻害剤又は阻害剤のカクテルは選択されることができ、非特異的酵素の活性を阻害するために試料に加えられることが可能である。この種の阻害剤の例は、特に限定されないが、白血球試料中のCMVプロテアーゼ基質に対する非異的活性を阻害するためのペプスタチンA、AEBSF、アプロチニン、E−64、ヘパリン、ベスタチン、GW311616A及びエグリンCが含まれる。阻害剤の他の例としては、特に限定されないが、鼻洗浄試料中のヒト・ライノウイルス(HRV)基質に対する非異的活性を阻害するためのE−64、ペプスタチンA、アプロチニン、アセチル−DEVD−CHO、EDTA+EGTA、AEBSF、エグリンC及びベスタチンが含まれる。
【0082】
加えて、バックグラウンド・ノイズが、間接的に病原体によって生じる場合がある。例えば、多くの病原体は炎症を誘導するが、酵素又は病原体によって直接生じた基質の検出を妨げる可能性のあるさまざまな酵素反応を体内で誘導することができる。よって、本実施態様においては、1つ以上の阻害剤が感染症に伴う酵素活性を阻害するのに有用であってもよい。特定の実施態様においては、1つ以上の阻害剤は、髄膜炎により誘発された炎症による酵素活性を阻害する。
【0083】
特定の実施態様において、1つ以上の阻害剤は、ウイルス性感染と細菌性感染とを識別するのに(例えば、ウイルス性髄膜炎と細菌性髄膜炎といったように)有用であってもよい。1つ以上の阻害剤は、ウイルス性髄膜炎のプロテアーゼ活性は阻害しないが、細菌性髄膜炎のプロテアーゼ活性を阻害するように選択され得る。このように、対象から得られる生体試料が、細菌性髄膜炎のプロテアーゼに対して選択的な1つ以上の阻害剤の存在下で、髄膜炎のプロテアーゼにより改変され得る基質と接触するときには、生じるシグナルは対象のウイルス性髄膜炎の感染を表す。1つ以上の阻害剤は、同様の疾患又は医学的状態を引き起こしている細菌性感染症を区別するために用いることもできる。例えば、1つ以上の阻害剤は、細菌性髄膜炎の感染によってひきおこされる、肺炎球菌の感染と髄膜炎菌の感染とを区別するために用いることができる。本実施態様において、1つ以上の阻害剤は、ウイルス性髄膜炎でなく肺炎球菌のプロテアーゼ活性を阻害するように選択されることができる。他の1つ以上の阻害剤は、ウイルス性髄膜炎でない髄膜炎菌のプロテアーゼ活性を阻害するために選択されることができる。さらに別の実施態様では、1つ以上の阻害剤は、肺炎球菌及びウイルス性髄膜炎でない髄膜炎菌プロテアーゼ活性を阻害するために選択されることができる。このように、肺炎球菌プロテアーゼ活性を阻害する1つ以上の阻害剤の存在下でシグナルが生じる場合、及び髄膜炎菌プロテアーゼ活性を阻害する1つ以上の阻害剤の存在下でシグナルが生じない場合には、その髄膜炎は髄膜炎菌である。同様に、髄膜炎菌プロテアーゼ活性を阻害する1つ以上の阻害剤の存在下でシグナルが生じる場合及び、肺炎球菌プロテアーゼ活性を阻害する1つ以上の阻害剤の存在下でシグナルが生じない場合には、その髄膜炎は肺炎球菌である。
【0084】
(活性剤)
いくつかの実施形態では、活性剤は、反応混合物に加えることが可能である。ここで使用する「活性剤」とは、酵素の活性を誘導するか又は増加させる薬品であればいかなるものでも指す。本実施形態のひとつでは、活性剤はNaSOである。
【0085】
(シグナルの増幅)
酵素又は生体試料の基質の濃度は、幾つかの例において値が低く、検出レベルを下回ることがある。例えば、細菌感染の際のプロカルシトニン濃度は、0.5ng/ml(40pM)の低さのことがある。この種の低レベルを検出するために、シグナルの増幅が役立つことがある。シグナルの増幅は、チモーゲン活性化カスケードを利用することによって、成し遂げられることが可能である。チモーゲン又はプロ酵素は、不活性酵素前駆体である。チモーゲンは、活性酵素になるために、そのための生化学な変換(例えば、活性部位を現している加水分解反応又は活性部位を現すために構成を変えること)を必要とする。通常、前駆体酵素の特定の一部は、それを活性化させるために切断される。
【0086】
例えば、開裂配列はチモーゲンの生成のために酵素に結合することがある。開裂配列は、生体試料に存在する可能性のある基質のそれと同一か似たものでもよい。酵素による配列の切断は、活性化タンパク質分解酵素を与えるチモーゲンの抑制をリリースする。この酵素はそれから定量化された1組のチモーゲンによって、反応する。そして、それは遊離酵素の定量化された量をリリースする。そして、それは特定の基質の定量化された量によって、反応する。反応ごとに、シグナルを検出できる。それによって、シグナルの増幅を生じる。生体試料が第1のチモーゲンをつくるために用いる開裂配列と競合する基質を含む場合、発生するシグナルは減少する。
【0087】
(ノイラミニダーゼの検出)
ある実施態様においては、この方法は、生体試料の細菌の特定タイプと関連するノイラミニダーゼ活性を検出するために用いることができ、また、菌感染症を検出するために用いることもできる。ノイラミニダーゼ(別名シアリダーゼ、アシルノイラミニルヒドラーゼ又はEC3.2.1.18)は、動物及び多くの微生物の中で一般的な酵素である。それは、終端のα−ケトシジカル基に結合するシアル酸を糖タンパク質、糖脂質及びオリゴ糖から切断するグリコヒドロラーゼである。微生物の多数は、それらのノイラミニダーゼを表面に有し、人に対して病原性を有する。これらの病原性微生物は、コレラ菌、アースロバクター・ウレアファシエンスのような細菌を含む、そして、肺炎球菌性髄膜炎に関係する髄膜炎菌、インフルエンザ菌、肺炎球菌を含む。髄膜炎菌及びインフルエンザ菌の若干の分離株では、ガラクトースと結合したシアル酸α−2,3を切断するノイラミニダーゼ酵素が発現する。髄膜炎菌種はシチジンモノホスホ−N−アセチルノイラミン酸(CMP−NANA)及び5−アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)を認識する。その一方で、ヘモフィルス属インフルエンザはNeu5Acの形だけを認識する(NeuAcα2−3Gal)。肺炎球菌種は、N−アセチルガラクトサミン(NeuAcα2−3Gal、NeuAcα2−6Gal、NeuGcα2−3Gal、NeuGcα2−6Gal)に対するα−2,6結合を有するそれらと同様にガラクトースに対するα2−6結合を有するシアル酸含有基質を切断することを示した。ノイラミニダーゼ活性を検出することに役立つ他の結合は、α2−8、α2−9及び周期的なノイラミン酸の結合(例えば髄膜炎菌B及びC並びにアースロバクター・ウレアファシエンス)及び環状ノイラミン酸の結合(例えば緑膿菌)を含む。
【0088】
このように、基質は、異なる細菌株から生じているノイラミニダーゼを区別するために構築されることが可能である。特定の糖タンパク質に付加する可能性のあるシアル酸の例は、下で示される。
【0089】

【0090】
(ノイラミニダーゼ活性を検出することによる細菌性髄膜炎の発見)
生体試料の上記の細菌の検出は、特定のノイラミニダーゼ活性の検出により行うことができる。分析は、CSF中の細菌性髄膜炎を発見するために行うこともできる。CSF自体が内在性ノイラミニダーゼ活性を有しない場合、細菌性ノイラミニダーゼ活性の存在はCSF中の細菌の存在を示す。次に、生体試料のノイラミニダーゼ活性を検出するためのこの種の分析の非限定的な例について説明する。
【0091】
(オリゴ糖類ビーズ及び蛍光標識リガンド(レクチン)に基づくノイラミニダーゼ検出)
ノイラミニダーゼ活性は、シアル酸及びそのリガンド(レクチン)を使用して検出されることができる。基質は、オリゴ糖類(磁気ビーズに結合させている)の一端上のシアル酸とシアル酸と関する蛍光標識されたレクチンとを備える。
SNA−セイヨウニワトコレクチン、Neu5AC(2―6)Gal^^に特異的なもの。
MAL−イヌエンジュレクチン、Neu5AC(2―3)Gal^^。
WGA−小麦胚芽アグルチニンレクチン、大部分のSi−グリカン構造。
【0092】
図14A〜14Bを参照のこと。ノイラミニダーゼによるこの基質の開裂は、蛍光標識されたレクチンの分離に基づくものである。磁気ビーズを沈降させた後、蛍光を上清において検出することができる。
【0093】
NeuAcα2−3Galの使用は、全3つの髄膜炎に伴う細菌株の検出を可能とする。NeuAcα2−6Galの使用は、肺炎球菌種の検出を可能とする。そして、CMP−NANAを使用することは髄膜炎菌種の検出を可能とする。
【0094】
他の実施形態においては、多重分析として分析を行うことができる。この場合、シアル酸関連のオリゴ糖類は、上記の通りに磁気ビーズに結合している。ビーズ−オリゴ糖混合物は生体試料と最初に接触し、蛍光標識されたレクチンが添加される。試料に存在するノイラミニダーゼがない場合、レクチンはシアル酸と結合して、磁気ビーズによってプルダウンされる。図15(左パネル)を参照。しかしながら、ノイラミニダーゼが試料に存在する場合、シアル酸はオリゴ糖類から隔離される。そして、レクチンはシアル酸と結合するが、磁気ビーズによってはプルダウンされない。図15(右パネル)を参照。
【0095】
(血清型の検出)
ある実施態様においては、提供される方法は、特定の病原体の血清型を検出するために用いることができる。この例では、病原体の酵素は、血清型の構成型の範囲内で、共通の開裂配列を認識する。あるいは、単一の基質の改変がそのクラスの病原体を表すように、病原菌の種は開裂配列の類似点に従って分類することができる。例えば、エンテロウイルス(EV)は、120の報告されたヒト病原体から成る。3Cプロテアーゼは、ウイルスのライフサイクルにおける酵素で、株間で比較的保存されている。プロテアーゼ及びそれらの基質が酵素とCamb2基質[QSY9−Leu−Glu−Ala−Leu−Phe−Gln−Gly−Pro−Pro−Val−Tyr−Cys−(Alexa532)−NH](配列番号59)の間に進化樹と3D構造モデリングを用いて分析される。それらは、8つのグループ(図16を参照)に分類できる。
【0096】
(グループ1及び6)
エンテロウイルスのグループ1は、クローン(合計73中40)で最も大きい数を有する。グループ1の大部分のクローンは、同一の結合部位を共有する。にもかかわらず、エンテロウイルス81、エンテロウイルス83及びエコウイルス2は、P4位置で切断部位のVal及びIsoに置換がある活性部位の組成に若干の不規則性を有する。しかしながら、グループの残りのクローンのこの類似の開裂配列の存在は、これらの変化がリガンド−受容体相互作用に影響を及ぼさないことを示した。従って、これらのクローンは、エコウイルス30及びコクサッキーウイルスB5として類似の挙動を示すことが予想される。グループ1をグループ6と比較すると、基質の端に置換があることが示される。Tyrに対するPheのこれらの置換及びIsoに対するLeuは物理化学的に保存されている。したがって、グループ1及び6は1つのグループに入れることが可能である。
【0097】
(グループ2及び7)
エンテロウイルスのグループ2は、同一の活性部位を有する4つのクローン全部から成る。しかしながら、開裂配列には、位置P4及びP5に変換がある。位置P4にはまた、Asn又はThrの変換がある。これは、活性部位における共同発展する位置は、配列においては存在しないこと、あるいは、そのP4には特異的な関係がない可能性があることを示す。グループ2及び7の開裂配列の違いは、それぞれL及びMを有する位置P6の基質の端にある。そして、これらの置換は保存されている。しかしながら、予備的な結合の結果によれば、そして、ライノウイルス14の3Cプロテアーゼの解析された構造の分析によれば、基質の位置P6は3Cプロテアーゼの表面の限られた部分の範囲内で見つかる、したがって、それは特異性を決定する要素としての役割を果たす可能性がある。
【0098】
(グループ3)
エンテロウイルスのグループ3は、全てのメンバーは同一の結合サイトと開裂配列を有する。さらにまた、それぞれの位置P3、P4及びP5が、基質(Camb2)(配列番号:59)から、IEFに置換される。
【0099】
(グループ4)
このエンテロウイルスのグループのほとんどすべてのメンバーは、同じ切断部位配列及び同じ活性部位を共有する。唯一の変異した株はコクサッキーウイルスA13である。そして、それは、Asn及びPheの代わりに、それぞれ位置P4及びP5にGlu及びPheを有する。従って、コクサッキーウイルスA13はグループ3に割り当てられることも可能である。そして、それはまた、位置P4及びP5で、又は、このグループにGlu及びPheを有する。いずれの場合においても、アミノ酸の置換は物理化学的に保存されている。
【0100】
(グループ5及び8)
これらのエンテロウイルスのグループは、荷電アミノ酸の固有の特徴を位置P4(Arg又はLys)に示す。
【0101】
このように、それが酵素により改変されるときに、血清型又は病原体のサブグループを表すような基質を設計することができる。
【0102】
(キット)
酵素や基質を含み、本願明細書で記載されている方法に用いられるキットが提供される。本実施態様においては、キットの構成要素は、個別に包装されて使用の直前に混ぜられることが可能である。その他の実施態様としては、2つ又はより多くの構成要素が、一緒に包装されることができる。典型的なキットには、以下の試薬の1つ以上を含むことができる:酵素又は基質を含まない陰性対照試料、酵素又は基質から成る陽性対照試料、シグナル部分からの検出可能なシグナルの発生のためのシグナル生成試薬、試料収集手段(例えばシリンジ、綿棒又は他の試料回収装置)及び分離を実行するための試薬を含む。キットには、阻害剤及び/又は酵素の活性剤を含むこともできる。
【0103】
キットに含まれる試薬の包装は、例えば、ガラス、有機ポリマー、セラミック又は金属から作られるアンプルを含むことができ、瓶、エンベロープ、試験管、バイアル、フラスコ、シリンジ、などを含む。
【0104】
キットは、説明書と共に供給されることもできる。説明は紙に印刷されていてもよいし、又は、フロッピー(登録商標)ディスクのような、CD−ROM、DVD−ROMその他の電子フォーマットにおいて、供給されることができる。詳細な説明は、キットに物理的に付属してはいなくてもよく、その代わりとして、電子メールとして供給されるものの中で、ユーザは、キットの製造業者又は販売業者により示されるインターネット・ウェブサイトに誘導されるようにすることができる。
【0105】
以下の実施例は、この開示を説明するためのものであって、その範囲を制限するものではない。
【実施例1】
【0106】
(2基質によるキモトリプシンの競合阻害の実証)
試薬および器具:
【0107】

【0108】
希釈及び反応緩衝液:100mMのHEPES(pH7.5)
基質−1:Camb−2.4(Camb2基質のバッチ):Alexa 532フルオロフォアに基づくFRET基質
基質−2:市販の比色ベース(420nm)のa−キモトリプシン基質。1:1のHEPES/DMSOに20nMとなるよう溶解し、さらにHEPESバッファーで1:10に希釈した。
酵素−a−キモトリプシン:市販のa−キモトリプシン−タイプIVは、HEPESバッファーで希釈し20μg/mlのストックとした。
蛍光計:DMV、ポールスターギャラクシー。パラメーター:Ex. 531mm、Em.560mm、温度:室温、総読み込み時間:10分、ゲイン90。
すべての試験は3つ組試験で行われた。
【0109】
(反応手順)
溶液−1:HEPESバッファー。
溶液−2:基質−1のストックは、1000μlのHEPESで1:10に希釈し、100nMの2×溶液とした。
溶液−3、a−d:基質−2のストックはそれぞれHEPESで1:10に希釈し、その希釈液の10μlをそれぞれ40μlのHEPESに希釈した。a−400μM、b−40μM,c−4μM,d−400nM(10×溶液)
溶液−4:酵素のストックは、300μlのHEPESで1:20に希釈し、10×溶液とした。
【0110】
マルチチャンネルピペットを用いて、上記の各溶液を、非付着性黒底96ウェルプレートの列A−C、カラム1−6に加えた。溶液−1を30μl及び溶液−2を50μl、各ウェルに加えた。列A−Cに、溶液−1の10μlをカラム1及び2に加え、溶液−3aの10μlをカラム3に、溶液−3bの10μlをカラム4に、溶液−3cの10μlをカラム5に、そして溶液−3dの10μlをカラム6に添加した。列A−Cに、溶液−1の10μlをカラム1に添加し、溶液−4の10μlをカラム2−6に添加した。次いで蛍光計の読取を開始した。
【0111】
(結果)
【表3】

【0112】
上記の条件で、2種の基質のおよそ1:1のモル比において、10%の競合阻害が見られた。競合状態は対数関数的なスケールで確認できた。酵素濃度を変えること、基質1の濃度を低下させること、蛍光計のゲインを強めることでさらに高い測定感度を得ることができる。
【実施例2】
【0113】
(細菌感染検出のためのプロカルシトニン(PCT)検出)
細菌感染に対する宿主反応は、複雑な免疫機構の活性化及び炎症伝達物質の豊富な放出が含まれる。プロカルトシニン(PCT)は、最近、非常に重篤な患者の細菌感染の標識として提唱されている。PCTは、カルシトニンのプロホルモンと同一の配列を有する116のアミノ酸ペプチドである(Mullerなど、Crit Care Med(2000)28:977−83.図17)。通常の代謝条件では、PCTは、甲状腺のC細胞に存在するだけである。しかしながら、細菌感染および敗血症では、完全な、又は切断された(3−116アミノ酸)PCTが血液で見出され、さらに重要なことに、そのレベルは敗血症の重篤性と相関している。さらにまた、微生物感染症において、そして、炎症の様々な形態により、いくつかのカルシトニン前駆体で、成熟したカルシトニンでなくPCTを含むものの計算上の濃度が、数千倍の規模まで増加する。この増加および特にその経路は、病状の重篤さ及び死亡率と相関する。まず最初に、116のアミノ酸からなるプロカルシトニンが分泌される。ジペプチダーゼによる急速な開裂による114アミノ酸の長いプロカルシトニンが、この経路で見出される。さらなる開裂により、アミノプロカルシトニン、未発達のカルシトニン及びカタカルシンとして従来より知られるカルシトニン・カルボキシ・ペプチド−I(CCP−I)に至る。敗血症において、これらのペプチドは様々に増大し、それらはしばしばな遍在的な発現及び分泌量において膨大なレベルとなる。しかしながら、成熟したカルシトニンの血清濃度は、甲状腺c−細胞においてのみ、正常か又はわずかに増加するのみにとどまる。
【0114】
従って、敗血症または炎症の間、プロカルシトニンの血中濃度は上昇する。細菌性髄膜炎の場合、脳脊髄液のPCTのレベルと細菌性髄膜炎の間には100%の近くの高い相関が報告された。それ故、血液又はCSFのプロカルシトニンの濃度を定量することは、細菌性感染症(例えば細菌性髄膜炎)を発見することに役立つ。
【0115】
この例では、競合阻害は、プロカルシトニンを検出するために利用される。この方法では、以下の組成物からなる。
1)プロホルモン・コンバターゼ1(PC1)のような、PCTを切断できる1種以上の酵素。
2)対応する1種以上の誘導体を合成するために、PCTを切断できる1種以上の酵素により改変され得る1種以上の基質化合物。同じか異なるシグナル部分を有する基質化合物の各々が、この基質化合物に結合する。酵素が存在する場合には、1つ以上の基質化合物は、PCTで生じる改変と同一かそれに類する改変を受ける。例えば、1つ以上の酵素について低い親和性を有するものについては、1つ以上の基質は、切断部位がPCTの切断部位と同一か類似する切断部位を有する。
【0116】
分析は、2つの別々の試料により実行され得る:PCTを含まない対照試料及び生体試料(例えば血液又は脳脊髄液)を含む試験試料。1種以上の酵素および1種以上の基質化合物は、各試料に加えられる。
【0117】
PCTが試験試料に含まれていない場合は、基質化合物は両方の試料に同じ割合になるよう調整される(例えば分割される)。しかしながら、試験試料がPCTを含む場合、例えば、細菌を含む試料の場合、PCTは試料に存在する酵素に対する競合的な基質として働き、その結果、試験試料との割合で加えられた対照試料の基質化合物から呈されるより低い総合的な活性が示される。
【0118】
分析から得られる値は、臨床参考テーブルと比較されることもできる。テーブルは、PCT濃度の範囲を含み、確立した臨床データに由来するものがあり、細菌性敗血症の重篤性との関連づけに用いることができる。
【0119】
高いPCT濃度の試験結果は、敗血症の結果を示し、適切な薬物治療を可能にする。低いPCT濃度の試験結果は、通常の対象のレベルを示して、適切な処理および更なるテストにつながる。
【0120】
感染の間のPCTレベルは、0.5ng/ml(40pM)と同じくらいの低くてもよい。増幅システムは、低レベルの感染を検出するために有益である。したがって分析法は、酵素の反応から検出したシグナルを増幅するための増幅のシステムを含んでいるものでもよい。例えば、PCTの開裂配列を、プロ酵素のチモーゲン分子(例えばプロトロンビン)に融合できる。例えばPC1やその他のPCT配列の認識酵素によるPCT配列の開裂は、プロ酵素を活性タンパク質分解酵素(例えば、トロンビン)にすることの抑制を引き起こす。この酵素は定量化されたプロ酵素のセットによって、反応する。そして、それは遊離酵素の定量化された量を示す。そして、それはこの酵素(例えば、トロンビン基質と反応しているトロンビン)のための特定の基質の定量化された量によって、反応する。
【0121】
分析のシグナル強度は、PCTを含まないコントロール試料に対する、プロ酵素−酵素の異なる濃度によって、定量化される。定量化された反応をPCTの異なる濃度にさらすことは、最初のシグナルの強度を低下させる。プロカルシトニン量は、最終的な信号の強度から算出される。増幅のための方法は、0.5ng/ml程度に低い血清のPCT濃度の検出を可能にする。
【0122】
したがって、PC1または他のPCTを改変している酵素に関連して用いられることが可能である基質の例は、以下を含むが、これに限定されるものではない:
1.PC−1の切断部位を含むPCTのアミノ酸配列8−20から成るFRET基質。
2.PC1の開裂の後に生じるpNA比色標識から成るPCTのアミノ酸配列3−60。この分析は、標識基質からの開裂の後の発色団p−ニトロアニリド(pNA)の発色団の分光測光法の検出に基づく。pNAの発光は、400−又は405−nmで分光光度計またはマイクロタイタープレートリーダーを使用して定量化されることができる。
3.プロ酵素:生体試料のPCTは、PC1の特異的切断配列から成るプロ酵素と比較される。PC1による開裂の後、プロ酵素は、シグナル部位を有する基質を改変させるために活性化され、シグナルを生じさせる。
4.全長プロカルシトニン(116アミノ酸)
5.GKKR配列を含む、プロカスパーゼ3チモーゲンは、4−20アミノ酸の活性剤キャップで、酵素活性部位をカバーし、GKKR(配列番号1)またはRRKK(配列番号2)配列及び、その中の2つの隣接する塩基性アミノ酸(R&K)のいくつかの他の組合せを含む。
【実施例3】
【0123】
(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌毒素の検出)
ここで提供される方法は、例えば、MRSAの特定のペプチドのタンパク質濃度を定量化することによって、市井獲得メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(CA−MRSA)又は均一にメチシリンに対して耐性を示す黄色ブドウ球菌(HoMRSA)を検出するために用いることもできる。この種のペプチドの例は、21アミノ酸のペプチドのフェノール可溶性モジュリン(PSM)(MRSAの多くの疾患の特徴の原因となる)である。他の実施例は、HoMRSAのより高いレベルにおいて発現するパントンバレンタインロイコシジン(PVA)毒素の検出である。
【0124】
グルタミル・エンドペプチターゼは、16位置のアミノ酸GluにおいてPSMを切断する。PSMを検出するために、MRSAの生体試料は、グルタミル・エンドペプチターゼ並びにシグナル部分及びPSMと競合するグルタミル・エンドペプチターゼ切断部位を備える基質と接触される。このシグナル部分からのシグナルが測定される。PSMを含まない対照試料と比較してシグナルの違いがあるかどうかが決定される。シグナルの違い(例えば減少)が対照試料と比較してある場合、その違いは生体試料のPSMの存在を示す。
【0125】
ここに提示する方法に従って検出できる他の典型的な黄色ブドウ球菌の抗原には、以下が含まれる:リビトール、ポリサッカライドA、ポリサッカライドB、テイコ酸、プロテインA、PVA毒素、PSM毒素、凝固促進酵素、ブドウ球菌キナーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、ヒアルロニダーゼ、リパーゼ、ヘモリシン:α、β、γ、δ、バレンタインロイコシジン、LUK、表皮剥脱内毒素、毒素性ショック症候群毒素、エンテロトキシンC、Dヘモリシンγ、ロイコシジンパントン−バレンタイン、TSST−1、ペニシリン結合タンパク質2及びブドウ球菌内毒素。
【実施例4】
【0126】
(真菌感染の検出のための基質)
全身性真菌感染(真菌血症)は、病的状態の原因および免疫不全の患者(例えば、エイズ、癌化学療法、器官又は骨髄の移植)の死亡原因となっている。加えて、これまで危険にさらされているとみなされない患者(例えば集中治療室の患者)の院内感染は、主要な健康懸念の原因になっている。それ故、真菌感染は、診断および治療の目標として挙げられる。
【0127】
この方法はさまざまな菌類、例えば、カンジダ菌、クリプトコッカス・ネオフォルマンス、アスペルギルス・フミガーツス、コウマクノウキン門、ツボカビ門、ディカリア、グロムス門、微胞子虫類及びネオカリマスティクスの検出のために利用される。
【0128】
カンジダ菌(人間においては、消化管、口および陰部で見出される)は、真菌感染に関係する最も一般の微生物のうちの1つである。カンジダ属(例えば、C.dubliniensis、C.tropicalis、C.parapsilosis、C.albicans)によって生じる3つの主要な細胞外加水分解酵素群は、分泌アスパルチル・プロテイナーゼ(Sap)、ホスホリパーゼB酵素及びリパーゼである。
【0129】
特異的酵素のひとつはSap2である。Sap2は、C.albicansの培養菌において豊富に発現し、従って、カンジダ感染症の発見の有力なターゲットである。Sap2切断部位は、開裂部位(「P1」部位)のN末端アミノ酸のフェニルアラニンの選択性を示す。分泌イムノグロブリンA、インシュリンB、アルブミン及びコラーゲンを含むSap2の基質の複数の配列アラインメントは、公知の方法で利用できる配列を提供する。加えて、そのアラインメントは、真菌感染の疑いのある生体試料に存在する可能性のある天然の基質と競合する人工の基質の構築を許容する。このアラインメントは、下記の表4に示される。
【0130】
【表4】

【実施例5】
【0131】
(癌の検出)
癌化のプロセスは、遺伝子の発現パターン及びより具体的にはプロテアーゼの発現パターンを変化させる。これらのプロテアーゼは、細胞内制御の、更には細胞外活性の一部である。細胞外活性は、活性の低下及び細胞外マトリックスの組織の再構築を含み、それらは悪性腫瘍と関係している。そして、プロセスは主にメタロプロテイナーゼによって行われる。
【0132】
数種類の癌バイオマーカー(例えばα−フェトプロテイン(APP)、癌胎児性抗原(CEA)、前立腺特異抗原(PSA)及びCYFRA21)が特定されている。PSAは、精漿において最も豊富なカリクレイン様セリンプロテアーゼで、成熟期の開始の後は血清において検出が可能である。血流へのPSAの逆行的な放出は、若い健常な男性に稀に発生し、分泌されたPSA分子のうち100万分の1より少ない頻度で発生する。前立腺の疾患において、この血液への漏出は非常に増加する。そして、それ故、血清PSAは前立腺癌のマーカーとして役立つ。しかしながら、医療の場でのPSA試験はしばしば、高い偽陽性率が欠点である。いくつかの研究は、他のカリクレインのようなプロテアーゼ(例えばKLK2、KLK4及びKLK1)を検出することによるPSAの診断値を改善しようとした。さらに、血液中でPSAがほとんど触媒活性を示さないことを見出した。これは主にプロテアーゼ阻害剤(例えばα1−アンチキモトリプシン(ACT)、α2−マクログロブリン及びプロテインC阻害剤(PCI)が105倍以上過剰であることに起因する。そして、それは血清中で安定な共有結合複合体を形成することによって、いかなる触媒PSAも不活性化する。したがって、血液中のPSAは複数の形態、遊離状態又は、さまざまなプロテアーゼ阻害剤との複合体で存在する。PSA(それは全血液PSAの約5−35%を構成する)の遊離状態の形態は、触媒的に不活性である。しかしながら、PSAの光分解の活性は、1.3MのNaSOの存在下では、103倍以上に増加する。従って、カリクレインファミリーのメンバーの活性を決定するために、プロテアーゼの検出を増加させるように活性剤を生体試料に加えてもよい。あるいは、複合体の形成は、親和性クロマトグラフィーによって逆転することができ、活性PSAを放出できる。遊離活性PSAの酵素活性は、PSAにより改変されるPSA基質を使用して検出することができる。PSAの検出に役立つ可能性のある基質の例としては、以下が挙げられる。
HSSKLQ(配列番号15)
QFYSSN(配列番号16)
GAGLRLSSYY−SGAG(配列番号17)
SSIYSQTEEQ(配列番号18)
基質は、さらに、PSAにより改変される基質の検出を許容し、改変に基づくシグナルを生じさせるシグナル部分を有する。生じる信号は、例えば、蛍光でもよい。
【実施例6】
【0133】
(アレイを用いた脳卒中及び凝固カスケードの検出)
凝固カスケードのための分析は、図18に示すように行われ得る。各試験管には、凝固カスケードの動力学的に調製された既知濃度のセリンプロテアーゼ酵素と、その基質が入っている。基質には、特異的切断部位とシグナル部分とが備えられ、天然基質の力学的特性が保持されている。
【0134】
生体試料は、各試験管に加えられる。試験管中のプロテアーゼの基質が生体試料中に存在する場合、それはシグナル部分を有する基質と競合し、反応は、FRET基質ベース分析又は蛍光分極化によって分析することができる。
【0135】
生体試料は異なる個体群から得ることが可能である。そして、脳卒中及び血液疾患の危険がある人々のプロファイルは、凝固カスケードのシグナルのマーカーの活性に基づいて作成されることができる。例えば、試料は、健常なドナー、脳卒中の危険があるドナー及び脳卒中のドナーから得ることが可能である。
【実施例7】
【0136】
(アロマターゼの検出)
アロマターゼは、シトクロムP450スーパーファミリーのメンバーであり、アンドロゲンを芳香族化し、エストロゲンを生産する。ステロイドは、4つの融合されたリングから成る。アロマターゼは、酸化に続くメチル基の除去によって、ステロイドの左側のリング(A−リング)を芳香基(その名の由来である)に変換する。
【0137】
【化1】

【0138】
アロマターゼ酵素は、性腺、脳、脂肪組織、胎盤、血管、皮膚、骨、子宮内膜において、また同様に子宮内膜症、子宮フィブロイド、乳癌及び子宮体癌を含む多くの組織に見られ得る。閉経後の女性が循環する血漿エストロゲンを低レベルで有する一方、乳癌組織自体において起こるエストロゲンの局在的な合成または腫瘍内の生産は腫瘍のより高いエストロゲン発現レベルにつながることがある。このように、アロマターゼ阻害剤は、病変がエストロゲン受容体陽性であるとわかった乳癌患者の管理に役立つようになった。
【0139】
アロマターゼは、性腺内分泌機能で最終的に発現する。腫瘍内のアロマターゼは、閉経後エストロゲン受容体の乳癌患者の臨床治療の標的であると考えられた。しかしながら、臨床患者でのアロマターゼ発現の検出のための所定の評価方法は、確立されなかった。
【0140】
ヒト組織のアロマターゼの局在分布の検査は、おそらく、悪性腫瘍レベルに関連した情報を伝えることによって、より良好な処置を閉経後の乳癌患者に提供することと、同様に内分泌系の機能のための診断ツールとして用いられる。
【0141】
提供される方法は、異なる組織を分析し、アロマターゼレベルを悪性腫瘍の測定及び閉経後の女性の内分泌系の機能として検出するために用いることができる。アロマターゼの検出に役立つ基質の例は、メトキシ−4−トリフルオロメチル−クマリン(MFC)で、アロマターゼによって急速に高い蛍光物質に変換される蛍光基質、7−ヒドロキシ−4−トリフルオロメチル−クマリン(7−HFC)を含むものである。このように、患者から得られた生体試料はMFCと接触させられ、それの蛍光は生体試料中のアロマターゼの存在を検出するために測定され得る。
【実施例8】
【0142】
(サイトメガロウイルス(CMV)の検出のための基質の設計)
(組換えCMVプロテアーゼの生産)
CMVはセリンプロテアーゼをコードし、その触媒ドメインは74 kDaの前駆体(pPR、pUL80a)からの自己開裂によって生じたアセンブリン(28kDa)であるものである。アセンブリンは、セリンプロテアーゼで、その構造研究によってSer−His−Serの触媒の三つ組と、特徴的なタンパク質フォールド部位を有することが示されている。酵素の研究は、それがホモ二量体化によるアロステリック活性を呈することを示した。その解離定数は、ほぼ1μMであり、相対的に、構造を強化する(コスモトロピックな)塩類(例えばNaSO)によって、約2桁のオーダーまで減少させることができる。
【0143】
当初、CMVプロテアーゼは、CMVによって作られる内在性プロテアーゼを模した酵素の供給源としてクローンされた。組換えプロテアーゼのさらなる用途は、陽性対照、分析の評価、最適化及び正常化を含む。
【0144】
ヘルペスウイルス5(CMV)、AD−169株(ATCC番号、VR−358)をクローニングのテンプレートとして、ATCCから購入した。製造業者の指示に従ってトポイソメラーゼ・クローニングベクター(pET151/D−TOPO、インビトロジェン)への定方向クローニングを容易にするために、フォワードプライマー(5’−CACCATGACGATGGACGAGCAG−3’)(配列番号60)に、5’プライマー伸長分CACC(配列番号61)が加えられた。リバースプライマー(5’−TCACGCCTTGACGTATGACTCG−3’)(配列番号62)は停止コドン(TGA)を3’プライマー末端に導入するため用いられた。CMVプロテアーゼ遺伝子を増幅するためのPCRには、校正ポリメラーゼ(Vent、NEB)が用いられた。PCR産物は精製され、それらの完全性は塩基配列決定により検査された。それらは、pET151/D−TOPO (インビトロジェン)に直接クローニングされ、大腸菌BL21表現株に形質転換された。
【0145】
CMVプロテアーゼはNi−NTAアガロースカラム(キアゲン、カタログ番号30210)によって精製された。それは変性(8M尿素によって)条件下にあり、6×Hisタグを利用して発現ベクターのプロテアーゼによって行われた。純度は、概して濃度測定分析によって、ほぼ95%近かった。精製後は、CMVプロテアーゼは見かけ上の分子量6−8kDaカットの透析バッグを使用し、一連のグアニジン塩酸バッファーによって、リフォールドされた。透析の後、リフォールドされたプロテアーゼは、ストレージバッファー(25mMのHEPES、 150mMのNacl、1mMのEDTA、1mMのDTT、10% グリセロールpH7.5)において、等分されて−70℃で保存した。プロテアーゼの濃度は、フルオロプロファイル(商標)タンパク質定量キットを用いて蛍光分光学により算出された(シグマ、カタログFP0010)。
【0146】
(基質)
ペプチドは、CMVプロテアーゼのための競争的基質として用いられるように設計された。ペプチド配列は、CMVプロテアーゼの第一の開裂配列を模倣するように設計されていた。HCMVプロテアーゼ切断部位配列は公知であり(バウムなど、「ヒトサイトメガロウイルスu180のプロテアーゼ切断部位変異体のタンパク質分解活性」、J.Virol.、1994年6月;68(6):3742−3752)、そして、以下の表5においても提供される。
【0147】
【表5】

【0148】
CMVのUL80ポリタンパク質の3つの周知のプロテアーゼ切断部位から推論されるHCMVコンセンサス切断部位は、VXA(A/S)である(配列番号23、上の表5を参照)。CMV感染症も発見するために有用な基質についての知見では、コンセンサス配列はVV(XはKでない)A−/−S (配列番号24)又はVVNA−/−SCR(配列番号25)である。UL80切断部位の範囲内の1つのアミノ酸置換突然変異の研究は、切れやすい結合と関連する位置であるP3、P1及びP1’のアミノ酸の重要性を確認した。
【0149】
CMV感染症を発見するための役立つ基質の具体的な例としては、以下があげられる。
(Dabcyl)−R−G−V−V−N−A−/−S−S−R−L−A−(EDANS)(ここではBach1という)(配列番号26)。
QSY9−R−G−V−V−N−A−/−S−S−R−L−A−C(alexa532)−NH2(ここではCamb3という)(配列番号27)
QSY9−R−G−V−V−N−A−/−S−S−R−L−A−C(alexa532)−6XPEG−K(ビオチン)−NH2(ここではCamb4という)(配列番号28)
“−/−“の記号は、プロテアーゼによる切断部位を意味する。
【0150】
Bach1は、バッヘム(ロット番号0563789)の市販のペプチドである。ペプチドCamb3及びCamb4は、ケンブリッジ・リサーチ・バイオケミカルズ社、クリーブランド、英国により合成されたものである。
【0151】
組換えプロテアーゼの活性は、基質(Bach1)を使用して検査された。組換えプロテアーゼは、標準検定バッファー(25mMのHEPES、150mMのNaCl、5mMのEDTA、5mMのEGTA、 5%グリセロール、0.9MのNaSO、1mMのDTT、pH8.5)中でBach1を混合した。反応は、マルチ・プレート蛍光リーダーを使用してモニターされた(BMGフルオスター、Ex.340nm、 Em.490nm)。図19に、4μMのBach1に対する200nMのCMVプロテアーゼの活性を示す。
【0152】
(基質特異性および交差反応性)
この試験方法がCMVの検出に特異的であるか、試験されたヒト・ライノウイルス(HRV)、エンテロウイルス(EV)(COX及びEcho)、SARS及びCMVのプロテアーゼ間の交差反応に特異的であるかについて測定を行った。反応は、基質のストック溶液の100μLを標準検定バッファーの各プロテアーゼの100μLに加えることにより開始された。4μMの基質には、PEP1(HRVに対する)[(DABCYL)−L−E−A−L−F−Q−/−G−P−D(EDANS)−S−Q](配列番号63)、Elm1(EVに対する)[K(DABCYL)L−E−A−L−F−Q−G−P−P−V−Y−E(EDANS)A](配列番号64)、PEP6(SARSに対する)[(DABCYL)T−S−A−V−L−Q−S−G−F−R−D(EDANS)K] (配列番号65)、及びBach1(CMVに対する)[(DABCYL)−Arg−Gly−Val−Val−Asn−Ser−Ser−Arg−Leu−Ala−(EDANS)]が使用され、それぞれ、HRV、EV、SARS及びCMVのプロテアーゼの50nM、100nM、1.5μM及び200nMが使われた。実験は3つ組試験で行い、2回繰り返された。
【0153】
表6に示すように、CMVプロテアーゼが完全に特異的であるとわかった。CMVプロテアーゼはCMVプロテアーゼ切断部位を含む基質のみを切断し、他のプロテアーゼの切断部位に対しては切断しなかった。
【0154】
【表6】

【0155】
この方法により、少なくとも、次のウイルスを検出できる:アカゲザル・サイトメガロウイルス68−1株、ヒト・ヘルペスウイルス5(1042株)、ヒト・ヘルペスウイルス5(119株)、ヒト・ヘルペスウイルス5(2387株)、ヒト・ヘルペスウイルス(4654株)、ヒト・ヘルペスウイルス5(5035株)、ヒト・ヘルペスウイルス5(5040株)、ヒト・ヘルペスウイルス5(5160株)、ヒト・ヘルペスウイルス5(5508株)、ヒト・ヘルペスウイルス5AD169株、ヒト・ヘルペスウイルス5アイゼンハート株、ヒト・ヘルペスウイルス5マーリン株、ヒト・ヘルペスウイルス5PT株、ヒト・ヘルペスウイルストレド株、ヒト・ヘルペスウイルス5タウン株、チンパンジー・サイトメガロウイルス、ヨザル・ヘルペスウイルス1、ヒヒ・サイトメガロウイルスOCOM4−37、オナガザル・サイトメガロウイルス1、クチヒゲグエノン・サイトメガロウイルス1、アカコロブス・サイトメガロウイルス1、コロブスゲレザ・サイトメガロウイルス1、ヨーロッパジネズミ・サイトメガロウイルス1、カニクイザル・サイトメガロウイルス1、マンドリル・サイトメガロウイルス、イボイノシシ・サイトメガロウイルス1、オランウータン・サイトメガロウイルス1、ブタ・サイトメガロウイルス、類人猿サイトメガロウイルス。
【実施例9】
【0156】
(白血球(WBC)中のCMVの検出)
CMVは、内皮、上皮、線維芽細胞及び白血球を含む多くのタイプの細胞に感染する。CMVプロテアーゼは、血液へ放出される可能性がある。血液試料のCMVプロテアーゼの検出の第一段階は、全血において機能することであった。しかしながら、CMVプロテアーゼ活性は全血試料において、検出されなかった。次のステップは、扱うことが容易な血漿において機能することであった。CMV患者からの血漿試料による第一のテストは、明白な活性を明らかにしなかった。60の血液試料から分離された血漿がテストされ、そして、20はCMV陽性で、40は陰性だった。後述する方法によって得られた結果とPCR(デーナ・ウルフ教授により行われる)間の相関は、良くない成績であった。活性CMVプロテアーゼを分離するため、WBCは全血試料から分離された。驚くべきことに、WBCが使われるときに、即時の方法の結果とPCRの間には高い相関があった。このように、WBCはCMVの検出のために用いられた。
【0157】
白血球の検体を得る方法の実施例は、以下に設けられている。1.5から5mlまでの静脈血は、無菌静脈穿刺を用いてEDTA処理を行ったチューブに集められる。血液試料は、処理まで室温で保たれる(保存のためには他の温度を用いている場合にも、20〜25℃とする)。しかしながら、通常、試料収集の処理はWBCの溶解を回避するために6〜8時間の範囲内で実行されなければならない。高度の好中球減少(好中球の絶対計測値が200個/μL未満)を有する患者の場合は最低10mLの血液が必要とされることがある。
【0158】
赤血球溶解溶液(防腐剤を含有しない)が、WBCの分離のために用いられる。10×ストック溶液は、1LのHOに89.9gのNHCl、10.0gのKHCO、370.0mgのEDTA4ナトリウム塩を溶解することにより準備される。pHは7.3に調整される。溶液は、完全な、しっかりと閉じた50mLのチューブに4℃で格納される。1×実験用溶液は、50mLの10×溶解ストック溶液を450mLのHOに加えることにより調製され、よく混合される。それは、最大1週間の間は室温で保存することができる。
【0159】
30mLの溶解バッファーは2mLの血液と混合され、4分間室温でインキュベートされ、5分間1000回転/分で遠心分離される。上清は吸引除去され、そしてペレットは30mLのリン酸バッファー(PBS)の中に再懸濁される。この混合物は5分間1000回転/分で遠心分離される。そして上清は吸引除去される。次いで、ペレットは1mLのPBSにおいて再懸濁される。細胞は、それから、血球計算器またはオートメーション化した細胞カウンターを使用して計数される。細胞は、PBSによって1000細胞/μLとなるよう希釈される。
【0160】
CMVプロテアーゼの検出の典型的な生体外検査法は、室温において標準検定バッファー(25mMのHEPES、150mMのNaCl、5mMのEDTA、5mMのEGTA、5%グリセロール、0.9Mの NaSO、1mMのDTT、pH8.5)で実行される。蛍光標識基質は、典型的には4μMで用いられる。酵素は1μMから500pMまでの濃度で用いることができる。
【0161】
(阻害剤の使用)
若干の臨床標本では、酵素活性の検出を損なうような高いバックグラウンド活性を有することがある。これは基質を切断できる特異性のないプロテアーゼの存在による可能性がある。バックグラウンド・ノイズは、テストされている特定の酵素に最小の影響を及ぼすと共に、バックグラウンド活性を阻害できる1つ以上の阻害剤を分析に含むことによって、減少することができる。
【0162】
WBC溶解物も、非特異性の細胞プロテアーゼから生じている高いバックグラウンド活性を有することが見出されている。広範囲の生物情報科学研究に基づいて、バックグラウンド活性原因の可能性があるいくつかのプロテアーゼが確認されている。8つの阻害剤のカクテルが、望ましくないバックグラウンドを減少させるために選択されている:ペスタチンA、AEBSF、アプロチニン、E−64、ヘパリン、ベスタチン、GW311616A及びエグリンC(エグリンCはアレクシスから、他の全ての阻害剤はシグマ−アルドリッチから得られた)。
【0163】
全ての阻害剤は、製造業者の指示に従い、200×に溶解し、分注し、保存して用いた。阻害剤は凍結状態から解凍して用いた。分析を開始するために基質の追加の前に、カクテルは、生体試料/CMVプロテアーゼと共に2.5分間インキュベートされた。
【0164】
阻害剤カクテルの有無にかかわらず、WBC試料のバックグラウンド活性は、CMVプロテアーゼ基質Camb4を4μM加えることにより試験された。図20に示すように、阻害剤カクテルのないWBC試料は、高いバックグラウンド・ノイズを示した。阻害剤カクテルを含むWBC試料に50nMの組換えCMVプロテアーゼを添加することは、阻害剤カクテルが軽微な阻害効果(最高20%)CMVプロテアーゼ活性を呈することを示した。
【0165】
(臨床標本)
臨床標本は、ヘルシンキ委員会の承認を得て、ソロカメディカルセンター、ビア・シェヴァ、イスラエル、ハダッサ・エインケレム総合病院、 エルサレム、イスラエル及びシバ病院、テル・アビブ、イスラエルから集められた。合計10の血液試料、先天的なCMVをもつ新生児からの4試料、CMV感染症の治療を受けている移植患者からの5試料及び対照実験としての健常なドナーからの1試料が得られた。具体的には、WBCは収集から6時間後に単離され、計数されてPBSに1000WBC/μLとなるよう希釈された。各試料からの50000のWBC(50μL)は、阻害剤カクテル(10μMのペスタチンA、1mMのAEBSF、75μMのアプロチニン、50μMのE−64、20U/mLのヘパリン、6μMのベスタチン、10μMのGW311616A及び500μMのエグリンCからなる)によって2.5分間インキュベートされた。反応は、最適化した1×分析バッファー(25mMの HEPES、150mMのNaCl、5mMのEDTA、5mMのEGTA、5%グリセロール、0.9MのNaSO、1mMのDTT、 pH8.5)及び基質として4μMのCamb4を50μL加えることによって開始した。反応は3つ組試験で行われ、5分間測定された。結果は健常な個人(試料10)から得られるコントロール試料と比較された。健常な個人のそれらより高い信号を有した試料は、CMVが陽性であるとみなされた。すべての試料は、イスラエルのハダッサ・エインケレム総合病院のウイルス学研究室で、デーナ・ウルフ教授(試料1−4)によって、またテル・アヒブのシバ病院でエラ・メンデルスン教授(試料5―9)、PCRを用いてCMVについて分析された。結果を表7にまとめる。
【0166】
【表7】

【0167】
表8において示される結果の分析は、即時のプロテアーゼ活性試験が100%の陽性予測値および66%の陰性予測値を有することを示唆する。偽陽性値は12.5%であった、そして、偽陰性値は0%であった。これらの結果の全体の精度は、90%であった。
【0168】
【表8】

【実施例10】
【0169】
(レトロウイルスの検出のための基質)
提供された方法は、以下のウイルスを検出するためにも利用できる:オルソレトロウイルス科、レンチウイルス、霊長類レンチウイルス群、ヒト免疫不全ウイルス1:HIV−1のM:C_92BR025、HIV−1のM:C_ETH2220、HIV−1のM:F1_93BR020、HIV−1のM:F1_VI850、HIV−1の5M:F2_MP255C、HIV−1のM:F2_MP257C、HIV−1のM:G_92NG083、HIV−1のM:G_SE6165、HIV−1のM:H_90CF056、HIV−1のM:H_VI991、HIV−1のM:J_SE9173、HIV−1のM:J_SE9280、HIV−1のM:K_96CMMP535、HIV−1のM:K_97ZR−EQTB11、HIV−1のN_YBF106、HIV−1のN_YBF30、HIV−1のO_ANT70、HIV−1のO_MVP5180、ヒト免疫不全ウイルス3、ヒト免疫不全ウイルス1型(ARV2/SF2分離株)、ヒト免疫不全ウイルス1型(BH10分離株)、 ヒト免疫不全ウイルス1型(BH5分離株)、ヒト免疫不全ウイルス 1型(BH7分離株)、ヒト免疫不全ウイルス1型(BH8分離株)、ヒト免疫不全ウイルス1型(BRAIN分離株)、ヒト免疫不全ウイルス1型(BRU分離株)、15ヒト免疫不全ウイルス1型(CDC−451分離株)、ヒト免疫不全ウイルス1型(クローン12)、ヒト免疫不全ウイルス1型(ELI分離株)、ヒト免疫不全ウイルス1型(HXB2分離株)、ヒト免疫不全ウイルス1型(HXB3分離株)、ヒト免疫不全ウイルス1型(YU2分離株)、ヒト免疫不全ウイルス1型(JH3分離株)、ヒト免疫不全ウイルス1型(JRCSF分離株)、ヒト免疫不全ウイルス1型(KB−1分離株)、ヒト免疫不全ウイルス1型(Lai分離株)、ヒト免疫不全ウイルス1型(MAL分離株)、ヒト免疫不全ウイルス1型(MFA分離株)、ヒト免疫不全ウイルス1型(MN分離株)、ヒト免疫不全ウイルス1型(NDK分離株)、ヒト免疫不全ウイルス1型(ニューヨーク5分離株)、ヒト免疫不全ウイルス1型(NIT−A分離株)、ヒト免疫不全ウイルス1型(OYI分離株)、ヒト免疫不全ウイルス1型(PV22分離株)、ヒト免疫不全ウイルス1型(RF/HAT分離株)、ヒト免疫不全ウイルス1型(SC分離株)、ヒト免疫不全ウイルス1型(SF162分離株)、ヒト免疫不全ウイルス1型(SF33分離株)、ヒト免疫不全ウイルス1型(ウガンダ株/U455分離株)、ヒト免疫不全ウイルス1型(WMJ1分離株)、ヒト免疫不全ウイルス1型(WMJ2分離株)、ヒト免疫不全ウイルス1型(Z−84分離株)、ヒト免疫不全ウイルス1型(Z2/CDC−Z34分離株)、ヒト免疫不全ウイルス1型(ザイール3分離株)、ヒト免疫不全ウイルス1型(ザイール6分離株)、ヒト免疫不全ウイルス1型(ザイールHZ321分離株)、ヒト免疫不全ウイルス1型のlw12.3分離株。ヒト免疫不全ウイルス2:ヒト免疫不全5ウイルス2型(BEN分離株)、 ヒト免疫不全ウイルス2型(ROD分離株)、ヒト免疫不全ウイルス 2型(ST分離株)、ヒト免疫不全ウイルス2型(ST/24.1C#2分離株)、HIV−2のB_EHO、HIV−2のB_UC1、HIV−2.D205、ヒト免疫不全ウイルス2型(D205,7分離株)、ヒト免疫不全ウイルス2型(7312A分離株)、ヒト免疫不全ウイルス2型(CAM2分離株)、ヒト免疫不全ウイルス2型(D194分離株)、ヒト免疫不全ウイルス2型(ガーナ1分離株)、ヒト免疫不全ウイルス2型(KR分離株)、ヒト免疫不全ウイルス2型(NIH−Z分離株)、ヒト免疫不全ウイルス2型(SBLISY分離株)。
【0170】
上記のウイルスの検出のために、以下の化学式での競合的基質を用いることが可能である:
(S/G)(Q/G/R/K)(N/C/D)(Y/疎水性/芳香族) −/−P(I/V/疎水性)(V/Q)(配列番号28)
【0171】
特に限定されないが、検出のために以下のような他のウイルスを含むこともできる:レトロウイルス科、オルソレトロウイルス科、デルタレトロウイルス、霊長類Tリンパ好性ヒトT細胞好性ウイルス1型(Caribbean分離株)、ヒトT細胞好性ウイルス1型(MT−2分離株)、ヒトT細胞好性ウイルス1型(ATK株)、ヒトT細胞好性ウイルス1型(アフリカ分離株)、ヒトT細胞好性ウイルス1型(北アメリカ分離株)。HTLV(ヒトT細胞好性ウイルス)。
【0172】
HTLVの検出のための競合基質として用いられるキャプシド及びヌクレオカプシド(CA/NC)及びPr/P3の切断部位を有するペプチドとしては、特に限定されないが、以下を含むことができる:
(V/L/T/P)X(疎水性)(F/L)−/−V(疎水性)Q(配列番号29)
KVKV(F/L)−/−VVQPK(配列番号30)
PPX(疎水性)L−/−PI(配列番号31)
【実施例11】
【0173】
(オリゴ糖ビーズおよび蛍光標識リガンド(レクチン)に基づくノイラミニダーゼ活性の検出)
髄膜炎の原因がウイルス性であるか細菌かどうかについて決定することは、髄膜炎感染の疑いがある患者の治療の性質及びコースの改善を可能にする。髄膜炎を引き起こしている細菌株は細胞外ノイラミニダーゼ活性に関連し、CSF中にはないため、血清中のノイラミニダーゼ活性のモニタリングは細菌性髄膜炎感染症の指標として用いることができる。NeuAcα2−3Galノイラミニダーゼ系を使用するシステムは細菌株に関連する全ての3つの髄膜炎の検出を可能とする。
【0174】
【化2】

【0175】
(試薬)
Si−NeuAcα2−3Gal、分子量600ダルトン(デクストララボラトリーズUK、カタログ#NH312)
6−Joe−SE(6−カルボキシ−4’,5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシフルオレセイン、スクシンイミジルエステル)、分子量600ダルトン(アナスペックUSA、カタログ#81011)
レクチン:MAL−イヌエンジュレクチン、Neu5AC(2−3)Gal^^。分子量150000ダルトン。(シグマ、カタログ#L8025)
ビーズ:M280/MyOne−dynabeads−tos。活性化済(インビトロジェン)
ノイラミダーゼ酵素:肺炎レンサ球菌由来のa(2−3)−Nノイラミニダーゼ(シグマ、カタログ#N7271)
その他の全ての塩類はシグマ−アルドリッチから購入した。
【0176】
(Si−糖/ダイナビーズ−tos.)
●0.1Mホウ酸ナトリウム、pH9.5(標識バッファーA)
●0.1Mホウ酸ナトリウムにおける3M硫酸アンモニウム、pH9.5(標識バッファーB)
●HEPESバッファー(35mM)pH=7.4、MnCl10mM及びCaCl20mM(結合バッファー)
●0.1Mトリス−塩酸、pH=9.0
【0177】
1)50μLのペレットビーズ(500μl試薬より、許容量250nM)を100μLの5mg/ml(0.5mg、750nm)のNH−NeuAcα2−3Gal−Si、330μlのバッファーBと520μlのバッファーAとを、室温で36時間、2mlの丸底チューブでローリングする。
2)1mLの0.1MのTrisを加え、室温でオーバーナイトでインキュベートする。
3)5回の洗浄を10mLの結合バッファーで行い、1500μLの結合バッファーで再懸濁する。
【0178】
(レクチン−Joe(SE−NH2反応)
●1.0Mのトリス−塩酸、pH=8.0を調製
●0.1Mホウ酸3ナトリウム、pH8.5(標識バッファーC)を調製
【0179】
1)1000μg(1.6μM)の6−Joe−SEを60μLのDMSOに溶解させる。
2)5μLの#1を丸底チューブに移し、5mg/mlのMALを200μL、バッファーCに加える(1mg、0.0065μM−1:20m:m、Joeに対して)
3)ローリングしながら室温、オーバーナイトでインキュベートする。
6)30μLの1.0MのTrisを加え、室温、オーバーナイトでインキュベートする。
7)250μLを乾いた5mlのセファデックスG−25カラム(結合バッファでキャリブレートした)にロードし、上清を回収し、4℃で保存する。
【0180】
(レクチンのビーズSiへの結合の調製)
750μLの磁気ビーズを丸底黒色2mLチューブにプルダウンし、500μLの結合バッファーに再懸濁した。100μLの標識したレクチンを加えた。アルミニウム紙の下で、ローリングを加えつつ6時間室温でインキュベートした。1mg/mLのBSA結合バッファーで7回洗浄し、2000μLの結合バッファーに再懸濁した。
【0181】
(酵素反応)
50μLのレクチン結合ビーズは、1ユニットのa−(2−3)−ノイラミニダーゼ(部位特異的に肺炎レンサ球菌由来)の存在下又は非存在下で、15分間室温でインキュベートされた。磁気ビーズはプルダウンされ、蛍光が計測された。
【0182】
(結果)
肺炎レンサ球菌ノイラミニダーゼの一種によるビーズからのレクチンの放出量を下の表9に示す。
【0183】
【表9】

【0184】
これらの結果は、遊離酵素によるレクチンに結合したビーズのノイラミニダーゼ処理が、シアル酸を糖骨格から切断する能力を有し、ビーズからのレクチンの放出をひきおこすことを示す。
【0185】
(レクチン結合前のビーズ−Siとノイラミニダーゼの前処理)
100μLのオリゴ糖標識されたビーズは1ユニットのa−(2−3)−ノイラミニダーゼ(部位特異的に肺炎レンサ球菌由来)と共に15分間室温でインキュベートした。ビーズをプルダウンし、200μLの結合バッファーに再懸濁し、蛍光ラベルされたレクチンを10μL加えた。ローリングを加えつつ室温で2.5時間インキュベートしたあと、ビーズは結合バッファーで5回洗浄の後、蛍光を測定した。表10は、処理されたビーズのレクチン結合の%値の結果を示す。
【0186】
【表10】

【0187】
これらの結果は、ノイラミニダーゼを有するビーズ−Siの前処理がレクチンとビーズの間の結合を高く減少させたことを示す。
【実施例12】
【0188】
(非特異的プロテアーゼ活性の阻害剤)
提供される方法を妨げるような非特異的なプロテアーゼに対する阻害剤は、バックグラウンド・ノイズを減らして、生体試料での病原体、疾患、医学的状態、またはそのバイオマーカーの検出の精度を増加させることに役立てることに有用な可能性がある。バイオインフォマティクスに関する研究では最初に、各組織/器官の非特異的なプロテアーゼ及びそれらのプロテアーゼに対して効果的な可能性がある阻害剤を確認するために実行された。
【0189】
バイオインフォマティックスの調査は、以下のステージに従って実施された:
1)第1ステージにおいて、今日公知であるすべてのプロテアーゼについて、文献において検索された。プロテアーゼ検索はMedline文献検索(そして、それが引用した論文)及びMedilneヌクレオチド検索を通じて検索された。余剰のプロテアーゼ名については除去された。検索結果は442のプロテアーゼであった。
2)このステージにおいて、あらゆる周知のプロテアーゼは、それが示される組織と関係していた。あらゆるプロテアーゼは、以下のタンパク質データベースに対して検索された:
a.Medline
b.http://www.hprd.org
c.http://www.brenda.uni−koehi.de
【0190】
それらのデータベースは、その触媒活性部位(セリン、システイン、アスパラギン、メタロプロテアーゼ又はユビキチン−プロテアソーム系タンパク質)に従ってあらゆるプロテアーゼを分類するためにも用いた。
【0191】
各組織は、その問題のある生体系または器官に起因していた。ビジュアルベーシックのプログラムがエクセルに基づくデータベースに作成された。そのアプリケーションによって、ユーザは興味がある組織をマークすることができる。一旦ユーザが興味のある組織をマークすると、これらの組織において発現しているプロテアーゼが示される。以下は、分析される組織のリストである:リンパ球、副睾丸、食道、遍在組織、好中球、肝細胞、リンパ節、Th(2)細胞、小脳、子宮内頸部、メラニン形成細胞、腸細胞、Th(I)細胞、糸球体、好酸球、尿管上皮、心筋、精子、骨髄、ライディヒ細胞、空洞、舌、盲腸、空腸、筋細胞、胃、気管、歯肉、脱落膜、果核、尿道、絨毛膜、咽頭、蝸牛、前立腺、膵臓、血小板、胎盤、大脳、中脳、単球、気管支、十二指腸、視床、扁桃体、好塩基球、腸、軟骨、小膠細胞、CD8+細胞、白血球、表皮、心室、T細胞、星状細胞、胆管、神経膠、CD4+細胞、大グリア細胞、脂肪細胞、マクロファージ、CNS、目、肺、乳、橋(きょう)、骨、虹彩、レンズ、大動脈、卵巣、回腸、結腸、精液、血清、脳、胎児、肝臓、心臓、肝臓、血液、尿、血清、歯、心臓、精巣、腎臓、子宮、角膜、血漿、膣、直腸、扁桃腺、脾臓、胸腺、頸部、胚、心房、B細胞、筋肉、網膜、T細胞、動脈、ニューロン、破歯細胞、海馬、子宮内膜、脊髄、灰白質、副甲状腺、杯状細胞、子宮内膜、軟骨細胞、顆粒白血球、栄養芽層、精母細胞、ケラチン生成細胞、筋線維、血管、毛様体、胆嚢、前頭葉、白質、シュワン細胞、精管、視床下部、腎尿細管、松果体、セルトリ細胞、腎臓皮質、鼻粘膜、甲状腺、乳腺、巨大核細胞、側頭葉、副腎、ヘンレ係蹄、平滑筋、精原細胞、プルキンエ細胞、心房中隔、腎臓骨髄、頭頂葉、胃粘膜、副腎皮質、神経系、硝子体液、赤血球、後頭葉、樹枝細胞、唾液腺、ファローピウス管、脈絡叢、上衣細胞、羊水、固有層、脂肪組織、嗅球、心筋、頸部粘液、臍帯、皮膚線維芽細胞、副腎髄質、小腸、肺上皮、大脳皮質、膀胱、脳神経単位、骨格の筋肉、有歯の核、角質層、集合管、下垂体、冠状動脈、脳梁、細胞栄養芽層、尾状核、精嚢、大腸、腺下垂体、乏枝神経膠細胞、皮脂腺、クロム親和細胞、細菌細胞層、上行結腸、小腸、黒質、肺動脈、血管内皮、ランゲルハンス島、単核食細胞、腸の上皮、末梢血細胞、顆粒ルテイン細胞、消化管、角膜上皮細胞、血液生成幹細胞、胆嚢上皮、遠位曲尿細管、卵巣の小胞流体、気管支の上皮細胞、血管内皮細胞、膵管上皮、近位尿細管曲部、近位管状上皮、臍静脈内皮細胞、網膜色素性上皮細胞、脳脊髄液、角膜内皮、合胞栄養芽層、束状層、横行結腸、下行結腸、卵胞、絨毛膜絨毛、滑液膜、延髄、膵腺房、小脳皮質、脊髄幹細胞、中心傍回、核側坐核、顎下腺、虫垂、乳房上皮、心室中隔、胎盤膜、子宮筋層、毛様体上皮、ナチュラルキラー細胞、肺胞大食細胞、視床下核。
【0192】
3)前述した組織を選択するアプリケーションを用いて、呼吸器系において、発現するプロテアーゼが特定された。選択された組織は、以下の通りである:顎下腺、唾液、気管支、肺胞大食細胞、歯、毛様体上皮、咽頭、舌、白血球、大食細胞及び顆粒白血球、肺、唾液腺、舌、鼻粘膜、肺上皮、気管、気管支上皮細胞、歯肉、鼻粘膜、好中球。
【0193】
これらの組織の選択は、呼吸器系において発現している以下の72種のプロテアーゼをマークして行われた:トリプターゼα、デヒドロペプチダーゼ、トリプターゼε、腎臓ジペプチダーゼ、セリンプロテアーゼEOS、セリンプロテアーゼ15、セリンプロテアーゼ25、セリンプロテアーゼ8、システインプロテアーゼ2、プロテアーゼセリン11、エラスターゼ、白血球、胎盤タンパク質11、セリンプロテアーゼ、HTRA3、ジペプチジル・ペプチダーゼIV、CIpPカゼイノリチックプロテアーゼ、トリペプチジルアミノペプチダーゼ、気道トリプシン様プロテアーゼ、CIpXカゼイノリチックプロテアーゼX、モザイクセリンプロテアーゼコリン、βサイトApp切断酵素、ユビキチン特異プロテアーゼ35、βサイトApp切断酵素2、プラスミノゲン活性化ウロキナーゼ、膜貫通セリンプロテアーゼ2、シグナルペプチドペプチダーゼ様2B、Oシアロ糖タンパク質エンドペプチターゼ、色素上皮由来因子、扁平上皮癌抗原2、上皮角質層キモトリプシン様酵素、タンパク質コンバターゼ・サブチリシン/ケキシン、タイプ5、粘膜関連リンパ組織リンパ腫移動タンパク質、レニン、ヘプシン、ナプシン1、テスティシン、カルパイン7、カスパーゼ4、カスパーゼ5、カスパーゼ7、カスパーゼ9、カスパーゼ10、グランチームK、カリクレイン、マトリプターゼ、カテプシンE、カテプシンB、カテプシンC、カテプシンG、カテプシンH、カテプシンK、カテプシンS、カテプシンZ、パンクレアシン、プロテイナーゼ3、カテプシンA、カテプシンO、カリクレイン、カリクレイン5、カリクレイン7、カリクレイン8、カリクレイン9、カリクレイン10、カリクレイン11、カリクレイン12、カリクレイン13、カリクレイン15、カリクレイン6、トリプシノーゲン2、すべてのカリクレイン、カテプシンF、トリプターゼβ1。
【0194】
4)すべてのプロテアーゼについて、情報はその切断部位選択およびその周知の阻害剤に関して集められた。このプロセスの間、我々は、文献および以下のデータベースを使用した:
a.http://www.brenda.uni−koeln.de
b.www.hprd.org
c.http://www.ebi.uniprot.org/index.shtml
d.http://www.peptide.co.jp
e.http://merops.sanger.ac.uk
f.www.expasy.org
【0195】
5)特定されたプロテアーゼの切断プロファイルは、プロテアーゼのうちどちらがヒト・ライノウイルス属(HRV)ペプチド、Pep9(DABCYL)−L−E−A−L−F−Q−P−D(EDANS)−S−Q−NH(配列番号32)を切断する可能性について決定するために用いられた。周知の切断部位がないプロテアーゼは、Pep9も切断する可能性のあるプロテアーゼと考えられた。非特異的なメタロプロテアーゼはEDTAによって、強く阻害される。そして、それはほとんどすべての試料に加えられることが可能であり、したがって、この分析では考慮されなかった。Pep9を切断できるプロテアーゼは、以下を含む:トリプターゼε、セリンプロテアーゼ5、セリンプロテアーゼ15、セリンプロテアーゼ25、セリンプロテアーゼ8、胎盤タンパク質11、CIpPカゼイノリチィックプロテアーゼ、トリペプチジルアミノペプチダーゼ、気道トリプシン様プロテアーゼ、モザイクセリンプロテアーゼコリン、色素上皮由来因子、パラカスパーゼ、カテプシンA、カテプシンO、カリクレイン5、カリクレイン8、カリクレイン9、カリクレインB、カリクレイン10、カリクレイン11、カリクレイン12、カリクレイン13、カリクレイン6、プロテイナーゼ3、カリクレイン15、カテプシンF、レニン、プロターゼ、ナプシン1、カルパイン7、カスパーゼ4、カスパーゼ5、カスパーゼ7、カスパーゼ9、カスパーゼ10、エラスターゼ、カテプシンB、カテプシンH、カテプシンK、パンクレアシン、カテプシンE。
【0196】
6)最もペプチドPep9の切断に適したプロテアーゼが確認されたあと、これらのプロテアーゼを阻害できるプロテアーゼ阻害剤で最も小さいグループを確認した。ステップ4の阻害剤についてプロテアーゼ、毒性および入手可能性について文献をチェックした。他に考慮した点としては、ワンなど、Anal.Biochem.,252:238−245(1997)の記載によるHRVの阻害剤による周知の影響であった。
【0197】
7)下記の表11に示されるように、非特異的なプロテアーゼ活性及びバックグラウンド・ノイズを減らすために阻害を必要とする可能性がある約40のプロテアーゼがある。文献の再調査に基づいて、5つの阻害剤によってこれらのプロテアーゼを阻害する必要があり、HRVの3Cプロテアーゼ活性を下げることなく、呼吸器系由来の流体中で分析の読み取りに生じるバックグラウンドを下げることができる。表8において、EDTAは、メタロプロテアーゼに対するその阻害効果のために加えられた。
【0198】
【表11】

【0199】

【実施例13】
【0200】
(HRV検出のための鼻腔洗浄阻害剤カクテル)
前の実施例において集められる情報を用いて、理論的に非特異的なプロテアーゼの働きを抑制する7つの阻害剤を選択する。これらの阻害剤は、以下を含む:ペプスタチンA、AEBSF、アプロチニン、E−64、Ac−DEVD−CHO、EDTA+EGTA及びエグリンC。アミノペプチダーゼ阻害剤として有用なものとして、ベスタチンも選択された。これらの阻害剤は、バックグラウンド・ノイズおよびHRVプロテアーゼ特異的な活性に対してそれらの活性を試験された。
【0201】
すべての阻害剤は、製造業者の指示に従って100×で溶解され、分注され、保存され、用いられた。凍結と解凍のサイクルは阻害剤に課されなかった。基質を追加し、分析を始める前に、カクテルまたは個々の阻害剤の10μLは、90μLの試料/バッファー+HRVプロテアーゼと共に5分間インキュベートした。
【0202】
プロテアーゼ活性(バッファ+3C)上の、そして、鼻腔洗浄標本プールに存在するバックグラウンド・ノイズ上の阻害剤の作用を試験するために、反応速度は、問題となる阻害剤の有無にかかわらず比較された(表12)。反応は、開始バッファー環境下で、4μMのPep1および50nM組換えHRVの3Cプロテアーゼによって5分間で実行された。RT−PCRによる4つのHRV陰性標本の鼻腔洗浄標本プールは、不十分な量の個々の標本に対して実験の全体にわたって等しい条件を再現するために使われた。
【0203】
これらの結果(表12)に基づいて、最終的な鼻腔洗浄阻害剤カクテルは選択された:1mMのAEBSF、7.5μMのアプロチニン、5 mMのEDTA+EGTA各々(通常の分析用バッファーに含有されている)、50μMのE−64及び0.5μMのエグリンC。ペプスタチンA、Ac−DEVD−CHO及びベスタチンは省略した。阻害剤E−64はその強いシステインプロテアーゼ阻害ポテンシャルのために含有された。そして、それはHRVの3Cプロテアーゼ活性(表12)に対しては阻害を示さなかった。
【0204】
【表12】

【0205】
Ni:阻害なし、(+-):3つ組試験のSD。
【0206】
阻害剤カクテルは、カクテルの有無にかかわらず、そして、添加された50nMの組換えHRVの3Cプロテアーゼによって、標本プール及びWBCに対してもテストされた。図21のA−Bを参照のこと。WBCは炎症性の鼻腔洗浄液に豊富に含まれ、WBC溶解物がテストされた。WBC溶解物は、非特異的な細胞プロテアーゼから生じているHRV分析(基質pep1による)の高いバックグラウンドを有した。標本プールにおいて、観察されるバックグラウンドの一部はWBCに由来していると仮定された。
【0207】
そして、阻害剤カクテルの存在、非存在、及びカクテル+組換え型HRV 3Cプロテアーゼ存在下での結果は、両方の標本プール(図21 A)に示され、ヒトWBCで1x10細胞/mlである(図21B)。カクテルは、高い効力(>87%)を有する標本プールおよびWBCのバックグラウンドを阻害した。阻害剤カクテルを有する反応に組換えHRVの3Cプロテアーゼを妨げることは、通常の率で特定のHRVプロテアーゼ活性を誘導した。それが示された(+3C)箇所では、反応は4μMのPep1および50nm組換えHRVの3Cプロテアーゼにより実行された。データは、2つの独立繰り返しから代表的なものである。
【0208】
更に阻害剤カクテルを改善して、それがカバーする非特異的プロテアーゼの範囲を広げるために、さらに4つの阻害剤が加えられた:ベスタチン、ペプスタチンA、ヘパリン及びGW311616Aである。これらの阻害剤はHRVの3C組換え型プロテアーゼを阻害しなかった。そして、それらの周知の標的となるプロテアーゼを主成分として、それらは他の人間の体液標本に関連性がある可能性がある。これらの4つの阻害剤の追加の後、I8と呼ばれる新しい阻害剤カクテルが決められた。表13を参照のこと。
【0209】
【表13】

【実施例14】
【0210】
(脳脊髄液(CSF)のエンテロウイルスの検出のための阻害剤カクテル)
髄膜炎を発見する方法および組成物は、国際公開2007/029262号において開示された。しかしながら、エンテロウイルス基質Camb2を有するエンテロウイルスを検出するために使用するCSF(脳脊髄液)試料は、バックグラウンドを発生させる。バックグラウンド・ノイズを減らすために用いることができる阻害剤を確認するために、CSFおよびそれらの阻害剤に併用可能な非特異的プロテアーゼを、実施例12に記載されている方法を使用して確認した。
【0211】
(活性、設計及び結果)
1)CSFと関連のある全ての組織において、発現されるすべてのプロテアーゼを見つけるために、文献検索およびデータベース検索を実行した。使われたデータベースには以下が含まれた:MEROPS、BRENDA、OMIM、NCBI及びHPA。この検索は、以下の組織が含まれた:リンパ球、脳、白血球、神経系、腎臓骨髄、腎臓皮質、大脳皮質、脳神経単位、CNS、脊髄、T細胞、黒質、大脳、マクロファージ、海馬、B細胞、好中球、小脳、延髄、前頭葉、側頭葉、視床、扁桃体、灰白質、白物質、シュワン細胞、脳下垂体、脳脊髄液、神経グリア、甲状副腺、視床下部、索状層、大脳皮質、松下腺、ニューロン、好酸球、プルキンエ細胞、顆粒球、好塩基球。
【0212】
2)この検索によって、227のプロテアーゼが検索された。それらのシーケンスのホモロジーによれば、また、文献によると、これらのプロテアーゼは、3つのカテゴリに分けられた:
a.メタロプロテアーゼ(39種)。
b.ATP依存的なプロテアーゼ(41種)。
c.セリン/システインおよびアスパラギン酸プロテアーゼ(147種)。
【0213】
3)標本の予想されるATP濃度では、ATP依存的なプロテアーゼが基質を切断する確率を低下させる。さらにまた、反応バッファーのキレート化剤(EDTA)の使用は、非特異的なメタロプロテアーゼの活性を阻害する。従って、メタロプロテアーゼの除去および可能性がある非特異的な切断試薬としてのATP依存的なプロテアーゼの後には、セリン/システインおよびアスパラギン酸プロテアーゼは、CSFにおける非特異性のプロテアーゼ活性の候補であった。
【0214】
4)各セリン/システインおよびアスパラギン酸プロテアーゼのために、総合的な文献およびデータベース検索を、それらの切断部位選択のために実行した。それらの切断部位が重要な基質(Camb2)を切断しないことを示したので、これらのプロテアーゼについて多くは排除した。この排除のプロセスは、可能性のあるプロテアーゼを227から51まで削減した。
【0215】
5)残留する51のプロテアーゼについて、カクテルにおいて使用する阻害剤の数を最小化する(可能な限り)ために、それらのプロテアーゼ阻害剤(そして、場合によっては阻害剤間の相互作用)、阻害剤のpH依存およびプロテアーゼ(プロテアーゼ/阻害剤のインキュベーション時間)、そして、その阻害剤は、市販かどうかのために、さらなる文献検索を行った。
【0216】
6)Camb2を使用しているCSF試料のエンテロウイルスの検出に役立つことを提案された阻害剤は、下にリストされる:
グランチームH、プロテイナーゼ3:α−1−プロテイナーゼ阻害剤。
ジペプチジル・ペプチダーゼ:ディプロチンA、L−2,4−ジアミノブチリルピペリジンアミド。
PrSS11:HtrA1阻害剤(ノバルティス)。
HtrA2:Ucf−101(カルバイオケム)
カルパイン7:3−(4−ヨードフェニル)−2−メルカプト−(Z)−2−プロペン酸(シグマ−アルドリッチ)。
カリクレイン12:HAI−2A(R&Dシステムズ)、エコチン (シグマ)。
カテプシンA:エベラクトンB;キモスタチン。
カテプシンH:ヒトステフィンA及びヒトステフィンB。
カルパイン11:カルパスタチン。
【実施例15】
【0217】
(細菌的に感染したCSF試料のための阻害剤カクテル)
これまでウイルス性および細菌性髄膜炎の共同感染については報告されていなかった。このように、ウイルス性髄膜炎感染症に対する検査は、細菌性髄膜炎の否定的結果を意味する。しかしながら、細菌性髄膜炎に感染しているCSF試料はエンテロウイルスに対する検査の偽陽性結果につながるバックグラウンドでない特異的な活性を有する場合があり、それによって結果は混同する。CSF試料のバックグラウンドの非特異的な活性は基質を切断できる細菌プロテアーゼに関連があり、それによって陽性シグナルとなった可能性があった。CSFの細菌性髄膜炎で最も頻繁に見出されるものは、以下を含む:肺炎レンサ球菌、Neisseria meningitides(髄膜炎菌)、ヘモフィルス・インフルエンザ菌、肺炎桿菌。したがって、Pneumococcus(肺炎レンサ球菌、異なる2種の株6B及び23F)、そして、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)は、CSF試料において、観察される非特異的なバックグラウンドの活性をシミュレーションして、それを減らすための阻害剤を確認するために添加された。阻害剤の異なるグループからの40以上の阻害剤の総量がテストされた。
【0218】
2つの阻害剤(ホスホラミドン及び2,6−ピリジンジカルボン酸酸)は、これらの細菌(図22A、B)において誘導されるシグナルを著しく減少させた。コラゲナーゼの弱い阻害剤以外の、ホスホラミドンは、多くの細菌メタロエンドプロテイナーゼ、セルモリシン及びエラスターゼの強い阻害剤である。それは、トリプシン、パパイン、キモトリプシンおよびペプシンを阻害しない。ホスホラミドンは、実験系に添加したエコウイルス3C組換え型および肺炎球菌(タイプ6B及び23F)を使用して試験された。
【0219】
図22Aに示される実験は、Echo組換え型プロテアーゼ(50nm)、または、肺炎球菌6B及び23F(1μL)の2つの異なる種の存在下で実行された。阻害効果は、ホスホラミドン(20μM)の存在下/非存在下において、測定された。ホスホラミドンは、組み替えプロテアーゼについて7%、6B及び23Fによる肺炎球菌の活性を91%及び80%阻害した。この結果は、両方の株に対する90%の阻害のどの類似の結果が判断されたかという少なくとも3件の独立した実験を代表するものである。
【0220】
2,6−ピリジンジカルボン酸は、エコウイルス3C組み換え型、そして、実験系に添加されている髄膜炎菌についてテストされた。図22Bに示される実験は、エコ組換え型プロテアーゼ(1:18)存在下で、又は髄膜菌炎の3μL)の存在下で、または、血液(20μL)の存在下で実行された。RFU/分は、2,6−ピリジンジカルボン酸(2.5mM)の存在下/非存在下において、決定された。2,6−ピリジンジカルボン酸は、組換えプロテアーゼの活性を4.5%、髄膜炎菌の活性を81%及び血液活性を0%阻害した。
【0221】
ホスホラミドン及び2,6−ピリジンジカルボン酸は従って、上記する阻害剤カクテルI18、そして、阻害剤カクテルI9a(18+ホスホラミドン)、19b(18+2,6−ピリジンジカルボン酸)および110(18+ホスホラミドン+2,6−ピリジンジカルボン酸)に従って添加した。
【0222】
I9a阻害カクテルの最終組成は、表14aにまとめる。
【0223】
【表14a】

【0224】
I9b阻害カクテルの最終組成は、表14bにまとめる。
【0225】
【表14b】

【0226】
I10阻害剤カクテルの最終組成は、表15にまとめる。
【0227】
【表15】

【0228】
エンテロウイルス3Cプロテアーゼ(エコ)、WBC(1テスト当たり細胞数2x10)、肺炎球菌(1テスト当たりバクテリア数1×10)および髄膜炎菌(1テスト当たりバクテリア数1x10)(それぞれ5μL)は人工CSF(45μL)に添加した。そして、示された阻害剤カクテル(それぞれ5μL)を続けて添加した:I8、I9a=I8+ホスホラミドン(90μM)、I9b=I8+2,6−ピリジンジカルボン酸(2.5mM)及びI10=18+ホスホラミドン+2,6−ピリジンジカルボン酸。示された阻害剤カクテルを有する試料は、基質Camb2(最終濃度2μM)を含んでいる50μLの2×反応バッファーを追加し、2.5分間室温でインキュベートした。その後すみやかに蛍光定量的な測定を開始した。WBC溶解物はWBCの死及び組織炎症効果をシミュレーションする。そして、それによって、試料のアポトーシスを受けている細胞からプロテアーゼの放出が生じる。細菌総計は、感染したCSF試料50μLで見つかる平均(肺炎球菌)、及び高い(髄膜炎菌)濃度と相関している。
【0229】
図23の結果は、それにI10、I9a、そして、I9b阻害剤カクテルがエンテロウイルスの3Cプロテアーゼを約20%、そして、WBC溶解物を約90%阻害することを示す。この結果は、これらの阻害剤カクテルが、エンテロウイルス 3Cプロテアーゼに関連したプロテアーゼ活性を妨げずに、WBCの死に関連したCSFタンパク質分解活性を妨害できることを示す。一方で、I10を混合することが両方の細菌のタンパク質分解活性の80〜90%を阻害すると共に、I9aおよびI9b阻害剤カクテルは選択された細菌の方へ特定の阻害活動を有した。髄膜炎菌タンパク質分解活性に影響を及ぼさずに、I9aは肺炎球菌タンパク質分解活性を阻害する。そして、I9bは髄膜炎菌によって誘発されたものだけでなく肺炎球菌によるタンパク質分解活性を阻害する。
【0230】
髄膜炎試験結果の理論的な実施例は、表16に示される。試験は、5つのチューブにおいて実行される。最初の3つのチューブは、I10阻害剤カクテルによってインキュベートされる:陰性対照(人工CSF)、陰性対照(組換えエンテロウイルスの3Cプロテアーゼに添加される人工CSF)、及びCSF試料である。CSF試料を含んでいる更に2つのチューブは、阻害剤カクテルI9aまたはI9bとインキュベートされる。
【0231】
信号が検出されない場合、試料は(または分析の検出範囲の下で)エンテロウイルスおよび細菌(表16の結果#1)が陰性であると予測できる。ウイルスおよび細菌の共同感染が報告されなかったように、I10がある場合には、陽性シグナルはテストされたCSF試料(結果#2)の生きているエンテロウイルスの存在を示す。I9bが2,6−ピリジンジカルボン酸を含むとき、それは髄膜炎菌の活性のみを阻害する。したがって、チューブ#4(I9aとインキュベート)の陽性シグナルおよびチューブ#3および5(110および2,6−ピリジンジカルボン酸を含むI9bとインキュベート)の陰性シグナルは、試料(結果#3)の髄膜炎菌の存在を示す。I9aがホスホラミドンを含む場合、それは肺炎球菌の活性だけを阻害する。従って、チューブ#5(I9bとインキュベート)の陽性シグナルおよびチューブ#3および4(I10およびホスホラミドンを含むI9bとインキュベート)の陰性シグナルは、試料(結果#4)の肺炎球菌の存在を示す。
【0232】
したがって、ウイルス性髄膜炎感染症を発見するため国際公開2007/029262号において開示された方法および組成物は、現在の方法の阻害剤に関連して用いることが可能である。例えば、ウイルス性髄膜炎感染症を発見するために用いられることできる基質は、ヘルペスウイルス、西ナイルウイルスおよびエンテロウイルスを検出するものを含む。ヘルペスウイルスの検出のために用いられることができる基質の具体例は、配列番号48のものを含む。西ナイルウイルスの検出のために用いることができる基質の例としては、配列番号49、50及び51のものを含む。エンテロウイルスの検出のために用いることができる基質の例としては、配列番号52、53、54、55、56、57及び58が含まれる。加えて、阻害剤は、細菌性およびウイルス性髄膜炎感染症をと区別するために用いることができる。
【0233】
【表16】

【実施例16】
【0234】
(分析最適化前のエンテロウイルス用の臨床試料分析)
2つの臨床現場から得られたCSF試料は、分析条件が最適化される前に、本発明の方法によりエンテロウイルスの存在が試験された。さらに、試料は、RT−PCRと他の臨床パラメーターとの組合せでもテストされた。RT−PCR/臨床パラメーターの組合せにおいては、炎症が示されたとき、すなわち、1μLのCSF中に7以上の白血球(WBC)が示され、そして、RT−PCRが陽性の場合にのみ試料は陽性であるとみなされた。炎症(≦7細胞/μL)を示さないか、または、炎症を示すけれどもRT−PCRでは陰性の場合に、試料は陰性であるとみなされた。赤血球(RBC)数が100/μL(1セット)を越えた場合、または、試料の色が赤みがかっていた場合に(別のセット、RBCの数は条件とされない)、試料は溶血性であるとみなされた。
【0235】
反応率カットオフ値は、特性と感度とが最も良い相関関係を示すように、本発明の方法のために遡及的に最初に決定された。反応率がカットオフ値を超えた試料は陽性とみなされ、カットオフ値以下の試料は陰性であるとみなされた。
【0236】
本発明の方法に従ってエンテロウイルスを検出するための手順:各測定は、50μLのCSF試料を用いて行われた。試料に阻害剤カクテル(I8)を5μL加え、2.5分インキュベートした。この反応は、Camb2基質(最終濃度2μM)を含む50μLの2×反応バッファー(“2×RB”各々、50mMのHEPES pH7.5、1.8MのNaSO、300mMのNaCl、10%グリセロール、10mMのEDTA及び10mMのEGTA)を加えることにより開始された。
【0237】
(臨床現場1:前向き試料f)
ヘルシンキ委員会の承認を得て、臨床現場1から余った46ものCSF試料が将来的な患者から集められた。試料は、RT−PCR分析のためにウイルス学研究室に送られた。本発明の方法は、上述した通りに行われた。
【0238】
表17は、臨床現場の結果を要約したものである。最も良い相関関係を表わす反応率カットオフは、335RFU/分(陽性対照の約20%;50nM組換え3Cプロテアーゼ)に設定された。
【0239】
【表17】

【0240】
凡例:B−溶血性、P−陽性、N−陰性、FP−偽陽性、FN−偽陰性、X−不十分なデータのため除外。
【0241】
阻害剤カクテルの必要性:はじめに、試料の一連の実験は、プロテアーゼ阻害剤カクテルなしで行われた。しかしながら、試料D1は、肺炎連鎖球菌に陽性であったため、ウイルス陽性試料と区別することができなかった。よって、この実験は、反応バッファーを追加する2.5分前に、I8カクテルを加えて再び行われた。その結果、試料D1は陰性であったが、他のウイルス陽性試料は陽性のままであった。全体として、RT−PCR方法に対するより良好な相関関係が、阻害剤カクテルI8を加えることにより得ることができた。カットオフは、600(阻害剤なし)から335RFU/分(阻害剤あり)までの45%減少した。興味深いことには、組換えプロテアーゼ活性が阻害剤の有無それぞれで測定された際に、同じような40%の減少が観察された。この結果は、陽性CSF試料の活性が3Cプロテアーゼ活性に起因するという見解を強めるものである。
【0242】
(臨床現場2:後ろ向き試料)
ヘルシンキ委員会の承認の下、エンテロウイルスについて予備試験された30の陽性および30の陰性のCSF試料が、別のウイルス学研究室の余ったものから遡及的に集められた。試料はRT−PCR試験のために送られる前に、炎症(>7WBC/μL)の臨床基準を既にパスしていたため、この方法はRT−PCRのみと比較された。本発明の方法は、上述した通りに行われた。
【0243】
表18は、これらの試料の結果を要約したものである。335RFU/分の同じカットオフ(陽性対照の約20%;50nM組換え3Cプロテアーゼ)が用いられた。
【0244】
【表18】

【0245】
凡例:B−溶血性、P−陽性、N−陰性、FP−偽陽性、FN−偽陰性
【0246】
(臨床結果の分析)
(溶血性試料)
この結果は、この分析が赤血球を含む試料(100を超えるRBC又は赤みを呈する試料)を効率的に取り扱えていないことを示す。この分析は、17の溶血性試料のうち、5つを正しく認定できなかった。5つの試料のうち、4つは偽陽性であり、1つは偽陰性であった。残りの12の試料のうち、9つは陽性で、3つは陰性であった。したがって、例えば分析前の遠心分離によって、赤血球は試料から除去されてもよい。さらに、赤血球は、保存のため試料を凍結する前に除去され得る。
【0247】
(偽陰性)
この分析は、41の陽性試料のうち(そのうちの1つは、赤みがかっていた)、8つ(710002、718968、718818、718549、718498、603754、D17及びD18)を正しく認定できなかった。偽陰性試料がプロテアーゼを阻害したという可能性を除外するため、D17以外のすべての試料は、50nMの組換え酵素を混合した。これらの7つの試料において、阻害は検出されなかった。これらの偽陰性は、本願の方法の感度が、RT−PCRよりも低いことによるかもしれない。あるいは、試料が保存または凍結/解凍サイクルを経たことによりプロテアーゼが不活性化したためとも考えられる。
【0248】
(偽陽性)
58の試料のうち、11は偽陽性であり(D11、D13、D23、D29、D32、D43、D45、719104、718785、718366及び718346)、それらのうちの4つは赤みがかっていた(D32、D45、718366及び718346)。
【0249】
偽陽性(FP)反応は、炎症因子による非特異的基質切断から生じたものと思われる。しかしながら、白血球数と非特異的バックグラウンド・ノイズの大きさとの間には相関は認められなかった。さらに、炎症を有する9つの陰性試料(D1、D46、710022、718657、718909、718910、718488、718115及び718051)はカットオフ値以下で反応を示したことから、本願の方法が炎症性試料に対応できることを示唆した。
【0250】
FP試料のうちの5つには炎症はなかった(D11、D13、D23、D29及びD43)。これは、炎症のない溶血性及びFP試料が含まれない場合には、2つのFP試料だけが残ることを示唆する。
【0251】
(臨床的指標の矛盾に対するRT−PCR)
4つの試料は、陰性の臨床的特徴(炎症でない)を示しており、RT−PCR陽性(D10、D19、D23及びD27)が試験された。これらのうち、D23だけは本願の方法で陽性反応があった。これは、次の理由のいずれかに起因する可能性を有する:RT−PCRシグナルの偽陽性又は、活動的感染でないウイルスのゲノム要素の残りによる。
【0252】
(結論)
100以上のCSF試料は、本願発明に従ってエンテロウイルス髄膜炎を発見する方法を評価するために用いられた。表19は、この結果を要約する。本発明の方法を用いた感度および特性はそれぞれ、80%および81%であった。溶血性試料が除外される場合には、より高い特性(86%)が得られることが可能である。
【0253】
【表19】

【実施例17】
【0254】
(分析の最適化−プレートとチューブ)
(プラスチックの反応)
背景:ブランク反応において負の傾きが観察された。いくつかある原因の中で特にこの原因の一つとしては、反応中、プレートの穴に基質が付着することによるものであると判断された。他の見解としては、遠心分離の後、基質のペレットがチューブ内壁の全周面に固着することであった。したがって、非付着性(NB)プレート及びチューブが試験された。
【0255】
(プレート)
グライナー、カタログ番号655900の黒プレートを入手し、試験を行った。基質付着性を試験するにあたり、標準検定緩衝液(+基質)は、標準的なプレートとNBプレートの両方で15分間インキュベートされた。各々の穴(ウェル)は、200μLのPBSで2回洗われ、激しくボルテックスされた。最後に、どの程度プレートに付着したままであるのか評価するために、穴を100μLの1×反応バッファーで再懸濁した。各々の洗浄液は、蛍光で測定された。結果を表20に示す。
【0256】
【表20】

【0257】
この結果は、1回目の洗浄で、NBプレートでは、より多くの基質が洗い落されことを示す。2回目の洗浄の後、標準プレートはNBプレートより〜3倍多い基質を保持した。最終的には、2回の洗浄後、標準プレートはNBプレートより〜3倍多い基質を保持した。NBプレートの付加的な特徴とは、ブランクの曲線形状に対するその効果である。標準プレートに典型的な波形のブランク曲線(図24A)は、わずかな正の傾きによって、より線形となった(図24B、〜200RFU/分)。
【0258】
NBプレートの他の特徴としては、c.v.値低減に対する貢献である。表21に示されるように、標準プレートにおける標準c.v.値は10〜15%であるのに比べて、NBプレートにおける標準c.v.値は5〜6%である。
【0259】
【表21】

【0260】
(チューブ)
背景:
NBチューブに対してアンバーチューブを用いた際に、ブランクおよび陽性対照反応の反応速度(RFU±分)が著しく変化することが分かった。ブランク値(RFU±分)および蛍光の基準値は、NBチューブよりも高かった。したがって、蛍光基準値、ブランク及び陽性対照の反応速度におけるNBチューブに対するアンバーチューブの影響が調べられた。
【0261】
(試薬および器具)
阻害剤カクテル:阻害剤カクテルI10
酵素希釈バッファー:25mMのHEPES(pH7.5)、150mMのNaCl、1mMのEDTA、10%グリセロール、0.5mg/mLのBSA、1Mスクロース、0.1%アジ化ナトリウム。
2×反応バッファー、バッファーB:50mMのHEPES、10mM EDTA、10mMのEGTA、1.2M硫酸NaSO、アジ化ナトリウム0.1%、pH8.5。
人工CSF:125mMのNaCl、2.5mMのKCl、1mMのMgCl、1.25mMのNaHPO、2mMのCaCl、2.5mMグルコース、25mMのNaHCO、0.1%アジ化ナトリウム、25mMのHEPES、pH7.45。
酵素:エンテロウイルス株“Echo”由来の組換えプロテアーゼ[希釈1:18。
基質:Camb2.3、1mM、Camb2.4、2mM。(同じCamb2配列用の異なるバッチ)
HEPESバッファー:25mMのHEPES
NBチューブ:シグマ カタログ番号#Z666505
アンバーチューブ:USA サイエンティフィック社 カタログ番号1620−2707。
96穴プレート:黒底NBプレート−グライナーカタログ番号655900。
【0262】

【0263】
(チューブのパラメーターの違いの評価)
準備:
基質:Camb2.3および2.4は、DMSOで0.333mMに希釈された。
1:83のさらなる希釈が、HEPESバッファー±2×RBで行われた(ワーキング濃度としては、4.83μLの基質に対して400μLのRB±HEPESバッファー)。
【0264】
ウェルの内容物は、表22に示す通りであった。
【0265】
【表22】

【0266】
1.人工CSF±HEPESバッファーをプレートに入れる
2.400μLのHEPESバッファー±RB+基質(Camb2.3および2.4)をアンバー及びNBチューブ両方にて準備する。
3.酵素をウェルに加える
4.HEPESバッファー±RB+基質をメカニカルピペットでウェルに加える。
【0267】
(結果)
結果は、表23、24および25並びに図25Aおよび25Bに示される。5回の独立した反復実験から、蛍光基準値とブランクの比率が、アンバーチューブよりも低付着性の方が50%高いことがCamb2.3及び2.4の両方共に観察された。それにもかかわらず、反応速度(ブランクが負)は、相対的に同じままであった。平均反応速度の25%の増大は、Camb2.4のNBチューブにおいてのみ観察された。これらの違いが塩に依存するのかどうか検証するために、同じ実験が、HEPESバッファーで非依存的に3回繰り返された。蛍光基準値の差異は、アンバー対NBチューブにおいて、それぞれ30〜40%まで減少しており、このことの一部は少なくとも、この現象が塩の効果によることを示唆している。
【0268】
異なる蛍光の特性および反応速度が、アンバー対NBチューブにおいて観察された。そのため、相違の原因が更に調査された。
【0269】
【表23】

【0270】
【表24】

【0271】
【表25】

【0272】
(蛍光および反応速度の相違の原因が、吸着であるのか、蛍光放出であるかの評価)
基質:Camb2.4は、DMSOで0.333mMに希釈された。
1:83のさらなる希釈が、2×RBで行われた(ワーキング濃度としては、4.8μLの基質に対して400μLのRBバッファー)。
【0273】
ウェルの内容物は、表26に示す通りであった。
【0274】
【表26】

【0275】
1.人工CSrをプレートに入れる
2.3×400μLのRB+基質をアンバー及びNBチューブ両方にて準備する。室温で5分間インキュベートする。
3.新しいアンバー/NBチューブに移す。室温で5分間インキュベートする。
4.RB+基質をウェルに加える。
【0276】
(結果)
結果を表27に示す。
異なる特性の原因は、アンバーチューブへの吸着にあると思われる。
アンバーチューブを経たRB+基質は、低いRFU測定値を示す。2度アンバーチューブを経た場合に最も低い測定値が得られた。RBが2度NBチューブを経た際には、RFUの有意な変化は観察されなかった。さらに、RFU/分がRFU開始点(R2=0.941)に相関することが見出された。これは、ブランク率への主な影響は基質濃度に起因することを示唆するものと思われる。
【0277】
【表27】

【0278】
(活性又は非活性物質のいずれがチューブに吸着するのかの評価)
基質:Camb2.4は、DMSOで0.333mMに希釈された。
アンバーとNBチューブの両方において、1:83のさらなる希釈が、2×RBで行われた(最終濃度2μM、4.8μLの基質に対して400μLのRB)。
アンバーチューブにおいて、1:46のさらなる希釈が、2×RBで行われた(最終濃度4μM、9.6μLの基質に対して400μLのRB)。
NBチューブにおいて、1:116のさらなる希釈が、2×RBで行われた(最終濃度1μM、2.4μLの基質に対して400μLのRB)。
【0279】
ウェルの内容物は、表28に示す通りであった。
【0280】
【表28】

【0281】
1.人工CSF±HEPESバッファーをプレートに入れる
2.400μLのRB+基質をアンバー及びNBチューブ両方にて準備する。
3.酵素/希釈バッファーをウェルに加える。
4.RB+基質をウェルに加える。
【0282】
(結果)
結果は、表29および30に示される。吸収される物質の少なくとも一部は活性物質であるように見える。蛍光基準値がNBおよびアンバーチューブにおいて略同じとなるように基質濃度が調整された(アンバー及びNBチューブにおいて、それぞれ4μMと2μM、または、アンバー及びNBチューブにおいて、それぞれ2μMと1μM)。両チューブにおけるブランクおよび反応速度は、ほとんど同じであった。
【0283】
【表29】

【0284】
【表30】

【実施例18】
【0285】
(分析の最適化−バッファー)
反応バッファーは、本発明のエンテロウイルス試験キットの一部である。Camb2基質は、反応バッファーで溶解される。反応バッファーは、試験に用いられた酵素が最適条件で作用できるための異なる塩類を含む。ここでの反応バッファーの組成は、以下の通りである:HEPES(pH7.5)、300mMのNaCl、10mMのEDTA、10mMのEGTA、10%グリセロール、1.8MのNaSO、0.1%のアジ化ナトリウム。反応バッファー中の塩濃度は高く、最適な酵素活性とする。しかしながら、これらの条件下で、基質溶解度が影響を受ける。したがって、反応バッファーは、試験された3Cプロテアーゼの酵素活性を減少させずに、基質溶解度を増すように改良された。
【0286】
(結果)
300mMのNaClおよび10%のグリセロールが反応バッファーから除かれ、NaSO(0.9Mから)の低減された濃度のいくつかが、分析の最低の塩要求量を決定するため試験された(表31−34)。実験は、2人の異なる科学者によって、少なくとも3回繰り返された。
【0287】
【表31】

【0288】
【表32】

【0289】
【表33】

【0290】
【表34】

【0291】
上記の結果は、試験された各NaSO濃度において(0.9−0.6M−表31−34)、300mMのNaClおよび10%のグリセロールの両方が除去された際、酵素活性が改善されたことを示す。CVのわずかな改善も観察された。従って、反応バッファーは、NaClおよびグリセロールが除かれ、修正された。次に、NaSO濃度が、酵素活性に影響を及ぼさない最小量の許容レベルの試験を受けた(表35−36)。
【0292】
【表35】



【0293】
結果は、NaClなし及びグリセロールなしの0.6Mが同等であるいか、試験された他のNaSO濃度より変動係数の範囲内で効率的であることを示す。このようにして、0.6Mが選択された。0.6M以下にNaSO濃度を下げることは、さらに低いゲイン設定を必要とし、分析感度の低下を示した。0.4MのNaSO以下では、反応速度の急激な減少が観察された(表36)。
【0294】
【表36】

【0295】
(0.6MのNaSOでの再現性試験)
CSF試料は、0.6MのNaSOを有する50nmのEcho プロテアーゼおよび2×反応バッファーでインキュベートされた。また、3つのブランクおよび9つの陽性対照の反復試験が含まれた。代表的な実験のひとつを、表37に示す。
【0296】
【表37】

【0297】
0.6MのNaSOでの2×反応バッファーの再現性実験は、0.9MのNaSOを含むバッファーと比較して、同じであるか、または、それよりも良い反応速度を示す。
【0298】
新しいバッファー液組成は、2つの陽性および2つの陰性のCSF試料で試験された。結果(表38)は、バッファー液組成に関係なく、試験された試料は同じ特性を維持したことを示す。新しいバッファーでの反応速度のわずかな増加が観察された。この増加により、将来の試験において、カットオフ値の増加が必要になる可能性を有する。
【0299】
【表38】

【実施例19】
【0300】
(分析の最適化−溶媒)
さまざまな溶媒が、基質溶解度および安定性を最適化するために試験された。試験された溶媒には:イソプロパノール、DMSO、アセトニトリル、エチレングリコール、ジオキサン、1,2−プロパンジオールおよび1,3−プロパンジオール、が含まれる。テストされたすべての溶媒は2×反応バッファーで0−10%濃度に調整され、試験された最終濃度は0−5%であった。イソプロパノール、DMSO、アセトニトリル、エチレングリコールおよびジオキサンは、適当な溶媒濃度にて最終的に2×反応バッファーとなるように、3×反応バッファーに加えられた。Camb2は、最終的な2×バッファーに加えられた。1,2−プロパンジオールおよび1,3−プロパンジオールについては、Camb2は、溶媒中に適切な濃度で最初に溶解させられた。それから、溶媒+Camb2は、最終的に2×反応バッファー+2μMのCamb2となるように、3×反応バッファーに加えられた。すべての実験はテカン社ポーラスターで行われ、n=1、三つ組で行われた。
【0301】
(結果)
イソプロパノール:
【0302】
【表39】

【0303】
【表40】

【0304】
テストされたすべてのイソプロパノール濃度で、反応速度の低下が観察された。さらに、試験された高濃度のものでは(最終濃度4及び5%)、塩析沈殿が生じた。従って、この溶媒はEV分析に使用されるには不適当であると結論された。
【0305】
DMSO:
【0306】
【表41】

【0307】
テストされたすべてのDMSO濃度(1−5%)で、反応速度の低下は観察されなかった。しかしながら、ブランクの安定性の向上は観察されなかった。DMSOは、テストされたパラメーターのいずれにおいて、著しい効果を示さなかった。従って、この溶媒はEV分析に使用され得ると結論された。
【0308】
アセトニトリル:
【0309】
【表42】

【0310】
【表43】

【0311】
テストされたすべてのアセトニトリル濃度(1−5%)で、反応速度の低下が観察された。しかしながら、ブランクの安定性の向上が観察された(図26Aおよび26B)。アセトニトリル濃度は反応速度阻害の最小点に減少させた(〜7%の低下)、しかし、この濃度で、ブランクの安定性に対する寄与は不十分であった。
【0312】
ジオキサン:
【0313】
【表44】

【0314】
【表45】

【0315】
【表46】

【0316】
ジオキサン溶媒は、テストされた最も低い濃度においても酵素活性を阻害した。
【0317】
COX酵素(1:10)を有する1,3−プロパンジオール:
【0318】
【表47】

【0319】
【表48】

【0320】
1,3−プロパンジオールの結果は、3つの実験間で反応速度の変動性が大きいことを示す。ブランク値の減少も観察された。
【0321】
COX酵素(1:10)を有する1,2−プロパンジオール:
【0322】
【表49】

【0323】
【表50】

【0324】
1%の1,2−プロパンジオールを除いて、試験されたすべての濃度は酵素活性が阻害された。
【0325】
(溶媒の概要)
DMSO、エチレングリコール及び1,3−プロパンジオールを除き、テストされた溶媒はEV分析に最適ではなかった。
【実施例20】
【0326】
(分析最適化−反応条件)
以下の反応条件が、分析を最適化するために検討された:
a.基質濃度の低減及び測定時間の増加。
b.NaSO濃度の最適化。
c.脱イオン水(ddw)対DMSOでの基質溶解。
【0327】
(基質濃度の低減及び測定時間の増加)
基質(Camb2)濃度の減少および測定時間の増加の効果が試験された。実験は最終的な基質(Camb2.5)濃度、1、0.5、0.25および0.125μMで行われ、データ分析は異なる時間間隔:1.5−5、5−12および5−22分で行われた(図27A−C)。
【0328】
反応速度と基質濃度間の線形相関が示された(傾き=2100および2800RFU/分/μM、それぞれ1.5−5分および5−12分)。測定時間間隔が1.5−5から5−12分に変化した際に、ブランク値の減少および陽性対照値のわずかな増加が観察された(図28A)。よって、ブランクと陽性対照との比率がそれぞれ3.2から4.8まで(0.25μMのCamb2.5で)増加した(図28B)。さらに、測定時間間隔を5−22分に変えると、その比率が6まで(0.25uMのCamb2.5で、図28B)増加した。図28Bも、異なる基質濃度でのブランクと陽性対照の間に同程度の比率を示す。図28Cは測定時間間隔が1.5−5分から5−12分に変化した際、陽性対照とブランクの両方においてCV値の向上を示す。これらの結果によると、ブランク値の減少およびブランク値の安定性の増大が達成された。これらの結果に基づくと、基質濃度は最終濃度0.25μMに減少され、結果は5−10分間で分析されうる。
【0329】
(NaSO濃度の最適化)
硫酸ナトリウムは、一般に両価性の効果:3Cプロテアーゼ活性を増加させると共に基質溶解度を減少させる、を有する。基質濃度が0.25μMに低減させることと、5−10分間で結果が分析されることがいったん決定されると、NaSO濃度は最適化された。硫酸ナトリウムの最終濃度は分析の活性に影響を及ぼさない可能な限り低減させたが、溶解度は向上した。0.6−0.4MのNaSOは、新しい分析条件で試験された。
【0330】
【表51】

【0331】
●データ分析は、5−10分間で行われた。
●分析活性は3人の科学者によって、三つ組試験で測定された。表51の結果は3つの三つ組の平均である。
【0332】
結果によると、硫酸ナトリウム濃度の減少は酵素活性を0.6Mでの825から、0.5Mでの700、0.4Mでの444まで低くさせた。これらの結果に基づき、硫酸ナトリウム濃度は変えず、0.6Mの硫酸ナトリウムで作用を持続させることが決定された。
【0333】
(脱イオン水(ddw)対DMSOでの基質溶解)
新しい分析条件下で、DMSO対DDWでの基質溶解の効果を調べるために、基質原料(DMSO中1mM)がDMSO又はDDWで1:8に希釈され、作用ストックとした。作用ストックは、さらに2×RBで1:250に希釈されて0.5μM濃度とされた(ウェルにて最終濃度0.25μM)。
【0334】
分析活性は、3人の科学者によって、三つ組試験で測定された。表52の結果は、3つの三つ組の平均である。
【0335】
【表52】

【0336】
●データ分析は、5−10分間で行われた。
【0337】
第1回目の反復において、ブランクの傾きはDMSOおよびDDWの両方とも同じであった。2回目の反復において、DDWストックは、ブランクの傾きの減少を示した;しかしながら、その値は、標準偏差に対する有意差はなかった。さらに結果は、基質がDMSOと比較してDDWで希釈された際に、反応速度が25%低かったことを示す。これらの結果及びCamb2がDDWよりDMSOにおいて安定であるとする事実に基づいて、DMSOは基質の希釈剤に選択された。
【0338】
(妥当性確認試験)
2つの陽性および2つの陰性CSF試料は、新しい分析条件下でテストされた。
【0339】
【表53】

【0340】
これらの結果は、テストされた試料が新しい分析条件において、適切に機能したことを示す。陰性試料(710022および18911)は、ブランク以上の反応速度を示さなかった。陽性試料は高い反応速度(陽性対照の反応よりも高い)を有した。
【0341】
(結論)
分析条件は、25%のCamb2基質濃度および反応速度測定時間を5−10分に変更された。NaSO濃度は、0.6Mのままであった。これらの分析条件は、臨床試料により実証された。
【実施例21】
【0342】
部分的な分析最適化後のエンテロウイルス用の臨床試料分析
エンテロウイルス分析を最適化する前、この分析は最終濃度0.9MのNaSOと阻害剤カクテル(I8)とを含む2×反応バッファ(2×RB)へ基質を添加したCSF試料(組織全体、冷凍)を分析することから構成されており、主にWBCバックグラウンドを減らすことが目的であった。その分析は、感度および特異性をそれぞれ80%および81%得た。実施例16を参照のこと。以下の変化は、分析によりなされた:
−反応バッファーのNaSOの最終濃度は0.6Mまで下げられた。
−基質濃度は25%に低減され、2×反応バッファーに加えられた。
−算出時間は、5−10分に変更された。ゲインは100に上げられた。
−阻害剤カクテルは、基質添加前に2.5分のインキュベーションを有するI10と置き換えられた。
−非付着性プレートおよびチューブ管が用いられた。
【0343】
CSF試料は、以下の条件下で分析された:
【0344】
(試薬および器具)
阻害剤カクテル−I10
HEPESバッファー:25mMのHEPES
2×反応バッファー:50mMのHEPES、10mMのEDTA、10mMのEGTA、1.2M硫酸NaSO、0.1%アジ化ナトリウム、pH8.5。
人工CSF:125mMのNaCl、2.5mMのKCl、1mMのMgCl、1.25mMのNaHPO、2mMのCaCl、2.5mMグルコース、25mMのNaHCO、0.1%アジ化ナトリウム、25mMのHEPES、pH7.45。
酵素:希釈バッファーで1:18に希釈された“Echo”株由来の組換えエンテロウイルスプロテアーゼ。
基質:DMSOで1:8に希釈されたCamb2.5(1mM)。
蛍光光度計:BMG社製、ポーラスターギャラクシー。
Ex:520/10nm、Em:570/20nm。
温度:室温。
総読み込み時間:10分
ゲイン:100
反応プレート:非付着性黒底プレート(カタログ番号−655900、グライナー社)
【0345】
(分析手順)
1.クリーンベンチの中にて30分間室温で試料を解凍する。
2.BMG蛍光光度計で測定する試料の数に従って分析配置を準備する。ウェルの組成を表54に示す。
【0346】
【表54】

【0347】
3.阻害剤カクテルI10の充分な量を準備する(24ウェルあたり150μL)。
4.人工CSF/試料をウェルに加える(黒プレートNB cat.655900)。
5.Echoプロテアーゼをp.c.(陽性対照)ウェルに加える。
6.2×RBでCamb2.5(0.125mM)を1:250に希釈する。
7.阻害剤カクテルをすべてのウェルに加える。
8.50μLの2×RB+基質をすべてのウェルに加える。
9.ウェルをシーラーで覆う。
10.蛍光光度計で直ちに測定を行う。
【0348】
試料:試料は、実施例16にて上述したように、髄膜炎の疑いのある患者から集められた臨床試料であって、「全部の」試料として凍結されたものである。
【0349】
【表55】

【0350】
カットオフ値は、250RFU/分にセットされた。表55に示すように、前の実験に起因するすべての陰性(1−9)及び陽性(40−45)は、新しい分析条件下でのRT−PCR分析との相関を保持した。最大の改善点は偽陽性群において観察された(10−17)。これらの8つの前の偽陽性結果のうち、新しい分析条件下では、1つのみが偽陽性(17)のままであり、その他7つは陰性であった。さらにこれらの試料のうち、2つが溶血性試料であった(14および16)。このことは、新しい分析条件が溶血性試料によりうまく対応できることを示唆する。他の興味深い所見が境界域陰性群において観察された(18−22)。試験されたこれら5つの試料のうち4つは、新しい分析条件下でカットオフ値より著しく低かった。カットオフよりも僅かに低いままであった1つの試料は、溶血性試料であった。偽陽性および境界域陰性群の改善はブランクの傾きが改善されたことによるものであり、システムをよりしっかりとしたものにする。
【0351】
他方、新しい条件の効果が弱陽性群において観察された(32−39)。以前に弱陽性反応を示した8つの試料のうち5つは、新しい分析条件下で陰性であった。しかしながら、以前弱陽性反応を示した2つの試料は、新しい分析条件で強い陽性反応を示した(35および37)。1つの試料は弱陽性のままであった(39)。これらの所見は、古い分析条件下では、カットオフ値をわずかに超える反応速度を有する試料の大多数は、ロバスト性の不足による不自然な結果となっていたことを示唆する。偽陰性群での変化は観察されなかった(26−31)。
【0352】
さらに、陽性シグナルが、試験された3つの細菌性試料から得られた(23−25)。分析は問題になっている細菌に対して特異的に標的化された阻害剤(肺炎球菌に対してホスホラミドン(23及び24)、髄膜炎菌に対して2,6ピリジン(25))を添加して行われたにもかかわらず、結果として、非特異的なバックグラウンド活性を除去することができなかった。
【0353】
表56に示すように、新しい分析条件は、カットオフを僅かに超える反応速度を示した過去の偽陽性との結果を主に低減することによって、特異性を改善することが可能であった。この改善は、新しい分析条件でブランクのロバスト性を高めたことに起因し得る。偽陽性試料の大多数は、細菌性であった(4つのうち、3つ)。しかしながら、新しい分析条件で、検出感度は70%から45%まで低下した。この減少は、前に弱陽性と試験された試料(32−34、36および38)だけから生じた。この減少も新しい分析条件でのブランクの向上したロバスト性に起因するものであり、古い分析条件による陽性の不自然な結果を排除する。
【0354】
【表56】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料中の内在性基質の有無を検出することによって、対象中の病原体、疾患又は医学的状態のバイオマーカーの有無を検出する方法であって、
a)前記内在性基質を含むか又は含まない対象からの前記生体試料を用意し、
b)病原体、疾患又は医学的状態のバイオマーカーを表わす酵素及びシグナル部分を有する基質と前記生体試料とを接触させることによって試験反応をもたらし、該酵素は前記内在性基質及び該シグナル部分を有する基質を改変し、該酵素による該シグナル部分を有する基質の改変はシグナル部分からシグナルを生じさせ、
c)前記酵素と前記シグナル部分を有する基質とからなるコントロール反応からのデータを提供し、
d)試験反応で前記シグナル部分によって生じた前記シグナルを検出し、
e)病原体、疾患又は医学的状態のバイオマーカーの存在又は量は、試験反応で生じた前記シグナルとコントロール反応からの前記データの間での、前記生体試料中の前記内在性基質の存在により生じた違いにより示されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記酵素は、前記シグナル部分を有する基質を切断することによって、該シグナル部分を有する基質を改変することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シグナル部分が、酵素、フルオロフォア、発色団、タンパク質、ペプチド、化学発光物質、消光剤、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)対、プレ酵素、レクチン、アプタマー及び放射性同位体から選択されるシグナル部分であることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記シグナル部分がFRET対であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記シグナル部分を有する基質は、さらに分離部分を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記分離部分が、免疫学的結合物質、磁気結合部分、ペプチド結合部分、親和結合部分、レクチン、アプタマー及び核酸部分から選択される分離部分であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
さらに、改変されたシグナル部分を有する基質を、改変されていないシグナル部分を有する基質から分離することを特徴とする請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記病原体、疾患又は医学的状態は細菌感染であり、前記内在性基質はプロカルシトニンであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記病原体、疾患又は医学的状態はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌であり、前記内在性基質はフェノール可溶性モジュリンであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
さらに、前記生体試料を非特異的酵素活性の1つ以上の阻害剤と接触させることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
さらに、前記生体試料を病原体、疾患又は医学的状態のバイオマーカーを表わす前記酵素の1つ以上の活性剤と接触させることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記シグナル部分を有する基質は、病原体、疾患又は医学的状態のバイオマーカーを表す前記酵素による前記シグナル部分を有する基質の開裂を活性化する第2の酵素と融合し、活性化された該第2の酵素は、第2のシグナル部分を有する第2の基質を改変して、前記シグナル部分からシグナルを生じさせることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
生体試料中の生物学的カスケードに関与する内在性基質の有無を検出することによって、対象の生物学的カスケードの機能障害の有無を検出するための方法であって、
a)前記内在性基質を含むか又は含まない対象からの前記生体試料を用意し、
b)各試験反応において、酵素及びシグナル部分を有する基質と前記生体試料とを接触させることによって試験反応のアレイを提供し、各酵素は指定された内在性基質及びそれに対応するシグナル部分を有する基質を改変し、該酵素による該シグナル部分を有する基質の改変はシグナル部分からシグナルを生じさせ、
c)コントロール反応のアレイから参照プロファイルデータを提供し、
各コントロール反応は、前記酵素と前記シグナル部分を有する基質とを含み、
d)前記試験反応で前記シグナル部分によって生じた前記シグナルを検出し、
e)前記試験反応のアレイから生じる前記シグナルの試料プロファイルを作成し、
f)前記試料プロファイルと前記参照プロファイルとを比較し、生物学的カスケードの機能障害の存在又は量は、前記試料プロファイルと前記参照プロファイル間の違いにより示されることを特徴とする方法。
【請求項14】
前記生物学的カスケードの機能障害が、対象中の病原体、疾患又は医学的状態を表すことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記病原体、疾患又は医学的状態が、自己免疫疾患、遺伝性疾患、凝固障害、癌、炎症、神経変性疾患、高血圧、血管拡張、糖尿病及びアレルギーから選択されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記生物学的カスケードが、凝固カスケード、線維素溶解カスケード、キニン・カスケード、シグナル伝達カスケード、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)カスケード及び炎症カスケードから選択される生物学的カスケードであることを特徴とする請求項13〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記シグナル部分が、酵素、フルオロフォア、発色団、タンパク質、ペプチド、化学発光物質、消光剤、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)対、プレ酵素、レクチン、アプタマー及び放射性同位体から選択されるシグナル部分であることを特徴とする請求項13〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記シグナル部分がFRET対であることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記酵素は、前記シグナル部分を有する基質を切断することによって、前記シグナル部分を有する基質を改変することを特徴とする請求項13〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記シグナル部分を有する基質は、さらに分離部分を有することを特徴とする請求項13〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記分離部分が、免疫学的結合物質、磁気結合部分、ペプチド結合部分、親和結合部分、レクチン、アプタマー及び核酸部分から選択される分離部分であることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
さらに、改変されたシグナル部分を有する基質を、改変されていないシグナル部分を有する基質から分離することを特徴とする請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
さらに、前記生体試料を非特異的酵素活性の1つ以上の阻害剤と接触させることを特徴とする請求項13〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
さらに、前記生体試料を内在性基質を改変する前記酵素の1つ以上の活性剤と接触させることを特徴とする請求項13〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記シグナル部分を有する基質は、内在性基質を改変する前記酵素による前記シグナル部分を有する基質の開裂を活性化する第2の酵素と融合し、活性化された該第2の酵素は、第2のシグナル部分を有する第2の基質を改変して、前記シグナル部分からシグナルを生じさせることを特徴とする請求項13〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
a)生体試料中の内在性基質及びシグナル部分を有する基質を改変する酵素と、
b)前記シグナル部分を有する基質と、
c)生体試料中の内在性基質の有無を検出することによって、対象中の病原体、疾患又は医学的状態のバイオマーカーの有無を検出する方法を実施するための説明書とを備え、前記方法は、
d)前記内在性基質を含むか又は含まない対象からの生体試料を用意し、
e)病原体、疾患又は医学的状態のバイオマーカーを表わす酵素及びシグナル部分を有する基質と前記生体試料とを接触させることによって試験反応をもたらし、該酵素は前記内在性基質及びシグナル部分を有する基質を改変し、該酵素による該シグナル部分を有する基質の改変はシグナル部分からシグナルを生じさせ、
f)前記酵素と前記シグナル部分を有する基質とからなるコントロール反応からのデータを提供し、
g)試験反応で前記シグナル部分によって生じた前記シグナルを検出し、
h)病原体、疾患又は医学的状態のバイオマーカーの存在又は量は、試験反応で生じた前記シグナルとコントロール反応からの前記データの間での、前記生体試料中の前記内在性基質の存在により生じた違いにより示されることを特徴とするキット。
【請求項27】
さらに、非特異的酵素活性の1つ以上の阻害剤を備えることを特徴とする請求項26に記載のキット。
【請求項28】
さらに、前記酵素の1つ以上の活性剤を備えることを特徴とする請求項26又は27に記載のキット。
【請求項29】
病原体、疾患又は医学的状態を表す生体試料中の酵素の有無を検出することによって、対象の治療処置の有効性を測定するための方法であって、
a)治療処置の異なる時点で対象から得られた2つ以上の生体試料とシグナル部分を有する基質とを接触させ、前記酵素は該基質を改変し、前記酵素による該基質の改変はシグナル部分からシグナルを生じさせ、
b)前記シグナル部分から生じたシグナルを検出し、前記2つ以上の生体試料から生じる前記シグナルの違いは治療処置の有効性を示すことを特徴とする方法。
【請求項30】
前記2つ以上の生体試料のうちの1つは治療前に得られ、もう1つは治療後に得られることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記2つ以上の生体試料は、治療の間に異なる時点で得られることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記2つ以上の生体試料のうちの1つは治療の間に得られ、もう1つは治療後に得られることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記2つ以上の生体試料のうちの1つは治療前に得られ、もう1つは治療の間に得られ、そして3つめは治療後に得られることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記2つ以上の生体試料は、白血球(WBC)であることを特徴とする請求項29〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記シグナル部分が、酵素、フルオロフォア、発色団、タンパク質、ペプチド、化学発光物質、消光剤、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)対、プレ酵素、レクチン、アプタマー及び放射性同位体から選択されるシグナル部分であることを特徴とする請求項29〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記シグナル部分がFRET対であることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記基質は、さらに分離部分を有することを特徴とする請求項29〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記分離部分が、免疫学的結合物質、磁気結合部分、ペプチド結合部分、親和結合部分、レクチン、アプタマー及び核酸部分から選択される分離部分であることを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項39】
さらに、改変された基質を改変されていない基質から分離することを特徴とする請求項37又は38に記載の方法。
【請求項40】
さらに、前記2つ以上の生体試料を非特異的酵素活性の1つ以上の阻害剤と接触させることを特徴とする請求項29〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
酵素の有無を検出することによって、白血球(WBC)試料中の酵素活性の有無を検出する方法であって、
a)対象から得られた前記酵素を含むか又は含まないWBC試料と、シグナル部分を有する基質とを接触させ、前記酵素は該基質を改変し、該基質の改変はシグナル部分からシグナルを生じさせ、
b)前記シグナル部分から生じたシグナルを検出し、生じた前記シグナルが前記試料中の酵素活性を表わすことを特徴とする方法。
【請求項42】
前記酵素活性は、対象中の病原体、疾患又は医学的状態を表すことを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項43】
さらに、前記WBC試料を非特異的酵素活性の1つ以上の阻害剤と接触させることを特徴とする請求項41又は42に記載の方法。
【請求項44】
さらに、前記WBC試料を前記酵素の1つ以上の活性剤と接触させることを特徴とする請求項41〜43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記シグナル部分が、酵素、フルオロフォア、発色団、タンパク質、ペプチド、化学発光物質、消光剤、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)対、プレ酵素、レクチン、アプタマー及び放射性同位体から選択されるシグナル部分であることを特徴とする請求項41〜44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記シグナル部分がFRET対であることを特徴とする請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記基質は、さらに分離部分を有することを特徴とする請求項41〜46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記分離部分が、免疫学的結合物質、磁気結合部分、ペプチド結合部分、親和結合部分、レクチン、アプタマー及び核酸部分から選択される分離部分であることを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項49】
さらに、改変された基質を改変されていない基質から分離することを特徴とする請求項47又は48に記載の方法。
【請求項50】
前記酵素が、サイトメガロウイルス(CMV)プロテアーゼであることを特徴とする請求項41〜49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記基質が、アミノ酸配列VXAA/S(配列番号23)を有することを特徴とする請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記基質が、G-V-V-N-A-/S-C-R(配列番号19)、S-Y-V-L-A-/S-V-S(配列番号20)、N-N-V-E-A-/A-T-S(配列番号21)、T-A-V-N-A-/S-G-N(配列番号22)、R-G-V-V-N-A-/-S-S-R-L-A(配列番号26)及びR-G-V-V-N-A/-S-S-R-L-A-C(配列番号27)から選択されるアミノ酸配列を有する基質であることを特徴とする請求項50又は51に記載の方法。
【請求項53】
前記酵素が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)プロテアーゼであることを特徴とする請求項41〜49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記基質は、アミノ酸配列(S/G)(Q/G/R/K)(N/C/D)(Y/疎水性/芳香族)-/-P(I/V/疎水性)(V/Q)(配列番号28)を有することを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記酵素は、ヒトTリンパ好性ウイルス(HTLV)ウイルス・プロテアーゼであることを特徴とする請求項41〜49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記基質は、(V/L/T/P)X(疎水性)(F/L)-/-V(疎水性)Q(配列番号29)、KVKV(F/L)-/-VVQPK(配列番号30)及びPPX(疎水性)L-/-PI(配列番号31)から選択されるアミノ酸配列を有する基質であることを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項57】
真菌によって産生される酵素の有無を検出することによって、対象の真菌感染の有無を検出する方法であって、
a)対象から得られた前記酵素を含むか又は含まない生体試料とシグナル部分を有する基質とを接触させ、前記酵素は該基質を改変し、前記酵素による該基質の改変はシグナル部分からシグナルを生じさせ、
b)前記シグナル部分から生じた前記シグナルを検出し、生じた前記シグナルは、対象の真菌感染の存在を示すことを特徴とする方法。
【請求項58】
前記真菌はカンジダ菌、クリプトコッカス・ネオフォルマンス、アスペルギルス・フミガーツス、コウマクノウキン門、ツボカビ門、ディカリア、グロムス門、微胞子虫類及びネオカリマスティクスから選択される真菌であることを特徴とする請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記真菌はカンジダ菌であることを特徴とする請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記酵素は、分泌アスパルチル・プロテアーゼ(Sap)、ホスホリパーゼB又はリパーゼから選択される酵素であることを特徴とする請求項57〜59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記酵素はSap2であることを特徴とする請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記基質は、
R-L-I-Q-K-R-S-D(配列番号3)、
L-I-Q-K-R-S-D-V(配列番号4)、
F-V-N-Q-H-L(配列番号5)、
L-V-E-A-L-Y-L-V(配列番号6)、
E-A-L-Y-L-V-C-G(配列番号7)、
E-R-G-F-F-Y-T-P(配列番号8)、
P-A-L-F-F-R-L(配列番号9)、
L-V-I-H-T(配列番号10)、
H-Q-V-Y-F-V-R-K(配列番号11)、
P-A-R-F-F-R-L(配列番号12)、
P-A-E-F-F-A-L(配列番号13)及び、
P-L-E-M-F-A-L(配列番号14)、から選択されるアミノ酸配列を有する基質であることを特徴とする請求項57〜61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記シグナル部分が、酵素、フルオロフォア、発色団、タンパク質、ペプチド、化学発光物質、消光剤、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)対、プレ酵素、レクチン、アプタマー及び放射性同位体から選択されるシグナル部分であることを特徴とする請求項57〜62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記シグナル部分がFRET対であることを特徴とする請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記基質は、さらに分離部分を有することを特徴とする請求項57〜64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
前記分離部分が、免疫学的結合物質、磁気結合部分、ペプチド結合部分、親和結合部分、レクチン、アプタマー及び核酸部分から選択される分離部分であることを特徴とする請求項65に記載の方法。
【請求項67】
さらに、改変された基質を改変されていない基質から分離することを特徴とする請求項65又は66に記載の方法。
【請求項68】
さらに、前記生体試料を非特異的酵素活性の1つ以上の阻害剤と接触させることを特徴とする請求項57〜67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
さらに、前記生体試料を真菌により産生される前記酵素の1つ以上の活性剤と接触させることを特徴とする請求項57〜68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
髄膜炎病原体によって産生される酵素の有無を検出することによって、対象の髄膜炎感染の有無を検出するための方法であって、
a)対象から得られた前記酵素を含むか又は含まない生体試料とシグナル部分を有する基質とを接触させ、前記酵素は該基質を改変し、前記酵素による該基質の改変はシグナル部分からシグナルを生じさせ、
b)前記生体試料を非特異的酵素活性の1つ以上の阻害剤と接触させ、
c)前記シグナル部分から生じた前記シグナルを検出し、生じた前記シグナルは、対象の髄膜炎感染の存在を示すことを特徴とする方法。
【請求項71】
前記生体試料は脳脊髄液(CSF)又は血清であり、前記酵素は細菌ノイラミニダーゼであることを特徴とする請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記シグナル部分を有する基質は、α2−3、α2−6、α2−8、α2−9及び環状のノイラミン酸結合から選択されるリンカーによって連結したシアル酸及び炭水化物を含むことを特徴とする請求項70又は71に記載の方法。
【請求項73】
前記非特異的酵素活性の1つ以上の阻害剤は、グランザイムH、プロテイナーゼ3、ジペプチジル・ペプチダーゼ、PrSS11、HtrA2、カルパイン7、カリクレイン12、カテプシンA、カテプシンH及びカルパイン−11の阻害剤から選択される1つ以上の阻害剤であることを特徴とする請求項70〜72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
前記非特異的酵素活性の1つ以上の阻害剤は、α1−プロテイナーゼ阻害剤、ディプロチンA、L−2,4−ジアミノブチリル−ピペリジンアミド、HtrA1阻害剤、Ucf−101、3−(4−ヨードフェニル)−2−メルカプト−(Z)−2−プロペン酸、HAI−2A、エコチン、エベラクトンB、キモスタチン、ヒトステフィンA、ヒトステフィンB及びカルパスタチンから選択される1つ以上の阻害剤であることを特徴とする請求項70〜73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
前記1つ以上の阻害剤は、白血球からのプロテアーゼを阻害することを特徴とする請求項70〜74のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
前記生体試料は、脳脊髄液の試料であることを特徴とする請求項70〜75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
前記生体試料は、血清であることを特徴とする請求項70〜75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
前記シグナル部分が、酵素、フルオロフォア、発色団、タンパク質、ペプチド、化学発光物質、消光剤、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)対、プレ酵素、レクチン、アプタマー及び放射性同位体から選択されるシグナル部分であることを特徴とする請求項70〜77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
前記シグナル部分がFRET対であることを特徴とする請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記基質は、さらに分離部分を有することを特徴とする請求項70〜79のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
前記分離部分が、免疫学的結合物質、磁気結合部分、ペプチド結合部分、親和結合部分、レクチン、アプタマー及び核酸部分から選択される分離部分であることを特徴とする請求項80に記載の方法。
【請求項82】
さらに、改変された基質を改変されていない基質から分離することを特徴とする請求項80又は81に記載の方法。
【請求項83】
髄膜炎病原体によって産生される酵素の有無を検出することによって、対象の髄膜炎感染の有無を検出するための方法であって、
a)対象から得られた前記酵素を含むか又は含まない生体試料とシグナル部分を有する基質とを接触させ、前記酵素は該基質を改変し、前記酵素による該基質の改変はシグナル部分からシグナルを生じさせ、
b)前記生体試料を髄膜炎感染に関連する酵素活性の1つ以上の阻害剤と接触させ、
c)前記シグナル部分から生じた前記シグナルを検出し、生じた前記シグナルは、対象の髄膜炎感染の存在を示すことを特徴とする方法。
【請求項84】
前記生体試料は脳脊髄液(CSF)又は血清であり、前記酵素は細菌ノイラミニダーゼであることを特徴とする請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記シグナル部分を有する基質は、α2−3、α2−6、α2−8、α2−9及び環状のノイラミン酸結合から選択されるリンカーによって連結したシアル酸及び炭水化物を含むことを特徴とする請求項83又は84に記載の方法。
【請求項86】
前記1つ以上の阻害剤は、細菌性髄膜炎感染に関連する酵素活性は阻害するが、ウイルス性髄膜炎の酵素活性は阻害しないことを特徴とする請求項83〜85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
前記酵素活性は、髄膜炎による炎症に起因することを特徴とする請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記1つ以上の阻害剤は、肺炎球菌のプロテアーゼ活性を阻害することを特徴とする請求項83〜85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項89】
前記1つ以上の阻害剤は、髄膜炎菌のプロテアーゼ活性を阻害することを特徴とする請求項83〜85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項90】
前記1つ以上の阻害剤は、肺炎球菌及び髄膜炎菌のプロテアーゼ活性の両方を阻害することを特徴とする請求項83〜85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項91】
前記1つ以上の阻害剤は、
a)カクテルIl9a:
4−(2−アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオライド塩酸塩(AEBSF)、アプロチニン、ベスタチン、トランス−エポキシサクシニル−L−ロイシル−アミド(4−グアニジノ)ブタン(E−64)、エグリンC、(3S,3aS,6aR)−3−イソプロピル−1−(メタンスルホニル)−4−[4−(1−ピペリジニル)−2(E)−ブテノイル]パーヒドロピロロ[3,2b]ピロール−2(1H)−オン塩酸塩(GW311616A)、ペプスタチンA、ヘパリン及びホスホラミドン、
b)カクテルI19b:
4−(2−アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオライド塩酸塩(AEBSF)、アプロチニン、ベスタチン、トランス−エポキシサクシニル−L−ロイシル−アミド(4−グアニジノ)ブタン(E−64)、エグリンC、(3S,3aS,6aR)−3−イソプロピル−1−(メタンスルホニル)−4−[4−(1−ピペリジニル)−2(E)−ブテノイル]パーヒドロピロロ[3,2b]ピロール−2(1H)−オン塩酸塩(GW311616A)、ペプスタチンA、ヘパリン及び2,6−ピリジンジカルボン酸、及び、
c)カクテルI10:
4−(2−アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオライド塩酸塩(AEBSF)、アプロチニン、ベスタチン、トランス−エポキシサクシニル−L−ロイシル−アミド(4−グアニジノ)ブタン(E−64)、エグリンC、(3S,3aS,6aR)−3−イソプロピル−1−(メタンスルホニル)−4−[4−(1−ピペリジニル)−2(E)−ブテノイル]パーヒドロピロロ[3,2b]ピロール−2(1H)−オン塩酸塩(GW311616A)、ペプスタチンA、ヘパリン、ホスホラミドン及び2,6−ピリジンジカルボン酸、
から選択される阻害剤の混合物であることを特徴とする請求項83〜85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項92】
前記髄膜炎は、細菌性髄膜炎感染に関連する酵素活性は阻害するが、ウイルス性髄膜炎の酵素活性は阻害しない1つ以上の阻害剤の存在下で、シグナルが生じた場合には、ウイルス性髄膜炎であることを特徴とする請求項83〜85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項93】
前記酵素活性は、髄膜炎による炎症に起因することを特徴とする請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記対象は、髄膜炎の酵素活性を阻害する1つ以上の阻害剤の存在下で、これらの阻害剤がない場合に生じるシグナルと比較して、シグナルが減少するか又は生じない場合には、髄膜炎に感染していることを特徴とする請求項83〜85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項95】
前記髄膜炎病原体は、髄膜炎菌のプロテアーゼ活性を阻害する1つ以上の阻害剤の存在下で、これらの阻害剤がない場合に生じるシグナルと比較して、シグナルが減少するか又は生じない場合には、髄膜炎菌であることを特徴とする請求項83〜85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項96】
前記髄膜炎病原体は、肺炎球菌のプロテアーゼ活性を阻害する1つ以上の阻害剤の存在下で、これらの阻害剤がない場合に生じるシグナルと比較して、シグナルが減少するか又は生じない場合には、肺炎球菌であることを特徴とする請求項83〜85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項97】
前記生体試料は、脳脊髄液の試料であることを特徴とする請求項83〜96のいずれか1項に記載の方法。
【請求項98】
前記生体試料は、血清であることを特徴とする請求項83〜96のいずれか1項に記載の方法。
【請求項99】
前記シグナル部分が、酵素、フルオロフォア、発色団、タンパク質、ペプチド、化学発光物質、消光剤、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)対、プレ酵素、レクチン、アプタマー及び放射性同位体から選択されるシグナル部分であることを特徴とする請求項83〜98のいずれか1項に記載の方法。
【請求項100】
前記シグナル部分がFRET対であることを特徴とする請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記基質は、さらに分離部分を有することを特徴とする請求項83〜100のいずれか1項に記載の方法。
【請求項102】
前記分離部分が、免疫学的結合物質、磁気結合部分、ペプチド結合部分、親和結合部分、レクチン、アプタマー及び核酸部分から選択される分離部分であることを特徴とする請求項101に記載の方法。
【請求項103】
さらに、改変された基質を改変されていない基質から分離することを特徴とする請求項101又は102に記載の方法。
【請求項104】
髄膜炎感染を検出するためのキットであって、
a)生体試料中の髄膜炎病原体の酵素は該基質を改変し、該酵素による該基質の改変はシグナル部分からシグナルを生じさせるシグナル部分を有する基質と、
b)髄膜炎の酵素活性の1つ以上の阻害剤と
を備えることを特徴とするキット。
【請求項105】
前記1つ以上の阻害剤は、細菌性髄膜炎感染に関連する酵素活性は阻害するが、ウイルス性髄膜炎の酵素活性は阻害しないことを特徴とする請求項104に記載のキット。
【請求項106】
前記1つ以上の阻害剤は、髄膜炎による炎症を阻害することを特徴とする請求項104に記載のキット。
【請求項107】
前記1つ以上の阻害剤は、肺炎球菌のプロテアーゼ活性を阻害することを特徴とする請求項104〜106のいずれか1項に記載のキット。
【請求項108】
前記1つ以上の阻害剤は、髄膜炎菌のプロテアーゼ活性を阻害することを特徴とする請求項104〜106のいずれか1項に記載のキット。
【請求項109】
前記1つ以上の阻害剤は、肺炎球菌及び髄膜炎菌のプロテアーゼ活性の両方を阻害することを特徴とする請求項104〜106のいずれか1項に記載のキット。
【請求項110】
前記1つ以上の阻害剤は、
a)カクテルIl9a:
4−(2−アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオライド塩酸塩(AEBSF)、アプロチニン、ベスタチン、トランス−エポキシサクシニル−L−ロイシル−アミド(4−グアニジノ)ブタン(E−64)、エグリンC、(3S,3aS,6aR)−3−イソプロピル−1−(メタンスルホニル)−4−[4−(1−ピペリジニル)−2(E)−ブテノイル]パーヒドロピロロ[3,2b]ピロール−2(1H)−オン塩酸塩(GW311616A)、ペプスタチンA、ヘパリン及びホスホラミドン、
b)カクテルI19b:
4−(2−アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオライド塩酸塩(AEBSF)、アプロチニン、ベスタチン、トランス−エポキシサクシニル−L−ロイシル−アミド(4−グアニジノ)ブタン(E−64)、エグリンC、(3S,3aS,6aR)−3−イソプロピル−1−(メタンスルホニル)−4−[4−(1−ピペリジニル)−2(E)−ブテノイル]パーヒドロピロロ[3,2b]ピロール−2(1H)−オン塩酸塩(GW311616A)、ペプスタチンA、ヘパリン及び2,6−ピリジンジカルボン酸、及び
c)カクテルI10:
4−(2−アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオライド塩酸塩(AEBSF)、アプロチニン、ベスタチン、トランス−エポキシサクシニル−L−ロイシル−アミド(4−グアニジノ)ブタン(E−64)、エグリンC、(3S,3aS,6aR)−3−イソプロピル−1−(メタンスルホニル)−4−[4−(1−ピペリジニル)−2(E)−ブテノイル]パーヒドロピロロ[3,2b]ピロール−2(1H)−オン塩酸塩(GW311616A)、ペプスタチンA、ヘパリン、ホスホラミドン及び2,6−ピリジンジカルボン酸、
から選択される阻害剤の混合物であることを特徴とする請求項104〜106のいずれか1項に記載のキット。
【請求項111】
生体試料中のアロマターゼの有無を検出することによって、対象の内分泌系機能障害の有無を検出する方法であって、
a)対象から得られたアロマターゼを含むか又は含まない前記生体試料とシグナル部分を有する基質とを接触させ、アロマターゼは該基質を改変し、アロマターゼによる該基質の改変はシグナル部分からシグナルを生じさせ、
b)前記シグナル部分から生じた前記シグナルを検出し、生じた前記シグナルは、対象の内分泌系機能障害の存在を示すことを特徴とする方法。
【請求項112】
前記シグナル部分が、酵素、フルオロフォア、発色団、タンパク質、ペプチド、化学発光物質、消光剤、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)対、プレ酵素、レクチン、アプタマー及び放射性同位体から選択されるシグナル部分であることを特徴とする請求項111に記載の方法。
【請求項113】
前記シグナル部分がFRET対であることを特徴とする請求項112に記載の方法。
【請求項114】
前記基質は、さらに分離部分を有することを特徴とする請求項111〜113のいずれか1項に記載の方法。
【請求項115】
前記分離部分が、免疫学的結合物質、磁気結合部分、ペプチド結合部分、親和結合部分、レクチン、アプタマー及び核酸部分から選択される分離部分であることを特徴とする請求項114に記載の方法。
【請求項116】
さらに、改変された基質を改変されていない基質から分離することを特徴とする請求項114又は115に記載の方法。
【請求項117】
前記基質は、メトキシ−4−トリフルオロメチル−クマリン(MFC)であることを特徴とする請求項111、又は114〜116のいずれか1項に記載の方法。
【請求項118】
さらに、前記生体試料を非特異性プロテアーゼ活性の1つ以上の阻害剤と接触させることを特徴とする請求項111〜117のいずれか1項に記載の方法。
【請求項119】
さらに、前記生体試料をアロマターゼの1つ以上の活性剤と接触させることを特徴とする請求項111〜118のいずれか1項に記載の方法。
【請求項120】
前記活性剤は、NaSOであることを特徴とする請求項119に記載の方法。
【請求項121】
生体試料中の前立腺特異抗原(PSA)の有無を検出することによって、対象の前立腺癌の有無を検出する方法であって、
a)対象から得られたPSAを含むか又は含まない前記生体試料とシグナル部分を有する基質とを接触させ、PSAは該基質を改変し、PSAによる該基質の改変はシグナル部分からシグナルを生じさせ、
b)前記シグナル部分から生じた前記シグナルを検出し、生じた前記シグナルは、対象の前立腺癌の存在を示すことを特徴とする方法。
【請求項122】
前記シグナル部分が、酵素、フルオロフォア、発色団、タンパク質、ペプチド、化学発光物質、消光剤、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)対、プレ酵素、レクチン、アプタマー及び放射性同位体から選択されるシグナル部分であることを特徴とする請求項121に記載の方法。
【請求項123】
前記シグナル部分がFRET対であることを特徴とする請求項122に記載の方法。
【請求項124】
前記基質は、さらに分離部分を有することを特徴とする請求項121〜123のいずれか1項に記載の方法。
【請求項125】
前記分離部分が、免疫学的結合物質、磁気結合部分、ペプチド結合部分、親和結合部分、レクチン、アプタマー及び核酸部分から選択される分離部分であることを特徴とする請求項124に記載の方法。
【請求項126】
さらに、改変された基質を改変されていない基質から分離することを特徴とする請求項124又は125に記載の方法。
【請求項127】
前記基質は、
HSSKLQ(配列番号15)、
QFYSSN(配列番号16)、
GAGLRLSSYY-SGAG(配列番号17)又は、
SSIYSQTEEQ(配列番号18)、
から選択されるアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項121〜126のいずれか1項に記載の方法。
【請求項128】
さらに、前記生体試料を非特異性プロテアーゼ活性の1つ以上の阻害剤と接触させることを特徴とする請求項121〜127のいずれか1項に記載の方法。
【請求項129】
さらに、前記生体試料をPSAの1つ以上の活性剤と接触させることを特徴とする請求項121〜128のいずれか1項に記載の方法。
【請求項130】
前記活性剤は、NaSOであることを特徴とする請求項129に記載の方法。
【請求項131】
生物学的カスケードに関与する酵素の有無を検出することによって、対象の生物学的カスケードの機能障害の有無を検出する方法であって、
a)前記酵素を含むか又は含まない対象からの前記生体試料を用意し、
b)各試験反応において、シグナル部分を有する基質と前記生体試料とを接触させることによって試験反応のアレイを提供し、前記酵素は該シグナル部分を有する基質を改変し、前記酵素による該シグナル部分を有する基質の改変はシグナル部分からシグナルを生じさせ、
c)前記試験反応で前記シグナル部分によって生じた前記シグナルを検出し、
d)前記試験反応で生じた前記シグナルは、対象の生物学的カスケードの機能障害の存在を示すことを特徴とする方法。
【請求項132】
前記シグナル部分が、酵素、フルオロフォア、発色団、タンパク質、ペプチド、化学発光物質、消光剤、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)対、プレ酵素、レクチン、アプタマー及び放射性同位体から選択されるシグナル部分であることを特徴とする請求項131に記載の方法。
【請求項133】
前記シグナル部分がFRET対であることを特徴とする請求項132に記載の方法。
【請求項134】
前記基質は、さらに分離部分を有することを特徴とする請求項131〜133のいずれか1項に記載の方法。
【請求項135】
前記分離部分が、免疫学的結合物質、磁気結合部分、ペプチド結合部分、親和結合部分、レクチン、アプタマー及び核酸部分から選択される分離部分であることを特徴とする請求項134に記載の方法。
【請求項136】
さらに、改変された基質を改変されていない基質から分離することを特徴とする請求項134又は135に記載の方法。
【請求項137】
さらに、前記生体試料を非特異性プロテアーゼ活性の1つ以上の阻害剤と接触させることを特徴とする請求項131〜136のいずれか1項に記載の方法。
【請求項138】
さらに、前記生体試料を生物学的カスケードに関与する酵素の1つ以上の活性剤と接触させることを特徴とする請求項131〜137のいずれか1項に記載の方法。
【請求項139】
前記酵素は、前記シグナル部分を有する前記基質を切断することによって、前記シグナル部分を有する前記基質を改変することを特徴とする請求項131〜138のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公表番号】特表2011−528916(P2011−528916A)
【公表日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520615(P2011−520615)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【国際出願番号】PCT/IB2009/006643
【国際公開番号】WO2010/013138
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(511025972)
【Fターム(参考)】