説明

病原性大腸菌関連タンパク質

【課題】
病原性大腸菌、例えば腸内病原性大腸菌(EPEC)及び腸内出血性大腸菌(EHEC)により分泌されたEspAポリペプチドを提供する。
【解決手段】
a)腸内病原性または腸内出血性大腸菌からの分泌タンパク質であり、b)SDS-PAGEにより測定して約25キロダルトンの分子量を有することを特徴とする単離されたEspAポリペプチド、EspAをコードする単離された核酸配列、組換えEspAの製造方法、EspAに結合する抗体、EspA生産大腸菌の検出用キット、宿主をEspAで免疫化してEspAに対する防御免疫反応を誘発する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願のクロスレファレンス
本出願は1996年4月23日出願の米国仮特許出願60/015,999号に基づく優先権を主張する。
【0002】
連邦政府により後援された研究についての記載
本発明は、国立衛生研究所からの公衆衛生局奨励金AI32074のサポートによりなされた。米国政府は本発明について一定の権利を有し得る。
【0003】
本発明は一般的には病原生物の毒性に関し、より具体的には腸内病原性細菌に関連する毒性因子に関する。
【背景技術】
【0004】
抗生物質は多様な細菌感染症の治療に長年成功裏に使用されてきた。しかしこの数年、抗生物質に対する細菌の耐性の問題が増加している。今では多くの病原体がいくつかの抗生物質に対して耐性を有し、ある症例においてはそれらが引き起こす疾患は慣用の抗生物質でもはや治療できなくなっている。過去の抗生物質の成功にもかかわらず、この20年に開発された新しい種類の抗生物質はあったとしてもわずかである。既存の薬剤についての新たな改良物が導入されているが、これらの化合物に対する耐性が短い期間内に生成するのが通常である。
【0005】
毒性因子をコードする遺伝子に変異を生じさせると、その遺伝子を含む生物は病原性でなくなることが多くの研究により示されている。さらに、宿主に毒性因子に対するワクチンを投与すると疾患が防止できることが多い。しかし、毒性因子を特異的に抑制することにより疾患を緩和することができることは明らかにされていなかった。
【0006】
毒素、粘着、侵入、細胞内寄生の作用のメカニズムが研究されている。しかし、各毒性因子は異なるメカニズムを使用しており、これは広い抗菌スペクトルを有する阻害剤の開発を不可能にするものであった。治療の対象と考えられ得る一つの保存された因子は二成分調節系である。しかしこの系は毒性因子に特異的でなく、いくつかの細菌生存系において使用される。その上、これらの系は真核生物系において確認され、阻害剤を使用するとこれは宿主に対する毒性のリスクを高めることになる。理想的な抗感染剤を開発するためには、抗生物質が影響を及ぼす細菌性の毒性メカニズムが多くの病原体に普遍的に存在し、毒性メカニズムに特異的であり、宿主細胞において存在しないものでなければならない。最近確認されたそのような系の一つとして細菌のIII型分泌系がある。
【0007】
グラム陰性の細菌は、特別な機構を利用してその二つの膜とピロプラズマを横切って分子を排出するが、これは毒性因子をそれが宿主成分と相互に作用することができる細菌表面に移動させるための必須の過程である。グラム陰性菌の分泌は四つの主要な経路に分けられる。第一に、I型分泌は、大腸菌溶血素が典型的なものであるで毒素の小ファミリーにより使用される。第二に、II型分泌系は大部分のグラム陰性菌により、いくつかの毒性因子を含む多くの分子を排出するために使用される主要な排出経路であり、哺乳類の薬剤耐性メカニズムに相同性を有する。第三に、IV型分泌系は分泌産物内にコードされ、分泌メカニズムの一部としてそれ自体が開裂する。この系の典型はNeisseria IgAプロテアーゼである。第四に、最も最近発見された分泌経路のIII型経路である。
【0008】
III型分泌系は最初にYersiniaの毒性について必須であるYersinia分泌毒性タンパク質、YOPの分泌系として記載された。その後、Peudomonas syringaeP. solanacearurn及びXantharnonas carnpestris等のいくつかの植物病原体において相同の分泌系が確認された。これらの植物病原体は、この分泌経路を使用して植物において疾患を引き起こすために必要な毒性因子(ハーピン等)を分泌する。分泌系は類似しているが、ハーピンとYOP(すなわち分泌毒性因子)は相同のポリペプチドではない。より最近になって毒性に必要ないくつかのその他のIII型分泌系が他の病原体において確認された。これらの系は、サルモネラ菌及び赤痢菌が細胞に入り疾患を引き起こすために使用する侵入系を含む。疾患に必須の別のIII型分泌系がサルモネラ菌において確認されているが、この経路の分泌産物と毒性メカニズムはまだ確認されていない。緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は、強力な毒性因子である細胞外酵素Sの分泌に必要なIII型分泌系を有する。
【0009】
腸内病原性大腸菌(EPEC)は、乳児下痢の主要な原因であって、胃腸炎を引き起こすことが示された最初の大腸菌であった。腸内病原性大腸菌は、宿主上皮細胞のシグナル伝達経路を活性化し、ペデスタル及び付着/展退病変形成とともに細胞骨格再配列を引き起こす。
【0010】
三段階モデルにより腸内病原性大腸菌の病因が説明されている。IV型線毛によってもたらされる上皮細胞への初期の局所的な接着の後に、宿主上皮細胞シグナル伝達経路の活性化と宿主上皮細胞への密着が起こる。これらの最後の二つの段階は集合的に付着及び展退として知られている。宿主上皮細胞中のシグナル伝達は、宿主細胞チロシンキナーゼ活性を活性化し、90キロダルトンの宿主膜タンパク質、Hp9.0のチロシンリン酸化を起こし、細胞内イノシトールホスフェート(IP3)及びカルシウムを流動化させる。このシグナル伝達の後、細菌は上皮細胞の表面に密着し、宿主上皮細胞微小絨毛の損傷と細胞骨格タンパク質の細菌下への蓄積が伴う。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、病原細菌、例えば腸内病原性大腸菌における毒性と関連するタンパク質の発見に基づく。
【0012】
eaeAとespBとの間の腸内細胞展退の遺伝子座(Locus of Enterocyte Effacement)のDNA配列解析により、25キロダルトンの腸内病原性大腸菌分泌タンパク質のアミノ末端配列に適合する遺伝子(espA)が同定された。espAにおける挿入を有する変異体は、このタンパク質を分泌せず、あるいは上皮細胞シグナル伝達を活性化せず、あるいは細胞骨格再配列を引き起こさない。しかしこれらの機能は、クローン化された野生型espA遺伝子によって補充することができた。
【0013】
分泌毒性因子、EspA及びEspBをそれぞれコードする二つの腸内病原性大腸菌遺伝子、espA及びespBをクローン化し配列決定した。これらのタンパク質は、宿主上皮シグナル伝達経路と侵入の誘発に関係していることが示された。EspAは分泌タンパク質であるので、対象のポリペプチドを結合した融合タンパク質に使用するのに理想的なものである。
【0014】
III型分泌経路は細菌において同定された毒性因子特異的な保存経路であるので、潜在的な阻害剤の理想的なターゲットである。本発明は、III型分泌系の阻害剤を同定する方法を提供する。本発明は、新しい抗菌性治療剤の開発に関する。他の抗生物質と異なり、本発明の方法により同定された化合物は病原体を死滅させあるいはその増殖を阻害するものではない。その代わりにこれらの化合物は疾患を引き起こすのに必須の毒性因子の分泌をブロックする。III型分泌系は、多様な病原体の間に広く保存されることが示された最初の毒性メカニズムであるので、本発明の方法によって同定された化合物のあるものは広域抗菌スペクトル治療剤となる。いくつかのヒト、動物及び植物の疾患の治療に使用し得る新しい治療薬が同定されるという利点が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、病原性大腸菌、例えば腸内病原性大腸菌(EPEC)及び腸内出血性大腸菌(EHEC)によって分泌されるEspAと称するポリペプチドを提供する。そのような病原性大腸菌に起因する疾患の診断を、EspAに結合する抗体を使用することに基づき前記タンパク質を検出するためのもの、及びEspAポリペプチドをコードする核酸の検出用の核酸プローブの使用に基づくもの等の標準的方法により行うことができる。本発明はまた、EspAポリペプチドをコードする単離された核酸配列、EspAペプチド、組換えEspAを製造するための組換え法、EspAに結合する抗体、及びEspA生産大腸菌を検出するためのキットを提供する。本発明はまた、宿主をEspAで免疫化してEspAに対する防御免疫応答を誘発する方法を提供する。
【0016】
本発明の好ましい態様の詳細は添付の図面及び以下の記載に示す。
【0017】
本明細書で使用する用語「EspA」(EPEC分泌[またはシグナル発生]タンパク質Aを示す)は、腸内病原性あるいは腸内出血性大腸菌からの分泌タンパク質であり、SDS-PAGEにより測定して約25キロダルトンの分子量を有するポリペプチドをいう。EspAは、疾患に関連するプロセスである上皮細胞シグナル伝達、密接な接触、及び接着及び展退病変の形成を活性化するために必要な、腸内病原性大腸菌分泌タンパク質である。上皮細胞の例は細胞である。
【0018】
本明細書で使用する用語「ポリペプチド」は、その任意の天然の対立遺伝子変異体、並びに製造された組換え体形態を包含する。本明細書で使用する、EspAポリペプチドは天然及び組換え体形態の両方、すなわち該タンパク質の非天然形態及び病原性を引き起こす同様な機能を有するのに十分な天然のEspAペプチドに対する同一性を有するペプチドを包含する。このようなポリペプチドの例としては、腸内病原性及び腸内出血性大腸菌からのEspAポリペプチドが挙げられるが、それらに限定されるものではない。タンパク質及びポリペプチドは、誘導体、類似体及びペプチド模倣体を含む。あるいはEspAペプチドは、当業者に知られる合成方法を使用して化学的に合成することができる。好ましくは、自動ペプチド合成器を使用し、ポリエチレングリコールーポリスチレン(PEGPS)グラフト樹脂上においてNαFmocアミノ酸を用いる。例えば、ペプチドアミドリンカー(PAL)のような適したリンカーを使用して、例えばカルボキサミド末端基を形成することができる。
【0019】
本明細書で使用される用語「実質的に純粋な」は、例えば天然に付随するその他のタンパク質、脂質、炭水化物、核酸、及びその他の生物物質を実質的に含まないポリペプチド(例えばEspAポリペプチドあるいはその断片)を示す。例えば、ポリペプチド等の実質的に純粋な分子としては、乾燥重量で少くとも60%が対象の分子であるものとすることができる。当業者であれば、標準的なタンパク質精製法を使用してEspAポリペプチドを精製することができ、ポリペプチドの純度は、例えばポリアクリルアミドゲル電気泳動(例えばSDS-PAGE)、カラムクロマトグラフィー(例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC))、及びアミノ末端アミノ酸配列分析等の標準的方法を使用して決定することができる。
【0020】
本発明に包含されるEspAポリペプチドは、ヒトあるいはウサギ腸内病原性大腸菌からのEspAのアミノ酸配列、例えば図1または図4のアミノ酸配列の1つを有することができる。図1及び4に示したもののようなEspAポリペプチドはSDS-PAGEで測定して約25kDであることを特徴とし得る。
【0021】
また、図1及び4のEspAの1つのようなEspAポリペプチドの配列に「実質的に同一の」配列を有するポリペプチドも本発明に包含される。「実質的に同一の」アミノ酸配列は、保存的なアミノ酸置換、例えば1つのアミノ酸の同じ種類の他のものによる置換(例えば、イソロイシン、バリン、ロイシンあるいはメチオニンのような疎水性アミノ酸の別のものによる置換、あるいはリシンによるアルギニンの置換、アスパラギン酸によるグルタミン酸の置換、あるいはアスパラギンによるグルタミンの置換等の一つの極性アミノ酸の別のものによる置換)のみにより、あるいは一つ以上の非保存的置換、欠失、あるいは挿入により参照配列と異なるが、ただしそのポリペプチドが少くとも1種のEspA-特異的活性あるいはEspA-特異的エピトープを保持する配列である。例えば、EspAポリペプチドから一つ以上のアミノ酸を削除してその生物活性を有意に変化させることなくポリペプチドの構造を修飾することができる。また例えば、EspAの生物学的活性に必要でないアミノまたはカルボキシル末端アミノ酸を除去することができる。そのような修飾により、より小さい活性なEspAポリペプチドを得ることができる。
【0022】
本発明に包含されるその他のEspAポリペプチドは、図1及び4のEspAのいずれかのようなEspAポリペプチドのアミノ酸配列に少くとも50%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドである。アミノ酸配列の相同性を決定する際の比較の長さは、例えば少くとも15のアミノ酸、例えば少くとも20、25あるいは35のアミノ酸とすることができる。相同性は、標準の配列分析ソフトウェア(例えば、Sequence Analysis Software Package of the Genetics Computer Group,University of Wisconsin Biotechnology Center,1710 University Avenue,Madison,WI 53705;Ausubelら、上出も参照)を使用して測定できる。
【0023】
本発明はまた、少くとも1種のEspA-特異的活性あるいはエピトープを保持するEspAポリペプチドの断片を含む。例えば少くとも8〜10のアミノ酸を含むようなEspAポリペプチド断片は、免疫原としてEspA-特異的抗体の生産において使用することができる。断片は例えば、EspAにおいて保存されるアミノ酸配列を含むことができる。それらのペプチド免疫原としての使用に加えて、上記のEspA断片はELISAのようなイムノアッセイにおいて使用して、サンプル中のEspA-特異的抗体の存在を検出することができる。
【0024】
本発明のEspAポリペプチドは、いくつかの標準的方法の任意のものを使用して得ることができる。例えば、EspAポリペプチドは、標準の組換え体発現系(下記参照)において生産することができ、化学的に合成することができ(この方法は小さいEspAペプチド断片に限定され得る)、あるいはそれらが天然に発現される組織から精製することができる(例えばAusubelら、上出、を参照)。
【0025】
また本発明は、上記のEspAポリペプチドをコードする単離された核酸分子及びその断片を提供する。例えば、図1及び4のEspAをコードする核酸は本発明に包含される。これらの核酸は、天然のヌクレオチド配列(図1及び4を参照)、あるいはEspAをコードする天然の核酸のものと異なるが、遺伝子コードの縮退のために同じアミノ酸をコードする配列を含むことができる。本発明の核酸は、DNAまたはRNAヌクレオチド、あるいはその組み合わせまたは修飾物を含むことができる。
【0026】
「単離された核酸」は、例えば、それが由来する生物の天然のゲノム中に存在する場合に通常は直接隣接する5'及び3'隣接配列に直接隣接しないDNAあるいはRNA分子のような核酸を意味する。従ってこの用語は、例えば、プラスミドやウイルスベクターのようなベクターに組み込まれた核酸;異種細胞のゲノム(または相同の細胞のゲノムであるが天然のものとは異なる部位)に組み込まれた核酸;及び、例えばPCR増幅あるいは制限酵素消化によって生産されたDNAフラグメント、あるいはin vitro転写により生産されたRNA分子等の、分離した分子として存在する核酸を意味する。またこの用語は、例えば、融合タンパク質の生産において使用することができる別のポリペプチド配列をコードするハイブリッド遺伝子の部分を形成する組換え体核酸を意味する。
【0027】
本発明の核酸分子は、EspA遺伝子産物(例えば、EspARNA及びEspAポリペプチド、下記参照)の生産の標準的方法において鋳型として使用することができる。さらに、EspAポリペプチドをコードする核酸分子(及びその断片)及び関連する核酸、例えば(1)EspAポリペプチドをコードする核酸に相補的な配列、あるいはそれにハイブリダイズする配列あるいはその断片(例えば、少くとも12、15、20あるいは25ヌクレオチドを含む断片)を含む核酸、及び(2)EspAポリペプチドをコードする核酸に相補的な配列にハイブリダイズする配列あるいはその断片(例えば、少くとも12、15、20あるいは25ヌクレオチドを含む断片)を含む核酸を、それらのハイブリダイゼーション特性に注目した方法に使用できる。例えば、以下に詳細に記載するように、そのような核酸分子は以下の方法、EspA核酸を合成するためのPCR法、サンプル中のEspA核酸の存在を検出するための方法、新しいEspAファミリーのメンバーをコードする核酸を同定するためのスクリーニング方法、及び治療方法において使用することができる。
【0028】
本発明はまた、図1及び4に示したEspAに加えて、EspAポリペプチドファミリーのメンバーをコードする核酸分子を同定する方法を含む。これらの方法においては、例えば、EspAポリペプチドをコードする核酸を含むcDNAライブラリーのような核酸ライブラリー等のサンプルを、EspA-特異的プローブ、例えば、EspA-特異的核酸プローブでスクリーニングする。EspA-特異的核酸プローブは、EspAポリペプチドをコードする核酸に特異的にハイブリダイズするか、あるいはそれらの相補的な核酸分子(例えば、DNAあるいはRNAヌクレオチドを含む分子、あるいはそれらの組合せもしくは修飾物)である。本発明の方法の意味においては、用語「EspA-特異的プローブ」は、EspAポリペプチドをコードする核酸またはそれに相補的な配列に、その他のポリペプチドをコードする核酸またはそれに相補的な核酸よりも検出可能な程度により強く結合するプローブをいう。従って用語「EspA-特異的プローブ」は、EspAポリペプチドをコードする核酸(またはそれに相補的な配列)に結合することができるプローブを包含する。
【0029】
本発明は、EspA-特異的核酸プローブの生産を容易にする。そのようなプローブを得るための方法は、図1〜3に示したアミノ酸配列のアラインメントに基づいて設計することができる。このプローブは、少くとも12、例えば少なくとも15、25、35、50、100あるいは150のヌクレオチドを含むことができ、いくつかの標準的方法の任意のものにより製造することができる(例えばAusubelら、上出、を参照)。例えば、プローブは好ましくはPCR増幅法を使用して生成される。これらの方法においては、EspA-特異的アミノ酸を含むことができるEspA-保存配列に対応するプライマーを設計し、得られたPCR生成物をプローブとして使用してcDNAライブラリーのような核酸ライブラリーをスクリーニングする。EspAをコードするヌクレオチド配列は図1及び4のEspAの配列の分析に基づいて一般的にこの方法に従って同定された。
【0030】
当分野で知られるように、PCRプライマーは典型的には少なくとも15ヌクレオチド、例えば15〜30ヌクレオチドを含むように設計される。7アミノ酸を含むEspAペプチドをコードする21のヌクレオチドを含むEspA-特異的なプライマーの設計について以下に記載する。好ましくは、そのようなプローブにおける殆どまたは全てのヌクレオチドは、EspA-特異的アミノ酸を含むEspA-保存アミノ酸をコードする。例えば、少くとも40%のEspA-保存アミノ酸を含むペプチドをコードする配列を含むプライマーを使用することができる。そのような21のヌクレオチドを含むプライマーは、少くとも3つのEspA-保存アミノ酸をコードする配列を含むことができる。このように、プライマーは少くとも1つのEspA-特異的アミノ酸、例えば最高7つのEspA-特異的アミノ酸をコードする配列を含むことができる。プライマー配列が設計される鋳型としてEspA-特異的アミノ酸配列が選択されたら、例えば標準的な化学的方法を使用してプライマーを合成することができる。上記したように、遺伝子コードの縮退のために、そのようなプライマーは適当な縮退配列を含むように設計され、これは当業者により容易に決定することができる。
【0031】
本明細書で使用する、用語「espA」はEspAポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをいう。これらのポリヌクレオチドは、EspAをコードするDNA、cDNA及びRNA配列を含む。また、EspAの全体または部分をコードする全てのポリヌクレオチドは本発明に包含される。そのようなポリヌクレオチドは、天然、合成、及び意図的に操作されたポリヌクレオチドを含む。例えば、espAポリヌクレオチドは部位指向突然変異誘発にかけることができる。またespAポリヌクレオチド配列はアンチセンス配列を含む。ヌクレオチド配列によってコードされたEspAペプチドのアミノ酸配列が機能的に変化しない限り、全ての縮退ヌクレオチド配列は本発明に包含される。
【0032】
本発明は、本発明のポリヌクレオチドにハイブリダイズする核酸分子を包含する。本明細書で使用する用語「核酸」はRNA並びに一本鎖及び二本鎖DNA及びcDNAを包含する。EspAをコードするポリヌクレオチドは、図1及び4のヌクレオチド配列及びその配列に相補的な核酸配列を含む。相補的な配列はアンチセンスヌクレオチドを含んでもよい。配列がRNAである場合、図1及び4のデオキシヌクレオチドA、G、C及びTはそれぞれリボヌクレオチドA、G、C及びUに置換される。また、少くとも15塩基長の上記核酸配列の断片も本発明に包含され、これは断片が生理学的条件下で図1または4のタンパク質をコードするDNAに選択的にハイブリダイズすることを可能とするのに十分な長さである。
【0033】
核酸ハイブリダイゼーション反応においては、ストリンジェンシーの特定のレベルを得るために使用される条件はハイブリダイズされる核酸の種類により変化する。ハイブリダイゼーション条件の選択においては、例えば、核酸のハイブリダイゼーション領域の長さ、相補性の程度、ヌクレオチド配列組成(例えば、GC対AT含量)、及び核酸種(例えば、RNAあるいはDNA)を考慮することができる。また、核酸の1種が例えばフィルター上に固定されているかどうかも考慮することができる。
【0034】
次第に高くなるストリンジェンシー条件の例は以下の通りである。室温で2 x SSC/0.1%SDS(ハイブリダイゼーション条件);室温で0.2 x SSC/O.1% SDS(低ストリンジェンシー条件);約42℃で0.2 x SSC/O.1%SDS(中程度のストリンジェンシー条件):及び約68℃での0.1 x SSC(高ストリンジェンシー条件)。洗浄はこれらの条件の1つのみ、例えば高ストリンジェンシー条件を使用して行うことができ、あるいはこれらの条件のそれぞれ、例えばそれぞれ10〜15分ずつ上に挙げた順で挙げた段階の任意のものあるいは全てを繰り返すことにより行うことができる。しかし上記したように、最適の条件は使用する特定のハイブリダイゼーション反応により変化し、経験的に決定することができる。
【0035】
本発明のDNA配列は、いくつかの方法によって得ることができる。例えば、DNAは当分野においては周知のハイブリダイゼーション法を使用して単離することができる。これには、限定するものではないが、(1)ライブラリーをプローブとハイブリダイゼーションさせて相同のヌクレオチド配列を検出すること、(2)対象のDNA配列にアニーリングできるプライマーを使用した、DNA上でのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、及び(3)発現ライブラリーの抗体スクリーニングにより共通の構造上の特徴を有するクローン化されたDNA断片を検出することが含まれる。
【0036】
核酸ハイブリダイゼーションによるスクリーニング法によれば、適当なプローブが利用できるならば任意の遺伝子配列を任意の生物から分離することが可能となる。問題とするタンパク質をコードする配列の部分に対応するオリゴヌクレオチドプローブは化学的に合成することができ、あるいは天然の配列を断片化することにより製造することができる。化学合成は、既知のアミノ酸配列の短いオリゴペプチド配列を必要とする。タンパク質をコードするDNA配列は遺伝子コードから推定することができるが、コードの縮退を考慮に入れなければならない。配列が縮退している場合、混合付加反応を行うことが可能である。これは変性二本鎖DNAの不均質な混合物を使用する。そのようなスクリーニングのためには、ハイブリダイゼーションは好ましくは一重鎖DNAまたは変性二本鎖DNAについて行う。ポリメラーゼ連鎖反応技術と組合せて使用すれば、わずかな発現産物でもクローン化することができる。
【0037】
本発明は、EspAポリペプチドをコードする核酸配列、それらを含むベクター及び宿主細胞、及び発現方法を提供する。EspAのペプチドを単離した後、ペプチドをコードする核酸は当分野で周知の方法によって単離することができる。これらの単離された核酸はベクターに結合することができ、発現のために適した宿主細胞に導入することができる。結合及び核酸の細胞内での発現方法は当分野において周知である(Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,New York,1989を参照、これは引用により本明細書の一部とする)。
【0038】
本明細書で使用する用語「espB」及び「eaeA」は、腸内病原性大腸菌分泌タンパク質をコードするespA以外の遺伝子をいう。本明細書で使用するように、用語「EspB」及び「EaeA」は、espB及びeaeA遺伝子によってそれぞれコードされたタンパク質をいう。
【0039】
本発明は、EspAポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。例えば、天然のespAを有するプラスミド(pMSD2)は、espA欠損株においてEspAタンパク質の分泌を回復させることができる。本明細書で使用する「ベクター」は、プラスミド、DNA及びRNAウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、酵母で使用するためのベクター、及びその他の当業者に周知のベクターを含む。いくつかの種類のベクターは市販されており、本発明を実施するために使用することができる。本発明の実施に有用なベクターの例としては、低コピーベクタ−pMW118、陽性選択自殺ベクターpCVD442、及び市販のpBluescript II SK(+)(Stragene,La Jolla,CA)等が挙げられ広範囲なものから選択できる。
【0040】
ベクターがプラスミドである場合、これは一般的にはプロモーター、シグナル配列、表現型選択遺伝子、複製起点、及びその他の必要な成分等の当業者に知られた種々の成分を含む。原核生物ベクターにおいて最も一般的に使用されるプロモーターとしては、lacZプロモーター系、アルカリホスファターゼpho Aプロモーター、バクテリオファージλPLプロモーター(温度感受性プロモータ一)、tacプロモーター(lacレプレッサーにより制御されるハイブリッドtrp-lacプロモーター)、トリプトファンプロモーター、バクテリオファージT7プロモーター等が挙げられる。例えば、lacZプロモーターの制御下にある低コピーベクターpMW118である。
【0041】
シグナル配列は典型的にはペプチドをコードする核酸の5'に直接隣接し、従って融合タンパク質のアミノ末端において転写される。
【0042】
典型的な表現型選択遺伝子は、抗生物質抵抗性を宿主細胞に与えるタンパク質をコードするものである。例えば、アンピシリン耐性遺伝子(amp)及びテトラサイクリン耐性遺伝子(tet)はこの目的のために容易に使用される。異なる例としては、カナマイシン耐性の遺伝子(kan)をコードするaphA-3カセットを、カナマイシンプレート上での選択のためにEspAポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターの領域にクローン化することができる。
【0043】
EspAポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む適当なベクターの構築物は、当業者に周知の標準的な組換えDNA法を使用して製造される。結合されてベクターを生成する、EspAポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドを開裂し、特定の順序及び方向で結合して所望のベクターを生成する。
【0044】
本発明は、EspAポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを有するベクターを含む宿主細胞を提供する。本発明のポリヌクレオチドを使用して、発現EspAの増強された生産のための、形質転換またはトランスフェクトされた細胞を生産することができる。EspAは、当業者に周知の標準的な方法によって形質転換細胞から単離することができる。タンパク質は、例えば免疫アフィニティ精製を使用して単離することができる。
【0045】
EspAをコードするDNA配列は、適当な宿主細胞へのDNA導入によりin vitroで発現することができる。「宿主細胞」は、ベクターが増殖することができ、そのDNAが発現し得る細胞である。この用語は、被検宿主細胞の任意の子孫も含む。複製の間に突然変異が起こり得ることから、全ての子孫が親細胞に同一でない可能性があると考えられる。しかし用語「宿主細胞」を使用する場合、そのような子孫を含むものとする。安定な導入とは外来性DNAが宿主において連続的に維持されることを意味するが、その方法は当分野において知られている。
【0046】
本発明においては、EspAポリヌクレオチド配列を組換え体発現ベクターに挿入することができる。用語「組換え体発現ベクター」は、EspA遺伝子配列の挿入あるいは導入により操作された当分野において知られたプラスミド、ウイルスまたはその他のビヒクルをいう。そのような発現ベクターは、宿主の挿入された遺伝子配列の効率的な転写を促進するプロモーター配列を含む。発現ベクターは、典型的には、複製起点、プロモーター、及び形質転換細胞の表現型選択を可能とする特異的な遺伝子を含む。
【0047】
EspAをコードするポリヌクレオチド配列は、原核生物あるいは真核生物いずれにおいても発現させることができる。宿主としては、微生物、酵母、昆虫、哺乳動物生物等を挙げることができる。真核生物あるいはウイルス配列を有するDNA配列を原核生物においては発現させる方法は当分野において周知である。宿主中での発現及び複製が可能な生物学的に機能的なウイルス及びプラスミドDNAベクターは当分野で知られている。そのようなベクターを使用して本発明のDNA配列を導入する。
【0048】
組換えDNAによる宿主細胞の形質転換は当業者に周知の慣用の方法により実施することができる。宿主が大腸菌のような原核生物の場合は、DNAを取込むことができるコンピテント細胞は指数増殖期の後に回収された細胞から調製することができ、その後当分野において周知の方法を使用してCaCl2法により処理することができる。あるいは、MgCl2またはRbClを使用することができる。また所望の場合、形質転換は宿主細胞のプロトプラストを形成した後に行うことができる。その他の例としては、三親結合を使用して、ベクターを、大腸菌、特に腸内病原性大腸菌、あるいはウサギ腸内病原性大腸菌に遺伝学的に導入することができる。形質転換細胞は抗生物質、一般的にはテトラサイクリン(tet)またはアンピシリン(amp)であり、ベクターにおける耐性遺伝子tetまたはampの存在によりそれに対して細胞が耐性にされている抗生物質上の増殖で選択される。特定の態様においては、細胞はカナマイシン及びスクロースに対する耐性に基づいて選択される。
【0049】
宿主が真核生物である場合は、リン酸カルシウム共沈、慣用の物理的手段、例えばマイクロインジェクション、エレクトロポレーション、リポソームに封入されたプラスミドの挿入、あるいはウイルスベクター等のようなDNAのトランスフェクション方法を使用することができる。また真核細胞は、本発明のEspAをコードするDNA配列と、選択可能な表現型をコードする第二の外来DNA分子、例えば単純ヘルペスチミジンキナーゼ遺伝子とで同時形質転換することもできる。また別の方法としては、真核生物ウイルスベクター、例えばシミアンウイルス40(SV40)あるいはウシ乳頭腫ウイルスを使用して真核細胞を一時的に感染させあるいは形質転換し、タンパク質を発現させる(例えば、Eukaryotic Viral Vectors,Cold Spring Harbor Laboratory,Gluzman ed.,1982を参照)。
【0050】
本発明により得られる微生物で発現されたポリペプチドあるいはその断片の単離及び精製は、分取クロマトグラフィー、モノクローナルまたはポリクローナル抗体を使用する免疫学的な分離等の通常の手段により行うことができる。
【0051】
宿主細胞として使用し得る原核生物としては、大腸菌株JM101大腸菌K12株294(ATCC番号31,446)、大腸菌株W3110(ATCC番号27,325)、大腸菌X1776(ATCC番号31,537)、大腸菌XL-1Blue(Stratagene)、及び大腸菌Bが挙げられるが、その他の多くの大腸菌株、例えばHB101、NM522、NM538、NM539、及びその他の多くの原核生物の種及び属も同様に使用することができる。上に挙げた大腸菌株の他に、Bacillus sbtillisのような桿菌、Salmonella trphimuniumあるいはSerratima marcesansのような他の腸内細菌、及び種々のPseudomonas種はいずれも宿主として使用することができる。ある特定の態様においては、原核生物宿主細胞は腸内病原性大腸菌である。別の特定の態様においては、原核生物宿主細胞はウサギ腸内病原性大腸菌である。
【0052】
宿主細胞として使用し得る真核生物としては、PS23-6A、W301-18A、LL20、D234-3、INVSC1、INVSC2、YJJ337のような酵母株がある。gal 1及びpEFT-1のようなプロモーター及びエンハンサー配列が有用である。Vra-4も適当なエンハンサー配列を提供する。機能的な複製起点として有用な配列としては、ars1及び2μ環状プラスミドが挙げられる。
【0053】
グラム陰性の細菌は生物の多様な群であり、トレポネーマ(Treponema)及びボレリア(Borrelia)のようなスピロヘータ、シュードモナス科(Pseudomonadaceae)、レジオネラ科(Legionellaceae)、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、ビブリオ科(Vibrionaceae)、パスツレラ科(Pasteurellaceae)を含むグラム陰性の桿菌、ナイセリア科(Neisseriaceae)のようなグラム陰性球菌、嫌気性バクテロイド(Bacteroides)、及びリケッチア(Rickettsia)、クラミジア(Chlamydia)及びマイコプラズマ(Mycoplasma)等の他のグラム陰性細菌を含む。
【0054】
グラム陰性の桿菌(棒状杆菌)は臨床医学において重要である。それらは、(1)多くの重要な病原性の属を含む科である腸内細菌科、(2)ビブリオ、カンピロバクター(Campylobacter)及びヘリコバクター(Helicobacter)属、(3)日和見感染生物(例えばシュードモナス、フラボバクテリア(Flavobacterium)等)、及び(4)ヘモフィリス(Haemophilus)及びボルデテラ(Bordetella)属を含む。グラム陰性の桿菌は、腹部臓器、腹膜及び泌尿器の感染症、並びに気道、火傷、あるいは外傷を与えられた皮膚の二次侵入物及び宿主耐性の低下した部位において見られる主要な生物である。現在それらは生命に危険を及ぼす菌血症の最も多く見られる原因である。病原性グラム陰性桿菌の例としては、大腸菌(下痢、泌尿器感染症、新生児の髄膜炎)、赤痢菌種(Shigella)(赤痢)、腸チフス菌(Salmonella typhi)(腸チフス熱)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)(胃腸炎)、Yersinia enterocolitica(全腸炎)、ペスト菌(Yersinia pestis)(黒死病)、コレラ菌(Vibrio cholerae)(コレラ)、Campyrobacter jejuni(全腸炎)、Helicobocter jejuni(胃炎、消化性潰瘍)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa、火傷、泌尿器、気道、創傷感染及び皮膚、眼及び耳の初感染を含む日和見感染)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)(子供の髄膜炎、喉頭蓋炎、中耳炎、副鼻腔炎及び気管支炎)、百日咳菌(Bordetella pertussi)(百日咳)が挙げられる。ビブリオは運動性のグラム陰性杆菌細菌(ビブリオ科)の属である。コレラ菌はヒトにコレラを引き起こし、ビブリオのその他の種は動物の疾患を引き起こす。大腸菌はヒト及び温血性動物の腸に生息し、偏共性細菌叢の一部を形成するが、ヒト及び動物の腸疾患を引き起こす大腸菌の種類がある。そのようなものとしては、腸内攻撃性大腸菌(EaggEC)、腸内出血性大腸菌(EHEC)、腸内侵襲性大腸菌(EIEC)、腸内病原性大腸菌(EPEC)及び腸内毒素産生大腸菌(EPEC)が挙げられる。尿路病原性大腸菌(UPEC)は泌尿器感染症を引き起こす。新生児髄膜炎大腸菌(NMEC)も存在する。ヒトにおけるいくつかのものと同様の感染を動物において起こすものの他、動物特有の疾患があり、そのようなものとしては子ウシ敗血症、ウシ乳腺炎、ブタ水腫疾患、家禽の気嚢疾患等がある。
【0055】
ナイセリア種としては、N. cinereaN. gonorrhoeaeN. gonorrhoeae subsp. kochiiN. lactamicaN. meningitidisN. polysacchareaN. mucosaN. sicaN. subflava、非糖分解性種のN. flavescensN. caviaeN. cuniculi及びN. ovisが挙げられる。また、Moraxella(Branhamella)catarrhalisの株はナイセリアであると考える分類学者もいる。その他の関連する種としては、キンゲラ(Kingella)、エイケネラ(Eikenella)、シモンシエラ(Simonsiella)、アリシエラ(Alysiella)、CDCグループEF-4、CDCグループM-5が挙げられる。ベイヨネラ(Veillonella)は、ナイセリアの嫌気性の対応物であるグラム陰性球菌である。これらの非運動性ディプロコッカスは、正常な口腔細菌叢の一部である。
【0056】
グラム陰性の好気性球菌群の病原性細菌は、ナイセリア、モラクセラ(Moraxella)(ブランハメラ(Branhamella))及びアシネトバクター(Acinetobacter)を含む。ナイセリア属は、二種の重要なヒト病原体、淋菌(Neisseria gonorrhoeae(尿道炎、子宮頸部管炎、卵管炎、直腸炎、咽頭炎、結膜炎、咽頭炎、骨盤内炎症性疾患、関節炎、散在性疾患)、及び髄膜炎菌(Neisseria meningitides)(髄膜炎、敗血症、肺炎、関節炎、尿道炎)を含む。以前には無害であると考えられていたその他のグラム陰性の好気性球菌として、モラクセラ(ブランハメラ)カタラーリス(Moraxella(Branhamella catarrhalis)(慢性の肺疾患を有する患者の気管支炎及び気管支肺炎、副鼻腔炎、中耳炎)があり、これは最近ヒト感染症によく見られる原因であることが示された。
【0057】
また本発明のEspAポリペプチドは、免疫反応性である、すなわちEspAポリペプチドのエピトープに結合する抗体を生産するために使用することができる。種々のエピトープ特異性を有するプールされたモノクローナル抗体から実質的になる抗体、及び特定のモノクローナル抗体調製物が得られる。モノクローナル抗体は、当分野で周知の方法によりタンパク質の断片を含む抗原から製造される(Kohlerら、Nature,256:495,1975;Current Protocols in Molecular Biology,Ausubelら、ed.,1989)。
【0058】
本発明において使用する用語「抗体」は、その天然の無傷の分子及び、Fab、Fab'、F(ab')2及びFvのようなエピトープに結合することができるその断片を含む。これらの抗体フラグメントは、選択的にその抗原または受容体に結合する何らかの能力を保持し、以下のように定義される。
【0059】
(1)Fabは、抗体分子の一価の抗原結合断片を含む断片であり、抗体全体を酵素パパインで消化して無傷の軽鎖と重鎖の一部を得ることにより製造することができる。
【0060】
(2)Fab'は、抗体分子の断片であり、抗体全体をペプシンで消化し、その後還元して無傷の軽鎖と重鎖の一部を得ることにより製造することができる。抗体分子あたり2つのFab'断片が得られる。
【0061】
(3)(Fab')2は抗体の断片であり、抗体全体を酵素ペプシンで消化し、その後還元しないことにより得られる。F(ab')2は2つのジスルフィド結合により一体に保持されているFab'断片のダイマーである。
【0062】
(4)Fvは、遺伝子工学により製造され、二本の鎖として発現された、軽鎖の可変領域及び重鎖の可変領域を含む断片として定義される。
【0063】
(5)単鎖抗体は、遺伝子工学により製造され、適当なペプチドリンカーにより遺伝子的に一本鎖分子に融合された、軽鎖の可変領域及び重鎖の可変領域を含む分子として定義される。
【0064】
これらの断片を製造する方法は、当分野において知られている(例えば、Harlow及びLane,Antibodies: A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(最新版)を参照、これは引用により本明細書の一部とする)。
【0065】
エピトープは、抗体のパラトープが結合する、抗原上の任意の抗原決定基である。エピトープは通常アミノ酸あるいは糖側鎖のような分子の化学的に活性な表面での集まりからなり、通常特異的な三次元構造の特性、及び特異的な電荷特性を有する。
【0066】
必要な場合は、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体は、例えば、そのペプチドまたはその抗体を生成したペプチドが結合されたマトリックスに結合させ、溶出することによりさらに精製することができる。当業者であれば、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の精製及び/または濃縮のための免疫学の分野における通常の手段を理解するであろう(例えばColiganら、Unit 9,Current Protocols in Immunology,Wiley Interscience,最新版を参照、これは引用により本明細書の一部とする)。
【0067】
本発明はまた、espA特異的ヌクレオチドプローブまたは抗EspA抗体を設計する際に使用するためのペプチドエピトープを提供する。このようなプローブあるいは抗体は、限定するものではないが、グラム陰性細菌からのポリペプチドあるいはポリヌクレオチド等のその他の病原体の毒性に関与し得るタンパク質あるいは遺伝子を同定するために使用することができる。
【0068】
ポリクローナル及びモノクローナル抗体、キメラ抗体、単鎖抗体等を含む本発明の抗体は、本発明のEspAタンパク質、ペプチドあるいはヌクレオチド配列あるいはその断片に高い免疫特異性で結合する能力を有する。これらの抗体は、非標識でもよく適当に標識してもよい。本発明の抗体は、例えばEspAのアフィニティ精製のために使用することができる。本発明の抗体は、細胞、組織サンプル、サンプル調製物、あるいは液体中のこれらのタンパク質またはペプチドの定性的または定量的な検出のための公知の免疫学的な方法に使用できる。本発明の抗体は、前記ヌクレオチド配列またはその部分の定性的または定量的な検出のための公知の免疫学的な方法に使用することができる。
【0069】
本発明は、サンプル中のEspAポリペプチドを検出するための方法を提供し、該方法は、被検体からのサンプルをEspAポリペプチドに対する抗体と接触させ、EspAポリペプチドに対する抗体の結合を検出することを含む。結合は、サンプル中のEspAポリペプチドの存在を示す。本明細書で使用する用語「サンプル」は、哺乳動物またはヒト被験者あるいはその他の動物に由来する物質を含む。そのようなサンプルは、限定するものではないが毛、皮膚サンプル、組織サンプル、培養細胞、培養細胞培地、及び体液を含む。例えば、EspAポリペプチドは、HeLa細胞(例えば、ヒトの)培養物中で検出することができる。
【0070】
本明細書で使用する用語「組織」は、ヒトまたはその他の動物から得られた結合した細胞の塊(例えば、CNS組織、神経組織あるいは眼組織)をいうものであり、細胞に伴う結合物質及び液体物質を含む。例えば、ウサギ腸内病原性大腸菌は、ウサギの胃、盲腸及び結腸において見られる。本明細書で使用する用語「体液」はヒトまたはその他の動物から得た液体物質をいう。そのような体液としては、限定するものではないが、血液、血漿、血清、血清誘導物、胆汁、粘液、唾液、汗、羊水、腰部または脳室脳脊髄液(CSF)のようなCSFが挙げられる。
【0071】
本明細書で使用する用語「サンプル」は、単離されたポリペプチドを含む溶液、ポリペプチドが分泌された媒体、及びEspAポリペプチドを生産する宿主細胞を含む媒体も含む。例えばサンプルは、SDS-PAGEによって分離され、ウェスタン免疫ブロット分析のためにニトロセルロースへ移されるタンパク質サンプルとすることができる。反応を得るために必要なサンプルの量は当業者により標準的な実験技術で決定することができる。サンプルの最適な量は、連続希釈法によって決定することができる。
【0072】
ある態様においては、サンプル中のEspAポリペプチドの存在が、腸内病原性大腸菌による感染を示す。別の態様においては、サンプル中のEspAポリペプチドの存在が、腸内出血性大腸菌による感染を示す。
【0073】
本発明のタンパク質、タンパク質断片及び合成ペプチドには、予後、治療、診断あるいはドラッグデザインの用途等の多数の用途が意図されるものである。本発明のタンパク質、タンパク質断片及び合成ペプチドは、本発明のタンパク質に対する特異的な免疫反応性を有するモノクローナル及びポリクローナル抗体の調製のための基礎を提供する。ある態様においては、本発明は、請求項1のポリペプチドを宿主に投与し、宿主においてEspAポリペプチドに対する防御免疫応答を誘発することによる、EspA-生産大腸菌により引き起こされる疾患に感受性を有する宿主を免疫化する方法を提供する。これにより、EspA生産生物による宿主の感染が防がれる。より特異的な態様においては、EspA生産生物は大腸菌株である。さらに特異的な態様においては、大腸菌株は腸内病原性あるいは腸内出血性大腸菌のいずれかである。
【0074】
別の態様においては、本発明は、宿主をEspAポリペプチドで免疫化し、宿主においてEspAポリペプチドに対する免疫反応を誘発することによる、EspA生産生物に起因する疾患を緩和する方法を提供する。より特異的な態様においては、EspA生産生物は大腸菌株である。さらに特異的な態様においては、大腸菌株は腸内病原性あるいは腸内出血性大腸菌のいずれかである。本発明は、espAポリヌクレオチドを含むことが疑われるサンプルをespAポリヌクレオチドとハイブリダイズする核酸プローブと接触させ、プローブのespAポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションを検出することによる、サンプル中のespAポリヌクレオチドを検出するための方法を提供する。ハイブリダイゼーションの検出は、サンプル中のespAポリヌクレオチドを示す。
【0075】
別の態様においては、本発明は変異させたespA遺伝子を有する生物を提供する。espA遺伝子を変異させられていてもよい好ましい生物としては、限定するものではないが細菌が挙げられる。espA遺伝子を変異させられていてもよい細菌としては大腸菌が挙げられる。espA遺伝子を変異させられていてもよい大腸菌としては腸内病原性及び腸内出血性大腸菌が挙げられる。
【0076】
本発明は、EspAポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに選択可能なマーカーをコードする核酸を挿入することを含む、espAポリヌクレオチドを生産するための組換え方法を提供する。得られるポリヌクレオチドは、選択可能なマーカーを含む組換え体EspAポリペプチドをコードする。例えば、選択可能なマーカーは、単純ヘルペスウイルス(HSV)標識であってもよく、これに対する抗体は市販されている。
【0077】
本発明は、EspAポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞をEspAポリペプチドの発現と分泌を可能とする条件下で増殖させ、ポリペプチドを単離することによる、EspAポリペプチドを生産するための組換え方法を提供する。ポリペプチド及びペプチドを組換えにより生産する方法は本発明の範囲内にあるものである。本明細書で使用する用語「発現と分泌を可能とする条件」は、核酸が転写され、翻訳され、そのように生産されたポリペプチドを単離するのに適した条件をいう。生産されたポリペプチドは、培地に分泌されるタンパク質であり得る。培地は、微生物の増殖が起こり得るか、あるいは微生物が生存し得る液体、物質あるいは生物を含む。そのような環境は、例えば動物組織あるいは体液、水、及びその他の液体、食品、食品製品あるいは食品抽出物、ある種の無生物物質とすることができる。例えば、微生物はLuria-Bertani(LB)培地において増殖し得る。環境が微生物の増殖を促進することは必要でなく、その生存を可能とするだけでよい。
【0078】
本発明は、選択可能なマーカーをコードするポリヌクレオチドを細菌III型分泌系を有する細菌に導入し、細菌の増殖と前記ポリヌクレオチドによってコードされたポリペプチドの分泌を可能とする条件下で細菌を増殖させ、細菌III型分泌系を阻害する可能性がある化合物を細菌と接触させ、ポリペプチドの発現を誘発し、ポリペプチドの分泌を検出することによる、細菌III型分泌系を阻害する化合物を同定する方法を提供する。この方法の実施において、分泌が見られないことは細菌III型分泌系の阻害を示す。本発明において使用する用語「III型分泌」及び「III型分泌」経路は、細胞膜を横切って分子を排出する特別な機構をいう。細胞膜を横切って分子を排出することは、毒性因子をそれらが宿主細胞成分と相互に作用することができる表面に移動させるのに必須の過程である。III型分泌経路は、エネルギー源としてアデノシン三リン酸(ATP)を使用する。III型分泌経路は、鞭毛及び線状ファージ組立て遺伝子に相同であるが、グラム陰性菌に見られる他の分泌経路とは異なる。これはいずれの哺乳動物の経路にも似ていない。これは常に疾患の生成と関連する。III型分泌経路によって分泌される毒性因子は病原体の間で変化するが、III型分泌機構の成分は少なくともサルモネラ菌、赤痢菌及びエルシニア(Yersinia)の間で互換性がある。
【0079】
さらに本発明のポリペプチドあるいはヌクレオチド配列は、それらと相互作用し(例えば結合する)、それらの生物活性に影響を及ぼす化合物あるいは組成物を同定するために使用することができる。そのような効果には、EspA活性あるいは分泌の阻害あるいは刺激作用が含まれる。
【0080】
本発明は、EspAポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにおいて変異を生成し、選択可能なマーカーをコードする核酸配列をその変異の部位に挿入し、変異させたespAポリヌクレオチドを生物の染色体espA遺伝子に導入して染色体espA遺伝子に変異を生成し、変異を有する生物を選択することによる、非病原性生物を生産するための方法を提供する。本明細書で使用する用語「変異」は遺伝子のヌクレオチド配列、特にEspAポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにおける変化をいう。変異は、異なるアミノ酸配列を有するEspAポリペプチドを生成する変異、ミスセンス変異(フレームシフト変異を含む)、ナンセンス変異(ノックアウト変異を含む)、及びEspAポリペプチドの部分を含む融合タンパク質を生成する組換え遺伝子技術を含む。ある態様においては、選択可能なマーカーをコードする核酸配列は、カナマイシンに対する耐性をコードする。例えば、カナマイシン耐性遺伝子(kan)をコードするaphA-3カセットを、EspAポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにクローン化し、変異させられたespAポリヌクレオチドをカナマイシンプレート上で選択してノックアウト変異を生成することができる。
【0081】
本発明を実施するのに好ましい生物としては、限定するものではないが細菌が挙げられる。別の態様においては、EspAポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにおいて変異を生成するために使用する生物は大腸菌である。形質転換することができる大腸菌としては、腸内病原性及び腸内出血性大腸菌が挙げられる。
【0082】
本発明は、Eaeポリペプチドを発現するespA-欠損変異体生物及びEspAポリペプチドを発現するeaeA-欠損変異体生物の両方を宿主細胞に加え、細菌を宿主細胞に結合させ、これにより細胞中のチロシンキナーゼ活性を活性化することによる、宿主細胞におけるチロシンキナーゼ活性を活性化する方法を提供する。ある態様においては、細胞中の宿主細胞チロシンキナーゼ活性の活性化が90キロダルトン宿主膜タンパク質、Hp90のチロシンリン酸化を引き起こし、細胞内のイノシトールホスフェート(IP3)及びカルシウムを流動化させる。例えば、eaeA変異体とespA変異体の2つの変異体株をHeLa細胞に同時に感染させるのに使用する場合、侵入のためにeaeA変異体を使用してespA変異体を補完することができる。このように本発明は、細胞生物学により病原を研究するのに有用な科学的方法を提供する。
【0083】
本発明は、本発明の一種以上の抗体を含むキット並びにヌクレオチドをベースとするキットを包含する。ある態様においては、前記キットはEspAポリペプチドの検出に有用であり、EspAポリペプチドに結合する抗体を含む容器を密に封入した状態で受容するための区画化されたキャリアー手段である。本明細書で使用する「容器手段」は、バイアル、管等を含み、各容器手段は前記方法において使用される別々の要素の一つを含む。ある態様においては、EspAポリペプチドに結合する抗体は検出可能なように標識される。より特異的な態様においては、標識は放射性同位元素、生物発光性化合物、化学発光性化合物、螢光性化合物、金属キレート及び酵素からなる群から選択される。
【0084】
別の態様においては、前記キットはespAポリヌクレオチドの検出に有用であり、espAポリヌクレオチドにハイブリダイズする核酸プローブを含む容器を密に封入した状態で受容するための区画化されたキャリアー手段である。ある態様においては、espAポリヌクレオチドにハイブリダイズする核酸プローブは検出可能なように標識される。より特異的な態様においては、標識は放射性同位元素、生物発光性化合物、化学発光性化合物、螢光性化合物、金属キレート及び酵素からなる群から選択される。
【0085】
EspAは分泌タンパク質であるので、これはその他のペプチド及びタンパク質をクローン化して発現するための融合相手として有用である。例えば、対象のタンパク質に融合されたEspAは、例えば大腸菌のような宿主細胞において組換えにより製造され、融合タンパク質は形質転換された宿主が増殖する培養培地中に分泌される。融合タンパク質を抗EspA抗体により分離し、その後対象のペプチドまたはタンパク質からEspAを切断することができる。ELISAあるいはその他の免疫アフィニティ法をEspA融合タンパク質を同定するのに使用することができる。本発明は、対象となるポリペプチドまたはペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能なように結合したEspAをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を、融合ポリペプチドの発現及び分泌を可能とする条件下に増殖させ、融合ポリペプチドを単離することを含む、EspA融合タンパク質を生産する方法を提供する。用語「作動可能なように連結又は結合した」は、融合タンパク質の場合、プロモーター配列及びプロモーター核酸配列によって制御された1以上の構造遺伝子の間の機能的な結合をいう。作動可能なように結合されたプロモーターは、構造遺伝子によりコードされたポリペプチド(例えば融合タンパク質)の発現を調節する。
【0086】
以下の実施例は、本発明を説明するためのものであり、限定することを意図するものではない。これらは典型的に使用され得るものであるが、当業者に周知の別の方法を使用してもよい。
【実施例1】
【0087】
腸内病原性大腸菌espA遺伝子のDNA配列分析
この実施例の目的は、腸内病原性大腸菌の接着及び展退活性を担う遺伝子であるespAを特性化することである。espA遺伝子は、25キロダルトンの分泌タンパク質をコードし、腸内病原性大腸菌ゲノム上の、密着に必要な二つの遺伝子座であるeaeAとespBとの間の腸内細胞展退の遺伝子座に位置している。
【0088】
腸内病原性大腸菌のeaeAとespBとの間の腸内細胞展退の遺伝子座のDNA配列を決定した。DNA配列決定は以下のように行った。eaeA内からespBの上流(5')にわたる腸内細胞展退の遺伝子座のSalI-BglIIDNA断片を市販のプラスミドpBluescriptにクローン化してプラスミドpLCL109を形成した。プラスミドpLCL109のeaeB遺伝子に近い末端から、一連のネスティッドDNA欠失を形成した。これらのプラスミドpLCL109のDNA欠失を鋳型として用い、必要に応じて合成されたオリゴヌクレオチドプライマー[a-35S]dATP、及びSequenase酵素を用いてDNAの両鎖のヌクレオチド配列を決定した。DNA配列データは、University of WisconsinのGenetics Computer Groupが開発したソフトウェアパッケージで分析した。
【0089】
DNA配列の分析により三つのオープンリーディングフレームが判明した。第二のオープンリーディングフレーム(espA)の5'末端におけるDNA配列により予測されるアミノ酸配列は、腸内病原性大腸菌により分泌されるMRが約25キロダルトンのタンパク質のアミノ末端配列と同一であった。TFASTAを用いたGenBankデータベースの検索では類似した配列のタンパク質は検出されなかった。従ってespA遺伝子は分泌腸内病原性大腸菌タンパク質をコードする。
【0090】
espAがコードするタンパク質全体の予測分子量は20,468ダルトンである(図1)。報告された分泌産物のアミノ末端の前にリーダー配列は存在していない。強いコンセンサスリボゾーム結合部位は、開始コドンの前の7ヌクレオチドで終了している。アミノ末端における最初の19残基の11の残基は、セリンまたはスレオニンと予測された。
【実施例2】
【0091】
プラスミド上及び染色体上のespA遺伝子における変異の形成
この実施例の目的は、生物の染色体上のespA遺伝子に変異を形成することであった。また、この実施例の目的はプラスミド上のespA遺伝子に変異を形成することであった。その後このプラスミドを用いて、他の生物のespA遺伝子の変異を生成することができる。espA遺伝子における非極性変異を含むプラスミドを構築した。さらに、その染色体espA遺伝子における非極性変異を含む変異体細菌株を生成した。
【0092】
非極性変異を有するespA遺伝子を図2に示す。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて制限部位とともに欠失を生成し、これによりカナマイシンに対する耐性をコードするaphA-3カセットを、削除した領域にクローン化することができるようにした。このaphA-3カセットに先行して(5')、三つの全てのリーディングフレームに翻訳停止コドンがあり、その直後に(3')コンセンサスリボゾーム結合部位及び開始コドンがある。espA遺伝子への挿入は、espAの3'末端のリーディングフレームを保持し、従って下流の(3')遺伝子の転写及び翻訳には影響を及ぼさないように形成した。DNA配列決定により変異のリーディングフレームを確認した。
【0093】
プラスミド上のespA遺伝子における非極性変異の構築は以下のようなポリメラーゼ連鎖反応により行った。PCR鋳型は、pBluescriptにクローン化されたpLCL109のClaI-BglII断片を含むプラスミドpLCL114とした。Donne-99を有するユニバーサルプライマー及びDonne-100を有するリバースプライマーの2対のプライマーを用いた。オリゴヌクレオチドDonne-99及びDonne-100はそれぞれ、SalI-BglII断片の4157番目から4140番目のヌクレオチド、及び4297番目から4324番目のヌクレオチドである。クローニングのためにNruI制限部位をDonne-99及びDonne-100の双方の5'末端に形成した。オリゴヌクレオチドは、BaltimoreのUniversity of MarylandのBiopolymer Laboratoryで構築した。PCRは、ミニサイクラー(minicyler)内の50μLのサンプルで行った。PCR反応は、94℃で1分間のDNA変性、55℃で2分間のプライマーのアニーリング、及び72℃で3分間のポリヌクレオチドの伸長の30サイクルとした。増幅された二つの得られた増幅断片をそれぞれ市販のプラスミドpCRscriptにクローン化してpLCL119及びpLCL120を生成した。次いでpLCL120のインサートを、SalI及びNruIを用いてpLCL119にクローン化し、所望の欠失を含むpLCL121を形成した。次いで、SmaI部位が隣接する850bpのaphA-3カナマイシン耐性カセットをpLCL121のNruI部位に挿入した。
【0094】
変異されたespA対立遺伝子を陽性選択自殺ベクターpCVD442にクローン化し、対立遺伝子交換により野生型腸内病原性大腸菌株E2348/69に導入した。espA変異体細菌株を以下のように構築した。中断espA遺伝子を含むaphA-3カナマイシン耐性を有するプラスミドからのSalI-SacI断片を、三親結合により、または1.8kVに設定された大腸菌パルサーを用いる0.1cmキュベットでのエレクトロポレーションによりDH5αpir中の陽性選択自殺ベクターpCVD442にクローン化してE2348/69に導入した。
【0095】
espA変異体を改変LBカナマイシンプレート上で選択した。得られた腸内病原性大腸菌変異体株UMD872は、スクロース及びカナマイシンに対する耐性を有し、アンピシリンに対する感受性を有していた。変異に隣接する二つのプライマーDonne-52及びDonne-73を用いたPCR増幅によりespA変異が形成されたことを確認した。細菌は50%LBブロス/50%グリセロール(v/v)において-70℃で貯蔵し、クロラムフェニコール(20μg/ml)、アンピシリン(200μg/ml)、ナリジクス酸(50μg/ml)、またはカナマイシン(50μg/ml)を必要に応じて添加したLBアガープレート上またはLBブロスで増殖させた。
【実施例3】
【0096】
腸内病原性大腸菌espA遺伝子の破壊によりEspAタンパク質の分泌が消滅する
この実施例の目的は、espA遺伝子によりコードされるタンパク質を同定することであった。EspAタンパク質のアミノ末端配列データを比較すると、翻訳されたespA遺伝子の配列と一致していた。この結果を確認するため、espA欠失変異体UMD872を放射標識した組織培養培地中で増殖させた。espA遺伝子の欠失により25キロダルトンの放射標識した分泌タンパク質が消滅する。この結果を、分泌されたEspAタンパク質と反応する抗EPEC抗血清を用いた免疫沈降により確認した。抗EPEC抗血清を用いたウェスタン分析により25キロダルトンの分泌タンパク質がないことが示された。espA欠損株を無傷のespAを含むプラスミド(pMSD2)で形質転換すると、EspAタンパク質の分泌が回復した。このプラスミドがコードするEspAタンパク質の細菌による産生が増加することにより、III型分泌経路による他のタンパク質の分泌が減少した。
【実施例4】
【0097】
腸内病原性大腸菌EspAは培養上皮細胞の侵入に必要である
この実施例の目的は、腸内病原性大腸菌EspAタンパク質が上皮細胞侵入に関与しているかどうかを調べることであった。EspAタンパク質は、宿主細胞のシグナル伝達経路及び宿主の侵入を誘発するのに必要である。
【0098】
上皮癌細胞(HeLa)の単層に、親野生型またはespA変異体腸内病原性大腸菌株を3時間感染させた。接着性及び細胞内の(即ち、侵入性)腸内病原性大腸菌の数を測定した。HeLa細胞に対して接着性の細菌の絶対数は、変異体腸内病原性大腸菌株と親の腸内病原性大腸菌株との間の増殖速度の相違によって、菌株間で異なっていた。espA変異体株UMD872は上皮細胞に効率的に接着するが、侵入性は欠いている。しかし、espA遺伝子が無傷のespA遺伝子をコードするプラスミドpMSD2によって遺伝子的に補完されると、UMD872は野生型のものに近いレベルでHeLa単層に侵入した。
【0099】
espA、espB、及びeaeAの何れかにおける変異を含む細菌株の侵入を欠く挙動が、トランスに相互に遺伝子的に補完し合ってその後の侵入を媒介することができたのかどうかを判定するために、HeLa単層の同時感染実験を行った。eaeA細菌変異体株はシグナル発生を活性化させるが、密着を欠いている。eaeA変異体株により媒介されたシグナル発生により、espB欠損株が上皮細胞に入ることが可能となるが、逆は不可能である。これら二つの変異体株を用いてHeLa細胞を同時感染させた場合、eaeA変異体はespA変異体の侵入性を補完したが、eaeA変異体株の侵入の増加はみられなかった。実際に、より接着性の高いeaeA変異体によって誘導されたシグナル発生により、espA変異体の取り込みが増加する。espA及びespB欠失菌株の同時感染では、何れの菌株の侵入も増加せず、espA及びespBが互いに補完しないことを示している。
【0100】
同時感染実験により、espBのようにespA変異体の挙動はeaeAによって補完されるがその逆はないことが示された。実際、より接着性の高いeaeA変異体により生成されるシグナル発生によりインチミン発現espA変異体の取り込みが増加する。これに対して、espA及びespB変異体菌株の何れもが相互に補完できず、これは両タンパク質が上皮シグナル発生の誘発における同じ段階で一緒に作用し得ることを意味している。
【実施例5】
【0101】
EspAは上皮細胞でシグナル伝達事象を誘発するのに必須である
この実施例の目的は、上皮細胞においてシグナル伝達事象を誘発するためにEspAが必須であるかどうかを判定することであった。腸内病原性大腸菌は、宿主細胞の90キロダルトンの膜タンパク質のチロシンリン酸化、及びその後の接着細菌下のリン酸化タンパク質、アクチン、及びその他の細胞骨格成分の蓄積を誘導する。侵入性を欠いたespA変異体の、哺乳類細胞におけるこの二つのシグナル発生事象を誘導する能力を調べた。野生型腸内病原性大腸菌とは異なり、espA変異体株UMD872は宿主Hp90のリン酸化を誘導することができなかった。このリン酸化事象を誘導する能力は、EspAタンパク質をコードするプラスミド(pMSD2)によって回復した。
【0102】
接着及び侵入のアッセイは以下のように行った。DMEM中で増殖させた105のHeLa細胞に様々な腸内病原性大腸菌株(感染多重度1:100)を3時間感染させた。HeLa細胞は、10%(v/v)胎児ウシ血清を補充したダルベッコ最小イーグル培地(DMEM)中で、5%CO2とともに37℃で増殖させた。単層をリン酸緩衝食塩水で3回洗浄した後、リン酸緩衝食塩水中の1%Triron(v/v)に溶解し、LBアガープレート上に連続希釈により塗布した。侵入アッセイのために、洗浄した単層をゲンタマイシン(100μg/ml)と1時間インキュベートして外部の細菌を死滅させ、その後洗浄して溶解し、平板培養した。
【0103】
HeLa細胞単層に野生型または変異体腸内病原性大腸菌株を3時間感染させた。そしてHeLa細胞の上皮Triron X-100可溶性及び不溶性タンパク質を単離した。タンパク質のサンプルをSDS-PAGEで分離し、ニトロセルロースに移し、抗ホスホチロシン特異抗体をプローブとして検索した。
【0104】
腸内病原性大腸菌の分泌タンパク質及びHeLa細胞のタンパク質の単離は以下のように行った。組織培養プレートに106のHeLa細胞を一晩播種した。感染の前に、この培地をDMEMからメチオニン/システイン含有シクロヘキシミド(100μg/ml)を除去したものに置換した。HeLa細胞は10%(v/v)胎児ウシ血清を補充したDMEM中で、5%CO2とともに37℃で増殖させた。腸内病原性大腸菌を添加し(感染多重度100:1)、5%CO2インキュベーター中で37℃で2.5時間インキュベートし、その後30分かけて200μg/mlの35Sシステイン/メチオニンを添加した。培養上清を除去し、遠心分離(18,000xg、10分間)によって細菌をペレット化した。上清の分泌されたタンパク質を氷冷トリクロロ酢酸(10% v/v)を添加することにより沈降させ、氷上で60分間インキュベートした。タンパク質は、上述のように遠心分離によってペレット化し、Laemelliサンプル緩衝液に再懸濁した。サンプルを12%SDS-PAGEによって分離し、タンパク質のプロフィールをオートラジオグラフィーによって調べるか、あるいはニトロセルロースに移して抗EPEC抗体をプローブとして検索した。
【0105】
全ての腸内病原性大腸菌株は、不溶性画分においてチロシンリン酸化85キロダルトンタンパク質Ep85を示し、単層上の腸内病原性大腸菌株の存在が確認された。
【0106】
Helaホスホチロシンタンパク質は以下のように分析した。感染されたHeLa単層を氷冷リン酸緩衝食塩水で3回洗浄し、その後タンパク質分解酵素阻害剤の存在下で、1%Triron X-100に溶解した。Triron不溶性及び可溶性画分を単離し、Laemelliサンプル緩衝液に再懸濁し、抗ホスホチロシン抗体を用いたウェスタンブロット分析によりホスホチロシンタンパク質の存在を分析した。
【0107】
感染されたHeLa細胞を、蛍光性標識した抗ホスホチロシン抗体またはローダミン−ファロジンを用いた免疫蛍光顕微鏡検査で調べると、野生型の親腸内病原性大腸菌とは異なり、espA変異体はチロシンリン酸化タンパク質あるいは細胞骨格アクチンを接着微小コロニーの下に蓄積しないことがわかった。しかし、ホスホチロシン及びアクチンの蓄積は、プラスミドpMSD2上にespA遺伝子を有する株を用いることにより回復することができた。
【0108】
免疫蛍光顕微鏡検査は以下のように行った。円形のガラスカバースリップ上に播種したHeLa細胞に腸内病原性大腸菌または変異体株を3時間感染させた。単層を洗浄して2.5%パラホルムアルデヒド中で固定し、次いで糸状アクチンを(ファロジン−ローダミンを用いて)染色するか、あるいは適当なフルオレセイン結合二次抗体を用いる抗ホスホチロシン抗体を用いて染色した。
【実施例6】
【0109】
ウサギ腸内病原性大腸菌(RDEC-1)が分泌した毒性タンパク質EspA及びEspBの特性化
この実施例の目的は、ウサギ腸内病原性大腸菌(RDEC-1)におけるEspA及びEspBの構造を調べることであった。espA及びespB遺伝子をクローン化し、その配列を腸内病原性大腸菌(EPEC)のものと比較した。EspAタンパク質は、ある程度の類似性(88.5%同一)を示した。EspBタンパク質は内部領域において不均質(69.8%同一)であったが、腸内出血性大腸菌(EHEC)の一つの株と同一であった。
【0110】
espA及びespB遺伝子のクローン化及び配列分析は以下のように行った。RDEC-1 espA及びespBをコードするDNA断片を、刊行物に記載された腸内病原性大腸菌の配列に由来するプライマーを用いてRDEC-1の染色体DNAからPCRによって得た。Vent DNAポリメラーゼをPCRに用いてRDEC-1及び腸内病原性大腸菌株に由来する染色体DNAを増幅した。PCR反応は、94℃で1分間の変性、55℃で1分間のアニーリング、及び72℃で2分間の伸長の30サイクルにより行った。得られた4.3kbpの生成物を、市販のプラスミドpBluescriptに結合し、両鎖を配列決定した。DNA配列決定は以下のように行った。espA及びespB遺伝子をコードする4.3kbpのDNA断片を、プライマーAA01(+)及びMS11(-)、及びDNA鋳型としてRDEC-1染色体DNAを用いるPCRによって増幅した。得られた平滑末端断片を、SalIで消化し、市販のプラスミドpBluescript-II SK(+)のSalI-SmaI部位にクローン化した。RDEC-1 espAのDNA配列及び両鎖については、市販のTaq DyeDeoxyキットを用いて行った(図3)。
【0111】
このクローン化領域において二つのオープンリーディングフレームが見出され、これらのDNA配列は腸内病原性大腸菌espA及びespBに類似していた。RDEC-1 EspA(192アミノ酸)の予測分子量は23,533ダルトンであり、RDEC-1 EspB(314アミノ酸)は33,219ダルトンであった。RDEC-1 EspAは、腸内病原性大腸菌とある程度類似しており、88.5%の同一性を有していた(図4A及び図4B)。
【0112】
予測できなかった結果は、RDEC-1 EspBタンパク質が、子ウシから最初に単離され、溶血性尿毒症症候群の患者からも単離された、最近報告された腸内出血性大腸菌株413/89-1血清型026由来のEspBと、位置12(TからCに変化)及び位置729の塩基対(GからT)の二つのヌクレオチドの相違があったものの同一であったことである。さらに、RDEC-1 EspBは、腸内出血性大腸菌血清型0157及び腸内病原性大腸菌株のものとそれぞれ70.3%及び69.8%の同一性を示した。腸内病原性大腸菌配列と比較すると、RDEC-1と腸内出血性大腸菌(血清型026及び0157)EspBには同じ位置に小さな配列の欠失が見られた(図4A〜D)。
【0113】
これらの結果は、RDEC-1がespA及びespB遺伝子をコードしていること、予測EspAポリペプチドがRDEC-1及び腸内病原性大腸菌において高度に保存されていることを示している。しかしEspBは、腸内病原性大腸菌より腸内出血性大腸菌により類似している。espAから下流(3')のオープンリーディングフレームは、EspB分泌を調節し、宿主シグナル伝達経路を誘発するのに必要な分泌タンパク質である腸内病原性大腸菌EspDに対する類似性を示した(EMBL GenBankデータ、受託番号Y09228)。これらの結果は、espDがやはりRDEC-1においてespAとespBとの間に位置していることを示している。
【実施例7】
【0114】
RDEC-1 EspA及びEspBの特性化
この実施例の目的は、ウサギ腸内病原性大腸菌(RDEC-1)におけるEspAとEspBの機能を調べることであった。RDEC-1 espA及びespBにおける変異により、RDEC-1遺伝子産物が、宿主シグナル伝達経路及びHeLa細胞への侵入を誘発するのに必須であることが明らかになった。腸内病原性大腸菌espA及びespBを含むプラスミドをRDEC-1変異体株へ補充することにより、腸内病原性大腸菌タンパク質はより高レベルの侵入を媒介したものの、それらが機能的に互換性があることが示された。さらに、RDEC-1及び腸内病原性大腸菌分泌タンパク質の最大の発現は、それらの各宿主の体温において起こり、これは腸内病原性大腸菌がウサギへの感染力を欠いていることの一因であり得る。
【0115】
宿主上皮シグナル伝達経路におけるRDEC-1 espA及びespBの役割を確認するために、非極性停止コドン変異をespA及びespBに形成した。二つの自殺ベクターを構築し、戻し結合よりRDEC-1野生型株に導入した。得られた変異体株AAF001ΔA(EspA-)、AAF001ΔB(EspB-)、及び二重変異体株AAF001ΔAB(EspA/EspB-)をBglII消化によって確認した。
【0116】
RDEC-1 espA及びespB遺伝子における非極性停止コドン変異の形成は以下のように行った。espA及びespB遺伝子をコードする腸内細胞展退の遺伝子座の2.7kbpのDNA断片を、プライマーBK25(+)及びMS11(-)、及びDNA鋳型としてpORF123Bを用いるPCRにより増幅した。得られた平滑末端断片をEcoRIで消化し、pBluescript II SK(+)ベクターのEcoRI-SmaI部位にクローン化してpORF23Bを得た。espAを含むpORF23Bからの1.1kbpのEcoRI-BglII DNA断片をpBluescript II SK(+)のEcoRI-BamHI部位にクローン化してpORF23を得た。
【0117】
espAに非極性変異を形成するために、BglII制限部位及び停止コドンを含むΔespA(+)及びΔespA(-)プライマーを用い、またDNA鋳型として環状pORF23を用いて逆PCRを行った。次いでこのPCRの生成物の平滑末端結合によりpORF23Δを得た。得られたプラスミドは、停止コドン及びespA開始コドンから235塩基対下流(3')のBglII部位を含んでおり、これはDNA配列決定により確認された。pORF23AからのespA変異を含む1.1kbpのSall-SacIDNA断片を、陽性選択用のsacB遺伝子及びアンピシリン耐性遺伝子を含む自殺ベクターpCVD442の同じ部位に挿入し、pAA23Δを得た。得られたプラスミドを大腸菌SM10λpirに導入し、pACYC184を含むRDEC-1中に戻し結合した。
【0118】
espBにおける非極性変異のため、ΔespB(+)及びΔespB(-)プライマー、及びDNA鋳型としてpBxbを用いて逆PCRを行った。pBxbは、pBluescriptベクターにクローン化されたespBをコードするpORF23Bからの1.4kbpのXbaI断片を含む。得られたPCR生成物を自己結合させ、ΔespB(-)及びΔespB(+)プライマーにより導入されたBglII部位及び停止コドンを含むpBxbΔを得た。得られたpBXbΔのesp遺伝子は、espB開始コドンから154塩基対下流(3')から始まる250塩基対だけ除去されていた。pBxbAからのespB変異を含む1.1kbpのSalI-SacI部位DNA断片をpCVD442の同じ部位に挿入してpAABxbΔを得た。得られたプラスミドを大腸菌SM10λpirに形質転換し、pACYC184を含むRDEC-1に戻し結合した。espA及びespBにおいて二重変異を形成するため、pAABxbΔをAAF001ΔA(EspA-)株に導入した。3つのRDEC-1非極性変異体株を、スクロース及びクロラムフェニコールに対する耐性、及びアンピシリンに対する感受性を維持するそれらの表現型により確認した。espA及びespBにおける停止コドン挿入を確認するため、染色体DNAを各変異体株から調製し、esp遺伝子を含むプライマーを用いてPCRを行った。得られたPCR産物をBglIIで消化し、この形成された制限部位の存在を確認した。espA及び/またはespBにおける停止コドンを含む変異体株は、それぞれAAF001ΔA(EspA-)、AAF001ΔB(EspB-)、及びAAF001ΔAB(EspA-/EspB-)と指称することとした。
【0119】
自殺ベクターが、それぞれの隣接領域や他の遺伝子座に影響を及ぼさないことを確認するために、野生型に戻す変異(「戻し変異」)を行った。自殺ベクターpAA23及びpAABxbのAAF001ΔA(EspA-)及びAAF001ΔB(EspB-)株へのbans結合(bans conjugation)により、二つの戻し変異体株を得た。得られた戻し変異体株AAF003及びAAF004は、PCR及びBglII消化により確認した。EspA及びEspB株における戻し変異の形成は以下のように行った。espAを含むpORF23からの1.1kbpのSalI-SacI DNA断片をpCVD442のSalI-SacI部位に挿入してpAA23を得た。1.4kbpのpBxbのSal-SacI断片をpCDD442のSalI-SacI部位に挿入し、pAAFBxbを得た。pAA23及びpAABxbをSMλpirに導入し、AAF001AA及びAAF001ABにbans結合させた。得られた戻し変異体株は上述のように確認し、AAF002(EspA+)及びAAF003(EspB+)と指称することとした。
【0120】
腸内病原性大腸菌espA及びespB遺伝子のクローニングは以下のように行った。espA及びespBをコードする2.8kbpのDNA断片を、プライマーEespA(+)及びEespB(-)とともに腸内病原性大腸菌2348/69染色体DNAを鋳型として用いるPCRにより増幅した。この断片をBamHI及びSalIで消化し、lacZプロモーターの調節下の低コピーベクターpMW118のBamHI-SalI部位に導入してpMWespABを得た。espDオープンリーディングフレームに制限部位を有するpMWespABをBglIIで消化し、Klenow断片で平滑末端化し、次いで自己結合させてpMW6espDを得た。また、pMW6espABをBglII及びBamHIで消化し、自己結合させてpMWespBを得た。このpMWespABをBglII-SalIで消化し、Klenow断片で充填し、自己結合させてpMWespAを得た。
【0121】
組織培養培地におけるRDEC-1及びその変異体株の分泌プロフィールを分析した。腸内病原性大腸菌は、110キロダルトン(EspC)、40キロダルトン、39キロダルトン、37キロダルトン(EspB)、及び25キロダルトン(EspA)の5種のタンパク質を培養培地に分泌する。RDEC-1は、EspCと等価なタンパク質を分泌しない点を除いて同様な分泌プロフィールを示した。EspCは、宿主シグナル伝達経路の腸内病原性大腸菌誘導に必要とされない。二種の分泌タンパク質(40及び39キロダルトン)の分離は困難であったが、これらのタンパク質は、SDS-PAGEの異なる条件を用いて分離することができた。RDEC-1は、腸内病原性大腸菌EspA及びEspBと同様の移動度を有する二種のタンパク質を分泌した。
【0122】
RDEC-1分泌タンパク質を以下のように調製した。一晩培養した細菌の培養物を1:100でDMEMに希釈し、600nmの光学密度(OD600)が1.0になるまでインキュベートした。腸内病原性大腸菌espA及びespB組換えプラスミドを含むRDEC-1変異体株については、イソプロピルチオガラクトシド(IPTG)をDMEMに添加して転写を誘導した。細菌を遠心分離(18,000xg、10分間)で除去して、上清を10%氷冷トリクロロ酢酸を添加して沈殿させ、氷上で1時間インキュベートした。遠心分離の後、ペレットをLammeliサンプル緩衝液に再懸濁して、12%SDS-PAGEで分析した。
【0123】
EspA及びEspBの両タンパク質は、ウェスタン免疫ブロットにおいて抗腸内病原性大腸菌EspA及び抗腸内病原性大腸菌EspB血清と交差反応し、これはRDEC-1もEspA及びEspBタンパク質を分泌することを示している。ウェスタンブロットでは、腸内病原性大腸菌EspA及びEspBに対するウサギポリクローナル抗体を用いた。
【0124】
変異体株AAF001ΔA、AAF001ΔB、及びAAF001ΔABは、その分泌プロフィール及びウェスタンブロット分析により判定されたように、それぞれEspA、EspB、及びEspA/EspBタンパク質の分泌を欠いている。その遺伝子がespAから下流(3')に位置しているEspBは、変異体株AAF00ΔA(EspA-)でも分泌され、これは停止コドン挿入変異が下流の遺伝子発現に影響を及ぼさないことを示している。これらの結果から、RDEC-1 EspA及びEspBタンパク質が、我々がespA及びespBと指称することとした配列によってコードされていることも確認できる。さらに、AAF001ΔA(EspA-)及びAAF001ΔB(EspB-)に由来する二種の戻し変異体株AAF002及びAAF003は親の分泌タンパク質を発現し、これはAAF001ΔA及びAAF001ΔBにおける各非極性変異が、予測されたように下流の遺伝子及び他の遺伝子座に影響を及ぼさないことを示している。RDEC-1 EspA及びEspBのSDS-PAGEでの移動度は腸内病原性大腸菌の移動度より僅かに大きいが、RDEC-1EspA及びEspBの計算上の分子量は腸内病原性大腸菌のものよりも大きかった。
【0125】
他の分泌タンパク質の量は、EspA-、EspB-、EspA-/EspB-株においては野生型RDEC-1株と比較して低下していた。さらに、EspA-/EspB-株における40キロダルトン及び39キロダルトンのタンパク質の検出可能な分泌の低下は、EspA-及びEspB-株でみられたものよりも大きかった。腸内病原性大腸菌タンパク質の分泌は、EspCを除いて、sepクラスターによりコードされるIII型分泌系により媒介される。停止コドンを挿入することによるEspAまたはEspBの切断がこの分泌経路またはこの系のフィードバック調節を干渉し、他のIII型依存分泌タンパク質の分泌に影響を及ぼす可能性がある。
【0126】
Espタンパク質は、宿主シグナル伝達経路を誘発するのに必要である。腸内病原性大腸菌EspA及びEspBタンパク質は、宿主シグナル伝達経路を誘発し、チロシンリン酸化タンパク質、細胞骨格アクチン、及びその他の成分の接着細菌下の蓄積をもたらす。RDEC-1 EspA及びEspBがHeLa細胞においてこれらの事象を誘発するかどうかを判定するため、細胞骨格アクチンとチロシンリン酸化タンパク質を、ローダミン−ファロジン及び蛍光標識した抗ホスホチロシン抗体で染色した。付着したRDEC-1の下の細胞骨格アクチン及びチロシンリン酸化タンパク質の蓄積のレベルは腸内病原性大腸菌の場合より少ないが、これらの挙動は腸内病原性大腸菌のものと区別できない。これに対し、RDEC-1 EspA-、EspB-、及びEspA-/EspB-株は、付着した細菌下に細胞骨格アクチン及びチロシンリン酸化タンパク質を蓄積しなかった。しかし、戻し変異体株AAF003及びAAF004は、親株と同様にこれらのタンパク質を蓄積した。
【0127】
腸内病原性大腸菌espAまたはespBまたはその両方を含むプラスミドをRDEC-1 EspA-、EspB-、及びEspA-/EspB-株に導入すると、細胞骨格アクチン及びチロシンリン酸化タンパク質の蓄積がやはり回復した。しかし、EspBを分泌している腸内病原性大腸菌EspA-株をRDEC-1 EspBに同時感染させても宿主シグナル伝達事象の誘発は回復しなかった。腸内病原性大腸菌EspBも同時感染実験においてRDEC-1 EspAを補完しなかった。従って、EspA及びEspBは、同じ株から分泌される必要はあるが、両タンパク質のRDEC-1及び腸内病原性大腸菌における宿主シグナル伝達経路の活性化に関する機能は類似している。
【0128】
HeLa細胞に腸内病原性大腸菌を感染させると、チロシンリン酸化Hp90を免疫ブロットにより検出できた。免疫蛍光法により接着性RDEC-1細菌細胞下でチロシンリン酸化タンパク質が観察できたが、RDEC-1感染細胞ではチロシンリン酸化Hp90を検出できなかった。
【0129】
腸内出血性大腸菌は、免疫蛍光顕微鏡観察によって判定されたように、HEp-2及びT84細胞においてはチロシンリン酸化を誘導しない。配列決定の結果により、RDEC-1 EspBは、腸内病原性大腸菌より腸内出血性大腸菌に対してより類似していることが示されている。本実施例のこれらの結果から、RDEC-1感染の間のチロシンリン酸化タンパク質の蓄積がより低いことは、接着レベルの違いか、あるいはEspタンパク質の異質性、あるいはその両方によるRDEC-1の接着効率の低下に起因することがわかる。
【0130】
接着及び侵入能力。腸内病原性大腸菌EspA及びEspBは、宿主シグナル伝達経路の誘発に関与するばかりでなく、in vitroでの侵入にも必要である。接着及び侵入におけるRDEC-1 EspA及びEspBの役割を調べるため、RDEC-1 esp変異体株をRDEC-1のものと比較した。EspA-、EspB-、及びEspA-/EspB-株の接着能力は野生型RDEC-1株のそれと類似しており、接着がEspA及びEspB発現とは無関係であることを示している。野生型RDEC-1の侵入能力は腸内病原性大腸菌のそれの約90分の1であるが、変異体株EspA-、EspB-、及びEspA-/EspB-゜では、この能力はさらに低下した。しかし、戻し変異体株AAF002及びAAF003により侵入は回復した。この結果から、RDEC-1の侵入能力が、EspA及びEspBに依存していることがわかる。
【0131】
腸内病原性大腸菌EspA及びEspBのRDEC-1変異体を補完する能力を判定するため、腸内病原性大腸菌espA及びespB遺伝子を含む種々のプラスミドをRDEC-1変異体株に導入し、その侵入効率を野生型RDEC-1株のものと比較した。興味深いことに、AAF001ΔAB株において分泌された腸内病原性大腸菌EspA及びEspBの量はRDEC-1において通常認められる量より少ないにもかかわらず、pMWespAB(EPEC EspA+/EspB+)を含むAAF001ΔAB(RDEC-1 EspA-/EspB-)の侵入のレベルは野生型RDEC-1の4倍であった。従って、HeLa細胞においてRDEC-1と腸内病原性大腸菌株との間にみられる侵入レベルの違いは、Espタンパク質に起因すると考えることができ、腸内病原性大腸菌EspA及びEspBは、この組織培養モデルにおける侵入の媒介についてより効率的である。相同性の比較により、EspAはRDEC-1及び腸内病原性大腸菌において高度に保存されているが、EspBはより異質であることがわかった。このことはRDEC-1と腸内病原性大腸菌との間の侵入能力の差がEspBタンパク質に起因し得ることを示している。興味深いことに、腸内出血性大腸菌0157は、ヒト回盲部(HCT-8)上皮細胞に接着はするが侵入はしない。RDEC-1 EspBは、腸内病原性大腸菌より腸内出血性大腸菌のそれにより類似しており、これはおそらく侵入におけるEspBの役割を強調するものである。これらの知見は、Espの不均質性が腸内病原性大腸菌、RDEC-1、及び腸内出血性大腸菌の侵入能力に影響を及ぼすということを強く支持するものである。
【0132】
EspD変異体はEspA及びEspB分泌に影響を及ぼす。腸内病原性大腸菌はespAとespBとの間に位置するオープンリーディングフレームespDを含む。分泌におけるespD生成物の役割を確認するため、腸内病原性大腸菌espA、ΔespD(BglII部位におけるフレームシフト変異)、及びespDをコードするプラスミドpMWespDを構築し、RDEC-1二重変異体株AAF001AABに導入した。AAF001AAB[pMWespD]における腸内病原性大腸菌EspA及びEspB分泌タンパク質の量は、無傷の腸内病原性大腸菌espA、espD、及びespB遺伝子をコードする断片を含むAAF001AAB[pMWespAB]におけるものより少なかった。さらに、侵入能力も低かった。これらの結果から、espDの破壊は腸内病原性大腸菌EspA及びEspBタンパク質の分泌に影響を及ぼすことがわかる。この実施例では、espA及び/またはespBにおける変異により、おそらくその生成物が切断されるため、他の分泌タンパク質の量も低下したことを示した。espA及びespBの二重変異体では、espAまたはespB変異体と比較して、分泌レベルはより低下した。従って、切断された腸内病原性大腸菌EspDは、III型分泌系における干渉のために、AAF001AAB[pMW6espD]におけるEspA及びEspBの分泌に影響を及ぼし得る。この分泌系にEspDが直接関与しているかどうかはまだ分かっていない。
【0133】
腸内病原性大腸菌及びRDEC-1分泌タンパク質は、関連する宿主の体温に相当する温度により厳密に調節されている。温度は、腸内病原性大腸菌及び腸内出血性大腸菌413/89-1分泌タンパク質の発現を調節する。温度が20℃から37℃に上昇すると、EspBの発現は著しく上昇した。EspA及びEspBタンパク質は適当な宿主の体温により調節されていることから、野生型腸内病原性大腸菌及びRDEC-1株をDMEMに播種し、様々な温度でインキュベートして分泌タンパク質を調製し、SDS-PAGEで分析した。腸内病原性大腸菌分泌タンパク質の発現は、33℃から観察されるようになり、36℃で最大分泌レベルに達した。39℃になると分泌は低下し、42℃ではタンパク質の分泌はみられなくなった。これに対し、RDEC-1分泌タンパク質の発現は39℃で最大となり、42℃においてもこのタンパク質の発現が見られた。これらの結果から、腸内病原性大腸菌及びRDEC-1におけるEspタンパク質の最大発現は、関連する宿主の体温、即ちヒトで37℃、ウサギで39℃で起こることがわかる。
【0134】
結論として、両タンパク質は、宿主シグナル伝達経路及び侵入を誘発するのに必要であった。腸内病原性大腸菌esp遺伝子を用いた補完実験の結果、RDEC-1及び腸内病原性大腸菌によって誘発される宿主のシグナル伝達事象は、同じ分泌タンパク質により媒介されているらしいことがわかった。最後に、RDEC-1及び腸内病原性大腸菌分泌タンパク質の最適発現は、天然の宿主の体温と相関性を有していた。このことは、その厳格な宿主特異性及びウサギや他の動物には腸内病原性大腸菌が感染しないことを説明している。RDEC-1 espA及びespB株を用いた動物での感染の研究は、これらの分泌タンパク質の毒性における役割に関する情報を与え、またワクチンの研究に役立つであろう。
【実施例8】
【0135】
二種のウサギ腸内病原性大腸菌(RDEC-1)分泌タンパク質、EspA及びEspBは毒性因子である
この実施例の目的は、EspA及びEspBタンパク質の病因における役割を示すことである。これらのタンパク質の毒性における役割を調べるため、espA及びespBにおける変異を、ウサギ腸内病原性大腸菌株、RDEC-1において形成した。
【0136】
RDEC-1及びそのespA及びespB変異体株を、経口胃経路により子ウサギに接種した。殆どのRDEC-1は感染後一週間で盲腸及び結腸において認められた。しかし、変異体株はいずれもこれらの組織においてはその数が親株と比較して著しく減少した。RDEC-1は球形嚢(胞上皮)に特異的に接着し、細菌コロニー形成は盲腸においても観察された。これは盲腸における球形嚢がこの病原体にとって重要なコロニー形成部位であることを示している。EspA-及びEspB-株の球形嚢に対する接着レベルは70で、親株の接着レベルの8000分の1であった。これらの結果から、RDEC-1の接着能力及び組織向性が二種のEsp分泌タンパク質に依存していることがわかる。さらにEspBは、細菌のコロニー形成及び病原性においてEspAより一層重要な役目を果たしているようである。これは、腸内病原性大腸菌分泌タンパク質、EspA及びEspBは宿主細胞のシグナル伝達経路の誘発に関与しているが、コロニー形成及び毒性にも必要であるということを最初に示すものである。
【0137】
動物への感染は以下のように行った。一晩培養した細菌培養物を遠心分離によって回収し、1mlのリン酸緩衝食塩水に再懸濁した。ニュージーランド白ウサギ(体重1.0〜1.6kg)を一晩絶食させ、次いで5mlの2.5%滅菌炭酸水素ナトリウム及び1mlのRDEC-1またはespAまたはespB株(2.5×1010)を経口胃チューブを用いて胃に接種した。翌日同じ投与量の細菌を各ウサギに接種した。
【0138】
臨床的評価を以下のように行った。各ウサギの体重を毎日計測し、細菌の糞便排出を直腸スワブによって回収し、また糞便ペレットから回収した。直腸スワブはナリジクス酸を含むマッコンキー(MacConkey)プレートの表面の半分に転がした。5個の糞便ペレット、または同量の液体の糞便を各ウサギから回収して3mlのリン酸緩衝食塩水に再懸濁し、0.1mlの各糞便懸濁液をナリジクス酸を含むマッコンキープレート上に塗布した。ナリジクス酸耐性コロニーを以下のように評価した。0、増殖せず;1、広い間隔のコロニー;2、狭い間隔のコロニー;3、コロニーの集密的増殖。
【0139】
組織の標本採取及び調製は以下のように行った。ケタミン及び過剰量のフェノバルビタールナトリウムの静脈内注射によって屠殺した直後に、組織を切除した。
【0140】
腸内組織における細菌コロニー形成の量を以下のようにアッセイした。盲腸を除く腸セグメント(10cm)を、その近位及び遠位の末端において二重に結紮し、二つの結紮部分の間で切断し、10mlの氷冷リン酸緩衝食塩水で洗浄した。盲腸から得られた粘稠な内容物1gを、9mlのリン酸緩衝食塩水に加えた。得られたリン酸緩衝食塩水懸濁液を希釈し、ナリジクス酸を含むマッコンキープレート上に塗布した。
【0141】
腸内組織への細菌接着の量を以下のようにアッセイした。組織サンプルを9mm径のコルクパンチを用いて切り取り、リン酸緩衝溶液で三回洗浄し、2mlの氷冷リン酸緩衝食塩水を加えてホモジナイザーでホモジナイズし、次いでマッコンキープレート上に連続希釈サンプルを塗布した。各組識の1平方センチメートル当たりの細菌接着の数を以下のように計算した。CFU/cm2=細菌数/プレート×希釈倍率×2ml/〜0.452。
【実施例9】
【0142】
細菌III型分泌の阻害剤をスクリーニングするためのアッセイの開発
この実施例の目的は、細菌III型分泌の阻害剤をスクリーニングするためのアッセイを提供することである。
【0143】
EspAポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、HSV標識を含むいくつかの周知の分子に融合する。この遺伝子融合物はやはり腸内病原性大腸菌から分泌される。EspAのアミノ末端部分(III型分泌を媒介するために必要)をコードするespAの遺伝子領域を含むプラスミドを、それに対する市販の抗体が利用できる配列標識をコードする単純ヘルペスウイルス(HSV)配列に融合する。espA変異を含んでいるが、III型分泌系を使用するその他の腸内病原性大腸菌分泌タンパク質も分泌する菌株にこのプラスミドを形質転換する。これらの融合物を含む生物の上清を回収し、ELISAプレートに加えて標準的なELISAを行う。熱量測定による読取が融合タンパク質が分泌されたことを示す。
【0144】
このプラスミドをIII型分泌物を欠く菌株にも形質転換する(すなわち陰性対照)。この菌株で融合タンパク質が発現される場合、この融合タンパク質は発現はされるが分泌はされない。この変異体のELISAの結果により分泌されないことが確認される。
【0145】
従って、分泌を確認するための簡単なELISAアッセイが提供される。このアッセイは単純で特殊な技術は不要である。高価な試薬は不要なため、経済的でもある。このアッセイは自動化され、細菌III型分泌の阻害剤を同定するための試薬をスクリーニングするために用いられる。
【0146】
分泌をアッセイするため、試験化合物の存在下、細菌を組織培養液中に一晩静置して増殖させる。このような条件により腸内病原性大腸菌媒介分泌が得られる。翌日、細菌を遠心分離で除去し、上清を96ウェルマイクロタイタープレートのウェルに入れる。この上清に対して標準的なELISAを行う。試験化合物が殺菌性である場合は、細菌は一晩で増殖しない。
【0147】
腸内病原性大腸菌が分泌する他のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、いくつかの周知の分子に融合する。EspBポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを市販の抗体が利用できるHSV標識に融合した。この遺伝子融合物はやはり腸内病原性大腸菌から分泌された。このプラスミドを、espA変異を含むが、III型分泌系を使用する他の腸内病原性大腸菌分泌タンパク質を分泌する菌株に形質転換した。これらの融合物を含む生物の上清を回収し、ELISAプレートに加えて、例えば抗HSV抗体を用いる標準的ELISA法を行う。このスクリーニングを用いて医学的に重要な植物からの植物抽出物をアッセイした。1/200〜1/1000の希釈度(約250μg/ml)が適切である。有望な化合物はELISA分泌アッセイで再度スクリーニングして再現性を調べる。
【0148】
現時点での好適な態様を参照して本発明を説明したが、本発明の概念を逸脱することなく様々な改変が可能であることが理解されなければならない。従って、本発明は以下の請求の範囲のみにより限定される。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】espAのヌクレオチド配列及び推定アミノ酸配列を示す(本明細書においてはそれぞれ配列番号1及び配列番号2という)。可能性のあるリボソーム結合部位に下線を付す。pLCL121において形成した削除に隣接するプライマーDonne-99及びDonne-100に含まれるヌクレオチドに影を付した(枠で囲った)。
【図2A】espAにおける非極性突然変異の構築を示す。プライマーDonne-90及びリバースプライマーを使用してこの遺伝子の5'部分を含む断片を増幅し、これをpCRscriptにクローン化してpLCL119を生成した。プライマーDonne-100及びユニバーサルプライマーを使用して遺伝子の3'部分を含む断片を増幅し、これをpCRscriptにクローン化してpLCL120を生成した。新しいNrul部位をDonne-99及びDonne-100の両方に導入し、pLCL120のNruI-SalI断片をpLCL119にクローン化し、espA遺伝子内に150 bp削除を有するpLCL121を生成できるようにした。aphA-3カナマイシン耐性遺伝子を含むpUC18KからのSmaI断片をpLCL121のNruI部位にクローン化してpLCL122を生成した。この挿入により、aphA-3遺伝子の転写融合及びespA遺伝子の3'末端の翻訳融合が得られ、espAのリーディングフレームが保存される。リボソーム結合部位には下線を付す。
【図2B】espAにおける非極性突然変異の構築を示す。プライマーDonne-90及びリバースプライマーを使用してこの遺伝子の5'部分を含む断片を増幅し、これをpCRscriptにクローン化してpLCL119を生成した。プライマーDonne-100及びユニバーサルプライマーを使用して遺伝子の3'部分を含む断片を増幅し、これをpCRscriptにクローン化してpLCL120を生成した。新しいNrul部位をDonne-99及びDonne-100の両方に導入し、pLCL120のNruI-SalI断片をpLCL119にクローン化し、espA遺伝子内に150 bp削除を有するpLCL121を生成できるようにした。aphA-3カナマイシン耐性遺伝子を含むpUC18KからのSmaI断片をpLCL121のNruI部位にクローン化してpLCL122を生成した。この挿入により、aphA-3遺伝子の転写融合及びespA遺伝子の3'末端の翻訳融合が得られ、espAのリーディングフレームが保存される。リボソーム結合部位には下線を付す。
【図2C】espAにおける非極性突然変異の構築を示す。プライマーDonne-90及びリバースプライマーを使用してこの遺伝子の5'部分を含む断片を増幅し、これをpCRscriptにクローン化してpLCL119を生成した。プライマーDonne-100及びユニバーサルプライマーを使用して遺伝子の3'部分を含む断片を増幅し、これをpCRscriptにクローン化してpLCL120を生成した。新しいNrul部位をDonne-99及びDonne-100の両方に導入し、pLCL120のNruI-SalI断片をpLCL119にクローン化し、espA遺伝子内に150 bp削除を有するpLCL121を生成できるようにした。aphA-3カナマイシン耐性遺伝子を含むpUC18KからのSmaI断片をpLCL121のNruI部位にクローン化してpLCL122を生成した。この挿入により、aphA-3遺伝子の転写融合及びespA遺伝子の3'末端の翻訳融合が得られ、espAのリーディングフレームが保存される。リボソーム結合部位には下線を付す。
【図2D】espAにおける非極性突然変異の構築を示す。プライマーDonne-90及びリバースプライマーを使用してこの遺伝子の5'部分を含む断片を増幅し、これをpCRscriptにクローン化してpLCL119を生成した。プライマーDonne-100及びユニバーサルプライマーを使用して遺伝子の3'部分を含む断片を増幅し、これをpCRscriptにクローン化してpLCL120を生成した。新しいNrul部位をDonne-99及びDonne-100の両方に導入し、pLCL120のNruI-SalI断片をpLCL119にクローン化し、espA遺伝子内に150 bp削除を有するpLCL121を生成できるようにした。aphA-3カナマイシン耐性遺伝子を含むpUC18KからのSmaI断片をpLCL121のNruI部位にクローン化してpLCL122を生成した。この挿入により、aphA-3遺伝子の転写融合及びespA遺伝子の3'末端の翻訳融合が得られ、espAのリーディングフレームが保存される。リボソーム結合部位には下線を付す。
【図3A】RDEC-1(A)espA、espD及びespB遺伝子を含むプラスミドの遺伝子マップを示す。矢印は、espA及びespBにおいて形成された終止コドン挿入(A)の位置を示す。espB中の250塩基対の削除を//で示す。黒および白の四角はオープンリーディングフレーム及び予測オープンリーディングフレームを示す。制限酵素は次のように示す:Bam,BamHI;Ec,EcoRI;Bg,BglII;Xb,XbaI;Sa,SalI。
【図3B】腸内病原性大腸菌(EPEC)(B)espA、espD及びespB遺伝子を含むプラスミドの遺伝子マップを示す。矢印は、espDのBglII部位に形成されたフレームシフト変異の位置を示す。黒および白の四角はオープンリーディングフレーム及び予測オープンリーディングフレームを示す。制限酵素は次のように示す:Bam,BamHI;Ec,EcoRI;Bg,BglII;Xb,XbaI;Sa,SalI。
【図4A】RDEC-1 espA(本明細書ではそれぞれ配列番号3及び配列番号4という)のヌクレオチド配列を示す。アスタリスクは終止コドンを示す。可能性のあるリボソーム結合部位に下線を付す。
【図4B】RDEC-1 espB(本明細書ではそれぞれ配列番号5及び配列番号6という)のヌクレオチド配列を示す。アスタリスクは終止コドンを示す。可能性のあるリボソーム結合部位に下線を付す。
【図4C】EspAの予測アミノ酸配列のアラインメントを示す(配列番号7〜8)。影を付した(枠で囲った)領域は同一性を示す。
【図4D】EspBの予測アミノ酸配列のアラインメントを示す(配列番号9〜14)。影を付した(枠で囲った)領域は同一性を示す。ヌクレオチド及びアミノ酸配列はEMBL GenBankに寄託したが、それらの受託番号は以下の通りである:RDEC-1 espA(U80908)、RDEC-1 espB(U80796)、腸内病原性大腸菌株E2348/69 espA(Z54352)、腸内病原性大腸菌株E2348/69 espB(Z21555)、腸内病原性大腸菌株E2348/69 espD(Y09228)、腸内出血性大腸菌株EDL933血清型0157 espB(X96953)、腸内出血性大腸菌株413/89-1血清型026 espB(X99670)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)腸内病原性または腸内出血性大腸菌からの分泌タンパク質であり、
b)SDS-PAGEにより測定して約25キロダルトンの分子量を有する
ことを特徴とする単離されたEspAポリペプチド。
【請求項2】
ポリペプチドが配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
ポリペプチドが配列番号4に記載のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項4】
請求項1に記載のポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項5】
配列が配列番号2に記載のアミノ酸配列をコードする請求項4に記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
配列が
a)配列番号1に記載の核酸配列、
b)配列番号1に記載の核酸配列(TがUである)、
c)a)に相補的な核酸配列、及び
d)少なくとも15ヌクレオチド塩基長であり、ストリンジェントな条件下で配列番号2に記載のポリペプチドをコードするゲノムDNAにハイブリダイズするa)またはb)の断片
からなる群から選択される、請求項5に記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
配列が配列番号4に記載のアミノ酸配列をコードする請求項4に記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
配列が
a)配列番号3に記載の核酸配列、
b)配列番号3に記載の核酸配列(TがUである)、
c)a)に相補的な核酸配列、及び
d)少なくとも15ヌクレオチド塩基長であり、ストリンジェントな条件下で配列番号4に記載のポリペプチドをコードするゲノムDNAにハイブリダイズするa)またはb)の断片
からなる群から選択される、請求項7に記載のポリヌクレオチド。
【請求項9】
請求項4〜8のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項10】
請求項9に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項11】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチドに結合する抗EspA抗体。
【請求項12】
抗体がモノクローナルである請求項11に記載の抗体。
【請求項13】
抗体がポリクローナルである諸求項11に記載の抗体。
【請求項14】
a)サンプルを請求項11に記載の抗体に接触させ、
b)請求項11に記載の抗体のEspAポリペプチドに対する結合を検出することを含み、結合がサンプル中のEspAポリペプチドの存在を示すものである、サンプル中のEspAポリペプチドを検出する方法。
【請求項15】
サンプルが組織である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
サンプルが体液である請求項14に記載の方法。
【請求項17】
サンプル中のEspAポリペプチドの存在が腸内病原性大腸菌による感染を示すものである請求項14に記載の方法。
【請求項18】
サンプル中のEspAポリペプチドの存在が腸内出血性大腸菌による感染を示すものである請求項14に記載の方法。
【請求項19】
a)espAポリヌクレオチドを含むことが疑われるサンプルをespAポリヌクレオチドとハイブリダイズする核酸プローブと接触させ、
b)プローブのespAポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションを検出すること
を含み、ハイブリダイゼーションの検出がサンプル中のespAポリヌクレオチドを示すものである、サンプル中のespAポリヌクレオチドを検出する方法。
【請求項20】
核酸プローブが諸求項4〜8のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドである請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項4〜8のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドに選択可能なマーカーをコードする核酸を挿入し、得られるポリヌクレオチドが選択可能なマーカーを含む組換え体EspAポリペプチドをコードするようにすることを含む、espAポリヌクレオチドを生産するための組換え方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法により製造されたポリヌクレオチド。
【請求項23】
請求項22に記載のポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
【請求項24】
a)EspAポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞をEspAポリペプチドの発現と分泌を可能とする条件下で増殖させ、
b)該ポリペプチドを単離すること
を含む、EspAポリペプチドを生産するための組換え方法。
【請求項25】
a)請求項21に記載のポリヌクレオチドを細菌III型分泌系を有する細菌に導入し、
b)細菌の増殖と前記ポリヌクレオチドによってコードされたポリペプチドの分泌を可能とする条件下で細菌を増殖させ、
c)細菌III型分泌系を阻害する可能性がある化合物を細菌と接触させ、
d)ポリペプチドの発現を誘発し、
e)ポリペプチドの分泌を検出する
ことを含み、分泌が見られないことが細菌III型分泌系の阻害を示す、細菌III型分泌系を阻害する化合物を同定する方法。
【請求項26】
a)EspAポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにおいて変異を生成し、
b)選択可能なマーカーをコードする核酸配列を前記変異の部位に挿入し、
c)段階b)の変異させたespAポリヌクレオチドを生物の染色体espA遺伝子に導入して染色体espA遺伝子に変異を生成し、
d)前記変異を有する生物を選択すること
を含む、非病原性生物を生産する方法。
【請求項27】
選択可能なマーカーをコードする核酸配列が、カナマイシンに対する耐性をコードする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
生物が大腸菌である請求項26に記載の方法。
【請求項29】
請求項26に記載の方法により生産された、変異された、espA遺伝子を有する生物。
【請求項30】
EspAポリペプチドに結合する抗体を含む容器を含む1以上の容器を密に封入した状態で受容するための区画化されたキャリアー手段を含む、EspAポリペプチドの検出に有用なキット。
【請求項31】
抗体が検出可能なように標識されている請求項30に記載のキット。
【請求項32】
標識が放射性同位元素、生物発光性化合物、化学発光性化合物、螢光性化合物、金属キレート及び酵素からなる群から選択される請求項31に記載のキット。
【請求項33】
espAポリヌクレオチドにハイブリダイズする核酸プローブを含む容器を含む1以上の容器を密に封入した状態で受容するための区画化されたキャリアー手段を含む、espAポリヌクレオチドの検出に有用なキット。
【請求項34】
プローブが検出可能なように標識されている請求項33に記載のキット。
【請求項35】
標識が放射性同位元素、生物発光性化合物、化学発光性化合物、螢光性化合物、金属キレート及び酵素からなる群から選択される請求項34に記載のキット。
【請求項36】
a)対象となるポリペプチドまたはペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能可能なように結合したEspAをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を、融合タンパク質の発現及び分泌を可能とする条件下に増殖させ、
b)融合タンパク質を単離すること
を含む、EspA融合タンパク質を生産する方法。
【請求項37】
EspA生産生物により引き起こされる疾患に感受性を有する宿主を免疫化する医薬製造のためのEspAポリペプチドの使用。
【請求項38】
EspA生産生物が大腸菌である請求項37に記載の使用。
【請求項39】
EspA生産大腸菌が腸内病原性大腸菌である請求項38に記載の使用。
【請求項40】
EspA生産大腸菌が腸内出血性大腸菌である請求項38に記載の使用。
【請求項41】
EspAポリペプチドが請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチドである、請求項37〜40のいずれか1項に記載の使用。
【請求項42】
EspA生産生物により引き起こされる疾患を緩和する医薬製造のためのEspAポリペプチドの使用。
【請求項43】
EspA生産生物が大腸菌である請求項42に記載の使用。
【請求項44】
EspA生産大腸菌が腸内病原性大腸菌である請求項43に記載の方法。
【請求項45】
EspA生産大腸菌が腸内出血性大腸菌である請求項43に記載の方法。
【請求項46】
EspAポリペプチドが請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチドである、請求項42〜45のいずれか1項に記載の使用。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図2D】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図4D】
image rotate


【公開番号】特開2009−22294(P2009−22294A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233530(P2008−233530)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【分割の表示】特願平9−537532の分割
【原出願日】平成9年4月23日(1997.4.23)
【出願人】(500217418)ザ ユニバーシティー オブ ブリティッシュ コロンビア (4)
【Fターム(参考)】