病変の様子を文章化するためのコンピュータプログラムおよび文章作成装置
【課題】カルテ等の医療文書作成において病変の様子を文章化する場合の文章作成の労力をより軽減し、また、描画に含まれる医療情報を容易に取り出して二次利用が可能となるようにすること。
【解決手段】診断対象部の病変の様子を文章化するためのコンピュータプログラムおよび装置であって、当該コンピュータは、(S1)診断対象部に対し予め定められた特定部位と病変の名称とを入力する入力手段、(S2)表示画面に表示した診断対象部の下絵によって規定された描画可能領域内に病変領域をペン入力手段またはポインター入力手段によって描画し得るようにする描画編集手段、(S3)該描画可能領域内の描画の有無を調べることにより病変領域の位置と大きさとを認識しかつデータ化する解析手段、(S4)該データから病変の様子を表した文章を生成する文章生成手段として、コンピュータを機能させるよう構成される。また、当該装置はこれらの手段を有する。
【解決手段】診断対象部の病変の様子を文章化するためのコンピュータプログラムおよび装置であって、当該コンピュータは、(S1)診断対象部に対し予め定められた特定部位と病変の名称とを入力する入力手段、(S2)表示画面に表示した診断対象部の下絵によって規定された描画可能領域内に病変領域をペン入力手段またはポインター入力手段によって描画し得るようにする描画編集手段、(S3)該描画可能領域内の描画の有無を調べることにより病変領域の位置と大きさとを認識しかつデータ化する解析手段、(S4)該データから病変の様子を表した文章を生成する文章生成手段として、コンピュータを機能させるよう構成される。また、当該装置はこれらの手段を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医師や医療技術者等の医療従事者が診断対象部を診断した結果を、カルテなどの医療文書作成のために文章とする際に、その文章作成の労力をより軽減し、かつ、入力される医療情報の二次利用を可能にするためのコンピュータプログラムと装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、医療従事者(とりわけ医師)が手書きによって作成していたカルテなどの医療文書を、コンピュータを用いてその表示装置の画面(以下「表示画面」ともいう)上で容易に作成し得るようにしたプログラムや装置がある(例えば、特許文献1〜3など)。
例えば、特許文献1では、コンピュータに患者の識別情報を入力し、それに基いて、表示画面上に電子カルテを表示し、予め別途用意されたシェーマ(下絵画像)と文章候補とを表示して、画面上で適当な文章を選択して組み立てたり、描画ソフトによって病変部を描画しカルテに貼り付けたりすることを可能にしている。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載されたような技術は、多数の文章を予め用意しておき、その中から適当なもの選択し組み合わせることによって、キーボードから文を打ち込む手間をできるだけ省略するという技術である。医療従事者自身はキーボードのキーを打つという行為はしていないが、結局は、画面上で文章を構築し、文章を入力している。また、病変部を絵として記録するために描画ソフトが含まれているが、描き込まれた病変部の絵は、そのままでカルテに加えられ、常に絵として利用されているだけである。
【0004】
上記のように、従来のカルテ等の医療文章の作成を支援する技術では、コンピュータを利用して文章を便利に入力し得る機能を用意しているが、いずれも〔文章を記録するために、文章を入力する〕という基本的な概念からは何ら抜け出してはおらず、キー入力の手間が軽減されていても、表示画面内で文章を構築する労力は依然として必要である。
【0005】
また、従来の描画の入力を伴う文章作成支援技術が医療の現場においてどのように使用されているかを詳細に検討したところ、忙しい現場では必ずしも十分な文書化がなされているとは限らず、入力した描画をそのまま記録するかまたは簡単な用語を追記するだけで、記録を描画の内容に頼る傾向が見られた。
描画による記録は、その記録自体のためには有用であるが、絵であるがために、その中に含まれる医療情報をデータベースやデータウェアハウスに蓄積することや、その絵に含まれる内容をキーワードとしてデータベースやインターネットなどから更なる参照事項を検索すること(即ち、二次利用すること)が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−250526号公報
【特許文献2】特開2000−325314号公報
【特許文献3】特開2005−148990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、上記した問題点を解決し、カルテ等の医療文書作成において病変の様子を文章化する場合の文章作成の労力をより軽減し、かつ、描画に含まれる医療情報を容易に取り出して二次利用が可能となるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、次の特徴を有するものである。
(1)診断対象部の病変の様子を文章化するためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータを、
診断対象部に対して予め定められた1以上の特定部位とその部位ごとに予め定められた1以上の病変の名称の中から、病変の様子を文章化すべき特定部位とその病変の名称とを少なくとも入力する入力手段、
該コンピュータの表示装置の画面に診断対象部の下絵を表示し、該下絵によって規定された診断対象部の領域を描画可能領域として、該画面の描画可能領域内に前記病変が占有する病変領域を、ペン入力手段またはポインター入力手段によって描画し得るようにする、描画編集手段、
前記描画編集手段でなされた描画可能領域内の描画の有無を調べることにより、描画された病変領域の少なくとも位置と大きさとを認識しかつデータ化する、解析手段、
前記解析手段でデータ化された病変領域の少なくとも位置と大きさとを用いて、病変の様子を記述するために必要な数値および/または文言を生成し、前記入力された特定部位とその病変の名称と、その様子を記述した前記数値および/または文言とを含む文章を生成する、文章生成手段、
として機能させるための前記コンピュータプログラム。
(2)下記(A)の解析用データセットをさらに有し、
上記解析手段が上記描画可能領域内の描画の有無を調べるに際して、上記入力手段で入力された特定部位とその病変の名称とに対応した下記(A)の解析用データセットの領域リストの指定に従って、該描画の有無を調べるように、該解析手段が構成されている、上記(1)記載のコンピュータプログラム。
(A)描画可能領域内に描画された病変領域の少なくとも位置と大きさとについての解析を解析手段が行なうために参照すべき指定内容が、特定部位とその病変の名称ごとに定められた解析用データセットであって、
描画可能領域を特定部位とその病変名とに応じて1種類以上のパターンにて分割した小領域の集合、および/または、描画可能領域を分割せずに全体を1つの解析対象とした全領域をデータセットとして有し、かつ、前記小領域の集合および全領域のうちのどの領域に対して描画の有無を調べるのかを指定した領域リストを有する、解析用データセット。
(3)上記(A)の解析用データセットに含まれる1種類以上のパターンにて分割した小領域が、下記の(a)〜(f)から選ばれる1以上の小領域である、上記(2)記載のコンピュータプログラム。
(a)描画可能領域を、該領域の中心の1点から所定間隔の角度にて放射状に延びる直線によって分割した扇状の小領域。
(b)描画可能領域を、複数の同心円によって分割した環状の小領域。
(c)描画可能領域を格子状に交わる線によって分割した方形状の小領域。
(d)前記(a)〜(c)の小領域の形状以外の形状となるように、描画可能領域を分割してなる小領域。
(e)前記(a)〜(d)の小領域から選ばれた2以上の小領域を組み合わせてなる小領域。
(f)前記(a)〜(d)の小領域から選ばれた2以上の小領域同士が互いに重なり合った領域として規定される小領域。
(4)当該コンピュータプログラムが、
上記文章生成手段によって生成された文章を上記コンピュータの外部記憶装置に書込み読出す文書データ管理手段として、上記コンピュータを機能させるためのプログラム部分をさらに有する、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
(5)上記入力手段と上記描画編集手段とが、同じ表示装置と、同じペン入力手段またはポインター入力手段とを用いる構成とされ、
上記入力手段が、予め定められた1以上の特定部位とその部位ごとに予め定められた1以上の病変の名称を表示装置の画面に表示し、文章化すべき特定部位とその病変の名称とを、ペン入力手段またはポインター入力手段にて画面上で選択することによって、それら特定部位と病変の名称とを入力するように構成されている、
上記(1)〜(4)のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
(6)上記描画編集手段が、複数の描画可能領域を有し、これら描画可能領域は、それぞれ描画レイヤーとして、互いに重なり合って1つの画像として表示されるように構成され、上記入力手段で入力された特定部位とその病変の名称とに対応した描画可能領域が選択されて描画可能となるように構成されている、
上記(1)〜(5)のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
(7)上記描画編集手段は、描画可能領域を含んだ描画可能レイヤーの他に、解析用領域を含んだ解析用レイヤーを有しており、
描画可能レイヤー内の描画可能領域に病変領域が描画されると、その描画可能レイヤーに対応した解析用レイヤー内の解析用領域にも前記病変領域に対応した病変領域が作成されるように構成されており、
上記解析手段は、その解析用レイヤー内の解析用領域の描画の有無を調べることによって、病変領域の少なくとも位置と大きさとを認識しかつデータ化するように構成されている、
上記(6)記載のコンピュータプログラム。
(8)上記描画編集手段において、表示装置の画面上で入力用ペンまたはポインターによって描かれる病変領域が、入力される特定部位とその病変の名称ごとに固有の描画模様にて表現されるように定められており、それによって、1つの画面内に表示される複数の互いに異なる病変領域同士が視覚的に識別できるようになっている、
上記(1)〜(7)のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
(9)上記描画編集手段において、表示装置の画面上で入力用ペンまたはポインターが、下記(i)〜(v)のうちのいずれか1つの描画模様にて病変領域を規定する態様となっている、上記(8)記載のコンピュータプログラム。
(i)入力用ペンまたはポインターが移動するとその跡に、点線状、破線状、または、線状の軌跡が描かれ、その線状の軌跡自体が病変領域を規定する態様。
(ii)入力用ペンまたはポインターが移動するとその跡に、上記(i)の軌跡以外の模様による軌跡が描かれ、その模様による軌跡自体が病変領域を規定する態様。
(iii)入力用ペンまたはポインターが移動するとその跡に線状の軌跡が描かれ、さらに、該線状の軌跡が閉じられて閉領域が作られたときにその閉領域が自動的に所定の色や模様にて充填され、病変領域を規定する態様。
(iv)入力用ペンまたはポインターを意図する位置に合わせて入力を行うと、その位置に印判を押したように特定の模様が描かれ、その模様が病変領域を規定する態様。
(v)入力用ペンまたはポインターを意図する位置に合わせて入力を行うと、前記(i)〜(iv)以外の特定の模様が描かれ、その模様が病変領域を規定する態様。
(10)診断対象部が、病変領域を描画することが可能な部分であって、特定部位が、前記部分に含まれる解剖学的な単位である、上記(1)〜(9)のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
(11)当該コンピュータプログラムが、上記コンピュータを、下記(B)の参照事項出力手段として機能させるためのプログラム部分をさらに有する、上記(1)〜(10)のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
(B)上記文章生成手段によって生成された文章に関連した医療上の参照事項を、上記コンピュータがアクセス可能な記憶装置から探し出し出力する参照事項出力手段。
(12)診断対象部の病変の様子を文章化するための文章作成装置であって、
入力手段を有し、該入力手段は、診断対象部に対して予め定められた1以上の特定部位とその部位ごとに予め定められた1以上の病変の名称の中から、文章化すべき特定部位とその病変の名称とを入力し得るように構成されており、
描画編集手段を有し、該描画編集手段は、ペン入力手段またはポインター入力手段と、表示手段とをさらに含んでおり、該表示手段の画面に診断対象部の下絵を表示し、該下絵によって規定された診断対象部の領域を描画可能領域として、該画面の描画可能領域内に前記病変が占有する病変領域を、ペン入力手段またはポインター入力手段によって描画し得るように構成されており、
解析手段を有し、該解析手段は、前記描画編集手段でなされた描画可能領域内の描画の有無を調べることにより、描画された病変領域の少なくとも位置と大きさとを認識しかつデータ化するように構成されており、
文章生成手段を有し、該文章生成手段は、前記解析手段でデータ化された病変領域の少なくとも位置と大きさとを用いて、病変の様子を記述するために必要な数値および/または文言を生成し、前記入力された特定部位とその病変の名称と、その様子を記述した前記数値および/または文言とを含む文章を生成するように構成されている、
前記文章作成装置。
(13)上記(A)の解析用データセットをさらに有し、
上記解析手段が上記描画可能領域内の描画の有無を調べるに際して、上記入力手段で入力された特定部位とその病変の名称とに対応した上記(A)の解析用データセットの領域リストの指定に従って、該描画の有無を調べるように、該解析手段が構成されている、上記(10)記載の文章作成装置。
(14)当該文章作成装置が、表示装置と入力装置とを少なくとも接続されて構成されたコンピュータであり、入力装置は、ペン入力装置またはポインター入力装置であって、
該コンピュータが、上記(1)〜(11)のいずれかに記載のコンピュータプログラムを実行するようになっている、上記(12)または(13)記載の文章作成装置。
(15)外部のコンピュータが、インターネットを介して上記コンピュータと接続されており、上記コンピュータで実行される上記コンピュータプログラムを、ユーザーがインターネットを介して外部のコンピュータから利用できる構成となっている、
上記(14)記載の文章作成装置。
(16)上記コンピュータが、上記(11)に記載のコンピュータプログラムを実行するようになっており、
上記文章生成手段によって生成された文章に関連した医療上の参照事項を、上記コンピュータ内の記憶装置、または、上記コンピュータがアクセス可能な外部記憶装置から探し出し出力し得る構成となっている、上記(14)または(15)記載の文章作成装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明のコンピュータプログラムおよび装置によれば、医療従事者が診断対象部の特定部位を観察し病変の有無や状態を判断し(即ち診断し)、その部位の病変が占有する病変領域を表示画面上でペン入力手段等によって描画するだけで、その描画された病変領域が病変の様子を表した文章へと変換される。
本発明では、診断対象部の特定部位や病変の名称を入力する最初の作業は必要であるが、その場所や規模や性状、即ち、〔どの位置にあり、どの程度の大きさであり、どのような性状であるか〕という様子の描写については、文章として入力する必要が無い。この病変の場所や規模や性状、即ち、病変の様子については、本発明では、当該コンピュータプログラムにおける解析手段が前記の印るされた病変領域の描画を解析し、それに基いて文章生成手段が文章化を行う構成となっている。その解析手法や文章生成の手法の詳細は後述する。
従来の医療文書作成支援技術では、上記背景技術でも述べたとおり、描画を入力とする構成であっても、描画をそのまま保存するだけであったり、キー入力の手間が軽減されているだけでどこかの段階では文章を構築する労力が必要である。これに対して、本発明では、文章は入力した描画内容から自動的に生成される。この新たな構成によって、従来技術に比べて、本発明では文章作成の労力が大きく根本的に軽減されている。
【0010】
また、本発明では、入力した描画が位置や大きさを示す数値および/または文言へとデータ化されるので、描画の中に含まれる医療情報をデータベースやデータウェアハウスに蓄積することや、その絵に含まれる内容およびそれらから導き出される内容をキーワードとしてデータベースやインターネットなどから更なる参照事項を検索し提供することが労せずして可能になっている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は本発明の構成を示す図である。図1(a)は、本発明のプログラムの構成を示すプログラムフロー図であり、図1(b)は、本発明の装置の主要部分の構成の一例を模式的に示すブロック図であって、コンピュータに本発明のコンピュータプログラムを実行させることによって構成した場合の図である。
【図2】図2は、入力手段における好ましい入力の態様を示した図であり、表示画面に特定部位の名称とその病変の名称とを表示し、ユーザーがペンやマウスで選択しクリックによって入力するようにした例を示している。
【図3】図3は、描画編集手段において表示画面に示した診断対象部の下絵とそれによって規定された描画可能領域の例を示した図である。尚、同図および図10に示した下絵は、一般眼底疾患用のものである。
【図4】図4は、描画ペンによって表示画面に病変領域を描画する際の基本操作を例示した図である。
【図5】図5は、描画ペンの軌跡の色や模様を例示した図である。
【図6】図6は、右の眼球を例とした場合の、解析用データセットの小領域の分割パターンの例である。尚、同図の分割パターンは、図7に示した未熟児網膜症用の下絵に基いて作成されたものである。また、同図の例では説明のために小領域に着色を施している。実際のプログラムでは、個々の小領域が識別名と共に格納される。
【図7】図7は、本願発明の実施例において用いた、図6の分割パターンの基礎となった図であって、従来の眼科の医療現場においてカルテ作成等のために用いられている未熟児網膜症用の右の眼球のための下絵である。
【図8】図8は、図6から得られる種々の小領域の例を示した図である。
【図9】図9は、眼球に関する解析用データセットの領域リストの実例を表示画面に示した図である。
【図10】図10は、文章生成手段における文章変換を説明するための描画の例を示す図である。
【図11】図11は、本発明のプログラムにおける描画編集手段において、実際に表示画面に表示した眼球の下絵と、そこに描画された病変領域の絵の実例を示す図である。
【図12】図12は、解析手段によって得られた病変の様子を示すデータに、どのような用語や状態が含まれるかを調べるように構成されたコンピュータプログラム部分の一例を示す、プログラムリストである。
【図13】図13は、図12に例示するコンピュータプログラム部分によって得られた用語や状態を用い、重症度の分類を行うように構成されたコンピュータプログラム部分の一例を示す、プログラムリストである。
【図14】図14は、図12および図13に例示するコンピュータプログラム部分によって得られた用語、状態、重症度の分類を用い、それらに対応した適切な推奨治療を表示するように構成されたコンピュータプログラム部分の一例を示す、プログラムリストである。
【図15】図15は、本発明の実施例において、未熟児網膜症の隆起と発芽についてのそれぞれの描画を文章に変換したときの出力画面のコピーである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
先ず、本発明のコンピュータプログラム(以下、「当該プログラム」とも略す)を、図を参照しながら具体的に説明する。以下の説明では、診断対象部の特定部位における病変の一例として、眼球の網膜における静脈の拡張などを挙げているが、それらはあくまでも説明のための具体的な例示であって、他の診断対象部についてもそれらの例示を置き換えて同様に適用すればよい。
当該プログラムは、図1(a)のプログラムフローに示すように、診断対象部の病変の様子を文章化するために、
コンピュータを入力手段として機能させる(ステップS1)と、
コンピュータを描画編集手段として機能させる(ステップS2)と、
コンピュータを解析手段として機能させる(ステップS3)と、
コンピュータを文章生成手段として機能させる(ステップS4)とを
少なくとも有して構成される。
文章生成手段において生成された文章を、表示画面に表示すること、ハードディスクドライブ等の外部記憶装置に格納すること、印刷すること、通信回線を通じて他のコンピュータに配信することなどの付帯的な機能や手段は、必要に応じて当該プログラムの各部に挿入、追加してよい。
【0013】
上記ステップ(S1)の入力手段は、診断対象部(例えば、眼球)に対して予め定められた1以上の特定部位(例えば、網膜など)とその部位ごとに予め定められた1以上の病変の名称(例えば、静脈の拡張)の中から、少なくとも目的の特定部位とその病変の名称とを、ユーザーが入力し得るように構成される。
前記のユーザーとは、コンピュータで実行中の当該プログラムを操作する者(プログラムの使用者)であり、通常はカルテを書く医師などの医療従事者本人であるが、該医療従事者の指示に従ってコンピュータを操作するオペレータなどであってもよい。
【0014】
当該プログラムは、眼科専用、耳鼻咽喉科専用など、各診療科専用のプログラムであってよく、1つのプログラムに全ての診断対象部を網羅しなくてもよい。例えば、当該プログラムを眼科専用プログラムとする場合には、最初から診断対象部が眼球であることを前提として当該プログラムを実行するよう構成してよい。即ち、当該プログラムでは、少なくとも目的の特定部位とその病変の名称とを、ユーザーが入力し得るように構成すればよい。
一方、病院等で、当該プログラムを複数の診療科で使用し、データベースを共有するような場合には、当該プログラムは、必要な全ての診断対象部を網羅したものであってもよいし、複数の診療科専用の当該プログラムを集め、その上位にそれらのマネージメントのための管理用プログラムを別途置いて、そこで「診断対象部」を入力させ、各診療科専用の当該プログラムへと進むような構成としてもよい。
【0015】
診断対象部は、医療従事者による直接的な観察、内視鏡などの器具を介しての間接的な観察を問わず、ヒト、動物、植物などにおける病変のスケッチ(病変領域を描画で示すこと)が可能な全ての器官や部分が含まれる。
診断対象部は、特に限定はされないが、例えば、〔眼球およびその周囲の組織(角膜、水晶体、網膜硝子体、眼瞼、眼位、眼球運動)など眼科医が診療の対象とする部分〕、〔耳介、外耳道、鼓膜、鼻腔、咽頭、喉頭など耳鼻咽喉科医が診療の対象とする部分〕、〔皮膚、乳房、耳介、手足、顔面、熱傷など形成外科が診療の対象とする部分〕、その他、循環器、呼吸器、心臓血管、腎泌尿器、神経中枢、乳腺甲状腺、皮膚、筋骨格器、消化器などの他、歯科口腔外科・産婦人科・救急・集中治療・放射線・麻酔などの領域が挙げられる。
【0016】
特定部位は、各診断対象部に1以上存在するものであり、その診断対象部の位置や組織、機能によって、該診断対象部を細かく分けた局所的な部分である。
例えば、診断対象部が眼科領域である場合には、特定部位は、結膜、強膜、角膜、虹彩毛様体(ぶどう膜)、前房、隅角、水晶体、硝子体、網膜、視神経乳頭、視路、眼瞼、涙液涙器、眼位、眼球運動などである。診断対象部が耳鼻科領域である場合には、特定部位は、耳介、外耳道、鼓膜、外鼻、鼻前庭、鼻腔、口腔、咽頭、舌、喉頭などである。診断対象部が形成外科領域である場合には、特定部位は、皮膚、筋肉、骨、小腸、乳房、耳介、手足、胸、頭蓋顔面、褥瘡、熱傷深度などである。診断対象部が消化器である場合には、特定部位は、食道、胃、十二指腸、空腸、回腸、盲腸、虫垂、結腸、直腸、肛門、膵臓、肝臓、胆嚢などである。
【0017】
病変とは、上記特定部位に生じた変化である。
本発明では、病変の状態についての文章化を的確に行うために、病変の名称を予め定めておく。病変の名称は、従来より医療で用いられている名称をそのまま用いればよい。
例えば、診断対象部が眼球であって、特定部位が網膜の場合には、その部位に生じる病変の名称は、静脈拡張、静脈狭細、静脈蛇行、動脈拡張、動脈狭細、動脈蛇行、静脈隠伏、Salus交叉弓、静脈先細り、静脈塞き止め、血管腫、毛細血管瘤、吻合血管、閉塞動脈、閉塞静脈、点状出血、線状出血、斑状出血、火炎状出血、網膜前出血、網膜下出血、神経線維欠損、格子状変性、敷石状変性、網膜円孔、馬蹄形裂孔、扁平状剥離、胞状剥離、硬性白斑、軟性白斑、網膜萎縮、び漫性硝子体出血、塊状硝子体出血、び漫性黄斑浮腫、類嚢胞様黄斑浮腫、網膜嚢胞、分離網膜、網膜振盪などが、種々の病変の名称の中の一部の例として挙げられる。病変の名称は全てを網羅してもよいし、主要なものだけをプリセットとして保持しておき、実際に使用しながら現場で追加や変更を行う態様であってもよい。
また、眼球における網膜以外の他の特定部位(上記で列挙した角膜、結膜、強膜、前房など)にも、その部位独特の病変が多数存在する。
【0018】
特定部位とその病変の名称とを入力するということは、その入力に先立って、医療従事者が診断対象部を観察し、その中のいずれかの特定部位に病変があると診断したことを意味する。
また、「特定部位とその病変の名称とを少なくとも入力する」とは、特定部位と病変の名称とが識別できるならば、必ずしも別個に入力する必要はない。例えば、病変が「出血」のような一般的なものである場合には、特定部位と病変の名称の入力が必要であるが、ある病変の名称Aがある特定部位aだけの固有のものである場合には、必ずしもその特定部位と病変の名称とを別途入力させる必要はなく、病変Aの名称の入力だけでも、特定部位とその病変の名称とが入力されたと解釈してよい。
ただし、そのような省略可能な場合でも、先ず「特定部位a」を選択入力し、そこに生じる種々の病変の名称を表示して、その中から前記したような特定部位固有の病変の名称Aを選択入力するという手順の方が、ユーザーにとって該「病変の名称A」を見つけ易い場合には、使い勝手などを考慮し、特定部位とその病変の名称とを別途入力するようなデザインとすればよい。
尚、入力事項として、特定部位とその病変の名称に加えて、必要に応じた種々の付帯的な事項や情報を入力可能としてもよい。また、当該プログラムを細分化して特定部位専用のプログラムとする場合には、特定部位の入力が最初からなされていたものとみなす。
【0019】
特定部位の名称とその病変の名称は、本発明では、描画編集の準備、解析などにとって重要な文言となる。例えば、後述の描画編集手段では、特定部位の名称や病変の名称に対応して描画用のレイヤーが用意され、また、解析手段では、特定部位の名称や病変の名称は、解析のためのキーワードとしてデータセットの中にも予め定められている。
よって、ユーザーが入力する名称と、当該プログラムで用いている名称とを一致させることが重要である。そのため、基本的にはユーザーが既定の名称以外のものを入力できないように定めておいたり、類似の用語が入力された際には候補を選択する画面を出力させるといった態様が好ましい。ただし、予め定めておいた多数の病変の名称のいずれにも該当しない病変の入力に対応し得るよう、「その他」や「新規名称」などの項目を用意し、キーボードなどから新しい病変の名称を医療の現場で追加できるようにする態様が好ましい。
また、入力に際しては、ユーザーが特定部位とその病変の名称とをキーボードから打ち込むよりも、例えば、表示画面にプルダウンや新たなウィンドウなどを開いて部位の絵や名称を表示し、その中からユーザーがペンやマウスで選択しクリックする(確定ボタンを押す)ことで目的の名勝を入力する態様がワンタッチの操作となって便利である。
以上のような点から、図2に一例を示したように、表示画面に特定部位の名称とその病変の名称とを表示し、ユーザーがペンやマウスで選択しクリックによって入力する態様が、プログラム内で定めた語句だけを確実にかつ簡単に入力できる好ましい態様である。
【0020】
当該ステップ(S1)の入力手段で用いられる具体的な入力装置は、マウスやキーボード(実際には入力を確認するための表示装置が必要である)などであってもよいが、後述のステップ(S2)の描画編集手段では表示装置とペン入力装置またはポインター入力装置が必須であるから、それらを当該ステップ(S1)の入力手段の入力装置として兼用すれば、同じ入力装置を手に持ったままで、入力手段から描画編集手段へとスムーズに作業を進めることができるので好ましい。
入力手段から次の描画編集手段へと移るためのボタンは独立して表示画面上に適宜設けてもよいし、病変の名称の入力を合図として、描画編集手段へと移るようにしてもよい。
【0021】
上記ステップ(S2)の描画編集手段は、図3に一例を示すように、表示画面に診断対象部の下絵(d1、d2等)を表示し、該下絵によって規定された診断対象部の領域を描画可能領域とし、医療従事者が観察した実際の病変領域を、ペン入力手段またはポインター入力手段によって描画し得るように構成される。
図3の例では、表示画面に左右の眼球を示唆する2つの大円(d1、d2)が表示され、それらの大円の内側が描画可能領域となっている。そして、描画の目安とするための方位線(d11、d21)、同心円(d12、d22)、網膜の鋸状縁を示唆する波線の円(d13、d23)などが下絵として加えられている。同図の例では、方位線(d11、d21)は、30度の等間隔で放射状に描かれた大円(d1、d2)の半径となっている。
図3の例では、左側の眼球の描画可能領域内には、すでに数種類の病変領域がユーザーによって描かれている。
描画可能領域は、下絵の最外線(図3では大円)の外側に広がっていてもよい。描画の目安とするための方位線や同心円などの目盛りは、適宜加えてよい。
【0022】
描画可能領域の解像度や領域は、コンピュータの能力や表示画面の仕様の変化や技術の進歩などに応じて適宜決定すればよく、特に限定はされない。
一例として、アスペクト比(ヨコ4:タテ3)の場合であれば、ヨコ(640ドット)×タテ(480ドット)程度以上の領域を確保しその中に下絵を表示することが、ユーザーにとっては判別し易く好ましく、ヨコ(1024ドット)×タテ(768ドット)やヨコ(1280ドット)×タテ(960ドット)程度までが、現時点ではユーザーにとっての取扱い性や、コンピュータにとっての解析やデータ保存の点から適当な領域である。
これらの領域は、表示装置の画面仕様ではなく、当該プログラムが取り扱う描画領域のドットの配列の例である。これに対して表示装置の画面がより大画面であったりより小画面である場合には、前記の領域を適宜拡大縮小して表示すればよい。
【0023】
描画編集手段における入力手段(ペン入力手段、ポインター入力手段)は、入力装置と表示装置とプログラムとが一体となって機能するものである。
ペン入力手段を構成するための入力装置には、次の(イ)、(ロ)のタイプの装置が挙げられる。
(イ)表示画面にペン形の入力器具を直接接触させて、あたかもその器具と画面との接点から塗料や模様が画面上に出ているかのように該画面に描画し得るタイプの装置。
(ロ)表示画面とは別のボード(ペンタブレットなどと呼ばれる)上にペン形の入力器具を接触させて、表示画面上に描画するタイプの装置。ボード上には、描画を助けるための診断対象部と描画可能領域の下絵が描かれたシートを配置し、表示画面の描画可能領域と対応させてもよい。
前記(イ)のタイプの装置には、所謂タッチパネルのように表示画面上に透明電極フィルムを設けてペン形の器具の接触位置を検出するタイプのものや、表示画面上に透明のアンテナ網(磁気センサー網)を設けてペン形の発信器から発せられる磁気信号を検出するタイプのものなどが例示される。前記(ロ)のタイプの装置は、ボード上に設けた検出センサーによってペン形の入力器具の位置を検出するタイプのものなどが例示される。
一方、ポインター入力手段のための外付けの入力装置には、次の(ハ)、(ニ)のタイプのものが挙げられる。
(ハ)マウス(ボールや光線を利用したセンサによって検出した移動量をコンピュータへ伝える入力装置)
(ニ)タッチパッド(指などでなぞると、接触点を検出してコンピュータへ伝える入力装置)
上記(ロ)は、上記(ニ)と同様のポインター入力手段を構成する入力装置であると言うこともできる。上記(ロ)〜(ニ)の装置は、位置検出のメカニズムやパッドなどが互いに異なるが、いずれもポインターと呼ばれるマークを画面に表示し、それが意図した通りに動くように各外部装置を操作するというものである。このような操作に比べて、上記(イ)のタイプは、筆記用具で紙面上に直接絵を描く感覚により近いので、描画の作業性は好ましい。
これらの入力装置とその駆動および入力信号を描画へと結び付ける技術自体は、従来技術を参照すればよい。
以下の説明では、上記(イ)〜(ニ)の装置におけるような現実のペン形入力器具と画面内のポインターとを併せて、画面に軌跡を描くことができる描画ツールを「描画ペン」と呼ぶ。
【0024】
描画ペンによって表示画面に病変領域を描画する際の基本操作は、主として次の操作が例示される。該操作によって、描画模様が描かれ、病変領域の場所と大きさとが描画可能領域内に指定される。
図4(a)に示すように、描画ペンが移動するとその跡に点線状、破線状(一点鎖線や二点鎖線などの途切れたあらゆる線を含む)、線状(細線、太線を含む)の軌跡や、これらの軌跡以外の模様による軌跡を描き、その軌跡が占有する領域自体によって病変領域を規定する操作。
描画ペンの軌跡自体によって目的の病変領域を所定の色や模様で塗りつぶすには、軌跡を描く線や模様は、比較的太い帯状であることが塗りつぶしには好ましい。
図4(b)に示すように、描画ペンの軌跡によって目的の病変領域を囲み、病変領域を規定する操作。この場合の軌跡は、細く明確な線が領域の境界を示すのには好ましい。また、病変領域を囲む線が閉じられて閉領域が作られたときにその閉領域が自動的に所定の色や模様にて充填されるように描画プログラムを構成すれば、閉領域の識別性が高くなるので好ましい。線によって病変領域を囲んで閉領域を作る場合、該病変領域を囲む線は、ユーザーが自分のペン操作によって閉じてもよいし、ペンの開始位置とペンを画面から離した位置とをプログラムが自動的に結んで閉領域とする構成などであってもよい。
図4(c)に示すように、描画ペンを意図する位置に合わせて入力を行うと(即ち、描画ペンに装備された入力ボタンを押すと、所謂クリックをすると)その位置に印判を押したように特定の模様(円や多角形模様)が描かれ、その模様が病変領域を規定する操作。
【0025】
図4(a)の操作における描画ペンの軌跡は、他と識別可能な色や模様を持った線状等の軌跡であればよく、図5(a)〜(d)の例が挙げられる。同図の例では、説明のための例としてエンピツ形のポインターを描いている。
図5(a)は、特定の太さと色とを持った点線状、破線状、または、線状の軌跡を描く態様である。一点鎖線や二点鎖線など不連続な線は、全て破線状の軌跡に含まれるものとする。また、これら線の太さは細いものから太いものまで種々のものを適宜選択してよい。
図5(b)は、ハッチング模様からなる特定の太さの帯状の模様を軌跡として描く態様である。
図5(c)は、格子模様からなる特定の太さの帯状の模様を軌跡として描く態様である。
図5(d)は、ドット模様からなる特定の太さの帯状の模様を軌跡として描く態様である。
これらの色や模様は一例であって、波線によるハッチング模様、市松模様などの種々の模様や素地を用いてよい。
【0026】
図4(a)の操作による軌跡の色や模様、および、図4(b)の操作によって充填される色や模様は、病変領域を互いに識別できるように、また、特定部位や病変の名称ごとに固有の色や模様を定めておくことが好ましい。
描画のために画面の中で用いられる描画ペン、消しゴム、スタンプなどの種々の描画ツールの種類や機能、それらのツールを便利に選択するための表示手法などは、後述する従来公知の描画アプリケーションを参照してよい。
【0027】
診断対象部は通常立体である。例えば、眼球の場合の特定部位は、観察者にとって手前側に位置する角膜などから、奥側に位置する網膜などまで、複数の位置に立体的に存在する。また、診断対象部が組織の表面だけの平面的なものであっても、複数の病変が互いにオーバラップして存在する場合がある。
これら複数の特定部位に生じる複数の病変を、1つの平面に描いたのでは、視覚的にも解析的にも不明確になり好ましくない。
よって、本発明では好ましい態様として、描画可能領域を複数の描画レイヤー(1つの描画可能領域を1枚の透明シート上に描かれた領域のように1層として取り扱う概念)として設けておき、それら描画レイヤーを重ねて1つの画像として表示されるような構成とし、特定部位とその病変の名称が入力されると、それに対応した描画レイヤー(描画可能領域)が選択され、そのレイヤーの描画可能領域が描画可能となり、特定部位や病変の名称ごとに個別の描画レイヤーに描画するという態様を提案する。
この態様では、全ての特定部位の病変の名称と描画レイヤーとを1対1で完全に対応させる必要はなく、1つの描画レイヤーに複数の特定部位や病変領域を書き込むようにしてもよい。
描画可能領域を複数の描画レイヤーとして設ける態様によって、記憶されるデータの容量は大きくなるが、必要な描画レイヤーだけを表示して他の描画レイヤーを消したり重ね合わせたりして、描画結果を自在に表示し確認することが可能になり、また、後述の解析手段での描画領域の解析も病変領域同士の混在が無いので容易になる。
【0028】
描画編集手段において描画可能領域上に描かれる病変領域は、上記説明のとおり、ユーザーに視覚的に分り易いように種々の模様や色をもって指定できる構成となっている。
一方、その描画領域の位置や大きさを解析するプログラムの側からは、模様や色による識別は特に必要ではなく、病変領域を知るにはドットの有無が分れば足りる。
そこで、当該プログラムでは、上記した描画可能領域を含んだ描画可能レイヤーの他に、後述の解析手段においてプログラムが領域解析を行うのに適した解析用領域を含んだ解析用レイヤーを備える態様を推奨する。
この態様では、後述の解析手段は、解析用レイヤー内の解析用領域の描画の有無を調べることによって、病変領域の少なくとも位置と大きさとを認識しかつデータ化するように構成される。
また、この態様では、描画可能レイヤー内の描画可能領域に病変領域が描画されると、その描画可能レイヤーに対応した解析用レイヤー内の解析用領域にも、前記病変領域に対応した病変領域が作成されるように構成される。
解析用レイヤーへの描画は、予め解析用レイヤーを必要数だけ用意しておき、描画可能レイヤーへの描画と同時に裏で同時に実行するように構成してもよいし、描画可能レイヤーに描画されてから対応する解析用レイヤーを生成してそこへ領域データを転写するように構成してもよい。
【0029】
描画用レイヤーは、立体的構造を重ね合わせによって平面に表わすためのものであり、描画したそのままの画像を各レイヤーに保存している。それに対して、解析用レイヤーは、各病変を文章化するために必要なデータを保存する必要があるので、描画したそのままの画像でよい場合もあれば、解析するために最適な画像データとして変換することが必要な場合もある。例えば、茶色の斑点模様として描画した網膜光凝固斑に対して、斑点模様は描画レイヤーに描かれてそのまま保存されるが、解析用レイヤーではその施行範囲を文章化する目的で斑点模様を描画した範囲全体を対応する識別色で塗りつぶした画像に変換して、それを保存する事が好ましい。
【0030】
描画用、解析用ともに各病変が描かれたレイヤーをどのように保存するのかは、解析用データセットなどに予め定められる。
画像データの保存は、コンピュータのメモリに一時保存され、最終的には記憶媒体もしくは外部記憶装置に保存される。画像データの保存にはビットマップなど非圧縮形式が好ましく用いられる。
【0031】
描画編集手段において描画を行うためのプログラム技術自体や、複数の描画レイヤーに描画しそれらを重ね合わせて1枚の絵を構成し、描画レイヤーを個別に編集したり1つの画面に統合するプログラム技術自体は、従来公知の種々の描画アプリケーションの技術を参照してよいし、独自に開発したものであってもよい。
描画アプリケーションとは、表示画面に絵を描くためのグラフィックソフトウェアであって、「ペイントソフト」、「ペイントツール」、「ドローイングソフト」、「グラフィックソフト」」、などとも呼ばれている。従来公知の描画アプリケーションとしては、例えば、Adobe Systems社のAdobe Photoshop(登録商標)あるいはIllustrator(登録商標)、Microsoft社のMS Paint、日本ポラデジタル株式会社のCanvas(登録商標)などが挙げられる。
【0032】
上記ステップ(S3)の解析手段は、上記の描画編集手段の描画可能領域内のどこに描画がなされたかを該領域を細分化して調べることによって、描画された病変領域の少なくとも位置と大きさとを認識しかつそれらをデータ化するように(即ち、それら位置と大きさとを文言や数値として表現できるようなデータを生成するように)構成される。
描画可能領域内のどこに病変領域を示す描画がなされたかを調べるための基本的な手法は、描画可能領域または上記した解析用レイヤー上の解析用領域の各画素(ドット)、またはそれに対応するメモリー上のデータ行列内の各要素を調べて、各ドットに描画された痕跡(ドットデータ)があるかどうかを調べることである。
【0033】
当該プログラムによってコンピュータに描画可能領域内のどこに描画がなされたかを効率よく解析させかつ、診断記録として利用可能な表現を用いた解析結果を出させるために、本発明では、解析用データセットを予め用意しておくことを推奨する。
この解析用データセットは、解析手段が上記描画可能領域内の描画の有無を調べるに際して参照すべき解析用の指示書である。この解析用データセットは、大きく分けると2つのデータセット(領域系ライブラリーと指示系ライブラリー)を有して構成される。
領域系ライブラリーは、その病変の描画解析に最も適するように、〔描画可能領域を特定部位とその病変名に応じて1種類以上のパターンにて分割した小領域の集合〕をデータセットとして含むことが好ましく、またさらに〔描画可能領域を分割せずに全体を1つの解析対象とした全領域〕を含んでいてもよい。
指示系ライブラリーは、前記小領域の集合および全領域のうちのどの領域に対して描画の有無を調べるのかを指定した領域リストを含むことが好ましい。
当該プログラムの解析手段は、入力された特定部位とその病変名に該当する領域リストを読みに行くように構成され、該領域リストに記述された指定に従って、領域系ライブラリーのデータセットに含まれた小領域、または、小領域が集合した領域、または、全領域について、該描画の有無を調べるように構成される。
例えば、特定部位として角膜が入力され、病変の名称として角膜びらんが入力された場合、(1)その入力に応じて角膜に関する解析用レイヤーだけを解析対象とし、(2)角膜びらんという病変を調べるための区画として最適なパターンにて分割された小領域の集合を予め用意しておき、かつ、(3)その小領域の集合のなかのどの小領域を調べるかが記述された指示書があれば、解析の効率が高くなる。
また、その小領域の区画を、従来の診断でも使用されるような区画としておくことで、その区画に描画があったことが分れば、その解析データから、「角膜下方にびらんが軽度に見られる」など、従来の診断結果と同じ表現を用いた文章変換も可能になる。
【0034】
解析用データセットに含まれる分割した小領域は、上記の(a)〜(f)のように、従来の診断結果と同じ表現を用いた文章変換が可能になるように決定しておくことが好ましい。領域リストには、これらの小領域の中から、入力された病変に応じた適切なものを1以上指定しておく。
【0035】
図6は、右の眼球を例とした場合の、解析用データセットの小領域の分割パターンの一例であって、図7に示した未熟児網膜症用の下絵に基いて作成されたものである。図7は、従来の眼科の医療現場においてカルテ作成等のために用いられている右の眼球のための下絵であって、未熟児網膜症用のものである。図6、7に準じて、一般眼底疾患用の分割パターンも、一般眼底疾患用の下絵に基いて適宜作成すればよい。
図6の分割パターンでは、1時から12時までの360度の方位に関しては、図7の方位線を小領域が包含するように決定されている。例えば、図7の下絵では、円の中心から図の上方に向かう「12時」の方位線を0度とするとき、「1時」の方位線は30度の位置にある。これに対して、図6の分割パターンでは、「右1時」の小領域は、15度〜45度までの扇形として規定されており、図7の下絵の「1時」である30度の方位線を中心線として含んでいる。
このように、従来の下絵に沿いながら、その下絵の方位線を包含するように小領域の方位が決定されているので、例えば、図6の「右1時」の小領域に描画が含まれているという解析結果が、図7の下絵の「1時」に描画があることを意味し得るようになっている。
【0036】
図6に示す分割パターンに沿って細かく分割された各小領域(同図で細かく色分けされた個々の領域)は、1つ1つ個別に識別名が付与された図形として格納される。例えば、図8(a)に黒く着色した小領域は、上記(f)でいう〔2以上の小領域同士が互いに重なり合った領域〕、即ち、環状の小領域であるゾーンと扇状の小領域とが重なり合った領域であって、図6において「右1時5」と命名された小領域である。この小領域が単独の図形として格納される。
また、図6では詳細には示していないが、円の中央付近には、乳頭(視神経乳頭)やそれを同心状に取り囲む小円、黄斑部を取り囲む小円やそれをさらに取り囲む楕円など、細かい境界線が多数存在しており、それらの境界線と前記の方位線とによって細かく分断された小領域についても、1つ1つ識別名がつけられ、解析に利用されている。
例えば図6の例では、左右の目の区別と方位に応じて「右1時」〜「右12時」などと命名され、さらに、各方位の領域を、円の中心側から外へ順に「右1時1」、「右1時2」、「右1時3」、「右1時4」、「右1時5」などと細かく小領域として命名されている。他の方位も同様である。
分割パターンは、コンピュータの処理能力に応じて、より粗い分割や、より細かい分割であってもよい。
【0037】
また、図6のような細かく分断した小領域だけでなく、それら小領域のいくつかをまたは全てを合体させて、識別名をつけて1つの領域として利用するのが好ましい。次にいくつかの例を挙げる。
図6の「右1時1」、「右1時2」、「右1時3」、「右1時4」、「右1時5」を合体させた扇形の小領域。識別名は「右1時」。他の方位も同様である。
図8(b)に黒く着色して示すように、「右1時5」〜「右12時5」を合体させた環状の小領域(鋸状円より外側の領域)。識別名は、例えば「右毛様体」。
図8(c)に黒く着色して示すように、「右1時4」〜「右12時4」を合体させた環状の小領域(鋸状縁を含む領域)。識別名は、例えば「右鋸状縁」。
図8(d)に黒く着色して示すように、「右1時3」〜「右12時3」を合体させた略環状の小領域(鋸状縁の内側の領域)。識別名は、例えば「右ゾーンIII」
図8(e)に黒く着色して示すように、「右1時2」〜「右12時2」を合体させた環状の小領域。識別名は、例えば「右ゾーンII」
図8(f)に黒く着色して示すように、後極を取り囲む楕円の内側の領域。識別名は、例えば「右後極」
以上は、ごく一部の例であって、図6に示した小領域を合体させて、解析結果の表現に便利なように種々の小領域を規定してよい。
図6の小領域やそれらを合体した種々の小領域は、図7の下絵に記載された方位や円などに基いているので、その小領域に描画が有るか無いかの解析結果の表示は、従来の眼科の医療現場において用いられている位置の表示の仕方と合致する。これは眼球のみならず、生体のあらゆる部位についても同様である。
【0038】
上記のように、所定の分割パターンにて用意しておいた種々の小領域を、解析用レイヤーの解析のために適用するに際しては、各小領域内の各画素の座標を解析の度に計算で求めると膨大な時間がかかる。そこで、予め小領域の画像と共に、各小領域内の画素の座標をも保存しておき、解析の際に各小領域内の画素の座標を参照し得るように構成すると、処理が速くなり好ましい。
小領域の各図形や、小領域内の各画素の座標の保存は、当該プログラムが参照可能な記憶装置に格納されていればよく、また、当該プログラム自体の内部に記述されていてもよい。
【0039】
図9は、眼球に関する解析用データセットの領域リストの実例である。
同図の領域リストは、プログラム言語「Visual C++ 2008」(Microsoft社)に従って作成された当該コンピュータプログラムが利用し得るように記述した例である。
図9に例示した記述様式では、先頭にセミコロンがあれば、それ以降の文字列は画面に表示(コメントアウト)される。従って、同図の冒頭の3行はコメントであり、このコード表の一行に含まれるデータの意味を示すメモである。この3行に記載された各パラメータの意味を次に順に説明する。それらが、4行目以降の各パラメータの意味である。
colornum:このパラメータは、描画ペンがどの基本色に属するかを示すものである。例えばRGBで(255,0,0)と(254,0,0)は異なる色であるが、描画可能レイヤー上では同じ赤に属する。
red, green, blue:これらのパラメータは、描画ペンのRGBの数値を示すものである。
size, shape, layer:これらのパラメータは、描画ペンのサイズ、形状、描画レイヤーを指定するものである。
organization, structure, property, feature:これらのパラメータは、病変の組織、部位、特性、特徴を指定するものであり、病変の分類に役立てることができる。例えば、組織は、網膜、硝子体、乳頭、脈絡膜などを表し、部位は、静脈、動脈、網膜前、網膜下など表し、特性は、拡張、蛇行、狭細、拡大などを表し、特徴は、点状、線状、斑状、火炎状などを表している。
expression:このパラメータは、病変を表現する語を示すものである。
disease:このパラメータは、病変の名称を疾患ごとにまとめるためのコードを示すものである。
parts; focus; posteriorpole; latitude; longitude; directions:これらのパラメータは、それぞれ、解析の際にデータセットから指定する小領域を、部分領域(名称自体が解剖学的領域を限定する病変のための領域)、極在領域(純粋な解剖学的な領域)、後極部領域、同心様5分割領域、放射様4分割領域、放射様12分割領域で指定するものである。
部分領域は、黄斑、乳頭、乳頭上側、乳頭耳側、乳頭下側、乳頭鼻側を表している。
極在領域は、中心窩、黄斑部、視神経乳頭を表している。
後極部領域は、黄斑上側、黄斑耳側、黄斑下側、黄斑鼻側を表している。
同心様5分割領域は、ゾーンI、ゾーンII、ゾーンIII、鋸状縁、毛様体を表している。
放射様4分割領域は、上方、耳側、下方、鼻側を表している。
放射様12分割領域は、1時から12時までを表している。
threshold:このパラメータは、程度を表現するのに必要な小領域内のドット数の割合(1000分率)の境界値を示すパラメータである。
「;disease;parts,focus,posteriorpole,latitude,longitude,directionsは最後に,をつけること」との記述は、コードを作成する際の書式の覚書である。
より具体的には、図9の4行目の記述「2,000,000,255,3,1,5;網膜,静脈,拡張,;網膜静脈の拡張;,2,;;;;,1,2,3,;;,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,;5,50」は、
〔これを指定した描画ペンが、2という数値で指定された青色に属し、そのRGB値が(0,0,255)であり、3で指定されたペンサイズであり、1で指定された形状を有し、5で指定されるレイヤーに描画され、その属する組織が網膜であり、部位が静脈であり、特性が拡張であり、特徴は指定がなく、文章化する際の語としては「網膜静脈の拡張」が用いられ、2で指定される疾患には必ず病変の選択項目となり、解析の際には1から3で指定される同心様5分割領域と1から12で指定される放射様12分割領域が小領域として用いられ、拡張の程度を小領域ドット数に対する割合として0.5%未満を軽度、5%までを中等度、それ以上を重度として計算すること〕
を意味している。
また、図9に示す最後の行「1,242,000,000,3,1,11;乳頭,,拡大,;乳頭拡大;,1,;,2,;;;;;;」は、
〔これを指定した描画ペンが、1で指定された赤色に属し、そのRGB値が(242,0,0)であり、3で指定されたペンサイズであり、1で指定された形状を有し、11で指定されるレイヤーに描画され、その属する組織が乳頭であり、部位は指定がなく、特性は拡大であり、特徴は指定がなく、文章化する際の語としては「乳頭拡大」が用いられ、1で指定される疾患には必ず病変の選択項目となり、解析の際には2で指定される部分領域が小領域として用いられ、それ以外の小領域は用いられず、拡大の程度は指定がないものとして計算すること〕
を意味している。
このリストの例では必ずしも未熟児網膜症に出現するとは限らない病変も含まれている。
【0040】
解析手段による病変領域のデータ化は、病変の程度を示す数字や記号であっても、次の文章生成手段での文章化に対応した程度を示す文言(大きい、小さい、長い、短い、広い、狭い、軽度、中程度、重度など)であっても、これら数字と文言の両方を用いた表現であってもよい。
また、「大きさ」は、前記のような大小の程度を示す文言だけでなく、「存在する(見られる)」、「存在しない(見られない)」というような、有無を示す文言であってもよい。
【0041】
上記ステップ(S4)の文章生成手段は、先ず、上記の解析手段でデータ化された病変領域の少なくとも位置と大きさとを用いて、病変の様子を記述するために必要な数値および/または文言を生成するように構成される。
「数値および/または文言」とは、「数値および文言のうちの両方またはいずれか一方」を意味する。
この数値および/または文言の生成工程は、上記の解析手段に含まれると解釈してもよい。
文章生成手段は、入力された特定部位とその病変の名称と、その様子を記述した前記数値および/または文言とを含む文章を生成するように構成される。例えば、入力された特定部位とその病変の名称を主語とし、前記生成された数値または文言を述語とする文章、または、該文章と同一の内容を意味する文章である。
例えば、入力された特定部位とその病変の名称が、網膜静脈の拡張であって、図10に一点鎖線で囲んで示した太線による描画を解析した結果の位置が〔黄斑鼻側上方〕であり、大きさが〔幅が3、長さがその領域内の静脈の60%拡張〕である場合には、生成される文章としては次のものが例示される。
・「網膜静脈の拡張がゾーンIの10時〜12時では中等度に見られる。」
この文章には、文体を変えることで、同一の内容を意味する変形表現が種々存在する。例えば;
・「網膜のゾーンIの10時〜12時に、中等度の静脈の拡張が見られる」
・「中等度の網膜静脈拡張がゾーンIの10時〜12時に存在する」
・「ゾーンI、10時〜12時:中等度網膜静脈拡張」
・「中等度網膜静脈拡張(ゾーンI、10時〜12時)」
などである。
これらの表現は、事実が文言によって同様に正しく伝わるものであればどのように倒置してもよく、箇条書きであっても、表形式による文言の列挙であっても、上記の文章と同一の内容を意味するものであればよい。これらの文章や表現は、カルテなどの医療文書に適合するものを適宜採用すればよい。
【0042】
上記描画編集手段によって作成された描画データや解析用データ、解析手段で生成された解析結果、および、文章生成手段によって生成された文章などを、コンピュータの外部記憶装置などに書込み読出すことができるように、文書データ管理手段として該コンピュータを機能させるプログラム部分をさらに設ける態様が好ましい。
【0043】
本発明では、病変の名称を入力し描画を入力すれば、病変の様子が自動的に文章化されるので、それを文章データとしてデータベースやデータウェアハウスに蓄積することが容易になる。また、該文章に含まれる事項をキーワードとしてデータベースやインターネットなどから医療上の参照事項を検索し表示することが可能となる。
そこで、当該プログラムでは、参照事項出力手段として機能させるためのプログラム部分を設け、入力された情報を利用して医療上有用な他の情報を参照事項として得、それを画面に表示したり、ユーザーが閲覧しえるように出力することを提案する。表示や出力の様式は特に限定はされない。
例えば、文章変換された病変の様子に基いた、重症度分類、推奨治療法、可能性として稀なあるいはありえない描画に対する矛盾警告、描画されていないが存在が予想される病変の探索指示、病変の重症度の数値化、病名診断予測、推奨される検査項目などが挙げられる。また、描画を行った時点での患者の病状に対する付加知識を与えるだけでなく、今後の医学医療看護介護の進歩によっては患者の未来に対する予測なども提示することも可能である。
前記の参照事項は、当該コンピュータがアクセス可能な記憶装置(実装メモリー、ハードディスク装置やCD−ROM、インターネット等を通じて接続された外部記憶装置など)に、データベース、データウェアハウス、保存ファイル、または、プログラム内の記述として予め作成しておき、病変の名称や病変の様子などに基いて検索し得るように構成すればよい。
【0044】
次に、本発明による文章作成装置の構成を説明する。
本発明の装置は、入力手段と、描画編集手段と、解析手段と、文章生成手段とを少なくとも有する構成とされる。これらの各手段の機能は、上記において本発明のプログラムの各手段の説明で述べたとおりである。
当該文章作成装置の実際の態様は、図1(b)に概要を示すとおり、表示装置と入力装置とが少なくとも接続されて構成されたコンピュータである。ここで、入力装置は、上述のペン入力装置またはポインター入力装置であって、該コンピュータは、本発明のコンピュータプログラムを実行することで、文章作成装置として機能するようになっている。
該コンピュータは、外部記憶装置(ハードディスクドライブ、USBメモリー、各種記録媒体にデータを読み書きし得る装置など)を有することが一般的な態様として好ましく、プリンターなど通常のコンピュータに接続可能な周辺機器が接続可能である。
本発明のコンピュータプログラムを外部記憶装置にインストールしておき、該プログラムの全体を一度に実装メモリー(RAM)に読み込んで実行するようにする態様や、各手段ごとに実装メモリーに読み込んで実行するようにする態様、外部記憶装置などにデータセットを配置し適宜参照する態様などは、プログラムの大きさやコンピュータの仕様に応じて適宜決定すればよい。
【0045】
本発明の装置は、単発的な1台のコンピュータで構成するだけでなく、図1(b)のように、外部コンピュータ(端末)をインターネットやLAN(ローカルエリアネットワーク)などの通信回線を介して上記の本体コンピュータ(ホストコンピュータ)と接続し、ホストコンピュータで実行される上記コンピュータプログラムを、ユーザーが前記通信回線を介して端末で利用できる構成としてもよい。
また、1つの病院内で、ホストコンピュータに接続された大容量記憶装置内に、患者の各部のカルテやその他の医療情報をデータベースとして構築し、多数の端末で当該プログラムを実行し、該データベースを共有する構成としてもよい。
本発明をサーバクライアント型の電子カルテとして適用する場合、LANを介して施設内に設置されたサーバに多数の端末が接続された構成とし、データの入出力・共有を行うことができる。また、本発明をWEB型の電子カルテとして適用する場合、インターネットあるいは専用線を介してリモートで多数の端末が施設外に設置されたサーバに接続された構成とし、データの入出力・共有を行うことができる。
【実施例】
【0046】
本実施例では、本発明のプログラムを実際に製作し、コンピュータに実行させて、描画が文章へと変換される様子を調べた。
本実施例で用いたコンピュータおよびプログラムの構成では、ペンタブレットを入力手段と描画編集手段の入力装置として兼用する構成とした。
特定部位は網膜硝子体とし、病変は未熟児網膜症の隆起と発芽とした。
図11は、本発明のプログラムにおける描画編集手段のステップにおいて、実際に表示画面に表示した眼球の下絵(それによって描画可能領域が画面上に規定されている)と、そこにペンタブレットによって描画された病変領域の絵の実例を示している。同図の2つの眼球の下絵のうちの左側の下絵(即ち、右の眼球の下絵)に線状の軌跡で規定されたものが〔未熟児網膜症の隆起〕の領域であり、小さい円で3箇所に規定されたものが〔未熟児網膜症の発芽〕である。
【0047】
当該プログラムの実際の操作では、先ず、入力手段において、図2に示したような病変の名称を入力する画面を表示し、未熟児網膜症を選択しそれに属する隆起をクリックすることで未熟児網膜症の隆起を入力し、描画編集手段に移って線状の軌跡を描く描画ペンにて病変領域を画面に描いた。
次いで、入力手段に戻り、前記の病変の名称を入力する画面において、未熟児網膜症を選択しそれに属する発芽をクリックすることで未熟児網膜症の発芽を入力し、描画編集手段に移って小円を印判のように描く描画ペンにて病変領域を画面に描いた。
【0048】
〔描画領域の解析〕
前記の2つの病変についてそれぞれに描画された病変領域を、病変ごとに解析手段によって順番に調べ、描画可能領域を分割した小領域のどれにどの程度描画されているのかをそれぞれデータ化した。
未熟児網膜症の隆起については、図8(d)、(e)に例示した小領域であるゾーンについて描画の有無を調べるように予め解析用データセットの領域リストに記述した。そして、入力手段において「未熟児網膜症」が入力されかつ「隆起」が入力されると、解析手段がその入力結果に対応した領域リストを選択し、その記述で指定された小領域内の描画の有無を調べ、隆起の位置と大きさとを認識しデータ化するようにプログラムを構成した。「発芽」についても同様に、解析用データセットの領域リストに記述しておき、解析手段がその指定に従って発芽の位置と大きさ(程度)を認識しデータ化するようにプログラムを構成した。
【0049】
〔解析結果からの文章生成〕
入力手段において入力された文言である「発芽」と「隆起」のそれぞれを用い、かつ、解析手段によって生成されたそれぞれの位置と大きさのデータを用いて病変ごとに文章を作成し、図15のように表示した。
【0050】
〔重症度の分類、推奨治療の検索と表示〕
一方、解析手段によって生成された、「隆起」と「発芽」とに関するそれぞれの位置と大きさのデータに対して、図12にプログラムリストとして例示したステップのとおり、各データにどのような用語が含まれるかを調べるようにプログラムを構成した。
前記の用語を調べた結果を用い、図13に例示した重症度の分類のプログラムステップに従って重症度を分類した。さらに、図14に例示したプログラムステップに従って推奨治療を示した。
尚、推奨治療の表示は、描画された病変の情報が十分ではない時には、可能性や確認が提示されるようにした。
【0051】
〔文章表示結果と評価〕
図15は、未熟児網膜症の隆起と発芽についてのそれぞれの病変領域の描画入力から生成された文章と、それぞれの解析結果に基いて生成された重症度の分類と推奨治療法とを出力した画面のハードコピーである。
同図に示すように、未熟児網膜症の隆起と発芽についてそれぞれ描画した病変領域が、それぞれの病変の様子を表す文章へと変換されている。
領域リストでの指定のとおり、「ゾーンIII」と「方位」に関する解析がなされた結果、あたかも従来の手作業によるカルテの如く、「ゾーンIIIの2時では」などの表現にて、病変の位置を示す文章となっている。さらに、重症度の分類と推奨治療の検索結果とが簡単かつ的確に表示されている。
上記の出力結果からも明らかなように、本発明のプログラムによって、描画が必要十分に文章化され、かつ、描画の二次利用も可能であることが示された。
尚、本実施例では、「2時では中程度」、「4時では中程度」などのように、病変の程度を方位ごとに表現しているが、プログラムの仕方により、同じ程度のものをまとめて表現してもよい(例えば「中程度のものが2時と4時、軽度のものが1時と5時」など)。
分類や推奨治療はここでは確定的に表現されているが、描画内容によっては曖昧な場合も含まれることが予想される。そのような場合は、一定の範囲内での分類や推奨治療の表現あるいは描画の追加記載を促す文書を表示するようにしてもよい。このような分類や推奨治療は、本実施例に関しては、未熟児網膜症を専門とする医師にとっては特に重要な内容ではないが、必ずしも専門としない医師にとっては臨床上、大変有用な情報を提供している。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によって、医師等の医療従事者がカルテ等の医療文書を作成する際に、簡単な文言の初期入力と病変領域の作画的な指定だけで、病変の様子を描写した文章が自動的に生成できるようになり、文書作成の労力が根本的に軽減できるようになった。
また、本発明によって、従来、取り出すことのできなかった描画に含まれる医療情報を容易に二次利用することが可能になった。
【技術分野】
【0001】
本発明は、医師や医療技術者等の医療従事者が診断対象部を診断した結果を、カルテなどの医療文書作成のために文章とする際に、その文章作成の労力をより軽減し、かつ、入力される医療情報の二次利用を可能にするためのコンピュータプログラムと装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、医療従事者(とりわけ医師)が手書きによって作成していたカルテなどの医療文書を、コンピュータを用いてその表示装置の画面(以下「表示画面」ともいう)上で容易に作成し得るようにしたプログラムや装置がある(例えば、特許文献1〜3など)。
例えば、特許文献1では、コンピュータに患者の識別情報を入力し、それに基いて、表示画面上に電子カルテを表示し、予め別途用意されたシェーマ(下絵画像)と文章候補とを表示して、画面上で適当な文章を選択して組み立てたり、描画ソフトによって病変部を描画しカルテに貼り付けたりすることを可能にしている。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載されたような技術は、多数の文章を予め用意しておき、その中から適当なもの選択し組み合わせることによって、キーボードから文を打ち込む手間をできるだけ省略するという技術である。医療従事者自身はキーボードのキーを打つという行為はしていないが、結局は、画面上で文章を構築し、文章を入力している。また、病変部を絵として記録するために描画ソフトが含まれているが、描き込まれた病変部の絵は、そのままでカルテに加えられ、常に絵として利用されているだけである。
【0004】
上記のように、従来のカルテ等の医療文章の作成を支援する技術では、コンピュータを利用して文章を便利に入力し得る機能を用意しているが、いずれも〔文章を記録するために、文章を入力する〕という基本的な概念からは何ら抜け出してはおらず、キー入力の手間が軽減されていても、表示画面内で文章を構築する労力は依然として必要である。
【0005】
また、従来の描画の入力を伴う文章作成支援技術が医療の現場においてどのように使用されているかを詳細に検討したところ、忙しい現場では必ずしも十分な文書化がなされているとは限らず、入力した描画をそのまま記録するかまたは簡単な用語を追記するだけで、記録を描画の内容に頼る傾向が見られた。
描画による記録は、その記録自体のためには有用であるが、絵であるがために、その中に含まれる医療情報をデータベースやデータウェアハウスに蓄積することや、その絵に含まれる内容をキーワードとしてデータベースやインターネットなどから更なる参照事項を検索すること(即ち、二次利用すること)が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−250526号公報
【特許文献2】特開2000−325314号公報
【特許文献3】特開2005−148990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、上記した問題点を解決し、カルテ等の医療文書作成において病変の様子を文章化する場合の文章作成の労力をより軽減し、かつ、描画に含まれる医療情報を容易に取り出して二次利用が可能となるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、次の特徴を有するものである。
(1)診断対象部の病変の様子を文章化するためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータを、
診断対象部に対して予め定められた1以上の特定部位とその部位ごとに予め定められた1以上の病変の名称の中から、病変の様子を文章化すべき特定部位とその病変の名称とを少なくとも入力する入力手段、
該コンピュータの表示装置の画面に診断対象部の下絵を表示し、該下絵によって規定された診断対象部の領域を描画可能領域として、該画面の描画可能領域内に前記病変が占有する病変領域を、ペン入力手段またはポインター入力手段によって描画し得るようにする、描画編集手段、
前記描画編集手段でなされた描画可能領域内の描画の有無を調べることにより、描画された病変領域の少なくとも位置と大きさとを認識しかつデータ化する、解析手段、
前記解析手段でデータ化された病変領域の少なくとも位置と大きさとを用いて、病変の様子を記述するために必要な数値および/または文言を生成し、前記入力された特定部位とその病変の名称と、その様子を記述した前記数値および/または文言とを含む文章を生成する、文章生成手段、
として機能させるための前記コンピュータプログラム。
(2)下記(A)の解析用データセットをさらに有し、
上記解析手段が上記描画可能領域内の描画の有無を調べるに際して、上記入力手段で入力された特定部位とその病変の名称とに対応した下記(A)の解析用データセットの領域リストの指定に従って、該描画の有無を調べるように、該解析手段が構成されている、上記(1)記載のコンピュータプログラム。
(A)描画可能領域内に描画された病変領域の少なくとも位置と大きさとについての解析を解析手段が行なうために参照すべき指定内容が、特定部位とその病変の名称ごとに定められた解析用データセットであって、
描画可能領域を特定部位とその病変名とに応じて1種類以上のパターンにて分割した小領域の集合、および/または、描画可能領域を分割せずに全体を1つの解析対象とした全領域をデータセットとして有し、かつ、前記小領域の集合および全領域のうちのどの領域に対して描画の有無を調べるのかを指定した領域リストを有する、解析用データセット。
(3)上記(A)の解析用データセットに含まれる1種類以上のパターンにて分割した小領域が、下記の(a)〜(f)から選ばれる1以上の小領域である、上記(2)記載のコンピュータプログラム。
(a)描画可能領域を、該領域の中心の1点から所定間隔の角度にて放射状に延びる直線によって分割した扇状の小領域。
(b)描画可能領域を、複数の同心円によって分割した環状の小領域。
(c)描画可能領域を格子状に交わる線によって分割した方形状の小領域。
(d)前記(a)〜(c)の小領域の形状以外の形状となるように、描画可能領域を分割してなる小領域。
(e)前記(a)〜(d)の小領域から選ばれた2以上の小領域を組み合わせてなる小領域。
(f)前記(a)〜(d)の小領域から選ばれた2以上の小領域同士が互いに重なり合った領域として規定される小領域。
(4)当該コンピュータプログラムが、
上記文章生成手段によって生成された文章を上記コンピュータの外部記憶装置に書込み読出す文書データ管理手段として、上記コンピュータを機能させるためのプログラム部分をさらに有する、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
(5)上記入力手段と上記描画編集手段とが、同じ表示装置と、同じペン入力手段またはポインター入力手段とを用いる構成とされ、
上記入力手段が、予め定められた1以上の特定部位とその部位ごとに予め定められた1以上の病変の名称を表示装置の画面に表示し、文章化すべき特定部位とその病変の名称とを、ペン入力手段またはポインター入力手段にて画面上で選択することによって、それら特定部位と病変の名称とを入力するように構成されている、
上記(1)〜(4)のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
(6)上記描画編集手段が、複数の描画可能領域を有し、これら描画可能領域は、それぞれ描画レイヤーとして、互いに重なり合って1つの画像として表示されるように構成され、上記入力手段で入力された特定部位とその病変の名称とに対応した描画可能領域が選択されて描画可能となるように構成されている、
上記(1)〜(5)のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
(7)上記描画編集手段は、描画可能領域を含んだ描画可能レイヤーの他に、解析用領域を含んだ解析用レイヤーを有しており、
描画可能レイヤー内の描画可能領域に病変領域が描画されると、その描画可能レイヤーに対応した解析用レイヤー内の解析用領域にも前記病変領域に対応した病変領域が作成されるように構成されており、
上記解析手段は、その解析用レイヤー内の解析用領域の描画の有無を調べることによって、病変領域の少なくとも位置と大きさとを認識しかつデータ化するように構成されている、
上記(6)記載のコンピュータプログラム。
(8)上記描画編集手段において、表示装置の画面上で入力用ペンまたはポインターによって描かれる病変領域が、入力される特定部位とその病変の名称ごとに固有の描画模様にて表現されるように定められており、それによって、1つの画面内に表示される複数の互いに異なる病変領域同士が視覚的に識別できるようになっている、
上記(1)〜(7)のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
(9)上記描画編集手段において、表示装置の画面上で入力用ペンまたはポインターが、下記(i)〜(v)のうちのいずれか1つの描画模様にて病変領域を規定する態様となっている、上記(8)記載のコンピュータプログラム。
(i)入力用ペンまたはポインターが移動するとその跡に、点線状、破線状、または、線状の軌跡が描かれ、その線状の軌跡自体が病変領域を規定する態様。
(ii)入力用ペンまたはポインターが移動するとその跡に、上記(i)の軌跡以外の模様による軌跡が描かれ、その模様による軌跡自体が病変領域を規定する態様。
(iii)入力用ペンまたはポインターが移動するとその跡に線状の軌跡が描かれ、さらに、該線状の軌跡が閉じられて閉領域が作られたときにその閉領域が自動的に所定の色や模様にて充填され、病変領域を規定する態様。
(iv)入力用ペンまたはポインターを意図する位置に合わせて入力を行うと、その位置に印判を押したように特定の模様が描かれ、その模様が病変領域を規定する態様。
(v)入力用ペンまたはポインターを意図する位置に合わせて入力を行うと、前記(i)〜(iv)以外の特定の模様が描かれ、その模様が病変領域を規定する態様。
(10)診断対象部が、病変領域を描画することが可能な部分であって、特定部位が、前記部分に含まれる解剖学的な単位である、上記(1)〜(9)のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
(11)当該コンピュータプログラムが、上記コンピュータを、下記(B)の参照事項出力手段として機能させるためのプログラム部分をさらに有する、上記(1)〜(10)のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
(B)上記文章生成手段によって生成された文章に関連した医療上の参照事項を、上記コンピュータがアクセス可能な記憶装置から探し出し出力する参照事項出力手段。
(12)診断対象部の病変の様子を文章化するための文章作成装置であって、
入力手段を有し、該入力手段は、診断対象部に対して予め定められた1以上の特定部位とその部位ごとに予め定められた1以上の病変の名称の中から、文章化すべき特定部位とその病変の名称とを入力し得るように構成されており、
描画編集手段を有し、該描画編集手段は、ペン入力手段またはポインター入力手段と、表示手段とをさらに含んでおり、該表示手段の画面に診断対象部の下絵を表示し、該下絵によって規定された診断対象部の領域を描画可能領域として、該画面の描画可能領域内に前記病変が占有する病変領域を、ペン入力手段またはポインター入力手段によって描画し得るように構成されており、
解析手段を有し、該解析手段は、前記描画編集手段でなされた描画可能領域内の描画の有無を調べることにより、描画された病変領域の少なくとも位置と大きさとを認識しかつデータ化するように構成されており、
文章生成手段を有し、該文章生成手段は、前記解析手段でデータ化された病変領域の少なくとも位置と大きさとを用いて、病変の様子を記述するために必要な数値および/または文言を生成し、前記入力された特定部位とその病変の名称と、その様子を記述した前記数値および/または文言とを含む文章を生成するように構成されている、
前記文章作成装置。
(13)上記(A)の解析用データセットをさらに有し、
上記解析手段が上記描画可能領域内の描画の有無を調べるに際して、上記入力手段で入力された特定部位とその病変の名称とに対応した上記(A)の解析用データセットの領域リストの指定に従って、該描画の有無を調べるように、該解析手段が構成されている、上記(10)記載の文章作成装置。
(14)当該文章作成装置が、表示装置と入力装置とを少なくとも接続されて構成されたコンピュータであり、入力装置は、ペン入力装置またはポインター入力装置であって、
該コンピュータが、上記(1)〜(11)のいずれかに記載のコンピュータプログラムを実行するようになっている、上記(12)または(13)記載の文章作成装置。
(15)外部のコンピュータが、インターネットを介して上記コンピュータと接続されており、上記コンピュータで実行される上記コンピュータプログラムを、ユーザーがインターネットを介して外部のコンピュータから利用できる構成となっている、
上記(14)記載の文章作成装置。
(16)上記コンピュータが、上記(11)に記載のコンピュータプログラムを実行するようになっており、
上記文章生成手段によって生成された文章に関連した医療上の参照事項を、上記コンピュータ内の記憶装置、または、上記コンピュータがアクセス可能な外部記憶装置から探し出し出力し得る構成となっている、上記(14)または(15)記載の文章作成装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明のコンピュータプログラムおよび装置によれば、医療従事者が診断対象部の特定部位を観察し病変の有無や状態を判断し(即ち診断し)、その部位の病変が占有する病変領域を表示画面上でペン入力手段等によって描画するだけで、その描画された病変領域が病変の様子を表した文章へと変換される。
本発明では、診断対象部の特定部位や病変の名称を入力する最初の作業は必要であるが、その場所や規模や性状、即ち、〔どの位置にあり、どの程度の大きさであり、どのような性状であるか〕という様子の描写については、文章として入力する必要が無い。この病変の場所や規模や性状、即ち、病変の様子については、本発明では、当該コンピュータプログラムにおける解析手段が前記の印るされた病変領域の描画を解析し、それに基いて文章生成手段が文章化を行う構成となっている。その解析手法や文章生成の手法の詳細は後述する。
従来の医療文書作成支援技術では、上記背景技術でも述べたとおり、描画を入力とする構成であっても、描画をそのまま保存するだけであったり、キー入力の手間が軽減されているだけでどこかの段階では文章を構築する労力が必要である。これに対して、本発明では、文章は入力した描画内容から自動的に生成される。この新たな構成によって、従来技術に比べて、本発明では文章作成の労力が大きく根本的に軽減されている。
【0010】
また、本発明では、入力した描画が位置や大きさを示す数値および/または文言へとデータ化されるので、描画の中に含まれる医療情報をデータベースやデータウェアハウスに蓄積することや、その絵に含まれる内容およびそれらから導き出される内容をキーワードとしてデータベースやインターネットなどから更なる参照事項を検索し提供することが労せずして可能になっている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は本発明の構成を示す図である。図1(a)は、本発明のプログラムの構成を示すプログラムフロー図であり、図1(b)は、本発明の装置の主要部分の構成の一例を模式的に示すブロック図であって、コンピュータに本発明のコンピュータプログラムを実行させることによって構成した場合の図である。
【図2】図2は、入力手段における好ましい入力の態様を示した図であり、表示画面に特定部位の名称とその病変の名称とを表示し、ユーザーがペンやマウスで選択しクリックによって入力するようにした例を示している。
【図3】図3は、描画編集手段において表示画面に示した診断対象部の下絵とそれによって規定された描画可能領域の例を示した図である。尚、同図および図10に示した下絵は、一般眼底疾患用のものである。
【図4】図4は、描画ペンによって表示画面に病変領域を描画する際の基本操作を例示した図である。
【図5】図5は、描画ペンの軌跡の色や模様を例示した図である。
【図6】図6は、右の眼球を例とした場合の、解析用データセットの小領域の分割パターンの例である。尚、同図の分割パターンは、図7に示した未熟児網膜症用の下絵に基いて作成されたものである。また、同図の例では説明のために小領域に着色を施している。実際のプログラムでは、個々の小領域が識別名と共に格納される。
【図7】図7は、本願発明の実施例において用いた、図6の分割パターンの基礎となった図であって、従来の眼科の医療現場においてカルテ作成等のために用いられている未熟児網膜症用の右の眼球のための下絵である。
【図8】図8は、図6から得られる種々の小領域の例を示した図である。
【図9】図9は、眼球に関する解析用データセットの領域リストの実例を表示画面に示した図である。
【図10】図10は、文章生成手段における文章変換を説明するための描画の例を示す図である。
【図11】図11は、本発明のプログラムにおける描画編集手段において、実際に表示画面に表示した眼球の下絵と、そこに描画された病変領域の絵の実例を示す図である。
【図12】図12は、解析手段によって得られた病変の様子を示すデータに、どのような用語や状態が含まれるかを調べるように構成されたコンピュータプログラム部分の一例を示す、プログラムリストである。
【図13】図13は、図12に例示するコンピュータプログラム部分によって得られた用語や状態を用い、重症度の分類を行うように構成されたコンピュータプログラム部分の一例を示す、プログラムリストである。
【図14】図14は、図12および図13に例示するコンピュータプログラム部分によって得られた用語、状態、重症度の分類を用い、それらに対応した適切な推奨治療を表示するように構成されたコンピュータプログラム部分の一例を示す、プログラムリストである。
【図15】図15は、本発明の実施例において、未熟児網膜症の隆起と発芽についてのそれぞれの描画を文章に変換したときの出力画面のコピーである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
先ず、本発明のコンピュータプログラム(以下、「当該プログラム」とも略す)を、図を参照しながら具体的に説明する。以下の説明では、診断対象部の特定部位における病変の一例として、眼球の網膜における静脈の拡張などを挙げているが、それらはあくまでも説明のための具体的な例示であって、他の診断対象部についてもそれらの例示を置き換えて同様に適用すればよい。
当該プログラムは、図1(a)のプログラムフローに示すように、診断対象部の病変の様子を文章化するために、
コンピュータを入力手段として機能させる(ステップS1)と、
コンピュータを描画編集手段として機能させる(ステップS2)と、
コンピュータを解析手段として機能させる(ステップS3)と、
コンピュータを文章生成手段として機能させる(ステップS4)とを
少なくとも有して構成される。
文章生成手段において生成された文章を、表示画面に表示すること、ハードディスクドライブ等の外部記憶装置に格納すること、印刷すること、通信回線を通じて他のコンピュータに配信することなどの付帯的な機能や手段は、必要に応じて当該プログラムの各部に挿入、追加してよい。
【0013】
上記ステップ(S1)の入力手段は、診断対象部(例えば、眼球)に対して予め定められた1以上の特定部位(例えば、網膜など)とその部位ごとに予め定められた1以上の病変の名称(例えば、静脈の拡張)の中から、少なくとも目的の特定部位とその病変の名称とを、ユーザーが入力し得るように構成される。
前記のユーザーとは、コンピュータで実行中の当該プログラムを操作する者(プログラムの使用者)であり、通常はカルテを書く医師などの医療従事者本人であるが、該医療従事者の指示に従ってコンピュータを操作するオペレータなどであってもよい。
【0014】
当該プログラムは、眼科専用、耳鼻咽喉科専用など、各診療科専用のプログラムであってよく、1つのプログラムに全ての診断対象部を網羅しなくてもよい。例えば、当該プログラムを眼科専用プログラムとする場合には、最初から診断対象部が眼球であることを前提として当該プログラムを実行するよう構成してよい。即ち、当該プログラムでは、少なくとも目的の特定部位とその病変の名称とを、ユーザーが入力し得るように構成すればよい。
一方、病院等で、当該プログラムを複数の診療科で使用し、データベースを共有するような場合には、当該プログラムは、必要な全ての診断対象部を網羅したものであってもよいし、複数の診療科専用の当該プログラムを集め、その上位にそれらのマネージメントのための管理用プログラムを別途置いて、そこで「診断対象部」を入力させ、各診療科専用の当該プログラムへと進むような構成としてもよい。
【0015】
診断対象部は、医療従事者による直接的な観察、内視鏡などの器具を介しての間接的な観察を問わず、ヒト、動物、植物などにおける病変のスケッチ(病変領域を描画で示すこと)が可能な全ての器官や部分が含まれる。
診断対象部は、特に限定はされないが、例えば、〔眼球およびその周囲の組織(角膜、水晶体、網膜硝子体、眼瞼、眼位、眼球運動)など眼科医が診療の対象とする部分〕、〔耳介、外耳道、鼓膜、鼻腔、咽頭、喉頭など耳鼻咽喉科医が診療の対象とする部分〕、〔皮膚、乳房、耳介、手足、顔面、熱傷など形成外科が診療の対象とする部分〕、その他、循環器、呼吸器、心臓血管、腎泌尿器、神経中枢、乳腺甲状腺、皮膚、筋骨格器、消化器などの他、歯科口腔外科・産婦人科・救急・集中治療・放射線・麻酔などの領域が挙げられる。
【0016】
特定部位は、各診断対象部に1以上存在するものであり、その診断対象部の位置や組織、機能によって、該診断対象部を細かく分けた局所的な部分である。
例えば、診断対象部が眼科領域である場合には、特定部位は、結膜、強膜、角膜、虹彩毛様体(ぶどう膜)、前房、隅角、水晶体、硝子体、網膜、視神経乳頭、視路、眼瞼、涙液涙器、眼位、眼球運動などである。診断対象部が耳鼻科領域である場合には、特定部位は、耳介、外耳道、鼓膜、外鼻、鼻前庭、鼻腔、口腔、咽頭、舌、喉頭などである。診断対象部が形成外科領域である場合には、特定部位は、皮膚、筋肉、骨、小腸、乳房、耳介、手足、胸、頭蓋顔面、褥瘡、熱傷深度などである。診断対象部が消化器である場合には、特定部位は、食道、胃、十二指腸、空腸、回腸、盲腸、虫垂、結腸、直腸、肛門、膵臓、肝臓、胆嚢などである。
【0017】
病変とは、上記特定部位に生じた変化である。
本発明では、病変の状態についての文章化を的確に行うために、病変の名称を予め定めておく。病変の名称は、従来より医療で用いられている名称をそのまま用いればよい。
例えば、診断対象部が眼球であって、特定部位が網膜の場合には、その部位に生じる病変の名称は、静脈拡張、静脈狭細、静脈蛇行、動脈拡張、動脈狭細、動脈蛇行、静脈隠伏、Salus交叉弓、静脈先細り、静脈塞き止め、血管腫、毛細血管瘤、吻合血管、閉塞動脈、閉塞静脈、点状出血、線状出血、斑状出血、火炎状出血、網膜前出血、網膜下出血、神経線維欠損、格子状変性、敷石状変性、網膜円孔、馬蹄形裂孔、扁平状剥離、胞状剥離、硬性白斑、軟性白斑、網膜萎縮、び漫性硝子体出血、塊状硝子体出血、び漫性黄斑浮腫、類嚢胞様黄斑浮腫、網膜嚢胞、分離網膜、網膜振盪などが、種々の病変の名称の中の一部の例として挙げられる。病変の名称は全てを網羅してもよいし、主要なものだけをプリセットとして保持しておき、実際に使用しながら現場で追加や変更を行う態様であってもよい。
また、眼球における網膜以外の他の特定部位(上記で列挙した角膜、結膜、強膜、前房など)にも、その部位独特の病変が多数存在する。
【0018】
特定部位とその病変の名称とを入力するということは、その入力に先立って、医療従事者が診断対象部を観察し、その中のいずれかの特定部位に病変があると診断したことを意味する。
また、「特定部位とその病変の名称とを少なくとも入力する」とは、特定部位と病変の名称とが識別できるならば、必ずしも別個に入力する必要はない。例えば、病変が「出血」のような一般的なものである場合には、特定部位と病変の名称の入力が必要であるが、ある病変の名称Aがある特定部位aだけの固有のものである場合には、必ずしもその特定部位と病変の名称とを別途入力させる必要はなく、病変Aの名称の入力だけでも、特定部位とその病変の名称とが入力されたと解釈してよい。
ただし、そのような省略可能な場合でも、先ず「特定部位a」を選択入力し、そこに生じる種々の病変の名称を表示して、その中から前記したような特定部位固有の病変の名称Aを選択入力するという手順の方が、ユーザーにとって該「病変の名称A」を見つけ易い場合には、使い勝手などを考慮し、特定部位とその病変の名称とを別途入力するようなデザインとすればよい。
尚、入力事項として、特定部位とその病変の名称に加えて、必要に応じた種々の付帯的な事項や情報を入力可能としてもよい。また、当該プログラムを細分化して特定部位専用のプログラムとする場合には、特定部位の入力が最初からなされていたものとみなす。
【0019】
特定部位の名称とその病変の名称は、本発明では、描画編集の準備、解析などにとって重要な文言となる。例えば、後述の描画編集手段では、特定部位の名称や病変の名称に対応して描画用のレイヤーが用意され、また、解析手段では、特定部位の名称や病変の名称は、解析のためのキーワードとしてデータセットの中にも予め定められている。
よって、ユーザーが入力する名称と、当該プログラムで用いている名称とを一致させることが重要である。そのため、基本的にはユーザーが既定の名称以外のものを入力できないように定めておいたり、類似の用語が入力された際には候補を選択する画面を出力させるといった態様が好ましい。ただし、予め定めておいた多数の病変の名称のいずれにも該当しない病変の入力に対応し得るよう、「その他」や「新規名称」などの項目を用意し、キーボードなどから新しい病変の名称を医療の現場で追加できるようにする態様が好ましい。
また、入力に際しては、ユーザーが特定部位とその病変の名称とをキーボードから打ち込むよりも、例えば、表示画面にプルダウンや新たなウィンドウなどを開いて部位の絵や名称を表示し、その中からユーザーがペンやマウスで選択しクリックする(確定ボタンを押す)ことで目的の名勝を入力する態様がワンタッチの操作となって便利である。
以上のような点から、図2に一例を示したように、表示画面に特定部位の名称とその病変の名称とを表示し、ユーザーがペンやマウスで選択しクリックによって入力する態様が、プログラム内で定めた語句だけを確実にかつ簡単に入力できる好ましい態様である。
【0020】
当該ステップ(S1)の入力手段で用いられる具体的な入力装置は、マウスやキーボード(実際には入力を確認するための表示装置が必要である)などであってもよいが、後述のステップ(S2)の描画編集手段では表示装置とペン入力装置またはポインター入力装置が必須であるから、それらを当該ステップ(S1)の入力手段の入力装置として兼用すれば、同じ入力装置を手に持ったままで、入力手段から描画編集手段へとスムーズに作業を進めることができるので好ましい。
入力手段から次の描画編集手段へと移るためのボタンは独立して表示画面上に適宜設けてもよいし、病変の名称の入力を合図として、描画編集手段へと移るようにしてもよい。
【0021】
上記ステップ(S2)の描画編集手段は、図3に一例を示すように、表示画面に診断対象部の下絵(d1、d2等)を表示し、該下絵によって規定された診断対象部の領域を描画可能領域とし、医療従事者が観察した実際の病変領域を、ペン入力手段またはポインター入力手段によって描画し得るように構成される。
図3の例では、表示画面に左右の眼球を示唆する2つの大円(d1、d2)が表示され、それらの大円の内側が描画可能領域となっている。そして、描画の目安とするための方位線(d11、d21)、同心円(d12、d22)、網膜の鋸状縁を示唆する波線の円(d13、d23)などが下絵として加えられている。同図の例では、方位線(d11、d21)は、30度の等間隔で放射状に描かれた大円(d1、d2)の半径となっている。
図3の例では、左側の眼球の描画可能領域内には、すでに数種類の病変領域がユーザーによって描かれている。
描画可能領域は、下絵の最外線(図3では大円)の外側に広がっていてもよい。描画の目安とするための方位線や同心円などの目盛りは、適宜加えてよい。
【0022】
描画可能領域の解像度や領域は、コンピュータの能力や表示画面の仕様の変化や技術の進歩などに応じて適宜決定すればよく、特に限定はされない。
一例として、アスペクト比(ヨコ4:タテ3)の場合であれば、ヨコ(640ドット)×タテ(480ドット)程度以上の領域を確保しその中に下絵を表示することが、ユーザーにとっては判別し易く好ましく、ヨコ(1024ドット)×タテ(768ドット)やヨコ(1280ドット)×タテ(960ドット)程度までが、現時点ではユーザーにとっての取扱い性や、コンピュータにとっての解析やデータ保存の点から適当な領域である。
これらの領域は、表示装置の画面仕様ではなく、当該プログラムが取り扱う描画領域のドットの配列の例である。これに対して表示装置の画面がより大画面であったりより小画面である場合には、前記の領域を適宜拡大縮小して表示すればよい。
【0023】
描画編集手段における入力手段(ペン入力手段、ポインター入力手段)は、入力装置と表示装置とプログラムとが一体となって機能するものである。
ペン入力手段を構成するための入力装置には、次の(イ)、(ロ)のタイプの装置が挙げられる。
(イ)表示画面にペン形の入力器具を直接接触させて、あたかもその器具と画面との接点から塗料や模様が画面上に出ているかのように該画面に描画し得るタイプの装置。
(ロ)表示画面とは別のボード(ペンタブレットなどと呼ばれる)上にペン形の入力器具を接触させて、表示画面上に描画するタイプの装置。ボード上には、描画を助けるための診断対象部と描画可能領域の下絵が描かれたシートを配置し、表示画面の描画可能領域と対応させてもよい。
前記(イ)のタイプの装置には、所謂タッチパネルのように表示画面上に透明電極フィルムを設けてペン形の器具の接触位置を検出するタイプのものや、表示画面上に透明のアンテナ網(磁気センサー網)を設けてペン形の発信器から発せられる磁気信号を検出するタイプのものなどが例示される。前記(ロ)のタイプの装置は、ボード上に設けた検出センサーによってペン形の入力器具の位置を検出するタイプのものなどが例示される。
一方、ポインター入力手段のための外付けの入力装置には、次の(ハ)、(ニ)のタイプのものが挙げられる。
(ハ)マウス(ボールや光線を利用したセンサによって検出した移動量をコンピュータへ伝える入力装置)
(ニ)タッチパッド(指などでなぞると、接触点を検出してコンピュータへ伝える入力装置)
上記(ロ)は、上記(ニ)と同様のポインター入力手段を構成する入力装置であると言うこともできる。上記(ロ)〜(ニ)の装置は、位置検出のメカニズムやパッドなどが互いに異なるが、いずれもポインターと呼ばれるマークを画面に表示し、それが意図した通りに動くように各外部装置を操作するというものである。このような操作に比べて、上記(イ)のタイプは、筆記用具で紙面上に直接絵を描く感覚により近いので、描画の作業性は好ましい。
これらの入力装置とその駆動および入力信号を描画へと結び付ける技術自体は、従来技術を参照すればよい。
以下の説明では、上記(イ)〜(ニ)の装置におけるような現実のペン形入力器具と画面内のポインターとを併せて、画面に軌跡を描くことができる描画ツールを「描画ペン」と呼ぶ。
【0024】
描画ペンによって表示画面に病変領域を描画する際の基本操作は、主として次の操作が例示される。該操作によって、描画模様が描かれ、病変領域の場所と大きさとが描画可能領域内に指定される。
図4(a)に示すように、描画ペンが移動するとその跡に点線状、破線状(一点鎖線や二点鎖線などの途切れたあらゆる線を含む)、線状(細線、太線を含む)の軌跡や、これらの軌跡以外の模様による軌跡を描き、その軌跡が占有する領域自体によって病変領域を規定する操作。
描画ペンの軌跡自体によって目的の病変領域を所定の色や模様で塗りつぶすには、軌跡を描く線や模様は、比較的太い帯状であることが塗りつぶしには好ましい。
図4(b)に示すように、描画ペンの軌跡によって目的の病変領域を囲み、病変領域を規定する操作。この場合の軌跡は、細く明確な線が領域の境界を示すのには好ましい。また、病変領域を囲む線が閉じられて閉領域が作られたときにその閉領域が自動的に所定の色や模様にて充填されるように描画プログラムを構成すれば、閉領域の識別性が高くなるので好ましい。線によって病変領域を囲んで閉領域を作る場合、該病変領域を囲む線は、ユーザーが自分のペン操作によって閉じてもよいし、ペンの開始位置とペンを画面から離した位置とをプログラムが自動的に結んで閉領域とする構成などであってもよい。
図4(c)に示すように、描画ペンを意図する位置に合わせて入力を行うと(即ち、描画ペンに装備された入力ボタンを押すと、所謂クリックをすると)その位置に印判を押したように特定の模様(円や多角形模様)が描かれ、その模様が病変領域を規定する操作。
【0025】
図4(a)の操作における描画ペンの軌跡は、他と識別可能な色や模様を持った線状等の軌跡であればよく、図5(a)〜(d)の例が挙げられる。同図の例では、説明のための例としてエンピツ形のポインターを描いている。
図5(a)は、特定の太さと色とを持った点線状、破線状、または、線状の軌跡を描く態様である。一点鎖線や二点鎖線など不連続な線は、全て破線状の軌跡に含まれるものとする。また、これら線の太さは細いものから太いものまで種々のものを適宜選択してよい。
図5(b)は、ハッチング模様からなる特定の太さの帯状の模様を軌跡として描く態様である。
図5(c)は、格子模様からなる特定の太さの帯状の模様を軌跡として描く態様である。
図5(d)は、ドット模様からなる特定の太さの帯状の模様を軌跡として描く態様である。
これらの色や模様は一例であって、波線によるハッチング模様、市松模様などの種々の模様や素地を用いてよい。
【0026】
図4(a)の操作による軌跡の色や模様、および、図4(b)の操作によって充填される色や模様は、病変領域を互いに識別できるように、また、特定部位や病変の名称ごとに固有の色や模様を定めておくことが好ましい。
描画のために画面の中で用いられる描画ペン、消しゴム、スタンプなどの種々の描画ツールの種類や機能、それらのツールを便利に選択するための表示手法などは、後述する従来公知の描画アプリケーションを参照してよい。
【0027】
診断対象部は通常立体である。例えば、眼球の場合の特定部位は、観察者にとって手前側に位置する角膜などから、奥側に位置する網膜などまで、複数の位置に立体的に存在する。また、診断対象部が組織の表面だけの平面的なものであっても、複数の病変が互いにオーバラップして存在する場合がある。
これら複数の特定部位に生じる複数の病変を、1つの平面に描いたのでは、視覚的にも解析的にも不明確になり好ましくない。
よって、本発明では好ましい態様として、描画可能領域を複数の描画レイヤー(1つの描画可能領域を1枚の透明シート上に描かれた領域のように1層として取り扱う概念)として設けておき、それら描画レイヤーを重ねて1つの画像として表示されるような構成とし、特定部位とその病変の名称が入力されると、それに対応した描画レイヤー(描画可能領域)が選択され、そのレイヤーの描画可能領域が描画可能となり、特定部位や病変の名称ごとに個別の描画レイヤーに描画するという態様を提案する。
この態様では、全ての特定部位の病変の名称と描画レイヤーとを1対1で完全に対応させる必要はなく、1つの描画レイヤーに複数の特定部位や病変領域を書き込むようにしてもよい。
描画可能領域を複数の描画レイヤーとして設ける態様によって、記憶されるデータの容量は大きくなるが、必要な描画レイヤーだけを表示して他の描画レイヤーを消したり重ね合わせたりして、描画結果を自在に表示し確認することが可能になり、また、後述の解析手段での描画領域の解析も病変領域同士の混在が無いので容易になる。
【0028】
描画編集手段において描画可能領域上に描かれる病変領域は、上記説明のとおり、ユーザーに視覚的に分り易いように種々の模様や色をもって指定できる構成となっている。
一方、その描画領域の位置や大きさを解析するプログラムの側からは、模様や色による識別は特に必要ではなく、病変領域を知るにはドットの有無が分れば足りる。
そこで、当該プログラムでは、上記した描画可能領域を含んだ描画可能レイヤーの他に、後述の解析手段においてプログラムが領域解析を行うのに適した解析用領域を含んだ解析用レイヤーを備える態様を推奨する。
この態様では、後述の解析手段は、解析用レイヤー内の解析用領域の描画の有無を調べることによって、病変領域の少なくとも位置と大きさとを認識しかつデータ化するように構成される。
また、この態様では、描画可能レイヤー内の描画可能領域に病変領域が描画されると、その描画可能レイヤーに対応した解析用レイヤー内の解析用領域にも、前記病変領域に対応した病変領域が作成されるように構成される。
解析用レイヤーへの描画は、予め解析用レイヤーを必要数だけ用意しておき、描画可能レイヤーへの描画と同時に裏で同時に実行するように構成してもよいし、描画可能レイヤーに描画されてから対応する解析用レイヤーを生成してそこへ領域データを転写するように構成してもよい。
【0029】
描画用レイヤーは、立体的構造を重ね合わせによって平面に表わすためのものであり、描画したそのままの画像を各レイヤーに保存している。それに対して、解析用レイヤーは、各病変を文章化するために必要なデータを保存する必要があるので、描画したそのままの画像でよい場合もあれば、解析するために最適な画像データとして変換することが必要な場合もある。例えば、茶色の斑点模様として描画した網膜光凝固斑に対して、斑点模様は描画レイヤーに描かれてそのまま保存されるが、解析用レイヤーではその施行範囲を文章化する目的で斑点模様を描画した範囲全体を対応する識別色で塗りつぶした画像に変換して、それを保存する事が好ましい。
【0030】
描画用、解析用ともに各病変が描かれたレイヤーをどのように保存するのかは、解析用データセットなどに予め定められる。
画像データの保存は、コンピュータのメモリに一時保存され、最終的には記憶媒体もしくは外部記憶装置に保存される。画像データの保存にはビットマップなど非圧縮形式が好ましく用いられる。
【0031】
描画編集手段において描画を行うためのプログラム技術自体や、複数の描画レイヤーに描画しそれらを重ね合わせて1枚の絵を構成し、描画レイヤーを個別に編集したり1つの画面に統合するプログラム技術自体は、従来公知の種々の描画アプリケーションの技術を参照してよいし、独自に開発したものであってもよい。
描画アプリケーションとは、表示画面に絵を描くためのグラフィックソフトウェアであって、「ペイントソフト」、「ペイントツール」、「ドローイングソフト」、「グラフィックソフト」」、などとも呼ばれている。従来公知の描画アプリケーションとしては、例えば、Adobe Systems社のAdobe Photoshop(登録商標)あるいはIllustrator(登録商標)、Microsoft社のMS Paint、日本ポラデジタル株式会社のCanvas(登録商標)などが挙げられる。
【0032】
上記ステップ(S3)の解析手段は、上記の描画編集手段の描画可能領域内のどこに描画がなされたかを該領域を細分化して調べることによって、描画された病変領域の少なくとも位置と大きさとを認識しかつそれらをデータ化するように(即ち、それら位置と大きさとを文言や数値として表現できるようなデータを生成するように)構成される。
描画可能領域内のどこに病変領域を示す描画がなされたかを調べるための基本的な手法は、描画可能領域または上記した解析用レイヤー上の解析用領域の各画素(ドット)、またはそれに対応するメモリー上のデータ行列内の各要素を調べて、各ドットに描画された痕跡(ドットデータ)があるかどうかを調べることである。
【0033】
当該プログラムによってコンピュータに描画可能領域内のどこに描画がなされたかを効率よく解析させかつ、診断記録として利用可能な表現を用いた解析結果を出させるために、本発明では、解析用データセットを予め用意しておくことを推奨する。
この解析用データセットは、解析手段が上記描画可能領域内の描画の有無を調べるに際して参照すべき解析用の指示書である。この解析用データセットは、大きく分けると2つのデータセット(領域系ライブラリーと指示系ライブラリー)を有して構成される。
領域系ライブラリーは、その病変の描画解析に最も適するように、〔描画可能領域を特定部位とその病変名に応じて1種類以上のパターンにて分割した小領域の集合〕をデータセットとして含むことが好ましく、またさらに〔描画可能領域を分割せずに全体を1つの解析対象とした全領域〕を含んでいてもよい。
指示系ライブラリーは、前記小領域の集合および全領域のうちのどの領域に対して描画の有無を調べるのかを指定した領域リストを含むことが好ましい。
当該プログラムの解析手段は、入力された特定部位とその病変名に該当する領域リストを読みに行くように構成され、該領域リストに記述された指定に従って、領域系ライブラリーのデータセットに含まれた小領域、または、小領域が集合した領域、または、全領域について、該描画の有無を調べるように構成される。
例えば、特定部位として角膜が入力され、病変の名称として角膜びらんが入力された場合、(1)その入力に応じて角膜に関する解析用レイヤーだけを解析対象とし、(2)角膜びらんという病変を調べるための区画として最適なパターンにて分割された小領域の集合を予め用意しておき、かつ、(3)その小領域の集合のなかのどの小領域を調べるかが記述された指示書があれば、解析の効率が高くなる。
また、その小領域の区画を、従来の診断でも使用されるような区画としておくことで、その区画に描画があったことが分れば、その解析データから、「角膜下方にびらんが軽度に見られる」など、従来の診断結果と同じ表現を用いた文章変換も可能になる。
【0034】
解析用データセットに含まれる分割した小領域は、上記の(a)〜(f)のように、従来の診断結果と同じ表現を用いた文章変換が可能になるように決定しておくことが好ましい。領域リストには、これらの小領域の中から、入力された病変に応じた適切なものを1以上指定しておく。
【0035】
図6は、右の眼球を例とした場合の、解析用データセットの小領域の分割パターンの一例であって、図7に示した未熟児網膜症用の下絵に基いて作成されたものである。図7は、従来の眼科の医療現場においてカルテ作成等のために用いられている右の眼球のための下絵であって、未熟児網膜症用のものである。図6、7に準じて、一般眼底疾患用の分割パターンも、一般眼底疾患用の下絵に基いて適宜作成すればよい。
図6の分割パターンでは、1時から12時までの360度の方位に関しては、図7の方位線を小領域が包含するように決定されている。例えば、図7の下絵では、円の中心から図の上方に向かう「12時」の方位線を0度とするとき、「1時」の方位線は30度の位置にある。これに対して、図6の分割パターンでは、「右1時」の小領域は、15度〜45度までの扇形として規定されており、図7の下絵の「1時」である30度の方位線を中心線として含んでいる。
このように、従来の下絵に沿いながら、その下絵の方位線を包含するように小領域の方位が決定されているので、例えば、図6の「右1時」の小領域に描画が含まれているという解析結果が、図7の下絵の「1時」に描画があることを意味し得るようになっている。
【0036】
図6に示す分割パターンに沿って細かく分割された各小領域(同図で細かく色分けされた個々の領域)は、1つ1つ個別に識別名が付与された図形として格納される。例えば、図8(a)に黒く着色した小領域は、上記(f)でいう〔2以上の小領域同士が互いに重なり合った領域〕、即ち、環状の小領域であるゾーンと扇状の小領域とが重なり合った領域であって、図6において「右1時5」と命名された小領域である。この小領域が単独の図形として格納される。
また、図6では詳細には示していないが、円の中央付近には、乳頭(視神経乳頭)やそれを同心状に取り囲む小円、黄斑部を取り囲む小円やそれをさらに取り囲む楕円など、細かい境界線が多数存在しており、それらの境界線と前記の方位線とによって細かく分断された小領域についても、1つ1つ識別名がつけられ、解析に利用されている。
例えば図6の例では、左右の目の区別と方位に応じて「右1時」〜「右12時」などと命名され、さらに、各方位の領域を、円の中心側から外へ順に「右1時1」、「右1時2」、「右1時3」、「右1時4」、「右1時5」などと細かく小領域として命名されている。他の方位も同様である。
分割パターンは、コンピュータの処理能力に応じて、より粗い分割や、より細かい分割であってもよい。
【0037】
また、図6のような細かく分断した小領域だけでなく、それら小領域のいくつかをまたは全てを合体させて、識別名をつけて1つの領域として利用するのが好ましい。次にいくつかの例を挙げる。
図6の「右1時1」、「右1時2」、「右1時3」、「右1時4」、「右1時5」を合体させた扇形の小領域。識別名は「右1時」。他の方位も同様である。
図8(b)に黒く着色して示すように、「右1時5」〜「右12時5」を合体させた環状の小領域(鋸状円より外側の領域)。識別名は、例えば「右毛様体」。
図8(c)に黒く着色して示すように、「右1時4」〜「右12時4」を合体させた環状の小領域(鋸状縁を含む領域)。識別名は、例えば「右鋸状縁」。
図8(d)に黒く着色して示すように、「右1時3」〜「右12時3」を合体させた略環状の小領域(鋸状縁の内側の領域)。識別名は、例えば「右ゾーンIII」
図8(e)に黒く着色して示すように、「右1時2」〜「右12時2」を合体させた環状の小領域。識別名は、例えば「右ゾーンII」
図8(f)に黒く着色して示すように、後極を取り囲む楕円の内側の領域。識別名は、例えば「右後極」
以上は、ごく一部の例であって、図6に示した小領域を合体させて、解析結果の表現に便利なように種々の小領域を規定してよい。
図6の小領域やそれらを合体した種々の小領域は、図7の下絵に記載された方位や円などに基いているので、その小領域に描画が有るか無いかの解析結果の表示は、従来の眼科の医療現場において用いられている位置の表示の仕方と合致する。これは眼球のみならず、生体のあらゆる部位についても同様である。
【0038】
上記のように、所定の分割パターンにて用意しておいた種々の小領域を、解析用レイヤーの解析のために適用するに際しては、各小領域内の各画素の座標を解析の度に計算で求めると膨大な時間がかかる。そこで、予め小領域の画像と共に、各小領域内の画素の座標をも保存しておき、解析の際に各小領域内の画素の座標を参照し得るように構成すると、処理が速くなり好ましい。
小領域の各図形や、小領域内の各画素の座標の保存は、当該プログラムが参照可能な記憶装置に格納されていればよく、また、当該プログラム自体の内部に記述されていてもよい。
【0039】
図9は、眼球に関する解析用データセットの領域リストの実例である。
同図の領域リストは、プログラム言語「Visual C++ 2008」(Microsoft社)に従って作成された当該コンピュータプログラムが利用し得るように記述した例である。
図9に例示した記述様式では、先頭にセミコロンがあれば、それ以降の文字列は画面に表示(コメントアウト)される。従って、同図の冒頭の3行はコメントであり、このコード表の一行に含まれるデータの意味を示すメモである。この3行に記載された各パラメータの意味を次に順に説明する。それらが、4行目以降の各パラメータの意味である。
colornum:このパラメータは、描画ペンがどの基本色に属するかを示すものである。例えばRGBで(255,0,0)と(254,0,0)は異なる色であるが、描画可能レイヤー上では同じ赤に属する。
red, green, blue:これらのパラメータは、描画ペンのRGBの数値を示すものである。
size, shape, layer:これらのパラメータは、描画ペンのサイズ、形状、描画レイヤーを指定するものである。
organization, structure, property, feature:これらのパラメータは、病変の組織、部位、特性、特徴を指定するものであり、病変の分類に役立てることができる。例えば、組織は、網膜、硝子体、乳頭、脈絡膜などを表し、部位は、静脈、動脈、網膜前、網膜下など表し、特性は、拡張、蛇行、狭細、拡大などを表し、特徴は、点状、線状、斑状、火炎状などを表している。
expression:このパラメータは、病変を表現する語を示すものである。
disease:このパラメータは、病変の名称を疾患ごとにまとめるためのコードを示すものである。
parts; focus; posteriorpole; latitude; longitude; directions:これらのパラメータは、それぞれ、解析の際にデータセットから指定する小領域を、部分領域(名称自体が解剖学的領域を限定する病変のための領域)、極在領域(純粋な解剖学的な領域)、後極部領域、同心様5分割領域、放射様4分割領域、放射様12分割領域で指定するものである。
部分領域は、黄斑、乳頭、乳頭上側、乳頭耳側、乳頭下側、乳頭鼻側を表している。
極在領域は、中心窩、黄斑部、視神経乳頭を表している。
後極部領域は、黄斑上側、黄斑耳側、黄斑下側、黄斑鼻側を表している。
同心様5分割領域は、ゾーンI、ゾーンII、ゾーンIII、鋸状縁、毛様体を表している。
放射様4分割領域は、上方、耳側、下方、鼻側を表している。
放射様12分割領域は、1時から12時までを表している。
threshold:このパラメータは、程度を表現するのに必要な小領域内のドット数の割合(1000分率)の境界値を示すパラメータである。
「;disease;parts,focus,posteriorpole,latitude,longitude,directionsは最後に,をつけること」との記述は、コードを作成する際の書式の覚書である。
より具体的には、図9の4行目の記述「2,000,000,255,3,1,5;網膜,静脈,拡張,;網膜静脈の拡張;,2,;;;;,1,2,3,;;,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,;5,50」は、
〔これを指定した描画ペンが、2という数値で指定された青色に属し、そのRGB値が(0,0,255)であり、3で指定されたペンサイズであり、1で指定された形状を有し、5で指定されるレイヤーに描画され、その属する組織が網膜であり、部位が静脈であり、特性が拡張であり、特徴は指定がなく、文章化する際の語としては「網膜静脈の拡張」が用いられ、2で指定される疾患には必ず病変の選択項目となり、解析の際には1から3で指定される同心様5分割領域と1から12で指定される放射様12分割領域が小領域として用いられ、拡張の程度を小領域ドット数に対する割合として0.5%未満を軽度、5%までを中等度、それ以上を重度として計算すること〕
を意味している。
また、図9に示す最後の行「1,242,000,000,3,1,11;乳頭,,拡大,;乳頭拡大;,1,;,2,;;;;;;」は、
〔これを指定した描画ペンが、1で指定された赤色に属し、そのRGB値が(242,0,0)であり、3で指定されたペンサイズであり、1で指定された形状を有し、11で指定されるレイヤーに描画され、その属する組織が乳頭であり、部位は指定がなく、特性は拡大であり、特徴は指定がなく、文章化する際の語としては「乳頭拡大」が用いられ、1で指定される疾患には必ず病変の選択項目となり、解析の際には2で指定される部分領域が小領域として用いられ、それ以外の小領域は用いられず、拡大の程度は指定がないものとして計算すること〕
を意味している。
このリストの例では必ずしも未熟児網膜症に出現するとは限らない病変も含まれている。
【0040】
解析手段による病変領域のデータ化は、病変の程度を示す数字や記号であっても、次の文章生成手段での文章化に対応した程度を示す文言(大きい、小さい、長い、短い、広い、狭い、軽度、中程度、重度など)であっても、これら数字と文言の両方を用いた表現であってもよい。
また、「大きさ」は、前記のような大小の程度を示す文言だけでなく、「存在する(見られる)」、「存在しない(見られない)」というような、有無を示す文言であってもよい。
【0041】
上記ステップ(S4)の文章生成手段は、先ず、上記の解析手段でデータ化された病変領域の少なくとも位置と大きさとを用いて、病変の様子を記述するために必要な数値および/または文言を生成するように構成される。
「数値および/または文言」とは、「数値および文言のうちの両方またはいずれか一方」を意味する。
この数値および/または文言の生成工程は、上記の解析手段に含まれると解釈してもよい。
文章生成手段は、入力された特定部位とその病変の名称と、その様子を記述した前記数値および/または文言とを含む文章を生成するように構成される。例えば、入力された特定部位とその病変の名称を主語とし、前記生成された数値または文言を述語とする文章、または、該文章と同一の内容を意味する文章である。
例えば、入力された特定部位とその病変の名称が、網膜静脈の拡張であって、図10に一点鎖線で囲んで示した太線による描画を解析した結果の位置が〔黄斑鼻側上方〕であり、大きさが〔幅が3、長さがその領域内の静脈の60%拡張〕である場合には、生成される文章としては次のものが例示される。
・「網膜静脈の拡張がゾーンIの10時〜12時では中等度に見られる。」
この文章には、文体を変えることで、同一の内容を意味する変形表現が種々存在する。例えば;
・「網膜のゾーンIの10時〜12時に、中等度の静脈の拡張が見られる」
・「中等度の網膜静脈拡張がゾーンIの10時〜12時に存在する」
・「ゾーンI、10時〜12時:中等度網膜静脈拡張」
・「中等度網膜静脈拡張(ゾーンI、10時〜12時)」
などである。
これらの表現は、事実が文言によって同様に正しく伝わるものであればどのように倒置してもよく、箇条書きであっても、表形式による文言の列挙であっても、上記の文章と同一の内容を意味するものであればよい。これらの文章や表現は、カルテなどの医療文書に適合するものを適宜採用すればよい。
【0042】
上記描画編集手段によって作成された描画データや解析用データ、解析手段で生成された解析結果、および、文章生成手段によって生成された文章などを、コンピュータの外部記憶装置などに書込み読出すことができるように、文書データ管理手段として該コンピュータを機能させるプログラム部分をさらに設ける態様が好ましい。
【0043】
本発明では、病変の名称を入力し描画を入力すれば、病変の様子が自動的に文章化されるので、それを文章データとしてデータベースやデータウェアハウスに蓄積することが容易になる。また、該文章に含まれる事項をキーワードとしてデータベースやインターネットなどから医療上の参照事項を検索し表示することが可能となる。
そこで、当該プログラムでは、参照事項出力手段として機能させるためのプログラム部分を設け、入力された情報を利用して医療上有用な他の情報を参照事項として得、それを画面に表示したり、ユーザーが閲覧しえるように出力することを提案する。表示や出力の様式は特に限定はされない。
例えば、文章変換された病変の様子に基いた、重症度分類、推奨治療法、可能性として稀なあるいはありえない描画に対する矛盾警告、描画されていないが存在が予想される病変の探索指示、病変の重症度の数値化、病名診断予測、推奨される検査項目などが挙げられる。また、描画を行った時点での患者の病状に対する付加知識を与えるだけでなく、今後の医学医療看護介護の進歩によっては患者の未来に対する予測なども提示することも可能である。
前記の参照事項は、当該コンピュータがアクセス可能な記憶装置(実装メモリー、ハードディスク装置やCD−ROM、インターネット等を通じて接続された外部記憶装置など)に、データベース、データウェアハウス、保存ファイル、または、プログラム内の記述として予め作成しておき、病変の名称や病変の様子などに基いて検索し得るように構成すればよい。
【0044】
次に、本発明による文章作成装置の構成を説明する。
本発明の装置は、入力手段と、描画編集手段と、解析手段と、文章生成手段とを少なくとも有する構成とされる。これらの各手段の機能は、上記において本発明のプログラムの各手段の説明で述べたとおりである。
当該文章作成装置の実際の態様は、図1(b)に概要を示すとおり、表示装置と入力装置とが少なくとも接続されて構成されたコンピュータである。ここで、入力装置は、上述のペン入力装置またはポインター入力装置であって、該コンピュータは、本発明のコンピュータプログラムを実行することで、文章作成装置として機能するようになっている。
該コンピュータは、外部記憶装置(ハードディスクドライブ、USBメモリー、各種記録媒体にデータを読み書きし得る装置など)を有することが一般的な態様として好ましく、プリンターなど通常のコンピュータに接続可能な周辺機器が接続可能である。
本発明のコンピュータプログラムを外部記憶装置にインストールしておき、該プログラムの全体を一度に実装メモリー(RAM)に読み込んで実行するようにする態様や、各手段ごとに実装メモリーに読み込んで実行するようにする態様、外部記憶装置などにデータセットを配置し適宜参照する態様などは、プログラムの大きさやコンピュータの仕様に応じて適宜決定すればよい。
【0045】
本発明の装置は、単発的な1台のコンピュータで構成するだけでなく、図1(b)のように、外部コンピュータ(端末)をインターネットやLAN(ローカルエリアネットワーク)などの通信回線を介して上記の本体コンピュータ(ホストコンピュータ)と接続し、ホストコンピュータで実行される上記コンピュータプログラムを、ユーザーが前記通信回線を介して端末で利用できる構成としてもよい。
また、1つの病院内で、ホストコンピュータに接続された大容量記憶装置内に、患者の各部のカルテやその他の医療情報をデータベースとして構築し、多数の端末で当該プログラムを実行し、該データベースを共有する構成としてもよい。
本発明をサーバクライアント型の電子カルテとして適用する場合、LANを介して施設内に設置されたサーバに多数の端末が接続された構成とし、データの入出力・共有を行うことができる。また、本発明をWEB型の電子カルテとして適用する場合、インターネットあるいは専用線を介してリモートで多数の端末が施設外に設置されたサーバに接続された構成とし、データの入出力・共有を行うことができる。
【実施例】
【0046】
本実施例では、本発明のプログラムを実際に製作し、コンピュータに実行させて、描画が文章へと変換される様子を調べた。
本実施例で用いたコンピュータおよびプログラムの構成では、ペンタブレットを入力手段と描画編集手段の入力装置として兼用する構成とした。
特定部位は網膜硝子体とし、病変は未熟児網膜症の隆起と発芽とした。
図11は、本発明のプログラムにおける描画編集手段のステップにおいて、実際に表示画面に表示した眼球の下絵(それによって描画可能領域が画面上に規定されている)と、そこにペンタブレットによって描画された病変領域の絵の実例を示している。同図の2つの眼球の下絵のうちの左側の下絵(即ち、右の眼球の下絵)に線状の軌跡で規定されたものが〔未熟児網膜症の隆起〕の領域であり、小さい円で3箇所に規定されたものが〔未熟児網膜症の発芽〕である。
【0047】
当該プログラムの実際の操作では、先ず、入力手段において、図2に示したような病変の名称を入力する画面を表示し、未熟児網膜症を選択しそれに属する隆起をクリックすることで未熟児網膜症の隆起を入力し、描画編集手段に移って線状の軌跡を描く描画ペンにて病変領域を画面に描いた。
次いで、入力手段に戻り、前記の病変の名称を入力する画面において、未熟児網膜症を選択しそれに属する発芽をクリックすることで未熟児網膜症の発芽を入力し、描画編集手段に移って小円を印判のように描く描画ペンにて病変領域を画面に描いた。
【0048】
〔描画領域の解析〕
前記の2つの病変についてそれぞれに描画された病変領域を、病変ごとに解析手段によって順番に調べ、描画可能領域を分割した小領域のどれにどの程度描画されているのかをそれぞれデータ化した。
未熟児網膜症の隆起については、図8(d)、(e)に例示した小領域であるゾーンについて描画の有無を調べるように予め解析用データセットの領域リストに記述した。そして、入力手段において「未熟児網膜症」が入力されかつ「隆起」が入力されると、解析手段がその入力結果に対応した領域リストを選択し、その記述で指定された小領域内の描画の有無を調べ、隆起の位置と大きさとを認識しデータ化するようにプログラムを構成した。「発芽」についても同様に、解析用データセットの領域リストに記述しておき、解析手段がその指定に従って発芽の位置と大きさ(程度)を認識しデータ化するようにプログラムを構成した。
【0049】
〔解析結果からの文章生成〕
入力手段において入力された文言である「発芽」と「隆起」のそれぞれを用い、かつ、解析手段によって生成されたそれぞれの位置と大きさのデータを用いて病変ごとに文章を作成し、図15のように表示した。
【0050】
〔重症度の分類、推奨治療の検索と表示〕
一方、解析手段によって生成された、「隆起」と「発芽」とに関するそれぞれの位置と大きさのデータに対して、図12にプログラムリストとして例示したステップのとおり、各データにどのような用語が含まれるかを調べるようにプログラムを構成した。
前記の用語を調べた結果を用い、図13に例示した重症度の分類のプログラムステップに従って重症度を分類した。さらに、図14に例示したプログラムステップに従って推奨治療を示した。
尚、推奨治療の表示は、描画された病変の情報が十分ではない時には、可能性や確認が提示されるようにした。
【0051】
〔文章表示結果と評価〕
図15は、未熟児網膜症の隆起と発芽についてのそれぞれの病変領域の描画入力から生成された文章と、それぞれの解析結果に基いて生成された重症度の分類と推奨治療法とを出力した画面のハードコピーである。
同図に示すように、未熟児網膜症の隆起と発芽についてそれぞれ描画した病変領域が、それぞれの病変の様子を表す文章へと変換されている。
領域リストでの指定のとおり、「ゾーンIII」と「方位」に関する解析がなされた結果、あたかも従来の手作業によるカルテの如く、「ゾーンIIIの2時では」などの表現にて、病変の位置を示す文章となっている。さらに、重症度の分類と推奨治療の検索結果とが簡単かつ的確に表示されている。
上記の出力結果からも明らかなように、本発明のプログラムによって、描画が必要十分に文章化され、かつ、描画の二次利用も可能であることが示された。
尚、本実施例では、「2時では中程度」、「4時では中程度」などのように、病変の程度を方位ごとに表現しているが、プログラムの仕方により、同じ程度のものをまとめて表現してもよい(例えば「中程度のものが2時と4時、軽度のものが1時と5時」など)。
分類や推奨治療はここでは確定的に表現されているが、描画内容によっては曖昧な場合も含まれることが予想される。そのような場合は、一定の範囲内での分類や推奨治療の表現あるいは描画の追加記載を促す文書を表示するようにしてもよい。このような分類や推奨治療は、本実施例に関しては、未熟児網膜症を専門とする医師にとっては特に重要な内容ではないが、必ずしも専門としない医師にとっては臨床上、大変有用な情報を提供している。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によって、医師等の医療従事者がカルテ等の医療文書を作成する際に、簡単な文言の初期入力と病変領域の作画的な指定だけで、病変の様子を描写した文章が自動的に生成できるようになり、文書作成の労力が根本的に軽減できるようになった。
また、本発明によって、従来、取り出すことのできなかった描画に含まれる医療情報を容易に二次利用することが可能になった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断対象部の病変の様子を文章化するためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータを、
診断対象部に対して予め定められた1以上の特定部位とその部位ごとに予め定められた1以上の病変の名称の中から、病変の様子を文章化すべき特定部位とその病変の名称とを少なくとも入力する入力手段、
該コンピュータの表示装置の画面に診断対象部の下絵を表示し、該下絵によって規定された診断対象部の領域を描画可能領域として、該画面の描画可能領域内に前記病変が占有する病変領域を、ペン入力手段またはポインター入力手段によって描画し得るようにする、描画編集手段、
前記描画編集手段でなされた描画可能領域内の描画の有無を調べることにより、描画された病変領域の少なくとも位置と大きさとを認識しかつデータ化する、解析手段、
前記解析手段でデータ化された病変領域の少なくとも位置と大きさとを用いて、病変の様子を記述するために必要な数値および/または文言を生成し、前記入力された特定部位とその病変の名称と、その様子を記述した前記数値および/または文言とを含む文章を生成する、文章生成手段、
として機能させるための前記コンピュータプログラム。
【請求項2】
下記(A)の解析用データセットをさらに有し、
上記解析手段が上記描画可能領域内の描画の有無を調べるに際して、上記入力手段で入力された特定部位とその病変の名称とに対応した下記(A)の解析用データセットの領域リストの指定に従って、該描画の有無を調べるように、該解析手段が構成されている、請求項1記載のコンピュータプログラム。
(A)描画可能領域内に描画された病変領域の少なくとも位置と大きさとについての解析を解析手段が行なうために参照すべき指定内容が、特定部位とその病変の名称ごとに定められた解析用データセットであって、
描画可能領域を特定部位とその病変名とに応じて1種類以上のパターンにて分割した小領域の集合、および/または、描画可能領域を分割せずに全体を1つの解析対象とした全領域をデータセットとして有し、かつ、前記小領域の集合および全領域のうちのどの領域に対して描画の有無を調べるのかを指定した領域リストを有する、解析用データセット。
【請求項3】
上記(A)の解析用データセットに含まれる1種類以上のパターンにて分割した小領域が、下記の(a)〜(f)から選ばれる1以上の小領域である、請求項2記載のコンピュータプログラム。
(a)描画可能領域を、該領域の中心の1点から所定間隔の角度にて放射状に延びる直線によって分割した扇状の小領域。
(b)描画可能領域を、複数の同心円によって分割した環状の小領域。
(c)描画可能領域を格子状に交わる線によって分割した方形状の小領域。
(d)前記(a)〜(c)の小領域の形状以外の形状となるように、描画可能領域を分割してなる小領域。
(e)前記(a)〜(d)の小領域から選ばれた2以上の小領域を組み合わせてなる小領域。
(f)前記(a)〜(d)の小領域から選ばれた2以上の小領域同士が互いに重なり合った領域として規定される小領域。
【請求項4】
当該コンピュータプログラムが、
上記文章生成手段によって生成された文章を上記コンピュータの外部記憶装置に書込み読出す文書データ管理手段として、上記コンピュータを機能させるためのプログラム部分をさらに有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項5】
上記入力手段と上記描画編集手段とが、同じ表示装置と、同じペン入力手段またはポインター入力手段とを用いる構成とされ、
上記入力手段が、予め定められた1以上の特定部位とその部位ごとに予め定められた1以上の病変の名称を表示装置の画面に表示し、文章化すべき特定部位とその病変の名称とを、ペン入力手段またはポインター入力手段にて画面上で選択することによって、それら特定部位と病変の名称とを入力するように構成されている、
請求項1〜4のいずれか1項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項6】
上記描画編集手段が、複数の描画可能領域を有し、これら描画可能領域は、それぞれ描画レイヤーとして、互いに重なり合って1つの画像として表示されるように構成され、上記入力手段で入力された特定部位とその病変の名称とに対応した描画可能領域が選択されて描画可能となるように構成されている、
請求項1〜5のいずれか1項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項7】
上記描画編集手段は、描画可能領域を含んだ描画可能レイヤーの他に、解析用領域を含んだ解析用レイヤーを有しており、
描画可能レイヤー内の描画可能領域に病変領域が描画されると、その描画可能レイヤーに対応した解析用レイヤー内の解析用領域にも前記病変領域に対応した病変領域が作成されるように構成されており、
上記解析手段は、その解析用レイヤー内の解析用領域の描画の有無を調べることによって、病変領域の少なくとも位置と大きさとを認識しかつデータ化するように構成されている、
請求項6記載のコンピュータプログラム。
【請求項8】
上記描画編集手段において、表示装置の画面上で入力用ペンまたはポインターによって描かれる病変領域が、入力される特定部位とその病変の名称ごとに固有の描画模様にて表現されるように定められており、それによって、1つの画面内に表示される複数の互いに異なる病変領域同士が視覚的に識別できるようになっている、
請求項1〜7のいずれか1項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項9】
上記描画編集手段において、表示装置の画面上で入力用ペンまたはポインターが、下記(i)〜(v)のうちのいずれか1つの描画模様にて病変領域を規定する態様となっている、請求項8記載のコンピュータプログラム。
(i)入力用ペンまたはポインターが移動するとその跡に、点線状、破線状、または、線状の軌跡が描かれ、その線状の軌跡自体が病変領域を規定する態様。
(ii)入力用ペンまたはポインターが移動するとその跡に、上記(i)の軌跡以外の模様による軌跡が描かれ、その模様による軌跡自体が病変領域を規定する態様。
(iii)入力用ペンまたはポインターが移動するとその跡に線状の軌跡が描かれ、さらに、該線状の軌跡が閉じられて閉領域が作られたときにその閉領域が自動的に所定の色や模様にて充填され、病変領域を規定する態様。
(iv)入力用ペンまたはポインターを意図する位置に合わせて入力を行うと、その位置に印判を押したように特定の模様が描かれ、その模様が病変領域を規定する態様。
(v)入力用ペンまたはポインターを意図する位置に合わせて入力を行うと、前記(i)〜(iv)以外の特定の模様が描かれ、その模様が病変領域を規定する態様。
【請求項10】
診断対象部が、病変領域を描画することが可能な部分であって、特定部位が、前記部分に含まれる解剖学的な単位である、請求項1〜9のいずれか1項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項11】
当該コンピュータプログラムが、上記コンピュータを、下記(B)の参照事項出力手段として機能させるためのプログラム部分をさらに有する、請求項1〜10記載のいずれか1項に記載のコンピュータプログラム。
(B)上記文章生成手段によって生成された文章に関連した医療上の参照事項を、上記コンピュータがアクセス可能な記憶装置から探し出し出力する参照事項出力手段。
【請求項12】
診断対象部の病変の様子を文章化するための文章作成装置であって、
入力手段を有し、該入力手段は、診断対象部に対して予め定められた1以上の特定部位とその部位ごとに予め定められた1以上の病変の名称の中から、文章化すべき特定部位とその病変の名称とを入力し得るように構成されており、
描画編集手段を有し、該描画編集手段は、ペン入力手段またはポインター入力手段と、表示手段とをさらに含んでおり、該表示手段の画面に診断対象部の下絵を表示し、該下絵によって規定された診断対象部の領域を描画可能領域として、該画面の描画可能領域内に前記病変が占有する病変領域を、ペン入力手段またはポインター入力手段によって描画し得るように構成されており、
解析手段を有し、該解析手段は、前記描画編集手段でなされた描画可能領域内の描画の有無を調べることにより、描画された病変領域の少なくとも位置と大きさとを認識しかつデータ化するように構成されており、
文章生成手段を有し、該文章生成手段は、前記解析手段でデータ化された病変領域の少なくとも位置と大きさとを用いて、病変の様子を記述するために必要な数値および/または文言を生成し、前記入力された特定部位とその病変の名称と、その様子を記述した前記数値および/または文言とを含む文章を生成するように構成されている、
前記文章作成装置。
【請求項13】
下記(A)の解析用データセットをさらに有し、
上記解析手段が上記描画可能領域内の描画の有無を調べるに際して、上記入力手段で入力された特定部位とその病変の名称とに対応した下記(A)の解析用データセットの領域リストの指定に従って、該描画の有無を調べるように、該解析手段が構成されている、請求項10記載の文章作成装置。
(A)描画可能領域内に描画された病変領域の少なくとも位置と大きさとについての解析を解析手段が行なうために参照すべき指定内容が、特定部位とその病変の名称ごとに定められた解析用データセットであって、
描画可能領域を特定部位とその病変名とに応じて1種類以上のパターンにて分割した小領域の集合、および/または、描画可能領域を分割せずに全体を1つの解析対象とした全領域をデータセットとして有し、かつ、前記小領域の集合および全領域のうちのどの領域に対して描画の有無を調べるのかを指定した領域リストを有する、解析用データセット。
【請求項14】
当該文章作成装置が、表示装置と入力装置とを少なくとも接続されて構成されたコンピュータであり、入力装置は、ペン入力装置またはポインター入力装置であって、
該コンピュータが、請求項1〜11のいずれか1項に記載のコンピュータプログラムを実行するようになっている、請求項12または13記載の文章作成装置。
【請求項15】
外部のコンピュータが、インターネットを介して上記コンピュータと接続されており、上記コンピュータで実行される上記コンピュータプログラムを、ユーザーがインターネットを介して外部のコンピュータから利用できる構成となっている、
請求項14記載の文章作成装置。
【請求項16】
上記コンピュータが、請求項11に記載のコンピュータプログラムを実行するようになっており、
上記文章生成手段によって生成された文章に関連した医療上の参照事項を、上記コンピュータ内の記憶装置、または、上記コンピュータがアクセス可能な外部記憶装置から探し出し出力し得る構成となっている、請求項14または15記載の文章作成装置。
【請求項1】
診断対象部の病変の様子を文章化するためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータを、
診断対象部に対して予め定められた1以上の特定部位とその部位ごとに予め定められた1以上の病変の名称の中から、病変の様子を文章化すべき特定部位とその病変の名称とを少なくとも入力する入力手段、
該コンピュータの表示装置の画面に診断対象部の下絵を表示し、該下絵によって規定された診断対象部の領域を描画可能領域として、該画面の描画可能領域内に前記病変が占有する病変領域を、ペン入力手段またはポインター入力手段によって描画し得るようにする、描画編集手段、
前記描画編集手段でなされた描画可能領域内の描画の有無を調べることにより、描画された病変領域の少なくとも位置と大きさとを認識しかつデータ化する、解析手段、
前記解析手段でデータ化された病変領域の少なくとも位置と大きさとを用いて、病変の様子を記述するために必要な数値および/または文言を生成し、前記入力された特定部位とその病変の名称と、その様子を記述した前記数値および/または文言とを含む文章を生成する、文章生成手段、
として機能させるための前記コンピュータプログラム。
【請求項2】
下記(A)の解析用データセットをさらに有し、
上記解析手段が上記描画可能領域内の描画の有無を調べるに際して、上記入力手段で入力された特定部位とその病変の名称とに対応した下記(A)の解析用データセットの領域リストの指定に従って、該描画の有無を調べるように、該解析手段が構成されている、請求項1記載のコンピュータプログラム。
(A)描画可能領域内に描画された病変領域の少なくとも位置と大きさとについての解析を解析手段が行なうために参照すべき指定内容が、特定部位とその病変の名称ごとに定められた解析用データセットであって、
描画可能領域を特定部位とその病変名とに応じて1種類以上のパターンにて分割した小領域の集合、および/または、描画可能領域を分割せずに全体を1つの解析対象とした全領域をデータセットとして有し、かつ、前記小領域の集合および全領域のうちのどの領域に対して描画の有無を調べるのかを指定した領域リストを有する、解析用データセット。
【請求項3】
上記(A)の解析用データセットに含まれる1種類以上のパターンにて分割した小領域が、下記の(a)〜(f)から選ばれる1以上の小領域である、請求項2記載のコンピュータプログラム。
(a)描画可能領域を、該領域の中心の1点から所定間隔の角度にて放射状に延びる直線によって分割した扇状の小領域。
(b)描画可能領域を、複数の同心円によって分割した環状の小領域。
(c)描画可能領域を格子状に交わる線によって分割した方形状の小領域。
(d)前記(a)〜(c)の小領域の形状以外の形状となるように、描画可能領域を分割してなる小領域。
(e)前記(a)〜(d)の小領域から選ばれた2以上の小領域を組み合わせてなる小領域。
(f)前記(a)〜(d)の小領域から選ばれた2以上の小領域同士が互いに重なり合った領域として規定される小領域。
【請求項4】
当該コンピュータプログラムが、
上記文章生成手段によって生成された文章を上記コンピュータの外部記憶装置に書込み読出す文書データ管理手段として、上記コンピュータを機能させるためのプログラム部分をさらに有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項5】
上記入力手段と上記描画編集手段とが、同じ表示装置と、同じペン入力手段またはポインター入力手段とを用いる構成とされ、
上記入力手段が、予め定められた1以上の特定部位とその部位ごとに予め定められた1以上の病変の名称を表示装置の画面に表示し、文章化すべき特定部位とその病変の名称とを、ペン入力手段またはポインター入力手段にて画面上で選択することによって、それら特定部位と病変の名称とを入力するように構成されている、
請求項1〜4のいずれか1項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項6】
上記描画編集手段が、複数の描画可能領域を有し、これら描画可能領域は、それぞれ描画レイヤーとして、互いに重なり合って1つの画像として表示されるように構成され、上記入力手段で入力された特定部位とその病変の名称とに対応した描画可能領域が選択されて描画可能となるように構成されている、
請求項1〜5のいずれか1項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項7】
上記描画編集手段は、描画可能領域を含んだ描画可能レイヤーの他に、解析用領域を含んだ解析用レイヤーを有しており、
描画可能レイヤー内の描画可能領域に病変領域が描画されると、その描画可能レイヤーに対応した解析用レイヤー内の解析用領域にも前記病変領域に対応した病変領域が作成されるように構成されており、
上記解析手段は、その解析用レイヤー内の解析用領域の描画の有無を調べることによって、病変領域の少なくとも位置と大きさとを認識しかつデータ化するように構成されている、
請求項6記載のコンピュータプログラム。
【請求項8】
上記描画編集手段において、表示装置の画面上で入力用ペンまたはポインターによって描かれる病変領域が、入力される特定部位とその病変の名称ごとに固有の描画模様にて表現されるように定められており、それによって、1つの画面内に表示される複数の互いに異なる病変領域同士が視覚的に識別できるようになっている、
請求項1〜7のいずれか1項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項9】
上記描画編集手段において、表示装置の画面上で入力用ペンまたはポインターが、下記(i)〜(v)のうちのいずれか1つの描画模様にて病変領域を規定する態様となっている、請求項8記載のコンピュータプログラム。
(i)入力用ペンまたはポインターが移動するとその跡に、点線状、破線状、または、線状の軌跡が描かれ、その線状の軌跡自体が病変領域を規定する態様。
(ii)入力用ペンまたはポインターが移動するとその跡に、上記(i)の軌跡以外の模様による軌跡が描かれ、その模様による軌跡自体が病変領域を規定する態様。
(iii)入力用ペンまたはポインターが移動するとその跡に線状の軌跡が描かれ、さらに、該線状の軌跡が閉じられて閉領域が作られたときにその閉領域が自動的に所定の色や模様にて充填され、病変領域を規定する態様。
(iv)入力用ペンまたはポインターを意図する位置に合わせて入力を行うと、その位置に印判を押したように特定の模様が描かれ、その模様が病変領域を規定する態様。
(v)入力用ペンまたはポインターを意図する位置に合わせて入力を行うと、前記(i)〜(iv)以外の特定の模様が描かれ、その模様が病変領域を規定する態様。
【請求項10】
診断対象部が、病変領域を描画することが可能な部分であって、特定部位が、前記部分に含まれる解剖学的な単位である、請求項1〜9のいずれか1項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項11】
当該コンピュータプログラムが、上記コンピュータを、下記(B)の参照事項出力手段として機能させるためのプログラム部分をさらに有する、請求項1〜10記載のいずれか1項に記載のコンピュータプログラム。
(B)上記文章生成手段によって生成された文章に関連した医療上の参照事項を、上記コンピュータがアクセス可能な記憶装置から探し出し出力する参照事項出力手段。
【請求項12】
診断対象部の病変の様子を文章化するための文章作成装置であって、
入力手段を有し、該入力手段は、診断対象部に対して予め定められた1以上の特定部位とその部位ごとに予め定められた1以上の病変の名称の中から、文章化すべき特定部位とその病変の名称とを入力し得るように構成されており、
描画編集手段を有し、該描画編集手段は、ペン入力手段またはポインター入力手段と、表示手段とをさらに含んでおり、該表示手段の画面に診断対象部の下絵を表示し、該下絵によって規定された診断対象部の領域を描画可能領域として、該画面の描画可能領域内に前記病変が占有する病変領域を、ペン入力手段またはポインター入力手段によって描画し得るように構成されており、
解析手段を有し、該解析手段は、前記描画編集手段でなされた描画可能領域内の描画の有無を調べることにより、描画された病変領域の少なくとも位置と大きさとを認識しかつデータ化するように構成されており、
文章生成手段を有し、該文章生成手段は、前記解析手段でデータ化された病変領域の少なくとも位置と大きさとを用いて、病変の様子を記述するために必要な数値および/または文言を生成し、前記入力された特定部位とその病変の名称と、その様子を記述した前記数値および/または文言とを含む文章を生成するように構成されている、
前記文章作成装置。
【請求項13】
下記(A)の解析用データセットをさらに有し、
上記解析手段が上記描画可能領域内の描画の有無を調べるに際して、上記入力手段で入力された特定部位とその病変の名称とに対応した下記(A)の解析用データセットの領域リストの指定に従って、該描画の有無を調べるように、該解析手段が構成されている、請求項10記載の文章作成装置。
(A)描画可能領域内に描画された病変領域の少なくとも位置と大きさとについての解析を解析手段が行なうために参照すべき指定内容が、特定部位とその病変の名称ごとに定められた解析用データセットであって、
描画可能領域を特定部位とその病変名とに応じて1種類以上のパターンにて分割した小領域の集合、および/または、描画可能領域を分割せずに全体を1つの解析対象とした全領域をデータセットとして有し、かつ、前記小領域の集合および全領域のうちのどの領域に対して描画の有無を調べるのかを指定した領域リストを有する、解析用データセット。
【請求項14】
当該文章作成装置が、表示装置と入力装置とを少なくとも接続されて構成されたコンピュータであり、入力装置は、ペン入力装置またはポインター入力装置であって、
該コンピュータが、請求項1〜11のいずれか1項に記載のコンピュータプログラムを実行するようになっている、請求項12または13記載の文章作成装置。
【請求項15】
外部のコンピュータが、インターネットを介して上記コンピュータと接続されており、上記コンピュータで実行される上記コンピュータプログラムを、ユーザーがインターネットを介して外部のコンピュータから利用できる構成となっている、
請求項14記載の文章作成装置。
【請求項16】
上記コンピュータが、請求項11に記載のコンピュータプログラムを実行するようになっており、
上記文章生成手段によって生成された文章に関連した医療上の参照事項を、上記コンピュータ内の記憶装置、または、上記コンピュータがアクセス可能な外部記憶装置から探し出し出力し得る構成となっている、請求項14または15記載の文章作成装置。
【図1】
【図4】
【図5】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図15】
【図4】
【図5】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図15】
【公開番号】特開2013−69076(P2013−69076A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206544(P2011−206544)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(597039984)学校法人 川崎学園 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(597039984)学校法人 川崎学園 (4)
【Fターム(参考)】
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