説明

病気および状態の処置および防止のためのフロロ置換オメガカルボキシアリールジフェニル尿素

【課題】raf,VEGFR,PDGFR,p38および/またはflt−3キナーゼが含まれる一以上の信号形質導入経路が含まれる一以上のタンパクキナーゼによって調節されるヒトまたは他の哺乳類の病気の処置のための薬剤組成物の提供。
【解決手段】(a)生理学的に許容し得る担体、および(b)4−{4−〔3−(4−クロロ−3−トリフルオロメチルフェニル)ウレイド〕−3−フロロフェノキシ}ピリジン−2−カルボン酸メチルアミド、その酸塩、脱メチル体または代謝産物を含んでいる薬剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物、そのような化合物を含む薬剤組成物、そして単独または抗癌剤との組合せにおいて異常なVEGFR,PDGFR,raf,p38および/またはflt−3キナーゼ信号によって病気および状態を処置するためのこれら化合物または組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ras信号形質導入経路の活性化は、細胞増殖、分化および形質転換に対し深いインパクトを有する出来事のカスケードを指示する。rasの下流エフェクターであるRafキナーゼは、細胞表面レセプターから細胞核へのこれら信号のキーメディエーターとして認められている(Lowy,D.R.;Willumsen,B.W.Ann.Rev.Biochem.1993,62,851;Bos.J.L.Cancer Res.1989,49,4682)。rafキナーゼに対する非活性抗体の投与により、または優生ネガティブrafキナーゼもしくはrafキナーゼの基質である優生ネガティブMEKの同時発現によりrafキナーゼ信号経路を阻害することにより、活性rasの効果を阻害することは、形質転換された細胞の正常表現型への逆転へ導くことが示された(Daum et al.Trends Biochem.Sci.1994,19,474−80;Fridman et al.J.Biol.Chem.1994,269,30105−8を見よ)。Kolch et al(Nature 1991,349,426−428)は、アンチセンスRNAによるrafキナーゼ発現の阻害は膜関連癌遺伝子において細胞増殖をブロックすることをさらに指示した。同様に、rafキナーゼの阻害(アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドによる)は、種々のヒト腫瘍タイプとインビボおよびインビトロにおいて相関した。(Monia et al.Nat.Med.1996,2,685−75)
【0003】
1−2mmのサイズをこえて進行性腫瘍の成長を支持するためには、線維芽細胞、平滑筋細胞、内皮細胞、細胞外マトリックスタンパク、および可溶性因子よりなる支持構造である機能的ストローマを必要とする(Folkman,J.,Semin Oncol.2002,29(6 suppl16),15−8)。腫瘍はPDGFのような可溶性成長因子および形質転換成長因子β(TGT−β)のような可溶性成長因子の分泌を通じてストローマ組織の形成を誘発し、このことが次に線維芽細胞成長因子(FGF)、上皮細胞成長因子(EGF)および脈管内皮細胞成長因子(VEGF)のようなホスト細胞による相補因子の分泌を刺激する。これらの刺激因子は、腫瘍へ酸素および栄養を運び、そしてそれが成長しそして転移のためのルートを提供することを許容する、新しい血管の形成または脈管形成を誘発する。ストローマ形成の阻害を目指したある種の療法は広い範囲の組織学的タイプからの上皮腫瘍の成長を阻害するものと信じられる(George,D.Semin Oncol,2001,28(5 Suppl 17),27−33;Shaheen,R.M.et al.Cancer Res.2001,61(4),1464−8;Shaheen,R.M.et al.Cancer Res,1999(59)(21),5412−6)。しかしながら複雑な性格および脈管形成および腫瘍進行に含まれる多数の成長因子のため、単一の経路を標的とする剤は限られた有効性しか持たないであろう。腫瘍によりホストストローマ中の脈管形成を誘発するために利用される多数のキー信号経路に対する処置を提供することが望ましい。これらはストローマ形成の強力なスティミュレーターであるPDGF(Ostman,A.and C.H.Heldin,Adv.Cancer Res.2001,80,1−38)、線維芽細胞および内皮細胞に対するケモアトラクタントおよびミトゲンであるTGF、および脈管化の強化なレギュレーターであるVEGFを含む。
【0004】
PDGFは、パラクリン態様で多数の腫瘍によって分泌され、そして線維芽細胞、平滑筋および内皮細胞の成長を促進し、ストローマ形成および脈管形成を促進すると信じられるストローマ形成の他のレギュレーターである。PDGFは当初サル内腫ウイルスのv−sis癌遺伝子生産物として同定された(Heldin,C.H.et al.,J.cell Sci suppl,1985,3,65−76)。この成長因子はA鎖およびB鎖と呼ばれる二つのペプチド鎖からできており、両者はそれらの主アミノ酸配列において60%相同性を占める。これらの鎖はAA,BBまたはABホモまたはヘテロダイマーのいずれかよりなる30kDa成熟タンパクを形成するように架橋したジサルファイドである。PDGFは血小板中に高いレベルで発見され、そして内皮細胞および脈管平滑筋細胞によって発現される。加えて、PDGFの生産は貧弱に脈管化された腫瘍組織に見られるような低酸素条件下で上方へ調節される(Kourembanas S.et al.,Kidney Int.1997,51(2),438−43)。PDGFは高い親和性をもって1106アミノ酸124kDa膜横断チロシンキナーゼレセプターであるPDGFレセプターへ結合する(Heldin,C.H.,A.Ostman,and L.Ronnstrand,Biochim Biophys Acta,1998,1378(1),79−113)。PDGFRはアミノ酸配列において全体として30%相同性とそしてそれらのキナーゼドメインの間で64%相同性を有するホモまたはヘテロダイマー鎖として見出される(Heldin,C.H.et al,Embo J.1988,7(5),1387−93)。PDGFRはVEGFR2(KDR),VEGFR3(Flt4),c−kitおよびFLT3を含むキナーゼドメインに分かれるチロシンキナゼレセプターのファミリーメンバーである。PDGFレセプターは主として線維芽細胞、平滑筋細胞および周皮細胞上に、そして少ない程度でニューロン、腎臓メサンギウムおよび中枢神経系のLeydigおよびSchwann細胞上に発現される。
【0005】
そのレセプターへ結合する時、PDGFはレセプター二量化を誘発し、そしてチロシン残基の自家およびトランスホスフォリル化を受け、これがレセプターのキナーゼ活性を増強し、そしてSH2タンパク結合ドメインの活性化を通じて下流エフェクターの補充を促進する。PI−3−キナーゼ、ホスフォリパーゼC−ガンマ、srcおよびGAP(p21−rasのためのGTPファーゼ活性化タンパク)を含む多数の信号分子が活性化されたPDGFRと複合体を形成する(Soskic,V.et al.Biochemistry 1999,38(6),1757−64)。PI−3−キナーゼの活性化を通じて、PDGFはRho信号経路を活性化し、細胞生存性および移動性を誘発し、GAPの活性化を通じてp21−rasおよびMAPK信号経路の活性化によりミトゲン形成を誘発する。
【0006】
成人において、PDGFの主要な機能は創傷治癒の容易化と速度増大と、そして血管ホメオスタシスの維持であると信じられる(Baker,E.A.and D.J.Leaper,Wound Repair Regen,2000,865),392−8;Yn,J.A.Moon And H.R.kim,Biochem Biophys Res Commun,2001,282(3),697−700)。PDGFは血小板中に高濃度に見出され、そして線維芽細胞、平滑筋細胞、好中球およびマクロファージのための強力なケモアトラクタントである。創傷治癒における役割に加えて、PDGFは脈管ホモオスタシスの維持を助けることが知られている。新しい血管の発達の間、PDGFは血管の構造的一体性のために必要な周皮細胞および平滑筋細胞を補給する。PDGFは腫瘍新生脈管化の間も同様な役割を果すものと考えられる。脈管形成におけるその役割の一部として、PDGFは間隙流体圧力をコントロールし、結合組織細胞と細胞外マトリックス間の相互作用の調節を通じて脈管の透過性を調節する。PDGFR活性の阻害は間隙圧力を低下させ、腫瘍への細胞毒剤の流入を容易化し、これらの剤の抗腫瘍効果を改善することができる(Pietras,K.et al.Cancer Res,2002,62(19),5476−84;Pietras,K.et al,Cancer Res,2001,61(7),2929−34)。
【0007】
PDGFはストローマ細胞または腫瘍細胞上のPDGFRを直接オートクリンまたはパラクリン刺激することにより、または該レセプターの増幅または組換えによる該レセプターの活性化により、腫瘍成長を促進することができる。PDGFの過度の発現は、恐らくストローマ形成および血管形成の誘発に対するPDGFの直接効果によってPDGFを発現しない二つの細胞タイプ、ヒトメラノーマ細胞およびケラチノサイトを形質転換し得る(Forsberg,K.et al.Proc Natl Acad Sci USA,1993,90(2),293−7;Skobe,M.and N.E.Fusenig,Proc Natl Acad Sci USA,1998,95(3),1050−5)。この腫瘍ストローマのパラクリン刺激は、腫瘍がレセプターではなくPDGFを発現する、大腸、肺、乳房および前立腺のカルチノーマにも観察される(Bhardwaj,B.et al,Clin Caner Res,1996,2(4),773−82;Nakanishi,K.et al,Mod Pathol,1997,10(4),341−7;Sundberg,C.et al,Am J Pathol,1997,151(2),479−92;Lindmark,G.et al,Lab Invest,1993,69(6),682−9;Vigfnaud,J.M.et al,Cancer Res,1994,54(20),5455−63)。分析した腫瘍の大部分がリガンドPDGFとそのレセプターを発現する腫瘍細胞成長のオートクリン刺激は、膠芽腫(Fleming,T.P.et al,Cancer Res,1992,52(16),4550−3)、軟組織内腫(Wang,J.,M.D.Coltrera and A.M.Gown,Cancer Res,1994,54(2),560−4)、および卵巣癌(Henriksen,R.et al,Cencer Res,1993,53(19),4550−4)、前立腺(Fudge,K.,C.Y.Wang,and M.E.Stearns,Mod Pathol,1994,7(5),549−54)、膵臓(Funa,K.et al,Proc Natl Acad Sci USA,1992,89(9),3942−6)、および肺(Antoniades,H.N.et al,Proc Natl Acad Sci USA,1992,89(9),3942−6)において報告されている。このレセプターのリガンド非依存性活性化は少ない程度で見出され、しかし染色体配座イベントがEts様転写因子TELとPDGFレセプターの間の融合タンパクを生成する慢性骨髄単細胞白血病(CMML)中に報告されている。加えてPDGFRにおける突然変異の活性化は、c−kit活性化が含まれない胃腸ストローマ腫瘍中に報告されている(Heinrich,M.C.et al,Science,2003,9,9)。
【0008】
胚芽発達およびある種の血管形成依存性疾病の両方における血管形成および脈管形成の他の主要なレギュレーターは脈管内皮細胞成長因子(VEGF,脈管透過性因子VPFとも呼ばれる)である。VEGFは代替RNAスプライシングによるホモダイマー形に存在するミトゲンのアイソフォームのファミリーを代表する。VEGFアイソフォームは脈管内皮細胞に対して高度に特異性であることが報告されている(レビューについて、Farrata et al,Endocr.Rev.1992,13,18;Neufield et al,FASEB J.1999,13,9を見よ)。
【0009】
VEGF発現は低酸素症(Shweiki et al,Nature 1992,359,843)により、そしてインターロイキン−1、インターロイキン−6、上皮細胞成長因子および形質転換成長因子のような種々のサイトカインおよび成長因子によって誘発されると報告されている。今日までVEGFおよびVEGFファミリーメンバーは一以上の三つの膜横断レセプターチロシンキナーゼ(Mustonen et al,J Cell Biol,1995,129,895)へ、VEGFレセプター1(fit−1(fms様チロシンキナーゼ−1)としても知られる)、VEGFR−2(キナーゼドメイン含有レセプター(KDR)としても知られ、KDRのネズミ類縁体は胎児肝臓キナーゼ−1(f1k−1)として知られる)、およびVEGFR−3(f1t−4として知られる)と結合することが報告されている。KDRおよびf1t−1は異なる信号形質導入性質を持つことが示された(Waltenberger et al,J.Biol Chem,1994,269,26988;Park et al,Oncogene 1995,10,135)。このようにKDRはインタクトな細胞中で強いリガンド依存性チロシンホスフォリール化を受けるが、f1t−1は弱い応答を示す。このためKDRへの結合はVEGF仲介生物学的応答の全スペクトルの誘発のための決定的必要性であると信じられる。
【0010】
インビボにおいてVEGFは脈管形性において中心的役割を果し、そして血管形成および血管の透過性化を誘発する。規制されないVEGF発現は、異常な血管形成および/または高透過性プロセスを特徴とする多数の病気の発展へ寄与する。ある種の剤によるVEGF仲介信号形質導入の規制は異常な血管形成および/または高透過性プロセスのコントロールのための有用なモードを提供できるものと信じられる。
【0011】
腫瘍の低酸素領域内の腫瘍形成性細胞は、新しい血管の形成を刺激するように無活動内皮細胞の活性化を引金するVEGF生産の刺激によって応答する(Shweiki et al,Proc Nat1 Acad Sci,1995,92,768)。加えて、血管形成がない腫瘍領域におけるVEGF生産はras信号形質導入経路を通って進行し得る(Grugel et al,J.Biol.Chem.1995,270,259 15;Rak et al,Cancer Res.1995,55,4575)。その場のハイブリダイゼーション研究は、VEGFmRNAが肺(Mattern et al,Br.J.Caner Res.1993,53,4727;Suzuki et al,Cancer Res.1995,56,3004),腎臓および膀こう(Brown et al,Am.J.Pathl.1993,1431,1255);卵巣(Olson et al,Cancer Res.1994,54,1255);および頸部(Guidi et al,J.Natl.Cancer Inst.1995,87,12137)カルチノーマ、それに血管肉腫(Hashimoto et al,Lab.Invest.1995,73,859)およびいくつかの頸蓋内腫瘍(Plate et al,Nature 1992,359,845;Phillips et al,Int.J.Oncol 1993,2,913;Berkman et al,J.Clin.Invest.1993,91,153)を含む、多種類のヒト腫瘍において強い上方調節されることが示された。KDRに対する中和モノクローナル抗体は腫瘍血管形成をブロックするに有効であることが示された(Kim et al,Nature 1993,362,841;Rockwell et al,Mol.Cell.Differ.1995,3,315)。
【0012】
例えば極端な低酸素症の条件下でのVEGFの過剰発現は眼内血管形成へ導き、最終的には失明へ導く血管の高増殖をもたらし得る。そのような出来事のカスケートは、糖尿病、網膜症、虚血性網膜静脈塞栓、および未熟網膜症を含む多数の網膜症について(Aiello et al,New Engl.J.Med.1994,331,1480;Peer et al,Lab.Invest.1995,72,638)および年令関連班退化(AMD,Lopez et al.Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.1995,37,855)について観察された。
【0013】
リュウマチ性関節炎(RA)においては、脈管パンヌスの内方成長は血管形成因子の生産によって仲介され得る。RA患者の滑液中では免疫反応性VEGFのレベルが高く、退化的関節症を有する関節炎の他の形の患者の滑液においてはVEGFレベルは低い(Koch et al,J.Immunol.1994,152,4149)。血管形成阻害剤AGM−170はラットコラーゲン関節炎モデルにおいて関節の新脈管化を阻止することが示された(Peacock et al,J.Exper.Med.1992,175,1135)。
【0014】
増加したVEGF発現は乾癬皮膚、それに水疱性天疱瘡、多形紅斑、疱疹状皮膚炎のような上皮下水疱形成に関連した水疱性障害にも示された(Brown et al,J.Invest.Dermatol.1995,104,744)。
【0015】
脈管内皮成長因子(VEGF,VEGF−C,VEGF−D)およびそれらのレセプター(VEGFR2,VEGFR3)は腫瘍血管形成ばかりでなく、リンパ管形成キーレギュレーターである。VEGF,VEGF−CおよびVEGF−Dは主として腫瘍成長の間、そしてしばしば実質的に増大したレベルにおいて大部分の腫瘍において発現される。VEGF発現は低酸素症、サイトカイン、rasのような癌遺伝子により、または癌抑制遺伝子の不活性化によって刺激される(McMahon,G.Oncologist 2000,5(Suppl.1),3−10;McDonald,N.Q;Hendrickson W.A.Cell 1993,73,421−424)。
【0016】
VEGFの生物学活性はそれらのレセプターへの結合を通じて仲介される。VEGFR3(F1t−4とも呼ばれる)は正常成人組織中のリンパ管内皮に発現される。VEGFR3機能は新しいリンパ管形成に必要であるが、しかし既存のリンパ管の維持には必要でない。VEGFR3は腫瘍中の血管内皮においても上方調節される。VEGFR3のリガンドであるVEGF−CおよびVEGF−Dは哺乳類のリンパ管形成のレギュレーターとして同定された。腫瘍関連リンパ管形成因子によって誘発されるリンパ管形成は腫瘍中へ新しい脈管の成長を促進し、全身循環への腫瘍細胞のアクセスを提供し得る。リンパ管へ侵入した細胞は胸管を経由して血流中へのそれらの進路を見出すことができる。腫瘍発現研究は、一次腫瘍が拡がる能力に直接関係する臨床病理学的要因(例えばリンパ節関与、リンパ管侵襲、二次的転移、および無病生存律)とのVEGF−C、VEGF−DおよびVEGFR−3の直接の比較を許容した。多くの場合、これら研究はリンパ球形成因子と一次固形腫瘍が転移する能力との間に統計学的相関性を証明した(Skobe,M.et al,Nature Med.2001,7(2),192−198;Sacker,S.A.et al,Nature Med.2001,7(2),186−191;Makinen,T.et al,Nature Med.2001,7(2),199−205;Mandriota,S.J.et al,EMBO J.2001,20(4),672−82;Karpanen,T.et al,Cancer Res.2001,61(5),1786−90;Kubo,H.et al,Blood 2000,96(2),546−53)。
【0017】
低酸素症は癌細胞におけるVEGF生産のための重要な刺激であるらしい。p38MAPキナーゼの活性化が低酸素症に応答して腫瘍細胞によるVEGF誘発のために必要である(Blaschke,F.et al,Oral Oncology 2002,38,251−257)。VEGF分泌の調節を通ずる血管形成長への関与に加えて、p38MAPキナーゼは、癌細胞侵入、およびコラゲナーゼ活性の調節およびウロキナーゼプラスミノゲンアクチベーター発現を通じて異なるタイプの腫瘍の移動を促進する(Lafferriere,J.et al.Biol.Chem.2001,276,33762−33772;Westermarck,J.et al,Cancer Res.2000,60,7156−7162;Huang,S.et al,J.Biol.Chem,2000,275,12266−12272;Simon,C.et al,Exp.Cell Res,2001,271,344−355)。
【0018】
ミトゲン活性化タンパクキナーゼ(MAPK)p38の阻害は、インビボおよび/またはインビトロにおいてサイトカイン生産(例えば、TNF,IL−1,IL−6,IL−8)およびタンパク分解酵素生産(例えば、MMP−1,MMP−3)の両方の阻害を示した。ミトゲン活性化タンパク(MPA)キナーゼp38はIL−1およびTNF信号経路に含まれる(Lee,J.C.;Laydon,J.T.;McDonnel,P.C.;Gallagher,T.F.;Kumar,S.;Green,D.;Blumenthal,M.J.;Heys,J.R.;Landvatter,S.W.;Stricker,J.E.;McLaughlin,M.M.;Siemens,I.R.;Fisher,S.M.;Livi,G.P.;White,J.R.;Adams,J.L.;Yound,P.R.Nature 1994,372,739)。
【0019】
臨床研究は、TNF生産および/またはシグナリングをリウマチ性関節炎を含む多数の疾患へリンクさせた(Maini,J.Royal Coll.Physicians London 1996,30,344)。加えてTNFの過剰レベルは、急性リウマチ熱(Yegin et al.Lancet 1997,349,170)、骨再吸収(Pacifici et al.J.Clin.Endocrinol.Metabol.1997,82,29)、閉経後骨粗しょう症(Pacifici et al.J.Bone Mineral Res.1996,11,1043)、敗血症(Blackwell et al.Br.J.Anaeth.1996,77,110),グラム陰性敗血症(Debets et al.Prog.Clin.Biol.Res.1989,308,463),敗血症ショック(Tracey et al.Nature 1987,330,662;Girardin et al.New England J.Med.1988,319,387)、エンドトキシンショック(Beutler et al.Science 1985,229,869;Ashkenasi et al.Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 1991,88,10535),毒性ショック症候群(Saha et al.J.Immunol.1996,157,3869;Lina et al.FEMS Immurol.Med.Microbiol.1996,13,81),全身炎症応答症候群(Anon,Crit.Care Med.1992,20,864),炎症性腸病(Stokkers et al.J.Inffamm.1995−6,47,97),(クローン病(van Deventer et al.Aliment.Pharmacol.Therapeu.1996,10(Suppl.2),107;van Deventer et al.Gastroenterology 1995,109,129),および潰瘍性大腸炎(Masuda et al.J.Clin.Lab.Immunol.1995,46,111)を含む),Jarisch−Herxheimer反応(Fekede et al.New England J.Med.1996,335,311)、ぜん息(Amrani et al.Rev.Malad.Respir.1996,113,539)、成人呼吸窮迫症候群(Roten et al.Am.Rev.Respir.Dis.1991,143,590;Suter et al.Am.Rev.Respir.Dis.1992,145,1016),急性肺線維症(Pan et al.Pathol.Int.1996,46,91),肺サルコイド−シス(Ishioka et al.Sarcoidosis Vasculitis Diffuse Lung Dis.1996,13,139),アレルギー性呼吸器病(Casale et al.Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.1996,15,35)、ケイ肺症(Gossart et al.J.Immunol.1996,156,1540;Vanhee et al.Eur.Respir.J.1995,8,834),炭鉱労働者塵肺症(Borm et al.Am.Rev.Respir.Dis.1988,138,1589),肺胞傷害(Horinouchi et al.Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.1996,14,1044),肝不全(Gantner et al.J.Pharmacol.Exp.Therap.1997,280,53),急性炎症の間の肝臓病(Kim et al.J.Biol.Chem.1997,272,1402),重症アルコール性肝炎(Bird et al.Ann.Intern.Med.1990,112,917),マラリア(Grau et al.Immunol.Rev.1989,112,49;Taverne et al.Parasttol.Today 1996,12,290),Plasomdium falciparumマラリア(Perlmann et al.Infect.Immunit.1997,65,116)および脳マラリア(Rudin et al.Am.J.Pathol.1997,150,257),非インスリン依存性糖尿病(NIDDM;Stephens et al.J.Biol.Chem.1997,272,971;Ofei et al.Diabetes 1996,45,881),うっ血性心不全(Doyama et al.Int.J.Cardiol.1996,54,217;McMurray et al.Br.Heart J.1991,66,356),心臓病後損傷(Malkiel et al.Mol.Med.Today 1996,2,336),アテローム性動脈硬化症(Parums et al.J.Pathol.1996,179,A46),アルツハイマー病(Fagarasan et al.Brain Res.1996,723,231;Aisen et al.Gerontology 1997,43,143),急性脳炎(Ichiyama et al.J.Neural.1996,234,457),脳傷害(Cannon et al.Crit.Care Med.1992,20,1414;Hansbrogh et al.Surg.Clin.N.Am.1987,67,69;Marano et al,Surg.Gynecol.Obstetr.1990,170,32),多発性硬化症(M.S.;Coyle.Adv.Neuroimmunol.1996,6,143),Matusevicius et al.J.Neuroimmunol.1996,66,115),多発性硬化症における脱髄および稀突起膠細胞損失(Brosnan et al.Brain Pathol.1996,6,243),進行がん(Muc Wierzgon et al.J.Biol.Regulators Homeostatic Agents 1996,10,25),リンパ悪性腫瘍(Levy et al.Crit.Rev.Immunol.1996,16,31),膵臓炎(Exley et al.Gut 1992,33,1126),急性膵臓炎における全身合併症(Mckay et al.Br.J.Surg.1996,83,919),感染炎症およびがんにおける阻害された創傷治癒(Buck et al.Am.J.Pathol.1996,149,195),脊髄形成異常症候群(Raza et al.Int.J.Hematol.1996,63,265),全身エリテマトーデス(Maury et al.Arthritis Rheum.1989,32,146),胆汁性肝硬変(Miller et al.Am.J.Gasteroenterolog.1992,87,465),腸壊死(Sun et al.J.Clin.Invest.1988,81,1328),乾癬(Christophers Austr.J.Dermatol.1996,37,S4),放射線傷害(Redlick et al.J.Immunol.1996,157,1705),およびOKT3のようなモノクローナル抗体投与後の毒性(Brod et al.Neurology 1996,46,1633)を含む、多種類の炎症性および/または免疫調節病に関係している。
【0020】
TNFレベルはまた、虚血性再潅流損害(Colietti et al.J.Clin.Invest.1989,85,1333)を含むホスト対グラフト反応(Piguet et al.Immunol.Ser.1992,56,409)および腎臓(Maury et al.J.Exp.Med.1987,166,1132),肝臓(Imagawa et al.Transplantation 1990,50,219),心臓(Bolling et al.Transplantation 1992,53,283)および皮膚(Stevens et al.Transplant.Proc.1992,22,1924)を含む同種移植拒絶、肺同種移植拒絶(obliterative Dronchitis;LoCicero et al.J.Thorac.Cardiovasc.Surg.1990,99,1059),および全ヒップ置換による合併症(Cirino et al.Life Sci.1996,59,86)にも関係している。TNFαはまた、結核(Rook et al.Med.Malad.Infec.1996,26,904),消化性潰瘍中のヘリコバクターピロリの感染(Beales et al.Gastroenterology 1997,112,136),Trypanosoma cruzi感染から発生するChaga病(Chandrasekar et al.Biochem.Biophys.Res.Commun.1996,223,365),E.coli感染から発生するShiga様トキシンの影響(Harel et al.J.Clin.Invest.1992,56,40),Staphylococcus感染から来るエンテロトキシンAの影響(Fischer et al.J.Immunol.1990,144,4663),meningococci感染(Waage et al.Lancet 1987,355;Ossege et al.J.Neurolog.Sci 1996,144,1),およびBorrelia burgdorferiの感染(Brandt et al.Infect.Immunol.1990,58,983),Treponema pallidum(Chamberlin et al.Infect.Immunol.1989,57,2872),サイトメガロウイルス(CMV;Geist et al.Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.1997,16,31),インフルエンザウイルス(Beutler et al.Chin.Res.1986,34,491a),センダイウイルス(Goldfield et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 1989,87,1490),Theiler脳脊髄炎ウイルス(Sierra et al.Immuology 1993,78,399),およびヒト免疫不全ウイルス(HIV;Poli,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 1990,87,782;Vyakaram et al.AIDS 1990,4,21;Badley et al.J.Exp.Med.1997,185,55)を含む、感染病(レビュー;Beutler et al.Crit.Care Med.1993,21,5423;Degre,Biotherapy 1996,8,219)にも関連している。
【0021】
多数の病気は、過剰のまたは望ましくないマトリックス破壊メタロプロテアーゼ(MMP)活性によって、またはMMP対メタロプロテイナーゼの組織インヒビター(TIMP)の比のインバランスによって仲介されると考えられる。これらは変形性関節炎(Woessner et al.J.Biol.Chem.1984,259,3633),リウマチ性関節炎(Mullins et al.Biochim.Biophys.Acta 1983,659,117;Woolley et al.Arthritis Rheum.1977,20,1231;Gravalles et al.Arthritis Rheum.1991,34,1076),敗血症関節炎(Williams et al.Arthritis Rheum.1990,33,533),腫瘍転移(Reich et al.Cancer Res.1988,48,3307;Matrisian et al.Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 1986,83,9413),歯周病(Overall et al.J.Peridontal Res.1987,22,81),角膜潰瘍化(Burns et al.Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.1989,30,1569),たんぱく尿(Baricos et al.Biochem.J.1988,254,609),動脈硬化プラック破裂からの冠血栓(Henney et al.Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 1991,88,8154),動脈瘤大動脈病(Vine et al.Clin.Sci.1991,81,233),産児制限(Woessner et al.Steroids 1989,54,491),ジストロフィー性表皮剥離水疱(Kronberger et al.J.Invest.Dermatol.1982,79,208),外傷関節傷害後の退化的軟骨損失、MMPによって仲介される骨減少症、温度下顎関節病および神経系の脱髄病(Chantry et al.J.Neurochem.1988,50,688)を含む。
【0022】
p38の阻害はTNF生産およびMMP生産への阻害へ導くため、ミトゲン活性化タンパク(MAP)キナーゼp38の阻害は骨粗しょう症、およびリュウマチ性関節炎とCOPOのような炎症障害を含む上にリストした病気の処置へのアプローチを提供するものと信じられる(Badger,A.M.;Bradbeer,J.N.;Votta,B;Lee,J.C.;Adams,J.L.;Griswold,D.E.;J.Pharm.Exper.Ther.1996,279,1453)。
【0023】
低酸素症は悪性細胞においてVEGF生産のための重要な刺激に見える。p38キナーゼの活性化は低酸素症に応答して腫瘍によるVEGF誘発のために必要である(Blaschke,F.et al.Biochem.Biophys.Res.Commun.2003,296,890−896;Shemiran,B.et al.Oral Oncology 2002,38,251−257)。VEGF分泌の調節による血管形成へのその関与に加えて、p38キナーゼは悪性細胞侵入、およびコラゲナーゼ活性の調節およびウロキナーゼプラミノーゲン活性発現を通じて異なる腫瘍タイプの移動を促進する(Laferriere,J.et al.J.Biol.Chem.2001,276,33762−33772;Westermarck,J.et al.Cancer Res.2000,60,7156−7162;Huang,S.et al.J.Biol.Chem.2000,275,12266−12272;Simon,C.et al.Exp.Cell Res.2001,271,344−355)。それ故p38の阻害は血管形成および悪性細胞侵入に関係する信号カスケードを妨害することによって腫瘍成長に対してインパクトを与えることが期待される。
【0024】
或種の尿素は、セリン−スレオニンキナーゼおよび/またはチロシンキナーゼ阻害剤としての活性を有するとして記載されている。特に、癌、血管形成障害、炎症性障害の処置のための薬剤組成物の活性成分としての或種の尿素の有用性が示されている。以下の文献を見よ。
【0025】
【表1】


【0026】
オメガカルボキシアリール尿素は2000年7月20日発行のWO00/41698、2000年7月20日発行のWO00/42012、以下の公開および出願中の米国特許出願に記載されている。
【0027】
【表2】

【発明の開示】
【0028】
尿素へ結合した2−フルオロ−4−(2−(N−メチルカルバモイル)−4−ピリジルオキシ)フェニレン基を有する、下記式Iのオメガカルボキシアリールジフェニル尿素は、骨粗しょう症、炎症性障害、高増殖性障害、癌を含む血管形成障害の処置および防止のための関心ある分子ターゲットである、rafキナーゼ、VEGFRキナーゼ、p38キナーゼ、およびPDGFRの強力な阻害剤であることが発見された。
【0029】
本発明は、例えば
(i)式Iの新規化合物、その塩、プロドラッグおよび代謝産物、
(ii)そのような化合物を含んでいる薬剤組成物および
(iii)単剤としてまたは細胞毒治療剤として、raf,VEGFR,PDGFR,flt−3およびp38によって仲介される病気および状態を処置するためのこの化合物および組成物の使用を提供する。
【0030】
以下の式Iの化合物、その塩、プロドラッグおよび代謝産物を集合的に「本発明の化合物」という。式Iは以下のとおりである。
【0031】
【化1】

【0032】
本発明の化合物の代謝産物は、尿素窒素の一以上がヒドロキシ基で置換された式Iの酸化誘導体を含む。本発明の化合物の代謝産物は、式Iの化合物のメチルアミド基が加水分解され、次に代謝分解によって脱メチル化されたアナログをも含む。本発明の化合物の代謝産物は、さらにピリジン窒素原子がこの分野で1−オキソピリジンおよび1−ヒドロキシピリジンと称する構造へ導くN−オキシド形(例えばヒドロキシ基換基を持つ)の形にある酸化誘導体を含む。
【0033】
語化合物、塩基等の複数形がここで使用された場合、単一化合物、塩等をも意味する。
【0034】
式Iの化合物の薬学的に許容し得る塩の使用も本発明の範囲内である。用語「薬学的に許容し得る塩」とは、本発明の化合物の比較的無毒性の無機または有機酸付加塩をいう。例えば、S.M.Berger et al.“Phamaceutical Salts,”J.Pharm.Sci.1977,66,1−19を見よ。
【0035】
本発明の化合物の代表的な塩は、慣用の無毒性塩、例えばこの分野で良く知られた無機または有機酸からのものである。例えば、そのような酸付加塩は酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、カンファ酸塩、カンファスルホン酸塩、ケイ皮酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、イタコン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パモエート、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、スルホン酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシレート、およびウンデカン酸塩を含む。
【0036】
式Iの化合物の塩またはプロドラッグは一以上の不斉中心を含むことができる。不斉炭素原子は(R)または(S)配位または(R,S)配位で存在することができる。環状の置換基もシスまたはトランス形で存在し得る。すべてのそのような配位(エナンチオマーおよびジアステレオマーを含む)は本発明の範囲であることが意図される。好ましい異性体は一層望ましい生物活性を産む配位を持つ異性体である。本発明の化合物の分離した純粋または部分精製した異性体またはラセミ混合物も本発明の範囲に含まれる。前記異性体の精製および前記異性体混合物の分離はこの分野で知られた標準的技術によって達成することができる。
【0037】
本発明のこの具体例に使用される化合物の製造に用いられる特定のプロセスは実施例1に記載されている。式Iの化の塩の形は実施例2,3および4に記載されている。
【0038】
使用方法
本発明は、raf,VEGFR,PDGFR,p38,および/またはflt−3キナーゼが含まれる一以上の信号形質導入経路を変調することができる化合物を提供する。
【0039】
Rafは、細胞生育、細胞生存および侵入を含む、多数のキー細胞プロセスの調節に関与する重要な信号分子である。それはRas/Raf/MEK/ERK経路の一員である。この経路は大多数の腫瘍細胞内に存在する。VEGFR,PDGFRおよびFlt−3は膜横断レセプター分子であり、それは適切なリガンドによって刺激される時、Ras/Raf/MEK/ERK細胞信号経路を引金し、細胞出来事のカスケードへ導く。これらレセプター分子の各自はチロシンキナーゼ活性を持っている。
【0040】
VEGFRレセプターは脈管内皮成長因子(VEGF)によって刺激され、そして内皮細胞発達および機能の調節において重要なコントロールポイントである。VEGF−βレセプターは、間葉細胞を含む多数の細胞タイプにおける細胞増殖および生存を規制する。Flt−3はFLリガンドのためのレセプターである。これはc−kitに構造的に似ており、そして多能性造血細胞の成長を変調し、T−細胞、B−細胞および樹状細胞の発達に影響する。
【0041】
野生タイプおよび変異性を含む、raf,VEGFR,p38,PDGF、および/またはFit−3の任意の遺伝子またはイソフォームが本発明に従って変調されることができる。Rafまたはraf−1キナーゼは少なくとも3種のファミリーメンバー、すなわちA−Raf,B−RafおよびC−RafまたはRaf−1よりなるセリン/スレオニンキナーゼのファミリーである。例えば、Dhillcn and Kolch,Arch.Biochem.Biophys,404:3−9,2002を見よ。C−RafおよびB−Rafが本発明の化合物のための好ましい標的である。活性化するB−Raf突然変異(例えばV−599E変異株)は、メラノーマを含む各種の癌において同定されており、ここに記載する化合物はそれらの活性を阻害するために使用することができる。
【0042】
用語「変調」とは、経路(またはその成分)の機能的活性が該化合物の不存在下での正常な活性に比較して変化することを意味する。この効果は、増大、アゴナイジング、増大、増強、容易化、刺激、減少、ブロッキング、阻害、消失、拮抗化等を含む。変調のどのような品質または程度をも含む。
【0043】
本発明の化合物はまた、限定でなく以下のプロセスの一以上を変調することができる。細胞成長(例えば分化、細胞生存、および/または増殖)、腫瘍細胞成長(例えば分化、細胞生存、および/または増殖)、腫瘍退行、内皮細胞成長(例えば分化、細胞生存、および/または増殖)、血管形成(血管成長)、リンパ管形成(リンパ管成長)、および/または造血(例えばT−およびB−細胞発達、樹状細胞発達等)。
【0044】
特定の作用の理論またはメカニズムに拘束されることを欲するものではないが、本発明の化合物はキナーゼ活性を変調する能力を有していることが発見された。しかしながら本発明の方法は特定のメカニズムまたは如何に本発明の化合物がそれぞれの効果を達成するかに制限されない。用語「キナーゼ活性」とは、アデノシントリリン酸(ATP)からのガンマリン酸エステルがアミノ酸残基(例えばセリン、スレオニンまたはチロシン)に変換される触媒活性を意味する。ある化合物は、例えばキナーゼのATP結合ポケットに対してATPと直接競合することにより、活性に影響する酵素のコンフォメーション変化を生じさせることにより(例えば生物学的に活性な三次元構造の破壊により)等によってキナーゼ活性を阻害することができる。
【0045】
キナーゼ活性は慣用のアッセイ方法を使用して日常的に決定することができる。キナーゼアッセイは、典型的にはキナーゼ酵素、基質および検出系の成分を含む。典型的なキナーゼアッセイは、ホスフォリル化最終生成物(例えばペプチド基質を使用する時ホスフォタンパク)を生成するように、タンパクキナーゼのペプチド基質およびATPとの反応を含む。生成した最終生成物は適当な方法を使用して検出することができる。放射活性ATPが使用される時、放射活性標識ホスフォタンパクはアフィニティメンブレンまたはゲル電気泳動を使用して未反応ガンマ−32P−ATPから分離することができ、次にオートラジオグラフィーを用いてゲル上で可視化されるか、またはシンチレーションカウンターで検出することができる。非放射活性方法も使用できる。これら方法はホスフォリル化された基質を認識する抗体、例えば抗ホスフォチロシン抗体を利用する。例えば、キナーゼ酵素は、酵素が基質をホスフォリル化するのに有効な条件下、ATPとバッファーの存在下で基質とインキュベートされる。反応混合物は例えば電気泳動によって分離することができ、次に基質のホスフォリル化を例えば抗ホスフォチロシン抗体を用いてウエスタンブロックにより測定することができる。抗体は検出可能な標識、例えばHRPのような酵素、アビジンまたはビオチン、ケミルミネセント試薬で標識することができる。他の方法はELISAフォーマット、アフィニティメンブレン分離、蛍光分極アッセイ、ルミネッセントアッセイ等を使用することができる。
【0046】
放射活性フォーマットの代替法は、時間解像蛍光共鳴エネルギー移動(TR−TRET)である。この方法は標準的キナーゼ反応に従い、ここでは基質、例えばビオチニル化ポリ(GluTyr)がATPの存在下タンパクキナーゼによってホスフォリル化される。次に最終生成物はユウロピウムキレートホスフォ特異性抗体(抗ホスフォチロシンまたはホスフォセリン/スレオニン)と、そしてビオチニル化基質と結合するストレプトアビジンAPCで検出することができる。これら2成分は結合において空間的に一緒にされ、そしてホスフォ特異性抗体からアクセプター(SA−APC)へのエネルギー移動が均質フォーマットによって蛍光読みを発生させる。
【0047】
本発明の化合物は、raf,VEGFR,p38,PDGFR,および/またはFlt−3が含まれる細胞信号形質導入経路の一以上によって仲介されるどれかの病気または状態を処置/または防止するために使用することができる。用語「処置」は慣用的に、例えば病気または障害状態の撲滅、緩和、軽減、寛解、改善を目的として対象の管理またはケアを意味する。本化合物はまた、信号分子によって仲介される病気および/または状態を防止および/または処置するために使用されるとしても記載することができる。用語「仲介」は、例えば信号分子が病気および/または状態において異常または乱れている経路の一部であることを指示する。
【0048】
Raf関連病は、例えば細胞増殖障害、癌、腫瘍等を含む。
【0049】
VEGFR−2関連病は、例えば癌、腫瘍成長、炎症病、リュウマチ性関節炎、網膜症、乾癬、糸球体腎炎、喘息、慢性気管支炎、アテローム性動脈硬化症、移植拒絶、血管形成が関与する状態等を含む。
【0050】
VEGFR−3関連病は、例えば癌、角膜病、炎症角膜(例えば、Hamrah,Am.J.Path,163:57−68,2003)、角膜移植(Cursiefen et al,Cornea,22:271−8,2003)、リンパ管過形成、リンパ管形成が関与する状態等を含む。
【0051】
PDGFR−β関連病は、例えば細胞増殖、細胞マトリッス生産、細胞運動、および/または細胞外マトリッス生産によって特徴付けられる病気または状態である。特定の例は、例えば腫瘍、悪性腫瘍、癌、転移、慢性骨髄白血病、炎症、腎臓病、糖尿性ネフロパシー、糸状体増殖性糸状体腎炎、線維症状態、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、高血圧関連動脈硬化、静脈パイパス移植動脈硬化、硬皮症、間隙性呼吸器病、滑液障害、関節炎、白血病、リンパ腫等を含む。
【0052】
Flt−3関連病は、例えば免疫関連障害、血球障害、造血細胞発達が関与する状態(例えばT−細胞、B−細胞、樹状細胞)、癌、貧血、HIV,AIDS症候群等を含む。
【0053】
p38関連病は、例えば免疫関連障害、血球障害、および異常なサイトカイン生産、特にTNF−αまたは異常なMMP活性にリンクした他の障害を含む。これら障害は限定でなくリュウマチ性関節炎、COPD、骨粗しょう症、クローン病および乾癬を含む。
【0054】
加えて本発明の化合物は、米国特許No.6,316,479に開示されている状態または障害、例えば糸状体硬化症、間隙性腎炎、間隙性呼吸器病、アテローム性動脈硬化症、創傷瘢痕および硬皮症を処置するために使用することができる。
【0055】
本発明の化合物は、炎症状態、冠再狭窄、腫瘍関連血管形成、アテローム性硬化症、自家免疫病、炎症、糸状体または糸状体細胞の増殖に関連した腎臓病、網膜脈管増殖に関連した眼病、乾癬、肝硬変、糖尿病、アテローム性硬化症、再狭窄、血管移植再狭窄、ステント内再狭窄、血管形成、眼病、呼吸器線維症、閉塞性気管支炎、糸状体腎炎、リュウマチ性関節炎のような広い範囲の病気の進行を処置または防止する広い治療活性を有する。
【0056】
本発明は、ヒトおよび/または他の哺乳類における以下の状態の一つ以上を処置、防止、変調等を提供する。糖尿性網膜症、虚血性網膜静膜塞栓、未熟児および年令関連斑退化網膜症を含む網膜症;リュウマチ性関節炎;水疱性類天疱瘡、多形性紅斑、疱瘡状皮膚炎を含む皮下水疱形成に関連する水疱性障害または乾癬;
リウマチ熱、骨吸収、閉経後骨粗しょう症、敗血症、グラム陰性敗血症、敗血症ショック、エンドトキシンショック、毒性ショック症候群、炎症応答症候群、炎症性腸病(クローン病および潰瘍性大腸炎)、ジャリッシューヘルクスハイマー反応、肺サルコイド−シス、アレルギー性呼吸器病、ケイ肺病、炭鉱労働者じん肺症、肺胞傷害、肝不全、急性炎症中の肝臓病、重症アルコール性肝炎、マラリア(Plasmodium falciparum マラリアおよび脳性マラリア)、非インスリン依存性真性糖尿病(NIDDM)、うつ血性心不全、心臓病後障害、動脈硬化、アルツハイマー病、急性脳炎、脳傷害、多発性硬化症(多発性硬化症における脱髄および稀突起細胞損失)、進行がん、悪性リンパ腫、膵臓炎、感染炎症およびがんにおける創傷治癒傷害、骨髄形成異常症候群、全身円板状エリテマトーデス、胆管硬変、腸壊死、放射線傷害/モノクローナル抗体投与後の毒性、ホスト対グラフト反応(虚血性灌流傷害および腎臓、肝臓、心臓および皮膚のアログラフト反応)、肺アログラフト拒絶反応(閉塞性気管支炎)、または股関節全置換による合併症;結核、消化器潰瘍病中のヘリコバクター・ピロリ感染、Tripanosoma
cruzi感染から発生するチャガ病、大腸菌感染から生ずるシガ様トキシンの影響、スタフィロコッカス感染、メミンゴコッカス感染およびBorrelia burgdorferi,Treponema pallidum,サイトメガロウイルス、インフルエンザウイルス、Theiler’s脳脊髄炎ウイルス、およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)からの感染よりなる群から選ばれた感染病;
乳頭腫、杯神経膠腫、カポジ肉腫、黒色腫、肺癌、頸部癌、膀こう癌、乳癌、大腸癌、甲状腺癌、胃癌、肝細胞カルチノーマ、白血病、リンパ腫、ホジキンス病、バーキッツ病、関節炎、リュウマチ性関節炎、糖尿性網膜炎、血管形成、狭窄、ステント内狭窄、血管移植狭窄、肺線維症、肝硬変、動脈硬化、糸状体腎炎、糖尿性腎炎、血栓性ミュアンギオパシー症候群、移植拒絶反応、乾癬、糖尿病、創傷治癒、炎症、神経退化病、高免疫障害、血管腫、筋心臓血管形成、冠および能併発脈管化、虚血症、角膜病、ルベオーシス、新脈管緑内障、未熟児斑退化網膜症、創傷治癒、潰瘍ヘリコバクター関連病、骨折、子宮内膜炎、糖尿状態、ネコ掻傷熱、甲状腺肥大、熱傷後の喘息または浮腫、外傷、慢性肺病、発作、ポリープ、嚢、滑膜炎、慢性およびアレルギー性炎症、卵巣高刺激症候群、肺および脳浮腫、ケロイド、線維症、硬変、手根トンネル症候群、成人呼吸窮迫症候群、腹水炎、眼状態、心脈管状態、クロウーフカセ(POEMS)病、クローン病、糸状体腎炎、変形性関節症、多発性硬化症、移植拒絶、ライム病、敗血症、フオンリツペルリンダウ病、天疱瘡、ページェト病、ポリ嚢腎臓病、ザルコイドーシス、咽頭炎、高粘度症候群、オスラー、ウエーバーレンジュ病、慢性閉塞性肺病、放射、低酸素症、前子かん、子宮内膜炎、ヘルペスシンプレックスによる感染、虚血性網膜炎、角膜血管形成、ヘルペスゾスター、ヒト免疫不全ウイルス、パラポツクスウイルス、プロトゾア、トキソプラスモシス、および腫瘍関連惨出および浮腫。
【0057】
化合物は述べた活性の2以上を持つことができ、それ故複数の信号形質導入経路を標的とすることができる。このためこれら化合物は異なる化合物の組合わせを使用する時のみ通常得られる治療および予防効果を達成することができる。例えば、単一の化合物を使用する新しい脈管形成(例えばVEGFR−2および3の機能に関連した)(例えば血管および/またはリンパ管)および細胞増殖(例えばrafおよびPDGFR−β機能に関連した)の両方を阻害する能力は、癌および新しい脈管化を容易化する他の細胞増殖障害の処置において特に有益である。このため本発明は、特に少なくとも抗細胞増殖および抗血管形成(すなわち血管形成を阻害する)活性を有する化合物に関する。脈管成長および細胞増殖から利益を受けるとの障害または状態も本発明に従って処置することができる。単一化合物の使用は、その活性範囲が一層精密に規定されることができるために有益である。
【0058】
上に示したとおり、本発明はraf,VEGFR,PDGFRおよび/またはFlt−3に関連した病気および状態を処置および/または防止するための、および/または一以上の経路、ポリペプチド、遺伝子、病気、状態等を変調するための方法に関する。これらの方法は一般に本発明の化合物の有効量を投与することを含み、ここで有効量とは所望の結果を達成するのに有用な該化合物の量である。化合物は、後で詳しく論ずるように、どのような有効なルートによってもどのような形においても投与することができる。
【0059】
該方法は、細胞増殖の阻害を含む、腫瘍細胞増殖の変調を含む。細胞増殖の変調は腫瘍細胞の成長および/または分化が減少、消失、遅延化されること等を意味する。用語「増殖」は、細胞成長および分裂に関するいかなるプロセスを含み、そして分化およびアポプトシスを含む。上で論じたように、rafキナーゼは細胞増殖、分化およびアポトシスに含まれる細胞形質信号カスケードの活性化においてキーとなる役目を果す。例えば、研究はアンチセンスオリゴヌクレオチドによるc−raf−1の阻害は細胞増殖をブロックできることを発見した(上を参照)。阻害のどのような量も治療的であると考えられる。
【0060】
本発明の方法には、哺乳類の高増殖性障害を処置するために上記化合物(式Iの化合物)、その塩、プロドラッグ、代謝産物(酸化された誘導体)、および組成物を使用する方法が含まれる。この方法はヒトを含むそれを必要する哺乳類へ、該障害を処置するのに有効量の本発明の化合物、その薬学的に許容し得る塩、プロドラッグ、代謝産物(酸化誘導体)および組成物を投与することよりなる。高増殖障害は限定でなく、乳房、呼吸器、脳、生殖器、消化器、泌尿器、眼、肝臓、皮膚、頭頸部、甲状腺、副甲状腺、およびそれらの遠隔転移の癌のような固形腫瘍を含む。これらの障害はリンパ腫、内腫および白血病をも含む。
【0061】
限定でなく、rafおよび/またはFlt−3、および/またはras、それにそれらが一部である信号経路のどれかの上流または下流メンバーの一以上の突然変異を有する癌を含む、いかなる腫瘍または癌も処置することができる。以前に論じたように、癌はそれが責任あるメカニズムに関係なく本発明の化合物で処置することができる。限定でなく、例えば結腸、膵臓、乳房、前立腺、骨、肝臓、腎臓、肺、睾丸、皮膚、胃、結腸直腸、腎細胞カルチノーマ、肝細胞カルチノーマ、黒色腫等を含むどの器官の癌も処置することができる。
【0062】
乳がんの例は、限定でなく、侵襲性管悪性腫瘍、侵襲性小葉悪性腫瘍、その場の管悪性腫瘍およびその場の小葉悪性腫瘍を含む。
【0063】
脳がんの例は、限定でなく、脳幹および視床下部グリオーマ、小脳および大脳マストロサイトーマ、髄質プラストーマ、脳室上衣腫、それに神経外胚葉および松果体腫瘍を含む。呼吸器がんの例は、限定でなく小細胞および非小細胞肺癌、気管支アデノーマおよび肺胸膜線維腫を含む。
【0064】
男性生殖器の腫瘍は、限定でなく、前立腺および睾丸がんを含む。
【0065】
女性生殖器の腫瘍は、限定でなく、子宮内膜、頸管、卵巣、膣、外陰部がん、それに子宮筋腫を含む。
【0066】
消化器官の腫瘍は、限定でなく、肛門、結腸、結直腸、食道、胆のう、胃、膵臓、直腸、小腸、および唾液腺がんを含む。
【0067】
泌尿器の腫瘍は、限定でなく、膀胱、陰茎、腎臓、腎孟、尿管および尿道がんを含む。
【0068】
眼のがんは、限定でなく、眼内メラノーマおよび網膜芽腫を含む。
【0069】
肝臓がんの例は、限定でなく、肝細胞悪性腫瘍(線維層状変種ありなし)、胆管がん(肝内胆管がん)、および混合肝細胞および胆管がんを含む。
【0070】
皮膚がん、限定でなく、鱗細胞がん、カポジ肉腫、悪性メラノーマ、メルケル皮膚がん、および非メラノーマ皮膚がんを含む。
【0071】
頭頸部がんは、限定でなく、上顎/下顎/咽頭下部/鼻咽頭/口腔咽頭がん、および唇と口腔がんを含む。リンパ腫は、限定でなく、AIDS関連リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキン病、および中枢神経系のリンパ腫を含む。
【0072】
肉腫は、限定でなく、軟組織の肉腫、骨肉腫、悪性線維性組織腫瘍、リンパ肉腫、および横紋筋肉腫を含む。白血病は、限定でなく、急性骨髄白血病、急性リンパ芽白血病、慢性リンパ細胞白血病、慢性骨髄白血病、および毛状細胞白血病を含む。
【0073】
腫瘍細胞増殖の阻害に加えて、本発明の化合物は腫瘍退行、例えば腫瘍のサイズまたは体内の癌の範囲の減少を生じさせることができる。
【0074】
本発明は、細胞を含むシステムにおいて血管形成および/またはリンパ管形成を変調する方法に関し、該方法はここに記載した化合物の有効量をシステムへ投与することを含む。細胞を含む系は、患者の腫瘍、単離した器官、細胞または細胞のようなインビボシステム、インビトロアッセイシステム(CAM,BCE等)、動物モデル(例えばインビボ、皮下、癌モデル)、処置を必要とする宿主(例えば癌のような血管形成および/またはリンパ管形成成分を有する病気にかかっている宿主)等であることができる。本発明の好ましい化合物は血管形成および/またはリンパ形成、例えば新しい血管の形成を阻害する。
【0075】
血管形成の不適切なそして異所性の発現は生物にとって有害であり得る。多数の病現学的状態は余分の血管形成に関連する。これらは限定でなく、糖尿性網膜症、新生脈管緑内障、乾癬、退行性線維増殖、血管線維腫、炎症等を含む。加えて癌および新生組織に関連した増加した血液供給は成長を促進し、急速な腫瘍拡大および転移へ導く。さらに腫瘍内の新しい血管およびリンパ管の成長は変節した細胞の逃げ道を提供し、転移およびその結果の癌のひろがりを促進する。
【0076】
血管形成および/またはリンパ管形の測定およびその阻害のための有用なシステムは、例えば腫瘍外科植片の新生脈管化(例えば米国特許Nos.5,192,744;6,024,688)、ニワトリ奨尿膜(CAM)アッセイ(例えばTayler and Folkman,Nature,297:307−312,1982;Eliceiri et al,J.Cell Biol.,140:1255−1263,1998),ウシ毛細管内皮(BCE)細胞アッセイ(例えば米国特許No.6,024,688;Polverini;P.J.et al,Methods Enzymol., 198:440−450,1991),ミグレーションアッセイ,およびHUVEC(ヒト臍帯脈管内皮)成長阻害アッセイ(例えば米国特許No.6,060,449)を含む。加えて、リンパ管形成変調のための有用なシステムは、例えばウサギ耳モデル(例えばSzuba et al,FASEB J.,16(14):1985−7,2002)を含む。
【0077】
血管形成の変調は任意の適当な方法によって決定することができる。例えば、組織脈管化の程度は典型的には与えられたサンプル中に存在する脈管の数および密度を評価することによって決定される。例えば微小脈管密度(MVD)は他出力顕微鏡フィールドにおいて皮内細胞クラスターの数を計数することにより、または微小脈管皮内細胞に対して特異的なマーカーもしくはCD31(血小板皮内細胞接着分子もしくはPECAMとしても知られる)のような確立された脈管の成長の他のマーカーを検出することによって決定することができる。CD31抗体は、例えばPenfold et al,Br.J.Oral and Maxill.Surg.34:37−41;米国特許No.6,017,949;Dellas et al,Gyn.Oncol.67:27−33,1977等に記載されているような、免疫ステイン組織片に対する慣用の免疫細胞学的方法に使用することができる。血管形成に対する他のマーカーは、例えばVezfl(例えばXiang et al,Dev.Bio.206:123−141,1999),アンギオポイエチンTie−1およびTie−2(例えばSato et al,Nature,376:70−74,1995)を含む。
【0078】
加えて、本発明は本発明の化合物に対する感受性を決定するため患者をスクリーニングする方法に関する。例えば、本発明はここに開示した化合物によって状態が変調できるかを決定する方法に関し、該方法は細胞または細胞抽出物中のraf,VEGFR−2,VEGFR−3,PDGFR−β,p38および/またはflt−3の発現または活性を測定することを含み、ここでサンプルは前記状態を有する細胞または対象のものである。決定の結果が一以上の前記遺伝子(および/またはそれらがエンコードするポリペプチド)が正常な状態と異なることを指示する時、これは本発明の化合物で処置できることを同定する。すなわちこれによって前記障害または状態は、前記状態において発現または活性が正常対照に比較して増加している時、本発明の化合物によって変調することができる。この方法は、サンプル中の発現を正常対照か、または正常または影響されない組織から得たサンプル中の発現と比較するステップをさらに含む。比較は電子形(例えばデータベースに対して)標準に対してマニアルで実施することができる。正常対照はアッセイを提供する標準サンプルであることができ、それは同じ患者から隣接するがしかし影響されない組織であることができ、またはそれはあらかじめ決められた値等であることができる。遺伝子発現、タンパク発現(例えば細胞中の豊富度)、タンパク活性(例えばキナーゼ活性)等を決定することができる。
【0079】
例えば、癌患者からの生検は、Raf,VEGFR−2,VEGFR−3,p38,PDGFR−βおよびFlt−3の存在、量、および/または活性についてアッセイすることができる。これらの一つ以上の発現または活性の増大は癌が本発明の化合物による処理の標的となり得ることを指示し得る。例えば、実施例に記載するように、raf活性はホスフォERKを生ずるERKホスフォリル化へ導くカスケード(すなわちraf/MEK/ERK)を開始させる能力によってモニターすることができる。癌中の増加したホスフォERKレベルはそのraf活性が上昇したことを示し、それを処置するため本発明の化合物の使用を示唆する。
【0080】
加えて、癌を有する患者は組織が脈管新生を経験しているかどうかおよびどの程度かに基づいて選択し、モニターすることができる。これは上で論じたように、例えば循環しているVGFRリガンド等のレベルである脈管マーカー(例えばCD31)について免疫組織化学を使用して評価できる。
【0081】
患者の選択およびモニタリングは、VEGFR−2,VEGFR−3,p38,PDGFR−βおよびFlt−3の細胞外部分を含む、種々のレセプターから得た脱皮させた表面ドメインの体液(血液のような)中の正常値以上のレベルの出現に基づいて行うこともできる。検出方法は、例えば細胞外ドメインへ特異的に結合する抗体を使用して日常的に実施することができる。
【0082】
発現の測定は、細胞またはその表面中に存在するポリペプチドの量を決定もしくは検出すること、および根原的なmRNAを測定することを含み、後者の場合は存在するmRNAの量は細胞によって生産されるポリペプチドの量と考えられる。さらに、Raf,VEGFR−2,VEGFR−3,p38,PDGFR−βおよび/またはFlt−3のための遺伝子は、異常発現またはポリペプチド活性に責任ある遺伝子欠陷があるかどうかを決定するために分析することができる。
【0083】
ポリペプチド検出は、例えばウエスタンブロット、ELISA,ドットブロット、免疫沈澱、RIA,免疫組織化学等の任意の利用可能な方法によって実施できる。例えば、組織片を調製し、特異性抗体で標識することができる(間接また直接および顕微鏡で可視化)。ポリペプチドの量は、例えば関心あるサンプルを溶解し、次にELISAまたはウエスタンによって組織量あたりのポリペプチド量を決定することにより可視化せずに定量できる。抗体または他の特異性結合試薬を使用できる。検出をどのように実施するかは限定しない。
【0084】
サンプル中の標的核酸(例えばraf,VEGFR,PDGFR,Flt−3等のための遺伝子、mRNA等)の定量、存在/不存在検出を許容するアッセイが使用できる。アッセイは単一細胞レベルでも、またはサンプル中の細胞および組織の全体のコレクションの「平均した発現」のアッセイである多数の細胞を含むサンプルで実施することができる。限定でなく、例えばサザンブロット分析、ノーザンブロット分析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(例えばSaiki et al,Science,241:53,1988;米国特許Nos.4,683,195;4,683,202;6,040,166;PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Innis et al,ads,Academic Press,New York,1990),逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR),アンカードPCR,cDNA末端の急速増幅(RACE)(例えばChaefer in Gene Cloning and Analysis:Current Innovation,Pages 99−115,1997),リガーゼ連鎖反応(LCR)(EP320308),片側PCR(Ohara et al,Proc.Nat1.Acad.Sci,86:5673−5677,1989),インデキシング法(例えばLiang et al,Nucl.Acid Res.21:3269−3275,1993;米国特許Nos.5,262,311;5,599,072;5,965,409,WO97/18454,Prashar and Weissman,Proc.Nat1.Acad.Sci.93:659−663,米国特許Nos.6,010,850;5,712,126;Welsh et al,Nucleic Acid Res.20:4965−4970,1992,および米国特許No.5,487,985)、および他のRNA指紋技術、核酸配列増幅(NASBA)および他の転写酵素増幅システム(例えば米国特許Nos.5,409,818;5,554,527;WO88/10315)、ポリヌクレオチドアッセイ(例えば米国特許Nos.5,143,854;5,424,186;5,700,637;5,874,219;6,054,270;WO92/10092,WO90/15070),ケベックレプリカーゼ(PCT/US87/00880),ストランド移動増幅(SDA),修復連鎖反応(RCR),ヌクレアーゼ保護アッセイ、サブストラクション方法、急速スキャン等を含む、任意の好適なアッセイフォーマットを使用できる。追加の有用な方法は、限定でなく、例えば鋳型増幅法、競合PCR(例えば米国特許No.5,747,251)、レドックス法(例えば米国特許No.5,871,918)、Taqmanアッセイ(例えばHolland et al,Natl.Acd.Sci.88:7276−7280,1991;米国特許Nos.5,210,015および5,994,063)、リアルタイム蛍光モニタリング(例えば米国特許No.5,928,907),分子エネルギー移動標識(例えば米国特許Nos.5,348,853;5,532,129;5,563,322;6,030,787;6,117,635;Tyagi and Kramer,Nature Biotech.14:303−309,1996)を含む。遺伝子またはタンパク発現の単一細胞分析に適したどの方法も使用することができ、そしてその場のハイブリダイゼーション、免疫組織化学、MACS,FACS,フローサイトメトリー等を含む。単一細胞アッセイについては、発現生産物は、抗体、PCRまたは他のタイプの核酸増幅(例えばBrady et al,Methods Mol.& Cell.Biol,2,17−25,1990;Eberwine et al,Proc,Nat1.Acad.Sci.89:3010−3014,1992;米国特許No.5,723,290)を用いて測定できる。これらおよび他の方法は、例えば引用した刊行物に記載されているように慣用的に実施できる。
【0085】
raf,VEGFR−2,VEGFR−3,p38,PDGFR−βおよびFlt−3の活性は、例えば後記実施例に記載されているように、またはキナーゼのための標準的アッセイ(上を見よ)を使用して日常的に評価できる。
【0086】
また本発明は、障害の処置における本発明の化合物の有効性を評価する方法を提供する。該方法は任意の順序の以下のステップの一以上よりなる。例えばある量の本発明の化合物を投与し、raf,VEGFR−2,VEGFR−3,PDGFR−β,p38および/またはflt−3の発現または活性を測定し(上を見よ)、発現または活性に対する前記化合物を決定する。
【0087】
例えば、本発明の化合物で処置された患者から生検サンプルを採取し、前記信号分子の存在および/または活性をアッセイすることができる。上で論じたように、癌組織中のホスフォERKの減少したレベル(例えば正常組織または処置前と比較して)は、化合物がインビボで有効性を発揮しそして治療有効性であることを指示する。
【0088】
この方法は適切な投与量および投与計画、例えばどの位の量の化合物をそしてどのような頻度で投与するかを決定するために使用できる。組織中の信号分子に対する効果をモニターすることにより、臨床医は適切な処置プロトコールを決定し、そして望む効果、例えば形質導入経路の変調および阻害に対する効果が達成しつつあるかを決定することができる。
【0089】
本発明の化合物は、生物学的材料を含むサンプル中のraf,VEGFR−2,VEGFR−3,PDGFR−β,p38および/またはflt−3の存在および量を決定する
ためのマーカーとして使用することができる。これは有効な順序の以下のステップの一以上よりなる。(i)前記生物学的材料を含むサンプルを本発明の化合物と接触させ、そして(ii)前記化合物が前記材料と結合するかどうかを決定する。化合物は標識するか、またはそれを標識したATPのような標識化合物の競合剤として使用することができる。
【0090】
本発明はまた、限定でなく、raf,VEGFR,PDGFRおよび/またはFlt−3よりなる信号形質導入経路の他の変調剤と共に本発明の化合物を投与することを含む、哺乳類の病気および状態を処置、防止、変調等のための方法を提供する。これらは同じ組成物内に、または別の製剤もしくは投与単位中に存在し得る。投与は同じまたは異なるルートであることができ、そして同時、逐次的等であることができる。
【0091】
以下の刊行物はVEGFR−3変調に関し、そしてVEGFR−3によって仲介される病的状態およびそのような活性を決定するためアッセイのそれらの記載のためにここに参照として取入れる。
【0092】
【表3】

【0093】
以下の刊行物はVEGFR−2変調に関し、そしてVEGFR−2によって仲介される病的状態およびそのような活性を決定するためアッセイのそれらの記載のためにここに参照として取入れる。
【0094】
【表4】

【0095】
以下の刊行物はflt−3変調に関し、そしてflt−3によって仲介される病的状態およびそのような活性を決定するためアッセイのそれらの記載のためにここに参照として取入れる。
【0096】
【表5】

【0097】
以下の刊行物はPDGF/PDGFR変調に関し、そしてPDGF/PDGFRによって仲介される病的状態およびそのような活性を決定するためアッセイのそれらの記載のためにここに参照として取入れる。
【0098】
【表6】


【0099】
本発明の化合物の薬剤組成物
本発明は、1以上の本発明の化合物を含む医薬組成物にも関する。これらの組成物はそれを必要とする患者へ投与することによって所望の薬理効果を達成するために利用される。本発明の目的のための患者は特定の状態および疾病のための処置を含むヒトを含む哺乳類である。それ故本発明は、薬学的に許容し得る担体と、本発明の化合物およびそれらの塩よりなる医薬組成物を含む。薬学的に許容し得る担体は、好ましくは担体に帰すべき副作用が活性成分の有益な効果を損なわないように、活性成分の有効活性と矛盾しない濃度において無毒性でありかつ患者に対して無害の担体である。化合物の薬学的に有効量は、好ましくは処置されている特定の状態に結果を産むまたは影響する量である。本発明の化合物は、薬学的に許容し得る担体と共に、即時、遅延および時間放出製剤を含む有効な慣用の投与単位形において経口、非経口、局所、経鼻、経眼、光学的、舌下、経直腸、経膣等により投与することができる。
【0100】
経口投与のため、化合物はカプセル、ピル、錠剤、トローチ、ひし形錠、溶融物、粉末、溶液、サスペンジョン、またはエマルジョンに製剤することができ、そして医薬製剤の分野において知られた方法によって製造することができる。固形単位投与形は、例えば界面活性剤、滑沢剤、および乳糖、ショ糖、リン酸カルシウムおよびコーンスターチのような不活性フィラーを含んでいる通常の硬また軟ゼラチンシェルのカプセルであることができる。
【0101】
他の具体例において、本発明の化合物は、アカシア、コーンスターチまたはゼラチンのようなバインダー、バレイショデンプン、アルギン酸、コーンスターチ、グアーガム、トラガントガム、アカシアのような投与後錠剤の崩壊を助けることを意図した崩壊剤、錠剤顆粒の流動を改善し、そして錠剤臼および杵の表面への錠剤原料の付着を防止することを意図した滑沢剤例えばタルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、カルシウムまたは亜鉛、染料、着色剤および錠剤の美的品質を増強しそしてそれらの患者に対して受入れ易くすることを意図した、染料着色料、およびペパーミント、ウインターグリーンまたはチェリー香料のような香料と組合せて乳糖、ショ糖およびコーンスターチのような錠剤ベースと共に打錠することができる。経口液体形に使用するための好適な補助剤は、リン酸ジカルシウム、および薬学的に許容し得る界面活性剤、懸濁剤または乳化剤の添加ありなしの水およびアルコール、例えばエタノール、ベンジルアルコールおよびポリエチレンアルコールのような希釈剤を含む。コーティングとして、または他のように投与単位の物理的形状を修飾するための種々の他の材料が存在し得る。例えば錠、ピルまたはカプセルはシェラック、糖または両者でコーティングし得る。
【0102】
分散し得る粉末および顆粒は水性懸濁液の調製に適している。それらは活性成分を分散または湿潤剤、懸濁剤および一以上の保存剤との混合物で提供する。適当な分散または湿潤剤および懸濁剤は上で既に述べたものによって例示される。他の補助剤、例えば上で記載した甘味剤、香味剤も存在することができる。
【0103】
本発明の医薬組成物は水中油型エマルジョンの形でも良い。油相は液体パラインおよび植物油混合物のような植物油でよい。好適な乳化剤は、(1)アカシアガムおよびトラガントガムのような天然ガム、(2)大豆およびレシチンのような天然ホスフアチド、(3)脂肪酸および無水ヘキシトールから誘導されたエステルまたは部分エステル、例えばソルビタンモノオレエート、(4)前記部分エステルとエチレンオキサイドの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートでよい。乳化剤は甘味剤および香味剤を含んでも良い。
【0104】
油性懸濁液は、例えばアラキス油、オリーブ油、ゴマ油またはココナット油のような植物油に、または液体パラフィンのような鉱油に活性成分を懸濁することによって処方することができる。油性懸濁液は一以上の保存剤、例えばp−ヒドロキシ安息香酸エチルまたはプロピルエステル、一以上の着色剤、一以上の香味剤、ショ糖またはサッカリンのような一以上の甘味剤、および例えば蜜ロウ、ハードパラフィンまたはセチルアルコールのような増粘剤を含むことができる。
【0105】
シロップおよびエリキサーは、例えばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトールまたはショ糖のような甘味剤と共に処方することができる。その様な製剤は緩和剤およびメチルおよびプロピルパラベンのような保存剤、香味剤および着色剤を含むこともできる。
【0106】
本発明の化合物は、水、食塩水、デキストロース水溶液および関連する糖溶液、エタノール、イソプロパノールまたはヘキサデシルアルコールのようなアルコール類、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールのようなグリコール類、2,2−ジメチル−1,4−ジオキソラン−4−メタノールのようなグリセロールケタール、ポリエチレングリコール400のようなエーテル類、油、脂肪酸、脂肪酸エステルまたは脂肪酸グリセライドまたはアセチル化脂肪酸グリセライドのような無菌液体または液体混合物であることができる、薬剤担体を有する生理学的に許容し得る希釈剤中の、石鹸または洗剤のような界面活性剤、ペクチン、カルボマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはカルボキシメチルセルロースのような懸濁剤、または乳化剤および他の薬学的アジュバントの添加ありなしで化合物の注射可能な投与形として、非経口的に、すなわち皮下、静脈内、眼内、滑液内、筋内または腹腔内投与することができる。
【0107】
本発明の非経口製剤に使用できる油の例は、石油、動物、植物または合成起源のもの、例えば落花生油、大豆油、ゴマ油、綿実油、コーン油、オリーブ油、ペトロラタムおよび鉱油である。好適な脂肪酸はオレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸およびミリスチン酸を含む。好適な脂肪酸エステルは、例えばオレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルである。好適な石鹸は脂肪酸アルカリ金属塩、アンモニウム塩およびトリエタノールアミン塩であり、そして好適な洗剤はカチオン性洗剤、例えばジメチルジアルキルアンモニウムハライド、アルキルピリジニウムハライド、アルキルアミンアセテート;アニオン性洗剤、例えばアルキル、アリールおよびオレフィンスルホネート、アルキル、オレフィン、エーテルおよびモノグリセライドサルフェートおよびスルホサクシネート;非イオン洗剤、例えば脂肪アミンオキサイド、脂肪酸アルカノールアミド、およびポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)、またはエチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体;および両性洗浄剤、例えばアルキル−β−アミノプロピオネートおよび2−アルキルイミダゾリン4級アンモニウム塩、および混合物を含む。
【0108】
本発明の非経口組成物は、典型的には溶液中約0.5%ないし約25%の活性成分を含むであろう。保存剤およびバッファーも有利に使用し得る。注射部位での刺激を最小化またはなくすために、そのような組成物は、好ましくは約12ないし約17のHLBを有する非イオン界面活性剤を含むことができる。そのような製剤中の界面活性剤の量は好ましくは約5ないし約15重量%の範囲である。界面活性剤は上のHLBを有する単一成分か、または所望のHLBを有する2以上の成分の混合物であることができる。
【0109】
非経口製剤に使用される界面活性剤の例は、ポリエチレンソルビタン脂肪酸エステルクラス、例えばソルビタンモノオレエートおよびポリエチレンオキシドとプロピレングリコールとの縮合によって生成したエチレンオキシドと疎水性ベースの高分子量付加物である。
【0110】
医薬組成物は無菌の注射可能水性懸濁液の形でもよい。そのような懸濁液は、既知の方法に従って、適当な分散または湿潤剤および、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トランガントガムおよびアカシアガムのような懸濁剤;レシチンのような天然ホスファチド、エチレンオキシドと脂肪酸との縮合物、例えばポリオキシエチレンステアレート、エチレンオキシドと長鎖脂肪酸との縮合生成物例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエートのような脂肪酸およびヘキシトールから誘導された部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、または脂肪酸および無水ヘキシトールから誘導された部分エステルとエチレンオキシドの縮合生成物例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートであることができる分散または湿潤剤を使用して処方することができる。
【0111】
無菌の注射可能な製剤は、非毒性の非経口的に許容し得る希釈剤または溶媒中の無菌の注射溶液または懸濁液であることもできる。
【0112】
採用し得る希釈剤または溶媒は、例えば水、リンゲル液、等張塩化ナトリウム溶液または等張グルコース溶液である。加えて、無菌の固定油を溶媒または懸濁媒として慣用的に採用し得る。この目的のため合成モノまたはジグリセライドを含む任意のブランドの固定油を採用することができる。加えてオレイン酸のような脂肪酸を注射製剤に使用することができる。
【0113】
本発明の組成物は薬物の直腸投与のための坐剤の形で投与することもできる。そのような組成物は、常温では固体であるが直腸温度において液体であり、それ故薬物を放出するため直腸内で溶融する適当な非刺激性補助剤と薬物を混合することによって調製することができる。そのような材料は、例えばカカオバターおよびポリエチレングリコールである。
【0114】
本発明の方法において採用し得る他の製剤は経皮送達デバイス(パッチ)を採用する。そのような経皮パッチは、本発明の化合物を制御された量で連続または非連続注入することを提供するために使用し得る。薬剤の送達のための経皮パッチの構造および使用はこの分野では良く知られている(例えば米国特許第5,023,252号、1991年6月11日発行を見よ。参考としてここに取り入れる)。
【0115】
非経口投与のための制御された放出製剤は、この分野で既知のリポソーム、ポリマーマイクロスフェアおよびポリマーゲル製剤を含む。
【0116】
医薬組成物は機械的送達器具を用いて患者へ導入することが望ましいか必要である。薬剤の送達のための機械的送達器の構造および使用は当分野で良く知られている。例えば薬物を脳へ直接投与するための直接の技術は、通常血液−脳バリヤーをパイパスするため患者の心室系に配置された薬物送達カテーテルを含む。薬剤を体の特定の解剖学的区域へ輸送するため内植し得る送達システムの一例は、1991年4月30日発行の米国特許第5,011,472号記載されている。
【0117】
本発明の組成物は、必要または所望に応じ、一般に担体または希釈剤と呼ばれる他の慣用の薬学的に許容し得る配合成分を含むことができる。適切な投与形のそのような組成物を調製するための慣用操作を利用することができる。そのような成分および操作はここに参照として取り入れる以下の参考文献に記載されているものを含む。Powell,M.F.et al,Compendium of Excipients for Parenteral Formulations,PDA Journal of Pharmaceutical Science & Technology 1993,52(5),238−311;Strickey,R.G.,Parenteral Formulations of Small Molecule Therapeutics Marketed in the Vnited States(1999)Part−1,PDA Jounal of Pharmacentical Science & Technology 1999,53(6),324−348;Nema,S.et al,Excipients and Their Use in injjectable Products,PDA Jounal of Pharmacentical Science & Technology 1997,51(4),166−171。
【0118】
意図した投与ルートのための組成物を処方するために適切として使用することができる普通に使用される薬剤成分は以下のものを含む。
【0119】
酸性化剤(非限定的な例は、酢酸、クエン酸、フマル酸、塩酸、硝酸を含む);
アルカリ化剤(非限定的な例は、アンモニア溶液、炭酸アンモニウム、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、水酸化カリウム、ホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、トロールアミンを含む);
吸着剤(非限定的な例は、粉末セルロースおよび活性炭を含む);
エアゾル噴射剤(非限定的な例は、二酸化炭素、CCl,FClC−CClFおよびCClF);
空気置換剤(非限定的な例は、窒素およびアルゴンを含む);
抗カビ保存剤(非限定な例は、安息香酸、ブチルパラベン、エチルパラベン、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウムを含む);
抗微生物保存剤(非限定的な例は、塩化ベンズアルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、およびメチロサールを含む);
抗酸化剤(非限定的な例は、アスコルビン酸、アスコルビルパルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、メタ重亜硫酸ナトリウムを含む);
結合物質(非限定的な例は、ブロック共重合体、天然および合成ゴム、ポリアクリレート、ポリウレタン、シリコーン、ポリシロキサン、スチレンブタジエン共重合体を含む);
緩衝剤(非限定な例は、メタリン酸カリウム、リン酸二カリウム、酢酸ナトリウム、無水クエン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム二水和物を含む);
担持剤(非限定的な例は、アカシアシロップ、芳香シロップ、芳香エリキサー、チェリーシロップ、ココアシロップ、オレンジシロップ、シロップ、コーンオイル、鉱油、落花生油、ゴマ油、静菌塩化ナトリウム注射液、注射用静菌水を含む);
キレート剤(非限定的な例は、エデト酸ジナトリウムおよびエデト酸を含む);
着色剤(非限定的な例は、FD & CレッドNo.3,FD & CレッドNo.20,FD & CイエローNo.6,FD & CブルーNo.2,D & CグリーンNo.5,D & CオレンジNo.5,D & CレッドNo.8,カラメル、赤色酸化鉄を含む);
乳化剤(非限定的な例は、アカシア、セトマクロゴール、セチルアルコール、グリセリルモノステアレート、レシチン、ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン50モノステアレートを含む);
カプセル化剤(非限定的な例は、ゼラチンおよびセルロースアセテートフタレートを含む);
香味剤(非限定的な例は、アニス油、シナモン油、ココア、メンソール、オレンジ油、ペパーミント油、バニリンを含む);
調湿剤(非限定的な例は、グリセロール、プロピレン、グリコール、ソルビトールを含む);
オイル(非限定的な例は、アラキス油、鉱油、オリーブ油、グリセリンを含む);
軟膏基剤(非限定的な例は、ラノリン、親水性軟膏、ポリエチレングリコール軟膏、ペテロラタム、親水性ペトロラタム、白色軟膏、黄色軟膏、ローズウォーター軟膏を含む);
浸透促進剤(経皮送達)(非限定的な例は、モノまたはポリヒドロキシアルコール、モノまたは多価アルコール、飽和または不飽和脂肪アルコール、飽和または不飽和脂肪エステル、飽和または不飽和ジカルボン酸、精油、ホスフェチジル誘導体、セファリン、テルペン、アミド、エーテル、ケトンおよび尿素を含む);
可塑剤(非限定的な例は、フタル酸ジエチルおよびグリセロールを含む);
溶媒(非限定的な例は、エタノール、コーンオイル、綿実油、グリセロール、イソプロパノール、鉱油、オレイン酸、落花生油、精製水、注射用水、注射用無菌水、洗浄のための無菌水を含む);
硬化剤(非限定的な例は、セチルアルコール、セチルエステルワックス、微結晶ワックス、パラフィン、ステアリルアルコール、白ロウ、黄色ロウを含む);
界面活性剤(非限定的な例は、塩化ベンゼトニウム、ノノキシノール10、オキシトキシリノール9、ポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンモノパルミテートを含む);
懸濁剤(非限定的な例は、寒天、ベントナイト、カルボマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カオリン、メチルセルロース、トラガントガム、ビーガムを含む);
甘味剤(非限定的な例は、アスパルテーム、デキストロース、グリセロール、マンニトール、プロピレングリコール、サッカリンナトリウム、ソルビトール、ショ糖を含む);
錠剤抗粘着剤(非限定的な例は、ステアリン酸マグネシウム、タルクを含む);
錠剤バインダー(非限定的な例は、アカシア、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、圧縮性糖、エチルセルロース、ゼラチン、液体グルコース、メチルセルロース、非架橋ポリビニルピロリドン、プレゼラチン化デンプンを含む);
錠剤およびカプセル希釈剤(非限定的な例は、二塩基性リン酸カルシウム、カオリン、乳糖、マンニトール、微結晶セルロース、粉末セルロース、沈降性炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、ソルビトール、デンプンを含む);
錠剤コーティング剤(非限定的な例は、液体グルコース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、シエラックを含む);
錠剤直打賦形剤(非限定的な例は、二塩基性リン酸カルシムウムを含む);
錠剤崩壊剤(非限定的な例は、アルギン酸、カルボキメチルセルロースカルシウム、微結晶セルロース、ポラクリンカリウム、架橋ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンを含む);
錠剤滑剤(非限定的な例は、コロイド状シリカ、コーンスターチおよびタルクを含む);
錠剤滑沢剤(非限定的な例は、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛を含む);
錠剤/カプセル不透明化剤(非限定な例は、二酸化チタンを含む);
錠剤研磨剤(非限定的な例は、カルナウバロウ、シロロウを含む);
濃化剤(非限定的な例は、蜜ロウ、セチルアルコール、パラフィンを含む);
浸透圧調節剤(非限定的な例は、デキストロース、塩化ナトリウムを含む);
増粘剤(非限定的な例は、アルギン酸、ベントナイト、カルボマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、トラガントガムを含む);そして
湿潤剤(非限定的な例は、ペプタデカエチレンオキシセタノール、レシチン、ソルビトールモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレートを含む)
【0120】
本発明に従って医薬組成物は以下に例示することができる。
【0121】
無菌IV溶液:本発明の所望の化合物の5mg/ml溶液は、無菌の注射用水を使用して製造することができ、そしてもし必要ならpHが調節される。この溶液は無菌5%デキストロースで投与のため1−2mg/mlに希釈され、そして60分にわたるIV注入液として投与される。
【0122】
IV投与のための凍結乾燥粉末:無菌製剤は、(i)凍結乾燥粉末として本発明の所望の化合物100−1000mgと、(ii)32−327mg/mlクエン酸ナトリウムと、そして(iii)300−3000mgのデキストラン40とで調製することができる。この処方は無菌注射用食塩水またはデキストロースで10−20mg/mlの濃度で復元され、これはさらに食塩または5%デキストロースで0.2−0.4mg/mlへ希釈され、ボーラスIVとしてまたは15−60分にわたるIV注入によって投与される。
【0123】
筋肉内懸濁液:筋肉内注射のため以下の溶液または懸濁液を調製することができる。
本発明の所望の水不溶性化合物 50mg/ml
カルボキシメチルセルロースナトリウム 5mg/ml
TWEEN80 4mg/ml
塩化ナトリウム 9mg/ml
ベンジルアルコール 9mg/ml
【0124】
硬カプセル:多数の単位カプセルは、標準2片硬ゼラチンカプセルへ、各自活性成分粉末100mgと、乳糖150mgと、セルロース50mgと、そしてステアリン酸マグネシウム6mgを充填することによって調製することができる。
【0125】
軟ゼラチンカプセル:大豆油、綿実油またはオリーブ油のような消化し得る油中の活性成分の混合物が調製され、そして積極移動ポンプにより溶融ゼラチン中へ注入され、活性成分100mgを含有する軟ゼラチンカプセルに形成される。活性成分は、水混和性薬物ミックスを調製するためポリエチレングリコールと、グリセリンと、ソルビトールの混合物中に溶かすことができる。
【0126】
錠剤:投与単位が活性成分100mg、コロイド状二酸化ケイ素0.2mg、ステアリン酸マグネシウム5mg、微結晶セルロース275mg、デンプン11mg、および乳糖98.8mgであるように、慣用の操作に従って多類の錠剤が調製される。服用性を増大し、エレガンスおよび安定性を改良し、また遅延吸収のため、適切な水性および非水性コーティングを適用することができる。
【0127】
即時放出錠剤/カプセル:これらは慣用および新しいプロセスによって製造された固形経口投与形である。これらの単位は即時溶解および投薬の送達のため水なしで服用される。活性成分は糖、ゼラチン、ペクチンおよび甘味剤のような液体含有成分中に混合される。これらの液体は凍結乾燥および固相抽出技術によって固体錠剤またはカプセルに固化される。薬物化合物は、水なしで即時放出を意図した多孔質マトリックスを製造する粘弾性および熱弾性糖およびポリマーまたは発泡成分と共に圧縮することができる。
【0128】
本発明の薬剤組成物の投与量
前記した障害の処置に有用な化合物を評価するための既知の標準的研究室技術を基にして、標準的毒性試験および哺乳動物において上で同定した状態の処置のための標準的薬理学的アッセイにより、およびこれらの結果をこれら状態を処置するために使用される既知の医薬の結果と比較することにより、本発明の化合物の有効投与量はそれぞれの所望の適応症の処置のために容易に決定することができる。これらの状態の一つの処置において投与すべき有効成分の量は、特定の化合物および採用した投与ユニット、投与モード、処置の期間、処置される患者の年令と性、および処置される状態の性格および程度のような配慮に従って広く変動することができる。
【0129】
投与すべき活性成分の総量は1日体重kgあたり、一般に約0.001mg/kgないし約200mg/kg、好ましくは約0.01mg/kgないし約20mg/kgの範囲であろう。単位投与量は活性成分約0.5mgないし約1500mgを含有することができ、例えば1日1回以上投与することができる。ある場合には1日置きまたは1週毎の投与が適当である。臨床的に有用な投与スケジュールは1日3回投与から4週毎の投与までの範囲であろう。加えて、患者が一定期間薬物を投与されない薬物休日が薬理効果と耐薬性の間の全体バランスにとって有益であり得る。静脈内、皮下および非経口注射を含む注射および注入技術の使用による1日平均投与は約0.01ないし200mg/kg全体重であることが好ましいであろう。直腸投与療法の平均1日投与量は好ましくは0.01ないし200mg/kg全体重であろう。経膣投与療法の平均1日投与量は好ましくは0.01ないし200mg/kg全体重であろう。局所投与療法の平均1日投与量は、好ましくは1日1ないし4回の間で投与される0.01ないし200mg/kg全体重であろう。経皮濃度は、好ましくは約0.01ないし200mg/kgの平均1日投与量を維持するのに要する量であろう。吸入療法の平均1日投与量は好ましくは約0.01ないし100m/kgであろう。
【0130】
各患者のための特定な初期および継続投与療法は、立会診断医によって決定された状態の性格および重篤度、患者の年令および一般状態、薬物組合せ等に応じて変動するであろう。本発明の化合物またはその薬学的に許容し得る塩またはエステルの処置モードおよび投与回数は慣用の処置テストを使用して当業者によって確かめることができる。
【0131】
本発明の化合物および組成物と追加の活性成分との組合せ
本発明の化合物は単剤として、または合剤が許容できない副作用を発生させない場合一以上の他の薬剤との合剤として投与することができる。これは癌のような高増殖病の処置のために特に適切であり得る。この場合、本発明の化合物は既知の細胞毒剤、信号形質導入阻害剤、または他の抗癌剤、それにそれらの混合物または合剤と組合せることができる。
【0132】
一具体例において、本発明の化合物は細胞毒抗癌剤と組合せることができる。そのような剤の例は、Merck Index 第11版(1996)に見られる。これらの剤は、限定でなく、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、コラスパーゼ、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、エピルビシン、エトポシド、5−フロロウラシル、ヘキサメチルメラミン、ヒドロキシウレア、イフォスファミド、イリノテカン、リュウコボリン、ロムスチン、メクロレサミド、6−メルカプトプリン、メスナ、メトトレキセート、マイトマイシンC、トキサントロン、プレドニソロン、プレドニソン、プロカルバジン、ラノキシフェン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、チオグアニン、トポテカン、ビンブラスチンおよびビンデシンを含む。
【0133】
本発明の化合物と共に使用するのに適した他の細胞毒薬物は、限定でなく、Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Pherapentics(9th Ed.,1996,McGraw−Hill)において新生物病の処置に使用が知られた化合物である。これらの剤は、限定でなく、アミノグルテチミド、L−アスパラギナーゼ、アザチオプリン、5−アザシチジン、クラドリビン、ブスルファン、ジエチルスチルベストロール、2’−2’−ジフロロデオキシシチジン、ドセタクセル、エリスロヒドロキシノニルアデニン、エチニルエストラジオール、5−フロロデオキシウリジン、5−クロロデオキシウリジンモノリン酸、フルダラビンホスフェート、フルオキシメステロン、フルタミド、ヒドロキシプロゲステロンカプロエート、イダルビシン、インターフェロン、メドロキシプロゲステロンアセテート、メゲステロールアセテート、メルファラン、ミトタン、パクリタクセル、ペントスタチン、N−ホスフォノアセチル−L−アスパルテート(PALA)、プリカマイシン、セムスチン、テニポシド、テストステロンプロピオネート、チオテパ、トリメチルメラミン、ウリジン、およびビノレルビン腫瘍性病に使用するために認知された化合物を含む。
【0134】
本発明の化合物との合剤において使用に適した他の細胞毒抗癌剤は、オキサシプラチン、ゲムシタビン、カペシタビン、エポチロンおよびその天然または合成誘導体、テモゾロミド(Quinn et al.J.Clin.Oncology 2003,21(4),646−651),トシツモマブ(Baxxar)、トラベテクシン(Vidal et al.Proceedings of the American Society for Clinical Oncology 2004,23,abstract
3181),およびカイネシンスピンドルタンパクEg5の阻害剤(Wood et al,Curr.Opin.Phamacol.2001,1,370−377)のような新しく発見された細胞毒剤をも含む。
【0135】
本発明の他の具体例においては、本発明の化合物は他の信号形質導入阻害剤と組合せることができる。特に関心あるものは、EGFR,HER−2およびHER−4のようなEGFRファミリを標的とする信号形質導入阻害剤(Raymond et al,Drugs 2000,60,(Suppl.1),15−23;Harari et al,Oncogene 2000,19(53),6102−6114)、およびそれらのリガンドである。そのような剤の例は、限定でなく、ヘルセプチン(トラスツズマブ)、エルビタックス(セツキシマブ)、およびペルツズマブのような抗体治療剤を含む。そのような治療剤の例は、限定でなく、ZD−1839/イレッサ(Baselga et al,Drugs 2000,60(Suppl.1),33−40),OSI−774/タルセバ(Pollack et al,J.Pharm.Exp.Ther.1999,291(2),739−748),CI−1033(Bridges,Curr.Med.Chem.1996,6,825−843),GW−2016(lackey et al,92Th AACR Meeting,New Orleans,March 24−28,2001,abstract 4582),CP−724,714(Jani et al,Proceedings of the American Society for Clinical Oncology 2004,23,Abstract 3122),HKI−272(Rabindran et al,Cancer Res.2004,64,3958−3965),およびEKB−569(Greenberger et al,11th NCI−EORTC−AACR Symposium on New Drugs in Candcer Therapy Amsterdam,November 7−10,2000,abstract 388)のような、小分子キナーゼ阻害剤をも含む。
【0136】
他の具体例においても、本発明の化合物はスプリットキナーゼドメイン(VEGFR,FGFR,PDGFR,flt−3,c−kit,c−fms等)およびそれらのリガンドを標的とする他の信号形質導入阻害剤と組合せることができる。これらの剤は、限定でなく、アバスチン(ベバシズマブ)のような抗体を含む。またはこれらの剤は、限定でなく、STI−571/グリーベック(Zvelebil,Curr.Opin.Oncol.Endocr.Metab.Invest.Drugs 2000,2(1),74−82),PTK−787(Wood et al,Caner Res.2000,60(8),2178−2189),SU−11248(Demetri et al,Proceeding of the American Society for Clinical Oncology 2004,23,abstract 3001),ZD−6474(Hennequin et al,92nd AACR Meeting,New Orleans,March 24−28,2001,abstract 3152),AG−13736(Herbst et al,Clin.Cancer Res.2003,9,16(Suppl 1),abstract(253),KRN−951(Tagnchi et al,95th AACR Meeting,New Orleans,2004,abstract 2575),CP−547,(Proceedings of the American Association of Cancer Research 2004,45,abstract 3989),CHIR−258(Lee et al,ibid abstract 2130),MLM−518(Shen et al,Blood 2003,102,11,abstract 476),およびAZD−2171(Hennequin et al,ibid,abstract 4539)のような小分子阻害剤を含む。
【0137】
他の具体例において、本発明の化合物はRaf/MEK/ERK形質導入経路の阻害剤(Avruchi et al,Recent Prog.Horm.Res.2001,56,127−155),またはPKB(akt)経路阻害剤(Lawlor et al,J.Cell Sci.2001,114,2903−2910)と組合せることができる。これらは限定でなく、PD−325901(Sebolt−Leopold et al,Proceed of the American Association of Cancer Research 2004,45,abstract 4003)、およびARRY−142886(Wallace et al,ibid.abstract 3891)を含む。
【0138】
他の具体例において、本発明の化合物はヒストンデアセチラーゼの阻害剤と組合せることができる。このような剤の限定でなく、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA),LAQ−824(Ottmann et al,Proceedings of the American Society for Clinical Oncology 2004,23,abstract 3025),MS−275(Ryan et al,Proceedings of the American Association of Cancer Reseach 2004,45,abstract 2452),およびFR−901228(Piefkarz et al,Proceedings of the American Society for Clinical Oncology 2004,23,abstract 3028)を含む。
【0139】
他の具体例において、本発明の化合物はプロテアソーム阻害剤およびm−TOR阻害剤のような他の抗癌剤と組合せることができる。これらは限定でなく、ボルテゾミブ(Mackay et al,Proceedings of the American Society for Clinical Oncology 2004,23,abstract 3109)、およびCCI−779(Wu et al,Proceedings of the American Society for Clinical Oncology 2004,45,abstract 3849)を含む。
【0140】
一般に、癌の処置のため本発明の化合物と組合せた細胞毒および静細胞抗癌剤の使用は、以下のように役立つであろう。
(1)どちらの剤単独の投与に比較して、腫瘍成長の減少または腫瘍排除においてより良い有効性を与える;
(2)投与される化学療法剤のより少ない量の投与を提供する;
(3)単一剤化学療法およびいくつかの他の併用療法で観察されるよりも、少ない有害薬理学的合併症をもって患者が良く耐えられる化学療法処置を提供する;
(4)哺乳類、特にヒトにおいて異なる癌タイプのより広いスペクトルを処置することを提供する;
(5)処置した患者の間でより高い応答を提供する;
(6)標準的化学療法処置に比較して、処置した患者の中でより長い生存時間を提供する;
(7)腫瘍進行のためより長い時間を提供する;および/または
(8)他の抗癌剤組合せが拮抗的効果を産む既知の場合に比較して、単独で使用した剤と少なくとも同等に良好な有効性および耐薬性結果を与える。
【実施例】
【0141】
本明細書において使用した略号は以下のとおり。
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
MS 質量スペクトル分析
ES エレクトロスプレー
DMSO ジメチルスルホキシド
NMR 核磁気共鳴スペクトル分析
TLC 薄層クロマトグラフィー
rt 室温
【0142】
4−アミノ−3−フルオロフェノールの製造
【化2】

【0143】
アルゴンでパージした乾燥フラスコへ、10%Pd/C(80mg)と、次いで酢酸エチル(40ml)中に溶液として3−フルオロ−2−ニトロフェノール(1.2g,7.64mmol)を加えた。混合物をH雰囲気下4時間かきまぜた。混合物をセライトのパッドを通して濾過し、溶剤を減圧下蒸発し、黄褐色固体として所望の生成物を得た(940mg,7.39mmol,収率97%);H−NMR(DMSO−d)4.38(s,2H),6.29−6.35(m,1H),6.41(dd,J=2.5,12.7,1H),6.52−6.62(m,1H),8.76(s,1H)
【0144】
4−(4−アミノ−3−フルオロフェノキシ)ピリジン−2−カルボン酸メチルアミドの製造
【化3】

【0145】
0℃へ冷却したN,N−ジメチルアセタミド(6ml)中の4−アミノ−3−フルオロフェノール(500mg,3.9mmol)の溶液をカリウムt−ブトキサイド(441mg,3.9mmol)と加熱し、褐色溶液を0℃で25分かきまぜた。この混合物へジメチルアセタミド(4ml)中の溶液として4−クロロ−N−メチル−2−ピリジンカルボキサマイド(516mg,3.0mmol)を加えた。反応混合物を100℃で16時間加熱した。混合物を室温に冷やし、水で反応停止し、そして酢酸エチル(4×40ml)で抽出した。合併した有機層を水(2×30ml)で洗い、乾燥(MgSO)し、蒸発して赤褐色オイルを得た。H−NMRが残ったジメチルアセタミドの存在を示したので、このオイルをジエチルエーテル(50ml)に取り、食塩水(5×30ml)でさらに洗った。有機層を乾燥(MgSO)し、濃縮して赤褐色固体として所望の生成物950mgを得た。このものは精製することなく次の工程に使用された。
【0146】
4−クロロ−N−メチル−2−ピリジンカルボキサマイドの製造法は、Bankston et al,Org.Pro.Res,Dev.2002,6(6),778−781に記載されている。
【0147】
実施例1:4−{4−〔3−(4−クロロ−3−トリフルオロメチルフェニル)−ウレイ
ド〕−3−フルオロフェノキシ}ピリジン−2−カルボン酸メチルアミドの製造
【化4】

【0148】
トルエン(3ml)中の4−(4−アミノ−3−フルオロフェノキシ)ピリジン−2−カルボン酸メチルアミド(177mg,0.68mmol)の溶液を4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニルイソシアネート(150mg,0.68mmol)へ加えた。混合物を室温で72時間かきまぜた。反応混合物を減圧濃縮し、残渣をジエチルエーテルとこねた。生成した固体を濾過により集め、4時間減圧下乾燥して題記化合物(155mg,0.32mmol,収率47%)を得た。H−NMR(DMSO−d)2.76(d,J=4.9,3H),7.03−7.08(m,1H),7.16(dd,J=2.6,5.6,1H),7.32(dd,J=2.7,11.6,1H),7.39(d,J=2.5,1H),7.60(s,2H),8.07−8.18(m,2H),8.50(d,J=5.7,1H),8.72(s,1H),8.74−8.80(m,1H),9.50(s,1H);MS(HPLC/ES)483.06m/z=(M+1)
【0149】
実施例2:4−{4−〔3−(4−クロロ−3−トリフルオロメチルフェニル)−ウレイ
ド〕−3−フルオロフェノキシ}ピリジン−2−カルボン酸メチルアミド塩酸塩の製造
遊離塩基として実施例1の化合物(2.0g)を無水テトラヒドロフラン(15ml)に溶かし、そして4M HCl/ジオキサン(過剰)を加えた。次に溶液を真空濃縮し、灰白色固体2.32gを得た。この粗製塩を熱エタノール(125ml)に溶かし、活性炭を加えて15分間還流加熱した。熱い懸濁液をセライトパッドを通して濾過し、室温へ冷却した。フラスコを一夜フリーザー中に入れた。結晶性固体を吸引濾過し、エタノール、次にヘキサンで洗い風乾した。母液は濃縮し、一夜結晶化(フリーザー中)を許容した。固体の2回目のクロップを集め、1回目のクロップと合併した。無色の塩を2日間60℃で真空オーブン中で乾燥した。得られた塩酸塩の収量は1.72g(79%)であった。m.p.215℃
【0150】
元素分析:
計算値 実施値
C 48.57 48.68
H 3.11 2.76
N 10.79 10.60
Cl 13.65 13.63
F 14.63 14.88
【0151】
実施例3:4−{4−〔3−(4−クロロ−3−トリフルオロメチルフェニル)−ウレイ
ド〕−3−フルオロ}ピリジン−2−カルボン酸メチルアミドメシレートの製造
遊離塩基として実施例1の化合物(2.25g)をエタノール(100ml)に溶かし、メタンスルホン酸のストック溶液(過剰)を加えた。溶液を次に減圧濃縮し、黄色オイルを得た。エタノールを加え、濃縮を繰り返した灰白色固体2.41gを得た。粗製塩を熱エタノール(〜125ml)に溶かし、徐々に冷却化して結晶化させた。室温へ達した後、フラスコを一夜フリーザー中へ置いた。無色結晶性物質を吸引濾過により集め、フィルターケーキをエタノール、次にヘキサンで洗い風乾して物質2.05gを得た。これを一夜60℃で真空オーブン中で乾燥した。m.p.231℃
【0152】
元素分析:
計算値 実施値
C 45.64 45.34
H 3.31 3.08
N 9.68 9.44
Cl 6.12 6.08
F 13.13 13.42
S 5.54 5.59
【0153】
実施例4:4−{4−〔3−(4−クロロ−3−トリフルオロメチルフェニル)−ウレイ
ド〕−3−フルオロ}ピリジン−2−カルボン酸メチルアミドフェニルスルホン酸塩の製

遊離塩基として実施例1の化合物(2.25g)をエタノール(50ml)に懸濁し、エタノール(50ml)中のベンゼンスルホン酸(0.737g)を加えた。混合物を激しくかきまぜながら加熱した。すべての固体が溶解し、赤色溶液を与えた。この溶液を室温へ冷やし、フラスコを引掻いた。結晶生成を達成するのは困難で、いくらかの種晶が発見され、これを溶液へ加え、一夜フリーザー中へ置いた。フラスコ中に灰褐色の固体が生成し、この物質を砕き、そして吸引濾過により集めた。固体をエタノール、次にヘキサンで洗い、風乾した。秤量した生成物は2.06gであり、収率は69%であった。m.p.213℃
【0154】
元素分析:
計算値 実施値
C 50.59 50.24
H 3.30 3.50
N 8.74 8.54
Cl 5.53 5.63
F 11.86 11.79
S 5.00 5.16
【0155】
実施例5:c−raf(raf−1)生化学アッセイ
c−RAF生化学アッセイは、Lckキナーゼによって活性化(ホスホリル化)したc−Raf酵素で実施された。Lck−活性化c−Raf(Lck−Raf)は、Sf9昆虫細胞中にポリヘドリンプロモーターのコントロール下にGST−c−Raf(アミノ酸302からアミノ酸684まで)とLck(全長)を発現するバキュロウイルスで同時感染させることによって生産した。両方のバキュロウイルスは2.5の感染倍数で使用し、そして細胞は感染後48時間で収穫した。
【0156】
MEK−1タンパクは、Sf9昆虫細胞中に感染倍数5においてGST−MEK−1(全長)融合タンパクを発現するバキュロウイルスで細胞を感染させ、そして細胞を感染48時間後に収穫することによって生産した。GST−C−Raf302−648およびGST−MEK−1のために同様な精製操作が使用された。
【0157】
形質転換した細胞は、10mMリン酸ナトリウム、140mM塩化ナトリウムpH7.3,0.5%トリトンX−100、およびプロテアーゼ阻害剤カクテルを含んでいるバッファー中mLあたり湿った細胞バイオマス100mg懸濁した。細胞をポリトロンホモナイザーで破壊し、30,000gで30分遠心した。30,000g上清をGSH−セファローズへ適用した。樹脂を50mgトリス,pH8.0,150mM NaClおよび0.01%トリトンX−100を含んでいるバッファーで洗った。GST−標識タンパクをグルタチオン100mM、50mMトリス、pH8.0、150mM NaClおよび0.01%トリトンX−100を含む溶液で溶出した。精製したタンパクは、20mMトリス、pH7.5、150mM NaClおよび20%グリセロールを含むバッファー中へ透析した。
【0158】
テスト化合物は3倍希釈液を用いて典型的には50μMないし20nMの範囲ストック濃度へ(1μMないし0.4nMのアッセイ範囲の最終濃度)DMSO中に段階希釈した。c−Raf生化学アッセイは96ウエルコスターポリプロピレンプレート(コスタ336)中で放射活性フィルターマットアッセイとして行われた。プレートへ50mM HEPES,pH7.5、70mM NaCl、80ngのLck/c−Rafおよび1μg MEK−1を含む溶液75μLを負荷した。次に段階希釈した個々の化合物の2μLをATP添加の前に反応へ加えた。反応は5μM ATPおよび0.3uCi〔33P〕−ATPを含む25μL ATP溶液によって開始された。プレートはシールされ、32℃で1時間インキュベートされた。反応は4%リン酸50μLの添加により停止され、そしてWallac Tomtecハーベスターを用いてP30フィルターマット(パーキンエルマー)上に収穫された。フィルターマットは最初1%リン酸で、2番目に脱イオン水で洗った。フィルターをマイクロウェーブで乾燥し、シンチレーション液に浸し、そしてWallac1205ベータープレートカウンター(Wallac Inc.,Atlanta,GA,U.S.A.)中で読取られた。結果はパーセント阻害として表される。
【0159】
%阻害=〔100−(Tib/Ti)〕×100
ここでTib=(阻害剤ありのカウント/分)−(バックグラント)
Ti=(阻害剤なしのカウント/分)−(バックグラント)
本発明化合物は、このアッセイにおいてrafキナーゼの強力な阻害を示した。
【0160】
実施例6:p38キナーゼインビトロアッセイ
精製し、His−標識したp38α2(E.Coli中に発現)をMMK−6により高比活性へインビトロで活性化した。マイクロタイターフォーマットを使用し、すべての反応はアッセイパッファー(25mM HEPES 7.4,20mM MgCl,150mM NaCl)中に活性化p38α2の0.05μg/ウエルとミエリン塩基性タンパク10μg/ウエルを得るように希釈された試薬で100μL体積において実施された。テスト化合物(水中10%DMSO溶液5μL)が調製され、そして5nMから2.5μMまでの最終濃度をカバーするように希釈された。キナーゼアッセイはウエルあたりコールドATP 10μMおよび〔γ−33P〕ATP0.2μCi(200−400dpm/pmolATP)最終濃度を与えるようにATPカクテル25μLの添加によって開始された。プレートを32℃において35分間インキュベートし、反応を1N HCl水溶液の7μLで停止した。サンプルはTomTec1295ハーベスター(Wallac,Inc.)を用いてP30フィルターマット(Wallac,Inc.)上に収穫され、そしてLKB 1205ベータプレート液体シンチレーションカウンター(Wallac,Inc.)中でカウントされた。陰性対照は基質プラスATP単独を含んでいた。
SW1353細胞アッセイ:細胞(ヒトコンドロ肉腫)が96ウエルプレート中に接種(1000細胞/100μL DMEM10%FCS/ウエル)され、そして一夜インキュベートされた。培地置換後、細胞はテスト化合物へ37℃において1時間曝露され、その時ヒトIL−1(1ng/ml,Endogen,Woburn,WA)と、組換えヒトTNFα(10ng/ml)が添加された。培養物は37℃で48時間インキュベートされ、次に上清IL−6値がELISAによって決定される。本発明の化合物はp38キナーゼの有意な阻害を示す。
【0161】
実施例7:Bio−PLex Phospho−ERK1/2イムノアッセイ
レーザーフローサイトメトリープラットフォームを使用する96−ウエルホスホ−ERK(pERK)イムノアッセイは、細胞ライン中のベーサルpERKの阻害を測定するために確立された。MDA−MB−231細胞を完全成育培地中、96−ウエルマイクロタイタープレート中で50,000細胞/ウエルにおいてプレートした。ベーサルpERK1/2阻害に対するテスト化合物の効果のため、プレート翌日にMDA−MB−231細胞を0.1%BSAを有するDMEMへ移し、0.1%DMSO中3μMないし12nMの最終濃度へ1:3希釈した。細胞をテスト化合物と2時間インキュベートし、洗浄し、Bio−Plex全細胞溶解バッファーAに溶解した。サンプルはバッファーB1:1(v/v)で希釈し、アッセイプレートへ直接移すか、または処理するまで−80℃で凍結した。希釈したMDA−MB−231溶解物の50μLを抗ERK1/2抗体を接合した5ミクロンBio−Plexビーズ約2000と一夜シエカー上で室温でインキュベートした。翌日、ビオチニル化ホスホERK1/2サンドイッチイノムアッセイを実施し、ビーズを各インキュベーションの間3回洗い、次に現像剤としてPE−ストレプトアビジン50μLを使用した。pERK1/2の相対的蛍光単位が高感度において25ビーズをBio−Plexフローセル(プローブ)でカウントすることによって検出された。IC50が最大として未処理細胞をそしてバックグランドとして細胞なし(ビーズのみ)を用いて計算された。本発明化合物はこのアッセイにおいて有意な阻害を示す。
【0162】
実施例8:Flk−1(ネズミVEGFR−2)生化学アッセイ
このアッセイは、TR−FRETフォーマット中の96ウエルオパックプレート(Costar3915)中で実施された。反応条件は以下のとおり。10μM ATP,25nMポリGT−ビオチン、2nM En標識ホスホ−Try Ab,10nM APC,7nM Flk−1(キナーゼドメイン)、1%DMSO,30mM HEPES pH7.5,10mM MgCl,0.1mM EDTA,0.015%BRU,0.1mg/ml BSA,0.1%メルカプトエタノール。反応は酵素の添加により開始される。各ウエル中の最終容積は100μLである。プレートは、反応開始後約1.5ないし2.0時間においてパーキンエルマービクターVマルチラベルカウンター上で615および665nmの両方において読まれる。信号は各ウエルあたり比:(665nm/615nm)*10000として計算される。本発明化合物は有意なVEGFR−2キナーゼ阻害を示す。
【0163】
実施例9:ネズミPDGFR FRET生化学アッセイ
このアッセイは96ウエルブラックプレート(Costar3915)中にフォーマット化された。以下の試薬(およびそれらのソース)が使用された。ユーロピウム標識抗ホスフォチロシン抗体pY20およびストレプトアビジン−APC;ポリGT−ビオチン、およびDRT中のマウスPDGFR。反応条件は以下のとおり。1nMマウスPDGFRがアッセイバッファー(50mM HEPES pH7.5,10mM MgCl,0.1mM EDTA,0.015% BRIJ 35,0.1mg/mL BSA,0.1%メルカプトエタノール)中、20μM ATP,7nMポリGT−ビオチン、1nM
pY20抗体、5nMストレプトアビジン−APCおよび1% DMSOと混合される。各ウエル中の最終反応容積は100μLである。90分後10μL/ウエルの5μMスタウロスポリンを添加して反応を停止する。反応停止約1時間後、プレートはPerkin Elmer VictorVマルチラベルカウンター上615および665nmにおいて読取られる。信号は各ウエルについて比:(665nm/615nm)×1000として計算される。本発明化合物はPDGFRキナーゼの有意な阻害を示す。
【0164】
PDGFR−βのためのIC50の発生のため、酵素開始前に化合物が加えられた。50倍ストックプレートは50%DMSO/50%dHO溶液中段階的に1:3希釈した化合物でつくられた。ストックの2μL添加は1%DMSO中10μMないし4.56nMの範囲の化合物最終濃度を与えた。データは%阻害として表わされた。%阻害=100−(阻害剤あり信号−バックグランド)/(阻害なしの信号−パックグランド)×100
【0165】
実施例10:MDA−ME231増殖アッセイ
ヒト乳癌細胞(MDA MB−231,NCI)が10%熱不活性化FBSを補給した標準成長培地(DMEM)中で加湿インキュベーター中5%CO(vol/vol)中37℃で培養された。細胞は96ウエル培養皿中90μL成長培地中3000細胞/ウエルの密度にプレートされた。Toh CTG値を決定するため、プレート24時間後CellTiter−Gloルミネセント試薬の100μLが各ウエルへ加えられ、室温で30分インキュベートされた。Wallac Victor II機器上で発光が記録された。CellTiter−Glo試薬は細胞溶解をもたらし、存在する細胞の数に正比例する、存在するATPの量に比例するルミネセント信号を発生した。
【0166】
%阻害=〔1−(T72h test−Toh)/(T72h ctr1−Toh)〕×100
ここで、T72h test=テスト化合物の存在下72時間におけるATP依存ルミネセンス
72h ctr1=テスト化合物なしの72時間におけるATP依存ルミネセンス
Toh=時間ゼロにおけるATP依存ルミネセンス
本発明化合物はこのアッセイを用いて増殖の有意な阻害を示す。
【0167】
実施例11:AoSMC細胞中のpPDGFRサンドイッチELISA
100K P3−P6大動脈SMCが標準的細胞技術を用いて12ウエルクラスターの各ウエルへSGM−2の100μL/ウエルにおいてプレートされた。翌日細胞を100μL D−PBS(Gibco)で1回リンスし、0.1%BSA(シグマ、CatA9576)で500μL SBM(平滑筋細胞ベーサル培地)中で一夜餓えさせた。化合物はDMSO中に10μMないし1nMまで10倍希釈ステップにおいて希釈された。流し中で急速に反転することによって古い培地を除去し、次に各希釈液の100μLを細胞の対応するウエルへ37℃において1時間加えた。次に細胞を10ng/mLのPDGF BBリガンドで37℃において7分間刺激した。培地を傾斜し、プロテアーゼ阻害剤錠(完全、EDTAなし)と0.2mM Naバナデートを含む等張溶解バッファーを加えた。細胞は冷室内で−4℃において15分間溶解される。溶解物をエッペンドルフ管へ入れ、それへアガロース接合抗PDGFR−β抗体15μLを加え(Santa Cruz,sc−339)、4℃で一夜インキュベートする。翌日ビーズをPBSの50ボリュームで3回リンスし、1×LDSサンプルバッファー(Invitrogen)中5分間沸騰する。サンプルを3−8%勾配トリス−アセテートゲル(Invitrogen)を通し、ニトロセルロース上へ移した。膜は、ブロッキングバッファー(1:1000希釈)中抗ホスホPDGFR−β中1時間インキュベートする前に、1%BSA/TBS−T中で1時間ブロックした。TBS−T中で3回洗った後、膜をヤギ抗ウサギHRP IgG(Amersham,1:25000希釈)中で1時間インキュベートした。ECL基質の添加前にもう3回の洗浄が続いた。膜をハイパーフィルムECLへ露出した。その後膜を剥がし、トータルPDGFR−βについて抗PDGFR−β(Santa Cruz)で再プローブした。
【0168】
表1は、p38キナーゼ:PDGFRキナーゼ、およびVEGFR2キナーゼに対するインビトロキナーゼ生化学アッセイの結果を示す。これら3キナーゼ標的は、血管形成へ導き、そして腫瘍組織へ血液供給を提供する、ストローマ活性化および内皮細胞増殖にすべて含まれる。
【0169】
表1
mPDGFR mVEGFR2 p38
IC50,nM IC50,nM IC50,nM
実施例1 83 5.5 24
【0170】
表2は、(i)rafキナーゼ活性の機械的読取りである、MDA−MB231細胞中のpERKの阻害、および(ii)rafキナーゼ活性の機能的アッセイである、MAD−MB231細胞中の増殖アッセイの、rafキナーゼ活性のための二つの細胞アッセイの結果を示す。加えて、表2は、PDGFRキナーゼ阻害の機械的読取りである、大動脈平滑筋細胞中のPDGFR−βのPDGFR誘導ホスフォリル化の結果を示す。
【0171】
表2
細胞中のpERK 増殖 pPDGFR
(MDA−MB231)(MDA−MB231)(AoSMC)
IC50,nM IC50,nM IC50,nM
実施例1 22 600 43.5
【0172】
全体として、本発明の化合物は血管形成および腫瘍細胞増殖の阻害のユニークな組合せを提供する。それらはまた、すべて骨粗しょう症、炎症病および癌を含む高増殖病の処置のための関心ある分子標的である、raf,p38,PDGFRおよびVEGFR−2のようないくつかのキーキナーゼ標的に対する改良された阻害プロファイルを提供する。
【0173】
当業者は、以上の情報および当分野で利用可能な情報を使用して本発明をその全範囲において利用とできるものと信じられる。当業者には、ここに述べた本発明の精神および範囲から逸脱することなく変更および修飾をなすことができることを認識すべきである。以上および以下に引用したすべての刊行物、出願および特許は参照としてここに取り入れられる。
【0174】
以上および以下に述べたトピックの標題は、本出願に或種の情報が見られる場合のガイダンスを意味し、そのようなトピックについての情報が見られる場合本出願中の唯一の情報源であることを意図するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)の化合物、またはその塩、またはその単離された立体異性体、
【化1】

または、メチルアミド官能基が脱メチル化され、または1以上の尿素窒素がヒドロキシ基によって置換され、またはピリジン窒素がN−オキシド型である式(I)の化合物と、そして生理学的に許容し得る担体を含んでいる、raf,VEGFR,PDGFR,p38および/またはflt−3キナーゼが含まれる一以上の信号形質導入経路が含まれる一以上のタンパクキナーゼによって調節されるヒトまたは他の哺乳類における病気の処置のための薬剤組成物。
【請求項2】
式(I)の化合物の塩が、
a)塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、トリフロロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸(トシレート塩)、1−ナフタレンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、酢酸、トリフロロ酢酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、シュウ酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、安息香酸、サリチル酸、フェニル酢酸、またはマンデル酸である有機酸または無機酸の塩基塩;または
b)アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、アンモニウムカチオン、脂肪族置換アンモニウムカチオン、または芳香族置換アンモニウムカチオンを含有する有機または無機塩基の酸塩;
である請求項1の薬剤組成物塩。
【請求項3】
式(I)の化合物の塩が、
N−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−2−フルオロ−(4−(2−N−メチルカルバモイル)−4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素の塩酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、またはメタンスルホン酸塩である請求項1の薬剤組成物。
【請求項4】
4−{4−〔3−(4−クロロ−3−トリフロロメチルフェニル)ウレイド〕−3−フロロフェノキシ}ピリジン−2−カルボン酸アミド;
4−{4−〔3−(4−クロロ−3−トリフロロメチルフェニル)ウレイド〕−3−フロロフェノキシ}−1−ヒドロキシピリジン−2−カルボン酸メチルアミド;または
4−{4−〔3−(4−クロロ−3−トリフロロメチルフェニル)ウレイド〕−3−フロロフェノキシ}−1−ヒドロキシピリジン−2−カルボン酸アミド;
から選ばれた化合物を含む請求項1の薬剤組成物。

【公開番号】特開2011−168599(P2011−168599A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67296(P2011−67296)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【分割の表示】特願2006−521221(P2006−521221)の分割
【原出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(504210617)バイエル、ファーマシューテイカルズ、コーポレイション (11)
【Fターム(参考)】