病理組織画像撮影システム、病理組織画像撮影方法、および病理組織画像撮影プログラム
【課題】病理医の操作無しに、病理組織画像から病理医が病理組織診断の際に注目する領域(ROI)を検出し、検出したROIを拡大して撮影する範囲として選択し、選択した範囲を拡大して撮影する。
【解決手段】本発明の病理組織画像撮影システムは、病理組織画像を撮影する病理画像取得部と、病理組織画像を出力する出力部と、を有する病理画像撮影システムであって、病理組織画像からROIを検出し、当該ROIに位置する画素に重みを付加する重みづけ部と、重みづけ部で付加された重みの値を基に、病理組織画像から拡大して撮影する拡大撮影範囲を選択する範囲選択部と、を有し、病理画像取得部は、範囲選択部が選択した拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影し、出力部は、拡大撮影範囲を拡大して撮影した病理組織画像を出力することを特徴とする。
【解決手段】本発明の病理組織画像撮影システムは、病理組織画像を撮影する病理画像取得部と、病理組織画像を出力する出力部と、を有する病理画像撮影システムであって、病理組織画像からROIを検出し、当該ROIに位置する画素に重みを付加する重みづけ部と、重みづけ部で付加された重みの値を基に、病理組織画像から拡大して撮影する拡大撮影範囲を選択する範囲選択部と、を有し、病理画像取得部は、範囲選択部が選択した拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影し、出力部は、拡大撮影範囲を拡大して撮影した病理組織画像を出力することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病理組織画像から、拡大して撮影する範囲を選択し、選択した範囲を拡大した病理組織画像を撮影する、病理組織画像撮影システム、病理組織画像撮影方法、および病理組織画像撮影プログラム、に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の臨床医療現場では、X線、CT(Computed Tomography)、MRI(Magnetic Resonance Imaging)などの画像診断機器が進歩し、体内の微小な異物を探知することができるようになってきている。しかし、これらの画像診断機器は、体内の異物の位置情報をもたらすのみで、その異物の性質を特定することはできない。
【0003】
したがって、最終的には、病理医が画像診断機器で探知した異物から採取した標本組織を顕微鏡で観察し、探知した異物の性質が良性なのか悪性なのかを経験を基に診断(病理組織診断)している。
【0004】
特に、がんの病理組織診断は以下のように行われている。
【0005】
まず、異物から採取した標本組織を、固定するために脱水し、パラフィンによるブロック化の処理を行う。
【0006】
次に、ブロック化の処理を行った標本組織を4〜8マイクロメートルの厚さの薄片に切り取り、スライドグラスにのせ、病理組織スライドを作成する。
【0007】
次に、作成した病理組織スライド上の標本組織からパラフィンを取り除き、ヘマトキシリンとエオジンという染色液で染色する(HE染色)。HE染色により、標本組織に含まれる細胞核が青紫色に染色され、その他の細胞質や繊維、赤血球などが淡紅色に染色される。
【0008】
その後、病理医は、HE染色を行った病理組織スライドを顕微鏡で観察し、観察結果から得られる形態学的な情報をもとに病理組織診断を行う。
【0009】
この際、病理医は、まず、低倍率の対物レンズを通して病理組織スライド上の標本組織を観察し、標本組織の組織としてのパターンの変化(例えば、組織や細胞核の密集度の変化や、細胞核のパターンの変化など)を観察し、それらの観察結果からがんと疑われる領域のめぼしをつける。
【0010】
その後、病理医は、がんと疑われる領域を、高倍率の対物レンズを通して拡大して観察し、標本組織の細胞核の大きさや形の変化などを観察し、標本組織を採取した異物の性質を判定する。
【0011】
また、近年では、病理医は病理組織診断の際に、病理組織スライドを病理組織画像として撮影し、撮影した病理組織画像を基に診断を行うケースが増えてきている。
【0012】
顕微鏡視野中の病理組織スライドを病理組織画像として撮影することで、過去に撮影した病理組織画像や、各病気の典型的な病理組織画像と比較することが容易に出来るため、病理医はより正確な病理組織診断を行うことが出来る。
【0013】
また最近では、撮影した病理組織画像を解析し、病理組織画像から得られる標本組織の形態学的情報を基に、その標本組織が属する診断カテゴリーやその標本組織に含まれるがん細胞の悪性度を判定するなど、簡易の病理組織診断を行うことで、病理医による病理組織診断を支援する病理組織診断支援システムなどの開発が進んでいる。病理組織診断支援システムの例として、特許文献1には、病理組織画像の特徴を定量的に表し、病理組織学的特長に基づいた各診断カテゴリーへの適合度を計算することで、適合度の高い診断カテゴリー名を表示する技術が記載されている。
【0014】
この様な病理組織診断に用いられる病理組織画像は、顕微鏡に搭載されたCCD(Charge Coupled Device)カメラで撮影されるのが一般的である。
【0015】
以前は、撮影した病理組織画像を写真として現像する必要があったが、最近では撮影した病理組織画像をモニタ上で確認できるようになり、病理組織画像を写真として現像する時間を省き、病理組織診断に掛かる時間を短縮することが出来るようになってきている。
【0016】
また、撮影した病理組織画像を電子情報として保存することで、過去に撮影した病理組織画像などとの比較や、病理組織画像への画像処理などがより容易に行えるようになり、迅速な病理組織診断を行うことが出来るようになってきている。
【0017】
この様な、病理組織画像を撮影し、撮影した病理組織画像をモニタに出力する病理組織画像撮影システムには様々なものが提案されており、それらの中には、撮影した病理組織画像に画像処理等の処理を行うことで、病理医による病理組織診断を補助する技術も存在する。
【0018】
その一例として、特許文献2には、低倍率で撮影した病理組織画像を幾つかの小区画に分割し、各小区画に含まれる組織の領域の割合を計算し、組織の領域の割合が高い順に小区画に優先度を設けることで、病理医が病理組織診断の際に注目すべき領域(ROI:Region Of Interest)を判断する際の目安を提示する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2006−153742号公報
【特許文献2】特開平11−344676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかし、特許文献2に記載されている技術には、以下のような問題が存在する。
【0021】
第1の問題は、撮影した病理組織画像を占める組織の領域の割合が、そのまま、その範囲の重要性を示すものではないということである。
【0022】
例えば、乳がんの乳腺手術材料などのように病理組織スライドのほぼ全域に組織が存在する場合、病理組織スライドを撮影した病理組織画像もほぼ全域が組織で占められている。
【0023】
がんの場合、細胞核にその特徴が現れやすいため、細胞核を多く含む範囲の重要性が高いことが多い。そのため、病理医は、病理組織画像全域が組織で占められている様な場合、細胞核が多く含まれる領域をROIとし、拡大して観察する。
【0024】
一方、病理組織画像を占める組織の領域の割合が高くても、それが脂肪や間質のみの領域であれば、その範囲の重要性は低く、病理医は、がんの病理組織診断の際にそのような領域には注目しない。
【0025】
特許文献2に記載されている技術では、撮影した病理組織画像を小区画に分割し、組織の領域の割合が高い順に優先度を設けることができる。しかし、上述した様に、組織の領域が占める割合が高い範囲が、必ずしもROIと一致するわけではない。そのため、特許文献2に記載されている技術により各小区画に割り振られた優先度が、そのまま病理医がROIとして拡大して撮影する際の優先度になるとは限らない。
【0026】
そのため、病理組織画像から、単純に組織の領域が占める割合が高い領域を検出するのではなく、細胞核を多く含む領域など、病理医が病理組織診断の際に注目する領域であるROIを検出する必要がある。
【0027】
第2の問題は、特許文献2に記載されている技術では、病理医が操作しなければ、重要性が高く拡大して撮影する拡大撮影範囲を選択できないということである。
【0028】
第1の課題でも述べたように、特許文献2に記載されている技術により割り振られた優先度は、必ずしも病理医がROIとして拡大して撮影する際の優先度と一致しない。そのため、特許文献2に記載されている技術では、病理医が、病理組織撮影システムが割り振った優先度を参考にしながらモニタ上で撮影した病理組織画像を確認し、拡大撮影範囲を選択する必要がある。
【0029】
また、このように特許文献2に記載されている技術では病理医が操作しなければ拡大撮影範囲を選択できないため、特許文献1に記載されている病理組織診断支援システムと病理組織画像撮影システムを組み合わせた、病理組織画像の撮影から病理組織診断までを全て自動で行う自動病理組織診断支援システムに組み込むことができない。
【0030】
そのため、病理組織画像からROIを自動的に検出し、検出したROIを拡大撮影範囲として選択し、選択した拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影することが出来る必要がある。
【0031】
以上をまとめると、上述した第1および第2の問題を解決するためには、病理組織画像からROIを自動的に検出し、検出したROIを拡大撮影範囲として選択し、選択した拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影することが出来る必要があるという課題が存在する。
【0032】
本発明の目的は、上述した課題を解決することができる、病理組織画像撮影システム、病理組織画像撮影方法、および病理組織画像撮影プログラム、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0033】
上記目的を達成するために本発明の病理組織画像撮影システムは、
病理組織画像を撮影する病理画像取得部と、
前記病理組織画像を出力する出力部と、
前記病理組織画像からROIを検出し、当該ROIに位置する画素に重みを付加する重みづけ部と、
前記重みづけ部で付加された重みの値を基に、前記病理組織画像から拡大して撮影する拡大撮影範囲を選択する範囲選択部と、を有し、
前記病理画像取得部は、前記範囲選択部が選択した前記拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影し、
前記出力部は、前記拡大撮影範囲を拡大して撮影した病理組織画像を出力する病理組織画像撮影システムであって、
前記病理組織画像からがんと疑われる領域を検出するがん検出部をさらに有し、
前記病理画像取得部は、病理組織スライド上の標本組織に含まれる細胞核のパターンが認識できる倍率で病理組織画像を撮影し、
前記重みづけ部は、前記がん検出部が前記病理組織画像から検出したがんと疑われる領域の密集度を計算した値を各画素に密集度の重みとして付加し、
前記範囲選択部は、前記病理組織画像中の、前記密集度の重みの値が最大となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした規定の範囲を前記拡大撮影範囲として選択することを特徴とする。
【0034】
上記目的を達成するために本発明の病理組織画像撮影方法は、
病理組織画像を撮影して出力する病理組織画像撮影システムが行う病理組織画像撮影方法であって、
前記病理組織画像を撮影する撮影ステップと、
前記病理組織画像からROIを検出し、当該ROIに位置する画素に重みを付加する重みづけステップと、
前記重みづけステップで付加された重みの値を基に、前記病理組織画像から拡大して撮影する拡大撮影範囲を選択する範囲選択ステップと、
前記範囲選択ステップで選択した前記拡大範囲を拡大した病理組織画像を撮影する拡大撮影ステップと、
前記拡大撮影範囲を拡大して撮影した病理組織画像を出力する出力ステップと、
前記病理組織画像からがんと疑われる領域を検出するがん検出ステップと、有し、
前記撮影ステップにおいて、病理組織スライド上の標本組織に含まれる細胞核のパターンが認識できる倍率で前記病理組織画像を撮影し、
前記重みづけステップにおいて、前記がん検出ステップで前記病理組織画像から検出したがんと疑われる領域の密集度を計算した値を各画素に密集度の重みとして付加し、
前記範囲選択ステップにおいて、前記病理組織画像中の、前記密集度の重みの値が最大となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした規定の範囲を前記拡大撮影範囲として選択することを特徴とする。
【0035】
上記目的を達成するために本発明の病理組織画像撮影プログラムは、
病理組織画像を撮影して出力する病理組織画像撮影システムに、
前記病理組織画像を撮影する撮影手順と、
前記病理組織画像からROIを検出し、当該ROIに位置する画素に重みを付加する重みづけ手順と、
前記重みづけ手順で付加された重みの値を基に、前記病理組織画像から拡大して撮影する拡大撮影範囲を選択する範囲選択手順と、
前記範囲選択手順で選択した前記拡大範囲を拡大した病理組織画像を撮影する拡大撮影手順と、
前記拡大撮影範囲を拡大して撮影した病理組織画像を出力する出力手順と、
前記病理組織画像からがんと疑われる領域を検出するがん検出手順と、を実行させるための病理組織画像撮影プログラムであって、
前記撮影手順において、病理組織スライド上の標本組織に含まれる細胞核のパターンが認識できる倍率で前記病理組織画像を撮影し、
前記重みづけ手順において、前記がん検出手順で前記病理組織画像から検出したがんと疑われる領域の密集度を計算した値を各画素に密集度の重みとして付加し、
前記範囲選択手順において、前記病理組織画像中の、前記密集度の重みの値が最大となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした規定の範囲を前記拡大撮影範囲として選択することを特徴とする。
【発明の効果】
【0036】
本発明の病理組織画像撮影システムによれば、重みづけ部において、病理組織画像から自動的にROIを検出し、ROIに位置する画素に重みを付加し、範囲選択部において、各画素に付加された重みの値を基に、拡大して撮影する範囲を選択し、病理画像取得部において、選択した範囲を拡大した病理組織画像を撮影する構成となっている。
【0037】
また、これらの処理は病理医の操作が無くとも、全て自動で行われる。
【0038】
これにより、病理医の操作無しに、病理組織画像からROIを検出し、検出したROIを拡大撮影範囲として選択し、選択した拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影することが出来るという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1の実施形態の病理組織画像撮影システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した病理組織画像撮影システムの動作を説明するフローチャートである。
【図3】本発明の第2の実施形態の病理組織画像撮影システムの構成を示すブロック図である。
【図4】図3に示した病理組織画像撮影システムの動作を説明するフローチャートである。
【図5】本発明の第3の実施形態の病理組織画像撮影システムの構成を示すブロック図である。
【図6】図5に示した病理組織画像撮影システムの動作を説明するフローチャートである。
【図7】本発明の第4の実施形態の病理組織画像撮影システムの構成を示すブロック図である。
【図8】図7に示した病理組織画像撮影システムの動作を説明するフローチャートである。
【図9】図7に示した距離計算部による距離の重みの計算方法を説明する図である。
【図10】本発明の第5の実施形態の病理組織画像撮影システムの構成を示すブロック図である。
【図11】図10に示した病理組織画像撮影システムの動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1に、本発明の第1の実施形態の病理組織画像撮影システムの構成を示す。
【0041】
図1に示すように、本実施形態の病理組織画像撮影システムは、病理画像取得部100と、ROI決定部110と、出力部120と、を有する。
【0042】
病理画像取得部100は、任意の倍率で病理組織画像を撮影する手段である。病理画像取得部100は、顕微鏡視野中の病理組織スライドの任意の範囲を任意の倍率で病理組織画像として撮影することができ、種々の倍率(例えば、0.5倍、1倍、1.25倍、2.5倍、4倍、5倍、10倍、20倍、40倍、60倍、63倍、100倍など)の対物レンズを持つ顕微鏡やスキャナのCCDカメラからなる。
【0043】
ROI決定部110は、重みづけ部111と、範囲選択部112と、を有し、病理画像取得部100が撮影した病理組織画像からROIを検出し、検出したROIを拡大して撮影する拡大撮影範囲として選択する手段である。
【0044】
重みづけ部111は、病理画像取得部100が撮影した病理組織画像からROIを検出し、検出したROIに位置する画素に重みを付加する手段である。
【0045】
範囲選択部112は、重みづけ部111で付加された重みの値を基に、病理組織画像から拡大撮影範囲を選択する手段である。また、範囲選択部112は、選択した拡大撮影範囲の位置を病理画像取得部100に出力する。
【0046】
この出力を受け、病理画像取得部100は、範囲選択部112が選択した拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影する。
【0047】
出力部120は、病理画像取得部100が撮影した病理組織画像を出力する手段である。
【0048】
次に、本実施形態の病理組織画像撮影システムの動作について、図2のフローチャートを用いて説明する。
【0049】
まず、病理画像取得部100は、ROIを検出するのに適した任意の倍率で病理組織画像を撮影する(ステップS101)。
【0050】
次に、重みづけ部111は、ステップS101で撮影した病理組織画像からROIを検出する(ステップS102)。
【0051】
次に、重みづけ部111は、ステップS102で検出したROIに位置する画素に重みを付加する(ステップS103)。
【0052】
次に、範囲選択部112は、ステップS103で重みが付加された病理組織画像から、各画素の重みの値を基に、拡大撮影範囲を選択する(ステップS104)。この際に拡大撮影範囲として選択される範囲の大きさは、任意の大きさとする。
【0053】
次に、範囲選択部112は、あらかじめ設定された数分の拡大撮影範囲が得られたかを判定する(ステップS105)。
【0054】
範囲選択部112は、あらかじめ設定された数分の拡大撮影範囲が得られるまでステップS104を繰り返す。
【0055】
次に、範囲選択部112は、ステップS105で選択した全ての拡大撮影範囲の位置を病理画像取得部100に出力する。
【0056】
次に、病理画像取得部100は、ステップS105で選択した全ての拡大撮影範囲に対し、拡大撮影範囲を拡大した病理組画像を撮影する(ステップS106)。拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影する際の倍率は、ステップS101で病理組織画像を撮影した倍率よりも大きい任意の倍率とする。
【0057】
その後、出力部120は、ステップS106で拡大撮影範囲を拡大して撮影した病理組織画像を全て出力する(ステップS107)。
【0058】
上述したように、本実施形態の病理組織画像撮影システムにおいては、重みづけ部111において、病理組織画像からROIを検出し、検出したROIに位置する画素に重みを付加し、範囲選択部112において、各画素に付加された重みの値を基に、拡大撮影範囲を選択し、病理画像取得部において、選択した拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影する構成となっている。
【0059】
また、これらの処理は病理医の操作が無くとも、全て自動で行われる。
【0060】
これにより、病理組織画像からROIを自動的に検出し、検出したROIを拡大撮影範囲として選択し、選択した拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影することが出来るという効果が得られる。
(第2の実施形態)
図3に、本発明の第2の実施形態の病理組織画像撮影システムの構成を示す。
【0061】
図3に示すように、本実施形態の病理組織画像撮影システムは、図1に示した第1の実施形態と比較して、ROI決定部110をROI決定部210に変更した点が異なる。なお、その他の構成要素については第1の実施形態と同様であるため、図1と同様の符号を付し、説明を省略する。
【0062】
ROI決定部210は、重みづけ部211と、範囲選択部212と、を有し、病理画像取得部100が撮影した病理組織画像からROIを検出し、検出したROIを拡大撮影範囲として選択する手段である。
【0063】
重みづけ部211は、病理画像取得部100が撮影した病理組織画像中の細胞核の密集度を計算した値を各画素に重みとして付加する手段である。なお、本実施形態においては、重みづけ部211において病理組織スライド上の標本組織に含まれる細胞核の密集度を計算する必要があるため、病理画像取得部100は病理組織スライド上の標本組織全体が顕微鏡視野に収まる倍率で病理組織画像を撮影するものとする。
【0064】
重みづけ部211は、病理組織画像中の細胞核の密集度を計算するために、病理組織画像から細胞核のエッジを検出し、検出したエッジを多く含む領域を細胞核の密集度が高い領域とする。細胞核には、がんの特徴が現れやすいため、病理医は、がんの病理組織診断の際に細胞核の密集度が高い領域に注目する。そのため、本実施形態においては、細胞核のエッジを多く含む、細胞核の密集度が高い領域をROIとする。
【0065】
重みづけ部211における、病理組織画像中の細胞核の密集度を計算する具体的な方法を以下に示す。重みづけ部211は、病理組織画像に対し、まず、シアンの値を基にグレースケール化処理を行い、次に、平滑化処理を行い、次に、エッジ検出処理を行い、検出されたエッジの値を基に病理組織画像から階調画像を作成する。次に、重みづけ部211は、作成した階調画像の各画素を中心とした規定の範囲に含まれる画素のエッジの値の平均値を計算し、計算したエッジの値の平均値を各画素の細胞核の密集度とする。その後、重みづけ部211は、計算した細胞核の密集度の値を各画素に重みとして付加する。
【0066】
範囲選択部212は、病理組織画像中の、重みづけ部211で付加された重みの値が最大となる画素を選択し、選択した画素を中心とした規定の範囲を拡大撮影範囲として選択する手段である。また、範囲選択部212は、選択した拡大撮影範囲の位置を病理画像取得部100に出力する。
【0067】
この出力を受け、病理画像取得部100は、範囲選択部212が選択した拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影する。
【0068】
次に、本実施形態の病理組織画像撮影システムの動作について、図4のフローチャートを用いて説明する。
【0069】
まず、病理画像取得部100は、病理組織スライド上の標本組織全体が顕微鏡視野に収まる倍率で病理組織画像を撮影する(ステップS201)。
【0070】
次に、重みづけ部211は、ステップS201で撮影した病理組織画像中の細胞核の密集度を計算するために、病理組織画像の各画素のシアンの値を基に、病理組織画像にグレースケール化処理を行う(ステップS202)。
【0071】
HE染色により、病理組織スライド上の標本組織に含まれる細胞核は青紫色に染色され、それ以外の細胞質や繊維、赤血球などは淡紅色に染色されている。そのため、シアンの値をもとに病理組織画像をグレースケール化することにより、密集度の計算対象である細胞核のエッジを強調することができる。ステップS201で撮影した病理組織画像がRGB256ビット画像の場合には、以下に示す数式1によりシアンの値Cを求めることができる。
(数式1)
C=255−R
ここで、シアンの値CはRGB表現(R=Red,G=Green,B=Blue)でBとGを混ぜ合わせたB+Gで表すことができ、RはRGB表現のRである。
【0072】
次に、重みづけ部211は、ステップS202でグレースケール化された病理組織画像に対し、ノイズを除去するために、3×3画素のメディアンフィルタにより平滑化処理を行う(ステップS203)。
【0073】
3×3のメディアンフィルタとは、注目画素の周りの3×3=9画素のなかの中央値を出力とするフィルタである。なお、メディアンフィルタは3×3画素以外の任意の画素数を対象とするものでもよい。また、メディアンフィルタを用いなくとも、任意の平滑化のためのフィルタを用いてもよい。
【0074】
次に、重みづけ部111は、ステップS203でノイズを除去するために平滑化された病理組織画像に対し、細胞核のエッジを検出するために、プリューウィットエッジを計算する(ステップS204)。
【0075】
プリューウィットエッジは、以下に示す数式2のように、横方向のプリューウィットフィルタfx(x、y)と縦方向のプリューウィットフィルタfy(x、y)の絶対値和を求めることにより計算することができる。プリューウィットフィルタを用いなくとも、エッジを検出する他のフィルタを用いてもよい。
(数式2)
Δ(x,y)=|fx(x,y)|+|fy(x,y)|
次に、重みづけ部211は、ステップS204で求めた各画素のエッジの値であるプリューウィットフィルタ絶対値和の最小値と最大値を求める。
【0076】
次に、重みづけ部211は、求めたプリューウィットフィルタ絶対値和の最大値と最小値の差を5等分し、各画素をプリューウィットフィルタ絶対値和の値により5つのグループに振り分ける。この際、各画素は、振り分けられたグループの値(例えば1〜5)を重みとして付加される。なお、ここでは、振り分けられる画素のプリューウィットフィルタ絶対値和の値が大きいグループほど、大きなグループの値をもつものとする。また、各画素のプリューウィットフィルタ絶対値和の最大値と最小値の差を分ける方法は、5等分でなく、任意の分割方法、任意の分割数でもよい。
【0077】
次に、重みづけ部211は、各画素に付加された重みの値を基に、病理組織画像から5階調画像を作成する(ステップS205)。
【0078】
次に、重みづけ部211は、ステップS205で作成した5階調画像に対し、各画素を中心とした規定の範囲に含まれる画素の重みの値の平均値を計算し、エッジ平均画像を作成する(ステップS206)。また、この際に計算した重みの値の平均値を最終的な各画素の重みの値とする。これにより、周囲に細胞核のエッジを多く含む領域、つまり細胞核の密集度が高い領域に位置する画素ほど大きな値の重みが付加されることになる。
【0079】
なお、ここでは、各画素の周囲の重みの平均値を計算するのに用いる各画素を中心とした規定の範囲の大きさは、中心画素から33画素離れた範囲とする。周囲の重みの平均値を計算するのに用いる規定の範囲の大きさは、中心画素から任意の画素数離れた範囲でもよい。
【0080】
次に、範囲選択部212は、ステップS206で作成したエッジ平均画像から、重みの値が最大となる画素、つまり細胞核の密集度が最も高い領域に位置する画素を中心とした範囲を拡大撮影範囲として選択する(ステップS207)。この際に、拡大撮影範囲として選択する範囲の大きさは、任意の大きさとする。
【0081】
次に、範囲選択部212は、同じ範囲を拡大撮影範囲として複数回選択しないように、ステップS207で選択した拡大撮影範囲に含まれる画素の重みの値を0にする(ステップS208)。
【0082】
次に、範囲選択部212は、あらかじめ設定された数分の拡大撮影範囲が得られたかを判定する(ステップS209)。
【0083】
範囲選択部212は、あらかじめ設定された数分の拡大撮影範囲が得られるまでステップS207とステップS208を繰り返す。
【0084】
次に、範囲選択部212は、ステップS209で選択した全ての拡大撮影範囲の位置を病理画像取得部100に出力する。
【0085】
次に病理画像取得部100は、ステップS209で選択した全ての拡大撮影範囲に対し、拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影する(ステップS210)。拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影する際の倍率は、ステップS201で病理組織画像を撮影した倍率よりも大きい任意の倍率とする。
【0086】
その後、出力部120は、ステップS210で拡大撮影範囲を拡大して撮影した病理組織画像を全て出力する(ステップS211)。
【0087】
上述したように、本実施形態の病理組織画像撮影システムにおいては、重みづけ部211において、病理組織画像からがんの特徴が現れやすい細胞核の密集度が高い領域をROIとして検出し、ROIに位置する画素に重みを付加し、範囲選択部212において、各画素に付加された重みの値を基に、拡大撮影範囲を選択し、病理画像取得部100において、選択した拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影する構成となっている。
【0088】
また、これらの処理は病理医の操作が無くとも、全て自動で行われる。
【0089】
これにより、病理組織画像からROIを自動的に検出し、検出したROIを拡大撮影範囲として選択し、選択した拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影することが出来るという効果が得られる。
(第3の実施形態)
図5に、本発明の第3の実施形態の病理組織画像撮影システムの構成を示す。
【0090】
図5に示すように、本実施形態の病理組織画像撮影システムは、図3に示した第2の実施形態と比較して、ROI決定部210をROI決定部310に変更した点と、がん検出部330を追加した点が異なる。なお、その他の構成要素については第2の実施形態と同様であるため、図3と同様の符号を付し、説明を省略する。
【0091】
がん検出部330は、病理画像取得部100が撮影した病理組織画像からがんと疑われる領域を検出する手段である。また、がん検出部330は、病理組織画像から検出したがんと疑われる領域に位置する各画素に対しマークを付加する。なお、ここでは、がんと疑われる領域の検出手法として、特許文献1に記載されている病理組織画像の特徴を定量的に表す手法を用いることとする。がんと疑われる領域を検出する方法は、その他の任意の学習手法や画像処理手法を用いてもよい。
【0092】
なお、がん検出部330おいては、病理組織画像を撮影する際の倍率は、第2の実施形態で用いた病理組織スライド上の標本組織全体が顕微鏡視野に収まる倍率では、倍率が小さすぎるため、がんと疑われる領域を検出することができない。がん検出部330でがんと疑われる領域を検出するためには、病理組織画像において細胞核のパターンが認識できる必要がある。そのため、本実施形態においては、病理画像取得部100は、がん検出部330でがんと疑われる領域を検出することができる倍率である、病理組織スライド上の標本組織に含まれる細胞核のパターンが認識できる倍率で病理組織画像を撮影するものとする。なお、一般的には顕微鏡視野中(病理組織画像中)で細胞核のパターンが認識できる倍率は10倍程度とされている。
【0093】
ROI決定部310は、重みづけ部311と、範囲選択部312と、を有し、がん検出部330で病理組織画像から検出されたがんと疑われる領域をROIとし、ROIを拡大撮影範囲として選択する手段である。
【0094】
重みづけ部311は、がん検出部330が病理組織画像から検出したがんと疑われる領域の密集度を計算した値を各画素に密集度の重みCとして付加する手段である。重み付け部311は、病理組織画像中の、がん検出部330がマークを付加した画素を含む規定の範囲の全てのパターンに対し、規定の範囲の左上原点に位置する画素に一定の値を加算した値を密集度の重みCとする。
【0095】
なお、本実施形態においては、がん検出部330で検出されたがんと疑われる領域をROIとする。
【0096】
範囲選択部312は、病理組織画像中の、重みづけ部311で付加された密集度の重みCの値が最大となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした規定の範囲を拡大撮影範囲として選択する手段である。また、範囲選択部312は、選択した拡大撮影範囲の位置を病理画像取得部100に出力する。
【0097】
この出力を受け、病理画像取得部100は、範囲選択部312が選択した拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影する。
【0098】
次に、第3の実施形態の病理組織画像撮影システムの動作について図6のフローチャートを用いて説明する。
【0099】
まず、病理画像取得部100は、病理組織スライド上の標本組織の細胞核のパターンが認識できる倍率で病理組織画像を撮影する(ステップS301)。
【0100】
次に、がん検出部330は、ステップS301で撮影した病理組織画像から、特許文献1に記載されている病理組織画像の特徴を定量的に表す手法を用いて、がんと疑われる領域を検出し、検出した領域に位置する画素にマークを付加する(ステップS302)。
【0101】
次に、重みづけ部311は、ステップS302でがんと疑われる領域に位置する画素にマークが付加された病理組織画像に対し、全画素に対してがん検出部330でマークが付加された画素であるかを判定する(ステップS303)。
【0102】
ステップS303において、判定対象である注目画素にマークが付加されていた場合、重みづけ部311は、注目画素を含む幅W、高さHの規定の範囲の全てのパターンに対し、左上を原点とし、左上原点に位置する画素に一定の値を加算して行き、加算した値を密集度の重みCとする(ステップS304)。密集度の重みCは、各画素で保存され、加算されて行く。そのため、自己を左上原点とした幅W、高さHの規定の範囲内に、マークを付加された画素を多く含む画素ほど密集度の重みCの値が大きくなる。したがって、密集度の重みCの値が大きい画素ほど、がんと疑われる領域の密集度が高い領域、つまりROIとして重要性が高い領域に位置する画素を意味することになる。ここでは、1回の加算で密集度の重みCの値には1が加算されるものとするが、1でなくても任意の値でもよい。
【0103】
また、注目画素を含む規定の範囲の大きさとなる、幅Wと、高さH、の値は任意の値とする。
【0104】
また、ここでは、左上原点に位置する画素に重みを加算する方法を示したが、他に右上、左下、右下を原点として重みを加算する方法や、中心画素に重みを加算する方法、その他の任意の重みを加算する方法でもよい。
【0105】
次に、重みづけ部311は、ステップS303とステップS304の処理を、病理組織画像の全ての画素に対して行ったかを判定する(ステップS305)。
【0106】
重みづけ部311は、ステップS303とステップS304の処理を、病理組織画像の全ての画素に対して行うまで繰り返す(ステップS306)。
【0107】
次に、範囲選択部312は、ステップS304で付加された密集度の重みCの値が最大となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした幅W、高さHの規定の範囲を拡大撮影範囲として選択する(ステップS307)。
【0108】
次に、範囲選択部312は、同じ範囲を拡大撮影範囲として複数回選択しないように、ステップS307で選択した拡大撮影範囲に含まれる各画素が持つ密集度の重みCから、選択した拡大撮影範囲に含まれるマークが付加されている画素の数を減算する(ステップS308)。例えば、ステップS307で、選択した拡大撮影範囲にマークが付加された画素が3つ含まれる場合、拡大撮影範囲内の全ての画素のからおのおの密集度の重みCの値から3を減算する。また、重みの減算の方法はこれに限るものではなく、拡大撮影範囲内の各画素の密集度の重みCを全て0にする方法や、他の任意の重みを減算する方法でもよいものとする。
【0109】
次に、範囲選択部312は、あらかじめ設定されている数分の拡大撮影範囲が得られたかを判定する(ステップS309)。
【0110】
範囲選択部312は、あらかじめ設定されている数分の拡大撮影範囲が得られるまでステップS307とステップS308を繰り返す。
【0111】
次に、範囲選択部312は、ステップS309で選択した全ての拡大撮影範囲の位置を病理画像取得部100に出力する。
【0112】
次に、病理画像取得部100は、ステップS309で選択した全ての拡大撮影範囲に対し、拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影する(ステップS310)。拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影する際の倍率は、ステップS301で病理組織画像を撮影した倍率よりも大きい任意の倍率とする。
【0113】
その後、出力部120は、ステップS310で拡大撮影範囲を拡大して撮影した病理組織画像を全て出力する(ステップS311)。
【0114】
上述したように、本実施形態の病理組織画像撮影システムにおいては、がん検出部330において、病理組織画像からがんと疑われる領域を検出し、重みづけ部311において、検出されたがんと疑われる領域をROIとし、ROIに位置する画素に対し重みを付加し、範囲選択部312において、各画素に付加された重みの値を基に、拡大撮影範囲を選択し、病理画像取得部において、選択した拡大範囲撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影する構成となっている。
【0115】
また、これらの処理は病理医の操作が無くとも、全て自動で行われる。
【0116】
これにより、病理組織画像からROIを自動的に検出し、検出したROIを拡大撮影範囲として選択し、選択した拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影することが出来るという効果が得られる。
(第4の実施形態)
図7に、本発明の第4の実施形態の病理組織画像撮影システムの構成を示す。
【0117】
図7に示すように、本実施形態の病理組織画像撮影システムは、図5に示した第3の実施形態と比較して、ROI決定部310をROI決定部410に変更した点が異なる。なお、ROI決定部410は、ROI決定部310と比較して、範囲選択部312を範囲選択部412に変更した点と、距離計算部413を追加した点と、が異なる。その他の構成要素については第3の実施形態と同様であるため、図5と同一の符号を付し、説明を省略する。
【0118】
ROI決定部410は、重みづけ部311と、範囲選択部412と、距離計算部413と、を有し、がん検出部330で病理組織画像から検出されたがんと疑われる領域をROIとし、ROIを拡大撮影範囲として選択する手段である。
【0119】
距離計算部413は、病理画像取得部100が撮影した病理組織画像中の各画素を含む規定の範囲の全てのパターンに対し、各画素と規定の範囲の中心画素との距離を計算した値を規定の範囲の左上原点に位置する画素に距離の重みDとして付加する手段である。
【0120】
距離の重みDは、今注目している注目画素が今考えている規定の範囲の中心画素からどれだけ離れているかを表している。そのため、距離の重みDの値が小さい画素を左上原点に持つ規定の範囲ほど、ROIが中心に近い位置に存在することになる。したがって、範囲選択部412が拡大撮影範囲を選択する際に、左上原点に位置する画素の距離の重みDの値が小さい規定の範囲を選択することで、ROIを病理組織画像の中心に持っていくことができる。
【0121】
範囲選択部412は、病理組織画像中の、重みづけ部311で付加された密集度の重みCの値が最大となる画素を選択し、密集度の重みCの値が最大となる画素が複数存在する場合、それらの画素の中から距離計算部413で付加された距離の重みDの値が最小となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした規定の範囲を拡大撮影範囲として選択する手段である。また、範囲選択部412は、選択した拡大撮影範囲の位置を病理画像取得部100に出力する。
【0122】
この出力を受け、病理画像取得部100は、範囲選択部412が選択した拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影する。
【0123】
次に、本実施形態の病理組織画像撮影システムの動作について図8のフローチャートを用いて説明する。
【0124】
まず、病理画像取得部100は、病理組織スライド上の標本組織の細胞核のパターンが認識できる倍率で病理組織画像を撮影する(ステップS401)。
【0125】
次に、がん検出部330は、ステップS401で撮影した病理組織画像から、特許文献1に記載されている病理組織画像の特徴を定量的に表す手法を用いて、がんと疑われる領域を検出し、検出した領域に位置する画素にマークを付加する(ステップS402)。
【0126】
次に、重みづけ部311は、ステップS402でがんと疑われる領域に位置する画素にマークが付加された病理組織画像に対し、全画素に対してがん検出部330でマークが付加された画素であるかを判定する(ステップS403)。
【0127】
ステップS403において、判定対象である注目画素にマークが付加されていた場合、重みづけ部311は、注目画素を含む幅W、高さHの規定の範囲の全てのパターンに対し、左上を原点とし、左上原点に位置する画素に一定の値を加算して行き、加算した値を密集度の重みCとする(ステップS404)。
【0128】
次に、距離計算部413は、ステップS404で密集度の重みCが付加された病理組織画像に対し、各画素に距離の重みDを付加する(ステップS405)。
【0129】
距離の重みDの計算は次のように行う。距離計算部413は、がん検出部330でマークが付加されたがんと疑われる領域に位置する画素を含む、左上を原点とした幅W、高さHの規定の範囲の全てのパターンに対し、注目画素と今考えている規定の範囲の中心画素(X=W/2,Y=H/2)との距離を計算し、今考えている規定の範囲の左上原点に位置する画素に距離の重みDとして付加する。
【0130】
例えば、図9に示すように、幅W=7、高さH=7の範囲を規定の範囲として考えるとする。がん検出部330でマークが付加された注目画素が(2,2)の座標位置にあるとすると、この注目画素は今考えている幅W=7、高さH=7の規定の範囲の中心画素(4,4)から距離2√2だけ離れていることになる。この場合、今考えている規定の範囲の左上原点に位置する画素(1,1)に、距離の重みD=2√2を付加する。なお、左上原点に位置する画素(1,1)に、既に距離の重みDが付加されている場合、より小さい方の値を距離の重みDとして採用する。
【0131】
上述したように、ここでは、ステップS405において、マークが付加されたがんと疑われる領域に位置する注目画素と、考えている幅W、高さHの規定の範囲の中心画素と、の距離を計算し、距離の重みDとしているが、あらかじめ距離計算用マップを作成しておき、ステップS405において、距離計算用マップから対応する注目画素と中心画素との距離を取得するという方法でもよい。
【0132】
また、ここでは、考えている規定の範囲の左上を原点とし、左上原点に位置する画素に距離の重みDを付加する方法を示したが、他に右上、左下、右下などを原点として距離の重みDを付加する方法や、中心画素に距離の重みDを付加する方法、その他の任意の重みを付加する方法を用いてもよい。
【0133】
また、左上原点の画素に既に距離の重みDが付加されていた場合、小さい方の値を距離の重みDとして採用するとしたが、それらを加算する方法や、その他の方法を用いてもよい。
【0134】
なお、注目画素を含む規定の範囲の大きさとなる、幅Wと、高さH、の値は任意の値とする。
【0135】
次に、重みづけ部311と距離計算部413は、ステップS403〜ステップS405の処理を、病理組織画像の全ての画素に対して行ったかを判定する(ステップS406)。
【0136】
重みづけ部311と距離計算部413は、ステップS403〜ステップS405の処理を、病理組織画像の全ての画素に対して行うまで繰り返す(ステップS407)。
【0137】
次に、範囲選択部412は、ステップS404で付加された密集度の重みCの値が最大となる画素が、病理組織画像中に複数存在するかを判定する(ステップS408)。
【0138】
範囲選択部412は、密集度の重みCの値が最大となる画素が複数存在しない場合、密集度の重みCの値が最大となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした幅W、高さHの規定の範囲を拡大撮影範囲として選択する(ステップS409)。
【0139】
範囲選択部412は、密集度の重みCの値が最大となる画素が複数存在する場合、それらの画素の内、距離の重みDの値が最小となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした幅W、高さHの規定の範囲を拡大撮影範囲として選択する(ステップS410)。
【0140】
次に、範囲選択部412は、同じ範囲を拡大撮影範囲として複数回選択しないように、ステップS409〜ステップS410で選択した拡大撮影範囲内の各画素が持つ密集度の重みCから、選択した拡大撮影範囲に含まれるマークが付加されている画素の数を減算する(ステップS411)。
【0141】
次に、範囲選択部412は、あらかじめ設定されている数分の拡大撮影範囲が得られたかを判定する(ステップS412)。
【0142】
範囲選択部412は、あらかじめ設定されている数分の拡大撮影範囲が得られるまでステップS408〜ステップS411を繰り返す。
【0143】
次に、範囲選択部412は、選択した全ての拡大撮影範囲の位置を病理画像取得部100に出力する。
【0144】
次に、病理画像取得部100は、ステップS412で選択した全ての拡大撮影範囲に対し、拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影する(ステップS413)。拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影する際の倍率は、ステップS401で病理組織画像を撮影した倍率よりも大きい任意の倍率とする。
【0145】
その後、出力部120は、ステップS413で拡大撮影範囲を拡大して撮影した病理組織画像を全て出力する(ステップS414)。
【0146】
なお、本実施形態では、ステップS405で距離の重みDを付加するとしたが、ステップS408の後、密集度の重みCの値が最大となる画素が複数存在する場合にのみ、それらの画素について距離の重みDを計算してもよい。
【0147】
上述したように、本実施形態の病理組織画像撮影システムにおいては、がん検出部330において、病理組織画像からがんと疑われる領域を検出し、重みづけ部311と距離計算部413において、検出されたがんと疑われる領域をROIとし、ROIに位置する画素に対し重みを付加し、範囲選択部412において、各画素に付加された重みの値を基に、拡大撮影範囲を選択し、病理画像取得部100において、選択した拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影する構成となっている。
【0148】
また、これらの処理は病理医の操作が無くとも、全て自動で行われる。
【0149】
これにより、病理組織画像からROIを自動的に検出し、検出したROIを拡大撮影範囲として選択し、選択した拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影することが出来るという効果が得られる。
(第5の実施形態)
図10に、本発明の第5の実施形態の病理組織画像撮影システムの構成を示す。
【0150】
図10に示すように、本実施形態の病理組織画像撮影システムは、図7に示した第4の実施形態と比較して、ROI決定部410をROI決定部510に変更した点が異なる。なお、ROI決定部510は、ROI決定部410と比較して、範囲選択部412を範囲選択部512に変更した点と、組織領域計算部514を追加した点と、が異なる。その他の構成要素については第4の実施形態と同様であるため、図7と同一の符号を付し、説明を省略する。
【0151】
ROI決定部510は、重みづけ部311と、範囲選択部512と、距離計算部413と、組織領域計算部514と、を有し、がん検出部330で病理組織画像から検出されたがんと疑われる領域をROIとし、ROIを拡大撮影範囲として選択する手段である。
【0152】
組織領域計算部514は、病理画像取得部100が撮影した病理組織画像から組織の領域を検出し、各画素を左上原点とした規定の範囲内の組織の領域に位置する画素の数を計算した値を各画素に組織領域の重みRとして付加する手段である。組織領域計算部514は、病理組織画像から以下に示す3つの条件を全て満たす画素を検出し、それらの画素を組織の領域に位置する画素とする。
【0153】
組織領域計算部514が組織の領域に位置する画素を検出する際の条件は以下の通りである。
【0154】
(条件1)RとGとBの輝度のうち最大値が64以上となる。
【0155】
(条件2)RとBの輝度のうち小さい方の値からGの輝度を減じた値が10以上となる。
【0156】
(条件3)RとGとBの輝度のうち最大値と最小値の差をとったものに255を乗じた 値を、RとGとBの輝度のうち最大値で除した値が32以上となる。
【0157】
範囲選択部512は、病理組織画像中の、重みづけ部311で付加された密集度の重みCの値が最大となる画素を選択し、密集度の重みCの値が最大となる画素が複数存在する場合、それらの画素の中から距離計算部413で付加された距離の重みDの値が最小となる画素を選択し、距離の重みDの値が最小となる画素がさらに複数存在する場合、それらの画素の中から組織領域計算部514で付加された組織領域の重みRの値が最大となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした規定の範囲を拡大撮影範囲として選択する手段である。また範囲選択部512は、選択した拡大撮影範囲の位置を病理画像撮影部100に出力する。
【0158】
この出力を受け、病理画像取得部100は、範囲選択部512が選択した拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影する。
【0159】
次に、本実施形態の病理組織画像撮影システムの動作について図11のフローチャートを用いて説明する。
【0160】
まず、病理画像取得部100は、病理組織スライド上の標本組織の細胞核のパターンが認識できる倍率で病理組織画像を取得する(ステップS501)。
【0161】
次に、がん検出部330は、ステップS501で撮影した病理組織画像から、特許文献1に記載されている病理組織画像の特徴を定量的に表す手法を用いて、がんと疑われる領域を検出し、検出した領域に位置する画素にマークを付加する(ステップS502)。
【0162】
次に、重みづけ部311は、ステップS502でがんと疑われる領域に位置する画素にマークが付加された病理組織画像に対し、全画素に対してがん検出部330でマークが付加された画素であるかを判定する(ステップS503)。
【0163】
ステップS503において、判定対象である注目画素にマークが付加されていた場合、重みづけ部311は、注目画素を含む幅W、高さHの規定の範囲の全てのパターンに対し、左上を原点とし、左上原点に位置する画素に一定の値を加算して行き、加算した値を密集度の重みCとする(ステップS504)。
【0164】
次に、距離計算部413は、ステップS504で密集度の重みCが付加された病理組織画像に対し、各画素に距離の重みDを付加する(ステップS505)。
【0165】
次に、重みづけ部311と距離計算部413は、ステップS503〜ステップS505の処理を、病理組織画像の全ての画素に対して行ったかを判定する(ステップS506)。
【0166】
重みづけ部311と距離計算部413は、ステップS503〜ステップS505の処理を、病理組織画像の全ての画素に対して行うまで繰り返す(ステップS507)。
【0167】
次に、範囲選択部512は、ステップS504で付加された密集度の重みCの値が最大となる画素が、病理組織画像中に複数存在するかを判定する(ステップS508)。
【0168】
範囲選択部512は、密集度の重みCの値が最大となる画素が複数存在しない場合、密集度の重みCの値が最大となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした幅W、高さHの規定の範囲を拡大撮影範囲として選択する(ステップS509)。
【0169】
ステップS508で密集度の重みCの値が最大となる画素が複数存在する場合、範囲選択部512は、それらの画素の中から距離の重みDの値が最小となる画素が複数存在するかを判定する(ステップS510)。
【0170】
範囲選択部512は、距離の重みDの値が最小となる画素が複数存在しない場合、距離の重みDの値が最小となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした幅W、高さHの規定の範囲を拡大撮影範囲として選択する(ステップS511)。
【0171】
ステップS510で距離の重みDの値が最小となる画素が複数存在する場合、組織領域計算部514は、それらの画素について、注目画素を左上原点とした幅W、高さHの規定の範囲内に上述した3つの条件を全て満たす、組織の領域に位置する画素が何個含まれているかを計算し、計算した組織の領域に位置する画素の数を注目画素に組織領域の重みRとして付加する(ステップS512)。
【0172】
この際、組織領域計算部514は、組織の領域に位置する画素を検出するために、病理組織画像中の、RとGとBの輝度のうち最大値が64以上となる画素を選択し、選択した画素の中からRとBの輝度のうち小さい方の値からGの輝度を減じた値が10以上となる画素を選択し、選択した画素の中からRとGとBの輝度のうち最大値と最小値との差をとった値に255を乗じた値をRとGとBの輝度のうち最大値で除した値が32以上となる画素を選択し、選択した画素を組織の領域に位置する画素として検出する。
【0173】
なお、ここでは、上述した3つの条件を全て満たす画素を組織の領域に位置する画素として検出するものとしたが、他の組織の領域の検出方法を用いてもよい。
【0174】
また、ここではステップS512で病理組織画像から組織の領域を検出しているが、あらかじめ組織の領域を検出したマスク画像を作成しておき、ステップS512ではマスク画像を適用するという方法でもよい。
【0175】
また、ステップS505の後に、あらかじめ組織領域の重みRを各画素に対して計算し、付加しておいてもよい。
【0176】
次に、範囲選択部512は、ステップS510で距離の重みDの値が最小となる画素が複数存在する場合、ステップS512で付加された組織領域の重みRの値が最大となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした幅W、高さHの規定の範囲を拡大撮影範囲として選択する(ステップS513)。
【0177】
次に、範囲選択部512は、同じ範囲を拡大撮影範囲として複数回選択しないように、ステップS509〜ステップS513で選択した拡大撮影範囲内の各画素が持つ密集度の重みCから、選択した拡大撮影範囲に含まれるマークが付加されている画素の数を減算する(ステップS514)。
【0178】
次に、範囲選択部512は、あらかじめ設定されている数分の拡大撮影範囲が得られたかを判定する(ステップS515)。
【0179】
範囲選択部512は、あらかじめ設定されている数分の拡大撮影範囲が得られるまでステップS406〜ステップS413を繰り返す。
【0180】
次に、範囲選択部512は、ステップS515で選択した全ての拡大撮影範囲の位置を病理画像取得部100に出力する。
【0181】
次に、病理画像取得部100は、ステップS515で選択した全ての拡大撮影範囲に対し、拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影する(ステップS516)。拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影する際の倍率は、ステップS501で病理組織画像を撮影した倍率よりも大きい任意の倍率とする。
【0182】
その後、出力部120は、ステップS516で拡大撮影範囲を拡大して撮影した病理組織画像を全て出力する(ステップS517)。
【0183】
上述したように、本実施形態の病理組織画像撮影システムにおいては、がん検出部330において、病理組織画像からがんと疑われる領域を検出し、重みづけ部311と距離計算部413と組織領域計算部514において、検出されたがんと疑われる領域をROIとし、ROIに位置する画素に対し重みを付加し、範囲選択部512において、各画素に付加された重みの値を基に、拡大撮影範囲を選択し、病理画像取得部100において、選択した拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影する構成となっている。
【0184】
また、これらの処理は病理医の操作が無くとも、全て自動で行われる。
【0185】
これにより、病理組織画像からROIを自動的に検出し、検出したROIを拡大撮影範囲として選択し、選択した拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影することが出来るという効果が得られる。
【0186】
なお、上述した第1〜第5の実施形態の病理組織画像撮影システムは、一例であり、その構成及び動作は、発明の主旨を逸脱しない範囲で、適宜に変更可能である。
【0187】
例えば、最初に第2の実施形態を用いて細胞核の密集度が高い領域を検出し、検出した細胞核の密集度が高い領域を拡大した病理組織画像を撮影し、その後、第2の実施形態を用いて撮影した病理組織画像を基に、第3〜第5の実施形態を用いてがんと疑われる領域を検出し、検出した領域をさらに拡大して撮影する範囲として選択し、選択した範囲を拡大した病理組織画像を撮影するようにしても良い。
【0188】
また、例えば、第3〜第5の実施形態においては、がん検出部330でがんと疑わしい領域を検出しているが、他の病気を検出するシステムを組み込むことで、がん以外の病理組織診断に対応できるようにしても良い。
【0189】
また、例えば、特許文献1に記載されている病理組織診断支援システムと組み合わせることで、病理医の操作無しに、病理組織画像からROIに検出し、検出したROIを拡大して撮影した病理組織画像を基に正確な病理組織診断を行う、自動病理組織診断支援システムとしても良い。
【0190】
なお、本発明の病理組織画像撮影システムは、上述のように専用のハードウェアにより実現されるもの以外に、その機能を実現するためのプログラムを、病理組織画像撮影システムで読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムを病理組織画像撮影システムに読み込ませ、実行するものであってもよい。病理組織画像撮影システムで読み取り可能な記録媒体とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD−ROM等の記録媒体、病理組織画像撮影システムに内蔵されるハードディスク装置等の記憶装置を指す。さらに、病理組織画像撮影システムで読み取り可能な記録媒体は、インターネットを介してプログラムを送信する場合のように、短時間の間、動的に病理組織画像撮影システム内部の揮発性メモリのように一定時間プログラムを保持しているものを含む。
【符号の説明】
【0191】
100 病理画像取得部
110,210,310,410,510 ROI決定部
111,211,311 重みづけ部
112,212,312,412,512 範囲選択部
120 出力部
330 がん検出部
413 距離計算部
514 組織領域計算部
【技術分野】
【0001】
本発明は、病理組織画像から、拡大して撮影する範囲を選択し、選択した範囲を拡大した病理組織画像を撮影する、病理組織画像撮影システム、病理組織画像撮影方法、および病理組織画像撮影プログラム、に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の臨床医療現場では、X線、CT(Computed Tomography)、MRI(Magnetic Resonance Imaging)などの画像診断機器が進歩し、体内の微小な異物を探知することができるようになってきている。しかし、これらの画像診断機器は、体内の異物の位置情報をもたらすのみで、その異物の性質を特定することはできない。
【0003】
したがって、最終的には、病理医が画像診断機器で探知した異物から採取した標本組織を顕微鏡で観察し、探知した異物の性質が良性なのか悪性なのかを経験を基に診断(病理組織診断)している。
【0004】
特に、がんの病理組織診断は以下のように行われている。
【0005】
まず、異物から採取した標本組織を、固定するために脱水し、パラフィンによるブロック化の処理を行う。
【0006】
次に、ブロック化の処理を行った標本組織を4〜8マイクロメートルの厚さの薄片に切り取り、スライドグラスにのせ、病理組織スライドを作成する。
【0007】
次に、作成した病理組織スライド上の標本組織からパラフィンを取り除き、ヘマトキシリンとエオジンという染色液で染色する(HE染色)。HE染色により、標本組織に含まれる細胞核が青紫色に染色され、その他の細胞質や繊維、赤血球などが淡紅色に染色される。
【0008】
その後、病理医は、HE染色を行った病理組織スライドを顕微鏡で観察し、観察結果から得られる形態学的な情報をもとに病理組織診断を行う。
【0009】
この際、病理医は、まず、低倍率の対物レンズを通して病理組織スライド上の標本組織を観察し、標本組織の組織としてのパターンの変化(例えば、組織や細胞核の密集度の変化や、細胞核のパターンの変化など)を観察し、それらの観察結果からがんと疑われる領域のめぼしをつける。
【0010】
その後、病理医は、がんと疑われる領域を、高倍率の対物レンズを通して拡大して観察し、標本組織の細胞核の大きさや形の変化などを観察し、標本組織を採取した異物の性質を判定する。
【0011】
また、近年では、病理医は病理組織診断の際に、病理組織スライドを病理組織画像として撮影し、撮影した病理組織画像を基に診断を行うケースが増えてきている。
【0012】
顕微鏡視野中の病理組織スライドを病理組織画像として撮影することで、過去に撮影した病理組織画像や、各病気の典型的な病理組織画像と比較することが容易に出来るため、病理医はより正確な病理組織診断を行うことが出来る。
【0013】
また最近では、撮影した病理組織画像を解析し、病理組織画像から得られる標本組織の形態学的情報を基に、その標本組織が属する診断カテゴリーやその標本組織に含まれるがん細胞の悪性度を判定するなど、簡易の病理組織診断を行うことで、病理医による病理組織診断を支援する病理組織診断支援システムなどの開発が進んでいる。病理組織診断支援システムの例として、特許文献1には、病理組織画像の特徴を定量的に表し、病理組織学的特長に基づいた各診断カテゴリーへの適合度を計算することで、適合度の高い診断カテゴリー名を表示する技術が記載されている。
【0014】
この様な病理組織診断に用いられる病理組織画像は、顕微鏡に搭載されたCCD(Charge Coupled Device)カメラで撮影されるのが一般的である。
【0015】
以前は、撮影した病理組織画像を写真として現像する必要があったが、最近では撮影した病理組織画像をモニタ上で確認できるようになり、病理組織画像を写真として現像する時間を省き、病理組織診断に掛かる時間を短縮することが出来るようになってきている。
【0016】
また、撮影した病理組織画像を電子情報として保存することで、過去に撮影した病理組織画像などとの比較や、病理組織画像への画像処理などがより容易に行えるようになり、迅速な病理組織診断を行うことが出来るようになってきている。
【0017】
この様な、病理組織画像を撮影し、撮影した病理組織画像をモニタに出力する病理組織画像撮影システムには様々なものが提案されており、それらの中には、撮影した病理組織画像に画像処理等の処理を行うことで、病理医による病理組織診断を補助する技術も存在する。
【0018】
その一例として、特許文献2には、低倍率で撮影した病理組織画像を幾つかの小区画に分割し、各小区画に含まれる組織の領域の割合を計算し、組織の領域の割合が高い順に小区画に優先度を設けることで、病理医が病理組織診断の際に注目すべき領域(ROI:Region Of Interest)を判断する際の目安を提示する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2006−153742号公報
【特許文献2】特開平11−344676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかし、特許文献2に記載されている技術には、以下のような問題が存在する。
【0021】
第1の問題は、撮影した病理組織画像を占める組織の領域の割合が、そのまま、その範囲の重要性を示すものではないということである。
【0022】
例えば、乳がんの乳腺手術材料などのように病理組織スライドのほぼ全域に組織が存在する場合、病理組織スライドを撮影した病理組織画像もほぼ全域が組織で占められている。
【0023】
がんの場合、細胞核にその特徴が現れやすいため、細胞核を多く含む範囲の重要性が高いことが多い。そのため、病理医は、病理組織画像全域が組織で占められている様な場合、細胞核が多く含まれる領域をROIとし、拡大して観察する。
【0024】
一方、病理組織画像を占める組織の領域の割合が高くても、それが脂肪や間質のみの領域であれば、その範囲の重要性は低く、病理医は、がんの病理組織診断の際にそのような領域には注目しない。
【0025】
特許文献2に記載されている技術では、撮影した病理組織画像を小区画に分割し、組織の領域の割合が高い順に優先度を設けることができる。しかし、上述した様に、組織の領域が占める割合が高い範囲が、必ずしもROIと一致するわけではない。そのため、特許文献2に記載されている技術により各小区画に割り振られた優先度が、そのまま病理医がROIとして拡大して撮影する際の優先度になるとは限らない。
【0026】
そのため、病理組織画像から、単純に組織の領域が占める割合が高い領域を検出するのではなく、細胞核を多く含む領域など、病理医が病理組織診断の際に注目する領域であるROIを検出する必要がある。
【0027】
第2の問題は、特許文献2に記載されている技術では、病理医が操作しなければ、重要性が高く拡大して撮影する拡大撮影範囲を選択できないということである。
【0028】
第1の課題でも述べたように、特許文献2に記載されている技術により割り振られた優先度は、必ずしも病理医がROIとして拡大して撮影する際の優先度と一致しない。そのため、特許文献2に記載されている技術では、病理医が、病理組織撮影システムが割り振った優先度を参考にしながらモニタ上で撮影した病理組織画像を確認し、拡大撮影範囲を選択する必要がある。
【0029】
また、このように特許文献2に記載されている技術では病理医が操作しなければ拡大撮影範囲を選択できないため、特許文献1に記載されている病理組織診断支援システムと病理組織画像撮影システムを組み合わせた、病理組織画像の撮影から病理組織診断までを全て自動で行う自動病理組織診断支援システムに組み込むことができない。
【0030】
そのため、病理組織画像からROIを自動的に検出し、検出したROIを拡大撮影範囲として選択し、選択した拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影することが出来る必要がある。
【0031】
以上をまとめると、上述した第1および第2の問題を解決するためには、病理組織画像からROIを自動的に検出し、検出したROIを拡大撮影範囲として選択し、選択した拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影することが出来る必要があるという課題が存在する。
【0032】
本発明の目的は、上述した課題を解決することができる、病理組織画像撮影システム、病理組織画像撮影方法、および病理組織画像撮影プログラム、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0033】
上記目的を達成するために本発明の病理組織画像撮影システムは、
病理組織画像を撮影する病理画像取得部と、
前記病理組織画像を出力する出力部と、
前記病理組織画像からROIを検出し、当該ROIに位置する画素に重みを付加する重みづけ部と、
前記重みづけ部で付加された重みの値を基に、前記病理組織画像から拡大して撮影する拡大撮影範囲を選択する範囲選択部と、を有し、
前記病理画像取得部は、前記範囲選択部が選択した前記拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影し、
前記出力部は、前記拡大撮影範囲を拡大して撮影した病理組織画像を出力する病理組織画像撮影システムであって、
前記病理組織画像からがんと疑われる領域を検出するがん検出部をさらに有し、
前記病理画像取得部は、病理組織スライド上の標本組織に含まれる細胞核のパターンが認識できる倍率で病理組織画像を撮影し、
前記重みづけ部は、前記がん検出部が前記病理組織画像から検出したがんと疑われる領域の密集度を計算した値を各画素に密集度の重みとして付加し、
前記範囲選択部は、前記病理組織画像中の、前記密集度の重みの値が最大となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした規定の範囲を前記拡大撮影範囲として選択することを特徴とする。
【0034】
上記目的を達成するために本発明の病理組織画像撮影方法は、
病理組織画像を撮影して出力する病理組織画像撮影システムが行う病理組織画像撮影方法であって、
前記病理組織画像を撮影する撮影ステップと、
前記病理組織画像からROIを検出し、当該ROIに位置する画素に重みを付加する重みづけステップと、
前記重みづけステップで付加された重みの値を基に、前記病理組織画像から拡大して撮影する拡大撮影範囲を選択する範囲選択ステップと、
前記範囲選択ステップで選択した前記拡大範囲を拡大した病理組織画像を撮影する拡大撮影ステップと、
前記拡大撮影範囲を拡大して撮影した病理組織画像を出力する出力ステップと、
前記病理組織画像からがんと疑われる領域を検出するがん検出ステップと、有し、
前記撮影ステップにおいて、病理組織スライド上の標本組織に含まれる細胞核のパターンが認識できる倍率で前記病理組織画像を撮影し、
前記重みづけステップにおいて、前記がん検出ステップで前記病理組織画像から検出したがんと疑われる領域の密集度を計算した値を各画素に密集度の重みとして付加し、
前記範囲選択ステップにおいて、前記病理組織画像中の、前記密集度の重みの値が最大となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした規定の範囲を前記拡大撮影範囲として選択することを特徴とする。
【0035】
上記目的を達成するために本発明の病理組織画像撮影プログラムは、
病理組織画像を撮影して出力する病理組織画像撮影システムに、
前記病理組織画像を撮影する撮影手順と、
前記病理組織画像からROIを検出し、当該ROIに位置する画素に重みを付加する重みづけ手順と、
前記重みづけ手順で付加された重みの値を基に、前記病理組織画像から拡大して撮影する拡大撮影範囲を選択する範囲選択手順と、
前記範囲選択手順で選択した前記拡大範囲を拡大した病理組織画像を撮影する拡大撮影手順と、
前記拡大撮影範囲を拡大して撮影した病理組織画像を出力する出力手順と、
前記病理組織画像からがんと疑われる領域を検出するがん検出手順と、を実行させるための病理組織画像撮影プログラムであって、
前記撮影手順において、病理組織スライド上の標本組織に含まれる細胞核のパターンが認識できる倍率で前記病理組織画像を撮影し、
前記重みづけ手順において、前記がん検出手順で前記病理組織画像から検出したがんと疑われる領域の密集度を計算した値を各画素に密集度の重みとして付加し、
前記範囲選択手順において、前記病理組織画像中の、前記密集度の重みの値が最大となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした規定の範囲を前記拡大撮影範囲として選択することを特徴とする。
【発明の効果】
【0036】
本発明の病理組織画像撮影システムによれば、重みづけ部において、病理組織画像から自動的にROIを検出し、ROIに位置する画素に重みを付加し、範囲選択部において、各画素に付加された重みの値を基に、拡大して撮影する範囲を選択し、病理画像取得部において、選択した範囲を拡大した病理組織画像を撮影する構成となっている。
【0037】
また、これらの処理は病理医の操作が無くとも、全て自動で行われる。
【0038】
これにより、病理医の操作無しに、病理組織画像からROIを検出し、検出したROIを拡大撮影範囲として選択し、選択した拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影することが出来るという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1の実施形態の病理組織画像撮影システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した病理組織画像撮影システムの動作を説明するフローチャートである。
【図3】本発明の第2の実施形態の病理組織画像撮影システムの構成を示すブロック図である。
【図4】図3に示した病理組織画像撮影システムの動作を説明するフローチャートである。
【図5】本発明の第3の実施形態の病理組織画像撮影システムの構成を示すブロック図である。
【図6】図5に示した病理組織画像撮影システムの動作を説明するフローチャートである。
【図7】本発明の第4の実施形態の病理組織画像撮影システムの構成を示すブロック図である。
【図8】図7に示した病理組織画像撮影システムの動作を説明するフローチャートである。
【図9】図7に示した距離計算部による距離の重みの計算方法を説明する図である。
【図10】本発明の第5の実施形態の病理組織画像撮影システムの構成を示すブロック図である。
【図11】図10に示した病理組織画像撮影システムの動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1に、本発明の第1の実施形態の病理組織画像撮影システムの構成を示す。
【0041】
図1に示すように、本実施形態の病理組織画像撮影システムは、病理画像取得部100と、ROI決定部110と、出力部120と、を有する。
【0042】
病理画像取得部100は、任意の倍率で病理組織画像を撮影する手段である。病理画像取得部100は、顕微鏡視野中の病理組織スライドの任意の範囲を任意の倍率で病理組織画像として撮影することができ、種々の倍率(例えば、0.5倍、1倍、1.25倍、2.5倍、4倍、5倍、10倍、20倍、40倍、60倍、63倍、100倍など)の対物レンズを持つ顕微鏡やスキャナのCCDカメラからなる。
【0043】
ROI決定部110は、重みづけ部111と、範囲選択部112と、を有し、病理画像取得部100が撮影した病理組織画像からROIを検出し、検出したROIを拡大して撮影する拡大撮影範囲として選択する手段である。
【0044】
重みづけ部111は、病理画像取得部100が撮影した病理組織画像からROIを検出し、検出したROIに位置する画素に重みを付加する手段である。
【0045】
範囲選択部112は、重みづけ部111で付加された重みの値を基に、病理組織画像から拡大撮影範囲を選択する手段である。また、範囲選択部112は、選択した拡大撮影範囲の位置を病理画像取得部100に出力する。
【0046】
この出力を受け、病理画像取得部100は、範囲選択部112が選択した拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影する。
【0047】
出力部120は、病理画像取得部100が撮影した病理組織画像を出力する手段である。
【0048】
次に、本実施形態の病理組織画像撮影システムの動作について、図2のフローチャートを用いて説明する。
【0049】
まず、病理画像取得部100は、ROIを検出するのに適した任意の倍率で病理組織画像を撮影する(ステップS101)。
【0050】
次に、重みづけ部111は、ステップS101で撮影した病理組織画像からROIを検出する(ステップS102)。
【0051】
次に、重みづけ部111は、ステップS102で検出したROIに位置する画素に重みを付加する(ステップS103)。
【0052】
次に、範囲選択部112は、ステップS103で重みが付加された病理組織画像から、各画素の重みの値を基に、拡大撮影範囲を選択する(ステップS104)。この際に拡大撮影範囲として選択される範囲の大きさは、任意の大きさとする。
【0053】
次に、範囲選択部112は、あらかじめ設定された数分の拡大撮影範囲が得られたかを判定する(ステップS105)。
【0054】
範囲選択部112は、あらかじめ設定された数分の拡大撮影範囲が得られるまでステップS104を繰り返す。
【0055】
次に、範囲選択部112は、ステップS105で選択した全ての拡大撮影範囲の位置を病理画像取得部100に出力する。
【0056】
次に、病理画像取得部100は、ステップS105で選択した全ての拡大撮影範囲に対し、拡大撮影範囲を拡大した病理組画像を撮影する(ステップS106)。拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影する際の倍率は、ステップS101で病理組織画像を撮影した倍率よりも大きい任意の倍率とする。
【0057】
その後、出力部120は、ステップS106で拡大撮影範囲を拡大して撮影した病理組織画像を全て出力する(ステップS107)。
【0058】
上述したように、本実施形態の病理組織画像撮影システムにおいては、重みづけ部111において、病理組織画像からROIを検出し、検出したROIに位置する画素に重みを付加し、範囲選択部112において、各画素に付加された重みの値を基に、拡大撮影範囲を選択し、病理画像取得部において、選択した拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影する構成となっている。
【0059】
また、これらの処理は病理医の操作が無くとも、全て自動で行われる。
【0060】
これにより、病理組織画像からROIを自動的に検出し、検出したROIを拡大撮影範囲として選択し、選択した拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影することが出来るという効果が得られる。
(第2の実施形態)
図3に、本発明の第2の実施形態の病理組織画像撮影システムの構成を示す。
【0061】
図3に示すように、本実施形態の病理組織画像撮影システムは、図1に示した第1の実施形態と比較して、ROI決定部110をROI決定部210に変更した点が異なる。なお、その他の構成要素については第1の実施形態と同様であるため、図1と同様の符号を付し、説明を省略する。
【0062】
ROI決定部210は、重みづけ部211と、範囲選択部212と、を有し、病理画像取得部100が撮影した病理組織画像からROIを検出し、検出したROIを拡大撮影範囲として選択する手段である。
【0063】
重みづけ部211は、病理画像取得部100が撮影した病理組織画像中の細胞核の密集度を計算した値を各画素に重みとして付加する手段である。なお、本実施形態においては、重みづけ部211において病理組織スライド上の標本組織に含まれる細胞核の密集度を計算する必要があるため、病理画像取得部100は病理組織スライド上の標本組織全体が顕微鏡視野に収まる倍率で病理組織画像を撮影するものとする。
【0064】
重みづけ部211は、病理組織画像中の細胞核の密集度を計算するために、病理組織画像から細胞核のエッジを検出し、検出したエッジを多く含む領域を細胞核の密集度が高い領域とする。細胞核には、がんの特徴が現れやすいため、病理医は、がんの病理組織診断の際に細胞核の密集度が高い領域に注目する。そのため、本実施形態においては、細胞核のエッジを多く含む、細胞核の密集度が高い領域をROIとする。
【0065】
重みづけ部211における、病理組織画像中の細胞核の密集度を計算する具体的な方法を以下に示す。重みづけ部211は、病理組織画像に対し、まず、シアンの値を基にグレースケール化処理を行い、次に、平滑化処理を行い、次に、エッジ検出処理を行い、検出されたエッジの値を基に病理組織画像から階調画像を作成する。次に、重みづけ部211は、作成した階調画像の各画素を中心とした規定の範囲に含まれる画素のエッジの値の平均値を計算し、計算したエッジの値の平均値を各画素の細胞核の密集度とする。その後、重みづけ部211は、計算した細胞核の密集度の値を各画素に重みとして付加する。
【0066】
範囲選択部212は、病理組織画像中の、重みづけ部211で付加された重みの値が最大となる画素を選択し、選択した画素を中心とした規定の範囲を拡大撮影範囲として選択する手段である。また、範囲選択部212は、選択した拡大撮影範囲の位置を病理画像取得部100に出力する。
【0067】
この出力を受け、病理画像取得部100は、範囲選択部212が選択した拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影する。
【0068】
次に、本実施形態の病理組織画像撮影システムの動作について、図4のフローチャートを用いて説明する。
【0069】
まず、病理画像取得部100は、病理組織スライド上の標本組織全体が顕微鏡視野に収まる倍率で病理組織画像を撮影する(ステップS201)。
【0070】
次に、重みづけ部211は、ステップS201で撮影した病理組織画像中の細胞核の密集度を計算するために、病理組織画像の各画素のシアンの値を基に、病理組織画像にグレースケール化処理を行う(ステップS202)。
【0071】
HE染色により、病理組織スライド上の標本組織に含まれる細胞核は青紫色に染色され、それ以外の細胞質や繊維、赤血球などは淡紅色に染色されている。そのため、シアンの値をもとに病理組織画像をグレースケール化することにより、密集度の計算対象である細胞核のエッジを強調することができる。ステップS201で撮影した病理組織画像がRGB256ビット画像の場合には、以下に示す数式1によりシアンの値Cを求めることができる。
(数式1)
C=255−R
ここで、シアンの値CはRGB表現(R=Red,G=Green,B=Blue)でBとGを混ぜ合わせたB+Gで表すことができ、RはRGB表現のRである。
【0072】
次に、重みづけ部211は、ステップS202でグレースケール化された病理組織画像に対し、ノイズを除去するために、3×3画素のメディアンフィルタにより平滑化処理を行う(ステップS203)。
【0073】
3×3のメディアンフィルタとは、注目画素の周りの3×3=9画素のなかの中央値を出力とするフィルタである。なお、メディアンフィルタは3×3画素以外の任意の画素数を対象とするものでもよい。また、メディアンフィルタを用いなくとも、任意の平滑化のためのフィルタを用いてもよい。
【0074】
次に、重みづけ部111は、ステップS203でノイズを除去するために平滑化された病理組織画像に対し、細胞核のエッジを検出するために、プリューウィットエッジを計算する(ステップS204)。
【0075】
プリューウィットエッジは、以下に示す数式2のように、横方向のプリューウィットフィルタfx(x、y)と縦方向のプリューウィットフィルタfy(x、y)の絶対値和を求めることにより計算することができる。プリューウィットフィルタを用いなくとも、エッジを検出する他のフィルタを用いてもよい。
(数式2)
Δ(x,y)=|fx(x,y)|+|fy(x,y)|
次に、重みづけ部211は、ステップS204で求めた各画素のエッジの値であるプリューウィットフィルタ絶対値和の最小値と最大値を求める。
【0076】
次に、重みづけ部211は、求めたプリューウィットフィルタ絶対値和の最大値と最小値の差を5等分し、各画素をプリューウィットフィルタ絶対値和の値により5つのグループに振り分ける。この際、各画素は、振り分けられたグループの値(例えば1〜5)を重みとして付加される。なお、ここでは、振り分けられる画素のプリューウィットフィルタ絶対値和の値が大きいグループほど、大きなグループの値をもつものとする。また、各画素のプリューウィットフィルタ絶対値和の最大値と最小値の差を分ける方法は、5等分でなく、任意の分割方法、任意の分割数でもよい。
【0077】
次に、重みづけ部211は、各画素に付加された重みの値を基に、病理組織画像から5階調画像を作成する(ステップS205)。
【0078】
次に、重みづけ部211は、ステップS205で作成した5階調画像に対し、各画素を中心とした規定の範囲に含まれる画素の重みの値の平均値を計算し、エッジ平均画像を作成する(ステップS206)。また、この際に計算した重みの値の平均値を最終的な各画素の重みの値とする。これにより、周囲に細胞核のエッジを多く含む領域、つまり細胞核の密集度が高い領域に位置する画素ほど大きな値の重みが付加されることになる。
【0079】
なお、ここでは、各画素の周囲の重みの平均値を計算するのに用いる各画素を中心とした規定の範囲の大きさは、中心画素から33画素離れた範囲とする。周囲の重みの平均値を計算するのに用いる規定の範囲の大きさは、中心画素から任意の画素数離れた範囲でもよい。
【0080】
次に、範囲選択部212は、ステップS206で作成したエッジ平均画像から、重みの値が最大となる画素、つまり細胞核の密集度が最も高い領域に位置する画素を中心とした範囲を拡大撮影範囲として選択する(ステップS207)。この際に、拡大撮影範囲として選択する範囲の大きさは、任意の大きさとする。
【0081】
次に、範囲選択部212は、同じ範囲を拡大撮影範囲として複数回選択しないように、ステップS207で選択した拡大撮影範囲に含まれる画素の重みの値を0にする(ステップS208)。
【0082】
次に、範囲選択部212は、あらかじめ設定された数分の拡大撮影範囲が得られたかを判定する(ステップS209)。
【0083】
範囲選択部212は、あらかじめ設定された数分の拡大撮影範囲が得られるまでステップS207とステップS208を繰り返す。
【0084】
次に、範囲選択部212は、ステップS209で選択した全ての拡大撮影範囲の位置を病理画像取得部100に出力する。
【0085】
次に病理画像取得部100は、ステップS209で選択した全ての拡大撮影範囲に対し、拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影する(ステップS210)。拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影する際の倍率は、ステップS201で病理組織画像を撮影した倍率よりも大きい任意の倍率とする。
【0086】
その後、出力部120は、ステップS210で拡大撮影範囲を拡大して撮影した病理組織画像を全て出力する(ステップS211)。
【0087】
上述したように、本実施形態の病理組織画像撮影システムにおいては、重みづけ部211において、病理組織画像からがんの特徴が現れやすい細胞核の密集度が高い領域をROIとして検出し、ROIに位置する画素に重みを付加し、範囲選択部212において、各画素に付加された重みの値を基に、拡大撮影範囲を選択し、病理画像取得部100において、選択した拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影する構成となっている。
【0088】
また、これらの処理は病理医の操作が無くとも、全て自動で行われる。
【0089】
これにより、病理組織画像からROIを自動的に検出し、検出したROIを拡大撮影範囲として選択し、選択した拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影することが出来るという効果が得られる。
(第3の実施形態)
図5に、本発明の第3の実施形態の病理組織画像撮影システムの構成を示す。
【0090】
図5に示すように、本実施形態の病理組織画像撮影システムは、図3に示した第2の実施形態と比較して、ROI決定部210をROI決定部310に変更した点と、がん検出部330を追加した点が異なる。なお、その他の構成要素については第2の実施形態と同様であるため、図3と同様の符号を付し、説明を省略する。
【0091】
がん検出部330は、病理画像取得部100が撮影した病理組織画像からがんと疑われる領域を検出する手段である。また、がん検出部330は、病理組織画像から検出したがんと疑われる領域に位置する各画素に対しマークを付加する。なお、ここでは、がんと疑われる領域の検出手法として、特許文献1に記載されている病理組織画像の特徴を定量的に表す手法を用いることとする。がんと疑われる領域を検出する方法は、その他の任意の学習手法や画像処理手法を用いてもよい。
【0092】
なお、がん検出部330おいては、病理組織画像を撮影する際の倍率は、第2の実施形態で用いた病理組織スライド上の標本組織全体が顕微鏡視野に収まる倍率では、倍率が小さすぎるため、がんと疑われる領域を検出することができない。がん検出部330でがんと疑われる領域を検出するためには、病理組織画像において細胞核のパターンが認識できる必要がある。そのため、本実施形態においては、病理画像取得部100は、がん検出部330でがんと疑われる領域を検出することができる倍率である、病理組織スライド上の標本組織に含まれる細胞核のパターンが認識できる倍率で病理組織画像を撮影するものとする。なお、一般的には顕微鏡視野中(病理組織画像中)で細胞核のパターンが認識できる倍率は10倍程度とされている。
【0093】
ROI決定部310は、重みづけ部311と、範囲選択部312と、を有し、がん検出部330で病理組織画像から検出されたがんと疑われる領域をROIとし、ROIを拡大撮影範囲として選択する手段である。
【0094】
重みづけ部311は、がん検出部330が病理組織画像から検出したがんと疑われる領域の密集度を計算した値を各画素に密集度の重みCとして付加する手段である。重み付け部311は、病理組織画像中の、がん検出部330がマークを付加した画素を含む規定の範囲の全てのパターンに対し、規定の範囲の左上原点に位置する画素に一定の値を加算した値を密集度の重みCとする。
【0095】
なお、本実施形態においては、がん検出部330で検出されたがんと疑われる領域をROIとする。
【0096】
範囲選択部312は、病理組織画像中の、重みづけ部311で付加された密集度の重みCの値が最大となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした規定の範囲を拡大撮影範囲として選択する手段である。また、範囲選択部312は、選択した拡大撮影範囲の位置を病理画像取得部100に出力する。
【0097】
この出力を受け、病理画像取得部100は、範囲選択部312が選択した拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影する。
【0098】
次に、第3の実施形態の病理組織画像撮影システムの動作について図6のフローチャートを用いて説明する。
【0099】
まず、病理画像取得部100は、病理組織スライド上の標本組織の細胞核のパターンが認識できる倍率で病理組織画像を撮影する(ステップS301)。
【0100】
次に、がん検出部330は、ステップS301で撮影した病理組織画像から、特許文献1に記載されている病理組織画像の特徴を定量的に表す手法を用いて、がんと疑われる領域を検出し、検出した領域に位置する画素にマークを付加する(ステップS302)。
【0101】
次に、重みづけ部311は、ステップS302でがんと疑われる領域に位置する画素にマークが付加された病理組織画像に対し、全画素に対してがん検出部330でマークが付加された画素であるかを判定する(ステップS303)。
【0102】
ステップS303において、判定対象である注目画素にマークが付加されていた場合、重みづけ部311は、注目画素を含む幅W、高さHの規定の範囲の全てのパターンに対し、左上を原点とし、左上原点に位置する画素に一定の値を加算して行き、加算した値を密集度の重みCとする(ステップS304)。密集度の重みCは、各画素で保存され、加算されて行く。そのため、自己を左上原点とした幅W、高さHの規定の範囲内に、マークを付加された画素を多く含む画素ほど密集度の重みCの値が大きくなる。したがって、密集度の重みCの値が大きい画素ほど、がんと疑われる領域の密集度が高い領域、つまりROIとして重要性が高い領域に位置する画素を意味することになる。ここでは、1回の加算で密集度の重みCの値には1が加算されるものとするが、1でなくても任意の値でもよい。
【0103】
また、注目画素を含む規定の範囲の大きさとなる、幅Wと、高さH、の値は任意の値とする。
【0104】
また、ここでは、左上原点に位置する画素に重みを加算する方法を示したが、他に右上、左下、右下を原点として重みを加算する方法や、中心画素に重みを加算する方法、その他の任意の重みを加算する方法でもよい。
【0105】
次に、重みづけ部311は、ステップS303とステップS304の処理を、病理組織画像の全ての画素に対して行ったかを判定する(ステップS305)。
【0106】
重みづけ部311は、ステップS303とステップS304の処理を、病理組織画像の全ての画素に対して行うまで繰り返す(ステップS306)。
【0107】
次に、範囲選択部312は、ステップS304で付加された密集度の重みCの値が最大となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした幅W、高さHの規定の範囲を拡大撮影範囲として選択する(ステップS307)。
【0108】
次に、範囲選択部312は、同じ範囲を拡大撮影範囲として複数回選択しないように、ステップS307で選択した拡大撮影範囲に含まれる各画素が持つ密集度の重みCから、選択した拡大撮影範囲に含まれるマークが付加されている画素の数を減算する(ステップS308)。例えば、ステップS307で、選択した拡大撮影範囲にマークが付加された画素が3つ含まれる場合、拡大撮影範囲内の全ての画素のからおのおの密集度の重みCの値から3を減算する。また、重みの減算の方法はこれに限るものではなく、拡大撮影範囲内の各画素の密集度の重みCを全て0にする方法や、他の任意の重みを減算する方法でもよいものとする。
【0109】
次に、範囲選択部312は、あらかじめ設定されている数分の拡大撮影範囲が得られたかを判定する(ステップS309)。
【0110】
範囲選択部312は、あらかじめ設定されている数分の拡大撮影範囲が得られるまでステップS307とステップS308を繰り返す。
【0111】
次に、範囲選択部312は、ステップS309で選択した全ての拡大撮影範囲の位置を病理画像取得部100に出力する。
【0112】
次に、病理画像取得部100は、ステップS309で選択した全ての拡大撮影範囲に対し、拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影する(ステップS310)。拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影する際の倍率は、ステップS301で病理組織画像を撮影した倍率よりも大きい任意の倍率とする。
【0113】
その後、出力部120は、ステップS310で拡大撮影範囲を拡大して撮影した病理組織画像を全て出力する(ステップS311)。
【0114】
上述したように、本実施形態の病理組織画像撮影システムにおいては、がん検出部330において、病理組織画像からがんと疑われる領域を検出し、重みづけ部311において、検出されたがんと疑われる領域をROIとし、ROIに位置する画素に対し重みを付加し、範囲選択部312において、各画素に付加された重みの値を基に、拡大撮影範囲を選択し、病理画像取得部において、選択した拡大範囲撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影する構成となっている。
【0115】
また、これらの処理は病理医の操作が無くとも、全て自動で行われる。
【0116】
これにより、病理組織画像からROIを自動的に検出し、検出したROIを拡大撮影範囲として選択し、選択した拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影することが出来るという効果が得られる。
(第4の実施形態)
図7に、本発明の第4の実施形態の病理組織画像撮影システムの構成を示す。
【0117】
図7に示すように、本実施形態の病理組織画像撮影システムは、図5に示した第3の実施形態と比較して、ROI決定部310をROI決定部410に変更した点が異なる。なお、ROI決定部410は、ROI決定部310と比較して、範囲選択部312を範囲選択部412に変更した点と、距離計算部413を追加した点と、が異なる。その他の構成要素については第3の実施形態と同様であるため、図5と同一の符号を付し、説明を省略する。
【0118】
ROI決定部410は、重みづけ部311と、範囲選択部412と、距離計算部413と、を有し、がん検出部330で病理組織画像から検出されたがんと疑われる領域をROIとし、ROIを拡大撮影範囲として選択する手段である。
【0119】
距離計算部413は、病理画像取得部100が撮影した病理組織画像中の各画素を含む規定の範囲の全てのパターンに対し、各画素と規定の範囲の中心画素との距離を計算した値を規定の範囲の左上原点に位置する画素に距離の重みDとして付加する手段である。
【0120】
距離の重みDは、今注目している注目画素が今考えている規定の範囲の中心画素からどれだけ離れているかを表している。そのため、距離の重みDの値が小さい画素を左上原点に持つ規定の範囲ほど、ROIが中心に近い位置に存在することになる。したがって、範囲選択部412が拡大撮影範囲を選択する際に、左上原点に位置する画素の距離の重みDの値が小さい規定の範囲を選択することで、ROIを病理組織画像の中心に持っていくことができる。
【0121】
範囲選択部412は、病理組織画像中の、重みづけ部311で付加された密集度の重みCの値が最大となる画素を選択し、密集度の重みCの値が最大となる画素が複数存在する場合、それらの画素の中から距離計算部413で付加された距離の重みDの値が最小となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした規定の範囲を拡大撮影範囲として選択する手段である。また、範囲選択部412は、選択した拡大撮影範囲の位置を病理画像取得部100に出力する。
【0122】
この出力を受け、病理画像取得部100は、範囲選択部412が選択した拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影する。
【0123】
次に、本実施形態の病理組織画像撮影システムの動作について図8のフローチャートを用いて説明する。
【0124】
まず、病理画像取得部100は、病理組織スライド上の標本組織の細胞核のパターンが認識できる倍率で病理組織画像を撮影する(ステップS401)。
【0125】
次に、がん検出部330は、ステップS401で撮影した病理組織画像から、特許文献1に記載されている病理組織画像の特徴を定量的に表す手法を用いて、がんと疑われる領域を検出し、検出した領域に位置する画素にマークを付加する(ステップS402)。
【0126】
次に、重みづけ部311は、ステップS402でがんと疑われる領域に位置する画素にマークが付加された病理組織画像に対し、全画素に対してがん検出部330でマークが付加された画素であるかを判定する(ステップS403)。
【0127】
ステップS403において、判定対象である注目画素にマークが付加されていた場合、重みづけ部311は、注目画素を含む幅W、高さHの規定の範囲の全てのパターンに対し、左上を原点とし、左上原点に位置する画素に一定の値を加算して行き、加算した値を密集度の重みCとする(ステップS404)。
【0128】
次に、距離計算部413は、ステップS404で密集度の重みCが付加された病理組織画像に対し、各画素に距離の重みDを付加する(ステップS405)。
【0129】
距離の重みDの計算は次のように行う。距離計算部413は、がん検出部330でマークが付加されたがんと疑われる領域に位置する画素を含む、左上を原点とした幅W、高さHの規定の範囲の全てのパターンに対し、注目画素と今考えている規定の範囲の中心画素(X=W/2,Y=H/2)との距離を計算し、今考えている規定の範囲の左上原点に位置する画素に距離の重みDとして付加する。
【0130】
例えば、図9に示すように、幅W=7、高さH=7の範囲を規定の範囲として考えるとする。がん検出部330でマークが付加された注目画素が(2,2)の座標位置にあるとすると、この注目画素は今考えている幅W=7、高さH=7の規定の範囲の中心画素(4,4)から距離2√2だけ離れていることになる。この場合、今考えている規定の範囲の左上原点に位置する画素(1,1)に、距離の重みD=2√2を付加する。なお、左上原点に位置する画素(1,1)に、既に距離の重みDが付加されている場合、より小さい方の値を距離の重みDとして採用する。
【0131】
上述したように、ここでは、ステップS405において、マークが付加されたがんと疑われる領域に位置する注目画素と、考えている幅W、高さHの規定の範囲の中心画素と、の距離を計算し、距離の重みDとしているが、あらかじめ距離計算用マップを作成しておき、ステップS405において、距離計算用マップから対応する注目画素と中心画素との距離を取得するという方法でもよい。
【0132】
また、ここでは、考えている規定の範囲の左上を原点とし、左上原点に位置する画素に距離の重みDを付加する方法を示したが、他に右上、左下、右下などを原点として距離の重みDを付加する方法や、中心画素に距離の重みDを付加する方法、その他の任意の重みを付加する方法を用いてもよい。
【0133】
また、左上原点の画素に既に距離の重みDが付加されていた場合、小さい方の値を距離の重みDとして採用するとしたが、それらを加算する方法や、その他の方法を用いてもよい。
【0134】
なお、注目画素を含む規定の範囲の大きさとなる、幅Wと、高さH、の値は任意の値とする。
【0135】
次に、重みづけ部311と距離計算部413は、ステップS403〜ステップS405の処理を、病理組織画像の全ての画素に対して行ったかを判定する(ステップS406)。
【0136】
重みづけ部311と距離計算部413は、ステップS403〜ステップS405の処理を、病理組織画像の全ての画素に対して行うまで繰り返す(ステップS407)。
【0137】
次に、範囲選択部412は、ステップS404で付加された密集度の重みCの値が最大となる画素が、病理組織画像中に複数存在するかを判定する(ステップS408)。
【0138】
範囲選択部412は、密集度の重みCの値が最大となる画素が複数存在しない場合、密集度の重みCの値が最大となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした幅W、高さHの規定の範囲を拡大撮影範囲として選択する(ステップS409)。
【0139】
範囲選択部412は、密集度の重みCの値が最大となる画素が複数存在する場合、それらの画素の内、距離の重みDの値が最小となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした幅W、高さHの規定の範囲を拡大撮影範囲として選択する(ステップS410)。
【0140】
次に、範囲選択部412は、同じ範囲を拡大撮影範囲として複数回選択しないように、ステップS409〜ステップS410で選択した拡大撮影範囲内の各画素が持つ密集度の重みCから、選択した拡大撮影範囲に含まれるマークが付加されている画素の数を減算する(ステップS411)。
【0141】
次に、範囲選択部412は、あらかじめ設定されている数分の拡大撮影範囲が得られたかを判定する(ステップS412)。
【0142】
範囲選択部412は、あらかじめ設定されている数分の拡大撮影範囲が得られるまでステップS408〜ステップS411を繰り返す。
【0143】
次に、範囲選択部412は、選択した全ての拡大撮影範囲の位置を病理画像取得部100に出力する。
【0144】
次に、病理画像取得部100は、ステップS412で選択した全ての拡大撮影範囲に対し、拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影する(ステップS413)。拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影する際の倍率は、ステップS401で病理組織画像を撮影した倍率よりも大きい任意の倍率とする。
【0145】
その後、出力部120は、ステップS413で拡大撮影範囲を拡大して撮影した病理組織画像を全て出力する(ステップS414)。
【0146】
なお、本実施形態では、ステップS405で距離の重みDを付加するとしたが、ステップS408の後、密集度の重みCの値が最大となる画素が複数存在する場合にのみ、それらの画素について距離の重みDを計算してもよい。
【0147】
上述したように、本実施形態の病理組織画像撮影システムにおいては、がん検出部330において、病理組織画像からがんと疑われる領域を検出し、重みづけ部311と距離計算部413において、検出されたがんと疑われる領域をROIとし、ROIに位置する画素に対し重みを付加し、範囲選択部412において、各画素に付加された重みの値を基に、拡大撮影範囲を選択し、病理画像取得部100において、選択した拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影する構成となっている。
【0148】
また、これらの処理は病理医の操作が無くとも、全て自動で行われる。
【0149】
これにより、病理組織画像からROIを自動的に検出し、検出したROIを拡大撮影範囲として選択し、選択した拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影することが出来るという効果が得られる。
(第5の実施形態)
図10に、本発明の第5の実施形態の病理組織画像撮影システムの構成を示す。
【0150】
図10に示すように、本実施形態の病理組織画像撮影システムは、図7に示した第4の実施形態と比較して、ROI決定部410をROI決定部510に変更した点が異なる。なお、ROI決定部510は、ROI決定部410と比較して、範囲選択部412を範囲選択部512に変更した点と、組織領域計算部514を追加した点と、が異なる。その他の構成要素については第4の実施形態と同様であるため、図7と同一の符号を付し、説明を省略する。
【0151】
ROI決定部510は、重みづけ部311と、範囲選択部512と、距離計算部413と、組織領域計算部514と、を有し、がん検出部330で病理組織画像から検出されたがんと疑われる領域をROIとし、ROIを拡大撮影範囲として選択する手段である。
【0152】
組織領域計算部514は、病理画像取得部100が撮影した病理組織画像から組織の領域を検出し、各画素を左上原点とした規定の範囲内の組織の領域に位置する画素の数を計算した値を各画素に組織領域の重みRとして付加する手段である。組織領域計算部514は、病理組織画像から以下に示す3つの条件を全て満たす画素を検出し、それらの画素を組織の領域に位置する画素とする。
【0153】
組織領域計算部514が組織の領域に位置する画素を検出する際の条件は以下の通りである。
【0154】
(条件1)RとGとBの輝度のうち最大値が64以上となる。
【0155】
(条件2)RとBの輝度のうち小さい方の値からGの輝度を減じた値が10以上となる。
【0156】
(条件3)RとGとBの輝度のうち最大値と最小値の差をとったものに255を乗じた 値を、RとGとBの輝度のうち最大値で除した値が32以上となる。
【0157】
範囲選択部512は、病理組織画像中の、重みづけ部311で付加された密集度の重みCの値が最大となる画素を選択し、密集度の重みCの値が最大となる画素が複数存在する場合、それらの画素の中から距離計算部413で付加された距離の重みDの値が最小となる画素を選択し、距離の重みDの値が最小となる画素がさらに複数存在する場合、それらの画素の中から組織領域計算部514で付加された組織領域の重みRの値が最大となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした規定の範囲を拡大撮影範囲として選択する手段である。また範囲選択部512は、選択した拡大撮影範囲の位置を病理画像撮影部100に出力する。
【0158】
この出力を受け、病理画像取得部100は、範囲選択部512が選択した拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影する。
【0159】
次に、本実施形態の病理組織画像撮影システムの動作について図11のフローチャートを用いて説明する。
【0160】
まず、病理画像取得部100は、病理組織スライド上の標本組織の細胞核のパターンが認識できる倍率で病理組織画像を取得する(ステップS501)。
【0161】
次に、がん検出部330は、ステップS501で撮影した病理組織画像から、特許文献1に記載されている病理組織画像の特徴を定量的に表す手法を用いて、がんと疑われる領域を検出し、検出した領域に位置する画素にマークを付加する(ステップS502)。
【0162】
次に、重みづけ部311は、ステップS502でがんと疑われる領域に位置する画素にマークが付加された病理組織画像に対し、全画素に対してがん検出部330でマークが付加された画素であるかを判定する(ステップS503)。
【0163】
ステップS503において、判定対象である注目画素にマークが付加されていた場合、重みづけ部311は、注目画素を含む幅W、高さHの規定の範囲の全てのパターンに対し、左上を原点とし、左上原点に位置する画素に一定の値を加算して行き、加算した値を密集度の重みCとする(ステップS504)。
【0164】
次に、距離計算部413は、ステップS504で密集度の重みCが付加された病理組織画像に対し、各画素に距離の重みDを付加する(ステップS505)。
【0165】
次に、重みづけ部311と距離計算部413は、ステップS503〜ステップS505の処理を、病理組織画像の全ての画素に対して行ったかを判定する(ステップS506)。
【0166】
重みづけ部311と距離計算部413は、ステップS503〜ステップS505の処理を、病理組織画像の全ての画素に対して行うまで繰り返す(ステップS507)。
【0167】
次に、範囲選択部512は、ステップS504で付加された密集度の重みCの値が最大となる画素が、病理組織画像中に複数存在するかを判定する(ステップS508)。
【0168】
範囲選択部512は、密集度の重みCの値が最大となる画素が複数存在しない場合、密集度の重みCの値が最大となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした幅W、高さHの規定の範囲を拡大撮影範囲として選択する(ステップS509)。
【0169】
ステップS508で密集度の重みCの値が最大となる画素が複数存在する場合、範囲選択部512は、それらの画素の中から距離の重みDの値が最小となる画素が複数存在するかを判定する(ステップS510)。
【0170】
範囲選択部512は、距離の重みDの値が最小となる画素が複数存在しない場合、距離の重みDの値が最小となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした幅W、高さHの規定の範囲を拡大撮影範囲として選択する(ステップS511)。
【0171】
ステップS510で距離の重みDの値が最小となる画素が複数存在する場合、組織領域計算部514は、それらの画素について、注目画素を左上原点とした幅W、高さHの規定の範囲内に上述した3つの条件を全て満たす、組織の領域に位置する画素が何個含まれているかを計算し、計算した組織の領域に位置する画素の数を注目画素に組織領域の重みRとして付加する(ステップS512)。
【0172】
この際、組織領域計算部514は、組織の領域に位置する画素を検出するために、病理組織画像中の、RとGとBの輝度のうち最大値が64以上となる画素を選択し、選択した画素の中からRとBの輝度のうち小さい方の値からGの輝度を減じた値が10以上となる画素を選択し、選択した画素の中からRとGとBの輝度のうち最大値と最小値との差をとった値に255を乗じた値をRとGとBの輝度のうち最大値で除した値が32以上となる画素を選択し、選択した画素を組織の領域に位置する画素として検出する。
【0173】
なお、ここでは、上述した3つの条件を全て満たす画素を組織の領域に位置する画素として検出するものとしたが、他の組織の領域の検出方法を用いてもよい。
【0174】
また、ここではステップS512で病理組織画像から組織の領域を検出しているが、あらかじめ組織の領域を検出したマスク画像を作成しておき、ステップS512ではマスク画像を適用するという方法でもよい。
【0175】
また、ステップS505の後に、あらかじめ組織領域の重みRを各画素に対して計算し、付加しておいてもよい。
【0176】
次に、範囲選択部512は、ステップS510で距離の重みDの値が最小となる画素が複数存在する場合、ステップS512で付加された組織領域の重みRの値が最大となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした幅W、高さHの規定の範囲を拡大撮影範囲として選択する(ステップS513)。
【0177】
次に、範囲選択部512は、同じ範囲を拡大撮影範囲として複数回選択しないように、ステップS509〜ステップS513で選択した拡大撮影範囲内の各画素が持つ密集度の重みCから、選択した拡大撮影範囲に含まれるマークが付加されている画素の数を減算する(ステップS514)。
【0178】
次に、範囲選択部512は、あらかじめ設定されている数分の拡大撮影範囲が得られたかを判定する(ステップS515)。
【0179】
範囲選択部512は、あらかじめ設定されている数分の拡大撮影範囲が得られるまでステップS406〜ステップS413を繰り返す。
【0180】
次に、範囲選択部512は、ステップS515で選択した全ての拡大撮影範囲の位置を病理画像取得部100に出力する。
【0181】
次に、病理画像取得部100は、ステップS515で選択した全ての拡大撮影範囲に対し、拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影する(ステップS516)。拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影する際の倍率は、ステップS501で病理組織画像を撮影した倍率よりも大きい任意の倍率とする。
【0182】
その後、出力部120は、ステップS516で拡大撮影範囲を拡大して撮影した病理組織画像を全て出力する(ステップS517)。
【0183】
上述したように、本実施形態の病理組織画像撮影システムにおいては、がん検出部330において、病理組織画像からがんと疑われる領域を検出し、重みづけ部311と距離計算部413と組織領域計算部514において、検出されたがんと疑われる領域をROIとし、ROIに位置する画素に対し重みを付加し、範囲選択部512において、各画素に付加された重みの値を基に、拡大撮影範囲を選択し、病理画像取得部100において、選択した拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影する構成となっている。
【0184】
また、これらの処理は病理医の操作が無くとも、全て自動で行われる。
【0185】
これにより、病理組織画像からROIを自動的に検出し、検出したROIを拡大撮影範囲として選択し、選択した拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影することが出来るという効果が得られる。
【0186】
なお、上述した第1〜第5の実施形態の病理組織画像撮影システムは、一例であり、その構成及び動作は、発明の主旨を逸脱しない範囲で、適宜に変更可能である。
【0187】
例えば、最初に第2の実施形態を用いて細胞核の密集度が高い領域を検出し、検出した細胞核の密集度が高い領域を拡大した病理組織画像を撮影し、その後、第2の実施形態を用いて撮影した病理組織画像を基に、第3〜第5の実施形態を用いてがんと疑われる領域を検出し、検出した領域をさらに拡大して撮影する範囲として選択し、選択した範囲を拡大した病理組織画像を撮影するようにしても良い。
【0188】
また、例えば、第3〜第5の実施形態においては、がん検出部330でがんと疑わしい領域を検出しているが、他の病気を検出するシステムを組み込むことで、がん以外の病理組織診断に対応できるようにしても良い。
【0189】
また、例えば、特許文献1に記載されている病理組織診断支援システムと組み合わせることで、病理医の操作無しに、病理組織画像からROIに検出し、検出したROIを拡大して撮影した病理組織画像を基に正確な病理組織診断を行う、自動病理組織診断支援システムとしても良い。
【0190】
なお、本発明の病理組織画像撮影システムは、上述のように専用のハードウェアにより実現されるもの以外に、その機能を実現するためのプログラムを、病理組織画像撮影システムで読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムを病理組織画像撮影システムに読み込ませ、実行するものであってもよい。病理組織画像撮影システムで読み取り可能な記録媒体とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD−ROM等の記録媒体、病理組織画像撮影システムに内蔵されるハードディスク装置等の記憶装置を指す。さらに、病理組織画像撮影システムで読み取り可能な記録媒体は、インターネットを介してプログラムを送信する場合のように、短時間の間、動的に病理組織画像撮影システム内部の揮発性メモリのように一定時間プログラムを保持しているものを含む。
【符号の説明】
【0191】
100 病理画像取得部
110,210,310,410,510 ROI決定部
111,211,311 重みづけ部
112,212,312,412,512 範囲選択部
120 出力部
330 がん検出部
413 距離計算部
514 組織領域計算部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
病理組織画像を撮影する病理画像取得部と、
前記病理組織画像を出力する出力部と、
前記病理組織画像からROIを検出し、当該ROIに位置する画素に重みを付加する重みづけ部と、
前記重みづけ部で付加された重みの値を基に、前記病理組織画像から拡大して撮影する拡大撮影範囲を選択する範囲選択部と、を有し、
前記病理画像取得部は、前記範囲選択部が選択した前記拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影し、
前記出力部は、前記拡大撮影範囲を拡大して撮影した病理組織画像を出力する病理組織画像撮影システムであって、
前記病理組織画像からがんと疑われる領域を検出するがん検出部をさらに有し、
前記病理画像取得部は、病理組織スライド上の標本組織に含まれる細胞核のパターンが認識できる倍率で病理組織画像を撮影し、
前記重みづけ部は、前記がん検出部が前記病理組織画像から検出したがんと疑われる領域の密集度を計算した値を各画素に密集度の重みとして付加し、
前記範囲選択部は、前記病理組織画像中の、前記密集度の重みの値が最大となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした規定の範囲を前記拡大撮影範囲として選択することを特徴とする病理組織画像撮影システム。
【請求項2】
前記がん検出部は、前記病理組織画像から検出したがんと疑われる領域に位置する各画素に対しマークを付加し、
前記重みづけ部は、前記病理組織画像中の、前記がん検出部がマークを付加した画素を含む前記規定の範囲の全てのパターンに対し、前記規定の範囲の左上原点に位置する画素に一定の値を加算した値を密集度の重みとする、請求項1に記載の病理組織画像撮影システム。
【請求項3】
前記病理組織画像中の各画素を含む前記規定の範囲の全てのパターンに対し、各画素と前記規定の範囲の中心画素との距離を計算した値を前記規定の範囲の左上原点に位置する画素に距離の重みとして付加する距離計算部をさらに有し、
前記範囲選択部は、前記病理組織画像中の、前記密集度の重みの値が最大となる画素を選択し、当該画素が複数存在する場合、当該画素の中から前記距離の重みの値が最小となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした前記規定の範囲を前記拡大撮影範囲として選択する、請求項2に記載の病理組織画像撮影システム。
【請求項4】
前記病理組織画像から組織の領域を検出し、各画素を左上原点とした前記規定の範囲に含まれる組織の領域に位置する画素の数を計算した値を各画素に組織領域の重みとして付加する組織領域計算部をさらに有し、
前記範囲選択部は、前記病理組織画像中の、前記密集度の重み値が最大となる画素を選択し、当該画素が複数存在する場合、当該画素の中から前記距離の重みの値が最小となる画素を選択し、当該画素がさらに複数存在する場合、当該画素の中から前記組織領域の重みの値が最大となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした前記規定の範囲を前記拡大撮影範囲として選択する、請求項3に記載の病理組織画像撮影システム。
【請求項5】
前記組織領域計算部は、前記病理組織画像中の、RとGとBの輝度のうち最大値が64以上となる画素を選択し、選択した画素の中からRとBの輝度のうち小さい方の値からGの輝度を減じた値が10以上となる画素を選択し、選択した画素の中からRとGとBの輝度のうち最大値と最小値との差をとった値に255を乗じた値を当該最大値で除した値が32以上となる画素を選択し、選択した画素を前記組織の領域に位置する画素として検出する、請求項4に記載の病理組織画像撮影システム。
【請求項6】
病理組織画像を撮影して出力する病理組織画像撮影システムが行う病理組織画像撮影方法であって、
前記病理組織画像を撮影する撮影ステップと、
前記病理組織画像からROIを検出し、当該ROIに位置する画素に重みを付加する重みづけステップと、
前記重みづけステップで付加された重みの値を基に、前記病理組織画像から拡大して撮影する拡大撮影範囲を選択する範囲選択ステップと、
前記範囲選択ステップで選択した前記拡大範囲を拡大した病理組織画像を撮影する拡大撮影ステップと、
前記拡大撮影範囲を拡大して撮影した病理組織画像を出力する出力ステップと、
前記病理組織画像からがんと疑われる領域を検出するがん検出ステップと、有し、
前記撮影ステップにおいて、病理組織スライド上の標本組織に含まれる細胞核のパターンが認識できる倍率で前記病理組織画像を撮影し、
前記重みづけステップにおいて、前記がん検出ステップで前記病理組織画像から検出したがんと疑われる領域の密集度を計算した値を各画素に密集度の重みとして付加し、
前記範囲選択ステップにおいて、前記病理組織画像中の、前記密集度の重みの値が最大となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした規定の範囲を前記拡大撮影範囲として選択することを特徴とする病理組織画像撮影方法。
【請求項7】
前記がん検出ステップにおいて、前記病理組織画像から検出したがんと疑われる領域に位置する各画素に対しマークを付加し、
前記重みづけステップにおいて、前記病理組織画像中の、前記がん検出ステップでマークを付加した画素を含む前記規定の範囲の全てのパターンに対し、前記規定の範囲の左上原点に位置する画素に一定の値を加算した値を密集度の重みとする、請求項6に記載の病理組織画像撮影方法。
【請求項8】
前記病理組織画像中の各画素を含む前記規定の範囲の全てのパターンに対し、各画素と前記規定の範囲の中心画素との距離を計算した値を前記規定の範囲の左上原点に位置する画素に距離の重みとして付加する距離計算ステップをさらに有し、
前記範囲選択ステップにおいて、前記病理組織画像中の、前記密集度の重みの値が最大となる画素を選択し、当該画素が複数存在する場合、当該画素の中から前記距離の重みの値が最小となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした前記規定の範囲を前記拡大撮影範囲として選択する、請求項7に記載の病理組織画像撮影方法。
【請求項9】
前記病理組織画像から組織の領域を検出し、各画素を左上原点とした前記規定の範囲に含まれる組織の領域に位置する画素の数を計算した値を各画素に組織領域の重みとして付加する組織領域計算ステップをさらに有し、
前記範囲選択ステップにおいて、前記病理組織画像中の、前記密集度の重み値が最大となる画素を選択し、当該画素が複数存在する場合、当該画素の中から前記距離の重みの値が最小となる画素を選択し、当該画素がさらに複数存在する場合、当該画素の中から前記組織領域の重みの値が最大となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした前記規定の範囲を前記拡大撮影範囲として選択する、請求項8に記載の病理組織画像撮影方法。
【請求項10】
前記組織領域計算ステップにおいて、前記病理組織画像中の、RとGとBの輝度のうち最大値が64以上となる画素を選択し、選択した画素の中からRとBの輝度のうち小さい方の値からGの輝度を減じた値が10以上となる画素を選択し、選択した画素の中からRとGとBの輝度のうち最大値と最小値との差をとった値に255を乗じた値を当該最大値で除した値が32以上となる画素を選択し、選択した画素を前記組織の領域に位置する画素として検出する、請求項9に記載の病理組織画像撮影方法。
【請求項11】
病理組織画像を撮影して出力する病理組織画像撮影システムに、
前記病理組織画像を撮影する撮影手順と、
前記病理組織画像からROIを検出し、当該ROIに位置する画素に重みを付加する重みづけ手順と、
前記重みづけ手順で付加された重みの値を基に、前記病理組織画像から拡大して撮影する拡大撮影範囲を選択する範囲選択手順と、
前記範囲選択手順で選択した前記拡大範囲を拡大した病理組織画像を撮影する拡大撮影手順と、
前記拡大撮影範囲を拡大して撮影した病理組織画像を出力する出力手順と、
前記病理組織画像からがんと疑われる領域を検出するがん検出手順と、を実行させるための病理組織画像撮影プログラムであって、
前記撮影手順において、病理組織スライド上の標本組織に含まれる細胞核のパターンが認識できる倍率で前記病理組織画像を撮影し、
前記重みづけ手順において、前記がん検出手順で前記病理組織画像から検出したがんと疑われる領域の密集度を計算した値を各画素に密集度の重みとして付加し、
前記範囲選択手順において、前記病理組織画像中の、前記密集度の重みの値が最大となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした規定の範囲を前記拡大撮影範囲として選択することを特徴とする病理組織画像撮影プログラム。
【請求項12】
前記がん検出手順において、前記病理組織画像から検出したがんと疑われる領域に位置する各画素に対しマークを付加し、
前記重みづけ手順において、前記病理組織画像中の、前記がん検出手順でマークを付加した画素を含む前記規定の範囲の全てのパターンに対し、前記規定の範囲の左上原点に位置する画素に一定の値を加算した値を密集度の重みとする、請求項11に記載の病理組織画像撮影プログラム。
【請求項13】
前記病理組織画像中の各画素を含む前記規定の範囲の全てのパターンに対し、各画素と前記規定の範囲の中心画素との距離を計算した値を前記規定の範囲の左上原点に位置する画素に距離の重みとして付加する距離計算手順をさらに有し、
前記範囲選択手順において、前記病理組織画像中の、前記密集度の重みの値が最大となる画素を選択し、当該画素が複数存在する場合、当該画素の中から前記距離の重みの値が最小となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした前記規定の範囲を前記拡大撮影範囲として選択する、請求項12に記載の病理組織画像撮影プログラム。
【請求項14】
前記病理組織画像から組織の領域を検出し、各画素を左上原点とした前記規定の範囲に含まれる組織の領域に位置する画素の数を計算した値を各画素に組織領域の重みとして付加する組織領域計算手順をさらに有し、
前記範囲選択手順において、前記病理組織画像中の、前記密集度の重み値が最大となる画素を選択し、当該画素が複数存在する場合、当該画素の中から前記距離の重みの値が最小となる画素を選択し、当該画素がさらに複数存在する場合、当該画素の中から前記組織領域の重みの値が最大となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした前記規定の範囲を前記拡大撮影範囲として選択する、請求項13に記載の病理組織画像撮影プログラム。
【請求項15】
前記組織領域計算手順において、前記病理組織画像中の、RとGとBの輝度のうち最大値が64以上となる画素を選択し、選択した画素の中からRとBの輝度のうち小さい方の値からGの輝度を減じた値が10以上となる画素を選択し、選択した画素の中からRとGとBの輝度のうち最大値と最小値との差をとった値に255を乗じた値を当該最大値で除した値が32以上となる画素を選択し、選択した画素を前記組織の領域に位置する画素として検出する、請求項14に記載の病理組織画像撮影プログラム。
【請求項1】
病理組織画像を撮影する病理画像取得部と、
前記病理組織画像を出力する出力部と、
前記病理組織画像からROIを検出し、当該ROIに位置する画素に重みを付加する重みづけ部と、
前記重みづけ部で付加された重みの値を基に、前記病理組織画像から拡大して撮影する拡大撮影範囲を選択する範囲選択部と、を有し、
前記病理画像取得部は、前記範囲選択部が選択した前記拡大撮影範囲を拡大した病理組織画像を撮影し、
前記出力部は、前記拡大撮影範囲を拡大して撮影した病理組織画像を出力する病理組織画像撮影システムであって、
前記病理組織画像からがんと疑われる領域を検出するがん検出部をさらに有し、
前記病理画像取得部は、病理組織スライド上の標本組織に含まれる細胞核のパターンが認識できる倍率で病理組織画像を撮影し、
前記重みづけ部は、前記がん検出部が前記病理組織画像から検出したがんと疑われる領域の密集度を計算した値を各画素に密集度の重みとして付加し、
前記範囲選択部は、前記病理組織画像中の、前記密集度の重みの値が最大となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした規定の範囲を前記拡大撮影範囲として選択することを特徴とする病理組織画像撮影システム。
【請求項2】
前記がん検出部は、前記病理組織画像から検出したがんと疑われる領域に位置する各画素に対しマークを付加し、
前記重みづけ部は、前記病理組織画像中の、前記がん検出部がマークを付加した画素を含む前記規定の範囲の全てのパターンに対し、前記規定の範囲の左上原点に位置する画素に一定の値を加算した値を密集度の重みとする、請求項1に記載の病理組織画像撮影システム。
【請求項3】
前記病理組織画像中の各画素を含む前記規定の範囲の全てのパターンに対し、各画素と前記規定の範囲の中心画素との距離を計算した値を前記規定の範囲の左上原点に位置する画素に距離の重みとして付加する距離計算部をさらに有し、
前記範囲選択部は、前記病理組織画像中の、前記密集度の重みの値が最大となる画素を選択し、当該画素が複数存在する場合、当該画素の中から前記距離の重みの値が最小となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした前記規定の範囲を前記拡大撮影範囲として選択する、請求項2に記載の病理組織画像撮影システム。
【請求項4】
前記病理組織画像から組織の領域を検出し、各画素を左上原点とした前記規定の範囲に含まれる組織の領域に位置する画素の数を計算した値を各画素に組織領域の重みとして付加する組織領域計算部をさらに有し、
前記範囲選択部は、前記病理組織画像中の、前記密集度の重み値が最大となる画素を選択し、当該画素が複数存在する場合、当該画素の中から前記距離の重みの値が最小となる画素を選択し、当該画素がさらに複数存在する場合、当該画素の中から前記組織領域の重みの値が最大となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした前記規定の範囲を前記拡大撮影範囲として選択する、請求項3に記載の病理組織画像撮影システム。
【請求項5】
前記組織領域計算部は、前記病理組織画像中の、RとGとBの輝度のうち最大値が64以上となる画素を選択し、選択した画素の中からRとBの輝度のうち小さい方の値からGの輝度を減じた値が10以上となる画素を選択し、選択した画素の中からRとGとBの輝度のうち最大値と最小値との差をとった値に255を乗じた値を当該最大値で除した値が32以上となる画素を選択し、選択した画素を前記組織の領域に位置する画素として検出する、請求項4に記載の病理組織画像撮影システム。
【請求項6】
病理組織画像を撮影して出力する病理組織画像撮影システムが行う病理組織画像撮影方法であって、
前記病理組織画像を撮影する撮影ステップと、
前記病理組織画像からROIを検出し、当該ROIに位置する画素に重みを付加する重みづけステップと、
前記重みづけステップで付加された重みの値を基に、前記病理組織画像から拡大して撮影する拡大撮影範囲を選択する範囲選択ステップと、
前記範囲選択ステップで選択した前記拡大範囲を拡大した病理組織画像を撮影する拡大撮影ステップと、
前記拡大撮影範囲を拡大して撮影した病理組織画像を出力する出力ステップと、
前記病理組織画像からがんと疑われる領域を検出するがん検出ステップと、有し、
前記撮影ステップにおいて、病理組織スライド上の標本組織に含まれる細胞核のパターンが認識できる倍率で前記病理組織画像を撮影し、
前記重みづけステップにおいて、前記がん検出ステップで前記病理組織画像から検出したがんと疑われる領域の密集度を計算した値を各画素に密集度の重みとして付加し、
前記範囲選択ステップにおいて、前記病理組織画像中の、前記密集度の重みの値が最大となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした規定の範囲を前記拡大撮影範囲として選択することを特徴とする病理組織画像撮影方法。
【請求項7】
前記がん検出ステップにおいて、前記病理組織画像から検出したがんと疑われる領域に位置する各画素に対しマークを付加し、
前記重みづけステップにおいて、前記病理組織画像中の、前記がん検出ステップでマークを付加した画素を含む前記規定の範囲の全てのパターンに対し、前記規定の範囲の左上原点に位置する画素に一定の値を加算した値を密集度の重みとする、請求項6に記載の病理組織画像撮影方法。
【請求項8】
前記病理組織画像中の各画素を含む前記規定の範囲の全てのパターンに対し、各画素と前記規定の範囲の中心画素との距離を計算した値を前記規定の範囲の左上原点に位置する画素に距離の重みとして付加する距離計算ステップをさらに有し、
前記範囲選択ステップにおいて、前記病理組織画像中の、前記密集度の重みの値が最大となる画素を選択し、当該画素が複数存在する場合、当該画素の中から前記距離の重みの値が最小となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした前記規定の範囲を前記拡大撮影範囲として選択する、請求項7に記載の病理組織画像撮影方法。
【請求項9】
前記病理組織画像から組織の領域を検出し、各画素を左上原点とした前記規定の範囲に含まれる組織の領域に位置する画素の数を計算した値を各画素に組織領域の重みとして付加する組織領域計算ステップをさらに有し、
前記範囲選択ステップにおいて、前記病理組織画像中の、前記密集度の重み値が最大となる画素を選択し、当該画素が複数存在する場合、当該画素の中から前記距離の重みの値が最小となる画素を選択し、当該画素がさらに複数存在する場合、当該画素の中から前記組織領域の重みの値が最大となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした前記規定の範囲を前記拡大撮影範囲として選択する、請求項8に記載の病理組織画像撮影方法。
【請求項10】
前記組織領域計算ステップにおいて、前記病理組織画像中の、RとGとBの輝度のうち最大値が64以上となる画素を選択し、選択した画素の中からRとBの輝度のうち小さい方の値からGの輝度を減じた値が10以上となる画素を選択し、選択した画素の中からRとGとBの輝度のうち最大値と最小値との差をとった値に255を乗じた値を当該最大値で除した値が32以上となる画素を選択し、選択した画素を前記組織の領域に位置する画素として検出する、請求項9に記載の病理組織画像撮影方法。
【請求項11】
病理組織画像を撮影して出力する病理組織画像撮影システムに、
前記病理組織画像を撮影する撮影手順と、
前記病理組織画像からROIを検出し、当該ROIに位置する画素に重みを付加する重みづけ手順と、
前記重みづけ手順で付加された重みの値を基に、前記病理組織画像から拡大して撮影する拡大撮影範囲を選択する範囲選択手順と、
前記範囲選択手順で選択した前記拡大範囲を拡大した病理組織画像を撮影する拡大撮影手順と、
前記拡大撮影範囲を拡大して撮影した病理組織画像を出力する出力手順と、
前記病理組織画像からがんと疑われる領域を検出するがん検出手順と、を実行させるための病理組織画像撮影プログラムであって、
前記撮影手順において、病理組織スライド上の標本組織に含まれる細胞核のパターンが認識できる倍率で前記病理組織画像を撮影し、
前記重みづけ手順において、前記がん検出手順で前記病理組織画像から検出したがんと疑われる領域の密集度を計算した値を各画素に密集度の重みとして付加し、
前記範囲選択手順において、前記病理組織画像中の、前記密集度の重みの値が最大となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした規定の範囲を前記拡大撮影範囲として選択することを特徴とする病理組織画像撮影プログラム。
【請求項12】
前記がん検出手順において、前記病理組織画像から検出したがんと疑われる領域に位置する各画素に対しマークを付加し、
前記重みづけ手順において、前記病理組織画像中の、前記がん検出手順でマークを付加した画素を含む前記規定の範囲の全てのパターンに対し、前記規定の範囲の左上原点に位置する画素に一定の値を加算した値を密集度の重みとする、請求項11に記載の病理組織画像撮影プログラム。
【請求項13】
前記病理組織画像中の各画素を含む前記規定の範囲の全てのパターンに対し、各画素と前記規定の範囲の中心画素との距離を計算した値を前記規定の範囲の左上原点に位置する画素に距離の重みとして付加する距離計算手順をさらに有し、
前記範囲選択手順において、前記病理組織画像中の、前記密集度の重みの値が最大となる画素を選択し、当該画素が複数存在する場合、当該画素の中から前記距離の重みの値が最小となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした前記規定の範囲を前記拡大撮影範囲として選択する、請求項12に記載の病理組織画像撮影プログラム。
【請求項14】
前記病理組織画像から組織の領域を検出し、各画素を左上原点とした前記規定の範囲に含まれる組織の領域に位置する画素の数を計算した値を各画素に組織領域の重みとして付加する組織領域計算手順をさらに有し、
前記範囲選択手順において、前記病理組織画像中の、前記密集度の重み値が最大となる画素を選択し、当該画素が複数存在する場合、当該画素の中から前記距離の重みの値が最小となる画素を選択し、当該画素がさらに複数存在する場合、当該画素の中から前記組織領域の重みの値が最大となる画素を選択し、選択した画素を左上原点とした前記規定の範囲を前記拡大撮影範囲として選択する、請求項13に記載の病理組織画像撮影プログラム。
【請求項15】
前記組織領域計算手順において、前記病理組織画像中の、RとGとBの輝度のうち最大値が64以上となる画素を選択し、選択した画素の中からRとBの輝度のうち小さい方の値からGの輝度を減じた値が10以上となる画素を選択し、選択した画素の中からRとGとBの輝度のうち最大値と最小値との差をとった値に255を乗じた値を当該最大値で除した値が32以上となる画素を選択し、選択した画素を前記組織の領域に位置する画素として検出する、請求項14に記載の病理組織画像撮影プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−255808(P2012−255808A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−202859(P2012−202859)
【出願日】平成24年9月14日(2012.9.14)
【分割の表示】特願2008−15100(P2008−15100)の分割
【原出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月14日(2012.9.14)
【分割の表示】特願2008−15100(P2008−15100)の分割
【原出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
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