説明

痔を治療するシステム

従来技術の上記の欠点および/または不利の1つ以上を克服および/または最低にする、侵襲性が最低の方法を用いて痔を治療する好適な装置および方法の提供。その痔の動脈を治療する治療システムは、肛門管の出入のためのサイズおよび形状の少なくとも1つを画成しかつ肛門鏡を通るチャンネルを画成する肛門鏡;痔の動脈を同定しかつ動脈内の血流をモニタリングするためのチャンネル内に受容可能なモニタリング装置;およびそれぞれの痔の動脈に作動末端を配置し次に痔の動脈へエネルギーを適用して動脈を熱的に損傷するための作動末端を有しかつチャンネル内に受容可能なエネルギー適用装置を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、影響が殆どない侵襲技術を用いて痔の患者を治療するシステムおよび方法に関し、そしてさらに詳細に、ドップラーまたは超音波の装置のようなモニター装置および光ファイバーまたは他の集中照射装置のようなエネルギー適用装置を用いて痔の動脈を熱的に損傷してそれらの血流を低下または予防する方法および治療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
痔は、直腸静脈の圧力の上昇により起こされ、出血、痒みおよび痛みを生ずる直腸および肛門の拡張したまたは膨隆した静脈である。直腸の壁に対する圧力は、痔の管を支持する筋肉を弱める。管は、次に拡大しそしてそれらの支持を失い、直腸の管の内側に袋状の突出(内痔核)を形成するか、または肛門の周辺の皮膚の下に袋状の突出(外痔核)を形成する。内痔核が肛門の外へ突き出すとき、それは脱肛した痔といわれる。ときには、血餅または血栓は外痔核に見られ、そしてこの症状は、血栓形成外痔核といわれる。痔は、何時でも、すべての年齢群でも、そして性別を問わず生ずる。若い人々、妊娠した女性および子供を産んだ女性も、痔の問題をかかえていることが報告されている。
【0003】
肛門の管に血液を供給している動脈は、上の直腸からその管中へ下降し、そして肛門管のまわりに互いに連絡している動脈の豊富な網状構造を形成する。動脈のこの豊富な網状構造のために、痔の血管は、動脈の血液を容易に供給する。痔の管に血液を供給する血管は、痔の褥様構造(cusion)の支持組織を通過する。痔の静脈は、肛門管および痔から血液を排出する。これらの静脈は、2つの方向に血液を排出する。第1の方向は、直腸中へ上方に向かい、そして第2の方向は、肛門を囲む皮膚の下へ下降する。痔の病因論の初期の理論に基づく提案は、静脈の圧力の局所的な増加が、肛門の褥様構造内で痔の叢の拡張を起こすというものである。しかし、この理論は、肛門の褥様構造の血管の解剖学的な最近の研究により、反駁されている。
【0004】
痔の普通の症状は、出血および便通時の脱肛である。痔に伴う血栓症および裂肛は、痛みを生じさせる。痔の他の症状は、よごれ(soiling)、痒みおよび肛門周囲の刺激を含む。
軽い痔の症状では、多数の治療法が現在存在し、その主な目的は、症状を軽減することであるか、または痔の症状の悪化を避けることを助けることである。このような治療は、軟膏、特別な食事、パッチおよび痔のマッサージ(治療部位の血流を刺激するのに用いられる)を含む。
【0005】
他の一般的な治療法は、肛門の拡張である。肛門の拡張は、従来行われている方法であって、それは、肛門の括約筋を延伸または拡張して直腸の圧力の上昇から痔を予防しそして排便時のいきみを減らす方法である。この方法で起こる可能性のある副作用は、大便失禁または肛門の漏れである。従って、この方法は、老齢者および/または括約筋の弱い人には使用できない。
【0006】
ゴムバンド結紮法では、特殊なゴムバンドを内痔核のまわりに固くむすんで痔の内部の循環を遮断する。バンドは痔への血液の循環を遮断し、次に約1週間の間痔はしぼみそしてバンドとともに離れ落ちる。複数の痔の場合、それらは約1月離れた間隔で別々に治療される。ゴムバンド結紮法の共通の副作用は、外痔核の血餅形成および出血のような合併症を含む。
【0007】
ドップラー誘導結紮法では、そのなかにドップラープローブを備えた特に改変されたプロトスコープが用いられて痔の動脈を結紮する。ドップラープローブは、挿入されそしてドップラー信号の聞き取れる変化により痔の動脈の位置を確認するのに使用される。一度位置が確認されると、針のホルダーがプロトスコープの内腔中に挿入され、そして動脈が吸収可能な縫合糸により粘膜下組織へ結紮される。このやり方を繰り返す。痔の動脈のドップラー誘導結紮は、動脈の血液の流入を止め、粘膜をつなぎ、痔の塊を縮めそして引っ込ませる。現在、このやり方は全身麻酔の下で行われ、ほとんどの患者は、簡単な鎮静の下ではそれに耐えることができない。
【0008】
シエロテラピー(scierotherapy)または注射療法は、内痔核の基部へシエロテラピー用剤または硬化剤を注射することを含む。シエロテラピー用剤は、静脈の壁を破壊させそして痔を縮ませる。この方法は、複数の痔を同時に治療するのに用いられ、かなりしばしば、脆い静脈をもつ高齢の男性および女性を治療するのに使用される。この方法に伴う欠点の1つは、膿瘍がいくらかの患者で報告されていることである。
【0009】
凍結処置または冷凍方法は、液体窒素または亜酸化窒素を用いて凍結プローブを氷点に冷やす。プローブの凍結した先端を次に移動させて痔と接触させ、組織を凍結しそして破壊する。2または3週間後、痔は縮みそして離れ落ちる。内痔核および外痔核の両者は、この方法により治療できる。この方法の欠点の1つは、非常に痛みを伴い、他の合併症例えば治療された痔からの悪臭の放出を生じ、それは、約1週間の間続きそして吸収パッドを使用しなければならない。この方法に伴う他の欠点は、傷が感染するようになることである。
【0010】
痔核切除は、痔を取り除く外科的方法であり、通常重篤なケースに使用される。この方法は、脱肛したまたは血栓形成の内痔核、または大きな痛い外痔核に勧められる。この方法では、痔はメスまたはレーザーを用いて外科的に取り除かれ、切断部は糸により縫合され、そして小さいパッドを肛門に置いて治療した場所からの分泌物を吸収する。この方法は、麻酔および数日の入院を要し、病床で休む必要がある。そのため、この方法は、比較的高価である。この方法の副作用は、激しい痛み、出血、肛門管の縮小(次に裂肛を導く)、便通の不能、および瘢痕化を含む。
【0011】
痔の電気的治療は、電流を欠陥のある静脈中へ直接流す。プラスの電流でもマイナスの電流でも、痔を破壊するおよび/または閉鎖する組織内で化学的または熱的反応を生ずる。これらの治療の例は、双極電気療法および痔溶解を含み、治療用直流を痔に直接適用し、痔組織を縮め溶解する化学反応を生ずる。これらの治療は、内痔核に限られる。その上、それらは時間がかかる治療であり、医師および患者にとり単調で退屈なものであり、そして肛門直腸瘻孔の発生を導く。
【0012】
最近の赤外線照射方法は、痔を破壊する赤外線装置により発生する熱を用いる。装置は、痔を凝固するのに使用され、次にそれを縮める。この方法は、凝固の深さについて改善されたコントロールを可能にしたことから、初期の方法よりも改善されている。処置後の合併症も最小でありそしてより少ない出血も報告されているが、この方法は、照射の配置および適用に伴う問題および痛みを生じさせる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、侵襲性が最低の方法を用いて痔を治療する好適な装置および方法を開発する必要がなお存在し、その装置および方法は、従来技術の上記の欠点および/または不利の1つ以上を克服および/または最低にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
患者の痔を治療するための治療システムを提供するのが本発明の目的である。
患者の痔を治療するためのレーザー治療システムを提供するのが本発明の現在好ましい態様の他の目的である。
痔の管を光凝固することにより痔を治療する方法を提供するのが本発明の現在好ましい態様の他の目的である。
【0015】
簡単に述べれば、本発明は、例えばレーザーエネルギーを用いる光凝固により熱エネルギーを適用することによって、上痔動脈の分枝を治療するシステムおよび方法である。しばしば痔または痔核と呼ばれる肛門の域のなかまたはその周辺の炎症性の拡張した血管は、結合組織の障害、上痔動脈中の圧力の相対的上昇および血管の弁の弱体化により生ずる。好適な治療システムおよび方法が、侵襲が殆どないやり方でこのような症状を治療するために本発明により提供される。本発明の現在好ましい態様では、治療システムは、好ましくは患者に与える痛みまたは不快を最低にしつつ、レーザーエネルギーを用いて肛門および直腸の域の拡張した動脈を光凝固する。この治療システムには、肛門管を出入するサイズおよび/または形状を画成しかつそれを通る1つ以上のチャンネルを画成する肛門鏡(anus−scope)、モニタリング装置例えばドップラーまたは超音波プローブ(治療されるべき痔の動脈の位置を確認するためのチャンネル内に受容される)、およびエネルギー適用装置例えばレーザーへ組み合わされた光ファイバーライン(同定された痔動脈へエネルギー例えばレーザーエネルギーを適用するためのチャンネルを通って受け取られて、動脈を熱的に損傷させ、次に痔への血流を顕著に減少および/または停止させる)が設けられる。本発明のシステムおよび方法の利点の1つは、それが従来技術の治療および方法に比べてより早い処置後の回復を可能にしそして好ましくは合併症がより少ないおよび/または全くないことである。本発明のシステムおよび方法の他の利点は、ほとんどの他の好い結果が得られる方法では必要な全身麻酔を要することがなく、合併症が非常に減りそして治療が単純化されることである。
本発明および/またはその現在好ましい態様の上記および他の目的、特徴および利点は、添付図面とともに以下の記述から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】使い捨てまたは再使用可能な肛門鏡および光ファイバーを有する本発明の治療システムの第1の態様の概略図である。
【図2】Aは、本発明の肛門鏡の第2の態様の末端正面図である。Bは、Aの肛門鏡の側面一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
普通痔核(pile)ともよばれる痔は、肛門および直腸の域中およびその周辺の病気に冒された静脈に生ずることが見いだされる症状である。人口全般の約30%がかかることが知られている症状である。
【0018】
肛門管へ血液を供給する動脈は、上方の直腸からその管へ下降し、肛門管の周辺で互いに連絡している動脈の豊富な網状構造を形成する。動脈の豊富な網状構造のために、痔の血管は、動脈の血液を容易に供給できる。痔の血管に供給する動脈は、痔の褥様構造の支持組織を通過する。肛門の静脈は、肛門の管および痔から血液を取りさる。これらの静脈は、2つの方向に向かう。第1の方向は、直腸中へ上昇し、そして第2の方向は肛門を囲む皮膚の下へ下降する。痔の病因に関する初期の理論に基づく提案は、静脈圧の局所的な上昇が肛門の褥様構造内で痔の叢の拡張を起こすというものである。しかし、この理論は、肛門の褥様構造の血管の解剖学的見地からの最近の研究に基づいて反駁されている。
【0019】
それらの血管の外観および出血する傾向にもかかわらず、痔の発達は、結合組織の障害並びに上痔動脈からの血液の絶対的または相対的増加によるものである。粘膜内の動静脈吻合は、肛門の褥様構造の体積の増加に寄与するものと考えられる。この動脈の要素は、痔の出血が動脈の血液の外観およびpHをもつ理由を説明する。これらの新しい理論に基づいて、新しい治療法が提案される。
【0020】
本発明の現在好ましい態様は、痔の病因の最近開発された理論に基づいて痔の症状を治療する新しい方法およびシステムを提供する。現在好ましい態様では、レーザーエネルギーが、全身麻酔の使用なしに、痔に供給する動脈を光凝固させるのに使用され、その結果、多くの従来技術の方法およびシステムにおけるよりも処置後のケアが必要とされない。
【0021】
治療装置には、使い捨てまたは再使用可能な肛門鏡および構成要素が設けられる。適切なサイズの肛門鏡の内部には、構成要素を導入するための1つ以上のチャンネルが設けられている。現在好ましい態様では、治療システムの構成要素は、エネルギー適用装置例えばレーザー源およびそれに組み合わされた光ファイバーライン、モニタリング装置例えばドップラー装置(ドップラー、エコードップラー、エコーカラードップラー)または超音波装置、吸引装置例えばヒュームおよび/または熱を吸引するためのアスピレーターおよび鏡および/または場所を照明するための光源を含む。いくつかのこれらの態様では、ドップラートランスデューサーは、痔動脈の分枝を治療するために、鏡の遠位の末端を同定し配置するのに使用される。いくつかの態様では、システムは、複数の構成要素をそのなかに受容するための複数の用途のチャンネルを含み、複数の構成要素は、例えば光ファイバー、ドップラーシステムおよびヒューム、熱、流体および/または血液を排出するための吸引装置への接続、並びに鏡および/または場所を照明するための光源用チャンネルである。システムは、また好ましくは観察窓を含む。
【0022】
治療システムを用いて痔の上動脈の分枝を治療する方法は、一般に、痔の褥様構造の上の肛門管中に肛門鏡を挿入しそして治療域をレーザーエネルギーにより照射することを含む。痔動脈の分枝は、当業者に周知のドップラートランスデューサーまたは他の方法により位置を確認される。血管の位置を確認した後、レーザーエネルギーが、約200−2000ミクロンの範囲内のサイズをもつ光ファイバーを使用して動脈の分枝へ適用される。ファイバーは、皮膚のラインから約5−7cmの深さへ、ドップラーシステムを見ることにより、動脈中および/またはその周辺へ導入される。光ファイバーラインの出力端から放出面などからのレーザー照射の放出は、対応する痔動脈分枝の光凝固を生じさせる。痔動脈分枝の完全な閉鎖に必要な時間およびレーザーパワーは、ドップラーまたは超音波のコントロールの下モニターされる。この完全な閉鎖は、ドップラーにより確認される。このシステムおよび方法の利点の1つは、それらが、全身麻酔の必要なしに、最低の侵襲で患者を取り扱うことである。
【0023】
本発明のレーザーシステムによる痔動脈の末端分枝の光凝固は、他の治療法と比べたとき、多くの利点を有する。適切なサイズの肛門鏡の使用は、比較的痛みがなく、そして肛門口に挿入されたとき患者に不快感を起こすことが少ない。全身麻酔が用いられないので、患者は治療後短時間で開放される。方法を行うのが容易であり、処置後の痛みが最小または全くなく、数分間で行うことができる。さらに、どんな麻酔も必要とされないので、それに関連する合併症が起きない。
【0024】
処置中、痔の褥様構造に近い光ファイバーの位置は、モニタリング装置例えばドップラーまたは超音波装置を用いてモニターできる。これは、また直腸および肛門の域の他の正常な血管の損傷を防ぐ。それぞれの損傷した動脈の完全な閉鎖は、ドップラーシステムにより確認できる。直腸の壁の面の固定による粘膜の硬化は、脱肛を防ぐ。患者は、処置後の痛みが最低または全くなく、処置後正常な活動に戻ることができる。
本発明は、以下の実施例によりさらに説明されるが、それらにより制限されることはない。
【0025】
(痔の褥様構造を治療する治療システム)
図1に示されるように、治療システム100は、使い捨てまたは再使用可能なハンドピース102を含み、そのハンドピース102は、肛門域の関係する血管を治療するのに用いられる肛門鏡104および光ファイバー106を含む。肛門鏡104は、不快さが殆どなくそして全身麻酔なしで患者の肛門管中に挿入される。ドップラーシステム108は、光凝固により治療するのに必要な動脈分枝の位置の確認を助ける。位置を確認された動脈分枝は、予め設定された時間の間隔で光ファイバー106へ光学的に組み合わされたレーザー110からのレーザー照射によって照射され、血管の完全な閉鎖はドップラー108によりモニターされる。フュームそしてもし必要ならば熱は、当業者にとり周知のタイプの排煙機のような吸引装置112を用いて処置中除かれる。光源114は、肛門鏡104と光学的に組み合わされて、鏡のチャンネルを通して肉眼で見ることのできる光を伝達することにより、肛門鏡の内部を照明する、および/または処置域を照明する。痔の褥様構造へ血液を供給する各動脈分枝の部分的および/または完全な閉鎖は、光凝固により達成され、そしてドップラー像により確認される。処置後、肛門鏡は取り出されそして患者は開放される。
【実施例1】
【0026】
図2Aおよび2Bは、肛門管の出入が容易なようにデザインされた使い捨てまたは再使用可能な肛門鏡200を示す。肛門鏡200は、実質的に円筒状の外壁204、その遠位の末端上に形成された角度のついた先端206、および近位の末端上に形成された放射状に延在するフランジ208を画成する鏡本体202を含む。理解されるように、角度のついた先端206は、肛門管中への鏡の挿入の容易さを助けるように構成される。取っ手210は、本体202の近位の末端から横方向に突き出し、光源へ組み合わされるチャンネル212をそのなかに画成する。チャンネルは、鏡本体202の内部を照明する、および/または鏡の遠位の先端206で治療域を照明するために、それを通って光を伝達する。挿入部214は、鏡本体202内で受容され、そして鏡本体の円筒状の壁204内に滑動自由に受容される側壁216、および鏡本体の遠位の先端206と整合し同一平面にある角度のついた遠位の先端の壁218を画成する。挿入部214は、さらに、複数の異なる構成要素をそのなかに受容するための入口末端222をそれを通って延在かつ画成する多用途チャンネル220、並びにそれぞれの構成要素の動作末端または必要に応じた他の部分をそれを通して受容するための出口末端224を画成する。現在好ましい態様では、チャンネル220は、(1)痔の褥様構造の検出のためにドップラーまたは超音波のプローブのようなモニタリング装置の導入のため、(2)痔の動脈を熱的に損傷し次にそれぞれの痔への血流を減少または停止するためにそれぞれの痔の動脈へエネルギーを適用することによって光ファイバーのようなエネルギー適用装置のそれを通る導入のため、そして(3)フュームおよび/または熱を取り除くためにアスピレーターのような吸引装置へ接続するために設けられる。チャンネル212は、観察するために肛門鏡の内部および/または治療域を照明することを目的として照明システムをそれを通って導入するために設けられる。所望ならば、鏡本体202および挿入部214は、それを通って観察することを助けるために、実質的に透明かまたは半透明である。鏡200は、近位の末端の上に、観察口または窓207を画成し、そしてその側壁204および216に、処置中それを通って観察するために、実質的に透明または半透明の処置窓226を画成する。
【実施例2】
【0027】
(痔の褥様構造を治療する方法)
図2Aおよび2Bの肛門鏡を、痔の褥様構造の上の肛門管中に導入する。痔の動脈の分枝は、チャンネル220を通って身体中に導入される超音波ドップラーCWまたはエコカラードップラーにより検出される。チャンネル220は、また光ファイバーの送出のために設けられ、光ファイバーは次に痔の動脈へレーザー照射を送出する。チャンネル212中へ導入される照明システムは、肛門鏡を内部で観察し照明するために光をあてる。システムには、観察窓207が設けられている。レーザーエネルギーは、血管を閉じるために必要な予定された時間間隔で約200−2000ミクロンの範囲内のサイズを規定する光ファイバーを通して適用される。血管の完全な閉鎖は、ドップラーを用いて証明される。ダイオードレーザー源が、血管の光凝固のために使用される。処置の完了後、肛門鏡を引き出す。
【実施例3】
【0028】
(痔の褥様構造を治療する方法)
図2Aおよび2Bに示されたタイプの肛門鏡に、エネルギー源例えばレーザー(例えば980nmダイオードレーザーのようなダイオードレーザー)、エネルギー適用装置例えばレーザーへ接続されチャンネル220を通って受容可能な光ファイバーライン、モニタリング装置例えばチャンネル220内で受容可能なドップラープローブ、チャンネル212へ接続された光源およびアスピレーター(組織の凝固により発生するフュームを吸引するためチャンネル220へ接続可能である)が設けられる。例示の態様では、システムおよび方法は、痔の動脈のドップラーまたは超音波誘導熱治療に使用される。肛門鏡200は、痔の褥様構造の上の肛門管中に挿入される。モニタリングプローブ例えばドップラーおよび/または超音波プローブは、チャンネル220中へ挿入されて、上痔動脈の分枝を同定する。鏡200は、モニタリングプローブがそれぞれの痔の動脈を同定するまで、例えば取っ手210を操作することにより回転される。次に、鏡200は、正しい位置に保持され、モニタリングプローブはチャンネル220から取り出され、エネルギー適用装置がチャンネル220中へ挿入され、そして装置の作動末端は、直腸の粘膜まで配置されるか、またはそうでなければそれぞれの痔の動脈に最も隣接してまたはそれと接触して配置される。エネルギーは、組織を熱的に損傷するのに十分な予定された時間放出され、次にそれぞれの痔の動脈を通る血流を顕著に減少させる、および/または停止させる。
【0029】
いくつかのこのような態様では、本発明のシステムおよび方法は、痔動脈のレーザー治療に使用される。このような態様の1つでは、レーザーは980nmレーザーであり、光ファイバーラインは1000ミクロンのファイバーであり、そしてモニタリング装置は超音波ドップラープローブ(直径約2mmであり、約20MHzで操作する)である。光ファイバーの放出末端は、直腸の粘膜へ配置されそしてパルスレーザーエネルギーは複数の回数で適用される。1つの態様では、レーザーエネルギーは、各動脈へ14ワットで約4回適用され、それぞれ約18ジュールであって合計約72ジュールとなる。
【0030】
それぞれの動脈へレーザーエネルギーを適用した後、エネルギー適用装置は取り出され、そしてモニタリング装置がチャンネル220へ再度挿入されて、熱的治療から生ずる血流の減少および/またはそれぞれの動脈の閉鎖をモニターする。処置は、上痔動脈のそれぞれの粘膜下の分枝のそれぞれへ肛門鏡200を回転することにより繰り返される。典型的な処置は、約3つの動脈分枝を熱的に治療することを含む。
【0031】
本発明の他の態様では、レーザーおよび光ファイバーラインを用いるよりも、RF発生器およびRFプローブが、その代わりに使用される。これらの態様では、RFプローブがそれぞれの動脈分枝と接触して置かれて、分枝を熱的に損傷させ、次に血流を顕著に減少または停止させる。本明細書の教示に基づいて当業者により理解されるように、現在知られているまたは後で知られるようになる多数の異なるエネルギー源、エネルギー適用装置およびモニタリング装置の任意のものが、本発明のシステムおよび方法に使用できる。
【0032】
すべての現在好ましい態様では、どんな麻酔または鎮痛の処置も必要がなく、処置は入院することなく、分単位(例えば、約10−約30分の範囲内、最も好ましくは約15分または20分以内)で行われ、そして患者は処置を行った直後開放される。例えばレーザー凝固または光凝固による熱治療は、粘膜および粘膜下の組織を壊死させ、そして痔の動脈の閉鎖または実質的な閉鎖を生じさせる。治療された患者では、内視鏡による壊死の診断が処置後約7−14日間続くこと、痔の褥様構造の退縮が処置後約7−14日以内で明らかであること、そして退縮が約90日までの追加の期間増大し脱肛の完全なまたは部分的な低下を生ずることが分かっている。従って、本発明の現在好ましい態様の利点の1つは、例えばレーザー治療によるような上痔動脈の分枝の熱凝固が、動脈を閉じると同時に直腸の粘膜および粘膜下を筋性層へ固定し、痔の退縮および肛門管を通るそれらの脱肛への障害を生ずることである。しかも他の利点は、処置が、患者へ最低の痛みまたは不快さを生じさせ、そして手術後の回復が別のアプローチよりも早くそして合併症がほとんどないことである。他の利点は、麻酔または鎮痛の必要がなく、それにより合併症を顕著に減らし、治療を簡略にし、そして処置をより早くそしてより安全にすることである。
【0033】
添付図面に関連して本発明の好ましい態様を記述したが、本発明は特定の態様に限定されず、種々の変化および改変が、請求の範囲に規定された本発明の範囲または趣旨から離れることなく、当業者により行うことができることを理解すべきである。例えば、多数の異なるエネルギー源、エネルギー適用装置、および/またはモニタリング装置の任意のものが使用できる。例えば、多数の異なるレーザーまたは他の集中照射装置が使用でき、例えば出力末端(供給動脈または必要に応じ他のものの付近に配置できる、または所望に応じてまたはさもなければ必要に応じて血管でそれらの配置を可能にする支持体上に設けられる)を有する光ファイバーに組み合わされたダイオードレーザーまたはスーパールミニセンスダイオードがある。その上、本明細書で示された肛門鏡は例示に過ぎず、現在知られているまたは後で知られるようになる多数の異なる構造の任意のものを用いることができる。従って、用語肛門鏡は、本明細書で開示された肛門鏡の機能(肛門管中へのモニタリング装置の導入および/または肛門管中へのエネルギー適用装置の導入を含む)の1つ以上を行う、現在知られているまたは後で知られている多数の異なる装置の任意のものを意味するのに使用される。従って、現在好ましい態様のこの詳しい記述は、本発明を制限するという記述とは異なり、例示として考えるべきものである。
【符号の説明】
【0034】
100 治療システム
102 ハンドピース
104 肛門鏡
106 光ファイバー
108 ドップラーシステム
110 レーザー
112 吸引装置
114 光源
200 肛門鏡
202 鏡本体
204 外壁
206 先端
207 窓
208 フランジ
210 取っ手
212 チャンネル
214 挿入物
216 側壁
218 先端壁
220 チャンネル
222 入口末端
224 出口末端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肛門管を出入するためのサイズおよび形状の少なくとも1つを画成しかつ肛門鏡を通るチャンネルを画成する肛門鏡;
痔の動脈を同定しかつ動脈内の血流をモニタリングするための、チャンネル内に受容可能なモニタリング装置;および
それぞれの痔の動脈に作動末端を配置し次に痔の動脈へエネルギーを適用して動脈を熱的に損傷するための、作動末端を有しかつチャンネル内に受容可能なエネルギー適用装置
を含むことを特徴とする痔の動脈を治療する治療システム。
【請求項2】
エネルギー適用装置と組み合わされたエネルギー源をさらに含む請求項1のシステム。
【請求項3】
エネルギー源が、レーザーおよびRF発生器の1つである請求項2のシステム。
【請求項4】
エネルギー適用装置が光ファイバーおよびRFプローブの1つである請求項3のシステム。
【請求項5】
光ファイバーが、約200−約2000ミクロンの範囲内の直径を有する請求項4のシステム。
【請求項6】
モニタリング装置が、ドップラー装置および超音波装置の1つである請求項1のシステム。
【請求項7】
ドップラー装置が、ドップラー、エコードップラーおよびエコーカラードップラーからなる群から選ばれる請求項6のシステム。
【請求項8】
ドップラー装置が、チャンネル内に受容されそして痔動脈の分枝を体内で同定する請求項5のシステム。
【請求項9】
フュームをそれから吸引するための、チャンネルと流体連絡で接続可能な吸引装置をさらに含む請求項1のシステム。
【請求項10】
肛門鏡の内部の照明および治療域の照明の少なくとも1つのための、肛門鏡へ光学的に組み合わされた光源をさらに含む請求項1のシステム。
【請求項11】
肛門鏡が、それぞれエネルギー適用装置およびモニタリング装置を受容するための、複数のチャンネルを含む請求項1のシステム。
【請求項12】
肛門鏡が使い捨てである請求項1のシステム。
【請求項13】
a.肛門鏡の内部および治療域の少なくとも1つを照明する照明装置を受容するための第1のチャンネル;および
b.エネルギー適用装置またはモニタリング装置の何れかをそのなかに受容するための多用途チャンネル
をさらに含む請求項1のシステム。
【請求項14】
肛門管を出入しそしてそのなかを通るチャンネルを画成する第1の手段;
痔の動脈の位置を確認しかつ動脈内の血流をモニタリングするための、チャンネル内で受容可能な第2の手段;および
痔の動脈へエネルギーを適用して熱的に損傷させしかも動脈内の血流の顕著な減少および防止の少なくとも1つを行うための、チャンネル内に受容可能な第3の手段
を含むことを特徴とする痔の動脈を治療する治療システム。
【請求項15】
第1の手段が肛門鏡であり、第2の手段がモニタリング装置であり、そして第3の手段がエネルギー適用装置である請求項14のシステム。
【請求項16】
モニタリング装置が、ドップラー装置および超音波装置の1つであり、エネルギー適用装置が、光ファイバーおよびRFプローブの1つである請求項15のシステム。
【請求項17】
i.肛門管中へ肛門鏡を導入する段階、
ii.肛門鏡を通って肛門管中へモニタリング装置を導入し、モニタリング装置により痔の動脈の位置を確認する段階、および
iii.肛門鏡を通って肛門管中へエネルギー適用装置を導入し、モニタリング装置により同定された痔の動脈にエネルギー適用装置の作動末端を配置し、エネルギー適用装置の作動末端から痔の動脈へエネルギーを適用し、次に痔の動脈を熱的に損傷しそして動脈の血流の顕著な減少および防止の少なくとも1つを行う段階
を含むことを特徴とする肛門および直腸の域中および周辺の痔の動脈を治療する方法。
【請求項18】
痔の動脈と接触してまたは密に隣接してエネルギー装置の作動末端を配置する段階をさらに含む請求項17の方法。
【請求項19】
第1の痔の動脈の位置を確認し治療する段階、肛門鏡を回転する段階、および第2の痔の動脈の位置を確認し治療する段階をさらに含む請求項17の方法。
【請求項20】
肛門鏡を通ってモニタリング装置を導入する段階、モニタリング装置がそれぞれの痔の動脈の位置を確認するまで肛門管内で肛門鏡を回転する段階、それぞれの痔の動脈に肛門鏡の位置を固定する段階、肛門鏡からモニタリング装置を取り出す段階、肛門鏡を通ってエネルギー適用装置を導入し痔の動脈に肛門鏡の作動末端を配置する段階、エネルギー適用装置の作動末端から痔の動脈へエネルギーを適用する段階、および少なくとも1つの他の痔の動脈へ上記の段階を繰り返す段階をさらに含む請求項17の方法。
【請求項21】
痔の動脈を熱的に治療した後肛門鏡からエネルギー適用装置を取り出す段階、肛門鏡中へモニタリング装置を再導入する段階、および治療された痔の動脈中の血流をモニターする段階をさらに含む請求項20の方法。
【請求項22】
エネルギー適用装置を導入する段階が、肛門鏡を通って肛門管中へ集中照射装置を導入する段階、モニタリング装置により位置を確認された痔の動脈に集中照射装置の出力末端を配置する段階、集中照射装置の出力末端から痔の動脈へ、痔の動脈を熱的に損傷しそして動脈中の血流の顕著な減少および防止の少なくとも1つを行うのに十分な照射を適用する段階を含む請求項17の方法。
【請求項23】
段階iiおよびiii中、肛門鏡の内部および治療域の少なくとも1つを照明することをさらに含む請求項17の方法。
【請求項24】
段階iii中またはその後、肛門鏡を通って治療域を吸引することをさらに含む請求項17の方法。
【請求項25】
麻酔なしに段階i−iiiを行うことをさらに含む請求項16の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【公表番号】特表2010−526643(P2010−526643A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508520(P2010−508520)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/063405
【国際公開番号】WO2008/141272
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(502359666)セラムオプテック インダストリーズ インコーポレーテッド (20)
【Fターム(参考)】