説明

痛覚神経刺激装置

【課題】電気的刺激によってC線維のみを効率良く刺激する。
【解決手段】 先端を皮膚内に僅かに刺して用いる第1電極31と、前記第1電極の周囲に導通せずに配置され、皮膚に接触させて用いる少なくとも一つ以上の第2電極2とから構成される電極部と、前記第1電極31の電気的極性を+極とし前記第2電極32の電気的極性を−極としたパルス信号を供給するパルス信号供給手段11と
を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、Aδ線維の刺激により生じる一次痛覚と、C線維の刺激により生じる二次痛覚とについて、C線維の刺激のみを行うことが可能な痛覚神経刺激装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気刺激により痛覚のみを刺激するために、特許文献1に記載の電極が開発された。この電極によれば、Aδ線維の刺激が可能なものであった(特許文献1の図4参照)。
【0003】
上記に対し、特に糖尿病の三大合併症の一つである末梢神経障害の早期発見のためにC線維のみを刺激して、これに対する反応を診る要望が高い。これは、C線維の太さが0.4〜1.2μm、Aδ線維の太さが2〜5μm、触覚や圧覚といった機械的受容体に接続されるAβ線維の太さが5〜12μmであり、神経障害が細径線維から始まることに因っている。したがって、特許文献1で刺激可能なAδ線維よりさらに細いC線維を刺激できれば、より早期に神経障害の発生を把握することが可能となり、糖尿病性神経障害の進行の把握や適切なコントロールに大いに寄与する。C線維のみを刺激するため一般的に行われている手法としては、レーザ装置を用いるものがある。しかし、レーザ装置を用いる場合には検査機器や設備が大掛かりになり、装置の大型化、高額化、複雑化に伴い、汎用性の面でも問題があった。しかもレーザ光線によるC線維刺激はまだ十分な精度に達しておらず、C線維刺激の確率は低く、臨床応用には至っていない。
【0004】
上記に示した特許文献1においても、刺激電極の針端子を−極とし、その周囲の電極を+極として刺激を与えることによりAδ線維を選択的に刺激可能であるが、C線維を選択的に刺激できなかった。
【0005】
ところで、当該分野では、所望の刺激箇所に装着する刺激目的電極に−極の電気刺激を印加し、末端電極に+極を印加する手法が一般的に採用されている。これは、末梢神経の興奮(発火)は、−極の刺激電極の直下で発生するからである。上記に示した特許文献1においても、刺激電極の針端子を−極とし、その周囲の電極を+極として刺激を与えることによりAδ線維を選択的に刺激可能であると記載されている。しかし、例えば体性感覚誘発電位SEPの測定(図10参照)で用いられるような皮膚表面からの神経刺激では、電気的極性を反転させてもその効果や影響がないことは、この分野において広く知られている。
【0006】
更に、電流知覚閾値と疼痛耐性閾値を電気生理学的ないし定量的に自動測定する装置が知られている(特許文献2参照)。しかし、この装置では、正弦波を用いた刺激を与えるものであり、C線維、Aδ線維、Aβ線維について周波数がそれぞれ、5Hz、250Hz、2000Hzの刺激に対して最も反応するというものであり、C線維、Aδ線維、Aβ線維について独立して単独で刺激可能となる手法を提供するものではない。また正弦波での刺激を要する為、矩形波に代表されるパルス波での刺激と比べ、刺激の生成や制御する上で装置が複雑となる。
【0007】
また特許文献2に係る発明は表面電極を用いている為、電極を皮膚内に刺した場合と比して、与える刺激強度が大きくなる。つまりC線維のような細径線維を刺激する際に、触覚など他の神経線維をも刺激する可能性が高く、C線維のみを選択的に刺激するのは困難と考えられる。さらに、正弦波を用いた刺激であるため、C線維を刺激する際は3秒間の刺激が二度必要となり(特許文献2 カラム8、9参照)、その間被験者に苦痛を与えることとなる。そもそもC線維のみを刺激しているかは、体性感覚誘発電位(SEP)などより伝導速度を算出する事で確認できる。神経線維の伝導速度が数m/s程度であることを考慮すれば、特許文献2に係る発明のように数秒間刺激した場合、その刺激による反応を求められないため、どの神経線維を刺激しているか特定できないと考えられる。
【0008】
特許文献3に係る発明は表面電極を用いて痛覚を刺激することなく特定の触覚受容器を選択的に刺激するものである。これも触覚を刺激するには有用であるが、既述のとおり表面電極を用いるため刺激強度が2mA程度と大きくなる。また痛覚に関するAδ線維やC線維は細径線維であるため刺激をしづらい為、特許文献3に係る発明ではAδ線維やC線維を選択的に刺激できなかった。さらに特許文献3に係る発明は受容器を選択的に刺激するにあたり、重み付け変化などの複雑な処理を必要とする問題があった。
【0009】
一般的な電気刺激による興奮しやすさはAβ線維、Aδ線維、C線維の順となり、軸索を有する有髄かつ太径線維ほど電気刺激がしやすい。つまり、細径線維でありかつ軸索の無い無髄線維であるC線維は電気刺激による興奮が最も発生しにくく、他の線維を刺激せずにC線維のみを選択的に刺激するのは極めて困難であった。
【特許文献1】特表2006−59430号公報
【特許文献2】米国特許第5806522号明細書
【特許文献3】特許第3543097号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上述べたような痛覚神経刺激装置の現状に鑑み、電極の極性についての新たな発想に基づいてなされたもので、その目的は、電気的刺激によってC線維のみを効率良く短時間に刺激することが可能な簡便な痛覚神経刺激装置を提供することである。更に、C線維とAδ線維をも独立して単独で刺激可能な痛覚神経刺激装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る痛覚神経刺激装置は、先端を皮膚内に僅かに刺して用いる第1電極と、前記第1電極の周囲に導通せずに配置され、皮膚に接触させて用いる少なくとも一つ以上の第2電極とから構成される電極部と前記第1電極の電気的極性を+極とし前記第2電極の電気的極性を−極としたパルス信号を供給するパルス信号供給手段とを具備することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る痛覚神経刺激装置は、前記パルス信号の立上り時間と立下り時間との少なくとも一方を変化させる立上・立下制御手段と、所望の立上り時間と立下り時間のパルス信号に変化させる指示入力を与えるための立上・立下時間指示手段を備える指示入力部とを具備することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る痛覚神経刺激装置では、前記パルス信号の立上り及び/又は立下りを直線的に変化可能であることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る痛覚神経刺激装置では、前記パルス信号の立上り及び/又は立下りの傾斜を指数関数的に変化可能であることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る痛覚神経刺激装置は、前記パルス信号の電流と電圧の少なくとも一方を変化させる刺激強度制御手段と、前記指示入力部に備えられ、前記刺激強度制御手段に対し所望の電流或いは電圧のパルス信号に変化させる指示を与えるための刺激強度指示手段とを具備することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る痛覚神経刺激装置は、前記パルス信号供給手段が供給するパルス信号のパルス幅・パルス間隔・パルス数を変化させるパルス波形制御手段と、前記指示入力部に備えられ、前記パルス波形制御手段に対し所望のパルス幅・パルス間隔・パルス数のパルス信号に変化させる指示を与えるためのパルス波形指示手段とを具備することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る痛覚神経刺激装置では、前記パルス信号のパルス幅が0.1〜100msであることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る痛覚神経刺激装置では、前記パルス信号の波形形状と時間軸とにより囲われた領域の面積が、0.01〜100(ms・mA)であることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る痛覚神経刺激装置では、前記パルス信号の波形形状と時間軸とにより囲われた領域の面積が、0.1〜20000(ms・V)であることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る痛覚神経刺激装置は、前記第1電極の電気的極性と前記第2の電極の電気的極性とを変換する電気的極性変換手段と、前記指示入力部に備えられ、前記電気的極性変換手段に対し電気的極性の変換を指示するための極性変換指示手段とを具備することを特徴とする。
【0021】
本発明に係る痛覚神経刺激装置では、前記第2電極は前記第1電極の周囲に環状に配置されることを特徴とする。
【0022】
本発明に係る痛覚神経刺激装置では、前記電極部が複数存在することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、第1電極の電気的極性を+極とし第2電極の電気的極性を−極として供給するので、線維の太さが最も細いC線維のみを刺激するパルス供給を図ることができる。ここに、第1電極は針状であるため、生体との接触面積が第2電極と比べ極めて小さい。それ故、Aδ線維より細いC線維を適切に発火できない可能性がある。これは主に、細い線維ほど電気刺激に対する閾値が高いことによっている。逆に、C線維の物理的特性として利用できる可能性のあるものとして、Aδ線維よりも分布密度が高い、皮膚表面に垂直に走行している、機械受容器の末端と比べて表層部まで線維を伸ばしている、などが挙げられる。そこで、刺激箇所を−極にして信号を印加する従来の一般的手法とは逆の発想により、C線維のみの刺激を可能とした。以上の効果は、後述するように刺激感覚、反応時間及び体性感覚誘発電位SEP(Somatosensory Evoked Potentials)波形の測定結果より容易に証明される。つまり、炎症に代表されるような燃えるような痛み感覚を惹起し、反応時間は例えば手の刺激では1000ms程度と非常に遅く、さらにSEPデータでは刺激からピークに到る応答時間(潜時)が、C線維の伝導速度に対応する時間となる知見が得られ、他の神経線維にほとんど影響を及ぼさずC線維のみの刺激を行うことが可能であることが分った。
【0024】
本発明では、パルス信号の立上り時間と立下り時間との少なくとも一方を変化させる立上・立下制御手段と、この立上・立下制御手段に対し所望の立上り時間と立下り時間のパルス信号に変化させる指示入力を与えるための指示入力部とを具備するので、第1の電極の電気的極性を+極とし第2の電極の電気的極性を−極として供給するパルス信号について、その立上り時間と立下り時間との少なくとも一方を変化させて、他の線維にほとんど影響を及ぼさずに線維の太さが最も細いC線維のみを刺激するパルス供給を図ることができる。
【0025】
本発明では、パルス信号供給手段が供給するパルス信号の電流と電圧の少なくとも一方を変化させる刺激強度制御手段と、刺激強度制御手段に対し所望の電流或いは電圧のパルス信号に変化させる指示を与えるための刺激強度指示手段とが具備されているので、刺激強度を変化させることでより太い神経線維であるAδ線維やAβ線維をも刺激可能である。
【0026】
さらに本発明では、刺激強度を変化させることで、一般的な電気刺激での興奮しやすさの順序(Aβ、Aδ、C)とは逆の順でそれぞれの神経線維を刺激可能である。特にC線維を選択的にしかも弱い刺激強度で刺激が可能である。
【0027】
本発明では、パルス信号供給手段が供給するパルス信号のパルス幅・パルス間隔・パルス数を変化させるパルス波形制御手段と、パルス波形制御手段に対し所望のパルス幅・パルス間隔・パルス数のパルス信号に変化させる指示を与えるためのパルス波形指示手段とが、具備されているので、C線維のみの刺激を行うことが可能となるパルス幅・パルス間隔・パルス数を探しながら、また個人差を吸収する測定を行うことが可能である。
【0028】
神経障害は、痛覚神経を刺激した際に被験者が刺激を感じるか否かで確認できる。本発明では、被験者へ与える刺激は極めて短時間かつ微少であるだけでなく、他の神経線維への影響も与えることがないため、被験者へ最小限の負担で迅速かつ効率的に神経障害の確認が可能である。
【0029】
本発明では、第1電極の電気的極性と第2電極の電気的極性とを変換する電気的極性変換手段と、電気的極性変換手段に対し電気的極性の変換を指示するための極性変換指示手段とが具備されているので、電気的極性の変換を行うことにより、Aδ線維とC線維の刺激を切り換えて測定を行うことも可能である。神経障害は細径線維から発生するため、個別に神経線維を刺激することで神経障害の早期発見や進行状況の把握や機能評価でき、糖尿病性神経障害の進行の把握や適切なコントロールに大きく寄与する。
【0030】
神経線維はどこか一部が刺激されれば刺激により得られる効果や反応は同じである。つまり操作者の熟練度により単一の電極部では、的確にC線維を刺激できない可能性もある。そこで、複数の電極部を用いることで操作者の熟練度に依存することなくC線維のみ刺激可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、添付図面を参照して本発明に係る痛覚神経刺激装置およびその使用方法の実施例を説明する。痛覚神経刺激装置は、図1に示されるように、パルス発生本体部10に、電流/電圧制御部21、電源部22、表示部23及び操作部24が接続された構成を備える。更に、電流/電圧制御部21には極性切換部25が接続されており、極性切換部25には、表皮内刺激電極部30が接続されている。
【0032】
表皮内刺激電極部30は、特許文献1に記載された電極とほぼ同様の構造であり、その断面図を図2(a)に示す。表皮内刺激電極部30は、先端が皮膚内に僅かに刺せる形状を有した第1電極である針状電極31と、皮膚に接触させて用いる第2電極である接触電極32とを備える。図2より明らかなように、針状電極31は接触電極32より突出(突起)している。また、針状電極31の先端は必ずしも尖っている必要はなく、球状や棒状等であってもよい。接触電極32は、針状電極31を中心として針状電極31を取り囲む円筒状をなしても良いし、複数の接触電極32が針状電極31を中心に円筒状に位置するように配置されても良く、その内径は例えば1mmである。また、接触電極32の一部は図2(b)に示すように皮膚内に僅かに刺せる形状を有していてもよい。
【0033】
接触電極32と針状電極31の間隙には、絶縁材料により構成されるスペーサ33が埋設されていてもよい。また、接触電極32の周囲には、接触電極32を芯として円柱状に形成され、絶縁材料により構成される外装部34が備えられている。
【0034】
パルス発生本体部10は、アナログ/ディジタルマイクロプロセッサにより構成され、パルス信号を発生して供給するパルス信号供給手段11の他に、立上・立下制御手段12、パルス波形制御手段13を備える。立上・立下制御手段12は、パルス信号供給手段11が供給するパルス信号の立上り時間と立下り時間との少なくとも一方を変化させるものである。指示入力部を構成する操作部24は、ダイヤルやボタンやキーボードやタッチパネルなどにより構成されてもよく、操作部24には図3に示されるように、立上・立下時間指示手段41が備えられている。この立上・立下時間指示手段41により、立上・立下制御手段12に対し所望の立上り時間と立下り時間のパルス信号に変化させる指示入力を与えることができる。さらに立上・立下制御手段12は、パルス信号の立上り又は立下りの形状を、直線的に立上げ又は立下げる直線モードか、指数関数的に立上げる又は立下げる指数関数モードの選択も可能とし、図9(e)に示すような形状のパルス波形を生成可能とする。
【0035】
上記立上・立下時間指示手段41からの指示入力では、立上り時間と立下り時間を指定可能とする。例えば、立上り時間は0.068ms〜1000ms、立下り時間は0.068ms〜5msから所望のパルスを選択することができる。さらに、立上り又は立下りの形状も指定可能とする。例えば、直線的に立上る/立下る直線モードと、指数関数的に立上る/立下る指数関数モードから所望の立上り又は立下りの形状を選択可能とする。図4(a)には、直線モードにおいて、立下り時間を0.068msとし、立下り時間をそれぞれ、0.068ms、0.34ms、0.68ms、1.02ms、1.36msとした5種類のパルスP1〜P5を示している。ここに明らかな通り、パルスには、矩形波のみならず鋸歯状波を含むものである。
【0036】
また、パルスに関する形状の指定は、パルス信号の波形形状と時間軸とにより囲われた領域の面積により行うことが可能である。この場合、パルス信号の波形形状と時間軸とにより囲われた領域の面積とは、例えばP5にあっては、図4(b)のハッチングにより示す領域を意味する。指定される好適なパルス信号の印加電流形状と時間軸とにより囲われた領域の面積は、0.01〜100(ms・mA)である。また、指定される好適なパルス信号の印加電圧形状と時間軸とにより囲われた領域の面積は、0.1〜20000(ms・V)である。
【0037】
パルス発生本体部10に備えられているパルス波形制御手段13は、パルス信号供給手段11が供給するパルス信号のパルス幅・パルス間隔・パルス数を変化させるものである。操作部24には図3に示されるように、パルス波形指示手段43が備えられている。このパルス波形指示手段43により、パルス波形制御手段13に対し所望のパルス幅・パルス間隔・パルス数のパルス信号に変化させる指示を与えることができる。
【0038】
パルス幅・パルス間隔・パルス数により選択するようになっており、パルス幅は0.5〜30msを例えば0.1ms刻みで選択可能とし、パルス間隔は1〜100msを例えば1ms刻みで、パルス数を例えば1回刻みで選択可能とする。
【0039】
パルス発生本体部10に接続されている電流/電圧制御部21は、パルス信号供給手段11が供給するパルス信号の電流と電圧の少なくとも一方を変化させる刺激強度制御手段である。操作部24には図3に示されるように、刺激強度指示手段42が備えられており、この刺激強度指示手段42により刺激強度制御手段である電流/電圧制御部21に対し所望の電流或いは電圧のパルス信号に変化させる指示を与えることが可能である。
【0040】
例えば、電流制御の場合に、0.0mAから0.01mA刻みで所定値まで電流の上昇を可能(所望値からの下降も可能)に構成されている。勿論、針状電極31と接触電極32を装着した後には、電極間インピーダンスが一定と考えられるから、電圧値を所定値(例えば、0V)から0.2V刻みで所定値まで上昇を可能(所望値からの下降も可能)に構成しても良い。
【0041】
電流/電圧制御部21に接続されている極性切換部25は、針状電極31の電気的極性と接触電極32の電気的極性とを変換する電気的極性変換手段として機能する。操作部24には図3に示されるように、極性変換指示手段44が備えられており、この極性変換指示手段44により電気的極性変換手段である極性切換部25に対し電気的極性の変換を指示することができる。これにより針状電極31の電気的極性を+極にして接触電極32の電気的極性を−極にすることができ、これと逆に、針状電極31の電気的極性を−極にして接触電極32の電気的極性を+極にすることができる。
【0042】
表示部23には、パルス発生本体部10が作成した現状の刺激強度(mA)、パルスの立上り時間、立下り時間、パルス幅・パルス間隔・パルス数、電極極性などの文字情報等が表示される。
【0043】
以上の通りに構成された痛覚神経刺激装置は次のようにして用いられる。まず、表皮内刺激電極部30を被検者の検査部位における皮膚に接触させて、針状電極31が皮膚に刺さるように固定する。この時、針状電極31は0.01mm〜0.3mm程度皮膚内に刺さる。次に、操作部24を操作して、極性変換指示手段44により針状電極31の電気的極性を+極にして接触電極32の電気的極性を−極にする指示を与える。これにより、極性切換部25により、針状電極31の電気的極性が+極に、接触電極32の電気的極性が−極になるように電流路の接続制御がなされる。
【0044】
更に、操作部24を操作して、立上・立下時間指示手段41により、立上・立下制御手段12に対し所望の立上り時間と立下り時間のパルス信号に変化させる指示入力を与え、パルス波形指示手段43により、パルス波形制御手段13に対し所望のパルス幅・パルス間隔・パルス数のパルス信号に変化させる指示を与え、刺激強度指示手段42により刺激強度制御手段である電流/電圧制御部21に対し所望の電流或いは電圧のパルス信号に変化させる指示を与える。表示部23の表示により、上記操作部24から所望の設定がなされたかを確認して、刺激開始の操作を行う。
【0045】
以上により、針状電極31と接触電極32との間に、パルス信号が印加されて刺激がなされる。この状態において、操作部24を操作して、被検者が痛みを感じるまで電流値(或いは電圧値)を徐々に上昇させる。また、立上り時間と立下り時間を変更して測定を行い、パルス幅・パルス間隔・パルス数を変更して測定を行ってもよい。被験者に神経障害があれば、被験者は痛みを感じない、若しくは痛みを感じても高い強度の刺激を要することから判断できる。更に表皮内刺激電極部30を被検者の別の(或いは同一の)検査部位における皮膚に接触させて、刺激位置による違いや左右差などを確認できる。さらに操作部24を操作して針状電極31と接触電極32の電気的極性を変換して、上記と同様に測定を行えば、糖尿病性神経障害の進行の把握や適切なコントロールをも確認できる。
【0046】
<測定例1>
上記痛覚神経刺激装置を用いて、針状電極31の電気的極性を+極にして接触電極32の電気的極性を−極にして、刺激を次の条件において実施し、体性感覚誘発電位を測定した。
被検者:26歳健康成人男性
刺激条件:パルス幅0.5msのパルス信号により定電流刺激。
刺激部位:上腕前部、手首のレベル
パルス信号:強度0.07mA、パルス間隔20ms、パルス幅0.5ms、パルス数5、立上りは直線モードで0.68ms、立下りは0.068ms
加算回数:10回。
【0047】
刺激電流を前記の通り、0.07mAとして刺激を行った場合の体性感覚誘発電位は、図5に示されるように刺激から850msのN1に上側ピークが生じ、950msのP1に下側ピークが生じた。ここで、刺激部位から脳までの距離が約110cmであり、N1頂点の伝導速度を計算すると、約1.3m/sとなる。C線維刺激による伝導速度が0.5〜2m/sであることから、この範囲に入っている。これに対し、Aδ線維の伝導速度が15m/s程度であり、全く異なっている。また伝導距離から考えると、この潜時(刺激を与えてから反応がでるまでの時間)でのAδ線維の応答は考えられない。この結果よりC線維のみ刺激されていることが検証された。これは、針状電極31の電気的極性を+極にして接触電極32の電気的極性を−極にするという、従来の一般的手法からは想起できない電極極性に関する構成を採用することにより、C線維のみの刺激が可能となった。
【0048】
<測定例2>
上記痛覚神経刺激装置を用いて、表皮内刺激電極部30を2個とし、針状電極31の電気的極性を+極にして接触電極32の電気的極性を−極にして、刺激を次の条件において実施し、体性感覚誘発電位を測定した。
被検者:45歳健康成人男性
刺激条件:刺激幅20msのパルス信号により定電流刺激。
刺激部位:左手背および前腕肘のレベル
パルス信号:強度0.03mA(手背)および0.05mA(肘)、パルス間隔30ms、パルス幅20ms、パルス数4、立上りは指数関数モード、立下りは0.025ms。
加算回数:12回。
【0049】
刺激電流を前記の通り、手背0.05mA、前腕0.03mAとして刺激を行った場合の体性感覚誘発電位は、図6に示されるように類似していた。誘発陽性頂点(P2)潜時(図6矢印)は、手背刺激で1099ms、前腕刺激で880msであり、両者の潜時差は219msであった。両刺激部位間の距離は24.5cmであるから、刺激部位間の末梢伝導速度は1.1m/sと算出される。この記録例ではP2に先行する陰性成分(N2)も記録されており(図6丸印)、同様の計算により伝導速度は1.2m/sとなる。C線維の伝導速度が0.5〜2m/sであることから、いずれもこの範囲に入っている。Aδ線維刺激による伝導速度性成分が300〜400msに出現することからも、この例で得られた応答がAδ線維を介するものではないことが明らかである。従って、C線維のみの刺激ができていることが検証された。針状電極31の電気的極性を+極にして接触電極32の電気的極性を−極にするという、従来の一般的手法からは想起できない電極極性に関する構成を採用することにより、C線維のみの刺激が可能となった。
【0050】
<測定例3>
上記痛覚神経刺激装置を用いて、表皮内刺激電極部30を1個とし、針状電極31の電気的極性を負極とし接触電極32の電気的極性を正極にした。つまり、操作部24を操作して、極性変換指示手段44により極性切り換えを行った。刺激を次の条件において実施し、体性感覚誘発電位を測定した。呈示例は、前述測定例2の手背刺激によるC線維応答を記録した後、電極および刺激設定はそのままで刺激極性のみ反転させて得たものである。
被検者:45歳健康成人男性
パルス信号:強度0.05mA、パルス間隔30ms、パルス幅20ms、パルス数4、立上りは指数関数モード、立下りは0.025ms
加算回数:20回。
【0051】
刺激電流を前記の通り、0.05mAとして刺激を行った場合の体性感覚誘発電位は、図7(下段)に示されるように刺激後200−400msに陰性、陽性頂点を生じた。陽極刺激の場合のprolonged pain(じわーと長く続く痛み感覚)と異なり、陰極刺激では鋭い痛みを惹起した。C線維侵害受容器は炎症に代表させるようなじりじりとした痛みや灼熱痛に関わり、一方Aδ侵害受容器は鋭い痛みを担当することから、陰極刺激ではAδ線維が刺激されたものと考えられる。手背の刺激ではAδ線維刺激が200−400msに陰性、陽性成分を誘発することがよく知られており、この例は完全にこれに一致する。図7の波形で重要なことは、極性を反転する以外の条件は同一であるにも関わらず、それぞれC線維とAδ線維が単独で刺激されている点である。陽極刺激(上段)では200−400msの成分は全く観察されないし、陰極刺激(下段)では1000ms付近のC線維応答は全く誘発されていない。皮膚感覚線維の選択的刺激において、極めて顕著な極性反転効果が得られることが検証された。
【0052】
これにより、C線維とAδ線維とを個別に刺激できることを実証した。これにより、神経障害発生が最初に確認されるC線維のみの障害を確認できるだけでなく、神経障害がAδ線維まで進行しているかを適切に確認でき、障害の進行状態を知り得る効果がある。なお、測定例1〜3においては、触覚に相当するAβ線維に対応する刺激から20ms近傍(刺激部位から導出部位までの距離が約110cmで、Aβ線維に関する伝導速度50m/s程度)にピークが見られないことから、触覚を刺激することなく痛覚のみを選択的に刺激できていることが確認できた。
【0053】
測定例1〜3では、C線維のみ刺激されることを定量的に実証するためSEPを求めたが、実際の神経障害の確認には上記刺激を被験者に与え、被験者に刺激を感じたか否かにより確認すればよい。上記一回あたりのパルス信号は0.1mA前後と微少であり、さらに被験者への刺激時間は約0.1秒程度と極めて短時間といえる。
【0054】
<測定例4>
上記痛覚神経刺激装置を用いて、表皮内刺激電極部30を2個とし、針状電極31の電気的極性を+極にして接触電極32の電気的極性を−極にして、刺激を次の条件において実施し、体性感覚誘発電位を測定した。
被検者:45歳健康成人男性
刺激条件:刺激幅20msのパルス信号により定電流刺激。
刺激部位:右足背および下腿の膝前面のレベル
パルス信号:強度0.08mA(足背)および0.03mA(肘)、パルス間隔30ms、パルス幅20ms、パルス数3、立上りは指数関数モードで20ms、立下りは0.025ms。加算回数12回。被験者は、刺激を感じたらできるだけ素早くボタンを押す課題を行い、反応時間(刺激からボタン押しまでの時間)を同時に記録した。
【0055】
刺激電流を前記の通り、足背0.05mA、膝0.11mAとして刺激を行った場合の体性感覚誘発電位は、図7に示されるように類似していた。誘発陽性頂点(P2)潜時(図8(a)矢印)は、足背刺激で1452ms、膝刺激で1135msであり、両者の潜時差は317msであった。両刺激部位間の距離は35cmであるから、刺激部位間の末梢伝導速度は1.1m/sと算出される。この記録例ではボタン押し課題に起因すると思われるさらに遅い陽性成分(図8(a)黒丸)も記録されており、両刺激部位の潜時差は311msである。同様の計算により伝導速度は1.1m/sとなる。C線維の伝導速度が0.5〜2m/sであることから、この範囲に入っている。従って、下肢についてもC線維のみの刺激ができていることが検証された。
【0056】
図8(b)に示すグラフは、同時に記録した反応時間を示したもので、白色が足背、梨地模様が膝である。反応時間を50ms毎のブロックに分け、各ブロックの反応の回数を棒グラフで示す。足背の平均反応時間は1263±61ms、膝では955±43msであった。従って両刺激部位間の反応時間の差は309msであり、伝導速度は1.1m/sと算出される。一般にボタン押しによる反応時間計測は誤差が大きく短潜時のものには使いにくいが、1秒前後の反応をみる場合には十分利用価値があると思われる。神経障害の確認に用いるような場合、誘発電位や正確な反応時間を測定しなくても、刺激を感じたら素早く「はい」と合図してもらうだけでも十分である。1秒前後あるいはそれよりも遅い潜時帯での応答があれば、被験者はその刺激条件でC線維刺激による感覚を得ていることが確実であるからである。
【0057】
<測定例5>
次に、パルス信号の各種条件を変化させて測定を行った結果を示す。全て、同一被験者(45歳男性)から反応時間を計測して行った。刺激部位は全て左手背とした。図9(a)は刺激条件を極性以外同一にし(パルスは指数関数的、パルス幅20ms、刺激間隔30msでパルス数3)、極性反転の効果をみたものである。刺激強度0.01mAから開始し、0.01mAきざみで強くしてゆくと、陽極刺激では0.05mAで初めて灼熱痛が感じられた。この時の反応時間は872msであり、明らかにC線維刺激の結果である。上のグラフの一番左のプロットがこの試行である。以後同様に0.01mAずつ刺激を強くして反応時間をプロットしてゆくと、0.2mA付近で反応時間が急に短くなり、概ね260〜320msほどで安定する。この時の刺激感覚は明瞭な刺す痛みであり、Aδ線維が刺激に加わったためである。さらに刺激を強くすると0.6mA付近で、こつんという触覚感覚が混じるようになり、反応時間は概ね200〜220msとなる。触覚に関わるAβ線維が興奮に加わったためである。手背刺激の場合、AδとAβ線維信号の脳への到達時間のずれは60msとされており、これに合致する結果である。一方、陰極刺激では(図9(a)下のグラフ)、どの刺激強度でもC線維刺激の反応時間は観察されず、ややAδの応答範囲が広くなっている(0.06mAからAδ)。
【0058】
この結果で重要なことは、上記痛覚神経刺激装置を用いて陽極刺激を行った場合、一般的な電気刺激での興奮しやすさの順序(Aβ、Aδ、C)とは逆の順でそれぞれの神経線維を刺激している点である。この刺激条件では、C線維を選択的にしかも弱い刺激強度で刺激できるのであるから、その利点は明瞭である。
【0059】
図9(b)は刺激条件を立上り設定以外同一にし(立下り17.5μs、パルス幅1〜1.5ms、刺激間隔30msでパルス数5)、パルスの立上りの効果を検討したものである。図9(b)の横軸は、立上り時間を示し、1P=17.5μs、5P=194μs、10P=433μs、15P=688μs、20P=987μsを示す。また、菱形のプロット点はC線維刺激閾値を示し、四角形のプロット点はC線維刺激限界値を示す。菱形のプロット点と四角形のプロット点の間が、有効にC線維刺激を行い得る有効域である。ここでは、総刺激量(電流x時間)が一定になるように、パルス幅を条件毎に若干調節した。図9(b)のグラフに示すように、立上り時間を長く設定すると、C線維刺激閾値が減少し、C線維刺激限界値が上昇した。即ち、C線維選択的刺激の有効刺激域(C線維刺激閾値とC線維刺激限界値との間)が拡大した。
【0060】
同様に、総刺激量を一定にして立下り時間の効果を検討したのが図9(c)である。刺激条件(立上り17.5μs、パルス幅0.5〜1.0ms、刺激間隔30msでパルス数5)を採用した。図9(c)の横軸は、立下り時間を示し、1P=17.5μs、5P=194μs、10P=433μs、15P=688μs、20P=987μsを示す。また、菱形のプロット点はC線維刺激閾値を示し、四角形のプロット点はC線維刺激限界値を示す。菱形のプロット点と四角形のプロット点の間が、有効にC線維刺激を行い得る有効域である。立上り時間ほど顕著ではないものの、立下り時間もC線維刺激有効域に影響を及ぼす。これらの結果から、パルス波形の形状がC線維刺激に影響を及ぼすことは明らかである。
【0061】
個人差あるいは測定毎に若干差があるものの、概ね立上り、立下りが急峻なほどAδ線維選択性が高く、緩やかなほどC線維選択性が高くなる。一般に使用されるパルス波形で例えば、矩形波はAδ線維刺激向き、三角波あるいは鋸歯状波はC線維向きであることが予想される。
【0062】
図9(d)は、総刺激量を同一にした矩形パルスと三角パルスを比較したものである。矩形波の刺激条件(立上り17.5μs、立下り17.5μs、パルス幅0.5ms)を採用し、三角波の刺激条件(立上り500μs、立下り500μs、パルス幅1ms)を採用した。選択的にC線維が刺激される電流値域(有効C線維刺激域)は、矩形波で0.11〜0.25mA、三角波で0.06〜0.29mAであり、有効C線維刺激域拡大に、三角波が有効であることが確認される。この結果は、同一のC線維刺激効果を得るには、矩形波と比べて立上りを緩やかにしたパルス波形が、総刺激量の面で有利であることを予想させる。
【0063】
これを確認した測定結果が図9(e)である。ある電流値で初めてC線維が刺激されるパルス幅(閾値)を、矩形波、直線的立上り波形(立上り1ms)および指数関数的立上り波形の3者で求め、パルスの形と電流値から総刺激量(ms・mA)を算出して、総刺激量の値で比較を行った。刺激条件(立下り25μs、矩形波の立上り17.5μs、直線的立上りパルス波の立上り1ms、パルス幅20msでパルス数3)を採用した。図9(e)に示すように、同じC線維刺激効果を得るには指数関数的波形が最も小さい総刺激量で済むことがわかる。例えば0.02mAの閾値では、指数関数的波形は矩形波と比べて2割少ない総刺激量となっている。
【0064】
図9(f)は、短いパルスではC線維が刺激できなかった試行例において、パルス幅の延長効果をみたものである。刺激条件(立下り及び立上り17.5μs、刺激間隔83msでパルス数5)を採用した。呈示例ではパルス幅10msまではC線維刺激効果は認められず、20msで初めて出現し、パルス幅のさらなる延長により若干C線維刺激閾値が低下している。
【0065】
図9(g)は、単発刺激ではC線維が刺激できなかった試行例において、パルス数増加の効果をみたものである。刺激条件(立下り及び立上り25μs、パルス幅40ms、刺激間隔80ms)を採用した。パルス数1及び2ではC線維は刺激されず、3〜10で明瞭なC線維刺激感覚が誘発された。パルス数3〜10では閾値は変わらなかった。反応時間はパルス数にかかわらずほぼ一定であり(980〜1120ms)、どのパルス数でも3発目の刺激に対してボタン押しを行ったものと考えられる。
【0066】
これらの結果から明らかな通り、印加パルスの諸条件はいずれもCあるいはAδ線維選択刺激に影響を及ぼし、それぞれのパラメーターの最適値及び諸条件の最適な組み合わせを個々の検査例で可能にするには、本発明の刺激装置が具備する機能が不可欠であることが明らかである。とりわけ極性の反転やパルス波形の立上り、立下りの自由な設定は重要であるが、その他の機能例えば電流値もしくは電圧値の設定などの不可欠である。図9(a)〜図9(g)のいずれの測定例においても、C線維刺激には0.01mAのオーダーの正確さが必要でることが明らかであるからである。この結果より、C線維およびAδ線維をそれぞれ選択的に刺激することができ、特に、正弦波と異なるパルスを用いて上記の通りに刺激を与えることができ、神経障害の早期発見や機能評価に有用であると考えられる。
【0067】
なお、以上の実施例及び測定例においては、複数個の表皮内刺激電極部30が備えられた構成を採用し、使用するようにしても良いことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係る痛覚神経刺激装置の実施例の構成を示すブロック図。
【図2(a)】本発明に係る痛覚神経刺激装置の実施例に用いた電極の構成を示す断面図。
【図2(b)】本発明に係る痛覚神経刺激装置の実施例に用いた電極の一例を示す断面図。
【図3】本発明に係る痛覚神経刺激装置の実施例の要部に関する構成を示すブロック図。
【図4(a)】本発明に係る痛覚神経刺激装置の実施例により供給される、立上り時間と立下り時間を異ならせたパルス信号の波形を示す図。
【図4(b)】本発明に係る痛覚神経刺激装置のパルス信号と時間軸に囲われた面積(総刺激量)を示す図。
【図5】本発明に係る痛覚神経刺激装置の実施例によりC線維に対する刺激を行った場合の第1の測定結果を示す図。
【図6】本発明に係る痛覚神経刺激装置の実施例によりC線維に対する刺激を行った場合の第2の測定結果を示す図。
【図7】本発明に係る痛覚神経刺激装置の実施例により電気極性を反転させて刺激を行った場合の第3の測定結果を示す図。
【図8(a)】本発明に係る痛覚神経刺激装置の実施例によりC線維に対する刺激を行った場合の第4の測定結果を示す図。
【図8(b)】本発明に係る痛覚神経刺激装置の実施例によりC線維に対する刺激を行った場合の第4の測定結果において、各刺激部位毎の反応時間を示す図。
【図9(a)】本発明に係る痛覚神経刺激装置の実施例により、電気的極性と刺激強度との関係を示す図。
【図9(b)】本発明に係る痛覚神経刺激装置の実施例により、立上り時間と刺激強度との関係を示す図。
【図9(c)】本発明に係る痛覚神経刺激装置の実施例により、立下り時間と刺激強度との関係を示す図。
【図9(d)】本発明に係る痛覚神経刺激装置の実施例により、総刺激量と一定とし矩形波と三角波とを比較した図。
【図9(e)】本発明に係る痛覚神経刺激装置の実施例により、刺激電流値を変化させた場合の総刺激量の遷移を、矩形波と三角波並びに指数関数的波形において比較した図。
【図9(f)】本発明に係る痛覚神経刺激装置の実施例により、パルス幅と刺激強度との関係を示す図。
【図9(g)】本発明に係る痛覚神経刺激装置の実施例により、パルス数と刺激強度との関係を示す図。
【図10】体性感覚誘発電位SEPの測定における生体に対する電極配置を示す図。
【符号の説明】
【0069】
10 パルス発生本体部
11 パルス信号供給手段
12 立上・立下制御手段
13 パルス波形制御手段
21 電圧制御部
22 電源部
23 表示部
24 操作部
24 指示入力部
25 極性切換部
30 表皮内刺激電極部
31 針状電極(第1電極)
32 接触電極(第2電極)
33 スペーサ
34 外装部
41 立上・立下時間指示手段
42 刺激強度指示手段
43 パルス波形指示手段
44 極性変換指示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端を皮膚内に僅かに刺して用いる第1電極と、
前記第1電極の周囲に導通せずに配置され、皮膚に接触させて用いる少なくとも一つ以上の第2電極と、
から構成される電極部と
前記第1電極の電気的極性を+極とし前記第2電極の電気的極性を−極としたパルス信号を供給するパルス信号供給手段と
を具備することを特徴とする痛覚神経刺激装置。
【請求項2】
前記パルス信号の立上り時間と立下り時間との少なくとも一方を変化させる立上・立下制御手段と、
所望の立上り時間と立下り時間のパルス信号に変化させる指示入力を与えるための立上・立下時間指示手段を備える指示入力部と
を具備することを特徴とする請求項1に記載の痛覚神経刺激装置。
【請求項3】
前記パルス信号の立上り及び/又は立下りを直線的に変化可能であること
を特徴とする請求項2に記載の痛覚神経刺激装置。
【請求項4】
前記パルス信号の立上り及び/又は立下りの傾斜を指数関数的に変化可能であること
を特徴とする請求項2または3に記載の痛覚神経刺激装置。
【請求項5】
前記パルス信号の電流と電圧の少なくとも一方を変化させる刺激強度制御手段と、
前記指示入力部に備えられ、前記刺激強度制御手段に対し所望の電流或いは電圧のパルス信号に変化させる指示を与えるための刺激強度指示手段と
を具備することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の痛覚神経刺激装置。
【請求項6】
前記パルス信号供給手段が供給するパルス信号のパルス幅・パルス間隔・パルス数を変化させるパルス波形制御手段と、
前記指示入力部に備えられ、前記パルス波形制御手段に対し所望のパルス幅・パルス間隔・パルス数のパルス信号に変化させる指示を与えるためのパルス波形指示手段と
を具備することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の痛覚神経刺激装置。
【請求項7】
前記パルス信号のパルス幅が0.1〜100msであること
を特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の痛覚神経刺激装置。
【請求項8】
前記パルス信号の波形形状と時間軸とにより囲われた領域の面積が、0.01〜100(ms・mA)であること
を特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の痛覚神経刺激装置。
【請求項9】
前記パルス信号の波形形状と時間軸とにより囲われた領域の面積が、0.1〜20000(ms・V)であること
を特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の痛覚神経刺激装置。
【請求項10】
前記第1電極の電気的極性と前記第2の電極の電気的極性とを変換する電気的極性変換手段と、
前記指示入力部に備えられ、前記電気的極性変換手段に対し電気的極性の変換を指示するための極性変換指示手段と
を具備することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の痛覚神経刺激装置。
【請求項11】
前記第2電極は前記第1電極の周囲に環状に配置されること
を特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の痛覚神経刺激装置。
【請求項12】
前記電極部が複数存在すること
を特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の痛覚神経刺激装置。

【図1】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図3】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8(a)】
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【図8(b)】
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【図9(a)】
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【図9(b)】
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【図9(c)】
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【図9(d)】
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【図9(e)】
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【図9(f)】
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【図9(g)】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−88802(P2010−88802A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264298(P2008−264298)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(504261077)大学共同利用機関法人自然科学研究機構 (156)
【出願人】(000230962)日本光電工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】