説明

瘢痕組織形成を減少させるための組成物および方法

本発明は、創傷治癒を処置するため、および、瘢痕組織形成を減少させるためのシロリムスおよびシロリムスのアナログの適用を記載する。本発明はまた、類似の効果を有するmTORタンパク質と相互作用すると考えられる非シロリムス化合物も意図する。詳細には、例えば、開いたまたは閉じた手術部位のいずれかを含む手術手順時に投与することができる微粒子、フォーム、ゲル、スプレー、および生体接着剤を作製するための様々な媒質を意図する。長期移植のためのコーティング医療装置が、上記組成物の1つの使用方法として意図される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、薬理活性による組織治癒および過剰瘢痕防止の分野に関する。詳細には、本発明は、術後瘢痕組織形成および/または癒着を減少および/または防止するためのシロリムス、タクロリムス、およびシロリムスのアナログ(すなわち、ラパマイシンおよびその誘導体)の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
術後の過剰な瘢痕組織の形成、癒着、および血管の狭小化(narrowing)は、古典的な開放手順および関節鏡視下手順/腹腔鏡手順の両方を使用した腹部、神経、脊髄、血管、胸部、または他の手術型後の主な問題である。
【0003】
瘢痕組織は、通常は身体が再構築された修復組織が得られる完全且つ迅速な創傷治癒反応を開始する際の損傷の自然治癒過程の一部として形成される。しかし、一定の例では、この通常の治癒過程により過剰な瘢痕組織を形成し得る。
【0004】
ある種の手術または損傷の後において、過剰な瘢痕組織の生成は、手術および治癒の結果に影響を与える主な問題である。眼では、例えば、術後の瘢痕形成は手術の結果を決定し得る。これは、失明病である緑内障の場合が特にそうであり、緑内障手術の結果を改善するために現在いくつかの抗瘢痕形成処方計画が使用されているが、重篤な合併症のために臨床での使用が制限されている。手術結果に負の影響を与える過剰な瘢痕組織生成の他の例には、癒着溶解手術、血管形成術、脊髄手術、血管手術、および心臓手術が含まれる。
【0005】
術後瘢痕形成問題を解決するための今までの試みでは、アントラサイクリン、ダウノマイシン、マイトマイシンC、およびドキソルビシンなどの高細胞傷害性有糸分裂インヒビターを使用していた。Kelleher, 米国特許第6,063,396号。同様に、動脈再狭窄を阻害または減少するための細胞増殖抑制薬の管腔内投与が報告されている。Kunz et al., 米国特許第5,981,568号。
【0006】
当技術の現段階では、医学的危険性が低く、且つ治療的に有益な化合物を使用した瘢痕組織の形成を有意に減少させる術後治療および外傷後治療が欠如している。
【発明の開示】
【0007】
定義
本明細書中で使用される、「付着」という用語は、媒質または担体と化合物との間の任意の相互作用を指す。付着は、可逆的でも不可逆的でもよい。このような付着は、共有結合、イオン結合、ファンデルワールス力、または摩擦などであり得るが、それに限定されるわけではない。化合物が、含浸しているか、組み込まれているか、コーティングされているか、懸濁されているか、溶解されているか、混合している場合などにおいて、化合物は媒質または担体に付着している。
【0008】
本明細書中で使用される、「コーティング」という用語は、生体組織と媒質に付着している薬学的化合物との間の任意の物理的関係を指す。このような物理的関係は、噴霧、層化、含浸、内部配置、および外部配置などであり得るが、それに限定されるわけではない。
【0009】
本明細書中で使用される、「創傷」という用語は、組織構造の正常な完全性の破壊を伴う身体の損傷を示す。1つの意味では、この用語は、「手術部位」を含むことが意図される。別の意味では、この用語は、創傷(挫傷、切傷、裂傷、非穿通創(すなわち、皮膚は破壊していないが、基底構造が損傷している創傷)、開放創、穿通創、穿孔創、刺創、汚染創、皮下創、熱傷など)を含むことが意図される。本発明にしたがって首尾よく治療することができる創傷または潰創に関連する病態は皮膚疾患である。
【0010】
本明細書中で使用される、「手術部位」という用語は、特定の医学的目的のために実施された皮膚または内部器官の任意の開口部(opening)を指す。医療関係者が伝統的な手術などで対象となる領域に物理的に直接アクセスした場合、手術部位は「開口」され得る。または、医療関係者が、蛍光透視鏡を使用して活性を視覚化することができるカテーテル、および、光ファイバーシステムを使用して活性を視覚化することができる内視鏡(すなわち、腹腔鏡)など(それに限定されるわけではない)の遠隔装置を使用して手順を実施した場合、手術部位は「閉鎖」され得る。手術部位には、器官、筋肉、腱、靭帯、および結合組織などが含まれ得るが、それに限定されるわけではない。
【0011】
本明細書中で使用される、「器官」という用語には、静脈、動脈、リンパ管、食道、胃、十二指腸、空腸、回腸、結腸、直腸、膀胱、尿管、胆嚢、胆管、膵管、心膜、腹膜、および胸膜が含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0012】
本明細書中で使用される、「皮膚」という用語は、皮膚の表層を広範に囲んでおり、かつ露呈している場合、皮層の基礎となる。皮膚は身体の最も露呈した部分であるので、様々な疾患由来の様々な損傷(裂傷、切り傷、擦過傷、熱傷、および凍傷、または損傷などであるが、それに限定されるわけではない)に対して特に感受性が高い。
【0013】
本明細書中で使用される、「吻合」という用語は、2つの血管またはそれぞれ管腔を有する器官を成長が刺激される近位に置き、2つの血管または器官を連続組織の形成によって連結する手術手段を指す。好ましくは、連結すべき身体器官は、静脈、動脈、および腸管の部分である。最も好ましくは、連結すべき器官は動脈である。当業者は、本発明が意図する吻合手順は全ての脈管手術領域だけでなく、器官連結のための他の手術手順での使用も可能であることを認識するであろう。実施することができる吻合の例には、動脈吻合、静脈吻合、動静脈吻合、リンパ管の吻合、胃食道吻合、胃十二指腸吻合、胃空腸吻合、空腸、回腸、結腸、および直腸の間の吻合、尿管膀胱吻合、胆嚢または胆管の十二指腸への吻合、および膵管と十二指腸への吻合が含まれるが、それに限定されるわけではない。さらに、吻合により、人工移植片を管腔を有する身体の器官に連結することができる。1つの態様では、本発明は、媒質と、患者の動静脈吻合物との接触を意図しており、ここで患者は、末期腎疾患を示し且つ透析を受けている。
【0014】
本明細書中で使用される、「伝達(communication)」という用語は、典型的に連結された器官対に関連する様式である器官から別の器官への浮遊または拡散による2つの器官の体液との交換能力を指す。吻合を貫流することができる流動物(fluid)の例には、血液、尿、リンパ液、胆汁、膵液、摂取物、および膿性分泌物などの液体および半固体が含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0015】
本明細書中で使用される、「媒質」という用語は、化合物を治療点(例えば、創傷、手術部位など)に送達するための担体または賦形剤として作用する任意の材料または材料の組み合わせを指す。したがって、全ての実際的な目的のために、「媒質」という用語は「担体」という用語と同義と見なされる。1つの態様では、媒質は、薬物または化合物に付着した担体を含み、かつ、媒質は担体の治療点への送達を促進する。別の態様では、担体は、付着した薬物を含み、かつ、担体は、薬物の治療点への送達を促進する。好ましくは、媒質は、フォーム、ゲル(ヒドロゲルが含まれるが、それに限定されるわけではない)、キセロゲル、微粒子(すなわち、ミクロスフェア、リポソーム、マイクロカプセルなど)、生体癒着剤、液体からなる群より選択される。詳細には、微粒子とヒドロゲル、生体癒着剤、フォーム、または液体との組み合わせを含む媒質が本発明で意図される。好ましくは、ヒドロゲル、生体癒着剤、およびフォームは、本明細書中で意図されるポリマーの任意の1つまたはその組み合わせを含む。本発明によって意図される任意の媒質は、制御放出処方物を含み得る。例えば、いくつかの場合、媒質は、約1日から6ヶ月まで続く長期間の薬物の制御放出および徐放を提供する薬物送達系を構成する。
【0016】
本明細書中で使用される、「キセロゲル」という用語は、複数の気泡および取り込まれた化合物を有するシリコンと酸素との組み合わせを含む任意の装置を指す。得られたガラス状のマトリクスは、マトリクスの溶解時に取り込まれた化合物を制御放出することができる。
【0017】
本明細書中で使用される、「材料」という用語は、媒質の作製に有用な任意の化学物質を指す。例えば、リポソーム媒質は、リン脂質材料から構成され、微粒子およびヒドロゲル材料は、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)コポリマーおよびヒアルロン酸によって例示されるポリマー材料から構成される。
【0018】
本明細書中で使用される、「瘢痕組織形成の減少」という用語は、創傷治癒の改善を反映する任意の組織の反応を指す。詳細には、細胞外傷後の過形成または副作用など(それに限定されるわけではない)の病態の改善が意図される。全瘢痕組織を回避しなければならないことを意図しない。非治療患者と比較して、瘢痕形成または過形成の量が減少するならば十分である。
【0019】
本明細書中で使用される、「フォーム」という用語は、体積に対する大部分の気体が気泡の形態であり、液体、固体、またはゲル内に分散している分散物を指す。気泡の直径は、通常、気泡間のラメラの厚さよりも比較的大きい。
【0020】
本明細書中で使用される、「ゲル」という用語は、溶媒中に懸濁した場合、様々な程度まで、中間の粘度の液体またはゼリー様生成物を形成する任意の材料を指す。ゲルはまた、一定量の水を含む固体または半固体コロイドを含み得る。これらのコロイド溶液を当技術分野においてしばしばヒドロゾルと呼ぶ。1つの特定のゲル型はヒドロゲルである。本明細書中で使用される、「ヒドロゲル」という用語は、ゼラチンおよびペクチンならびにその画分および誘導体など(それに限定されるわけではない)を含む溶媒(典型的には、水または極性溶媒)中に懸濁した場合、様々な程度まで、ゼリー様生成物を形成する任意の材料を指す。典型的には、ヒドロゲルは、水中で膨張して溶解することなくその構造内で大量の水を保持することができる。1つの態様では、本発明は、体温未満で液体であり、体温で強固なゲルを形成するゲルを意図する。
【0021】
本明細書中で使用される、「スプレー」という用語は、空気中に吹き飛ばされるか、放出されるか、分散される液体または粒子の任意の懸濁液を指す。スプレーは、粒子または液滴の噴出であり得る。スプレーは、エアゾールであり得る。
【0022】
「エアゾール」とは、本明細書中で、分散物など(それに限定されない)の気体中の物質の液体または固体の粒子の懸濁液と定義される。エアゾールは、固体または液体の分散物を含み得る。本発明は、様々な型のアトマイザーおよびネブライザーによるエアゾールの生成を意図する。「アトマイザー」は、バッフルを使用しないエアゾール発生器である一方で、「ネブライザー」は、より小さな粒子の生成のためにバッフルを使用する。1つの態様では、本発明は、振動エレメントおよび先細りの穴を有するドーム形開口プレートを含む市販のArogen(商標)エアゾール発生器の使用を意図する。プレートが1秒あたり数千回振動する場合、微小ポンピング作用により、液体を先細りの穴から汲み上げて正確に定義された範囲の液滴サイズを有する低速エアゾールが得られる。Aerogen (商標)エアゾール発生器は、高圧ガスを必要としない。「バフリング」とは、目的物(すなわち、「バッフル」)による前進運動の妨害である。エアゾールをコンテナまたは管類の側面に衝突させることによって「バフリング」を行うことができる。より典型的には、構造物(ボールまたは他の障壁など)を、エアゾールの経路に入れる(例えば、米国特許第5,642,730号(参照により本明細書に組み入れられる)を参照のこと)。本発明は、送達装置から放出される際にエアゾールを減速させるためのバッフルの使用を意図する。
【0023】
本明細書中で使用される、「化合物」または「薬物」という用語は、投与して所望の効果を達成することができる任意の薬理学的に活性な物質を指す。化合物または薬物は、合成物または有機物、タンパク質またはペプチド、オリゴヌクレオチドまたはヌクレオチド、多糖または糖であり得る。化合物または薬物は、刺激的または阻害的(抗生物質活性、抗ウイルス活性、抗真菌活性、ステロイド活性、細胞傷害活性、細胞増殖抑制活性、抗増殖活性、抗炎症活性、鎮痛活性、または麻酔活性など)であり得る任意の様々な活性を有し得るか、造影剤または他の診断薬として有用であり得る。好ましい態様では、本発明は、mTORタンパク質に結合して創傷および術後癒着を減少させ、そして/または創傷および術後瘢痕形成を減少させることができる化合物または薬物を意図する。別の態様では、本発明は、細胞増殖抑制性を示し、主にG0期またはG1期の細胞分裂サイクルを妨害するように作用し、それにより細胞を死滅させることなく増殖を阻害すると考えられる化合物または薬物を意図する。「化合物」または「薬物」という用語は、任意の特定の媒質の作製を意図する、いずれの薬学的に活性でない材料(ポリマーまたは樹脂などであるが、それに限定されるわけではない)を指すことも意図しない。
【0024】
本明細書中で使用される、「ラパマイシン」という用語は、薬物シロリムスに代表される化合物を指す。ラパマイシンは、ストレプトマイセス属(例えば、ストレプトマイセス・ヒグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus))から天然に抽出されるか、化学合成されるか、遺伝子操作細胞培養技術によって産生することができる抗真菌抗生物質である。
【0025】
本明細書中で使用される、「アナログ」という用語は、アナログが親化合物と類似の生化学活性を有するように親化合物と実質的な構造-活性関係を有する任意の化合物を指す。例えば、シロリムスは、2位、7位、または32位のいずれかで置換された多数のアナログを有する。当業者は、「誘導体」という用語は、本明細書中で「アナログ」という用語と交換可能に使用されることを理解しているはずである。
【0026】
本明細書中で使用される、化合物または薬物を「投与された」または「投与すること」という用語は、化合物または薬物がその意図する効果を患者に発揮するように化合物または薬物を患者に提供する任意の方法を指す。例えば、1つの投与方法は、カテーテル、スプレーガン、シリンジなど(それに限定されるわけではない)の医療装置を使用した間接的機構による。投与方法の第2の例は、経口摂取、経皮パッチ、局所、吸入、坐剤などの直接投薬による。
【0027】
本明細書中で使用される、「生体適合性」という用語は、宿主に実質的に有害な反応を誘発しない任意の材料を指す。外来目的物を生体内に移入する場合、目的物が、宿主に負の効果を与える炎症反応などの免疫反応を誘導するかどうか常に配慮する。本発明の文脈では、デザインした目的にしたがって生体適合性を評価する(例えば、包帯は皮膚と生体適合性を示すとみなされるのに対して、埋め込み型医療装置は身体の内部組織と生体適合性を示すと見なされる)。好ましくは、生体適合性材料には、生分解性材料および双安定性材料が含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0028】
本明細書中で使用される、「生分解性」という用語は、生細胞もしくは生体またはそのプロセス(水が含まれる)によって生化学的に作用し、分子構造が変化するように低分子量の生成物に分解することができる任意の材料を指す。
【0029】
本明細書中で使用される、「生体侵食性(bioerodible)」という用語は、分子構造が変化しないように、いかなる長期炎症作用も起こすことなく、付着した表面から離れて機械的に磨減する任意の材料を指す。ある意味では、生体侵食(bioerosin)とは、安定な低分子量の生成物が最後に溶解される「生分解」の最終段階を示す。
【0030】
本明細書中で使用される、「生体再吸収性」という用語は、身体組織内または身体組織を通して同化する任意の材料を指す。生体再吸収プロセスは、生分解および/または生体侵食を利用することができる。
【0031】
本明細書中で使用される、「生体安定性」という用語は、意図する期間生理学的環境下で残存して、医学的に有益な効果をもたらす任意の材料を指す。
【0032】
本明細書中で使用される、「補足的薬学的化合物」という用語は、本発明が意図する媒質の一部として投与される任意の医学的に安全な化合物を指す。補足的薬学的化合物を含む媒質の投与には、全身、局所、移植、または任意の他の手段が含まれるが、それに限定されるわけではない。補足的薬学的化合物は、細胞増殖抑制性であり得るかmTORタンパク質に結合することができる化合物と類似するか異なる活性を有し得る。好ましくは、補足的薬学的化合物には、抗炎症薬、コルチコステロイド、抗血栓薬、抗生物質、抗ウイルス薬、鎮静薬、および麻酔薬が含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0033】
本明細書中で使用される、「補助的薬学的化合物」という用語は、本発明が意図する媒質と個別に投与される任意の薬学的に安全な化合物を指す。補助的薬学的化合物の投与には、経口摂取、経皮パッチ、局所、吸入、坐剤などが含まれるが、それに限定されるわけではない。好ましくは、補助的薬学的化合物には、シロリムス、タクロリムス、シロリムスのアナログ、抗炎症薬、コルチコステロイド、抗血栓薬、抗生物質、抗ウイルス薬、鎮静薬、および麻酔薬が含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0034】
本明細書中で使用される、「コロイド系」または「コロイド」という用語は、通常の光学顕微鏡の分解能では小さすぎるが半透膜を通過することができない、別の物質の至る所に分散した粒子からなる物質を指す。3つ全ての様相がコロイド系内に存在する必要はない。繊維はコロイドとして2つの様相のみを示すことができ、薄膜はコロイドとして1つの様相のみを有し得る。コロイド系の単位が分離している必要はない。連続的網状構造(コロイドの様相を示すその基本単位)もこのクラスに含まれる(例えば、多孔質固体、気体、およびフォーム)。流動物のコロイド系は、2つ以上の成分から構成することができ、ゾル(例えば、タンパク質ゾル、金ゾル、乳濁液、臨界ミセル濃度を超える界面活性剤溶液、またはエアゾール)と呼ばれる。懸濁液では、固体粒子は液体中に分散されており、コロイド懸濁液は、その粒子サイズがコロイドの範囲のものである。
【0035】
本明細書中で使用される、「用量計量エレメント」という用語は、化合物の投与量を制御するエレメントである。エレメントは、投与される化合物の量を測定することができるが、必ずしもその必要はない。好ましい態様では、エレメントは、単純に規定の体積のコンテナ(例えば、リザーバ)として特徴付けられる。好ましい態様では、規定の体積を、製造者または医療従事者(例えば、看護士、薬剤師、医師など)が充填し、全体積を投与する。別の態様では、リザーバは、視覚可能な測定表示(indica)(例えば、印、数字など)を備えた透明または半透明のシリンダーであり、ガイドとして表示を使用して所望の点(例えば、全量未満)まで充填する。
【0036】
本明細書中で使用される、「流動物駆動エレメント」という用語は、装置に沿った方向に流動物が移動するエレメントである。いくつかの態様では、流動物駆動エレメントは、キャニスタに格納された圧縮ガスによって駆動されるプランジャを含む。他の態様では、ポンプを含む。さらに他の態様では、手で作動する(シリンジ様式)プランジャを含む。
【0037】
本明細書中で使用される、「患者」という用語は、ヒトまたは動物であり、必ずしも入院していなくてもよい。例えば、外来患者、養護施設の患者は、「患者」である。
【0038】
本明細書中で使用される、「医療装置」という用語は、広義には、医学的手順で使用する任意の装置を指す。詳細には、医学的手順または治療法で患者に接触する任意の装置が、本明細書中で医療装置として意図される。同様に、医学的手順または治療法時に化合物または薬物を患者に投与する任意の装置は、本明細書中で医療装置を意図する。「直接医療インプラント」には、尿路カテーテルおよび脈管内カテーテル、透析用シャント、創傷排液チューブ、皮膚縫合、移植血管および埋め込み型メッシュ、眼内装置、埋め込み型薬物送達系、および心臓弁などが含まれるが、それに制限されるわけではない。「創傷ケア装置」には、一般的な創傷包帯、非癒着性包帯、熱傷用包帯(burn dressigng)、生体移植材料、テープ状の閉鎖物(closure)および包帯、ならびに手術用被布が含まれるが、それに制限されるわけではない。「手術用装置」には、媒質を投与するための内視鏡システム(すなわち、カテーテル、脈管カテーテル、ならびにメスおよび牽引子などの手術道具)および薬物ポート、注射針などの一過性薬物送達装置が含まれるが、それに制限されるわけではない。細胞増殖抑制薬または抗増殖薬(すなわち、例えば、シロリムスまたはシロリムスのアナログ)を含む媒質が医療装置の表面に付着するようになる場合、医療装置は、「コーティング」されている。この付着は、永続的でも一過性でもよい。一過性の場合、付着により、細胞増殖抑制薬または抗増殖薬を制御放出することができる。
【0039】
「細胞増殖抑制性」という用語は、その主な抗増殖作用機構がG0期またはG1期の細胞周期の進行を妨害する任意の化合物を指す。1つの態様では、シロリムス、タクロリムス、またはシロリムスのアナログは、細胞増殖抑制性を示し、G1期から進行する細胞周期を妨害(すなわち、停止)する。
【0040】
「内視鏡」という用語は、生体内に挿入して作業(手術手順の観察、手術手順の実施、媒質の手術部位への適用が含まれるが、それに限定されるわけではない)に使用することができる任意の医療装置を指す。内視鏡は、装置(関節鏡、腹腔鏡、子宮鏡、膀胱鏡(cytoscope)などが含まれるが、それに限定されるわけではない)によって例示される。中空器官に対する内視鏡の使用を制限することを意図しない。関節鏡または腹腔鏡などの内視鏡を皮膚を介して挿入し、閉じた手術部位に到達させることを特に意図する。
【0041】
本明細書中で使用される、「液体」という用語は、方法(噴霧、注入、圧搾(squeezing)、飛散、および吹き付けなどが含まれるが、それに限定されるわけではない)によって手術部位に適用される、粘度が最小の媒質を指す。
【0042】
本明細書中で使用される、「液体として投薬する」という用語は、噴霧、注入、圧搾、飛散、および吹き付けなどを指す。
【0043】
本明細書中で使用される、「液体投与」という用語は、それによって媒質が重力または圧力起因の力のいずれかに反応して流れるか流れ込む能力を含む、任意の方法を指す。
【0044】
本明細書中で使用される、「液体スプレー」という用語は、微細分散した液滴が重力によって手術部位に定着する、圧力起因の力に反応した微細分散液滴の発生を含む液体投与を指す。
【0045】
本明細書中で使用される、「注入可能な液体」という用語は、重力に反応した低粘度の液体の流れまたは流れ込みを含む液体投与を指す。本発明は、1センチポアズ〜15,000センチポアズとの間、好ましくは1センチポアズ〜500センチポアズとの間(すなわち、飽和グルコース溶液に類似)、より好ましくは1センチポアズ〜250センチポアズとの間(すなわち、潤滑油に類似)の範囲の低粘度の液体(室温で)を意図する。
【0046】
本明細書中で使用される、「圧搾可能な液体」という用語は、圧力起因の力に反応して高粘度の液体の流れまたは流れ込みを含む液体投与を指す。本発明は、5,000センチポアズ〜100,000センチポアズとの間、好ましくは25,000センチポアズ〜50,000センチポアズとの間(すなわち、マヨネーズに類似)、より好ましくは15,000センチポアズ〜25,000センチポアズとの間(すなわち、溶融ガラスに類似)、より好ましくは5,000センチポアズ〜15,000センチポアズとの間(すなわち、蜂蜜に類似)の範囲の高粘度の液体(室温で)を意図する。
【0047】
本明細書中で使用される、「微粒子」という用語は、化合物または薬物が付着することができる任意の微視的担体を指す。好ましくは、本発明によって意図される微粒子は、制御放出特性を有する処方物でありうる。
【0048】
本明細書中で使用される、「PLGA」という用語は、乳酸とグリコール酸とのポリマーまたはコポリマーの混合物を指す。本明細書中で使用される、「ラクチドポリマー」は乳酸ポリマーと化学的に等価であり、「グリコリドポリマー」はグリコール酸ポリマーと化学的に等価である。1つの態様では、PLGAは、ラクチドポリマーおよびグリコリドポリマーの交互混合物を意図し、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)ポリマーを指す。
【0049】
概要
本発明は、組織治癒および瘢痕防止の分野に関する。1つの態様では、薬学的化合物を使用して、瘢痕組織形成を減少および/または防止する。別の態様では、シロリムス、タクロリムス、およびシロリムスのアナログ(すなわち、シロリムスおよびその誘導体)を使用して、術後瘢痕組織形成を減少および/または防止する。別の態様では、G0期またはG1期の細胞周期を妨害することができる化合物を使用して、過剰な瘢痕組織を減少および/または防止する。別の態様では、mTORタンパク質に結合することができる化合物を使用して、瘢痕組織形成を減少および/または防止する。
【0050】
本発明の1つの局面は、薬物が、シロリムス、タクロリムス、エベロリムス、ならびにそれらのアナログおよび誘導体からなる群より選択され、薬物が付着した担体が、微粒子、ゲル、キセロゲル、生体接着剤、フォーム、および液体からなる群より選択される、担体に付着した薬物を意図する。1つの態様では、担体は、生体適合性材料を含む。別の態様では、担体は生分解性材料を含む。1つの態様では、微粒子は、ミクロスフェア、マイクロカプセル化粒子、マイクロカプセル、およびリポソームからなる群より選択される。1つの態様では、微粒子は、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、脂肪族ポリエステル(ポリグリコール酸およびポリ乳酸が含まれるが、それに制限されるわけではない)、ヒアルロン酸、修飾多糖、キトサン、セルロース、デキストラン、ポリウレタン、ポリアクリル酸、偽ポリ(アミノ酸)、ポリヒドロキシブトレート関連コポリマー、ポリアンヒドリド、ポリメチルメタクリレート、ポリ(エチレンオキシド)、レシチン、およびリン脂質からなる群より選択されるポリマーを含む。1つの態様では、担体は、ゼラチン、コラーゲン、セルロースエステル、硫酸デキストラン、ポリ硫酸ペントサン、キチン、サッカリド、アルブミン、フィブリンシーラント(fibrin sealant)、合成ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドとのブロック重合体、ポリエチレングリコール、アクリレート、アクリルアミド、メタクリレート(2-ヒドロキシエチルメタクリレートが含まれるが、それに限定されるわけではない)、ポリ(オルソエステル)、シアノアクリレート、ゼラチン-レゾルシン-アルデヒド型生体接着剤、ポリアクリル酸、ならびにそのコポリマーおよびブロックコポリマーからなる群より選択される材料を含む。別の態様では、担体は、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、脂肪族ポリエステル(ポリグリコール酸およびポリ乳酸が含まれるが、それに制限されるわけではない)、ヒアルロン酸、修飾多糖、キトサン、セルロース、デキストラン、ポリウレタン、ポリアクリル酸、偽ポリ(アミノ酸)、ポリヒドロキシブトレート関連コポリマー、ポリアンヒドリド、ポリメチルメタクリレート、ポリ(エチレンオキシド)、レシチン、およびリン脂質からなる群より選択されるポリマーを含む。1つの態様では、担体は、制御放出様式で薬物を放出する。1つの態様では、担体は着色されている。1つの態様では、担体は、X線分光法によって視覚化される放射性不透明マーカーをさらに含む。
【0051】
本発明の1つの局面は、シロリムス、タクロリムス、シロリムスのアナログ、およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される化合物を含み、微粒子、ゲル、生体接着剤、ヒドロゲル、キセロゲル、フォーム、およびその組み合せからなる群より選択される、媒質を意図する。1つの態様では、媒質は、生体適合性材料を含む。1つの態様では、媒質は、生分解性材料を含む。1つの態様では、媒質は、化合物を制御放出させる。1つの態様では、微粒子は、ミクロスフェア、マイクロカプセル化粒子、マイクロカプセル、およびリポソームからなる群より選択される。1つの態様では、微粒子は、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、脂肪族ポリエステル(ポリグリコール酸およびポリ乳酸が含まれるが、それに制限されるわけではない)、ヒアルロン酸、修飾多糖、キトサン、セルロース、デキストラン、ポリウレタン、ポリアクリル酸、偽ポリ(アミノ酸)、ポリヒドロキシブトレート関連コポリマー、ポリアンヒドリド、ポリメチルメタクリレート、ポリ(エチレンオキシド)、レシチン、およびリン脂質からなる群より選択されるポリマーを含む。1つの態様では、媒質は、ゼラチン、コラーゲン、セルロースエステル、硫酸デキストラン、ポリ硫酸ペントサン、キチン、サッカリド、アルブミン、フィブリンシーラント、合成ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドとのブロック重合体、ポリエチレングリコール、アクリレート、アクリルアミド、メタクリレート(2-ヒドロキシエチルメタクリレートが含まれるが、それに限定されるわけではない)、ポリ(オルソエステル)、シアノアクリレート、ゼラチン-レゾルシン-アルデヒド型生体接着剤、ポリアクリル酸、ならびにそのコポリマーおよびブロックコポリマーからなる群より選択される材料を含む。別の態様では、媒質は、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、脂肪族ポリエステル(ポリグリコール酸およびポリ乳酸が含まれるが、それに制限されるわけではない)、ヒアルロン酸、修飾多糖、キトサン、セルロース、デキストラン、ポリウレタン、ポリアクリル酸、偽ポリ(アミノ酸)、ポリヒドロキシブトレート関連コポリマー、ポリアンヒドリド、ポリメチルメタクリレート、ポリ(エチレンオキシド)、レシチン、およびリン脂質からなる群より選択されるポリマーを含む。1つの態様では、媒質は着色されている。1つの態様では、媒質は、X線分光法によって視覚化される放射性不透明マーカーをさらに含む。1つの態様では、シロリムスのアナログは、エベロリムス、CCI-779、ABT-578、7-エピ-ラパマイシン、7-チオメチル-ラパマイシン、7-エピ-トリメトキシフェニル-ラパマイシン、7-エピ-チオメチル-ラパマイシン、7-デメトキシ-ラパマイシン、32-デメトキシ-ラパマイシン、および2-デスメチル-ラパマイシンからなる群より選択される。1つの態様では、媒質は、抗炎症薬、コルチコステロイド、抗血栓薬、抗生物質、抗ウイルス薬、鎮静薬、および麻酔薬からなる群より選択される補足的薬学的化合物をさらに含む。
【0052】
本発明の1つの局面は、a)媒質と、b)シロリムス、タクロリムス、シロリムスのアナログ、およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される、媒質に結合した化合物とを含む組成物を意図する。1つの態様では、媒質は、生体適合性材料を含む。別の態様では、媒質は、生分解性材料を含む。1つの態様では、媒質は、化合物を制御放出させる。1つの態様では、媒質は、微粒子、液体、フォーム、ゲル、ヒドロゲル、キセロゲル、および生体接着剤からなる群より選択される。別の態様では、媒質はスプレーである。1つの態様では、媒質は微粒子を含む。1つの態様では、微粒子は、マイクロカプセル化粒子である。1つの態様では、マイクロカプセル化粒子は、マイクロカプセル、ミクロスフェア、およびリポソームからなる群より選択される。1つの態様では、媒質は着色されている。1つの態様では、媒質は、X線分光法によって視覚化される放射性不透明マーカーをさらに含む。1つの態様では、シロリムスのアナログは、エベロリムス、CCI-779、ABT-578、7-エピ-ラパマイシン、7-チオメチル-ラパマイシン、7-エピ-トリメトキシフェニル-ラパマイシン、7-エピ-チオメチル-ラパマイシン、7-デメトキシ-ラパマイシン、32-デメトキシ-ラパマイシン、および2-デスメチル-ラパマイシンからなる群より選択される。1つの態様では、組成物は、c-mycのアンチセンスをさらに含む。1つの態様では、組成物は、ツムスタチンをさらに含む。1つの態様では、組成物は、抗炎症薬、コルチコステロイド、抗血栓薬、抗生物質、抗ウイルス薬、鎮静薬、および麻酔薬からなる群より選択される補足的薬学的化合物をさらに含む。
【0053】
本発明の別の局面は、a)微粒子;およびb)シロリムス、タクロリムス、シロリムスのアナログ、およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される、微粒子に結合した化合物を含む組成物を意図する。1つの態様では、微粒子は、生体適合性材料を含む。1つの態様では、微粒子は、生分解性材料を含む。1つの態様では、微粒子は、ミクロスフェアである。1つの態様では、微粒子は、マイクロカプセル化粒子である。1つの態様では、媒質は、化合物を制御放出させる。1つの態様では、マイクロカプセル化粒子は、マイクロカプセルおよびリポソームからなる群より選択される。1つの態様では、微粒子は着色されている。1つの態様では、微粒子は、X線分光法によって視覚化される放射性不透明マーカーをさらに含む。1つの態様では、シロリムスのアナログは、エベロリムス、CCI-779、ABT-578、7-エピ-ラパマイシン、7-チオメチル-ラパマイシン、7-エピ-トリメトキシフェニル-ラパマイシン、7-エピ-チオメチル-ラパマイシン、7-デメトキシ-ラパマイシン、32-デメトキシ-ラパマイシン、および2-デスメチル-ラパマイシンからなる群より選択される。1つの態様では、組成物は、c-mycのアンチセンスをさらに含む。1つの態様では、組成物は、ツムスタチンをさらに含む。1つの態様では、組成物は、抗炎症薬、コルチコステロイド、抗血栓薬、抗生物質、抗ウイルス薬、鎮静薬、および麻酔薬からなる群より選択される補足的薬学的化合物をさらに含む。
【0054】
本発明の1つの局面は、a)シロリムス、タクロリムス、シロリムスのアナログ、およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される化合物をカプセル化する微粒子;およびb)微粒子が付着する生体適合性材料および性分解性材料を含む組成物を意図する。1つの態様では、微粒子は、ミクロスフェア、マイクロカプセル、およびリポソームからなる群より選択される。1つの態様では、微粒子は、化合物を制御放出させる。1つの態様では、微粒子は透明である。1つの態様では、微粒子は着色されている。1つの態様では、微粒子は、X線分光法によって視覚化される放射性不透明マーカーをさらに含む。1つの態様では、生体適合性材料および性分解性材料は、ポリラクチド-ポリグリコリドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマー、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)ポリマー(すなわち、PLGA)、ヒアルロン酸、修飾多糖、ならびに生体適合性および生分解性の両方を示すことが公知の任意の他の周知の物質からなる群より選択される。1つの態様では、シロリムスのアナログは、mTORタンパク質に結合することができる化合物を含む。1つの態様では、mTORタンパク質に結合することができる化合物は、エベロリムス、CCI-779、ABT-578、7-エピ-ラパマイシン、7-チオメチル-ラパマイシン、7-エピ-トリメトキシフェニル-ラパマイシン、7-エピ-チオメチル-ラパマイシン、7-デメトキシ-ラパマイシン、32-デメトキシ-ラパマイシン、2-デスメチル-ラパマイシンからなる群より選択される。1つの態様では、組成物は、c-mycのアンチセンスをさらに含む。別の態様では、組成物は、ツムスタチンをさらに含む。1つの態様では、微粒子は、複数の補足的薬学的化合物をさらに含む。1つの態様では、補足的薬学的化合物は、抗炎症薬、コルチコステロイド、抗血栓薬、抗生物質、抗ウイルス薬、鎮静薬、および麻酔薬からなる群より選択される。
【0055】
本発明の別の局面は、a)生体適合性ヒドロゲルおよび生分解性ヒドロゲル;およびb)シロリムス、タクロリムス、シロリムスのアナログ、およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択されるヒドロゲルに付着した化合物を含む組成物である。1つの態様では、ヒドロゲルは、ゼラチン、ペクチン、コラーゲン、ヘモグロビン、炭水化物、ヒアルロン酸、セルロースエステル、Carbopol(登録商標)、合成ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、アクリレート、およびメタクリレートならびにそのコポリマーからなる群より選択される材料を含む。1つの態様では、ヒドロゲルは、化合物を制御放出させる。1つの態様では、シロリムスのアナログは、mTORタンパク質に結合することができる化合物を含む。1つの態様では、mTORタンパク質に結合することができる化合物は、エベロリムス、CCI-779、ABT-578、7-エピ-ラパマイシン、7-チオメチル-ラパマイシン、7-エピ-トリメトキシフェニル-ラパマイシン、7-エピ-チオメチル-ラパマイシン、7-デメトキシ-ラパマイシン、32-デメトキシ-ラパマイシン、2-デスメチル-ラパマイシンからなる群より選択される。1つの態様では、組成物は、c-mycのアンチセンスをさらに含む。別の態様では、組成物は、ツムスタチンをさらに含む。1つの態様では、生分解性ヒドロゲルおよび生体適合性ヒドロゲルは、複数の補足的薬学的化合物をさらに含む。1つの態様では、補足的薬学的化合物は、抗炎症薬、コルチコステロイド、抗血栓薬、抗生物質、抗ウイルス薬、鎮静薬、および麻酔薬からなる群より選択される。1つの態様では、細胞増殖抑制性薬学的組成物は、ヒドロゲルに組み込まれたポリマー媒質に付着する。1つの態様では、ポリマー媒質は生分解性を示し、ヒドロゲルと異なる放出速度および生分解特性を有する。別の態様では、ポリマー媒質は、ポリラクチド-ポリグリコリドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマー、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)ポリマー(すなわち、PLGA)、ヒアルロン酸、または他の類似のポリマーからなる群より選択される。1つの態様では、ヒドロゲルは、細胞増殖抑制薬を組み込んだ微粒子を含む。
【0056】
本発明の別の局面は、a)生体適合性生体接着剤;およびb)シロリムス、エベロリムス、シロリムスのアナログ、およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される生体接着剤に付着した化合物を含む組成物を意図する。1つの態様では、生体接着剤は生分解性である。1つの態様では、生体接着剤は、化合物を制御放出させる。1つの態様では、生体接着剤は、フィブリン、フィブリノゲン、カルシウムポリカルボフィル、ポリアクリル酸、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、カラヤおよびトラガカントなどの天然ゴム、アルギン、シアノアクリレート、キトサン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デンプン、ペクチン、またはその混合物からなる群より選択される材料を含む。1つの態様では、生体接着剤は、ポリエチレンおよび鉱物油から構成される炭化水素ゲル基剤をさらに含む。1つの態様では、基剤は、塩基の安定性を維持する予め選択したpHレベルを有する。1つの態様では、シロリムスのアナログは、タクロリムス、エベロリムス、CCI-779、ABT-578、7-エピ-ラパマイシン、7-チオメチル-ラパマイシン、7-エピ-トリメトキシフェニル-ラパマイシン、7-エピ-チオメチル-ラパマイシン、7-デメトキシ-ラパマイシン、32-デメトキシ-ラパマイシン、2-デスメチル-ラパマイシンからなる群より選択されるmTORタンパク質に結合することができる化合物を含む。1つの態様では、組成物は、c-mycのアンチセンスをさらに含む。別の態様では、組成物は、ツムスタチンをさらに含む。1つの態様では、生体接着剤は、複数の補足的薬学的化合物をさらに含む。1つの態様では、補足的薬学的化合物は、抗炎症薬、コルチコステロイド、抗血栓薬、抗生物質、抗ウイルス薬、鎮静薬、および麻酔薬からなる群より選択される。
【0057】
本発明の別の局面は、シロリムス、エベロリムス、シロリムスのアナログ、およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される化合物を含むゲルを意図する。1つの態様では、ゲルは、ヒドロゲルを含む。1つの態様では、ゲルは、化合物を制御放出させる。1つの態様では、ゲルは着色されている。1つの態様では、ゲルは、X線分光法によって視覚化される放射性不透明マーカーをさらに含む。1つの態様では、シロリムスのアナログは、エベロリムス、CCI-779、ABT-578、7-エピ-ラパマイシン、7-チオメチル-ラパマイシン、7-エピ-トリメトキシフェニル-ラパマイシン、7-エピ-チオメチル-ラパマイシン、7-デメトキシ-ラパマイシン、32-デメトキシ-ラパマイシン、2-デスメチル-ラパマイシンからなる群より選択される。1つの態様では、ゲルは、アンチセンスc-mycをさらに含む。別の態様では、ゲルは、ツムスタチンをさらに含む。1つの態様では、ゲルは、抗炎症薬、コルチコステロイド、抗血栓薬、抗生物質、抗ウイルス薬、鎮静薬、および麻酔薬からなる群より選択される補足的薬学的化合物をさらに含む。1つの態様では、装置の少なくとも一部がシロリムスおよびシロリムスのアナログを含む付着ゲルを含む手術装置を意図する。
【0058】
本発明の別の局面は、シロリムス、タクロリムス、シロリムスのアナログ、およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される化合物を含むフォームを意図する。1つの態様では、フォームは、キセロゲルをさらに含む。1つの態様では、フォームは、化合物を制御放出させる。1つの態様では、フォームは着色されている。1つの態様では、フォームは、X線分光法によって視覚化される放射性不透明マーカーをさらに含む。1つの態様では、シロリムスのアナログは、エベロリムス、CCI-779、ABT-578、7-エピ-ラパマイシン、7-チオメチル-ラパマイシン、7-エピ-トリメトキシフェニル-ラパマイシン、7-エピ-チオメチル-ラパマイシン、7-デメトキシ-ラパマイシン、32-デメトキシ-ラパマイシン、2-デスメチル-ラパマイシンからなる群より選択される。1つの態様では、フォームは、アンチセンスc-mycをさらに含む。別の態様では、フォームは、ツムスタチンをさらに含む。1つの態様では、フォームは、抗炎症薬、コルチコステロイド、抗血栓薬、抗生物質、抗ウイルス薬、鎮静薬、および麻酔薬からなる群より選択される補足的薬学的化合物をさらに含む。1つの態様では、装置の少なくとも一部がシロリムスおよびシロリムスのアナログを含む付着フォームを含む手術装置を意図する。
【0059】
本発明の1つの局面は、a)i)シロリムス、タクロリムス、シロリムスのアナログ、およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される化合物を含み、かつ、微粒子、ゲル、キセロゲル、ヒドロゲル、生体接着剤、フォーム、およびその組み合わせからなる群より選択される媒質と、ii)手術部位を有する患者とを提供する工程;ならびにb)手術部位を媒質と接触させる工程を含む方法を意図する。1つの態様では、手術部位は、閉じた手術部位を含む。別の態様では、手術部位は、開いた手術部位を含む。1つの態様では、工程(a)の媒質を手術部位に媒質を送達することができる装置中に格納する。1つの態様では、装置は、ブラッシングによって媒質を送達させる。1つの態様では、装置は、液体投与によって媒質を送達させる。1つの態様では、液体投与は、液体スプレーを含む。1つの態様では、液体スプレーはエアゾール形態である。1つの態様では、液体投与は、注入可能な液体を含む。別の態様では、液体投与は、圧搾可能な液体を含む。1つの態様では、装置はカテーテルを含む。1つの態様では、装置は、内視鏡手術のために構成されている。1つの態様では、媒質は、生体適合性材料を含む。1つの態様では、媒質は、生分解性材料を含む。1つの態様では、微粒子は、ミクロスフェア、マイクロカプセル化粒子、マイクロカプセル、およびリポソームからなる群より選択される。1つの態様では、媒質は、着色されている。1つの態様では、媒質は、X線分光法によって視覚化される放射性不透明マーカーをさらに含む。1つの態様では、シロリムスのアナログは、エベロリムス、CCI-779、ABT-578、7-エピ-ラパマイシン、7-チオメチル-ラパマイシン、7-エピ-トリメトキシフェニル-ラパマイシン、7-エピ-チオメチル-ラパマイシン、7-デメトキシ-ラパマイシン、32-デメトキシ-ラパマイシン、および2-デスメチル-ラパマイシンからなる群より選択される。1つの態様では、方法は、c-mycのアンチセンスを投与する工程をさらに含む。別の態様では、方法は、ツムスタチンを投与する工程をさらに含む。1つの態様では、媒質は、抗炎症薬、コルチコステロイド、抗血栓薬、抗生物質、抗ウイルス薬、鎮静薬、および麻酔薬からなる群より選択される補足的薬学的化合物を投与する工程をさらに含む。1つの態様では、方法は、シロリムス、タクロリムス、シロリムスのアナログ、抗炎症薬、コルチコステロイド、抗血栓薬、抗生物質、抗ウイルス薬、鎮静薬、および麻酔薬からなる群より選択される補助的薬学的化合物を投与する工程をさらに含む。
【0060】
本発明の1つの局面は、a)i)シロリムス、タクロリムス、シロリムスのアナログ、およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される化合物を含み、かつ、微粒子、ゲル、キセロゲル、ヒドロゲル、生体接着剤、フォーム、およびその組み合わせからなる群より選択される媒質と、ii)創傷を有する患者とを提供する工程;ならびにb)創傷を媒質と接触させる工程を含む方法を意図する。1つの態様では、創傷は、外面に存在する。別の態様では、創傷は内面に存在する。1つの態様では、工程(a)の媒質を創傷に媒質を送達することができる装置中に格納する。1つの態様では、装置は、ブラッシングによって媒質を送達させる。1つの態様では、装置は、液体投与によって媒質を送達させる。1つの態様では、液体投与は、液体スプレーを含む。1つの態様では、液体スプレーはエアゾール形態である。1つの態様では、液体投与は、注入可能な液体を含む。別の態様では、液体投与は、圧搾可能な液体を含む。1つの態様では、装置はカテーテルを含む。1つの態様では、装置は内視鏡手術のために構成されている。1つの態様では、媒質は、生体適合性材料を含む。1つの態様では、媒質は、生分解性材料を含む。1つの態様では、微粒子は、ミクロスフェア、マイクロカプセル化粒子、マイクロカプセル、およびリポソームからなる群より選択される。1つの態様では、媒質は、着色されている。1つの態様では、媒質は、X線分光法によって視覚化される放射性不透明マーカーをさらに含む。1つの態様では、シロリムスのアナログは、エベロリムス、CCI-779、ABT-578、7-エピ-ラパマイシン、7-チオメチル-ラパマイシン、7-エピ-トリメトキシフェニル-ラパマイシン、7-エピ-チオメチル-ラパマイシン、7-デメトキシ-ラパマイシン、32-デメトキシ-ラパマイシン、および2-デスメチル-ラパマイシンからなる群より選択される。1つの態様では、方法は、c-mycのアンチセンスを投与する工程をさらに含む。別の態様では、方法は、ツムスタチンを投与する工程をさらに含む。1つの態様では、媒質は、抗炎症薬、コルチコステロイド、抗血栓薬、抗生物質、抗ウイルス薬、鎮静薬、および麻酔薬からなる群より選択される補足的薬学的化合物を投与する工程をさらに含む。1つの態様では、方法は、シロリムス、タクロリムス、シロリムスのアナログ、抗炎症薬、コルチコステロイド、抗血栓薬、抗生物質、抗ウイルス薬、鎮静薬、および麻酔薬からなる群より選択される補助的薬学的化合物を投与する工程をさらに含む。
【0061】
本発明の別の局面は、a)i)媒質ならびにシロリムス、タクロリムス、シロリムスのアナログ、およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される、媒質に付着した化合物を含む組成物;およびii)手術部位を有する患者を提供する工程;およびb)手術部位を媒質と接触させる工程を含む方法を意図する。1つの態様では、手術部位は、閉じた手術部位を含む。1つの態様では、工程(a)の組成物を手術部位に組成物を送達することができる、リザーバを含む装置中に格納する。1つの態様では、媒質は、生体適合性材料を含む。1つの態様では、媒質は、生分解性材料を含む。1つの態様では、媒質は、微粒子、ゲル、キセロゲル、ヒドロゲル、生体接着剤、フォーム、およびその組み合せからなる群より選択される。別の態様では、媒質は、化合物を制御放出させる。1つの態様では、微粒子は、マイクロカプセル化粒子である。1つの態様では、マイクロカプセル化粒子は、マイクロカプセルおよびリポソームからなる群より選択される。1つの態様では、工程a)の組成物を、スプレー形態で手術部位に接触させる。1つの態様では、装置は、ブラッシングによって組成物を送達させる。1つの態様では、装置は、液体投与によって媒質を送達させる。1つの態様では、液体投与は、液体スプレーを含む。1つの態様では、液体スプレーはエアゾール形態である。1つの態様では、液体投与は、注入可能な液体を含む。別の態様では、液体投与は、圧搾可能な液体を含む。1つの態様では、装置はカテーテルを含む。1つの態様では、方法は、手術部位の内視鏡装置との接触を観察する工程をさらに含む。別の態様では、方法は、手術部位の蛍光透視鏡装置との接触を観察する工程をさらに含む。1つの態様では、媒質は、着色されている。1つの態様では、媒質は、X線分光法によって視覚化される放射性不透明マーカーをさらに含む。1つの態様では、シロリムスのアナログは、エベロリムス、CCI-779、ABT-578、7-エピ-ラパマイシン、7-チオメチル-ラパマイシン、7-エピ-トリメトキシフェニル-ラパマイシン、7-エピ-チオメチル-ラパマイシン、7-デメトキシ-ラパマイシン、32-デメトキシ-ラパマイシン、および2-デスメチル-ラパマイシンからなる群より選択される。1つの態様では、方法は、c-mycのアンチセンスを投与する工程をさらに含む。別の態様では、方法は、ツムスタチンを投与する工程をさらに含む。1つの態様では、媒質は、抗炎症薬、コルチコステロイド、抗血栓薬、抗生物質、抗ウイルス薬、鎮静薬、および麻酔薬からなる群より選択される補足的薬学的化合物を投与する工程をさらに含む。1つの態様では、方法は、シロリムス、タクロリムス、シロリムスのアナログ、抗炎症薬、コルチコステロイド、抗血栓薬、抗生物質、抗ウイルス薬、鎮静薬、および麻酔薬からなる群より選択される補助的薬学的化合物を投与する工程をさらに含む。
【0062】
本発明の別の局面は、a)i)微粒子ならびにシロリムス、タクロリムス、シロリムスのアナログ、およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される、微粒子に付着した化合物を含む組成物;およびii)手術部位を有する患者を提供する工程;およびb)手術部位を組成物と接触させる工程を含む方法を意図する。1つの態様では、手術部位は、閉じた手術部位を含む。別の態様では、手術部位は、開いた手術部位を含む。1つの態様では、工程a)の組成物を手術部位に組成物を送達することができる、リザーバを含む装置中に格納する。1つの態様では、装置は、ブラッシングによって組成物を送達させる。1つの態様では、装置は、液体投与によって組成物を送達させる。1つの態様では、液体投与は、液体スプレーを含む。1つの態様では、液体スプレーはエアゾール形態である。1つの態様では、液体投与は、注入可能な液体を含む。別の態様では、液体投与は、圧搾可能な液体を含む。1つの態様では、装置はカテーテルを含む。1つの態様では、方法は、手術部位の内視鏡装置との接触を観察する工程をさらに含む。別の態様では、方法は、手術部位の蛍光透視鏡装置との接触を観察する工程をさらに含む。1つの態様では、微粒子は、生体適合性材料を含む。1つの態様では、微粒子は、生分解性材料を含む。1つの態様では、微粒子は、ミクロスフェアである。1つの態様では、微粒子は、マイクロカプセル化粒子である。1つの態様では、マイクロカプセル化粒子は、マイクロカプセルおよびリポソームからなる群より選択される。1つの態様では、微粒子は、着色されている。1つの態様では、マイクロカプセル化粒子は、X線分光法によって視覚化される放射性不透明マーカーをさらに含む。1つの態様では、シロリムスのアナログは、エベロリムス、CCI-779、ABT-578、7-エピ-ラパマイシン、7-チオメチル-ラパマイシン、7-エピ-トリメトキシフェニル-ラパマイシン、7-エピ-チオメチル-ラパマイシン、7-デメトキシ-ラパマイシン、32-デメトキシ-ラパマイシン、および2-デスメチル-ラパマイシンからなる群より選択される。1つの態様では、方法は、c-mycのアンチセンスを投与する工程をさらに含む。別の態様では、方法は、ツムスタチンおよびアンチセンスc-mycを投与する工程をさらに含む。1つの態様では、媒質は、抗炎症薬、コルチコステロイド、抗血栓薬、抗生物質、抗ウイルス薬、鎮静薬、および麻酔薬からなる群より選択される補足的薬学的化合物を投与する工程をさらに含む。1つの態様では、方法は、シロリムス、タクロリムス、シロリムスのアナログ、抗炎症薬、コルチコステロイド、抗血栓薬、抗生物質、抗ウイルス薬、鎮静薬、および麻酔薬からなる群より選択される補助的薬学的化合物を投与する工程をさらに含む。
【0063】
本発明の別の局面は、a)i)開いた手術部位を有する患者と、ii)シロリムス、タクロリムス、シロリムスのアナログ、およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される化合物に付着した生体適合性媒質と、iii)化合物を手術部位に投与することができる、媒質を含む医療装置とを提供する工程;b)医療装置からの媒質の投与によって手術部位を媒質と接触させる工程;c)化合物の薬理学的活性によって過剰な術後瘢痕組織および/または癒着の形成を減少させる工程を含む方法を意図する。1つの態様では、媒質は生分解性である。1つの態様では、媒質により、シロリムスまたはシロリムスのアナログを制御放出で投与する。1つの態様では、媒質は、マイクロカプセル化粒子を含む。別の態様では、媒質は、ゲル、フォーム、包帯、および生体接着剤からなる群より選択される。1つの態様では、液体投与によって化合物を手術部位と接触させる。1つの態様では、接触は、噴霧、ブラッシング、ラッピング、および重層からなる群より選択される。1つの態様では、マイクロカプセル化粒子は、微粒子、ミクロスフェア、マイクロカプセル、およびリポソームからなる群より選択される。1つの態様では、媒質は、ポリラクチド-ポリグリコリドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマー、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)ポリマー(すなわち、PLGA)、ヒアルロン酸、修飾多糖、ならびに生体適合性および生分解性の両方を示すことが公知の任意の他の周知の物質からなる群より選択される材料から構成される。1つの態様では、シロリムスのアナログは、エベロリムス、CCI-779、ABT-578、7-エピ-ラパマイシン、7-チオメチル-ラパマイシン、7-エピ-トリメトキシフェニル-ラパマイシン、7-エピ-チオメチル-ラパマイシン、7-デメトキシ-ラパマイシン、32-デメトキシ-ラパマイシンおよび2-デスメチル-ラパマイシンからなる群より選択されるmTORタンパク質に結合することができる化合物を含む。1つの態様では、方法は、c-mycのアンチセンスを投与する工程をさらに含む。別の態様では、方法は、ツムスタチンを投与する工程をさらに含む。1つの態様では、医療装置は、内臓型スプレーコンテナ、ガス推進スプレーコンテナ、スプレーカテーテル、液体分散カテーテル、ブラシ、およびシリンジからなる群より選択される。1つの態様では、スプレーは、単回用量の化合物を含み得る。1つの態様では、スプレーは、化合物と接触したマイクロカプセル化粒子を含み得る。1つの態様では、媒質は、着色されている。1つの態様では、媒質は、X線分光法によって視覚化される放射性不透明マーカーをさらに含む。1つの態様では、方法は、抗炎症薬、コルチコステロイド、抗血栓薬、抗生物質、抗ウイルス薬、鎮静薬、および麻酔薬からなる群より選択される補足的薬学的化合物を投与する工程をさらに含む。1つの態様では、方法は、シロリムス、タクロリムス、シロリムスのアナログ、抗炎症薬、コルチコステロイド、抗血栓薬、抗生物質、抗ウイルス薬、鎮静薬、および麻酔薬からなる群より選択される補助的薬学的化合物を投与する工程をさらに含む。1つの態様では、補助的薬学的化合物の投与を、手術部位の手術手順への曝露前に開始する。別の態様では、補助的薬学的化合物の投与を、手術部位の曝露から6ヶ月後まで継続する。
【0064】
本発明の別の局面は、a)i)閉じた手術部位を有する患者と、ii)シロリムス、タクロリムス、シロリムスのアナログ、およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される化合物に付着した生体適合性媒質と、iii)媒質を手術部位に投与することができる、媒質を含む医療装置とを提供する工程;b)医療装置からの媒質の投与によって手術部位を媒質と接触させる工程;ならびにc)化合物の薬理学的活性によって過剰な術後瘢痕組織および/または癒着の形成を減少させる工程を含む方法を意図する。1つの態様では、媒質は生分解性である。1つの態様では、方法は、媒質投与を誘導および検証するために内視鏡を使用して手術部位を視覚化する工程をさらに含む。1つの態様では、シロリムスのアナログは、エベロリムス、CCI-779、ABT-578、7-エピ-ラパマイシン、7-チオメチル-ラパマイシン、7-エピ-トリメトキシフェニル-ラパマイシン、7-エピ-チオメチル-ラパマイシン、7-デメトキシ-ラパマイシン、32-デメトキシ-ラパマイシンおよび2-デスメチル-ラパマイシンからなる群より選択されるmTORタンパク質に結合することができる化合物を含む。1つの態様では、媒質は、c-mycのアンチセンスをさらに含む。別の態様では、媒質は、ツムスタチンをさらに含む。1つの態様では、医療装置は、カテーテルおよび内視鏡からなる群より選択される。1つの態様では、カテーテルは、媒質を重層することができる。1つの態様では、カテーテルは、媒質を噴霧することができる。1つの態様では、カテーテルは、媒質を液体投与することができる。別の態様では、カテーテルは、媒質をブラッシングすることができる。1つの態様では、カテーテルにより、媒質が注入される。別の態様では、媒質は、微粒子、フォーム、ゲル、ヒドロゲル、液体スプレー、および生体接着剤からなる群より選択される。1つの態様では、方法は、抗炎症薬、コルチコステロイド、抗血栓薬、抗生物質、抗ウイルス薬、鎮静薬、および麻酔薬からなる群より選択される補足的薬学的化合物を投与する工程をさらに含む。1つの態様では、方法は、シロリムス、タクロリムス、シロリムスのアナログ、抗炎症薬、コルチコステロイド、抗血栓薬、抗生物質、抗ウイルス薬、鎮静薬、および麻酔薬からなる群より選択される補助的薬学的化合物を投与する工程をさらに含む。1つの態様では、補助的薬学的化合物の投与を、手術部位の手術手順への曝露前に開始する。別の態様では、補助的薬学的化合物の投与を、手術部位の曝露から6ヶ月後まで継続する。
【0065】
本発明の1つの局面は、i)シロリムスおよびシロリムスのアナログを含む媒質を含むリザーバ;ii)リザーバに接続された流動物駆動エレメント;iii)第1の末端がリザーバに接続された第1の末端および第2の末端を有するチャネル;ならびにiv)チャネルの第2の末端に配置された押し出しポートを含み、液体駆動エレメントにより、押し出しポートから媒質が押し出される装置を意図する。
【0066】
本発明の1つの局面は、シロリムスおよびシロリムスのアナログを含む媒質を含むリザーバを含み、媒質を手術部位に送達することができる装置を意図する。1つの態様では、送達は、スプレー形態である。1つの態様では、送達は、エアゾール形態である。1つの態様では、装置はカテーテルを含む。1つの態様では、装置は内視鏡である。1つの態様では、内視鏡は、腹腔鏡である。1つの態様は、装置の少なくとも一部がシロリムスおよびシロリムスのアナログを含む付着媒質を含む手術装置を意図する。
【0067】
本発明の別の態様は、シロリムスおよびシロリムスのアナログを含むリザーバを含み、シロリムスおよびシロリムスのアナログを手術部位に送達することができる装置を意図する。1つの態様では、送達は、スプレー形態である。1つの態様では、送達は、エアゾール形態である。1つの態様では、装置はカテーテルを含む。1つの態様では、装置は、腹腔鏡装置を含む。1つの態様では、装置は、 装置の少なくとも一部がシロリムスおよびシロリムスのアナログでコーティングされた手術装置である。
【0068】
これらならびに本発明の他の態様および適用は、添付の図面を含む本発明の詳細な説明を読むことにより、当業者に明白となる。
【0069】
発明の詳細な説明
本発明は、組織治癒および瘢痕組織形成の減少の分野に関する。より詳細には、本発明は、術後瘢痕組織形成を減少するためのシロリムスおよびシロリムスのアナログ(すなわち、シロリムスおよびその誘導体)の使用に関する。本発明はまた、瘢痕組織形成の減少および/または防止のためのmTORタンパク質に結合することができる化合物の使用も意図する。mTORタンパク質への化合物の結合は、直接または間接的、競合または非競合であってよい。mTORタンパク質に対する化合物の結合効率をそれぞれ増加または減少させることができるアロステリックなアゴニストまたはアンタゴニストも意図される。主に細胞死が起こるような方法でのG0期またはG1期の細胞分裂サイクルの妨害によって作用すると考えされる抗増殖性細胞増殖抑制性化合物(すなわち、シロリムスおよびシロリムスのアナログ)の態様も本発明で意図される。
【0070】
シロリムスおよびその誘導体は、各1mg〜100mgの1回用量/日〜5回用量/日の経口投与用液体形態で抗増殖性細胞抑制薬として現在市販されている。これらの開示された経口媒質は、従来の錠剤、カプセル、顆粒、および粉末からなる。Guitard et al., Pharmaceutical Compositions. 米国特許第6,197,781号 (参照により本明細書に組み入れられる)。
【0071】
最近まで、上記液体シロリムス組成物についての臨床用途は、過剰な瘢痕組織の減少用には全く意図されていなかった。シロリムス(すなわち、ラパマイシン)は、術後癒着および瘢痕組織の治療に有用であり、薬物を材料のシートに付着させて損傷領域に配置する。シロリムスは材料のシートから放出されるにつれて、抗増殖作用を発揮する。Fischell et al., Surgically Implanted Devices Having Reduced Scar Tissue Formation, 米国特許第6,534,693号 (2003)。
【0072】
本発明の1つの局面は、制御放出様式での(すなわち、1日から6ヶ月までの範囲)手術部位または創傷へのシロリムスまたは他の細胞増殖抑制薬の送達を意図する。本明細書に記載のいくつかの態様では、ポリマーが微粒子、ゲル、フォーム、または液体の形態を取る場合に制御薬物放出能力が得られる特定のポリマー処方物を含む特定の媒質を意図する。1つの態様では、細胞増殖抑制性化合物の局所投与を、細胞増殖抑制性化合物の全身投与と同時に行う。
【0073】
本発明の別の局面は、付着した化合物を含む媒質を投与するための様々な装置および方法を意図する。好ましくは、これらの装置および方法には、スプレー缶、プランジャを備えたリザーバ、内視鏡手順のためのカテーテルを介した送達、予め混合した媒質、投与時に混合する媒質が含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0074】
シロリムスおよびシロリムスのほとんどのアナログは、水溶液に容易に溶解しないことが公知である。非極性溶媒または両親媒性材料は、通常、溶液(すなわち、例えば、オリーブオイル)を生成する必要がある。さもなければ、シロリムスおよびシロリムスのアナログの水性混合物は、コロイド懸濁液または分散物に制限される。本発明は、シロリムスの溶解性を改善する方法を意図する。この目的を達成するために、この問題に取り組むためのシロリムスの修飾誘導体を意図する。
【0075】
シロリムスの可溶性モノアシル誘導体およびジアシル誘導体を、公知の方法にしたがって調製することができる。Rakhit, 米国特許第4,316,885号(参照により本明細書に組み入れられる)。これらの誘導体は、他の溶質または懸濁剤(例えば、溶液を等張にするのに十分な生理食塩水またはグルコース、胆汁塩、アカシア、ゼラチン、ソルビタンモノオレエート、およびポリソルベート 80(ソルビトールのオレイン酸エステルおよびエチレンオキシドと共重合したその無水物)など)を含む滅菌溶液または懸濁液の形態で使用される。さらに、シロリムスの水溶性プロドラッグ(グリシネート、プロピロネート、およびピロリジノブチレートが含まれるが、それに限定されるわけではない)を使用することができる。Stella et al., 米国特許第4,650,803号(参照により本明細書に組み入れられる)。
【0076】
または、機能的シロリムス誘導体を作製するためのシロリムスまたはシロリムスのアナログのアミノアルキル化を意図する。Kingsbury et al.Synthesis Of Water-Soluble (Aminoalkyl)camptothecin Analogues : Inhibition Of Topoisomerase I And Antitumor Activity, J. Med. Chem. 34: 98 (1991)。Kingsbury et al.の論文は、カンプトテシン環系へのアミノアルキル基の導入によるカンプトテシンのいくつかの水溶液アナログの合成を教示する。これらの誘導体は、その生物学的有効性を保持していた。
【0077】
または、モノカルバメート結合を介したフェノール基のジアミンへの結合によって修飾された、溶解性が改善されたシロリムスまたはそのアナログを意図する。例えば、モノカルバメート結合を介してフェノール基とジアミンとが結合した誘導体によってカンプトテシンの水溶性が改善されることが公知である。Sawada et al., Synthesis And Antitumor Activity Of 20(S)-Camptothecin Derivatives: Carbamate-Linked, Water Soluble Derivatives Of 7-Ethyl-10-hydroxycamptothecin, Chem. Pharm. Bull 39: 1446 (1991)。
【0078】
材料のシート状に配置したβ放射放射性同位体により、瘢痕組織形成が減少することが知られている。有効であるが、寿命が短いことおよび放射性同位体の臨床での使用に関連する安全性の問題により、手術室または医院での日常低使用に理想的ではない。Fischell et al., 米国特許第5,795,286号(参照により本明細書に組み入れられる)。
【0079】
瘢痕組織形成を減少させるための様々な手段および方法が当技術分野において開示されているが、細胞増殖抑制性化合物の薬理学的活性を利用しない。例えば、様々な材料の生分解性メッシュのシート、ゲル、フォーム、および隔膜は、市販されているか、望ましくない瘢痕組織の成長および術後癒着を減少させることを意図する臨床試験が行われている。これらの隔膜の作用機構は薬理学的ではなく、損傷組織の物理的分離による癒着の防止に関与する。
【0080】
シロリムスおよび関連化合物の作用
本発明は、細胞増殖抑制性抗増殖性化合物(シロリムス、タクロリムス(FK506)およびシロリムスの任意のアナログ(エベロリムス(すなわち、SDZ-RAD)、CCI-779、ABT-578、7-エピ-ラパマイシン、7-チオメチル-ラパマイシン、7-エピ-トリメトキシフェニル-ラパマイシン、7-エピ-チオメチル-ラパマイシン、7-デメトキシ-ラパマイシン、32-デメトキシ-ラパマイシン、2-デスメチル-ラパマイシンが含まれるが、それに限定されるわけではない)などであるが、それに制限されるわけではない)の投与を意図する。1つの態様では、本発明は、非シロリムス化合物(c-mycのアンチセンス(Resten-NG)およびツムスタチンなどであるが、それに制限されるわけではない)を意図する。
【0081】
mTORの阻害
シロリムス(すなわち、シロリムス)およびその機能的アナログなどの細胞増殖抑制性抗増殖性化合物は、細胞増殖を減少させることが公知である。抗真菌薬として最初に発見された細菌マクロライドであるシロリムスは、強力な免疫抑制薬、有望な抗癌化合物、および抗増殖性化合物である。本発明の機構を理解するために必要なことではないが、シロリムスはその細胞受容体であるFK506結合タンパク質(FKBP12)と複合体を形成し、ラパマイシンの哺乳動物標的(mTOR)の機能を阻害すると考えられる。十分なアミノ酸の媒介により、下流エフェクターにおけるホスファチジルイノシトール3-キナーゼ経路での変換によってmTORは翻訳調節および他の細胞機能を支配すると現在は理解されている。最近の所見により、脂質二次メッセンジャーであるホスファチジン酸を介した分裂促進シグナルとmTORとの間の新規の関連が明らかとなり、mTORは栄養およびマイトジェンシグナルの統合に関与し得ることが示唆される。1つの仮説は、ホスファチジン酸とmTORとの間のこの可能な相互作用はシロリムス結合によって阻害されることを示唆する。Chen et al., A Novel Pathway Regulating The Mammalian Target Of Sirolimus (mTOR) Signaling. Biochem Pharmacol. 64: 1071-1077 (2002)。
【0082】
シロリムスまたはシロリムスアナログのmTORタンパク質への結合は、直接または間接的であってよく、アロステリックアゴニストなどの促進化合物の結合に依存する。逆に、シロリムスまたはシロリムスアナログのmTORタンパク質への結合は、アロステリックアンタゴニストなどの阻害化合物の結合に依存し得る。したがって、当業者は、シロリムスまたはシロリムスのアナログの存在に起因する得られたmTORタンパク質活性の変化は、シロリムスまたはシロリムスのアナログへの結合のみに依存し得ないと理解するであろう。
【0083】
細胞周期の妨害
本発明の機構を理解するために必要なことではないが、シロリムスおよびシロリムスのアナログなどの細胞増殖抑制性抗増殖物の主な作用は、G0期またはG1期の細胞周期の進行の妨害と考えられる。mTORタンパク質に結合することができる他の化合物は、細胞増殖を減少させ、それにより手術部位または表皮創傷部位の過剰な瘢痕組織形成を減少させるとも予想される。mTORタンパク質に結合することができる化合物は、シロリムスまたはシロリムスのアナログに構造が類似していも類似していなくてもよく、類似のmTOR結合部位を有さなくてもよい。手術部位または他の損傷部位に適切に分散した場合に瘢痕組織を有効に減少させるための細胞周期のG0期およびG1期を妨害する他の細胞増殖抑制性抗増殖物も、本発明の範囲内であることが意図される。
【0084】
シロリムスおよびそのアナログは、様々な細胞型に影響を与える。血管形成術後の脈管過形成を防止する場合、脈管ステント部位で放出されるシロリムスの主な機構は、細胞周期のG1期での成長因子およびサイトカイン媒介平滑筋細胞増殖を阻害することと考えられる。抗拒絶薬としてのその適用では、T細胞の増殖および分化を妨害するためにシロリムスを全身投与する。Moses, J. W., Brachytherapy And Drug Eluting Stents, J Invasive Cardiology, 15: 30B-33B (2003)。
【0085】
Glib-1腫瘍形成(oncongeny)発現は、瘢痕組織およびケロイドの両方で起こり、ケロイドはより高い過剰増殖特性を発現し、glib-1発現は通常の瘢痕組織よりも高い。シロリムスは、glib-1腫瘍形成発現を阻害することが公知であるので、シロリムスはケロイドにおいてglib-1発現も阻害すると予想される。Kim et al., Are Keloid Really "Glib-loids": High-Level Expression Of Glib-l Oncogeny In Keloid. J. Am Acad Dermatol 45 (5): 707-711 (2001)。1つの態様では、本発明は、シロリムスまたはシロリムスのアナログの投与後のケロイド形成の減少を意図する。
【0086】
非シロリムス関連化合物の作用
細胞傷害性/抗増殖性化合物
他の細胞傷害性化合物(すなわち、タキソールおよび他の抗癌化合物)は、mTORタンパク質に結合しても結合しなくてもよく、抗増殖効果を有するが、典型的には細胞傷害性を示す。これらの細胞傷害性化合物は、G2期またはM期における首尾のよい細胞分裂の妨害によって一部増殖を妨害し、細胞を死滅させる。細胞死の副産物自体および副産物単独で炎症性および刺激性を示し、細胞傷害効果よりもむしろ細胞増殖抑制効果を使用した細胞増殖の停止が好ましいと考えられる。実際、薬物でコーティングされたステントの試験では、細胞増殖抑制薬(シロリムス)でコーティングしたステントで処置した動脈は、細胞傷害薬(パクリタキセル)でコーティングしたステントで処置した血管よりも新生内膜組織の成長が低かった。

【0087】
本発明はまた、細胞傷害性抗増殖性非シロリムス化合物(タキソール、アクチノマイシン-D、アルケラン、サイトキサン(cytoxan)、ロイケラン(leukeran)、シスプラチン、BiCNU、アドリアマイシン、ドキソルビシン、セルビジン(cerubidine)、イダマイシン(idamycin)、ミスラシン(mithracin)、ムタマイシン(mutamycin)、フルオロウラシル、メトトレキセート、チオグアニン、トキソテール(toxotere) 、エトポシド、ビンクリスチン、イリノテカン、ハイカンプチン(hycamptin)、マツラン(matulane)、ブモン(vumon)、ヘキサリン、ヒドロキシ尿素、ジェムザール(gemzar)、オンコビン、およびエトフォフォス(etophophos)などの抗癌化合物が含まれるが、それに限定されるわけではない)を意図する。好ましくは、細胞傷害性抗増殖性非シロリムス化合物は、シロリムス、タクロリムス、およびシロリムスのアナログと組み合わせて使用される。または、細胞傷害性抗増殖性非シロリムス化合物を単独で使用することもできる。
【0088】
非シロリムスmTOR結合
本発明の1つの態様は、mTORタンパク質を阻害することができる化合物による過剰な瘢痕形成の減少を意図する。1つの例示的化合物は、ツムスタチン(抗脈管形成活性およびアポトーシス促進活性の両方を示すIV型コラーゲンの28キロダルトンフラグメント)である。ツムスタチンは、タンパク質合成の内皮細胞特異的インヒビターとして機能することが公知であるが、過剰な瘢痕組織を減少させるいかなる能力についても当技術分野において推量されていない。本発明を理解するために必要なことではないが、ツムスタチンはαVβ3インテグリンを介して作用し、局所接着キナーゼ、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ、プロテインキナーゼB、mTORを阻害し、4E結合タンパク質1からの真核生物開始因子4Eタンパク質(eIF4E)の解離を防止すると考えられる。
【0089】
シロリムスの臨床への現在の適用
シロリムスの使用はいくつか公知であるが、それらには媒質がミクロスフェア、ゲル、液体、生体接着剤、またはフォームの形態であるシロリムスと媒質との組み合わせは含まれていない。公知の用途は、損傷後の過剰な瘢痕組織成長を防止するためのこのような組成物の使用も意図していない。このような形態では、罹患組織の任意の部分を見逃すことなく、シロリムスを創傷部位に容易に投与することができる。
【0090】
瘢痕組織の減少
材料のシートに付着したシロリムス(すなわち、ラパマイシン)は、癒着および瘢痕組織の有用な術後治療として公知である。Fischell et al., Surgically Implanted Devices Having Reduced Scar Tissue Formation, 米国特許第6,534,693号 (2003)。本明細書中で使用される、「瘢痕形成」とはまた、例えば、インプラント、外傷、手術または系、および局所性疾患/感染由来の損傷に対して二次的におこる体内の任意の神経、脈管、管(ductal)/管(tubal)(例えば、膵管、胆管、または卵管)の空間の狭小化を意図する。1つの態様では、本発明は、包帯または医療装置に付着していても付着していなくてもよい媒質(フォーム、ゲル、生体接着剤が含まれるが、それに限定されるわけではない)を含む組成物中の瘢痕化を減少するためのシロリムス、タクロリムス、およびシロリムスのアナログの投与を意図する。さらに、本発明は、シロリムスまたは関連化合物を制御放出させる組成物による瘢痕組織形成の防止におけるシロリムスの長期投与を意図する。
【0091】
移植
シロリムス(すなわち、Rapamune(登録商標):Wyeth, Madison, NJ)は、腎移植における長期免疫抑制療法で有用な免疫抑制薬として公知である。所見により、シロリムスはシクロスポリンA(CsA)と相乗的に作用することが示されている。例えば、用量制御剖検では、CsAおよびステロイドと組み合わせた2mg/日または5mg/日のシロリムス投与後、12時間以内で急性拒絶反応エピソードの速度がそれぞれ19%および14%減少した。シロリムスは脈管平滑筋細胞(慢性拒絶反応に関連する免疫閉塞過程の重要成分)の増殖を遅延させるように作用すると推測される。Kahan, Sirolimus : A Comprehensive Review. Expert Opin Pharmacother 2: 1903-17 (2001)。
【0092】
mTORインヒビター(すなわち、シロリムス)の投与は、拒絶リスクの減少および同種移植片の機能および寿命の増大によって腎移植レシピエントの結果を改善することが公知である。Gourishankar et al., New Developments In Immunosuppressive Therapy In Renal Transplantation. Expert Opin Biol Ther 2: 483-501 (2002)。
【0093】
タクロリムスおよびシロリムスは、膵臓移植のための最適な免疫抑制ストラテジーと見なされる2つの免疫抑制化合物である。詳細には、これらの化合物の適用は、同種移植片の拒絶速度の実質的に低下および移植片生存の改善に寄与している。Odorico et al.,Technical And Immunosuppressive Advances In Transplantation For Insulin-Dependent Diabetes Mellitus. World J Surg 26: 194-211 (2002)。シロリムスのアナログ(SDZ RAD (エベロリムス、Certican(登録商標)))の投与後に腎移植の成功に対する類似の効果が報告されている。Nashan, Early Clinical Experience With A Novel Sirolimus Derivative. Ther Drug Monit 24: 53-8 (2002)。
【0094】
脈管ステント
シロリムスは、管腔内脈管医療装置のためのコーティング、ならびに内膜過形成、狭窄性脈管再造形、得られた脈管瘢痕形成、および損傷誘導性脈管炎症の治療方法として公知である。Falotico et al.,Compound/Compound Delivery Systems For The Prevention And Treatment Of Vascular Disease. 米国特許出願公開公報第2002/0007214 Al号、米国特許出願公開公報第2002/0007215 Al号、米国特許出願第2001/0005206 Al号、米国特許出願第2001/007213 Al号、米国特許出願第2001/0029351 Al号;およびMorris et al., Method Of Treating Hyperproliferative Vascular Diseases. 米国特許第5,665,728号。これらの病態を、一般に、過剰増殖脈管疾患といい、脈管カテーテル留置、脈管擦過、経皮経管血管/冠動脈形成、脈管手術、脈管内皮増殖、内膜過形成、異物内皮増殖、および閉塞性増殖/過形成(線維芽細胞、内皮、または内膜など(それに限定されるわけではない)などの特定の病態が含まれる)に起因し得る。
【0095】
損傷動脈の血管形成術または再疎通後の細胞増殖および再狭窄を減少させるために、脈管ステントをシロリムス(すなわち、シロリムス)、アクチノマイシンD、またはタキソールでコーティングした。しかし、これらの組成物は、手術手順部位の細胞増殖の減少のためには決して使用されなかった。Hossainy et al., Process For Coating Stents. 米国特許第6,153,252号。
【0096】
シロリムスは、G1-S期の移行前の細胞周期の遮断によって平滑筋細胞(SMC)の増殖および移動をインビトロで阻害し、新生内膜形成をインビボで減少させることが証明されている。さらに、シロリムス薬物溶出ステントにより、ステント移植後の再狭窄が消失する。パクリタキセル(タキソール:微小管安定剤)は、類似の抗増殖効果を有する。しかし、パクリタキセルは、細胞分裂に必要な紡錘体形成の阻害によって作用すると考えられる。Chieffo et al., Drug-Eluting Stents. Minerva Cardioangiol 50: 419-29 (2002)。
【0097】
ケロイド
瘢痕に関連する病変は、ケロイドとして公知である。ケロイドは、以前の外傷部位から生じる。ケロイド罹患の大部分の原因は、継続的な成長、掻痒、および外観による。臨床的には、ケロイドは、ケロイドが元の損傷の境界上で成長し続けるという点で瘢痕と区別される。シロリムスおよびタクロリムス(すなわち、FK506;抗増殖薬)は共にケロイドを有効に治療することが認められた。Kim et al., Are Keloid Really "Glib-loids" : High-Level Expression Of Glib-1 Oncogeny In Keloid. J. Am Acad Dermatol 45 (5): 707-711 (2001)。
【0098】
TNF-βリガンド
また、シロリムス誘導体と組織成長因子βリガンドとの組み合わせは、眼の瘢痕組織の形成を防止し、そして/または創傷治癒のために結合組織または軟組織の増殖を促進することが公知である。Donahoe et al., Methods And Compositions For Enhancing Cellular Response To TGF-β Ligands. 米国特許第5,912,224号。
【0099】
手術手順時またはその後のいずれかにおいて、シロリムスおよびシロリムスのアナログが、任意の生組織における瘢痕組織形成の減少または防止に有効であり得るという見込みが未だ当技術分野において欠如していることは、明らかである。
【0100】
本発明の好ましい態様
過剰な瘢痕組織生成は、多数の創傷型からの治癒の公知の罹患結果である。例には、肥大性熱傷瘢痕、手術による癒着(すなわち、例えば、腹部、脈管、脊髄、神経、胸郭、および心臓)、豊胸手術後の被膜拘縮、ならびに眼の手術および耳の手術後の過剰な瘢痕形成が含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0101】
本発明によって意図される特定の化合物の手術部位または創傷への送達には、微粒子、ゲル、ヒドロゲル、フォーム、生体接着剤、液体、キセロゲル、または手術用包帯が含まれるが、それに限定されるわけではない。特に、これらの媒質は、シロリムスなどの化合物を制御放出させる様々な態様で生成される。
【0102】
臨床適用
熱傷
熱傷は、治癒過程で瘢痕組織が発達することが周知である。熱傷創傷の治癒ならびに瘢痕組織および癒着の減少および/または防止を促進するために本明細書に記載の任意の1つの組成物および方法によってシロリムスおよびシロリムスのアナログを適用することが本発明で意図される。
【0103】
熱傷由来の肥大性瘢痕形成の臨床管理としては、主に、1970年代初期から加圧が注目されてきた。正確な作用機構は知られていないが、圧力は臨床的に瘢痕成熟過程を増強させると考えられる。巻き付け可能か不可能な、または、柔らかい材料で作製された包帯を、初期瘢痕管理で使用する。最終的な瘢痕管理のために、特注の圧力ガーメントを一般に使用し、加圧状態を補助するために凹面にインサートを配置する。Staley et al., Use Of Pressure To Treat Hypertrophic Burn Scars. Adv Wound Care 10: 44-46 (1997)。しかし、これらのアプローチは、有益であるが、重篤で衰弱させる瘢痕形成を依然として発達させることが明らかである。
【0104】
有効な局所化学療法、熱傷創傷切除の再導入、および生物学的包帯の使用のさらなる開発により、浸襲性熱傷創傷感染の罹患が有意に減少し、40年間にわたって生存率の改善に寄与してきた。しかし、現在利用可能な皮膚代替物は不完全であり、研究により非抗原性且つ無病の生理学的に有効な組織(すなわち、合成皮膚)を開発し続けることが不可欠である。このアプローチは、最終的に、創傷閉鎖を改善し、瘢痕形成を減少することにより、再建手術を実施する必要性が減少する。Greenfield et al., Advances In Burn Wound Care. Crit Care Nurs Clin North Am 8: 203-15 (1996)。
【0105】
熱傷患者の瘢痕形成を減少させる特定の抗増殖薬(すなわち、シロリムスおよびシロリムスのアナログ)の出現は、熱傷患者に多大な恩典を与えている。詳細には、瘢痕組織の過成長の制御により、正常な治癒過程を優先することが可能である。したがって、美容および臨床的に熱傷瘢痕を治療するための熱傷後治癒のための薬物療法の必要性が最小になる。本発明は、特に、a)i)シロリムスもしくはシロリムスのアナログまたは他の細胞増殖抑制性抗増殖薬、ii)熱傷患者を提供する工程;およびb)瘢痕形成が減少する条件下で熱傷患者にシロリムスまたはシロリムスのアナログを投与する工程を含む、瘢痕を減少させる方法を意図する。好ましくは、シロリムス、シロリムスのアナログ、または他の活性化合物を、シロリムスなどの活性化合物の同時全身投与を行うか行うことなく皮膚上の熱傷部位に局所的に送達させる。
【0106】
心膜炎
心膜炎は、心臓発作から数日または数週間後に起こり得る、心膜(すなわち、心臓の嚢状被覆)の炎症および腫脹である。心膜炎に関与する臨床症状の例には、ドレスラー症候群、心筋梗塞後、心損傷後、および心臓切開後が含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0107】
心膜炎は、心臓発作から2日後〜5日後以内に発症し得るか(すなわち、例えば、急性心筋梗塞)、このような発作から11週間も経て発症する可能性があり、症状の発現の繰り返しを含み得る。心膜炎はまた、開心術、穿刺創、および閉塞性胸部損傷に起因し得る。
【0108】
心臓発作から短期間で発症する心膜炎は、心膜嚢中の血液に対する炎症反応または心筋内の死滅組織もしくは重篤に損傷した組織の存在に起因する。炎症時、免疫系は、時折、誤って健常な細胞を攻撃する。心臓上で炎症心膜が摩擦した場合に痛みが起こる。
【0109】
初期心膜炎は、心臓発作の7%〜10%を悪化させる。ドレスラー症候群は、心臓発作後の患者の1%のみで認められる。リスクには、以前の心臓発作、開心術、または胸部外傷が含まれる。
【0110】
1つの態様では、本発明は、シロリムス、タクロリムス、シロリムスのアナログ、または別の細胞増殖抑制性抗増殖薬を心膜炎の症状を示す患者に投与する、心臓手術後の瘢痕および炎症を減少させる方法を意図する。別の態様では、本発明は、シロリムス、タクロリムス、シロリムスのアナログ、または別の細胞増殖抑制性抗増殖薬を心膜炎を防止するために心臓手術を受けた患者に投与する、瘢痕および炎症を減少させる方法を意図する。
【0111】
術後癒着
術後癒着は、手術手順に関連する損傷後に組織間または器官間で形成される線維性の瘢痕組織形成またはフィブリンマトリクスである。このような損傷には、虚血、異物反応、出血、擦過、切開、および感染に関連する炎症が含まれる。米国では、下腹部癒着軽減のための年間コストは、入院患者の治療費において20億ドルより多いと見積もられている。癒着は、心臓、脊髄、神経、胸膜、および他の胸部の手術後にも発症する。1つの態様では、本発明は肺手術後の胸膜癒着の減少を意図する。別の態様では、本発明は、心臓手術後の心臓癒着の減少を意図する。
【0112】
術後損傷部位は、術後の最初の数日間以内に通常は分離したままである組織または器官で癒着を形成するか、フィブリンマトリクスによって互いに連結する。通常の環境下では、器官間のほとんどのフィブリンマトリクスは治癒過程で分解される。フィブリンマトリクスが分解し損なった場合、恒久的癒着を形成し、組織および/または器官を互いに連結させる。婦人科または通常の開腹手術後のこのような望ましくない癒着の形成により、様々な合併症(痛み、不妊症、および腸閉鎖症が含まれる)を発症し得る。
【0113】
癒着は、婦人科および一般の開腹手術手順を受けた患者における重篤な後遺症として認識されている。例えば、術後の卵管、卵巣、および子宮などの構造物間の癒着の存在は、痛みおよび不妊症の主な原因である。
【0114】
腹部癒着は、小腸閉鎖症の主な原因であり、症例の54%〜74%を占める。さらに、腹部癒着の約80%〜90%が手術に起因する。
【0115】
大規模な多施設研究で実施したセカンドルック腹腔鏡検査によって決定したところ、不妊症治療手順の55%〜100%で骨盤癒着が生じる。
【0116】
組織外傷およびそれによる回復時間を減少させるために、組織の対処を最小にする特定の顕微鏡による医学的手順が開発されている。しかし、これらの技術に従う場合でさえ、一定の手術手順を受けた大部分の患者で術後癒着が起こり得る。したがって、一般には、術後癒着形成を最小にする最良のアプローチは、抗癒着プロトコールと組み合わせた特別な顕微鏡手術技術の使用によると考えられる。
【0117】
手術部位を開くための過フッ化炭化水素の液体スプレー適用後に術後癒着が減少することが公知である。これらの化フッ化炭化水素は、組織のコーティングおよび表面張力の減少、したがって、極めて接近している場合に、コーティングした組織の癒着の防止によって作用する。Niazi, S., Use Of Fluorocarbons For The Prevention Of Surgical Adhesions. 米国特許第6,235,796号。
【0118】
物理的障壁手段による手術組織の癒着を減少させる別の方法は、ノズルによって2つのポリマー溶液を混合する二室のスプレー缶またはスプレーボトルを使用する。この混合によって求核-求電子架橋反応が開始され、固化ポリマーマトリクスが生成される。いずれかのポリマー混合物は、生体接着性ポリマーマトリクスの一部として成長因子を手術部位に送達させることもできる。ポリマーマトリクスは、組織表面コーティングによって術後癒着形成を防止し、瘢痕組織を除去することができる。コラーゲンまたはヒアルロン酸の合成ポリマーが特に意図され、マトリクスの生体接着性を改良するために天然タンパク質を添加することができる。Rhee et al., Method Of Using Crosslinked Polymer Compositions In Tissue Treatment Applications. 米国特許第6,116,139号(参照により本明細書に組み入れられる)。
【0119】
または、別の障壁型(熱ゲル化ポリマー)の投与によって術後癒着が防止または減少することが公知である。その投与時の加熱ゲル(thermal gel)のゲル化を、その相転移温度によって決定する。加熱ゲルの相転移温度を、修飾ポリマー(すなわち、セルロースエステルまたはCarbopol(登録商標))と構成性ポリマー(すなわち、ポリオキシアルケンコポリマー)との混合によって改変することができることが当技術分野において公知である。Flore et al., Methods And Compositions For The Delivery Of Pharmaceutical Agents And/Or The Prevention Of Adhesions. 米国特許第6,280,745号。'745号特許は、術後瘢痕形成および癒着の防止が、ヒドロゲルと共に送達された任意の化合物の薬理学的作用よりもむしろゲルの実際の物理的存在(すなわち、成長に対する人為的障壁)に起因することを説明している。
【0120】
本発明は、薬理学的作用によって瘢痕組織の形成および術後癒着を防止または減少させる細胞増殖抑制性および抗増殖化合物(すなわち、例えば、シロリムス、タクロリムス、および/またはシロリムスのアナログなど)を含む媒質の手術部位または他の組織損傷領域への投与を意図する。好ましい態様では、液体投与技術、熱ゲル化ポリマー、生体接着剤、または微粒子によって、細胞増殖抑制性または抗増殖性化合物を含む媒質を手術分野に容易に投与する。
【0121】
脈管外瘢痕形成
本発明は、脈管外部位に適用した細胞増殖抑制性および抗増殖性化合物(すなわち、シロリムス、タクロリムス、およびシロリムスのアナログ)を含む媒質を意図する。1つの態様では、化合物により、瘢痕組織または組織の癒着が減少または防止される。
【0122】
恒久的血液透析アクセスの出現により、末期腎疾患患者に慢性的血液透析を使用することが可能になった。自発的動静脈瘻が最適な導管を維持するにもかかわらず、その構築は常に実行可能というわけではない。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から作製された人工血管は、典型的には、血液アクセス(hemoaccess)のための第2の選択肢である。しかし、これらの移植片は、開存性速度の減少および合併症数の増加に見舞われる。Anderson et al.,Polytetrafluoroethylene Hemoaccess Site Infections, American Society for Artificial Internal Organs Journal, 46 (6):Sl8-21 (2000)。1つの態様では、本発明は、PTFE移植片合併症を有する患者へのシロリムス、タクロリムス、またはシロリムスのアナログを含む媒質の投与を意図する。1つの態様では、媒質を、PTFE移植片に噴霧する。別の態様では、媒質を、PTFE移植片を取り囲む手術用ラップ(surgical wrap)に付着させる。1つの態様では、媒質を、PTFE移植手順時に脈管構造の外面に配置する手術用スリーブ(surgical sleeve)(すなわち、事実上管状の包帯またはメッシュ)に付着させる。
【0123】
耳の瘢痕形成
本発明の1つの局面は、進行性内耳悪化(すなわち、コレステリン腫)を防止するための耳中および耳周囲へのシロリムス、タクロリムス、およびシロリムスのアナログの適用方法を意図する。耳内(鼓膜が含まれる)の瘢痕形成過程は他の組織と非常に類似していることが公知である。後天性コレステリン腫の上皮病理発生は、以下の3つの必要条件を有すると考えられる。(1)鼓膜での固有の解剖学的状況(直ぐそばの2つの異なる上皮層)、(2)中耳内の粘膜下組織の慢性的破壊(感染、炎症)、および(3)創傷治癒(すなわち、増殖期)。中耳感染および細胞壊死による粘膜下空間の破壊により、創傷治癒カスケードが開始される。創傷治癒では、一般に、結合組織の線維芽細胞およびマクロファージが極めて重要な役割を果たす。サイトカインは、欠損粘膜の再上皮化を促進すると考えられ、瘢痕組織の発達は、同時に鼓膜外面の無傷の扁平上皮細胞層に影響を与える。それにより、非損傷上皮層の増殖が誘導される。コレステリン腫マトリクスは、常に、結合組織層であるペリマトリクス(perimatrix)に囲まれている。炎症の持続により、ペリマトリクスの創傷治癒、線維芽細胞(肉芽組織)の増殖、および上皮(マトリクス)の増殖が永続する。創傷治癒により、線維芽細胞およびマクロファージのサイトカインはコレステリン腫起源、成長、および骨破壊の原動力であると推測される。Milewski C., Role Of Perimatrix Fibroblasts In Development Of Acquired Middle Ear Cholesteatoma. A Hypothesis. HNO 46:494-501 (1998)。
【0124】
本発明は、薬理学的作用によってこのような過剰な瘢痕組織を防止または減少させるための細胞増殖抑制性および抗増殖性化合物(シロリムス、タクロリムス、および/またはシロリムスのアナログが含まれるが、それに限定されるわけではない)を含む媒質の耳への投与を意図する。
【0125】
眼の瘢痕形成
本発明の1つの局面は、手術または外傷後またはその間の眼組織へのシロリムス、タクロリムス、およびシロリムスのアナログの適用方法を意図する。様々な眼の病態(眼の凝固および熱傷、機械的および化学的損傷、角結膜炎などの眼の感染、および他の眼の病態が含まれる)が、角膜瘢痕形成および線維芽細胞増殖に関連することが公知である。これらの病態のいくつかは、他の眼の病態の手術による治療後に術後的に発症することが公知である。この望ましくない組織の成長は容易に新血管形成を行うので、永続的に確立および活性化される。組織瘢痕形成または線維芽細胞増殖は、治療が困難な病態である。現在、眼領域のさらなる手術の実施またはステロイド(典型的には、注射による)の使用によってこれを治療する。しかし、ステロイドは、感染、白内障、および緑内障などの副作用を増大させる。インドメタシンのような他の非ステロイド薬は、抗瘢痕形成効果が非常に低い。(Williamson J. et al., British J. of Ophthalmology 53: 361 (1969); Babel, J., Histologie Der Crtisonkatarakt, p. 327. Bergmann, Munich (1973))。
【0126】
角膜瘢痕形成、新血管形成、または線維芽細胞増殖を、ヒト白血球エラスターゼ(HLE)阻害剤(すなわち、オリゴペプチドに置換されたカルバメート)の適用によって減少させることができることが当技術分野において公知である。Digenis et al.Methods Of Treating Eye Conditions With Human Leukocyte Elastase (HLE) Inhibitory Agents. 米国特許第5,922,319号。エラスターゼ(ヒト白血球エラスターゼおよびカテプシンG)は、炎症、関節炎、および気腫に関連するいくつかの慢性組織破壊を担うと考えられる。したがって、エラスターゼインヒビターの作用は、瘢痕組織形成の減少に対するその抗増殖効果に関するmTORタンパク質を含まない。
【0127】
進行性瘢痕形成により、特に、網膜が関与する場合、盲目になり得る。網膜復位術の最も一般的な失敗原因は、神経網膜の両面上の線維細胞収縮膜の形成である。増殖性硝子体網膜症として公知のこの眼内線維形成は、膜の収縮性による失明牽引性網膜剥離(blinding tractional retinal detachment)を引き起こす。収縮性は、移動運動および細胞外マトリクスへの癒着に依存すると考えられる細胞媒介事象である。Sheridan et al., Matrix Metalloproteinases : A Role In The Contraction Of Vitreo-Retinal Scar Tissue. Am J Pathol 159: 1555-66 (2001)。
【0128】
角膜創傷治癒はしばしば、不透明な瘢痕組織の形成をもたらす。損傷角膜の基質線維芽細胞は、IVコラーゲンを発現し、基底板様構造の形成に起用する。通常、基質膠原性マトリクスは角膜発達時に直交層板を組織化するのに対して、アルカリ熱傷角膜は無秩序様式で発達することが公知である。損傷角膜の基質中の線維芽細胞によるIV型コラーゲン発現の増強は、損傷角膜中の基底板様構造の形成に寄与し得るという概念と一致する。Ishizaki et al., Stromal Fibroblasts Are Associated With Collagen IV In Scar Tissues Of Alkali-Burned And Lacerated Corneas. Curr Eye Res 16: 339-48 (1997)。
【0129】
医療装置
本発明の1つの局面は、医療装置インプラントの配置後の瘢痕組織形成および癒着を減少させるためのシロリムス、タクロリムス、およびシロリムスのアナログの適用方法を意図する。
【0130】
直接医療インプラント周囲の過剰な瘢痕組織形成および炎症は、特に考慮される。例えば、長期間皮膚から突出した経皮的機能インプラントの永続的配置は依然として現実化していない。最終的な成功に向けた努力は、様々な不成功機構に向けるべきである。例えば、これらの機構は、皮膚-インプラント接触面の剪断および引き裂きを引き起こす外因性または内因性のいずれかであり得る。外因性の力は、外部環境による皮膚またはインプラントのいずれかに印加した力と定義する。内因性の力は、成熟瘢痕組織の退縮および扁平上皮細胞の表面移動などの身体の成長および細胞成熟に伴って直接または間接的に印加しなければならない力である。無傷の皮膚-インプラント接触面は、微生物侵入に対するシールを提供するために達成されることが重要である。化膿性創傷によりインプラントを強制的に除去させられるので、皮膚は無傷のままでなければならない。Hall et al., Some Factors That Influence Prolonged Interfacial Continuity. J Biomed Mater Res 18: 383-93 (1984)。
【0131】
再建手術または豊胸手術などの美容外科のためのインプラントはまた、過剰な瘢痕組織形成の問題を有する。豊胸手術は、硬化および収縮しうる周辺瘢痕莢膜(surrounding scar capsule)を生じることが知られており、これは、不快感、破裂を伴うシェルの弱化、非対称性、および患者の不満足につながる。この現象は、長期間で70%もの移植患者で起こることが公知である。ほとんどの合併症は、後期の漏れ(late leaks)、感染、および被膜拘縮に起因する。Ersek et al., Textured Surface, Nonsilicone Gel Breast Implants : Four Years' Clinical Outcome. Plast Reconstr Surg 100: 1729-39 (1997)。
【0132】
緑内障インプラントも、瘢痕形成によって失敗することが疑われる。緑内障インプラントは、眼圧を減少させ、視神経に対する損傷を防止するために眼からの流動物の流出を増加させるようにデザインされる。インプラントは、一方の端を前室に挿入し、他方の端を結膜の真下の眼球の外側に縫合したシリコンプレートに付着させたシリコンチューブからなる。そこへ流動物が流入し、かつそこから周辺組織によって流動物が吸収されるような空間を形成できる、線維性被膜によりシリコンプレートが取り囲まれるので、緑内障「インプラント」は、手術後の最初の3週間〜6週間にわたって「水抜き」となる。理想的には、プレートを取り囲む被膜(すなわち、濾過胞)のサイズおよび厚さは、被膜を通過する流動物の量が8mmHg〜14mmHgの眼圧で眼によって生成される流動物の量と同一となるようにする。最も一般的な長期的合併症は、装置周囲の厚い線維性被膜の形成に起因する手術から2年〜4年後の濾過胞の破損である。強膜表面に対する滑らかな排液プレートの微小移動(micromovement)は、創傷治癒反応の低レベル活性化の刺激、膠原瘢痕形成の増加、および線維性被膜の厚さの増加による緑内障インプラント機構に不可欠であり得る。Jacob et al.Biocompatibility Response To Modified Baerveldt Glaucoma Drains. J Biomed Mater Res 43: 99-107 (1998)。
【0133】
本発明の別の局面は、シロリムス、タクロリムス、またはシロリムスのアナログを含む媒質での医療装置のコーティングを意図する。本明細書中で使用される、「コーティング」とは、医療装置に付着した任意の化合物を指す。例えば、このような付着には、表面吸着、製品の材料への含浸、医療装置表面への共有結合またはイオン結合および単純な摩擦による接着が含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0134】
シロリムスまたはシロリムスのアナログを、多数の方法で任意の数の生体適合性材料(すなわち、ポリマー)を使用して医療装置に付着させることができる。シロリムスを含む異なるポリマーを、異なる医療装置のために使用する。例えば、エチレン-コ-ビニルアセテートおよびポリブチルメタクリレートポリマーをステンレススチールと共に使用する。Falotico et al., 米国特許出願第20020016625号。他のポリマーを、他の材料(ニッケルとチタンの合金などの超弾性を示す材料が含まれる)から形成された医療装置と共により有効に使用することができる。1つの態様では、化合物(シロリムス、タクロリムス、またはシロリムスのアナログなどであるが、それに限定されるわけではない)を、ポリマーマトリクスに直接組み込み、ポリマースプレーがカテーテルに付着するようにカテーテルの外面に噴霧する。別の態様では、次いで、化合物は、長時間にわたりポリマーマトリクスから溶出し、周囲組織に侵入する。1つの態様では、化合物は、少なくとも1日から約6ヶ月までカテーテル上に付着したままであると予想される。
【0135】
1つの態様では、本発明は、ステンレススチール製の医療装置(すなわち、例えば、永続的インプラント)上にコーティングするシロリムスヒドロゲルポリマーを意図する。好ましくは、ステンレススチール製のインプラントは、スチレンアクリル系水性分散ポリマー(固形分55%)を刷毛でコーティングし、85℃で30分間乾燥させる。次に、このポリマー表面を、以下からなる制御放出ヒドロゲル組成物で上塗りする。

次いで、使用前にコーティングを85℃で25時間乾燥させる。本発明は、上記シロリムス濃度を制限することを意図しない。当業者は、様々なシロリムス濃度(1.0mg/ml〜10mg/ml、好ましくは0.1mg/ml〜5mg/ml、より好ましくは0.001mg/ml〜1mg/mlなどであるが、それに限定されるわけではない)を使用することができることを自覚すべきである。
【0136】
別の態様では、非侵食性ポリマーの複数の積層をシロリムスと組み合わせて使用することができる。好ましくは、ポリマーマトリクスは、以下の2つの層を含む:第1のポリマーおよび組み込まれたシロリムスを含む内側の基準層ならびにシロリムスが過度に急速に溶出されて周辺組織に侵入することを防止するための拡散障壁として作用する外側の第2のポリマー層。1つの態様では、外層または上塗りの厚さにより、マトリクスからシロリムスが溶出する速度が決定される。好ましくは、ポリマーマトリクスの厚さの合計は、約1ミクロンから約20ミクロンまたはそれ以上の範囲である。本発明の別の態様は、カテーテルへのポリマー/シロリムス混合物の噴霧または浸漬を意図する。
【0137】
管腔内狭小化
身体管腔中の過剰な瘢痕組織の形成およびそれによる管腔内狭小化は、身体器官に関連する疾患、有害な外傷、インプラント、または手術後の周知の現象である。このような狭小化の機構には、線維芽細胞、内皮、および内膜の過剰な増殖または過形成が含まれる。おそらく、最も周知の病態は、全身性または局所的な過剰増殖脈管疾患後または脈管手術、有害な外傷、または医療装置の埋め込みの合併症としての脈管管腔の狭小化病態である再狭窄の病態である。過剰な管腔狭小化の他の例は、管(ductal)/管(tubal)手術後(膵管、胆管、および卵管の手術が含まれるが、それに限定されるわけではない)に起こる。
【0138】
本発明を制限することを意図しないが、動静脈瘻閉塞に関する以下の例は適切な教示を提供すると考えられる。
【0139】
血管アクセス合併症には、血液透析患者の主な問題である動静脈瘻が含まれるが、それに限定されるわけではない。最も一般的な合併症は、吻合部位での進行性狭窄である。ほとんどの場合、この狭窄は、静脈吻合部位で起こる。
【0140】
血管アクセスは、DOQI (Dialysis Outcome Quality Initiatives)により定められている。2000年初期に、National Kidney Foundation(NKF)は、「全病期の腎疾患および腎機能障害ならびにそのモニタリングおよび管理」を含むようにDOQI研究の範囲を拡大することを発表した。DOQIは、以下の4つの領域における標準的治療法ガイドラインを開発および公表した-血液透析、腹膜透析、貧血、血管アクセスおよび栄養摂取。
【0141】
したがって、DOQIにより、血管アクセスが必要な患者を、透析の進行後に患者で機能しない以下の血管アクセス移植片で処置する。i)Cimino移植片(前腕下側の橈骨動脈/橈側皮静脈A-V瘻(すなわち、天然の移植片)である);ii)上腕の天然の瘻(上腕動脈が橈側皮静脈または尺側皮静脈に接続している);およびiii)上腕PTFEループ(上腕動脈が肘正中静脈(median antecubical vein)に接続している)。
【0142】
移植片テクノロジーに関する主な失敗の問題とは、i)70%のCimino移植片が使用に適しているにもかかわらず、50%が最初の10年間で失敗し、30%が血栓症を生じるか、成熟(すなわち、内皮化および治癒すること)できないこと、ii)移植片を通過する血流速度が速く(すなわち、300ml/分〜500ml/分)、それにより手および前腕への血流が不足することを特徴とする「盗血」として公知の病態が発症すること、およびiii)PTFE移植片が、典型的には、静脈の解剖学的部位で内膜が肥厚することである。
【0143】
これらの問題を修正する1つのアプローチは、慢性動静脈吻合後に認められる内膜肥厚を阻害するために血管周囲内皮細胞インプラントを適用することである。Nugent et al., Perivascular Endothelial Implants Inhibit Intimal Hyperplasia In A Model Of Arteriovenous Fistulae : A Safety And Efficacy Study In The Pig. J Vasc Res 39 (6): 524-33 (2002)。1つの態様では、本発明は、透析患者における動静脈吻合後の瘢痕組織形成を減少させる方法を意図する。別の態様では、患者は末期腎疾患を有する。別の態様では、患者は人工移植片を有する。
【0144】
本発明の別の局面は、冠状動脈または末梢バイパス移植手術後の血管合併症の治療を意図する。動脈移植片は自己静脈移植片よりも成功率が高いことが周知である。しかし、静脈移植片は、採取および挿入が容易であり、且つ遥かに利用可能であるので、依然として好ましい。静脈移植片の使用における主な欠点は、主に過剰な内膜過形成に起因する手術から1ヶ月〜6ヶ月以内に10%〜18%が失敗するという事実にある。新生内膜肥厚およびアテローム硬化性プラークと共に過形成が起こり得る。したがって、静脈移植片の開存性の改良は、依然としてこの脈管手術領域で長い間切実に要求され続けている。
【0145】
本発明は、脈管構造の内皮および平滑筋細胞が直接外傷を受ける任意の手術後(例えば、縫合)後のシロリムス、タクロリムス、およびシロリムスのアナログを含む媒質の投与による脈管移植片の開存性を改良する方法を意図する。1つの態様では、媒質の投与により、内側平滑筋細胞の固有の順応的反応に起因すると考えられる吻合および静脈移植片内膜過形成が減少する。
【0146】
移植
本発明の1つの局面は、器官移植の間および後に患者に投与する細胞増殖抑制性および抗増殖性化合物(すなわち、例えば、シロリムス、タクロリムス、およびシロリムスのアナログ)を含む媒質を意図する。1つの態様では、方法により、移植後瘢痕形成が防止または予防される。シロリムスおよび関連化合物は移植片対宿主拒絶カスケードの減少に有効であることが周知である。しかし、本発明は、この臨床目的におけるシロリムスの瘢痕形成防止における新規の使用を提案する。
【0147】
薬物送達系
本発明は、およそ一様に分布し、放出速度が制御され、開いたまたは閉じた手術部位のいずれかに投与することができるいくつかの薬物送達系を意図する。薬物送達系の作製に有用な様々な異なる媒質を以下に記載する。任意の1つの媒質または担体が本発明を制限することを意図しない。任意の媒質または担体を、別の媒質または担体と組み合わせることができることに留意のこと。例えば、1つの態様では、化合物に付着したポリマー微粒子担体をゲル媒質と組み合わせることができる。
【0148】
本発明が意図する担体または媒質は、ゼラチン、コラーゲン、セルロースエステル、硫酸デキストラン、ポリ硫酸ペントサン、キチン、サッカリド、アルブミン、フィブリンシーラント、合成ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドとのブロック重合体、ポリエチレングリコール、アクリレート、アクリルアミド、メタクリレート(2-ヒドロキシエチルメタクリレートが含まれるが、それに限定されるわけではない)、ポリ(オルソエステル)、シアノアクリレート、ゼラチン-レゾルシン-アルデヒド型生体接着剤、ポリアクリル酸、ならびにそのコポリマーおよびブロックコポリマーからなる群より選択される材料を含む。
【0149】
本発明の1つの局面は、いくつかの構成要素(シロリムス、タクロリムス、またはシロリムスのアナログを含むリザーバ、カテーテル、吸入器、またはチューブが含まれるが、それに限定されるわけではない)を含む医療装置を意図する。1つの態様では、医療装置により、患者の内部または外部に噴霧する。別の態様では、医療装置により、患者の内部または外部にゲルを投与する。
【0150】
本発明のある態様は、シロリムス、タクロリムス(FK506)、およびシロリムスのアナログ(エベロリムス(すなわち、SDZ-RAD)、CCI-779、ABT-578、7-エピ-ラパマイシン、7-チオメチル-ラパマイシン、7-エピ-トリメトキシフェニル-ラパマイシン、7-エピ-チオメチル-ラパマイシン、7-デメトキシ-ラパマイシン、32-デメトキシ-ラパマイシン、および2-デスメチル-ラパマイシンなどであるが、それに限定されるわけではない)を含む薬物送達系を意図する。
【0151】
31位および42位にモノエステルおよびジエステルを含むシロリムスの他の誘導体は、抗真菌薬(米国特許第4,316,885号)およびラパマイシンの水溶性プロドラッグ(米国特許第4,650,803号)として有用であることが示されている。30-デメトキシラパマイシンも文献に記載されている(C. Vezina et al.J. Antibiot. (Tokyo), 1975,28 (10), 721; S. N. Sehgal et al., J. Antibiot. (Tokyo), 1975,28 (10), 727; 1983,36 (4), 351; N. L. Pavia et al., J. Natural Products, 1991,54(1), 167-177)。
【0152】
ラパマイシンのその他化学修飾が多数試みられている。これらには、ラパマイシンのモノエステルおよびジエステル(WO 92/05179)、ラパマイシンの27-オキシム(EPO 467606);ラパマイシンの 42-オキソアナログ(米国特許第5,023,262号); 二環式ラパマイシン(米国特許第5,120,725号);ラパマイシンの二量体(米国特許第5,120,727号);ラパマイシンのシリルエーテル(米国特許第5,120,842号);およびアリールスルホネートおよびスルファメート(米国特許第5,177,203号)の調製が含まれる。最近、ラパマイシンは、その天然に存在する鏡像異性体形態で合成された(K. C. Nicolaou et al., J. Am. Chem. Soc., 1993,115, 4419-4420; S. L. Schreiber, J. Am. Chem. Soc., 1993, 115, 7906-7907; S. J. Danishefsky, J. Am. Chem. Soc., 1993, 115, 9345-9346。
【0153】
または、媒質はまた、非シロリムス化合物(アンチセンスc-mycおよびツムスタチンなどであるが、それに限定されるわけではない)を含み得る。他の薬学的化合物(抗炎症薬、コルチコステロイド、抗血栓薬、抗生物質、抗真菌薬、抗ウイルス薬、鎮静薬、および麻酔薬などであるが、それに限定されるわけではない)を、単独またはシロリムスおよびシロリムスのアナログと組み合わせて送達させることができる。
【0154】
微粒子
本発明の1つの局面は、微粒子を含む媒質を意図する。好ましくは、微粒子は、リポソーム、ナノ粒子、ミクロスフェア、ナノスフェア、マイクロカプセル、およびナノカプセルを含む。好ましくは、本発明で意図されるいくつかの微粒子は、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、脂肪族ポリエステル(ポリグリコール酸およびポリ乳酸が含まれるが、それに制限されるわけではない)、ヒアルロン酸、修飾多糖、キトサン、セルロース、デキストラン、ポリウレタン、ポリアクリル酸、偽ポリ(アミノ酸)、ポリヒドロキシブトレート関連コポリマー、ポリアンヒドリド、ポリメチルメタクリレート、ポリ(エチレンオキシド)、レシチン、およびリン脂質を含む。
【0155】
リポソーム
本発明の1つの局面は、シロリムスおよびシロリムスのアナログを付着して放出することができるリポソームを意図する。リポソームは、リン脂質などの両親媒性分子から作製された水性コアを取り囲む微視的球状脂質二重層である。例えば、図1は、シロリムス分子2がリン脂質ミセル8の疎水性テール4の間に捕捉された1つのリポソーム態様を示す。水溶性薬物をコア中に捕捉し、シロリムスなどの脂溶性薬物を殻様二重層に溶解することができる。リポソームは、水溶性および水不溶性の化学物質を界面活性剤または他の乳化剤を使用することなく媒質中で共に使用することができるという点で特に特徴的である。当技術分野において周知であるように、リポソームは、水媒体中でのリン脂質の強い混合によって自発的に形成される。水溶性化合物は、リン脂質を水和することができる水溶液中に溶解される。したがって、リポソーム形成時、これらの化合物は、水性リポソーム中心内に捕捉される。リン脂質膜であるリポソーム壁は、オイルなどの脂溶性物質を保持する。リポソームは、組み込まれた化合物を制御放出する。さらに、リポソームを、薬物動態学的半減期を増加させるためにポリエチレングリコールなどの水溶性ポリマーでコーティングすることができる。本発明の1つの態様は、リポソームを精製して特別にデザインされた構造特性を有する安定な単層(単一層)のリポソームを得るための超高剪断テクノロジーを意図する。リポソームのこれらの固有の特性により、通常は不混和性の化合物を同時に保持し、制御放出させることができる。
【0156】
本発明は、カチオン性およびアニオン性のリポソームならびにシロリムスおよびシロリムスのアナログを含む中性脂質を有するリポソームを意図する。好ましくは、カチオン性リポソームは、材料と脂肪酸リポソーム成分との混合および電荷の結合による負電荷の材料を含む。明らかに、カチオン性またはアニオン性のリポソームの選択は、最終リポソーム混合物の所望のpHに依存する。カチオン性リポソームの例には、リポフェクチン、リポフェクタミン、およびリポフェクトエース(lipofectace)が含まれる。
【0157】
本発明の1つの態様は、シロリムスおよびシロリムスのアナログを制御放出させるリポソームを含む媒質を意図する。好ましくは、制御放出が可能なリポソームは、i)生分解性および非毒性を示し、ii)水溶性および油溶性化合物の両方を保有し、iii)取り扱い困難な化合物を可溶化し、iv)化合物の酸化を防止し、v)タンパク質の安定化を促進し、vi)水和を制御し、vii)二重層組成物の変化(脂肪酸の鎖の長さ、脂肪酸の脂質組成、飽和および不飽和脂肪酸の相対量、および物理的配置などであるが、それに限定されるわけではない)によって化合物放出を制御し、viii)溶媒依存性を有し、iv)pH依存性を有し、v)温度依存性を有する。
【0158】
本発明の組成物は、広範には2つの区分に分類される。従来のリポソームは、一般に、糖脂質を含んでも含んでいなくてもよい合成同一鎖リン脂質を含み得る安定化天然レシチン(PC)の混合物である。特定のリポソームは、i)双極性脂肪酸、ii)組織標的化療法のための抗体に付着する能力を含み、iii)材料(リポタンパク質および炭水化物などであるが、それに限定されるわけではない)でコーティングすることができ、iv)多カプセル化およびv)乳濁液適合性を含み得る。
【0159】
超音波処理および振動など(それに限定されるわけではない)の方法によってリポソームを研究室で容易に作製することができる。または、化合物送達リポソームは市販されている。例えば、Collaborative Laboratories, Inc.は、特定の必要な送達のために特注デザインのリポソームを製造することが公知である。
【0160】
ミクロスフェア、微粒子、およびマイクロカプセル
一般に一様な分布を維持し、化合物を安定に制御放出させ、生産および調合が経済的であるので、ミクロスフェアおよびマイクロカプセルは有用である。好ましくは、会合送達ゲルまたは化合物含浸ゲルは透明であり、または、ゲルは医療関係者による目視を容易にするために着色されている。当業者は、「ミクロスフェア、マイクロカプセル、および微粒子」という用語(すなわち、μmで測定される)は、その各対応物「ナノスフェア、ナノカプセル、およびナノ粒子」(すなわち、nmで測定される)と同義であることを認識すべきである。本明細書で考察されるように、当業者は、「ミクロスフェア/ナノスフェア、マイクロカプセル/ナノカプセル、および微粒子/ナノ粒子」という用語を交換可能に使用することも明らかである。
【0161】
ミクロスフェアは、市販されている(Prolease(登録商標), Alkerme's: Cambridge, Mass)。例えば、凍結乾燥シロリムス媒質を適切な溶媒中でホモジナイズし、20〜90μmの範囲のミクロスフェアを製造するために噴霧する。次いで、精製、カプセル化、および保存時に徐放完全性を維持する技術に従う。Scott et al., Improving Protein Therapeutics With Sustained Release Formulations, Nature Biotechnology, Volume 16: 153-157 (1998)。
【0162】
生分解性ポリマーの使用によるミクロスフェア組成物の修飾により、シロリムス放出速度を制御する能力を得ることができる。Miller et al., Degradation Rates of Oral Resorbable Implants {Polylactates and Polyglycolates : Rate Modification and Changes in PLA/PGA Copolymer Ratios, J. Biomed. Mater. Res., Vol. II : 711-719 (1977)。
【0163】
または、徐放または制御放出ミクロスフェア調製物を、生分解性ポリマーの金属塩を最初に調製する水中乾燥法を使用して調製する。次いで、シロリムスの溶解または分散媒質を、生分解性ポリマーの金属塩溶液に添加する。シロリムスと生分解性ポリマーの金属塩との重量比は、例えば、約1:100000〜約1:1、好ましくは約1:20000〜約1:500、より好ましくは約1:10000〜約1:500であり得る。次に、生分解性ポリマーの金属塩およびシロリムスを含む有機溶媒溶液を水相に注いで、油/水乳濁液を調製する。次いで、油相中の溶媒を蒸発除去してミクロスフェアを得る。最後に、これらのミクロスフェアを取出し、洗浄し、凍結乾燥させる。その後、ミクロスフェアを減圧下で加熱して残存する水および有機溶媒を除去する。
【0164】
生分解性ポリマーの金属塩とシロリムスとの混合物と適合するミクロスフェアの生成に有用な他の方法は、i)コアセルベート化物質(coacervating agent)、i)粒子集塊を防止するために抗凝集剤を添加した水中乾燥法または相分離法、およびiii)噴霧乾燥法である。
【0165】
1つの局面では、本発明は、約1日と6ヶ月との間の持続時間で化合物を制御放出することができるミクロスフェアまたはマイクロカプセルを含む媒質を意図する。1つの態様では、医療従事者が媒質が分散していることを明確に目視することができるように着色することができる。別の態様では、ミクロスフェアまたはマイクロカプセルは透明であり得る。別の態様では、ミクロスフェアまたはマイクロカプセルに放射線不透過性蛍光透視鏡色素を含浸する。
【0166】
制御放出マイクロカプセルを、遠心押し出し(centrifugal extrusion)、パンコーティング、およびエアサスペンションなどの公知のカプセル化技術の使用によって生成することができる。当技術分野において周知の技術を使用して、これらのミクロスフェア/マイクロカプセルを、特定の放出速度を達成するように操作することができる。例えば、Oliosphere(登録商標)(Macromed)は、制御放出ミクロスフェア系である。これらの特定のミクロスフェアは、5〜500μmの範囲の均一サイズで利用可能であり、生体適合性ポリマーおよび生分解性ポリマーから構成される。ミクロスフェアの特定のポリマー組成により、特注デザインのミクロスフェアが可能なように薬物放出速度を制御する(バースト効果の有効な管理が含まれる)ことが当技術分野において周知である。ProMaxx(登録商標)(Epic Therapeutics, Inc.)は、タンパク質-マトリクス薬物送達系である。この系は事実上水性であり、標準的な薬学的薬物送達モデルに適用可能である。特に、ProMaxx(登録商標)は、小分子および高分子の薬物の両方を送達させる生体侵食性タンパク質ミクロスフェアであり、ミクロスフェアのサイズおよび所望の薬物放出特性の両方に関して特注生産することができる。
【0167】
1つの態様では、ミクロスフェアまたは微粒子は、内部間膜のpHより低いpHで安定なpH感受性カプセル化材料を含む。内部間膜の典型的なpH範囲は、pH7.6〜pH7.2である。したがって、マイクロカプセルは、pH7未満で維持すべきである。しかし、pH変動が予想される場合、pH感受性材料を、マイクロカプセル溶解に必要な異なるpH基準に基づいて選択することができる。したがって、溶解が望まれるpH環境についてカプセル化化合物を選択し、安定性を維持するために予め選択したpHで保存する。カプセル剤として有用なpH感受性材料の例は、Eudragit(登録商標)L-100またはS-100(Rohm GMBH)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ポリビニルアセテートフタレート、セルロースアセテートフタレート、およびセルロースアセテートトリメリテートである。1つの態様では、脂質は、マイクロカプセルの内部コーティングを含む。これらの組成物では、これらの脂質は、脂肪酸とヘキシチオール無水物とのエステルおよびトリグリセリドなど食用脂であり得るが、それに限定されるわけではない。Lew C. W.,Controlled-Release pH Sensitive Capsule And Adhesive System And Method. 米国特許第5,364,634号(参照により本明細書に組み入れられる)。
【0168】
本発明の1つの態様は、シロリムス、タクロリムス(FK506)およびシロリムスの任意のアナログ(エベロリムス(すなわち、SDZ-RAD)、CCI-779、ABT-578、7-エピ-シロリムス、7-チオメチル-シロリムス、7-エピ-トリメトキシフェニル-シロリムス、7-エピ-チオメチル-シロリムス、7-デメトキシ-シロリムス、32-デメトキシ-シロリムス、および2-デスメチル-シロリムスなどであるが、それに限定されるわけではない)を含むミクロスフェアまたはマイクロカプセルを意図する。または、ミクロスフェアまたはマイクロカプセルはまた、c-mycおよびツムスタチンなど(それに限定されるわけではない)の非シロリムス化合物を含み得る。他の補助的薬学的化合物を、単独またはシロリムスおよびシロリムスのアナログ(抗炎症薬、コルチコステロイド、抗血栓薬、抗生物質、抗真菌薬、抗ウイルス薬、鎮静薬、および麻酔薬などであるが、それに限定されるわけではない)と組み合わせて送達させることができる。
【0169】
1つの態様では、本発明が意図する微粒子は、ゼラチンまたはゼラチンと類似の電荷密度を有する他の高分子カチオンを含み、一次微粒を形成するための複合体として使用する。一次微粒子を、以下の組成の混合物として生成する。i)ゼラチン(60ブルーム、ブタ皮膚由来のA型)、ii)コンドロイチン4硫酸(0.005%〜0.1%)、iii)グルタルアルデヒド(25%、グレード1)、およびiv)1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミドヒドロクロリド(塩酸EDC)および超高純度スクロース(Sigma Chemical Co., St. Louis, Mo.)。ゼラチン供給源は重要でないと考えられ、ウシ、ブタ、ヒト、または他の動物供給源に由来し得る。典型的には、高分子カチオンは、19,000〜30,000ダルトンである。次いで、コアセルベート化物質として、硫酸コンドロイチンを硫酸ナトリウムまたはエタノールとの複合体に添加する。
【0170】
微粒子の形成後、化合物(すなわち、例えば、シロリムス)を、微粒子表面に直接結合させるか、「ブリッジ」または「スペーサー」を使用して間接的に付着させる。化合物との直接カップリングのための部位を得るためにゼラチンリジン基のアミノ基を容易に誘導体化する。または、アビジン-ビオチンなどのスペーサー(すなわち、ターゲティングリガンド上の結合分子および誘導体化部分)も、微粒子へのターゲティングリガンドへの間接的カップリングに有用である。微粒子の安定性を、塩酸EDCによるグルタルアルデヒド-スペーサー架橋の誘導量によって制御する。制御放出媒質も、グルタルアルデヒド-スペーサー架橋の最終密度によって経験的に決定する。
【0171】
表1は、シロリムスのマイクロカプセル送達系についての1つの態様を定義する。この特定の態様により、マイクロカプセル外面の接着剤との接触によって化合物含有マイクロカプセル生体接着ゲルが形成される。
【0172】
(表1)例示的なマイクロカプセルシロリムス送達系

【0173】
この態様の生体接着剤は、本明細書で意図する化合物の送達のために持続的にマイクロカプセルを内部間膜内に配置することが可能である。当業者は、様々な濃度(すなわち、例えば、0.001%〜30%)のシロリムスを上記例に組み込むことができることを自覚すべきである。
【0174】
1つの態様では、本発明は、シロリムスおよびシロリムスのアナログと共にフィブリノゲンまたはトロンビンを含む組成物の噴霧乾燥によって形成された微粒子を意図する。好ましくは、これらの微粒子は溶解性を示し、選択されたタンパク質(すなわち、フィブリノゲンまたはトロンビン)は微粒子の壁を作製する。したがって、シロリムスおよびシロリムスのアナログを、微粒子のタンパク質壁内およびその間に組み込む。Heath et al., Microparticles And Their Use In Wound Therapy. 米国特許第6,113,948号(参照により本明細書に組み入れられる)。生組織への微粒子の適用後、フィブリノゲンとトロンビンとの間のその後の反応によって組織シーラントが作製され、それによって組み込まれた化合物が隣接周囲領域に放出される。1つの態様では、放出された化合物は、瘢痕組織形成の減少および/または組織接着の防止を行う薬理学的活性を有する。
【0175】
1つの態様では(図2)、本発明は、細胞増殖抑制性または抗増殖性化合物(すなわち、シロリムスまたはシロリムスのアナログ)12が含浸した(すなわち、カプセル化された)生体適合性生分解性材料を含むミクロスフェア10を意図する。化合物12は、完全に溶解されているかコロイドとして存在することが意図される。
【0176】
1つの態様では(図3)、本発明は、細胞増殖抑制性または抗増殖性化合物(すなわち、シロリムスまたはシロリムスのアナログ)12がミクロスフェア10に接着した生体適合性生分解性材料を含むミクロスフェア10を意図する。
【0177】
別の態様では(図4)、本発明は、細胞増殖抑制性または抗増殖性化合物(すなわち、シロリムスまたはシロリムスのアナログ)の化合物層12で囲まれ、同様に第2の生体適合性生分解性材料層26で囲まれた生体適合性生分解性材料を含む内部22を含むミクロスフェア20を意図する。第2の層26は、化合物層12の放出速度を制御することができる。好ましくは、化合物層12は、約1日〜6ヶ月の間にわたり放出される。1つの特定の態様では、化合物層12を、層26内にまたは内部22に含めることができる。
【0178】
図2または図3のいずれかにおける例示的ミクロスフェアの直径は、約0.1ミクロンと100ミクロンとの間、好ましくは20〜75ミクロン、より好ましくは40〜60ミクロンであるべきである。当業者は、ミクロスフェアの形状は正確に球状である必要はなく、手術部位(すなわち、開いているか閉じている)内または手術部位上に噴霧または塗布することができる非常に小さな粒子でありさえすればよいことを理解する。1つの態様では、微粒子は、ラクチド/グリコリド(PLGA)、ヒアルロン酸、修飾多糖、および任意の他の周知の材料からなる群より選択される生体適合性および/または生分解性材料から構成される。
【0179】
本発明は、本明細書に記載の微粒子と別の媒質との組み合わせを意図する。例えば、微粒子を、媒質(フォーム、ヒドロゲル、ゲル、または液体が含まれるが、それに限定されるわけではない)と組み合わせることができる。1つの態様では、制御放出媒質を作製する。本発明の説明は、様々な媒質のためのいくつかの例示的態様を示す。任意の制御放出媒質は本明細書に記載の組み合わせに制限されることを意図しない。
【0180】
液体投与
本発明の1つの局面は、流動性液体を含む媒質の投与を意図する。好ましくは、液体媒質を、様々な技術(噴霧、注入、および圧搾などが含まれるが、それに限定されるわけではない)を使用して投与することができる。
【0181】
1つの態様では、本発明は、微粒子を含むか含まない液体、フォーム、ヒドロゲル、および生体接着剤などを含む液体スプレー媒質を意図する。本発明の1つの態様は、シロリムス、タクロリムス、およびシロリムスのアナログを含むスプレー媒質を意図する。好ましくは、内視鏡手順(腹腔鏡または関節鏡などであるが、それに限定されるわけではない)の間に閉じた手術部位に直接カテーテルを使用してスプレーを投与することができる。または、開いた手術部位上に液滴スプレーを作製するために、圧力源(すなわち、圧力調整器およびノズルチップを含むスプレー缶またはシリンダー)によって化合物のスプレーを作製することができる。別の態様では、ネブライザー(すなわち、例えば、アトマイザー)を使用して、エアゾールスプレーを作製することもできる。別の態様では、開いた手術部位にスプレーを投与する。
【0182】
本発明の1つの態様は(図5)、細胞増殖抑制性および抗増殖性化合物(すなわち、シロリムスおよびシロリムスのアナログ)を手術部位または創傷部位に噴霧することができる加圧スプレー缶1を意図する。缶本体2の頂部の作動ボタン3を押すことにより、化合物スプレー5がノズル4から出射される。スプレー5は、水性混合物、微粒子、フォーム、および生体接着剤からなる群より選択される媒質を含むシロリムスまたはシロリムスのアナログを含むことを意図する。または、ノズル4は、医療用チューブ6に取りつけられているか、ネブライザー(図6を参照のこと)を使用して、化合物を手術部位に噴霧することもできる。当業者は、本発明が缶からの噴霧に制限されることを意図しないことを理解するであろう。
【0183】
本発明の1つの局面は、シロリムス、タクロリムス、およびシロリムスのアナログの媒質(液体、生体接着剤、およびフォームなどであるが、それに限定されるわけではない)を均等様式および制御放出様式で手持ち式のアプリケーターによって内部組織または器官に適用する方法を意図する。1つの態様では、アプリケーターは、ポンプ、内視鏡的管腔の通過に十分な薄さの管状延長物、ポンプに密閉して接続された管状延長物の近位末端、および管状延長物の遠位末端に付着したアプリケーターチップを含む。ポンプの活性化により、ポンプによって液体に接触することなく媒質が均等様式および制御様式でチップを介して内部組織に移動する。1つの態様では、ポンプは、分散させるべき液体と直接物理的に接触しない手持ち式プランジャを有する手持ち式部分を含むマイクロピペッターである。装置は、さらに、管状延長物の遠位末端から延びた少なくとも2つの閉鎖ピンを含む創傷閉鎖装置を含み得る。別の態様では、アプリケーターは、シリンジの遠位末端から延びたチューブを備えたシリンジであり得る。別の態様では、管状延長物は、医療関係者が手でしっかり握って、媒質を開いた手術部位に適用するのに十分な大きさである。1つの態様では、アプリケーターは、単一のアプリケーターチップを形成するために併合した2つの管状延長物を含む。好ましくは、2つの管状延長物は、単一の混合物として組織に適用される異なる媒質を含む。1つの態様では、管状延長物は、シロリムス、タクロリムス、およびシロリムスのアナログの粉末媒質を含む。
【0184】
1つの態様では、本発明は、開いた手術部位にシロリムスおよびシロリムスのアナログを含む媒質を噴霧する方法を意図する。好ましくは、噴霧される媒質は、フィブリノゲンの活性化に必要な生体接着剤を含む。ガス推進装置は、ゲル化または固化することができる第1の薬剤を含む第1の適用物を噴霧し、その後第1の薬剤をゲル化するか固化するために第1の薬剤を活性化する第2の薬剤の第2の適用物を噴霧することが公知である。Epstein G., Gas Driven Spraying Of Mixed Sealant Agents. 米国特許第6,461,361号(参照により本明細書に組み入れられる)。または、第1および第2の薬剤を、スプレーが生組織に接触した場合にこれらが固体マトリクスを形成するように噴霧時に混合される。詳細には、滅菌ガス噴出生体接着剤スプレーアプリケーターの1つの型は、タンパク質溶液(すなわち、トロンビン)と凝固溶液(すなわち、フィブリノゲン)との組み合わせを使用する。Fukunaga et al., Applicator For Applying A Biocompatible Adhesive. 米国特許第5,582,596号(参照により本明細書に組み入れられる)。または、ピストルに類似の形状の手持ち式トリガー機構に反応した2つのシリンジの段階的機械的前進によるエアゾール化フィブリノゲン/トロンビン生体接着剤の定量適用が公知である。Coelho et al., Sprayer For Fibrin Glue. 米国特許第5,759,171号(参照により本明細書に組み入れられる)。別の態様では、液体担体に懸濁されたミクロスフェアを噴霧する。別の態様では、熱ゲル化ポリマーを開いた手術部位に噴霧する。
【0185】
1つの態様では、本発明は、閉じた手術部位および周辺組織にシロリムスおよびシロリムスのアナログを含む媒質をスプレーする方法を意図する。好ましくは、閉じた手術部位への液体の適用は、内視鏡手術装置による材料シートの配置の付属物として役立つ。1つの態様では、内視鏡装置は、材料シートの配置時に液体(すなわち、生理食塩水)を一掃するための複数の開口部を有する。Tilton et al., Instrumentation For Endoscopic Surgical Insertion And Application Of Liquid, Gel And Like Material. 米国特許第6,416,506号(参照により本明細書に組み入れられる)。または、内視鏡アプリケーター装置(すなわち、例えば、腹腔鏡での使用に適合させたスプレー)も、シロリムス、タクロリムス、およびシロリムスのアナログを含む組織成体接着剤のスプレー適用を選択的に指示することを意図する。Trumbull, H. R.,Laparoscopic Sealant Applicator. 米国特許第6,228,051号(参照により本明細書に組み入れられる)。または、内視鏡または蛍光透視鏡装置中のカテーテルを介した使用に適合させたスプレーチューブまたは装置も、細胞増殖抑制性薬学的化合物(例えば、シロリムスまたはそのアナログ)を含む液体またはゲル媒質のスプレーまたは流れを手術部位に選択的に方向付けることを意図する。
【0186】
本発明は、細胞増殖抑制性および抗増殖薬(すなわち、例えば、シロリムス、タクロリムス、およびシロリムスのアナログ)、生物活性薬、および/または水不溶性熱可塑性ポリマーを含む様々な液体およびゲル媒質(熱可塑性ポリマーが含まれる)を関心対象の領域(例えば、開いたまたは閉じた手術部位)に送達することができる腹腔鏡装置を意図する。1つの態様では、本発明は、管状延長ロッドハウジングを出射する際にエアゾール化するガス圧下でシロリムスおよび/またはシロリムスのアナログを含むスプレーを出射する装置の使用を意図する。Fujita et al., Method For Remote Delivery Of An Aerosolized Liquid. 米国特許第5,722,950号(参照により本明細書に組み入れられる)。または、気管チューブ、胸郭カテーテル、またはトロカールカテーテルなどの埋め込まれた医療手術チューブの壁を貫通したスリットによってスプレーを生成することができる。好ましくは、スプレーは、チューブの壁からチューブの管腔まで突き抜けた穴の数およびサイズによって決定される、エアゾール、粗いスプレー、または液体の流れであり得る。Sheridan D., Medico-Surgical Tube Including Improved Means For Administering Liquid Or Gas Treatment. 米国特許第5,207,655号(参照により本明細書に組み入れられる)。1つの態様では、本発明は、小開口部72によって媒質を噴霧するスプレーチップ71を意図する(図6を参照のこと)。好ましくは、スプレー71は、ルアーロック73を含むので、任意の標準的な医療コネクタと適合可能である。
【0187】
観察用光ファイバー48および第1の管腔47、および第2の管腔46を含む例示的内視鏡シャフト44(図7)を、腹腔鏡または関節鏡手順で使用することができる。第1の管腔47を、手術用切削工具(示さず)の操作のために使用することができ、第2の管腔46を、内視鏡送達カテーテル43を使用した手術部位へのシロリムスおよびシロリムスのアナログ12の投与のために使用することができる。
【0188】
別の態様では、カテーテルは、手術用切削装置およびシロリムス、タクロリムス、およびシロリムスのアナログを含む媒質の送達のための共通の管腔を含む。1つの態様では、シロリムス、タクロリムス、またはシロリムスのアナログを、材料の液体スプレー、注入可能な液体、圧搾可能な液体、フォーム、ゲル、ヒドロゲル、またはシートの形態で投与することができる。別の態様では、シロリムス化合物は、本明細書に記載の微粒子の形態である。1つの態様では、微粒子を含む媒質は、腹腔鏡または関節鏡手順のいずれかまたは両方の後の瘢痕組織形成の減少によって手術後合併症を減少させる。
【0189】
別の態様では、媒質を閉じた手術部位に送達するために内視鏡送達カテーテルを器官管腔46を通して挿入する。図8は、典型的な内視鏡送達カテーテルの1つの態様を示す。メス型ルアーロックアダプター81をリザーバに接続し(示さず)、シロリムス、タクロリムス、またはシロリムスのアナログを含む媒質がカテーテル管腔82を還流してサイドポート83でカテーテルから出射する。
【0190】
本発明は、媒質を開いた手術部位に注入する工程を含む方法を意図する。1つの態様では、可動性チューブが液体媒質の流れを方向付けることができる手持ち式コンテナから液体媒質を注入する。好ましくは、手持ち式コンテナには、ボトル、皿、または混合トレイが含まれるが、それに限定されるわけではない。別の態様では、遠隔制御または医療助手によって手動によって傾けることができる固定コンテナから液体媒質を注入する。好ましくは、固定コンテナには、媒質の流れを制御するためのバルブを備えたアプリケーターチューブが含まれるが、それに限定されるわけではない。別の態様では、媒質をチューブから開いた手術部位に適用する。別の態様では、圧搾ボトル(squeeze bottle)から媒質を適用する。
【0191】
生体接着剤
本発明の1つの局面は、シロリムスおよびシロリムスのアナログを含む生体接着性媒質を意図する。好ましくは、生体接着性媒質の様々な態様は、生きた器官内での使用のためにデザインされた生体適合性および生分解性パッチを含む。1つの態様では、生体接着性パッチは、少なくとも1日〜6ヶ月の期間にわたり化合物を一定に放出する。当業者は、この態様は、皮膚の表皮層に現在利用可能なほとんどの従来の経皮パッチよりも優れていることを認識する。本発明の機構を理解するために必要なことではないが、生体接着性パッチは短時間のみ局所で作用する局所投薬の適用よりも迅速に創傷を治癒すると考えられる。さらに、長期生体接着性パッチは、複数回の包帯交換のための、より多くの薬物添加における不便さおよびコストが存在しない。上記定義の液体投与技術を使用して、いくつかの生体接着剤を適用する。
【0192】
本発明の1つの態様は、歯のエナメルマトリクスを含む創傷治癒薬と組み合わせたシロリムスおよびシロリムスのアナログを含む生体接着剤を意図する。Gestrelius et al., Matrix Protein Compositions For Wound Healing. 米国特許第6,503,539号(参照により本明細書に組み入れられる)。または、Liquiderm(商標)接着剤およびDermabond(登録商標)Topical Skin Adhesive (Closure Medical Corporation)も本発明に適合する。Dermabond(登録商標)接着剤は、切開および裂傷の閉鎖における縫合糸およびステープルの実行可能な代替物として公知である。Liquiderm(商標)接着剤をブラシで創傷に塗り、創傷を汚れおよび細菌に対して密封し、それにより治癒環境をつくる。
【0193】
本発明の1つの態様は、シロリムスおよびシロリムスのアナログならびにヘモグロビンとアルブミンとの混合物を含むグルタルアルデヒド溶液からなる接着材料を含む生体接着剤を意図する。好ましくは、コーティングは化合物の制御放出のための容器として機能し、術後の脈管外構造を支持する。Ollerenshaw et al., Vascular Coating Composition, 米国特許第6,372,229号(参照により本明細書に組み入れられる)。
【0194】
本発明の1つの局面は、シロリムスおよびシロリムスのアナログを含む生体接着剤を使用した吻合方法を意図する。生体接着剤は、吻合に有用であることが公知である。Black et al., Sutureless Anastomotic Technique Using A Bioadhesive And Device Therefore、米国特許第6,245,083号(参照により本明細書に組み入れられる)。しかし、術後瘢痕形成を減少させるための生体接着剤へのシロリムスおよびシロリムスのアナログの含浸は新規である。
【0195】
1つの態様では、本発明は、架橋タンパク性材料およびシロリムス、タクロリムス、およびシロリムスのアナログからなる群より選択される化合物を含む生体接着剤を使用した、器官(その少なくとも1つが内部空洞を有する)の連結方法を意図する。好ましくは、器官を並置し(すなわち、手または手術装置による)、本発明の化合物含浸生体接着剤を使用して器官を互いに連結する。一方の器官を他方の器官の導入させるための器官の壁の切断による開口部の作製によってこの連結を促進する。開口部を互いに保持する場合、本発明の生体接着剤を適用する2つの器官の境界に吻合部位を形成する。例えば、膨張した場合に器官内が安定になる膨張性バルーンの使用によって各器官に装置を付着させる。開口部を介して拡大する手段によって、膨張性バルーンを互いに付着させることができる。したがって、生体接着剤を適用している間、動脈切開部位が拡張しながら吻合すべき器官が保持される。使用した生体接着剤は、開口部が連絡するように連結した器官を密封するのに十分であり、それにより、液体および化合物を開口部を介して一方の器官から他方の器官に移動できる。一旦生体接着剤が固まると、2つの器官の空洞は連結開口部を介して連絡することができる。
【0196】
本発明は、非毒性を示し、生体組織を接着する能力を有し、迅速に安定化し(典型的には、約30秒〜約5分以内)、好ましくは湿潤状態で固まり、生体組織および合成材料の両方に結合し、吻合連結を受けた器官の安定化に十分な強度を与える、吻合での使用に適切な生体接着剤を意図する。好ましくは、シロリムスおよびシロリムスのアナログを含み、タンパク性材料および架橋剤からなる生体接着性組成物は、本発明で吻合での使用が意図される。Kowanko N., Adhesive Composition And Method, 米国特許第5,385,606号(参照により本明細書に組み入れられる)。'506号特許の生体接着性組成物は、以下の2つの成分を含む:i)27〜53重量%のタンパク性材料;およびii)存在するタンパク質の20〜60重量部毎に1重量部の荷重配分比のジアルデヒドまたはポリアルデヒド。生体接着剤を生成するために、2重量部を混合し、結合すべき表面上で反応させる。結合形成が急速であり、一般に、完了までに1分未満しか必要としない。得られた接着は強力であり、400〜1300g/cm2の引裂き強度の結合を得ることができる。
【0197】
本発明に適合する別の適切な接着剤を、二価カルボン酸と硫黄含有アミノ酸またはその誘導体の1つとの縮合によって作製する。これらの生成物は、酸化してジスルフィド架橋を形成することができる反応性SH官能基を含み、架橋していても架橋していなくてもよいポリマーが得られる。Constancis et al.,Adhesive Compositions For Surgical Use. 米国特許第5,496,872号(参照により本明細書に組み入れられる)。
【0198】
本発明の1つの態様は、シロリムスおよびシロリムスのアナログを含む二成分生体接着剤の押し出しを意図する。1つの態様では、本発明は、生体接着剤を使用した管状器官の側面-側面または末端-側面様式での連結または吻合方法に関する。例えば、'506号特許の二成分生体接着剤を、混合チップを有する押し出し装置によって適用することができる。1つの態様では、医療関係者によって自由で開かれた吻合部位へのアクセスが行われる開いた手術中の2つの器官の境界上に生体接着剤を押し出す。別の態様では、内視鏡によって方向付けられた生体接着剤を適用することができる(下記)。
【0199】
吻合態様の詳細を、冠状動脈バイパス手術の実施によって例示することができる。本発明の1つの態様は、以下の工程を含む、内胸動脈とも呼ばれる内乳動脈(以後「IMA」)の左冠状動脈枝への吻合方法を意図する:i)胸壁からのIMAを単離する工程;ii)意図する吻合部位に近位の位置を固定する工程;iii)意図する吻合部位より遠位のIMAを切開する工程;iv)宿主動脈を持ち上げる工程;v)IMAの切開によって第1の空洞を作製する工程;vi)宿主動脈を単離する工程;vii)宿主動脈の切開によって第2の空洞を作製する工程; viii)カテーテルが第1の空洞を通過して第2の空洞に突き出すようにIMA中に二重バルーンカテーテルを挿入する工程;ix)第2の空洞が安定化するように、宿主動脈内のカテーテルの第1のバルーンを膨らませる工程;x)直接並置されるように第1および第2の空洞を配置する工程;xi)第1の空洞が安定するようにIMA内のカテーテルの第2のバルーンを膨らませる工程;xii)吻合を維持するために十分な強度が達成されるように、並置された第1および第2の空洞周囲にシロリムスおよびシロリムスのアナログを含む生体接着剤を適用する工程;xiii)吻合からカテーテルを除去する工程;およびxiii)吻合を結紮する工程。
【0200】
本発明の1つの態様は、ヒドロゲル(下記)ならびにシロリムス、タクロリムス、およびシロリムスのアナログからなる群より選択される化合物を含む生体接着性パッチを意図する。臨床目的では、医療関係者は、包帯で覆った化合物を含むパッチを創傷に適用するであろう。包帯は、ヒドロゲルの創傷との接触を維持し、ヒドロゲルの乾燥を防止する。または、細胞増殖抑制性および抗増殖化合物(すなわち、例えば、シロリムス、タクロリムス、およびシロリムスのアナログ)を、ヒドロゲルに直接組み込むか、ヒドロゲル内に存在する微粒子に付着させることができる。1つの態様では、微粒子を含む生体接着剤は、化合物の媒質を制御放出させる。
【0201】
生体接着剤は、フィブリン糊、シアノアシレート、カルシウムポリカルボフィル、ポリアクリル酸、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、カラヤおよびトラガカントなどの天然ゴム、アルギン、キトサン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デンプン、ペクチン、またはその混合物を含むことが公知である。または、接着剤を、ゲル安定性を維持する予め選択したpHでポリエチレンおよび鉱物油からなる炭水化物ゲル基剤と組み合わせることができる。
【0202】
1つの態様では、マイクロカプセルを含む接着性ゲルを、予め選択したpHに調整する。次いで、接着性バイオゲル系を、有効成分が送達されるような条件下で手術部位中に配置する。
【0203】
フォーム
本発明の1つの局面は、フォームならびにシロリムスおよびシロリムスのアナログを含む媒質を意図する。フォーム媒質を、一般に、以前に製造したヒドロゲルまたはゲルから生成することが当技術分野において周知である。したがって、当業者は、本明細書に開示のヒドロゲル媒質を対応するフォーム媒質に変換することができることを理解する。したがって、多数の異なるフォーム組成物が当技術分野において公知であり、以下は本発明が意図するフォームの一例であることが意図される。本発明は、このフォーム型に制限されることを意図しない。
【0204】
本発明の1つの態様は、水で膨潤したゲルの一般的な凍結乾燥プロセスまたはゲル内への気泡の導入によって、水膨潤ポリマーゲルならびにシロリムスおよびシロリムスのアナログを含むフォームを意図する。好ましくは、ゲル内部に気泡を導入する工程を含むフォームの調製方法は、英国特許第574,382号、特開平5-254029、特開平8-208868、および特開平8-337674、ならびに特公平6-510330などに開示のプロセスを含む。特に、本発明の水膨潤ゲルのフォームを、刊行物に開示のフォームと比較して水吸収性および安定性がより高い水膨潤ポリマーゲルのフォームが得られる下記のプロセスによって調製する。
【0205】
フォームの調製方法の1つの例は、i)シロリムス、タクロリムス、およびシロリムスのアナログからなる群より選択される化合物を含むゲルの内部に気泡を導入する工程;ii)フォームが得られるようにエステル化多糖溶液またはポリアミン溶液中に気泡を導入する工程;およびiii)フォーム形成溶液とポリアミン溶液またはエステル化多糖とをそれぞれ接触させてゲル化させる工程を含む。別の例では、方法は、i)フォームが形成されるようにエステル化多糖とポリアミンとの混合溶液に気泡を導入する工程;およびii)ゲル化を完了する工程を含む。
【0206】
別の態様では、フォームの調製方法は、i)フォームを形成することができるシロリムス、タクロリムス、およびシロリムスのアナログからなる群より選択される化合物を含む溶液に気泡を導入する工程;およびii)水不溶性ゲルが生成されるように発泡剤を添加してフォームを形成する工程を含む。好ましくは、ガス発生は、例えば、炭酸アンモニウム、アゾジカルボンアミド、p-トルエンスルホニルヒドラジン、ブタン、ヘキサン、およびエーテル(それに限定されるわけではない)を使用した加熱または化学反応に起因する。フォームの任意の調製方法は、フォームを形成するための溶液の機械的撹拌による供給ガスの水溶液への拡散などをさらに含み得る。
【0207】
フォームの任意の調製方法は、必要に応じてフォームを安定化させるための発泡剤であるイオン性または非イオン性界面活性剤(すなわち、「表面活性剤」)をさらに含み得る。1つの態様では、イオン性界面活性剤には、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、α-オレフィンスルホネート、およびスルホアルキルアミドなどの陰イオン性界面活性剤;アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、およびアルキルピリジニウム塩などの陽イオン性界面活性剤;イミダゾリン界面活性剤などの両性界面活性剤が含まれる。別の態様では、非イオン性界面活性剤には、例えば、ポリエチレンオキシドアルキルエーテル、ポリエチレンオキシドアルキルフェニルエーテル、グリセロール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、およびスクロース脂肪酸エステルなどが含まれる。
【0208】
低分子量界面活性剤は、生体組織または生理活性物質(すなわち、酵素など)を刺激および変性することが公知である。好ましくは、本発明のフォーム態様のための非毒性界面活性剤が意図される。本発明で意図されるフォームは、気泡表面で凝集する複合体分子の収集物である非毒性界面活性剤を含む。好ましくは、このような界面活性剤には、食用フォーム中の脂肪もしくはタンパク質または髭剃り用クリーム中の化学添加剤が含まれるが、それに限定されるわけではない。本発明を理解するために必要なことではないが、気泡を分離したままにすることおよび水をその表面と反発させることによる表面張力によるフォーム構造の崩壊の防止によって界面活性剤は作用すると考えられる。手持ち式容器から噴霧したフォームは、スプレーに空気が引き込まれるにつれて、その液体体積の約100倍に拡大することができる。液体を超えるフォームの利点は、フォームは拡大プロセスが起こるにつれて、割れ目および他の分かりにくい隠れた場所に充填されることである。
【0209】
本発明を理解するために必要なことではないが、エステル化多糖自体が両親媒性を示し、気体-液体界面の安定のための発泡剤として機能すると考えられる。したがって、いくつかの態様では、エステル化多糖の存在下で界面活性剤は必要ないかもしれない。エステル化多糖は、両親媒性に加えて反応性を有するので、エステル化多糖を「反応性界面活性多糖」をいうことができる。
【0210】
いくつかの態様では、界面活性剤はまた、アルブミン、ゼラチン、アルブミン、またはレシチンなどのタンパク質であり得るが、それに限定されるわけではない。
【0211】
1つの態様では、フォームの調製方法は、気泡安定剤を添加する工程をさらに含む。好ましくは、気泡安定剤には、ドデシルアルコール、テトラデカノール、またはヘキサデカノールなどの高級アルコール;エタノールアミンなどのアミノアルコール;カルボキシメチルセルロースなどの水溶性ポリマーなどが含まれるが、それに限定されるわけではない。または、気泡安定剤は、アガロース、アガロペクチン、アミロース、アミロペクチン、アラビナン、イソリケナン、カードラン、カラギーナン、ゲランガン、ニゲラン、およびラミナランなどの天然多糖を含む多糖であり得る。本発明を理解するために必要なことではないが、気泡安定剤は架橋完了前の気泡の消滅を防止すると考えられる。
【0212】
1つの態様では、本発明は、フォームおよび化合物(シロリムス、タクロリムス、およびシロリムスのアナログなどであるが、それに限定されるわけではない)を含む加圧キャニスタを意図する。図9に示すように、加圧フォームキャニスタ80は、一般に、円筒型の本体を有する。フォームキャニスタ80は、開口部62によってアクセスされるそれに連結された可動性分注弁75を含む。弁75を従来の製造技術にしたがって構築し、上方延長弁通路76および横方向延長レッジ77を画定する。弁75は、弁通路76を介して加圧フォーム内容物を放出するように操作することができる。一般に、円錐状キャップ60は、その先端にノズル開口部61および下方延長ノズル通路65を画定する。弁75はまた、キャップ60内のノズル通路65内に部分的に延長する。
【0213】
ゲル
ヒドロゲル媒質は、膨潤および平衡への到達によって水溶液と相互作用する、共有結合的またはイオン結合的に(ironically)架橋した親水性ポリマーの三次元網状構造を含む。化合物(シロリムスおよびシロリムスのアナログなどであるが、それに限定されるわけではない)を、製造プロセス時にヒドロゲル媒質に添加することができる。ヒドロゲル媒質テクノロジーは、多数の異なる組成物型を含むので、「ヒドロゲル」という用語は、任意の特定の化合物をいわないが、特定の性質を有する組成物を特定する。例えば、ヒドロゲルは、物理的障壁の提供またはヒドロゲルへの薬物の化学的付着によってヒドロゲル中に含まれる薬物化合物を制御放出することができる。
【0214】
ヒドロゲルは、主に、水溶液への膨潤能力を有することによって特徴付けられる。膨潤比および溶解性を、ヒドロゲルの特定の組成物によって制御する。膨潤比が高いほど、ヒドロゲルに付着するか含まれる組み込まれた化合物の放出速度が速くなる。本発明の機構を理解するために必要なことではないが、膨潤比が高いほど、ヒドロゲル内により隙間のある構造およびより密接な模倣物である生体組織が得られるので、ヒドロゲルと組織との間の拡散過程が促進されると考えられる。高膨潤比はまた、ヒドロゲル組成物の親水性に関連し、より良好な吸収性が得られる。
【0215】
1つの態様では、本発明は、i)4℃で750mlの2回蒸留水へのヘパリン(400mg、0.036mmol)の添加、ii)4℃で1.0mlの2回蒸留水へのヒト血清アルブミン(550mg、0.085mmol)の添加、およびiii)4℃で250mlの2回蒸留水へのN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N-エチルカルボジイミド(すなわち、EDC溶液;94mg)の添加によって調製された化合物の制御放出能力を有するヒドロゲルマトリクスを意図する。小さな攪拌バーおよび所望の濃度の化合物(すなわち、例えば、シロリムス)を含む2mlポリエチレン-ポリプロピレンシリンジ内で、1mlのアルブミン溶液と共にヘパリン溶液を最初に混合する。その後、EDC溶液を添加して、最終混合物を形成させる。全てのステップを4℃で行う。
【0216】
24時間後、シリンジをトルエン中に配置した場合の膨潤によってヒドロゲルをシリンジから取り出す。アルブミン-ヘパリンヒドロゲルをシリンジから押し出した後、ヒドロゲルをリン酸緩衝化生理食塩水で平衡化して非カップリング材料を除去する。
【0217】
付着化合物の放出速度を、マトリクス中のヘパリン存在量の変化によって制御することができる。
【0218】
本発明の1つの態様は、シロリムスおよびシロリムスのアナログならびに架橋親水性接着性ポリマーを含むヒドロゲル積層板を意図する。このような組成物は、包帯などの吸収性製品を形成する。好ましくは、ヒドロゲルポリマーは、一般に、合成ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、アクリレート、およびメタクリレート、ならびにそのコポリマーである。Kundel, Hydrogel Laminate, Bandages and Composites And Methods For Forming The Same, 米国特許第6, 468,383号 (参照により本明細書に組み入れられる)。または、本発明に適合するヒドロゲルを、デキストラン、マレイン酸、またはヒアルロン酸などの炭水化物とポリビニルクロリドとの架橋によって形成することができる。Kim et al., Dextran-Maleic Acid Monoesters And Hydrogels Based Thereon. 米国特許第6,476,204号; Giusti et al., Biomaterial Comprising Hyaluronic Acid and Derivatives Thereof In Interpenetrating Polymer Networks (IPN). 米国特許第5,644,049号 (両方とも参照により本明細書に組み入れられる)。
【0219】
別の態様は、シロリムスおよびシロリムスのアナログを制御放出することができるヒアルロン酸を含むヒドロゲル媒質を意図する。これらの組成物は局所的且つ注射可能なポリマー溶液として開示されているが、本発明は、化合物(シロリムスおよびシロリムスのアナログなどであるが、それに限定されるわけではない)を体内に持続放出するためのヒドロゲル内のヒアルロン酸ポリマーを意図する。Drizen et al., Sustained Release System. 米国特許第6,063,405号 (参照により本明細書に組み入れられる)。
【0220】
本発明が意図する1つの局面は、ゲル化時間が制御された、シロリムスまたはシロリムスのアナログを含むヒドロゲル媒質を含む。1つの態様では、ヒドロゲルは、1つまたは複数の合成および/または天然の水溶性ポリマーならびに化合物を含むか放出させる1つまたは複数の二価または多価陽イオンでできている。少なくとも1つのポリマー中のモノマーは、分子間ポリマーのイオン架橋を形成するための二価または多価陽イオンと反応することができる酸またはその塩である。このようなヒドロゲルは、組織培養足場での使用に関して詳細に考察されている。Ma P. X.,Ironically Crosslinked Hydrogels With Adjustable Gelation Time. 米国特許第6,497,902号 (参照により本明細書に組み入れられる)。詳細には、制御ゲル化時間は、i)陽イオン溶解性、ii)陽イオン濃度、iii)混合物/化合物を含む陽イオンの比、iv)ポリマー濃度、およびv)ゲル化温度の機能として教示されている。
【0221】
1つの態様では、本発明は、開いた手術部位へのシロリムスおよびシロリムスのアナログを含むヒドロゲルの投与を意図する。別の態様では、本発明は、生体組織との接触の際にゲルに移行するカテーテルを介した閉じた手術部位へのシロリムスおよびシロリムスのアナログを含むヒドロゲルの投与(すなわち、腹腔鏡手順時)を意図する。1つの態様では、ミセル化ヒドロゲルコアは、シロリムスおよびシロリムスのアナログのリザーバとして役立つ。別の態様では、ヒドロゲルは、シロリムスおよびシロリムスのアナログに付着した微粒子を含む。シロリムスおよびシロリムスのアナログは、本発明で、瘢痕組織の減少および創傷または手術切開の改善に薬理学的に有効であることが意図される。
【0222】
本発明の1つの態様は、タンパク質(すなわち、アルブミン、カゼイン、フィブリノゲン、γ-グロブリン、ヘモグロビン、フェリチン、およびエラスチン)と多糖(すなわち、ヘパリン、ヘパラン、硫酸コンドロイチン、およびデキストラン)との架橋によって形成されたシロリムスおよびシロリムスのアナログを含む制御放出ヒドロゲル媒質を意図する。ヒドロゲル媒質からの化合物放出を制御する決定因子は、i)ゲル組成、ii)架橋度、およびiii)ゲル表面処理である。詳細には、ヒドロゲル放出可能な化合物には、ホルモン、細胞増殖抑制薬、抗生物質、ペプチド、タンパク質、酵素、および抗凝固剤が含まれることが公知である。Feijen J., Biodegradable Hydrogel Matrices For the Controlled Release Of Pharmacologically Active Agents. 米国特許第4,925,677号 (参照により本明細書に組み入れられる)。または、本発明が意図するヒドロゲル媒質からの化合物の制御放出は、ポリマー架橋物の間の加水分解性スペーサーの挿入によって可能である。1つの態様では、ヒドロゲル分解速度は、1日から6ヶ月までの溶解速度が得られるように修飾することが意図される。Hennink et al., Hydrolyzable Hydrogels For Controlled Release. 米国特許第6,497,903号 (参照により本明細書に組み入れられる)。
【0223】
または、ヒドロゲル媒質は、分散により化合物の周辺組織への持続放出送達が得られる独自の化合物容器として作用することができる。Kennedy et al., Semisolid Therapeutic Delivery System And Combination Semisolid, Multiparticulate, Therapeutic Delivery System. 米国特許第6,488,952号 (参照により本明細書に組み入れられる)。1つの態様では、本発明は、医療装置(例えば、創傷包帯など)に共有結合したシロリムスおよびシロリムスのアナログを含むリポソームを含むヒドロゲルを意図する。好ましくは、本発明が意図するヒドロゲル媒質は、ゼラチン、ペクチン、コラーゲン、およびヘモグロビンからなる群より選択される材料を含む。DiCosmo et al., Compound Delivery Via Therapeutic Hydrogels, 米国特許第6,475,516号 (参照により本明細書に組み入れられる)。1つの特定の態様では、ヒドロゲルは、シロリムスまたはシロリムスのアナログを含む粒子を含む。
【0224】
本発明の1つの態様は、閉じた手術部位にシロリムスまたはシロリムスのアナログを含むヒドロゲルを配置することができるカテーテルを含む医療装置を提供する方法を意図する。Sahatjian et al., Compound Delivery, 米国特許第5,674,192号 (参照により本明細書に組み入れられる)。好ましくは、ヒドロゲルは、創傷治癒薬(歯のエナメルマトリクスなどであるが、それに限定されるわけではない)とししてデザインされた第2の化合物を含む。Gestrelius et al., Matrix Protein Compositions For Wound Healing. 米国特許第6,503,539号 (参照により本明細書に組み入れられる)。
【0225】
本発明の1つの局面は、ポリオキシエチレンおよびポリプロピレン単位から作製した生体適合性ポロクサマーの使用に基づいた熱可逆性ゲルテクノロジーを意図する。好ましくは、これらのポロクサマーは、商標Pluronics(登録商標)またはTetronics(登録商標)で販売されている任意のポリマーまたはコポリマーを含む。Tetronic(登録商標)ゲル形成マクロマーは、少なくとも1つのポリマーブロックが疎水性であり、共通の架橋可能な基によって結合し、熱ゲル化薬物送達装置として開示されている4つの共有結合ポリマーブロックを含む。Pathak et al.に付与された米国特許第6,410,645号 (参照により本明細書に組み入れられる)。これらのゲルは温度感受性および親油性を有すると考察され、医療用の薬物および組織コーティングを投与するために使用することができる。疎水性ポリマーブロックを有する他のTetronic(登録商標)ポリオールは、薬物送達装置として公知である。Haslam et al.に付与された米国特許第4,474,751号; 同第4,474,752号; 同第4,474,753号; および同第4,478,822号 (全て参照により本明細書に組み入れられる)。
【0226】
1つの態様では、ポロクサマー407(すなわち、Pluronics(登録商標)F-127)は、主成分であり、特定の物理的および化学的性質を有する様々な処方で製造することができる。熱可逆性ゲルの最も有意な物理的特徴は、体温に加温された際に液体からゲルに変化する能力である。この特徴により、体内または体表での液体状態のポリマー製品の固体状態(すなわち、ゲル)への操作が可能である。液体状態の加熱ゲルを投与する1つの特定の利点には、適所でのゲル化前の身体/組織の輪郭への成形が含まれる。したがって、加熱ゲルは、組織表面との接触を保持し、隣接組織への薬物送達用担体としての作用に加えて、物理的防御障壁として作用する。典型的には、加熱ゲルは、非毒性、非刺激性、および薬理学的に不活性であることが公知の材料から構成される。さらに、加熱ゲルは、体内で溶解され、通常の排泄作用によって除去される。
【0227】
本発明は、微粒子に付着したシロリムスおよびシロリムスのアナログを含む生体適合性加熱ゲル媒質を意図する。1つの態様では、微粒子は、シロリムスおよびシロリムスのアナログの制御放出することができる。1つの態様では、加熱ゲル媒質は、ポリマーゲル(Flogel(登録商標)(Alliance Pharmaceutical Corp)などであるが、それに限定されるわけではない)を含む。好ましくは、FloGel(登録商標)などのポリマーゲルを、体温に加温された場合に固化してミクロスフェアを適所に保持する物理的障壁が作製される一方で、加熱ゲルおよびミクロスフェア生体腐食し、細胞増殖抑制性化合物が放出されて過剰な瘢痕組織が防止される、冷却液体として組織および器官に適用する。
【0228】
キセロゲル
本発明の1つの局面は、シロリムス、タクロリムス、およびシロリムスのアナログを含む媒質の長期制御放出のための装置および方法を意図する。1つの態様では、媒質は、市販品であるXerocell(商標)(Gentis, Berwyn, PA)によって例示されるキセロゲルを含む。キセロゲルは、ガラス状マトリクス中に満たされた複数の微視的気泡を含む。1つの態様では、本発明は、キセロゲル、ならびにシロリムス、タクロリムス、および/またはシロリムスのアナログを含む制御放出媒質を意図する。好ましくは、キセロゲルは、約数時間から1年を超える期間にわたり制御放出プロフィールを完全に制御する。
【0229】
本発明の1つの局面は、シロリムス、タクロリムス、およびシロリムスのアナログを含むキセロゲルを手術部位または手術部位付近に配置する工程を含む方法を意図する。1つの態様では、キセロゲル上および周囲の手術部位が治癒する。1つの態様では、キセロゲルは、手術瘢痕および/または癒着組織を減少させるように、シロリムス、タクロリムス、および/またはシロリムスのアナログを制御放出させる。
【0230】
手術用包帯/テープ
本発明の1つの局面は、媒質ならびにシロリムスおよびシロリムスのアナログを含む手術用包帯および手術用テープを意図する。このような包帯およびテープの例には、材料のシート、手術用綿棒、ガーゼパッド、閉鎖ストリップ、圧迫包帯、手術用テープなどが含まれるが、それに限定されるわけではない。例えば、本発明の1つの態様は、不織繊維層、弾性層、メルトブローン接着性繊維層、および第2の不織繊維層を含み、複合材が第2の不織層に含浸させたシロリムスおよびシロリムスのアナログを含む、積層複合材を意図する。Menzies et al.,Laminated Composites, 米国特許第6,503,855号 (参照により本明細書に組み入れられる)。
【0231】
1つの態様では(図10)、本発明は、材料のシートまたはメッシュに含浸させる(すなわち、付着させる)か、コーティングするか、配置したシロリムスおよびシロリムスのアナログを含む生体適合性の材料のシートまたはメッシュを意図する。このような材料のシートを、術後癒着および/または瘢痕組織の形成を防止するために、内部身体組織の間に配置することができる。1つの態様では、材料のシートは、生分解性である(Surgicel(商標), Johnson & Johnson)。別の態様では、材料のシートは、手術用縫合糸を含む。別の態様では、材料のシートは、手術用ステープルを含む。別の態様では、材料のシートは、眼科用バックル(eye buckle)を含む。別の態様では、材料のシートは、円筒型チューブを含む。
【0232】
1つの態様では、本発明は、シロリムスおよびシロリムスのアナログの媒質を含む湿性包帯製品を意図する。好ましくは、これらの包帯は、ポリウレタンコアを有する軟性フィルムからなる。本発明の機構を理解するために必要なことではないが、湿性包帯製品により、硬質痂皮の形成が減少し、瘢痕形成の可能性が減少すると考えられる。例えば、これらの包帯には、Elastoplast(登録商標)(Active Gel Strips; Beiersdor, Inc.)として現在市販されているものが含まれ得るが、それに限定されるわけではない。
【0233】
1つの態様では、本発明は、シリコーンとポリテトラフルオロエチレン(PTFE)との固有のブレンドおよびシロリムスおよびシロリムスのアナログの媒質から形成された半透膜を意図する。本発明の機構を理解するために必要なことではないが、PTFEが内部強化機構を提供し、それにより物理的強度が有意に増強された軟質シリコーンの薄板が作製されると考えられる。例えば、これらの包帯には、Silon-IPN(商標)(Bio Med Sciences)として現在市販されているものが含まれ得るが、それに限定されるわけではない。
【0234】
1つの態様では、本発明は、半透性薄膜の裏打ち上のポリウレタン膜-マトリクス、ならびにシロリムスおよびシロリムスのアナログを含む包帯を意図する。好ましくは、親水性膜は、クレンザー、補湿剤、および超吸収性デンプンコポリマーを含む。本発明の機構を理解するために必要なことではないが、手による創傷洗浄が必要なく、包帯交換時の洗浄により、患者の不快感ならびに包帯交換のための時間および費用が消失および減少すると考えられる。例えば、これらの包帯には、PolyMem(登録商標)(Ferris Mfg., Inc.)として現在市販されているものが含まれ得るが、それに限定されるわけではない。
【0235】
1つの態様では、本発明は、シロリムスおよびシロリムスのアナログを含む閉鎖ストリップを意図する。好ましくは、皮膚閉鎖は、腹内手術後の皮膚縫合方法で有用である。または、これらの閉鎖物を、シロリムスおよびシロリムスのアナログを有する任意の伝統的な縫合糸と共に使用することができる。本発明の機構を理解するために必要なことではないが、本発明が意図する皮膚閉鎖の利点は、i)感染率および総合罹患率が低いこと、ii)費用が安いこと、iii)従来の方法と比較した場合に手術時間が削減されること、ならびにiv)異物の肉芽腫、絞扼、組織の壊死、および蜂巣炎の回避であると考えられる。Pepicello et al., Five Year Experience With Tape Closure Of Abdominal Wounds. Surg Gynecol Obstet 169: 310-4 (1989)。
【0236】
マーカー剤
本発明は、本明細書で考察の任意の媒質へのマーカー剤としての任意の色素の組み込みを意図する。1つの態様では、所望の着色媒質は、「Coomassie(商標)ブリリアントブルーR-250」(「Serva Blueとして販売」;Serva)としても公知の青色色素「ブリリアントブルーR」などの着色色素または染色液を含むマーカーを含む。得られた媒質は、生体組織と良好な対照性を示し、手術時に媒質の発見が容易になる青色を有する。別の態様では、本発明は、互いに噴霧した場合に固化して約1週間にわたり段階的に分解する鮮麗に着色された材料を形成する、シロリムスおよびシロリムスのアナログを含む2つの液体から作製されたゲル、フィルム、またはスプレーを意図する。
【0237】
本発明の1つの態様は、医療関係者が瘢痕組織および/または癒着が形成され得る意図する領域を適切に被覆することができるように着色マーカー剤を有する生体適合性および生分解性ミクロスフェアまたはヒドロゲルを提供する方法を意図する。
【0238】
本発明はまた、本明細書で考察の任意の媒質への放射線不透過性マーカーの組み込みを意図する。1つの態様では、放射線不透過性マーカーは、バリウム化合物を含む。1つの態様では、放射線不透過性マーカーを、X線蛍光透視鏡法を使用して視覚化する。
【0239】
本明細書に記載の任意の適用のために、瘢痕組織の作製をさらに最小にするために1つまたは複数の記載の細胞増殖抑制性抗増殖薬の全身適用を結合的に使用することができる。全身適用は、経口、注射、または化合物を人体の全身に配置するための任意の他の周知の手段により得る。
【0240】
シロリムスおよびシロリムスのアナログなどの一定の化合物(mTORタンパク質への結合および/またはG0期およびG1期の細胞周期の妨害が可能な化合物)の使用のみを記載しているが、患者の結果を改善するための補足的薬学的化合物を提供することができると理解すべきである。詳細には、感染の防止および/または痛みの減少のために抗生物質および/または鎮痛剤および/または抗炎症薬を添加することができる。少なくとも1つの補足的薬学的化合物と組み合わせてシロリムスおよびシロリムスのアナログを使用した任意の患者は、シロリムスおよびシロリムスのアナログも従来の投与物として投与した場合に応答を改善することができることがさらに理解される。
【0241】
様々な他の修正形態、適合形態、および別のデザインは、勿論、上記教示に照らして可能である。したがって、本明細書に具体的に記載の範囲よりも添付の特許請求の範囲の範囲内で本発明を実施することができることを現時点で理解すべきである。
【0242】
実験
以下の実施例は、本発明の一定の好ましい態様および局面を例示するのに役立つが、その範囲を制限すると解釈すべきではない。
【0243】
以下の実験の開示では、以下の略語を適用する。g(グラム);mg(ミリグラム);μg(マイクログラム)、M(モル)、mM(ミリモル);μM(マイクロモル)、nm(ナノメーター)、L(リットル)、ml(ミリリットル)、μl(マイクロリットル)、℃(摂氏)、m(メートル)、sec.(秒)。
【0244】
実施例1
疎水性化合物ための制御放出ミクロスフェア
本実施例は、制御放出様式でシロリムスを投与することができるミクロスフェアの生成を記載する。
【0245】
Vook et al.に付与された米国特許第号6447796号 (参照により本明細書に組み入れられる)にしたがって作製した、無バーストであり、24時間〜100日間の持続時間でシロリムス化合物をプログラム可能に徐放する制御放出ミクロスフェア薬学的組成物を作製する。末端キャッピングおよび非キャッピングの生体適合性性分解性ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)コポリマー(PLGA)のブレンドの使用によるこれらのミクロスフェアは、疎水性薬物に特に適切である。末端キャッピングポリマーは、エステルとして官能化した末端残基を有し、非キャッピングポリマーは、カルボン酸として存在する末端残基を有する。
【0246】
本実施例が意図する50:50の比率のPLGAコポリマーの分子量は、10〜100kDaの範囲であるが、当業者は他の比率も可能であると理解するであろう。簡単に述べれば、周知の溶媒蒸発技術を使用して、100mgのPLGAあたりシロリムスが0.1〜2.0mgの範囲であるシロリムス/PLGAミクロスフェアを調製する。蒸発技術により、ミクロスフェアコア負荷が理論上の最大値の10%、20%、40%、および50%になると予想される。これらの予想されるコア負荷効率が得られるシロリムスとPLGAコポリマーとの適切な比を決定するために実証的検定を行う。
【0247】
例えば、有用なプロトコールは以下である。
1)水浴を予め15℃に加熱する。
2)1%ポリビニルアルコールの蒸留水溶液を調製する。
3)1%ポリビニルアルコールの塩化メチレン飽和蒸留水溶液を調製する。
3)適量のシロリムスおよびPLGAを3.5g塩化メチレンに同時溶解する。
4)25mlの1%ポリビニルアルコールの塩化メチレン飽和蒸留水溶液にPLGA-シロリムス溶液を添加する。
5)50ml遠心分離管中、10,000rpmで30秒間混合物をホモジナイズする。
6)500mlの1%ポリビニルアルコールの蒸留水溶液にホモジナイズした混合物を添加する。
7)650rpmにて15℃で1/2時間撹拌する。
8)650rpmにて25℃で4時間撹拌する。
9)濾過によってミクロスフェアを回収する。
10)回収したミクロスフェアを洗浄する。
10)回収したミクロスフェアを一晩真空乾燥する。
【0248】
ミクロスフェアの平均直径は、2.5〜200μm、好ましくは4.0〜75μm、より好ましくは5.0〜10.0μmの範囲と予想される。コア負荷能力に対する放出率は、以下と予想される。i)10%コア負荷を使用した10日間で40.19%のシロリムス放出、ii)20%コア負荷を使用した6日間で71.58%のシロリムス放出、iii)40%コア負荷を使用した6日間で48.09%のシロリムス放出、およびiv)50%コア負荷を使用した6日間で39.84%のシロリムス放出。
【0249】
実施例II
リポソームカプセル化
本実施例は、シロリムスをカプセル化するリポソームの調製方法を記載する。
【0250】
多重膜小胞(すなわち、リポソーム)を、卵ホスファチジルコリン(EPC)およびコレステロール(Ch)(比率4:3)から調製する。詳細には、窒素雰囲気下でのEPC(14.4mg=18.3μmol)、5.6mgコレステロール(13.7μmol)、および0.1mgシロリムスとの混合物を含むジクロロメタンまたはクロロホルムなどの非極性有機溶媒の乾燥によってプレリポソーム液膜を得る。次いで、得られた乾燥脂質フィルムを、乾燥脂質フィルムの1ml等張リン酸緩衝液(pH8.1)での水和および処方時の懸濁液の速やかな震盪によってシロリムスをカプセル化する多重膜小胞のリポソーム懸濁液に変換する。最後に、1%wt/体積のソルビトールを、ソルビトール:リン脂質=3:1のモル比で懸濁液に添加する。
【0251】
次いで、最終リポソーム懸濁液を、変性アルコールへの直接浸漬によって-25℃で凍結乾燥させる。凍結乾燥前後のシロリムスの1mlリポソーム懸濁液との会合は、約80%と予想される。
【0252】
実施例III
ヒドロゲル組成物
本実施例は、シロリムスが拡散によって放出されるようにヒドロゲルにシロリムスを組み込んだ組成物を提供する。
【0253】
このヒドロゲル組成物は、かなりの量のH2Oを保持し、最終的に水性環境下で平衡含量に達する。グリセリルモノオレエート(すなわち、GMO)を本明細書中に記載するが、当業者は、粘度/剛性に関して類似の物理的/化学的性質を有する多数のポリマー、炭水化物の組成、および脂肪酸誘導体は本発明の目的のためのヒドロゲルを生成することができることを認識する。
【0254】
第1に、GMOを、その融点を超える温度(すなわち、40℃〜50℃)で加熱する。第2に、本明細書で考察の所望の濃度の任意のシロリムス懸濁液または水溶液シロリムス誘導体を含むリン酸緩衝液、通常の生理食塩水、または斑極性溶媒などの加温した水ベースの緩衝液(すなわち、電解液)を添加して、三次元ヒドロゲル組成物を生成する。
【0255】
ゲルポリマーとしてのGMOの選択は、その両親媒性により有利である。詳細には、GMOは主に脂質ベースのヒドロゲルを提供し、それによりシロリムスなどの親油性化合物が組み込まれる。
【0256】
室温(すなわち、20℃〜25℃)で、このヒドロゲルは、約5%〜15%H2Oおよび95%〜85%GMOからなるラメラ相中に存在する。このラメラ相は、容易に操作、注入、および注射される中程度の粘度の流動物である。しかし、このヒドロゲルを生理学的温度およびpH(すなわち、約37℃およびpH7.4)に曝露した場合、約15%〜40%H2Oおよび85%〜60%GMOからなる立方相(すなわち、液晶ゲル)が得られ、平衡含水量(すなわち、過剰な水の存在下での最大含水量)は約35重量%〜40重量%と予想される。この立方相は粘度が高く、1,200,000センチポアズ(cp)を超える。
【0257】
実施例IV
熱可逆性ゲル
この例は、シロリムスを制御放出に十分な内部ミセル成分を有する熱可逆性ゲルポリマー組成物に組み込むことができることを証明する。
【0258】
このポリマー組成物は、Flogel(登録商標)(Alliance Pharmaceuticals; San Diego, CA)に代表され、式HO(C2H4O)b(C3H6O)a(C2H4O)bH(式中、水酸基数によって決定したところ、aは、(C3H6O)aで示される疎水性物質塩基の分子量が少なくとも約900、好ましくは少なくとも約2500、最も好ましくは少なくとも約4000の平均分子量であるような整数である)を有するポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーを含む。ポリオキシプロピレン疎水性物質塩基の平均分子量は約4000であり、総平均分子量は約12,000であり、コポリマーの総重量の約70重量%のオキシエチレン基を含む類似のポリマー組成物を生成することもできる。好ましいコポリマーは、中心ポリオキシプロピレンブロックに隣接した2つのポリオキシエチレンブロックを含むトリブロックコポリマーであり、商標Pluronic(登録商標)F-127(BASF Corp, Parsippany, N. J.)で販売されている。
【0259】
この実施例では、本明細書で考察のシロリムスと混合したPluronic(登録商標)F-127を水に入れ、ポリオキシプロピレン基と水との間の接触を取り除くためにPluronic(登録商標)F-127を自己アセンブリさせる(すなわち、自己アセンブリを疎水性効果によって駆動する)。シロリムス薬物分子が捕捉されたこれらの自己アセンブリ単位をミセルと呼ぶ。ミセルの構造およびその間の相互作用は、温度に強く依存する。ミセルの三次元立方相への組織化によって温度が増加するにつれて、溶液粘度が大幅に増加する(すなわち、ゲル相形成)ことに留意のこと(実施例IIIを参照のこと)。このゲル化時間を、修飾ポリマー(セルロース誘導体が含まれるが、それに限定されるわけではない)の添加によって制御することができる。
【0260】
Pluronic(登録商標)F-127-シロリムス溶液を、使用するまで+4℃で維持する。冷却用液を生体組織上または生体組織内に配置した場合、溶液がゲル化して組織表面上で固体マトリクスを形成する。その後のマトリクスの制御溶解時に、シロリムスは隣接環境にゆっくり放出されて瘢痕組織および癒着形成を防止する。熱可逆性ゲルの溶解速度を、化合物(脂肪酸石鹸誘導体が含まれるが、それに限定されるわけではない)によって制御することができる。ゲル化マトリクスは投与初日から溶解し始め、投与21日目で完全に溶解すると予想される。
【0261】
実施例V
フィブリンベースの微粒子生体接着剤
本実施例は、シロリムス化合物を含む粉末フィブリン生体接着剤の調製を記載する。詳細には、組成物は、フィブリノゲン-トロンビンマトリクスおよびシロリムスを含む微粒子を含む。このプロトコールは、使用直前に互いに混合する2つの個別の粉末(すなわち、フィブリノゲン粉末およびトロンビン粉末)の調製を必要とする。Heath et al.に付与された米国特許第6,113, 948号 (参照により本明細書に組み入れられる)。
【0262】
簡単に述べれば、第1の粉末はフィブリノゲンおよびスクロースを含み、第2の粉末はトロンビン、CaCl2、シロリムス、およびマンニトールを含む。600mgスクロースを使用して、フィブリノゲンを最初に処方する。次いで、得られた組成物を、以下の条件下で回収容器を備えたMini Spray Dryerを使用して、噴霧乾燥させる。

【0263】
10mg/100mgのフィブリノゲン理論活性について20%の最終賦形剤負荷が予想される。これは、フィブリノゲン生物活性の堅持を示す。
【0264】
組織表面15cm2あたり2mgの最終濃度を得るのに十分な濃度での1gのD-マンニトールを含む10mlの40mM CaCl2と、任意の可溶性形態のシロリムスとを溶解させることによって第2の粉末を調製する。得られた溶液を使用して、1バイアルのトロンビンを再構成する。噴霧乾燥条件は、注出口温度が62℃であり、供給量を0.75g/分に減少させること以外は、第1の粉末と本質的に同一である。
【0265】
トロンビン凝固アッセイにより、93単位/100mgの理論活性と有利に比較した91.86単位/100mgのトロンビン活性が明らかとなるはずである。これは、トロンビン生物活性の堅持を示す。
【0266】
次いで、ローラー混合物上で20分間配置することによってガラスバイアル中で第1および第2の微粒子粉末を混合して、50:50のブレンドを形成する。この活性化混合物を、生物組織に適用する。
【0267】
実施例VI
PLGAミクロスフェアを使用した二成分生体接着剤
本実施例は、タンパク性材料および架橋剤からなるシロリムス溶出生体接着剤のための組成物を記載する。
【0268】
新鮮凍結ヒト血漿の凍結乾燥によって乾燥血漿を得る。その後、45重量%の固体を含む粘性溶液を生成するためにこの固体に水を添加して、溶液Aを作製する。その後、実施例Iにしたがって調製したシロリムス溶出ミクロスフェアを溶液Aに添加する。10%(w/w)グルタルアルデヒド混合物の作製によって溶液Bを調製する。2つの長方形(すなわち、2.5cm×2.5cm)の肉のブロックの結合させるべき表面上に、溶液Bを軽く噴霧することによって、生体接着性を試験することができる。次いで、表面を、1〜2mmの厚さまで溶液Aでコーティングし、溶液Bで再度噴霧する。このプロセスにより、溶液AとBの比は重量に対して7:1となる。次いで、表面を溶液Aの適用から約10秒以内で連結し、温度および溶液Aと溶液Bとの混合の有効性に依存して治癒が完了するまで、一般的には15〜60秒間、この位置を保持する。
【0269】
溶液Aおよび溶液Bの適用の順序を逆にするか、溶液Aおよび溶液Bを同時に適用するか、溶液Aおよび溶液Bを適用直前に予め混合する場合、本質的に同一の結合強度が認められると予想される。生体接着層を含むサンプルを25mlリン酸緩衝化等張生理食塩水(PBS:pH7.4;37℃)で満たしたガラスバイアルに入れることによってシロリムス溶液を試験することができる。所定の間隔をおいて緩衝液を除去することができ、バイアルを新鮮なPBSで再度充填する。次いで、除去したPBS中のシロリムスを、1:1クロロホルムとの混合によって抽出する。クロロホルムを分離し、ポリエチレンFritおよびYLON+GL0.45μmフィルター(Millipore)で濾過する。シロリムスの放出量を、UV分光法によって280nmにて三回決定し、検量線と比較することができる。
【0270】
実施例VII
フォームクリーム
本実施例は、シロリムスを含む薬学的フォーム用組成物を記載する。
【0271】
ターボ拡散器中での以下の成分の組み合わせによってクリームを生成する。シロリムス1%、白色ワセリン12%、流動パラフィン74%、白蝋3%、水素化ヒマシ油5%、およびメチルグルコースジオレエート5%。ターボ拡散器の操作は、72℃で撹拌しながら加温することによって、ワセリン、パラフィン、グルコース、およびワックス成分を最初に共に融解させる。次いで、水素化ヒマシ油を混合物に添加し、中央の(central)ターボホモジナイザーでホモジナイズする。室温への冷却後、シロリムスを混合物に添加し、500mHgの弱い真空下にてターボ拡散器でホモジナイズする。得られたクリームを、適切なコンテナに満たす。
【0272】
実施例VIII
フォームクリームキャニスター
本実施例は、シロリムスフォームクリーム適用キャニスターのための充填要件および組成を記載する。

【0273】
加温のための外部ジャケットおよび撹拌ブレードを備えた第1のステンレススチール製のキャニスターでは、3.2kgセチルステアリルアルコール(USP)を、撹拌しながら65℃±0.5℃の温度で43.8kg鉱物油(USP)に溶解する。加熱冷却ウォータージャケット、撹拌ブレード、スクレーパー、および中央のターボホモジナイザーを備えた第2のステンレススチール製ターボ真空拡散器では、実施例VIIにしたがって作製した29kg鉱物油(USP)および4kgシロリムスフォームクリームを共に入れる。弱い真空下(500mmHg)での低速で30分間の撹拌によってこれらの二成分を混合する。その後、上記セチルステアリルアルコールの鉱物油溶液を、45℃に冷却し、混合物を室温まで冷却しながらさらに10分間弱い真空下で連続的に撹拌してシロリムス/鉱物油混合物に添加する。次いで、混合物を、充填機によって約20,000個のキャニスターに再分割する。その後、キャニスターをポリエチレン弁で密封し、高圧ガスPurifair(商標)3.2で充填し、弁が押し下げられた場合の完全な送達を容易にするためにポリエチレンチューブを弁に挿入する。
【0274】
実施例IX
エラストマー系フォーム
本実施例は、シロリムスフォーム足場組成物の生成を記載する。
【0275】
ε-カプロラクトン-グリコリド(PCL/PLGA)と35/65モル組成物とのランダムコポリマーを、開環重合反応によって合成する。Bezwada et al., Elastomeric Medical Device. 米国特許第5,468,253号 (参照により本明細書に組み入れられる)。ジエチレングリコールイニシエーターを添加し、以下の特徴を有する乾燥ポリマーを得るために1.15mmol/molの単量体濃度に調製する。i)25℃のヘキサフルオロイソプロパノール中で1.59dL/gの固有のコポリマー粘度、ii)約0.5%残存単量体を使用したプロトンNMRによる35.5/64.5のPCL/PGAモル比、iii)それぞれ約-10℃および65℃のガラス転移点および融点。
【0276】
次に、60±0.5℃への穏やかな加熱および少なくとも4時間でありかつ8時間以下の連続的撹拌によって、所望の濃度のシロリムスを含む5%(w/w)35/65PCL/PGAポリマー/1,4-ジオキサン溶液を調製する。溶液を、磁石撹拌バーを有するフラスコ中で調製する。次いで、乾燥窒素を使用した特に粗い多孔質フィルター(すなわち、フリットディスクを備えたPyrexブランドの円筒濾紙)での溶液の濾過によって透明な均一の溶液を得た。
【0277】
その後、例えば、実験室規模のlyophilizer-Freezemobile 6(Virtis(商標))を使用して溶液を凍結乾燥させた。凍結乾燥器を、乾燥窒素雰囲気下で20℃に予め設定し、約30分間で平衡化する。実際のサイクルの開始の直前に、PCL/PGAポリマー溶液を鋳型に注ぐ。ガラス鋳型が好ましいが、i)1,4-ジオキサンに対して不活性であり、ii)良好な熱伝達特性を有し、iii)フォームを容易に取出すことができる表面を有する任意の材料で作製した鋳型も好ましい。厚さ5.5mmの光学ガラスを有し、外径21cmおよび内径19.5cmの円筒形の620グラムのガラス鋳型または皿で最良の結果が予想される。次に、厚さ2mmのフォーム片を作製するために以下のステップを以下の順序にしたがって行う。
i)溶液を含むガラス皿を、20℃に維持した凍結乾燥器の棚に慎重に置く(傾けない)。サイクルを開始し、棚の温度を熱馴化のための20℃で30分間保持する。
ii)次いで、棚を-5℃に冷却することによって溶液を-5℃に冷却する。
iii)-5℃での凍結から60分後、昇華によるジオキサンの一次乾燥を開始するために真空にする;-5℃で真空下での約1時間の一次乾燥はほとんどの溶媒の除去に必要である。この乾燥段階の終了後、典型的には、真空レベルを50mTorrまたはそれ以下に到達させる。
iv)次に、吸収されたジオキサンを除去するために、2段階で50mTorrまたはそれ以下の真空下での二次乾燥を行う。第1段階では、棚の温度を約1時間、+5℃上昇させる。第2段階では、約1時間温度を20℃上昇させる。
v)第2段階の終了後、凍結乾燥器を室温にし、窒素を使用して真空状態を解除する。次いで、開扉前に、チャンバーを乾燥窒素で約30分間パージする。
【0278】
当業者に公知のように、本明細書に記載の条件は典型的であり、操作範囲は以下のいくつかの要因に依存する。例えば、溶液の濃度;ポリマーの分子量および組成;溶液の体積;鋳型のパラメーター;冷却速度および加熱速度などのような機械の可変要因。上記プロセスは、無作為な微細構造を有するエラストマー系フォームが得られると予想される。
【0279】
実施例X
カテーテルによるスプレー適用
本実施例は、付随のカテーテルを使用した内視鏡手順時のスプレーとして本明細書に記載のシロリムスを含む適切な賦形剤を投与するための方法および装置を提供する。
【0280】
「側孔カテーテル」は、カテーテルの閉じた遠位末端付近い小さな丸形の側孔を有する(例えば、図11)。このカテーテルは、穴および薄壁を有し、2〜20フレンチ、好ましくは5〜10フレンチの均一な直径を有する軟質の細長い生体適合性ポリマーの管類で構築する。カテーテル上での放射線不透過性マーキングにより、蛍光透視によってカテーテルの位置の追跡を容易になる。カテーテルは、シロリムスを含む媒質を含む。実際には、担体を、承認されている標準的な手順にしたがって、カテーテルを内視鏡システムの管腔に挿入し、カテーテルの遠位末端が適用部位内または適用部位付近に配置されるように慎重に移動する。次いで、シロリムスの薬学的溶液を、弱い圧力下でメス型ルアーロックに取りつけたシリンジ様リザーバから注射し、カテーテルの遠位末端に向かって押し進め、側孔から適用部位に出現させる。または、スプレー缶または他の加圧装置をルアーロックに取りつけて、スプレーを側孔を介して投与することができる。
【0281】
または、「スリットカテーテル」(図12)はまた、閉じた遠位末端97付近に等間隔でレーザーカットした非常に薄いスリット95を有する、穴、薄壁、生体適合性ポリマー材料92を含む軟質カテーテル90から構成される。これらのスリットは、カテーテル内の流体圧力がスリットを同時膨張して一過性に開ける限界点(critical point)に達しない限り注入剤を逃げさせないために十分に堅い。このカテーテルは、装置の位置づけを補助するための外部放射線不透過性マーカーも含む。
【0282】
これらのスリットカテーテルを、カテーテルの近位末端で薬物注入の少量の統制されたパルスを送達することができる自動化されたピストン駆動パルス注入装置と組み合わせても使用される。パルスを送達する場合、カテーテル内の圧力が瞬時に上昇してシロリムスを投与するためにスリットが瞬時に開く。前者の形態では、スプレーがカテーテルの全長に沿って全スリットを介して均一に送達されるのに対し、「側孔」カテーテル由来のスプレーは主にほとんど近位の側孔から投与されるので、スリットカテーテルは側孔カテーテルより好ましい。
【0283】
実施例XI
単回用量ディスペンサーによるスプレー適用
本実施例は、単回用量のシロリムス、タクロリムス、およびシロリムスのアナログを適用することができる単回用量スプレーディスペンサーを記載する。下記の基本概念を修正して、単回用量を内部または外部に投与するように適合することができることが当業者に理解される。例えば、下記のディスペンサーを、体内の管腔内部位への投与のためのカテーテルを使用した操作のために再構成することができる。手術部位のサイズに依存して、医療関係者は、任意の1つの特定の部位に1つまたは複数の缶を分注することができる。
【0284】
ディスペンサー装置
約50cm2の創傷を約200μg/cm2の速度で被覆することを意図する単回用量のシロリムスの噴霧のためのディスペンサー装置は、シロリムス、タクロリムス、またはシロリムスのアナログを含む所定の用量の液体媒質を含むシリンダーを有する。ピストンを密封様式でシリンダー内のシリンダーを分離する保存位置から作動位置にスライドさせる。注出口通路は、シリンダーをピストンが保存位置から作動位置にスライドした場合に全単回用量の液体を装置から放出させる注出口開口部に連結する。Martin et al., Device For Dispensing A Single Dose Of Fluid. 米国特許第6,345, 737号 (参照により本明細書に組み入れられる)。
【0285】
液体媒質
シロリムスを、1mg/mlの濃度でオリーブ油に溶解する。または、公知の方法にしたがって、シロリムスの可溶性モノアシルおよびジアシル誘導体を調製する。Rakhit, 米国特許第4,316,885号 (参照により本明細書に組み入れられる)。これらの誘導体を、他の溶質または懸濁剤(例えば、溶液を等張にするのに十分な生理食塩水またはグルコース、胆汁塩、アカシア、ゼラチン、モノオレエート、およびポリソルベート80(ソルビトールのオレイン酸エステルおよびエチレンオキシドと共重合したその無水物)など)を含む滅菌溶液または懸濁液の形態で使用する。さらに、シロリムスの水溶性プロドラッグ(グリシネート、プロピロネート、およびピロリジノブチレートが含まれるが、それに限定されるわけではない)を使用することができる。Stella et al., 米国特許第4,650,803号(参照により本明細書に組み入れられる)。
【0286】
制御放出
または、上記の液体媒質を、実施例Iにしたがって調製したミクロスフェアまたは実施例IIIにしたがって調製したリポソームを使用して調製する。
【0287】
実施例XII
エアゾール化
本実施例は、関心対象の領域にシロリムスエアゾールスプレーを提供する1つの方法を記載する。
【0288】
ネブライザー
ネブライザーは、本明細書で考察の適用可能な任意の実施例にしたがったシロリムスの溶液または懸濁液を、狭いベンチュリ開口部を介した、典型的には空気または酸素のいずれかの加圧ガスの加速によって治療エアゾールミストに変形する。特に、制御放出能力を示すシロリムス媒質の態様が好ましい。シロリムスは、処方物の5%w/wまでの量、好ましくは1%w/w未満の量で液体担体中に存在する。担体は、典型的には、例えば、塩化ナトリウムの添加によって体液と等張にすることが好ましい水または希釈アルコール溶液である。溶解性増強剤が当技術分野において周知であり、必要な濃度に依存して必要と見なされる量を添加することができる。選択的な添加物には、処方物が滅菌で調製されていない場合、防腐剤(例えば、ヒドロキシ安息香酸メチル、抗酸化剤、揮発油、緩衝剤、および界面活性剤)が含まれる。
【0289】
本発明は、エアゾールを発生する多数の装置の使用を意図し、以下の例示的装置は本発明を制限することを意図しない。ネブライザー装置は、空気が空気チャンバーに侵入するように圧縮空気または他の高圧ガスの外部供給源に直接接続した空気バネ弁結合部を作動させるレバーを有する。空気チャネルは、空気チャンバーからエアゾール化装置の遠位末端に延びている。空気チャネルは、開口部エアゾール化チップを含むロッド延長物で終結している。
【0290】
流動物チャンバーチップはまた、空気チャネルと連絡する開口部を含む。シロリムス流動物チャンバーチップの末端が空気チャネル開口部に挿入された場合、空気は空気チャンバーを通過しない。しかし、流動物チャンバーチップの末端が空気チャネル開口部から引き出された場合、空気と流動物が混合してエアゾールになり、分注チップを介して装置から出射する。
【0291】
液体媒質
シロリムスを、少なくとも10mg/mlの濃度でオリーブ油に溶解する。または、公知の方法にしたがって、シロリムスの可溶性モノアシルおよびジアシル誘導体を調製する。Rakhit, 米国特許第4,316,885号 (参照により本明細書に組み入れられる)。これらの誘導体を、他の溶質または懸濁剤(例えば、溶液を等張にするのに十分な生理食塩水またはグルコース、胆汁塩、アカシア、ゼラチン、モノオレエート、およびポリソルベート80(ソルビトールのオレイン酸エステルおよびエチレンオキシドと共重合したその無水物)など)を含む滅菌溶液または懸濁液の形態で使用する。さらに、シロリムスの水溶性プロドラッグ(グリシネート、プロピロネート、およびピロリジノブチレートが含まれるが、それに限定されるわけではない)を使用することができる。Stella et al., 米国特許第4,650,803号(参照により本明細書に組み入れられる)。
【0292】
実施例XIII
多管腔カテーテル
本態様は、いくつかのシロリムス溶液を同時投与することができるか、シロリムス溶液を非シロリムス溶液と単一の組成物に混合することができるカテーテルを記載する。シロリムス含有生体接着剤を噴霧するための2つの個別の成分の混合が特に意図される。
【0293】
医療組織生体接着剤などの二成分製品を適用するための装置は、管状本体の前部に接続した平頭片を有する。他管腔チューブは、互いに管状本体と連絡すると予想される。頭部の背面は、2つのカニューレハブの一部も有する。多管腔チューブは、管腔チューブの内端から排出末端まで平行に延びた3つの管腔から構成される。2つの管腔は、2つの各シリンジに接続し(それぞれ)、その各外筒はシロリムス含有組成物を含み得る。シリンジのプランジャロッドを、両外筒中の組成物を均等に混合して投与するために同時操作されるように、架橋部材によって連結する。
【0294】
頭部に部分的に含まれる2つのカニューレハブを、好ましくは金属から作製された硬いカニューレに接続する。2つの金属カニューレは、V形に延長するように頭部に配向している。第3の管腔は、接続管類の末端であり、軟質空気チューブに接続されている。空気チューブはまた、頭部の後端に向かって2つの金属カニューレによって形成されたV形のチップから延長している。
【0295】
空気チューブは、接続管類を介して多管腔チューブの第3の管腔と直接連絡している。2つのシリンジ外筒からの組成物の正確な流れおよび空気の流れは、多管腔チューブの排出末端から薄い噴流として互いに接近してカテーテルから出現すると考えられる。治療部位に十分量の分散シロリムス生体接着剤が供給されるように、2つのシリンジ外筒由来の組成物が気流によって最適な混合物で噴霧される。2つのシリンジ外筒由来の組成物および異なる管腔中の空気の輸送が異なるために、材料を含む化合物は、多管腔チューブの放出末端を通過した場合のみ混合する。したがって、2つのシリンジ外筒由来の材料を含む化合物部分が正確に投与され、シロリムス生体接着剤の組成は常に正確である。
【0296】
実施例XIV
生体接着剤アプリケーター装置
本実施例は、生体接着剤アプリケーター装置の1つの態様を記載する(図13を参照のこと)。
【0297】
アプリケーターを、完全に縮めた位置から完全に圧縮した位置の間の各シリンジ本体の穴の中を変更可能にスライドするプランジャ101および102を有するシリンジ105および106の対として構築する。シリンジ105および106はそれぞれ混合した場合に接着性化合物となる異なる材料(すなわち、例えば、トロンビンおよびフィブリン)を含む。シリンジは1つの端で共通の混合領域120で1つになり、混合領域120は、シリンジ105および106の各注出口と接続するように適合する。プランジャ101および102は、各シリンジ105および106から各媒質を押し出し、その際に混合して単一の流れとしてノズル122から出射する。混合接着剤媒質がアプリケーターから出射した後、混合物は標的組織部位上で生体接着剤に硬化する。
【図面の簡単な説明】
【0298】
【図1】シロリムス分子をカプセル化したリポソームの1つの態様を示す図である。
【図2】細胞増殖抑制性抗増殖性化合物を充填したミクロスフェアの1つの態様を示す図である。
【図3】細胞増殖抑制性抗増殖性化合物を表面に接着したミクロスフェアの1つの態様を示す図である。
【図4】シロリムスまたはシロリムスのアナログの制御放出を含むミクロスフェアの1つの態様を示す図である。
【図5】シロリムス媒質を投与するためのスプレー缶の1つの態様を示す図である。
【図6】シリンジに取り付けた噴霧器チップの1つの態様を示す図である。
【図7】媒質を送達させる内視鏡カテーテルを含む内視鏡シャフトの1つの態様の断面図である。
【図8】媒質投与のための内視鏡カテーテルの1つの態様を示す図である。注:典型的なサイズは、長さ=200cm;直径=2.5mm、および領域3の長さ(w/穴)=4cm。注:シリンジまたは他のプランジャ装置もしくはスプレー缶上に容易に取りつけられる雌ルアーロック81。
【図9】フォームキャニスタの1つの態様を示す図である。
【図10】手術用包帯の1つの態様を示す図である。
【図11】側孔カテーテルの2つの例示的態様を示す図である。
【図12】スリットポートスプレーカテーテルチップの1つの態様の拡大図である。
【図13】生体接着剤塗布器の1つの態様を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体に付着した薬物であって、薬物が、シロリムス、タクロリムス、エベロリムス、ならびにそれらのアナログおよび誘導体からなる群より選択され、薬物が付着した担体が、微粒子、ゲル、キセロゲル、生体接着剤、フォーム、および液体からなる群より選択される、薬物。
【請求項2】
担体が生体適合性材料を含む、担体に付着した請求項1記載の薬物。
【請求項3】
担体が生分解性材料を含む、担体に付着した請求項1記載の薬物。
【請求項4】
微粒子が、ミクロスフェア、マイクロカプセル化粒子、マイクロカプセル、およびリポソームからなる群より選択される、担体に付着した請求項1記載の薬物。
【請求項5】
ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、脂肪族ポリエステル、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ヒアルロン酸、修飾多糖、ポリ(エチレンオキシド)、レシチン、およびリン脂質からなる群より選択されるポリマーを含む、請求項4記載の微粒子。
【請求項6】
担体が、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、脂肪族ポリエステル、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ヒアルロン酸、修飾多糖、ポリ(エチレンオキシド)、レシチン、リン脂質、フィブリンシーラント(fibrin sealant)、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドとのブロック重合体、ポリエチレングリコール、メタクリレート、およびシアノアクリレートからなる群より選択される材料を含む、担体に付着した請求項1記載の薬物。
【請求項7】
担体が制御放出様式で薬物を放出する、担体に付着した請求項1記載の薬物。
【請求項8】
担体が着色されている、担体に付着した請求項1記載の薬物。
【請求項9】
シロリムス、タクロリムス、シロリムスのアナログ、およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される化合物を含み、かつ、微粒子、ゲル、キセロゲル、生体接着剤、およびフォームからなる群より選択される、媒質。
【請求項10】
生体適合性材料を含む、請求項9記載の媒質。
【請求項11】
生分解性材料を含む、請求項9記載の媒質。
【請求項12】
微粒子が、ミクロスフェア、マイクロカプセル化粒子、マイクロカプセル、およびリポソームからなる群より選択される、請求項9記載の媒質。
【請求項13】
着色されている、請求項9記載の媒質。
【請求項14】
シロリムスのアナログが、エベロリムス、CCI-779、ABT-578、7-エピ-ラパマイシン、7-チオメチル-ラパマイシン、7-エピ-トリメトキシフェニル-ラパマイシン、7-エピ-チオメチル-ラパマイシン、7-デメトキシ-ラパマイシン、32-デメトキシ-ラパマイシン、および2-デスメチル-ラパマイシンからなる群より選択される、請求項9記載の媒質。
【請求項15】
抗炎症薬、コルチコステロイド、抗血栓薬、抗生物質、抗ウイルス薬、鎮静薬、および麻酔薬からなる群より選択される第2の化合物をさらに含む、請求項9記載の媒質。
【請求項16】
請求項9記載の媒質を含むリザーバを含み、かつ、請求項9記載の媒質を手術部位に送達することができる、装置。
【請求項17】
送達がスプレーの形態である、請求項16記載の装置。
【請求項18】
送達がエアゾールの形態である、請求項16記載の装置。
【請求項19】
カテーテルを含む、請求項16記載の装置。
【請求項20】
内視鏡手術のために構成されている、請求項16記載の装置。
【請求項21】
蛍光透視鏡手術のために構成されている、請求項16記載の装置。
【請求項22】
装置の少なくとも一部が請求項9記載の媒質でコーティングされている、医療装置。
【請求項23】
a)i)シロリムス、タクロリムス、シロリムスのアナログ、およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される化合物を含み、かつ、微粒子、ゲル、キセロゲル、生体接着剤、およびフォームからなる群より選択される、媒質と、
ii)患者の手術部位
とを提供する工程;ならびに
b)該手術部位を該媒質と接触させる工程
を含む、方法。
【請求項24】
手術部位が、閉じた手術部位を含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
工程(a)の媒質を装置中に格納する、請求項23記載の方法。
【請求項26】
スプレー形態の工程(b)の媒質を手術部位と接触させる、請求項25記載の方法。
【請求項27】
スプレーがエアゾール形態である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
装置がカテーテルを含む、請求項25記載の方法。
【請求項29】
装置が内視鏡手術のために構成される、請求項25記載の方法。
【請求項30】
カテーテルにより、閉じた手術部位に媒質を送達する、請求項29記載の方法。
【請求項31】
装置が蛍光透視鏡手術のために構成される、請求項25記載の方法。
【請求項32】
媒質が生体適合性材料を含む、請求項23記載の方法。
【請求項33】
媒質が生分解性材料を含む、請求項23記載の方法。
【請求項34】
微粒子が、ミクロスフェア、マイクロカプセル化粒子、マイクロカプセル、およびリポソームからなる群より選択され、かつ、該微粒子がミクロスフェアである、請求項23記載の方法。
【請求項35】
媒質が着色されている、請求項23記載の方法。
【請求項36】
媒質が、抗炎症薬、コルチコステロイド、抗血栓薬、抗生物質、抗ウイルス薬、鎮静薬、および麻酔薬からなる群より選択される第2の化合物をさらに含む、請求項23記載の方法。
【請求項37】
瘢痕組織形成および癒着を減少させるための手術手順の部位またはその近傍へ配置するための生体適合性材料を含み、かつ、直径が0.1ミクロン〜100ミクロンの間であり、長期間放出に適合化されたミクロスフェアに付着した細胞増殖抑制性抗増殖薬を含む、ミクロスフェアの集団。
【請求項38】
シロリムス、タクロリムス、およびシロリムスのアナログからなる群より選択される付着化合物を有する微粒子を含むゲルまたは液体を手術部位に送達する方法。
【請求項39】
シロリムス、タクロリムス、シロリムスのアナログ、およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される少なくとも1つの化合物を含む、ゲルまたは液体であって、該化合物が微粒子に付着している、ゲルまたは液体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2007−503462(P2007−503462A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532817(P2006−532817)
【出願日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/014118
【国際公開番号】WO2004/110347
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYREX
【出願人】(505412362)アフメディカ インコーポレイティッド (1)
【Fターム(参考)】