説明

瘻孔カテーテルと流体供給用チューブとの接続構造

【課題】 瘻孔カテーテルを体に押し付けることがなく、流体の流れがスムーズになり、かつ漏れが生じ難い瘻孔カテーテルと流体供給用チューブとの接続構造を提供すること。
【解決手段】 外部保持部11の外周面に嵌合溝部11cを形成した。そして、接続部材30を、嵌合部31とガイド部32と嵌合部31とガイド部32とを連結する連結部本体33とで構成して、ガイド部32を外部保持部11の上部開口14a上方に位置させた状態で、嵌合部31を嵌合溝部11cに嵌合させた。また、チューブ本体21の先端側に筒状の係合部22を設け、チューブ本体21をガイド部32の内部に開放側から入れるようにして係合部22を外部保持部11とガイド部32との間に押し込むことにより、チューブ本体21の先端部21aを外部保持部11の上部開口14aに連通させた状態で係合部22を外部保持部11とガイド部32との間に係合できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の消化管内に流動食や栄養剤等の流体物を供給するために用いられる瘻孔カテーテルと流体供給用チューブとの接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高齢や疾病により自力で口から食べ物を摂取する機能が低下した人(以下、患者と記す。)に対して、瘻孔カテーテルを用いて流動食や栄養剤等の流体物を供給することが行われている。この瘻孔カテーテルは、一般に、患者の腹部に形成された摂取用の瘻孔に挿通されるチューブ状部と、チューブ状部の基端部に取り付けられて腹部の皮膚面側に設置される外部保持部と、チューブ状部の先端部に取り付けられて胃等の消化管の内部に設置される内部保持部とで構成されている。このような瘻孔カテーテルは、患者の腹部に瘻孔を形成して取り付けられ、消化管壁と腹壁とを固定したのちに、流体供給用チューブが接続され、この流体供給用チューブを介して消化管に流体物を供給する。
【0003】
このような瘻孔カテーテルに流体供給用チューブを接続する際に、流体供給用チューブを瘻孔カテーテルに強く押し付けると、瘻孔カテーテルの外部保持部が、瘻孔の体内側に埋没する恐れが生じる。外部保持部が瘻孔の体内側に埋没することを防止するためには、流体供給用チューブを瘻孔カテーテルに強く押し付けることなく、流体供給用チューブを瘻孔カテーテルに接続する必要が生じる。このため、瘻孔カテーテルの中には、瘻孔カテーテルの外部保持部に対して、流体供給用チューブを瘻孔カテーテルの長手方向に直交する方向から係合させるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この胃瘻造設カテーテル(瘻孔カテーテル)では、アダプタ(外部保持部)の上部にフランジが形成されており、栄養補給チューブ集成体(流体供給用チューブ)の先端には、胃瘻造設カテーテルのフランジに係合可能な脚部が設けられている。この栄養補給チューブ集成体は、胃瘻造設カテーテルの長手方向に対して直交した状態で接続されるように構成されており、先端部の開口は、栄養補給チューブ集成体の栄養補給チューブに対して直交して形成されている。そして、先端部の開口からフランジの厚み分の隙間を設けて脚部が設けられている。なお、脚部の基端部は、栄養補給チューブ集成体の先端部に連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2008−504896号公報
【発明の概要】
【0006】
しかしながら、前述した従来の瘻孔カテーテルでは、瘻孔カテーテルの流体流路と、瘻孔カテーテルに接続される流体供給用チューブの流体流路とが直交するため、流体供給用チューブから瘻孔カテーテルへの流体の流れがスムーズでなくなる。また、瘻孔カテーテルと流体供給用チューブとの接続部で流体が漏れやすくなるという問題もある。
【0007】
本発明は、前述した問題に対処するためになされたもので、その目的は、瘻孔カテーテルを体に押し付けることがなく、流体の流れがスムーズになり、かつ漏れが生じ難い瘻孔カテーテルと流体供給用チューブとの接続構造を提供することである。
【0008】
前述した目的を達成するため、本発明に係る瘻孔カテーテルと流体供給用チューブとの接続構造の構成上の特徴は、患者の腹壁と消化管壁とに形成された瘻孔に取り付けられる瘻孔カテーテルと、瘻孔カテーテルに接続され瘻孔カテーテルが備える流体流路を介して患者の消化管に流体物を供給する流体供給用チューブとの接続構造であって、瘻孔カテーテルにおける瘻孔の腹壁の表面側に設置される部分を流体流路の開口を備えた外部保持部で構成するとともに、平面視が略C形または略U形の内周縁部を備えたガイド部を外部保持部の開口側から間隔を保たせた状態で連結部で外部保持部に連結し、流体供給用チューブのチューブ本体の先端近傍に、チューブ本体をガイド部の開放側から内部に入れるようにして外部保持部とガイド部との間に進入することにより、チューブ本体の先端部を外部保持部の開口に連通させた状態で外部保持部とガイド部との間に係合可能な筒状の係合部をチューブ本体と同軸的に設けたことにある。
【0009】
本発明に係る瘻孔カテーテルと流体供給用チューブとの接続構造では、瘻孔カテーテルの外部保持部から連結部を延ばしてその連結部に平面視が略C形または略U形のガイド部を連結している。この場合、ガイド部の略C形または略U形の内部空間が外部保持部の開口と間隔を保って流体流路の延長線上に位置するようにする。そして、流体供給用チューブのチューブ本体の先端側に、筒状の係合部をチューブ本体と同軸的に設けて、この係合部を、チューブ本体をガイド部の開放側から内部に入れるようにして、すなわち、瘻孔カテーテルの流体流路に略直交する方向から外部保持部とガイド部との間に進入させて係合させることにより、チューブ本体の先端部が外部保持部の開口に連通するように構成している。
【0010】
したがって、瘻孔カテーテルへの流体供給用チューブの接続が、係合部を、外部保持部とガイド部との間に横からスライドさせるように移動させることにより行えるようになり、流体供給用チューブを瘻孔カテーテルに押し付ける必要がなくなる。これによって、瘻孔カテーテルに流体供給用チューブを接続する際に、外部保持部が瘻孔の体内側に押し付けられて埋没することがなくなる。また、係合部がチューブ本体に同軸的に設けられているため、瘻孔カテーテルに流体供給用チューブを接続したときに、瘻孔カテーテルの流体流路と流体供給用チューブの流体流路とが略直線状に連なる。このため、流体が流体供給用チューブから瘻孔カテーテルに流れにくくなったり、瘻孔カテーテルと流体供給用チューブとの接続部で流体が漏れやすくなったりするといった問題は生じなくなる。なお、ガイド部の内周縁部の形状が略C形または略U形になっていればよく、外周縁部の形状は略C形または略U形でなくともよい。
【0011】
また、本発明に係る瘻孔カテーテルと流体供給用チューブとの接続構造の他の構成上の特徴は、ガイド部を弾性体で構成し、外部保持部における開口の周縁部に盛り上がり部を形成するとともに、係合部におけるガイド部と当接する部分とチューブ本体の先端部との間の長さを、盛り上がり部とガイド部との間の長さよりも長くし、係合部とチューブ本体の先端近傍部分から先端部にかけての係合部から突出する部分とを盛り上がり部とガイド部との間に押し込んでチューブ本体の先端部を外部保持部の開口に連通させたときに、係合部が盛り上がり部とガイド部との間に係合できるようにしたことにある。
【0012】
これによると、係合部を外部保持部とガイド部との間に係合させる操作が、係合部とチューブ本体の先端近傍部分から先端部にかけての係合部から突出する部分とを盛り上がり部とガイド部との間に押し込むだけで済むため容易になる。この場合、ガイド部は、盛り上がり部との間隔を広げるように付勢されて撓んだのちに元の状態に復元する。さらに、本発明によると、係合部やガイド部の構造を単純にすることができる。
【0013】
また、本発明に係る瘻孔カテーテルと流体供給用チューブとの接続構造のさらに他の構成上の特徴は、外部保持部における開口の周縁部に盛り上がり部を形成するとともに、係合部におけるガイド部と当接する部分とチューブ本体の先端部との間の長さを、盛り上がり部とガイド部との間の長さよりも長くし、盛り上がり部に押圧により変形して盛り上がり部とガイド部との間の長さを長くする変形機構を設けるか、またはチューブ本体の先端部に押圧により変位して係合部におけるガイド部と当接する部分とチューブ本体の先端部との間の長さを短くする変位機構を設けたことにある。
【0014】
この場合の変形機構は、盛り上がり部を押圧により窪んだり収縮したりする軟質の材料で構成したり、押圧操作と押圧を解除する操作により所定部分が進退する機構で構成したりすることができる。また、変位機構は、チューブ本体の先端部を押圧により収縮する軟質の材料で構成したり、押圧操作と押圧を解除する操作により係合部から進退する機構で構成したりすることができる。すなわち、この場合の変形は、窪んだり収縮したりする等のことであり、変位は、窪んだり収縮したりすることに加えて位置を変更すること等である。これによると、係合部を外部保持部とガイド部との間に係合させる操作が容易になる。
【0015】
また、本発明に係る瘻孔カテーテルと流体供給用チューブとの接続構造のさらに他の構成上の特徴は、係合部の内部に、係合部に対してチューブ本体の先端部を外部側に付勢するばね機構を設けることにより変位機構を構成し、チューブ本体の先端部を押圧することにより、係合部の内部に後退させることができるようにしたことにある。
【0016】
この場合、係合部を手で持って外部保持部とガイド部との間に押し込むことにより、係合部を外部保持部とガイド部との間に係合でき、その際に、チューブ本体の先端部が盛り上がり部に押圧されて係合部の内部に後退する。これによると、係合部を外部保持部とガイド部との間に係合させたり、その係合を解除させたりする操作を確実に行える。なお、この場合のチューブ本体の先端部は硬質材料で構成し、押圧によりばねが収縮してもチューブ本体の先端部は収縮したり変形したりしないか、またはばねの収縮よりも少ない収縮や変形しか生じないようにすることが好ましい。
【0017】
また、本発明に係る瘻孔カテーテルと流体供給用チューブとの接続構造のさらに他の構成上の特徴は、ガイド部を弾性体で構成するとともに、ガイド部の両端における外部保持部の対向面にそれぞれ突部を形成し、係合部を外部保持部とガイド部との間に係合させるときに、ガイド部が撓んで突部が係合部の端面を通過したのちに係合部の側部に係合するようにしたことにある。これによると、係合部とガイド部との係合がより確実になる。
【0018】
また、本発明に係る瘻孔カテーテルと流体供給用チューブとの接続構造のさらに他の構成上の特徴は、ガイド部と連結部とを外部保持部とは別体からなる接続部材で構成し、外部保持部の外周面に円形の嵌合溝部を外部保持部の周方向に沿って形成するとともに、連結部に円形の嵌合溝部に回転可能に嵌合する嵌合部を含ませたことにある。これによると、瘻孔カテーテルに対して接続部材が軸周り方向に回転可能になるため、瘻孔カテーテルの外部保持部に汚れ等が生じたときの清掃が容易になる。
【0019】
また、本発明に係る瘻孔カテーテルと流体供給用チューブとの接続構造のさらに他の構成上の特徴は、瘻孔カテーテルを、外部保持部と、外部保持部に基端部が連結され先端側部分が瘻孔から消化管内にかけて延びるようにして設置されるチューブ状部と、チューブ状部の先端に連結され消化管内に設置される内部保持部とで構成したことにある。これによると、瘻孔カテーテルは患者の体内側だけでなく体外側にも外れにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る瘻孔カテーテルと流体供給用チューブとの接続構造の瘻孔カテーテルと流体供給用チューブとを接続した状態を示した正面図である。
【図2】図1に示した瘻孔カテーテルと流体供給用チューブとを接続する前の状態を示した正面図である。
【図3】瘻孔カテーテルを示しており、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図4】接続部材を示した底面図である。
【図5】第2実施形態が備える接続部材を示した底面図である。
【図6】第3実施形態が備える係合部を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態を、図面を用いて説明する。図1および図2は、同実施形態に係る瘻孔カテーテルと流体供給用チューブとの接続構造を構成する瘻孔カテーテル10と流体供給用チューブ20と、接続部材30とを示している。瘻孔カテーテル10は、図3に示したように、それぞれポリウレタンからなる外部保持部11と、外部保持部11の下端面中央に連結されたチューブ状部12と、チューブ状部12の先端に連結された内部保持部13とで構成されている。以下、外部保持部11側を上方、内部保持部13側を下方として説明する。
【0022】
外部保持部11は、やや肉厚のリング状に形成された挿入口部11aと、挿入口部11aの外周下端の両側から外側に突出した一対の突出部11bとからなっている。この突出部11bは、瘻孔カテーテル10が患者の体内に埋没することを防止する機能を有する。また、挿入口部11aの外周面における突出部11bの上側には、接続部材30を取り付けるための嵌合溝部11cが円周に沿って形成されている。
【0023】
そして、挿入口部11aの中央には上下に貫通する挿入孔14が形成されており、挿入孔14の上部開口14aの直径は下方から上方にいくほど徐々に大きくなっている。また、挿入口部11aの外周上部の直径は下方から上方にいくほど小さくなっており、これによって、挿入口部11aの外周上部は中央側が盛り上がった曲面に形成されている。テーパ状の上部開口14aと外周上部の曲面とを形成することによって、挿入口部11aの上面には環状の盛り上がり部15が形成されている。そして、挿入孔14の内周面には、中央にスリットが形成された逆止弁16が設けられている。
【0024】
チューブ状部12は、栄養剤や流動食等の流体物を通過させるための流体流路(図示せず)が内部に形成された細長い円筒体で構成されており、流体流路の上端は外部保持部11の挿入孔14と連通している。内部保持部13は、チューブ状部12の下端部に固定された接続部12aを介してチューブ状部12に接続されている。この内部保持部13は、接続部12aの下端開口縁部から四方に延びる4個の帯状の連結部13aと、各連結部13aの上部間に設けられた4個の連結膜部13bとで構成されており、各連結部13aの先端部は互いに連結されている。
【0025】
流体供給用チューブ20は、チューブ本体21と、チューブ本体21の下端側に取り付けられた係合部22とで構成されている。チューブ本体21は、チューブ状部12の流体流路に連通する流体流路を備えた軟質チューブで構成されており、チューブ状部12と略同じ太さをしている。チューブ本体21の先端部21aは軸方向に押圧されることにより収縮して係合部22内に入る。また、先端部21aは、外部保持部11の挿入孔14の上部開口14aを含む上部側部分と液密状態で嵌合でき、挿入孔14に嵌合したときに、逆止弁16のスリットを開ける。これによって、チューブ本体21の流体流路から瘻孔カテーテル10の流体流路に流体を流すことができる。係合部22は、硬質の樹脂材料からなる円筒体で構成されており、チューブ本体21の先端部21aを内部に収容可能な状態でチューブ本体21の下端側外周部に固定されている。
【0026】
接続部材30は、嵌合溝部11cに嵌合する嵌合部31と、嵌合部31と間隔を保って平行に配置されるガイド部32と、嵌合部31とガイド部32とを連結する連結部本体33とで構成されている。なお、嵌合部31と連結部本体33とで本発明に係る連結部が構成される。図4は、接続部材30を底面側から見た状態を示しており、嵌合部31は略U字状の板で構成されている。そして、嵌合部31の略U字状の内周縁部奥側部分を嵌合溝部11c内に嵌め込むことにより、接続部材30は、瘻孔カテーテル10の外部保持部11に回転可能に組み付けられる。ガイド部32は、平面視(図示せず)が略C字状の板で構成されており、嵌合部31との間に間隔を保って、嵌合部31と平行に配置されている。
【0027】
嵌合部31とガイド部32との間隔は、嵌合部31を嵌合溝部11cに嵌合させたときに、外部保持部11の盛り上がり部15とガイド部32との間隔が、係合部22の軸方向の長さと略等しくなるようにして設定される。また、ガイド部32の内周縁部は、開放側部分(図4の右側部分)が開放側から奥側にいくにしたがって対向する部分間の幅が徐々に狭くなるように形成され、その奥側が略円形(C形)になるように形成されている。そして、ガイド部32の下面における両端側に、それぞれ突部32aが形成されている。
【0028】
この突部32aの下面を側方から見た状態では、ガイド部32の開放側に位置する部分が、ガイド部32の開放側から奥側にいくほど徐々に下方に向かうテーパ状に形成され、ガイド部32の奥側に位置する部分が水平状に形成されている。また、一対の突部32aの間隔は、係合部22の外径よりもやや狭くなっている。図4に二点鎖線で示したように、係合部22をガイド部32に係合させたときには、係合部22の外周面に一対の突部32aが当接して、係合部22がガイド部32から外れることを防止する。連結部本体33は、嵌合部31の上面中央部と、ガイド部32の下面中央部とを連結しており、断面形状(図示せず)が円弧状に形成された板状の連結片で構成されている。
【0029】
この構成において、患者の瘻孔(図示せず)に取り付けられた瘻孔カテーテル10に流体供給用チューブ20を接続する場合には、まず、外部保持部11の嵌合溝部11cに、嵌合部31を嵌合させて、瘻孔カテーテル10に接続部材30を組み付ける。この場合、嵌合部31の開放側の両端部を嵌合溝部11cの両側部分に挿し込むようにして接続部材30を瘻孔カテーテル10に対して横方向からスライドさせる。これによって、嵌合部31の内周縁部の奥側部分が、嵌合溝部11cの半周部分に嵌合し、接続部材30は瘻孔カテーテル10に対して軸回り方向に回転可能な状態で組み付けられる。
【0030】
つぎに、図2に示したように、接続部材30のガイド部32の開放側部分と瘻孔カテーテル10の盛り上がり部15との間の近傍に係合部22を位置させるようにして流体供給用チューブ20を瘻孔カテーテル10に近づける。そして、矢印で示したように、流体供給用チューブ20を瘻孔カテーテル10側に移動して係合部22を盛り上がり部15とガイド部32との間に押し込む。この際、チューブ本体21の先端部21aは盛り上がり部15に押圧されて係合部22の内部に収容され、係合部22の上端両側(図2の状態で前後両側)が突部32aのテーパ面を押し上げながら、係合部22は盛り上がり部15とガイド部32との間の奥側に入っていく。
【0031】
このとき、ガイド部32の開放側部分は上方に撓む。そして、係合部22の上端両側が突部32aを通過したときに、チューブ本体21の先端部21aが係合部22から突出して外部保持部11の挿入孔14の上部側部分に嵌合して、図1に示した状態になる。このとき、チューブ本体21の先端部21aは、上部開口14aに液密状態で接触し、逆止弁16のスリットを開ける。また、ガイド部32が元の状態に戻って突部32aは、図4に示したように係合部22の外周面に係合する。これによって、係合部22は瘻孔カテーテル10から外れることを防止される。
【0032】
その状態で、チューブ本体21の基端開口からチューブ本体21内に流体物を入れる。なお、チューブ本体21の基端開口には予め、流体物が収容された供給装置が接続されており、流体物はこの供給装置から供給される。この結果、流体物はチューブ本体21の流体流路から挿入孔14およびチューブ状部12の流体流路を介して患者の消化管内、例えば、胃内に供給される。また、瘻孔カテーテル10の外部保持部11に流体物や汚れが付着したときには、所定の布や紙で流体物や汚れを拭き取る。この場合、接続部材30を回転させることにより、外部保持部11の表面全体を満遍なく拭き取ることができる。
【0033】
以上のように、本実施形態に係る瘻孔カテーテルと流体供給用チューブとの接続構造では、瘻孔カテーテル10の外部保持部11に、ガイド部32を備えた接続部材30を取り付けるようにしている。そして、流体供給用チューブ20のチューブ本体21の先端側に、係合部22を設けて、この係合部22を、外部保持部11とガイド部32との間に押し込んで係合させることにより、チューブ本体21の先端部21aを外部保持部11の上部開口14aに連通させるようにしている。
【0034】
したがって、瘻孔カテーテル10への流体供給用チューブ20の接続が、係合部22を、外部保持部11とガイド部32との間に横から押し込むことにより行えるようになり、流体供給用チューブ20を瘻孔カテーテル10に上方から押し付ける必要がなくなる。これによって、外部保持部11が体内側に押し付けられて埋没することがなくなる。また、瘻孔カテーテル10に流体供給用チューブ20を接続したときに、瘻孔カテーテル10の流体流路と流体供給用チューブ20の流体流路とが略直線状に連なるため、流体が流体供給用チューブ20から瘻孔カテーテル10に流れにくくなったり、瘻孔カテーテル10と流体供給用チューブ20との接続部で流体が漏れやすくなったりするといったことは生じなくなる。
【0035】
また、チューブ本体21の先端部21aを軟質の材料で構成して、先端部21aを押圧したときに、先端部21aが収縮して係合部22の内部に収容されるため、係合部22を外部保持部11とガイド部32との間に係合させる操作が容易になる。さらに、ガイド部32の両端における下面にそれぞれ突部32aを形成して、係合部22が外部保持部11とガイド部32との間に係合したときに、突部32aが係合部22の側部に係合するようにしたため、係合部22とガイド部32との係合がより確実になる。また、接続部材30を外部保持部11に対して回転可能にしたため、外部保持部11に汚れ等が生じたときの清掃が容易になる。さらに、瘻孔カテーテル10の下部に内部保持部13を設けたため、瘻孔カテーテル10が体外側に引っ張られたときに、瘻孔カテーテル10が容易に体から外れることが防止される。
【0036】
(第2実施形態)
図5は、本発明の第2実施形態に係る瘻孔カテーテルと流体供給用チューブとの接続構造が備える接続部材40を示している。この接続部材40は、嵌合溝部11cに嵌合する嵌合部41と、嵌合部41と間隔を保って平行に配置されるガイド部42と、嵌合部41とガイド部42とを連結する連結部本体(図示せず)とで構成されている。嵌合部41は前述した嵌合部31と同形の略U字状の板で構成されている。ガイド部42は、平面視(図示せず)が略C字状の板で構成されており、嵌合部41との間に間隔を保って、嵌合部41と平行に配置されている。
【0037】
また、ガイド部42の内周縁部は、前述したガイド部32の内周縁部と同様、開放側部分(図5の右側部分)が開放側から奥側にいくにしたがって対向する部分間の幅が徐々に狭くなるように形成され、その奥側が略円形(C形)になるように形成されているが、奥側の略円形部分は、ガイド部32の円形部分よりも小さくなっている。そして、係合部22を接続部材40に組み付けたときには、図5に二点鎖線で示したように、チューブ本体21がガイド部42の内周縁部の奥側の円形部分に押し込まれて係合し、流体供給用チューブ20が瘻孔カテーテル10や接続部材40から外れることを防止する。なお、このガイド部42には突部は設けられていない。
【0038】
本実施形態に係る瘻孔カテーテルと流体供給用チューブとの接続構造のそれ以外の部分の構成は、前述した第1実施形態に係る瘻孔カテーテルと流体供給用チューブとの接続構造と同一である。また、本実施形態に係る瘻孔カテーテルと流体供給用チューブとの接続構造では、係合部22が外部保持部11とガイド部32との間に係合し、チューブ本体21がガイド部42の内周縁部の奥側に係合する。本実施形態に係る瘻孔カテーテルと流体供給用チューブとの接続構造のそれ以外の作用効果は、前述した第1実施形態に係る瘻孔カテーテルと流体供給用チューブとの接続構造の作用効果と同様である。
【0039】
(第3実施形態)
図6は、本発明の第3実施形態に係る瘻孔カテーテルと流体供給用チューブとの接続構造が備える流体供給用チューブ50の要部を示している。この流体供給用チューブ50では、軟質のチューブ本体の下端部が、係合部52を支持する硬質の支持筒部51で構成されている。この支持筒部51は、溶剤溶着等によってチューブ本体の上部側部分に接合されており、支持筒部51の下部側部分の外周にはフランジ状のばね受け部51aが形成されている。そして、ばね受け部51aに、ばね53を介して係合部52が取り付けられている。係合部52は、円筒体からなる本体部分の上下にそれぞれチューブ本体51を挿通させる穴部が形成された天井部52aと底面部52bとを設けた構成をしている。
【0040】
そして、係合部52は、底面部52bをばね受け部51aの下面側に位置させ、天井部52aとばね受け部51aとの間にばね53を位置させて支持筒部51に組み付けられている。係合部52は、ばね受け部51aとばね53とによって上方に付勢されている。このため、係合部52に対して支持筒部51の先端部51bを上方に押圧すると、ばね53が収縮して先端部51bは係合部52内に収容される。本実施形態に係る瘻孔カテーテルと流体供給用チューブとの接続構造のそれ以外の部分の構成は、前述した第1実施形態に係る瘻孔カテーテルと流体供給用チューブとの接続構造と同一である。
【0041】
また、本実施形態に係る瘻孔カテーテルと流体供給用チューブとの接続構造では、支持筒部51の先端部51bを押圧すると、ばね53が収縮して先端部51bが係合部52内に収容されるため、係合部52外部保持部11とガイド部32との間に係合させたり、その係合を解除させたりする操作を確実に行える。本実施形態に係る瘻孔カテーテルと流体供給用チューブとの接続構造のそれ以外の作用効果は、前述した第1実施形態に係る瘻孔カテーテルと流体供給用チューブとの接続構造の作用効果と同様である。
【0042】
また、他の実施形態として、前述した各実施形態が備える外部保持部11の盛り上がり部15を軟質材料で構成し、瘻孔カテーテル10に流体供給用チューブ20等を接続する際に、チューブ本体21等の先端部21a等が盛り上がり部15を押圧して窪ませるようにしてもよい。これによっても、前述した各実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0043】
本発明に係る瘻孔カテーテルと流体供給用チューブとの接続構造は、前述した各実施形態に限定するものでなく、本発明の技術的範囲内で適宜変更実施が可能である。例えば、前述した実施形態では、接続部材30,40を外部保持部11と別体からなる部材で構成しているが、接続部材30,40は外部保持部11と一体で構成してもよい。また、前述した実施形態では、接続部材30を瘻孔カテーテル10に対して軸回り方向に回転可能にしているが、嵌合溝部11cを円形でなく平行する二つの溝部で構成し、接続部材30が回転できないようにすることもできる。さらに、瘻孔カテーテルの内部保持部をバルーン状(ドーム状)のもので構成してもよい。また、瘻孔カテーテルとしては、内部保持部を備えていないものを用いることもできる。さらに、第3実施形態におけるコイル状のばね53にかえて蛇腹状のばね等を用いることもできる。
【符号の説明】
【0044】
10…瘻孔カテーテル、11…外部保持部、11c…嵌合溝部、12…チューブ状部、13…内部保持部、14…挿入孔、14a…上部開口、15…盛り上がり部、20,50…流体供給用チューブ、21…チューブ本体、21a,51b…先端部、22,52…係合部、30,40…接続部材、31,41…嵌合部、32,42…ガイド部、32a…突部、33…連結部本体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の腹壁と消化管壁とに形成された瘻孔に取り付けられる瘻孔カテーテルと、前記瘻孔カテーテルに接続され前記瘻孔カテーテルが備える流体流路を介して前記患者の消化管に流体物を供給する流体供給用チューブとの接続構造であって、
前記瘻孔カテーテルにおける前記瘻孔の腹壁の表面側に設置される部分を前記流体流路の開口を備えた外部保持部で構成するとともに、平面視が略C形または略U形の内周縁部を備えたガイド部を前記外部保持部の開口側から間隔を保たせた状態で連結部で前記外部保持部に連結し、前記流体供給用チューブのチューブ本体の先端近傍に、前記チューブ本体を前記ガイド部の開放側から内部に入れるようにして前記外部保持部と前記ガイド部との間に進入することにより、前記チューブ本体の先端部を前記外部保持部の開口に連通させた状態で前記外部保持部と前記ガイド部との間に係合可能な筒状の係合部を前記チューブ本体と同軸的に設けたことを特徴とする瘻孔カテーテルと流体供給用チューブとの接続構造。
【請求項2】
前記ガイド部を弾性体で構成し、前記外部保持部における開口の周縁部に盛り上がり部を形成するとともに、前記係合部における前記ガイド部と当接する部分と前記チューブ本体の先端部との間の長さを、前記盛り上がり部と前記ガイド部との間の長さよりも長くし、前記係合部と前記チューブ本体の先端近傍部分から先端部にかけての前記係合部から突出する部分とを前記盛り上がり部と前記ガイド部との間に押し込んで前記チューブ本体の先端部を前記外部保持部の開口に連通させたときに、前記係合部が前記盛り上がり部と前記ガイド部との間に係合できるようにした請求項1に記載の瘻孔カテーテルと流体供給用チューブとの接続構造。
【請求項3】
前記外部保持部における開口の周縁部に盛り上がり部を形成するとともに、前記係合部における前記ガイド部と当接する部分と前記チューブ本体の先端部との間の長さを、前記盛り上がり部と前記ガイド部との間の長さよりも長くし、前記盛り上がり部に押圧により変形して前記盛り上がり部と前記ガイド部との間の長さを長くする変形機構を設けるか、または前記チューブ本体の先端部に押圧により変位して前記係合部における前記ガイド部と当接する部分と前記チューブ本体の先端部との間の長さを短くする変位機構を設けた請求項1または2に記載の瘻孔カテーテルと流体供給用チューブとの接続構造。
【請求項4】
前記係合部の内部に、前記係合部に対して前記チューブ本体の先端部を外部側に付勢するばね機構を設けることにより前記変位機構を構成し、前記チューブ本体の先端部を押圧することにより、前記係合部の内部に後退させることができるようにした請求項3に記載の瘻孔カテーテルと流体供給用チューブとの接続構造。
【請求項5】
前記ガイド部を弾性体で構成するとともに、前記ガイド部の両端における前記外部保持部の対向面にそれぞれ突部を形成し、前記係合部を前記外部保持部と前記ガイド部との間に係合させるときに、前記ガイド部が撓んで前記突部が前記係合部の端面を通過したのちに前記係合部の側部に係合するようにした請求項1ないし4のうちのいずれか一つに記載の瘻孔カテーテルと流体供給用チューブとの接続構造。
【請求項6】
前記ガイド部と前記連結部とを前記外部保持部とは別体からなる接続部材で構成し、前記外部保持部の外周面に円形の嵌合溝部を前記外部保持部の周方向に沿って形成するとともに、前記連結部に前記円形の嵌合溝部に回転可能に嵌合する嵌合部を含ませた請求項1ないし5のうちのいずれか一つに記載の瘻孔カテーテルと流体供給用チューブとの接続構造。
【請求項7】
前記瘻孔カテーテルを、前記外部保持部と、前記外部保持部に基端部が連結され先端側部分が前記瘻孔から前記消化管内にかけて延びるようにして設置されるチューブ状部と、前記チューブ状部の先端に連結され前記消化管内に設置される内部保持部とで構成した請求項1ないし6のうちのいずれか一つに記載の瘻孔カテーテルと流体供給用チューブとの接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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