瘻孔カテーテル
【課題】シリンジや伸展具などの交換用の器具を用いることなく挿入、抜去することのできる瘻孔カテーテルを得る。また、瘻孔に対する侵襲の少ない瘻孔カテーテルを得る。
【解決手段】略円筒状のカテーテル部10と、棒状のバンパー部20と、可撓性を有しカテーテル部10の外周面及びバンパー部20の外周面に重ね合わせ可能に湾曲した周壁を備え、該周壁にはカテーテル部10を挿入可能なカテーテル挿入口31が形成されたガイド部30と、可撓性を有し、カテーテル部10とバンパー部20とを軸方向に連なるように接続する第一接続部40と、可撓性を有し、バンパー部20とガイド部30とを軸方向に連なるように接続する第二接続部50とを備えた。
【解決手段】略円筒状のカテーテル部10と、棒状のバンパー部20と、可撓性を有しカテーテル部10の外周面及びバンパー部20の外周面に重ね合わせ可能に湾曲した周壁を備え、該周壁にはカテーテル部10を挿入可能なカテーテル挿入口31が形成されたガイド部30と、可撓性を有し、カテーテル部10とバンパー部20とを軸方向に連なるように接続する第一接続部40と、可撓性を有し、バンパー部20とガイド部30とを軸方向に連なるように接続する第二接続部50とを備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の消化管内に流動食や栄養剤等の流体物を供給するために用いられる瘻孔カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高齢や疾病により自力で口から食べ物を摂取する機能が低下した人(以下、患者と記す。)に対して、瘻孔カテーテルを用いて流動食や栄養剤等を供給する経腸栄養投与が行われている。経腸栄養投与においては、患者の腹部に瘻孔(胃瘻)を造設し、この瘻孔に瘻孔カテーテルを装着し、瘻孔カテーテルを通じて患者に流動食等を供給する。
【0003】
このような経腸栄養投与に用いられる瘻孔カテーテルは、体内側に設置される体内固定部の形状によって、いわゆるバルーン型とバンパー型とに大別できる。
【0004】
バルーン型の体内固定部を瘻孔に装着する際には、まず、バルーンをしぼませて細くした状態にて瘻孔に挿入する。そして、体内に挿入されたバルーンにシリンジ等を使って空気や生理食塩水等を注入することで、バルーンを膨らませて体内固定部として機能させる。バルーン型の体内固定部を瘻孔から抜去する際には、装着時と逆の手技となる。
【0005】
また、バンパー型の体内固定部を瘻孔に装着する際には、まず、棒状の伸展具を用いてバンパーを伸展させ細くした状態で瘻孔に挿入する。そして、体内に挿入されたバンパーから伸展具を外すことで、バンパーを拡径した元の状態に戻させ、バンパーを体内固定部として機能させる。バンパー型の体内固定部を抜去する際には、装着時と逆の手技となる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−183437号公報(図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
瘻孔カテーテルは、瘻孔を造設した際に前述のようにして瘻孔に装着され、その後長期間(例えば1カ月〜4カ月程度)の使用の後、交換を行う必要がある。ところが、従来の瘻孔カテーテルを交換する際には、バルーン型であればシリンジ、バンパー型であれば伸展具、といった交換用の器具を準備する必要があった。
このような交換用の器具は、衛生上の観点等から患者毎に専用のものを用いることが望まれるが、医療従事者にとって、このような交換用の器具を患者毎に管理しておくことは負担が大きかった。また、在宅にて瘻孔カテーテルを交換するケースもあるが、瘻孔カテーテルを交換する頻度は通常であれば1カ月〜4カ月に1度程度であるので、その間に交換用の器具を紛失してしまうこともある。また、特に、従来のバンパー型の瘻孔カテーテルは、交換用の器具(伸展具)を用いる際の手技が複雑であり、医療従事者に対して十分な教育が必要であるとともに医療従事者の作業負担も大きかった。
【0008】
また、従来のバンパー型の瘻孔カテーテルには、バンパーを伸展させて細くしても瘻孔より径の大きいものがあり、瘻孔を傷つけてしまうおそれがあったため、より低侵襲の瘻孔カテーテルが望まれていた。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、シリンジや伸展具などの交換用の器具を用いることなく挿入、抜去することのできる瘻孔カテーテルを提供するものである。また、瘻孔に対する侵襲の少ない瘻孔カテーテルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る瘻孔カテーテルは、略円筒状のカテーテル部と、棒状のバンパー部と、可撓性を有し前記カテーテル部の外周面及び前記バンパー部の外周面に重ね合わせ可能に湾曲した周壁を備え、該周壁には前記カテーテル部を挿入可能なカテーテル挿入口が形成されたガイド部と、可撓性を有し、前記カテーテル部と前記バンパー部とを軸方向に連なるように接続する第一接続部と、可撓性を有し、前記バンパー部と前記ガイド部とを軸方向に連なるように接続する第二接続部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る瘻孔カテーテルは、カテーテル部及びバンパー部の外周面に重ね合わせ可能なガイド部を備え、このガイド部に沿ってバンパー部とガイド部とを瘻孔に挿入、抜去することができる。このため、交換用の器具を用いることなく瘻孔に挿入、抜去することが可能な瘻孔カテーテルを得ることができる。また、瘻孔を通過するのは、ガイド部に重ねられたバンパー部またはカテーテル部であり、瘻孔に対する侵襲が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態1に係る瘻孔カテーテルの側面図及び平面図である。
【図2】実施の形態1に係る瘻孔カテーテルの斜視図である。
【図3】実施の形態1に係る瘻孔カテーテルを変形させた状態を示す斜視図である。
【図4】実施の形態1に係る瘻孔カテーテルの瘻孔に留置される状態を説明する図である。
【図5】実施の形態1に係る瘻孔カテーテルの構成を説明する図である。
【図6】実施の形態1に係る瘻孔カテーテルの作用を説明する図である。
【図7】実施の形態2に係る瘻孔カテーテルを説明する図である。
【図8】実施の形態3に係る瘻孔カテーテルを説明する図である。
【図9】実施の形態3に係る瘻孔カテーテルの作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る瘻孔カテーテルの実施の形態について図面を参照して説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0014】
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係る瘻孔カテーテルの側面図及び平面図であり、図1(a)が側面図、図1(b)が平面図である。図2は、実施の形態1に係る瘻孔カテーテルの斜視図、図3は同じく瘻孔カテーテルを変形させた状態を示す斜視図である。また、図4は、実施の形態1に係る瘻孔カテーテルの瘻孔に留置される状態を説明する図である。なお、各図においては、各部材の大小関係が実際の物とは異なる場合がある。また、図1〜図3及び後述の各図において、同一の符号を付したものは、同一のまたはこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。
【0015】
瘻孔カテーテル1は、カテーテル部10と、バンパー部20と、ガイド部30と、第一接続部40と、第二接続部50とを備える。なお、以降の説明において、瘻孔カテーテル1のカテーテル部10側(図1の紙面上側)を「基端側」、ガイド部30側(図1の紙面下側)を「先端側」と称する場合がある。
【0016】
カテーテル部10は、瘻孔に挿入され、栄養剤等の流体を通過させる機能を有する。カテーテル部10は、内部に流体物を通過させるための内腔を有しており、その両端は貫通した略円筒状の部材である。カテーテル部10は、例えばポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂等の柔軟性を有する合成樹脂材料で構成される。
【0017】
バンパー部20は、瘻孔カテーテル1が瘻孔に装着された際に患者の内臓壁(胃壁)の内側に位置し、瘻孔カテーテル1が瘻孔から外れるのを防ぐ体内固定部として機能する。バンパー部20は、例えばポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂、ABS樹脂、ポリエチレン樹脂等の合成樹脂材料から成る筒状のチューブ素材で構成された棒状の部材である。また、本実施の形態1では、バンパー部20の内腔の中に芯部材21が挿入されている。芯部材21は、ほぼ円筒状の剛性を有する部材であり、バンパー部20を構成するチューブの内壁に密着するように設置されている。芯部材21は、例えば、チタン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ABS等の剛性を有する材料で構成されている。なお、バンパー部20の内腔に芯部材21を設けない構成としてもよい。この場合には、剛性を有する材料でバンパー部20を構成したり、バンパー部20を硬化させるコーティングを施したりするのが好ましく、また、バンパー部20に内腔を設けても設けなくてもよい。
【0018】
ガイド部30は、可撓性を有し、短冊状の部材を断面がほぼ弧状となるように丸く反らせたような形状を有する部材である。ガイド部30の内周面は、カテーテル部10及びバンパー部20の外周面に重ね合わせることができるように、カテーテル部10及びバンパー部20の外周面とほぼ同じ曲面に構成されている。なお、ガイド部30の内周面と、カテーテル部10及びバンパー部20の外周面とが異なる曲面で構成されている場合でも、ガイド部30を柔軟性のある素材で構成することで、その柔軟性によりガイド部30をカテーテル部10及びバンパー部20の外周面に沿わせることが可能となる。ガイド部30の周壁の厚み、周方向の長さ、及び内周面の曲面形状は、例えば人手による支持がなくとも、ガイド部30をカテーテル部10及びバンパー部20の外周面に重ね合わせた状態(後述する図6(a)の状態)を維持可能に設定されているのが好ましい。このようにすることで、瘻孔への挿入操作を行いやすい。例えば本実施の形態1では、ガイド部30の軸方向に直交する断面が半円弧形状となるように構成されているが、ガイド部30の断面の弧の中心角をより大きくすることで、ガイド部30とカテーテル部10とバンパー部20との係合度合いを高めることができる。ガイド部30は、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂等の合成樹脂材料で構成される。
【0019】
ガイド部30には、カテーテル挿入口31が形成されている。図4に示すように瘻孔に挿入される状態において、カテーテル挿入口31にはカテーテル部10が挿入される。カテーテル挿入口31は、カテーテル部10を挿入することが可能な開口部であればよく、図1〜図3に例示するように円形の開口部としてもよいし、スリットあるいは切れ目であってもよい。カテーテル部10の外周面とカテーテル挿入口31とが密着するようにカテーテル挿入口31の開口径を設定することで、カテーテル挿入口31に挿入されたカテーテル部10が容易に動かないようにするのが好ましい。
【0020】
第一接続部40は、カテーテル部10の一方の端部(先端側の端部)と、バンパー部20の一方の端部(基端側の端部)とを接続する部材である。第一接続部40は、柔軟性を有し湾曲可能な部材、例えばポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂等の合成樹脂材料で構成されている。
【0021】
第二接続部50は、バンパー部20の一方の端部(先端側の端部)と、ガイド部30の一方の端部(基端側の端部)とを接続する部材である。第二接続部50は、柔軟性を有し湾曲可能な部材、例えばポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂等の合成樹脂材料で構成されている。
【0022】
図3に示すように、第二接続部50を曲げ、ガイド部30の内周面をカテーテル部10及びバンパー部20の外周面に重ねることができる。ガイド部30の曲面状の内周面が、カテーテル部10及びバンパー部20の外周面を適度に係合し、ガイド部30とバンパー部20とが重ね合わされた状態が保持される。
【0023】
次に、瘻孔カテーテル1の寸法関係について図1を参照して説明する。
カテーテル部10の長手方向の長さは、既存のバンパー型の瘻孔カテーテルのカテーテル部とほぼ同じ長さであり、患者の腹壁等の厚みに合わせて例えば1.5cm〜7cm程度である。
バンパー部20の長手方向の長さは、瘻孔から抜けるのを防ぐために瘻孔の直径よりも長い長さとし、例えば2cm〜5cm程度である。
バンパー部20の基端からカテーテル部10の基端までの長さA(カテーテル部10と第一接続部40とを合わせた長さ)と、ガイド部30のカテーテル挿入口31の中央からバンパー部20の先端までの長さBは、図4に示すようにカテーテル部10の基端部をカテーテル挿入口31に挿入したときに、バンパー部20が内臓壁の内側にほぼ水平に吊り下げられるような寸法関係とする。
【0024】
次に、瘻孔カテーテル1の製造について説明する。
図5は、実施の形態1に係る瘻孔カテーテルの構成を説明する図である。図5に示すように、瘻孔カテーテル1は、1本のチューブ部材(管)の周壁を切り欠いて、カテーテル部10、バンパー部20、ガイド部30、第一接続部40、及び第二接続部50を構成している。図5では、周壁を切り欠いて取り除いた部分を網掛け表示している。図示するように、カテーテル部10とバンパー部20との間のチューブの周壁を、周方向に部分的に切り欠き、チューブの残った部分を第一接続部40としている。また、同様にして、バンパー部20とガイド部30との間のチューブの周壁を、周方向に部分的に切り欠き、チューブの残った部分を第二接続部50としている。第一接続部40及び第二接続部50の幅は、湾曲可能な柔軟性と、瘻孔に設置された状態で数か月間使用しても容易には切断されないような耐久性とを考慮して適宜定めることができる。また、ガイド部30は、チューブの周壁を、周方向に部分的に切り欠いて構成されている。そして、ガイド部30の周壁に、カテーテル挿入口31が形成されている。
【0025】
次に、実施の形態1に係る瘻孔カテーテルの作用を説明する。図6は、実施の形態1に係る瘻孔カテーテルの作用を説明する図である。図6(a)〜(g)は、瘻孔を造設した場合、あるいは瘻孔に設置された瘻孔カテーテル1を交換する場合に、瘻孔カテーテル1を患者の瘻孔に装着する際の手順を示している。また、図6では、患者に形成された瘻孔61及び体壁62(胃壁等の内臓壁と腹壁)を併せて図示している。
【0026】
図6(a)に示すように、第二接続部50を曲げてガイド部30の内周面をバンパー部20の外周面に重ねた状態の瘻孔カテーテル1を、第二接続部50が下側(患者側)となる向きで、患者の瘻孔61に挿入する。バンパー部20の外周面がガイド部30の内周面に沿って挿入されるため、直線的にスムースにバンパー部20を挿入することが可能である。瘻孔61に挿入される部分の径は、バンパー部20にガイド部30を重ねた径であり、従来のバンパー型の体内固定部を伸展させたものと比べて径が小さく、瘻孔61に対する侵襲が少ない。
【0027】
さらに、図6(b)に示すように、瘻孔61内にバンパー部20とガイド部30とを重ね合わせた部分を押し下げ、内視鏡等によりバンパー部20が胃壁等の内臓壁の内側に到達したことを確認する。
【0028】
次に、図6(c)に示すように、ガイド部30の位置を体表側で固定しつつ、ガイド部30の内周面に沿って第一接続部40及びカテーテル部10を瘻孔61内に挿入する。ガイド部30の内周面にカテーテル部10の外周面が沿っているため、直線的にスムースにカテーテル部10を瘻孔61に挿入することが可能である。また、瘻孔61に挿入される部分の径は、最大でもカテーテル部10の径にガイド部30を重ねた径であり、カテーテル部10の径に対して極端に大きくなく、瘻孔61に対する侵襲が少ない。このようにしてカテーテル部10を瘻孔61内に押し進めていくと、内臓壁の内側においてバンパー部20はガイド部30から外れる。
【0029】
そして、カテーテル部10の先端が内臓壁の内側に到達するまでカテーテル部10を瘻孔61内に押し進めると、図6(d)に示すような状態となる。すなわち、図6(d)に示すように、バンパー部20は、第一接続部40と第二接続部50とによってカテーテル部10とガイド部30とに吊り下げられた状態となる。このとき、バンパー部20はほぼ水平な向きとなり、瘻孔61に対する抜け止め(体内固定部)としての機能を発揮することができる。また、本実施の形態1では、バンパー部20のチューブの内腔に芯部材21を設けたので、バンパー部20は内臓壁の内側においてほぼまっすぐの形状が維持される。このため、例えば体表側から瘻孔カテーテル1を引き抜く方向に引っ張られた場合でも、バンパー部20が折れ曲がって瘻孔61に引き込まれるのを抑制することができ、固定状態を維持することができる。
【0030】
バンパー部20が内臓壁の内側にほぼ水平に吊り下げられた状態(図6(d))において、体表側には、カテーテル部10の基端側の一部と、所定長さのガイド部30と、カテーテル挿入口31とが露出するような位置関係となるよう、これらの部材のサイズが設定されている。
【0031】
そして、図6(e)に示すように、体表側に出ているガイド部30を折り曲げ、カテーテル挿入口31にカテーテル部10の基端を挿入する。このようにすることで、体表側においてカテーテル部10とガイド部30とが一体化される。この状態のガイド部30は、体表に沿うとともにカテーテル部10の軸方向とほぼ直交する方向に延びており、カテーテル部10が瘻孔61から体内へと引き込まれてしまうのを抑制する抜け止め(体外固定部)として機能することができる。
【0032】
以上の手順により、瘻孔61への瘻孔カテーテル1の装着が終了する。なお、図6では図示しないが、予め瘻孔61にガイドワイヤーを挿入しておき、バンパー部20及びカテーテル部10の内腔にこのガイドワイヤーを挿入してガイドワイヤーに沿ってバンパー部20及びカテーテル部10を瘻孔61に挿入するようにしてもよい。このようにすることで、より確実に瘻孔61に瘻孔カテーテル1を装着することができる。
【0033】
さらに、図6(f)に示すように、アダプター2を、カテーテル部10に取り付ける。アダプター2は、カテーテル部10と栄養剤や薬液等の流体を供給する図示しないチューブとを接続する部材である。図6では、カテーテル部10に挿入されるたけのこ状の挿入部2aと、2つの注入口2b、2cと、各注入口に対応したキャップ2d、2eを備えたアダプター2を例示しているが、用途に合わせて任意のアダプター2を用いればよい。
【0034】
瘻孔カテーテル1にアダプター2を取り付けた状態を図6(g)に示す。栄養剤や薬液を注入する際には、キャップ2d、2eを外して注入口2b、2cにシリンジやチューブ(図示せず)を接続し、栄養剤や薬液を注入する。このようにすることで、注入された栄養剤や薬液は、カテーテル部10の内腔を通り、内臓壁の内側に位置するカテーテル部10の先端部から内臓壁の内側へと入る。
【0035】
なお、瘻孔カテーテル1を瘻孔61から抜去する際には、上述した手順と逆の手順により行うことができる。簡単に説明すると、まず、アダプター2を外し(図6(g)、(f))、ガイド部30を起こしてカテーテル挿入口31からカテーテル部10を抜き(図6(e)、(d))、瘻孔61に挿入されたガイド部30に沿ってカテーテル部10を瘻孔61から離れる方向に引き抜く(図6(c))。このようにすることで、内臓壁の内側のバンパー部20はほぼ水平状態から起立状態となって瘻孔61を通過し、ガイド部30とバンパー部20をともに瘻孔61から抜去することができる(図6(c)、(b)、(a))。
【0036】
以上のように、本実施の形態1の瘻孔カテーテル1は、他の器具を用いることなく、瘻孔カテーテル1それ単体で瘻孔61に装着、抜去することができる。このため、従来のようにシリンジや伸展具などの交換用の器具を医療従事者が管理する必要もなく、医療従事者の器具の管理負担を軽減することができる。また、瘻孔カテーテル1は、他の器具を用いることもなく簡便な手技で瘻孔61に装着、抜去できるので、術者の作業負担を軽減できる。簡便な手技で瘻孔61に装着、抜去できることから、作業時間も短縮でき、術者の負担が軽減できるとともに患者の負担も軽減できる。
【0037】
また、本実施の形態1の瘻孔カテーテル1は、丸く反った周囲壁を有するガイド部30に沿ってバンパー部20とカテーテル部10を瘻孔61に挿入、抜去することができる。このため、ガイド部30が瘻孔61を保護する機能を発揮し、バンパー部20とカテーテル部10を瘻孔61に挿入、抜去する際に瘻孔61への刺激を軽減することができる。
【0038】
また、本実施の形態1の瘻孔カテーテル1において瘻孔61を通過する部分の径は、バンパー部20にガイド部30を重ねた径、またはカテーテル部10にガイド部30を重ねた径であり、従来のバンパー型の体内固定部を伸展させたものと比べて径が小さい。このため、従来のバンパー型の体内固定部と比べて、瘻孔61に対する侵襲を低減することができる。
【0039】
また、本実施の形態1では、瘻孔カテーテル1を、1本のチューブ(管)により構成した。例えば異なる部材同士を接着する場合、接着部分が外れてしまうというリスクがあるが、本実施の形態の瘻孔カテーテル1によればそのようなリスクがない。
【0040】
なお、本実施の形態1では、1本のチューブの周壁を切り欠いて瘻孔カテーテル1を構成する例を示したが、複数の部材を組み合わせて瘻孔カテーテル1を構成してもよい。例えば、ポリウレタン樹脂またはシリコーン樹脂でカテーテル部10、第一接続部40、第二接続部50、及びガイド部30をそれぞれ構成するとともに、ABS樹脂またはポリエチレン樹脂でバンパー部20を構成し、各部材を接着または溶着により接合することができる。
【0041】
実施の形態2.
図7は、実施の形態2に係る瘻孔カテーテルを説明する図である。本実施の形態2では、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0042】
図7に示す瘻孔カテーテル1のカテーテル部10には、目盛り11が設けられている。目盛り11は、瘻孔61へのカテーテル部10の挿入の深さを示すものである。このようにすることで、術者は、瘻孔61へのカテーテル部10の挿入の程度を容易に把握することができ、円滑な装着操作を行うことができる。
【0043】
実施の形態3.
図8は、実施の形態3に係る瘻孔カテーテルを説明する図である。本実施の形態3に係る瘻孔カテーテルは、複数の体壁の厚みに対応可能としたものである。本実施の形態3では、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0044】
図8に示すように、ガイド部30には、複数のカテーテル挿入口31a、31b、31cが設けられている。カテーテル挿入口31a、31b、31cは、ガイド部30の軸方向に沿って、所定間隔をおいて形成されている。なお、図8では3つのカテーテル挿入口を設ける例を示しているが、カテーテル挿入口の数はこれに限定されない。
また、カテーテル部10には、実施の形態2と同様にして目盛り11が設けられている。
【0045】
図9は、実施の形態3に係る瘻孔カテーテルの作用を説明する図である。図9(a)、(b)、(c)は、それぞれ、カテーテル挿入口31a、31b、31cにカテーテル部10を挿入した状態を示している。図9に示すように、患者の瘻孔61に瘻孔カテーテルを挿入した後、体表側に露出しているカテーテル部10を、カテーテル挿入口31a、31b、31cのいずれかに挿入する。このように、カテーテル挿入口31a、31b、31cのいずれにカテーテル部10を挿入するかによって、バンパー部20から体表までの距離を変えることができるので、異なる厚みの体壁を有する患者に対応することができる。すなわち、患者の体壁の厚みに合わせて、カテーテル挿入口31a、31b、31cのいずれかを選択してカテーテル部10を挿入する。その際、術者は、カテーテル部10に設けられた目盛り11を参考にしてカテーテル部10の挿入深さを把握し、カテーテル挿入口31a、31b、31cのいずれを用いるかを決定することができる。
【0046】
このように、本実施の形態3によれば、実施の形態1と同様の効果に加え、異なる厚みの体壁を有する患者に対応した瘻孔カテーテルを得ることができるという効果を奏する。
【符号の説明】
【0047】
1 瘻孔カテーテル、2 アダプター、2a 挿入部、2b 注入口、2c 注入口、2d キャップ、2e キャップ、10 カテーテル部、11 目盛り、20 バンパー部、21 芯部材、30 ガイド部、31 カテーテル挿入口、31a カテーテル挿入口、31b カテーテル挿入口、31c カテーテル挿入口、40 第一接続部、50 第二接続部、61 瘻孔、62 体壁。
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の消化管内に流動食や栄養剤等の流体物を供給するために用いられる瘻孔カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高齢や疾病により自力で口から食べ物を摂取する機能が低下した人(以下、患者と記す。)に対して、瘻孔カテーテルを用いて流動食や栄養剤等を供給する経腸栄養投与が行われている。経腸栄養投与においては、患者の腹部に瘻孔(胃瘻)を造設し、この瘻孔に瘻孔カテーテルを装着し、瘻孔カテーテルを通じて患者に流動食等を供給する。
【0003】
このような経腸栄養投与に用いられる瘻孔カテーテルは、体内側に設置される体内固定部の形状によって、いわゆるバルーン型とバンパー型とに大別できる。
【0004】
バルーン型の体内固定部を瘻孔に装着する際には、まず、バルーンをしぼませて細くした状態にて瘻孔に挿入する。そして、体内に挿入されたバルーンにシリンジ等を使って空気や生理食塩水等を注入することで、バルーンを膨らませて体内固定部として機能させる。バルーン型の体内固定部を瘻孔から抜去する際には、装着時と逆の手技となる。
【0005】
また、バンパー型の体内固定部を瘻孔に装着する際には、まず、棒状の伸展具を用いてバンパーを伸展させ細くした状態で瘻孔に挿入する。そして、体内に挿入されたバンパーから伸展具を外すことで、バンパーを拡径した元の状態に戻させ、バンパーを体内固定部として機能させる。バンパー型の体内固定部を抜去する際には、装着時と逆の手技となる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−183437号公報(図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
瘻孔カテーテルは、瘻孔を造設した際に前述のようにして瘻孔に装着され、その後長期間(例えば1カ月〜4カ月程度)の使用の後、交換を行う必要がある。ところが、従来の瘻孔カテーテルを交換する際には、バルーン型であればシリンジ、バンパー型であれば伸展具、といった交換用の器具を準備する必要があった。
このような交換用の器具は、衛生上の観点等から患者毎に専用のものを用いることが望まれるが、医療従事者にとって、このような交換用の器具を患者毎に管理しておくことは負担が大きかった。また、在宅にて瘻孔カテーテルを交換するケースもあるが、瘻孔カテーテルを交換する頻度は通常であれば1カ月〜4カ月に1度程度であるので、その間に交換用の器具を紛失してしまうこともある。また、特に、従来のバンパー型の瘻孔カテーテルは、交換用の器具(伸展具)を用いる際の手技が複雑であり、医療従事者に対して十分な教育が必要であるとともに医療従事者の作業負担も大きかった。
【0008】
また、従来のバンパー型の瘻孔カテーテルには、バンパーを伸展させて細くしても瘻孔より径の大きいものがあり、瘻孔を傷つけてしまうおそれがあったため、より低侵襲の瘻孔カテーテルが望まれていた。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、シリンジや伸展具などの交換用の器具を用いることなく挿入、抜去することのできる瘻孔カテーテルを提供するものである。また、瘻孔に対する侵襲の少ない瘻孔カテーテルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る瘻孔カテーテルは、略円筒状のカテーテル部と、棒状のバンパー部と、可撓性を有し前記カテーテル部の外周面及び前記バンパー部の外周面に重ね合わせ可能に湾曲した周壁を備え、該周壁には前記カテーテル部を挿入可能なカテーテル挿入口が形成されたガイド部と、可撓性を有し、前記カテーテル部と前記バンパー部とを軸方向に連なるように接続する第一接続部と、可撓性を有し、前記バンパー部と前記ガイド部とを軸方向に連なるように接続する第二接続部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る瘻孔カテーテルは、カテーテル部及びバンパー部の外周面に重ね合わせ可能なガイド部を備え、このガイド部に沿ってバンパー部とガイド部とを瘻孔に挿入、抜去することができる。このため、交換用の器具を用いることなく瘻孔に挿入、抜去することが可能な瘻孔カテーテルを得ることができる。また、瘻孔を通過するのは、ガイド部に重ねられたバンパー部またはカテーテル部であり、瘻孔に対する侵襲が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態1に係る瘻孔カテーテルの側面図及び平面図である。
【図2】実施の形態1に係る瘻孔カテーテルの斜視図である。
【図3】実施の形態1に係る瘻孔カテーテルを変形させた状態を示す斜視図である。
【図4】実施の形態1に係る瘻孔カテーテルの瘻孔に留置される状態を説明する図である。
【図5】実施の形態1に係る瘻孔カテーテルの構成を説明する図である。
【図6】実施の形態1に係る瘻孔カテーテルの作用を説明する図である。
【図7】実施の形態2に係る瘻孔カテーテルを説明する図である。
【図8】実施の形態3に係る瘻孔カテーテルを説明する図である。
【図9】実施の形態3に係る瘻孔カテーテルの作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る瘻孔カテーテルの実施の形態について図面を参照して説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0014】
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係る瘻孔カテーテルの側面図及び平面図であり、図1(a)が側面図、図1(b)が平面図である。図2は、実施の形態1に係る瘻孔カテーテルの斜視図、図3は同じく瘻孔カテーテルを変形させた状態を示す斜視図である。また、図4は、実施の形態1に係る瘻孔カテーテルの瘻孔に留置される状態を説明する図である。なお、各図においては、各部材の大小関係が実際の物とは異なる場合がある。また、図1〜図3及び後述の各図において、同一の符号を付したものは、同一のまたはこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。
【0015】
瘻孔カテーテル1は、カテーテル部10と、バンパー部20と、ガイド部30と、第一接続部40と、第二接続部50とを備える。なお、以降の説明において、瘻孔カテーテル1のカテーテル部10側(図1の紙面上側)を「基端側」、ガイド部30側(図1の紙面下側)を「先端側」と称する場合がある。
【0016】
カテーテル部10は、瘻孔に挿入され、栄養剤等の流体を通過させる機能を有する。カテーテル部10は、内部に流体物を通過させるための内腔を有しており、その両端は貫通した略円筒状の部材である。カテーテル部10は、例えばポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂等の柔軟性を有する合成樹脂材料で構成される。
【0017】
バンパー部20は、瘻孔カテーテル1が瘻孔に装着された際に患者の内臓壁(胃壁)の内側に位置し、瘻孔カテーテル1が瘻孔から外れるのを防ぐ体内固定部として機能する。バンパー部20は、例えばポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂、ABS樹脂、ポリエチレン樹脂等の合成樹脂材料から成る筒状のチューブ素材で構成された棒状の部材である。また、本実施の形態1では、バンパー部20の内腔の中に芯部材21が挿入されている。芯部材21は、ほぼ円筒状の剛性を有する部材であり、バンパー部20を構成するチューブの内壁に密着するように設置されている。芯部材21は、例えば、チタン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ABS等の剛性を有する材料で構成されている。なお、バンパー部20の内腔に芯部材21を設けない構成としてもよい。この場合には、剛性を有する材料でバンパー部20を構成したり、バンパー部20を硬化させるコーティングを施したりするのが好ましく、また、バンパー部20に内腔を設けても設けなくてもよい。
【0018】
ガイド部30は、可撓性を有し、短冊状の部材を断面がほぼ弧状となるように丸く反らせたような形状を有する部材である。ガイド部30の内周面は、カテーテル部10及びバンパー部20の外周面に重ね合わせることができるように、カテーテル部10及びバンパー部20の外周面とほぼ同じ曲面に構成されている。なお、ガイド部30の内周面と、カテーテル部10及びバンパー部20の外周面とが異なる曲面で構成されている場合でも、ガイド部30を柔軟性のある素材で構成することで、その柔軟性によりガイド部30をカテーテル部10及びバンパー部20の外周面に沿わせることが可能となる。ガイド部30の周壁の厚み、周方向の長さ、及び内周面の曲面形状は、例えば人手による支持がなくとも、ガイド部30をカテーテル部10及びバンパー部20の外周面に重ね合わせた状態(後述する図6(a)の状態)を維持可能に設定されているのが好ましい。このようにすることで、瘻孔への挿入操作を行いやすい。例えば本実施の形態1では、ガイド部30の軸方向に直交する断面が半円弧形状となるように構成されているが、ガイド部30の断面の弧の中心角をより大きくすることで、ガイド部30とカテーテル部10とバンパー部20との係合度合いを高めることができる。ガイド部30は、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂等の合成樹脂材料で構成される。
【0019】
ガイド部30には、カテーテル挿入口31が形成されている。図4に示すように瘻孔に挿入される状態において、カテーテル挿入口31にはカテーテル部10が挿入される。カテーテル挿入口31は、カテーテル部10を挿入することが可能な開口部であればよく、図1〜図3に例示するように円形の開口部としてもよいし、スリットあるいは切れ目であってもよい。カテーテル部10の外周面とカテーテル挿入口31とが密着するようにカテーテル挿入口31の開口径を設定することで、カテーテル挿入口31に挿入されたカテーテル部10が容易に動かないようにするのが好ましい。
【0020】
第一接続部40は、カテーテル部10の一方の端部(先端側の端部)と、バンパー部20の一方の端部(基端側の端部)とを接続する部材である。第一接続部40は、柔軟性を有し湾曲可能な部材、例えばポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂等の合成樹脂材料で構成されている。
【0021】
第二接続部50は、バンパー部20の一方の端部(先端側の端部)と、ガイド部30の一方の端部(基端側の端部)とを接続する部材である。第二接続部50は、柔軟性を有し湾曲可能な部材、例えばポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂等の合成樹脂材料で構成されている。
【0022】
図3に示すように、第二接続部50を曲げ、ガイド部30の内周面をカテーテル部10及びバンパー部20の外周面に重ねることができる。ガイド部30の曲面状の内周面が、カテーテル部10及びバンパー部20の外周面を適度に係合し、ガイド部30とバンパー部20とが重ね合わされた状態が保持される。
【0023】
次に、瘻孔カテーテル1の寸法関係について図1を参照して説明する。
カテーテル部10の長手方向の長さは、既存のバンパー型の瘻孔カテーテルのカテーテル部とほぼ同じ長さであり、患者の腹壁等の厚みに合わせて例えば1.5cm〜7cm程度である。
バンパー部20の長手方向の長さは、瘻孔から抜けるのを防ぐために瘻孔の直径よりも長い長さとし、例えば2cm〜5cm程度である。
バンパー部20の基端からカテーテル部10の基端までの長さA(カテーテル部10と第一接続部40とを合わせた長さ)と、ガイド部30のカテーテル挿入口31の中央からバンパー部20の先端までの長さBは、図4に示すようにカテーテル部10の基端部をカテーテル挿入口31に挿入したときに、バンパー部20が内臓壁の内側にほぼ水平に吊り下げられるような寸法関係とする。
【0024】
次に、瘻孔カテーテル1の製造について説明する。
図5は、実施の形態1に係る瘻孔カテーテルの構成を説明する図である。図5に示すように、瘻孔カテーテル1は、1本のチューブ部材(管)の周壁を切り欠いて、カテーテル部10、バンパー部20、ガイド部30、第一接続部40、及び第二接続部50を構成している。図5では、周壁を切り欠いて取り除いた部分を網掛け表示している。図示するように、カテーテル部10とバンパー部20との間のチューブの周壁を、周方向に部分的に切り欠き、チューブの残った部分を第一接続部40としている。また、同様にして、バンパー部20とガイド部30との間のチューブの周壁を、周方向に部分的に切り欠き、チューブの残った部分を第二接続部50としている。第一接続部40及び第二接続部50の幅は、湾曲可能な柔軟性と、瘻孔に設置された状態で数か月間使用しても容易には切断されないような耐久性とを考慮して適宜定めることができる。また、ガイド部30は、チューブの周壁を、周方向に部分的に切り欠いて構成されている。そして、ガイド部30の周壁に、カテーテル挿入口31が形成されている。
【0025】
次に、実施の形態1に係る瘻孔カテーテルの作用を説明する。図6は、実施の形態1に係る瘻孔カテーテルの作用を説明する図である。図6(a)〜(g)は、瘻孔を造設した場合、あるいは瘻孔に設置された瘻孔カテーテル1を交換する場合に、瘻孔カテーテル1を患者の瘻孔に装着する際の手順を示している。また、図6では、患者に形成された瘻孔61及び体壁62(胃壁等の内臓壁と腹壁)を併せて図示している。
【0026】
図6(a)に示すように、第二接続部50を曲げてガイド部30の内周面をバンパー部20の外周面に重ねた状態の瘻孔カテーテル1を、第二接続部50が下側(患者側)となる向きで、患者の瘻孔61に挿入する。バンパー部20の外周面がガイド部30の内周面に沿って挿入されるため、直線的にスムースにバンパー部20を挿入することが可能である。瘻孔61に挿入される部分の径は、バンパー部20にガイド部30を重ねた径であり、従来のバンパー型の体内固定部を伸展させたものと比べて径が小さく、瘻孔61に対する侵襲が少ない。
【0027】
さらに、図6(b)に示すように、瘻孔61内にバンパー部20とガイド部30とを重ね合わせた部分を押し下げ、内視鏡等によりバンパー部20が胃壁等の内臓壁の内側に到達したことを確認する。
【0028】
次に、図6(c)に示すように、ガイド部30の位置を体表側で固定しつつ、ガイド部30の内周面に沿って第一接続部40及びカテーテル部10を瘻孔61内に挿入する。ガイド部30の内周面にカテーテル部10の外周面が沿っているため、直線的にスムースにカテーテル部10を瘻孔61に挿入することが可能である。また、瘻孔61に挿入される部分の径は、最大でもカテーテル部10の径にガイド部30を重ねた径であり、カテーテル部10の径に対して極端に大きくなく、瘻孔61に対する侵襲が少ない。このようにしてカテーテル部10を瘻孔61内に押し進めていくと、内臓壁の内側においてバンパー部20はガイド部30から外れる。
【0029】
そして、カテーテル部10の先端が内臓壁の内側に到達するまでカテーテル部10を瘻孔61内に押し進めると、図6(d)に示すような状態となる。すなわち、図6(d)に示すように、バンパー部20は、第一接続部40と第二接続部50とによってカテーテル部10とガイド部30とに吊り下げられた状態となる。このとき、バンパー部20はほぼ水平な向きとなり、瘻孔61に対する抜け止め(体内固定部)としての機能を発揮することができる。また、本実施の形態1では、バンパー部20のチューブの内腔に芯部材21を設けたので、バンパー部20は内臓壁の内側においてほぼまっすぐの形状が維持される。このため、例えば体表側から瘻孔カテーテル1を引き抜く方向に引っ張られた場合でも、バンパー部20が折れ曲がって瘻孔61に引き込まれるのを抑制することができ、固定状態を維持することができる。
【0030】
バンパー部20が内臓壁の内側にほぼ水平に吊り下げられた状態(図6(d))において、体表側には、カテーテル部10の基端側の一部と、所定長さのガイド部30と、カテーテル挿入口31とが露出するような位置関係となるよう、これらの部材のサイズが設定されている。
【0031】
そして、図6(e)に示すように、体表側に出ているガイド部30を折り曲げ、カテーテル挿入口31にカテーテル部10の基端を挿入する。このようにすることで、体表側においてカテーテル部10とガイド部30とが一体化される。この状態のガイド部30は、体表に沿うとともにカテーテル部10の軸方向とほぼ直交する方向に延びており、カテーテル部10が瘻孔61から体内へと引き込まれてしまうのを抑制する抜け止め(体外固定部)として機能することができる。
【0032】
以上の手順により、瘻孔61への瘻孔カテーテル1の装着が終了する。なお、図6では図示しないが、予め瘻孔61にガイドワイヤーを挿入しておき、バンパー部20及びカテーテル部10の内腔にこのガイドワイヤーを挿入してガイドワイヤーに沿ってバンパー部20及びカテーテル部10を瘻孔61に挿入するようにしてもよい。このようにすることで、より確実に瘻孔61に瘻孔カテーテル1を装着することができる。
【0033】
さらに、図6(f)に示すように、アダプター2を、カテーテル部10に取り付ける。アダプター2は、カテーテル部10と栄養剤や薬液等の流体を供給する図示しないチューブとを接続する部材である。図6では、カテーテル部10に挿入されるたけのこ状の挿入部2aと、2つの注入口2b、2cと、各注入口に対応したキャップ2d、2eを備えたアダプター2を例示しているが、用途に合わせて任意のアダプター2を用いればよい。
【0034】
瘻孔カテーテル1にアダプター2を取り付けた状態を図6(g)に示す。栄養剤や薬液を注入する際には、キャップ2d、2eを外して注入口2b、2cにシリンジやチューブ(図示せず)を接続し、栄養剤や薬液を注入する。このようにすることで、注入された栄養剤や薬液は、カテーテル部10の内腔を通り、内臓壁の内側に位置するカテーテル部10の先端部から内臓壁の内側へと入る。
【0035】
なお、瘻孔カテーテル1を瘻孔61から抜去する際には、上述した手順と逆の手順により行うことができる。簡単に説明すると、まず、アダプター2を外し(図6(g)、(f))、ガイド部30を起こしてカテーテル挿入口31からカテーテル部10を抜き(図6(e)、(d))、瘻孔61に挿入されたガイド部30に沿ってカテーテル部10を瘻孔61から離れる方向に引き抜く(図6(c))。このようにすることで、内臓壁の内側のバンパー部20はほぼ水平状態から起立状態となって瘻孔61を通過し、ガイド部30とバンパー部20をともに瘻孔61から抜去することができる(図6(c)、(b)、(a))。
【0036】
以上のように、本実施の形態1の瘻孔カテーテル1は、他の器具を用いることなく、瘻孔カテーテル1それ単体で瘻孔61に装着、抜去することができる。このため、従来のようにシリンジや伸展具などの交換用の器具を医療従事者が管理する必要もなく、医療従事者の器具の管理負担を軽減することができる。また、瘻孔カテーテル1は、他の器具を用いることもなく簡便な手技で瘻孔61に装着、抜去できるので、術者の作業負担を軽減できる。簡便な手技で瘻孔61に装着、抜去できることから、作業時間も短縮でき、術者の負担が軽減できるとともに患者の負担も軽減できる。
【0037】
また、本実施の形態1の瘻孔カテーテル1は、丸く反った周囲壁を有するガイド部30に沿ってバンパー部20とカテーテル部10を瘻孔61に挿入、抜去することができる。このため、ガイド部30が瘻孔61を保護する機能を発揮し、バンパー部20とカテーテル部10を瘻孔61に挿入、抜去する際に瘻孔61への刺激を軽減することができる。
【0038】
また、本実施の形態1の瘻孔カテーテル1において瘻孔61を通過する部分の径は、バンパー部20にガイド部30を重ねた径、またはカテーテル部10にガイド部30を重ねた径であり、従来のバンパー型の体内固定部を伸展させたものと比べて径が小さい。このため、従来のバンパー型の体内固定部と比べて、瘻孔61に対する侵襲を低減することができる。
【0039】
また、本実施の形態1では、瘻孔カテーテル1を、1本のチューブ(管)により構成した。例えば異なる部材同士を接着する場合、接着部分が外れてしまうというリスクがあるが、本実施の形態の瘻孔カテーテル1によればそのようなリスクがない。
【0040】
なお、本実施の形態1では、1本のチューブの周壁を切り欠いて瘻孔カテーテル1を構成する例を示したが、複数の部材を組み合わせて瘻孔カテーテル1を構成してもよい。例えば、ポリウレタン樹脂またはシリコーン樹脂でカテーテル部10、第一接続部40、第二接続部50、及びガイド部30をそれぞれ構成するとともに、ABS樹脂またはポリエチレン樹脂でバンパー部20を構成し、各部材を接着または溶着により接合することができる。
【0041】
実施の形態2.
図7は、実施の形態2に係る瘻孔カテーテルを説明する図である。本実施の形態2では、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0042】
図7に示す瘻孔カテーテル1のカテーテル部10には、目盛り11が設けられている。目盛り11は、瘻孔61へのカテーテル部10の挿入の深さを示すものである。このようにすることで、術者は、瘻孔61へのカテーテル部10の挿入の程度を容易に把握することができ、円滑な装着操作を行うことができる。
【0043】
実施の形態3.
図8は、実施の形態3に係る瘻孔カテーテルを説明する図である。本実施の形態3に係る瘻孔カテーテルは、複数の体壁の厚みに対応可能としたものである。本実施の形態3では、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0044】
図8に示すように、ガイド部30には、複数のカテーテル挿入口31a、31b、31cが設けられている。カテーテル挿入口31a、31b、31cは、ガイド部30の軸方向に沿って、所定間隔をおいて形成されている。なお、図8では3つのカテーテル挿入口を設ける例を示しているが、カテーテル挿入口の数はこれに限定されない。
また、カテーテル部10には、実施の形態2と同様にして目盛り11が設けられている。
【0045】
図9は、実施の形態3に係る瘻孔カテーテルの作用を説明する図である。図9(a)、(b)、(c)は、それぞれ、カテーテル挿入口31a、31b、31cにカテーテル部10を挿入した状態を示している。図9に示すように、患者の瘻孔61に瘻孔カテーテルを挿入した後、体表側に露出しているカテーテル部10を、カテーテル挿入口31a、31b、31cのいずれかに挿入する。このように、カテーテル挿入口31a、31b、31cのいずれにカテーテル部10を挿入するかによって、バンパー部20から体表までの距離を変えることができるので、異なる厚みの体壁を有する患者に対応することができる。すなわち、患者の体壁の厚みに合わせて、カテーテル挿入口31a、31b、31cのいずれかを選択してカテーテル部10を挿入する。その際、術者は、カテーテル部10に設けられた目盛り11を参考にしてカテーテル部10の挿入深さを把握し、カテーテル挿入口31a、31b、31cのいずれを用いるかを決定することができる。
【0046】
このように、本実施の形態3によれば、実施の形態1と同様の効果に加え、異なる厚みの体壁を有する患者に対応した瘻孔カテーテルを得ることができるという効果を奏する。
【符号の説明】
【0047】
1 瘻孔カテーテル、2 アダプター、2a 挿入部、2b 注入口、2c 注入口、2d キャップ、2e キャップ、10 カテーテル部、11 目盛り、20 バンパー部、21 芯部材、30 ガイド部、31 カテーテル挿入口、31a カテーテル挿入口、31b カテーテル挿入口、31c カテーテル挿入口、40 第一接続部、50 第二接続部、61 瘻孔、62 体壁。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒状のカテーテル部と、
棒状のバンパー部と、
可撓性を有し前記カテーテル部の外周面及び前記バンパー部の外周面に重ね合わせ可能に湾曲した周壁を備え、該周壁には前記カテーテル部を挿入可能なカテーテル挿入口が形成されたガイド部と、
可撓性を有し、前記カテーテル部と前記バンパー部とを軸方向に連なるように接続する第一接続部と、
可撓性を有し、前記バンパー部と前記ガイド部とを軸方向に連なるように接続する第二接続部とを備えた
ことを特徴とする瘻孔カテーテル。
【請求項2】
前記バンパー部及び前記カテーテル部は、瘻孔に挿入された前記ガイド部に沿って挿入、抜去される
ことを特徴とする請求項1記載の瘻孔カテーテル。
【請求項3】
前記第二接続部が曲げられるとともに重ねられた状態の前記バンパー部及び前記ガイド部が、軸方向に沿って瘻孔に挿入され、
前記瘻孔に挿入された前記ガイド部に沿って、さらに前記第一接続部及び前記カテーテル部が瘻孔に挿入されることで、内臓壁の内側において前記第一接続部及び前記第二接続部により前記バンパー部がほぼ水平に吊り下げられて前記バンパー部が体内固定部として機能する
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の瘻孔カテーテル。
【請求項4】
前記バンパー部が内臓壁の内側に留置された状態において、前記カテーテル部の基端側及び前記ガイド部の前記カテーテル挿入口は、体表側に露出するように構成されており、
体表側に露出した前記ガイド部が曲げられて前記カテーテル挿入口に前記カテーテル部の基端側が挿入されることにより、前記ガイド部が体外固定部として機能する
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の瘻孔カテーテル。
【請求項5】
前記バンパー部は、内腔を有する筒状部材で構成されており、
前記筒状部材の内腔内に剛性を有する芯部材が挿入されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の瘻孔カテーテル。
【請求項6】
前記カテーテル部、前記バンパー部、前記ガイド部、前記第一接続部、及び前記第二接続部は、柔軟性を有する1本のチューブ部材からなり、
前記チューブ部材の周壁を周方向に部分的に切り欠いて、前記ガイド部、第一接続部、及び第二接続部が形成されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の瘻孔カテーテル。
【請求項7】
前記ガイド部に前記カテーテル挿入口を複数設けた
ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の瘻孔カテーテル。
【請求項1】
略円筒状のカテーテル部と、
棒状のバンパー部と、
可撓性を有し前記カテーテル部の外周面及び前記バンパー部の外周面に重ね合わせ可能に湾曲した周壁を備え、該周壁には前記カテーテル部を挿入可能なカテーテル挿入口が形成されたガイド部と、
可撓性を有し、前記カテーテル部と前記バンパー部とを軸方向に連なるように接続する第一接続部と、
可撓性を有し、前記バンパー部と前記ガイド部とを軸方向に連なるように接続する第二接続部とを備えた
ことを特徴とする瘻孔カテーテル。
【請求項2】
前記バンパー部及び前記カテーテル部は、瘻孔に挿入された前記ガイド部に沿って挿入、抜去される
ことを特徴とする請求項1記載の瘻孔カテーテル。
【請求項3】
前記第二接続部が曲げられるとともに重ねられた状態の前記バンパー部及び前記ガイド部が、軸方向に沿って瘻孔に挿入され、
前記瘻孔に挿入された前記ガイド部に沿って、さらに前記第一接続部及び前記カテーテル部が瘻孔に挿入されることで、内臓壁の内側において前記第一接続部及び前記第二接続部により前記バンパー部がほぼ水平に吊り下げられて前記バンパー部が体内固定部として機能する
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の瘻孔カテーテル。
【請求項4】
前記バンパー部が内臓壁の内側に留置された状態において、前記カテーテル部の基端側及び前記ガイド部の前記カテーテル挿入口は、体表側に露出するように構成されており、
体表側に露出した前記ガイド部が曲げられて前記カテーテル挿入口に前記カテーテル部の基端側が挿入されることにより、前記ガイド部が体外固定部として機能する
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の瘻孔カテーテル。
【請求項5】
前記バンパー部は、内腔を有する筒状部材で構成されており、
前記筒状部材の内腔内に剛性を有する芯部材が挿入されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の瘻孔カテーテル。
【請求項6】
前記カテーテル部、前記バンパー部、前記ガイド部、前記第一接続部、及び前記第二接続部は、柔軟性を有する1本のチューブ部材からなり、
前記チューブ部材の周壁を周方向に部分的に切り欠いて、前記ガイド部、第一接続部、及び第二接続部が形成されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の瘻孔カテーテル。
【請求項7】
前記ガイド部に前記カテーテル挿入口を複数設けた
ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の瘻孔カテーテル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2013−59560(P2013−59560A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201071(P2011−201071)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000228888)日本コヴィディエン株式会社 (170)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000228888)日本コヴィディエン株式会社 (170)
【Fターム(参考)】
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