癌および免疫障害の処置および予防のための抗CD70抗体ならびにその使用
【課題】癌および免疫障害の処置および予防のための抗CD70抗体ならびにその使用の提供。
【解決手段】治療剤と結合体化することなく細胞毒性作用、細胞静止作用または免疫抑制作用を誘導する抗CD70抗体および誘導体等のCD70結合剤、ならびに抗体または誘導体を含む医薬組成物およびキットが開示される。被験体にCD70結合剤を投与する工程を包含する、CD70を発現する癌および免疫障害の処置のための方法および予防のための方法も開示される。本発明により、被験体内のCD70を発現する癌を処置するための方法が提供される。
【解決手段】治療剤と結合体化することなく細胞毒性作用、細胞静止作用または免疫抑制作用を誘導する抗CD70抗体および誘導体等のCD70結合剤、ならびに抗体または誘導体を含む医薬組成物およびキットが開示される。被験体にCD70結合剤を投与する工程を包含する、CD70を発現する癌および免疫障害の処置のための方法および予防のための方法も開示される。本発明により、被験体内のCD70を発現する癌を処置するための方法が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本出願は、米国仮特許出願第60/619,018号(2004年10月15日出願)、および米国仮特許出願第60/645,355号(2005年1月19日出願)の優先権を主張する。これらの各々は、本明細書中でその全体が参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
CD70は、各種の正常および悪性の細胞型により発現される細胞膜結合/分泌分子の腫瘍壊死因子(TNF)ファミリーの一員である。CD70の一次アミノ酸(AA)配列により、カルボキシ末端が細胞外に曝され、アミノ酸末端が形質膜の細胞質ゾル側に見られる膜貫通タイプIIのタンパク質が予測される(非特許文献1;非特許文献2)。ヒトCD70は、20AA細胞質ドメイン、18AA膜貫通ドメイン、および2つの潜在的N結合グリコシル化部位を有する155AA細胞質外ドメインから構成される(非特許文献1;非特許文献2)。放射性同位元素で標識されたCD70発現細胞の抗CD70抗体による特異的免疫沈澱は、29および50kDaのポリペプチドを生じる(非特許文献2;非特許文献3)。特に、構造鎖C、D、HおよびI中では、TNF−アルファおよびTNF−ベータに対する相同性に基づいて、CD70についての三量体構造が予測される(非特許文献4)。
【0003】
初期の免疫組織学的研究において、CD70が、扁桃腺、皮膚および消化器官中の胚中心B細胞と稀なT細胞上で発現することが明らかになった(非特許文献5)。その後、最近抗原活性化されたTおよびBリンパ球の細胞表面上でCD70が発現することが報告されており、その発現は抗原刺激を取り除くと弱まる(非特許文献6;非特許文献7)。リンパ系内では、活性化されたナチュラルキラー細胞(非特許文献8)およびマウスの成熟末梢樹状細胞(非特許文献9)もCD70を発現する。非リンパ由来細胞では、胸腺髄質上皮細胞上でCD70が検出されている(非特許文献5;非特許文献10)。
【0004】
正常細胞上での発現に加え、リンパ腫、癌腫および神経性腫瘍を始めとする異なる種類の癌におけるCD70の発現が報告されている。悪性B細胞では、散在性大B細胞リンパ腫の71%、濾胞中心リンパ腫の33%、マントルリンパ腫の25%、およびB−CLLの50%がCD70を発現することが報告されている(非特許文献11)。CD70は、ホジキン病の悪性ホジキン細胞およびリード・シュテルンベルク細胞上で、他のリンパ活性化マーカーとともに発現することが多い(非特許文献12)。ある報告では、胸腺癌腫の88%(8例のうち7例)および異型性胸腺腫の20%(5例のうち1例)においてCD70が発現したと報じている(非特許文献10)。CD70が検出された第2タイプの癌腫は上咽頭癌腫である。ある研究では、非分化上咽頭癌腫から得られた急速凍結腫瘍生検の80%(20例のうち16例)においてCD70が存在すると報告している(非特許文献13)。CD70は、脳腫瘍細胞、特にグリオーマ細胞系、固体ヒトグリオーマおよび髄膜腫上でも検出されている(非特許文献14;非特許文献15)。
【0005】
CD70の受容体は、約55kDaのグリコシル化されたタイプIの膜貫通タンパク質であるCD27である(非特許文献2;非特許文献5)。CD70はCD27Lと称される場合もある。細胞表面上でホモダイマーとして存在するCD27(非特許文献16)は、細胞外ドメインの約40個のアミノ酸からなるシステインが豊富な繰返し単位により定められるTNF受容体・スーパーファミリーの一員である(非特許文献17;非特許文献18)。CD27は、胸腺細胞、NK、TおよびB細胞により発現される(非特許文献19;非特許文献20)。休止T細胞上では、CD27は構成的に発現するが、抗原誘発により、CD27の発現はさらにアップレギュレートされる(非特許文献21;非特許文献22)。さらに、T細胞抗原受容体複合体単独で、または付属分子CD28と組み合わせてT細胞を誘発することにより、活性化T細胞から可溶性CD27が放出される(非特許文献23)。ナイーブB細胞はCD27を発現しないが、発現が誘導され、CD70とは対照的に、B細胞の抗原誘発後も維持される(非特許文献24;非特許文献25)。
【0006】
正常なB系統細胞においてCD27およびCD70の発現が制限されていたこととは著しく対照的に、多くのB細胞非ホジキンリンパ腫および白血病では、CD27およびCD70はともに共発現することが多い。これにより、これらの細胞上において、オートクラインループの形態をした機能的なCD27/CD70の相互作用が潜在的に導かれ、CD27シグナル伝達およびCD70誘導増殖をもたらすことにより悪性細胞の成長にとって有利になる(非特許文献11)。
【0007】
細胞により仲介される自己免疫病におけるCD70/CD27共刺激の役割は、実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)のモデルで調査されている(非特許文献26)。抗マウスCD70mAb(クローンFR−70)をインビボ投与した場合、BおよびT細胞数、T細胞プライミング、Ig産生またはTH1/TH2細胞バランスに影響を与えることなく、抗原誘導TNF−アルファ産生を阻害することによりEAEの発症が抑制された。しかしながら、そのような処置は確立した病気にはほとんど有効性を持たなかった。
【0008】
移植片対宿主病(GVHD)は、骨髄ドナーと移植片の受容者との間で組織適合性抗原が異なる場合に、同種間骨髄移植(BMT)療法の結果生じることが多く、致命的となることが多い、主要なTH1により仲介される免疫応答である(非特許文献27)。GVHDは、移植されたドナー骨髄に存在する成熟T細胞によって惹起される、宿主組織に対する免疫反応である(非特許文献28)。重症複合免疫不全症患者における母性T細胞移植の場合のように、同種間反応を特徴とする条件下において、インビボでCD4+細胞上でCD70が検出されたことは注目すべきことである(非特許文献29)。GVHDの予防は、シクロスポリン、コルチコステロイドまたはメトトレキセート等の汎T細胞免疫抑制剤により行なわれる。しかしながら、これらの物質は特異的ではなく、重大な副作用を起こす。
【0009】
上記のように、CD70は、正常な非造血細胞上では発現されない。CD70の発現は、生理学的条件下では、多くの場合、最近抗原活性化されたTおよびB細胞に限定され、その発現は、抗原刺激が終わるとダウンレギュレートされる。CD70が、例えば、関節リウマチ(非特許文献29)、乾癬性関節炎(非特許文献29)、および狼瘡(非特許文献30)等の免疫障害に寄与し得ることは、動物モデルによる検証により示されている。炎症反応における潜在的な役割に加えて、CD70は、リンパ腫B細胞、ホジキン/リード・シュテルンベルク細胞、神経性悪性細胞、および多くの癌腫を含む各種の形質転換細胞上でも発現する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Bowmanら,J.Immunol.,1994年,第152巻,p.1756−61
【非特許文献2】Goodwinら,Cell,1993年,第73巻,p.447−56
【非特許文献3】Hintzenら,J.Immunol.,1994年,第152巻,p.1762−73
【非特許文献4】Petschら,Mol.Immunol.,1995年,第32巻,p.761−72
【非特許文献5】Hintzenら,Int.Immunol.,1994年,第6巻,p.477−80
【非特許文献6】Lensら,Eur.J.Immunol.,1996年,第26巻,p.2964−71
【非特許文献7】Lensら,Immunology,1997年,第90巻,p.38−45
【非特許文献8】Orengoら,Clin.Exp.Immunol.,1997年,第107巻,p.608−13
【非特許文献9】Akibaら,J.Exp.Med.,2000年,第191巻,p.375−80
【非特許文献10】Hishimaら,Am.J.Surg.Pathol.,2000年,第24巻,p.742−46
【非特許文献11】Lensら,Br.J.Haematol.,1999年,第106巻,p.491−503
【非特許文献12】GrussおよびKadin,Bailieres Clin.Haematol.,1996年,第9巻,p.417−46
【非特許文献13】Agathanggelouら,Am J Path,1995年,第147巻,p.1152−60
【非特許文献14】Held−FeindtおよびMentlein,Int.J.Cancer,2002年,第98巻,p.352−56
【非特許文献15】Wischlusenら,Can.Res.,2002年,第62巻,p.2592−99
【非特許文献16】Gravesteinら,Eur.J.Immunol.,1993年,第23巻,p.943−50
【非特許文献17】Smithら,Science,1990年,第248巻,p.1019−23
【非特許文献18】Locksleyら,Cell,2001年,第104巻,p.487−501
【非特許文献19】Hintzenら,Immunol Today,1994年,第15巻,p.307−11
【非特許文献20】Lensら,Semin.Immunol.,1998年,第10巻,p.491−99
【非特許文献21】de Jongら,J.Immunol.,1991年,第146巻,p.2488−94
【非特許文献22】Hintzenら,J.Immunol.,1993年,第151巻,p.2426−35
【非特許文献23】Hintzenら,J.Immunol.,1991年,第147巻,p.29−35
【非特許文献24】Jacquotら,J.Immunol.,1997年,第159巻,p.2652−57
【非特許文献25】Kobataら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1995年,第92巻,p.11249−53
【非特許文献26】Nakajimaら,J.Neuroimmunol.,2000年,第109巻,p.188−96
【非特許文献27】den Haanら,Science,1995年,第268巻,p.1476
【非特許文献28】GiraltおよびChamplin,Blood,1994年,第84巻,p.3603
【非特許文献29】Brugnoniら,Immunol.Lett,1997年,第55巻,p.99−104
【非特許文献30】Oelkeら,Arthritis Rheum.,2004年,第50巻,p.1850−60
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、CD70を発現しない細胞に対しては特に望ましくない作用を及ぼすことなく、CD70を発現する細胞に対して臨床的に有用な細胞毒性作用、細胞静止作用または免疫抑制作用を及ぼすことが可能な抗CD70抗体および他のCD70結合剤が必要とされる。そのような結合剤は、CD70を発現する癌、またはCD70を発現する細胞により仲介される免疫障害に対して有用である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の簡単な説明)
本発明は、CD70抗体および他のCD70結合剤を提供し、さらに、そのような結合剤を、CD70を発現する細胞が存在するCD70を発現する癌および免疫障害の予防または処置のために使用することに関する方法を提供する。抗体または他の結合剤は、CD70に結合し、治療剤と結合体化しない場合に、CD70を発現する細胞に対して細胞毒性作用、細胞静止作用および/または免疫抑制作用を示す。
【0013】
1つの局面では、被験体内のCD70を発現する癌を処置する方法が提供される。この方法は、一般に、CD70に結合する抗原結合領域および上記被験体において少なくともADC、ADCC、ADCPまたはCDC応答を仲介する少なくとも1つのエフェクタードメインを有する結合剤を効果的な量で上記被験体に投与する工程を含み、上記結合剤は、治療剤と結合体化しない場合、細胞静止作用または細胞毒性作用を及ぼす。このCD70結合剤は、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、または完全なヒト抗体等の抗体とすることができる。この抗体は、例えば、ヒトIgMまたはIgG抗体のエフェクタードメインを含むようにすることができる。上記IgG抗体は、例えば、ヒトIgG1またはIgG3サブタイプとすることができる。いくつかの実施形態では、上記抗体はヒトの定常領域を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、上記抗体は、CD70との結合に関して、モノクローナル抗体1F6または2F2と競合する。他の実施形態では、上記抗体は、ヒト化1F6もしくは2F2またはキメラ1F6もしくは2F2抗体である。上記抗体は、例えば、一価、二価または多価とすることができる。
【0015】
上記CD70を発現する癌は、例えば、腎腫瘍、B細胞リンパ腫、結腸癌腫、ホジキン病、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、鼻咽頭癌腫、脳腫瘍または胸腺癌腫とすることができる。腎腫瘍は、例えば、腎細胞癌腫とすることができる。脳腫瘍は、例えば、神経膠腫、グリア芽腫、または髄膜腫とすることができる。上記被験体は、例えば、ヒト等の哺乳動物とすることができる。
【0016】
他の局面では、免疫障害を処置するための方法が提供される。この方法は、CD70に結合する抗原結合領域および上記被験体において少なくともADC、ADCC、ADCPまたはCDC応答を仲介する少なくとも1つのエフェクタードメインを有する結合剤を効果的な量で上記被験体に投与する工程を含み、上記結合剤は、治療剤と結合体化しない場合、細胞静止作用、細胞毒性作用、または免疫抑制作用を及ぼす。このCD70結合剤は、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、または完全なヒト抗体等の抗体とすることができる。この抗体は、例えば、ヒトIgMまたはIgG抗体のエフェクタードメインを含むようにすることができる。上記IgG抗体は、例えば、ヒトIgG1またはIgG3サブタイプとすることができる。いくつかの実施形態では、上記抗体はヒトの定常領域を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、上記抗体は、CD70との結合に関して、モノクローナル抗体1F6または2F2と競合する。他の実施形態では、上記抗体は、ヒト化1F6もしくは2F2またはキメラ1F6もしくは2F2抗体である。上記抗体は、例えば、一価、二価または多価とすることができる。
【0018】
上記免疫障害は、例えば、T細胞仲介免疫障害とすることができる。いくつかの実施形態では、上記T細胞仲介免疫障害は、CD70を発現する活性化T細胞を含む。いくつかの実施形態では、休止T細胞は、抗体/医薬結合体の投与により大きく低減しない。上記T細胞仲介免疫障害はまた、例えば、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、タイプI糖尿病、喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、血小板減少紫斑病、多発性硬化症、乾癬、シェーグレン症候群、ハシモト甲状腺炎、グレーブス病、原発性胆汁肝硬変、ウェゲナー肉芽腫症、結核、または移植片対宿主病とすることもできる。他の実施形態では、上記免疫障害は活性化Bリンパ球障害である。上記被験体は、例えば、ヒト等の哺乳動物とすることができる。
【0019】
他の局面では、CD70に結合する抗原結合領域を含む抗体が提供される。この抗体は、被験体において少なくともADC、ADCC、ADCPまたはCDC応答を仲介する少なくとも1つのエフェクタードメインを含み、CD70を発現する癌に対して細胞静止作用または細胞毒性作用を及ぼし、この細胞静止作用または細胞毒性作用は、細胞静止剤または細胞毒性剤と結合体化しない場合にもたらされ、上記抗体は、モノクローナル抗体1F6または2F2ではない。上記抗体は、CD70との結合に関して、モノクローナル抗体1F6および2F2と競合し得る。
【0020】
他の局面では、上記抗体は、CD70に結合する抗原結合領域および被験体において少なくともADC、ADCC、ADCPまたはCDC応答を仲介する少なくとも1つのエフェクタードメインを含み、CD70を発現する免疫障害に対して免疫抑制作用を及ぼし、この免疫抑制作用は、細胞静止剤または細胞毒性剤と結合体化しない場合にもたらされ、上記抗体は、モノクローナル抗体1F6または2F2ではない。上記抗体は、CD70との結合に関して、モノクローナル抗体1F6および2F2と競合し得る。
【0021】
関連する局面では、CD70を発現する癌または免疫障害を処置するための医薬組成物も提供される。この組成物は、CD70結合抗体、および少なくとも1つの薬学的に適合性のある成分を含む。さらに、凍結乾燥されたCD70結合抗体を含む容器、および薬学的に許容される希釈液を含む第2の容器を含む医薬キットが提供される。
【0022】
本発明は、下記の発明の詳細な説明、発明の特定の実施形態の非限定的な例および添付の図面を参照することにより、さらに十分に理解することができる。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
被験体内のCD70を発現する癌を処置するための方法であって、
CD70に結合する抗原結合領域および該被験体において少なくともADC、ADCC、ADCPまたはCDC応答を仲介する少なくとも1つのエフェクタードメインを有する結合剤を効果的な量で該被験体に投与する工程を包含し、該結合剤は、治療剤と結合体化しない場合、細胞静止作用または細胞毒性作用を及ぼし、該結合剤は治療剤と結合体化しない、方法。
(項目2)
前記結合剤は抗体である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、または完全なヒト抗体である、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記抗体はヒト化抗体である、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記ヒト化抗体は、ヒトIgMまたはIgG抗体のエフェクタードメインを含む、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記IgG抗体は、ヒトIgG1またはIgG3サブタイプである、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記抗体はキメラ抗体である、項目3に記載の方法。
(項目8)
前記キメラ抗体は、ヒトIgMまたはIgG抗体のエフェクタードメインを含む、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記IgG抗体は、ヒトIgG1またはIgG3サブタイプである、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記抗体はヒトの定常領域を含む、項目3に記載の方法。
(項目11)
前記抗体は、CD70との結合に関して、モノクローナル抗体1F6または2F2と競合する、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記抗体は、以下:
(a)配列番号6に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するH1領域;
(b)配列番号8に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するH2領域;
(c)配列番号10に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するH3領域;
(d)配列番号16に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するL1領域;
(e)配列番号18に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するL2領域;
(f)配列番号20に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するL3領域;
(g)配列番号26に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するH1領域;
(h)配列番号28に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するH2領域;
(i)配列番号30に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するH3領域;
(j)配列番号36に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するL1領域;
(k)配列番号38に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するL2領域;および
(l)配列番号40に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するL3領域
からなる群から選択される少なくとも1つのポリペプチド領域を含む、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記抗体は、前記(a)、(b)および(c)のH1領域、H2領域およびH3領域;または前記(g)、(h)および(i)のH1領域、H2領域およびH3領域を含む、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)および(f)のポリペプチド領域は、それぞれ、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号16、配列番号18および配列番号20に示すアミノ酸配列を有する、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記(a)、(b)および(c)のH1領域、H2領域およびH3領域を含む抗体は、前記(d)、(e)および(f)のL1領域、L2領域およびL3領域をさらに含むか;または
前記(g)、(h)および(i)のH1領域、H2領域およびH3領域を含む抗体は、前記(j)、(k)および(l)のL1領域、L2領域およびL3領域をさらに含む、項目13に記載の方法。
(項目16)
前記抗体は、配列番号2または配列番号22に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域を含む、項目13に記載の方法。
(項目17)
前記重鎖可変領域は、配列番号2または配列番号22に示すアミノ酸配列を有する、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記配列番号2または配列番号22に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域を含む前記抗体は、それぞれ、配列番号12または配列番号32に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域をさらに含む、項目16に記載の方法。
(項目19)
前記軽鎖可変領域は、配列番号12または配列番号32に示すアミノ酸配列を有する、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記抗体は、ヒト化1F6またはヒト化2F2である、項目4に記載の方法。
(項目21)
前記抗体は、キメラ1F6またはキメラ2F2である、項目7に記載の方法。
(項目22)
前記抗体は多価である、項目1に記載の方法。
(項目23)
前記CD70を発現する癌は、多発性骨髄腫、腎腫瘍、B細胞リンパ腫、結腸癌腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、鼻咽頭癌腫、脳腫瘍または胸腺癌腫からなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目24)
前記腎腫瘍は腎細胞癌腫である、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記脳腫瘍は、神経膠腫、グリア芽腫、または髄膜腫である、項目23に記載の方法。
(項目26)
前記被験体はヒトである、項目1に記載の方法。
(項目27)
被験体内の免疫障害を処置するための方法であって、
CD70に結合する抗原結合領域および該被験体において少なくともADC、ADCC、ADCPまたはCDC応答を仲介する少なくとも1つのエフェクタードメインを有する結合剤を効果的な量で該被験体に投与する工程を包含し、該結合剤は、治療剤と結合体化しない場合、細胞静止作用、細胞毒性作用、または免疫抑制作用を及ぼし、該結合剤は治療剤と結合体化しない、方法。
(項目28)
前記結合剤は抗体である、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、または完全なヒト抗体である、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記抗体はヒト化抗体である、項目28に記載の方法。
(項目31)
前記ヒト化抗体は、ヒトIgMまたはIgG抗体のエフェクタードメインを含む、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記IgG抗体は、ヒトIgG1またはIgG3サブタイプである、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記抗体はキメラ抗体である、項目28に記載の方法。
(項目34)
前記キメラ抗体は、ヒトIgMまたはIgG抗体のエフェクタードメインを含む、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記IgG抗体は、ヒトIgG1またはIgG3サブタイプである、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記抗体はヒトの定常領域を含む、項目28に記載の方法。
(項目37)
前記抗体は、CD70との結合に関して、モノクローナル抗体1F6または2F2と競合する、項目27に記載の方法。
(項目38)
前記抗体は、以下:
(a)配列番号6に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するH1領域;
(b)配列番号8に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するH2領域;
(c)配列番号10に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するH3領域;
(d)配列番号16に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するL1領域;
(e)配列番号18に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するL2領域;
(f)配列番号20に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するL3領域;
(g)配列番号26に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するH1領域;
(h)配列番号28に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するH2領域;
(i)配列番号30に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するH3領域;
(j)配列番号36に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するL1領域;
(k)配列番号38に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するL2領域;および
(l)配列番号40に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するL3領域
からなる群から選択される少なくとも1つのポリペプチド領域を含む、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記抗体は、前記(a)、(b)および(c)のH1領域、H2領域およびH3領域;または前記(g)、(h)および(i)のH1領域、H2領域およびH3領域を含む、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)および(f)のポリペプチド領域は、それぞれ、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号16、配列番号18および配列番号20に示すアミノ酸配列を有する、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記(a)、(b)および(c)のH1領域、H2領域およびH3領域を含む抗体は、前記(d)、(e)および(f)のL1領域、L2領域およびL3領域をさらに含むか;または
前記(g)、(h)および(i)のH1領域、H2領域およびH3領域を含む抗体は、前記(j)、(k)および(l)のL1領域、L2領域およびL3領域をさらに含む、項目39に記載の方法。
(項目42)
前記抗体は、配列番号2または配列番号22に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域を含む、項目39に記載の方法。
(項目43)
前記重鎖可変領域は、配列番号2または配列番号22に示すアミノ酸配列を有する、項目42に記載の方法。
(項目44)
前記配列番号2または配列番号22に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域を含む前記抗体は、それぞれ、配列番号12または配列番号32に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域をさらに含む、項目42に記載の方法。
(項目45)
前記軽鎖可変領域は、配列番号12または配列番号32に示すアミノ酸配列を有する、項目44に記載の方法。
(項目46)
前記抗体は、キメラ抗体1F6またはキメラ抗体2F2あるいはヒト化抗体1F6またはヒト化抗体2F2である、項目45に記載の方法。
(項目47)
前記抗体は、ヒト化抗体1F6またはヒト化抗体2F2である、項目27に記載の方法。
(項目48)
前記抗体は多価である、項目27に記載の方法。
(項目49)
前記免疫障害はT細胞仲介免疫障害である、項目27に記載の方法。
(項目50)
前記T細胞仲介免疫障害は、CD70を発現する活性化T細胞を含む、項目49に記載の方法。
(項目51)
休止T細胞は、前記抗体/医薬結合体の投与により大きく低減しない、項目50に記載の方法。
(項目52)
前記T細胞仲介免疫障害は、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、タイプI糖尿病、喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、免疫性血小板減少紫斑病、多発性硬化症、乾癬、シェーグレン症候群、ハシモト甲状腺炎、グレーブス病、原発性胆汁肝硬変、ウェゲナー肉芽腫症、結核、ワルデンストレームマクログロブリン血症、または移植片対宿主病である、項目49に記載の方法。
(項目53)
前記免疫障害は活性化Bリンパ球障害である、項目27に記載の方法。
(項目54)
前記被験体はヒトである、項目27に記載の方法。
(項目55)
CD70に結合する抗原結合領域および被験体において少なくともADC、ADCC、ADCPまたはCDC応答を仲介する少なくとも1つのエフェクタードメインを含み、CD70を発現する癌に対して細胞静止作用または細胞毒性作用を及ぼす抗体であって、該細胞静止作用または細胞毒性作用は、細胞静止剤または細胞毒性剤と結合体化しない場合にもたらされ、該抗体は、モノクローナル抗体1F6またはモノクローナル抗体2F2ではない、抗体。
(項目56)
前記抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、または完全なヒト抗体である、項目55に記載の抗体。
(項目57)
前記抗体は、ヒトIgG1またはIgG3サブタイプである、項目56に記載の抗体。
(項目58)
CD70との結合に関して、モノクローナル抗体1F6およびモノクローナル抗体2F2と競合する抗原結合領域および被験体において少なくともADC、ADCC、ADCPまたはCDC応答を仲介する少なくとも1つのエフェクタードメインを含み、CD70を発現する癌に対して細胞静止作用または細胞毒性作用を及ぼす抗体であって、該細胞静止作用または細胞毒性作用は、細胞静止剤または細胞毒性剤と結合体化しない場合にもたらされ、該抗体は、モノクローナル抗体1F6またはモノクローナル抗体2F2ではない、抗体。
(項目59)
前記抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、または完全なヒト抗体である、項目58に記載の抗体。
(項目60)
前記抗体は、ヒトIgG1またはIgG3サブタイプである、項目59に記載の抗体。
(項目61)
CD70に結合する抗原結合領域および被験体において少なくともADC、ADCC、ADCPまたはCDC応答を仲介する少なくとも1つのエフェクタードメインを含み、CD70を発現する免疫障害に対して免疫抑制作用を及ぼす抗体であって、該免疫抑制作用は、細胞静止剤または細胞毒性剤と結合体化しない場合にもたらされ、該抗体は、モノクローナル抗体1F6またはモノクローナル抗体2F2ではない、抗体。
(項目62)
前記抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、または完全なヒト抗体である、項目61に記載の抗体。
(項目63)
前記抗体は、ヒトIgG1またはIgG3サブタイプである、項目62に記載の抗体。
(項目64)
CD70との結合に関して、モノクローナル抗体1F6およびモノクローナル抗体2F2と競合する抗原結合領域および被験体において少なくともADC、ADCC、ADCPまたはCDC応答を仲介する少なくとも1つのエフェクタードメインを含み、CD70を発現する免疫障害に対して免疫抑制作用を及ぼす抗体であって、該免疫抑制作用は、細胞静止剤または細胞毒性剤と結合体化しない場合にもたらされ、該抗体は、モノクローナル抗体1F6またはモノクローナル抗体2F2ではない、抗体。
(項目65)
前記抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、または完全なヒト抗体である、項目64に記載の抗体。
(項目66)
前記抗体は、ヒトIgG1またはIgG3サブタイプである、項目65に記載の抗体。
(項目67)
CD70を発現する癌または免疫障害を処置するための医薬組成物であって、該組成物は、CD70に結合する抗原結合領域および被験体において少なくともADC、ADCC、ADCPまたはCDC応答を仲介する少なくとも1つのエフェクタードメインを含む抗体を含有し、該抗体は、治療剤および少なくとも1つの薬学的に適合性のある成分と結合体化しない、組成物。
(項目68)
項目55〜64のうちいずれか1つに記載の抗体を含む容器であって、該抗体は凍結乾燥されている、容器と、
薬学的に許容される希釈液を含む第2の容器と、
を含む、医薬キット。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】1F6のVLおよびVHcDNAおよびアミノ酸配列。1F6の軽鎖(VL、上側の2つのパネル;配列番号11および12)および重鎖(VH、下側の2つのパネル;配列番号1および2)可変領域のコード配列およびアミノ酸配列を決定した。VLおよびVHの相補性決定領域(CDR)を、Kabatら(1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Washington,DC,US Department of Health and Public Services;ChothiaおよびLesk,1987,J.Mol.Biol.196:901−917)に記載の基準に基づいて同定した。CDRに対応するアミノ酸残基には下線を引いている。VLおよびVHのシグナルペプチドは、それぞれ、アミノ残基−20〜0および−19〜0であると同定している。
【図2】2F2のVLおよびVHcDNAおよびアミノ酸配列。2F2の軽鎖(VL、上側の2つのパネル;配列番号31および32)および重鎖(VH、下側の2つのパネル;配列番号21および22)可変領域のコード配列およびアミノ酸配列を決定した。VLおよびVHの相補性決定領域(CDR)を、Kabatら(同上);ChothiaおよびLesk(同上)に記載の基準に基づいて同定した。CDRに対応するアミノ酸残基には下線を引いている。VLおよびVHのシグナルペプチドは、それぞれ、アミノ残基−20〜0および−19〜0であると同定している。
【図3】1F6のCDRと2F2のCDR間のアミノ酸配列の比較(各配列番号16、36、18、38、20、40、6、26、8、28、10および30)。1F6のCDRおよび2F2のCDRのアミノ酸配列を並べている。下線の残基は保存的置換を表わし、枠内にイタリックで示した残基は非保存的(divergent)置換を表わす。
【図4】キメラ1F6発現ベクターpDEF14−1F6。抗体の発現のための発現ベクターの構造を示している。
【図5】キメラ1F6抗CD70抗体は、抗体依存性細胞障害作用(ADCC)を仲介する。Na251CrO4で標識した標的細胞(WIL2−S Bリンパ芽球様細胞、Caki−1腎細胞癌腫細胞、および786−0腎細胞癌腫細胞)をキメラ1F6(c1F6)、マウス1F6(m1F6)、またはヒトIgG(hIgG)で被覆し、エフェクターと標的の割合を1個の標的細胞につきCD16+細胞が30個となるように、末梢血単核細胞(PBMC)と混合した。4時間後、溶解細胞からの上清をシンチレーションカウンタで測定した。特異的溶解率を、{(試験サンプルcpm−自然発生的なcpm)÷(総cpm−自然発生的なcpm)}×100により算出した。点は、3つのサンプルの平均±標準的偏差を表す。
【図6】複数のドナーのPBMCにより認識されたキメラ1F6被覆標的細胞。Na251CrO4で標識したCaki−1腎細胞癌腫細胞を濃度が異なるキメラ1F6または非結合コントロールヒトIgG(hIgG)で被覆し、エフェクターと標的の割合を1個の標的細胞につきCD16+細胞が17個となるように、2人の正常なドナー(2051661およびND016)からのPBMCと混合した。図5に示すように、4時間後に培養上清中のクロム51活性を測定して特異的溶解を評価した。
【図7】キメラ1F6は、リンパ細胞系に対するADCCを仲介する。CD70+Bリンパ芽球様細胞(WIL2−S)および皮膚T細胞性リンパ腫細胞(HH)を、Na251CrO4で標識し、次いで、図示するような各種の濃度でキメラ1F6またはヒトIg(hIgG)と混合した。PBMC含有CD16+細胞を18:1(CD16+細胞:標的)の割合で標的細胞に加え、4時間の培養後、図5に示すように溶解率を判定した。
【図8】キメラ1F6は、CD70+多発性骨髄腫細胞系に対するADCCを仲介する。(A)多発性骨髄腫細胞系によるCD70の発現。L−363、JJN−3、LP−1およびU−266細胞を、マウス抗CD70抗体(白抜きのヒストグラム)または非結合マウスIgGコントロール抗体(黒塗りのヒストグラム)で染色した。抗体結合をFITC結合体化抗マウスIgGにより検出し、フローサイメトリーで細胞を分析した。(B)c1F6のADCC 活性。CD38+/CD138+/CD70+多発性骨髄腫細胞系をNa251CrO4で標識し、次いで、図示するような各種の濃度でキメラ1F6(黒塗りの四角)またはヒトIg(hIgG)(黒塗りの三角)と混合した。PBMCから濃縮されたCD16+細胞を15:1(CD16+細胞:標的)の割合で標的細胞に加え、4時間の培養後、図5に示すように溶解率を判定した。CD16+エフェクター細胞を抗体で前培養してFcγRIII(CD16、白抜きの四角)にすることによりブロックすることによりADCC活性をブロックした。各グラフ内の数字は、QIFIKIT(登録商標)(DakoCytomation,Carpinteria,CA)を用いて測定した各細胞系が発現したCD70分子の数を示す。
【図9】キメラ1F6は、ホジキン病(HD)細胞系に対するADCCを仲介する。CD70+HD細胞系Hs445およびL428をNa251CrO4で標識し、次いで、図示するような濃度でキメラ1F6またはヒトIg(hIgG)と混合した。PBMC含有CD16+細胞を18:1(CD16+細胞:標的)の割合で標的細胞に加え、4時間の培養後、図5に示すように溶解率を判定した。各グラフ内の数字は、QIFIKIT(登録商標)(DakoCytomation,Carpinteria,CA)を用いて測定した各細胞系が発現したCD70分子の数を示す。
【図10】抗原に特異的なT細胞拡大中に誘導されたCD70。正常なHLA−A0201ドナーからのPBMCを、インフルエンザウイルスマトリックスタンパク質に由来するM1ペプチドで刺激した。(A)およびBは、M1ペプチドで5日間刺激した後拡大するCD8+/Vβ17+上の特異的なCD70の誘導の代表例を示す。CD8+/Vβ17−細胞またはCD8+/Vβ17+細胞上でのコントロールIgG(白抜きの曲線)と抗CD70 mAb(黒塗りの曲線)の結合を示す。
【図11】抗原に特異的なCD8+/Vβl7+細胞の低減に関するc1F6の用量応答比較。図10に示したように、正常なHLA−A0201ドナーからのPBMCをM1ペプチドで刺激した。ペプチドで刺激した培養物を未処理のままにしておくか、または図示するように、無関係なコントロールmAb、マウス抗CD70抗体(m1F6)もしくは段階的な量のキメラ抗CD70抗体(c1F6)を加えると同時に培養を開始した。9日後のCD8+/Vβ17+細胞の割合をフローサイメトリーで判定した。
【図12】キメラ1F6は、CD70+B細胞における補体依存性細胞毒性作用を仲介する。CD70+リンパ芽球性NHL系(MHH−PREB−1)、EBV−バーキット性リンパ腫系(MC116)、リンパ芽球様B細胞系(WIL2−S)、および多発性骨髄腫細胞系(LP−1)を、10%の正常なヒト血清の存在下で、図示した段階的な量の抗体により培養した。MHH−PREB−1、MC116およびWIL2−Sに関しては、50μg/mL、5μg/mL、0.5μg/mL、および0.05μg/mLで抗体を用いる一方、LP−1に関しては、50μg/mL、10μg/mL、2μg/mL、および0.4μg/mLで抗体を用いた。ヒトIgG(hIgG)を非結合陰性コントロール抗体として用いた。細胞溶解をフローサイメトリーで検出したDNA染料(ヨウ化プロピジウム)に対する細胞膜浸透力により評価した。培地のみの背景細胞溶解を減算して特異的細胞溶解を得た。
【図13】キメラ1F6は、CD70+T細胞中の補体依存性細胞毒性作用を仲介する。CD70+皮膚T細胞性リンパ腫系HHおよびCD70+活性化正常T細胞系(C9D)のc1F6仲介CDCを図12に示すように評価した。
【図14】キメラ1F6は、CD70+細胞に対する抗体依存性細胞食作用(ADCP)を仲介する。CD70+リンパ芽球様細胞(WIL2−S)を緑色蛍光細胞膜染料(PKH67)で標識し、段階的な量のc1F6で処理し、次いで、単球由来のマクロファージと混合した。2時間後、混合物をPE結合体化抗CD11b抗体と共に培養し、マクロファージ表面を標識した。マクロファージによる抗体被覆標的細胞の取り込みを、緑色および赤色二重蛍光細胞のフローサイトメトリー分析により判定した。蛍光顕微鏡検査のためらに、CD11b+細胞をAlexa Fluor(登録商標)568ヤギ抗マウスIgGでさらに染色し、赤色シグナルを増強させた。(A)WIL2−S細胞をコントロール抗体(hIgG1)またはc1F6で処理し、マクロファージと混合した。抗体で覆われた標的細胞を摂取した(マクロファージ全体の)食作用細胞の割合を右上の象限に示す。(B)WIL2−S細胞を、段階的な量のc1F6(三角)または非結合コントロールIg(hIgG1、円)で処理し、標的細胞を摂取した食作用細胞の割合をフローサイメトリーにより判定した。
【図15】キメラ1F6は、複数のCD70+細胞標的に対するADCPを仲介する。図15に示すように、図示したCD70+リンパ腫、多発性骨髄腫、および腎細胞癌腫細胞系を、キメラ1F6仲介ADCPアッセイの標的として用いた。キメラ1F6の濃度が飽和時の特異的ADCP活性率を一覧にしている。
【図16】CD70+異種移植リンパ腫モデルにおけるc1F6のインビボ抗腫瘍活性。薬物処置の一日前に、SCIDマウス(n=10/群)の静脈内に1×106Ramos細胞またはIM−9細胞を接種した。キメラ1F6の単回投与を1mg/kgまたは4mg/kgで行ない、非結合コントロール抗体(IgG)の単回投与を4mg/kgで行なった。生存状況を監視し、P値で示すように、処置群間の相違をログランクテストを用いて比較した。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(発明の詳細な説明)
本発明は、CD70結合剤を提供し、さらには、そのような結合剤を、CD70を発現する癌および免疫障害の予防または処置のために使用する方法を提供する。CD70結合剤は、CD70に結合するドメイン(例えば、細胞外ドメイン)およびエフェクタードメインを含む。本発明者らは、治療剤と結合体化しない場合、エフェクタードメインを有するCD70結合剤がCD70を発現する細胞に対する細胞毒性作用、細胞静止作用または免疫抑制作用を誘導することができることを見出した。例えば、細胞毒性作用、細胞静止作用または免疫抑制作用は、細胞毒性白血球細胞、例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、食作用細胞(例えば、マクロファージ)および/または血清補体成分を漸増ならびに活性化することにより誘導することができる。
【0025】
1つの局面では、上記方法および組成物は、CD70に結合する抗体および抗体誘導体に関する。例示的な実施形態では、この抗体またはその誘導体は、CD70との結合に関して、モノクローナル抗体1F6または2F2と競合する。細胞毒性作用、細胞静止作用および/または免疫抑制作用は、CD70抗体または誘導体、およびその抗体のエフェクタードメイン(例えば、Fc領域)と相互作用するエフェクター細胞または補体成分によって仲介される。細胞毒性作用、細胞静止作用および/または免疫抑制作用は、CD70を発現する細胞の増殖を低減または阻害する。CD70抗体は、モノクローナル、キメラ、ヒト化およびヒト抗体とすることができる。いくつかの実施形態では、抗体定常領域は、IgGサブタイプである。いくつかの実施形態では、上記抗体は、マウスモノクローナル抗体ではない。
【0026】
他の局面では、上記方法および組成物は、CD70に結合する他のCD70結合剤に関する。CD70結合剤は、CD70の細胞外ドメインに結合する。細胞毒性作用、細胞静止作用および/または免疫抑制作用は、CD70結合剤、およびエフェクタードメイン(例えば、Fc領域)と相互作用するエフェクター細胞または補体成分により仲介される。細胞毒性作用、細胞静止作用および/または免疫抑制作用は、CD70を発現する細胞の増殖を低減または阻害する。CD70結合剤は、例えば、CD27およびその誘導体とすることができる。
【0027】
(I.定義および略号)
他に定義されない限り、本明細書中において用いるすべての技術的および科学的用語は、記載の方法および組成物に関連する当業者によって一般的に理解されるものを意味する。本明細書中において用いる下記の用語および語句は、他に明記しない限り、それらに与えられた意味を有する。
【0028】
本明細書中において用いる「阻害する」または「阻害」という用語は、測定可能な量だけ減少させること、または完全に妨げることを意味する。
【0029】
本明細書中において用いる「CD70結合剤」という用語は、抗CD70抗体、抗CD70抗体の誘導体、またはCD70の細胞外ドメインもしくはその一部等に結合する他の物質を意味する。
【0030】
「治療剤」とは、癌細胞または活性化免疫細胞に細胞毒性作用、細胞静止作用または免疫抑制作用を及ぼす物質である。
【0031】
「細胞毒性作用」とは、標的細胞の低減、除去および/または殺傷を指す。「細胞毒性剤」とは、細胞に対する細胞毒性作用を有する物質を指す。
【0032】
「細胞静止作用」とは、細胞増殖の阻害を指す。「細胞静止剤」とは、細胞(または細胞の特定の部分集合)に対して細胞静止作用を有することにより、細胞(または細胞の特定の部分集合)の成長および/または拡大を阻害する物質を指す。
【0033】
CD70結合剤のCD70を発現する細胞に対する作用に関連する場合、「低減する」という用語は、CD70発現細胞の減少または除去を指す。
【0034】
本明細書中において用いる「免疫抑制剤」という用語は、免疫応答の発達または維持を阻害する物質を指す。そのような阻害は、例えば、免疫細胞(例えば、TまたはBリンパ球)の除去;他の細胞の機能的能力を調節(例えば、ダウンレギュレート)することができる免疫細胞の誘導または発生;免疫細胞における非応答状態の誘導(例えば、アネルギー);または免疫細胞により発現されたタンパク質のパターンの改変等、それら細胞の活性または機能の向上、低下または変更(例えば、サイトカイン、ケモカイン、成長因子、転写因子、キナーゼ、共刺激分子または他の細胞表面受容体等のあるクラスの分子の産生および/または分泌の改変)により行うことができる。典型的な実施形態では、免疫抑制剤は、免疫応答を促進する免疫細胞に対する細胞毒性作用または細胞静止作用を有する。
【0035】
本明細書中において用いる「免疫細胞」とは、免疫応答の制御に関わる造血系の細胞を指す。典型的な実施形態では、免疫細胞は、Tリンパ球、Bリンパ球、NK細胞、単球/マクロファージ、または樹状細胞である。
【0036】
「ポリペプチド」という用語は、アミノ酸のポリマーまたはその等価物を指し、特定の長さの産物を意味しない;よって、「ペプチド」および「タンパク質」は、ポリペプチドの定義に含まれる。また、本明細書中において定義する「抗体」もポリペプチドの定義に含まれる。「ポリペプチド領域」とは、ポリペプチドのセグメントを指し、このセグメントは、例えば、1つ以上のドメインまたはモチーフを含んでもよい(例えば、抗体のポリペプチド領域は、例えば、1つ以上の相補性決定領域(CDR)を含んでもよい)。「フラグメント」という用語は、典型的にポリペプチドの少なくとも連続する20個、または少なくとも連続する50個のアミノ酸を有する部分を指す。「誘導体」とは、第2のポリペプチドに対して1つ以上の非保存的または保存的アミノ酸置換を有するポリペプチドもしくはそのフラグメント;または、例えば、異種ポリペプチドの結合もしくはグリコシル化、アセチル化、リン酸化等、第2の分子の共有結合により改変されるポリペプチドもしくはそのフラグメントである。例えば、「誘導体」の定義には、アミノ酸(例えば、非天然アミノ酸等)の1つ以上の類似体を有するポリペプチド、非置換の結合を有するポリペプチド、ならびに天然および非天然のものを含む当該分野で公知の他の改変も含まれる。
【0037】
本明細書中において用いる「抗体」という用語は、(a)免疫グロブリンポリペプチドおよび免疫グロブリンの免疫活性部分(すなわち、特定の抗原(例えば、CD70)に免疫特異的に結合する抗原結合部位を含む免疫グロブリンファミリーのポリペプチドもしくはそのフラグメント)、または(b)抗原(例えば、CD70)に免疫特異的に結合するそのような免疫グロブリンポリペプチドもしくはフラグメントの保存的に置換された誘導体を指す。抗体は、例えば、HarlowおよびLane,Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988)において一般に記載されている。
【0038】
上記で定義した免疫グロブリンポリペプチドまたはそのフラグメントに関連する場合、「保存的に置換」とは、免疫グロブリンポリペプチドまたはそのフラグメントの抗原に対する(例えばKDにより測定される)特異的結合を実質的に減少させない1つ以上のアミノ酸の置換(すなわち、ELISA等の標準的な結合アッセイによる判定で結合を増加させる置換、結合を顕著に変化させない置換、または約40%以下、典型的には約30%以下、より典型的には約20%以下、さらにより典型的には約10%以下、または最も典型的には約5%以下だけ結合を減少させる置換)を意味する。
【0039】
本明細書中において用いる「抗体誘導体」とは、例えば、上記で定義したように、異種ポリペプチドの結合、または通常は抗体に関連しないグリコシル化、アシル化もしくはリン酸化等、異種分子の共有結合により改変される抗体を指す。いくつかの実施形態では、異種分子は治療剤ではない。いくつかの実施形態では、異種分子は、それ自身では細胞静止作用または細胞毒性作用を示さない。
【0040】
「モノクローナル抗体」という用語は、真核もしくは原核細胞クローン、またはファージクローンを含む単一の細胞クローンに由来する抗体を指し、それを生成した方法を意味するものではない。よって、本明細書中において用いる「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術により生成される抗体に限定されない。
【0041】
ポリペプチドに関連する場合、「異種」という用語は、他のポリペプチドとは起源(例えば、細胞、組織、生物または種)が異なるため、それら2つのポリペプチドが異なることを意味する。典型的には、異種ポリペプチドは、種が異なるものである。
【0042】
CD70結合剤に関連する場合、本明細書中において用いられる「機能的」という用語は、結合剤が(1)CD70に結合可能であり、かつ(2)細胞毒性もしくは細胞静止剤と結合体化することなく、CD70を発現する細胞の増殖を低減もしくは阻害するか、または免疫抑制剤と結合体化することなく、免疫細胞に対する免疫抑制効果を有することを示す。
【0043】
本明細書中において用いられる「抗体エフェクター機能」またはAECは、IgのFcエフェクタードメイン(例えば、免疫グロブリンのFc領域)によって導かれる機能を指
す。このような機能は、例えば、Fcエフェクタードメインを、食作用または溶解活性を有する免疫細胞上のFc受容体に結合するか、またはFcエフェクタードメインを、補体系の成分に結合することにより行なうことができる。典型的には、Fc結合細胞または補体成分により仲介される作用により、CD70の標的となる細胞が阻害および/または低減する。
【0044】
「抗体依存性細胞障害作用」またはADCCとは、抗体で覆われた標的細胞(すなわち、抗体が結合した細胞)と溶解活性を有する免疫細胞(エフェクター細胞とも呼ばれる)
との相互作用に依存する細胞死を誘導するメカニズムである。このようなエフェクター細胞としては、ナチュラルキラー細胞、単球/マクロファージおよび好中球が挙げられる。ADCCは、腫瘍細胞に結合した抗体のFc領域と、好中球、マクロファージおよびナチュラルキラー細胞等の免疫エフェクター細胞上のFcγ受容体、特に、FcγRIおよびFcγRIIIとの相互作用により誘発される。腫瘍細胞は、仲介するエフェクター細胞の種類に応じて、食作用または溶解により除去される。抗体で覆われた標的細胞の死は、エフェクター細胞活性の結果生じる。
【0045】
「抗体依存性細胞食作用」またはADCPとは、抗体で覆われた細胞の全体または一部が免疫グロブリンFc領域に結合する食作用免疫細胞(例えば、マクロファージ、好中球および樹状細胞)により吸収されるプロセスを指す。
【0046】
「補体依存性細胞毒性作用」またはCDCとは、細胞死を誘導するメカニズムであって、標的結合抗体のFcエフェクタードメインが一連の酵素反応を活性させ、結果的に標的細胞膜に穴を形成するメカニズムを指す。典型的には、抗原/抗体複合体、例えば、抗体で覆われた標的細胞上の抗原/抗体複合体は補体成分C1qを結合しそして活性化させ、それにより補体カスケードを活性化することで標的細胞死をもたらす。また、補体の活性化により、白血球上の補体受容体(例えば、CR3)を結合することでADCCを促進する補体成分を標的細胞表面上に堆積し得る。
【0047】
2つ以上の核酸またはポリペプチド配列に関連する場合、「同一」または「同一性パーセント」という用語は、比較し、そして最大対応のために配置したときに同じであるか、または同じヌクレオチドまたはアミノ酸残基を特定の割合で有する2つ以上の配列または副配列を指す。同一性パーセントを決定するために、配列を最適な比較目的のために配置する(例えば、第1のアミノ酸または核酸配列と第2のアミノ酸または核酸配列とを最適に配置した配列にギャップを導入することができる)。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列における位置に、第2の配列において対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドがある場合、当該位置の両分子は同一である。これら2つの配列間の同一性パーセントは、配列が共有する同一である位置の数の関数である(すなわち、同一%=同一位置の数/位置(例えば、重複する位置)の総数×100)。いくつかの実施形態では、これら2つの配列は同じ長さである。
【0048】
2つの核酸またはポリペプチドに関連する場合、「実質的に同一」という用語は、(例えば、下記の方法のうちの1つを用いて判定したときに)少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、または少なくとも65%の同一性;典型的には少なくとも70%または少なくとも75%の同一性;より典型的には少なくとも80%または少なくとも85%の同一性;およびさらにより典型的には少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の同一性を有する2つ以上の配列または副配列を指す。
【0049】
2つ以上のポリペプチド配列に関連する場合、「類似性」または「類似性パーセント」とは、比較し、そして最大対応のために配置し、下記の方法のうちの1つを用いて測定したときに、同じであるか、または保存的に置換されたアミノ酸残基を特定の割合で有する2つ以上の配列または副配列を指す。例えば、第1のアミノ酸配列に含まれるアミノ酸の数と同数のアミノ酸を比較した場合、または、例えば、下記の方法のうちの1つによって配置したポリペプチドの配置と比較した場合、第1のアミノ酸配列が第2のアミノ酸配列と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、90%または95%同一であるか、または保存的に置換されているときに、第1のアミノ酸配列が第2のアミノ酸配列と類似すると考えることができる。
【0050】
ポリペプチド配列に関連する場合、「実質的な類似性」または「実質的に類似する」という用語は、参照配列に対して、ポリペプチド領域が少なくとも70%、典型的には少なくとも80%、より典型的には少なくとも85%、または少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列類似性を有する配列を持つことを示す。例えば、あるポリペプチドは、第2のポリペプチドとは、例えば、それら2つのペプチドが1つ以上の保存的な置換により異なる場合に実質的に類似する。
【0051】
抗CD70抗体またはその誘導体に関連する場合、抗CD70抗体の1つ以上の抗原結合領域(例えば、重鎖もしくは軽鎖可変領域、または重鎖もしくは軽鎖CDR)と実質的に同一または実質的に類似する1つ以上のポリペプチド領域を有するタンパク質は、当該分野で公知または本明細書中において言及する各種の標準的なイムノアッセイのいずれかを用いて判定したときに、抗CD70抗体により認識されるCD70のエピトープに対する特異的結合を保持する。
【0052】
2つの配列間の同一性パーセントまたは類似性パーセントの判定は、数学的アルゴリズムを用いて達成することができる。2つの配列の比較に利用することが好ましく、かつ非限定的な数学的アルゴリズムの例としては、KarlinおよびAltschul,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5877において改変されたKarlinおよびAltschul,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264−2268のアルゴリズムがある。このようなアルゴリズムは、Altschulら,1990,J.Mol.Biol.215:403−410のNBLASTおよびXBLASTプログラムに組み込まれる。BLASTによるヌクレオチド検索では、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12を用いて当該タンパク質をコードする核酸と相同性を有するヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTによるタンパク質検索では、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて当該タンパク質と相同性を有するアミノ酸配列を得ることができる。比較目的でギャップアライメントを得るために、Altschulら,1997,Nucleic Acids Res.25:3389−3402に記載のとおりにギャップBLASTを利用することができる。あるいは、PSI−Blastを用いて、分子間の距離関係を検出する反復検索を行なうことができる(同上)。BLAST、ギャップBLAST、およびPSI−Blastプログラムを利用する場合、各プログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)の初期値パラメーターを用いることができる。配列の比較に利用することが好ましく、かつ非限定的な数学的アルゴリズムの他の例として、MyersおよびMiller,CABIOS(1989)のアルゴリズムがある。このようなアルゴリズムは、GCG配列アライメントソソフトウエアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれる。ALIGNプログラムをアミノ酸配列の比較に利用する場合、PAM120重量残基表、ギャップ長ペナルティー12、およびギャップペナルティー4を用いることができる。配列分析のためのさらなるアルゴリズムは当該分野で公知であり、TorellisおよびRobotti,1994,Comput.Appl.Biosci.10:3−5に記載のADVANCEおよびADAM;ならびにPearsonおよびLipman,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.85:2444−8に記載のFASTAが挙げられる。FASTAでは、ktupが検索の感度と速度を設定するコントロールオプションである。ktup=2の場合、比較している2つの配列内の類似する領域は、並べた残基対を見ることにより見つけることができ;ktup=1の場合には、一列に並べたアミノ酸を調べる。ktupは、タンパク配列については2もしくは1に、またはDNA配列については1〜6に設定することができる。ktupを特定しない場合、初期値は、タンパク質については2であり、DNAについては6である。
【0053】
あるいは、タンパク質配列アライメントは、Higginsら,1996,Methods Enzymol.266:383−402に記載のCLUSTAL Wアルゴリズムを用いて実施してもよい。
【0054】
本明細書中において用いる「予防」または「予防する」という用語は、CD70を発現する癌または免疫障害の臨床的または診断的症状が発症する前に、抗CD70抗体もしくは誘導体または他の結合剤を被験体に投与(例えば、CD70を発現する癌または免疫障害を患う素因があるか、またはその危険性が高い人に投与)し、(a)CD70を発現する癌もしくは免疫障害の発病もしくは発症、またはそれらの1つ以上の臨床的または診断的症状を阻止するため、(b)CD70を発現する癌または免疫障害の発症の程度を抑制するため、または(c)CD70を発現する癌または免疫障害の発症の可能性を低くくすることを指す。
【0055】
本明細書中において用いる「処置」または「処置する」という用語は、CD70を発現する癌または免疫障害の臨床的または診断的症状の発症後のいずれかの臨床病期に、抗CD70抗体もしくはその誘導体または他の結合剤を被験体に投与することにより、病気の臨床または診断的症状が明らかに減少するか、またはなくなるような、被験体におけるCD70を発現する癌または免疫障害の進行を遅延、停止または後退させることを指す。処置としては、例えば、症状の重症度、症状の数または再発頻度の減少が挙げられる。
【0056】
本明細書中において用いる「薬学的に許容される」という用語は、米国連邦政府または州政府の規制機関により承認されているか、または米国薬局方もしくは動物、より特定的にはヒトへの使用に関して一般に認識されている他の薬局方に挙げられていることを意味する。「薬学的に適合性のある成分」とは、抗CD70結合剤とともに投与される薬学的に許容される希釈剤、アジュバント、賦形剤または基剤を指す。
【0057】
「効果的な量」という用語は、被験体における発病の阻害またはCD70を発現する癌もしくは免疫障害の1つ以上の臨床的もしくは診断的症状の改善に十分な抗体まもしくは誘導体または他の結合剤の量を指す。効果的な量の物質は、本明細書中に記載の方法に従って「効果的な投薬計画」で投与される。「効果的な投薬計画」という用語は、CD70を発現する癌または免疫障害の処置または予防の達成に十分な薬量および投与頻度の組合せを指す。
【0058】
(II.抗CD70抗体およびその誘導体)
本明細書中に記載の方法および組成物は、CD70に特異的に結合し、CD70を発現する癌細胞または活性化免疫細胞に細胞毒性作用、細胞静止作用または免疫抑制作用を及ぼすCD70結合剤の使用を含む。CD70結合剤は、例えば、抗CD70抗体、抗CD70抗体の抗原結合フラグメント、その誘導体、または他のCD70結合剤とすることができる。CD70結合剤は、CD70を発現する標的細胞に対するADC、ADCC、ADCPおよび/またはCDC応答を仲介または刺激する抗体エフェクタードメイン機能を含む。エフェクタードメインは、例えば、Ig分子のFc領域とすることができる。CD70結合剤は、CD70を発現する癌細胞に細胞毒性作用もしくは細胞静止作用を及ぼすか、または活性化リンパ球もしくは樹状細胞に細胞毒性作用、細胞静止作用、または免疫抑制作用を及ぼして、それぞれ、CD70を発現する癌または免疫障害を処置する。典型的には、CD70結合剤は、細胞毒性白血球細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、食作用細胞(例えば、マクロファージ)、および/または血清補体成分)を補充およ
び/または活性化する。いくつかの実施形態では、CD70結合剤は、モノクローナル抗体(mAb)1F6もしくは2F2またはその誘導体である。他の実施形態では、抗CD70抗体またはその誘導体は、CD70に対する結合に関して、モノクローナル抗体1F6または2F2と競合する。いくつかの実施形態では、CD70結合剤は、CD70に結合する際に、作動的(agonistic)シグナルまたは非作動的(antagonistic)シグナルを誘導しない。
【0059】
抗CD70抗体は、典型的には、モノクローナル抗体であるかまたはモノクローナル抗体に由来するものであり、例えば、キメラ(例えば、ヒト定常領域またはマウス可変領域を有する)、ヒト化もしくは完全なヒト抗体;単鎖抗体;マキシボディ(maxibody)、ミニボディ(minibody)、抗原結合領域等を含むようにすることができる。抗体分子は、細胞毒性白血球細胞および/または血清補体成分と機能的に相互作用を行ない、それらを活性化することが可能な少なくとも1つのエフェクタードメインを含む。いくつかの実施形態では、CD70抗原結合領域は、例えば、免疫グロブリンのヒンジ−CH2−CH3ドメイン等の1つもしくは複数のエフェクタードメイン、またはエフェクター機能を有するエフェクタードメインの一部もしくはフラグメントと連結することができる。例えば、単鎖抗体を含む抗原結合抗体フラグメントは、可変領域を、エフェクタードメインの全体または一部(例えば、CH2および/またはCH3ドメインのみ、またはCH1、ヒンジおよび/またはCLドメインとの組み合わせ)と組み合わせて含むように
することができる。また、抗原結合フラグメントは、エフェクタードメインのいずれの組み合わせも含むようにすることができる。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体は、ヒンジ−CH2−CH3ドメインと連結したCD70結合可変領域を含む単鎖抗体とすることができる。
【0060】
典型的には、抗体は、エフェクター機能を仲介することができる特異的なIgイソタイプのヒトまたはヒト以外(例えば、げっ歯類(マウスまたはラット等))、ロバ、ヒツジ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ウマまたはニワトリ)を起源とする。本明細書中において用いる「ヒトの」抗体としては、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体が挙げられ、さらに、下記および、例えば、米国特許第5,939,598号および6,111,166号に記載のように、ヒト免疫グロブリンライブラリーから、ヒトB細胞から、または1つ以上のヒト免疫グロブリンについてのトランスジェニック動物から単離された抗体が挙げられる。
【0061】
抗体のエフェクタードメインは、あらゆる適切な脊椎動物種およびイソタイプに由来するようにすることができる。異なる動物種からのイソタイプは、エフェクター機能を仲介する能力が異なる。例えば、ヒト免疫グロブリンのCDCおよびADCC/ADCPを仲介する能力は、一般に、それぞれ、IgM=IgG1=IgG3>IgG2>IgG4およびIgG1=IgG3>IgG2/IgM/IgG4の順である。マウス免疫グロブリンは、CDCおよびADCC/ADCPを、一般に、それぞれ、マウスIgM=IgG3>>IgG2b>IgG2a>>IgG1およびIgG2b>IgGa>IgG1>>IgG3の順に仲介する。他の例では、マウスIgG2aがADCCを仲介する一方、マウスIgG2aおよびIgMはともにCDCを仲介する。いくつかの実施形態では、CD70結合剤は、抗体の可変ドメインおよびエフェクタードメインからなる。他の実施形態では、CD70結合剤は、本質的に、抗体の可変ドメインおよびエフェクタードメインからなり、治療剤ではない付加的な化合物をさらに含むようにすることができる。CD70結合ポリペプチドも、適切な定常ドメインからなる組換え融合タンパク質として発現し、所望のエフェクター機能を生じることができる。
【0062】
標的細胞に結合すると、抗体または誘導体は、エフェクタードメイン(例えば、Fcドメイン)により仲介されたエフェクター機能を介して、インビトロおよびインビボで、標
的細胞破壊を誘発し得る。特定の理論に限定することを意図しないが、抗体のFc領域は、Fc受容体(FcR)を発現する細胞を補充し、それらを抗体で覆われた標的細胞と並置し得る。FcγRIII(CD16)、FcγRII(CD32)およびFcγRIII(CD64)を含むIgGについて表面FcRを発現する細胞は、IgGで覆われた細胞の破壊のためにエフェクター細胞として作用し得る。このようなエフェクター細胞としては、単球、マクロファージ、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球および好酸球が挙げられる。IgGによるFcγRの関与は、抗体依存性細胞障害作用(ADCC)または抗体依存性細胞食作用(ADCP)を活性化する。ADCCが膜孔形成タンパク質およびプロテアーゼの分泌を介してCD16+エフェクター細胞により仲介される一方、食作用はCD32+およびCD64+エフェクター細胞により仲介される(Fundamental Immunology,4th ed.,Paul ed.,Lippincott−Raven,N.Y.,1997,Chapters 3,17および30;Uchidaら,2004,J.Exp.Med.199:1659−69;Akewanlopら,2001,Cancer Res.61:4061−65;Watanabeら,1999,Breast Cancer Res.Treat.53:199−207参照)。ADCCおよびADCPに加えて、細胞結合抗体のFc領域はまた、補体古典経路を活性化し、補体依存性細胞毒性作用(CDC)を引き出し得る。補体系のC1qは、抗原と複合体化した抗体のFc領域に結合する。C1qの細胞結合抗体との結合により、C4およびC2のタンパク質分解活性を伴う順次的な事象が開始され、C3転換酵素が発生し得る。C3転換酵素によるC3のC3bへの分裂により、C5b、C6、C7、C8およびC9を含む末端補体成分の活性化が可能になる。これらのタンパク質は、集合的に、抗体で覆われた細胞上に細胞膜障害複合体孔を形成する。これらの孔は細胞膜の完全性を破壊し、標的細胞を殺傷する(Immunobiology,6th ed.,Janewayら,Garland Science,N.Y.,2005,Chapter 2参照)。
【0063】
抗体は、単一特異性、二重特異性、三重特異性、またはそれ以上の多重特異性とすることができる。多重特異性抗体は、CD70の異なるエピトープに対して特異的、かつ/またはCD70および異種タンパク質の両方に特異的であってもよい(例えば、PCT公開公報WO93/17715、WO92/08802、WO91/00360およびWO92/05793;Tuttら,1991,J.Immunol.147:60−69;米国特許第4,474,893号;同第4,714,681号;同第4,925,648号;同第5,573,920号;および同第5,601,819号;Kostelnyら,1992,J.Immunol.148:1547−1553参照。)本明細書中に記載の方法を実施するために有用な二重特異性および三重特異性抗体を含む多重特異性抗体は、CD70(モノクローナル抗体2F2および1F6のCDRを有する抗体を含むがそれらに限定されない)、ならびにCD16/FcgRIII、CD64/FcgRI、キラー阻害もしくは活性受容体、または補体コントロールタンパク質CD59などのADCC、食作用および/またはCDCを仲介する第2の細胞表面受容体もしくは受容体複合体の両方に免疫特異的に結合する抗体である。典型的な実施形態では、多重特異性抗体の部分と、第2の細胞表面分子または受容体複合体との結合により、抗CD70抗体または他のCD70結合剤のエフェクター機能が向上する。
【0064】
1つの局面では、抗CD70抗体は、モノクローナル抗体1F6の1つ以上の相補性決定領域(CDR)と実質的に同一または実質的に類似する1つ以上のCDRを含む(表1参照)。例えば、抗体は、mAb 1F6の対応する重鎖CDR(H1領域、H2領域もしくはH3領域)または対応する軽鎖CDR(L1領域、L2領域もしくはL3領域)(それぞれ配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号16、配列番号18または配列番号20)と実質的に同一または実質的に類似する重鎖CDRおよび/または軽鎖CDRを含むようにすることができる。典型的な実施形態では、抗CD70抗体は、mAb 1F6の対応する重鎖および/または軽鎖CDRと実質的に同一または実質的に類似する2つもしくは3つの重鎖CDRおよび/または2つもしくは3つの軽鎖CDRを有する。特定の実施形態では、1F6の重鎖または軽鎖CDRと実質的に同一または実質的に類似するCDRは、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号16、配列番号18または配列番号20に示すアミノ酸配列を有する。
【0065】
例えば、いくつかの実施形態では、抗CD70抗体がmAb 1F6の重鎖CDRと実質的に同一または実質的に類似する少なくとも1つの重鎖CDRを有する場合、この抗体またはその誘導体は、mAb 1F6の軽鎖CDRと実質的に同一または実質的に類似する少なくとも1つの軽鎖CDRをさらに含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、抗CD70抗体は、(a)mAb 1F6の対応するCDRと実質的に同一または実質的に類似する3つのCDRを1組と、(b)4つのフレームワーク領域を1組有する重鎖または軽鎖可変ドメインを含む。例えば、抗CD70抗体は、(a)モノクローナル抗体1F6に由来する3つのCDRを1組と、(b)IgGタイプの4つのフレームワーク領域を1組有する重鎖または軽鎖可変ドメインを含むようにすることができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、抗CD70抗体はキメラ抗体である。キメラ抗体は、例えば、マウスのモノクローナル抗体に由来する可変領域およびヒトIgG免疫グロブリン定常領域を有する抗体等、抗体の異なる部分が異なる動物種に由来する分子である。キメラ抗体を作る方法は当該分野で公知である。(例えば、Morrison,Science,1985,229:1202;Oiら,1986,BioTechniques 4:214;Gilliesら,1989,J.Immunol.Methods 125:191−202;米国特許第5,807,715号、同4,816,567号および同第4,816,397号参照。)
例示的な実施形態では、抗CD70抗体は、mAb 1F6の重鎖可変領域と実質的に同一または実質的に類似する(すなわち、配列番号2に示すアミノ酸配列と実質的に同一または実質的に類似する、表1参照)重鎖可変領域、および/またはmAb 1F6の軽鎖可変領域と実質的に同一または実質的に類似する(すなわち、配列番号12に示すアミノ酸配列と実質的に同一または実質的に類似する、表1参照)軽鎖可変領域を含むキメラ抗体である。例えば、この抗体は、配列番号2に示すアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含むようにすることができ、任意に、配列番号12に示すアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域をさらに含むようにすることができる。重鎖および軽鎖抗体定常領域は、IgGタイプである。例示的な実施形態では、抗CD70抗体は、キメラIgG mAb 1F6である。
【0068】
いくつかの実施形態では、抗CD70抗体は、モノクローナル抗体2F2の1つ以上のCDRと実質的に同一または実質的に類似する1つ以上のCDRを含むキメラ抗体である(表1参照)。例えば、この抗体は、対応する重鎖CDR(H1領域、H2領域もしくはH3領域)またはmAb 2F2の対応する軽鎖CDR(L1領域、L2領域もしくはL3領域)と実質的に同一または実質的に類似する重鎖CDRおよび/または軽鎖CDR(配列番号26、配列番号28;配列番号30;配列番号36、配列番号38または配列番号40)を含むようにすることができる。典型的な実施形態では、抗CD70抗体は、mAb 2F2の対応する重鎖および/または軽鎖CDRと実質的に同一または実質的に類似する2つもしくは3つの重鎖CDRおよび/または2つもしくは3つの軽鎖CDRを有する。特定の実施形態では、2F2の重鎖または軽鎖CDRと実質的に同一または実質的に類似するCDRは、配列番号26、配列番号28、配列番号30;配列番号36、配列番号38、または配列番号40に示すアミノ酸配列を有する。
【0069】
例えば、いくつかの実施形態では、抗CD70抗体がmAb 2F2の重鎖CDRと実質的に同一または実質的に類似する少なくとも1つの重鎖CDRを有する場合、この抗体またはその誘導体は、mAb 2F2の軽鎖CDRと実質的に同一または実質的に類似する少なくとも1つの軽鎖CDRをさらに含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、抗CD70抗体は、(a)mAb 2F2の対応するCDRと実質的に同一または実質的に類似する3つのCDRを1組と、(b)4つのフレームワーク領域を1組有する重鎖または軽鎖可変ドメインを含む。例えば、抗CD70抗体は、(a)モノクローナル抗体2F2に由来する3つのCDRを1組と、(b)IgGタイプの4つのフレームワーク領域を1組有する重鎖または軽鎖の可変ドメインを含むようにすることができる。例示的な実施形態では、抗CD70抗体は、キメラIgG mAb 2F2である。
【0071】
1つの実施形態では、抗CD70抗体は、mAb 2F2の重鎖可変領域と実質的に同一または実質的に類似する(すなわち、配列番号22に示すアミノ酸配列と実質的に同一または実質的に類似する、表1参照)重鎖可変領域、および/またはmAb 2F2の軽鎖可変領域と実質的に同一または実質的に類似する(すなわち、配列番号32に示すアミノ酸配列と実質的に同一または実質的に類似する、表1参照)軽鎖可変領域を含む。例えば、この抗体は、配列番号22に示すアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含むようにすることができ、任意に、配列番号32に示すアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域をさらに含むようにすることができる。1つの例示的な実施形態では、抗CD70抗体はmAb 2F2である。
【0072】
いくつかの実施形態では、上記抗体は、1F6 VHおよび2F2 VL、または1F6 VHおよび2F2 VLを含む。
【0073】
以下の表は、各配列番号が対応する1F6または2F2の領域を示す。
【0074】
(表1)
【0075】
【表1−1】
【0076】
【表1−2】
【0077】
【表1−3】
【0078】
【表1−4】
抗CD70抗体およびその誘導体、ならびに他の結合剤は、CD70に対する結合親和性に関して記載または特定してもよい。典型的な結合親和性としては、5×10−2M、10−2M、5×10−3M、10−3M、5×10−4M、10−4M、5×10−5M、10−5M、5×10−6M、10−6M、5×10−7M、10−7M、5×10−8M、10−8M、5×10−9M、10−9M、5×10−10M、10−10M、5×10−11M、10−11M、5×10−12M、10−12M、5×10−13M、10−13M、5×10−14M、10−14M、5×10−15Mまたは10−15M未満の解離定数またはKdを有するものが挙げられる。
【0079】
上記抗体は、当該分野で公知の方法により生成することができる。例えば、モノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ技術、組換え技術およびファージディスプレイ技術の使用またはそれらの組合せを含む多種多様な技術を用いて調製することができる。ハイブリドーマ技術は、例えば、Harlowら,Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.,1988);およびHammerlingら,In Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas,pp.563−681(Elsevier,N.Y.,1981)において一般に議論されている。抗CD70抗体を作るために用いることができるファージディスプレイ技術の例としては、例えば、(HoogenboomおよびWinter,1991,J.Mol.Biol.227:381;Marksら,1991,J.Mol.Biol.222:581;QuanおよびCarter,2002,The rise of
monoclonal antibodies as therapeutics in Anti−IgE and Allergic Disease,JardieuおよびFick Jr.編,Marcel Dekker,New York,NY,Chapter 20,pp.427−469;Brinkmanら,1995,J.Immunol.Methods 182:41−50;Amesら,1995,J.Immunol.Methods 184:177−186;Kettleboroughら,1994,Eur.J.Immunol.24:952−958;Persicら,1997,Gene 187:9−18;Burtonら,1994,Advances in
Immunology 57:191−280;PCT出願番号PCT/GB91/01134;PCT公開公報WO90/02809、WO91/10737、WO92/01047、WO92/18619、WO93/11236、WO95/15982、WO95/20401、および米国特許第5,698,426号、同第5,223,409号、同第5,403,484号、同第5,580,717号、同第5,427,908号、同第5,750,753号、同第5,821,047号、同第5,571,698号、同第5,427,908号、同第5,516,637号、同第5,780,225号、同第5,658,727号、同第5,733,743号および同第5,969,108号(これらの開示内容は本明細書中において参考として援用する)に開示されたものが挙げられる。
【0080】
単鎖抗体を作るために用いることができる技術の例としては、米国特許第4,946,778号および同第5,258,498号;Hustonら,1991,Methods
in Enzymology 203:46−88;Shuら,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:7995−7999;およびSkerraら,1988,Science 240:1038−1040が挙げられる。
【0081】
二重特異性抗体を作製する方法は当該分野で公知である。二重特異性抗体の全長は、伝統的には、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の同時発現に基づいて作られる(例えば、Milsteinら,1983,Nature 305:537−39参照)。免疫グロブリン重鎖および軽鎖の任意組み合わせにより、これらのハイブリ
ドーマ(クアドローマ)は、10個の異なる抗体分子の潜在的混合物を作り、それらのう
ち1つだけが正しい二重特異性構造を有する。同様の手順が国際公開公報WO93/08829、およびTrauneckerら,1991、EMBO J.10:3655−59に開示されている。
【0082】
異なるアプローチに従って、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体−抗原結合部位)を免疫グロブリン定常ドメイン配列と融合させる。ヒンジ、CH2、およびCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの融合が好ましい。いくつかの実施形態では、上記融合物は、少なくとも1つの融合物に存在する、軽鎖結合に必要な部位を有する第1の重鎖定常領域(CH1)を含む。免疫グロブリン重鎖融合物および、所望であれば、免疫グロブリン軽鎖をコードする配列を有する核酸を、個別の発現ベクターに挿入し、適切な宿主生物に同時トランスフェクションする。これによって、構成物内で用いる割合が不均一な3つのポリペプチド鎖により最適収量が得られる場合、実施形態における3つのポリペプチドフラグメントの相互比率の調整が著しく柔軟になる。しかしながら、同じ割合の少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現により高収量になる場合、またはその割合が特に重要でない場合、3つのポリペプチド鎖のうち2つまたはそれら全てをコードする配列を1つの発現ベクターに挿入することが可能である。
【0083】
このアプローチの1つの実施形態では、二重特異性抗体は、1つの腕に第1の結合特異性を有し、他方の腕に(第2の結合特異性をもたらす)ハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖対を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖を有する。この非対称構造により、所望の二重特異性化合物を不要な免疫グロブリン鎖の組み合わせから分離することが容易となるが、これは二重特異性分子の半分にしか存在しない免疫グロブリン軽鎖が分離を容易にするためである(例えば、本明細書中においてその全てを参考として援用する国際公開公報WO94/04690参照)。
【0084】
二重特異性抗体についてのさらなる考察に関しては、例えば、Sureshら,1986,Methods in Enzymology 121:210;Rodriguesら,1993,J.Immunology 151:6954−61;Carterら,1992,Bio/Technology 10:163−67;Carterら,1995,J.Hematotherapy 4:463−70;Merchantら,1998,Nature Biotechnology 16:677−81を参照されたい。このような技術を用いることにより、本明細書中において定義するような病気の処置または予防に使用する二重特異性抗体を調製することができる。
【0085】
欧州特許公報EPA 0 105 360号には二官能性抗体も記載されている。この参考文献に開示されているように、ハイブリッドまたは二官能性抗体は、生物学的に、すなわち、細胞融合技術によって、または化学的に、特に架橋剤もしくはジスルフィド架橋形成剤を用いることによって導出することができ、抗体全体またはそのフラグメントを含み得る。このようなハイブリッド抗体を得る方法は、例えば、国際公開公報WO83/03679および欧州特許公報EPA 0 217 577に開示されており、これらの両方を本明細書中において参考として援用する。
【0086】
抗CD70抗体はまた、ヒト化抗体とすることもできる。ヒト化抗体は、所望の抗原を結合し、非ヒト種に由来する1つ以上のCDR、ならびにヒト免疫グロブリン分子に由来するフレームワークおよび定常領域を有する抗体分子である。ヒトのフレームワーク領域内のフレームワーク残基は、抗原結合を変更、好ましくは改善するために、CDRドナー抗体の対応する残基と置換されることが多い。これらフレームワーク置換は、当該分野で周知の方法、例えば、CDRとフレームワーク残基の相互作用の設計により、特定の位置の異常なフレームワーク残基を同定する抗原結合および配列の比較に重要なフレームワーク残基を同定することにより同定される(例えば、Queenら,米国特許第5,585,089号;Reichmannら,1988,Nature 332:323参照)。例えば、CDRグラフト化(CDR grafting)(例えば、EP 0 239 400;PCT公開公報WO91/09967;米国特許第5,225,539号;同第5,530,101号;および同第5,585,089号参照)、上張り(veneering)または表面の変更(resurfacing)(EP 0 592 106;EP 0 519 596;Padlan,Molecular Immunology,1991,28(4/5):489−498;Studnickaら,1994,Protein Engineering 7(6):805−814;Roguskaら,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.91:969−973)およびチェインシャッフリング(chain shuffling)(例えば、米国特許第5,565,332号参照)(これら参考文献の全てを本明細書中において参考として援用する)を含む当該分野で公知の各種の技術を用いて抗体をヒト化することができる。
【0087】
例えば、国際公開公報WO87/02671;欧州特許公報第0 184 187号;欧州特許公報第0 171 496号;欧州特許公報第0 173 494号;国際公開公報WO86/01533;米国特許第4,816,567号;欧州特許公報第0 012 023号;Berterら,1988,Science 240:1041−43;Liuら,1987,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:3439−43;Liuら,1987,J.Immunol.139:3521−26;Sunら,1987,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:214−18;Nishimuraら,1987,Cancer.Res.47:999−1005;Woodら,1985,Nature 314:446−449;ならびにShawら,1988,J.Natl.Cancer Inst.80:1553−59;Morrison,1985,Science 229:1202−07;Oiら,1986,BioTechniques 4:214;米国特許第5,225,539号;Jonesら,1986,Nature 321:552−25;Verhoeyanら,1988,Science 239:1534;およびBeidlerら,1988,J.Immunol.141:4053−60(これら各々の全てを本明細書中において参考として援用する)に記載される方法を用いて、当該分野で公知の組換えDNA技術によりヒト化モノクローナル抗体を作ることができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、抗CD70抗体はヒトIgG抗体である。ヒト抗体は、例えば、ヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体ライブラリーを用いたファージディスプレイ法(上記参照)を含む当該分野で公知の各種方法により作ることができる。例えば、米国特許第4,444,887号および4,716,111号;ならびにPCT公開公報WO98/46645、WO98/50433、WO98/24893、WO98/16654、WO96/34096、WO96/33735、およびWO91/10741(これらの開示内容は本明細書中において参考として援用する)も参照されたい。また、選択したエピトープを認識するヒト抗体は、選択した非ヒトモノクローナル抗体、例えば、マウス抗体を用いて同じエピトープを認識する完全なヒト抗体の選択を誘導する「誘導選択(guided selection)」と称される技術を用いて生成することができる(例えば、Jespersら,1994,Bio/technology 12:899−903参照)。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現するトランスジェニックマウスを用いて作ることもできる。抗原に対するモノクローナル抗体は、慣用ハイブリドーマ技術を用いて、免疫化されたトランスジェニックマウスから得ることができる。このヒト抗体を作る技術の概略については、LonbergおよびHuszar,1995,Int.Rev.Immunol.13:65−93を参照されたい。このヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体を作る技術、ならびにそのような抗体を作るための手順の詳細な考察については、例えば、PCT公開公報WO98/24893;WO92/01047;WO96/34096;WO96/33735;欧州特許第0 598 877号;米国特許第5,413,923号、同第5,625,126号、同5,633,425号、同第5,569,825号、同第5,661,016号、同第5,545,806号、同第5,814,318号、同第5,885,793号、同第5,916,771号および同第5,939,598号(これらの開示内容は本明細書中において参考として援用する)を参照されたい。
【0089】
また、Abgenix,Inc.(Fremont,Ca)、Genpharm(San Jose,CA)、およびMedarex(Princeton,NJ)等の企業は、上記の技術と同様の技術を用いて、選択した抗原に対するヒト抗体を提供するように契約ことができる。内因性免疫グロブリン重鎖および軽鎖遺伝子を発現することができないが、ヒトの重鎖および軽鎖遺伝子を発現することができるトランスジェニックマウスを用いて完全なヒト抗体を作ることができる。トランスジェニックマウスは、選択した抗原、例えば、本発明のポリペプチドの全てまたは一部を用いて通常の方法で免疫化される。抗原に対するモノクローナル抗体は、慣用ハイブリドーマ技術を用いて得ることができる。トランスジェニックマウスが保有するヒト免疫グロブリントランス遺伝子は、B細胞の分化中に再構成され、その後、クラスの変更(class switching)および体細胞変異が行なわれる。よって、このような技術を用いることにより、治療上有用なIgG、IgA、IgMおよびIgE抗体を作ることができる。このヒト抗体を作る技術の概要については、LonbergおよびHuszar(1995,Int.Rev.Immunol.13:65−93)を参照されたい。このヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体を作る技術、ならびにそのような抗体を作る手順のより詳細な考察については、例えば、米国特許第5,625,126号;同第5,633,425;同第5,569,825;同第5,661,016号;同第5,545,806号(これら各々の全てを本明細書中において参考として援用する)参照。
【0090】
上記のように、CD70結合剤は、抗CD70抗体の誘導体とすることができる。一般に、抗CD70誘導体は、抗CD70抗体(抗原結合フラグメントまたは保存的に置換されたポリペプチドを含む)、および抗CD70抗体とは異種の少なくとも1つのポリペプチド領域または他の部分を含む。例えば、抗体誘導体が抗原結合領域もしくはそれに由来する領域を介してCD70に特異的に結合すること、またはエフェクタードメインがFc受容体を特異的に結合することを妨げないように、例えば、任意の種の分子の共有結合により、抗CD70抗体を改変することができる。典型的な改変としては、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質分解切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質との結合等が挙げられる。特異的化学切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝的合成等を含むがこれらに限定されない公知技術により、多数の化学的改変のうちのいずれかを行ってもよい。
【0091】
いくつかの実施形態では、上記抗体誘導体は、CD70に特異的に結合する多量体(例えば、ホモダイマー)を形成するように、例えば、各々が(i)抗CD70抗体の抗原結合領域、またはそれに由来するポリペプチド領域(例えば、1つ以上のアミノ酸の保存的置換によるもの等)、および(ii)多量体化(例えば二量体化)ポリペプチド領域を有する1つ以上のモノマーを含む二量体等の多量体である。典型的な実施形態では、抗CD70抗体の抗原結合領域またはそれに由来するポリペプチド領域は、二量体化または多量体化ドメインを含む異種タンパク質と、組換えによってまたは化学的に融合する。免疫障害またはCD70を発現する癌を処置または予防する目的で被験体に抗体誘導体を投与する前に、当該誘導体をホモダイマーまたはヘテロダイマーの形成を可能とする条件に供する。本明細書中において用いるヘテロダイマーは、同一の二量体化ドメインおよび異なるCD70抗原結合領域、同一のCD70抗原結合領域および異なる二量体化ドメイン、または異なるCD70抗原結合領域および異なる二量体化ドメインを含んでもよい。
【0092】
典型的な二量体化ドメインは、転写因子から生じる二量体化ドメインである。1つの実施形態では、二量体化ドメインは、塩基性領域ロイシンジッパー(「bZIP」)の二量体化ドメインである(Vinsonら,1989,Science 246:911−916参照)。有用なロイシンジッパードメインとしては、例えば、酵母転写因子GCN4、哺乳類転写因子CCAAT/エンハンサー結合タンパク質C/EBP、ならびに癌遺伝子産物FosおよびJun中の核形質転換のロイシンジッパードメインが挙げられる。(Landschultzら,1988,Science 240:1759−64;BaxevanisおよびVinson,1993,Curr.Op.Gen.Devel.3:278−285;O’Sheaら,1989,Science 243:538−542参照。)他の実施形態では、二量体化ドメインは、塩基性領域ヘリックス−ループ−ヘリックス(「bHLH」)タンパク質の二量体化ドメインである。(Murreら,1989,Cell 56:777−783を参照されたい。また、Davisら,1990,Cell 60:733−746;VoronovaおよびBaltimore,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:4722−4726も参照されたい。)特に有用なhHLHタンパク質は、myc、maxおよびmacである。
【0093】
さらに他の実施形態では、二量体化ドメインは、例えば、重鎖定常領域(例えば、CH1ドメイン、CH2ドメインおよび/またはCH3ドメイン)等の免疫グロブリン定常領域またはそのドメインである。(例えば、米国特許第5,155,027号、同第5,336,603号、同第5,359,046号および同第5,349,053号;EP 0
367 166;WO96/04388参照。)
ヘテロダイマーは、FosとJunとの間(Bohmannら,1987,Science 238:1386−1392)、ATF/CREBファミリーのメンバー間(Haiら,1989,Genes Dev.3:2083−2090)、C/EBPファミリーのメンバー間(Caoら,1991,Genes Dev.5:1538−52;Williamsら,1991,Genes Dev.5:1553−67;Romanら,1990,Genes Dev.4:1404−15)、およびATF/CREBファミリーのメンバーとFos/Junファミリーのメンバーとの間(HaiおよびCurran,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:3720−24)に形成されることが知られている。それゆえ、CD70結合タンパク質を、異なる二量体化ドメインを含むヘテロダイマーとして被験体に投与する場合、前記のいかなる組合せを用いてもよい。
【0094】
他の実施形態では、抗CD70抗体誘導体は、第2の抗体と結合体化した抗CD70抗体(「抗体ヘテロ結合体」)である(米国特許第4,676,980号参照)。本方法を実施するために有用なヘテロ結合体は、CD70に結合する抗体(例えば、モノクローナル抗体2F2または1F6のCDRおよび/または重鎖を有する抗体)、およびCD16/FcgRIII、CD64/FcgRI、キラー細胞活性化受容体もしくは阻害受容体、または補体コントロールタンパク質CD59等の表面受容体もしくは受容体複合体に結合する抗体を含む。典型的な実施形態では、多重特異性抗体の部分と第2の細胞表面分子または受容体複合体との結合により、抗CD70抗体のエフェクター機能が向上する。
【0095】
いくつかの実施形態では、抗CD70抗体またはその誘導体は、競合結合の判定に関して当該分野で公知のいずれかの方法(例えば、本明細書中に記載のイムノアッセイ等)により判定されるように、mAb 1F6または2F2とCD70との結合を競合的に阻害する。典型的な実施形態では、上記抗体は、1F6または2F2とCD70との結合を、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%または少なくとも75%だけ競合的に阻害する。他の実施形態では、上記抗体は、1F6または2F2とCD70との結合を、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%だけ競合的に阻害する。
【0096】
抗体は、CD70との特異的な結合について、各種の公知の方法のうちのいずれかにより分析することができる。使用可能なイムノアッセイとしては、例えば、ウエスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合イムノソルベントアッセイ)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体固定アッセイ、免疫放射測定アッセイ、蛍光イムノアッセイ、およびプロテインAイムノアッセイ等の技術を用いた競合または非競合アッセイ系が挙げられる。このようなアッセイは、当該分野では慣習的に行なわれており、周知である。(例えば、Ausubelら編,Short Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons,Inc.,New York,4th ed.1999);Harlow and Lane,Using Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1999参照。)
さらに、抗体のCD70との結合親和性および抗体CD70相互作用のオフレート(off−rate)は、競合結合アッセイにより判定することができる。競合結合アッセイの一例としては、増量した非標識CD70の存在下で、標識CD70(例えば、3Hまたは125I)と、着目する抗体とをインキュベートすること、および標識CD70に結合した抗体を検出することを含むラジオイムノアッセイが挙げられる。次いで、CD70に対する抗体の親和性および結合オフレートを、スカッチャードプロット分析によるデータから判定することができる。また、二次抗体(例えば、mAb 1F6または2F2等)との競合を、ラジオイムノアッセイを用いて判定することもできる。例えば、増量した非標識の二次抗体が存在する中で、CD70と、標識化合物(例えば、3Hまたは125I)と結合体化させた着目抗体とをインキュベートする。あるいは、CD70に対する抗体の結合親和性、ならびに抗体−CD70相互作用のオンレート(on−rate)およびオフレートを、表面プラスモン共鳴により判定することができる。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体またはその誘導体を標的とし、CD70を発現する細胞の膜上に蓄積することができる。
【0097】
本方法に有用な抗CD70抗体およびその誘導体は、タンパク質の合成について当該分野で公知の方法、典型的には、例えば、組換え体発現技術により作ることができる。CD70に結合し、CD70を発現する細胞の増殖を低下または阻害する抗体またはその誘導体の組換え体発現は、当該抗体またはその誘導体をコードする核酸を含む発現ベクターの構築を必要とする。タンパク質分子産生用ベクターを、当該分野で公知の技術を用いた組換えDNA技術により作ってもよい。例えば、組換え核酸法、核酸合成、細胞培養、トランスジーンの組み込み、および組換えタンパク質の発現のために、SambrookおよびRussel,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,3rd ed.,2001);Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory
Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,2nd ed.,1989);Short Protocols in Molecular Biology(Ausubelら,John Wiley and Sons,New York,4th
ed.,1999);ならびにGlickおよびPasternak,Molecular Biotechnology:Principles and Applications of Recombinant DNA(ASM Press,Washington,D.C.,2nd ed.,1998)に記載された技術等、標準的な技術を用いることができる。
【0098】
例えば、抗CD70抗体の組換え発現のために、発現ベクターは、プロモーターに作動可能に結合させた重鎖もしくは軽鎖または重鎖もしくは軽鎖可変ドメインをコードしてもよい。例えば、発現ベクターは、抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列(例えば、PCT公開公報WO86/05807;PCT公開公報WO89/01036;および米国特許第5,122,464号参照)を含んでもよく、抗体の可変ドメインは、全重鎖または軽鎖の発現用ベクターにクローン化してもよい。発現ベクターを、慣用技術により宿主細胞に移入し、次いで、導入した細胞を慣用技術により培養して抗CD70抗体を産生する。典型的な実施形態では、二本鎖抗体の発現のために、重鎖および軽鎖をともにコードするベクターを、全免疫グロブリン分子の発現用宿主細胞中で共発現させることができる。
【0099】
各種の原核および真核宿主発現ベクター系を利用して抗CD70抗体またはその誘導体を発現させることができる。典型的には、特に、組換え抗CD70抗体分子全体について、組換えタンパク質の発現のために真核細胞が用いられる。例えば、ヒトのサイトメガロウイルスに由来する主要中間初期遺伝子プロモーターエレメント等のベクターと組み合わせたチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)等の哺乳類細胞は、抗CD70抗体およびその誘導体の産生のための効果的な発現系である(例えば、Foeckingら,1986,Gene 45:101;Cockettら,1990,Bio/Tcchnology 8:2参照)。
【0100】
例えば、他の宿主発現系としては、細菌細胞におけるプラスミドに基づいた発現系(例えば、Rutherら,1983,EMBO 1,2:1791;InouyeおよびInouye,1985,Nucleic Acids Res.13:3101−3109;Van HeekeおよびShuster,1989,J.Biol.Chem.24:5503−5509参照);Spodoptera frugiperda細胞におけるAutographa californica核多角体病ウイルス(AcNPV)発現ベクターの使用等の昆虫系;および、例えば、アデノウイルスに基づいた系等の哺乳類細胞におけるウイルスに基づいた発現系(例えば、LoganおよびShenk,1984,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:355−359;Bittnerら,1987,Methods in Enzymol.153:51−544参照)が挙げられる。
【0101】
また、挿入した配列の発現を調節するか、または遺伝子産物を所望の特定の様式で改変およびプロセシングする宿主細胞株を選択することができる。適切な細胞系または宿主系を選択して、発現したタンパク質の正確な改変およびプロセシング(例えば、グリコシル化、リン酸化および切断)を確実に行なうことができる。この目的のために、一次転写物および遺伝子産物の適切なプロセシングのための細胞装置を有する真核宿主細胞を用いることができる。そのような哺乳類宿主細胞としては、例えば、CHO、VERO、BHK、HeLa、COS、MDCK、293、3T3およびW138が挙げられる。
【0102】
安定した発現系は、典型的には、組換え抗CD70抗体またはその誘導体の長期的、高収率の産生に用いられる。例えば、抗CD70抗体またはその誘導体を安定して発現する細胞系は、適切な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位)および選択マーカーにより制御されるDNAを用いて宿主細胞を形質転換し、その後、形質転換細胞を選択培地で成長させることにより操作することができる。選択マーカーは、選択に対する耐性を付与し、細胞がそれらの染色体にDNAを安定して組み込み、増殖して細胞増殖巣(focus)を形成することを可能にし、次に、その細胞増殖巣をクローン化し、細胞系へと発展させることができる。例えば、それぞれ、tk−、hgprt−またはaprt−細胞において用いることができる単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼおよびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子を含む多くの選択系を用いることができる。また、メトトレキセートに対する耐性を付与するdhfr;ミコフェノール酸に対する耐性を付与するgpt;アミノグリコシドG−418に対する耐性を付与するneo;およびハイグロマイシンに対する耐性を付与するhygro等の遺伝子の選択の基準として代謝拮抗物質耐性を用いることができる。組換えDNA技術の分野で一般に知られる方法を通常通りに用いて所望の組換えクローンを選択することができ、そのような方法は、例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編,John Wiley and Sons,N.Y.,1993);Kriegler,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual(Stockton Press,N.Y.,1990);Current Protocols in
Human Genetics(Dracopoliら編,John Wiley and Sons,N.Y.,1994,Chapters 12および13);ならびにColberre−Garapinら,1981,J.Mol.Biol.150:1に記載されている。
【0103】
抗体または誘導体の発現量は、ベクター増幅により高めることができる。(例えば、一般に、BebbingtonおよびHentschel,The Use of Vectors Based on Gene Amplification for the
Expression of Cloned Genes in Mammalian
Cells in DNA Cloning,Vol.3(Academic Press,New York,1987)を参照されたい。)抗CD70抗体またはその誘導体を発現するベクター系におけるマーカーが増幅可能な場合、宿主細胞培養培地に存在する阻害剤の量を増加させることで、該阻害剤に対する耐性を付与するマーカー遺伝子のコピー数が増加した宿主細胞が選択される。関連抗体遺伝子のコピー数も増加し、それにより抗体またはその誘導体の発現が増加する(Crouseら,1983,Mol.Cell.Biol.3:257参照。)
抗CD70抗体が重鎖および軽鎖の両方またはその誘導体を含む場合、重鎖タンパク質をコードする第1のベクター、および軽鎖タンパク質をコードする第2のベクターの2つの発現ベクターで宿主細胞を同時遺伝子導入してもよい。これら2つのベクターは、重鎖および軽鎖タンパク質を等しく発現することができる同一の選択マーカーを含んでもよい。あるいは、重鎖および軽鎖タンパク質の両方をコードし、発現することが可能な単一のベクターを用いてもよい。そのような場合、典型的には、軽鎖は、毒性を有する遊離重鎖が過剰になることを避けるために重鎖の前に配置される(Proudfoot,1986,Nature 322:52;Kohler,1980,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:2197参照)。重鎖および軽鎖のコード配列は、cDNAまたはゲノムDNAを含んでもよい。
【0104】
(例えば、動物、化学合成または組換え体発現により)抗CD70抗体またはその誘導体が作られると、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換またはアフィニティークロマトグラフィー(例えば、インタクトなFc領域を有する抗体の精製用プロテインAクロマトグラフィー等))、遠心分離、溶解度差、またはタンパク質精製のための任意の他の標準的技術等、タンパク質精製のための任意の適切な方法により、当該抗CD70抗体または誘導体を精製することができる。抗CD70抗体またはその誘導体は、例えば、ペプチド等のマーカー配列と融合させることにより、アフィニティークロマトグラフィーによる精製を容易にすることができる。適切なマーカーアミノ酸配列としては、例えば、pQEベクター(QIAGEN,Inc.,Chatsworth,CA,91311)に設けられたタグ、およびインフルエンザヘマグルチニンタンパク質に由来するエピトープに対応する「HA」タグ(Wilsonら,1984,Cell 37:767)および「flag」タグ等のヘキサ−ヒスチジンペプチドが挙げられる。
【0105】
抗CD70抗体またはその誘導体が作られると、CD70を発現する癌細胞に対する細胞静止もしくは細胞毒性作用またはCD70を発現する免疫細胞に対する免疫抑制作用を及ぼす能力を下記または当該分野で公知の方法により判定する。
【0106】
活性化免疫細胞またはCD70を発現する癌細胞外において抗CD70抗体の活性を最小化するために、細胞膜結合CD70に特異的に結合するが、可溶性CD70には結合しない抗体を用いて、抗CD70抗体が活性化免疫細胞またはCD70を発現する癌細胞の細胞表面に濃縮されるようにすることができる。
【0107】
典型的には、抗CD70抗体または誘導体は実質的に精製されている(例えば、その効果を限定するか、または望ましくない副作用を生じる物質を実質的に含まない)。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体または誘導体は、少なくとも約40%純粋、少なくとも約50%純粋、または少なくとも約60%純粋である。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体または誘導体は、少なくとも約60〜65%、65〜70%、70〜75%、75〜80%、80〜85%、85〜90%、90〜95%、または95〜98%純粋である。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体または誘導体は概ね99%純粋である。
【0108】
(III.他のCD70結合剤)
さらに、CD70結合剤は、融合タンパク質(典型的には少なくとも10個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個または少なくとも100個のアミノ酸の異種タンパク質に組換え融合または化学的に結合体化(すなわち、共有結合および非共有結合の両方の結合体化を含む)させたタンパク質)が挙げられる。このようなCD70結合剤は、CD70および免疫グロブリンエフェクタードメインもしくはその機能的等価物に結合する部分を含む。本明細書中において用いられるように、免疫グロブリンエフェクタードメインの機能的等価物は、食作用もしくは溶解活性またはFcエフェクタードメインと補体系成分との結合により、免疫細胞上のFc受容体に結合する。融合タンパク質は、必ずしも直接的である必要はなく、リンカー配列を介して発生してもよい。
【0109】
例えば、CD70結合剤は、インフレームの抗CD70抗体の1つ以上のCDRのコード領域と、異種タンパク質をコードする配列とを融合させて組換えにより作ることができる。異種タンパク質は、エフェクタードメインまたはその機能的等価物を含んでおり、以下の特徴のうち1つ以上を提供し得る:安定した発現の促進;高収率の組換え発現を容易にする手段の提供;および/または多量体ドメインの提供。
【0110】
いくつかの実施形態では、CD70結合剤は、CD70に結合し、細胞毒性剤との結合体化を伴わない、CD70を発現する細胞単独での増殖を低減または阻害する抗体に由来する1つ以上のCDRを含むようにすることができる。
【0111】
1つの局面では、CD70結合剤は、CD27、およびCD70に結合する改変体またはそのフラグメントを含むようにすることができる。CD70結合剤は、CD70に特異的に結合するペプチド、リガンドおよび他の分子をさらに含むようにすることができる。
【0112】
CD70結合剤は、タンパク質−タンパク質相互作用のスクリーニングに適した任意の方法を用いて同定することができる。典型的には、まず、CD70に特異的に結合する能力でタンパク質を同定する。そのような結合タンパク質については、細胞毒性白血球細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞)、食作用細胞(例えば、マクロファージ)、および血清補体成分を、細胞毒性または細胞静止剤と結合体化することなく補充および活性化することにより活性化リンパ球またはCD70を発現する癌細胞に細胞静止作用または細胞毒性作用を及ぼす能力、または免疫抑制剤と結合体化することなく、それら自体により、免疫細胞に免疫抑制作用を及ぼす能力を判定することができる。使用可能な伝統的方法としては、λgt11ライブラリーの抗体検査技術と類似する方法で、標識CD70を用いた発現ライブラリーの検査を伴う「相互作用クローニング」技術がある。例示のためで限定するものではないが、これは以下のように達成することができる:CD70(またはその1F6もしくは2F2結合ドメイン)をコードするcDNAクローンのC末端を心臓筋肉キナーゼ(HMK)用のリン酸化部位に挿入することにより改変する(例えば、Blanar およびRutter,1992,Science 256:1014−1018参照)。この組換えタンパク質を大腸菌で発現し、GDPアフィニティーカラムで均一になるまで精製し(Ederyら,1988,Gene 74:517−525)、γ32P−ATPおよびウシ心臓筋肉キナーゼ(Sigma)を用いて、1×108cpm/μgの比活性まで標識し、これを用いて「ファーウェスタンアッセイ」(BlanarおよびRutter,1992,Science 256:1014−1018)によりヒト胎盤λgt11 cDNAライブラリーをスクリーニングする。CD70プローブと相互作用するプラークを単離する。陽性λプラークのcDNA挿入物を遊離し、pBluescript KS(Stratagene,La Jolla,CA)等、配列決定に適したベクターにサブクローニングする。
【0113】
タンパク質相互作用をインビボで検出する方法の1つが2ハイブリッドシステムである。このシステムの1つに関しては、説明がなされており(Chienら,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:9578−82)、Clontech(Palo Alto,CA)から市販されている。
【0114】
CD70結合タンパク質が同定されると、(単独で、または多量体化させた場合もしくは二量体化または多量体化ドメインと融合させた場合に)CD70を発現する癌細胞に対する細胞静止または細胞毒性作用、またはCD70を発現する免疫細胞に対する免疫抑制作用を及ぼす能力について下記の方法により判定することができる。
【0115】
(IV.抗CD70標的化剤のエフェクター機能を改善する方法)
いくつかの実施形態では、CD70結合剤のエフェクター機能は、当該分野で公知の1つ以上の抗体操作アプローチを用いてエフェクター機能を改善することにより増大することができる。このようなアプローチについて、非限定的な例を下記に例示する。
【0116】
ADCCおよびADCPは、細胞結合抗体と、エフェクター細胞上で発現したFcγ受容体(FcγR)の相互作用を介して仲介される。IgG Fc領域のグリコシル化状態および一次アミノ酸配列はともに、Fcγ−FcγR相互作用について機能的な効果を有する。より強力なFcγ−FcγR相互作用は、エフェクター細胞によるより良好な標的細胞の殺傷と関連する。
【0117】
保存的Asn297と共有結合したオリゴ糖は、IgGのFc領域がFcγRに結合するために必要である(Lundら,1996,J.Immunol.157:4963−69;WrightおよびMorrison、1997,Trends Biotechnol.15:26−31)。このIgG上の糖形態を操作することにより、IgG仲介ADCCを大幅に改善することができる。二分N−アセチルグルコサミン改変をこの糖形態に付加すること(Umanaら,1999,Nat.Biotechnol.17:176−180;Daviesら,2001,Biotech.Bioeng.74:288−94)、またはフコースをこの糖形態から除去すること(Shieldsら,2002,J.Biol.Chem.277:26733−40;Shinkawaら,2003,J.Biol.Chem.278:6591−604;Niwaら,2004,Cancer Res.64:2127−33)は、IgG FcとFcγRとの間の結合を改善することにより、Ig仲介ADCC活性を向上させるIgG Fc操作の2つの例である。
【0118】
ヒトのIgG1 Fc領域において、溶媒に曝されたアミノ酸を体系的に置換することにより、FcγR結合親和性が変化したIgG改変体が生成された(Shieldsら,2001,J.Biol Chem.276:6591−604)。親IgG1と比較して、Thr256/Ser298、Ser298/Glu333、Ser298/Lys334、またはSer298/Glu333/Lys334からAlaが置換されたこれら改変体の部分集合は、FcγRに対する結合親和性およびADCC活性の両方において増加を示した(Shieldsら,2001,J.Biol.Chem.276:6591−604;Okazakiら,2004,J.Mol.Biol.336:1239−49)。
【0119】
抗体仲介CDCは、Clqと細胞結合IgG分子との結合により開始される。Clq結合およびClq結合の種特異的差異の原因となるヒトIgG1上の特定のアミノ酸残基が報告されている(Idusogieら,2000,J.Immunol.164:4178−4184)。抗体の補体固定活性は、Lys326およびGlu333の置換により改善されており;これは、例えば、このような置換が、ヒトIgG1抗体リツキシマブのClq結合およびCDC活性の両方を改善することができるためである(Idusogieら,2001,J.Immunol.166:2571−2575)。ヒトIgG2骨格上で同じ置換を行なうことにより、Clqにうまく結合しておらず、補体活性化活性が著しく不足した抗体イソタイプを、Clqに結合するとともにCDCを仲介することができる抗体に変換することができる(Idusogieら,2001,J.Immunol.166:2571−75)。他にもいくつかの方法が抗体の補体固定活性を改善するために適用されている。例えば、IgMの18−アミノ酸カルボキシル末端尾部をIgGのカルボキシル末端にグラフティングすることにより、それらのCDC活性が大きく向上する。これは、通常は検出可能なCDC活性を有さないIgG4でも観察される(Smithら,1995,J.Immunol.154:2226−36)。また、IgG1重鎖のカルボキシ末端付近に位置するSer444をCysと置換することにより、IgG1の尾部と尾部との二量化を誘導し、単量体IgG1に対して、CDC活性が200倍に増加した(Shopesら,1992,J.Immunol.148:2918−22)。また、Clqに対する特異性を有する二重特異性抗体構築物もまたCDC活性を与える(Kontermannら,1997,Nat.Biotech.15:629−31)。
【0120】
抗体のインビボ半減期もまた、そのエフェクター機能に影響を与えることがある。いくつかの実施形態では、抗体の半減期を増減し、その治療活性を変更することが望ましい。FcRnは、β2−ミクログロブリンと非共有結合するMHCクラスI抗原と同様の構造をした受容体である。FcRnは、IgGの異化作用およびそれらの組織間のトランスサイトーシスを調節する(GhetieおよびWard,2000,Annu.Rev.Immunol.18:739−766;GhetieおよびWard,2002,Immunol.Res.25:97−113)。IgG−FcRn相互作用は、pH6.0(細胞内小胞のpH)で発生するが、pH7.4(血液のpH)では発生しない;この相互
作用により、IgGを血液循環に再循環させることが可能になる(GhetieおよびWard,2000,Ann.Rev.Immunol.18:739−766;GhetieおよびWard,2002,Immunol.Res.25:97−113)。FcRn結合に関与するヒトIgG1上の領域がマッピングされている(Shieldsら,2001,J.Biol.Chem.276:6591−604)。ヒトIgG1のPro238、Thr256、Thr307、Gln311、Asp312、Glu380、Glu382、またはAsn434の位置でのアラニン置換により、FcRn結合が向上する(Shieldsら,2001,J.Biol.Chem.276:6591−604)。これらの置換を保有するIgG1分子は、血清半減期がより長いものと予測される。結果、これらの改変IgG1分子は、それらのエフェクター機能を実行することが可能であるため、改変されていないIgG1と比較して、より長い期間治療効果を及ぼすことができる。
【0121】
(V.細胞毒性、細胞静止および免疫抑制活性に関するアッセイ)
抗体が標的細胞に対するエフェクター機能を仲介するか否かを判定する方法は公知である。このような方法について下記に例示する。
【0122】
抗CD70抗体または誘導体が活性化免疫細胞またはCD70を発現する癌細胞に対する抗体依存性細胞障害作用を仲介するか否かを判定するために、抗体およびエフェクター免疫細胞の存在下で標的細胞死を測定するアッセイを用いてもよい。このタイプの細胞毒性を測定するために用いられるアッセイは、エフェクター細胞および標的特異的抗体の存在下での培養後、代謝的に標識された標的細胞からの51Cr放出の判定に基づくようにすることができる(例えば、PerussiaおよびLoza,2000,Methods in Molecular Biology 121:179−92、ならびにCurrent Potocols in Immunologyにおける「51Cr Release Assay of Antibody−Dependent Cell−Mediated Cytotoxicity(ADCC)」、Coliganら編,Wileyand Sons,1993参照)。例えば、Na251CrO4で標識され、5,000細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに入れられた活性化免疫細胞(例えば、活性化リンパ球)またはCD70を発現する癌細胞は、異なる濃度の抗CD70抗体を用いて30分間処理し、次に、正常なヒトの末梢血単核細胞(PBMC)と4時間混合することができる。標的細胞死を伴う膜破壊により、51Crを培養上清中に放出するが、これを回収し、その放射能を細胞毒性活性の測定値として評価してもよい。ADCCを測定する他のアッセイは、非放射性標識を用いるか、または特定の酵素の放出の誘導に基づいてもよい。例えば、時間分解蛍光測定に基づく非放射性アッセイが市販されている(Delphia,Perkin Elmer)。このアッセイでは、細胞膜に浸透し、次いで、加水分解して膜不透過親水性リガンド(TDA)を形成する蛍光増感リガンド(BATDA)のアセトキシメチルエステルを標的細胞に組み込む。TDAは、標的特異的抗体およびPBMCエフェクター細胞と混合されると溶解細胞から放出され、ユーロピウムと混合された場合には高蛍光性キレートを形成することが可能である。時間分解蛍光光度計で測定したシグナルは、細胞溶解量と相関関係にある。
【0123】
抗CD70抗体または誘導体が活性化免疫細胞またはCD70を発現する癌細胞に対する抗体依存性細胞食作用を仲介するか否かを判定するために、エフェクター免疫細胞による標的細胞内在化を測定するアッセイ(例えば、新たに培養されたマクロファージまたは確立されたマクロファージ様細胞系)を用いてもよい(例えば、MunnおよびCheung,1990,J.Exp.Med.172:231−37;Kelerら,2000,J.Immunol.164:5746−52;Akewanlopら,2001,Cancer Res.61:4061−65参照)。例えば、標的細胞を、PKH67(Sigma)等の脂溶性膜染料で標識し、標的特異的抗体で覆い、エフェクター免疫細胞と4〜24時間混合してもよい。次いで、エフェクター細胞を、食作用細胞表面マーカー(例えば、CD14)に特異的な蛍光色素で標識した抗体で対比染色することにより同定し、当該細胞を2色フローサイメトリーまたは蛍光顕微鏡検査法により分析してもよい。二重陽性細胞は、標的細胞を内在化したエフェクター細胞を表す。これらのアッセイについては、エフェクター細胞は、5〜10日間、M−CSFまたはGM−CSFを用いて培養してマクロファージに分化したPBMC由来の単球であってもよい(例えば、MunnおよびCheung,同上参照)。ATCCから利用可能なヒトのマクロファージ様細胞
系U937(Larrickら,1980,J.Immunology 125:6−12)またはTHP−1(Tsuchiyaら,1980,Int.J.Cancer 26:171−76)は、代替的な食作用細胞源として用いてもよい。
【0124】
標的細胞との結合時に抗体が補体依存性細胞毒性作用を仲介するか否かを判定する方法も公知である。CD70結合剤がCDC活性化免疫細胞またはCD70を発現する癌細胞を仲介するか否かを判定するために同じ方法を適用することができる。そのような方法を以下において例示的に説明する。
【0125】
活性補体の源は、正常なヒトの血清であるか、またはウサギを始めとする実験動物から精製することができる。標準的なアッセイでは、補体の存在下で、CD70を発現する活性化免疫細胞(例えば、活性化リンパ球)またはCD70を発現する癌細胞を用いてCD70結合剤を培養する。そのようなCD70結合剤の細胞溶解仲介能力は、いくつかの計測値によって判定することができる。1つの例では、Na51CrO4放出アッセイが用いられる。このアッセイでは、標的細胞はNa51CrO4で標識される。組み込まれていないNa51CrO4を洗い落とし、96ウェルプレートに適切な密度、典型的には、5,000〜50,000細胞/ウェルで細胞を入れる。正常な血清または精製された補体の存在下でCD70結合剤を用いた培養を、典型的には、5%のCO2雰囲気中において37℃で2〜6時間継続する。細胞溶解を示す放出された放射能を、γ線計測により一定分量の培養上清において判定する。組み込まれたNa51CrO4を洗剤(0.5〜1%のNP−40またはTriton X−100)で処理して放出することにより最大細胞溶解を判定する。自然発生的な背景細胞溶解を、CD70結合剤がなく補体のみが存在するウェルで判定する。細胞溶解率を、(CD70結合剤により誘導された溶解−自然発生的な溶解)/最大細胞溶解により算出する。第2の計測値は、代謝染料(例えば、Alamar Blue)の生存細胞分の減少である。このアッセイでは、補体を有し、上記のように培養したCD70結合剤を用いて標的細胞を培養する。培養の最後に、1/10の用量のAlamar Blue(Biosource International,Camarillo,CA)を加える。5%のCO2雰囲気中において37℃で最大16時間培養を継続する。530nmの励起波長および590nmの発光波長を用いた蛍光分析により、代謝的に活性な生存細胞を示すAlamar Blueの減少を判定する。第3の計測値は、ヨウ化プロピジウム(PI)に対する細胞膜浸透力である。補体活性化の結果として原形質膜に孔が形成されることにより、PIが細胞内に侵入し、細胞核内に拡散してDNAに結合することが容易になる。DNAとの結合時に、600nmのPI蛍光が大きく増加する。上記のように、CD70結合剤および補体を用いて標的細胞の処理を行なう。培養の最後に、最終濃度が5μg/mlになるまでPIを加える。次いで、励起用の488nmアルゴンレーザーを用いたフローサイメトリーにより、細胞懸濁液を検査する。溶解細胞は、600nmの蛍光発光で検出される。
【0126】
(VI.免疫障害またはCD70を発現する癌の動物モデル)
抗CD70抗体または誘導体は、免疫障害またはCD70を発現する癌の動物モデルにおいてテストまたは検証することができる。免疫障害またはCD70を発現する癌について確立された多くの動物モデルが当業者に知られており、そのいずれについても抗CD70抗体または誘導体の有効性を検査するために用いることができる。そのようなモデルの非限定的な例を以下に示す。
【0127】
糖尿病、狼瘡、全身性硬化症、シェーグレン症候群、実験的自己免疫脳脊髄炎(多発性硬化症)、甲状腺炎、重症筋無力症、関節炎、ブドウ膜炎、炎症性腸疾患を含む全身性および器官特異的な自己免疫病の動物モデルの例が、The Autoimmune DiseasesにおけるBigazzi,「Animal Models of Autoimmunity:Spontaneous and Induced」(RoseおよびMackay編,Academic Press,1998)、Current Protocols in Immunologyにおける「Animal Models for Autoimmune and Inflammatory Disease」(Coliganら編,Wiley & Sons,1997)、およびMethods
in Molecular Medicine,Vol.102.Autoimmunity:Methods and ProtocolsにおけるPeng,「Experimental Use of Murine Lupus Models」(Perl編,Humana Press Inc.)に記載されている。
【0128】
アレルギー性症状、例えば、喘息および皮膚炎も、げっ歯類においてモデル化することができる。気道過敏症は、オボアルブミンにより(Tomkinsonら,2001,J.Immunol.166:5792−800)またはSchistosoma mansoni卵抗原(Tesciubaら,2001,J.Immunol.167:1996−2003)によってマウス中に誘導することができる。マウスのNc/Nga系は、血清IgEの顕著な増加を示し、アトピー性皮膚炎様病変を自然発生させる(Vestergaardら,2000,Mol.Med.Today 6:209−10;Watanabeら,1997,Int.Immunol.9:461−66;Saskawaら,2001,Int.Arch.Allergy Immunol.126:239−47)。
【0129】
免疫適格ドナーのリンパ球を致死照射組織非適合宿主に注射することは、マウスでGVHDを誘導するための古典的なアプローチである。あるいは、親B6D2F1マウスモデルは、急性および慢性GVHDの両方を誘導するシステムを提供する。このモデルでは、B6D2F1マウスは、C57BL/6およびDBA/2マウスの親系統間交配のF1子孫である。DBA/2リンパ系細胞を非照射B6D2F1マウスに移入することにより、慢性GVHDが引き起こされる一方、C57BL/6、C57BL/10またはB10.D2リンパ系細胞の移入では、急性GVHDが引き起こされる(Slaybackら,2000,Bone Marrow Transpl.26:931−938;Kataokaら,2001,Immunology 103:310−318)。
【0130】
さらに、ヒト造血幹細胞および成熟末梢血液リンパ系細胞はともに、SCIDマウスに植え付けることができ、これらのヒトリンパ−造血細胞は、SCIDマウス中で機能を持ち続ける(McCuneら,1988,Science 241:1632−1639;Kamel−ReidおよびDick,1988,Science 242:1706−1709;Mosierら,1988,Nature 335:256−259)。これは、ヒトリンパ系細胞に対して潜在的な治療剤を直接テストするための小動物モデルシステムを提供している(例えば、Tournoyら,2001,J.Immunol.166:6982−6991参照)。
【0131】
さらに、CD70を発現するヒト腫瘍細胞系を、適切な免疫欠損げっ歯類系、例えば、胸腺欠損ヌードマウスまたはSCIDマウスに移植することにより、体内における抗CD70抗体または誘導体の有効性を調べる小動物モデルを作ることができる。CD70を発現するヒトリンパ腫細胞系の例としては、例えば、Daudi(Ghetieら,1994,Blood 83:1329−36;Ghetieら,1990,Int.J.Cancer 15:481−85;de Montら,2001,Cancer Res.61:7654−59),Ramos(Maら,2002,Leukemia 16:60−6;Pressら,2001,Blood 98:2535−43),HS−Sultan(CattanおよびMaung,1996,Cancer Chemother
Pharmacol.38:548−52;CattanおよびDouglas,1994,Leuk.Res.18:513−22),Raji(Ochakovskayaら,2001,Clin.Cancer Res.7:1505−10;Breistoら,1999,Cancer Res.59:2944−49),およびCA46(Kreitmanら,1999,Int.J.Cancer 81:148−55)が挙げられる。CD70を発現するホジキンリンパ腫系の非限定的な例としては、L540cy(Barthら,2000,Blood 95:3909−14;Wahlら,2002,Cancer Res.62:3736−42)が挙げられる。CD70を発現するヒト腎臓細胞癌腫細胞系の非限定的な例としては、786−O(Ananthら,1999,Cancer Res.59:2210−6;Dattaら,2001,Cancer Res.61:1768−75)、ACHN(Haraら,2001,J.Urol.166:2491−4;Miyakeら,2002,J.Urol.167:2203−8)、Caki−1(Prewettら,1998,Clin.Cancer Res.4:2957−66;ShiおよびSiemann,2002,Br.J.Cancer 87:119−26)ならびにCaki−2(Zellwegerら,2001,Neoplasia 3:360−67)が挙げられる。CD70を発現する上咽頭癌腫細胞系の非限定的な例としては、C15およびC17(Bussonら,1988,Int.J.Cancer 42:599−606;Bernheimら,1993,Cancer
Genet.Cytogenet.66:11−5)が挙げられる。CD70を発現するヒトグリオーマ細胞系の非限定的な例としては、U373(Palmaら,2000,Br.J.Cancer 82:480−7)およびU87MG(Johnsら,2002,Int.J.Cancer 98:398−408)が挙げられる。これらの腫瘍細胞系は、皮下注射による固体腫瘍または静脈内注射による散在性腫瘍のいずれかとして、免疫欠損げっ歯動物宿主中で確立することができる。宿主内で確立されると,これらの腫瘍モデルを適用して、インビボ腫瘍成長の調節について、本明細書中に記載の抗CD70抗体または誘導体の治療有効性を評価することができる。
【0132】
(VII.免疫障害およびCD70を発現する癌)
本明細書中に記載の抗CD70抗体および誘導体は、免疫細胞(例えば、リンパ球または樹状細胞)の不適切な活性化によるCD70の発現を特徴とするCD70を発現する癌または免疫障害の処置または予防に有用である。このようなCD70の発現は、例えば、細胞表面上のCD70タンパク質の増加量および/または発現したCD70の抗原性の変化が原因となり得る。効果的な量の抗CD70抗体または誘導体をその処置または予防を必要とする被験体に投与することにより、当該抗体または誘導体が、(i)CD70を発現し、その病状に関連する活性化免疫細胞に結合し、(ii)その活性化免疫細胞に対して、細胞毒性、細胞静止または免疫抑制剤と結合体化することなく、細胞毒性、細胞静止または免疫抑制効果を及ぼすことにより本明細書中に記載の方法による免疫障害の処置または予防が達成される。
【0133】
免疫細胞の不適切な活性化を特徴とし、本明細書中に記載の方法により処置または予防することができる免疫学的疾患は、例えば、その障害の背後にある過敏性反応のタイプにより分類することができる。これらの反応は、典型的には、アナフィラキシー反応、細胞毒性(細胞分解)反応、免疫複合体反応、または細胞仲介免疫(CMI)反応(遅延タイプの過敏性(DTH)反応ともいう)の4種類に分類される。(例えば、Fundamental Immunology(William E.Paul編,Raven Press,N.Y.,3rd ed.1993)参照。)
そのような免疫障害の具体的な例としては、以下のものが挙げられる:関節リウマチ、自己免疫脱髄疾患(例えば、多発性硬化症、アレルギー性脳髄膜炎)、内分泌眼病、ブドウ膜網膜炎、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、グレーブス病、糸球体腎炎、自己免疫肝臓病,炎症性腸疾患(例えば、クローン病)、アナフィラキシー、アレルギー性反応、シェーグレン症候群、タイプI糖尿病、原発性胆汁肝硬変、ウェゲナー肉芽腫症、繊維筋肉痛、多発性筋炎、皮膚筋炎、多発性内分泌不全、シュミッツ症候群、自己免疫ブドウ膜炎、アジソン病、副腎炎、甲状腺炎、ハシモト甲状腺炎、自己免疫甲状腺病、悪性貧血、胃萎縮症、慢性肝炎、狼瘡性肝炎、アテローム性動脈硬化、亜急性皮膚エリテマトーデス、副甲状腺機能低下症、ドレッスラー症候群、自己免疫血小板減少症、突発性血小板減少紫斑病、溶血性貧血、尋常性天疱瘡、天疱瘡、疱疹状皮膚炎、円形脱毛症、ペンフィゴイド、強皮症、進行性全身性硬化症、CREST症候群(石灰症、レイノー現象、食道不良運動、手指硬化および末梢血管拡張症)、雄性および雌性の自己免疫不妊症、強着性脊椎炎、潰瘍性大腸炎、混合結合組織病、多発関節炎ネドーサ、全身性壊死化脈管炎、アトピー性皮膚炎、アトピー性鼻炎、グッドパスチャー症候群、チャガス病、サルコイドーシス、リューマチ熱、喘息、再発性流産、抗リン脂質症候群、農夫肺、多形紅斑、心臓切開後症候群、カッシング症候群、自己免疫慢性活性肝炎、愛鳥家肺、毒性上皮性壊死溶解、アルポート症候群、歯槽炎、アレルギー性肺胞炎、繊維化性肺胞炎、間質性肺病、紅斑ノドースン、壊疽性膿皮症、輸血反応、タカヤス動脈炎、リュウマチ性多筋肉痛、側頭動脈炎、住血吸虫症、巨大細胞動脈炎、回虫症、アスペルギルス症、サムプター症候群、湿疹、リンパ肉芽腫症、ベーチェット病、キャプラン症候群、川崎病、デング熱、脳脊髄炎、心内膜炎、心筋内繊維症、眼内炎、持久性隆起性紅斑、乾癬、胎児赤芽球症、好酸球性筋膜炎、シュルマン症候群、フェルティ症候群、フィラリア症、毛様体炎、慢性毛様体炎、異虹彩色性毛様体炎、フックの毛様体炎、IgA腎症、ヘノック・ショーンレイン紫斑病、移植片対宿主病、移植拒絶、心筋症、イートン・ランバート症候群、再発性多発性軟骨炎、低温性グロブリン血症、ワルデンストレームマクログロブリン血症、エバンス症候群、および自己免疫生殖腺不全。
【0134】
よって、本明細書中に記載の方法は、Bリンパ球の障害(例えば、全身性エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、関節リウマチ、およびタイプI糖尿病)、Th1リンパ球の障害(例えば、関節リウマチ、多発性硬化症、乾癬、シェーグレン症候群、ハシモト甲状腺炎、グレーブス病、原発性胆汁肝硬変、ウェゲナー肉芽腫症、結核または急性移植片対宿主病)、またはTh2リンパ球の障害(例えば、アトピー性皮膚炎、全身性エリテマトーデス、アトピー性喘息、鼻結膜炎、アレルギー性鼻炎、オーメン症候群、全身性硬化症、または慢性移植片対宿主病)の処置を含む。一般に、樹状細胞に関連する障害は、Th1リンパ球またはTh2リンパ球の障害を伴う。
【0135】
いくつかの実施形態では、免疫障害は、その障害に関連する活性化T細胞がCD70を発現するT細胞障害等のT細胞仲介免疫障害である。そのようなCD70を発現する活性化T細胞を低減するために抗CD70抗体または誘導体を投与することができる。特定の実施形態では、抗CD70抗体または誘導体の投与により、CD70を発現する活性化T細胞を低減することができる一方、休止T細胞は、抗CD70抗体または誘導体によって実質的に低減されることはない。この文脈において、「実質的に低減されない」とは、約60%未満、または約70%未満、または約80%未満の休止T細胞が低減されないことを意味する。
【0136】
本明細書中に記載の抗CD70抗体および誘導体は、CD70を発現する癌の処置または予防にも有用である。本明細書中に記載の方法によるCD70を発現する癌の処置または予防は、効果的な量の抗CD70抗体または誘導体をその処置または予防を必要とする被験体に投与することにより、当該抗体または誘導体が(i)CD70を発現する癌細胞に結合し、(ii)単独でCD70を発現する癌細胞の増殖を低減または阻害する細胞毒性または細胞静止効果を及ぼすことにより達成される。
【0137】
本明細書中に記載の方法により処置または予防できるCD70を発現する癌としては、例えば、異なるサブタイプの無痛性非ホジキンリンパ腫(無痛性NHL)(例えば、小胞NHL、小リンパ球リンパ腫、リンパ形質細胞NHLまたは辺縁帯NHL);非ホジキンリンパ腫、例えば、バーキットリンパ腫および慢性リンパ球白血病を含むB細胞系の癌;多発性骨髄腫、腎臓細胞癌腫;上咽頭癌腫;胸腺癌腫;グリオーマ;グリア芽腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症;髄膜腫;ならびに結腸、胃および直腸の癌腫が挙げられる。
【0138】
(VIII.抗CD70抗体および誘導体を含む医薬組成物およびその投与)
抗CD70結合剤を含有する組成物(例えば、抗CD70抗体および誘導体)を、免疫障害またはCD70を発現する癌を有するか、またはその危険性のある被験体に投与することが可能である。本発明は、さらに、CD70を発現する癌または免疫障害の予防または処置のための物質の製造における、CD70結合剤(例えば、抗CD70抗体または誘導体)の使用にも対応する。本明細書中において用いる「被験体」という用語は、例えば
、霊長類、げっ歯類およびイヌ等のヒトおよび非ヒト哺乳類を含む、CD70結合CD70結合剤を投与可能なあらゆる哺乳類患者を意味する。特に本明細書中に記載の方法を用いる処置の対象となる被験体は、ヒトを含む。抗体または誘導体は、免疫障害またはCD70を発現する癌の予防または処置において、単独または他の組成物と組み合わせて投与することができる。
【0139】
CD70結合剤の投与に使用可能な公知の供給システムが各種存在する。導入方法としては、皮膚内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下内、鼻内、硬膜外および経口経路が挙げられるが、これらに限定されない。CD70結合剤は、例えば、点滴もしくはボーラス注射、上皮もしくは皮膚粘膜内層(例えば、口粘膜、直腸または腸粘膜等)による吸収により投与することができ、化学療法剤等の生物活性剤とともに投与することができる。投与は、全身または局所であってよい。
【0140】
特定の実施形態では、CD70結合剤組成物は、注射により、カテーテルにより、坐剤により、または移植物により投与され、この移植物は、例えば、シアラスティック膜(sialastic membrane)等の膜、または繊維を含む多孔性、非多孔性またはゼラチン状物質、である。典型的には、この組成物を投与する場合、抗CD70抗体または誘導体を吸収しない材料が用いられる。
【0141】
他の実施形態では、抗CD70抗体または誘導体は、調節除放システムで供給される。1つの実施形態では、ポンプを用いてもよい(Langer,1990,Science
249:1527−1533;Sefton,1989,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201;Buchwaldら,1980,Surgery
88:507;Saudekら,1989,N.Engl.J.Med.321:574参照。)他の実施形態では、高分子物質を用いることができる(Medical Applications of Controlled Release(LangerおよびWise編,CRC Press,Boca Raton,Florida,1974);Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance(SmolenおよびBall編,Wiley,New York,1984);RangerおよびPeppas,1983,Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61を参照されたい。また、Levyら,1985,Science 228:190;Duringら,1989,Ann.Neurol.25:351;Howardら,1989,J.Neurosurg.71:105も参照されたい。)他の調節除放システムは、例えば、上記のLangerで考察されている。
【0142】
CD70結合剤(例えば、抗CD70抗体または誘導体)は、治療有効量の結合剤および1つ以上の薬学的に適合性のある成分を含む医薬組成物として投与することできる。例えば、この医薬組成物は、典型的には、1つ以上の医薬キャリア(例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油等、石油、動物、植物または合成を起源とする、水および油等の滅菌液体)を含む。医薬組成物を静脈内投与する場合の典型的なキャリアは水である。塩溶液ならびにデキトロースおよびグリセロール水溶液も液体キャリアとして、特に、注射可能な溶液に用いることができる。適切な医薬賦形剤としては、例えば、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等が挙げられる。上記組成物は、所望であれば、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤も含むことができる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、丸剤、カプセル、粉剤、除放処方物等の形態を取ることができる。上記組成物は、トリグリセリド等の伝統的な結合剤およびキャリアとともに坐剤として処方することができる。経口処方物としては、薬学グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等の標準的なキャリアを含むことができる。適切な医薬キャリアの例は、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。そのような組成物は、治療効果のある量の核酸またはタンパク質を、典型的には、精製した形態で、患者に適切な投与形式で提供できるように適切な量のキャリアとともに含む。剤形は、投与方法に対応する。
【0143】
典型的な実施形態では、上記医薬組成物は、所定の手順に従ってヒトへの静脈内投与に適合した医薬組成物として処方される。典型的には、静脈内投与用の組成物は、滅菌等張水性緩衝液中の溶液である。必要であれば、上記医薬は、可溶化剤、および注射部位の痛みを和らげるリグノカイン等の局所麻酔剤を含むようにすることもできる。一般に、それらの成分は、個別に、または単位投与の形態で混合して、例えば、活性剤の量を示すアンプルまたはプラスチック袋等の密封容器に凍結乾燥粉末または無水濃縮物として供給される。上記医薬を点滴により投与する場合、滅菌医薬グレードの水または塩溶液を含む点滴ビンで調合することができる。上記医薬を注射により投与する場合、注射用滅菌水または塩溶液のアンプルを提供し、投与前に成分を混合することができる。
【0144】
さらに、上記医薬組成物は、(a)凍結乾燥形態のCD70結合剤(例えば、抗CD70抗体または誘導体)を含む容器、および(b)注射用の薬学的に許容される希釈剤(例えば、滅菌水)を含む第2の容器を含む薬学キットとして提供することができる。薬学的に許容される希釈剤は、凍結乾燥した抗CD70抗体または誘導体の再構築または希釈に用いることができる。そのような容器に任意に付属させることができるものとしては、医薬または生物学製品の製造、使用または販売を統制する政府機関により規定された形態の注意書きがあり、この注意書きは、ヒトへの投与のための製造、使用または販売に関する当局の承認を反映するものである。
【0145】
免疫障害またはCD70を発現する癌の処置または予防に効果的なCD70結合剤(例えば、抗CD70抗体または誘導体)の量は、標準的な臨床技術により決定することができる。さらに、最適な投与量範囲の特定に役立てるために、任意に、インビトロアッセイを用いてもよい。処方物に用いられる正確な投与量は、投与経路および免疫障害もしくはCD70を発現する癌の段階にも依存し、実施者の判断および各患者の状況に応じて決定すべきである。効果的な投与量は、インビトロまたは動物モデルテストシステムから得られる投与量/応答曲線から外挿してもよい。
【0146】
例えば、抗CD70抗体または誘導体の毒性および治療有効性は、細胞培養物もしくは実験動物にて、LD50(集団の50%に対して致死となる投与量)およびED50(集団の50%に対して治療効果のある投与量)を決定する標準的な薬学手順によって判定することができる。毒性効果と治療効果の投与量比は治療指標であり、LD50/ED50の比で表わすことができる。高い治療指標を示すCD70結合剤(例えば、抗CD70抗体または誘導体)が好ましい。CD70結合剤が毒性のある副作用を示す場合、そのCD70結合剤を侵された組織部位に向ける送達システムを用いて、CD70を発現しない細胞に対する潜在的な損傷を最小化することにより、副作用を低減させることができる。
【0147】
細胞培養物アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトにおける使用のために投与量範囲を決定するために用いることができる。CD70結合剤の投与量は、典型的には、ED50を含み、かつ毒性がほとんど無いかまたは全く無い循環濃度の範囲にある。投与量は、この範囲内において、使用する投与形態および利用する投与経路に応じて変更してもよい。本方法で用いるあらゆるCD70結合剤に関して、最初に、治療効果のある投与量を細胞培養物アッセイにより予測することができる。投与量は、動物モデルにおいて、細胞培養物中で決定されたIC50(すなわち、症状の阻害を最大値の半分だけ達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように決定することができる。そのような情報を用いて、ヒトにおいて有用な投与量をより正確に決定することができる。血漿中の量は、例えば、高速液体クロマトグラフィーで測定することができる。
【0148】
一般に、免疫障害またはCD70を発現する癌を有する患者に投与する抗CD70抗体または誘導体の量は、典型的には、0.1mg/(被験体の体重)kg〜100mg/kgである。被験体に投与する量は、0.1mg/(被験体の体重)kg〜50mg/kg、1mg/kg〜30mg/kg、1mg/kg〜20mg/kg、1mg/kg〜15mg/kg、または1mg/kg〜10mg/kgである。一般に、ヒトの抗体は、人体では、外来タンパク質に対する免疫応答のために、他の種からの抗体よりも長い半減期を有する。よって、ヒト化、キメラまたはヒトの抗体を含む抗CD70抗体または誘導体の投与量を減少させ、投与の頻度を低くすることが可能な場合が多い。
【0149】
いくつかの実施形態では、CD70結合剤を含む医薬組成物は、治療剤(すなわち、非結合体化細胞毒性または免疫抑制剤(例えば、本明細書中に記載したもののいずれか))をさらに含むようにすることができる。抗CD70結合剤はまた、免疫障害またはCD70を発現する癌の処置または予防のために1つ以上の治療剤と組み合わせて同時に投与することもできる。例えば、組合せ治療は、治療剤(例えば、細胞静止、細胞毒性または細胞抑制剤(癌または免疫障害の処置に慣用的に用いられているような結合体化していない細胞静止、細胞毒性または細胞抑制剤等))を含むようにすることができる。また、組合せ治療は、例えば、活性化リンパ球、樹状細胞またはCD70を発現する癌細胞の表面上のCD70以外の受容体または受容体複合体を標的とする物質の投与を含むようにすることができる。そのような物質の例としては、活性化リンパ球、樹状細胞またはCD70を発現する癌細胞の表面にある分子に結合する第2の非CD70抗体が挙げられる。他の例としては、そのような受容体または受容体複合体を標的とするリガンドが挙げられる。典型的には、そのような抗体またはリガンドは、活性化リンパ球、樹状細胞またはCD70を発現する癌細胞上の細胞表面受容体に結合し、細胞静止または細胞毒性シグナルを活性化リンパ球、樹状細胞またはCD70を発現する癌細胞に届けることにより、抗CD70抗体の細胞毒性または細胞静止作用を向上させる。このような組合せ投与は、病気のパラメーター(例えば、症状の程度、症状の数、または再発の頻度)に対して加法的または相乗的効果を有し得る。
【0150】
組合せ投与の治療計画に関して、特定の実施形態では、抗CD70結合剤は、治療剤と同時に投与される。他の特定の実施形態では、上記治療剤は、抗CD70抗体または誘導体の投与前または投与後少なくとも1時間から数ヶ月までの期間、例えば、抗CD70抗体または誘導体の投与前または投与後少なくとも1時間、5時間、12時間、1日、1週間、1ヶ月または3ヶ月の期間に投与される。いくつかの実施形態では、被験体は、抗CD70結合剤の投与後、および任意で治療剤の投与後に監視される。
【0151】
上記治療剤は、例えば、癌細胞または活性化免疫細胞に治療作用を及ぼす任意の物質とすることができる。典型的には、上記治療剤は、細胞毒性または免疫抑制剤である。
【0152】
有用な種類の細胞毒性または免疫抑制剤としては、例えば、抗チュブリン剤、オーリスタチン、DNA副溝結合剤、DNA複製阻害剤、アルキル化剤(例えば、シスプラチン、モノ(プラチナ)、ビス(プラチナ)および三核プラチナ複合体およびカルボプラチン等のプラチナ複合体)、アントラサイクリン、抗生物質、抗葉酸剤、代謝拮抗物質、化学療法増感剤、デュオカルマイシン、エトポシド、フッ素化ピリミジン、イオノホア、レキシトロプシン、ニトロソウレア、プラチノール、前形成化合物(pre−forming compounds)、プリン代謝拮抗物質、ピューロマイシン、照射増感剤、ステロイド、タキサン、トポイソメラーゼ阻害剤、ビンカアルカロイド等が挙げられる。
【0153】
個々の細胞毒性または免疫抑制剤としては、例えば、アンドロゲン、アントラマイシン(AMC)、アスパラギナーゼ、5−アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、ブスルファン、ブチオニンスルホキシミン、カンプトテシン、カルボプラチン、カルムスチン(BSNU)、CC−1065、クロラムブシル、シスプラチン、コルヒチン、シクロホスファミド、シタラビン、シチジンアラビノシド、サイトカラシンB、デカルバジン、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ダウノルビシン、デカルバジン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エストロゲン、5−フルオロデオキシウリジン、5−フルオロウラシル、グラミシジンD、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン(CCNU)、メクロレタミン、メルファラン、6−メルカプトプリン、メトトレキセート、ミトラマイシン、ミトマイシンC、ミトキサントロン、ニトロイミダゾール、パクリタキセル、プリカミシン、プロカルビジン、ストレプトゾトシン、テノポシド、6−チオグアニン、チオTEPA、トポテカン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、VP−16およびVM−26が挙げられる。
【0154】
いくつかの典型的な実施形態では、上記治療剤は細胞毒性剤である。適切な細胞毒性剤としては、例えば、ドラスタチン(例えば、オーリスタチンE、AFP、MMAF、MMAE)、DNA副溝結合剤(例えば、エネジインおよびレキシトロプシン)、デュオカルマイシン、タキサン(例えば、パクリタキセルおよびドセタキセル)、ピューロマイシン、ビンカアルカロイド、CC−1065、SN−38、トポテカン、モルホリノ−ドキソルビシン、リゾキシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、エキノマイシン、コンブレタスタチン、ネトロプシン、エポチロンAおよびB、エストラムスチン、クリプトフィシン、セマドチン、メイタンシノイド、ジスコデルモリド、エロイテロビン、およびミトキサントロンが挙げられる。
【0155】
いくつかの実施形態では、上記細胞毒性剤は、例えば、ドキソルビシン、パクリタキセル、メルファラン、ビンカアルカロイド、メトトレキセート、ミトマイシンCまたはエトポシド等、慣用の化学療法剤である。また、例えば、CC−1065類似体、カリケミアミシン、メイタンシン、ドラスタチン10の類似体、リゾキシンおよびパリトキシン等の強力な物質を、抗CD70抗体またはその誘導体に結合させることができる。
【0156】
特定の実施形態では、上記細胞毒性または細胞静止剤は、オーリスタチンE(当該分野ではドラスタチン−10としても知られる)またはその誘導体である。典型的には、オーリスタチンE誘導体は、例えば、オーリスタチンEとケト酸との間で形成されたエステルである。例えば、オーリスタチンEは、パラアセチル安息香酸またはベンゾイル吉草酸と反応させて、それぞれ、AEBおよびAEVBを作ることができる。他の典型的なオーリスタチン誘導体としては、AFP、MMAF、およびMMAEが挙げられる。オーリスタチンEおよびその誘導体の合成と構造は、米国特許出願第09/845,786号(米国特許出願公開第20030083263号)および同第10/001,191号;国際特許出願PCT/US03/24209、国際特許出願PCT/US02/13435、および米国特許第6,323,315号;同第6,239,104号;同第6,034,065号;同第5,780,588号;同第5,665,860号;同第5,663,149号;同第5,635,483号;同第5,599,902号;同第5,554,725号;同第5,530,097号;同第5,521,284号;同第5,504,191号;同第5,410,024号;同第5,138,036号;同第5,076,973号;同第4,986,988号;同第4,978,744号;同第4,879,278号;同第4,816,444号;および同第4,486,414号に記載されている。
【0157】
特定の実施形態では、上記細胞毒性剤はDNA副溝結合剤である。(例えば、米国特許第6,130,237号を参照されたい。)例えば、いくつかの実施形態では、上記副溝結合剤はCBI化合物である。他の実施形態では、上記副溝結合剤はエネジイン(例えば、カリケアミシン)である。
【0158】
抗チュブリン剤の例としては、タキサン類(例えばTaxol(商標登録)(パクリタキセル)、Taxotere(商標登録)(ドセタキセル))、T67(チュラリク)、ビンカアルキロイド類(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、およびビノレルビン)、およびドラスタチン類(例えば、オーリスタチンE、AFP、MMAF、MMAE、AEB、AEVB)が挙げられるが、これらに限定されない。他の抗チュブリンとしては、例えば、バッカチン誘導体、タキサン類似体(例えば、エポチロンAおよびB)、ノコダゾール、コルヒチンおよびコルシミド、エストラムスチン、クリプトフィシン、セマドチン、メイタンシノイド、コンブレタスタチン、ジスコデルモリド、およびエロイテロビンが挙げられる。
【0159】
いくつかの実施形態では、上記細胞毒性剤は、抗チュブリン剤の他の群であるメイタンシノイドである。例えば、特定の実施形態では、メイタンシノイドは、メイタンシンまたはDM−1である(ImmunoGen,Inc.;Chariら,1992,Cancer Res.52:127−131も参照されたい)。
【0160】
いくつかの実施形態では、上記治療剤は放射同位元素ではない。
【0161】
いくつかの実施形態では、上記細胞毒性または免疫抑制剤は代謝拮抗物質である。代謝拮抗物質は、例えば、プリン拮抗薬(例えば、アゾチオプリンまたはミコフェノール酸モフェチル)、デヒドロフォレートレダクターゼ阻害剤(例えば、メトトレキセート)、アシクロビル、ガングシクロビル、ジドブジン、ビダラビン、リババリン、アジドチミジン、シチジンアラビノシド、アマンタジン、ジデオキシウリジン、ヨードデオキシウリジン、ポスカーネットまたはトリフルリジンとすることができる。
【0162】
他の実施形態では、上記細胞毒性または免疫抑制剤は、タクロリムス、シクロスポリンまたはラパマイシンである。さらなる実施形態では、上記細胞毒性剤は、アルデスロイキン、アレンツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アルトレタミン、アミフォスチン、アナストロゾール、三酸化ヒ素、ベキサロテン、ベキサロテン、カルステロン、カペシタビン、セレコキシブ、クラドリビン、ダーベポエチンアルファ、デニロイキンジフチトクス、デクスラゾキサン、ドロモスタノロンプロピオネート、エピルビシン、エポエチンアルファ、エストラムスチン、エキセメスタン、フィルグラスチン、フロキシウリジン、フルダラビン、フルベストラント、ゲンシタビン、ゲンツズマブオゾガミシン、ゴセレリン、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブメシレート、インターフェロンアルファ−2a、イリノテカン、レトロゾール、ロイコボリン、レバミソール、メクロレタミンもしくはナイトロジェンマスタード、メゲストロール、メスナ、メトトレキセート、メトキサレン、マイトマイシンC、ミトタン、ナンドロロンフェンプロピオネート、オプレルベキン、オキサリプラチン、パミドロネート、ペガデマーゼ、ペガスパルガーゼ、ペグフィルグラスチン、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、ポルフィマーナトリウム、プロカルバジン、キナクリン、ラスブリカーゼ、サルグラモスチン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、テモゾロミド、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、トレミフェン、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレチノイン、ウラシルマスタード、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビンおよびゾレドロネートである。
【0163】
さらなる実施形態では、上記医薬は、ヒト化された抗HER2モノクローナル抗体、RITUXAN(リツキシマブ;Genentech;キメラ抗CD20モノクローナル抗体);OVAREX(AltaRex Corporation,MA);PANOREX(Glaxo Wellcome,NC;マウスIgG2a抗体);セツキシマブエルビタクス(Imclone Systems Inc.,NY;抗EGFR IgGキメラ抗体);ビタキシン(MedImmune,Inc.MD;キャンパスI/H(Leukosite,MA;ヒト化IgG1抗体);スマートMI95(Protein Design Labs,Inc.,CA;ヒト化抗CD33 IgG抗体;リンホサイド(Immunomedics,Inc.,NJ;ヒト化抗CD22 IgG抗体);スマートID10(Protein Design Labs,Inc.,CA;ヒト化抗HLA−DR抗体);オンコリン(Techniclone,Inc.,CA;放射能標識マウス抗HLA−Dr10抗体);アロミュン(BioTransplant,CA;ヒト化抗CD2 mAb);アバスチン(Genentech,Inc.,CA;抗VEGFヒト化抗体);エプラツザマブ(Immunomedics,Inc.,NJおよびAmgen,CA;抗CD22抗体);およびCEAcide(Immunomedics,NJ;ヒト化抗CEA抗体)などの抗体である。
【0164】
他の適切な抗体としては、以下の抗原に対する抗体が挙げられるが、それらに限定されない:CA125、CA15−3、CA19−9、L6、Lewis Y、Lewis X、アルファフェトタンパク質、CA242、胎盤アルカリホスファターゼ、前立腺特異的膜抗原、前立腺酸性ホスファターゼ、上皮成長因子、MAGE−1、MAGE−2、MAGE−3、MAGE−4、抗トランスフェリン受容体、p97、MUC1−KLH、CEA、gp100、MART1、前立腺特異的抗原、IL−2受容体、CD20、CD52、CD33、CD22、ヒト絨毛性腺刺激ホルモン、CD38、CD40、ムチン、P21、MPG、およびNeu癌遺伝子産物。
【0165】
いくつかの実施形態では、上記医薬は免疫抑制剤である。免疫抑制剤は、例えば、ガンシクロビル、エタネルセプト、タクロリムス、シクロスポリン、ラパマイシン、シクロホスファミド、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチルまたはメトトレキセートとすることができる。あるいは、免疫抑制剤は、例えば、グルココルチコイド(例えば、コルチゾールまたはアルドステロン)またはグルココルチコイド類似体(例えば、プレドニゾンまたはデキサメタゾン)とすることができる。
【0166】
いくつかの典型的な実施形態では、免疫抑制剤は、アリールカルボン酸誘導体、ピラゾール含有誘導体、オキシカム誘導体およびニコチン酸誘導体等の抗炎症剤である。抗炎症剤の種類としては、例えば、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、5−リポキシゲナーゼ阻害剤、およびロイコトリエン受容体拮抗薬が挙げられる。
【0167】
適切なシクロオキシゲナーゼ阻害剤としては、メクロフェナミン酸、メフェナミン酸、カルプロフェン、ジクロフェナク、ジフルニザル、フェンブフェン、フェノプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ナブメトン、ナプロキセン、スリンダク、テノキシカン、トルメチンおよびアセチルサリチル酸が挙げられる。
【0168】
適切なリポキシゲナーゼ阻害剤としては、レドックス阻害剤(例えば、カテコールブタン誘導体、ノルジヒドログアイアレチン酸(NDGA)、マソプロコール、フェニドン、イアノパレン、インダゾリノン、ナファザトローム、ベンゾフラノール、アルキルヒドロキシルアミン)、および非レドックス阻害剤(例えば、ヒドロキチアゾール、メトキシアルキルチアゾール、ベンゾピランおよびその誘導体、メトキシテトラヒドロピラン、ボスウェリン酸およびボスウェリン酸のアセチル化誘導体、およびシクロアルキル基で置換されたキノリンメトキシフェニル酢酸)およびレドックス阻害剤の前駆体が挙げられる。
【0169】
他の適切なリポゲキシゲナーゼ阻害剤としては、酸化防止剤(例えば、フェノール、没食子酸プロピル、フラボノイドおよび/またはフラボノイドを含有する天然の基質、フラボンのヒドロキシル化誘導体、フラボノール、ジヒドロクエルセチン、ルテオリン、ガランギン、オロボール、カルコンの誘導体、4,2’,4’−トリヒドロキシカルコン、オルト−アミノフェノール、N−ヒドロキシウレア、ベンゾフラノール、エブセレン、および還元セレノ酵素の活性を増加させる種)、イオンキレート剤(例えば、ヒドロキサム酸およびその誘導体、N−ヒドロキシウレア、2−ベンジル−1−ナフトール、カテコール、ヒドロキシルアミン、カルノソールトロロクスC、カテコール、ナフトール、スルファサラジン、ジロイトン、5−ヒドロキシアントラニル酸、および4−(オメガ−アリールアルキル)フェニルアルカン酸)、イミダゾール含有化合物(例えば、ケトコナゾールおよびイトラコナゾール)、フェノチアジン、およびベンゾピラン誘導体が挙げられる。
【0170】
さらに他の適切なリポシキゲナーゼ阻害剤としては、エイコサノイドの阻害剤(例えば、オクタデカテトラエン酸、エイコサテトラエン酸、ドコサペンタエン酸、エイコサヘキサエン酸、ドコサヘキサエン酸およびそれらのエステル、PGE1(プロスタグランジンE1)、PGA2(プロスタグランジンA2)、ビプロストール、15−モノヒドロキシエイコサテトラエン酸、15−モノヒドロキシ−エイコサトリエン酸、15−モノヒドロキシエイコサペンタエン酸、ならびにロイコトリエンB5、C5およびD5)、カルシウム流に干渉する化合物、フェノチアジン、ジフェニルブチルアミン、ベラパミル、フスコシド、クルクミン、クロロゲン酸、カフェー酸、5,8,11,14−エイコサテトラエン酸(ETYA)、ヒドロキシフェニルレチナミド、イオナパレン、エスクリン、ジエチルカルバマジン、フェナントロリン、バイカレイン、プロキシクロミル、チオエーテル、ジアリルスルフィド、およびジ−(1−プロペニル)スルフィドが挙げられる。
【0171】
ロイコトリエン受容体拮抗薬としては、カルシトリオール、オンタゾラスト、Bayer Bay−x−1005、Ciba−Geigy CGS−25019C、ebselen、Leo Denmark ETH−615、Lilly LY−293111、Ono ONO−4057、Terumo TMK−688、Boehringer Ingleheim BI−RM−270、Lilly LY 213024、Lilly LY 264086、Lilly LY 292728、Ono ONO LB457、Pfizer 105696、Perdue Frederick PF 10042、Rhone−Poulenc Rorer RP 66153、SmithKline Beecham SB−201146、SmithKline Beecham SB−201993、SmithKline Beecham SB−209247、Searle SC−53228、Sumitomo SM 15178、American Home Products WAY 121006、Bayer Bay−o−8276、Warner−Lambert CI−987、Warner−Lambert CI−987BPC−15LY 223982、Lilly LY 233569、Lilly LY−255283、MacroNex MNX−160、Merck and Co.MK−591、Merck and Co.MK−886、One ONO−LB−448、Purdue Frederick PF−5901、Rhone−Poulenc Rorer RG 14893、Rhone−Poulenc Rorer RP
66364、Rhone−Poulenc Rorer RP 69698、Sionoogi S−2474、Searle SC−41930、Searle SC−50505、Searle SC−51146、Searle SC−52798、SmithKline Beecham SKandF−104493、Leo Denmark
SR−2566、Tanabe T−757、およびTeijin TEI−1338が挙げられる。
【実施例】
【0172】
本発明を下記の実施例においてさらに説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。下記の実施例に記載の細胞系は、American Type Culture Collection(ATCC)またはDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen
GmbH,Braunschweig,Germany(DMSZ)に規定された条件に従った培養で維持した。細胞培養試薬は、Invitrogen Corp.(Carlsbad,CA)から得た。
【0173】
(実施例1.キメラ抗CD70抗体の構築)
1F6および2F2 mAbの軽鎖(VL)および重鎖(VH)可変領域をコードするcDNA配列を決定するために、TRIzol(商標登録)試薬(Invitrogen,Carlsbad,CA)を製造者の使用説明書に従って用いて、1F6および2F2ハイブリドーマから全RNAを単離した。遺伝子に特異的なプライマーmIgcK1:5’−CTT CCA CTT GAC ATT GAT GTC TTT G−3’(配列番号41)およびプライマーmIgG1:5’−CAG GTC ACT GTC ACT GGC TCA G−3’(配列番号42)を適用して、両RNA調製物からの軽鎖可変(VL)および重鎖可変(VH)の第一鎖cDNAをそれぞれ逆転写した。第一鎖cDNA反応は、InvitrogenからのSuperScript(商標登録)Fist Strand Synhtesis System for RT−PCRを用いて実施した。次いで、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)および供給されたTdT緩衝液を製造者(Invitrogen)により規定された条件に従って用いて、VLおよびVHcDNAをpoly−G末端付加した。次いで、Poly−G末端付加VLおよびVH第一鎖cDNAをPCR増幅に供した。VLおよびVHの両方のPCR用のフォワードプライマーは、ANCTAIL:5’GTC GAT GAG CTC TAG AAT TCG TGC CCC CCC CCC CCC C−3’(配列番号43)であった。VLを増幅するためのリバースプライマーは、HBS−mck:5’−CGT CAT GTC GAC GGA TCC AAG CTT CAA GAA GCA CAC GAC TGA GGC AC−3’(配列番号44)であった。VHを増幅するためのリバースプライマーは、HBS−mG1:5’−CGT CAT GTC GAC GGA TCC AAG CTT GTC ACC ATG GAG TTA GTT TGG GC−3’(配列番号45)であった。Ex Taqおよび提供された反応緩衝液を製造者(Fisher Scientific,Pittsburgh,PA)により指定された条件で用いて、PCRを実施した。次いで、VLおよびVHPCR産物をHindIIIおよびEcoRIにより切断し、HindIII/EcoRI切断pUC19にクローニングした。組換えプラスミドクローンを同定し、1F6と2F2ハイブリドーマのヌクレオチド配列を決定した。
【0174】
1F6および2F2 mAbの重鎖および軽鎖中の相補性決定領域(CDR)を、Kabatら,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Washington DC,US Department of Health and Public Services;ChothiaおよびLesk,1987,J.Mol.Biol.196:901−17(図1および図2)に記載の基準に従って決定した。cDNAおよびアミノ酸の両方のレベルの配列アライメントでは、密接に関係する軽鎖遺伝子がおそらく両ハイブリドーマで利用されていることが明らかになった。アミノ酸レベルでは1F6VLと2F2VLの間に92%の配列同一性がある。CDRの配列比較では、1F6 CDR−L1が2F2 CDR−L1と同一であり、1F6 CDR−L2と2F2 CDR−L2の間では非保存的(divergent)置換わずかに1つによってだけ異なり、1F6 CDR−L3と2F2 CDR−L3の間では保存的置換わずかに2つだけによって異なることが示されている(図3)。一方、1F6 VHと2F2 VHの間には高度の配列多様性が存在し;これら2つのVH間では、137個のアミノ酸残基のうち約66個が異なる。CDRの配列比較において、1F6 CDR−H1と2F2 CDR−H1の間では、10個のアミノ残基のうち5個が異なり(5個の置換のうち3個が非保存的(divergent)置換である)、1F6 CDR−H2と2F2 CDR−H2の間では、17個の残基のうち12個が異なり(12個の置換のうち9個が非保存的(divergent)置換である)、1F6 CDR−H3と2F2 CDR−H3の間では、9個の残基のうち5個が異なる(5個の置換のうち4個が非保存的(divergent)置換である)ことが示されている(図3)。
【0175】
キメラ1F6重鎖および軽鎖の両方を含有する発現ベクターが、下記に記載のとおり構築された。このベクターでは、各ポリペプチド鎖が、関連するCHEF1イントロン配列および免疫グロブリンポリA領域とともに、CHEF1プロモータのコピーの制御下にある。この大きなベクターの構築のために、各々が最終構築物の一部をコードする個別の「キメラ化」プラスミドにおいてキメラ化重鎖および軽鎖配列を作製する必要があった。次いで、最終的な発現構築物を、必要な制御領域の残りをコードする第3のベクターとの3方向連結反応により作製した。このプラスミドを用いてDG44 CHO細胞を形質転換し、良好に産生を行なうクローン系を単離した。
【0176】
(重鎖キメラ化ベクターの構築)
CHEF1ベクターのNotI−XhoIフラグメント6kbをBluescriptベクターにクローニングすることにより、キメラ化ベクター(pSG850)を予め構築した。このフラグメントは、CHEF1 5’イントロンの一部、キメラIgG1抗体重鎖、およびポリAシグナルを含むヒトのIgG4定常領域のすぐ下流側の領域のゲノム配列の一部を含む。重鎖可変領域と1F6とを置換することにより、キメラ1F6配列を有するプラスミドが生じた。この構築物を調製するために、1F6重鎖可変領域配列全体を、シークエンシングベクターからのPCRを介して増幅した。HindIII制限部位、コンセンサスKozac配列5’から重鎖リーダーのコード配列、およびリーダー配列と相同な配列をコードするフォワードオリゴヌクレオチドプライマー5’−ATA AAT
AAG CTT ACC GCC ACC ATG GCT TGG GTG TGG
ACC TTG−3’(配列番号46)を用いた。リバースプライマー5’−ATA AAG GCT AGC TGA GGA GAC GGT GAC TGA GGT−3’(配列番号47)は、可変領域の3’末端と相同な配列およびNheI制限部位をコードした。PCR産物をHindIIIおよびNheIで消化した。pSG850ベクターを同じ酵素で消化して既存の可変領域を除去し、大きいほうのベクターフラグメントを単離した。1F6 VHおよびpSG850ベクターフラグメントを連結反応させて、キメラ1F6重鎖を含むpJC140を構築した。
【0177】
(軽鎖キメラ化ベクターの構築)
CHEF1ベクターのXhoI−XbaIフラグメント4kbをBluescriptベクターにクローニングすることにより、キメラ化ベクター(pSG855)を予め構築した。このフラグメントは、ヒトIgG4の下流領域の一部、CHEF1プロモータ領域、CHEF1 5’イントロン、キメラ抗体カッパ軽鎖、およびポリAシグナルを含むヒトカッパ下流領域を含む。既存の軽鎖可変領域と1F6とを置換することにより、キメラ1F6カッパ配列を有するプラスミドが生じた。この構築物を調製するために、1F6軽鎖可変領域配列全体を、シークエンシングベクターからのPCRを介して増幅した。HindIII制限部位、コンセンサスKozac配列5’から軽鎖リーダーのコード配列、およびリーダー配列と相同な配列をコードするフォワードオリゴヌクレオチドプライマー5’−ATA AAG AAG CTT ACC GCC ACC ATG GAG ACA GAC ACA CTC CTG−3’(配列番号48)を用いた。リバースプライマー5’−ATA AAG GAA GAC AGA TGG TGC AGC CAC AGT CCG TTT GAT TTC CAG CTT GGT GCC−3’(配列番号49)は、BbsI制限部位を含む、軽鎖可変領域の最後の24塩基対およびカッパ定常領域の最初の24塩基対と相補的な配列をコードした。PCR産物を、HindIIIおよびBbsIで消化した。pSG855ベクターを同じ酵素で消化して既存の可変領域を切り取り、大きいほうのベクターフラグメントを単離した。1F6 VHおよびpSG855ベクターフラグメントを連結反応させて、キメラ1F6軽鎖を含むpJC160を構築した。
【0178】
(c1F6発現ベクターのアセンブリ)
キメラ1F6抗体の両方の鎖を有する発現ベクターを3方向連結反応によりアセンブリした。CHEF1発現ベクターpDEF14をNotIおよびXbaIで消化し、19.7kbのベクターフラグメントを単離した。pJC140をNotIおよびXhoIで消化し、6キロベースのフラグメントを単離した。pJC160をXhoIおよびXbaIで消化し、4キロベースのフラグメントを単離した。これら3つのフラグメントを連結反応において1:1:1のモル比で混合し、その連結反応産物を用いてXL10−Gold細胞を形質転換した。制限マッピングによりクローンをスクリーニングし、重鎖および軽鎖コード領域のシークエンシングにより正確なクローンを確認した。図4は、最終産物のプラスミドマップを示す。
【0179】
(pDEF14−1F6を用いたDG44細胞のトランスフェクション)
200μgのpDEF14−1F6プラスミドDNAをPvuIを用いて37℃で一晩線状化し、次いで、超音波分解した鮭の精子DNA(Specialty Media cat#S−005−G Lavallette、NJ)を100μg加えたのちエタノール析出した。そのDNAを、350μlの滅菌dH2Oおよび450のμlの2X HeBS(40mMのHEPES−NaOH pH 7.0、274mMのNaCl、10mMのKCl、1.4mMのNa2HPO4、および12mMのブドウ糖)中で再懸濁した。
【0180】
DG44チャイニーズハムスター卵巣細胞を、予め無血清懸濁に適合させた一層の細胞から得た。振盪フラスコ内で、非選択性培地(組み換えヒトインスリン、L−グルタミン、ヒポキサンチンおよびチミジンを補った無血清Excell325(JRH Biosciences,Inc.,Lenexa,KS)においておよそ1×106細胞/mlの密度になるまでDG44を培養した。15mlの滅菌チューブ内で遠心分離により2×107個の細胞を集め、CMF−PBSで洗浄して再ペレット化した。洗浄したDG44細胞をDNA溶液で再懸濁し、BioRad GenePulser IIエレクトロポレーター(960μF、290ボルト、時定数9〜11ミリ秒)(Bio−Rad,Hercules,CA)で一度パルスを印加した。これらの細胞は、8〜10分間室温で回収できた。次いで、上記非選択性無血清培地10mlに細胞を加え、固定したT75フラスコに移し、2日間、37℃、5%CO2で回収できた。次いで、トランスフェクションプールを低速で遠心分離し、選択性培地(ヒポキサンチンおよびチミジンを含まないこと以外は上記の培地と同じ;Excell325SELを示す)で再懸濁し、培養物の生存率が>90%になるまで継代した。このトランスフェクションプールをフェッドバッチ培養することにより、マウス1F6 Abと同程度の特異性を有するcAbを生じた。
【0181】
(c1F6トランスフェクションプールのサブクローニング)
フィーダー細胞法を用いて、c1F6トランスフェクションプール細胞を、(ヒポキサンチンまたはチミジンを含まない)Excell325SEL中において1:2000の割合でDG44細胞と混合し、1000細胞/ウェルの密度で4つの96ウェルプレートに入れた。これにより、1ウェル当たり1000個のDG44フィーダー細胞とともに、1ウェル当たり0.5個という効果的な密度でc1F6細胞を得た。DG44細胞は、それらのHTに対する要件のために、2、3日後に絶滅した。同じ条件下において10,000細胞/ウェルでプレートに入れたDG44細胞は、生存が確認されなかった。これら2つのプレートにより、単一コロニーが増殖した34個のウェルを生じた。この34個のクローンウェルを24のウェルプレートまで拡大し、それらのウェルで絶滅した培養上清のcAb滴定濃度について、標準的な抗キメラ抗体ELISAでスクリーニングした。振盪フラスコフェッドバッチ培養を介したさらなるスクリーニングのために、滴定濃度および成長度に基づいて6個のサブクローンを選択した。これらのクローンのうちの1つは、最終的なフェッドバッチ滴定濃度が1.1g/lで、1日につき細胞1つあたりおよそ20ピコグラムの細胞特異的生産性を示した。
【0182】
(実施例2:キメラ1F6は、CD70+腫瘍細胞系に対してADCCを仲介する。)
CD70+細胞系WIL2−S、Caki−1および786−Oに対するc1F6のADCC仲介能力を、標準的な51Cr放出アッセイを用いて測定した。腫瘍細胞を100μCi Na251CrO4を用いて1時間標識し、完全に洗浄して、組み込まれていない放射性同位元素を除去し、次いで、5,000細胞/ウェルの濃度で96ウェルプレートに入れた。抗体c1F6、m1F6またはヒトIgを、エフェクターPBMCを加える前に、1μg/mlの最終濃度で適切なウェルに0.5時間加えた。PBMCを調整して、30個のCD16+細胞:1個の標的細胞というエフェクター細胞と標的細胞の割合を反映させた。4時間の培養後、溶解細胞から放出された51Crを測定し、{(テストサンプルcpm−自然発生的なcpm)÷(総cpm−自然発生的なcpm)}×100で特異的溶解率を算出した。同位元素の自然発生的な放出について、培地のみで培養した標的細胞の浮遊物から判定した。2%triton−Xで溶解した標的細胞から総数を判定した。図5に示すように、c1F6が各腫瘍標的の溶解を効果的に誘導する一方、CD70結合マウス1F6(m1F6)または非結合コントロールヒトIg(hIg)で処理した腫瘍細胞への影響は少なかった。抗体がない場合のNK感受性標的K562の溶解では、PBMC内に細胞傷害能を有するエフェクター細胞が存在することが確認された。
【0183】
(実施例3:複数のドナーのPBMCにより認識されたキメラ1F6被覆標的細胞)
Caki−1腎細胞癌腫細胞をNa251CrO4で標識し、段階的な量のc1F6で処理し、次いで、2人の正常なドナーのエフェクターPBMCで培養した。特異的溶解を、実施例2で説明したように4時間の培養後に評価した。ドナー2051661およびND016は、1または0.1μg/mlのc1F6で処理したCaki−1標的細胞を効率よく溶解した(図6)。その後、特異的溶解が抗体用量に依存して減少し、標的細胞を0.001μg/mlのc1F6で処理したときにはごく少量でしかなかった。非結合コントロールIg(hIg)と混合した標的細胞は、いずれのドナーのPBMCでも溶解しなかった。
【0184】
(実施例4:キメラ1F6被覆リンパ細胞系はPBMCによる溶解の影響を受けやすい。)
BおよびT細胞系の形質転換細胞もc1F6仲介ADCC活性の影響を受けやすいか否かを判定するために、上記のように、CD70+Bリンパ芽球様細胞(WIL2−S)および皮膚T細胞性リンパ腫細胞(HH)をNa251CrO4で標識し、次いで、種々の濃度でc1F6またはヒトIgと混合した。PBMCを18:1(CD16+細胞:標的)の割合で標的細胞に加え、実施例2で説明したように4時間の培養後に溶解率を判定した。図7は、c1F6の存在下でWIL2−SおよびHHの両方がPBMCエフェクター細胞により認識および溶解されることを示す。標的細胞を非結合コントロール抗体で処理することにより生じる細胞溶解は少なかったが、WIL2−SおよびHH細胞を1μg/mlのc1F6で処理した場合、それぞれ43.5%および37.5%の標的細胞が死んだ。
【0185】
多発性骨髄腫細胞系L−363、JJN−3、LP−1およびU−266のCD70の発現について、フローサイメトリーでテストした。図8Aに示すように、それぞれのCD70については、容易に検出された。これら多発性骨髄腫細胞系のキメラ1F6仲介ADCCに対する感受性を実施例2で説明したように判定した。1または0.1μg/mlのc1F6で処理した標的細胞を効率よく溶解した(図8B)。その後、特異的溶解が抗体用量に依存して減少し、標的細胞を0.001μg/mlのc1F6で処理したときにはごく少量でしかなかった。非結合コントロールIg(hIg)と混合した標的細胞は溶解しなかった。エフェクター細胞を抗CD16抗体で前培養してFcγRIIIをブロックすることによりADCC活性がなくなり、溶解活性がFcRを有するエフェクター細胞と抗体の相互作用に依存することが確認された。CD70+ホジキン病細胞系を標的として用いた場合にも同様の用量依存キメラ1F6仲介ADCCが観察された(図9)。
【0186】
(実施例5:抗原特異的インビトロ免疫応答時の活性化T細胞上でのCD70の発現)
インフルエンザウイルスマトリックスタンパク質に由来する9アミノ酸ペプチド(GILGFVFTL、M1ペプチド(配列番号50))は、HLA−A0201分子のペプチド結合溝に結合する。HLA−A0201を発現する抗原提示細胞によりM1ペプチドを同原T細胞に提示することで、T細胞受容体Vβ17鎖を発現するCD8+細胞毒性T細胞の活性化および拡大を特異的に促進させ(Lehnerら,1995,J.Exp.Med.181:79−91)、抗原に特異的なT細胞の活性化および拡大について、それらの母性抗原まで追跡する有用なインビトロ実験系を構築する。
【0187】
活性化抗原特異的T細胞上でのCD70の発現を調べるために、HLA−A0201を発現する正常なドナーのPBMCを、M1ペプチドを用いて刺激した。2×106細胞/mlにて、5μg/mlのM1ペプチドとともに、5%のヒトAB血清を補ったAIMV培地にPBMCを播種した。IL−2(Proleukin,Chiron,Emeryville,CA)およびIL−15(R and D Systems,Minneapolis,MN)を、それぞれ、20IU/mlおよび5ng/mlの最終濃度で、培養の開始後2日目から2日に1回の割合で添加した。CD8+/Vβ17+T細胞の拡大およびCD8+/Vβ17+上でのCD70の誘導に続いて、三色フローサイトメトリーを行った。Vβ17+T細胞を、抗TCRVβ17 mAbクローンE17.5F3(Beckman Coulter,Miami,FL)により同定した。培養開始の2日後には、CD8+/Vβ17+は、リンパ球集団内の細胞のうちわずか0.9%でしかないという結果が示された。T細胞の拡大は、CD8+/Vβ17+集団内でのみ顕著であった。CD8+/Vβ17+の割合は、5日目に1.9%、7日目に14%、11日目に23%というように漸進的に増加した。CD70の拡大は、抗原刺激の3日後に検出可能になり、7日目には、拡大CD8+/Vβ17+細胞のおよそ60%に増加した(図10A)。また、平均蛍光強度(MFI)により示されるCD70の最大発現量も7日目に検出された(図10B)。その後、CD70+/CD8+/Vβ17+細胞の割合およびCD8+/Vβ17+上でのCD70発現のMFIは減少し始めた。CD70は、CD8+/Vβ17+細胞上で明らかに発現した一方、CD8+/Vβ17−細胞上ではCD70を検出することはできなかった。これらの結果から、CD70は、抗原刺激に応答する活性化T細胞上で誘導され、バイスタンダー(bystander)である抗原非特異的なT細胞上では誘導されないことが確認された。
【0188】
(実施例6:c1F6によるCD70+抗原特異的T細胞のインビトロ欠失)
抗原特異的活性化T細胞を低減させる能力についてc1F6をテストするために、抗CD70抗体が存在または存在しない状態で、HLA−A0201を発現する正常なドナーのPBMCをM1ペプチドを用いて刺激した。上述したように、24ウェルプレート内において、0.5×106細胞/mlの濃度で、5μg/mlのM1ペプチドとともに、IL−2およびIL−15を補った2mlの培地にPBMCを播種した。培養の開始時、および培養の開始後2日目および5日目に、非結合免疫グロブリン、マウス1F6(m1F6)またはキメラ1F6(c1F6)抗体を1μg/mlの濃度で加えた。5日目に、使用した培養上清の半分を新鮮なサイトカイン含有培地と取り替えた。9日目に、FITC結合体化抗Vβl7抗体およびPE−Cy5結合体化抗CD8抗体で染色した細胞のフローサイトメトリー分析により、抗原反応性細胞(CD8+/Vβl7+集団)の割合を判定した。0日目および5日目に、さらに、0.25×106のCD16+細胞濃縮PBMCを細胞培養のいくつかに加えた。CD16+細胞の濃縮のために、PBMCを抗CD8、抗CD4、抗CD20、および抗CD14抗体で標識することにより、T細胞、B細胞および単球を低減させ、その後に免疫遺伝ビーズ選択を行なった。観察期間中、抗原特異的CD8+/Vβl7+細胞は、抗体がない培養物中の全ての生存細胞の47.2%を占めるまで拡大した。同様に、CD8+/Vβl7+細胞は、それぞれ、非結合抗体およびマウス抗CD70抗体で処理した培養物に存在する全ての細胞の48.3%および38.5%に相当した。対照的に、キメラ抗CD70抗体で処理した培養物では、CD8+/Vβl7+の拡大が実質的に阻害されていることが観察された(12.5%)。抗原反応性細胞の低減は、CD16+エフェクター細胞が培養物に加えられた場合にはより顕著であった。CD8+/Vβl7+細胞は、未処理の培養物中では32.6%、無関係な抗体およびm1F6抗体で処理した細胞内では、それぞれ、22.4%または22.9%であったのに対して、c1F6で処理した培養物中では、全ての細胞のわずか1.5%でしかなかった。これらの結果により、c1F6は、抗原活性化T細胞を選択的に標的にし、その拡大を防ぐことが分かる。
【0189】
(実施例7:抗原特異的CD8+/Vβl7+細胞の低下に関する抗CD70の用量応答比較)
c1F6が抗原活性化T細胞の拡大を妨げる能力を確認し、さらにこの応答の抗体依存性を評価するために、第2の観察として、段階的な量のc1F6の存在下で、M1ペプチドで刺激したPBMCを発生させた(図11)。9日目に未処理の培養物から回収した抗原特異的CD8+/Vβl7+細胞は、全ての生存細胞の56%に相当した。対照的に、0日目に培養物にc1F6を加えた場合、用量依存的に抗原反応性集団の拡大を著しく制限した。CD8+/Vβl7+細胞は、1μg/ml、0.1μg/mlおよび0.01μg/mlのc1F6で処理した培養物中の全ての細胞において、それぞれ、7.8%、5.8%、および16.9%を占めた。0.001μg/mlの濃度で加えたc1F6抗体は、CD8+/Vβl7+細胞の拡大を妨げなかった。
【0190】
(実施例8.キメラ1F6はCD70+BおよびT細胞において補体依存性細胞毒性作用を仲介する。)
c1F6が補体依存性細胞毒性作用を仲介する能力を、CD70+BおよびT細胞を用いて調べた。これらの実験では、熱活性化していない正常なヒトの血清を補体源として用いた。正常なヒト血清の存在下で、段階的な量のc1F6または非結合ヒトIgGコントロールを用いて標的細胞を処理した。37℃で2時間培養した後、ヨウ化プロピジウムを5μg/mlの最終濃度まで加えた。次いで、細胞調製物をフローサイメトリーによって調べた。ヨウ化プロピジウムで染色した細胞は、抗体が仲介した補体活性化および膜付着複合体の形成の結果、原形質膜完全性を失った(細胞溶解)と見なした。自然発生的な背景溶解を、抗体が仲介した細胞溶解から取り除き、特異的細胞溶解を生じた。このアッセイを用いた場合、c1F6は、いくつかのCD70+B細胞標的の用量依存的溶解を仲介した(図12)。これらの標的は、リンパ芽球性非ホジキンリンパ腫系(MHH−PREB−1)、EBVバーキット性リンパ腫系(MC116)、およびEBV+リンパ芽球様B細胞系(WIL2−S)を含んでいた。MHH−PREB−1およびWIL2−Sの両方について、最大特異的溶解は>50%であった。MC116の特異的溶解は、用いたc1F6の最大濃度で概ね15%であった。
【0191】
2つのCD70+T細胞標的の感度についても調べた。HHは、CD70を構成的に発現する皮膚T細胞性リンパ腫細胞系である。C9Dは、培養において維持、増殖される正常なT細胞系である。1:1のCESS:T細胞比で、フィトヘマグルチニン(PHA、2μg/ml)、IL−2(100IU/mlのProleukin(登録商標)(アルデスロイキン)Chiron,Emeryville,CA)、および照射CESS細胞(ATCC,Manassas,VA)を用いて休止C9Dを刺激することにより、誘導可能なCD70の表面発現を伴う細胞活性化/拡大周期を開始する。上述したように、正常なヒトの血清の存在下で、c1F6またはコントロールIgGを用いてHHおよびCD70+C9D細胞を培養した。ヨウ化プロピジウム浸透性およびフローサイメトリーにより細胞溶解を評価した(図13)。両方の標的において用量依存的に細胞溶解が検出され、c1F6がCD70+T細胞標的上のCDCも仲介することが示された。
【0192】
(実施例9:キメラ1F6はCD70+腫瘍細胞系に対するADCPを仲介する。)
CD70+WIL2−S細胞および単球由来のマクロファージを食作用細胞源として用いて、c1F6が抗体依存性細胞食作用を仲介する能力について調べた。マクロファージを生成するために、PBMCの単球を、1%のヒト血清を含有する培地において、組織培養フラスコにおよそ1時間付着させた。非付着性細胞をデカントし、残りの付着性細胞を、500ユニット/mLのrhGM−CSFを補った無血清X−VIVO培地(BioWhittaker,Walkersville,MD)で11〜14日間培養させた。マクロファージは、>75%の生存率であり、CD3−/CD14+/CD11b+であり、FcγRI、IIおよびIIIを発現した。c1F6仲介ADCPを検出するために、8×105個のWIL2−S標的細胞を、製造者の取り決めに従って、緑色蛍光細胞膜染料PKH67(Sigma−Aldrich Corp.,St.Louis,MO)で染色した。次いで、これらの細胞を、PBS中の2ug/mLのc1F6を用いて30分間氷上で前培養し、PBSを用いて一度洗浄して余分な抗体を取り除いた。10%のUltra Low IgG FBS(Invitrogen Corp.)を補ったRPMI1640培地中で1個のマクロファージ細胞につき4個の標的細胞の最終比で、96ウェルU底マイクロタイタープレートの2×105個のマクロファージと標的細胞を組み合わせた。5%CO2加湿インキュベータにおいて、37℃で2時間培養した後、細胞混合物をPE結合体化マウス抗CD11b抗体で標識してマクロファージを表面標識した。これらの細胞をPBSで一度洗浄し、PBS中の1%パラホルムアルデヒドで固定し、フローサイメトリーにより分析することにより二重蛍光を食作用活性の測定値として検出した。蛍光顕微鏡検査法のために、CD11b+細胞をAlexa Fluor(登録商標)568ヤギ抗マウスIgG(Molecular Probes,Inc.,Eugene,OR)でさらに標識し、赤色蛍光シグナルを増強させた。図14Aに示すように、標的がc1F6で被覆された場合には、79%のマクロファージがWIL2−S標的細胞を貪食した。対照的に、非結合Igコントロール抗体で処理したWIL2−S細胞と混合したマクロファージでは、食作用の制限が観察された(12.8%)。食作用を示す二重蛍光染色は、標的細胞の摂取によるものであり、蛍光顕微鏡検査により判定されるような結合形成によるものではなかった。緑色WIL2−S細胞物質については、膜が赤色に染色されたマクロファージ内に局在することが明らかに示された。非結合Igで処理したWIL2−S細胞については、赤色に染色されたマクロファージとは個別に離れて存在することが分かった。食作用活性は、抗体に用量特異的に依存していた(図14B)。さらなる検査により、異なる癌種に由来するCD70+形質転換細胞系は全てキメラ1F6仲介ADCPに対して敏感であることが明らかになった(図15)。
【0193】
(実施例10:c1F6のインビボ抗腫瘍活性)
CD70陽性バーキット性リンパ腫系RajiおよびEBV形質転換リンパ芽球様細胞系IM−9をATCC(Manassas,VA)から得た。RPMI(Life Technologies Inc.,Gaithersburg,MD)中で細胞を成長させ、10%ウシ胎仔血清を補った。播種性疾患を確立するために、0.2ml PBSで洗浄し、再懸濁した1×106個のRajiまたはIM−9細胞をC.B.−17 SCIDマウス(Harlan,Indianapolis,IN)の尾側静脈に注射した。注射後、全てのマウスをプールし、次いで、ランダムに各種の処置群に入れた。尾側静脈への静脈注射による細胞移植の1日後に、1mg/kgまたは4mg/kgのc1F6、または4mg/kgのコントロールIgGを単一用量与えた。マウスの重量を測定し、少なくとも週に1度病気の徴候について評価した。マウスが以下のうち1つ以上を特徴とする発病発症の徴候を示したときに、実験装置から取り除き、屠殺した:0日目の体重から15〜20%の体重減少、猫背、昏睡、頭蓋腫脹、または脱水症。Rajiモデルでは、未処置およびコントロールIgGで処置した群の平均生存期間は、それぞれ、21日および24日であった。キメラ1F6は用量依存的に生存期間を延長し、1mg/kgおよび4mg/kgのキメラ1F6で処置した群の平均生存期間は、それぞれ、31日および72日であった(図16)。IM−9モデルでも同様の生存期間の増加が観察された。未処置またはコントロールIgGを用いて処置しない場合の平均生存期間は、それぞれ、35日および28日であった。1mg/kgまたは4mg/kgのc1F6を用いて処置することにより、平均生存期間が、それぞれ、53日および>100日増加した(図16)。両方のモデルでは、図16に示すようなログランクテストに基づいて、生存期間の増加が統計的に有意であることが分かった。
【0194】
(実施例11:抗CD70抗体の投与による実験的アレルギー性脳脊髄炎の処置)
例えば、自己免疫脱髄疾病を含む細胞仲介自己免疫病におけるTh1仲介免疫応答を増強する際のCD70/CD27仲介T細胞−T細胞相互作用の役割を研究で示す。この実施例では、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)(脱髄病多発性硬化症(MS)の動物モデル)を、ヒトCD70の1F6エピトープに対応するマウスCD70のエピトープを認識するキメラまたはヒト化抗CD70抗体で処置する。
【0195】
実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)の誘発および臨床的評価:200μgの結核菌H37Raおよび40μgのプロテオリピドタンパク質の免疫優先エピトープPLP139−151を含む100μlの完全フロイントアジュバント(CFA)エマルジョンによる皮下免疫により、6〜7週齢のメスSJLマウスにR−EAE(再発性EAE)を誘発させる。EAEの徴候は下記のように0〜5段階で採点する:(0)正常;(1)弱々しい尾または後肢の虚弱;(2)弱々しい尾および後肢の虚弱(よたよた歩き);(3)部分的な後肢の麻痺;(4)完全な後肢の麻痺;および(5)死にかけている。再発とは、動物が既に少なくとも全体的な臨床スコアを改善しており、少なくとも2日間安定化した後、臨床スコアの評点を少なくとも1つ上げて、それを(2日より多く)維持することであると定義される。このデータを、特定の処置群における全動物の平均臨床スコアまたは再発率(ある群における再発の総数をその群のマウスの総数で割ったもの)としてプロットする。
【0196】
抗CD70投与計画:抗CD70抗体(0.1〜3mg/kg体重)を合計体積100μlで腹腔内投与する。マウスを3週連続で、1週につき3回処置する(合計9回の処置)。疾患の発症前(7日目)または急性疾患のピーク時(14日目)に処置を開始する。対照として、1つのEAE誘導マウス群を未処置のままにしておく。
【0197】
TNF−αおよびIFN−γ誘導の阻害:EAEを患ったマウスの脳内のTNF−αおよびIFN−γの存在を実証することにより、EAE病の進行を示す炎症性疾患の過程を示す。抗CD70抗体で処置したSJLマウスの脳内でのこれらサイトカインの誘発を阻害することにより、EAEの予防または処置における抗CD70抗体治療の有用性を示す。臨床前(13日目(3回の処置後)および26日目(9回の処置後))および急性疾患のピーク時(20日目(3回の処置後)および33日目(9回の処置後))に処置した少なくとも3匹の動物からから脳を集める。脳を固定し(10%緩衝化ホルマリン)、組織をパラフィンに包埋し、切片化する。次に、各サイトカインに特異的な一次抗体を用いたインキュベート、およびそれに続くFITCと結合体化させた二次抗体を用いたインキュベートにより、TNF−αまたはIFN−γについて切片を個々に染色する。次いで、組織切片を標本用培地中で標本とし、免疫蛍光顕微鏡検査により分析する。抗CD70抗体処置マウス対未処置EAE誘導マウスにおけるTNF−αまたはIFN−γ染色の減少量は、抗CD70抗体治療を用いた炎症サイトカイン誘導の阻害を示す。
【0198】
病気の症状の抑制または再発率:抗CD70抗体処置群内のEAE誘導SJLマウスを未処置EAE誘導マウスと比較して、病気の発症の予防または確立した病気の処置における抗CD70抗体治療の有効性を評価する。前臨床的に処置したマウスに関しては、未処置の対照群と比較した場合のEAE疾患の平均スコアの減少は、病気の予防における抗CD70抗体治療の有効性を示す。急性疾患のピークで処置したマウスに関しては、未処置の対照群と比較した場合の(a)再発率の低下または(b)EAEの処置後の平均スコアの減少は、確立した疾患の処置における抗CD70抗体処置の有効性を示す。
【0199】
(実施例12:抗CD70抗体の投与による移植片対宿主病の処置)
hu−SCIDモデルがヒトの免疫疾患を調べるための効果的なシステムであることが分かった。この移植片対宿主病のモデルでは、ヒトのPBLおよび/またはPBMCに対する抗CD70抗体および抗体/医薬結合体の作用を検証する。
【0200】
免疫不全症マウスにおけるヒトの免疫細胞の確立:ヒトのPBLまたはPBMCを注射する前に、以下のエフェクター細胞について、ここに示す試薬を用いてマウス内で低下させた:ナチュラルキラー(NK)細胞については、例えば、抗アシアロGM1またはTMB−1抗体;マクロファージ/単球については、例えば、クロドロネートカプセル化リポソーム;好中球については、例えば、抗Gr−1抗体;補体については、例えば、コブラ毒因子。ヒトのPBLまたはPBMC(1〜30×107)を、SCIDマウス(メスのCB.17−SCID、SCID−NOD、またはCB.17−SCID/ベージュマウス、8〜12週齢)に移植し、そのマウス内において、機能的ヒト免疫系を長期的に安定して再構築した。
【0201】
実験中にヒト免疫グロブリンの存在について血清を分析することにより、SCEDマウスにおけるヒト細胞の移植を評価する。研究を通して麻酔または安楽死動物の血液、腹腔浸出液および脾臓におけるヒト細胞の数により移植効率も測定する。ヒト細胞の移植が成功すると、抗CD70抗体または抗CD70抗体/医薬結合体(1−10mg/kg体重、腹腔内または静脈内に4〜7日毎に4〜7回投与)でマウスを処置する。ヒト細胞に対する抗体または抗体結合体処置の作用について、処置後異なる日数(1日、4日、7日、14日、および28日)で採取したマウスの血中および/または脾臓内のヒト細胞の数を調べることにより調査を行なう。
【0202】
組織の収集:注射後の特定の時点および実験の最後に、以下の組織を収集し、疾患の進行および安楽死させたマウスの細胞浸潤について分析する:脾臓、リンパ節、胸腺、肝臓、骨髄、肺、脳、腸、結腸、皮膚、膵臓、腹腔浸出液、および血液。
【0203】
(実施例13:抗CD70抗体の投与による喘息の処置)
喘息のマウスモデルにおいて抗CD70抗体の有効性を調べた。0日目、7日目および14日目に、感作のために、Balb/cマウスを10mgのOVA/Alumにより処置した。10mg/kg体重の抗マウスCD70抗体(クローン3B9)を、0日目から7日ごとに4回腹腔内に投与した。次いで、21日目、22日目、および23日目に、5%噴霧状オボアルブミンを用いてマウスの免疫性をテストした。26日目に、マウスを処理して、気管支肺胞洗浄液、血液、排出リンパ節、脾臓、および肺を収集した。得られた結果から、対照群と比較して、3B9で処置した群では、肺への細胞浸潤がより軽度であることが示された。
【0204】
本発明は、本明細書中に記載の特定の実施形態によってその範囲が限定されるものではない。実際、本明細書中に記載したものを含む本発明の各種改変に関しては、上述した説明および添付した図面から当業者には明らかとなるであろう。そのような改変は、添付した請求の範囲に含まれるものとする。
【0205】
本明細書中において、特許出願、特許および科学に関する出版物を含む各種の参考文献を挙げたが、それら各々の開示内容のすべてを本明細書中において参考として援用する。
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
【数9】
【数10】
【数11】
【数12】
【数13】
【数14】
【数15】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本出願は、米国仮特許出願第60/619,018号(2004年10月15日出願)、および米国仮特許出願第60/645,355号(2005年1月19日出願)の優先権を主張する。これらの各々は、本明細書中でその全体が参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
CD70は、各種の正常および悪性の細胞型により発現される細胞膜結合/分泌分子の腫瘍壊死因子(TNF)ファミリーの一員である。CD70の一次アミノ酸(AA)配列により、カルボキシ末端が細胞外に曝され、アミノ酸末端が形質膜の細胞質ゾル側に見られる膜貫通タイプIIのタンパク質が予測される(非特許文献1;非特許文献2)。ヒトCD70は、20AA細胞質ドメイン、18AA膜貫通ドメイン、および2つの潜在的N結合グリコシル化部位を有する155AA細胞質外ドメインから構成される(非特許文献1;非特許文献2)。放射性同位元素で標識されたCD70発現細胞の抗CD70抗体による特異的免疫沈澱は、29および50kDaのポリペプチドを生じる(非特許文献2;非特許文献3)。特に、構造鎖C、D、HおよびI中では、TNF−アルファおよびTNF−ベータに対する相同性に基づいて、CD70についての三量体構造が予測される(非特許文献4)。
【0003】
初期の免疫組織学的研究において、CD70が、扁桃腺、皮膚および消化器官中の胚中心B細胞と稀なT細胞上で発現することが明らかになった(非特許文献5)。その後、最近抗原活性化されたTおよびBリンパ球の細胞表面上でCD70が発現することが報告されており、その発現は抗原刺激を取り除くと弱まる(非特許文献6;非特許文献7)。リンパ系内では、活性化されたナチュラルキラー細胞(非特許文献8)およびマウスの成熟末梢樹状細胞(非特許文献9)もCD70を発現する。非リンパ由来細胞では、胸腺髄質上皮細胞上でCD70が検出されている(非特許文献5;非特許文献10)。
【0004】
正常細胞上での発現に加え、リンパ腫、癌腫および神経性腫瘍を始めとする異なる種類の癌におけるCD70の発現が報告されている。悪性B細胞では、散在性大B細胞リンパ腫の71%、濾胞中心リンパ腫の33%、マントルリンパ腫の25%、およびB−CLLの50%がCD70を発現することが報告されている(非特許文献11)。CD70は、ホジキン病の悪性ホジキン細胞およびリード・シュテルンベルク細胞上で、他のリンパ活性化マーカーとともに発現することが多い(非特許文献12)。ある報告では、胸腺癌腫の88%(8例のうち7例)および異型性胸腺腫の20%(5例のうち1例)においてCD70が発現したと報じている(非特許文献10)。CD70が検出された第2タイプの癌腫は上咽頭癌腫である。ある研究では、非分化上咽頭癌腫から得られた急速凍結腫瘍生検の80%(20例のうち16例)においてCD70が存在すると報告している(非特許文献13)。CD70は、脳腫瘍細胞、特にグリオーマ細胞系、固体ヒトグリオーマおよび髄膜腫上でも検出されている(非特許文献14;非特許文献15)。
【0005】
CD70の受容体は、約55kDaのグリコシル化されたタイプIの膜貫通タンパク質であるCD27である(非特許文献2;非特許文献5)。CD70はCD27Lと称される場合もある。細胞表面上でホモダイマーとして存在するCD27(非特許文献16)は、細胞外ドメインの約40個のアミノ酸からなるシステインが豊富な繰返し単位により定められるTNF受容体・スーパーファミリーの一員である(非特許文献17;非特許文献18)。CD27は、胸腺細胞、NK、TおよびB細胞により発現される(非特許文献19;非特許文献20)。休止T細胞上では、CD27は構成的に発現するが、抗原誘発により、CD27の発現はさらにアップレギュレートされる(非特許文献21;非特許文献22)。さらに、T細胞抗原受容体複合体単独で、または付属分子CD28と組み合わせてT細胞を誘発することにより、活性化T細胞から可溶性CD27が放出される(非特許文献23)。ナイーブB細胞はCD27を発現しないが、発現が誘導され、CD70とは対照的に、B細胞の抗原誘発後も維持される(非特許文献24;非特許文献25)。
【0006】
正常なB系統細胞においてCD27およびCD70の発現が制限されていたこととは著しく対照的に、多くのB細胞非ホジキンリンパ腫および白血病では、CD27およびCD70はともに共発現することが多い。これにより、これらの細胞上において、オートクラインループの形態をした機能的なCD27/CD70の相互作用が潜在的に導かれ、CD27シグナル伝達およびCD70誘導増殖をもたらすことにより悪性細胞の成長にとって有利になる(非特許文献11)。
【0007】
細胞により仲介される自己免疫病におけるCD70/CD27共刺激の役割は、実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)のモデルで調査されている(非特許文献26)。抗マウスCD70mAb(クローンFR−70)をインビボ投与した場合、BおよびT細胞数、T細胞プライミング、Ig産生またはTH1/TH2細胞バランスに影響を与えることなく、抗原誘導TNF−アルファ産生を阻害することによりEAEの発症が抑制された。しかしながら、そのような処置は確立した病気にはほとんど有効性を持たなかった。
【0008】
移植片対宿主病(GVHD)は、骨髄ドナーと移植片の受容者との間で組織適合性抗原が異なる場合に、同種間骨髄移植(BMT)療法の結果生じることが多く、致命的となることが多い、主要なTH1により仲介される免疫応答である(非特許文献27)。GVHDは、移植されたドナー骨髄に存在する成熟T細胞によって惹起される、宿主組織に対する免疫反応である(非特許文献28)。重症複合免疫不全症患者における母性T細胞移植の場合のように、同種間反応を特徴とする条件下において、インビボでCD4+細胞上でCD70が検出されたことは注目すべきことである(非特許文献29)。GVHDの予防は、シクロスポリン、コルチコステロイドまたはメトトレキセート等の汎T細胞免疫抑制剤により行なわれる。しかしながら、これらの物質は特異的ではなく、重大な副作用を起こす。
【0009】
上記のように、CD70は、正常な非造血細胞上では発現されない。CD70の発現は、生理学的条件下では、多くの場合、最近抗原活性化されたTおよびB細胞に限定され、その発現は、抗原刺激が終わるとダウンレギュレートされる。CD70が、例えば、関節リウマチ(非特許文献29)、乾癬性関節炎(非特許文献29)、および狼瘡(非特許文献30)等の免疫障害に寄与し得ることは、動物モデルによる検証により示されている。炎症反応における潜在的な役割に加えて、CD70は、リンパ腫B細胞、ホジキン/リード・シュテルンベルク細胞、神経性悪性細胞、および多くの癌腫を含む各種の形質転換細胞上でも発現する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Bowmanら,J.Immunol.,1994年,第152巻,p.1756−61
【非特許文献2】Goodwinら,Cell,1993年,第73巻,p.447−56
【非特許文献3】Hintzenら,J.Immunol.,1994年,第152巻,p.1762−73
【非特許文献4】Petschら,Mol.Immunol.,1995年,第32巻,p.761−72
【非特許文献5】Hintzenら,Int.Immunol.,1994年,第6巻,p.477−80
【非特許文献6】Lensら,Eur.J.Immunol.,1996年,第26巻,p.2964−71
【非特許文献7】Lensら,Immunology,1997年,第90巻,p.38−45
【非特許文献8】Orengoら,Clin.Exp.Immunol.,1997年,第107巻,p.608−13
【非特許文献9】Akibaら,J.Exp.Med.,2000年,第191巻,p.375−80
【非特許文献10】Hishimaら,Am.J.Surg.Pathol.,2000年,第24巻,p.742−46
【非特許文献11】Lensら,Br.J.Haematol.,1999年,第106巻,p.491−503
【非特許文献12】GrussおよびKadin,Bailieres Clin.Haematol.,1996年,第9巻,p.417−46
【非特許文献13】Agathanggelouら,Am J Path,1995年,第147巻,p.1152−60
【非特許文献14】Held−FeindtおよびMentlein,Int.J.Cancer,2002年,第98巻,p.352−56
【非特許文献15】Wischlusenら,Can.Res.,2002年,第62巻,p.2592−99
【非特許文献16】Gravesteinら,Eur.J.Immunol.,1993年,第23巻,p.943−50
【非特許文献17】Smithら,Science,1990年,第248巻,p.1019−23
【非特許文献18】Locksleyら,Cell,2001年,第104巻,p.487−501
【非特許文献19】Hintzenら,Immunol Today,1994年,第15巻,p.307−11
【非特許文献20】Lensら,Semin.Immunol.,1998年,第10巻,p.491−99
【非特許文献21】de Jongら,J.Immunol.,1991年,第146巻,p.2488−94
【非特許文献22】Hintzenら,J.Immunol.,1993年,第151巻,p.2426−35
【非特許文献23】Hintzenら,J.Immunol.,1991年,第147巻,p.29−35
【非特許文献24】Jacquotら,J.Immunol.,1997年,第159巻,p.2652−57
【非特許文献25】Kobataら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1995年,第92巻,p.11249−53
【非特許文献26】Nakajimaら,J.Neuroimmunol.,2000年,第109巻,p.188−96
【非特許文献27】den Haanら,Science,1995年,第268巻,p.1476
【非特許文献28】GiraltおよびChamplin,Blood,1994年,第84巻,p.3603
【非特許文献29】Brugnoniら,Immunol.Lett,1997年,第55巻,p.99−104
【非特許文献30】Oelkeら,Arthritis Rheum.,2004年,第50巻,p.1850−60
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、CD70を発現しない細胞に対しては特に望ましくない作用を及ぼすことなく、CD70を発現する細胞に対して臨床的に有用な細胞毒性作用、細胞静止作用または免疫抑制作用を及ぼすことが可能な抗CD70抗体および他のCD70結合剤が必要とされる。そのような結合剤は、CD70を発現する癌、またはCD70を発現する細胞により仲介される免疫障害に対して有用である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の簡単な説明)
本発明は、CD70抗体および他のCD70結合剤を提供し、さらに、そのような結合剤を、CD70を発現する細胞が存在するCD70を発現する癌および免疫障害の予防または処置のために使用することに関する方法を提供する。抗体または他の結合剤は、CD70に結合し、治療剤と結合体化しない場合に、CD70を発現する細胞に対して細胞毒性作用、細胞静止作用および/または免疫抑制作用を示す。
【0013】
1つの局面では、被験体内のCD70を発現する癌を処置する方法が提供される。この方法は、一般に、CD70に結合する抗原結合領域および上記被験体において少なくともADC、ADCC、ADCPまたはCDC応答を仲介する少なくとも1つのエフェクタードメインを有する結合剤を効果的な量で上記被験体に投与する工程を含み、上記結合剤は、治療剤と結合体化しない場合、細胞静止作用または細胞毒性作用を及ぼす。このCD70結合剤は、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、または完全なヒト抗体等の抗体とすることができる。この抗体は、例えば、ヒトIgMまたはIgG抗体のエフェクタードメインを含むようにすることができる。上記IgG抗体は、例えば、ヒトIgG1またはIgG3サブタイプとすることができる。いくつかの実施形態では、上記抗体はヒトの定常領域を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、上記抗体は、CD70との結合に関して、モノクローナル抗体1F6または2F2と競合する。他の実施形態では、上記抗体は、ヒト化1F6もしくは2F2またはキメラ1F6もしくは2F2抗体である。上記抗体は、例えば、一価、二価または多価とすることができる。
【0015】
上記CD70を発現する癌は、例えば、腎腫瘍、B細胞リンパ腫、結腸癌腫、ホジキン病、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、鼻咽頭癌腫、脳腫瘍または胸腺癌腫とすることができる。腎腫瘍は、例えば、腎細胞癌腫とすることができる。脳腫瘍は、例えば、神経膠腫、グリア芽腫、または髄膜腫とすることができる。上記被験体は、例えば、ヒト等の哺乳動物とすることができる。
【0016】
他の局面では、免疫障害を処置するための方法が提供される。この方法は、CD70に結合する抗原結合領域および上記被験体において少なくともADC、ADCC、ADCPまたはCDC応答を仲介する少なくとも1つのエフェクタードメインを有する結合剤を効果的な量で上記被験体に投与する工程を含み、上記結合剤は、治療剤と結合体化しない場合、細胞静止作用、細胞毒性作用、または免疫抑制作用を及ぼす。このCD70結合剤は、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、または完全なヒト抗体等の抗体とすることができる。この抗体は、例えば、ヒトIgMまたはIgG抗体のエフェクタードメインを含むようにすることができる。上記IgG抗体は、例えば、ヒトIgG1またはIgG3サブタイプとすることができる。いくつかの実施形態では、上記抗体はヒトの定常領域を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、上記抗体は、CD70との結合に関して、モノクローナル抗体1F6または2F2と競合する。他の実施形態では、上記抗体は、ヒト化1F6もしくは2F2またはキメラ1F6もしくは2F2抗体である。上記抗体は、例えば、一価、二価または多価とすることができる。
【0018】
上記免疫障害は、例えば、T細胞仲介免疫障害とすることができる。いくつかの実施形態では、上記T細胞仲介免疫障害は、CD70を発現する活性化T細胞を含む。いくつかの実施形態では、休止T細胞は、抗体/医薬結合体の投与により大きく低減しない。上記T細胞仲介免疫障害はまた、例えば、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、タイプI糖尿病、喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、血小板減少紫斑病、多発性硬化症、乾癬、シェーグレン症候群、ハシモト甲状腺炎、グレーブス病、原発性胆汁肝硬変、ウェゲナー肉芽腫症、結核、または移植片対宿主病とすることもできる。他の実施形態では、上記免疫障害は活性化Bリンパ球障害である。上記被験体は、例えば、ヒト等の哺乳動物とすることができる。
【0019】
他の局面では、CD70に結合する抗原結合領域を含む抗体が提供される。この抗体は、被験体において少なくともADC、ADCC、ADCPまたはCDC応答を仲介する少なくとも1つのエフェクタードメインを含み、CD70を発現する癌に対して細胞静止作用または細胞毒性作用を及ぼし、この細胞静止作用または細胞毒性作用は、細胞静止剤または細胞毒性剤と結合体化しない場合にもたらされ、上記抗体は、モノクローナル抗体1F6または2F2ではない。上記抗体は、CD70との結合に関して、モノクローナル抗体1F6および2F2と競合し得る。
【0020】
他の局面では、上記抗体は、CD70に結合する抗原結合領域および被験体において少なくともADC、ADCC、ADCPまたはCDC応答を仲介する少なくとも1つのエフェクタードメインを含み、CD70を発現する免疫障害に対して免疫抑制作用を及ぼし、この免疫抑制作用は、細胞静止剤または細胞毒性剤と結合体化しない場合にもたらされ、上記抗体は、モノクローナル抗体1F6または2F2ではない。上記抗体は、CD70との結合に関して、モノクローナル抗体1F6および2F2と競合し得る。
【0021】
関連する局面では、CD70を発現する癌または免疫障害を処置するための医薬組成物も提供される。この組成物は、CD70結合抗体、および少なくとも1つの薬学的に適合性のある成分を含む。さらに、凍結乾燥されたCD70結合抗体を含む容器、および薬学的に許容される希釈液を含む第2の容器を含む医薬キットが提供される。
【0022】
本発明は、下記の発明の詳細な説明、発明の特定の実施形態の非限定的な例および添付の図面を参照することにより、さらに十分に理解することができる。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
被験体内のCD70を発現する癌を処置するための方法であって、
CD70に結合する抗原結合領域および該被験体において少なくともADC、ADCC、ADCPまたはCDC応答を仲介する少なくとも1つのエフェクタードメインを有する結合剤を効果的な量で該被験体に投与する工程を包含し、該結合剤は、治療剤と結合体化しない場合、細胞静止作用または細胞毒性作用を及ぼし、該結合剤は治療剤と結合体化しない、方法。
(項目2)
前記結合剤は抗体である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、または完全なヒト抗体である、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記抗体はヒト化抗体である、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記ヒト化抗体は、ヒトIgMまたはIgG抗体のエフェクタードメインを含む、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記IgG抗体は、ヒトIgG1またはIgG3サブタイプである、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記抗体はキメラ抗体である、項目3に記載の方法。
(項目8)
前記キメラ抗体は、ヒトIgMまたはIgG抗体のエフェクタードメインを含む、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記IgG抗体は、ヒトIgG1またはIgG3サブタイプである、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記抗体はヒトの定常領域を含む、項目3に記載の方法。
(項目11)
前記抗体は、CD70との結合に関して、モノクローナル抗体1F6または2F2と競合する、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記抗体は、以下:
(a)配列番号6に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するH1領域;
(b)配列番号8に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するH2領域;
(c)配列番号10に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するH3領域;
(d)配列番号16に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するL1領域;
(e)配列番号18に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するL2領域;
(f)配列番号20に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するL3領域;
(g)配列番号26に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するH1領域;
(h)配列番号28に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するH2領域;
(i)配列番号30に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するH3領域;
(j)配列番号36に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するL1領域;
(k)配列番号38に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するL2領域;および
(l)配列番号40に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するL3領域
からなる群から選択される少なくとも1つのポリペプチド領域を含む、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記抗体は、前記(a)、(b)および(c)のH1領域、H2領域およびH3領域;または前記(g)、(h)および(i)のH1領域、H2領域およびH3領域を含む、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)および(f)のポリペプチド領域は、それぞれ、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号16、配列番号18および配列番号20に示すアミノ酸配列を有する、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記(a)、(b)および(c)のH1領域、H2領域およびH3領域を含む抗体は、前記(d)、(e)および(f)のL1領域、L2領域およびL3領域をさらに含むか;または
前記(g)、(h)および(i)のH1領域、H2領域およびH3領域を含む抗体は、前記(j)、(k)および(l)のL1領域、L2領域およびL3領域をさらに含む、項目13に記載の方法。
(項目16)
前記抗体は、配列番号2または配列番号22に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域を含む、項目13に記載の方法。
(項目17)
前記重鎖可変領域は、配列番号2または配列番号22に示すアミノ酸配列を有する、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記配列番号2または配列番号22に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域を含む前記抗体は、それぞれ、配列番号12または配列番号32に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域をさらに含む、項目16に記載の方法。
(項目19)
前記軽鎖可変領域は、配列番号12または配列番号32に示すアミノ酸配列を有する、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記抗体は、ヒト化1F6またはヒト化2F2である、項目4に記載の方法。
(項目21)
前記抗体は、キメラ1F6またはキメラ2F2である、項目7に記載の方法。
(項目22)
前記抗体は多価である、項目1に記載の方法。
(項目23)
前記CD70を発現する癌は、多発性骨髄腫、腎腫瘍、B細胞リンパ腫、結腸癌腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、鼻咽頭癌腫、脳腫瘍または胸腺癌腫からなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目24)
前記腎腫瘍は腎細胞癌腫である、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記脳腫瘍は、神経膠腫、グリア芽腫、または髄膜腫である、項目23に記載の方法。
(項目26)
前記被験体はヒトである、項目1に記載の方法。
(項目27)
被験体内の免疫障害を処置するための方法であって、
CD70に結合する抗原結合領域および該被験体において少なくともADC、ADCC、ADCPまたはCDC応答を仲介する少なくとも1つのエフェクタードメインを有する結合剤を効果的な量で該被験体に投与する工程を包含し、該結合剤は、治療剤と結合体化しない場合、細胞静止作用、細胞毒性作用、または免疫抑制作用を及ぼし、該結合剤は治療剤と結合体化しない、方法。
(項目28)
前記結合剤は抗体である、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、または完全なヒト抗体である、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記抗体はヒト化抗体である、項目28に記載の方法。
(項目31)
前記ヒト化抗体は、ヒトIgMまたはIgG抗体のエフェクタードメインを含む、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記IgG抗体は、ヒトIgG1またはIgG3サブタイプである、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記抗体はキメラ抗体である、項目28に記載の方法。
(項目34)
前記キメラ抗体は、ヒトIgMまたはIgG抗体のエフェクタードメインを含む、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記IgG抗体は、ヒトIgG1またはIgG3サブタイプである、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記抗体はヒトの定常領域を含む、項目28に記載の方法。
(項目37)
前記抗体は、CD70との結合に関して、モノクローナル抗体1F6または2F2と競合する、項目27に記載の方法。
(項目38)
前記抗体は、以下:
(a)配列番号6に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するH1領域;
(b)配列番号8に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するH2領域;
(c)配列番号10に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するH3領域;
(d)配列番号16に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するL1領域;
(e)配列番号18に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するL2領域;
(f)配列番号20に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するL3領域;
(g)配列番号26に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するH1領域;
(h)配列番号28に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するH2領域;
(i)配列番号30に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するH3領域;
(j)配列番号36に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するL1領域;
(k)配列番号38に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するL2領域;および
(l)配列番号40に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するL3領域
からなる群から選択される少なくとも1つのポリペプチド領域を含む、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記抗体は、前記(a)、(b)および(c)のH1領域、H2領域およびH3領域;または前記(g)、(h)および(i)のH1領域、H2領域およびH3領域を含む、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)および(f)のポリペプチド領域は、それぞれ、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号16、配列番号18および配列番号20に示すアミノ酸配列を有する、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記(a)、(b)および(c)のH1領域、H2領域およびH3領域を含む抗体は、前記(d)、(e)および(f)のL1領域、L2領域およびL3領域をさらに含むか;または
前記(g)、(h)および(i)のH1領域、H2領域およびH3領域を含む抗体は、前記(j)、(k)および(l)のL1領域、L2領域およびL3領域をさらに含む、項目39に記載の方法。
(項目42)
前記抗体は、配列番号2または配列番号22に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域を含む、項目39に記載の方法。
(項目43)
前記重鎖可変領域は、配列番号2または配列番号22に示すアミノ酸配列を有する、項目42に記載の方法。
(項目44)
前記配列番号2または配列番号22に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域を含む前記抗体は、それぞれ、配列番号12または配列番号32に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域をさらに含む、項目42に記載の方法。
(項目45)
前記軽鎖可変領域は、配列番号12または配列番号32に示すアミノ酸配列を有する、項目44に記載の方法。
(項目46)
前記抗体は、キメラ抗体1F6またはキメラ抗体2F2あるいはヒト化抗体1F6またはヒト化抗体2F2である、項目45に記載の方法。
(項目47)
前記抗体は、ヒト化抗体1F6またはヒト化抗体2F2である、項目27に記載の方法。
(項目48)
前記抗体は多価である、項目27に記載の方法。
(項目49)
前記免疫障害はT細胞仲介免疫障害である、項目27に記載の方法。
(項目50)
前記T細胞仲介免疫障害は、CD70を発現する活性化T細胞を含む、項目49に記載の方法。
(項目51)
休止T細胞は、前記抗体/医薬結合体の投与により大きく低減しない、項目50に記載の方法。
(項目52)
前記T細胞仲介免疫障害は、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、タイプI糖尿病、喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、免疫性血小板減少紫斑病、多発性硬化症、乾癬、シェーグレン症候群、ハシモト甲状腺炎、グレーブス病、原発性胆汁肝硬変、ウェゲナー肉芽腫症、結核、ワルデンストレームマクログロブリン血症、または移植片対宿主病である、項目49に記載の方法。
(項目53)
前記免疫障害は活性化Bリンパ球障害である、項目27に記載の方法。
(項目54)
前記被験体はヒトである、項目27に記載の方法。
(項目55)
CD70に結合する抗原結合領域および被験体において少なくともADC、ADCC、ADCPまたはCDC応答を仲介する少なくとも1つのエフェクタードメインを含み、CD70を発現する癌に対して細胞静止作用または細胞毒性作用を及ぼす抗体であって、該細胞静止作用または細胞毒性作用は、細胞静止剤または細胞毒性剤と結合体化しない場合にもたらされ、該抗体は、モノクローナル抗体1F6またはモノクローナル抗体2F2ではない、抗体。
(項目56)
前記抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、または完全なヒト抗体である、項目55に記載の抗体。
(項目57)
前記抗体は、ヒトIgG1またはIgG3サブタイプである、項目56に記載の抗体。
(項目58)
CD70との結合に関して、モノクローナル抗体1F6およびモノクローナル抗体2F2と競合する抗原結合領域および被験体において少なくともADC、ADCC、ADCPまたはCDC応答を仲介する少なくとも1つのエフェクタードメインを含み、CD70を発現する癌に対して細胞静止作用または細胞毒性作用を及ぼす抗体であって、該細胞静止作用または細胞毒性作用は、細胞静止剤または細胞毒性剤と結合体化しない場合にもたらされ、該抗体は、モノクローナル抗体1F6またはモノクローナル抗体2F2ではない、抗体。
(項目59)
前記抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、または完全なヒト抗体である、項目58に記載の抗体。
(項目60)
前記抗体は、ヒトIgG1またはIgG3サブタイプである、項目59に記載の抗体。
(項目61)
CD70に結合する抗原結合領域および被験体において少なくともADC、ADCC、ADCPまたはCDC応答を仲介する少なくとも1つのエフェクタードメインを含み、CD70を発現する免疫障害に対して免疫抑制作用を及ぼす抗体であって、該免疫抑制作用は、細胞静止剤または細胞毒性剤と結合体化しない場合にもたらされ、該抗体は、モノクローナル抗体1F6またはモノクローナル抗体2F2ではない、抗体。
(項目62)
前記抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、または完全なヒト抗体である、項目61に記載の抗体。
(項目63)
前記抗体は、ヒトIgG1またはIgG3サブタイプである、項目62に記載の抗体。
(項目64)
CD70との結合に関して、モノクローナル抗体1F6およびモノクローナル抗体2F2と競合する抗原結合領域および被験体において少なくともADC、ADCC、ADCPまたはCDC応答を仲介する少なくとも1つのエフェクタードメインを含み、CD70を発現する免疫障害に対して免疫抑制作用を及ぼす抗体であって、該免疫抑制作用は、細胞静止剤または細胞毒性剤と結合体化しない場合にもたらされ、該抗体は、モノクローナル抗体1F6またはモノクローナル抗体2F2ではない、抗体。
(項目65)
前記抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、または完全なヒト抗体である、項目64に記載の抗体。
(項目66)
前記抗体は、ヒトIgG1またはIgG3サブタイプである、項目65に記載の抗体。
(項目67)
CD70を発現する癌または免疫障害を処置するための医薬組成物であって、該組成物は、CD70に結合する抗原結合領域および被験体において少なくともADC、ADCC、ADCPまたはCDC応答を仲介する少なくとも1つのエフェクタードメインを含む抗体を含有し、該抗体は、治療剤および少なくとも1つの薬学的に適合性のある成分と結合体化しない、組成物。
(項目68)
項目55〜64のうちいずれか1つに記載の抗体を含む容器であって、該抗体は凍結乾燥されている、容器と、
薬学的に許容される希釈液を含む第2の容器と、
を含む、医薬キット。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】1F6のVLおよびVHcDNAおよびアミノ酸配列。1F6の軽鎖(VL、上側の2つのパネル;配列番号11および12)および重鎖(VH、下側の2つのパネル;配列番号1および2)可変領域のコード配列およびアミノ酸配列を決定した。VLおよびVHの相補性決定領域(CDR)を、Kabatら(1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Washington,DC,US Department of Health and Public Services;ChothiaおよびLesk,1987,J.Mol.Biol.196:901−917)に記載の基準に基づいて同定した。CDRに対応するアミノ酸残基には下線を引いている。VLおよびVHのシグナルペプチドは、それぞれ、アミノ残基−20〜0および−19〜0であると同定している。
【図2】2F2のVLおよびVHcDNAおよびアミノ酸配列。2F2の軽鎖(VL、上側の2つのパネル;配列番号31および32)および重鎖(VH、下側の2つのパネル;配列番号21および22)可変領域のコード配列およびアミノ酸配列を決定した。VLおよびVHの相補性決定領域(CDR)を、Kabatら(同上);ChothiaおよびLesk(同上)に記載の基準に基づいて同定した。CDRに対応するアミノ酸残基には下線を引いている。VLおよびVHのシグナルペプチドは、それぞれ、アミノ残基−20〜0および−19〜0であると同定している。
【図3】1F6のCDRと2F2のCDR間のアミノ酸配列の比較(各配列番号16、36、18、38、20、40、6、26、8、28、10および30)。1F6のCDRおよび2F2のCDRのアミノ酸配列を並べている。下線の残基は保存的置換を表わし、枠内にイタリックで示した残基は非保存的(divergent)置換を表わす。
【図4】キメラ1F6発現ベクターpDEF14−1F6。抗体の発現のための発現ベクターの構造を示している。
【図5】キメラ1F6抗CD70抗体は、抗体依存性細胞障害作用(ADCC)を仲介する。Na251CrO4で標識した標的細胞(WIL2−S Bリンパ芽球様細胞、Caki−1腎細胞癌腫細胞、および786−0腎細胞癌腫細胞)をキメラ1F6(c1F6)、マウス1F6(m1F6)、またはヒトIgG(hIgG)で被覆し、エフェクターと標的の割合を1個の標的細胞につきCD16+細胞が30個となるように、末梢血単核細胞(PBMC)と混合した。4時間後、溶解細胞からの上清をシンチレーションカウンタで測定した。特異的溶解率を、{(試験サンプルcpm−自然発生的なcpm)÷(総cpm−自然発生的なcpm)}×100により算出した。点は、3つのサンプルの平均±標準的偏差を表す。
【図6】複数のドナーのPBMCにより認識されたキメラ1F6被覆標的細胞。Na251CrO4で標識したCaki−1腎細胞癌腫細胞を濃度が異なるキメラ1F6または非結合コントロールヒトIgG(hIgG)で被覆し、エフェクターと標的の割合を1個の標的細胞につきCD16+細胞が17個となるように、2人の正常なドナー(2051661およびND016)からのPBMCと混合した。図5に示すように、4時間後に培養上清中のクロム51活性を測定して特異的溶解を評価した。
【図7】キメラ1F6は、リンパ細胞系に対するADCCを仲介する。CD70+Bリンパ芽球様細胞(WIL2−S)および皮膚T細胞性リンパ腫細胞(HH)を、Na251CrO4で標識し、次いで、図示するような各種の濃度でキメラ1F6またはヒトIg(hIgG)と混合した。PBMC含有CD16+細胞を18:1(CD16+細胞:標的)の割合で標的細胞に加え、4時間の培養後、図5に示すように溶解率を判定した。
【図8】キメラ1F6は、CD70+多発性骨髄腫細胞系に対するADCCを仲介する。(A)多発性骨髄腫細胞系によるCD70の発現。L−363、JJN−3、LP−1およびU−266細胞を、マウス抗CD70抗体(白抜きのヒストグラム)または非結合マウスIgGコントロール抗体(黒塗りのヒストグラム)で染色した。抗体結合をFITC結合体化抗マウスIgGにより検出し、フローサイメトリーで細胞を分析した。(B)c1F6のADCC 活性。CD38+/CD138+/CD70+多発性骨髄腫細胞系をNa251CrO4で標識し、次いで、図示するような各種の濃度でキメラ1F6(黒塗りの四角)またはヒトIg(hIgG)(黒塗りの三角)と混合した。PBMCから濃縮されたCD16+細胞を15:1(CD16+細胞:標的)の割合で標的細胞に加え、4時間の培養後、図5に示すように溶解率を判定した。CD16+エフェクター細胞を抗体で前培養してFcγRIII(CD16、白抜きの四角)にすることによりブロックすることによりADCC活性をブロックした。各グラフ内の数字は、QIFIKIT(登録商標)(DakoCytomation,Carpinteria,CA)を用いて測定した各細胞系が発現したCD70分子の数を示す。
【図9】キメラ1F6は、ホジキン病(HD)細胞系に対するADCCを仲介する。CD70+HD細胞系Hs445およびL428をNa251CrO4で標識し、次いで、図示するような濃度でキメラ1F6またはヒトIg(hIgG)と混合した。PBMC含有CD16+細胞を18:1(CD16+細胞:標的)の割合で標的細胞に加え、4時間の培養後、図5に示すように溶解率を判定した。各グラフ内の数字は、QIFIKIT(登録商標)(DakoCytomation,Carpinteria,CA)を用いて測定した各細胞系が発現したCD70分子の数を示す。
【図10】抗原に特異的なT細胞拡大中に誘導されたCD70。正常なHLA−A0201ドナーからのPBMCを、インフルエンザウイルスマトリックスタンパク質に由来するM1ペプチドで刺激した。(A)およびBは、M1ペプチドで5日間刺激した後拡大するCD8+/Vβ17+上の特異的なCD70の誘導の代表例を示す。CD8+/Vβ17−細胞またはCD8+/Vβ17+細胞上でのコントロールIgG(白抜きの曲線)と抗CD70 mAb(黒塗りの曲線)の結合を示す。
【図11】抗原に特異的なCD8+/Vβl7+細胞の低減に関するc1F6の用量応答比較。図10に示したように、正常なHLA−A0201ドナーからのPBMCをM1ペプチドで刺激した。ペプチドで刺激した培養物を未処理のままにしておくか、または図示するように、無関係なコントロールmAb、マウス抗CD70抗体(m1F6)もしくは段階的な量のキメラ抗CD70抗体(c1F6)を加えると同時に培養を開始した。9日後のCD8+/Vβ17+細胞の割合をフローサイメトリーで判定した。
【図12】キメラ1F6は、CD70+B細胞における補体依存性細胞毒性作用を仲介する。CD70+リンパ芽球性NHL系(MHH−PREB−1)、EBV−バーキット性リンパ腫系(MC116)、リンパ芽球様B細胞系(WIL2−S)、および多発性骨髄腫細胞系(LP−1)を、10%の正常なヒト血清の存在下で、図示した段階的な量の抗体により培養した。MHH−PREB−1、MC116およびWIL2−Sに関しては、50μg/mL、5μg/mL、0.5μg/mL、および0.05μg/mLで抗体を用いる一方、LP−1に関しては、50μg/mL、10μg/mL、2μg/mL、および0.4μg/mLで抗体を用いた。ヒトIgG(hIgG)を非結合陰性コントロール抗体として用いた。細胞溶解をフローサイメトリーで検出したDNA染料(ヨウ化プロピジウム)に対する細胞膜浸透力により評価した。培地のみの背景細胞溶解を減算して特異的細胞溶解を得た。
【図13】キメラ1F6は、CD70+T細胞中の補体依存性細胞毒性作用を仲介する。CD70+皮膚T細胞性リンパ腫系HHおよびCD70+活性化正常T細胞系(C9D)のc1F6仲介CDCを図12に示すように評価した。
【図14】キメラ1F6は、CD70+細胞に対する抗体依存性細胞食作用(ADCP)を仲介する。CD70+リンパ芽球様細胞(WIL2−S)を緑色蛍光細胞膜染料(PKH67)で標識し、段階的な量のc1F6で処理し、次いで、単球由来のマクロファージと混合した。2時間後、混合物をPE結合体化抗CD11b抗体と共に培養し、マクロファージ表面を標識した。マクロファージによる抗体被覆標的細胞の取り込みを、緑色および赤色二重蛍光細胞のフローサイトメトリー分析により判定した。蛍光顕微鏡検査のためらに、CD11b+細胞をAlexa Fluor(登録商標)568ヤギ抗マウスIgGでさらに染色し、赤色シグナルを増強させた。(A)WIL2−S細胞をコントロール抗体(hIgG1)またはc1F6で処理し、マクロファージと混合した。抗体で覆われた標的細胞を摂取した(マクロファージ全体の)食作用細胞の割合を右上の象限に示す。(B)WIL2−S細胞を、段階的な量のc1F6(三角)または非結合コントロールIg(hIgG1、円)で処理し、標的細胞を摂取した食作用細胞の割合をフローサイメトリーにより判定した。
【図15】キメラ1F6は、複数のCD70+細胞標的に対するADCPを仲介する。図15に示すように、図示したCD70+リンパ腫、多発性骨髄腫、および腎細胞癌腫細胞系を、キメラ1F6仲介ADCPアッセイの標的として用いた。キメラ1F6の濃度が飽和時の特異的ADCP活性率を一覧にしている。
【図16】CD70+異種移植リンパ腫モデルにおけるc1F6のインビボ抗腫瘍活性。薬物処置の一日前に、SCIDマウス(n=10/群)の静脈内に1×106Ramos細胞またはIM−9細胞を接種した。キメラ1F6の単回投与を1mg/kgまたは4mg/kgで行ない、非結合コントロール抗体(IgG)の単回投与を4mg/kgで行なった。生存状況を監視し、P値で示すように、処置群間の相違をログランクテストを用いて比較した。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(発明の詳細な説明)
本発明は、CD70結合剤を提供し、さらには、そのような結合剤を、CD70を発現する癌および免疫障害の予防または処置のために使用する方法を提供する。CD70結合剤は、CD70に結合するドメイン(例えば、細胞外ドメイン)およびエフェクタードメインを含む。本発明者らは、治療剤と結合体化しない場合、エフェクタードメインを有するCD70結合剤がCD70を発現する細胞に対する細胞毒性作用、細胞静止作用または免疫抑制作用を誘導することができることを見出した。例えば、細胞毒性作用、細胞静止作用または免疫抑制作用は、細胞毒性白血球細胞、例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、食作用細胞(例えば、マクロファージ)および/または血清補体成分を漸増ならびに活性化することにより誘導することができる。
【0025】
1つの局面では、上記方法および組成物は、CD70に結合する抗体および抗体誘導体に関する。例示的な実施形態では、この抗体またはその誘導体は、CD70との結合に関して、モノクローナル抗体1F6または2F2と競合する。細胞毒性作用、細胞静止作用および/または免疫抑制作用は、CD70抗体または誘導体、およびその抗体のエフェクタードメイン(例えば、Fc領域)と相互作用するエフェクター細胞または補体成分によって仲介される。細胞毒性作用、細胞静止作用および/または免疫抑制作用は、CD70を発現する細胞の増殖を低減または阻害する。CD70抗体は、モノクローナル、キメラ、ヒト化およびヒト抗体とすることができる。いくつかの実施形態では、抗体定常領域は、IgGサブタイプである。いくつかの実施形態では、上記抗体は、マウスモノクローナル抗体ではない。
【0026】
他の局面では、上記方法および組成物は、CD70に結合する他のCD70結合剤に関する。CD70結合剤は、CD70の細胞外ドメインに結合する。細胞毒性作用、細胞静止作用および/または免疫抑制作用は、CD70結合剤、およびエフェクタードメイン(例えば、Fc領域)と相互作用するエフェクター細胞または補体成分により仲介される。細胞毒性作用、細胞静止作用および/または免疫抑制作用は、CD70を発現する細胞の増殖を低減または阻害する。CD70結合剤は、例えば、CD27およびその誘導体とすることができる。
【0027】
(I.定義および略号)
他に定義されない限り、本明細書中において用いるすべての技術的および科学的用語は、記載の方法および組成物に関連する当業者によって一般的に理解されるものを意味する。本明細書中において用いる下記の用語および語句は、他に明記しない限り、それらに与えられた意味を有する。
【0028】
本明細書中において用いる「阻害する」または「阻害」という用語は、測定可能な量だけ減少させること、または完全に妨げることを意味する。
【0029】
本明細書中において用いる「CD70結合剤」という用語は、抗CD70抗体、抗CD70抗体の誘導体、またはCD70の細胞外ドメインもしくはその一部等に結合する他の物質を意味する。
【0030】
「治療剤」とは、癌細胞または活性化免疫細胞に細胞毒性作用、細胞静止作用または免疫抑制作用を及ぼす物質である。
【0031】
「細胞毒性作用」とは、標的細胞の低減、除去および/または殺傷を指す。「細胞毒性剤」とは、細胞に対する細胞毒性作用を有する物質を指す。
【0032】
「細胞静止作用」とは、細胞増殖の阻害を指す。「細胞静止剤」とは、細胞(または細胞の特定の部分集合)に対して細胞静止作用を有することにより、細胞(または細胞の特定の部分集合)の成長および/または拡大を阻害する物質を指す。
【0033】
CD70結合剤のCD70を発現する細胞に対する作用に関連する場合、「低減する」という用語は、CD70発現細胞の減少または除去を指す。
【0034】
本明細書中において用いる「免疫抑制剤」という用語は、免疫応答の発達または維持を阻害する物質を指す。そのような阻害は、例えば、免疫細胞(例えば、TまたはBリンパ球)の除去;他の細胞の機能的能力を調節(例えば、ダウンレギュレート)することができる免疫細胞の誘導または発生;免疫細胞における非応答状態の誘導(例えば、アネルギー);または免疫細胞により発現されたタンパク質のパターンの改変等、それら細胞の活性または機能の向上、低下または変更(例えば、サイトカイン、ケモカイン、成長因子、転写因子、キナーゼ、共刺激分子または他の細胞表面受容体等のあるクラスの分子の産生および/または分泌の改変)により行うことができる。典型的な実施形態では、免疫抑制剤は、免疫応答を促進する免疫細胞に対する細胞毒性作用または細胞静止作用を有する。
【0035】
本明細書中において用いる「免疫細胞」とは、免疫応答の制御に関わる造血系の細胞を指す。典型的な実施形態では、免疫細胞は、Tリンパ球、Bリンパ球、NK細胞、単球/マクロファージ、または樹状細胞である。
【0036】
「ポリペプチド」という用語は、アミノ酸のポリマーまたはその等価物を指し、特定の長さの産物を意味しない;よって、「ペプチド」および「タンパク質」は、ポリペプチドの定義に含まれる。また、本明細書中において定義する「抗体」もポリペプチドの定義に含まれる。「ポリペプチド領域」とは、ポリペプチドのセグメントを指し、このセグメントは、例えば、1つ以上のドメインまたはモチーフを含んでもよい(例えば、抗体のポリペプチド領域は、例えば、1つ以上の相補性決定領域(CDR)を含んでもよい)。「フラグメント」という用語は、典型的にポリペプチドの少なくとも連続する20個、または少なくとも連続する50個のアミノ酸を有する部分を指す。「誘導体」とは、第2のポリペプチドに対して1つ以上の非保存的または保存的アミノ酸置換を有するポリペプチドもしくはそのフラグメント;または、例えば、異種ポリペプチドの結合もしくはグリコシル化、アセチル化、リン酸化等、第2の分子の共有結合により改変されるポリペプチドもしくはそのフラグメントである。例えば、「誘導体」の定義には、アミノ酸(例えば、非天然アミノ酸等)の1つ以上の類似体を有するポリペプチド、非置換の結合を有するポリペプチド、ならびに天然および非天然のものを含む当該分野で公知の他の改変も含まれる。
【0037】
本明細書中において用いる「抗体」という用語は、(a)免疫グロブリンポリペプチドおよび免疫グロブリンの免疫活性部分(すなわち、特定の抗原(例えば、CD70)に免疫特異的に結合する抗原結合部位を含む免疫グロブリンファミリーのポリペプチドもしくはそのフラグメント)、または(b)抗原(例えば、CD70)に免疫特異的に結合するそのような免疫グロブリンポリペプチドもしくはフラグメントの保存的に置換された誘導体を指す。抗体は、例えば、HarlowおよびLane,Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988)において一般に記載されている。
【0038】
上記で定義した免疫グロブリンポリペプチドまたはそのフラグメントに関連する場合、「保存的に置換」とは、免疫グロブリンポリペプチドまたはそのフラグメントの抗原に対する(例えばKDにより測定される)特異的結合を実質的に減少させない1つ以上のアミノ酸の置換(すなわち、ELISA等の標準的な結合アッセイによる判定で結合を増加させる置換、結合を顕著に変化させない置換、または約40%以下、典型的には約30%以下、より典型的には約20%以下、さらにより典型的には約10%以下、または最も典型的には約5%以下だけ結合を減少させる置換)を意味する。
【0039】
本明細書中において用いる「抗体誘導体」とは、例えば、上記で定義したように、異種ポリペプチドの結合、または通常は抗体に関連しないグリコシル化、アシル化もしくはリン酸化等、異種分子の共有結合により改変される抗体を指す。いくつかの実施形態では、異種分子は治療剤ではない。いくつかの実施形態では、異種分子は、それ自身では細胞静止作用または細胞毒性作用を示さない。
【0040】
「モノクローナル抗体」という用語は、真核もしくは原核細胞クローン、またはファージクローンを含む単一の細胞クローンに由来する抗体を指し、それを生成した方法を意味するものではない。よって、本明細書中において用いる「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術により生成される抗体に限定されない。
【0041】
ポリペプチドに関連する場合、「異種」という用語は、他のポリペプチドとは起源(例えば、細胞、組織、生物または種)が異なるため、それら2つのポリペプチドが異なることを意味する。典型的には、異種ポリペプチドは、種が異なるものである。
【0042】
CD70結合剤に関連する場合、本明細書中において用いられる「機能的」という用語は、結合剤が(1)CD70に結合可能であり、かつ(2)細胞毒性もしくは細胞静止剤と結合体化することなく、CD70を発現する細胞の増殖を低減もしくは阻害するか、または免疫抑制剤と結合体化することなく、免疫細胞に対する免疫抑制効果を有することを示す。
【0043】
本明細書中において用いられる「抗体エフェクター機能」またはAECは、IgのFcエフェクタードメイン(例えば、免疫グロブリンのFc領域)によって導かれる機能を指
す。このような機能は、例えば、Fcエフェクタードメインを、食作用または溶解活性を有する免疫細胞上のFc受容体に結合するか、またはFcエフェクタードメインを、補体系の成分に結合することにより行なうことができる。典型的には、Fc結合細胞または補体成分により仲介される作用により、CD70の標的となる細胞が阻害および/または低減する。
【0044】
「抗体依存性細胞障害作用」またはADCCとは、抗体で覆われた標的細胞(すなわち、抗体が結合した細胞)と溶解活性を有する免疫細胞(エフェクター細胞とも呼ばれる)
との相互作用に依存する細胞死を誘導するメカニズムである。このようなエフェクター細胞としては、ナチュラルキラー細胞、単球/マクロファージおよび好中球が挙げられる。ADCCは、腫瘍細胞に結合した抗体のFc領域と、好中球、マクロファージおよびナチュラルキラー細胞等の免疫エフェクター細胞上のFcγ受容体、特に、FcγRIおよびFcγRIIIとの相互作用により誘発される。腫瘍細胞は、仲介するエフェクター細胞の種類に応じて、食作用または溶解により除去される。抗体で覆われた標的細胞の死は、エフェクター細胞活性の結果生じる。
【0045】
「抗体依存性細胞食作用」またはADCPとは、抗体で覆われた細胞の全体または一部が免疫グロブリンFc領域に結合する食作用免疫細胞(例えば、マクロファージ、好中球および樹状細胞)により吸収されるプロセスを指す。
【0046】
「補体依存性細胞毒性作用」またはCDCとは、細胞死を誘導するメカニズムであって、標的結合抗体のFcエフェクタードメインが一連の酵素反応を活性させ、結果的に標的細胞膜に穴を形成するメカニズムを指す。典型的には、抗原/抗体複合体、例えば、抗体で覆われた標的細胞上の抗原/抗体複合体は補体成分C1qを結合しそして活性化させ、それにより補体カスケードを活性化することで標的細胞死をもたらす。また、補体の活性化により、白血球上の補体受容体(例えば、CR3)を結合することでADCCを促進する補体成分を標的細胞表面上に堆積し得る。
【0047】
2つ以上の核酸またはポリペプチド配列に関連する場合、「同一」または「同一性パーセント」という用語は、比較し、そして最大対応のために配置したときに同じであるか、または同じヌクレオチドまたはアミノ酸残基を特定の割合で有する2つ以上の配列または副配列を指す。同一性パーセントを決定するために、配列を最適な比較目的のために配置する(例えば、第1のアミノ酸または核酸配列と第2のアミノ酸または核酸配列とを最適に配置した配列にギャップを導入することができる)。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列における位置に、第2の配列において対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドがある場合、当該位置の両分子は同一である。これら2つの配列間の同一性パーセントは、配列が共有する同一である位置の数の関数である(すなわち、同一%=同一位置の数/位置(例えば、重複する位置)の総数×100)。いくつかの実施形態では、これら2つの配列は同じ長さである。
【0048】
2つの核酸またはポリペプチドに関連する場合、「実質的に同一」という用語は、(例えば、下記の方法のうちの1つを用いて判定したときに)少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、または少なくとも65%の同一性;典型的には少なくとも70%または少なくとも75%の同一性;より典型的には少なくとも80%または少なくとも85%の同一性;およびさらにより典型的には少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の同一性を有する2つ以上の配列または副配列を指す。
【0049】
2つ以上のポリペプチド配列に関連する場合、「類似性」または「類似性パーセント」とは、比較し、そして最大対応のために配置し、下記の方法のうちの1つを用いて測定したときに、同じであるか、または保存的に置換されたアミノ酸残基を特定の割合で有する2つ以上の配列または副配列を指す。例えば、第1のアミノ酸配列に含まれるアミノ酸の数と同数のアミノ酸を比較した場合、または、例えば、下記の方法のうちの1つによって配置したポリペプチドの配置と比較した場合、第1のアミノ酸配列が第2のアミノ酸配列と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、90%または95%同一であるか、または保存的に置換されているときに、第1のアミノ酸配列が第2のアミノ酸配列と類似すると考えることができる。
【0050】
ポリペプチド配列に関連する場合、「実質的な類似性」または「実質的に類似する」という用語は、参照配列に対して、ポリペプチド領域が少なくとも70%、典型的には少なくとも80%、より典型的には少なくとも85%、または少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列類似性を有する配列を持つことを示す。例えば、あるポリペプチドは、第2のポリペプチドとは、例えば、それら2つのペプチドが1つ以上の保存的な置換により異なる場合に実質的に類似する。
【0051】
抗CD70抗体またはその誘導体に関連する場合、抗CD70抗体の1つ以上の抗原結合領域(例えば、重鎖もしくは軽鎖可変領域、または重鎖もしくは軽鎖CDR)と実質的に同一または実質的に類似する1つ以上のポリペプチド領域を有するタンパク質は、当該分野で公知または本明細書中において言及する各種の標準的なイムノアッセイのいずれかを用いて判定したときに、抗CD70抗体により認識されるCD70のエピトープに対する特異的結合を保持する。
【0052】
2つの配列間の同一性パーセントまたは類似性パーセントの判定は、数学的アルゴリズムを用いて達成することができる。2つの配列の比較に利用することが好ましく、かつ非限定的な数学的アルゴリズムの例としては、KarlinおよびAltschul,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5877において改変されたKarlinおよびAltschul,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264−2268のアルゴリズムがある。このようなアルゴリズムは、Altschulら,1990,J.Mol.Biol.215:403−410のNBLASTおよびXBLASTプログラムに組み込まれる。BLASTによるヌクレオチド検索では、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12を用いて当該タンパク質をコードする核酸と相同性を有するヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTによるタンパク質検索では、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて当該タンパク質と相同性を有するアミノ酸配列を得ることができる。比較目的でギャップアライメントを得るために、Altschulら,1997,Nucleic Acids Res.25:3389−3402に記載のとおりにギャップBLASTを利用することができる。あるいは、PSI−Blastを用いて、分子間の距離関係を検出する反復検索を行なうことができる(同上)。BLAST、ギャップBLAST、およびPSI−Blastプログラムを利用する場合、各プログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)の初期値パラメーターを用いることができる。配列の比較に利用することが好ましく、かつ非限定的な数学的アルゴリズムの他の例として、MyersおよびMiller,CABIOS(1989)のアルゴリズムがある。このようなアルゴリズムは、GCG配列アライメントソソフトウエアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれる。ALIGNプログラムをアミノ酸配列の比較に利用する場合、PAM120重量残基表、ギャップ長ペナルティー12、およびギャップペナルティー4を用いることができる。配列分析のためのさらなるアルゴリズムは当該分野で公知であり、TorellisおよびRobotti,1994,Comput.Appl.Biosci.10:3−5に記載のADVANCEおよびADAM;ならびにPearsonおよびLipman,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.85:2444−8に記載のFASTAが挙げられる。FASTAでは、ktupが検索の感度と速度を設定するコントロールオプションである。ktup=2の場合、比較している2つの配列内の類似する領域は、並べた残基対を見ることにより見つけることができ;ktup=1の場合には、一列に並べたアミノ酸を調べる。ktupは、タンパク配列については2もしくは1に、またはDNA配列については1〜6に設定することができる。ktupを特定しない場合、初期値は、タンパク質については2であり、DNAについては6である。
【0053】
あるいは、タンパク質配列アライメントは、Higginsら,1996,Methods Enzymol.266:383−402に記載のCLUSTAL Wアルゴリズムを用いて実施してもよい。
【0054】
本明細書中において用いる「予防」または「予防する」という用語は、CD70を発現する癌または免疫障害の臨床的または診断的症状が発症する前に、抗CD70抗体もしくは誘導体または他の結合剤を被験体に投与(例えば、CD70を発現する癌または免疫障害を患う素因があるか、またはその危険性が高い人に投与)し、(a)CD70を発現する癌もしくは免疫障害の発病もしくは発症、またはそれらの1つ以上の臨床的または診断的症状を阻止するため、(b)CD70を発現する癌または免疫障害の発症の程度を抑制するため、または(c)CD70を発現する癌または免疫障害の発症の可能性を低くくすることを指す。
【0055】
本明細書中において用いる「処置」または「処置する」という用語は、CD70を発現する癌または免疫障害の臨床的または診断的症状の発症後のいずれかの臨床病期に、抗CD70抗体もしくはその誘導体または他の結合剤を被験体に投与することにより、病気の臨床または診断的症状が明らかに減少するか、またはなくなるような、被験体におけるCD70を発現する癌または免疫障害の進行を遅延、停止または後退させることを指す。処置としては、例えば、症状の重症度、症状の数または再発頻度の減少が挙げられる。
【0056】
本明細書中において用いる「薬学的に許容される」という用語は、米国連邦政府または州政府の規制機関により承認されているか、または米国薬局方もしくは動物、より特定的にはヒトへの使用に関して一般に認識されている他の薬局方に挙げられていることを意味する。「薬学的に適合性のある成分」とは、抗CD70結合剤とともに投与される薬学的に許容される希釈剤、アジュバント、賦形剤または基剤を指す。
【0057】
「効果的な量」という用語は、被験体における発病の阻害またはCD70を発現する癌もしくは免疫障害の1つ以上の臨床的もしくは診断的症状の改善に十分な抗体まもしくは誘導体または他の結合剤の量を指す。効果的な量の物質は、本明細書中に記載の方法に従って「効果的な投薬計画」で投与される。「効果的な投薬計画」という用語は、CD70を発現する癌または免疫障害の処置または予防の達成に十分な薬量および投与頻度の組合せを指す。
【0058】
(II.抗CD70抗体およびその誘導体)
本明細書中に記載の方法および組成物は、CD70に特異的に結合し、CD70を発現する癌細胞または活性化免疫細胞に細胞毒性作用、細胞静止作用または免疫抑制作用を及ぼすCD70結合剤の使用を含む。CD70結合剤は、例えば、抗CD70抗体、抗CD70抗体の抗原結合フラグメント、その誘導体、または他のCD70結合剤とすることができる。CD70結合剤は、CD70を発現する標的細胞に対するADC、ADCC、ADCPおよび/またはCDC応答を仲介または刺激する抗体エフェクタードメイン機能を含む。エフェクタードメインは、例えば、Ig分子のFc領域とすることができる。CD70結合剤は、CD70を発現する癌細胞に細胞毒性作用もしくは細胞静止作用を及ぼすか、または活性化リンパ球もしくは樹状細胞に細胞毒性作用、細胞静止作用、または免疫抑制作用を及ぼして、それぞれ、CD70を発現する癌または免疫障害を処置する。典型的には、CD70結合剤は、細胞毒性白血球細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、食作用細胞(例えば、マクロファージ)、および/または血清補体成分)を補充およ
び/または活性化する。いくつかの実施形態では、CD70結合剤は、モノクローナル抗体(mAb)1F6もしくは2F2またはその誘導体である。他の実施形態では、抗CD70抗体またはその誘導体は、CD70に対する結合に関して、モノクローナル抗体1F6または2F2と競合する。いくつかの実施形態では、CD70結合剤は、CD70に結合する際に、作動的(agonistic)シグナルまたは非作動的(antagonistic)シグナルを誘導しない。
【0059】
抗CD70抗体は、典型的には、モノクローナル抗体であるかまたはモノクローナル抗体に由来するものであり、例えば、キメラ(例えば、ヒト定常領域またはマウス可変領域を有する)、ヒト化もしくは完全なヒト抗体;単鎖抗体;マキシボディ(maxibody)、ミニボディ(minibody)、抗原結合領域等を含むようにすることができる。抗体分子は、細胞毒性白血球細胞および/または血清補体成分と機能的に相互作用を行ない、それらを活性化することが可能な少なくとも1つのエフェクタードメインを含む。いくつかの実施形態では、CD70抗原結合領域は、例えば、免疫グロブリンのヒンジ−CH2−CH3ドメイン等の1つもしくは複数のエフェクタードメイン、またはエフェクター機能を有するエフェクタードメインの一部もしくはフラグメントと連結することができる。例えば、単鎖抗体を含む抗原結合抗体フラグメントは、可変領域を、エフェクタードメインの全体または一部(例えば、CH2および/またはCH3ドメインのみ、またはCH1、ヒンジおよび/またはCLドメインとの組み合わせ)と組み合わせて含むように
することができる。また、抗原結合フラグメントは、エフェクタードメインのいずれの組み合わせも含むようにすることができる。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体は、ヒンジ−CH2−CH3ドメインと連結したCD70結合可変領域を含む単鎖抗体とすることができる。
【0060】
典型的には、抗体は、エフェクター機能を仲介することができる特異的なIgイソタイプのヒトまたはヒト以外(例えば、げっ歯類(マウスまたはラット等))、ロバ、ヒツジ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ウマまたはニワトリ)を起源とする。本明細書中において用いる「ヒトの」抗体としては、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体が挙げられ、さらに、下記および、例えば、米国特許第5,939,598号および6,111,166号に記載のように、ヒト免疫グロブリンライブラリーから、ヒトB細胞から、または1つ以上のヒト免疫グロブリンについてのトランスジェニック動物から単離された抗体が挙げられる。
【0061】
抗体のエフェクタードメインは、あらゆる適切な脊椎動物種およびイソタイプに由来するようにすることができる。異なる動物種からのイソタイプは、エフェクター機能を仲介する能力が異なる。例えば、ヒト免疫グロブリンのCDCおよびADCC/ADCPを仲介する能力は、一般に、それぞれ、IgM=IgG1=IgG3>IgG2>IgG4およびIgG1=IgG3>IgG2/IgM/IgG4の順である。マウス免疫グロブリンは、CDCおよびADCC/ADCPを、一般に、それぞれ、マウスIgM=IgG3>>IgG2b>IgG2a>>IgG1およびIgG2b>IgGa>IgG1>>IgG3の順に仲介する。他の例では、マウスIgG2aがADCCを仲介する一方、マウスIgG2aおよびIgMはともにCDCを仲介する。いくつかの実施形態では、CD70結合剤は、抗体の可変ドメインおよびエフェクタードメインからなる。他の実施形態では、CD70結合剤は、本質的に、抗体の可変ドメインおよびエフェクタードメインからなり、治療剤ではない付加的な化合物をさらに含むようにすることができる。CD70結合ポリペプチドも、適切な定常ドメインからなる組換え融合タンパク質として発現し、所望のエフェクター機能を生じることができる。
【0062】
標的細胞に結合すると、抗体または誘導体は、エフェクタードメイン(例えば、Fcドメイン)により仲介されたエフェクター機能を介して、インビトロおよびインビボで、標
的細胞破壊を誘発し得る。特定の理論に限定することを意図しないが、抗体のFc領域は、Fc受容体(FcR)を発現する細胞を補充し、それらを抗体で覆われた標的細胞と並置し得る。FcγRIII(CD16)、FcγRII(CD32)およびFcγRIII(CD64)を含むIgGについて表面FcRを発現する細胞は、IgGで覆われた細胞の破壊のためにエフェクター細胞として作用し得る。このようなエフェクター細胞としては、単球、マクロファージ、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球および好酸球が挙げられる。IgGによるFcγRの関与は、抗体依存性細胞障害作用(ADCC)または抗体依存性細胞食作用(ADCP)を活性化する。ADCCが膜孔形成タンパク質およびプロテアーゼの分泌を介してCD16+エフェクター細胞により仲介される一方、食作用はCD32+およびCD64+エフェクター細胞により仲介される(Fundamental Immunology,4th ed.,Paul ed.,Lippincott−Raven,N.Y.,1997,Chapters 3,17および30;Uchidaら,2004,J.Exp.Med.199:1659−69;Akewanlopら,2001,Cancer Res.61:4061−65;Watanabeら,1999,Breast Cancer Res.Treat.53:199−207参照)。ADCCおよびADCPに加えて、細胞結合抗体のFc領域はまた、補体古典経路を活性化し、補体依存性細胞毒性作用(CDC)を引き出し得る。補体系のC1qは、抗原と複合体化した抗体のFc領域に結合する。C1qの細胞結合抗体との結合により、C4およびC2のタンパク質分解活性を伴う順次的な事象が開始され、C3転換酵素が発生し得る。C3転換酵素によるC3のC3bへの分裂により、C5b、C6、C7、C8およびC9を含む末端補体成分の活性化が可能になる。これらのタンパク質は、集合的に、抗体で覆われた細胞上に細胞膜障害複合体孔を形成する。これらの孔は細胞膜の完全性を破壊し、標的細胞を殺傷する(Immunobiology,6th ed.,Janewayら,Garland Science,N.Y.,2005,Chapter 2参照)。
【0063】
抗体は、単一特異性、二重特異性、三重特異性、またはそれ以上の多重特異性とすることができる。多重特異性抗体は、CD70の異なるエピトープに対して特異的、かつ/またはCD70および異種タンパク質の両方に特異的であってもよい(例えば、PCT公開公報WO93/17715、WO92/08802、WO91/00360およびWO92/05793;Tuttら,1991,J.Immunol.147:60−69;米国特許第4,474,893号;同第4,714,681号;同第4,925,648号;同第5,573,920号;および同第5,601,819号;Kostelnyら,1992,J.Immunol.148:1547−1553参照。)本明細書中に記載の方法を実施するために有用な二重特異性および三重特異性抗体を含む多重特異性抗体は、CD70(モノクローナル抗体2F2および1F6のCDRを有する抗体を含むがそれらに限定されない)、ならびにCD16/FcgRIII、CD64/FcgRI、キラー阻害もしくは活性受容体、または補体コントロールタンパク質CD59などのADCC、食作用および/またはCDCを仲介する第2の細胞表面受容体もしくは受容体複合体の両方に免疫特異的に結合する抗体である。典型的な実施形態では、多重特異性抗体の部分と、第2の細胞表面分子または受容体複合体との結合により、抗CD70抗体または他のCD70結合剤のエフェクター機能が向上する。
【0064】
1つの局面では、抗CD70抗体は、モノクローナル抗体1F6の1つ以上の相補性決定領域(CDR)と実質的に同一または実質的に類似する1つ以上のCDRを含む(表1参照)。例えば、抗体は、mAb 1F6の対応する重鎖CDR(H1領域、H2領域もしくはH3領域)または対応する軽鎖CDR(L1領域、L2領域もしくはL3領域)(それぞれ配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号16、配列番号18または配列番号20)と実質的に同一または実質的に類似する重鎖CDRおよび/または軽鎖CDRを含むようにすることができる。典型的な実施形態では、抗CD70抗体は、mAb 1F6の対応する重鎖および/または軽鎖CDRと実質的に同一または実質的に類似する2つもしくは3つの重鎖CDRおよび/または2つもしくは3つの軽鎖CDRを有する。特定の実施形態では、1F6の重鎖または軽鎖CDRと実質的に同一または実質的に類似するCDRは、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号16、配列番号18または配列番号20に示すアミノ酸配列を有する。
【0065】
例えば、いくつかの実施形態では、抗CD70抗体がmAb 1F6の重鎖CDRと実質的に同一または実質的に類似する少なくとも1つの重鎖CDRを有する場合、この抗体またはその誘導体は、mAb 1F6の軽鎖CDRと実質的に同一または実質的に類似する少なくとも1つの軽鎖CDRをさらに含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、抗CD70抗体は、(a)mAb 1F6の対応するCDRと実質的に同一または実質的に類似する3つのCDRを1組と、(b)4つのフレームワーク領域を1組有する重鎖または軽鎖可変ドメインを含む。例えば、抗CD70抗体は、(a)モノクローナル抗体1F6に由来する3つのCDRを1組と、(b)IgGタイプの4つのフレームワーク領域を1組有する重鎖または軽鎖可変ドメインを含むようにすることができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、抗CD70抗体はキメラ抗体である。キメラ抗体は、例えば、マウスのモノクローナル抗体に由来する可変領域およびヒトIgG免疫グロブリン定常領域を有する抗体等、抗体の異なる部分が異なる動物種に由来する分子である。キメラ抗体を作る方法は当該分野で公知である。(例えば、Morrison,Science,1985,229:1202;Oiら,1986,BioTechniques 4:214;Gilliesら,1989,J.Immunol.Methods 125:191−202;米国特許第5,807,715号、同4,816,567号および同第4,816,397号参照。)
例示的な実施形態では、抗CD70抗体は、mAb 1F6の重鎖可変領域と実質的に同一または実質的に類似する(すなわち、配列番号2に示すアミノ酸配列と実質的に同一または実質的に類似する、表1参照)重鎖可変領域、および/またはmAb 1F6の軽鎖可変領域と実質的に同一または実質的に類似する(すなわち、配列番号12に示すアミノ酸配列と実質的に同一または実質的に類似する、表1参照)軽鎖可変領域を含むキメラ抗体である。例えば、この抗体は、配列番号2に示すアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含むようにすることができ、任意に、配列番号12に示すアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域をさらに含むようにすることができる。重鎖および軽鎖抗体定常領域は、IgGタイプである。例示的な実施形態では、抗CD70抗体は、キメラIgG mAb 1F6である。
【0068】
いくつかの実施形態では、抗CD70抗体は、モノクローナル抗体2F2の1つ以上のCDRと実質的に同一または実質的に類似する1つ以上のCDRを含むキメラ抗体である(表1参照)。例えば、この抗体は、対応する重鎖CDR(H1領域、H2領域もしくはH3領域)またはmAb 2F2の対応する軽鎖CDR(L1領域、L2領域もしくはL3領域)と実質的に同一または実質的に類似する重鎖CDRおよび/または軽鎖CDR(配列番号26、配列番号28;配列番号30;配列番号36、配列番号38または配列番号40)を含むようにすることができる。典型的な実施形態では、抗CD70抗体は、mAb 2F2の対応する重鎖および/または軽鎖CDRと実質的に同一または実質的に類似する2つもしくは3つの重鎖CDRおよび/または2つもしくは3つの軽鎖CDRを有する。特定の実施形態では、2F2の重鎖または軽鎖CDRと実質的に同一または実質的に類似するCDRは、配列番号26、配列番号28、配列番号30;配列番号36、配列番号38、または配列番号40に示すアミノ酸配列を有する。
【0069】
例えば、いくつかの実施形態では、抗CD70抗体がmAb 2F2の重鎖CDRと実質的に同一または実質的に類似する少なくとも1つの重鎖CDRを有する場合、この抗体またはその誘導体は、mAb 2F2の軽鎖CDRと実質的に同一または実質的に類似する少なくとも1つの軽鎖CDRをさらに含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、抗CD70抗体は、(a)mAb 2F2の対応するCDRと実質的に同一または実質的に類似する3つのCDRを1組と、(b)4つのフレームワーク領域を1組有する重鎖または軽鎖可変ドメインを含む。例えば、抗CD70抗体は、(a)モノクローナル抗体2F2に由来する3つのCDRを1組と、(b)IgGタイプの4つのフレームワーク領域を1組有する重鎖または軽鎖の可変ドメインを含むようにすることができる。例示的な実施形態では、抗CD70抗体は、キメラIgG mAb 2F2である。
【0071】
1つの実施形態では、抗CD70抗体は、mAb 2F2の重鎖可変領域と実質的に同一または実質的に類似する(すなわち、配列番号22に示すアミノ酸配列と実質的に同一または実質的に類似する、表1参照)重鎖可変領域、および/またはmAb 2F2の軽鎖可変領域と実質的に同一または実質的に類似する(すなわち、配列番号32に示すアミノ酸配列と実質的に同一または実質的に類似する、表1参照)軽鎖可変領域を含む。例えば、この抗体は、配列番号22に示すアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含むようにすることができ、任意に、配列番号32に示すアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域をさらに含むようにすることができる。1つの例示的な実施形態では、抗CD70抗体はmAb 2F2である。
【0072】
いくつかの実施形態では、上記抗体は、1F6 VHおよび2F2 VL、または1F6 VHおよび2F2 VLを含む。
【0073】
以下の表は、各配列番号が対応する1F6または2F2の領域を示す。
【0074】
(表1)
【0075】
【表1−1】
【0076】
【表1−2】
【0077】
【表1−3】
【0078】
【表1−4】
抗CD70抗体およびその誘導体、ならびに他の結合剤は、CD70に対する結合親和性に関して記載または特定してもよい。典型的な結合親和性としては、5×10−2M、10−2M、5×10−3M、10−3M、5×10−4M、10−4M、5×10−5M、10−5M、5×10−6M、10−6M、5×10−7M、10−7M、5×10−8M、10−8M、5×10−9M、10−9M、5×10−10M、10−10M、5×10−11M、10−11M、5×10−12M、10−12M、5×10−13M、10−13M、5×10−14M、10−14M、5×10−15Mまたは10−15M未満の解離定数またはKdを有するものが挙げられる。
【0079】
上記抗体は、当該分野で公知の方法により生成することができる。例えば、モノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ技術、組換え技術およびファージディスプレイ技術の使用またはそれらの組合せを含む多種多様な技術を用いて調製することができる。ハイブリドーマ技術は、例えば、Harlowら,Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.,1988);およびHammerlingら,In Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas,pp.563−681(Elsevier,N.Y.,1981)において一般に議論されている。抗CD70抗体を作るために用いることができるファージディスプレイ技術の例としては、例えば、(HoogenboomおよびWinter,1991,J.Mol.Biol.227:381;Marksら,1991,J.Mol.Biol.222:581;QuanおよびCarter,2002,The rise of
monoclonal antibodies as therapeutics in Anti−IgE and Allergic Disease,JardieuおよびFick Jr.編,Marcel Dekker,New York,NY,Chapter 20,pp.427−469;Brinkmanら,1995,J.Immunol.Methods 182:41−50;Amesら,1995,J.Immunol.Methods 184:177−186;Kettleboroughら,1994,Eur.J.Immunol.24:952−958;Persicら,1997,Gene 187:9−18;Burtonら,1994,Advances in
Immunology 57:191−280;PCT出願番号PCT/GB91/01134;PCT公開公報WO90/02809、WO91/10737、WO92/01047、WO92/18619、WO93/11236、WO95/15982、WO95/20401、および米国特許第5,698,426号、同第5,223,409号、同第5,403,484号、同第5,580,717号、同第5,427,908号、同第5,750,753号、同第5,821,047号、同第5,571,698号、同第5,427,908号、同第5,516,637号、同第5,780,225号、同第5,658,727号、同第5,733,743号および同第5,969,108号(これらの開示内容は本明細書中において参考として援用する)に開示されたものが挙げられる。
【0080】
単鎖抗体を作るために用いることができる技術の例としては、米国特許第4,946,778号および同第5,258,498号;Hustonら,1991,Methods
in Enzymology 203:46−88;Shuら,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:7995−7999;およびSkerraら,1988,Science 240:1038−1040が挙げられる。
【0081】
二重特異性抗体を作製する方法は当該分野で公知である。二重特異性抗体の全長は、伝統的には、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の同時発現に基づいて作られる(例えば、Milsteinら,1983,Nature 305:537−39参照)。免疫グロブリン重鎖および軽鎖の任意組み合わせにより、これらのハイブリ
ドーマ(クアドローマ)は、10個の異なる抗体分子の潜在的混合物を作り、それらのう
ち1つだけが正しい二重特異性構造を有する。同様の手順が国際公開公報WO93/08829、およびTrauneckerら,1991、EMBO J.10:3655−59に開示されている。
【0082】
異なるアプローチに従って、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体−抗原結合部位)を免疫グロブリン定常ドメイン配列と融合させる。ヒンジ、CH2、およびCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの融合が好ましい。いくつかの実施形態では、上記融合物は、少なくとも1つの融合物に存在する、軽鎖結合に必要な部位を有する第1の重鎖定常領域(CH1)を含む。免疫グロブリン重鎖融合物および、所望であれば、免疫グロブリン軽鎖をコードする配列を有する核酸を、個別の発現ベクターに挿入し、適切な宿主生物に同時トランスフェクションする。これによって、構成物内で用いる割合が不均一な3つのポリペプチド鎖により最適収量が得られる場合、実施形態における3つのポリペプチドフラグメントの相互比率の調整が著しく柔軟になる。しかしながら、同じ割合の少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現により高収量になる場合、またはその割合が特に重要でない場合、3つのポリペプチド鎖のうち2つまたはそれら全てをコードする配列を1つの発現ベクターに挿入することが可能である。
【0083】
このアプローチの1つの実施形態では、二重特異性抗体は、1つの腕に第1の結合特異性を有し、他方の腕に(第2の結合特異性をもたらす)ハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖対を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖を有する。この非対称構造により、所望の二重特異性化合物を不要な免疫グロブリン鎖の組み合わせから分離することが容易となるが、これは二重特異性分子の半分にしか存在しない免疫グロブリン軽鎖が分離を容易にするためである(例えば、本明細書中においてその全てを参考として援用する国際公開公報WO94/04690参照)。
【0084】
二重特異性抗体についてのさらなる考察に関しては、例えば、Sureshら,1986,Methods in Enzymology 121:210;Rodriguesら,1993,J.Immunology 151:6954−61;Carterら,1992,Bio/Technology 10:163−67;Carterら,1995,J.Hematotherapy 4:463−70;Merchantら,1998,Nature Biotechnology 16:677−81を参照されたい。このような技術を用いることにより、本明細書中において定義するような病気の処置または予防に使用する二重特異性抗体を調製することができる。
【0085】
欧州特許公報EPA 0 105 360号には二官能性抗体も記載されている。この参考文献に開示されているように、ハイブリッドまたは二官能性抗体は、生物学的に、すなわち、細胞融合技術によって、または化学的に、特に架橋剤もしくはジスルフィド架橋形成剤を用いることによって導出することができ、抗体全体またはそのフラグメントを含み得る。このようなハイブリッド抗体を得る方法は、例えば、国際公開公報WO83/03679および欧州特許公報EPA 0 217 577に開示されており、これらの両方を本明細書中において参考として援用する。
【0086】
抗CD70抗体はまた、ヒト化抗体とすることもできる。ヒト化抗体は、所望の抗原を結合し、非ヒト種に由来する1つ以上のCDR、ならびにヒト免疫グロブリン分子に由来するフレームワークおよび定常領域を有する抗体分子である。ヒトのフレームワーク領域内のフレームワーク残基は、抗原結合を変更、好ましくは改善するために、CDRドナー抗体の対応する残基と置換されることが多い。これらフレームワーク置換は、当該分野で周知の方法、例えば、CDRとフレームワーク残基の相互作用の設計により、特定の位置の異常なフレームワーク残基を同定する抗原結合および配列の比較に重要なフレームワーク残基を同定することにより同定される(例えば、Queenら,米国特許第5,585,089号;Reichmannら,1988,Nature 332:323参照)。例えば、CDRグラフト化(CDR grafting)(例えば、EP 0 239 400;PCT公開公報WO91/09967;米国特許第5,225,539号;同第5,530,101号;および同第5,585,089号参照)、上張り(veneering)または表面の変更(resurfacing)(EP 0 592 106;EP 0 519 596;Padlan,Molecular Immunology,1991,28(4/5):489−498;Studnickaら,1994,Protein Engineering 7(6):805−814;Roguskaら,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.91:969−973)およびチェインシャッフリング(chain shuffling)(例えば、米国特許第5,565,332号参照)(これら参考文献の全てを本明細書中において参考として援用する)を含む当該分野で公知の各種の技術を用いて抗体をヒト化することができる。
【0087】
例えば、国際公開公報WO87/02671;欧州特許公報第0 184 187号;欧州特許公報第0 171 496号;欧州特許公報第0 173 494号;国際公開公報WO86/01533;米国特許第4,816,567号;欧州特許公報第0 012 023号;Berterら,1988,Science 240:1041−43;Liuら,1987,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:3439−43;Liuら,1987,J.Immunol.139:3521−26;Sunら,1987,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:214−18;Nishimuraら,1987,Cancer.Res.47:999−1005;Woodら,1985,Nature 314:446−449;ならびにShawら,1988,J.Natl.Cancer Inst.80:1553−59;Morrison,1985,Science 229:1202−07;Oiら,1986,BioTechniques 4:214;米国特許第5,225,539号;Jonesら,1986,Nature 321:552−25;Verhoeyanら,1988,Science 239:1534;およびBeidlerら,1988,J.Immunol.141:4053−60(これら各々の全てを本明細書中において参考として援用する)に記載される方法を用いて、当該分野で公知の組換えDNA技術によりヒト化モノクローナル抗体を作ることができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、抗CD70抗体はヒトIgG抗体である。ヒト抗体は、例えば、ヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体ライブラリーを用いたファージディスプレイ法(上記参照)を含む当該分野で公知の各種方法により作ることができる。例えば、米国特許第4,444,887号および4,716,111号;ならびにPCT公開公報WO98/46645、WO98/50433、WO98/24893、WO98/16654、WO96/34096、WO96/33735、およびWO91/10741(これらの開示内容は本明細書中において参考として援用する)も参照されたい。また、選択したエピトープを認識するヒト抗体は、選択した非ヒトモノクローナル抗体、例えば、マウス抗体を用いて同じエピトープを認識する完全なヒト抗体の選択を誘導する「誘導選択(guided selection)」と称される技術を用いて生成することができる(例えば、Jespersら,1994,Bio/technology 12:899−903参照)。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現するトランスジェニックマウスを用いて作ることもできる。抗原に対するモノクローナル抗体は、慣用ハイブリドーマ技術を用いて、免疫化されたトランスジェニックマウスから得ることができる。このヒト抗体を作る技術の概略については、LonbergおよびHuszar,1995,Int.Rev.Immunol.13:65−93を参照されたい。このヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体を作る技術、ならびにそのような抗体を作るための手順の詳細な考察については、例えば、PCT公開公報WO98/24893;WO92/01047;WO96/34096;WO96/33735;欧州特許第0 598 877号;米国特許第5,413,923号、同第5,625,126号、同5,633,425号、同第5,569,825号、同第5,661,016号、同第5,545,806号、同第5,814,318号、同第5,885,793号、同第5,916,771号および同第5,939,598号(これらの開示内容は本明細書中において参考として援用する)を参照されたい。
【0089】
また、Abgenix,Inc.(Fremont,Ca)、Genpharm(San Jose,CA)、およびMedarex(Princeton,NJ)等の企業は、上記の技術と同様の技術を用いて、選択した抗原に対するヒト抗体を提供するように契約ことができる。内因性免疫グロブリン重鎖および軽鎖遺伝子を発現することができないが、ヒトの重鎖および軽鎖遺伝子を発現することができるトランスジェニックマウスを用いて完全なヒト抗体を作ることができる。トランスジェニックマウスは、選択した抗原、例えば、本発明のポリペプチドの全てまたは一部を用いて通常の方法で免疫化される。抗原に対するモノクローナル抗体は、慣用ハイブリドーマ技術を用いて得ることができる。トランスジェニックマウスが保有するヒト免疫グロブリントランス遺伝子は、B細胞の分化中に再構成され、その後、クラスの変更(class switching)および体細胞変異が行なわれる。よって、このような技術を用いることにより、治療上有用なIgG、IgA、IgMおよびIgE抗体を作ることができる。このヒト抗体を作る技術の概要については、LonbergおよびHuszar(1995,Int.Rev.Immunol.13:65−93)を参照されたい。このヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体を作る技術、ならびにそのような抗体を作る手順のより詳細な考察については、例えば、米国特許第5,625,126号;同第5,633,425;同第5,569,825;同第5,661,016号;同第5,545,806号(これら各々の全てを本明細書中において参考として援用する)参照。
【0090】
上記のように、CD70結合剤は、抗CD70抗体の誘導体とすることができる。一般に、抗CD70誘導体は、抗CD70抗体(抗原結合フラグメントまたは保存的に置換されたポリペプチドを含む)、および抗CD70抗体とは異種の少なくとも1つのポリペプチド領域または他の部分を含む。例えば、抗体誘導体が抗原結合領域もしくはそれに由来する領域を介してCD70に特異的に結合すること、またはエフェクタードメインがFc受容体を特異的に結合することを妨げないように、例えば、任意の種の分子の共有結合により、抗CD70抗体を改変することができる。典型的な改変としては、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質分解切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質との結合等が挙げられる。特異的化学切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝的合成等を含むがこれらに限定されない公知技術により、多数の化学的改変のうちのいずれかを行ってもよい。
【0091】
いくつかの実施形態では、上記抗体誘導体は、CD70に特異的に結合する多量体(例えば、ホモダイマー)を形成するように、例えば、各々が(i)抗CD70抗体の抗原結合領域、またはそれに由来するポリペプチド領域(例えば、1つ以上のアミノ酸の保存的置換によるもの等)、および(ii)多量体化(例えば二量体化)ポリペプチド領域を有する1つ以上のモノマーを含む二量体等の多量体である。典型的な実施形態では、抗CD70抗体の抗原結合領域またはそれに由来するポリペプチド領域は、二量体化または多量体化ドメインを含む異種タンパク質と、組換えによってまたは化学的に融合する。免疫障害またはCD70を発現する癌を処置または予防する目的で被験体に抗体誘導体を投与する前に、当該誘導体をホモダイマーまたはヘテロダイマーの形成を可能とする条件に供する。本明細書中において用いるヘテロダイマーは、同一の二量体化ドメインおよび異なるCD70抗原結合領域、同一のCD70抗原結合領域および異なる二量体化ドメイン、または異なるCD70抗原結合領域および異なる二量体化ドメインを含んでもよい。
【0092】
典型的な二量体化ドメインは、転写因子から生じる二量体化ドメインである。1つの実施形態では、二量体化ドメインは、塩基性領域ロイシンジッパー(「bZIP」)の二量体化ドメインである(Vinsonら,1989,Science 246:911−916参照)。有用なロイシンジッパードメインとしては、例えば、酵母転写因子GCN4、哺乳類転写因子CCAAT/エンハンサー結合タンパク質C/EBP、ならびに癌遺伝子産物FosおよびJun中の核形質転換のロイシンジッパードメインが挙げられる。(Landschultzら,1988,Science 240:1759−64;BaxevanisおよびVinson,1993,Curr.Op.Gen.Devel.3:278−285;O’Sheaら,1989,Science 243:538−542参照。)他の実施形態では、二量体化ドメインは、塩基性領域ヘリックス−ループ−ヘリックス(「bHLH」)タンパク質の二量体化ドメインである。(Murreら,1989,Cell 56:777−783を参照されたい。また、Davisら,1990,Cell 60:733−746;VoronovaおよびBaltimore,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:4722−4726も参照されたい。)特に有用なhHLHタンパク質は、myc、maxおよびmacである。
【0093】
さらに他の実施形態では、二量体化ドメインは、例えば、重鎖定常領域(例えば、CH1ドメイン、CH2ドメインおよび/またはCH3ドメイン)等の免疫グロブリン定常領域またはそのドメインである。(例えば、米国特許第5,155,027号、同第5,336,603号、同第5,359,046号および同第5,349,053号;EP 0
367 166;WO96/04388参照。)
ヘテロダイマーは、FosとJunとの間(Bohmannら,1987,Science 238:1386−1392)、ATF/CREBファミリーのメンバー間(Haiら,1989,Genes Dev.3:2083−2090)、C/EBPファミリーのメンバー間(Caoら,1991,Genes Dev.5:1538−52;Williamsら,1991,Genes Dev.5:1553−67;Romanら,1990,Genes Dev.4:1404−15)、およびATF/CREBファミリーのメンバーとFos/Junファミリーのメンバーとの間(HaiおよびCurran,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:3720−24)に形成されることが知られている。それゆえ、CD70結合タンパク質を、異なる二量体化ドメインを含むヘテロダイマーとして被験体に投与する場合、前記のいかなる組合せを用いてもよい。
【0094】
他の実施形態では、抗CD70抗体誘導体は、第2の抗体と結合体化した抗CD70抗体(「抗体ヘテロ結合体」)である(米国特許第4,676,980号参照)。本方法を実施するために有用なヘテロ結合体は、CD70に結合する抗体(例えば、モノクローナル抗体2F2または1F6のCDRおよび/または重鎖を有する抗体)、およびCD16/FcgRIII、CD64/FcgRI、キラー細胞活性化受容体もしくは阻害受容体、または補体コントロールタンパク質CD59等の表面受容体もしくは受容体複合体に結合する抗体を含む。典型的な実施形態では、多重特異性抗体の部分と第2の細胞表面分子または受容体複合体との結合により、抗CD70抗体のエフェクター機能が向上する。
【0095】
いくつかの実施形態では、抗CD70抗体またはその誘導体は、競合結合の判定に関して当該分野で公知のいずれかの方法(例えば、本明細書中に記載のイムノアッセイ等)により判定されるように、mAb 1F6または2F2とCD70との結合を競合的に阻害する。典型的な実施形態では、上記抗体は、1F6または2F2とCD70との結合を、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%または少なくとも75%だけ競合的に阻害する。他の実施形態では、上記抗体は、1F6または2F2とCD70との結合を、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%だけ競合的に阻害する。
【0096】
抗体は、CD70との特異的な結合について、各種の公知の方法のうちのいずれかにより分析することができる。使用可能なイムノアッセイとしては、例えば、ウエスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合イムノソルベントアッセイ)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体固定アッセイ、免疫放射測定アッセイ、蛍光イムノアッセイ、およびプロテインAイムノアッセイ等の技術を用いた競合または非競合アッセイ系が挙げられる。このようなアッセイは、当該分野では慣習的に行なわれており、周知である。(例えば、Ausubelら編,Short Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons,Inc.,New York,4th ed.1999);Harlow and Lane,Using Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1999参照。)
さらに、抗体のCD70との結合親和性および抗体CD70相互作用のオフレート(off−rate)は、競合結合アッセイにより判定することができる。競合結合アッセイの一例としては、増量した非標識CD70の存在下で、標識CD70(例えば、3Hまたは125I)と、着目する抗体とをインキュベートすること、および標識CD70に結合した抗体を検出することを含むラジオイムノアッセイが挙げられる。次いで、CD70に対する抗体の親和性および結合オフレートを、スカッチャードプロット分析によるデータから判定することができる。また、二次抗体(例えば、mAb 1F6または2F2等)との競合を、ラジオイムノアッセイを用いて判定することもできる。例えば、増量した非標識の二次抗体が存在する中で、CD70と、標識化合物(例えば、3Hまたは125I)と結合体化させた着目抗体とをインキュベートする。あるいは、CD70に対する抗体の結合親和性、ならびに抗体−CD70相互作用のオンレート(on−rate)およびオフレートを、表面プラスモン共鳴により判定することができる。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体またはその誘導体を標的とし、CD70を発現する細胞の膜上に蓄積することができる。
【0097】
本方法に有用な抗CD70抗体およびその誘導体は、タンパク質の合成について当該分野で公知の方法、典型的には、例えば、組換え体発現技術により作ることができる。CD70に結合し、CD70を発現する細胞の増殖を低下または阻害する抗体またはその誘導体の組換え体発現は、当該抗体またはその誘導体をコードする核酸を含む発現ベクターの構築を必要とする。タンパク質分子産生用ベクターを、当該分野で公知の技術を用いた組換えDNA技術により作ってもよい。例えば、組換え核酸法、核酸合成、細胞培養、トランスジーンの組み込み、および組換えタンパク質の発現のために、SambrookおよびRussel,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,3rd ed.,2001);Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory
Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,2nd ed.,1989);Short Protocols in Molecular Biology(Ausubelら,John Wiley and Sons,New York,4th
ed.,1999);ならびにGlickおよびPasternak,Molecular Biotechnology:Principles and Applications of Recombinant DNA(ASM Press,Washington,D.C.,2nd ed.,1998)に記載された技術等、標準的な技術を用いることができる。
【0098】
例えば、抗CD70抗体の組換え発現のために、発現ベクターは、プロモーターに作動可能に結合させた重鎖もしくは軽鎖または重鎖もしくは軽鎖可変ドメインをコードしてもよい。例えば、発現ベクターは、抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列(例えば、PCT公開公報WO86/05807;PCT公開公報WO89/01036;および米国特許第5,122,464号参照)を含んでもよく、抗体の可変ドメインは、全重鎖または軽鎖の発現用ベクターにクローン化してもよい。発現ベクターを、慣用技術により宿主細胞に移入し、次いで、導入した細胞を慣用技術により培養して抗CD70抗体を産生する。典型的な実施形態では、二本鎖抗体の発現のために、重鎖および軽鎖をともにコードするベクターを、全免疫グロブリン分子の発現用宿主細胞中で共発現させることができる。
【0099】
各種の原核および真核宿主発現ベクター系を利用して抗CD70抗体またはその誘導体を発現させることができる。典型的には、特に、組換え抗CD70抗体分子全体について、組換えタンパク質の発現のために真核細胞が用いられる。例えば、ヒトのサイトメガロウイルスに由来する主要中間初期遺伝子プロモーターエレメント等のベクターと組み合わせたチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)等の哺乳類細胞は、抗CD70抗体およびその誘導体の産生のための効果的な発現系である(例えば、Foeckingら,1986,Gene 45:101;Cockettら,1990,Bio/Tcchnology 8:2参照)。
【0100】
例えば、他の宿主発現系としては、細菌細胞におけるプラスミドに基づいた発現系(例えば、Rutherら,1983,EMBO 1,2:1791;InouyeおよびInouye,1985,Nucleic Acids Res.13:3101−3109;Van HeekeおよびShuster,1989,J.Biol.Chem.24:5503−5509参照);Spodoptera frugiperda細胞におけるAutographa californica核多角体病ウイルス(AcNPV)発現ベクターの使用等の昆虫系;および、例えば、アデノウイルスに基づいた系等の哺乳類細胞におけるウイルスに基づいた発現系(例えば、LoganおよびShenk,1984,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:355−359;Bittnerら,1987,Methods in Enzymol.153:51−544参照)が挙げられる。
【0101】
また、挿入した配列の発現を調節するか、または遺伝子産物を所望の特定の様式で改変およびプロセシングする宿主細胞株を選択することができる。適切な細胞系または宿主系を選択して、発現したタンパク質の正確な改変およびプロセシング(例えば、グリコシル化、リン酸化および切断)を確実に行なうことができる。この目的のために、一次転写物および遺伝子産物の適切なプロセシングのための細胞装置を有する真核宿主細胞を用いることができる。そのような哺乳類宿主細胞としては、例えば、CHO、VERO、BHK、HeLa、COS、MDCK、293、3T3およびW138が挙げられる。
【0102】
安定した発現系は、典型的には、組換え抗CD70抗体またはその誘導体の長期的、高収率の産生に用いられる。例えば、抗CD70抗体またはその誘導体を安定して発現する細胞系は、適切な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位)および選択マーカーにより制御されるDNAを用いて宿主細胞を形質転換し、その後、形質転換細胞を選択培地で成長させることにより操作することができる。選択マーカーは、選択に対する耐性を付与し、細胞がそれらの染色体にDNAを安定して組み込み、増殖して細胞増殖巣(focus)を形成することを可能にし、次に、その細胞増殖巣をクローン化し、細胞系へと発展させることができる。例えば、それぞれ、tk−、hgprt−またはaprt−細胞において用いることができる単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼおよびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子を含む多くの選択系を用いることができる。また、メトトレキセートに対する耐性を付与するdhfr;ミコフェノール酸に対する耐性を付与するgpt;アミノグリコシドG−418に対する耐性を付与するneo;およびハイグロマイシンに対する耐性を付与するhygro等の遺伝子の選択の基準として代謝拮抗物質耐性を用いることができる。組換えDNA技術の分野で一般に知られる方法を通常通りに用いて所望の組換えクローンを選択することができ、そのような方法は、例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編,John Wiley and Sons,N.Y.,1993);Kriegler,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual(Stockton Press,N.Y.,1990);Current Protocols in
Human Genetics(Dracopoliら編,John Wiley and Sons,N.Y.,1994,Chapters 12および13);ならびにColberre−Garapinら,1981,J.Mol.Biol.150:1に記載されている。
【0103】
抗体または誘導体の発現量は、ベクター増幅により高めることができる。(例えば、一般に、BebbingtonおよびHentschel,The Use of Vectors Based on Gene Amplification for the
Expression of Cloned Genes in Mammalian
Cells in DNA Cloning,Vol.3(Academic Press,New York,1987)を参照されたい。)抗CD70抗体またはその誘導体を発現するベクター系におけるマーカーが増幅可能な場合、宿主細胞培養培地に存在する阻害剤の量を増加させることで、該阻害剤に対する耐性を付与するマーカー遺伝子のコピー数が増加した宿主細胞が選択される。関連抗体遺伝子のコピー数も増加し、それにより抗体またはその誘導体の発現が増加する(Crouseら,1983,Mol.Cell.Biol.3:257参照。)
抗CD70抗体が重鎖および軽鎖の両方またはその誘導体を含む場合、重鎖タンパク質をコードする第1のベクター、および軽鎖タンパク質をコードする第2のベクターの2つの発現ベクターで宿主細胞を同時遺伝子導入してもよい。これら2つのベクターは、重鎖および軽鎖タンパク質を等しく発現することができる同一の選択マーカーを含んでもよい。あるいは、重鎖および軽鎖タンパク質の両方をコードし、発現することが可能な単一のベクターを用いてもよい。そのような場合、典型的には、軽鎖は、毒性を有する遊離重鎖が過剰になることを避けるために重鎖の前に配置される(Proudfoot,1986,Nature 322:52;Kohler,1980,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:2197参照)。重鎖および軽鎖のコード配列は、cDNAまたはゲノムDNAを含んでもよい。
【0104】
(例えば、動物、化学合成または組換え体発現により)抗CD70抗体またはその誘導体が作られると、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換またはアフィニティークロマトグラフィー(例えば、インタクトなFc領域を有する抗体の精製用プロテインAクロマトグラフィー等))、遠心分離、溶解度差、またはタンパク質精製のための任意の他の標準的技術等、タンパク質精製のための任意の適切な方法により、当該抗CD70抗体または誘導体を精製することができる。抗CD70抗体またはその誘導体は、例えば、ペプチド等のマーカー配列と融合させることにより、アフィニティークロマトグラフィーによる精製を容易にすることができる。適切なマーカーアミノ酸配列としては、例えば、pQEベクター(QIAGEN,Inc.,Chatsworth,CA,91311)に設けられたタグ、およびインフルエンザヘマグルチニンタンパク質に由来するエピトープに対応する「HA」タグ(Wilsonら,1984,Cell 37:767)および「flag」タグ等のヘキサ−ヒスチジンペプチドが挙げられる。
【0105】
抗CD70抗体またはその誘導体が作られると、CD70を発現する癌細胞に対する細胞静止もしくは細胞毒性作用またはCD70を発現する免疫細胞に対する免疫抑制作用を及ぼす能力を下記または当該分野で公知の方法により判定する。
【0106】
活性化免疫細胞またはCD70を発現する癌細胞外において抗CD70抗体の活性を最小化するために、細胞膜結合CD70に特異的に結合するが、可溶性CD70には結合しない抗体を用いて、抗CD70抗体が活性化免疫細胞またはCD70を発現する癌細胞の細胞表面に濃縮されるようにすることができる。
【0107】
典型的には、抗CD70抗体または誘導体は実質的に精製されている(例えば、その効果を限定するか、または望ましくない副作用を生じる物質を実質的に含まない)。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体または誘導体は、少なくとも約40%純粋、少なくとも約50%純粋、または少なくとも約60%純粋である。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体または誘導体は、少なくとも約60〜65%、65〜70%、70〜75%、75〜80%、80〜85%、85〜90%、90〜95%、または95〜98%純粋である。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体または誘導体は概ね99%純粋である。
【0108】
(III.他のCD70結合剤)
さらに、CD70結合剤は、融合タンパク質(典型的には少なくとも10個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個または少なくとも100個のアミノ酸の異種タンパク質に組換え融合または化学的に結合体化(すなわち、共有結合および非共有結合の両方の結合体化を含む)させたタンパク質)が挙げられる。このようなCD70結合剤は、CD70および免疫グロブリンエフェクタードメインもしくはその機能的等価物に結合する部分を含む。本明細書中において用いられるように、免疫グロブリンエフェクタードメインの機能的等価物は、食作用もしくは溶解活性またはFcエフェクタードメインと補体系成分との結合により、免疫細胞上のFc受容体に結合する。融合タンパク質は、必ずしも直接的である必要はなく、リンカー配列を介して発生してもよい。
【0109】
例えば、CD70結合剤は、インフレームの抗CD70抗体の1つ以上のCDRのコード領域と、異種タンパク質をコードする配列とを融合させて組換えにより作ることができる。異種タンパク質は、エフェクタードメインまたはその機能的等価物を含んでおり、以下の特徴のうち1つ以上を提供し得る:安定した発現の促進;高収率の組換え発現を容易にする手段の提供;および/または多量体ドメインの提供。
【0110】
いくつかの実施形態では、CD70結合剤は、CD70に結合し、細胞毒性剤との結合体化を伴わない、CD70を発現する細胞単独での増殖を低減または阻害する抗体に由来する1つ以上のCDRを含むようにすることができる。
【0111】
1つの局面では、CD70結合剤は、CD27、およびCD70に結合する改変体またはそのフラグメントを含むようにすることができる。CD70結合剤は、CD70に特異的に結合するペプチド、リガンドおよび他の分子をさらに含むようにすることができる。
【0112】
CD70結合剤は、タンパク質−タンパク質相互作用のスクリーニングに適した任意の方法を用いて同定することができる。典型的には、まず、CD70に特異的に結合する能力でタンパク質を同定する。そのような結合タンパク質については、細胞毒性白血球細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞)、食作用細胞(例えば、マクロファージ)、および血清補体成分を、細胞毒性または細胞静止剤と結合体化することなく補充および活性化することにより活性化リンパ球またはCD70を発現する癌細胞に細胞静止作用または細胞毒性作用を及ぼす能力、または免疫抑制剤と結合体化することなく、それら自体により、免疫細胞に免疫抑制作用を及ぼす能力を判定することができる。使用可能な伝統的方法としては、λgt11ライブラリーの抗体検査技術と類似する方法で、標識CD70を用いた発現ライブラリーの検査を伴う「相互作用クローニング」技術がある。例示のためで限定するものではないが、これは以下のように達成することができる:CD70(またはその1F6もしくは2F2結合ドメイン)をコードするcDNAクローンのC末端を心臓筋肉キナーゼ(HMK)用のリン酸化部位に挿入することにより改変する(例えば、Blanar およびRutter,1992,Science 256:1014−1018参照)。この組換えタンパク質を大腸菌で発現し、GDPアフィニティーカラムで均一になるまで精製し(Ederyら,1988,Gene 74:517−525)、γ32P−ATPおよびウシ心臓筋肉キナーゼ(Sigma)を用いて、1×108cpm/μgの比活性まで標識し、これを用いて「ファーウェスタンアッセイ」(BlanarおよびRutter,1992,Science 256:1014−1018)によりヒト胎盤λgt11 cDNAライブラリーをスクリーニングする。CD70プローブと相互作用するプラークを単離する。陽性λプラークのcDNA挿入物を遊離し、pBluescript KS(Stratagene,La Jolla,CA)等、配列決定に適したベクターにサブクローニングする。
【0113】
タンパク質相互作用をインビボで検出する方法の1つが2ハイブリッドシステムである。このシステムの1つに関しては、説明がなされており(Chienら,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:9578−82)、Clontech(Palo Alto,CA)から市販されている。
【0114】
CD70結合タンパク質が同定されると、(単独で、または多量体化させた場合もしくは二量体化または多量体化ドメインと融合させた場合に)CD70を発現する癌細胞に対する細胞静止または細胞毒性作用、またはCD70を発現する免疫細胞に対する免疫抑制作用を及ぼす能力について下記の方法により判定することができる。
【0115】
(IV.抗CD70標的化剤のエフェクター機能を改善する方法)
いくつかの実施形態では、CD70結合剤のエフェクター機能は、当該分野で公知の1つ以上の抗体操作アプローチを用いてエフェクター機能を改善することにより増大することができる。このようなアプローチについて、非限定的な例を下記に例示する。
【0116】
ADCCおよびADCPは、細胞結合抗体と、エフェクター細胞上で発現したFcγ受容体(FcγR)の相互作用を介して仲介される。IgG Fc領域のグリコシル化状態および一次アミノ酸配列はともに、Fcγ−FcγR相互作用について機能的な効果を有する。より強力なFcγ−FcγR相互作用は、エフェクター細胞によるより良好な標的細胞の殺傷と関連する。
【0117】
保存的Asn297と共有結合したオリゴ糖は、IgGのFc領域がFcγRに結合するために必要である(Lundら,1996,J.Immunol.157:4963−69;WrightおよびMorrison、1997,Trends Biotechnol.15:26−31)。このIgG上の糖形態を操作することにより、IgG仲介ADCCを大幅に改善することができる。二分N−アセチルグルコサミン改変をこの糖形態に付加すること(Umanaら,1999,Nat.Biotechnol.17:176−180;Daviesら,2001,Biotech.Bioeng.74:288−94)、またはフコースをこの糖形態から除去すること(Shieldsら,2002,J.Biol.Chem.277:26733−40;Shinkawaら,2003,J.Biol.Chem.278:6591−604;Niwaら,2004,Cancer Res.64:2127−33)は、IgG FcとFcγRとの間の結合を改善することにより、Ig仲介ADCC活性を向上させるIgG Fc操作の2つの例である。
【0118】
ヒトのIgG1 Fc領域において、溶媒に曝されたアミノ酸を体系的に置換することにより、FcγR結合親和性が変化したIgG改変体が生成された(Shieldsら,2001,J.Biol Chem.276:6591−604)。親IgG1と比較して、Thr256/Ser298、Ser298/Glu333、Ser298/Lys334、またはSer298/Glu333/Lys334からAlaが置換されたこれら改変体の部分集合は、FcγRに対する結合親和性およびADCC活性の両方において増加を示した(Shieldsら,2001,J.Biol.Chem.276:6591−604;Okazakiら,2004,J.Mol.Biol.336:1239−49)。
【0119】
抗体仲介CDCは、Clqと細胞結合IgG分子との結合により開始される。Clq結合およびClq結合の種特異的差異の原因となるヒトIgG1上の特定のアミノ酸残基が報告されている(Idusogieら,2000,J.Immunol.164:4178−4184)。抗体の補体固定活性は、Lys326およびGlu333の置換により改善されており;これは、例えば、このような置換が、ヒトIgG1抗体リツキシマブのClq結合およびCDC活性の両方を改善することができるためである(Idusogieら,2001,J.Immunol.166:2571−2575)。ヒトIgG2骨格上で同じ置換を行なうことにより、Clqにうまく結合しておらず、補体活性化活性が著しく不足した抗体イソタイプを、Clqに結合するとともにCDCを仲介することができる抗体に変換することができる(Idusogieら,2001,J.Immunol.166:2571−75)。他にもいくつかの方法が抗体の補体固定活性を改善するために適用されている。例えば、IgMの18−アミノ酸カルボキシル末端尾部をIgGのカルボキシル末端にグラフティングすることにより、それらのCDC活性が大きく向上する。これは、通常は検出可能なCDC活性を有さないIgG4でも観察される(Smithら,1995,J.Immunol.154:2226−36)。また、IgG1重鎖のカルボキシ末端付近に位置するSer444をCysと置換することにより、IgG1の尾部と尾部との二量化を誘導し、単量体IgG1に対して、CDC活性が200倍に増加した(Shopesら,1992,J.Immunol.148:2918−22)。また、Clqに対する特異性を有する二重特異性抗体構築物もまたCDC活性を与える(Kontermannら,1997,Nat.Biotech.15:629−31)。
【0120】
抗体のインビボ半減期もまた、そのエフェクター機能に影響を与えることがある。いくつかの実施形態では、抗体の半減期を増減し、その治療活性を変更することが望ましい。FcRnは、β2−ミクログロブリンと非共有結合するMHCクラスI抗原と同様の構造をした受容体である。FcRnは、IgGの異化作用およびそれらの組織間のトランスサイトーシスを調節する(GhetieおよびWard,2000,Annu.Rev.Immunol.18:739−766;GhetieおよびWard,2002,Immunol.Res.25:97−113)。IgG−FcRn相互作用は、pH6.0(細胞内小胞のpH)で発生するが、pH7.4(血液のpH)では発生しない;この相互
作用により、IgGを血液循環に再循環させることが可能になる(GhetieおよびWard,2000,Ann.Rev.Immunol.18:739−766;GhetieおよびWard,2002,Immunol.Res.25:97−113)。FcRn結合に関与するヒトIgG1上の領域がマッピングされている(Shieldsら,2001,J.Biol.Chem.276:6591−604)。ヒトIgG1のPro238、Thr256、Thr307、Gln311、Asp312、Glu380、Glu382、またはAsn434の位置でのアラニン置換により、FcRn結合が向上する(Shieldsら,2001,J.Biol.Chem.276:6591−604)。これらの置換を保有するIgG1分子は、血清半減期がより長いものと予測される。結果、これらの改変IgG1分子は、それらのエフェクター機能を実行することが可能であるため、改変されていないIgG1と比較して、より長い期間治療効果を及ぼすことができる。
【0121】
(V.細胞毒性、細胞静止および免疫抑制活性に関するアッセイ)
抗体が標的細胞に対するエフェクター機能を仲介するか否かを判定する方法は公知である。このような方法について下記に例示する。
【0122】
抗CD70抗体または誘導体が活性化免疫細胞またはCD70を発現する癌細胞に対する抗体依存性細胞障害作用を仲介するか否かを判定するために、抗体およびエフェクター免疫細胞の存在下で標的細胞死を測定するアッセイを用いてもよい。このタイプの細胞毒性を測定するために用いられるアッセイは、エフェクター細胞および標的特異的抗体の存在下での培養後、代謝的に標識された標的細胞からの51Cr放出の判定に基づくようにすることができる(例えば、PerussiaおよびLoza,2000,Methods in Molecular Biology 121:179−92、ならびにCurrent Potocols in Immunologyにおける「51Cr Release Assay of Antibody−Dependent Cell−Mediated Cytotoxicity(ADCC)」、Coliganら編,Wileyand Sons,1993参照)。例えば、Na251CrO4で標識され、5,000細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに入れられた活性化免疫細胞(例えば、活性化リンパ球)またはCD70を発現する癌細胞は、異なる濃度の抗CD70抗体を用いて30分間処理し、次に、正常なヒトの末梢血単核細胞(PBMC)と4時間混合することができる。標的細胞死を伴う膜破壊により、51Crを培養上清中に放出するが、これを回収し、その放射能を細胞毒性活性の測定値として評価してもよい。ADCCを測定する他のアッセイは、非放射性標識を用いるか、または特定の酵素の放出の誘導に基づいてもよい。例えば、時間分解蛍光測定に基づく非放射性アッセイが市販されている(Delphia,Perkin Elmer)。このアッセイでは、細胞膜に浸透し、次いで、加水分解して膜不透過親水性リガンド(TDA)を形成する蛍光増感リガンド(BATDA)のアセトキシメチルエステルを標的細胞に組み込む。TDAは、標的特異的抗体およびPBMCエフェクター細胞と混合されると溶解細胞から放出され、ユーロピウムと混合された場合には高蛍光性キレートを形成することが可能である。時間分解蛍光光度計で測定したシグナルは、細胞溶解量と相関関係にある。
【0123】
抗CD70抗体または誘導体が活性化免疫細胞またはCD70を発現する癌細胞に対する抗体依存性細胞食作用を仲介するか否かを判定するために、エフェクター免疫細胞による標的細胞内在化を測定するアッセイ(例えば、新たに培養されたマクロファージまたは確立されたマクロファージ様細胞系)を用いてもよい(例えば、MunnおよびCheung,1990,J.Exp.Med.172:231−37;Kelerら,2000,J.Immunol.164:5746−52;Akewanlopら,2001,Cancer Res.61:4061−65参照)。例えば、標的細胞を、PKH67(Sigma)等の脂溶性膜染料で標識し、標的特異的抗体で覆い、エフェクター免疫細胞と4〜24時間混合してもよい。次いで、エフェクター細胞を、食作用細胞表面マーカー(例えば、CD14)に特異的な蛍光色素で標識した抗体で対比染色することにより同定し、当該細胞を2色フローサイメトリーまたは蛍光顕微鏡検査法により分析してもよい。二重陽性細胞は、標的細胞を内在化したエフェクター細胞を表す。これらのアッセイについては、エフェクター細胞は、5〜10日間、M−CSFまたはGM−CSFを用いて培養してマクロファージに分化したPBMC由来の単球であってもよい(例えば、MunnおよびCheung,同上参照)。ATCCから利用可能なヒトのマクロファージ様細胞
系U937(Larrickら,1980,J.Immunology 125:6−12)またはTHP−1(Tsuchiyaら,1980,Int.J.Cancer 26:171−76)は、代替的な食作用細胞源として用いてもよい。
【0124】
標的細胞との結合時に抗体が補体依存性細胞毒性作用を仲介するか否かを判定する方法も公知である。CD70結合剤がCDC活性化免疫細胞またはCD70を発現する癌細胞を仲介するか否かを判定するために同じ方法を適用することができる。そのような方法を以下において例示的に説明する。
【0125】
活性補体の源は、正常なヒトの血清であるか、またはウサギを始めとする実験動物から精製することができる。標準的なアッセイでは、補体の存在下で、CD70を発現する活性化免疫細胞(例えば、活性化リンパ球)またはCD70を発現する癌細胞を用いてCD70結合剤を培養する。そのようなCD70結合剤の細胞溶解仲介能力は、いくつかの計測値によって判定することができる。1つの例では、Na51CrO4放出アッセイが用いられる。このアッセイでは、標的細胞はNa51CrO4で標識される。組み込まれていないNa51CrO4を洗い落とし、96ウェルプレートに適切な密度、典型的には、5,000〜50,000細胞/ウェルで細胞を入れる。正常な血清または精製された補体の存在下でCD70結合剤を用いた培養を、典型的には、5%のCO2雰囲気中において37℃で2〜6時間継続する。細胞溶解を示す放出された放射能を、γ線計測により一定分量の培養上清において判定する。組み込まれたNa51CrO4を洗剤(0.5〜1%のNP−40またはTriton X−100)で処理して放出することにより最大細胞溶解を判定する。自然発生的な背景細胞溶解を、CD70結合剤がなく補体のみが存在するウェルで判定する。細胞溶解率を、(CD70結合剤により誘導された溶解−自然発生的な溶解)/最大細胞溶解により算出する。第2の計測値は、代謝染料(例えば、Alamar Blue)の生存細胞分の減少である。このアッセイでは、補体を有し、上記のように培養したCD70結合剤を用いて標的細胞を培養する。培養の最後に、1/10の用量のAlamar Blue(Biosource International,Camarillo,CA)を加える。5%のCO2雰囲気中において37℃で最大16時間培養を継続する。530nmの励起波長および590nmの発光波長を用いた蛍光分析により、代謝的に活性な生存細胞を示すAlamar Blueの減少を判定する。第3の計測値は、ヨウ化プロピジウム(PI)に対する細胞膜浸透力である。補体活性化の結果として原形質膜に孔が形成されることにより、PIが細胞内に侵入し、細胞核内に拡散してDNAに結合することが容易になる。DNAとの結合時に、600nmのPI蛍光が大きく増加する。上記のように、CD70結合剤および補体を用いて標的細胞の処理を行なう。培養の最後に、最終濃度が5μg/mlになるまでPIを加える。次いで、励起用の488nmアルゴンレーザーを用いたフローサイメトリーにより、細胞懸濁液を検査する。溶解細胞は、600nmの蛍光発光で検出される。
【0126】
(VI.免疫障害またはCD70を発現する癌の動物モデル)
抗CD70抗体または誘導体は、免疫障害またはCD70を発現する癌の動物モデルにおいてテストまたは検証することができる。免疫障害またはCD70を発現する癌について確立された多くの動物モデルが当業者に知られており、そのいずれについても抗CD70抗体または誘導体の有効性を検査するために用いることができる。そのようなモデルの非限定的な例を以下に示す。
【0127】
糖尿病、狼瘡、全身性硬化症、シェーグレン症候群、実験的自己免疫脳脊髄炎(多発性硬化症)、甲状腺炎、重症筋無力症、関節炎、ブドウ膜炎、炎症性腸疾患を含む全身性および器官特異的な自己免疫病の動物モデルの例が、The Autoimmune DiseasesにおけるBigazzi,「Animal Models of Autoimmunity:Spontaneous and Induced」(RoseおよびMackay編,Academic Press,1998)、Current Protocols in Immunologyにおける「Animal Models for Autoimmune and Inflammatory Disease」(Coliganら編,Wiley & Sons,1997)、およびMethods
in Molecular Medicine,Vol.102.Autoimmunity:Methods and ProtocolsにおけるPeng,「Experimental Use of Murine Lupus Models」(Perl編,Humana Press Inc.)に記載されている。
【0128】
アレルギー性症状、例えば、喘息および皮膚炎も、げっ歯類においてモデル化することができる。気道過敏症は、オボアルブミンにより(Tomkinsonら,2001,J.Immunol.166:5792−800)またはSchistosoma mansoni卵抗原(Tesciubaら,2001,J.Immunol.167:1996−2003)によってマウス中に誘導することができる。マウスのNc/Nga系は、血清IgEの顕著な増加を示し、アトピー性皮膚炎様病変を自然発生させる(Vestergaardら,2000,Mol.Med.Today 6:209−10;Watanabeら,1997,Int.Immunol.9:461−66;Saskawaら,2001,Int.Arch.Allergy Immunol.126:239−47)。
【0129】
免疫適格ドナーのリンパ球を致死照射組織非適合宿主に注射することは、マウスでGVHDを誘導するための古典的なアプローチである。あるいは、親B6D2F1マウスモデルは、急性および慢性GVHDの両方を誘導するシステムを提供する。このモデルでは、B6D2F1マウスは、C57BL/6およびDBA/2マウスの親系統間交配のF1子孫である。DBA/2リンパ系細胞を非照射B6D2F1マウスに移入することにより、慢性GVHDが引き起こされる一方、C57BL/6、C57BL/10またはB10.D2リンパ系細胞の移入では、急性GVHDが引き起こされる(Slaybackら,2000,Bone Marrow Transpl.26:931−938;Kataokaら,2001,Immunology 103:310−318)。
【0130】
さらに、ヒト造血幹細胞および成熟末梢血液リンパ系細胞はともに、SCIDマウスに植え付けることができ、これらのヒトリンパ−造血細胞は、SCIDマウス中で機能を持ち続ける(McCuneら,1988,Science 241:1632−1639;Kamel−ReidおよびDick,1988,Science 242:1706−1709;Mosierら,1988,Nature 335:256−259)。これは、ヒトリンパ系細胞に対して潜在的な治療剤を直接テストするための小動物モデルシステムを提供している(例えば、Tournoyら,2001,J.Immunol.166:6982−6991参照)。
【0131】
さらに、CD70を発現するヒト腫瘍細胞系を、適切な免疫欠損げっ歯類系、例えば、胸腺欠損ヌードマウスまたはSCIDマウスに移植することにより、体内における抗CD70抗体または誘導体の有効性を調べる小動物モデルを作ることができる。CD70を発現するヒトリンパ腫細胞系の例としては、例えば、Daudi(Ghetieら,1994,Blood 83:1329−36;Ghetieら,1990,Int.J.Cancer 15:481−85;de Montら,2001,Cancer Res.61:7654−59),Ramos(Maら,2002,Leukemia 16:60−6;Pressら,2001,Blood 98:2535−43),HS−Sultan(CattanおよびMaung,1996,Cancer Chemother
Pharmacol.38:548−52;CattanおよびDouglas,1994,Leuk.Res.18:513−22),Raji(Ochakovskayaら,2001,Clin.Cancer Res.7:1505−10;Breistoら,1999,Cancer Res.59:2944−49),およびCA46(Kreitmanら,1999,Int.J.Cancer 81:148−55)が挙げられる。CD70を発現するホジキンリンパ腫系の非限定的な例としては、L540cy(Barthら,2000,Blood 95:3909−14;Wahlら,2002,Cancer Res.62:3736−42)が挙げられる。CD70を発現するヒト腎臓細胞癌腫細胞系の非限定的な例としては、786−O(Ananthら,1999,Cancer Res.59:2210−6;Dattaら,2001,Cancer Res.61:1768−75)、ACHN(Haraら,2001,J.Urol.166:2491−4;Miyakeら,2002,J.Urol.167:2203−8)、Caki−1(Prewettら,1998,Clin.Cancer Res.4:2957−66;ShiおよびSiemann,2002,Br.J.Cancer 87:119−26)ならびにCaki−2(Zellwegerら,2001,Neoplasia 3:360−67)が挙げられる。CD70を発現する上咽頭癌腫細胞系の非限定的な例としては、C15およびC17(Bussonら,1988,Int.J.Cancer 42:599−606;Bernheimら,1993,Cancer
Genet.Cytogenet.66:11−5)が挙げられる。CD70を発現するヒトグリオーマ細胞系の非限定的な例としては、U373(Palmaら,2000,Br.J.Cancer 82:480−7)およびU87MG(Johnsら,2002,Int.J.Cancer 98:398−408)が挙げられる。これらの腫瘍細胞系は、皮下注射による固体腫瘍または静脈内注射による散在性腫瘍のいずれかとして、免疫欠損げっ歯動物宿主中で確立することができる。宿主内で確立されると,これらの腫瘍モデルを適用して、インビボ腫瘍成長の調節について、本明細書中に記載の抗CD70抗体または誘導体の治療有効性を評価することができる。
【0132】
(VII.免疫障害およびCD70を発現する癌)
本明細書中に記載の抗CD70抗体および誘導体は、免疫細胞(例えば、リンパ球または樹状細胞)の不適切な活性化によるCD70の発現を特徴とするCD70を発現する癌または免疫障害の処置または予防に有用である。このようなCD70の発現は、例えば、細胞表面上のCD70タンパク質の増加量および/または発現したCD70の抗原性の変化が原因となり得る。効果的な量の抗CD70抗体または誘導体をその処置または予防を必要とする被験体に投与することにより、当該抗体または誘導体が、(i)CD70を発現し、その病状に関連する活性化免疫細胞に結合し、(ii)その活性化免疫細胞に対して、細胞毒性、細胞静止または免疫抑制剤と結合体化することなく、細胞毒性、細胞静止または免疫抑制効果を及ぼすことにより本明細書中に記載の方法による免疫障害の処置または予防が達成される。
【0133】
免疫細胞の不適切な活性化を特徴とし、本明細書中に記載の方法により処置または予防することができる免疫学的疾患は、例えば、その障害の背後にある過敏性反応のタイプにより分類することができる。これらの反応は、典型的には、アナフィラキシー反応、細胞毒性(細胞分解)反応、免疫複合体反応、または細胞仲介免疫(CMI)反応(遅延タイプの過敏性(DTH)反応ともいう)の4種類に分類される。(例えば、Fundamental Immunology(William E.Paul編,Raven Press,N.Y.,3rd ed.1993)参照。)
そのような免疫障害の具体的な例としては、以下のものが挙げられる:関節リウマチ、自己免疫脱髄疾患(例えば、多発性硬化症、アレルギー性脳髄膜炎)、内分泌眼病、ブドウ膜網膜炎、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、グレーブス病、糸球体腎炎、自己免疫肝臓病,炎症性腸疾患(例えば、クローン病)、アナフィラキシー、アレルギー性反応、シェーグレン症候群、タイプI糖尿病、原発性胆汁肝硬変、ウェゲナー肉芽腫症、繊維筋肉痛、多発性筋炎、皮膚筋炎、多発性内分泌不全、シュミッツ症候群、自己免疫ブドウ膜炎、アジソン病、副腎炎、甲状腺炎、ハシモト甲状腺炎、自己免疫甲状腺病、悪性貧血、胃萎縮症、慢性肝炎、狼瘡性肝炎、アテローム性動脈硬化、亜急性皮膚エリテマトーデス、副甲状腺機能低下症、ドレッスラー症候群、自己免疫血小板減少症、突発性血小板減少紫斑病、溶血性貧血、尋常性天疱瘡、天疱瘡、疱疹状皮膚炎、円形脱毛症、ペンフィゴイド、強皮症、進行性全身性硬化症、CREST症候群(石灰症、レイノー現象、食道不良運動、手指硬化および末梢血管拡張症)、雄性および雌性の自己免疫不妊症、強着性脊椎炎、潰瘍性大腸炎、混合結合組織病、多発関節炎ネドーサ、全身性壊死化脈管炎、アトピー性皮膚炎、アトピー性鼻炎、グッドパスチャー症候群、チャガス病、サルコイドーシス、リューマチ熱、喘息、再発性流産、抗リン脂質症候群、農夫肺、多形紅斑、心臓切開後症候群、カッシング症候群、自己免疫慢性活性肝炎、愛鳥家肺、毒性上皮性壊死溶解、アルポート症候群、歯槽炎、アレルギー性肺胞炎、繊維化性肺胞炎、間質性肺病、紅斑ノドースン、壊疽性膿皮症、輸血反応、タカヤス動脈炎、リュウマチ性多筋肉痛、側頭動脈炎、住血吸虫症、巨大細胞動脈炎、回虫症、アスペルギルス症、サムプター症候群、湿疹、リンパ肉芽腫症、ベーチェット病、キャプラン症候群、川崎病、デング熱、脳脊髄炎、心内膜炎、心筋内繊維症、眼内炎、持久性隆起性紅斑、乾癬、胎児赤芽球症、好酸球性筋膜炎、シュルマン症候群、フェルティ症候群、フィラリア症、毛様体炎、慢性毛様体炎、異虹彩色性毛様体炎、フックの毛様体炎、IgA腎症、ヘノック・ショーンレイン紫斑病、移植片対宿主病、移植拒絶、心筋症、イートン・ランバート症候群、再発性多発性軟骨炎、低温性グロブリン血症、ワルデンストレームマクログロブリン血症、エバンス症候群、および自己免疫生殖腺不全。
【0134】
よって、本明細書中に記載の方法は、Bリンパ球の障害(例えば、全身性エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、関節リウマチ、およびタイプI糖尿病)、Th1リンパ球の障害(例えば、関節リウマチ、多発性硬化症、乾癬、シェーグレン症候群、ハシモト甲状腺炎、グレーブス病、原発性胆汁肝硬変、ウェゲナー肉芽腫症、結核または急性移植片対宿主病)、またはTh2リンパ球の障害(例えば、アトピー性皮膚炎、全身性エリテマトーデス、アトピー性喘息、鼻結膜炎、アレルギー性鼻炎、オーメン症候群、全身性硬化症、または慢性移植片対宿主病)の処置を含む。一般に、樹状細胞に関連する障害は、Th1リンパ球またはTh2リンパ球の障害を伴う。
【0135】
いくつかの実施形態では、免疫障害は、その障害に関連する活性化T細胞がCD70を発現するT細胞障害等のT細胞仲介免疫障害である。そのようなCD70を発現する活性化T細胞を低減するために抗CD70抗体または誘導体を投与することができる。特定の実施形態では、抗CD70抗体または誘導体の投与により、CD70を発現する活性化T細胞を低減することができる一方、休止T細胞は、抗CD70抗体または誘導体によって実質的に低減されることはない。この文脈において、「実質的に低減されない」とは、約60%未満、または約70%未満、または約80%未満の休止T細胞が低減されないことを意味する。
【0136】
本明細書中に記載の抗CD70抗体および誘導体は、CD70を発現する癌の処置または予防にも有用である。本明細書中に記載の方法によるCD70を発現する癌の処置または予防は、効果的な量の抗CD70抗体または誘導体をその処置または予防を必要とする被験体に投与することにより、当該抗体または誘導体が(i)CD70を発現する癌細胞に結合し、(ii)単独でCD70を発現する癌細胞の増殖を低減または阻害する細胞毒性または細胞静止効果を及ぼすことにより達成される。
【0137】
本明細書中に記載の方法により処置または予防できるCD70を発現する癌としては、例えば、異なるサブタイプの無痛性非ホジキンリンパ腫(無痛性NHL)(例えば、小胞NHL、小リンパ球リンパ腫、リンパ形質細胞NHLまたは辺縁帯NHL);非ホジキンリンパ腫、例えば、バーキットリンパ腫および慢性リンパ球白血病を含むB細胞系の癌;多発性骨髄腫、腎臓細胞癌腫;上咽頭癌腫;胸腺癌腫;グリオーマ;グリア芽腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症;髄膜腫;ならびに結腸、胃および直腸の癌腫が挙げられる。
【0138】
(VIII.抗CD70抗体および誘導体を含む医薬組成物およびその投与)
抗CD70結合剤を含有する組成物(例えば、抗CD70抗体および誘導体)を、免疫障害またはCD70を発現する癌を有するか、またはその危険性のある被験体に投与することが可能である。本発明は、さらに、CD70を発現する癌または免疫障害の予防または処置のための物質の製造における、CD70結合剤(例えば、抗CD70抗体または誘導体)の使用にも対応する。本明細書中において用いる「被験体」という用語は、例えば
、霊長類、げっ歯類およびイヌ等のヒトおよび非ヒト哺乳類を含む、CD70結合CD70結合剤を投与可能なあらゆる哺乳類患者を意味する。特に本明細書中に記載の方法を用いる処置の対象となる被験体は、ヒトを含む。抗体または誘導体は、免疫障害またはCD70を発現する癌の予防または処置において、単独または他の組成物と組み合わせて投与することができる。
【0139】
CD70結合剤の投与に使用可能な公知の供給システムが各種存在する。導入方法としては、皮膚内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下内、鼻内、硬膜外および経口経路が挙げられるが、これらに限定されない。CD70結合剤は、例えば、点滴もしくはボーラス注射、上皮もしくは皮膚粘膜内層(例えば、口粘膜、直腸または腸粘膜等)による吸収により投与することができ、化学療法剤等の生物活性剤とともに投与することができる。投与は、全身または局所であってよい。
【0140】
特定の実施形態では、CD70結合剤組成物は、注射により、カテーテルにより、坐剤により、または移植物により投与され、この移植物は、例えば、シアラスティック膜(sialastic membrane)等の膜、または繊維を含む多孔性、非多孔性またはゼラチン状物質、である。典型的には、この組成物を投与する場合、抗CD70抗体または誘導体を吸収しない材料が用いられる。
【0141】
他の実施形態では、抗CD70抗体または誘導体は、調節除放システムで供給される。1つの実施形態では、ポンプを用いてもよい(Langer,1990,Science
249:1527−1533;Sefton,1989,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201;Buchwaldら,1980,Surgery
88:507;Saudekら,1989,N.Engl.J.Med.321:574参照。)他の実施形態では、高分子物質を用いることができる(Medical Applications of Controlled Release(LangerおよびWise編,CRC Press,Boca Raton,Florida,1974);Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance(SmolenおよびBall編,Wiley,New York,1984);RangerおよびPeppas,1983,Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61を参照されたい。また、Levyら,1985,Science 228:190;Duringら,1989,Ann.Neurol.25:351;Howardら,1989,J.Neurosurg.71:105も参照されたい。)他の調節除放システムは、例えば、上記のLangerで考察されている。
【0142】
CD70結合剤(例えば、抗CD70抗体または誘導体)は、治療有効量の結合剤および1つ以上の薬学的に適合性のある成分を含む医薬組成物として投与することできる。例えば、この医薬組成物は、典型的には、1つ以上の医薬キャリア(例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油等、石油、動物、植物または合成を起源とする、水および油等の滅菌液体)を含む。医薬組成物を静脈内投与する場合の典型的なキャリアは水である。塩溶液ならびにデキトロースおよびグリセロール水溶液も液体キャリアとして、特に、注射可能な溶液に用いることができる。適切な医薬賦形剤としては、例えば、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等が挙げられる。上記組成物は、所望であれば、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤も含むことができる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、丸剤、カプセル、粉剤、除放処方物等の形態を取ることができる。上記組成物は、トリグリセリド等の伝統的な結合剤およびキャリアとともに坐剤として処方することができる。経口処方物としては、薬学グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等の標準的なキャリアを含むことができる。適切な医薬キャリアの例は、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。そのような組成物は、治療効果のある量の核酸またはタンパク質を、典型的には、精製した形態で、患者に適切な投与形式で提供できるように適切な量のキャリアとともに含む。剤形は、投与方法に対応する。
【0143】
典型的な実施形態では、上記医薬組成物は、所定の手順に従ってヒトへの静脈内投与に適合した医薬組成物として処方される。典型的には、静脈内投与用の組成物は、滅菌等張水性緩衝液中の溶液である。必要であれば、上記医薬は、可溶化剤、および注射部位の痛みを和らげるリグノカイン等の局所麻酔剤を含むようにすることもできる。一般に、それらの成分は、個別に、または単位投与の形態で混合して、例えば、活性剤の量を示すアンプルまたはプラスチック袋等の密封容器に凍結乾燥粉末または無水濃縮物として供給される。上記医薬を点滴により投与する場合、滅菌医薬グレードの水または塩溶液を含む点滴ビンで調合することができる。上記医薬を注射により投与する場合、注射用滅菌水または塩溶液のアンプルを提供し、投与前に成分を混合することができる。
【0144】
さらに、上記医薬組成物は、(a)凍結乾燥形態のCD70結合剤(例えば、抗CD70抗体または誘導体)を含む容器、および(b)注射用の薬学的に許容される希釈剤(例えば、滅菌水)を含む第2の容器を含む薬学キットとして提供することができる。薬学的に許容される希釈剤は、凍結乾燥した抗CD70抗体または誘導体の再構築または希釈に用いることができる。そのような容器に任意に付属させることができるものとしては、医薬または生物学製品の製造、使用または販売を統制する政府機関により規定された形態の注意書きがあり、この注意書きは、ヒトへの投与のための製造、使用または販売に関する当局の承認を反映するものである。
【0145】
免疫障害またはCD70を発現する癌の処置または予防に効果的なCD70結合剤(例えば、抗CD70抗体または誘導体)の量は、標準的な臨床技術により決定することができる。さらに、最適な投与量範囲の特定に役立てるために、任意に、インビトロアッセイを用いてもよい。処方物に用いられる正確な投与量は、投与経路および免疫障害もしくはCD70を発現する癌の段階にも依存し、実施者の判断および各患者の状況に応じて決定すべきである。効果的な投与量は、インビトロまたは動物モデルテストシステムから得られる投与量/応答曲線から外挿してもよい。
【0146】
例えば、抗CD70抗体または誘導体の毒性および治療有効性は、細胞培養物もしくは実験動物にて、LD50(集団の50%に対して致死となる投与量)およびED50(集団の50%に対して治療効果のある投与量)を決定する標準的な薬学手順によって判定することができる。毒性効果と治療効果の投与量比は治療指標であり、LD50/ED50の比で表わすことができる。高い治療指標を示すCD70結合剤(例えば、抗CD70抗体または誘導体)が好ましい。CD70結合剤が毒性のある副作用を示す場合、そのCD70結合剤を侵された組織部位に向ける送達システムを用いて、CD70を発現しない細胞に対する潜在的な損傷を最小化することにより、副作用を低減させることができる。
【0147】
細胞培養物アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトにおける使用のために投与量範囲を決定するために用いることができる。CD70結合剤の投与量は、典型的には、ED50を含み、かつ毒性がほとんど無いかまたは全く無い循環濃度の範囲にある。投与量は、この範囲内において、使用する投与形態および利用する投与経路に応じて変更してもよい。本方法で用いるあらゆるCD70結合剤に関して、最初に、治療効果のある投与量を細胞培養物アッセイにより予測することができる。投与量は、動物モデルにおいて、細胞培養物中で決定されたIC50(すなわち、症状の阻害を最大値の半分だけ達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように決定することができる。そのような情報を用いて、ヒトにおいて有用な投与量をより正確に決定することができる。血漿中の量は、例えば、高速液体クロマトグラフィーで測定することができる。
【0148】
一般に、免疫障害またはCD70を発現する癌を有する患者に投与する抗CD70抗体または誘導体の量は、典型的には、0.1mg/(被験体の体重)kg〜100mg/kgである。被験体に投与する量は、0.1mg/(被験体の体重)kg〜50mg/kg、1mg/kg〜30mg/kg、1mg/kg〜20mg/kg、1mg/kg〜15mg/kg、または1mg/kg〜10mg/kgである。一般に、ヒトの抗体は、人体では、外来タンパク質に対する免疫応答のために、他の種からの抗体よりも長い半減期を有する。よって、ヒト化、キメラまたはヒトの抗体を含む抗CD70抗体または誘導体の投与量を減少させ、投与の頻度を低くすることが可能な場合が多い。
【0149】
いくつかの実施形態では、CD70結合剤を含む医薬組成物は、治療剤(すなわち、非結合体化細胞毒性または免疫抑制剤(例えば、本明細書中に記載したもののいずれか))をさらに含むようにすることができる。抗CD70結合剤はまた、免疫障害またはCD70を発現する癌の処置または予防のために1つ以上の治療剤と組み合わせて同時に投与することもできる。例えば、組合せ治療は、治療剤(例えば、細胞静止、細胞毒性または細胞抑制剤(癌または免疫障害の処置に慣用的に用いられているような結合体化していない細胞静止、細胞毒性または細胞抑制剤等))を含むようにすることができる。また、組合せ治療は、例えば、活性化リンパ球、樹状細胞またはCD70を発現する癌細胞の表面上のCD70以外の受容体または受容体複合体を標的とする物質の投与を含むようにすることができる。そのような物質の例としては、活性化リンパ球、樹状細胞またはCD70を発現する癌細胞の表面にある分子に結合する第2の非CD70抗体が挙げられる。他の例としては、そのような受容体または受容体複合体を標的とするリガンドが挙げられる。典型的には、そのような抗体またはリガンドは、活性化リンパ球、樹状細胞またはCD70を発現する癌細胞上の細胞表面受容体に結合し、細胞静止または細胞毒性シグナルを活性化リンパ球、樹状細胞またはCD70を発現する癌細胞に届けることにより、抗CD70抗体の細胞毒性または細胞静止作用を向上させる。このような組合せ投与は、病気のパラメーター(例えば、症状の程度、症状の数、または再発の頻度)に対して加法的または相乗的効果を有し得る。
【0150】
組合せ投与の治療計画に関して、特定の実施形態では、抗CD70結合剤は、治療剤と同時に投与される。他の特定の実施形態では、上記治療剤は、抗CD70抗体または誘導体の投与前または投与後少なくとも1時間から数ヶ月までの期間、例えば、抗CD70抗体または誘導体の投与前または投与後少なくとも1時間、5時間、12時間、1日、1週間、1ヶ月または3ヶ月の期間に投与される。いくつかの実施形態では、被験体は、抗CD70結合剤の投与後、および任意で治療剤の投与後に監視される。
【0151】
上記治療剤は、例えば、癌細胞または活性化免疫細胞に治療作用を及ぼす任意の物質とすることができる。典型的には、上記治療剤は、細胞毒性または免疫抑制剤である。
【0152】
有用な種類の細胞毒性または免疫抑制剤としては、例えば、抗チュブリン剤、オーリスタチン、DNA副溝結合剤、DNA複製阻害剤、アルキル化剤(例えば、シスプラチン、モノ(プラチナ)、ビス(プラチナ)および三核プラチナ複合体およびカルボプラチン等のプラチナ複合体)、アントラサイクリン、抗生物質、抗葉酸剤、代謝拮抗物質、化学療法増感剤、デュオカルマイシン、エトポシド、フッ素化ピリミジン、イオノホア、レキシトロプシン、ニトロソウレア、プラチノール、前形成化合物(pre−forming compounds)、プリン代謝拮抗物質、ピューロマイシン、照射増感剤、ステロイド、タキサン、トポイソメラーゼ阻害剤、ビンカアルカロイド等が挙げられる。
【0153】
個々の細胞毒性または免疫抑制剤としては、例えば、アンドロゲン、アントラマイシン(AMC)、アスパラギナーゼ、5−アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、ブスルファン、ブチオニンスルホキシミン、カンプトテシン、カルボプラチン、カルムスチン(BSNU)、CC−1065、クロラムブシル、シスプラチン、コルヒチン、シクロホスファミド、シタラビン、シチジンアラビノシド、サイトカラシンB、デカルバジン、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ダウノルビシン、デカルバジン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エストロゲン、5−フルオロデオキシウリジン、5−フルオロウラシル、グラミシジンD、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン(CCNU)、メクロレタミン、メルファラン、6−メルカプトプリン、メトトレキセート、ミトラマイシン、ミトマイシンC、ミトキサントロン、ニトロイミダゾール、パクリタキセル、プリカミシン、プロカルビジン、ストレプトゾトシン、テノポシド、6−チオグアニン、チオTEPA、トポテカン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、VP−16およびVM−26が挙げられる。
【0154】
いくつかの典型的な実施形態では、上記治療剤は細胞毒性剤である。適切な細胞毒性剤としては、例えば、ドラスタチン(例えば、オーリスタチンE、AFP、MMAF、MMAE)、DNA副溝結合剤(例えば、エネジインおよびレキシトロプシン)、デュオカルマイシン、タキサン(例えば、パクリタキセルおよびドセタキセル)、ピューロマイシン、ビンカアルカロイド、CC−1065、SN−38、トポテカン、モルホリノ−ドキソルビシン、リゾキシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、エキノマイシン、コンブレタスタチン、ネトロプシン、エポチロンAおよびB、エストラムスチン、クリプトフィシン、セマドチン、メイタンシノイド、ジスコデルモリド、エロイテロビン、およびミトキサントロンが挙げられる。
【0155】
いくつかの実施形態では、上記細胞毒性剤は、例えば、ドキソルビシン、パクリタキセル、メルファラン、ビンカアルカロイド、メトトレキセート、ミトマイシンCまたはエトポシド等、慣用の化学療法剤である。また、例えば、CC−1065類似体、カリケミアミシン、メイタンシン、ドラスタチン10の類似体、リゾキシンおよびパリトキシン等の強力な物質を、抗CD70抗体またはその誘導体に結合させることができる。
【0156】
特定の実施形態では、上記細胞毒性または細胞静止剤は、オーリスタチンE(当該分野ではドラスタチン−10としても知られる)またはその誘導体である。典型的には、オーリスタチンE誘導体は、例えば、オーリスタチンEとケト酸との間で形成されたエステルである。例えば、オーリスタチンEは、パラアセチル安息香酸またはベンゾイル吉草酸と反応させて、それぞれ、AEBおよびAEVBを作ることができる。他の典型的なオーリスタチン誘導体としては、AFP、MMAF、およびMMAEが挙げられる。オーリスタチンEおよびその誘導体の合成と構造は、米国特許出願第09/845,786号(米国特許出願公開第20030083263号)および同第10/001,191号;国際特許出願PCT/US03/24209、国際特許出願PCT/US02/13435、および米国特許第6,323,315号;同第6,239,104号;同第6,034,065号;同第5,780,588号;同第5,665,860号;同第5,663,149号;同第5,635,483号;同第5,599,902号;同第5,554,725号;同第5,530,097号;同第5,521,284号;同第5,504,191号;同第5,410,024号;同第5,138,036号;同第5,076,973号;同第4,986,988号;同第4,978,744号;同第4,879,278号;同第4,816,444号;および同第4,486,414号に記載されている。
【0157】
特定の実施形態では、上記細胞毒性剤はDNA副溝結合剤である。(例えば、米国特許第6,130,237号を参照されたい。)例えば、いくつかの実施形態では、上記副溝結合剤はCBI化合物である。他の実施形態では、上記副溝結合剤はエネジイン(例えば、カリケアミシン)である。
【0158】
抗チュブリン剤の例としては、タキサン類(例えばTaxol(商標登録)(パクリタキセル)、Taxotere(商標登録)(ドセタキセル))、T67(チュラリク)、ビンカアルキロイド類(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、およびビノレルビン)、およびドラスタチン類(例えば、オーリスタチンE、AFP、MMAF、MMAE、AEB、AEVB)が挙げられるが、これらに限定されない。他の抗チュブリンとしては、例えば、バッカチン誘導体、タキサン類似体(例えば、エポチロンAおよびB)、ノコダゾール、コルヒチンおよびコルシミド、エストラムスチン、クリプトフィシン、セマドチン、メイタンシノイド、コンブレタスタチン、ジスコデルモリド、およびエロイテロビンが挙げられる。
【0159】
いくつかの実施形態では、上記細胞毒性剤は、抗チュブリン剤の他の群であるメイタンシノイドである。例えば、特定の実施形態では、メイタンシノイドは、メイタンシンまたはDM−1である(ImmunoGen,Inc.;Chariら,1992,Cancer Res.52:127−131も参照されたい)。
【0160】
いくつかの実施形態では、上記治療剤は放射同位元素ではない。
【0161】
いくつかの実施形態では、上記細胞毒性または免疫抑制剤は代謝拮抗物質である。代謝拮抗物質は、例えば、プリン拮抗薬(例えば、アゾチオプリンまたはミコフェノール酸モフェチル)、デヒドロフォレートレダクターゼ阻害剤(例えば、メトトレキセート)、アシクロビル、ガングシクロビル、ジドブジン、ビダラビン、リババリン、アジドチミジン、シチジンアラビノシド、アマンタジン、ジデオキシウリジン、ヨードデオキシウリジン、ポスカーネットまたはトリフルリジンとすることができる。
【0162】
他の実施形態では、上記細胞毒性または免疫抑制剤は、タクロリムス、シクロスポリンまたはラパマイシンである。さらなる実施形態では、上記細胞毒性剤は、アルデスロイキン、アレンツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アルトレタミン、アミフォスチン、アナストロゾール、三酸化ヒ素、ベキサロテン、ベキサロテン、カルステロン、カペシタビン、セレコキシブ、クラドリビン、ダーベポエチンアルファ、デニロイキンジフチトクス、デクスラゾキサン、ドロモスタノロンプロピオネート、エピルビシン、エポエチンアルファ、エストラムスチン、エキセメスタン、フィルグラスチン、フロキシウリジン、フルダラビン、フルベストラント、ゲンシタビン、ゲンツズマブオゾガミシン、ゴセレリン、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブメシレート、インターフェロンアルファ−2a、イリノテカン、レトロゾール、ロイコボリン、レバミソール、メクロレタミンもしくはナイトロジェンマスタード、メゲストロール、メスナ、メトトレキセート、メトキサレン、マイトマイシンC、ミトタン、ナンドロロンフェンプロピオネート、オプレルベキン、オキサリプラチン、パミドロネート、ペガデマーゼ、ペガスパルガーゼ、ペグフィルグラスチン、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、ポルフィマーナトリウム、プロカルバジン、キナクリン、ラスブリカーゼ、サルグラモスチン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、テモゾロミド、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、トレミフェン、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレチノイン、ウラシルマスタード、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビンおよびゾレドロネートである。
【0163】
さらなる実施形態では、上記医薬は、ヒト化された抗HER2モノクローナル抗体、RITUXAN(リツキシマブ;Genentech;キメラ抗CD20モノクローナル抗体);OVAREX(AltaRex Corporation,MA);PANOREX(Glaxo Wellcome,NC;マウスIgG2a抗体);セツキシマブエルビタクス(Imclone Systems Inc.,NY;抗EGFR IgGキメラ抗体);ビタキシン(MedImmune,Inc.MD;キャンパスI/H(Leukosite,MA;ヒト化IgG1抗体);スマートMI95(Protein Design Labs,Inc.,CA;ヒト化抗CD33 IgG抗体;リンホサイド(Immunomedics,Inc.,NJ;ヒト化抗CD22 IgG抗体);スマートID10(Protein Design Labs,Inc.,CA;ヒト化抗HLA−DR抗体);オンコリン(Techniclone,Inc.,CA;放射能標識マウス抗HLA−Dr10抗体);アロミュン(BioTransplant,CA;ヒト化抗CD2 mAb);アバスチン(Genentech,Inc.,CA;抗VEGFヒト化抗体);エプラツザマブ(Immunomedics,Inc.,NJおよびAmgen,CA;抗CD22抗体);およびCEAcide(Immunomedics,NJ;ヒト化抗CEA抗体)などの抗体である。
【0164】
他の適切な抗体としては、以下の抗原に対する抗体が挙げられるが、それらに限定されない:CA125、CA15−3、CA19−9、L6、Lewis Y、Lewis X、アルファフェトタンパク質、CA242、胎盤アルカリホスファターゼ、前立腺特異的膜抗原、前立腺酸性ホスファターゼ、上皮成長因子、MAGE−1、MAGE−2、MAGE−3、MAGE−4、抗トランスフェリン受容体、p97、MUC1−KLH、CEA、gp100、MART1、前立腺特異的抗原、IL−2受容体、CD20、CD52、CD33、CD22、ヒト絨毛性腺刺激ホルモン、CD38、CD40、ムチン、P21、MPG、およびNeu癌遺伝子産物。
【0165】
いくつかの実施形態では、上記医薬は免疫抑制剤である。免疫抑制剤は、例えば、ガンシクロビル、エタネルセプト、タクロリムス、シクロスポリン、ラパマイシン、シクロホスファミド、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチルまたはメトトレキセートとすることができる。あるいは、免疫抑制剤は、例えば、グルココルチコイド(例えば、コルチゾールまたはアルドステロン)またはグルココルチコイド類似体(例えば、プレドニゾンまたはデキサメタゾン)とすることができる。
【0166】
いくつかの典型的な実施形態では、免疫抑制剤は、アリールカルボン酸誘導体、ピラゾール含有誘導体、オキシカム誘導体およびニコチン酸誘導体等の抗炎症剤である。抗炎症剤の種類としては、例えば、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、5−リポキシゲナーゼ阻害剤、およびロイコトリエン受容体拮抗薬が挙げられる。
【0167】
適切なシクロオキシゲナーゼ阻害剤としては、メクロフェナミン酸、メフェナミン酸、カルプロフェン、ジクロフェナク、ジフルニザル、フェンブフェン、フェノプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ナブメトン、ナプロキセン、スリンダク、テノキシカン、トルメチンおよびアセチルサリチル酸が挙げられる。
【0168】
適切なリポキシゲナーゼ阻害剤としては、レドックス阻害剤(例えば、カテコールブタン誘導体、ノルジヒドログアイアレチン酸(NDGA)、マソプロコール、フェニドン、イアノパレン、インダゾリノン、ナファザトローム、ベンゾフラノール、アルキルヒドロキシルアミン)、および非レドックス阻害剤(例えば、ヒドロキチアゾール、メトキシアルキルチアゾール、ベンゾピランおよびその誘導体、メトキシテトラヒドロピラン、ボスウェリン酸およびボスウェリン酸のアセチル化誘導体、およびシクロアルキル基で置換されたキノリンメトキシフェニル酢酸)およびレドックス阻害剤の前駆体が挙げられる。
【0169】
他の適切なリポゲキシゲナーゼ阻害剤としては、酸化防止剤(例えば、フェノール、没食子酸プロピル、フラボノイドおよび/またはフラボノイドを含有する天然の基質、フラボンのヒドロキシル化誘導体、フラボノール、ジヒドロクエルセチン、ルテオリン、ガランギン、オロボール、カルコンの誘導体、4,2’,4’−トリヒドロキシカルコン、オルト−アミノフェノール、N−ヒドロキシウレア、ベンゾフラノール、エブセレン、および還元セレノ酵素の活性を増加させる種)、イオンキレート剤(例えば、ヒドロキサム酸およびその誘導体、N−ヒドロキシウレア、2−ベンジル−1−ナフトール、カテコール、ヒドロキシルアミン、カルノソールトロロクスC、カテコール、ナフトール、スルファサラジン、ジロイトン、5−ヒドロキシアントラニル酸、および4−(オメガ−アリールアルキル)フェニルアルカン酸)、イミダゾール含有化合物(例えば、ケトコナゾールおよびイトラコナゾール)、フェノチアジン、およびベンゾピラン誘導体が挙げられる。
【0170】
さらに他の適切なリポシキゲナーゼ阻害剤としては、エイコサノイドの阻害剤(例えば、オクタデカテトラエン酸、エイコサテトラエン酸、ドコサペンタエン酸、エイコサヘキサエン酸、ドコサヘキサエン酸およびそれらのエステル、PGE1(プロスタグランジンE1)、PGA2(プロスタグランジンA2)、ビプロストール、15−モノヒドロキシエイコサテトラエン酸、15−モノヒドロキシ−エイコサトリエン酸、15−モノヒドロキシエイコサペンタエン酸、ならびにロイコトリエンB5、C5およびD5)、カルシウム流に干渉する化合物、フェノチアジン、ジフェニルブチルアミン、ベラパミル、フスコシド、クルクミン、クロロゲン酸、カフェー酸、5,8,11,14−エイコサテトラエン酸(ETYA)、ヒドロキシフェニルレチナミド、イオナパレン、エスクリン、ジエチルカルバマジン、フェナントロリン、バイカレイン、プロキシクロミル、チオエーテル、ジアリルスルフィド、およびジ−(1−プロペニル)スルフィドが挙げられる。
【0171】
ロイコトリエン受容体拮抗薬としては、カルシトリオール、オンタゾラスト、Bayer Bay−x−1005、Ciba−Geigy CGS−25019C、ebselen、Leo Denmark ETH−615、Lilly LY−293111、Ono ONO−4057、Terumo TMK−688、Boehringer Ingleheim BI−RM−270、Lilly LY 213024、Lilly LY 264086、Lilly LY 292728、Ono ONO LB457、Pfizer 105696、Perdue Frederick PF 10042、Rhone−Poulenc Rorer RP 66153、SmithKline Beecham SB−201146、SmithKline Beecham SB−201993、SmithKline Beecham SB−209247、Searle SC−53228、Sumitomo SM 15178、American Home Products WAY 121006、Bayer Bay−o−8276、Warner−Lambert CI−987、Warner−Lambert CI−987BPC−15LY 223982、Lilly LY 233569、Lilly LY−255283、MacroNex MNX−160、Merck and Co.MK−591、Merck and Co.MK−886、One ONO−LB−448、Purdue Frederick PF−5901、Rhone−Poulenc Rorer RG 14893、Rhone−Poulenc Rorer RP
66364、Rhone−Poulenc Rorer RP 69698、Sionoogi S−2474、Searle SC−41930、Searle SC−50505、Searle SC−51146、Searle SC−52798、SmithKline Beecham SKandF−104493、Leo Denmark
SR−2566、Tanabe T−757、およびTeijin TEI−1338が挙げられる。
【実施例】
【0172】
本発明を下記の実施例においてさらに説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。下記の実施例に記載の細胞系は、American Type Culture Collection(ATCC)またはDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen
GmbH,Braunschweig,Germany(DMSZ)に規定された条件に従った培養で維持した。細胞培養試薬は、Invitrogen Corp.(Carlsbad,CA)から得た。
【0173】
(実施例1.キメラ抗CD70抗体の構築)
1F6および2F2 mAbの軽鎖(VL)および重鎖(VH)可変領域をコードするcDNA配列を決定するために、TRIzol(商標登録)試薬(Invitrogen,Carlsbad,CA)を製造者の使用説明書に従って用いて、1F6および2F2ハイブリドーマから全RNAを単離した。遺伝子に特異的なプライマーmIgcK1:5’−CTT CCA CTT GAC ATT GAT GTC TTT G−3’(配列番号41)およびプライマーmIgG1:5’−CAG GTC ACT GTC ACT GGC TCA G−3’(配列番号42)を適用して、両RNA調製物からの軽鎖可変(VL)および重鎖可変(VH)の第一鎖cDNAをそれぞれ逆転写した。第一鎖cDNA反応は、InvitrogenからのSuperScript(商標登録)Fist Strand Synhtesis System for RT−PCRを用いて実施した。次いで、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)および供給されたTdT緩衝液を製造者(Invitrogen)により規定された条件に従って用いて、VLおよびVHcDNAをpoly−G末端付加した。次いで、Poly−G末端付加VLおよびVH第一鎖cDNAをPCR増幅に供した。VLおよびVHの両方のPCR用のフォワードプライマーは、ANCTAIL:5’GTC GAT GAG CTC TAG AAT TCG TGC CCC CCC CCC CCC C−3’(配列番号43)であった。VLを増幅するためのリバースプライマーは、HBS−mck:5’−CGT CAT GTC GAC GGA TCC AAG CTT CAA GAA GCA CAC GAC TGA GGC AC−3’(配列番号44)であった。VHを増幅するためのリバースプライマーは、HBS−mG1:5’−CGT CAT GTC GAC GGA TCC AAG CTT GTC ACC ATG GAG TTA GTT TGG GC−3’(配列番号45)であった。Ex Taqおよび提供された反応緩衝液を製造者(Fisher Scientific,Pittsburgh,PA)により指定された条件で用いて、PCRを実施した。次いで、VLおよびVHPCR産物をHindIIIおよびEcoRIにより切断し、HindIII/EcoRI切断pUC19にクローニングした。組換えプラスミドクローンを同定し、1F6と2F2ハイブリドーマのヌクレオチド配列を決定した。
【0174】
1F6および2F2 mAbの重鎖および軽鎖中の相補性決定領域(CDR)を、Kabatら,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Washington DC,US Department of Health and Public Services;ChothiaおよびLesk,1987,J.Mol.Biol.196:901−17(図1および図2)に記載の基準に従って決定した。cDNAおよびアミノ酸の両方のレベルの配列アライメントでは、密接に関係する軽鎖遺伝子がおそらく両ハイブリドーマで利用されていることが明らかになった。アミノ酸レベルでは1F6VLと2F2VLの間に92%の配列同一性がある。CDRの配列比較では、1F6 CDR−L1が2F2 CDR−L1と同一であり、1F6 CDR−L2と2F2 CDR−L2の間では非保存的(divergent)置換わずかに1つによってだけ異なり、1F6 CDR−L3と2F2 CDR−L3の間では保存的置換わずかに2つだけによって異なることが示されている(図3)。一方、1F6 VHと2F2 VHの間には高度の配列多様性が存在し;これら2つのVH間では、137個のアミノ酸残基のうち約66個が異なる。CDRの配列比較において、1F6 CDR−H1と2F2 CDR−H1の間では、10個のアミノ残基のうち5個が異なり(5個の置換のうち3個が非保存的(divergent)置換である)、1F6 CDR−H2と2F2 CDR−H2の間では、17個の残基のうち12個が異なり(12個の置換のうち9個が非保存的(divergent)置換である)、1F6 CDR−H3と2F2 CDR−H3の間では、9個の残基のうち5個が異なる(5個の置換のうち4個が非保存的(divergent)置換である)ことが示されている(図3)。
【0175】
キメラ1F6重鎖および軽鎖の両方を含有する発現ベクターが、下記に記載のとおり構築された。このベクターでは、各ポリペプチド鎖が、関連するCHEF1イントロン配列および免疫グロブリンポリA領域とともに、CHEF1プロモータのコピーの制御下にある。この大きなベクターの構築のために、各々が最終構築物の一部をコードする個別の「キメラ化」プラスミドにおいてキメラ化重鎖および軽鎖配列を作製する必要があった。次いで、最終的な発現構築物を、必要な制御領域の残りをコードする第3のベクターとの3方向連結反応により作製した。このプラスミドを用いてDG44 CHO細胞を形質転換し、良好に産生を行なうクローン系を単離した。
【0176】
(重鎖キメラ化ベクターの構築)
CHEF1ベクターのNotI−XhoIフラグメント6kbをBluescriptベクターにクローニングすることにより、キメラ化ベクター(pSG850)を予め構築した。このフラグメントは、CHEF1 5’イントロンの一部、キメラIgG1抗体重鎖、およびポリAシグナルを含むヒトのIgG4定常領域のすぐ下流側の領域のゲノム配列の一部を含む。重鎖可変領域と1F6とを置換することにより、キメラ1F6配列を有するプラスミドが生じた。この構築物を調製するために、1F6重鎖可変領域配列全体を、シークエンシングベクターからのPCRを介して増幅した。HindIII制限部位、コンセンサスKozac配列5’から重鎖リーダーのコード配列、およびリーダー配列と相同な配列をコードするフォワードオリゴヌクレオチドプライマー5’−ATA AAT
AAG CTT ACC GCC ACC ATG GCT TGG GTG TGG
ACC TTG−3’(配列番号46)を用いた。リバースプライマー5’−ATA AAG GCT AGC TGA GGA GAC GGT GAC TGA GGT−3’(配列番号47)は、可変領域の3’末端と相同な配列およびNheI制限部位をコードした。PCR産物をHindIIIおよびNheIで消化した。pSG850ベクターを同じ酵素で消化して既存の可変領域を除去し、大きいほうのベクターフラグメントを単離した。1F6 VHおよびpSG850ベクターフラグメントを連結反応させて、キメラ1F6重鎖を含むpJC140を構築した。
【0177】
(軽鎖キメラ化ベクターの構築)
CHEF1ベクターのXhoI−XbaIフラグメント4kbをBluescriptベクターにクローニングすることにより、キメラ化ベクター(pSG855)を予め構築した。このフラグメントは、ヒトIgG4の下流領域の一部、CHEF1プロモータ領域、CHEF1 5’イントロン、キメラ抗体カッパ軽鎖、およびポリAシグナルを含むヒトカッパ下流領域を含む。既存の軽鎖可変領域と1F6とを置換することにより、キメラ1F6カッパ配列を有するプラスミドが生じた。この構築物を調製するために、1F6軽鎖可変領域配列全体を、シークエンシングベクターからのPCRを介して増幅した。HindIII制限部位、コンセンサスKozac配列5’から軽鎖リーダーのコード配列、およびリーダー配列と相同な配列をコードするフォワードオリゴヌクレオチドプライマー5’−ATA AAG AAG CTT ACC GCC ACC ATG GAG ACA GAC ACA CTC CTG−3’(配列番号48)を用いた。リバースプライマー5’−ATA AAG GAA GAC AGA TGG TGC AGC CAC AGT CCG TTT GAT TTC CAG CTT GGT GCC−3’(配列番号49)は、BbsI制限部位を含む、軽鎖可変領域の最後の24塩基対およびカッパ定常領域の最初の24塩基対と相補的な配列をコードした。PCR産物を、HindIIIおよびBbsIで消化した。pSG855ベクターを同じ酵素で消化して既存の可変領域を切り取り、大きいほうのベクターフラグメントを単離した。1F6 VHおよびpSG855ベクターフラグメントを連結反応させて、キメラ1F6軽鎖を含むpJC160を構築した。
【0178】
(c1F6発現ベクターのアセンブリ)
キメラ1F6抗体の両方の鎖を有する発現ベクターを3方向連結反応によりアセンブリした。CHEF1発現ベクターpDEF14をNotIおよびXbaIで消化し、19.7kbのベクターフラグメントを単離した。pJC140をNotIおよびXhoIで消化し、6キロベースのフラグメントを単離した。pJC160をXhoIおよびXbaIで消化し、4キロベースのフラグメントを単離した。これら3つのフラグメントを連結反応において1:1:1のモル比で混合し、その連結反応産物を用いてXL10−Gold細胞を形質転換した。制限マッピングによりクローンをスクリーニングし、重鎖および軽鎖コード領域のシークエンシングにより正確なクローンを確認した。図4は、最終産物のプラスミドマップを示す。
【0179】
(pDEF14−1F6を用いたDG44細胞のトランスフェクション)
200μgのpDEF14−1F6プラスミドDNAをPvuIを用いて37℃で一晩線状化し、次いで、超音波分解した鮭の精子DNA(Specialty Media cat#S−005−G Lavallette、NJ)を100μg加えたのちエタノール析出した。そのDNAを、350μlの滅菌dH2Oおよび450のμlの2X HeBS(40mMのHEPES−NaOH pH 7.0、274mMのNaCl、10mMのKCl、1.4mMのNa2HPO4、および12mMのブドウ糖)中で再懸濁した。
【0180】
DG44チャイニーズハムスター卵巣細胞を、予め無血清懸濁に適合させた一層の細胞から得た。振盪フラスコ内で、非選択性培地(組み換えヒトインスリン、L−グルタミン、ヒポキサンチンおよびチミジンを補った無血清Excell325(JRH Biosciences,Inc.,Lenexa,KS)においておよそ1×106細胞/mlの密度になるまでDG44を培養した。15mlの滅菌チューブ内で遠心分離により2×107個の細胞を集め、CMF−PBSで洗浄して再ペレット化した。洗浄したDG44細胞をDNA溶液で再懸濁し、BioRad GenePulser IIエレクトロポレーター(960μF、290ボルト、時定数9〜11ミリ秒)(Bio−Rad,Hercules,CA)で一度パルスを印加した。これらの細胞は、8〜10分間室温で回収できた。次いで、上記非選択性無血清培地10mlに細胞を加え、固定したT75フラスコに移し、2日間、37℃、5%CO2で回収できた。次いで、トランスフェクションプールを低速で遠心分離し、選択性培地(ヒポキサンチンおよびチミジンを含まないこと以外は上記の培地と同じ;Excell325SELを示す)で再懸濁し、培養物の生存率が>90%になるまで継代した。このトランスフェクションプールをフェッドバッチ培養することにより、マウス1F6 Abと同程度の特異性を有するcAbを生じた。
【0181】
(c1F6トランスフェクションプールのサブクローニング)
フィーダー細胞法を用いて、c1F6トランスフェクションプール細胞を、(ヒポキサンチンまたはチミジンを含まない)Excell325SEL中において1:2000の割合でDG44細胞と混合し、1000細胞/ウェルの密度で4つの96ウェルプレートに入れた。これにより、1ウェル当たり1000個のDG44フィーダー細胞とともに、1ウェル当たり0.5個という効果的な密度でc1F6細胞を得た。DG44細胞は、それらのHTに対する要件のために、2、3日後に絶滅した。同じ条件下において10,000細胞/ウェルでプレートに入れたDG44細胞は、生存が確認されなかった。これら2つのプレートにより、単一コロニーが増殖した34個のウェルを生じた。この34個のクローンウェルを24のウェルプレートまで拡大し、それらのウェルで絶滅した培養上清のcAb滴定濃度について、標準的な抗キメラ抗体ELISAでスクリーニングした。振盪フラスコフェッドバッチ培養を介したさらなるスクリーニングのために、滴定濃度および成長度に基づいて6個のサブクローンを選択した。これらのクローンのうちの1つは、最終的なフェッドバッチ滴定濃度が1.1g/lで、1日につき細胞1つあたりおよそ20ピコグラムの細胞特異的生産性を示した。
【0182】
(実施例2:キメラ1F6は、CD70+腫瘍細胞系に対してADCCを仲介する。)
CD70+細胞系WIL2−S、Caki−1および786−Oに対するc1F6のADCC仲介能力を、標準的な51Cr放出アッセイを用いて測定した。腫瘍細胞を100μCi Na251CrO4を用いて1時間標識し、完全に洗浄して、組み込まれていない放射性同位元素を除去し、次いで、5,000細胞/ウェルの濃度で96ウェルプレートに入れた。抗体c1F6、m1F6またはヒトIgを、エフェクターPBMCを加える前に、1μg/mlの最終濃度で適切なウェルに0.5時間加えた。PBMCを調整して、30個のCD16+細胞:1個の標的細胞というエフェクター細胞と標的細胞の割合を反映させた。4時間の培養後、溶解細胞から放出された51Crを測定し、{(テストサンプルcpm−自然発生的なcpm)÷(総cpm−自然発生的なcpm)}×100で特異的溶解率を算出した。同位元素の自然発生的な放出について、培地のみで培養した標的細胞の浮遊物から判定した。2%triton−Xで溶解した標的細胞から総数を判定した。図5に示すように、c1F6が各腫瘍標的の溶解を効果的に誘導する一方、CD70結合マウス1F6(m1F6)または非結合コントロールヒトIg(hIg)で処理した腫瘍細胞への影響は少なかった。抗体がない場合のNK感受性標的K562の溶解では、PBMC内に細胞傷害能を有するエフェクター細胞が存在することが確認された。
【0183】
(実施例3:複数のドナーのPBMCにより認識されたキメラ1F6被覆標的細胞)
Caki−1腎細胞癌腫細胞をNa251CrO4で標識し、段階的な量のc1F6で処理し、次いで、2人の正常なドナーのエフェクターPBMCで培養した。特異的溶解を、実施例2で説明したように4時間の培養後に評価した。ドナー2051661およびND016は、1または0.1μg/mlのc1F6で処理したCaki−1標的細胞を効率よく溶解した(図6)。その後、特異的溶解が抗体用量に依存して減少し、標的細胞を0.001μg/mlのc1F6で処理したときにはごく少量でしかなかった。非結合コントロールIg(hIg)と混合した標的細胞は、いずれのドナーのPBMCでも溶解しなかった。
【0184】
(実施例4:キメラ1F6被覆リンパ細胞系はPBMCによる溶解の影響を受けやすい。)
BおよびT細胞系の形質転換細胞もc1F6仲介ADCC活性の影響を受けやすいか否かを判定するために、上記のように、CD70+Bリンパ芽球様細胞(WIL2−S)および皮膚T細胞性リンパ腫細胞(HH)をNa251CrO4で標識し、次いで、種々の濃度でc1F6またはヒトIgと混合した。PBMCを18:1(CD16+細胞:標的)の割合で標的細胞に加え、実施例2で説明したように4時間の培養後に溶解率を判定した。図7は、c1F6の存在下でWIL2−SおよびHHの両方がPBMCエフェクター細胞により認識および溶解されることを示す。標的細胞を非結合コントロール抗体で処理することにより生じる細胞溶解は少なかったが、WIL2−SおよびHH細胞を1μg/mlのc1F6で処理した場合、それぞれ43.5%および37.5%の標的細胞が死んだ。
【0185】
多発性骨髄腫細胞系L−363、JJN−3、LP−1およびU−266のCD70の発現について、フローサイメトリーでテストした。図8Aに示すように、それぞれのCD70については、容易に検出された。これら多発性骨髄腫細胞系のキメラ1F6仲介ADCCに対する感受性を実施例2で説明したように判定した。1または0.1μg/mlのc1F6で処理した標的細胞を効率よく溶解した(図8B)。その後、特異的溶解が抗体用量に依存して減少し、標的細胞を0.001μg/mlのc1F6で処理したときにはごく少量でしかなかった。非結合コントロールIg(hIg)と混合した標的細胞は溶解しなかった。エフェクター細胞を抗CD16抗体で前培養してFcγRIIIをブロックすることによりADCC活性がなくなり、溶解活性がFcRを有するエフェクター細胞と抗体の相互作用に依存することが確認された。CD70+ホジキン病細胞系を標的として用いた場合にも同様の用量依存キメラ1F6仲介ADCCが観察された(図9)。
【0186】
(実施例5:抗原特異的インビトロ免疫応答時の活性化T細胞上でのCD70の発現)
インフルエンザウイルスマトリックスタンパク質に由来する9アミノ酸ペプチド(GILGFVFTL、M1ペプチド(配列番号50))は、HLA−A0201分子のペプチド結合溝に結合する。HLA−A0201を発現する抗原提示細胞によりM1ペプチドを同原T細胞に提示することで、T細胞受容体Vβ17鎖を発現するCD8+細胞毒性T細胞の活性化および拡大を特異的に促進させ(Lehnerら,1995,J.Exp.Med.181:79−91)、抗原に特異的なT細胞の活性化および拡大について、それらの母性抗原まで追跡する有用なインビトロ実験系を構築する。
【0187】
活性化抗原特異的T細胞上でのCD70の発現を調べるために、HLA−A0201を発現する正常なドナーのPBMCを、M1ペプチドを用いて刺激した。2×106細胞/mlにて、5μg/mlのM1ペプチドとともに、5%のヒトAB血清を補ったAIMV培地にPBMCを播種した。IL−2(Proleukin,Chiron,Emeryville,CA)およびIL−15(R and D Systems,Minneapolis,MN)を、それぞれ、20IU/mlおよび5ng/mlの最終濃度で、培養の開始後2日目から2日に1回の割合で添加した。CD8+/Vβ17+T細胞の拡大およびCD8+/Vβ17+上でのCD70の誘導に続いて、三色フローサイトメトリーを行った。Vβ17+T細胞を、抗TCRVβ17 mAbクローンE17.5F3(Beckman Coulter,Miami,FL)により同定した。培養開始の2日後には、CD8+/Vβ17+は、リンパ球集団内の細胞のうちわずか0.9%でしかないという結果が示された。T細胞の拡大は、CD8+/Vβ17+集団内でのみ顕著であった。CD8+/Vβ17+の割合は、5日目に1.9%、7日目に14%、11日目に23%というように漸進的に増加した。CD70の拡大は、抗原刺激の3日後に検出可能になり、7日目には、拡大CD8+/Vβ17+細胞のおよそ60%に増加した(図10A)。また、平均蛍光強度(MFI)により示されるCD70の最大発現量も7日目に検出された(図10B)。その後、CD70+/CD8+/Vβ17+細胞の割合およびCD8+/Vβ17+上でのCD70発現のMFIは減少し始めた。CD70は、CD8+/Vβ17+細胞上で明らかに発現した一方、CD8+/Vβ17−細胞上ではCD70を検出することはできなかった。これらの結果から、CD70は、抗原刺激に応答する活性化T細胞上で誘導され、バイスタンダー(bystander)である抗原非特異的なT細胞上では誘導されないことが確認された。
【0188】
(実施例6:c1F6によるCD70+抗原特異的T細胞のインビトロ欠失)
抗原特異的活性化T細胞を低減させる能力についてc1F6をテストするために、抗CD70抗体が存在または存在しない状態で、HLA−A0201を発現する正常なドナーのPBMCをM1ペプチドを用いて刺激した。上述したように、24ウェルプレート内において、0.5×106細胞/mlの濃度で、5μg/mlのM1ペプチドとともに、IL−2およびIL−15を補った2mlの培地にPBMCを播種した。培養の開始時、および培養の開始後2日目および5日目に、非結合免疫グロブリン、マウス1F6(m1F6)またはキメラ1F6(c1F6)抗体を1μg/mlの濃度で加えた。5日目に、使用した培養上清の半分を新鮮なサイトカイン含有培地と取り替えた。9日目に、FITC結合体化抗Vβl7抗体およびPE−Cy5結合体化抗CD8抗体で染色した細胞のフローサイトメトリー分析により、抗原反応性細胞(CD8+/Vβl7+集団)の割合を判定した。0日目および5日目に、さらに、0.25×106のCD16+細胞濃縮PBMCを細胞培養のいくつかに加えた。CD16+細胞の濃縮のために、PBMCを抗CD8、抗CD4、抗CD20、および抗CD14抗体で標識することにより、T細胞、B細胞および単球を低減させ、その後に免疫遺伝ビーズ選択を行なった。観察期間中、抗原特異的CD8+/Vβl7+細胞は、抗体がない培養物中の全ての生存細胞の47.2%を占めるまで拡大した。同様に、CD8+/Vβl7+細胞は、それぞれ、非結合抗体およびマウス抗CD70抗体で処理した培養物に存在する全ての細胞の48.3%および38.5%に相当した。対照的に、キメラ抗CD70抗体で処理した培養物では、CD8+/Vβl7+の拡大が実質的に阻害されていることが観察された(12.5%)。抗原反応性細胞の低減は、CD16+エフェクター細胞が培養物に加えられた場合にはより顕著であった。CD8+/Vβl7+細胞は、未処理の培養物中では32.6%、無関係な抗体およびm1F6抗体で処理した細胞内では、それぞれ、22.4%または22.9%であったのに対して、c1F6で処理した培養物中では、全ての細胞のわずか1.5%でしかなかった。これらの結果により、c1F6は、抗原活性化T細胞を選択的に標的にし、その拡大を防ぐことが分かる。
【0189】
(実施例7:抗原特異的CD8+/Vβl7+細胞の低下に関する抗CD70の用量応答比較)
c1F6が抗原活性化T細胞の拡大を妨げる能力を確認し、さらにこの応答の抗体依存性を評価するために、第2の観察として、段階的な量のc1F6の存在下で、M1ペプチドで刺激したPBMCを発生させた(図11)。9日目に未処理の培養物から回収した抗原特異的CD8+/Vβl7+細胞は、全ての生存細胞の56%に相当した。対照的に、0日目に培養物にc1F6を加えた場合、用量依存的に抗原反応性集団の拡大を著しく制限した。CD8+/Vβl7+細胞は、1μg/ml、0.1μg/mlおよび0.01μg/mlのc1F6で処理した培養物中の全ての細胞において、それぞれ、7.8%、5.8%、および16.9%を占めた。0.001μg/mlの濃度で加えたc1F6抗体は、CD8+/Vβl7+細胞の拡大を妨げなかった。
【0190】
(実施例8.キメラ1F6はCD70+BおよびT細胞において補体依存性細胞毒性作用を仲介する。)
c1F6が補体依存性細胞毒性作用を仲介する能力を、CD70+BおよびT細胞を用いて調べた。これらの実験では、熱活性化していない正常なヒトの血清を補体源として用いた。正常なヒト血清の存在下で、段階的な量のc1F6または非結合ヒトIgGコントロールを用いて標的細胞を処理した。37℃で2時間培養した後、ヨウ化プロピジウムを5μg/mlの最終濃度まで加えた。次いで、細胞調製物をフローサイメトリーによって調べた。ヨウ化プロピジウムで染色した細胞は、抗体が仲介した補体活性化および膜付着複合体の形成の結果、原形質膜完全性を失った(細胞溶解)と見なした。自然発生的な背景溶解を、抗体が仲介した細胞溶解から取り除き、特異的細胞溶解を生じた。このアッセイを用いた場合、c1F6は、いくつかのCD70+B細胞標的の用量依存的溶解を仲介した(図12)。これらの標的は、リンパ芽球性非ホジキンリンパ腫系(MHH−PREB−1)、EBVバーキット性リンパ腫系(MC116)、およびEBV+リンパ芽球様B細胞系(WIL2−S)を含んでいた。MHH−PREB−1およびWIL2−Sの両方について、最大特異的溶解は>50%であった。MC116の特異的溶解は、用いたc1F6の最大濃度で概ね15%であった。
【0191】
2つのCD70+T細胞標的の感度についても調べた。HHは、CD70を構成的に発現する皮膚T細胞性リンパ腫細胞系である。C9Dは、培養において維持、増殖される正常なT細胞系である。1:1のCESS:T細胞比で、フィトヘマグルチニン(PHA、2μg/ml)、IL−2(100IU/mlのProleukin(登録商標)(アルデスロイキン)Chiron,Emeryville,CA)、および照射CESS細胞(ATCC,Manassas,VA)を用いて休止C9Dを刺激することにより、誘導可能なCD70の表面発現を伴う細胞活性化/拡大周期を開始する。上述したように、正常なヒトの血清の存在下で、c1F6またはコントロールIgGを用いてHHおよびCD70+C9D細胞を培養した。ヨウ化プロピジウム浸透性およびフローサイメトリーにより細胞溶解を評価した(図13)。両方の標的において用量依存的に細胞溶解が検出され、c1F6がCD70+T細胞標的上のCDCも仲介することが示された。
【0192】
(実施例9:キメラ1F6はCD70+腫瘍細胞系に対するADCPを仲介する。)
CD70+WIL2−S細胞および単球由来のマクロファージを食作用細胞源として用いて、c1F6が抗体依存性細胞食作用を仲介する能力について調べた。マクロファージを生成するために、PBMCの単球を、1%のヒト血清を含有する培地において、組織培養フラスコにおよそ1時間付着させた。非付着性細胞をデカントし、残りの付着性細胞を、500ユニット/mLのrhGM−CSFを補った無血清X−VIVO培地(BioWhittaker,Walkersville,MD)で11〜14日間培養させた。マクロファージは、>75%の生存率であり、CD3−/CD14+/CD11b+であり、FcγRI、IIおよびIIIを発現した。c1F6仲介ADCPを検出するために、8×105個のWIL2−S標的細胞を、製造者の取り決めに従って、緑色蛍光細胞膜染料PKH67(Sigma−Aldrich Corp.,St.Louis,MO)で染色した。次いで、これらの細胞を、PBS中の2ug/mLのc1F6を用いて30分間氷上で前培養し、PBSを用いて一度洗浄して余分な抗体を取り除いた。10%のUltra Low IgG FBS(Invitrogen Corp.)を補ったRPMI1640培地中で1個のマクロファージ細胞につき4個の標的細胞の最終比で、96ウェルU底マイクロタイタープレートの2×105個のマクロファージと標的細胞を組み合わせた。5%CO2加湿インキュベータにおいて、37℃で2時間培養した後、細胞混合物をPE結合体化マウス抗CD11b抗体で標識してマクロファージを表面標識した。これらの細胞をPBSで一度洗浄し、PBS中の1%パラホルムアルデヒドで固定し、フローサイメトリーにより分析することにより二重蛍光を食作用活性の測定値として検出した。蛍光顕微鏡検査法のために、CD11b+細胞をAlexa Fluor(登録商標)568ヤギ抗マウスIgG(Molecular Probes,Inc.,Eugene,OR)でさらに標識し、赤色蛍光シグナルを増強させた。図14Aに示すように、標的がc1F6で被覆された場合には、79%のマクロファージがWIL2−S標的細胞を貪食した。対照的に、非結合Igコントロール抗体で処理したWIL2−S細胞と混合したマクロファージでは、食作用の制限が観察された(12.8%)。食作用を示す二重蛍光染色は、標的細胞の摂取によるものであり、蛍光顕微鏡検査により判定されるような結合形成によるものではなかった。緑色WIL2−S細胞物質については、膜が赤色に染色されたマクロファージ内に局在することが明らかに示された。非結合Igで処理したWIL2−S細胞については、赤色に染色されたマクロファージとは個別に離れて存在することが分かった。食作用活性は、抗体に用量特異的に依存していた(図14B)。さらなる検査により、異なる癌種に由来するCD70+形質転換細胞系は全てキメラ1F6仲介ADCPに対して敏感であることが明らかになった(図15)。
【0193】
(実施例10:c1F6のインビボ抗腫瘍活性)
CD70陽性バーキット性リンパ腫系RajiおよびEBV形質転換リンパ芽球様細胞系IM−9をATCC(Manassas,VA)から得た。RPMI(Life Technologies Inc.,Gaithersburg,MD)中で細胞を成長させ、10%ウシ胎仔血清を補った。播種性疾患を確立するために、0.2ml PBSで洗浄し、再懸濁した1×106個のRajiまたはIM−9細胞をC.B.−17 SCIDマウス(Harlan,Indianapolis,IN)の尾側静脈に注射した。注射後、全てのマウスをプールし、次いで、ランダムに各種の処置群に入れた。尾側静脈への静脈注射による細胞移植の1日後に、1mg/kgまたは4mg/kgのc1F6、または4mg/kgのコントロールIgGを単一用量与えた。マウスの重量を測定し、少なくとも週に1度病気の徴候について評価した。マウスが以下のうち1つ以上を特徴とする発病発症の徴候を示したときに、実験装置から取り除き、屠殺した:0日目の体重から15〜20%の体重減少、猫背、昏睡、頭蓋腫脹、または脱水症。Rajiモデルでは、未処置およびコントロールIgGで処置した群の平均生存期間は、それぞれ、21日および24日であった。キメラ1F6は用量依存的に生存期間を延長し、1mg/kgおよび4mg/kgのキメラ1F6で処置した群の平均生存期間は、それぞれ、31日および72日であった(図16)。IM−9モデルでも同様の生存期間の増加が観察された。未処置またはコントロールIgGを用いて処置しない場合の平均生存期間は、それぞれ、35日および28日であった。1mg/kgまたは4mg/kgのc1F6を用いて処置することにより、平均生存期間が、それぞれ、53日および>100日増加した(図16)。両方のモデルでは、図16に示すようなログランクテストに基づいて、生存期間の増加が統計的に有意であることが分かった。
【0194】
(実施例11:抗CD70抗体の投与による実験的アレルギー性脳脊髄炎の処置)
例えば、自己免疫脱髄疾病を含む細胞仲介自己免疫病におけるTh1仲介免疫応答を増強する際のCD70/CD27仲介T細胞−T細胞相互作用の役割を研究で示す。この実施例では、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)(脱髄病多発性硬化症(MS)の動物モデル)を、ヒトCD70の1F6エピトープに対応するマウスCD70のエピトープを認識するキメラまたはヒト化抗CD70抗体で処置する。
【0195】
実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)の誘発および臨床的評価:200μgの結核菌H37Raおよび40μgのプロテオリピドタンパク質の免疫優先エピトープPLP139−151を含む100μlの完全フロイントアジュバント(CFA)エマルジョンによる皮下免疫により、6〜7週齢のメスSJLマウスにR−EAE(再発性EAE)を誘発させる。EAEの徴候は下記のように0〜5段階で採点する:(0)正常;(1)弱々しい尾または後肢の虚弱;(2)弱々しい尾および後肢の虚弱(よたよた歩き);(3)部分的な後肢の麻痺;(4)完全な後肢の麻痺;および(5)死にかけている。再発とは、動物が既に少なくとも全体的な臨床スコアを改善しており、少なくとも2日間安定化した後、臨床スコアの評点を少なくとも1つ上げて、それを(2日より多く)維持することであると定義される。このデータを、特定の処置群における全動物の平均臨床スコアまたは再発率(ある群における再発の総数をその群のマウスの総数で割ったもの)としてプロットする。
【0196】
抗CD70投与計画:抗CD70抗体(0.1〜3mg/kg体重)を合計体積100μlで腹腔内投与する。マウスを3週連続で、1週につき3回処置する(合計9回の処置)。疾患の発症前(7日目)または急性疾患のピーク時(14日目)に処置を開始する。対照として、1つのEAE誘導マウス群を未処置のままにしておく。
【0197】
TNF−αおよびIFN−γ誘導の阻害:EAEを患ったマウスの脳内のTNF−αおよびIFN−γの存在を実証することにより、EAE病の進行を示す炎症性疾患の過程を示す。抗CD70抗体で処置したSJLマウスの脳内でのこれらサイトカインの誘発を阻害することにより、EAEの予防または処置における抗CD70抗体治療の有用性を示す。臨床前(13日目(3回の処置後)および26日目(9回の処置後))および急性疾患のピーク時(20日目(3回の処置後)および33日目(9回の処置後))に処置した少なくとも3匹の動物からから脳を集める。脳を固定し(10%緩衝化ホルマリン)、組織をパラフィンに包埋し、切片化する。次に、各サイトカインに特異的な一次抗体を用いたインキュベート、およびそれに続くFITCと結合体化させた二次抗体を用いたインキュベートにより、TNF−αまたはIFN−γについて切片を個々に染色する。次いで、組織切片を標本用培地中で標本とし、免疫蛍光顕微鏡検査により分析する。抗CD70抗体処置マウス対未処置EAE誘導マウスにおけるTNF−αまたはIFN−γ染色の減少量は、抗CD70抗体治療を用いた炎症サイトカイン誘導の阻害を示す。
【0198】
病気の症状の抑制または再発率:抗CD70抗体処置群内のEAE誘導SJLマウスを未処置EAE誘導マウスと比較して、病気の発症の予防または確立した病気の処置における抗CD70抗体治療の有効性を評価する。前臨床的に処置したマウスに関しては、未処置の対照群と比較した場合のEAE疾患の平均スコアの減少は、病気の予防における抗CD70抗体治療の有効性を示す。急性疾患のピークで処置したマウスに関しては、未処置の対照群と比較した場合の(a)再発率の低下または(b)EAEの処置後の平均スコアの減少は、確立した疾患の処置における抗CD70抗体処置の有効性を示す。
【0199】
(実施例12:抗CD70抗体の投与による移植片対宿主病の処置)
hu−SCIDモデルがヒトの免疫疾患を調べるための効果的なシステムであることが分かった。この移植片対宿主病のモデルでは、ヒトのPBLおよび/またはPBMCに対する抗CD70抗体および抗体/医薬結合体の作用を検証する。
【0200】
免疫不全症マウスにおけるヒトの免疫細胞の確立:ヒトのPBLまたはPBMCを注射する前に、以下のエフェクター細胞について、ここに示す試薬を用いてマウス内で低下させた:ナチュラルキラー(NK)細胞については、例えば、抗アシアロGM1またはTMB−1抗体;マクロファージ/単球については、例えば、クロドロネートカプセル化リポソーム;好中球については、例えば、抗Gr−1抗体;補体については、例えば、コブラ毒因子。ヒトのPBLまたはPBMC(1〜30×107)を、SCIDマウス(メスのCB.17−SCID、SCID−NOD、またはCB.17−SCID/ベージュマウス、8〜12週齢)に移植し、そのマウス内において、機能的ヒト免疫系を長期的に安定して再構築した。
【0201】
実験中にヒト免疫グロブリンの存在について血清を分析することにより、SCEDマウスにおけるヒト細胞の移植を評価する。研究を通して麻酔または安楽死動物の血液、腹腔浸出液および脾臓におけるヒト細胞の数により移植効率も測定する。ヒト細胞の移植が成功すると、抗CD70抗体または抗CD70抗体/医薬結合体(1−10mg/kg体重、腹腔内または静脈内に4〜7日毎に4〜7回投与)でマウスを処置する。ヒト細胞に対する抗体または抗体結合体処置の作用について、処置後異なる日数(1日、4日、7日、14日、および28日)で採取したマウスの血中および/または脾臓内のヒト細胞の数を調べることにより調査を行なう。
【0202】
組織の収集:注射後の特定の時点および実験の最後に、以下の組織を収集し、疾患の進行および安楽死させたマウスの細胞浸潤について分析する:脾臓、リンパ節、胸腺、肝臓、骨髄、肺、脳、腸、結腸、皮膚、膵臓、腹腔浸出液、および血液。
【0203】
(実施例13:抗CD70抗体の投与による喘息の処置)
喘息のマウスモデルにおいて抗CD70抗体の有効性を調べた。0日目、7日目および14日目に、感作のために、Balb/cマウスを10mgのOVA/Alumにより処置した。10mg/kg体重の抗マウスCD70抗体(クローン3B9)を、0日目から7日ごとに4回腹腔内に投与した。次いで、21日目、22日目、および23日目に、5%噴霧状オボアルブミンを用いてマウスの免疫性をテストした。26日目に、マウスを処理して、気管支肺胞洗浄液、血液、排出リンパ節、脾臓、および肺を収集した。得られた結果から、対照群と比較して、3B9で処置した群では、肺への細胞浸潤がより軽度であることが示された。
【0204】
本発明は、本明細書中に記載の特定の実施形態によってその範囲が限定されるものではない。実際、本明細書中に記載したものを含む本発明の各種改変に関しては、上述した説明および添付した図面から当業者には明らかとなるであろう。そのような改変は、添付した請求の範囲に含まれるものとする。
【0205】
本明細書中において、特許出願、特許および科学に関する出版物を含む各種の参考文献を挙げたが、それら各々の開示内容のすべてを本明細書中において参考として援用する。
【数1】
【数2】
【数3】
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【数13】
【数14】
【数15】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−197321(P2012−197321A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−162676(P2012−162676)
【出願日】平成24年7月23日(2012.7.23)
【分割の表示】特願2007−536935(P2007−536935)の分割
【原出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(505314468)シアトル ジェネティックス, インコーポレイテッド (19)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−162676(P2012−162676)
【出願日】平成24年7月23日(2012.7.23)
【分割の表示】特願2007−536935(P2007−536935)の分割
【原出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(505314468)シアトル ジェネティックス, インコーポレイテッド (19)
【Fターム(参考)】
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