説明

癌および自己免疫障害の処置のためのホスファターゼインヒビターとして使用するためのリン酸等価体としてのスルフヒダントイン

本発明は、新規リン酸等価体に関する。本発明は、スルフヒダントイン、または逆スルフヒダントインを有する化合物、その使用および関連する方法に関する。本発明は、式(I)または式(II)の化合物:またはその薬学的に受容可能な塩に関し;ここで、Q、T、m、およびXは、本明細書中に記載される。これらの化合物は、ホスファターゼのインヒビターであり、詳細には、SHP−2のインヒビターである。本発明はまた、本発明の化合物を含む薬学的に受容可能な組成物、およびこれらの化合物を使用する方法、ならびに癌、および自己免疫障害といった種々のホスファターゼ媒介性疾患を処置する組成物を提供する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の技術分野)
本発明は、新規リン酸等価体に関する。本発明は、スルフヒダントイン部分または逆スルフヒダントイン部分を有する化合物、その使用、および関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
多くの生物学的に重要な機能が、リン酸基の転移により調節される。しばしば化合物の活性形態または不活性形態は、この化合物に結合したリン酸基の存在または不在により決定される。従って、多くの生物学的酵素は、このリン酸基転移の調節に関係する。例えば、キナーゼ酵素は、ヌクレオシド三リン酸からタンパク質レセプターへのリン酸基の転移を触媒する。対照的に、ホスファターゼ酵素は、加水分解により基質からリン酸基を取り除く。
【0003】
SHP−2(srcホモロジー2含有タンパク質チロシンホスファターゼ)は、68kDaのホスファターゼタンパク質であり、またSHPTP2、Syp、PTP1DおよびPTP2Cとしても公知である(Luら,Molecular Cell(2001)8,759)。この酵素は、各組織の細胞質内で発現する。SHP−2は、重要なシグナル伝達酵素であり、SHP−2の生物学的機能は、広範に研究されている(Feng,Exp.Cell Res.(1999)253,45;NeelおよびTonks,Curr.Optin.Cell Biol.(1997)9,193;Tonks,Adv.Pharmacol.(1996)36,91)。この酵素は、増殖因子、サイトカインレセプターチロシンキナーゼ、および接着分子を含む、種々のリガンドとの相互作用を通して活性化され、細胞増殖の正の制御因子として最も顕著に認識される。SHP−2はまた、免疫シグナル伝達において重要な機能を果たす(HuyerおよびAlexander,Curr.Biol.(1999)9,R129;Cohenら,Cell(1995)80,237)。SHP−2酵素は、Ras−MAPキナーゼカスケードの活性化に必要とされるが、その経路におけるそのSHP−2酵素の正確な役割は、明らかでない(Van Vactorら,Curr.Optin.Genet.Dev.(1998)8,112)。SHP−2は、近年、Helicobacter pyloriの細胞内標的として同定されている(Higashiら,Science(2002)295,683)。種々の生物学的経路においてSHP−2が果たす重大な役割に起因して、この酵素に対するインヒビターの開発は、癌や他の自己免疫性疾患に対する有用な処置を提供する。
【0004】
SHP−2のようなホスファターゼ酵素を調節する新しい化学的実体の開発は、重要な前進であり、ホスファターゼ酵素が重要な役割を果たす疾患についての新規処置の開発をもたらし得る。リン酸調節因子の開発は、活発な研究の分野であり、広範に研究されている(Ripka,Annual Rev. Med.Chem.(2000)35,21章およびその中で引用された参考文献)。
【0005】
潜在的なホスファターゼインヒビターとして現在まで調査された化合物の大部分は、二つの一般クラスに分割され得る。最も一般的なホスファターゼインヒビターは、一つまたは二つのカルボン酸を組み込み、生理学的pHでリン酸上に存在する二つの形式負電荷を模倣する。ホスファターゼインヒビターの別の一般クラスは、加水分解不可能なリン酸基の模倣物としてモノフルオロホスフィン酸部分またはジフルオロホスフィン酸部分を組み込む。
【0006】
より最近の研究は、リン酸部分を模倣し得る新しい複素環式基の開発(すなわち、リン酸等価体の開発)に焦点が当てられている。成功したリン酸等価体は、理想的には、非加水分解性かつ生物学的に利用可能である。成功したリン酸模倣物はまた、この模倣物の形状およびイオン化状態に依存する。リン酸部分を模倣するように設計された新しい複素環式基の例としては、Cdc25bに対して調査されたテトロン酸誘導体(Sodeokaら,J.Med.Chem.(2001)44(20),3216)、およびタンパク質チロシンホスファターゼ1B(PTB1B)に対して調査されているアゾールジンジオン(azoledinedione)クラスのインヒビター(Malamasら,J.Med.Chem.(2000)43,995)が挙げられる。しかし、この模倣物の効力は、まだ調査中である。
【0007】
2−アルキルスルフヒダントインは、セリンプロテアーゼインヒビターとして報告されているが(Groutasら, Biochemistry(1997)36,4739;Hlastaら,J.Med.Chem.(1995)38,4687)、これらは、リン酸模倣物としては決して認識されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ホスファターゼ酵素の強力な調節因子、およびリン酸基転移の調節に関係する他の酵素の強力な調節因子を開発する必要が、なお大いにある。また、リン酸等価体として有用な新規化学的実体を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、スルフヒダントイン部分が、リン酸基についての等価体置換として有用であるという発見に関する。本発明は、スルフヒダントイン(1,1−ジオキソ[1,2,5]チアジアゾリジン−3−オン)環系または逆スルフヒダントイン(1,1−ジオキソ[1,2,4]チアジアゾリジン−3−オン)環系をリン酸等価体として含む化合物の新規使用を記載する。本発明はまた、ホスファターゼ酵素調節因子としてのこれらの化合物の使用を記載する。詳細には、現在、本発明の化合物、およびその薬学的に受容可能な組成物が、SHP−2ホスファターゼ酵素のインヒビターとして有効であることが見出されている。これらの化合物は、一般式(I)および一般式(II):
【0010】
【化7】

または、その薬学的に受容可能な塩を有し、ここで、Q、T、m、およびXは、以下に記載される通りである。
【0011】
これらの化合物、およびこれらを含む薬学的に受容可能な組成物は、癌および自己免疫疾患のような種々の障害を処置するため、またはその障害のリスクを軽減するために、有用である。
【0012】
(発明の詳細な説明)
本発明は、スルフヒダントイン部分が、リン酸基についての等価体置換として有用であるという発見に関する。本発明は、式(I)および式(II)の化合物:
【0013】
【化8】

またはその薬学的に受容可能な誘導体を提供し、ここで、
Qは、C1〜8脂肪族;C6〜10アリール、5〜10個の環原子を有するヘテロアリール、および3〜10個の環原子を有するヘテロシクリルから選択される、必要に応じて置換された基であり;
Tは、C1〜6アルキリデン鎖から選択され、Tの一つまたは二つの非隣接メチレン単位は、必要に応じてかつ独立して−O−、−NR−、−S−、−C(O)−,−C(O)NR−、−NRC(O)−、−NRC(O)NR−、−SO−、−SO−、−NRSO−、−SONR−、または−NRSONR−によって置換され;
mは、0または1から選択され;
Xは、−CH−、−C(O)−、または−CF−から選択され;そして
各Rは、水素、または必要に応じて置換されたC1〜8脂肪族基から独立して選択されるか、あるいは同じ窒素と結合した二つのR基が、この窒素と一緒になって、その窒素に加えて0〜2個のヘテロ原子を有する3〜7員の複素環式環を形成し、ここで、このヘテロ原子は、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される。
【0014】
本明細書中に記載される場合、以下の定義が、他のように示されない限り、適用されるべきである。句「必要に応じて置換された」は、句「置換または非置換の」と交換可能に使用される。他のように示されない限り、必要に応じて置換された基は、この基の置換可能な位置の各々で置換基を有し得、そして各置換は、他のどの置換からも独立している。
【0015】
本明細書中で使用される場合、用語「脂肪族」または「脂肪族基」は、完全に飽和されているかまたは1以上の不飽和単位を含む、直鎖であるかまたは分枝したC〜C12炭化水素鎖、あるいは完全に飽和であるかまたは1以上の不飽和単位を含む単環式C〜C炭化水素もしくは二環式C〜C12炭化水素を意味するが、これらは、この分子の残りへの単一の結合点を有する芳香族(本明細書中では、「炭素環」、または「シクロアルキル」ともいわれる)ではなく、上記二環式環系におけるどの個別の環も、3〜7員を有する。例えば、適切な脂肪族基としては、直線状または分枝状のアルキル基、アルケニル基、およびアルキニル基、ならびにそれらのハイブリッド(例えば、(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキルおよび(シクロアルキル)アルケニル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
用語「アルキリデン鎖」は、必要に応じて置換された、飽和または不飽和の、直鎖状または分枝状のC1〜6炭素鎖を意味し、この鎖の非隣接飽和炭素の二つまでは、各々が必要に応じてかつ独立して−O−、−NR−、−S−、−C(O)−、−C(O)NR−、−NRC(O)−、NRC(O)NR−、−SO−、−SO−、NRSO−、−SONR−、または−NRSONR−により置換され、ここで、Rは上記のとおりである。アルキリデン鎖上の任意の置換基は、脂肪族基について以下に記載されるとおりである。
【0017】
単独で使用されるか、またはより大きな部分の一部として使用される用語「アルキル」、「アルコキシ」、「ヒドロキシアルキル」、「アルコキシアルキル」、および「アルコキシカルボニル」は、1〜12個の炭素原子を含む直鎖と分枝鎖との両方を包含する。単独で使用されるか、または、より大きな部分の一部として使用される用語「アルケニル」および「アルキニル」は、2〜12個の炭素原子を含む直鎖と分枝鎖との両方を包含する。
【0018】
用語「ハロアルキル」、「ハロアルケニル」および「ハロアルコキシ」は、それぞれ一つ以上のハロゲン原子で置換された、アルキル、アルケニル、およびアルコキシを意味する。用語「ハロゲン」は、F、Cl、BrまたはIを意味する。
【0019】
用語「ヘテロ原子」とは、窒素、酸素または硫黄を意味し、窒素および硫黄の任意の酸化形態、ならびに任意の塩基性窒素の四級化形態を包含する。用語「窒素」はまた、複素環式環の置換可能な窒素を含む。例として、酸素、硫黄または窒素から選択される0〜3個のヘテロ原子を有する、飽和環、または部分的不飽和環において、この窒素は、(3,4−ジヒドロ−2H−ピロリル中のような)N、(ピロリジニル中のような)NH、または(N−置換ピロリジニル中のような)NRであり得る。
【0020】
単独で使用されるか、または、「アラルキル」、「アラルコキシ」、または「アリールオキシアルキル」の場合のようにより大きな部分の一部として使用される用語「アリール」とは、合計5〜14個の環員を有する単環式炭素環系、二環式炭素環系、および三環式炭素環系をいい、この系において少なくとも一つの環は、芳香族であり、そしてこの系において各環は、3〜8個の環員を含む。用語「アリール」は、用語「アリール環」と交換可能に使用され得る。
【0021】
本明細書中で使用される場合、用語「複素環」、「ヘテロシクリル」、または「複素環式」は、5〜14個の環員を有する非芳香族単環式環系、非芳香族二環式環系、または非芳香族三環式環系を意味し、その一つ以上の環員は、ヘテロ原子であり、この系において各環は、3〜7個の環員を含む。
【0022】
単独で使用されるか、もしくは「ヘテロアラルキル」、または「ヘテロアリールアルコキシ」の場合のようにより大きな部分の一部として使用される用語「ヘテロアリール」とは、合計5〜14個の環員を有する単環式環系、二環式環系、および三環式環系をいい、ここで:1)この系において少なくとも一つの環が、芳香族であり;2)この系において少なくとも一つの環が、一つ以上のヘテロ原子を含み;そして3)この系において各環が、3〜7個の環員を含む。用語「ヘテロアリール」は、用語「ヘテロアリール環」または用語「ヘテロ芳香族」と交換可能に使用され得る。
【0023】
アリール基(アラルキル、アラルコキシ、アリールオキシアルキルなどを含む)、またはヘテロアリール基(ヘテロアラルキル、ヘテロアリールアルコキシなどを含む)は、一つ以上の置換基を含み得る。アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、またはヘテロアラルキル基の不飽和炭素原子上の適切な置換基は、ハロゲン;ハロアルキル;−CF−;−R;−OR;−SR;1,2−メチレンジオキシ;1,2−エチレンジオキシ;保護されたOH(例えば、アシルオキシ);フェニル(Ph);Rで置換されたPh;−O(Ph);Rで置換された−O(Ph);−CH(Ph);Rで置換された−CH(Ph);−CHCH(Ph);Rで置換された−CHCH(Ph);−NO;−CN;−N(R;−NRC(O)R;−NRC(O)N(R;−NRCO;−NRNRC(O)R;−NRNRC(O)N(R;−NRNRCO;−C(O)C(O)R;−C(O)CHC(O)R;−CO;−C(O)R;−C(O)N(R;−OC(O)N(R;−S(O);−SON(R;−S(O)R;−NRSON(R;−NRSO;−C(=S)N(R;−C(=NH)−N(R;または−(CHNHC(O)Rから選択され;ここで、各Rは、水素、必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族、非置換の5〜6員のヘテロアリール環、または複素環式環、フェニル(Ph)、−O(Ph)、または−CH(Ph)−CH(Ph)から独立して選択され;ここで、yは0〜6である。RがC1〜6脂肪族である場合、Rは、−NH、−NH(C1〜4脂肪族)、−N(C1〜4脂肪族)、−S(O)(C1〜4脂肪族)、−SO(C1〜4脂肪族)、ハロゲン、−OH、−O(C1〜4脂肪族)、−NO、−CN、−COH、−CO(C1〜4脂肪族)、−O(ハロC1〜4脂肪族)、またはハロ(C1〜4脂肪族)から選択された一つ以上の置換基で置換され得、ここで、各C1〜4脂肪族基は、非置換である。
【0024】
脂肪族基、または非芳香族複素環式環は、一つ以上の置換基を含み得る。脂肪族基、または非芳香族複素環式環の飽和炭素原子上の適切な置換基は、アリール基またはヘテロアリール基の不飽和炭素について上に列挙された置換基、および以下:=O、=S、=NNHR、=NN(R、=NNHC(O)R、=NNHCO(C1〜4脂肪族)、=NNHSO(C1〜4脂肪族)、または=NRから選択され、各Rは、水素、または必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族から独立して選択される。RがC1〜6脂肪族である場合、Rは、−NH、−NH(C1〜4脂肪族)、−N(C1〜4脂肪族)、ハロゲン、−C1〜4脂肪族、−OH、−O(C1〜4脂肪族)、−NO、−CN、−COH、−CO(C1〜4脂肪族)、−O(ハロC1〜4脂肪族)、または−ハロC1〜4脂肪族から選択される一つ以上の置換基で置換され得、ここで各C1〜4脂肪族は、非置換である。
【0025】
非芳香族複素環式環の窒素原子上の置換基は、−R、−N(R、−C(O)R、−CO、−C(O)C(O)R、−C(O)CHC(O)R、−SO、−SON(R、−C(=S)N(R、−C(=NH)−N(R、または−NRSOから選択され;ここで、各Rは、水素、必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族、必要に応じて置換されたフェニル(Ph)、必要に応じて置換された−O(Ph)、必要に応じて置換された−CH(Ph)、必要に応じて置換された−CHCH(Ph)、または必要に応じて置換された5〜6員のヘテロアリール環もしくは必要に応じて置換された5〜6員の複素環式環から独立して選択される。Rが、C1〜6脂肪族、またはフェニル環である場合、Rは、−NH、−NH(C1〜4脂肪族)、−N(C1〜4脂肪族)、ハロゲン、−C1〜4脂肪族、−OH、−O(C1〜4脂肪族)、−NO、−CN、−COH、−CO(C1〜4脂肪族)、−O(ハロC1〜4脂肪族)、またはハロ(C1〜4脂肪族)から選択された一つ以上の置換基で置換され得、ここで、各C1〜4脂肪族は、非置換である。
【0026】
本発明の化合物は、化学的に実現可能かつ安定した化合物に限定される。従って、上記の化合物における置換基または可変体の組み合わせは、そのような組み合せが、安定な化合物、または化学的に実現可能な化合物を生じる場合のみ許される。安定な化合物、または化学的に実現可能な化合物とは、少なくとも一週間の間、水分も他の化学的に反応する条件のもない場合40℃以下の温度で保たれた場合、その化学構造が、実質的には変化しない化合物である。
【0027】
他のように規定されない限り、本明細書中に示された構造はまた、この構造の全ての立体化学形態(すなわち、各不斉中心についてのR配置およびS配置)を含む。従って、本発明の化合物の単一の立体化学的異性体、ならびに鏡像異性混合物および立体異性混合物は、本発明の範囲内である。他のように規定されない限り、本明細書中に示される構造はまた、一つ以上の同位体が富んだ原子の存在のみ異なる化合物を含む。例えば、重水素もしくは三重水素による水素の置換、または13C−が富んだ炭素もしくは14C−が富んだ炭素による炭素の置換を除いて本発明の構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。
【0028】
本発明の化合物は、二者択一型の互変異性形態で存在し得る。他のように示されない場合、どちらの互変異性体の表示も、もう一方の互変異性体を包含する。
【0029】
本明細書中で使用される場合、用語「リガンド」とは、タンパク質と相互作用する任意の分子を意味する。従って、用語リガンドは、タンパク質の基質、タンパク質のアゴニスト、タンパク質のアンタゴニストおよび別のタンパク質を含むが、これらに限定されないことが理解される。
【0030】
本明細書中で使用される場合、用語「タンパク質:リガンド複合体」とは、タンパク質に結合したリガンドをいう。
【0031】
本明細書中で使用される場合、用語「基質」とは、タンパク質(特に酵素)が作用する分子をいう。
【0032】
本明細書中で使用される場合、用語「機構上重要なリン酸基」とは、リガンドにおけるリン酸基であって、そのリガンドとタンパク質との間の相互作用に関係するリン酸基を意味する。好ましくは、この相互作用は、誘因性相互作用である。より好ましくは、この相互作用は、化学的相互作用である。例えば、機構上重要なリン酸基は、タンパク質との共有結合的相互作用ならびに/または非共有結合的相互作用(例えば、水素結合、イオン性相互作用、親油性相互作用および立体相互作用)に関係し得る。
【0033】
本明細書中で使用される場合、用語「リン酸等価体」、または「リン酸模倣物」は、タンパク質の本来のリガンドにおける機構上重要なリン酸基の役割を模倣する部分を意味する。
【0034】
本明細書中で使用される場合、用語「スルフヒダントイン部分」、または「スルフヒダントイン断片」は、式:
【0035】
【化9】

を含む官能基を意味する。C−4上の二つの結合は、同じ原子(例えば、酸素)、または二つの異なる原子に対し得ると理解される。当業者は、式I−Dを含む化合物が、式I−Dにおいて波線により示されるようなC−4位およびN−5位で置換され得る一方、これらの位置での非水素置換基の存在または非存在は、スルフヒダントイン部分の最重要部分を構成する核環構造を変化しないことを認識する。従って、当業者は、スルフヒダントイン部分またはスルフヒダントイン断片を有する化合物が、化学的に実現可能かつ安定である限り、式I−D(その任意の置換された変異体を含む)のような、5員の複素環式1,1−ジオキソ[1,2,5]チアジアゾリジン−3−オンの核により規定されることを認識する。
【0036】
本明細書中で使用される場合、用語「逆スルフヒダントイン部分」、または「逆スルフヒダントイン断片」は、式:
【0037】
【化10】

を含む官能基を意味する。C−5上の二つの結合は、同じ原子(例えば、酸素)、または二つの異なる原子に対し得ると理解される。当業者は、式II−Dを含む化合物が、式II−Dにおいて波線により示されるようなN−4位およびC−5位で置換され得る一方、これらの位置での非水素置換基の存在または非存在は、逆スルフヒダントイン部分の最重要部分を構成する核環構造を変化しないことを認識する。従って、当業者は、逆スルフヒダントイン部分または逆スルフヒダントイン断片を有する化合物が、化学的に実現可能かつ安定である限り、式II−D(その任意の置換された変異体を含む)のような、5員の1,1−ジオキソ[1,2,4]チアジアゾリジン−3−オンの複素環式核により規定されることを認識する。
【0038】
本明細書中で使用される場合、用語「等価体」または「古典的等価体(classical isostere)」は、化学的特性質および物理学的特性が、別の基または分子の化学的特性および物理学的特性と類似する基または分子を意味する。用語等価体は、分子全体ではなく、分子の一部をいうと一般に理解される(Thornber,Chem.Soc.Rev.(1979)8,563)。
【0039】
本明細書中で使用される場合、用語「生物学的等価体」、「生物学的等価性置換体」、または「非古典的等価体」は、別の基または分子に対する基または分子の化学的類似性および物理学的類似性が、類似の生物学的特性を生じることを意味する。用語「生物学的等価体」は、分子全体ではなく、分子の一部をいうと一般に理解される。化合物の生物学的等価体は、生物学的に重要なパラメータにおいて類似性を生じ得る。化合物の生物学的等価体は、毒性を減弱し、活性を改変し、そして/またはその化合物の代謝を変化させるのに有用であり得る。以下のパラメータは、生物学的等価性置換体を発生させることにおいて考慮され得る:サイズ、形状、電子分布、脂溶性、水溶性、pK、化学反応性、および水素結合能(Thornber,Chem.Soc.Rev.(1979)8,563に記載され、その全体が、本明細書中に参考として援用される)。
【0040】
本明細書中で使用される場合、用語「結合ポケット」とは、その形状の結果として、別の化学的実体または化合物と首尾よく結合する、分子または分子複合体の領域をいう。当業者は、本来のリガンドまたは基質の、それらの対応するレセプターまたは酵素の結合ポケットとの結合は、作用の多くの生物学的機構の基礎であることを認識する。同様に、多くの薬剤は、レセプターおよび酵素の結合ポケットとの結合を介して、それらの生物学的効果を発揮する。そのような結合は、結合ポケットの全ての部分または任意の部分に生じ得る。そのような結合の理解は、薬物の標的レセプター酵素とのより有利な結合を有し、それゆえに改善された生物学的効果を有する薬剤の設計に至るのを補助し得る。従って、この情報は、レセプターまたは酵素の潜在的なリガンドもしくは調節因子(例えば、セリン/スレオニンホスファターゼ、二重特異的ホスファターゼ、およびホスホチロシンホスファターゼ(PTP)、ならびに特にSHP−2を含むホスファターゼのインヒビター)の設計において役立つ。
【0041】
用語「結合する」は、化学的実体または化合物、あるいはそれらの部分の間の近接を記載するために本明細書中で使用される。この結合は、非共有結合であっても(ここで、並置は、静電相互作用またはファンデルワールス相互作用により、エネルギー的に好ましい)、または共有結合であっても良い。
【0042】
本発明は、スルフヒダントイン部分または逆スルフヒダントイン部分が、リン酸基の等価性置換体として有用であるという発見に関する。従って、本発明の一つの実施形態は、式:
【0043】
【化11】

を有するリン酸等価体に関する。
【0044】
好ましい実施形態に従って、スルフヒダントイン部分または逆スルフヒダントイン部分による、分子内の機構上重要なリン酸基の置換は、以下のスキーム1およびスキーム2において構造的に表され得、ここで、「Molec」は、機構上重要なリン酸基を含む分子の残部を表す:
【0045】
【化12】

スルフヒダントイン部分によるリン酸の等価性置換。
【0046】
【化13】

逆スルフヒダントイン部分によるリン酸の等価性置換。
【0047】
好ましい実施形態に従って、リン酸等価体は、リン酸生物学的等価体である。
【0048】
本発明の一つの実施形態は、リン酸等価体としてスルフヒダントイン部分または逆スルフヒダントイン部分を含む化合物を使用する方法に関し、上記化合物をタンパク質と接触させる工程を包含し、ここで、このタンパク質の本来のリガンドは、少なくとも一つの機構上重要なリン酸基を含む。好ましくは、タンパク質は、酵素である。好ましくは、酵素は、本来のリガンドについての結合ドメインである。より好ましくは、結合ドメインは、本来のリガンドについてのレセプターである。
【0049】
好ましい実施形態において、タンパク質は、ホスファターゼ;キナーゼ;ヌクレオチダーゼ;SH2ドメイン;デヒドロゲナーゼ、オキシダーゼ、レダクターゼ、および他のNAD依存性タンパク質もしくはフラビン依存性タンパク質;RNAヘリカーゼ、およびDNAヘリカーゼ;RNAポリメラーゼおよびDNAポリメラーゼ;ナトリウム/カリウムATPアーゼ(プロトンポンプ);P型カチオン輸送ATPアーゼ;カルボキシキナーゼ;ATPシンターゼ;ATP依存性プロテアーゼ;ホスホトランスフェラーゼ;ホスホリボシルトランスフェラーゼ;ミオシン、キネシンおよび他のモータータンパク質;ダイナミンおよびダイナミン様タンパク質;ADPリボシル化因子;DNA修復タンパク質;RNAスプライシングタンパク質;DNAリガーゼ;補酵素A依存性酵素;アシルキャリアタンパク質ホスホパンテテインドメイン;シトレートリアーゼ;チアミンピロリン酸依存性タンパク質;ホスホジエステラーゼ;RNAシクラーゼ;カルバモイルリン酸シンターゼ;グルコサミン−6−リン酸イソメラーゼ;トリオースリン酸イソメラーゼ;リブロースリン酸3−エピメラーゼ;ピリドキサルリン酸依存性タンパク質;cAMP依存性タンパク質およびcGMP依存性タンパク質;PID(ホスホチロシン相互作用ドメイン)タンパク質;ホスホリパーゼ;ホスファチジルエタノールアミン結合タンパク質;PHドメイン;リン脂質結合タンパク質;リン酸依存性レセプター;イノシトールリン酸結合タンパク質;ホスホチロシン結合タンパク質;ホスホセリン結合タンパク質;ホスホヒスチジン結合タンパク質;リン酸依存性転写調節因子;リン酸依存性トランスポーター;硫酸依存性トランスポーター;NTPアーゼ;DNA複製タンパク質;ヌクレオチド糖トランスフェラーゼ;ホスホリラ−ゼ;糖ホスホトランスフェラーゼ;スルファターゼ;ヌクレアーゼ;およびアレスチンからなる群より選択される。好ましくは、このタンパク質はホスファターゼである。より好ましくは、このホスファターゼはSHP−2である。
【0050】
別の好ましい実施形態において、本来のリガンドは、タンパク質の基質である。別の好ましい実施形態において、本来のリガンドは、別のタンパク質である。なお別の好ましい実施形態において、本来のリガンドは、タンパク質のアゴニストである。別の実施形態において、本来のリガンドは、タンパク質のアンタゴニストである。
【0051】
本発明の一つの実施形態は、タンパク質と結合可能な化合物を同定する方法に関し、ここで、このタンパク質は、少なくとも一つの機構上重要なリン酸基を含む本来のリガンドを有し、この方法は、以下の工程:
a)スルフヒダントイン部分または逆スルフヒダントイン部分を含む第一の化合物を選択する工程;
b)必要に応じてこの第一の化合物を改変して、該タンパク質と結合のために少なくとも一つのさらなる構造の特徴を最適化する工程;
を包含する。
【0052】
好ましい実施形態に従って、この最適化は、構造−活性の関係を最適化する工程を包含する。より好ましい実施形態において、この最適化は、分子モデリングを包含する。
【0053】
別の好ましい実施形態において、このタンパク質は酵素である。好ましくは、酵素は、本来のリガンドについての結合ドメインである。より好ましくは、結合ドメインは、本来のリガンドについてのレセプターである。
【0054】
好ましい実施形態において、本来のリガンドは、タンパク質の基質である。別の実施形態において、本来のリガンドは、別のタンパク質である。好ましい実施形態において、本来のリガンドはタンパク質のアゴニストである。別の実施形態において、本来のリガンドはタンパク質のアンタゴニストである。
【0055】
好ましい実施形態において、この化合物は、タンパク質のインヒビターである。
【0056】
別の好ましい実施形態において、このタンパク質は、ホスファターゼである。より好ましくは、この化合物はホスファターゼインヒビターである。
【0057】
別の好ましい実施形態において、このホスファターゼは、SHP−2である。より好ましくは、この化合物はSHP−2インヒビターである。
【0058】
本発明の1つの実施形態は、タンパク質と結合可能な化合物を生成する方法に関し、ここで、このタンパク質は、少なくとも一つの機構上重要なリン酸基を含む本来のリガンド有し、この方法は、本来のリガンド中のリン酸基をスルフヒダントイン部分または逆スルフヒダントイン部分により置換して、この化合物を生成する工程を包含する。
【0059】
好ましい実施形態において、タンパク質は、酵素である。好ましくは、この酵素は本来のリガンドについての結合ドメインである。より好ましくは、この結合ドメインは、本来のリガンドについてのレセプターである。
【0060】
好ましい実施形態において、本来のリガンドはタンパク質の基質である。別の実施形態において、本来のリガンドは別のタンパク質である。好ましい実施形態において、本来のリガンドはタンパク質のアゴニストである。別の実施形態において、本来のリガンドはタンパク質のアンタゴニストである。
【0061】
好ましい実施形態において、この化合物はタンパク質のインヒビターである。
【0062】
別の好ましい実施形態において、このタンパク質はホスファターゼである。より好ましくは、この化合物はホスファターゼインヒビターである。
【0063】
別の好ましい実施形態において、このホスファターゼはSHP−2である。より好ましくは、この化合物はSHP−2インヒビターである。
【0064】
本発明の一つの実施形態は、タンパク質:リガンド複合体に関し、ここで、このリガンドは、式Iに従う化合物である。
【0065】
好ましい実施形態において、このタンパク質は酵素である。好ましくは、酵素は本来のリガンドについての結合ドメインである。より好ましくは、結合ドメインは本来のリガンドについてのレセプターである。
【0066】
別の好ましい実施形態において、このタンパク質はホスファターゼである。より好ましくはこのホスファターゼはSHP−2である。
【0067】
好ましい実施形態において、この化合物はタンパク質の基質である。別の実施形態において、この化合物はタンパク質のインヒビターである。好ましい実施形態において、この化合物はタンパク質のアゴニストである。別の実施形態において、この化合物はタンパク質のアンタゴニストである。
【0068】
理論に束縛されることを望むことはなく、本出願人らは、本明細書中に記載されるスルフヒダントイン部分および逆スルフヒダントイン部分は、例えば、スルフヒダントイン部分の分子モデルをリン酸基の分子モデルと重ね合わせることにより、実証され得るように、リン酸基と同じ形状を有すると考える。形状におけるこの類似性に基づいて、本発明のスルフヒダントイン部分および逆スルフヒダントイン部分は、リン酸基の様式と類似の様式で結合すると期待される。さらに、本明細書中に記載されるスルフヒダントイン部分および逆スルフヒダントイン部分は、ホスファターゼ酵素のような酵素の共有結合性で不可逆性のインヒビターとして有用であり得、そして、例えば、結晶構造データを入手することにおいてプローブとしての役割を果たし得る。
【0069】
本発明の一つの実施形態は、リン酸等価体としてのスルフヒダントイン部分または逆スルフヒダントイン部分の使用に関する。当業者は、本発明のリン酸等価体を設計するための多くの手段が存在することを理解する。これらの同じ手段は、少なくとも一つの機構上重要なリン酸基を含む本来のリガンドを有するタンパク質のリガンドとして、スクリーニングのための化合物を選択するのに使用され得る。この設計または選択は、リン酸基の結合ポケットを満たす種々の部分の選択から開始してもよい。
【0070】
個々のリン酸基の結合ポケットを満たすような部分を選択するための多くの手段が、存在する。これらとしては、リン酸基の結合ポケットの物理的モデルまたはコンピュータモデルの視覚検査、および選択された部分のモデルを種々のリン酸基の結合ポケットへ手動でドッキングすることが挙げられる。当該分野で周知かつ入手可能であるモデリングソフトウェアが、使用され得る。このモデリングソフトウェアとしては、QUANTA(Molecular Simulations,Inc.,Burlington,MA,1992)、SYBYL(Molecular Modeling Software,Tripos Associates,Inc.,St.Louis,MO,1992)、AMBER(Weinerら,J.Am.Chem.Soc.(1984)106,765−784)、またはCHARMM(Brooksら,J.Comp.Chem.(1983)4,187−217)が挙げられる。このモデリング工程は、次いでCHARMM、およびAMBERのような標準的な分子力学の力場を用いるエネルギー極小化が続き得る。さらに、本発明の結合部分を選択するプロセスを補助するための、多くのより特化したコンピュータプログラムが存在する。これらとしては、以下が挙げられる:
1.GRID(Goodford,A Computational Procedure for Determining Energetically Favorable Binding Sites on Biologically Important Macromolecules,J.Med.Chem(1985)28,849−857)。GRIDは、Oxford University,Oxford,UKから入手可能である;
2.MACCS−3D(MDL Information Systems,San Leandro,CA)のような3Dデータベースシステム。この領域は、Martin(Martin,3D Database Searching in Drug Design,J.Med.Chem.(1992)35,2145−2154)により概説されている;
3.HOOK(Molecular Simulationsから入手可能、Burington,MA)。
【0071】
リン酸等価体の上記コンピュータ支援モデリングに加えて、本発明のリン酸等価体は、タンパク質の空の活性部位または結合ポケットを使用するかまたは必要に応じてタンパク質の公知のインヒビターのいくつかの部分を含むかのいずれかによって「デノボ(de novo)」を構築し得る。このような方法は、当該分野において周知である。この方法としては、例えば:
1.LUDI(Bohm,The Computer Program LUDI:ANew Method for the De Novo Design of Enzyme Inhibitors,J.Comp.Aid.Molec.Design.(1992)6,61−78)。LUDIはBiosym Technologies,San Diego,CAから市販される。
【0072】
2.LEGEND(Nishibataら,Tetrahedron(1991)47,8985)。LEGENDは、Molecular Simulations,Burlington,MAから市販される。
【0073】
3.LeapFrog(Tripos associates,St.Louis,MOから市販される)
が挙げられる。
【0074】
薬剤のモデリングについて一般に使用される多くの技術が、使用され得る。概説については、Cohenら,Molecular Modeling Software and Methods for Medicinal Chemistry,J.Med.Chem(1990)33,883−894を参照のこと。同様に特定のドラッグデザインの計画に適用され得る化学文献の技術において多くの例が存在する。概論については、Naviaら,The Use of Structural Information in Drug Design,Current Options in Structual Biology(1992)2,202−210)を参照のこと。
【0075】
種々の従来の技術は、上の評価、およびホスファターゼ阻害活性についての化合物のスクリーニングに必要な評価の各々を実施するのに使用され得る。一般に、これらの技術は、所与の部分の位置および所与の部分の結合近接度、結合したリガンドの占有空間、所与の化合物の結合の変形エネルギー、ならびに静電相互作用エネルギーを決定する工程を包含する。上の評価において有用な従来の技術の例としては、量子力学、分子力学、分子動力学、モンテカルロサンプリング(Monte Carlo sampling)、系統的探索、および距離幾何学的方法が挙げられる(Marshall,Ann.Ref.Pharmacol.Toxicol.(1987)27,193)。特定のコンピュータソフトウェアが、これらの方法を実施において使用するために開発されている。そのような使用のために設計されたプログラムの例としては、Gaussian92,revision E.2(Frisch,Gaussian,Inc.,Pittsburgh,PA(c)1993);AMBER,version 4.0(P.A.Kollman,University of California at San Francisco(c)1993);QUANTA/CHARMM(Molecular Simulations,Inc.,Burlington,MA(c)1992);およびInsight II/Discover(Biosysm Technologies Inc.,San Diego,CA(c)1992)が挙げられる。これらのプログラムは、例えば、Silicon Graphics Indigo 2 workstation またはIBM RISC/6000 workstation model 550を使用して実行され得る。他のハードウェアシステムおよびソフトウェアパッケージは、公知であり、当業者に対して明白に適用される。
【0076】
本発明の一つの実施形態は、式(I)および式(II)の化合物に関し、ここで、ラジカルQは、以下に示すように:
【0077】
【化14】

スルフヒダントイン中核部分または逆スルフヒダントイン中核部分へ直接結合するか(I−AおよびII−A);−CH−を介するか(I−BおよびII−B);または−C(O)NH−(C1〜6アルキリデン)を介する(I−CおよびII−C)。ここで、XおよびQは、上記のとおりである。
【0078】
式Iまたは式II、あるいは派生式I−A、II−A、I−B、II−B、I−CまたはII−Cのいずれかの好ましいQ基は、C6〜10アリールおよび5〜6員のヘテロシクリルから選択される必要に応じて置換された基である。
【0079】
好ましい実施形態に従って、式Iまたは式IIの化合物、もしくは派生式I−A、II−A、I−B、II−B、I−C、またはII−Cのいずれかにおいて、Xは、−CH−である。
【0080】
式Iの好ましい化合物は、以下の表1に示される。
【0081】
【化15】

【0082】
【化16】

【0083】
【化17】

本発明の化合物は、以下に示されるスキームおよび合成例により示されるような、アナログ化合物について当業者に公知の方法により一般に調製され得る。
【0084】
【化18】

スキーム3は、式Iの化合物の調製のための一般的な方法を示し、ここでmは0であり、
Qは置換されたフェニル環である。アニリン1は、アルキル化され得、アミン2を形成する。次いで、アミン2は、(蟻酸をクロロスルホニルイソシアネートに添加することにより形成される)スルファミルクロリドと結合し得、スルホンアミド3を提供する(Albericioら,J.Combi.Chem.(2001)3,290)。次いで環化が、なされ得、スルフヒダントイン4を形成し得、このスルフヒダントイン4は、当該分野で公知の方法を通して必要とされるとおりにさらに誘導され得る。他のアニリン誘導体が、本発明に従って他の化合物を提供するために使用され得ることは、当業者に対して明らかである。
【0085】
【化19】

スキーム4は、式Iの化合物の調製のための別の一般的な方法を示し、ここで、Tは−CH−であり、Qは置換されたフェニル環である。−CH−リンカーは、アルデヒド7の還元的アミノ化により提供され、アミン8を形成し(Grundke,Synthesis(1987)1115)、そしてこのアミン8は、上のスキーム3に示されるとおりにさらに誘導され得る。
【0086】
SHP−2ホスファターゼのインヒビターとして本発明において利用される化合物の活性は、当該分野で公知の方法に従ってインビトロ、インビボ、または細胞株においてアッセイされ得る。インビトロアッセイとしてはSHP−2によるリン酸化の阻害を定量するアッセイが挙げられる。インビトロアッセイは、SHP−2に結合するインヒビターの能力を定量する。インヒビターの結合は、結合する前にインヒビターを放射標識し、インヒビター/SHP−2複合体を単離し、そして結合した放射標識の量を定量することにより測定され得る。あるいは、インヒビターの結合は、新規インヒビターを公知の放射リガンドに結合したSHP−2とインキュベートする競合実験を実施することにより決定され得る。SHP−2インヒビターのような本発明において利用される化合物をアッセイするための詳細な条件は、以下の実施例に示される。
【0087】
別の実施形態に従って、本発明は、本発明の化合物またはその薬学的に受容可能な誘導体、および薬学的に受容可能なキャリア、アジュバントまたはビヒクルを含む組成物を提供する。本発明の組成物における化合物の量は、生物学的サンプルまたは患者において、ホスファターゼ酵素(特にSHP−2)を検出可能に調節するのに有効であるような量である。好ましくは、本発明の組成物は、このような組成物を必要とする患者に対する投与のために処方される。最も好ましくは、本発明の組成物は、経口投与で患者に投与するために処方される。
【0088】
本明細書中で使用される場合、用語「患者」は、動物、好ましくは哺乳動物、そして最も好ましくはヒトを意味する。
【0089】
用語「薬学的に受容可能なキャリア、アジュバントまたはビヒクル」は、処方される化合物の薬理的活性を破壊しない、非毒性のキャリア、アジュバントまたはビヒクルをいう。本発明の組成物において使用され得る薬学的に受容可能なキャリア、アジュバントまたはビヒクルとしては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝物質(例えば、リン酸塩)、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分のグリセリド混合物、水、塩、または電解液(例えば、硫酸プロタミン)、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩類、コロイダルシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベース物質、ポリエチレングリコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリアクリレート、蝋、ポリエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール、および羊毛脂が挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
本明細書中で使用される場合、用語「検出可能に調節する」は、この組成物およびホスファターゼ酵素を含むサンプルとこの組成物の非存在下におけるホスファターゼ酵素を含む等価なサンプルとの間のホスファターゼ活性の計測可能な変化を意味する。
【0091】
「薬学的に受容可能な誘導体」とは、本発明の化合物の任意の非毒性塩、エステル、エステル塩、または他の誘導体を意味し、ここで本発明の化合物は、レシピエントへの投与の際に、直接的にかまたは間接的のどちらかで本発明の化合物、もしくは阻害活性代謝物またはその残留物を提供可能である。
【0092】
本発明の化合物の薬学的に受容可能な塩としては、薬学的に受容可能な無機酸および有機酸ならびに無機塩基および有機塩基由来の塩が挙げられる。適切な酸の塩の例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、蟻酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パモエート(palmoate)、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシレート、およびウンデカン酸塩が挙げられる。他の酸(例えば、シュウ酸)は、その酸自体は、薬学的に受容可能でないものの、本発明の化合物およびそれらの薬学的に受容可能な酸付加塩を得るのに中間体として有用な塩の調製に使用され得る。
【0093】
適切な塩基から誘導された塩としては、アルカリ金属(例えば、ナトリウムおよびカリウム)塩、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)塩、アンモニウム塩、およびN(C1〜4アルキル)塩が挙げられる。本発明はまた、本明細書中で開示される化合物の任意の塩基性窒素含有基の四級化を想定する。水溶性もしくは油溶性または分散可能な産物は、このような四級化によって得られ得る。
【0094】
本発明の組成物は、経口的、非経口的、吸入スプレーにより、局所的、経直腸的、鼻内、頬側、膣内、または移植レザバーを介して、投与され得る。本明細書中で使用される場合、用語「非経口」は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑膜内、胸骨内、骨髄腔内、肝臓内、病巣内および頭蓋内の注射技術、もしくは注入技術を包含する。好ましくは、この組成物は、経口、腹膜内または静脈内に投与される。本発明の組成物の滅菌した注射可能形態は、水性懸濁液または油性懸濁液であり得る。これらの懸濁液は、適切な分散剤、または湿潤剤ならびに懸濁剤を使用して、当該分野で公知の技術に従って処方され得る。この滅菌した注射可能調製物はまた、非毒性の非経口的に受容可能な希釈剤または溶媒(例えば、1,3−ブタンジオールにおける溶液)中の、滅菌した注射可能な溶液または懸濁液であり得る。使用し得る受容可能なビヒクルおよび溶媒には、水、リンガー溶液、および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに滅菌した不揮発性油が、従来、溶媒または懸濁媒体として使用されている。
【0095】
この目的のために、任意の温和な不揮発性油が、使用され得、この不揮発性油としては、合成モノグリセリドまたは合成ジグリセリドが挙げられる。脂肪酸(例えば、オレイン酸およびそのグリセリド誘導体)は、注射可能物の調製において有用であり、これは、天然の薬学的に受容可能な油(例えば、オリーブ油またはヒマシ油)(特にポリオキシエチル化形態における)である。これらの油状溶液または油状懸濁液はまた、長鎖アルコール希釈剤、または長鎖アルコール分散剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、または乳濁液および懸濁液を含む薬学的に受容可能な投薬形態の処方において一般に使用される類似の分散剤)を含有し得る。薬学的に受容可能な固体、液体または他の投薬形態の製造において一般に使用される他の一般に使用される界面活性剤(例えば、Tween、Span、および他の乳化剤、もしくはバイオアベイラビリティー向上剤)はまた、処方の目的のために使用され得る。
【0096】
本発明の薬学的に受容可能な組成物は、任意の経口的に受容可能な投薬形態において経口的に投与され得、この投薬形態としては、カプセル、錠剤、水性懸濁液、または溶液が挙げられるが、これらに限定されない。経口使用のための錠剤の場合において、一般に使用されるキャリアとしては、ラクトースおよびコーンスターチが挙げられる。潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)はまた、代表的に添加される。カプセル形態における経口投与について、有用な希釈材としては、ラクトースおよび乾燥コーンスターチが挙げられる。水性懸濁液が、経口使用のために必要とされる場合、活性成分は、乳化剤および懸濁剤と組み合わされる。望ましい場合、特定の甘味剤、香味剤、または着色剤もまた、添加され得る。
【0097】
あるいは、本発明の薬学的に受容可能な組成物は、直腸投与のための坐薬形態で投与され得る。これらは、この薬剤を、室温では固体だが、直腸内の温度では液体である適切な無刺激の賦形剤と混合することにより調製され得、従って、直腸内で溶解し、薬物を放出する。このような物質としては、ココアバター、黄蝋およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0098】
本発明の薬学的に受容可能な組成物はまた、特に処置標的が、局所適用により容易に接近可能な領域または組織を含む場合(眼、肌、または下部腸管の疾患を含む)、局所的に投与され得る。適切な局所処方物は、これらの領域または器官の各々のために容易に調製される。
【0099】
下部腸管についての局所適用は、直腸の坐薬処方(上を参照のこと)または適切な浣腸処方において実施され得る。局所的な経皮パッチもまた、使用され得る。
【0100】
局所適用について、薬学的に受容可能な組成物は、一つ以上のキャリア中に懸濁または溶解した活性成分を含有する適切な軟膏中に処方され得る。本発明の化合物の局所投与のためのキャリアとしては、鉱油、液体ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化蝋、および水が挙げられるがこれらに限定されない。あるいは、薬学的に受容可能な組成物は、一つ以上の薬学的に受容可能なキャリア中に懸濁または溶解した活性成分を含有する適切なローションまたはクリーム中に処方され得る。適切なキャリアとしては、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステル蝋、セテアリールアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、および水が挙げられるがこれらに限定されない。
【0101】
眼科用途について、薬学的に受容可能な組成物は、等張のpH調整した滅菌生理食塩水中の微小化懸濁液としてか、または、好ましくは、等張のpH調整した滅菌生理食塩水中
の溶液(ベンジルアルコニウムクロリドのような防腐剤を有するか、または有さないかのいずれか)として処方され得る。あるいは、眼科用途について、薬学的に受容可能な組成物は、ワセリンのような軟膏中に処方され得る。
【0102】
本発明の薬学的に受容可能な組成物はまた、鼻エアロゾルまたは吸入により投与され得る。このような組成物は、薬学的処方の分野において周知の技術に従って調製され、ベンジルアルコールまたは他の適切な防腐剤、生物学的利用能を増強するための吸収促進剤、炭化フッ素および/もしくは他の従来の可溶化剤または分散剤を使用して、生理食塩水中の溶液として調製され得る。
【0103】
最も好ましくは、本発明の薬学的に受容可能な組成物は、経口投与のために処方される。
【0104】
単一の投薬形態において組成物を生成するためにキャリア物質と組合され得る本発明の化合物の量は、処置される宿主および特定の投与形態に依存して変化する。好ましくは、この組成物は、インヒビターの一日当たり体重1kg当たり0.01mg〜100mgの間の投薬量が、これらの処方物を受け取る患者に投与され得るように、処方されるべきである。
【0105】
任意の特定の患者のための特定の投薬量および処置レジメンは、種々の要因(使用する特定の化合物の活性;年齢;体重;身体全体の健康;患者の性別および食事;投与の時間;排泄速度;薬物の組み合わせ;担当医の判断;および処置される特定の疾患の重篤度を含む)に依存することもまた理解されるべきである。この組成物中の本発明の化合物の量はまた、この組成物中の特定の化合物に依存する。
【0106】
処置もしくは予防される特定の状態または疾患に依存して、単独療法(monotherapy)でこの状態を処置または予防するために通常投与されるさらなる治療剤はまた、本発明の組成物中に存在し得る。
【0107】
例えば、化学療法剤、または他の抗増殖剤が、本発明の化合物と組み合わされ得、癌および増殖性疾患を処置する。公知の化学療法剤の例としては、GreevecTM、アドリアマイシン、デキサメタゾン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、フルオロウラシル、トポテカン、タキソル、インターフェロン、および白金誘導体(platinum derivative)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0108】
本発明の化合物と組み合わされ得る薬剤の他の例としては、抗炎症剤(例えば、コルチコステロイド、TNFブロッカー、IL−1 RA、アザチオプリン、シクロホスファミド、およびスルファサラミン);免疫調節剤および免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン、タクロリムス、ラパマイシン、ミコフェノレートモフェチル、インターフェロン、コルチコステロイド、シクロホスホアミド、アザチオプリン、およびスルファサラジン);神経栄養性因子(例えば、アセチルコリンエステラーゼインヒビター、MAOインヒビター、インターフェロン、抗痙攣薬、イオンチャネルブロッカー、リルゾール、および抗パーキンソン病薬剤);循環器病を処置するための薬剤(例えば、βブロッカー、ACEインヒビター、利尿剤、硝酸塩、カルシウムチャネルブロッカー、およびスタチン);肝疾患を処置するための薬剤(例えば、コルチコステロイド、コレスチラミン、インターフェロン、および抗ウイルス薬);血液障害を処置するための薬剤(例えば、コルチコステロイド、抗白血病剤、および増殖因子);糖尿病を処置するための薬剤(例えば、インスリン、インスリンアナログ、αグルコシダーゼインヒビター、ビグアニド、およびインスリン増感剤);および免疫不全障害を処置するための薬剤(例えば、γグロブリン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
本発明の組成物に存在するさらなる治療剤の量は、唯一の活性剤としてこの治療剤を含む組成物中で通常投与される量以下である。好ましくは、本開示の組成物内のさらなる治療剤の量は、唯一の治療的な活性剤としてこの薬剤を含む組成物中に通常存在する量の約50%〜100%の範囲である。
【0110】
別の実施形態に従って、本発明は、生物学的サンプルを本発明の化合物またはこの化合物を含む組成物と接触させる工程を包含する、生物学的サンプルにおいてホスファターゼ活性を阻害する方法に関する。好ましい実施形態に従って、本発明は、生物学的サンプルを本発明の化合物またはこの化合物を含む組成物と接触させる工程を包含する、生物学的サンプルにおいて、SHP−2活性を阻害する方法に関する。
【0111】
本明細書中で使用される場合、用語「生物学的サンプル」としては、細胞培養物またはその抽出物;哺乳動物またはその抽出物から得られた生検物質;および血液、唾液、尿、便、精液、涙、または他の体液、もしくはその抽出物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0112】
生物学的サンプルにおけるSHP−2活性の阻害は、当業者に公知である種々の目的のために有用である。そのような目的の例としては、輸血、臓器移植、生物学的検体の貯蔵および生物学的アッセイが挙げられるが、これらに限定されない。
【0113】
別の実施形態に従って、本発明は、自己免疫疾患、増殖性疾患、血管形成障害および癌から選択される疾患を処置するか、または重篤度を軽減するための方法を提供する。
【0114】
好ましい実施形態に従って、本発明は、本発明に従って患者へ組成物を投与する工程を包含する、患者におけるSHP−2媒介性疾患または状態を処置するか、もしくは重篤度を軽減するための方法を提供する。
【0115】
本明細書中で使用される場合、用語「SHP−2媒介性疾患」は、SHP−2が役割を果たすことが公知である任意の疾患または他の有害な状態を意味する。そのような状態としては、自己免疫疾患、増殖性疾患、血管形成障害、および癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0116】
本発明の化合物により処置されるかまたは予防され得る自己免疫障害としては、糸球体腎炎、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、慢性甲状腺炎、グレーブズ病、自己免疫胃炎、糖尿病、自己免疫溶血性貧血、自己免疫好中球減少症、血小板減少症、アトピー性皮膚炎、慢性活性肝炎、重症筋無力症、多発性硬化症、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、乾癬、または対宿主性移植片病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
本発明の化合物により処置されるかまたは予防され得る増殖性疾患としては、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、転移性黒色腫、カポジ肉腫、多発性骨髄腫、HTLV−1−媒介性腫瘍形成(HTLV−1−mediated tumorigenesis)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0118】
本発明の化合物により処置され得るかまたは予防され得る血管形成障害としては、固体腫瘍、眼球新生血管新生(ocular neovasculization)、乳児血管腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
本発明の化合物により処置され得るかまたは予防され得る癌としては、結腸癌、乳癌、胃癌および卵巣癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0120】
別の実施形態において、さらなる治療剤を含まない、組成物を利用する本発明の方法は、患者へさらなる治療剤を分割して投薬するさらなる工程を包含する。これらのさらなる治療剤が分割して投薬される場合、これらは、本発明の組成物の投与の前か、本発明の組成物の投与に連続してか、または本発明の組成物の投与後に、患者に投与され得る。
【0121】
本発明の化合物またはその薬学的組成物はまた、移植可能な医療デバイス(例えば、プロテーゼ、人工弁、血管移植片、ステントおよびカテーテル)を覆うための組成物へ組み込まれ得る。例えば、血管ステントは、再狭窄(損傷後の血管壁が再び狭くなること)を克服するために使用されている。しかし、ステントまたは他の移植可能デバイスを使用する患者は、血餅形成または、血小板活性化の危険性がある。これらの望ましくない効果は、キナーゼインヒビターを含む薬学的に受容可能な組成物を有するデバイスを予め覆うことにより、予防され得るか、または緩和され得る。適切な被覆および被覆移植可能デバイスの一般的な調製は、米国特許第6,099,562号;同第5,886,026号;および同第5,304,121号に記載される。この被覆は、代表的には生体適合性のポリマー物質(例えば、ヒドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ酪酸、酢酸エチレンビニルおよびこれらの混合物)である。この被覆は、フルオロシリコン、ポリサッカライド、ポリエチレングリコール、リン脂質、またはその組み合わせの適切なトップコートによりさらに覆われ得、この組成物において徐放性特性を提供する。本発明の化合物で覆われた移植可能デバイスは、本発明の別の実施形態である。
【0122】
本明細書中に記載される本発明が、より十分に理解され得るために、以下の実施例が示される。これらの実施例は、例示の目的のみであり、いかなる様式においても本発明を限定するようには解釈されないことが、理解されるべきである。
【実施例】
【0123】
(実施例1)
【0124】
【化20】

(4−(エトキシカルボニルメチルアミノ)−安息香酸メチルエステル(101))
アニリン、トリエチルアミンおよびブロモ酢酸エチルの溶液を、60℃で2.5日間加熱した。この反応混合物を、冷却し、そしてTLC(25% EtOAc/hex)によって、出発物質、およびより高いRスポットを大部分示した。さらなる塩基、ブロミド、および2日間にわたる持続した過熱は、TLCによる変化ををほとんどもたらさなかった。この反応混合物を冷却し、酢酸エチルで希釈し、10% HClで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、シリカ上へ吸収させ、そして、10〜30%酢酸エチル/ヘキサンを使用したフラッシュカラムにより精製し、101を白色固体として得た。
【0125】
(実施例2)
【0126】
【化21】

(4−(エトキシカルボニルメチルスルファミルアミノ)−安息香酸メチルエステル(102))
火炎乾燥フラスコに、クロロスルホニルイソシアネートを充填した。無水蟻酸(96%)を滴下して添加し、ガスを発生させた。この溶液を、蟻酸の添加すると途中で凝固し、最終的に濁った液体に変化させた(粗製スルファミルクロリド)。この溶液を、これ以上ガスの発生が観察されなくなるまで室温で攪拌した。このスルホニルクロリドを、20mLの乾燥メチレンクロリドで希釈し、20mLメチレンクロリド中101/トリエチルアミンの0℃の溶液へ添加した。この反応液を、0℃〜室温まで2時間攪拌し(TLCにより30%酢酸エチル/ヘキサンにおいて約50%の出発物質を示した)、そして室温で一晩攪拌した。この反応液は、TLC(70:30 酢酸エチル:ヘキサン)により大部分は二つのスポットを示した。この反応液をメチレンクロリドで希釈し、10% HClで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、淡黄色油状物に濃縮した。この粗製混合物を、シリカ上へ吸着し、20%酢酸エチル/ヘキサンで溶出させることによるフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、出発物質および白色固体102を回収した。
【0127】
(実施例3)
【0128】
【化22】

(4−(1,1,4−トリオキソ−1λ−[1,2,5]チアジアゾリジン−2−イル)−安息香酸メチルエステル(103))
化合物102を、5mLメタノールに溶解し、0℃に冷却した。新たに調製したメタノール中のNaOMeの溶液を添加し、そしてこの溶液を、室温まで温め、一晩攪拌した。TLC(70:30ヘキサン/酢酸エチル)により、出発物質は示されなかった。この反応液を、Dowex樹脂で酸性にし、濾過し、白色固体になるまで濃縮した。この化合物103を、酢酸エチル/ヘキサンから再結晶した。
【0129】
(実施例4)
【0130】
【化23】

([(ベンゾフラン−2−イルメチル)−アミノ]−酢酸エチルエステル(104))
グリシンエチルエステルヒドロクロリドを、100mL乾燥メタノールに溶解した。カルボン酸ナトリウムを添加し、次にベンゾフラン−2−カルバルデヒドおよび約10gの硫酸ナトリウムを添加した。この反応物を、室温で12時間攪拌した。この反応液を濾過し、そして、母液を濃縮した。この残渣を、THF中に再懸濁し、再び濾過した。濾液に対し、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムを添加し、そしてこの反応液を室温で12時間攪拌し、濁った溶液を提供した。1N NaOHを添加し、この溶液を清澄にした。この反応液を酢酸エチルへ注ぎ、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして濃い黄色油状物に濃縮した。この油状物を、10〜30%の酢酸エチル/ヘキサンを使用したカラムクロマトグラフィーにより精製し、粘性のある黄色油状物2種類を得た。この非極性油状物は、対応するイミンを大部分含むようであった。より極性の油状物は、所望の生成物104であった。
【0131】
(実施例5)
【0132】
【化24】

([(ベンゾフラン−2−イルメチル)−スルファミルアミノ]−酢酸エチルエステル(105))
スルファミルクロリドの貯蔵物を、蟻酸をクロロスルホニルイソシアネートに添加することにより調製した。このスルファミルクロリドを、メチレンクロリド中の104およびトリエチルアミンの室温の溶液へ添加した。この反応物を、室温で一晩攪拌した。TLC(30% 酢酸エチル/ヘキサン)により、主要なスポットおよびわずかな産物を示した。この反応液を、10% HClへ注ぎ、メチレンクロリドで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして濃い黄色シロップになるまで濃縮した。この粗製シロップを、シリカ上へ吸収させ、15〜30%のエチル酢酸/ヘキサンを使用したフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、最終生成物105を淡黄色フィルムとして得た。
【0133】
(実施例6)
【0134】
【化25】

(5−ベンゾフラン−2−イルメチル−1,1−ジオキソ−1λ−[1,2,5]チアジアゾリジン−3−オン(106))
105を、室温で10mL乾燥メタノールに溶解した。NaOMe溶液を滴下し、この反応液を室温で2時間攪拌した。沈殿物を形成しなかったが、TLC(30%酢酸エチル/ヘキサン)は、出発物質を示さない。Dowex樹脂を添加し、この溶液を20分間攪拌し、濾過し、そして黄色フィルムになるまで濃縮した。このフィルムを、酢酸エチル中に溶解し、沈殿物を形成させた。この固体106を、濾過により回収し、ヘキサンで洗浄した。この洗浄物もまた回収し、濃縮し、さらなる生成物を提供した。
【0135】
(実施例7.SHP−2アッセイ)
N末端6ヒスチジンタグ化したSHP−2の触媒ドメイン(250−527)を、E.coliにおいて発現させ、そしてこのタンパク質を、従来の方法により精製した。SHP−2活性を、SHP−2による二リン酸フルオレセイン(FDP)の脱リン酸化により発生する蛍光シグナルを測定することにより評価した。このアッセイを、96ウェルのポリプロピレンブロックプレートにおいて実施した。最終アッセイ容量は、100μLであり、25mM NaOAc、pH6で、0.02% Triton X−100、10mM DTT、および2nM SHP−2を含有した。インヒビターを、DMSO中に懸濁し、コントロールを含む全ての反応を、最終濃度3%のDMSOで実施した。3μM FDPを添加することにより反応を開始させ、室温で45分間インキュベートした。プレートを、Molecular Devices Gemini plate reader、Ex485、Em538、Cutoff530を使用して読取った。
【0136】
本発明の化合物についてのSHP−2アッセイの結果を以下の表2に示す。
【0137】
【化26】

SHP−2のIC50値について、「+++」は、1.0μM未満を表し、「++」は、1.0μMと100μMとの間を表し、そして「+」は、100μMより大きいことを表す。
【0138】
本発明者らは、本発明の多くの実施形態を提示しているものの、本発明の化合物および方法を利用する他の実施形態を提供するために、本発明者らの基本的な構成は変更され得ることは、明らかである。従って、本発明の範囲は、一例として本明細書に提供されている特定の実施例ではなく、添付された特許請求の範囲により規定されることが理解され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】

、またはその薬学的に受容可能な塩であって、ここで:
Qは、C1〜8脂肪族、C6〜10アリール、5〜10個の環原子を有するヘテロアリール、および3〜10個の環原子を有するヘテロシクリルから選択される必要に応じて置換された基であり;
Tは、C1〜6アルキリデン鎖から選択され、ここで、Tの一つまたは二つの非隣接メチレン単位は、必要に応じて、かつ独立して−O−、−NR−、−S−、−C(O)−,−C(O)NR−、−NRC(O)−、−NRC(O)NR−、−SO−、−SO−、−NRSO−、−SONR−、または−NRSONR−によって置換され;
mは、0または1から選択され;
Xは、−CH−、−C(O)−、または−CF−から選択され;および
各Rは、水素、または必要に応じて置換されたC1〜8脂肪族基から独立して選択され、あるいは同じ窒素と結合した二つのR基が、該窒素と一緒になって、該窒素に加えて0〜2個のヘテロ原子を有する3〜7員の複素環式環を形成し、ここで、該ヘテロ原子は、独立して窒素、酸素、または硫黄から選択される、化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、該化合物が:
【化2】

【化3】

から選択されるか、またはその薬学的に受容可能な塩である、化合物。
【請求項3】
請求項2に記載の化合物であって、ここで、Qは、C6〜10アリールおよび5〜6員のヘテロシクリルから選択される、化合物。
【請求項4】
Xが−CH−である、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
前記化合物が、表1に示される化合物から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
式(II)の化合物:
【化4】

またはその薬学的に受容可能な塩であって、ここで:
Qは、C1〜8脂肪族、C6〜10アリール、5〜10個の環原子を有するヘテロアリール、および3〜10個の環原子を有するヘテロシクリルから選択される必要に応じて置換された基であり;
Tは、C1〜6アルキリデン鎖から選択され、ここで、Tの一つまたは二つの非隣接メチレン単位は、必要に応じて、かつ独立して、−O−、−NR−、−S−、−C(O)−,−C(O)NR−、−NRC(O)−、−NRC(O)NR−、−SO−、−SO−、−NRSO−、−SONR−、または−NRSONR−によって置換され;
mは、0または1から選択され;
Xは、−CH−、−C(O)−、または−CF−から選択され;および
各Rは、水素、または必要に応じて置換されたC1〜8脂肪族基から独立して選択され、あるいは同じ窒素と結合した二つのR基が、該窒素と一緒になって、窒素に加えて0〜2個のヘテロ原子を有する3〜7員の複素環式環を形成し、ここで、該ヘテロ原子は、独立して窒素、酸素、または硫黄から選択される、化合物。
【請求項7】
請求項6に記載の化合物であって、該化合物が:
【化5】

から選択されるか、またはその薬学的に受容可能な塩である、化合物。
【請求項8】
請求項7に記載の化合物であって、Qは、C6〜10アリールおよび5〜6員のヘテロシクリルから選択される、化合物。
【請求項9】
Xが−CH−である、請求項7に記載の化合物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物、および薬学的に受容可能なキャリア、アジュバント、またはビヒクル、を含む薬学的組成物。
【請求項11】
前記組成物が、さらなる治療薬剤を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
以下の式:
【化6】

を有するリン酸等価体。
【請求項13】
前記リン酸等価体が、リン酸生物学的等価体である、請求項12に記載のリン酸等価体。
【請求項14】
タンパク質:リガンドの複合体であって、該リガンドが、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物である、複合体。
【請求項15】
前記タンパク質が酵素である、請求項14に記載の複合体。
【請求項16】
前記酵素が、リガンドの結合ドメインである、請求項15に記載の複合体。
【請求項17】
前記結合ドメインがリガンドのレセプターである、請求項16に記載の複合体。
【請求項18】
前記レセプターが結合ポケットを含む、請求項17に記載の複合体。
【請求項19】
前記化合物が前記タンパク質の基質である、請求項14に記載の複合体。
【請求項20】
前記化合物が前記タンパク質のインヒビターである、請求項14に記載の複合体。
【請求項21】
前記化合物が前記タンパク質のアゴニストである、請求項14に記載の複合体。
【請求項22】
前記化合物が前記タンパク質のアンタゴニストである、請求項14に記載の複合体。
【請求項23】
前記タンパク質がホスファターゼである、請求項14に記載の複合体。
【請求項24】
前記ホスファターゼがSHP−2である、請求項23に記載の複合体。
【請求項25】
リン酸等価体のような、スルフヒダントイン部分または逆スルフヒダントイン部分を含む化合物を使用する方法であって、該方法は、前記化合物とタンパク質とを接触させる工程を包含し、ここで、該タンパク質の天然リガンドは、力学的に重要なリン酸基を含む、方法。
【請求項26】
前記タンパク質が酵素である請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記酵素が天然リガンドの結合ドメインである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記結合ドメインが天然リガンドのレセプターである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記レセプターが結合ポケットを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記天然リガンドが、タンパク質の基質である、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記天然リガンドが、第二のタンパク質である、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記天然リガンドがタンパク質のアゴニストである、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
前記天然リガンドがタンパク質のアンタゴニストである、請求項25に記載の方法。
【請求項34】
前記化合物が、リン酸生物学的等価体である、請求項25に記載の方法。
【請求項35】
請求項25に記載の方法であって、ここで、前記タンパク質が、ホスファターゼ;キナーゼ;ヌクレオチダーゼ;SH2;デヒドロゲナーゼ;オキシダーゼ、レダクターゼ、および他のNAD依存性タンパク質、またはフラビン依存性タンパク質;RNAへリカーゼ、およびDNAへリカーゼ;RNAポリメラーゼおよびDNAポリメラーゼ;ナトリウム/カリウムATPアーゼ(プロトンポンプ);P−型カチオン輸送ATPアーゼ;カルボキシキナーゼ;ATPシンセターゼ;ATP依存性プロテアーゼ;ホスホトランスフェラーゼ;ホスホリボシルトランスフェラーゼ;ミオシン、キネシン、および他のモータータンパク質;ダイナミン、およびダイナミン様タンパク質;ADP−リボシル化因子;DNA修復タンパク質;RNAスプライシングタンパク質;DNAリガーゼ;補酵素A依存性タンパク質;アシルキャリアタンパク質ホスホパンテテインドメイン;クエン酸リアーゼ;チアミンピロリン酸依存性タンパク質;ホスホジエステラーゼ;RNAシクラーゼ;カルバモイルリン酸シンターゼ;グルコサミン−6−リン酸イソメラーゼ;トリオースリン酸イソメラーゼ;リブロース−リン酸3−エピメラーゼ;ピリドキサルリン酸−依存性タンパク質;cAMP依存性タンパク質、およびcGMP依存性タンパク質;PID(ホスホチロシン相互作用ドメイン)タンパク質;ホスホリパーゼ;ホスファチヂルエタノールアミン結合タンパク質;PHドメイン;ホスホリピド結合タンパク質;リン酸依存性レセプター;イノシトールリン酸結合タンパク質;ホスホチロシン結合タンパク質;ホスホセリン結合タンパク質;ホスホヒスチジン結合タンパク質;リン酸依存性転写調節因子;リン酸依存性トランスポーター;硫酸依存性トランスポーター;NTPアーゼ;DNA複製タンパク質;ヌクレオチド糖トランスフェラーゼ;ホスホリラ−ゼ;糖ホスホトランスフェラーゼ;スルファターゼ;ヌクレアーゼ、およびアレスチンからなる群から選択される、方法。
【請求項36】
前記タンパク質がホスファターゼである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記ホスファターゼがSHP−2である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
タンパク質と結合可能な化合物を同定する方法であって、ここで、該タンパク質が、少なくとも一つの力学的に重要なリン酸基を含む天然リガンドを有し、該方法は:
a.)スルフヒダントイン部分または逆スルフヒダントイン部分を含む第一の化合物を選択する工程;
b.)該タンパク質と結合するための少なくとも一つのさらなる構造的特徴を最適化するために該第一の化合物を必要に応じて改変する工程;
を包含する、方法。
【請求項39】
前記最適化が構造−活性の関係を最適化する工程を包含する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記最適化が分子モデリングを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記タンパク質が酵素である、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記酵素が天然リガンドの結合ドメインである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記結合ドメインが天然リガンドのレセプターである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記レセプターが結合ポケットを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記天然リガンドが前記タンパク質の基質である、請求項38に記載の方法。
【請求項46】
前記天然リガンドが第二のタンパク質である請求項38に記載の方法。
【請求項47】
前記天然リガンドがタンパク質のアゴニストである、請求項38に記載の方法。
【請求項48】
前記天然リガンドがタンパク質のアンタゴニストである、請求項38に記載の方法。
【請求項49】
前記化合物がタンパク質のインヒビターである、請求項38に記載の方法。
【請求項50】
前記タンパク質がホスファターゼである、請求項38に記載の方法。
【請求項51】
前記化合物がホスファターゼインヒビターである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記ホスファターゼがSHP−2である、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記化合物がSHP−2インヒビターである、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
タンパク質と結合可能な化合物を生成する方法であって、ここで、該タンパク質は、少なくとも一つの力学的に重大なリン酸基を含む天然リガンドを有し、該方法は、該天然リガンド内で該リン酸基をスルフヒダントイン部分または逆スルフヒダントイン部分と置換する工程を包含し、該化合物を生成する、方法。
【請求項55】
前記タンパク質が酵素である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記酵素が天然リガンドのための結合ドメインである、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記結合ドメインが天然リガンドのレセプターである、請求項
56に記載の方法。
【請求項58】
前記レセプターが結合ポケットを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記天然リガンドが前記タンパク質の基質である、請求項54に記載の方法。
【請求項60】
前記天然リガンドが第二のタンパク質である、請求項54に記載の方法。
【請求項61】
前記天然リガンドがタンパク質のアゴニストである、請求項54に記載の方法。
【請求項62】
前記天然リガンドがタンパク質のアンタゴニストである、請求項54に記載の方法。
【請求項63】
前記化合物がタンパク質のインヒビターである、請求項54に記載の方法。
【請求項64】
前記タンパク質がホスファターゼである、請求項54に記載の方法。
【請求項65】
前記化合物がホスファターゼインヒビターである、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記ホスファターゼがSHP−2である、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
前記化合物がSHP−2インヒビターである、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
患者において自己免疫性疾患、増殖性疾患、脈管形成障害、および癌から選択される疾患を処置、または予防する方法であって、該患者へ請求項10に記載の組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項69】
請求項68に記載の方法であって、該方法は、糸状体腎炎、リウマチ性関節炎、全身性エリテストーデス、強皮症、橋本病、グレーブス病、自己免疫腎炎、糖尿病、自己免疫溶血性貧血、自己免疫好中球減少症、血小板減少症、アトピー性皮膚炎、慢性活動性肝炎、重症筋無力症、多発性硬化症、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、乾癬、または移植片対宿主疾患から選択される自己免疫性疾患を処置、または予防するのに使用される、方法。
【請求項70】
請求項68に記載の方法であって、該方法が、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、転移性黒色腫、カポジ肉腫、多発性骨髄腫、およびHTLV−1−媒介性腫瘍形成から選択される増殖性疾患を処置、または予防するのに使用される、方法。
【請求項71】
請求項68に記載の方法であって、該方法が、固体の腫瘍、眼内新血管新生、および幼児性血管腫から選択される血管形成障害を処置、または予防するのに使用される、方法。
【請求項72】
結腸癌、乳癌、胃癌、および卵巣癌から選択される癌を処置、または予防するのに使用される、請求項68に記載の方法。
【請求項73】
前記患者へさらなる治療薬剤を投与する工程をさらに包含する、請求項68に記載の方法。
【請求項74】
前記さらなる治療薬剤が化学治療剤、抗増殖剤、および抗炎症剤から選択される、請求項73に記載の方法。

【公表番号】特表2006−514960(P2006−514960A)
【公表日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−566641(P2004−566641)
【出願日】平成15年12月30日(2003.12.30)
【国際出願番号】PCT/US2003/041630
【国際公開番号】WO2004/062664
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】