説明

癌についての血小板生物マーカー

本発明は、免疫学および生化学の分野に関する。本発明は、特に、全身的脈管形成活性における関連の変化を有する臨床状態の初期検出のための方法、デバイスおよびキットを記載する。この臨床状態は、特に、癌、炎症性状態、感染、ならびに妊娠および流産に関連する事象である。本発明は、脈管形成に関連する状態、特に癌の検出および識別を可能にする。本発明は、血液血小板において見出される生物分子の、脈管形成状態および特に癌状態に関連する臨床状態についての生物マーカーとしての使用を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、免疫学および生化学の分野に関する。特に、本発明は、全身性脈管形成活性における関連の変化を有する臨床的状態、特に、癌、炎症性状態、感染および妊娠に伴う事象の初期検出のための、方法、デバイスおよびキットを記載する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
新しい毛細血管の形成である脈管形成は、生殖、胚発生ならびに癌の増殖および進行に必須である基礎的なプロセスである。腫瘍の拡散の主要な経路は、血流を通る。一旦循環内に入ると、腫瘍細胞は、血小板と共に凝集して塊となり、この塊は腫瘍細胞の生存を増強する。次いで、この塞栓は、血管内皮に接着する。例えば、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4および非特許文献5を参照のこと。
【0003】
癌のような疾患状態の初期検出は、代表的に、より効果的な治療的処置を可能にし、それに対応するより好ましい臨床結果を可能にする。
【非特許文献1】Bikfalviら,Semin Thromb Hemost.,2004年,第30巻,第1号,p.137−44
【非特許文献2】Sargiannidouら,Semin Thromb Hemost.,2004年,第30巻,第1号,p.127−36
【非特許文献3】Sierkoら,Semin Thromb Hemost.,2004年,第30巻,第1号,p.95−108
【非特許文献4】Blakytnyら,J Cell Physiol,2004年,第199巻,第1号,p.67−76
【非特許文献5】Folkman J.,Semin Oncol.,2002年,第29巻,第6号,第16補遺,p.15−8
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、癌性疾患が進行段階に達する前に、癌および腫瘍の存在を臨床医が決定することを可能にする検出方法の需要が存在する。さらに、臨床医は、癌性腫瘍が休眠性(dormant)であるかもしくは悪性であるかを効率的かつ正確に決定するための方法を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
本発明は、脈管形成に関連する状態、特に癌の検出および識別を可能にする。本発明は、血液血小板において見出される生物分子の、脈管形成状態および特に癌状態に関連する臨床状態についての生物マーカーとしての使用を包含する。本発明において使用される場合、脈管形成状態としては、疾患状態 対 非疾患状態(例えば、癌 対 正常(すなわち、非癌(non−cancer))および、特に、侵襲性癌 対 休眠性癌もしくは侵襲性癌 対 非癌)の間の識別が挙げられるが、これらに限定されない。
【0006】
実際に、驚くべきことに、多くの本発明の生物マーカーは、良性腫瘍 対 悪性腫瘍、侵襲性腫瘍 対 休眠性腫瘍、脈管形成性腫瘍 対 非脈管形成性腫瘍、などの間を識別するために使用され得る。脈管形成調節因子の血小板による選択的取り込み(血漿中のそれらのタンパク質の対応する増加を伴わない)は、腫瘍が臨床的に検出される前の癌の診断(特に初期診断)に役立つ、有用な測定を提供する。さらに、血小板における複数の生物マーカーの多重測定、すなわち血小板プロファイリングは、患者における脈管形成活性における変化の非常に感度の高い指標を提供し、そして疾患特異的な指標を提供する。このような血小板の特性は、現在利用可能ないかなる診断方法によっても検出不能な顕微鏡サイズのヒトの癌を検出するために使用され得る。脈管形成特性の小さな源(例えば、休眠性非脈管形成性腫瘍)でさえも、腫瘍自体が臨床的に検出される前にタンパク質プロフィールを検出可能に改変し得る。特定の実施形態において、血小板脈管形成プロフィールは、一種類の生物マーカーよりもより包括的である。何故なら、血小板脈管形成プロフィールは、広範な腫瘍の種類および腫瘍の大きさを検出し得るからである。血小板脈管形成プロフィールにおける相対的変化は、初期インサイチュ癌から始まって(すなわち、腫瘍が臨床的に検出される前の時点から始まって)、腫瘍の発達の間中、腫瘍の追跡を可能にし、迅速な予後診断、初期の処置、および疾患進行もしくは(例えば、脈管形成インヒビターのような非毒性の薬物による処置の後の)疾患退行の正確なモニタリングを可能にする。
【0007】
血小板は、公知の多くの脈管形成調節タンパク質(例えば、VEGF−A、VEGF−C、bFGF、HGF、アンジオポエチン−1、PDGF、EGF、IGF−I、IGF BP−3、ビトロネクチン、フィブロネクチン、フィブリノゲン、へパラナーゼ(Heparanase)、およびスフィンゴシン−1 POのような正の調節因子、ならびに/またはトロンボスポンジン、HGFのNK1/NK2/NK3フラグメント、TGF−β−1、プラスミノゲン(アンジオスタチン)、高分子量キニノゲン(ドメイン5)、フィブロネクチン(45kDフラグメント)、EGF(フラグメント)、α−2抗プラスミン(フラグメント)、β−トロンボグロブリン、エンドスタチンおよびBDNF(脳由来神経栄養因子)のような負の制御因子)を取り込み、これらをこの源(例えば、腫瘍)が存在する限り隔離し続ける。本発明を脈管形成調節因子の隔離についてのいかなる特定の生物学的メカニズムもしくは役割にも限定することはないが、血小板は、これらのタンパク質の活性化内皮への効率的な輸送体として作用し、そして血小板における生物マーカーのプロフィールは、腫瘍の存在および増殖の発症を反映すると考えられる。
【0008】
したがって、1つの局面において、本発明は、被験体における脈管形成状態を評価する(quantify)ための方法を提供し、この方法は、以下:(a)この被験体由来の生物学的サンプル中の少なくとも1種の血小板関連生物マーカーを測定する工程であって、この少なくとも1種の血小板関連生物マーカーは、表1および表2(前出)の生物マーカーからなる群より選択される工程;および(b)この測定値を脈管形成状態と関連付ける工程を、包含する。好ましい実施形態において、上記少なくとも1種の血小板関連生物マーカーは、表1の生物マーカーからなる群より選択される。
【0009】
好ましい実施形態において、上記少なくとも1種の血小板関連生物マーカーは、以下の生物マーカーから選択される:VEGF、PDGF、bFGF、PF4、CTAP III、エンドスタチン、タムスタチン(tumstatin)、メタロプロテアーゼの組織インヒビター、アポリポタンパクA1、IL8、TGF、NGAL、MIP、メタロプロテアーゼ、BDNF、NGF、CTGF、アンジオゲニン、アンジオポエチン、アンジオスタチン、およびトロンボスポンジン。
【0010】
1つの実施形態において、上記少なくとも1種の血小板関連生物マーカーは、この生物マーカーをSELDIプローブの吸着剤上に捕獲し、そしてレーザー脱離イオン化質量分析法によってこの捕獲した生物マーカーを検出することによって、測定される。特定の実施形態において、上記吸着剤は、カチオン交換吸着剤、金属キレートもしくは疎水性吸着剤である。他の実施形態において、上記吸着剤は、生物特異的(biospecific)吸着剤である。別の実施形態において、上記少なくとも1種の生物マーカーは、イムノアッセイによって検出される。
【0011】
別の実施形態において、上記の関連付ける工程は、ソフトウェア分類アルゴリズムによって実施される。特定の実施形態において、上記脈管形成状態は、癌 対 正常(非癌)である。別の実施形態において、上記脈管形成状態は、良性腫瘍 対 悪性腫瘍である。なお別の実施形態において、上記脈管形成状態は、侵襲性腫瘍 対 非侵襲性腫瘍(すなわち休眠性腫瘍)である。なお別の実施形態において、上記脈管形成状態は、特定の種類の癌であり、この癌としては、乳癌、肝臓癌、肺癌、血管芽細胞腫、膀胱癌、前立腺癌、胃癌、脳の癌、神経芽細胞腫、結腸癌、癌腫、肉腫、白血病、リンパ腫および骨髄腫(myoloma)が挙げられる。
【0012】
なお別の実施形態において、上記方法は、(c)上記脈管形成状態に基づいて被験体の処置を行う工程を、さらに包含する。上記測定値が癌と相関している場合、したがって、被験体の処置を行う工程は、例えば化学治療剤をこの被験体に投与する工程を包含する。
【0013】
さらなる実施形態において、(d)被験体の処置の後に、少なくとも1種の血小板関連生物マーカーを測定する工程をさらに包含する。
【0014】
別の局面において、本発明は、被験体由来のサンプル中の少なくとも1種の生物マーカーを測定する工程を包含する方法を提供し、ここで、少なくとも1種の血小板関連生物マーカーは、表1または表2に示される生物マーカーからなる群より選択される。好ましい実施形態において、上記少なくとも1種の血小板関連生物マーカーは、表1の生物マーカーからなる群より選択される。
【0015】
1つの実施形態において、上記少なくとも1種の血小板関連生物マーカーは、この生物マーカーをSELDIプローブの吸着剤上に捕獲し、そしてこの捕獲した生物マーカーをレーザー脱離イオン化質量分析法によって検出することによって、測定される。特定の実施形態において、上記吸着剤は、カチオン交換吸着剤、アニオン交換吸着剤、金属キレートもしくは疎水性吸着剤である。他の実施形態において、上記吸着剤は、生物特異的吸着剤である。別の実施形態において、上記少なくとも1種の血小板関連生物マーカーは、イムノアッセイによって測定される。
【0016】
なお別の局面において、以下を含むキットを提供する:(a)固体支持体であって、この固体支持体に結合する少なくとも1種の捕獲試薬(capture reagent)を含み、ここで、この捕獲試薬は、表1および表2に示される生物マーカーからなる第1の群より選択される少なくとも1種の血小板関連生物マーカーを結合する、固体支持体;ならびに(b)この固体支持体を用いて表1および表2に示される少なくとも1種の生物マーカーを検出するための指示書。好ましい実施形態において、上記少なくとも1種の血小板関連生物マーカーは、表1の生物マーカーからなる群より選択される。別の好ましい実施形態において、上記少なくとも1種の血小板関連生物マーカーは、以下の生物マーカーからなる群より選択される:VEGF、PDGF、bFGF、PF4、CTAP III、エンドスタチン、タムスタチン、メタロプロテアーゼの組織インヒビター、アポリポタンパクA1、DL8、TGF、NGAL、MIP、メタロプロテアーゼ、BDNF、NGF、CTGF、アンジオゲニン、アンジオポエチン、アンジオスタチン、およびトロンボスポンジンならびにこれらの組み合わせ。
【0017】
1つの実施形態において、上記キットは、この固体支持体を用いて以下の生物マーカーから選択される生物マーカーを検出するための指示書を提供する:VEGF、PDGF、bFGF、PF4、CTAP III、エンドスタチン、タムスタチン、メタロプロテアーゼの組織インヒビター、アポリポタンパクA1、IL8、TGF、NGAL、MIP、メタロプロテアーゼ、BDNF、NGF、CTGF、アンジオゲニン、アンジオポエチン、アンジオスタチン、およびトロンボスポンジンならびにこれらの組み合わせ。
【0018】
別の実施形態において、上記捕獲試薬(親和性試薬とも呼ばれる)を含む上記固体支持体は、SELDIプローブである。特定の実施形態において、上記捕獲試薬は、カチオン交換吸着剤、アニオン交換吸着剤、金属キレートもしくは疎水性吸着剤である。いくつかの好ましい実施形態において、上記捕獲試薬は、カチオン交換吸着剤である。他の実施形態において、上記キットは、さらに、(c)アニオン交換クロマトグラフィー吸着剤(例えば、第四級アミン吸着剤(例えば、BioSepra Q Ceramic HyperD(登録商標)F吸着剤ビーズ)を含む。他の実施形態において、上記キットは、(c)表1および表2の血小板関連生物マーカーの少なくとも1種を含む容器を、さらに含む。
【0019】
さらなる局面において、本発明は、以下を含むキットを提供する:(a)固体支持体であって、この固体支持体に結合する少なくとも1種の捕獲試薬を含み、ここで、この捕獲試薬は、表1および表2に示される生物マーカーからなる第1の群より選択される少なくとも1種の血小板関連生物マーカーを結合する、固体支持体;ならびに(b)表Iもしくは表IIに示される生物マーカーの少なくとも1種を含む容器。好ましい実施形態において、上記血小板関連生物マーカーは、表1の生物マーカーからなる群より選択される。
【0020】
1つの実施形態において、上記キットは、上記固体支持体を用いて以下から選択される生物マーカーを検出するための指示書を提供する:VEGF、PDGF、bFGF、PF4、CTAP III、エンドスタチン、タムスタチン、メタロプロテアーゼの組織インヒビター、アポリポタンパクA1、IL8、TGF、NGAL、MIP、メタロプロテアーゼ、BDNF、NGF、CTGF、アンジオゲニン、アンジオポエチン、アンジオスタチン、およびトロンボスポンジン。別の実施形態において、上記キットは、上記固体支持体を用いて以下の生物マーカーの各々を検出するための指示書を提供する:VEGF、PDGF、bFGF、PF4、CTAP III、エンドスタチン、タムスタチン、メタロプロテアーゼの組織インヒビター、アポリポタンパクA1、IL8、TGF、NGAL、MIP、メタロプロテアーゼ、BDNF、NGF、CTGF、アンジオゲニン、アンジオポエチン、アンジオスタチン、およびトロンボスポンジン。またはその代わりに、上記キットは、これらの生物マーカーの各々をさらに検出する。
【0021】
別の実施形態において、上記捕獲試薬を含む上記固体支持体は、SELDIプローブである。特定の実施形態において、上記捕獲試薬は、カチオン交換吸着剤、アニオン交換吸着剤、金属キレートもしくは疎水性吸着剤である。他の実施形態において、上記吸着剤は、生物特異的吸着剤である。いくつかの実施形態において、上記捕獲試薬は、カチオン交換吸着剤である。他の実施形態において、上記キットは、(c)アニオン交換クロマトグラフィー吸着剤を含む。
【0022】
なおさらなる局面において、本発明は、ソフトウェア製品を提供し、この製品は、以下:(a)サンプルに起因するデータにアクセスするコードであって、このデータは、この生物学的サンプル中の少なくとも1種の血小板関連生物マーカーの測定値を含み、この血小板関連生物マーカーは、表1および表2の生物マーカーからなる群から選択される、コード;ならびに(b)この測定値の関数として、このサンプルの脈管形成疾患状態を分類する分類アルゴリズムを実行するコードを含む。好ましい実施形態において、上記生物マーカーは、表1の生物マーカーからなる群より選択される。
【0023】
なお別の実施形態において、本発明は、被験体における腫瘍の進行もしくは退行の過程を決定するための方法を提供し、この方法は、第1時点で被験体由来の血小板のサンプル中の少なくとも1種の生物マーカーを測定する工程であって、ここで、この少なくとも1種の生物マーカーは、VEGF、PDGF、bFGF、PF4、CTAP III、エンドスタチン、タムスタチン、メタロプロテアーゼの組織インヒビター、アポリポタンパクA1、IL8、TGF、NGAL、MIP、メタロプロテアーゼ、BDNF、NGF、CTGF、アンジオゲニン、アンジオポエチン、アンジオスタチン、およびトロンボスポンジンからなる群より選択される工程;第2時点で、この被験体由来の血小板のサンプル中の少なくとも1種の生物マーカーを測定する工程;ならびに、この第1測定値と第2測定値とを比較する工程であって、ここで、この測定値の比較は、被験体における腫瘍の進行もしくは退行の過程を決定する工程を、包含する。
【0024】
1つの実施形態において、上記分類アルゴリズムは、上記サンプルの脈管形成状態を、以下からなる群より選択される生物マーカーの測定値の関数として分類する:VEGF、PDGF、bFGF、PF4、CTAP III、エンドスタチン、タムスタチン、メタロプロテアーゼの組織インヒビター、アポリポタンパクA1、IL8、TGF、NGAL、MIP、メタロプロテアーゼ、BDNF、NGF、CTGF、アンジオゲニン、アンジオポエチン、アンジオスタチン、およびトロンボスポンジン。別の実施形態において、上記分類アルゴリズムは、上記サンプルの脈管形成状態を、以下の生物マーカーの各々の測定値の関数として分類する:VEGF、PDGF、bFGF、PF4、CTAPDI、エンドスタチン、タムスタチン、メタロプロテアーゼの組織インヒビター、アポリポタンパクA1、IL8、TGF、NGAL、MIP、メタロプロテアーゼ、BDNF、NGF、CTGF、アンジオゲニン、アンジオポエチン、アンジオスタチン、およびトロンボスポンジン。
【0025】
他の局面において、本発明は、表1および表2において示される血小板関連生物マーカーから選択される精製された生物分子を提供する。そしてさらに、本発明は、表1もしくは表2において示される生物マーカーを質量分析法もしくはイムノアッセイによって検出する工程を包含する方法を、提供する。
【0026】
本発明の他の特徴、目的および利点、ならびに本発明の好ましい実施形態は、以下の詳細な説明、実施例および特許請求の範囲から明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(発明の詳細な説明および好ましい実施形態)
(I.序論)
生物マーカーは、1つの表現型状態(例えば、疾患を有する)の被験体から採取したサンプルにおいて、別の表現型状態(例えば、疾患を有さない)と比較して、差次的に存在する有機生体分子である。生物マーカーは、異なる群におけるこの生物マーカーの発現レベルの平均もしくは中央値が、統計的に有意であると計算される場合、異なる表現型状態の間で差次的に存在する。統計学的有意性についての一般的な検定としては、とりわけ、t検定、ANOVA、Kruskal−Wallis、Wilcoxon、Mann−Whitneyおよびオッズ比が挙げられる。生物マーカーは、単独でまたは組み合わせて、1つの表現型に属する被験体もしくは別の表現型に属する被験体の相対危険率の測定を提供する。したがって、これらは、疾患についての(診断用)マーカー、薬物の治療有効性についての(治療学)マーカー、および薬物毒性についてのマーカーとして、有用である。
【0028】
血小板は、癌についての生物マーカーとして、かつ脈管形成活性(抗脈管形成活性を含む)における相違によって特徴付けられる他の状態についての生物マーカーとして、驚くべき優良な供給源であることが見出されている。特に、血小板由来生物マーカーは、非常に初期の疾患状態における変化を表し、そして、癌を非癌から識別し得るのみならず、良性腫瘍を悪性腫瘍から識別し得る。したがって、本発明は、癌、関節炎および妊娠という多種多様な臨床状態の初期診断のための手段を提供する。異なる臨床状態は、本発明を使用して、各臨床状態が異なる生物マーカーもしくは異なる多数の生物マーカーの集団(cluster)の変化をもたらし得る際に、識別され得る。したがって、所定の臨床状態についての生物マーカー発現パターンは、疾患もしくは代謝状態のフィンガープリントもしくはプロフィールであり得る。したがって、本発明は、脈管活性における変化に関連する疾患状態、もしくは脈管活性における変化に関連する代謝活性における変化を示す生物マーカーを検出しその発現レベルを決定するためのキット、方法およびデバイスを提供する。
【0029】
腫瘍増殖における変動を検出する本発明の能力は、例えば、本明細書中で提供される図面および表において示される。図面および表において示されるデータを得るための方法は、実施例において詳細に説明される。簡潔に言うと、マウスに、休眠性腫瘍もしくは侵襲性腫瘍のどちらかを移植し、これらの腫瘍を所定の期間の間増殖させた。腫瘍を移植しなかったコントロール動物もまた、調査した。これらのマウスから血小板を得、ホモジナイズし、実施例で記載するように処理し、そしてSELDI質量分析法および当業者によって実施される他の方法を用いて分析した。これらの方法論を用い、非常に初期の疾患状態で変化を示し得、そして癌を非癌から識別し得るのみならず、良性腫瘍を悪性腫瘍から識別し得る、血小板由来生物マーカーを同定した。例えば、図面および表1において示されるように、生物マーカーであるPF4の発現は、腫瘍を与えたマウス由来の血小板において増強されている。驚くべきことに、PF4発現は、休眠性腫瘍移植片を与えたマウスにおいて最も高い。図面および表1は、生物マーカーであるCTAP III(約16.2kDaの質量を有する二量体)について類似の結果を示す。
【0030】
検出に適した生物マーカーを作製するために、生物マーカーの分子量だけが既知である必要があるが、観察されるピークの形状および強度(例えば、図1a)ならびに他のパラメータもまた、使用され得ることに、留意されたい。例えば、生物マーカーに対する抗体が使用され得、または、生物マーカーの活性が既知である場合、この生物マーカーを検出しそして定量するために酵素アッセイが使用され得る。
【0031】
(II.癌性腫瘍および非癌性腫瘍についての血小板生物マーカー)
(生物マーカー)
本発明は、脈管形成活性もしくは抗脈管形成活性によって特徴付けられる状態(特に、癌 対 正常(非癌)もしくは良性(すなわち休眠性)腫瘍 対 悪性腫瘍)を有する被験体の血小板において差次的に存在するポリペプチドベースの生物マーカーを、提供する。この生物マーカーは、質量分析法によって決定される質量 対 電荷の比、飛行時間型質量分析法におけるそのスペクトルピークの形状、および吸着剤表面へのその結合特性によって、性質決定される。これらの特性は、検出された特定の生体分子が本発明の生物マーカーであるか否かを決定するための1つの方法を提供する。これらの特性は、生体分子の固有の特性を表し、この生体分子が識別される方法におけるプロセスの限定を表さない。1つの局面において、本発明は、これらの生物マーカーを、単離された(すなわち精製された)形態で提供する。
【0032】
この生物マーカーは、Ciphergen Biosystems,Inc.(Fremont,CA)(「Ciphergen」)からのProteinChipアレイを使用するSELDI技術を用いて見出された。血小板サンプルを、3つの表現型状態のうちの1つに該当するマウス被験体から収集した:正常、良性腫瘍、悪性腫瘍。この血小板を、尿素緩衝液で抽出し、次いで、アニオン交換、カチオン交換もしくはIMAC銅SELDIバイオチップに分析のために直接供したか、またはアニオン交換ビーズ上に分画し次いでカチオン交換SELDIバイオチップに分析のために供したかのいずれかを行った。サンプル中のポリペプチドのスペクトルを、Ciphergen PBS II質量分析計における飛行時間型質量分析法によって産生した。このようにして得たスペクトルを、Ciphergen Biosystems,Inc.からのCiphergen Express(登録商標)Data Manager SoftwareならびにBiomarker WizardおよびBiomarker Pattern Softwareによって分析した。各群についてのマススペクトルを、散布図分析に供した。Mann−Whitney検定分析を用いて、異なる3つの群を比較し、そして2つの群の間で有意に異なる(p<0.0001)タンパク質を選択した。これらの方法は、実施例の節でより詳細に説明される。
【0033】
このようにして見出された生物マーカーは、表1および表2において示される。「ProteinChipアッセイ」行は、生物マーカーが見出されたアニオン交換クロマトグラフィー画分、この生物マーカーが結合するバイオチップの型、洗浄条件(実施例において記載される)を表す。
【0034】
(表1)
【0035】
【表1】

(表2)
【0036】
【表2】

本発明の生物マーカーは、質量分析法によって決定されるその質量電荷比によって性質決定される。各生物マーカーの質量電荷比(「M」値)は、表1および表2において、表題「マーカー」の行の下で提供される。したがって、例えば、M8206は、8206の質量電荷比を有する。質量電荷比は、Ciphergen Biosystems,Inc.PBS II質量分析計上で産生されたマススペクトルから決定された。この機器は、約±0.15%の質量確度を有する。さらに、この機器は、約400〜1000m/dmの質量分解能を有し、ここで、mは、質量であり、そしてdmは、0.5ピーク高さでのマススペクトルピーク幅である。生物マーカーの質量電荷比は、Biomarker WizardTMソフトウェア(Ciphergen Biosystems,Inc.)を用いて決定された。Biomarker Wizardは、(PBS IIによって決定された)分析した全てのスペクトルからの同じピークの質量電荷比を集め、その集団における最大および最小の質量電荷比を取り、そして2で割ることによって、生物マーカーに対する質量電荷比を指定する。したがって、与えられた質量は、これらの仕様書を反映する。
【0037】
本発明の生物マーカーは、飛行時間型質量分析法におけるそのスペクトルピークの形状によってさらに性質決定される。マススペクトルは、図面においてこの生物マーカーが存在していることを表すピークを示す。
【0038】
本発明の生物マーカーは、クロマトグラフィー表面上のその結合特性によってさらに性質決定される。例えば、画分III(pH5洗浄)において見出されるマーカーは、pH6では結合するが、pH5で溶出する。生物マーカーのほとんどは、50mMの酢酸ナトリウムでの洗浄後カチオン交換吸着剤(例えば、the Ciphergen(登録商標)WCX ProteinChip(登録商標)アレイ)に結合し、そして多くは、IMACバイオチップに結合する。
【0039】
本発明の特定の生物マーカーのアイデンティティ(identitiy)は、表1に示すように決定されている。この決定が行われた方法は、実施例の節に記載される。アイデンティティが決定されている生物マーカーについて、この生物マーカーの存在は、当該分野で公知の他の方法によって決定され得、これらの方法としては、測光検出(photometric detection)および免疫学的検出が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
本発明を用いて検出可能である生物マーカーは、質量電荷比、結合特性およびスペクトル形状によって性質決定され得るが、これらは、その特定のアイデンティティの予備知識なしに質量分析法によって検出され得る。しかし、所望される場合、アイデンティティが決定されていない生物マーカーは、例えば、ポリペプチドのアミノ酸配列を決定することによって同定され得る。例えば、タンパク質生物マーカーは、多くの酵素(例えば、トリプシンもしくはV8プロテアーゼ)を用いるペプチドマッピングによって同定され得、そして消化フラグメントの分子量が使用して、マッピングにおいて使用されたプロテアーゼによって作製された消化フラグメントの分子量に適合する配列についてのデータベースを検索し得る。あるいは、タンパク質生物マーカーは、タンデム質量分析法(MS)技術を用いて配列決定され得る。この方法において、タンパク質は、例えば、ゲル電気泳動によって単離される。生物マーカーを含むバンドは切り出され、そしてタンパク質は、プロテアーゼ消化に供される。個々のタンパク質フラグメントは、タンデムMSの第1の質量分析計によって分離される。次いで、このフラグメントは、衝突誘導型冷却(collision−induced cooling)に供される。このフラグメントは、ポリペプチドラダーを産生するペプチドである。次いで、このポリペプチドラダーは、このタンデムMSの第2の質量分析計によって分析される。ポリペプチドラダーのメンバーの質量における相違は、配列におけるアミノ酸を同定する。タンパク質全体は、この方法で配列決定されてもよく、または配列フラグメントは、アイデンティティ候補を見出すためのデータベース探索(database mining)に供されてもよい。
【0041】
生物マーカーの検出のための好ましい生物学的供給源は、血小板である。
【0042】
本発明の生物マーカーは、生体分子である。したがって、本発明は、これらの生体分子を単離された形態で提供する。生物マーカーは、生物学的流体(例えば、血小板もしくは血清)から単離され得る。これらは、当該分野で公知の任意の方法によって、その質量および結合特性の両方に基づいて単離され得る。例えば、生体分子を含有するサンプルは、本明細書中で記載されるようにクロマトグラフィー分画に供され得、そして例えばアクリルアミドゲル電気泳動によってさらなる分離に供され得る。生物マーカーのアイデンティティの知見もまた、免疫親和性クロマトグラフィーによるその単離を可能にする。
【0043】
(血小板関連生物マーカーの改変形態の使用)
タンパク質は、多くの場合、複数の異なる形態でサンプル中に存在することが見出されている。これらの異なる形態は、異なる質量で検出可能に性質決定される。これらの形態は、転写前改変および転写後改変のいずれかもしくは両方からもたらされ得る。転写前改変形態としては、対立遺伝子改変体、スプライシング改変体(slice variant)およびRNA編集(editing)形態が挙げられる。転写後改変形態としては、タンパク質分解性切断(例えば、親タンパク質のフラグメント)、糖化、リン酸化、脂質化(lipidation)、酸化、メチル化、シスチニル化、スルホン化およびアセチル化から生じる形態が挙げられる。特定のタンパク質およびその全ての改変形態を含むタンパク質の収集物は、本明細書中で「タンパク質集団(protein cluster)」と呼ばれる。特定のタンパク質の全ての改変形態の収集物(この特定のタンパク質自体を除く)は、本明細書中で、「改変タンパク質集団」と呼ばれる。本発明の任意の生物マーカーの改変形態それ自体もまた、生物マーカーとして使用され得る。特定の場合、改変形態は、診断において本明細書中で示す特定の形態よりもよりよい識別能力を示し得る。
【0044】
生物マーカーの改変形態は、生物マーカーからの改変形態を検出し得そして識別し得る任意の方法論によって、最初に検出され得る。最初の検出のための好ましい方法は、生物マーカーおよびその改変形態を(例えば、生物特異的捕獲試薬を用いて)捕獲する第1の工程、および、次いでこの捕獲したタンパク質を質量分析法によって検出する工程を包含する。より具体的には、このタンパク質は、この生物マーカーおよびその改変形態を認識する捕獲試薬(例えば、抗体、アプタマーもしくはアフィボディ(Affibody))を用いて捕獲される。この方法はまた、タンパク質相互作用体(protein interactor)を生じ、これは、タンパク質に結合するか、またはさもなければ抗体によって認識され、そしてそれ自体が生物マーカーであり得る。好ましくは、生物特異的捕獲試薬は、固相に結合する。次いで、捕獲されたタンパク質は、SELDI質量分析法によって検出され得るか、またはタンパク質を捕獲試薬から溶出し、そして溶出したタンパク質を従来的なMALDIもしくはSELDIによって検出することによって、検出され得る。質量分析法の使用は、特に魅力的である。何故なら、質量分析法は、標識を必要とせずに質量に基づいてタンパク質の改変形態を識別し得かつ評価し得るからである。
【0045】
好ましくは、生物特異的捕獲試薬が、固相(例えばビーズ、プレート、膜もしくはチップ)に結合させられる。生体分子(例えば抗体)を固相に結合させる方法は、当該分野で周知である。これらの方法は、例えば、二官能性結合剤を用いてもよく、または固相は、接触している分子を結合するエポキシドもしくはイミダゾールのような反応基(reactive group)から誘導体化されてもよい。異なる標的タンパク質に対する生物特異的捕獲試薬は、同じ場所において混合されてもよく、またはこれらは、異なる物理的位置もしくはアドレス可能位置で固相に結合してもよい。例えば、多数のカラムに誘導体化ビーズを入れてもよい(各カラムは、1種類のタンパク質集団を捕獲し得る)。あるいは、1つのカラムに、種々のタンパク質集団に対する捕獲試薬で誘導体化された異なるビーズを充填し、それによって全ての分析物を同じ場所に捕獲してもよい。したがって、抗体誘導体化ビーズベースの技術(例えば、Luminex(Austin,TX)のxMAP技術)が、タンパク質集団を検出するために使用され得る。しかし、この生物特異的捕獲試薬は、集団のメンバーを識別するために、これらに対して特異的に指向されなければならない。
【0046】
なお別の実施形態において、バイオチップの表面は、タンパク質集団に対して指向性である捕獲試薬で、同じ場所もしくは物理的に異なるアドレス可能位置のどちらかで、誘導体化され得る。異なるアドレス可能位置において異なる集団を捕獲することの利点は、分析が単純になることである。
【0047】
タンパク質の改変形態の同定および目的の臨床的パラメータとの関連付けの後、この改変形態は、本発明の方法のいずれかにおいて生物マーカーとして使用され得る。この時点で、改変形態の検出は、任意の特異的検出方法論(親和性捕獲およびそれに続く質量分析、またはこの改変形態を特異的に指向する従来的イムノアッセイが挙げられる)によって達成され得る。イムノアッセイは、分析物を捕獲するために、生物特異的捕獲試薬(例えば、抗体)を必要とする。さらに、このアッセイが、タンパク質とこのタンパク質の改変形態とを特異的に識別するために設計されなければならない場合、例えば、サンドイッチアッセイを使用して達成され得る。このサンドイッチアッセイにおいて、1つの抗体は、1種より多い形態を捕獲し、そして第2に、明瞭に標識された特異的に結合する抗体を捕獲して、種々の形態の明瞭な検出を提供する。抗体は、生体分子で動物を免疫化することによって産生され得る。本発明は、従来のイムノアッセイ(例えば、ELISAを含むサンドイッチイムノアッセイもしくは蛍光ベースのイムノアッセイ、ならびに他の酵素イムノアッセイを含む)を企図する。
【0048】
別の局面において、本発明は、本発明の生物マーカーに結合する生物特異的捕獲試薬(例えば抗体)を含有する組成物を提供する。例えば、本発明の生物マーカーに対して指向される抗体およびこの生物マーカーに結合する抗体は、この生物マーカーの検出のために有用である。1つの実施形態において、生物特異的捕獲試薬は、固相(例えば、ビーズ、チップ、膜もしくはマイクロタイタープレート)に結合させられる。
【0049】
(III.血小板関連生物マーカーの検出)
本発明の生物マーカーは、任意の適切な方法によって検出され得る。この目的のために使用され得る検出パラダイムとしては、光学的方法、電気化学的方法(ボルタメトリー(voltametry)技術および電流測定技術)、原子力顕微鏡検査、および高周波方法(例えば、多極性共鳴質量分析法)が挙げられる。光学的方法の例は、共焦点顕微鏡および非共焦点顕微鏡の両方の顕微鏡検査に加えて、蛍光、発光、化学発光、吸光度、反射率、透過率および複屈折率もしくは屈折率の検出である(例えば、表面プラスモン共鳴、偏光解析法、共振ミラー方法、格子結合導波管方法(grating coupler waveguide method)もしくは干渉分光法)。
【0050】
特許請求される本発明を用いる検出の前に、生物マーカーは、分画されて、検出を妨害し得る血液の他の成分から単離されてもよい。分画は、他の血液成分からの血小板単離、血小板成分の細胞下分画、および/または血小板において見出される他の生体分子からの所望の生物マーカーの分画を含み得、例えば、クロマトグラフィー、親和性精製、1Dマッピングおよび2Dマッピング、ならびに精製のための当該分野で公知の他の方法論を用いる。1つの実施形態において、サンプルは、バイオチップの手段によって分析される。バイオチップは、一般に、固体基質を含み、そして一般に平らな表面を有し、この表面に捕獲試薬(吸着剤もしくは親和性試薬とも呼ぶ)が結合させられる。多くの場合、バイオチップの表面は、複数のアドレス可能な位置を含み、これらの位置の各々が、そこに結合した捕獲試薬を有する。
【0051】
タンパク質バイオチップは、ポリペプチドの捕獲のために適合されたバイオチップである。多くのタンパク質バイオチップが、当該分野で記載されている。これらとしては、例えば、Ciphergen Biosystems,Inc.(Fremont,CA)、Packard BioScience Company(Meriden CT)、Zyomyx(Hayward,CA)、Phylos(Lexington,MA)およびBiacore(Uppsala,Sweden)によって製造されているタンパク質バイオチップが挙げられる。これらのタンパク質バイオチップの例は、以下の特許および特許出願公開おいて記載されている:米国特許第6,225,047号;PCT国際公開第99/51773号;米国特許第6,329,209号;PCT国際公開第00/56934号;および米国特許第5,242,828号。
【0052】
(質量分析法による検出)
好ましい実施形態において、本発明の生物マーカーは、質量分析法によって検出される。この方法は、質量分析計を使用して気相イオンを検出する。質量分析計の例は、飛行時間型分析計、磁場型分析計、四極子フィルター分析計、イオントラップ分析計、イオンサイクロトロン共鳴分析計、静電型(electrostatic sector)分析計およびこれらのハイブリッドである。
【0053】
さらに好ましい方法において、この質量分析計は、レーザー脱離/イオン化質量分析計である。レーザー脱離/イオン化質量分析法において、分析物は、質量分析法プローブの表面上に位置し、デバイスは、質量分析計のプローブインターフェースと会合するように、そして分析物にイオン化および質量分析計への導入のためのイオン化エネルギーを供するように適合される。レーザー脱離質量分析計は、レーザーエネルギー(代表的には、紫外線レーザーからのエネルギーであるが、赤外線レーザーからのエネルギーでもよい)を使用して、分析物を表面から脱着し、これらを揮発させそしてイオン化させて、これらを質量分析計のイオン光学に利用可能にする。
【0054】
(SELDI)
本発明における使用のための好ましい質量分析技術は、「表面増強レーザー脱離およびイオン化(Surface Enhanced Laser Desorption and Ionization)」すなわち「SELDI」であり、例えば、米国特許第5,719,060号および同第6,225,047号(両方ともHutchensおよびYipに対する)に記載される通りである。これは、脱離/イオン化気相イオン分光分析(例えば、質量分析)の方法をいい、ここで、分析物(本明細書中では、1種以上の生物マーカー)は、SELDI質量分析プローブの表面上に捕獲される。SELDIにはいくつかの変法が存在する。
【0055】
SELDIの1つの変法は、「親和性捕獲質量分析法」と呼ばれる。これはまた、「表面増強親和性捕獲(Surface−Enhanced Affinity Capture)」すなわち「SEAC」とも呼ばれる。この変法は、プローブ表面上に物質を有するプローブの使用を包含し、この物質は、この物質と分析物との間の非共有結合性親和性相互作用(吸着)を介して、分析物を捕獲する。この物質は、「吸着剤」、「捕獲試薬」、「親和性試薬」もしくは「結合部分」と、様々に呼ばれる。このようなプローブは、「親和性捕獲プローブ」と呼ばれ得、そして「吸着剤表面」を有すると言われ得る。この捕獲試薬は、分析物を結合し得る任意の物質であり得る。この捕獲試薬は、この選択的表面の基質に直接的に結合されてもよく、またはこの基質は、捕獲試薬を(例えば、共有結合もしくは配位共有結合を形成する反応を介して)結合し得る反応性部分を保持する反応性表面を有してもよい。エポキシドおよびカルボジイミダゾール(carbodiimidizole)は、抗体もしくは細胞性レセプターのようなポリペプチド捕獲試薬を共有結合する、有用な反応性部分である。ニトリロ酢酸およびイミノ二酢酸は、有用な反応性部分であり、これは、金属イオンに結合するキレート剤として作用し、この金属イオンは、ヒスチジン含有ペプチドと非共有結合的に相互作用する。吸着剤は、一般に、クロマトグラフィー吸着剤と生物特異的吸着剤とに分類される。
【0056】
「クロマトグラフィー吸着剤」は、クロマトグラフィーにおいて代表的に使用される吸着剤物質をいう。クロマトグラフィー吸着剤としては、例えば、イオン交換物質、金属キレート剤(例えば、ニトリロ酢酸もしくはイミノ二酢酸)、固定化金属キレート、疎水性相互作用吸着剤、親水性相互作用吸着剤、色素、単純な生体分子(例えば、ヌクレオチド、アミノ酸、単純な糖類および脂肪酸)ならびに混合様式の吸着剤(例えば、疎水性引力/静電反発力吸着剤)が挙げられる。
【0057】
「生物特異的吸着剤」とは、生体分子(例えば、核酸分子(例えばアプタマー)、ポリペプチド、多糖類、脂質、ステロイドもしくはこれらの結合体(例えば糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質、核酸(例えばDNA)−タンパク質結合体))を含む吸着剤をいう。特定の場合、生物特異的吸着剤は、多タンパク質複合体、生体膜もしくはウイルスのような高分子構造であり得る。生物特異的吸着剤の例は、抗体、レセプタータンパク質および核酸である。生物特異的吸着剤は、代表的に、標的分子に対して、クロマトグラフィー吸着剤よりもより高い特異性を有する。SELDIにおける使用のための吸着剤のさらなる例は、米国特許第6,225,047号において見出され得る。「生物特異的吸着剤」とは、少なくとも10−8Mの親和性で分析物に結合する。
【0058】
Ciphergen Biosystemsによって製造されるタンパク質バイオチップは、アドレス可能位置で表面に結合するクロマトグラフィー吸着剤もしくは生物特異的吸着剤を有する表面を含む。Ciphergen ProteinChip(登録商標)アレイとしては、以下が挙げられる:NP20(親水性);H4およびH50(疎水性);SAX−2、Q−10およびLSAX−30(アニオン交換);WCX−2、CM−10およびLWCX−30(カチオン交換);IMAC−3、IMAC−30およびIMAC 40(金属キレート);ならびにPS−10、PS−20(カルボジイミダゾール(carboimidizole)、エポキシドに反応性の表面)およびPG−20(カルボジイミダゾール(carboimidizole)を介して結合したタンパク質G)。疎水性ProteinChipアレイは、イソプロピルフェノキシ−ポリ(エチレングリコール)メタクリレート官能基もしくはノニルフェノキシ−ポリ(エチレングリコール)メタクリレート官能基を有する。アニオン交換ProteinChipアレイは、第四級アンモニウム官能基を有する。カチオン交換ProteinChipアレイは、カルボン酸官能基を有する。固定化金属キレートProteinChipアレイは、ニトリロ酢酸官能基を有し、この官能基は、遷移金属イオン(例えば、銅、ニッケル、亜鉛およびガリウム)にキレート化によって吸着される。事前活性化ProteinChipアレイは、カルボジイミダゾール(carboimidizole)官能基もしくはエポキシド官能基を有し、これは、共有結合のためにタンパク質上の基と反応し得る。
【0059】
このようなバイオチップは、さらに以下に記載される:米国特許第6,579,719号(HutchensおよびYip,「Retentate Chromatography」,2003年6月17日);PCT国際公開第00/66265号(Richら,「Probes for a Gas Phase Ion Spectrometer」,2000年11月9日);米国特許第6,555,813号(Beecherら,「Sample Holder with Hydrophobic Coating for Gas Phase Mass Spectrometer」,2003年4月29日);米国特許出願公開第2003 0032043 A1号(PohlおよびPapanu,「Latex Based Adsorbent Chip」,2002年7月16日);ならびにPCT国際公開第03/040700号(Umら,「Hydrophobic Surface Chip」,2003年5月15日);米国特許出願公開第2003/0218130 A1号(Boschettiら,「Biochips With Surfaces Coated With Polysaccharide−Based Hydrogels」,2003年4月14日)ならびに米国特許出願第60/448,467号(発明の名称「Photocrosslinked Hydrogel Surface Coatings」,Huangら,2003年2月21日出願)。
【0060】
一般に、吸着剤表面を有するプローブは、サンプル中に存在し得る生物マーカーもしくは複数の生物マーカーを吸着剤に結合させるのに十分な一定時間、サンプルと接触させられる。インキュベーション期間後、基質は洗浄されて、未結合の物質は除去される。任意の適切な洗浄溶液が、使用され得る。好ましくは、水溶液が使用される。分子が結合し続ける程度は、洗浄のストリンジェンシーを調整することによって操作され得る。洗浄溶液の溶出特性は、例えば、pH、イオン強度、疎水性、カオトロピズムの程度、洗浄剤の強度および温度に依存し得る。プローブが(本明細書中で記載される)SEAC特性およびSEND特性の両方を有する場合を除き、次いで、結合した生物マーカーを有する基質に、エネルギー吸収分子が適用される。
【0061】
基質に結合した生物マーカーは、気相イオン分光分析計(例えば飛行時間型質量分析計)において検出される。生物マーカーは、レーザーのようなイオン化供給源によってイオン化され、産生されたイオンは、イオン光学アセンブリによって収集され、次いで、質量分析計は、通過するイオンを分散させそして分析する。次いで、検出器は、検出されたイオンの情報を、質量電荷比に変換する。生物マーカーの検出は、代表的に、シグナル強度の検出を包含する。したがって、生物マーカーの量および質量の両方が決定され得る。
【0062】
SELDIの別の変法は、表面増強Neat脱離(Surface−Enhanced Neat Desorption)(SEND)であり、これは、プローブ表面に化学的に結合したエネルギー吸収性分子を含むプローブ(「SENDプローブ」)の使用を包含する。語句「エネルギー吸収性分子」(EAM)は、レーザー脱離/イオン化源からのエネルギーを吸収し得、その後、この分子に接触している分析物分子の脱離およびイオン化に寄与する分子をいう。EAMカテゴリーとしては、しばしば「マトリックス」と呼ばれる、MALDIにおいて使用される分子が挙げられ、これは、ケイ皮酸誘導体、シナピン酸(SPA)、シアノ−ヒドロキシ−ケイ皮酸(CHCA)およびジヒドロキシ安息香酸、フェルラ酸、ならびにヒドロキシアセト−フェノン誘導体によって例示される。特定の実施形態において、このエネルギー吸収性分子は、直鎖状ポリマーもしくは架橋ポリマー(例えば、ポリメタクリレート)内に組み込まれる。例えば、この組成物は、α−シアノ−4−メタクリロイロキシケイ皮酸とアクリレートとの共重合体であり得る。別の実施形態において、この組成物は、α−シアノ−4−メタクリロイロキシケイ皮酸とアクリレートと3−(三エトキシ)シリルプロピルメタクリレートとの共重合体である。別の実施形態において、この組成物は、α−シアノ−4−メタクリロイロキシケイ皮酸とオクタデシルメタクリレートとの共重合体である(「C18 SEND」)。SENDは、さらに以下に記載される:米国特許第6,124,137号およびPCT国際公開第03/64594号(Kitagawa,「Monomers And Polymers Having Energy Absorbing Moieties Of Use In Desorption/ionization Of Analytes」,2003年8月7日)。
【0063】
SEAC/SENDは、SELDIの変法であり、ここで、捕獲試薬とエネルギー吸収性分子との両方が、サンプル提示表面に結合している。SEAC/SENDプローブは、したがって、親和性捕獲およびイオン化/脱離を介して分析物の捕獲を可能にし、外来性のマトリックスの適用を必要としない。C18 SENDバイオチップは、SEAC/SENDの変法であり、捕獲試薬として機能するC18部分、およびエネルギー吸収性部分として機能するCHCA部分を含む。
【0064】
SELDIの別の変法は、表面増強感光性結合および放出(Surface−Enhanced Photolabile Attachment and Release)(SEPAR)と呼ばれ、分析物に共有結合し得、次いで光(例えば、レーザー光)への曝露後のこの部分における感光性結合の破壊を介して分析物を放出し得る表面に結合する部分を有するプローブの使用を包含する(米国特許第5,719,060号を参照)。SEPARおよびSELDIの他の形態は、本発明にしたがって、生物マーカーもしくは生物マーカープロフィールを検出するために用意に適合される。
【0065】
(他の質量分析方法)
別の質量分析方法において、生物マーカーは、生物マーカーを結合するクロマトグラフィー特性を有するクロマトグラフィー樹脂上に最初に捕獲され得る。本願の実施例において、種々の方法を包含し得る。例えば、生物マーカーを、カチオン交換樹脂(例えばCM Ceramic HyperD F樹脂)上に捕獲し、この樹脂を洗浄し、この生物マーカーを溶出して、MALDIによって検出し得る。あるいは、この方法は、カチオン交換樹脂への適用の前に、アニオン交換樹脂上へのサンプルの適用を先行させてもよい。別の代替法において、アニオン交換樹脂上で分画し、そしてMALDIによって直接検出してもよい。なお別の方法において、生物マーカーを、この生物マーカーに結合する抗体を含むイムノクロマトグラフィー樹脂上に捕獲し、樹脂を洗浄して未結合物質を除去し、この生物マーカーを樹脂から溶出して、溶出された生物マーカーをMALDIおよびSELDIで検出してもよい。
【0066】
(データ分析)
飛行時間型質量分析法による分析物の分析は、飛行時間型スペクトルを産生する。最終的に分析された飛行時間型スペクトルは、代表的に、サンプルに対するイオン化エネルギーの単一のパルスからのシグナルを表さず、むしろ多くのパルスからのシグナルの合計を表す。このことは、ノイズを低減し、そしてダイナミックレンジを増大する。飛行時間型データは、次いで、データ処理に供される。CiphergenのProteinChip(登録商標)ソフトウェアにおいて、データ処理は、代表的に、マススペクトルを産生するためのTOFからM/Zへの変換、機器のオフセットを除去するための基線減算、および高周波ノイズを低減するための高周波ノイズフィルタリングを包含する。
【0067】
脱離および生物マーカーの検出によって産生されるデータは、プログラム可能なデジタルコンピュータの使用によって分析され得る。コンピュータープログラムは、データを分析して、検出された生物マーカーの数、必要に応じて検出された各生物マーカーのシグナルの強度および決定された分子量を示す。データ分析は、生物マーカーのシグナル強度を決定する工程および所定の統計的分布から逸脱しているデータを除去する工程を包含する。例えば、観察されたピークは、各ピークの高さをある参照に対して計算する工程によって正規化され得る。この参照は、機器およびエネルギー吸収性分子のような化学物質によって産生されたバックグラウンドノイズであり得、これは、目盛りにおいて0として設定される。
【0068】
コンピューターは、得られたデータを表示のための種々の形式に変換し得る。標準スペクトルが表示されてもよいが、1つの有用な形式において、ピーク高さおよび質量情報のみがスペクトル表示から維持されて、より明瞭な画像を生じることならびにほぼ同一の分子量を有する生物マーカーがより容易に見えるようにすることを可能にする。別の有用な形式において、2つ以上のスペクトルが比較され、便利なことに、独特の生物マーカー、およびサンプル間でアップレギュレートされている生物マーカーまたはダウンレギュレートされている生物マーカーが、強調される。これらの形式のいずれかを用いて、特定の生物マーカーがサンプル中に存在するか否かを容易に決定し得る。
【0069】
分析は、一般に、スペクトル中のピーク(分析物からのシグナルを表す)の同定を包含する。ピーク選択は、視覚的になされ得るが、CiphergenのProteinChip(登録商標)ソフトウェアパッケージの一部のようなソフトウェアが利用可能であり、このソフトウェアは、ピークの検出を自動化し得る。一般に、このソフトウェアは、選択された閾値を超えるシグナル対ノイズ比を有するシグナルを同定し、そしてこのピークシグナルの中心におけるピークの質量をラベリング(labeling)することによって機能する。1つの有用な適用において、多くのスペクトルが比較され、マススペクトルのある選択された百分率で存在する同一のピークを同定する。このソフトウェアの1つのバージョンは、所定の質量範囲の種々のスペクトルにおいて現れる全てのピークを集め、そして質量(M/Z)集団の中央点(mid−point)付近の全てのピークに対して質量(M/Z)を指定する。
【0070】
データを分析するために使用されるソフトウェアは、コードを含み得、このコードは、シグナルの分析にアルゴリズムを適用し、このシグナルが、本発明に従う生物マーカーに対応するシグナルにおけるピークを表すか否かを決定する。このソフトウェアはまた、観察された生物マーカーピークに関するデータを、分類木(classification tree)もしくはANN分析に供し、生物マーカーピークもしくは生物マーカーピークの組み合わせが存在するか否かを決定し得る。この生物マーカーピークもしくは生物マーカーピークの組み合わせの存在は、試験下の特定の臨床パラメータの状態を示す。データの分析は、サンプルの質量分析法による分析から(直接的もしくは間接的のいずれかで)得られた種々のパラメータに対して「適合させられ(keyed)」得る。これらのパラメータとしては、1つ以上のピークの存在もしくは非存在、ピークもしくはピーク群の形状、1つ以上のピークの高さ、1つ以上のピークの高さの対数、およびピーク高さデータの他の算術的操作が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
(血小板関連生物マーカーのSELDI検出のための一般的プロトコール)
上述のように、SELDI質量分析法は、本発明によって生物マーカーの検出のために企図される、好ましいプロトコールである。SELDIを用いる生物マーカーの検出のための一般的プロトコールは、好ましくは、生物マーカーを含有するサンプルを分画し、それによって、目的の生物マーカーをサンプル中の他の成分から少なくとも部分的に単離することによって開始する。サンプルの初期の分画は、このアプローチが、多くの場合、特許請求される本発明の感度を改善するので、好ましい。事前分画の好ましい方法は、サンプルを、アニオン交換クロマトグラフィー物質(例えば、Q HyperD(BioSepra,SA))と接触させる工程を包含する。結合した物質は、次いで、pH9、pH7、pH5およびpH4の緩衝液を用いる段階的pH溶出に供され、生物マーカーを含有する画分が収集される。
【0072】
試験される(好ましくは、事前に分画された)サンプルは、次いで、カチオン交換吸着剤(好ましくは、WCX ProteinChipアレイ(Ciphergen Biosystems,Inc.))もしくはIMAC吸着剤(好ましくは、IMAC3 ProteinChipアレイ(Ciphergen Biosystems,Inc.))を含有する親和性プローブと接触させられる。このプローブは、次いで、未結合分子を洗い流す一方で生物マーカーを保持する緩衝液で、洗浄される。この生物マーカーは、レーザー脱離/イオン化質量分析法によって検出される。
【0073】
あるいは、生物マーカーを認識する抗体が利用可能である場合、例えばPF4およびCTAP IIIを用いる場合に、生物特異的プローブが構築され得る。このようなプローブは、抗体を官能性付与されたプローブ(例えば、事前に活性化されたPS10もしくはPS20 ProteinChipアレイ(Ciphergen Biosystems,Inc.))に接触させることによって形成され得る。一旦プローブの表面に結合させられると、このプローブは、次いで、サンプルからの生物マーカーをプローブ表面上に捕獲するために使用され得る。次いで、この生物マーカーは、例えば、レーザー脱離/イオン化質量分析法によって検出され得る。
【0074】
(イムノアッセイによる検出)
別の実施形態において、本発明の生物マーカーは、イムノアッセイによって測定され得る。イムノアッセイは、生物マーカーを捕獲するために、生物特異的捕獲試薬(例えば抗体)を必要とする。抗体は、当該分野で周知の方法(例えば、生物マーカーを用いた動物の免疫化)によって産生され得る。生物マーカーは、その結合特性に基づいて、サンプルから単離され得る。あるいは、ポリペプチド生物マーカーのアミノ酸配列が既知である場合、このポリペプチドは、合成され得、そして当該分野で周知の方法によって抗体を作製するために使用され得る。
【0075】
本発明は、従来的イムノアッセイを企図し、このイムノアッセイとしては、例えば、サンドイッチイムノアッセイ(ELISAもしくは蛍光ベースのイムノアッセイを含む)ならびに他の酵素イムノアッセイが挙げられる。SELDIベースのイムノアッセイにおいて、生物マーカーについての生物特異的捕獲試薬は、MSプローブ(例えば、事前に活性化されたProteinChipアレイ)の表面に結合させられる。次いで、この生物マーカーは、この試薬を介してバイオチップに特異的に捕獲され、そして捕獲された生物マーカーは、質量分析法によって検出される。
【0076】
(IV.生物マーカー発現における変化と脈管形成状態との関連付け)
本発明の使用は、臨床医が脈管形成活性に関連する個体の代謝状態における変化を診断することを可能にする。これは、検出するために探索される変化した代謝状態に関連する脈管形成活性からもたらされる血小板関連生物マーカーの、発現レベルにおける変化をモニタリングすることによって、達成される。したがって、本発明の好ましい生物マーカーは、脈管形成もしくは脈管停止(angiostasis)に関連するが、適切な生物マーカーの正確な同定は、これらの生物マーカーを用いる特許請求される本発明の実施に必須ではない。特許請求される本発明の、記載された様式での実施は、単一の検出可能マーカーもしくは多数の検出可能マーカーによって実施され得、これらの検出可能マーカーは、生理学的改変(例えば、癌、感染、妊娠、組織損傷など)に関連する脈管形成活性の改変に応答する変化した発現レベルを、個々に示すか、もしくは群として示す。
【0077】
生物マーカー発現は、種々の方法によってモニタリングされ得る。例えば、1つのサンプルが、生物マーカー発現レベルについて分析され得、これは、その後、代表的コントロール集団のサンプリングから決定されたコントロール閾値と比較され得る。あるいは、1人の患者から時間をかけて採取された多数のサンプルは、比較されて、生物マーカー発現レベルが上昇したか低下したかを決定され得る。このアプローチは、疾患のための(生物マーカー発現に影響する)処置の後の、患者の予後診断を評価する場合に、特に有用である。なお他の生物マーカー評価は、過度の実験を要することなく、当業者に用意に明らかになる。
【0078】
(単一のマーカー)
個々の生物マーカーの検出は、この生物マーカーが上記の診断基準(特に、本発明の使用を介して検出されるために探索される、疾患もしくは代謝状態における変化の相関)に適合する場合、特許請求される本発明のために企図される。単一の生物マーカーは、被験体における脈管形成状態を評価するための診断試験において、例えば癌の存在もしくは疾患(例えば患者における脈管形成活性に影響を及ぼす特定の癌)の過程における変化を診断するために、使用され得る。語句「脈管形成状態」としては、特に、疾患状態 対 非疾患状態を識別すること、特に、侵襲性癌 対 休眠性癌または侵襲性癌 対 非癌を識別することが挙げられる。さらに、脈管形成状態は、種々の種類の癌を含み得る。この状態に基づき、さらなる診断試験または治療的手順もしくはレジメンを含む、さらなる手順が示され得る。
【0079】
表1および表2に列挙される各生物マーカーは、患者における脈管形成における変化に応答して、差次的に発現される。したがって、これらの生物マーカーの各々は、脈管形成状態の決定における補助において個々に有用である。本発明のいくつかの実施形態は、例えば、血小板調製物中の選択された生物マーカーの発現レベルを測定する工程を包含する。この生物マーカーの発現レベルを、同じ個体においてより初期に決定された発現レベルと比較することによって、当業者は、疾患の過程、もしくは疾患の処置に対する応答の過程を、決定し得る。あるいは、検出された生物マーカーのレベルは、1種以上の疾患状態についての閾値(例えば、適切な公知の表現型を示す個体の集団の調査によって決定される)と比較され得る。本発明での個々の検出による、診断目的もしくは予後診断目的のために適した例示的な公知の生物マーカーとしては、VEGF、PDGF、bFGF、PF4、CTAP III、エンドスタチン、タムスタチン、メタロプロテアーゼの組織インヒビター、アポリポタンパクA1、IL8、TGF、NGAL、MIP、メタロプロテアーゼ、BDNF、NGF、CTGF、アンジオゲニン、アンジオポエチン、アンジオスタチン、およびトロンボスポンジンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
脈管形成活性における変化の指標としての個々の生物マーカーの使用は、代表的に、この生物マーカーを検出する工程、およびその後の、決定された生物マーカー発現レベルと、特定の疾患に関連する閾値レベルもしくは代謝における変化に関連する閾値レベルとの関連付け(correlation)を包含する。例えば、SELDIバイオチップ上の捕獲の後に、質量分析法による検出、ならびに第2に、この測定値を脈管形成ネガティブな状態から脈管形成ポジティブな状態を識別する診断的な量もしくはカットオフと比較する工程が続く。この診断的な量は、被験体が特定の脈管形成状態を有すると分類される量より多い生物マーカーの量もしくはこれより少ない生物マーカーの量を表す。例えば、腫瘍形成の間、生物マーカーが正常と比較してアップレギュレートされる場合、したがって、診断的カットオフより上と測定された量は、癌の診断を提供する。あるいは、侵襲性腫瘍の処置の間に生物マーカーがダウンレギュレートされる場合、したがって、診断的カットオフより下と測定された量は、腫瘍の退行の診断、もしくは腫瘍の休眠性状態への過程の診断を提供する。
【0081】
また、生物マーカーの測定されたレベルは、特定の種類の癌の診断、または異なる癌の種類の識別を容易にするために使用され得る。例えば、生物マーカーもしくは生物マーカーの組み合わせが、癌の特定の種類において、他と比較して特定のレベルより上にアップレギュレートされる場合、診断的カットオフより上と測定された生物マーカーの量は、特定の種類の癌が存在することの指標を提供する。さらに、生物マーカーの組み合わせは、以下に記載されるようなさらなる診断情報を提供するために使用され得る。本明細書中に記載される生物マーカーおよび技術を使用して同定され得そして互いに識別され得る癌の種類のいくつかの例としては、乳癌、肝臓癌、肺癌、血管芽細胞腫、神経芽細胞腫、膀胱癌、前立腺癌、胃癌、脳の癌および結腸癌が挙げられる。癌腫、肉腫、白血病、リンパ腫および骨髄腫(myoloma)もまた、本明細書中に記載される生物マーカーおよび方法を使用して識別され得る。さらに、異なる癌の種類は、生物マーカーの異なるパターンを発現し、そしてそれによって互いに識別され得る。各癌の種類のパターンの特徴は、本明細書中で記載されるように、例えば、各癌の種類からのサンプルを、分類アルゴリズム(癌の種類に基づいてサンプルを分類し得る)を作製するための学習(learning)アルゴリズムを用いて分析することによって決定され得る。
【0082】
当該分野でよく理解されているように、アッセイにおける特定の診断カットオフを調整することにより、診断医の存在に依存して、診断的アッセイの感度もしくは特異性を上昇させ得る。特定の診断的カットオフは、例えば、異なる脈管形成状態を有する被験体からの統計的に有意な数のサンプルにおいて生物マーカーの量を測定すること(本明細書中でなされたように)、および診断医の所望するレベルの特異性および感度に適合するカットオフを引き出すことによって、決定され得る。
【0083】
(マーカーの組み合わせ)
個々の生物マーカーは、有用な診断用マーカーであるが、生物マーカーの組み合わせは、単一の診断マーカーのみよりも特定の状態のより予測的な値を提供し得ることが見出されている。具体的には、サンプル中の複数の生物マーカーの検出は、試験の感度および/または特異性を上昇させ得る。本発明に関連して、少なくとも2種の、好ましくは3種、4種、5種、6種もしくは7種の、より好ましくは10種、15種または20種の異なる生物マーカー発現レベルが、疾患の診断もしくは代謝状態の変化の診断において決定される。組み合わせにおいて使用され得る例示的な生物マーカーとしては、PF4、VEGF、PDGF、bFGF、PDECGF、CTGF、アンジオゲニン、アンジオポエチン、アンジオスタチン、エンドスタチン、およびトロンボスポンジンが挙げられる。本発明の好ましい実施形態は、複数の生物マーカーを検出し、これらのマーカーは、bFGFおよび少なくとも1種の他の生物マーカーを含み、この他の生物マーカーは、以下からなる群から選択される:VEGF、PDGF、PDECGF、CTGF、アンジオゲニン、アンジオポエチン、PF4、アンジオスタチン、エンドスタチン、およびトロンボスポンジン。代替の好ましい実施形態は、複数の生物マーカーを検出し、これらのマーカーは、PF4および少なくとも1種の他の生物マーカーを含み、この他の生物マーカーは、以下からなる群から選択される:VEGF、PDGF、bFGF、PDECGF、CTGF、アンジオゲニン、アンジオポエチン、アンジオスタチン、エンドスタチン、およびトロンボスポンジン。
【0084】
(V.腫瘍状態を評価するための分類アルゴリズムの作製)
上述のように、検出された生物マーカー発現レベルの分析は、手動で実施されてもよく、またはコンピューターソフトウェアを用いて自動で実施されてもよい。1つのサンプル分析が実施されてもよく、または多数のサンプル分析が行われてもよい。この多数のサンプルの各々は、研究の下で、処置もしくは評価の過程の間の適切な時点で採取されている。分析の確度は、決定が、疾患の処置もしくは代謝状態の変化の間の進行をモニタリングするために用いられ得る場合、および疾患もしくは代謝状態の変化を診断するために用いられる場合の両方において、特に重要である。特許請求される本発明の好ましい実施形態において、患者の処置を行うことは、発現レベルの分類に基づき、この分類は、評価された患者の疾患もしくは代謝状態を正確に反映する。
【0085】
本発明での使用のために適する多くの異なる分類戦略は、当該分野で公知である。好ましい戦略は、疾患の進行の異なる段階で生物マーカーの異なる発現レベルを同定する。例えば、腫瘍増殖において、腫瘍は、転移の初期の形成からの一連の段階を通過し得る。したがって、適切な分類スキームは、腫瘍増殖および/または転移活性によって分類される「侵襲性」;増殖していないかもしくは活発に転移していない腫瘍を同定する「休眠性」;例えば治療後に、縮小している腫瘍を同定する「退行性」;ならびに「腫瘍なし」を含み得る。
【0086】
いくつかの実施形態において、「既知のサンプル」のようなサンプルを使用して産生されたスペクトル(例えば、マススペクトルもしくは時間非行型スペクトル)に由来するデータは、次いで、「訓練(train)」分類モデルに使用され得る。「既知のサンプル」は、既に分類されているサンプルである。スペクトルに由来し、分類モデルを形成するために使用されるデータは、「訓練データセット」と呼ばれ得る。一旦訓練されると、この分類モデルは、未知のサンプルを用いて産生されたスペクトルに由来するデータにおけるパターンを認識し得る。この分類モデルは、次いで、未知のサンプルをクラス(class)に分類するために使用され得る。これは、例えば、特定の生物学的サンプルが、特定の生物学的状態(例えば、疾患 対 非疾患)に関連しているか否かを予測することにおいて、有用であり得る。
【0087】
分類モデルを形成するために使用される訓練データセットは、生データを含んでもよく、または事前に処理されたデータを含んでもよい。いくつかの実施形態において、生データは、飛行時間型スペクトルもしくはマススペクトルから直接得られ得、次いで、必要に応じて上述のように「事前処理」され得る。
【0088】
分類モデルは、データの集団(bodies)をこのデータに存在する目的のパラメータに基づいて分類することを試みる、任意の適切な統計的分類(または「学習」)方法を用いて形成され得る。分類方法は、監督されても(supervised)または監督されなくても(unsupervised)どちらでもよい。監督された分類プロセスもしくは監督されない分類プロセスの例は、Jain,「Statistical Pattern Recognition:A Review」,IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence,第22巻,第1号,2000年1月において記載され、この教示は、参考として援用される。
【0089】
監督された分類において、既知の分類(category)の例を含む訓練データは、学習メカニズムに提示され、このメカニズムは、既知のクラスの各々を規定する1組以上の関係性を学習する。次いで、新しいデータが、この学習メカニズムに適用され、次いで、このメカニズムは、学習した関係性を用いてこの新しいデータを分類する。監督された分類プロセスの例としては、線形回帰プロセス(例えば、多重線形回帰(MLR)、部分的最小自乗(PLS)、および主成分回帰(PCR))、二分決定木(例えば、CART分類のような帰納的分配プロセス(recursive partitioning process)および回帰木(regression tree))、逆行性伝播ネットワークのような人工的神経ネットワーク、判別分析(例えば、Bayesian分類法(classifier)もしくはFischer分析)、ロジスティック分類法(classifier)、ならびにサポートベクトル(support vector)分類法(classifier)(サポートベクトル機械)が挙げられる。
【0090】
好ましい監督された分類方法は、帰納的分配プロセスである。帰納的分配プロセスは、帰納的分配木(recursive partitioning tree)を使用して、未知のサンプルに由来するスペクトルを分類する。帰納的分配プロセスに関するさらなる詳細は、Paulseらの米国特許出願公開第2002 0138208 A1号(「Method for analyzing mass spectra」)において提供される。
【0091】
他の実施形態において、作製された分類モデルは、監督されない学習方法を用いて形成され得る。監督されない分類は、事前に分類されたスペクトル(このスペクトルに訓練データセットが由来する)を用いずに、訓練データセットにおける類似性に基づいて分類を学習することを試みる。監督されない学習方法としては、クラスター分析が挙げられる。クラスター分析は、データを「集団(cluster)」もしくは群に分割することを試み、この集団もしくは群は、理想的には、互いに非常に類似するメンバーを有するべきであり、ここでこのメンバーは、他の集団のメンバーとは非常に異なる。次いで、類似性は、データ項目間の距離を測定するいくつかの距離の測定基準を用いて測定され、そして互いに近いデータ項目を一緒にする。集合(clustering)技術としては、MacQueenのK−平均アルゴリズムおよびKohonenの自己組織化マップアルゴリズムが挙げられる。
【0092】
生物学的情報の分類における使用のためにアサートされる上述の学習アルゴリズムは、例えば、PCT国際公開第01/31580号(Barnhillら,「Methods and devices for identifying patterns in biological systems and methods of use thereof」)、米国特許出願第2002 0193950 A1号(Gavinら,「Method or analyzing mass spectra」)、米国特許出願第2003 0004402 A1号(Hittら,「Process for discriminating between biological states based on hidden patterns from biological data」)、および米国特許出願第2003 0055615 A1号(ZhangおよびZhang,「Systems and methods for processing biological expression data」)において記載される。
【0093】
分類モデルは、任意の適切なデジタルコンピューター上で形成され得、そして使用され得る。適切なデジタルコンピューターとしては、任意の標準的オペレーティングシステムもしくは特定のオペレーティングシステム(例えば、Unix(登録商標)ベース、Windows(登録商標)ベースもしくはLinux(登録商標)ベースのオペレーティングシステム)を用いるマイクロコンピューター、小型(mini)コンピューターもしくは大型(large)コンピューターが挙げられる。使用されるデジタルコンピューターは、目的のスペクトルを作製するために使用される質量分析計から物理的に離れていてもよく、または質量分析計と結合されていてもよい。
【0094】
本発明の実施形態に従う訓練データセットおよび分類モデルは、デジタルコンピューターによって実行されるかもしくは使用されるコンピューターコードによって実現され得る。このコンピューターコードは、任意の適切なコンピューター読み取り可能媒体(光学的もしくは磁気的な、ディスク、スティック、テープなどが挙げられる)上に保存され得、そして任意の適切なコンピュータープログラミング言語(C、C++、ビジュアルベーシックなど)で書かれ得る。
【0095】
上述の学習アルゴリズムは、既に発見されている生物マーカーについての分類メカニズムを開発するため、または脈管形成状態を決定するための新規な生物マーカーを探索するための、両方に有用である。この分類アルゴリズムは、次に、単独でもしくは組み合わせて使用される生物マーカーについての診断の値(例えば、カットオフ点)を提供することによって、診断試験のための基礎を形成する。
【0096】
(VI.患者管理の実行)
疾患状態についての診断および予後の評価のための方法、キットおよびデバイスの提供において、本発明は、患者の管理(care)を行うためのツールを提供するために、有用性を有する。特に、本発明は、患者における脈管形成活性における変化をもたらす種々の疾患の処置を診断することおよび評価することにおいて用途を見出す。このような状態としては、例えば、癌状態、妊娠状態、感染状態(例えば、肝炎状態)、損傷状態、および関節炎状態が挙げられ得る。本発明の特定の実施形態において、脈管形成状態を評価するための方法は、この状態に基づいて、被験体の処置を行う工程をさらに包含する。このような実施は、疾患の状態の決定後の医師または臨床医の行動を包含する。例えば、医師が、侵襲性癌の診断を行う場合、次いで、処置の特定のレジメン(例えば、化学療法もしくは外科手術)が続き得る。あるいは、腫瘍なしもしくは休眠性腫瘍の診断の後に、患者が罹患している特定の疾患を決定するためのさらなる試験が続き得る。
【0097】
本発明の特に有用な局面は、上記のように、生命を脅かす可能性のある状態の初期の検出を提供する。初期の診断は、この状態の初期の処置を可能にすることによって、回復についての予後を増大する。例として、癌の初期の検出は、より初期かつより衰弱させない化学療法を可能にするか、または転移の前に任意の腫瘍を外科的に除去することを可能にする。関節炎の初期の検出は、衰弱性の間接損傷が起こる前に炎症を制御する薬物介入を可能にし、疾患の症状を遅延させる。
【0098】
1つの実施形態において、本発明は、被験体における癌の進行もしくは癌の退行の過程を決定するための方法を提供する。長い間に、生物マーカーの量もしくは相対量(例えば、パターン)は変化する。例えば、表1の生物マーカーであるタムスタチンは、脈管形成の間に増加する。したがって、この生物マーカーの傾向、例えば、長期の間に増大するという傾向は、被験体における脈管形成が、増大していることを示す。同様に、タムスタチンのレベルの低下は、被験体における脈管形成が減少していることを示す。したがって、この方法は、少なくとも2回の異なる時点(例えば、1回目および2回目)で被験体における1種以上の生物マーカーを測定する工程、ならびに量の変化が存在する場合、これを比較する工程を包含する。疾患の過程(例えば、癌の進行もしくは退行)は、これらの比較に基づいて決定される。
【0099】
診断後、本発明を用いる生物マーカーの検出は、使用される処置レジメンの有効性の評価を可能にする。例えば、癌において、休眠性腫瘍の処置後の生物マーカーCTAP IIIの発現における減少は、侵襲性腫瘍へと変化する腫瘍の表現型と相関する。逆に、CTAP IIIにおけるその後の増大の検出は、侵襲性から休眠性もしくは非存在への腫瘍表現型の変化に相関する。
【0100】
本発明のさらなる実施形態は、アッセイ結果もしくは診断またはその両方を、例えば技術者、医師または患者に通信することに関する。特定の実施形態において、コンピューターは、アッセイ結果もしくは診断またはその両方を、目的の相手(例えば医師およびその患者)に通信するために使用される。いくつかの実施形態において、結果もしくは診断が通信される国もしくは管轄区域(jurisdiction)と異なる国もしくは管轄区域において、アッセイが行われるか、またはアッセイ結果が分析される。
【0101】
本発明の好ましい実施形態において、疾患もしくは代謝状態を示す生物マーカーの試験被験体における存在もしくは非存在に基づく診断は、診断が得られてからできる限り早く被験体に通信される。この診断は、被験体の処置をする医師によって、被験体に通信されてもよい。あるいは、この診断は、e−mailによって試験被験体に送られてもよく、または被験体に電話によって通信されてもよい。診断をe−mailもしくは電話で通信するために、コンピューターが用いられ得る。特定の実施形態において、診断試験の結果を含むメッセージは、自動的に作製され、そして遠距離通信の分野の当業者によく知られているコンピューターハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせを用いて被験体に送達され得る。健康管理指向型通信システムの1つの例は、米国特許第6,283,761号に記載される。しかし、本発明は、この特定の通信システムを利用する方法に制限されない。本発明の方法の特定の実施形態において、サンプルをアッセイする工程、疾患を診断する工程、アッセイ結果もしくは診断を通信する工程を含む、この方法の全ての工程もしくはいくつかの工程は、種々の管轄区域(例えば、外国)で実施され得る。
【0102】
(VII.癌性腫瘍および非癌性腫瘍についての血小板関連生物マーカーの検出のためのキット)
別の局面において、本発明は、脈管形成に関連する疾患状態もしくは代謝活性における変化を評価するためのキットを提供する。これらのキットは、本発明に従う生物マーカーを検出するために使用される。1つの実施形態において、このキットは、固体支持体の上に結合した吸着剤を有する固体支持体(例えば、チップ、マイクロタイタープレートもしくはビーズまたは樹脂)を含み、ここで、この吸着剤は、本発明の生物マーカーを結合する。したがって、例えば、本発明のキットは、SELDIのための質量分析プローブ(例えば、ProteinChip(登録商標)アレイ)を含み得る。生物特異的吸着剤の場合、このキットは、反応性表面を有する固体支持体、および生物特異的吸着剤を入れた容器を含み得る。いくつかの実施形態において、この固体支持体は、少なくとも1種、好ましくは少なくとも2種、3種もしくは4種の生物マーカー(例えば、表1および表2に記載の生物マーカー)に結合可能な1種以上の吸着剤を結合する。好ましい実施形態において、この生物マーカーは、PF4、VEGF、PDGF、bFGF、PDECGF、CTGF、アンジオゲニン、アンジオポエチン、アンジオスタチン、エンドスタチンもしくはトロンボスポンジンおよびこれらの組み合わせである。固体支持体に結合させるための好ましい吸着剤としては、カチオン交換吸着剤、アニオン交換吸着剤、疎水性吸着剤および生物特異的吸着剤が挙げられる。好ましい生物特異的吸着剤としては、抗体、アプタマー、相補的核酸、アフィボディなどが挙げられる。さらなる生物特異的吸着剤は、当業者によって容易に理解される。
【0103】
このキットはまた、洗浄溶液もしくは洗浄溶液を作製するための指示書を含み得、ここで、捕獲試薬と洗浄溶液との組み合わせは、その後の例えば質量分析法による検出のために、1つの生物マーカーまたは複数の生物マーカーの固体支持体上への捕獲を可能にする。このキットは、1種より多い吸収剤を含み得、これらは、各々異なる個体支持体上に存在し得る。
【0104】
さらなる実施形態において、このようなキットは、ラベルもしくは別個の挿入物の形態での、適切な操作パラメータのための指示書を含み得る。例えば、この指示書は、消費者に、サンプルを収集する方法、プローブを洗浄する方法もしくは検出される特定の生物マーカーを洗浄する方法を、知らせ得る。
【0105】
なお別の実施形態において、このキットは、生物マーカーサンプルを入れた1つ以上の容器を含み得、これらは、キャリブレーションのための標準として使用され得る。
【0106】
(VIII.診断システム)
本発明はまた、患者における脈管形成活性における変化に応答して発現が変化する生物マーカーを検出するための診断システムを企図する。本発明の診断システムは、好ましくは、一工程で操作され得るが、そのように制限されない。例えば、いくつかの実施形態は、複数の血小板関連生物マーカーを結合する複数の吸着剤表面を含む。好ましくは、この吸着剤は、目的の生物マーカーを特異的に吸着する、生物特異的吸着剤である。本発明の診断システムはまた、目的の生物マーカーを検出するための手段を有し、この手段は、質量分析法であり得る。
【0107】
例として、本発明の好ましい実施形態は、焼結フリット上の血漿ホモジネートを受け入れる。このフリットは、液体の毛細管流動を支持し得る吸収(bibulous)物質に流体連絡する。この吸収物質の範囲内には、検出されるべき生物マーカーを特異的に認識する流体的に可動性の(fluidly mobile)生物特異的吸着剤を含む試薬がある。好ましくは、この流体的に可動性の生物特異的吸着剤は、検出可能標識を含み、より好ましくは、可視性の標識を含む。この吸収物質のさらに下流には、固定された生物吸着剤があり、これは、検出されるべき生物マーカーを認識する。
【0108】
上述のような単純なデバイスを使用して、焼結フリットに導入された血漿ホモジネートは、細胞の屑を含まないように濾過される。残った液体を、吸収物質へと進行させ、このの吸収物質は、この液体を内部に、そして最終的にその長さに沿って運ぶ。吸収物質の横断の際、この流体的に可動性の生物特異的吸着剤は、可溶化されて、検出されるべき生物マーカーに結合し、複合体を形成する。液体がさらに吸収物質の中を進行する際に、この複合体は、固定された生物特異的吸着剤に遭遇し、そしてこれに結合する。この複合体が固定された生物特異的吸着剤に結合する際に、固定された生物特異的吸着剤が吸収物質に結合している地点において、この複合体が集まり、この場所が検出され得る。このデバイスは、複合体の結合後、必要に応じて洗浄緩衝液で洗浄され、元のホモジネートに存在する可能性のある干渉物質が除去される。
【0109】
当業者は、上述の好ましいデバイスと実質的に同じ様式で機能する、いくつかの改変型デバイス形式が存在することを容易に理解する。例えば、このデバイスは、マイクロタイタープレートウェルの底に結合する生物特異的試薬を用いて、本質的にELISA型の様式で実施され得る。この様式において、ホモジネートは、ウェルに添加される。次いで、過剰なホモジネートが除去され、そしてウェルが、洗浄緩衝液で洗浄される。最後に、標識された可動性の抗体が加えられ、そして得られた複合体が検出される。
【0110】
当業者は、上述のデバイスの形式が周知であり、本発明の範囲内に多くの改変型が含まれることを容易に理解する。例えば、類似のデバイスは、米国特許第5,409,664号、同第6,146,589号、同第4,960,691号、同第5,260,193号、同第5,202,268号および同第5,766,961号に記載される。
【0111】
(IX.スクリーニングアッセイにおける癌についての生物マーカーの使用および癌の処置の方法)
本発明の方法は、他の用途もまた有する。例えば、この生物マーカーは、インビトロもしくはインビボで生物マーカーの発現を調節する化合物についてスクリーニングするために使用され得る。この化合物は、次いで、患者における癌の処置もしくは予防において、または腫瘍の休眠性腫瘍から侵襲性腫瘍への転換の処置もしくは予防において、有用であり得る。別の例において、この生物マーカーは、癌の処置への応答をモニタリングするために使用され得る。なお別の実施形態において、この生物マーカーは、被験体が癌を発症する危険があるか否かを決定するための遺伝研究において使用され得る。
【0112】
したがって、例えば、本発明のキットは、タンパク質バイオチップ(例えば、Ciphergen H50 ProteinChipアレイ、例えばProteinChipアレイ)のような疎水性機能を有する固体支持体、ならびに支持体を洗浄するための酢酸ナトリウム緩衝液、ならびにチップ上の本発明の血小板関連生物マーカーを測定するため、そしてこれらの測定値を例えば癌の診断に使用するためのプロトコールを提供する指示書を含み得る。
【0113】
治療的試験のために適した化合物は、表1および表2に列挙される1種以上の生物マーカーと相互作用する化合物を同定することによって最初にスクリーニングされ得る。例として、スクリーニングは、表1または表2に列挙された生物マーカーを組換え的に発現する工程、この生物マーカーを精製する工程、およびこの生物マーカーを支持体に固定する工程を包含する。次いで、試験化合物は、代表的に水性条件において支持体に結合され、そして試験化合物と生物マーカーとの間の相互作用が、例えば溶出率を塩濃度の関数として測定することによって、測定される。特定のタンパク質は、表1または表2の1種以上の生物マーカーを認識しそして切断する。この場合、このタンパク質は、1種以上の生物マーカーの消化を、標準的アッセイ(例えば、タンパク質のゲル電気泳動)においてモニタリングすることによって検出され得る。
【0114】
関連の実施形態において、試験化合物が表1または表2の1種以上の化合物の活性を阻害する能力が、測定され得る。当業者は、特定の生物マーカーの活性の測定のために使用される技術は、その生物マーカーの機能および特性に依存して変わることを理解する。例えば、適切な基質が利用可能であり、そして基質の濃度もしくは反応産物の出現が容易に測定可能である場合には、生物マーカーの酵素活性がアッセイされ得る。治療的試験化合物が所定の生物マーカーの活性を阻害するかもしくは増強する潜在的な能力は、この試験化合物の存在下もしくは非存在下で触媒の速度を測定することによって決定され得る。試験化合物が表1または表2の1種以上の化合物の非酵素的な(例えば、構成的な)機能もしくは活性に干渉する能力もまた、測定され得る。例えば、表1または表2の生物マーカーの1つを含む多タンパク質複合体の自己凝集は、試験化合物の存在下もしくは非存在下で分光光度測定によってモニタリングされ得る。あるいは、生物マーカーが転写の非酵素的エンハンサーである場合、この生物マーカーが転写を増強する能力に干渉する試験化合物は、この試験化合物の存在下もしくは非存在下でインビボもしくはインビトロで生物マーカー依存的転写のレベルを測定することによって同定され得る。
【0115】
表1または表2の生物マーカーのいずれかの活性を調節し得る試験化合物は、癌を罹患する患者もしくは癌を発症する危険のある患者に投与され得る。例えば、特定の生物マーカーの活性を増大する試験化合物の投与は、特定の生物マーカーの活性がインビボで癌についてのタンパク質の蓄積を防止する場合、患者における癌の危険率を低下させ得る。逆に、特定の生物マーカーの活性を低下させる試験化合物の投与は、この生物マーカーの活性の増大が、少なくとも部分的に、癌の発症を担う場合、患者における癌の危険率を低下させ得る。
【0116】
さらなる局面において、本発明は、癌のような、表1および表2の血小板関連生物マーカーの改変形態のレベルの上昇に関連する障害の処置のために有用な化合物を同定するための方法を提供する。例えば、1つの実施形態において、細胞抽出物もしくは発現ライブラリーは、完全長の生物マーカーの短縮形態への切断を触媒する化合物についてスクリーニングされ得る。このようなスクリーニングアッセイの1つの実施形態において、生物マーカーの切断は、生物マーカーへのフルオロフォアの結合によって検出され得る。このフルオロフォアは、この生物マーカーが切断されていない場合に消光したままであるが、この生物マーカーが切断されている場合に発光する。あるいは、特定のアミノ酸の間のアミド結合を切断不能にするように完全長生物マーカーが改変されている改変型が、インビボで、完全長生物マーカーをその位置で切断する細胞性プロテアーゼに選択的に結合する(すなわち「トラップ(trap)」する)ために使用され得る。プロテアーゼおよびその標的をスクリーニングする方法および同定する方法は、科学論文において(例えば、Lopez−Ottinら(Nature Reviews,3:509−519 (2002))において)十分に記載されている。
【0117】
別の実施形態において、本発明は、薬学的薬物(例えば、抗脈管形成性化合物もしくは抗腫瘍形成性化合物)の治療効力を決定するための方法を、提供する。これらの方法は、薬物の臨床試験の実施において、ならびに薬物における患者の進行のモニタリングにおいて、有用である。治療もしくは臨床試験は、特定のレジメンにおいて薬物を投与する工程を包含する。このレジメンは、この薬物を1回投薬してもよく、もしくは長期間にわたってこの薬物を多数回投薬してもよい。医師もしくは臨床研究者は、患者もしくは被験体における薬物の効果を、投与の過程にわたってモニタリングする。薬物がその状態に対し薬学的な影響を有する場合、本発明の生物マーカーの量もしくは相対量(例えば、パターンもしくはプロフィール)は、非疾患プロフィールに向かって変化する。例えば、表1における生物マーカーであるPF4およびCTAP IIIは、腫瘍を保持する被験体由来の血小板を増大する。したがって、被験体におけるこれらの生物マーカーの量の過程を腫瘍の処置の過程の間、追跡し得る。したがって、この方法は、薬物治療を受ける被験体における1種以上の生物マーカーを測定する工程、およびこの生物マーカーの量を被験体の疾患状態と関連付ける工程を包含する。本発明の1つの実施形態は、この生物マーカーのレベルを、薬物治療の過程の間の少なくとも2回の異なる時点(例えば、第1時点および第2時点)で決定する工程、ならびにこの生物マーカーの量の変化が存在する場合には、それを比較する工程を包含する。例えば、この生物マーカーは、薬物投与の前および後、または薬物投与の間の2回の異なる時点で測定され得る。治療の効果は、これらの比較に基づいて決定される。処置が有効である場合、したがって、生物マーカーは正常に向かう傾向があり、一方処置が有効でない場合、生物マーカーは疾患指標に向かう傾向がある。処置が有効である場合、したがって、生物マーカーは正常に向かう傾向があり、一方処置が有効でない場合、生物マーカーは疾患指標に向かう傾向がある。
【0118】
なお別の実施形態において、本発明は、短縮型生物マーカーのレベルの上昇に関連する疾患(例えば癌)を処置するか、または疾患の進行もしくは罹患しやすさを低減するための方法を提供する。例えば、表1または表2の完全長生物マーカーを切断する1種以上のタンパク質が同定された後、この同定されたタンパク質の切断活性を阻害する化合物について、コンビナトリアルライブラリーがスクリーニングされ得る。このような化合物についての化学物質ライブラリーのスクリーニングの方法は、当該分野で周知である。例えば、Lopez−Otinら(2002)を参照されたい。あるいは、阻害性化合物は、血小板関連生物マーカーの構造に基づいて、知的に設計され得る。
【0119】
臨床レベルにおいて、試験化合物スクリーニングは、試験被験体が試験化合物に曝露される前および後に、この被験体からサンプルを得る工程を包含する。表1および表2の1種以上の血小板関連生物マーカーのサンプルにおけるレベルは、この生物マーカーのレベルが試験化合物への曝露の後に変化するか否かを決定するために、測定され得そして分析され得る。このサンプルは、本明細書中で記載されるように、質量分析法によって分析されてもよく、またはこのサンプルは、当業者に公知の任意の適切な手段によって分析されてもよい。例えば、表1および表2に列挙される1種以上の生物マーカーのレベルは、この生物マーカーに特異的に結合する放射性標識化抗体もしくは蛍光標識化抗体を用いて、ウェスタンブロットによって直接測定され得る。あるいは、1種以上の生物マーカーをコードするmRNAのレベルにおける変化が測定され得、そして被験体への所定の試験化合物の投与と関連付けられ得る。さらなる実施形態において、1種以上の生物マーカーの発現のレベルにおける変化は、インビトロの方法および材料を用いて測定され得る。例えば、表1および表2の1種以上の生物マーカーを発現するか、または発現可能であるヒト組織培養細胞が、試験化合物と接触させられ得る。試験化合物によって処置されている被験体は、処置から得られ得る任意の生理学的効果について慣用的に検査される。特に、この試験化合物は、被験体における疾患罹患率を低減させる能力について評価される。あるいは、この試験化合物が、癌であると以前に診断されている被験体に投与される場合、試験化合物は、癌の進行を遅くさせるかもしくは停止させる能力について、スクリーニングされる。このことは、本出願の精神および範囲内であり、かつ添付の特許請求の範囲内にある。
【実施例】
【0120】
(実施例1:癌についての生物マーカーの同定)
(A.サンプル調製)
血液を、麻酔したマウスから、直接心臓穿刺によって3.2%クエン酸ナトリウムポリエチレン管内へ収集し、そして可能な限りすぐに200gで回転させた。次いで、上相(血小板に富む血漿(PRP))を、新しい管に移し、そして血小板(P)を800gでの遠心分離によって分離した。単離した血小板ペレット(P)および血小板の乏しい血漿(PPP)上清を、別々に分析した。
【0121】
各マウスからの血小板ペレット(P)を、9M尿素、2% CHAPS(3−[(3−クロラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート(sulfonat))、50mM TrisHCl、pH9で抽出し、4℃で10,000×gで1分間遠心分離し、そして血小板抽出物を、以下に記載するように分画した。各マウスからの20μlのPPPを、40μlのU9緩衝液(9M尿素、2% CHAPS、50mM TrisHCl、pH9)で変性させ、そして純粋な血漿抽出物を、以下で記載するように分画した。各マウス由来の腫瘍組織もまた、組織を使い捨て乳棒ですりつぶし、そして4℃で15分間ボルテックスすることによって、U9緩衝液で抽出した。抽出したタンパク質を、4℃で10,000×gで10分間遠心分離することによって、回収した。次いで、純粋な腫瘍組織を、以下に記載するように分画した。
【0122】
(B.サンプル分画)
腫瘍サンプル、血小板ペレットサンプルおよび血漿サンプルを、EDM血清分画プロトコール(Ciphergen(登録商標),Fremont,CA)に従って改変したアニオン交換クロマトグラフィーによって分画した。分画を、DPC(登録商標)Micromix 5振とう機を備えたBeckman Biomek(登録商標)2000 Laboratory Work Station上で、96ウェル様式のフィルタープレート中で実施した。20μlの血小板抽出物および腫瘍抽出物のアリコート、ならびに100μlの50mM TrisHCl(pH9)で希釈した60μlの変性血漿を、BioSepra Q Ceramic HyperD(登録商標)F吸着剤ビーズ(50mM TrisHCl(pH9)で再水和させ、そして50mM Tris−HCl(pH9.0)で事前に平衡化した)を事前に満たしたフィルター底96ウェルマイクロプレートに移した。全ての液体を、マルチスクリーン真空マニホールド(Millipore,Bedford,MA)を使用して、濾過プレートから除去した。4℃で30分間のインキュベーションの後、フロースルーを画分Iとして収集した。濾過プレートを、2×100μlの以下の緩衝液でインキュベートし、以下の画分を得た:1M尿素、0.1% CHAPS、50mM NaCl、2.5%アセトニトリル、50mM TrisHCl、pH7.5(画分II)、1M尿素、0.1% CHAPS、50mM NaCl、2.5%アセトニトリル、50mM 酢酸Na、pH5.0(画分III)、1M尿素、0.1% CHAPS、50mM NaCl、2.5%アセトニトリル、50mM 酢酸Na、pH4.0(画分IV)、1M尿素、0.1% CHAPS、500mM NaCl、2.5%アセトニトリル、50mM クエン酸Na、pH3.0(画分V)、および33.3%イソプロパノール/16.7%アセトニトリル/8%ギ酸(画分VI)。これらは、表Iおよび表IIにおいて言及される画分である。
【0123】
(C.ProteinChipアレイ上の発現相違マッピング)
弱いカチオン交換クロマトグラフィータンパク質アレイ(WCX2 ProteinChipTMアレイ;Ciphergen(登録商標),Fremont,CA)を、96ウェルバイオプロセッサー上に乗せ、そして50mM酢酸ナトリウム/0.1%オクチルグルコシド(Sigma,St.Louis,MO)、pH5.0で平衡化した。40μlアニオン交換クロマトグラフィー画分を、各アレイスポット上で100μlの同緩衝液中に希釈し、そして1時間インキュベートした。アレイスポットを、100μlの50mM酢酸ナトリウム/0.1%オクチルグルコシド(pH5)で3分間洗浄した。水ですすいだ後、各アレイスポットにつき2×1μlのシナピン酸溶液を加えた。
【0124】
(D.SELDI−TOF MSによるタンパク質プロファイリング)
アレイを、Protein Biology System II SELDI−TOF質量分析計(Ciphergen(登録商標),Fremont,CA)を用いて読み取った。読み取り機は、既知の分子量のペプチド標準較正物質(Ciphergen(登録商標),Fremont,CA)を用いて毎日外部的にキャリブレーションした。
【0125】
(E.SELDI−TOFマススペクトルの処理)
スペクトルを、ProteinChip Software Biomarker Edition、バージョン3.2.0(Ciphergen,Fremont,CA)を用いて処理した。基線減算の後、スペクトルを、全イオン電流方法によって正規化した。ピーク検出を、Biomarker Wizardソフトウェア(Ciphergen,Fremont,CA)により、3のシグナル対ノイズ比を用いて実施した。
【0126】
(F.タンパク質マーカー同定)
タンパク質マーカーを、IgGスピンカラムによるアフィニティクロマトグラフィーおよび逆相クロマトグラフィーによって精製した。各工程の精製を、Normal Phase ProteinChipアレイによってモニタリングした。主画分を、5mM DTT(pH9)によって還元し、そして50mM ヨードアセトアミドによって暗所で2時間アルキル化した。最終分離は、16%トリシンSDS PAGEゲル上で行った。このゲルを、Colloidal Blue Staining Kit(Invitrogen)によって染色した。選択したタンパク質バンドを切り出し、200μlの50%メタノール/10%酢酸で30分間洗浄し、100μlのACNで15分間脱水し、そして70μlの50%ギ酸、25% ACN、15%イソプロパノール、10%水で、室温で2時間、激しく攪拌しながら抽出した。抽出物中のタンパク質マーカーを、Normal Phase ProteinChipアレイ上の2μlの分析によって検証した。残った抽出物を、20μlの50mM 炭酸水素アンモニウム(pH8)中10ng/μlの改変トリプシン(Roche Applied Science)によって3時間37℃で消化した。
【0127】
単一MSスペクトルおよびMS/MSスペクトルを、Ciphergen PCI−1000 ProteinChip Interfaceを備えたQSTAR質量分析計上で得た。各プロテアーゼ消化物の1μlのアリコートを、NP20 ProteinChipアレイ上でCHCA存在下で分析した。
【0128】
スペクトルを、単一MSモードにおいて0.9〜3kDaで収集した。スペクトルを調べた後、特定のイオンを選択し、そしてCID断片化のために衝突セル(collision cell)内に導入した。CIDスペクトルデータを、同定のために、データベース探索ツールであるMascot(Matrix Sciences)に供した。
【0129】
(実施例2:SELDIを用いる生物マーカーの同定)
この実施例は、患者を診断するかもしくは患者の処置後の予後を決定するために有用な生物マーカーの同定のために本発明を使用する方法を記載する。
【0130】
本発明の実施において有用な生物マーカーを同定するために、まず、参照生物マーカープロフィールを患者の2つの集団について確立する。1つの集団は、「コントロール」群として働き、第1の表現型を発現する。第2の集団は、「試験群」であり、生物マーカーの検出を通した診断が模索されている表現型を示す。この実施例において、試験群は、研究の過程の間に転移の可能性を示す腫瘍に罹患している個体であるか、または後に(6ヶ月以内に)その腫瘍に罹患する個体である。コントロール群は、研究の終了後少なくとも12ヶ月にわたって、いかなる型のいかなる癌性の罹患も示さない集団由来である。
【0131】
集団間の生物マーカーを、血小板から単離された生物マーカーの発現を比較することによって同定する。試験のための血液サンプルの調製を、以下に記載する。形成された血小板ホモジネートを、Q10、IMAC30−Cu(II)およびCM10のSELDIプローブProteinChipアレイ上で連続して精製する。生物マーカーを、ホモジネートからの1種以上の血小板関連生物分子の発現の差次的発現レベルによって同定する。このレベルを、生物マーカーによって産生されたイオン種について形成されたピークの下の面積によって決定する。次いで、データについて統計分析を実施し、生物マーカー発現レベルにおける変化が、有意であり、かつ転移性癌と正確に相関していることの両方を確かめる。
【0132】
(実施例3:処置の間に癌患者の予後を予測するための生物マーカーの使用)
この実施例は、癌を緩和させるための処置の後の癌患者の予後を決定するための、生物マーカーの使用を説明する。
【0133】
血液サンプルを、患者から採取し、評価の過程の間の1回以上の異なる時点(例えば、0日目、2日目、5日目、10日目、14日目、21日目、30日目、60日目および/または90日目)で評価する。血液サンプルを、好ましくは新鮮な間に評価するが、評価のための適切な時期まで凍結保存してもよい。患者の評価は、患者が病院または診療所に到着する第1日目に始め、そして少なくとも癌性状態のための処置が終わった後の数週間の間にわたって続ける。
【0134】
血液サンプルの分析を、最初に、血小板を単離し、そして試験に適した血小板ホモジネートを作製することによって実施する。血小板を、当業者に周知の確立された手順を用いて個々の血液サンプルから単離する。次いで、血小板抽出物を、単離した血小板を氷冷した等張緩衝液(血小板の容積1:緩衝液の容積3)中に浮遊させ、次いで血小板浮遊液を15秒間超音波処理することによって調製する。次いで、各血小板抽出物を、イオン交換ビーズ(Q HyperD)用いて分画し、そしてWCX2 ProteinChipアレイ上でアッセイする。アレイ上に保持されているタンパク質を、SELDI質量分析計によって検出し、そして各イオン種の量を、産生されたイオンピークの下の面積を決定することによって定量する。結果を集計し、そしてBF4およびCTAP IIIに対応する生物マーカーの量を、各サンプルについて決定する。
【0135】
次いで、集計した結果を、患者の予後を確立するために使用する。予後を、各サンプル由来のBD4およびCTAP IIIに関連するイオン種の相対量を比較することによって決定する。侵襲性癌性腫瘍を処置するための治療を受けている患者について、測定した生物マーカーレベルにおける上昇は、腫瘍が新しい組織環境への侵襲性浸潤を停止し、そして現在休眠性であることを示す。この場合、患者を、マーカーレベルの将来の何らかの低下(腫瘍の侵襲性表現型への回帰の指標である)について、処置後定期的にモニタリングする。
【0136】
侵襲性癌の外科的除去を受けている患者について、再発について、処置の数週間後に患者の評価を開始する。外科的手順によって引き起こされる生物マーカーの変動(fluxuation)(腫瘍とは無関係である)を除去し、落ち着かせるために、時間経過が必要である。これらの状況下で、首尾よい腫瘍の除去は、BF4マーカーおよびCTAP IIIマーカーの消失を伴う。
【0137】
本明細書中の実施例および実施形態は、例示のみを目的とすること、その種々の改変もしくは変更が当業者によって示唆されること、ならびに本明細書中で引用された特許および特許出願は、本明細書中でその全体が全ての目的のために参考として援用されることが、理解される。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1a】図1aは、コントロール動物(灰色線)および休眠性腫瘍を移植した動物(黒色線)から得た血小板抽出物の質量分析的発現マップを示す。x軸上の数字は、観察された粒子の質量電荷比(m/z)を表す。そして曲線の高さは、観察されたピークの強度に対応する。使用された抽出物は、実施例に記載されるように、最初のアニオン交換分画の画分2から得られた。この画分由来のサンプルは、WCX2 ProteinChipアレイにおいて分析された。CTAP IIIおよびPF4は、腫瘍保持マウスにおいてアップレギュレートされることが同定された。
【図1b】図1bは、CTAP IIIおよびPF4(矢印)が、休眠性腫瘍保持マウスおよび侵襲性腫瘍保持マウスの両方の血小板においてアップレギュレートされたが、血漿においてアップレギュレートされなかったことを示す。
【図2a】図2aは、以下の3つの群のマウスの血小板および血漿から得た抽出物において測定した正規化CTAP IIIピーク強度のプロットを示す:それぞれ、コントロール個体、休眠性(非脈管形成性)ヒト脂肪肉腫腫瘍を有する個体、および侵襲性(脈管形成性)ヒト脂肪肉腫腫瘍を有する個体である。図2における各群のピーク強度について、中央値±標準誤差を示す。
【図2b】図2bは、同じ群のマウスの血小板および血漿における正規化PF4ピーク強度のプロットを示す。図2における各群のピーク強度について、中央値±標準誤差を示す。
【図2c】図2cは、腫瘍保持マウスの血小板および血漿における、19日目、32日目および120日目の増殖における、正規化CTAP IIIピーク強度のプロットを示す。このプロットは、血小板CTAP IIIレベルは、研究した時間経過の間にわたって上昇したが、同じ期間にわたって、血漿CTAP IIIレベルは、低下したか変化しなかったことを示す。図2における各群のピーク強度について、中央値±標準誤差を示す。
【図2d】図2dは、腫瘍保持マウスの血小板および血漿における、19日目、32日目および120日目の増殖における、正規化PF4ピーク強度のプロットを示す。このプロットは、血小板PF4レベルは、研究した時間経過の間にわたって上昇したが、同じ期間にわたって、血漿PF4レベルは、低下したか変化しなかったことを示す。図2における各群のピーク強度について、中央値±標準誤差を示す。
【図3a】図3aは、抗塩基性線維芽細胞増殖因子(抗bFGF)抗体を用いる、血小板抽出物および血漿抽出物の抗体相互作用発見マップを示す。具体的には、この図面は、bFGFおよびそのフラグメントが、休眠性(非侵襲性)腫瘍保持マウスにおいてアップレギュレートされることを示す。
【図3b】図3bは、血小板抽出物 対 血漿抽出物における変化している発現レベルの比較を、非脈管形成性腫瘍保持マウスにおけるbFGFの発現と脈管形成性腫瘍保持マウスにおけるbFGFの発現との間の相違の比較と合わせて可能にする、発現(expresion)マップを示す。
【図3c】図3cは、血小板におけるbFGF隔離の時間経過を示す。
【図4a】図4aは、抗血小板由来増殖因子(抗PDGF)抗体を用いる、血小板抽出物の抗体相互作用発見マップを示す。この図面は、PDGFおよびそのフラグメントが、休眠性腫瘍保持マウスにおいて(移植後30日間)アップレギュレートされることを示す。
【図4b】図4bは、血小板抽出物および血漿の両方におけるPDGFレベルを示す発現マップを示す。
【図5】図5は、血小板抽出物および血漿抽出物の分画後にアニオン交換カラム上に観察される生物マーカーの発現マップ、およびその後に行ったこれらの画分のうちの1つ(画分1)のWCX2 ProteinChipアレイ上でのプロファイリングを示す。この図面は、VEGFおよびそのフラグメントが、腫瘍保持マウス由来の血小板において(移植後30日間)アップレギュレートされることを示し、そしてVEGFおよびそのフラグメントが、侵襲性(脈管形成性)腫瘍を有するマウス由来の血小板において、休眠性腫瘍を有するマウスと比較して、より大きな程度アップレギュレートされることを示す。
【図6】図6は、血小板抽出物の分画後にアニオン交換カラム上に観察される生物マーカーの発現マップ、およびその後に行ったこれらの画分のうちの1つ(画分1)のWCX2 ProteinChipアレイ上でのプロファイリングを示す。この図面は、いくつかのマーカー(20400Daタンパク質を含む)が、腫瘍保持マウスから採取した血小板抽出物(黒色)においてコントロールマウス由来の血小板抽出物(灰色)と比較して、アップレギュレートされることを示す。
【図7】図7は、血小板抽出物の分画後にアニオン交換カラム上に観察される生物マーカーの発現マップ、およびその後に行ったこれらの画分のうちの1つ(画分1)のWCX2 ProteinChipアレイ上でのプロファイリングを示す。この図面は、休眠性腫瘍保持マウス(黒色)においてコントロールマウス(灰色)と比較してアップレギュレートされることが同定された、いくつかのマーカーを示す。
【図8】図8は、正常マウス、非脈管形成性腫瘍保持マウス、および脈管形成性腫瘍保持マウスから採取した血小板サンプルおよび血漿サンプルにおけるbFGFレベル、VEGFレベル、PDGFレベルおよびエンドスタチンレベルのプロットを示す。
【図9a】図9aは、抗VEGF抗体、抗bFGF抗体および抗エンドスタチン抗体を用いる血小板抽出物のウェスタンブロットを示す。エンドスタチンは、VEGFおよびbFGFを犠牲にして増大することが示される。
【図9b】図9bは、エンドスタチンが、血小板細胞内の取り込みについて、VEGFと競合することを示す。
【図10】図10は、50ngの125I標識化VEGFを含有する100μlのMatrigelがマウスに注射された、実験の結果を示す。その後、種々の組織を、マウスから単離し、そして組織1gあたりの数を決定した。このデータは、この因子の血漿レベルにおける対応する上昇を伴わず、血小板が、125I標識化VEGFを隔離したことを示す。したがって、脈管形成性調節タンパク質は、100μlのMatrigelペレットほどの小さな源が皮下に移植された場合でさえも、選択的かつ定量化可能な様式で血小板によって取り込まれ得る。
【図11】図11は、移植133日後のヌードマウスにおける非脈管形成性ヒト脂肪肉腫 対 脈管形成性ヒト脂肪肉腫の増殖を示す。
【図12a】図12a〜dは、血小板抽出物における脈管形成調節タンパク質(例えば、VEGF)の量の増大を示す。このことは、選択的隔離プロセスを表し、そして血小板表面との単純な結合を表さない。
【図12b】図12a〜dは、血小板抽出物における脈管形成調節タンパク質(例えば、VEGF)の量の増大を示す。このことは、選択的隔離プロセスを表し、そして血小板表面との単純な結合を表さない。
【図12c】図12a〜dは、血小板抽出物における脈管形成調節タンパク質(例えば、VEGF)の量の増大を示す。このことは、選択的隔離プロセスを表し、そして血小板表面との単純な結合を表さない。
【図12d】図12a〜dは、血小板抽出物における脈管形成調節タンパク質(例えば、VEGF)の量の増大を示す。このことは、選択的隔離プロセスを表し、そして血小板表面との単純な結合を表さない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体における脈管形成状態を評価するための方法であって、該方法は、以下:
(a)該被験体由来の生物学的サンプル中の少なくとも1種の血小板関連生物マーカーを測定する工程であって、該少なくとも1種の血小板関連生物マーカーは、表1および表2の生物マーカーからなる群より選択される工程;および
(b)該測定値を脈管形成状態と関連付ける工程
を包含する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記少なくとも1種の血小板関連生物マーカーは、表1の生物マーカーからなる群より選択される、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記少なくとも1種の血小板関連生物マーカーは、表2の生物マーカーからなる群より選択される、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、検出された前記生物マーカーの少なくとも1種は、血管内皮増殖因子(VEGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、第4血小板因子(PF4)、結合組織活性化タンパク質III(CTAP III)、エンドスタチン、タムスタチン、メタロプロテアーゼの組織インヒビター、アポリポタンパクA1、IL8、血小板由来内皮細胞増殖因子(PDECGF)、結合組織増殖因子(CTGF)、アンジオゲニン、アンジオポエチン、アンジオスタチンおよびトロンボスポンジンからなる群より選択される、方法。
【請求項5】
前記脈管形成状態は、癌 対 非癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記脈管形成状態は、良性腫瘍 対 悪性腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記脈管形成状態は、侵襲性癌 対 休眠性癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、前記脈管形成状態は、癌の種類であり、ここで、該癌の種類は、乳癌、肝臓癌、肺癌、血管芽細胞腫、膀胱癌、前立腺癌、胃癌、脳の癌、神経芽細胞腫、結腸癌、癌腫、肉腫、白血病、リンパ腫および骨髄腫からなる群より選択される、方法。
【請求項9】
請求項1、請求項5、請求項6、請求項7または請求項8のいずれか1項に記載の方法であって、前記検出する工程は、前記生物マーカーの、クロマトグラフィーによる検出、免疫学的検出、フローサイトメトリーによる検出、または質量分析法による検出を包含する、方法。
【請求項10】
請求項1、請求項5、請求項6、請求項7または請求項8のいずれか1項に記載の方法であって、前記検出する工程は、複数の生物マーカーを検出する工程を包含し、該複数の生物マーカーは、bFGFと、VEGF、PDGF、PF4、CTAP III、エンドスタチン、タムスタチン、メタロプロテアーゼの組織インヒビター、アポリポタンパクA1、IL8、TGF、NGAL、MIP、メタロプロテアーゼ、BDNF、NGF、CTGF、アンジオゲニン、アンジオポエチン、アンジオスタチンおよびトロンボスポンジンからなる群より選択される少なくとも1種の他の生物マーカーとを含む、方法。
【請求項11】
請求項1、請求項5、請求項6、請求項7または請求項8のいずれか1項に記載の方法であって、前記検出する工程は、複数の生物マーカーを検出する工程を包含し、該複数の生物マーカーは、PF4と、VEGF、PDGF、bFGF、CTAP III、エンドスタチン、タムスタチン、メタロプロテアーゼの組織インヒビター、アポリポタンパクA1、IL8、TGF、NGAL、MIP、メタロプロテアーゼ、BDNF、NGF、CTGF、アンジオゲニン、アンジオポエチン、アンジオスタチンおよびトロンボスポンジンからなる群より選択される少なくとも1種の他の生物マーカーとを含む、方法。
【請求項12】
請求項5に記載の方法であって、前記癌は、休眠性、侵襲性、持続的侵襲性、退行性、または変化なしと分類される、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、1種以上の生物マーカーの発現の低下を検出することは、侵襲性と分類される癌と相関している、方法。
【請求項14】
請求項12に記載の方法であって、1種以上の生物マーカーの発現の上昇を検出することは、休眠性と分類される癌と相関している、方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法であって、前記少なくとも1種の生物マーカーは、イムノアッセイによって検出される、方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法であって、前記関連付ける工程は、ソフトウェア分類アルゴリズムによって実施される、方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって、前記少なくとも1種の生物マーカーは、該生物マーカーをSELDIプローブの吸着剤表面上に捕獲した後に、レーザー脱離イオン化質量分析法によって検出される、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、前記吸着剤は、イオン交換吸着剤である、方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法であって、前記吸着剤は、生物特異的吸着剤である、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、前記生物特異的吸着剤は、抗体である、方法。
【請求項21】
請求項13に記載の方法であって、(c)前記脈管形成状態に基づいて被験体の処置を行う工程をさらに包含する、方法。
【請求項22】
請求項5または請求項13に記載の方法であって、(c)前記癌の前記分類に基づいて被験体の処置を行う工程をさらに包含する、方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、前記癌は、侵襲性と分類され、そして被験体の処置を行う工程は、該癌を外科的に矯正する工程を包含する、方法。
【請求項24】
請求項22に記載の方法であって、(d)被験体の処置の後に、少なくとも1種の血小板関連生物マーカーを測定する工程をさらに包含する、方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、前記少なくとも1種の血小板関連生物マーカーにおけるその後の増加を検出することは、前記癌における侵襲性から休眠性もしくは非存在への変化と相関している、方法。
【請求項26】
請求項24に記載の方法であって、前記少なくとも1種の血小板関連生物マーカーにおけるその後の増加を検出することは、侵襲性のままである前記癌と相関している、方法。
【請求項27】
被験体の内因性脈管形成活性における変化を検出するための方法であって、該方法は、以下:
(a)該被験体由来の生物学的サンプル中の1種以上の血小板関連生物マーカーの発現を検出する工程であって、検出された生物マーカーの少なくとも1種の発現は、内因性脈管形成活性における変化に関連して改変されている工程;および
(b)検出された生物マーカーの少なくとも1種の該発現を、該検出された生物マーカーの該発現を同一の生物マーカーについて以前に決定した発現と比較することにより、内因性脈管形成活性における該変化と関連付ける工程
を包含する方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、該検出された生物マーカーの少なくとも1種は、血管内皮増殖因子(VEGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、第4血小板因子(PF4)、結合組織活性化タンパク質III(CTAP III)、エンドスタチン、タムスタチン、メタロプロテアーゼの組織インヒビター、アポリポタンパクA1、IL8、血小板由来内皮細胞増殖因子(PDECGF)結合組織増殖因子(CTGF)、アンジオゲニン、アンジオポエチン、アンジオスタチンおよびトロンボスポンジンからなる群より選択される、方法。
【請求項29】
請求項27に記載の方法であって、前記被験体の内因性脈管形成活性における前記変化は、腫瘍形成、腫瘍増殖、妊娠、組織損傷および感染からなる群より選択される医学的状態に起因する、方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法であって、前記医学的状態は、癌に関連する腫瘍形成もしくは腫瘍増殖である、方法。
【請求項31】
請求項27に記載の方法であって、前記検出する工程は、前記生物マーカーの、クロマトグラフィーによる検出、免疫学的検出、フローサイトメトリーによる検出、または質量分析法による検出を包含する、方法。
【請求項32】
請求項27に記載の方法であって、前記検出する工程は、複数の生物マーカーを検出する工程を包含し、該複数の生物マーカーは、bFGFと、VEGF、PDGF、PF4、CTAP III、エンドスタチン、タムスタチン、メタロプロテアーゼの組織インヒビター、アポリポタンパクA1、IL8、TGF、NGAL、MIP、メタロプロテアーゼ、BDNF、NGF、CTGF、アンジオゲニン、アンジオポエチン、アンジオスタチンおよびトロンボスポンジンからなる群より選択される少なくとも1種の他の生物マーカーとを含む、方法。
【請求項33】
請求項27に記載の方法であって、前記検出する工程は、複数の生物マーカーを検出する工程を包含し、該複数の生物マーカーは、PF4と、VEGF、PDGF、bFGF、CTAP III、エンドスタチン、タムスタチン、メタロプロテアーゼの組織インヒビター、アポリポタンパクA1、IL8、TGF、NGAL、MIP、メタロプロテアーゼ、BDNF、NGF、CTGF、アンジオゲニン、アンジオポエチン、アンジオスタチンおよびトロンボスポンジンからなる群より選択される少なくとも1種の他の生物マーカーとを含む、方法。
【請求項34】
請求項27に記載の方法であって、前記被験体の内因性脈管形成活性における前記変化は、休眠性、侵襲性、持続的侵襲性、退行性、または変化なしと分類される、方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法であって、1種以上の生物マーカーの発現の低下を検出することは、脈管形成活性における侵襲性への変化と相関している、方法。
【請求項36】
請求項34に記載の方法であって、1種以上の生物マーカーの発現の上昇を検出することは、脈管形成活性における休眠性もしくは退行性への変化と相関している、方法。
【請求項37】
請求項27に記載の方法であって、前記少なくとも1種の生物マーカーは、イムノアッセイによって検出される、方法。
【請求項38】
請求項27に記載の方法であって、前記関連付ける工程は、ソフトウェア分類アルゴリズムによって実施される、方法。
【請求項39】
請求項27に記載の方法であって、前記少なくとも1種の生物マーカーは、該生物マーカーをSELDIプローブの吸着剤表面上に捕獲した後に、レーザー脱離イオン化質量分析法によって検出される、方法。
【請求項40】
請求項39に記載の方法であって、前記吸着剤は、イオン交換吸着剤である、方法。
【請求項41】
請求項39に記載の方法であって、前記吸着剤は、生物特異的吸着剤である、方法。
【請求項42】
請求項40に記載の方法であって、前記生物特異的吸着剤は、抗体である、方法。
【請求項43】
請求項34に記載の方法であって、(c)脈管形成活性における前記分類された変化に基づいて被験体の処置を行う工程をさらに包含する、方法。
【請求項44】
請求項43に記載の方法であって、脈管形成活性における前記変化は、侵襲性と分類され、そして被験体の処置を行う工程は、該侵襲性脈管形成活性の原因を外科的に矯正する工程を包含する、方法。
【請求項45】
請求項43に記載の方法であって、(d)被験体の処置の後に、複数の該血小板関連生物マーカーの発現を検出する工程をさらに包含する、方法。
【請求項46】
請求項45に記載の方法であって、1種以上の前記生物マーカーの発現におけるその後の上昇を検出することは、内因性の脈管形成活性における侵襲性から休眠性もしくは非存在への変化と相関している、方法。
【請求項47】
請求項45に記載の方法であって、1種以上の前記生物マーカーの発現におけるその後の低下を検出することは、侵襲性のままである前記癌と相関している、方法。
【請求項48】
キットであって、以下:
(a)固体支持体であって、該固体支持体に結合する少なくとも2つの別個の吸着剤表面を含み、ここで、該吸着剤表面は、表1および表2の生物マーカーからなる群より選択される複数の血小板関連生物マーカーを結合する、固体支持体;および
(b)該固体支持体を用いて生物マーカーを検出するための指示書
を含むキット。
【請求項49】
請求項48に記載のキットであって、前記血小板関連生物マーカーは、表1の生物マーカーからなる群より選択される、キット。
【請求項50】
請求項48に記載のキットであって、前記血小板関連生物マーカーは、VEGF、PDGF、bFGF、PF4、CTAP III、エンドスタチン、タムスタチン、メタロプロテアーゼの組織インヒビター、アポリポタンパクA1、IL8、TGF、NGAL、MIP、メタロプロテアーゼ、BDNF、NGF、CTGF、アンジオゲニン、アンジオポエチン、アンジオスタチンおよびトロンボスポンジンからなる群より選択される、キット。
【請求項51】
請求項48に記載のキットであって、(c)前記吸着剤表面によって結合される少なくとも2種類の生物マーカーを含む容器をさらに含む、キット。
【請求項52】
請求項48に記載のキットであって、検出される前記生物マーカーについて、被験体における正常検出範囲を含む図表をさらに含む、キット。
【請求項53】
請求項48に記載のキットであって、前記固体支持体は、SELDIプローブである、キット。
【請求項54】
請求項53に記載のキットであって、SELDI質量分析法もしくはMALDI質量分析法における使用のために安定的であるマトリックス材料をさらに含む、キット。
【請求項55】
前記SELDIプローブがカチオン交換吸着剤を含む、請求項53に記載のキット。
【請求項56】
前記SELDIプローブが、アニオン交換クロマトグラフィー吸着剤をさらに含む、請求項55に記載のキット。
【請求項57】
前記SELDIプローブが生物特異的吸着剤を含む、請求項53に記載のキット。
【請求項58】
前記生物特異的吸着剤は、抗体である、請求項57に記載のキット。
【請求項59】
ソフトウェア製品であって、該製品は、以下:
(a)被験体から採取されたサンプルに起因するデータにアクセスするコードであって、該データは、該サンプル中の複数の血小板関連生物マーカーの検出された発現レベルを含み、該血小板関連生物マーカーの少なくとも1種は、表1および表2の生物マーカーからなる群から選択される、コード;ならびに
(b)該サンプル中の生物マーカーの測定値の関数として、被験体の内因性脈管形成活性における変化を分類する分類アルゴリズムを実行するコード
を含む、ソフトウェア製品。
【請求項60】
被験体に、該被験体由来のサンプル中の複数の血小板関連生物マーカーの相関から決定された該被験体の内因性脈管形成活性における変化を伝達する工程を包含する方法であって、ここで、該血小板関連生物マーカーは、表1および表2の生物マーカーからなる群より選択される、方法。
【請求項61】
請求項60に記載の方法であって、診断は、コンピューターによって作製された媒体を介して前記被験体に伝達される、方法。
【請求項62】
被験体における癌の存在を検出するための診断システムであって、該システムは、以下:
(a)複数の血小板関連生物マーカーを結合する複数の吸着剤表面であって、該血小板関連生物マーカーは、表1および表2の生物マーカーより選択され、そして該血小板関連生物マーカーの少なくとも1種は、該被験体における該癌の存在によって改変されている、吸着剤表面;ならびに
(b)該結合部分に結合した該血小板関連生物マーカーを検出するための検出器
を含む、システム。
【請求項63】
前記吸着剤表面の少なくとも1つは、SELDIプローブの表面の一部分である、請求項62に記載のシステム。
【請求項64】
前記吸着剤表面の少なくとも1つは、イオン交換吸着剤である、請求項62に記載のシステム。
【請求項65】
前記検出器は、質量分析計である、請求項62に記載のシステム。
【請求項66】
前記検出器は、前記吸着剤によって結合された生物マーカーに特異的な少なくとも1種の標識化抗体を含む、請求項62に記載のシステム。
【請求項67】
請求項62に記載のシステムであって、前記生物マーカーの少なくとも1種は、VEGF、PDGF、bFGF、PF4、CTAP III、エンドスタチン、タムスタチン、メタロプロテアーゼの組織インヒビター、アポリポタンパクA1、IL8、TGF、NGAL、MIP、メタロプロテアーゼ、BDNF、NGF、CTGF、アンジオゲニン、アンジオポエチン、アンジオスタチンおよびトロンボスポンジンからなる群より選択される、システム。
【請求項68】
前記吸着剤表面の少なくとも1つは、生物特異的吸着剤である、請求項62に記載のシステム。
【請求項69】
前記生物特異的吸着剤は、抗体である、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
被験体における癌の種類を識別する方法であって、該方法は、以下:
(a)該被験体由来の生物学的サンプル中の少なくとも1種の血小板関連生物マーカーを測定する工程であって、ここで、該少なくとも1種の血小板関連生物マーカーは、表1および表2の生物マーカーからなる群より選択される工程;ならびに
(b)該測定値を少なくとも1種の癌の種類と関連付ける工程
を包含する方法。
【請求項71】
請求項70に記載の方法であって、前記癌の種類は、乳癌、肝臓癌、肺癌、血管芽細胞腫、膀胱癌、前立腺癌、胃癌、脳の癌、神経芽細胞腫、結腸癌、癌腫、肉腫、白血病、リンパ腫および骨髄腫からなる群より選択される、方法。
【請求項72】
請求項70に記載の方法であって、前記少なくとも1種の血小板関連生物マーカーは、イムノアッセイによって測定される、方法。
【請求項73】
請求項70に記載の方法であって、前記少なくとも1種の血小板関連生物マーカーは、質量分析法によって測定される、方法。
【請求項74】
請求項73に記載の方法であって、測定する工程は、実量分析の前に、前記少なくとも1種の血小板由来生物マーカーを、固相に結合した吸着剤上に捕獲する工程をさらに包含する、方法。
【請求項75】
質量分析法は、レーザー脱離/イオン化質量分析法である、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
請求項73に記載の方法であって、関連付ける工程は、単数または複数の前記測定値を分類モデルを実行するアルゴリズムに供する工程をさらに包含し、該分類モデルは、前記サンプルを癌の種類に分類する、方法。
【請求項77】
請求項70〜請求項76のいずれか1項に記載の方法であって、複数の血小板関連生物マーカーを測定する工程および関連付ける工程を包含する、方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10】
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【図11】
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【図12a】
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【図12b】
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【図12c】
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【図12d】
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【公表番号】特表2008−508538(P2008−508538A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−524787(P2007−524787)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/013859
【国際公開番号】WO2006/022895
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(599086582)チルドレンズ・メディカル・センター・コーポレイション (9)
【氏名又は名称原語表記】Children’s Medical Center Corporation
【住所又は居所原語表記】300 Longwood Avenue, Boston, Massachusetts 02115, U.S.A.
【出願人】(501497253)ヴァーミリオン インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】