説明

癌に対する併用免疫療法組成物および方法

治療的免疫応答の誘導の向上のための、かつ/または、疾患、例えば、限定するものではないが、癌および感染症の予防、改善および治療のうち少なくともいずれか1つのための、免疫療法組成物およびそのような組成物の組み合わせの同時使用について開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(政府の権利)
本発明は、米国保健社会福祉省(Department of Health and Human Services)の機関である米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)との共同研究開発契約の履行において生み出された。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【0002】
(共同研究契約に関する言明)
本発明は、2008年5月8日に遂行された共同研究開発契約の当事者によって、または該当事者を代表してなされた。共同研究開発契約の当事者は、グローブイミューン社(GlobeImmune,Inc.)、および、米国国立衛生研究所の研究所、中枢施設または一部門である国立癌研究所によって代表される米国保健社会福祉省である。
【0003】
(配列表の参照)
本願は、EFS‐Webによりテキストファイルとして電子的に提出された配列表を含んでいる。該テキストファイルはファイル名「3923−24−PCT_ST25」であり、サイズはバイト数47KBで、2010年4月16日に登録された。該テキストファイルに含まれる情報は、米国連邦規則法典第37部門1.52(e)(5)に準じ、参照により全体が本願に組み込まれる。
【0004】
(技術分野)
本発明は、概して、治療的免疫応答の誘導の改良のための、かつ/または、疾患、例えば限定するものではないが、癌および感染症の予防、改善および治療のうち少なくともいずれか1つのための、2つの異なる免疫療法組成物の同時使用に関する。
【背景技術】
【0005】
ワクチン剤などの免疫療法組成物は、疾患の予防および治療のための医療産業において利用可能な最もコスト効率の良い手段のうちの1つである。しかしながら、様々な疾患、例えば病原体感染を原因とするかまたは病原体感染に関連する疾患、癌、遺伝子欠損および他の免疫系の障害についての、安全かつ有効な免疫療法の戦略およびアジュバントを開発することが依然として切に必要とされている。癌および多くの感染症、例えばウイルス疾患および細胞内病原体を原因とする疾患の治療については、細胞を媒介した(細胞性)免疫応答を誘発する免疫療法を提供することが望ましいが、多くのワクチンは主に、または完全に、体液性免疫の誘発を対象としている。確かに、数多くのサブユニットワクチン、および病原体死滅ワクチンまたは病原体減弱化ワクチンの欠点は、強い体液性免疫応答を刺激するように見える一方で、防御的な細胞性免疫を誘発しないことである。
【0006】
癌は世界的に主要な死因であり、癌の有効な治療法の開発は最も活発な研究領域のうちの1つであり続けている。癌を治療および予防するための様々な革新的手法が提案されてきたが、多くの癌が高い死亡率を持ち続けており、治療が困難である場合もあれば、従来型の治療法に対して比較的反応に乏しい場合もある。癌の生物学における新たな発見により、標的特異的な抗癌剤を設計する機会がもたらされており、医薬品および免疫療法の開発における進歩が促進されてきた。これらの発見は、癌細胞中の特異標的に対する高い選択性を備えた分子および治療用組成物の設計を可能にする。
【0007】
同一の抗原を標的とするワクチンプラットフォームを、免疫細胞の活性および抗腫瘍効果を引き起こす能力の点で比較した、多数の免疫療法研究が報告されている(例えば、非特許文献1〜9を参照されたい)。ミラー(Millar)らは、同一抗原を標的とする2つの異なるベクター(rVおよび組換えアデノウイルス)によって誘導されるT細胞集団の機能性には差異が無いことを示した(非特許文献5)。
【0008】
ネズミ科動物のB7‐1、ICAM‐1、およびLFA‐3遺伝子ならびにヒトの癌胎児性抗原(CEA)遺伝子を含有する組換えワクシニア(rV)ウイルスおよび組換え鶏痘(rF)ウイルス(rV/F‐CEA/TRICOM)の多様なプライム‐ブーストワクチン接種法の抗腫瘍効果が、前臨床モデルにおいてこれまで報告されてきた(非特許文献6、10〜14)。最近では、組換え型のサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)(酵母‐CEA)ワクチンの抗腫瘍効果も前臨床モデルにおいて実証された(非特許文献15、16)。rV/FCEA/TRICOMまたは酵母‐CEAのいずれかを用いたワクチン接種後の免疫応答の誘導が実証されており、いずれのワクチンによって誘発された抗腫瘍効果も、主としてCEA特異的なT細胞集団の誘導に起因する。
【0009】
いくつかの研究から、癌を含む疾患の様々なモデルにおける免疫応答の開始においては、より多様なT細胞集団の誘導が有利であることが実証されている(非特許文献17〜24)。しかしながら、同一抗原を標的とするワクチンの同時使用の報告はない。上述されたもののような、同一抗原を標的とする研究の次には、歴史的に見ても、研究者らは、さらなる研究のために最も効果的なワクチンを選択するか、またはT細胞応答を増幅するために多様なプライム‐ブースト法を使用している。例えば、CEAを標的とする組換えのワクシニアベクターおよび鶏痘ベクターを用いた多様なプライム‐ブーストワクチン接種法(非特許文献25、26)が使用されたのは、最初のワクチンへの免疫応答が同じベクターを用いた次のワクチン接種の効果を低減することが示されたからである(非特許文献3、12、25および27)。多様なプライム‐ブースト法の明らかな利点を実証する同様の結果が、HIVおよびマラリアを含む、様々な癌およびその他の疾患のモデルにおいて述べられている(非特許文献27〜32)。これらの研究において観察された応答の増強は、抗原特異的なT細胞の関連集団の増幅に起因していたが、この場合も、これらの結果を達成するために多様なプライム‐ブースト法が使用された。
【0010】
従って、癌治療法および感染症の免疫療法/ワクチン技術における進歩にもかかわらず、依然として、そのような疾患の治療についての安全かつ有効な免疫療法的手法の改良が切実に必要とされ続けている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Weide et al.,Immunol Lett 2008 Jan 15;115(1):33−42
【非特許文献2】Riezebos−Brilman et al.,Gene Ther 2007 Dec;14(24):1695−704
【非特許文献3】Naslund et al.,J Immunol 2007 Jun 1;178(11):6761−9
【非特許文献4】Mylin et al.,J Virol 2000 Aug;74(15):6922−34
【非特許文献5】Millar et al.,Cell Immunol 2007 Nov−Dec;250(1−2):55−67
【非特許文献6】Hodge et al.,Cancer Res 2003 Nov 15;63(22):7942−9
【非特許文献7】Chan et al.,Gene Ther 2006 Oct;13(19):1391−402
【非特許文献8】Casimiro et al.,J Virol 2003 Jun;77(11):6305−13
【非特許文献9】Bos et al.,J Immunol 2007 Nov 1;179(9):6115−22
【非特許文献10】Hodge et al.,Cancer Res 1999 Nov 15;59(22):5800−7
【非特許文献11】Hodge et al.,Clin Cancer Res 2003 May;9(5):1837−49
【非特許文献12】Grosenbach et al.,Cancer Res 2001 Jun 1;61(11):4497−505
【非特許文献13】Greiner et al.,Cancer Res 2002 Dec 1;62(23):6944−51
【非特許文献14】Arlen et al.,Crit Rev Immunol 2007;27(5):451−62
【非特許文献15】Bernstein et al.,Vaccine 2008 Jan 24;26(4):509−21
【非特許文献16】Wansley et al.,Clin Cancer Res 2008 Jul 1;14(13):4316−25
【非特許文献17】Dudley et al.,Cancer J 2000 Mar−Apr;6(2):69−77
【非特許文献18】Dutoit et al.,Cancer Res 2001 Aug 1;61(15):5850−6
【非特許文献19】Echchakir et al.,Int Immunol 2000 Apr;12(4):537−46
【非特許文献20】Ferradini et al.,Cancer Res 1992 Sep 1;52(17):4649−54
【非特許文献21】Messaoudi et al.,Science 2002 Nov 29;298(5599):1797−800
【非特許文献22】Nikolich−Zugich et al.,Nat Rev Immunol 2004 Feb;4(2):123−32
【非特許文献23】Sportes et al.,J Exp Med 2008 Jul 7;205(7):1701−14
【非特許文献24】Zhou et al.,Cancer Res 2005 Feb 1;65(3):1079−88
【非特許文献25】Hodge et al.,Vaccine 1997 Apr−May;15(6−7):759−68
【非特許文献26】Marshall et al.,J Clin Oncol 2000 Dec 1;18(23):3964−73
【非特許文献27】Wu et al.,J Virol 2005 Jul;79(13):8024−31
【非特許文献28】Pancholi et al.,J Infect Dis 2000 Jul;182(1):18−27
【非特許文献29】Barnett et al.,AIDS Res Hum Retroviruses 1998 Oct;14 Suppl 3:S299−309
【非特許文献30】Dunachie et al.,J Exp Biol 2003 Nov;206(Pt 21):3771−9
【非特許文献31】McMichael,Annu Rev Immunol 2006;24:227−55
【非特許文献32】Moore et al.,Immunol Rev 2004 Jun;199:126−43
【発明の概要】
【0012】
本発明の1つの実施形態は、個体における癌の少なくとも1つの症状を予防、改善、もしくは治療すること、癌に罹患している個体の生存期間を延長させること、および該個体における1つ以上の癌抗原に対する治療的免疫応答を誘導することのうちの少なくともいずれか1つのための方法に関する。該方法は、該個体に、(a)少なくとも1つの共刺激分子をコードする核酸配列と、少なくとも1つの癌抗原またはその免疫原性ドメインをコードする核酸配列とを含む組換えワクシニアウイルスを含む第1の免疫療法組成物;および(b)少なくとも1つの癌抗原またはその免疫原性ドメインを含む酵母ビヒクルを含む第2の免疫療法組成物、を投与するステップを含む。第1および第2の免疫療法組成物は、該個体に同時に投与される。1つの態様では、組換えワクシニアウイルスは、共刺激分子であるB7‐1、ICAM‐1およびLFA‐3をコードする核酸配列を含む。
【0013】
本発明の別の実施形態は、個体における癌の少なくとも1つの症状を予防、改善、もしくは治療すること、癌に罹患している個体の生存期間を延長させること、および該個体における1つ以上の癌抗原に対する治療的免疫応答を誘導することのうちの少なくともいずれか1つのための方法に関する。該方法は、該個体に、(a)第1の免疫療法組成物であって:(i)B7‐1、ICAM‐1およびLFA‐1またはその生物学的に活性な部分をコードする核酸配列と、少なくとも1つの癌抗原またはその免疫原性ドメインをコードする核酸配列とを含む組換えワクシニアウイルス、および(ii)GM‐CSFまたはその生物学的に活性な部分をコードする核酸配列を含む組換え鶏痘ウイルス、を含む免疫療法組成物、ならびに(b)少なくとも1つの癌抗原またはその免疫原性ドメインを含む酵母ビヒクルを含む第2の免疫療法組成物、を投与するステップを含む。第1および第2の免疫療法組成物は、該個体に同時に投与される。この実施形態の1つの態様では、該方法は、最初の投与の少なくとも1週間後に、該個体に、(a)第3の免疫療法組成物であって、(i)B7‐1、ICAM‐1およびLFA‐1またはその生物学的に活性な部分をコードする核酸配列と、少なくとも1つの癌抗原またはその免疫原性ドメインをコードする核酸配列とを含む組換え鶏痘ウイルス、および(ii)GM‐CSFまたはその生物学的に活性な部分をコードする核酸配列を含む組換え鶏痘ウイルス、を含む免疫療法組成物、ならびに(b)少なくとも1つの癌抗原またはその免疫原性ドメインを含む酵母ビヒクルを含む第2の免疫療法組成物、を投与するステップをさらに含む。第2および第3の免疫療法組成物は、該個体に同時に投与される。
【0014】
本発明のさらに別の実施形態は、個体における癌の少なくとも1つの症状を予防、改善、もしくは治療すること、癌に罹患している個体の生存期間を延長させること、および該個体における1つ以上の抗原に対する治療的免疫応答を誘導することのうちの少なくともいずれか1つのために、個体に同時投与するための医薬の調製における、免疫療法組成物の組み合わせの使用に関する。該免疫療法組成物は、(a)第1の免疫療法組成物であって、(i)B7‐1、ICAM‐1およびLFA‐1またはその生物学的に活性な部分をコードする核酸配列と、少なくとも1つの癌抗原またはその免疫原性ドメインをコードする核酸配列とを含む組換えワクシニアウイルス、および(ii)GM‐CSFまたはその生物学的に活性な部分をコードする核酸配列を含む組換え鶏痘ウイルス、を含む免疫療法組成物、ならびに;(b)少なくとも1つの癌抗原またはその免疫原性ドメインを含む酵母ビヒクルを含む第2の免疫療法組成物、を含む。1つの態様では、免疫療法組成物は、第3の免疫療法組成物であって、(i)B7‐1、ICAM‐1およびLFA‐1またはその生物学的に活性な部分をコードする核酸配列と、少なくとも1つの癌抗原またはその免疫原性ドメインをコードする核酸配列とを含む組換え鶏痘ウイルス、ならびに(ii)GM‐CSFまたはその生物学的に活性な部分をコードする核酸配列を含む組換え鶏痘ウイルス、を含む免疫療法組成物をさらに含む。
【0015】
本発明の1つの実施形態は、個体における疾患および病気のうち少なくとも1つの症状を予防、改善、または治療する方法に関する。該方法は、該個体に(a)ウイルスゲノムまたはその一部を含む組換えウイルスを含む第1の免疫療法組成物;および(b)酵母ビヒクルを含む第2の免疫療法組成物、を投与するステップを含む。第1および第2の免疫療法組成物は、該個体に同時に投与される。
【0016】
本発明の別の実施形態は、個体における1つ以上の抗原に対する治療的免疫応答を誘導する方法に関する。該方法は、該個体に(a)ウイルスゲノムまたはその一部を含む組換えウイルスを含む第1の免疫療法組成物;および(b)酵母ビヒクルを含む第2の免疫療法組成物、を投与するステップを含む。第1および第2の免疫療法組成物は、該個体に同時に投与される。
【0017】
本発明の別の実施形態は、疾患または病気に罹患している個体の生存期間を延長させる方法に関する。該方法は、該個体に(a)ウイルスゲノムまたはその一部を含む組換えウイルスを含む第1の免疫療法組成物;および(b)酵母ビヒクルを含む第2の免疫療法組成物、を投与するステップを含む。第1および第2の免疫療法組成物は、該個体に同時に投与される。
【0018】
本発明のさらに別の実施形態は、個体における疾患および病気のうちの少なくとも1つの症状を予防、改善、または治療するために該個体に同時投与するための医薬の調製における、免疫療法組成物の組み合わせの使用に関する。該免疫療法組成物は、(a)ウイルスゲノムまたはその一部を含む組換えウイルスを含む第1の免疫療法組成物;および(b)酵母ビヒクルを含む第2の免疫療法組成物、を含む。該組成物は同時投与のために製剤化される。
【0019】
本発明の別の実施形態は、個体における1つ以上の抗原に対する治療的免疫応答を誘導するために該個体に同時投与するための医薬の調製における、免疫療法組成物の組み合わせの使用に関する。該免疫療法組成物は、(a)ウイルスゲノムまたはその一部を含む組換えウイルスを含む第1の免疫療法組成物;および(b)酵母ビヒクルを含む第2の免疫療法組成物、を含む。第1および第2の免疫療法組成物のうち一方または両方は、少なくとも1つの抗原またはその免疫原性ドメインを含む。該組成物は同時投与のために製剤化される。
【0020】
本発明のさらに別の実施形態は、疾患または病気に罹患している個体の生存期間を延長させるために該個体に同時投与するための医薬の調製における、免疫療法組成物の組み合わせの使用に関する。該免疫療法組成物は、(a)ウイルスゲノムまたはその一部を含む組換えウイルスを含む第1の免疫療法組成物;および(b)酵母ビヒクルを含む第2の免疫療法組成物、を含む。第1および第2の免疫療法組成物のうち一方または両方は、少なくとも1つの抗原またはその免疫原性ドメインを含む。該組成物は同時投与のために製剤化される。
【0021】
本発明のさらに別の実施形態は、(a)ウイルスゲノムまたはその一部を含む組換えウイルスを含む第1の免疫療法組成物と、(b)酵母ビヒクルを含む第2の免疫療法組成物と、を含む組成物に関する。第1および第2の免疫療法組成物のうち一方または両方は、少なくとも1つの抗原またはその免疫原性ドメインを含む。第1および第2の免疫療法組成物は混合剤として提供される。
【0022】
本発明の別の実施形態は、次の免疫療法組成物すなわち(a)少なくとも1つの共刺激分子をコードする核酸配列と、少なくとも1つの抗原またはその免疫原性ドメインをコードする核酸配列とを含む組換えワクシニアウイルスを含む第1の免疫療法組成物;および(b)少なくとも1つの抗原またはその免疫原性ドメインを含む酵母ビヒクルを含む第2の免疫療法組成物、を含むキットに関する。1つの態様では、組換えワクシニアウイルスは、共刺激分子であるB7‐1、ICAM‐1およびLFA‐3をコードする核酸配列を含む。1つの態様では、抗原は癌抗原である。1つの態様では、抗原はCAP‐1‐6Dエピトープを含む改変CEAである。本発明のキットの他の態様は下記に記載されている。
【0023】
本発明の別の実施形態は、次の免疫療法組成物すなわち(a)第1の免疫療法組成物であって、(i)B7‐1、ICAM‐1およびLFA‐1またはその生物学的に活性な部分をコードする核酸配列と、少なくとも1つの抗原またはその免疫原性ドメインをコードする核酸配列とを含む組換えワクシニアウイルス、および(ii)GM‐CSFまたはその生物学的に活性な部分をコードする核酸配列を含む組換え鶏痘ウイルス、を含む免疫療法組成物、ならびに(b)少なくとも1つの抗原またはその免疫原性ドメインを含む酵母ビヒクルを含む第2の免疫療法組成物、を含むキットに関する。1つの態様では、該キットは、第3の免疫療法組成物であって、(i)B7‐1、ICAM‐1およびLFA‐1またはその生物学的に活性な部分をコードする核酸配列と、少なくとも1つの抗原またはその免疫原性ドメインをコードする核酸配列とを含む組換え鶏痘ウイルス、ならびに(ii)GM‐CSFまたはその生物学的に活性な部分をコードする核酸配列を含む組換え鶏痘ウイルス、を含む免疫療法組成物を、さらに含む。1つの態様では、抗原は癌抗原である。1つの態様では、抗原はCAP‐1‐6Dエピトープを含む改変CEAである。本発明のキットの他の態様は下記に記載されている。
【0024】
本発明の方法、使用、組成物またはキットに関する実施形態のうち任意のものなど、本明細書中(上記または下記)に記載される実施形態のうち任意のものにおいて、第1および第2の免疫療法組成物のうち一方または両方(または特定の実施形態においてはさらに第3の免疫療法組成物のうち少なくともいずれか1つ)は、少なくとも1つの抗原またはその免疫原性ドメインを含む。1つの態様では、第1および第2の免疫療法組成物の両方(または特定の実施形態においてはさらに第3の免疫療法組成物のうち少なくともいずれか1つ)が、少なくとも1つの抗原またはその免疫原性ドメインを含む。1つの態様では、第1の免疫療法組成物は少なくとも1つの抗原またはその免疫原性ドメインを含むが、第2の免疫療法組成物は含まない。1つの態様では、第2の免疫療法組成物は少なくとも1つの抗原またはその免疫原性ドメインを含むが、第1の免疫療法組成物は含まない。1つの態様では、第1および第2の免疫療法組成物はそれぞれ同一の抗原またはその免疫原性ドメインを含む。1つの態様では、第1および第2の免疫療法組成物(または特定の実施形態においてはさらに第3の免疫療法組成物のうち少なくともいずれか1つ)は、異なる抗原またはその免疫原性ドメインを含む。
【0025】
本発明の方法、使用、組成物またはキットに関する実施形態のうち任意のものなど、本明細書中(上記または下記)に記載される本発明の実施形態または態様のうちいずれかの1つの態様では、第1の免疫療法組成物および第3の免疫療法組成物のうち少なくともいずれか一方は、1つ以上の免疫刺激性分子をコードする1つ以上の核酸配列を含む組換えウイルスを含む。1つの態様では、第1の免疫療法組成物および第3の免疫療法組成物のうち少なくともいずれか一方は、ウイルスゲノムまたはその一部と、少なくとも1つの抗原またはその免疫原性ドメインをコードする核酸配列とを含む組換えウイルス、および1つ以上の免疫刺激性分子をコードする1つ以上の核酸配列を含む組換えウイルスを含む。1つの態様では、第1の免疫療法組成物および第3の免疫療法組成物のうち少なくともいずれか一方は、少なくとも1つの抗原またはその免疫原性ドメインをコードする核酸配列と、1つ以上の免疫刺激性分子をコードする1つ以上の核酸配列とを含む組換えウイルスを含む。
【0026】
本発明の方法、使用、組成物またはキットに関する実施形態のうち任意のものなど、本明細書中(上記または下記)に記載される本発明の実施形態または態様のうちいずれか1つの態様では、第1の免疫療法組成物および第3の免疫療法組成物のうち少なくともいずれか一方における1つまたは複数の組換えウイルスは、ポックスウイルスである。1つの態様では、第1の免疫療法組成物および第3の免疫療法組成物のうち少なくともいずれか一方における1つまたは複数の組換えウイルスは、組換えワクシニアウイルスである。1つの態様では、ワクシニアウイルスは改変ワクシニアアンカラ(MVA)である。1つの態様では、第1の免疫療法組成物および第3の免疫療法組成物のうち少なくともいずれか一方における1つまたは複数の組換えウイルスは、鶏痘ウイルスである。
【0027】
本発明の方法、使用、組成物またはキットに関する実施形態のうち任意のものなど、本明細書中(上記または下記)に記載される本発明の実施形態または態様のうちいずれかの1つの態様では、免疫刺激性分子は1つ以上の共刺激分子を含む。1つの態様では、免疫刺激性分子には、限定するものではないが、B7.1(B7‐1)、B7.2(B7‐2)、ICAM‐1、LFA‐3、4‐1BBL、CD59、CD40、CD40Lおよび/またはCD70が挙げられる。1つの態様では、免疫刺激性分子はB7‐1、ICAM‐1およびLFA‐3のうち1つ、2つまたは3つすべてを含む。1つの態様では、免疫刺激性分子は、1つ以上のサイトカイン、例えば、限定するものではないが、腫瘍壊死因子‐α(TNF‐α)、インターロイキン6(IL‐6)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM‐CSF)、インターフェロン‐γ(IFN‐γ)、IFN‐α、IFN‐λ、インターロイキン12(IL‐12)、RANTES、およびインターロイキン2(IL‐2)を含む。1つの態様では、サイトカインは顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM‐CSF)である。
【0028】
本発明の方法、使用、組成物またはキットに関する実施形態のうち任意のものなど、本明細書中(上記または下記)に記載される本発明の実施形態または態様のうちいずれかの1つの態様では、第2の免疫療法組成物は、少なくとも1つの抗原またはその免疫原性ドメインを発現する酵母ビヒクルを含む。1つの態様では、第2の免疫療法組成物の中の酵母ビヒクルは完全な酵母である。1つの態様では、第2の免疫療法組成物の中の酵母ビヒクルは加熱殺滅された完全な酵母である。1つの態様では、第2の免疫療法組成物の中の酵母ビヒクルはサッカロマイセス属に由来する。
【0029】
本明細書中(上記または下記)に記載される本発明の方法または使用の実施形態または態様のうちいずれかの1つの態様では、第1および第2の免疫療法組成物(または、ある実施形態においてはさらに第3の免疫療法組成物のうち少なくともいずれか1つ)は、個体体内の異なる部位に投与される。別の態様では、第1および第2(かつ/または第3)の免疫療法組成物は、個体体内の同じ部位に、または隣接した部位に投与される。
【0030】
本明細書中(上記または下記)に記載される本発明の方法または使用の実施形態または態様のうちいずれかの別の態様では、方法または使用は、免疫療法組成物のうち一方または両方(またはある種の実施形態においては3つすべて)を用いて個体をブーストするステップをさらに含む。1つの態様では、個体は第1の免疫療法組成物を用いるよりも高頻度で第2の免疫療法組成物を用いてブーストされる。
【0031】
第1および第2の免疫療法組成物が存在する、本明細書中(上記または下記)に記載される本発明の方法または使用の実施形態または態様のうちいずれかの別の態様では、方法または使用は、第1の免疫療法組成物とは異なるウイルスゲノムまたはその一部を含む組換えウイルスを含む第3の免疫療法組成物を用いて個体をブーストするステップをさらに含む。例えば、1つの態様では、第1の免疫療法組成物は組換えワクシニアウイルスを含み、第3の免疫療法組成物は鶏痘ウイルスを含む。
【0032】
本発明の方法、使用、組成物またはキットに関する実施形態のうち任意のものなど、本明細書中に記載される本発明の実施形態または態様のうちいずれか1つの態様では、第1または第2の免疫療法組成物の一方が他方より高頻度で投与される。例えば、1つの態様では、第1の免疫療法組成物がウイルス由来の免疫療法組成物であり、第2の免疫療法組成物が酵母由来の免疫療法組成物である場合、第2の免疫療法組成物は第1の免疫療法組成物より高頻度で投与されうる。例えば、1つの態様では、第1および第2の免疫療法組成物の同時投与と同時投与との合間に、第2の免疫療法組成物が1回、2回、3回またはそれ以上投与されてもよい。
【0033】
本明細書中(上記または下記)に記載される本発明の方法または使用の実施形態または態様のうちいずれかの別の態様では、該方法は、別の供給源の抗原またはその免疫原性ドメインを用いて個体をブーストするステップをさらに含む。
【0034】
本明細書中(上記または下記)に記載される本発明の方法または使用の実施形態または態様のうちいずれかの別の態様では、該方法は、少なくとも1つの生物学的応答調節物質を個体に投与するステップをさらに含む。
【0035】
本発明の方法、使用、組成物またはキットに関する実施形態のうち任意のものなど、本明細書中(上記または下記)に記載される本発明の実施形態または態様のうちいずれかの1つの態様では、個体は癌に罹患している。1つの態様では、該方法または使用は、全身腫瘍組織量を低減するか、または個体体内における腫瘍増殖を抑制する。本発明の方法、使用、組成物またはキットに関する実施形態のうち任意のものなど、本発明の任意の実施形態の1つの態様では、抗原は、黒色腫、扁平上皮癌、乳癌、頭頸部癌、甲状腺癌、軟部組織肉腫、骨肉腫、精巣癌、前立腺癌、卵巣癌、膀胱癌、皮膚癌、脳腫瘍、血管肉腫(angiosarcoma)、血管肉腫(hemangiosarcoma)、肥満細胞腫、白血病、リンパ腫、原発性肝癌、肺癌、膵臓癌、胃腸の癌、腎細胞癌、造血性新生物形成またはこれらの転移癌、の群から選択される癌に由来する。1つの態様では、抗原は、癌胎児性抗原(CEA)、点突然変異型Rasオンコプロテイン、ブラキュリ(Brachyury)、MUC‐1、EGFR、BCR‐Abl、MART‐1、MAGE‐1、MAGE‐3、GAGE、GP‐100、MUC‐2、正常および点突然変異型p53オンコプロテイン、PSMA、チロシナーゼ、TRP‐1(gp75)、NY‐ESO‐1、TRP‐2、TAG72、KSA、CA‐125、PSA、HER‐2/neu/c‐erb/B2、hTERT、p73、B‐RAF、大腸腺腫様ポリポーシス(APC)、Myc、フォンヒッペル・リンドウ(von Hippel−Lindau)タンパク質(VHL)、Rb‐1、Rb‐2、アンドロゲン受容体(AR)、Smad4、MDR1、Flt‐3、BRCA‐1、BRCA‐2、pax3‐fkhr、ews‐fli‐1、HERV‐H、HERV‐K、TWIST、メソテリン(Mesothelin)、NGEP、そのような抗原の改変体、そのような抗原のスプライスバリアント、およびそのような抗原のエピトープアゴニスト、ならびに、そのような抗原、または、これらの免疫原性ドメイン、これらの改変体、これらの変異体、かつ/もしくはこれらのエピトープアゴニスト、のうち少なくともいずれかの組み合わせ、の群から選択される。1つの態様では、抗原は癌胎児性抗原(CEA)であり、癌胎児性抗原は、1つの実施形態ではCAP1‐6Dエピトープを含む。1つの態様では、抗原はCAP‐1‐6Dエピトープを含む改変CEAである。1つの態様では、CEAは、配列番号2のアミノ酸配列(配列番号1として本明細書中に表わされる核酸配列によってコードされる)を含む。別の態様では、抗原は突然変異型Rasである。1つの態様では、抗原は、Rasの1つ以上のフラグメントを含む多重ドメイン融合タンパク質であり、各フラグメントはRasの12位、13位、59位、61位および76位のうち少なくともいずれか1つの部位に1つ以上の突然変異を含む。1つの態様では、該Ras融合タンパク質は、配列番号4(配列番号3として本明細書中に表わされる核酸配列によってコードされる)、配列番号6(配列番号5として本明細書中に表わされる核酸配列によってコードされる)、配列番号8(配列番号7として本明細書中に表わされる核酸配列によってコードされる)、および配列番号10(配列番号9として本明細書中に表わされる核酸配列によってコードされる)のうち少なくともいずれか1つのアミノ酸配列を有する。1つの態様では、抗原はブラキュリ(Brachyury)である。1つの態様では、抗原はMUC‐1である。1つの態様では、抗原はEGFRである。1つの態様では、抗原はBCR−Ablである。
【0036】
本明細書中(上記または下記)に記載される本発明の方法または使用の実施形態または態様のうちいずれかの1つの態様では、方法または使用は、化学療法で個体を治療するステップ、および放射線照射療法で個体を治療するステップのうちの少なくともいずれか一方のステップをさらに含む。
【0037】
本発明の方法、使用、組成物またはキットに関する実施形態のうち任意のものなど、本明細書中(上記または下記)に記載される本発明の実施形態または態様のうちいずれかの別の態様では、個体は病原体に起因するかまたは病原体に関係する疾患に罹患している。1つの態様では、方法または使用は、病原体による個体の感染を低減または予防する。1つの態様では、方法または使用は、個体における病原体の力価を低減する。
【0038】
本発明の方法、使用、組成物またはキットに関する実施形態のうち任意のものなど、本発明の任意の実施形態の1つの態様では、抗原は、ウイルス抗原、真菌抗原、細菌抗原、蠕虫抗原、寄生虫抗原、外部寄生生物抗原、および原生動物抗原の群から選択される。1つの態様では、抗原は、アデノウイルス、アレナウイルス、ブンヤウイルス、コロナウイルス、コクサッキーウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン‐バーウイルス、フラビウイルス、ヘパドナウイルス、肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルス、レンチウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、ミクソウイルス、腫瘍ウイルス、オルトミクソウイルス、乳頭腫ウイルス、パポバウイルス、パラインフルエンザウイルス、パラミクソウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポックスウイルス、狂犬病ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、レオウイルス、ラブドウイルス、風疹ウイルス、トガウイルス、水痘ウイルス、およびT‐リンパ好性ウイルス、から選択されたウイルスに由来する。1つの態様では、抗原は、アスペルギルス属、ボルデテラ属(Bordatella)、ブルギア属、カンジダ属、クラミジア属、コクシジウム(Coccidia)、クリプトコックス属、イヌ糸状虫属、エシェリヒア属、フランキセラ属、ゴノコックス(Gonococcus)、ヒストプラスマ属、リーシュマニア属、ミコバクテリア属、マイコプラズマ属、ゾウリムシ属、百日咳菌(Pertussis)、プラスモディウム属、肺炎球菌(Pneumococcus)、ニューモシスティス属、リケッチア属、サルモネラ属、赤痢菌属、ブドウ球菌属、連鎖球菌属、トキソプラズマ属、コレラ菌(Vibriocholerae)、およびエルシニア属からなる群から選択される属の感染性病原体に由来する。1つの態様では、抗原は、シュードモナス属、ボルデテラ属、ミコバクテリア属、ビブリオ属、バチルス属、サルモネラ属、フランキセラ属、ブドウ球菌属、連鎖球菌属、エシェリヒア属、腸球菌属、パスツレラ属、およびエルシニア属から選択された属の細菌に由来する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】rV‐CEA/TRICOMまたは酵母‐CEAを用いたワクチン接種が差異のある血清サイトカインプロファイルを誘導することを示すグラフ(図1A=MIP1α、図1B=RANTES、図1C=GM‐CSF、図1D=IL‐6、図1E=IL‐12p70、図1F=IL‐13、図1G=IL‐1α、図1H=IL‐1βおよび図1I=IL‐5)。
【図2】rV/F‐CEA/TRICOMまたは酵母‐CEAを用いたワクチン接種から誘導される個別のTCRレパートリーを示す図。(Vαのプロファイルを、未処理(図2A)、rV/F‐CEA/TRICOM(図2B)、および酵母‐CEA(図2C)について示し、Vβプロファイルを、未処理(図2D)、rV/F‐CEA/TRICOM(図2E)、および酵母‐CEA(図2F)について示す。)
【図3】図3A:CEAのドメインIIIのA3ループ上の、別々であって重複していないCEA‐526エピトープおよびCEA‐572エピトープを示す図。図3B〜3C:rV/F‐CEA/TRICOMまたは酵母‐CEAを用いたワクチン接種が、2つの別々のCEA特異的エピトープであるCEA‐526(図3B)およびCEA‐572(図3C)を用いたin vitro刺激に応答して別個のサイトカインプロファイルを誘導することを示す図。
【図4】rV/F‐CEA/TRICOMまたは酵母‐CEAを用いたワクチン接種を受けたマウス由来のCEA‐572エピトープに特異的なT細胞株が、別々のTCR Vαプロファイルを有することを示す図(CEA‐526ペプチド(図4A)およびCEA‐572ペプチド(図4B)の存在下で維持されたrV/F‐CEA/TRICOM T細胞株のVα TCRレパートリー(黒色の棒グラフ);CEA‐526ペプチド(図4C)およびCEA‐572ペプチド(図4D)の存在下で維持された酵母‐CEA T細胞株のVα TCRレパートリー(白色の棒グラフ))。
【図5】rV/F‐CEA/TRICOMまたは酵母‐CEAを用いたワクチン接種を受けたマウスから生成されたエピトープ特異的なT細胞株は同水準の溶解活性を有するが特有の親和性(avidity)を有することを示す図(図5Aおよび5Cは、rV/F‐CEA/TRICOMワクチン接種から生成され、CEA‐526ペプチド(図5A)およびCEA‐572ペプチド(図5C)に特異的なT細胞株を示し;図5Bおよび5Dは、酵母‐CEAワクチン接種から生成され、CEA‐526ペプチド(図5B)およびCEA‐572ペプチド(図5D)に特異的なT細胞株を示し;図5Eおよび5Fは、rV/F‐CEA/TRICOM(図5E)または酵母‐CEA(図5F)を用いたワクチン接種を受けたマウスから生成されたCEA‐572エピトープに特異的なT細胞株を示す)。
【図6】同所性肺転移モデルにおけるrV/F‐CEA/TRICOMおよび酵母‐CEAワクチンの同時投与により抗腫瘍効果が増大することを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
発明の詳細な説明
本発明は、治療的免疫応答の誘導、ならびに、疾患、例えば、限定するものではないが、癌および感染症の予防、改善および治療のうち少なくともいずれか1つ、のうち少なくともいずれか1つのための、2つの免疫療法組成物(本明細書中ではワクチンとも呼ばれる)の同時使用に関する。より具体的には、それぞれ同一の抗原またはその免疫原性ドメインを標的とする組換えウイルス免疫療法ワクチンおよび酵母由来免疫療法ワクチンを使用して、ワクチンのベクターおよび抗原の両方が、共通かつ特有のサイトカイン応答、遺伝子発現プロファイル、およびT細胞受容体表現型を有しているT細胞集団の誘導において役割を有することが本明細書中で実証される。従って、抗原およびベクターの両方が別個のT細胞集団の誘導において役割を果たす。本明細書中に示された研究は、表現型上かつ機能的に別個のT細胞集団が、同一抗原を標的とする2つのベクタープラットフォームによって誘導されることを示す。最後に、本発明者らは、2つのワクチンを同時併用して治療効力を改良することができることを実証し、ワクチンの同時投与が本明細書中に記載された実験において抗腫瘍効果を向上させることを示した。これらの結果は、より多様なT細胞集団の誘導および治療効力向上に起因する、単一の抗原を標的とする2つの別個のベクタープラットフォームの同時投与の治療的有益性を示している。
【0041】
本研究は、同一抗原を標的とする2つの異なるワクチンベクターの有効な同時投与を最初に実証したものと考えられる。本明細書中に記載された研究で使用される各々のワクチンは、同水準のCD4+T細胞の増殖およびCD8+T細胞の細胞溶解活性を個々に誘導することが以前に示されているが(Wansley et al.,Clin Cancer Res,2008 Jul 1;14(13):4316−25)、これらのワクチンが表現型上かつ機能的に別個のT細胞集団を誘導し、かつ該ワクチンを同時併用して十分に抗腫瘍効果を向上させることができるという発見は、知られても予想されてもいなかった。
【0042】
同じ抗原(OVA)を標的とする2つの異なるワクチンプラットフォーム(rVおよび組換えアデノウイルス)によって誘導されたT細胞集団の機能性は相違しなかったことを示す先の研究(Millar et al.,2007,Cell Immunol 250(1−2):55−67)とは対照的に、本発明は、1つはウイルス由来の免疫療法組成物(本明細書中ではrV‐CEA/TRICOMと呼ばれる)であり、1つは酵母由来の免疫療法組成物(本明細書中では酵母‐CEAと呼ばれる)である2つの異なる免疫療法ワクチンによって誘導されたT細胞集団の機能性に、ベクターおよび抗原の両方が影響するという証拠を提供する。両ワクチンによって誘導されたT細胞集団を、サイトカイン産生、遺伝子発現、およびTCRプロファイリングの点で比較しつつ、本明細書中に示された研究は、rV‐CEA/TRICOMがTh1応答およびTc1表現型を備えたCD8+T細胞を誘導する一方、酵母‐CEAがTh1/Th2混合応答およびTc1/Tc2混合表現型を備えたCD8+T細胞を誘導することを見出した(図1および3)。免疫細胞の遊走ならびにTCRシグナル伝達およびT細胞増殖に関与する遺伝子のアップレギュレーションが、両方のワクチンによって観察された(表1)。興味深いことに、これらのワクチンは様々な細胞経路に関与する遺伝子の発現を明白な不利なやり方で調節するとはいえ、抗原特異的免疫応答または抗腫瘍効果は無効にならない(Wansley et al.,Clin Cancer Res 2008 Ju1 1;14(13):4316−25)。さらに、いずれのワクチンによって誘導されたT細胞集団も、共通かつ特有のVαおよびVβ TCR遺伝子を使用すること(図2)、また、ワクチン接種を受けたCEA‐Tgマウスから作出された、2つのCEAエピトープのうちの1つに特異的なT細胞株が、差異のある親和性および抗原特異的細胞溶解活性を示すこと(図5)も、本明細書中で実証される。総合すれば、これらの研究は、2つの免疫療法ワクチンが別個のT細胞集団を誘導し、これらのT細胞集団の表現型および機能の差はベクターおよび抗原の両方に起因しうることを実証している。これらの知見は、免疫療法組成物に関連した任意の抗原の使用に適用可能である。
【0043】
いずれのワクチンプラットフォームによる抗原送達の方法も、これらの別個の応答の生成に影響を及ぼす可能性がある。酵母‐CEAが主に免疫応答を活性化するメカニズムは、樹状細胞(DC)による、CEAを発現する酵母の取り込みとその後のCEA抗原のプロセシングおよび提示によるものであり(Bernstein et al.,Vaccine 2008 Jan 24;26(4):509−21)、一方、rV/F‐CEA/TRICOMベクターは細胞に感染して、CEA抗原がプロセシングを受けて提示されるのを可能にする細胞内発現を誘導する(Hodge et al.,Cancer Res 1999 Nov 15;59(22):5800−7)。観察された別の差異は、rV/F‐CEA/TRICOMワクチン接種がCEA特異的抗体の産生を誘導する一方、酵母‐CEAは誘導しないことである(データは示さない)。免疫系の細胞部門および体液部門の活性化におけるそのようなメカニズムの差は、ベクターおよび抗原に特異的な別個のT細胞集団の誘導をも左右する可能性がある。
【0044】
驚くべきことに、本発明者らは、同一の抗原を標的とする2つのワクチンの投与により別個のT細胞集団が誘導され、ネズミ科動物の同所性肺転移モデルにおいて有意に高い抗腫瘍免疫がもたらされることを発見した(図6)。この研究はさらに、同一の抗原を標的とする2つのワクチンプラットフォームは、これらのワクチンプラットフォームが別々のT細胞集団を誘導するという理由で同時投与可能であることも初めて示した。更に、これらのデータは、2つのワクチンの同時投与が、同一の抗原を標的とするより多様なT細胞集団の誘導により、抗腫瘍効果の十分な増大をもたらすことを示している。これらの知見は、これらのワクチンの同時併用が抗原特異的免疫を増大させるために利用されうることを示している。本明細書中に記載されるような免疫療法ワクチンの同時使用は、両方のワクチンから生成されたT細胞で構成されるより多様なT細胞集団を誘導して、本発明以前に使用された多様なプライム‐ブースト計画を不要とするが、多様なプライム‐ブースト計画を本明細書中に記載された同時投与プロトコールと組み合わせることにより、有効な免疫応答がさらに増強される可能性がある。本発明は、初回ワクチン接種で始まる免疫応答を、より多様なT細胞集団を誘導し、次いでブーストして後続の各ワクチン接種を用いて規模を拡大することにより、最大化する。治療の初期において、より多様なT細胞集団が誘導されるので、そのような戦略は癌患者においても慢性感染症に罹患している患者においても効果的であろう。
【0045】
従って、本発明は、1つ以上の抗原に対する治療的免疫応答を誘導すること、ならびに、癌もしくは感染症などの疾患または病気の予防、改善および治療のうち少なくともいずれか1つを行うことのうちの少なくともいずれか一方のための、2つ以上の異なる免疫療法組成物の同時使用に関する。1つの実施形態では、2つ以上の異なる免疫療法組成物は同じ抗原を標的とする。別の実施形態では、2つ以上の異なる免疫療法組成物のうち一方は1つ以上の抗原を標的とし、免疫療法組成物のうち他方はアジュバントとして、必ずしも抗原を標的とすることなく、または他方の組成物と同じ抗原を必ずしも標的とすることなく(すなわち、1つの実施形態では、第2の組成物は異なる抗原を標的とする)、提供される。上記の実施形態の任意の組み合わせを含みうる1つの実施形態において、2つ以上の免疫療法組成物は同時に、しかし患者の異なる物理的部位に、投与される。上記の実施形態の任意の組み合わせを含みうる別の実施形態において、2つ以上の異なる免疫療法組成物は同時に、かつ患者の同じかまたはほぼ隣接した部位に、投与される。
【0046】
本発明で使用される2つ以上の異なる免疫療法組成物はそれぞれ、免疫応答を、好ましくは少なくとも細胞性免疫応答を、より好ましくはT細胞による細胞性免疫応答を、個々に誘導することが可能である。1つの態様では、組成物のうち少なくとも一方は、CD8+およびCD4+のうち少なくともいずれか一方であるT細胞による免疫応答を、より好ましくはCD8+かつCD4+のT細胞による免疫応答を、誘導することができる。好ましくは、本発明によって同時に使用される組成物はすべて、CD8+およびCD4+のうち少なくともいずれか一方であるT細胞による免疫応答を、より好ましくは、CD8+かつCD4+の免疫応答を、誘導することができる。任意選択で、組成物のうち少なくとも一方は体液性免疫応答を誘発することができる。好ましくは、免疫療法組成物のうち一方によって誘発される、T細胞による免疫応答は、他方の免疫療法組成物によって誘発されるT細胞による免疫応答とは1つ以上の側面において表現型上および機能上のうち少なくともいずれか一方において異なっている。1つの態様では、免疫療法組成物は、次の特徴すなわち(a)抗原提示細胞を活性化するのに有効な1つ以上のパターン認識受容体を刺激すること;(b)抗原提示細胞上の、接着分子、共刺激分子、およびMHCクラスI/クラスII分子をアップレギュレートすること;(c)抗原提示細胞による炎症誘発性サイトカインの産生を誘導すること;(d)T細胞によるTh1型サイトカインの産生を誘導すること;(e)T細胞によるTh17型サイトカインの産生を誘導すること;(f)Tregを抑制またはダウンレギュレートすること;かつ/または(g)MHCクラスIおよび/またはMHCクラスII、抗原特異的免疫応答を誘発すること、のうち1つ以上を有する。適切な免疫療法組成物には、酵母由来の免疫療法組成物、ウイルス由来の免疫療法組成物、抗体由来の免疫療法組成物、DNAの免疫療法組成物、サブユニットワクチン、ならびに免疫応答を刺激または調整するのに有用な任意の成分またはアジュバント、例えばTLRアゴニスト、サイトカイン、免疫増強剤、およびその他の作用物質、ならびにこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、それらの多くが以下により詳細に記載される。1つの態様では、本発明で使用される免疫療法組成物は組換えウイルス由来の組成物および酵母由来の組成物を含む(以下に詳細に記述)。
【0047】
[ウイルス由来の免疫療法組成物]
本発明の1つの態様は、組換えウイルス由来の免疫療法組成物(この表現は、「ウイルス由来の免疫療法製品」、「ウイルス由来の組成物」、「ウイルス由来の免疫療法剤」、「ウイルス由来のワクチン」、「組換えウイルスまたは組換えウイルスベクターを含むかまたは備えている免疫療法組成物」、またはこれらの表現の任意の類似の派生表現と互換的に使用されうる)に関する。本明細書中で使用されるように、「ウイルス由来の免疫療法組成物」という表現は、ウイルスベクター成分(例えば、ウイルスベクターを構成するのに有効な組換えウイルスまたはその一部)を含み、かつ、対象者において少なくとも1つの治療的有用性を達成するのに十分な免疫応答を誘発する組成物を指す。ウイルス由来の免疫療法組成物および同組成物を製造かつ一般的に使用する方法は、例えば、米国特許第6,045,802号、米国特許第6,893,869号、米国特許第6,548,068号および米国特許第6,969,609号明細書に詳細に記載されており、前記特許文献は各々全体が参照により本願に組み込まれる。1つの態様では、本発明において有用なウイルス由来の免疫療法組成物は、CD8+およびCD4+のうち少なくともいずれか一方であるT細胞による免疫応答を、また1つの態様では、CD8+かつCD4+のT細胞による免疫応答を、また1つの態様では、体液性免疫応答を、誘導する能力を有する。本発明において有用なウイルス由来の免疫療法組成物は、例えば、個体において、該個体が疾患もしくは病気について治療されるように、または疾患もしくは病気に起因する症状が緩和もしくは治療されるように、免疫応答を誘発することができる。
【0048】
ウイルス由来の免疫療法組成物は、典型的には、ウイルスゲノムまたはその一部と(例えば組換えウイルス)、疾患原因物質または疾患状態に由来する少なくとも1つの抗原(例えば癌抗原、感染症抗原、およびそれらの少なくとも1つの免疫原性ドメインのうち少なくともいずれか1つ)をコードする核酸配列とを含むウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態では、ウイルス由来の免疫療法組成物は、1つ以上の免疫刺激性分子をコードする1つ以上の核酸配列を含む少なくとも1つのウイルスベクターをさらに含む。いくつかの実施形態では、免疫刺激性分子および抗原をコードする遺伝子は、同じウイルスベクター(同じ組換えウイルス)に挿入される。
【0049】
本発明のそのような免疫療法組成物において使用可能なウイルスは、細胞に感染して、該ウイルスによって運ばれた抗原がプロセシングかつ提示されるのを可能にする該抗原の細胞内発現を誘導する、任意のウイルスである。これらのウイルスの中で好ましいのは、Th1応答およびTc1表現型を備えたCD8+T細胞を誘導するものである。本発明の組成物において使用可能なウイルスには、ウイルスの感染力を破壊することなく新しい遺伝子を導入するためにゲノムの一部を削除することが可能なウイルスが挙げられる。
【0050】
本発明のウイルスベクターの製造において有用な親ウイルス(すなわちウイルスベクター/組換えウイルスの製造の元であり、派生元であり、母体である等のウイルス)には、限定するものではないが、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、アルファウイルス、レトロウイルス、ピコルナウイルス、バキュロウィルス、およびイリドウイルスが挙げられる。本発明における有用性を有するポックスウイルス(ポックスウイルス科に属するもの)には、複製型および非複製型のベクターが含まれる。そのようなポックスウイルスには、限定するものではないが、オルソポックス(オルソポックスウイルス属)、例えばワクシニアウイルス(Perkus et al.,Science 229:981−984,1985;Kaufman et al.,Int.J.Cancer 48:900−907,1991,Moss,Science 252:1662,1991)、アライグマポックス、ラビットポックスなど、アビポックス(アビポックスウイルス属)、例えば鶏痘ウイルス、スイポックス(スイポックスウイルス属)、カプリポックス(カプリポックスウイルス属)などが挙げられる。ポックスウイルスは、ワクシニア‐コペンハーゲン、ワクシニア‐ワイエス株、極めて減弱化されたワクシニアウイルス(ワクシニア‐MVA株)、改変ワクシニアアンカラ(Sutter and Moss,Proc.Nat’l Acad.Sci.U.S.A.89:10847−10851;Sutter et al.,Virology 1994)、NYVAC、TROVAC、カナリアポックス、ALVAC(Baxby and Paoletti,Vaccine 10:8−9,1992;Rinns,M.M.et al.,(Eds)Recombinant Poxviruses CRC Press,Inc.,Boca Raton 1992;Paoletti,E.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 93:11349−11353,1996)、スイポックスなどの群から選択されうる。ワクシニア‐ワイエス株の誘導体には機能的なK1L遺伝子を欠くvTBC33が挙げられるがこれに限定はされない。さらに別の実施形態では、ウイルスは、米国ジョージア州アトランタ所在の米国疾病管理センター(Centers for Disease Control)から天然痘ワクチンとして入手可能なDry‐Vaxである。1つの実施形態では、組換えベクターはワクシニアウイルスである。別の実施形態では、組換えベクターは鶏痘ウイルス由来である。鶏痘ウイルスの1つの株は、例えば、POXVAC‐TC(シェーリング・プラウ株式会社(Schering−Plough Corporation))である。
【0051】
本発明における有用性を有する組換えポックスウイルスはいくつかの属性を有し、該属性には(i)抗原提示細胞(APC)および腫瘍細胞を含む多種類の細胞への遺伝子の効率的送達;(ii)高レベルのタンパク質発現;(iii)免疫系への最適な抗原提示;(iv)細胞性免疫応答も抗体応答も誘発する能力;(v)細胞の、恒久的ではなく一時的な遺伝子組換え、ならびに(vi)免疫学的に交差反応しないため、異なる属に由来するポックスウイルスの組み合わせを使用する能力、が挙げられる。
【0052】
組換えワクシニアウイルス(rV、rMVA)および組換え鶏痘ウイルス(rF)は、本発明のウイルス由来の免疫療法組成物に使用される2つの典型的なウイルスである。ネズミ科動物のB7‐1、ICAM‐1およびLFA‐3遺伝子ならびにヒトのCEA遺伝子を含有している組換えワクシニアウイルスおよび鶏痘ウイルス(rV/F‐CEA/TRICOM)については記載があり(Hodge et al.,Cancer Res 1999 Nov 15;59(22):5800−7;Grosenbach et al.,Cancer Res 2001 Jun 1;61(11):4497−505およびHodge et al.,Cancer Res 2003 Nov 15;63:7942−7949)、前記文献はそれぞれ全体が参照により本願に組み込まれる。ネズミ科動物のGM‐CSFを発現するrFウイルス(rF‐GM‐CSF)は以前に記載されている(Kass et al.,Cancer Res 2001 Jan 1;61(1):206−14)。本発明の目的に関しては、「rV/F‐CEA/TRICOM」と呼ばれるワクチンは、rF‐GM‐CSF(GM‐CSFをコードする遺伝子を含有している組換え鶏痘ウイルス)と混合されたrV‐CEA/TRICOM(B7‐1、ICAM‐1、LFA‐3およびCEAをコードするポリヌクレオチドを含有する組換えワクシニアウイルス)を用いたプライミングと、該プライミングがrF‐GM‐CSFと混合されたrF‐CEA/TRICOM(B7‐1、ICAM‐1、LFA‐3およびCEAをコードするポリヌクレオチドを含有する組換え鶏痘ウイルス)を用いて7日ごとにブーストされることとを含む完全なワクチンプロトコールを指している。当然ながら、CEAは、本発明の1つ以上の免疫療法組成物に関して使用される適切な抗原(この場合、腫瘍関連抗原または癌抗原)の単なる一例である。
【0053】
本発明のウイルスベクターは、核酸配列に作動可能に連結された少なくとも1つの発現制御要素を含む。発現制御要素は、核酸配列の発現を制御かつ調節するためにベクターに挿入される(Ausubel et al.,1987,in “Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,New York,N.Y.)。発現制御要素は当分野で知られており、プロモータが挙げられる。本発明において有用なプロモータは、当分野で知られているようなポックスウイルスプロモータであり、例えば、限定するものではないが30K、I3、sE/L、7.5K、40K、およびC1が挙げられる。30Kプロモータの核酸配列は、GenBank登録番号M35027の塩基番号28,012〜28,423(アンチセンス)に開示されている。13の核酸配列は、GenBank登録番号J03399の塩基番号1100〜1301(アンチセンス)に開示されている。7.5Kプロモータの核酸配列は、GenBank登録番号M35027の塩基番号186550〜186680に開示されている。40Kプロモータの核酸配列は、GenBank登録番号M13209の塩基番号9700〜9858(アンチセンス)に開示されている。C1プロモータの核酸配列は、GenBank登録番号M59027の塩基番号1〜242に、また米国特許第5,093,258号明細書に、開示されている。sE/Lプロモータの配列は当分野において既知である。他のポックスウイルスのプロモータ、例えばデービソン(Davison)およびモス(Moss)(J.Mol.Biol.210:749−769.(1989))によって記述されたものが使用されてもよい。これらのプロモータのうちいずれも、当分野の標準的な方法を使用して合成可能である。適切なプロモータの選択は、該プロモータの発現のタイミングおよび発現レベルに基づく。初期プロモータまたは初期/後期プロモータが1つの態様において使用される。1つの実施形態では、利用されるプロモータまたはプロモータの組み合わせにより、相乗的な免疫応答を提供するための、感染宿主における各抗原および共刺激分子のうち少なくともいずれか一方の最適な発現が可能となる。1つの実施形態では、抗原または共刺激分子をコードする核酸分子はそれぞれ、別個かつ異なるプロモータによって制御される。
【0054】
本発明で使用するために記載された任意の免疫療法組成物と共に本明細書中で使用されるように、免疫刺激性分子には、限定されるものではないが、サイトカインおよび共刺激分子が挙げられる。例えば、サイトカインには、限定されるものではないが、腫瘍壊死因子α(TNF‐α)、インターロイキン6(IL‐6)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM‐CSF)、インターフェロンγ(IFN‐γ)、IFN‐α、IFN‐λ、インターロイキン12(IL‐12)、RANTES、およびインターロイキン2(IL‐2)が挙げられる。共刺激分子には、限定されるものではないが、B7.1(本明細書中ではB7‐1とも呼ばれる)、B7.2(本明細書中ではB7‐2とも呼ばれる)、ICAM‐1、LFA‐3、4‐1BBL、CD59、CD40、CD40LおよびCD70が挙げられる。免疫刺激性分子は、本発明の免疫療法組成物中で単独で提供されてもよいし、様々な組み合わせで提供されてもよく、1つ以上のウイルスベクターまたは他のワクチンベクターによって発現されうる。1つの態様では、本発明の組換えベクターは、単一または2つの共刺激分子の使用では得られない、免疫応答の相乗的な増強のために、少なくとも3つの共刺激分子をコードする遺伝子を含む。様々な組み合わせの共刺激分子をコードする遺伝子は、組換えベクターで使用するための本発明の要素であり、所望の免疫応答および治療すべき疾患または病気に応じて、例えば次のような組み合わせ:B7.1、B7.2、ICAM‐1、およびLFA‐3;B7.1、ICAM‐1、およびLFA‐3;B7.1、B7.2、ICAM‐1、および4‐1BBL;B7.1、B7.2、ICAM‐1、LFA−3、および4‐1BBL;CD59およびVCAM‐1;ならびにB7.1およびB7.2;CD59、CD40、4‐BBL、CD70およびVCAM‐1、B7.1、B7.2;OX−40L、4‐1BBL;が挙げられる。
【0055】
B7.1(CD80)は、T細胞抗原CD28の天然リガンドであり、T細胞およびB細胞の接着を仲介する。B7.1は、活性化B細胞およびγインターフェロンで刺激された単球において発現される。CD28およびCTLA‐4へのCD80の結合はT細胞に共刺激シグナルを提供し、アップレギュレートされたリンホカイン産生をもたらす。B7.2(CD86)はCD28およびCTLA‐4の他のリガンドである。
【0056】
CD54としても知られるICAM‐1(細胞間接着分子1)は白血球および内皮に関連する細胞間接着分子であり、白血球受容体であるLFA‐1(インテグリン)のリガンドである。ICAM‐1はサイトカイン刺激でアップレギュレートされ、細胞間相互作用、白血球の経内皮遊走、および炎症誘発性免疫細胞の動員に関係するシグナル伝達に関与する。
【0057】
LFA‐3(リンパ球機能関連抗原3)、すなわちCD58は、抗原提示細胞(APC)によって発現される接着分子であり、T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞の上に見出される接着分子CD2を介して共刺激シグナルを仲介する。この相互作用は細胞間接着およびT細胞の活性化を促進する。
【0058】
4‐1BBLは活性化された抗原提示細胞(APC)上で発現され、かつ、活性化されたCD4およびCD8 T細胞上で発現される腫瘍壊死因子受容体ファミリーに属する共刺激分子である4‐1BBのリガンドである。これらの分子の相互作用はT細胞の増殖および生存を増強し、CD8+T細胞の記憶を拡張かつ活性化することができる(Bukczynski et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.2004,101(5):1291−6)。
【0059】
CD59は補体調節タンパク質である。ワクシニアウイルスなどのウイルス、ワクシニアは、補体による溶解を防止するために自身のウイルスエンベロープに宿主細胞のCD59を組み入れる(Bohana−Kashtan et al.,2004,Mol.Immunol.41(6−7):583−97)。
【0060】
VCAM‐1(血管細胞接着分子1)、すなわちCD106は、内皮細胞によって発現される接着分子であり、血管内皮へのリンパ球、単球、好酸球および好塩基球の接着を仲介する。VCAM‐1はさらに、白血球‐内皮細胞シグナル伝達において機能する。
【0061】
CD40は抗原提示細胞(APC)によって発現される共刺激タンパク質である。CD40による、そのT細胞上の天然リガンドCD40Lへの結合はAPCを活性化し、様々な免疫応答および炎症性応答を仲介するシグナル伝達カスケードを引き起こす。
【0062】
CD70は、長期的なT細胞免疫の生成および維持に必要な受容体であるCD27のリガンドである。
OX40‐Lは活性化されたB細胞、T細胞、樹状細胞および内皮細胞の表面上で発現され、その天然の受容体であるOX40に結合するが、OX40は活性化されたCD4+T細胞によって主として発現されるので、この相互作用はT細胞の活性化と関係がある。
【0063】
GM‐CSF(顆粒球マクロファージ・コロニー刺激因子)は、T細胞、マクロファージおよびその他の細胞によって産生される白血球増殖因子として機能するサイトカインである。GM‐CSFは幹細胞を刺激して顆粒球(好中球、好酸球および好塩基球)ならびに単球を産生させるので、免疫系活性化および発生過程の不可欠な要素である。
【0064】
ウイルス複製/感染の部位(いずれにせよ抗原産生の部位)における免疫刺激性分子および抗原の同時産生は、特定のエフェクターの生成を増強する。特定の免疫刺激性分子に応じて、免疫原性増強に種々のメカニズム、すなわち:ヘルプシグナルの増強(IL‐2)、プロフェッショナルAPCの動員(GM‐CSF)、CTL頻度の増大(IL‐2)、および/または抗原プロセシング経路およびMHC発現への影響(IFN‐γおよびTNFα)が関与する。ある場合には、多価ワクチンを取得する目的で、2つ以上の対象とする抗原を含む組換えウイルスを製造することが有益な場合もある。
【0065】
1つの実施形態では、医薬組成物は、複数の共刺激分子をコードする核酸分子を含有する組換えウイルス(例えばポックスウイルス)を、薬学的に許容可能な担体中に含む。該組換えウイルスは、少なくとも1つの抗原またはその免疫原性ドメインをコードする核酸配列をさらに含むこともできるし、別例として、少なくとも1つの抗原またはその免疫原性ドメインをコードしている第2の組換えウイルス(例えばポックスウイルス)が提供されてもよい。
【0066】
1つの実施形態では、本発明において有用なウイルス由来の免疫療法組成物は、B7.1またはB7.2をコードする核酸配列、ICAM‐1をコードする核酸配列、およびLFA‐3をコードする核酸配列を含む組換えウイルス(例えば組換えポックスウイルス)ならびに薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物を含む。B7、ICAM‐1、LFA‐3構築物に加えて、医薬組成物の組換えウイルスは、少なくとも1つの抗原またはその免疫原性ドメインをコードする核酸配列をさらに含むこともできるし、別例として、少なくとも1つの抗原またはその免疫原性ドメインをコードする核酸配列が、第2の組換えウイルスによって組成物中に提供されてもよい。
【0067】
1つの実施形態では、免疫応答のさらなる相乗作用または増強のために、該組成物はさらに、当分野で知られているような外から追加された免疫刺激性分子、例えば、限定するものではないが、共刺激分子であるB7、ICAM‐1、LFA‐3、4‐1BBL、CD59、CD40、CD70、VCAM‐1、OX‐40L、かつ/またはそのような免疫刺激性分子に結合する抗体、かつ/またはそのような免疫刺激性分子のアゴニストもしくはアンタゴニスト、かつ/またはサイトカインおよびケモカイン、例えば、限定するものではないが、IL‐2、GM‐CSF、TNF‐α、IFN‐γ、IFN‐α、IFN‐λ、IL‐12、RANTES、M1P‐1a、Flt‐3L(米国特許第5,554,512号;同第5,843,423号明細書)などを含むこともできる。サイトカインおよびケモカイン自体が組成物中に提供されてもよいし、または別例として、サイトカインおよびケモカインは、サイトカインもしくはケモカインをコードする組換えウイルスベクターによって提供されてもよい。
【0068】
本発明の1つの実施形態では、LFA‐3またはその機能的な部分をコードする核酸配列を30Kポックスウイルスプロモータの制御下に、ICAM‐1またはその一部をコードする核酸配列をI3ポックスウイルスプロモータの制御下に、かつB7.1またはその一部をコードする核酸配列をsE/Lポックスウイルスプロモータの制御下に含む組換えポックスウイルスが提供される。該組換えポックスウイルスは、少なくとも1つの抗原またはその免疫原性ドメインをコードする核酸配列をさらに提供してもよい。
【0069】
本発明の別の実施形態では、B7.1をコードする核酸配列をsE/Lポックスウイルスプロモータの制御下に、LFA‐3またはその一部をコードする核酸配列をI3ポックスウイルスプロモータの制御下に、かつICAM‐1またはその一部をコードする核酸配列を7.5Kポックスウイルスプロモータの制御下に含む組換えポックスウイルスが提供される。任意選択で、該構築物は、少なくとも抗原またはその免疫原性ドメインをコードする核酸配列をさらに含む。
【0070】
本発明の1つの実施形態において、組換え鶏痘ウイルスは、B7.1またはその一部をコードする核酸配列をsE/Lポックスウイルスプロモータの制御下に、LFA‐3またはその一部をコードする核酸配列をI3ポックスウイルスプロモータの制御下に、またICAM‐1またはその一部をコードする核酸配列を7.5Kポックスウイルスプロモータの制御下に含む。組換え鶏痘ウイルスは、標的抗原をコードする核酸配列を40Kポックスウイルスプロモータのようなポックスウイルスプロモータの制御下にさらに含むこともできる。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態では、組換えウイルス由来の免疫療法組成物は抗原を発現しないが、そのような場合、そのような組成物の組換えウイルスベクターは本明細書中に別記される1つ以上の免疫刺激性分子をなおも発現することが好ましい。本発明のこの実施形態では、抗原は、本発明の酵母由来の免疫療法組成物のような、本明細書中に記載されるような1つまたは複数の別の免疫療法組成物によって提供される。本発明において使用される免疫療法組成物の各々が免疫系に対して何らかの独自の「危険シグナル」または共刺激シグナルを提供しうるので、ベクターの寄与を提供すると同時に組成物のうち1つだけが抗原を含むことで十分な場合がある。
【0072】
本発明は、抗原および複数の共刺激分子のうち少なくともいずれか一方をコードする核酸配列を含む組換えウイルスを生成する方法をさらに提供する。組換えポックスウイルスを生成する1つの方法は、米国特許第5,093,258号明細書に開示されるように、in vivoにおける親ポックスウイルスのゲノムDNAと挿入すべき異種配列を担持するプラスミドベクターとの間の相同組換えによって遂行される。ポックスウイルス中へ外来配列を挿入するためのプラスミドベクターは、組換えDNA技術の標準的な方法によって構築される。該プラスミドベクターは、それぞれタンパク質コード配列に連結されたポックスウイルスプロモータを含み、ポックスウイルスゲノムの非必須領域由来のウイルス配列によって挟まれた、1つ以上のキメラ外来遺伝子を含有している。プラスミドは、当分野で一般に認められているトランスフェクション方法を使用して、親ポックスウイルスに感染した細胞の中にトランスフェクトされ、プラスミド上のポックスウイルス配列と親ウイルスゲノム中の対応するDNAとの間の組換えにより、プラスミドから、キメラの外来遺伝子のウイルスゲノム中への挿入がもたらされる。組換えウイルスは、当分野で知られているように、様々な選択システムまたはスクリーニングシステムのうち任意のものを使用して、選択および精製される。ワクシニアゲノム中への外来遺伝子の挿入はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析によって確認される。外来遺伝子の発現はウエスタンブロット解析によって実証される。組換えポックスウイルスの生成の別法は直接的な連結反応によって遂行される(Pleiderer et al.,J.Gen.Virol.76:2957−2962,1995;Merchlinsky et al.,Virol.238:444−451,1997)。
【0073】
[酵母由来の免疫療法組成物]
本発明の1つの実施形態では、本発明は、少なくとも1つの「酵母由来の免疫療法組成物」(この表現は、「酵母由来の免疫療法製品」、「酵母由来の組成物」、「酵母由来の免疫療法剤」、「酵母由来のワクチン」、「酵母ビヒクルを含む免疫療法組成物」、またはこれらの表現の任意の類似の派生表現と、互換的に使用可能である)の使用を含む。本明細書中で使用されるように、「酵母由来の免疫療法組成物」という表現は、酵母ビヒクル成分を含み、かつ対象者において少なくとも1つの治療的利益を達成するのに十分な免疫応答を誘発する組成物を指す。より具体的には、酵母由来の免疫療法組成物は、酵母ビヒクル成分を含み、細胞性免疫応答のような免疫応答、例えば、限定するものではないがT細胞による細胞性免疫応答を、誘発または誘導することができる組成物である。1つの態様では、本発明において有用な酵母由来の免疫療法組成物はCD8+およびCD4+のうち少なくともいずれか一方であるT細胞による免疫応答を誘導することが可能であり、また1つの態様ではCD8+およびCD4+のT細胞による免疫応答を誘導することが可能である。任意選択で、酵母由来の免疫療法組成物は体液性免疫応答を誘発することができる。本発明において有用な酵母由来の免疫療法組成物は、例えば、個体において、該個体が疾患もしくは病気について治療されるように、または疾患もしくは病気に起因する症状が緩和または治療されるように、免疫応答を誘発することができる。
【0074】
典型的には、酵母由来の免疫療法組成物は、酵母ビヒクルと、該酵母ビヒクルによって発現されるか、該酵母ビヒクルに付着されるか、または該酵母ビヒクルと混合される少なくとも1つの抗原またはその免疫原性ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗原またはその免疫原性ドメインは融合タンパク質として提供される。本発明の1つの態様では、融合タンパク質は2つ以上の抗原を含むことができる。1つの態様では、融合タンパク質は、1つ以上の抗原の2つ以上の免疫原性ドメイン、または1つ以上の抗原の2つ以上のエピトープを含むことができる。TARMOGEN(R)は、本発明において有用な酵母由来の免疫療法組成物の1つの非限定的な例である。TARMOGEN(R)(TARgeted MOlecular immunoGEN、米国コロラド州ルイビル所在のグローブイミューン社)は概して、酵母ビヒクルであって1つ以上の異種抗原を細胞外で(その表面で)、細胞内で(内部で、もしくは細胞質で)、または細胞外および細胞内の両方で発現するものを指す。
【0075】
酵母由来の免疫療法組成物、および同組成物を製造かつ一般的に使用する方法は、例えば、米国特許第5,830,463号、米国特許第7,083,787号、米国特許第7,465,454号、米国特許出願公開第2007‐0224208号、米国特許出願公開第US2008‐0003239号、およびStubbs et al.,Nat.Med.7:625−629(2001)、Lu et al.,Cancer Research 64:5084−5088(2004)、ならびにBernstein et al.,Vaccine 2008 Jan 24;26(4):509−21に詳細に記載されており、前記文献はそれぞれその全体が参照により本願に組み込まれる。これらの酵母由来の免疫療法製品は細胞性および体液性免疫応答を含む免疫応答を誘発することが示されている。酵母由来の免疫療法製品は、様々な動物種においてin vivoで様々な抗原を発現する標的細胞を殺滅することが可能であり、またその殺滅は、抗原特異的な、CD8+およびCD4+のうち少なくともいずれか一方による免疫応答を介して行われる。さらなる研究により、酵母は、樹状細胞によって貪食されて該樹状細胞を直接活性化し、該樹状細胞は次いで非常に効率的な方法でCD4+およびCD8+T細胞に対して酵母関連タンパク質を提示する。例えば、Stubbs et al.Nature Med.5:625−629(2001)および米国特許第7,083,787号明細書を参照されたい。
【0076】
本発明で使用される酵母由来の免疫療法組成物のうちいずれにおいても、酵母ビヒクルに関係する次の態様が本発明に含まれる。本発明によれば、酵母ビヒクルは、本発明の治療用組成物において、1つ以上の抗原、その免疫原性ドメインまたはそのエピトープと共に使用可能である任意の酵母細胞(例えば完全な細胞または無傷の細胞)またはその誘導体(以下を参照)であり、あるいは1つの態様では、酵母ビヒクルは単独で使用されてもアジュバントとして使用されてもよい。したがって、酵母ビヒクルには、限定するものではないが、生きている無傷の酵母微生物(すなわち、細胞壁を含め、その成分をすべて有している酵母細胞)、殺滅(死滅)もしくは不活性化された酵母微生物、またはその誘導体、例えば:酵母スフェロプラスト(すなわち細胞壁を欠く酵母細胞)、酵母サイトプラスト(すなわち細胞壁および核を欠く酵母細胞)、酵母ゴースト(すなわち細胞壁、核および細胞質を欠く酵母細胞)、細胞レベル以下の酵母細胞膜抽出物もしくはその画分(酵母膜粒子および以前は細胞レベル以下の酵母粒子とも呼ばれる)、任意の他の酵母粒子、または酵母細胞壁調製物が挙げられる。
【0077】
酵母スフェロプラストは、典型的には酵母細胞壁の酵素消化によって製造される。そのような方法は、例えば、Franzusoff et al.,1991,Meth.Enzymol.194,662−674に記載されており、前記文献は全体が参照により本願に組み込まれる。
【0078】
酵母サイトプラストは、典型的には酵母細胞の除核によって製造される。そのような方法は、例えば、Coon,1978,Natl.Cancer Inst.Monogr.48,45−55に記載されており、前記文献は全体が参照により本願に組み込まれる。
【0079】
酵母ゴーストは、典型的には、透過化または溶解された細胞を再封鎖することにより製造され、その細胞の細胞小器官のうち少なくとも一部を含有していてもよいが、含有する必要はない。そのような方法は、例えば、Franzusoff et al.,1983,J.Biol.Chem.258,3608−3614およびBussey et al.,1979,Biochim.Biophys.Acta 553,185−196に記載されており、前記文献は全体が参照により本願に組み込まれる。
【0080】
酵母膜粒子(細胞レベル以下の酵母細胞膜抽出物またはその画分)は、天然の核または細胞質を欠く酵母膜を指す。該粒子は、任意の大きさ、例えば天然の酵母膜の大きさから、超音波処理またはその他の当分野で知られた膜破壊方法とその後の再封鎖によって生じた微粒子に及ぶ大きさのものであってよい。細胞レベル以下の酵母細胞膜抽出物を作製する方法は、例えばFranzusoff et al.,1991,Meth.Enzymol.194,662−674に記載されている。酵母の膜部分と、抗原または他のタンパク質が酵母膜粒子の調製に先立って酵母により組換え発現される場合は抗原または対象とする他のタンパク質と、を含有する酵母膜粒子の画分が使用されてもよい。抗原または対象とする他のタンパク質は、膜の内部に担持されてもよいし、膜の一方の表面に担持されてもよいし、またはその組み合わせ(すなわち、タンパク質が膜の内側および外側の両方にあり、かつ/または酵母膜粒子の膜を貫通する)でもよい。1つの実施形態では、酵母膜粒子は、少なくとも1つの所望抗原または対象とする他のタンパク質を、膜の表面にまたは少なくとも部分的に膜内に埋め込まれた状態で含んでいる無傷の酵母膜、破壊された酵母膜、または破壊かつ再封鎖された酵母膜でありうる組換え酵母膜粒子である。
【0081】
酵母細胞壁調製物の一例は、単離された酵母細胞壁であってその表面上に抗原を担持するかまたは細胞壁内に少なくとも部分的に埋め込まれた抗原を担持しており、該酵母細胞壁調製物が、動物に投与された時、疾患標的に対する所望の免疫応答を促すようになっているものである。
【0082】
本発明の酵母ビヒクルを製造するために任意の酵母株を使用することができる。酵母は、3つの種類すなわち:子嚢菌類(Ascomycetes)、担子菌類(Basidiomycetes)および不完全菌類(Fungi Imperfecti)、のうちの1つに属する単細胞微生物である。免疫モジュレータとして使用するための酵母の種類の選択に対する1つの留意事項は、酵母の病原性である。1つの実施形態では、酵母はサッカロマイセス・セレビシエのような非病原性の菌株である。非病原性の酵母菌株の選択により、酵母ビヒクルが投与される個体への何らかの副作用が最小限となる。しかしながら、酵母の病原性を当業者に既知の任意の手段によって無効にすることができる場合は(例えば突然変異株)、病原性酵母が使用されてもよい。本発明の1つの態様に従えば、非病原性の酵母菌株が使用される。
【0083】
本発明において使用可能な酵母菌株の属には、限定するものではないが、サッカロマイセス属、カンジダ属(病原性の可能性がある)、クリプトコックス属、ハンゼヌラ属、クリベロマイセス属、ピチア属、ロードトルラ属、シゾサッカロマイセス属およびヤロウィア属が挙げられる。1つの態様では、酵母の属は、サッカロマイセス属、カンジダ属、ハンゼヌラ属、ピチア属またはシゾサッカロマイセス属から選択され、1つの態様ではサッカロマイセス属が使用される。本発明において使用可能な酵母菌株の種には、限定するものではないが、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・ケフィール(Candida kefyr)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、クリプトコックス・ラウレンチイ(Cryptococcus laurentii)、クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ハンゼヌラ・アノマラ(Hansenula anomala)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クリベロマイセス・フラギリス(Kluyveromyces fragilis)、クリベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、クリベロマイセス・マルキシアヌス・バラエティ・ラクティス(Kluyveromyces marxianus var.lactis)、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)、ロードトルラ・ルブラ(Rhodotorula rubra)、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、およびヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)が挙げられる。当然ながら、これらの生物種のうちいくつかは、前述の生物種の中に含まれるように意図される様々な亜種、タイプ、サブタイプなどを含む。1つの態様では、本発明において使用可能な酵母の生物種には、S.セレビシエ、C.アルビカンス、H.ポリモルファ、P.パストリスおよびS.ポンベが挙げられる。S.セレビシエは、取り扱いが比較的簡単であること、食品添加物としての使用について「一般に安全と認められる(Generally Recognized As Safe)」すなわち「GRAS」である(GRAS、FDA規則案62FR18938、1997年4月17日)ことから、有用である。本発明の1つの実施形態は、S.セレビシエのcir°株のような、プラスミドを特に高いコピー数へと複製することができる酵母菌株である。このS.セレビシエ菌株は、1つまたは複数の標的抗原、抗原融合タンパク質、および他のタンパク質のうち少なくともいずれか1つを高レベルで発現させることを可能とする発現ベクターを支援することができるような菌株である。加えて、任意の突然変異型酵母菌株、例えば発現された標的抗原または他のタンパク質の翻訳後修飾の低下を示すもの、例えばN‐結合型グリコシル化を行う酵素の変異体などを本発明の中で使用することができる。
【0084】
1つの実施形態では、本発明の酵母ビヒクルは、酵母ビヒクルおよび抗原/作用物質の送達を受ける細胞種類、例えば樹状細胞またはマクロファージと融合することによって、該細胞種類に、酵母ビヒクル、および多くの実施形態では抗原またはその他の作用物質の、特に効率的な送達を達成することができる。本明細書中で使用されるように、酵母ビヒクルの標的の細胞種類との融合は、酵母菌の細胞膜またはその粒子が、標的の細胞種類(例えば樹状細胞またはマクロファージ)の細胞膜と融合して融合細胞の形成をもたらす能力を指す。本明細書中で使用されるように、融合細胞は細胞の融合によって生じた多核の原形質の塊である。いくつかのウイルス表面タンパク質(HIVのような免疫不全ウイルス、インフルエンザウイルス、ポリオウイルスおよびアデノウイルスのウイルス表面タンパク質を含む)、およびその他の融合誘起剤(卵子と精子との間の融合に関与するものなど)は、2つの細胞膜の間の(すなわちウイルスの膜と哺乳動物細胞の細胞膜との間、または哺乳動物細胞の細胞膜どうしの間の)融合をもたらすことができることが示されている。例えば、表面にHIVのgp120/gp41異種抗原を生産する酵母ビヒクルは、CD4+Tリンパ球と融合する能力を有する。しかしながら、標的とする成分の酵母ビヒクル内への組み込みは、状況によっては望ましい場合もあるが、必ずしも必要ではないことに注意されたい。抗原を細胞外に発現する酵母ビヒクルの場合、このことが本発明の酵母ビヒクルの一層の利点となりうる。一般に、本発明において有用な酵母ビヒクルは、樹状細胞(およびマクロファージのようなその他の細胞)によって容易に取り込まれる。
【0085】
本発明のいくつかの実施形態では、酵母由来の免疫療法組成物は、少なくとも1つの抗原、その免疫原性ドメイン、またはそのエピトープを含む。本発明で使用するために企図される抗原には、その抗原に対する免疫応答を誘発することが望まれるあらゆる抗原が含まれる(以下により詳細に記載される)。
【0086】
本発明のいくつかの実施形態では、酵母由来の免疫療法組成物は抗原を発現しないかそうでなければ含有も提示もしないが、ただしこの場合、酵母ビヒクルは任意選択で1つ以上の免疫刺激性分子を発現することができる。本発明のこの実施形態では、抗原は、ウイルス由来の免疫療法組成物など、本明細書中に記載されるような1つ以上の別の免疫療法組成物によって提供される。本発明において使用される免疫療法組成物の各々が免疫系に対して何らかの独自の「危険シグナル」または共刺激シグナルを提供しうるので、組成物のうち1つだけが抗原を含むと同時にベクターの寄与を提供することで十分な場合がある。
【0087】
本発明によれば、用語「酵母ビヒクル‐抗原複合体」または「酵母‐抗原複合体」は一般に酵母ビヒクルの抗原との何らかの関連について述べるために使用され、そのような組成物が上述のような免疫応答を誘発するために使用される場合は「酵母由来の免疫療法組成物」と互換的に使用可能である。そのような関連には、酵母(組換え酵母)による抗原の発現、酵母の中への抗原の導入、酵母への抗原の物理的な付着、およびバッファー中またはその他の溶液中もしくは調合物中などにおける、酵母と抗原とを合わせた混合、が挙げられる。これらの複合体の種類は以下に詳細に記載される。
【0088】
1つの実施形態では、酵母ビヒクルを調製するために使用されるかまたは酵母ビヒクルである酵母細胞(例えば完全な酵母)は、タンパク質が該酵母細胞によって発現されるように該タンパク質(例えば抗原または作用物質)をコードする異種核酸分子でトランスフェクトされる。そのような酵母は、本明細書中において組換え酵母または組換え酵母ビヒクルとも呼ばれる。該酵母細胞は次いで投与されてもよいし、該酵母細胞は殺滅処理されてもよいし、または酵母スフェロプラスト、サイトプラスト、ゴーストもしくは細胞レベル以下の粒子の形成などによって誘導体化されてもよい。酵母スフェロプラストは、抗原または他のタンパク質を発現する組換えスフェロプラストを生産するために、組換え核酸分子を用いて直接トランスフェクトされてもよい(例えば、スフェロプラストが酵母全体から生産され、次いでトランスフェクトされる)。
【0089】
1つの態様では、酵母ビヒクルを調製するために使用される酵母細胞または酵母スフェロプラストは、抗原または他のタンパク質が該酵母細胞または酵母スフェロプラストによって組換え発現されるように、該抗原または他のタンパク質をコードする組換え核酸分子でトランスフェクトされる。この態様では、抗原または他のタンパク質を組換え発現する酵母細胞または酵母スフェロプラストは、酵母サイトプラスト、酵母ゴースト、または酵母膜粒子もしくは酵母細胞壁粒子、またはその画分を含む酵母ビヒクルを作製するために使用される。
【0090】
本発明の酵母ビヒクルによって生産されるいくつかの抗原および他のタンパク質のうち少なくともいずれか一方は、酵母ビヒクルによって適切に生産可能であり、かつ典型的には少なくとも1個〜少なくとも約6個以上、例えば約2個〜約6個の範囲の異種抗原および他のタンパク質である、任意の数の抗原および他のタンパク質のうち少なくともいずれか一方である。
【0091】
本発明の酵母ビヒクルにおける抗原または他のタンパク質の発現は、当業者に既知の技術を使用して遂行可能である。簡潔に述べると、1つの態様では、少なくとも1つの所望の抗原または他のタンパク質をコードする核酸分子が、該核酸分子が宿主酵母細胞中に形質転換された時に該核酸分子の構成的発現または調節された発現のうちいずれかを達成することができるように転写制御配列に作動可能に連結される方式で、発現ベクターに挿入される。1つ以上の抗原および他のタンパク質のうち少なくともいずれか一方をコードする核酸分子は、1つ以上の発現制御配列に作動可能に連結された1つ以上の発現ベクター上にあってよい。特に重要な発現制御配列は、プロモータおよび上流活性化配列のような、転写開始を制御する配列である。任意の適切な酵母プロモータも本発明において使用可能であり、様々なそのようなプロモータは当業者には周知である。サッカロマイセス・セレビシエにおける発現のためのプロモータには、限定するものではないが、次の酵母タンパク質すなわち:アルコール脱水素酵素I(ADH1)またはII(ADH2)、CUP1、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、トリオースリン酸イソメラーゼ(TPI)、ペプチド伸長因子EF‐1α(TEF2)、グリセリンアルデヒド‐3‐リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH;トリオースリン酸デヒドロゲナーゼについてはTDH3とも呼ばれる)、ガラクトキナーゼ(GAL1)、ガラクトース‐1‐リン酸ウリジルトランスフェラーゼ(GAL7)、UDP‐ガラクトースエピメラーゼ(GAL10)、チトクロムc1(CYC1)、Sec7タンパク質(SEC7)および酸性ホスファターゼ(PHO5)をコードする遺伝子のプロモータ、例えばADH2/GAPDHプロモータおよびCYC1/GAL10プロモータのようなハイブリッドプロモータ、また例えば細胞内のグルコース濃度が低い(例えば約0.1〜約0.2パーセント)時に誘導されるADH2/GAPDHプロモータ、ならびにCUP1プロモータおよびTEF2プロモータが挙げられる。同様に、エンハンサーとも呼ばれるいくつかの上流活性化配列(UAS)が知られている。サッカロマイセス・セレビシエにおける発現のための上流活性化配列には、限定するものではないが、次のタンパク質すなわち:PCK1、TPI、TDH3、CYC1、ADH1、ADH2、SUC2、GAL1、GAL7およびGAL10をコードする遺伝子のUAS、ならびにGAL4遺伝子産物によって活性化される他のUASがあり、1つの態様ではADH2 UASが使用される。ADH2 UASはADR1遺伝子産物によって活性化されるので、異種遺伝子がADH2 UASに作動可能に連結される場合、ADR1遺伝子を過剰発現させることが好ましい場合がある。サッカロマイセス・セレビシエにおける発現のための転写終結配列には、α因子、GAPDH、およびCYC1遺伝子の終結配列が挙げられる。
【0092】
C1化合物資化性の(methyltrophic)酵母において遺伝子を発現させる転写制御配列には、アルコールオキシダーゼおよびギ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の転写制御領域が挙げられる。
【0093】
本発明による酵母細胞内への核酸分子のトランスフェクションは、細胞内へ核酸分子を投与する任意の方法により達成可能であり、例えば、限定するものではないが、拡散、能動輸送、浴槽式超音波処理、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、吸着、およびプロトプラスト融合が挙げられる。トランスフェクトされた核酸分子は、当業者に周知の技術を使用して、酵母染色体に一体化されてもよいし、染色体外のベクター上に維持されてもよい。そのような核酸分子を担持する酵母ビヒクルの例は、本明細書中に詳細に開示される。上記に議論されるように、酵母サイトプラスト、酵母ゴースト、および酵母膜粒子調製物または細胞壁調製物は、所望の核酸分子を用いて完全な酵母微生物または酵母スフェロプラストをトランスフェクトするステップと、その内部で抗原を生産するステップと、その後さらに、当業者に周知の技術を使用して該微生物またはスフェロプラストを操作して、サイトプラスト、ゴーストまたは細胞レベル以下の酵母細胞膜抽出物もしくはその所望の抗原もしくは他のタンパク質を含有する画分を生産するステップとにより組換え生産されてもよい。
【0094】
本発明の1つの態様では、酵母ビヒクルは、抗原が発現タンパク質産物の送達または移動によって、部分的にまたは完全に、酵母ビヒクルの表面上に発現または提供(細胞外発現)されるように、操作される。本発明のこの態様を遂行する1つの方法は、酵母ビヒクルの表面上に1つ以上のタンパク質を配置するためのスペーサーアームを使用することである。例えば、抗原または他の対象タンパク質と、該抗原または他の対象タンパク質を酵母細胞壁に対して標的化するタンパク質との融合タンパク質を作出するために、スペーサーアームを使用することが可能である。例えば、他のタンパク質を標的化するために使用することができるような1つのタンパク質は、抗原または他のタンパク質が酵母細胞壁に対して標的化されるのを可能にして該抗原または他のタンパク質が酵母の表面に位置するようにする酵母タンパク質(例えば細胞壁タンパク質2(cwp2)、Aga2、Pir4またはFlo1タンパク質)である。酵母タンパク質以外のタンパク質がスペーサーアームに使用されてもよい。しかしながら、いかなるスペーサーアームタンパク質についても、免疫応答をスペーサーアームタンパク質ではなく標的抗原に対して向けさせることが最も望ましい。そのため、他のタンパク質がスペーサーアームに使用される場合、使用されるスペーサーアームタンパク質は、標的抗原に対する免疫応答が圧倒されるほど大きなスペーサーアームタンパク質自体への免疫応答を生じるべきでない。当業者は、標的抗原への免疫応答に比べて小さなスペーサーアームタンパク質への免疫応答を目標としなければならない。スペーサーアームは、必要に応じて、抗原を容易に除去するかまたはプロセシングして酵母から離脱させるのを可能にする切断部位(例えばプロテアーゼ切断部位)を有するように構築されうる。免疫応答の規模を測定する任意の既知の方法(例えば抗体産生アッセイ、細胞溶解アッセイなど)が使用可能であり、該方法は当業者には容易に知ることができる。
【0095】
標的抗原またはその他のタンパク質を酵母表面上に露出させるように位置決めする別の方法は、目標物を酵母細胞壁へつなぎ留めるためにグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)のようなシグナル配列を使用することである。別例として、位置決めは、抗原が細胞壁に結合されたタンパク質(例えばcwp)に結合するように、抗原または他の対象タンパク質を小胞体(ER)内への移動を介して分泌経路へと向けるシグナル配列を付加することにより、行われてもよい。
【0096】
1つの態様では、スペーサーアームタンパク質は酵母タンパク質である。該酵母タンパク質は、約2〜約800アミノ酸の酵母タンパク質で構成されていてよい。1つの実施形態では、該酵母タンパク質は約10〜700アミノ酸である。別の実施形態では、該酵母タンパク質は約40〜600アミノ酸である。本発明の他の実施形態は、少なくとも250アミノ酸、少なくとも300アミノ酸、少なくとも350アミノ酸、少なくとも400アミノ酸、少なくとも450アミノ酸、少なくとも500アミノ酸、少なくとも550アミノ酸、少なくとも600アミノ酸、または少なくとも650アミノ酸である酵母タンパク質を含む。1つの実施形態では、酵母タンパク質の長さは少なくとも450アミノ酸である。
【0097】
酵母タンパク質の使用により、酵母ビヒクル内の融合タンパク質の発現の安定化、発現された融合タンパク質の翻訳後修飾の防止、および、酵母内の特定のコンパートメントへの融合タンパク質の標的化(例えば酵母細胞表面で発現させること)のうち少なくともいずれか1つを行うことができる。酵母分泌経路への送達については、使用する典型的な酵母タンパク質として、限定するものではないが、Aga(例えば、限定するものではないが、Aga1およびAga2のうち少なくともいずれか一方);SUC2(酵母インベルターゼ);α因子シグナルリーダー配列;CPY;細胞壁内への局在化および保持のためのCwp2p;娘細胞形成の初期段階の間に酵母細胞芽体に局在化するためのBUD遺伝子;Flo1p;Pir2p;ならびにPir4p、が挙げられる。
【0098】
他の配列が、例えば、タンパク質を酵母ビヒクルの他の部分に対して、例えば細胞質ゾルまたはミトコンドリアの中に、標的化、保持および安定化のうち少なくともいずれか1つを行うために使用されてもよい。上記の実施形態のうちいずれかに使用することができる適切な酵母タンパク質の例には、限定するものではないが、SEC7;ホスホエノールピルビル酸カルボキシキナーゼPCK1、ホスホグリセロキナーゼPGKおよびトリオースリン酸イソメラーゼTPIの遺伝子産物であって、グルコースおよび細胞質ゾル局在化におけるそれらの抑制性発現のためのもの;細胞を熱処理に曝露すると発現が誘導されてそのタンパク質がより熱安定性となる、熱ショックタンパク質SSA1、SSA3、SSA4、SSC1;ミトコンドリア内への移行のためのミトコンドリアタンパク質CYC1;ACT1、が挙げられる。
【0099】
1つの実施形態では、酵母グリコシル化量の制御は、酵母による、特に表面上での抗原の発現を制御するために使用される。糖部分は嵩高くなる傾向があるため、酵母グリコシル化量は、表面において発現される抗原の免疫原性および抗原性に影響を及ぼす可能性がある。そのため、酵母の表面における糖部分の存在、および標的抗原周辺の三次元空間へのその影響は、本発明による酵母の改変において考慮されるべきである。酵母のグリコシル化量を低減する(または、必要に応じて増加させる)ために、任意の方法を使用することができる。例えば、低グリコシル化であるように選択されてきた酵母突然変異株(例えばmnn1、och1およびmnn9突然変異)を使用することも考えられるし、変異により標的抗原上のグリコシル化アクセプタ配列を除去することも考えられる。別例として、簡略化されたグリコシル化パターンを備えた酵母、例えばピチア属を使用することも考えられる。さらに、グリコシル化を低減または変更する方法を使用して酵母を処理することもできる。
【0100】
本発明の1つの実施形態では、酵母ビヒクル内で抗原または他のタンパク質が組換え発現される代わりに、酵母ビヒクルは、該タンパク質もしくはペプチドとともに、または、抗原としての役割を果たし、かつ/または本発明による免疫調節剤もしくは生体応答調節剤として有用である炭水化物もしくは他の分子とともに、細胞内に充填される。続いて、こうして抗原および他のタンパク質のうち少なくともいずれか一方を細胞内に含有させた酵母ビヒクルは、患者に投与されてもよいし、樹状細胞のような担体に充填されてもよい。ペプチドおよびタンパク質は、当業者に周知の技術、例えば拡散、能動輸送、リポソーム融合、エレクトロポレーション、貧食作用、凍結融解サイクルおよび浴槽式超音波処理によって、本発明の酵母ビヒクル内に直接挿入可能である。ペプチド、タンパク質、炭水化物、または他の分子を直接充填することができる酵母ビヒクルには、無傷の酵母のほか、製造後に抗原および他の作用物質を充填することができるスフェロプラスト、ゴーストまたはサイトプラストが挙げられる。別例として、無傷の酵母に抗原および作用物質のうち少なくともいずれか一方を充填し、次いで該酵母からスフェロプラスト、ゴースト、サイトプラスト、または細胞レベル以下の粒子が調製されてもよい。任意の数の抗原および他の作用物質のうち少なくともいずれか一方を、例えば、微生物またはその一部の充填によって提供されるであろう少なくとも1、2、3、4個または任意の整数から最大で何百もしくは何千個の抗原、および他の作用物質のうち少なくともいずれか一方を、この実施形態の酵母ビヒクルに充填することが可能である。
【0101】
本発明の別の実施形態では、抗原および他の作用物質のうち少なくともいずれか一方は、酵母ビヒクルに物理的に付着される。酵母ビヒクルへの抗原および他の作用物質のうち少なくともいずれか一方の物理的付着は、当分野において適切な任意の方法により、例えば共有結合および非共有結合の結合法により、例えば、限定するものではないが、抗原および他の作用物質のうち少なくともいずれか一方を酵母ビヒクルの外側表面に化学的に架橋すること、または、抗原および他の作用物質のうち少なくともいずれか一方を酵母ビヒクルの外側表面に生物学的に、例えば抗体もしくは他の結合パートナーを用いて連結することにより、遂行可能である。化学的架橋は、例えば、グルタルアルデヒド結合、フォトアフィニティーラベリング、カルボジイミドを用いた処理、ジスルフィド結合を形成することができる化学物質を用いた処理、および当分野において標準的なその他の架橋形成をなす化学物質を用いた処理などの方法によって、達成することができる。別例として、酵母細胞膜の脂質二重層の電荷または細胞壁の組成を変化させる化学物質を酵母ビヒクルと接触させて、酵母の外側表面が、特定の電荷特性を有している抗原および他の作用物質のうち少なくともいずれか一方とより融合または結合しやすくなるようにしてもよい。抗体、結合性ペプチド、可溶性受容体、および他のリガンドのような標的化物質が、融合タンパク質として抗原に組み入れられてもよいし、抗原を酵母ビヒクルに結合させるために他の方法で抗原と関連付けられてもよい。
【0102】
さらに別の実施形態では、酵母ビヒクルと、抗原または他のタンパク質とは、より受動的な非特異的または非共有結合的な結合メカニズムによって、例えばバッファーまたはその他の適切な調合物(例えば混合剤)の中で酵母ビヒクルと抗原または他のタンパク質とを静かに混合することによって、互いに関連付けられる。
【0103】
本発明の1つの実施形態では、酵母ビヒクルおよび抗原または他のタンパク質はいずれも、樹状細胞またはマクロファージのような担体の細胞内に充填されて、本発明の治療用組成物またはワクチンを形成する。
【0104】
1つの実施形態では、無傷の酵母(異種抗原または他のタンパク質の発現の有無に関わらない)は、粉砕されるかまたは酵母細胞壁調製物、酵母膜粒子もしくは酵母フラグメント(すなわち完全体でないもの)を製造する方法で処理され、かついくつかの実施形態では、酵母フラグメントは、免疫応答を増強するための抗原を含む他の組成物(例えばDNAワクチン、タンパク質サブユニットワクチン、殺滅処理または不活性化された病原体)とともに提供されてもよいし、または該組成物とともに投与されてもよい。例えば、酵素処理、化学処理または物理的力(例えば機械的せん断または超音波処理)を使用して、酵母がアジュバントとして使用される部分まで細分化されてもよい。
【0105】
本発明の1つの実施形態では、本発明において有用な酵母ビヒクルには、殺滅処理または不活性化された酵母ビヒクルが含まれる。酵母の殺滅処理または不活性化は、当分野で既知の様々な適切な方法のうちいずれによっても遂行可能である。例えば、酵母の熱不活性化は酵母を不活性化する標準的な方法であり、当業者は、必要に応じて、当分野で既知の標準的な方法によって標的抗原の構造上の変化をモニタリングすることができる。別例として、酵母を不活性化する他の方法、例えば化学的方法、電気的方法、放射線による方法、UV法が使用されてもよい。例えば、Methods of Enzymology,Vol.194,Cold Spring Harbor Publishing(1990)のような標準的な酵母培養の教科書に開示された方法を参照されたい。使用される不活性化戦略のうちいずれも、標的抗原の二次、三次、または四次構造を考慮して、その免疫原性を最適化するような構造を保存するべきである。
【0106】
組換え酵母ビヒクルの生産および該酵母ビヒクルによる抗原および他のタンパク質(例えば本明細書中に記載されるような作用物質)のうち少なくともいずれか一方の発現のための有効な条件には、酵母株の培養が可能な有効な培地が含まれる。有効な培地は、典型的には、同化可能な炭水化物、窒素およびリン酸供給源のほか、適切な塩類、無機質、金属、および他の栄養素、例えばビタミンおよび成長因子、を含む水性培地である。培地は複雑な栄養素を含む場合もあるし、規定の最少培地であってもよい。本発明の酵母株は、様々な容器において、例えば、限定するものではないが、バイオリアクタ、エルレンマイヤーフラスコ、試験管、マイクロタイターディッシュ、およびペトリ皿において培養可能である。培養は、該酵母株に適切な温度、pHおよび酸素含量で行なわれる。そのような培養条件は、当業者の専門知識の範囲内で十分である(例えば、Guthrie et al.(eds.),1991,Methods in Enzymology,vol.194、サンディエゴ所在のアカデミックプレス、を参照されたい)。
【0107】
本発明のいくつかの態様では、酵母は、中性のpH条件下で、具体的には、少なくとも5.5のpHレベルに維持された培地で増殖する、すなわち培地のpHは、pH5.5より下に低下してはならない。他の態様では、酵母は約5.5に維持されたpHレベルで増殖する。当業者には当然のことであるが、培養プロセスには酵母培養の開始だけでなく培養の維持管理も含まれる。酵母の培養は時間を経るにつれて酸性になる(すなわちpHが低下する)ことが知られているので、培養プロセス中のpHレベルをモニタリングするように注意しなければならない。このプロセスは、2008年8月14日に公開された国際公開公報第2008/097863号パンフレットに詳細に記載されている。
【0108】
酵母ビヒクルは、当業者に周知の数多くの技術を使用して、本発明の酵母由来免疫療法組成物または製品、例えば対象者に直接投与されるかまたは最初に担体に充填される調製物へと製剤化されうる。例えば、酵母ビヒクルは凍結乾燥によって乾燥されてもよい。酵母ビヒクルを含む調合物は、製パン作業または醸造作業に使用される酵母について行われるように、酵母を塊または錠剤に詰めることにより調製されてもよい。さらに、酵母ビヒクルは、宿主または宿主細胞によって忍容される等張バッファーのような薬学的に許容可能な賦形剤と混合されてもよい。そのような賦形剤の例には水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、ハンクス溶液、およびその他の水性の生理学的に平衡な塩類溶液が挙げられる。固定油、胡麻油、オレイン酸エチル、またはトリグリセリドのような非水性のビヒクルも使用可能である。他の有用な調合物には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、グリセロールまたはデキストランのような粘度増強剤を含有する懸濁剤が挙げられる。賦形剤はさらに、等張性および化学的安定性を増強する物質のような少量の添加剤も含有することができる。バッファーの例には、リン酸バッファー、重炭酸塩バッファーおよびトリスバッファーが含まれ、保存剤の例には、チメロサール、m‐またはo‐クレゾール、ホルマリンおよびベンジルアルコールが含まれる。標準的な調合物は、液体注射剤、または注射用の懸濁物または溶液として適切な液体中に溶解させることが可能な固形物であってよい。したがって、非液体の調合物中においては、賦形剤は、例えば、デキストロース、ヒト血清アルブミン、および保存剤のうち少なくともいずれか1つを含むことが可能であり、該賦形剤に、投与に先立って滅菌水または生理食塩水を加えることができる。
【0109】
[本発明の免疫療法組成物において有用な抗原]
本発明によれば、用語「抗原」の本明細書中における一般的な使用は:天然に存在するかまたは合成由来のタンパク質の任意の部分(ペプチド、部分的なタンパク質、完全長タンパク質)、細胞組成物(細胞全体、細胞溶解物または破壊された細胞)、生物体(生物全体、溶解物または破壊された細胞)もしくは炭水化物、または他の分子、またはこれらの一部を指す。抗原は、いくつかの実施形態では、免疫系の構成要素(例えばT細胞、抗体)が遭遇する同一または類似の抗原に対する抗原特異的免疫応答(例えば、体液性免疫応答および細胞性免疫応答のうち少なくともいずれか一方)を誘発することができる。用語「癌抗原」は、本明細書中において用語「腫瘍特異抗原」、「腫瘍関連抗原」、「癌関連標的」あるいは「腫瘍関連標的」と互換的に使用可能である。
【0110】
抗原は単一のエピトープと同程度に小さくてもよいし、またそれより大きくてもよく、多数のエピトープを含むことができる。そのため、抗原の大きさは約5〜12アミノ酸ほどの大きさであってもよく(例えばペプチド)、また部分的なタンパク質、マルチマーおよび融合タンパク質を含む完全長タンパク質、キメラタンパク質、またはアゴニスト・タンパク質もしくはペプチドと同程度の大きさであってもよい。さらに、抗原は炭水化物を含むことができる。
【0111】
免疫応答の刺激を指す場合、用語「免疫原」は用語「抗原」の部分集合であり、したがって、場合によっては、用語「抗原」と互換的に使用することができる。免疫原とは、本明細書中で使用されるように、体液性および細胞性のうち少なくともいずれか一方の免疫応答を誘発し(すなわち免疫原性であり)、該免疫原の個体への投与により、該個体の免疫系が遭遇する同一または類似の抗原に対する抗原特異的免疫応答が開始されるようにする抗原について述べている。
【0112】
所与の抗原の「免疫原性ドメイン」とは、動物に投与された時に免疫原として働く少なくとも1つのエピトープを含有する抗原の任意の部分、フラグメントまたはエピトープ(例えばペプチドフラグメントもしくはペプチドサブユニット、または抗体エピトープもしくは他の立体構造依存的エピトープ)であってよい。例えば、単一タンパク質は多数の異なる免疫原性ドメインを含有することができる。免疫原性ドメインは、体液性免疫応答の場合のように、タンパク質内の線状に連なる配列である必要はない。
【0113】
「エピトープ」は、本明細書中では、所与の抗原内の、免疫応答を誘発するのに十分な単一の免疫原性部位として定義される。当業者であれば、T細胞エピトープは大きさおよび組成においてB細胞エピトープとは異なること、またクラスI MHC経路を介して提示されるエピトープはクラスII MHC経路を介して提示されるエピトープとは異なることを認識するであろう。エピトープは線状に連なる配列であってもよいし、立体構造依存的エピトープ(保存された結合領域)であってもよい。
【0114】
本明細書中に記載された免疫療法組成物のうち任意のものにおいて有用な抗原には、免疫応答を誘発することが望ましいあらゆる抗原またはその免疫原性ドメインが含まれるが、特に、そのような抗原に対する治療的免疫応答が個体にとって有益であると思われる任意の抗原またはその免疫原性ドメインが含まれる。抗原としては、限定するものではないが、癌抗原、ウイルス抗原、過剰発現された哺乳動物細胞表面分子、細菌抗原、真菌抗原、原生動物抗原、蠕虫抗原、外部寄生生物抗原、1つ以上の突然変異アミノ酸を有する哺乳動物細胞分子、哺乳動物細胞によって出生前または新生児期に正常に発現されるタンパク質、疫学的作用物質(例えばウイルス)の挿入によって発現が誘導されるタンパク質、遺伝子転座によって発現が誘導されるタンパク質、および調節配列の突然変異によって発現が誘導されるタンパク質、が挙げられる。
【0115】
本発明の1つの態様では、本発明の1つ以上の免疫療法組成物において有用な抗原は任意の癌関連抗原または腫瘍関連抗原を含む。1つの態様では、抗原は、前新生物状態または過形成状態に関連した抗原を含む。抗原はまた、癌に関連していてもよいし、癌の原因であってもよい。そのような抗原は、腫瘍特異抗原、腫瘍関連抗原(TAA)もしくは組織特異抗原、これらのエピトープ、またはこれらのエピトープアゴニストであってもよい。癌抗原には、限定するものではないが、任意の腫瘍または癌、例えば、限定するものではないが、黒色腫、扁平上皮癌、乳癌、頭頸部癌、甲状腺癌、軟部組織肉腫、骨肉腫、精巣癌、前立腺癌、卵巣癌、膀胱癌、皮膚癌、脳腫瘍、血管肉腫(angiosarcoma)、血管肉腫(hemangiosarcoma)、肥満細胞腫、白血病、リンパ腫、原発性肝癌、肺癌、膵臓癌、胃腸の癌(結腸直腸癌を含む)、腎細胞癌、造血性新生物形成およびこれらの転移癌、に由来する抗原が挙げられる。
【0116】
適切な癌抗原には、限定するものではないが、癌胎児性抗原(CEA)およびそのエピトープ、例えばCAP‐1、CAP‐1‐6D(GenBank登録番号M29540またはZaremba et al.,1997,Cancer Research 57:4570−4577)、MART‐1(Kawakami et al,J.Exp.Med.180:347−352,1994)、MAGE‐1(米国特許第5,750,395号明細書)、MAGE‐3、GAGE(米国特許第5,648,226号明細書)、GP‐100(Kawakami et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 91 :6458−6462,1992)、MUC‐1(例えばJerome et al.,J.Immunol.,151 :1654−1662(1993))、MUC‐2、突然変異型Rasオンコプロテイン(例えば米国特許第7,465,454号および同第7,563,447号明細書を参照されたい)正常および突然変異型p53オンコプロテイン(Hollstein et al Nucleic Acids Res.22:3551−3555,1994)、PSMA(前立腺特異的膜抗原;Israeli et al.,Cancer Res.53:227−230,1993)、チロシナーゼ(Kwon et al PNAS 84:7473−7477,1987)、TRP‐1(gp75)(Cohen et al Nucleic Acid Res.18:2807−2808,1990;米国特許第5,840,839号明細書)、NY‐ESO‐1(Chen et al PNAS 94:1914−1918,1997)、TRP‐2(Jackson et al.,EMBOJ,11 :527−535,1992)、TAG72、KSA、CA‐125、PSA(前立腺特異抗原;Xue et al.,The Prostate,30:73−78(1997))、HER‐2/neu/c‐erb/B2(米国特許第5,550,214号明細書)、EGFR(表皮成長因子受容体;Harris et al.,Breast Cancer Res.Treat,29:1−2(1994))、hTERT、p73、B‐RAF(B‐Raf癌癌原遺伝子セリン/トレオニンプロテインキナーゼ;Sithanandam et al.,(1990),Oncogene 5(12):1775−80)、大腸腺腫様ポリポーシス(APC)、Myc、フォンヒッペル・リンドウタンパク質(VHL)、Rb‐1、Rb‐2、アンドロゲン受容体(AR)、Smad4、MDR1(P‐糖タンパク質としても知られる)、Flt‐3、BRCA‐1(乳癌1;米国特許第5,747,282号明細書)、BRCA‐2(乳癌2;米国特許第5,747,282号明細書)、Bcr‐Abl、pax3‐fkhr、ews‐fli‐1、ブラキュリ(Brachyury)(GenBank登録番号NP_003172.1もしくはNM_003181.2;Edwards et al.,1996,Genome Res.6:226−233)、HERV‐H(ヒト内在性レトロウイルスH)、HERV‐K(ヒト内在性レトロウイルスK)、TWIST(GenBank登録番号NM_000474およびNP_000465)、メソテリン(Mesothelin)(Kojima et al.,1995,J.Biol.Chem.270(37):21984−90;Chang and Pastan,1996,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.93(1):136−40)、NGEP(前立腺において発現される新規遺伝子(New Gene Expressed in Prostate);Bera et al.,2004,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.101(9):3059−3064;Cereda et al.,2010,Cancer Immunol.Immunother.59(1):63−71;GenBank登録番号AAT40139もしくはAAT40140)、そのような抗原および組織特異抗原の改変体、そのような抗原のスプライスバリアント、およびそのような抗原のエピトープアゴニストのうち少なくともいずれか1つ、が挙げられる。他の癌抗原は当分野において周知である。他の癌抗原は、米国特許第4,514,506号明細書に開示された方法のような当分野で既知の方法によって、同定、単離、およびクローン化されてもよい。癌抗原はさらに、1つ以上の成長因子および各々のスプライスバリアントを含む場合もある。
【0117】
本発明の1つの態様では、癌抗原は、癌胎児性抗原(CEA)、そのエピトープを含むかもしくはそのエピトープで構成されているポリペプチド、例えばCAP‐1、CAP‐1‐6D(GenBank登録番号M29540またはZaremba et al.,1997,Cancer Research 57:4570−4577)、改変CEA、CEAのスプライスバリアント、そのようなCEAタンパク質のエピトープアゴニスト、およびCEAの少なくとも1つの免疫原性ドメインを含む融合タンパク質またはそのアゴニストエピトープ、のうち少なくともいずれか1つである。1つの態様では、CEAは、2007年3月1日に公開された米国特許出願公開第2007_0048860号明細書に記載の配列番号46で表されるアミノ酸配列であって、配列番号45の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を有する改変CEAに相当する改変CEAである。1つの態様では、抗原は、本明細書中の配列番号2で表わされるアミノ酸配列であって、配列番号1で表わされる核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を有する改変CEAである。
【0118】
本発明の1つの態様では、抗原は突然変異型Rasオンコプロテインである。典型的なRasオンコプロテインは、例えば米国特許第7,465,454号および同第7,563,447号明細書に記載されている。Rasはオンコプロテインの1つの例であり、特定の位置にいくつかの突然変異が生じ、かつ1種類以上の癌の進行に関係していることが知られている。したがって、ある種の癌において突然変異していることが知られている特定の残基を含有するペプチドで構成された融合タンパク質であって、その部位における数個または全ての既知の突然変異を網羅するために各ドメインがその部位に異なる突然変異を含有している融合タンパク質を構築することができる。本発明において有用な融合タンパク質は、1個、2個、または多数のドメインを有し、各ドメインは特定のタンパク質(同一または異なるタンパク質)由来のペプチドで構成され、各ペプチドはエピトープまたは突然変異アミノ酸(該タンパク質中に見出される突然変異アミノ酸など)を含みかつその両側に隣接する少なくとも4つのアミノ酸残基で構成され、該突然変異は特定の疾患(例えば癌)に関係している。例えば、Rasに関しては、12位を含みかつその両側の少なくとも4つのアミノ酸を含む1個、2個、3個またはそれ以上の免疫原性ドメインであって、各ドメインが非突然変異型Rasタンパク質に通常存在するグリシンについて様々な置換(例えば該グリシンのバリン、システイン、アルギニン、アスパラギン酸、セリン、またはアラニンによる置換)を有するドメインを提供することができる。別の例として、13位を含みかつその両側の少なくとも4つのアミノ酸を含む1個、2個、3個またはそれ以上の免疫原性ドメインであって、各ドメインが非突然変異型Rasタンパク質に通常存在するグリシンについて様々な置換(例えば該グリシンのアスパラギン酸による置換)を有するドメインを提供することができる。さらに別の例として、61位を含みかつその両側の少なくとも4つのアミノ酸を含む1個、2個、3個またはそれ以上の免疫原性ドメインであって、各ドメインが非突然変異型Rasタンパク質に通常存在するグルタミンについて様々な置換(例えば該グルタミンのロイシン、アルギニン、またはヒスチジンによる置換)を有するドメインを提供することができる。一例では、癌抗原は、野生型Rasタンパク質に関するアミノ酸部位12、13、59、61または76を包含する、野生型Rasタンパク質の少なくとも5〜9個連続したアミノ酸残基のフラグメントであって、12、13、59、61または76位のアミノ酸残基が野生型Rasタンパク質に対して突然変異しているフラグメントを含む。1つの態様では、融合タンパク質構築物は、別の突然変異型腫瘍抗原(例えば野生型Rasタンパク質配列と比べて少なくとも1つの突然変異を含むRasタンパク質)とインフレームで融合された少なくとも1つのペプチドで構成され、該ペプチドは、(a)野生型Ras(ヒトまたはネズミ科動物のK‐Ras、N‐RasまたはH‐Ras)の少なくとも8〜16位を含むペプチドであって、野生型Rasに関して12位のアミノ酸残基が野生型Rasと比べて突然変異しているペプチド;(b)野生型Rasの少なくとも9〜17位を含むペプチドであって、野生型Rasに関して13位のアミノ酸残基が野生型Rasと比べて突然変異しているペプチド;(c)野生型Rasの少なくとも55〜63位を含むペプチドであって、配列番号3に関して59位のアミノ酸残基が野生型Rasと比べて突然変異しているペプチド;(d)野生型Rasの少なくとも57〜65位を含むペプチドであって、野生型Rasに関して61位のアミノ酸残基が野生型Rasと比べて突然変異しているペプチド;または(e)野生型Rasの少なくとも72〜80位を含むペプチドであって、野生型Rasに関して76位のアミノ酸残基が野生型Rasと比べて突然変異しているペプチド、からなる群から選択される。上記の部位は、ヒトおよびマウスの配列が該タンパク質のこの領域において同一であり、かつK‐Ras、H‐RasおよびN‐Rasはこの領域において同一であるので、ヒトおよびマウスのK‐Ras、N‐RasおよびH‐Rasにおいて同一であることに注目されたい。1つの態様では、本発明における抗原として使用するのに適したRas融合タンパク質は、配列番号4(本明細書中に配列番号3として表わされる核酸配列によりコードされる)、配列番号6(本明細書中に配列番号5として表わされる核酸配列によりコードされる)、配列番号8(本明細書中に配列番号7として表わされる核酸配列によりコードされる)、および配列番号10(本明細書中に配列番号9として表わされる核酸配列によりコードされる)、のうち少なくともいずれか1つから選択される。
【0119】
本発明の1つの態様では、抗原はヒトのブラキュリ(Brachyury)である。ヒト・ブラキュリのアミノ酸配列は本明細書中に配列番号15によって表わされており、該配列は配列番号14によって表わされる核酸配列によってコードされる。
【0120】
本発明の別の態様では、本発明の1つ以上の免疫療法組成物において有用な抗原は、病原体に関連するか、または病原体に起因するかもしくは関連する疾患もしくは病気に関連する、任意の抗原を含む。そのような抗原には、限定するものではないが、ウイルス抗原、真菌抗原、細菌抗原、蠕虫抗原、寄生虫抗原、外部寄生生物抗原、原生動物抗原、またはその他任意の感染性病原体由来の抗原が挙げられる。
【0121】
1つの態様では、抗原は、ウイルス由来、例えば、限定するものではないが、アデノウイルス、アレナウイルス、ブンヤウイルス、コロナウイルス、コクサッキーウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン‐バーウイルス、フラビウイルス、ヘパドナウイルス、肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルス、レンチウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、ミクソウイルス、オルトミクソウイルス、乳頭腫ウイルス、パポバウイルス、パラインフルエンザウイルス、パラミクソウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポックスウイルス、狂犬病ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、レオウイルス、ラブドウイルス、風疹ウイルス、トガウイルス、および水痘ウイルス由来である。他のウイルスには、T‐リンパ好性ウイルス、例えばヒトTリンパ好性ウイルス(HTLV、例えばHTLV‐IおよびHTLV‐II)、ウシ白血病ウイルス(BLVS)およびネコ白血病ウイルス(FLV)が挙げられる。レンチウイルスには、限定するものではないが、ヒト(HIV、例えばHIV‐1またはHIV‐2)、サル(SIV)、ネコ科動物(FIV)およびイヌ科動物(CIV)の免疫不全ウイルスが挙げられる。1つの実施形態では、ウイルス抗原には、非腫瘍原性ウイルス由来の抗原も含まれる。
【0122】
別の態様では、抗原は、以下すなわち:アスペルギルス属、ボルデテラ属(Bordatella)、ブルギア属、カンジダ属、クラミジア属(Chlamydia)、コクシジウム(Coccidia)、クリプトコックス属、イヌ糸状虫属、エシェリヒア属、フランキセラ属、ゴノコックス(Gonococcus)、ヒストプラスマ属、リーシュマニア属、ミコバクテリア属、マイコプラズマ属、ゾウリムシ属、百日咳菌(Pertussis)、プラスモディウム属、肺炎球菌(Pneumococcus)、ニューモシスティス属、リケッチア属、サルモネラ属、赤痢菌属、ブドウ球菌属、連鎖球菌属、トキソプラズマ属、コレラ菌(Vibriocholerae)、およびエルシニア属、から選択される属の感染性病原体に由来する。1つの態様では、感染性病原体は熱帯熱マラリア原虫または三日熱マラリア原虫から選択される。
【0123】
1つの態様では、抗原は以下すなわち:腸内細菌科、球菌科、ビブリオ科、パスツレラ科、マイコプラズマ科、およびリケッチア科、から選択された科の細菌に由来する。1つの態様では、細菌は以下すなわち:シュードモナス属、ボルデテラ属、ミコバクテリア属、ビブリオ属、バチルス属、サルモネラ属、フランキセラ属、ブドウ球菌属、連鎖球菌属、エシェリヒア属、腸球菌属、パスツレラ属、およびエルシニア属から選択された属のものである。1つの態様では、細菌は以下すなわち:緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、鼻疽菌(Pseudomonas mallei)、偽鼻疸菌(Pseudomonas pseudomallei)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、癩菌(Mycobacterium leprae)、野兎病菌(Francisella tularensis)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、サルモネラ菌(Salmonella enteric)、ペスト菌(Yersinia pestis)、大腸菌(Escherichia coli)および気管支敗血症菌(Bordetella bronchiseptica)から選択された生物種に由来する。
【0124】
1つの態様では、抗原は、真菌、例えば、限定するものではないが、サッカロマイセス属菌、アスペルギルス属菌、クリプトコックス属菌、コクシジオイデス属菌、ニューロスポラ属菌、ヒストプラスマ属菌、またはブラストミセス属菌由来の真菌などの真菌に由来する。1つの態様では、真菌は:アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、A・フラバス(A.flavus)、A・ニガー(A.niger)、A・テレウス(A.terreus)、A・ニデュランス(A.nidulans)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、コクシジオイデス・ポサダシ(posadasii)またはクリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)から選択された生物種に由来する。感染病の原因となる最も一般的なアスペルギルス属生物種には、A・フミガーツス、A・フラバス、A・ニガー、A・テレウスおよびA・ニデュランスがあり、例えば、免疫抑制状態にあるかまたはT細胞もしくは食細胞の機能障害を有する患者において見つかる場合がある。A・フミガーツスは、喘息、アスペルギルス腫および侵入性アスペルギルス症に関係している。サン・ジョーキン・バレー熱としても知られるコクシジオイデス症は、コクシジオイデス・イミチスを原因とする真菌性疾患であり、急性呼吸器感染症および慢性肺疾患、または髄膜、硬骨および関節への播種をもたらす可能性がある。例えば非免疫抑制状態または免疫抑制状態の対象者、例えばHIVに感染している対象者における、クリプトコックス症関連症状も、本発明の方法の対象である。
【0125】
いくつかの実施形態では、抗原は融合タンパク質である。本発明の1つの態様では、融合タンパク質は2つ以上の抗原を含むことができる。1つの態様では、融合タンパク質は、2つ以上の免疫原性ドメイン、および1つ以上の抗原の2つ以上のエピトープのうち少なくともいずれか一方を含むことができる。抗原、その免疫原性ドメイン、およびそのエピトープのうち少なくともいずれかの任意の組み合わせが、本発明の組成物における使用について企図される。そのような抗原、その免疫原性ドメイン、およびそのエピトープのうち少なくともいずれか1つを含有する免疫療法組成物は、様々な患者において抗原特異的な免疫処置を提供することができる。例えば、本発明において有用な融合タンパク質は複数のドメイン(2つ以上のドメイン)を有し、各ドメインは特定のタンパク質由来のペプチドまたはポリペプチドで構成され、該ペプチドまたはポリペプチドは、該タンパク質中に見出される特定の疾患または病気に関係している突然変異を生じたアミノ酸を含みかつその両側に隣接する少なくとも4つのアミノ酸残基で構成されている。
【0126】
1つの実施形態では、本発明において有用な酵母由来の免疫療法組成物の成分として使用される融合タンパク質は、酵母における異種抗原の発現に特に有用な構築物を使用して生産される。典型的には、所望の抗原性タンパク質またはペプチドはそのアミノ末端において、(a)酵母ビヒクル中の融合タンパク質の発現を安定させるか、または発現された融合タンパク質の翻訳後修飾を防止する、特殊な合成ペプチド(そのようなペプチドは、例えば、2004年8月12日に公開された米国特許出願公開第2004‐0156858A1号明細書に詳細に記載されており、前記特許文献は全体が参照により本願に組み込まれる);(b)内在性の酵母タンパク質の少なくとも一部であって、いずれかの融合パートナーが酵母内におけるタンパク質発現の安定性を著しく増強し、かつ/または酵母細胞によるタンパク質の翻訳後修飾を防止するもの(そのようなタンパク質も、例えば上述の出願公開第2004‐0156858A1号明細書に詳細に記載されている);および(c)融合タンパク質を酵母の表面で発現させる酵母タンパク質の少なくとも一部(例えば国際公開第2008/019366号パンフレットに詳細に記載されているようなAgaタンパク質)、のうち少なくともいずれか1つに融合される。さらに、本発明は、特にタンパク質の選択および同定に使用するために、抗原をコードする構築物のC末端に融合されるペプチドの使用を含む。そのようなペプチドには、限定するものではないが、任意の合成または天然ペプチド、例えばペプチドタグ(例えば、6×His)またはその他の短いエピトープタグが挙げられる。本発明による抗原のC末端に付着されるペプチドは、上記に議論されたN末端ペプチドの付加と共に使用されてもよいし、N末端ペプチドの付加を伴わずに使用されてもよい。
【0127】
本発明によれば、1つの実施形態では、2つ以上の異なる免疫療法組成物は同一の抗原を標的とすることが好ましい。この実施形態では、同一の抗原またはその免疫原性ドメインは、典型的には各々の免疫療法組成物のベクターによって発現されるが、抗原およびその免疫原性ドメインのうち少なくともいずれか一方が一方または両方の組成物と混合されてもよいし、かつ/または、酵母由来の免疫療法組成物の場合、抗原は酵母ビヒクルに付着されるか、または酵母ビヒクルの内部に担持されるか、またはその両方であってよい。1つの実施形態では、両方の組成物が同じ抗原を標的としてもよいが、各組成物が同じ抗原内の異なるエピトープまたは免疫原性ドメインを標的としてもよい。1つの実施形態において、各免疫療法組成物は、異なる抗原、その免疫原性ドメイン、およびエピトープのうち少なくともいずれか1つを標的とする。例えば、1つの組成物を使用してRasのような1つの抗原を標的とし、かつ別の免疫療法組成物を使用してCEAのような同じ癌または同じ癌のサブセットにおいて同様に発現される別の癌抗原を標的とすることは好都合であるかもしれない。別の実施形態では、同じ種類の少なくとも2つの異なる抗原組成物が存在する、1種類の免疫療法組成物の組み合わせ(例えば、突然変異型Rasまたは突然変異型Rasの複数の免疫原性ドメインを含む融合タンパク質を発現する酵母由来の免疫療法組成物と、CEAまたは本明細書中に記載されるような改変CEAを発現する酵母由来の免疫療法組成物との組み合わせ)が提供される。この組み合わせは、同一または異なる抗原を発現する他の種類の免疫療法組成物(例えばウイルス由来の組成物)と同時に投与される。そのような実施形態の1つの態様では、様々な組み合わせが混合されてよいし、別の態様では、物理的に混合される必要はなく、同じ部位もしくは異なる部位へ、または同じ投与期間内に、同時投与されてもよい。さらに別の実施形態では、2つ以上の異なる免疫療法組成物のうちの一方は1つ以上の抗原を標的とし、他方の免疫療法組成物はアジュバントとして提供されて必ずしも何らかの抗原を標的とする必要はないか(すなわち、該組成物はその抗原非特異的な免疫療法的効果のために使用される)、または必ずしも他方の組成物と同じ癌抗原を標的とする必要はない。より具体的には、本明細書中に記載される各々の免疫療法ベクターは、組成物の有効性にベクター特異的な効果を提供することが示されているので、いくつかの実施形態では、1つのベクターだけが抗原に関連付けられるかまたは抗原を発現してもよく、かつ別のベクターは抗原非特異的な免疫療法的効果を提供するために併用される。
【0128】
[本発明の組成物の使用方法]
本発明の方法では、本明細書中に記載されるような2つ以上の免疫療法組成物が、個体に対して最初に同時投与される。組成物の投与に関して本明細書中で使用されるように、用語「同時(に)」とは、各々の組成物を、特にそのような組成物の初回投与量を、実質的に同時もしくは同じ投与期間内に、または該免疫療法組成物による免疫系のプライミングの初期効果が生じる期間内に(例えば1〜2日以内および好ましくはより短期間に)、投与することを意味する。明確に述べれば、同時投与とは、全ての組成物を正確に同時に投与する必要はなく、むしろ、すべての組成物の投与が、各々の組成物を用いて免疫系を同時にプライミングするために、患者への1つの予定された投薬の範囲内においてなされるべきである(例えば、1つの組成物が最初に投与され、続いて直ちに、または即座に第2の組成物の投与が行われる、など)。組成物が同じ部位に投与される場合のような、いくつかの状況では、組成物は混合剤で提供されてもよいが、同じ部位に投与される場合であっても、同じ投与期間中に各組成物を連続投与することが好ましい場合もある。1つの態様では、組成物は同じ1〜2日の内に投与され、また1つの態様では同じ日に、また1つの態様では同じ12時間の内に、また1つの態様では同じ8時間の内に、また1つの態様では同じ4時間の内に、また1つの態様では同じ1、2または3時間の内に、また1つの態様では同じ1、2、3、4、6、7、8、9、または10分間の内に、投与される。
【0129】
いくつかの状況では、第1または第2の免疫療法組成物のうち一方が他方より高頻度に投与される。例えば、1つの態様では、第1の免疫療法組成物がウイルス由来の免疫療法組成物であり、第2の免疫療法組成物が酵母由来の免疫療法組成物である場合、第2の免疫療法組成物は第1の免疫療法組成物より高頻度に投与される場合がある。例えば、1つの態様では、第1および第2の免疫療法組成物の同時投与の合間に、第2の免疫療法組成物が1回、2回または3回以上追加で投与されてもよい。例えば、ウイルス由来の免疫療法組成物を用いた免疫処置は長時間の抗原提示をもたらすので、この組成物をより短期の頻度で投与することは必要でないかまたは有益でない可能性がある一方、酵母由来の免疫療法組成物は別々の抗原ボーラス投与を提供するので、免疫応答を抑制する恐れを伴わずにより高頻度で投与されうる。例えば、1つの態様では、ウイルス由来の免疫療法組成物は2、3、4週ごとまたはそれ以上の週ごとに投与される一方、酵母由来の免疫療法組成物は1週間間隔で投与され、この間隔は、全治療期間が長くなるにつれてより長い間隔(2、3または4週間以上)に延ばされてもよい。
【0130】
本発明の1つの実施形態では、2つ以上の免疫療法組成物は、同時に、しかし患者の異なる物理的部位へ投与される。例えば、1つの組成物が個体の身体の一方の側の部位に投与され、別の組成物が個体の身体の反対側の部位に投与されてもよい。別例として、1つの組成物が特定の流入領域リンパ節の近くの部位に投与され、別の組成物が異なる流入領域リンパ節の近くの部位に投与されてもよい。別の実施形態では、2つ以上の異なる免疫療法組成物は、同時に、かつ患者の中の同じ部位またはほぼ隣接する部位に投与される。ほぼ隣接する部位とは、第1の組成物が投与されるのと正確に同じ注射部位ではないが、第1の注射部位にごく接近した(隣接した、または近接した)部位である。1つの実施形態では、2つ以上の異なる免疫療法組成物は混合剤の状態で投与される。本発明の1つの態様では、ウイルス由来の免疫療法組成物は皮下、筋肉内、または腫瘍内に投与され、本発明の酵母由来の組成物は皮下投与される。
【0131】
いくつかの実施形態は、投与方法の組み合わせを含むことができる。例えば、酵母由来の免疫療法組成物(第1の組成物)およびウイルス由来の免疫療法組成物(第2の組成物)の同時投与の典型的な事例を使用して、酵母由来の組成物の投与量の一部分(例えば酵母由来の組成物の総投与量の一部)が、ウイルス由来の免疫療法組成物の投与量の一部もしくは全部との混合物として、またはウイルス由来の免疫療法組成物の投与量の一部もしくは全部と同じ部位もしくは隣接する部位に、投与されてもよく、その後、酵母由来の免疫療法組成物の投与量の残りの部分が個体の他の部位へ投与される。同様に、ウイルス由来の組成物の投与量の一部分が、酵母由来の組成物の投与量の一部もしくは全部との混合物として、または酵母由来の組成物の投与量の一部もしくは全部と同じ部位もしくは隣接する部位に、投与されてもよく、その後、ウイルス由来の免疫療法組成物の残りの部分が個体の他の部位へ投与される。1つの実施形態では、個体の異なる部位に分けて投与されることになっているウイルス由来の免疫療法組成物および酵母由来の免疫療法組成物のうち少なくともいずれか一方の単回投与量の範囲内において、ある部分が標的抗原を含有または発現し、かつ他の部分は含有または発現しない場合もある(すなわち、他の部分は空のベクターであってもよいし、共刺激分子、サイトカイン、またはその他の非抗原物質をコードしてもよい)。
【0132】
ワクチンまたは組成物の投与は、全身投与であってもよいし、粘膜投与であってもよく、かつ/または標的部位の所在場所の近位(例えば腫瘍付近)への投与であってもよい。好ましい投与経路は、予防または治療すべき病気の種類、使用される抗原、および標的の細胞集団もしくは組織のうち少なくともいずれか1つに応じて、当業者には明白であろう。様々な許容可能な投与方法には、限定するものではないが、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、結節内(intranodal)投与、冠動脈内投与、動脈内投与(例えば頚動脈内)、皮下投与、経皮的送達、気管内投与、皮下投与、関節内投与、脳室内投与、吸入(例えばエアロゾル)、頭蓋内、脊髄内、眼内、耳内、鼻腔内、経口、経肺投与、カテーテル移植、および組織内への直接注入が挙げられる。1つの態様では、投与経路には:静脈内、腹腔内、皮下、皮内、結節内、筋肉内、経皮的、吸入、鼻腔内、経口、眼内、関節内、頭蓋内、および脊髄内が含まれる。非経口送達には、皮内、筋肉内、腹腔内、胸膜腔内、肺内、静脈内、皮下、心房(atrial)カテーテルおよび静脈(venal)カテーテルの経路が挙げられる。耳内送達には点耳剤が挙げられる。鼻腔内送達には点鼻剤または鼻腔内注入が挙げられる。また、眼内送達には点眼剤が挙げられる。エアロゾル(吸入)送達は、当分野で標準的な方法(例えば、Stribling et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 189:11277−11281,1992を参照されたい。この文献は参照により全体が本願に組み込まれる)を使用して実施されてもよい。粘膜の免疫を調節する他の投与経路はウイルス感染の治療に有用である。そのような経路には、気管支経路、皮内経路、筋肉内経路、鼻腔内経路、その他の吸入経路、直腸経路、皮下経路、局所経路、経皮的経路、膣内および尿道内経路が挙げられる。1つの態様では、本発明の免疫療法剤組成物は皮下投与される。好ましい投与方法には、限定するものではないが、静脈内、腹腔内、皮下、皮内、結節内、筋肉内、経皮または腫瘍内が挙げられる。投与量は少なくとも一回投与される。その後の投与量は、適応があれば投与可能であり、一般的に利用される。
【0133】
より具体的には、1つの実施形態では、本発明の2つ以上の異なる免疫療法組成物の最初の同時投与に続いて、1つの免疫療法組成物、および1つの実施形態では両方またはすべての免疫療法組成物の、ブースター投与が行われてもよい。ブースター投与(ブースト)は、任意の適切な期間をおいて投与可能であり、典型的には1、2、3、4、5、6、7、または8週間おいて投与される。2つ以上の免疫療法組成物のブースター投与は、必要に応じて同時投与されても別々に投与されてもよいが、最も典型的にはプライミング投与のように同時に投与される。プライミング投与と同様に、投与方法はプライミング投与に関して上述されるような部位および投与戦略の任意の組み合わせを使用することが可能であるが、プライミング投与と同じ投与プロトコールに限定はされない。例えば、プライミング投与が2つの異なる部位に投与される場合(各部位に1つの免疫療法組成物)、ブースター投与は、その同じ2つの部位へ投与されてもよいし、1つの部位または隣接しあう部位へ投与されてもよいし、2つの異なる部位へ投与されてもよく、上述の部分分け戦略が使用されてもよい。
【0134】
さらに、ブースター投与はプライミング投与と厳密に同じ方法で製剤化される必要はない。例えば、プライミング投与における免疫療法組成物がそれぞれ抗原およびその免疫原性ドメインのうち少なくともいずれか一方を提供した場合、ブースター投与においては、両方の免疫療法組成物が再び抗原およびその免疫原性ドメインのうち少なくともいずれか一方を提供してもよいし、免疫療法組成物のうち一方のみが抗原およびその免疫原性ドメインのうち少なくともいずれか一方を提供し、かつ他方の免疫療法組成物が空のベクターであるか、非抗原物質(例えば免疫刺激性分子またはその他の作用物質)を提供してもよい。本明細書中に記載されるような、組成物のその他の可能な改変、例えば、使用されるウイルスベクターの改変または変更(例えば、プライミング組成物にワクシニアウイルス、およびブースト組成物に鶏痘ウイルスを使用する、またはその逆)、酵母ビヒクルの改変または変更(例えば、酵母菌株の変更、酵母生産方法の変更、酵母が抗原を提供する方法の変更、例えば、発現か混合物か、など)、投与量、組成物のうち1つ以上によって提供される抗原またはドメイン、および、免疫刺激性分子または他の作用物質の包含または排除もしくは置換も、ブースト段階において企図される。
【0135】
用語「単位投与量」とは、該用語が本発明の組成物の接種材料に関するものであるように、哺乳動物用のまとまった投与量として適切な、物理的に別々の単位であって、各単位が、所要の希釈剤を伴って所望の免疫原性効果を生じると算定された予め規定された量の免疫療法組成物を含有している単位を指す。本発明の接種材料の新規な単位投与量に関する仕様は、特定の免疫療法組成物の独自の特性および達成すべき特定の免疫学的効果によって決まり、かつ依存している。個体、好ましくはヒトに本発明の免疫療法組成物を提供する際に、投与される組換えベクターの投与量は、その個体の年齢、体重、身長、性別、全般的な健康状態、かつての病歴、疾患の進行、全身腫瘍組織量、病原体負荷などのような要因に応じて決められることになる。
【0136】
接種材料は、一般に、忍容可能な(許容可能な)希釈剤、例えば生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水またはその他の生理学的に忍容可能な希釈剤などの溶液として調製されて水性の医薬組成物を形成する。
【0137】
本発明の組換えウイルス由来の免疫療法組成物に関しては、一般に、被接種者に約10〜約1010プラーク形成単位の範囲の組換えウイルス投与量を提供することが望ましいが、より低用量または高用量、例えば、限定するものではないが、10、10、10、10、10、10、10、10 1010、1011プラーク形成単位またはそれ以上が投与されてもよい。個体に組換えウイルスベクターを投与する方法の例には、限定するものではないが、ex vivoにおける組換えウイルスへの腫瘍細胞の曝露、またはウイルスの静脈内投与、皮下投与(S.C.)、皮内投与(I.D.)、もしくは筋肉内投与(I.M.)による罹患宿主への組換えベクターの注入が挙げられる。別例として、組換えウイルスベクターまたは組換えウイルスベクターの組み合わせは、癌病変部もしくは腫瘍の中への直接注入または薬学的に許容可能な担体に含めての局所適用により、局所投与されてもよい。投与すべき複数の共刺激分子をコードする核酸配列と併せて1つ以上の抗原の核酸配列を担持する組換えベクターの量は、ウイルス粒子の力価に基づく。投与すべき抗原の好ましい範囲は、哺乳動物(好ましくはヒト)1個体当たり10〜1010個のウイルス粒子であるが、より低用量または高用量、例えば、限定するものではないが、10、10、10、10、10、10、10、10 1010、1011プラーク形成単位またはそれ以上が投与されてもよい。
【0138】
本発明の酵母由来の免疫療法組成物に関しては、適切な単回投与量は、一般に、適切な期間にわたって1回以上投与された時、抗原特異的な免疫応答を誘発するのに有効な量で、患者の身体の所与の細胞種類、組織、または領域に酵母ビヒクルおよび抗原(含まれる場合)を有効に提供することができる投与量である。例えば、1つの実施形態では、本発明の酵母ビヒクルの単回投与量は、組成物を投与される生物体の体重1キログラム当たり約1×10〜約5×10個の酵母細胞等量である。より好ましくは、本発明の酵母ビヒクルの単回投与量は、1投与量あたり(すなわち生物1個体当たり)約0.1Y.U.(細胞1×10個)〜約100Y.U.(細胞1×10個)、例えば細胞0.1×10個の増分で任意の中間的な用量(すなわち1.1×10、1.2×10、1.3×10...)である。好ましい投与量には1Y.U.〜40Y.U.投与量が含まれ、より好ましくは10Y.U.〜40Y.U.である。1つの実施形態では、該投与量は、個体の異なる部位に、ただし同じ投与期間中に投与される。例えば、40Y.U.投与量が、1つの投与期間中に個体の4つの異なる部位に10Y.U.投与量を注入することにより、投与されてもよい。
【0139】
免疫すべき哺乳動物が既に疾患(例えば、癌もしくは転移癌、または慢性の病原体感染)に罹患している場合、ワクチンは、本明細書中に記載された異なる免疫療法組成物の同時投与に加えて、その疾患を治療するために使用される他の治療処置(例えば、化学療法、放射線照射療法、小分子療法、サイトカイン療法、抗ウイルス療法、生体応答調節剤療法、手術など)と併せて投与されてもよい。
【0140】
本発明の免疫療法組成物の使用方法は、個体において免疫応答を誘発して、該個体が疾患もしくは病気から、または疾患もしくは病気に起因する症状から保護されるようにする。本明細書中で使用されるように、「疾患から保護される」という言葉は、疾患を予防すること、疾患の少なくとも1つの症状を予防すること、疾患の発病を遅延させること、疾患の1つ以上の症状を低減すること、疾患の発生を低減すること、および、疾患の重症度を低減することのうち少なくともいずれか1つを指す。癌に関しては、本発明の免疫療法組成物の同時投与は、好ましくは以下すなわち:腫瘍増殖の予防、疾患の発病の遅延、全身腫瘍組織量の低減、腫瘍増殖の低減、生存期間の延長、臓器機能の改善、または個体の健康状態の改善、のうち1つ以上をもたらす。感染症および他の疾患に関しては、免疫療法組成物の同時投与は、好ましくは以下すなわち:疾患または病気の予防、感染予防、疾患の発病の遅延、生存期間の延長、病原体負荷の低減(例えば、ウイルス力価の低減)、個体における感染に起因する少なくとも1つの症状の低減、感染または疾患に起因する臓器損傷または器官系損傷の低減、および臓器または器官系の機能の改善、のうち1つ以上をもたらす。
【0141】
本発明の治療法では、本発明の免疫療法組成物の投与は「予防的」または「治療的」のいずれであってもよい。予防的に提供される場合、本発明の免疫療法組成物は疾患または病気の任意の症状よりも前に提供される。免疫療法組成物のこの予防的投与は、任意のその後生じる疾患を予防もしくは改善し、または発病時期を遅延させる役割を果たす。治療的に提供される場合、免疫療法組成物は、疾患の症状の発現時または発現後に提供される。用語「疾患」は、動物の正常な健康状態からの何らかの乖離を指し、疾患の症状が存在する状況、および乖離(例えば腫瘍増殖、感染など)は生じているが症状は未だ現われていない状態を含んでいる。
【0142】
本発明の任意の実施形態において、本発明の免疫療法組成物の個体への投与に加えて、追加の外生的な免疫調節剤もしくは免疫刺激性分子、化学療法薬、抗生物質、抗真菌薬、抗ウイルス薬、癌治療剤、サイトカイン、および他の治療剤、治療用組成物、または治療プロトコールが、単独または組み合わせで、治療すべき病気に応じて投与されてもよい。本発明の免疫療法組成物と併用可能な適切な生体応答調節剤には、限定するものではないが、サイトカイン、ケモカイン、ホルモン、脂質誘導体、ペプチド、タンパク質、多糖類、小分子薬剤、抗体およびその抗原結合フラグメント(例えば、限定するものではないが、抗サイトカイン抗体、抗サイトカイン受容体抗体、抗ケモカイン抗体)、ビタミン、ポリヌクレオチド、核酸結合部分、アプタマー、ならびに増殖調節因子が挙げられる。外から追加される作用物質および生体応答調節剤の例には、限定するものではないが、Flt‐3L、シクロホスファミド、シスプラチン、ガンシクロビル、アンホテリシンB、5フルオロウラシル、インターロイキン2(IL‐2)、インターロイキン4(IL‐4)、IL‐6、インターロイキン10(IL‐10)、インターロイキン12(IL‐12)、I型インターフェロン(IFN‐αを含む)またはI型インターフェロンもしくはその受容体のアゴニストもしくはアンタゴニスト;II型インターフェロン(IFN‐γを含む)またはII型インターフェロンもしくはその受容体のアゴニストもしくはアンタゴニスト;IIIインターフェロン(IFN‐λを含む)またはIII型インターフェロンもしくはその受容体のアゴニストもしくはアンタゴニスト;腫瘍壊死因子α(TNF‐α);形質転換増殖因子β(TGF‐β);抗CD40;CD40L;抗CTLA‐4抗体(例えば、アネルギーT細胞を放出するため);T細胞共刺激物質(例えば抗CD137、抗CD28、抗CD40);アレムツズマブ(例えばCamPath(登録商標))、デニロイキンジフチトクス(例えばONTAK(R));抗CD4;抗CD25;抗PD‐1、抗PD‐L1、抗PD‐L2;FOXP3を阻害する(例えば、CD4+/CD25+制御性T細胞の活性/殺滅を無効にする)作用物質;Flt3リガンド、イミキモド(Aldara(登録商標))、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM‐CSF);顆粒球コロニー刺激因子(G‐CSF)、サルグラモスチム(Leukine(R));限定するものではないがプロラクチンおよび成長ホルモンなどのホルモン;トール様受容体(TLR)アゴニスト、例えば、限定するものではないがTLR‐2アゴニスト、TLR‐4アゴニスト、TLR‐7アゴニスト、およびTLR‐9アゴニスト;TLRアンタゴニスト、例えば、限定するものではないがTLR‐2アンタゴニスト、TLR‐4アンタゴニスト、TLR‐7アンタゴニスト、およびTLR‐9アンタゴニスト;抗炎症薬および免疫調節剤、例えば、限定するものではないが、COX‐2阻害剤(例えばセレコキシブ、NSAIDS)、グルココルチコイド、スタチン、ならびにサリドマイドおよびその類似化合物、例えばIMiDTM(サリドマイドの構造的かつ機能的な類似化合物(例えばREVLIMID(登録商標)(レナリドマイド)、ACTIMID(登録商標)(ポマリドマイド));炎症誘発性の作用物質、例えば真菌もしくは細菌の成分または任意の炎症誘発性サイトカインもしくはケモカイン;免疫療法ワクチン、例えば、限定するものではないが、ウイルス由来のワクチン、細菌由来のワクチン、または抗体由来のワクチン;ならびに、任意の他の免疫調節剤、免疫強化物質、抗炎症薬、および炎症誘発性物質のうち少なくともいずれか1つ、が挙げられる。
【0143】
これらの外生的な作用物質および治療法は、本発明の免疫療法組成物と同時に施用されてもよいし、異なる時点で施用されてもよい。例えば、化学療法と併せて個体に提供される場合、免疫療法組成物の有効性を最大限にするために、化学療法剤の投薬の間の「休日」に免疫療法組成物を投与することが望ましい場合がある。
【0144】
本発明の組成物および治療ワクチンは、特定の疾患または病気、例えば病原体による感染症から対象者を保護するのに有用な任意の他の化合物、そのような感染症の何らかの症状を治療または改善する任意の化合物、および癌に対する任意の化合物または治療法、をさらに含むことができる。
【0145】
本発明の方法では、組成物および治療用組成物は、動物、例えば任意の脊椎動物、特に脊椎動物の哺乳綱に属する任意のもの、例えば、限定するものではないが、霊長類、げっ歯類、家畜および家庭のペットに投与されうる。家畜には、食用の哺乳動物、または有用な農産物を生産する哺乳動物(例えば羊毛生産用のヒツジ)が挙げられる。保護すべき哺乳動物には、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマおよびブタが挙げられる。
【0146】
[本発明において有用な一般的技術]
本発明の実施には、別途指摘のないかぎり、当業者に良く知られた、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、核酸化学、および免疫学の従来技術を使用することになろう。そのような技術は文献に十分に説明されており、該文献は例えば、Methods of Enzymology,Vol.194,Guthrie et al.,eds.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1990);Biology and activities of yeasts,Skinner,et al.,eds.,Academic Press(1980);Methods in yeast genetics:a laboratory course manual,Rose et al.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1990);The Yeast Saccharomyces:Cell Cycle and Cell Biology,Pringle et al.,eds.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1997);The Yeast Saccharomyces:Gene Expression,Jones et al.,eds.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1993);The Yeast Saccharomyces:Genome Dynamics,Protein Synthesis,and Energetics,Broach et al.,eds.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1992);Molecular Cloning:A Laboratory Manual,second edition(Sambrook et al.,1989)およびMolecular Cloning:A Laboratory Manual,third edition(Sambrook and Russel,2001)(本明細書中では合わせて「サムブルック(Sambrook)」と呼ぶ);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel et al.,eds.,1987、2001年までの追補を含む);PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullis et al.,eds.,1994);Harlow and Lane(1988)Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Publications,New York;Harlow and Lane(1999)Using Antibodies:A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY(本明細書中では合わせて「ハーロウ・アンド・レーン(Harlow and Lane)」と呼ぶ);Beaucage et al.eds.,Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry John Wiley and Sons,Inc.,New York,2000);Casarett and Doull’s Toxicology The Basic Science of Poisons,C.Klaassen,ed.,6th edition(2001)、ならびにVaccines,S.Plotkin and W.Orenstein,eds.,3rd edition(1999)である。
【0147】
[一般的定義]
「免疫治療組成物」とは、対象者において少なくとも1つの治療的利益を達成するのに十分な免疫応答を誘発する組成物である。
【0148】
一般に、用語「生物学的に活性な」とは、化合物が、in vivo(すなわち天然の生理的環境)またはin vitro(すなわち実験室条件下)において計測または観察されるような、細胞または生物体の代謝またはその他のプロセスに影響を及ぼす少なくとも1つの検出可能な活性を有することを示す。従って、タンパク質の生物学的に活性な部分またはフラグメントまたはドメインとは、例えば、完全長タンパク質の生物学的活性を有するために十分な大きさの部分、フラグメントまたはドメインを指す。そのような活性は、種類としてはすべてのタンパク質の活性ではなくそのタンパク質に特有の活性である。
【0149】
「個体」または「対象者」または「患者」(これらの用語は互換的に使用可能である)は、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトである。哺乳動物には、例えば、限定するものではないが、家畜、スポーツ動物、ペット、霊長類、マウスおよびラットが挙げられる。
【0150】
本発明によれば、用語「調節する」は、「制御する、調節する(regulate)」と互換的に使用可能であり、概して特定の活性のアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションを意味する。本明細書中で使用されるように、用語「アップレギュレートする」は、概して、特定の活性に関して、誘発、開始、増加、増大、ブースト、改善、増強、増幅、促進、または提供、のうちいずれかを述べるために使用されうる。同様に、用語「ダウンレギュレートする」は、概して、特定の活性に関して、減少、低減、抑制、回復、縮小、低下、阻止、または防止、のうちいずれかを述べるために使用されうる。
【0151】
本発明における単離タンパク質または単離ポリペプチドへの言及は、完全長タンパク質、融合タンパク質、またはそのようなタンパク質の任意のフラグメント、ドメイン、立体構造依存的エピトープ、もしくはホモログを含む。より具体的には、単離タンパク質は、本発明によれば、その本来の環境から取り出された(すなわち人為操作を受けた)タンパク質(ポリペプチドまたはペプチドを含む)であり、例えば、精製タンパク質、部分精製タンパク質、組換え生産されたタンパク質、および合成的に生産されたタンパク質を含むことができる。そのため、「単離(された)」は、そのタンパク質が精製された程度を反映しない。好ましくは、本発明の単離タンパク質は組換え生産される。本発明によれば、「改変」および「突然変異」という用語は、特に本明細書中に記載されたタンパク質またはその一部分のアミノ酸配列(または核酸配列)への改変/突然変異に関して、互換的に使用されうる。
【0152】
本明細書中で使用されるように、用語「ホモログ」は、天然に存在するタンパク質またはペプチド(すなわち「原型」または「野生型」タンパク質)に対する軽微な改変により、天然に存在するタンパク質またはペプチドとは異なっているが、天然に存在する形態の基本的なタンパク質および側鎖の構造を維持しているタンパク質またはペプチドを指すために使用される。そのような変更には、限定するものではないが、1つもしくは少数のアミノ酸側鎖の変更;1つもしくは少数のアミノ酸の変更であって、例えば欠失(例えばタンパク質もしくはペプチドの短縮型)挿入および置換のうち少なくともいずれか1つ;1つもしくは少数の原子の立体化学的変更;かつ/または軽微な誘導体化であって、例えば、限定するものではないが、メチル化、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、ミリストイル化、プレニル化、パルミチン酸化(palmitation)、アミド化、およびグリコシルホスファチジルイノシトールの付加のうち少なくともいずれか1つ、が挙げられる。ホモログは、天然に存在するタンパク質またはペプチドと比較して、増強された、減少した、またはほぼ同様の特性を有することができる。ホモログは、タンパク質のアゴニストまたはタンパク質のアンタゴニストを含むことができる。ホモログは、タンパク質の生産のための当分野で周知の技術、例えば、限定するものではないが、単離された天然に存在するタンパク質の直接改変、直接的なタンパク質合成、または、例えば無作為もしくは部位特異的な遺伝子突然変異誘発を行うための古典的DNA技術もしくは組換えDNA技術を用いたタンパク質をコードする核酸配列の改変、を使用して生産可能である。
【0153】
所与のタンパク質のホモログは、基準となるタンパク質のアミノ酸配列に対して、少なくとも約45%、または少なくとも約50%、または少なくとも約55%、または少なくとも約60%、または少なくとも約65%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%同一、または少なくとも約95%同一、または少なくとも約96%同一、または少なくとも約97%同一、または少なくとも約98%同一、または少なくとも約99%同一(または45%〜99%の全ての整数値において任意の同一率)のアミノ酸配列を含むこともできるし、該アミノ酸配列から本質的に構成されることもできるし、該アミノ酸配列で構成されることもできる。1つの実施形態では、ホモログは、基準となるタンパク質の天然に存在するアミノ酸配列に対して、100%未満同一、約99%未満同一、約98%未満同一、約97%未満同一、約96%未満同一、約95%未満同一など、1%間隔で約70%未満同一までのアミノ酸配列を含むこともできるし、該アミノ酸配列から本質的に構成されることもできるし、該アミノ酸配列で構成されることもできる。
【0154】
本明細書中で使用されるように、別段の定めがない限り、同一率(%)への言及は、(1)アミノ酸の検索にblastp、および核酸の検索にblastnを標準デフォルトパラメータとともに使用するBLAST 2.0 Basic BLASTホモロジー検索であって、クエリ配列はデフォルト設定により低複雑性領域についてフィルタリングされるホモロジー検索(Altschul,S.F.,Madden,T.L.,Schaeaeffer,A.A.,Zhang,J.,Zhang,Z.,Miller,W.and Lipman,D.J.(1997)“Gapped BLAST and PSI−BLAST:a new generation of protein database search programs.”Nucleic Acids Res.25:3389−3402に記載。この文献は参照により全体が本願に組み込まれる);(2)BLAST2アラインメント(後述のパラメータを使用);および(3)標準デフォルトパラメータを用いたPSI‐BLAST(位置特異的繰り返しBLAST(Position−Specific Iterated BLAST)、のうち少なくともいずれか1つを使用して行なわれる、ホモロジー評価を指す。BLAST 2.0 Basic BLASTとBLAST 2との間の標準パラメータの若干の違いにより、2つの特異的配列がBLAST 2プログラムを使用して有意なホモロジーを有すると認識される一方で、該配列のうちの一方をクエリ配列として使用するBLAST 2.0 Basic BLASTで実施された検索が、他方の配列を上位マッチに同定しない場合もあることが知られている。加えて、PSI‐BLASTは、自動化された簡便なバージョンの「プロファイル」検索を提供するが、これは配列ホモログを捜す高感度な方法である。このプログラムは最初にギャップ有りBLASTデータベース検索を行なう。PSI‐BLASTプログラムは、回答された任意の有意なアラインメントからの情報を使用して位置特異的なスコアマトリクスを構築し、これが次回のデータベース探索のためのクエリ配列を交換する。したがって、当然ながら、これらのプログラムのうちのいずれか1つを使用することにより同一率(%)を決定可能である。
【0155】
2つの特異的配列は、Tatusova and Madden,(1999),“Blast 2 sequences − a new tool for comparing protein and nucleotide sequences”,FEMS Microbiol Lett.174:247−250(この文献は参照により全体が本願に組み込まれる)に記載されるようにして、BLAST 2を使用して互いにアラインすることができる。BLAST 2配列アラインメントは、その2つの配列の間で、得られるアラインメントにおけるギャップ(欠失および挿入)の導入を可能にするGapped BLAST検索(BLAST 2.0)を実施するように、BLAST 2.0アルゴリズムを使用してblastpまたはblastnにおいて実施される。本明細書中では、明瞭にするために、BLAST 2配列アラインメントは以下のような標準デフォルトパラメータを使用して行なわれる。
blastnについては、0 BLOSUM62マトリクスを使用し:
マッチに対する報酬=1
ミスマッチに対するペナルティ=−2
オープンギャップペナルティ(5)および伸長ギャップペナルティ(2)
ギャップx_ドロップオフ(50)期待値(10)ワードサイズ(11)フィルタ(on)。
blastpについては、0 BLOSUM62マトリクスを使用し:
オープンギャップペナルティ(11)および伸長ギャップペナルティ(1)
ギャップx_ドロップオフ(50)期待値(10)ワードサイズ(3)フィルタ(on)。
【0156】
本明細書中で使用されるように、「アゴニスト」とは、受容体もしくはリガンドに結合するか、または別の分子と相互作用するかもしくは化学系内や生体系内で相互作用して、応答を生成もしくは誘起する、任意の化合物または作用物質、例えば、限定するものではないが小分子、タンパク質、ペプチド、抗体、核酸結合物質などであり、天然に存在する物質の作用を模倣する作用物質(例えばタンパク質またはペプチドのアゴニスト)が挙げられる。「アンタゴニスト」とは、アゴニストまたは天然に存在する物質の作用を阻止または抑制または低減する、任意の化合物または作用物質、例えば、限定するものではないが小分子、タンパク質、ペプチド、抗体、核酸結合物質などである。
【0157】
単離(された)核酸分子とは、その本来の環境から取り出された(すなわち人為操作を受けた)核酸分子であり、その本来の環境とは自然界において該核酸分子が見出されるゲノムまたは染色体である。よって、「単離(された)」とは、核酸分子が精製されている程度を必ずしも反映するものではなく、その分子が、自然界において核酸分子が見出されるゲノム全体または染色体全体を含んでいないことを示している。単離核酸分子は遺伝子を含むことができる。遺伝子を含む単離核酸分子は、そのような遺伝子を含む染色体のフラグメントではなく、該遺伝子に関連したコード領域および調節領域を備えているが同じ染色体上に本来見出される別の遺伝子は備えていない。単離核酸分子はさらに、特定の核酸配列であって、自然界において通常は該特定の核酸配列に隣接していない追加の核酸(つまり異種配列)が隣接している(すなわち該特定の配列の5’末端および3’末端のうち少なくともいずれか一方にある)核酸配列を含むこともできる。単離核酸分子には、DNA、RNA(例えばmRNA)、またはDNAもしくはRNAのいずれかの誘導体(例えばcDNA)が含まれうる。「核酸分子」という言葉は主として物理的な核酸分子を指し、「核酸配列」という言葉は主として核酸分子上のヌクレオチドの配列を指すが、この2つの言葉は、特にタンパク質またはタンパク質のドメインをコードすることができる核酸分子または核酸配列に関しては、互換的に使用可能である。用語「ポリヌクレオチド」も、「核酸分子」または「核酸配列」という用語と互換的に使用可能である。
【0158】
組換え核酸分子とは、本明細書中に記載された1つ以上の任意のタンパク質をコードする少なくとも1つの任意の核酸配列を、トランスフェクトすべき細胞において該核酸分子の発現を有効に調節することができる少なくとも1つの任意の転写制御配列に、作動可能に連結された状態で含むことができる分子である。「核酸分子」という言葉は主として物理的な核酸分子を指し、「核酸配列」という言葉は主として核酸分子上のヌクレオチドの配列を指すが、この2つの言葉は、特にタンパク質をコードすることができる核酸分子または核酸配列に関しては、互換的に使用可能である。加えて、「組換え分子」という言葉は主として、転写制御配列に作動可能に連結された核酸分子を指すが、動物に投与される「核酸分子」という言葉と互換的に使用可能である。
【0159】
組換え核酸分子は組換えベクターを含み、組換えベクターは、本発明の融合タンパク質をコードする単離核酸分子に作動可能に連結され、該融合タンパク質の組換え製造を可能にし、かつ、本発明に従って該核酸分子を宿主細胞へ送達する能力を有する、任意の核酸配列、典型的には異種配列である。そのようなベクターは、該ベクターに挿入される単離核酸分子に自然状態では隣接することのない核酸配列を含有することができる。該ベクターは、RNAまたはDNAのいずれであってもよく、原核生物由来または真核生物由来のいずれであってもよく、本発明では好ましくはウイルスまたはプラスミドである。組換えベクターは、核酸分子のクローニング、配列決定、およびその他の操作のうち少なくともいずれか1つにおいて使用可能であり、そのような分子の(例えば、DNA組成物またはウイルスベクター由来の組成物としての)送達において使用可能である。組換えベクターは、核酸分子の発現において使用されることが好ましく、発現ベクターと呼ぶこともできる。好ましい組換えベクターは、トランスフェクトされた宿主細胞中で発現される能力を有する。
【0160】
本発明の組換え分子において、核酸分子は、調節配列、例えば転写制御配列、翻訳制御配列、複製開始点、およびその他の調節配列であって宿主細胞との適合性を有しかつ本発明の核酸分子の発現を制御する調節配列を含有している発現ベクターに、作動可能に連結される。特に、本発明の組換え分子には、1つ以上の発現制御配列に作動可能に連結された核酸分子が含まれる。「作動可能に連結された」という言葉は、核酸分子を、宿主細胞内へトランスフェクトされた(すなわち形質転換、形質導入またはトランスフェクトされた)時に該分子が発現されるように、発現制御配列に連結することを指す。
【0161】
本発明によれば、用語「トランスフェクション」は、外生的な核酸分子(すなわち組換え核酸分子)を細胞内に挿入することができる任意の方法を指すために使用される。用語「形質転換」は、そのような用語が藻類、細菌および酵母のような微生物細胞の中への核酸分子の導入を指すために使用される場合、用語「トランスフェクション」と互換的に使用可能である。微生物系においては、用語「形質転換」は、該微生物体が外生的な核酸を獲得することによる遺伝性変化について述べるために使用され、用語「トランスフェクション」と本質的に同義である。したがって、トランスフェクション技術には、限定するものではないが、形質転換、細胞の化学処理、粒子衝突、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、吸着、感染およびプロトプラスト融合が挙げられる。
【0162】
次の実験結果は例証を目的として提供されており、本発明の範囲を限定することが意図されたものではない。
実施例
次の材料および方法が、以下の実施例において使用された。
【0163】
[マウスおよび腫瘍細胞株]
リンパ球のin vitro刺激については、雌のC57BL/6(H‐2b)マウスを米国国立癌研究所(National Cancer Institute)フレデリック癌研究開発センター(Frederick Cancer Research and Development Facility)(米国メリーランド州フレデリック)から入手した。ヒトCEA遺伝子(CEA‐Tg)の発現についてホモ接合の1つがいのC57BL/6マウスを、ジョン・シャイヴリー博士(Dr.John Shively)(米国カリフォルニア州ドアルテ、シティ・オブ・ホープ)より寄贈いただいた。CEA発現についてホモ接合であることは、マウス尾部DNAのPCR分析(Greiner et al.,Cancer Res 2002 Dec 1;62(23):6944−51)によって確認した。6〜8週齢の雌マウスをすべての実験に使用し、AAALACガイドラインに従って病原体の無い条件下でマイクロアイソレータケージに収容した。実証研究はNIHの所内動物実験委員会(NIH Intramural Animal Care and Use Committee)の承認の下で行なった。標的腫瘍細胞株EL‐4(H‐2b、胸腺腫)はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)(米国バージニア州マナッサス)から入手した。ネズミ科動物の肺腺癌腫瘍細胞LL/2 6は、チャンダン・グーハ博士(Dr.Chandan Guha)(米国ニューヨーク州ニューヨークのアルバート・アインシュタイン医学大学(Albert Einstein College of Medicine))から寄贈された。ヒトCEAを発現するLL/2ネズミ科動物肺癌細胞(LL2‐CEA)は、先述(Robbins et al.,Cancer Res 1991 Jul 15;51(14):3657−62)のようにして、CEA cDNAを用いたレトロウイルス形質導入によって生成した。細胞は、完全培地(10%ウシ胎児血清、2mMグルタミン、100ユニット/mlペニシリン、および100μg/mlストレプトマイシンが補足されたDMEM)中で維持した。
【0164】
[ワクチン構築物]
ネズミ科動物のB7‐1、ICAM‐1およびLFA‐3遺伝子ならびにヒトCEA遺伝子を含有している組換えワクシニア(rV)および組換え鶏痘(rF)ウイルス(rV/F‐CEA/TRICOM)については、既に記載がある(Hodge et al.,Cancer Res 1999 Nov 15;59(22):5800−7;およびGrosenbach et al.,Cancer Res 2001 Jun 1;61(11):4497−505)。ネズミ科動物のGM‐CSF発現rFウイルス(rFGM‐CSF)については既に記載がある(Kass et al.,Cancer Res 2001 Jan 1;61(1):206−14)。完全長CEAタンパク質を発現する組換えサッカロマイセス・セレビシエ構築物(酵母‐CEA)については既に記載がある(Bernstein et al.,Vaccine 2008 Jan 24;26(4):509−21)。酵母‐CEAは、以前に記載されているようにして本研究のために生産および加熱殺滅した(Haller et al.,Vaccine 2007 Feb 9;25(8):1452−63)。
【0165】
[ワクチン接種スケジュール]
血清中サイトカイン分析については、CEA‐Tgマウス(n=2)を、先述のようにして(Wansley et al.,Clin Cancer Res 2008 Jul 1;14(13):4316−25)、1×10pfuのrVCEA/TRICOMまたは動物1匹あたり4YUの酵母‐CEA(1YU=10個の酵母粒子)を用いてワクチン接種した。他のすべての研究(rV/F‐CEA/TRICOMワクチン群)について、CEA‐Tgマウスを、第0日に、1×10pfuのrV‐CEA/TRICOMを1×10pfuのrF‐GM‐CSFと混合したものを用いてプライミングし、7日ごとに、1×10pfuのrF‐CEA/TRICOMを1×10pfuのrF‐GM‐CSFと混合したものを用いてブーストした。残りの実施例および本発明の他所については、このワクチンプロトコールは概して「rV/F‐CEA/TRICOM」として示されることになる。酵母‐CEAワクチン群では、CEA‐Tgマウスを7日ごとに酵母‐CEA(マウス1匹あたり4YU)を用いてワクチン接種した。rV/F‐CEA/TRICOMワクチンおよび酵母‐CEAワクチンの組み合わせを接種されるマウスは、背側右側部に1×10pfuのrV‐CEA/TRICOMを皮下投与すること、ならびに、下肢内側および肩甲骨にマウス1匹あたり4YUの酵母‐CEAを皮下送達することによりプライミングした。複数部位にわたる酵母‐CEA投薬の分離については既に記述があり(上述のWansley,2008)、ここでは、マウスの複数の流入領域リンパ節を標的とするように、酵母‐CEAワクチンだけでなくrV/F‐CEA/TRICOMをも分離するために採用されている。組み合わせ群のマウスは、1×10pfuのrF‐CEA/TRICOMおよび酵母‐CEA(マウス1匹あたり4YU)を用いて残りの研究期間について1週間間隔でブーストした。
【0166】
[サイトカイン発現プロファイル]
血清中サイトカイン分析については、ワクチン接種したマウス(上記のワクチン接種スケジュールを参照)を、ワクチン接種後0日、2日および4日に採血し、血清を単離した。サイトカイン発現は、リンコ・ダイアグノシス・サービシズ(Linco Diagnostic Services)(米国ミズーリ州セントチャールズ)によるTh1/Th2および炎症誘発性サイトカインパネルを使用して分析した。rV/F‐CEA/TRICOMまたは酵母‐CEAでワクチン接種されたマウス(n=5)由来のCD8+T細胞によって分泌されるサイトカインを計測するために、CD8+T細胞をバルク培養し、以前に記述されたようにして(Wansley et al.,2008、上述)、CEA‐572〜579ペプチド(GIQNSVSA、CEA‐572と指定、また本明細書中に配列番号11で示す)またはCEA‐526〜533ペプチド(EAQNTTYL、CEA‐526と指定、また本明細書中に配列番号12で示す)(10μg/ml)の存在下で再刺激した。サイトカインレベルは、マウス炎症性サイトカインサイトメトリックビーズアレイ(Inflammatory Cytokine Cytometric Bead Array)キットおよびマウスTh1/Th2サイトカインサイトメトリックビーズアレイ(Th1/Th2 Cytokine Cytometric Bead Array)キット(BDバイオサイエンシズ(BD Biosciences)、米国カリフォルニア州サンホセ)を使用して、製造業者の指示に従って計測した。
【0167】
[T細胞受容体(TCR)プロファイル]
RNAは、RNeasy(登録商標)ミニキット(キアゲン社(Qiagen,Inc.)、米国カリフォルニア州バレンシア)を使用して製造業者の指示に従って単離した。その後、RNAを、RT‐PCRのためのInvitrogen(登録商標)Superscript(登録商標)ファーストストランド合成システム(Invitrogen SuperscriptR First−Strand Synthesis System for RT−PCR)(インビトロジェン(Invitrogen)、米国カリフォルニア州カールスバード8)を用いて、製造業者の指示に従ってRT‐PCR反応に使用した。VαおよびVβ遺伝子を、19個のVα遺伝子および24個のVβ遺伝子について以前に記述されたプライマーおよび条件(Pannetier et al.,Proc Natl Acad Sci USA 1993 May 1;90(9):4319−23;Arden et al.,Nature 1985 Aug 29−Sep 4;316(6031):783−7)を使用して増幅した。PCR生成物を、Agilent(登録商標)2100バイオアナライザー(Agilent 2100 Bioanalyzer)およびAgilent(登録商標)DNA1000試薬キット(Agilent DNA 1000 Reagent Kit)(アジレント・テクノロジー(Agilent Technologies)、米国カリフォルニア州サンタクララ)を使用して製造業者の指示に従ってオンチップ電気泳動により分析した。Agilent(登録商標)2100エキスパート・ソフトウェア(Agilent 2100 Expert Software)(バージョンB.02.06SI418[パッチ01])を、PCR生成物のサイズ(bp)および量(nmol/L)を同定するために使用した。各試料について存在する各遺伝子の量を合計し、各遺伝子について、合計のTCR VαまたはVβレパートリーの割合(%)を計算した。
【0168】
マウスTCR Vβ2、3、4、5.1および5.2、6、7、8.1および8.2、8.3、9、10、11、12、13、14ならびに17に特異的なモノクローナル抗体で構成されているマウスVβTCRスクリーニングパネル(BDファーミンジェン(BD Pharmingen)、米国カリフォルニア州サンホセ)を使用して、FACScan(登録商標)サイトメータ(ベクトン・ディキンソン(Becton Dickinson))を用いたフローサイトメトリーによりタンパク質レベルでTCR Vβ発現を同定した。
【0169】
[cDNAオリゴアレイ]
CEA‐Tgマウスを、未処理とするか、またはrV/F‐CEA/TRICOMもしくは酵母‐CEAを用いた1週間間隔で3回のワクチン接種を行うかのいずれかとした。第33日において、脾細胞を採取し、RNAを単離した。T細胞およびB細胞活性化、ケモカインおよびケモカインレセプター、ならびに一般的なサイトカインのcDNAオリゴアレイ(SAバイオサイエンシズ(SABiosciences)、米国メリーランド州フレデリック)を使用して、遺伝子発現の変化を調査した。遺伝子は、製造業者の推奨に従って、その標準化した強度比が>2または<0.5(2倍切り捨て)である場合にそれぞれアップレギュレートまたはダウンレギュレートされたとみなした。
【0170】
[CEA特異的CTL細胞株およびin vitroアッセイ]
rV/F‐CEA/TRICOMまたは酵母‐CEAでワクチン接種されたマウスから生じたCEA‐526特異的およびCEA‐572特異的なT細胞株を、CEA‐526またはCEA‐572ペプチド(1μg/ml)およびIL‐2(10U/ml)を含んだ培養中で新鮮な照射処理されたAPCとともに維持した。このT細胞株が111In標識された標的を溶解する能力を計測するために、様々な比率のT細胞を、標識された標的とともに3連として96ウェルU底プレートで37℃および5%COにてインキュベートした。ある研究では、抗MHCクラスI遮断抗体(H2D、BDファーミンジェン)を使用して、TCRを介した細胞毒性とNK様の細胞毒性とを識別した。上清中の放射活性は、ガンマカウンタ(Corba Autogamma、パッカード・インスツルメンツ(Packard Instruments)、米国イリノイ州ダウナーズグローヴ)を使用して計測した。腫瘍溶解率(%)を以下のようにして計算した。すなわち、腫瘍溶解率(%)=[(実験のcpm−自然発生のcpm)/(最大のcpm−自然発生のcpm)]×100である。CEA特異的CTL株の親和性を評価するために、既述(Hodge et al,2005,J Immunol 174(10):5994−6004)のようにして殺腫瘍活性を試験した。データを平均化し、Δ%の特異的溶解としてグラフ化した。各実験内の群を標準化するために、データをペプチド濃度に対する最大溶解率(%)としても表した。最後に、標準化したデータの自然対数をペプチド濃度に対してプロットした。各T細胞集団の親和性を、最大の標的溶解の50%をもたらすペプチド濃度の負の対数として定義し(Hodge et al.,2005、上述およびDerby et al,2001,J Immunol 166(3):1690−1697)、nMで表した。HIV‐gag‐390〜398ペプチド(SQVTNPANI、HIV‐gagペプチドと指定、また本明細書中では配列番号13で示す)を、本実験において陰性対照として使用した。CEA‐526およびCEA‐572に特異的なMHCクラスIペプチド四量体を、ベックマン・コールター(Beckman Coulter)(米国カリフォルニア州フラートン)から入手した。表示する場合は、CTL活性を、ウンダーリヒ(Wunderlich)らの記載(1994,“Induction and measurement of cytotoxic T lymphocyte activity.”In:Coligan J,Kruisbeek A,Margulies D,Shevach E,Strober W(eds)Current Protocols in Immunology,Wiley,Hoboken,NJ)のように、溶解ユニット(LU)に変換した。
【0171】
[腫瘍治療法研究]
LL2‐CEA腫瘍に関する治療法研究については、6〜8週齢の雌のCEA‐Tgマウスに体積100μl中3×10個のLL2‐CEA細胞を用いて尾静脈注射を行った。腫瘍移植の4日後、マウスを上述のようにしてプライミングし、次いでブーストした。肺転移を計数するために、屠殺したマウスの肺を膨らませて墨で染色し、フェケテ(Fekete)の溶液で固定した(Wexler,J Natl Cancer Inst 1966 Apr;36(4):641−5)。
【0172】
[統計解析]
マッキントッシュ(登録商標)用のGraphPad Prismバージョン4.0a(グラフパッド・ソフトウェア(GraphPad Software)、米国カリフォルニア州サンディエゴ)を使用して、in vivoデータに対する統計解析を実施した。ノンパラメトリックのマン・ホイットニー両側検定を、第45日におけるマウス1匹当たりの平均腫瘍数について実施した。生存が≦1週間と見なされた、第45日時点で>10個の肺腫瘍小結節を担持するマウスについて、ログランク(マンテル・コックス)検定を実施した。値はすべて95%信頼区間で計算し、p値≦0.05を有意とみなした。
【0173】
実施例1
以下の実施例は、後にCEA特異的なT細胞応答に影響を及ぼす可能性のあるサイトカインおよびケモカインの宿主先天性免疫応答の誘導における免疫療法ベクターの役割を示す。
【0174】
この実験では、後にCEA特異的なT細胞応答に影響を及ぼす可能性のあるサイトカインおよびケモカインの宿主先天性免疫応答の誘導における免疫療法ベクターの役割を調査した。簡潔に述べると、CEA‐Tgマウス(n=2)をrV‐CEA/TRICOMまたは酵母‐CEAでワクチン接種した。血清を0日、2日および4日目に採取し、プールし、Th1/Th2および炎症誘発性サイトカインのパネルを使用してサイトカインのパネルについて分析した。図1に示されるように、rV‐CEA/TRICOM(塗り潰された正方形)は、MIP1α、RANTES、GM‐CSF、およびIL‐12p70のレベルが高くIL‐5レベルは低い、Th1型のサイトカインプロファイルを誘導する(それぞれ図1A、B、C、およびE)。対照的に、酵母‐CEAワクチン接種は、高レベルのIL‐6(図1D)、低レベルのMIP1α、RANTES、IL‐13、およびIL‐5(それぞれ図1A、B、F、およびI)を備えたTh1/Th2混合型のサイトカインプロファイルを誘導する。データは各日におけるサイトカインのpg/mlとして示されている。これらのデータは、rV‐CEA/TRICOMを用いたワクチン接種と酵母‐CEAを用いたワクチン接種とでは異なるサイトカインの発現を誘導することを示し、各々のワクチンプラットフォームによって異なるT細胞集団が誘導されることを示している。
【0175】
実施例2
以下の実施例は、rV/F‐CEA/TRICOMを用いたワクチン接種と酵母‐CEAを用いたワクチン接種とでは別個のTCRレパートリーが誘導されることを実証する。
【0176】
この実験では、いずれのプラットフォームを用いたワクチン接種も特徴のあるTCRレパートリーを備えたCD8+T細胞集団を誘導するかどうかを測定することを目指した。CEA‐Tgマウス(1群あたりn=5)を、上記の材料および方法の節で述べたようなrV/F‐CEA/TRICOMまたは酵母‐CEAのいずれかを用いてワクチン接種した。未処理のマウスを陰性対照とした(図2Aおよび2D)。ワクチン接種されたマウス由来の脾臓を、ワクチン接種の14日後に採取してプールした。19個のVα特異的プライマーおよび24個のVβ特異的プライマーを使用してRT‐PCR反応を実施した。その後、PCR生成物を分析し、各遺伝子についてTCRレパートリー全体のうちの割合(%)を計算した(図2;星印は、一方のワクチンで接種されたマウス由来のT細胞において他方と比較して特異な発現を示す遺伝子を示す)。未処理マウスおよびrV/F‐CEA/TRICOMまたは酵母‐CEAでワクチン接種されたマウス由来の脾細胞のTCR Vαプロファイルは、各群が別個のTCR Vα発現プロファイルを有することを示している(図2A〜C)。19個のVα遺伝子のうちの12個の発現は、両ワクチンによって誘導されたT細胞の間で類似していたが、7個のVα遺伝子は、一方のワクチン由来のT細胞集団について、他方と比較して特有である(図2BおよびC)。これらの同じ動物由来のVβレパートリーの比較から、少数の例外を除いて、Vβプロファイルも2群のマウスの中で異なることが示された(図2D〜E)。24個のVβ遺伝子のうち14個の発現は、両ワクチンによって誘導されたT細胞の間で類似していたが、ワクチンはまた特有のVβ遺伝子も誘導する。図2EおよびFに示されるように、10個のVβ遺伝子が、rV/F‐CEA/TRICOMまたは酵母‐CEAのいずれかでワクチン接種されたCEA‐Tgマウス由来のT細胞による特有の発現を示した(Vβ1、Vβ4、Vβ5.1、Vβ5.2、Vβ5.3、Vβ8.1、Vβ8.3、Vβ9、Vβ10、およびVβ20)。これらのデータは、未処理マウスおよびrV/F‐CEA/TRICOMまたは酵母‐CEAでワクチン接種されたマウス由来のT細胞のVαおよびVβ TCRレパートリーが、TCR遺伝子発現の共通パターンおよび特有パターンの両方を有することを示す。しかしながら、これらの違いが、異なるベクターに感染した細胞によるCEA抗原の異なるプロセシングおよび提示に起因するのか、ベクター自体に起因するのかは未知である。2つのベクタープラットフォームを用いてワクチン接種されたCEA‐Tgマウスから作られた2つの異なるCEAエピトープに特異的なT細胞株のTCRレパートリーについて、以下の実施例において述べる。
【0177】
実施例3
以下の実施例は、rV/F‐CEA/TRICOMまたは酵母‐CEAを用いたワクチン接種がベクターおよび抗原に応じた共通および特有の両方の遺伝子発現を誘導することを示す。
【0178】
脾細胞の遺伝子発現に対するベクターおよび抗原の両方の影響を調べるために、cDNAオリゴアレイを使用して、rV/F‐CEA/TRICOMまたは酵母‐CEAを用いたワクチン接種により誘導されたT細胞集団をさらに特徴解析した。rV/FCEA/TRICOMまたは酵母‐CEAを用いてワクチン接種されたCEA‐Tgマウスの脾細胞による、T細胞およびB細胞の活性化、ケモカイン、ケモカインレセプター、ならびにサイトカインに関与する252種の遺伝子の発現を調査した。表1は、各アレイについて、rV/FCEA/TRICOMおよび酵母‐CEAの両方が同じ遺伝子の発現の変化を、例えば、大多数がサイトカインシグナル伝達系に関与する26個の遺伝子の少なくとも2倍のアップレギュレーションを誘導することを示している。さらに、いずれのワクチンも、免疫細胞の走化性に関与するロイコトリエンレセプターであるLtb4r2、分泌型リン酸化タンパク質1(Spp1、またはオステオポンチン)のようなT細胞の増殖に関与する遺伝子、および腫瘍抑制因子Inhaをアップレギュレートした。同時に、各ワクチンプラットフォームはいくつかの遺伝子の発現において特有の変化を誘導する(表1、太字)。酵母‐CEAは、Ccl12、Cxcl9、Ccr9のような免疫細胞の走化性に関与する遺伝子をダウンレギュレートする一方、rV/F‐CEA/TRICOMはこれらの遺伝子いずれの発現も変化させない。この実験の結果は、2つのワクチンプラットフォームが遺伝子発現において共通および特有の両方の変化を誘導することを示している。
【0179】
【表1】

実施例4
以下の実施例は、rV/F‐CEA/TRICOMおよび酵母‐CEAが機能的に異なるT細胞集団を誘導することを実証する。
【0180】
該ワクチンによって誘導されたT細胞集団の抗原特異的応答を測定するために、2つの異なるCEAエピトープ(CEA‐572およびCEA‐526)のうちいずれかを用いたin vitro刺激の後に、ワクチン接種された動物由来のT細胞によって生産されるサイトカインを調べた。図3Aは、ドメインIIIのA3ループ上の、別々の重なり合わないCEA‐526およびCEA‐572エピトープを示しているCEAタンパク質を図示している。
【0181】
図3を参照すると、CEA‐Tgマウス(n=5)を第0日にrV‐CEA/TRICOMでプライミングし(塗り潰された棒グラフ)、第7日および第14日にrFCEA/TRICOMでブーストした。一方、CEA‐Tgマウス(n=5)を、酵母‐CEAを用いて第0日にプライミングし、第7日および第14日にブーストした(白抜きの棒グラフ)。33日目にマウスを屠殺し、脾臓をプールし、(図3B)CEA‐526ペプチドまたは(図3C)CEA‐572ペプチドのいずれかとともに7日間バルク培養した。リンパ球をCEA特異的なペプチドまたはVSVNペプチド対照で24時間再刺激した後、IL‐2、IL‐10、TNF‐α、IFN‐γ、IL‐5およびIL‐4を、サイトカインビーズアレイによって計測した(pg/ml/L×10個細胞)。データはすべてVSVNペプチド対照に対して標準化した。
【0182】
2つの異なるCEAエピトープが、ワクチン接種された動物由来のT細胞から異なるレベルのサイトカイン産生を誘導することが観察された。rV/F‐CEA/TRICOMワクチン接種の後には、酵母‐CEAと比べると、CEA‐526に応答してより高レベルのTNF‐αが分泌されるが(図3B、塗り潰された棒グラフ)、酵母‐CEAワクチン接種は、T細胞がCEA‐572ペプチドで刺激されると著しく高レベルのTNF‐αを産生する(図3C、白抜きの棒グラフ)。さらに、酵母‐CEAワクチン接種由来のT細胞は、rV/F‐CEA/TRICOMワクチン接種由来のT細胞と比較して、CEA‐526およびCEA‐572ペプチドで刺激された時に、より高レベルのIL‐2を誘導する(図3Bおよび3C、白抜きの棒グラフ)。同様に、rV/F‐CEA/TRICOMを用いたワクチン接種の後、T細胞は、酵母‐CEAワクチン接種と比較して、CEA‐526およびCEA‐572ペプチドに応答して、より高レベルのIFN‐γを誘導する(図3Bおよび3C、塗り潰された棒グラフ)。
【0183】
データはさらに、ワクチン接種された動物由来のT細胞が単一のCEAエピトープに応答して異なるレベルの様々なサイトカインを分泌することも示す。酵母‐CEAでワクチン接種されたマウス由来のT細胞は、CEA‐572エピトープに応答してIL‐4、IL‐10、TNF‐α、IFN‐γ、IL‐5、およびIL‐2を分泌する(図3C、白抜きの棒グラフ)。他方、rV/F‐CEA/TRICOMでワクチン接種されたマウス由来のT細胞は、CEA‐572ペプチドに応答して、酵母‐CEAと比較して著しく高レベルのIFN‐γを分泌し、かつCEA‐572エピトープに応答してより低レベルのIL‐10およびTNF‐αを分泌する(図3C、塗り潰された棒グラフ)。これらの結果は、rV/F‐CEA/TRICOMまたは酵母‐CEAを用いたワクチン接種によって誘導されたT細胞集団が、抗原特異的かつ機能的に別個であることを示している。
【0184】
実施例5
以下の実施例は、rV/F‐CEA/TRICOMでワクチン接種されたマウスから生じたT細胞株と、酵母‐CEAでワクチン接種されたマウスから生じたT細胞株とでは、14種の異なるTCRレパートリーおよび機能的親和性を有することを実証する。
【0185】
rV/F‐CEA/TRICOMまたは酵母‐CEAのいずれかでワクチン接種されたマウス由来のT細胞の機能における潜在的な差異をさらに調査するために、CEA‐526またはCEA‐572ペプチドのいずれかに特異的なT細胞株を、[材料および方法]に記載したようにワクチン接種されたCEA‐Tgマウスから作出した。簡潔に述べると、CEA‐Tgマウス(1群当たりn=5)を、上述のようにrV/F‐CEA/TRICOMまたは酵母‐CEAでワクチン接種した。最後のワクチン接種の2週間後に、脾臓を採取してプールし、脾細胞をCEA‐526またはCEA‐572ペプチドとともに7日間バルク培養した。リンパ球を新鮮なペプチド、IL‐2で再刺激し、7日ごとにAPCを照射処理し、in vitro実験のために培養物中に維持した。TCRプロファイル解析を18回の刺激サイクルの後に実施した。
【0186】
4つの細胞株のVαTCRプロファイルは、該T細胞集団が共通のVαTCRレパートリーおよび別個のVαTCRレパートリーを有することを示している。図4を参照すると、(図4A)CEA‐526ペプチドおよび(図4B)CEA‐572ペプチドの存在下で維持されたrV/F‐CEA/TRICOMのT細胞株のVαTCRレパートリー(黒色棒グラフ)が示されている。図4はさらに、(図4C)CEA‐526ペプチドおよび(図4D)CEA‐572ペプチドの存在下で維持された酵母‐CEAのT細胞株のVαTCRレパートリー(白色棒グラフ)も示している。結果は、Vα鎖TCRレパートリー全体に対する割合(%)として表されている。星印は、一方のワクチンを接種されたマウス由来のT細胞において他方と比較して特有の発現を示す31個の遺伝子を示す。
【0187】
CEA‐526エピトープで刺激された、ワクチン接種されたマウス由来のT細胞では、T細胞は、19個のVα遺伝子のうち16個の共通な発現と、3個のVα遺伝子の特有な発現を示した(図4AおよびC)。CEA‐572エピトープで刺激された、ワクチン接種されたマウス由来のT細胞では、T細胞は、19個のVα遺伝子のうち15個の共通な発現と、4個のVα遺伝子の特有な発現を示した(図4BおよびD)。VβTCRプロファイルを分析すると同様の結果が見られた(データは示さない)。さらに、該T細胞株の選択されたVβTCR遺伝子の発現が、市販のモノクローナル抗体を使用したフローサイトメトリーによって確認された(データは示さない)。これらのデータは、rV/F‐CEA/TRICOMまたは酵母‐CEAのいずれかでワクチン接種されたマウス由来のT細胞集団がベクター特異的でもあり抗原特異的でもあるというさらなる証拠を提供する。
【0188】
いずれかのベクター由来のT細胞の間の機能的な差異を特徴解析するために、rV/FCEA/TRICOMから生成されたT細胞のCEA特異的な細胞溶解活性を、酵母‐CEAワクチン接種から生成されたものと比較した。T細胞株培養物の純度は、CD8、CD4、およびNK細胞を同定するためのモノクローナル抗体を用いた細胞表面染色とその後のフローサイトメトリーによって確認した(データは示さない)。さらに、CEA‐526またはCEA‐572に特異的なMHCクラスI‐ペプチド四量体を使用する四量体染色により、該T細胞株についてペプチド特異性が確認された(データは示さない)。
【0189】
簡潔に述べると、rV/F‐CEA/TRICOMワクチン接種から生成され、(図5A)CEA‐526ペプチドおよび(図5C)CEA‐572ペプチドに特異的なT細胞株を、記載の比率のペプチドパルスした111In標識EL‐4細胞標的とともに4時間インキュベートした。酵母‐CEAワクチン接種から生成され、(図5B)CEA‐526ペプチドおよび(図5D)CEA‐572ペプチドに特異的なT細胞株も、記載の比率の111In標識EL‐4細胞標的とともに4時間インキュベートした。図5を参照すると、CEA‐572およびCEA‐526ペプチドでパルスした111In標識EL‐4細胞は、実線でつながれた黒塗りの正方形によって表わされ、VSVNP(陰性対照)でパルスした111In標識EL‐4細胞は、点線でつながれた白円によって表わされている。T細胞の親和性を測定するために、(図5B、挿入図)rV/F‐CEA/TRICOM(黒塗りの正方形)および酵母‐CEA(白円)由来のCEA‐526特異的なT細胞株を、1μM〜0μMの範囲の様々な濃度のCEA‐526(またはHIV‐gag対照)ペプチドの存在下で111In標識EL‐4細胞とともに4時間インキュベートした。rV/F‐CEA/TRICOM(図5E)または酵母‐CEA(図5F)でワクチン接種されたマウスから生成された、CEA‐572エピトープに特異的なT細胞株も、111In標識LL2‐CEAとともに細胞溶解T細胞アッセイに使用し、様々な比率でLL2(陰性対照)腫瘍標的に対して標準化した。バーは、3連ウェルからの標準誤差を示す。
【0190】
図5Aおよび5Bは、rV/F‐CEA/TRICOMから生成されたCEA‐526ペプチド特異的なT細胞株が、酵母‐CEAワクチン接種から生成されたT細胞株と比較してより高い溶解活性を有することを示す。CEA‐572エピトープに特異的なT細胞株はいずれも同水準の細胞溶解活性を示した(図5Cおよび5D)。図5Bの挿入図は、rV/F‐CEA/TRICOMワクチン接種から生成されたCEA‐526特異的なT細胞株が酵母‐CEAワクチン接種から生成されたCEA‐526特異的なT細胞株より23.3倍高い親和性を有していたことを示す。
【0191】
CEA‐572特異的なT細胞株も、111In標識LL2‐CEA細胞を標的とするCTLアッセイに使用した。rV/F‐CEA/TRICOMまたは酵母‐CEAのいずれかでワクチン接種されたマウス由来のCEA‐572特異的なT細胞を、このアッセイに先立って20週間培養した。いずれのT細胞株もLL2‐CEA標的を溶解し、溶解は、T細胞とエフェクター細胞(LL2‐CEA標的)との比率が低下するにつれて低下する(図5Eおよび5F)。これらの結果は、いずれのT細胞株もCEAを発現する細胞を溶解することができるが、LL2‐CEA細胞の溶解をLL2細胞の溶解に対して標準化すると、酵母‐CEAでワクチン接種されたマウス由来のT細胞株(図5F)は、rV/FCEA/TRICOMでワクチン接種されたマウス由来のT細胞株(図5E)と比較してより高レベルの活性を有していたことを示している。
【0192】
図5Eおよび5Fで観察された細胞溶解がTCRを介したものであってNK細胞の活性によるものではないことを確認するために、MHCクラスI分子に対して特異的なモノクローナル遮断抗体を用いたCTL実験を、LL2‐CEA腫瘍標的を用いて実施し、対照のLL2標的細胞に対して標準化し、MHCクラスI遮断抗体の存在が細胞溶解を無効にしたことを示した。NK細胞を介した細胞溶解の欠如を、YAK1標的を使用したCTLにおいてさらに確認したが、このことは、MHCクラス遮断抗体の存在が様々なT細胞株によるYAK1細胞の溶解を無効にすることを見出した。これらの結果を合わせると、同じCEAエピトープを標的とする異なるベクターから作出されたT細胞株の溶解活性はTCRを介するものであり、細胞溶解のレベルは、ペプチドパルスした標的細胞を標的とする場合は類似しているが、CEAを発現する腫瘍標的を溶解する能力については異なっていることが示される。さらに、rV/F‐CEA/TRICOMで誘導されたT細胞株の親和性は、酵母‐CEAワクチン接種から作出されたT細胞株の親和性より高い可能性がある。これらの結果はさらに、rV‐CEA/TRICOMまたは酵母‐CEAでワクチン接種されたマウス由来のT細胞集団をプラットフォーム特異的であると特徴づけている。
【0193】
実施例6
以下の実施例は、rV/F‐CEA/TRICOMおよび酵母‐CEAを組み合わせることが、ネズミ科動物の同所性肺転移モデルにおける効果的な抗腫瘍療法であることを実証する。
【0194】
研究は、2つのワクチンの同時投与がいずれか一方のワクチンプラットフォームを単独で用いたワクチン接種より優れた抗腫瘍活性を生じるかどうかを判断するために行なわれた。簡潔に述べると、CEA‐TgマウスにLL2‐CEA腫瘍細胞を静脈注射した。4日目に、rV/F‐CEA/TRICOM(n=10)、酵母‐CEA(n=14)、またはrV/F‐CEA/TRICOMおよび酵母‐CEA(n=10)でマウスをプライミングし、対照群(n=17)は未処理とした。マウスを実験期間中7日ごとにブーストした。rV/F‐CEA/TRICOM群はrV/F‐CEA/TRICOMでブーストした。酵母‐CEA群は酵母‐CEAのみでブーストした。組み合わせ群はrV/F‐CEA/TRICOMおよび酵母‐CEAでブーストした。これらの研究については、rV/F‐CEA/TRICOMを背側右側部に皮下注射し、1YUの酵母‐CEAを各々の下肢内側および肩甲骨に皮下注射して、複数の流入領域リンパ節を標的とした。45日目にマウスを屠殺し、肺を採取し、染色し、固定した。図6に示されるデータは、2つの別個の実験(白抜きの記号と塗り潰された記号で図示)由来のマウス1匹当たりの肺転移の数を表わす。バーは、マウス1匹当たりの転移の平均数p=0.015を、未処理のマウスとrV/F‐CEA/TRICOMおよび酵母‐CEAの組み合わせ群とを比較して示す。
【0195】
未処理のマウスは、マウス1匹当たり平均10.84個の腫瘍を有していた(+2.41)。rV/FCEA/TRICOMでワクチン接種されたマウスはマウス1匹当たり平均7.50個の転移を有し(+2.02)、酵母‐CEAでワクチン接種されたマウスはマウス1匹当たり平均9.71個の転移を有していた(+1.22)。しかしながら、rV/F‐CEA/TRICOMおよび酵母‐CEAの組み合わせでワクチン接種されたマウスはマウス1匹当たり2.80個の転移を有し(+0.77)、この組み合わせ群は、未処理の対照と比較して転移の数が有意に低い唯一の群であった(p=0.015)。また、未処理群、rV/F‐CEA/TRICOM群、および酵母‐CEA群についてのマウス1匹当たりの転移の最大数はそれぞれ36、24および18であったが、組み合わせ群における転移の最大数は7であった。さらに、ログランク検定(45日目において>9個の肺腫瘍小結節を担持するマウス;生存は<1週間と思われる)から、未処理のマウスと、rV/F‐CEA/TRICOMおよび酵母‐CEAの組み合わせで処理されたマウスとの間の統計的有意差が示された(p=0.0027)。また、rV/F‐CEA/TRICOM単独で処理されたマウスとrV/F‐CEA/TRICOMおよび酵母‐CEAを用いた同時ワクチン接種で処理されたマウスとの間に統計的有意差があった(p=0.0293)。加えて、酵母‐CEA単独で処理されたマウスとrV/F‐CEA/TRICOMおよび酵母‐CEAを用いた同時ワクチン接種で処理されたマウスとの間に統計的有意差があった(p=0.0017)。これらの結果を合わせると、rV/F‐CEA/TRICOMおよび酵母‐CEAワクチンの同時投与は抗腫瘍効果を増大させうることが示される。
【0196】
上記に議論されるように、ワクチンプラットフォームを比較する報文は、免疫系の刺激においてあるものが他のものより有効であることを歴史的に結論付けており、従って臨床研究用のためにより有効なプラットフォームのさらなる開発を推奨してきた(Riezebos−Brilman et al.,Gene Ther 2007 Dec;14(24):1695−704;およびCasimiro et al.,J Virol 2003 Jun;77(11):6305−13)。本明細書中に提供された結果は、各プラットフォームにより誘発されたT細胞集団が、異なるCEAエピトープに対して特有かつ共通の表現型上および機能上の応答を示すことを実証した。本明細書中に示された結果は、(a)同じ抗原を標的とする2つのワクチンプラットフォームが別個のT細胞集団を誘導すること、(b)これらのT細胞集団の誘導はベクター特異的かつ抗原特異的であること、ならびに(c)ワクチンは抗腫瘍効果を改善するために抗腫瘍モデルにおいて同時使用が可能であること、を初めて示している。
【0197】
本発明の様々な実施形態について詳細に説明してきたが、当然ながら、当業者にはこれらの実施形態の改変形態および修正形態が思い浮かぶであろう。しかしながら、明白に了解されるべきことであるが、そのような改変形態および修正形態は、添付の特許請求の範囲に記載されるように、本発明の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体における癌の少なくとも1つの症状を予防、改善、もしくは治療すること、癌に罹患している個体の生存期間を延長させること、および、前記個体における1つ以上の癌抗原に対する治療的免疫応答を誘導することのうちの少なくともいずれか1つのための方法であって、前記個体に、
(a)少なくとも1つの共刺激分子をコードする核酸配列と、少なくとも1つの癌抗原またはその免疫原性ドメインをコードする核酸配列とを含む組換えワクシニアウイルスを含む第1の免疫療法組成物;および
(b)少なくとも1つの癌抗原またはその免疫原性ドメインを含む酵母ビヒクルを含む第2の免疫療法組成物
を投与するステップを含み、
第1および第2の免疫療法組成物は個体に同時に投与されることを特徴とする方法。
【請求項2】
組換えワクシニアウイルスは、共刺激分子であるB7‐1、ICAM‐1およびLFA‐3をコードする核酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
個体における癌の少なくとも1つの症状を予防、改善、もしくは治療すること、癌に罹患している個体の生存期間を延長させること、および、前記個体における1つ以上の癌抗原に対する治療的免疫応答を誘導することのうちの少なくともいずれか1つのための方法であって、前記個体に、
(a)第1の免疫療法組成物であって:
(i)B7‐1、ICAM‐1およびLFA‐1またはその生物学的に活性な部分をコードする核酸配列と、少なくとも1つの癌抗原またはその免疫原性ドメインをコードする核酸配列とを含む組換えワクシニアウイルス、および;
(ii)GM‐CSFまたはその生物学的に活性な部分をコードする核酸配列を含む組換え鶏痘ウイルス、
を含む免疫療法組成物、ならびに;
(b)少なくとも1つの癌抗原またはその免疫原性ドメインを含む酵母ビヒクルを含む第2の免疫療法組成物
を投与するステップを含み、
第1および第2の免疫療法組成物は前記個体に同時に投与されることを特徴とする方法。
【請求項4】
前記方法は、最初の投与の少なくとも1週間後に、前記個体に、
(a)第3の免疫療法組成物であって:
(i)B7‐1、ICAM‐1およびLFA‐1またはその生物学的に活性な部分をコードする核酸配列と、少なくとも1つの癌抗原またはその免疫原性ドメインをコードする核酸配列とを含む組換え鶏痘ウイルス、および;
(ii)GM‐CSFまたはその生物学的に活性な部分をコードする核酸配列を含む組換え鶏痘ウイルス
を含む免疫療法組成物、ならびに;
(b)少なくとも1つの癌抗原またはその免疫原性ドメインを含む酵母ビヒクルを含む第2の免疫療法組成物
を投与するステップをさらに含み、
第2および第3の免疫療法組成物は前記個体に同時に投与されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
抗原はCAP‐1‐6Dエピトープを含む改変CEAである、請求項3または請求項4に記載の方法。
【請求項6】
個体における癌の少なくとも1つの症状を予防、改善、もしくは治療すること、癌に罹患している個体の生存期間を延長させること、および、個体における1つ以上の癌抗原に対する治療的免疫応答を誘導することのうちの少なくともいずれか1つのために、前記個体に同時投与するための医薬の調製における、免疫療法組成物の組み合わせの使用であって、前記免疫療法組成物は、
(a)第1の免疫療法組成物であって:
(i)B7‐1、ICAM‐1およびLFA‐1またはその生物学的に活性な部分をコードする核酸配列と、少なくとも1つの癌抗原またはその免疫原性ドメインをコードする核酸配列とを含む組換えワクシニアウイルス、および;
(ii)GM‐CSFまたはその生物学的に活性な部分をコードする核酸配列を含む組換え鶏痘ウイルス
を含む免疫療法組成物、ならびに;
(b)少なくとも1つの癌抗原またはその免疫原性ドメインを含む酵母ビヒクルを含む第2の免疫療法組成物
を含むことを特徴とする、使用。
【請求項7】
第3の免疫療法組成物であって:
(i)B7‐1、ICAM‐1およびLFA‐1またはその生物学的に活性な部分をコードする核酸配列と、少なくとも1つの癌抗原またはその免疫原性ドメインをコードする核酸配列とを含む組換え鶏痘ウイルス、ならびに;
(ii)GM‐CSFまたはその生物学的に活性な部分をコードする核酸配列を含む組換え鶏痘ウイルス
を含む免疫療法組成物をさらに含む、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
ワクシニアウイルスは改変ワクシニアアンカラ(MVA)である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項9】
個体における疾患もしくは病気の少なくとも1つの症状を予防、改善、もしくは治療すること、前記疾患もしくは病気に罹患している個体の生存期間を延長させること、および、前記個体における1つ以上の抗原に対する治療的免疫応答を誘導することのうちの少なくともいずれか1つのための方法であって、前記個体に:
(a)ウイルスゲノムまたはその一部を含む組換えウイルスを含む第1の免疫療法組成物;および
(b)酵母ビヒクルを含む第2の免疫療法組成物
を投与するステップを含み、
第1および第2の免疫療法組成物は前記個体に同時に投与されること、および
第1および第2の免疫療法組成物のうち一方または両方が、少なくとも1つの抗原またはその免疫原性ドメインを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
個体における疾患または病気の少なくとも1つの症状を予防、改善、または治療すること、個体の生存期間を延長させること、および、個体における1つ以上の抗原に対する治療的免疫応答を誘導することのうちの少なくともいずれか1つのために、前記個体に同時投与するための医薬の調製における、免疫療法組成物の組み合わせの使用であって、前記免疫療法組成物は、
(a)ウイルスゲノムまたはその一部を含む組換えウイルスを含む第1の免疫療法組成物;および
(b)酵母ビヒクルを含む第2の免疫療法組成物
を含み、
第1および第2の免疫療法組成物のうち一方または両方が、少なくとも1つの抗原またはその免疫原性ドメインを含むことを特徴とする使用。
【請求項11】
第1の免疫療法組成物は、1つ以上の免疫刺激性分子をコードする1つ以上の核酸配列を含む組換えウイルスを含む、請求項9または請求項10に記載の方法または使用。
【請求項12】
第1の免疫療法組成物は、ウイルスゲノムまたはその一部と、少なくとも1つの抗原またはその免疫原性ドメインをコードする核酸配列とを含む組換えウイルス、および1つ以上の免疫刺激性分子をコードする1つ以上の核酸配列を含む組換えウイルスを含む、請求項9または請求項10に記載の方法または使用。
【請求項13】
第1の免疫療法組成物は、少なくとも1つの抗原またはその免疫原性ドメインをコードする核酸配列と、1つ以上の免疫刺激性分子をコードする1つ以上の核酸配列とを含む組換えウイルスを含む、請求項9または請求項10に記載の方法または使用。
【請求項14】
第1の免疫療法組成物における1つまたは複数の組換えウイルスはポックスウイルスである、請求項9〜13のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項15】
第1の免疫療法組成物における1つまたは複数の組換えウイルスは組換えワクシニアウイルスである、請求項9〜13のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項16】
ワクシニアウイルスは改変ワクシニアアンカラ(MVA)である、請求項15に記載の方法または使用。
【請求項17】
第1の免疫療法組成物における1つまたは複数の組換えウイルスは鶏痘ウイルスである、請求項9〜13のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項18】
免疫刺激性分子は1つ以上の共刺激分子を含む、請求項9〜13のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項19】
免疫刺激性分子はB7‐1、ICAM‐1、およびLFA‐3を含む、請求項18に記載の方法または使用。
【請求項20】
免疫刺激性分子は1つ以上のサイトカインを含む、請求項9〜13のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項21】
サイトカインは顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM‐CSF)である、請求項20に記載の方法または使用。
【請求項22】
第2の免疫療法組成物は、少なくとも1つの抗原またはその免疫原性ドメインを発現する酵母ビヒクルを含む、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項23】
第2の免疫療法組成物の中の酵母ビヒクルは完全な酵母である、請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項24】
第2の免疫療法組成物の中の酵母ビヒクルは加熱殺滅された完全な酵母である、請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項25】
第2の免疫療法組成物の中の酵母ビヒクルはサッカロマイセス属酵母に由来する、請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項26】
第1および第2の免疫療法組成物は、個体体内の異なる部位に投与される、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項27】
第1および第2の免疫療法組成物は、個体体内の同じ部位に、または隣接した部位に投与される、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項28】
第1および第2の免疫療法組成物はそれぞれ少なくとも1つの抗原またはその免疫原性ドメインを含む、請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項29】
第1および第2の免疫療法組成物はそれぞれ同一の抗原またはその免疫原性ドメインを含む、請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項30】
第1の免疫療法組成物は少なくとも1つの抗原またはその免疫原性ドメインを含み、第2の免疫療法組成物は抗原またはその免疫原性ドメインを含まない、請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項31】
第2の免疫療法組成物は少なくとも1つの抗原またはその免疫原性ドメインを含み、第1の免疫療法組成物は抗原またはその免疫原性ドメインを含まない、請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項32】
免疫療法組成物のうち一方または両方を用いて個体をブーストするステップをさらに含む、請求項1〜31のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項33】
第1の免疫療法組成物を用いるよりも高頻度で第2の免疫療法組成物を用いて個体をブーストするステップを含む、請求項32に記載の方法または使用。
【請求項34】
第1の免疫療法組成物とは異なるウイルスゲノムまたはその一部を含む組換えウイルスを含む第3の免疫療法組成物を用いて個体をブーストするステップをさらに含む、請求項1〜31のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項35】
第1の免疫療法組成物は組換えワクシニアウイルスを含み、第3の免疫療法組成物は鶏痘ウイルスを含む、請求項34に記載の方法または使用。
【請求項36】
別の供給源の抗原またはその免疫原性ドメインを用いて個体をブーストするステップをさらに含む、請求項1〜31のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項37】
少なくとも1つの生物学的応答調節物質を個体に投与するステップをさらに含む、請求項1〜36のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項38】
個体は癌に罹患している、請求項1〜37のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項39】
前記方法は、全身腫瘍組織量を低減するか、または個体体内における腫瘍増殖を抑制する、請求項38に記載の方法または使用。
【請求項40】
抗原は、黒色腫、扁平上皮癌、乳癌、頭頸部癌、甲状腺癌、軟部組織肉腫、骨肉腫、精巣癌、前立腺癌、卵巣癌、膀胱癌、皮膚癌、脳腫瘍、血管肉腫(angiosarcoma)、血管肉腫(hemangiosarcoma)、肥満細胞腫、白血病、リンパ腫、原発性肝癌、肺癌、膵臓癌、胃腸の癌、腎細胞癌、造血性新生物形成およびこれらの転移癌からなる群から選択される癌に由来する、請求項38に記載の方法または使用。
【請求項41】
抗原は、癌胎児性抗原(CEA)、突然変異型Rasオンコプロテイン、ブラキュリ(Brachyury)、MUC‐1、EGFR、BCR‐Abl、MART‐1、MAGE‐1、MAGE‐3、GAGE、GP‐100、MUC‐2、正常および点突然変異型p53オンコプロテイン、PSMA、チロシナーゼ、TRP‐1(gp75)、NY‐ESO‐1、TRP‐2、TAG72、KSA、CA‐125、PSA、HER‐2/neu/c‐erb/B2、hTERT、p73、B‐RAF、大腸腺腫様ポリポーシス(APC)、Myc、フォンヒッペル・リンドウ(von Hippel−Lindau)タンパク質(VHL)、Rb‐1、Rb‐2、アンドロゲン受容体(AR)、Smad4、MDR1、Flt‐3、BRCA‐1、BRCA‐2、pax3‐fkhr、ews‐fli‐1、HERV‐H、HERV‐K、TWIST、メソテリン、NGEP、そのような抗原の改変体、そのような抗原のスプライスバリアント、およびそのような抗原のエピトープアゴニスト、からなる群から選択される、請求項38に記載の方法または使用。
【請求項42】
抗原は癌胎児性抗原(CEA)である、請求項38に記載の方法または使用。
【請求項43】
CEAはCAP1‐6Dエピトープを含む、請求項42に記載の方法または使用。
【請求項44】
CEAは、配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項43に記載の方法または使用。
【請求項45】
抗原は突然変異型Rasである、請求項38に記載の方法または使用。
【請求項46】
抗原は、Rasの1つ以上のフラグメントを含む多重ドメイン融合タンパク質であり、各フラグメントはRasの12位、13位、59位、61位および76位のうちの少なくともいずれか1つの部位に1つ以上の突然変異を含む、請求項45に記載の方法または使用。
【請求項47】
抗原は、配列番号4、配列番号6、配列番号8、および配列番号10のうちの少なくともいずれか1つのアミノ酸配列を有する、請求項45に記載の方法または使用。
【請求項48】
抗原はブラキュリ(Brachyury)である、請求項38に記載の方法または使用。
【請求項49】
抗原はMUC‐1である、請求項38に記載の方法または使用。
【請求項50】
抗原はEGFRである、請求項38に記載の方法または使用。
【請求項51】
抗原はBCR−Ablである、請求項38に記載の方法または使用。
【請求項52】
化学療法で個体を治療するステップをさらに含む、請求項38〜51のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項53】
放射線照射療法で個体を治療するステップをさらに含む、請求項38〜51のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項54】
個体は病原体に起因するかまたは病原体に関係する疾患に罹患している、請求項1〜37のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項55】
前記方法は病原体による個体の感染を低減または予防する、請求項54に記載の方法または使用。
【請求項56】
前記方法は個体における病原体の力価を低減する、請求項54に記載の方法または使用。
【請求項57】
抗原は、ウイルス抗原、真菌抗原、細菌抗原、蠕虫抗原、寄生虫抗原、外部寄生生物抗原、および原生動物抗原からなる群から選択される、請求項54に記載の方法または使用。
【請求項58】
抗原は、アデノウイルス、アレナウイルス、ブンヤウイルス、コロナウイルス、コクサッキーウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン‐バーウイルス、フラビウイルス、ヘパドナウイルス、肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルス、レンチウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、ミクソウイルス、腫瘍ウイルス、オルトミクソウイルス、乳頭腫ウイルス、パポバウイルス、パラインフルエンザウイルス、パラミクソウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポックスウイルス、狂犬病ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、レオウイルス、ラブドウイルス、風疹ウイルス、トガウイルス、水痘ウイルス、およびT‐リンパ好性ウイルスからなる群から選択されるウイルスに由来する、請求項54に記載の方法または使用。
【請求項59】
抗原は、アスペルギルス属、ボルデテラ属、ブルギア属、カンジダ属、クラミジア属、コクシジウム(Coccidia)、クリプトコックス属、イヌ糸状虫属、エシェリヒア属、フランキセラ属、ゴノコックス(Gonococcus)、ヒストプラスマ属、リーシュマニア属、ミコバクテリア属、マイコプラズマ属、ゾウリムシ属、百日咳菌(Pertussis)、プラスモディウム属、肺炎球菌(Pneumococcus)、ニューモシスティス属、リケッチア属、サルモネラ属、赤痢菌属、ブドウ球菌属、連鎖球菌属、トキソプラズマ属、コレラ菌(Vibriocholerae)、およびエルシニア属からなる群から選択される属の感染性病原体に由来する、請求項54に記載の方法または使用。
【請求項60】
抗原は、シュードモナス属、ボルデテラ属、ミコバクテリア属、ビブリオ属、バチルス属、サルモネラ属、フランキセラ属、ブドウ球菌属、連鎖球菌属、エシェリヒア属、腸球菌属、パスツレラ属、およびエルシニア属から選択される属の細菌に由来する、請求項54に記載の方法または使用。
【請求項61】
(a)ウイルスゲノムまたはその一部を含む組換えウイルスを含む第1の免疫療法組成物と、
(b)酵母ビヒクルを含む第2の免疫療法組成物と
を含む組成物であって、
第1および第2の免疫療法組成物のうち一方または両方は、少なくとも1つの抗原またはその免疫原性ドメインを含み、かつ
第1および第2の免疫療法組成物は混合剤として提供されることを特徴とする組成物。
【請求項62】
第1の免疫療法組成物は、1つ以上の免疫刺激性分子をコードする1つ以上の核酸配列を含む組換えウイルスを含む、請求項61に記載の組成物。
【請求項63】
第1の免疫療法組成物は、ウイルスゲノムまたはその一部と、少なくとも1つの癌抗原またはその免疫原性ドメインをコードする核酸配列とを含む組換えウイルス、および、1つ以上の免疫刺激性分子をコードする1つ以上の核酸配列を含む組換えウイルスを含む、請求項61に記載の組成物。
【請求項64】
第1の免疫療法組成物は、少なくとも1つの抗原またはその免疫原性ドメインをコードする核酸配列と、1つ以上の免疫刺激性分子をコードする1つ以上の核酸配列とを含む組換えウイルスを含む、請求項61に記載の組成物。
【請求項65】
第1の免疫療法組成物における1つまたは複数の組換えウイルスはポックスウイルスである、請求項61〜64のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項66】
第2の免疫療法組成物は、少なくとも1つの抗原またはその免疫原性ドメインを発現する酵母ビヒクルを含む、請求項61に記載の組成物。
【請求項67】
第2の免疫療法組成物の中の酵母ビヒクルは加熱殺滅された完全な酵母である、請求項61または請求項66に記載の組成物。
【請求項68】
第2の免疫療法組成物の中の酵母ビヒクルはサッカロマイセス属に由来する、請求項61、請求項66または請求項67に記載の組成物。
【請求項69】
抗原は癌抗原である、請求項61〜68のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項70】
抗原は病原体に由来する、請求項61〜68のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項71】
少なくとも1つの生物学的応答調節物質をさらに含む、請求項61〜70のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項72】
少なくとも1つの化学療法剤をさらに含む、請求項61〜70のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項73】
下記の免疫療法組成物すなわち:
(a)少なくとも1つの共刺激分子をコードする核酸配列と、少なくとも1つの抗原またはその免疫原性ドメインをコードする核酸配列とを含む組換えワクシニアウイルスを含む第1の免疫療法組成物;および
(b)少なくとも1つの抗原またはその免疫原性ドメインを含む酵母ビヒクルを含む第2の免疫療法組成物
を含むキット。
【請求項74】
組換えワクシニアウイルスは、共刺激分子であるB7‐1、ICAM‐1およびLFA‐3をコードする核酸配列を含む、請求項73に記載のキット。
【請求項75】
下記の免疫療法組成物すなわち:
(a)第1の免疫療法組成物であって、
(i)B7‐1、ICAM‐1およびLFA‐1またはその生物学的に活性な部分をコードする核酸配列と、少なくとも1つの抗原またはその免疫原性ドメインをコードする核酸配列とを含む組換えワクシニアウイルス、および;
(ii)GM‐CSFまたはその生物学的に活性な部分をコードする核酸配列を含む組換え鶏痘ウイルス
を含む免疫療法組成物、ならびに
(b)少なくとも1つの抗原またはその免疫原性ドメインを含む酵母ビヒクルを含む第2の免疫療法組成物
を含むキット。
【請求項76】
第3の免疫療法組成物であって、
(i)B7‐1、ICAM‐1およびLFA‐1またはその生物学的に活性な部分をコードする核酸配列と、少なくとも1つの抗原またはその免疫原性ドメインをコードする核酸配列とを含む組換え鶏痘ウイルス、ならびに
(ii)GM‐CSFまたはその生物学的に活性な部分をコードする核酸配列を含む組換え鶏痘ウイルス
を含む免疫療法組成物をさらに含む、請求項75に記載のキット。
【請求項77】
抗原は癌抗原である、請求項73〜76のいずれか1項に記載のキット。
【請求項78】
抗原はCAP‐1‐6Dエピトープを含む改変CEAである、請求項73〜76のいずれか1項に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−524075(P2012−524075A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505977(P2012−505977)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/031460
【国際公開番号】WO2010/121180
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(505226437)グローブイミューン,インコーポレイテッド (10)
【出願人】(508285606)ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ (8)
【Fターム(参考)】