説明

癌に関与するタンパク質

【課題】癌の診断、スクリーニング、治療及び予防において使用するポリペプチド(CCMP-1)を提供する。また、この蛋白質を含有する組成物、この蛋白質に対し免疫特異性であるワクチン及び抗体も提供する。
【解決手段】以下の(a)〜(c)のいずれかのCCMP-1ポリペプチドと特異的に結合する捕獲試薬を含む組成物:
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含む又は前記アミノ酸配列からなるもの;
(b)配列番号1のアミノ酸配列に対し1以上のアミノ酸の置換、欠失又は挿入を有する誘導体であって、CCMP-1活性を保持しているもの;又は
(c)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドの断片であって、長さが少なくとも10アミノ酸であり且つ70%の相同性を有する断片。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌の診断、予防及び治療における、蛋白質CCMP-1/エフリンB-3型受容体の使用、前記蛋白質に免疫特異的な蛋白質を含有する組成物(ワクチン及び抗体を含む)に関する。
【背景技術】
【0002】
結腸直腸癌は、皮膚癌を除き、米国の男性及び女性において三番目に多く診断される癌である。結腸直腸癌が早期段階で発見され治療を受けた人々における生存率は良好であるが、早期段階で発見される結腸直腸癌は、わずかに37%である。一旦この癌が、隣接する臓器又はリンパ節に拡散すると、5年相対生存率は、著しく低下する。癌胎児性抗原(CEA)及びCA 19-9は、ほとんどの結腸癌及び直腸癌の細胞によって産生され、血流へと放出される物質である。しかしながら、これらのマーカーは、癌以外の理由で高い場合があり、又は癌を有するヒトにおいて正常である場合がある。従って、結腸直腸癌のより特異的なマーカーが必要とされている。
免疫療法は、外科的切除後のアジュバント設定(adjuvant setting)において最大の可能性をもたらし得るという事実にもかかわらず、結腸直腸癌の治療に関して、一般に承認された免疫療法薬はない。しかし、エドレコロマブ(Edrecolomab)(モノクローナル抗体17-1A、又はPanorex(商標))は、臨床試験が英国及び米国で行われている結腸直腸癌のアジュバント療法であり、また独国においては既に承認されている。従って、結腸直腸癌の免疫療法について、新しく且つ適切な標的又は抗原の同定が非常に重要である。
【0003】
乳癌は、西欧において女性の癌による死亡主因のひとつである。乳癌治療における主な挑戦は、早期発見率を向上させること、疾患進行を追跡すること及び再発を確認することに使用できる新規な非侵襲性マーカーを発見すること、並びに特に5年生存率が依然として非常に悪い更に進行した疾患のための、改善された毒性の低い治療法を見いだすことである。癌細胞に対してより特異的な標的、理想的には免疫療法及び標的化毒素のようなアプローチによる攻撃を受け得るように、腫瘍細胞表面上に発現される前記標的を同定する大きな必要性が存在している。
【0004】
腫瘍特異蛋白質は、cDNAのディファレンシャルスクリーニング(Hubert, R.S.ら、Proc. Natl. Acad, Sci. USA、96:14523-14528 (1999))及び腫瘍特異的な抗体により認識される細胞表面蛋白質の精製(Catimel, B.ら、J. Biol. Chem.、271: 25664-25670 (1996))などの技術を用い、多くの種類の癌について同定されている。更に最近になって、発現した配列エレメントを10,000種まで含むDNA「チップ」が、腫瘍細胞遺伝子発現を特徴付けることに使用されている(Dhanasekaran, S.M.ら、Nature、412:822-826 (2001))。しかしながら、多数且つ広範なこれまでの癌のトランスクリプトーム分析が、腫瘍関連蛋白質を全て、更にはほとんどさえも明らかにしていないことには、いくつかの理由がある。その理由には、以下のものが挙げられる:
(i)転写産物と疾患関連蛋白質レベルとの間の相関性の欠如;特に膜蛋白質については、長い半減期を持つ場合が多く、そのために高度なmRNA代謝回転を有さないことが、よく知られている。従って、正常細胞と癌細胞との間の蛋白質レベルの差は一貫しているにもかかわらず、所定の膜蛋白質のmRNAの変化を、癌状態と関連づけることは難しい場合が多い;
(ii)転写産物、例えばerbB2/HER2-neuの単純な示差的レベルよりもむしろ、疾患状態における蛋白質の移行が、癌細胞において正常乳房細胞におけるよりもはるかに大きい形質膜局在を示し、並びに転写因子であるエストロゲン受容体及びSTAT3は、核へと移行し、それらの腫瘍原性作用を発揮する;並びに
(iii)新規/特徴付けられていない遺伝子は、1チップ当りの発現した配列エレメントの数並びにDNAクローンの知識及び利用可能性に関して制限があるcDNAアレイの「閉じたシステム」においては、高度には提示されない。
【0005】
腫瘍抗原を同定するための代替的なアプローチとして、本発明者らは、プロテオミクスを使用して、癌細胞株から単離された細胞膜の蛋白質の相補体(complement)を特徴付けた。
CCMP-1は、エフリンB型受容体3としても知られている受容体チロシンキナーゼである。cDNAプロファイリングは、遺伝子レベルで、CCMP-1が前立腺癌組織において過剰発現される15種の遺伝子のひとつであることを示している。しかしながら、RT-PCR及びノーザンブロット分析は各々、遺伝子の40%及び88%においてこのような結果を実証しており、アレイ-ベースの技術により明らかにされた遺伝子発現において、定量的差異のより良いバリデーションが必要であることが示されている(Chaib H.ら、Neoplasia、3:43-52 (2001))。中レベルから低レベルのCCMP-1転写産物は、4種の小細胞肺癌細胞株のうち3種においても明らかにされており(Tang, X.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、95:9779-9784 (1998))、エフリンB型受容体に対するリガンドの示差的発現は、試験した結腸癌標本において隣接する正常粘膜よりも高い発現を有するエフリンB2によって明らかにされている。リガンドであるエフリンB2及びエフリンB型受容体4は、結腸癌上皮の管腔表面において最も頻繁に発現されている(Liu, W.ら、Cancer、94:934-939(2002))。
【0006】
国際公開公報第01/57188号は、多数のcDNA配列及びそれらがコードする蛋白質を提供している。これらには配列番号2273として同定された配列が含まれており、この配列はCCMP-1に相当する。この配列は、同定された他の1350の配列のいずれかと等価であり、関節炎又は癌などの状態の予防、治療又は改善に有用であることが示されいる。独国特許第DE4233782号は、CCMP-1と99%同一であるポリペプチドをコードしている、胚組織から単離したRNAから増幅されたcDNAを提供している。しかしながら、これらの開示は、CCMP-1を、周辺膜に局在しているものとしても同定しておらず、結腸直腸癌又は乳癌に対する治療的アプローチにとって有用であるとも同定していない。
【0007】
先行技術は、CCMP-1蛋白質の癌に関連する変化を示しておらず、従って、癌、より具体的には、体内器官の内層で典型的に見出される上皮細胞由来の腫瘍細胞に関する治療的アプローチにおけるCCMP-1の有用性を示してはいない。前記腫瘍細胞には例えば、乳房、前立腺、結腸、膵臓、前立腺の腺癌、舌の扁平上皮細胞癌、喉頭の扁平上皮細胞癌、咽頭の扁平上皮細胞癌、耳下腺癌、肺の扁平上皮細胞癌、脳の星状細胞腫、腎癌、直腸細胞癌、膀胱癌及び腫乳頭状嚢胞状腺腫が挙げられるが、これらに限定されるものではない。用語「癌(腫)(carcinoma)」は、皮膚、又はより一般的には体内器官、例えば、乳房、前立腺、肺、胃又は膀胱の内層に見出される、上皮から生じる悪性の新生物を含む。癌腫は、隣接する組織に浸潤し、また遠く離れた器官、例えば:骨、肝臓、肺又は脳まで広がる(転移する)傾向がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、癌腫におけるCCMP-1蛋白質の発現の癌に関連した変化に関する知見を基にしている。従って本発明は、癌腫(例えば、乳癌及び結腸直腸癌であるが、これらに限定されない)の診断及び治療のためのCCMP-1の使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従ってひとつの局面において、本発明は、対象者における癌のスクリーニング用及び/又は診断用、及び/又は癌の治療の有効性のモニタリング用の組成物であって、
以下の(a)〜(c)のいずれかのCCMP-1ポリペプチドと特異的に結合する捕獲試薬を含む、前記組成物:
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むもの、又は前記アミノ酸配列からなるもの;
(b)配列番号1のアミノ酸配列に対し、1又は複数のアミノ酸の置換、改変、欠失又は挿入を有する誘導体であって、CCMP-1の活性を保持しているもの;又は
(c)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドの断片であって、長さが少なくとも10アミノ酸であり且つその断片の長さにわたり少なくとも70%の相同性を有するもの。
【0010】
さらに、別の態様において本発明は、
対象者における癌のスクリーニング用及び/又は診断用、及び/又は癌の治療の有効性のモニタリング用の組成物であって、
以下の(d)〜(h)のいずれかのCCMP-1核酸分子と相補的であり且つハイブリダイズすることができるハイブリダイズ核酸分子を含む、前記組成物:
(d)配列番号2のDNA配列若しくはそのRNA等価物を含むもの、又は配列番号2のDNA配列若しくはそのRNA等価物からなるもの;
(e) (d)の配列と相補的である配列を有するもの;
(f) 請求項1で定義されるCCMP-1ポリペプチドをコードしている配列を有するもの;
(g) (d)、(e)及び(f)のいずれかと実質的同一性を示す配列を有するもの;又は
(h) (d)、(e)、(f)又は(g)の断片であって、長さが少なくとも10ヌクレオチドであるもの。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1−1】CCMP-1のヌクレオチド配列及び推定アミノ酸配列を示している。タンデム質量スペクトルは、下線付きの太字で示す。
【図1−2】図1−1続き。
【図1−3】図1−1続き。
【図2】CCMP-1 mRNAの組織分布を示している。正常組織(白抜き棒)及び正常結腸組織(点付き棒)、結腸腺癌組織(黒色棒)及び結腸癌細胞株(斜線付き棒)のmRNAレベルは、リアルタイムRT-PCRで定量した。mRNAレベルは、コピー数/ng cDNAの数値として、y-軸に沿って表した。
【図3】正常乳房組織(白抜き棒)、腫瘍乳房組織(斜線付き棒)及び乳癌細胞株(黒色棒)のCCMP-1発現を示している。比較した正常組織及び7名の乳癌患者由来の腫瘍組織中のCCMP-1 mRNAのレベルは、リアルタイムRT-PCRにより測定した。mRNAレベルは、コピー数/ng cDNAの数値として表わした。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、癌腫におけるCCMP-1蛋白質の発現の癌に関連した変化に関する知見を基にしている。従って本発明は、癌腫(例えば、乳癌及び結腸直腸癌であるが、これらに限定されない)の診断及び治療のためのCCMP-1の使用を提供する。
従ってひとつの局面において、本発明は、対象者における癌のスクリーニング及び/若しくは診断の方法、並びに/又は癌療法の有効性のモニタリングの方法を提供し、これらの方法は以下の工程を含む:
(i)以下のいずれかのCCMP-1ポリペプチドを、該対象者から得られた生物学的試料中で検出及び/又は定量する工程:
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含む又は前記アミノ酸配列からなる、ポリペプチド;
(b)配列番号1のアミノ酸配列に対して1以上のアミノ酸の置換、改変、欠失又は挿入を有する誘導体であって、CCMP-1の活性を保持しているポリペプチド;又は
(c)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチド断片であって、長さが少なくとも10個のアミノ酸であり、この断片の全長にわたって少なくとも70%の相同性を有するポリペプチド。
これ以後、このようなポリペプチドは、CCMP-1ポリペプチドと称する。本発明をより詳細に理解するために、上述する(a)から(c)の範囲内に含まれるポリペプチドを、次でより詳細に考察する。当業者には、本発明で用いられるペプチドは、CCMP-1、それらの誘導体、断片及び改変型(例えば、アナログ)を含むことが理解されるであろう。
【0013】
((a)の範囲内に含まれるポリペプチド)
(a)の範囲内に含まれるポリペプチドは、図1に示された特定のアミノ酸配列(配列番号1)からなってもよく、又は該配列に対し付加的なN-末端及び/若しくはC-末端アミノ酸配列を有してもよい。付加的な配列は、特定のポリペプチドの特性を変更するために提供されてもよい。このことは、特定の発現システムでの、組換え発現の向上又は発現の調節において有用であり得る。例えば付加的な配列は、蛋白質分解性切断に対する何らかの保護を提供し得る。付加的なアミノ酸配列が含まれることが有利である場合が多く、前記付加的なアミノ酸配列には、分泌若しくはリーダー配列、プレ-、プロ-若しくはプレプロ-蛋白質配列、又はアフィニティタグのような精製を補助する配列(例えば、複数のヒスチジン残基、FLAGタグ、HAタグ若しくはmycタグなどが挙げられるが、これだけに限られない)が含まれる。組換え産生のときに安定性を提供することができる、付加的な配列を使用してもよい。このような配列は、切断し得る配列を付加的な配列又はそれらの一部として組込むことによって、必要に応じて、任意に除去されてもよい。このように、ポリペプチドが、他のポリペプチドを含む他の部分に融合されてもよい。このような付加的な配列及びアフィニティタグは、本技術分野において周知である。
【0014】
従って、付加的な配列は、同定及び精製に役立つようにポリペプチドの特性を変更することにも有用であり得る。例えば、ポリペプチドがアフィニティクロマトグラフィーにより単離され得る部分に連結されている融合蛋白質が提供されてもよい。前記部分は、抗原又はエピトープであってもよく、アフィニティカラムは、該抗原又はエピトープに(望ましくは高度な特異性で)結合している固定化された抗体又は固定化された抗体断片を含んでもよい。融合蛋白質は、通常、適切な緩衝液の添加によって、カラムから溶離することができる。
【0015】
しかしながら、付加的なN-末端又はC-末端配列は、ポリペプチドを得るために使用される特定技術の結果として単純に存在していてもよく、前記ポリペプチドに対して特定の有利な特性のいずれをも提供しなくてもよい。このようなポリペプチドは、本発明の範囲内である。
付加的なN-末端又はC-末端配列が存在する場合は常に、得られたポリペプチドが、図1に示されるアミノ酸配列(配列番号1)を有するポリペプチドの免疫学的又は生物学的な活性を示すことが好ましい。
【0016】
((b)の範囲のポリペプチド)
次に上記(b)で定義されたポリペプチドについて、これらのポリペプチドが、先に上記(a)で与えられたポリペプチドの誘導体(又は変種)であることは、当業者に理解されるであろう。このような誘導体は、配列番号1のポリペプチドの免疫学的又は生物学的活性を示すことが好ましい。あるいは、前記ポリペプチドの生物学的活性は、変更することができる。従って、これらの誘導体は、翻訳後改変を含む得ることが、当業者に理解されるであろう。前記翻訳後改変としては、例えばリン酸化、グリコシル化及びファルネシル化が挙げられるが、これだけに限られない。
蛋白質のアミノ酸配列において、蛋白質の機能に影響を及ぼさない変更を生じることができる。これらは、アミノ酸の欠失、挿入及び置換を含み、選択的スプライシング並びに/又は複数の翻訳開始部位及び/若しくは停止部位の存在から生じ得る。多型は、翻訳過程の非忠実性(infidelity)の結果として生じる場合もある。従って、蛋白質の生物学的又は免疫学的機能に影響しないアミノ酸配列の変化は、許容され得る。
【0017】
当業者は、様々な変化が、特定の活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列にしばしば生じて、少なくとも前記活性のある割合を有する、好ましくは前記活性の実質的な割合を有する誘導体(時には、変種又は「突然変異蛋白質」として知られている)が作られ得ることを理解するであろう。上記(a)において説明されたポリペプチドのこのような誘導体は、本発明の範囲内であり、アレル及び非アレル誘導体を含む。
本発明において使用されるポリペプチド誘導体の例は、1個又は複数のアミノ酸の1個又は複数の他のアミノ酸による置換を除けば、上記(a)において定義されたポリペプチドである。アミノ酸置換は、当該技術分野において公知であるように保存的又は半保存的であってよく、及びポリペプチドの所望する活性に著しく影響しないことが好ましい。置換は、自然発生的であるか、又は例えば突然変異誘発を用い導入されてもよい(例えば、Hutchinsonら、J. Biol. Chem.、253:6551 (1978))。
【0018】
従って、アミノ酸のグリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシンは、しばしば互いに置換され得る(脂肪族側鎖を有するアミノ酸)。これらの可能性のある置換のうち、グリシン及びアラニンが互いの置換に使用されること(これらは比較的短い側鎖を有することから)、並びにバリン、ロイシン及びイソロイシンが互いの置換に使用されること(これらは疎水性の大きな脂肪族側鎖を有することから)が、好ましい。
互いに置換できる場合が多い他のアミノ酸には、以下のものが挙げられる:
−フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファン(芳香族側鎖を有するアミノ酸);
−リシン、アルギニン及びヒスチジン(塩基性側鎖を有するアミノ酸);
−アスパラギン酸及びグルタミン酸(酸性側鎖を有するアミノ酸);
−アスパラギン及びグルタミン(アミド側鎖を有するアミノ酸);並びに
−システイン及びメチオニン(含硫側鎖を有するアミノ酸);並びに
−アスパラギン酸及びグルタミン酸は、各々ホスホセリン及びホスホトレオニンと置換することができる(酸性側鎖を有するアミノ酸)。
【0019】
アミノ酸の欠失又は挿入を、上記(a)に示したアミノ酸配列に関して行うこともできる。従って、例えば、前記ポリペプチドの生物学的及び/又は免疫学的活性に対し実質的な効果を及ぼさないか、又は少なくともそのような活性を排除しないアミノ酸は、欠失されてもよい。このような欠失は、ポリペプチドの全長及び分子量を低下させる一方で、依然として活性を保持していることから、有利であり得る。このような欠失は、特定の目的に必要なポリペプチドの量を減少させることができ、例えば、用量レベルが減少され得る。
【0020】
特定の態様では、置換されたアミノ酸(複数)が、CCMP-1ポリペプチドの活性に著しく作用し、またCCMP-1ペプチドにドミナントネガティブ活性をもたらすように特異的に選択されてもよい。別の態様では、置換されたアミノ酸(複数)が、CCMP-1ポリペプチドに構成的活性をもたらすように特異的に選択されてもよい。
上記(a)に示した配列に対しアミノ酸挿入を含むポリペプチドも、本発明の範囲内に含まれる。このような変化は、本発明に使用されるポリペプチドの特性を変更し得る(例えば、融合蛋白質に関連して先に説明したように、同定、精製又は発現を補助する)。該アミノ酸変化は、例えば、部位特定変異誘発を用いる(Hutchinsonら、J. Biol. Chem.、253:6551(1978))ような、適切ないずれかの技術を用いて行うことができる。
【0021】
本発明に使用するポリペプチドへのアミノ酸の置換又は挿入は、天然に存在する又は天然に存在しないアミノ酸を用いて行うことができることが、理解されるべきである。天然又は合成のアミノ酸が使用されるかどうかにかかわらず、L-アミノ酸のみが存在することが好ましい。
いかなるアミノ酸変化が生じたか(置換、改変、挿入又は欠失のいずれによるか)に関わらず、本発明の使用に好ましいポリペプチドは、上記(a)に定義されたポリペプチドと少なくとも50%の配列同一性を有し、より好ましくは配列同一性の度合いが少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%である。少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも98%の配列同一性が最も好ましい。
【0022】
用語「同一性」は、ふたつのポリペプチド配列間の類似性を説明するために用いることができる。アミノ酸配列同一性の度合いは、「ベストヒット(bestfit)」(Smith及びWaterman、Advances in Applied Mathematics、482-489 (1981))のようなプログラムを用いて計算することができ、いずれのふたつの配列間においても最も類似するセグメントを見出だすことができる。このアラインメントは、Schwarz及びDayhofの著書(「Atlas of Protein Sequence and Structure」、Dayhof, M.O.編集、353-358(1979))に記載されるように、アミノ酸類似性の行列を用いて達成されるスコアを最大化することに基づいている。
【0023】
前記手法を実行するために本技術分野で周知のソフトウェアパッケージは、CLUSTALプログラムである。このプログラムは、ふたつのポリペプチドのアミノ酸配列を比較し、必要に応じてどちらかの配列にスペースを挿入することにより、最適なアラインメントを見出す。最適なアラインメントのためのアミノ酸の同一性又は類似性(同一性+アミノ酸の種類の保存性)も、BLASTXのようなソフトウェアパッケージを用い、計算することができる。このプログラムは、類似配列の最も長いひと配列(stretch)を整列させ、適合度に対して値を割当てる。いずれかひとつのパターン比較について、幾つかの類似する領域を見出すことができ、その各々は異なるスコアを有する。当業者は、異なる長さのふたつのポリペプチドを、より長い断片の全長にわたって比較することができるのを理解できるあろう。あるいは、より短い領域を比較してもよい。通常は、同じ長さの配列が、有用な比較を行うために比較される。
高度な配列同一性が存在する場合、アミノ酸配列には比較的少ない差異が存在するであろう。従って、例えば、アミノ酸配列の差異が、20個未満、10個未満、又は5個未満の差異であり得る。
【0024】
((c)の範囲内のポリペプチド)
前述のように、ポリペプチドの長さを縮小することは、得られる縮小された長さのポリペプチドが依然所望の活性を有するか、又は有用な抗体を生じることができるという条件では、有利であることが多い。従って特徴(c)は、本発明で使用される上記ポリペプチド(a)又は(b)の断片を網羅している。
当業者は、上に開示した技術を用いて、特定の断片が活性を有するかどうかを決定することができる。好ましい断片は、長さが少なくとも10アミノ酸である。前記断片は、少なくとも20アミノ酸、少なくとも50アミノ酸、少なくとも100アミノ酸又はそれよりも長くてもよい。ポリペプチドのいずれか所定の断片は、親ポリペプチドの機能的活性を有していても又は有さなくてもよい。
【0025】
ポリペプチドの「誘導体」は、アミノ酸残基の置換、欠失若しくは付加の導入及び/又はアミノ酸改変(例えばリン酸化及びグリコシル化であるが、これらに限定されない)によって変更されている、親ポリペプチドのアミノ酸配列を含んでいるポリペプチドを含む。誘導体は、親ポリペプチドのホモログ、アナログ及びオルソログも包含する。誘導体ポリペプチドは、親ポリペプチドと類似又は同一の機能を有することが好ましい。
本明細書で開示されているスクリーニング方法及び診断方法に有用なCCMP-1ポリペプチドを検出/定量するひとつの手段は、抗体の使用を含む。従って、CCMP-1ポリペプチドは、抗体の産生における使用も見出せる。好ましくは、抗体が、該対象者から得られた生物学的試料中の、本発明の第一の局面に定義されたようなポリペプチドを検出及び/又はその量を定量化するために使用される。
【0026】
ひとつの態様において、組織切片中の抗体の結合を使用して、異常なCCMP-1ポリペプチド局在化又は異常なCCMP-1ポリペプチドレベルを検出することができる。具体的態様において、CCMP-1ポリペプチドを認識する抗体は、CCMP-1ポリペプチドのレベルについて患者組織(例えば、乳房生検材料)をアッセイするのに使用することができ、この場合、異常なCCMP-1ポリペプチドレベルは癌の指標である。「異常なレベル」とは、癌を患っていない対象者のレベル又は基準レベルと比較して、増加又は減少したレベルを含む。
【0027】
更なる局面において、CCMP-1ポリペプチドの存在を検出/定量する方法は、例えば、検出可能なマーカー(例えば化学発光、酵素、蛍光又は放射性の部分などであるが、これらに限定されるものではない)といった、直接的又は間接的に標識された検出試薬を用い、捕獲されたポリペプチドを検出することを含む。
本発明の診断法は、当業者に公知な多くの方法を用いて行うことができ、前記方法としては、免疫沈降とそれに続くドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動、2次元ゲル電気泳動、ウェスタンブロットのような技術を使用する競合及び非競合アッセイシステム、免疫細胞化学、免疫組織化学、イムノアッセイ、例えばラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射線測定法、蛍光イムノアッセイ及びプロテインAイムノアッセイが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の状況において、生物学的試料は、血清試料又は組織試料(例えば乳房組織)のような、いずれかの供給源から得ることができる。転移の証拠を探す場合、リンパ節、肝臓、肺及び/又は骨及び脳のような転移の主要部位が注目され得る。
【0028】
本発明は、上に定義したようなCCMP-1ポリペプチドに対する捕獲試薬(例えば、抗体)を含む、診断用キットも提供する。加えて、このようなキットは、任意に下記の1以上のものを含んでいてもよい:
(1)診断、予後判定、治療的モニタリング又はこれらアプリケーションのいずれかの組合せに捕獲試薬を使用するための使用説明書;
(2)捕獲試薬に対する標識化結合パートナー;
(3)捕獲試薬が固定されている固相(例えば試薬片);及び
(4)診断、予後判定、治療的用途又はこれらアプリケーションのいずれかの組合せについて、規制官庁の認可を示すラベル又は添付文書。
捕獲試薬に対する標識された結合パートナーが提供されない場合、抗-CCMP-1ポリペプチド捕獲試薬それ自身を検出マーカーで標識することができる(前記参照)。
【0029】
以下に考察するように、CCMP-1ポリペプチドは、癌の免疫療法的アプローチにおいて使用される。当業者であれば、そのような1以上のポリペプチドを調製するのに好ましいアプローチは、組換えDNA技術を基礎とし得ることを理解するであろう。加えて、ポリペプチド又はそれらの断片をコードしている核酸分子は、それ自体で使用され得る。従って本発明は、対象者における癌をスクリーニング及び/若しくは診断する方法、並びに/又は癌療法の有効性をモニタリングする方法も提供する。それらの方法は、該対象者から得られた生物学的試料中の核酸分子を検出する及び/若しくは定量する工程を含み、この場合、前記核酸分子は:
(d) 配列番号2のDNA配列若しくはそのRNA等価物を含むか、又はそれらからなる;
(e) (d)の配列に相補的な配列を有する;
(f) 上記(a)〜(c)に定義されたCCMP-1ポリペプチドをコードしている配列を有する;
(g) (d)、(e)及び(f)のいずれかと実質的な同一性を示す配列を有する;又は
(h) 長さが少なくとも30ヌクレオチドの、(d)、(e)、(f)又は(g)の断片である。
【0030】
上に説明したこのような核酸分子は、以後CCMP-1核酸と称す。(d)〜(f)のいずれかと実質的同一性を示す配列が、例えば少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は95%の配列同一性を有するのが好ましく、最も好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有する場合が好ましい。「ベストヒット」プログラム(Smith及びWaterman、「Advances in applied Mathematics」、482-489 (1981))は、ふたつの核酸配列間において最も類似するセグメントを発見するために使用されるコンピュータソフトウェアの一種の一例であり、一方GAPプログラムは、配列をそれらの全長に沿って整列させ、必要に応じていずれかの配列にスペースを挿入することにより最適アラインメントを見いだすことを可能にする。
【0031】
特に文脈に記さない限りは、CCMP-1核酸分子は、下記の特徴を1以上有することができる:
1)これらはDNA又はRNAであってよい;
2)これらは一本鎖又は二本鎖であってよい;
3)これらは、天然には存在しない分子を提供するために、例えば5’及び/又は3’フランキング配列に共有結合されているといった、組換え型で提供されてもよい;
4)これらは、通常天然に存在する5’及び/又は3’フランキング配列を伴わずに提供されてよい;
5)これらは、実質的に純粋な形で提供されてもよい。従ってこれらは、蛋白質の混入及び/又は他の核酸を実質的に含まない形で提供されてもよい;又は
6)これらは、イントロンを伴い又は伴わず(例えば、cDNAとして)提供されてもよい。
【0032】
これらのCCMP-1核酸分子を、ここでより詳細に考察する。用語「RNA等価物」は、遺伝暗号においてRNAの「U」を「T」で置換えることを斟酌すると、所定のRNA分子が、所定のDNA分子の配列に相補的な配列を有していることを示す。核酸分子は、単離された形態、組換え形態又は化学合成形態であってもよい。
本願明細書において「コード(する)」核酸分子と称されるものには、CCMP-1ポリペプチドをコードしているCCMP-1核酸分子に加え、相補的な核酸も含まれる。従って例えば、二本鎖核酸分子の鎖の両方が、(互いに会合しているかどうかに関わらず)本発明に含まれる。同様に、mRNA分子及び相補的DNA分子(例えば、cDNA分子)も含まれる。
上で考察したのCCMP-1核酸分子のいずれかにハイブリダイズすることができる核酸分子の使用も、本発明により網羅される。このような核酸分子は、本願明細書において「ハイブリダイズ(する)」核酸分子と称される。ハイブリダイズ核酸分子は、プローブ若しくはプライマーとして、例えばハイブリダイゼーションアッセイにおいて有用であり得る。
【0033】
ハイブリダイゼーションアッセイは、CCMP-1ポリペプチドをコードしている遺伝子の異常な発現に関連している状態、疾患若しくは病態の検出、予後判定、診断若しくはモニタリングに、又は癌を示唆する徴候若しくは症状を伴う患者の鑑別診断に使用することができる。特に、このようなハイブリダイゼーションアッセイは、核酸を含む患者の試料を、CCMP-1ポリペプチドをコードしているCCMP-1 DNA又はRNAにハイブリダイズし得る核酸プローブと、ハイブリダイゼーションが起る条件下で接触させること、並びに生じたハイブリダイゼーションを検出又は測定することを含む方法によって、実行することができる。従って、このようなハイブリダイゼーションアッセイは、
i)対象者から得た核酸を含む生物学的試料を、CCMP-1核酸分子とハイブリダイズし得る核酸プローブと、ハイブリダイゼーションが起り得る条件下で接触させること;及び
ii)生じたハイブリダイゼーションを検出又は測定すること;
を含む。
望ましくは、そのようなハイブリダイズ分子は、長さが、少なくとも10ヌクレオチドであり、好ましくは少なくとも25ヌクレオチド又は少なくとも50ヌクレオチドである。ハイブリダイズ核酸分子は、具体的には上記(d)、(e)、(f)、(g)又は(h)の範囲内の核酸にハイブリダイズすることが好ましい。
【0034】
望ましくは、ハイブリダイズ分子は、上記(d)、(e)、(f)、(g)又は(h)の範囲内の核酸分子に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするであろう。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の一例は、試みられるハイブリダイゼーションが、約0.9Mの塩溶液を用いて、約35℃〜約65℃の温度にて実施されることである。しかしながら、当業者であれば、プローブ長、塩基組成、存在するイオンの種類などのような可変性を考慮し、必要に応じてこのような条件を変動させることができるであろう。高度な選択性のためには、低塩及び高温度の条件のような比較的ストリンジェントな条件を使用して、二重鎖を形成させる。本願明細書において使用される「高ストリンジェンシー条件」は、0.5M NaHPO4、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1mM EDTA中65℃にてフィルター結合しているDNAへのハイブリダイゼーション、及び0.1xSSC/0.1%SDS中68℃での洗滌を意味する(Ausubel F.M.ら編集、1989年、「Current Protocols in Molecular Biology」第I巻、Green Publishing Associates社、及びJohn Wiley & Sons社、ニューヨーク、2.10.3頁)。幾つかのアプリケーションに関しては、より低度のストリンジェンシー条件が二重鎖形成に必要である。本願明細書において使用される、「中程度のストリンジェンシー条件」とは、0.2xSSC/0.1%SDS中42℃での洗滌を意味する(Ausubelら、1989年、前掲)。ハイブリダイゼーション条件は、漸増量のホルムアミドを添加して、ハイブリッド二重鎖を不安定化させることにより、よりストリンジェントにすることもできる。従って、詳細なハイブリダイゼーション条件は、容易に操作することができ、一般には所望する結果に応じて選択されるであろう。一般に、50%ホルムアミドの存在下で都合の良いハイブリダイゼーション温度は、次のようである:本願明細書に定義されるポリペプチドをコードしている遺伝子の断片と同一性95〜100%であるプローブに関して42℃、同一性90〜95%に関して37℃、また同一性70〜90%に関して32℃。
【0035】
本発明は、CCMP-1ポリペプチドをコードしているCCMP-1 RNAとハイブリダイズし得る核酸プローブを含むキットも提供する。具体的な態様において、キットは、1個又は複数の容器中に、ポリメラーゼ連鎖反応(例えば、Innisら、1990年、「PCR Protocols」、Academic Press社、サンディエゴ、CA参照)、Qβレプリカーゼを使用するリガーゼ連鎖反応(欧州特許第320,308号参照)、環状プローブ反応又は当該技術分野において公知の他の方法によるような適切な反応条件下で、本願明細書に定義されるポリペプチドをコードしている核酸の少なくとも一部の増幅をプライミングすることができるプライマー対(例えば、サイズ範囲が各々、6〜30ヌクレオチド、より好ましくは10-30ヌクレオチド、更により好ましくは10〜20ヌクレオチド)を含む。
【0036】
本発明において使用するハイブリダイズする核酸分子は、その長さに沿って、上記(d)-(h)の範囲内の核酸分子と高度の配列同一性を有し得る(例えば、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、95%、又は少なくとも98%の配列同一性)。当業者に理解されるように、所定の一本鎖核酸分子が、別の核酸分子とより高度の配列同一性を有すれば有する程、適切な条件下で他の核酸分子と相補的である核酸分子にハイブリダイズする可能性はより大きくなる。
所望であれば、相補的な配列を含む、CCMP-1ポリペプチドをコードしている遺伝子、関連する遺伝子、又は関連するCCMP-1核酸配列又は部分配列(sub-sequence)も、ハイブリダイゼーションアッセイにおいて使用することができる。CCMP-1ポリペプチドをコードしているCCMP-1ヌクレオチド、又は少なくとも8個のヌクレオチドを含むそれらの部分配列は、ハイブリダイゼーションプローブとして使用することができる。
【0037】
別の局面において、本発明は、対象者において癌を予防及び/又は治療する方法を提供し、その方法は、該対象者に少なくとも1種のCCMP-1ポリペプチドを治療上有効な量投与することを含む。
更に別の局面において、本発明は、癌の予防及び/又は治療に使用される医薬組成物の調製における、少なくとも1種のCCMP-1ポリペプチドの使用を提供する。対象者は、哺乳動物であってもよく、好ましくはヒトである。
【0038】
特定の態様において、CCMP-1ポリペプチドは、別のポリペプチド、例えば、融合蛋白質の細胞への侵入を促進するHIV/Tat蛋白質の蛋白質形質導入ドメインなどと融合されて(Asoh, S.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、99:17107-17112 (2002))、癌治療のための医薬組成物製造において使用するために提供される。
組換えCCMP-1ポリペプチドは、発現システムを含む遺伝的に操作された宿主細胞から、当該技術分野において周知のプロセスにより調製することができる。従って本発明は、CCMP-1ポリペプチド又はCCMP-1核酸を含む発現システム、そのような発現システムにを有する遺伝的に操作された宿主細胞、及び組換え技術によるCCMP-1ポリペプチドの産生にも関する。無細胞翻訳システムも、組換えポリペプチドの産生に使用することができる(例えば、Roche Diagnostics社(ルイス、英国)のウサギの網状赤血球溶解液、小麦胚芽溶解液、SP6/T7 in vitro T&T及びRTS 100 E. Coli HY転写及び翻訳キット、並びにPromega UK社(サザンプトン、英国)のTNT Quickと組合わせた転写/翻訳システム)。
【0039】
組換えCCMP-1ポリペプチド産生のため、宿主細胞は、遺伝的に操作されて、CCMP-1核酸の発現システム又はそれらの一部を組込まれてもよい。このような組込みは、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAD-デキストラン媒介トランスフェクション、トランスベクション、マイクロインジェクション、陽イオン性脂質媒介トランスフェクション、電気穿孔、形質導入、擦過ローディング(scrape loading)、弾道導入(ballistic introduction)、又は感染などの、当該技術分野において周知の方法を用い行うことができる(例えば、Davisら、Basic Methods in Molecular Biology、1986年、及びSambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbour laboratory Press社、コールドスプリングハーバー、NY、1989年参照)。
【0040】
宿主細胞の代表例としては、細菌細胞、例えば大腸菌(E. Coli)、連鎖球菌(Streptococci)、ブドウ球菌(Staphylococci)、放線菌(Streptomyces)及びバシラス・サブチリス(Bacillus subtilis)細胞など;真菌細胞、例えば酵母細胞及びコウジカビ(Aspergillus)細胞など;昆虫細胞、例えばショウジョウバエ(Drosophila) S2及びスポドプテラ(Spodoptera) Sf9細胞など;動物細胞、例えばCHO、COS、HeLa、C127、3T3、HEK 293、BHK及びBowes黒色腫細胞など;並びに、植物細胞が挙げられる。
【0041】
多種多様な発現システムを使用することができ、例えば染色体、エピソーム及びウイルス由来のシステム(例えば細菌プラスミド由来、バクテリオファージ由来、トランスポゾン由来、酵母エピソーム由来、挿入エレメント由来、酵母染色体エレメント由来、例えばバキュロウイルス、SV40のようなパポーバウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、家禽ポックスウイルス、仮性狂犬病ウイルス及びレトロウイルスなどのウイルス由来のベクター)、並びにプラスミド及びバクテリオファージ遺伝エレメント由来のもののような、それらの組合せ由来のベクター(例えばコスミド及びファージミド)などであるが、これらに限定されるものではない。この発現システムは、発現を調節及び引き起こす制御領域を含んでもよい。一般に、宿主において核酸を維持、増殖又は発現し、ポリペプチドを生成することができるいずれのシステム又はベクターも使用することができる。適切なCCMP-1核酸配列は、Sambrookらの著書(前掲)に記載されたもののような、様々な周知かつ慣習的技術により、発現システムへ挿入することができる。適切な分泌シグナルを、CCMP-1ポリペプチドに組込み、翻訳された蛋白質を、小胞体の管腔、細胞周辺腔又は細胞外環境へ分泌させることができる。これらのシグナルは、CCMP-1ポリペプチドに対して内因性であってよく、又は異種性のシグナルであってよい。
【0042】
ひとつの態様において、CCMP-1ポリペプチドは、単離された形で提供されてもよく、少なくともある程度精製されたCCMP-1ポリペプチドを含んでもよく、他の部分に融合されていてもよい。CCMP-1ポリペプチドは、組換え法を用いて作製されるか、合成的に作製されるか、又はこれらの方法を組合せて作製され得る。特に、緑色蛍光蛋白質(米国特許第5,625,048号、第5,777,079号、第6,054,321号及び第5,804,387号)又はDsRed蛍光蛋白質(Matzら、Nature Biotech. 17:969-973 (1999))のような局在化レポーター蛋白質と、CCMP-1ポリペプチドとの融合体が、具体的に企図されている。CCMP-1ポリペプチドは、実質的に純粋な形態、つまり他の蛋白質が、実質的な程度に除かれている形態で提供されてもよい。従ってCCMP-1ポリペプチドは、組成物において、主要に存在する成分である(すなわち、溶媒又は担体を除いく、質量/質量ベースで決定される場合に、少なくとも50%;好ましくは少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%のレベルで存在する)ように提供され得る。
【0043】
CCMP-1ポリペプチドが、後で考察するような細胞ベースのスクリーニングアッセイで使用するために発現される場合は、このポリペプチドは、細胞表面に産生されることが好ましい。この事象において、細胞は、スクリーニングアッセイに使用される前に、収集されてもよい。CCMP-1ポリペプチドが培地に分泌される場合は、培地は、該ポリペプチドを単離するために、回収することができる。細胞内に生成される場合は、細胞は、CCMP-1ポリペプチドが回収される前に、最初に溶解されなければならない。
【0044】
CCMP-1ポリペプチドは、硫酸アンモニウム又はエタノール沈殿、酸抽出、陽イオン又は陰イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、分子ふるいクロマトグラフィー、遠心法、電気泳動法及びレクチンクロマトグラフィーを含む周知の方法により、組換え細胞培養物から回収及び精製することができる。ひとつの態様において、これらの方法の組合せが使用される。別の態様において、高性能液体クロマトグラフィーが使用される。更なる態様において、CCMP-1ポリペプチドへ特異的に結合する抗体を使用し、CCMP-1ポリペプチドを含有する試料から該ポリペプチドを枯渇させるか、又は該ポリペプチドを精製することができる。ポリペプチドが単離及び/又は精製の間に変性されている場合は、当該技術分野において周知の技術を使用し、リフォールディングさせて、CCMP-1ポリペプチドの未変性の又は活性なコンホメーションを再生することができる。
【0045】
更なる局面において、本発明は、対象者における癌を予防及び/又は治療する方法を提供し、この方法は、該対象者へ、少なくとも1種のCCMP-1核酸を治療上有効な量投与することを含む。
更に別の態様において、本発明は、癌治療において使用される医薬組成物の調製における、少なくとも1種のCCMP-1核酸の使用を提供する。
【0046】
具体的態様において、ハイブリダイズ核酸分子は、アンチセンス分子として、相補的CCMP-1核酸への結合によりCCMP-1ポリペプチドの発現を変更するのに使用することができ、また癌の治療又は予防において使用することができる。アンチセンス核酸は、CCMP-1ポリペプチドをコードしているRNA(好ましくはmRNA)の一部分に対してある程度の配列相補性によってハイブリダイズし得るCCMP-1核酸を含む。アンチセンス核酸は、CCMP-1ポリペプチドをコードしているmRNAのコード領域及び/又は非コード領域に相補的であることができる。最も好ましくは、CCMP-1ポリペプチドの発現は、アンチセンス核酸を使用することにより阻害される。従って本発明は、CCMP-1ポリペプチドをコードしている遺伝子又はcDNAに対してアンチセンスである、少なくとも8個のヌクレオチドを含む核酸の、治療的又は予防的使用を提供する。
【0047】
ひとつの態様において、CCMP-1核酸は、遺伝子治療において投与される(例えば、Hoshida, T.ら、Pancreas、25:111-121 (2002);Ikuno, Y.、Invest. Ophthalmol. Vis. Sci.、43:2406-2411 (2002);Bollard, C.、Blood、99:3179-3187 (2002);Lee E.、Mol. Med.、7:773-782 (2001)を参照のこと)。遺伝子治療は、発現された又は発現可能な核酸を対象者へ投与することを意味する。当該技術分野において利用可能な遺伝子治療のいずれかの方法を、本発明において使用することができる。ひとつの局面において、CCMP-1核酸は、医薬組成物として投与することができ、該核酸は、適切な宿主においてCCMP-1ポリペプチド又はそれらのキメラ蛋白質を発現する発現ベクターの一部である。特にこのような核酸は、ポリペプチドコード領域に機能的に連結されているプロモーターを有し、該プロモーターは、誘導性又は構成性(及び、任意で組織特異性)である。別の特定の態様において、コード配列及びいずれか他の所望の配列がゲノムの所望の位置で相同組換えを促進する領域に隣接するCCMP-1核酸分子が使用され、その結果核酸の染色体内発現を提供する(Koller & Smithies、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、86:8932-8935 (1989);Zijlstraら、Nature、342:435-438 (1989))。
【0048】
CCMP-1核酸の患者への送達は直接的であってよく、この場合に、患者は直接に核酸又は核酸運搬ベクターに曝露される;この方法は、in vivo遺伝子治療として公知である。あるいは、核酸の患者への送達は間接的であってもよく、この場合に、細胞が最初に核酸でin vitroにおいて形質転換され、その後患者へ移植される;この方法ex vivo遺伝子治療として公知である。
【0049】
癌の症状は、本願明細書において定義されたポリペプチドをコードしている遺伝子配列を、ポリペプチドの遺伝子発現を低下させる周知の遺伝子「ノックアウト」法、リボザイム法又はトリプルヘリックス法と組合せて使用することによって、CCMP-1ポリペプチドのレベル又は活性を低下させることにより、寛解させることができる。このアプローチでは、リボザイム又はトリプルヘリックス分子を用いて、遺伝子の活性、発現又は合成を調節し、その結果癌の症状を寛解させる。このような分子は、変異体又は非変異体の標的遺伝子の発現を低下又は阻害するようにデザインされてもよい。このような分子を作製及び使用する技術は、当業者に周知である。
【0050】
内因性CCMP-1ポリペプチド発現も、標的化された相同組換えを使用し、ポリペプチドをコードしている遺伝子又はそのような遺伝子のプロモーターを失活又は「ノックアウト」することにより、低下させることができる(例えば、Smithiesら、Nature、317:230-234 (1985);Thomas & Capecchi、Cell、51:503-512 (1987);Thompsonら、Cell、5:313-321 (1989);及びZijlstraら、Nature、342:435-438 (1989)参照)。例えば、内因性遺伝子(このポリペプチドをコードしている遺伝子のコード領域又は調節領域のいずれか)に相同なDNAに隣接する非機能性ポリペプチドをコードしている変異体遺伝子(又は全く関係のないDNA配列)は、in vivoにおいて標的遺伝子を発現する細胞をトランスフェクションするために、選択マーカー及び/又はネガティブ選択マーカーを伴い又は伴わずに、使用することができる。標的化された相同組換えによる、DNA構築体の挿入は、標的遺伝子の失活をもたらす。
【0051】
CCMP-1核酸は、発現配列タグ(EST)分析を用い、ヒト細胞におけるmRNA由来のcDNAライブラリーから、標準的なクローニング及びスクリーニング技術を用いて、得ることができる(Adams, M.ら、Science、252:1651-1656 (1991);Adams, M.ら、Nature、355:632-634 (1992);Adams, M.ら、Nature、377:Suppl: 3-174 (1995))。CCMP-1核酸は、ゲノムDNAライブラリーのような天然の供給源から得ることもでき、又は周知の技術及び市販の技術を用い合成することもできる。CCMP-1ポリペプチドのコード配列を含むCCMP-1核酸は、該ポリペプチドの組換え作製のために使用することができる。CCMP-1核酸は、成熟ポリペプチドのコード配列を、単独で;又は、リーダー又は分泌配列、プレ-、プロ-若しくはプレプロ-蛋白質配列、切断配列又は他の融合ペプチド部分、例えばアフィニティタグ若しくはポリペプチド作出時に安定性を付与する付加的な配列をコードしているもののような他のコード配列を伴うリーディングフレームの中に、含むことができる。好ましいアフィニティタグは、複数のヒスチジン残基(例えばGentzら、Proc. Natl. Acad. Sci USA、86:821-824 (1989)参照)、FLAGタグ、HAタグ又はmycタグを含む。CCMP-1核酸は、非-コード5’及び3’配列、例えば転写されるが翻訳されない配列、スプライシングシグナル、ポリアデニル化シグナル、リボソーム結合部位及びmRNAを安定化する配列も含むことができる。
【0052】
ゲノムライブラリーの調製において、DNA断片が作製され、その幾つかは、本願明細書に定義されたポリペプチドの一部又は全体をコードしているであろう。このDNAは、様々な制限酵素を用い特異的部位で切断することができる。あるいは、マンガン存在下でDNaseを使用してDNAを断片化するか、又は例えば音波処理により、DNAを物理的に剪断することができる。続いてDNA断片は、標準的な技術(アガロース及びポリアクリルアミドゲル電気泳動、カラムクロマトグラフィー及びショ糖勾配遠心分離を含むが、これらに限定されるものではない)により、サイズに従って分離することができる。続いてDNA断片は、適切なベクター(プラスミド、コスミド、バクテリオファージλ及びT4を含むが、これらに限定されるものではない)又は酵母人工染色体(YAC)へ挿入することができる(例えば、Sambrookら、1989年、「Molecular Cloning, A Laboratory Manual」、1D版、Cold Spring Harbor Laboratory Press社、コールドスプリングハーバー、NY;Glover, D.M.(編集)、1985年、「DNA Cloning: A Practical Approach」、MRL Press社、オックスフォード、英国、第I、II巻;Ausubel F.M.ら編集、1989年、「Current Protocols in Molecular Biology」、第I巻、I, Green Publishing Associates社、及びJohn Wiley & sons社、ニューヨークを参照)。ゲノムライブラリーは、標識されたプローブへの核酸ハイブリダイゼーションによりスクリーニングすることができる(Benton & Davis、Science、196:180 (1977);Grunstein & Hogness、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、72:3961 (1975))。
【0053】
蛋白質をコードしているDNAを操作することは、精製の目的で、蛋白質の改変及び大量の蛋白質の作製のために特に強力な技術である。これは、所望の核酸配列を増幅するPCR技術の使用を含み得る。従って、本願明細書において提供される配列データを使用し、PCRに使用するプライマーをデザインし、その結果所望の配列を標的化して、高度に増殖させることができる。
典型的には、プライマーは、長さが少なくとも5ヌクレオチドであり、一般には少なくとも10ヌクレオチドであろう(例えば、長さが15〜25ヌクレオチド)。場合によっては、長さが少なくとも30ヌクレオチド又は少なくとも35ヌクレオチドのプライマーを使用してもよい。
更なる代替案として、自動化された化学合成を使用することができる。比較的短い配列を、化学的に合成し、互いにライゲーションして、より長い配列を提供することができる。
【0054】
上記(b)の部で言及されたCCMP-1ポリペプチド誘導体は、CCMP-1核酸のヌクレオチド配列へ1個又は複数のヌクレオチドの置換、付加又は欠失を導入することにより作出することができ、その結果コードされた蛋白質に1個又は複数のアミノ酸の置換、付加又は欠失が導入される。当業者に公知の標準技術を用いて、変異を導入することができ、前記技術としては、例えば部位特定変異誘発及びPCR媒介型変異誘発が挙げられる。好ましくは、保存的アミノ酸置換を、1種又は複数の推定される非必須アミノ酸残基で行うことができる。
ヒト以外の種由来のホモログ及びオルソログを含むCCMP-1ポリペプチドをコードしているCCMP-1核酸は、上記(d)-(h)に説明されたCCMP-1核酸の配列を有する標識化プローブを用いてストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で適切なライブラリーをスクリーニングする工程、並びに該核酸配列を含む完全長cDNA及びゲノムクローンを単離する工程を含む方法によって、得ることができる。このようなハイブリダイゼーション技術は、当該技術分野において周知であり、ハイブリダイゼーション条件の例は、先に説明されている。
【0055】
単離されたcDNA配列は、ポリペプチドをコードしている領域がそのcDNAの5’末端で短く切断されている点で、多くの場合不完全であることを当業者は理解するであろう。これは、固有な低い連続移動性(processivity)(ポリメリゼーション反応の間に、鋳型に結合し続ける酵素能力の測定値)を有する酵素である、逆転写酵素の結果であり、第1鎖cDNA合成の間にmRNA鋳型のDNAコピーを完成することができない。
【0056】
完全長cDNAを得る方法又は短いcDNAを延長する方法は、当該技術分野において周知であり、例えばRACE(cDNA末端の迅速増幅;例えば、Frohmanら、Proc. Natl. Acad. Sci USA、85:8998-9002 (1988))がある。Marathon(商標)技法(Clontech Laboratories社)により例示されるこの技術の最新の改変は、より長いcDNAの検索を著しく単純化している。この技法は、選択された組織から抽出されたmRNAから調製されたcDNAを使用し、その後各末端でのアダプター配列のライゲーションが続く。その後遺伝子特異的及びアダプター特異的オリゴヌクレオチドプライマーの組合せを使用し、PCRが実行され、cDNAの欠落している(missing)5’末端が増幅される。その後PCR反応は、典型的には、更にアダプター配列の3’側にアニーリングするアダプター特異的プライマー及び更に既知の遺伝子配列の5’側にアニーリングする遺伝子特異的プライマーである、増幅産物にアニーリングするようにデザインされた入れ子式プライマーを用い、繰り返される。この反応の産物は、次に、DNA配列決定により解析され、並びに完全長cDNAが、この産物を存在するcDNAに直接接続し、完全な配列を生じるか、又は5’プライマーのデザインのための新規配列情報を用い、個別の完全長PCRを行うかのいずれかにより、構築される。
【0057】
本発明の更なる局面は、癌治療に使用するワクチン組成物に関する。従って、CCMP-1ポリペプチド又はCCMP-1核酸は、抗原性物質として有用であり、また癌の治療又は予防のためのワクチン製造において使用することができる。このような物質は、「抗原性」及び/又は「免疫原性」であり得る。一般に「抗原性」とは、蛋白質又は核酸が、抗体を生じるために使用することができるか、又は実際に対象者において抗体反応を誘導することが可能であることの意味を有する。「免疫原性」とは、蛋白質又は核酸が、対象者において防御的免疫応答を誘起することが可能である意味を有する。従って後者の場合、CCMP-1ポリペプチド又は核酸は、抗体反応を生じ得るのみではなく、加えて、抗体ベースでない免疫応答も生じ得る。
【0058】
抗原性蛋白質又はポリペプチドをスクリーニングし、エピトープ性領域、すなわち蛋白質又はポリペプチドの抗原性又は免疫原性に寄与するようなそれらの領域を同定することが可能であることは周知である。当業者には周知のアミノ酸及びペプチド特性を用い、CCMP-1ポリペプチドの抗原性指数(領域が抗原性である可能性の測定値)を推定することができる。例えば、「ペプチド構造(Peptidestructure)」プログラム(Jameson及びWolf、CABIOS、4(1):181 (1988))及び「スレッディング(Threading)」と称される技術(Altuvia Y.ら、J. Mol. Biol. 249:244 (1995))を使用することができるが、これらに限定されるものではない。従ってCCMP-1ポリペプチドは、前記エピトープを1個若しくは複数含むか、又はそれらの抗原/免疫原特性を維持するようにそのような領域に十分に類似していてもよい。当業者に周知の方法を用い、抗原性について、ポリペプチドの断片及び/又はホモログ及び/又は誘導体を試験することができる。従って本発明において使用される断片は、1個若しくは複数の前記エピトープ性領域を含むか又はエピトープ領域に十分に類似して、それらの抗原/免疫原特性を維持し得る。このように、本発明で使用するための断片は、本願明細書に記載される蛋白質又はポリペプチド、ホモログ又は誘導体の特定部分に対して100%同一であり得ることから、前記断片について、同一性の程度は恐らく関連性がないであろう。重要な問題点は、前記断片は、それらが由来する蛋白質の抗原/免疫原特性を保持していることであり得る。
CCMP-1誘導体は、好ましくは、少なくともそれらが由来する蛋白質又はポリペプチドの抗原性及び/又は免疫原性をある程度有する。
【0059】
従って更なる局面において、本発明は、癌の治療又は予防のための医薬組成物の製造における、CCMP-1ポリペプチド又はCCMP-1核酸の使用を提供し、この場合、組成物はワクチンであり得る。このワクチンは、任意で1種又は複数の適切なアジュバントを含有してもよい。当該技術分野において周知であるアジュバントの例は、水酸化アルミニウムのような無機ゲル、及び不完全フロイントアジュバントのような油中水型乳剤を含む。他の有用なアジュバントは、当業者に周知であろう。
ポリペプチド又は核酸は胃内で崩壊されるので、このワクチン組成物は、非経口的に投与されることが好ましい(例えば、皮下、筋肉内、静脈内又は皮内注射)。
【0060】
従って、本発明は以下のものを提供する:
(a)癌治療のための免疫原性組成物、好ましくはワクチンの調製における、CCMP-1ポリペプチド又はCCMP-1核酸の使用;
(b)対象者において免疫応答を誘導する場合の、前記免疫原性組成物の使用;及び
(c)対象者へ、有効量のCCMP-1ポリペプチド又はCCMP-1核酸を、好ましくはワクチンとして投与する工程を含む、対象者における癌の治療若しくは予防、又は対象者における癌のワクチン接種の方法。
【0061】
更なる局面において、本発明は、CCMP-1ポリペプチドに結合する少なくとも1種の抗体を治療上有効な量で対象者に投与することを含む、該対象者における癌を治療及び/又は予防する方法を提供する。
最も好ましいのは、CCMP-1ポリペプチドに特異的に結合する抗体である。ひとつの態様において、CCMP-1ポリペプチドに特異的に結合する抗体又は腫瘍に対する標的治療的物質を使用して、該ポリペプチド活性を阻害することができる。
【0062】
従って更に別の局面において、本発明は、癌の予防及び/又は治療に使用する医薬組成物の調製における、少なくとも1種のCCMP-1ポリペプチドに結合する抗体の使用を提供する。特に、抗体を含有する又は抗体からなるワクチン及び/又は組成物の調製は、本発明のこの局面の好ましい態様である。
従って、CCMP-1ポリペプチドを免疫原として使用して、そのような免疫原に免疫特異性に結合する抗体を作製することができる。本発明の抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、Fab断片、F(ab’)断片、Fab発現ライブラリーから作製される断片、抗イディオタイプ(抗-Id)抗体、及びこれらのいずれかのエピトープ結合断片を含むが、これらに限定されるものではない。本願明細書において使用される用語「抗体」は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、抗原に特異的に結合する抗原結合部位を含む分子を含む。本発明の抗体は、CCMP-1ポリペプチドを認識する。好ましくは、本発明の抗体は、CCMP-1ポリペプチドに特異的に結合する。本発明の免疫グロブリン分子は、免疫グロブリン分子のいずれかのクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD及びIgA)又はサブクラスであってもよい。
【0063】
抗体の産生において、所望する抗体のスクリーニングは、例えば、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)のような、当該技術分野において公知の技術により実現することができる。例えば、CCMP-1ポリペプチドの特異的ドメインを認識する抗体を選択するために、作製されたハイブリドーマを、産物が前記ドメインを含むポリペプチド断片に結合するかについてアッセイすることができる。第一のポリペプチドホモログに特異的に結合するが、第二のポリペプチドホモログには特異的に結合しない(又は少ないアビディティで結合する)抗体を選択するために、第一のポリペプチドホモログへの結合が陽性であること及び第二のポリペプチドホモログへの結合を欠くこと(又は低下した結合)に基づいて選択することができる。
【0064】
CCMP-1ポリペプチドに対するモノクローナル抗体(mAb)の調製に関して、培養中の連続継代細胞株により抗体分子の作製を提供する技術のいずれを使用してもよい。例えば、本来はKohler及びMilsteinにより開発されたハイブリドーマ技術(Nature、256:495-497 (1975))に加え、トリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら、Immunology Today、4:72 (1983))、及びヒトモノクローナル抗体を作製するためのEBVハイブリドーマ技術(Coleら、「Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy」、Alan R. Liss社、77-96頁 (1985))がある。このような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDを含む免疫グロブリンクラス及びそれらのサブクラスのいずれかであってよい。本発明のmAbを作製するハイブリドーマは、in vitro又はin vivoで培養され得る。本発明の更なる態様において、モノクローナル抗体は、当該技術分野において公知の技術を利用して、無菌動物で作製することができる。
【0065】
モノクローナル抗体は、ヒトモノクローナル抗体及びキメラモノクローナル抗体(例えば、ヒト-マウスキメラ)を含むが、これらに限定されるものではない。キメラ抗体は、ヒト免疫グロブリンの定常領域及びマウスmAb由来の可変領域を有するもの(例えば、米国特許第4,816,567号及び米国特許第4,816,397号参照)のような、異なる部分が異なる動物種に由来している分子である。ヒト化抗体は、非ヒト種由来の1又は複数の相補性決定領域(CDR)及びヒト免疫グロブリン分子由来の枠組み領域を有する、非ヒト種由来の抗体分子である(例えば、米国特許第5,585,089号参照)。
【0066】
キメラモノクローナル抗体及びヒト化モノクローナル抗体は、例えば次に挙げる文献に記載された方法を使用して、当該技術分野において公知の組換えDNA技術により作製することができる:国際公開公報第87/02671号;欧州特許第184,187号;欧州特許第171,496号;欧州特許第173,494号;国際公開公報第86/01533号;米国特許第4,816,567号;欧州特許第125,023号;Betterら、Science、240:1041-1043 (1988);Liuら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、84:3439-3443 (1987);Liuら、J. Immunol.、139:3521-3526 (1987);Sunら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、84:214-218 (1987);Nishimuraら、Canc. Res.、47:999-1005 (1987);Woodら、Nature、314:446-449 (1985);Shawら、J. Natl. Cancer Inst.、80:1553-1559 (1988);Morrison、Science、229:1202-1207 (1985);Oiら、Bio/Techniques、4:214 (1986);米国特許第5,225,539号;Jonesら、Nature、321:552-525 (1986);Verhoeyanら、Science、239:1534 (1988);及び、Beidlerら、J. Immunol.、141:4053-4060 (1988)。
【0067】
完全なヒト抗体は、ヒト患者の治療的処置に特に望ましい。このような抗体は、内在性免疫グロブリン重鎖及び軽鎖遺伝子の発現は不可能であるが、ヒト重鎖及び軽鎖遺伝子は発現することができるようなトランスジェニックマウスを用い作製することができる。前記トランスジェニックマウスは、例えば、CCMP-1ポリペプチドの全て又は一部といった、選択された抗原を用いて、通常の様式で免疫される。前記抗原に対するモノクローナル抗体は、通常のハイブリドーマ技術を用いて得ることができる。トランスジェニックマウスにより収容されるヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、B細胞分化の間に再編成し、引き続きクラススイッチ及び体細胞突然変異を受ける。従ってこのような技術を使用し、治療的に有用なIgG、IgA、IgM及びIgE抗体を作出することが可能である。ヒト抗体産生に関するこの技術の概要については、Lonberg & Huszar、Int. Rev. Immunol.、13:65-93 (1995)を参照されたい。ヒト抗体及びヒトモノクローナル抗体を作製するこの技術並びに前記のような抗体を作製するプロトコールの詳細な考察については、例えば、米国特許第5,625,126号;第5,633,425号;第5,569,825号;第5,661,016号;及び、第5,545,806号を参照されたい。加えて、Abgenix社(フリーモント、CA)及びGenpharm社(サンノゼ、CA)などの会社が、先に説明したものに類似する技術を用いて選択された抗原に対するヒト抗体の提供に携わっている。
【0068】
選択されたエピトープを認識する完全なヒト抗体は、「ガイド付き選択(guided 選択)」と称される技術を用いて作製することができる。このアプローチにおいて、選択された非ヒトモノクローナル抗体、例えばマウス抗体が用いられて、同じエピトープを認識する完全なヒト抗体の選択がガイドされる(Jespers ら、Bio/technology、12:899-903 (1994))。
【0069】
本発明の抗体は、当該技術分野において公知な様々のファージディスプレイ法を用い作製することもできる。ファージディスプレイ法において、機能性抗体ドメインは、それらをコードしているポリヌクレオチド配列を保持するファージ粒子の表面にディスプレイされる。特にこのようなファージを利用し、レパトア又はコンビナトリアル抗体ライブラリー(例えば、ヒト又はマウス)から発現された抗原結合ドメインをディスプレイすることができる。対象とする抗原に結合する抗原結合ドメインを発現しているファージは、例えば標識された抗原又は固相表面若しくはビーズに結合された又は捕獲された抗原を用い、抗原により選択又は同定することができる。これらの方法に使用されるファージは、典型的には繊維状ファージであり、ファージ遺伝子III又は遺伝子VIII蛋白質のどちらかに組換え的に融合されているFab、Fv又はジスルフィド安定化Fv抗体ドメインを有するファージから発現されたドメインに結合しているfd及びM13を含む。本発明の抗体を作製するために使用することができるファージディスプレイ法は、次の文献で開示されているものを含む:Brinkmanら、J. Immunol. Methods、182:41-50 (1995);Amesら、J. Immunol. Methods、184:177-186 (1995);Kettleborough ら、Eur. J. Immunol.、24:952-958 (1994);Persicら、Gene、187:9-18 (1997);Burtonら、Advances in Immunology、57:191-280 (1994);欧州特許第0589877号;国際公開公報第90/02809号;第91/10737号;第92/01047号;第92/18619号;第93/11236号;第95/15982号;第95/20401号;及び、米国特許第5,698,426号;第5,223,409号;第5,403,484号;第5,580,717号;第5,427,908号;第5,750,753号;第5,821,047号;第5,571,698号;第5,427,908号;第5,516,637号;第5,780,225号;第5,658,727号;第5,733,743号及び第5,969,108号。
【0070】
先の参考文献において説明されたように、ファージ選択後に、ファージから抗体コード領域を単離し、ヒト抗体又はいずれか他の所望の抗原結合断片を含む抗体全体を作製するのに使用して、例えば以下に詳述されるように、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母及び細菌を含む所望の宿主において発現させることができる。例えば、Fab、Fab’及びF(ab’)2断片を組換え的に作製する技術も、国際公開公報第92/22324号;Mullinaxら、Bio/Techniques、12(6):864-869 (1992);及びSawaiら、AJRI、34:26-34 (1995);及びBetterら、Science、240:1041-1043 (1988)に記載されるもののような、当該技術分野において公知の方法を用いて、行うことができる。
一本鎖Fv及び抗体を産生するのに使用できる技術の例は、米国特許第4,946,778号及び第5,258,498号;Hustonら、Methods in Enzymology、203:46-88 (1991);Shuら、PNAS、90:7995-7999 (1993);及び、Skerraら、Science、240:1038-1040 (1988)に記載されたものを含む。
【0071】
本発明は更に、当該技術分野において公知の方法により作製することができる、二重特異性抗体を提供する。完全長二重特異性抗体の慣習的な作製は、2種の免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の同時発現に基づいており、この場合、前記2つの鎖は異なる特異性を有している(Milsteinら、Nature、305:537-539 (1983))。免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖のランダムな取り合せのために、これらのハイブリドーマ(クアドローマ(quadroma))は、10種の異なる抗体分子が見込まれる混合物を産生し、そのうちのひとつのみが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製は、通常アフィニティクロマトグラフィー工程により行われ、かなり厄介であり、生成物の収量は低い。同様の手法は、国際公開公報第93/08829号、及びTrauneckerら、EMBO J.、10:3655-3659 (1991)に開示されている。
【0072】
別の、より好ましいアプローチによると、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体-抗原結合部位)が、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合される。この融合体は、ヒンジ領域、CH2領域及びCH3領域の少なくとも一部分を含む、免疫グロブリン重鎖定常ドメインを有することが好ましい。これらの融合体の少なくともひとつに存在する、軽鎖結合に必要な部位を含む、第一の重鎖定常領域(CH1)を有することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合体(及び、必要に応じて、免疫グロブリン軽鎖)をコードしているDNAは、個別の発現ベクターに挿入されて、適切な宿主生物にコトランスフェクションされる。これは、構築に使用される3種のポリペプチド鎖の不均等な比率が最適な収量を提供するような態様において、3種のポリペプチド断片の相互割合を調節することに大きな柔軟性を提供する。しかし、少なくとも2種の同等な比率のポリペプチド鎖の発現が高収量を生じる場合又はこれらの比率が特に重要ではない場合には、ひとつの発現ベクター内に2種又は3種全てのポリペプチド鎖のコード配列を挿入することも可能である。
【0073】
このアプローチの好ましい態様において、二重特異性抗体は、1本のアームにおいて第一の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖と、他方のアームにおいてハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対(第二の結合特異性を提供)とから構成される。二重特異性分子の半分のみに免疫グロブリン軽鎖が存在することは、容易な分離手段を提供するので、この非対称構造は、望ましくない免疫グロブリン鎖組合せから所望の二重特異性化合物を分離することを容易にする。このアプローチは、国際公開公報第94/04690号に開示されている。二重特異性抗体の作製の更なる詳細については、Suresh ら、Methods in Enzymology、121:210 (1986)を参照されたい。
【0074】
本発明は、抗ポリペプチド免疫グロブリン分子の機能的に活性な断片、誘導体又はアナログを提供する。「機能的に活性な」とは、前記断片、誘導体又はアナログが、その断片、誘導体又はアナログが由来している抗体によって認識されるのと同じ抗原を認識する、抗-抗イディオタイプ抗体(すなわち、三次抗体)を誘導(elicit)し得ることを意味する。具体的には、好ましい態様において、免疫グロブリン分子のイディオタイプの抗原性は、枠組み及び抗原を特異的に認識するCDR配列のC-末端であるCDR配列を欠失させることによって、増強させることができる。どのCDR配列が抗原に結合するかを決定するために、CDR配列を含む合成ペプチドを、当該技術分野において公知のいずれかの結合アッセイ法による抗原との結合アッセイにおいて使用することができる。
【0075】
本発明は、F(ab’)2断片及びFab断片など(これらに限定されないが)のような抗体断片を提供する。特異的エピトープを認識する抗体断片は、公知の技術により作製することができる。F(ab’)2断片は、可変領域、軽鎖定常領域及び重鎖CH1ドメインからなり、抗体分子のペプシン消化により作製される。Fab断片は、F(ab’)2断片のジスルフィド架橋を還元することにより作製される。本発明は同じく、本発明の抗体の重鎖及び軽鎖二量体、又はFv若しくは一本鎖抗体(SCA)のようなそれらの最小断片(例えば、米国特許第4,946,778号;Bird、Science、242:423-42 (1988);Hustonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、85:5879-5883 (1988);及び、Wardら、Nature、334:544-54 (1989)に説明されたもの)、又は本発明の抗体と同じ特異性を有する他の分子も提供する。一本鎖抗体は、アミノ酸架橋を介してFv領域の重鎖及び軽鎖断片を連結して、一本鎖ポリペプチドを生じることによって形成される。E. coliにおける機能性Fv断片をアッセンブリーする技術も、使用することができる(Skerraら、Science、242:1038-1041 (1988))。
【0076】
他の態様において、本発明は、例えば免疫グロブリンが、N末端又はC末端のいずれかで、免疫グロブリンでない他の蛋白質のアミノ酸配列(又はそれらの一部、好ましくはその蛋白質の少なくとも10、20又は50アミノ酸の部分)と共有結合(例えば、ペプチド結合)を介して融合しているような、本発明の免疫グロブリンの融合蛋白質(又はそれらの機能的に活性な断片)を提供する。好ましくは、免疫グロブリン又はその断片が、定常ドメインのN末端で他の蛋白質に共有結合的に連結されている。上述のように、このような融合蛋白質は、精製を容易にし、in vivoにおける半減期を増大し、上皮バリアを越える抗原の免疫システムへの送達を増強し得る。
【0077】
本発明の免疫グロブリンは、いずれか改変されている、すなわち免疫特異的結合を損なわない共有結合である限りはいずれの種類の分子の共有結合によっても改変されている、アナログ及び誘導体を含む。免疫グロブリンの誘導体及びアナログは、例えば更に改変されているもの、例えばグリコシル化、アセチル化、PEG化(pegylation)、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロック基による誘導化、蛋白質分解性切断、細胞リガンド又は他の蛋白質への連結などにより改変されているもの、を含むが、これらに限定されるものではない。多くの化学改変のいずれかを公知の技術により行うことができ、前記技術としては特異的化学切断、アセチル化、ホルミル化などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。加えて、アナログ又は誘導体は、1個又は複数の古典的でないアミノ酸を含むことができる。
【0078】
前述の抗体を、本発明で使用されるポリペプチドの局在及び活性に関する当該技術分野で公知の方法において、例えば、これらの蛋白質のイメージング又は放射線イメージング、適切な生理的試料中のそれらのレベルの測定、診断的方法など及び放射線療法のために、使用することができる。
本発明の抗体は、抗体の合成のための当該技術分野においていずれか公知の方法、特に化学合成又は組換え発現によって作製することができ、好ましくは組換え発現技術により作製される。
【0079】
抗体、又はその断片、誘導体又はアナログの組換え発現は、その抗体をコードしている核酸の構築が必要である。抗体のヌクレオチド配列が公知である場合、抗体をコードしている核酸は、化学合成されたオリゴヌクレオチドから組み立てることができ(例えば、Kutmeier ら、Bio/Techniques、17:242 (1994)に記されている)、これは簡単に述べると、抗体をコードしている配列の一部を含む重複するオリゴヌクレオチドの合成、これらのオリゴヌクレオチドのアニーリング及びライゲーション、それに続くライゲーションしたオリゴヌクレオチドのPCR増幅を含む。
あるいは、抗体をコードしている核酸は、抗体のクローニングにより得てもよい。特定の抗体をコードしている核酸を含むクローンは利用できないが、抗体分子の配列が既知である場合は、抗体をコードしている核酸を、配列の3’及び5’末端にハイブリダイズ可能な合成プライマーを使用するPCR増幅によって、又は特定の遺伝子配列に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを使用するクローニングによって、適切な供給源(例えば、抗体cDNAライブラリー、又はその抗体を発現している組織若しくは細胞から作製されたcDNAライブラリー)から入手してもよい。
【0080】
特定の抗原を特異的に認識する抗体分子(又はこのような抗体をコードしている核酸のクローニングのためのcDNAライブラリーの供給源)を入手できない場合は、特定の抗原に特異的な抗体は、当該技術分野においていずれか公知の方法、例えば、ウサギのような動物に免疫してポリクローナル抗体を産生させるか、より好ましくは、モノクローナル抗体を産生させることにより、作製してもよい。あるいは、少なくとも抗体のFab部分をコードしているクローンを、特異的抗原に結合するFab断片のクローンについてFab発現ライブラリーをスクリーニングすること(例えば、Huseら、Science、246:1275-1281 (1989)に記されたもの)により、又は抗体ライブラリーのスクリーニング(例えば、Clacksonら、Nature、352:624 (1991);Haneら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、94:4937 (1997)参照)により、入手してもよい。
【0081】
少なくとも抗体分子の可変ドメインをコードしている核酸が一度得られたならば、その核酸を、抗体分子の定常領域をコードしているヌクレオチド配列を含むベクターへ導入することができる(例えば、国際公開公報第86/05807号;国際公開公報第89/01036号;及び米国特許第5,122,464号参照)。完全な抗体分子の発現を可能にする核酸との同時発現のための完全な軽鎖又は重鎖を含むベクターも、利用することができる。次に、抗体をコードしている核酸を使用して、スルフヒドリル基を含まないアミノ酸残基との鎖内ジスルフィド結合に参加する1個又は複数の可変領域システイン残基の置換(又は欠失)に必要なヌクレオチド置換(複数)又は欠失(複数)を導入することができる。このような改変は、ヌクレオチド配列における特異的な変異又は欠失の導入に関して当該技術分野において公知の方法により行うことができ、そのような方法は例えば、化学的突然変異誘発、in vitro部位特定突然変異誘発(Hutchinsonら、J. Biol. Chem.、253:6551 (1978))、PCRベースの方法などであるが、これらに限定されるものではない。
【0082】
加えて、適切な抗原特異性のマウス抗体分子由来の遺伝子を、適切な生物学的活性のヒト抗体分子由来の遺伝子と一緒にスプライシングすることによる、「キメラ抗体」を作製するために開発された技術(Morrisonら、Proc. Natl. Acad. Sci.、81:851-855 (1984);Neubergerら、Nature、312:604-608 (1984);Takedaら、Nature、314:452-454 (1985))を使用することができる。前掲のように、キメラ抗体は、マウスmAbに由来した可変領域及びヒト抗体の定常領域を有するもの(例えばヒト化抗体)のような、異なる部分が異なる動物種に由来した分子である。
【0083】
抗体分子をコードしている核酸がひとたび得られたならば、抗体分子の作製のためのベクターを、当該技術分野において周知の技術を用い、組換えDNA技術により作製してもよい。従って、抗体分子配列を含む核酸を発現することによって本発明に使用される抗体を調製する方法が、本願明細書に記載されている。当業者に周知の方法を用い、抗体分子コード配列並びに適切な転写シグナル及び翻訳制御シグナルを含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法は、例えば、in vitro組換えDNA技術、合成技術及びin vivo遺伝子組換えを含む。例えば、Sambrookらの著書(1990年、「Molecular Cloning, A Laboratory Manual」、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory社、コールドスプリングハーバー、NY)及びAusubelらの著書(編集、1998年、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley & Sons社、NY)に記された技術を参照のこと。
【0084】
発現ベクターは、通常の技術により宿主細胞にトランスフェクションされ、トランスフェクションされた細胞は次に通常の技術により培養され、本発明の抗体が作製される。
本発明の組換え抗体の発現に使用される宿主細胞は、大腸菌(Escherichia coli)のような細菌細胞、又は好ましくは真核細胞、特に組換え抗体分子全体の発現のための真核細胞のいずれかであってもよい。特に、ヒトサイトメガロウイルス由来の主要な中間初期(intermediate early)遺伝子プロモーターエレメントなどのベクターと組合せたチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)のような哺乳動物細胞が、抗体の効率的な発現システムである(Foeckingら、Gene、45:101 (1985); Cockettら、BioTechnology、8:2 (1990))。
【0085】
様々な宿主発現ベクターシステムを利用し、本発明の抗体分子を発現することができる。このような宿主発現システムとは、対象とするコード配列が生成され、続いて精製されるビヒクルを表わすが、適切なヌクレオチドコード配列により形質転換又はトランスフェクションされた場合に、本発明の抗体分子をin situ発現し得る細胞も表わす。前記システムとしては、微生物、例えば抗体コード配列を含む組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA又はコスミドDNA発現ベクターにより形質転換されている、細菌(例えば、E. coli、B.サブチリス);抗体コード配列を含む組換え酵母発現ベクターで形質転換されている、酵母(例えば、サッカロミケス ピチア(Saccharomyces Pichia);抗体コード配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)で感染されている、昆虫細胞システム;抗体コード配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)により感染されている、又は組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)により形質転換されている、植物細胞システム;又は、哺乳動物細胞のゲノム由来のプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)又は哺乳動物ウイルス由来のプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含む、組換え発現構築体を収容している、哺乳動物細胞システム(例えば、COS、CHO、BHK、293、3T3細胞)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0086】
細菌システムにおいて、発現される抗体分子に意図された用途に応じ、多くの発現ベクターを有利に選択することができる。例えば、抗体分子を含有する医薬組成物の製造のために、そのような蛋白質を大量に生成する場合、容易に精製することができる融合蛋白質産物の高レベルの発現を指令するベクターが望ましい。このようなベクターとしては、抗体コード配列がlac Zコード領域と共にインフレームで個別にベクターへライゲーションされ、融合蛋白質が作製されるような、E. coli発現ベクターpUR278(Rutherら、EMBO J.、2:1791 (1983));pINベクター(Inouye & Inouye、Nucleic Acids Res.、13:3101-3109 (1985);Van Heeke & Schuster、J. Biol. Chem.、24:5503-5509 (1989))などを含むが、これらに限定されるものではない。pGEXベクターも、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)との融合蛋白質として、外来ポリペプチドを発現させるのに使用することができる。一般に、このような融合蛋白質は可溶性であり、マトリックスグルタチオンアガロースビーズへの吸着及び結合、それに続く遊離のグルタチオンの存在下での溶離によって、溶解した細胞から精製することができる。pGEXベクターは、クローニングされた標的遺伝子産物がGST部分から放出され得るように、トロンビン又はXa因子プロテアーゼ切断部位を含むようにデザインされている。
【0087】
昆虫システムにおいて、オートグラファ(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcNPV)は、外来遺伝子を発現するためのベクターとして使用される。このウイルスは、スポトプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞において増殖する。抗体コード配列は、このウイルスの必須でない領域(例えば、多角体(polyhedrin)遺伝子)に個別にクローニングされ、AcNPVプロモーター(例えば、多角体プロモーター)の制御下に配置されてもよい。哺乳動物宿主細胞において、多くのウイルス-ベースの発現システム(例えば、アデノウイルス発現システム)を利用することができる。
前述のように、挿入された配列の発現を変更するか、又は所望する特異的な様式で遺伝子産物を改変及びプロセシングするような宿主細胞株を、選択することができる。このような蛋白質産物の改変(例えば、グリコシル化)及びプロセシング(例えば、切断)は、蛋白質の機能にとって重要である場合がある。
【0088】
組換え抗体の長期にわたる高収量の産生のために、安定した発現が好ましい。例えば、対象とする抗体を安定して発現する細胞株を、抗体のヌクレオチド配列及び選択し得るヌクレオチド配列(例えば、ネオマイシン又はハイグロマイシン)を含む発現ベクターで細胞をトランスフェクションすること、並びに選択マーカーの発現に関して選択することにより、作製することができる。このような操作された細胞株は、抗体分子と直接又は間接に相互作用する化合物のスクリーニング及び評価において、特に有用であり得る。
【0089】
抗体分子の発現レベルは、ベクター増幅により増加することができる(総説は、Bebbington及びHentschel、「The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells in DNA cloning」、第3巻、Academic Press社、ニューヨーク、1987年参照)。抗体を発現しているベクターシステム内のマーカーが増幅可能である場合は、宿主細胞の培養物中に存在するインヒビターレベルの増大が、マーカー遺伝子のコピー数を増加する。増幅される領域は抗体遺伝子に付随していることから、抗体の産生も増大するであろう(Crouseら、Mol. Cell Biol.、3:257 (1983))。
【0090】
宿主細胞は、本発明の範囲内で使用するための2つの発現ベクターでコトランスフェクションされていてもよく、この場合、第一のベクターが重鎖由来のポリペプチドをコードし、第二のベクターが軽鎖由来のポリペプチドをコードしていてもよい。これらのふたつのベクターは、重鎖及び軽鎖ポリペプチドの同等の発現を可能にする同一の選択マーカーを含んでもよい。あるいは、重鎖及び軽鎖の両ポリペプチドをコードしている単一のベクターを使用してもよい。このような状況においては、過剰な毒性のある遊離の重鎖を避けるために、軽鎖は重鎖の前に配置されるべきである(Proudfoot、Nature、322:52 (1986);Kohler、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、77:2197 (1980))。重鎖及び軽鎖のコード配列は、cDNA又はゲノムDNAを含んでもよい。
【0091】
本発明の抗体分子がひとたび組換え的に発現されれば、その抗体分子は当該技術分野においていずれか公知の抗体分子精製法、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、プロテインA又は特異的抗原を用いるようなアフィニティクロマトグラフィー、及びサイズ排除カラムクロマトグラフィー)、遠心分離、示差的溶解度(differential solubility)により、又は蛋白質精製のためのいずれか他の標準技術により精製され得る。
【0092】
あるいは、いずれの融合蛋白質も、発現される融合蛋白質に特異的な抗体を利用することによって、容易に精製することができる。例えば、Janknechtらの説明したシステムは、ヒト細胞株において発現されている未変性融合蛋白質を容易に精製することができる(Janknechtら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、88:8972-897 (1991))。このシステムにおいて、対象とする遺伝子は、その遺伝子のオープンリーディングフレームが、6個のヒスチジン残基からなるアミノ末端タグと翻訳的に融合されるように、ワクシニア組換えプラスミドへサブクローニングされる。このタグは、この融合蛋白質のマトリックス結合ドメインとして役立つ。組換えワクシニアウイルスに感染した細胞からの抽出物は、Ni2+ニトリロ酢酸アガロースカラム上に装荷され、ヒスチジンタグ付き蛋白質がイミダゾール含有緩衝液により選択的に溶離される。
【0093】
好ましい態様において、本発明の抗体又はそれらの断片は、診断的又は治療的部分に結合されている。このような抗体は、診断又は所定の治療計画の有効性を決定するのに使用することができる。検出は、抗体と検出可能な物質とのカップリングにより容易にされ得る。検出可能な物質の例は、様々な酵素、補欠分子団、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射性核種、陽電子放射金属(陽電子放射断層撮影に使用される)、及び非放射性常磁性金属イオン(本発明の診断に使用するために、抗体と結合され得る金属イオンについては、一般に米国特許第4,741,900号参照)を含む。適切な酵素は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ又はアセチルコリンエステラーゼを含み;適切な補欠分子団は、ストレプトアビジン、アビジン及びビオチンを含み;適切な蛍光物質は、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド及びフィコエリスリンを含み;適切な発光物質は、ルミノールを含み;適切な生物発光物質は、ルシフェラーゼ、ルシフェリン及びエクオリンを含み;適切な放射性核種は、125I、131I、111In及び99Tcを含む。
【0094】
本発明の抗体及びそれらの断片は、所定の生物学的反応を改変するために、治療的物質又は薬剤部分と結合させることができる。治療的物質又は薬剤部分は、古典的な化学的治療物質に限定されるようには解釈されない。例えば、薬剤部分は、所望の生物学的活性を有する蛋白質又はポリペプチドであってよい。このような蛋白質は、例えば、アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素又はジフテリア毒素のような毒素;腫瘍壊死因子、α-インターフェロン、β-インターフェロン、神経増殖因子、血小板由来増殖因子、組織プラスミノーゲンアクチベーター、血栓性物質又は抗血管形成性物質(例えばアンジオスタチン若しくはエンドスタチン)のような蛋白質;又は、リンホカイン、インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-6(IL-6)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、神経増殖因子(NGF)又は他の増殖因子のような、生物学的応答改変物質;を含み得るが、これらに限定されるものではない。他の治療的部分は、111In及び90Yのような放射性核種;カリケアマイシンといった抗生物質;又は、アルキルホスホコリン、トポイソメラーゼIインヒビター、タキソイド及びスラミンのような薬物を含むことができる。
【0095】
このような治療的部分を抗体に結合させる技術は周知であり、例えば、Arnonら、「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy、Reisfeldら(編集)、243-56頁、Alan R. Liss社、1985年;Hellstromら、「Controlled Drug Delivery」第2版中の「Antibodies For Drug Delivery」、Robinsonら編集、1987年、623-53頁、Marcel Dekker社;「Monoclonal Antibodies’84: Biological And Clinical Applications」中のThorpeの「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review」、Pincheraら編集、1985年、475-506頁;「Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy」中の「Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy」、Baldwinら編集、303-16頁、Academic Press社、1985年;Thorpeら、Immunol. Rev.、62:119-58 (1982);及び、Dubowchikら、Pharmacology and Therapeutics、83:67-123 (1999)を参照されたい。
【0096】
あるいは、抗体は、二次抗体に結合されてもよく、米国特許第4,676,980号に開示されるような抗体異種複合体を形成することができる。
結合された治療的部分を伴う又は伴わない抗体を、単独で、又は細胞傷害性因子(複数)及び/又はサイトカイン(複数)と組合せて投与される治療的物質として使用することができる。
【0097】
本発明の更なる局面は、CCMP-1ポリペプチドの、例えば発現又は酵素若しくは結合活性のような特性を調節する(アップレギュレーション又はダウンレギュレーション)する活性物質をスクリーニングする方法を提供する。本発明のスクリーニング法により同定された物質は、癌の治療において使用される強力な治療薬である。
【0098】
本発明は、CCMP-1ポリペプチドに結合するか、又はCCMP-1ポリペプチドの発現若しくは活性に対して刺激作用若しくは阻害作用を有する、活性物質を同定する方法を提供する。候補物質の例は、核酸(例えば、DNA及びRNA)、糖質、脂質、蛋白質、ペプチド、ペプチド模倣物、抗体、アゴニスト、アンタゴニスト、小分子及び他の薬物を含むが、これらに限定されるものではない。活性物質は、当該技術分野において公知のコンビナトリアルライブラリー法における多くの適切なアプローチのいずれかを用いて得ることができ、そのようなアプローチとしては次のものを含む:生物学的ライブラリー;空間的に位置付け可能なパラレル固相又は液相ライブラリー;デコンボルーション(deconvolution)を必要とする、合成ライブラリー法;「1ビーズ1化合物」ライブラリー法;及び、アフィニティクロマトグラフィー選択を使用する、合成ライブラリー法。生物学的ライブラリー法は、ペプチドライブラリーに限定されるが、他の4種の方法は、ペプチド、非ペプチドオリゴマー又は化合物の小分子ライブラリーにも用いられる(Lam、Anticancer Drug Des.、12:145 (1997);米国特許第5,738,996号;及び米国特許第5,807,683号)。
分子ライブラリー合成法の例は、当該技術分野において見出すことができ、例えば:DeWitt ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90:6909 (1993);Erbら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、91:11422 (1994);Zuckermannら、J. Med. Chem.、37:2678 (1994);Choら、Science、261:1303 (1993);Carrellら、Angew. Chem. Int. Ed. Engl.、33:2059 (1994);Carellら、Angew. Chem. Int. Ed. Engl.、33:2061 (1994);及び、Gallopら、J. Med. Chem.、37:1233 (1994)において見出すことが出来る。
【0099】
化合物のライブラリーは、例えば、溶液中に(例えば、Houghten、Bio/Techniques、13:412-421 (1992))、又はビーズ(Lam、Nature、354:82-84 (1991))、チップ(Fodor、Nature、364:555-556 (1993))、細菌(米国特許第5,223,409号)、胞子(米国特許第5,571,698号;第5,403,484号;及び第5,223,409号)、プラスミド(Cullら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、89:1865-1869 (1992))若しくはファージ(Scott及びSmith、Science、249:386-390 (1990);Devlin、Science、249:404-406 (1990);Cwirlaら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、87:6378-6382 (1990);及び、Felici、J. Mol. Biol.、222:301-310 (1991))上に存在することができる。
【0100】
ひとつの態様において、CCMP-1ポリペプチドと相互作用する(すなわち、結合する)物質は、細胞-ベースのアッセイシステムにおいて同定される。この態様によると、CCMP-1ポリペプチドを発現している細胞が候補物質と接触させられて、候補物質がCCMP-1ポリペプチドと相互作用する能力が決定される。好ましくは、候補物質のCCMP-1ポリペプチドと相互作用する能力は、参照値域(reference range)又は対照と比較される。別の態様において、CCMP-1ポリペプチドを発現している細胞の第一及び第二の集団が候補物質又は対照物質と接触させられて、候補物質と対照物質との間の相互作用の差異を比較することにより、ポリペプチドと相互作用する候補物質の能力が決定される。所望であれば、このアッセイは、複数の候補物質(例えば、ライブラリー)をスクリーニングするために使用することができる。細胞は、例えば、原核生物起源(例えば、E. coli)であってもよく、又は真核生物起源(例えば、酵母又は哺乳動物)であってもよい。更に、これらの細胞は、CCMP-1ポリペプチドを内因性に発現してもよく、又はこのポリペプチドを発現するように遺伝子操作されていてもよい。一部の態様において、CCMP-1ポリペプチド又は候補物質は、例えば、放射性標識(例えば、32P、35S又は125I)又は蛍光標識(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリスリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルアルデヒド又はフルオレスカミン)を用いて、ポリペプチドと候補物質との間の相互作用を検出できるように標識される。CCMP-1ポリペプチドと直接又は間接に相互作用する候補物質の能力は、当業者に公知の方法により決定することができる。例えば、候補物質及びポリペプチドの間の相互作用は、フローサイトメトリー、シンチレーションアッセイ、免疫沈降又はウェスタンブロット分析により決定することができる。
【0101】
別の態様において、CCMP-1ポリペプチドと相互作用する(すなわち、CCMP-1ポリペプチドと結合する)物質は、天然の又は組換えCCMP-1ポリペプチドが候補物質と接触させられて、候補物質のポリペプチドと相互作用する能力が決定される無細胞アッセイシステムにおいて同定される。好ましくは、候補物質のCCMP-1ポリペプチドと相互作用する能力は、参照値域又は対照と比較される。あるいは、天然の又は組換えCCMP-1ポリペプチドを含む第一及び第二の試料が候補物質又は対照物質と接触させられて、候補物質と対照物質との間の相互作用の差異を比較することにより、候補物質が前記ポリペプチドと相互作用する能力が決定される。所望であれば、このアッセイは、複数の候補物質(例えば、ライブラリー)をスクリーニングするために使用してもよい。好ましくは、CCMP-1ポリペプチドは、例えば、CCMP-1ポリペプチドを特異的に認識して結合する固定化された抗体を有するとCCMP-1ポリペプチド接触させることにより、又は蛋白質に結合するようにデザインされた表面を有する精製されたポリペプチド調製物と接触させることにより、最初に固定化される。CCMP-1ポリペプチドは、部分的又は完全に精製されていてもよく(例えば、部分的又は完全に他のポリペプチドを含まない)、又は細胞溶解液の一部であってもよい。更に、CCMP-1ポリペプチドは、CCMP-1ポリペプチド又はその生物学的に活性な部分及びグルタチオニン-S-トランスフェラーゼのようなドメインを含む融合蛋白質であってもよい。あるいは、CCMP-1ポリペプチドは、当業者に周知の技術を用い、ビオチン化することができる(例えば、ビオチン化キット、Pierce Chemicals社;ロックフォード、IL)。候補物質がCCMP-1ポリペプチドと相互作用する能力は、当業者に公知の方法により二連で決定されてもよい。
【0102】
ひとつの態様において、CCMP-1ポリペプチドと結合又は相互作用する他の蛋白質を同定するために、CCMP-1ポリペプチドが、二重ハイブリッド(two-hybrid)アッセイ又は三重ハイブリッド(three hybrid)アッセイにおいて「おとり(bait)蛋白質」として使用される(例えば、米国特許第5,283,317号;Zervosら、Cell、72:223-232 (1993);Maduraら、J. Biol. Chem.、268:12046-12054 (1993);Bartelら、Bio/Techniques、14:920-924 (1993);Iwabuchiら、Oncogene、8:1693-1696 (1993);及び、国際公開公報第94/10300号参照)。当業者が理解するように、このような結合蛋白質は、CCMP-1ポリペプチドによるシグナルの伝達に関与している可能性がある。例えばこれらは、CCMP-1ポリペプチドに関与するシグナル伝達経路の上流又は下流エレメントである場合がある。あるいは、CCMP-1ポリペプチドと相互作用するポリペプチドは、CCMP-1ポリペプチドを含む蛋白質複合体(すなわち、1種又は複数の他のポリペプチドと直接又は間接に相互作用するCCMP-1ポリペプチド)を単離し、質量分析又はウェスタンブロットのような当該技術分野において公知の方法を使用して関連する蛋白質を同定することにより、同定することができる(例えば、Blackstock, W. & Weir, M.、Trends in Biotechnology、17: 121-127 (1999);Rigaut, G.、Nature Biotechnology、17: 1030-1032 (1999);Husi, H.、Nature Neurosci.、3:661-669 (2000); Ho, Y.ら、Nature、415:180-183 (2002);Gavin, A.ら、Nature、415: 141-147 (2002))。
【0103】
全ての場合において、候補物質がCCMP-1ポリペプチドと直接又は間接に相互作用する能力は、当業者に公知の方法により決定することができる。候補物質とCCMP-1ポリペプチドとの間の相互作用は、例えば、フローサイトメトリー、シンチレーションアッセイ、活性アッセイ、質量分析、顕微鏡観察、免疫沈降又はウェスタンブロット分析(これらに限定されないが)により決定することができる。
【0104】
別の態様において、CCMP-1ポリペプチドと競合的に相互作用する(すなわち、結合する)物質は、競合的結合アッセイにより同定される。この態様によると、前記ポリペプチドを発現している細胞は、候補物質及び前記ポリペプチドと相互作用することが既知の物質と接触させられて;次に、候補物質が前記ポリペプチドと競合的に相互作用する能力が決定される。あるいは、CCMP-1ポリペプチドと競合的に相互作用する(すなわち、結合する)物質は、前記ポリペプチドを、候補物質及び前記ポリペプチドと相互作用することが既知の物質と接触させることにより、無細胞アッセイシステムにおいて同定される。前述のように、候補物質がCCMP-1ポリペプチドと相互作用する能力は、当業者に公知の方法により決定することができる。これらのアッセイは、細胞ベースであるか又は無細胞であるかにかかわらず、複数の候補物質(例えば、ライブラリー)をスクリーニングするのに使用することができる。
【0105】
別の態様において、CCMP-1ポリペプチドの発現を調節する(すなわち、アップレギュレーション又はダウンレギュレーションする)活性物質は、細胞ベースのアッセイにおいて同定される。従って、CCMP-1ポリペプチド又は核酸を発現している細胞集団が候補物質と接触させられて、その候補物質のCCMP-1ポリペプチド又はCCMP-1核酸の発現を調節する能力が、参照値域又は対照との比較により決定される。別の態様において、CCMP-1ポリペプチド又はCCMP-1核酸を発現している細胞の第一及び第二の集団が候補物質又は対照物質と接触させられて、候補物質のCCMP-1ポリペプチド又はCCMP-1核酸の発現を変更する能力が、第一及び第二の細胞集団間でCCMP-1ポリペプチド又はCCMP-1核酸の発現レベルの差異を比較することにより決定される。更なる態様において、第一の集団におけるCCMP-1ポリペプチド又はCCMP-1核酸の発現は、更に参照値域又は対照と比較されてもよい。次にこの比較に基づいて、候補物質を、CCMP-1ポリペプチド又は核酸の発現のモジュレーターとして同定することができる。例えば、CCMP-1ポリペプチド又は該ポリペプチドをコードしているmRNAの発現が候補物質の存在下で非存在下よりも有意に大きい場合、その候補物質は、CCMP-1ポリペプチド又は該ポリペプチドをコードしているmRNAの発現の刺激物質(stimulator)として同定される。あるいは、CCMP-1ポリペプチド又は該ポリペプチドをコードしているmRNAの発現が候補物質の存在下で非存在下よりも有意に低い場合、この候補物質は、CCMP-1ポリペプチド又は該ポリペプチドをコードしているmRNAの発現のインヒビターとして同定される。CCMP-1ポリペプチド又はそれをコードしているmRNAの発現レベルは、本発明の記載に基づいて当業者に公知の方法により決定することができる。例えば、CCMP-1 mRNA発現は、ノーザンブロット分析又はRT-PCRにより評価することができ、蛋白質レベルは、ウェスタンブロット分析又は他の当該技術分野において公知の手段により評価することができる。
【0106】
別の態様において、CCMP-1ポリペプチドの活性を調節する活性物質は、CCMP-1ポリペプチドを含有する調製物又はCCMP-1ポリペプチドを発現している細胞(例えば、原核細胞又は真核細胞)を、候補物質又は対照物質と接触させて、候補物質がCCMP-1ポリペプチドの活性を調節(例えば、刺激又は阻害)する能力を決定することにより、同定される。CCMP-1ポリペプチドの活性は、「下流エフェクター」に対するその作用(例えば、このポリペプチドの細胞シグナル伝達経路の誘導(例えば、細胞内Ca2+、ジアシルグリセロール、IP3、cAMP、又は他の中間体)であるが、これに限定されない)を検出すること、適切な基質に対するCCMP-1ポリペプチドの触媒又は酵素活性を検出すること、レポーター遺伝子(例えば、CCMP-1ポリペプチドに応答し、検出マーカー(例えば、ルシフェラーゼ)をコードしている核酸に機能的に連結されている、調節エレメント)の誘導を検出すること、又は細胞応答(例えば、細胞分化、若しくは場合によっては細胞増殖)を検出することにより評価することができ、本発明の記載に基づいて、前記の活性を測定するために当業者に公知の技術を使用して(例えば、米国特許第5,401,639号参照)、評価することができる。次に候補物質の作用を対照物質と比較することにより、候補物質を、CCMP-1ポリペプチドの活性のモジュレーターとして同定することができる。適切な対照物質は、PBS及び通常の生理食塩水(NS)を含む。
【0107】
別の態様において、細胞ベースのアッセイシステムが使用され、CCMP-1ポリペプチドの生成又は分解に寄与するか、又はCCMP-1ポリペプチドの翻訳後改変に寄与し、酵素のような蛋白質又はその生物学的に活性な部分に結合するか又はそれらの活性を変更する活性物質が同定される。第一のスクリーニングにおいて、CCMP-1ポリペプチドの生成、分解又は翻訳後改変を調節する化合物を同定するために、複数の物質(例えば、ライブラリー)が、次の(i)及び(ii)を天然に又は組換え的に発現する細胞と接触させられる:(i)CCMP-1ポリペプチド;及び、(ii)CCMP-1ポリペプチドのプロセシングに寄与する蛋白質。所望であれば、第一のスクリーニングにおいて同定された活性物質は、次の第二のスクリーニングにおいて、CCMP-1ポリペプチドを天然に又は組換え的に発現している細胞に対してアッセイされてもよい。候補物質がCCMP-1ポリペプチドの生成、分解又は翻訳後改変を調節する能力は、当業者に公知の方法により決定することができ、そのような方法としてはキナーゼアッセイ、ホスファターゼアッセイ、フローサイトメトリー、シンチレーションアッセイ、免疫沈降及びウェスタンブロット分析を含むが、これらに限定されるものではない。
更に別の態様において、CCMP-1ポリペプチドを発現している細胞は、複数の候補物質と接触させられる。このような物質の、CCMP-1ポリペプチドの生成、分解又は翻訳後改変を調節する能力は、先に説明されたような当業者に公知の方法により決定することができる。
【0108】
別の態様において、CCMP-1ポリペプチドの発現、活性又は発現及び活性の両方を調節(すなわち、アップレギュレート又はダウンレギュレート)する活性物質は、動物モデルにおいて同定される。適切な動物の例は、マウス、ラット、ウサギ、サル、モルモット、イヌ及びネコを含むが、これらに限定されるものではない。好ましくは、使用される動物が、癌のモデルを提示している。従って、哺乳動物の第一群及び第二群に、候補物質又は対照物質が投与され、第一及び第二の哺乳動物群間の発現レベルの差異を比較することにより、候補物質のCCMP-1ポリペプチド又は核酸の発現を調節する能力が決定される。所望であれば、第一及び第二の哺乳動物群間のCCMP-1ポリペプチド又は核酸の発現レベルは、哺乳動物対照群のCCMP-1ポリペプチド又は核酸の発現レベルと比較することができる。候補物質又は対照物質は、当該技術分野において公知の手段により投与することができる(例えば、経口、経直腸、又は腹腔内若しくは静脈内のような非経口)。CCMP-1ポリペプチド又は核酸の発現の変化は、先に概説した方法により評価することができる。特定の態様において、物質の治療上有効な量は、疾患症状の改善又は改善をモニタリングすることにより決定することができ、疾患発症を遅延するか又は疾患進行を遅らせる(例えば腫瘍サイズの縮小であるが、これに限定されない)。癌専門医に公知の技術を用い、候補物質が、疾患に関連した1種又は複数の症状を変更するかどうかを決定することができる。
【0109】
本発明は、癌の治療又は予防について化合物の有効性を同定又は証明するため、創薬での使用するためのアッセイも提供する。試験化合物は、癌に罹患した対象者におけるCCMP-1ポリペプチドのレベルを調節する能力について、アッセイされ得る。癌に罹患した対象者におけるCCMP-1ポリペプチドのレベルを、癌でない対象者において認められるレベルへと調節し得る化合物、又は癌の実験動物モデルにおいて同様の変化を生じ得る化合物は、更なる創薬のためのリード化合物として使用されてもよく、又は治療に使用されてもよい。このようなアッセイは、候補薬物のスクリーニング、臨床モニタリング又は創薬に使用することもでき、この場合、大量のCCMP-1ポリペプチドは、臨床疾患の代理マーカーとして役立ち得る。
【0110】
当業者であれば、CCMP-1ポリペプチドは、物質、特に該ポリペプチドの活性を調節(例えば、刺激又は阻害)するように作用する小分子を構造ベースでデザインする方法において使用できることも理解するであろう。該方法は、下記の工程を含む:
1)該ポリペプチドの三次元構造を決定する工程;
2)前記物質の可能性のある反応部位又は結合部位(複数)のポリペプチド内の三次元構造を推定する工程;
3)推定された反応部位又は結合部位と、反応又は結合することが予測される候補物質を合成する工程;及び
4)候補物質が該ポリペプチドの活性を調節し得るかどうかを試験する工程。
前述の方法は、反復プロセスである可能性が高いことも理解されるであろう。
【0111】
本発明は更に、先に説明されたスクリーニングアッセイにより同定された物質、CCMP-1ポリペプチド及びCCMP-1核酸、並びに本願明細書に記載されるような治療におけるそれらの使用を提供する。以後、治療において使用する物質、CCMP-1ポリペプチド、それに対する抗体及びCCMP-1核酸は、「活性物質」と称す。用語「治療」は、治療的又は予防的のいずれかの療法を含む。本願明細書において、特定の活性物質又は物質の組合せを使用し疾患又は状態を治療若しくは予防する方法について言及する場合は、そのような言及は、疾患又は状態を治療若しくは予防するための医薬品の調製におけるその活性物質又は物質の組合せの使用が意図されていることが理解されることとする。
【0112】
従って、本発明は、該対象者へ、少なくとも1種の本発明の活性物質を治療的に有効な量で投与することを含む、癌の予防及び/又は治療の方法を提供する。
更に別の局面において、本発明は、少なくとも1種の本発明の活性物質を含有する医薬組成物を提供し、前記医薬組成物は、任意で1種又は複数の医薬として許容できる賦形剤、担体又は希釈剤を共に含んでもよい。
【0113】
ひとつの態様において、1種又は複数の活性物質が、単独で、又は1種若しくは複数の癌の追加治療若しくは治療的化合物と組合せて、投与される。このような治療の例は、外科的療法及び放射線療法を含む。治療的化合物の例は、シクロホスファミド(シトキサン(Cytoxan)(商標));メトトレキセート(メトトレキセート(Methotrexate)(商標));5-フルオロウラシル(5-FU);パクリタキセル(タキソール);ドセタキセル(タキソテール(Taxotere)(商標));ビンクリスチン(オンコビン(Oncovin)(商標));ビンブラスチン(ヴェルバン(Velban)(商標));ビノレルビン(ナベルビン(Navelbine)(商標));ドキソルビシン(アドリアマイシン);タモキシフェン(ノルバデックス(Nolvadex)(商標));トレミフェン(フェアストン(Fareston)(商標));酢酸メゲストロール(メゲース(Megace)(商標));アナストロゾール(アリミデックス(Arimidex)(商標));ゴセレリン(ゾラデックス(Zoladex)(商標));抗-HER2モノクローナル抗体(ハーセプチン(Herceptin)(商標));カペシタビン(ゼローダ(Xeloda)(商標))、及び塩酸ラロキシフェン(エビスタ(Evista)(商標))を含むが、これらに限定されるものではない。
【0114】
(ヒト又は家畜の)治療において本発明の活性物質を使用するために、活性物質は通常、標準的な医薬的手法に従い、例えば活性物質を医薬として許容される担体と混合することによって、医薬組成物に調製される。従って本発明の更なる局面において、少なくとも1種の本発明の活性物質及び医薬として許容される担体を含有する、医薬組成物が提供される。この医薬組成物は、癌の予防又は治療に特に有用である。ひとつの局面において、医薬組成物はワクチンとして使用され、よっていずれか更なる成分がワクチン用途のために許容されるであろう。加えて当業者であれば、そのようなワクチン調製物に1種又は複数の適切なアジュバントを添加できることを理解するであろう。
【0115】
本発明の活性物質は、薬物投与に通常使用される経路のいずれかにより、対象者に投与することができ、例えば活性物質は、非経口、経口、局所的(頬腔内、舌下又は経皮を含む)又は吸入により投与することができる。所定の症例のいずれかにおいて最も適した投与経路は、具体的な活性物質、関連する癌、対象者、疾患の性質及び重症度、並びに対象者の生理学的状態により依存するであろう。
この活性物質は、1種又は複数の他の治療的活性のある化合物(例えば、抗癌剤)と組合せて(例えば、同時、逐次又は個別に)投与することができる。
【0116】
活性物質の投与される用量は、具体的な活性物質、関連する癌、対象者、疾患の性質及び重症度、対象者の生理的状態、並びに選択された投与経路にしたがって変動するであろうし;当業者であれば、適切な用量を容易に決定することができる。ヒト及び動物における癌及び腫瘍の治療に関して、用量は、0.01mg/kg〜750mg/kgの範囲であり得る。ヒト及び動物における予防的使用に関して、用量は、0.01mg/kg〜100mg/kgの範囲であり得る。
医薬組成物は、投与法に応じて、本発明の活性物質を0.1質量%、好ましくは10〜60質量%含有する。
【0117】
医薬組成物は、1回投与量あたりの予め定められた量の本発明の活性物質を含有する単位剤形で、通常提供され得る。このような単位は、例えば、治療される状態、投与経路並びに対象者の年齢、体重及び状態に応じて750mg/kg〜0.01mg/kgを含むが、これらに限定されるものではない。好ましい単位用量組成物は、先に引用したような活性物質又はその適切な画分の一日量又は副次投与量(sub-dose)を含有するものである。
本発明の活性物質の個々の用量の最適量及び間隔は、治療される状態の性質及び程度、剤形、投与の経路及び部位、並びに治療される具体的な対象者により決定され、そのような選択肢が通常の技術により決定できることは、当業者であれば理解するであろう。治療の最適コース、すなわち指定された日数にわたって1日あたり与えられる本発明の活性物質の投与回数は、通常の過程の用量決定(treatment determination)試験を用いて当業者により確認することができることも、当業者であれば理解するであろう。
【0118】
用量投与計画は、最適な所望する反応を提供するように調整される。例えば、単回ボーラス(bolus)で投与することができ、数回の分割量で時間をかけて投与することができ、又は治療状況の緊急性により示されるように、投与量を比例的に減量又は増量することができる。
本発明で使用される医薬として許容できる担体は、例えば投与経路に応じて、多種多様な形態をとることができる。
経口投与のための組成物は、液体又は固形物であってよい。経口用液体調製物は、例えば、水性又は油性の懸濁剤、液剤、乳剤、シロップ剤若しくはエリキシル剤の形状であってもよく、又は使用前に水若しくは他の適切なビヒクルにより再構成される乾燥製品として提供されてもよい。経口液体調製物は、懸濁剤、例えば、ソルビトール、メチルセルロース、ブドウ糖シロップ、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル又は水和された食用油など;乳化剤、例えば、レシチン、ソルビタンモノオレエート又はアカシアなどを含有することができ、水;非水性ビヒクル(これは食用油を含む)、例えば、アーモンド油、グリセリンのような油状エステル、プロピレングリコール又はエチルアルコール;保存剤、例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチル若しくはプロピル又はソルビン酸;香味剤、保存剤、着色剤などを使用することができる。
【0119】
散剤、カプセル剤及び錠剤のような経口固形調製物の場合、デンプン、糖質、微晶質セルロースのような担体、希釈剤、顆粒化剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などを含むことができる。投与の容易さのために、錠剤及びカプセル剤は、最も有利な経口単位剤形を代表し、その場合一般に固形医薬担体が使用される。本発明の活性物質は、前述の一般的剤形に加え、制御放出手段及び/又は送達装置により投与することもできる。錠剤及びカプセル剤は、通常の担体又は賦形剤、例として、結合剤、例えば、シロップ、アカシア、ゼラチン、ソルビトール、トラガカント又はポリビニルピロリドンなど;充填剤、例えば乳糖、糖、トウモロコシデンプン、リン酸カルシウム、ソルビトール又はグリシンなど;錠剤化滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール又はシリカなど;崩壊剤、例えばジャガイモデンプンなど;又は、許容できる湿潤剤、例えばラウリル硫酸ナトリウムなどを含有することができる。これらの錠剤は、通常の医薬の実践において周知の方法に従い、標準的な水性又は非水性技術によりコーティングしてもよい。
【0120】
経口投与に適している本発明の医薬組成物は、各々が予め定められた量の活性物質を散剤又は顆粒剤として含有しているカプセル剤、カシェ剤又は錠剤のような個別の単位として、又は液剤若しくは水性液体、非水性液体中の懸濁剤、水中油型乳剤、若しくは油中水型液体乳剤として存在することができる。このような組成物は、製薬学のいずれかの方法により調製することができるが、全ての方法は、1種又は複数の必要成分で構成される担体と活性物質とを会合させる工程を含む。一般にこれらの組成物は、活性物質を、液体担体又は細かく分けられた固形担体又はそれら両方と均一及び密に混合し、その後必要ならば、製品を所望の体裁(presentation)へと成形することにより調製される。例えば錠剤は、圧縮又は成形により調製することができ、任意で1種又は複数の付属成分と一緒に調製してもよい。
【0121】
圧縮錠剤は、散剤又は顆粒剤のような易流動性の形状の活性物質を適切な機械において圧縮することにより調製することができ、前記活性物質は任意で結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、界面活性剤又は分散剤と混合されていてもよい。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿潤された粉末化合物の混合物を適切な機械で成形することにより作製してもよい。所望であれば、各錠剤は、約1mg〜約500mgの活性物質を含有し、各カシェ剤又はカプセル剤は、約1〜約500mgの活性物質を含有する。
【0122】
本発明の活性物質を含有する組成物は、粉末又は液体濃縮物の形で調製されてもよい。通常の水に可溶性の賦形剤、例えば乳糖又はショ糖を、散剤に配合して、散剤の物理特性を改善することができる。従って本発明の特に適切な散剤は、このような組合せを50〜100質量%、好ましくは60〜80質量%、通常の賦形剤を0〜50質量%、好ましくは20〜40質量%含有する。獣医学的な場面で使用される場合、そのような散剤は、プレミックスを介して動物飼料に添加されるか、又は動物飲料水中に希釈してもよい。
本発明の経口投与用の液体濃縮物は、水溶性化合物の組合せを適切に含有し、任意で獣医学的に許容される水混和性溶媒、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、グリセロールフォーマル(glycerol formal)、又は最大30容量%のエタノールと混合した溶媒を含有してもよい。液体濃縮物は、動物の飲料水に投与することができる。
【0123】
非経口投与に適した医薬組成物は、ヒドロキシプロピルセルロースのような界面活性剤と適宜混合した水を溶媒とする、本発明の活性物質の液剤又は懸濁剤として調製することができる。分散剤も、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの油中混合物中で調製することができる。通常の貯蔵及び使用の条件下では、これらの調製物は、微生物の増殖を防止するために、保存剤を含有する。
注射使用に適した医薬品形態は、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、及び組成物を対象とされるレシピエントの血液と等張にする溶質を含有し得る水性又は非水性の滅菌注射液、並びに懸濁化剤及び増粘剤を含有し得る水性及び非水性の滅菌懸濁剤を含む。即時調製注射液、分散液及び懸濁液は、無菌の散剤、顆粒剤及び錠剤から調製することができる。
【0124】
これらの組成物は、例えば密封したアンプル及びバイアルのような単回投与又は反復投与用の容器内で供することができ、使用直前に無菌の液体担体、例えば注射用水の添加のみを必要とする凍結され乾燥された(凍結乾燥)状態で貯蔵されてもよい。無菌の液体担体は、個別のバイアル又はアンプル内に供給することができ、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール)、それらの適切な混合物並びに植物油を含有する溶媒又は分散媒体であってもよい。有利なことに、局所麻酔薬、保存剤及び緩衝剤のような物質も、無菌の液体担体中に含むことができる。
【0125】
ある態様において、本発明の活性物質は、in vivoにおける適切な分布を確実にするために、例えばリポソーム中に製剤化することができる。リポソーム製造法については、例えば、米国特許第4,522,811号;第5,374,548号;及び、第5,399,331号を参照のこと。リポソームは、特定の細胞又は器官へ選択的に輸送される1種又は複数の部分を含むことができ、その結果、標的化された薬物送達を増強する(例えば、Ranade, V.、J. Clin. Pharmacol.、29:685 (1989)参照)。
標的化部分の例は、葉酸又はビオチン(例えば、米国特許第5,416,016号参照);マンノシド(Umezawaら、Biochem. Biophys. Res. Comm.、153:1038 (1988));抗体(Bloeman, P.ら、FEBS Lett.、357:140 (1995);Owais, M.ら、Antimicrob. Agents Chemother.、39: 180 (1995));界面活性剤プロテインA受容体(Briscoeら、Am. J. Physiol.、1233:134 (1995))、発明された分子の成分と同様に、本発明の組成を含み得るものの異なる種類;psi 20(Schreierら、J. Biol. Chem.、269:9090 (1994));同じくKeinanen, K. & Laukkanen, M.、FEBS Lett.、346:123 (1994);Killion, J. & Fidler, I.、Immunomethods、4:273 (1994)参照)を含む。本発明のひとつの態様において、本発明の活性物質は、リポソーム中に製剤化され;より好ましい態様において、リポソームは、標的化部分を含む。最も好ましい態様において、リポソーム中の治療的化合物は、腫瘍近傍の部位へボーラス注射で送達される。
【0126】
局所的投与に適応している医薬組成物は、軟膏剤、クリーム剤、懸濁剤、ローション剤、散剤、液剤、パスタ剤、ゲル剤、含浸させた包帯、スプレー剤、エアゾール剤又は油剤、経皮的器具、粉剤などとして製剤することができる。これらの組成物は、活性物質を含む通常の方法により調製することができる。従ってこれらは、適合性のある通常の担体及び添加剤、例えば保存剤、薬物浸透を補助する溶媒、クリーム剤又は軟膏剤中の皮膚軟化剤、及びローション剤のためのエタノール又はオレイルアルコールなども含むこともできる。このような担体は、組成物の約1%から最大約98%として存在してもよい。より一般的には、このような担体が組成物の最大約80%までを形成するであろう。単なる例証として、クリーム剤又は軟膏剤は、所望の稠度を有するクリーム剤又は軟膏剤を製造するために、約5〜10質量%で前記化合物を充分量含有している充分量の親水性物質及び水の混合により調製される。
【0127】
経皮投与に適応している医薬組成物は、長期間レシピエント上皮と密な接触が維持されることが意図される個別の貼付剤として示することもできる。例えばこの活性物質は、イオン導入により貼付剤から送達することができる。
例えば口及び皮膚のような、外側組織への用途に関して、この組成物は、外用軟膏剤又はクリーム剤として塗布されることが好ましい。軟膏剤として製剤される場合、この活性物質は、パラフィン系又は水混和性軟膏基剤と共に使用することができる。あるいは、活性物質は、水中油型クリーム基剤又は油中水型基剤と共に製剤することができる。
【0128】
口中外用投与に適応する医薬組成物は、菱形飴剤、香錠及び含嗽剤を含む。
眼内外用に適応する医薬組成物は、活性物質が、適切な担体、特に水性溶媒中に溶解又は懸濁されている点眼剤を含む。前記医薬組成物は、前述のような外用軟膏剤又はクリーム剤も含む。
担体は固形物であるような直腸投与に適応する医薬組成物は、最も好ましくは単位投与量の坐剤で提供される。適切な担体は、ココアバター又は他のグリセリド若しくは当該技術分野において通常使用される材料を含み、これらの坐剤は、軟化した又は融解した担体(複数)との組合せと混合し、その後冷却し、金型で成形することにより通常形成される。これらは、浣腸剤として投与することもできる。
膣内投与に適応する医薬組成物は、ペッサリー、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、パスタ剤、泡状又は噴霧状組成物として提供することができる。これらは、当該技術分野において通常使用される皮膚軟化剤又は基剤を含有してもよい。
【0129】
癌におけるCCMP-1の重要性を考慮し、本発明の更なる局面を下記のように構成する:
i)CCMP-1ポリペプチド発現を調節する、例えば、アップレギュレート又はダウンレギュレートする化合物のスクリーニング法;
ii)患者から得た生物学的試料中のCCMP-1ポリペプチドの存在若しくは非存在を決定する工程及び/又は前記ポリペプチドを定量する工程を含む、患者における癌治療のモニタリング/評価する方法;
iii)少なくとも1種のCCMP-1ポリペプチドの存在若しくは非存在を決定する工程及び/又は前記ポリペプチドを定量する工程を含む、対象者から得た生物学的試料中の癌細胞の同定法;
(iv)癌患者において、CCMPポリペプチド若しくはCCMP-1核酸の発現若しくは生物学的活性(若しくはそれら両方)又は相互作用を、調節(例えば、アップレギュレート又はダウンレギュレート)する又は補う活性物質を、治療的に有効な量で患者へ投与することを含む、癌の治療法;
(v)(a)癌の発症又は発生の予防;(b)癌の進行の防止;又は、(c)癌症状の寛解のため、医薬品製造におけるCCMP-1ポリペプチド又はCCMP-1核酸の使用;
(vi)癌の治療用医薬品の製造における、CCMP-1ポリペプチドを認識する抗体の使用;
(vii)該CCMP-1ポリペプチドを認識する、治療的部分に結合させた抗体の、癌の治療用医薬品の製造における使用;
(viii)CCMP-1ポリペプチドを認識する抗体を治療的に有効な量で該対象者へ投与することを含む、対象者の癌治療法;
(ix)癌治療において使用するためのCCMP-1ポリペプチドを認識する抗体;
(x)CCMP-1ポリペプチド又はCCMP-1核酸の発現若しくは活性と相互作用するか、又は前記発現若しくは活性を調節する物質を、治療的に有効な量で該対象者へ投与することを含む、対象者における癌治療法;及び
(xi)癌治療において使用するための、CCMP-1ポリペプチド又はCCMP-1核酸の発現若しくは活性と相互作用するか、又は前記発現若しくは活性を調節する物質。
【0130】
本発明の各局面の好ましい特徴は、他の局面の各々に必要な変更を加えている。本願明細書で言及した特許及び特許出願を含む文献は、法的に許される程度に完全に組込まれている。
【実施例1】
【0131】
(実施例1:結腸腺癌細胞株におけるCCMP-1の同定)
CCMP-1を、結腸直腸癌細胞膜及び乳癌細胞膜から単離し、1Dゲル電気泳動により精製して、クローニングする前に質量分析により特徴付けた。
結腸腺癌細胞株膜内の蛋白質を、SDS-PAGEにより分離し、分析した。
(接着性結腸腺癌細胞株の粗分画)
[1a-細胞培養物]
細胞株LoVo(ECACC 87060101)及びLS174T(ECACC 87060401)を、各々、10%ウシ胎児血清、2mMグルタミン、1%ペニシリン及び1%ストレプトマイシンを補充した、Hams F12又はEMEM+1%NEAA培地において培養した。これらの細胞を、95%空気及び5%二酸化炭素の加湿した大気下で、37℃にて増殖させた。
【0132】
[1b-細胞画分及び形質膜作製]
結腸腺癌細胞株のプールから、精製した膜調製物を単離した。接着細胞(2x108)を、PBSで3回洗滌して、プラスチック製セルリフターを使用して掻き取った。細胞を、1000xgで5分間、4℃にて遠心し、この細胞ペレットを、ホモジナイゼーション用緩衝液(250mMショ糖、10mM HEPES、1mM EDTA、1mM バナジン酸塩及び0.02%アザイド、プロテアーゼインヒビター)中に再懸濁した。ボールベアリングホモジナイザー(8.002mmボール、HGM Lab equipment社)を用い、細胞のおよそ95%が破壊されるまで、細胞を破砕した。膜を、Pasqualiらの説明した方法を用いて分画した。分画した細胞を3000xgで10分間、4℃にて遠心し、除核(postnuclear)上清を60%ショ糖緩衝剤(cushion)上に積層し、100,000xgで45分間遠心した。この膜を、パスツールピペットを用いて収集し、15〜60%ショ糖勾配上に積層し、100,000xgで17時間遠心した。分画したショ糖勾配由来の蛋白質を、4〜20%の1Dゲル(Novex社)上に泳動し、ウェスタンブロットを行った。アルカリホスファターゼ及びトランスフェリン免疫反応性のものを含むが、オキシドレダクターゼII又はカルネキシン免疫反応性のものは含まないこれらの画分をプールして、形質膜画分とした。
【0133】
[1c-1D-ゲル分析のための形質膜画分の調製]
形質膜画分をプールし、10mM HEPES、1mM EDTA、1mMバナジン酸塩、0.02%アザイドで、少なくとも4倍に希釈した。希釈したショ糖画分をSW40又はSW60チューブに入れ、遅い加速及び減速で、100,000xgにて45分間遠心した。上清を、膜ペレットから除去し、このペレットをPBS-CMで3回洗滌した。膜ペレットを、63mM TrisHCl、pH7.4の2%SDS中で可溶化した。メルカプトエタノール(最終2%)、グリセロール(10%)及びブロモフェノールブルー(最終0.0025%)の添加後、蛋白質アッセイを行った。最終濃度1μg/μlの蛋白質を、1D-ゲル装荷に使用した。
【0134】
[1d-1D-ゲル技術]
蛋白質又は膜ペレットを、1D-試料緩衝液(約1mg/ml)中に溶解し、この混合物を95℃で5分間加熱した。
試料を、Bio-Rad社(Bio-Rad Laboratories社、Hemel Hempstead、英国)から購入したプレキャスト8〜16%グラジエントゲル上での1D-ゲル電気泳動を用いて、分離した。界面活性剤(detergent)抽出物から得た蛋白質混合物30〜50μgを含有する試料を、マイクロピペットを用いスタッキングゲルウェルにアプライした。分子量(10、15、25、37、50、75、100、150及び250kDa)を含むウェルが、撮像後の分離ゲルの内挿によるキャリブレーションのために含まれた。蛋白質の分離は、約5時間又はブロモフェノールブルーマーカー色素がゲル下端に到達するまで、電流30mAをゲルに流して行った。
電気泳動後、ゲル板をこじ開け、ゲルを固定液(10%酢酸、40%エタノール、50%水)のトレイに置き、一晩振盪した。次にこのゲルを、プライマー溶液(ミリQ水中7.5%酢酸、0.05%SDS)中で振盪することにより30分間プライミングし、その後蛍光色素(7.5%酢酸中0.06% OGS色素)と共に3時間振盪しながらインキュベーションした。好ましい蛍光色素は、米国特許第6,335,446号に開示されている。シプロレッド(Sypro Red)(Molecular Probes社、ユージーン、OR)は、この目的に適する代替色素である。
染色したゲルのデジタル画像を、ストームスキャナ(Storm Scanner)(Molecular Dynamics社、米国)において、青色蛍光モードで走査することにより得た。捕捉した画像を用い、ゲル内蛋白質分解のため、切り出すゲル領域を決定した。
【0135】
[1e-選択された蛋白質の回収及び分析]
ゲルの各垂直なレーンを、ステンレス鋼製の外科用メス、又は特定の蛋白質バンドを収集しようとせずにゲルレーンを長さに沿って下方へ移動しながら連続的に切り出すPEEKゲルカッター(OGS)のどちらかにより、切り出した。蛋白質CCMP-1は、およそMW 17.9kDaであった。
【0136】
蛋白質は、トリプシン(改変トリプシン、Promega社、WI、米国)によるゲル内消化を用いてプロセッシングし、トリプシン消化したペプチドを作製した。回収した試料を、ふたつに分けた。MALDI分析前に、試料を脱塩し、C18 Zip Tips(商標)(Millipore社、ベッドフォード、MA)を用い濃縮した。タンデム質量分析用の試料を、C18 SPE材料を組込んでいるナノLCシステム(LC Packings社、アムステルダム、オランダ)を用い精製した。回収したペプチドプールを、脱離のためのレーザー波長337nm及び解析の反射モードを用いて、MALDI-TOF-質量分析(Voyager STR、Applied Biosystem社、フレミングハム、MA)により解析した。プールは、マイクロマス四重極時間飛行型(Q-TOF)質量分析計(Micromass社、Altrincham、英国)を使用して、ナノ-LCタンデム質量分析(LC/MS/MS)によっても解析した。結腸癌膜蛋白質の部分的アミノ酸配列決定及び同定のために、トリプシン性ペプチドの非インタープリター型(non-interpleter)タンデム質量スペクトルを、SEQUEST検索プログラム(Engら、J. Am. Soc. Mass Spectrom.、5:976-989 (1994))v.C.1.を用い、米国立生物工学情報センター(NCBI)(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/でアクセス可能)に保持されている非重複的データベースにおける蛋白質エントリーを構築されているパブリックドメイン蛋白質データベースに対して検索した。データベース同定の判定基準としては、以下のものが挙げられる:トリプシンの切断特異性;データベースから返されたペプチド中のa、b及びyイオンの組の検出;カルバミドメチル化を説明している、Cys残基に関する質量増分。SEQUESTプログラムを使用するスペクトル-スペクトル相関性による蛋白質同定後、MALDI-TOF質量分析において検出した質量を、同定した蛋白質内のトリプシン消化のペプチドに割当てた。SEQUESTプログラムを使用するトリプシン消化のペプチドの非インタープリター型MS/MSスペクトルによる検索によって、アミノ酸配列が同定できない場合は、これらのペプチドのタンデム質量スペクトルを、当該技術分野において公知の方法を用い、手動で解釈した(ペプチドイオンの低エネルギーフラグメンテーション質量スペクトルの解釈の場合、Gaskellら、Rapid Commun. Mass Spectrom.、6:658-662 (1992)参照)。国際公開公報第02/21139号に開示された方法も、質量スペクトルの解釈に使用した。
ひとつのタンデムスペクトル(図1参照)及び質量1672.9Daは、CCMP-1に相当するGenBank寄託番号X75208.1及びSwissProt寄託番号P54753に合致することが分かった。
【実施例2】
【0137】
(実施例2:ヒト組織におけるCCMP-1 mRNAの発現)
リアルタイム定量的RT-PCR(Heidら、Genome Res.、6: 986-994 (1996);Morrisonら、Bio/Techniques、24:954-958 (1988))を使用し、正常結腸及び結腸腫瘍組織及び腺癌細胞株(図2参照)並びに乳房縮小形成術時に採取された正常乳房組織及び手術時に採取された乳癌組織及び乳癌細胞株(図3参照)において、CCMP-1 mRNAの分布を分析した。正常及び腫瘍乳房試料に関する倫理的承認は、手術時に得た(オックスフォード大学、英国)。PCRに使用したプライマーは、次のようである:センス、5’ actgatcctcgagtggagtgag 3’ (配列番号3)、アンチセンス、5’ cacctcaaaggtgtagcgcgtg 3’ (配列番号4)。前述のように調製したcDNA 10ng、SYBRグリーン配列検出試薬(PE Biosystems社)並びにセンス及びアンチセンスプライマーを含む反応液を、ABI7700配列検出システム(PE Biosystems社)でアッセイした。このPCR条件は、50℃2分間を1サイクル、95℃10分間を1サイクル、95℃15秒/65℃1分間を40サイクルであった。PCR産物の蓄積をSYBRグリーン蛍光の増加としてリアルタイムで測定し、そのデータを、Sequence Detectorプログラムv1.6.3(PE Biosystems社)を用いて解析した。蛍光及び増幅サイクルに対する最初の鋳型のコピー数に関する標準曲線を、鋳型として増幅したPCR産物を用いて作製し、各試料中のCCMP-1コピー数を計算するのに用いた。
【0138】
ヒト組織中のCCMP-1発現は、乳腺、脳、唾液腺及びリンパ節において最高レベルの発現が見出されたことを示した。CCMP-1 mRNAは、前立腺癌細胞株PC3及びPC3Mにおいても検出され;PC3細胞における発現は、正常前立腺と比べ上昇した(図示せず)。CCMP-1 mRNAは、試験した他の細胞株又は正常組織においては、ほとんど又は全く検出されなかった。最高レベルのCCMP-1発現が結腸癌細胞株LS174T(3000コピー/ng cDNA;図2)において、より低いレベルの発現がLoVo細胞株(1000〜1100コピー/ng cDNA;図2)において観察された。CCMP-1 mRNAは、乳癌細胞株BT-20 (ATCC HTB-19)、BT-474 (HTB-20)、MCF-7 (ATCC HTB-22;ECACC 86012803)、T47D、MDA-MB-468 (ATCC HTB-132)及びMDA-MB-453 (ATCC HTB-131)においても、500〜4400コピー/ng cDNAの範囲で検出された(図3参照)。
【0139】
一部の結腸癌株及び乳癌株において観察されたCCMP-1発現の上昇が、臨床試料において繰り返されるかどうかを試験するために、13名の結腸癌患者(図2;試料1080から1402及び14から16、ここでN=正常組織及びT=腫瘍組織)及び7名の乳癌患者(図3、ここでN=正常組織及びT=腫瘍組織)から得て対比された正常及び腫瘍組織試料中のmRNAの発現も測定した。CCMP-1発現は、9個の結腸腫瘍試料において、それらが対比された正常組織と比べ増加し;発現レベルの増加は、およそ1.6から16倍であり(図2)、全ての7種の乳腫瘍試料及び乳細胞株(図3)においては増加した。図2と3の間ではy-軸スケールが異なることに注意。
従って、CCMP-1は、正常ヒト組織における制限された発現パターンを示し、一部の結腸腫瘍及び乳房腫瘍においては上昇した。このことは、この蛋白質は強力な治療的標的であることを示唆している。
【実施例3】
【0140】
(実施例3:CCMP-1のクローニング及び発現)
完全長CCMP-1を、cDNAプール(結腸、HT29細胞、乳房、LS174T細胞)から、フォワードプライマー:ctcggctcctagagctgcc (配列番号5);リバースプライマー:ctgcttggcatccctgcac (配列番号6)及び下記のPCR条件を用い、増幅した:94℃で3分間を1サイクル;94℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で3分間を40サイクル;72℃で3分間を1サイクル。PCR産物は、Stratagene Pfu酵素により増幅した。CCMP-1をコードしているPCR産物を、最初にpCR4(Invitrogen社)にクローニングし、次に再増幅して、C-末端 V5-hexaHISタグを有するpcDNA3.1 (Invitrogen社)にKpnI/BamHI部位でクローニングした。
【0141】
pcDNA3.1ネオマイシンベクター(Invitrogen社)にクローニングしたCCMP-1を、HEK 293細胞(GeneJuice、Novagen社)にトランスフェクションさせた。これらの細胞は、0.8mg/mlゲネチシン(抗生物質G418、Sigma社)で選択し、耐性細胞をプールして、混合クローンプールとして使用した。HEK 293細胞(初代ヒト胚性腎細胞、ATCC番号:CRL-1537)を、ダルベッコ培地NUTミックスF12、10%ウシ胎児血清、2mMグルタミンにおいて増殖させた。
Abcam社(ケンブリッジ、英国)のサービスを用いて、CCMP-1に対するポリクローナル抗体を産生させた。この抗体は、配列が疎水性、抗原性、表面適合性及び他の既知蛋白質ファミリーメンバーとの低い同一性のプロットに基づいて合成のために選択されたふたつの特異的ペプチドで免疫したウサギにおいて、産生させた。ペプチドは、免疫に先立ってキーホールリンペットヘモシアニンの特異的チオール反応性カップリングを可能にするために、末端に付加されているシステイン残基によるFmoc化学反応を用い、合成した。使用したCCMP-1ペプチドは:GQYSRPAEFETTSER (配列番号7)及びCATGHEPAAKESQ (配列番号8)であった。
【0142】
産生した抗血清を用いたウェスタンブロットは、CCMP-1を過剰発現している混合クローンプールからのHEK 293細胞溶解液中に約110kDaのバンドを認めたが、親HEK 293細胞においては前記バンドを認めなかった。この組換え蛋白質は、特異的モノクローナル抗体(Invitrogen社)により認識されるV5タグも発現していた。抗V5タグ抗体を用いたウェスタンブロットも、CCMP-1を発現しているHEK 293細胞溶解液中の約110kDaの1本のバンドが認められた。
これらの抗血清は、LS174T細胞溶解液(ヒト結腸腺癌、接着性、ATCC CL-188)中にも同一分子量の蛋白質が認められた。
【0143】
[CCMP-1のチロシンリン酸化の測定]
親HEK 293細胞及びV5タグと共に組換えCCMP-1を過剰発現しているHEK 293細胞を、前述のように増殖させた。細胞を、500ng/ml組換えLERK8-Fcキメラ蛋白質(CCMP-1へのリガンドであるEphrin B3としても既知;R&D Sytems社)の存在下又は非存在下で、様々な時点で処理した。LERK8-Fcは、ポリペプチドリンカーを介し、ヒトIgG分子のFc領域に融合されたLERK8の細胞外ドメインを含む可溶性リガンドであり;これにより、LERK8-Fc蛋白質が、標準的な抗ヒト二次抗体を用いて検出されることを可能にしている。細胞を収集し、緩衝液(20mM TrisHCL pH7.6、1mM EDTA、150mM NaCl、10mM NaF、1mM オルトバナジン酸ナトリウム)中で溶解し、混合し、氷上に20分間放置した。次に、細胞溶解液を、10,000xgで遠心し、上清を1D-SDS PAGE電気泳動により分離した。次に、細胞溶解液に、RC20抗-ホスホチロシン抗体(Transduction laboratories社)を用いたウェスタンブロットを行った。
CCMP-1を過剰発現しているHEK 293細胞は、LERK8リガンド(500ng/ml)による処理時に、血清条件又は無血清条件において増殖させた未処理細胞と比べ、増大したリン酸化を示したことが見出された。チロシンリン酸化は、30分から2時間の間最高であったが、6時間及び24時間には未処理細胞と比較して増加した状態を保持していた。LERK8処理も、抗V5抗体を使用するウェスタンブロットにおいて認められるような、CCMP-1蛋白質レベルの減少を生じた。ウェスタンブロットをポンソーSでも染色して、LERK8処理細胞が未処理細胞と同等の蛋白質装荷を有したことを示した。
【0144】
[LS174T細胞におけるホスホチロシン免疫沈降]
内因性CCMP-1を発現しているLS174T細胞におけるCCMP-1リン酸化を明らかにするために、LERK8リガンド(500ng/ml)で処理した細胞から、溶解液を前述のように調製した。溶解液を、PY-20H抗ホスホチロシン抗血清(Transduction laboratories社)10μlと共に、4℃で1時間インキュベーションした。次に、この抗体を、プロテインA セファロース(Sepharose)ビーズ(Pierce社)を用いて捕獲した。これらのビーズをPBSで3回洗滌し、結合した蛋白質を1D-SDS-PAGE試料緩衝液溶解緩衝液20μlの添加により溶離した。免疫沈降物を、1D-SDS-PAGE電気泳動により分離し、抗CCMP-1抗血清を用い、ウェスタンブロットを行った。これらのデータは、10分から2時間の間のLERK8リガンド処理がLS174T細胞におけるチロシンリン酸化の増加を生じたことを示した。
【実施例4】
【0145】
(実施例4:組換えCCMP-1を発現しているHEK 293細胞の免疫細胞化学分析)
親HEK 293細胞及びV5タグを有する組換えCCMP-1を過剰発現しているHEK 293細胞を、4%パラホルムアルデヒド/PBS中に一晩放置して固定し、その後10%ロバ血清/0.3% Triton X-100/PBSと共に1時間インキュベーションすることにより、ブロッキングし、透過性亢進した。C-末端 V5タグを介してCCMP-1を検出するために、細胞を、2.5%ロバ血清/0.075% Triton X-100/PBS中の抗V5抗体(Invitrogen社)1:500を用いプロービングし、PBSで3回洗滌し、その後2.5%ロバ血清/0.075% Triton X-100/PBSを溶媒とするビオチン化抗マウス二次抗体(Jackson Laboratories社)中で更に1時間インキュベーションした。CCMP-1の自身のリガンドであるLERK8への結合特性を用いてCCMP-1を検出するために、細胞を、2.5%ロバ血清/0.075% Triton X-100/PBSを溶媒とする500ng/ml LERK8-Fc中でインキュベーションし、PBSで3回洗滌し、その後ビオチン化した抗ヒト二次抗体(Jackson Laboratories社)中で更に1時間インキュベーションした。その後細胞を、PBSで3回洗滌し、Extravadin Cy-3 (Sigma社)と共にインキュベーションした。
【0146】
抗V5タグ抗体を用いる免疫細胞化学染色は、組換えCCMP-1蛋白質の、トランスフェクションされたHEK 293細胞の細胞膜への局在化を明確に示した。これらトランスフェクションされた細胞において、染色は、細胞-細胞接触部位及び細胞外膜で最も強く、核、核周辺又は細胞質ゾルの染色は明確ではなかった。親HEK 293細胞が染色されなかったことは、この抗体が、トランスフェクション細胞において標的化された組換え蛋白質に特異的に結合したことを示している。プローブとしてLERK-Fcリガンドを使用して、同様の染色パターンがトランスフェクションされたHEK 293細胞において示され、トランスフェクションされない細胞におけるバックグラウンドは最小であった。
まとめると、これらの結果は、i)組換えCCMP-1は、細胞膜において発現され、局在化されていること;ii)組換えCCMP-1は、LERK8に結合することができるという点で、適切にフォールディングされていること;iii)LERK8-Fcを使用して、CCMP-1局在化を追跡することができること;を明らかにしている。
【実施例5】
【0147】
(実施例5:CCMP-1へのLERK8結合はCCMP-1内在化(internalisation)を誘導する)
CCMP-1トランスフェクションされたHEK 293細胞を一晩播種し、標準的な組織培養条件のもと500ng/ml LERK8-Fcリガンドの存在又は非存在下で2時間インキュベーションし、その後パラホルムアルデヒド/PBS中に固定した。細胞は、10%ロバ血清/0.3% Triton X-100/PBS中で1時間インキュベーションすることにより、ブロッキングして透過性亢進し、引き続き500ng/ml LERK8-Fc (R & D systems社)、次にビオチン化した抗ヒト二次抗体(Jackson Laboratories社)、最後にExtravadin Cy-3 (Sigma社)で連続的にインキュベーションした。これらは全て2.5%ロバ血清/0.075% Triton X-100/PBS中に希釈されており、各インキュベーション間は、PBSで3回洗滌した。
【0148】
未処理CCMP-1トランスフェクションされたHEK 293細胞中のCCMP-1は、細胞膜に局在化した。HEK 293細胞中のCCMP-1局在化は、膜状仮足(lamellipodia)において最も強力である。LERK8処理したHEK 293細胞において、LERK-8 Fcと共に2時間インキュベーションすることは、本質的に全ての細胞膜染色の喪失を生じた。濃い顆粒状の細胞質染色が代わりに存在し、これは内在化の指標である。
【0149】
[フローサイトメトリー]
CCMP-1トランスフェクションされたHEK 293細胞及びLS174T細胞を一晩播種し、標準的な組織培養条件のもと、500ng/ml LERK8-Fcリガンドの存在又は非存在下で、各々10分間、2時間又は24時間インキュベーションした。細胞を組織培養プレートから解離させ、1条件につき500,000個細胞を96ウェルプレートに移し、引き続き4℃にて処理した。フロー緩衝液(1%BSA/0.1%アザイド/PBS)中で洗滌後(遠心及びその後の再懸濁)、細胞を、同じ緩衝液を溶媒とする500ng/ml LERK8-Fc中で30分間インキュベーションした。細胞は、フロー緩衝液で3回洗滌し、次にフロー緩衝液中に1:50希釈したフィコエリスリン(PE)複合抗ヒト二次抗体(AbCam社、カタログ番号7006)中で30分間、暗所でインキュベーションした。フロー緩衝液で1回及びIsoton Flow Cytometry Solution (Beckman Coulter社)で2回洗滌した後、細胞プールの平均蛍光を、Beckman Coulter Epics XL.MCLフローサイトメーターを用いる分析により得た。
【0150】
LERK8の培養中のHEK 293細胞への添加は、平均細胞蛍光の急激な減少を生じ、これはCCMP-1蛋白質のインターナリゼーションと一致する。LERK8とのインキュベーションにより引き起こされた平均細胞蛍光の低下がLS174T細胞において認められ、これにより、LS174T細胞も細胞膜上にCCMP-1を発現し、従って内因性CCMP-1がヒト由来の癌細胞株の表面に発現されていることが示される。平均細胞蛍光の減少はLS174T細胞においても認められ、免疫細胞化学の結果と合せて考慮した場合、このことは、細胞内での内因性CCMP-1の内在化と一致する。
前記知見は、CCMP-1への抗体結合が、抗体(毒素、サイトカイン又は放射性ヌクレオチドに結合している抗体を含み得る)の内在化を生じ得ることを示唆している。従って、CCMP-1は、癌治療のための免疫療法ベースのアプローチの良い標的を示している。
【実施例6】
【0151】
(実施例6:LERK8は細胞形態(morphology)及び細胞-細胞相互作用の変更を誘導する)
CCMP-1でトランスフェクションされたHEK 293細胞及び親HEK 293細胞を、24時間培養し、引き続き500ng/ml LERK8-Fcの存在又は非存在下で一晩インキュベーションした。
未処理の親HEK 293細胞を緩い(loose)細胞群で増殖させ、細胞から外側に伸びる細胞突起は、「鋸歯状」境界を生じた。LERK-8処理した親細胞及び未処理CCMP-1でトランスフェクションされた細胞は両方とも、同じ形態を有した。しかしCCMP-1でトランスフェクションされたHEK 293細胞の一夜インキュベーションは、細胞突起の退縮及び密な凝集塊(clump)への細胞移動を生じ、最大の細胞-細胞接触及び「滑らかな」境界を伴った。
【0152】
LERK8-Fcにより引き起こされた形態の変化の速度の経時的研究は、細胞突起の退縮がLERK8の添加後20分と早期に認められ、40分後には突起が完全に退縮したことを明らかにした。細胞の凝集塊への移動は、LERK8処理の40分後に始まり、細胞の小さい滑らかな境界を持つ凝集塊が、LERK8処理の60分後には形成された。その後の5時間に渡り、これらの細胞群は、共に移動し、より大きい細胞会合体を形成した。
【実施例7】
【0153】
(実施例7:腫瘍組織の免疫組織化学分析)
Covalab社(フランス)のサービスを用い、CCMP-1に対するポリクローナル抗体を産生させた。配列を疎水性、抗原性、表面確率(surface probability)及び他の既知蛋白質ファミリーメンバーに対する低い同一性のプロットに基づいて合成のために選択した、ふたつの特異的ペプチドで免疫したウサギにおいて、前記抗体を産生させた。ペプチドは、免疫前に、Fmoc化学反応を用いて、末端に付加されてキーホールリンペットヘモシアニンの特異的チオール反応性カップリングを可能にするシステイン残基を有するように合成した。使用したCCMP-1ペプチドは:GQYSRPAEFETTSERGS (配列番号9)であった。
【0154】
前記ペプチドに対して生じた抗体の特異性を明らかにするために、CCMP-1及び他のエフリンB受容体蛋白質のウェスタンブロット分析を行った。親HEK 293細胞の溶解液を調製した。溶解液5μgを、1μgの組換えCCMP-1又は1μgのマウスエフリンB1、B2、B3、B4若しくはB6、又はマウスエフリンA1-8受容体蛋白質(R & D systems社)でスパイク(spike)し、引き続き1D-SDS-PAGEにより分離した。このゲルを、PVDF膜へ移し、前記ペプチド(配列番号9)に対して産生させたポリクローナ抗体で探索した。蛋白質は、ビオチン化二次抗体と結合させたストレプトアビジン-HRPを用い検出した。これらの結果は、この抗体は、組換えCCMP-1及びマウスエフリンB3受容体蛋白質(R & D systems社)のみを認識したが、他のエフリンB又はエフリンA受容体ファミリーメンバーは認識しないことを示した。
【0155】
免疫組織化学分析を、55名のドナー由来の乳癌組織の1mm切片及び様々な正常組織の20切片(Clinomics Laboratories社、165 Tor Court, Pittsfield, MA 01201)を含むホルマリン固定パラフィン包埋した組織マイクロアレイ上で行った。スライドは、キシレンで2x5分間洗滌し脱パラフィン化し、その後連続的に等級化した(successive graded)エタノールで脱水し、PBSで5分間洗滌した。抗原検索(retrieval)は、これらのスライドを、DAKO抗原検索液中に含浸し、電子レンジにおいて高出力(950W)で10分間処理することにより行った。加えて、抗体の検出は、Autozyme (AbCam社)による5分間37℃での組織のプロテアーゼ処理により改善された。この組織を10%ロバ血清/PBSで1時間ブロッキングし、その後1.5μg/mlの一次ポリクローナル抗体(2.5%ロバ血清/PBS中)を添加した。PBSで3回洗滌した後、組織切片を、1:200希釈した(2.5%ロバ血清/PBS中2.5μg/ml)ビオチン-結合二次抗体(ビオチン-SP-結合AffiniPureロバ抗-モルモット、Jackson ImmunoResearch社)と共に1時間インキュベーションした。スライドをPBSで3回洗滌し、組織を、1:100希釈した(2.5%ロバ血清/PBS中5μg/ml)ストレプトアビジン-HRP(Jackson ImmunoResearch社)と共にインキュベーションし、その後PBSで5分間、3回洗滌した。抗体シグナルは、製造業者の指示に従ってDAB基質溶液(Dako社)を使用し、検出した。ヘマトキシリン-エオシン(Dako社)を用いて、隣接組織アレイを対比染色し、光学顕微鏡に装着したデジタルカメラにより画像を撮影した。
【0156】
乳房腫瘍マイクロアレイ上のCCMP-1の免疫組織化学分析の結果は、CCMP-1が、乳癌、乳腺癌及び乳房浸潤腺管癌の組織切片に存在したことを明らかにした。各々の場合において、発現は一般に、腫瘍組織の癌性上皮細胞に限られており、主に細胞膜局在が示された。
結腸癌マイクロアレイの結果、並びに前立腺癌、舌扁平上皮細胞癌、喉頭扁平上皮細胞癌、咽頭扁平上皮細胞癌、耳下腺癌、肺扁平上皮細胞癌、及び脳星状細胞腫、更には腎癌及び腎細胞癌、膀胱癌及び乳頭状嚢胞状癌を含むマイクロアレイ上のCCMP-1の免疫組織化学分析の結果は、全て、主に癌性上皮細胞に局在化されているCCMP-1の発現を示した。
【実施例8】
【0157】
(実施例8:CCMP-1によるコロニー形成の誘導)
500ng/ml LERK8-Fcの存在及び非存在下で組換えCCMP-1を発現しているHEK293細胞、親HEK 293細胞又は空のpcDNA3.1ベクターでトランスフェクションされているHEK293細胞(ベクター対照細胞)を、コロニー形成能について評価した。
6-ウェル組織培養プレートを0.9%アガーで被覆し、一晩37℃のインキュベーター内に放置した。細胞培地0.5ml中1,000個の細胞(HEK 293 pcDNA3.1ベクター対照細胞、HEK 293親細胞及びCCMP-1発現しているHEK 293細胞)を、2mlのメチルセルロース-ベースの培地(ClonaCell(商標)-TCS、SemCell Technologies社)に添加した。この混合物を、7回インバージョンして、10分間静置した。その後、細胞を含有する培地2mlを各ウェルに分注し、その組織培養プレートを37℃で、5%CO2で7日間培養した。1個よりも多い細胞を含む各条件のコロニー数を、スコアリングした。
【0158】
[結果]
(細胞) (コロニー数)
親HEK 293 18
HEK 293 pcDNA3.1 ベクター対照 24
CCMP-1過剰発現しているHEK 293 157
CCMP-1過剰発現しているHEK 293+LERK8-Fc 244
【0159】
HEK 293細胞におけるCCMP-1発現は、形成されたコロニーの数及びサイズの両方を増大し、これにより、CCMP-1の過剰-発現が腫瘍原性の可能性を高めることが示唆される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者における癌をスクリーニング及び/又は診断する方法、及び/又は癌の治療の有効性をモニタリングする方法であって、前記癌が、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、前立腺腺癌、舌の扁平上皮細胞癌、喉頭の扁平上皮細胞癌、咽頭の扁平上皮細胞癌、耳下腺癌、肺の扁平上皮細胞癌、脳の星状細胞腫、腎癌、腎細胞癌、膀胱癌及び腫乳頭状嚢胞状腺腫であり、
該対象者から得られた生物学的試料中の以下の(i)又は(ii)を検出及び/又は定量する工程を含む、前記方法:
(i)以下の(a)〜(c)のいずれかのCCMP-1ポリペプチド:
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むもの、又は前記アミノ酸配列からなるもの;
(b)CCMP-1の活性を保持している配列番号1のアミノ酸配列に対し、1個又は複数のアミノ酸の置換、改変、欠失又は挿入を有する誘導体であるもの;又は
(c)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドの断片であって、長さが少なくとも10アミノ酸であり且つその断片の長さにわたり少なくとも70%の相同性を有するもの;又は
(ii)以下の(d)〜(h)のいずれかの核酸分子:
(d)配列番号2のDNA配列若しくはそのRNA等価物を含むもの、又は配列番号2のDNA配列若しくはそのRNA等価物からなるもの;
(e) (d)の配列と相補的である配列を有するもの;
(f) (a)から(c)に定義されるCCMP-1ポリペプチドをコードしている配列を有するもの; (g) (d)、(e)及び(f)のいずれかと実質的同一性を示す配列を有するもの;又は
(h) (d)、(e)、(f)又は(g)の断片であって、長さが少なくとも10ヌクレオチドであるもの。
【請求項2】
前記ポリペプチド又は該核酸のレベルが、先に決定された参照値域又は対照と比較される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
決定する工程が:
(a)試料を、請求項1の(i)において定義されたポリペプチドに特異的である捕獲試薬と接触させる工程;及び
(b)該捕獲試薬と試料中の該ポリペプチドとの間に結合が生じるかどうかを検出する工程;
を含む、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
工程(b)が、直接的又は間接的に標識された検出試薬を用いて、捕獲されたポリペプチドを検出することを含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
捕獲試薬が、固相上に固定されている、請求項3又は4記載の方法。
【請求項6】
請求項1の(i)記載のCCMP-1ポリペプチドを認識する抗体、その機能的に活性な断片、誘導体又はアナログ。
【請求項7】
ポリペプチドが、請求項1の(i)記載のCCMP-1ポリペプチドを認識する抗体を用いて、検出及び/又は定量される、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
抗体が、モノクローナル、ポリクローナル、キメラ、ヒト化若しくは二重特異性であるか、又は治療的な部分、検出可能な標識、二次抗体若しくはそれらの断片、細胞傷害性物質若しくはサイトカインと結合している、請求項6記載の抗体又は請求項7記載の方法。
【請求項9】
請求項1の(i)記載のCCMP-1ポリペプチドに特異的な捕獲試薬、試薬及び使用説明書を含む、診断用キット。
【請求項10】
癌の治療用医薬品の製造における、
(i)請求項1の(i)記載のCCMP-1ポリペプチド;又は
(ii)請求項1の(ii)記載の核酸分子;
の使用であって、前記癌が、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、前立腺腺癌、舌の扁平上皮細胞癌、喉頭の扁平上皮細胞癌、咽頭の扁平上皮細胞癌、耳下腺癌、肺の扁平上皮細胞癌、脳の星状細胞腫、腎癌、腎細胞癌、膀胱癌及び腫乳頭状嚢胞状腺腫である、前記使用。
【請求項11】
癌の治療用医薬品の製造における、請求項6又は8記載の抗体の使用であって、前記癌が、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、前立腺腺癌、舌の扁平上皮細胞癌、喉頭の扁平上皮細胞癌、咽頭の扁平上皮細胞癌、耳下腺癌、肺の扁平上皮細胞癌、脳の星状細胞腫、腎癌、腎細胞癌、膀胱癌及び腫乳頭状嚢胞状腺腫である、前記使用。
【請求項12】
医薬組成物がワクチンである、請求項10の(i)又は(ii)記載の使用。
【請求項13】
請求項1の(i)記載のCCMP-1ポリペプチドと相互作用する抗癌剤をスクリーニングする方法であって、前記癌が、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、前立腺腺癌、舌の扁平上皮細胞癌、喉頭の扁平上皮細胞癌、咽頭の扁平上皮細胞癌、耳下腺癌、肺の扁平上皮細胞癌、脳の星状細胞腫、腎癌、腎細胞癌、膀胱癌及び腫乳頭状嚢胞状腺腫であり、
(a)該ポリペプチドを、候補物質と接触させる工程;及び
(b)候補物質が該ポリペプチドと相互作用するかどうかを決定する工程;
を含む前記方法。
【請求項14】
候補物質とCCMP-1ポリペプチドとの間の相互作用を決定する工程が、候補物質と該ポリペプチドとの結合を定量的に検出することを含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
(a)請求項1(i)記載のCCMP-1ポリペプチドの発現若しくは活性;又は
(b)請求項1(ii)記載の核酸分子の発現;
を調節する抗癌剤をスクリーニングする方法であって、前記癌が、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、前立腺腺癌、舌の扁平上皮細胞癌、喉頭の扁平上皮細胞癌、咽頭の扁平上皮細胞癌、耳下腺癌、肺の扁平上皮細胞癌、脳の星状細胞腫、腎癌、腎細胞癌、膀胱癌及び腫乳頭状嚢胞状腺腫であり、
(i)候補物質の存在下における該ポリペプチドの発現若しくは活性又は該核酸分子の発現を、候補物質の非存在下若しくは対照物質の存在下における該ポリペプチドの発現若しくは活性又は該核酸分子の発現と、比較する工程;及び
(ii)候補物質が、該ポリペプチドの発現若しくは活性又は該核酸分子の発現を変化させるかどうかを決定する工程;
を含む、前記方法。
【請求項16】
該ポリペプチドの発現若しくは活性のレベル、又は該核酸分子の発現レベルが、予め定められた参照値域と比較される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
パート(ii)が、更なる試験又は抗癌剤としての治療的若しくは予防的使用のために、該ポリペプチドの発現若しくは活性又は該核酸分子の発現を調節する物質を選択する工程を含む、請求項15又は16記載の方法。
【請求項18】
該ポリペプチドの発現若しくは活性又は該核酸分子の発現を変化させる、請求項13〜15のいずれか1項記載の方法により同定される物質。
【請求項19】
癌の治療用医薬品の製造における、請求項1記載のCCMP-1ポリペプチドの発現若しくは活性又はCCMP-1核酸の発現と相互作用する物質、又は前記CCMP-1ポリペプチドの発現若しくは活性又はCCMP-1核酸の発現を調節する物質の使用であって、前記癌が、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、前立腺腺癌、舌の扁平上皮細胞癌、喉頭の扁平上皮細胞癌、咽頭の扁平上皮細胞癌、耳下腺癌、肺の扁平上皮細胞癌、脳の星状細胞腫、腎癌、腎細胞癌、膀胱癌及び腫乳頭状嚢胞状腺腫である前記使用。
【請求項20】
癌が、乳癌である、請求項1〜5、7及び13〜17のいずれか1項記載の方法、又は請求項19記載の使用。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−101901(P2010−101901A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284833(P2009−284833)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【分割の表示】特願2003−584733(P2003−584733)の分割
【原出願日】平成15年4月9日(2003.4.9)
【出願人】(507073918)ユセベ ファルマ ソシエテ アノニム (70)
【Fターム(参考)】