説明

癌の予報および予後方法および癌治療のモニタリング

本発明はバイオマーカーおよびがんの予想および予後のためのバイオマーカーの使用、およびがん処置の有効性をモニターするためのバイオマーカーの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマーカーおよび癌の予報および予後のためのバイオマーカーの使用、さらに癌治療の有効性をモニターするためバイオマーカーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の病的状態は、遺伝子DNAのコピー数の変化を通じて、または特定の遺伝子の転写レベルの変化(例えば開始のコントロール、RNA前駆体の提供、RNA処理等を通じて)を通じて種々の遺伝子の発現レベルにおける相違によって特徴付けられる。例えば、遺伝子のロスおよびゲインは悪性形質転換および。進行において重要な役割を果す。これらのゲインおよびロスは少なくとも2種の遺伝子、ガン遺伝子およびガン抑制遺伝子によって駆動されると考えられる。ガン遺伝子は腫瘍形生の正のレギュレーターであり、ガン抑制遺伝子は腫瘍形成の負のレギュレーターである(Marshall,Cell 64:313−326,1991;Weinberg,Science 254:1138−1146,1991)。それ故規制されない成長を活性化する一のメカニズムは、ガン遺伝子タンパクをコードする遺伝子の数を増加させるか、またはこれら遺伝子の発現レベルを増加させる(例えば細胞または環境変化に応答して)ことであり、そして他のメカニズムは遺伝子物質を損失させるか、またはガン抑制物質をコードする遺伝子の発現レベルを減らすことである。このモデルは神経膠腫に関連した遺伝子物質のロスおよびゲインによって支持されている(Mikkelson,et al.,J.Cellular Biochem.46:3−8,199)。このように、特定の遺伝子(例えばガン遺伝子または腫瘍抑制遺伝子)の発現(転写)レベルの変化は、種々の癌の存在および進行の道標として役立つ。
【発明の開示】
【0003】
本発明は、バイオマーカーおよび癌の予報および予後のためのバイオマーカーの使用、それに癌治療の有効性をモニターするためバイオマーカーの使用に関する。本発明は、また、ソラフェニブルによる処置の有効性のためのバイオマーカーとして、可溶性メタロプロティナーゼ(MMP)およびインターロイキン(IL)またはコロニー刺激因子(CSF)の使用に関する。バイオマーカーは、表1に掲載されたリストから選ぶことができ、例えばMMP−1,MMP−10,IL−6,IL−8,IL−10,CSF−2,SLCO4A1,および/またはFOS様抗原等を含む。
【0004】
本発明の一具体例において、バイオマーカーは薬物へ暴露後変化した発現を証明する一以上の遺伝子および/または遺伝子産物を含む。さらなる具体例において、薬物はソラフェニブおよびその誘導体であり、他の一具体例において、バイオエーカーはMMP−1,MMP−10,IL−6,IL−8,IL−10,CSF−2,SLCO4Al,およびまたはFOS様抗原である。
【0005】
本発明の他の一具体例は、一以上の遺伝子および/または遺伝子産物の発現レベルを分析するステップを含んでいる、組織または細胞サンプルに対する薬物の効果をスクリーニングする方法であって、ここで組織または細胞サンプル中の遺伝子発現および/または遺伝子産物レベルが薬物への暴露前および後に分析され、そして遺伝子および/または遺伝子産物の発現レベルの変動は薬物効果の指示であるか、またはその処置に対する患者の応答の診断または予報を提供する。さらなる具体例において、遺伝子または遺伝子産物はMMP−1,MMP−10,IL−6,IL−8,IL−10,CSF−2,SLCO4A1,および/またはFOS様抗原である。
【0006】
本発明の他の一具体例は、一以上の遺伝子および/または遺伝子産物の発現レベルを分析するステップを含んでいる、新規薬物発見方法であって、ここで細胞の遺伝子発現および/または遺伝子産物レベルが薬物へ暴露前および後に分析され、そして遺伝子および/または遺伝子産物の発現レベルの変動は薬物有効性の指示である。さらなる局面において、遺伝子または遺伝子産物はMMP−1,MMP−10,IL−6,IL−8,IL−10,CSF−2,SLCO4A1,および/またはFOS様抗原である。
【0007】
本発明はさらに癌の処置に有用な化合物を同定する方法を提供し、該方法は癌を有する対象へテスト化合物を投与し、そしてポリペプチドの活性を測定することを含み、ここでポリペプチドの活性の変化はテスト化合物が癌の処置に有用であることの指示である。さらなる具体例において、ポリペプチドはMMP−1,MMP−10,IL−6,IL−8,IL−10,CSF−2,SLCO4A1,および/またはFOS様抗原であり、そして他の具体例において、化合物はソラフェニブである。
【0008】
本発明はこのように、例えばアゴニストおよびアンタゴニスト、部分的アゴニスト、逆アゴニスト、アクチベーター、コアクチベーター、および阻害剤のような調節剤または変調剤として作用し得る化合物を同定するために使用し得る方法を提供する。従って本発明は、癌に関連するポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現を調節するための試薬および方法を提供する。ポリペプチドの発現、安定性または量、またはポリペプチドの活性を変調する試薬は、タンパク、ペプチド、ペプチド模倣物、核酸、核酸アナログ(例えばペプチド核酸、ロックした核酸)、または小分子であることができる。
【0009】
本発明はまた、一以上の遺伝子および/または遺伝子産物の発現レベルを分析するステップを含む、患者診断を提供する方法を提供し、ここで正常および患者サンプルの遺伝子発現および/または遺伝子産物レベルが分析され、そして患者サンプル中の遺伝子および/または遺伝子産物の発現レベルの変動は病気の診断である。患者サンプルは、血液、羊膜液、血漿、精液、骨髄、および組織生検を含むがそれに限らない。さらなる具体例において、遺伝子または遺伝子産物はMMP−1,MMP−10,IL−6,IL−8,IL−10,CSF−2,SLCO4A1,および/またはFOS様抗原である。
【0010】
本発明はなおさらに、癌を持っている疑いのある対象中のポリペプチドの活性を測定することを含む、対象中の癌を診断する方法を提供し、もし癌を持っている疑いのない対象中のポリペプチドの活性に比較して、ポリペプチドの活性に差が存在するならば、その時その対象は癌を持っていると診断される。さらなる具体例において、ポリペプチドはMMP−1,MMP−10,IL−6,IL−8,IL−10,CSF−2,SLCO4A1,および/またはFOS様抗原である。
【0011】
他の一具体例において、本発明はあるタンパクに対する抗体が患者サンプル中のタンパクと反応するように使用される、患者サンプル中の癌を検出する方法を提供する。さらなる具体例において、抗体はMMP−1,MMP−10,IL−6,IL−8,IL−10,CSF−2,SLCO4A1,および/またはFOS様抗原に対して特異性である。
【0012】
本発明の他の一面は、一以上の遺伝子および遺伝子産物の発現レベルを分析するステップを含んでいる、正常および病的状態を区別する方法であり、ここで正常および病的組織の遺伝子発現および/または遺伝子産物レベルが分析され、そして遺伝子および/または遺伝子産物の発現レベルの変動は病的状態の指示である。さらなる面において、遺伝子または遺伝子産物は、MMP−1,MMP−10,IL−6,IL−8,IL−10,CSF−2,SLCO4A1,および/またはFOS様抗原である。
【0013】
他の一具体例において、本発明は少なくとも一つの遺伝子の正常な細胞と比較した応差発現を検出することを含む、細胞の表現型を決定する方法に関し、ここで遺伝子は少なくとも係数2、少なくとも係数5、少なくとも係数20、または少なくとも係数50だけ応差発現される。さらなる具体例において、遺伝子はMMP−1,MMP−10,IL−6,IL−8,IL−10,CSF−2,SLCO4A1,および/またはFOS様抗原をコードする。
【0014】
例えば、血液、尿、唾液、糞(核酸を抽出するため、例えば米国特許6,177,251号を見よ)、組織を含む綿棒、生検組織、組織切片、培養細胞等を含む、その中のポリヌクレオチドまたはポリペプチドを同定することを望むいかなるサンプルも使用ずることができる。
【0015】
検出は他の遺伝子、例えば脳、心臓、腎臓、脾臓、胸腺、肝臓、胃、小腸、結腸、筋肉、肺、睾丸、胎盤、下垂体、甲状腺、皮膚、副腎、膵臓、唾液腺、子宮、卵巣、前立腺、末梢血球(T細胞、リンパ球等)、胎芽、正常胸脂肪、成人および胎児幹細胞、内皮、表皮、筋細胞、脂肪、管腔内皮、好塩基性上皮、筋上皮、間質細胞、それらの癌等のような他の病的状態組織、細胞において発現される遺伝子のためのポリヌクレオチドプローブと組合わせにおいて実現することができる。
【0016】
なお他の一具体例において、本発明は少なくとも1つのポリペプチドの正常細胞と比較しての応差発現を検出することを含む、細胞の表現型を決定する方法に関し、ここにおいてタンパクは少なくとも係数2、少なくとも係数5、少なくとも係数20、少なくとも係数50まで応差的に発現される。さらなる具体例において、ポリペプチドはMMP−1,MMP−10,IL−6,IL−8,IL−10,CSF−2,SLCO4A1,および/またはFOS様抗原である。
【0017】
他の一具体例において、本発明は、少なくとも約10の、少なくとも約15の、少なくとも約25の、または少なくとも約40の連続ヌクレオチドを有するヌクレオチド配列を含む核酸プローブを用意し、患者から細胞のサンプルを取得し、任意に実質上すべてが非ガン性である細胞のサンプルを用意し、核酸プローブを前記第1および第2の細胞サンプルの各自と厳格な条件下接触させ、そして(a)第1の細胞サンプルのmRNAとの前記プローブのハイブリダイゼーションの量を、(b)第2の細胞サンプルのmRNAとの前記プローブのハイブリダイゼーションの量と比較することによって患者からの細胞の表現型を決定する方法に関し、ここにおいて、第1の細胞サンプルmRNAとのハイブリダイゼーションの量が、第2細胞サンプルのmRNAとのハイブリダイゼーションの量と比較して、少なくとも係数2、少なくとも係数5、少なくとも係数20、または少なくとも係数50の差は第1の細胞サンプルの表現型の指示である。さらなる具体例において、核酸プローブはMMP−1,MMP−10,IL−6,IL−8,IL−10,CSF−2,SLCO4A1,および/またはFOS様抗原をコードするヌクレオチド配列である。
【0018】
他の一具体例において、本発明は、患者から単離された細胞のサンプル中の核酸のレベルを測定するためのプローブ/プライマーを含んでいるガン細胞または組織の存在を同定するためのテストキットを提供する。いくつかの具体例において、キットは、キットを使用するための指示書、細胞を懸濁または固定するための溶液、検出可能なタグまたはラベル、核酸をハイブリダイゼーションに感受性とするための溶液、細胞を溶解するための溶液、または核酸の精製のための溶液をさらに含むことができる。さらなる具体例において、プローブ/プライマーは、MMP−1,MMP−10,IL−6,IL−8,IL−10,CSF−2,SLCO4A1,および/またはFOS様抗原をコードするヌクレオチド配列(またはそれに対して相補的な配列)を含む。
【0019】
一具体例において、本発明は、あるタンパクに特異性の抗体を含んでいる、ガン細胞または組織の存在を同定するためのテストキットを提供する。いくつかの具体例において、キットは細胞を懸濁または固定するための溶液、検出可能なタグまたはラベル、核酸をハイブリダイゼーションに感受性とするための溶液、細胞を溶解するための溶液、または核酸を精製するための溶液をさらに含むことができる。さらなる具体例において、プローブ/プライマーは、MMP−1,MMP−10,IL−6,IL−8,IL−10,CSF−2,SLCO4A1,および/またはFOS様抗原をコードするヌクレオチド配列(またはそれに対して相補的な配列)である。
【0020】
他の具体例において、本発明は、患者から単離された細胞のサンプル中の核酸のレベルを測定するためのプローブ/プライマーを含んでいる、ガン細胞または組織における化合物または治療剤の有効性をモニターするためのテストキットを提供する。いくつかの具体例において、キットはキットを使用するための指示書、細胞を懸濁または固定するための溶液、検出可能なタグまたはラベル、核酸をハイブリダイゼーションに感受性とするための溶液、細胞を溶解するための溶液、または核酸を精製するための溶液をさらに含むことができる。さらなる具体例において、プローブ/プライマーは、MMP−1,MMP−10,IL−6,IL−8,IL−10,CSF−2,SLCO4A1,および/またはFOS様抗原をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0021】
本発明はまた、低酸素組織内で選択的に活性化される、マルチキナーゼ阻害剤(後記実施例を見よ)とプロドラッグとの組合せに関する。例えばキノン生還元性プロドラッグは、それらが細胞毒性効果を発揮することができる組織中で選択的に活性化される。例えば、Seow et al.,Proc Nat1 Acad Sci USA,2005,Jun 28;102(26):9282−7を見よ。
【0022】
一具体例において、本発明は、あるタンパクに対して特異性の抗体を含んでいる、ガン細胞または組織において化合物または治療剤の有効性をモニターするためのテストキットを提供する。いくつかの具体例において、キットはキットを使用するための指示書をさらに含む。いくつかの具体例において、キットは細胞を懸濁または固定するための溶液、検出可能なタグまたはラベル、ポリペプチドを抗体の結合に感受性とするための溶液、細胞を溶解するための溶液、またはポリペプチドを精製するための溶液をさらに含むことができる。さらなる具体例において、抗体はMMP−1,MMP−10,IL−6,IL−8,IL−10,CSF−2,SLCO4A1,および/またはFOS様抗原に対して特異性である。
【0023】
本発明は記載した特定の方法論、プロトコール、細胞ライン、動物種および属、構成、および試薬に制限されるものではなく、変更し得ることを理解すべきである。またここで使用した術語は特定の具体例を記載する目的のみであり、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定することを意図しないことを理解すべきである。
【0024】
ここに、および特許請求の範囲に使用された単数形は、文脈が明らかに他のように指示しない限り複数形をも含む。このため、一つの遺伝子への言及は一以上の遺伝子への言及であり、そして当業者に知られた均等物を含む。
【0025】
他に定義しない限り、ここに使用した技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者にとって普通に理解される同じ意味を有する。ここに記載したものと類似または均等などのような方法、装置および材料も本発明の実施またはテストに使用することができ、好ましい方法、装置および材料が今や記載される。
【0026】
2006年3月31日に出願された米国仮特許出願No.60/787,693を含む、ここで述べたすべての発表および特許は、例えばここに記載される発明に関して使用し得る可能性のある、発表に記載された構成および方法論を記載し、開示する目的で、ここに参照として取入れる。上記および明細書全体を通じて論じた発表は本出願の出願日前のそれらの開示のために提供される。本発明者がそのような開示を先発明として認めたものと解してはならない。
〔定義〕
【0027】
便宜のため、明細書、実施例および特許請求の範囲に使用されたいくつかの用語および語句の意味を下記に提供する。
【0028】
アレイ(例えばマイクロアレイ)上の「アドレス」は、エレメント、例えばオリゴヌクレオチドがアレイの固体表面に取付けられている位置を指す。
【0029】
ここで使用される術語「アゴニスト」は、あるタンパクの生物活性を真似する、または上方調節する(例えば強化または補強)する剤を意味する。アゴニストは野生タイプタンパクまたは野生タンパクの少なくとも一つの生物活性を有するその誘導体であることができる。アゴニストはまた、遺伝子の発現を上方調節する、またはあるタンパクの少なくとも一つの生物活性を増大させる化合物であることもできる。アゴニストはまた、ポリペプチドと、他の分子、例えば標的ペプチドまた核酸との相互作用を増大する化合物であることができる。
【0030】
ここで使用される「増幅」とは、ある核酸配列の追加のコピーの生産に関する。例えば、増幅は、当業者には良く知られたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術(例えば、Dieffenbach and Dreksler(1955)PCR Primer,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Plainview,N.Y.を見よ)を用いて実施することができる。
【0031】
ここで使用する術語「抗体」は、例えばどれもアイソタイプ(IgG,IgA,IgE等)の全抗体を含み、そして脊椎動物(例えば哺乳類)タンパクと特異的に反応するそれらのフラグメントを含むことを意図する。抗体は慣用の技術を使用してフラグメント化することができ、フラグメントは全抗体について記載した同じ方法で有用性についてスクリーニングすることができる。このようにこの術語は、一定のタンパクと選択的に反応することができる、抗体分子の酵素分解した、または組換え生産した部分のセグメントを含む。そのような酵素分解または組換えフラグメントの非限定例は、Fab,F(ab)2,Fab’,Fvおよびペプチドリンカーによって結合したv〔L〕および/またはv〔H〕ドメインを含んでいる一本鎖抗体(scFv)を含む。scFvは2以上の結合部位を有する抗体を形成するため共有結合的に、また非共有結合的に連結することができる。本発明は、抗体のポリクローナル、モノクローナルまたは他の精製した調製物および組換え抗体を含む。
【0032】
術語「アレイ」または「マトリックス」は、デバイス上のアドレス可能な位置またはアドレスの配置を指す。位置は二次元アレイに、三次元アレイに、または他のマトリックスフォーマットに配置することができる。位置の数は数個から少なくとも数10万に範囲することができる。最も重要なのは、各位置が完全に独立した反応部位を代表することである。「核酸アレイ」は、オリゴヌクレオチドまたは遺伝子のもっと大きい部分のような核酸プローブを含んでいるアレイを指称する。プローブがオリゴヌクレオチドであるアレイは、「オリゴヌクレオチドアレイ」または「オリゴヌクレオチドチップ」と呼ばれる。ここでは「バイオチップ」または「生物学的チップ」とも呼ばれる「マイクロアレイ」は、少なくとも約100/cm、および好ましくは少なくとも約1000/cmの別々の領域密度を有する領域のアレイである。マイクロアレイの領域は、典型的な寸法、例えば約10〜250μmの範囲の直径を有し、そしてアレイ中の他の領域から約同じ距離を離されている。
【0033】
ここで互換可能に使用される「生物学的活性」または「バイオ活性」または「活性」または生物学的機能」は、ポリペプチド(生来また変性したコンフォメーションにある)により、またはそのサブ配列によって直接または間接に行われるエフェクターまたは抗原機能を意味する。生物学的活性は、ポリペプチドへの結合、他のタンパクまたは分子へ結合、DNA結合タンパクとしての活性、転写レギュレーターとして活性、損傷したDNAへ結合する能力等を含む。バイオ活性は対象ポリペプチドに直接影響を及ぼすことによって変調することができる。代ってバイオ活性は対応する遺伝子の発現を変調することによるような、ポリペプチドのレベルを変調することによって変化させることができる。
【0034】
ここで使用する術語「生物学的サンプル」は、生物または生物の成分(例えば細胞)から得たサンプルを指す。サンプルはどのような生物学的組織または流体でもよい。サンプルは患者から得られたサンプルであることができるが、しかし唾液、血液、血球(例えば白血球)、組織または生検サンプル(例えば腫瘍生検)、尿、腹水、および胸膜液、またはそれからの細胞を含むがそれに限らない。生物学的サンプルは組織学的目的で採取された凍結切片のような組織の切片を含むことができる。
【0035】
術語「バイオマーカー」または「マーカー」は、広範囲の細胞内および細胞外イベントと、全生物生理化学的変化を包含する。バイオマーカーは細胞機能の実質上どのような面をも、例えば信号発生分子の生産レベルまたは速度、転写ファクター、代謝物、遺伝子転写物、それにタンパクの翻訳後修飾を含むがそれに限らない。バイオマーカーは転写レベルの全ゲノム分析またはタンパクレベルおよび/または修飾の全プロテロム分析を含むことができる。
【0036】
バイオマーカーはまた、未処理病気細胞に比較して、病気を有する対象の化合物処理した病気細胞において上方または下方調節された遺伝子または遺伝子産物を指すこともできる。すなわち、遺伝子または遺伝子産物は、小分子の有効性を同定、予想または検出するため、任意に他の遺伝子または遺伝子産物と共に、使用し得る処理した細胞に対して充分に特異性である。このように、遺伝子または遺伝子産物は、病気細胞における化合物の有効性に、または該化合物による処理に対して病気細胞の応答に特徴的な遺伝子または遺伝子産物である。
【0037】
ヌクレオチド配列は、他のヌクレオチド配列と、もし二つの配列の塩基がマッチすれば、すなわちワトソン−クリック塩基対を形成することができるならば「相補的」である。術語「相補的ストランド」は、ここでは術語「相補体」と互換的に使用される。核酸ストランドの相補体はコーディングストランドの相補体または非コーディングストランドの相補体であり得る。
【0038】
「遺伝子の検出剤」は、その遺伝子、またはそれに関連した他の生物学的分子、例えばその遺伝子または該遺伝子によってコードされるポリペプチドから転写されたRNAを特異的に検出するために使用することができる剤を指す。例示的検出剤は該遺伝子に相当する核酸にハイブリダイズする核酸プローブ、および抗体である。
【0039】
「ベースラインレベル」は、正常レベル(すなわち病気なしの患者)のための標準対照を指すことができるが、しかし比較的であることもできる。すなわち低いベースラインレベルが病気を有する他の対象のレベルと比較される場合である。
【0040】
術語「癌」は、乳房、呼吸器、脳、生殖器、消化器、泌尿器、眼、肝臓、皮膚、頭頸部、甲状腺、上皮小体、の癌およびそれらの遠隔転移のような固形癌を含むがそれに限らない。この語はリンパ腫、肉腫および白血病を含む。
【0041】
乳がんの例は、限定でなく、侵襲性管悪性腫瘍、侵襲性小葉悪性腫瘍、その場の管悪性腫瘍、およびその場の小葉悪性腫瘍を含む。
【0042】
呼吸器がんの例は、限定でなく、小細胞および非小細胞肺悪性腫瘍、気管支アデノーマ、および胸膜肺ブラストーマを含む。
【0043】
脳がんの例は、限定でなく、脳幹および視床下部グリオーマ、小脳および大脳アストロサイトーマ、髄質ブラストーマ、脳室上衣腫、それに神経外葉および松果体腫瘍を含む。
【0044】
男性生殖器の腫瘍は、限定でなく、前立腺および睾丸がんを含む。
【0045】
消化器の腫瘍は限定でなく、肛門、結腸、結直腸、食道、胆のう、胃、膵臓、直腸、小腸および唾液腺がんを含む。
【0046】
泌尿器の腫瘍は、限定でなく、膀胱、陰茎、腎臓、腎孟(例えばRCC)、尿管および尿道がんを含む。
【0047】
眼のがんは、限定でなく、眼内メラノーマおよび網膜芽腫を含む。
【0048】
肝臓がんの例は、限定でなく、肝細胞悪性腫瘍(線維層状変種ありなしの肝細胞悪性腫瘍)、肝管がん(肝内胆管がん)、および混合肝細胞および胆管がんを含む。
【0049】
皮膚がんは、限定でなく、鱗細胞がん、カポジ肉腫、悪性メラノーマ、メルケル皮膚がん、および非メラノーマ皮膚がんを含む。
【0050】
頭頸部がんは、限定でなく、上顎/下顎/咽頭下部/鼻咽頭/口腔咽頭がん、および唇と口腔がんを含む。
【0051】
リンパ腫は、限定でなく、AIDS関連リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキン病、および中枢神経系のリンパ腫を含む。
【0052】
肉腫は、限定でなく、軟組織の肉腫、悪性線維性組織腫瘍、リンパ肉腫、および横紋筋肉腫を含む。
【0053】
白血病は、限定でなく、急性骨髄白血病、急性リンパ芽白血病、慢性リンパ細胞白血病、慢性骨髄白血病、および毛状細胞白血病を含む。
【0054】
「がんの病気細胞」は、がんを持つ対象に存在する細胞をいう。すなわち、正常細胞の修飾形で、がんを持たない対象中に存在しない細胞、またはがんを持っていない対象に比較して、がんを有する対象中に有意に高いまた低い数で存在する細胞である。
【0055】
術語「均等」は、機能的に均等なポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むと理解される。均等なヌクレオチド配列は、対立変種のような一以上のヌクレオチド置換、付加または欠失によって異なる配列を含み得る。
【0056】
ここでは「遺伝子発現プロフィル」と互換的に使用される術語「発現プロフィル」は、細胞中の一以上の遺伝子のmRNAレベルを表す値のセットを指す。発現レベルは、好ましくは少なくとも約10遺伝子、好ましくは少なくとも50,100またはそれ以上の発現レベルを表す値を含む。発現プロフィルはまた、多数細胞および条件において同様なレベルで発現される遺伝子(例えばGAPDHのようなハウスキーピング遺伝子)のmRNAレベルを含むことができる。例えば、がんの病的細胞の発現プロフィルは、病気細胞において10以上の遺伝子のmRNAレベルを代表する値のセットを指す。
【0057】
術語「遺伝子」は、ポリペプチドまたは前駆体の生産のために必要なコントロールおよびコーディング配列を含む核酸配列を指す。ポリペプチドは全長さコーディング配列により、またはこのコーディング配列のどの部分によってもコードされることができる。遺伝子は全体または一部が、植物、カビ、動物、バクテリアゲノムまたはエピソーム、真核、核またはプラスミドDNA、cDNA、ウイルスDNA、または化学的に合成されたDNAを含む、この分野で知られたどんな源からも得ることができる。遺伝子は、発現産物、発現速度、または発現コントロールの態様に影響し得るコーディングまたは未翻訳領域に一以上の修飾を含むことができる。そのような修飾は一以上のヌクレオチドの変異、挿入、欠失および置換を含むがこれに限らない。遺伝子は中断されないコーディング配列を構成するか、または適切なスプライス接合によって結合した一以上のイントロンを含むことができる。
【0058】
「ハイブリダイゼーション」は、核酸の一つのストランドが塩基ペアリングによって相補的ストランドと結合するどんなプロセスをも指称する。例えば、二つの1本鎖核酸は、それらが2本鎖デュプレックスを形成する時「ハイブリダイズ」する。2本鎖の領域は1本鎖核酸の一方または両方の全長、または1方の1本鎖核酸の全部と他の1本鎖核酸のサブ配列を含むことができ、または2本鎖の領域は各核酸のサブ配列を含むことができる。ハイブリダイゼーションはまた、二つの鎖がなお2本鎖らせんを形成している限り、いくつかのミスマッチを含んでいるデュプレックスの形成を含むことができる。「厳格なハイブリダイゼーション条件」は本質的に特異的ハイブリダイゼーションが生ずるハイブリダイゼーションを指す。
【0059】
DNAまたはRNAのような核酸に関してここで使用される術語「単離した」は、マクロ分子の天然の源の中に存在する他のDNAまたはRNAから分離された分子を指す。術語「単離された」はまた、組換えDNA技術によって製造される時細胞材料、ウイルス材料、細胞培養物を含まない、または化学的に合成された時化学的前駆体または他の化学品を実質上含まない核酸またはペプチドを指す。さらに、「単離された核酸」は、フラグメントとして天然に存在せず、そして天然状態で発見されないであろう核酸フラグメントを含むことができる。術語「単離された」はまた、ここでは他の細胞タンパクから単離されたポリペプチドをも指し、そして精製されたおよび組換えポリペプチドの両方を含むことを意味する。
【0060】
ここで使用される術語「標識」および「検出可能な標識」は、放射性アイソトープ、フルオロフオール、ケミルミネセンス部分、酵素、酵素基質、酵素助因子、酵素阻害剤、染料、金属イオン、リガンド(例えばビオチンまたはハプテン)等を含むがそれに限らない検出することができる分子を指す。術語「フルオレサー」は、検出可能な範囲において蛍光を発揮する物質またはその一部を指す。本発明において使用することができる標識の特定例は、フルオロセイン、ローダミン、ダンシル、ウンベリフェロン、テキサスレッド、ルミノール、NADPH、α−β−ガラクトシダーゼ、および西洋わさびペルオキシダーゼを含む。
【0061】
ここで使用する術語「発現レベル」は、与えられた核酸の測定可能なレベルを指す。核酸の発現レベルはこの分野で知られた方法によって決定される。術語「応差的に発現された」または「応差的発現」は、与えられた核酸の測定可能なレベルの増大または減少をいう。ここで使用する「応差的に発現された」または「応差的発現」は、両方が正常標準サンプルと比較される比較に用いた二つのサンプルにおいて、核酸の発現レベルの差が少なくとも1.4倍以上であることを意味する。本発明に従った「応差的に発現された」または「応差的発現」はまた、比較に用いた二つのサンプルにおいて核酸発現のレベルの差が1.4倍以上、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍またはそれ以上までであることを意味する。もし二つのサンプルの一方が与えられた核酸の検出可能な発現を含まないならば、検出可能に発現された核酸が少なくとも±1.4倍において発現される限り、二つのサンプル中に核酸が「応差的に発現された」というべきである。核酸配列の応差的発現は、もし比較に用いた二以上のサンプル中の核酸発現レベルの差がもはや少なくとも1.4倍の差でなくなるように変化するときに「阻害」される。核酸発現のレベルの絶対的定量は、一以上の対照核酸の既知濃度を含め、対照核酸の量に基づいて標準曲線を作成し、そして標準曲線に関して、「未知」核酸種の発現レベルを外挿することによって得ることができる。
【0062】
ここで使用する術語「核酸」は、デオキシリボ核酸(DNA)、および適切な場合、リボ核酸(RNA)のようなポリヌクレオチドを指す。この術語はまた、均等物として、ヌクレオチドアナログから作成されたRNAまたはDNAのアナログ、記載される具体例に適用できるとき、1本鎖(センスまたはアンチセンス)および2本鎖ポリヌクレオチドを含むことを理解すべきである。クロモソーム、mRNA、rRNAおよびESTが核酸と呼ぶことができる分子の代表例である。
【0063】
ここで使用する術語「オリゴヌクレオチド」は、例えば約10ないし約1000ヌクレオチドを含む核酸分子を指す。本発明において使用するためのオリゴヌクレオチドは、約15ないし約150ヌクレオチド、もっと好ましくは約150ないし約1000の長さである。オリゴヌクレオチドは天然に存在するオリゴヌクレオチドまたは合成オリゴヌクレオチドであることができる。オリゴヌクレオチドはホスフオルアミダイト法(Beaucage and Carruthers,Tetrahedron Lett.22:1859−62,1981)、またはトリエステル法(Matteucci,et al.,J.Am.Chem.Soc.103:3185,1981)、またはこの分野で知られた他の化学的方法によって調製することができる。
【0064】
ここで使用される術語「患者」または「対象」は哺乳類(例えばヒトおよび動物)を含む。
【0065】
ここで使用されるように、アレイへ取付けられた核酸または他の分子は、「プローブ」または「捕獲プローブ」と呼ばれる。アレイが一つの遺伝子に相当するいくつかのプローブを含有するとき、これらのプローブは「遺伝子プローブセット」と呼ばれる。遺伝子プローブセットは、例えば約2ないし約20プローブ、好ましくは約2ないし約10プローブ、そして最も好ましくは約5プローブよりなることができる。
【0066】
細胞の生物学的状態の「プロフィル」は、薬物処理に応答して変化することが知られている細胞の種々の成分のレベルおよび細胞の生物学的状態の他の動揺を指す。細胞の成分は、例えばRNAのレベル、タンパク豊富さのレベル、またはタンパク活性レベルを含む。
【0067】
術語「タンパク」は、ここでは術語「ペプチド」および「ポリペプチド」と互換的に使用される。
【0068】
ある細胞の発現プロフィルは、二つのプロフィル中の遺伝子の発現が、類似性が共通の特徴、例えば同じタイプの細胞の指示であるように十分に類似している時、他の細胞の発現プロフィルと「類似」である。従って第1の細胞および第2の細胞の発現プロフィルは、第1の細胞中に発現される遺伝子の少なくとも75%が第2の細胞において第1の細胞に関して係数2以内であるレベルにおいて発現されるときに類似である。
【0069】
ここで使用されるように、「小分子」は約5kDより小さい、および最も好ましくは4kDより小さい分子量を有する組成物をいう。小分子は核酸、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド模倣物、炭水化物、脂質、または他の有機または無機化合物であることができる。多数の製薬会社は、バイオ活性を変調する化合物を同定するため本発明のアッセイのどれでもスクリーニングできる、化学的および/または生物学的混合物、しばしばカビ、バクテリアまたは海藻抽出物の広範なライブラリを持っている。
【0070】
鋳型核酸の標的部位へプローブの「特異的ハイブリダイゼーション」は、ハイブリダイゼーション信号が明瞭に解読できるように、標的に対し支配的なプローブのハイブリダイゼーションをいう。さらにここに記載されるように、特異的ハイブリダイゼーションを生ずるそのような条件は、相同性領域の長さ、該領域のGC含有量、およびハイブリドの融点(Tm)によって変動する。ハイブリダイゼーション条件は、塩含有量、酸性度、およびハイブリダイゼーション溶液および洗液の温度において変動し得る。
【0071】
ポリペプチドの「変種」は、一以上のアミノ酸が変えられたアミノ酸配列を持つポリペプチドをいう。変種は、置換したアミノ酸が類似の構造または化学的性質を有する(例えばイソロイシンによるロイシンの置換)「保守的」変化を持つことができる。変種はまた、「非保守的」変化(例えばトリプトファンによるグリシンの置換)を持つことができる。類似のマイナーな変動は、アミノ酸欠失または挿入またはその両方を含むことができる。生物学的または免疫学的活性を破壊することなくどのアミノ酸を置換、挿入または欠失できるかの決定のガイドラインは、この分野で良く知られたコンピュータープログラム、例えばLASERGENソフトウエア(DNASTAR)を使用して同定することができる。
【0072】
ポリヌクレオチド配列の文脈において使用される時、術語「変種」は、特定の遺伝子の配列またはそのコーディング配列に関係したポリヌクレオチド配列を包含することができる。この定義はまた、例えば「対立」、「スプライス」または「多形」変種を含み得る。スプライス変種は参照分子に対して有意な同一性を持つことができるが、しかしmRNAプロセシングの間エクソンの代替スプライシングにより、ポリヌクレオチドのより大きいまたはより小さい数を一般に持つことができる。対応するポリペプチドは追加の機能的ドメインを持つか、またはドメイン不存在であることができる。種変種は、一つの種から他の種へ変化するポリヌクレオチド配列である。生成するポリペプチドは一般に相互に関して有意なアミノ酸同一性を持つであろう。多形変種は、与えられた種の個々の間の特定の遺伝子のポリヌクレオチド配列におけるバリエーションである。多形変種はまた、ポリヌクレオチド配列が一塩基だけ変った「単一ヌクレオチド多形」(SNP)を包含し得る。SNPの存在は、例えば特定の集団、病的状態、または病的状態のための傾向の指示であり得る。
【0073】
本発明の一面は、異常な増殖によって特徴付けられる細胞の分化および増殖を変調することができる剤の同定に向けられる。本発明のもっと特定な一面は、核酸配列の応差的発現を調節するそれらの能力について候補化合物または物質をスクリーニングする方法に関する。すなわち、もしある核酸配列ががん細胞において過大発現されるならば、その時候補化合物は発現を減少するそれらの能力についてスクリーニングされ、そしてもし核酸配列ががん細胞において過小発現されるならば、テスト化合物は発現を増加するそれらの能力についてスクリーニングされる。加えて、他の特定面において、本発明はここに記載した応差的に発現された配列によってコードされる一以上のポリペプチドの活性を変調するテスト化合物または物質を同定するスクリーニングアッセイに関する。これに関し、本発明はマーカー核酸の発現を変調する、および/またはコードされたポリペプチドのバイオ活性を変える化合物を決定するためのアッセイを提供する。
【0074】
本発明に従ってどのような化合物も使用することができる。開示は例えばソラフェニブに関して記載されるが、これは一例であり、本発明はそれに限定されない。例えば、ステントおよび後で述べる他の化合物を含む、他のマルチキナーゼ阻害剤も使用することができる。加えて、全体を参照としてここに取入るWO00/42102,WO00/41698、およびPCT/US/30542に記載されているソラフェニブ(BAYER43−9006)も含められる。
〔応差的発現の変調のためのスクリーニング〕
【0075】
薬物スクリーニングは、テスト化合物(例えばソラフェニブ)を細胞のサンプルへ加え、そして効果をモニターすることによって実施される。テスト化合物を含まない平行サンプルも対照としてモニターされる。処理および未処理細胞が次に、顕微鏡分析、生存性テスト、複製能力、組織学的検査、その細胞に関係ある特定のRNAまたはポリペプチドのレベルを含むがそれに限らない適当な表現型基準によって比較される。処理および未処理細胞間の効果の差はテスト化合物に帰すべきことを指示する。
【0076】
テスト化合物の望ましい効果は、がん関連マーカー核酸配列によって与えられた任意の表現型に対する効果である。その例は、mRNAの過多豊富さを制限する、コードされたタンパクの生産を制限する、またはタンパクの機能的効果を制限するテスト化合物を含む。テスト化合物の効果は、処理および未処理細胞間の結果を比較する時に明らかであろう。
【0077】
本発明はまた、核酸マーカーの発現をインビトロで阻害または増強する剤(例えばソラフェニブ)についてスクリーニングする方法を含み、該方法は該剤がmRNAの生産を阻害または増強することができるかを決定するために、マーカー核酸mRNA(例えばMMP−1,MMP−10,IL−6,IL−8,IL−10,CSF−2,SLCO4A1,および/またはFOS様抗原)が培養細胞中で検出できる細胞または組織を剤へ暴露し、そして暴露した細胞または組織中のmRNAのレベルを決定することを含み、ここで剤への細胞ラインの暴露後mRNAのレベルの減少はマーカー核酸mRNA生産の阻害の指示であり、そしてmRNAレベルの増加はマーカーmRNA生産の増強を指示する。
【0078】
代って、スクリーニング方法は、マーカータンパクが培養細胞中で検出可能である細胞または組織をマーカータンパクの生産を阻害または増強すると思われる剤へ暴露し、そして細胞または組織中のマーカータンパクのレベルを決定することを含み、ここで剤への細胞または組織の暴露後マーカータンパクのレベルの減少はマーカータンパク生産の阻害の指示であり、そしてマーカータンパクのレベルの増加はマーカータンパク生産の増強の指示である。
【0079】
本発明はまた、マーカー核酸の発現を阻害または増強する剤のインビボスクリーニング方法を包含し、該方法はその中でマーカーmRNAまたはタンパクが検出可能である腫瘍細胞を有する対象を、マーカーmRNAまたはタンパクの生産を阻害または増強すると思われる剤へ暴露し、そして暴露した哺乳類の腫瘍細胞中のマーカーmRNAまたはタンパクのレベルを決定することを含む。剤へ対象後のマーカーmRNAまたはタンパクのレベルの減少はマーカー核酸発現の阻害の指示であり、そしてマーカー核酸の増加はマーカー核酸発現増強の指示である。
【0080】
従って本発明は、マーカー核酸を発現する細胞をテスト化合物とインキュベートし、そしてmRNAまたはタンパクレベルの測定することを含む方法を提供する。本発明はさらに、細胞集団中のマーカー核酸の発現レベルを定量的に決定するための方法、およびある剤が細胞集団中でマーカー核酸の発現レベルを増加または減少させることができるかを決定する方法を提供する。細胞集団中でマーカー核酸の発現レベルを増加または減少させることができるかを決定する方法は、(a)対照および剤処理細胞集団からの細胞抽出物を調製し、(b)細胞抽出物からマーカーポリペプチドを単離し、そして(c)マーカーポリペプチドと前記ポリペプチドに対して特異性の抗体の間の免疫複合体の量を定量化(例えば平行して)ステップを含む。本発明のマーカーポリペプチドはそのバイオ活性についてアッセイすることによって定量化してもよい。マーカー核酸発現の増加を誘発する剤は、対照細胞中に生成した免疫複合体の量と比較した、処理した細胞中に生成した免疫複合体の量を増加させる能力によって同定し得る。類似の態様で、マーカー核酸の発現を減少させる剤は、対照細胞と比較しての、処理細胞抽出物に生成した免疫複合体の量を減少させる能力によって同定し得る。
【0081】
本発明は、がんにおいて応差的に調節される単離された核酸配列と、そのような配列を同定するための方法を提供する。本発明は、がんを有する対象中で応差的に調節される核酸配列を同定するための方法を提供し、該方法は、対象から得たRNAに相当するヌクレオチドサンプルを既知のアイデンティティの一以上の核酸分子を含んでいる核酸サンプルへハイブリダイズさせ、そして該核酸サンプルの既知アイデンティティの一以上の核酸分子へのハイブリダイゼーションを測定することを含み、ここにおいてがんなしの対象から得た核酸サンプルと比較して、核酸サンプルの既知アイデンティティの一以上の核酸分子へのハイブリダイゼーションにおいて2倍の差ががんを有する対象におけるヌクレオチド配列の応差的発現の指示である。
【0082】
一般に本発明は、対象からメッセンジャーRNAを単離し、mRNAサンプルからcRNAを発生させ、該cRNAをアレイ上に分離した位置をもって安定に会合した複数の核酸分子を含んでいるマイクロアレイへハイブリダイズさせ、そしてcRNAのアレイへのハイブリダイゼーションのパターンを同定することを含む、がんを有する対象で応差的に調節される核酸配列を同定する方法を提供する。本発明に従えば、アレイの与えられた位置へハイブリダイズする核酸分子は、もしハイブリダイゼーション信号が、がんを有しない対象から得た核酸サンプルとハイブリダイズした同じアレイ上の同じ位置におけるハイブリダイゼーション信号よりも少なくとも2倍高いかまたは低ければ、応差的に調節されるといわれる。
〔遺伝子の発現レベルを決定するためのマイクロアレイ〕
【0083】
遺伝子発現レベルの決定はマイクロアレイを利用して達成し得る。一般に以下のステップ:(a)対象からmRNAサンプルを入手し、それから標識した核酸(標的核酸または標的)を調製し、(b)標的核酸をアレイ上の対応するプローブと、標的核酸が例えばハイブリダイゼーションまたは特異的結合によって結合するのに十分な条件下で接触させ、(c)場合によって未結合標的をアレイから除去し、(d)結合した標的を検出し、そして(e)例えばコンピューターを使用する方法を使用して結果を分析することを含むことができる。ここで使用する「核酸プローブ」または「プローブ」は、アレイへハイブリダイズした核酸である。
【0084】
核酸標本は、侵襲的または非侵襲的サンプリング方法によってテストされる対象から得ることができる。あるサンプリング手段は、もしそれが動物(ネズミ、ヒト、ヒツジ、ウマ、ウシ、ネコまたはイヌを含む)の皮膚または器官からの核酸の採集を含むならば侵襲的というべきである。侵襲的方法は、例えば血液採集、精液採集、生検針、胸膜吸引、臍帯生検を含む。そのような方法の例は、Kim,et al.(J.Virol.66:3879−3882,1992);Biswas et al.(Ann.NY Acad.Sci.590:582−583,1990);およびBiswas,et al.(J.Clin.Microbiol.29:2228−2233,1991)に論じられている。
【0085】
対照的に、非侵襲的サンプリング手段は、核酸が動物の内または外表面から回収される手段である。そのような非侵襲的サンプリング手段の例は、例えば涙、唾液、尿、糞材料、汗、毛髪の線棒採集を含む。
【0086】
本発明の一具体例において、テストされる対象からの一以上の細胞が得られ、そしてRNAが細胞から単離される。好ましい具体例においては、末梢血液白血球(PBL)が対象から得られる。対象から細胞サンプルを取得し、所望のタイプのためにサンプルをエンリッチすることも可能である。所望の細胞が固体組織中にある場合には、特定の細胞は、例えばマイクロ切開またはレーザ捕獲マイクロ切開によって切開することができる(例えば、Bonner et al.,Science 278:1481,1997;Emmert−Buck,et al.,Science 274:998,1996;Fend,et al.,Am.J.Path.154:61,1999;Murakami,et al.,Kidney Int.58:1346,2000を見よ。)
【0087】
RNAは、種々の方法、例えばグアニジウムチオシアネート溶解に次いでCsCl遠心(Chirgwin,et al.,Biochemistry 18:5294−5299,1979)によって組織または細胞サンプルから抽出することができる。単一細胞からのRNAは、単一細胞からcDNAライブラリを調製するための記載された方法によって得ることができる(例えば、Dulac,Curr.Top.Dev.Biol.36:245,1998;Jena,et al.,J.Immunol.Methods 190:199,1996を見よ。)
【0088】
RNAサンプルは特定の種のためにさらにエンリッチすることができる。一具体例において、例えばポリ(A)+RNAをRNAサンプルから単離することができる。他の具体例においては、RNA集団は、関心ある配列について、プライマー特異性cDNA合成、またはcDNA合成および鋳型指令インビトロ転写の多段階に基づく直鎖状増幅の多段階によってエンリッチされることができる(例えば、Wang,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:9717,1989;Dulac et al.,前出;Jena et al.,前出を見よ)。加えて、特定の種または配列においてエンリッチされたまたはされないRNAの集団は、例えばPCR;リガーゼ連鎖反応(LCR)(例えば、Wu and Wallace,Genomics 4:560,1989;Landegren,et al.,Science 241:1077,1988を見よ)、自家持続配列複製(SSR)(例えば、Guatell,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci:USA.87:1874,1990を見よ);核酸に基づく配列増幅(NASBA)および転写増幅(例えば、Kwoh,et al.,Pro.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173,1989を見よ)を含む、種々の増幅方法によってさらに増幅することができる。PCR技術はこの分野で良く知られている(例えば、PCR technology:Principle and Applications for DNA Amplication,ed.H.A.Erlich,Freeman Press,N.Y.1992;PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,eds.Innis et al.,Academic Press,San Diego,Calif.,1990;Mattila et al.,Nucleic Acids Pos.19:4967,1991;Eckert,et al.,PCR Methods and Applications 1:17,1991;PCR,eds.McPherson et al.,IRL Press,Oxford;U.S.Pat.No.4,683,202を見よ)。増幅方法は、例えばOhyama et al.(BioTechniques 29:530,2000);Luo,et al.(Nat.Med.5:117,1999);Hegde,et al.(BioTechiques 29:548,2000);Kacharmina,et al.(Meth.Enzymol.303:3,1999);Livesey et al.(Curr.Biol.10:301,2000);Spirin et al.(Invest.Ophtalmol.Vis.Sci.40:3108,1998);Sakai,et al.(Anal.Biochem.287:32,2000)に記載されている。RNA増幅およびDNA合成は細胞中その場で実施することができる(例えば、Eberwine et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:3010,1992を見よ)。
【0089】
核酸分子は、核酸のマイクロアレイへのハイブリダイゼーションの検出を許容するため標識することができる。すなわち、プローブは信号発生システムのメンバーを含むことができ、このため直接に、または信号発生システムの1以上の追加のメンバーとの結合作用を通じて検出することができる。例えば、核酸は蛍光標識したdNTP(例えば、Kricka,1992,Nonisotopic DNA Probe Techniques,Academic Press,San Diego,Culif.を見よ)。ビオチン化dNTPまたはrNTPと標識化ストレプトアビジンの付加、ケミルミネセンス標識、またはラジオアイソトープで標識することができる。標識の他の例は、Tyagi and Kramer(Nature Biotech.14:303,1996)に記載された“分子ビーコン”を含む。ハイブリダイゼーションは、例えばプラスモン共鳴(例えば、Thiel,et al.,Anal.Chem.69:4948,1997を見よ)によっても決定することができる。
【0090】
本発明の他の面は、応差発現された遺伝子を検出するための方法およびプロセスに関する。検出方法は、診断、予後、法医学および研究用途を含む種々の用途を有する。遺伝子検出を達成するため、本発明に従ったポリヌクレオチドをプローブとして使用することができる。術語「プローブ」または「ポリヌクレオチドプローブ」は、この分野で慣例的な意味を有し、例えば適切なプロセスに使用される時、設計された標的ポリヌクレオチドの存在を同定するために有効なポリヌクレオチドである。同定は単に存在または不存在の決定を含むことができ、または定量化、例えばサンプル中に存在する遺伝子または遺伝子転写物の量を評価することができる。プローブは診断目的でホモログを同定し、およびテストサンプル中の本発明のポリヌクレオチドを検出、定量または単離するような、種々の態様において有用である。
【0091】
サンプル中の標的核酸の定量および/または存在/不存在検出を許容するアッセイを利用することができる。アッセイは単一細胞レベルにおいて、または多数の細胞を含むサンプルにおいて実施することができ、その場合アッセイはサンプル中に存在する細胞および組織全体のコレクションにわたる平均化発現である。どのような適切なアッセイフォーマットも使用することができ、限定なしにノーザンブロット分析、サザンブロット分析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(例えばSaiki et al.,Science 241:53,1988;U.S.Pat.No.4,683,195;4,683,202;6,040,166;PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Innis et al.eds.,Academic Press,New York,1990),逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、アンカードPCR,cDNAエンドの急速増幅(RACE)(例えばSchaefer in Gene Cloning and Analysis:Current Innovations,Pages 99−115,1997),リガーゼ連鎖反応(LCR)(EP 320308),片側PCRC(Ohara et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.86:5673−5677,1989),インデキシング方法(例えばV.S.Pat.No.5,508,169),その場ハイブリダイゼーション、応差ディスプレー(例えばLiang et al.,Nucl.Acid Res.21:3269−3275,1993;U.S.Pat.Nos.5,262,311, 5,599,672, 5,965,409;WO97/18454;Prashar and Weissman,Proc.Natl.Acad.Sci.93:659−663,U.S.Pat.Nos.6,010,850, 5,712,126;Weish et al.,Nucleic Acid Res.20:4965−4970,1992,U.S.Pat.No.5,487,985)および他のRNA指紋技術、核酸配列に基づく増幅(NASBA)、および他の転写に基づく増幅システム(例えばU.S.Pat.Nos.5,409,818および5,554,527;WO88/10315)、ポリヌクレオチドアレイ(例えばU.S.Pat.Nos.5,143,854, 5,424,186, 5,700,637;5,874,219および6,054,270;WO92/10092;WO90/15070);Qbeta リプリカーゼ(PCT/US87/00880),ストランドディスプレースメント増幅(SDA),修復連鎖反応(RCR),ヌクレアーゼ保護アッセイ、サブトラクションに基づく方法、急速スキャン(TM)等を含む。追加の有用な方法は、限定でなく、例えば鋳型依存増幅法、競合PCR(例えば、U.S.Pat.No.5,747,251)、レドックスに基づくアッセイ(例えばU.S.Pat.No.5,871,918)、Taqman系アッセイ(例えばHolland et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.88:7276−7280,1991;U.S.Pat.Nos.5,210,015および5,994,063)、リアルタイム蛍光モニタリング(例えばU.S.Pat.No.5,928,907)、分子エネルギー移動標識(例えばU.S.Pat.Nos.5,348,853, 5,532,129, 5,565,322, 6,030,787および6,117,635;Tyagi and Kramer,Nature Biotech,14:303−309,1996)を含む。遺伝子またはタンパク発現の単一細胞分析のためのどのように適した方法も使用することができ、その場ハイブリダイゼーション、イムノサイトケミストリー、MACS,FACS,フローサイトメトリー等を含む。単一細胞アッセイのため、発現産物は抗体、PCRまたは他のタイプの核酸増幅(例えばBrady et al.,Methods Mol.& Cell.Biol.2:7−25,1990;Eberwine et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.89:3010−3014;U.S.Pat.No.5,723,290)を使用して測定することができる。これらおよび他の方法は慣例的に、例えば上述の発表のように実施することができる。
【0092】
一具体例において、標的核酸の複数のセット(例えば2,3,4,5またはそれ以上)が標識され、そしてハイブリダイゼーション反応(マルチプレックス分析)に使用することができる。例えば1セットの核酸が他の細胞からのRNAに対応することができる。核酸の複数のセットは異なる標識で、例えば区別できるように独自の発光スペクトルを持っている異なる蛍光標識(例えばフルオロセインおよびローダミン)で標識することができる。次にセットは混合され、1個のマイクロアレイへ同時にハイブリダイズされる(例えばShena et al.,Science 270:467−470,1995を見よ)。
【0093】
本発明に従って使用のためのマイクロアレイは小分子有効性の特徴的な遺伝子の1以上のプローブを含んでいる。好ましい具体例において、マイクロアレイはがんにおいて上方調節された遺伝子とがんにおいて下方調節された遺伝子からなる群から選ばれた一以上の遺伝子を含んでいる。このマイクロアレイは少なくとも10、好ましくは少なくとも20、少なくとも50、少なくとも100または少なくとも1000の小分子有効性に特徴的な遺伝子を含むことができる。
【0094】
アレイ上の各遺伝子に対応する一以上のプローブが存在し得る。例えば、マイクロアレイは一つの遺伝子に対応する2ないし20のプローブ、好ましくは約5ないし10のプローブを含むことができる。プローブは全長のRNA配列、または小分子有効性に特徴的な遺伝子の相補体に対応することができ、またはプローブは特異的ハイブリダイゼーションを許容するのに十分な長さのそれらの部分に対応することができる。そのようなプローブは約50ヌクレオチドから約100,200,500または1000ヌクレオチドまで、または1000ヌクレオチド以上を含むことができる。ここにさらに記載されるように、マイクロアレイは約10ないし50ヌクレオチド、好ましくは約15ないし30ヌクレオチド、そしてもっと好ましくは約20−25ヌクレオチドよりなるオリゴヌクレオチドプローブを含有することができる。プローブは好ましくは1本鎖であり、そして配列特異的ハイブリダイゼーションの所望のレベルを提供するように標的に対し十分な相補性を有するであろう。
【0095】
典型的には、本発明に使用されるアレイはcmあたり100以上の異なるプローブの部位密度を有するであろう。好ましくは500/cm以上、もっと好ましくは約1000/cm以上、最も好ましくは約10,000/cm以上の部位密度を有するであろう。好ましくは、アレイは単一基板上に100以上の異なるプローブ、もっと好ましくは約1000の異なるプローブ、なお好ましくは約10,000以上の異なるプローブ、最も好ましくは100,000以上の異なるプローブを単一基板上に有するであろう。
【0096】
多数の異なるマイクロアレイ構造およびそれらの製造方法が当業者に知られており、そしてU.S.Pat.Nos.5,242,974;5,384,261;5,405,783;5,412,087;5,424,186;5,429,807;5,436,327;5,445,934;5,556,752;5,472,672;5,527,681;5,529,756;5,545,531;5,554,501;5,561,071;5,571,639;5,593,839;5,624,711;5,700,637;5,744,305;5,770,456;5,770,722;5,837,832;5,856,101;5,874,219;5,885,837;5,919,523;6,077,674;6,156,501;Shena et al.,Tibtech 16:301,1998;Duggan et al.,Nat.Genet.21:10,1999;Bowtell et al.,Nat.Genet.21:25,1999;Lipshutz et al.,Nature Genet.21:20−24,1999;Blanchard et al.,Biosensors and Bioelectronics 11;687−90,1996;Maskos et al.,Nucleotic Acids Res.21:4663−69,1993;Hughes et al.,Nat.Biotechnol.19:342,2001に記載されており、それらの全体の記載をここに参照として取入れる。種々の用途においてアレイを用いる方法を記載する特許は、U.S.Pat.Nos.5,143,854;5,288,644;5,324,633;5,432,049;5,470,806;5,503,980;5,510,270;5,525,464;5,547,839;5,580,732;5,661,028;5,848,659;および5,874,219を含み、それらの記載を参照としてここに取入れる。
【0097】
アレイは、好ましくは対照および参照核酸を含んでいる。対照核酸は、例えば、bioB、bioCおよびbioDのような原核遺伝子、P1バクテリオファージからのcre、またはdap,lys,phe,thrおよびtrpのようなポリAコントロールを含む。参照核酸は、一つの実験から他の実験への結果の正規化と、そして定量的レベルで多数実験の比較を許容する。例示参照核酸は既知の発現レベルのハウスキーピング遺伝子、例えばGAPDH、ヘキソキナーゼおよびアクチンを含む。
【0098】
一具体例において、オリゴヌクレオチドのアレイは固体支持体上に合成し得る。例示的固体支持体はガラス、プラスチック、ポリマー、金属、半金属、セラミック、有機物等を含む。チップマスキング技術および光保護化学を使用して、核酸プローブの規則正しいアレイを発生させることが可能である。DNAチップまたは超大スケール固定化ポリマーアレイ(VLSIPSアレイ)として知られるこれらのアレイは、約1cmないし数cmの面積を持つ基板上に数百万の区切られたプローブ領域を含むことができ、それによって数個から数百万のプローブを組み込む(例えばU.S.Pat.No.5,631,734を見よ)。
【0099】
発現レベルを比較するため、標識核酸は標的核酸とアレイ上のプローブの間の結合のために十分な条件下アレイと接触させることができる。好ましい具体例においては、ハイブリダイゼーション条件は、ハイブリダイゼーション特異性の望むレベルを提供するように選定することができる。すなわち標識した核酸とマイクロアレイ上のプローブの間にハイブリダイゼーションが起こるのに十分な条件である。
【0100】
ハイブリダイゼーションは本質的に特異的ハイブリダイゼーションを許容する条件において実施することができる。核酸の長さおよびGC含有量が熱溶融点を決定し、そのため標的核酸へのプローブの特異的ハイブリダイゼーションを得るために必要なハイブリダイゼーション条件を決定するであろう。これらのファクターは当業者に良く知られており、そしてアッセイにおいてテストすることができる。核酸ハイブリダイゼーションへの広汎なガイドは、Tijssen et al.,Laboratory Techniques in Binchemistry and Molecular Biology,Vol.24;Hybridization With Nucleotic Acid Probes,P.Tijssen,ed.Elsevier,N.Y.,1993に見られる。
【0101】
上に記載した方法は、アレイ表面上に標識した標的核酸のハイブリダイゼーションパターンの生産を生ずる。生成した標識核酸のハイブリダイゼーションパターンは、標的核酸の特定の標識に基づいて選択される特定の検出態様で、種々の方法において可視化または検出することができる。代表的な検出手段はシンチレーション計数、オートラジオグラフィー、蛍光測定、比色測定、発光測定、光散乱等を含む。
【0102】
そのような検出方法の一つは、商業的に入手可能なアレイスキャナー(Affymetrix,Santa Clara,CA)、例えば417Arrayer,418 Array Scanner,またはAgilent Gene Array Scannerを利用する。スキャナーは、インターフェースおよび使用容易なソフトウエアツールを備えたシステムコンピューターから制御される。出力は種のソフトウエアアプリケーションによって直接導入または直接読み取ることができる。好ましい走査装置は、例えばU.S.Pat.Nos.5,143,854および5,424,186に記載されている。
【0103】
蛍光標識プローブのため、転写アレイの各部位において蛍光発光が走査共焦点レーザー顕微鏡によって検出されることができる。代って、2種類の発蛍光源に特異的な波長において同時標本照射を許容するレーザーを使用し、そして2種類の発蛍光源からの発光を同時に分析することができる(例えば、Shalon et al.,Genome Res.6:639−645,1996を見よ)。好ましい具体例において、アレイはコンピューターX−Yステージおよび顕微鏡目標を備えたレーザー蛍光スキャナーで走査することができる。蛍光レーザー走査装置は前出Shalon et al.に記載されている。
【0104】
遺伝子発現データ、例えば実行する比較のタイプを分析するための種々のアルゴリズムが利用し得る。いくつかの具体例において、同時調節される遺伝子をグループ化することが望ましい。これは多数プロフィルの比較を許容する。そのような遺伝子のグループを同定するための好ましい具体例は、クラスタリングアルゴリズムを含む(クラスタリングアルゴニズムのレビューについては、例えば、Fukunaga,1990,Statistical Pattern Recognition,2nd Ed.,Academic Press,San Diego;Everitti,1974,Cluster Analysis,London;Heinemann Educ.Books;Hartigan,1975,Clustering Algorithms,New York,Wiley;Sueath and Sokal,1973,Numerical Toxonomy,Freeman;Anderberg,1973,Cluster Analysis for Applications,Academic Press.New Yorkを見よ)。
〔バイオマーカー発見〕
【0105】
発現パターンは、患者において薬物処置の有効性を予想するために使用することができるバイオマーカーのパネルを誘導するために使用することができる。バイオマーカーは生物学的サンプルから単離したRNA,腫瘍生検の凍結サンプルから単離したRNAのマイクロアレイ実験からの遺伝子発現レベル、または血清中の質量スペクトル誘導タンパク質量から構成されることができる。
【0106】
データ分析の精密なメカニズムはデータの正確な性格によるであろうが、バイオマーカーのパネルを開発するための典型的操作は以下のとおりである。データ(遺伝子発現レベルまたは質量スヘクトル)が処置前患者について集められる。研究が進むにつれ、患者は、薬物処理に対する彼等の応答に従って、有効かまたは非有効かに分類される。有効性を多数レベルはデータモデル中に受け入れられることができるが、しかしもし患者集団が数百より少なければ二元比較が最適と考えられる。各クラスは適切な患者数であると仮定して、タンパクおよび/または遺伝子データはこの分野で知られた多数の技術によって比較することができる。そのような技術の多数は伝統的な統計学または機械的学習の分野から誘導される。これらの技術は二つの目的を果す。
1.データの次元数を減らす。−質量スペクトルまたは遺伝子発現マイクロアレイの場合、データは個々のデータポイントを数千以上から約3ないし10へ減らされる。この減少はセットとして取上げた時データポイントの予報力に基づいている。
2.トレーニング−これら3ないし10データポイントは多数機械学習アルゴニズムを訓練するために使用され、それは次に、この場合、有効な薬物処置を非有効から区別するタンパクまたは遺伝子発現のパターンを認識するように学習する。
【0107】
得られた訓練したアルゴリズムは、次にそれらの予想力を測定するためにテストされる。典型的には、数千より少ない訓練例しか得られない時は、何らかの形の交差バリデーションが実施される。例示すると、10倍交差バリデーションを考えよ。この場合、患者サンプルは無作為に10のビンの1つに割当てられる。バリデーションの最初のラウンドにおいて、9のビンのサンプルが訓練に使用され、そして10番目のビンの残りのサンプルがアルゴリズムをテストするために使用される。これは追加の9回繰り返され、各時テストのために異なるビン中のサンプルが残される。10ラウンドすべてからの結果(正しい予想およびエラー)が結合され、そして予想力が評価される。異なるアルゴリズム、そして異なるパネルが検討のためにこの方法で比較されることができる。最良のアルゴリズム/パネル組合せがその時選択されるであろう。この利口なアルゴリズムが最も処置に応答すると思われる患者を選択するために使用できる。
【0108】
多数のアルゴリズムは患者から得た追加の情報から利益を受ける。例えば、予報力を改善するため性別または年令を使用することができる。また、正規化およびスムース化のようなデータ変換もノイズを減らすために使用し得る。このため、多数のアルゴリズムが成績を最適化するために多数の異なるパラメーターを使用して訓練されることができる。もし予想力がこのデータ中に存在すれば、最適な、または最適に近い利口なアルゴリズムを開発できるらしい。もしもっと多くの患者サンプルが得られるならば、アルゴリズムは新しいデータの利益を得るために再訓練されることができる。
【0109】
質量スペクトルを使用する例として、血漿(1μl)を疎水性SELDI標的へ適用し、水で良く洗い、SELDI−Of質量スペクトル計によって分析することができる。これは100以上の患者に対して繰り返すことができる。各サンプル中の16,000m/z値の強度から得られるタンパクプロフィルは、薬物有効性の予想である特定のm/z値のセットを同定するために統計学的に解析されるであろう。イオン交換またはIMAC表面のような他のSELDI標的を使用して同じ実験を行うことができる。これらは血漿中に存在するタンパクの異なるサブセットを捕捉するであろう。さらに、血漿を変性し、SEIDI標的へ適用前に前分画することができる。
〔診断および予後アッセイ〕
【0110】
本発明のバイオマーカーは、処置を受けていない患者、および化学療法および放射線のような治療をすでに受けている患者を含む、がんを有する患者の種々のクラスの処置療法を決定し、そして仕立てるために利用することができる。加えて、このバイオマーカーは活動的処置下にある患者について、治療有効性を決定し、そして追加の化学療法剤を必要とするか、または治療コースを修飾する必要とするかを指示するためにモニターするために使用することができる。例えば、バイオマーカーの変調または治療効果に関連するレベルを達成することの失敗は、薬物のより高い投与量および/または他の治療法の追加を含む処置修飾を示唆し得る。
【0111】
有用な化学療法剤の例は、限定でなく、例えばアルキル化剤(例えばシクロホスファミド、イフォスファミド、メルファラン、クロラムブシル、アジリジン、エポキサイド、アルキルスルホネート)、シスプチンおよびそのアナログ(例えばカルボプラチン、オキサプラチン)、抗代謝産物(例えばメトトレキサン、5−フロロウラシル、カペシタビン、シタラビン、ケムシタビン、フルダラビン)、トポシオメラーゼ不活性化剤(例えばカンプトセシン、イリノテカン、トポテカン、エトポシド、テニポシド、ドキソルビシン、ダウノルビシン)、抗微小管剤(例えばビンクリスチン、ビンビアスチンおよびビノレルビンのようなビンカアルカロイド、パクリタキセルおよびドセタキセルのようなタキサン)、インターロイキン−2、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、モノクローナル抗体、エストロゲン変調剤(例えばタモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン)、メゲストール、アロマターゼ阻害剤(例えばフルタミド、カソデックス)、インターフェロン(例えばインターフェロン−アルファ2aのようなサブタイプを含むインターフェロン−アルファ)等を含む。例えば、Cancer:Principles and Practice of Oncology,7th Edition,Devita et al,Lippincott Williams & Wilkins,2005,Chapters 15,16,17,18を見よ。
【0112】
本発明は、バイオマーカー(例えばMMP−1,MMP−10,IL−6,IL−8,IL−10,CSF−2,SLCO4A1,および/またはFOS様抗原)、すなわちがんに対する核酸および/またはポリペプチドマーカーを検出することによる、望まない細胞増殖によって特徴付けられる病気または状況発展のリスクに対象があるかどうかを決定するための方法を提供する。
【0113】
臨床応用において、ヒト組織サンプルをここで同定したバイオマーカーの存在および/または不存在についてスクリーニングすることができる。そのようなサンプルは、生検針コア、外科的切除サンプル、リンパ節組織または血清からなることができる。例えば、これら方法は生検を得ることを含み、それは任意に全細胞集団の約80%へ腫瘍細胞をエンリッチするためクライオスタット切開によって分画される。ある具体例においてはこれらのサンプルから抽出された核酸をこの分野で良く知られた技術によって増幅することができる。検出された選ばれたマーカーのレベルは、転移、非転移悪性、良性または正常組織サンプルと比較されるであろう。
【0114】
一具体例において、診断方法は、ノーザンブロット分析、逆転写−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、その場のハイブリダイゼーション、免疫沈澱、ウエスタンブロットハイブリダイゼーション、または免疫組織化学によるような、対象がバイオマーカー(例えばMMP−1,MMP−10,IL−6,IL−8,IL−10,CSF−2,SLCO4A1,および/またはFOS様抗原)の異常なmRNAおよび/またはタンパクレベルを持っているかを決定することを含む。この方法によれば、細胞を対象から得ることができ、そしてバイオマーカー、タンパクまたはmRNAのレベルが決定され、そして健康対象中のこれらのマーカーのレベルと比較される。バイオマーカーポリペプチドまたはmRNAの異常レベルはがんの指示であり得る。
【0115】
従って一面において、本発明はここに開示した独特の核酸マーカーに特異的なプローブおよびプライマーを提供する。従って核酸プローブは、マーカー核酸配列のコーディング配列の一部分に対し相補的な長さが少なくとも10核酸、好ましくは少なくとも15ヌクレオチド、もっと好ましくは25ヌクレオチド、および最も好ましくは少なくとも40ヌクレオチド、およびコーディング配列の全部または殆ど全部を含む。
【0116】
一具体例において、該方法は患者からの細胞中のがん細胞の存在を決定するために核酸プローブを使用することを含む。詳しくは、該方法は以下のステップを含む。
1.ある核酸配列のコーディング配列の一部分に対し相補的な長さが少なくとも10核酸、好ましくは少なくとも15核酸、もっと好ましくは25ヌクレオチド、および最も好ましくは少なくとも40ヌクリオチド、およびコーディング配列の全部または全部近くを含む核酸プローブを用意し;
2.がん細胞を含んでいる可能性がある患者から組織サンプルを取得し;
3.実質上全部が非がんである細胞を含んでいる第2の組織サンプルを用意し;
4.厳格な条件で核酸プローブを前記第1および第2の組織サンプルと接触させ(例えばノーザンブロットまたはその場のハイブリダイゼーションアッセイにおいて);そして
5.(a)該プローブの第1の組織サンプルのmRNAとのハイブリダイゼーションの量を、(b)該プローブの第2の組織サンプルのmRNAとのハイブリダイゼーションの量と比較することを含み、ここで第2の組織サンプルのmRNAとのハイブリダイゼーションの量と比較した時、第1の組織サンプルのmRNAとのハイブリダイゼーションの量における統計学的な有意差は第1の組織サンプル中のがん細胞の存在の指示である。
【0117】
一面において該方法は、与えられたマーカー核酸配列(例えばMMP−1,MMP−10,IL−6,IL−8,IL−10,CSF−2,SLCO4A1,および/またはFOS様抗原)から得たプローブとのその場合のハイブリダイゼーションを含む。該方法は、潜在的にがんまたは前がん細胞を含んでいる与えられたタイプのサンプルおよび正常細胞と、標識したハイブリダイゼーションプローブを接触させ、そしてプローブが与えられた組織タイプの一部の細胞を、同じ組織タイプの他の細胞を標識する程度よりも、統計学的に異なる程度に(例えば少なくとも係数2、または少なくとも係数5、または少なくとも係数20、または少なくとも係数50)標識するかを決定することを含む。
【0118】
やはり本発明内には、核酸配列のコーディング配列の一部に対して相補的であり、そして与えられた組織タイプの正常細胞と比較して応差的に発現される、長さが少なくとも12ヌクレオチド、好ましくは15ヌクレオチド、もっと好ましくは少なくとも25ヌクレオチド、そして最も好ましくは少なくとも40ヌクレオチド、そして全部または全部近くの核酸プローブとのテスト細胞のmRNAを接触させ、そしてmRNAのプローブのハイブリダイゼーションの概ねの量を決定することにより、例えば細胞が(a)正常か、または(b)がんまたは前がん状態かについて、与えられたヒト組織からのテスト細胞の表現型の決定方法を含み、ここでその組織タイプの正常細胞のmRNAに見られるよりも多いか少ないハイブリダイゼーションの量はテスト細胞はがんまたは前がん状態である指示である。
【0119】
代って、上記診断アッセイはマーカー核酸配列(例えばMMP−1,MMP−10,IL−6,IL−8,IL−10,CSF−2,SLCO4A1,および/またはFOS様抗原)によってコードされるタンパク産物を指向する抗体を使用して実施することができる。従って一具体例において、このアッセイはテスト細胞のタンパクをある核酸の遺伝子生産物に対して特異的な抗体と接触させ、ここでマーカー核酸はテスト細胞と同じ組織タイプの正常細胞において与えられた対照レベルにおいて発現されるものであり、そして抗体とテスト細胞のタンパクによる免疫複合体生成の概ねの量を決定することを含み、ここにおいて同じ組織タイプの正常細胞と比較した時、テスト細胞のタンパクで生成した免疫複合体の量の統計学的有意差はテスト細胞のがんまたは前がん性であることの指示である。好ましくは、抗体はMMP−1,MMP−10,IL−6,IL−8,IL−10,CSF−2,SLCO4A1,および/またはFOS様抗原に対して特異性である。
【0120】
本発明において有用なポリペプチドへ特異的に結合するポリクローナルおよび/またはモノクローナル抗体の製造方法は当業者には既知であり、そして例えばDymecki,et al.(J.Biol.Chem.267:4815,1992);Boersma & Van Leewen(J.Neurosci.Methods 51:317,1994);Green,et al.(Cell 28:477,1982);Amheiter et al.(Nature 294:278,1981)に見られる。
【0121】
そのような他の方法は、マーカー核酸配列の遺伝子産物であって、与えられた組織タイプのがん組織において同じ組織タイプの非がん組織中の該遺伝子産物のレベルよりも多いかまたは少ないレベルにおいて存在する遺伝子産物に対して特異的な抗体を用意し、潜在的にがん細胞を含んでいる、与えられた組織タイプの組織の第1のサンプルを患者から取得し、正常細胞を含みそして本質的にがん細胞を含まない、同じ組織タイプの組織の第2のサンプルを用意し(これは同じ患者または正常対照、例えば他の個人または培養細胞からでよい)、抗体と、サンプル中に存在するマーカー核酸配列産物の間の免疫複合体生成を許容する条件下で、第1および第2のサンプルのタンパク(これは溶解したが分画していない細胞、またはその場において部分的に精製し得る)と該抗体を接触させ、そして(a)第1のサンプル中の免疫複合体の生成量を、(b)第2のサンプル中の免疫複合体の生成量と比較する各ステップを含み、ここにおいて第2のサンプル中の免疫複合体生成量と比較して少ない第1のサンプル中の免疫複合体生成量の統計学的有意差は第1の組織サンプル中のがん細胞の存在の指示である。
【0122】
本発明は、対象から得た細胞サンプルがマーカーポリペプチドの異常な量を持っているかを決定する方法を提供し、該方法は、(a)対象から細胞サンプルを取得し、(b)取得したサンプル中のマーカーポリペプチドの量を定量的に決定し、そして(c)対象から得たサンプルがマーカーポリペプチドの異常量を有するかどうかを決定するため、決定したマーカーポリペプチドの量を既知標準と比較することを含む。そのようなマーカーポリペプチドは、免疫組織化学的アッセイ、ドットブロットアッセイ、ELISA等によって検出することができる。
【0123】
イムノアッセイは細胞サンプル中のタンパクのレベルを定量するために普通に使用され、そして多数の他のイムノアッセイ技術がこの分野で知られている。本発明は特定のアッセイ操作に限定されず、それ故均質および不均質操作の両方を含むことを意図する。本発明に従って実施し得る例示的イムノアッセイは、蛍光分極イムノアッセイ(FPIA)、蛍光イムノアッセイ(FIA)、酵素イムノアッセイ(EIA)、比濁阻害イムノアッセイ(NIA)、酵素リンクイムノアッセイ(ELISA)、およびラジオイムノアッセイ(RIA)を含む。指示薬部分または標識グループを対象抗体へ結合することができ、そしてしばしばアッセイ設備の入手可能性およびコンパチブルなイムノアッセイ操作によって指図される方法の種々の用途の要請を満たすように選択される。上述の種々のイムノアッセイの実施に使用される一般的技術は当業者に知られている。
【0124】
他の具体例において、患者の生物学的流体(例えば血液または尿)中のコードされた産物のレベル、または代ってポリペプチドのレベルが、その患者の細胞中のマーカー核酸配列の発現レベルをモニターする方法として決定されることができる。そのような方法は、患者から生物学的流体のサンプルを採取し、サンプル(またはサンプルからのタンパク)をコードされたマーカーポリペプチドに対して特異的な抗体と接触させ、そして該固体による免疫複合体生成量を決定するステップを含み、ここで免疫複合体生成量はサンプル中のマーカーコード生産物のレベルの指示である。正常個人から採取した対照サンプル中の、または同じ人から前または後で得た一以上のサンプル中の同じ抗体による免疫複合体生成量と比較する時、この決定は特に有益である。
【0125】
他の具体例において、この方法は高増殖障害に相関させることができる、細胞中に存在するマーカーポリペプチドの量を決定するために使用することができる。マーカーポリペプチドの量は、細胞のサンプルが形質転換された、またはそれへ向って前処理された細胞を含んでいるかどうかを予想的に評価するために使用することができる。さらにこの方法は、形質転換されたことが知られた細胞の表現型を評価するために使用することができ、表現型決定の結果は特定の治療方法の計画において有用である。例えば、サンプル細胞中の非常に高いマーカーポリペプチドレベルはがんに対する強力な診断および予後マーカーである。マーカーポリペプチドの観察は、例えばもっと攻撃的な治療の使用に関する決定に利用することができる。
【0126】
上述したように、本発明の一面は、患者から単離された細胞の文脈において、マーカーポリペプチドのレベルがサンプル細胞中で有意に減少したかどうかを決定するための診断アッセイに関する。術語「有意に減少」とは、細胞が類似の組織源の正常細胞に比較して、減少したマーカーポリペプチドの細胞量を有することを意味する。例えば、細胞は正常対照細胞に比較して、マーカーポリペプチドを約50%、25%、10%または5%より少なく持つことができる。特にこのアッセイはテスト細胞中のマーカーポリペプチドの量を評価し、好ましくは測定したレベルを少なくとも1つの対照細胞、例えば正常細胞および/または既知表現型の形質転換された細胞中に検出されたマーカーポリペプチドのレベルと比較する。
【0127】
本発明にとって特に重要なことは、正常または異常マーカーポリペプチドレベルに関連した細胞の数によって決定されたマーカーポリペプチドレベルを定量する能力である。特定のマーカーポリペプチド表現型を有する細胞の数は、次に患者予後に相関させることができる。本発明の一具体例において、病変のマーカーポリペプチド表現型は、マーカーポリペプチドの異常に高い/低いレベルを持つことが見られる生検中の細胞のパーセントとして決定される。そのような発現は免疫組織化学アッセイ、ドットブロットアッセイ、ELISA等によって検出することができる。
【0128】
組織サンプルが使用される場合、マーカーポリペプチド表現型を有する細胞の数を決定するため免疫組織化学的染色を使用することができる。そのような染色のため、組織の多数ブロックが生検または他の組織サンプルから採取され、そしてプロテアーゼKまたはペプシンのような剤を使用してタンパク分解加水分解にかけられる。ある具体例においては、サンプル細胞から該分画を単離し、そして該分画中のマーカーポリペプチドを検出するのが望ましい。
【0129】
組織サンプルはホルマリン、グルタルアルデヒド、メタノール等のような試薬による処理によって固定される。サンプルは次にマーカーポリペプチドに対し結合特異性を有する抗体、好ましくはモノクローナル抗体とインキュベートされる。この抗体は結合の後からの検出のため標識へ接合することができる。サンプルは免疫複合体の生成に十分な時間インキュベートされる。次に抗体の結合がこの抗体へ接合した標識を利用して検出される。抗体が標識されない場合、例えば抗マーカーポリペプチド抗体のアイソタイプに対して特異性の第2の標識した抗体を使用することができる。使用し得る標識は放射性核種、発蛍光剤、発ケミルミネセンス剤、酵素等である。
【0130】
酵素が使用される場合、酵素に対する基質をサンプルへ添加し、着色したまた蛍光生成物を提供することができる。接合体に使用するための好適な酵素の例は、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、マレートデヒドロゲナーゼ等を含む。商業的に入手できない場合、そのような抗体/酵素接合体は当業者に知られた技術によって容易に製造することができる。
【0131】
一具体例において、アッセイはドットブロットアッセイとして実施される。ドットブロットアッセイは、あらかじめ決定した数の細胞から得た細胞不含生成物中のマーカーポリペプチドの量へ相関させることにより、単一細胞に関連したマーカーポリペプチドの平均量の決定を許容するため、組織サンプルが使用される場合に特別の用途を見出す。
【0132】
がん文献においては、同じタイプの腫瘍細胞(例えば乳および/または大腸腫瘍細胞)は個々のがん遺伝子の均一に増加した発現、または個の腫瘍抑制遺伝子の均一に減少した発現を示さないことがある事実が確立している。また、与えられたタイプのがん細胞の間にも与えられたマーカー遺伝子の発現の変動するレベルが存在することがあり、一回のテストよりもテストの組に依存する必要性がさらに強調される。従って一面において、本発明は診断テストの信頼性および/または正確性を改良するため、多数の本発明のプローブを使用してテストの組を提供する。
【0133】
一具体例において、本発明は組織化されたアレイ中のDNAチップ上に核酸プローブが固定化される方法をも提供する。オリゴヌクレオチドは、リソグラフィーを含む種々の操作によって固体支持体へ結合することができる。例えば一つのチップは250,000のオリゴヌクレオチドを保持することができる。これら核酸プローブは、長さが少なくとも12ヌクレオチド、好ましくは少なくとも15ヌクレオチド、もっと好ましくは少なくとも約25ヌクレオチド、そして最も好ましくは約40ヌクレオチド、そしてマーカー核酸配列のコーディング配列の一部へ相補的であり、そして腫瘍細胞において応差的に発現される配列の全部または全部近くを含んでいる。本発明は種々のがんのための利用し得るテストを上廻る有意義な利益を提供する。何故なら、単一チップ上に核酸マーカーのアレイを提供することによって信頼性が増すからである。
【0134】
この方法は、生検を採取し、場合によって腫瘍細胞を全細胞集団の約80%へ富化するため低温切開によって分画される。次にDNAまたはRNAが抽出され、増幅され、そしてマーカー核酸配列の存在または不存在を決定するためDNAチップを使って分析される。
【0135】
一具体例において、核酸プローブは二次元マトリックスまたはアレイ中の基板上にスポットされる。核酸のサンプルが標識され、そして次にプローブへハイブリダイズされることができる。プローブ核酸へ結合した標識したサンプル核酸を含む2本鎖核酸は、サンプルの未結合部分を洗い流した後検出することができる。
【0136】
プローブ核酸は、ガラス、ニトロセルロース等を含む基板上にスポットすることができる。プローブは共有結合により、または疎水性相互作用のような非特異性相互作用によって基板へ結合することができる。サンプル核酸は放射性標識、蛍光源、ケミルミセンス源等を用いて標識することができる。
【0137】
アレイの構築技術およびこれらアレイの使用方法は、例えばEP0799897;WO97/29212;WO97/27317;EP0785280;WO97/02357;U.S.Pat.No.5,593,839;U.S.Pat.No.5,578,834;EP0728520;U.S.Pat.No.5,599,695;EP0721016;U.S.Pat.No.5,599,695;EP0721016;U.S.Pat.No.5,556,752;WO95/22058;U.S.Pat.No.5,631,734に記載されている。
【0138】
さらにアレイは遺伝子の応差発現を検査するために使用することができ、そして遺伝子機能を決定するために使用することができる。例えば、核酸配列のアレイは、どれかの核酸配列が正常細胞とがん細胞の間で応差的に発現されるかどうかを決定するために使用できる。対応する正常細胞中には観察されない、がん細胞中の特定のメッセージの増加した発現は、がん特異性タンパクを指示し得る。
【0139】
一具体例において、核酸分子は、核酸のどれかが、正常細胞または組織とがん細胞または組織の間で応差的に発現されるかどうかを決定するために配列した核酸分子を使用することができるように、固体表面(例えばメンブレン)上にマイクロアレイを作成するために使用することができる。一具体例において、本発明の核酸分子はcDNAであることができ、または後でPCRによって増幅され、そしてナイロン膜上にスポットされるcDNAを生成させるために使用することができる。膜は次にがんまたは正常細胞または組織の均等なサンプルから得た放射標識した標的核酸分子と反応させることができる。cDNA生成方法およびマイクロアレイ調製は当業者に知られており、そして例えば、Bertucci,et al.(Hum.Mol.Genet.8:2129,1999);Nuguyen,et al.(Genomics 29:209,1995);Zhao,et al.(Gene 156:207);Gress,et al.(Mammalian Genome 3:609,1992);Zhumabayeva,et al.(Biotechniques 30:158,201);Lennon,et al.(Trends Genet.7:314,1991)に見られる。
【0140】
なお他の具体例において、本発明は、本発明のマーカーポリペプチドに対して発生させた抗体のパネルの使用を企画する。好ましくは、抗体はMMP−1,MMP−10,IL−6,IL−8,IL−10,CSF−2,SLCO4A1,および/またはFOS様抗原に対して発生される。そのような抗体のパネルはがんに対する信頼し得る診断プローブとして使用することができる。本発明のアッセイは、細胞、例えば肺細胞を含んでいる生検サンプルをコードされた一以上の生産に対する抗体のパネルと接触させ、マーカーペプチドの存在または不存在を決定することを含む。
【0141】
本発明の診断方法は、処置の追跡として使用することができ、例えばマーカーポリペプチドのレベルの定量化は現在および以前に採用されたがん治療の有効性の、そしてこれら治療の患者予後に対する効果の指示であり得る。
【0142】
加えて、マーカー核酸またはマーカーポリペプチドは、初期検出、追跡スクリーニング、再発の検出、および化学療法または外科手術の処置後モニタリングのための診断パネルの一部として使用することができる。
【0143】
従って、本発明は例えば細胞の腫瘍発生転換から発生する増殖不全の診断および表現型決定を助けるため、細胞からのマーカーポリペプチドのゲインおよび/またはロスを検出するための診断アッセイおよび試薬を提供可能とする。
【0144】
上に記載した診断アッセイは、予後アッセイにも使用されるように適合させることができる。そのような応用は、腫瘍の進行において特徴的な段階において発生する出来事に対する本発明のアッセイの感受性の利益を採用する。例えば、与えられたマーカー遺伝子は非常に早い段階、多分細胞が悪性腫瘍への発展へ非可逆的に委ねられる前に上方または下方調節され、一方他のマーカー遺伝子はもっと後の段階でのみ上方または下方調節されることができる。そのような方法は、テスト細胞のmRNAを、腫瘍進行の異なる段階においてがんまたは前がん細胞中に異なる特徴的レベルにおいて発現される。与えられたマーカー核酸から誘導された核酸プローブと接触させ、そして細胞のmRNAへのプローブのハイブリダイゼーションの概算量を決定するステップを含み、そのような量は細胞中の該遺伝子の発現レベルの指示であり、このため細胞の腫瘍進行段階の指示である。代ってこのアッセイは、テスト細胞のタンパクと接触させた、与えられたマーカー核酸の遺伝子産物に特異的な抗体で実施することができる。そのようなテストの組は、腫瘍の存在および位置を開示するのでなく、医師がその腫瘍に最も適した処置モードを選択し、そしてその処置の成功の可能性を予想することを許容する。
【0145】
本発明の方法は、腫瘍の臨床コースの追跡にも使用することができる。例えば、本発明の方法をがんに対する患者の処置の後、患者からの組織サンプルに適用し、他の組織サンプルを採取しそしてこのテストを繰り返すことができる。成功的な処置はがんまたは前がん細胞に特徴的な応差発現を示すすべての細胞の除去をもたらすか、またはそれらの細胞中の遺伝子発現の実質的な増加、多分正常レベルへ近付くまたは上廻る増加をもたらすであろう。
【0146】
本発明は、ある剤が投与された対象において病気または障害(例えば腎細胞または肝細胞のがん)の処置における剤の有効性を決定する方法にも関し、該方法は、例えば、前記対象から得た生物学的サンプル中の表1から選ばれたmRNA、またはそれによってコードされるポリペプチド(IL−6,IL−8,MMP−1および/またはMMP−10)の量を検出することを含み、ここで前記ポリペプチドの量は前記剤の治療上有効量が投与されたかどうかの指示である。
【0147】
そのような剤の例は、マルチキナーゼ阻害剤、特にソラフェニブおよびその誘導体のようなVEGFR活性を有する阻害剤;ソラフェニブに似た活性プロフィルを有するマルチキナーゼ阻害剤(例えばWilhelm et al.,2004に記載されたような);抗脈管形成および抗腫瘍増殖活性の両方を持つ剤(例えばソラフェニブ)を含む。加えて薬物の組合わせ、例えばVEGFR2阻害剤と細胞毒または化学療法剤の組合せ;ソラフェニブと、キノン生還元性プロドラッグ(Jaffar et al.Curr Drug Deliv.2004 Oct:1(4),345−50)、または増大した低酸素症によって活性化される、または低酸素条件下で細胞を選択的に死滅させる他の薬物との組合せを含む。
【0148】
本発明に従ってバイオマーカー生産を誘発するマルチキナーゼ阻害剤の例は、例えば、ZD 6474,AZD 2171,AG−013736,AMG 706,BIBF−1120,XL999,MLN518,PKC412,OSI−930,OSI817,好ましくはSutent(SU11248;スニチニブマレート)を含む。そのような剤は、VEGFR(VEGFR2のような)、PDGFR,およびc−KIT活性;VEGFR(VEGFR2のような)および任意にRAF,PDGFR(PDGFRベータのような)、c−KIT,RET,および/またはFLT3活性を持つことができる。他のマルチキナーゼ阻害剤の例は、例えば、MP−412,ダサチニブ、CEP−701,XL647,Tykerb,ST1571,AMN107およびAEE788を含む。
【0149】
化学療法剤は、限定でなく、例えばアルキル化剤(例えばシクロホスファミド、イフオスファミド、メルフアラン、クロラムブシル、アジリジン、エポキサイド、アルキルスルホネート)、シスプラチンおよびアナログ(例えばカルボプラチン、オキサリプラチン)、抗代謝産物(例えばメトトレキセート、5−フロロウラシル、カペシタビン、シタラビン、ゲムシタビン、フルダラビン)、トポシオメラーゼ阻害剤(例えばカムプトテシン、リノテカン、トポテカン、エトポシド、テニポシド、ドキソルビシン、ダウノルビシン)、抗微小管剤(例えばビンクリスチン、ビンブラスチンおよびビノレクビンのようなビンカアルカロイド;パクリタキセルおよびドセタキセルのようなタキサン)、インターフェロン、インターロイキン−2、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、モノクローナル抗体、エストロゲン変調剤(例えばタモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン)、メゲステロール、アロマターゼ阻害剤(例えばレトロゾール、アナストロゾール、エキセメスタン、オクトレオチド)、抗アンドロゲン(例えばフルタミド、カソデックス)等を含む。例えば、Cancer:Principles and Practice of Oncology,7th Ddition,Devita et al,Lippincott Williams & Wilkins,2005,Chapters 15,16,17 and 63を見よ。プロドラッグ、特にキノン生還元性化合物のような、低酸素組織中で活性化されるプロドラッグも含められる。例えば、Jaffar et al.Curr.Drug Deliv.2004,1(4):345−350,2004を見よ。
【0150】
mRNA,またはそれによってコードされるポリペプチドの量は、ここに記載したどれかの方法によってルーチンに検出することができる。術語「検出」は標的(すなわちmRNAまたはポリペプチド)の存在がサンプル中で決定されることを指示する。術語「量」は、定量的および定性的測定、濃度、絶対値、サンプル中に存在する総量等を含む、どれかの適当な測定、値またはスケールを含むことができる。mRNAの量(例えば鋳型として標的mRNAを使用するcDNAの測定を含む)またはポリペプチドの量は、治療的または生理学的に有効量のソラニフェブ(またはその誘導体)が投与されたかどうかの指示として記載することができる。このためバイオマーカーの一以上のある量が検出される時、これは剤(ソラフェニブのような)が対象中で生理学的効果を達成しつつあることの指示である。表1はソラフェニブ投与に関連したバイオマーカーの完全なリストを含んでいる。
【0151】
「治療効果」とは、投与された薬物が病気または障害の少なくとも一つの徴候を処置、闘争、緩和、軽減、寛解、改善すること等(例えば治療上有効量で投与した時)を指示する。ソラフェニブの治療効果は、限定でなく、例えば脈管形成阻害;細胞増殖阻害;組織壊死または低酸素症;腫瘍成長、停止または減速;腫瘍細胞増殖の停止または減速;例えば腫瘍細胞および/または内皮細胞におけるアポトーシスの産生;チロシンキナーゼの阻害;VEGFR(VEGFR2のような)、PDGFR(PDGFRベータのような)、FLT3,C−KIT,RETおよびRAFの阻害等を含む。他の活性については、例えばWilhelms et al,Canc.Res.2004,64(19):7099−109;Carlomagno et al,J.Nat1.Cancer Inst.2006 Mar 1:98(5):326−34を見よ。ソラフェニブおよび本発明に従った他の剤は、実質的な治療効果を得る以前に生物学的有効投与量(BED)を産む。後者は、例えばソラフェニブの投与量がそのキナーゼ標的と相互作用するには十分であるが、しかし病気または障害を効果的に処置するためには適当でない時に発生し得る。これらの状況、すなわち、一以上のバイオマーカーの変調(例えばIL−6,IL−8,MMP−1および/またはMMP−10レベルの増加)の不存在、またはもしバイオマーカー量が期待よりも少ない状況においては、剤(ソラフェニブのような)投与量はバイオマーカー量の期待した変化が観察されるまで増加することができる。
【0152】
薬物有効性のための診断マーカーとして利用されるバイオマーカーの量は、種々の方法によって決定することができる。例えば、この量は薬物処置の前および後で同じ対象から得たサンプルを使用して決定することができ、そして二つの時点の間の有意差は薬物がその効果を達成していることを決定するために用いることができる。そのような差はルーチンに決定することができ、そして例えば2×(倍)、3×、3.5×、4×、5×、6×、7×、8×、9×10×、11×、15×、20×またはそれ以上から、約3×−4×から、約2×−5×から、約2×−10×から等を含むことができる。表1に示すように、154遺伝子がソラフェニブ処置に応答して応差的に調節されることが決定され、そしてこれら遺伝子のいずれも、そしてそれらがコードするポリペプチドも薬物有効性のための代用バイオマーカーとして使用することができる。術語「応差的に調節」とは、遺伝子発現(例えばmRNAによりまたはポリペプチドによって測定された)が薬物投与において変化するが、測定したすべての遺伝子がそのような変化を示すとは限らなかったことを意味する。
【0153】
同じ患者からのサンプル間の量を比較することに加え、標準または正常値も使用することができる。例えば、特定のバイオマーカーのための典型的な値または値の範囲を対象集団において確立することができ、そして次にそのような値を薬物有効性の閾値として使用することができる。典型的範囲外の値は観察される時は、そのような値は薬物が治療効果を持ちつつあることを指示するであろう。他方、バイオマーカーレベルの有意義の欠如は、病気(例えばがん)がその薬物に応答性でないこと、または有効性を持つためには追加的増与量増加が必要であることを指示するために使用できる。標準または正常値と比較することに加え、バイオマーカーのレベルはソラフェニブ投与前、前記対象から得たサンプルと比較することができる。表1中の負(−)の記号は、バイオマーカーのレベルが減少したことを指示し、もし記号がリストされていなければ、バイオマーカーが増加したことを示す。
【0154】
本発明はまた、対象の処置コースの間ある剤(ソラフェニブのような)の効果、例えば対象の処置のコースの間バイオマーカーの応差的遺伝子またはポリペプチド発現について生物学的サンプルがアッセイされる場合に、剤の効果をモニターする方法を提供する。検出した量が剤の不十分な治療量が投与されたことを指示する時、適正なバイオマーカー応答に達し、治療レベルが得られるまで追加の薬物を提供することができる。
【0155】
バイオマーカーの増加は剤による治療の間いつでも観察することができる。例えば、バイオマーカー発現は、対象へ一以上の投与量(例えば多数投与量)、例えば2,3,6,8,10,12,14,16,20,22,26,30,36,40またはそれ以上の投与量(投与量が薬物の1日量を指示する場合)を含む投与量が投与され終った後まで観察されることはない。そのような増加は、剤の投与後、例えば約4−24時間、1−3日、1−7日、または3−10日に起こることができる。
【0156】
本発明に従って、例えばある剤が治療効果を有するかどうかを決定するためにいかなる数のバイオマーカーも検出することができる。これらは1,2,4,10,15,20,30,60を含み、そして表1に示したマーカーの全体のセットを含む。表1のバイオマーカーのアミノ酸およびヌクレオチド配列は知られており、そしてGenBankのような公共データベースから得ることができる。
【0157】
本発明はまた、ある剤(ソラニフェブまたはステントのような)を投与された対象において腫瘍の処置における該剤の有効性を決定する方法を提供し、該方法は前記対象中の腫瘍低酸素症の量を測定することを含み、ここで前記量はソラフェニブの治療上有効量が投与されたかどうかの指示である。組織低酸素症とは、細胞が嫌気性呼吸を経験しているように酸素使用の減少として定義することができる。低酸素症を決定するため種々の方法を使用することができる。例えば、全身的な測定は、例えば、血中乳酸、pH、酸素輸送/酸素消費、混合静脈酸素飽和、静脈動脈二酸化炭素勾配等を含む。全身的測定に加え、区域的低酸素症も測定できる。これらは、例えば血液酸素化レベル依存性(BOLD)MRI(例えばPrasad et al.,Noninvasive Evaluation of Internal Oxygenation with BOLD MRI,Circulation 94:3271−3275,1996),応差的通路長スペクトル分析、18F−フルオロミソニダゾール(18F−FMiSO)陽子発射トモグラフィー(PET)(例えば、Lawrentschuk et al.,BJU Int.96(4):540−546,2005)および2−ニトロイミダゾール低酸素症マーカーを使用する他の方法のような、非侵襲的方法を含む。他のバイオマーカー方法のため、ソラフェニブ投与は高酸素症が観察されるまで増量することができる。
【0158】
本発明のバイオマーカーは、腫瘍低酸素症発生のための、特に低酸素症が新しい血管形成なしで起こる時の内因性マーカーとして利用することができる。例えばソラフェニブおよびステントは、がんを処置するために使用される場合、組織低酸素症を招来する腫瘍と血管の成長に対して有効である。これらの剤および他の剤に応答する組織低酸素症の存在および程度は、本発明に従って例えば、IL−6,IL−8,MMP−1および/またはMMP−10を含む、表1にリストしたどれかのバイオマーカーを測定することによって決定することができる。他の方法のように、これらバイオマーカーは血液、腫瘍細胞または他の体液中で測定することができる。従って本発明は、組織低酸素症のためのバイオマーカーに関する。これは、例えば対象から得た生物学的サンプル中のMMP−1,MMP−10,IL−6,IL−8,IL−10,CSF−2,SLCO4A1,および/またはFOS様抗原ポリペプチドまたはmRNAの量を決定することを含む、腫瘍組織低酸素症の存在を決定する方法を含む。前記ポリペプチドまたはmRNAの量は腫瘍組織中の低酸素症発生の指示である。
【0159】
本発明はまた、ある化合物がソラフェニブの薬理学的活性を持っているかどうかを決定する方法を提供し、該方法はソラフェニブへ曝露された細胞中の少なくとも二つの応差的に調節されるmRNA,またはそれによってコードされるポリペプチドの量を検出することを含み、ここで前記量は前記化合物がソラフェニブの薬理活性を持っているかどうかの指示でありそして前記応差的に調節されるmRNAは表1から選ばれる。
【0160】
ここに開示される応差的に発現される遺伝子の発現パターンは、それらはソラフェニブ投与に応答して細胞によってディスプレーされる独特のパターンであることにおいて、指紋として記載することができる。指紋と同じく、ある発現パターンは組織のソラフェニブ応答に関してその状態を特徴付けるための独特のアイデンティファイヤーとして使用することができる、それはマルチキナーゼ阻害剤に対する細胞応答を比較し、そして特徴化するためのポイントとして使用することができる。例えば、この指紋は関心ある化合物がソラフェニブと同じ薬理作用を持っているかどうかを決定するために使用することができる。応差的遺伝子発現はあるテスト化合物について決定することができる。パターンより近くマッチすればする程、その化合物はソラフェニブの薬理学的プロフィルをより近く映す。そのような化合物はソラフェニブが使用されるどの適応症にも使用することができる。
【0161】
本発明はまた、対象においてソラフェニブ投与に関連した炎症イベントを低減する方法を提供し、該方法はそのような対象へ抗炎症剤の有効量を投与することを含む。例えば非ステロイド抗炎症剤(NSAID);コルチゾンおよびその誘導体等を含むどのような抗炎症剤も投与することができる。
〔予想的アッセイ〕
【0162】
与えられた抗がん剤からの臨床的利益を予想できる研究室内アッセイは、がんを有する患者の臨床マネージメントを大きく強化するであろう。この効果を評価するため、抗がん剤に関連するバイオマーカーを、生物学的サンプル(例えば腫瘍サンプル、血漿)中で処置の前、最中および後に分析することができる。
【0163】
例えば、MMP−1,MMP−10,IL−6,IL−8,IL−10,CSF−2,SLCO4A1,および/またはFOS様抗原mRNAおよびタンパクを血漿中で検出することができる。このためMMP−1,MMP−10,IL−6,IL−8,IL−10,CSF−2,SLCO4A1,および/またはFOS様抗原の血漿濃度の変化をがん患者中でモニターすることができる。加えて、MMP−1,MMP−10,IL−6,IL−8,IL−10,CSF−2,SLCO4A1,および/またはFOS様抗原タンパクレベルも、パラフィン埋没腫瘍生検を用いて定量的免疫組織化学的によってモニターすることができる。
【0164】
処置をモニターするための他のアプローチは血清プロテオミックスペクトルの評価である。特に、血漿サンプルは質量スペクトルに分析(例えば表面増強レーザーデソープションおよびイオン化)へ服させることができ、そしてプロテオミックスペクトルは各患者について発生させることができる。処置前および最中に患者からの血漿の分析から得られたスペクトルのセットは、処理されたサンプルを未処理サンプルから完全に区別するプロテオミックパターンを同定することができる反復検索アルゴリズムによって分析することができる。得られたパターンは次に処置後の臨床的利益を予想するために使用し得る。
【0165】
生物学的サンプル(例えば腫瘍生検サンプル、血液サンプル)の全体的遺伝子発現のプロフィルおよびバイオインフォマチック誘導パターン同定は、ある抗がん剤に対する臨床的利益および感受性を予想し、そしてそれに対する抵抗性の発展を予想するために利用することができる。例えば、処置前および最中に患者からの全血から得た単離された細胞は、Affymetrx GeneChip 技術およびアルゴリズムを使用して、血球遺伝子発現プロフィルを発生させるために使用することができる。これら遺伝子発現プロフィルは特定の抗がん剤での処置からの臨床的利益を予想させる。
【0166】
H−NMR(核磁気共鳴)による尿の生化学的組成の分析も予想アッセイとして利用することができる。パターン認識技術を抗がん剤による処置に対する代謝応答を評価するために使用することができ、そしてこの応答を臨床エンドポイントに相関させることができる。尿中に排泄されるバイオマーカーまたは内因性代謝産物は正常対象についてプロトンNMRによって良く特徴化されている(Zuppi et al.,Clin Chim Acta 265:85−97,1997)。これら代謝産物(約30−40)は、クエン酸および尿素サイクルのような主要代謝経路の副生物を代表する。薬物、病気および遺伝子刺激は、この刺激に対する代謝応答の時間ラインおよび大きさの指示である、ベースライン尿プロフィルの代謝特異性変化を生ぜしめることが示された。これらの分析は多変数であり、それ故データ解釈を改良するためパターン認識技術を使用する。尿代謝物パターンは臨床的利益を決定するため臨床的エンドポイントに相関させることができる。
【実施例】
【0167】
本発明は、以下の非限定的実施例を参照して以下に説明される。
【0168】
Affymetrix分析
【0169】
RNeasy プロトコール(Qiagen,CA)を使用する修飾した販売者プロトコールに従って、TRIzo1試薬(Life Technologies,MD)を使用して全RNAが腫瘍から抽出された。RNA(5μg)は、販売者プロトコール(Invitrogen,CA)に従ってRT−PCRのためのInvitrogen Superscrip III Choice システムを使用してcDNAへ転写された。cDNAは、RNA標識化キット(Enzo Diagnostics,NY)を使用してビオチン化ヌクレオチドを取込むインビトロ転写反応に使用された。生成したcRNAは精製され、定量化され、断片化され、そして各アレイ(Human Genome U133 Plus 2.0)上に負荷(10μg)された。ハイブリダイゼーションは、Affymetrix GemeChip ハイブリダイゼーションオーブン640(Affimetrix;Santa Clara,CA)中45℃で16−18時間進められた。アレイは、Affymetrix Fluidics Station 450 を使用してフイコエリスリン接合ストレプトアビジンで染色された。測定はアレイをAffymetrix Scanner 3000 に入れた後に行われた。発射された光の強度が発現レベルを指示する数値へデシタル変換された。遺伝子発現の相対的倍数変化がソラフェニブ処置腫瘍対ビヒクル処置腫瘍の比較から計算された。
【0170】
腫瘍溶解物のAffymetrix分析に基づいて、約154遺伝子がソラフェニブ処置腫瘍において3.5倍以上上方調節または下方調節された。ソラフェニブ処置後分析された4時点において、最も有意な遺伝子変化は3回目投与4時間に起こり、そして24時間までに減少し始める。表1を見よ。
【0171】
Taqman分析
【0172】
すべて関心ある遺伝子は、FAM蛍光タグ(FAM=6−カルボキシフルオロセイン)を有するMGB設計プローブであった。正常化のため、蛍光タグ(VICアミダイト)を有するリボソームタンパクに対するMGBプローブが使用された。
【0173】
PCR反応は、Supersript III First Strand Synthesis キット(Invitrgen,CA)を使用して腫瘍細胞サンプルから単離したRNAから調製したcDNAを使用し、ABI Prism 7900 Sequence Detector(PE Applied Biosystems,CA)上で実施された。反応は、50℃2分および95℃10分のプレPCRサイクル1回と、次いで95℃15秒および60℃1分の40サイクルを含んでいた。
【0174】
発現品質の推計はC+値に基づいていた。各個々のサンプルはそれ自身のL37値へ正常化された。倍数変化はddCT法を用いて計算され、そして処置したサンプルをビヒクル対照サンプルと比較した。
【0175】
炎症および脈管形サイトカインIL−6およびIL−8、それにマトリックスメタロプロテイナーゼMMP−1およびMMP−10のmRNA中レベルの有意な増加がソラフェニブで処置において観察された。Affimetrix遺伝子チップ上に発生させたデータは、ヒト特異性プライマーを用いるTaqman分析によって確認された。
【0176】
腫瘍および血漿中のタンパクレベルの測定
【0177】
腫瘍サンプルを急速冷凍し、溶解バッファー(40mM Tris,pH,10%グリセロール、50mM b−グリセロールホスフェート、5mM EGTA,2mM EDTA,1mM オルトバナジン酸ナトリウム、10mMフッ化ナトリウム、0.3% Triton X−100,およびプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche,Indianapolis,IN)中でホモジナイズされた。
【0178】
Meso Scale Diagnostics(Gaithers burg,MD)からの特異的アッセイキットを使用し、製造者からの条件に従ってIL−6,IL−8およびVEGFのレベルが決定された。
【0179】
MMP−1およびMMP−10タンパクレベルは、R & D Systems(Minneapolis,MN)からのイムノアッセイELISAにおいて、販売者のプロトコールに従って決定された。
【0180】
IL−6,IL−8,MMP−1およびMMP−10の腫瘍タンパクレベルは、テストした異なる投与量においてソラフェニブ処置(QDX3)によって上昇した。すべての4種のタンパクレベルの統計学的に有意義な上昇は、3回目投与(15,30,60mg/kg投与量)24時間において観察された。IL−6,IL−8,MMP−1およびMMP−10の血漿中の上昇の傾向は、ソラフェニブ処理動物から採取した血漿中に観察された。
【0181】
どこかの日/時間ポイントにおける43−9006処置による3.5より大きい倍数を持つトッププローブセット。有意な信号は>1000である。
【表1】












【図面の簡単な説明】
【0182】
【図1】遺伝子調節のタンパク発現研究のアウトラインを示す。
【図2】マウスにおけるソラフェニブ処置およびHypoxyprobeを使用する低酸素症評価の時間ライン。腫瘍採取1時間前、マウスはHypoxyprobe(ピモノニダゾール塩酸塩60mg/kg,Chemicon International;Temecula,CA)を静脈注射された。腫瘍は最終ソラフェニブ投与4時間および24時間後に収穫された。紫外線可視化のため、5mmに切断したホルマリン固定パラフィン埋め込み腫瘍切片をキット(Hypoxyprobe−1 Plus Kit;Chemicon International:Temecula,CA)で供給されるFITC接合Hypoxyprobe−1 一次抗体と1時間インキュベートした。切片はまた、ヤギ抗CD31抗体(Santa Cruz:Santa Cruz,CA)とインキュベートされた。
【図3】ソラフェニブ処置により調節された遺伝子のAffymetrix分析を提供する。データは処置された腫瘍を対応する対照腫瘍と比較した時の遺伝子発現における相対的倍数変化として表わされる。ここで、明るい赤は遺伝子発現の>3.5倍上方調節を表わし、明るい緑は遺伝子発現の>3.5倍下方調節を表わす。
【図4】IL−8およびIL−6遺伝子はソラフェニブ処置によりtaqman分析によって確認されるように上方調節されることを示す。
【図5】MMP−1およびMMP−10遺伝子はソラフェニブ処置によりtaqman分析によって確認されるように上方調節されることを示す。
【図6】ソラフェニブ処置した腫瘍はIL−6,IL−8,MMP−1およびMMP−10タンパクのレベルを評価された。データは平均値±SEM;グループ当りの動物n=10 パネル(A)腫瘍IL−6(pg/ml) パネル(B)腫瘍IL−8(pg/ml) パネル(C)腫瘍MMP−10(pg/ml) パネル(D)腫瘍MMP−1(pg/ml)
【図7】ソラフェニブ処置した動物からの血漿はIL−6,IL−8およびMMP−10のレベルと評価された。データは平均値±SE;n=10動物/グループ、*はP=0.05を示す。 パネル(A)血漿IL−6(pg/ml) パネル(B)血漿IL−8(pg/ml) パネル(C)血漿MMP−10(pg/ml)
【図8】VEGFレベルはソラフェニブ処理腫瘍において適度に評価された。データは平均値±SEM;n=10動物/グループ、*はP=0.05を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソラフェニブを投与された対象の病気または障害におけるソラフェニブの有効性を決定する方法であって、前記対象から得た生物学的サンプル中のMMP−1,MMP−10,IL−6,IL−8,IL−10,CSF−2,SLCO4A1、および/またはFOS様抗原ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの量を検出することを含み、ここで前記量は治療的に有効なソラフェニブが投与されたかどうかの指示であり、そして検出された量を標準値と比較することを含む方法。
【請求項2】
前記量は、ソラフェニブ投与前、前記対象からサンプルである標準値と比較して増加している請求項1の方法。
【請求項3】
前記量は、標準値と比較して増加している請求項1の方法。
【請求項4】
標準は、ソラフェニブ投与前に前記対象から得た生物学的サンプル中のMMP−1,MMP−10,IL−6,IL−8,IL−10,CSF−2,SLCO4A1、および/またはFOS様抗原ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの量を検出することによって決定される請求項1の方法。
【請求項5】
ソラフェニブ投与のコースを通じて得られた生物学的サンプル中のMMP−1,MMP−10,IL−6,IL−8,IL−10,CSF−2,SLCO4A1、および/またはFOS様抗原ポリペプチドまたはポリヌクレオチドを検出することを含む請求項1の方法。
【請求項6】
IL−6,IL−8および/またはMMP−1が検出される請求項1の方法。
【請求項7】
前記サンプルは腫瘍組織または腫瘍細胞サンプルである請求項1の方法。
【請求項8】
前記サンプルは血液サンプルである請求項1の方法。
【請求項9】
前記増加は、ソラフェニブ投与後約4〜24時間、1〜3日、1〜7日、または3〜10日後に起こる請求項2または3の方法。
【請求項10】
IL−6,IL−8,MMP−1および/またはMMP−10の前記量が対照または標準レベルと比較して増加するまで前記対象へソラフェニブを投与することをさらに含む請求項1の方法。
【請求項11】
前記病気または障害は腫瘍である請求項1の方法。
【請求項12】
前記病気または障害はメラノーマ、肝細胞がん、非小肺細胞肺がん、または腎細胞がんである請求項1の方法。
【請求項13】
ソラフェニブを投与された対象の病気または障害に処置においてソラフェニブの有効性を決定する方法であって、前記対象から得た生物学的サンプル中のIL−6,IL−8,MMP−1および/またはMMP−10mRNAの量を検出することを含み、ここでmRNAの量はソラフェニブの治療的有効量が投与されたかどうかの指示である、方法。
【請求項14】
ソラフェニブを投与された対象の病気または障害の処置においてソラフェニブの有効性を決定する方法であって、前記対象から得た生物学的サンプル中の少なくとも一つの応差的に調節されるmRNA、またはそれによってコードされるポリペプチドの量を検出することを含み、ここで前記mRNAまたはそれによってコードされるポリペプチドは表1から選ばれ、そしてここで前記mRNAまたはそれによってコードされるポリペプチドの量はソラフェニブの治療的に有効量が投与されたかどうかの指示である、方法。
【請求項15】
少なくとも10の応差的に調節されたmRNAまたは前記mRNAによってコードされるポリペプチドの量が検出される請求項14の方法。
【請求項16】
ソラフェニブを投与された対象における腫瘍の治療におけるソラフェニブの有効性を決定する方法であって、前記対象中の腫瘍低酸素症の量を測定することを含み、ここで前記量はソラフェニブの治療的に有効量が投与されたかどうかの指示である、方法。
【請求項17】
がんを持っている対象のためのソラフェニブ処置のコースを決定する方法であって、MMP−1,MMP−10,IL−6,IL−8,IL−10,CSF−2,SLCO4A1、および/またはFOS様抗原ポリペプチドまたはポリヌクレオチドを対照または正常値に比較して前記対象から得た生物学的サンプル中において増加を誘発するのに有効な量を投与することを含む、方法。
【請求項18】
ある化合物がソラフェニブの薬理活性を持っているかどうかを決定する方法であって、前記ソラフェニブへ曝露された細胞中の、少なくとも二つの応差的に調節されるmRNAまたはそれによってコードされるポリペプチドの量を検出することを含み、ここで前記量は前記化合物がソラフェニブの薬理作用を持っている指示であり、そして前記応差的に調節されるmRNAは表1から選ばれる、方法。
【請求項19】
腫瘍組織低酸素症の存在を決定する方法であって、対象から得た生物学的サンプル中のMMP−1,MMP−10,IL−6,IL−8,IL−10,CSF−2,SLCO4A1、および/またはFOS様抗原ポリペプチドまたはポリヌクレオチドまたはmRNAの量を検出することを含み、ここにおいて前記ポリペプチドまたはmRNAの量は腫瘍組織中の低酸素症の発生を指示する、方法。
【請求項20】
対象においてソラフェニブ投与に関連した炎症イベントを減らす方法であって、前記対象へ抗炎症剤の有効量を投与することを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6(A)】
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【図6(B)】
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【図6(C)】
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【図6(D)】
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【図7(A)】
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【図7(B)】
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【図7(C)】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−532029(P2009−532029A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503038(P2009−503038)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/007965
【国際公開番号】WO2007/123722
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(503106111)バイエル・ヘルスケア・エルエルシー (154)
【Fターム(参考)】