癌の予防または治療のための腫瘍抗原
【課題】癌の予防および/または治療、特に免疫療法に使用するための、腫瘍抗原をコードする外来遺伝子の挿入および発現のための改良されたベクターを提供する。
【解決手段】特定の配列をコードする、プラスミドまたはウイルスベクタである発現ベクター;前記特定配列をコードする単離核酸分子;特定の配列群のいずれか1つにより表される単離ペプチド;ならびに前記単離ペプチドおよび医薬的に許容されるキャリヤーを含む組成物。
【解決手段】特定の配列をコードする、プラスミドまたはウイルスベクタである発現ベクター;前記特定配列をコードする単離核酸分子;特定の配列群のいずれか1つにより表される単離ペプチド;ならびに前記単離ペプチドおよび医薬的に許容されるキャリヤーを含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2003年5月16日出願の米国特許出願第60/471,119号、および2003年5月16日出願の米国特許出願第60/471,193号に基づく優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、ポリペプチドをコードする核酸、ならびに、癌の予防および/または治療におけるその核酸またはポリペプチドの使用に関する。より詳細には、本発明は、癌の免疫療法に使用するための、腫瘍抗原をコードする外来遺伝子の挿入および発現のための改良されたベクターに関する。
【背景技術】
【0003】
高密度マイクロアレイ、SEREX、免役組織化学法(IHC)、RT−PCR、in−situハイブリダイゼーション(ISH)およびレーザー捕捉顕微法といったいくつかの技術による、原発性腫瘍および正常細胞についての発現プロファイリングに基づく分子の同定の大きな進歩のため、腫瘍関連抗原(TAA)を用いた癌ワクチンの開発においては最近数年間に大変な拡大があった(Rosenberg,Immunity,1999; Sgroi et al,1999,Schena et al,1995,Offringa et al,2000)。TAAとは、腫瘍細胞によって発現または過剰発現されている抗原であり、および1またはいくつかの腫瘍に特異的である可能性があり、たとえばCEA抗原は直腸結腸癌、乳癌、および肺癌で発現される。Sgroiら(1999)は、浸潤性および転移性癌細胞で発現に差のあるいくつかの遺伝子を、レーザー捕捉顕微解剖法およびcDNAマイクロアレイを組み合わせて用いて同定した。DNAまたはウイルスのようないくつかの運搬系(delivery system)は、ヒト癌に対する治療ワクチン接種に用いることができ(Bonnet et al,2000)、および免疫応答を導きおよびまたTAAに対する免疫寛容を打破することができる。腫瘍細胞は、B7.1といったT細胞共刺激分子または特にIFN−γ、IL2、またはGM−CSFといったサイトカインをコードする導入遺伝子を挿入することによって、より免疫原性を高めることができる。TAAおよびサイトカインまたは共刺激分子の共発現はまた、効果的な治療ワクチンの開発において有用であることが示されている(Hodge et al,95,Bronte et al,1995,Chamberlain et al,1996)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本分野には、癌を予防または治療するために免疫応答を刺激することにおいて有用な試薬および方法の必要性がある。本発明は、癌を治療する試みにおいて他の試薬および方法が直面する問題の多数を克服する試薬および方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、癌を予防および/または治療するための患者への投与のための免疫原性標的を提供する。特に、その免疫原性標的は、腫瘍抗原(「TA」)および/または血管新生関連抗原(「AA」)である。一実施形態では、免疫原性標的は、配列番号34または配列番号36によってコードされるか、または配列番号35または配列番号37のアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、TAおよび/またはAAは、プラスミド、または組換えウイルスといった他の運搬ベクター内に含まれた核酸として患者に投与される。TAおよび/またはAAはまた、共刺激分子(co-stimulatory molecule)またはアジュバントといった免疫促進剤と組み合わせて投与されうる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1A−1】AAC2−1およびAAC2−2のヌクレオチド配列。欠けたヌクレオチドまたはアミノ酸は「*」で示される。配列間の差は下線で示す。
【図1A−2】図1A−1の続き。
【図1B】AAC2−1およびAAC2−2の予想アミノ酸配列の整列。欠けたヌクレオチドまたはアミノ酸は「*」で示される。配列間の差は下線で示す。
【図2】ヒトリンパ球は、AAC2−2タンパク質に由来するペプチドに反応して、IFN−γを分泌するエフェクター細胞へ分化する。T細胞は、表III(群1〜9)に示されるペプチドの群で刺激された。3回の刺激後、リンパ球をペプチド特異的IFN−γ産生についてELISPOTによって分析した。挿入図のグラフは、ペプチド群6番によって刺激された活性化細胞は、抗原特異的CTL活性の能力を有し、ペプチド負荷されたT2標的細胞を傷害することを示す。ペプチドEC5は、CTL活性およびIFN−γ分泌の両方の誘導における主な活性を誘導する。
【図3】HLA−A2−Kb遺伝子導入マウス由来のマウスT細胞は、ヒトAAC2−2をコードするDNAプラスミドを用いたDNA免疫を認識およびそれに応答してIFN−γ分泌する。pEF6−hAAC2−2免疫マウス由来の脾臓細胞は、さまざまな群のペプチドを用いて再刺激された。6日後、細胞を採取しおよび各ペプチド群のそれぞれまたは対照HLA−A2結合9量体HIVペプチドに応答したIFN−γ分泌について試験した。ELISPOTプレートを一夜インキュベートしおよび発色させた。各群は、陽性対照として用いたPMAおよびイオノマイシンに応答して、高レベルのIFN−γ産生(250スポットより大)で反応した。反応性の高いペプチド群の1つ(群6)はまた、これまでに試験したHLA−A−0201+ドナー由来のヒトリンパ球によっても認識される。
【図4】ヒトAAC2−2をコードする遺伝子を用いたDNAワクチン接種は、移植されたB16F10黒色腫細胞の増殖を完全に阻害する。この作用は、flu−NPタンパク質およびヒトflk1(VEGFR−2)をコードするプラスミドが腫瘍増殖を妨げることができないことによって示される通り、非特異的免疫応答が原因ではない。
【図5】ヒトAAC2−2ベクターを用いたDNAワクチン接種が腫瘍増殖の作用に対して完全に防御する能力を示す、B16F10黒色腫細胞のC57BL/6マウスへの移植後のマウスの生存。この防御作用は抗原特異的であり、および他の遺伝子を用いたワクチン接種を介して誘導することができない。
【図6】C57BL/6マウス由来のTリンパ球は、pEF6−hAAC2−2発現プラスミドを用いたDNAワクチン接種後に、ヒトAAC2−2のペプチドに応答して、エフェクター細胞活性を示しおよびIFN−γを分泌する。これらのペプチドは、B6MHCクラスIについて交差反応性を示しうる。群1および群5のペプチドは、C57BL/6T細胞によって強い反応性を誘導する。
【図7】BFA4cDNA配列。
【図8】BFA4アミノ酸配列。
【図9】BFA4ペプチドに対する免疫応答。
【図10】BCY1ヌクレオチド(A)およびアミノ酸(B)配列。
【図11】特異的BCY1ペプチドに対する免疫応答。
【図12】BFA5cDNA配列。
【図13】BFA5アミノ酸配列。
【図14A】BFA5由来ペプチドに対する免疫応答。
【図14B】BFA5由来ペプチドに対する免疫応答。
【図14C】BFA5由来ペプチドに対する免疫応答。
【図15】BCZ4cDNAおよびアミノ酸配列。
【図16A】BCZ4由来ペプチドに対する免疫応答。
【図16B】BCZ4由来ペプチドに対する免疫応答。
【図16C】BCZ4由来ペプチドに対する免疫応答。
【図17】BFY3cDNAおよびアミノ酸配列。
【図18A】BFY3由来ペプチドに対する免疫応答。
【図18B】BFY3由来ペプチドに対する免疫応答。
【図18C】BFY3由来ペプチドに対する免疫応答。
【図18D】BFY3由来ペプチドに対する免疫応答。
【図18E】BFY3由来ペプチドに対する免疫応答。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、癌の予防および/または治療に有用な試薬および方法を提供する。本明細書中で引用されたすべての参考文献は参照により本開示に含まれる。
一実施形態では、本発明は、癌を予防および/または治療するための、1つ以上の腫瘍抗原(「TA」)に対する免疫応答の誘導または促進に関する。一部の実施形態では、1つ以上のTAは組み合わせることができる。好ましい実施形態では、免疫応答は、たとえば腫瘍抗原をコードする核酸ベクターまたはペプチドまたはポリペプチドの形の腫瘍抗原自体の投与後の、宿主細胞におけるTAの発現の結果として生じる。
【0008】
ここでは、「抗原」とは、抗原が投与されている宿主において免疫応答を生じる、ポリペプチドまたはその一部といった分子である。免疫応答は、抗原の少なくとも1つのエピトープに結合する抗体の産生および/または抗原のエピトープを発現している細胞に対する細胞性免疫応答の発生を含みうる。応答は、たとえば、抗体産生の増加、抗原に対する親和性の増大した抗体の産生、または増大したかまたはより効果的な細胞性応答(すなわち、T細胞の増加、またはより高い抗腫瘍活性を持つT細胞)を生じることによる、現在の免疫応答の促進でありうる。免疫応答を生じる抗原を、代替的に、免疫原性であると、または免疫原ということができる。本発明の説明においては、TAを「免疫原性標的」ということができる。
【0009】
TAは、癌細胞が抗原の起源である場合、腫瘍関連抗原(TAA)および腫瘍特異的抗原(TSA)の両方を含む。TAAとは、正常細胞上で観察されるよりも多量に腫瘍細胞の表面上で発現されている抗原、または胎児発生中に正常細胞上に発現されている抗原である。TSAとは、腫瘍細胞に独特であり、および正常細胞上には発現されていない抗原である。TAはさらに、TAAまたはTSA、その抗原性断片、およびその抗原性を保った改変型を含む。
【0010】
TAは典型的には、発現パターン、機能、または遺伝的起源にしたがって5つのカテゴリ:癌精巣(CT)抗原(すなわち、MAGE、NY−ESO−1);メラノサイト分化抗原(すなわち、MelanA/MART−1、チロシナーゼ、gap100);突然変異抗原(すなわち、MUM−1、p53、CDK−4);過剰発現された「自己」抗原(すなわち、HER−2/neu、p53);および、ウイルス抗原(すなわち、HPV、EBV)に分類される。本発明を実施する目的上は、適当なTAとは、TAが発現している宿主において抗腫瘍免疫応答を誘導または促進する任意のTAである。適当なTAは、たとえば、gap100(Cox et al.,Science,264:716−719(1994))、MART−1/MelanA(Kawakami et al.,J.Exp.Med.,180: 347−352(1994))、gp75(TRP−1)(Wang et al.,J.Exp.Med.,186: 1131−1140 (1996))、チロシナーゼ(Wolfel et al.,Eur.J.Immunol.,24:759−764 (1994);国際公開第200175117号パンフレット;国際公開第200175016号パンフレット;国際公開第200175007号パンフレット)、NY−ESO−1(国際公開第98/14464号パンフレット;国際公開第99/18206号パンフレット)、黒色腫プロテオグリカン(Hellstrom et al.,J.Immunol.,130: 1467−1472 (1983))、MAGEファミリー抗原(すなわち、MAGE−1,2,3,4,6,12,51 ; Van der Bruggen et al.,Science,254: 1643− 1647 (1991);米国特許第6,235,525号明細書;CN1319611)、BAGEファミリー抗原(Boel et al.,Immunity,2: 167−175 (1995))、GAGEファミリー抗原(すなわちGAGE−1,2 ; Van den Eynde et al.,J.Exp.Med.,182: 689−698 (1995); 米国特許第6,013,765号明細書)、RAGEファミリー抗原(すなわちRAGE−1; Gaugler et at.,Immunogenetics,44: 323−330 (1996);米国特許第5,939,526号明細書)、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV(Guilloux et at.,J.Exp.Med.,183 : 1173−1183 (1996))、p15(Robbins et al.,J Immunol.154: 5944−5950(1995))、B−カテニン(Robbins et al.,J.Exp.Med.,183: 1185−1192 (1996) )、MUM−1(Coulie et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92: 7976−7980 (1995))、サイクリン依存性キナーゼ−4(CDK4)(Wolfel et al.,Science,269:1281−1284 (1995))、p21−ras(Fossum et at.,Int.J.Cancer,56: 40−45(1994))、BCR−abl(Bocchia et al.,Blood,85: 2680− 2684 (1995))、p53(Theobald et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92: 11993−11997 (1995))、pl85HER2/neu(erb−Bl ; Fisk et al.,J.Exp.Med.,181: 2109−2117 (1995))、上皮増殖因子受容体(EGFR)(Harris et al.,Breast Cancer Res.Treat,29: 1−2 (1994))、癌胎児性抗原(CEA)(Kwong et al.,J.Natl.CancerInst.,85: 982−990 (1995)米国特許第5,756,103号明細書;第5,274,087号明細書;第5,571,710号明細書;第6,071,716号明細書;第5,698,530号明細書;第6,045,802号明細書;欧州特許第263933号明細書;欧州特許第346710号明細書;および欧州特許第784483号明細書);癌関連変異ムチン(すなわちMUC−1遺伝子産物; Jerome et al.,J.Immunol.,151: 1654−1662(1993));EBVのEBNA遺伝子産物(すなわちEBNA−1;Rickinson et al.,Cancer−Surveys,13 : 53−80 (1992));ヒトパピローマウイルスのE7、E6タンパク質(Ressing et al.,J.Immunol,154: 5934−5943 (1995));前立腺特異的抗原(PSA; Xue et al.,The Prostate,30: 73−78 (1997));前立腺特異的膜抗原(PSMA; Israeli,et al.,CancerRes.,54:1807−1811 (1994));イディオタイプエピトープまたは抗原、たとえば、免疫グロブリンイディオタイプまたはT細胞受容体イディオタイプ(Chen et al.,J.Immunol.,153: 4775−4787 (1994));KSA(米国特許第5,348,887号明細書)、キネシン2(Dietz,et al.Biochem Biophys Res Commun 2000 Sep 7; 275 (3): 731−8)、HIP−55、TGFβ−1抗アポトーシス因子(Toomey,et al.Br J Biomed Sci 2001; 58 (3): 177−83)、腫瘍タンパク質D52(Bryne J.A.,et al.,Genomics,35: 523−532 (1996))、H1FT、NY−BR−1(国際公開第01/47959号パンフレット)、NY−BR−62、NY−BR−75、NY−BR−85、NY−BR−87、NY−BR−96(Scanlan,M.Serologic and Bioinformatic Approaches to the Identification of Human Tumor Antigens,in Cancer ワクチンs 2000,Cancer Research Institute,New York,NY)、BFA4(配列番号28および29)、BCY1(配列番号30および31)、BFA5(配列番号32および33)、BCZ4(配列番号34および35)、およびBFY3(配列番号36および37)を含み、「野生型」(すなわち、ゲノムによって通常コードされる、天然に存在する)、改変型、および変異型、およびその他の断片および誘導体を含む。これらのTAはいずれも、単独で、または共免疫手順において互いに組み合わせて使用することができる。
【0011】
一部の場合には、TAおよび血管新生関連抗原(「AA」)といった他の抗原の両方を用いて患者を共免疫することが有益でありうる。AAとは、血管の誘導および/または連続した発達に関与する細胞に随伴する免疫原性分子(すなわち、ペプチド、ポリペプチド)である。たとえば、AAは、血管の主要な構造要素である内皮細胞(「EC」)上で発現されうる。癌の治療のためには、腫瘍に供給する血管の内部または近傍にAAが見出されることが好ましい。AAに対する患者の免疫は、好ましくは抗AA免疫応答を結果として生じ、それによって腫瘍の近傍または内部で生じる血管新生過程が予防されおよび/または阻害される。
【0012】
典型的なAAは、たとえば、血管内皮増殖因子(すなわちVEGF;Bernardini,et al.J Urol.,2001,166 (4): 1275−9; Starnes,et al.J.Thorac.Cardiovasc.Surg.,2001,122 (3): 518−23; Dias,et al.Blood,2002,99 :2179−2184)、VEGF受容体(すなわちVEGF−R、flk−1/KDR;Starnes,et al.J.Thorac.Cardiovasc.Surg.,2001,122 (3): 518−23)、EPH受容体(すなわちEPHA2;Gerety,et al.1999,Cell,4: 403−414)、上皮増殖因子受容体(すなわちEGFR;Ciardeillo,et al.Clin.Cancer Res.,2001,7 (10): 2958−70)、塩基性線維芽細胞増殖因子(すなわちbFGF;Davidson,et al.Clin.Exp.Metastasis 2000,18 (6): 501−7; Poon,et al.Am J.Surg.,2001,182 (3): 298−304)、血小板由来細胞増殖因子(すなわちPDGF−B)、血小板由来内皮細胞増殖因子(PD−ECGF;Hong,et al.J.Mol.Med.,2001,8 (2): 141−8)、形質転換増殖因子(すなわち、TGF−α; Hong,et al.J.Mol.Med.,2001,8 (2):141−8)、エンドグリン(Balza,et al.Int.J.Cancer,2001,94 : 579−585)、Idタンパク質(Benezra,R.Trends Cardiovasc.Med.,2001,11 (6): 237−41)、プロテアーゼたとえばuPA、uPAR、およびマトリクスメタロプロテイナーゼ(MMP−2、MMP−9;Djonov,et al.J.Pathol.,2001,195 (2): 147−55)、一酸化窒素合成酵素(Am.J.Ophthalmol.,2001,132 (4): 551−6)、アミノペプチダーゼ(Rouslhati,E.Nature Cancer,2: 84−90,2002)、トロンボスポンジン(すなわちTSP−1、TSP−2;Alvarez,et al.Gynecol.Oncol.,2001,82 (2): 273−8; Seki,et al.Int.J.Oncol.,2001,19 (2): 305−10)、k−ras(Zhang,et al.Cancer Res.,2001,61 (16): 6050−4)、Wnt(Zhang,et al.Cancer Res.,2001,61 (16): 6050−4)、サイクリン依存性キナーゼ(CDK; Drug Resist.Updat.2000,3 (2): 83−88)、微小管(Timar,et al.2001.Path.Oncol.Res.,7(2) : 85− 94)、熱ショックタンパク質(すなわちHSP90(Timar、上記))、ヘパリン結合因子(すなわちへパリナーゼ; Gohji,et al.Int.J.Cancer,2001,95 (5): 295−301)、合成酵素(すなわちATP合成酵素、チミジル酸合成酵素)、コラーゲン受容体、インテグリン(すなわちαν3、αν5、α1β1、α2β1、α5β1)、表面プロテオグリカンNG2、AAC2−1(配列番号1)、またはAAC2−2(配列番号2)を特に含み、「野生型」(すなわち、ゲノムによって通常コードされる、天然に存在する)、改変型、および変異型、およびその他の断片および誘導体を含む。これらの標的はいずれも、単独で、または互いにまたは他の物質と組み合わせて、本発明の実施に適当であろう。
【0013】
一部の実施形態では、免疫原性標的をコードする核酸分子が利用される。その核酸分子は、ATCC Deposit中のDNA挿入部に含まれるもののような、1つ以上の免疫原性標的をコードするヌクレオチド配列、またはその断片または誘導体を含みうるかまたはそれから構成されうる。「核酸配列」または「核酸分子」の語は、DNAまたはRNA配列をいう。その語は、特に4−アセチルシトシン、8−ヒドロキシ−N6−メチルアデノシン、アジリジニル−シトシン、プソイドイソシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−カルボキシ−メチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6−イソ−ペンテニルアデニン、1−メチルアデニン、1−メチルプソイドウラシル、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチル−グアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−メチルアデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノ−メチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルキュェオシン、5'−メトキシカルボニル−メチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、オキシブトキソシン、プソイドウラシル、キュェオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、N−ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、プソイドウラシル、キュェオシン、2−チオシトシン、および2,6−ジアミノプリン、といった、しかしそれに限定されない、DNAおよびRNAの公知の塩基アナログのうち任意のものから生じる分子を包含する。
【0014】
単離された核酸分子とは、(1)総核酸が起源細胞から単離される際に天然に共存して見出されるタンパク質、脂質、糖質、または他の物質の少なくとも約50%から分離されている;(2)その核酸分子が天然で結合しているポリヌクレオチドの全部または一部と結合していない;(3)天然では結合していないポリヌクレオチドと調節可能に結合している;および/または、(4)より大きなポリヌクレオチド配列の一部として天然に存在しない:ものである。好ましくは、本発明の単離された核酸分子は、ポリペプチド産生における用途、または、治療用途、診断用途、予防用途もしくは研究用途に干渉する、天然の環境で見出されるいかなる他の夾雑核酸分子または他の夾雑物も実質的に含まない。ここでは、「天然に存在する」または「天然」または「天然に見出される」の語は、核酸分子、ポリペプチド、宿主細胞、などといった生物材料との関連において用いられる場合、人による操作無しに自然界に見出される物質をいう。同様に、「天然に存在しない」または「非天然」はここでは、自然界に見られないかまたは人によって構造的に改変されたかもしくは合成された物質をいう。
【0015】
2つ以上の核酸またはポリペプチド分子の同一性は、配列を比較することによって決定される。本分野で知られる通り、「同一性」とは、分子を構成する単位(すなわち、ヌクレオチドまたはアミノ酸残基)間の一致によって決定される、核酸分子またはポリペプチド間の配列関連性の程度を意味する。同一性は、特定の数学モデルまたはコンピュータープログラム(すなわちアルゴリズム)によって処理された、ギャップ整列(あれば)を伴う2つ以上の配列のうち小さい方の間の同一マッチの割合を測定する。核酸配列間の同一性は、類縁配列が核酸配列または単離された核酸分子とハイブリダイズする能力によっても決定されうる。そのような配列の定義において、「高度にストリンジェントな条件」および「中等度にストリンジェントな条件」の語句は、配列が相補的である核酸鎖のハイブリダイゼーションを可能にし、および顕著にミスマッチである核酸のハイブリダイゼーションを除外するための手順をいう。ハイブリダイゼーションおよび洗浄について「高度にストリンジェントな条件」の例は、0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム、65〜68℃、または0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム、および50%ホルムアミド、42℃である。(たとえば、Sambrook,Fritsch & Maniatis,Molecular Cloning : A Laboratory Manual (2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory7 1989); Anderson et al.,Nucleic Acid Hybridisation : A Practical Approach Ch.4 (IRL Press Limited)を参照)。「中等度にストリンジェントな条件」の語句は、「高度にストリンジェントな条件」下で起こりうるよりも高い程度の塩基対ミスマッチを有するDNA 二重鎖 が生じうる条件をいう。典型的な中等度にストリンジェントな条件は、0.015 M塩化ナトリウム,0.0015 Mクエン酸ナトリウム、50〜65℃、または0.015 M塩化ナトリウム,0.0015 Mクエン酸ナトリウム,および20%ホルムアミド 、37〜50℃である。一例として、50℃、0.015 Mナトリウムイオン中での中等度にストリンジェントな条件は、21% ミスマッチを可能にする。ハイブリダイゼーション中に、非特異的および/またはバックグラウンドハイブリダイゼーションを低減するために、ハイブリダイゼーション緩衝液および洗浄緩衝液に他の物質を含めることが可能である。例は、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%ピロリン酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウムNaDodSO4(SDS)、フィコール、Denhardt液、超音波処理サケ精子DNA(または他の非相補的DNA)、および硫酸デキストランであるが、他の適当な物質もまた用いることができる。これらの添加剤の濃度および種類は、ハイブリダイゼーション条件の厳密性に実質的に影響することなく変えることができる。ハイブリダイゼーション実験は、pH6.8〜7.4で通常実施される;しかし、典型的なイオン強度条件では、ハイブリダイゼーションの速度はpHにほとんど依存しない。
【0016】
本発明の一部の実施形態では、ポリペプチドをコードする核酸配列を細胞へ運搬するためにベクターが用いられる。ベクターとは、核酸配列を宿主細胞へ運搬するのに用いられる任意の分子である。一部の場合には、発現ベクターが用いられる。発現ベクターとは、宿主細胞の形質転換に適し、および運搬される核酸配列の発現を指示および/または調節する核酸配列を含む核酸分子である。発現は、転写、翻訳、および、イントロンが存在する場合にはスプライシング、といった過程を含むがそれらに限定されない。発現ベクターは典型的には、ポリペプチドをコードする異種核酸配列と調節可能に結合した1つ以上の隣接配列を含む。隣接配列は、たとえば、同種(すなわち、宿主細胞と同一の種および/または株に由来)、異種(すなわち、宿主細胞種または株以外の種に由来)、ハイブリッド(すなわち、2つ以上の起源に由来する隣接配列の組み合わせ)、または合成でありうる。
【0017】
隣接配列は、好ましくは、コード配列の複製、転写および/または翻訳を達成することができ、およびコード配列と調節可能に結合している。ここでは、調節可能に結合という語句は、機能的関係にあるポリヌクレオチド配列の結合をいう。たとえば、プロモーターまたはエンハンサーは、それがコード配列の転写に影響を与える場合は、コード配列と調節可能に結合している。しかし、隣接配列は、正しく機能するかぎり、必ずしもコード配列と隣接している必要は無い。したがって、たとえば、翻訳されないが転写される介在配列が、プロモーター配列とコード配列の間に存在することができ、およびプロモーター配列はそれでもコード配列と調節可能に結合していると考えることができる。同様に、エンハンサー配列は、コード配列の上流または下流に位置しおよび配列の転写に影響を与えることができる。
【0018】
一部の実施形態では、隣接配列は、標的細胞において高レベル遺伝子発現を推進する転写調節領域であることが好ましい。転写調節領域は、たとえば、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、リプレッサー配列、またはその組み合わせを含みうる。転写調節領域は、構成性、組織特異的、細胞型特異的(すなわち、その領域は、ある種類の組織または細胞において、他の種類と比較してより高いレベルの転写を推進する)、または調節可能(すなわち、化合物との相互作用に対して応答性である)でありうる。転写調節領域の起源は、隣接配列が細胞においてその細胞内の核酸の転写を引き起こすことによって機能するならば、任意の原核または真核生物、任意の脊椎動物または非脊椎動物、または任意の植物でありうる。さまざまな転写調節領域を、本発明の実施において利用しうる。
【0019】
適当な転写調節領域は、たとえば、CMVプロモーター(すなわち、CMV最初期プロモーター);真核遺伝子由来プロモーター(すなわちエストロゲン誘導性ニワトリ卵白アルブミン遺伝子、インターフェロン遺伝子、グルココルチコイド誘導性チロシンアミノトランスフェラーゼ遺伝子、およびチミジンキナーゼ遺伝子);および主要初期および後期アデノウイルス遺伝子プロモーター;SV40初期プロモーター領域(Bernoist and Chambon,1981,Nature 290: 304−10);ラウス肉腫ウイルス(RSV)の3'長末端反復(LTR)に含まれるプロモーター(Yamamoto,et al.,1980,Cell 22:787−97);単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV−TK)プロモーター(Wagner et al.,1981,Proc.Natl.Acad.Sci.U.SA.78: 1444−45);メタロチオナイン遺伝子の調節配列(Brinster et al.,1982,Nature 296: 39−42);ベータ−ラクタマーゼプロモーターといった原核発現ベクター(Villa−Kamaroff et al.,1978,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,75: 3727−31);またはtacプロモーター(DeBoer et al.,1983,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,80: 21−25)を含む。組織型および/または細胞型特異的転写調節領域は、たとえば、膵腺房細胞で活性であるエラスターゼI遺伝子調節領域(Swift et al.,1984,Cell 38 : 639−46; Ornitz et al.,1986,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.50: 399−409 (1986); MacDonald,1987,Hepatology 7: 425−515);膵ベータ細胞で活性であるインシュリン遺伝子調節領域(Hanahan,1985,Nature 315: 115−22);リンパ系細胞で活性である免疫グロブリン遺伝子調節領域(Grosschedl et al.,1984,Cell 38 : 647−58;Adames et al.,1985,Nature 318: 533−38; Alexander et al.,1987,Mol.Cell.Biol.,7: 1436−44);精巣細胞、乳房細胞、リンパ系細胞および肥満細胞中のマウス乳腺腫瘍ウイルス調節領域(Leder et al.,1986,Cell 45:485−95);肝臓のアルブミン遺伝子調節領域(Pinkert et al.,1987,Genes and Devel.1 :268−76);肝臓のアルファ−フェトプロテイン遺伝子調節領域(Krumlauf et al,1985,Mol.Cell Biol,5:1639−48; Hammer et al,1987,Science 235:53−58);肝臓のアルファ1−抗トリプシン遺伝子調節領域(Kelsey et al.,1987,Genes and Devel.1:161−71);骨髄性細胞中のベータ−グロブリン遺伝子調節領域(Mogram et al.,1985,Nature 21 5:338−40; Kollias et al,1986,Cell 46:89−94);脳の乏突起膠細胞中のミエリン塩基性タンパク質遺伝子調節領域(Readhead et al,1987,Ceil 48:703−1 2); 骨格筋のミオシン軽鎖2遺伝子調節領域(Sani,1985,Nature 314:283−86);視床下部のゴナドトロピン放出ホルモン遺伝子調節領域(Mason et al,1986,Science 234:1372−78),および黒色腫細胞のチロシナーゼプロモーター(Hart,I.Semin Oncol 1996 Fcb;23(l):154−8; Siders,et al.Cancer Gene Ther 1998 Sep−Oct;5(5):281−91)を特に含む。たとえば光、熱、放射線、テトラサイクリン、または熱ショックタンパク質といった特定の化合物または条件の存在下で活性化される誘導性プロモーターもまた利用することができる(たとえば国際公開第WO00/10612号パンフレットを参照)。他の適当なプロモーターが本分野で知られている。
【0020】
上記の通り、エンハンサーはまた適当な隣接配列でもある。エンハンサーはDNAのcis作用配列であり、通常は長さ約10〜300bpで、プロモーターに作用して転写を増大させる。エンハンサーは典型的には方向および位置に依存せず、調節されるコード配列に対して5’および3’の両方が同定されている。哺乳類遺伝子から入手可能ないくつかのエンハンサー配列が知られている(すなわち、グロビン、ジアスターゼ、アルブミン、アルファ−フェトプロテインおよびインシュリン)。同様に、SV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、ポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーは、真核プロモーター配列に有用である。エンハンサーは核酸コード領域に対して5’または3’の位置でスプライスされてベクターに入りうるが、典型的にはプロモーターから5'位に位置する。他の適当なエンハンサーが本分野で公知であり、および本発明に適用可能である。
【0021】
本発明の試薬を調製する間に、細胞をトランスフェクションまたは形質転換する必要がありうる。トランスフェクションとは、細胞による外来すなわち外因性DNAの取り込みをいい、および外因性DNAが細胞膜内に導入された時に細胞はトランスフェクションされている。いくつかのトランスフェクション法が本分野でよく知られている(すなわち、Graham et al.,1973,Virology 52: 456; Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratories,1989); Davis et al.,Basic Methods in Molecular Biology (Elsevier,1986); およびChu et al.,1981,Gene 13: 197)。そのような方法は、1つ以上の 外因性 DNA部分を適当な宿主細胞へ導入するのに用いることができる。
【0022】
一部の実施形態では、細胞のトランスフェクションがその細胞の形質転換を結果として生じることが好ましい。細胞の特性に変化がある場合、細胞は形質転換されており、新しい核酸を含むように改変された場合は形質転換されている。トランスフェクション後に、トランスフェクションされた核酸は、細胞の染色体内へ物理的に組み込むことによって細胞の核酸と組換えることができ、複製されずにエピソーム配列として一過性に維持されることができ、または、プラスミドとして独立して複製することができる。その核酸が細胞分裂と共に複製される場合、細胞は安定に形質転換されている。
【0023】
本発明はさらに、ポリペプチドの形の、単離された免疫原性標的を提供する。ポリペプチドは下記の場合に単離されていると考えられる:(1)起源細胞から単離される際に天然に共存して見出されるポリヌクレオチド、脂質、糖質、または他の物質の少なくとも約50%から分離されている;(2)その「単離されたポリペプチド」が天然で結合しているポリペプチドの全部または一部と(共有または非共有相互作用によって)結合していない;(3)天然で結合していないポリペプチドと(共有または非共有相互作用によって)調節可能に結合している;または、(4)天然に存在しない。好ましくは、単離されたポリペプチドは、治療用途、診断用途、予防用途もしくは研究用途に干渉する、天然の環境で見出されるいかなる他の夾雑ポリペプチドまたは他の夾雑物も実質的に含まない。
【0024】
免疫原性標的ポリペプチドは、ここでの定義では、成熟ポリペプチドでよく、および、調製される方法に応じて、アミノ末端メチオニン残基を有していてもいなくてもよい。たとえば免疫原性標的の特性または活性(すなわち、活性、抗原性)の少なくとも1つを有する、たとえば、断片、変異体(すなわち、対立遺伝子、スプライス)、オルソログ、ホモログといった類縁ポリペプチド、および、誘導体もまたさらに考慮される。配列が由来するポリペプチドの少なくとも一部に対応する配列を有する、一連の隣接しているアミノ酸残基をいうペプチドもまた関連している。好ましい実施形態では、ペプチドはアミノ酸約5〜10個、10〜15個、15〜20個、20〜30個、または30〜50個を含む。より好ましい一実施形態では、ペプチドは、たとえばクラスIMHC分子上での提示に適した、アミノ酸9〜12個を含む。
【0025】
核酸またはポリペプチドの断片は、配列(すなわち、核酸またはポリペプチド)のアミノ末端(リーダー配列ありまたは無し)および/またはカルボキシ末端での切断を含む。断片はまた、変異体(すなわち、対立遺伝子、スプライス)、オルソログ、ホモログ、および親配列と比較して1つ以上のアミノ酸付加または置換または内部欠失を有する他の変異体を含みうる。好ましい実施形態では、切断および/または欠失は、アミノ酸約10個、20個、30個、40個、50個、またはより多数を含む。そのように生じたポリペプチド断片は、アミノ酸約10個、25個、30個、40個、50個、60個、70個、またはより多数を含む。そのようなポリペプチド断片は、随意的にアミノ末端メチオニン残基を含みうる。そのような断片は、たとえば、免疫原性標的ポリペプチドに対して抗体または細胞性免疫応答を生じるために用いることができることが理解される。
【0026】
変異体とは、対象配列と比較して、1つ以上の配列置換、欠失、および/または付加を有する配列である。変異体は、天然に存在しうるかまたは人工的に構築されうる。変異体は、対応する核酸分子から調製されうる。好ましい実施形態では、変異体は、1ないし3、または1ないし5、または1ないし10、または1ないし15、または1ないし20、または1ないし25、または1ないし30、または1ないし40、または1ないし50、または50以上のアミノ酸置換、挿入、付加および/または欠失を有する。
【0027】
対立遺伝子変異体とは、1個体の生物または生物の集団の染色体上の所定の遺伝子座を占める、遺伝子のいくつかの可能な天然に存在する代替型の1つである。スプライス変異体とは、一次転写物のスプライシングの結果として生じた、いくつかのRNA転写物の1つから生じたポリペプチドである。オルソログとは、別の種に由来する類似の核酸またはポリペプチド配列である。たとえば、免疫原性標的ポリペプチドのマウス型およびヒト型は互いにオルソログと考えられる。配列の誘導体とは、親配列に由来する、置換、付加、欠失を有するか、または化学的に改変された変異体である。変異体はまた、1つ以上の第1の配列(たとえばペプチド)の、少なくとも1つの別の配列(たとえば異種ペプチド)のアミノまたはカルボキシ末端での融合をいう、融合タンパク質を含みうる。
【0028】
「類似性」とは、類似性が同一マッチおよび保存的置換マッチの両方を含む関連性の尺度をいう他は、同一性と関係する概念である。2つのポリペプチド配列が、たとえば、10/20個の同一アミノ酸を有し、および残りがすべて非保存的置換であるならば、パーセント同一性および類似性は両方とも50%となる。同一の例で、保存的置換が存在するさらに5つの位置があれば、パーセント同一性は50%のままであるが、しかしパーセント類似性は75%(15/20)となる。したがって、保存的置換が存在する場合には、2つのポリペプチド間のパーセント類似性は、それらの2つのポリペプチド間のパーセント同一性よりも高くなる。
【0029】
置換は、保存的、または非保存的、またはその任意の組み合わせでありうる。ポリペプチドの配列への保存的アミノ酸改変(およびコードヌクレオチドへの対応する改変)は、親ポリペプチドと類似の機能的および化学的特性を有するポリペプチドを生じうる。たとえば、「保存的アミノ酸置換」は、そのアミノ酸残基の位置での大きさ、電荷、疎水性、または親水性にほとんどまたは全く影響しないような、および特に、免疫原性の低下を結果として生じないような、天然アミノ酸残基の非天然残基での置換を含みうる。適当な保存的アミノ酸置換を表1に示す。
【表1】
【0030】
当業者は、よく知られた方法を用いて、ポリペプチドの適当な変異体を決定することができる。分子の、活性(すなわち、MHC結合、免疫原性)を破壊することなく変化させうる適当な部分を特定するために、当業者は、その活性にとって重要でないと考えられる部分を標的するであろう。たとえば、同一の種または別の種に由来し類似の活性を有する類似のポリペプチドが知られている場合、当業者はポリペプチドのアミノ酸配列を、そのような類似のポリペプチドと比較することができる。そのような分析を実施することによって、類似のポリペプチドの間で保存されている残基、および分子の部分を特定することができる。そのような類似のポリペプチドと比較して保存されていない分子の部分における変化は、ポリペプチドの生物学的活性および/または構造に悪影響を与える可能性がより低いことが理解される。同様に、MHCへの結合に必要な残基が知られており、および結合を改善するために改変されうる。しかし、MHCへの結合の低下を結果として生じる改変は、大部分の場合には適切でない。当業者はまた、相対的に保存された領域においてさえ、活性を保つ一方で、化学的に類似のアミノ酸を天然に存在する残基と置換しうることを理解する。したがって、生物学的活性のためにまたは構造のために重要でありうる部分さえ、生物学的活性を破壊することなく、またはポリペプチド構造に悪影響を与えることなく、保存的アミノ酸置換に供しうる。
【0031】
他の好ましい ポリペプチド 変異体は、グリコシル化 部位の数および/または種類が対象アミノ酸 配列と比較して変更されたグリコシル化 変異体を含む。一実施形態では、 ポリペプチド 変異体 は、対象アミノ酸 配列よりも多数または少数のN−結合型 グリコシル化 部位を含む。N−結合型 グリコシル化 部位 は、配列 Asn−X−Ser または Asn−X−Thrによって特徴づけられ、Xで表されるアミノ酸残基はプロリン以外の任意のアミノ酸 残基でよい。 この配列を生じるためのアミノ酸 残基の置換は、 N−結合型糖鎖の付加のための可能性のある新しい部位を提供する。代替的に,この配列 を消去する置換は、既存の N−結合型糖鎖を除去する。1つ以上の N−結合型 グリコシル化 部位 (典型的には天然に存在するもの)が消去されおよび1つ以上の 新しいN−結合型 部位が精製される、N−結合型糖鎖の再配列もまた提供される。ポリペプチドのO−結合型 グリコシル化に影響を与えるためには、セリン および/または スレオニン 残基を改変する。
別の好ましい変異体は、対象アミノ酸配列組と比較して、1つ以上のシステイン残基が欠失したかまたは別のアミノ酸(たとえば、セリン)で置換された、システイン変異体を含む。システイン変異体は、たとえば不溶性の封入体の単離後に、ポリペプチドを生物学的に活性な立体構造へ再折りたたみしなければならない場合に有用である。システイン変異体は一般的に天然タンパク質よりも少数のシステイン残基を有し、および典型的には、対にならないシステインの結果として生じる相互作用を最小化するために、偶数を有する。
【0032】
他の実施形態では、本発明の単離されたポリペプチドは、ポリペプチドの精製を補助する融合ポリペプチド部分を含む。融合は、その対象ポリペプチド変異体のアミノ末端またはカルボキシ末端のどちらでも行いうる。融合は、リンカーまたはアダプター分子無しに直接でよく、またはリンカーまたはアダプター分子を介しうる。リンカーまたはアダプター分子は、1つ以上のアミノ酸残基、典型的にはアミノ酸残基約20ないし約50個でありうる。リンカーまたはアダプター分子はまた、融合部分の分離を可能にするために、DNA制限エンドヌクレアーゼのためまたはプロテアーゼのための切断部位と共に設計されうる。一旦構築されれば、融合ポリペプチドを本明細書に記載の方法にしたがって誘導体化できることが理解される。適当な融合部分は、特に、金属結合ドメイン(たとえば、ポリヒスチジン部分)、免疫グロブリン結合ドメイン(すなわち、プロテインA、プロテインG、T細胞、B細胞、Fc受容体、または補体タンパク質抗体結合ドメイン)、糖結合ドメイン(たとえば、マルトース結合ドメイン)、および/または「タグ」ドメイン(すなわち、〜の少なくとも一部α−ガラクトシダーゼ、strepタグペプチド、T7タグペプチド、FLAGペプチド、または、モノクローナル抗体のようなそのドメインと結合する化合物を用いて精製しうる他のドメイン)を含む。このタグは、典型的には、ポリペプチドの発現に際してポリペプチドと融合され、および宿主細胞からの目的ポリペプチドの配列のアフィニティ精製のための手段として役立つ。アフィニティ精製は、たとえば、アフィニティマトリクスとしてタグに対する抗体を用いるカラムクロマトグラフィーによって達成することができる。随意的に、タグは、切断のためにある種のペプチダーゼを用いることのようなさまざまな方法によって、目的ポリペプチドの精製された配列から続いて除去することができる。下記の通り、融合はまた、TAとたとえばケモカインCXC10(IP−10)、CCL7(MCP−3)、またはCCL5(RANTES)といった共刺激因子との間で行いうる。
【0033】
融合モチーフは、小胞体といったMHC処理区画への、免疫原性標的の運搬を促進しうる。伝達配列または経細胞運搬配列といわれるこれらの配列は、HIV tat Kim et al.1997 J.Immunol.159: 1666を参照)、Drosophila antennapedia(Schutze−Redelmeier et al.1996 J.Immunol.157: 650を参照)、またはヒトperiod−1タンパク質(hPER1;特に、SRRHHCRSKAKRSRHH(配列番号42))に由来する配列を含む。
【0034】
加えて、ポリペプチドまたはその変異体は、同種ポリペプチドと融合してホモ二量体を生じ、または異種ポリペプチドと融合してヘテロ二量体を生じうる。異種ペプチドおよびポリペプチドは:融合ポリペプチドの検出および/または単離を可能にするエピトープ;細胞外ドメインまたは膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインといった、膜貫通受容体タンパク質またはその一部;膜貫通受容体タンパク質と結合するリガンドまたはその一部;触媒として活性である酵素またはその一部;ロイシンジッパードメインのような、オリゴマー化を促進するポリペプチドまたはペプチド;免疫グロブリン定常領域のような、安定性を増加するポリペプチドまたはペプチド;および、そのポリペプチドまたはその変異体とは異なる治療活性を有するポリペプチドを含むがそれらに限定されない。
【0035】
一部の実施形態では、免疫原性標的、ポリペプチド、またはその誘導体をコードする核酸配列を、細胞表面タンパク質、サイトカインまたはケモカインといった1つ以上の共刺激因子と、本発明の組成物中で組み合わせることが有利でありうる。共刺激因子は、たとえば、ポリペプチドとして、またはそのポリペプチドをコードする核酸として、組成物に含めることができる。適当な共刺激分子は、たとえば、CD28ファミリーのメンバー(すなわち、CD28、ICOS;Hutloff,et al.Nature 1999,397 : 263−265; Peach,et al.JExp Med 1994,180 : 2049−2058)を結合するポリペプチド、たとえば CD28結合ポリペプチドB7.1(CD80 ; Schwartz,1992; Chen et al,1992 ; Ellis,et al.J.Immunol.,156 (8): 2700−9)およびB7.2(CD86 ; Ellis,et al.J.Immunol.,156(8) : 2700−9);インテグリンファミリーのメンバー(すなわちLFA−1(CD11a/CD18) ; Sedwick,et al.J Immunol 1999,162 : 1367−1375;Wulfing,et al.Science 1998,282: 2266−2269; Lub,et al.Immunol Today 1995,16 : 479−483)を、ICAMファミリーのメンバー(すなわち、ICAM−1、−2または−3)を含め、結合するポリペプチド;CD2ファミリーメンバー(すなわち、CD2、シグナル伝達リンパ球活性化分子(CDw150または「SLAM」; Aversa,et al.J Immunol 1997,158 : 4036−4044) )と結合するポリペプチド、たとえばCD58(LFA−3;CD2リガンド;Davis,et al.Immunol Today 1996,17 : 177−187)またはSLAMリガンド(Sayos,et al.Nature 1998,395: 462−469);熱安定性抗原(HSAまたはCD24; Zhou,et al.EurJ Immunol 1997,27: 2524−2528)と結合するポリペプチド;TNF受容体(TNFR)ファミリーのメンバーと結合するポリペプチド(すなわち、4−1BB(CD137; Vinay,et al.Semin Immunol 1998,10 : 481−489)、OX40 (CD134; Weinberg,et al.Semin Immunol 1998,10: 471−480; Higgins,et al.J Immunol 1999,162: 486−493)、およびCD27(Lens,et al.Semin Immunol 1998,10: 491−499) )たとえば4−1BBL(4−1BBリガンド; Vinay,et al.Semin Immunol 1998,10: 481−48; DeBenedette,et al.J Immunol 1997,158 : 551−559)、 TNFR随伴因子−1(TRAF−1;4−1BBリガンド; Saoulli,et al.JExp Med 1998,187 :1849− 1862,Arch,et al.Mol Cell Biol 1998,18: 558−565)、 TRAF−2(4−1BBおよびOX40リガンド;Saoulli,et al.J Exp Med 1998,187 : 1849−1862; Oshima,et al.Int Immunol 1998,10: 517−526,Kawamata,et al.JBiol Chem 1998,273 :5808−5814)、TRAF−3(4−1BBおよびOX40リガンド;Arch,et al.Mol Cell Biol 1998,18: 558−565; Jang,et al.Biochem Biophys Res Commun 1998,242 : 613−620; Kawamata S,et al.J Biol Chem 1998,273 : 5808−5814)、 OX40L(OX40リガンド;Gramaglia,et al.J Immunol 1998,161 : 6510−6517)、TRAF−5(OX40リガンド;Arch,et al.Mol Cell Biol 1998,18: 558−565; Kawamata,et al.JBiol Chem 1998,273 : 5808−5814)、およびCD70(CD27リガンド;Couderc,et al.Cancer GeneTher.,5 (3): 163−75)を含む。CD154 (CD40 ligおよび/または「CD40L」; Gurunathan,et al.J Immunol.,1998,161 : 4563−4571; Sine,et al.Hum.Gene Ther.,2001,12 : 1091−1102)もまた適当でありうる。
【0036】
1つ以上のサイトカインもまた、本発明の組成物中に含まれるポリペプチドまたは核酸によってコードされる共刺激因子または「アジュバント」として適当でありうる(Parmiani,et al.Immunol Lett 2000 Sep 15; 74(1) : 41−4; Berzofsky,et al.Nature Immunol.1: 209−219)。適当なサイトカインは、たとえば、インターロイキン−2(IL−2)(Rosenberg,et al.Nature Med.4: 321−327 (1998) )、IL−4、IL−7、IL−12(Pardollによる総説、1992; Harries,et al.J.Gene Med.2000 Jul−Aug; 2 (4): 243−9; Rao,et al.J.Immunol.156: 3357−3365 (1996) )、IL−15(Xin,et al.Vaccine,17: 858−866,1999)、IL−16(Cruikshank,et al.J.Leuk Biol.67 (6): 757−66,2000)、IL−18(J.Cancer Res.Clin.Oncol.2001.127 (12): 718−726)、GM−CSF(CSF(Disis,et al.Blood,88 : 202−210 (1996) )、腫瘍壊死因子−アルファ(TNF−α)、またはIFN−αまたはINF−γといったインターフェロンを含む。本分野で知られる通りの、他のサイトカインもまた、本発明を実施するために適当である可能性がある。
【0037】
ケモカインもまた利用することができる。たとえば、腫瘍自己抗原へ融合したCXCL10(IP−10)およびCCL7(MCP−3)を含む融合タンパク質は、抗腫瘍免疫を誘導することが示されている(Biragyn,et al.Nature Biotech.1999,17 :253−258)。ケモカインCCL3(MIP−1α)およびCCL5(RANTES)(Boyer,et al.Vaccine,1999,17 (Supp.2): S53−S64)もまた、本発明の実施において有用でありうる。他の適当なケモカインが本分野で公知である。
抑制性または負の調節免疫機構をブロックし、結果として免疫応答の促進を生じうることもまた本分野で公知である。たとえば、抗CTLA−4(Shrikant,et al.Immunity,1996,14 : 145−155; Sutmuller,et al.J.Exp.Med.,2001,194: 823−832)、抗CD25(Sutmuller、上記)、抗CD4(Matsui,et al.J.Immunol.,1999,163: 184−193)、融合タンパク質IL13Ra2−Fc(Terabe,et al.Nature Immunol.,2000,1:515−520)、およびその組み合わせ(すなわち、抗CTLA−4および抗CD25、Sutmuller,上記)を用いた処置は、抗腫瘍免疫応答をアップレギュレートすることが示されており、および本発明の実施に適する。
【0038】
これらの成分はいずれも、単独でまたは他の物質と併用して使用しうる。たとえば、CD80、ICAM−1およびLFA−3の組み合わせ(「TRICOM」)は抗癌免疫応答を促進しうることが示されている(Hodge,et al.Cancer Res.59: 5800−5807 (1999)。他の効果的な組み合わせは、たとえば、IL−12+GM−CSF(Ahlers,et al.J.Immunol.,158: 3947−3958 (1997); Iwasaki,et al.J.Immunol.158: 4591−4601(1997))、IL−12+GM−CSF+TNF−α(Ahlers,et al.Int.Immunol.13: 897−908 (2001))、CD80+IL−12(Fruend,et al.Int.J.Cancer,85: 508−517 (2000); Rao,et al.上記)、およびCD86+GM−CSF+IL−12(Iwasaki、上記)を含む。当業者は、本発明の実施に有用である別の組み合わせを知る。加えて、当業者は、そのような機構を調節するために用いることができる別の試薬または方法を知る。これらの試薬および方法、および当業者に公知であるその他は、本発明の実施に利用することができる。
【0039】
たとえば、自己複製ウイルスレプリコンの使用(Caley,et al.1999.Vaccine,17: 3124−2135; Dubensky,et al.2000.Mol.Med.6: 723−732; Leiter,et al.2000.Cancer Res.60: 51−55)、コドン最適化(Liu,et al.2000.Mol.Ther.,1:497−500 ; Dubensky,上記 ; Huang,et al.2001.J.Virol.75: 4947−4951)、in vivoエレクトロポレーション(Widera,et al.2000.J.Immunol.164 : 4635−3640)、CpG刺激モチーフの組み込み(Gurunathan,et al.Ann.Rev.Immunol.,2000,18 : 927−974; Leitner,上記;Cho,et al.J.Immunol.168 (10): 4907−13)、エンドサイトーシスまたはユビキチン処理経路の標的化のための配列(Thomson,et al.1998.J.Virol.72: 2246−2252; Velders,et al.2001.J.Immunol.166: 5366− 5373)、マレック病ウイルス1型VP22配列(J.Virol.76 (6): 2676−82,2002)、基礎免疫−追加免疫処方(Gurunathan,上記 ; Sullivan,et al.2000.Nature,408: 605−609; Hanke,et al.1998.Vaccine,16: 439−445; Amara,et al.2001.Science,292: 69−74)、およびSalmonellaのような粘膜運搬ベクターの使用(Darji,et al.1997.Cell,91: 765−775; Woo,et al.2001.Vaccine,19: 2945−2954)を含む、核酸を基礎とする免疫の効率を改善するための別の戦略もまた用いることができる。他の方法が本分野で公知であり、その一部を下に記載する。
化学治療剤、放射線、抗血管新生化合物、または他の物質もまた、免疫原性標的を用いる癌の治療および/または予防に利用できる(Sebti,et al.Oncogene 2000 Dec 27; 19 (56): 6566−73)。たとえば、転移性乳癌の治療において、有用な化学治療剤は、特にシクロホスファミド、ドキソルビシン、パクリタキセル、ドセタキセル、ナベルビン、カペシタビン、およびマイトマイシンCを含む。たとえば、シクロホスファミド+メトトレキサート+5−フルオロウラシル;シクロホスファミド+ドキソルビシン+5−フルオロウラシル;または、シクロホスファミド+ドキソルビシンを含む、併用化学治療処方もまた有用であることが証明されている。プレドニゾン、タキサン、ナベルビン、マイトマイシンC、またはビンブラスチンといった他の化合物が、さまざまな理由で利用されている。大部分の乳癌患者はエストロゲン受容体陽性(ER+)腫瘍を有し、およびこれらの患者では、内分泌療法(すなわち、タモキシフェン)が化学療法より好ましいそのような患者には、タモキシフェンまたは、第二次治療として、プロゲスチン(酢酸メドロキシプロゲステロンまたは酢酸メゲストロール)が好ましい。アロマターゼ阻害剤(すなわち、レトロゾールといった、アミノグルテチミドおよびその類縁物質)は、腫瘍増殖を維持するために必要なエストロゲンのアベイラビリティを低下させ、および一部の患者において第二次または第三次の内分泌療法に使用しうる。
【0040】
他の癌は異なる化学治療処方を必要としうる。たとえば、転移性直腸結腸癌は典型的には、カンプトサール(イリノテカンまたはCPT−11)、5−フルオロウラシルまたはロイコボリンを用いて、単独でまたは互いに併用して治療される。プロテイナーゼおよびインテグリン阻害剤、たとえばMMP阻害剤マリマステート(British Biotech)、COL−3(Collagenex)、ネオバスタット(Aeterna)、AG3340(Agouron)、BMS−275291(Bristol Myers Squibb)、CGS27023A(Novartis)またはインテグリン阻害剤ビタキシン(Medimmune)、またはMED1522(MerckKgaA)もまた使用に適している可能性がある。このように、直腸結腸癌に随伴する免疫原性標的の免疫標的化は、それらの化学治療剤を用いた治療と併用して実施しうる。同様に、他の種類の癌を治療するのに用いられる化学治療剤は本分野でよく知られており、および本明細書に記載の免疫原性標的と組み合わせることができる。
【0041】
多数の抗血管新生物質が本分野で公知であり、および免疫原性標的ワクチンとの同時投与に適する(たとえば、Timar,et al.2001.Pathology Oncol.Res.,7 (2):85−94を参照)。そのような物質は、たとえば、増殖因子(すなわち、ANG−2、NK1、2、4(HGF)、形質転換増殖因子ベータ(TGF−β))、サイトカイン(すなわち、IFN−α、−β、−γといったインターフェロン、血小板因子4(PF−4)、PR−39)、プロテアーゼ(すなわち、切断AT−III、コラーゲンXVIII断片(エンドスタチン))、Hmwカリクレイン−d5プラスミン断片(アンギオスタチン)、プロトロンビン−F1−2、TSP−1)、プロテアーゼ阻害剤(すなわち、TIMP−1、−2、または−3といったメタロプロテアーゼ組織阻害剤;マスピン;PAI−1といったプラスミノーゲン活性化因子−阻害因子;色素上皮由来因子(PEDF))、ツムスタチン(ILEX,Inc.から入手可能)、抗体産物(すなわち、コラーゲン結合抗体HUIV26、HUI77、XL313;抗VEGF;抗インテグリン(すなわち、ビタキシン(Lxsys)))、およびグリコシダーゼ(すなわち、へパリナーゼ−I、−III)といった生理的物質を含む。抗血管新生能を有するのが公知であるかまたは有すると考えられている「化学的」または改変された生理的物質は、たとえば、ビンブラスチン、タキソール、ケトコナゾール、サリドマイド、ドルスタチン、コンブレスタチンA、ラパマイシン(Guba,et al.2002,Nature Med.,8:128−135)、CEP−7055(Cephalon,Inc.から入手可能)、フラボン酢酸、Bay12−9566(Bayer Corp.)、AG3340(Agouron,Inc.)、CGS27023A(Novartis)、テトラサイクリン誘導体(すなわち、COL−3(Collagenix,Inc.))、ネオバスタット(Aeterna)、BMS−275291(Bristol−Myers Squibb)、低用量5−FU、低用量メトトレキサート(MTX)、イルソフラジン、ラジシコール、シクロスポリン、カプトプリル、セレコキシブ、D45152硫酸化多糖、陽イオン性タンパク質(プロタミン)、陽イオン性ペプチド−VEGF、スラミン(ポリスルホン化ナフチル尿素)、VEGFの機能または産生に干渉する化合物(すなわち、SU5416またはSU6668(Sugen)、PTK787/ZK22584(Novartis))、ジスタマイシンA、アンギオザイム(リボザイム)、イソフラビノイド、スタウロスポリン誘導体、ゲニステイン、EMD121974(Merck KcgaA)、チロホスチン、イソキノロン、レチノイン酸、カルボキシアミドトリアゾール、TNP−470、オクトレオチド、2−メトキシエストラジオール、アミノステロール (すなわち、スクワラミン)、グルタチオン類縁物質(すなわち、N−アセチル−L−システイン)、コンブレタスタチンA−4(Oxigene)、Eph受容体遮断剤(Nature,414: 933−938,2001)、Rh−アンギオスタチン、Rh−エンドスタチン(国際公開第01/93897号パンフレット)、環状RGDペプチド、アキューチン−ディスインテグリン、ベンゾジアゼピン、ヒト化抗avb3抗体、Rh−PAI−2、アミロライド、p−アミドベンズアミジン、抗uPA抗体、抗uPAR抗体、L−フェニルアラニン−N−メチルアミド(すなわち、バチミステート、マリマステート)、AG3340、およびミノサイクリンを含む。多数の他の適当な物質が本分野で公知でありおよび本発明の実施に十分である。
本発明はまた、癌の治療の「従来でない」方法と組み合わせて利用することができる。たとえば、ある種の嫌気性細菌の投与が腫瘍 増殖を遅らせることを補助しうることが近年実証されている。1つの研究では、Clostridium novyiを改変してファージエピソーム上にある毒素遺伝子を消去し、および直腸結腸腫瘍を有するマウスに投与した(Dang,et al.P.N.A.S.USA,98 (26): 15155−15160,2001)。化学療法と併用して、その処置は動物における腫瘍壊死を引き起こすことが示された。本明細書中で記載される試薬および方法は、そのような治療方法と組み合わせることができる。
【0042】
免疫原性標的をコードする核酸は、いくつかの利用可能な方法のうち任意のものによって患者へ投与することができる。核酸を宿主へ導入するために使用が成功しているさまざまなウイルスベクターは、特に、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ヘルペスウイルス、およびポックスウイルスを含む。多数のそのようなウイルスベクターが本分野で利用可能であることが本分野で理解される。本発明のベクターは、当業者に広く利用可能である標準的な組換え方法を用いて構築することができる。そのような方法は、Molecular Cloning : A Laboratory Manual (Sambrook,et al.,1989,Cold Spring Harbor Laboratory Press)、 Gene Expression Technology (Methods in Enzymology,Vol.185,edited by D.Goeddel,1991.Academic Press,San Diego,CA)、およびPCR Protocols: A Guide to Methods and Applications (Innis,et al.1990.Academic Press,San Diego,CA)といった一般的な分子生物学参考文献に見出すことができる。
好ましいレトロウイルスベクターは、レンチウイルスの誘導体、およびマウスまたは鳥レトロウイルスの誘導体である。適当なレトロウイルスベクターの例は、たとえば、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳癌ウイルス(MuMTV)、SIV、BIV、HIVおよびラウス肉腫ウイルス(RSV)を含む。いくつかのレトロウイルスベクターは、複数の外因性核酸配列を組み込むことができる。組換えレトロウイルスは不完全であるため、それらは感染性ベクター粒子を生じるためには補助を必要とする。この補助は、たとえば、レトロウイルス構造遺伝子をコードするヘルパー細胞株によって提供することができる。適当なヘルパー細胞株は、特に、T2、PA317およびPA12を含む。そのような細胞株を用いて作製したベクター粒子を、次いで、NIH3T3細胞のような組織細胞株を感染させるのに使用し、大量のキメラレトロウイルス粒子を生じることができる。レトロウイルスベクターは、従来の方法(すなわち注射)によって、または標的細胞集団の近傍への「産生細胞株」の移植によって投与することができる(Culver,K.,et al.,1994,Hum.GeneTher.,5 (3):343−79 ; Culver,K.,et al.,Cold Spring Harb.Symp.Quant.Biol.,59: 685−90); Oldfield,E.,1993,Hum.Gene Ther.,4(1):39−69)。産生細胞株は、ウイルスベクターを産生し、およびウイルス粒子を標的細胞付近に放出するように操作されている。放出されたウイルス粒子の一部は標的細胞と接触しおよびそれらの細胞に感染し、そのようにして本発明の核酸を標的細胞へ送る。標的 細胞の感染後、ベクターの核酸の発現が起こる。
【0043】
アデノウイルスベクターは、真核細胞中への遺伝子運搬のために(Rosenfeld,M.,et al.,1991,Science,252 (5004): 431−4; Crystal,R.,et al.,1994,Nat.Genet.,8 (1) : 42−51)、真核遺伝子発現研究(Levrero,M.,et al.,1991,Gene,101 (2): 195−202)、ワクチン開発(Graham,F.and Prevec,L.,1992,Biotechnology,20: 363−90)、および動物モデルにおいて(Stratford−Perricaudet,L.,et al.,1992,Bone Marrow Transplant.,9 (Suppl.1) : 151−2; Rich,D.,et al.,1993,Hum.Gene Ther.,4(4) : 461−76)、特に有用であることが証明されている。組換えAdをさまざまな組織へin vivoで投与するための実験的経路は、特に、気管内導入(Rosenfeld,M.,et al.,1992,Cell,68(1) : 143−55)、筋肉内注射(Quantin,B.,et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,89 (7): 2581−4)、末梢静脈注射(Herz,J.,and Gerard,R.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,90 (7): 2812−6)および脳への定位接種(Le Gal La Salle,G.,et al.,1993,Science,259 (5097): 988−90)を含んできた。
【0044】
アデノ随伴 ウイルス(AAV)は、宿主細胞ゲノムへの一体化において、高レベル感染性、広い宿主域および特異性を示す(Hermonat,P.,et al.,1984,Proc.Natl.acid.Sci.U.S.A.,81(20) : 6466−70)。および単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1) は、特にその神経親和性のために、神経系における使用について、さらに別の魅力的なベクター系である(Geller,A.,et al.,1991,TrendsNeurosci.,14 (10): 428−32; Glorioso,et al.,1995,Mol.Biotechnol.,4(1) : 87−99; Glorioso,et al.,1995,Annu.Rev.Microbiol.,49:675−710)。
ポックスウイルスは別の有用な発現ベクターである(Smith,et al.1983,Gene,25(1) : 21−8; Moss,et al,1992,Biotechnology,20: 345−62; Moss,et al,1992,Curr.Top.Microbiol.Immunol.,158 : 25−38; Moss,et al.1991.Science,252: 1662−1667)。有用であることが示されているポックスウイルスは、特に、ワクシニア、NYVAC、アビポックス、鶏痘、カナリヤポックス、ALVAC、およびALVAC(2)を含む。
【0045】
NYVAC(vP866)は、ワクシニアウイルスのコペンハーゲンワクチン株から、既知のまたは可能性のある病原性因子をコードする、ゲノムの必須でない領域6個を欠失することによって得られた(たとえば、米国特許第5,364,773号および第5,494,807号明細書を参照)。欠失した遺伝子座はまた、外来遺伝子の挿入のための受容遺伝子座として組換えられた。欠失した領域は、チミジンキナーゼ遺伝子(TK;J2R);出血性領域(u;B13R+B14R);A型封入体領域(ATI;A26L);ヘマグルチニン遺伝子(HA;A56R);宿主域遺伝子領域(C7L−K1L);および、リボヌクレオチド還元酵素の大サブユニット(I4L)である。NYVACは、病原性および宿主域に関連する遺伝子産物をコードするオープンリーディングフレーム18個の特異的欠失によって作製された、遺伝子組換えされたワクシニアウイルス株である。NYVACはTAを発現するために有用であることが示されている(たとえば、米国特許第6,265,189号明細書を参照)。NYVAC(vP866)、vP994、vCP205、vCP1433、placZH6H4L逆方向、pMPC6H6K3E3およびpC3H6FHVBもまたATCCへブダペスト条約の条項に従って寄託されており、登録番号はそれぞれVR−2559、VR−2558、VR−2557、VR−2556、ATCC−97913、ATCC−97912、およびATCC−97914である。
【0046】
ALVACを基礎とする組換えウイルス(すなわち、ALVAC−1およびALVAC−2)もまた、本発明の実施における使用に適している(たとえば、 米国特許第5,756,103号明細書を参照)。ALVAC(2)は、ALVAC(2)ゲノムがワクシニアプロモーターの調節下にあるワクシニアE3LおよびK3L遺伝子を含む以外は、ALVAC(1)と同一である(米国特許第6,130,066号明細書;Beattie et al.,1995a,1995b,1991; Chang et al.,1992; Davies et al.,1993)。ALVAC(1)およびALVAC(2)の両方が、TAといった外来DNA配列の発現に有用であることが実証されている(Tartaglia et al.,1993 a,b; 米国特許第5,833,975号明細書)。ALVACはブダペスト条約の条項に従ってAmerican Type Culture Collection (ATCC),10801 University Boulevard,Manassas,Va.20110−2209,USAに寄託されており、ATCC登録番号はVR−2547であった。
【0047】
別の有用なポックスウイルスベクターがTROVACである。TROVACとは、1日齢雛のワクチン接種用に認可されている鶏痘ウイルスのFP−1ワクチン株に由来するプラークからクローニングされた弱毒化鶏痘をいう。TROVACは同様に、ブダペスト条約の条項に従ってATCCに寄託され、登録番号は2553であった。
【0048】
「非ウイルス」プラスミドベクターもまた、本発明の実施において適当でありうる。好ましいプラスミドベクターは、細菌、昆虫、および/または哺乳類宿主細胞に適合する。そのようなベクターは、たとえば、PCR−11、pCR3、およびpcDNA3.1(Invitrogen,San Diego,CA)、pBSII(Stratagene,La Jolla,CA)、 pET15(Novagen,Madison,WI)、pGEX(PharmaciaBiotech,Piscataway,NJ)、pEGFP−N2(Clontech,Palo Alto,CA)、pETL(BlueBacII,Invitrogen)、pDSR−alpha(国際公開第90/14363号パンフレット)およびpFastBacDual(Gibco−BRL,Grand Island,NY)、およびBluescript(登録商標)プラスミド誘導体(高コピー数のCOLE1を基礎とするファージミド、Stratagene Cloning Systems,La Jolla,CA)、Taq増幅PCR産物をクローニングするために設計されたPCRクローニングプラスミド(たとえば、TOPO(登録商標)TAクローニング(登録商標)キット、PCR2.1(登録商標)プラスミド誘導体、Invitrogen,Carlsbad,CA)を含む。細菌ベクターもまた本発明に用いることができる。これらのベクターは、たとえば、Shigella、Salmonella、Vibrio cholerae、Lactobacillus、Bacille calmette guerin (BCG)、およびStreptococcusを含む(たとえば、国際公開第88/6626号;国際公開第90/0594号;国際公開第91/13157号;国際公開第92/1796号;および国際公開第92/21376号パンフレットを参照)。多数の他の非ウイルスプラスミド発現ベクターおよび系が本分野で公知であり、および本発明に用いることができる。
【0049】
適当な核酸運搬方法は、特に、DNA−リガンド複合体、アデノウイルス−リガンド−DNA複合体、DNAの直接注射、CaPO4沈降、遺伝子銃法、エレクトロポレーション、およびコロイド分散系を含む。コロイド分散系は、高分子複合体、ナノカプセル、微小球、ビーズ、および、水中油滴エマルジョン、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含む脂質を基礎とする系を含む。本発明の好ましいコロイド系はリポソームであり、これはin vitroおよび in vivoで運搬媒体として有用である人工膜小胞である。RNA、DNAおよび完全なウイルス粒子をその水系の内部に封入し、および細胞へ生物学的に活性な形で送ることができる(Fraley,R.,et al.,1981,Trends Biochem.Sci.,6: 77)。リポソームの組成物は通常、リン脂質の組み合わせ、特に、通常はステロイド特にコレステロールと組み合わせた高温相転移リン脂質である。他のリン脂質または他の脂質もまた使用することができる。リポソームの物理的特性はpH、イオン強度、および二価陽イオンの存在に依存する。リポソーム作製に有用である脂質の例は、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミンといったホスファチジル化合物、スフィンゴ脂質、セレブロシド、およびガングリオシドを含む。特に有用なのは、脂質部分が14〜18個、特に16〜18個の炭素原子を含み、および飽和している、ジアシルホスファチジルグリセロールである。例となるリン脂質は、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびジステアロイルホスファチジルコリンを含む。
【0050】
免疫原性標的もまた、免疫応答を高めるために、1つ以上のアジュバントと組み合わせて投与することができる。典型的なアジュバントを下記の表2に示す:
【表2】
【0051】
本発明の免疫原性標的はまた、スクリーニング検定法における用途のためまたは免疫療法のための抗体を作製するのに用いることができる。他の用途は当業者に明らかとなる。「抗体」の語は、本分野で公知であるいくつかの方法によって作製された、Fab、Fab2、1本鎖抗体(たとえばFv)、ヒト化抗体、キメラ抗体、ヒト抗体を含む抗体断片を、本分野で公知である通り含む。さまざまな種類の抗体を調製および使用する方法は当業者によく知られており、および本発明の実施に有用である(たとえば、Harlow,et al.Antibodies: A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988 ; Harlow,et al.Using Antibodies: A Laboratory Manual,Portable Protocol No.1,1998; Kohler and Milstein,Nature,256: 495 (1975)を参照);Jones et al.Nature,321: 522−525 (1986); Riechmann et al.Nature,332: 323−329 (1988); Presta (Curr.Op.Struct.Biol.,2: 593−596 (1992); Verhoeyen et al.(Science,239: 1534−1536 (1988); Hoogenboom et al.,J.Mol.Biol.,227: 381 (1991); Marks et al.,J.Mol.Biol.,222: 581 (1991); Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985) ;Boerner et al.,J.Immunol.,147(1) : 86−95 (1991); Marks et al.,Bio/Technology 10,779− 783 (1992);Lonberg et al.,Nature 368856−859 (1994);Morrison,Nature368812−13 (1994); Fishwild et al.,Nature Biotechnology 14,845−51 (1996); Neuberger,Nature Biotechnology 14,826 (1996); Lonberg and Huszar,Intern.Rev.Immunol.13 65−93 (1995)号;第および米国特許第4,816,567号号;第5,545,807号;第5,545,806号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;および第5,661,016号明細書)。抗体またはそれに由来する誘導体はまた、特に、細胞毒性医薬または毒素、または活性なその断片、たとえばジフテリアA鎖、外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、クルシン、クロチン、フェノマイシン、エノマイシンといった治療用部分と複合体化しうる。細胞毒性物質はまた、放射性化学物質を含みうる。抗体およびその誘導体は、in vitroまたはin vivo用途のために本発明の組成物に組み込むことができる。
【0052】
免疫原性標的を表す核酸、タンパク質、またはその誘導体は、患者において疾患状態の存在を判定するための、予後を予測するための、または化学治療または他の治療処方の有効性を判定するための、検定法に用いることができる。本分野で知られる通りに実施される発現プロファイルは、免疫原性標的の発現の相対レベルを測定するために用いることができる。発現のレベルは次いで、基底レベルと相関させ、特定の疾患が患者に存在するかどうか、患者の予後、または特定の治療処方が有効かどうかを判定することができる。たとえば、患者が特定の化学治療処方を用いて治療されているならば、患者組織中(すなわち末梢血中)の免疫原性標的の発現のレベル低下は、その処方がその宿主における癌量を低下させていることを示しうる。同様に、発現のレベルが上昇しているならば、別の治療様式を用いる必要がありうる。一実施形態では、免疫原性標的をコードする核酸に対応する核酸プローブを、宿主における発現の検出および定量のために、本分野で公知である通りのバイオチップに結合させることができる。
【0053】
核酸、タンパク質、その誘導体、またはそれに対する抗体を、医薬スクリーニング検定法において試薬として用いることもまた可能である。その試薬は、患者の細胞株、または細胞または組織における免疫原性標的の発現に対する医薬候補の作用を確認するために用いることができる。発現プロファイリング法は、高処理量スクリーニング法と組み合わせて、有用な化合物の迅速な特定を可能にしおよび医薬候補を用いた治療の有効性を監視することを可能にすることができる(たとえば、Zlokarnik,et al.,Science 279,84−8 (1998)を参照)。医薬候補は、天然に存在するかまたは合成によって得られる、化合物、核酸、タンパク質、抗体、またはそれに由来する誘導体であることができる。このように特定された医薬候補は、用途の中でも特に、患者への投与のための医薬組成物として、またはさらにスクリーニング検定法における用途のために、使用することができる。
【0054】
本発明の組成物の宿主への投与は、当業者に公知であるさまざまな方法のいずれかを用いて達成することができる。組成物は、ヒトおよび他の哺乳類を含む、患者への投与のための薬剤(すなわち、「医薬組成物」)を製造するための製薬学の従来の方法に従って処理することができる。医薬組成物は好ましくは、たとえば、DNA、ウイルスベクター粒子、ポリペプチドまたはペプチドの所定の量を含む単位用量の形に作製される。ヒトまたは他の哺乳類のために適した1日量は、患者の状態および他の要素に応じて大幅に変化しうるが、しかし、今度も、所定の方法を用いて決定することができる。
【0055】
医薬組成物は、経口的に、非経口的に、吸入スプレーによって、直腸に、節内に、または局所的に、医薬品として許容されるキャリヤー、アジュバント、および媒体を含む単位用量処方で投与することができる。「医薬品として許容されるキャリヤー」または「生理的に許容されるキャリヤー」の語句はここでは、医薬組成物としての核酸、ポリペプチド、またはペプチドの運搬を達成または促進するために適した、1つ以上の処方材料をいう。「医薬組成物」は、核酸またはポリペプチドの治療上有効な量を含む組成物である。「有効量」および「治療上有効な量」の語句はそれぞれ、有効な免疫応答を誘導または促進するために用いられる核酸またはポリペプチドの量をいう。本発明の組成物は、宿主において、腫瘍の発生から宿主を保護しおよび/または宿主が既存の腫瘍を身体から排除することを可能にする、抗腫瘍免疫応答の誘導または促進を提供することが好ましい。
【0056】
経口投与のためには、医薬組成物は、たとえば、特に、カプセル、錠剤、懸濁剤、液剤を含むいくつかの剤形のいずれかでありうる。液剤は、生理食塩水、デキストロース、または水を含む適当なキャリヤーを含む組成物として、注射によって投与することができる。非経口の語はここでは、皮下、静脈内、筋肉内、胸骨内、輸液、または腹腔内投与を含む。医薬の直腸投与のための坐剤は、ココアバターおよびポリエチレングリコールといった通常の温度で個体であるが直腸温で液体である適当な非刺激性添加物と医薬を混合することによって調製できる。
【0057】
宿主を免疫するため、またはそうでなければ本発明の組成物を用いて障害または疾患を治療するための用量処方は、疾患の種類、年齢、体重、性別、患者の医学的症状、症状の重症度、投与経路、および使用する特定の化合物を含むさまざまな因子に基づく。たとえば、ポックスウイルスベクターは、1回用量当たり1x106感染性粒子を含む組成物として投与することができる。このように、用量処方は大幅に変動しうるが、しかし標準的な方法を用いて普通に決定することができる。
【0058】
基礎免疫段階で標的となる免疫原が1つの形で最初に投与され、その後、追加免疫段階で標的となる免疫原が別の形で投与される、基礎免疫−追加免疫処方もまた使用することができる(たとえば、国際公開第01/30382A1を参照。基礎免疫段階および追加免疫段階の標的となる免疫原の形は異なる。たとえば、基礎免疫段階が核酸を用いたならば、追加免疫はペプチドとして投与しうる。同様に、基礎免疫段階が1つの種類の組換えウイルス(すなわち、ALVAC)を用いた場合、追加免疫段階は別の種類のウイルス(すなわち、NYVAC)を使用しうる。この投与の基礎免疫−追加免疫法は、強い免疫応答を誘導することが示されている。
【0059】
本発明の組成物は、単独の活性な医薬として投与することができる一方、それらはまた1つ以上の他の組成物または物質(すなわち、他の免疫原性標的、共刺激分子、アジュバント)と組み合わせて用いることもできる。組み合わせとして投与される場合、個々の成分は、同時にまたは別の時に投与される別々の組成物として処方することができ、または成分は単一の組成物として合わせることができる。
滅菌注射用水性または油性懸濁液といった注射用調製物は、公知の方法に従って、適当な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて処方することができる。注射用調製物はまた、無毒性の非経口的に許容しうる希釈剤または溶媒中の滅菌注射用液または懸濁液でありうる。使用できる適当な媒体および溶媒は、特に、水、リンゲル液、および等張塩化ナトリウム溶液である。たとえば、ポックスウイルスといったウイルスベクターを0.4%NaCl中に処方することができる。加えて、滅菌不揮発性油が従来、溶媒または懸濁媒として用いられている。この目的には、合成モノまたはジグリセリドを含むどのブランドの不揮発性油も用いることができる。加えて、オレイン酸といった脂肪酸は注射剤の調製に用いられる。
【0060】
局所投与のためには、組成物の適当な局所用量を、毎日1から4回、および好ましくは2から3回投与することができる。用量はまた、用量を投与しない中間日を用いて投与しうる。適当な組成物は、処方の重量で0.001%ないし10%w/w、たとえば1%ないし2%を含みうるが、処方の10%w/wと同じ量、しかし好ましくは5%w/w以下、およびより好ましくは0.1%ないし1%を含みうる。局所投与に適した処方は、皮膚を通る浸透に適した液体または半液体(たとえば、リニメント、ローション、軟膏、クリーム、またはペースト)および目、耳、または鼻への投与に適した滴下剤を含む。
【0061】
医薬組成物はまた、固形(顆粒、粉剤または坐剤を含む)に調製することができる。医薬組成物は、滅菌といった従来の製薬操作に供することができ、および/または従来の補助剤、たとえば保存料、安定剤、湿潤剤、懸濁剤、緩衝剤などを含みうる。経口投与用の固体剤形は、カプセル剤、錠剤、丸剤、粉剤、および顆粒剤を含みうる。そのような固体剤形では、活性化合物は、白糖、乳糖、またはデンプンといった、少なくとも1つの不活性な希釈剤と混合しうる。そのような剤形はまた、通常の慣行の通り、たとえば、ステアリン酸マグネシウムといった滑沢剤のような、不活性な希釈剤以外の別の物質も含みうる。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合、剤形はまた緩衝剤を含みうる。錠剤および丸剤は別に腸溶性コーティングと共に調製しうる。経口投与用の液体剤形は、水といった本分野で一般的に用いられる不活性な希釈剤を含む、医薬品として許容される乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、およびエリキシル剤を含みうる。そのような組成物はまた、補助剤、たとえば湿潤剤、甘味料、香味料、および香料を含みうる。
【0062】
本発明の核酸またはポリペプチドを含む医薬組成物は、いくつかの形状のいずれかを取ることができ、およびいくつかの経路のいずれかによって投与しうる。好ましい実施形態では、組成物は非経口経路(皮内、筋肉内または皮下)を介して投与され、宿主において免疫応答を誘導する。代替的に、組成物はリンパ節(節内)または腫瘤(すなわち、腫瘍内投与)内へ直接投与することができる。たとえば、用量は0、7、および14日目に皮下投与することができる。TAを含む組成物を用いる免疫に適した方法は、特にp53(Hollstein et al.,1991)、p21−ras(Almoguera et al.,1988)、HER−2 (Fendly et al.,1990)、黒色腫関連抗原(MAGE−1;MAGE−2)(van der Bruggen et al.,1991)、p97(Hu et al.,1988)、黒色腫関連抗原E(国際公開第99/30737号パンフレット)および癌胎児性抗原(CEA)(Kantor et al.,1993; Fishbein et al.,1992;Kaufman et al.,1991)について示された通り、本分野で公知である。
【0063】
投与可能な組成物の好ましい実施形態は、たとえば、核酸またはポリペプチドを含む懸濁剤、シロップ剤、またはエリキシル剤といった液体調製物を含む。好ましい注射用調製物は、たとえば、懸濁剤または乳剤といった、非経口、皮下、皮内、筋肉内または静脈投与に適した核酸またはポリペプチドを含む。たとえば、組換えポックスウイルスは、滅菌水、生理食塩水、グルコースなどといった適当なキャリヤー、希釈剤、または添加物と混合することができる。組成物はまた、たとえば等張水性の生理食塩緩衝液中での再構成のための凍結乾燥形で提供することができる。加えて、組成物は、他の抗新生物剤、抗腫瘍剤または抗癌剤と、および/または、抗新生物剤、抗腫瘍剤または抗癌剤の悪影響を低減または緩和する物質と、同時に投与または連続的に投与することができる。
【0064】
本発明の組成物を含むキットもまた提供される。キットは、適当なキャリヤー、希釈剤または添加物入りの別々の容器を含みうる。キットはまた、同時または連続的な投与のための、別の抗癌剤、抗腫瘍剤または抗新生物剤、および/または、抗新生物剤、抗腫瘍剤または抗癌剤の悪影響を低減または緩和する物質を含むことができる。別に、キットは成分を混合または合わせる、および/または投与のための説明書を含みうる。
【0065】
本発明のよりよい理解およびその多数の利点は、例によって示される下記の実施例から得られる。
【実施例】
【0066】
実施例1
AAC2腫瘍関連抗原
AAC2コード配列の1つの型(AAC2−1)が共同研究者によって提供され、およびマウスbcl−6関連亜鉛フィンガータンパク質(「BAZF」)と高い配列類似性を有することが見出された。この配列情報に基づいて、PCRプライマーを下記の通り設計した:
CACCATGGGT TCCCCCGCCGCCCCGGA(順方向プライマー;配列番号6)
CTAGGGCCCC CCGAGAATGT GGTAGTGCAC TTT(逆方向プライマー;配列番号7)
RNAは、集密状態のHUVEC(BioWhittacker;品番CC2517、ロット番号1F0141)培養からトリアゾールを用いて、取扱説明書に従って単離された(Life Technologies,Inc.,品番15596)。高信頼性RT−PCRを次いでその順方向および逆方向プライマーを用いて実施し(94度、2分;94度、30秒;56.8度、30秒;68度、1分40秒で24サイクル;25回目のサイクルは68度、7分)、1,447塩基対cDNAの単離を結果として生じた。cDNAをpEF6−TOPO真核発現プラスミドへクローニングし、および「pEF6−hAAC2−2」と称した。cDNApEF6−hAAC2−2を、4種類のプライマーを用いて配列決定し、および、AAC2−1およびマウスBAZFの配列と整列した(図1)。図に示す通り、AAC2−2は、AAC2−1の245位に見出されるセリン残基(S)を欠く。次に、AAC2−2の298位から316位のアミノ酸17個の一連(SEFFSCQNCEAVAGCSS)は、AAC2−1のアミノ酸298〜316と11.8%の配列同一性だけを示した(図1)。興味深いことに、298位から316位のアミノ酸17個の一連はマウスBAZFと100%同一であり、これが長いセリン鎖に伴う転写因子機能(亜鉛フィンガー)に決定的でありうることを示唆する。AAC2−2は次いでpcDNA3.1−zeo真核発現プラスミドへクローニングされた(「pcDNA3.1−hAAC2−2」)。
【0067】
実施例2
AAC2ペプチドに対するヒトT細胞反応性
AAC2−2アミノ酸配列を用いて、HLA−A−0201と結合することが予測される9量体ペプチドのライブラリを構築した(表3;「N」はその配列がマウスホモログ中に見出されないことを示し、一方、「Y」はそのがマウスホモログ中に見出されることを示す)。23のペプチドをDMSOに10mg/mlにて溶解し(表4)、およびヒトPBMC培養に用いてCD8およびCD4apT細胞応答をin vitroで誘導する能力を試験した。
【表3】
【0068】
GM−CSFおよびIL−4を用いて、HLA−A−0201を発現している供血者の末梢血単球から樹状細胞(DC)を作製した。DCを、表4に示す9量体AAC2−2ペプチドの異なるプールを用いてパルスした。
【表4】
【0069】
これらのDCを用いて、自家T細胞濃縮PBMC調製物を刺激した。T細胞を、自家PBMCを用いて再刺激し、および次いでCD40−リガンド−活性化自家B細胞を用いて再刺激した。各ペプチドプールを用いた3回目および4回目の刺激後に、IFN−γ産生についてのELISPOT分析は、T細胞がAAC2−2ペプチドのプールの1つに対して非常に強く反応したことを示した(ペプチド群6;図2)。ペプチド群6は下記のペプチドを含む:ILTDVTLLV(aa36〜44)、TLLVGGQPL(aa41〜49)、およびFMYTSRLRL(aa95〜103)。フローサイトメトリー分析(FACS)は、このペプチド特異的株に由来するリンパ球は、>50%の記憶(CD45RO+)表現型を有するCD8T細胞から成ることを示した。抗CD56抗体で染色された細胞はごく少数しかなく(<2%)、観察されたIFN−γ産生はNK細胞活性が原因でないことを示した。
【0070】
このペプチドプール特異的T細胞株からのCTL活性の分析はまた、活性化T細胞が、ペプチド負荷されたTAP欠損T2細胞をHLA−A−0201制限的な方法で傷害する能力を有したことを実証した(図2)。この分析はまた、ILTDVTLLVが、ペプチド特異的CTL活性の大部分を刺激した主なペプチドであったことを明らかにした。したがって、AAC2−2ペプチドはヒト免疫系において免疫原性であることが決定した。
【0071】
実施例3
AAC2−2のin vivo免疫原性
HLA−A2−Kb遺伝子導入マウスにDNA免疫を用いて、AAC2−2タンパク質は処理されて免疫原性ペプチドとなり、およびHLA−A−0201制限T細胞応答をin vivoで誘導することができることが見出された。マウスは1日目にpEF6−hAAC2−2を用いた注射によって免疫し、および同じプラスミドを用いて21日目に追加免疫した。リンパ球を、免疫したマウスから追加免疫の21日後に採取し、および表4に示すさまざまな群のAAC2−2ペプチドを用いてin vitroで再刺激した。これらのペプチドに対するペプチド特異的エフェクターT細胞機能を、IFN−γELISPOT分析を用いて見出した(図3)。ヒト培養PBMCにおいて強く免疫原性であることが以前に示された同じプールのペプチド(群6)がまた、DNAワクチン接種後にT細胞による顕著な反応性を導いたことが見出された(図3)。このように、DNAを基礎とするワクチンとして投与されたAAC2遺伝子産物はin vivoで免疫原性であり、およびCTL活性の活性化で特徴づけられる強い細胞媒介性免疫応答を誘導する。
【0072】
実施例4
治療用AAC2−2ワクチン
AAC2−2遺伝子産物に対するpEF6−hAAC2−2DNAワクチンを用いる治療用ワクチン接種は、固形腫瘍の増殖を完全に遮断することが見出された。C57BL/6マウス8個体の群に、活発なおよび相対的に非免疫原性の腫瘍細胞株であるB16F10黒色腫細胞104個を皮下に負荷した。マウスを次いで、腫瘍負荷の6日後に開始して週間隔で免疫した。flu−NPタンパク質をコードするプラスミドまたは生理食塩水単独のどちらかを用いて処理した対照マウス(群当たり8個体)はすべて大きい腫瘍を生じた。対照的に、pEF6−hAAC2−2で免疫したマウスのすべて(8/8)は、50日の期間にわたって検出可能な腫瘍が無かった(図4)。すべてのマウスは80日間を通じて腫瘍が無いままであった(データ記載せず)。図5は、黒色腫移植後の、記載のさまざまなDNAベクターで処理したマウスの生存をプロットし、ふたたび黒色腫増殖に対するマウスの保護におけるAAC2−2ワクチン接種の完全な有効性を示す。ヒトAAC2−2遺伝子をコードするベクターを用いた免疫の結果として、有害な健康上の作用は観察されていない(免疫したマウスは対照マウスと同程度に活動的であり、および体重減少を示さなかった)。
【0073】
図4および5に示す通り、ヒトVEGFR−2(pBLAST−hflk1)をコードするプラスミドを用いたワクチン接種は、腫瘍負荷されたマウスを保護しなかった。実際、腫瘍はこれらのマウスではさらに速やかにさえ増殖した。pBLAST−hflk1プラスミドを用いてワクチン接種したマウス由来の血清のELISAによる分析は、VEGFR−2タンパク質に対するIgGが顕著な力価で誘導されることを見出した(データ記載せず)。これらの結果は、VEGFR−2に対して向けられる、抗体を基礎とする免疫応答は、血管新生および固形腫瘍増殖を防ぐのに有効でない可能性があることを示唆する。
【0074】
pEF6−hAAC2−2を用いて免疫したC57BL/6マウスにおける黒色腫固形腫瘍増殖の阻害は、そのタンパク質に対する免疫応答と相関する(図6)。C57BL/6マウスの免疫は上記の通り実施された。免疫したマウスに由来する脾臓細胞を、HLA−A2−Kb遺伝子導入マウスを用いた実験で使用したのと同一のペプチドプールで再刺激した(表3)。相当数のペプチドが、C57BL/6クラスI MHC(KbおよびDb分子)と交差反応した。ペプチドのプールの2つが特に(群1および群5)強いエフェクター細胞活性を誘導することがIFN−γELISPOT検定で見出された(図6)。これらの群のペプチドのすべてがまた、マウスBAZFタンパク質中の対応する配列と同一である。これらの結果は、ヒトAAC2−2を用いた免疫はそのマウスオルソログBAZFに対する免疫応答をマウスにおいて活性化し、および結果として腫瘍血管新生を阻害できることを強く示唆する。これらの結果は単一の実験に由来し、およびこれらの結果を示したのはすべての実験ではなかった。
【0075】
実施例5
BFA4腫瘍抗原
BFA4配列は、以前は何らかの種類の癌に原因づけられる機能が無かった既知の転写因子である「trichorhinophalangeal syndrome1」(TRPS−1) 遺伝子 (Genebank ID番号6684533 ; Momeniet et al,Nature Genetics,24(1),71−74,2000)であることが見出された。BFA4cDNA配列を図7に示し(配列番号28)、および推論されるアミノ酸配列を図8に示す(配列番号29)。
【0076】
A.BFA4ペプチドおよびポリクローナル抗血清
監視目的で、ウサギ抗BFA4ポリクローナル抗体を作製した。BFA4に対する抗体反応を誘導するために、下記の6種類のペプチド(22量体)を設計および合成した:
CLP 2589 MVRKKNPPLRNVASEGEGQILE BFA4(1-22)(配列番号78)
CLP 2590 SPKATEETGQAQSGQANCQGLS BFA4(157-178)(配列番号79)
CLP 2591 VAKPSEKNSNKSIPALQSSDSG BFA4(371-392)(配列番号80)
CLP 2592 NHLQGSDGQQSVKESKEHSCTK BFA4(649-670)(配列番号81)
CLP 2593 NGEQIIRRRTRKRLNPEALQAE BFA4(940-961)(配列番号82)
CLP 2594 ANGASKEKTKAPPNVKNEGPLNV BFA4(1178-1199)(配列番号83)
ウサギをペプチドで免疫し、血清を単離し、および下記の抗体力価が観察された:
【0077】
ペプチドはまた、下記の通り、免疫応答を促進するためKLHペプチドと結合することによって改変した:
BFA4(1-22) KLH-MVRKKNPPLRNVASEGEGQILE (CLP-2589;(配列番号78))
BFA4(157-178) KLH-SPKATEETGQAQSGQANCQGLS (CLP-2590;(配列番号79))
BFA4(371-392) KLH-VAKPSEKNSNKSIPALQSSDSG (CLP-2591;(配列番号80))
BFA4(649-670) KLH-NHLQGSDGQQSVKESKEHSCTK (CLP-2592;(配列番号81))
BFA4(940-961) KLH-NGEQIIRRRTRKRLNPEALQAE (CLP-2593;(配列番号82))
BFA4(1178-1200) KLH-ANGASKEKTKAPPNVKNEGPLNV (CLP-2594;(配列番号83))
pcDNA3.2BFA4(3.6mg)はまた、ニワトリにおいてポリクローナル血清を生じるためのDNA免疫に用いた。
【0078】
B.BFA4のクローニング
BFA4に関する完全なcDNA配列は〜10kbであり、および遺伝子はBT474腺管癌細胞で発現される。RT−PCRによる4kb,7kbまたは10kb産物の増幅によって完全長BFA4遺伝子を増幅するために、プライマー7717(順方向プライマー)および7723(逆方向プライマー)を設計した
プライマー7717:BFA4−BamHl/Fl(5'末端順方向)、Kozakを伴う:
5'CGGGATCCACCATGGTCCGGAAAAAGAACCCC 3' (DNA3.1についてBamHI,MP76)(配列番号84)
プライマー7723:BFA4−BamHI/R1(3'末端逆方向4kb):
5'CGGGATCCCTCTTTAGGTTTTCCATTTTTTTCCAC 3' (DNA3.1についてBamHI,MP76)(配列番号85)
BT−474細胞からTrizolを用いて取扱説明書に従って(Gibco BRL)異なるバッチで単離および凍結された総RNA10mgをRT−PCRで用い、BFA4遺伝子を増幅した。RT−PCR条件は、Taq Platinum 高信頼性酵素、OPC(オリゴ精製カートリッジ; Applied Biosystems)精製プライマーおよび精製総RNA/ポリA mRNA(BT474細胞)を用いて最適化した。最適化の結果として、単一バンドで4.0kb断片を生じた。
【0079】
BFA4配列を再増幅するために、mRNAをDNアーゼを用いて取扱説明書に従って(GibcoBRL)処理した。4kb DNAを、PCRを用いて、プライマー7717および7723プライマー(10pmol/マイクロリットル)およびTaq Platinum高信頼性 ポリメラーゼ(GIBCO BRL)酵素を用いて再増幅した。反応の組の両方についてサーモサイクラー条件は下記の通りであった:94℃(2分)、その後94℃(30秒)、52℃(30秒)、67℃(4分)および67℃(5分)の30サイクル、および最後に40℃10分。3個のBFA4クローンが、pCR2.1/TOPO−TAクローニング後に同定された。
【0080】
いくつかの突然変異が、BFA4配列の分析中に同定された。これらの配列を訂正するために、クローンJB−3552−1−2由来のBFA4遺伝子(pCR2.1/TOPO/BFA4)のBamHI/XhoI断片(5')を、クローンJB−3552−1−4由来のBFA4遺伝子(pCR2.1/TOPO/BFA4)のXhoI/BamHI断片(3')と交換した。この再組換え断片を次いでpMCS5BamHI/CAPにライゲーションした。クローンJB−3624−1−5が作製され、および正しい配列を含むことが見出された。
【0081】
単離されたBFA4クローンのヌクレオチド344は報告された配列とは異なった(BFA4ではC、TRPS−1ではT)。その変化は結果としてpheからserへのアミノ酸変化を生じた。この配列を報告された配列へ変えるために、クローンJB−3552−1−2由来のBFA4遺伝子(pCR2.1/TOPO/BFA4)のEcoRI/BglII断片(5')をpUC8:2へサブクローニングし、クローンJB−3631−2を生じた。このクローンは、BFA4タンパク質のアミノ酸115をセリンからフェニルアラニンへTRPS1タンパク質のように変化させるQuickchange(Stratagene)突然変異誘発のためのテンプレートとして用いた。選択されたクローンはJB−3648−2−3であった。突然変異誘発はまた、pMCS5BFA4(BT474)をBFA4タンパク質のアミノ酸115をセリンからフェニルアラニンへTRPS1タンパク質のように変化させるQuickchange(Stratagene)突然変異誘発のためのテンプレートとして用いて繰り返した。いくつかのクローンが、DNA配列決定によって正しいことが見出され、およびクローンの1つ(JB−3685−1−18)を以降のサブクローニングに用いた。
【0082】
JB−3685−1−18を次いで、BFA4コード配列を4種類の異なる発現ベクター:1)ポックスウイルス(NYVAC)ベクターpSD554VC(COPAK/H6;JB−3707−1−7);2)pcDNA3.1/Zeo(+)(JB−3707−3−2);3)pCAMycHis(JB−3707−5−1);および、4)セムリキ森林ウイルスアルファウイルスレプリコンベクターpMP76(JB−3735−1−23)のBamHI部位へサブクローニングするのに用いた。JB−3707−1−7、JB−3707−5−1、およびJB−3735−1−23内のBFA4コード配列は、DNA配列決定によって確認された。
終止コドンがpcDNA3.1/Zeo/BFA4構造(JB−3707−3−2)中のクローニングされた配列の終わり近くに導入された。独自のEcoR1部位を開き、および挿入してBFA4コード配列と共に終止コドンをフレーム内に導入した。いくつかの推定されるクローンがEcoR1部位の消失によって同定されたが、しかし3個のクローン(JB−3756−1−2;JB−3756−3−1;およびJB−3756−4−1)が配列決定された。3個すべては挿入の部分について正しいことが見出された。クローンJB−3756−3−1は正しい配列および方向を有することが同定された。
【0083】
Mycおよびmyc/hisタグ(Evansetal、1985)をオリゴヌクレオチドを用いて導入し、pcDNA3.1/Zeo/BFA4構造(JB−3707−3−2)中へEcoRI/EcoRV部位にアニーリングおよびライゲーションした。これらの構造についていくつかのクローンが得られた。正しい配列および方向を有する3個のクローンが得られた:1)PcDNA3.1/Zeo/BFA4/myc−tag(JB−3773−1−2);2)PcDNA3.1/Zeo/BFA4/mychis−tag(JB−3773−2−1);および、3)PcDNA3.1/Zeo/BFA4/mychis−tag(JB−3773−2−2)。
【0084】
C.BFA4の発現
1.ポックスウイルスベクターからの発現
pSD554VC(COPAK/H6;JB−3707−1−7)ベクターを用いてNYVAC−BFA4ウイルスを作製した。In vitro組換えを、プラスミドCOPAK/H6/BFA4およびNYVACを用いてRK13/CEF細胞で実施した。NYVAC−BFA4(vP2033−NYVAC−RK13)を作製し、およびストック終濃度1.12x109/ml(10ml)での3回の濃縮の完了後、P3レベルへ増幅した。Vero細胞をNYVAC−BFA4にM.O.I.0.5pfu/細胞にて感染させた。BFA4タンパク質の発現を確認するために、細胞溶解物および培地を感染の24時間後に採取した。濃縮した培地の1/20および溶解物の1/40をウェスタンブロットに負荷し、およびBFA4ペプチドCLP2589、2591、2598および2594(抗BFA4抗血清のペプチド配列および調製については上記参照)に対するウサギ抗血清と共にインキュベートした。約120kDのバンドが、NYVAC−BFA4感染Vero細胞の溶解物および濃縮培地の両方に見られ、これはVero対照細胞(「ブランク感染」)、親NYVACウイルスに感染したVero細胞、または濃縮培地のどれにも見られなかった。
【0085】
2.pcDNA3.1を基礎とするベクターからの発現
pcDNAを基礎とするベクターからのBFA4の発現を証明するため、およびBFA4ペプチドに対して作製したポリクローナル血清の品質を分析するため、一過性トランスフェクション試験を実施した。下記の構造を用いてBFA4遺伝子の発現を試験した:pcDNA3.1zeoR/BFA4、pMP76/BFA4、pcDNA3.1zeoR/BFA4/Myc tagおよび pcDNA 3.1 zeoR/BFA4/MycHis tag。BFA4発現プラスミド(5μgおよび10μg)をpGL3ルシフェラーゼ(1□g)(Promega)と、Geneポーター試薬(Gene Therapy Systems)をトランスフェクション 試薬として用いて同時トランスフェクションした。トランスフェクション後48時間で、全細胞抽出物を、細胞を細胞溶解試薬(200μl)中にかき取りおよび1サイクルの凍結融解(−20℃凍結、37℃融解)によって調製した。トランスフェクション効率は、相対ルシフェラーゼ単位(RLU)を2連で測定することでルシフェラーゼレポーター遺伝子の発現を分析することにより定量した。同様のRLU値が、BFA4発現ベクターの存在下および非存在下でルシフェラーゼ構造を同時トランスフェクションした試料で得られた。異なる量(5μgおよび10μg)のBFA4発現ベクターについて毒性またはRLU値に有意差は観察されなかった。アルカリホスファターゼ系を使用しCHOK1細胞抽出物(pCDNA3.1/zeo/BFA4/MycHisTag)および抗BFA4ポリクローナル抗血清を用いた予備ウェスタンブロット分析は、BFA4ベクターでトランスフェクションされた細胞の抽出物中に、約120kDaバンドにバンドを証明した。
【0086】
BFA4を発現しているCOSA2細胞の安定クローンを得るために、安定トランスフェクション試験を開始した。これらの細胞は、in vitro刺激検定法に有用である。pcDNA3.1zeoR/BFA4(2.5μgおよび20μg)、およびpcDNA3.1zeoR/BFA4/MycHis tag (2.5μg)を用いてBFA4の発現を試験した)。pGL3ルシフェラーゼ(2.5μg)を、トランスフェクション効率を監視する対象ベクターとして用いた。
【0087】
Geneポーター試薬を用いてDNAベクターのトランスフェクションを促進した。最初の実験について、トランスフェクション後48時間で、全細胞抽出物を、細胞を細胞溶解試薬(200μl)中にかき取りおよび1サイクルの−20℃/37℃での凍結融解によって調製した。2回目の実権から得られたトランスフェクションされた細胞をトリプシン処理し、凍結ショックで確立し、および細胞をZeocinの漸増濃度(0、250、500、750および1000μg/ml)中に平板播種した。トランスフェクションされていないCosA2細胞は、60〜80%集密にて3週間100μg/ml(Zeocin)、および10%集密にて250μg/ml(Zeocin)で生存した。しかし、3週間後、より高い薬物濃度では(500〜1000μg/ml)、トランスフェクションされていない細胞およびZeocinの高濃度(500〜1000μg/ml)を含むプレートでは生細胞は観察されなかった。
【0088】
異なる薬物濃度(Zeocin−250、500、750および1000μg/ml)で増殖しているいくつかのZeocin耐性クローンを、10cmプレートから3週間後に採取した。これらのクローンをさらに3.5cmプレートでZeocin500、750および1000μg/mlの存在下で増殖させた。これらのクローンの凍結ロットを調製し、および各プール(pcDNA3.1zeoR/BFA4、およびpcDNA3.1zeoR/BFA4/MycHis tag)からいくつかのクローンをT75cm2培養瓶でZeocin1mg/mlの存在下で増殖させた。各プール(pcDNA3.1zeoR/BFA4、およびpcDNA3.1zeoR/BFA4/MycHis tag)からの5個のクローンをT75cm2培養瓶でZeocin1mg/mlの存在下で増殖させた。細胞はZeocin医薬(1mg/ml)選択下に維持される。6個のクローンをBFA4ペプチドパルス標的実験に使用し、および2個のクローンがBFA4を中等度のレベルで発現することが免疫検定法によって見出された。非接着細胞株K562A2およびEL4A2もまた、安定な細胞株を作製するために、これらのベクターを用いてトランスフェクションした。
【0089】
3.原核発現ベクター
pCDNA3.1/BFA4由来のN−末端54kDaBFDA4をコードするBamHI−Xho−1断片(1.5Kbp)断片をpGEX4T1−6His(Veritas)プラスミドにクローニングした。このベクターは、tacプロモーター、その後にN−末端グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST−26kDa)およびGST融合タンパク質のC末端に6ヒスチジンタグを含む。
【0090】
BFA4−N54発現プラスミドを用いてBL21細胞を形質転換し、および25℃にて抗生物質選択培地(2L培養)中で一定のOD(600nm)まで増殖させ、およびその後、1mM IPTG.を用いて誘導した。GST−BFA4−N54は可溶性タンパク質であることがわかった。可溶性画分の清澄化抽出物をバッチ毎にグルタチオン−Sepharose 4Bに吸着させ、および10mM還元グルタチオンを用いて溶出した。タンパク質濃度の推定およびTCA沈澱後に画分を分析した。溶出液中の分子量85kDaの特異的ポリペプチドがSDS−PAGEによって確認された。組換えタンパク質はグルタチオン−Sepharoseによって精製され、さらなる精製のためにNiNTAカラムに吸収された。結合したタンパク質は0.25Mイミダゾールを用いて溶出した。タンパク質を、40%グリセロールを含むTBSに対して透析し、結果として4.5mgのGST−BFA4−N54−6His(N末端BFA4タンパク質)タンパク質を生じた。BFA4の発現は、ウサギ抗BFA4ポリクローナル抗体を用いてウェスタンブロットによって確認された。
【0091】
D.抗BFA4免疫応答
1.BFA4ペプチド
BFA4に対する遺伝子免疫ベクターに加えて、BFA4に対する免疫試薬が作製されている。BFA4遺伝子産物の範囲にわたる九量体ペプチド100種類のライブラリが合成された。ペプチドは、HLA−A*0201と結合する潜在能力に基づいて選択された。表5は、HLA−A*0201に対する、BFA4タンパク質に由来する試験した100種類の九量体ペプチドエピトープを列記する(下記参照):
【表5−1】
【表5−2】
【0092】
ペプチドライブラリを、免疫試験のために、表6(下記参照)に示す通りの7〜10種類の異なるペプチドを含む別々の群へプールした。BFA4全体にわたるペプチドライブラリに加えて、N−末端の300個のアミノ酸(1〜300位)にわたる組換えタンパク質が合成されおよびE.coliから精製されている。
【表6−1】
【表6−2】
【0093】
2.BFA4ペプチドの免疫反応性およびヒトエフェクターT細胞の作製:
BFA4ペプチドを、免疫試験のために7〜10種類のペプチドを含む別々のプールに群分けした。溶解したペプチドプールを自家HLA−A*0201樹状細胞にパルスし、および自家T細胞濃縮PBMC調製物を活性化するために用いた。各ペプチドプール刺激培養に由来する活性化T細胞を、CD40L活性化自家B細胞を用いてさらに3〜5回再刺激した。IFN−γELISPOT分析およびペプチドパルスした標的細胞のCTL傷害についての検定を、BFA4に由来するこれらのエピトープの免疫原性を実証するために実施した。
【0094】
ヒトT細胞は、ELISPOT検定においてIFN−γを分泌する能力によって示される通り、BFA4タンパク質に由来するペプチドのいくつかのプールに対してエフェクター細胞活性を実証した。これらの実験は異なる回数のAPC刺激後に繰り返し、結果として同一の反応性ペプチド群が得られた。ペプチド群1、2、4、5、6、7、8、9、および10はこれらの検定において免疫反応性であることが見出された。続いて、これらの反応性ペプチド群を、各群から単一のペプチドを別々に試験した別のIFN−γELISPOT検定でデコンボルーションした。ELISPOT検定でのBFA4ペプチド群1、5、6、7、8、9、および10からの個別のペプチド。この分析は、ヒトT細胞によって認識される、BFA4タンパク質に由来するいくつかの個別の強く反応性であるペプチドを明らかにした。これらの単独のペプチドの多数はまた、ペプチド負荷したヒトT2リンパ腫細胞標的のCTL活性傷害も誘導したことも観察された。これらのペプチドを表7に列記する:
【表7】
【0095】
D.in vivoでの免疫後のBFA4に対する免疫応答:
pcDNA3.1/Zeo−BFA4プラスミドを用いて、マウスKbα3ドメインに融合したハイブリッドHLA−A*0201α1α2ドメインをC57BL/6マウスで発現している遺伝子導入マウス(A2−Kbマウス)を免疫した。DNA免疫および活性化された脾臓細胞の採取後の、プールしたペプチドの群を用いたIFN−γELISPOT分析は、いくつかの反応性BFA4ペプチド群を明らかにした。これらの群の一部(特に群7および8)はまた、培養ヒトT細胞において強く反応し、ペプチドの重なり合う群がヒトT細胞によって認識され、およびワクチン接種後に自然に処理されHLA−A2上に提示されることを示唆した。
【0096】
ワクチン接種実験はまた、NYVAC−BFA4およびMP76−18−BFA4ベクターを用いてA2−Kbマウスで実施した。マウスを、10〜20gのMP−76−18−BFA4および1〜2x107pfuのvP2033(NYVAC−BFA4)を用いて皮下免疫し、および28日後に等しい量の各ベクターを用いて追加免疫した。免疫マウス由来の脾臓細胞の、BFA4ペプチドのプールを用いた再刺激は、BFA4ペプチド群2、3、4、5、7、9、および10に応答したIFN−γ産生の誘導をELISPOT検定で明らかにした。このように、CMVプロモーターに動かされる真核プラスミド、NYVAC、またはセムリキレプリカーゼを基礎とするDNAプラスミドにコードされるBFA4遺伝子はすべて、BFA4タンパク質に対してin vivoでT細胞応答を誘導する能力があった。
【0097】
実施例6
BCY1腫瘍抗原
BCY1遺伝子は、「後側発現物質(posterior−expressed maternal)遺伝子−3」(PEM−3)と呼ばれCaenorhabtidis elegans胚における後側から前側のパターン化に関与する線虫遺伝子と相同である部分オープンリーディングフレーム(ORF)として検出された。この遺伝子の癌への関与は以前に記録されていない。
【0098】
A.BCY1およびアミノ酸DNA配列
部分DNA配列がBCY1について最初に決定された。プライマー9616SXCおよび9617SXCは、BCY I部分DNA 配列に由来し、およびBCY IをRT−PCRによってCalu 6 総RNAからクローニングするために設計されている。プライマーは、下記の通り、PCR産物が両端にBamHI部位を有しおよびATG開始コドンおよびKozak配列を5'末端に有するように設計された:
9616SXC: 5′ CAGTACGGATCCACCATGGCCGAGCTGCGCCTGAAGGGC 3 (配列番号183)
9617SXC: 5′ CCACGAGGATCCTTAGGAGAATATTCGGATGGCTTGCG 3′(配列番号184)
1.2 Kbの予想単位複製配列が、最適化された条件下でThermoScript RT−PCR System(Invitrogen)を用いて得られた。3回の別々のRT−PCRに由来するPCR産物をBamHIで消化し、および別々にpcDNA3.1/Zeo(+)に挿入した。結果として生じるクローンは、最初のRT−PCRからMC50A6、MC50A8およびMC50A19;2回目のRT−PCRからMC54.21およびMC55.29;および、3回目のRT−PCRからMC55.32であった。下記のプライマーをクローンの配列決定に使用した:
9620MC: 5′ TAATACGACTCACTATAGGG 3′(配列番号185)
9621MC: 5′ TAGAAGGCACAGTCGAGG 3′(配列番号186)
9618MC: 5′ GAAAACGACTTCCTGGCGGGGAG 3′(配列番号187)
9619MC: 5′ GCTCACCCAGGCGTGGGGCCTC 3′(配列番号188)
6個すべてのクローンのDNA配列決定は、図10に示す通りの、元の部分BCY1配列とは下記の差を有する共通配列(配列番号30)を示した:結果としてAlaからGlyへのアミノ酸置換を生じる1031位のCからGへの置換;結果としてThr欠失を生じる1032〜1034位のGC欠失;および、ThrからAlaへのアミノ酸置換を生じる1177位のAからGへの置換。クローンMC50A8およびMC55.29は共通配列と同一である。BCY1のアミノ酸配列を図10(配列番号31)に示す。
B.BCY1乳癌抗原に対する免疫試薬:
BCY1遺伝子産物の範囲にわたる九量体ペプチド100種類のライブラリが合成された。ペプチドはHLA−A*0201と結合する潜在能力に基づいて選択された。表8は、HLA−A*0201に対する、BCY1タンパク質に由来する試験した100種類の九量体ペプチドエピトープを列記する(下記参照):
【表8−1】
【表8−2】
【0099】
表9は、免疫試験に用いたペプチドの群を示す:
【表9】
【0100】
C.BCY1ペプチドの免疫反応性およびヒトエフェクターT細胞の作製
BCY1に由来する100種類のペプチドのライブラリを、免疫試験のために7〜10種類のペプチドを含む10群に分けた。溶解したペプチドプールを自家HLA−A*0201樹状細胞にパルスし、および自家T細胞濃縮PBMC調製物を活性化するために用いた。各ペプチドプール刺激培養に由来する活性化T細胞を、CD40L活性化自家B細胞を用いてさらに3〜5回再刺激した。IFN−γELISPOT分析およびペプチドパルスした標的細胞のCTL傷害についての検定を、BCY1に由来するこれらのエピトープの免疫原性を実証するために実施した。
【0101】
ヒトT細胞は、ELISPOT検定においてIFN−γを分泌する能力によって示される通り、BCY1タンパク質に由来するペプチドのいくつかのプールに対してエフェクター細胞活性を実証した。これらの実験は異なる回数のAPC刺激後に繰り返し、結果として同一の反応性ペプチド群が得られた。ペプチド群1、2、3、4、5、6、および7はこれらの検定において免疫反応性であることが見出された。続いて、これらの反応性ペプチド群を、各群から単一のペプチドを別々に試験した別のIFN−γELISPOT検定でデコンボルーションした。この分析は、ヒトT細胞によって認識される、BCY1タンパク質に由来するいくつかの個別の強く反応性であるペプチドを明らかにした。(図11)。これらの単独のペプチドの多数はまた、ペプチド負荷したヒトT2リンパ腫細胞標的のCTL活性傷害も誘導した。これらのペプチドを表9に列記する。
【0102】
実施例7
BFA5/NYBR−1乳癌抗原
A.BFA5の同定
マイクロアレイプロファイリング分析は、52の正常非腫瘍組織のパネルと比較して、BFA5が、乳房腫瘤生検試料54のうち41で(76%)低〜高レベルで、および乳房腫瘤54のうち31で(57%)高レベルで発現したことを示した。In situハイブリダイゼーション(ISH)を、一連のBFA5DNAプローブを用いて実施し、およびそのマイクロアレイを腫瘍の少なくとも61%について非常に強いシグナルを示して確認した。さらなるバイオインフォマティクス評価は、これらの遺伝子発現分析結果の結果を支持した。
【0103】
BFA5ヌクレオチド配列の配列分析は、いくつかの胎児および成人脳cDNAクローンから単離された2つの未同定ヒト遺伝子:KIAA1074(GenBank登録番号XM~159732);および、KIAA0565(GenBank登録番号AB011137)(Kikuno,et al.The complete sequences of 100 new cDNA clones from brain which code for large proteins in vitro.DNA Res.6:197−205)との高度の類似性を明らかにした。これらの遺伝子は、推定されるZnフィンガー領域および核局在化配列を含むことが見出された。BFA5は、別の研究者によって、乳癌抗原の可能性があることが示唆されている(Jager,et al.2001.Identification of a tissue−specific putative transcription factor in breast tissue by serological screening of a breast cancer library.Cancer Res.61:2055−2061および国際公開第01/47959号パンフレット)。これらの発表のそれぞれで、ヌクレオチド配列BFA5はNYBR−1(「New York Breast Cancer−1」;GenBank登録番号AF269087(ヌクレオチド)およびAAK27325(アミノ酸)と表された。本明細書の目的のためには、その配列をBFA−5と呼び、BFA−5 および NYBR−1 の語は相互に交換可能である。
【0104】
Jagerらによって以前に示されおよび上記の国際公開第01/47959号パンフレットに記載の通り、BFA5は乳腺で特異的に発現され、分析した乳房腫瘤の12/19に発現されている。BFA5/NYBR−1遺伝子の構造は、それがbZIP部位(DNA結合ドメインとそれに続くロイシンジッパーモチーフ)を伴う150〜160kDの核転写因子をコードすることを明らかにしている。その遺伝子はまた、タンパク質−タンパク質相互作用における役割を示唆する5個縦列アンキリン反復を含む。これらのアンキリン反復は、そのタンパク質のホモ二量体化に関与しうる。BFA5cDNA配列を図12および配列番号32に示す。BFA5アミノ酸配列を図13および配列番号33に示す。
【0105】
B.BFA51の免疫反応性
ヒトT細胞の活性化およびELISPOTにおけるIFN−γ分泌。
【0106】
HLA−A*0201に対する中程度または強力な結合物質であることが予想される、BFA5/NYBR−1コード配列に由来する100種類のペプチドのライブラリを、RammenseeおよびParkerアルゴリズムを用いて設計した。ライブラリを10種類のペプチドの10個のプールにさらに分け(表11参照)、および、ペプチドを成熟自家樹状細胞にパルス後に、各プールを用いて10の異なる培養T細胞を活性化した。BFA5/NYBR−1ペプチドのライブラリを用いて2回の実験を実施し、下記の通りHLA−A*0201ヒトT細胞における免疫反応性を実証した。
【表10】
【0107】
ELISPOT分析を、BFA5ペプチドの各プールを用いて4回の刺激で活性化したヒト培養T細胞について実施した。図14Aでは、X軸の下の数字はペプチドプールの番号(1〜10)を示す。CMVpp65ペプチドおよびFluマトリクスペプチドに対する反応性を、実験でT細胞活性化について陽性対照として用いた。各実験は、「AP10」で表す一人のHLA−A*0201+ドナーに由来するPBMCおよび樹状細胞を用いて実施した。結果は、BFA4は検定では100、000細胞当たりの高いELISPOTカウントを有し顕著に反応性であったが、BFA5は9/10プールについてさらに反応性であり、ELISPOT反応性を実証したことを示す。同様の結果が、BFA4およびBFA5/NYBR−1の両方に関して別のHLA−A*0201について得られた。グラフは600スポットで最高値となるが、それを超えるとELISPOT読み取り機が正確な計数を与えないためである。600スポットの値を有する培養は、この数のスポットよりも多数を有する。
【0108】
多数のBFA5ペプチドプールは、高レベルのIFN−γ産生によって示される通り、反応性である(図14A)。単独の反応性BFA5ペプチドを単離するために、各反応性ペプチドプールを次いで個別のペプチドに分け、および免疫原性についてELISPOT分析を用いて分析した。図14Bに示す通り、BFA5はいくつかの単一の反応性ペプチドを有し、BFA4よりも高度に免疫原性である。同様の結果が、2つの独立したPBMC培養実験で得られた。
【0109】
ELISPOT分析に加えて、BFA5ペプチドによって活性化されたヒトT細胞を、CTLとして機能する能力を測定するために検定した。細胞をペプチドパルスした樹状細胞、続いてCD40リガンド活性化B細胞(5回の刺激)を用いて活性化した。示した実験は、HLA−A*0201+ドナーAP31から単離されたPBMCを用いて実施した。単離されたT細胞は、51Cr放出検定で、ペプチド負荷T2細胞を用いて試験した。T細胞対標的比10:1、5:1、および1:1での%特異的溶解を、BFA5/NYBR−1ペプチドのプールのどちらかまたは個別のペプチドを用いてパルスしたT2細胞について示す。グラフはc非特異的HLA−A*0201結合HIVペプチド(対照)を用いて負荷された標的に対して誘導されたCTL活性、続いてペプチドプール(プール1など)に対するCTL活性、および次いで各プールからの個別のペプチドによって誘導された活性を右側に示す。高レベルの細胞毒性が、1:1のE:T比で一部のペプチドに観察された。対照HIVペプチドによって誘導されたCTL活性(パーセント特異的溶解)は一般的に<10%であった。同様の結果が、HLA−A*0201を発現している別のPBMCドナー(AP10)について得られた。図14Cは、多数のBFA5ペプチドが、BFA5ペプチド負荷標的細胞のT細胞媒介性細胞毒性を引き起こすことを示す。表11は、免疫原性を有するペプチドを列記する。5種類のペプチド(LMDMQTFKA、ILIDSGADI、ILSWAKLL、SQYSGQLKV、およびELCSVRLTL)が、IFN−γ分泌およびCTL活性の両方を、両方のドナーに由来するT細胞で誘導することが見出された。
【表11】
【0110】
C.免疫試薬
ポリクローナル抗血清を、BFA5の下記の一連の22〜23量体ペプチドに対して作製した:
9620MC: 5′ TAATACGACTCACTATAGGG 3′
9621MC: 5′ TAGAAGGCACAGTCGAGG 3′
9618MC: 5′ GAAAACGACTTCCTGGCGGGGAG 3′
9619MC: 5′ GCTCACCCAGGCGTGGGGCCTC 3′
ウサギからの予備採血試料を処理しおよび−20℃にて保存した。ウサギを下記の通り免疫した:1)ペプチドをフロイント完全アジュバント(FCA)とのエマルジョンとして投与した;および、2)2週間後、ペプチドをスカシ貝ヘモシアニン(KLH)と結合し、およびフロイント不完全アジュバントFIAとのエマルジョンとして投与した。下記の結果が観察された:
【表12】
【0111】
予備採血試料の結果は、すべての試料についてIgG力価<100を示した。
【0112】
ポリクローナル抗血清の品質を評価するために、ウェスタンブロットを、BFA5に対する血清を用いて実施した。血清を、BT474、MDMB453、MCF−7、Calu−6、およびCosA2細胞から得られた細胞抽出物に対して別々にスクリーニングした。BFA5タンパク質のおよその予想分子量は153kDaである。220kDのバンドがBT474抽出物でCLP2980抗体について観察され、しかしMDMB453細胞抽出物には観察されなかったが、しかし130kDのバンドがMDMB453抽出物に存在した。両方のバンドはこの分析で試験したポリクローナル抗血清と合致することが見出された。これらのバンドのどちらも、陰性対照には存在しなかった。したがって、そのポリクローナル抗血清はBFA5に対して特異的であると結論することができる。
【0113】
実施例8
BCZ4腫瘍抗原
A.BCZ4配列
BCZ4配列は、乳癌試料において過剰発現された配列として検出された。BCZ4のヌクレオチド配列および推論されるアミノ酸配列を、図15、配列番号34(BCZ4cDNA)、および配列番号35(BCZ4アミノ酸配列)に示す。
【0114】
B.BCZ4乳癌抗原に対する免疫試薬:
BCZ4遺伝子産物の範囲にわたる九量体ペプチド100種類のライブラリが合成された。ペプチドは、HLA−A*0201と結合する潜在能力に基づいて選択された。表13は、HLA−A*0201に対する、BCZ4タンパク質に由来する試験した100種類の九量体ペプチドエピトープを列記する(下記参照):
【表13】
【0115】
C.BCZ4ペプチドの免疫反応性およびヒトエフェクターT細胞の作製
AP10で表されるHLA−A2.1陽性ドナーに由来するヒトPBMCを、BCZ4抗原に由来する9量体ペプチドの異なるプール(一覧は表13を参照)を用いてパルスした自家樹状細胞を用いて活性化した。活性化T細胞を、12日後に、同一の各ペプチドプールを用いてパルスした自家CD40−リガンド活性化B細胞を用いてさらに8〜10日間再刺激した。この二次刺激をさらに、計3回の刺激を繰り返した。活性化T細胞を3回目の刺激後に単離し、および示す通り(図16A)、各BCZ4ペプチドプールに対するヒトIFN−γ産生についてのELISPOT分析に供した。図16Aでは、青色の棒はBCZ4ペプチドプールに対する反応性を、および赤色の棒は陰性対照としてHLA−A2.1−結合HIVペプチドについて示す。陽性対照CMVおよびfluに対するHLA−A2.1−結合記憶抗原ペプチドを実験で陽性対照として用いた。標準偏差を表示する。実験を、追加のもう1回のペプチド刺激後の活性化T細胞について繰り返し、同様の結果を得た。
【0116】
ペプチドプールを、IFN−γELISPOT検定を用いてデコンボルーションした(図16B)。ドナーAP10由来のヒトT細胞を、表13に示す異なるプールのBCZ4ペプチドで刺激した。刺激は記載した別の抗原について記載の通り医実施した。4回および5回の刺激後に、T細胞を採取し、および各プール中の各個別のペプチドを用いてIFN−γ産生についてELISPOT分析に供した。表示の棒はペプチド反応性for各特異的プールについての個別のペプチド反応性を表す。表13は反応性ペプチドのそれぞれを特定する。この実験を、AP10ドナーT細胞のもう1回の刺激後に繰り返し、同様の結果を得た。
【0117】
ELISPOT分析に加えて、BCZ4 ペプチドによって活性化されたヒトT細胞を、CTLとして機能する能力を測定するために検定した。細胞をペプチドパルスした樹状細胞、続いてCD40リガンド活性化B細胞(5回の刺激)を用いて活性化した。示した実験は、HLA−A*0201+ドナーAP31から単離されたPBMCを用いて実施した。単離されたT細胞は、51Cr放出検定で、ペプチド負荷T2細胞を用いて試験した。T細胞対標的比10:1での%特異的溶解を、個別のBCZ4ペプチドを用いてパルスしたT2細胞について示す。高レベルの細胞毒性が、一部のペプチドに観察された(図16C)。対照HIVペプチドによって誘導されたCTL活性(パーセント特異的溶解)は一般的に<10%であった。同様の結果が、HLA−A*0201を発現している別のPBMCドナー(AP10)について得られた。
【0118】
表14は個別のペプチドの反応性を列記する:
【表14】
【0119】
D.BCZ4発現ベクター
BCZ4を、pSporty/BCZ4というプラスミドをテンプレートとして用いて、Platinum Taq(Invitrogen)を用いてPCR増幅した。増幅条件は下記の通り:1)94℃2分;2)94℃30秒、53℃30秒、67℃2.5分のサイクル35回;および、3)67℃7分。PCRプライマーは、EcoRI制限部位を含み、およびORFに直接隣接する(すなわち、無関係な配列が無い)ように設計した。プライマー配列は下記の通り:AS032F(順方向プライマー)5'GGAATTCAACATGGACATTGAAGCATATCTTGAAAGAATTG 3'(配列番号591) AS034R (逆方向 プライマー) 5'GGAATTCCTGGTGAGCTGGATGACAAATAGAC AAGATTG3'(配列番号592)。Kozak配列もまた順方向プライマーに含まれた。pcDNA3.1/Zeo (+) をEcoRIで切断し、および自己ライゲーションを防ぐためにCIPを用いて処理した。BCZ4単位複製配列を次いでEcoRI消化pcDNA3.1/Zeo(+)にライゲーションした。配列決定は、予測BCZ4配列に合致する1個のクローン(AS−579−5)を与えた。BCZ4タンパク質を次いで、この発現ベクターから標準的方法を用いて発現した。
【0120】
実施例9
BFY3腫瘍抗原
A.BFY3配列
BFY3配列が、過剰発現された配列として乳癌試料中に検出された。BFY3w/EcoRI末端の、HTB131総RNAからの、AS007F(順方向プライマー)5'GGAATTCACCATGCTTTGGAAATTGACGGAT 3'(配列番号593)およびAS010R(逆方向プライマー)5'GGAATTCCTCACTTTCTGTGCTTCTCCTCTTTGTCA3'(配列番号594)を用いたRT−PCR増幅を実施した。PCR産物をEcoR1で消化し、および、EcoRI消化しおよびCIP処理したpcDNA3.1/Zeo(+)ベクターへライゲーションによってクローニングした。いくつかの陽性クローンが、制限消化およびAS−391−2一致予測BFY3配列の配列結果によって特定された。BFY3のヌクレオチド配列および推論されるアミノ酸配列を、図17、配列番号36(BFY3cDNA)、および配列番号37(BFY3アミノ酸配列)に示す。
B.BFY3乳癌抗原に対する免疫試薬
BFY3遺伝子産物の範囲にわたる九量体ペプチド100種類のライブラリが合成された。ペプチドは、HLA−A*0201と結合する潜在能力に基づいて選択された。表15は、HLA−A*0201に対する、試験したBFY3タンパク質に由来する試験した100種類の九量体ペプチドエピトープを列記する(下記参照):
【表15】
【0121】
AP31で表される、HLA−A2.1陽性ドナー由来のヒトPBMCを、BFY3抗原に由来する9量体ペプチドの異なるプール(一覧は表1を参照)を用いてパルスした自家樹状細胞を用いて活性化した。活性化T細胞を、12日後に、同一の各ペプチドプールを用いてパルスした自家CD40−リガンド活性化B細胞を用いてさらに8〜10日間再刺激した。この二次刺激をさらに2回、計4回の刺激を繰り返した。活性化T細胞を4回目の刺激後に単離し、および示す通り、各BFY3ペプチドプールに対するヒトIFN−γ産生についてのELISPOT分析に供した。反応性青色の棒はBFY3ペプチドプールに対する反応性を、および赤色の棒は陰性対照としてHLA−A2.1−結合HIVペプチドについて示す。標準偏差を表示する。実験を、異なる回のペプチド刺激からの活性化T細胞について2回繰り返し、同様の結果を得た(図18A)。
【0122】
BFY3ペプチドプールを、IFN−γELISPOT検定でデコンボルーションしおよび試験した。ドナーAP10由来のヒトT細胞を、表15に示すBFY3ペプチドの異なるプールを用いて刺激した。刺激は、記載した他の抗原について前述した通りに実施した。4回の刺激後、各培養からのT細胞を採取し、および、ペプチド各プール中の個々のペプチドを用いてIFN−γ産生についてのELISPOT分析に供した。図18Bは、特定の各プールについての個々のペプチド反応性を図解する。
【0123】
ELISPOT分析に加えて、BFY3ペプチドによって活性化されたヒトT細胞を反応性について検定した。ペプチドプール当たり10種類のペプチドから成るペプチドのプール10個を用いてCTLを作製した。エフェクターのこれらの10個の群を、対応するペプチドプールを用いてパルスした標的を傷害するのに使用した。プール1、3、5、6、および7に由来するペプチドは認識されたことが見出され、それらのプール中のペプチドはCTLを生じることができることを示した(図18C)。これらの10個のプールから、ペプチド3344、3320、3378、2272、および3387がCTLによって強く認識された(図18D)。「中等度に認識された」ペプチドは、3369、3355、および3362を含んだ(図18D)。BFY3をトランスフェクションしたCosA2細胞は、プール1および3から生じたCTLによって殺され、これらのプールに由来する処理されおよび提示されたエピトープは免疫的に関係することを示した(図18E)。この細胞毒性を担うペプチドは3320および3344である。表16はBFY3ペプチドの特性を要約する。
【表16】
【0124】
C.BFY3発現ベクター
BFY3発現ベクターを構築するために、AS007F(順方向プライマー)5' GGAATTCACCATGCTTTGGAAATTGACGGAT3'(配列番号595)およびAS010R(逆方向プライマー)5' GGAATTCCTCACTTTCTGTGCTTCTCCTCTTTGTCA3'(配列番号596)を用いたHTB131総RNAからのBFY3w/EcoRI末端のRT−PCR増幅を実施した。PCRは標準的方法を用いて実施した。増幅産物はEcoRIを用いて消化し、およびCIP処理pcDNA3.1/Zeo(+)ベクターへライゲーションによって、標準的方法を用いてクローニングした。いくつかの陽性クローンが、制限消化によって特定されおよび配列決定された。配列決定は、クローンAS−391−2の配列が、予想されるBFY3配列とマッチしたことを示した。BFY3タンパク質が次いでBFY3発現ベクターを用いて標準的方法を用いて発現された。
【0125】
実施例10
複数の腫瘍抗原をコードする発現ベクター
一部の場合には、複数の腫瘍抗原をコードする発現ベクターを構築するのが好ましい可能性がある。抗原の一定の組み合わせが、単一の発現ベクターと組み合わせた場合、単一のベクターで多数の患者の発現プロファイルを包含することがわかっている。たとえば、異なる患者に由来する乳癌試料の1つの試験は、BFA4およびBFA5の組み合わせが試料の74%の発現プロファイルをカバーし;BCY1およびBFA5の組み合わせが試料の65%をカバーし;BCZ4およびBFA5の組み合わせが試料の69%をカバーし;BFY3およびBFA5の組み合わせが試料の67%をカバーし;BCY1、BFA4およびBFA5の組み合わせが試料の78%をカバーし;BCZ4、BFA4およびBFA5の組み合わせが試料の81%をカバーし;および、BFY3、BFA4、およびBFA5の組み合わせが試料の74%をカバーしたことを示した。したがって、乳癌患者の間で最も一般的な発現プロファイルが単一のベクターを用いて対処されうるように、複数抗原発現構造を構築することができる。そのような複数抗原発現ベクターは、腫瘍抗原配列のそれぞれをコードする核酸を、プロモーターまたは他の転写調節配列の近傍に配置する、標準的なクローニング技術を用いて構築する。発現ベクターは、腫瘍抗原をコードする各ヌクレオチド配列が特異的プロモーターと調節可能に結合するように、または腫瘍抗原が集合的に単一のプロモーターと調節可能に結合しおよび単一の発現単位として発現されうるように、操作することができる。単一の発現単位が構築される場合は、腫瘍抗原配列を発現後に分けるために有用であるヌクレオチド配列を腫瘍抗原配列の間に挿入することができる。有用な配列は、IRES配列、プロテアーゼ切断部位に相当するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、などを含む。そのような複数抗原発現ベクターを構築するのに適したベクターは、たとえば、ワクシニア、アビポックス、ALVACおよびNYVACといったポックスウイルスを含む。
【0126】
本発明は好ましい実施形態に関して説明されている一方、変化および改変を当業者が考えられることが理解される。したがって、請求される本発明の範囲内となるそのような同等の変化のすべてを付属の請求項が包含することが意図される。
【0127】
他の実施態様
1.配列番号34または配列番号36に示される核酸配列;配列番号35または配列番号37に示されるアミノ酸配列をコードする核酸配列;あるいはそれらの断片;を含む発現ベクター。
【0128】
2.プラスミドまたはウイルスベクターであることを特徴とする実施態様1記載の発現ベクター。
【0129】
3.ウイルスベクターが、ポックスウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルスおよびアデノ随伴ウイルスより成る群から選択されることを特徴とする実施態様2記載の発現ベクター。
【0130】
4.ウイルスベクターが、ワクシニア、NYVAC、アビポックス、カナリヤポックス、ALVAC、ALVAC(2)、鶏痘およびTROVACより成る群から選択されるポックスウイルスであることを特徴とする実施態様3記載の発現ベクター。
【0131】
5.ウイルスベクターが、NYVAC、ALVACおよびALVAC(2)より成る群から選択されるポックスウイルスであることを特徴とする実施態様4記載の発現ベクター。
【0132】
6.少なくとも1つの別の腫瘍関連抗原をさらに含むことを特徴とする実施態様1記載の発現ベクター。
【0133】
7.プラスミドまたはウイルスベクターであることを特徴とする実施態様6記載の発現ベクター。
【0134】
8.ウイルスベクターが、ポックスウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルスおよびアデノ随伴ウイルスより成る群から選択されることを特徴とする実施態様7記載の発現ベクター。
【0135】
9.ウイルスベクターが、ワクシニア、NYVAC、アビポックス、カナリヤポックス、ALVAC、ALVAC(2)、鶏痘およびTROVACより成る群から選択されるポックスウイルスであることを特徴とする実施態様8記載の発現ベクター。
【0136】
10.ウイルスベクターが、NYVAC、ALVACおよびALVAC(2)より成る群から選択されるポックスウイルスであることを特徴とする実施態様9記載の発現ベクター。
【0137】
11.血管新生関連抗原をコードする少なくとも1つの核酸配列をさらに含むことを特徴とする実施態様1記載の発現ベクター。
【0138】
12.プラスミドまたはウイルスベクターであることを特徴とする実施態様11記載の発現ベクター。
【0139】
13.ウイルスベクターが、ポックスウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルスおよびアデノ随伴ウイルスより成る群から選択されることを特徴とする実施態様12記載の発現ベクター。
【0140】
14.ウイルスベクターが、ワクシニア、NYVAC、アビポックス、カナリヤポックス、ALVAC、ALVAC(2)、鶏痘およびTROVACより成る群から選択されるポックスウイルスであることを特徴とする実施態様13記載の発現ベクター。
【0141】
15.ウイルスベクターが、NYVAC、ALVACおよびALVAC(2)より成る群から選択されるポックスウイルスであることを特徴とする実施態様14記載の発現ベクター。
【0142】
16.血管新生関連抗原をコードする少なくとも1つの核酸配列をさらに含むことを特徴とする実施態様6記載の発現ベクター。
【0143】
17.プラスミドまたはウイルスベクターであることを特徴とする実施態様16記載の発現ベクター。
【0144】
18.ウイルスベクターが、ポックスウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルスおよびアデノ随伴ウイルスより成る群から選択されることを特徴とする実施態様17記載の発現ベクター。
【0145】
19.ウイルスベクターが、ワクシニア、NYVAC、アビポックス、カナリヤポックス、ALVAC、ALVAC(2)、鶏痘およびTROVACより成る群から選択されるポックスウイルスであることを特徴とする実施態様17記載の発現ベクター。
【0146】
20.ウイルスベクターが、NYVAC、ALVACおよびALVAC(2)より成る群から選択されるポックスウイルスであることを特徴とする実施態様18のポックスウイルス。
【0147】
21.共刺激因子をコードする少なくとも1つの核酸配列をさらに含むことを特徴とする実施態様1、6、11または16記載の発現ベクター。
【0148】
22.プラスミドまたはウイルスベクターであることを特徴とする実施態様22記載の発現ベクター。
【0149】
23.ウイルスベクターが、ポックスウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルスおよびアデノ随伴ウイルスより成る群から選択されることを特徴とする実施態様23記載の発現ベクター。
【0150】
24.ウイルスベクターが、ワクシニア、NYVAC、アビポックス、カナリヤポックス、ALVAC、ALVAC(2)、鶏痘およびTROVACより成る群から選択されるポックスウイルスであることを特徴とする実施態様24記載の発現ベクター。
【0151】
25.ウイルスベクターが、NYVAC、ALVACおよびALVAC(2)より成る群から選択されるポックスウイルスであることを特徴とする実施態様18のポックスウイルス。
【0152】
26.医薬品として許容されるキャリヤーに含まれる発現ベクターを含有する組成物であって、前記ベクターが、配列番号34または配列番号36に示される核酸配列;配列番号35または配列番号37に示されるアミノ酸配列をコードする核酸配列;あるいはそれらの断片を含むことを特徴とする組成物。
【0153】
27.前記ベクターがプラスミドまたはウイルスベクターであることを特徴とする実施態様26記載の組成物。
【0154】
28.ウイルスベクターが、ポックスウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルスおよびアデノ随伴ウイルスより成る群から選択されることを特徴とする実施態様27記載の組成物。
【0155】
29.ウイルスベクターが、ワクシニア、NYVAC、アビポックス、カナリヤポックス、ALVAC、ALVAC(2)、鶏痘およびTROVACより成る群から選択されるポックスウイルスであることを特徴とする実施態様28記載の組成物。
【0156】
30.ウイルスベクターが、NYVAC、ALVACおよびALVAC(2)より成る群から選択されるポックスウイルスであることを特徴とする実施態様29記載の組成物。
【0157】
31.配列番号34または配列番号36に示される核酸配列;配列番号35または配列番号37に示されるアミノ酸配列をコードする核酸配列;あるいはそれらの断片;を含む発現ベクターを宿主に投与することを含む、癌を予防または治療する方法。
【0158】
32.前記ベクターがプラスミドまたはウイルスベクターであることを特徴とする実施態様31記載の方法。
【0159】
33.ウイルスベクターが、ポックスウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルスおよびアデノ随伴ウイルスより成る群から選択されることを特徴とする実施態様32記載の方法。
【0160】
34.ウイルスベクターが、ワクシニア、NYVAC、アビポックス、カナリヤポックス、ALVAC、ALVAC(2)、鶏痘およびTROVACより成る群から選択されるポックスウイルスであることを特徴とする実施態様33記載の方法。
【0161】
35.ウイルスベクターが、NYVAC、ALVACおよびALVAC(2)より成る群から選択されるポックスウイルスであることを特徴とする実施態様34の方法。
【0162】
36.表15または16に示されるBFY3由来の単離ペプチド。
【0163】
37.表15または16に示されるペプチドを、単独でまたは別の薬剤と組み合わせて患者に投与することを含み、組み合わせて投与する場合個々の成分は同時にまたは別々に投与される、腫瘍抗原BFY3に対して宿主を免疫する方法。
【0164】
38.表15または16に示されるBFY3由来の単離ペプチド。
【0165】
39.表15または16に示されるペプチドを、単独でまたは別の薬剤と組み合わせて患者に投与することを含み、組み合わせて投与する場合個々の成分は同時にまたは別々に投与される、腫瘍抗原BFY3に対して宿主を免疫する方法。
【0166】
40.表13または14に示されるBCZ4由来の単離ペプチド。
【0167】
41.表13または14に示されるペプチドを、単独でまたは別の薬剤と組み合わせて患者に投与することを含み、組み合わせて投与する場合個々の成分は同時にまたは別々に投与される、腫瘍抗原BCZ4に対して宿主を免疫する方法。
【0168】
42.表13または14に示されるBCZ4由来の単離ペプチド。
【0169】
43.表13または14に示されるペプチドを、単独でまたは別の薬剤と組み合わせて患者に投与することを含み、組み合わせて投与する場合個々の成分は同時にまたは別々に投与される、腫瘍抗原BCZ4に対して宿主を免疫する方法。
【0170】
44.少なくとも2つの異なる腫瘍抗原またはその断片をコードする少なくとも2つの核酸配列を含み、前記腫瘍抗原がBFA4、BCY1、BFA5、BCZ4およびBFY3より成る群から選択されることを特徴とする、複数の腫瘍抗原またはその断片の発現のための発現ベクター。
【0171】
45.少なくとも2つの腫瘍抗原またはその断片をコードする少なくとも2つの核酸配列を含み、該核酸配列が配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34および配列番号36の配列より成る群から選択されることを特徴とする、複数の腫瘍抗原またはその断片の発現のための発現ベクター。
【0172】
46.プラスミドまたはウイルスベクターであることを特徴とする実施態様44または45記載の発現ベクター。
【0173】
47.ウイルスベクターが、ポックスウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルスおよびアデノ随伴ウイルスより成る群から選択されることを特徴とする実施態様46記載の発現ベクター。
【0174】
48.ウイルスベクターが、ワクシニア、NYVAC、アビポックス、カナリヤポックス、ALVAC、ALVAC(2)、鶏痘およびTROVACより成る群から選択されるポックスウイルスであることを特徴とする実施態様47記載の発現ベクター。
【0175】
49.ウイルスベクターが、NYVAC、ALVACおよびALVAC(2)より成る群から選択されるポックスウイルスであることを特徴とする実施態様48記載の発現ベクター。
【0176】
50.共刺激因子をコードする少なくとも1つの核酸配列をさらに含むことを特徴とする実施態様44から49いずれ1項記載の発現ベクター。
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2003年5月16日出願の米国特許出願第60/471,119号、および2003年5月16日出願の米国特許出願第60/471,193号に基づく優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、ポリペプチドをコードする核酸、ならびに、癌の予防および/または治療におけるその核酸またはポリペプチドの使用に関する。より詳細には、本発明は、癌の免疫療法に使用するための、腫瘍抗原をコードする外来遺伝子の挿入および発現のための改良されたベクターに関する。
【背景技術】
【0003】
高密度マイクロアレイ、SEREX、免役組織化学法(IHC)、RT−PCR、in−situハイブリダイゼーション(ISH)およびレーザー捕捉顕微法といったいくつかの技術による、原発性腫瘍および正常細胞についての発現プロファイリングに基づく分子の同定の大きな進歩のため、腫瘍関連抗原(TAA)を用いた癌ワクチンの開発においては最近数年間に大変な拡大があった(Rosenberg,Immunity,1999; Sgroi et al,1999,Schena et al,1995,Offringa et al,2000)。TAAとは、腫瘍細胞によって発現または過剰発現されている抗原であり、および1またはいくつかの腫瘍に特異的である可能性があり、たとえばCEA抗原は直腸結腸癌、乳癌、および肺癌で発現される。Sgroiら(1999)は、浸潤性および転移性癌細胞で発現に差のあるいくつかの遺伝子を、レーザー捕捉顕微解剖法およびcDNAマイクロアレイを組み合わせて用いて同定した。DNAまたはウイルスのようないくつかの運搬系(delivery system)は、ヒト癌に対する治療ワクチン接種に用いることができ(Bonnet et al,2000)、および免疫応答を導きおよびまたTAAに対する免疫寛容を打破することができる。腫瘍細胞は、B7.1といったT細胞共刺激分子または特にIFN−γ、IL2、またはGM−CSFといったサイトカインをコードする導入遺伝子を挿入することによって、より免疫原性を高めることができる。TAAおよびサイトカインまたは共刺激分子の共発現はまた、効果的な治療ワクチンの開発において有用であることが示されている(Hodge et al,95,Bronte et al,1995,Chamberlain et al,1996)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本分野には、癌を予防または治療するために免疫応答を刺激することにおいて有用な試薬および方法の必要性がある。本発明は、癌を治療する試みにおいて他の試薬および方法が直面する問題の多数を克服する試薬および方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、癌を予防および/または治療するための患者への投与のための免疫原性標的を提供する。特に、その免疫原性標的は、腫瘍抗原(「TA」)および/または血管新生関連抗原(「AA」)である。一実施形態では、免疫原性標的は、配列番号34または配列番号36によってコードされるか、または配列番号35または配列番号37のアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、TAおよび/またはAAは、プラスミド、または組換えウイルスといった他の運搬ベクター内に含まれた核酸として患者に投与される。TAおよび/またはAAはまた、共刺激分子(co-stimulatory molecule)またはアジュバントといった免疫促進剤と組み合わせて投与されうる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1A−1】AAC2−1およびAAC2−2のヌクレオチド配列。欠けたヌクレオチドまたはアミノ酸は「*」で示される。配列間の差は下線で示す。
【図1A−2】図1A−1の続き。
【図1B】AAC2−1およびAAC2−2の予想アミノ酸配列の整列。欠けたヌクレオチドまたはアミノ酸は「*」で示される。配列間の差は下線で示す。
【図2】ヒトリンパ球は、AAC2−2タンパク質に由来するペプチドに反応して、IFN−γを分泌するエフェクター細胞へ分化する。T細胞は、表III(群1〜9)に示されるペプチドの群で刺激された。3回の刺激後、リンパ球をペプチド特異的IFN−γ産生についてELISPOTによって分析した。挿入図のグラフは、ペプチド群6番によって刺激された活性化細胞は、抗原特異的CTL活性の能力を有し、ペプチド負荷されたT2標的細胞を傷害することを示す。ペプチドEC5は、CTL活性およびIFN−γ分泌の両方の誘導における主な活性を誘導する。
【図3】HLA−A2−Kb遺伝子導入マウス由来のマウスT細胞は、ヒトAAC2−2をコードするDNAプラスミドを用いたDNA免疫を認識およびそれに応答してIFN−γ分泌する。pEF6−hAAC2−2免疫マウス由来の脾臓細胞は、さまざまな群のペプチドを用いて再刺激された。6日後、細胞を採取しおよび各ペプチド群のそれぞれまたは対照HLA−A2結合9量体HIVペプチドに応答したIFN−γ分泌について試験した。ELISPOTプレートを一夜インキュベートしおよび発色させた。各群は、陽性対照として用いたPMAおよびイオノマイシンに応答して、高レベルのIFN−γ産生(250スポットより大)で反応した。反応性の高いペプチド群の1つ(群6)はまた、これまでに試験したHLA−A−0201+ドナー由来のヒトリンパ球によっても認識される。
【図4】ヒトAAC2−2をコードする遺伝子を用いたDNAワクチン接種は、移植されたB16F10黒色腫細胞の増殖を完全に阻害する。この作用は、flu−NPタンパク質およびヒトflk1(VEGFR−2)をコードするプラスミドが腫瘍増殖を妨げることができないことによって示される通り、非特異的免疫応答が原因ではない。
【図5】ヒトAAC2−2ベクターを用いたDNAワクチン接種が腫瘍増殖の作用に対して完全に防御する能力を示す、B16F10黒色腫細胞のC57BL/6マウスへの移植後のマウスの生存。この防御作用は抗原特異的であり、および他の遺伝子を用いたワクチン接種を介して誘導することができない。
【図6】C57BL/6マウス由来のTリンパ球は、pEF6−hAAC2−2発現プラスミドを用いたDNAワクチン接種後に、ヒトAAC2−2のペプチドに応答して、エフェクター細胞活性を示しおよびIFN−γを分泌する。これらのペプチドは、B6MHCクラスIについて交差反応性を示しうる。群1および群5のペプチドは、C57BL/6T細胞によって強い反応性を誘導する。
【図7】BFA4cDNA配列。
【図8】BFA4アミノ酸配列。
【図9】BFA4ペプチドに対する免疫応答。
【図10】BCY1ヌクレオチド(A)およびアミノ酸(B)配列。
【図11】特異的BCY1ペプチドに対する免疫応答。
【図12】BFA5cDNA配列。
【図13】BFA5アミノ酸配列。
【図14A】BFA5由来ペプチドに対する免疫応答。
【図14B】BFA5由来ペプチドに対する免疫応答。
【図14C】BFA5由来ペプチドに対する免疫応答。
【図15】BCZ4cDNAおよびアミノ酸配列。
【図16A】BCZ4由来ペプチドに対する免疫応答。
【図16B】BCZ4由来ペプチドに対する免疫応答。
【図16C】BCZ4由来ペプチドに対する免疫応答。
【図17】BFY3cDNAおよびアミノ酸配列。
【図18A】BFY3由来ペプチドに対する免疫応答。
【図18B】BFY3由来ペプチドに対する免疫応答。
【図18C】BFY3由来ペプチドに対する免疫応答。
【図18D】BFY3由来ペプチドに対する免疫応答。
【図18E】BFY3由来ペプチドに対する免疫応答。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、癌の予防および/または治療に有用な試薬および方法を提供する。本明細書中で引用されたすべての参考文献は参照により本開示に含まれる。
一実施形態では、本発明は、癌を予防および/または治療するための、1つ以上の腫瘍抗原(「TA」)に対する免疫応答の誘導または促進に関する。一部の実施形態では、1つ以上のTAは組み合わせることができる。好ましい実施形態では、免疫応答は、たとえば腫瘍抗原をコードする核酸ベクターまたはペプチドまたはポリペプチドの形の腫瘍抗原自体の投与後の、宿主細胞におけるTAの発現の結果として生じる。
【0008】
ここでは、「抗原」とは、抗原が投与されている宿主において免疫応答を生じる、ポリペプチドまたはその一部といった分子である。免疫応答は、抗原の少なくとも1つのエピトープに結合する抗体の産生および/または抗原のエピトープを発現している細胞に対する細胞性免疫応答の発生を含みうる。応答は、たとえば、抗体産生の増加、抗原に対する親和性の増大した抗体の産生、または増大したかまたはより効果的な細胞性応答(すなわち、T細胞の増加、またはより高い抗腫瘍活性を持つT細胞)を生じることによる、現在の免疫応答の促進でありうる。免疫応答を生じる抗原を、代替的に、免疫原性であると、または免疫原ということができる。本発明の説明においては、TAを「免疫原性標的」ということができる。
【0009】
TAは、癌細胞が抗原の起源である場合、腫瘍関連抗原(TAA)および腫瘍特異的抗原(TSA)の両方を含む。TAAとは、正常細胞上で観察されるよりも多量に腫瘍細胞の表面上で発現されている抗原、または胎児発生中に正常細胞上に発現されている抗原である。TSAとは、腫瘍細胞に独特であり、および正常細胞上には発現されていない抗原である。TAはさらに、TAAまたはTSA、その抗原性断片、およびその抗原性を保った改変型を含む。
【0010】
TAは典型的には、発現パターン、機能、または遺伝的起源にしたがって5つのカテゴリ:癌精巣(CT)抗原(すなわち、MAGE、NY−ESO−1);メラノサイト分化抗原(すなわち、MelanA/MART−1、チロシナーゼ、gap100);突然変異抗原(すなわち、MUM−1、p53、CDK−4);過剰発現された「自己」抗原(すなわち、HER−2/neu、p53);および、ウイルス抗原(すなわち、HPV、EBV)に分類される。本発明を実施する目的上は、適当なTAとは、TAが発現している宿主において抗腫瘍免疫応答を誘導または促進する任意のTAである。適当なTAは、たとえば、gap100(Cox et al.,Science,264:716−719(1994))、MART−1/MelanA(Kawakami et al.,J.Exp.Med.,180: 347−352(1994))、gp75(TRP−1)(Wang et al.,J.Exp.Med.,186: 1131−1140 (1996))、チロシナーゼ(Wolfel et al.,Eur.J.Immunol.,24:759−764 (1994);国際公開第200175117号パンフレット;国際公開第200175016号パンフレット;国際公開第200175007号パンフレット)、NY−ESO−1(国際公開第98/14464号パンフレット;国際公開第99/18206号パンフレット)、黒色腫プロテオグリカン(Hellstrom et al.,J.Immunol.,130: 1467−1472 (1983))、MAGEファミリー抗原(すなわち、MAGE−1,2,3,4,6,12,51 ; Van der Bruggen et al.,Science,254: 1643− 1647 (1991);米国特許第6,235,525号明細書;CN1319611)、BAGEファミリー抗原(Boel et al.,Immunity,2: 167−175 (1995))、GAGEファミリー抗原(すなわちGAGE−1,2 ; Van den Eynde et al.,J.Exp.Med.,182: 689−698 (1995); 米国特許第6,013,765号明細書)、RAGEファミリー抗原(すなわちRAGE−1; Gaugler et at.,Immunogenetics,44: 323−330 (1996);米国特許第5,939,526号明細書)、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV(Guilloux et at.,J.Exp.Med.,183 : 1173−1183 (1996))、p15(Robbins et al.,J Immunol.154: 5944−5950(1995))、B−カテニン(Robbins et al.,J.Exp.Med.,183: 1185−1192 (1996) )、MUM−1(Coulie et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92: 7976−7980 (1995))、サイクリン依存性キナーゼ−4(CDK4)(Wolfel et al.,Science,269:1281−1284 (1995))、p21−ras(Fossum et at.,Int.J.Cancer,56: 40−45(1994))、BCR−abl(Bocchia et al.,Blood,85: 2680− 2684 (1995))、p53(Theobald et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92: 11993−11997 (1995))、pl85HER2/neu(erb−Bl ; Fisk et al.,J.Exp.Med.,181: 2109−2117 (1995))、上皮増殖因子受容体(EGFR)(Harris et al.,Breast Cancer Res.Treat,29: 1−2 (1994))、癌胎児性抗原(CEA)(Kwong et al.,J.Natl.CancerInst.,85: 982−990 (1995)米国特許第5,756,103号明細書;第5,274,087号明細書;第5,571,710号明細書;第6,071,716号明細書;第5,698,530号明細書;第6,045,802号明細書;欧州特許第263933号明細書;欧州特許第346710号明細書;および欧州特許第784483号明細書);癌関連変異ムチン(すなわちMUC−1遺伝子産物; Jerome et al.,J.Immunol.,151: 1654−1662(1993));EBVのEBNA遺伝子産物(すなわちEBNA−1;Rickinson et al.,Cancer−Surveys,13 : 53−80 (1992));ヒトパピローマウイルスのE7、E6タンパク質(Ressing et al.,J.Immunol,154: 5934−5943 (1995));前立腺特異的抗原(PSA; Xue et al.,The Prostate,30: 73−78 (1997));前立腺特異的膜抗原(PSMA; Israeli,et al.,CancerRes.,54:1807−1811 (1994));イディオタイプエピトープまたは抗原、たとえば、免疫グロブリンイディオタイプまたはT細胞受容体イディオタイプ(Chen et al.,J.Immunol.,153: 4775−4787 (1994));KSA(米国特許第5,348,887号明細書)、キネシン2(Dietz,et al.Biochem Biophys Res Commun 2000 Sep 7; 275 (3): 731−8)、HIP−55、TGFβ−1抗アポトーシス因子(Toomey,et al.Br J Biomed Sci 2001; 58 (3): 177−83)、腫瘍タンパク質D52(Bryne J.A.,et al.,Genomics,35: 523−532 (1996))、H1FT、NY−BR−1(国際公開第01/47959号パンフレット)、NY−BR−62、NY−BR−75、NY−BR−85、NY−BR−87、NY−BR−96(Scanlan,M.Serologic and Bioinformatic Approaches to the Identification of Human Tumor Antigens,in Cancer ワクチンs 2000,Cancer Research Institute,New York,NY)、BFA4(配列番号28および29)、BCY1(配列番号30および31)、BFA5(配列番号32および33)、BCZ4(配列番号34および35)、およびBFY3(配列番号36および37)を含み、「野生型」(すなわち、ゲノムによって通常コードされる、天然に存在する)、改変型、および変異型、およびその他の断片および誘導体を含む。これらのTAはいずれも、単独で、または共免疫手順において互いに組み合わせて使用することができる。
【0011】
一部の場合には、TAおよび血管新生関連抗原(「AA」)といった他の抗原の両方を用いて患者を共免疫することが有益でありうる。AAとは、血管の誘導および/または連続した発達に関与する細胞に随伴する免疫原性分子(すなわち、ペプチド、ポリペプチド)である。たとえば、AAは、血管の主要な構造要素である内皮細胞(「EC」)上で発現されうる。癌の治療のためには、腫瘍に供給する血管の内部または近傍にAAが見出されることが好ましい。AAに対する患者の免疫は、好ましくは抗AA免疫応答を結果として生じ、それによって腫瘍の近傍または内部で生じる血管新生過程が予防されおよび/または阻害される。
【0012】
典型的なAAは、たとえば、血管内皮増殖因子(すなわちVEGF;Bernardini,et al.J Urol.,2001,166 (4): 1275−9; Starnes,et al.J.Thorac.Cardiovasc.Surg.,2001,122 (3): 518−23; Dias,et al.Blood,2002,99 :2179−2184)、VEGF受容体(すなわちVEGF−R、flk−1/KDR;Starnes,et al.J.Thorac.Cardiovasc.Surg.,2001,122 (3): 518−23)、EPH受容体(すなわちEPHA2;Gerety,et al.1999,Cell,4: 403−414)、上皮増殖因子受容体(すなわちEGFR;Ciardeillo,et al.Clin.Cancer Res.,2001,7 (10): 2958−70)、塩基性線維芽細胞増殖因子(すなわちbFGF;Davidson,et al.Clin.Exp.Metastasis 2000,18 (6): 501−7; Poon,et al.Am J.Surg.,2001,182 (3): 298−304)、血小板由来細胞増殖因子(すなわちPDGF−B)、血小板由来内皮細胞増殖因子(PD−ECGF;Hong,et al.J.Mol.Med.,2001,8 (2): 141−8)、形質転換増殖因子(すなわち、TGF−α; Hong,et al.J.Mol.Med.,2001,8 (2):141−8)、エンドグリン(Balza,et al.Int.J.Cancer,2001,94 : 579−585)、Idタンパク質(Benezra,R.Trends Cardiovasc.Med.,2001,11 (6): 237−41)、プロテアーゼたとえばuPA、uPAR、およびマトリクスメタロプロテイナーゼ(MMP−2、MMP−9;Djonov,et al.J.Pathol.,2001,195 (2): 147−55)、一酸化窒素合成酵素(Am.J.Ophthalmol.,2001,132 (4): 551−6)、アミノペプチダーゼ(Rouslhati,E.Nature Cancer,2: 84−90,2002)、トロンボスポンジン(すなわちTSP−1、TSP−2;Alvarez,et al.Gynecol.Oncol.,2001,82 (2): 273−8; Seki,et al.Int.J.Oncol.,2001,19 (2): 305−10)、k−ras(Zhang,et al.Cancer Res.,2001,61 (16): 6050−4)、Wnt(Zhang,et al.Cancer Res.,2001,61 (16): 6050−4)、サイクリン依存性キナーゼ(CDK; Drug Resist.Updat.2000,3 (2): 83−88)、微小管(Timar,et al.2001.Path.Oncol.Res.,7(2) : 85− 94)、熱ショックタンパク質(すなわちHSP90(Timar、上記))、ヘパリン結合因子(すなわちへパリナーゼ; Gohji,et al.Int.J.Cancer,2001,95 (5): 295−301)、合成酵素(すなわちATP合成酵素、チミジル酸合成酵素)、コラーゲン受容体、インテグリン(すなわちαν3、αν5、α1β1、α2β1、α5β1)、表面プロテオグリカンNG2、AAC2−1(配列番号1)、またはAAC2−2(配列番号2)を特に含み、「野生型」(すなわち、ゲノムによって通常コードされる、天然に存在する)、改変型、および変異型、およびその他の断片および誘導体を含む。これらの標的はいずれも、単独で、または互いにまたは他の物質と組み合わせて、本発明の実施に適当であろう。
【0013】
一部の実施形態では、免疫原性標的をコードする核酸分子が利用される。その核酸分子は、ATCC Deposit中のDNA挿入部に含まれるもののような、1つ以上の免疫原性標的をコードするヌクレオチド配列、またはその断片または誘導体を含みうるかまたはそれから構成されうる。「核酸配列」または「核酸分子」の語は、DNAまたはRNA配列をいう。その語は、特に4−アセチルシトシン、8−ヒドロキシ−N6−メチルアデノシン、アジリジニル−シトシン、プソイドイソシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−カルボキシ−メチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6−イソ−ペンテニルアデニン、1−メチルアデニン、1−メチルプソイドウラシル、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチル−グアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−メチルアデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノ−メチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルキュェオシン、5'−メトキシカルボニル−メチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、オキシブトキソシン、プソイドウラシル、キュェオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、N−ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、プソイドウラシル、キュェオシン、2−チオシトシン、および2,6−ジアミノプリン、といった、しかしそれに限定されない、DNAおよびRNAの公知の塩基アナログのうち任意のものから生じる分子を包含する。
【0014】
単離された核酸分子とは、(1)総核酸が起源細胞から単離される際に天然に共存して見出されるタンパク質、脂質、糖質、または他の物質の少なくとも約50%から分離されている;(2)その核酸分子が天然で結合しているポリヌクレオチドの全部または一部と結合していない;(3)天然では結合していないポリヌクレオチドと調節可能に結合している;および/または、(4)より大きなポリヌクレオチド配列の一部として天然に存在しない:ものである。好ましくは、本発明の単離された核酸分子は、ポリペプチド産生における用途、または、治療用途、診断用途、予防用途もしくは研究用途に干渉する、天然の環境で見出されるいかなる他の夾雑核酸分子または他の夾雑物も実質的に含まない。ここでは、「天然に存在する」または「天然」または「天然に見出される」の語は、核酸分子、ポリペプチド、宿主細胞、などといった生物材料との関連において用いられる場合、人による操作無しに自然界に見出される物質をいう。同様に、「天然に存在しない」または「非天然」はここでは、自然界に見られないかまたは人によって構造的に改変されたかもしくは合成された物質をいう。
【0015】
2つ以上の核酸またはポリペプチド分子の同一性は、配列を比較することによって決定される。本分野で知られる通り、「同一性」とは、分子を構成する単位(すなわち、ヌクレオチドまたはアミノ酸残基)間の一致によって決定される、核酸分子またはポリペプチド間の配列関連性の程度を意味する。同一性は、特定の数学モデルまたはコンピュータープログラム(すなわちアルゴリズム)によって処理された、ギャップ整列(あれば)を伴う2つ以上の配列のうち小さい方の間の同一マッチの割合を測定する。核酸配列間の同一性は、類縁配列が核酸配列または単離された核酸分子とハイブリダイズする能力によっても決定されうる。そのような配列の定義において、「高度にストリンジェントな条件」および「中等度にストリンジェントな条件」の語句は、配列が相補的である核酸鎖のハイブリダイゼーションを可能にし、および顕著にミスマッチである核酸のハイブリダイゼーションを除外するための手順をいう。ハイブリダイゼーションおよび洗浄について「高度にストリンジェントな条件」の例は、0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム、65〜68℃、または0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム、および50%ホルムアミド、42℃である。(たとえば、Sambrook,Fritsch & Maniatis,Molecular Cloning : A Laboratory Manual (2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory7 1989); Anderson et al.,Nucleic Acid Hybridisation : A Practical Approach Ch.4 (IRL Press Limited)を参照)。「中等度にストリンジェントな条件」の語句は、「高度にストリンジェントな条件」下で起こりうるよりも高い程度の塩基対ミスマッチを有するDNA 二重鎖 が生じうる条件をいう。典型的な中等度にストリンジェントな条件は、0.015 M塩化ナトリウム,0.0015 Mクエン酸ナトリウム、50〜65℃、または0.015 M塩化ナトリウム,0.0015 Mクエン酸ナトリウム,および20%ホルムアミド 、37〜50℃である。一例として、50℃、0.015 Mナトリウムイオン中での中等度にストリンジェントな条件は、21% ミスマッチを可能にする。ハイブリダイゼーション中に、非特異的および/またはバックグラウンドハイブリダイゼーションを低減するために、ハイブリダイゼーション緩衝液および洗浄緩衝液に他の物質を含めることが可能である。例は、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%ピロリン酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウムNaDodSO4(SDS)、フィコール、Denhardt液、超音波処理サケ精子DNA(または他の非相補的DNA)、および硫酸デキストランであるが、他の適当な物質もまた用いることができる。これらの添加剤の濃度および種類は、ハイブリダイゼーション条件の厳密性に実質的に影響することなく変えることができる。ハイブリダイゼーション実験は、pH6.8〜7.4で通常実施される;しかし、典型的なイオン強度条件では、ハイブリダイゼーションの速度はpHにほとんど依存しない。
【0016】
本発明の一部の実施形態では、ポリペプチドをコードする核酸配列を細胞へ運搬するためにベクターが用いられる。ベクターとは、核酸配列を宿主細胞へ運搬するのに用いられる任意の分子である。一部の場合には、発現ベクターが用いられる。発現ベクターとは、宿主細胞の形質転換に適し、および運搬される核酸配列の発現を指示および/または調節する核酸配列を含む核酸分子である。発現は、転写、翻訳、および、イントロンが存在する場合にはスプライシング、といった過程を含むがそれらに限定されない。発現ベクターは典型的には、ポリペプチドをコードする異種核酸配列と調節可能に結合した1つ以上の隣接配列を含む。隣接配列は、たとえば、同種(すなわち、宿主細胞と同一の種および/または株に由来)、異種(すなわち、宿主細胞種または株以外の種に由来)、ハイブリッド(すなわち、2つ以上の起源に由来する隣接配列の組み合わせ)、または合成でありうる。
【0017】
隣接配列は、好ましくは、コード配列の複製、転写および/または翻訳を達成することができ、およびコード配列と調節可能に結合している。ここでは、調節可能に結合という語句は、機能的関係にあるポリヌクレオチド配列の結合をいう。たとえば、プロモーターまたはエンハンサーは、それがコード配列の転写に影響を与える場合は、コード配列と調節可能に結合している。しかし、隣接配列は、正しく機能するかぎり、必ずしもコード配列と隣接している必要は無い。したがって、たとえば、翻訳されないが転写される介在配列が、プロモーター配列とコード配列の間に存在することができ、およびプロモーター配列はそれでもコード配列と調節可能に結合していると考えることができる。同様に、エンハンサー配列は、コード配列の上流または下流に位置しおよび配列の転写に影響を与えることができる。
【0018】
一部の実施形態では、隣接配列は、標的細胞において高レベル遺伝子発現を推進する転写調節領域であることが好ましい。転写調節領域は、たとえば、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、リプレッサー配列、またはその組み合わせを含みうる。転写調節領域は、構成性、組織特異的、細胞型特異的(すなわち、その領域は、ある種類の組織または細胞において、他の種類と比較してより高いレベルの転写を推進する)、または調節可能(すなわち、化合物との相互作用に対して応答性である)でありうる。転写調節領域の起源は、隣接配列が細胞においてその細胞内の核酸の転写を引き起こすことによって機能するならば、任意の原核または真核生物、任意の脊椎動物または非脊椎動物、または任意の植物でありうる。さまざまな転写調節領域を、本発明の実施において利用しうる。
【0019】
適当な転写調節領域は、たとえば、CMVプロモーター(すなわち、CMV最初期プロモーター);真核遺伝子由来プロモーター(すなわちエストロゲン誘導性ニワトリ卵白アルブミン遺伝子、インターフェロン遺伝子、グルココルチコイド誘導性チロシンアミノトランスフェラーゼ遺伝子、およびチミジンキナーゼ遺伝子);および主要初期および後期アデノウイルス遺伝子プロモーター;SV40初期プロモーター領域(Bernoist and Chambon,1981,Nature 290: 304−10);ラウス肉腫ウイルス(RSV)の3'長末端反復(LTR)に含まれるプロモーター(Yamamoto,et al.,1980,Cell 22:787−97);単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV−TK)プロモーター(Wagner et al.,1981,Proc.Natl.Acad.Sci.U.SA.78: 1444−45);メタロチオナイン遺伝子の調節配列(Brinster et al.,1982,Nature 296: 39−42);ベータ−ラクタマーゼプロモーターといった原核発現ベクター(Villa−Kamaroff et al.,1978,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,75: 3727−31);またはtacプロモーター(DeBoer et al.,1983,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,80: 21−25)を含む。組織型および/または細胞型特異的転写調節領域は、たとえば、膵腺房細胞で活性であるエラスターゼI遺伝子調節領域(Swift et al.,1984,Cell 38 : 639−46; Ornitz et al.,1986,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.50: 399−409 (1986); MacDonald,1987,Hepatology 7: 425−515);膵ベータ細胞で活性であるインシュリン遺伝子調節領域(Hanahan,1985,Nature 315: 115−22);リンパ系細胞で活性である免疫グロブリン遺伝子調節領域(Grosschedl et al.,1984,Cell 38 : 647−58;Adames et al.,1985,Nature 318: 533−38; Alexander et al.,1987,Mol.Cell.Biol.,7: 1436−44);精巣細胞、乳房細胞、リンパ系細胞および肥満細胞中のマウス乳腺腫瘍ウイルス調節領域(Leder et al.,1986,Cell 45:485−95);肝臓のアルブミン遺伝子調節領域(Pinkert et al.,1987,Genes and Devel.1 :268−76);肝臓のアルファ−フェトプロテイン遺伝子調節領域(Krumlauf et al,1985,Mol.Cell Biol,5:1639−48; Hammer et al,1987,Science 235:53−58);肝臓のアルファ1−抗トリプシン遺伝子調節領域(Kelsey et al.,1987,Genes and Devel.1:161−71);骨髄性細胞中のベータ−グロブリン遺伝子調節領域(Mogram et al.,1985,Nature 21 5:338−40; Kollias et al,1986,Cell 46:89−94);脳の乏突起膠細胞中のミエリン塩基性タンパク質遺伝子調節領域(Readhead et al,1987,Ceil 48:703−1 2); 骨格筋のミオシン軽鎖2遺伝子調節領域(Sani,1985,Nature 314:283−86);視床下部のゴナドトロピン放出ホルモン遺伝子調節領域(Mason et al,1986,Science 234:1372−78),および黒色腫細胞のチロシナーゼプロモーター(Hart,I.Semin Oncol 1996 Fcb;23(l):154−8; Siders,et al.Cancer Gene Ther 1998 Sep−Oct;5(5):281−91)を特に含む。たとえば光、熱、放射線、テトラサイクリン、または熱ショックタンパク質といった特定の化合物または条件の存在下で活性化される誘導性プロモーターもまた利用することができる(たとえば国際公開第WO00/10612号パンフレットを参照)。他の適当なプロモーターが本分野で知られている。
【0020】
上記の通り、エンハンサーはまた適当な隣接配列でもある。エンハンサーはDNAのcis作用配列であり、通常は長さ約10〜300bpで、プロモーターに作用して転写を増大させる。エンハンサーは典型的には方向および位置に依存せず、調節されるコード配列に対して5’および3’の両方が同定されている。哺乳類遺伝子から入手可能ないくつかのエンハンサー配列が知られている(すなわち、グロビン、ジアスターゼ、アルブミン、アルファ−フェトプロテインおよびインシュリン)。同様に、SV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、ポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーは、真核プロモーター配列に有用である。エンハンサーは核酸コード領域に対して5’または3’の位置でスプライスされてベクターに入りうるが、典型的にはプロモーターから5'位に位置する。他の適当なエンハンサーが本分野で公知であり、および本発明に適用可能である。
【0021】
本発明の試薬を調製する間に、細胞をトランスフェクションまたは形質転換する必要がありうる。トランスフェクションとは、細胞による外来すなわち外因性DNAの取り込みをいい、および外因性DNAが細胞膜内に導入された時に細胞はトランスフェクションされている。いくつかのトランスフェクション法が本分野でよく知られている(すなわち、Graham et al.,1973,Virology 52: 456; Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratories,1989); Davis et al.,Basic Methods in Molecular Biology (Elsevier,1986); およびChu et al.,1981,Gene 13: 197)。そのような方法は、1つ以上の 外因性 DNA部分を適当な宿主細胞へ導入するのに用いることができる。
【0022】
一部の実施形態では、細胞のトランスフェクションがその細胞の形質転換を結果として生じることが好ましい。細胞の特性に変化がある場合、細胞は形質転換されており、新しい核酸を含むように改変された場合は形質転換されている。トランスフェクション後に、トランスフェクションされた核酸は、細胞の染色体内へ物理的に組み込むことによって細胞の核酸と組換えることができ、複製されずにエピソーム配列として一過性に維持されることができ、または、プラスミドとして独立して複製することができる。その核酸が細胞分裂と共に複製される場合、細胞は安定に形質転換されている。
【0023】
本発明はさらに、ポリペプチドの形の、単離された免疫原性標的を提供する。ポリペプチドは下記の場合に単離されていると考えられる:(1)起源細胞から単離される際に天然に共存して見出されるポリヌクレオチド、脂質、糖質、または他の物質の少なくとも約50%から分離されている;(2)その「単離されたポリペプチド」が天然で結合しているポリペプチドの全部または一部と(共有または非共有相互作用によって)結合していない;(3)天然で結合していないポリペプチドと(共有または非共有相互作用によって)調節可能に結合している;または、(4)天然に存在しない。好ましくは、単離されたポリペプチドは、治療用途、診断用途、予防用途もしくは研究用途に干渉する、天然の環境で見出されるいかなる他の夾雑ポリペプチドまたは他の夾雑物も実質的に含まない。
【0024】
免疫原性標的ポリペプチドは、ここでの定義では、成熟ポリペプチドでよく、および、調製される方法に応じて、アミノ末端メチオニン残基を有していてもいなくてもよい。たとえば免疫原性標的の特性または活性(すなわち、活性、抗原性)の少なくとも1つを有する、たとえば、断片、変異体(すなわち、対立遺伝子、スプライス)、オルソログ、ホモログといった類縁ポリペプチド、および、誘導体もまたさらに考慮される。配列が由来するポリペプチドの少なくとも一部に対応する配列を有する、一連の隣接しているアミノ酸残基をいうペプチドもまた関連している。好ましい実施形態では、ペプチドはアミノ酸約5〜10個、10〜15個、15〜20個、20〜30個、または30〜50個を含む。より好ましい一実施形態では、ペプチドは、たとえばクラスIMHC分子上での提示に適した、アミノ酸9〜12個を含む。
【0025】
核酸またはポリペプチドの断片は、配列(すなわち、核酸またはポリペプチド)のアミノ末端(リーダー配列ありまたは無し)および/またはカルボキシ末端での切断を含む。断片はまた、変異体(すなわち、対立遺伝子、スプライス)、オルソログ、ホモログ、および親配列と比較して1つ以上のアミノ酸付加または置換または内部欠失を有する他の変異体を含みうる。好ましい実施形態では、切断および/または欠失は、アミノ酸約10個、20個、30個、40個、50個、またはより多数を含む。そのように生じたポリペプチド断片は、アミノ酸約10個、25個、30個、40個、50個、60個、70個、またはより多数を含む。そのようなポリペプチド断片は、随意的にアミノ末端メチオニン残基を含みうる。そのような断片は、たとえば、免疫原性標的ポリペプチドに対して抗体または細胞性免疫応答を生じるために用いることができることが理解される。
【0026】
変異体とは、対象配列と比較して、1つ以上の配列置換、欠失、および/または付加を有する配列である。変異体は、天然に存在しうるかまたは人工的に構築されうる。変異体は、対応する核酸分子から調製されうる。好ましい実施形態では、変異体は、1ないし3、または1ないし5、または1ないし10、または1ないし15、または1ないし20、または1ないし25、または1ないし30、または1ないし40、または1ないし50、または50以上のアミノ酸置換、挿入、付加および/または欠失を有する。
【0027】
対立遺伝子変異体とは、1個体の生物または生物の集団の染色体上の所定の遺伝子座を占める、遺伝子のいくつかの可能な天然に存在する代替型の1つである。スプライス変異体とは、一次転写物のスプライシングの結果として生じた、いくつかのRNA転写物の1つから生じたポリペプチドである。オルソログとは、別の種に由来する類似の核酸またはポリペプチド配列である。たとえば、免疫原性標的ポリペプチドのマウス型およびヒト型は互いにオルソログと考えられる。配列の誘導体とは、親配列に由来する、置換、付加、欠失を有するか、または化学的に改変された変異体である。変異体はまた、1つ以上の第1の配列(たとえばペプチド)の、少なくとも1つの別の配列(たとえば異種ペプチド)のアミノまたはカルボキシ末端での融合をいう、融合タンパク質を含みうる。
【0028】
「類似性」とは、類似性が同一マッチおよび保存的置換マッチの両方を含む関連性の尺度をいう他は、同一性と関係する概念である。2つのポリペプチド配列が、たとえば、10/20個の同一アミノ酸を有し、および残りがすべて非保存的置換であるならば、パーセント同一性および類似性は両方とも50%となる。同一の例で、保存的置換が存在するさらに5つの位置があれば、パーセント同一性は50%のままであるが、しかしパーセント類似性は75%(15/20)となる。したがって、保存的置換が存在する場合には、2つのポリペプチド間のパーセント類似性は、それらの2つのポリペプチド間のパーセント同一性よりも高くなる。
【0029】
置換は、保存的、または非保存的、またはその任意の組み合わせでありうる。ポリペプチドの配列への保存的アミノ酸改変(およびコードヌクレオチドへの対応する改変)は、親ポリペプチドと類似の機能的および化学的特性を有するポリペプチドを生じうる。たとえば、「保存的アミノ酸置換」は、そのアミノ酸残基の位置での大きさ、電荷、疎水性、または親水性にほとんどまたは全く影響しないような、および特に、免疫原性の低下を結果として生じないような、天然アミノ酸残基の非天然残基での置換を含みうる。適当な保存的アミノ酸置換を表1に示す。
【表1】
【0030】
当業者は、よく知られた方法を用いて、ポリペプチドの適当な変異体を決定することができる。分子の、活性(すなわち、MHC結合、免疫原性)を破壊することなく変化させうる適当な部分を特定するために、当業者は、その活性にとって重要でないと考えられる部分を標的するであろう。たとえば、同一の種または別の種に由来し類似の活性を有する類似のポリペプチドが知られている場合、当業者はポリペプチドのアミノ酸配列を、そのような類似のポリペプチドと比較することができる。そのような分析を実施することによって、類似のポリペプチドの間で保存されている残基、および分子の部分を特定することができる。そのような類似のポリペプチドと比較して保存されていない分子の部分における変化は、ポリペプチドの生物学的活性および/または構造に悪影響を与える可能性がより低いことが理解される。同様に、MHCへの結合に必要な残基が知られており、および結合を改善するために改変されうる。しかし、MHCへの結合の低下を結果として生じる改変は、大部分の場合には適切でない。当業者はまた、相対的に保存された領域においてさえ、活性を保つ一方で、化学的に類似のアミノ酸を天然に存在する残基と置換しうることを理解する。したがって、生物学的活性のためにまたは構造のために重要でありうる部分さえ、生物学的活性を破壊することなく、またはポリペプチド構造に悪影響を与えることなく、保存的アミノ酸置換に供しうる。
【0031】
他の好ましい ポリペプチド 変異体は、グリコシル化 部位の数および/または種類が対象アミノ酸 配列と比較して変更されたグリコシル化 変異体を含む。一実施形態では、 ポリペプチド 変異体 は、対象アミノ酸 配列よりも多数または少数のN−結合型 グリコシル化 部位を含む。N−結合型 グリコシル化 部位 は、配列 Asn−X−Ser または Asn−X−Thrによって特徴づけられ、Xで表されるアミノ酸残基はプロリン以外の任意のアミノ酸 残基でよい。 この配列を生じるためのアミノ酸 残基の置換は、 N−結合型糖鎖の付加のための可能性のある新しい部位を提供する。代替的に,この配列 を消去する置換は、既存の N−結合型糖鎖を除去する。1つ以上の N−結合型 グリコシル化 部位 (典型的には天然に存在するもの)が消去されおよび1つ以上の 新しいN−結合型 部位が精製される、N−結合型糖鎖の再配列もまた提供される。ポリペプチドのO−結合型 グリコシル化に影響を与えるためには、セリン および/または スレオニン 残基を改変する。
別の好ましい変異体は、対象アミノ酸配列組と比較して、1つ以上のシステイン残基が欠失したかまたは別のアミノ酸(たとえば、セリン)で置換された、システイン変異体を含む。システイン変異体は、たとえば不溶性の封入体の単離後に、ポリペプチドを生物学的に活性な立体構造へ再折りたたみしなければならない場合に有用である。システイン変異体は一般的に天然タンパク質よりも少数のシステイン残基を有し、および典型的には、対にならないシステインの結果として生じる相互作用を最小化するために、偶数を有する。
【0032】
他の実施形態では、本発明の単離されたポリペプチドは、ポリペプチドの精製を補助する融合ポリペプチド部分を含む。融合は、その対象ポリペプチド変異体のアミノ末端またはカルボキシ末端のどちらでも行いうる。融合は、リンカーまたはアダプター分子無しに直接でよく、またはリンカーまたはアダプター分子を介しうる。リンカーまたはアダプター分子は、1つ以上のアミノ酸残基、典型的にはアミノ酸残基約20ないし約50個でありうる。リンカーまたはアダプター分子はまた、融合部分の分離を可能にするために、DNA制限エンドヌクレアーゼのためまたはプロテアーゼのための切断部位と共に設計されうる。一旦構築されれば、融合ポリペプチドを本明細書に記載の方法にしたがって誘導体化できることが理解される。適当な融合部分は、特に、金属結合ドメイン(たとえば、ポリヒスチジン部分)、免疫グロブリン結合ドメイン(すなわち、プロテインA、プロテインG、T細胞、B細胞、Fc受容体、または補体タンパク質抗体結合ドメイン)、糖結合ドメイン(たとえば、マルトース結合ドメイン)、および/または「タグ」ドメイン(すなわち、〜の少なくとも一部α−ガラクトシダーゼ、strepタグペプチド、T7タグペプチド、FLAGペプチド、または、モノクローナル抗体のようなそのドメインと結合する化合物を用いて精製しうる他のドメイン)を含む。このタグは、典型的には、ポリペプチドの発現に際してポリペプチドと融合され、および宿主細胞からの目的ポリペプチドの配列のアフィニティ精製のための手段として役立つ。アフィニティ精製は、たとえば、アフィニティマトリクスとしてタグに対する抗体を用いるカラムクロマトグラフィーによって達成することができる。随意的に、タグは、切断のためにある種のペプチダーゼを用いることのようなさまざまな方法によって、目的ポリペプチドの精製された配列から続いて除去することができる。下記の通り、融合はまた、TAとたとえばケモカインCXC10(IP−10)、CCL7(MCP−3)、またはCCL5(RANTES)といった共刺激因子との間で行いうる。
【0033】
融合モチーフは、小胞体といったMHC処理区画への、免疫原性標的の運搬を促進しうる。伝達配列または経細胞運搬配列といわれるこれらの配列は、HIV tat Kim et al.1997 J.Immunol.159: 1666を参照)、Drosophila antennapedia(Schutze−Redelmeier et al.1996 J.Immunol.157: 650を参照)、またはヒトperiod−1タンパク質(hPER1;特に、SRRHHCRSKAKRSRHH(配列番号42))に由来する配列を含む。
【0034】
加えて、ポリペプチドまたはその変異体は、同種ポリペプチドと融合してホモ二量体を生じ、または異種ポリペプチドと融合してヘテロ二量体を生じうる。異種ペプチドおよびポリペプチドは:融合ポリペプチドの検出および/または単離を可能にするエピトープ;細胞外ドメインまたは膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインといった、膜貫通受容体タンパク質またはその一部;膜貫通受容体タンパク質と結合するリガンドまたはその一部;触媒として活性である酵素またはその一部;ロイシンジッパードメインのような、オリゴマー化を促進するポリペプチドまたはペプチド;免疫グロブリン定常領域のような、安定性を増加するポリペプチドまたはペプチド;および、そのポリペプチドまたはその変異体とは異なる治療活性を有するポリペプチドを含むがそれらに限定されない。
【0035】
一部の実施形態では、免疫原性標的、ポリペプチド、またはその誘導体をコードする核酸配列を、細胞表面タンパク質、サイトカインまたはケモカインといった1つ以上の共刺激因子と、本発明の組成物中で組み合わせることが有利でありうる。共刺激因子は、たとえば、ポリペプチドとして、またはそのポリペプチドをコードする核酸として、組成物に含めることができる。適当な共刺激分子は、たとえば、CD28ファミリーのメンバー(すなわち、CD28、ICOS;Hutloff,et al.Nature 1999,397 : 263−265; Peach,et al.JExp Med 1994,180 : 2049−2058)を結合するポリペプチド、たとえば CD28結合ポリペプチドB7.1(CD80 ; Schwartz,1992; Chen et al,1992 ; Ellis,et al.J.Immunol.,156 (8): 2700−9)およびB7.2(CD86 ; Ellis,et al.J.Immunol.,156(8) : 2700−9);インテグリンファミリーのメンバー(すなわちLFA−1(CD11a/CD18) ; Sedwick,et al.J Immunol 1999,162 : 1367−1375;Wulfing,et al.Science 1998,282: 2266−2269; Lub,et al.Immunol Today 1995,16 : 479−483)を、ICAMファミリーのメンバー(すなわち、ICAM−1、−2または−3)を含め、結合するポリペプチド;CD2ファミリーメンバー(すなわち、CD2、シグナル伝達リンパ球活性化分子(CDw150または「SLAM」; Aversa,et al.J Immunol 1997,158 : 4036−4044) )と結合するポリペプチド、たとえばCD58(LFA−3;CD2リガンド;Davis,et al.Immunol Today 1996,17 : 177−187)またはSLAMリガンド(Sayos,et al.Nature 1998,395: 462−469);熱安定性抗原(HSAまたはCD24; Zhou,et al.EurJ Immunol 1997,27: 2524−2528)と結合するポリペプチド;TNF受容体(TNFR)ファミリーのメンバーと結合するポリペプチド(すなわち、4−1BB(CD137; Vinay,et al.Semin Immunol 1998,10 : 481−489)、OX40 (CD134; Weinberg,et al.Semin Immunol 1998,10: 471−480; Higgins,et al.J Immunol 1999,162: 486−493)、およびCD27(Lens,et al.Semin Immunol 1998,10: 491−499) )たとえば4−1BBL(4−1BBリガンド; Vinay,et al.Semin Immunol 1998,10: 481−48; DeBenedette,et al.J Immunol 1997,158 : 551−559)、 TNFR随伴因子−1(TRAF−1;4−1BBリガンド; Saoulli,et al.JExp Med 1998,187 :1849− 1862,Arch,et al.Mol Cell Biol 1998,18: 558−565)、 TRAF−2(4−1BBおよびOX40リガンド;Saoulli,et al.J Exp Med 1998,187 : 1849−1862; Oshima,et al.Int Immunol 1998,10: 517−526,Kawamata,et al.JBiol Chem 1998,273 :5808−5814)、TRAF−3(4−1BBおよびOX40リガンド;Arch,et al.Mol Cell Biol 1998,18: 558−565; Jang,et al.Biochem Biophys Res Commun 1998,242 : 613−620; Kawamata S,et al.J Biol Chem 1998,273 : 5808−5814)、 OX40L(OX40リガンド;Gramaglia,et al.J Immunol 1998,161 : 6510−6517)、TRAF−5(OX40リガンド;Arch,et al.Mol Cell Biol 1998,18: 558−565; Kawamata,et al.JBiol Chem 1998,273 : 5808−5814)、およびCD70(CD27リガンド;Couderc,et al.Cancer GeneTher.,5 (3): 163−75)を含む。CD154 (CD40 ligおよび/または「CD40L」; Gurunathan,et al.J Immunol.,1998,161 : 4563−4571; Sine,et al.Hum.Gene Ther.,2001,12 : 1091−1102)もまた適当でありうる。
【0036】
1つ以上のサイトカインもまた、本発明の組成物中に含まれるポリペプチドまたは核酸によってコードされる共刺激因子または「アジュバント」として適当でありうる(Parmiani,et al.Immunol Lett 2000 Sep 15; 74(1) : 41−4; Berzofsky,et al.Nature Immunol.1: 209−219)。適当なサイトカインは、たとえば、インターロイキン−2(IL−2)(Rosenberg,et al.Nature Med.4: 321−327 (1998) )、IL−4、IL−7、IL−12(Pardollによる総説、1992; Harries,et al.J.Gene Med.2000 Jul−Aug; 2 (4): 243−9; Rao,et al.J.Immunol.156: 3357−3365 (1996) )、IL−15(Xin,et al.Vaccine,17: 858−866,1999)、IL−16(Cruikshank,et al.J.Leuk Biol.67 (6): 757−66,2000)、IL−18(J.Cancer Res.Clin.Oncol.2001.127 (12): 718−726)、GM−CSF(CSF(Disis,et al.Blood,88 : 202−210 (1996) )、腫瘍壊死因子−アルファ(TNF−α)、またはIFN−αまたはINF−γといったインターフェロンを含む。本分野で知られる通りの、他のサイトカインもまた、本発明を実施するために適当である可能性がある。
【0037】
ケモカインもまた利用することができる。たとえば、腫瘍自己抗原へ融合したCXCL10(IP−10)およびCCL7(MCP−3)を含む融合タンパク質は、抗腫瘍免疫を誘導することが示されている(Biragyn,et al.Nature Biotech.1999,17 :253−258)。ケモカインCCL3(MIP−1α)およびCCL5(RANTES)(Boyer,et al.Vaccine,1999,17 (Supp.2): S53−S64)もまた、本発明の実施において有用でありうる。他の適当なケモカインが本分野で公知である。
抑制性または負の調節免疫機構をブロックし、結果として免疫応答の促進を生じうることもまた本分野で公知である。たとえば、抗CTLA−4(Shrikant,et al.Immunity,1996,14 : 145−155; Sutmuller,et al.J.Exp.Med.,2001,194: 823−832)、抗CD25(Sutmuller、上記)、抗CD4(Matsui,et al.J.Immunol.,1999,163: 184−193)、融合タンパク質IL13Ra2−Fc(Terabe,et al.Nature Immunol.,2000,1:515−520)、およびその組み合わせ(すなわち、抗CTLA−4および抗CD25、Sutmuller,上記)を用いた処置は、抗腫瘍免疫応答をアップレギュレートすることが示されており、および本発明の実施に適する。
【0038】
これらの成分はいずれも、単独でまたは他の物質と併用して使用しうる。たとえば、CD80、ICAM−1およびLFA−3の組み合わせ(「TRICOM」)は抗癌免疫応答を促進しうることが示されている(Hodge,et al.Cancer Res.59: 5800−5807 (1999)。他の効果的な組み合わせは、たとえば、IL−12+GM−CSF(Ahlers,et al.J.Immunol.,158: 3947−3958 (1997); Iwasaki,et al.J.Immunol.158: 4591−4601(1997))、IL−12+GM−CSF+TNF−α(Ahlers,et al.Int.Immunol.13: 897−908 (2001))、CD80+IL−12(Fruend,et al.Int.J.Cancer,85: 508−517 (2000); Rao,et al.上記)、およびCD86+GM−CSF+IL−12(Iwasaki、上記)を含む。当業者は、本発明の実施に有用である別の組み合わせを知る。加えて、当業者は、そのような機構を調節するために用いることができる別の試薬または方法を知る。これらの試薬および方法、および当業者に公知であるその他は、本発明の実施に利用することができる。
【0039】
たとえば、自己複製ウイルスレプリコンの使用(Caley,et al.1999.Vaccine,17: 3124−2135; Dubensky,et al.2000.Mol.Med.6: 723−732; Leiter,et al.2000.Cancer Res.60: 51−55)、コドン最適化(Liu,et al.2000.Mol.Ther.,1:497−500 ; Dubensky,上記 ; Huang,et al.2001.J.Virol.75: 4947−4951)、in vivoエレクトロポレーション(Widera,et al.2000.J.Immunol.164 : 4635−3640)、CpG刺激モチーフの組み込み(Gurunathan,et al.Ann.Rev.Immunol.,2000,18 : 927−974; Leitner,上記;Cho,et al.J.Immunol.168 (10): 4907−13)、エンドサイトーシスまたはユビキチン処理経路の標的化のための配列(Thomson,et al.1998.J.Virol.72: 2246−2252; Velders,et al.2001.J.Immunol.166: 5366− 5373)、マレック病ウイルス1型VP22配列(J.Virol.76 (6): 2676−82,2002)、基礎免疫−追加免疫処方(Gurunathan,上記 ; Sullivan,et al.2000.Nature,408: 605−609; Hanke,et al.1998.Vaccine,16: 439−445; Amara,et al.2001.Science,292: 69−74)、およびSalmonellaのような粘膜運搬ベクターの使用(Darji,et al.1997.Cell,91: 765−775; Woo,et al.2001.Vaccine,19: 2945−2954)を含む、核酸を基礎とする免疫の効率を改善するための別の戦略もまた用いることができる。他の方法が本分野で公知であり、その一部を下に記載する。
化学治療剤、放射線、抗血管新生化合物、または他の物質もまた、免疫原性標的を用いる癌の治療および/または予防に利用できる(Sebti,et al.Oncogene 2000 Dec 27; 19 (56): 6566−73)。たとえば、転移性乳癌の治療において、有用な化学治療剤は、特にシクロホスファミド、ドキソルビシン、パクリタキセル、ドセタキセル、ナベルビン、カペシタビン、およびマイトマイシンCを含む。たとえば、シクロホスファミド+メトトレキサート+5−フルオロウラシル;シクロホスファミド+ドキソルビシン+5−フルオロウラシル;または、シクロホスファミド+ドキソルビシンを含む、併用化学治療処方もまた有用であることが証明されている。プレドニゾン、タキサン、ナベルビン、マイトマイシンC、またはビンブラスチンといった他の化合物が、さまざまな理由で利用されている。大部分の乳癌患者はエストロゲン受容体陽性(ER+)腫瘍を有し、およびこれらの患者では、内分泌療法(すなわち、タモキシフェン)が化学療法より好ましいそのような患者には、タモキシフェンまたは、第二次治療として、プロゲスチン(酢酸メドロキシプロゲステロンまたは酢酸メゲストロール)が好ましい。アロマターゼ阻害剤(すなわち、レトロゾールといった、アミノグルテチミドおよびその類縁物質)は、腫瘍増殖を維持するために必要なエストロゲンのアベイラビリティを低下させ、および一部の患者において第二次または第三次の内分泌療法に使用しうる。
【0040】
他の癌は異なる化学治療処方を必要としうる。たとえば、転移性直腸結腸癌は典型的には、カンプトサール(イリノテカンまたはCPT−11)、5−フルオロウラシルまたはロイコボリンを用いて、単独でまたは互いに併用して治療される。プロテイナーゼおよびインテグリン阻害剤、たとえばMMP阻害剤マリマステート(British Biotech)、COL−3(Collagenex)、ネオバスタット(Aeterna)、AG3340(Agouron)、BMS−275291(Bristol Myers Squibb)、CGS27023A(Novartis)またはインテグリン阻害剤ビタキシン(Medimmune)、またはMED1522(MerckKgaA)もまた使用に適している可能性がある。このように、直腸結腸癌に随伴する免疫原性標的の免疫標的化は、それらの化学治療剤を用いた治療と併用して実施しうる。同様に、他の種類の癌を治療するのに用いられる化学治療剤は本分野でよく知られており、および本明細書に記載の免疫原性標的と組み合わせることができる。
【0041】
多数の抗血管新生物質が本分野で公知であり、および免疫原性標的ワクチンとの同時投与に適する(たとえば、Timar,et al.2001.Pathology Oncol.Res.,7 (2):85−94を参照)。そのような物質は、たとえば、増殖因子(すなわち、ANG−2、NK1、2、4(HGF)、形質転換増殖因子ベータ(TGF−β))、サイトカイン(すなわち、IFN−α、−β、−γといったインターフェロン、血小板因子4(PF−4)、PR−39)、プロテアーゼ(すなわち、切断AT−III、コラーゲンXVIII断片(エンドスタチン))、Hmwカリクレイン−d5プラスミン断片(アンギオスタチン)、プロトロンビン−F1−2、TSP−1)、プロテアーゼ阻害剤(すなわち、TIMP−1、−2、または−3といったメタロプロテアーゼ組織阻害剤;マスピン;PAI−1といったプラスミノーゲン活性化因子−阻害因子;色素上皮由来因子(PEDF))、ツムスタチン(ILEX,Inc.から入手可能)、抗体産物(すなわち、コラーゲン結合抗体HUIV26、HUI77、XL313;抗VEGF;抗インテグリン(すなわち、ビタキシン(Lxsys)))、およびグリコシダーゼ(すなわち、へパリナーゼ−I、−III)といった生理的物質を含む。抗血管新生能を有するのが公知であるかまたは有すると考えられている「化学的」または改変された生理的物質は、たとえば、ビンブラスチン、タキソール、ケトコナゾール、サリドマイド、ドルスタチン、コンブレスタチンA、ラパマイシン(Guba,et al.2002,Nature Med.,8:128−135)、CEP−7055(Cephalon,Inc.から入手可能)、フラボン酢酸、Bay12−9566(Bayer Corp.)、AG3340(Agouron,Inc.)、CGS27023A(Novartis)、テトラサイクリン誘導体(すなわち、COL−3(Collagenix,Inc.))、ネオバスタット(Aeterna)、BMS−275291(Bristol−Myers Squibb)、低用量5−FU、低用量メトトレキサート(MTX)、イルソフラジン、ラジシコール、シクロスポリン、カプトプリル、セレコキシブ、D45152硫酸化多糖、陽イオン性タンパク質(プロタミン)、陽イオン性ペプチド−VEGF、スラミン(ポリスルホン化ナフチル尿素)、VEGFの機能または産生に干渉する化合物(すなわち、SU5416またはSU6668(Sugen)、PTK787/ZK22584(Novartis))、ジスタマイシンA、アンギオザイム(リボザイム)、イソフラビノイド、スタウロスポリン誘導体、ゲニステイン、EMD121974(Merck KcgaA)、チロホスチン、イソキノロン、レチノイン酸、カルボキシアミドトリアゾール、TNP−470、オクトレオチド、2−メトキシエストラジオール、アミノステロール (すなわち、スクワラミン)、グルタチオン類縁物質(すなわち、N−アセチル−L−システイン)、コンブレタスタチンA−4(Oxigene)、Eph受容体遮断剤(Nature,414: 933−938,2001)、Rh−アンギオスタチン、Rh−エンドスタチン(国際公開第01/93897号パンフレット)、環状RGDペプチド、アキューチン−ディスインテグリン、ベンゾジアゼピン、ヒト化抗avb3抗体、Rh−PAI−2、アミロライド、p−アミドベンズアミジン、抗uPA抗体、抗uPAR抗体、L−フェニルアラニン−N−メチルアミド(すなわち、バチミステート、マリマステート)、AG3340、およびミノサイクリンを含む。多数の他の適当な物質が本分野で公知でありおよび本発明の実施に十分である。
本発明はまた、癌の治療の「従来でない」方法と組み合わせて利用することができる。たとえば、ある種の嫌気性細菌の投与が腫瘍 増殖を遅らせることを補助しうることが近年実証されている。1つの研究では、Clostridium novyiを改変してファージエピソーム上にある毒素遺伝子を消去し、および直腸結腸腫瘍を有するマウスに投与した(Dang,et al.P.N.A.S.USA,98 (26): 15155−15160,2001)。化学療法と併用して、その処置は動物における腫瘍壊死を引き起こすことが示された。本明細書中で記載される試薬および方法は、そのような治療方法と組み合わせることができる。
【0042】
免疫原性標的をコードする核酸は、いくつかの利用可能な方法のうち任意のものによって患者へ投与することができる。核酸を宿主へ導入するために使用が成功しているさまざまなウイルスベクターは、特に、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ヘルペスウイルス、およびポックスウイルスを含む。多数のそのようなウイルスベクターが本分野で利用可能であることが本分野で理解される。本発明のベクターは、当業者に広く利用可能である標準的な組換え方法を用いて構築することができる。そのような方法は、Molecular Cloning : A Laboratory Manual (Sambrook,et al.,1989,Cold Spring Harbor Laboratory Press)、 Gene Expression Technology (Methods in Enzymology,Vol.185,edited by D.Goeddel,1991.Academic Press,San Diego,CA)、およびPCR Protocols: A Guide to Methods and Applications (Innis,et al.1990.Academic Press,San Diego,CA)といった一般的な分子生物学参考文献に見出すことができる。
好ましいレトロウイルスベクターは、レンチウイルスの誘導体、およびマウスまたは鳥レトロウイルスの誘導体である。適当なレトロウイルスベクターの例は、たとえば、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳癌ウイルス(MuMTV)、SIV、BIV、HIVおよびラウス肉腫ウイルス(RSV)を含む。いくつかのレトロウイルスベクターは、複数の外因性核酸配列を組み込むことができる。組換えレトロウイルスは不完全であるため、それらは感染性ベクター粒子を生じるためには補助を必要とする。この補助は、たとえば、レトロウイルス構造遺伝子をコードするヘルパー細胞株によって提供することができる。適当なヘルパー細胞株は、特に、T2、PA317およびPA12を含む。そのような細胞株を用いて作製したベクター粒子を、次いで、NIH3T3細胞のような組織細胞株を感染させるのに使用し、大量のキメラレトロウイルス粒子を生じることができる。レトロウイルスベクターは、従来の方法(すなわち注射)によって、または標的細胞集団の近傍への「産生細胞株」の移植によって投与することができる(Culver,K.,et al.,1994,Hum.GeneTher.,5 (3):343−79 ; Culver,K.,et al.,Cold Spring Harb.Symp.Quant.Biol.,59: 685−90); Oldfield,E.,1993,Hum.Gene Ther.,4(1):39−69)。産生細胞株は、ウイルスベクターを産生し、およびウイルス粒子を標的細胞付近に放出するように操作されている。放出されたウイルス粒子の一部は標的細胞と接触しおよびそれらの細胞に感染し、そのようにして本発明の核酸を標的細胞へ送る。標的 細胞の感染後、ベクターの核酸の発現が起こる。
【0043】
アデノウイルスベクターは、真核細胞中への遺伝子運搬のために(Rosenfeld,M.,et al.,1991,Science,252 (5004): 431−4; Crystal,R.,et al.,1994,Nat.Genet.,8 (1) : 42−51)、真核遺伝子発現研究(Levrero,M.,et al.,1991,Gene,101 (2): 195−202)、ワクチン開発(Graham,F.and Prevec,L.,1992,Biotechnology,20: 363−90)、および動物モデルにおいて(Stratford−Perricaudet,L.,et al.,1992,Bone Marrow Transplant.,9 (Suppl.1) : 151−2; Rich,D.,et al.,1993,Hum.Gene Ther.,4(4) : 461−76)、特に有用であることが証明されている。組換えAdをさまざまな組織へin vivoで投与するための実験的経路は、特に、気管内導入(Rosenfeld,M.,et al.,1992,Cell,68(1) : 143−55)、筋肉内注射(Quantin,B.,et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,89 (7): 2581−4)、末梢静脈注射(Herz,J.,and Gerard,R.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,90 (7): 2812−6)および脳への定位接種(Le Gal La Salle,G.,et al.,1993,Science,259 (5097): 988−90)を含んできた。
【0044】
アデノ随伴 ウイルス(AAV)は、宿主細胞ゲノムへの一体化において、高レベル感染性、広い宿主域および特異性を示す(Hermonat,P.,et al.,1984,Proc.Natl.acid.Sci.U.S.A.,81(20) : 6466−70)。および単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1) は、特にその神経親和性のために、神経系における使用について、さらに別の魅力的なベクター系である(Geller,A.,et al.,1991,TrendsNeurosci.,14 (10): 428−32; Glorioso,et al.,1995,Mol.Biotechnol.,4(1) : 87−99; Glorioso,et al.,1995,Annu.Rev.Microbiol.,49:675−710)。
ポックスウイルスは別の有用な発現ベクターである(Smith,et al.1983,Gene,25(1) : 21−8; Moss,et al,1992,Biotechnology,20: 345−62; Moss,et al,1992,Curr.Top.Microbiol.Immunol.,158 : 25−38; Moss,et al.1991.Science,252: 1662−1667)。有用であることが示されているポックスウイルスは、特に、ワクシニア、NYVAC、アビポックス、鶏痘、カナリヤポックス、ALVAC、およびALVAC(2)を含む。
【0045】
NYVAC(vP866)は、ワクシニアウイルスのコペンハーゲンワクチン株から、既知のまたは可能性のある病原性因子をコードする、ゲノムの必須でない領域6個を欠失することによって得られた(たとえば、米国特許第5,364,773号および第5,494,807号明細書を参照)。欠失した遺伝子座はまた、外来遺伝子の挿入のための受容遺伝子座として組換えられた。欠失した領域は、チミジンキナーゼ遺伝子(TK;J2R);出血性領域(u;B13R+B14R);A型封入体領域(ATI;A26L);ヘマグルチニン遺伝子(HA;A56R);宿主域遺伝子領域(C7L−K1L);および、リボヌクレオチド還元酵素の大サブユニット(I4L)である。NYVACは、病原性および宿主域に関連する遺伝子産物をコードするオープンリーディングフレーム18個の特異的欠失によって作製された、遺伝子組換えされたワクシニアウイルス株である。NYVACはTAを発現するために有用であることが示されている(たとえば、米国特許第6,265,189号明細書を参照)。NYVAC(vP866)、vP994、vCP205、vCP1433、placZH6H4L逆方向、pMPC6H6K3E3およびpC3H6FHVBもまたATCCへブダペスト条約の条項に従って寄託されており、登録番号はそれぞれVR−2559、VR−2558、VR−2557、VR−2556、ATCC−97913、ATCC−97912、およびATCC−97914である。
【0046】
ALVACを基礎とする組換えウイルス(すなわち、ALVAC−1およびALVAC−2)もまた、本発明の実施における使用に適している(たとえば、 米国特許第5,756,103号明細書を参照)。ALVAC(2)は、ALVAC(2)ゲノムがワクシニアプロモーターの調節下にあるワクシニアE3LおよびK3L遺伝子を含む以外は、ALVAC(1)と同一である(米国特許第6,130,066号明細書;Beattie et al.,1995a,1995b,1991; Chang et al.,1992; Davies et al.,1993)。ALVAC(1)およびALVAC(2)の両方が、TAといった外来DNA配列の発現に有用であることが実証されている(Tartaglia et al.,1993 a,b; 米国特許第5,833,975号明細書)。ALVACはブダペスト条約の条項に従ってAmerican Type Culture Collection (ATCC),10801 University Boulevard,Manassas,Va.20110−2209,USAに寄託されており、ATCC登録番号はVR−2547であった。
【0047】
別の有用なポックスウイルスベクターがTROVACである。TROVACとは、1日齢雛のワクチン接種用に認可されている鶏痘ウイルスのFP−1ワクチン株に由来するプラークからクローニングされた弱毒化鶏痘をいう。TROVACは同様に、ブダペスト条約の条項に従ってATCCに寄託され、登録番号は2553であった。
【0048】
「非ウイルス」プラスミドベクターもまた、本発明の実施において適当でありうる。好ましいプラスミドベクターは、細菌、昆虫、および/または哺乳類宿主細胞に適合する。そのようなベクターは、たとえば、PCR−11、pCR3、およびpcDNA3.1(Invitrogen,San Diego,CA)、pBSII(Stratagene,La Jolla,CA)、 pET15(Novagen,Madison,WI)、pGEX(PharmaciaBiotech,Piscataway,NJ)、pEGFP−N2(Clontech,Palo Alto,CA)、pETL(BlueBacII,Invitrogen)、pDSR−alpha(国際公開第90/14363号パンフレット)およびpFastBacDual(Gibco−BRL,Grand Island,NY)、およびBluescript(登録商標)プラスミド誘導体(高コピー数のCOLE1を基礎とするファージミド、Stratagene Cloning Systems,La Jolla,CA)、Taq増幅PCR産物をクローニングするために設計されたPCRクローニングプラスミド(たとえば、TOPO(登録商標)TAクローニング(登録商標)キット、PCR2.1(登録商標)プラスミド誘導体、Invitrogen,Carlsbad,CA)を含む。細菌ベクターもまた本発明に用いることができる。これらのベクターは、たとえば、Shigella、Salmonella、Vibrio cholerae、Lactobacillus、Bacille calmette guerin (BCG)、およびStreptococcusを含む(たとえば、国際公開第88/6626号;国際公開第90/0594号;国際公開第91/13157号;国際公開第92/1796号;および国際公開第92/21376号パンフレットを参照)。多数の他の非ウイルスプラスミド発現ベクターおよび系が本分野で公知であり、および本発明に用いることができる。
【0049】
適当な核酸運搬方法は、特に、DNA−リガンド複合体、アデノウイルス−リガンド−DNA複合体、DNAの直接注射、CaPO4沈降、遺伝子銃法、エレクトロポレーション、およびコロイド分散系を含む。コロイド分散系は、高分子複合体、ナノカプセル、微小球、ビーズ、および、水中油滴エマルジョン、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含む脂質を基礎とする系を含む。本発明の好ましいコロイド系はリポソームであり、これはin vitroおよび in vivoで運搬媒体として有用である人工膜小胞である。RNA、DNAおよび完全なウイルス粒子をその水系の内部に封入し、および細胞へ生物学的に活性な形で送ることができる(Fraley,R.,et al.,1981,Trends Biochem.Sci.,6: 77)。リポソームの組成物は通常、リン脂質の組み合わせ、特に、通常はステロイド特にコレステロールと組み合わせた高温相転移リン脂質である。他のリン脂質または他の脂質もまた使用することができる。リポソームの物理的特性はpH、イオン強度、および二価陽イオンの存在に依存する。リポソーム作製に有用である脂質の例は、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミンといったホスファチジル化合物、スフィンゴ脂質、セレブロシド、およびガングリオシドを含む。特に有用なのは、脂質部分が14〜18個、特に16〜18個の炭素原子を含み、および飽和している、ジアシルホスファチジルグリセロールである。例となるリン脂質は、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびジステアロイルホスファチジルコリンを含む。
【0050】
免疫原性標的もまた、免疫応答を高めるために、1つ以上のアジュバントと組み合わせて投与することができる。典型的なアジュバントを下記の表2に示す:
【表2】
【0051】
本発明の免疫原性標的はまた、スクリーニング検定法における用途のためまたは免疫療法のための抗体を作製するのに用いることができる。他の用途は当業者に明らかとなる。「抗体」の語は、本分野で公知であるいくつかの方法によって作製された、Fab、Fab2、1本鎖抗体(たとえばFv)、ヒト化抗体、キメラ抗体、ヒト抗体を含む抗体断片を、本分野で公知である通り含む。さまざまな種類の抗体を調製および使用する方法は当業者によく知られており、および本発明の実施に有用である(たとえば、Harlow,et al.Antibodies: A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988 ; Harlow,et al.Using Antibodies: A Laboratory Manual,Portable Protocol No.1,1998; Kohler and Milstein,Nature,256: 495 (1975)を参照);Jones et al.Nature,321: 522−525 (1986); Riechmann et al.Nature,332: 323−329 (1988); Presta (Curr.Op.Struct.Biol.,2: 593−596 (1992); Verhoeyen et al.(Science,239: 1534−1536 (1988); Hoogenboom et al.,J.Mol.Biol.,227: 381 (1991); Marks et al.,J.Mol.Biol.,222: 581 (1991); Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985) ;Boerner et al.,J.Immunol.,147(1) : 86−95 (1991); Marks et al.,Bio/Technology 10,779− 783 (1992);Lonberg et al.,Nature 368856−859 (1994);Morrison,Nature368812−13 (1994); Fishwild et al.,Nature Biotechnology 14,845−51 (1996); Neuberger,Nature Biotechnology 14,826 (1996); Lonberg and Huszar,Intern.Rev.Immunol.13 65−93 (1995)号;第および米国特許第4,816,567号号;第5,545,807号;第5,545,806号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;および第5,661,016号明細書)。抗体またはそれに由来する誘導体はまた、特に、細胞毒性医薬または毒素、または活性なその断片、たとえばジフテリアA鎖、外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、クルシン、クロチン、フェノマイシン、エノマイシンといった治療用部分と複合体化しうる。細胞毒性物質はまた、放射性化学物質を含みうる。抗体およびその誘導体は、in vitroまたはin vivo用途のために本発明の組成物に組み込むことができる。
【0052】
免疫原性標的を表す核酸、タンパク質、またはその誘導体は、患者において疾患状態の存在を判定するための、予後を予測するための、または化学治療または他の治療処方の有効性を判定するための、検定法に用いることができる。本分野で知られる通りに実施される発現プロファイルは、免疫原性標的の発現の相対レベルを測定するために用いることができる。発現のレベルは次いで、基底レベルと相関させ、特定の疾患が患者に存在するかどうか、患者の予後、または特定の治療処方が有効かどうかを判定することができる。たとえば、患者が特定の化学治療処方を用いて治療されているならば、患者組織中(すなわち末梢血中)の免疫原性標的の発現のレベル低下は、その処方がその宿主における癌量を低下させていることを示しうる。同様に、発現のレベルが上昇しているならば、別の治療様式を用いる必要がありうる。一実施形態では、免疫原性標的をコードする核酸に対応する核酸プローブを、宿主における発現の検出および定量のために、本分野で公知である通りのバイオチップに結合させることができる。
【0053】
核酸、タンパク質、その誘導体、またはそれに対する抗体を、医薬スクリーニング検定法において試薬として用いることもまた可能である。その試薬は、患者の細胞株、または細胞または組織における免疫原性標的の発現に対する医薬候補の作用を確認するために用いることができる。発現プロファイリング法は、高処理量スクリーニング法と組み合わせて、有用な化合物の迅速な特定を可能にしおよび医薬候補を用いた治療の有効性を監視することを可能にすることができる(たとえば、Zlokarnik,et al.,Science 279,84−8 (1998)を参照)。医薬候補は、天然に存在するかまたは合成によって得られる、化合物、核酸、タンパク質、抗体、またはそれに由来する誘導体であることができる。このように特定された医薬候補は、用途の中でも特に、患者への投与のための医薬組成物として、またはさらにスクリーニング検定法における用途のために、使用することができる。
【0054】
本発明の組成物の宿主への投与は、当業者に公知であるさまざまな方法のいずれかを用いて達成することができる。組成物は、ヒトおよび他の哺乳類を含む、患者への投与のための薬剤(すなわち、「医薬組成物」)を製造するための製薬学の従来の方法に従って処理することができる。医薬組成物は好ましくは、たとえば、DNA、ウイルスベクター粒子、ポリペプチドまたはペプチドの所定の量を含む単位用量の形に作製される。ヒトまたは他の哺乳類のために適した1日量は、患者の状態および他の要素に応じて大幅に変化しうるが、しかし、今度も、所定の方法を用いて決定することができる。
【0055】
医薬組成物は、経口的に、非経口的に、吸入スプレーによって、直腸に、節内に、または局所的に、医薬品として許容されるキャリヤー、アジュバント、および媒体を含む単位用量処方で投与することができる。「医薬品として許容されるキャリヤー」または「生理的に許容されるキャリヤー」の語句はここでは、医薬組成物としての核酸、ポリペプチド、またはペプチドの運搬を達成または促進するために適した、1つ以上の処方材料をいう。「医薬組成物」は、核酸またはポリペプチドの治療上有効な量を含む組成物である。「有効量」および「治療上有効な量」の語句はそれぞれ、有効な免疫応答を誘導または促進するために用いられる核酸またはポリペプチドの量をいう。本発明の組成物は、宿主において、腫瘍の発生から宿主を保護しおよび/または宿主が既存の腫瘍を身体から排除することを可能にする、抗腫瘍免疫応答の誘導または促進を提供することが好ましい。
【0056】
経口投与のためには、医薬組成物は、たとえば、特に、カプセル、錠剤、懸濁剤、液剤を含むいくつかの剤形のいずれかでありうる。液剤は、生理食塩水、デキストロース、または水を含む適当なキャリヤーを含む組成物として、注射によって投与することができる。非経口の語はここでは、皮下、静脈内、筋肉内、胸骨内、輸液、または腹腔内投与を含む。医薬の直腸投与のための坐剤は、ココアバターおよびポリエチレングリコールといった通常の温度で個体であるが直腸温で液体である適当な非刺激性添加物と医薬を混合することによって調製できる。
【0057】
宿主を免疫するため、またはそうでなければ本発明の組成物を用いて障害または疾患を治療するための用量処方は、疾患の種類、年齢、体重、性別、患者の医学的症状、症状の重症度、投与経路、および使用する特定の化合物を含むさまざまな因子に基づく。たとえば、ポックスウイルスベクターは、1回用量当たり1x106感染性粒子を含む組成物として投与することができる。このように、用量処方は大幅に変動しうるが、しかし標準的な方法を用いて普通に決定することができる。
【0058】
基礎免疫段階で標的となる免疫原が1つの形で最初に投与され、その後、追加免疫段階で標的となる免疫原が別の形で投与される、基礎免疫−追加免疫処方もまた使用することができる(たとえば、国際公開第01/30382A1を参照。基礎免疫段階および追加免疫段階の標的となる免疫原の形は異なる。たとえば、基礎免疫段階が核酸を用いたならば、追加免疫はペプチドとして投与しうる。同様に、基礎免疫段階が1つの種類の組換えウイルス(すなわち、ALVAC)を用いた場合、追加免疫段階は別の種類のウイルス(すなわち、NYVAC)を使用しうる。この投与の基礎免疫−追加免疫法は、強い免疫応答を誘導することが示されている。
【0059】
本発明の組成物は、単独の活性な医薬として投与することができる一方、それらはまた1つ以上の他の組成物または物質(すなわち、他の免疫原性標的、共刺激分子、アジュバント)と組み合わせて用いることもできる。組み合わせとして投与される場合、個々の成分は、同時にまたは別の時に投与される別々の組成物として処方することができ、または成分は単一の組成物として合わせることができる。
滅菌注射用水性または油性懸濁液といった注射用調製物は、公知の方法に従って、適当な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて処方することができる。注射用調製物はまた、無毒性の非経口的に許容しうる希釈剤または溶媒中の滅菌注射用液または懸濁液でありうる。使用できる適当な媒体および溶媒は、特に、水、リンゲル液、および等張塩化ナトリウム溶液である。たとえば、ポックスウイルスといったウイルスベクターを0.4%NaCl中に処方することができる。加えて、滅菌不揮発性油が従来、溶媒または懸濁媒として用いられている。この目的には、合成モノまたはジグリセリドを含むどのブランドの不揮発性油も用いることができる。加えて、オレイン酸といった脂肪酸は注射剤の調製に用いられる。
【0060】
局所投与のためには、組成物の適当な局所用量を、毎日1から4回、および好ましくは2から3回投与することができる。用量はまた、用量を投与しない中間日を用いて投与しうる。適当な組成物は、処方の重量で0.001%ないし10%w/w、たとえば1%ないし2%を含みうるが、処方の10%w/wと同じ量、しかし好ましくは5%w/w以下、およびより好ましくは0.1%ないし1%を含みうる。局所投与に適した処方は、皮膚を通る浸透に適した液体または半液体(たとえば、リニメント、ローション、軟膏、クリーム、またはペースト)および目、耳、または鼻への投与に適した滴下剤を含む。
【0061】
医薬組成物はまた、固形(顆粒、粉剤または坐剤を含む)に調製することができる。医薬組成物は、滅菌といった従来の製薬操作に供することができ、および/または従来の補助剤、たとえば保存料、安定剤、湿潤剤、懸濁剤、緩衝剤などを含みうる。経口投与用の固体剤形は、カプセル剤、錠剤、丸剤、粉剤、および顆粒剤を含みうる。そのような固体剤形では、活性化合物は、白糖、乳糖、またはデンプンといった、少なくとも1つの不活性な希釈剤と混合しうる。そのような剤形はまた、通常の慣行の通り、たとえば、ステアリン酸マグネシウムといった滑沢剤のような、不活性な希釈剤以外の別の物質も含みうる。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合、剤形はまた緩衝剤を含みうる。錠剤および丸剤は別に腸溶性コーティングと共に調製しうる。経口投与用の液体剤形は、水といった本分野で一般的に用いられる不活性な希釈剤を含む、医薬品として許容される乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、およびエリキシル剤を含みうる。そのような組成物はまた、補助剤、たとえば湿潤剤、甘味料、香味料、および香料を含みうる。
【0062】
本発明の核酸またはポリペプチドを含む医薬組成物は、いくつかの形状のいずれかを取ることができ、およびいくつかの経路のいずれかによって投与しうる。好ましい実施形態では、組成物は非経口経路(皮内、筋肉内または皮下)を介して投与され、宿主において免疫応答を誘導する。代替的に、組成物はリンパ節(節内)または腫瘤(すなわち、腫瘍内投与)内へ直接投与することができる。たとえば、用量は0、7、および14日目に皮下投与することができる。TAを含む組成物を用いる免疫に適した方法は、特にp53(Hollstein et al.,1991)、p21−ras(Almoguera et al.,1988)、HER−2 (Fendly et al.,1990)、黒色腫関連抗原(MAGE−1;MAGE−2)(van der Bruggen et al.,1991)、p97(Hu et al.,1988)、黒色腫関連抗原E(国際公開第99/30737号パンフレット)および癌胎児性抗原(CEA)(Kantor et al.,1993; Fishbein et al.,1992;Kaufman et al.,1991)について示された通り、本分野で公知である。
【0063】
投与可能な組成物の好ましい実施形態は、たとえば、核酸またはポリペプチドを含む懸濁剤、シロップ剤、またはエリキシル剤といった液体調製物を含む。好ましい注射用調製物は、たとえば、懸濁剤または乳剤といった、非経口、皮下、皮内、筋肉内または静脈投与に適した核酸またはポリペプチドを含む。たとえば、組換えポックスウイルスは、滅菌水、生理食塩水、グルコースなどといった適当なキャリヤー、希釈剤、または添加物と混合することができる。組成物はまた、たとえば等張水性の生理食塩緩衝液中での再構成のための凍結乾燥形で提供することができる。加えて、組成物は、他の抗新生物剤、抗腫瘍剤または抗癌剤と、および/または、抗新生物剤、抗腫瘍剤または抗癌剤の悪影響を低減または緩和する物質と、同時に投与または連続的に投与することができる。
【0064】
本発明の組成物を含むキットもまた提供される。キットは、適当なキャリヤー、希釈剤または添加物入りの別々の容器を含みうる。キットはまた、同時または連続的な投与のための、別の抗癌剤、抗腫瘍剤または抗新生物剤、および/または、抗新生物剤、抗腫瘍剤または抗癌剤の悪影響を低減または緩和する物質を含むことができる。別に、キットは成分を混合または合わせる、および/または投与のための説明書を含みうる。
【0065】
本発明のよりよい理解およびその多数の利点は、例によって示される下記の実施例から得られる。
【実施例】
【0066】
実施例1
AAC2腫瘍関連抗原
AAC2コード配列の1つの型(AAC2−1)が共同研究者によって提供され、およびマウスbcl−6関連亜鉛フィンガータンパク質(「BAZF」)と高い配列類似性を有することが見出された。この配列情報に基づいて、PCRプライマーを下記の通り設計した:
CACCATGGGT TCCCCCGCCGCCCCGGA(順方向プライマー;配列番号6)
CTAGGGCCCC CCGAGAATGT GGTAGTGCAC TTT(逆方向プライマー;配列番号7)
RNAは、集密状態のHUVEC(BioWhittacker;品番CC2517、ロット番号1F0141)培養からトリアゾールを用いて、取扱説明書に従って単離された(Life Technologies,Inc.,品番15596)。高信頼性RT−PCRを次いでその順方向および逆方向プライマーを用いて実施し(94度、2分;94度、30秒;56.8度、30秒;68度、1分40秒で24サイクル;25回目のサイクルは68度、7分)、1,447塩基対cDNAの単離を結果として生じた。cDNAをpEF6−TOPO真核発現プラスミドへクローニングし、および「pEF6−hAAC2−2」と称した。cDNApEF6−hAAC2−2を、4種類のプライマーを用いて配列決定し、および、AAC2−1およびマウスBAZFの配列と整列した(図1)。図に示す通り、AAC2−2は、AAC2−1の245位に見出されるセリン残基(S)を欠く。次に、AAC2−2の298位から316位のアミノ酸17個の一連(SEFFSCQNCEAVAGCSS)は、AAC2−1のアミノ酸298〜316と11.8%の配列同一性だけを示した(図1)。興味深いことに、298位から316位のアミノ酸17個の一連はマウスBAZFと100%同一であり、これが長いセリン鎖に伴う転写因子機能(亜鉛フィンガー)に決定的でありうることを示唆する。AAC2−2は次いでpcDNA3.1−zeo真核発現プラスミドへクローニングされた(「pcDNA3.1−hAAC2−2」)。
【0067】
実施例2
AAC2ペプチドに対するヒトT細胞反応性
AAC2−2アミノ酸配列を用いて、HLA−A−0201と結合することが予測される9量体ペプチドのライブラリを構築した(表3;「N」はその配列がマウスホモログ中に見出されないことを示し、一方、「Y」はそのがマウスホモログ中に見出されることを示す)。23のペプチドをDMSOに10mg/mlにて溶解し(表4)、およびヒトPBMC培養に用いてCD8およびCD4apT細胞応答をin vitroで誘導する能力を試験した。
【表3】
【0068】
GM−CSFおよびIL−4を用いて、HLA−A−0201を発現している供血者の末梢血単球から樹状細胞(DC)を作製した。DCを、表4に示す9量体AAC2−2ペプチドの異なるプールを用いてパルスした。
【表4】
【0069】
これらのDCを用いて、自家T細胞濃縮PBMC調製物を刺激した。T細胞を、自家PBMCを用いて再刺激し、および次いでCD40−リガンド−活性化自家B細胞を用いて再刺激した。各ペプチドプールを用いた3回目および4回目の刺激後に、IFN−γ産生についてのELISPOT分析は、T細胞がAAC2−2ペプチドのプールの1つに対して非常に強く反応したことを示した(ペプチド群6;図2)。ペプチド群6は下記のペプチドを含む:ILTDVTLLV(aa36〜44)、TLLVGGQPL(aa41〜49)、およびFMYTSRLRL(aa95〜103)。フローサイトメトリー分析(FACS)は、このペプチド特異的株に由来するリンパ球は、>50%の記憶(CD45RO+)表現型を有するCD8T細胞から成ることを示した。抗CD56抗体で染色された細胞はごく少数しかなく(<2%)、観察されたIFN−γ産生はNK細胞活性が原因でないことを示した。
【0070】
このペプチドプール特異的T細胞株からのCTL活性の分析はまた、活性化T細胞が、ペプチド負荷されたTAP欠損T2細胞をHLA−A−0201制限的な方法で傷害する能力を有したことを実証した(図2)。この分析はまた、ILTDVTLLVが、ペプチド特異的CTL活性の大部分を刺激した主なペプチドであったことを明らかにした。したがって、AAC2−2ペプチドはヒト免疫系において免疫原性であることが決定した。
【0071】
実施例3
AAC2−2のin vivo免疫原性
HLA−A2−Kb遺伝子導入マウスにDNA免疫を用いて、AAC2−2タンパク質は処理されて免疫原性ペプチドとなり、およびHLA−A−0201制限T細胞応答をin vivoで誘導することができることが見出された。マウスは1日目にpEF6−hAAC2−2を用いた注射によって免疫し、および同じプラスミドを用いて21日目に追加免疫した。リンパ球を、免疫したマウスから追加免疫の21日後に採取し、および表4に示すさまざまな群のAAC2−2ペプチドを用いてin vitroで再刺激した。これらのペプチドに対するペプチド特異的エフェクターT細胞機能を、IFN−γELISPOT分析を用いて見出した(図3)。ヒト培養PBMCにおいて強く免疫原性であることが以前に示された同じプールのペプチド(群6)がまた、DNAワクチン接種後にT細胞による顕著な反応性を導いたことが見出された(図3)。このように、DNAを基礎とするワクチンとして投与されたAAC2遺伝子産物はin vivoで免疫原性であり、およびCTL活性の活性化で特徴づけられる強い細胞媒介性免疫応答を誘導する。
【0072】
実施例4
治療用AAC2−2ワクチン
AAC2−2遺伝子産物に対するpEF6−hAAC2−2DNAワクチンを用いる治療用ワクチン接種は、固形腫瘍の増殖を完全に遮断することが見出された。C57BL/6マウス8個体の群に、活発なおよび相対的に非免疫原性の腫瘍細胞株であるB16F10黒色腫細胞104個を皮下に負荷した。マウスを次いで、腫瘍負荷の6日後に開始して週間隔で免疫した。flu−NPタンパク質をコードするプラスミドまたは生理食塩水単独のどちらかを用いて処理した対照マウス(群当たり8個体)はすべて大きい腫瘍を生じた。対照的に、pEF6−hAAC2−2で免疫したマウスのすべて(8/8)は、50日の期間にわたって検出可能な腫瘍が無かった(図4)。すべてのマウスは80日間を通じて腫瘍が無いままであった(データ記載せず)。図5は、黒色腫移植後の、記載のさまざまなDNAベクターで処理したマウスの生存をプロットし、ふたたび黒色腫増殖に対するマウスの保護におけるAAC2−2ワクチン接種の完全な有効性を示す。ヒトAAC2−2遺伝子をコードするベクターを用いた免疫の結果として、有害な健康上の作用は観察されていない(免疫したマウスは対照マウスと同程度に活動的であり、および体重減少を示さなかった)。
【0073】
図4および5に示す通り、ヒトVEGFR−2(pBLAST−hflk1)をコードするプラスミドを用いたワクチン接種は、腫瘍負荷されたマウスを保護しなかった。実際、腫瘍はこれらのマウスではさらに速やかにさえ増殖した。pBLAST−hflk1プラスミドを用いてワクチン接種したマウス由来の血清のELISAによる分析は、VEGFR−2タンパク質に対するIgGが顕著な力価で誘導されることを見出した(データ記載せず)。これらの結果は、VEGFR−2に対して向けられる、抗体を基礎とする免疫応答は、血管新生および固形腫瘍増殖を防ぐのに有効でない可能性があることを示唆する。
【0074】
pEF6−hAAC2−2を用いて免疫したC57BL/6マウスにおける黒色腫固形腫瘍増殖の阻害は、そのタンパク質に対する免疫応答と相関する(図6)。C57BL/6マウスの免疫は上記の通り実施された。免疫したマウスに由来する脾臓細胞を、HLA−A2−Kb遺伝子導入マウスを用いた実験で使用したのと同一のペプチドプールで再刺激した(表3)。相当数のペプチドが、C57BL/6クラスI MHC(KbおよびDb分子)と交差反応した。ペプチドのプールの2つが特に(群1および群5)強いエフェクター細胞活性を誘導することがIFN−γELISPOT検定で見出された(図6)。これらの群のペプチドのすべてがまた、マウスBAZFタンパク質中の対応する配列と同一である。これらの結果は、ヒトAAC2−2を用いた免疫はそのマウスオルソログBAZFに対する免疫応答をマウスにおいて活性化し、および結果として腫瘍血管新生を阻害できることを強く示唆する。これらの結果は単一の実験に由来し、およびこれらの結果を示したのはすべての実験ではなかった。
【0075】
実施例5
BFA4腫瘍抗原
BFA4配列は、以前は何らかの種類の癌に原因づけられる機能が無かった既知の転写因子である「trichorhinophalangeal syndrome1」(TRPS−1) 遺伝子 (Genebank ID番号6684533 ; Momeniet et al,Nature Genetics,24(1),71−74,2000)であることが見出された。BFA4cDNA配列を図7に示し(配列番号28)、および推論されるアミノ酸配列を図8に示す(配列番号29)。
【0076】
A.BFA4ペプチドおよびポリクローナル抗血清
監視目的で、ウサギ抗BFA4ポリクローナル抗体を作製した。BFA4に対する抗体反応を誘導するために、下記の6種類のペプチド(22量体)を設計および合成した:
CLP 2589 MVRKKNPPLRNVASEGEGQILE BFA4(1-22)(配列番号78)
CLP 2590 SPKATEETGQAQSGQANCQGLS BFA4(157-178)(配列番号79)
CLP 2591 VAKPSEKNSNKSIPALQSSDSG BFA4(371-392)(配列番号80)
CLP 2592 NHLQGSDGQQSVKESKEHSCTK BFA4(649-670)(配列番号81)
CLP 2593 NGEQIIRRRTRKRLNPEALQAE BFA4(940-961)(配列番号82)
CLP 2594 ANGASKEKTKAPPNVKNEGPLNV BFA4(1178-1199)(配列番号83)
ウサギをペプチドで免疫し、血清を単離し、および下記の抗体力価が観察された:
【0077】
ペプチドはまた、下記の通り、免疫応答を促進するためKLHペプチドと結合することによって改変した:
BFA4(1-22) KLH-MVRKKNPPLRNVASEGEGQILE (CLP-2589;(配列番号78))
BFA4(157-178) KLH-SPKATEETGQAQSGQANCQGLS (CLP-2590;(配列番号79))
BFA4(371-392) KLH-VAKPSEKNSNKSIPALQSSDSG (CLP-2591;(配列番号80))
BFA4(649-670) KLH-NHLQGSDGQQSVKESKEHSCTK (CLP-2592;(配列番号81))
BFA4(940-961) KLH-NGEQIIRRRTRKRLNPEALQAE (CLP-2593;(配列番号82))
BFA4(1178-1200) KLH-ANGASKEKTKAPPNVKNEGPLNV (CLP-2594;(配列番号83))
pcDNA3.2BFA4(3.6mg)はまた、ニワトリにおいてポリクローナル血清を生じるためのDNA免疫に用いた。
【0078】
B.BFA4のクローニング
BFA4に関する完全なcDNA配列は〜10kbであり、および遺伝子はBT474腺管癌細胞で発現される。RT−PCRによる4kb,7kbまたは10kb産物の増幅によって完全長BFA4遺伝子を増幅するために、プライマー7717(順方向プライマー)および7723(逆方向プライマー)を設計した
プライマー7717:BFA4−BamHl/Fl(5'末端順方向)、Kozakを伴う:
5'CGGGATCCACCATGGTCCGGAAAAAGAACCCC 3' (DNA3.1についてBamHI,MP76)(配列番号84)
プライマー7723:BFA4−BamHI/R1(3'末端逆方向4kb):
5'CGGGATCCCTCTTTAGGTTTTCCATTTTTTTCCAC 3' (DNA3.1についてBamHI,MP76)(配列番号85)
BT−474細胞からTrizolを用いて取扱説明書に従って(Gibco BRL)異なるバッチで単離および凍結された総RNA10mgをRT−PCRで用い、BFA4遺伝子を増幅した。RT−PCR条件は、Taq Platinum 高信頼性酵素、OPC(オリゴ精製カートリッジ; Applied Biosystems)精製プライマーおよび精製総RNA/ポリA mRNA(BT474細胞)を用いて最適化した。最適化の結果として、単一バンドで4.0kb断片を生じた。
【0079】
BFA4配列を再増幅するために、mRNAをDNアーゼを用いて取扱説明書に従って(GibcoBRL)処理した。4kb DNAを、PCRを用いて、プライマー7717および7723プライマー(10pmol/マイクロリットル)およびTaq Platinum高信頼性 ポリメラーゼ(GIBCO BRL)酵素を用いて再増幅した。反応の組の両方についてサーモサイクラー条件は下記の通りであった:94℃(2分)、その後94℃(30秒)、52℃(30秒)、67℃(4分)および67℃(5分)の30サイクル、および最後に40℃10分。3個のBFA4クローンが、pCR2.1/TOPO−TAクローニング後に同定された。
【0080】
いくつかの突然変異が、BFA4配列の分析中に同定された。これらの配列を訂正するために、クローンJB−3552−1−2由来のBFA4遺伝子(pCR2.1/TOPO/BFA4)のBamHI/XhoI断片(5')を、クローンJB−3552−1−4由来のBFA4遺伝子(pCR2.1/TOPO/BFA4)のXhoI/BamHI断片(3')と交換した。この再組換え断片を次いでpMCS5BamHI/CAPにライゲーションした。クローンJB−3624−1−5が作製され、および正しい配列を含むことが見出された。
【0081】
単離されたBFA4クローンのヌクレオチド344は報告された配列とは異なった(BFA4ではC、TRPS−1ではT)。その変化は結果としてpheからserへのアミノ酸変化を生じた。この配列を報告された配列へ変えるために、クローンJB−3552−1−2由来のBFA4遺伝子(pCR2.1/TOPO/BFA4)のEcoRI/BglII断片(5')をpUC8:2へサブクローニングし、クローンJB−3631−2を生じた。このクローンは、BFA4タンパク質のアミノ酸115をセリンからフェニルアラニンへTRPS1タンパク質のように変化させるQuickchange(Stratagene)突然変異誘発のためのテンプレートとして用いた。選択されたクローンはJB−3648−2−3であった。突然変異誘発はまた、pMCS5BFA4(BT474)をBFA4タンパク質のアミノ酸115をセリンからフェニルアラニンへTRPS1タンパク質のように変化させるQuickchange(Stratagene)突然変異誘発のためのテンプレートとして用いて繰り返した。いくつかのクローンが、DNA配列決定によって正しいことが見出され、およびクローンの1つ(JB−3685−1−18)を以降のサブクローニングに用いた。
【0082】
JB−3685−1−18を次いで、BFA4コード配列を4種類の異なる発現ベクター:1)ポックスウイルス(NYVAC)ベクターpSD554VC(COPAK/H6;JB−3707−1−7);2)pcDNA3.1/Zeo(+)(JB−3707−3−2);3)pCAMycHis(JB−3707−5−1);および、4)セムリキ森林ウイルスアルファウイルスレプリコンベクターpMP76(JB−3735−1−23)のBamHI部位へサブクローニングするのに用いた。JB−3707−1−7、JB−3707−5−1、およびJB−3735−1−23内のBFA4コード配列は、DNA配列決定によって確認された。
終止コドンがpcDNA3.1/Zeo/BFA4構造(JB−3707−3−2)中のクローニングされた配列の終わり近くに導入された。独自のEcoR1部位を開き、および挿入してBFA4コード配列と共に終止コドンをフレーム内に導入した。いくつかの推定されるクローンがEcoR1部位の消失によって同定されたが、しかし3個のクローン(JB−3756−1−2;JB−3756−3−1;およびJB−3756−4−1)が配列決定された。3個すべては挿入の部分について正しいことが見出された。クローンJB−3756−3−1は正しい配列および方向を有することが同定された。
【0083】
Mycおよびmyc/hisタグ(Evansetal、1985)をオリゴヌクレオチドを用いて導入し、pcDNA3.1/Zeo/BFA4構造(JB−3707−3−2)中へEcoRI/EcoRV部位にアニーリングおよびライゲーションした。これらの構造についていくつかのクローンが得られた。正しい配列および方向を有する3個のクローンが得られた:1)PcDNA3.1/Zeo/BFA4/myc−tag(JB−3773−1−2);2)PcDNA3.1/Zeo/BFA4/mychis−tag(JB−3773−2−1);および、3)PcDNA3.1/Zeo/BFA4/mychis−tag(JB−3773−2−2)。
【0084】
C.BFA4の発現
1.ポックスウイルスベクターからの発現
pSD554VC(COPAK/H6;JB−3707−1−7)ベクターを用いてNYVAC−BFA4ウイルスを作製した。In vitro組換えを、プラスミドCOPAK/H6/BFA4およびNYVACを用いてRK13/CEF細胞で実施した。NYVAC−BFA4(vP2033−NYVAC−RK13)を作製し、およびストック終濃度1.12x109/ml(10ml)での3回の濃縮の完了後、P3レベルへ増幅した。Vero細胞をNYVAC−BFA4にM.O.I.0.5pfu/細胞にて感染させた。BFA4タンパク質の発現を確認するために、細胞溶解物および培地を感染の24時間後に採取した。濃縮した培地の1/20および溶解物の1/40をウェスタンブロットに負荷し、およびBFA4ペプチドCLP2589、2591、2598および2594(抗BFA4抗血清のペプチド配列および調製については上記参照)に対するウサギ抗血清と共にインキュベートした。約120kDのバンドが、NYVAC−BFA4感染Vero細胞の溶解物および濃縮培地の両方に見られ、これはVero対照細胞(「ブランク感染」)、親NYVACウイルスに感染したVero細胞、または濃縮培地のどれにも見られなかった。
【0085】
2.pcDNA3.1を基礎とするベクターからの発現
pcDNAを基礎とするベクターからのBFA4の発現を証明するため、およびBFA4ペプチドに対して作製したポリクローナル血清の品質を分析するため、一過性トランスフェクション試験を実施した。下記の構造を用いてBFA4遺伝子の発現を試験した:pcDNA3.1zeoR/BFA4、pMP76/BFA4、pcDNA3.1zeoR/BFA4/Myc tagおよび pcDNA 3.1 zeoR/BFA4/MycHis tag。BFA4発現プラスミド(5μgおよび10μg)をpGL3ルシフェラーゼ(1□g)(Promega)と、Geneポーター試薬(Gene Therapy Systems)をトランスフェクション 試薬として用いて同時トランスフェクションした。トランスフェクション後48時間で、全細胞抽出物を、細胞を細胞溶解試薬(200μl)中にかき取りおよび1サイクルの凍結融解(−20℃凍結、37℃融解)によって調製した。トランスフェクション効率は、相対ルシフェラーゼ単位(RLU)を2連で測定することでルシフェラーゼレポーター遺伝子の発現を分析することにより定量した。同様のRLU値が、BFA4発現ベクターの存在下および非存在下でルシフェラーゼ構造を同時トランスフェクションした試料で得られた。異なる量(5μgおよび10μg)のBFA4発現ベクターについて毒性またはRLU値に有意差は観察されなかった。アルカリホスファターゼ系を使用しCHOK1細胞抽出物(pCDNA3.1/zeo/BFA4/MycHisTag)および抗BFA4ポリクローナル抗血清を用いた予備ウェスタンブロット分析は、BFA4ベクターでトランスフェクションされた細胞の抽出物中に、約120kDaバンドにバンドを証明した。
【0086】
BFA4を発現しているCOSA2細胞の安定クローンを得るために、安定トランスフェクション試験を開始した。これらの細胞は、in vitro刺激検定法に有用である。pcDNA3.1zeoR/BFA4(2.5μgおよび20μg)、およびpcDNA3.1zeoR/BFA4/MycHis tag (2.5μg)を用いてBFA4の発現を試験した)。pGL3ルシフェラーゼ(2.5μg)を、トランスフェクション効率を監視する対象ベクターとして用いた。
【0087】
Geneポーター試薬を用いてDNAベクターのトランスフェクションを促進した。最初の実験について、トランスフェクション後48時間で、全細胞抽出物を、細胞を細胞溶解試薬(200μl)中にかき取りおよび1サイクルの−20℃/37℃での凍結融解によって調製した。2回目の実権から得られたトランスフェクションされた細胞をトリプシン処理し、凍結ショックで確立し、および細胞をZeocinの漸増濃度(0、250、500、750および1000μg/ml)中に平板播種した。トランスフェクションされていないCosA2細胞は、60〜80%集密にて3週間100μg/ml(Zeocin)、および10%集密にて250μg/ml(Zeocin)で生存した。しかし、3週間後、より高い薬物濃度では(500〜1000μg/ml)、トランスフェクションされていない細胞およびZeocinの高濃度(500〜1000μg/ml)を含むプレートでは生細胞は観察されなかった。
【0088】
異なる薬物濃度(Zeocin−250、500、750および1000μg/ml)で増殖しているいくつかのZeocin耐性クローンを、10cmプレートから3週間後に採取した。これらのクローンをさらに3.5cmプレートでZeocin500、750および1000μg/mlの存在下で増殖させた。これらのクローンの凍結ロットを調製し、および各プール(pcDNA3.1zeoR/BFA4、およびpcDNA3.1zeoR/BFA4/MycHis tag)からいくつかのクローンをT75cm2培養瓶でZeocin1mg/mlの存在下で増殖させた。各プール(pcDNA3.1zeoR/BFA4、およびpcDNA3.1zeoR/BFA4/MycHis tag)からの5個のクローンをT75cm2培養瓶でZeocin1mg/mlの存在下で増殖させた。細胞はZeocin医薬(1mg/ml)選択下に維持される。6個のクローンをBFA4ペプチドパルス標的実験に使用し、および2個のクローンがBFA4を中等度のレベルで発現することが免疫検定法によって見出された。非接着細胞株K562A2およびEL4A2もまた、安定な細胞株を作製するために、これらのベクターを用いてトランスフェクションした。
【0089】
3.原核発現ベクター
pCDNA3.1/BFA4由来のN−末端54kDaBFDA4をコードするBamHI−Xho−1断片(1.5Kbp)断片をpGEX4T1−6His(Veritas)プラスミドにクローニングした。このベクターは、tacプロモーター、その後にN−末端グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST−26kDa)およびGST融合タンパク質のC末端に6ヒスチジンタグを含む。
【0090】
BFA4−N54発現プラスミドを用いてBL21細胞を形質転換し、および25℃にて抗生物質選択培地(2L培養)中で一定のOD(600nm)まで増殖させ、およびその後、1mM IPTG.を用いて誘導した。GST−BFA4−N54は可溶性タンパク質であることがわかった。可溶性画分の清澄化抽出物をバッチ毎にグルタチオン−Sepharose 4Bに吸着させ、および10mM還元グルタチオンを用いて溶出した。タンパク質濃度の推定およびTCA沈澱後に画分を分析した。溶出液中の分子量85kDaの特異的ポリペプチドがSDS−PAGEによって確認された。組換えタンパク質はグルタチオン−Sepharoseによって精製され、さらなる精製のためにNiNTAカラムに吸収された。結合したタンパク質は0.25Mイミダゾールを用いて溶出した。タンパク質を、40%グリセロールを含むTBSに対して透析し、結果として4.5mgのGST−BFA4−N54−6His(N末端BFA4タンパク質)タンパク質を生じた。BFA4の発現は、ウサギ抗BFA4ポリクローナル抗体を用いてウェスタンブロットによって確認された。
【0091】
D.抗BFA4免疫応答
1.BFA4ペプチド
BFA4に対する遺伝子免疫ベクターに加えて、BFA4に対する免疫試薬が作製されている。BFA4遺伝子産物の範囲にわたる九量体ペプチド100種類のライブラリが合成された。ペプチドは、HLA−A*0201と結合する潜在能力に基づいて選択された。表5は、HLA−A*0201に対する、BFA4タンパク質に由来する試験した100種類の九量体ペプチドエピトープを列記する(下記参照):
【表5−1】
【表5−2】
【0092】
ペプチドライブラリを、免疫試験のために、表6(下記参照)に示す通りの7〜10種類の異なるペプチドを含む別々の群へプールした。BFA4全体にわたるペプチドライブラリに加えて、N−末端の300個のアミノ酸(1〜300位)にわたる組換えタンパク質が合成されおよびE.coliから精製されている。
【表6−1】
【表6−2】
【0093】
2.BFA4ペプチドの免疫反応性およびヒトエフェクターT細胞の作製:
BFA4ペプチドを、免疫試験のために7〜10種類のペプチドを含む別々のプールに群分けした。溶解したペプチドプールを自家HLA−A*0201樹状細胞にパルスし、および自家T細胞濃縮PBMC調製物を活性化するために用いた。各ペプチドプール刺激培養に由来する活性化T細胞を、CD40L活性化自家B細胞を用いてさらに3〜5回再刺激した。IFN−γELISPOT分析およびペプチドパルスした標的細胞のCTL傷害についての検定を、BFA4に由来するこれらのエピトープの免疫原性を実証するために実施した。
【0094】
ヒトT細胞は、ELISPOT検定においてIFN−γを分泌する能力によって示される通り、BFA4タンパク質に由来するペプチドのいくつかのプールに対してエフェクター細胞活性を実証した。これらの実験は異なる回数のAPC刺激後に繰り返し、結果として同一の反応性ペプチド群が得られた。ペプチド群1、2、4、5、6、7、8、9、および10はこれらの検定において免疫反応性であることが見出された。続いて、これらの反応性ペプチド群を、各群から単一のペプチドを別々に試験した別のIFN−γELISPOT検定でデコンボルーションした。ELISPOT検定でのBFA4ペプチド群1、5、6、7、8、9、および10からの個別のペプチド。この分析は、ヒトT細胞によって認識される、BFA4タンパク質に由来するいくつかの個別の強く反応性であるペプチドを明らかにした。これらの単独のペプチドの多数はまた、ペプチド負荷したヒトT2リンパ腫細胞標的のCTL活性傷害も誘導したことも観察された。これらのペプチドを表7に列記する:
【表7】
【0095】
D.in vivoでの免疫後のBFA4に対する免疫応答:
pcDNA3.1/Zeo−BFA4プラスミドを用いて、マウスKbα3ドメインに融合したハイブリッドHLA−A*0201α1α2ドメインをC57BL/6マウスで発現している遺伝子導入マウス(A2−Kbマウス)を免疫した。DNA免疫および活性化された脾臓細胞の採取後の、プールしたペプチドの群を用いたIFN−γELISPOT分析は、いくつかの反応性BFA4ペプチド群を明らかにした。これらの群の一部(特に群7および8)はまた、培養ヒトT細胞において強く反応し、ペプチドの重なり合う群がヒトT細胞によって認識され、およびワクチン接種後に自然に処理されHLA−A2上に提示されることを示唆した。
【0096】
ワクチン接種実験はまた、NYVAC−BFA4およびMP76−18−BFA4ベクターを用いてA2−Kbマウスで実施した。マウスを、10〜20gのMP−76−18−BFA4および1〜2x107pfuのvP2033(NYVAC−BFA4)を用いて皮下免疫し、および28日後に等しい量の各ベクターを用いて追加免疫した。免疫マウス由来の脾臓細胞の、BFA4ペプチドのプールを用いた再刺激は、BFA4ペプチド群2、3、4、5、7、9、および10に応答したIFN−γ産生の誘導をELISPOT検定で明らかにした。このように、CMVプロモーターに動かされる真核プラスミド、NYVAC、またはセムリキレプリカーゼを基礎とするDNAプラスミドにコードされるBFA4遺伝子はすべて、BFA4タンパク質に対してin vivoでT細胞応答を誘導する能力があった。
【0097】
実施例6
BCY1腫瘍抗原
BCY1遺伝子は、「後側発現物質(posterior−expressed maternal)遺伝子−3」(PEM−3)と呼ばれCaenorhabtidis elegans胚における後側から前側のパターン化に関与する線虫遺伝子と相同である部分オープンリーディングフレーム(ORF)として検出された。この遺伝子の癌への関与は以前に記録されていない。
【0098】
A.BCY1およびアミノ酸DNA配列
部分DNA配列がBCY1について最初に決定された。プライマー9616SXCおよび9617SXCは、BCY I部分DNA 配列に由来し、およびBCY IをRT−PCRによってCalu 6 総RNAからクローニングするために設計されている。プライマーは、下記の通り、PCR産物が両端にBamHI部位を有しおよびATG開始コドンおよびKozak配列を5'末端に有するように設計された:
9616SXC: 5′ CAGTACGGATCCACCATGGCCGAGCTGCGCCTGAAGGGC 3 (配列番号183)
9617SXC: 5′ CCACGAGGATCCTTAGGAGAATATTCGGATGGCTTGCG 3′(配列番号184)
1.2 Kbの予想単位複製配列が、最適化された条件下でThermoScript RT−PCR System(Invitrogen)を用いて得られた。3回の別々のRT−PCRに由来するPCR産物をBamHIで消化し、および別々にpcDNA3.1/Zeo(+)に挿入した。結果として生じるクローンは、最初のRT−PCRからMC50A6、MC50A8およびMC50A19;2回目のRT−PCRからMC54.21およびMC55.29;および、3回目のRT−PCRからMC55.32であった。下記のプライマーをクローンの配列決定に使用した:
9620MC: 5′ TAATACGACTCACTATAGGG 3′(配列番号185)
9621MC: 5′ TAGAAGGCACAGTCGAGG 3′(配列番号186)
9618MC: 5′ GAAAACGACTTCCTGGCGGGGAG 3′(配列番号187)
9619MC: 5′ GCTCACCCAGGCGTGGGGCCTC 3′(配列番号188)
6個すべてのクローンのDNA配列決定は、図10に示す通りの、元の部分BCY1配列とは下記の差を有する共通配列(配列番号30)を示した:結果としてAlaからGlyへのアミノ酸置換を生じる1031位のCからGへの置換;結果としてThr欠失を生じる1032〜1034位のGC欠失;および、ThrからAlaへのアミノ酸置換を生じる1177位のAからGへの置換。クローンMC50A8およびMC55.29は共通配列と同一である。BCY1のアミノ酸配列を図10(配列番号31)に示す。
B.BCY1乳癌抗原に対する免疫試薬:
BCY1遺伝子産物の範囲にわたる九量体ペプチド100種類のライブラリが合成された。ペプチドはHLA−A*0201と結合する潜在能力に基づいて選択された。表8は、HLA−A*0201に対する、BCY1タンパク質に由来する試験した100種類の九量体ペプチドエピトープを列記する(下記参照):
【表8−1】
【表8−2】
【0099】
表9は、免疫試験に用いたペプチドの群を示す:
【表9】
【0100】
C.BCY1ペプチドの免疫反応性およびヒトエフェクターT細胞の作製
BCY1に由来する100種類のペプチドのライブラリを、免疫試験のために7〜10種類のペプチドを含む10群に分けた。溶解したペプチドプールを自家HLA−A*0201樹状細胞にパルスし、および自家T細胞濃縮PBMC調製物を活性化するために用いた。各ペプチドプール刺激培養に由来する活性化T細胞を、CD40L活性化自家B細胞を用いてさらに3〜5回再刺激した。IFN−γELISPOT分析およびペプチドパルスした標的細胞のCTL傷害についての検定を、BCY1に由来するこれらのエピトープの免疫原性を実証するために実施した。
【0101】
ヒトT細胞は、ELISPOT検定においてIFN−γを分泌する能力によって示される通り、BCY1タンパク質に由来するペプチドのいくつかのプールに対してエフェクター細胞活性を実証した。これらの実験は異なる回数のAPC刺激後に繰り返し、結果として同一の反応性ペプチド群が得られた。ペプチド群1、2、3、4、5、6、および7はこれらの検定において免疫反応性であることが見出された。続いて、これらの反応性ペプチド群を、各群から単一のペプチドを別々に試験した別のIFN−γELISPOT検定でデコンボルーションした。この分析は、ヒトT細胞によって認識される、BCY1タンパク質に由来するいくつかの個別の強く反応性であるペプチドを明らかにした。(図11)。これらの単独のペプチドの多数はまた、ペプチド負荷したヒトT2リンパ腫細胞標的のCTL活性傷害も誘導した。これらのペプチドを表9に列記する。
【0102】
実施例7
BFA5/NYBR−1乳癌抗原
A.BFA5の同定
マイクロアレイプロファイリング分析は、52の正常非腫瘍組織のパネルと比較して、BFA5が、乳房腫瘤生検試料54のうち41で(76%)低〜高レベルで、および乳房腫瘤54のうち31で(57%)高レベルで発現したことを示した。In situハイブリダイゼーション(ISH)を、一連のBFA5DNAプローブを用いて実施し、およびそのマイクロアレイを腫瘍の少なくとも61%について非常に強いシグナルを示して確認した。さらなるバイオインフォマティクス評価は、これらの遺伝子発現分析結果の結果を支持した。
【0103】
BFA5ヌクレオチド配列の配列分析は、いくつかの胎児および成人脳cDNAクローンから単離された2つの未同定ヒト遺伝子:KIAA1074(GenBank登録番号XM~159732);および、KIAA0565(GenBank登録番号AB011137)(Kikuno,et al.The complete sequences of 100 new cDNA clones from brain which code for large proteins in vitro.DNA Res.6:197−205)との高度の類似性を明らかにした。これらの遺伝子は、推定されるZnフィンガー領域および核局在化配列を含むことが見出された。BFA5は、別の研究者によって、乳癌抗原の可能性があることが示唆されている(Jager,et al.2001.Identification of a tissue−specific putative transcription factor in breast tissue by serological screening of a breast cancer library.Cancer Res.61:2055−2061および国際公開第01/47959号パンフレット)。これらの発表のそれぞれで、ヌクレオチド配列BFA5はNYBR−1(「New York Breast Cancer−1」;GenBank登録番号AF269087(ヌクレオチド)およびAAK27325(アミノ酸)と表された。本明細書の目的のためには、その配列をBFA−5と呼び、BFA−5 および NYBR−1 の語は相互に交換可能である。
【0104】
Jagerらによって以前に示されおよび上記の国際公開第01/47959号パンフレットに記載の通り、BFA5は乳腺で特異的に発現され、分析した乳房腫瘤の12/19に発現されている。BFA5/NYBR−1遺伝子の構造は、それがbZIP部位(DNA結合ドメインとそれに続くロイシンジッパーモチーフ)を伴う150〜160kDの核転写因子をコードすることを明らかにしている。その遺伝子はまた、タンパク質−タンパク質相互作用における役割を示唆する5個縦列アンキリン反復を含む。これらのアンキリン反復は、そのタンパク質のホモ二量体化に関与しうる。BFA5cDNA配列を図12および配列番号32に示す。BFA5アミノ酸配列を図13および配列番号33に示す。
【0105】
B.BFA51の免疫反応性
ヒトT細胞の活性化およびELISPOTにおけるIFN−γ分泌。
【0106】
HLA−A*0201に対する中程度または強力な結合物質であることが予想される、BFA5/NYBR−1コード配列に由来する100種類のペプチドのライブラリを、RammenseeおよびParkerアルゴリズムを用いて設計した。ライブラリを10種類のペプチドの10個のプールにさらに分け(表11参照)、および、ペプチドを成熟自家樹状細胞にパルス後に、各プールを用いて10の異なる培養T細胞を活性化した。BFA5/NYBR−1ペプチドのライブラリを用いて2回の実験を実施し、下記の通りHLA−A*0201ヒトT細胞における免疫反応性を実証した。
【表10】
【0107】
ELISPOT分析を、BFA5ペプチドの各プールを用いて4回の刺激で活性化したヒト培養T細胞について実施した。図14Aでは、X軸の下の数字はペプチドプールの番号(1〜10)を示す。CMVpp65ペプチドおよびFluマトリクスペプチドに対する反応性を、実験でT細胞活性化について陽性対照として用いた。各実験は、「AP10」で表す一人のHLA−A*0201+ドナーに由来するPBMCおよび樹状細胞を用いて実施した。結果は、BFA4は検定では100、000細胞当たりの高いELISPOTカウントを有し顕著に反応性であったが、BFA5は9/10プールについてさらに反応性であり、ELISPOT反応性を実証したことを示す。同様の結果が、BFA4およびBFA5/NYBR−1の両方に関して別のHLA−A*0201について得られた。グラフは600スポットで最高値となるが、それを超えるとELISPOT読み取り機が正確な計数を与えないためである。600スポットの値を有する培養は、この数のスポットよりも多数を有する。
【0108】
多数のBFA5ペプチドプールは、高レベルのIFN−γ産生によって示される通り、反応性である(図14A)。単独の反応性BFA5ペプチドを単離するために、各反応性ペプチドプールを次いで個別のペプチドに分け、および免疫原性についてELISPOT分析を用いて分析した。図14Bに示す通り、BFA5はいくつかの単一の反応性ペプチドを有し、BFA4よりも高度に免疫原性である。同様の結果が、2つの独立したPBMC培養実験で得られた。
【0109】
ELISPOT分析に加えて、BFA5ペプチドによって活性化されたヒトT細胞を、CTLとして機能する能力を測定するために検定した。細胞をペプチドパルスした樹状細胞、続いてCD40リガンド活性化B細胞(5回の刺激)を用いて活性化した。示した実験は、HLA−A*0201+ドナーAP31から単離されたPBMCを用いて実施した。単離されたT細胞は、51Cr放出検定で、ペプチド負荷T2細胞を用いて試験した。T細胞対標的比10:1、5:1、および1:1での%特異的溶解を、BFA5/NYBR−1ペプチドのプールのどちらかまたは個別のペプチドを用いてパルスしたT2細胞について示す。グラフはc非特異的HLA−A*0201結合HIVペプチド(対照)を用いて負荷された標的に対して誘導されたCTL活性、続いてペプチドプール(プール1など)に対するCTL活性、および次いで各プールからの個別のペプチドによって誘導された活性を右側に示す。高レベルの細胞毒性が、1:1のE:T比で一部のペプチドに観察された。対照HIVペプチドによって誘導されたCTL活性(パーセント特異的溶解)は一般的に<10%であった。同様の結果が、HLA−A*0201を発現している別のPBMCドナー(AP10)について得られた。図14Cは、多数のBFA5ペプチドが、BFA5ペプチド負荷標的細胞のT細胞媒介性細胞毒性を引き起こすことを示す。表11は、免疫原性を有するペプチドを列記する。5種類のペプチド(LMDMQTFKA、ILIDSGADI、ILSWAKLL、SQYSGQLKV、およびELCSVRLTL)が、IFN−γ分泌およびCTL活性の両方を、両方のドナーに由来するT細胞で誘導することが見出された。
【表11】
【0110】
C.免疫試薬
ポリクローナル抗血清を、BFA5の下記の一連の22〜23量体ペプチドに対して作製した:
9620MC: 5′ TAATACGACTCACTATAGGG 3′
9621MC: 5′ TAGAAGGCACAGTCGAGG 3′
9618MC: 5′ GAAAACGACTTCCTGGCGGGGAG 3′
9619MC: 5′ GCTCACCCAGGCGTGGGGCCTC 3′
ウサギからの予備採血試料を処理しおよび−20℃にて保存した。ウサギを下記の通り免疫した:1)ペプチドをフロイント完全アジュバント(FCA)とのエマルジョンとして投与した;および、2)2週間後、ペプチドをスカシ貝ヘモシアニン(KLH)と結合し、およびフロイント不完全アジュバントFIAとのエマルジョンとして投与した。下記の結果が観察された:
【表12】
【0111】
予備採血試料の結果は、すべての試料についてIgG力価<100を示した。
【0112】
ポリクローナル抗血清の品質を評価するために、ウェスタンブロットを、BFA5に対する血清を用いて実施した。血清を、BT474、MDMB453、MCF−7、Calu−6、およびCosA2細胞から得られた細胞抽出物に対して別々にスクリーニングした。BFA5タンパク質のおよその予想分子量は153kDaである。220kDのバンドがBT474抽出物でCLP2980抗体について観察され、しかしMDMB453細胞抽出物には観察されなかったが、しかし130kDのバンドがMDMB453抽出物に存在した。両方のバンドはこの分析で試験したポリクローナル抗血清と合致することが見出された。これらのバンドのどちらも、陰性対照には存在しなかった。したがって、そのポリクローナル抗血清はBFA5に対して特異的であると結論することができる。
【0113】
実施例8
BCZ4腫瘍抗原
A.BCZ4配列
BCZ4配列は、乳癌試料において過剰発現された配列として検出された。BCZ4のヌクレオチド配列および推論されるアミノ酸配列を、図15、配列番号34(BCZ4cDNA)、および配列番号35(BCZ4アミノ酸配列)に示す。
【0114】
B.BCZ4乳癌抗原に対する免疫試薬:
BCZ4遺伝子産物の範囲にわたる九量体ペプチド100種類のライブラリが合成された。ペプチドは、HLA−A*0201と結合する潜在能力に基づいて選択された。表13は、HLA−A*0201に対する、BCZ4タンパク質に由来する試験した100種類の九量体ペプチドエピトープを列記する(下記参照):
【表13】
【0115】
C.BCZ4ペプチドの免疫反応性およびヒトエフェクターT細胞の作製
AP10で表されるHLA−A2.1陽性ドナーに由来するヒトPBMCを、BCZ4抗原に由来する9量体ペプチドの異なるプール(一覧は表13を参照)を用いてパルスした自家樹状細胞を用いて活性化した。活性化T細胞を、12日後に、同一の各ペプチドプールを用いてパルスした自家CD40−リガンド活性化B細胞を用いてさらに8〜10日間再刺激した。この二次刺激をさらに、計3回の刺激を繰り返した。活性化T細胞を3回目の刺激後に単離し、および示す通り(図16A)、各BCZ4ペプチドプールに対するヒトIFN−γ産生についてのELISPOT分析に供した。図16Aでは、青色の棒はBCZ4ペプチドプールに対する反応性を、および赤色の棒は陰性対照としてHLA−A2.1−結合HIVペプチドについて示す。陽性対照CMVおよびfluに対するHLA−A2.1−結合記憶抗原ペプチドを実験で陽性対照として用いた。標準偏差を表示する。実験を、追加のもう1回のペプチド刺激後の活性化T細胞について繰り返し、同様の結果を得た。
【0116】
ペプチドプールを、IFN−γELISPOT検定を用いてデコンボルーションした(図16B)。ドナーAP10由来のヒトT細胞を、表13に示す異なるプールのBCZ4ペプチドで刺激した。刺激は記載した別の抗原について記載の通り医実施した。4回および5回の刺激後に、T細胞を採取し、および各プール中の各個別のペプチドを用いてIFN−γ産生についてELISPOT分析に供した。表示の棒はペプチド反応性for各特異的プールについての個別のペプチド反応性を表す。表13は反応性ペプチドのそれぞれを特定する。この実験を、AP10ドナーT細胞のもう1回の刺激後に繰り返し、同様の結果を得た。
【0117】
ELISPOT分析に加えて、BCZ4 ペプチドによって活性化されたヒトT細胞を、CTLとして機能する能力を測定するために検定した。細胞をペプチドパルスした樹状細胞、続いてCD40リガンド活性化B細胞(5回の刺激)を用いて活性化した。示した実験は、HLA−A*0201+ドナーAP31から単離されたPBMCを用いて実施した。単離されたT細胞は、51Cr放出検定で、ペプチド負荷T2細胞を用いて試験した。T細胞対標的比10:1での%特異的溶解を、個別のBCZ4ペプチドを用いてパルスしたT2細胞について示す。高レベルの細胞毒性が、一部のペプチドに観察された(図16C)。対照HIVペプチドによって誘導されたCTL活性(パーセント特異的溶解)は一般的に<10%であった。同様の結果が、HLA−A*0201を発現している別のPBMCドナー(AP10)について得られた。
【0118】
表14は個別のペプチドの反応性を列記する:
【表14】
【0119】
D.BCZ4発現ベクター
BCZ4を、pSporty/BCZ4というプラスミドをテンプレートとして用いて、Platinum Taq(Invitrogen)を用いてPCR増幅した。増幅条件は下記の通り:1)94℃2分;2)94℃30秒、53℃30秒、67℃2.5分のサイクル35回;および、3)67℃7分。PCRプライマーは、EcoRI制限部位を含み、およびORFに直接隣接する(すなわち、無関係な配列が無い)ように設計した。プライマー配列は下記の通り:AS032F(順方向プライマー)5'GGAATTCAACATGGACATTGAAGCATATCTTGAAAGAATTG 3'(配列番号591) AS034R (逆方向 プライマー) 5'GGAATTCCTGGTGAGCTGGATGACAAATAGAC AAGATTG3'(配列番号592)。Kozak配列もまた順方向プライマーに含まれた。pcDNA3.1/Zeo (+) をEcoRIで切断し、および自己ライゲーションを防ぐためにCIPを用いて処理した。BCZ4単位複製配列を次いでEcoRI消化pcDNA3.1/Zeo(+)にライゲーションした。配列決定は、予測BCZ4配列に合致する1個のクローン(AS−579−5)を与えた。BCZ4タンパク質を次いで、この発現ベクターから標準的方法を用いて発現した。
【0120】
実施例9
BFY3腫瘍抗原
A.BFY3配列
BFY3配列が、過剰発現された配列として乳癌試料中に検出された。BFY3w/EcoRI末端の、HTB131総RNAからの、AS007F(順方向プライマー)5'GGAATTCACCATGCTTTGGAAATTGACGGAT 3'(配列番号593)およびAS010R(逆方向プライマー)5'GGAATTCCTCACTTTCTGTGCTTCTCCTCTTTGTCA3'(配列番号594)を用いたRT−PCR増幅を実施した。PCR産物をEcoR1で消化し、および、EcoRI消化しおよびCIP処理したpcDNA3.1/Zeo(+)ベクターへライゲーションによってクローニングした。いくつかの陽性クローンが、制限消化およびAS−391−2一致予測BFY3配列の配列結果によって特定された。BFY3のヌクレオチド配列および推論されるアミノ酸配列を、図17、配列番号36(BFY3cDNA)、および配列番号37(BFY3アミノ酸配列)に示す。
B.BFY3乳癌抗原に対する免疫試薬
BFY3遺伝子産物の範囲にわたる九量体ペプチド100種類のライブラリが合成された。ペプチドは、HLA−A*0201と結合する潜在能力に基づいて選択された。表15は、HLA−A*0201に対する、試験したBFY3タンパク質に由来する試験した100種類の九量体ペプチドエピトープを列記する(下記参照):
【表15】
【0121】
AP31で表される、HLA−A2.1陽性ドナー由来のヒトPBMCを、BFY3抗原に由来する9量体ペプチドの異なるプール(一覧は表1を参照)を用いてパルスした自家樹状細胞を用いて活性化した。活性化T細胞を、12日後に、同一の各ペプチドプールを用いてパルスした自家CD40−リガンド活性化B細胞を用いてさらに8〜10日間再刺激した。この二次刺激をさらに2回、計4回の刺激を繰り返した。活性化T細胞を4回目の刺激後に単離し、および示す通り、各BFY3ペプチドプールに対するヒトIFN−γ産生についてのELISPOT分析に供した。反応性青色の棒はBFY3ペプチドプールに対する反応性を、および赤色の棒は陰性対照としてHLA−A2.1−結合HIVペプチドについて示す。標準偏差を表示する。実験を、異なる回のペプチド刺激からの活性化T細胞について2回繰り返し、同様の結果を得た(図18A)。
【0122】
BFY3ペプチドプールを、IFN−γELISPOT検定でデコンボルーションしおよび試験した。ドナーAP10由来のヒトT細胞を、表15に示すBFY3ペプチドの異なるプールを用いて刺激した。刺激は、記載した他の抗原について前述した通りに実施した。4回の刺激後、各培養からのT細胞を採取し、および、ペプチド各プール中の個々のペプチドを用いてIFN−γ産生についてのELISPOT分析に供した。図18Bは、特定の各プールについての個々のペプチド反応性を図解する。
【0123】
ELISPOT分析に加えて、BFY3ペプチドによって活性化されたヒトT細胞を反応性について検定した。ペプチドプール当たり10種類のペプチドから成るペプチドのプール10個を用いてCTLを作製した。エフェクターのこれらの10個の群を、対応するペプチドプールを用いてパルスした標的を傷害するのに使用した。プール1、3、5、6、および7に由来するペプチドは認識されたことが見出され、それらのプール中のペプチドはCTLを生じることができることを示した(図18C)。これらの10個のプールから、ペプチド3344、3320、3378、2272、および3387がCTLによって強く認識された(図18D)。「中等度に認識された」ペプチドは、3369、3355、および3362を含んだ(図18D)。BFY3をトランスフェクションしたCosA2細胞は、プール1および3から生じたCTLによって殺され、これらのプールに由来する処理されおよび提示されたエピトープは免疫的に関係することを示した(図18E)。この細胞毒性を担うペプチドは3320および3344である。表16はBFY3ペプチドの特性を要約する。
【表16】
【0124】
C.BFY3発現ベクター
BFY3発現ベクターを構築するために、AS007F(順方向プライマー)5' GGAATTCACCATGCTTTGGAAATTGACGGAT3'(配列番号595)およびAS010R(逆方向プライマー)5' GGAATTCCTCACTTTCTGTGCTTCTCCTCTTTGTCA3'(配列番号596)を用いたHTB131総RNAからのBFY3w/EcoRI末端のRT−PCR増幅を実施した。PCRは標準的方法を用いて実施した。増幅産物はEcoRIを用いて消化し、およびCIP処理pcDNA3.1/Zeo(+)ベクターへライゲーションによって、標準的方法を用いてクローニングした。いくつかの陽性クローンが、制限消化によって特定されおよび配列決定された。配列決定は、クローンAS−391−2の配列が、予想されるBFY3配列とマッチしたことを示した。BFY3タンパク質が次いでBFY3発現ベクターを用いて標準的方法を用いて発現された。
【0125】
実施例10
複数の腫瘍抗原をコードする発現ベクター
一部の場合には、複数の腫瘍抗原をコードする発現ベクターを構築するのが好ましい可能性がある。抗原の一定の組み合わせが、単一の発現ベクターと組み合わせた場合、単一のベクターで多数の患者の発現プロファイルを包含することがわかっている。たとえば、異なる患者に由来する乳癌試料の1つの試験は、BFA4およびBFA5の組み合わせが試料の74%の発現プロファイルをカバーし;BCY1およびBFA5の組み合わせが試料の65%をカバーし;BCZ4およびBFA5の組み合わせが試料の69%をカバーし;BFY3およびBFA5の組み合わせが試料の67%をカバーし;BCY1、BFA4およびBFA5の組み合わせが試料の78%をカバーし;BCZ4、BFA4およびBFA5の組み合わせが試料の81%をカバーし;および、BFY3、BFA4、およびBFA5の組み合わせが試料の74%をカバーしたことを示した。したがって、乳癌患者の間で最も一般的な発現プロファイルが単一のベクターを用いて対処されうるように、複数抗原発現構造を構築することができる。そのような複数抗原発現ベクターは、腫瘍抗原配列のそれぞれをコードする核酸を、プロモーターまたは他の転写調節配列の近傍に配置する、標準的なクローニング技術を用いて構築する。発現ベクターは、腫瘍抗原をコードする各ヌクレオチド配列が特異的プロモーターと調節可能に結合するように、または腫瘍抗原が集合的に単一のプロモーターと調節可能に結合しおよび単一の発現単位として発現されうるように、操作することができる。単一の発現単位が構築される場合は、腫瘍抗原配列を発現後に分けるために有用であるヌクレオチド配列を腫瘍抗原配列の間に挿入することができる。有用な配列は、IRES配列、プロテアーゼ切断部位に相当するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、などを含む。そのような複数抗原発現ベクターを構築するのに適したベクターは、たとえば、ワクシニア、アビポックス、ALVACおよびNYVACといったポックスウイルスを含む。
【0126】
本発明は好ましい実施形態に関して説明されている一方、変化および改変を当業者が考えられることが理解される。したがって、請求される本発明の範囲内となるそのような同等の変化のすべてを付属の請求項が包含することが意図される。
【0127】
他の実施態様
1.配列番号34または配列番号36に示される核酸配列;配列番号35または配列番号37に示されるアミノ酸配列をコードする核酸配列;あるいはそれらの断片;を含む発現ベクター。
【0128】
2.プラスミドまたはウイルスベクターであることを特徴とする実施態様1記載の発現ベクター。
【0129】
3.ウイルスベクターが、ポックスウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルスおよびアデノ随伴ウイルスより成る群から選択されることを特徴とする実施態様2記載の発現ベクター。
【0130】
4.ウイルスベクターが、ワクシニア、NYVAC、アビポックス、カナリヤポックス、ALVAC、ALVAC(2)、鶏痘およびTROVACより成る群から選択されるポックスウイルスであることを特徴とする実施態様3記載の発現ベクター。
【0131】
5.ウイルスベクターが、NYVAC、ALVACおよびALVAC(2)より成る群から選択されるポックスウイルスであることを特徴とする実施態様4記載の発現ベクター。
【0132】
6.少なくとも1つの別の腫瘍関連抗原をさらに含むことを特徴とする実施態様1記載の発現ベクター。
【0133】
7.プラスミドまたはウイルスベクターであることを特徴とする実施態様6記載の発現ベクター。
【0134】
8.ウイルスベクターが、ポックスウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルスおよびアデノ随伴ウイルスより成る群から選択されることを特徴とする実施態様7記載の発現ベクター。
【0135】
9.ウイルスベクターが、ワクシニア、NYVAC、アビポックス、カナリヤポックス、ALVAC、ALVAC(2)、鶏痘およびTROVACより成る群から選択されるポックスウイルスであることを特徴とする実施態様8記載の発現ベクター。
【0136】
10.ウイルスベクターが、NYVAC、ALVACおよびALVAC(2)より成る群から選択されるポックスウイルスであることを特徴とする実施態様9記載の発現ベクター。
【0137】
11.血管新生関連抗原をコードする少なくとも1つの核酸配列をさらに含むことを特徴とする実施態様1記載の発現ベクター。
【0138】
12.プラスミドまたはウイルスベクターであることを特徴とする実施態様11記載の発現ベクター。
【0139】
13.ウイルスベクターが、ポックスウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルスおよびアデノ随伴ウイルスより成る群から選択されることを特徴とする実施態様12記載の発現ベクター。
【0140】
14.ウイルスベクターが、ワクシニア、NYVAC、アビポックス、カナリヤポックス、ALVAC、ALVAC(2)、鶏痘およびTROVACより成る群から選択されるポックスウイルスであることを特徴とする実施態様13記載の発現ベクター。
【0141】
15.ウイルスベクターが、NYVAC、ALVACおよびALVAC(2)より成る群から選択されるポックスウイルスであることを特徴とする実施態様14記載の発現ベクター。
【0142】
16.血管新生関連抗原をコードする少なくとも1つの核酸配列をさらに含むことを特徴とする実施態様6記載の発現ベクター。
【0143】
17.プラスミドまたはウイルスベクターであることを特徴とする実施態様16記載の発現ベクター。
【0144】
18.ウイルスベクターが、ポックスウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルスおよびアデノ随伴ウイルスより成る群から選択されることを特徴とする実施態様17記載の発現ベクター。
【0145】
19.ウイルスベクターが、ワクシニア、NYVAC、アビポックス、カナリヤポックス、ALVAC、ALVAC(2)、鶏痘およびTROVACより成る群から選択されるポックスウイルスであることを特徴とする実施態様17記載の発現ベクター。
【0146】
20.ウイルスベクターが、NYVAC、ALVACおよびALVAC(2)より成る群から選択されるポックスウイルスであることを特徴とする実施態様18のポックスウイルス。
【0147】
21.共刺激因子をコードする少なくとも1つの核酸配列をさらに含むことを特徴とする実施態様1、6、11または16記載の発現ベクター。
【0148】
22.プラスミドまたはウイルスベクターであることを特徴とする実施態様22記載の発現ベクター。
【0149】
23.ウイルスベクターが、ポックスウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルスおよびアデノ随伴ウイルスより成る群から選択されることを特徴とする実施態様23記載の発現ベクター。
【0150】
24.ウイルスベクターが、ワクシニア、NYVAC、アビポックス、カナリヤポックス、ALVAC、ALVAC(2)、鶏痘およびTROVACより成る群から選択されるポックスウイルスであることを特徴とする実施態様24記載の発現ベクター。
【0151】
25.ウイルスベクターが、NYVAC、ALVACおよびALVAC(2)より成る群から選択されるポックスウイルスであることを特徴とする実施態様18のポックスウイルス。
【0152】
26.医薬品として許容されるキャリヤーに含まれる発現ベクターを含有する組成物であって、前記ベクターが、配列番号34または配列番号36に示される核酸配列;配列番号35または配列番号37に示されるアミノ酸配列をコードする核酸配列;あるいはそれらの断片を含むことを特徴とする組成物。
【0153】
27.前記ベクターがプラスミドまたはウイルスベクターであることを特徴とする実施態様26記載の組成物。
【0154】
28.ウイルスベクターが、ポックスウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルスおよびアデノ随伴ウイルスより成る群から選択されることを特徴とする実施態様27記載の組成物。
【0155】
29.ウイルスベクターが、ワクシニア、NYVAC、アビポックス、カナリヤポックス、ALVAC、ALVAC(2)、鶏痘およびTROVACより成る群から選択されるポックスウイルスであることを特徴とする実施態様28記載の組成物。
【0156】
30.ウイルスベクターが、NYVAC、ALVACおよびALVAC(2)より成る群から選択されるポックスウイルスであることを特徴とする実施態様29記載の組成物。
【0157】
31.配列番号34または配列番号36に示される核酸配列;配列番号35または配列番号37に示されるアミノ酸配列をコードする核酸配列;あるいはそれらの断片;を含む発現ベクターを宿主に投与することを含む、癌を予防または治療する方法。
【0158】
32.前記ベクターがプラスミドまたはウイルスベクターであることを特徴とする実施態様31記載の方法。
【0159】
33.ウイルスベクターが、ポックスウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルスおよびアデノ随伴ウイルスより成る群から選択されることを特徴とする実施態様32記載の方法。
【0160】
34.ウイルスベクターが、ワクシニア、NYVAC、アビポックス、カナリヤポックス、ALVAC、ALVAC(2)、鶏痘およびTROVACより成る群から選択されるポックスウイルスであることを特徴とする実施態様33記載の方法。
【0161】
35.ウイルスベクターが、NYVAC、ALVACおよびALVAC(2)より成る群から選択されるポックスウイルスであることを特徴とする実施態様34の方法。
【0162】
36.表15または16に示されるBFY3由来の単離ペプチド。
【0163】
37.表15または16に示されるペプチドを、単独でまたは別の薬剤と組み合わせて患者に投与することを含み、組み合わせて投与する場合個々の成分は同時にまたは別々に投与される、腫瘍抗原BFY3に対して宿主を免疫する方法。
【0164】
38.表15または16に示されるBFY3由来の単離ペプチド。
【0165】
39.表15または16に示されるペプチドを、単独でまたは別の薬剤と組み合わせて患者に投与することを含み、組み合わせて投与する場合個々の成分は同時にまたは別々に投与される、腫瘍抗原BFY3に対して宿主を免疫する方法。
【0166】
40.表13または14に示されるBCZ4由来の単離ペプチド。
【0167】
41.表13または14に示されるペプチドを、単独でまたは別の薬剤と組み合わせて患者に投与することを含み、組み合わせて投与する場合個々の成分は同時にまたは別々に投与される、腫瘍抗原BCZ4に対して宿主を免疫する方法。
【0168】
42.表13または14に示されるBCZ4由来の単離ペプチド。
【0169】
43.表13または14に示されるペプチドを、単独でまたは別の薬剤と組み合わせて患者に投与することを含み、組み合わせて投与する場合個々の成分は同時にまたは別々に投与される、腫瘍抗原BCZ4に対して宿主を免疫する方法。
【0170】
44.少なくとも2つの異なる腫瘍抗原またはその断片をコードする少なくとも2つの核酸配列を含み、前記腫瘍抗原がBFA4、BCY1、BFA5、BCZ4およびBFY3より成る群から選択されることを特徴とする、複数の腫瘍抗原またはその断片の発現のための発現ベクター。
【0171】
45.少なくとも2つの腫瘍抗原またはその断片をコードする少なくとも2つの核酸配列を含み、該核酸配列が配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34および配列番号36の配列より成る群から選択されることを特徴とする、複数の腫瘍抗原またはその断片の発現のための発現ベクター。
【0172】
46.プラスミドまたはウイルスベクターであることを特徴とする実施態様44または45記載の発現ベクター。
【0173】
47.ウイルスベクターが、ポックスウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルスおよびアデノ随伴ウイルスより成る群から選択されることを特徴とする実施態様46記載の発現ベクター。
【0174】
48.ウイルスベクターが、ワクシニア、NYVAC、アビポックス、カナリヤポックス、ALVAC、ALVAC(2)、鶏痘およびTROVACより成る群から選択されるポックスウイルスであることを特徴とする実施態様47記載の発現ベクター。
【0175】
49.ウイルスベクターが、NYVAC、ALVACおよびALVAC(2)より成る群から選択されるポックスウイルスであることを特徴とする実施態様48記載の発現ベクター。
【0176】
50.共刺激因子をコードする少なくとも1つの核酸配列をさらに含むことを特徴とする実施態様44から49いずれ1項記載の発現ベクター。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号35の配列をコードする発現ベクター。
【請求項2】
配列番号35の配列が、配列番号34によりコードされていることを特徴とする請求項1記載の発現ベクター。
【請求項3】
配列番号29、31および33よりなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列をコードする核酸配列をさらに含むことを特徴とする請求項1または2記載の発現ベクター。
【請求項4】
配列番号37の配列をコードする核酸配列をさらに含むことを特徴とする請求項3記載の発現ベクター。
【請求項5】
配列番号29の配列をコードする核酸配列が配列番号28の配列であり、配列番号31の配列をコードする核酸配列が配列番号30の配列であり、配列番号33の配列をコードする核酸配列が配列番号32の配列であり、配列番号35の配列をコードする核酸配列が配列番号34の配列であり、配列番号37の配列をコードする核酸配列が配列番号36の配列であることを特徴とする請求項3または4記載の発現ベクター。
【請求項6】
ヒトB7.1をコードする少なくとも1つの核酸配列をさらに含むことを特徴とする請求項1−5いずれか1項記載の発現ベクター。
【請求項7】
プラスミドまたはウイルスベクターであることを特徴とする請求項1−6いずれか1項記載の発現ベクター。
【請求項8】
ウイルスベクターが、ポックスウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルスおよびアデノ随伴ウイルスよりなる群から選択されることを特徴とする請求項7記載の発現ベクター。
【請求項9】
ポックスウイルスが、ワクシニアまたはNYVACであることを特徴とする請求項8記載の発現ベクター。
【請求項10】
ポックスウイルスが、アビポックスウイルスであることを特徴とする請求項8記載の発現ベクター。
【請求項11】
アビポックスウイルスが、カナリヤポックス、ALVACおよびALVAC(2)よりなる群から選択されることを特徴とする請求項10記載の発現ベクター。
【請求項12】
配列番号35の配列をコードする単離核酸分子。
【請求項13】
配列番号34の配列を含む単離核酸分子。
【請求項14】
配列番号29、31および33よりなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列をコードする核酸配列をさらに含むことを特徴とする請求項12または13記載の単離核酸分子。
【請求項15】
配列番号37の配列をコードする核酸配列をさらに含むことを特徴とする請求項14記載の単離核酸分子。
【請求項16】
配列番号29の配列をコードする核酸配列が配列番号28の配列であり、配列番号31の配列をコードする核酸配列が配列番号30の配列であり、配列番号33の配列をコードする核酸配列が配列番号32の配列であり、配列番号35の配列をコードする核酸配列が配列番号34の配列であり、配列番号37の配列をコードする核酸配列が配列番号36の配列であることを特徴とする請求項14または15記載の単離核酸分子。
【請求項17】
医薬的に許容されるキャリヤー中に請求項1−11いずれか1項記載の発現ベクターまたは請求項12−16いずれか1項記載の単離核酸分子を含む組成物。
【請求項18】
配列番号389から488のいずれかの配列により表される単離ペプチド。
【請求項19】
配列番号391、394、395、396、398、400、401、404、406、408、409、417、429、430、435、436、437、438、440、446、457、458、463、467、468、470、475、476、477、478、486および488のいずれか1つにより表される請求項18記載の単離ペプチド。
【請求項20】
配列番号391、395、401、417、430および468のいずれか1つにより表される請求項19記載の単離ペプチド。
【請求項21】
請求項18−20いずれか1項記載の少なくとも1つの単離ペプチド、および医薬的に許容されるキャリヤーを含む組成物。
【請求項1】
配列番号35の配列をコードする発現ベクター。
【請求項2】
配列番号35の配列が、配列番号34によりコードされていることを特徴とする請求項1記載の発現ベクター。
【請求項3】
配列番号29、31および33よりなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列をコードする核酸配列をさらに含むことを特徴とする請求項1または2記載の発現ベクター。
【請求項4】
配列番号37の配列をコードする核酸配列をさらに含むことを特徴とする請求項3記載の発現ベクター。
【請求項5】
配列番号29の配列をコードする核酸配列が配列番号28の配列であり、配列番号31の配列をコードする核酸配列が配列番号30の配列であり、配列番号33の配列をコードする核酸配列が配列番号32の配列であり、配列番号35の配列をコードする核酸配列が配列番号34の配列であり、配列番号37の配列をコードする核酸配列が配列番号36の配列であることを特徴とする請求項3または4記載の発現ベクター。
【請求項6】
ヒトB7.1をコードする少なくとも1つの核酸配列をさらに含むことを特徴とする請求項1−5いずれか1項記載の発現ベクター。
【請求項7】
プラスミドまたはウイルスベクターであることを特徴とする請求項1−6いずれか1項記載の発現ベクター。
【請求項8】
ウイルスベクターが、ポックスウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルスおよびアデノ随伴ウイルスよりなる群から選択されることを特徴とする請求項7記載の発現ベクター。
【請求項9】
ポックスウイルスが、ワクシニアまたはNYVACであることを特徴とする請求項8記載の発現ベクター。
【請求項10】
ポックスウイルスが、アビポックスウイルスであることを特徴とする請求項8記載の発現ベクター。
【請求項11】
アビポックスウイルスが、カナリヤポックス、ALVACおよびALVAC(2)よりなる群から選択されることを特徴とする請求項10記載の発現ベクター。
【請求項12】
配列番号35の配列をコードする単離核酸分子。
【請求項13】
配列番号34の配列を含む単離核酸分子。
【請求項14】
配列番号29、31および33よりなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列をコードする核酸配列をさらに含むことを特徴とする請求項12または13記載の単離核酸分子。
【請求項15】
配列番号37の配列をコードする核酸配列をさらに含むことを特徴とする請求項14記載の単離核酸分子。
【請求項16】
配列番号29の配列をコードする核酸配列が配列番号28の配列であり、配列番号31の配列をコードする核酸配列が配列番号30の配列であり、配列番号33の配列をコードする核酸配列が配列番号32の配列であり、配列番号35の配列をコードする核酸配列が配列番号34の配列であり、配列番号37の配列をコードする核酸配列が配列番号36の配列であることを特徴とする請求項14または15記載の単離核酸分子。
【請求項17】
医薬的に許容されるキャリヤー中に請求項1−11いずれか1項記載の発現ベクターまたは請求項12−16いずれか1項記載の単離核酸分子を含む組成物。
【請求項18】
配列番号389から488のいずれかの配列により表される単離ペプチド。
【請求項19】
配列番号391、394、395、396、398、400、401、404、406、408、409、417、429、430、435、436、437、438、440、446、457、458、463、467、468、470、475、476、477、478、486および488のいずれか1つにより表される請求項18記載の単離ペプチド。
【請求項20】
配列番号391、395、401、417、430および468のいずれか1つにより表される請求項19記載の単離ペプチド。
【請求項21】
請求項18−20いずれか1項記載の少なくとも1つの単離ペプチド、および医薬的に許容されるキャリヤーを含む組成物。
【図1A−1】
【図1A−2】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図18D】
【図18E】
【図1A−2】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図18D】
【図18E】
【公開番号】特開2012−110328(P2012−110328A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−277026(P2011−277026)
【出願日】平成23年12月19日(2011.12.19)
【分割の表示】特願2010−235422(P2010−235422)の分割
【原出願日】平成16年5月15日(2004.5.15)
【出願人】(503263001)サノフィ パストゥール インコーポレイテッド (11)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月19日(2011.12.19)
【分割の表示】特願2010−235422(P2010−235422)の分割
【原出願日】平成16年5月15日(2004.5.15)
【出願人】(503263001)サノフィ パストゥール インコーポレイテッド (11)
【Fターム(参考)】
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