説明

癌の早期MRI検出を改善するための腫瘍標的化ナノ送達系

本発明は、薬剤送達、癌処置および診断および医薬の分野である。本発明は、癌性腫瘍を含む疾患の処置および造影のために、分子の全身送達するための抗体または抗体フラグメント標的化イムノリポソームの製造方法を提供する。本発明はまたイムノリポソームおよび組成物、ならびに種々の組織の造影法も提供する。本リポソーム複合体は、例えば、磁気共鳴造影に使用するための、造影剤の封入に有用である。送達系の特異性は、抗体または抗体フラグメントの標的化に由来する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は、薬剤送達、癌処置および診断および医薬の分野である。本発明は、癌性腫瘍を含む疾患の処置および造影のために、分子の全身送達するための抗体または抗体フラグメント標的化イムノリポソームの製造方法を提供する。本発明はまたイムノリポソームおよび組成物、ならびに種々の組織の造影法も提供する。本リポソーム複合体は、例えば、磁気共鳴造影に使用するための、造影剤の封入に有用である。送達系の特異性は、抗体または抗体フラグメントの標的化に由来する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
初期段階で、原発性および転移性疾患の両方である癌を検出する能力は、該疾患の疼痛および病苦の終息である目標に向けた主要な段階である。遺伝子治療のための腫瘍標的化送達系の開発は、現在達成可能であるよりも、より効率的な造影剤の送達の可能性を広げている。磁気共鳴造影(MRI)は、臓器の3次元解剖学的画像を獲得できる。これらと常磁性画像の組合せは、腫瘍の正確な局在化ならびに腫瘍増殖および血管形成の長手方向および定量的モニタリングをもたらす。(Gillies, R.J., et al., Neoplasia 2:139-451(2000); Degani, H., et al., Thrombosis & Haemostasis 89:25-33(2003))。
【0003】
癌診断に用いられる最も一般的な常磁性造影剤の一つは、Magnevist(登録商標)(ガドペンタテートジメグルミン)(Mag)(Berlex Imaging, Montville, NJ)である。ガドリニウムは希土類元素である。それは、そのイオン(Gd++)が7個の不対電子を有するため、常磁性特性を有する。MRIスキャンで観察されるコントラスト増進は、主に水素プロトンスピン格子緩和時間(Ti)に対するGd++の強い効果のためである。遊離ガドリニウムは非常に毒性であり、故に臨床使用には適さないが、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)とのキレート化は、十分に耐容性で、安定で、強い常磁性の複合体を産生する。この金属キレートは代謝不活性である。しかしながら、ガドペンタテートジメグルミンのi.v.注射後、メグルミンイオンは、疎水性(hydhophobic)ガドペンテタートから解離し、それは細胞外水にのみ分布する。それは自然の血液−脳関門を通過できず、故に、正常脳組織、嚢胞、術後瘢痕等に蓄積せず、尿中に急速に排泄される。それは約1.6時間の半減期を有する。投与量の約80%が6時間以内に尿中に排泄される。
【0004】
しかしながら、現在の造影剤には著しい制約があり、それらは、主として造影剤の灌流および拡散の程度ならびにグルコース取り込みに基づいているということを含む。これらの遊離(非複合体化)薬剤では、変化は腫瘍、炎症性疾患、および(乳房において)ホルモン効果でさえ見られる(例えばほとんどのガドリニウムベースのおよびヨウ素ベースの造影剤は、間質性空間への灌流および拡散を記録するものであり、FDG−PETはグルコース取り込みを検出する)。故に、これらの造影剤は腫瘍を特異的に標的としていない。加えて、活動的良性変化は必ずしも悪性と切り離すことができるわけではない、例えば胸部MRIの良性増大領域、慢性膵炎と膵臓癌腫。また、小腫瘍によるこれらの薬剤の取り込みが不十分であり、故に、感受性が乏しく、そして早期検出性に欠け、これは肺癌のような疾患において特に決定的である。孤在性肺小結節または胸膜小結節を検出することができない可能性がある。故に、必要とされるのは、このような薬剤を、体内の特異的組織、例えば、腫瘍組織および転移巣に送達する機構である。
【発明の開示】
【0005】
発明の要旨
一つの態様において、本発明は、抗体または抗体フラグメント標的化カチオン性イムノリポソーム複合体の製造方法であって、抗体または抗体フラグメントを製造し、該抗体または抗体フラグメントとカチオン性リポソームを混合して、カチオン性イムノリポソームを形成させ(ここで、該抗体または抗体フラグメントは、該カチオン性リポソームに化学的に接合していない)、そして該カチオン性イムノリポソームと造影剤を混合して、該抗体または抗体フラグメント標的化カチオン性イムノリポソーム複合体を形成することを含む、方法を提供する。本発明の実施に際して使用する抗体フラグメントの例は、一本鎖Fvフラグメント、例えば抗トランスフェリン受容体一本鎖Fv(TfRscFv)および抗HER−2抗体または抗体フラグメントを含む。さらなる態様において、本方法は、さらに、カチオン性イムノリポソームとK[K(H)KKK]5−K(H)KKC(HoKC)(配列番号1)ペプチドを含むペプチドを混合することを含む。
【0006】
適当には、本抗体または抗体フラグメントを、該カチオン性リポソームと約1:20から約1:40(w:w)の比率で混合する。適当には、本カチオン性リポソームはジオレオイルトリメチルアンモニウムホスフェートとジオレオイルホスファチジルエタノールアミンおよび/またはコレステロールの混合物;またはジメチルジオクタデシルアンモニウムブロマイドとジオレオイルホスファチジルエタノールアミンおよび/またはコレステロールの混合物を含む。
【0007】
さらなる態様において、本カチオン性イムノリポソームを、造影剤と、約0.1:10から約0.1:35(mg造影剤:μgリポソーム)の範囲の比率で、適当には約1:14から約1:28(mg造影剤:μgリポソーム)、または約1:21(mg造影剤:μgリポソーム)で混合する。本発明の実施に際して使用する造影剤の例は、磁気共鳴造影(MRI)剤、例えばガドリニウム、ガドペンタテートジメグルミン、イオパミドールおよび酸化鉄を含むが、これらに限定されない。また、CTのためのバリウム、ヨウ素および食塩水造影剤、PETのための18F−2−デオキシ−2−フルオロ−D−グルコース(FDG)および他の造影剤も使用できる。
【0008】
本発明はまた、本発明の方法により製造されたカチオン性イムノリポソーム複合体および、カチオン性リポソーム、抗体または抗体フラグメント、および造影剤を含む抗体または抗体フラグメント標的化カチオン性イムノリポソーム複合体(ここで、該抗体または抗体フラグメントが該カチオン性リポソームに化学的に接合していない)も提供する。
【0009】
さらなる態様において、本発明は、患者における臓器または組織を造影するための方法、およびまた良性組織/疾患と癌性組織/疾患を区別するための方法であって、本発明のカチオン性イムノリポソーム複合体を、造影実施前に患者に投与することを含む方法を提供する。投与は任意の経路、例えば、静脈内投与、筋肉内投与、皮内投与、眼内投与、腹腔内投与、腫瘍内投与、鼻腔内投与、脳内投与または皮下投与を介して行ってよい。適当には、本発明の方法および複合体を使用して造影する組織は、癌性転移を含む癌性組織である。
【0010】
本発明はまた、患者における腫瘍組織を造影および処置する方法であって、腫瘍組織を造影するために本発明のカチオン性イムノリポソーム複合体を患者に投与し、そして腫瘍組織を処置するために抗癌剤を患者に投与することを含む、方法も提供する。抗癌剤の例は、核酸、遺伝子、タンパク質、ペプチド、小分子、化学療法剤、例えばドセタキセル、ミトキサントロンおよびゲムシタビン、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはsiRNAを含む。
【0011】
本発明のさらなる態様は、当業者には良く知られる。
【0012】
図面/図の簡単な説明
図1Aおよび1Bは、TfRscFv−リポソーム−DNAナノ複合体によるCaPan−1正所性転移モデルの腫瘍特異的ターゲティングを示す。1Aにおいて矢印で示す肝臓中の同じ腫瘍小結節は、1Bにおいて強いβ−ガラクトシダーゼ発現を示す。1A=肉眼的剖検;1B=β−ガラクトシダーゼについて染色後の組織。
【0013】
図2A−2Cは、TfRscFv−Lip−Magナノ複合体でトランスフェクションした後のK564細胞のインビトロMR画像を示す。1A=時間依存的トランスフェクション。示す値は相対的強度である。1B=は、複合体中に包含されるMagnevist(登録商標)の量による相対的強度の変化を示す(μl)。1C=TfRscFv−Lip−Mag複合体対遊離Magnevist(登録商標)の比較。全ての図中の小さい丸は、サンプル位置のマーカーである。
【0014】
図3A−Iは、リガンド−リポソーム−Magナノ複合体を使用した、2種の異なるモデルにおける改善されたMR画像を示す。3A、D、およびGは、大きな膵臓正所性腫瘍(矢印)(腫瘍の外科的移植4ヶ月後)のMRIシグナルにおけるi.v.投与した遊離造影剤およびTfRscFv−Lip−Mag複合体の間の差異を示す。3B、E、およびHは、皮下膵臓腫瘍およびとかなり小さな腹部膵臓腫瘍(矢印)を有する第二のマウスにおける類似の効果を示す。3C、FおよびIは、皮下前立腺腫瘍(矢印)を有する第三の動物での画像であり、同じ効果が明白である。
【0015】
図4A−Cは、Magnevist(登録商標)なしでの、リポソームのSPM相画像を示す。4A、4Bおよび4Cに挙げる画像は、各々1.68V、1.45V、および1.35Vの設定値で得た。不適合基質およびと機械的に対応するリポソームの間の対応する位相差は、−3.5°、+8°、および+40°である。SPMチップとリポソームの相互作用は、設定値が変わるに連れて誘引性から反発まで変わる。
【0016】
図5A−Cは、リポソーム封入Magnevist(登録商標)(Lip+Mag)のSPMおよびSEM画像を示す。5Aは、リポソーム封入Magnevist(登録商標)粒子の原子間力顕微鏡法局所的画像である。SPM相画像(設定値=1.6)(5B)および15keV SEM(TE)[転送方式電子検出器]画像(5C)は同様のコントラストを提供するが、完全に異なる相補的物理機構により産生される。
【0017】
図6Aおよび6Bは、TfRscFv+Lip+Magナノ複合体のSPM形態学および相イメージングを示す。6Aは、全ナノ複合体のl5keV SEM(TE)[転送方式電子検出器]画像である。6B=その視野の低倍率画像である。四角に入っている領域が6Aの画像である。
【0018】
図7Aおよび7Bは、25nm高転置を使用したリフトモードのSPM形態学および磁気相画像の断面比較を示す。7Aは、完全TfRscFv−Lip−Magナノ複合体のSPM形態学/磁気相画像である。誘引性および反発性面内磁気相互作用から成る7Bの二重双極子様シグナルの見かけは、この相互作用の原因が、SEMおよび非磁気SPM相画像と一致して、NDS内のMagnevistの不均一ドーナツ形分布であることを示唆する。
【0019】
図8A−8Hは、リガンド−HK−リポソーム−Magナノ複合体を使用した2種のモードでの改善されたMR造影を示す。ヒト乳癌MDA−MB−435(図8E−8H)およびヒト前立腺癌細胞株(DU145)(図8A−8D)。
【0020】
図9A−Cは、TfRscFv−HK−リポソーム−Magナノ複合体によるCaPan−1皮下腫瘍および正所性転移モデルの腫瘍特異的ターゲティングを示す。
【0021】
図10は、遊離Magと比較して、膵臓癌腫モデルにおいて本発明の複合体により送達されたMagを使用して、強度の増加を示す、動的MRIを示す。
【0022】
図11A−11Cは、本発明のMag含有複合体による膵臓癌転移のMR造影を示す。
【0023】
図12A−12Eは、本発明のMag含有複合体による、肺転移のMR造影の大きな増強を示す。
【0024】
図13A−13Dは、本発明のMag含有複合体による腎臓細胞癌腫肺転移のMR造影の大きな増強を示す。
【0025】
図14A−14Dは、本発明のMag含有複合体による、小腎臓細胞癌腫肺転移のMR造影による、大きな検出感受性を示す。
【0026】
図15A−15Bは、本発明のMag含有複合体による非常に小さなMR造影を示し、本発明の複合体の感受性を証明する。
【0027】
図16は、本発明のMag含有複合体を使用したMRIにより見られる検出/造影を確認する、転移組織の切片を示す。
【0028】
図17は図16の高倍率図を示す。
【0029】
図18A−18Fは、本発明のMag含有複合体による、肺の胸膜下における転移のMR造影を示す。
【0030】
図19A−19Bは、本発明のMag含有複合体による、B16/F10黒色腫肺転移の検出を示す。
【0031】
発明の詳細な記載
本発明は、造影剤、例えば磁気共鳴造影(MRI)剤、例えばガドリニウム、ガドペンタテートジメグルミン(Magnevist(登録商標))および、イオパミドール、酸化鉄;CTのためのバリウム、ヨウ素および食塩水造影剤;およびPETのための18F−2−デオキシ−2−フルオロ−D−グルコース(FDG)および、組織、例えば腫瘍を標的化するための他の造影剤の全身送達のためのナノ複合体を提供することにより、早期検出および腫瘍と良性組織の鑑別診断のための、増進した感受性および腫瘍細胞特異性に対する重要な要請を満たす。走査型電子顕微鏡(SEM)および走査型プローブ顕微鏡(SPM)(Wolfert, M.A., et al., Human Gene Therapy 7:2123-2133 (1996); Dunlap, D.D., et al., Nucleic Acids Research 25:3095-3101 (1997); Kawaura, C., et al., FEBS Letters 421:69-72 (1998); Choi, Y.H., et al., Human Gene Therapy 10:2657-2665 (1999); Diebel, C.E., et al., Nature 406:299-302 (2000); Rasa, M., et al., J. Coll. Interface Sci 250:303-315 (2002))は、こららの造影剤運搬ナノ複合体の物理的構造およびサイズを試験するために使用されている。大きな磁気モーメントを有する高原子番号元素であるガドリニウムの場合、これらの特性は、SEMおよびSPMの両方においてコントラストを増強するための種々の方法に活用されている。ここに示される発見は、本発明のリポソームナノ複合体が、実際にMagnevist(登録商標)のような造影剤を封入し、そしてこれらの複合体の静脈内投与が増強された腫瘍造影をもたらすことを証明する。本発明は、肺における胸膜転移を含む非常に小さな転移の検出という予期されない、そして驚くべき結果、ならびに良性および癌性組織を鑑別する能力を提供する。
【0032】
一つの態様において、本発明は、造影剤、例えば磁気共鳴造影(MRI)造影剤を含む腫瘍ターゲティング送達系を提供する。米国公開特許出願2003/0044407(その開示は、その全体を引用により本明細書に包含させる)は、種々の薬剤を封入するこれらのナノサイズの、カチオン性リポソームを開示する。これらのリポソームの表面を飾るのは、フォレートまたはトランスフェリンのようなリガンド、または細胞表面受容体に対する抗体もしくは抗体フラグメントであり得るターゲティング分子である。リポソーム上へのリガンド/抗体の存在は、その受容体によるターゲティング分子の結合、続く非常に有効な内在化経路である受容体依存性エンドサイトーシスを介した結合複合体の内在化を介して、複合体の細胞内への挿入を促進する(Cristiano, R.J., and Curiel, D.T., Cancer Gene Therapy 3:49-57 (1996); Cheng, P.W., Human Gene Therapy 7:275-282 (1996))。このリポソームの修飾は、そのペイロードを腫瘍細胞に特異的に送達可能とするだけでなく、リポソームのトランスフェクション効力の増加ももたらす。トランスフェリン受容体(TfR)レベルは、口腔、前立腺、乳房、および膵臓を含む種々の癌のタイプで増加している(Keer, H.N., et al., Journal of Urology 143:381-385(1990);Rossi, M.C., およびZetter, B.R., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA)89:6197-6201(1992);Elliott, R.L., et al., Ann. N.Y. Acad. Sci. 698:159-166(1993);Thorstensen, K., and Romslo, I., Scand. J. Clin. Lab. Investig. (Supp.)215:113-120(1993);Miyamoto, T., et al., Int'l. J. Oral Maxillofacial Surg. 23:430-433(1994);Ponka, P. and Lok, C.N., Int'l. J. Biochem. Cell Biol. 31:1111-1137(1999))。さらに、TfRは、癌細胞のような急速に発育している細胞内の内在化中に再循環し(Ponka, P. and Lok, C.N., Int'l. J. Biochem. Cell Biol. 31:1111-1137(1999))、故にTfRレベルが増加していない癌細胞においてさえ、これらのトランスフェリン標的化ナノ複合体の取り込みに寄与する。適当な態様において、ここに記載のナノ複合体は、ターゲティング部分として、抗トランスフェリン受容体一本鎖抗体フラグメント(TfRscFv)を用いる(Haynes, B.F., et al., J. Immunol. 127:347-351(1981);Batra, J.K., et al., Molecular & Cellular Biology 11:2200-2205(1991))。TfRscFvは、モノクローナル抗体5E9により認識されるTfRのエピトープのための完全抗体結合部位を含む(Batra, J.K., et al., Molecular & Cellular Biology 11:2200-2205(1991))。TfRscFvは、増加したTfRレベルを有する癌細胞へのリポソームのターゲティングにおいて、Tf分子それ自体、または完全Mabよりも有利である:1)scFvのサイズ(28kDa)は、Tf分子(80kDa)または親Mab(155kDa)より遙かに小さい。scFv−リポソーム−DNA複合体は、故に、固形腫瘍の特徴である小さな毛細血管への良好な浸透性を示す。2)小さいscFvは、臨床試験において必要なスケールアップした製造に関して実際的利点を有する。3)scFvは組み換え分子であり、Tfのような血液産物ではなく、故に、血液起源病原体による汚染の可能性の危険がない。4)MabのFc領域無しで、Fc受容体の非抗原特異的結合の発生が排除される(Jain, R.K. and Baxter, L.T., Cancer Res. 48:7022-7032(1988))。このような抗TfR一本鎖抗体分子は、静脈内投与したカチオン性リポソーム−DNAナノ複合体を、主に腫瘍に向けることができる(米国公開特許出願2003/0044407;Xu, L., et al., Molecular Medicine 7:723-734(2001);Xu L, et al., Molecular Cancer Therapeutics 1:337-346(2002)参照)。このような腫瘍標的化ナノ複合体内へのMagnevist(登録商標)(Mag)の封入は、腫瘍転移の増加した感受性および検出および癌の診断についての利益を提供する。ガドリニウム、ガドペンタテートジメグルミン(Magnevist(登録商標))、イオパミドール、酸化鉄;CTのためのバリウム、ヨウ素および食塩水造影剤;および18F−2−デオキシ−2−フルオロ−D−グルコース(FDG)およびPETのための他の造影剤、ならびに当業者に既知の全ての現存する造影剤、ならびに全ての将来的な造影剤またはまだ開発すべき造影剤(例えば、MRI、CT、PET、SPECTなどのため)もまた本発明のイムノリポソーム内に封入できる。
【0033】
本発明の抗体または抗体フラグメント標的化カチオン性リポソーム複合体は、望む複合体の要素が規定された比率および規定された順番で混合される、単純で効率的な非化学的接合方法により製造する(米国公開特許出願2003/0044407参照)。得られる複合体は、抗体または抗体フラグメントがリポソームまたはポリマーに化学的に接合している類似の複合体と同程度有効であるか、より有効である。用語“免疫複合体”、“イムノリポソーム”、“複合体”、“ナノ複合体”、“免疫ナノ複合体”、“リポソーム複合体”は、本発明のカチオン性リポソームに言及するために、全体を通して交換可能に使用される。
【0034】
全抗体または抗体フラグメントを本発明の複合体を製造するために使用できる。適当な態様において、抗体フラグメントを使用する。好ましくは、抗体フラグメントは、抗体の一本鎖Fvフラグメントである。一つの好ましい抗体は抗TfRモノクローナル抗体であり、好ましい抗体フラグメントは、抗TfRモノクローナル抗体に基づいたscFvである。適当な抗TfRモノクローナル抗体は5E9である(例えば、Hayes, B.F., et al., “Characterization of a Monoclonal Antibody (5E9) that Defines a Human Cell Surface Antigen of Cell Activation,” J. Immunol. 127:347-352 (1981); Batra, J.K., et al., “Single-chain Immunotoxins Directed at the Human Transferring Receptor Containing Pseudomonas Exotoxin A or Diphtheria Toxin: Anti-TFR(Fv)-PE40 and DT388-Anti-TFR(Fv),” Mol. Cell. Biol. 11:2200-2205 (1991)参照;それらの内容は引用により本明細書に包含させる)。5E9抗体に基づくscFvは、見かけの分子量26,000の一本ポリペプチド鎖として、このMAbにより認識されるTfRのエピトープのための完全抗体結合部位を含む。scFvは、VH−リンカー−VLまたはVL−リンカー−VHのいずれかとして整えられた第一可変領域のC末端と第二のN末端を連結する適当に設計されたリンカーペプチドで、各々重および軽鎖からの要素VHおよびVL可変ドメインを接続することにより形成する。他の好ましい抗体は抗HER−2モノクローナル抗体であり、他の好ましい抗体フラグメントは抗HER−2モノクローナル抗体に基づくscFvである。
【0035】
適当な態様において、システイン部分を、scFvのC末端に添加する。理論に縛られることを望まないが、遊離スルフヒドリル基を提供するシステインが、例えば電荷−電荷相互作用を介して、抗体とリポソームの間の複合体化を増強し得る。システイン有りまたは無しで、タンパク質を大腸菌封入体として発現し、次いで活性形の抗体フラグメントを産生するために再折り畳みできる。
【0036】
複合体の形成において立体的に安定なイムノリポソームの使用を望まない限り、本複合体の製造の第一工程は、カチオン性リポソームまたはリポソームもしくは小ポリマーと選択した抗体または抗体フラグメントの混合を含む(本明細書の実施例および米国公開特許出願2003/0044407参照)。広範囲のカチオン性リポソームが、本発明の複合体の製造に有用である。公開PCT出願WO99/25320は、数種のカチオン性リポソームの製造を記載する。望ましいリポソームの例は、ジオレオイルトリメチルアンモニウムホスフェート(DOTAP)およびジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)および/またはコレステロール(chol)の混合物、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロマイド(DDAB)およびDOPEおよび/またはcholの混合物を含む。脂質の比率は、特異的標的細胞型のための治療分子の取り込みの効率を最適化するために変化し得る。本リポソームは、1種以上のカチオン性脂質および1種以上の中性またはヘルパー脂質の混合物を含み得る。望ましいカチオン性脂質(複数もある)対中性またはヘルパー脂質(複数もある)の比率は、約1:(0.5−3)、好ましくは1:(1−2)である(モル比)。
【0037】
本発明はまた、造影剤の送達のための標的化カチオン性ポリマーも提供する。適当なポリマーは、DNAコンパクションの仲介ができ、またエンドソーム放出も仲介できる、DNA結合性カチオン性ポリマーである。好ましいポリマーはポリエチレンイミンである。他の有用なポリマーは、ポリリシン(polysine)、プロタミンおよびポリアミドアミンデンドリマーを含む。
【0038】
抗体または抗体フラグメントは、標的細胞の表面に、好ましくは標的細胞上で異なって発現される受容体に結合するものである。抗体または抗体フラグメントをカチオン性リポソームまたはポリマーと、室温でおよび約1:20から約1:40(w:w)の範囲のタンパク質:脂質比率でまたは約0.1:1から10:1(モル比)の範囲のタンパク質:ポリマー比率で混合する。
【0039】
抗体または抗体フラグメントおよびリポソームまたはポリマーを、室温で短時間、典型的に約10−15分インキュベートし、次いで混合物を選択した治療剤または診断剤と混合する。抗体およびリポソームと複合体化できる治療分子または治療剤の例は、遺伝子、高分子量DNA(ゲノムDNA)、プラスミドDNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、ペプチド、リボザイム、核酸(siRNAおよびアンチセンスを含む)、ウイルス粒子、免疫調節剤、タンパク質、小分子および化学的試薬を含む。好ましい治療分子は、p53、Rb94またはApoptinをコードする遺伝子である。RB94は、網膜芽腫腫瘍抑制遺伝子の変異体である。Apoptinは、腫瘍細胞のみにアポトーシスを誘発する遺伝子である。他の好ましい態様において、該薬剤はアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはsiRNA分子、例えばHER−2アンチセンスまたはsiRNA分子である。好ましい薬剤の第三のタイプは、診断的造影剤、例えばGd−DTPA剤のようなMRI造影剤である。さらなる造影剤は、ガドリニウム、ガドペンタテートジメグルミン(Magnevist(登録商標))、イオパミドール、酸化鉄;CTのためのバリウム、ヨウ素および食塩水造影剤;およびPETのための18F−2−デオキシ−2−フルオロ−D−グルコース(FDG)および他の造影剤を含むが、これらに限定されない。これらの薬剤がp53のコード領域のようなDNAであるとき、それはRSVまたはCMVプロモーターのような強い構造的プロモーターの制御下に位置し得る。
【0040】
抗体または抗体フラグメントおよびリポソーム組合せを約1:10から1:20(薬剤のμg:総脂質のnmole)または1:10から1:40(薬剤のug:総ポリマーのnmole)の範囲の比率で治療剤または診断剤と混合し、室温で短時間、典型的に約10から15分インキュベートする。リポソーム複合体のサイズは、Malvern Zetasizer 3000を使用した動的光散乱で測定して、典型的に約50−400nmの範囲内である。
【0041】
本発明の一つの態様において、複合体の形成に使用するリポソームは、立体的に安定化されたリポソームである。立体的に安定化されたリポソームは、親水性ポリマー、例えばPEG、ポリ(2−エチルアクリル酸)、またはポリ(n−イソプロピルアクリルアミド(PNIPAM)が統合されているリポソームである。このような修飾されたリポソームは、治療剤または診断剤と複合体化するとき、それらが典型的にそのように修飾されていない同等なリポソームと同程度に速く網内系により血流から除去されないため、特に有用であり得る。本発明の立体的に安定化されたリポソーム複合体を製造するために、抗体または抗体フラグメント、リポソームおよび治療剤または診断剤を混合する順番は、上記の順番と逆になる。第一工程において、カチオン性リポソームを最初に上記の治療剤または診断剤と約1:10から1:20(薬剤のμg:脂質のnmole)の範囲の比率で混合する。このlipoplexに、生理学的に許容される緩衝液中のPEGポリマー溶液を添加し、得られる溶液を、ポリマーがリポソーム複合体に統合されるのに十分な時間室温でインキュベートする。次いで、抗体または抗体フラグメントを安定化されたリポソーム複合体と、室温でおよび約1:5から約1:30(w:w)の範囲のタンパク質:脂質比率で混合する。
【0042】
本発明に従い製造したリポソームまたはポリマー複合体を、インビボ投与のための薬理学的に許容される製剤として製剤できる。本複合体を、薬理学的に適合性の媒体または担体と混合する。本組成物を、例えば、複合体の治療的または診断的分子の投与により利益を受けるために、ヒト患者への静脈内投与のために製剤できる。本複合体を、i.v.投与後に体内重に分配するように、適当な大きさにする。あるいは、本複合体を腫瘍内(IT)、病巣内(IL)、エアロゾル(aerosal)、経皮、内視鏡的、局所、筋肉内(IM)、皮内(ID)、眼内(IO)、腹腔内(IP)、鼻腔内(IN)、脳内(intracereberal)(IC)または皮下投与のような他の投与経路を介して送達できる。このような方法を介した送達のための製剤の製造、およびこのような方法を使用した送達は当分野で既知である。
【0043】
一つの態様において、抗体または抗体フラグメント標的化リポソーム(またはポリマー)および治療剤複合体を含む組成物を、ヒト遺伝子治療を行うために投与する。複合体の治療剤成分は、適当な制御配列の制御したの治療用遺伝子を含む。ヒト癌のための種々の形態の遺伝子治療が、wt p53またはRB94をコードする核酸を含む抗体または抗体フラグメント標的化リポソームまたはポリマー複合体の全身送達により達成できる。本複合体は、インビトロおよびインビボの両方で照射および/または化学療法のために、原発および転移腫瘍両方の腫瘍細胞を特異的に標的とし、感作できる。
【0044】
本複合体は、脂質の選択および比率、抗体または抗体フラグメント対リポソームの比率、抗体または抗体フラグメントおよびリポソーム対治療剤または診断剤の比率、および抗体または抗体フラグメントおよび治療剤または診断剤の選択を介して、標的細胞型のために最適化できる。
【0045】
一つの態様において、標的細胞は癌細胞である。悪性細胞増殖を有する全ての組織が標的となり得るが、頭頚部、乳房、前立腺、膵臓、脳(神経膠芽腫を含む)、子宮頚、肺、肝臓、脂肪肉腫、横紋筋肉腫、絨毛癌、黒色腫、網膜芽腫、卵巣、泌尿生殖器、胃および結腸直腸癌が適当な標的である。
【0046】
本発明の方法により製造された複合体はまた、治療分子または何らかの核酸の送達について非腫瘍細胞を標的化するためにも使用できる。全ての正常細胞が標的であり得るが、好ましい細胞は樹状細胞、血管の内皮細胞、肺細胞、乳房細胞、骨髄細胞、胸腺細胞および肝臓細胞である。望ましくない、しかし良性の細胞、例えば良性前立腺肥大細胞、過活動性甲状腺細胞、脂肪腫細胞、および関節炎、狼瘡、重症筋無力症、扁平上皮化生、黄斑変性症、心血管疾患、アルツハイマー病のような神経学的疾患、異形成などに関与する抗体を産生するB細胞のような自己免疫性疾患に関連する細胞を標的化できる。
【0047】
本複合体は、照射処置または化学療法剤のいずれかのような他の治療的処置と組み合わせて投与できる。治療的処置、または治療的処置の組合せを、本複合体の投与の前にまたは後に、例えば約12時間から約7日以内に投与できる。化学療法剤は、例えば、ドキソルビシン、5−フルオロウラシル(5FU)、シスプラチン(CDDP)、ドセタキセル(タキソテール(登録商標))、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、パクリタキセル(pacletaxel)、ビンブラスチン、エトポシド(VP−16)、カンプトテシン(camptothecia)、アクチノマイシン−D、ミトキサントロンおよびマイトマイシンCを含む。照射両方/治療は、ガンマ照射(137Cs)、X線、UV照射、マイクロ波、電子放出などを含む。さらなる治療剤は、小分子、ペプチド、タンパク質などを含む。
【0048】
診断剤または造影剤もまた標的化細胞にリポソームまたはポリマー複合体を介して送達できる。用語“診断剤”および“造影剤”は、投与後にインビボで検出できる、可視化できる、造影できるまたは観察できる薬剤を言うために本明細書を通して交換可能に使用する。診断剤および造影剤を検出、可視化、造影または観察するための方法は当分野で既知であり、例えば、蛍光造影(蛍光光度計)または生物発光造影のような光学造影、陽電子放出断層撮影(PET)走査、単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)走査、磁気共鳴造影(MRI)、x線、ラジオヌクレオチド造影(例えば、ガンマカメラ、コンピュータ断層撮影(CT)、定量的オートラジオグラフィーなど)などを含む。診断剤の例は、高電子密度物質、鉄、磁気共鳴造影剤および放射性医薬を含む。造影に有用な放射性核種は、同位体64Cu、67Cu、111In、99mTc、67Gaまたは68Gaを含む、銅、ガリウム、インジウム、レニウム、およびテクネチウムの放射性同位体を含む。Gd−DTPA剤、ガドリニウム、またはMagnevist(登録商標)(ガドペンタテートジメグルミン)(Mag)(Berlex Imaging, Montville, NJ)のようなMRI剤。引用により本明細書に包含させる米国特許5,688,488においてLow et al. により開示された造影剤は本発明において有用である。さらなる造影剤は、イオパミドール(例えば、ISOVUE(登録商標)、Regional Health Limited, Aukland, AU)、酸化鉄;CTのためのバリウム、ヨウ素および食塩水造影剤;およびPETのための18F−2−デオキシ−2−フルオロ−D−グルコース(FDG)および他の造影剤を含むが、これらに限定されない。
【0049】
本発明の方法に従い製造された複合体は、該複合体による治療的または診断的分子の全身送達に使用するためのキットの形で提供され得る。適当なキットは、別々に、適当な複数容器(または1個の容器)中に、リポソーム、抗体または抗体フラグメント、および治療剤または診断剤を含む。これらの成分を、滅菌条件下で適当な順番で混合し、製剤後合理的な時間、一般に約30分から約24時間以内に患者に投与し得る。本キット成分は、好ましくは溶液としてまたは乾燥粉末として提供される。溶液形態中に提供される成分を、好ましくは、滅菌注射用水中、適当な緩衝液、浸透圧調節剤などと共に製剤する。
【0050】
造影剤の封入および送達
ある態様において、本発明は、1種以上の造影剤がリポソームの内部に封入されている、二層の炭化水素鎖領域内に含まれる、内および/または外単層と複合体化/結合している(例えば、静的相互作用または化学的/共有結合性相互作用を介して)、またはこれらの任意のまたは全ての可能性の組合せの、カチオン性リポソーム複合体を提供する。適当には、本造影剤をリポソーム内部に封入するおよび/または内および/または該単層と結合させる。
【0051】
ここで使用する、用語“診断剤”および“造影剤”は、投与後にインビボで検出、可視化、造影または観察できる薬剤を意味する。造影剤の例は、高電子密度物質、鉄、磁気共鳴造影剤および放射医薬を含む。造影に有用な放射性核種は、同位体64Cu、67Cu、111In、99mTc、67Gaまたは68Gaを含む、銅、ガリウム、インジウム、レニウム、およびテクネチウムの放射性同位体を含む。Gd−DTPA剤、ガドリニウム、またはMagnevist(登録商標)(ガドペンタテートジメグルミン)(Mag)(Berlex Imaging, Montville, NJ)のようなMRI剤。引用により本明細書に包含させる米国特許5,688,488においてLow et al. により開示された造影剤は本発明において有用である。さらなる造影剤は、イオパミドール(例えば、ISOVUE(登録商標)、Regional Health Limited, Aukland, AU)、酸化鉄;CTのためのバリウム、ヨウ素および食塩水造影剤;およびPETのための18F−2−デオキシ−2−フルオロ−D−グルコース(FDG)および他の造影剤を含むが、これらに限定されない。
【0052】
ここに記載の通り、造影剤は、処理中に1種以上の造影剤とリポソームを単に混合することにより、適当には本発明のリポソーム複合体に封入されている、含まれるまたは複合体化/結合している。造影剤:リポソーム複合体の適当な比率は、当業者により容易に決定される。例えば、造影剤対リポソーム複合体の比率は、適当には約0.1:10から約0.1:35(mg造影剤:μgリポソーム)、より適当には約1:14から約1:28(mg造影剤:μgリポソーム)の範囲内、または約1:21(mg造影剤:μgリポソーム)にある。
【0053】
全体を通して記載されている通り、造影剤の送達/封入のための望ましいカチオン性リポソームは、ジオレオイルトリメチルアンモニウムホスフェート(DOTAP)およびジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)および/またはコレステロール(chol)の混合物;およびジメチルジオクタデシルアンモニウムブロマイド(DDAB)およびDOPEおよび/またはcholの混合物を含むリポソームを含む。脂質の比率は、造影剤の取り込みの効率を最適化するために変化させ得る。本リポソームは、1種以上のカチオン性脂質および1種以上の中性またはヘルパー脂質の混合物を含み得る。カチオン性脂質(複数もある)対中性またはヘルパー脂質(複数もある)の望ましい比率は、約1:(0.5−3)、好ましくは約1:(1−2)(モル比)である。本発明の実施において有用な種々の脂質の比率の例は以下を含むが、これらに限定されない:
【表1】

(DOTAP=ジオレオイルトリメチルアンモニウム(aminnonium)ホスフェート、DDAB=ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロマイド;DOPE=ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン;chol=コレステロール)。
【0054】
一つの態様において、本発明は、抗体または抗体フラグメントを製造し;抗体または抗体フラグメントとカチオン性リポソームを混合してカチオン性イムノリポソームを形成させ(ここで、該抗体または抗体フラグメントは、該カチオン性リポソームに化学的に接合していない);そして、カチオン性イムノリポソームと1種以上の造影剤を混合して、抗体または抗体フラグメント標的化カチオン性イムノリポソーム複合体を形成させること含む、造影剤含有抗体または抗体フラグメント標的化カチオン性イムノリポソーム複合体の製造方法を提供する。
【0055】
適当な態様において、本抗体フラグメントは一本鎖Fvフラグメント、例えば、抗トランスフェリン受容体一本鎖Fv(TfRscFv)または抗HER−2抗体または抗体フラグメントである。造影剤含有カチオン性イムノリポソームの製造において使用するための適当な脂質の例は、ここに記載されており、ジオレオイルトリメチルアンモニウムホスフェートとジオレオイルホスファチジルエタノールアミンおよび/またはコレステロールの混合物;およびジメチルジオクタデシルアンモニウムブロマイドとジオレオイルホスファチジルエタノールアミンおよび/またはコレステロールの混合物を含む。適当には、抗体または抗体フラグメントを本カチオン性リポソームと、約1:20から約1:40(w:w)の範囲の比率で混合して、カチオン性イムノリポソームを形成させる。適当には、本カチオン性イムノリポソームを、造影剤と、約0.1:10から約0.1:35(mg造影剤:μgリポソーム)、より適当には約1:14から約1:28(mg造影剤:μgリポソーム)の範囲内、または約1:21(mg造影剤:μgリポソーム)で混合する。
【0056】
造影剤の例は、ここに記載のものおよび当分野で既知のものを含む。適当には、造影剤はMRI造影剤、例えばガドリニウム、ガドペンタテートジメグルミン、イオパミドール(例えば、ISOVUE(登録商標)、Regional Health Limited, Aukland, AU)、または酸化鉄;CTのためのバリウム、ヨウ素および食塩水造影剤;およびPETのための18F−2−デオキシ−2−フルオロ−D−グルコース(FDG)および他の造影剤である。
【0057】
さらなる態様において、本発明の方法およびイムノリポソーム複合体は、さらに、本カチオン性イムノリポソームと、K[K(H)KKK]5−K(H)KKC(HoKCまたはHK)(配列番号1)ペプチドを含むペプチドを混合することを含む。HoKCペプチドは、末端システインを含み、マレイミド基への結合を可能とする。故に、HoKCペプチドを使用するとき、リポソーム製剤はまた適当にはN−マレイミド−フェニルブチレート−DOPE(MPB−DOPE)を、総脂質の0.1から50モルパーセント、より好ましくは総脂質の1−10モルパーセント、最も好ましくは総脂質の5モルパーセント含む。HoKCリポソームを、先に記載の通り製造する(Yu, W. et al. Enhanced transfection efficiency of a systemically delivered tumor-targeting immunolipoplex by inclusion of a pH-sensitive histidylated oligolysine peptide, Nucleic Acids Research 32, e48 (2004))。
【0058】
さらなる態様において、本発明は、カチオン性リポソーム、抗体または抗体フラグメント、および1種以上の造影剤(ここで、該抗体または抗体フラグメントは該カチオン性リポソームに化学的に接合していない)を含む、抗体または抗体フラグメント標的化カチオン性イムノリポソーム複合体を提供する。抗体または抗体フラグメントは、適当にはリポソームと、抗体または抗体フラグメントとリポソーム、適当には抗体または抗体フラグメントのシステイン残基とリポソーム表面の間の相互作用(例えば、静電気、ファンデルワールス、または他の非化学的に接合する相互作用)を介して適当に結合する。一般に、リンカーまたはスペーサー分子(例えば、ポリマーまたは他の分子)を、抗体およびリポソームの結合に使用しない。造影剤(複数もある)は、カチオン性リポソーム内に封入されてよく、カチオン性リポソームの炭化水素鎖内に含まれてよく、カチオン性リポソームの内または外単層と結合してよく、またはそれらの任意の組合せであってよい。適当には、本発明のカチオン性イムノリポソームは、単層リポソーム(すなわち一重の二層)であるが、数種の同心二層を含む多重膜リポソームも使用できる。本発明の一重の二層カチオン性イムノリポソームは、薬剤(例えば、造影剤)を封入できる内部水性容量を含む。それらはまた薬剤(例えば、造影剤)を含むことができる炭化水素鎖領域(すなわち、脂質の脂質鎖領域)を有する一重の二層を含む。加えて、薬剤(例えば、造影剤)は、リポソーム膜(すなわち、脂質の頭部基領域)の内単層および/または外単層のいずれかまたは両方と、例えば、負電荷造影剤および正電荷カチオン性リポソームの間の電荷−電荷相互作用を介して、複合体化または結合できる。さらなる態様において、薬剤(例えば、造影剤)を、本発明のカチオン性イムノリポソーム複合体のこれらの領域のいずれかまたは全てに封入でき/結合でき/複合体化できる。
【0059】
さらに別の態様において、本発明は、造影実施前に患者に本発明の造影剤含有カチオン性イムノリポソーム複合体を投与することを含む、患者の臓器または組織を造影する方法を提供する。本イムノリポソーム複合体は、静脈内(IV)、経口、局所、吸入、筋肉内(IM)注射、腫瘍内(IT)注射、皮内(ID)注射、腹腔内(IP)注射、鼻腔内(IN)注射、眼内(IO)注射、頭蓋内(IC)注射、または他の経路を含むがこれらに限定されない任意の望む経路を介して投与できる。ここで使用する、用語患者は、動物患者(例えば、非ヒト哺乳動物、例えばイヌ、ネコ、ブタ、ヒツジなど)ならびにヒトの両方を含む。患者の組織を造影する方法は当分野で既知であり、PET走査、SPECT走査、MRI造影などを含むが、これらに限定されない。患者における全ての組織または臓器を、本発明の方法および複合体を使用して造影できる。単にリポソーム上のターゲティングリガンドの改変により、任意の過剰発現タンパク質または分子を標的化できる。
【0060】
適当には、本発明の方法を、癌に罹患している、またはその素因がある患者における癌性組織の造影に使用する。本発明の方法を使用して造影できる癌性組織は、固形腫瘍、ならびに転移病巣を含む。本発明の方法はまた癌性組織と非癌性(良性)組織を区別できる。
【0061】
さらなる態様において、本発明は、腫瘍組織を造影するために本発明の造影剤含有イムノリポソーム複合体を患者に投与し、そして腫瘍組織を処置するために抗癌剤を患者に投与することを含む、癌に罹患している、またはその素因がある患者における腫瘍組織を造影および処置する方法を提供する。
【0062】
投与できる抗癌剤の例は、ここに記載のもののような小分子、タンパク質、ペプチド、および化学療法剤、遺伝子、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびsiRNAを含むが、これらに限定されない。化学療法剤の例は、ドキソルビシン、5−フルオロウラシル(5FU)、シスプラチン(CDDP)、ドセタキセル(タキソテール(登録商標))、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、パクリタキセル(pacletaxel)、ビンブラスチン、エトポシド(VP−16)、カンプトテシン、アクチノマイシン−D、ミトキサントロンおよびマイトマイシンC、および抗体治療、例えばモノクローナル抗体、例えば、HERCEPTIN(登録商標)(Genentech, San Francisco CA)を含むが、これらに限定されない。本発明の実施に際して使用するアンチセンスオリゴヌクレオチドおよびsiRNA分子の例は、各々の内容をその全体を引用により本明細書に包含させる米国公開特許出願2003/0044407および2006年9月14日出願の米国特許出願11/520,796に記載のものを含むが、これらに限定されない。さらなる抗癌剤は、ペプチド、タンパク質および小分子(例えば、各々の内容をその全体を引用により本明細書に包含させる2006年5月15日出願の米国仮特許出願60/800,163、および2006年9月14日出願の60/844,352を参照)を含む。抗癌剤(例えば、化学療法剤、小分子、遺伝子またはアンチセンスまたはsiRNAなど)は、造影剤も含むカチオン性イムノリポソームと結合でき、または、それは、別に、本発明に従った異なるイムノリポソームで、または他の担体または送達系(例えば、通常の臨床標準に従った化学療法剤のIV注射)を介して送達できる。
【0063】
適当な態様において、本発明の方法は、造影剤(例えば、MRI造影剤、例えばガドペンタテートジメグルミン)を含むイムノリポソーム複合体、および抗腫瘍剤を異なる時点で投与することを含む(すなわち、複合体および薬剤を同時にまたは異なる時点で投与できる)。適当には、抗癌剤を造影剤含有イムノリポソーム複合体の前または後に(例えば、カチオン性イムノリポソーム複合体投与の少なくとも1時間前または後に、少なくとも6時間前または後に、少なくとも12時間前または後に、少なくとも24時間前または後に、少なくとも48時間前または後になど)投与する。さらに別の態様において、癌に罹患している患者における腫瘍組織を造影および処置する方法は、該患者にさらに照射処置を投与する方法を含み得る。
【0064】
ヒトへの投与のための抗癌剤(例えば、化学療法、遺伝子、小分子、タンパク質、ペプチド、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはsiRNAなど)の適当な投与量および時期は、ここに含まれる情報に基づいて当業者により容易に決定され、当分野において容易に利用可能である。さらに、このような量は、動物、例えば、マウス、ラット、イヌまたは他の試験において行った実験からの外挿により概算できる。
【0065】
造影剤の封入および送達のために本発明のナノイムノリポソーム複合体(scLおよびscL−HoKC)を利用する利点の例は、該複合体の腫瘍ターゲティング特性による癌性組織でのより高い濃度を含む。該複合体が癌細胞に蓄積するため、癌特異的造影と異なる血流および間質腔への拡散(現在臨床で使用されている非複合体化遊離造影剤で見られる通り)がある。また、癌と良性過程で異なる増強がある。より長い血管および組織半減期が、本発明の複合体を使用した遅延造影を可能にする。本複合体および方法を、種々の深さで目的の組織を造影するのに使用できる。
【0066】
故に、本発明の方法および複合体は、腫瘍におけるシグナルの増強だけでなく、また腫瘍の内部構造の大きな鮮明度ももたらす。より重要には、より小さい腫瘍が検出でき、より速い検出および故に改善した応答/生存に至る。これらの複合体はまた、良性を悪性孤在性小結節から区別するためにも使用できる。これは、いつ処置を開始すべきかの決定の推進を助ける。現在、小結節が増大するか否かの決定が、それが悪性であるか否かが確かではないため、遅れる。しかしながら、本発明の複合体が主におよび特異的に腫瘍細胞をトランスフェクトするため、これは悪性物の、例えば肺CTに見られる小孤在性小結節が小悪性物であるか否かの確認として働く。この直前の2点は、肺および膵臓癌において特に顕著である。
【0067】
本発明の造影剤含有複合体の使用により扱われる癌造影問題のタイプの例は、膵臓癌における、早期検出および慢性膵炎との区別;肺への転移疾患の早期検出;孤在性肺孤在性小結節の良性または悪性としての分類;乳房における増加したMR増強の小病巣領域の良性または悪性としての分類を含む。
【0068】
本発明の複合体はまた、この送達系を使用して、治療遺伝子が患者特異的癌細胞に入りそうであることを確認するためにも使用できる。すなわち、造影剤含有複合体が細胞に入ることができるという事実が、本発明の複合体と結合した治療遺伝子または他の薬剤のこれらの特異的癌細胞への挿入の指標を提供する。
【0069】
関連分野の通常の技術者には、本方法への他の適当な修飾および適合が、本発明の範囲またはその全ての態様から逸脱することなくなし得ることが明らかである。以下に、本発明を詳細に記載するが、説明の目的のみでここに包含させ、本発明を限定する意図はない以下の実施例を参照して、本発明はより明瞭に理解されるであろう。
【0070】
実施例1
Magnevist(登録商標)含有イムノリポソーム複合体
材料および方法
細胞株
ヒトリンパ芽球性白血病細胞株K562を、Lombardi Comprehensive Cancer Center Tissue Culture core facilityから得た。これらの懸濁液細胞を、10%熱不活性化FBS+2mM L−グルタミン、ならびにペニシリン、ストレプトマイシン(streptomycion)およびネオマイシンのそれぞれ50μg/mlを補ったRPMI1640に維持した。ヒト膵臓癌細胞株CaPan−1(ATCC Manassas, VAから得た)は、膵臓の転移腺肉腫由来であった。それを20%非熱不活性化FBS、2mM L−グルタミンならびにペニシリン、ストレプトマイシンおよびネオマイシンのそれぞれ50μg/mLを補った、4mM L−グルタミンおよび重炭酸ナトリウム含有Iscov's Modified Dulbecco's Mediumに維持した。ヒト前立腺癌細胞株DU145(ATCC, Manassas, VA)は、元々、前立腺の広範な転移癌腫を有する患者の脳における病巣から元々由来した。それを、上記のように10%熱不活性化FBS+L−グルタミンおよび抗体で補ったアール塩(EMEM)含有最小必須培地に維持した。
【0071】
ナノ複合体化
カチオン性リポソーム(DOTAP:DOPE)を、先に記載のエタノール注入法により製造した(その各々の開示を引用により本明細書に包含させる米国公開特許出願2003/0044407;Xu L, et al., Molecular Cancer Therapeutics 1:337-346 (2002)参照)。プラスミドDNAを送達するとき、完全複合体を、以前に記載のものと同じ方法で形成した(米国公開特許出願2003/0044407参照)。インビトロ使用のために造影剤を封入するために、TfRscFvをリポソームと、特異的比率で混合し、室温で10分インキュベートした。Magnevist(登録商標)をこの溶液に添加し、混合し、再び、室温で10分インキュベートした。2−8℃で貯蔵したとき、本複合体はMalvern Zetasizer 3000Hを使用したサイズ測定により決定して、少なくとも8日間安定である。この時間枠中の測定値のキュムラント(Z平均)平均は112.3±4.67(S.E.)であり、一方多分散性(反復スキャン中の値の再現性を示す)は0.445±0.03である。ナノ複合体の許容されるサイズ範囲は約20から1000nm、適当には約50から700nmおよびより適当には約100から500nmである。インビトロトランスフェクションのために、2mlの無血清培地をトランスフェクション前に本複合体に添加した。インビボ使用のために、本複合体は、上記方法を使用して、1mg造影剤対0.33−1.17μg TfRscFv対10−35μgリポソーム(適当には1mg造影剤対0.5から1.0μg TfRScFv対14−28μgリポソーム、最も適当には1mg造影剤対0.71μg TfRscFv対21μgリポソーム)の比率で形成した。インビボ使用のために製造するとき、デキストロースを5%の最終濃度で添加した。
【0072】
インビトロトランスフェクション
懸濁液細胞K562をトランスフェクトするために、血清以外の全ての添加物を含む総容量4.0mlの培地(無血清培地培地)中の15×10細胞を、100mm組織培養皿に置いた。種々の量のMagnevist(登録商標)を含む上記からの2mlのトランスフェクション溶液を細胞懸濁液に添加した。プレートを37℃で、穏やかに振盪しながら結果の小で示す時間(90分まで)インキュベートし、その後細胞を4℃で0.5ml マイクロ遠心管中、穏やかにペレット化し(600×gで7分)、10mlの無血清培地培地で3回洗浄して全ての過剰なトランスフェクション溶液を除去し、造影するまで湿った氷上に置いた。
【0073】
インビボ腫瘍ターゲティング
原発および転移腫瘍へのTfRscFv−Lipナノ複合体の腫瘍選択的ターゲティングを評価するために、ヒト膵臓癌細胞株CaPan−1を使用した正所性転移モデルを使用した。CaPan−1の皮下異種移植腫瘍を、MatrigelTM コラーゲン基準膜マトリックス(BD Biosciences)に懸濁した1×10 CaPan−1細胞の注射により、雌無胸腺ヌードマウスに誘発させた。約8週間後、腫瘍を回収し、腫瘍の単一細胞懸濁液を調製した。同様にMatrigelTMに懸濁させた1.2−1.5×10細胞も、雌無胸腺ヌードマウスの外科的に暴露させた膵臓に注入した。手術5週間後、LacZ遺伝子担持複合体を、3回、24時間にわたりi.v.注射した(40μgDNA/注射)。60時間後動物を殺し、先に記載した方法を使用してβ−ガラクトシダーゼ発現について染色された転移および臓器の存在について試験した(Xu, L., et al., Human Gene Therapy 10:2941-2952(1999))。
【0074】
MRI造影
インビトロMRI造影のために、マイクロ遠心管中の細胞ペレットをマグネットの中央に置いた。MR造影をHoward Universityで、4.7Thorizontal bore NMR machine(Varian Inc, Palo Alto, CA)を使用して行った。造影プロトコールは、マルチスライスT1強調スピンエコー造影シークエンスおよび飽和回復シークエンスから成る。T1強調造影技術のために、繰り返し時間(TR)は1000msであり、エコー時間(TE)は13msであった。Tl強調スピンエコー造影技術は、陽画像増強を確認するために適用した。可変エコー時間での飽和回復MRシークエンスをT1測定のために使用した。画像のスライス厚は、0.5mmであった。用いたRFコイルは30mm 単一ループコイルであった。RFコイルは、RFトランスミッターおよびレシーバーとして働いた。RFパルスは、選択的5ms sincパルスであった。相コード化工程の数は256であった。視野は15mm×15mmであった。試験において選択した画像領域は、RF均質性のためにRFコイルの中心に位置した。MR画像を、マイクロ遠心管の横断面方向で取った。細胞ペレットの高さは12mmであった。マルチスライス画像の範囲は全ペレットをカバーした。空気−ペレット教会からの感受性効果のために、画像歪みにより影響を受けなかった中心スライス画像を、試験に使用した。画像強度を、Varian Image Browserソフトウエアを使用して測定した。シグナルを、各マイクロ遠心管からの画像の2/3をカバーするのに十分に大きい目的領域から取る。これらの試験管からのペレットの相対的画像強度を、コントラスト促進評価およびT1測定に適用した。
【0075】
インビボ試験のために、CaPan−1正所性腫瘍またはDU145皮下異種移植腫瘍担持マウスを使用した。CaPan−1腫瘍は上記の通り誘導した。DU145腫瘍は、Matrigel中7×10細胞の皮下接種により誘導した。これらの試験は、Georgetown Universityで行った。造影すべき動物を麻酔し、専有の社内設計、動物管理系に置いた。この系は、温度を37℃に維持する温水加熱系、ならびに動物の皮膚温度、環境温度およびデバイスの壁温度をモニターするための4チャネル熱光学モニタリング系を含む。造影のために、イソフルランを4%で、66%酸素および30%一酸化二窒素混合物から成る残りのガスと共に使用して麻酔を誘導した。麻酔の維持は、上記の酸素および一酸化二窒素の類似ガス条件下の1.5%イソフルランにより達成した。麻酔した動物を円筒可変放射周波数共鳴アンテナ(鳥かご共鳴器容量コイル)の内側に配置させ、約300MHzの中心周波数にチューニングした(7テスラの磁界強度を対象としたとき水分子の中心共鳴周波数)。使用した造影プロトコールは、7TBruker BioSpin(Germany/USA)造影操作卓上で行ったTl強調Turbo−RARE(急速増強を伴う急速獲得)3次元造影シークエンスであった。使用した造影パラメータは:T1強調Turbo-RARE 3D(3次元)、TE 13.3ms、TR 229.5、Flipbackオン、8.0/3.5/3.5cm視野を伴う4エコーおよび256×256×256マトリックスであった。基準画像獲得後、動物を動物ケースに固定化したままにし、Magnevist(登録商標)のみ(400μlに1×リン酸緩衝化食塩水pH=7.4で希釈)またはMagnevist(登録商標)含有イムノリポソーム複合体(TfRscFv−Lip−Mag)(総容量400μl)を、動物の尾静脈への静脈内注射により27G針を使用して全身投与し、3−D造影シークエンスを直ぐに開始した。2種の溶液での造影を連続した日に行った。
【0076】
走査型電子顕微鏡(SEM)
リポソーム封入Magnevist(登録商標)造影剤およびリポソーム封入複合体をコーティングする腫瘍ターゲティング一本鎖トランスフェリン受容体タンパク質から成る完全ナノ複合体、TfRscFv−Lip−Magのサンプル溶液をGUMCで調製し、NISTに送り、暗所で冷蔵保存した。個々の造影操作毎に、脱イオン水で、容量比1:3の新たな希釈液を調製し、5μL液滴を、30−60nm formvarおよび15−20nm 炭素から成る標準200メッシュTEMグリッド上にマイクロピペットで加えた。本液滴を、グリッド中で5分空気乾燥させ、その後顕微鏡のバキュームチャンバーに収納した。造影を、Hitachi S-4800電場放出顕微鏡を使用して、NISTで行った。SEMのNDA造影への適用の目的は、上部および下部二次電子検出器[SE(U)とSE(L)] −− その通常のモードでSEMを使用する −− を、装置を低電圧STEMに変更しながらの伝達電子(TE)の検出器の追加と、比較することである。
【0077】
走査型プローブ顕微鏡(SPM)
リポソーム封入Magnevist(登録商標)造影剤、および完全ナノ複合体のサンプル溶液をGUMCで調製し、NISTに送り、暗所および冷蔵保存した。各造影期間のために、脱イオン水で、容量で1:3の新たに希釈を調製し、5μL液滴を、天然オキシドまたはポリ−Lリシンコーティングと共に使用する超音波(untrasonically)洗浄したシリコン支持体にマイクロピペット輸送した。SPM造影を、Veeco MultiMode顕微鏡をNanoscope IVコントローラーと共に使用して得た。Zコントロール(〜320−360kHzおよびk 〜 20−60N/mのためのVeeco RTESPカンチレバー)を用いたタッピングモードによる形態学、相造影、および磁気被覆チップ(Veeco MESP 68kHz)を使用した磁気力顕微鏡を、ライフ・モードで行った。溶液が単離されたナノ粒子および塊を暴露するために蒸発するに連れた脱濡れ(dewetting)および表面エネルギー“相分離”の動的造影を、粒子安定性に対する溶媒乾燥の結果、およびSPM系で利用可能な種々のSPMコントラスト機構に対する影響の理解のために使用した。
【0078】
結果
レポーター遺伝子を担持するリガンド−リポソームナノ複合体による腫瘍特異的ターゲティング
TfRscFv−LipAナノ複合体の、原発腫瘍および転移正所性転移モデルへの選択的ターゲティングを評価するために、ヒトPanCa細胞株CaPan−1を使用して、臨床的症状のより近い近接を用いた。CaPan−1異種移植腫瘍切片のヌードマウスへの外科的正所性移植は、56日以内に、肝臓および脾臓に転移を生じることが示されている(Alisauskus,R., et al., Cancer Research 55:5743s-5748s(1995))。CaPan−1の正所性腫瘍を、「方法」に記載の通り雌無胸腺ヌードマウスに誘発した。約5週間後、動物を殺し、膵臓および他の臓器における腫瘍を調べるために剖検した。図1Aに示す通り、広範な腫瘍増殖が膵臓中で明白である。1Aにおいて矢印で示した肝臓における同じ腫瘍小結節は、1Bにおいて強いβ−ガラクトシダーゼ発現を示す。1A=肉眼的剖検;1B=β−ガラクトシダーゼについて染色後の組織。転移は、5匹中4匹のマウスで、脾臓、肝臓、肺、副腎および横隔膜内でさえ含む、種々の臓器に存在した。この実験を繰り返し、同様の結果であった。
【0079】
腫瘍および転移選択的ターゲティングを確率するために、マウスを殺す前に、β−ガラクトシダーゼ発現のためのpSVb(LacZ)プラスミドDNAを担持するTfRscFv−LipA複合体を、24時間にわたり3回マウスにi.v.注射した(注射あたり40μgのプラスミドDNA)。全5匹のマウスを注射60時間後に殺し、肝臓、肺、脾臓、膵臓および横隔膜を含む種々の臓器を回収し、転移および腫瘍特異的染色の存在について試験した。1mmの厚さにスライスした新鮮なサンプルをX−galで染色して、遺伝子が発現している場所に青色を生じさせた。複合体の腫瘍ターゲティング能および高トランスフェクション効率が、この動物からの種々の臓器におけるレポーター遺伝子の存在により証明された(図1B)。肝臓、肺、副腎および横隔膜において、レポーター遺伝子が転移においてのみ非常に発現されていて、隣接正常組織には青色が明白ではないことが明瞭に示される。図1Aにおいて肝臓中で見ることができる転移(矢印)は、図1Bにおいてβ−ガラクトシダーゼを強く発現する同じ腫瘍小結節(矢印)であり、このナノ複合体の腫瘍特異的性質を確認する。マウスの幾分かで、膵臓における腫瘍増殖がまた移植に使用した元の切開部位を通して腫瘍の突出ももたらした。図1Bにおいて、正常非染色皮膚に囲まれたこの強く青色染色された皮下腫瘍も示され、また腫瘍細胞特異性を示す。同様の結果が残りのマウスおよび反復実験でも示された。故に、この全身投与したナノ複合体は、原発および転移の両方の腫瘍細胞を、それが体内のどこで生じようと標的とし、プラスミドDNAを効率的に送達する。我々は、この送達系の可能性を拡大して、造影剤を包含させることを望んだ。そうする能力は、改善された造影および癌検出をもたらすであろう。
【0080】
Magnevist(登録商標)を送達するためのTfRscFv−Lip複合体を使用したインビトロ試験
Magnevist(登録商標)が臨床において最も使用されている造影剤の一つであるために、これらの試験での使用のために選択した。これらの最初の実験において、本複合体がMagnevist(登録商標)を伴って製造できるか、もしそうであるならばMRIシグナルを増強するかを実験した。トリプシン処理が膜損傷および細胞からの造影剤の滲出をもたらすため、接着細胞をこれらの試験には使用しなかった。その代わり、懸濁液培養として増殖させたヒトリンパ芽球性白血病細胞株、K562を使用した。さらに、細胞の穏やかなペレット化および洗浄が、造影前に全ての過剰なMagnevist(登録商標)または複合体を除去し、細胞関連シグナルのみの検出を可能とした。
【0081】
1. TfRscFv−Lip−Magナノ複合体による時間依存性画像増強
TfRscFv−Lip−Magnevist(登録商標)ナノ複合体のトランスフェクションのための最適時間を試験した。Magnevist(登録商標)の示される臨床用量は0.1mMole/kgである。これらの最初の試験において、250μlのトランスフェクション溶液あたり、複合体中、0.3mMole/kgの用量を使用した(ヒトに対してマウスの少ない体重および血液量に関して補正)。K562細胞を、20から90分の範囲の時間トランスフェクトした。20分は、画像強度に基づいて、非常に低いトランスフェクション活性を示した。しかしながら、図2Aに示される通り、60分までに、複合体でトランスフェクトされた細胞は、未処置細胞と比較して、強度の大きな増大を示した。未処置細胞の強度(202±48)は、空マーカー試験管(194±43)と有意差はなく、細胞それら自体が検出されるシグナルに関与しないことを示す。より重要なことに、トランスフェクトした細胞の60および90分の相対的強度が同一(それぞれ317±46および317±47)であるため、トランスフェクション効率は約60分でプラトーになった。
【0082】
2. Magnevist(登録商標)用量依存性画像増強
トランスフェクション時間として60分を使用して、次いで、TfRscFv−Lip−Mag複合体画像増強に対するMagnevist(登録商標)の量の増加の影響を評価した。試験した用量は0.05、0.3および0.9mMole/kgであった。マウスのサイズおよび血液量について補正して、250μlのトランスフェクション溶液中の複合体中で使用したMagnevist(登録商標)の量は0.25μl、1.5μlおよび4.5μlであった。図2Bおよび表1に示される通り、複合体中に含まれる造影剤の量の関数として、画像強度は増加し、T1緩和時間は短くなった。
【表2】

【0083】
3. 遊離Magnevist(登録商標)と比較したTfRscFv−Lip−Magによる画像増強
上記実験に基づき、TfRscFv−リポソームがMagnevist(登録商標)と複合体化し、それを画像増強のために細胞に送達できることが示された。複合体化造影剤の該薬剤単独と比較した増強のレベルを評価し、得られたシグナルが、非包含Magnevist(登録商標)の存在によるものではないことを証明するために、K562細胞を遊離Magnevist(登録商標)またはTfRscFv−Lip−Magナノ複合体のいずれかで処理した。同一量の造影剤(0.3μM/kgまたは1.5μl/250μl トランスフェクション容量)およびトランスフェクション時間(60分)を両溶液について使用した。遊離Magnevist(登録商標)は、予測通り未処置細胞と比較して増強されたコントラストを示し、TfRscv−Lip−Mag複合体で処置された細胞は、未処置および遊離Magnevist(登録商標)処置細胞の両方と比較して、画像強度のより大きな増加および短いTi緩和時間を証明した(図2C、表2)。これらの結果は、標的化ナノ複合体の手段による造影剤取り込みの効率の増加を証明するだけでなく、観察されたシグナルが非複合体化Magnevist(登録商標)によるものではないであろうことも示す。
【表3】

【0084】
TfRscFv−Lip−Magでのインビボ画像増強
上記試験は、本ナノ複合体が、Magnevist(登録商標)単独よりも効率的にインビトロで腫瘍細胞を造影できることを確立した。しかしながら、臨床使用の可能性を有するために、本複合体は、インビボで同様の効果を示さなければならない。レポーター遺伝子を担持する本複合体の腫瘍特異的ターゲティングを証明するために上記で使用したものと同じヒト膵臓癌正所性マウスモデル(CaPan−1)を、これらの試験に使用した。加えて、第二の腫瘍モデル、皮下前立腺異種移植マウスモデル(DU145)もまた使用した。CaPan−1またはDU145腫瘍を担持するマウスを、「方法」において記載の通り7TBruker NMRで造影した。コイル中に配置されると、基準画像がTI強調Turbo RARE(急速増強を伴う急速獲得)3次元造影シークエンスを使用して得られた。画像アラインメントを容易にするために、基準獲得後、動物をケース中に維持し、その間造影溶液を静脈内注射を介して投与した。シグナル獲得は、注射3分以内に開始した。遊離(臨床において行われている通り)または本複合体に包含されたいずれかでマウスに投与されたMagnevist(登録商標)の量は10μlであった。この量は、ヒトにおいて使用される0.2mM/Kgまたは2倍と同等である。この量は、0.1mM/Kg Magnevist(登録商標)の標準ヒト用量のみでは、マウスにおいて非常に乏しいシグナルをもたらすため選択した。遊離Magnevist(登録商標)およびTfRscFv−Lip−Mag複合体での造影を連続2日間行った。基準スキャンもまたナノ複合体投与前に行い、前日からのMagnevist(登録商標)の全てがウォッシュアウトされていることを確認した。MR技術およびウィンドウは、スキャナーの自動ウィンドウイング特性を補正するように調節されたウィンドウを有する2セットの画像の間で同一であった。
【0085】
3匹の別々のマウスにおけるMagnevist(登録商標)およびナノ複合体−Magの画像を図3A−Iに示す。図3A、3Dおよび3Gにおいて、CaPan−1腫瘍細胞外科的移植4ヶ月後、動物は、大きな正所性腫瘍を担持する。造影剤単独と比較して増加した解像度およびシグナル強度がかなり明白である。同様の結果が、図3B、3Eおよび3Hに示す、CaPan−1腫瘍を有する第二のマウスでも観察される。この動物は、手術後わずか2ヶ月で、切開部位を通して目に見える皮下腫瘍増殖を有する。小さな腹部塊も触診により検出された。本複合体化Magnevist(登録商標)の投与後に皮下腫瘍のシグナルがより増強されていただけでなく、小さい正所性腫瘍らしきもの(矢印)がこのスキャンにおいて明瞭であるが遊離Magnevist(登録商標)を受けた動物では明瞭ではない。同様に、遊離Magnevist(登録商標)と比較して、増加した鮮明度およびコントラストが、TfRscFv−Lip−Mag複合体注射後に皮下DU145腫瘍(図3C、3Fおよび3I)で明瞭である。再構成および定量を、2種の異なる腫瘍モデル、膵臓癌(CaPan−1)および前立腺癌(DU145)を示す図3B、3Eおよび3Hならびに3C、3Fおよび3Iで行った。両方の場合、予期された通り、遊離Magnevist(登録商標)による基準を越える増加した強度(ピクセル)がある。しかしながら、腫瘍ターゲティングナノ複合体による造影剤の送達は、これらの腫瘍モデルの両方においてほぼ3倍のシグナル強度のさらなる増加をもたらす。故に、これらの試験は、Magnevist(登録商標)がTfRscFv−リポソーム複合体に包含されたとき、インビボ状況で改善された腫瘍可視化があり、そして、臨床使用のための腫瘍検出の手段としてこれをさらに開発する利点の可能性を示唆する。
【0086】
物理的特徴付け試験
インビトロ試験は複合体化Magnevist(登録商標)がリポソーム内に封入される証明を提供し、精密な顕微鏡技術(SEMおよびSPM)がこれを証明しているが、TfRscFv−Lip−Mag複合体をさらに特徴付け(例えば複合体サイズ)する。
【0087】
1. Magnevist(登録商標)なしのリポソームの造影
高解像度造影は狭い焦点深度を意味し、故に、相対的に薄くかつ平らなサンプルを必要とする。どの程度薄いかは技術に依存するが、表面および支持体効果 −−表面エネルギーおよび対称性低下 − がしばしばバイオマテリアルに典型的な構造力を支配する。これは、その薄い性質を考慮して、リポソームの場合特に当てはまる。(Foo, J.J., et al., Annals of Biomedical Engineering 31:1279-1286(2003))。故に、単離されたリポソームを調製するためのおよび次元的および機構的安定性特徴付けするための信頼できる方法が必須である。この特徴付けの目的は、造影剤が実際にナノ粒子に取りこまれており、リポソームと単に外的結合しているものではないことを確立するための、ナノ粒子の機械的剛性および磁気特性の直接検出を実施することである。
【0088】
SPMは、カンチレバー共鳴周波数近くに結合しているチップおよびカンチレバーを振動させることによるタッピングモードで表面形態学を造影する。フィードバック回路が、カンチレバーの振動を、一定振幅に維持する。この一定振幅は、自由に振動するカンチレバーよりも幾分小さい接点により与えられる。SPMチップが、種々の小さい力を介して表面と相互作用するため、表面上のある点でのカンチレバー励起およびその応答の間に層シフトがある。不均質表面について、チップ−表面相互作用は、例えば表面電荷、急形態学的変化、および機械的剛性変化に従い変化する。設定点を変えることにより、そしてどのようにある種の特性が軟または硬タッピングに応答するかを観察することにより、我々は、これをリポソームのような特異的構造について予測される応答と相関させることができる。(自由振動振幅シグナルは約1.78Vである。)ペイロードなしの一対の単離されたリポソームのSPM相画像のシークエンスを図4A−Cに示す。図4Aは、1.68Vの設定点で造影し、そして支持体およびリポソームの間の対応する逆位相差は、−3.5度の相値を与えられた場合、チップ−サンプル相互作用がリポソームに対して誘引性であることを示す。誘引性相互作用および逆相の場合、リポソームの相画像は、リポソーム端での形態学的に重要な輪以外、暗く見える。図4Bは、1.45Vに設定点を下げたときの効果を証明する:ここでは、リポソームは、チップ−サンプル相互作用が反発になったため明るく見え、そしてこの場合、リポソームおよび支持体の間の位相差は+8度である。最後に、図4Cは、1.35Vの設定点で記録した位相差がさらに増加し、+35度になることを示す。
【0089】
2. リポソーム封入Magnevist(登録商標)の造影
図5A−Cは、単離されたリポソーム封入Magnevist(Lip+Mag)ナノ粒子のSPMおよびSEM画像を示す。単一Lip+Mag粒子のサイズ分布は、光学測定に従って100−200nm直径およびスケールの範囲内であり、それは、ペイロード封入リポソームが、球形状態ではリポソーム単独より約50%大きいことを示す。
【0090】
図5Aに示すSPMトポグラフは、Magnevist(登録商標)含有リポソームが、乾燥後にバイモダル表面形態を有し、それはペイロードを含んでいないリポソームの単純長円表面(示していない)よりもさらに複雑である。SPM相行動は、無ペイロードリポソームのそれと非常に異なり、外環が中心に対して反発性であり、そして対応するSPM相画像は図5Bに示す。誘引性および反発性チップ−サンプル相互作用両方の領域が中程度の設定点値で見られる。1.6の設定点で得られるSPM相画像およびTEモードのSEM画像の相関は、図5Bおよび5Cから明らかである。リポソームは、SEM画像において全粒子で均一に明るく見え(示していない)、SPMにより我々が得た均一相画像に類似する。チップおよびカンチレバーは時間および用法に応じて変化する。さらに、作成された画像が、チップ上の外来物質のために、チップ不安定性により影響を受けないことを確認することは重要である。故に、それらを頻繁に変える。各カンチレバーがその共鳴特性について幾分異なるため、図4および5において使用した設定点は異なる。
【0091】
3. TfRscFv−Lip−Magナノ複合体の造影
「方法」において記載の通り、完全TfRscFv−Lip−Magナノ複合体を調製し、SEMおよびSPMで造影した。図6Aおよび6Bに示す結果は、、溶媒フィルムが相分離を起こすことを示す;しかしながら、単離されたNDSの例は、乾燥フィルム上で容易に観察できる。SEMビームが明らかにフィルム上への何らかの傷の原因となるが、粒子は、ビーム傷が顕著になる前に数回繰り返し走査できることは注意すべきである。完全複合体の見かけは(Lip+Mag)のみのものと異なる。形態は規則性が低く、そして乾燥後のリポソーム表面の相当なテクスチャリングは、タンパク質変性と一致する。また、SEM TE画像は、(Lip+Mag)粒子で見られるリポソームの外環および中心の間の良く定義された境界が、あまり明瞭ではなく、形態がはるかに可変性であることを示す。これは、リポソーム内のタンパク質の存在が、フィルム乾燥中のリポソームを通る浸透性流出を変えるとの観察と一致する。
【0092】
SPM(MFM)の磁気力顕微鏡造影性能を使用することにより、これらのNDS粒子についてさらなる情報を得ることが可能である。ガドリニウム含有Magnevist(登録商標)の磁気モーメントがかなり大きいため、磁化SPMチップを使用して、リポソーム内に濃縮されている指向性Magnevist(登録商標)と相互作用することが可能であるはずである。図7Aおよび7Bにおおいて、数個の約100−200nm直径ナノ複合体のMFMを示す。SPMのリフトモード能力を使用して、作成された画が、真に本質的に磁気であることが確立される。このモードで、通常タッピングモード下の形態学的画像を得る。次いで、参照表面情報を使用して、表面から特異的な高さを除くことによりチップを並置し、次いで、この増加した高さについて走査する。これは、シグナルに対する形態学の影響を除く。表面から15nm以上の高さでのリフトモードで得たMFM画像は、磁気相画像により与えられる。シグナルの見かけは、本複合体内へのガドリニウム封入を確認する。図7Aは、完全TfRscFv−Lip−Magナノ複合体のSPM形態学/磁気相画像である。図7Bの二重双極子様シグナルの見かけは誘引性および反発性面内磁気相互作用と一致し、この相互作用の原因が、NDS内のMagnevist(登録商標)の不均一ドーナツ形分布であることを示唆し、SEMおよび非磁気SPM相画像と一致する。
【0093】
検討
ここに記載の結果は、我々が、一般に使用されているMR造影剤Magnevist(登録商標)を封入し、インビトロおよび正所性動物モデルの両方で腫瘍細胞に送達でき、そしてそうすることにより、非複合体化Magnevist(登録商標)で見られるよりもより明確で強い画像を生じることを証明する。
【0094】
図1に示す通り、本発明のナノ複合体は転移疾患を標的にでき、それにより転移の検出感受性を高める。SEMおよびSPMを使用して、Magnevist(登録商標)が封入されたとき、TfRscFv−リポソーム複合体がそのナノメートルサイズを維持することが証明されている(約100−200nmの粒子が図6および7に見られる)。ペイロード含有リポソームの構造的および機械的特性が、それを含まないものと相当に異なり、それによりMagnevist(登録商標)が実際にリポソーム内に封入されていることを証明する。これは、本複合体のMFM造影によりさらに確認された。
【0095】
以下の理論に縛られることを望まないが、(Lip+Mag)内部構造の暫定的な説明 は、SPM形態学画像におけるふくらみがリポソーム密閉相分離を示し、すなわち、粒子の中心での優勢な水性相を伴い粒子の末端周囲での稠密なMagnevist(登録商標)−脂質ドーナツ形分布の形成を示すことである。この応答は、恐らく、いくつかの重要な因子に帰し得る:第一に、Magnevist(登録商標)溶液の特性は製造者によると、20℃でpH〜6.5−8、1,960のオスモル濃度および4.9の粘性である。溶液のこの分離についてのもっともらしい化学的根拠がMagnevist(登録商標)データシートに示されている:メグルミン塩は複合体から完全に解離し、故に局所的浸透性条件が変化する。ガドリニウム複合体およびカチオン性脂質の電荷相互作用と合わさって、これらの相互作用は、リポソーム内の高張性相分離のための強い分離力を提供し得る。カチオン性脂質およびMagnevist(登録商標)溶液の間の電荷分布はリポソームの安定化に有効であり、溶液中で、そして恐らく血流中で構造的支持を提供する。この増強された構造支持が、リポソームのみの溶液で観察される相当な分解と対照的にそれがほとんど粒子がフィルム乾燥工程中に無傷で残ることを可能にし、これらの試験のための大きな利点である。
【0096】
前記の実施例は、本発明のイムノリポソーム複合体内へのMR造影剤の十分な封入を証明する。本複合体により証明された伝統的に送達させたMagnevist(登録商標)を越える画像増強は、MRIを介した癌の早期検出を改善するためのこの系の能力を示す。
【0097】
実施例2
種々の細胞株における造影の比較
図8A−8Hは、リガンド−HK−リポソーム−Magナノ複合体を使用した、癌の2種のモデルにおける改善されたMR造影を示す。本実施例において使用するためのナノ複合体は、実施例1に明示のものと同じ比率および方法を使用して製造した。ヒト乳癌MDA−MB−435(図8E−8H)またはヒト前立腺癌細胞株(DU145)(図8A−8D)細胞を雌無胸腺ヌードマウスの背下部に皮下注射した。遊離Magnevist(登録商標)、または同量のMagnevist(登録商標)を含むTfRscFv−リポソームナノ複合体(scLip−Mag)もしくはHoKcペプチド含有TfRscFv−HK−リポソームナノ複合体(scLip−HK−Mag)を、連続3日間、各マウスにi.v.注射(尾静脈を介して)した。Magnevist(登録商標)のこの量はヒト患者に投与する量の2倍に等しい。全例において投与した溶液の総容量は400μlであった。基準スキャンを両方のナノ複合体の投与直前に実施し、前日からのMagnevist(登録商標)の全てがウォッシュアウトされていることを確認した。MR技術およびウィンドウは、スキャナーの自動ウィンドウイング特性を補正するように調節されたウィンドウを有する4セットの画像の間で同一であった。パネルは、皮下腫瘍を有するマウスにおけるMRIシグナルの差異を示し、ここで、scLip−Mag注射後、そしてなおさらにscLip−HK−Mag注射後に前立腺腫瘍(DU145)(図8A−8D)および乳房腫瘍(435)(図8E−8H)の両方において増加した鮮明度およびコントラストが明白である。
【0098】
図9A−9Cは、TfRscFv−HK−リポソーム−Magナノ複合体によるCaPan−1皮下腫瘍および正所性転移モデルの腫瘍特異的ターゲティングを示す。皮下CaPan−1異種移植腫瘍を、実施例1の「方法」に記載の通り雌無胸腺ヌードマウスに誘発した。腫瘍を回収し、MATRIGEL(登録商標)中の単一細胞懸濁液を外科的に暴露した膵臓に注射した。注射8週間後、Magnevist(登録商標)を担持する、HoKC(HK)ペプチド含有または不含有TfRscFv−リポソーム複合体を、連続2日間マウスに注射した。全例で投与した溶液の総容量は400μlであった。基準スキャンをナノ複合体の投与直前に実施し、前日からのMagnevist(登録商標)の全てがウォッシュアウトされていることを確認した。MR技術およびウィンドウは、スキャナーの自動ウィンドウイング特性を補正するように調節されたウィンドウを有する3セットの画像の間で同一であった。図8A−8Hと同様に、表3に示す通り、皮下腫瘍(白色矢印)および転移病巣の改善された造影解像度が観察される。
【表4】

【0099】
実施例3
遊離(非複合体化)またはTfRScFv−Lip−Magnevistの全身注射の皮下PANC−1腫瘍の動的MRIスキャンの比較
以下の実験を実施し、全身送達後の腫瘍における遊離(非複合体化)およびTfRscFv−Lip−Magの取り込みおよびウォッシュアウトの速度およびレベルを比較した。PANC−1の皮下異種移植腫瘍を、MatrigelTMコラーゲン基材膜マトリックス(BD Biosciences)に懸濁させた1から2×10 PANC−1細胞の注射により雌無胸腺ヌードマウスに誘発させた。約2.5−3週間後、動物を造影のために使用した。カチオン性リポソーム(DOTAP:DOPE)を、先に記載の通りエタノール注入法により調製した(その各々の開示を引用により本明細書に包含させる米国公開特許出願2003/0044407;Xu L, et al., Molecular Cancer Therapeutics 1:337-346 (2002)を参照のこと)。これらの試験で使用したターゲティング部分は抗トランスフェリン受容体一本鎖抗体フラグメント(TfRscFv)である。
【0100】
造影剤をカプセル封入するために、TfRscFvをリポソームと特異的比率で混合し、室温で1−30分、適当には5−20分、最も適当には10−12分インキュベートした。Magnevist(登録商標)をこの溶液に添加し、混合し、再び室温で1−30分、適当には5−20分、最も適当には10−12分インキュベートした。インビボ使用のために調製するとき、スクロースまたはデキストロースを0.5−50%、適当には1−20%、最も適当にはスクロースについて10%およびデキストロースについて5%の最終濃度で添加し、室温で1−30分、適当には5−25分、最も適当には15−20分インキュベートした。本複合体は、上記方法を使用して、1mg造影剤対0.33−1.17μg TfRscFv対10−35μgリポソーム(適当には1mg造影剤対0.5から1.0μg TfRScFv対14−28μgリポソーム、最も適当には1mg造影剤対0.71μg TfRscFv対21μgリポソーム)の比率で形成される。本複合体の許容されるサイズ範囲は、約20から1000nm、適当には約50から700nmおよび最も適当には約100から500nmである。ここで、本複合体は、4.7mg Magnevist、99μgリポソームおよび3.3μg TfRscFvと5%の最終濃度のデキストロースを使用して形成した。
【0101】
上記の通り誘発したPANC−1皮下腫瘍担持マウスを麻酔し、動物ホルダーシステムに入れた。イソフルランを4%で、66%酸素および30%一酸化二窒素混合物を含む残りのガスと共に使用して麻酔を誘導した。麻酔の維持は、上記の酸素および一酸化二窒素の類似ガス条件下の1.0から2.0%イソフルラン(好ましくは1.5%)により達成した。麻酔した動物を円筒可変放射周波数共鳴アンテナ(鳥かご共鳴器容量コイル)の内側に配置させ、約300MHzの中心周波数にチューニングした(7テスラの磁界強度を対象としたとき水分子の中心共鳴周波数)。使用した造影プロトコールは、7TBruker BioSpin(Germany/USA)造影操作卓上で行ったT1強調2次元Turbo RARE(急速増強を伴う急速獲得)造影シークエンスであった。使用した造影パラメータは:T1強調2D(2次元)、TE 10.21ms、TR 420.3、Flipbackオフ、5.12/5.12cmの視野を伴う8エコーであった。基準画像獲得後、動物を動物ケースに固定化したままにし、遊離(非複合体化)Magnevist(登録商標)(Mag、またはここではgad−d)または同量のMag(総容量50−1000μl、適当には100−500μl、最も適当には200−400μl)を含むTfRscFv−Lip−Mag複合体を、動物の尾静脈への静脈内注射により27G針を使用して全身投与し、造影シークエンスを直ぐに開始した。スキャン(2平均、1.3分)を定期的に2時間にわたり繰り返し、ピクセル強度を測定し、プロットした。遊離および複合体両方の造影について同じマウスを使用した。造影は連続した日に行い、遊離Magが最初であった。
【0102】
図10に示す通り、遊離造影剤と比較して、本複合体の静脈内注射後に、腫瘍におおける顕著に高いレベルのシグナルがある。より顕著には、この高いレベルは、実験の経過中維持される。
【0103】
実施例4
TfRscFv−Lip−HoKC−MagnevistによるCaPan−1肝臓転移の検出
以下の実験を行い、本発明のTfRscFv−Lip−HoKC−Mag複合体が転移腫瘍を検出し、造影を増強する能力を評価する。例として、膵臓癌からの転移を試験したが、しかしながら、全てのタイプの癌からの転移の造影が、本発明の複合体および方法を使用して達成され得る(例えば前立腺、黒色腫、腎臓、乳房、胃、肝臓、卵巣、膀胱、頭頚部、脳、骨および全ての他のタイプの固形腫瘍)。CaPan−1の皮下異種移植腫瘍を、MatrigelTMコラーゲン基材膜マトリックス(BD Biosciences)に懸濁した0.5から1×10 CaPan−1細胞の注射により雌無胸腺ヌードマウスに誘発した。約8週間後 the腫瘍を回収し、腫瘍の単一細胞懸濁液を調製した。MatrigelTMにまた懸濁させた1.2−1.5×10細胞を、先に記載の通り雌無胸腺ヌードマウスの外科的に暴露した膵臓に注射した(Alisauskus, R., Wong, G.Y., and Gold, D.V., Initial studies of monoclonal antibody PAM4 targeting to xenografted orthotopic pancreatic cancer, Cancer Research 55, 5743s-5748s (1995))。
【0104】
カチオン性リポソーム(DOTAP:DOPE)を、先に記載の通りエタノール注入法により調製した(その各々の開示を引用により本明細書に包含させる米国公開特許出願2003/0044407;Xu L, et al., Molecular Cancer Therapeutics 1:337-346 (2002)を参照のこと)。HoKCペプチド{K[K(H)KKK]−K(H)KKC}(配列番号1)は、末端システインを含み、マレイミド基への結合を可能とする。故に、HoKCペプチドを使用したとき、リポソーム製剤はまたN−マレイミド−フェニルブチレート−DOPE(MPB−DOPE)を、総脂質の0.150モルパーセント、より好ましくは総脂質の1−10モルパーセント、最も好ましくは総脂質の5モルパーセント含む。HoKCリポソームHoKCリポソームを、先に記載の通り製造した(Yu, W. et al. Enhanced transfection efficiency of a systemically delivered tumor-targeting immunolipoplex by inclusion of a pH-sensitive histidylated oligolysine peptide, Nucleic Acids Research 32, e48 (2004)))。これらの試験に使用したターゲティング部分は抗トランスフェリン受容体一本鎖抗体フラグメント(TfRscFv)である。
【0105】
造影剤を封入するために、TfRscFvをリポソームと特異的比率で混合し、室温で1−30分、適当には5−20分、最も適当には10−12分インキュベートした。Magnevist(登録商標)をこの溶液に添加し、混合し、再び室温で1−30分、適当には5−20分、最も適当には10−12分インキュベートした。インビボ使用のために調製するとき、スクロースまたはデキストロース0.5−50%、適当には1−20%、最も適当にはスクロースについて10%よびデキストロースについて5%の最終濃度で添加し、および室温で1−30分、適当には5−25分、最も適当には15−20分インキュベートした。本複合体は、上記の方法を使用して1mg造影剤対0.33−1.17μg TfRscFv対10−35μgリポソーム−HoKC(適当には1mg造影剤対0.5から1.0μg TfRScFv対14−28μgリポソーム−HoKC、最も適当には1mg造影剤対0.71μg TfRscFv対21μgリポソーム−HoKC)の比率で形成した。本複合体の許容されるサイズ範囲は約20から1000nm、適当には約50から700nmおよび最も好ましくは100から500nmである。ここで、本複合体を4.7mg Magnevist(登録商標)、99μgリポソーム−HoKCおよび3.3μg TfRscFvと、最終濃度5%のデキストロースを使用して形成させた。
【0106】
上記で誘発させたCaPan−1正所性腫瘍担持マウス(腫瘍細胞の外科的移植約12週後)を麻酔し、動物ホルダー系に置いた。イソフルランを4%で、66%酸素および30%一酸化二窒素混合物を含む残りのガスと共に使用して麻酔を誘導した。麻酔の維持は、上記の酸素および一酸化二窒素の類似ガス条件下の1.0から2.0%イソフルラン(好ましくは1.5%)により達成した。麻酔した動物を円筒可変放射周波数共鳴アンテナ(鳥かご共鳴器容量コイル)の内側に配置させ、約300MHzの中心周波数にチューニングした(7テスラの磁界強度を対象としたとき水分子の中心共鳴周波数)。使用した造影プロトコールは、7TBruker BioSpin(Germany/USA)造影操作卓上で行ったT1強調Turbo RARE(急速増強を伴う急速獲得)3次元造影シークエンスであった。使用した造影パラメータは:T1強調Turbo−RARE 3D(3次元)、TE 13.3ms、TR 229.5ms、Flipbackオン、8.0/3.5/3.5cmの視野を伴う4エコーおよび256×256×256マトリックスであった。基準画像獲得後、動物を動物ケースに固定化したままにし、TfRscFv−Lip−HoKC−Mag複合体(総容量50−1000μl、より好ましくは100−500μl、最も好ましくは200−400μl)を、動物の尾静脈への静脈内注射により27G針を使用して全身投与し、3D造影シークエンスを直ぐに開始した。
【0107】
造影後、動物を殺し、転移の存在について視覚的に試験した。当業者に既知の標準法を使用して、肝臓を摘出し、ホルマリンに固定し、パラフィン包埋し、切断し、H&Eを使用して染色した。切片を顕微鏡により試験し、観察された転移を撮像した。
【0108】
図11A−11A:図11A:プレ−コントラスト。図11B:TfRcFv−Lip−HoKC−Mag注射、図11C:組織学。正所性膵臓癌はTfRcFv−Lip−HoKC−Mag(短白色矢印)で増強を示す。短白色矢印で示す2箇所は、より後方の切片で繋がっており、原発性で正所性に配置した腫瘍を示す。小転移(太い白色矢印)は、原発腫瘍で見られるのと同じパターンで増強される。肝臓の細い伸延部分(長くて太い矢印)は転移に隣接して存在する。剖検(示していない)および組織学(右画像)は、肝臓の長くて細い伸延部分に直接隣接した転移(黒色矢印)を示す。転移腫瘍の一つの形態とMRIの観察との類似性参照。
【0109】
実施例5
TfRscFv−Lip−Magnevistによる肺転移の増強された検出
以下の実験を行って、造影剤を担持する本発明の複合体を静脈内投与(または何らかの他の適当な経路、例えば、IT、ID、IM、IPであるがこれに限定されない)したとき、本複合体を使用せずに造影剤を投与したときと比べて転移の検出を増強できることを証明した。肺腫瘍を雌Balb/Cマウスに、1から10×10 RenCa細胞の静脈内注射により誘発した。この方法は、ほとんど排他的に動物の肺に存在し、故に、原発または転移のいずれかとして肺腫瘍をもたらす何らかの他のタイプの癌のモデル系として働く転移をもたらす。約2−4週間後動物を造影のために使用した。
【0110】
カチオン性リポソーム(DOTAP:DOPE)を、先に記載の通りエタノール注入法により調製した(その各々の開示を引用により本明細書に包含させる米国公開特許出願2003/0044407;Xu L, et al., Molecular Cancer Therapeutics 1:337-346 (2002)を参照のこと)。これらの試験に使用したターゲティング部分は抗トランスフェリン受容体一本鎖抗体フラグメント(TfRscFv)である。
【0111】
造影剤を封入するために、TfRscFvをリポソームと特異的比率で混合し、室温で1−30分、適当には5−20分、最も適当には10−12分インキュベートした。Magnevist(登録商標)をこの溶液に添加し、混合し、再び室温で1−30分、適当には5−20分、最も適当には10−12分インキュベートした。インビボ使用のために調製するとき、スクロースまたはデキストロース0.5−50%、適当には1−20%、最も適当にはスクロースについて10%よびデキストロースについて5%の最終濃度で添加し、室温で1−30分、より適当には5−25分、最も適当には15−20分インキュベートした。本複合体は、上記方法を使用して、1mg造影剤対0.33−1.17μg TfRscFv対10−35μgリポソーム(適当には1mg造影剤対0.5から1.0μg TfRScFv対14−28μgリポソーム、最も適当には1mg造影剤対0.71μg TfRscFv対21μgリポソーム)の比率で形成した。本複合体の許容されるサイズ範囲は約20から1000nm、適当には約50から700nmおよび最も適当には約100から500nmであった。ここで、本複合体本複合体は、4.7mg Magnevist、99μgリポソームおよび3.3μg TfRscFvと、最終濃度5%のデキストロースを使用して形成させた。
【0112】
上記で誘発した肺腫瘍を担持するマウスを麻酔し、動物ホルダー系に置いた。イソフルランを4%で、66%酸素および30%一酸化二窒素混合物を含む残りのガスと共に使用して麻酔を誘導した。麻酔の維持は、上記の酸素および一酸化二窒素の類似ガス条件下の1.0から2.0%イソフルラン(好ましくは1.5%)により達成した。麻酔した動物を円筒可変放射周波数共鳴アンテナ(鳥かご共鳴器容量コイル)の内側に配置させ、約300MHzの中心周波数にチューニングした(7テスラの磁界強度を対象としたとき水分子の中心共鳴周波数)。使用した造影プロトコールは、7TBruker BioSpin(Germany/USA)造影操作卓上で行ったT1強調2次元Turbo Multislice-Multiecho造影シークエンスであった。使用した造影パラメータは:T1強調2D(2次元)、TE 10.21ms、TR 400ms、Flipbackオフ、3.84×3.84cmおよび256×256マトリックスの視野の8平均であった。基準画像獲得後、動物を動物ケースに固定したままにし、遊離(非複合体化)Magnevist(登録商標)(gad−d)または同量のMag(総容量50−1000μl、より適当には100−500μl、最も適当には200−400μl)を含むTfRscFv−Lip−Mag複合体を、動物の尾静脈への静脈内注射により27G針を使用して全身投与し、造影シークエンスを直ぐに開始した。画像のピクセル強度を測定し、プロットした。遊離および複合体の両方の造影のために同じマウスを使用した。本造影を連続した日に行った。
【0113】
図12A−12Eに示す通り、遊離造影剤と比較して、本複合体の静脈内注射後に腫瘍における顕著に高いレベルのシグナルが存在する。故に、本発明の複合体はまた、遊離造影剤の投与の現在使用されている方法と比較して、肺における相対的に大きな転移の検出も増強する。
【0114】
実施例6
TfRscFv−Lip−Magnevistによる小肺転移の増強された転移
以下の実験行って、造影剤を担持する本発明の複合体を静脈内投与(または何らかの他の適当な経路、例えば、IT、ID、IM、IPであるがこれに限定されない)したとき、本複合体を使用せずに造影剤を投与したときには検出できない、非常に小さな転移を検出できることを証明した。肺腫瘍を1から10×10 RenCa細胞の静脈内注射により、雌Balb/Cマウスに誘発した。この方法は、ほとんど排他的に動物の肺に存在し、故に、原発または転移のいずれかとして肺腫瘍をもたらす何らかの他のタイプの癌のモデル系として働く転移をもたらす。約7−9日後動物を造影のために使用した。
【0115】
カチオン性リポソーム(DOTAP:DOPE)を、先に記載の通りエタノール注入法により調製した(その各々の開示を引用により本明細書に包含させる米国公開特許出願2003/0044407;Xu L, et al., Molecular Cancer Therapeutics 1:337-346 (2002)を参照のこと)。これらの試験に使用したターゲティング部分は抗トランスフェリン受容体一本鎖抗体フラグメント(TfRscFv)である。
【0116】
造影剤を封入するために、TfRscFvをリポソームと特異的比率で混合し、室温で1−30分、適当には5−20分、最も適当には10−12分インキュベートした。Magnevist(登録商標)をこの溶液に添加し、混合し、再び室温で1−30分、適当には5−20分、最も適当には10−12分インキュベートした。インビボ使用のために調製するとき、スクロースまたはデキストロース0.5−50%、適当には1−20%、最も適当にはスクロースについて10%よびデキストロースについて5%の最終濃度で添加し、および室温で1−30分、適当には5−25分、最も適当には15−20分インキュベートした。本複合体は、上記の方法を使用して、1mg造影剤対0.33−1.17μg TfRscFv対10−35μgリポソーム(適当には1mg造影剤対0.5から1.0μg TfRScFv対14−28μgリポソーム、最も適当には1mg造影剤対0.71μg TfRscFv対21μgリポソーム)の比率で形成される。本複合体の許容されるサイズ範囲は約20から1000nm、適当には約50から700nmおよび最も適当には約100から500nm。ここで、本複合体本複合体は、4.7mg Magnevist、99μgリポソームおよび3.3μg TfRscFvと、最終濃度5%のデキストロースを使用して形成させた。
【0117】
上記で誘発した肺腫瘍を担持するマウスを麻酔し、動物ホルダー系に置いた。イソフルランを4%で、66%酸素および30%一酸化二窒素混合物を含む残りのガスと共に使用して麻酔を誘導した。麻酔の維持は、上記の酸素および一酸化二窒素の類似ガス条件下の1.0から2.0%イソフルラン(好ましくは1.5%)により達成した。麻酔した動物を円筒可変放射周波数共鳴アンテナ(鳥かご共鳴器容量コイル)の内側に配置させ、約300MHzの中心周波数にチューニングした(7テスラの磁界強度を対象としたとき水分子の中心共鳴周波数)。使用した造影プロトコールは、7TBruker BioSpin(Germany/USA)造影操作卓上で行うT1強調2次元Turbo Multislice-Multiecho造影シークエンスであった。使用した造影パラメータは:T1強調2D(2次元)造影シークエンス、TE 10.21ms、TR 572.99ms、Flipbackオフ、2.56×2.56cmおよび256×256マトリックスの視野の8平均であった。基準画像獲得後、動物を動物ケースに固定したままにし、遊離(非複合体化)Magnevist(登録商標)(gad−d)または同量のMag(総容量50−1000μl、適当には100−500μl、最も適当には200−400μl)を含むTfRscFv−Lip−Mag複合体を、動物の尾静脈への静脈内注射により27G針を使用して全身投与し、造影シークエンスを直ぐに開始した。画像のピクセル強度を測定した。遊離および複合体の両方の造影のために同じマウスを使用した。本造影を連続した日に行った。この視野で5ピクセルがCTで検出される3mm ヒト腫瘍とほぼ同等である。
【0118】
図13A−13Dに示す通り、4ピクセルの転移(下部矢印)(直径約0.4mmの転移に相当)が本複合体注射後に検出可能であったが、遊離gad−dの後には不可能であった。さらに、遊離gad−dと比較して、第二のわずかに大きな転移(上部矢印)においてシグナルが顕著に増強された。故に、本発明の複合体はまた、遊離造影剤の投与の現在使用されている方法と比較して、肺における小転移の検出も増強する。約3ピクセル(直径約0.3mmの腫瘍に相当)のより小さな転移でさえまた本発明の複合体を使用して検出されたが、遊離gad−dでは検出不可能であった(図14A−14D)。
【0119】
上記と同じ腫瘍モデル系を用いて、本発明の複合体の静脈内注射後により小さなサイズの腫瘍が検出できる。ここで、使用した造影パラメータはまたT1強調2D(2次元)Mutltislice-Multiecho造影シークエンス、TE 10.21ms、同時にTR=630.8ms、Flipbackオフ、2.56×2.56cmおよび256×256マトリックスの視野の8平均であった。図15A−15Bに示す通り、1−2ピクセルの孤在性小結節が本複合体により検出可能であった。孤在性小結節N1およびN2はMRIスキャンで可視化された。それらが実際にバックグラウンドを越えるシグナルを発するかを決定するためには小さすぎるため(1−2ピクセル)、強度をImage Jソフトウエアを使用して測定し、最小、最大、平均値および標準偏差(SD)を2個の孤在性小結節について決定した。統計学的に、小結節の最大が基底の最大+2SDより大きいとき、小結節がノイズではなく、実際であるとの95%信頼がある。小結節2は明らかにこの95%信頼の範囲内であり、小結節1は丁度この限界であり、故にこれらは本複合体により増強された腫瘍塊でありそうである。造影後、当業者に既知の標準法を使用して、この動物から肺を摘出し、ホルマリンに固定し、パラフィン包埋し、切断し、H&Eを使用して染色した。切片を顕微鏡により試験し、観察された転移を撮像した。図16(低解像度、2×)および図17(高解像度、10×)に示す通り、約0.1mmの2個の腫瘍が、MRIに基づいて予測されるのと同じ葉および近い位置に見られた。2個の孤在性小結節の距離をMRI画像で測定し、組織学に基づいたものと等しい(〜600nm)ことが判明した。故に、これらの非常に小さな組織学的に決定された腫瘍塊は、実際に、本発明の複合体を使用したMRIで検出された孤在性小結節を示す。ここで見られた肺転移についての検出感受性のレベルは、肺の原発腫瘍および他の癌タイプに由来する肺転移の一般的に使用される検出法であるCTで現在見られるより高い。明らかに、これは予期されない、そして驚くべき結果を示す。
【0120】
実施例7
TfRscFv−Lip−Magnevistによる胸膜下肺転移の検出
図13および14について上記実施例6において、上記した通りの腫瘍モデル系および造影パラメータを用いて、図18A−18Fに示す通り、肺の胸膜下における転移を検出することも可能である。これは、現在の、実際には細胞に入らない非複合体化薬剤でのMRI造影がこの位置の転移を検出できないため、予期されず、そして驚きである。これは、肺および他のタイプの癌の早期検出および処置において顕著な利点を提供する。
【0121】
実施例8
TfRscFv−Lip−Magnevistによる黒色腫肺転移の増強された検出
胸膜転移の検出/処置について、臨床コントロールは非常に達成が困難であり、利益の測定も困難である。本実施例に示す結果は、本発明の複合体が胸膜転移に到達し、トランスフェクトでき、故にそれらの治療に使用できることも示す。さらに、本発明の複合体は、このまたは何らかの他の治療の有効性を測定するために用いる造影ツールであろう。
【0122】
以下の実験を行って、静脈内投与(または何らかの他の適当な経路、例えば、IT、ID、IM、IPであるがこれに限定されない)したとき、造影剤を担持する本発明の複合体が腎臓細胞癌腫からの転移に限定されない転移を検出できることを証明した。肺腫瘍を0.1から5×10 B16/F10 マウス黒色腫細胞の静脈内注射により雌C57/Bl 6マウスに誘発した。この方法は、ほとんど排他的に動物の肺に存在し、故に、原発または転移のいずれかとして肺腫瘍をもたらす何らかの他のタイプの癌のモデル系として働く転移をもたらす。約2−4週間後、動物を造影に使用した。
【0123】
カチオン性リポソーム(DOTAP:DOPE)を、先に記載の通りエタノール注入法により調製した(その各々の開示を引用により本明細書に包含させる米国公開特許出願2003/0044407;Xu L, et al., Molecular Cancer Therapeutics 1:337-346 (2002)を参照のこと)。これらの試験に使用したターゲティング部分は抗トランスフェリン受容体一本鎖抗体フラグメント(TfRscFv)である。
【0124】
造影剤を封入するために、TfRscFvをリポソームと特異的比率で混合し、室温で1−30分、適当には5−20分、最も適当には10−12分インキュベートした。Magnevist(登録商標)をこの溶液に添加し、混合し、再び室温で1−30分、適当には5−20分、最も適当には10−12分インキュベートした。インビボ使用のために調製するとき、スクロースまたはデキストロース0.5−50%、適当には1−20%、最も適当にはスクロースについて10%よびデキストロースについて5%の最終濃度で添加し、および室温で1−30分、適当には5−25分、最も適当には15−20分インキュベートした。本複合体は、上記の方法を使用して、1mg造影剤対0.33−1.17μg TfRscFv対10−35μgリポソーム(適当には1mg造影剤対0.5から1.0μg TfRScFv対14−28μgリポソーム、最も適当には1mg造影剤対0.71μg TfRscFv対21μgリポソーム)の比率で形成される。本複合体の許容されるサイズ範囲は約20から1000nm、適当には50から70nmおよび最も適当には100から500nm。ここで、本複合体本複合体は、4.7mg Magnevist、99μgリポソームおよび3.3μg TfRscFvと、最終濃度5%のデキストロースを使用して形成させた。
【0125】
上記で誘発した肺腫瘍を担持するマウスを麻酔し、動物ホルダー系に置いた。イソフルランを4%で、66%酸素および30%一酸化二窒素混合物を含む残りのガスと共に使用して麻酔を誘導した。麻酔の維持は、上記の酸素および一酸化二窒素の類似ガス条件下の1.0から2.0%イソフルラン(好ましくは1.5%)により達成した。麻酔した動物を円筒可変放射周波数共鳴アンテナ(鳥かご共鳴器容量コイル)の内側に配置させ、約300MHzの中心周波数にチューニングした(7テスラの磁界強度を対象としたとき水分子の中心共鳴周波数)。使用した造影プロトコールは、7TBruker BioSpin(Germany/USA)造影操作卓上で行うT1強調2次元Turbo Multislice-Multiecho造影シークエンスであった。使用した造影パラメータは:T1強調2D(2次元)造影シークエンス、TE 10.21ms、TR 1418.13ms、Flipbackオフ、3.84×3.84cmおよび256×256マトリックスの視野の8平均であった。基準画像獲得後、動物を動物ケースに固定したままにし、遊離(非複合体化)Magnevist(登録商標)(gad−d)または同量のMag(総容量50−1000μl、適当には100−500μl、最も適当には200−400μl)を含むTfRscFv−Lip−Mag複合体を、動物の尾静脈への静脈内注射により27G針を使用して全身投与し、造影シークエンスを直ぐに開始した。画像のピクセル強度を測定した。遊離および複合体の両方の造影のために同じマウスを使用した。本造影を連続した日に行った。
【0126】
図19A−19Bに示す通り、2個の小転移(矢印)が、本複合体化Magnevist(登録商標)(Mag)の注射後に肺で検出された。本画像は、肺中の2種の異なるスライスを示す。
【0127】
上記と同一の腫瘍モデル系(B16/F10黒色腫)および造影パラメータを使用して、他の動物における転移のピクセル強度を、基準後、遊離Magnevist(登録商標)後およびTfRscFv−Lip−Mag後にImage Jソフトウエアでの動的プロファイリングを使用して測定し、値を比較した。以下の表4に示す通り、本複合体は、基準値を超える最大の増強を示した。標準偏差は、複合体と基準値の間は有意であるが、遊離Magnevist(登録商標)と基準の間は有意ではないことを示す。
【表5】

【0128】
参考文献
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33. Morawski, A.M., et al., Magnetic Resonance in Medicine 51:480-486 (2004)
【0129】
本明細書中に記載の全ての刊行物、特許および特許出願は、個々の刊行物、特許または特許出願が具体的にかつ個々に引用により包含されることが示されているのと同程度に、引用により本明細書に包含させる。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】図1Aおよび1Bは、TfRscFv−リポソーム−DNAナノ複合体によるCaPan−1正所性転移モデルの腫瘍特異的ターゲティングを示す。1Aにおいて矢印で示す肝臓中の同じ腫瘍小結節は、1Bにおいて強いβ−ガラクトシダーゼ発現を示す。1A=肉眼的剖検;1B=β−ガラクトシダーゼについて染色後の組織。
【図2】図2A−2Cは、TfRscFv−Lip−Magナノ複合体でトランスフェクションした後のK564細胞のインビトロMR画像を示す。1A=時間依存的トランスフェクション。示す値は相対的強度である。1B=は、複合体中に包含されるMagnevist(登録商標)の量による相対的強度の変化を示す(μl)。1C=TfRscFv−Lip−Mag複合体対遊離Magnevist(登録商標)の比較。全ての図中の小さい丸は、サンプル位置のマーカーである。
【図3】図3A−Iは、リガンド−リポソーム−Magナノ複合体を使用した、2種の異なるモデルにおける改善されたMR画像を示す。3A、D、およびGは、大きな膵臓正所性腫瘍(矢印)(腫瘍の外科的移植4ヶ月後)のMRIシグナルにおけるi.v.投与した遊離造影剤およびTfRscFv−Lip−Mag複合体の間の差異を示す。3B、E、およびHは、皮下膵臓腫瘍およびとかなり小さな腹部膵臓腫瘍(矢印)を有する第二のマウスにおける類似の効果を示す。3C、FおよびIは、皮下前立腺腫瘍(矢印)を有する第三の動物での画像であり、同じ効果が明白である。
【図4】図4A−Cは、Magnevist(登録商標)なしでの、リポソームのSPM相画像を示す。4A、4Bおよび4Cに挙げる画像は、各々1.68V、1.45V、および1.35Vの設定値で得た。不適合基質およびと機械的に対応するリポソームの間の対応する位相差は、−3.5°、+8°、および+40°である。SPMチップとリポソームの相互作用は、設定値が変わるに連れて誘引性から反発まで変わる。
【図5】図5A−Cは、リポソーム封入Magnevist(登録商標)(Lip+Mag)のSPMおよびSEM画像を示す。5Aは、リポソーム封入Magnevist(登録商標)粒子の原子間力顕微鏡法局所的画像である。SPM相画像(設定値=1.6)(5B)および15keV SEM(TE)[転送方式電子検出器]画像(5C)は同様のコントラストを提供するが、完全に異なる相補的物理機構により産生される。
【図6】図6Aおよび6Bは、TfRscFv+Lip+Magナノ複合体のSPM形態学および相イメージングを示す。6Aは、全ナノ複合体のl5keV SEM(TE)[転送方式電子検出器]画像である。6B=その視野の低倍率画像である。四角に入っている領域が6Aの画像である。
【図7】図7Aおよび7Bは、25nm高転置を使用したリフトモードのSPM形態学および磁気相画像の断面比較を示す。7Aは、完全TfRscFv−Lip−Magナノ複合体のSPM形態学/磁気相画像である。誘引性および反発性面内磁気相互作用から成る7Bの二重双極子様シグナルの見かけは、この相互作用の原因が、SEMおよび非磁気SPM相造影と一致して、NDS内のMagnevistの不均一ドーナツ形分布であることを示唆する。
【図8】図8A−8Hは、リガンド−HK−リポソーム−Magナノ複合体を使用した2種のモードでの改善されたMR造影を示す。ヒト乳癌MDA−MB−435(図8E−8H)およびヒト前立腺癌細胞株(DU145)(図8A−8D)。
【図9】図9A−Cは、TfRscFv−HK−リポソーム−Magナノ複合体によるCaPan−1皮下腫瘍および正所性転移モデルの腫瘍特異的ターゲティングを示す。
【図10】図10は、遊離Magと比較して、膵臓癌腫モデルにおいて本発明の複合体により送達されたMagを使用して、強度の増加を示す、動的MRIを示す。
【図11】図11A−11Cは、本発明のMag含有複合体による膵臓癌転移のMR造影を示す。
【図12】図12A−12Eは、本発明のMag含有複合体による、肺転移のMR造影の大きな増強を示す。
【図13】図13A−13Dは、本発明のMag含有複合体による腎臓細胞癌腫肺転移のMR造影の大きな増強を示す。
【図14】図14A−14Dは、本発明のMag含有複合体による、小腎臓細胞癌腫肺転移のMR造影による、大きな検出感受性を示す。
【図15】図15A−15Bは、本発明のMag含有複合体による非常に小さなMR造影を示し、本発明の複合体の感受性を証明する。
【図16】図16は、本発明のMag含有複合体を使用したMRIにより見られる検出/造影を確認する、転移組織の切片を示す。
【図17】図17は図16の高倍率図を示す。
【図18】図18A−18Fは、本発明のMag含有複合体による、肺の胸膜下における転移のMR造影を示す。
【図19】図19A−19Bは、本発明のMag含有複合体による、B16/F10黒色腫肺転移の検出を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体または抗体フラグメント標的化カチオン性イムノリポソーム複合体の製造方法であって:
(a)抗体または抗体フラグメントを製造し;
(b)該抗体または抗体フラグメントとカチオン性リポソームを混合して、カチオン性イムノリポソームを形成させ(ここで、該抗体または抗体フラグメントは、該カチオン性リポソームに化学的に接合していない);そして
(c)該カチオン性イムノリポソームと造影剤を混合して、該抗体または抗体フラグメント標的化カチオン性イムノリポソーム複合体を形成する
ことを含む、方法。
【請求項2】
抗体を該カチオン性リポソームと混合する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
抗体フラグメントを該カチオン性リポソームと混合する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
該抗体フラグメントが一本鎖Fvフラグメントである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
該抗体フラグメントが抗トランスフェリン受容体一本鎖Fv(TfRscFv)である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
該抗体または抗体フラグメントが抗HER−2抗体または抗体フラグメントである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
該抗体フラグメントが、該カチオン性リポソームとの混合前に、カルボキシ末端にシステイン部分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
さらに該カチオン性イムノリポソームと、K[K(H)KKK]5−K(H)KKC(HoKC)(配列番号1)ペプチドを含むペプチドの混合を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
該カチオン性リポソームが、1種以上のカチオン性脂質および1種以上の中性またはヘルパー脂質の混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
該抗体または抗体フラグメントを、該カチオン性リポソームと、約1:20から約1:40(w:w)の範囲の比率で混合する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
該カチオン性リポソームが、ジオレオイルトリメチルアンモニウムホスフェートとジオレオイルホスファチジルエタノールアミンおよび/またはコレステロールの混合物;またはジメチルジオクタデシルアンモニウムブロマイドとジオレオイルホスファチジルエタノールアミンおよび/またはコレステロールの混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
該カチオン性イムノリポソームを、該造影剤と、約0.1:10から約0.1:35(mg造影剤:μgリポソーム)の範囲の比率で混合する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
該カチオン性イムノリポソームを、該造影剤と、約1:14から約1:28(mg造影剤:μgリポソーム)の比率で混合する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
該カチオン性イムノリポソームを、該造影剤と、約1:21(mg造影剤:μgリポソーム)のモル比で混合する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
該造影剤が磁気共鳴造影(MRI)剤、コンピュータ断層撮影(CT)造影剤、または陽電子放出断層撮影(PET)造影剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
該MRI剤が、ガドペンタテートジメグルミン、酸化鉄、またはイオパミドールであり、該CT造影剤がバリウム、ヨウ素または食塩水であり、または該PET造影剤が18F−2−デオキシ−2−フルオロ−D−グルコース(FDG)である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1の方法により製造したカチオン性イムノリポソーム複合体。
【請求項18】
カチオン性リポソーム、抗体または抗体フラグメント、および造影剤を含む抗体または抗体フラグメント標的化カチオン性イムノリポソーム複合体(ここで、該抗体または抗体フラグメントが該カチオン性リポソームに化学的に接合していない)。
【請求項19】
該造影剤が該カチオン性リポソーム内に封入されている、請求項18に記載のカチオン性イムノリポソーム複合体。
【請求項20】
該造影剤が該カチオン性リポソームの内または外単層と結合している、請求項18に記載のカチオン性イムノリポソーム複合体。
【請求項21】
該抗体フラグメントが一本鎖Fvフラグメントである、請求項18に記載のカチオン性イムノリポソーム複合体。
【請求項22】
該抗体フラグメントが抗トランスフェリン受容体一本鎖Fv(TfRscFv)である、請求項18に記載のカチオン性イムノリポソーム複合体。
【請求項23】
該抗体または抗体フラグメントが抗HER−2抗体または抗体フラグメントである、請求項18に記載のカチオン性イムノリポソーム複合体。
【請求項24】
該カチオン性リポソームが1種以上のカチオン性脂質および1種以上の中性またはヘルパー脂質の混合物を含む、請求項18に記載のカチオン性イムノリポソーム複合体。
【請求項25】
該抗体または抗体フラグメントおよび該カチオン性リポソームが約1:20から約1:40(w:w)の範囲の比率で存在する、請求項18に記載のカチオン性イムノリポソーム複合体。
【請求項26】
該カチオン性リポソームがジオレオイルトリメチルアンモニウムホスフェートとジオレオイルホスファチジルエタノールアミンおよび/またはコレステロールの混合物;またはジメチルジオクタデシルアンモニウムブロマイドとジオレオイルホスファチジルエタノールアミンおよび/またはコレステロールの混合物を含む、請求項18に記載のカチオン性イムノリポソーム複合体。
【請求項27】
該造影剤および該カチオン性イムノリポソームが約0.1:10から約0.1:35(mg造影剤:μgリポソーム)の範囲の比率で存在する、請求項18に記載のカチオン性イムノリポソーム複合体。
【請求項28】
該造影剤および該カチオン性イムノリポソームが約1:14から約1:28(mg造影剤:μgリポソーム)のモル比で存在する、請求項18に記載のカチオン性イムノリポソーム複合体。
【請求項29】
該造影剤および該カチオン性イムノリポソームが約1:21(mg造影剤:μgリポソーム)のモル比で存在する、請求項18に記載のカチオン性イムノリポソーム複合体。
【請求項30】
該造影剤が磁気共鳴造影(MRI)剤、コンピュータ断層撮影(CT)造影剤、または陽電子放出断層撮影(PET)造影剤である、請求項18に記載のカチオン性イムノリポソーム複合体。
【請求項31】
該MRI剤がガドペンタテートジメグルミン、酸化鉄、またはイオパミドールであり、該CT造影剤がバリウム、ヨウ素または食塩水であり、または該PET造影剤が18F−2−デオキシ−2−フルオロ−D−グルコース(FDG)である、請求項30に記載のカチオン性イムノリポソーム複合体。
【請求項32】
さらに、該複合体と結合したK[K(H)KKK]5−K(H)KKC(HoKC)(配列番号1)ペプチドを含む、請求項18に記載のカチオン性イムノリポソーム複合体。
【請求項33】
患者の臓器または組織を造影する方法であって、請求項18に記載のカチオン性イムノリポソーム複合体を、該造影実施前に患者に投与することを含む、方法。
【請求項34】
該投与が静脈内投与、筋肉内投与、皮内投与、眼内投与、腹腔内投与、腫瘍内投与、鼻腔内投与、脳内(intracereberal)投与または皮下投与を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
患者の癌性組織を造影する方法であって、請求項18に記載のカチオン性イムノリポソーム複合体を、該造影実施前に患者に投与することを含む、方法。
【請求項36】
患者の癌性転移を造影する方法であって、請求項18に記載のカチオン性イムノリポソーム複合体を、該造影実施前に患者に投与することを含む、方法。
【請求項37】
該投与が静脈内投与、筋肉内投与、皮内投与、眼内投与、腹腔内投与、腫瘍内投与、鼻腔内投与、脳内投与または皮下投与を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
該投与が静脈内投与、筋肉内投与、皮内投与、眼内投与、腹腔内投与、腫瘍内投与、鼻腔内投与、脳内投与または皮下投与を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
癌を有する患者の腫瘍組織を造影および処置する方法であって、腫瘍組織を造影するために請求項18に記載のカチオン性イムノリポソーム複合体を患者に投与し、そして腫瘍組織を処置するために抗癌剤を患者に投与することを含む、方法。
【請求項40】
該投与が静脈内投与、筋肉内投与、皮内投与、眼内投与、腹腔内投与、腫瘍内投与、鼻腔内投与、脳内投与または皮下投与を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
該抗癌剤が化学療法剤、遺伝子または小分子である、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
該化学療法剤がドセタキセル、ミトキサントロンおよびゲムシタビンから成る群から選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
該抗癌剤が該カチオン性イムノリポソームと結合している、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
該抗癌剤がアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはsiRNAである、請求項36に記載の方法。
【請求項45】
該アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは該siRNAが該カチオン性イムノリポソームと結合している、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
該抗癌剤をカチオン性イムノリポソーム複合体の前または後に送達する、請求項39に記載の方法。
【請求項47】
該抗癌剤をカチオン性イムノリポソーム複合体の少なくとも12時間前または後に送達する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
さらに患者に放射線療法を適用することを含む、請求項39に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2009−512712(P2009−512712A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536843(P2008−536843)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/041139
【国際公開番号】WO2007/047981
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(594140915)ジョージタウン・ユニバーシティ (11)
【氏名又は名称原語表記】GEORGETOWN UNIVERSITY
【Fターム(参考)】