癌の検出方法

【課題】癌の診断に有用な癌の検出手段を提供すること。
【解決手段】特定のポリペプチドの発現を指標とする癌の検出方法が開示されている。これらのポリペプチドは、イヌ精巣由来cDNAライブラリーと担癌犬の血清を用いたSEREX法により、担癌生体由来の血清中に存在する抗体と結合するポリペプチドとして単離されたものである。これらのポリペプチドは、癌患者の血清中に特異的に存在する抗体と反応するので、試料中の該抗体を測定すれば、生体内の癌を検出することができる。また、該抗体の抗原タンパク質自体又はそれをコードするmRNAを測定することによっても、生体内の癌を検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な癌の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は全死亡原因の第一位を占める疾患であり、現在行われている治療は手術療法を主体に放射線療法と化学療法を組み合わせた、対処療法が主となっている。これまで医療技術の発達により、早期発見できれば癌は治せる可能性の高い病となってきている。そのため、癌患者の体力的、経済的負担なく、血清や尿などを用いて簡便に検査できる癌の検出方法が求められている。
【0003】
血液や尿を用いた癌診断法として、最近では腫瘍マーカーなどの腫瘍生産物を測定する方法が普及してきた。腫瘍生産物とは、腫瘍に関連する抗原、酵素、特定のタンパク質、代謝産物、腫瘍遺伝子、腫瘍遺伝子生産物および腫瘍抑制遺伝子などをさし、癌胎児性抗原CEA、糖タンパク質CA19-9、CA125、前立腺特異抗原PSA、甲状腺で産生されるペプチドホルモンであるカルシトニンなどが一部の癌で腫瘍マーカーとして癌診断に活用されている。しかし多くの癌種においては、癌診断に有用な腫瘍マーカーは存在しない。また、現在知られている腫瘍マーカーの大部分は、体液中にはごく微量(pg/mLオーダー程度)しか存在しないため、それらを検出するためには、高感度な測定法や特殊な技術が必要とされる。このような現状の中で、各種癌を簡便な操作で高感度に検出できる新規な癌検査手段が提供されれば、各種癌に対する診断用途が開かれると期待される。
【0004】
また、癌の検出が可能なだけでなく、目に見えない部分に発生した癌診断、癌の進行度診断、癌の悪性度や術後の経過診断、再発診断、転移診断、治療のモニタリングなどが可能であれば、非常に有用である。
【0005】
具体的には、目に見えない部分に発生した癌診断が可能となれば、腹腔内など気づきにくい部分の癌の早期発見に有用である。また、腫瘍が肉眼で確認できるほど大きくない場合、超音波検査・CT(コンピュータトモグラフィー)・MRI(核磁気共鳴イメージング)でも発見できないような癌を発見することができる。
【0006】
また、癌の進行度については、腫瘍の原発部位での拡がりの程度と、所属リンパ節・遠隔臓器への転移の有無とに基づき分類される。一般に、ステージと呼ばれる病期は5段階に分類されており、数字が大きくなるほど進行している。厳密には臓器によって定義が異なるが、例えば病期0は上皮内に留まっている癌、病期IVは遠隔転移を起こしているような癌である。こういった癌の進行度がわかった場合には、適切な治療方針の決定のほかに、抗癌剤治療効果診断が可能となる。治療方針の決定の具体例としては、前立腺癌などは悪性度が非常に低く、ほとんど進行しないまま治療を必要としないものも存在する一方、骨などに転移を起こして痛みを伴って患者を死に至らしめるような進行性のものも存在する。ホルモン療法や摘出手術などの治療にはそれぞれ副作用が伴うため、治療法を適切に判断し決定する必要がある。また、抗癌剤選択が適切か否かや、抗癌剤投与を終えるタイミングなどを適切に判断することができれば、患者の体力的、経済的負担も軽減できる。そのため、進行度が診断できることは重要である。
【0007】
癌細胞は特徴の一つに幼若化すなわち脱分化するという性質がある。一部の癌を除いて、低分化あるいは未分化な分化度の低いもの癌細胞ほど、転移後の増殖も早く治療予後も不良である。このような癌を悪性度が高いという。逆に、高分化な癌細胞すなわち細胞分化度が高いものほど臓器の構造・機能的性質を残しており、比較的悪性度が低いと言える。こういった癌の悪性度がわかった場合、腫瘍が小さくても悪性度が高ければ腫瘍摘出時のマージンを多く確保したり、周辺組織の広範囲に注意して経過観察したりすることができる。
【0008】
再発、転移を含む術後の経過診断ができる場合には、手術によって腫瘍が完全に摘出できたかどうかという診断が可能となる。摘出が完全でなかった場合は再発が起こる可能性が高いため、より注意深く短い間隔で経過観察を行ったり、場合によっては早期に再手術に踏み切ったりする判断材料となる。また、再発した場合にも早期に発見できる可能性が高い。遠隔転移を起こしている場合には発見が遅れがちであるが、転移診断が可能となれば、摘出部位とその周辺以外にも検査範囲を広げる判断材料となる。
【0009】
治療のモニタリングができる場合、様々な治療法の中から最適な治療方法や組み合わせを選択し、治療の最適化することができる。抗癌剤の治療効果を見ることができれば抗癌剤の投与期間や種類、量を選択する手助けとなる。また、腫瘍摘出後には残存腫瘍の有無を知ることができ、経過観察でも転移・再発をいち早く知る手がかりが得られるため早期治療開始が可能である。治療効果をモニタリングすることができれば、その治療法が適切であったか、他の治療法へ変更するかといった判断材料となる。
【0010】
ところで、イヌはヒトと比べ7倍早く年を取るということが知られている。最近、コンパニオンアニマルは家族の一員として飼育され、飼い主と同様の生活習慣を持っていることが多い。そのため、コンパニオンアニマルの癌罹患により、飼い主が将来癌を発症する危険性が高いことを予測することができる。コンパニオンアニマルの簡便で正確な癌診断が可能となれば、飼い主の癌予防の手がかりとなることが期待される。
【0011】
現在、イヌの飼育数は日本では約639万頭、また米国では約1764万頭ともいわれている。狂犬病予防接種のほかに5種、7種、8種などの混合ワクチンが一般に普及し、イヌパルボウィルス感染症、イヌジステンパーウィルス感染症、イヌパラインフルエンザ(ケンネルコフ)、イヌアデノウィルス2型感染症(ケンネルコフ)、イヌ伝染性肝炎、イヌコロナウィルス感染症、レプトスピラ病といった致死率の高い感染症が減少した。そのため、イヌの平均寿命は延び、7歳以上の高齢犬は全飼育数の35.5%を占めている。死亡原因もヒトと同じく癌や高血圧、心臓病などが増加の一途をたどっている。米国では1年間に約400万頭が癌と診断されており、日本においても潜在的に約160万頭に何らかの腫瘍があるといわれている。
【0012】
しかしながら、これまで簡便な動物用の癌診断薬は存在せず、動物医療においてはX線、CT、MRIによる撮影などの検査法も普及していない。触診や簡単な血液検査、X線撮影による検査を行って、獣医の経験に大きく依存した診断が行われているのが現状である。血清を用いた検査法も一部では行われ始めたが、イヌの腫瘍マーカーはまだ見つかっていないため、ヒトの腫瘍マーカーを用いたものとなっている。
【0013】
正確な癌診断のためには、開腹手術が必要であり、イヌの体力的負担、飼い主の費用負担の問題が大きい。イヌやネコといったコンパニオンアニマルの癌診断を簡便に行うことができれば、早期発見や正確な診断につながりコンパニオンアニマルの癌治療に有用であると期待される。また、そういった血清を用いた簡便な癌診断が可能になれば、癌診断が可能になるだけでなく、定期的な健康診断や手術前診断、治療方針の決定に大きく貢献することが期待される。
【0014】
コンパニオンアニマルはヒトのように健康診断が普及していないため発見が遅れ、腫瘍が大きくなって初めて飼い主が気づき、来院することが多い。その大きくなってしまった腫瘍が悪性である場合、手術などの外科的療法や抗癌剤などの投薬を行ったとしても、すでに手遅れとなる場合が非常に多い。そのため、獣医が悪性と判断した場合には手術せずに抗癌剤治療を行うのが一般的である。手術を行う場合にも、マージン確保の大きさや手術中の血液、細胞飛散対策といった手術中の対策も厳重に施す必要がある。手術後すぐに抗癌剤治療を開始し、経過観察も短い間隔で行うことが望ましい。最近普及しつつあるドッグドックといわれるイヌ健康診断に取り入れられれば、早期発見につながることが期待される。
【0015】
一方、良性腫瘍である場合には、腫瘍が大きくとも手術に踏み切れる。手術後は切除部分のケアだけですみ、高価な抗癌剤治療を行う必要はなく、経過観察に神経を尖らせる必要もない。
【0016】
このような現状から、動物の癌診断に適用できる高感度で簡便な癌検出手段が提供されれば、正確で無駄のない治療が可能になり、飼い主にとっても獣医にとってもメリットが大きい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】2004年度厚生労働省調査
【非特許文献2】日経サイエンス、2007年、3月号、p. p.80-88
【非特許文献3】臨床検査 2003年、12月発行、vol.47、No.13、p.1641-1654
【非特許文献4】イヌ・ネコの疾病統計 2005年1月発行
【非特許文献5】Companion Animal Health Products : 2006 Edition By Tim Wesley, ANIMAL PHARM REPORTS
【非特許文献6】がんの拡がりと進行度、大阪府立成人病センター調査部 津熊秀明
【非特許文献7】蛋白質核酸酵素 vol.50, No.11, p.1405-1412
【非特許文献8】J Cell Sci. 115:1825-35
【非特許文献9】Blood. 95:1788-96
【非特許文献10】Mol Endocrinol. 9:243-54(1995)
【非特許文献11】J Cell Biol. 145:83-98(1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、癌の診断に有用な癌の検出手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、イヌ精巣由来cDNAライブラリーと担癌犬の血清を用いたSEREX法により、担癌生体由来の血清中に存在する抗体と結合するタンパク質をコードするcDNAを取得し、そのcDNAを基にして、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、配列番号16で示されるアミノ酸配列を有するイヌカルメジンタンパク、配列番号26で示されるアミノ酸配列を有するイヌ中心体タンパク質(centrosomal protein、以下CEPと略記することがある)、及び配列番号45で示されるアミノ酸配列を有するイヌ甲状腺ホルモン受容体相互作用因子11(thyroid hormone receptor interactor 11、以下「TRIP11」と記載することがある)を作製した。また、取得した遺伝子のヒト相同性遺伝子を基にして、配列番号4で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、配列番号18で示されるアミノ酸配列を有するヒトカルメジンタンパク、配列番号28で示されるアミノ酸配列を有するヒトCEP、及び配列番号47で示されるアミノ酸配列を有するヒトTRIP11を作製した。そして、それらタンパク質をコードする遺伝子が、イヌおよびヒトの精巣と悪性の癌細胞に特異的に発現すること(実施例A−1、B−1、C−1、D−1を参照)、およびそれらタンパク質のアミノ酸配列を基に作製された組換えポリペプチドが、担癌生体中の血清とのみ特異的に反応することを見出し、さらに、該組換えポリペプチドを用いて調製した抗体を利用して、担癌生体から特異的に上記ポリペプチド及びその相同因子を検出できることを見出し、本願発明を完成した。
【0020】
すなわち、本発明は、生体から分離された試料に対して行なう方法であって、以下の(a)〜(d)の少なくともいずれか1つのポリペプチドの発現を測定することを含む、癌の検出方法を提供する。
(a) 配列番号2又は4に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドに対する抗体と抗原抗体反応により結合する反応性を有する、前記生体内で産生されるポリペプチド、
(b) カルメジン、
(c) 配列番号26、28又は42に示されるアミノ酸配列を有する中心体タンパク質に対する抗体と抗原抗体反応により結合する反応性を有するポリペプチド、
(d) 甲状腺ホルモン受容体相互作用因子11(thyroid hormone receptor interactor 11)。
【0021】
また、本発明は、以下の(i)〜(l)のいずれかのポリペプチドに対して生体内で誘導される抗体と抗原抗体反応するポリペプチドを含む癌検出試薬を提供する。
(i) 配列番号2又は4に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(j) カルメジン、
(k) 配列番号26、28又は42に示されるアミノ酸配列を有する中心体タンパク質、
(l) 甲状腺ホルモン受容体相互作用因子11。
【0022】
さらに、本発明は、以下の(m)〜(p)のいずれかのポリペプチドと抗原抗体反応する抗体又はその抗原結合性断片を含む癌検出試薬を提供する。
(m) 配列番号2又は4に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドに対する抗体と抗原抗体反応により結合する反応性を有し生体内で産生されるポリペプチド、
(n) カルメジン、
(o) 配列番号26、28又は42に示されるアミノ酸配列を有する中心体タンパク質に対する抗体と抗原抗体反応により結合する反応性を有し生体内で産生されるポリペプチド、
(p) 甲状腺ホルモン受容体相互作用因子11。
【0023】
さらに、本発明は、配列表の配列番号1、3、15、17、25、27、41、44及び46のいずれかに示される塩基配列中の部分領域と特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む癌検出試薬を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、新規な癌の検出方法が提供された。下記実施例において具体的に示されるように、配列番号2又は4に示されるアミノ酸配列、カルメジンのアミノ酸配列、配列番号26、28又は42に示されるCEPのアミノ酸配列、及びTRIP11のアミノ酸配列を基に作製した組換えポリペプチドは、癌患者の血清中に特異的に存在する抗体と反応する。したがって、本発明の方法により試料中の該抗体を測定すれば、生体内の癌を検出することができる。また、該抗体の抗原タンパク質自体を測定することによっても、生体内の癌を検出することができる。本発明の方法によれば、眼に見えない小さいサイズの癌や体内深部の癌も検出することができるため、健康診断等における癌の早期発見にも有用である。また、癌治療後の患者の経過観察に本発明の方法を利用すれば、再発した癌を早期に検出することもできる。さらに、本発明の方法によれば、腫瘍の増大や周辺組織への浸潤、リンパ節及び遠隔臓器への癌の転移といった、癌の進行度の診断も可能である。また、上記抗体の血清中存在量は、悪性度の高い癌患者において悪性度の低い癌患者よりも多いため、本発明の方法によれば、癌の悪性度の診断も可能である。上記抗体の血清中存在量増減によって抗癌剤の治療効果や、腫瘍摘出後の残存腫瘍有無、さらに経過観察でも転移・再発をいち早く知る手がかりが得られるなど、その治療法が適切であったか、他の治療法へ変更するか、なんらかの治療を開始するかといった治療方法選択の判断材料となる治療のモニタリングも可能である。また、下記実施例に記載される通り、精巣及び癌細胞において、配列番号2又は4に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、カルメジン、配列番号26、28又は42に示されるアミノ酸配列を有するCEP、及びTRIP11をコードするmRNAが特異的に高発現している。従って、該mRNAを測定することによっても、癌の検出が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例A−1で同定した遺伝子の、正常組織および腫瘍細胞株での発現パターンを示す図である。参照番号1;同定した遺伝子の発現パターン、参照番号2;GAPDH遺伝子の発現パターンを示す。
【図2】実施例Aにおいて大腸菌で製造し精製した、本発明で用いられるポリペプチドの1例であるイヌ組換えタンパクをクマシー染色で検出した図である。参照番号3;イヌ組換えタンパクのバンドを示す。
【図3】実施例Aで調製したイヌ組換えタンパクを用いて行なった担癌犬の癌診断結果の一部である。
【図4】実施例Aで調製したイヌ組換えタンパクを用いて行なった担癌犬の癌詳細診断結果の一部である。
【図5】カルメジンタンパクをコードする遺伝子の、正常組織および腫瘍細胞株での発現パターンを示す図である。参照番号1;カルメジンタンパクをコードする遺伝子の発現パターン、参照番号2;GAPDH遺伝子の発現パターンを示す。
【図6】実施例Bにおいて大腸菌で製造し精製した、本発明で用いられるタンパクの1例であるイヌカルメジンをクマシー染色で検出した図である。参照番号3;イヌカルメジンタンパクのバンドを示す。
【図7】実施例Bで調製したイヌカルメジンタンパクを用いて行った担癌犬の癌診断結果の一部である。
【図8】実施例Bで調製したイヌカルメジンタンパクを用いて行った担癌犬の癌詳細診断結果の一部である。
【図9】CEPをコードする遺伝子の、正常組織および腫瘍細胞株での発現パターンを示す図である。参照番号1;CEPをコードする遺伝子の発現パターン、参照番号2;GAPDH遺伝子の発現パターンを示す。
【図10】実施例Cにおいて大腸菌で製造し精製した、本発明で用いられるポリペプチドの1例であるイヌCEP由来ポリペプチドをクマシー染色で検出した図である。参照番号3;イヌCEP由来ポリペプチドのバンドを示す。
【図11】実施例Cで調整したイヌCEP由来ポリペプチドを用いて行った担癌犬の癌診断結果の一部である。
【図12】実施例Cで調整したイヌCEP由来ポリペプチドを用いて行った担癌犬の癌詳細診断結果の一部である。
【図13】TRIP11タンパクをコードする遺伝子の、正常組織および腫瘍細胞株での発現パターンを示す図である。参照番号1;TRIP11タンパクをコードする遺伝子の発現パターン、参照番号2;GAPDH遺伝子の発現パターンを示す。
【図14】実施例Dにおいて大腸菌で製造し精製した、本発明で用いられるポリペプチドの1例であるイヌTRIP11由来ポリペプチドをクマシー染色で検出した図である。参照番号3;イヌTRIP11由来ポリペプチドのバンドを示す。
【図15】実施例Dで調製したイヌTRIP11由来ポリペプチドを用いて行った担癌犬の癌診断結果の一部である。
【図16】実施例Dで調製したイヌTRIP11由来ポリペプチドを用いて行った担癌犬の癌詳細診断結果の一部である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の方法では、生体から分離された試料を用いて、所定のポリペプチドの発現を測定する。上記試料を用いてポリペプチドの発現を測定する方法としては、試料中に含まれる該ポリペプチドに対する抗体を免疫測定する方法(第1の方法)、試料中に含まれる該ポリペプチド自体を免疫測定する方法(第2の方法)、及び試料中に含まれる該ポリペプチドをコードするmRNAを測定する方法(第3の方法)が挙げられる。本発明の方法では、これらのいずれの方法でポリペプチドの発現を測定してもよい。なお、本発明において、「測定」という語には、検出、定量及び半定量のいずれもが包含される。
【0027】
本発明の方法で発現を測定する上記した所定のポリペプチドとは、以下の(a)〜(d)のうちの少なくともいずれか1つのポリペプチドである。
(a) 配列番号2又は4に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドに対する抗体と抗原抗体反応により結合する反応性を有する、前記生体内で産生されるポリペプチド、
(b) カルメジン、
(c) 配列番号26、28又は42に示されるアミノ酸配列を有する中心体タンパク質に対する抗体と抗原抗体反応により結合する反応性を有するポリペプチド、
(d) 甲状腺ホルモン受容体相互作用因子11(thyroid hormone receptor interactor 11)。
【0028】
下記実施例に示されるように、これらのポリペプチドは、いずれか1つのみの発現を測定しても、癌を検出することができる。従って、本発明では、(a)〜(d)のうちの1つのみについて発現を調べてもよいし、2つ以上を組み合わせて調べてもよい。2つ以上を組み合わせて指標とすれば、癌の検出精度をより高めることができる(下記実施例E参照)。
【0029】
上記(a)のポリペプチドは、配列番号2又は4に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドに対する抗体と抗原抗体反応により結合する反応性を有するポリペプチドであって、生体内で産生されるポリペプチドである。言い換えると、発現を測定すべき該所定のポリペプチドとは、配列番号2のイヌ由来ポリペプチド又は配列番号4のヒト由来ポリペプチドと同一の抗原性を示すポリペプチドである。
【0030】
このようなポリペプチドの具体例としては、配列番号2のイヌ由来ポリペプチド、配列番号4のヒト由来ポリペプチドが挙げられる。これらのポリペプチドは、「配列番号2又は4に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドに対する抗体」の対応抗原そのものであり、上記所定のポリペプチドに含まれる。また、その他の具体例としては、上記イヌ由来ポリペプチド又はヒト由来ポリペプチドと同一の抗原性を有する、その他の哺乳動物由来のポリペプチド(以下、このようなポリペプチドを「相同因子」と表現する。また、上記したヒト由来ポリペプチドを、イヌ由来ポリペプチドの「ヒト相同因子」ということがある。)が挙げられる。
【0031】
ここで、配列番号2に示されるアミノ酸配列とは、イヌ精巣由来cDNAライブラリーと担癌犬の血清を用いたSEREX法により、担癌犬由来の血清中に特異的に存在する抗体(以下、イヌの「癌特異的抗体」ということがある)と結合するポリペプチドとして同定された、機能未知なポリペプチドのアミノ酸配列である(実施例A−1参照)。従って、上記第1の方法により配列番号2のポリペプチドに対する該癌特異的抗体を測定することで、イヌの癌を検出できる(実施例A−3及びA−4参照)。また、上記第2の方法により抗原たる配列番号2のポリペプチド自体を測定することでも、イヌの癌を検出できる(実施例A−5及びA−6参照)。また、下記実施例に記載される通り、該抗原ポリペプチドをコードするmRNAは精巣と癌細胞で有意に高発現しているため(実施例A−1参照)、該mRNAを測定することによっても、イヌの癌を検出することができる。なお、配列番号2に示すイヌ由来ポリペプチドの配列は、NCBIのデーターベースにAccession No.XP_535343(タンパク質)及びAccession No.XM_535343(コード遺伝子)として登録されているが、その機能は報告されていない。
【0032】
配列番号4に示されるアミノ酸配列は、BLASTによる相同検索の結果見出された、上記イヌ由来ポリペプチドのヒト相同因子のアミノ酸配列である。ヒト相同因子をコードする塩基配列及びそのアミノ酸配列は、配列表の配列番号3及び4にそれぞれ示される通りであり、NCBIのデーターベースにもAccession No.NP_689873(タンパク質)及びAccession No.NM_152660(コード遺伝子)として登録されている。ヒト相同因子も、上記したイヌ由来ポリペプチド同様、その機能は報告されていない。下記実施例に具体的に記載される通り、ヒト相同因子をコードするmRNAは、配列番号2のイヌ由来ポリペプチド同様、ヒトの精巣と癌細胞で有意に高発現しており、健常ヒトにおいては該ヒト相同因子に対する抗体が検出されない。従って、ヒトにおいて配列番号4のポリペプチドの発現を調べることによって、ヒトの癌を検出することができる。
【0033】
上記したイヌ由来ポリペプチド又はそのヒト相同因子と同一の抗原性を有するその他の哺乳動物相同因子の具体例としては、例えば、下記実施例に示される担癌ネコ体内に特異的に存在するポリペプチドが挙げられる。該ネコポリペプチドは、配列番号2のイヌ由来ポリペプチドを免疫原として用いて調製した抗体と抗原抗体反応するし、また、配列番号4のヒト相同因子を免疫原として用いて調製した抗体とも抗原抗体反応する(実施例A−5及びA−6参照)。従って、このネコポリペプチドは、上記イヌ由来ポリペプチド及びヒト由来ポリペプチドと同一の抗原性を有するネコ相同因子であり、本発明において発現を測定する対象となる「配列番号2又は4に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドに対する抗体と抗原抗体反応により結合する反応性を有する」ポリペプチドの範囲に包含される。下記実施例に具体的に記載される通り、ネコ相同因子に対しネコ体内で誘導される抗体は、健常ネコでは検出されず、担癌ネコでのみ検出される。抗原たるネコ相同因子自体もまた、健常ネコでは検出されず、担癌ネコでのみ検出される。従って、イヌ及びヒト以外の哺乳動物相同因子の発現を測定することによっても、該哺乳動物の癌を検出することができる。
【0034】
好ましくは、上記(a)のポリペプチドは、配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、又は、該ポリペプチドと95%以上の相同性を有し生体内で産生されるポリペプチドである。イヌ由来ポリペプチド(配列番号2)とそのヒト相同因子(配列番号4)との相同性は、塩基配列で93%、アミノ酸配列で99%である。イヌとヒトのように遺伝的に遠縁な哺乳動物間であっても、相同因子のアミノ酸配列の相同性は99%と非常に高く、そのため、ヒト以外の哺乳動物との間でも、配列番号2のイヌ由来ポリペプチドとその相同因子とは95%以上の高い相同性を有するものと考えられる。
【0035】
上記(b)のポリペプチドであるカルメジン(Calmegin)とは、精細胞の分化時期に特異的に発現するタンパクとして同定されたものであり、in vitroでシャペロン活性を示す。精巣内のみで発現し、成熟精子では消失するタンパク質であることから、精細胞分化に関与するタンパク質を折りたたむ機能を持つと考えられている(非特許文献7、井上直和・山口亮・伊川正人 蛋白質核酸酵素 vol.50 No.11 1405-1412)。しかし、該タンパクが癌に発現し、癌の診断等に有用であるという報告はない。
【0036】
配列番号16に示されるアミノ酸配列はイヌのカルメジンのアミノ酸配列である。該アミノ酸配列を有するイヌカルメジンは、イヌ精巣由来cDNAライブラリーと担癌犬の血清を用いたSEREX法により、担癌犬由来の血清中に特異的に存在する抗体と結合するポリペプチドとして同定されたものである(実施例B−1参照)。すなわち、担癌犬体内では、配列番号16に示すアミノ酸配列を有するカルメジンに対する抗体が特異的に誘導されている。従って、上記第1の方法により配列番号16に示されるアミノ酸配列を有するカルメジンに対する上記した抗体を測定することで、イヌの癌を検出できる(実施例B−3及びB−4参照)。また、上記第2の方法により抗原たる配列番号16のカルメジン自体を測定することでも、イヌの癌を検出できる(実施例B−5及びB−6参照)。また、下記実施例に記載される通り、カルメジンをコードするmRNAは精巣と癌細胞で有意に高発現しているため(実施例B−1参照)、該mRNAを測定することによっても、イヌの癌を検出することができる。
【0037】
本発明の方法では、配列番号16のイヌカルメジンのみならず、その他の哺乳動物のカルメジン(以下、イヌカルメジンに対する「相同因子」ということがある。また、単に「カルメジン」という場合には、イヌに限らず、他の哺乳動物由来のカルメジンも包含される。)も測定対象となる。下記実施例に具体的に記載される通り、ヒトカルメジンをコードするmRNAは、配列番号16のイヌカルメジン同様、ヒトの精巣と癌細胞で有意に高発現しており、健常ヒト体内には該ヒトカルメジンに対する抗体が検出されない。また、ネコカルメジンに対する抗体は、健常ネコ体内では検出されず、担癌ネコでのみ検出される。従って、イヌ以外の哺乳動物におけるカルメジンの発現を測定することによっても、該哺乳動物の癌を検出することができる。本発明の方法で測定対象となるイヌ以外のカルメジンとしては、例えば、ヒトカルメジン、ネコカルメジン等が挙げられるが、これらに限定されない。なお、ヒトカルメジンをコードする塩基配列及びそのアミノ酸配列は、配列表の配列番号17及び18にそれぞれ示される通りであり、イヌカルメジンとの相同性は塩基配列で90%、アミノ酸配列で89%である。イヌとヒトのように遺伝的に遠縁な哺乳動物間であっても、それぞれのカルメジンのアミノ酸配列の相同性は89%と非常に高く、そのため、ヒト以外の哺乳動物との間でも、イヌカルメジンとその相同因子とは80%程度以上の高い相同性を有するものと考えられる。すなわち、本発明の方法において発現を測定するカルメジンは、特に限定されないが、配列番号16に示されるイヌカルメジンのアミノ酸配列と好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上の相同性を有する。
【0038】
上記(c)のポリペプチドとは、配列番号26、28又は42に示されるアミノ酸配列を有する中心体タンパク質(CEP)に対する抗体と抗原抗体反応により結合する反応性を有するポリペプチドである。言い換えると、上記(c)のポリペプチドとは、配列番号26若しくは42のイヌ由来CEP又は配列番号28のヒト由来CEPと同一の抗原性を示すポリペプチドである。
【0039】
このような所定のCEPの具体例としては、配列番号26又は42のイヌ由来CEP、配列番号28のヒト由来CEPが挙げられる。これらのCEPは、「配列番号26、28又は42に示されるアミノ酸配列を有するCEPに対する抗体」の対応抗原そのものであり、上記所定のCEPに含まれる。また、その他の具体例としては、上記イヌ由来CEP又はヒト由来CEPと同一の抗原性を有する、その他の哺乳動物由来のCEP(以下、このようなCEPを「相同因子」と表現する。また、上記したヒト由来CEPを、イヌ由来CEPの「ヒト相同因子」ということがある。)が挙げられる。
【0040】
ここで、配列番号26に示されるアミノ酸配列とは、イヌ精巣由来cDNAライブラリーと担癌犬の血清を用いたSEREX法により、担癌犬由来の血清中に特異的に存在する抗体(以下、イヌの「癌特異的抗体」ということがある)と結合するポリペプチドとして同定された、イヌCEPのアミノ酸配列である(実施例C−1参照)。従って、上記第1の方法により配列番号26に示されるアミノ酸配列を有するイヌCEPに対する上記した抗体を測定することで、イヌの癌を検出できる(実施例C−3及びC−4参照)。また、上記第2の方法により抗原たる配列番号26のCEP自体を測定することでも、イヌの癌を検出できる(実施例C−5及びC−6参照)。また、下記実施例に記載される通り、配列番号26のCEPをコードするmRNAは精巣と癌細胞で有意に高発現しているため(実施例C−1参照)、該mRNAを測定することによっても、イヌの癌を検出することができる。なお、CEPとは、中心体が微小管を制御するために必要なタンパク質であり、中心体の成熟にも関与している。骨髄増殖性疾患の一部において、染色体転座が度々起こることが知られているが、その転座が起こるポイントにCEP遺伝子が存在するため、何らかの関係があると考えられている。しかし、該タンパクが癌に発現し、癌診断に有用であるという報告はない(非特許文献8 J Cell Sci. 115:1825-35、非特許文献9 Blood. 95:1788-96)。
【0041】
配列番号42に示されるアミノ酸配列は、データベースに登録されている公知のイヌCEPのアミノ酸配列であり、BLAST検索により上記取得したイヌCEPと相同性が極めて高いタンパク質として見出されたものである(実施例C−1参照)。該公知のイヌCEPの塩基配列を配列番号41に示す。配列番号42のイヌCEPも、配列番号26のイヌCEPと同様に、担癌イヌにおいて高発現していると考えられ、下記実施例に具体的に記載される通り、該公知のイヌCEPの発現を調べることによってイヌの癌を検出することができる。
【0042】
配列番号28に示されるアミノ酸配列は、BLASTによる相同検索の結果見出された、上記イヌ由来CEPのヒト相同因子のアミノ酸配列である。ヒト相同因子をコードする塩基配列及びそのアミノ酸配列は、配列表の配列番号27及び28にそれぞれ示される通りである。下記実施例に具体的に記載される通り、ヒト相同因子をコードするmRNAは、配列番号26のイヌ由来CEP同様、ヒトの精巣と癌細胞で有意に高発現しており、健常ヒトにおいては該ヒト相同因子に対する抗体が検出されない。従って、ヒトにおいて配列番号28のCEPの発現を調べることによって、ヒトの癌を検出することができる。
【0043】
上記したイヌ由来CEP又はそのヒト相同因子と同一の抗原性を有するその他の哺乳動物相同因子の具体例としては、例えば、下記実施例に示される担癌ネコ体内に特異的に存在するCEPが挙げられる。該ネコCEPは、配列番号26又は42のイヌ由来CEPを免疫原として用いて調製した抗体と抗原抗体反応するし、また、配列番号28のヒト相同因子を免疫原として用いて調製した抗体とも抗原抗体反応する(実施例C−5及びC−6参照)。従って、このネコCEPは、上記イヌ由来CEP及びヒト由来CEPと同一の抗原性を有するネコ相同因子であり、本発明において発現を測定する対象となる「配列番号26、28又は42に示されるアミノ酸配列を有するCEPに対する抗体と抗原抗体反応により結合する反応性を有する」CEPの範囲に包含される。下記実施例に具体的に記載される通り、ネコ相同因子に対しネコ体内で誘導される抗体は、健常ネコでは検出されず、担癌ネコでのみ検出される。抗原たるネコ相同因子自体もまた、健常ネコでは検出されず、担癌ネコでのみ検出される。従って、イヌ及びヒト以外の哺乳動物相同因子の発現を測定することによっても、該哺乳動物の癌を検出することができる。
【0044】
好ましくは、本発明の検出方法において発現を測定すべき上記CEPは、配列表の配列番号26若しくは42に示されるアミノ酸配列を有するCEP、又は、該CEPと80%以上の相同性を有し生体内で産生されるポリペプチドである。イヌ由来CEPとそのヒト相同因子との相同性は、塩基配列で87%、アミノ酸配列で84%である。イヌとヒトのように遺伝的に遠縁な哺乳動物間であっても、相同因子のアミノ酸配列の相同性は84%と非常に高く、そのため、ヒト以外の哺乳動物との間でも、イヌ由来CEPとその相同因子とは80%以上の高い相同性を有するものと考えられる。
【0045】
上記(d)のポリペプチドであるTRIP11(thyroid hormone receptor interactor 11)は、当初は甲状腺ホルモン受容体βに相互作用する因子として同定されたが、ゴルジ体や微小管に結合することも判明し、ゴルジ体や微小管等を結びつけ、これら細胞小器官の形状をを維持する役割を果たしていると考えられている。しかし、該タンパクが癌に発現し、癌の診断等に有用であるという報告はない(非特許文献10 Mol Endocrinol. 9:243-54(1995)、非特許文献11 J Cell Biol. 145:83-98(1999))。
【0046】
配列番号45に示されるアミノ酸配列はイヌのTRIP11のアミノ酸配列である。該アミノ酸配列を有するイヌTRIP11は、イヌ精巣由来cDNAライブラリーと担癌犬の血清を用いたSEREX法により、担癌犬由来の血清中に特異的に存在する抗体と結合するポリペプチドとして同定されたものである(実施例D−1参照)。すなわち、担癌犬体内では、配列番号45に示すアミノ酸配列を有するTRIP11に対する抗体が特異的に誘導されている。従って、上記第1の方法により配列番号45に示されるアミノ酸配列を有するTRIP11に対する上記した抗体を測定することで、イヌの癌を検出できる(実施例D−3及びD−4参照)。また、上記第2の方法により抗原たる配列番号45のTRIP11自体を測定することでも、イヌの癌を検出できる(実施例D−5及びD−6参照)。また、下記実施例に記載される通り、TRIP11をコードするmRNAは精巣と癌細胞で有意に高発現しているため(実施例D−1参照)、該mRNAを測定することによっても、イヌの癌を検出することができる。
【0047】
本発明の方法では、配列番号45のイヌTRIP11のみならず、その他の哺乳動物のTRIP11(以下、イヌTRIP11に対する「相同因子」ということがある。また、単に「TRIP11」という場合には、イヌに限らず、他の哺乳動物由来のTRIP11も包含される。)も測定対象となる。下記実施例に具体的に記載される通り、ヒトTRIP11をコードするmRNAは、配列番号45のイヌTRIP11同様、ヒトの精巣と癌細胞で有意に高発現しており、健常ヒト体内には該ヒトTRIP11に対する抗体が検出されない。また、ネコTRIP11に対する抗体は、健常ネコ体内では検出されず、担癌ネコでのみ検出される。従って、イヌ以外の哺乳動物におけるTRIP11の発現を測定することによっても、該哺乳動物の癌を検出することができる。本発明の方法で測定対象となるイヌ以外のTRIP11としては、例えば、ヒトTRIP11、ネコTRIP11等が挙げられるが、これらに限定されない。なお、ヒトTRIP11をコードする塩基配列及びそのアミノ酸配列は、配列表の配列番号46及び47にそれぞれ示される通りであり、イヌTRIP11との相同性は塩基配列で88%、アミノ酸配列で86%である。イヌとヒトのように遺伝的に遠縁な哺乳動物間であっても、それぞれのTRIP11のアミノ酸配列の相同性は86%と非常に高く、そのため、ヒト以外の哺乳動物との間でも、イヌTRIP11とその相同因子とは75%程度以上の高い相同性を有するものと考えられる。すなわち、本発明の方法において発現を測定するTRIP11は、特に限定されないが、配列番号45に示されるイヌTRIP11のアミノ酸配列と好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上の相同性を有する。
【0048】
なお、本発明において、「アミノ酸配列を有する」とは、アミノ酸残基がそのような順序で配列しているという意味である。従って、例えば、「配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド」とは、配列番号2に示されるMet Ala Ala Leu・・(中略)・・Ile Thr Ser Proのアミノ酸配列を持つ、306アミノ酸残基のサイズのポリペプチドを意味する。また、例えば、「配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド」を「配列番号2のポリペプチド」と略記することがある。「塩基配列を有する」という表現についても同様である。また、本発明において、「ポリペプチド」とは、複数のアミノ酸がペプチド結合することによって形成される分子をいい、構成するアミノ酸数が多いポリペプチド分子のみならず、アミノ酸数が少ない低分子量の分子(オリゴペプチド)や、全長タンパク質も包含され、本発明では配列番号2、4、16、18、26、28、42、45又は47に示すアミノ酸配列の全長から成るタンパク質も包含される。
【0049】
上記第1の方法において、試料中に存在し得る上記癌特異的抗体の測定は、該抗体と抗原抗体反応する抗原物質を用いた免疫測定により容易に行うことができる。免疫測定法自体は下記に詳述するとおり周知の常法である。免疫測定の抗原物質としては、例えば、担癌イヌ体内で該抗体を誘導するもととなった配列番号2、16、26、42又は45のポリペプチドを用いることができる。また、抗体には交叉反応性があり、実際に免疫原となった抗原物質以外の分子であっても、分子上に免疫原のエピトープと類似した構造が存在すれば、その分子は免疫原に対して誘導された抗体と抗原抗体反応により結合し得る。例えば、アミノ酸配列の相同性が高いポリペプチド同士では、エピトープの構造も類似している場合が多く、その場合には両者は同一の抗原性を示し得る。下記実施例に具体的に記載される通り、配列番号2、16、26、42又は45のイヌ由来ポリペプチドは、担癌イヌ体内で該ポリペプチドに対し誘導された抗体と抗原抗体反応するほか、担癌ネコ体内でネコ相同因子に対し誘導された抗体とも抗原抗体反応するし、また、ヒト相同因子は、担癌イヌ体内及び担癌ネコ体内で誘導された上記抗体と抗原抗体反応する。従って、本発明の第1の方法では、免疫測定の抗原として、いずれの哺乳動物由来の相同因子を用いることもできる。
【0050】
通常、タンパク質等のような、複雑な構造をとる分子量の大きい抗原物質の場合、分子上に構造の異なる複数の部位が存在している。従って、生体内では、そのような抗原物質に対し、複数の部位をそれぞれ認識して結合する複数種類の抗体が生産される。すなわち、生体内でタンパク質等の抗原物質に対して生産される抗体は、複数種類の抗体の混合物であるポリクローナル抗体である。本願発明者らが見出した、担癌生体由来の血清中に特異的に存在する、配列番号2、16、26、42又は45のポリペプチドまたはその相同因子と抗原抗体反応により特異的に結合する癌特異的抗体もまた、ポリクローナル抗体である。なお、本発明において「ポリクローナル抗体」といった場合には、抗原物質を体内に含む生体由来の血清中に存在する抗体であって、該抗原物質に対して該生体内で誘導された抗体を指す。
【0051】
担癌生体特異的な抗体を免疫測定するための抗原として、下記実施例Aでは、配列番号2の全長領域から成るポリペプチド、およびそのヒト相同因子である配列番号4の全長領域から成るポリペプチドを調製し、これらのポリペプチドと担癌生体由来の血清中の前記抗体との反応性を確認している。下記実施例Bでは、配列番号16(イヌカルメジン)の全長領域から成るポリペプチド、およびそのヒト相同因子である配列番号18(ヒトカルメジン)の全長領域から成るポリペプチドを調製し、これらのポリペプチドと担癌生体由来の血清中の前記抗体との反応性を確認している。下記実施例Cでは、配列番号26(イヌCEP)中の1514番〜2339番アミノ酸の領域から成るポリペプチド、及び配列番号28(ヒトCEP)中の1513番〜2325番アミノ酸の領域から成るポリペプチドを調製し、これらのポリペプチドと担癌生体由来の血清中の前記抗体との反応性を確認している。下記実施例Dでは、配列番号45(イヌTRIP11)中の237番〜1023番アミノ酸の領域から成るポリペプチド、及び配列番号47(ヒトTRIP11)中の236番〜1023番アミノ酸の領域から成るポリペプチドを調製し、これらのポリペプチドと担癌生体由来の血清中の前記抗体との反応性を確認している。しかしながら、前記抗体はポリクローナル抗体であるから、配列番号2、16、26、42若しくは45又はその相同因子の全長から成るポリペプチドであれば当然結合するし、また、該ポリペプチドの断片であっても、前記ポリクローナル抗体中にはその断片の構造を認識する抗体が含まれ得るため、やはり担癌生体由来の血清中に含まれる前記抗体と結合できる。すなわち、配列番号2、16、26、42若しくは45又はその相同因子の全長から成るポリペプチドであっても、その断片であっても、同様に担癌生体血清中に特異的に含まれる前記ポリクローナル抗体の測定に用いることができ、癌の検出に有用である。
【0052】
従って、本発明の第1の方法で免疫測定の抗原として用いられるポリペプチドは、配列番号2、16、26、42若しくは45又はその相同因子(例えば配列番号4、18、28、47等)の全長から成るポリペプチドのみに限定されず、配列番号2、16、26、42若しくは45又はその相同因子のアミノ酸配列中の連続する7個以上、好ましくは連続する10個以上のアミノ酸から成るポリペプチド断片であって、配列番号2、16、26、42若しくは45のイヌ由来ポリペプチド又はその相同因子に対するポリクローナル抗体と抗原抗体反応するポリペプチド(以下、便宜的に「特異反応性部分ポリペプチド」ということがある)も包含される。なお、約7アミノ酸残基以上のポリペプチドであれば抗原性を発揮することがこの分野において知られている。
【0053】
ただし、アミノ酸残基の数があまりに少ないと、試料中に存在する、配列番号2、16、26、42若しくは45のイヌ由来ポリペプチド及びその相同因子とは異なるその他のタンパク質に対する抗体とも交叉反応してしまう可能性が高くなる。従って、免疫測定の精度を高める観点からは、抗原として用いるポリペプチド断片のアミノ酸残基の数は多いものが好ましい。例えば、配列番号2又はその相同因子の場合、ポリペプチド断片のアミノ酸残基数を好ましくは30以上、さらに好ましくは100以上、さらに好ましくは200以上、さらに好ましくは250以上とするのが望ましい。配列番号16のイヌカルメジン又はその相同因子の場合、好ましくは30以上、さらに好ましくは100以上、さらに好ましくは200以上、さらに好ましくは400以上、さらに好ましくは550以上とするのが望ましい。配列番号26若しくは42のイヌCEP又はその相同因子の場合、好ましくは30以上、さらに好ましくは100以上、さらに好ましくは300以上、さらに好ましくは600以上とするのが望ましく、さらには1000以上、1500以上、2000以上としてもよい。配列番号45のイヌTRIP11又はその相同因子の場合、好ましくは30以上、さらに好ましくは100以上、さらに好ましくは300以上、さらに好ましくは600以上とするのが望ましく、さらには1000以上、1500以上としてもよい。
【0054】
抗原として用いるポリペプチドの好ましい具体例としては、以下のポリペプチドが挙げられる。
(e) 配列番号2又は4に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(f) 配列番号16又は18に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(g) 配列番号26に示されるアミノ酸配列中の連続する500個以上のアミノ酸から成るポリペプチドであって、1514番〜2339番アミノ酸の領域内の連続する500個以上のアミノ酸を含むポリペプチド、又は、配列番号28に示されるアミノ酸配列中の連続する500個以上のアミノ酸から成るポリペプチドであって、1513番〜2325番アミノ酸の領域内の連続する500個以上のアミノ酸を含むポリペプチド、
(h) 配列番号45に示されるアミノ酸配列中の連続する500個以上のアミノ酸から成るポリペプチドであって、237番〜1023番アミノ酸の領域内の連続する500個以上のアミノ酸を含むポリペプチド、又は、配列番号47に示されるアミノ酸配列中の連続する500個以上のアミノ酸から成るポリペプチドであって、236番〜1023番アミノ酸の領域内の連続する500個以上のアミノ酸を含むポリペプチド。
【0055】
上記(g)のポリペプチド(配列番号26のポリペプチド若しくはその断片、又は配列番号28のポリペプチド若しくはその断片)のうち、より好ましい具体例としては、配列番号26に示されるアミノ酸配列中の1514番〜2339番アミノ酸の領域を含み、1000個以下のアミノ酸から成る断片、及び、配列番号28に示されるアミノ酸配列中の1513番〜2325番アミノ酸の領域を含み、1000個以下のアミノ酸から成る断片が挙げられる。特に好ましい具体例としては、配列番号26中の1514番〜2339番アミノ酸の領域(配列番号35)から成る断片、及び配列番号28に示されるアミノ酸配列中の1513番〜2325番アミノ酸の領域(配列番号36)から成る断片が挙げられる。
【0056】
上記(h)のポリペプチド(配列番号45のポリペプチド若しくはその断片、又は配列番号47のポリペプチド若しくはその断片)のうち、より好ましい具体例としては、配列番号45に示されるアミノ酸配列中の237番〜1023番アミノ酸の領域を含み、1000個以下のアミノ酸から成る断片、及び、配列番号47に示されるアミノ酸配列中の236番〜1023番アミノ酸の領域を含み、1000個以下のアミノ酸から成る断片が挙げられる。特に好ましい具体例としては、配列番号45中の237番〜1023番アミノ酸の領域(配列番号54)から成る断片、及び配列番号47に示されるアミノ酸配列中の236番〜1023番アミノ酸の領域(配列番号55)から成る断片が挙げられる。
【0057】
一般に、タンパク質抗原において、該タンパク質のアミノ酸配列のうち少数のアミノ酸残基が置換され、欠失され又は挿入された場合であっても、元のタンパク質とほぼ同じ抗原性を有している場合があることは当業者において広く知られている。従って、配列番号2、16、26、42若しくは45又はその相同因子のアミノ酸配列のうち少数のアミノ酸残基が置換され、欠失され、及び/又は挿入された配列を有するポリペプチドであって、配列番号2、16、26、42若しくは45又はその相同因子の配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の相同性を有し、かつ、配列番号2、16、26、42若しくは45に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド又はその相同因子に対するポリクローナル抗体と抗原抗体反応により特異的に結合するポリペプチド(以下、便宜的に「特異反応性修飾ポリペプチド」ということがある)も、上記したポリペプチドと同様に癌の検出に用いることができる。好ましくは、該特異反応性修飾ポリペプチドは、配列番号2、16、26、42若しくは45又はその相同因子(好ましくは配列番号4、18、28、47)のアミノ酸配列において、1ないし数個のアミノ酸残基が置換され、欠失され、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を有する。
【0058】
ここで、アミノ酸配列の「相同性」とは、比較すべき2つのアミノ酸配列のアミノ酸残基ができるだけ多く一致するように両アミノ酸配列を整列させ、一致したアミノ酸残基数を全アミノ酸残基数で除したものを百分率で表したものである。上記整列の際には、必要に応じ、比較する2つの配列の一方又は双方に適宜ギャップを挿入する。このような配列の整列化は、例えばBLAST、FASTA、CLUSTAL W等の周知のプログラムを用いて行なうことができる。ギャップが挿入される場合、上記全アミノ酸残基数は、1つのギャップを1つのアミノ酸残基として数えた残基数となる。このようにして数えた全アミノ酸残基数が、比較する2つの配列間で異なる場合には、相同性(%)は、長い方の配列の全アミノ酸残基数で、一致したアミノ酸残基数を除して算出される。なお、天然のタンパク質を構成する20種類のアミノ酸は、低極性側鎖を有する中性アミノ酸(Gly, Ile, Val, Leu, Ala, Met, Pro)、親水性側鎖を有する中性アミノ酸(Asn, Gln, Thr, Ser, Tyr, Cys)、酸性アミノ酸(Asp, Glu)、塩基性アミノ酸(Arg, Lys, His)、芳香族アミノ酸(Phe, Tyr, Trp)のように類似の性質を有するものにグループ分けでき、これらの間での置換であればポリペプチドの性質が変化しないことが多いことが知られている。従って、配列番号2、16、26、42若しくは45のポリペプチド又はその相同因子中のアミノ酸残基を置換する場合には、これらの各グループの間で置換することにより、対応抗体との結合性を維持できる可能性が高くなる。
【0059】
本発明で用いられる上記ポリペプチドを部分配列として含み(すなわち、本発明で用いられるポリペプチドの一端又は両端に他の(ポリ)ペプチドが付加されたもの)、かつ、配列番号2、16、26、42若しくは45のポリペプチド又はその相同因子に対するポリクローナル抗体と抗原抗体反応により特異的に結合するポリペプチド(以下、便宜的に「特異反応性付加ポリペプチド」ということがある)も、上記したポリペプチドと同様に癌の検出に用いることができる。
【0060】
本発明で用いられる上記ポリペプチドは、例えば、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t―ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法に従って合成することができる。また、各種の市販のペプチド合成機を利用して常法により合成することもできる。また、公知の遺伝子工学的手法を用いて容易に調製することができる。例えば、配列番号2、16、26、42若しくは45のポリペプチド又はその相同因子をコードする遺伝子を発現している組織から抽出したRNAから、該遺伝子のcDNAをRT−PCRにより調製し、該cDNAの全長又は所望の一部を発現ベクターに組み込んで、宿主細胞中に導入し、目的とするポリペプチドを得ることができる。配列番号2のイヌポリペプチド、配列番号16のイヌカルメジン、配列番号26及び42のイヌCEP、並びに配列番号45のイヌTRIP11をコードするcDNAの塩基配列はそれぞれ配列番号1、配列番号15、配列番号25及び41、並びに配列番号44に示され、これらのヒト相同因子をコードするcDNAの塩基配列はそれぞれ配列番号3、配列番号17(ヒトカルメジン)、配列番号27(ヒトCEP)、及び配列番号47(ヒトTRIP11)に示されているため、RT−PCRに用いるプライマーはこれらの塩基配列を参照して容易に設計できる。また、後述するとおり、ヒト以外の哺乳動物の相同因子をコードする遺伝子は、イヌの塩基配列及びヒト相同因子の塩基配列を参照して設計したプライマーにより増幅し得るため、例えばネコ相同因子をコードするcDNAも上記と同様の手法により容易に調製し得る。RNAの抽出、RT−PCR、ベクターへのcDNAの組み込み、ベクターの宿主細胞への導入は、例えば以下に記載するとおり、周知の方法により行なうことができる。また、用いるベクターや宿主細胞も周知であり、種々のものが市販されている。
【0061】
上記宿主細胞としては、上記ポリペプチドを発現可能な細胞であればいかなるものであってもよく、原核細胞の例としては大腸菌など、真核細胞の例としてはサル腎臓細胞COS 1、チャイニーズハムスター卵巣細胞CHO等の哺乳動物培養細胞、出芽酵母、分裂酵母、カイコ細胞、アフリカツメガエル卵細胞などが挙げられる。
【0062】
宿主細胞として原核細胞を用いる場合、発現ベクターとしては、原核細胞中で複製可能なオリジン、プロモーター、リボソーム結合部位、DNAクローニング部位、ターミネーター等を有する発現ベクターを用いる。大腸菌用発現ベクターとしては、pUC系、pBluescriptII、pET発現システム、pGEX発現システムなどが例示できる。上記ポリペプチドをコードするDNAをこのような発現ベクターに組み込み、該ベクターで原核宿主細胞を形質転換したのち、得られた形質転換体を培養すれば、前記DNAがコードしているポリペプチドを原核宿主細胞中で発現させることができる。この際、該ポリペプチドを、他のタンパク質との融合タンパク質として発現させることもできる。なお、上記ポリペプチドをコードするDNAは、例えば上記したようにRT-PCRによりcDNAを調製して得ることができ、また後述するように市販の核酸合成機を用いて常法により合成することもできる。なお、配列番号2、4、16、18、26、28、42、45及び47のポリペプチドをコードする遺伝子のcDNAの塩基配列は、それぞれ配列表の配列番号1、3、15、17、25、27、41、44及び46に示されている。
【0063】
宿主細胞として真核細胞を用いる場合、発現ベクターとしては、プロモーター、スプライシング領域、ポリ(A)付加部位等を有する真核細胞用発現ベクターを用いる。そのような発現ベクターとしては、pKA1、pCDM8、pSVK3、pMSG、pSVL、pBK-CMV、pBK-RSV、EBVベクター、pRS、pcDNA3、pMSG、pYES2等が例示できる。上記と同様に、本発明で用いられるポリペプチドをコードするDNAをこのような発現ベクターに組み込み、該ベクターで真核宿主細胞を形質転換したのち、得られた形質転換体を培養すれば、前記DNAがコードしているポリペプチドを真核宿主細胞中で発現させることができる。発現ベクターとしてpIND/V5-His、pFLAG-CMV-2、pEGFP-N1、pEGFP-C1等を用いた場合には、Hisタグ、FLAGタグ、mycタグ、HAタグ、GFPなど各種タグを付加した融合タンパク質として、上記ポリペプチドを発現させることができる。
【0064】
発現ベクターの宿主細胞への導入は、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法等の周知の方法を用いることができる。
【0065】
宿主細胞から目的のポリペプチドを単離精製するためには、公知の分離操作を組み合わせて行うことができる。例えば尿素などの変性剤や界面活性剤による処理、超音波処理、酵素消化、塩析や溶媒分別沈殿法、透析、遠心分離、限外ろ過、ゲルろ過、SDS-PAGE、等電点電気泳動、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、アフニティークロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー等が挙げられる。
【0066】
以上の方法によって得られるポリペプチドには、他の任意のタンパク質との融合タンパク質の形態にあるものも含まれる。例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)やHisタグとの融合タンパク質などが例示できる。このような融合タンパク質の形態のポリペプチドも、上記した特異反応性付加ポリペプチドに包含され、本発明の第1の検出方法に用いることができる。さらに、形質転換細胞で発現されたポリペプチドは、翻訳された後、細胞内で各種修飾を受ける場合がある。このような翻訳後修飾されたポリペプチドも、配列番号2又は4のポリペプチドに対するポリクローナル抗体との結合性を有する限り、本発明の第1の検出方法において使用可能である。この様な翻訳修飾としては、N末端メチオニンの脱離、N末端アセチル化、糖鎖付加、細胞内プロテアーゼによる限定分解、ミリストイル化、イソプレニル化、リン酸化などが例示できる。
【0067】
試料中の抗体の測定は、上記したポリペプチドを抗原として用いた免疫測定により容易に行うことができる。免疫測定自体はこの分野において周知であり、反応様式で分類すると、サンドイッチ法、競合法、凝集法、ウェスタンブロット法等がある。また、標識で分類すると、放射免疫測定、蛍光免疫測定、酵素免疫測定、ビオチン免疫測定等があり、いずれの方法を用いても上記抗体の免疫測定を行うことができる。特に限定されないが、サンドイッチELISAや凝集法は、操作が簡便で大掛かりな装置等を必要としないため、本発明の方法における上記抗体の免疫測定方法として好ましく適用することができる。抗体の標識として酵素を用いる場合、酵素としては、ターンオーバー数が大であること、抗体と結合させても安定であること、基質を特異的に着色させる等の条件を満たす物であれば特段の制限はなく、通常の酵素免疫測定法に用いられる酵素、例えば、ペルオキシダーゼ、β―ガラクトシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、グルコース−6−リン酸化脱水素酵素、リンゴ酸脱水素酵素等を用いることもできる。また、酵素阻害物質や補酵素等を用いることもできる。これら酵素と抗体との結合は、マレイミド化合物等の架橋剤を用いる公知の方法によって行うことができる。基質としては、使用する酵素の種類に応じて公知の物質を使用することができる。例えば酵素としてペルオキシダーゼを使用する場合には、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジシンを、また酵素としてはアルカリフォスファターゼを用いる場合には、パラニトルフェノール等を用いることができる。放射性同位体としては125Iや3H等の通常ラジオイムノアッセイで用いられている物を使用することができる。蛍光色素としては、フルオロレッセンスイソチオシアネート(FITC)やテトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)等の通常の蛍光抗体法に用いられる物を使用することができる。
【0068】
なお、これらの免疫測定法自体は周知であり、本明細書で説明する必要はないが、簡単に記載すると、例えば、サンドイッチ法では、抗原として用いる上記ポリペプチドを固相に不動化し、血清等の試料と反応させ、洗浄後、適当な二次抗体を反応させ、洗浄後、固相に結合した二次抗体を測定する。抗原ポリペプチドを固相に不動化することにより、未結合の二次抗体を容易に除去することができるため、本発明の癌の検出方法の態様として好ましい。二次抗体としては、例えば試料がイヌ由来であれば、抗イヌIgG抗体を用いることができる。二次抗体を上記に例示した標識物質で標識しておくことにより、固相に結合した二次抗体を測定することができる。こうして測定した二次抗体量が血清試料中の上記抗体量に相当する。標識物質として酵素を用いる場合には、酵素作用によって分解して発色する基質を加え、基質の分解量を光学的に測定することによって抗体量を測定できる。標識物質として放射性同位体を用いる場合には、放射性同位体の発する放射線量をシンチレーションカウンター等により測定することができる。
【0069】
本発明の第2の方法では、生体から得た試料中に含まれ得る、配列番号2のポリペプチド若しくはその相同因子、カルメジン、配列番号26若しくは42のCEP若しくはその相同因子、及びTRIP11のうちの少なくともいずれか1つが測定される。上述した通り、癌患者においては、配列番号2のポリペプチド若しくはその相同因子、イヌやヒト等のカルメジン、配列番号26若しくは42のCEP若しくはその相同因子、又はイヌやヒト等のTRIP11と抗原抗体反応する癌特異的抗体の量が有意に多いが、このことは、癌患者体内において、該癌特異的抗体の抗原たるこれらのポリペプチド又はその相同因子の産生量が有意に多いことを示している。該抗原自体を測定することによっても、癌を検出することができるということは、下記実施例に具体的に記載されている通りである。従って、配列番号2のポリペプチド若しくはその相同因子、カルメジン、配列番号26若しくは42のCEP若しくはその相同因子、又はTRIP11自体を測定することによっても、上記第1の方法と同様に、生体内の癌を検出することができる。
【0070】
試料中のポリペプチドの測定は、周知の免疫測定法により容易に行なうことができる。具体的には、例えば、配列番号2、16、26、42若しくは45のポリペプチド又はその相同因子と抗原抗体反応する抗体又はその抗原結合性断片を作製し、これを用いて免疫測定を行うことにより、試料中に存在し得る配列番号2、16、26、42若しくは45のポリペプチド又はその相同因子を測定することができる。上述した通り、抗体には交叉反応性があるため、例えば、配列番号2、16、26、42若しくは45のイヌ由来ポリペプチドと抗原抗体反応する抗体又はその抗原結合性断片を用いて、配列番号2、16、26、42若しくは45のイヌ由来ポリペプチドのみならず、その他の哺乳動物相同因子、例えば配列番号4、18、28若しくは47のヒト相同因子や、ネコ相同因子等も測定することができる。免疫測定方法自体は、上述した通り周知の常法である。
【0071】
ここで、「抗原結合性断片」とは、抗体分子中に含まれるFab断片やF(ab')2断片のような、抗原との結合能を有する抗体断片を意味する。抗体はポリクローナル抗体でもモノクローナルでもよいが、免疫測定等のためには、再現性が高いモノクローナル抗体が好ましい。ポリペプチドを免疫原とするポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の調製方法は周知であり、常法により容易に行うことが出来る。例えば、ポリペプチドをキーホールリンペットヘモシアン(KLH)やカゼイン等のキャリアタンパク質に結合させたものを免疫原とし、アジュバントと共に動物に免疫することにより、該ポリペプチドに対する抗体を誘起することができる。免疫した動物から採取した脾細胞やリンパ球のような抗体産生細胞をミエローマ細胞と融合させてハイブリドーマを作製し、配列番号2、16、26、42若しくは45のタンパク質又はその相同因子と結合する抗体を産生するハイブリドーマを選択し、これを増殖させて、培養上清から上記タンパク質を対応抗原とするモノクローナル抗体を得ることが出来る。なお、上記の方法は周知の常法である。
【0072】
本発明の第3の方法では、生体から得た試料中に含まれ得る、配列番号2のポリペプチド若しくはその相同因子、カルメジン、配列番号26若しくは42のCEP若しくはその相同因子、及びTRIP11のうちのいずれか1つをコードするmRNAが測定される。下記実施例に具体的に示される通り、配列番号2のイヌ由来ポリペプチド若しくは配列番号4のそのヒト相同因子をコードするmRNA;配列番号16のイヌカルメジン若しくは配列番号18のヒトカルメジンをコードするmRNA;配列番号26若しくは42のイヌCEP又は配列番号28のそのヒト相同因子をコードするmRNA;及び配列番号45のイヌTRIP11又は配列番号47のヒトTRIP11をコードするmRNAは、癌細胞において有意に高発現している。従って、試料中の該mRNAを測定することによっても、生体内の癌を検出することができる。
【0073】
試料中のmRNAは、例えば、該mRNAを鋳型とするリアルタイム検出RT−PCRのような常法により定量することができ、常法であるノーザンブロットにおける染色強度等によっても概ね定量することができる。配列番号2、4、16、18、26、28、42、45及び47のポリペプチドをコードするcDNAの配列は、それぞれ配列番号1、3、15、17、25、27、41、44及び46に示される通りであるから、これらの配列をもとに、配列番号1、3、15、17、25、27、41、44又は46に示される塩基配列中の部分領域と特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチド(以下、「癌検出用ポリヌクレオチド」という)を調製し、該ポリヌクレオチドをプローブや核酸増幅法におけるプライマーとして用いて、該mRNAの試料中存在量を測定することができる。後述するとおり、配列番号1又は3に示される塩基配列中の部分領域と特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドであれば、イヌ及びヒト以外の哺乳動物における相同因子をコードするmRNAも測定することができる。同様に、配列番号15又は17に示される塩基配列中の部分領域と特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドであれば、イヌ及びヒト以外の哺乳動物におけるカルメジンをコードするmRNAも測定することができる。配列番号25、27又は41に示される塩基配列中の部分領域と特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドであれば、イヌ及びヒト以外の哺乳動物における相同因子をコードするmRNAも測定することができる。配列番号44又は46に示される塩基配列中の部分領域と特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドであれば、イヌ及びヒト以外の哺乳動物におけるTRIP11をコードするmRNAも測定することができる。なお、本発明において、ポリヌクレオチドはRNAでもDNAでもよい。
【0074】
ここで、「特異的にハイブリダイズする」とは、通常のハイブリダイズの条件下において、対象とする部分領域とのみハイブリダイズし、その他の領域とは実質的にハイブリダイズしないという意味である。
【0075】
「通常のハイブリダイズの条件下」とは、通常のPCRのアニーリングやプローブによる検出に用いられる条件下のことをいい、例えば、Taqポリメラーゼを用いたPCRの場合には、50mM KCl、10mM Tris-HCl(pH 8.3〜9.0)、1.5mM MgCl2といった一般的な緩衝液を用いて、54℃〜60℃程度の適当なアニーリング温度で反応を行なうことをいい、また、例えばノーザンハイブリダイゼーションの場合には、5 x SSPE、50%ホルムアミド、5 x Denhardt's solution、0.1〜0.5%SDSといった一般的なハイブリダイゼーション溶液を用いて、42℃〜65℃程度の適当なハイブリダイゼーション温度で反応を行なうことをいう。ただし、適当なアニーリング温度又はハイブリダイゼーション温度は、上記例示に限定されず、プライマー又はプローブとして用いる癌検出用ポリヌクレオチドのTm値及び実験者の経験則に基づいて定められ、当業者であれば容易に定めることができる。
【0076】
「実質的にハイブリダイズしない」とは、全くハイブリダイズしないか、するとしても対象とする部分領域にハイブリダイズする量よりも大幅に少なく、相対的に無視できる程度の微量しかハイブリダイズしないという意味である。そのような条件下で特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドとしては、対象の部分領域の塩基配列と一定以上の相同性を有するポリヌクレオチドが挙げられ、例えば70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の相同性を有するポリヌクレオチドが挙げられる。最も好ましくは、該ポリヌクレオチドは、対象の部分領域の塩基配列と同一の塩基配列を有する。相同性の定義は、上記したアミノ酸配列の相同性と同様である。なお、癌検出用ポリヌクレオチドの末端に対象とハイブリダイズしない領域が含まれていても、プローブの場合には、ハイブリダイズする領域がプローブ全体のおよそ半分以上を占めていれば検出に用いることができるし、また、プライマーの場合には、ハイブリダイズする領域がプライマー全体のおよそ半分以上を占め、かつ3'末端側にあれば、正常にアニーリングして伸長反応を生じ得るので、検出に用いることができる。そのように、癌検出用ポリヌクレオチドの末端にハイブリダイズしない領域が含まれている場合において、対象の塩基配列との相同性を算出するときは、ハイブリダイズしない領域は考慮せず、ハイブリダイズする領域のみに着目して算出するものとする。
【0077】
なお、本発明において、「部分領域」とは、配列番号1、3、15、17、25、27、41、44又は46に示される塩基配列中の一部の領域を言い、好ましくは連続する18塩基以上の領域である。なお、本発明において、「配列番号1に示される塩基配列」と言った場合には、配列番号1に実際に示されている塩基配列の他、これと相補的な配列も包含する。従って、例えば「配列番号1に示される塩基配列を有するポリヌクレオチド」と言った場合には、配列番号1に実際に示されている塩基配列を有する一本鎖ポリヌクレオチド、その相補的な塩基配列を有する一本鎖ポリヌクレオチド、及びこれらから成る二本鎖ポリヌクレオチドが包含される。本発明で用いられるポリヌクレオチドを調製する場合や、本発明で用いられるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを調製する場合には、適宜いずれかの塩基配列を選択することとなるが、当業者であれば容易にその選択をすることができる。
【0078】
癌検出用ポリヌクレオチドの塩基数は、特異性を確保する観点から、18塩基以上が好ましい。サイズは、プローブとして用いる場合には、好ましくは18塩基以上、さらに好ましくは20塩基以上、コード領域の全長以下が好ましく、プライマーとして用いる場合には、18塩基以上が好ましく、50塩基以下が好ましい。癌検出用ポリヌクレオチドの好ましい例としては、配列番号1、3、15、17、25、27、41、44又は46に示される塩基配列中の連続する18塩基以上から成るポリヌクレオチドが挙げられる。
【0079】
本明細書を参照した当業者には明らかであるが、配列番号2、16、26又は45のイヌポリペプチドをコードするmRNA量の測定には、それぞれ配列番号1、15、25又は44中の部分領域と特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドが用いられ、また、配列番号4、18、28又は47のヒト相同因子をコードするmRNA量の測定には、それぞれ配列番号3、17、27又は46中の部分領域と特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドが用いられる。ただし、相同因子同士は、通常、塩基配列レベルでも相同性が高く、配列番号1と3とは93%、配列番号15と17とは90%、配列番号25と27とは87%、配列番号44と46とは88%と、いずれも相同性が非常に高い。そのため、配列番号1、15、25又は44中の部分領域と特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドは、それぞれ、該部分領域に対応する配列番号3、17、27又は46中の部分領域とも特異的にハイブリダイズし得る。実際に、下記実施例に記載されるように、例えば配列番号7及び8にそれぞれ示される塩基配列を有する一対のプライマーセットを用いれば、配列番号1中の部分領域とも配列番号3中の部分領域とも特異的にハイブリダイズするので、配列番号2のイヌ由来ポリペプチドをコードするmRNAも、そのヒト相同因子である配列番号4のポリペプチドをコードするmRNAも、いずれも測定することができる(実施例A)。配列番号19及び20の塩基配列を有する一対のプライマーセットを用いれば、配列番号15中の部分領域とも配列番号17中の部分領域とも特異的にハイブリダイズするので、配列番号16のイヌカルメジンをコードするmRNAも、そのヒト相同因子である配列番号18のヒトカルメジンをコードするmRNAも、いずれも測定することができる(実施例B)。配列番号29及び30の塩基配列を有する一対のプライマーセットであれば、配列番号25中の部分領域とも配列番号27中の部分領域とも特異的にハイブリダイズするし、また、配列番号41中の部分領域とも特異的にハイブリダイズするので、配列番号26又は42のイヌCEPをコードするmRNAも、そのヒト相同因子である配列番号28のヒトCEPをコードするmRNAも、いずれも測定することができる(実施例C)。配列番号48及び49の塩基配列を有する一対のプライマーセットであれば、配列番号44中の部分領域とも配列番号46中の部分領域とも特異的にハイブリダイズするので、配列番号45のイヌTRIP11をコードするmRNAも、そのヒト相同因子である配列番号47のヒトTRIP11をコードするmRNAも、いずれも測定することができる(実施例D)。従って、例えば、配列番号1;15;25;又は44のイヌの塩基配列中の部分領域と特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドを用いて、配列番号2;16;26及び42;又は45のイヌポリペプチドをコードするmRNAのみならず、これらのヒト相同因子である配列番号4;18;28;又は47のポリペプチドをコードするmRNAもそれぞれ測定できるし、同様に、ネコ等のその他の哺乳動物の相同因子をコードするmRNAも測定することができる。
【0080】
癌検出用ポリヌクレオチドを設計する場合には、配列番号1と3との間;配列番号15と17との間;配列番号25と27との間;又は配列番号44と46との間で相同性が特に高い(好ましくは塩基配列が同一である)部分領域を選択することがより望ましい。イヌとヒトとの間で相同性が特に高い部分領域であれば、その他の動物種の相同遺伝子中にも該領域と相同性が非常に高い領域が存在すると予想されるので、そのように部分領域を選択すれば、イヌやヒト以外の動物種の相同因子をコードするmRNAを測定する精度も高めることができる。
【0081】
被検核酸の部分領域と特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドをPCRのような核酸増幅法のプライマー又はプローブとして用いて被検核酸を測定する方法自体は周知であり、例えば下記実施例に具体的に詳述されるRT-PCRの他、ノーザンブロット、インサイチューハイブリダイゼーション等が挙げられる。本発明においてmRNA量を測定する場合には、これら周知の測定方法のいずれをも採用できる。
【0082】
PCRのような核酸増幅法自体はこの分野において周知であり、そのための試薬キット及び装置も市販されているので、容易に行うことができる。すなわち、例えば、鋳型となる被検核酸(例えば、配列番号2、4、16、18、26、28、45又は47に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする遺伝子のcDNA)と、癌検出用ポリヌクレオチド(プライマー)の一対とを、公知の緩衝液中で、Taqポリメラーゼ及びdNTPの存在下で、変性、アニーリング、伸長の各工程を反応液の温度を変化させることにより行う。通常、変性工程は、90〜95℃、アニーリング工程は、鋳型とプライマーのTm又はその近傍(好ましくは±4℃以内)、伸長工程はTaqポリメラーゼの至適温度である72℃で行われる。各工程は30秒〜2分程度で適宜選択される。この熱サイクルを例えば25〜40回程度繰り返すことにより、一対のプライマーで挟まれた鋳型核酸の領域が増幅される。なお、核酸増幅法はPCRに限定されるものではなく、この分野において周知の他の核酸増幅法も用いることができる。このように、癌検出用ポリヌクレオチドの一対をプライマーとして用い、被検核酸を鋳型として用いて核酸増幅法を行うと、被検核酸が増幅されるのに対し、試料中に被検核酸が含まれない場合には増幅が起きないので、増幅産物を検出することにより試料中に被検核酸が存在するか否かを知ることができる。増幅産物の検出は、増幅後の反応溶液を電気泳動し、バンドをエチジウムブロミド等で染色する方法や、電気泳動後の増幅産物をナイロン膜等の固相に不動化し、被検核酸と特異的にハイブリダイズする標識プローブとハイブリダイズさせ、洗浄後、該標識を検出することにより行うことができる。また、クエンチャー蛍光色素とレポーター蛍光色素を用いたいわゆるリアルタイム検出PCRを行うことにより、検体中の被検核酸の量を定量することも可能である。なお、リアルタイム検出PCR用のキットも市販されているので、容易に行うことができる。さらに、電気泳動バンドの強度に基づいて被検核酸を半定量することも可能である。なお、被検核酸は、mRNAでも、mRNAから逆転写したcDNAであってもよい。被検核酸としてmRNAを増幅する場合には、上記一対のプライマーを用いたNASBA法(3SR法、TMA法)を採用することもできる。NASBA法自体は周知であり、そのためのキットも市販されているので、上記一対のプライマーを用いて容易に実施することができる。
【0083】
プローブとしては、癌検出用ポリヌクレオチドに蛍光標識、放射標識、ビオチン標識等の標識を付した標識プローブを用いることができる。ポリヌクレオチドの標識方法自体は周知である。被検核酸又はその増幅物を固相化し、標識プローブとハイブリダイズさせ、洗浄後、固相に結合された標識を測定することにより、試料中に被検核酸が存在するか否かを調べることができる。あるいは、癌検出用ポリヌクレオチドを固相化し、被検核酸をハイブリダイズさせ、固相に結合した被検核酸を標識プローブ等で検出することも可能である。このような場合、固相に結合した癌検出用ポリヌクレオチドもプローブと呼ばれる。なお、ポリヌクレオチドプローブを用いた被検核酸の測定方法もこの分野において周知であり、緩衝液中、ポリヌクレオチドプローブを被検核酸とTm又はその近傍(好ましくは±4℃以内)で接触させることによりハイブリダイズさせ、洗浄後、ハイブリダイズした標識プローブ又は固相プローブに結合された鋳型核酸を測定することにより行うことができる。このような方法には、例えばノーザンブロット、インサイチューハイブリダイゼーション、サザンブロット法等の周知の方法が包含される。本発明においては、周知のいずれの方法をも適用できる。
【0084】
本発明の検出方法では、上記のとおりに測定したポリペプチドの発現量に基づいて、対象生体が癌であるか否か等を判断する。癌の検出は、対象生体におけるポリペプチドの発現を測定するのみでも可能であるが、検出精度を高める観点からは、1ないし複数の健常者試料におけるポリペプチドの発現量(抗体量、ポリペプチド量又はmRNA量)を調べて健常者基準値を取得し、対象生体の測定値を該健常者基準値と比較することが好ましい。さらに検出精度を高めたい場合には、癌を罹患していることがわかっている多数の患者から得た試料についてポリペプチド発現量を調べて癌患者基準値を取得し、対象生体の測定値を健常者基準値及び癌患者基準値の双方と比較してもよい。上記基準値は、例えば、各試料におけるポリペプチド発現量を数値化し、その平均値を算出することによって定めることができる。なお、健常者基準値と癌患者基準値は、予め多数の健常者及び癌患者についてポリペプチド発現量を調べて定めておくことができる。そのため、本発明の方法で基準値との比較を行なう場合には、予め定めた基準値を用いてもよい。
【0085】
上記4種類のポリペプチドのうち、2種類以上のポリペプチドの発現量を指標とする場合であれば、いずれか1種類のポリペプチドの発現量により癌が検出された場合に、対象生体が癌を罹患していると判断することができる(下記実施例E参照)。
【0086】
本発明の検出方法では、他の癌抗原や癌マーカーによる診断を組み合わせて用いてもよい。これにより、癌の検出精度をさらに高めることができる。例えば、本発明の方法において、上記した癌特異的抗体を測定する際には、上記したポリペプチドと同様に、癌組織で多く発現する別のポリペプチドを抗原として組み合わせて用いることができる。また、本発明の方法と既に知られている癌マーカーによる診断とを組み合わせて行なってもよい。
【0087】
本発明の検出方法によれば、生体内の癌を検出することができる。特に、下記実施例に記載される通り、本発明の方法によれば眼に見えない小さいサイズの腫瘍や体内深部の腫瘍をも検出できるので、癌の早期発見に有用である。また、癌の治療後経過観察中の患者について本発明の検出方法を適用すれば、癌の再発があった場合にその癌を早期に検出することができる。
【0088】
また、担癌生体において、本発明で測定対象となる上記所定のポリペプチドを発現する癌細胞の数が増加すればそれだけ、該生体内における該ポリペプチド及びそのmRNAの蓄積量が増大し、血清中に上記ポリペプチドに対する抗体が多く産生される。一方、癌細胞の数が減少すればそれだけ、生体内の該ポリペプチド及びそのmRNAの蓄積量が減少し、血清中の上記ポリペプチドに対する抗体が減少する。従って、上記所定のポリペプチドの発現量が多い場合には、腫瘍の増大や癌の転移が生じている、すなわち癌の進行度が進んでいると判断することができる。実際に、下記実施例に具体的に記載される通り、腫瘍の増大や転移といった癌の進行に伴い、担癌生体血清中の上記抗体量の上昇が観察されている。このように、本発明の方法によれば、癌の進行度を検出することもできる。
【0089】
また、下記実施例に示される通り、同一種類の腫瘍において、悪性型では良性型よりも有意に上記抗体量が多い。そのため、上記所定のポリペプチドの発現量が多い場合には、癌の悪性度がより高いと判断することができる。すなわち、本発明の方法によれば、癌の悪性度を検出することもできる。
【0090】
さらに、上記所定のポリペプチドの発現量の増減を指標として、癌の治療効果をモニタリングすることもできる。下記実施例に記載されるように、手術による腫瘍摘出後、再発防止のために抗癌剤を投与している個体では、ポリペプチド発現量が担癌状態よりも低下している。良性腫瘍の場合であっても同様であり、切除前にポリペプチドの発現が認められている場合であれば、腫瘍が完全に切除できていると発現量が低下する。従って、癌の治療中や治療後の個体について、上記ポリペプチドの発現量を観察することで、抗癌剤の治療効果や、腫瘍摘出後の残存腫瘍有無、さらに経過観察でも転移・再発をいち早く知る手がかりが得られる。適切に治療できている場合には、ポリペプチドの発現量は治療前の担癌状態よりも低下するので、その生体に対し行なった(行なっている)治療の効果が良好であると判断することができる。ポリペプチド発現量が上昇又は維持されている場合、あるいは一旦低下した後さらに上昇が見られた場合には、治療効果が不十分と判断することができ、他の治療方法への変更や抗癌剤投与量の変更等、治療方法選択の有用な判断材料となる。
【0091】
本発明の癌の検出方法の対象となる癌としては、配列番号2のポリペプチド若しくはその相同因子、カルメジン、配列番号26若しくは42のCEP若しくはその相同因子、及びTRIP11のうちの少なくともいずれか1つを発現している癌であり、脳腫瘍、頭、首、肺、子宮、または食道の扁平上皮癌、メラノーマ、肺または子宮の腺癌、腎癌、悪性混合腫瘍、肝細胞癌、基底細胞癌、勅細胞腫様歯肉腫、口腔内腫瘤、肛門周囲腺癌、肛門嚢腫瘤、肛門嚢アポクリン腺癌、セルトリ細胞腫、膣前庭癌、皮脂腺癌、皮脂腺上皮腫、脂腺腺腫、汗腺癌、鼻腔内腺癌、鼻腺癌、甲状腺癌、大腸癌、気管支腺癌、腺癌、腺管癌、乳腺癌、複合型乳腺癌、乳腺悪性混合腫瘍、乳管内乳頭状腺癌、線維肉腫、血管周皮腫、骨肉腫、軟骨肉腫、軟部組織肉腫、組織球肉腫、粘液肉腫、未分化肉腫、肺癌、肥満細胞腫、皮膚平滑筋腫、腹腔内平滑筋腫、平滑筋腫、慢性型リンパ球性白血病、リンパ腫、消化管型リンパ腫、消化器型リンパ腫、小〜中細胞型リンパ腫、副腎髄質腫瘍、顆粒膜細胞腫、褐色細胞腫、膀胱癌(移行上皮癌)、化膿性炎症、腹腔内肝臓腫瘍、肝臓癌、形質細胞腫、悪性血管外膜細胞腫、血管肉腫、肛門嚢腺癌、口腔癌、転移性悪性黒色腫、メラニン欠乏性悪性黒色腫、皮膚悪性黒色腫、悪性筋上皮腫、悪性精巣上皮腫、精細胞腫(セミノーマ)、大腸腺癌、胃腺癌、低グレード皮脂腺癌、耳垢腺癌、アポクリン腺癌、低分化型アポクリン汗腺癌、悪性線維性組織球腫、多発性骨髄腫、間葉系悪性腫瘍、脂肪肉腫、骨肉腫、起原不明の肉腫、軟部肉腫(紡錘形細胞腫瘍)、低分化肉腫、滑膜肉腫、血管肉腫、転移性悪性上皮腫瘍、管状乳腺腺癌、乳腺導管癌、炎症性乳癌、胚細胞腫、白血病、浸潤性毛包上皮腫、中細胞型リンパ腫、多中心型リンパ腫、骨肉腫(乳腺)、肥満細胞腫(Patnaik II型)、肥満細胞腫(Grade II)、平滑筋肉腫などを挙げることができるが、これらに限定されない。また、本発明の方法の対象となる生体は哺乳動物であり、ヒトやイヌ、ネコが好ましい。
【0092】
本発明の方法に供する試料としては、血液、血清、血漿、腹水、胸水などの体液、組織、細胞が挙げられる。特に、上記第1の方法及び第2の方法においては、血清、血漿、腹水及び胸水を好ましく用いることができ、また、mRNAを測定する上記第3の方法においては、組織試料及び細胞試料が好ましい。
【0093】
第1の方法で免疫測定の抗原として用いられる上記したポリペプチド(すなわち、配列番号2、配列番号16、配列番号26若しくは42、又は配列番号45のイヌ由来ポリペプチド及びその相同因子、特異反応性部分ポリペプチド、特異反応性修飾ポリペプチド、並びに特異反応性付加ポリペプチド)は、癌検出試薬として提供することができる。該試薬は、上記ポリペプチドのみから成っていてもよく、また、該ポリペプチドの安定化等に有用な各種添加剤等を含んでいてもよい。また、該試薬は、プレートやメンブレン等の固相に固定化した状態で提供することもできる。
【0094】
第2の方法で配列番号2、配列番号16、配列番号26若しくは42、若しくは配列番号45のイヌポリペプチド又はその相同因子を免疫測定する際に用いられる、該イヌポリペプチド又はその相同因子と抗原抗体反応する抗体又はその抗原結合性断片も、癌検出試薬として提供することができる。この場合の癌検出試薬も、上記抗体又は抗原結合性断片のみから成るものであってもよく、また、該抗体又は抗原結合性断片の安定化等に有用な各種添加剤等を含んでいてもよい。また、該抗体又は抗原結合性断片は、マンガンや鉄等の金属を結合させたものであってもよい。そのような金属結合抗体又は抗原結合性断片を体内に投与すると、抗原タンパク質がより多く存在する部位に該抗体又は抗原結合性断片がより多く集積するので、MRI等によって金属を測定すれば、抗原タンパク質を産生する癌細胞の存在を検出することができる。
【0095】
さらにまた、第3の方法でmRNAの測定に用いられる上記した癌検出用ポリヌクレオチドも、癌検出試薬として提供することができる。この場合に癌検出用試薬も、該ポリヌクレオチドのみから成るものであってもよく、また、該ポリヌクレオチドの安定化等に有用な各種添加剤等を含んでいてもよい。該試薬中に含まれる該癌検出用ポリヌクレオチドは、好ましくはプライマー又はプローブである。癌検出用ポリヌクレオチドの条件及び好ましい例は上述した通りである。
【実施例】
【0096】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。
【0097】
実施例A−1:SEREX法による新規癌抗原タンパクの取得
(1)cDNAライブラリの作製
健常な犬の精巣組織から酸−グアニジウム−フェノール−クロロフォルム法(Acid guanidium-Phenol-Chloroform法)により全RNAを抽出し、Oligotex-dT30 mRNA purification Kit(宝酒造社製)を用いてキット添付のプロトコールに従ってポリA RNAを精製した。
【0098】
この得られたmRNA(5μg)を用いてイヌ精巣cDNAファージライブラリを合成した。cDNAファージライブラリの作製にはcDNA Synthesis Kit,ZAP-cDNA Synthesis Kit,ZAP-cDNA GigapackIII Gold Cloning Kit(STRATAGENE社製)を用い、キット添付のプロトコールに従ってライブラリを作製した。作製したcDNAファージライブラリのサイズは1.3×10pfu/mlであった。
【0099】
(2)血清によるcDNAライブラリのスクリーニング
上記作製したイヌ精巣由来cDNAファージライブラリを用いて、イムノスクリーニングを行った。具体的にはΦ90×15mmのNZYアガロースプレートに2340 クローンとなるように宿主大腸菌(XL1-Blue MRF')に感染させ、42℃、3〜4時間培養し、溶菌斑(プラーク)を作らせ、IPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトシド)を浸透させたニトロセルロースメンブレン(Hybond C Extra: GE Healthecare Bio-Science社製)でプレートを37℃で4時間覆うことによりタンパク質を誘導・発現させ、メンブレンにタンパク質を転写した。その後メンブレンを回収し0.5%脱脂粉乳を含むTBS(10mM Tris-HCl,150mM NaCl pH7.5)に浸し4℃で一晩振盪することによって非特異反応を抑制した。このフィルターを500倍希釈した患犬血清と室温で2〜3時間反応させた。
【0100】
上記患犬血清としては、扁平上皮癌の患犬より採取した血清を用いた。これらの血清は−80℃で保存し、使用直前に前処理を行った。血清の前処理方法は、以下の方法による。すなわち、外来遺伝子を挿入していないλ ZAP Express ファージを宿主大腸菌(XL1-BLue MRF')に感染させた後、NZYプレート培地上で37℃、一晩培養した。次いで0.5M NaClを含む0.2M NaHCO3 pH8.3のバッファーをプレートに加え、4℃で15時間静置後、上清を大腸菌/ファージ抽出液として回収した。次に、回収した大腸菌/ファージ抽出液をNHS-カラム (GE Healthecare Bio-Science社製)に通液して、大腸菌・ファージ由来のタンパク質を固定化した。このタンパク固定化カラムに患犬血清を通液・反応させ、大腸菌およびファージに吸着する抗体を血清から取り除いた。カラムを素通りした血清画分は、0.5%脱脂粉乳を含むTBSにて500倍希釈し、これをイムノスクリーニング材料とした。
【0101】
かかる処理血清と上記融合タンパク質をブロットしたメンブレンをTBS―T(0.05% Tween20/TBS)にて4回洗浄を行った後、二次抗体として0.5%脱脂粉乳を含むTBSにて5000倍希釈を行ったヤギ抗イヌIgG(Goat anti Dog IgG-h+I HRP conjugated: BETHYL Laboratories社製)を、室温1時間反応させ、NBT/BCIP反応液(Roche社製)を用いた酵素発色反応により検出し、発色反応陽性部位に一致するコロニーをΦ90×15mmのNZYアガロースプレート上から採取し、SM緩衝液(100mM NaCl、10mM MgClSO4、50mM Tris-HCl、0.01% ゼラチン pH7.5)500μlに溶解させた。発色反応陽性コロニーが単一化するまで上記と同様の方法で、二次、三次スクリーニングを繰り返し、血清中のIgGと反応する30940個のファージクローンをスクリーニングして、1個の陽性クローンを単離した。
【0102】
(3)単離抗原遺伝子の相同性検索
上記方法により単離した1個の陽性クローンを塩基配列解析に供するため、ファージベクターからプラスミドベクターに転換する操作を行った。具体的には宿主大腸菌(XL1-Blue MRF')を吸光度OD600が1.0となるよう調製した溶液200μlと、精製したファージ溶液100μlさらにExAssist helper phage (STRATAGENE社製)1μlを混合した後37℃で15分間反応後、LB培地を3ml添加し37℃で2.5〜3時間培養を行い、直ちに70℃の水浴にて20分間保温した後、4℃、1000×g、15分間遠心を行い上清をファージミド溶液として回収した。次いでファージミド宿主大腸菌(SOLR)を吸光度OD600が1.0となるよう調製した溶液200μlと、精製したファージ溶液10μlを混合した後37℃で15分間反応させ、50μlをアンピシリン(終濃度50μg/ml)含有LB寒天培地に播き37℃一晩培養した。トランスフォームしたSOLRのシングルコロニーを採取し、アンピシリン(終濃度50μg/ml)含有LB培地37℃にて培養後、QIAGEN plasmid Miniprep Kit(キアゲン社製)を使って目的のインサートを持つプラスミドDNAを精製した。
【0103】
精製したプラスミドは、配列番号5に記載のT3プライマーと配列番号6に記載のT7プライマーを用いて、プライマーウォーキング法によるインサート全長配列の解析を行った。このシークエンス解析により配列番号1に記載の遺伝子配列を取得した。この遺伝子の塩基配列およびアミノ酸配列を用いて、相同性検索プログラムBLASTサーチ(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)を行い既知遺伝子との相同性検索を行った結果、得られた遺伝子は機能未知のタンパク質(Accession No.XP_535343)をコードする遺伝子(Accession No.XM_535343)であることが判明した。この遺伝子のヒト相同因子もまた機能未知のタンパク質(Accession No.NP_689873)をコードする遺伝子(Accession No.NM_152660)(相同性:塩基配列93%、アミノ酸配列99%)であった。ヒト相同因子の塩基配列を配列番号3に、アミノ酸配列を配列番号4に記載した。
【0104】
(4)各組織での発現解析
上記方法により得られた遺伝子に対しイヌおよびヒトの正常組織および各種細胞株における発現をRT-PCR(Reverse Transcription-PCR)法により調べた。逆転写反応は以下の通り行なった。すなわち、各組織50−100mgおよび各細胞株5−10×10個の細胞からTRIZOL試薬(invitrogen社製)を用いて添付のプロトコールに従い全RNAを抽出した。この全RNAを用いてSuperscript First-Strand Synthesis System for RT-PCR(invitrogen社製)により添付のプロトコールに従いcDNAを合成した。ヒト正常組織(脳、海馬、精巣、結腸、胎盤)のcDNAは、ジーンプールcDNA(invitrogen社製)、QUICK-Clone cDNA(クロンテック社製)およびLarge-Insert cDNA Library(クロンテック社製)を用いた。PCR反応は、取得したイヌ遺伝子及びそのヒト相同遺伝子に特異的なプライマー(配列番号7および8に記載)を用いて以下の通り行った。すなわち、逆転写反応により調製したサンプル0.25μl、上記プライマーを各2μM、0.2mM各dNTP、0.65UのExTaqポリメラーゼ(宝酒造社製)となるように各試薬と添付バッファーを加え全量を25μlとし、Thermal Cycler(BIO RAD社製)を用いて、94℃―30秒、55℃―30秒、72℃―1分のサイクルを30回繰り返して行った。なお、上記した配列番号7及び8に示す塩基配列を有する遺伝子特異的プライマーは、配列番号1の塩基配列中の87番〜606番および配列番号3の塩基配列中の173番〜695番塩基の領域を増幅するものであり、該プライマーを用いてイヌ遺伝子及びそのヒト相同遺伝子のいずれの発現も調べることができるものであった。比較対照のため、GAPDH特異的なプライマー(配列番号9および10に記載)も同時に用いた。その結果、図1に示すように、取得したイヌ遺伝子は、健常なイヌ組織では精巣に強い発現が見られ、一方イヌ乳癌細胞株で強い発現が見られた。ヒト相同遺伝子の発現も、イヌ遺伝子と同様、ヒト正常組織で発現が確認できたのは精巣のみだったが、ヒト癌細胞では脳腫瘍、白血病、乳癌、肺癌で発現が検出され、ヒト相同遺伝子も精巣と癌細胞に特異的に発現していることが確認された。
【0105】
なお、図1中、縦軸の参照番号1は、上記で同定した遺伝子の発現パターンを、参照番号2は、比較対照であるGAPDH遺伝子の発現パターンを示す。
【0106】
実施例A−2:新規癌抗原タンパクの作製
(1)組換えタンパク質の作製
実施例A−1で取得した配列番号1の遺伝子を基に、以下の方法にて組換えタンパク質を作製した。PCRは、実施例A−1で得られたファージミド溶液より調製し配列解析に供したベクターを1μl、NdeIおよびXhoI制限酵素切断配列を含む2種類のプライマー(配列番号11および12に記載)を各0.4μM、0.2mM dNTP、1.25UのPrimeSTAR HSポリメラーゼ(宝酒造社製)となるように各試薬と添付バッファーを加え全量を50μlとし、Thermal Cycler (BIO RAD社製)を用いて、98℃―10秒、55℃―15秒、72℃―1分のサイクルを30回繰り返すことにより行った。なお、上記2種類のプライマーから、配列番号2のアミノ酸配列全長をコードする領域が得られる。PCR後、増幅されたDNAを1%アガロースゲルにて電気泳動し、QIAquick Gel Extraction Kit (QIAGEN社製)を用いて約930bpのDNA断片を精製した。
【0107】
精製したDNA断片をクローニングベクターpCR-Blunt(invitrogen社製)にライゲーションした。これを大腸菌に形質転換後プラスミドを回収し、増幅された遺伝子断片が目的配列と一致することをシークエンスで確認した。目的配列と一致したプラスミドをNdeIおよびXhoI制限酵素で処理し、QIAquick Gel Extraction Kitで精製後、目的遺伝子配列を、NdeI、XhoI制限酵素で処理した大腸菌用発現ベクターpET16b(Novagen社製)に挿入した。このベクターの使用によりHisタグ融合型の組換えタンパク質が産生できる。このプラスミドを発現用大腸菌BL21(DE3)に形質転換し、1mM IPTGによる発現誘導を行うことで目的タンパク質を大腸菌内で発現させた。
【0108】
また、配列番号3の遺伝子を基に、以下の方法にてヒト相同遺伝子の組換えタンパク質を作製した。PCRは、実施例A−1で作製した各種組織・細胞cDNAよりRT-PCR法による発現が確認できたcDNAを1μl、EcoRVおよびEcoRI制限酵素切断配列を含む2種類のプライマー(配列番号13および14に記載)を各0.4μM、0.2mM dNTP、1.25UのPrimeSTAR HSポリメラーゼ(宝酒造社製)となるように各試薬と添付バッファーを加え全量を50μlとし、Thermal Cycler (BIO RAD社製)を用いて、98℃―10秒、55℃―15秒、72℃―1分のサイクルを30回繰り返すことにより行った。なお、上記2種類のプライマーから、配列番号4のアミノ酸配列全長をコードする領域が得られる。PCR後、増幅されたDNAを1%アガロースゲルにて電気泳動し、QIAquick Gel Extraction Kit (QIAGEN社製)を用いて約930bpのDNA断片を精製した。
【0109】
精製したDNA断片をクローニングベクターpCR-Blunt(invitrogen社製)にライゲーションした。これを大腸菌に形質転換後プラスミドを回収し、増幅された遺伝子断片が目的配列と一致することをシークエンスで確認した。目的配列と一致したプラスミドをEcoRVおよびEcoRI制限酵素で処理し、QIAquick Gel Extraction Kitで精製後、目的遺伝子配列を、EcoRV、EcoRI制限酵素で処理した大腸菌用発現ベクターpET30a(Novagen社製)に挿入した。このベクターの使用によりHisタグ融合型の組換えタンパク質が産生できる。このプラスミドを発現用大腸菌BL21(DE3)に形質転換し、1mM IPTGによる発現誘導を行うことで目的タンパク質を大腸菌内で発現させた。
【0110】
(2)組換えタンパク質の精製
上記で得られた、配列番号1および配列番号3を発現するそれぞれの組換え大腸菌をアンピシリン(終濃度100μg/ml)含有LB培地にて600nmでの吸光度が0.7付近になるまで37℃で培養後、IPTG終濃度が1 mMとなるよう添加し、さらに37℃で4時間培養した。その後4800rpmで10分間遠心し集菌した。この菌体ペレットをリン酸緩衝化生理食塩水に懸濁し、さらに4800rpmで10分間遠心し菌体の洗浄を行った。
【0111】
この菌体を50mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に懸濁し、氷上にて超音波破砕を行った。大腸菌超音波破砕液を6000rpmで20分間遠心分離し、得られた上清を可溶性画分、沈殿物を不溶性画分とした。
【0112】
不溶性画分を50mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)にて懸濁し6000rpmで15分間遠心した。本操作を2回繰り返し、脱プロテアーゼ操作を行った。
【0113】
この残渣を6Mグアニジン塩酸塩(シグマアルドリッチジャパン社製)、0.15M塩化ナトリウム含有50mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に懸濁し、4℃で15時間静置しタンパク質を変性させた。この変性操作後、6000rpmで30分間遠心して得られた可溶性画分を、定法に従って調整したニッケルキレートカラム(担体 Chelateing Sepharose(商標) Fast Flow(GE Health Care社製)、カラム容量5mL、平衡化緩衝液 6Mグアニジン塩酸塩、0.15M塩化ナトリウム含有50mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0))に添加し、さらに4℃で一晩静置しニッケルキレート化した担体への吸着を行った。このカラム担体を1500rpmで5分間遠心して上清を回収し、カラム担体についてはリン酸緩衝化生理食塩水で懸濁後、カラムに再充填した。
【0114】
カラム未吸着画分をカラム容量の10倍量の0.5M塩化ナトリウム含有0.1M酢酸緩衝液(pH4.0)にて洗浄操作を行った後、直ちに、0.5M塩化ナトリウム含有0.1M酢酸緩衝液(pH3.0)にて溶出した。各溶出画分はカラム容量の6倍量採取した。目的タンパク質の溶出については定法に従って行ったクマシー染色によって確認し、この結果より溶出画分を脱塩、濃縮し診断用の固相化材料とした。
【0115】
実施例A−3:イヌ組換えタンパクを用いた癌診断
(1)イヌの癌診断
悪性または良性腫瘍の確認された患犬486頭と健常犬6頭の血液を採取し、血清を分離した。実施例A−2で作製したイヌ組換えタンパク、抗イヌIgG抗体を用いてELISA法にて該タンパクに特異的に反応する血清中のIgG抗体価を測定した。
【0116】
作製したタンパクの固相化は、リン酸緩衝化生理食塩水にて50μg/mLに希釈した組換えタンパク質溶液を96穴イモビライザーアミノプレート(ヌンク社製)に100μL/well添加し、4℃で一晩静置して行った。ブロッキングは、0.5 % BSA(bovine serum albumin(ウシ血清アルブミン)、シグマアルドリッチジャパン社製)含有50 mM 重炭酸ナトリウム緩衝溶液(pH 8.3)(以下ブロッキング溶液)を100μL/well加え、室温で1時間振とうした。希釈にブロッキング溶液を用いた500倍希釈血清を100μL/well添加し、室温で3時間振とうして反応させた。0.05%Tween20(和光純薬工業社製)含有リン酸緩衝化生理食塩水(以下PBS-T)で3回洗浄し、ブロッキング溶液にて3000倍希釈したHRP修飾イヌIgG抗体(Goat anti Dog IgG-h+I HRP conjugated:BETHYL Laboratories社製)を100μL/well加え、室温で1時間振とうして反応させた。PBS-Tで3回洗浄し、HRP基質 TMB(1-Step Turbo TMB(テトラメチルベンジジン)、PIERCE社製)を100μl/well添加し、室温で30分間酵素基質反応させた。その後、0.5M硫酸溶液(シグマアルドリッチジャパン社製)を100μl/well加えて反応停止後、マイクロプレートリーダーにて450nmの吸光度測定を行った。コントロールとしては、作製した組換えタンパク質を固相化しないもの、担癌犬血清を反応させないものを上記と同様に行い比較することとした。
【0117】
上記癌診断に用いた全486検体中311検体で、摘出された腫瘍組織を用いた病理診断の結果、悪性と確定診断がされている。
【0118】
具体的には、悪性黒色腫、悪性混合腫瘍、肝細胞癌、基底細胞癌、勅細胞腫様歯肉腫、口腔内腫瘤、肛門周囲腺癌、肛門嚢腫瘤、肛門嚢アポクリン腺癌、セルトリ細胞腫、膣前庭癌、皮脂腺癌、皮脂腺上皮腫、脂腺腺腫、汗腺癌、鼻腔内腺癌、鼻腺癌、甲状腺癌、大腸癌、気管支腺癌、腺癌、腺管癌、乳腺癌、複合型乳腺癌、乳腺悪性混合腫瘍、乳管内乳頭状腺癌、線維肉腫、血管周皮腫、骨肉腫、軟骨肉腫、軟部組織肉腫、組織球肉腫、粘液肉腫、未分化肉腫、肺癌、肥満細胞腫、皮膚平滑筋腫、腹腔内平滑筋腫、平滑筋腫、扁平上皮癌、慢性型リンパ球性白血病、リンパ腫、消化管型リンパ腫、消化器型リンパ腫、小〜中細胞型リンパ腫、副腎髄質腫瘍、顆粒膜細胞腫、褐色細胞腫、膀胱癌(移行上皮癌)、化膿性炎症、腹腔内肝臓腫瘍、肝臓癌、形質細胞腫、悪性血管外膜細胞腫、血管肉腫、肛門嚢腺癌、口腔癌、転移性悪性黒色腫、メラニン欠乏性悪性黒色腫、皮膚悪性黒色腫、悪性筋上皮腫、悪性精巣上皮腫、精細胞腫(セミノーマ)、大腸腺癌、胃腺癌、低グレード皮脂腺癌、耳垢腺癌、アポクリン腺癌、低分化型アポクリン汗腺癌、悪性線維性組織球腫、多発性骨髄腫、間葉系悪性腫瘍、脂肪肉腫、骨肉腫、起原不明の肉腫、軟部肉腫(紡錘形細胞腫瘍)、低分化肉腫、滑膜肉腫、血管肉腫、転移性悪性上皮腫瘍、管状乳腺腺癌、乳腺導管癌、炎症性乳癌、胚細胞腫、白血病、浸潤性毛包上皮腫、中細胞型リンパ腫、多中心型リンパ腫、骨肉腫(乳腺)、肥満細胞腫(Patnaik II型)、肥満細胞腫(Grade II)、平滑筋肉腫などの癌診断を受けている検体である。
【0119】
これら担癌犬生体由来の血清は、図3に示したように有意に高い組換えタンパク質に対する抗体価を示した。本診断法による悪性判断を健常犬平均値の2倍以上とした場合、192検体、61.7%で悪性と診断できることがわかった。この192検体の癌の種類は以下のとおりである。なお、検体によっては複数種類の癌を罹患しているものもあるが、以下に示す数値は癌の種類ごとの累計値である。
悪性黒色腫10例、リンパ腫9例、褐色細胞腫1例、顆粒膜細胞腫1例、肝細胞癌3例、血管腫1例、悪性精巣腫瘍9例、口腔内腫瘤4例、肛門周囲腺癌7例、骨肉腫3例、線維肉腫8例、腺管癌19例、軟骨肉腫1例、乳腺癌35例、複合型乳腺癌24例、肺癌1例、皮脂腺癌2例、鼻腺癌2例、肥満細胞腫26例、副腎髄質腫瘍1例、平滑筋肉腫2例、扁平上皮癌7例、慢性リンパ球性白血病1例、未分化肉腫1例、悪性混合腫瘍2例、血管外膜細胞腫1例、左膝関節部の腫瘍1例、左肺後葉腫瘍1例、膀胱癌(移行上皮癌)1例、軟部肉腫(紡錘形細胞腫瘍)1例、耳垢腺癌1例、多中心型リンパ腫2例、脂肪肉腫1例、滑膜肉腫1例、浸潤性毛包上皮腫1例、肛門嚢腺癌1例
【0120】
さらに、末期癌患犬より採取した胸水、腹水を用いて、同様の診断を行った結果、血清を用いた本診断法による結果と同様の値を検出することができ、癌と診断することができた。
【0121】
また、本診断法を用いることにより、さらに目に見えない部分の癌診断、進行度診断、悪性度診断、術後の経過診断、再発診断、転移診断などのような診断が可能であることがわかった。以下に図4に示した詳細診断の具体例について数例をあげる。
【0122】
(2)−1 目に見えない腫瘍の癌診断
患犬1(フラットコーテットレトリバー)は、2007年6月7日時点で腫瘤が確認されていなかったが、その20日ほど後の2007年6月24日に左上顎犬歯の付け根の歯肉に有茎状の直径2mmの腫瘤が発見された患犬である。発見された日に有茎部を結糸し、切除を行っている。肉眼で腫瘤を確認できる以前から450nmでの吸光度は0.32と、有意に高い値が確認されており、腫瘍発見時0.37と比較しても大きく変わらなかった。この結果から本手法を用いることにより、腹腔内など目に見えない部分の癌診断でも可能なことがわかった。
【0123】
また、腫瘍が肉眼で確認できる以前から値の上昇が確認され、腫瘍発生の前兆を示していたもの言える。よって、定期健診などの健康診断にも有用であることがわかる。
【0124】
この患犬1は腫瘤切除2週間後に再び血清診断を行ったところ、450nmでの吸光度は0.07と大きく低下していた。ゆえに、抗体価上昇の原因となっていた癌抗原の発現している腫瘍が完全切除されていることも確認された。((2)-4 術後の経過診断)
【0125】
(2)−2 癌の進行度診断
癌の進行度は腫瘍の大きさや深さ、周辺組織にどれほど影響を及ぼしているか、転移をしているかなどによって判断される。転移すなわち癌が進行すると以前より高い値が検出されることがわかった。さらにもう一例として以下では、抗癌剤投与を行った具体例による進行度診断について述べる。
【0126】
患犬2(雑種)は、2006年10月13日に右後肢断脚による腫瘍摘出を行った患犬である。摘出した腫瘍を用いた病理診断結果は、グレード3にやや近いグレード2の高悪性度肥満細胞腫とのことであった。2007年3月12日に右鼠頚部と肝臓に転移・再発を確認し、このときは手術せずに抗がん剤(ビンブラスチン・プレドニゾロン)による治療を開始した。転移・再発の確認された時点より抗癌剤投与を開始し、1週間後、2週間後、4週間後、8週間後に再度抗癌剤投与を行っている。その投与毎の血清診断の結果、450nmでの吸光度はそれぞれ0.36、0.37、0.26、0.20、0.29であった。投与開始後から4週間目までは短い間隔にて抗癌剤投与を行い、徐々に値が低下していることから癌の進行を抑制できていることがわかる。しかしながら、前回投与から1ヵ月の間隔をおいた、8週間後には再び値の上昇が確認され、癌が再び進行していることが示された。このとき、臨床でも腫瘍が大きくなっていることが確認されている。患犬2の結果より、癌進行度についても診断できることがわかった。さらに、その一例として上記のように抗癌剤治療効果についても診断可能であることがわかった。
【0127】
(2)−3 癌の悪性度診断
基底細胞腫には悪性型と良性型とがあり、近年、新WHOでは悪性型を基底細胞癌、良性型を毛芽腫と分類するという傾向にあるとのことである。
【0128】
基底細胞癌(悪性)と診断された患犬3(ビーグル)は、手術時の血清診断の結果、450nmでの吸光度は0.35であった。一方、毛芽腫(良性)と診断された患犬4(雑種)は、手術時の血清診断の結果、450nmでの吸光度は0と全く検出されなかった。よって、同じ基底細胞腫でも、悪性型の基底細胞癌と良性型の毛芽腫を診断できることがわかった。
【0129】
次に、乳腺腫瘍について例を挙げる。乳腺腫瘍には、乳腺癌や乳腺悪性混合腫瘍といった悪性腫瘍と、悪性所見を示さない良性乳腺腫瘍がある。患犬5(ヨーキー)は、2006年5月17日に乳腺悪性混合腫瘍と乳腺癌にて、摘出手術を受けた患犬である。一般的に、乳腺の混合腫瘍は悪性であっても周囲への浸潤性が乏しいために完全切除されやすく、切除後の経過が良好なことが多い腫瘍である。しかしながら摘出された組織を用いた病理診断では、患犬5の標本の一部成分に、浸潤性が見られており、悪性度の高い腫瘍であると診断されていた。また、乳腺癌は通常周囲への浸潤性が強く再発や転移が起こりやすい腫瘍である。患犬5の標本上では腫瘍細胞に浸潤性が見られなかったが、部分材料のため他の領域に悪性度の高い成分が増殖している可能性も指摘されていた。そのため、患犬5は悪性度の高い乳癌であることが病理診断結果から明らかである。この手術時に採血した血清診断の結果、450nmでの吸光度は0.39であった。一方、患犬6(ヨークシャテリア)は、2007年1月28日に、乳腺腫瘍の摘出手術を受けた患犬である。このときの摘出組織を用いた病理診断では、細胞異型性は軽度であり、悪性所見の見当たらない良性乳腺腫と診断された。この手術時に採血した血清診断の結果、450nmでの吸光度は0.05であった。以上の2検体の結果からも悪性度の高い腫瘍は、悪性度の低い、すなわち良性の腫瘍に比べ、値が大きいことがわかった。
【0130】
(2)−4 術後の経過診断
患犬7(シーズー)は、口腔内腫瘍で来院し2007年3月22日に摘出手術を行っている。この際行った血清診断の結果、450nmでの吸光度は0.40であった。また、摘出した組織を用いた病理診断では、悪性の勅細胞腫様歯肉腫と診断されている。この腫瘍は、遠隔転移は稀であるが切除が不十分だと再発しやすいという特徴がある。そのため手術により腫瘍の完全切除ができたか否かということは、重要である。2007年5月18日の経過観察の際には、450nmでの吸光度は0.25と抗体価の低下が確認された。2007年8月までに再発は確認されていない。よって患犬7では、完全に腫瘍を切除できたために血清診断結果は手術時よりも低下したといえる。
【0131】
(2)−5 再発診断
患犬8(ハスキー)は、2007年5月8日に乳腺癌の摘出手術を行っている。この際行った血清診断の結果、450nmでの吸光度は0.08であった。摘出した組織を用いた病理診断では、異型性の強い上皮系細胞が主に腺管構造を形成、増殖しており乳腺原発の腺癌と診断された。そのとき既にリンパ管内に多数の癌細胞が入っているのが確認されており、リンパ節や遠隔部への転移、再発のリスクが高いということであった。手術から約一ヶ月半後の2007年6月28日に同部位に再発が確認された。このときの血清診断の結果は0.08と値は全く下がっていない。患犬8では、腫瘍が切除しきれていなかったかまたは、再発したために、診断結果が5月初旬と6月下旬で変化していないといえる。
【0132】
(2)−6 転移診断
患犬9(スコティッシュテリア)は、2003年2月 乳腺腫瘍、2003年8月 口腔内悪性黒色腫、2005年1月 口唇に悪性黒色腫、2005年4月13日 口腔内黒色腫と転移・再発を繰り返し、これらすべて手術で切除済みの患犬である。2005年4月の口腔内黒色腫の再発の後に、経過観察で再来院した2006年12月17日の血清診断の結果は、450nmでの吸光度が0.3であった。その半年後の2007年6月20日には頚部リンパ、膝きょうリンパが肥大して再来院している。リンパ腫であれば全身のリンパが腫れるが、患犬9については2箇所のみであったため、おそらく転移によるリンパ腫である可能性が高いとの臨床診断であった。本手法による診断によっても、450nmでの吸光度は0.75と大きく上昇しており、以前存在した腫瘍の転移であることがわかった。
【0133】
(2)−7 治療モニタリング
患犬11(ミニチュアダックスフンド)は、2007年4月19日に腫瘍摘出を行った患犬である。摘出した腫瘍を用いた病理診断結果は、浸潤性、転移性に発生している可能性が高い中等度の悪性度である複合型乳腺癌とのことであった。このときの血清診断の結果、450nmでの吸光度は0.26であった。摘出手術から約1年後の2008年6月3日、血清診断の結果、450nmでの吸光度は0.13と大きく低下していた。このとき肉眼では癌の再発は確認されなかったが、再発防止のためそれから2ヶ月間、週に一度の間隔にて抗癌剤投与(インターキャット)を行い、再発がない状態を維持した。抗癌剤投与開始2週間後、4週間後、6週間後に血清診断を行った結果、450nmでの吸光度はそれぞれ0.09、0.07、0.08であった。患犬11の結果から、腫瘍が完全に取りきれていれば担癌状態より値が低下し、抗癌剤治療においても癌の再発が抑制できていれば値の上昇が見られず、治療の経時変化を追えることがわかった。また、患犬8で示したように再発診断も可能であることから、治療モニタリングについても可能であることがわかった。
【0134】
(2)−8 再発時の悪性診断
患犬12(チワワ)は2007年4月27日に腫瘍摘出を行った患犬である。摘出した腫瘍を用いた病理診断結果は、乳管上皮由来の腺管癌、すなわち悪性の乳癌とのことであった。その約1年後の2008年6月29日に再び腫瘍が発見されたため、摘出手術を行った。その摘出した腫瘍を用いた病理組織診断結果は、乳管上皮由来の腫瘍細胞が不規則な腺腔を形成し、内腔へ重層化して造成する部分も認められるが構成する細胞はほぼ均一な卵円形核を有し、細胞の異型性は軽度ということで良性乳腺腫と診断された。このときの血清診断の結果、450nmでの吸光度は0.02とほとんど検出されなかった。患犬8、12の結果から、再発時に悪性の場合には血清診断値は下がらないか維持されており、良性の場合にはほとんど検出されないことがわかった。
【0135】
(2)−9 良性腫瘍患犬の予後診断
患犬13(トイプードル)は、2007年10月9日に腫瘍摘出を行った患犬である。摘出した腫瘍を用いた病理診断結果は、乳腺上皮細胞と筋上皮細胞両成分が増殖する腫瘍が形成されていたが、両成分とも悪性所見を示しておらず、乳腺良性混合腫瘍と診断されていた。このときの血清診断の結果、450nmでの吸光度は0.07と僅かに検出された。その8ヵ月後の2008年6月5日に再採血を行った結果、450nmでの吸光度は0と全く検出されなかった。臨床でもこのとき再発は確認されていない。従って、良性腫瘍患犬であっても、腫瘍がある状態のときに血清診断値が検出されていれば、腫瘍が取りきれていれば値は低下し、予後の診断が可能であることがわかった。
【0136】
(3)ネコの診断
次に担癌猫および健常猫の診断を行った。上記で用いたイヌ組換えタンパクと抗ネコIgG抗体を用いて、上記と同様にして、該ポリペプチドに特異的に反応するネコ血清中のIgG抗体価を測定した。2次抗体は、HRP修飾抗ネコIgG抗体(PEROXIDASE-CONJUGATED GOAT IgG FRACTION TO CAT IgG (WHOLE MOLECULE): CAPPEL RESERCH REAGENTS社製)をブロッキング溶液にて8000倍希釈して用いた。
【0137】
患猫1(チンチラ)は2005年8月17日に乳腺癌にて腫瘍の摘出手術を受けた患猫である。患猫1の450nmでの吸光度は、0.32であった。また、2006年10月17日に腺管癌にて摘出手術を受けた、患猫2(ヒマラヤン)においても450nmでの吸光度は、0.18であった。一方、健常猫では全く検出されなかった。
【0138】
従って犬と同様、猫の場合も、癌を患った検体では値が検出され、一方健常の検体ではまったく検出されなかったため、猫についても犬と同様に、イヌ組換えタンパクを用いた本手法にて癌診断が可能であることがわかった。
【0139】
(4)健常人の診断
上記で用いたイヌ組換えタンパクと抗ヒトIgG抗体を用いて、上記と同様にして、該タンパクに特異的に反応する健常人血清中のIgG抗体価を測定した。2次抗体は、HRP修飾抗ヒトIgG抗体(HRP-Goat Anti-Human IgG(H+L) Conjugate: Zymed Laboratories社製)をブロッキング溶液にて10000倍希釈して用いた。ポジティブコントロールとしてリン酸緩衝化生理食塩水にて50μg/mlに調整した卵白アルブミン抗原を固相化したものを用いた。その結果、450nmでの吸光度は卵白アルブミン抗原には健常ヒト1で0.25であった。一方、この組換えタンパク質には0と全く検出されなかった。また、健常ヒト2においても、卵白アルブミン抗原には450nmでの吸光度は0.18であり、一方、この組換えタンパク質には0と全く検出されなかった。
【0140】
実施例A−4:ヒト組換えタンパクを用いた癌診断
実施例A−2で作製したヒト組換えタンパクを用いて、実施例A−3と同様にして、該タンパクに反応する、ヒト、イヌおよびネコ血清中のIgG抗体価を測定した。
【0141】
健常人血清を用いた診断結果では、実施例A−3(4)と同様に卵白アルブミン抗原をポジティブコントロールとして用いた場合に、卵白アルブミンを固相化した場合に値は検出され、ヒト組換えタンパクを固相化した場合にはほとんど検出されなかった。
【0142】
また、健常犬・猫においても、該タンパクを固相化した場合には、450nmでの吸光度はほとんど検出されなかった。
【0143】
一方、患犬10(シーズー)は、2007年6月21日に乳腺癌の摘出手術を受けた患犬である。摘出した組織を用いた病理診断では、強い異型性と浸潤性を有する乳腺組織が大小の塊状に腺様増殖しており、悪性と診断されている。この患犬10の450nmでの吸光度は、0.29であった。その他病理診断で悪性と診断されている310検体の血清を用いて悪性診断を行った。悪性判断を健常犬平均値の2倍以上とした場合、189検体、60.8%で悪性と診断できることがわかった。患猫3(雑種)は、2007年4月3日に乳腺癌の摘出手術を受けているが、この患猫においても、450nmでの吸光度は、0.14であった。
【0144】
以上のことから、ヒト組換えタンパクを用いても、ヒト、イヌ、ネコいずれにおいても同様の診断が可能であることがわかった。
【0145】
さらに、イヌ組換えタンパクと同様にヒト組換えタンパクを用いて、末期癌患犬より採取した胸水、腹水を診断した結果、血清を用いた結果と同様の値を検出することができ、癌と診断することができた。
【0146】
実施例A−5:抗原ポリペプチドを測定することによる癌診断(1)
実施例A−2で作製したイヌ組換えタンパクをマウス、ウサギに免疫し、該抗原特異的抗体を作製、取得した。このポリクローナル抗体を用いて、サンドイッチELISA法により、担癌生体血清中に含まれる該抗原ポリペプチド自体の検出を行った。作製した該タンパク特異的ポリクローナル抗体に特異的に反応する、血清中の該タンパク量について抗マウスIgG抗体を用いてサンドイッチELISA法にて測定した。
【0147】
1次抗体の固相化は、リン酸緩衝化生理食塩水にて20倍希釈したウサギ抗血清を96穴イモビライザーアミノプレート(ヌンク社製)に100μL/well添加し、室温で2時間振とうして行った。ブロッキングは、0.5 % BSA(bovine serum albumin(ウシ血清アルブミン)、シグマアルドリッチジャパン社製)含有50 mM 重炭酸ナトリウム緩衝溶液(pH 8.3)(以下ブロッキング溶液)を100μL/well加え、室温で1時間振とうした。その後、ブロッキング溶液を用いて希釈した担癌生体由来血清を100μL/well添加し、室温で3時間振とうして反応させた。このとき希釈倍率は10-1000倍の10倍希釈系列で調整した。0.05%Tween20(和光純薬工業社製)含有リン酸緩衝化生理食塩水(以下PBS-T)で3回洗浄し、2次抗体は、ブロッキング溶液にて200倍希釈したマウス抗血清を100μL/well加え、室温で1時間振とうして反応させた。PBS-Tで3回洗浄し、3次抗体は、ブロッキング溶液にて2000倍希釈したHRP修飾マウスIgG抗体(Stabilized Goat Anti Mouse HRP conjugated : PIERCE社製)を100μL/well加え、室温で1時間振とうして反応させた。PBS-Tで3回洗浄し、HRP基質 TMB(1-Step Turbo TMB(テトラメチルベンジジン)、PIERCE社製)を100μl/well添加し、室温で30分間酵素基質反応させた。その後、0.5M硫酸溶液(シグマアルドリッチジャパン社製)を100μl/well加えて反応停止後、マイクロプレートリーダーにて450nmの吸光度測定を行った。コントロールとしては、ウサギ抗血清を固相化しないもの、担癌生体由来血清を反応させないものを上記と同様に行い比較することとした。
【0148】
その結果、皮膚平滑筋肉腫、乳癌、悪性黒色腫などの担癌犬及び担癌猫ではポリペプチドの値が検出され、健常犬、健常猫及び健常人では検出されなかった。従って、イヌ由来組換えポリペプチドを免疫原として調製した抗体を用いて抗原ポリペプチドを検出するこの手法においても、癌を診断することができた。
【0149】
実施例A−6:抗原ポリペプチドを測定することによる癌診断(2)
実施例A−2で作製したヒト組換えタンパクをマウス、ウサギに免疫し、該抗原特異的抗体を作製、取得した。実施例5と同様に、このポリクローナル抗体を用いたサンドイッチELISA法により、担癌生体血清中に含まれる該抗原ポリペプチド自体の検出を行った。
【0150】
その結果、皮膚平滑筋肉腫、乳癌、悪性黒色腫などの担癌犬及び担癌猫ではポリペプチドの値が検出され、健常犬、健常猫及び健常人では検出されなかった。従って、ヒト由来組換えポリペプチドを免疫原として調製した抗体を用いて抗原ポリペプチドを検出するこの手法においても、癌を診断することができた。
【0151】
実施例B−1:SEREX法による新規癌抗原タンパクの取得
(1)cDNAライブラリの作製
健常な犬の精巣組織から酸−グアニジウム−フェノール−クロロフォルム法(Acid guanidium-Phenol-Chloroform法)により全RNAを抽出し、Oligotex-dT30 mRNA purification Kit(宝酒造社製)を用いてキット添付のプロトコールに従ってポリA RNAを精製した。
【0152】
この得られたmRNA(5μg)を用いてイヌ精巣cDNAファージライブラリを合成した。cDNAファージライブラリの作製にはcDNA Synthesis Kit,ZAP-cDNA Synthesis Kit,ZAP-cDNA GigapackIII Gold Cloning Kit(STRATAGENE社製)を用い、キット添付のプロトコールに従ってライブラリを作製した。作製したcDNAファージライブラリのサイズは1.3×10pfu/mlであった。
【0153】
(2)血清によるcDNAライブラリのスクリーニング
上記作製したイヌ精巣由来cDNAファージライブラリを用いて、イムノスクリーニングを行った。具体的にはΦ90×15mmのNZYアガロースプレートに2340クローンとなるように宿主大腸菌(XL1-Blue MRF')に感染させ、42℃、3〜4時間培養し、溶菌斑(プラーク)を作らせ、IPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトシド)を浸透させたニトロセルロースメンブレン(Hybond C Extra: GE Healthecare Bio-Science社製)でプレートを37℃で4時間覆うことによりタンパク質を誘導・発現させ、メンブレンにタンパク質を転写した。その後メンブレンを回収し0.5%脱脂粉乳を含むTBS(10mM Tris-HCl,150mM NaCl pH7.5)に浸し4℃で一晩振盪することによって非特異反応を抑制した。このフィルターを500倍希釈した患犬血清と室温で2〜3時間反応させた。
【0154】
上記患犬血清としては、肛門近位腫瘍の患犬より採取した血清を用いた。これらの血清は−80℃で保存し、使用直前に前処理を行った。血清の前処理方法は、以下の方法による。すなわち、外来遺伝子を挿入していないλ ZAP Express ファージを宿主大腸菌(XL1-BLue MRF')に感染させた後、NZYプレート培地上で37℃、一晩培養した。次いで0.5M NaClを含む0.2M NaHCO3 pH8.3のバッファーをプレートに加え、4℃で15時間静置後、上清を大腸菌/ファージ抽出液として回収した。次に、回収した大腸菌/ファージ抽出液をNHS-カラム (GE Healthecare Bio-Science社製)に通液して、大腸菌・ファージ由来のタンパク質を固定化した。このタンパク固定化カラムに患犬血清を通液・反応させ、大腸菌およびファージに吸着する抗体を血清から取り除いた。カラムを素通りした血清画分は、0.5%脱脂粉乳を含むTBSにて500倍希釈し、これをイムノスクリーニング材料とした。
【0155】
かかる処理血清と上記融合タンパク質をブロットしたメンブレンをTBS―T(0.05% Tween20/TBS)にて4回洗浄を行った後、二次抗体として0.5%脱脂粉乳を含むTBSにて5000倍希釈を行ったヤギ抗イヌIgG(Goat anti Dog IgG-h+I HRP conjugated: BETHYL Laboratories社製)を、室温1時間反応させ、NBT/BCIP反応液(Roche社製)を用いた酵素発色反応により検出し、発色反応陽性部位に一致するコロニーをΦ90×15mmのNZYアガロースプレート上から採取し、SM緩衝液(100mM NaCl、10mM MgClSO4、50mM Tris-HCl、0.01% ゼラチン pH7.5)500μlに溶解させた。発色反応陽性コロニーが単一化するまで上記と同様の方法で、二次、三次スクリーニングを繰り返し、血清中のIgGと反応する30940個のファージクローンをスクリーニングして、1個の陽性クローンを単離した。
【0156】
(3)単離抗原遺伝子の相同性検索
上記方法により単離した1個の陽性クローンを塩基配列解析に供するため、ファージベクターからプラスミドベクターに転換する操作を行った。具体的には宿主大腸菌(XL1-Blue MRF')を吸光度OD600が1.0となるよう調製した溶液200μlと、精製したファージ溶液100μlさらにExAssist helper phage (STRATAGENE社製)1μlを混合した後37℃で15分間反応後、LB培地を3ml添加し37℃で2.5〜3時間培養を行い、直ちに70℃の水浴にて20分間保温した後、4℃、1000×g、15分間遠心を行い上清をファージミド溶液として回収した。次いでファージミド宿主大腸菌(SOLR)を吸光度OD600が1.0となるよう調製した溶液200μlと、精製したファージ溶液10μlを混合した後37℃で15分間反応させ、50μlをアンピシリン(終濃度50μg/ml)含有LB寒天培地に播き37℃一晩培養した。トランスフォームしたSOLRのシングルコロニーを採取し、アンピシリン(終濃度50μg/ml)含有LB培地37℃にて培養後、QIAGEN plasmid Miniprep Kit(キアゲン社製)を使って目的のインサートを持つプラスミドDNAを精製した。
【0157】
精製したプラスミドは、配列番号5に記載のT3プライマーと配列番号6に記載のT7プライマーを用いて、プライマーウォーキング法によるインサート全長配列の解析を行った。このシークエンス解析により配列番号15に記載の遺伝子配列を取得した。この遺伝子の塩基配列およびアミノ酸配列を用いて、相同性検索プログラムBLASTサーチ(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)を行い既知遺伝子との相同性検索を行った結果、得られた遺伝子はカルメジン(calmegin)遺伝子であることが判明した。イヌカルメジンのヒト相同因子は、ヒトカルメジン(相同性:塩基配列90%、アミノ酸配列89%)であった。ヒトカルメジンの塩基配列を配列番号17に、アミノ酸配列を配列番号18に示す。
【0158】
(4)各組織での発現解析
上記方法により得られた遺伝子に対しイヌおよびヒト正常組織および各種細胞株における発現をRT-PCR(Reverse Transcription-PCR)法により調べた。逆転写反応は以下の通り行なった。すなわち、各組織50−100mgおよび各細胞株5−10×10個の細胞からTRIZOL試薬(invitrogen社製)を用いて添付のプロトコールに従い全RNAを抽出した。この全RNAを用いてSuperscript First-Strand Synthesis System for RT-PCR(invitrogen社製)により添付のプロトコールに従いcDNAを合成した。ヒト正常組織(脳、海馬、精巣、結腸、胎盤)のcDNAは、ジーンプールcDNA(invitrogen社製)、QUICK-Clone cDNA(クロンテック社製)およびLarge-Insert cDNA Library(クロンテック社製)を用いた。PCR反応は、取得した遺伝子特異的なプライマー(配列番号19および20に記載)を用いて以下の通り行った。すなわち、逆転写反応により調製したサンプル0.25μl、上記プライマーを各2μM、0.2mM各dNTP、0.65UのExTaqポリメラーゼ(宝酒造社製)となるように各試薬と添付バッファーを加え全量を25μlとし、Thermal Cycler (BIO RAD社製)を用いて、94℃―30秒、55℃―30秒、72℃―1分のサイクルを30回繰り返して行った。なお、上記遺伝子特異的プライマーは、配列番号15の塩基配列(イヌカルメジン遺伝子)中の755番〜1318番および配列番号17の塩基配列(ヒトカルメジン遺伝子)中の795番〜1358番塩基の領域を増幅するものであり、該プライマーを用いてイヌカルメジン遺伝子及びヒトカルメジン遺伝子のいずれの発現も調べることができるものであった。比較対照のため、GAPDH特異的なプライマー(配列番号9および10に記載)も同時に用いた。その結果、図5に示すように、健常なイヌ組織では精巣に強い発現が見られ、一方イヌ腫瘍細胞株で強い発現が見られた。ヒトカルメジン遺伝子の発現も、イヌカルメジン遺伝子と同様、正常組織で発現が確認できたのは精巣のみだったが、癌細胞では脳腫瘍、白血病、食道癌で発現が検出され、ヒトカルメジン遺伝子も精巣と癌細胞に特異的に発現していることが確認された。
【0159】
なお、図5中、縦軸の参照番号1は、カルメジン遺伝子の発現パターンを、参照番号2は、比較対照であるGAPDH遺伝子の発現パターンを示す。
【0160】
実施例B−2:イヌおよびヒトカルメジンタンパクの作製
(1)組換えタンパク質の作製
実施例B−1で取得した配列番号15の遺伝子を基に、以下の方法にて組換えタンパク質を作製した。PCRは、実施例B−1で得られたファージミド溶液より調製し配列解析に供したベクターを1μl、BamHIおよびEcoRI制限酵素切断配列を含む2種類のプライマー(配列番号21および22に記載)を各0.4μM、0.2mM dNTP、1.25UのPrimeSTAR HSポリメラーゼ(宝酒造社製)となるように各試薬と添付バッファーを加え全量を50μlとし、Thermal Cycler (BIO RAD社製)を用いて、98℃―10秒、55℃―15秒、72℃―2分のサイクルを30回繰り返すことにより行った。なお、上記2種類のプライマーから、配列番号16のアミノ酸配列全長をコードする領域が得られる。PCR後、増幅されたDNAを1%アガロースゲルにて電気泳動し、QIAquick Gel Extraction Kit (QIAGEN社製)を用いて約1.9kbpのDNA断片を精製した。
【0161】
精製したDNA断片をクローニングベクターpCR-Blunt(invitrogen社製)にライゲーションした。これを大腸菌に形質転換後プラスミドを回収し、増幅された遺伝子断片が目的配列と一致することをシークエンスで確認した。目的配列と一致したプラスミドをBamHIおよびEcoRI制限酵素で処理し、QIAquick Gel Extraction Kitで精製後、目的遺伝子配列を、BamHI、EcoRI制限酵素で処理した大腸菌用発現ベクターpET30a(Novagen社製)に挿入した。このベクターの使用によりHisタグ融合型の組換えタンパク質が産生できる。このプラスミドを発現用大腸菌BL21(DE3)に形質転換し、1mM IPTGによる発現誘導を行うことで目的タンパク質を大腸菌内で発現させた。
【0162】
また、配列番号17の遺伝子を基に、以下の方法にてヒト相同遺伝子の組換えタンパク質を作製した。PCRは、実施例B−1で作製した各種組織・細胞cDNAよりRT-PCR法による発現が確認できたcDNAを1μl、EcoRIおよびXhoI制限酵素切断配列を含む2種類のプライマー(配列番号23および24に記載)を各0.4μM、0.2mM dNTP、1.25UのPrimeSTAR HSポリメラーゼ(宝酒造社製)となるように各試薬と添付バッファーを加え全量を50μlとし、Thermal Cycler (BIO RAD社製)を用いて、98℃―10秒、55℃―15秒、72℃―2分のサイクルを30回繰り返すことにより行った。なお、上記2種類のプライマーから、配列番号18のアミノ酸配列全長をコードする領域が得られる。PCR後、増幅されたDNAを1%アガロースゲルにて電気泳動し、QIAquick Gel Extraction Kit (QIAGEN社製)を用いて約1.9kbpのDNA断片を精製した。
【0163】
精製したDNA断片をクローニングベクターpCR-Blunt(invitrogen社製)にライゲーションした。これを大腸菌に形質転換後プラスミドを回収し、増幅された遺伝子断片が目的配列と一致することをシークエンスで確認した。目的配列と一致したプラスミドをEcoRIおよびXhoI制限酵素で処理し、QIAquick Gel Extraction Kitで精製後、目的遺伝子配列を、EcoRI、XhoI制限酵素で処理した大腸菌用発現ベクターpET30a(Novagen社製)に挿入した。このベクターの使用によりHisタグ融合型の組換えタンパク質が産生できる。このプラスミドを発現用大腸菌BL21(DE3)に形質転換し、1mM IPTGによる発現誘導を行うことで目的タンパク質を大腸菌内で発現させた。
【0164】
(2)組換えタンパク質の精製
上記で得られた、配列番号15および配列番号17を発現するそれぞれの組換え大腸菌をカナマイシン(終濃度30μg/ml)含有LB培地にて600nmでの吸光度が0.7付近になるまで37℃で培養後、IPTG終濃度が1 mMとなるよう添加し、さらに37℃で4時間培養した。その後4800rpmで10分間遠心し集菌した。この菌体塊をリン酸緩衝化生理食塩水に懸濁し、さらに4800rpmで10分間遠心し菌体の洗浄を行った。
【0165】
得られた菌体塊を20mMリン酸緩衝液(pH7.0)に懸濁し、氷上にて超音波破砕を行った。大腸菌超音波破砕液を6000rpmで20分間遠心分離し、得られた上清を可溶性画分、沈殿物を不溶性画分とした。
【0166】
可溶性画分を陽イオン交換カラム(担体 SP Sepharose(商標) Fast Flow(GE Health Care社)、カラム容量5mL、平衡化緩衝液 20mMリン酸緩衝液(pH7.0))に添加した。カラム容量の10倍量の20mMリン酸緩衝液(pH7.0)にて洗浄を行った後、直ちに0.3M-1.0M 塩化ナトリウム含有20mMリン酸緩衝液(pH7.0)にて塩の段階的濃度勾配により溶出を行った。各溶出画分はカラム容量の6倍量ずつ採取した。
【0167】
この溶出画分のうち0.3M塩化ナトリウム含有20mMリン酸緩衝液(pH7.0)の画分すべてと、1.0M塩化ナトリウム含有20mMリン酸緩衝液(pH7.0)画分の1番目の画分を合わせて、2次カラムによりさらに精製操作を行った。
【0168】
2次カラムはカラム担体Bio gel HT Type II(BioRad社)、カラム容量5mLを用いた。カラム容量の10倍の0.3M塩化ナトリウム含有20mMリン酸緩衝液(pH7.0)にて平衡化を行った後、上記溶出画分を添加した。カラム容量の10倍量の0.3M塩化ナトリウム含有20mMリン酸緩衝液(pH7.0)と0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)にて、カラム未吸着画分の洗浄を行った。その後直ちに、0.2Mリン酸緩衝液(pH7.0)にて溶出を行った。溶出画分はカラム容量の6倍量採取した。目的タンパク質の溶出については定法に従って行ったクマシー染色によって確認し、この結果より溶出画分を脱塩、濃縮し診断用の固相化材料とした。
【0169】
実施例B−3:イヌカルメジンタンパクを用いた癌診断
(1)イヌの癌診断
悪性または良性腫瘍の確認された患犬486頭と健常犬6頭の血液を採取し、血清を分離した。実施例B−2で作製したイヌカルメジンタンパク、抗イヌIgG抗体を用いてELISA法にて該タンパクに特異的に反応する血清中のIgG抗体価を測定した。
【0170】
作製したタンパクの固相化は、リン酸緩衝化生理食塩水にて50μg/mLに希釈した組換えタンパク質溶液を96穴イモビライザーアミノプレート(ヌンク社製)に100μL/well添加し、4℃で一晩静置して行った。ブロッキングは、0.5 % BSA(bovine serum albumin(ウシ血清アルブミン)、シグマアルドリッチジャパン社製)含有50 mM 重炭酸ナトリウム緩衝溶液(pH 8.3)(以下ブロッキング溶液)を100μL/well加え、室温で1時間振とうした。希釈にブロッキング溶液を用いた1000倍希釈血清を100μL/well添加し、室温で3時間振とうして反応させた。0.05%Tween20(和光純薬工業社製)含有リン酸緩衝化生理食塩水(以下PBS-T)で3回洗浄し、ブロッキング溶液にて3000倍希釈したHRP修飾イヌIgG抗体(Goat anti Dog IgG-h+I HRP conjugated:BETHYL Laboratories社製)を100μL/well加え、室温で1時間振とうして反応させた。PBS-Tで3回洗浄し、HRP基質 TMB(1-Step Turbo TMB(テトラメチルベンジジン)、PIERCE社)を100μl/well添加し、室温で30分間酵素基質反応させた。その後、0.5M硫酸溶液(シグマアルドリッチジャパン社製)を100μl/well加えて反応停止後、マイクロプレートリーダーにて450nmの吸光度測定を行った。コントロールとしては、作製した組換えタンパク質を固相化しないもの、担癌犬血清を反応させないものを上記と同様に行い比較することとした。
【0171】
上記癌診断に用いた全486検体中311検体で、摘出された腫瘍組織を用いた病理診断の結果、悪性と確定診断がされている。
【0172】
具体的には、悪性黒色腫、悪性混合腫瘍、肝細胞癌、基底細胞癌、勅細胞腫様歯肉腫、口腔内腫瘤、肛門周囲腺癌、肛門嚢腫瘤、肛門嚢アポクリン腺癌、セルトリ細胞腫、膣前庭癌、皮脂腺癌、皮脂腺上皮腫、脂腺腺腫、汗腺癌、鼻腔内腺癌、鼻腺癌、甲状腺癌、大腸癌、気管支腺癌、腺癌、腺管癌、乳腺癌、複合型乳腺癌、乳腺悪性混合腫瘍、乳管内乳頭状腺癌、線維肉腫、血管周皮腫、骨肉腫、軟骨肉腫、軟部組織肉腫、組織球肉腫、粘液肉腫、未分化肉腫、肺癌、肥満細胞腫、皮膚平滑筋腫、腹腔内平滑筋腫、平滑筋腫、扁平上皮癌、慢性型リンパ球性白血病、リンパ腫、消化管型リンパ腫、消化器型リンパ腫、小〜中細胞型リンパ腫、副腎髄質腫瘍、顆粒膜細胞腫、褐色細胞腫、膀胱癌(移行上皮癌)、化膿性炎症、腹腔内肝臓腫瘍、肝臓癌、形質細胞腫、悪性血管外膜細胞腫、血管肉腫、肛門嚢腺癌、口腔癌、転移性悪性黒色腫、メラニン欠乏性悪性黒色腫、皮膚悪性黒色腫、悪性筋上皮腫、悪性精巣上皮腫、精細胞腫(セミノーマ)、大腸腺癌、胃腺癌、低グレード皮脂腺癌、耳垢腺癌、アポクリン腺癌、低分化型アポクリン汗腺癌、悪性線維性組織球腫、多発性骨髄腫、間葉系悪性腫瘍、脂肪肉腫、骨肉腫、起原不明の肉腫、軟部肉腫(紡錘形細胞腫瘍)、低分化肉腫、滑膜肉腫、血管肉腫、転移性悪性上皮腫瘍、管状乳腺腺癌、乳腺導管癌、炎症性乳癌、胚細胞腫、白血病、浸潤性毛包上皮腫、中細胞型リンパ腫、多中心型リンパ腫、骨肉腫(乳腺)、肥満細胞腫(Patnaik II型)、肥満細胞腫(Grade II)、平滑筋肉腫などの癌診断を受けている検体である。
【0173】
これら担癌犬生体由来の血清は、図7に示したように有意に高い組換えタンパク質に対する抗体価を示した。本診断法による悪性判断を健常犬平均値の2倍以上とした場合、177検体、56.9%で悪性と診断できることがわかった。この177検体の癌の種類は以下のとおりである。なお、検体によっては複数種類の癌を罹患しているものもあるが、以下に示す数値は癌の種類ごとの累計値である。
悪性黒色腫10例、リンパ腫10例、褐色細胞腫1例、顆粒膜細胞腫1例、肝細胞癌4例、汗腺癌5例、血管腫1例、悪性精巣腫瘍7例、口腔内腫瘤4例、肛門周囲腺癌11例、骨肉腫4例、線維肉腫7例、軟骨肉腫2例、乳腺癌35例、複合型乳腺癌27例、肺癌2例、皮脂腺癌2例、鼻腺癌2例、肥満細胞腫25例、副腎髄質腫瘍1例、平滑筋肉腫1例、扁平上皮癌5例、慢性リンパ球性白血病1例、胚細胞腫1例、悪性線維性組織球腫1例、転移性悪性上皮腫瘍1例、乳腺導管癌1例、血管肉腫1例、管状乳腺腺癌1例、浸潤性毛包上皮腫1例、前立腺癌1例、気管支腺癌1例
【0174】
さらに、末期癌患犬より採取した胸水、腹水を用いて、同様の診断を行った結果、血清を用いた本診断法による結果と同様の値を検出することができ、癌と診断することができた。
【0175】
また、本診断法を用いることにより、さらに目に見えない部分の癌診断、進行度診断、悪性度診断、術後の経過診断、再発診断、転移診断などのような診断が可能であることがわかった。以下に図8に示した詳細診断の具体例について数例をあげる。
【0176】
(2)−1 目に見えない腫瘍の癌診断
患犬1(フラットコーテットレトリバー)は、2007年6月7日時点で腫瘤が確認されていなかったが、その20日ほど後の2007年6月24日に左上顎犬歯の付け根の歯肉に有茎状の直径2mmの腫瘤が発見された患犬である。発見された日に有茎部を結糸し、切除を行っている。肉眼で腫瘤を確認できる以前から450nmでの吸光度は0.31と、有意に高い値が確認されており、腫瘍発見時0.33と比較しても大きく変わらなかった。この結果から本手法を用いることにより、腹腔内など目に見えない部分の癌診断でも可能なことがわかった。
【0177】
また、腫瘍が肉眼で確認できる以前から値の上昇が確認され、腫瘍発生の前兆を示していたことが言える。よって、定期健診などの健康診断にも有用であることがわかる。
【0178】
この患犬1は腫瘤切除2週間後に再び血清診断を行ったところ、450nmでの吸光度は0.17と大きく低下していた。ゆえに、抗体価上昇の原因となっていた癌抗原の発現している腫瘍が完全切除されていることも確認された。((2)-4 術後の経過診断)
【0179】
(2)−2 癌の進行度診断
癌の進行度は腫瘍の大きさや深さ、周辺組織にどれほど影響を及ぼしているか、転移をしているかなどによって判断される。転移すなわち癌が進行すると以前より高い値が検出されることがわかった。さらにもう一例として以下では、抗癌剤投与を行った具体例による進行度診断について述べる。
【0180】
患犬2(ミニチュアダックスフンド)は、2007年2月21日に吐き気と痩せてきたことを主訴に来院し、腹腔内に2箇所の大型腫瘍が発見された患犬である。2007年2月23日に腫瘍の摘出を行い、右腎は肥大し433g、近傍リンパ節も血管に富み、42gあった。このときの摘出した組織を用いた病理診断では、多中心型の悪性リンパ腫と診断された。腫瘍細胞が脂肪織を播種性に拡がっているのが確認され、腹腔内のほかの臓器にも広がる可能性があるとの診断であった。腫瘍摘出手術後の2007年3月1日より抗癌剤(オンコビン)投与を開始し、それから2ヵ月後、3ヵ月後と3回にわたって血清診断を行った。その結果、450nmでの吸光度はそれぞれ0.18、0.16、0.14であった。投与開始時点から徐々に値が低下してきており、抗癌剤効果が現れていることが確認できた。すなわち癌の進行を抑制できていることがわかる。患犬2の結果より、癌進行度についても診断できることがわかった。さらに、その一例として上記のように抗癌剤治療効果についても診断可能であることがわかった。
【0181】
(2)−3 癌の悪性度診断
基底細胞腫には悪性型と良性型とがあり、近年、新WHOでは悪性型を基底細胞癌、良性型を毛芽腫と分類するという傾向にあるとのことである。
【0182】
基底細胞癌(悪性)と診断された患犬3(ビーグル)は、手術時の血清診断の結果、450nmでの吸光度は0.13であった。一方、毛芽腫(良性)と診断された患犬4(雑種)は、手術時の血清診断の結果、450nmでの吸光度は0と全く検出されなかった。よって、同じ基底細胞腫でも、悪性型の基底細胞癌と良性型の毛芽腫を診断できることがわかった。
【0183】
次に、乳腺腫瘍について例を挙げる。乳腺腫瘍には、乳腺癌や乳腺悪性混合腫瘍といった悪性腫瘍と、悪性所見を示さない良性乳腺腫瘍がある。患犬5(ヨーキー)は、2006年5月17日に乳腺悪性混合腫瘍と乳腺癌にて、摘出手術を受けた患犬である。一般的に、乳腺の混合腫瘍は悪性であっても周囲への浸潤性が乏しいために完全切除されやすく、切除後の経過が良好なことが多い腫瘍である。しかしながら摘出された組織を用いた病理診断では、患犬5の標本の一部成分に、浸潤性が見られており、悪性度の高い腫瘍であると診断されていた。また、乳腺癌は通常周囲への浸潤性が強く再発や転移が起こりやすい腫瘍である。患犬5の標本上では腫瘍細胞に浸潤性が見られなかったが、部分材料のため他の領域に悪性度の高い成分が増殖している可能性も指摘されていた。そのため、患犬5は悪性度の高い乳癌であることが病理診断結果から明らかである。この手術時に採血した血清診断の結果、450nmでの吸光度は0.57であった。一方、患犬6(ヨークシャテリア)は、2007年1月28日に、乳腺腫瘍の摘出手術を受けた患犬である。このときの摘出組織を用いた病理診断では、細胞異型性は軽度であり、悪性所見の見当たらない良性乳腺腫と診断された。この手術時に採血した血清診断の結果、450nmでの吸光度は0であった。以上の2検体の結果からも悪性度の高い腫瘍は、悪性度の低い、すなわち良性の腫瘍に比べ、値が大きいことがわかった。
【0184】
(2)−4 術後の経過診断
患犬7(シーズー)は、口腔内腫瘍で来院し2007年3月22日に摘出手術を行っている。この際行った血清診断の結果、450nmでの吸光度は0.70であった。また、摘出した組織を用いた病理診断では、悪性の勅細胞腫様歯肉腫と診断されている。この腫瘍は、遠隔転移は稀であるが切除が不十分だと再発しやすいという特徴がある。そのため手術により腫瘍の完全切除ができたか否かということは、重要である。2007年5月18日の経過観察の際には、450nmでの吸光度は0.47と値の低下が確認された。2007年8月までに再発は確認されていない。よって患犬7では、完全に腫瘍を切除できたために血清診断結果は手術時よりも低下したといえる。
【0185】
(2)−5 再発診断
患犬8(ハスキー)は、2007年5月8日に乳腺癌の摘出手術を行っている。この際行った血清診断の結果、450nmでの吸光度は0.11であった。摘出した組織を用いた病理診断では、異型性の強い上皮系細胞が主に腺管構造を形成、増殖しており乳腺原発の腺癌と診断された。そのとき既にリンパ管内に多数の癌細胞が入っているのが確認されており、リンパ節や遠隔部への転移、再発のリスクが高いということであった。手術から約一ヶ月半後の2007年6月28日に同部位に再発が確認された。このときの血清診断の結果は0.12と値の上昇が確認された。患犬8では、腫瘍が切除しきれていなかったかまたは、再発したために、血清診断結果が5月初旬よりも6月下旬のほうが大きく検出されたとわかった。
【0186】
患犬9(シェルティー)は、2006年10月24日に腺管癌の摘出手術を行っている。この際行った血清診断の結果、450nmでの吸光度はほぼ0とほとんど検出されなかった。その約3ヵ月後の2007年1月31日に再発し、再来院、再摘出手術を行っている。このときの摘出した組織を用いた病理診断では、卵円形異型核を有する癌細胞が多数リンパ管侵襲をおこし、鼠径部リンパ節転移しているため遠隔転移の可能性がある腺管癌(乳癌)との診断であった。この際行った血清診断の結果、450nmでの吸光度は0.10と上昇していることが確認された。患犬9でも同様に、腫瘍が切除しきれていなかったかまたは、再発したために、血清診断結果が3ヵ月後のほうが大きく検出されたとわかった。
【0187】
(2)−6 転移診断
患犬10(スコティッシュテリア)は、2003年2月 乳腺腫瘍、2003年8月 口腔内悪性黒色腫、2005年1月 口唇に悪性黒色腫、2005年4月13日 口腔内黒色腫と転移・再発を繰り返し、これらすべて手術で切除済みの患犬である。2005年4月の口腔内黒色腫の再発の後に、経過観察で再来院した2006年12月17日の血清診断の結果は、450nmでの吸光度が0.39であった。その半年後の2007年6月20日には頚部リンパ、膝きょうリンパが肥大して再来院している。リンパ腫であれば全身のリンパが腫れるが、患犬10については2箇所のみであったため、おそらく転移によるリンパ腫である可能性が高いとの臨床診断であった。本手法による診断によっても、450nmでの吸光度は0.80と大きく上昇しており、以前存在した腫瘍の転移であることがわかった。
【0188】
患犬11(柴犬)は、2006年3月11日に右口唇部口腔悪性黒色腫にて腫瘍の摘出を行った患犬である。2006年6月10日から同年9月26日まで抗がん剤(シクロホスファシド)の治療歴があり、2006年5月23日から有機ゲルマニウム主成分のビレモS投薬継続中である。この腫瘍の転移と考えられる2007年3月20日の腫瘍摘出時に行った血清診断の結果は、450nmでの吸光度が0.06であった。このときの摘出した組織を用いた病理診断では、転移性悪性黒色腫と診断されている。しかし、転移した黒色種の手術3ヵ月後の2007年6月27日に再び転移を起こしている。2007年3月20日は右頚部に腫瘍が発生したが、今回はその反対側に発生し、腫瘍の形状も前回と類似した黒色の塊を形成しているとのことである。大きさは3.1×3.2×0.8cm大であり、臨床診断でも転移とのことである。このとき行った血清診断の結果は、450nmでの吸光度は、0.19と上昇しているのが確認され、転移であることがわかった。
【0189】
(2)−7 治療モニタリング
患犬11(ミニチュアダックスフンド)は、2007年4月19日に腫瘍摘出を行った患犬である。摘出した腫瘍を用いた病理診断結果は、浸潤性、転移性に発生している可能性が高い中等度の悪性度である複合型乳腺癌とのことであった。このときの血清診断の結果、450nmでの吸光度は0.30であった。摘出手術から約1年後の2008年6月3日、血清診断の結果、450nmでの吸光度は0.25と低下していた。このとき肉眼では癌の再発は確認されなかったが、再発防止のためそれから2ヶ月間、週に一度の間隔にて抗癌剤投与(インターキャット)を行い、再発がない状態を維持した。抗癌剤投与開始2週間後、4週間後、6週間後に血清診断を行った結果、450nmでの吸光度はそれぞれ0.25、0.19、0.19であった。患犬11の結果から、腫瘍が完全に取りきれていれば担癌状態より値が低下し、抗癌剤治療においても癌の再発が抑制できていれば値の上昇が見られず、治療の経時変化を追えることがわかった。また、患犬8で示したように再発診断も可能であることから、治療モニタリングについても可能であることがわかった。
【0190】
(2)−8 再発時の悪性診断
患犬12(チワワ)は2007年4月27日に腫瘍摘出を行った患犬である。摘出した腫瘍を用いた病理診断結果は、乳管上皮由来の腺管癌、すなわち悪性の乳癌とのことであった。その約1年後の2008年6月29日に再び腫瘍が発見されたため、摘出手術を行った。その摘出した腫瘍を用いた病理組織診断結果は、乳管上皮由来の腫瘍細胞が不規則な腺腔を形成し、内腔へ重層化して造成する部分も認められるが構成する細胞はほぼ均一な卵円形核を有し、細胞の異型性は軽度ということで良性乳腺腫と診断された。このときの血清診断の結果、450nmでの吸光度は0と全く検出されなかった。患犬8、12の結果から、再発時に悪性の場合には血清診断値は上昇するか維持されており、良性の場合には検出されないことがわかった。
【0191】
(2)−9 良性腫瘍患犬の予後診断
患犬13(トイプードル)は、2007年10月9日に腫瘍摘出を行った患犬である。摘出した腫瘍を用いた病理診断結果は、乳腺上皮細胞と筋上皮細胞両成分が増殖する腫瘍が形成されていたが、両成分とも悪性所見を示しておらず、乳腺良性混合腫瘍と診断されていた。このときの血清診断の結果、450nmでの吸光度は0.13と僅かに検出された。その8ヵ月後の2008年6月5日に再採血を行った結果、450nmでの吸光度は0と全く検出されなかった。臨床でもこのとき再発は確認されていない。従って、良性腫瘍患犬であっても、腫瘍がある状態のときに血清診断値が検出されていれば、腫瘍が取りきれていれば値は低下し、予後の診断が可能であることがわかった。
【0192】
(3)ネコの診断
次に担癌猫および健常猫の診断を行った。上記で用いたイヌカルメジンタンパクと抗ネコIgG抗体を用いて、上記と同様にして、該ポリペプチドに特異的に反応するネコ血清中のIgG抗体価を測定した。2次抗体は、HRP修飾抗ネコIgG抗体(PEROXIDASE-CONJUGATED GOAT IgG FRACTION TO CAT IgG (WHOLE MOLECULE): CAPPEL RESERCH REAGENTS社製)をブロッキング溶液にて8000倍希釈して用いた。
【0193】
患猫1(チンチラ)は2005年8月17日に乳腺癌にて腫瘍の摘出手術を受けた患猫である。患猫1の450nmでの吸光度は、0.22であった。また、2006年10月17日に腺管癌にて摘出手術を受けた、患猫2(ヒマラヤン)においても450nmでの吸光度は、0.21であった。一方、健常猫では全く検出されなかった。
【0194】
従って犬と同様、猫の場合も、癌を患った検体では値が検出され、一方健常の検体ではまったく検出されなかったため、猫についても犬と同様に、イヌカルメジンタンパクを用いた本手法にて癌診断が可能であることがわかった。
【0195】
(4)健常人の診断
上記で用いたイヌカルメジンタンパクと抗ヒトIgG抗体を用いて、上記と同様にして、該タンパクに特異的に反応する健常人血清中のIgG抗体価を測定した。2次抗体は、HRP修飾抗ヒトIgG抗体(HRP-Goat Anti-Human IgG(H+L) Conjugate: Zymed Laboratories社製)をブロッキング溶液にて10000倍希釈して用いた。ポジティブコントロールとしてリン酸緩衝化生理食塩水にて50μg/mlに調整した卵白アルブミン抗原を固相化したものを用いた。その結果、450nmでの吸光度は卵白アルブミン抗原には健常ヒト1で0.25であった。一方、この組換えタンパク質には0.03とほとんど検出されなかった。
【0196】
実施例B−4:ヒトカルメジンタンパクを用いた癌診断
実施例B−2で作製したヒトカルメジンタンパクを用いて、実施例B−3と同様にして、該タンパクに反応する、ヒト、イヌおよびネコ血清中のIgG抗体価を測定した。
【0197】
健常人血清を用いた診断結果では、実施例B−3(4)と同様に卵白アルブミン抗原をポジティブコントロールとして用いた場合に、卵白アルブミンを固相化した場合に値は検出され、ヒトカルメジンタンパクを固相化した場合にはほとんど検出されなかった。
【0198】
また、健常犬・猫においても、該タンパクを固相化した場合には、450nmでの吸光度はほとんど検出されなかった。
【0199】
一方、患犬12(シーズー)は、2007年6月21日に乳腺癌の摘出手術を受けた患犬である。摘出した組織を用いた病理診断では、強い異型性と浸潤性を有する乳腺組織が大小の塊状に腺様増殖しており、悪性と診断されている。この患犬12の450nmでの吸光度は、0.70であった。その他病理診断で悪性と診断されている310検体の血清を用いて悪性診断を行った。悪性判断を健常犬平均値の2倍以上とした場合、171検体、55.0%で悪性と診断できることがわかった。患猫3(雑種)は、2007年4月3日に乳腺癌の摘出手術を受けているが、この患猫においても、450nmでの吸光度は、0.38であった。
【0200】
以上のことから、ヒトカルメジンタンパクを用いても、ヒト、イヌ、ネコいずれにおいても同様の診断が可能であることがわかった。
【0201】
さらに、イヌ組換えタンパクと同様にヒト組換えタンパクを用いて、末期癌患犬より採取した胸水、腹水を診断した結果、血清を用いた結果と同様の値を検出することができ、癌と診断することができた。
【0202】
実施例B−5:抗原ポリペプチドを測定することによる癌診断(1)
実施例B−2で作製したイヌ組換えタンパクをマウス、ウサギに免疫し、該抗原特異的抗体を作製、取得した。このポリクローナル抗体を用いて、サンドイッチELISA法により、担癌生体血清中に含まれる該抗原ポリペプチド自体の検出を行った。作製した該タンパク特異的ポリクローナル抗体に特異的に反応する、血清中の該タンパク量について抗マウスIgG抗体を用いてサンドイッチELISA法にて測定した。
【0203】
1次抗体の固相化は、リン酸緩衝化生理食塩水にて20倍希釈したウサギ抗血清を96穴イモビライザーアミノプレート(ヌンク社製)に100μL/well添加し、室温で2時間振とうして行った。ブロッキングは、0.5 % BSA(bovine serum albumin(ウシ血清アルブミン)、シグマアルドリッチジャパン社製)含有50 mM 重炭酸ナトリウム緩衝溶液(pH 8.3)(以下ブロッキング溶液)を100μL/well加え、室温で1時間振とうした。その後、ブロッキング溶液を用いて希釈した担癌生体由来血清を100μL/well添加し、室温で3時間振とうして反応させた。このとき希釈倍率は10-1000倍の10倍希釈系列で調整した。0.05%Tween20(和光純薬工業社製)含有リン酸緩衝化生理食塩水(以下PBS-T)で3回洗浄し、2次抗体は、ブロッキング溶液にて200倍希釈したマウス抗血清を100μL/well加え、室温で1時間振とうして反応させた。PBS-Tで3回洗浄し、3次抗体は、ブロッキング溶液にて2000倍希釈したHRP修飾マウスIgG抗体(Stabilized Goat Anti Mouse HRP conjugated : PIERCE社製)を100μL/well加え、室温で1時間振とうして反応させた。PBS-Tで3回洗浄し、HRP基質 TMB(1-Step Turbo TMB(テトラメチルベンジジン)、PIERCE社製)を100μl/well添加し、室温で30分間酵素基質反応させた。その後、0.5M硫酸溶液(シグマアルドリッチジャパン社製)を100μl/well加えて反応停止後、マイクロプレートリーダーにて450nmの吸光度測定を行った。コントロールとしては、ウサギ抗血清を固相化しないもの、担癌生体由来血清を反応させないものを上記と同様に行い比較することとした。
【0204】
その結果、皮膚平滑筋肉腫、乳癌、悪性黒色腫などの担癌犬、担癌猫ではポリペプチドの値が検出され、健常犬、健常猫及び健常人では検出されなかった。従って、イヌ由来組換えポリペプチドを免疫原として調製した抗体を用いて抗原ポリペプチドを検出するこの手法においても、癌を診断することができた。
【0205】
実施例B−6:抗原ポリペプチドを測定することによる癌診断(2)
実施例B−2で作製したヒト組換えタンパクをマウス、ウサギに免疫し、該抗原特異的抗体を作製、取得した。実施例B−5と同様に、このポリクローナル抗体を用いたサンドイッチELISA法により、担癌生体血清中に含まれる該抗原ポリペプチド自体の検出を行った。
【0206】
その結果、皮膚平滑筋肉腫、乳癌、悪性黒色腫などの担癌犬、担癌猫ではポリペプチドの値が検出され、健常犬、健常猫及び健常人では検出されなかった。従って、ヒト由来組換えポリペプチドを免疫原として調製した抗体を用いて抗原ポリペプチドを検出するこの手法においても、癌を診断することができた。
【0207】
実施例C−1:SEREX法による新規癌抗原タンパクの取得
(1)cDNAライブラリの作製
健常な犬の精巣組織から酸−グアニジウム−フェノール−クロロフォルム法(Acid guanidium-Phenol-Chloroform法)により全RNAを抽出し、Oligotex-dT30 mRNA purification Kit(宝酒造社製)を用いてキット添付のプロトコールに従ってポリA RNAを精製した。
【0208】
この得られたmRNA(5μg)を用いてイヌ精巣cDNAファージライブラリを合成した。cDNAファージライブラリの作製にはcDNA Synthesis Kit,ZAP-cDNA Synthesis Kit,ZAP-cDNA GigapackIII Gold Cloning Kit(STRATAGENE社製)を用い、キット添付のプロトコールに従ってライブラリを作製した。作製したcDNAファージライブラリのサイズは1.3×10pfu/mlであった。
【0209】
(2)血清によるcDNAライブラリのスクリーニング
上記作製したイヌ精巣由来cDNAファージライブラリを用いて、イムノスクリーニングを行った。具体的にはΦ90×15mmのNZYアガロースプレートに2340クローンとなるように宿主大腸菌(XL1-Blue MRF')に感染させ、42℃、3〜4時間培養し、溶菌斑(プラーク)を作らせ、IPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトシド)を浸透させたニトロセルロースメンブレン(Hybond C Extra: GE Healthecare Bio-Science社製)でプレートを37℃で4時間覆うことによりタンパク質を誘導・発現させ、メンブレンにタンパク質を転写した。その後メンブレンを回収し0.5%脱脂粉乳を含むTBS(10mM Tris-HCl,150mM NaCl pH7.5)に浸し4℃で一晩振盪することによって非特異反応を抑制した。このフィルターを500倍希釈した患犬血清と室温で2〜3時間反応させた。
【0210】
上記患犬血清としては、乳癌の患犬より採取した血清を用いた。これらの血清は−80℃で保存し、使用直前に前処理を行った。血清の前処理方法は、以下の方法による。すなわち、外来遺伝子を挿入していないλ ZAP Express ファージを宿主大腸菌(XL1-BLue MRF')に感染させた後、NZYプレート培地上で37℃、一晩培養した。次いで0.5M NaClを含む0.2M NaHCO3 pH8.3のバッファーをプレートに加え、4℃で15時間静置後、上清を大腸菌/ファージ抽出液として回収した。次に、回収した大腸菌/ファージ抽出液をNHS-カラム (GE Healthecare Bio-Science社製)に通液して、大腸菌・ファージ由来のタンパク質を固定化した。このタンパク固定化カラムに患犬血清を通液・反応させ、大腸菌およびファージに吸着する抗体を血清から取り除いた。カラムを素通りした血清画分は、0.5%脱脂粉乳を含むTBSにて500倍希釈し、これをイムノスクリーニング材料とした。
【0211】
かかる処理血清と上記融合タンパク質をブロットしたメンブレンをTBS―T(0.05% Tween20/TBS)にて4回洗浄を行った後、二次抗体として0.5%脱脂粉乳を含むTBSにて5000倍希釈を行ったヤギ抗イヌIgG(Goat anti Dog IgG-h+I HRP conjugated: BETHYL Laboratories社製)を、室温1時間反応させ、NBT/BCIP反応液(Roche社製)を用いた酵素発色反応により検出し、発色反応陽性部位に一致するコロニーをΦ90×15mmのNZYアガロースプレート上から採取し、SM緩衝液(100mM NaCl、10mM MgClSO4、50mM Tris-HCl、0.01% ゼラチン pH7.5)500μlに溶解させた。発色反応陽性コロニーが単一化するまで上記と同様の方法で、二次、三次スクリーニングを繰り返し、血清中のIgGと反応する30940個のファージクローンをスクリーニングして、1個の陽性クローンを単離した。
【0212】
(3)単離抗原遺伝子の相同性検索
上記方法により単離した1個の陽性クローンを塩基配列解析に供するため、ファージベクターからプラスミドベクターに転換する操作を行った。具体的には宿主大腸菌(XL1-Blue MRF')を吸光度OD600が1.0となるよう調製した溶液200μlと、精製したファージ溶液100μlさらにExAssist helper phage (STRATAGENE社製)1μlを混合した後37℃で15分間反応後、LB培地を3ml添加し37℃で2.5〜3時間培養を行い、直ちに70℃の水浴にて20分間保温した後、4℃、1000×g、15分間遠心を行い上清をファージミド溶液として回収した。次いでファージミド宿主大腸菌(SOLR)を吸光度OD600が1.0となるよう調製した溶液200μlと、精製したファージ溶液10μlを混合した後37℃で15分間反応させ、50μlをアンピシリン(終濃度50μg/ml)含有LB寒天培地に播き37℃一晩培養した。トランスフォームしたSOLRのシングルコロニーを採取し、アンピシリン(終濃度50μg/ml)含有LB培地37℃にて培養後、QIAGEN plasmid Miniprep Kit(キアゲン社製)を使って目的のインサートを持つプラスミドDNAを精製した。
【0213】
精製したプラスミドは、配列番号5に記載のT3プライマーと配列番号6に記載のT7プライマーを用いて、プライマーウォーキング法によるインサート全長配列の解析を行った。このシークエンス解析により配列番号25に記載の遺伝子配列を取得した。この遺伝子の塩基配列およびアミノ酸配列を用いて、相同性検索プログラムBLASTサーチ(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)を行い既知遺伝子との相同性検索を行った結果、得られた遺伝子は配列番号41に記載の登録されているCEP遺伝子と塩基配列・アミノ酸配列共に99%(ただし、オーバーラップする領域のみで算出)の相同性を示す遺伝子であることが判明し、該遺伝子はCEP遺伝子であると判断された。取得したイヌCEPのヒト相同因子は、ヒトCEP(配列番号25に記載のCEP遺伝子との相同性:塩基配列87%、アミノ酸配列84%)であった。ヒトCEPの塩基配列を配列番号27に、アミノ酸配列を配列番号28に示す。
【0214】
(4)各組織での発現解析
上記方法により得られた遺伝子に対しイヌおよびヒト正常組織および各種細胞株における発現をRT-PCR(Reverse Transcription-PCR)法により調べた。逆転写反応は以下の通り行なった。すなわち、各組織50−100mgおよび各細胞株5−10×10個の細胞からTRIZOL試薬(invitrogen社製)を用いて添付のプロトコールに従い全RNAを抽出した。この全RNAを用いてSuperscript First-Strand Synthesis System for RT-PCR(invitrogen社製)により添付のプロトコールに従いcDNAを合成した。ヒト正常組織(脳、海馬、精巣、結腸、胎盤)のcDNAは、ジーンプールcDNA(invitrogen社製)、QUICK-Clone cDNA(クロンテック社製)およびLarge-Insert cDNA Library(クロンテック社製)を用いた。PCR反応は、取得した遺伝子特異的なプライマー(配列番号29および30に記載)を用いて以下の通り行った。すなわち、逆転写反応により調製したサンプル0.25μl、上記プライマーを各2μM、0.2mM各dNTP、0.65UのExTaqポリメラーゼ(宝酒造社製)となるように各試薬と添付バッファーを加え全量を25μlとし、Thermal Cycler (BIO RAD社製)を用いて、94℃―30秒、55℃―30秒、72℃―30秒のサイクルを30回繰り返して行った。なお、上記遺伝子特異的プライマーは、配列番号25および配列番号41の塩基配列(イヌCEP遺伝子)中の4582番〜5124番並びに配列番号27の塩基配列(ヒトCEP遺伝子)中の4610番〜5152番塩基の領域を増幅するものであり、該プライマーを用いてイヌCEP遺伝子及びヒトCEP遺伝子のいずれの発現も調べることができるものであった。比較対照のため、GAPDH特異的なプライマー(配列番号9および10に記載)も同時に用いた。その結果、図9に示すように、イヌCEP遺伝子は、健常なイヌ組織では精巣に強い発現が見られ、一方イヌ乳癌細胞で強い発現が見られた。ヒトCEP遺伝子の発現も、イヌCEP遺伝子と同様、ヒト正常組織で発現が確認できたのは精巣のみだったが、ヒト癌細胞では脳腫瘍、白血病、食道癌で発現が検出され、特に白血病細胞株で強い発現を示したことから、ヒトCEP遺伝子も精巣と癌細胞に特異的に発現していることが確認された。
【0215】
なお、図9中、縦軸の参照番号1は、CEP遺伝子の発現パターンを、参照番号2は、比較対照であるGAPDH遺伝子の発現パターンを示す。
【0216】
実施例C−2:イヌおよびヒトCEP由来ポリペプチドの作製
(1)組換えタンパク質の作製
実施例C−1で取得した配列番号25の遺伝子を基に、以下の方法にて組換えタンパク質を作製した。PCRは、実施例C−1で得られたファージミド溶液より調製し配列解析に供したベクターを1μl、BamHIおよびSalI制限酵素切断配列を含む2種類のプライマー(配列番号31および32に記載)を各0.4μM、0.2mM dNTP、1.25UのPrimeSTAR HSポリメラーゼ(宝酒造社製)となるように各試薬と添付バッファーを加え全量を50μlとし、Thermal Cycler (BIO RAD社製)を用いて、98℃―10秒、55℃―5秒、72℃―7分のサイクルを30回繰り返すことにより行った。なお、上記2種類のプライマーにより、配列番号26のアミノ酸配列中の1514番〜2339番アミノ酸の領域(配列番号35)をコードする領域が得られる。PCR後、増幅されたDNAを1%アガロースゲルにて電気泳動し、QIAquick Gel Extraction Kit (QIAGEN社製)を用いて約2.5kbpのDNA断片を精製した。
【0217】
同様にして、配列番号37および38に記載した2種類のプライマーを用いたPCRを行い、配列番号26のアミノ酸配列全長をコードする領域を得た。PCR後、増幅されたDNAを1%アガロースゲルにて電気泳動し、QIAquick Gel Extraction Kit (QIAGEN社製)を用いて約7.0kbpのDNA断片を精製した。
【0218】
さらに、配列番号37および43に記載した2種類のプライマーを用いたPCRを行い、配列番号42のアミノ酸配列全長をコードする領域を得た。PCR後、増幅されたDNAを1%アガロースゲルにて電気泳動し、QIAquick Gel Extraction Kit (QIAGEN社製)を用いて約7.8kbpのDNA断片を精製した。
【0219】
精製した各DNA断片をクローニングベクターpCR-Blunt(invitrogen社製)にライゲーションした。これを大腸菌に形質転換後プラスミドを回収し、増幅された遺伝子断片が目的配列と一致することをシークエンスで確認した。目的配列と一致したプラスミドをBamHIおよびSalI制限酵素で処理し、QIAquick Gel Extraction Kitで精製後、目的遺伝子配列を、BamHI、SalI制限酵素で処理した大腸菌用発現ベクターpET30a(Novagen社製)に挿入した。このベクターの使用によりHisタグ融合型の組換えタンパク質が産生できる。このプラスミドを発現用大腸菌BL21(DE3)に形質転換し、1mM IPTGによる発現誘導を行うことで目的タンパク質を大腸菌内で発現させた。
【0220】
また、配列番号27の遺伝子を基に、以下の方法にてヒト相同遺伝子の組換えタンパク質を作製した。PCRは、実施例C−1で作製した各種組織・細胞cDNAよりRT-PCR法による発現が確認できたcDNAを1μl、BamHIおよびSalI制限酵素切断配列を含む2種類のプライマー(配列番号33および34に記載)を各0.4μM、0.2mM dNTP、1.25UのPrimeSTAR HSポリメラーゼ(宝酒造社製)となるように各試薬と添付バッファーを加え全量を50μlとし、Thermal Cycler (BIO RAD社製)を用いて、98℃―10秒、55℃―5秒、72℃―7分のサイクルを30回繰り返すことにより行った。なお、上記2種類のプライマーにより、配列番号28のアミノ酸配列中の1513番〜2325番アミノ酸の領域(配列番号36)をコードする領域が得られる。PCR後、増幅されたDNAを1%アガロースゲルにて電気泳動し、QIAquick Gel Extraction Kit (QIAGEN社製)を用いて約2.5kbpのDNA断片を精製した。
【0221】
同様にして、配列番号39および40に記載した2種類のプライマーを用いたPCRを行い、配列番号28のアミノ酸配列全長をコードする領域を得た。PCR後、増幅されたDNAを1%アガロースゲルにて電気泳動し、QIAquick Gel Extraction Kit (QIAGEN社製)を用いて約7.0kbpのDNA断片を精製した。
【0222】
精製した各DNA断片をクローニングベクターpCR-Blunt(invitrogen社製)にライゲーションした。これを大腸菌に形質転換後プラスミドを回収し、増幅された遺伝子断片が目的配列と一致することをシークエンスで確認した。目的配列と一致したプラスミドをBamHIおよびSalI制限酵素で処理し、QIAquick Gel Extraction Kitで精製後、目的遺伝子配列を、BamHI、SalI制限酵素で処理した大腸菌用発現ベクターpET30a(Novagen社製)に挿入した。このベクターの使用によりHisタグ融合型の組換えタンパク質が産生できる。このプラスミドを発現用大腸菌BL21(DE3)に形質転換し、1mM IPTGによる発現誘導を行うことで目的タンパク質を大腸菌内で発現させた。
【0223】
(2)組換えタンパク質の精製
上記で得られた、配列番号26の一部および配列番号28の一部を発現するそれぞれの組換え大腸菌をカナマイシン(終濃度30μg/ml)含有LB培地にて600nmでの吸光度が約0.7になるまで37℃で培養後、IPTG終濃度が1 mMとなるよう添加し、30℃で20時間培養した。その後4800rpmで10分間遠心し集菌した。この菌体ペレットをリン酸緩衝化生理食塩水に懸濁し、さらに4800rpmで10分間遠心し菌体の洗浄を行った。
【0224】
この菌体をリン酸緩衝化生理食塩水に懸濁し、氷上にて超音波破砕を行った。大腸菌超音波破砕液を7000rpmで20分間遠心分離し、得られた上清を可溶性画分、沈殿物を不溶性画分とした。不溶性画分を4%Triton X-100溶液にて懸濁し7000rpmで20分間遠心した。本操作を2回繰り返し、脱プロテアーゼ操作を行った。その後、残渣をリン酸緩衝化生理食塩水に懸濁し、脱界面活性剤操作を行った。この残渣を8M尿素(シグマアルドリッチジャパン社製)含有10mMトリス塩酸、100mMリン酸緩衝溶液(以下8M尿素溶液)とプロテアーゼインヒビターカクテル溶液に懸濁し、4℃で15時間静置しタンパク質を変性させた。
【0225】
この変性操作後、7000rpmで20分間遠心して得られた可溶性画分を、定法に従って調整したニッケルキレートカラム(担体 Chelateing Sepharose(商標) Fast Flow(GE Health Care社)、カラム容量5mL、平衡化緩衝液 8M尿素溶液)に添加し、さらに4℃で一晩静置した。このカラム担体を1500rpmで5分間遠心して上清を回収し、カラム担体についてはリン酸緩衝化生理食塩水で懸濁後、カラムに再充填した。未吸着画分をカラム容量の5倍量の8M尿素溶液と10倍量の0.5M 塩化ナトリウム含有0.1M酢酸緩衝液(pH5.0)と10mMイミダゾール含有20mMリン酸緩衝液(pH8.0)にて洗浄操作を行い、直ちに、5段階に分けた100mM-500mMイミダゾール段階的濃度勾配にて溶出した。各溶出画分はカラム容量の5倍量採取した。目的タンパク質の溶出については定法に従って行ったクマシー染色によって確認し、この結果より溶出画分を濃縮し診断用の固相化材料とした。
【0226】
同様にして、実施例C−2(1)で得られた、配列番号26の全長および配列番号28の全長、配列番号42の全長を発現するそれぞれの組換え大腸菌を培養し、目的タンパク質の精製を行い、診断用の固相化材料を得た。
【0227】
実施例C−3:イヌCEP由来ポリペプチドを用いた癌診断
(1)イヌの癌診断
悪性または良性腫瘍の確認された患犬486頭と健常犬6頭の血液を採取し、血清を分離した。実施例C−2で作製したイヌCEPの部分ポリペプチド(配列番号26のアミノ酸配列中:1514番〜2339番、配列番号35)と抗イヌIgG抗体を用いて、ELISA法にて該ポリペプチドに特異的に反応する血清中のIgG抗体価を測定した。
【0228】
作製したポリペプチドの固相化は、リン酸緩衝化生理食塩水にて50μg/mLに希釈した組換えタンパク質溶液を96穴イモビライザーアミノプレート(ヌンク社製)に100μL/well添加し、4℃で一晩静置して行った。ブロッキングは、0.5 % BSA(bovine serum albumin(ウシ血清アルブミン)、シグマアルドリッチジャパン社製)含有50 mM 重炭酸ナトリウム緩衝溶液(pH 8.3)(以下ブロッキング溶液)を100μL/well加え、室温で1時間振とうした。希釈にブロッキング溶液を用いた500倍希釈血清を100μL/well添加し、室温で3時間振とうして反応させた。0.05%Tween20(和光純薬工業社製)含有リン酸緩衝化生理食塩水(以下PBS-T)で3回洗浄し、ブロッキング溶液にて3000倍希釈したHRP修飾イヌIgG抗体(Goat anti Dog IgG-h+I HRP conjugated:BETHYL Laboratories社製)を100μL/well加え、室温で1時間振とうして反応させた。PBS-Tで3回洗浄し、HRP基質 TMB(1-Step Turbo TMB(テトラメチルベンジジン)、PIERCE社)を100μl/well添加し、室温で30分間酵素基質反応させた。その後、0.5M硫酸溶液(シグマアルドリッチジャパン社製)を100μl/well加えて反応停止後、マイクロプレートリーダーにて450nmの吸光度測定を行った。コントロールとしては、作製した組換えタンパク質を固相化しないもの、担癌犬血清を反応させないものを上記と同様に行い比較することとした。
【0229】
上記癌診断に用いた全486検体中311検体で、摘出された腫瘍組織を用いた病理診断の結果、悪性と確定診断がされている。
【0230】
具体的には、悪性黒色腫、悪性混合腫瘍、肝細胞癌、基底細胞癌、勅細胞腫様歯肉腫、口腔内腫瘤、肛門周囲腺癌、肛門嚢腫瘤、肛門嚢アポクリン腺癌、セルトリ細胞腫、膣前庭癌、皮脂腺癌、皮脂腺上皮腫、脂腺腺腫、汗腺癌、鼻腔内腺癌、鼻腺癌、甲状腺癌、大腸癌、気管支腺癌、腺癌、腺管癌、乳腺癌、複合型乳腺癌、乳腺悪性混合腫瘍、乳管内乳頭状腺癌、線維肉腫、血管周皮腫、骨肉腫、軟骨肉腫、軟部組織肉腫、組織球肉腫、粘液肉腫、未分化肉腫、肺癌、肥満細胞腫、皮膚平滑筋腫、腹腔内平滑筋腫、平滑筋腫、扁平上皮癌、慢性型リンパ球性白血病、リンパ腫、消化管型リンパ腫、消化器型リンパ腫、小〜中細胞型リンパ腫、副腎髄質腫瘍、顆粒膜細胞腫、褐色細胞腫、膀胱癌(移行上皮癌)、化膿性炎症、腹腔内肝臓腫瘍、肝臓癌、形質細胞腫、悪性血管外膜細胞腫、血管肉腫、肛門嚢腺癌、口腔癌、転移性悪性黒色腫、メラニン欠乏性悪性黒色腫、皮膚悪性黒色腫、悪性筋上皮腫、悪性精巣上皮腫、精細胞腫(セミノーマ)、大腸腺癌、胃腺癌、低グレード皮脂腺癌、耳垢腺癌、アポクリン腺癌、低分化型アポクリン汗腺癌、悪性線維性組織球腫、多発性骨髄腫、間葉系悪性腫瘍、脂肪肉腫、骨肉腫、起原不明の肉腫、軟部肉腫(紡錘形細胞腫瘍)、低分化肉腫、滑膜肉腫、血管肉腫、転移性悪性上皮腫瘍、管状乳腺腺癌、乳腺導管癌、炎症性乳癌、胚細胞腫、白血病、浸潤性毛包上皮腫、中細胞型リンパ腫、多中心型リンパ腫、骨肉腫(乳腺)、肥満細胞腫(Patnaik II型)、肥満細胞腫(Grade II)、平滑筋肉腫などの癌診断を受けている検体である。
【0231】
これら担癌犬生体由来の血清は、図11に示したように有意に高い組換えタンパク質に対する抗体価を示した。本診断法による悪性判断を健常犬平均値の2倍以上とした場合、197検体、63.3%で悪性と診断できることがわかった。この197検体の癌の種類は以下のとおりである。なお、検体によっては複数種類の癌を罹患しているものもあるが、以下に示す数値は癌の種類ごとの累計値である。
悪性黒色腫8例、リンパ腫9例、褐色細胞腫1例、化膿性炎症1例、顆粒膜細胞腫1例、肝細胞癌5例、血管腫1例、悪性精巣腫瘍6例、口腔内腫瘤5例、肛門周囲腺癌12例、骨肉腫4例、線維肉腫8例、腺管癌10例、軟骨肉腫2例、乳腺癌35例、複合型乳腺癌24例、肺癌2例、皮脂腺癌2例、鼻腺癌2例、肥満細胞腫24例、副腎髄質腫瘍1例、平滑筋肉腫1例、扁平上皮癌4例、慢性リンパ球性白血病1例、未分化肉腫1例、悪性混合腫瘍1例、左肺後葉腫瘍1例、右腋下部腫瘍1例、右前肢肘部腫瘍1例、膀胱癌(移行上皮癌)1例、転移性悪性黒色腫3例、メラニン欠乏性悪性黒色腫1例、大腸腺癌1例、形質細胞腫1例、組織球肉腫1例、脂肪肉腫1例、低分化肉腫1例、滑膜肉腫1例、悪性血管外膜細胞腫1例、アポクリン汗腺癌3例、気管支腺癌1例
【0232】
さらに、末期癌患犬より採取した胸水、腹水を用いて、同様の診断を行った結果、血清を用いた本診断法による結果と同様の値を検出することができ、癌と診断することができた。
【0233】
また、本診断法を用いることにより、さらに目に見えない部分の癌診断、進行度診断、悪性度診断、術後の経過診断、再発診断、転移診断などのような診断が可能であることがわかった。以下に図12に示した詳細診断の具体例について数例をあげる。
【0234】
(2)−1 目に見えない腫瘍の癌診断
患犬1(フラットコーテットレトリバー)は、2007年6月7日時点で腫瘤が確認されていなかったが、その20日ほど後の2007年6月24日に左上顎犬歯の付け根の歯肉に有茎状の直径2mmの腫瘤が発見された患犬である。発見された日に有茎部を結糸し、切除を行っている。肉眼で腫瘤を確認できる以前から450nmでの吸光度は0.41と、有意に高い値が確認されており、腫瘍発見時0.43と比較しても大きく変わらなかった。この結果から本手法を用いることにより、腹腔内など目に見えない部分の癌診断でも可能なことがわかった。
【0235】
また、腫瘍が肉眼で確認できる以前から値の上昇が確認され、腫瘍発生の前兆を示していたもの言える。よって、定期健診などの健康診断にも有用であることがわかる。
【0236】
この患犬1は腫瘤切除2週間後に再び血清診断を行ったところ、450nmでの吸光度は0.06と大きく低下していた。ゆえに、抗体価上昇の原因となっていた癌抗原の発現している腫瘍が完全切除されていることも確認された。((2)―4 術後の経過診断参照)
【0237】
(2)−2 癌の進行度診断
癌の進行度は腫瘍の大きさや深さ、周辺組織にどれほど影響を及ぼしているか、転移をしているかなどによって判断される。転移すなわち癌が進行すると以前より高い値が検出されることがわかった。さらにもう一例として以下では、抗癌剤投与を行った具体例による進行度診断について述べる。
【0238】
患犬2(ミニチュアダックスフンド)は、2007年2月21日に吐き気と痩せてきたことを主訴に来院し、腹腔内に2箇所の大型腫瘍が発見された患犬である。2007年2月23日に腫瘍の摘出を行い、右腎は肥大し433g、近傍リンパ節も血管に富み、42gあった。このときの摘出した組織を用いた病理診断では、多中心型の悪性リンパ腫と診断された。腫瘍細胞が脂肪織を播種性に拡がっているのが確認され、腹腔内のほかの臓器にも広がる可能性があるとの診断であった。腫瘍摘出手術後の2007年3月1日より抗癌剤(オンコビン)投与を開始し、それから2ヵ月後、3ヵ月後と3回にわたって血清診断を行った。その結果、450nmでの吸光度はそれぞれ0.15、0.15、0.07であった。投与開始時点から徐々に値が低下してきており、抗癌剤効果が現れていることが確認できた。すなわち癌の進行を抑制できていることがわかる。患犬2の結果より、癌進行度についても診断できることがわかった。さらに、その一例として上記のように抗癌剤治療効果についても診断可能であることがわかった。
【0239】
(2)−3 癌の悪性度診断
基底細胞腫には悪性型と良性型とがあり、近年、新WHOでは悪性型を基底細胞癌、良性型を毛芽腫と分類するという傾向にあるとのことである。
【0240】
基底細胞癌(悪性)と診断された患犬3(ビーグル)は、手術時の血清診断の結果、450nmでの吸光度は0.14であった。一方、毛芽腫(良性)と診断された患犬4(雑種)は、手術時の血清診断の結果、450nmでの吸光度は0と全く検出されなかった。よって、同じ基底細胞腫でも、悪性型の基底細胞癌と良性型の毛芽腫を診断できることがわかった。
【0241】
次に、乳腺腫瘍について例を挙げる。乳腺腫瘍には、乳腺癌や乳腺悪性混合腫瘍といった悪性腫瘍と、悪性所見を示さない良性乳腺腫瘍がある。患犬5(ヨーキー)は、2006年5月17日に乳腺悪性混合腫瘍と乳腺癌にて、摘出手術を受けた患犬である。一般的に、乳腺の混合腫瘍は悪性であっても周囲への浸潤性が乏しいために完全切除されやすく、切除後の経過が良好なことが多い腫瘍である。しかしながら摘出された組織を用いた病理診断では、患犬5の標本の一部成分に、浸潤性が見られており、悪性度の高い腫瘍であると診断されていた。また、乳腺癌は通常周囲への浸潤性が強く再発や転移が起こりやすい腫瘍である。患犬5の標本上では腫瘍細胞に浸潤性が見られなかったが、部分材料のため他の領域に悪性度の高い成分が増殖している可能性も指摘されていた。そのため、患犬5は悪性度の高い乳癌であることが病理診断結果から明らかである。この手術時に採血した血清診断の結果、450nmでの吸光度は0.77であった。一方、患犬6(ヨークシャテリア)は、2007年1月28日に、乳腺腫瘍の摘出手術を受けた患犬である。このときの摘出組織を用いた病理診断では、細胞異型性は軽度であり、悪性所見の見当たらない良性乳腺腫と診断された。この手術時に採血した血清診断の結果、450nmでの吸光度は0であった。以上の2検体の結果からも悪性度の高い腫瘍は、悪性度の低い、すなわち良性の腫瘍に比べ、値が大きいことがわかった。
【0242】
(2)−4 術後の経過診断
患犬7(雑種)は2003年8月と2006年8月9日に肛門周囲腺腫の摘出手術を受けた患犬である。2006年8月9日は、同部位に同様の腫瘍が再び発生していることから再発と臨床診断された。再発手術時の組織を用いた病理診断では、通常の肛門周囲腺腫と比較して大小不同や核異型などといった細胞異型や浸潤性が強く、また核分裂像も多数認められたことから悪性腫瘍と診断されている。病理診断医のコメントによると、再度の局所再発や転移形成には注意が必要であるとのことであった。このときの血清診断の結果は、450nmでの吸光度は0.43であった。この手術から約4ヶ月の2006年12月19日、術後経過観察時に再び行った血清診断の結果は、450nmでの吸光度は0.32と値が低下していることが確認された。2007年8月までに再発、転移は確認されていない。よって患犬7では、完全に腫瘍を切除できたために血清診断結果は手術時よりも低下したといえる。
【0243】
(2)−5 再発診断
患犬8(ハスキー)は、2007年5月8日に乳腺癌の摘出手術を行っている。この際行った血清診断の結果、450nmでの吸光度は0.09であった。摘出した組織を用いた病理診断では、異型性の強い上皮系細胞が主に腺管構造を形成、増殖しており乳腺原発の腺癌と診断された。そのとき既にリンパ管内に多数の癌細胞が入っているのが確認されており、リンパ節や遠隔部への転移、再発のリスクが高いということであった。手術から約一ヶ月半後の2007年6月28日に同部位に再発が確認された。このときの血清診断の結果は0.10と値の上昇が確認された。患犬8では、腫瘍が切除しきれていなかったかまたは、再発したために、血清診断結果が5月初旬よりも6月下旬のほうが大きく検出されたとわかった。
【0244】
患犬9(シェルティー)は、2006年10月24日に腺管癌の摘出手術を行っている。この際行った血清診断の結果、450nmでの吸光度は0.02であった。その約3ヵ月後の2007年1月31日に再発し、再来院、再摘出手術を行っている。このときの摘出した組織を用いた病理診断では、卵円形異型核を有する癌細胞が多数リンパ管侵襲をおこし、鼠径部リンパ節転移しているため遠隔転移の可能性がある腺管癌(乳癌)との診断であった。この際行った血清診断の結果、450nmでの吸光度は0.09と上昇していることが確認された。患犬9でも同様に、腫瘍が切除しきれていなかったかまたは、再発したために、血清診断結果が3ヵ月後のほうが大きく検出されたとわかった。
【0245】
(2)−6 転移診断
患犬10(スコティッシュテリア)は、2003年2月 乳腺腫瘍、2003年8月 口腔内悪性黒色腫、2005年1月 口唇に悪性黒色腫、2005年4月13日 口腔内黒色腫と転移・再発を繰り返し、これらすべて手術で切除済みの患犬である。2005年4月の口腔内黒色腫の再発の後に、経過観察で再来院した2006年12月17日の血清診断の結果は、450nmでの吸光度が0.42であった。その半年後の2007年6月20日には頚部リンパ、膝きょうリンパが肥大して再来院している。リンパ腫であれば全身のリンパが腫れるが、患犬10については2箇所のみであったため、おそらく転移によるリンパ腫である可能性が高いとの臨床診断であった。本手法による診断によっても、450nmでの吸光度は0.91と大きく上昇しており、以前存在した腫瘍の転移であることがわかった。
【0246】
(2)−7 治療モニタリング
患犬12(雑種)は、2007年7月27日に腫瘍摘出を行った患犬である。摘出した腫瘍を用いた病理診断結果は、乳管内を進展性に増殖する乳癌が認められ、腺管癌と診断された。このときの血清診断の結果、450nmでの吸光度は0.24であった。摘出手術から13ヶ月後の現在、癌の再発は認められていない。摘出手術から約1ヶ月後の2007年9月3日、2ヵ月後の2007年10月12日、10ヵ月後の2008年6月1日に再び血清診断を行った結果、450nmでの吸光度はそれぞれ0.18、0.18、0.12であった。
【0247】
患犬12の結果から、腫瘍が完全に取りきれていれば担癌状態より値が低下し、癌の再発が起こらなければ値の上昇が見られず、治療の経時変化を追えることがわかった。また、患犬8で示したように再発診断も可能であることから、治療モニタリングについても可能であることがわかった。
【0248】
(2)−8 再発時の悪性診断
患犬13(ゴールデンレトリーバー)は2005年5月1日に腫瘍摘出を行った患犬である。摘出した腫瘍を用いた病理診断結果は、乳管上皮由来の悪性腫瘍性病変、すなわち悪性乳腺管癌および乳管内を進展して増生する悪性乳頭状癌とのことであった。その約3年後の2008年6月28日に再び腫瘍が発見されたため、摘出手術を行った。その摘出した腫瘍を用いた病理組織診断結果は、前回の術創と見られる皮下の縫合糸の周囲に好中球やマクロファージ、形質細胞などの顕著な炎症細胞浸潤が認められるのみで腫瘍性病変は無と診断された。このときの血清診断の結果、450nmでの吸光度は0と全く検出されなかった。患犬8、9、13の結果から、再発時に悪性の場合には血清診断値は上昇するか維持されており、良性の場合には検出されないことがわかった。
【0249】
(2)−9 良性腫瘍患犬の予後診断
患犬14(トイプードル)は、2007年10月9日に腫瘍摘出を行った患犬である。摘出した腫瘍を用いた病理診断結果は、乳腺上皮細胞と筋上皮細胞両成分が増殖する腫瘍が形成されていたが、両成分とも悪性所見を示しておらず、乳腺良性混合腫瘍と診断されていた。このときの血清診断の結果、450nmでの吸光度は0.05と僅かに検出された。その8ヵ月後の2008年6月5日に再採血を行った結果、450nmでの吸光度は0と全く検出されなかった。臨床でもこのとき再発は確認されていない。従って、良性腫瘍患犬であっても、腫瘍がある状態のときに血清診断値が検出されていれば、腫瘍が取りきれていれば値は低下し、予後の診断が可能であることがわかった。
【0250】
(3)ネコの診断
次に担癌猫および健常猫の診断を行った。上記で用いたイヌCEPの部分ポリペプチドと抗ネコIgG抗体を用いて、上記と同様にして、該ポリペプチドに特異的に反応するネコ血清中のIgG抗体価を測定した。2次抗体は、HRP修飾抗ネコIgG抗体(PEROXIDASE-CONJUGATED GOAT IgG FRACTION TO CAT IgG (WHOLE MOLECULE): CAPPEL RESERCH REAGENTS社製)をブロッキング溶液にて8000倍希釈して用いた。
【0251】
患猫1(チンチラ)は2005年8月17日に乳腺癌にて腫瘍の摘出手術を受けた患猫である。患猫1の450nmでの吸光度は、0.48であった。また、2006年10月17日に腺管癌にて摘出手術を受けた、患猫2(ヒマラヤン)においても450nmでの吸光度は、0.18であった。一方、健常猫では全く検出されなかった。
【0252】
従って犬と同様、猫の場合も、癌を患った検体では値が検出され、一方健常の検体ではまったく検出されなかったため、猫についても犬と同様に、イヌCEP由来ポリペプチドを用いた本手法にて癌診断が可能であることがわかった。
【0253】
(4)健常人の診断
上記で用いたイヌCEPの部分ポリペプチドと抗ヒトIgG抗体を用いて、上記と同様にして、該ポリペプチドに特異的に反応する健常人血清中のIgG抗体価を測定した。2次抗体は、HRP修飾抗ヒトIgG抗体(HRP-Goat Anti-Human IgG(H+L) Conjugate: Zymed Laboratories社製)をブロッキング溶液にて10000倍希釈して用いた。ポジティブコントロールとしてリン酸緩衝化生理食塩水にて50μg/mlに調整した卵白アルブミン抗原を固相化したものを用いた。その結果、450nmでの吸光度は卵白アルブミン抗原には健常ヒト1で0.25であった。一方、この組換えタンパク質には0.02とほとんど検出されなかった。また、健常ヒト2においても、卵白アルブミン抗原には450nmでの吸光度は0.18であり、一方、この組換えタンパク質には0.03とほとんど検出されなかった。
【0254】
また、実施例C−2で作製した配列番号26に記載のイヌCEPの全長ポリペプチドを用いて、上記と同様に診断を行ったところ、ヒト、イヌ、ネコいずれにおいても同様の診断が可能であることがわかった。
【0255】
さらに、実施例C−2で作製した配列番号42に記載のイヌCEPの全長ポリペプチドを用いて、上記と同様に診断を行ったところ、ヒト、イヌ、ネコいずれにおいても同様の診断が可能であることがわかった。
【0256】
実施例C−4:ヒトCEP由来ポリペプチドを用いた癌診断
実施例C−2で作製したヒトCEPの部分ポリペプチド(配列番号28のアミノ酸配列中:1513番〜2325番、配列番号36)を用いて、実施例C−3と同様にして、該ポリペプチドに反応する、ヒト、イヌおよびネコ血清中のIgG抗体価を測定した。
【0257】
健常ヒト血清を用いた診断結果では、実施例C−3(4)と同様に卵白アルブミン抗原をポジティブコントロールとして用いた場合に、卵白アルブミンを固相化した場合に値は検出され、ヒトCEPの部分ポリペプチドを固相化した場合にはほとんど検出されなかった。
【0258】
また、健常犬・猫においても、該ポリペプチドを固相化した場合には、450nmでの吸光度はほとんど検出されなかった。
【0259】
一方、患犬11(シーズー)は、2007年6月21日に乳腺癌の摘出手術を受けた患犬である。摘出した組織を用いた病理診断では、強い異型性と浸潤性を有する乳腺組織が大小の塊状に腺様増殖しており、悪性と診断されている。この患犬11の450nmでの吸光度は、0.33であった。その他病理診断で悪性と診断されている310検体の血清を用いて悪性診断を行った。悪性判断を健常犬平均値の2倍以上とした場合、185検体、59.5%で悪性と診断できることがわかった。
【0260】
また、患猫3(雑種)は、2007年4月3日に乳腺癌の摘出手術を受けているが、この患猫においても、450nmでの吸光度は、0.15であった。
【0261】
以上のことから、ヒトCEP由来ポリペプチドを用いても、ヒト、イヌ、ネコいずれにおいても同様の診断が可能であることがわかった。
【0262】
さらに、イヌ組換えタンパクと同様にヒト組換えタンパクを用いて、末期癌患犬より採取した胸水、腹水を診断した結果、血清を用いた結果と同様の値を検出することができ、癌と診断することができた。
【0263】
また、実施例C−2で作製した配列番号28に記載のヒトCEPの全長ポリペプチドを用いて、上記と同様に診断を行ったところ、ヒト、イヌ、ネコいずれにおいても同様の診断が可能であることがわかった。
【0264】
実施例C−5:抗原ポリペプチドを測定することによる癌診断(1)
実施例C−2で作製した配列番号35に記載のイヌ組換えタンパクをマウス、ウサギに免疫し、該抗原特異的抗体を作製、取得した。このポリクローナル抗体を用いて、サンドイッチELISA法により、担癌生体血清中に含まれる該抗原ポリペプチド自体の検出を行った。作製した該タンパク特異的ポリクローナル抗体に特異的に反応する、血清中の該タンパク量について抗マウスIgG抗体を用いてサンドイッチELISA法にて測定した。
【0265】
1次抗体の固相化は、リン酸緩衝化生理食塩水にて20倍希釈したウサギ抗血清を96穴イモビライザーアミノプレート(ヌンク社製)に100μL/well添加し、室温で2時間振とうして行った。ブロッキングは、0.5 % BSA(bovine serum albumin(ウシ血清アルブミン)、シグマアルドリッチジャパン社製)含有50 mM 重炭酸ナトリウム緩衝溶液(pH 8.3)(以下ブロッキング溶液)を100μL/well加え、室温で1時間振とうした。その後、ブロッキング溶液を用いて希釈した担癌生体由来血清を100μL/well添加し、室温で3時間振とうして反応させた。このとき希釈倍率は10-1000倍の10倍希釈系列で調整した。0.05%Tween20(和光純薬工業社製)含有リン酸緩衝化生理食塩水(以下PBS-T)で3回洗浄し、2次抗体は、ブロッキング溶液にて200倍希釈したマウス抗血清を100μL/well加え、室温で1時間振とうして反応させた。PBS-Tで3回洗浄し、3次抗体は、ブロッキング溶液にて2000倍希釈したHRP修飾マウスIgG抗体(Stabilized Goat Anti Mouse HRP conjugated : PIERCE社製)を100μL/well加え、室温で1時間振とうして反応させた。PBS-Tで3回洗浄し、HRP基質 TMB(1-Step Turbo TMB(テトラメチルベンジジン)、PIERCE社製)を100μl/well添加し、室温で30分間酵素基質反応させた。その後、0.5M硫酸溶液(シグマアルドリッチジャパン社製)を100μl/well加えて反応停止後、マイクロプレートリーダーにて450nmの吸光度測定を行った。コントロールとしては、ウサギ抗血清を固相化しないもの、担癌生体由来血清を反応させないものを上記と同様に行い比較することとした。
【0266】
その結果、皮膚平滑筋肉腫、乳癌、悪性黒色腫などの担癌犬、担癌猫ではポリペプチドの値が検出され、健常犬、健常猫及び健常人では検出されなかった。従って、イヌ由来組換えポリペプチドを免疫原として調製した抗体を用いて抗原ポリペプチドを検出するこの手法においても、癌を診断することができた。
【0267】
また、実施例C−2で作製した配列番号26に記載のイヌCEPの全長ポリペプチドを免疫原として調製した抗体を用いて、上記と同様に診断を行った。
【0268】
その結果、イヌ、ネコいずれにおいても、イヌCEPの全長ポリペプチドを免疫原として調製した抗体を用いて抗原ポリペプチドを検出するこの手法において、同様に癌を診断することができた。
【0269】
さらに、実施例C−2で作製した配列番号42に記載のイヌCEPの全長ポリペプチドを免疫原として調製した抗体を用いて、上記と同様に診断を行った。
【0270】
その結果、イヌ、ネコいずれにおいても、イヌCEPの全長ポリペプチドを免疫原として調製した抗体を用いて抗原ポリペプチドを検出するこの手法において、同様に癌を診断することができた。
【0271】
実施例C−6:抗原ポリペプチドを測定することによる癌診断(2)
実施例C−2で作製した配列番号36に記載のヒト組換えタンパクをマウス、ウサギに免疫し、該抗原特異的抗体を作製、取得した。実施例C−5と同様に、このポリクローナル抗体を用いたサンドイッチELISA法により、担癌生体血清中に含まれる該抗原ポリペプチド自体の検出を行った。
【0272】
その結果、皮膚平滑筋肉腫、乳癌、悪性黒色腫などの担癌犬、担癌猫ではポリペプチドの値が検出され、健常犬、健常猫及び健常人では検出されなかった。従って、ヒト由来組換えポリペプチドを免疫原として調製した抗体を用いて抗原ポリペプチドを検出するこの手法においても、癌を診断することができた。
【0273】
また、実施例C−2で作製した配列番号28に記載のヒトCEPの全長ポリペプチドを免疫原として調製した抗体を用いて、上記と同様に診断を行った。
【0274】
その結果、イヌ、ネコいずれにおいても、ヒトCEPの全長ポリペプチドを免疫原として調製した抗体を用いて抗原ポリペプチドを検出するこの手法において、同様に癌を診断することができた。
【0275】
実施例D−1:SEREX法による新規癌抗原タンパクの取得
(1)cDNAライブラリの作製
健常な犬の精巣組織から酸−グアニジウム−フェノール−クロロフォルム法(Acid guanidium-Phenol-Chloroform法)により全RNAを抽出し、Oligotex-dT30 mRNA purification Kit(宝酒造社製)を用いてキット添付のプロトコールに従ってポリA RNAを精製した。
【0276】
この得られたmRNA(5μg)を用いてイヌ精巣cDNAファージライブラリを合成した。cDNAファージライブラリの作製にはcDNA Synthesis Kit, ZAP-cDNA Synthesis Kit, ZAP-cDNA GigapackIII Gold Cloning Kit(STRATAGENE社製)を用い、キット添付のプロトコールに従ってライブラリを作製した。作製したcDNAファージライブラリのサイズは1.3×10pfu/mlであった。
【0277】
(2)血清によるcDNAライブラリのスクリーニング
上記作製したイヌ精巣由来cDNAファージライブラリを用いて、イムノスクリーニングを行った。具体的にはΦ90×15mmのNZYアガロースプレートに2340クローンとなるように宿主大腸菌(XL1-Blue MRF')に感染させ、42℃、3〜4時間培養し、溶菌斑(プラーク)を作らせ、IPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトシド)を浸透させたニトロセルロースメンブレン(Hybond C Extra: GE Healthecare Bio-Science社製)でプレートを37℃で4時間覆うことによりタンパク質を誘導・発現させ、メンブレンにタンパク質を転写した。その後メンブレンを回収し0.5%脱脂粉乳を含むTBS(10mM Tris-HCl, 150mM NaCl pH7.5)に浸し4℃で一晩振盪することによって非特異反応を抑制した。このフィルターを500倍希釈した患犬血清と室温で2〜3時間反応させた。
【0278】
上記患犬血清としては、乳癌の患犬より採取した血清を用いた。これらの血清は−80℃で保存し、使用直前に前処理を行った。血清の前処理方法は、以下の方法による。すなわち、外来遺伝子を挿入していないλ ZAP Express ファージを宿主大腸菌(XL1-BLue MRF')に感染させた後、NZYプレート培地上で37℃、一晩培養した。次いで0.5M NaClを含む0.2M NaHCO3 pH8.3のバッファーをプレートに加え、4℃で15時間静置後、上清を大腸菌/ファージ抽出液として回収した。次に、回収した大腸菌/ファージ抽出液をNHS-カラム (GE Healthecare Bio-Science社製)に通液して、大腸菌・ファージ由来のタンパク質を固定化した。このタンパク固定化カラムに患犬血清を通液・反応させ、大腸菌およびファージに吸着する抗体を血清から取り除いた。カラムを素通りした血清画分は、0.5%脱脂粉乳を含むTBSにて500倍希釈し、これをイムノスクリーニング材料とした。
【0279】
かかる処理血清と上記融合タンパク質をブロットしたメンブレンをTBS―T(0.05% Tween20/TBS)にて4回洗浄を行った後、二次抗体として0.5%脱脂粉乳を含むTBSにて5000倍希釈を行ったヤギ抗イヌIgG(Goat anti Dog IgG-h+I HRP conjugated: BETHYL Laboratories社製)を、室温1時間反応させ、NBT/BCIP反応液(Roche社製)を用いた酵素発色反応により検出し、発色反応陽性部位に一致するコロニーをΦ90×15mmのNZYアガロースプレート上から採取し、SM緩衝液(100mM NaCl、10mM MgClSO4、50mM Tris-HCl、0.01% ゼラチン pH7.5)500μlに溶解させた。発色反応陽性コロニーが単一化するまで上記と同様の方法で、二次、三次スクリーニングを繰り返し、血清中のIgGと反応する30940個のファージクローンをスクリーニングして、1個の陽性クローンを単離した。
【0280】
(3)単離抗原遺伝子の相同性検索
上記方法により単離した1個の陽性クローンを塩基配列解析に供するため、ファージベクターからプラスミドベクターに転換する操作を行った。具体的には宿主大腸菌(XL1-Blue MRF')を吸光度OD600が1.0となるよう調製した溶液200μlと、精製したファージ溶液100μlさらにExAssist helper phage (STRATAGENE社製)1μlを混合した後37℃で15分間反応後、LB培地を3ml添加し37℃で2.5〜3時間培養を行い、直ちに70℃の水浴にて20分間保温した後、4℃、1000×g、15分間遠心を行い上清をファージミド溶液として回収した。次いでファージミド宿主大腸菌(SOLR)を吸光度OD600が1.0となるよう調製した溶液200μlと、精製したファージ溶液10μlを混合した後37℃で15分間反応させ、50μlをアンピシリン(終濃度50μg/ml)含有LB寒天培地に播き37℃一晩培養した。トランスフォームしたSOLRのシングルコロニーを採取し、アンピシリン(終濃度50μg/ml)含有LB培地37℃にて培養後、QIAGEN plasmid Miniprep Kit(キアゲン社製)を使って目的のインサートを持つプラスミドDNAを精製した。
【0281】
精製したプラスミドは、配列番号5に記載のT3プライマーと配列番号6に記載のT7プライマーを用いて、プライマーウォーキング法によるインサート全長配列の解析を行った。このシークエンス解析により配列番号44に記載の遺伝子配列を取得した。この遺伝子の塩基配列およびアミノ酸配列を用いて、相同性検索プログラムBLASTサーチ(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)を行い既知遺伝子との相同性検索を行った結果、得られた遺伝子はTRIP11遺伝子であることが判明した。イヌTRIP11のヒト相同因子は、ヒトTRIP11(相同性:塩基配列88%、アミノ酸配列86%)であった。ヒトTRIP11の塩基配列を配列番号46に、アミノ酸配列を配列番号47に示す。
【0282】
(4)各組織での発現解析
上記方法により得られた遺伝子に対しイヌおよびヒト正常組織および各種細胞株における発現をRT-PCR(Reverse Transcription-PCR)法により調べた。逆転写反応は以下の通り行なった。すなわち、各組織50−100mgおよび各細胞株5−10×10個の細胞からTRIZOL試薬(invitrogen社製)を用いて添付のプロトコールに従い全RNAを抽出した。この全RNAを用いてSuperscript First-Strand Synthesis System for RT-PCR(invitrogen社製)により添付のプロトコールに従いcDNAを合成した。ヒト正常組織(脳、海馬、精巣、結腸、胎盤)のcDNAは、ジーンプールcDNA(invitrogen社製)、QUICK-Clone cDNA(クロンテック社製)およびLarge-Insert cDNA Library(クロンテック社製)を用いた。PCR反応は、取得した遺伝子特異的なプライマー(配列番号48および49に記載)を用いて以下の通り行った。すなわち、逆転写反応により調製したサンプル0.25μl、上記プライマーを各2μM、0.2mM各dNTP、0.65UのExTaqポリメラーゼ(宝酒造社製)となるように各試薬と添付バッファーを加え全量を25μlとし、Thermal Cycler (BIO RAD社製)を用いて、94℃―30秒、55℃―30秒、72℃―1.5分のサイクルを30回繰り返して行った。なお、上記遺伝子特異的プライマーは、配列番号44の塩基配列(イヌTRIP11遺伝子)中の1519番〜2957番および配列番号46の塩基配列(ヒトTRIP11遺伝子)中の1872番〜3310番塩基の領域を増幅するものであり、該プライマーを用いてイヌTRIP11遺伝子及びヒトTRIP11遺伝子のいずれの発現も調べることができるものであった。比較対照のため、GAPDH特異的なプライマー(配列番号9および10に記載)も同時に用いた。その結果、図13に示すように、イヌTRIP11遺伝子は、健常なイヌ組織では精巣に強い発現が見られ、一方イヌ乳癌細胞株で強い発現が見られた。ヒトTRIP11遺伝子の発現も、イヌTRIP11遺伝子と同様、正常組織で発現が確認できたのは精巣のみだったが、癌細胞では脳腫瘍、白血病、乳癌、肺癌、食道癌細胞株など、多種類の癌細胞株で発現が検出され、ヒトTRIP11遺伝子も精巣と癌細胞に特異的に発現していることが確認された。
【0283】
なお、図13中、縦軸の参照番号1は、TRIP11遺伝子の発現パターンを、参照番号2は、比較対照であるGAPDH遺伝子の発現パターンを示す。
【0284】
実施例D−2:イヌおよびヒトTRIP11タンパクの作製
(1)組換えタンパク質の作製
実施例D−1で取得した配列番号44の遺伝子を基に、以下の方法にて組換えタンパク質を作製した。PCRは、実施例D−1で得られたファージミド溶液より調製し配列解析に供したベクターを1μl、SalIおよびXhoI制限酵素切断配列を含む2種類のプライマー(配列番号50および51に記載)を各0.4μM、0.2mM dNTP、1.25UのPrimeSTAR HSポリメラーゼ(宝酒造社製)となるように各試薬と添付バッファーを加え全量を50μlとし、Thermal Cycler (BIO RAD社製)を用いて、98℃―10秒、55℃―5秒、72℃―6分のサイクルを30回繰り返すことにより行った。なお、上記2種類のプライマーにより、配列番号45のアミノ酸配列中の237番〜1023番アミノ酸の領域(配列番号54)をコードする領域が得られる。PCR後、増幅されたDNAを1%アガロースゲルにて電気泳動し、QIAquick Gel Extraction Kit (QIAGEN社製)を用いて約2.4kbpのDNA断片を精製した。
【0285】
同様にして、配列番号56および57に記載した2種類のプライマーを用いたPCRを行い、配列番号45のアミノ酸配列全長をコードする領域を得た。PCR後、増幅されたDNAを1%アガロースゲルにて電気泳動し、QIAquick Gel Extraction Kit (QIAGEN社製)を用いて約6.0kbpのDNA断片を精製した。
【0286】
精製した各DNA断片をクローニングベクターpCR-Blunt(invitrogen社製)にライゲーションした。これを大腸菌に形質転換後プラスミドを回収し、増幅された遺伝子断片が目的配列と一致することをシークエンスで確認した。目的配列と一致したプラスミドをSalIおよびXhoI制限酵素で処理し、QIAquick Gel Extraction Kitで精製後、目的遺伝子配列を、SalI、XhoI制限酵素で処理した大腸菌用発現ベクターpET30b(Novagen社製)に挿入した。このベクターの使用によりHisタグ融合型の組換えタンパク質が産生できる。このプラスミドを発現用大腸菌BL21(DE3)に形質転換し、1mM IPTGによる発現誘導を行うことで目的タンパク質を大腸菌内で発現させた。
【0287】
また、配列番号46の遺伝子を基に、以下の方法にてヒト相同遺伝子の組換えタンパク質を作製した。PCRは、実施例D−1で作製した各種組織・細胞cDNAよりRT-PCR法による発現が確認できたcDNAを1μl、NdeIおよびKpnI制限酵素切断配列を含む2種類のプライマー(配列番号52および53に記載)を各0.4μM、0.2mM dNTP、1.25UのPrimeSTAR HSポリメラーゼ(宝酒造社製)となるように各試薬と添付バッファーを加え全量を50μlとし、Thermal Cycler (BIO RAD社製)を用いて、98℃―10秒、55℃―5秒、72℃―6分のサイクルを30回繰り返すことにより行った。なお、上記2種類のプライマーにより、配列番号47のアミノ酸配列中の236番〜1023番アミノ酸の領域(配列番号55)をコードする領域が得られる。PCR後、増幅されたDNAを1%アガロースゲルにて電気泳動し、QIAquick Gel Extraction Kit (QIAGEN社製)を用いて約2.4kbpのDNA断片を精製した。
【0288】
同様にして、配列番号58および59に記載した2種類のプライマーを用いたPCRを行い、配列番号47のアミノ酸配列全長をコードする領域を得た。PCR後、増幅されたDNAを1%アガロースゲルにて電気泳動し、QIAquick Gel Extraction Kit (QIAGEN社製)を用いて約6.0kbpのDNA断片を精製した。
【0289】
精製した各DNA断片をクローニングベクターpCR-Blunt(invitrogen社製)にライゲーションした。これを大腸菌に形質転換後プラスミドを回収し、増幅された遺伝子断片が目的配列と一致することをシークエンスで確認した。目的配列と一致したプラスミドをNdeIおよびKpnI制限酵素で処理し、QIAquick Gel Extraction Kitで精製後、目的遺伝子配列を、NdeI、KpnI制限酵素で処理した大腸菌用発現ベクターpET30b(Novagen社製)に挿入した。このベクターの使用によりHisタグ融合型の組換えタンパク質が産生できる。このプラスミドを発現用大腸菌BL21(DE3)に形質転換し、1mM IPTGによる発現誘導を行うことで目的タンパク質を大腸菌内で発現させた。
【0290】
(2)組換えタンパク質の精製
上記で得られた、配列番号44の一部および配列番号46の一部を発現するそれぞれの組換え大腸菌をカナマイシン(終濃度30μg/ml)含有LB培地にて600nmでの吸光度が0.7付近になるまで37℃で培養後、IPTG終濃度が1 mMとなるよう添加し、30℃で20時間培養した。その後4800rpmで10分間遠心し集菌した。この菌体ペレットをリン酸緩衝化生理食塩水に懸濁し、さらに4800rpmで10分間遠心し菌体の洗浄を行った。
【0291】
この菌体をリン酸緩衝化生理食塩水に懸濁し、氷上にて超音波破砕を行った。大腸菌超音波破砕液を7000rpmで15分間遠心分離し、得られた上清を可溶性画分、沈殿物を不溶性画分とした。
【0292】
不溶性画分を4%Triton X-100溶液にて懸濁し7000rpmで10分間遠心した。本操作を2回繰り返し、脱プロテアーゼ操作を行った。その後、残渣をリン酸緩衝化生理食塩水に懸濁し、脱界面活性剤操作を行った。
【0293】
この残渣を6Mグアニジン塩酸塩(シグマアルドリッチジャパン社製)含有20mMリン酸緩衝液(pH8.0)に懸濁し、4℃で15時間静置しタンパク質を変性させた。この変性操作後、7000rpmで20分間遠心して得られた可溶性画分を、定法に従って調整したニッケルキレートカラム(担体 Chelateing Sepharose(商標) Fast Flow(GE Health Care社)、カラム容量5mL、平衡化緩衝液 6Mグアニジン塩酸塩含有20mMリン酸緩衝液(pH8.0))に添加した。未吸着画分をカラム容量の10倍量の6Mグアニジン塩酸塩含有20mMリン酸緩衝液(pH8.0)と10mMイミダゾール含有20mMリン酸緩衝液(pH8.0)にて洗浄操作を行った後、直ちに、4段階に分けた50mM-500mMイミダゾール段階的濃度勾配にて溶出した。各溶出画分はカラム容量の5倍量採取した。目的タンパク質の溶出については定法に従って行ったクマシー染色によって確認し、この結果より溶出画分を濃縮し診断用の固相化材料とした。
【0294】
同様にして、実施例D−2(1)で得られた、配列番号45の全長および配列番号47の全長を発現するそれぞれの組換え大腸菌を培養し、目的タンパク質の精製を行い、診断用の固相化材料を得た。
【0295】
実施例D−3:イヌTRIP11由来ポリペプチドを用いた癌診断
(1)イヌの癌診断
悪性または良性腫瘍の確認された患犬486頭と健常犬6頭の血液を採取し、血清を分離した。実施例D−2で作製したイヌTRIP11の部分ポリペプチド(配列番号45のアミノ酸配列中:237番〜1023番、配列番号54)抗イヌIgG抗体を用いてELISA法にて該ポリペプチドに特異的に反応する血清中のIgG抗体価を測定した。
【0296】
作製したポリペプチドの固相化は、リン酸緩衝化生理食塩水にて100μg/mLに希釈した組換えタンパク質溶液を96穴イモビライザーアミノプレート(ヌンク社製)に100μL/well添加し、4℃で一晩静置して行った。ブロッキングは、0.5 % BSA(bovine serum albumin(ウシ血清アルブミン)、シグマアルドリッチジャパン社製)含有50 mM 重炭酸ナトリウム緩衝溶液(pH 8.3)(以下ブロッキング溶液)を100μL/well加え、室温で1時間振とうした。希釈にブロッキング溶液を用いた1000倍希釈血清を100μL/well添加し、室温で3時間振とうして反応させた。0.05%Tween20(和光純薬工業社製)含有リン酸緩衝化生理食塩水(以下PBS-T)で3回洗浄し、ブロッキング溶液にて3000倍希釈したHRP修飾イヌIgG抗体(Goat anti Dog IgG-h+I HRP conjugated:BETHYL Laboratories社製)を100μL/well加え、室温で1時間振とうして反応させた。PBS-Tで3回洗浄し、HRP基質 TMB(1-Step Turbo TMB(テトラメチルベンジジン)、PIERCE社)を100μl/well添加し、室温で30分間酵素基質反応させた。その後、0.5M硫酸溶液(シグマアルドリッチジャパン社製)を100μl/well加えて反応停止後、マイクロプレートリーダーにて450nmの吸光度測定を行った。コントロールとしては、作製した組換えタンパク質を固相化しないもの、担癌犬血清を反応させないものを上記と同様に行い比較することとした。
【0297】
上記癌診断に用いた全486検体中311検体で、摘出された腫瘍組織を用いた病理診断の結果、悪性と確定診断がされている。
【0298】
具体的には、悪性黒色腫、悪性混合腫瘍、肝細胞癌、基底細胞癌、勅細胞腫様歯肉腫、口腔内腫瘤、肛門周囲腺癌、肛門嚢腫瘤、肛門嚢アポクリン腺癌、セルトリ細胞腫、膣前庭癌、皮脂腺癌、皮脂腺上皮腫、脂腺腺腫、汗腺癌、鼻腔内腺癌、鼻腺癌、甲状腺癌、大腸癌、気管支腺癌、腺癌、腺管癌、乳腺癌、複合型乳腺癌、乳腺悪性混合腫瘍、乳管内乳頭状腺癌、線維肉腫、血管周皮腫、骨肉腫、軟骨肉腫、軟部組織肉腫、組織球肉腫、粘液肉腫、未分化肉腫、肺癌、肥満細胞腫、皮膚平滑筋腫、腹腔内平滑筋腫、平滑筋腫、扁平上皮癌、慢性型リンパ球性白血病、リンパ腫、消化管型リンパ腫、消化器型リンパ腫、小〜中細胞型リンパ腫、副腎髄質腫瘍、顆粒膜細胞腫、褐色細胞腫、膀胱癌(移行上皮癌)、化膿性炎症、腹腔内肝臓腫瘍、肝臓癌、形質細胞腫、悪性血管外膜細胞腫、血管肉腫、肛門嚢腺癌、口腔癌、転移性悪性黒色腫、メラニン欠乏性悪性黒色腫、皮膚悪性黒色腫、悪性筋上皮腫、悪性精巣上皮腫、精細胞腫(セミノーマ)、大腸腺癌、胃腺癌、低グレード皮脂腺癌、耳垢腺癌、アポクリン腺癌、低分化型アポクリン汗腺癌、悪性線維性組織球腫、多発性骨髄腫、間葉系悪性腫瘍、脂肪肉腫、骨肉腫、起原不明の肉腫、軟部肉腫(紡錘形細胞腫瘍)、低分化肉腫、滑膜肉腫、血管肉腫、転移性悪性上皮腫瘍、管状乳腺腺癌、乳腺導管癌、炎症性乳癌、胚細胞腫、白血病、浸潤性毛包上皮腫、中細胞型リンパ腫、多中心型リンパ腫、骨肉腫(乳腺)、肥満細胞腫(Patnaik II型)、肥満細胞腫(Grade II)、平滑筋肉腫などの癌診断を受けている検体である。
【0299】
これら担癌犬生体由来の血清は、図15に示したように有意に高い組換えタンパク質に対する抗体価を示した。本診断法による悪性判断を健常犬平均値の2倍以上とした場合、78検体、25.1%で悪性と診断できることがわかった。この78検体の癌の種類は以下のとおりである。なお、検体によっては複数種類の癌を罹患しているものもあるが、以下に示す数値は癌の種類ごとの累計値である。
悪性黒色腫4例、リンパ腫5例、化膿性炎症1例、顆粒膜細胞腫1例、肝細胞癌2例、悪性精巣腫瘍2例、口腔内腫瘤3例、肛門周囲腺腫5例、骨肉腫2例、腺管癌6例、乳腺癌16例、複合型乳腺癌8例、肺癌1例、皮脂腺癌2例、肥満細胞腫6例、平滑筋肉腫2例、扁平上皮癌4例、悪性混合腫瘍1例、転移性悪性黒色腫1例、乳腺導管癌1例、アポクリン腺癌1例、胃腺癌1例、多中心型リンパ腫1例、精細胞腫(セミノーマ)1例、形質細胞腫1例
【0300】
さらに、末期癌患犬より採取した胸水、腹水を用いて、同様の診断を行った結果、血清を用いた本診断法による結果と同様の値を検出することができ、癌と診断することができた。
【0301】
また、本診断法を用いることにより、さらに目に見えない部分の癌診断、進行度診断、悪性度診断、術後の経過診断、再発診断、転移診断などのような診断が可能であることがわかった。以下に図4に示した詳細診断の具体例について数例をあげる。
【0302】
(2)−1 目に見えない腫瘍の癌診断
患犬1(フラットコーテットレトリバー)は、2007年6月7日時点で腫瘤が確認されていなかったが、その20日ほど後の2007年6月24日に左上顎犬歯の付け根の歯肉に有茎状の直径2mmの腫瘤が発見された患犬である。発見された日に有茎部を結糸し、切除を行っている。肉眼で腫瘤を確認できる以前から450nmでの吸光度は0.15と、有意に高い値が確認されており、腫瘍発見時0.14と比較しても大きく変わらなかった。この結果から本手法を用いることにより、腹腔内など目に見えない部分の癌診断でも可能なことがわかった。
【0303】
また、腫瘍が肉眼で確認できる以前から値の上昇が確認され、腫瘍発生の前兆を示していたもの言える。よって、定期健診などの健康診断にも有用であることがわかる。
【0304】
この患犬1は腫瘤切除2週間後に再び血清診断を行ったところ、450nmでの吸光度は0と検出されなかった。ゆえに、抗体価上昇の原因となっていた癌抗原の発現している腫瘍が完全切除されていることも確認された。((2)-4 術後の経過診断)
【0305】
(2)−2 癌の進行度診断
癌の進行度は腫瘍の大きさや深さ、周辺組織にどれほど影響を及ぼしているか、転移をしているかなどによって判断される。転移すなわち癌が進行すると以前より高い値が検出されることがわかった。
【0306】
(2)−3 癌の悪性度診断
基底細胞腫には悪性型と良性型とがあり、近年、新WHOでは悪性型を基底細胞癌、良性型を毛芽腫と分類するという傾向にあるとのことである。
【0307】
基底細胞癌(悪性)と診断された患犬2(ビーグル)は、手術時の血清診断の結果、450nmでの吸光度は0.15であった。一方、毛芽腫(良性)と診断された患犬3(雑種)は、手術時の血清診断の結果、450nmでの吸光度は0と全く検出されなかった。よって、同じ基底細胞腫でも、悪性型の基底細胞癌と良性型の毛芽腫を診断できることがわかった。
【0308】
次に、乳腺腫瘍について例を挙げる。乳腺腫瘍には、乳腺癌や乳腺悪性混合腫瘍といった悪性腫瘍と、悪性所見を示さない良性乳腺腫瘍がある。患犬4(ヨーキー)は、2006年5月17日に乳腺悪性混合腫瘍と乳腺癌にて、摘出手術を受けた患犬である。一般的に、乳腺の混合腫瘍は悪性であっても周囲への浸潤性が乏しいために完全切除されやすく、切除後の経過が良好なことが多い腫瘍である。しかしながら摘出された組織を用いた病理診断では、患犬4の標本の一部成分に、浸潤性が見られており、悪性度の高い腫瘍であると診断されていた。また、乳腺癌は通常周囲への浸潤性が強く再発や転移が起こりやすい腫瘍である。患犬4の標本上では腫瘍細胞に浸潤性が見られなかったが、部分材料のため他の領域に悪性度の高い成分が増殖している可能性も指摘されていた。そのため、患犬4は悪性度の高い乳癌であることが病理診断結果から明らかである。この手術時に採血した血清診断の結果、450nmでの吸光度は0.20であった。一方、患犬5(ヨークシャテリア)は、2007年1月28日に、乳腺腫瘍の摘出手術を受けた患犬である。このときの摘出組織を用いた病理診断では、細胞異型性は軽度であり、悪性所見の見当たらない良性乳腺腫と診断された。この手術時に採血した血清診断の結果、450nmでの吸光度は0であった。以上の2検体の結果からも悪性度の高い腫瘍は、悪性度の低い、すなわち良性の腫瘍に比べ、値が大きいことがわかった。
【0309】
(2)−4 術後の経過診断
患犬6(シーズー)は、口腔内腫瘍で来院し2007年3月22日に摘出手術を行っている。この際行った血清診断の結果、450nmでの吸光度は0.12であった。また、摘出した組織を用いた病理診断では、悪性の勅細胞腫様歯肉腫と診断されている。この腫瘍は、遠隔転移は稀であるが切除が不十分だと再発しやすいという特徴がある。そのため手術により腫瘍の完全切除ができたか否かということは、重要である。2007年5月18日の経過観察の際には、450nmでの吸光度は0.02と抗体価の低下が確認された。2007年8月までに再発は確認されていない。よって患犬6では、完全に腫瘍を切除できたために血清診断結果は手術時よりも低下したといえる。
【0310】
患犬7(ヨーキー)は、手術時の2006年5月17日に採血した血清診断の結果、450nmでの吸光度は0.20であった。2006年12月16日に経過観察で再来院した際、再び血清診断を行った結果、450nmでの吸光度は0であった。2007年8月までに転移や再発は確認されていない。よって患犬7では、完全に腫瘍を切除できたために血清診断結果は手術時よりも低下したといえる。
【0311】
(2)−5 再発診断
患犬8(ハスキー)は、2007年5月8日に乳腺癌の摘出手術を行っている。この際行った血清診断の結果、450nmでの吸光度は0.04であった。摘出した組織を用いた病理診断では、異型性の強い上皮系細胞が主に腺管構造を形成、増殖しており乳腺原発の腺癌と診断された。そのとき既にリンパ管内に多数の癌細胞が入っているのが確認されており、リンパ節や遠隔部への転移、再発のリスクが高いということであった。手術から約一ヶ月半後の2007年6月28日に同部位に再発が確認された。このときの血清診断の結果は0.07と値の上昇が確認された。患犬8では、腫瘍が切除しきれていなかったかまたは、再発したために、診断結果が5月初旬よりも6月下旬のほうが大きく検出されたとわかった。
【0312】
(2)−6 転移診断
患犬9(スコティッシュテリア)は、2003年2月 乳腺腫瘍、2003年8月 口腔内悪性黒色腫、2005年1月 口唇に悪性黒色腫、2005年4月13日 口腔内黒色腫と転移・再発を繰り返し、これらすべて手術で切除済みの患犬である。2005年4月の口腔内黒色腫の再発の後に、経過観察で再来院した2006年12月17日の血清診断の結果は、450nmでの吸光度が0であった。その半年後の2007年6月20日には頚部リンパ、膝きょうリンパが肥大して再来院している。リンパ腫であれば全身のリンパが腫れるが、患犬9については2箇所のみであったため、おそらく転移によるリンパ腫である可能性が高いとの臨床診断であった。本手法による診断によっても、450nmでの吸光度は0.27と大きく上昇しており、以前存在した腫瘍の転移であることがわかった。
【0313】
患犬10(柴犬)は、2006年3月11日に右口唇部口腔悪性黒色腫にて腫瘍の摘出を行った患犬である。2006年6月10日から同年9月26日まで抗がん剤(シクロホスファシド)の治療歴があり、2006年5月23日から有機ゲルマニウム主成分のビレモS投薬継続中である。この腫瘍の転移と考えられる2007年3月20日の腫瘍摘出時に行った血清診断の結果は、450nmでの吸光度がほぼ0とほとんど検出されなかった。このときの摘出した組織を用いた病理診断では、転移性悪性黒色腫と診断されている。しかし、転移した黒色種の手術3ヵ月後の2007年6月27日に再び転移を起こしている。2007年3月20日は右頚部に腫瘍が発生したが、2007年6月27日はその反対側に発生し、腫瘍の形状も前回と類似した黒色の塊を形成しているとのことである。大きさは3.1×3.2×0.8cm大であり、臨床診断でも転移とのことである。このとき行った血清診断の結果は、450nmでの吸光度は、0.02と上昇しているのが確認され、以前存在した腫瘍の転移であることがわかった。
【0314】
(2)−7 治療モニタリング
患犬12(ミニチュアダックスフンド)は、2007年4月19日に腫瘍摘出を行った患犬である。摘出した腫瘍を用いた病理診断結果は、浸潤性、転移性に発生している可能性が高い中等度の悪性度である複合型乳腺癌とのことであった。このときの血清診断の結果、450nmでの吸光度は0.03であった。摘出手術から約1年後の2008年6月3日、血清診断の結果、450nmでの吸光度は0と全く検出されなかった。このとき肉眼では癌の再発は確認されなかったが、再発防止のためそれから2ヶ月間、週に一度の間隔にて抗癌剤投与(インターキャット)を行い、再発がない状態を維持した。抗癌剤投与開始2週間後、4週間後、6週間後に血清診断を行った結果、450nmでの吸光度はいずれも0と全く検出されなかった。患犬12の結果から、腫瘍が完全に取りきれていれば担癌状態より値が低下し、抗癌剤治療においても癌の再発が抑制できていれば値の上昇が見られず、治療の経時変化を追えることがわかった。また、患犬8で示したように再発診断も可能であることから、治療モニタリングについても可能であることがわかった。
【0315】
(2)−8 再発時の悪性診断
患犬13(ゴールデンレトリーバー)は2005年5月1日に腫瘍摘出を行った患犬である。摘出した腫瘍を用いた病理診断結果は、乳管上皮由来の悪性腫瘍性病変、すなわち悪性乳腺管癌および乳管内を進展して増生する悪性乳頭状癌とのことであった。その約3年後の2008年6月28日に再び腫瘍が発見されたため、摘出手術を行った。その摘出した腫瘍を用いた病理組織診断結果は、前回の術創と見られる皮下の縫合糸の周囲に好中球やマクロファージ、形質細胞などの顕著な炎症細胞浸潤が認められるのみで腫瘍性病変は無と診断された。このときの血清診断の結果、450nmでの吸光度は0と全く検出されなかった。患犬8、13の結果から、再発時に悪性の場合には血清診断値は上昇するか維持されており、良性の場合には検出されないことがわかった。
【0316】
(3)ネコの診断
次に担癌猫および健常猫の診断を行った。上記で用いたイヌTRIP11の部分ポリペプチドと抗ネコIgG抗体を用いて、上記と同様にして、該ポリペプチドに特異的に反応するネコ血清中のIgG抗体価を測定した。2次抗体は、HRP修飾抗ネコIgG抗体(PEROXIDASE-CONJUGATED GOAT IgG FRACTION TO CAT IgG (WHOLE MOLECULE): CAPPEL RESERCH REAGENTS社製)をブロッキング溶液にて8000倍希釈して用いた。
【0317】
患猫1(チンチラ)は2005年8月17日に乳腺癌にて腫瘍の摘出手術を受けた患猫である。患猫1の450nmでの吸光度は、0.05であった。また、2006年10月17日に腺管癌にて摘出手術を受けた、患猫2(ヒマラヤン)においても450nmでの吸光度は、0.34であった。一方、健常猫では全く検出されなかった。
【0318】
従って犬と同様、猫の場合も、癌を患った検体では値が検出され、一方健常の検体ではまったく検出されなかったため、猫についても犬と同様に、本手法にて癌診断が可能であることがわかった。
【0319】
(4)健常人の診断
上記で用いたイヌTRIP11の部分ポリペプチドと抗ヒトIgG抗体を用いて、上記と同様にして、該ポリペプチドに特異的に反応する健常人血清中のIgG抗体価を測定した。2次抗体は、HRP修飾抗ヒトIgG抗体(HRP-Goat Anti-Human IgG(H+L) Conjugate: Zymed Laboratories社製)をブロッキング溶液にて10000倍希釈して用いた。ポジティブコントロールとしてリン酸緩衝化生理食塩水にて50μg/mlに調整した卵白アルブミン抗原を固相化したものを用いた。その結果、450nmでの吸光度は卵白アルブミン抗原には健常ヒト1で0.25であった。一方、この組換えタンパク質には0と全く検出されなかった。また、健常ヒト2においても、卵白アルブミン抗原には450nmでの吸光度は0.18であり、一方、この組換えタンパク質には0と全く検出されなかった。
【0320】
また、実施例D−2で作製した配列番号45に記載のイヌTRIP11の全長ポリペプチドを用いて、上記と同様に診断を行ったところ、ヒト、イヌ、ネコいずれにおいても同様の診断が可能であることがわかった。
【0321】
実施例D−4:ヒトTRIP11由来ポリペプチドを用いた癌診断
実施例D−2で作製したヒトTRIP11の部分ポリペプチド(配列番号47のアミノ酸配列中:236番〜1023番、配列番号55)を用いて、実施例D−3と同様にして、該ポリペプチドに反応する、ヒト、イヌおよびネコ血清中のIgG抗体価を測定した。
【0322】
健常人血清を用いた診断結果では、実施例D−3(4)と同様に卵白アルブミン抗原をポジティブコントロールとして用いた場合に、卵白アルブミンを固相化した場合に値は検出され、ヒトTRIP11の部分ポリペプチドを固相化した場合にはほとんど検出されなかった。
【0323】
また、健常犬・猫においても、該ポリペプチドを固相化した場合には、450nmでの吸光度はほとんど検出されなかった。
【0324】
一方、患犬11(シーズー)は、2007年6月21日に乳腺癌の摘出手術を受けた患犬である。摘出した組織を用いた病理診断では、強い異型性と浸潤性を有する乳腺組織が大小の塊状に腺様増殖しており、悪性と診断されている。この患犬11の450nmでの吸光度は、0.19であった。その他病理診断で悪性と診断されている310検体の血清を用いて悪性診断を行った。悪性判断を健常犬平均値の2倍以上とした場合、74検体、23.8%で悪性と診断できることがわかった。患猫3(雑種)は、2007年4月3日に乳腺癌の摘出手術を受けているが、この患猫においても、450nmでの吸光度は、0.06であった。
【0325】
以上のことから、ヒトTRIP11由来ポリペプチドを用いても、ヒト、イヌ、ネコいずれにおいても同様の診断が可能であることがわかった。
【0326】
さらに、イヌ組換えタンパクと同様にヒト組換えタンパクを用いて、末期癌患犬より採取した胸水、腹水を診断した結果、血清を用いた結果と同様の値を検出することができ、癌と診断することができた。
【0327】
また、実施例D−2で作製した配列番号47に記載のヒトTRIP11の全長ポリペプチドを用いて、上記と同様に診断を行ったところ、ヒト、イヌ、ネコいずれにおいても同様の診断が可能であることがわかった。
【0328】
実施例D−5:抗原ポリペプチドを測定することによる癌診断(1)
実施例D−2で作製した配列番号54に記載のイヌ組換えタンパクをマウス、ウサギに免疫し、該抗原特異的抗体を作製、取得した。このポリクローナル抗体を用いて、サンドイッチELISA法により、担癌生体血清中に含まれる該抗原ポリペプチド自体の検出を行った。作製した該タンパク特異的ポリクローナル抗体に特異的に反応する、血清中の該タンパク量について抗マウスIgG抗体を用いてサンドイッチELISA法にて測定した。
【0329】
1次抗体の固相化は、リン酸緩衝化生理食塩水にて20倍希釈したウサギ抗血清を96穴イモビライザーアミノプレート(ヌンク社製)に100μL/well添加し、室温で2時間振とうして行った。ブロッキングは、0.5 % BSA(bovine serum albumin(ウシ血清アルブミン)、シグマアルドリッチジャパン社製)含有50 mM 重炭酸ナトリウム緩衝溶液(pH 8.3)(以下ブロッキング溶液)を100μL/well加え、室温で1時間振とうした。その後、ブロッキング溶液を用いて希釈した担癌生体由来血清を100μL/well添加し、室温で3時間振とうして反応させた。このとき希釈倍率は10-1000倍の10倍希釈系列で調整した。0.05%Tween20(和光純薬工業社製)含有リン酸緩衝化生理食塩水(以下PBS-T)で3回洗浄し、2次抗体は、ブロッキング溶液にて200倍希釈したマウス抗血清を100μL/well加え、室温で1時間振とうして反応させた。PBS-Tで3回洗浄し、3次抗体は、ブロッキング溶液にて2000倍希釈したHRP修飾マウスIgG抗体(Stabilized Goat Anti Mouse HRP conjugated : PIERCE社製)を100μL/well加え、室温で1時間振とうして反応させた。PBS-Tで3回洗浄し、HRP基質 TMB(1-Step Turbo TMB(テトラメチルベンジジン)、PIERCE社製)を100μl/well添加し、室温で30分間酵素基質反応させた。その後、0.5M硫酸溶液(シグマアルドリッチジャパン社製)を100μl/well加えて反応停止後、マイクロプレートリーダーにて450nmの吸光度測定を行った。コントロールとしては、ウサギ抗血清を固相化しないもの、担癌生体由来血清を反応させないものを上記と同様に行い比較することとした。
【0330】
その結果、皮膚平滑筋肉腫、乳癌、悪性黒色腫などの担癌犬、担癌猫ではポリペプチドの値が検出され、健常犬、健常猫及び健常人では検出されなかった。従って、イヌ由来組換えポリペプチドを免疫原として調製した抗体を用いて抗原ポリペプチドを検出するこの手法においても、癌を診断することができた。
【0331】
また、実施例D−2で作製した配列番号45に記載のイヌTRIP11の全長ポリペプチドを免疫原として調製した抗体を用いて、上記と同様の手法で診断を行った。
【0332】
その結果、イヌ、ネコいずれにおいても、イヌTRIP11の全長ポリペプチドを免疫原として調製した抗体を用いて抗原ポリペプチドを検出するこの手法において、同様に癌を診断することができた。
【0333】
実施例D−6:抗原ポリペプチドを測定することによる癌診断(2)
実施例D−2で作製した配列番号55に記載のヒト組換えタンパクをマウス、ウサギに免疫し、該抗原特異的抗体を作製、取得した。実施例D−5と同様に、このポリクローナル抗体を用いたサンドイッチELISA法により、担癌生体血清中に含まれる該抗原ポリペプチド自体の検出を行った。
【0334】
その結果、皮膚平滑筋肉腫、乳癌、悪性黒色腫などの担癌犬、担癌猫ではポリペプチドの値が検出され、健常犬、健常猫及び健常人では検出されなかった。従って、ヒト由来組換えポリペプチドを免疫原として調製した抗体を用いて抗原ポリペプチドを検出するこの手法においても、癌を診断することができた。
【0335】
また、実施例D−2で作製した配列番号47に記載のヒトTRIP11の全長ポリペプチドを免疫原として調製した抗体を用いて、上記と同様に診断を行った。
【0336】
その結果、イヌ、ネコいずれにおいても、ヒトTRIP11の全長ポリペプチドを免疫原として調製した抗体を用いて抗原ポリペプチドを検出するこの手法において、同様に癌を診断することができた。
【0337】
実施例E−1:4種類の抗原ポリペプチドを用いた組み合わせ癌診断(1)
(1)イヌの癌診断
実施例A−2で作製したイヌ組換えタンパク(配列番号2)、実施例B−2で作製したイヌカルメジンタンパク(配列番号16)、実施例C−2で作製したイヌCEPの全長(配列番号26または42)または部分ポリペプチド(配列番号26のアミノ酸配列中:1514番〜2339番、配列番号35)、実施例D−2で作製したイヌTRIP11の全長(配列番号45)または部分ポリペプチド(配列番号45のアミノ酸配列中:237番〜1023番、配列番号54)と抗イヌIgG抗体を用いて、上記と同様にして、該タンパクまたは該ポリペプチドに特異的に反応する血清中のIgG抗体価を測定した。
【0338】
本診断法による悪性判断を健常犬平均値の2倍以上とした場合、272検体、87.5%で悪性と診断できることがわかった。なお、4種類のタンパクまたはポリペプチドのうちどれか1種類について悪性判断がされた場合に対象生体を悪性腫瘍と診断した(以下同様)。この272検体の癌の種類は以下のとおりである。なお、検体によっては複数種類の癌を罹患しているものもあるが、以下に示す数値は癌の種類ごとの累計値である。
悪性黒色腫10例、リンパ腫13例、褐色細胞腫1例、化膿性炎症1例、顆粒膜細胞腫1例、肝細胞癌5例、血管腫1例、悪性精巣腫瘍8例、口腔内腫瘤4例、肛門周囲腺癌14例、骨肉腫5例、線維肉腫9例、腺管癌10例、軟骨肉腫2例、乳腺癌56例、複合型乳腺癌26例、肺癌2例、皮脂腺癌2例、鼻腺癌2例、肥満細胞腫37例、副腎髄質腫瘍1例、平滑筋肉腫2例、扁平上皮癌11例、慢性リンパ球性白血病1例、未分化肉腫2例、悪性混合腫瘍2例、左肺後葉腫瘍1例、右腋下部腫瘍1例、右前肢肘部腫瘍1例、膀胱癌(移行上皮癌)1例、転移性悪性黒色腫3例、メラニン欠乏性悪性黒色腫1例、大腸腺癌1例、形質細胞腫1例、組織球肉腫1例、脂肪肉腫1例、低分化肉腫1例、滑膜肉腫1例、悪性血管外膜細胞腫1例、アポクリン汗腺癌3例、気管支腺癌1例、胚細胞腫1例、悪性線維性組織球腫1例、転移性悪性上皮腫瘍1例、乳腺導管癌1例、血管肉腫1例、管状乳腺腺癌1例、浸潤性毛包上皮腫1例、前立腺癌1例、軟部肉腫(紡錘形細胞腫瘍)1例、耳垢腺癌1例、多中心型リンパ腫2例、浸潤性毛包上皮腫1例、肛門嚢腺癌1例、アポクリン腺癌1例、胃腺癌1例、精細胞腫(セミノーマ)1例、基底細胞癌1例、血管周皮腫4例、粘液肉腫1例、皮脂腺上皮腫1例、脾臓腫瘍1例
【0339】
(2)ネコの癌診断
次に担癌猫および健常猫の診断を行った。上記4種類のイヌ抗原ポリペプチドと抗ネコIgG抗体を用いて、上記と同様にして、該ポリペプチドに特異的に反応するネコ血清中のIgG抗体価を測定した。2次抗体は、HRP修飾抗ネコIgG抗体(PEROXIDASE-CONJUGATED GOAT IgG FRACTION TO CAT IgG (WHOLE MOLECULE): CAPPEL RESERCH REAGENTS社製)をブロッキング溶液にて8000倍希釈して用いた。
【0340】
癌診断に用いた全17検体中11検体で、摘出された腫瘍組織を用いた病理診断の結果、悪性と確定診断がされている。本診断法による悪性判断を健常猫平均値の2倍以上とした場合、9検体、81.8%で悪性と診断できることがわかった。
【0341】
実施例E−2:4種類の抗原ポリペプチドを用いた組み合わせ癌診断(2)
(1)イヌの癌診断
実施例A−2で作製したヒト組換えタンパク(配列番号4)、実施例B−2で作製したヒトカルメジンタンパク(配列番号18)、実施例C−2で作製したヒトCEPの全長(配列番号28)または部分ポリペプチド(配列番号28のアミノ酸配列中:1513番〜2325番、配列番号36)、実施例D−2で作製したヒトTRIP11の全長(配列番号47)または部分ポリペプチド(配列番号47のアミノ酸配列中:236番〜1023番、配列番号55)と抗イヌIgG抗体を用いて、上記と同様にして、該タンパクまたは該ポリペプチドに特異的に反応する血清中のIgG抗体価を測定した。
【0342】
本診断法による悪性判断を健常犬平均値の2倍以上とした場合、268検体、86.2%で悪性と診断できることがわかった。
【0343】
(2)ネコの癌診断
次に担癌猫および健常猫の診断を行った。上記4種類のヒト抗原ポリペプチドと抗ネコIgG抗体を用いて、上記と同様にして、該ポリペプチドに特異的に反応するネコ血清中のIgG抗体価を測定した。2次抗体は、HRP修飾抗ネコIgG抗体(PEROXIDASE-CONJUGATED GOAT IgG FRACTION TO CAT IgG (WHOLE MOLECULE): CAPPEL RESERCH REAGENTS社製)をブロッキング溶液にて8000倍希釈して用いた。
【0344】
癌診断に用いた全17検体中11検体で、摘出された腫瘍組織を用いた病理診断の結果、悪性と確定診断がされている。本診断法による悪性判断を健常猫平均値の2倍以上とした場合、7検体、63.6%で悪性と診断できることがわかった。
【0345】
実施例E−3:4種類の抗原ポリペプチドを測定することによる組み合わせ癌診断(1)
実施例A−2で作製したイヌ組換えタンパク(配列番号2)、実施例B−2で作製したイヌカルメジンタンパク(配列番号16)、実施例C−2で作製したイヌCEPの全長(配列番号26または42)または部分ポリペプチド(配列番号26のアミノ酸配列中:1514番〜2339番、配列番号35)、実施例D−2で作製したイヌTRIP11の全長(配列番号45)または部分ポリペプチド(配列番号45のアミノ酸配列中:237番〜1023番、配列番号54)をマウス、ウサギに免疫し、該抗原特異的抗体を作製、取得した。実施例A,B,C,D−5と同様に、このポリクローナル抗体を用いたサンドイッチELISA法により、担癌生体血清中に含まれる該抗原ポリペプチド自体の検出を行った。
【0346】
その結果、イヌ抗原ポリペプチドを免疫原として調製した抗体を用いて抗原ポリペプチドを検出するこの手法において、本診断法による悪性判断を健常犬平均値の2倍以上とした場合、252検体、81.0%で悪性と診断できることがわかった。ネコについても同様に、本診断法による悪性判断を健常猫平均値の2倍以上とした場合、8検体、72.7%で悪性と診断できることがわかった。
【0347】
実施例E−4:4種類の抗原ポリペプチドを測定することによる組み合わせ癌診断(2)
実施例A−2で作製したヒト組換えタンパク(配列番号4)、実施例B−2で作製したヒトカルメジンタンパク(配列番号18)、実施例C−2で作製したヒトCEPの全長(配列番号28)または部分ポリペプチド(配列番号28のアミノ酸配列中:1513番〜2325番、配列番号36)、実施例D−2で作製したヒトTRIP11の全長(配列番号47)または部分ポリペプチド(配列番号47のアミノ酸配列中:236番〜1023番、配列番号55)をマウス、ウサギに免疫し、該抗原特異的抗体を作製、取得した。実施例A,B,C,D−5と同様に、このポリクローナル抗体を用いたサンドイッチELISA法により、担癌生体血清中に含まれる該抗原ポリペプチド自体の検出を行った。
【0348】
その結果、ヒト抗原ポリペプチドを免疫原として調製した抗体を用いて抗原ポリペプチドを検出するこの手法において、本診断法による悪性判断を健常犬平均値の2倍以上とした場合、248検体、79.7%で悪性と診断できることがわかった。ネコについても同様に、本診断法による悪性判断を健常猫平均値の2倍以上とした場合、7検体、63.6%で悪性と診断できることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体から分離された試料に対して行なう方法であって、以下の(a)〜(d)の少なくともいずれか1つのポリペプチドの発現を測定することを含む、癌の検出方法。
(a) 配列番号2又は4に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドに対する抗体と抗原抗体反応により結合する反応性を有する、前記生体内で産生されるポリペプチド、
(b) カルメジン、
(c) 配列番号26、28又は42に示されるアミノ酸配列を有する中心体タンパク質に対する抗体と抗原抗体反応により結合する反応性を有するポリペプチド、
(d) 甲状腺ホルモン受容体相互作用因子11(thyroid hormone receptor interactor 11)。
【請求項2】
前記(a)のポリペプチドは、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド又は該ポリペプチドと95%以上の相同性を有するポリペプチドであり、前記(c)のポリペプチドは、配列番号26又は42に示されるアミノ酸配列を有する中心体タンパク質又は該中心体タンパク質と80%以上の相同性を有するポリペプチドである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記生体がイヌ、ヒト又はネコである請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記生体がイヌであり、測定すべき前記ポリペプチドは、配列番号2、16、26、42及び45のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドである請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記生体がイヌであり、測定すべき前記ポリペプチドは、配列番号2、16、26及び45のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドである請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記生体がヒトであり、測定すべき前記ポリペプチドは、配列番号4、18、28及び47のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドである請求項3記載の方法。
【請求項7】
前記ポリペプチドの発現の測定は、前記試料に含まれ得る、測定すべき前記ポリペプチドに対し前記生体内で誘導された抗体を免疫測定することにより行われる請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
以下の(e)〜(h)のいずれかのポリペプチドを抗原として用いた免疫測定により行なわれる請求項7記載の方法。
(e) 配列番号2又は4に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(f) 配列番号16又は18に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(g) 配列番号26に示されるアミノ酸配列中の連続する500個以上のアミノ酸から成るポリペプチドであって、1514番〜2339番アミノ酸の領域内の連続する500個以上のアミノ酸を含むポリペプチド、又は、配列番号28に示されるアミノ酸配列中の連続する500個以上のアミノ酸から成るポリペプチドであって、1513番〜2325番アミノ酸の領域内の連続する500個以上のアミノ酸を含むポリペプチド、
(h) 配列番号45に示されるアミノ酸配列中の連続する500個以上のアミノ酸から成るポリペプチドであって、237番〜1023番アミノ酸の領域内の連続する500個以上のアミノ酸を含むポリペプチド、又は、配列番号47に示されるアミノ酸配列中の連続する500個以上のアミノ酸から成るポリペプチドであって、236番〜1023番アミノ酸の領域内の連続する500個以上のアミノ酸を含むポリペプチド。
【請求項9】
前記(g)のポリペプチドが、配列番号26に示されるアミノ酸配列中の1514番〜2339番アミノ酸の領域を含み、1000個以下のアミノ酸から成るポリペプチド、又は、配列番号28に示されるアミノ酸配列中の1513番〜2325番アミノ酸の領域を含み、1000個以下のアミノ酸から成るポリペプチドであり、前記(h)のポリペプチドが、配列番号45に示されるアミノ酸配列中の237番〜1023番アミノ酸の領域を含み、1000個以下のアミノ酸から成るポリペプチド、又は、配列番号47に示されるアミノ酸配列中の236番〜1023番アミノ酸の領域を含み、1000個以下のアミノ酸から成るポリペプチドである請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記(g)のポリペプチドが、配列番号35又は36に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、前記(h)のポリペプチドが、配列番号54又は55に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドである請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記(a)〜(d)のいずれかのポリペプチドの発現の測定は、前記試料中に含まれ得る該ポリペプチドを免疫測定することにより行なわれる請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記試料が、血清、血漿、腹水又は胸水である請求項1ないし11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記(a)〜(d)のいずれかのポリペプチドの発現の測定は、前記試料中に含まれ得る、該ポリペプチドをコードするmRNAを測定することにより行われる請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記mRNAの塩基配列中の部分領域と特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドを用いて、前記試料中の前記mRNAの存在量を調べる、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記生体がイヌであり、前記ポリヌクレオチドは配列番号1、15、25、41及び44のいずれかに示される塩基配列中の部分領域と特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドである請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記生体がヒトであり、前記ポリヌクレオチドは配列番号3、17、27及び46のいずれかに示される塩基配列中の部分領域と特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドである請求項14記載の方法。
【請求項17】
前記ポリヌクレオチドがプライマー又はプローブである請求項14ないし16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記試料が組織又は細胞である請求項13ないし17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記癌が、脳腫瘍、頭、首、肺、子宮、または食道の扁平上皮癌、メラノーマ、肺または子宮の腺癌、腎癌、悪性混合腫瘍、肝細胞癌、基底細胞癌、勅細胞腫様歯肉腫、口腔内腫瘤、肛門周囲腺癌、肛門嚢腫瘤、肛門嚢アポクリン腺癌、セルトリ細胞腫、膣前庭癌、皮脂腺癌、皮脂腺上皮腫、脂腺腺腫、汗腺癌、鼻腔内腺癌、鼻腺癌、甲状腺癌、大腸癌、気管支腺癌、腺癌、腺管癌、乳腺癌、複合型乳腺癌、乳腺悪性混合腫瘍、乳管内乳頭状腺癌、線維肉腫、血管周皮腫、骨肉腫、軟骨肉腫、軟部組織肉腫、組織球肉腫、粘液肉腫、未分化肉腫、肺癌、肥満細胞腫、皮膚平滑筋腫、腹腔内平滑筋腫、平滑筋腫、慢性型リンパ球性白血病、リンパ腫、消化管型リンパ腫、消化器型リンパ腫、小〜中細胞型リンパ腫、副腎髄質腫瘍、顆粒膜細胞腫、褐色細胞腫、膀胱癌(移行上皮癌)、化膿性炎症、腹腔内肝臓腫瘍、肝臓癌、形質細胞腫、悪性血管外膜細胞腫、血管肉腫、肛門嚢腺癌、口腔癌、転移性悪性黒色腫、メラニン欠乏性悪性黒色腫、皮膚悪性黒色腫、悪性筋上皮腫、悪性精巣上皮腫、精細胞腫(セミノーマ)、大腸腺癌、胃腺癌、低グレード皮脂腺癌、耳垢腺癌、アポクリン腺癌、低分化型アポクリン汗腺癌、悪性線維性組織球腫、多発性骨髄腫、間葉系悪性腫瘍、脂肪肉腫、骨肉腫、起原不明の肉腫、軟部肉腫(紡錘形細胞腫瘍)、低分化肉腫、滑膜肉腫、血管肉腫、転移性悪性上皮腫瘍、管状乳腺腺癌、乳腺導管癌、炎症性乳癌、胚細胞腫、白血病、浸潤性毛包上皮腫、中細胞型リンパ腫、多中心型リンパ腫、骨肉腫(乳腺)、肥満細胞腫(PatnaikII型)、肥満細胞腫(GradeII)及び平滑筋肉腫からなる群より選ばれる少なくとも1種の癌である請求項1ないし18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記(a)〜(d)のいずれかのポリペプチドの発現量が多い場合に癌の悪性度が高くなることに基づき、癌の悪性度をさらに検出することを含む、請求項1ないし19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記(a)〜(d)のいずれかのポリペプチドの発現量が多い場合に癌の進行度が進んでいることに基づき、癌の進行度をさらに検出することを含む、請求項1ないし20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記(a)〜(d)のいずれかのポリペプチドの発現量が低下するか否かによって、癌の治療効果をさらにモニタリングすることを含む、請求項1ないし21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
以下の(i)〜(l)のいずれかのポリペプチドに対して生体内で誘導される抗体と抗原抗体反応するポリペプチドを含む癌検出試薬。
(i) 配列番号2又は4に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(j) カルメジン、
(k) 配列番号26、28又は42に示されるアミノ酸配列を有する中心体タンパク質、
(l) 甲状腺ホルモン受容体相互作用因子11。
【請求項24】
前記(k)のポリペプチドは、配列番号26に示されるアミノ酸配列中の連続する500個以上のアミノ酸から成るポリペプチドであって、1514番〜2339番アミノ酸の領域内の連続する500個以上のアミノ酸を含むポリペプチド、又は、配列番号28に示されるアミノ酸配列中の連続する500個以上のアミノ酸から成るポリペプチドであって、1513番〜2325番アミノ酸の領域内の連続する500個以上のアミノ酸を含むポリペプチドであり、前記(l)のポリペプチドは、配列番号45に示されるアミノ酸配列中の連続する500個以上のアミノ酸から成るポリペプチドであって、237番〜1023番アミノ酸の領域内の連続する500個以上のアミノ酸を含むポリペプチド、又は、配列番号47に示されるアミノ酸配列中の連続する500個以上のアミノ酸から成るポリペプチドであって、236番〜1023番アミノ酸の領域内の連続する500個以上のアミノ酸を含むポリペプチドである請求項23記載の試薬。
【請求項25】
前記(k)のポリペプチドは、配列番号26に示されるアミノ酸配列中の1514番〜2339番アミノ酸の領域を含み、1000個以下のアミノ酸から成るポリペプチド、又は、配列番号28に示されるアミノ酸配列中の1513番〜2325番アミノ酸の領域を含み、1000個以下のアミノ酸から成るポリペプチドであり、前記(l)のポリペプチドは、配列番号45に示されるアミノ酸配列中の237番〜1023番アミノ酸の領域を含み、1000個以下のアミノ酸から成るポリペプチド、又は、配列番号47に示されるアミノ酸配列中の236番〜1023番アミノ酸の領域を含み、1000個以下のアミノ酸から成るポリペプチドである請求項24記載の試薬。
【請求項26】
前記(k)のポリペプチドは、配列番号35又は36に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、前記(l)のポリペプチドは、配列番号54又は55に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドである請求項25記載の試薬。
【請求項27】
以下の(m)〜(p)のいずれかのポリペプチドと抗原抗体反応する抗体又はその抗原結合性断片を含む癌検出試薬。
(m) 配列番号2又は4に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドに対する抗体と抗原抗体反応により結合する反応性を有し生体内で産生されるポリペプチド、
(n) カルメジン、
(o) 配列番号26、28又は42に示されるアミノ酸配列を有する中心体タンパク質に対する抗体と抗原抗体反応により結合する反応性を有し生体内で産生されるポリペプチド、
(p) 甲状腺ホルモン受容体相互作用因子11。
【請求項28】
配列表の配列番号1、3、15、17、25、27、41、44及び46のいずれかに示される塩基配列中の部分領域と特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む癌検出試薬。
【請求項29】
前記ポリヌクレオチドは、配列表の配列番号1、3、15、17、25、27、41、44及び46のいずれかに示される塩基配列中の連続する18塩基以上から成る請求項28記載の試薬。
【請求項30】
前記ポリヌクレオチドは、プライマー又はプローブである請求項28又は29記載の試薬。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−101148(P2013−101148A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−23705(P2013−23705)
【出願日】平成25年2月8日(2013.2.8)
【分割の表示】特願2008−550574(P2008−550574)の分割
【原出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】