癌の治療およびモニタリングならびに化学療法薬に関するスクリーニングにおける血管内皮増殖因子受容体1+細胞の使用法
【課題】以前の腫瘍形成の部位から離れた部位での癌患者における腫瘍形成を阻害する方法、および転移を予防する方法の提供。
【解決手段】癌患者に対して、以前の腫瘍形成の部位から離れた部位での癌患者における腫瘍形成の阻害または転移の予防のいずれかのために有効な条件下で、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質を投与する方法。この目的に有用な候補化合物は、それらが血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞と結合するか否かに応じて、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞のレベルを以前のレベルと比較して、スクリーニングすることができる。
【解決手段】癌患者に対して、以前の腫瘍形成の部位から離れた部位での癌患者における腫瘍形成の阻害または転移の予防のいずれかのために有効な条件下で、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質を投与する方法。この目的に有用な候補化合物は、それらが血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞と結合するか否かに応じて、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞のレベルを以前のレベルと比較して、スクリーニングすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、癌の治療およびモニタリングならびに化学療法薬に関するスクリーニングにおける血管内皮増殖因子受容体1+細胞の使用法に向けられる。
【0002】
本出願は、2004年11月19日に提出された米国仮特許出願第60/629,662号、および2005年10月5日に提出された第60/723,770号の恩典を主張し、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0003】
本出願の主題は、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)の助成金第1 R01 CA098234-01号の下に、米国政府から支援を受けて得られた。米国政府は一定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
癌は米国では心発作に次いで二番目に多い死因である。この破壊的な結果をもたらす疾患の治療における新たな治療法の開発には重要な進展がみられる。この進展の多くは、正常細胞および癌細胞の両者における細胞増殖の理解が進んだことに起因する。
【0005】
正常細胞は、増殖因子受容体の、その各々のリガンドによる高度に制御された活性化の結果として増殖する。このような受容体の例には、増殖因子受容体チロシンキナーゼがある。
【0006】
癌細胞もまた、正常細胞におけるDNA変異または腫瘍抑制遺伝子機能の喪失の結果として増殖する。これらの遺伝的変化は、腫瘍に関連した増殖因子またはケモカインまたは受容体の過剰発現といったように、継続的な成長および転移の促進に向けて、他の細胞(例えば、内皮細胞)を刺激し、増殖させて腫瘍内に新たな血管を形成させることができる、多くの新たなタンパク質産物を生じさせる。
【0007】
腫瘍成長を支える非腫瘍細胞上に認められ、特定の環境では腫瘍細胞それ自体の表面に認められる増殖因子受容体のいくつかの例には、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、インスリン様増殖因子受容体(IGFR)、神経成長因子受容体(NGFR)および線維芽細胞増殖因子受容体(FGF)が含まれる。
【0008】
胚発生の過程では、ヘマンジオブラストと呼ばれる共通の前駆細胞から、造血細胞および初期内皮細胞(アンジオブラスト)が生じる。共通の細胞に由来するため、いくつかのシグナル伝達経路は造血細胞および血管細胞の両者に共通している。このような経路の一つはVEGFRシグナル伝達経路である。VEGF受容体(VEGFR)には、Shibuya M. et al., Oncogene 5:519-524 (1990)によってシークエンシングが行われたVEGFR1(他にはFLT-1として知られる)、および、Terman et al., Oncogene 6:1677-1683 (1991)中に記載され;かつMatthews W. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:9026-9030 (1991)によってシークエンシングが行われたVEGFR2(他にはKDRまたはFLK-1として知られる)が含まれる。
【0009】
別段に記述しない限り、または文脈によって明確にそれ以外のことが推測されない限り、本明細書はVEGF受容体に関する慣例的な文献上の命名法に従う。KDRはヒト型のVEGFR2と呼ばれることになる。FLK-1はVEGFR2のマウス相同体と呼ばれることになる。FLT-1はKDR/FLK-1受容体とは異なるものの関連性はある。
【0010】
VEGFRはVEGFR1およびVEGFR2のいずれとも結合して、内皮細胞および造血細胞に対して増殖作用および遊走作用を及ぼす。VEGRF2は内皮細胞に限定して発現されると考えられていた。しかし最近、VEGFR2が多能性造血幹細胞のサブセット上に存在することが示された(Ziegler et al., Science 285(5433):1553-8 (1999))。いくつかの研究により、ある種の白血病細胞もVEGFR1およびVEGFR2を発現することが明らかにされている(Fiedler et al., Blood 89(6):1870-5 (1997))。
【0011】
VEGFのさまざまな生物学的作用を媒介する2つの主要なシグナル伝達性チロシンキナーゼ受容体がVEGFR2およびVEGFR1である。VEGFに対するVEGFR1の結合親和性は極めて高く、Kd値が10〜70pMであるものの(Klagsbrun et al., Cytokine Growth Factor Rev 7(3):259-70 (1996))、ほとんどの研究は、VEGFR2が内皮細胞の増殖および分化のための細胞シグナルを伝達するために決定的な受容体であることを示している(Ortega et al., Am J Pathol 151(5):1215-24 (1997))。VEGFR1は血管リモデリングに対してより重要であるように思われる。脈管形成および血管形成の調節におけるVEGF受容体の相対的重要性は、マウス胚性幹細胞においてVEGFR2遺伝子およびVEGFR1遺伝子を相同組換えによって破壊した研究で確立されている。VEGFR2が欠損したマウスでは脈管形成、血管形成および造血に高度の欠陥がみられた(Shalaby et al., Nature 376(6535):62-6 (1995))。これに対して、VEGFR1ノックアウトマウスでは異常な血管路が生じ、このことはこの受容体が細胞相互作用および血管安定化の調節に役割を果たすことを示唆する(Fong et al., Nature 376(6535):66-70 (1995))。
【0012】
VEGFR2シグナル伝達の破壊による血管形成の阻害は、固形腫瘍の成長および転移の阻害をもたらす。例えば、マウスVEGFR2に対する中和モノクローナル抗体(MoAb)は、マウスモデルにおける腫瘍浸潤を阻害している(Skobe et al., Nat Med 3(11):1222-7 (1997)およびPrewett et al., Cancer Res 59(20):5209-18 (1999))。さらに、神経膠芽腫の成長は、VEGFR2に関してドミナントネガティブであるマウスで阻害されている(Millauer et al., Nature 367(6463):576-9 (1994))。このような腫瘍成長の阻害は、腫瘍の血流供給を効果的に制限する血管形成の阻害に起因する。
【0013】
白血病は、成熟および分化のさまざまな段階にある造血幹細胞から生じる。現在では、急性白血病は自己再生を起こす能力を有する未熟造血幹細胞から生じ、一方、慢性白血病などのある種のより悪性度の低い白血病はより成熟度の高い拘束された造血前駆細胞から生じることが十分に確立されている。
【0014】
いくつかの研究により、VEGFは、詳細に研究されているHL-60白血病細胞株を含め、樹立されたすべての白血病細胞株および新たに単離されたヒト白血病により、ほぼ常に発現されることが示されている(Fiedler et al., Blood 89(6):1870-5 (1997), Bellamy et al., Cancer Res 59(3):728-33 (1999))。いくつかの研究は、RT-PCRを用いて、VEGFR-2およびVEGFR-1がある種のヒト白血病のみによって発現されることを示している(Fiedler et al., Blood 89(6):1870-5 (1997), Bellamy et al., Cancer Res 59(3):728-33 (1999))。しかし、これらの研究のうち、VEGFの発現が同時並行的なVEGFR2/VEGFR1表面発現または機能的応答と関連するか否かを示したものはない。
【0015】
骨髄(BM)由来細胞(BMDC)は、悪性転換(Coussens et al., "MMP-9 Supplied by Bone Marrow-derived Cells Contributes to Skin Carcinogenesis," Cell 103:481-490 (2000))、腫瘍血管新生(Lyden et al., "Impaired Recruitment of Bone-marrow-derived Endothelial and Hematopoietic Precursor Cells Blocks Tumor Angiogenesis and Growth," Nat. Med. 7:1194-1201 (2001)およびAutiero et al., "Placental Growth Factor and its Receptor, Vascular Endothelial Growth Factor Receptor-1: Novel Targets for Stimulation of Ischemic Tissue Revascularization and Inhibition of Angiogenic and Inflammatory Disorders," Journal of Thromb. Haemost. 1:1356-1370 (2003))および新生物細胞の遊走(Neson et al., "Lymphocyte-facilitated Tumor Cell Adhesion to Endothelial Cells: the Role of High Affinity Leukocyte Integrins," Pathology 35:50-55 (2003))の一因となりうる。その幹細胞がBM内の特定のニッチ依存的領域に存在する、血管内皮増殖因子受容体1(VEGFR1)を発現する造血前駆細胞(HPC)の集団が同定されている。血管新生において、通常は全BM細胞のうち0.01%未満と少数であるこの集団は増殖し、BM由来のVEGFR2+内皮前駆細胞(EPC)とともに末梢循環へと動員されるが、これらはどちらも血管新生および原発性腫瘍の成長のために必須である(Lyden et al., "Impaired Recruitment of Bone-marrowderived Endothelial and Hematopoietic Precursor Cells Blocks Tumor Angiogenesis and Growth," Nat. Med. 7:1194-1201 (2001)およびHattori et al., "Placental Growth Factor Reconstitutes Hematopoiesis by Recruiting VEGFR1(+) Stem Cells from Bone-marrow Microenvironment," Nat. Med. 8:841-9 (2002))。骨髄単球由来であるこれらのVEGFR1+細胞は、腫瘍床における血管周囲部位に局在し、新たに形成された血管に対して支持および安定化の役割を果たす(Lyden et al., "Impaired Recruitment of Bone-marrowderived Endothelial and Hematopoietic Precursor Cells Blocks Tumor Angiogenesis and Growth," Nat. Med. 7:1194-1201 (2001))。これらおよびその他の腫瘍関連細胞は原発性腫瘍の成長を増強して腫瘍の拡散を促進することが見いだされているが、転移に対するそれらの明確な寄与は現在のところ不明である(Pollard, "Tumor-educated Macrophages Promote Tumor Progression and Metastasis," Nat. Rev. Cancer. 4:7178 (2004)およびHiratsuka et al., "MMP9 Induction by Vascular Endothelial Growth Factor Receptor-1 is Involved in Lung-specific Metastasis," Cancer Cell. 2:289-300 (2002))。
【0016】
本発明は、これらの現象を癌および転移のモニタリングおよび治療に利用することに向けられる。
【発明の概要】
【0017】
本発明は、以前の腫瘍形成の部位から離れた部位での癌患者における腫瘍形成を阻害する方法に向けられる。本方法は、癌患者に対して、以前の腫瘍形成の部位から離れた部位での癌患者における腫瘍形成を阻害するのに有効な条件下で、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質を投与する段階を含む。
【0018】
本発明のさらにもう1つの局面は、癌患者における転移を予防する方法に向けられる。本方法は、癌患者に対して、癌患者における転移を予防するのに有効な条件下で、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質を投与する段階を含む。
【0019】
本発明のもう1つの局面は、癌患者における腫瘍形成の阻害または転移の予防に有用な候補化合物を同定する方法に向けられる。これは、被験化合物を提供する段階、および被験化合物を血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞とともにインキュベートする段階を含む。血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞と結合する被験化合物は、癌患者における腫瘍形成の阻害または転移の予防に有用な候補化合物として同定される。
【0020】
本発明のもう1つの局面は、癌患者における転移をモニタリングする方法に関する。本方法は、患者試料を血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞のレベルに関して評価する段階、およびその血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞のレベルを血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の以前のレベルと比較する段階であって、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞のレベルの上昇によって将来の転移が示される段階を含む。
【0021】
本発明のさらにもう1つの局面は、以前の腫瘍形成の部位から離れた部位での対象におけるフィブロネクチン発現を阻害する方法に関する。これは、対象に対して、以前の腫瘍形成の部位から離れた部位での対象におけるフィブロネクチン発現を阻害するのに有効な条件下で、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質を投与する段階を含む。
【0022】
現時点では、全切除または部分切除およびアジュバント化学療法後の固形腫瘍の患者であって、後に転移を発症すると考えられる患者を判定することは極めて困難である。所定の任意の腫瘍について転移の頻度が高い部位(例えば、結腸癌患者における肝臓、骨肉腫患者における肺、乳癌患者におけるリンパ節)でVEGFR1+骨髄由来細胞を測定するシステムは、どの患者が、これらのVEGFR1+骨髄由来クラスターを標的とする追加的なアジュバント治療、ならびに、例えば、転移性または再発性病変の呈示を待つのではなく化学療法を伴う切除後に事前治療を行うといった、より慣例的な治療法を必要とするかを予測するのに役立つ可能性がある。これらの細胞クラスターを、VEGFR1またはVLAを発現する循環性細胞または動員細胞として血流中で追跡することもできる。さらに、将来的には、治療法に対する反応を追跡するため、または将来の転移リスクを評価するために、画像化試験によって追跡することを目的として、これらのVEGFR1+造血前駆細胞を標識することも可能である。これは、病期判定および微量残存病変に関するモニタリングのためのアプローチを変更するのに役立つ可能性がある。このようなマーカーおよび考えられる治療戦略は、原発性腫瘍を有する患者の医療ならびにそのような患者のために非常に有用であることが判明するであろう。また、この戦略は、虚血性疾患、ならびに関節リウマチおよび炎症性腸疾患などの炎症性疾患を有する患者に対しても有効である可能性がある。
【0023】
腫瘍の拡散に先立って転移の部位に、入ってくるVEGFR2+内皮細胞および腫瘍細胞にとって助けとなる微小環境の形成を導くこれらのVEGFR1+骨髄由来細胞が存在することは、これらの細胞がこれらの特徴を説明しうる新規なケモカインまたは増殖因子を産生するという証拠を提供する。腫瘍細胞の遊走および付着性の増強を引き起こすVEGFR1+細胞および前転移性ニッチに関与する新規なタンパク質/遺伝子の単離/同定は、腫瘍の拡散の予防のための重要な標的をもたらすと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1A〜Eは、骨髄由来細胞が前転移性ニッチを形成することを示している。図1Aにおいて、β-gal+骨髄細胞(左パネル)は、照射後かつLLC細胞移植前の肺ではほとんど観察されない(n=6)。第14日までに、β-gal+骨髄由来クラスターが肺実質中に出現し(左中パネルおよび矢印で示された領域の拡大挿入図;n=25)、第23日までにこれらは微小転移(右パネル、矢印)および肉眼的な転移(右パネル、挿入図;n=12)を伴うようになる。頻度の高い転移部位である終末細気管支と気管支静脈との間の間質中にクラスターも示されている(右中パネル)。Bは終末細気管支であり、Vは気管支静脈である。図1Bは、照射後かつDsRedタグ付加B16細胞の移植前の肺におけるGFP+骨髄を示している(左パネル;n=6)。第14日にはGFP+ BMDCが認められ、DsRed+腫瘍細胞はみられない(左中パネルおよび挿入図;n=12)。第18日から少数の個別のDsRed+ B16細胞がGFP+骨髄クラスターに付着しはじめ(右中パネル)、第23日までにDsRed+腫瘍細胞がクラスター部位で増殖するようになる(右パネル;n=8)。DAPI染色は細胞核を示している。図1Cは、肺における骨髄由来のGFP+ BMDCおよびDsRed+ B16細胞のフローサイトメトリーデータを示したグラフ(n=30)、ならびに第14日(左パネル)および第18日(右パネル)の2つの流れ図である。図1Dは、GFP+ BMDCをB16馴化培地を用いて動員し、続いてDsRedタグ付加腫瘍細胞を尾静脈から注入し、24時間後に付着したもの(右パネル、矢印)を、培地のみを投与した動物(左パネル;P<0.01)と比較して示している。挿入図は、4日後のクラスター内の増殖中の腫瘍細胞を示している(右パネルの挿入図;n=6)。図1Eは、皮内にLLCまたはB16腫瘍を有する動物における100倍対物視野当たりのクラスターの数を示している(n=12)。右下方のスケールバーは、図1A(左、左中、右中、80mm;左中挿入図、8mm;右、20mm;右挿入図、47mm)、図1B(左、左中、80mm;左中挿入図、8mm;右中、右、40mm)および図1D(40mm;右挿入図、20mm)に対して適用される。前転移性クラスターはVEGFR1+造血前駆細胞から構成される。図1F〜Iは前転移性クラスターがVEGFR1造血前駆細胞から構成されることを示している。図1Fは、腫瘍移植前の照射肺(左パネルおよび挿入図;n=10)および肺におけるクラスターを示しているLLC細胞移植から14日後の照射肺におけるVEGFR1染色を示している(右パネル、矢印;n=18、100倍対物視野当たりのVEGFR1染色を伴う細胞は3.9±0.2%、P<0.05)。図1GおよびHは、第14日のLLC腫瘍を有する動物の肺における二重免疫蛍光を示している。VEGFR1+およびGFP+骨髄細胞(左パネル)、VEGFR1+およびCD133+(右パネル)は図1Gに示されている。VEGFR1+およびCD117+は図1Hに示されている。図1Iは、生後40日の時点での腫瘍発生前のc-Mycトランスジェニックリンパ節におけるVEGFR1+クラスター(中央パネル、およびVEGFR1+細胞を示している挿入図)を、導入遺伝子を伴わない野生型同腹子リンパ節(左パネル)およびリンパ腫を有する第120日のc-Mycトランスジェニック節(右パネル)と比較して示している。右パネルの挿入図において、矢印はリンパ腫によって囲まれたVEGFR1+クラスターを示している(n=6)。右下方のスケールバーは、図1E(80mm;左挿入図、40mm)、図1G(20mm)、図1H(20mm)および図1I(80mm;挿入図、8mm)に対して適用される。
【図2】図2A〜Bは、骨髄細胞のホーミングの阻害によって転移が防止されることを示している。図2Aは、LLC移植から24日後に、VEGFR1+の選択された骨髄(R1陽性)が、微小転移(矢印、中央パネル)を許容するが、野生型(左パネル)に見られるような十分に血管が発達した大きな転移を防止することを示している。挿入図は、CD31(内皮マーカー)の発現を示している。VEGFR1+細胞(非R1)を除去した骨髄ではクラスターおよび転移の両方が無効化される(右パネル)(P<0.01、ANOVAによる)。表は100倍対物視野当たりのクラスターおよび微小転移の数を示している。*は転移が肺に充満していることを表す(R1陽性、n=4;非R1、n=4;野生型、n=6;非R1+野生型、n=4)。図2Bは、LLC腫瘍を有するマウスにおけるVEGFR1(抗R1)およびVEGFR2(抗R2)に対する抗体による処理が、クラスターおよび転移の両方を防止することを示している(P<0.01、ANOVAによる;すべての群について、n=5)。野生型の肺における矢印は大きなLLC転移を表す。抗R2における矢印はクラスターを示し、挿入図はクラスター内部の微小転移を示している。T、腫瘍細胞。表は、肺における100倍対物視野当たりのクラスターおよびLLC微小転移の数を示している。*は転移が組織に充満していることを表す。右下方のスケールバーは、図2A(20mm;野生型の挿入図、26mm;R1陽性の挿入図、32mm)および図2B(40mm;抗R2の挿入図、20mm)に対して適用される。
【図3】図3A〜Fは、VLA4/フィブロネクチン経路がクラスター形成を媒介することを示している。図3A〜Cは、腫瘍移植から14日後の野生型マウスに、VLA-4(挿入図、VEGFR1およびVLA-4)、MMP9およびId3(挿入図、VEGFR1およびId3)を発現するクラスターが生じていることを示している。図3Dは、VEGFR1+GFP+ BMDCを投与された、LLC腫瘍を有するId3ノックアウト(KO)マウスにおける肺組織を示している(P<0.01、ANOVAによる;n=6)。矢印は、上方の挿入図における領域を示している。矢印(下方の挿入図)は、GFP+VEGFR1+細胞を伴う転移の部位を示している。図3Eは、野生型肺におけるベースラインでのフィブロネクチン発現を示している(n=6)(左パネル)。前転移性肺の気管支周囲領域における間質フィブロネクチンの増加が第3日の時点でみられ(中央パネル、矢印)、第14日に発現が最大となった(右パネル)。挿入図、PDGRFα発現はフィブロネクチンを固着させる定在性の線維芽細胞を指し示している。図3Fは、定量的RT-PCRにより、LLC腫瘍を有するマウスの肺におけるフィブロネクチン発現が野生型よりも高いこと(*P<0.05、ANOVAによる;n=6)、およびB16黒色腫を有する動物のからの肺でのより早期に同様の傾向が判明したことを示している。右上方のスケールバーは、図3A〜C(40mm;挿入図、8mm)、図3D(80mm;右上方の挿入図、20mm;右下方の挿入図、80mm)および図3E(40mm;挿入図、20mm)に対して適用される。
【図4】図4A〜Eは、非定型的な部位へのLLC転移の再方向付け(redirection)を示している。図4A〜Bは、定量的RT-PCR分析により、MCMを投与されたマウスでは野生型およびLCM処理のものと比較して卵管(図4A)および腸(図4B)においてフィブロネクチン発現の増加が認められたことを示している。ANOVAにより、卵管については、野生型と比較して、第3〜5日で*P<0.05、第7〜9日で**P<0.001であり、腸については第7〜9日で*P<0.001である(n=6)。図4Cは、馴化培地中のVEGFおよびPIGFのレベルに関するELISAアッセイ(3回ずつ)を示している(*P<0.05、L-LCMとの比較、**P<0.01、培地のみとの比較、ANOVAによる)。図4Dは、VEGFR1+細胞のLCMおよびMCMへの遊走の増強を示すトランスウェル遊走アッセイ(3回ずつ)を示している(**P<0.001、ANOVAによる)。図4Eは、MCMによる処理によって、LLCの転移拡散が、脾臓(左パネル)、腎臓(左中パネル)、腸(右中パネル)および卵管(右パネル)などのB16黒色腫転移部位へと再方向付けされることを示している。矢印は、挿入図に示されている転移境界の領域を示している(n=6)。T、LLC腫瘍細胞。右下方のスケールバーは、図4E(200mm;挿入図、20mm)に対して適用される。
【図5】図5A〜Eは、腫瘍およびVEGFR2+細胞がVEGFR1+HPCの後に到達することを示している。図5Aは、第8日、第14日、第18日および第23日のフローサイトメトリー分析を示しており、これは肺におけるGFP+BMDCおよびDsRed B16黒色腫腫瘍細胞の集団を描写している(n=30)。図5Bは、CD34を伴うVEGFR1(中央パネル)、VEGFR1とこれらの造血マーカーの共発現の頻度(右グラフ)を示している。図5Cは、フローサイトメトリーによる肺におけるCD117+前駆細胞および蛍光性GFP+-LLC腫瘍細胞の分析により、第12日、第14日、第18日および第27日によって表されるように腫瘍細胞の到達前にこれらの細胞が存在することが判明したことを示している。図5Dは、骨髄由来のVEGFR2+循環性内皮前駆細胞が、VEGFR1+造血前駆細胞の後に前転移性ニッチに到達することを示している。VEGFR1とVEGFR2との二重免疫蛍光(左パネル)。VEGFR1とCD31/PECAMとのもの(中央パネル)(矢印は内皮細胞を指し示している)。VEGFR2+細胞のGFPとの二重免疫蛍光は、確立して成長している転移ニッチの内部のこれらの細胞が骨髄由来であることの表れである(右パネル)。図5Eは、VEGFR-2+細胞の転移ニッチへの到達の時期が、第16日および第24日の腫瘍を有する動物の肺組織で見られるように(細胞数/クラスター/100倍視野)、腫瘍細胞の到達と一致することを図示したグラフを示している(n=6)。スケールバー:20μm(図5B);左、左中央20μm、右10μm(図5D)。
【図6】図6A〜Fは、前転移性ヒト組織におけるVEGFR1の発現を示している。細胞クラスターが、乳癌(n=15)、肺癌(n=15)および消化器癌(n=3)を有する個体における悪性組織および非悪性組織においてVEGFR1により染色された。図6Aは乳腺癌転移の証拠があるリンパ節を示しており(矢印は腫瘍を指し示している)、図6Bは同じ患者からの悪性病変を伴わないリンパ節を示している。図6Cは原発性肺腺癌を示しており、図6Dは新生物を伴わない隣接する「正常な」肺を示している(矢印はVEGFR1+細胞を指し示している)。癌を有しない個体からのリンパ節(図6B挿入図;n=6)および肺組織(図6D挿入図;n=3)においてVEGFR1+クラスターは見られなかった。胃食道接合部の原発性腺扁平上皮癌(図6E)および癌を伴わない肝リンパ節(図6F)も示されている。図6E〜F中の挿入図は、VEGFR1とc-Kitとの同時免疫蛍光を示している。右下方のスケールバーはすべてのパネルに対して適用される(40mm;挿入図、40mm)。
【図7】図7A〜Cは、腫瘍がケモカインプロフィールおよびフィブロネクチン発現パターンに関してさまざまであることを示している。図7Aは、LLC馴化培地(LCM)で処理したWTマウスでは、培地対照(左パネルおよび中央パネルの挿入図)と比較して、肝臓(左パネル)および肺(中央パネル)においてフィブロネクチン発現が誘導されることを示している(n=12)。LCMは肺におけるβ-gal+BMクラスターを支える(右パネル、TB=末端細気管支、BV=気管支静脈)(n=6)。図7Bは、MCMで処理したマウスでは、培地対照での腸におけるフィブロネクチン発現(中央パネルの挿入図)に対して、肝臓(左パネル)および腸(中央パネル)ならびに腎臓、精巣および肺におけるフィブロネクチン発現の増強が起こることを示している(n=12)。MCMで処理したβ-gal+BMを有するWTマウスは、フィブロネクチンが豊富な領域に局在する隣接クラスター形成を呈する(右パネル)(n=6)。図6Cは、第14日の腫瘍を有する動物から得たLLCおよびB16黒色腫の両方についての、腫瘍由来の血漿におけるVEGFおよびPIGFに関するELISAレベルを示している(3回ずつ、*p<0.05、腫瘍由来の血漿とWT血漿との比較、一元配置ANOVAによる)。図7A〜Bについてのスケールバーは以下の通りである:左および中央パネル40μm、挿入図35.2μm、右パネル20μm。
【図8】図8A〜Dは、骨髄由来のVEGFR1+細胞が腫瘍細胞を誘引することを示している。図8Aは、BMから単離してB16腫瘍細胞と共培養したVEGFR1+細胞が凝集体を形成して増殖し、この効果がVEGFR1(中央パネル)またはVLA-4(右パネル)に対する抗体処理によって失われることを示している。図8Bは、選択されたVEGFR1+集団へのB16腫瘍細胞の遊走が増加することを示すトランスウェル遊走アッセイを示している(3回ずつ、p<0.001%、R1と非R1および培地との比較)。図8Cは、低倍率および高倍率でのVEGFR1+細胞クラスターのSDF-1(CXCL12)免疫蛍光染色を示している。VEGFR1+細胞クラスターによるSDF-1αおよびVEGFR1の同時免疫蛍光は、SDF-1α発現に関して陽性の染色。図8Dは、LLCおよびB16腫瘍細胞がCXCR4を発現することを示している。スケールバー;50μm、図8Aについては挿入図120μm、左および右のパネル40μm、図8Cについては中央8μm、図8Dについては20μm。
【図9】Id3ノックアウトマウスではHPC動員がみられないこと、およびId3欠損マウスではCD11b+ VEGFR1+造血前駆細胞の動員が減少することを示している。
【図10】VEGFR1抗体がB16腫瘍における転移を阻害することを示している。B16腫瘍(右パネル)が、VEGFR1および/またはVEGFR2に対する中和抗体で処理したマウスで示されている。WTの脾臓における塗り潰された矢印は、成長しうる黒色腫を挿入図とともに示しており、中抜き矢印は壊死およびメラニン顆粒を示している。抗R1(抗VEGFR1)における矢印は、脾臓における典型的な胚中心 を示している。抗R1+抗R2群における挿入図は、1匹の動物の肺における孤立性の転移を表している。スケールバーは以下の通りである:20μm:挿入図 WT脾臓 8μm、抗R1+抗R2 66μm。
【図11】図11A〜Dは、VLA-4およびMMP-9の阻害によって転移が阻害されることを示している。B16黒色腫は肺におけるフィブロネクチン発現を誘導する。これらの画像は、抗VLA-4抗体により処理したWTマウス(β-galとエオシンによる対比染色、n=8、p<0.01、Studentのt検定による)(図11A)およびMMP9-/-マウス(VEGFR1 DABとヘマトキシリンによる対比染色 n=6)(図11B)における、LLC移植から14日後の肺組織を表している。VLA-4抗体を投与されたWTマウスまたはMMP-9欠損マウスではβ-galおよびVEGFR1細胞クラスター形成が低減しており、これは図11C中に、クラスターまたは転移を定量した画像/100倍視野の下に表されている(p<0.01、Studentのt検定による)。図11Dは、B16黒色腫腫瘍移植後の第3日および第14日での肺組織におけるフィブロネクチン発現を示している。第14日における矢印はクラスター部位におけるフィブロネクチン発現を表している。スケールバーは以下の通りである:80μm(図11A)および左、中央パネル40μm、右8μm(図11D)。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な説明
本発明は、以前の腫瘍形成の部位から離れた部位での癌患者における腫瘍形成を阻害する方法に向けられる。本方法は、癌患者に対して、以前の腫瘍形成の部位から離れた部位での癌患者における腫瘍形成を阻害するのに有効な条件下で、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質を投与する段階を含む。この阻害物質を、原発性腫瘍部位での腫瘍再発を予防するために用いることもできる。
【0026】
本方法の投与の段階は、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の動員が刺激される時に対応する時期に行われる。このような刺激は、化学療法、ストレス、外科手術、癌患者における骨髄回復、炎症、照射または増殖因子の結果として起こりうる。顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージ刺激因子およびエリスロポエチンなどの増殖因子の刺激においては、血流中の造血細胞の動員が刺激され、腫瘍の成長および転移が促進される可能性がある。
【0027】
本発明の実施において、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質は、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞と結合するように選択される。
【0028】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質は、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の形成を防止または低減するように選択される。適した阻害物質は、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞に特異的な生体分子、またはRNAもしくはDNAを阻害する低分子でありうる。
【0029】
生体分子には、すべての脂質、ならびに分子量が450を上回る単糖類、アミノ酸およびヌクレオチドの重合体が含まれる。したがって、生体分子には、例えば、オリゴ糖および多糖、オリゴペプチド、ポリペプチド、ペプチドおよびタンパク質;ならびにオリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドが含まれる。オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドには、例えば、DNAおよびRNAが含まれる。
【0030】
生体分子にはさらに、上記の分子の任意のものの誘導体も含まれる。例えば、生体分子の誘導体には、オリゴペプチド、ポリペプチド、ペプチドおよびタンパク質の脂質およびグリコシル化誘導体が含まれる。生体分子の誘導体にはさらに、オリゴ糖および多糖の脂質誘導体、例えば、リポ多糖が含まれる。
【0031】
最も典型的には、生体分子は、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞に特異的な抗体、またはそのような抗体の機能的等価物である。このような機能的等価物には、例えば、キメラ化、ヒト化および一本鎖抗体ならびにそれらの断片が含まれる。
【0032】
抗体の機能的等価物は、好ましくは、キメラ化またはヒト化抗体である。キメラ化抗体は、非ヒト抗体の可変領域およびヒト抗体の定常領域を含む。ヒト化抗体は、非ヒト抗体の超可変領域(CDR)を含む。ヒト化抗体の超可変領域以外の可変領域、例えばフレームワーク可変領域および定常領域は、ヒト抗体のものである。
【0033】
本出願の目的において、非ヒト抗体の適した可変領域および超可変領域は、モノクローナル抗体を作製させる任意の非ヒト哺乳動物によって産生された抗体に由来してよい。ヒト以外の哺乳動物の適した例には、例えば、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ヤギまたは霊長動物が含まれる。マウスが好ましい。
【0034】
機能的等価物にはさらに、完全な抗体のそれと同じまたは同等な結合特性を有する、抗体の断片が含まれる。
【0035】
このような断片は、例えば、F(ab')2断片の一方または両方のFab断片を含んでよい。好ましくは、抗体断片は、完全な抗体の6つの相補性決定領域すべてを含むが、このような領域のすべてよりも少数、例えば3つ、4つまたは5つのCDRを含む機能的断片も同じく含まれる。
【0036】
好ましい断片は、一本鎖抗体またはFv断片である。一本鎖抗体とは、抗体の重鎖の少なくとも可変領域が、相互接続用リンカーを伴って、または伴わずに、軽鎖の可変領域と結合したものを含むポリペプチドのことである。したがって、Fv断片は抗体結合部位の全体を含む。これらの鎖は細菌または真核細胞において産生させることができる。
【0037】
抗体および機能的等価物は、IgG、IgM、IgA、IgDまたはIgEといった免疫グロブリンの任意のクラス、およびそれらのサブクラスのメンバーであってよい。好ましい抗体は、IgG1サブクラスのメンバーである。機能的等価物は、上記のクラスおよびサブクラスの任意のものの組み合わせの等価物であってもよい。
【0038】
本発明の抗体は、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞と結合することができ、それらの活性を阻害するように機能してもよい。このような抗体は、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の機能を阻害することにより、特に癌の治療において、治療的潜在能力を有する可能性がある。
【0039】
本発明の抗体は、VLA-4(α4β1)インテグリンと結合して、これらの骨髄由来クラスターの形成を阻害することができる。このような抗体は、VEGFR1+およびVLA-4+骨髄由来細胞の機能を阻害することにより、特に癌の治療において、治療的潜在能力を有する可能性がある。
【0040】
本発明の抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体のいずれであってもよい。
【0041】
モノクローナル抗体の生産は、当技術分野で周知である手法によって行うことができる。概略を述べると、この工程は、まず、事前に、インビボまたはインビトロで関心対象の抗原によって免疫化された哺乳動物(例えば、マウス)の脾臓から免疫細胞(リンパ球)を入手することを含む。続いて、抗体分泌性リンパ球を、細胞培養下で無限に複製可能な(マウスの)骨髄腫細胞または形質転換細胞と融合させ、それによって不死性の免疫グロブリン分泌細胞系を作製する。その結果得られた融合細胞またはハイブリドーマを培養し、その結果得られたコロニーを所望のモノクローナル抗体の産生に関してスクリーニングする。このような抗体を産生するコロニーをクローニングし、大量の抗体を産生させるためにインビボまたはインビトロで増殖させる。このような細胞を融合させることの理論的基盤および実用的方法の記述は、Kohler et al., Nature 256:495 (1975)に示されており、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0042】
哺乳動物のリンパ球は、血管内皮増殖因子受容体1+による動物(例えば、マウス)のインビボ免疫化によって免疫化される。十分な力価の抗体を得るために、必要に応じて、このような免疫化を最長で数週間の間隔で反復する。最後の抗原追加接種の後に、動物を屠殺して脾臓細胞を取り出す。
【0043】
細胞培養下で無限に複製可能な哺乳動物骨髄腫細胞またはその他の融合パートナーとの融合は、標準的で周知の手法によって、例えばポリエチレングリコール(「PEG」)または他の融合剤を用いることによって達成される(Milstein et al., Eur. J. Immunol. 6:511 (1976)、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。この不死細胞系は、好ましくはマウスのものであるがラットおよびヒトを非限定的に含む他の哺乳動物種の細胞に由来してもよく、急速な成長を可能とする、ある種の栄養分の利用のために必要な酵素が欠損していて、かつ良好な融合能力を有するように選択される。多くのこのような細胞系は当業者に公知であり、その他のものはたびたび記載されている。
【0044】
ポリクローナル抗体を産生させるための手順も周知である。典型的には、このような抗体は、免疫前血清を得るためにまず採血したニュージーランドホワイト種ウサギに血管内皮増殖因子受容体1+を皮下投与することによって産生させることができる。抗原は1部位当たり総容積100μlで6つの異なる部位に注射することができる。注射されるそれぞれの材料は、合成界面活性剤アジュバント・プルロニックポリオール、またはSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動後のタンパク質もしくはポリペプチドを含む微粉アクリルアミドゲルを含むと考えられる。続いて、初回注射から2週間後にウサギから採血し、6週間毎に3回、同じ抗原の追加接種を定期的に行う。続いて、それぞれの追加接種から10日後に血清の試料を採取する。続いて、抗体の捕捉のための対応する抗原を用いるアフィニティークロマトグラフィーにより、ポリクローナル抗体を血清から回収する。最後に、ウサギをペントバルビタール150mg/Kg IVによって安楽死させる。ポリクローナル抗体を産生させるためのこの手順および他の手順は、Harlowら編、Antibodies: A Laboratory Manual (1988)に開示されており、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0045】
本質的にヒト性である抗体は、ヒト抗体を発現するように遺伝的に改変されたトランスジェニック哺乳動物、特にトランスジェニックマウスにおいて産生させることができる。キメラ抗体およびヒト化抗体を作製するための方法も当技術分野で公知である。例えば、キメラ抗体を作製するための方法には、米国特許第4,816,397号および第4,816,567号に記載されたものが含まれ、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。ヒト化抗体を作製するための方法は米国特許第5,225,539号に記載されており、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0046】
抗体のヒト化のために好ましい方法は、CDRグラフティングと呼ばれる。CDRグラフティングでは、抗原との結合に直接関与するマウス抗体の領域であるCDRの相補性決定領域をヒト可変領域に移植して、「再構築されたヒト」可変領域を作り出す。続いて、これらの完全にヒト化された可変領域をヒト定常領域と連結して、完備された「完全ヒト化」抗体を作り出す。
【0047】
抗原と十分に結合する完全ヒト化抗体を作り出すためには、再構築されたヒト可変領域を注意深く設計することが有益である。CDRを移植しようとするヒト可変領域は注意深く選択されるべきであり、ヒト可変領域のフレームワーク領域(FR)の内部の決定的な位置に対して少数のアミノ酸変化を施すことが通常は必要である。
【0048】
例えば、再構築されたヒト可変領域は、選択されたヒト軽鎖可変領域のFR中に最大10個のアミノ酸変化を含むことができ、選択されたヒト重鎖可変領域のFR中に12個ものアミノ酸変化を含むことができる。これらの再構築されたヒト重鎖および軽鎖可変領域遺伝子をコードするDNA配列を、ヒト重鎖および軽鎖定常領域遺伝子、好ましくはそれぞれγ1およびκをコードするDNA配列と連結する。続いて、再構築されたヒト化抗体を哺乳動物細胞において発現させ、その標的に対するその親和性を対応するマウス抗体およびキメラ抗体のそれと比較する。
【0049】
置換すべきヒト化抗体の残基を選択するための方法、および置換を施すための方法は当技術分野で周知である。例えば、Co et al., Nature 351:501-502 (1992);Queen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:10029-1003 (1989)およびRodrigues et al., Int. J. Cancer, Supplement 7:45-50 (1992)を参照のこと、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。225の抗EGFRモノクローナル抗体のヒト化および再構築のための方法はWO 96/40210号に記載されており、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。本方法は、他のタンパク質に対する抗体のヒト化および再構築のために適合させることができる。
【0050】
一本鎖抗体を作るための方法も当技術分野で公知である。いくつかの例には、欧州特許出願第502 812号およびWels et al., Int. J. Cancer 60:137-144 (1995)に記載されたものが含まれ、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。また、一本鎖抗体をファージディスプレイライブラリーのスクリーニングによって調製することもできる。
【0051】
上記の機能的等価物を作製するためのその他の方法は、WO 93/21319号、欧州特許出願第239 400号、WO 89/09622号、欧州特許出願第338 745号、米国特許第5,658,570号、米国特許第5,693,780号および欧州特許出願第332 424号に開示されており、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0052】
本発明の方法の実施において、投与の段階は、主題阻害物質を経口、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下または鼻腔内に投与することによって行われる。本発明の阻害物質は単独で投与しても、または適した薬学的担体とともに投与してもよく、錠剤、カプセル、粉末、溶液、懸濁液または乳濁液といった固体または液体の形態であってよい。
【0053】
本発明の阻害物質は、例えば不活性希釈剤もしくは吸収されうる可食担体とともに経口投与してもよく、またはそれを硬カプセルもしくは軟カプセル中に封入してもよく、またはそれを圧縮して錠剤にしてもよく、またはそれを食品と直接混合してもよい。経口的な治療用投与のためには、本発明の阻害物質を添加剤と混合して、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤などの形態で用いることができる。このような組成物および製剤は、本発明の阻害物質を少なくとも0.1%含むべきである。これらの組成物における阻害物質のパーセンテージは当然ながらさまざまであってよく、その構成単位の重量の約2%〜約60%であることが好都合である。このような治療的に有用な組成物における本発明の阻害物質の量は、適した投薬量が得られるようなものであると考えられる。
【0054】
また、錠剤、カプセル剤などが、トラガカントゴム、アラビアゴム、コーンスターチまたはゼラチンなどの結合剤;第二リン酸カルシウムなどの添加剤;コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;およびスクロース、ラクトースまたはサッカリンなどの甘味剤を含んでもよい。投薬単位剤形がカプセルである場合には、それは、上記の種類の材料に加えて、脂肪油などの液体担体を含んでもよい。
【0055】
さまざまな他の材料が、コーティング剤として、または投薬単位の物理的形態を改変するために存在してもよい。例えば、錠剤をセラック、糖またはその両方によってコーティングすることができる。シロップ剤は、有効成分に加えて、甘味剤としてのスクロース、保存料としてのメチルパラベンおよびプロピルパラベン、色素、ならびにチェリーまたはオレンジの香味といった香味剤を含みうる。
【0056】
本発明の阻害物質を非経口的に投与することもできる。阻害物質の溶液または懸濁液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適宜混合して、水を媒質として調製することができる。分散液を、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、および油中にあるそれらの混合物を媒質として調製することもできる。実例となる油には、石油、動物性、植物性または合成由来の油、例えば、ラッカセイ油、大豆油または鉱油がある。一般に、水、食塩水、水性デキストロースおよび関連した糖溶液、ならびにプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのグリコールが好ましい液体担体であり、特に注射用溶液に対してはそうである。通常の貯蔵および使用の条件下で、これらの製剤は微生物の増殖を防ぐための保存料を含む。
【0057】
注射用途に適した剤形には、滅菌注射溶液または分散液、および滅菌注射溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末が含まれる。すべての場合において、その形態は滅菌されていなければならず、しかも容易な注入可能性が存在する程度まで流動性でなければならない。それは、製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、しかも細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、これらの適切な混合物、および植物油を含む溶媒または分散媒でありうる。
【0058】
本発明の阻害物質を、エアロゾルの形態で気道に直接投与することもできる。エアロゾルとしての使用のためには、溶液または懸濁液の状態にある本発明の阻害物質を、従来のアジュバントとともに、例えばプロパン、ブタンまたはイソブタンのような炭化水素噴射剤などの適した噴射剤と一緒にして、加圧されたエアロゾル容器内にパッケージ化してもよい。本発明の阻害物質を、ネブライザーまたは噴霧器などにおける非加圧形態で投与してもよい。
【0059】
本発明は、多岐にわたる癌を治療するのに有用である。本明細書で用いる場合、癌を治療するとは、具体的には、癌があると診断された患者、すなわちその患者の体内に確立した癌を有すると診断された患者に対して、癌組織における悪性細胞のそれ以上の成長もしくは拡散を阻害するため、および/または悪性細胞の死滅を引き起こすために、治療薬を投与することを指す。具体的には、乳癌、結腸癌、前立腺癌、肺癌および皮膚癌、ならびに多くの小児癌が、本発明の方法による治療の対象となりうる。癌を治療することにはまた、前悪性状態を有する患者を、前悪性状態の進行を停止させるため、またはその退縮を引き起こすために治療することも含まれる。前悪性状態の例には、過形成、異形成および化生が含まれる。
【0060】
本発明の治療術は、単独で用いることもでき、または他の癌治療法(例えば、化学治療薬、放射線照射またはそれらの組み合わせ)とともに用いることもできる。
【0061】
化学療法薬の例には、アルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン化合物およびアルキルスルホネート);代謝拮抗剤(例えば、葉酸、プリンまたはピリミジン拮抗薬);有糸分裂阻害剤(例えば、ビンカアルカロイド、ポドフィロトキシンの誘導体、および細胞毒性抗生物質);およびDNA発現に障害または干渉を及ぼす化合物が含まれる。
【0062】
化学療法薬または化学療法の具体的な例には、シスプラチン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、メクロルエタミン(ナイトロジェンマスタード)、ストレプトゾシン、シクロホスファミド、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ダウノルピシン、プロカルバジン、マイトマイシン、シタラビン、エトポシド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル(タキソテール)、アルデスロイキン、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、クラドリビン、ダカルバジン、フロクスウリジン、フルダラビン、ヒドロキシ尿素、イホスファミド、インターフェロンα、ロイプロリド、マガストロール(magastrol)、メルファラン、メルカプトプリン、オキサロプラチン、プリカマイシン、ミトタン、ペガスパルガーゼ、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、ウラシルマスタード、ビノレルビン、クロラムブシル、タキソールおよびそれらの組み合わせが含まれる。
【0063】
また、本発明の阻害物質を、放射線と併用することもできる。放射線の線源は、治療される患者の体外にあっても体内にあってもよい。線源が患者の体外にある場合には、その治療法は外部線源照射療法(EBRT)として知られる。放射線の線源が患者の体内にある場合には、その治療は近接照射療法(BT)と呼ばれる。
【0064】
放射線は、周知の標準的な手法に従って、この目的に製造された標準的な装置、例えばAECL TheratronおよびVarian Clinacなどを用いて投与される。放射線の線量は、当技術分野で周知の数多くの要因に依存する。このような要因には、治療される臓器、放射線の経路にあって誤って有害な影響を受ける可能性のある健常臓器、放射線療法に対する患者の認容性、および治療を必要とする身体の面積が含まれる。線量は典型的には1〜100Gyの間、特に2〜80Gyの間であると考えられる。報告されているいくつかの線量には、脊髄に対する35Gy、腎臓に対する15Gy、肝臓に対する20Gy、および前立腺に対する65〜80Gyが含まれる。しかし、本発明はいかなる特定の線量にも限定されないことが強調されるべきである。線量は、上述した要因を含む、所定の状況における具体的な要因に従って、治療を行う医師によって決定されると考えられる。
【0065】
外部放射線の線源と患者への進入点との間の距離は、標的細胞を死滅させることと副作用を軽減することとの間で許容しうるバランスが得られるような任意の距離であってよい。典型的には、外部放射線の線源は、患者への進入点から70〜100cmのところにある。
【0066】
近接照射療法は一般に、放射線の線源を患者の体内に配置することによって行われる。典型的には、放射線の線源は、治療される組織から約0〜3cmのところに配置される。公知の手法には、間質、洞間および表面近接照射療法が含まれる。放射性シードは永続的に移植することも一時的に移植することもできる。永続的インプラントに用いられているいくつかの典型的な放射性原子には、ヨウ素-125およびラドンが含まれる。一時的インプラントに用いられているいくつかの典型的な放射性原子には、ラジウム、セシウム-137およびイリジウム-192が含まれる。近接照射療法に用いられているそのほかのいくつかの放射性原子には、アメリシウム-241および金-198が含まれる。
【0067】
近接照射療法のための放射線の線量は、外部線源照射療法について上述したものと同じでありうる。近接照射療法の線量の決定においては、外部線源照射療法の線量の決定に関して上述した要因に加えて、用いられる放射性原子の性質も考慮される。
【0068】
本発明の特に好ましい態様は、アジュバント治療レジメンと合わせたその使用法を含む。特にこれは、外科手術の前および/または後の、さらには従来のアジュバント化学療法コースの全体を通じての、または外科手術を伴わない一次化学療法(アジュバントではない)コースを伴っての、化学療法、ならびにVEGFR1および/またはVLA-4に対する追加的なモノクローナル抗体の使用を含む。さらに、本発明を、一次手術の後に、通常であれば治療を受けない可能性のある患者、すなわち、一次完全切除後で残留性または遠隔性病変の証拠がみられない患者を、転移の拡散を予防するために治療するために用いることもできる。さらに、本発明を、転移の拡散のリスクが非常に高い患者を判定するための診断ツールとして用いることもできる。
【0069】
本発明のさらにもう1つの局面は、癌患者における転移を予防する方法に向けられる。本方法は、癌患者に対して、患者における転移を予防するのに有効な条件下で、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質を投与する段階を含む。本発明のこの局面は、上記のものと実質的に同じ治療術および治療様式を用いることを含む。
【0070】
本発明のこの局面の実施において、阻害物質は血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の形成または増殖を防止または低減する。このような阻害物質が、このような細胞の遊走、または他の部位での腫瘍の形成もしくは増殖を防止してもよい。
【0071】
本発明のもう1つの局面は、癌患者における腫瘍形成の阻害または転移の予防に有用な候補化合物を同定する方法に向けられる。これは、被験化合物を提供する段階、および被験化合物を血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞とともにインキュベートする段階を含む。血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞と結合する被験化合物は、癌患者における腫瘍形成の阻害または転移の予防に有用な候補化合物として同定される。
【0072】
本発明のもう1つの局面は、癌患者における転移をモニタリングする方法に向けられる。本方法は、患者試料を血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞のレベルに関して評価する段階、および血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞のレベルを血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の他のレベルと比較する段階を含む。このような他のレベルは患者における以前のレベルであってよく、この場合には、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞のレベルの上昇によってさらなる転移が示される。または、他のレベルは標準的または正常なレベルであってもよく、この場合にはレベルの測定値が正常または標準的なものよりも高いことによって転移が示されうる。
【0073】
本発明のこの局面の実施において、患者試料は組織試料または血液試料でありうる。
【0074】
本発明のこの局面は、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞のレベルを血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の以前のレベルと比較する段階に基づいて治療薬を投与することによって実施することが特に望ましい。このような投与には、上記のようなアジュバント治療レジメンが含まれる。または、治療薬は、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞のレベルを血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の以前のレベルと比較することに基づいてその強度が選択された化学療法薬でもありうる。
【0075】
本方法はインビトロで行うこともインビボで行うこともできる。本発明のインビボの局面に関して、評価および比較の段階は、癌患者における領域を画像化することを含む。これは、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞に特異的な標識物質、または標識された血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞を用いて、そのいずれかを癌患者に導入することによって実現することができる。
【0076】
本発明のさらにもう1つの局面は、以前の腫瘍形成の部位から離れた部位での対象におけるフィブロネクチン発現を抑制する方法に関する。これは、対象に対して、以前の腫瘍形成の部位から離れた部位での対象におけるフィブロネクチン発現を阻害するのに有効な条件下で、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質を投与することを含む。本発明のこの局面は、上記のものと実質的に同じ治療術および治療様式を用いることを含む。
【実施例】
【0077】
実施例1-骨髄BM移植
野生型C57Bl/6マウスに致死的な放射線照射(950rad)を行って、1×106個のβ-ガラクトシダーゼ+またはGFP+BM細胞(Rosa-26マウス)を移植した(Lyden et al., "Impaired Recruitment of Bone-marrow-derived Endothelial and Hematopoietic Precursor Cells Blocks Tumor Angiogenesis and Growth," Nat. Med. 7:1194-1201 (2001)、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。4週間後にマウスに2×106個のLLC(ATCC)またはB-16細胞(ATCC)のいずれかを皮内注射した。
【0078】
実施例2-β-ガラクトシダーゼ染色
組織および大腿骨を4%パラホルムアルデヒド(PFA)中で4時間にわたり固定した。試料を、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Tam et al., "The Allocation of Epiblast Cells to the Embryonic Heart and other Mesodermal Lineages:The Role of Ingression and Tissue Movement during Gastrulation," Development. 124:1631-1642 (1999)に記載された通りに、37℃のX-gal溶液中にて36時間にわたり染色した。X-gal染色された腫瘍およびBMを、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Lyden et al., "Impaired Recruitment of Bone-marrow-derived Endothelial and Hematopoietic Precursor Cells Blocks Tumor Angiogenesis and Growth," Nat. Med. 7:1194-1201 (2001)に記載された通りに包埋した。
【0079】
実施例3-蛍光性腫瘍トランスフェクション
B16およびLLC細胞(2×105個)をトランスフェクションの24時間前にプレーティングした。続いて細胞をペレット化し、DsRedレポーター遺伝子またはGFP遺伝子を含むレンチウイルスベクター上清とともに無血清培地中に再懸濁させた。以前に記載されたように、力価が1ml当たり感染性粒子1〜2×108個である濃縮されたウイルス構築物を、1ml中の2×106個の細胞(感染多重度50)を感染させるために用いた。蛍光の程度を確認するためにフローサイトメトリー分析を行った。C57Bl/6マウスに2×106個のLLC/GFP+またはB16/DsRed+細胞を接種した。
【0080】
実施例4-免疫組織化学
その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Lyden et al., "Id1 and Id3 are Required for Neurogenesis, Angiogenesis and Vascularization of Tumor Xenografts," Nature. 401:670-677 (1999)に記載された通りに、組織を固定して、OCT中またはパラフィンブロック中に包埋した。すべての抗原に関して、以下の抗原を用いた:VEGFR1(Flt-1、クローンmF-1、ImClone Systems、New York、New YorkおよびFlt-1クローンC-17、Santa Cruz Biotechnology)、CD31(PECAM、SC-1506、Santa Cruz Biotechnology)、VEGFR2(Flk-1/KDR、dc101、ImClone Systems)、MMP-9(D19557、Oncogene)、Id3(C-20、Santa Cruz Biotechnology)、フィブロネクチン(TV-1、Chemicon)、CD11b(CBRM1/5、eBioscience)、CD34(RAM34、BD Pharmigen)、ckit(ACK2、eBioscience)、PDGFRα(CD49d、VL-4、PS_2、Southern Biotech)、αV(Chemicon)、CD133(13A4、eBioscience)、α4(CD49d、VLA-4、PS_2、Southern Biotech)、α5(CD49e、5H10-27)、α6(CD49f、GoH3、BD Pharmingen)β1(9EG7、BD Pharmingen)、β2(M18/2、BD Pharmingen)、β4(Santa Cruz Biotechnology)、β7(M293、R+D Pharmingen)、SDF-1(79018.111、BD systems)CXCR4(2B11、BD Pharmingen)。
【0081】
実施例5-二重免疫蛍光
組織をOCT中にて切片化し、アセトンで後固定した。洗浄は、0.1%BSA/PBSを用いて行い、非特異的抗体をアビジンおよびビオチン(Vector Laboratories)でブロッキングした。第1の一次抗体(上で詳述した通り)を4℃で一晩インキュベートした。種特異的なビオチン化二次抗体(Vectastain ABC Kit, Vector)を室温で30分間インキュベートした。続いてテキサスレッドアビジンDまたはフルオレセインアビジンD(Vector)を30分間インキュベートした。この工程を第2の一次抗体についても繰り返した。切片をDAPI(Vectashield, Vector)を用いて蛍光封入剤にマウントし、以上のようにして描出した。
【0082】
実施例6-選択的骨髄移植
Rosa-26マウスに、第0、4および8日にアデノ-VEGF165(AdVEGF)を投与した(Avecilla et al., "Chemokine-mediated Interaction of Hematopoietic Progenitors with the Bone Marrow Vascular Niche is Required for Thrombopoiesis," Nat. Med. 10:64-71 (2004)、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。第12日にBMを単離し、ビオチン化マウスVEGFR1抗体および抗ビオチン磁気ビーズ(Miltenyi Biotec)で標識して、MACS(Miltenyi Biotec)を用いて分離した。3回の連続継代後のVEGFR1+BMの純度は95%であった。陰性選択集団は非R1細胞に相当した(Hattori et al., "Placental Growth Factor Reconstitutes Hematopoiesis by Recruiting VEGFR1(+) Stem Cells from Bone-marrow Microenvironment," Nat. Med. 8:841-9 (2002)、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。WTマウスに放射線を照射し、上記のように選択的BMを移植した。Id3 KO(Id1+/+Id3-/-)マウスに対して、3日毎で合計23日にわたる細胞105個の静脈内注射により、選択的なId3コンピテントVEGFR1+BMを移植した。対照動物には腫瘍を伴わずにVEGFR1+細胞を投与した。
【0083】
実施例7-抗体ターゲティング
WTマウスに2×107個のLLCまたはB-16細胞を接種した。VEGFR-1の遮断のために、マウスに対して、VEGFR1(mf-1、IgG1、400μg、ImClone)もしくはVEGFR2(DC101、IgG1、800μg、ImClone)に対するラット抗マウス抗体、またはそれらの組み合わせを第7〜22日の間に48時間毎に腹腔内注射し、その後に第24日に屠殺した。VLA-4のα4サブユニットの遮断のためには、マウスに対して、CD49dに対するラット抗マウス抗体(クローンR1-2、IgG2bκ、200μg、BD Biosciences Pharmingen)を第4日、第8日および第12日に静脈内注射した。動物をクラスター形成の評価のために第14日に屠殺した。腫瘍発生の後期にある転移に対するターゲティングのために、抗α4抗体を第6日、10日、14日、18日および22日に注射し、動物を第24日に屠殺した。すべての群を、実験群と同じスケジュールでの投与を受けたラット抗マウスIgG2aκアイソタイプ対照(KLH/G2a1-1、Southern Biotech)と比較した。
【0084】
実施例8-MMP-9 KO
C57BL6バックグラウンドを有するマウスをJackson Laboratoryから入手した。
【0085】
実施例9-インビトロ凝集アッセイ
第14日に、BM由来のVEGFR1+細胞を、B16細胞が移植されたマウスから単離した。R1+細胞(5×105個)を赤色蛍光(PKH26-GL, Sigma, St. Louis, MO)で染色し、10%FCSを加えたM199培地中を含む0.2%ゼラチン上で培養して、rhVEGF(10ng/mL, R&D Systems)、抗VEGFR1(10μg/ml、mf-1、ImClone)または抗α4(CD49、PS_2、20μg/ml、Southern Biotec)とともに14時間インキュベートした。同じく、腫瘍細胞との14時間のインキュベーションの前に、VEGFR1+細胞とrhVEGF、抗VEGFR1、抗α4との1時間のインキュベーションを行う試験も行った。R1+細胞をB-16またはLLC腫瘍細胞と共培養し、緑色蛍光(PKH2-GL、Sigma)で標識して(Lee et al., "In Situ Labeling of Adherent Cells with PKH26," In Vitro Cell. Dev. Biol.-Animal. 36:4-6 (2000)、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)、凝集および増殖に関して分析した。
【0086】
実施例10-馴化培地試験
B-16またはLLC細胞を18時間培養した無血清培地から、Kessinger et al., "Circulating Factors may be Responsible for Murine Strain-specific Responses to Mobilizing Cytokines," Exp. Hematology. 29:775-778 (2001)、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)に記載された通りに、馴化培地を濾過した(0.22μ)。上で詳述した通りに4週間前にRosa-26 BMTを投与されたWTマウスに対して、CM(300μl)を毎日、9日間にわたって腹腔内注射した。組織をフィブロネクチン(TV-1、Chemicon)およびβ-galに関して染色した。腫瘍の再方向付け試験のためには、黒色腫CM(300μl)またはPIGF(300μl、Peprotec)の腹腔内注射をLLC細胞の皮内移植の2日前に開始し、以後21日間にわたって毎日継続した。マッチさせた腫瘍を伴う対照群および伴わない対照群に対して、無血清培地を投与した。腫瘍の再方向付けを阻害するために、MCMを投与されたLLC腫瘍を有する実験群に対して、抗体ターゲティング試験と同様に抗VEGFR1抗体を注射した。組織を第22日に検査した。上に詳述したように、マッチさせた腫瘍を伴う対照群および伴わない対照群に対しては抗体処理と処理無しのそれぞれを行った。
【0087】
WT動物に対して、黒色腫馴化培地(300μL)を毎日、7日間にわたって注射し、その後にB16黒色腫腫瘍細胞を尾静脈に注射した。MCMまたは無血清RPMIを、B16注射後のマウスに対して毎日投与し、静脈内腫瘍投与から24時間後または4日後に屠殺した。肺をPBSで灌流し、その後にOCT中に凍結包埋させた。
【0088】
実施例11-遊走アッセイ
次に、馴化培地に応答したVEGFR1細胞の遊走について試験した。VEGFR1細胞を上記の通りに単離し、無血清培地中に再懸濁させた1×105個の細胞を、孔径5μmのトランスウェル(Costar、Corning Incorporated)の上方区画に入れた。馴化培地または対応する対照培地を用いて細胞を18時間遊走させた上で、細胞を膜の下側および下方区画から剥離し、血球計算器およびトリパンブルーを用いて6時間毎に細胞数の分析による評価を行った。VEGFR1+細胞に対するB16またはLLC腫瘍細胞の遊走は、以前に記載された通りに孔径12μmのトランスウェルを用いて行った(Redmond et al., "Endothelial Cells Inhibit Flow-induced Smooth Muscle Cell Migration: Role of Plasminogen Activator Inhibitor-1," Circulation 103:597-603 (2001)、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。蛍光標識した腫瘍細胞(PKH2-GL、Sigma)を1×105個として上方チャンバーに播き、1×105個のVEGFR1細胞を、無血清培地の入った下方チャンバーにプレーティングした。上方チャンバーと下方チャンバーとの間に濃度勾配はなかった。分析は、直接的な観察、および倒置蛍光顕微鏡(Nikon Eclipse TE 2000-U)を用いた手作業による200倍視野当たりの細胞数算定により、6時間毎に行った。
【0089】
実施例12-多数の組織におけるフィブロネクチンの定量的PCR分析
以前の記載の通りに(Hashimoto et al., "Bone Marrow-derived Progenitor Cells in Pulmonary Fibrosis." The Journal of Clinical Investigation 113:243-252 (2004)、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)、肺組織をTriZol中にて組織ホモジナイザーでホモジネート化し、RNAを抽出した。フィブロネクチン遺伝子の発現を定量し、以前の記載の通りに(Jensen et al., "The Human Herpes Virus 8-encoded Chemokine Receptor is Required for Angioproliferation in a Murineモデルof Kaposi's Sarcoma," Journal of Immunoiogy 174:3686-94 (2005)、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)、TaqMan遺伝子発現アッセイ(Applied Biosystems)を用いてGAPDHに対して標準化した。
【0090】
実施例13-ケモカインアッセイ
馴化培地および無血清培地ならびに腫瘍由来の血漿を、ELISA(Quantikine、R&D Systems)により、製造元の指示に従って、VEGFおよびPIGF濃度に関して分析した。腫瘍由来血漿はLLCまたはB16腫瘍細胞の14日後にマウスから入手した。
【0091】
実施例14-フローサイトメトリー試験
以前に記載された通りに(Gill et al., "Vascular Trauma Induces Rapid But Transient Mobilization of VEGFR2+AC133+ Endothelial Precursor Cells," Circulation Research 88:167-174 (2001)、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)、末梢血単核細胞を、蛍光結合モノクローナル抗体CD11b(M1/70、PE抗マウス、BD Pharmingen)、Sca-1(E13-161.7、PEおよびFITC抗マウスLy-6A/E、Becton Dickinson)およびVEGFR1(クローンmf-1、FITC、ImClone Systems)とともにインキュベートした。フローサイトメトリーは、以前に記載された通りに、右心室からの注入を介したPBSによる肺の灌流後の右肺全体を小片に刻んで100μmおよび40μmのフィルター(BD Biosciences)に通して単細胞懸濁液としたものに対しても行った。cKitフロー分析については、単細胞懸濁液を入手した後に、細胞をperCP cKitで直接に染色し、その後に固定せずにPBS中に入れ、Coulter FC500細胞計算器で分析した。
【0092】
実施例15-ヒト標本
ヒト標本には、腫瘍、隣接正常部(腫瘍境界域を越えたところ)、遠隔正常部およびリンパ節が含まれる。上記の通りに組織をパラフィン中に包埋して凍結固定し、VEGFR1(FB5、ImClone Systems)およびFlt-1、Calbiochemに対する抗体で染色した。組織試料は承認されたIRB申請書に従って入手し、取り扱った。
【0093】
実施例16-定量的免疫組織化学分析
IP LabおよびAdobe Photoshop 7.0の両方を利用して、ランダムな100倍視野を入手し、β-galまたは免疫組織化学染色に関する標準化された色調範囲を選択することによって分析した。ひとたびこの境界が描写されたところで、ピクしレーションヒストグラム下面積を計算し、総染色面積を総組織面積と比較した。
【0094】
実施例17-統計分析
結果は、平均±標準誤差として表現される。データは、Graphpad Prism統計プログラムを用いたstudent検定および分散分析によって分析した。P値<0.05を有意とした。エラーバーは平均の標準誤差を表す。
【0095】
本出願者らは、原発性腫瘍の皮内注射後のβ-ガラクトシダーゼ+(β-gal+)骨髄(BM)由来細胞の運命を分析した。肺に特異的に転移し、肝臓に稀に転移するルイス肺癌(LLC)腫瘍細胞、またはより広い播種性転移能を有するB16黒色腫腫瘍細胞を用いた。いずれかの型の腫瘍の皮内注射後に、肺、肝臓、脾臓、腎臓および生殖腺を切片化し、β-gal+BM細胞の存在に関して染色するか、またはGFP+BM細胞に関してスクリーニングした。照射後かつ腫瘍移植の前には、マウスの肺にはβ-gal+(0.01%±0.01 β-gal染色/100倍視野)もGFP+BM由来細胞もほとんどまたは全く観察されなかった(図1Aおよび1Bの左パネル)。腫瘍移植後であって腫瘍細胞の到達前である第14日までに、β-gal+(3.2%±1.2 β-gal染色/100倍視野、p<0.05、Studentのt検定による)またはGFP+BM由来細胞の血管外漏出およびクラスター形成が、いずれも将来転移が起こりやすい部位である終末細気管支および遠位肺胞付近で検出されるようになった(図1Aおよび1B、左中パネルおよび挿入図)。第16日までには、組織化された間質要素を20〜100個の細胞を含むβ-gal+クラスターが、将来の転移病変の外形を示すようになる(図1A、右中パネル)。既存のBM由来のクラスターに付随する個々の赤色蛍光性腫瘍細胞が第18日までに認められるようになり(図1B、右中パネル)、それは第23日までに微小転移へと進行する(図1Aおよび1B、右パネル)。β-gal+BM細胞の存在は十分に確立した腫瘍転移の内部であっても維持された(図1A、右パネル挿入図)。
【0096】
実施例18-腫瘍細胞の拡散の前に到達する骨髄由来細胞
腫瘍細胞到達の時期をさらに明確にするために、GFP+骨髄由来細胞および赤色蛍光標識した腫瘍細胞の存在を判定するためのフローサイトメトリー試験に着手した。第8日の前には、肺にはごくわずかなGFP+BM由来細胞が観察される(図1C 左パネルおよび表)。第12日から以後は、BM由来細胞の肺内への遊走がみられ、これはBM由来クラスターの顕微鏡下での観察と時を同じくする(図1C)。これらの細胞の数は増加し、その後、第18日までには腫瘍細胞と合流する(図1C)。第16日以前には、顕微鏡検査およびフローサイトメトリーのいずれによっても肺内に腫瘍細胞は検出されなかった。時間経過とともに、フローサイトメトリーによって肺内で同定される腫瘍細胞の数は増加し、これは顕微鏡画像で見られるように、確立した骨髄由来クラスターの部位での腫瘍細胞の付着および増殖に対応する(図1Bおよび1C)。腫瘍細胞がGFP+BM由来クラスターとともにクラスターを形成する頻度は95%を上回ることが明らかにされた(97%±1.1、図1B、右パネル)。この方法を用いて少数の腫瘍細胞が見逃された可能性はあるものの、培養下にあるB16黒色腫細胞によって馴化された培地を投与されたマウスを用いたさらなる実験では、馴化培地のみで骨髄由来細胞の動員および前転移性ニッチの形成を引き起こしうることが例証されている。転移の尾静脈モデルを用いたところ、馴化培地による刺激後の腫瘍細胞の導入(図1D)は、培地のみ(図1D)と比較して、注射1日後の肺内の腫瘍細胞の数を増加させる(図1D、141.3±10.2個の腫瘍細胞に対して、2.7±0.6個の腫瘍細胞/肺断面、p<0.01、Studentのt検定による)。腫瘍細胞の静脈内注射の4日後までには、転移性の節の頻度ならびにサイズが増大した(207±5.6個の腫瘍細胞/肺断面に比して、14±1.7個の腫瘍細胞/肺断面、p<0.01、Studentのt検定による)。赤色蛍光性腫瘍細胞のGFP+クラスターに対する同時局在分析は、どちらの時点でも93%を上回り、このことはこれらのBM由来細胞が腫瘍細胞の接着および増殖を補助することを示している。したがって、原発性腫瘍によって放出される因子の影響の下で、BM由来細胞は血流中に入り、遠隔性ではあるが特異的な前転移性部位へと動員される。
【0097】
実施例19-腫瘍タイプ特異的であるBM由来細胞クラスターの部位
腫瘍細胞種が体内の特異的な前転移性部位へのBMクラスターの分布を指示するか否かについて調べた(図1E)。LLC腫瘍細胞の皮内注射は、この腫瘍細胞種の転移特異性が原因で、肺(47.5±2.6/100倍視野)および肝臓(10.8±1.1)のみに限定されるBMクラスターの形成をもたらし、精巣、脾臓および腎臓ではクラスターは全く観察されなかった。これに対して、B16黒色腫腫瘍細胞は、この腫瘍が転移する頻度の高い臓器に対応して、肺(103.8±6.9)、肝臓(41.8±2.4)、精巣(36.6±3.1)、脾臓(25±3.2)および腎臓(20.6±1.8)などの多数の臓器でBMクラスターの形成を誘導した(図1E)。さらに、B16黒色腫細胞は、その転移性がより強いことに一致して、LLC腫瘍細胞よりも有意に多くのクラスターを誘導した(p<0.01、Studentのt検定による)。
【0098】
実施例20-これらのBM由来細胞の特性決定による造血前駆細胞の状態の判明
次にBM由来クラスターの細胞組成の特性を決定した。いずれの腫瘍細胞種によって誘導されたクラスターもVEGFR1を発現した(図1F、野生型よりも3.9±0.2の増加)。GFP+BM由来のクラスターはVEGFR1を共発現し(図1F)、これに対して照射のみの後の肺実質ではVEGFR1はほとんど発現されなかった(図1F)。これらの細胞クラスターのさらなる特性決定により、VEGFR1+であるBM由来細胞の大半がCD133(図1G)、CD34(図1G)およびCD117(cKit)を共発現することが判明し(図1Gおよび図1H)、このことからこれらの細胞のサブセットが始原造血細胞起原であることが示唆された。また、骨髄単球性マーカーはCD11b特定の細胞に存在したことから、BM由来クラスターには、ある程度の成熟上の不均一性もみられた。原発性腫瘍移植後の肺内の前駆細胞の分析では、以前に提示された経時推移試験が再現された。フローサイトメトリーによって認められたように、CD117+細胞は、GFP標識された腫瘍細胞よりも前に肺に到達した(図1H)。この初期のVEGFR1+BMクラスターではVEGFR2(図5A)およびCD31(図5A)の発現はみられなかった。さらなる動態試験により、VEGFR2+CEPが、腫瘍細胞の到達と時を同じくしてBM由来クラスターへと遊走することが判明した(図5B)。十分に形成された前転移性ニッチは、骨髄由来VEGFR2+内皮前駆細胞を含む(図5)。これらの所見は、BM由来のVEGFR1+造血細胞が前転移性ニッチを惹起して維持させ、腫瘍転移の惹起および維持のための許容性微小環境をもたらすことを立証するものである。
【0099】
実施例21-自然発生腫瘍モデルで生じるBM由来クラスター
移植された腫瘍に関する所見を、自然発生腫瘍モデルを用いたものと比較した。c-Mycを過剰発現するトランスジェニックマウスを選んだが、これはその早期発現およびリンパ系全体にわたる高悪性度の腫瘍拡散が理由である。生後40日までに、顕著なVEGFR1+クラスターが腫瘍の発現前にリンパ節内に検出され(145.1±16.4個のクラスター/100倍視野、図1I、中央パネルおよび挿入図)、これに対して、野生型同腹子ではクラスターが欠如していることが観察された(0.4±0.3個のクラスター/100倍視野、図1I、左パネル、p<0.001、Studentのt検定による)。これらのクラスターは、肺および肝臓などの他の臓器では観察されなかった。生後4カ月までには、VEGFR1+クラスターは確立したリンパ腫の全体に存続していたが、前転移性状態におけるよりもその程度は小さかった(c-Mycマウスにおける67.8±9.5個のクラスター/100倍視野に対して、同腹子では0.7±0.5個のクラスター/100倍視野、図1I、右パネルおよび挿入図、p<0.001、Studentのt検定による)。VEGFR1+細胞クラスターの周囲のリンパ腫細胞は明らかにVEGFR1を発現しなかった(図1I、右パネル挿入図)。
【0100】
実施例22-ヒト組織において転移の頻度が高い部位に生じるBM由来の細胞クラスター
マウスモデルで得られた、VEGFR1+細胞クラスターの腫瘍特異的形成を例証するデータを検証するために、原発性固形腫瘍を有する患者からのヒト組織を分析した。VEGFR1+クラスターはヒトの原発性腫瘍および転移組織の両方で観察された(図6A;乳癌-腋窩リンパ節、図6C;肺癌、図6E;食道癌)。転移の頻度の高い部位では腫瘍拡散の前に細胞クラスターの増加がみられ、このことからこの組織が悪性化する潜在能力が示唆された(図6、クラスター数/100倍視野;図6B;腋窩リンパ節21±5、図6D;肺19±4、図6F;GE接合部25±4)。悪性腫瘍を有しない患者から入手した正常なヒトリンパ節および肺組織は、VEGFR1+クラスターの形成を示さなかった(図6B、6D挿入図)。
【0101】
実施例23-選択的BM集団のターゲティングにより判明した、転移におけるVEGFR1+細胞の機能的役割
精製されたVEGFR1+BM細胞が前転移性クラスターを惹起する潜在能力を、これらの前駆細胞を照射マウスに選択的に移植することによって評価した。LLC移植から24日後までに、無傷BMを移植された対照マウス(WT)は顕著な肺転移を示し(図2A、左パネル)、十分に確立した血管を伴っていた(図2A、左パネル挿入図)。しかし、VEGFR1+BMの精製された集団を移植されたマウスでは、少数の腫瘍細胞から構成される多数の微小転移が肺全体に形成され(図2A、中央パネル矢印および表、25±9個の微小転移/100倍視野)、異常な血管系がみられた(図2A、中央パネル挿入図)。この結果は、VEGFR1+HPCが前転移性クラスターを惹起することができ、それが小さな転移を形成する腫瘍細胞を引きつけうることを示唆する。これに対して、VEGFR1+細胞を除去したBMは前転移性クラスターを生成することができなかった(図2A右パネルおよび表、p<0.01、一元配置ANOVAによる)。
【0102】
VEGFR1+細胞クラスターの破壊によって十分に確立した腫瘍の転移を阻止しうるか否かという問題に取り組むために、LLCまたはB16腫瘍を接種したマウスを、マウスVEGFR1、VEGFR2またはその両方を特異的に標的とするモノクローナル抗体で処理した。このアプローチによってVEGFR1+HPCの選択的ターゲティングが可能となるが、これはこれらの腫瘍細胞がVEGFR1もVEGFR2も発現しないためである。第24日までに、LLCを有する動物の肺(図2B、左パネルおよび表)またはB16黒色腫を有する動物の脾臓(図2B右パネルおよび挿入図)で見られるように、広範な拡散転移が両方のタイプの腫瘍について顕在化した。抗VEGFR1抗体による処理はそれのみでクラスターの惹起を解消させて転移を予防し(図2Bおよび表、p<0.01、一元配置ANOVAによる)、一方、抗VEGFR2抗体はVEGFR1+クラスターの形成は変化させなかったが、微小転移の進行は予防した(15±11個の微小転移/クラスター/100倍)(図2B、挿入図および表)。この2つの抗体の組み合わせは、抗VEGFR1療法と同様にクラスターの確立を阻止した;しかし、1匹の動物の肺では孤立したB16転移病変が観察された(図2B、挿入図)。総合すると、これらの結果は、VEGFR1+細胞クラスター形成のターゲティングによって腫瘍細胞の接着、増殖および転移拡散を予防しうることを示唆する。
【0103】
実施例24-前転移性ニッチの形成に関与するVLA4、MMP-9およびId3
次に、遊走性HPCが前転移性微小環境との相互作用の結果として細胞クラスターを形成する細胞上および分子上の機序について調べた。インテグリンα4β1(VLA-4)とそのリガンドであるフィブロネクチンとの相互作用は、骨髄ストロマ内部の初期造血細胞(Burger et al., "CXCR4 Chemokine Receptors (CD 184) and α4β1 Integrins Mediate Spontaneous Migration of Human CD34+ Progenitors and Acute Myeloid Leukaemia Cells Beneath Marrow Stromal Cells (pseudoemperipolesis),", British Journal of Haematology 122:579-589 (2003)およびScott et al., "Deletion of α4 Integrins from Adult Hematopoietic Cells Reveals Roles in Homeostasis, Regeneration, and Homing," Molecular and Cellular Biology 23:9349-9360 (2003)、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)および循環下にある成熟白血球(Neeson et al., "Lymphocyte-Facilitated Tumour Cell Adhesion to Endothelial Cells: The Role of High Affinity Leukocyte Integrins," Pathology 35:50-55 (2003)およびJonjic et al., "Molecules Involved in the Adhesion and Cytotoxicity of Activated Monocytes on Endothelial Cells," The Journal of Immunology 148:2080-2083 (1992)、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)の遊走のために必須である。このため、VEGFR1+細胞がインテグリンも発現し、それによってこの細胞種と前転移性ニッチとの相互作用を促進しうるか否かについて評価した。前転移性クラスターにあるVEGFR1+HPCはVLA-4(図3Aおよび挿入図、VEGFR1の共発現)を発現するものの、インテグリンに関しては陰性であることが見いだされた。このことは、これらの細胞上でのVLA-4の発現が、BM由来細胞の前転移性ニッチとの接着を可能にすることを示唆する。クラスター形成の後には、α4β7インテグリンならびにα6β4も骨髄細胞の内部で重要であり、それに付随するストロマは転移ニッチ内部でびまん性に顕著にみられる。造血細胞によって産生されるマトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP-9)などのプロテイナーゼは、cKitを発現する新たに導入された細胞を支えるために可溶性Kit-リガンドおよびVEGF-Aを放出することによって、基底膜を分解させ、局所微小環境を変化させるのに役立つ可能性がある(Hessig et al., "Recruitment of Stem and Progenitor Cells from the Bone Marrow Niche Requires MMP-9 Mediated Release of Kit-ligand," Cell 109:625-37 (2002)およびBergers et al., "Matrix Metalloproteinase-9 Triggers the Angiogenic Switch During Carcinogenesis," Nat Cell Biol 2:737-744 (2000)、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。さらに、フィブロネクチン結合に起因するα4β1シグナル伝達を通じてメタロプロテイナーゼ発現を増強することもできる(Huhtala et al., "Cooperative Signalling by alpha 5 beta 1 and alpha 4 beta I Integrins Regulates Metalloproteinase Gene Expression in Fibroblasts Adhering to Fibronectin," Journal of Cell Biology 129:867-879 (1995)およびYakubenko et al., "Differential Induction of Gelatinase B (MMP-9) and Gelatinase A (MMP-2) in T Lymphocytes Upon alpha(4)beta(1)-mediated Adhesion to VCAM-1 and the CS-1 Peptide of Fibronectin," Exp. Cell Res. 260:3-84 (2000)、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。MMP-9の発現は、前転移性クラスターにおいてVLA-4分布とともに観察され、このことはMMP-9産生がこれらのVEGFR1+HPCにおけるインテグリン結合および活性化の結果である可能性を示唆する(図3A)。これらの所見は、前転移性肺におけるVEGFR1を介したMMP-9発現を示したHiratsukaらの以前の研究に一致し、それを拡張するものである(Hiratsuka et al., "MMP9 Induction by Vascular Endothelial Growth Factor Receptor-1 is Involved in Lung-specific Metastasis," Cancer Cell. 2:289-300 (2002)、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。
【0104】
Id遺伝子のアップレギュレーションは、原発性腫瘍の成長のための前駆細胞の動員に決定的に重要であることが以前に示されている(Ruzinova et al., "Effect of Angiogenesis Inhibition by Id Loss and the Contribution of Bone-marrow-derived Endothelial Cells in Spontaneous Murine Tumours," Cancer Cell. 4:277-289 (2003)、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。VLA-4分布と一致して、発現はId3に関してもクラスター内部で認められた(図3Aおよび挿入図、VEGFR1およびId3の共発現)。この結果は、Id3アップレギュレーションがVEGFR1+細胞の前転移性ニッチへの動員を促進する可能性を示唆する。さらに、特定のインテグリンの発現はId遺伝子の活性化によって調節され、これはBM由来細胞および間質細胞の相互作用、運動性および補充の原因である可能性がある(Ruzinova et al., "Effect of Angiogenesis Inhibition by Id Loss and the Contribution of Bone-marrow-derived Endothelial Cells in Spontaneous Murine Tumours," Cancer Cell. 4:277-289 (2003)、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。
【0105】
前転移性ニッチの確立におけるこれらのタンパク質の機能的役割を確かめるために、VLA-4(抗α4抗体とともに)の発現を阻害するか、MMP-9およびId3ノックアウトマウスにおけるVEGFR1+細胞クラスター形成について調べた。これらのモデルのそれぞれに対して腫瘍を接種したところ、腫瘍移植から3週間後にクラスター形成(図3)および転移拡散の低減が見いだされた。腫瘍接種に応答してId変異マウスの循環中に動員されたVEGFR1+細胞(654個のVEGFR1+CD11b+細胞/μl)が、野生型対照(3,283個のVEGFR1+CD11b+細胞/μl)と比較して減少していることによって例証される、HPCの動員障害が示された(p<0.01、Studentのt検定による、図9)。これはこれらの動物において以前に認められた原発性腫瘍成長の低下を裏づけるものであり、転移表現型の低減を説明するのに役立つ。
【0106】
野生型VEGFR1+細胞がId3-/-マウスにおける転移の欠陥を復旧させる潜在能力について正式に検討するために、Id3コンピテントGFP +VEGFR1+HPCを、LLC腫瘍を有するId3 KOマウスに静脈内注射した。野生型VEGFR1+細胞の導入のみにより、腫瘍移植後の第21日までに、クラスター形成および微小転移が再び確立した(図3B)。顕著なこととして、LLC転移病変には、事前に確立したGFP+BM由来のクラスターが伴っていた(図3B)。これらの所見は、クラスターおよび転移の確立のために必要なVEGFR1+BM由来細胞の機能的役割をさらに強く示すものである。
【0107】
実施例25-VLA-4+BM由来細胞に対する走触性リガンドとして存在する組織実質中のフィブロネクチン
次に、組織特異的リガンドの発現がこれらのBMクラスターの接着および形成を媒介しうるか否かを明らかにするために、原発性腫瘍の注射後かつBM由来のVLA-4+VEGFR1+細胞のホーミングの前に、組織実質を調べた。実際に、LLC注射の後には、免疫組織化学分析および定量的PCRの両方により、肺における将来の転移ニッチの付近で、WT肺におけるベースラインのフィブロネクチン発現と比較してフィブロネクチン発現の増加が第3日から第14日にかけて時間経過に伴って観察された(図3Cおよび3E)。さらに、原発性腫瘍に応答して増殖する(図3)間質細胞のような定在性の線維芽細胞(図3)は、局在性フィブロネクチンに寄与する可能性がある。B16が移植されたマウスに関しては、肺におけるフィブロネクチン発現が、LLCを接種されたマウスと類似した分布で観察された(図3D)。さらに、フィブロネクチンはVEGFR1+クラスターにおいて発現されるように思われる(図3D)。フィブロネクチン発現の増加は、腸および卵管といった、黒色腫馴化培地に曝露された多数の組織では認められず、このことはこれらの部位に対するB16腫瘍の転移性がより高度であることに一致する(p<0.05は、MCMを投与されたマウスからの卵管における、第3〜5日に関するフィブロネクチン発現について、p<0.001は第7〜9日に関して、一元配置ANOVAによるLCM投与またはWT組織との比較、ならびにp<0.001は、MCMを投与されたマウスからの腸組織における第7〜9日のフィブロネクチン発現について、一元配置ANOVAによるLCM投与またはWT組織との比較、図7Aおよび7B)。
【0108】
実施例26-腫瘍細胞の遊走、付着性および増殖を促進するVEGFR1+細胞
VEGFR1+前駆細胞が腫瘍細胞の化学誘引および接着を促進することを確かめるために、腫瘍が移植されたマウスからVEGFR1+細胞を単離して、赤色蛍光(PKH26-G1)で標識した(図8)。緑色蛍光(PKH2-GL)で標識されたB16またはLLC細胞とのインビトロ同時インキュベーションで1時間以内に、造血前駆細胞が凝集して増殖し(150%の増加)、腫瘍細胞の接着および増殖を促進した。これに対して、抗VEGFR1抗体または抗VLA-4抗体のいずれかの存在下であらかじめ培養しておいたVEGFR1+HPCは、この結合親和性および拡大を阻止した(図8A)。さらに、トランスウェル遊走アッセイを行ったところ、骨髄由来VEGFR1+細胞に応答した蛍光標識腫瘍細胞の移動性(29.6±1.4個の腫瘍細胞/200×)は、非VEGFR1細胞(11.2±0.4)および培地のみ(9.9±0.9)よりも増強していた(図8B、p<0.001、一元配置ANOVAによる)。SDF-1/CXCR4軸は、骨髄内の特定のニッチに対するBM前駆細胞のホーミングおよび保持において顕著な役割を果たすことが知られている(Ratajczak et al., "Stem Cell Plasticity Revisted: CXCR4-positive Cells Expressing mRNA for Early Muscle, Liver and Neural Cells 'Hide Out' in the Bone Marrow," Leukemia. 18:29-40 (2004)、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。この軸を利用する多くの生理的プロセスにおける骨髄からの造血幹細胞および前駆細胞の移動と同様に、CXCR4を発現する特定の腫瘍細胞種も、局所ケモカイン勾配に応答してこの様式で遊走しうる(Lapidot et al., "Current Understanding of Stem Cell Mobilization: The Roles of Chemokines, Proteolytic Enzymes, Adhesion Molecules, Cytokines and Stromal Cells," Experimental Hematology. 30:973-981 (2002)、Balkwill、F., "The Significance of Cancer Cell Expression of the Chemokine Receptor CXCR4," Seminars in Cancer Biology. 14:171-179 (2004)およびMuller et al., "Involvement of Chemokine Receptors in Breast Cancer Metastasis," Nature. 410:50-56 (2001)、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。VEGFR1+細胞、線維芽細胞およびフィブロネクチンを含む、十分に形成された前転移性クラスターの内部では(図1A、左パネルに見られるように)、SDF-1(CXCL12)が高発現されるようになった(図8C)。CXCR4は、確立した原発性黒色腫の全体にわたってびまん性パターンで同定されたが、LLCについては「生存性」縁での局在領域であった(図8D)。前転移性ニッチに起原を発するケモカイン勾配の存在は、CXCR4+腫瘍細胞を誘引するのに役立つ可能性がある。これらの所見は、腫瘍タイプによって指示されるフィブロネクチンのアップレギュレーションが、前転移性ニッチの形成のために必要なVLA-4+VEGFR1+造血クラスターの結合を可能にすることを示唆する。さらに、VEGFR1およびVLA-4ならびにSDF-1およびCXCR4の発現を介した、これらのクラスターと腫瘍細胞との間の相互作用は、前転移性ニッチの転移への進行を支える。
【0109】
実施例27-転移拡散の腫瘍特異的パターンを指示するのを助ける腫瘍由来の馴化培地
LLCおよびB16細胞の選択的な転移能力についてさらに調べるために、培養下にある両方の腫瘍細胞種から馴化培地を入手した。LLC-馴化培地(LCM)の腹腔内注射は、培地のみ(図4)と比較して、定在性線維芽細胞からと思われるフィブロネクチンの発現を生じさせ、原発性皮内LLCと類似した様式ではあるがより急速に、BM由来のクラスター形成も生じさせた(図4A)。皮内B16腫瘍の影響と同等ではあるがより加速された形で;黒色腫馴化培地(MCM)は、LCMよりも大きな程度で、肝臓におけるフィブロネクチン発現を指示した(図4B)。MCMはまた、培地のみ(図4B)と比較して、腸(図4Bならびに図7Aおよび7B)で観察されたように、広範囲にわたる臓器において、クラスター形成を伴う線維芽細胞増殖およびフィブロネクチン発現の増強を引き起こす。これは、LLCを有するそれと比較して、B16腫瘍を有する動物において観察されたクラスターの増加と同時並行的に起こる(図1)。MCMがLCMよりも偏在的な様式でクラスター形成を促進すると考えて、続いて、増殖因子がこれらの2つの馴化培地間の転移能力およびプロフィールを説明する一助となるように変化するか否かを調べた(図4C)。腫瘍を有する動物からの血漿よりも高い、高レベルのVEGFが両方の馴化培地群で認められた。しかし、VEGFR1のみを介してシグナルを伝達する胎盤増殖因子(PIGF)のレベルに関しては、2つの馴化培地間で明らかな違いが検出された。MCMおよび黒色腫由来の血漿は、PIGFがほとんどまたは全く認められなかったLCMおよびLLC由来血漿と比較して、有意に高いレベルのPIGFを含む(図4C)。さらに、転移性の低い変異LLCにおいては、悪性度の高い対応物と比較して、馴化培地および血漿についてVEGFおよびPIGFの両方がはるかに低かった。トランスウェルアッセイにおいて、LCMおよびMCMは、他の増殖因子条件と比較してVEGFR1+骨髄由来細胞の遊走を最も効果的に増強した(LCM 55%±0.4、MCM 68.1%±5、培地10.8%±1.7、図4D、p<0.001、一元配置ANOVAによる)。これらの結果を考慮して、MCM中のPIGFなどのサイトカインが、LLC転移を通常ではない転移部位に再方向付けしうるか否かを問いただした。LLC皮内腫瘍移植の前にMCMを腹腔注射によって投与し、以後毎日投与したところ、肝臓および肺から、B16黒色腫が高い頻度で観察される腎臓、脾臓、腸および卵管などの部位へのLLC転移の再方向付けがもたらされた(図4E)。LLC腫瘍移植およびMCM注射を受けたマウスでは、VEGFR1抗体はクラスター形成を阻止し、LLC転移の再方向付けを防止した。これらの結果は、VEGFR1細胞クラスターを伴う馴化培地中に存在する腫瘍特異的ケモカインおよび/またはサイトカインが、転移拡散の基礎をなす複雑で多次元的な生化学的プログラムおよび細胞プログラムにおけるもう1つの決定因子であることを示している。
【0110】
特定の腫瘍のあらかじめ決定された転移部位への転移を指示する厳密な細胞上および分子上の機序は不明である。多くの腫瘍には、特定の部位への転移の偏好性がある。現在のドグマによれば、転移の偏好性は、腫瘍細胞それ自体における固有の分子的違い、ならびに血管系、結合組織および免疫細胞を含む周囲の間質細胞による潜在的な影響を反映すると考えられている(Hynes、R.O., "Metastatic Potential: Generic Predisposition of the Primary Tumour or Rare, Metastatic Variants-or Both?," Cell. 113:821-3 (2003)、Bergers et al., "Benefits of Targeting Both Pericytes and Endothelial Cells in the Tumour Vasculature with Kinase Inhibitors," J Clin Invest. 111:1287-95 (2003)、Fidler、I., "The Organ Microenvironment and Cancer Metastasis," Differentiation. 70:498-505 (2002)、Duda et al., "Differential Transplantability of Tumour-associated Stromal Cells." Cancer Research 64:5920-5924 (2004)、およびFolkman、J., "Role of Anigiogenesis in Tumour Growth and Metastasis," Semin. Oncol. 29:515-8 (2002)、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。以上の結果は、腫瘍転移が、標的臓器内に特定の許容性ニッチを形成させるVEGFR1+細胞の送達による分子的ブックマーキングに依存する、十分に規定された一連の事象によって惹起されるという新たな概念を導入するものである。以上のデータはさらに、腫瘍により分泌される体液性因子の違いが、特定の遠隔臓器における転移拡散を促進することを示唆する。腫瘍移植後の数日以内に、フィブロネクチンは、具体的な原発性腫瘍に応じた、将来の転移部位であることが知られた標的臓器の内部で、特定の場所で定在性の線維芽細胞および線維芽細胞様細胞によってアップレギュレートされるようになった。同時に、以前に記載されたように、造血前駆細胞は骨髄を出て末梢循環に入る(Hessig et al., "Recruitment of Stem and Progenitor Cells from the Bone Marrow Niche Requires MMP-9 Mediated Release of Kit-ligand," Cell. 109:625-37 (2002)、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。フィブロネクチンからのニッチ特異的な方向付けの手かがりの結果として、VLA-4を発現しMMP-9を産生するVEGFR1+HPCは、腫瘍およびVEGFR2+内皮細胞の到達前に、確立した内皮を越えて前転移性ニッチを形成することができる。これらのクラスターは、微小環境を変化させるMMP-9産生、ケモカイン勾配を作り出すSDF-1の発現の増強、ならびに腫瘍細胞の誘引およびニッチへの取込みを可能にするインテグリンアップレギュレーションをもたらすId3活性化を伴い、それによって完全な転移病変を生じさせる。示されたように、VEGFR1抗体による阻害またはVEGFR1+細胞の骨髄からの除去は、前転移性クラスターの形成を、そしてそれ故に転移を防止する。さらに、VEGFR1またはVLA-4の遮断は、造血性クラスター細胞および腫瘍細胞の結合および確立を防止する。Id3ノックアウトマウスへの野生型VEGFR1+細胞の導入による前転移性ニッチおよび転移の復旧は、Id3の発現が、前転移性ニッチの確立のために必須であるVEGFR1+細胞のホーミングのためのロードマップを与える、MMP-9、インテグリンおよびおそらくはケモカインを含む必要な要素の発現を誘導することを示唆する。
【0111】
最近、遠隔臓器への腫瘍の付着および浸潤を補助する炎症細胞の役割が大きく注目されている(Coussens et al., "Inflammation and Cancer," Nature. 420:860-867 (2002)、Borsig et al., "Synergistic Effects of L- and P-selectin in Facilitating Tumour Metastasis can Involve Non-mucin Ligands and Implicate Leukocytes as Enhancers of Metastasis," Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:2193-2198 (2000)、Lin et al., "Colony Stimulating Factor 1 Promoted Progression of Mammary Tumours to Malignancy," J. Exp. Med. 139:727-740 (2001)およびQian et al., "L-selectin can Facilitate Metastasis to Lymph Nodes in a Transgenic Mouse Model Model of Carcinogenesis," Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98:3976-3981 (2002)、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。本研究で同定されたVEGFR1+HPCは、必要な接着分子、プロテイナーゼ、ケモカインおよび成長条件を与えることにより、炎症の生理的経路に共通する特徴を発現し、腫瘍細胞の生着のための誘導性微小環境を作り出す(Bergers et al., "Matrix Metalloproteinase-9 Triggers the Angiogenic Switch During Carcinogenesis," Nat Cell Biol. 2:737-744 (2000)、Muller et al., "Involvement of Chemokine Receptors in Breast Cancer Metastasis," Nature. 410:50-56 (2001)およびSchoppman et al., "Tumour-associated Macrophages Express Lymphatic Endothelial Growth Growth Factors and are Related to Peritumoural Lymphaniogenesis," Am. J. Pathol. 161:947-956 (2002)、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。炎症との類似性にもかかわらず、前転移性ニッチはVEGFR1+前駆細胞集団で認められるように未分化状態を維持する。これは、非新生物細胞集団が将来の転移部位を予示しうることの初の直接的な証拠である。さらに、腫瘍拡散が明らかに認められる前のヒト組織における造血クラスターの同定は、臨床環境における転移の同定および予防を目的とするVEGFR1およびVLA-4に対するターゲティングの適用可能性を明らかに示すものである。この概念は腫瘍病期判定に対して極めて大きな影響を及ぼすと考えられ、アジュバント化学療法の展望を変化させると考えられる。
【0112】
好ましい態様を本明細書において詳細に描写および説明してきたが、関連技術分野の当業者には、本発明の精神を逸脱することなく、さまざまな改変、追加、置換などを行うことができ、これらはそれ故に以下の特許請求の範囲において規定される本発明の範囲に含まれると考えられることが明らかであると考えられる。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、癌の治療およびモニタリングならびに化学療法薬に関するスクリーニングにおける血管内皮増殖因子受容体1+細胞の使用法に向けられる。
【0002】
本出願は、2004年11月19日に提出された米国仮特許出願第60/629,662号、および2005年10月5日に提出された第60/723,770号の恩典を主張し、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0003】
本出願の主題は、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)の助成金第1 R01 CA098234-01号の下に、米国政府から支援を受けて得られた。米国政府は一定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
癌は米国では心発作に次いで二番目に多い死因である。この破壊的な結果をもたらす疾患の治療における新たな治療法の開発には重要な進展がみられる。この進展の多くは、正常細胞および癌細胞の両者における細胞増殖の理解が進んだことに起因する。
【0005】
正常細胞は、増殖因子受容体の、その各々のリガンドによる高度に制御された活性化の結果として増殖する。このような受容体の例には、増殖因子受容体チロシンキナーゼがある。
【0006】
癌細胞もまた、正常細胞におけるDNA変異または腫瘍抑制遺伝子機能の喪失の結果として増殖する。これらの遺伝的変化は、腫瘍に関連した増殖因子またはケモカインまたは受容体の過剰発現といったように、継続的な成長および転移の促進に向けて、他の細胞(例えば、内皮細胞)を刺激し、増殖させて腫瘍内に新たな血管を形成させることができる、多くの新たなタンパク質産物を生じさせる。
【0007】
腫瘍成長を支える非腫瘍細胞上に認められ、特定の環境では腫瘍細胞それ自体の表面に認められる増殖因子受容体のいくつかの例には、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、インスリン様増殖因子受容体(IGFR)、神経成長因子受容体(NGFR)および線維芽細胞増殖因子受容体(FGF)が含まれる。
【0008】
胚発生の過程では、ヘマンジオブラストと呼ばれる共通の前駆細胞から、造血細胞および初期内皮細胞(アンジオブラスト)が生じる。共通の細胞に由来するため、いくつかのシグナル伝達経路は造血細胞および血管細胞の両者に共通している。このような経路の一つはVEGFRシグナル伝達経路である。VEGF受容体(VEGFR)には、Shibuya M. et al., Oncogene 5:519-524 (1990)によってシークエンシングが行われたVEGFR1(他にはFLT-1として知られる)、および、Terman et al., Oncogene 6:1677-1683 (1991)中に記載され;かつMatthews W. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:9026-9030 (1991)によってシークエンシングが行われたVEGFR2(他にはKDRまたはFLK-1として知られる)が含まれる。
【0009】
別段に記述しない限り、または文脈によって明確にそれ以外のことが推測されない限り、本明細書はVEGF受容体に関する慣例的な文献上の命名法に従う。KDRはヒト型のVEGFR2と呼ばれることになる。FLK-1はVEGFR2のマウス相同体と呼ばれることになる。FLT-1はKDR/FLK-1受容体とは異なるものの関連性はある。
【0010】
VEGFRはVEGFR1およびVEGFR2のいずれとも結合して、内皮細胞および造血細胞に対して増殖作用および遊走作用を及ぼす。VEGRF2は内皮細胞に限定して発現されると考えられていた。しかし最近、VEGFR2が多能性造血幹細胞のサブセット上に存在することが示された(Ziegler et al., Science 285(5433):1553-8 (1999))。いくつかの研究により、ある種の白血病細胞もVEGFR1およびVEGFR2を発現することが明らかにされている(Fiedler et al., Blood 89(6):1870-5 (1997))。
【0011】
VEGFのさまざまな生物学的作用を媒介する2つの主要なシグナル伝達性チロシンキナーゼ受容体がVEGFR2およびVEGFR1である。VEGFに対するVEGFR1の結合親和性は極めて高く、Kd値が10〜70pMであるものの(Klagsbrun et al., Cytokine Growth Factor Rev 7(3):259-70 (1996))、ほとんどの研究は、VEGFR2が内皮細胞の増殖および分化のための細胞シグナルを伝達するために決定的な受容体であることを示している(Ortega et al., Am J Pathol 151(5):1215-24 (1997))。VEGFR1は血管リモデリングに対してより重要であるように思われる。脈管形成および血管形成の調節におけるVEGF受容体の相対的重要性は、マウス胚性幹細胞においてVEGFR2遺伝子およびVEGFR1遺伝子を相同組換えによって破壊した研究で確立されている。VEGFR2が欠損したマウスでは脈管形成、血管形成および造血に高度の欠陥がみられた(Shalaby et al., Nature 376(6535):62-6 (1995))。これに対して、VEGFR1ノックアウトマウスでは異常な血管路が生じ、このことはこの受容体が細胞相互作用および血管安定化の調節に役割を果たすことを示唆する(Fong et al., Nature 376(6535):66-70 (1995))。
【0012】
VEGFR2シグナル伝達の破壊による血管形成の阻害は、固形腫瘍の成長および転移の阻害をもたらす。例えば、マウスVEGFR2に対する中和モノクローナル抗体(MoAb)は、マウスモデルにおける腫瘍浸潤を阻害している(Skobe et al., Nat Med 3(11):1222-7 (1997)およびPrewett et al., Cancer Res 59(20):5209-18 (1999))。さらに、神経膠芽腫の成長は、VEGFR2に関してドミナントネガティブであるマウスで阻害されている(Millauer et al., Nature 367(6463):576-9 (1994))。このような腫瘍成長の阻害は、腫瘍の血流供給を効果的に制限する血管形成の阻害に起因する。
【0013】
白血病は、成熟および分化のさまざまな段階にある造血幹細胞から生じる。現在では、急性白血病は自己再生を起こす能力を有する未熟造血幹細胞から生じ、一方、慢性白血病などのある種のより悪性度の低い白血病はより成熟度の高い拘束された造血前駆細胞から生じることが十分に確立されている。
【0014】
いくつかの研究により、VEGFは、詳細に研究されているHL-60白血病細胞株を含め、樹立されたすべての白血病細胞株および新たに単離されたヒト白血病により、ほぼ常に発現されることが示されている(Fiedler et al., Blood 89(6):1870-5 (1997), Bellamy et al., Cancer Res 59(3):728-33 (1999))。いくつかの研究は、RT-PCRを用いて、VEGFR-2およびVEGFR-1がある種のヒト白血病のみによって発現されることを示している(Fiedler et al., Blood 89(6):1870-5 (1997), Bellamy et al., Cancer Res 59(3):728-33 (1999))。しかし、これらの研究のうち、VEGFの発現が同時並行的なVEGFR2/VEGFR1表面発現または機能的応答と関連するか否かを示したものはない。
【0015】
骨髄(BM)由来細胞(BMDC)は、悪性転換(Coussens et al., "MMP-9 Supplied by Bone Marrow-derived Cells Contributes to Skin Carcinogenesis," Cell 103:481-490 (2000))、腫瘍血管新生(Lyden et al., "Impaired Recruitment of Bone-marrow-derived Endothelial and Hematopoietic Precursor Cells Blocks Tumor Angiogenesis and Growth," Nat. Med. 7:1194-1201 (2001)およびAutiero et al., "Placental Growth Factor and its Receptor, Vascular Endothelial Growth Factor Receptor-1: Novel Targets for Stimulation of Ischemic Tissue Revascularization and Inhibition of Angiogenic and Inflammatory Disorders," Journal of Thromb. Haemost. 1:1356-1370 (2003))および新生物細胞の遊走(Neson et al., "Lymphocyte-facilitated Tumor Cell Adhesion to Endothelial Cells: the Role of High Affinity Leukocyte Integrins," Pathology 35:50-55 (2003))の一因となりうる。その幹細胞がBM内の特定のニッチ依存的領域に存在する、血管内皮増殖因子受容体1(VEGFR1)を発現する造血前駆細胞(HPC)の集団が同定されている。血管新生において、通常は全BM細胞のうち0.01%未満と少数であるこの集団は増殖し、BM由来のVEGFR2+内皮前駆細胞(EPC)とともに末梢循環へと動員されるが、これらはどちらも血管新生および原発性腫瘍の成長のために必須である(Lyden et al., "Impaired Recruitment of Bone-marrowderived Endothelial and Hematopoietic Precursor Cells Blocks Tumor Angiogenesis and Growth," Nat. Med. 7:1194-1201 (2001)およびHattori et al., "Placental Growth Factor Reconstitutes Hematopoiesis by Recruiting VEGFR1(+) Stem Cells from Bone-marrow Microenvironment," Nat. Med. 8:841-9 (2002))。骨髄単球由来であるこれらのVEGFR1+細胞は、腫瘍床における血管周囲部位に局在し、新たに形成された血管に対して支持および安定化の役割を果たす(Lyden et al., "Impaired Recruitment of Bone-marrowderived Endothelial and Hematopoietic Precursor Cells Blocks Tumor Angiogenesis and Growth," Nat. Med. 7:1194-1201 (2001))。これらおよびその他の腫瘍関連細胞は原発性腫瘍の成長を増強して腫瘍の拡散を促進することが見いだされているが、転移に対するそれらの明確な寄与は現在のところ不明である(Pollard, "Tumor-educated Macrophages Promote Tumor Progression and Metastasis," Nat. Rev. Cancer. 4:7178 (2004)およびHiratsuka et al., "MMP9 Induction by Vascular Endothelial Growth Factor Receptor-1 is Involved in Lung-specific Metastasis," Cancer Cell. 2:289-300 (2002))。
【0016】
本発明は、これらの現象を癌および転移のモニタリングおよび治療に利用することに向けられる。
【発明の概要】
【0017】
本発明は、以前の腫瘍形成の部位から離れた部位での癌患者における腫瘍形成を阻害する方法に向けられる。本方法は、癌患者に対して、以前の腫瘍形成の部位から離れた部位での癌患者における腫瘍形成を阻害するのに有効な条件下で、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質を投与する段階を含む。
【0018】
本発明のさらにもう1つの局面は、癌患者における転移を予防する方法に向けられる。本方法は、癌患者に対して、癌患者における転移を予防するのに有効な条件下で、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質を投与する段階を含む。
【0019】
本発明のもう1つの局面は、癌患者における腫瘍形成の阻害または転移の予防に有用な候補化合物を同定する方法に向けられる。これは、被験化合物を提供する段階、および被験化合物を血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞とともにインキュベートする段階を含む。血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞と結合する被験化合物は、癌患者における腫瘍形成の阻害または転移の予防に有用な候補化合物として同定される。
【0020】
本発明のもう1つの局面は、癌患者における転移をモニタリングする方法に関する。本方法は、患者試料を血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞のレベルに関して評価する段階、およびその血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞のレベルを血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の以前のレベルと比較する段階であって、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞のレベルの上昇によって将来の転移が示される段階を含む。
【0021】
本発明のさらにもう1つの局面は、以前の腫瘍形成の部位から離れた部位での対象におけるフィブロネクチン発現を阻害する方法に関する。これは、対象に対して、以前の腫瘍形成の部位から離れた部位での対象におけるフィブロネクチン発現を阻害するのに有効な条件下で、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質を投与する段階を含む。
【0022】
現時点では、全切除または部分切除およびアジュバント化学療法後の固形腫瘍の患者であって、後に転移を発症すると考えられる患者を判定することは極めて困難である。所定の任意の腫瘍について転移の頻度が高い部位(例えば、結腸癌患者における肝臓、骨肉腫患者における肺、乳癌患者におけるリンパ節)でVEGFR1+骨髄由来細胞を測定するシステムは、どの患者が、これらのVEGFR1+骨髄由来クラスターを標的とする追加的なアジュバント治療、ならびに、例えば、転移性または再発性病変の呈示を待つのではなく化学療法を伴う切除後に事前治療を行うといった、より慣例的な治療法を必要とするかを予測するのに役立つ可能性がある。これらの細胞クラスターを、VEGFR1またはVLAを発現する循環性細胞または動員細胞として血流中で追跡することもできる。さらに、将来的には、治療法に対する反応を追跡するため、または将来の転移リスクを評価するために、画像化試験によって追跡することを目的として、これらのVEGFR1+造血前駆細胞を標識することも可能である。これは、病期判定および微量残存病変に関するモニタリングのためのアプローチを変更するのに役立つ可能性がある。このようなマーカーおよび考えられる治療戦略は、原発性腫瘍を有する患者の医療ならびにそのような患者のために非常に有用であることが判明するであろう。また、この戦略は、虚血性疾患、ならびに関節リウマチおよび炎症性腸疾患などの炎症性疾患を有する患者に対しても有効である可能性がある。
【0023】
腫瘍の拡散に先立って転移の部位に、入ってくるVEGFR2+内皮細胞および腫瘍細胞にとって助けとなる微小環境の形成を導くこれらのVEGFR1+骨髄由来細胞が存在することは、これらの細胞がこれらの特徴を説明しうる新規なケモカインまたは増殖因子を産生するという証拠を提供する。腫瘍細胞の遊走および付着性の増強を引き起こすVEGFR1+細胞および前転移性ニッチに関与する新規なタンパク質/遺伝子の単離/同定は、腫瘍の拡散の予防のための重要な標的をもたらすと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1A〜Eは、骨髄由来細胞が前転移性ニッチを形成することを示している。図1Aにおいて、β-gal+骨髄細胞(左パネル)は、照射後かつLLC細胞移植前の肺ではほとんど観察されない(n=6)。第14日までに、β-gal+骨髄由来クラスターが肺実質中に出現し(左中パネルおよび矢印で示された領域の拡大挿入図;n=25)、第23日までにこれらは微小転移(右パネル、矢印)および肉眼的な転移(右パネル、挿入図;n=12)を伴うようになる。頻度の高い転移部位である終末細気管支と気管支静脈との間の間質中にクラスターも示されている(右中パネル)。Bは終末細気管支であり、Vは気管支静脈である。図1Bは、照射後かつDsRedタグ付加B16細胞の移植前の肺におけるGFP+骨髄を示している(左パネル;n=6)。第14日にはGFP+ BMDCが認められ、DsRed+腫瘍細胞はみられない(左中パネルおよび挿入図;n=12)。第18日から少数の個別のDsRed+ B16細胞がGFP+骨髄クラスターに付着しはじめ(右中パネル)、第23日までにDsRed+腫瘍細胞がクラスター部位で増殖するようになる(右パネル;n=8)。DAPI染色は細胞核を示している。図1Cは、肺における骨髄由来のGFP+ BMDCおよびDsRed+ B16細胞のフローサイトメトリーデータを示したグラフ(n=30)、ならびに第14日(左パネル)および第18日(右パネル)の2つの流れ図である。図1Dは、GFP+ BMDCをB16馴化培地を用いて動員し、続いてDsRedタグ付加腫瘍細胞を尾静脈から注入し、24時間後に付着したもの(右パネル、矢印)を、培地のみを投与した動物(左パネル;P<0.01)と比較して示している。挿入図は、4日後のクラスター内の増殖中の腫瘍細胞を示している(右パネルの挿入図;n=6)。図1Eは、皮内にLLCまたはB16腫瘍を有する動物における100倍対物視野当たりのクラスターの数を示している(n=12)。右下方のスケールバーは、図1A(左、左中、右中、80mm;左中挿入図、8mm;右、20mm;右挿入図、47mm)、図1B(左、左中、80mm;左中挿入図、8mm;右中、右、40mm)および図1D(40mm;右挿入図、20mm)に対して適用される。前転移性クラスターはVEGFR1+造血前駆細胞から構成される。図1F〜Iは前転移性クラスターがVEGFR1造血前駆細胞から構成されることを示している。図1Fは、腫瘍移植前の照射肺(左パネルおよび挿入図;n=10)および肺におけるクラスターを示しているLLC細胞移植から14日後の照射肺におけるVEGFR1染色を示している(右パネル、矢印;n=18、100倍対物視野当たりのVEGFR1染色を伴う細胞は3.9±0.2%、P<0.05)。図1GおよびHは、第14日のLLC腫瘍を有する動物の肺における二重免疫蛍光を示している。VEGFR1+およびGFP+骨髄細胞(左パネル)、VEGFR1+およびCD133+(右パネル)は図1Gに示されている。VEGFR1+およびCD117+は図1Hに示されている。図1Iは、生後40日の時点での腫瘍発生前のc-Mycトランスジェニックリンパ節におけるVEGFR1+クラスター(中央パネル、およびVEGFR1+細胞を示している挿入図)を、導入遺伝子を伴わない野生型同腹子リンパ節(左パネル)およびリンパ腫を有する第120日のc-Mycトランスジェニック節(右パネル)と比較して示している。右パネルの挿入図において、矢印はリンパ腫によって囲まれたVEGFR1+クラスターを示している(n=6)。右下方のスケールバーは、図1E(80mm;左挿入図、40mm)、図1G(20mm)、図1H(20mm)および図1I(80mm;挿入図、8mm)に対して適用される。
【図2】図2A〜Bは、骨髄細胞のホーミングの阻害によって転移が防止されることを示している。図2Aは、LLC移植から24日後に、VEGFR1+の選択された骨髄(R1陽性)が、微小転移(矢印、中央パネル)を許容するが、野生型(左パネル)に見られるような十分に血管が発達した大きな転移を防止することを示している。挿入図は、CD31(内皮マーカー)の発現を示している。VEGFR1+細胞(非R1)を除去した骨髄ではクラスターおよび転移の両方が無効化される(右パネル)(P<0.01、ANOVAによる)。表は100倍対物視野当たりのクラスターおよび微小転移の数を示している。*は転移が肺に充満していることを表す(R1陽性、n=4;非R1、n=4;野生型、n=6;非R1+野生型、n=4)。図2Bは、LLC腫瘍を有するマウスにおけるVEGFR1(抗R1)およびVEGFR2(抗R2)に対する抗体による処理が、クラスターおよび転移の両方を防止することを示している(P<0.01、ANOVAによる;すべての群について、n=5)。野生型の肺における矢印は大きなLLC転移を表す。抗R2における矢印はクラスターを示し、挿入図はクラスター内部の微小転移を示している。T、腫瘍細胞。表は、肺における100倍対物視野当たりのクラスターおよびLLC微小転移の数を示している。*は転移が組織に充満していることを表す。右下方のスケールバーは、図2A(20mm;野生型の挿入図、26mm;R1陽性の挿入図、32mm)および図2B(40mm;抗R2の挿入図、20mm)に対して適用される。
【図3】図3A〜Fは、VLA4/フィブロネクチン経路がクラスター形成を媒介することを示している。図3A〜Cは、腫瘍移植から14日後の野生型マウスに、VLA-4(挿入図、VEGFR1およびVLA-4)、MMP9およびId3(挿入図、VEGFR1およびId3)を発現するクラスターが生じていることを示している。図3Dは、VEGFR1+GFP+ BMDCを投与された、LLC腫瘍を有するId3ノックアウト(KO)マウスにおける肺組織を示している(P<0.01、ANOVAによる;n=6)。矢印は、上方の挿入図における領域を示している。矢印(下方の挿入図)は、GFP+VEGFR1+細胞を伴う転移の部位を示している。図3Eは、野生型肺におけるベースラインでのフィブロネクチン発現を示している(n=6)(左パネル)。前転移性肺の気管支周囲領域における間質フィブロネクチンの増加が第3日の時点でみられ(中央パネル、矢印)、第14日に発現が最大となった(右パネル)。挿入図、PDGRFα発現はフィブロネクチンを固着させる定在性の線維芽細胞を指し示している。図3Fは、定量的RT-PCRにより、LLC腫瘍を有するマウスの肺におけるフィブロネクチン発現が野生型よりも高いこと(*P<0.05、ANOVAによる;n=6)、およびB16黒色腫を有する動物のからの肺でのより早期に同様の傾向が判明したことを示している。右上方のスケールバーは、図3A〜C(40mm;挿入図、8mm)、図3D(80mm;右上方の挿入図、20mm;右下方の挿入図、80mm)および図3E(40mm;挿入図、20mm)に対して適用される。
【図4】図4A〜Eは、非定型的な部位へのLLC転移の再方向付け(redirection)を示している。図4A〜Bは、定量的RT-PCR分析により、MCMを投与されたマウスでは野生型およびLCM処理のものと比較して卵管(図4A)および腸(図4B)においてフィブロネクチン発現の増加が認められたことを示している。ANOVAにより、卵管については、野生型と比較して、第3〜5日で*P<0.05、第7〜9日で**P<0.001であり、腸については第7〜9日で*P<0.001である(n=6)。図4Cは、馴化培地中のVEGFおよびPIGFのレベルに関するELISAアッセイ(3回ずつ)を示している(*P<0.05、L-LCMとの比較、**P<0.01、培地のみとの比較、ANOVAによる)。図4Dは、VEGFR1+細胞のLCMおよびMCMへの遊走の増強を示すトランスウェル遊走アッセイ(3回ずつ)を示している(**P<0.001、ANOVAによる)。図4Eは、MCMによる処理によって、LLCの転移拡散が、脾臓(左パネル)、腎臓(左中パネル)、腸(右中パネル)および卵管(右パネル)などのB16黒色腫転移部位へと再方向付けされることを示している。矢印は、挿入図に示されている転移境界の領域を示している(n=6)。T、LLC腫瘍細胞。右下方のスケールバーは、図4E(200mm;挿入図、20mm)に対して適用される。
【図5】図5A〜Eは、腫瘍およびVEGFR2+細胞がVEGFR1+HPCの後に到達することを示している。図5Aは、第8日、第14日、第18日および第23日のフローサイトメトリー分析を示しており、これは肺におけるGFP+BMDCおよびDsRed B16黒色腫腫瘍細胞の集団を描写している(n=30)。図5Bは、CD34を伴うVEGFR1(中央パネル)、VEGFR1とこれらの造血マーカーの共発現の頻度(右グラフ)を示している。図5Cは、フローサイトメトリーによる肺におけるCD117+前駆細胞および蛍光性GFP+-LLC腫瘍細胞の分析により、第12日、第14日、第18日および第27日によって表されるように腫瘍細胞の到達前にこれらの細胞が存在することが判明したことを示している。図5Dは、骨髄由来のVEGFR2+循環性内皮前駆細胞が、VEGFR1+造血前駆細胞の後に前転移性ニッチに到達することを示している。VEGFR1とVEGFR2との二重免疫蛍光(左パネル)。VEGFR1とCD31/PECAMとのもの(中央パネル)(矢印は内皮細胞を指し示している)。VEGFR2+細胞のGFPとの二重免疫蛍光は、確立して成長している転移ニッチの内部のこれらの細胞が骨髄由来であることの表れである(右パネル)。図5Eは、VEGFR-2+細胞の転移ニッチへの到達の時期が、第16日および第24日の腫瘍を有する動物の肺組織で見られるように(細胞数/クラスター/100倍視野)、腫瘍細胞の到達と一致することを図示したグラフを示している(n=6)。スケールバー:20μm(図5B);左、左中央20μm、右10μm(図5D)。
【図6】図6A〜Fは、前転移性ヒト組織におけるVEGFR1の発現を示している。細胞クラスターが、乳癌(n=15)、肺癌(n=15)および消化器癌(n=3)を有する個体における悪性組織および非悪性組織においてVEGFR1により染色された。図6Aは乳腺癌転移の証拠があるリンパ節を示しており(矢印は腫瘍を指し示している)、図6Bは同じ患者からの悪性病変を伴わないリンパ節を示している。図6Cは原発性肺腺癌を示しており、図6Dは新生物を伴わない隣接する「正常な」肺を示している(矢印はVEGFR1+細胞を指し示している)。癌を有しない個体からのリンパ節(図6B挿入図;n=6)および肺組織(図6D挿入図;n=3)においてVEGFR1+クラスターは見られなかった。胃食道接合部の原発性腺扁平上皮癌(図6E)および癌を伴わない肝リンパ節(図6F)も示されている。図6E〜F中の挿入図は、VEGFR1とc-Kitとの同時免疫蛍光を示している。右下方のスケールバーはすべてのパネルに対して適用される(40mm;挿入図、40mm)。
【図7】図7A〜Cは、腫瘍がケモカインプロフィールおよびフィブロネクチン発現パターンに関してさまざまであることを示している。図7Aは、LLC馴化培地(LCM)で処理したWTマウスでは、培地対照(左パネルおよび中央パネルの挿入図)と比較して、肝臓(左パネル)および肺(中央パネル)においてフィブロネクチン発現が誘導されることを示している(n=12)。LCMは肺におけるβ-gal+BMクラスターを支える(右パネル、TB=末端細気管支、BV=気管支静脈)(n=6)。図7Bは、MCMで処理したマウスでは、培地対照での腸におけるフィブロネクチン発現(中央パネルの挿入図)に対して、肝臓(左パネル)および腸(中央パネル)ならびに腎臓、精巣および肺におけるフィブロネクチン発現の増強が起こることを示している(n=12)。MCMで処理したβ-gal+BMを有するWTマウスは、フィブロネクチンが豊富な領域に局在する隣接クラスター形成を呈する(右パネル)(n=6)。図6Cは、第14日の腫瘍を有する動物から得たLLCおよびB16黒色腫の両方についての、腫瘍由来の血漿におけるVEGFおよびPIGFに関するELISAレベルを示している(3回ずつ、*p<0.05、腫瘍由来の血漿とWT血漿との比較、一元配置ANOVAによる)。図7A〜Bについてのスケールバーは以下の通りである:左および中央パネル40μm、挿入図35.2μm、右パネル20μm。
【図8】図8A〜Dは、骨髄由来のVEGFR1+細胞が腫瘍細胞を誘引することを示している。図8Aは、BMから単離してB16腫瘍細胞と共培養したVEGFR1+細胞が凝集体を形成して増殖し、この効果がVEGFR1(中央パネル)またはVLA-4(右パネル)に対する抗体処理によって失われることを示している。図8Bは、選択されたVEGFR1+集団へのB16腫瘍細胞の遊走が増加することを示すトランスウェル遊走アッセイを示している(3回ずつ、p<0.001%、R1と非R1および培地との比較)。図8Cは、低倍率および高倍率でのVEGFR1+細胞クラスターのSDF-1(CXCL12)免疫蛍光染色を示している。VEGFR1+細胞クラスターによるSDF-1αおよびVEGFR1の同時免疫蛍光は、SDF-1α発現に関して陽性の染色。図8Dは、LLCおよびB16腫瘍細胞がCXCR4を発現することを示している。スケールバー;50μm、図8Aについては挿入図120μm、左および右のパネル40μm、図8Cについては中央8μm、図8Dについては20μm。
【図9】Id3ノックアウトマウスではHPC動員がみられないこと、およびId3欠損マウスではCD11b+ VEGFR1+造血前駆細胞の動員が減少することを示している。
【図10】VEGFR1抗体がB16腫瘍における転移を阻害することを示している。B16腫瘍(右パネル)が、VEGFR1および/またはVEGFR2に対する中和抗体で処理したマウスで示されている。WTの脾臓における塗り潰された矢印は、成長しうる黒色腫を挿入図とともに示しており、中抜き矢印は壊死およびメラニン顆粒を示している。抗R1(抗VEGFR1)における矢印は、脾臓における典型的な胚中心 を示している。抗R1+抗R2群における挿入図は、1匹の動物の肺における孤立性の転移を表している。スケールバーは以下の通りである:20μm:挿入図 WT脾臓 8μm、抗R1+抗R2 66μm。
【図11】図11A〜Dは、VLA-4およびMMP-9の阻害によって転移が阻害されることを示している。B16黒色腫は肺におけるフィブロネクチン発現を誘導する。これらの画像は、抗VLA-4抗体により処理したWTマウス(β-galとエオシンによる対比染色、n=8、p<0.01、Studentのt検定による)(図11A)およびMMP9-/-マウス(VEGFR1 DABとヘマトキシリンによる対比染色 n=6)(図11B)における、LLC移植から14日後の肺組織を表している。VLA-4抗体を投与されたWTマウスまたはMMP-9欠損マウスではβ-galおよびVEGFR1細胞クラスター形成が低減しており、これは図11C中に、クラスターまたは転移を定量した画像/100倍視野の下に表されている(p<0.01、Studentのt検定による)。図11Dは、B16黒色腫腫瘍移植後の第3日および第14日での肺組織におけるフィブロネクチン発現を示している。第14日における矢印はクラスター部位におけるフィブロネクチン発現を表している。スケールバーは以下の通りである:80μm(図11A)および左、中央パネル40μm、右8μm(図11D)。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な説明
本発明は、以前の腫瘍形成の部位から離れた部位での癌患者における腫瘍形成を阻害する方法に向けられる。本方法は、癌患者に対して、以前の腫瘍形成の部位から離れた部位での癌患者における腫瘍形成を阻害するのに有効な条件下で、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質を投与する段階を含む。この阻害物質を、原発性腫瘍部位での腫瘍再発を予防するために用いることもできる。
【0026】
本方法の投与の段階は、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の動員が刺激される時に対応する時期に行われる。このような刺激は、化学療法、ストレス、外科手術、癌患者における骨髄回復、炎症、照射または増殖因子の結果として起こりうる。顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージ刺激因子およびエリスロポエチンなどの増殖因子の刺激においては、血流中の造血細胞の動員が刺激され、腫瘍の成長および転移が促進される可能性がある。
【0027】
本発明の実施において、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質は、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞と結合するように選択される。
【0028】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質は、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の形成を防止または低減するように選択される。適した阻害物質は、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞に特異的な生体分子、またはRNAもしくはDNAを阻害する低分子でありうる。
【0029】
生体分子には、すべての脂質、ならびに分子量が450を上回る単糖類、アミノ酸およびヌクレオチドの重合体が含まれる。したがって、生体分子には、例えば、オリゴ糖および多糖、オリゴペプチド、ポリペプチド、ペプチドおよびタンパク質;ならびにオリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドが含まれる。オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドには、例えば、DNAおよびRNAが含まれる。
【0030】
生体分子にはさらに、上記の分子の任意のものの誘導体も含まれる。例えば、生体分子の誘導体には、オリゴペプチド、ポリペプチド、ペプチドおよびタンパク質の脂質およびグリコシル化誘導体が含まれる。生体分子の誘導体にはさらに、オリゴ糖および多糖の脂質誘導体、例えば、リポ多糖が含まれる。
【0031】
最も典型的には、生体分子は、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞に特異的な抗体、またはそのような抗体の機能的等価物である。このような機能的等価物には、例えば、キメラ化、ヒト化および一本鎖抗体ならびにそれらの断片が含まれる。
【0032】
抗体の機能的等価物は、好ましくは、キメラ化またはヒト化抗体である。キメラ化抗体は、非ヒト抗体の可変領域およびヒト抗体の定常領域を含む。ヒト化抗体は、非ヒト抗体の超可変領域(CDR)を含む。ヒト化抗体の超可変領域以外の可変領域、例えばフレームワーク可変領域および定常領域は、ヒト抗体のものである。
【0033】
本出願の目的において、非ヒト抗体の適した可変領域および超可変領域は、モノクローナル抗体を作製させる任意の非ヒト哺乳動物によって産生された抗体に由来してよい。ヒト以外の哺乳動物の適した例には、例えば、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ヤギまたは霊長動物が含まれる。マウスが好ましい。
【0034】
機能的等価物にはさらに、完全な抗体のそれと同じまたは同等な結合特性を有する、抗体の断片が含まれる。
【0035】
このような断片は、例えば、F(ab')2断片の一方または両方のFab断片を含んでよい。好ましくは、抗体断片は、完全な抗体の6つの相補性決定領域すべてを含むが、このような領域のすべてよりも少数、例えば3つ、4つまたは5つのCDRを含む機能的断片も同じく含まれる。
【0036】
好ましい断片は、一本鎖抗体またはFv断片である。一本鎖抗体とは、抗体の重鎖の少なくとも可変領域が、相互接続用リンカーを伴って、または伴わずに、軽鎖の可変領域と結合したものを含むポリペプチドのことである。したがって、Fv断片は抗体結合部位の全体を含む。これらの鎖は細菌または真核細胞において産生させることができる。
【0037】
抗体および機能的等価物は、IgG、IgM、IgA、IgDまたはIgEといった免疫グロブリンの任意のクラス、およびそれらのサブクラスのメンバーであってよい。好ましい抗体は、IgG1サブクラスのメンバーである。機能的等価物は、上記のクラスおよびサブクラスの任意のものの組み合わせの等価物であってもよい。
【0038】
本発明の抗体は、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞と結合することができ、それらの活性を阻害するように機能してもよい。このような抗体は、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の機能を阻害することにより、特に癌の治療において、治療的潜在能力を有する可能性がある。
【0039】
本発明の抗体は、VLA-4(α4β1)インテグリンと結合して、これらの骨髄由来クラスターの形成を阻害することができる。このような抗体は、VEGFR1+およびVLA-4+骨髄由来細胞の機能を阻害することにより、特に癌の治療において、治療的潜在能力を有する可能性がある。
【0040】
本発明の抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体のいずれであってもよい。
【0041】
モノクローナル抗体の生産は、当技術分野で周知である手法によって行うことができる。概略を述べると、この工程は、まず、事前に、インビボまたはインビトロで関心対象の抗原によって免疫化された哺乳動物(例えば、マウス)の脾臓から免疫細胞(リンパ球)を入手することを含む。続いて、抗体分泌性リンパ球を、細胞培養下で無限に複製可能な(マウスの)骨髄腫細胞または形質転換細胞と融合させ、それによって不死性の免疫グロブリン分泌細胞系を作製する。その結果得られた融合細胞またはハイブリドーマを培養し、その結果得られたコロニーを所望のモノクローナル抗体の産生に関してスクリーニングする。このような抗体を産生するコロニーをクローニングし、大量の抗体を産生させるためにインビボまたはインビトロで増殖させる。このような細胞を融合させることの理論的基盤および実用的方法の記述は、Kohler et al., Nature 256:495 (1975)に示されており、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0042】
哺乳動物のリンパ球は、血管内皮増殖因子受容体1+による動物(例えば、マウス)のインビボ免疫化によって免疫化される。十分な力価の抗体を得るために、必要に応じて、このような免疫化を最長で数週間の間隔で反復する。最後の抗原追加接種の後に、動物を屠殺して脾臓細胞を取り出す。
【0043】
細胞培養下で無限に複製可能な哺乳動物骨髄腫細胞またはその他の融合パートナーとの融合は、標準的で周知の手法によって、例えばポリエチレングリコール(「PEG」)または他の融合剤を用いることによって達成される(Milstein et al., Eur. J. Immunol. 6:511 (1976)、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。この不死細胞系は、好ましくはマウスのものであるがラットおよびヒトを非限定的に含む他の哺乳動物種の細胞に由来してもよく、急速な成長を可能とする、ある種の栄養分の利用のために必要な酵素が欠損していて、かつ良好な融合能力を有するように選択される。多くのこのような細胞系は当業者に公知であり、その他のものはたびたび記載されている。
【0044】
ポリクローナル抗体を産生させるための手順も周知である。典型的には、このような抗体は、免疫前血清を得るためにまず採血したニュージーランドホワイト種ウサギに血管内皮増殖因子受容体1+を皮下投与することによって産生させることができる。抗原は1部位当たり総容積100μlで6つの異なる部位に注射することができる。注射されるそれぞれの材料は、合成界面活性剤アジュバント・プルロニックポリオール、またはSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動後のタンパク質もしくはポリペプチドを含む微粉アクリルアミドゲルを含むと考えられる。続いて、初回注射から2週間後にウサギから採血し、6週間毎に3回、同じ抗原の追加接種を定期的に行う。続いて、それぞれの追加接種から10日後に血清の試料を採取する。続いて、抗体の捕捉のための対応する抗原を用いるアフィニティークロマトグラフィーにより、ポリクローナル抗体を血清から回収する。最後に、ウサギをペントバルビタール150mg/Kg IVによって安楽死させる。ポリクローナル抗体を産生させるためのこの手順および他の手順は、Harlowら編、Antibodies: A Laboratory Manual (1988)に開示されており、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0045】
本質的にヒト性である抗体は、ヒト抗体を発現するように遺伝的に改変されたトランスジェニック哺乳動物、特にトランスジェニックマウスにおいて産生させることができる。キメラ抗体およびヒト化抗体を作製するための方法も当技術分野で公知である。例えば、キメラ抗体を作製するための方法には、米国特許第4,816,397号および第4,816,567号に記載されたものが含まれ、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。ヒト化抗体を作製するための方法は米国特許第5,225,539号に記載されており、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0046】
抗体のヒト化のために好ましい方法は、CDRグラフティングと呼ばれる。CDRグラフティングでは、抗原との結合に直接関与するマウス抗体の領域であるCDRの相補性決定領域をヒト可変領域に移植して、「再構築されたヒト」可変領域を作り出す。続いて、これらの完全にヒト化された可変領域をヒト定常領域と連結して、完備された「完全ヒト化」抗体を作り出す。
【0047】
抗原と十分に結合する完全ヒト化抗体を作り出すためには、再構築されたヒト可変領域を注意深く設計することが有益である。CDRを移植しようとするヒト可変領域は注意深く選択されるべきであり、ヒト可変領域のフレームワーク領域(FR)の内部の決定的な位置に対して少数のアミノ酸変化を施すことが通常は必要である。
【0048】
例えば、再構築されたヒト可変領域は、選択されたヒト軽鎖可変領域のFR中に最大10個のアミノ酸変化を含むことができ、選択されたヒト重鎖可変領域のFR中に12個ものアミノ酸変化を含むことができる。これらの再構築されたヒト重鎖および軽鎖可変領域遺伝子をコードするDNA配列を、ヒト重鎖および軽鎖定常領域遺伝子、好ましくはそれぞれγ1およびκをコードするDNA配列と連結する。続いて、再構築されたヒト化抗体を哺乳動物細胞において発現させ、その標的に対するその親和性を対応するマウス抗体およびキメラ抗体のそれと比較する。
【0049】
置換すべきヒト化抗体の残基を選択するための方法、および置換を施すための方法は当技術分野で周知である。例えば、Co et al., Nature 351:501-502 (1992);Queen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:10029-1003 (1989)およびRodrigues et al., Int. J. Cancer, Supplement 7:45-50 (1992)を参照のこと、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。225の抗EGFRモノクローナル抗体のヒト化および再構築のための方法はWO 96/40210号に記載されており、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。本方法は、他のタンパク質に対する抗体のヒト化および再構築のために適合させることができる。
【0050】
一本鎖抗体を作るための方法も当技術分野で公知である。いくつかの例には、欧州特許出願第502 812号およびWels et al., Int. J. Cancer 60:137-144 (1995)に記載されたものが含まれ、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。また、一本鎖抗体をファージディスプレイライブラリーのスクリーニングによって調製することもできる。
【0051】
上記の機能的等価物を作製するためのその他の方法は、WO 93/21319号、欧州特許出願第239 400号、WO 89/09622号、欧州特許出願第338 745号、米国特許第5,658,570号、米国特許第5,693,780号および欧州特許出願第332 424号に開示されており、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0052】
本発明の方法の実施において、投与の段階は、主題阻害物質を経口、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下または鼻腔内に投与することによって行われる。本発明の阻害物質は単独で投与しても、または適した薬学的担体とともに投与してもよく、錠剤、カプセル、粉末、溶液、懸濁液または乳濁液といった固体または液体の形態であってよい。
【0053】
本発明の阻害物質は、例えば不活性希釈剤もしくは吸収されうる可食担体とともに経口投与してもよく、またはそれを硬カプセルもしくは軟カプセル中に封入してもよく、またはそれを圧縮して錠剤にしてもよく、またはそれを食品と直接混合してもよい。経口的な治療用投与のためには、本発明の阻害物質を添加剤と混合して、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤などの形態で用いることができる。このような組成物および製剤は、本発明の阻害物質を少なくとも0.1%含むべきである。これらの組成物における阻害物質のパーセンテージは当然ながらさまざまであってよく、その構成単位の重量の約2%〜約60%であることが好都合である。このような治療的に有用な組成物における本発明の阻害物質の量は、適した投薬量が得られるようなものであると考えられる。
【0054】
また、錠剤、カプセル剤などが、トラガカントゴム、アラビアゴム、コーンスターチまたはゼラチンなどの結合剤;第二リン酸カルシウムなどの添加剤;コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;およびスクロース、ラクトースまたはサッカリンなどの甘味剤を含んでもよい。投薬単位剤形がカプセルである場合には、それは、上記の種類の材料に加えて、脂肪油などの液体担体を含んでもよい。
【0055】
さまざまな他の材料が、コーティング剤として、または投薬単位の物理的形態を改変するために存在してもよい。例えば、錠剤をセラック、糖またはその両方によってコーティングすることができる。シロップ剤は、有効成分に加えて、甘味剤としてのスクロース、保存料としてのメチルパラベンおよびプロピルパラベン、色素、ならびにチェリーまたはオレンジの香味といった香味剤を含みうる。
【0056】
本発明の阻害物質を非経口的に投与することもできる。阻害物質の溶液または懸濁液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適宜混合して、水を媒質として調製することができる。分散液を、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、および油中にあるそれらの混合物を媒質として調製することもできる。実例となる油には、石油、動物性、植物性または合成由来の油、例えば、ラッカセイ油、大豆油または鉱油がある。一般に、水、食塩水、水性デキストロースおよび関連した糖溶液、ならびにプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのグリコールが好ましい液体担体であり、特に注射用溶液に対してはそうである。通常の貯蔵および使用の条件下で、これらの製剤は微生物の増殖を防ぐための保存料を含む。
【0057】
注射用途に適した剤形には、滅菌注射溶液または分散液、および滅菌注射溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末が含まれる。すべての場合において、その形態は滅菌されていなければならず、しかも容易な注入可能性が存在する程度まで流動性でなければならない。それは、製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、しかも細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、これらの適切な混合物、および植物油を含む溶媒または分散媒でありうる。
【0058】
本発明の阻害物質を、エアロゾルの形態で気道に直接投与することもできる。エアロゾルとしての使用のためには、溶液または懸濁液の状態にある本発明の阻害物質を、従来のアジュバントとともに、例えばプロパン、ブタンまたはイソブタンのような炭化水素噴射剤などの適した噴射剤と一緒にして、加圧されたエアロゾル容器内にパッケージ化してもよい。本発明の阻害物質を、ネブライザーまたは噴霧器などにおける非加圧形態で投与してもよい。
【0059】
本発明は、多岐にわたる癌を治療するのに有用である。本明細書で用いる場合、癌を治療するとは、具体的には、癌があると診断された患者、すなわちその患者の体内に確立した癌を有すると診断された患者に対して、癌組織における悪性細胞のそれ以上の成長もしくは拡散を阻害するため、および/または悪性細胞の死滅を引き起こすために、治療薬を投与することを指す。具体的には、乳癌、結腸癌、前立腺癌、肺癌および皮膚癌、ならびに多くの小児癌が、本発明の方法による治療の対象となりうる。癌を治療することにはまた、前悪性状態を有する患者を、前悪性状態の進行を停止させるため、またはその退縮を引き起こすために治療することも含まれる。前悪性状態の例には、過形成、異形成および化生が含まれる。
【0060】
本発明の治療術は、単独で用いることもでき、または他の癌治療法(例えば、化学治療薬、放射線照射またはそれらの組み合わせ)とともに用いることもできる。
【0061】
化学療法薬の例には、アルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン化合物およびアルキルスルホネート);代謝拮抗剤(例えば、葉酸、プリンまたはピリミジン拮抗薬);有糸分裂阻害剤(例えば、ビンカアルカロイド、ポドフィロトキシンの誘導体、および細胞毒性抗生物質);およびDNA発現に障害または干渉を及ぼす化合物が含まれる。
【0062】
化学療法薬または化学療法の具体的な例には、シスプラチン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、メクロルエタミン(ナイトロジェンマスタード)、ストレプトゾシン、シクロホスファミド、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ダウノルピシン、プロカルバジン、マイトマイシン、シタラビン、エトポシド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル(タキソテール)、アルデスロイキン、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、クラドリビン、ダカルバジン、フロクスウリジン、フルダラビン、ヒドロキシ尿素、イホスファミド、インターフェロンα、ロイプロリド、マガストロール(magastrol)、メルファラン、メルカプトプリン、オキサロプラチン、プリカマイシン、ミトタン、ペガスパルガーゼ、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、ウラシルマスタード、ビノレルビン、クロラムブシル、タキソールおよびそれらの組み合わせが含まれる。
【0063】
また、本発明の阻害物質を、放射線と併用することもできる。放射線の線源は、治療される患者の体外にあっても体内にあってもよい。線源が患者の体外にある場合には、その治療法は外部線源照射療法(EBRT)として知られる。放射線の線源が患者の体内にある場合には、その治療は近接照射療法(BT)と呼ばれる。
【0064】
放射線は、周知の標準的な手法に従って、この目的に製造された標準的な装置、例えばAECL TheratronおよびVarian Clinacなどを用いて投与される。放射線の線量は、当技術分野で周知の数多くの要因に依存する。このような要因には、治療される臓器、放射線の経路にあって誤って有害な影響を受ける可能性のある健常臓器、放射線療法に対する患者の認容性、および治療を必要とする身体の面積が含まれる。線量は典型的には1〜100Gyの間、特に2〜80Gyの間であると考えられる。報告されているいくつかの線量には、脊髄に対する35Gy、腎臓に対する15Gy、肝臓に対する20Gy、および前立腺に対する65〜80Gyが含まれる。しかし、本発明はいかなる特定の線量にも限定されないことが強調されるべきである。線量は、上述した要因を含む、所定の状況における具体的な要因に従って、治療を行う医師によって決定されると考えられる。
【0065】
外部放射線の線源と患者への進入点との間の距離は、標的細胞を死滅させることと副作用を軽減することとの間で許容しうるバランスが得られるような任意の距離であってよい。典型的には、外部放射線の線源は、患者への進入点から70〜100cmのところにある。
【0066】
近接照射療法は一般に、放射線の線源を患者の体内に配置することによって行われる。典型的には、放射線の線源は、治療される組織から約0〜3cmのところに配置される。公知の手法には、間質、洞間および表面近接照射療法が含まれる。放射性シードは永続的に移植することも一時的に移植することもできる。永続的インプラントに用いられているいくつかの典型的な放射性原子には、ヨウ素-125およびラドンが含まれる。一時的インプラントに用いられているいくつかの典型的な放射性原子には、ラジウム、セシウム-137およびイリジウム-192が含まれる。近接照射療法に用いられているそのほかのいくつかの放射性原子には、アメリシウム-241および金-198が含まれる。
【0067】
近接照射療法のための放射線の線量は、外部線源照射療法について上述したものと同じでありうる。近接照射療法の線量の決定においては、外部線源照射療法の線量の決定に関して上述した要因に加えて、用いられる放射性原子の性質も考慮される。
【0068】
本発明の特に好ましい態様は、アジュバント治療レジメンと合わせたその使用法を含む。特にこれは、外科手術の前および/または後の、さらには従来のアジュバント化学療法コースの全体を通じての、または外科手術を伴わない一次化学療法(アジュバントではない)コースを伴っての、化学療法、ならびにVEGFR1および/またはVLA-4に対する追加的なモノクローナル抗体の使用を含む。さらに、本発明を、一次手術の後に、通常であれば治療を受けない可能性のある患者、すなわち、一次完全切除後で残留性または遠隔性病変の証拠がみられない患者を、転移の拡散を予防するために治療するために用いることもできる。さらに、本発明を、転移の拡散のリスクが非常に高い患者を判定するための診断ツールとして用いることもできる。
【0069】
本発明のさらにもう1つの局面は、癌患者における転移を予防する方法に向けられる。本方法は、癌患者に対して、患者における転移を予防するのに有効な条件下で、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質を投与する段階を含む。本発明のこの局面は、上記のものと実質的に同じ治療術および治療様式を用いることを含む。
【0070】
本発明のこの局面の実施において、阻害物質は血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の形成または増殖を防止または低減する。このような阻害物質が、このような細胞の遊走、または他の部位での腫瘍の形成もしくは増殖を防止してもよい。
【0071】
本発明のもう1つの局面は、癌患者における腫瘍形成の阻害または転移の予防に有用な候補化合物を同定する方法に向けられる。これは、被験化合物を提供する段階、および被験化合物を血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞とともにインキュベートする段階を含む。血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞と結合する被験化合物は、癌患者における腫瘍形成の阻害または転移の予防に有用な候補化合物として同定される。
【0072】
本発明のもう1つの局面は、癌患者における転移をモニタリングする方法に向けられる。本方法は、患者試料を血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞のレベルに関して評価する段階、および血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞のレベルを血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の他のレベルと比較する段階を含む。このような他のレベルは患者における以前のレベルであってよく、この場合には、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞のレベルの上昇によってさらなる転移が示される。または、他のレベルは標準的または正常なレベルであってもよく、この場合にはレベルの測定値が正常または標準的なものよりも高いことによって転移が示されうる。
【0073】
本発明のこの局面の実施において、患者試料は組織試料または血液試料でありうる。
【0074】
本発明のこの局面は、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞のレベルを血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の以前のレベルと比較する段階に基づいて治療薬を投与することによって実施することが特に望ましい。このような投与には、上記のようなアジュバント治療レジメンが含まれる。または、治療薬は、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞のレベルを血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の以前のレベルと比較することに基づいてその強度が選択された化学療法薬でもありうる。
【0075】
本方法はインビトロで行うこともインビボで行うこともできる。本発明のインビボの局面に関して、評価および比較の段階は、癌患者における領域を画像化することを含む。これは、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞に特異的な標識物質、または標識された血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞を用いて、そのいずれかを癌患者に導入することによって実現することができる。
【0076】
本発明のさらにもう1つの局面は、以前の腫瘍形成の部位から離れた部位での対象におけるフィブロネクチン発現を抑制する方法に関する。これは、対象に対して、以前の腫瘍形成の部位から離れた部位での対象におけるフィブロネクチン発現を阻害するのに有効な条件下で、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質を投与することを含む。本発明のこの局面は、上記のものと実質的に同じ治療術および治療様式を用いることを含む。
【実施例】
【0077】
実施例1-骨髄BM移植
野生型C57Bl/6マウスに致死的な放射線照射(950rad)を行って、1×106個のβ-ガラクトシダーゼ+またはGFP+BM細胞(Rosa-26マウス)を移植した(Lyden et al., "Impaired Recruitment of Bone-marrow-derived Endothelial and Hematopoietic Precursor Cells Blocks Tumor Angiogenesis and Growth," Nat. Med. 7:1194-1201 (2001)、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。4週間後にマウスに2×106個のLLC(ATCC)またはB-16細胞(ATCC)のいずれかを皮内注射した。
【0078】
実施例2-β-ガラクトシダーゼ染色
組織および大腿骨を4%パラホルムアルデヒド(PFA)中で4時間にわたり固定した。試料を、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Tam et al., "The Allocation of Epiblast Cells to the Embryonic Heart and other Mesodermal Lineages:The Role of Ingression and Tissue Movement during Gastrulation," Development. 124:1631-1642 (1999)に記載された通りに、37℃のX-gal溶液中にて36時間にわたり染色した。X-gal染色された腫瘍およびBMを、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Lyden et al., "Impaired Recruitment of Bone-marrow-derived Endothelial and Hematopoietic Precursor Cells Blocks Tumor Angiogenesis and Growth," Nat. Med. 7:1194-1201 (2001)に記載された通りに包埋した。
【0079】
実施例3-蛍光性腫瘍トランスフェクション
B16およびLLC細胞(2×105個)をトランスフェクションの24時間前にプレーティングした。続いて細胞をペレット化し、DsRedレポーター遺伝子またはGFP遺伝子を含むレンチウイルスベクター上清とともに無血清培地中に再懸濁させた。以前に記載されたように、力価が1ml当たり感染性粒子1〜2×108個である濃縮されたウイルス構築物を、1ml中の2×106個の細胞(感染多重度50)を感染させるために用いた。蛍光の程度を確認するためにフローサイトメトリー分析を行った。C57Bl/6マウスに2×106個のLLC/GFP+またはB16/DsRed+細胞を接種した。
【0080】
実施例4-免疫組織化学
その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Lyden et al., "Id1 and Id3 are Required for Neurogenesis, Angiogenesis and Vascularization of Tumor Xenografts," Nature. 401:670-677 (1999)に記載された通りに、組織を固定して、OCT中またはパラフィンブロック中に包埋した。すべての抗原に関して、以下の抗原を用いた:VEGFR1(Flt-1、クローンmF-1、ImClone Systems、New York、New YorkおよびFlt-1クローンC-17、Santa Cruz Biotechnology)、CD31(PECAM、SC-1506、Santa Cruz Biotechnology)、VEGFR2(Flk-1/KDR、dc101、ImClone Systems)、MMP-9(D19557、Oncogene)、Id3(C-20、Santa Cruz Biotechnology)、フィブロネクチン(TV-1、Chemicon)、CD11b(CBRM1/5、eBioscience)、CD34(RAM34、BD Pharmigen)、ckit(ACK2、eBioscience)、PDGFRα(CD49d、VL-4、PS_2、Southern Biotech)、αV(Chemicon)、CD133(13A4、eBioscience)、α4(CD49d、VLA-4、PS_2、Southern Biotech)、α5(CD49e、5H10-27)、α6(CD49f、GoH3、BD Pharmingen)β1(9EG7、BD Pharmingen)、β2(M18/2、BD Pharmingen)、β4(Santa Cruz Biotechnology)、β7(M293、R+D Pharmingen)、SDF-1(79018.111、BD systems)CXCR4(2B11、BD Pharmingen)。
【0081】
実施例5-二重免疫蛍光
組織をOCT中にて切片化し、アセトンで後固定した。洗浄は、0.1%BSA/PBSを用いて行い、非特異的抗体をアビジンおよびビオチン(Vector Laboratories)でブロッキングした。第1の一次抗体(上で詳述した通り)を4℃で一晩インキュベートした。種特異的なビオチン化二次抗体(Vectastain ABC Kit, Vector)を室温で30分間インキュベートした。続いてテキサスレッドアビジンDまたはフルオレセインアビジンD(Vector)を30分間インキュベートした。この工程を第2の一次抗体についても繰り返した。切片をDAPI(Vectashield, Vector)を用いて蛍光封入剤にマウントし、以上のようにして描出した。
【0082】
実施例6-選択的骨髄移植
Rosa-26マウスに、第0、4および8日にアデノ-VEGF165(AdVEGF)を投与した(Avecilla et al., "Chemokine-mediated Interaction of Hematopoietic Progenitors with the Bone Marrow Vascular Niche is Required for Thrombopoiesis," Nat. Med. 10:64-71 (2004)、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。第12日にBMを単離し、ビオチン化マウスVEGFR1抗体および抗ビオチン磁気ビーズ(Miltenyi Biotec)で標識して、MACS(Miltenyi Biotec)を用いて分離した。3回の連続継代後のVEGFR1+BMの純度は95%であった。陰性選択集団は非R1細胞に相当した(Hattori et al., "Placental Growth Factor Reconstitutes Hematopoiesis by Recruiting VEGFR1(+) Stem Cells from Bone-marrow Microenvironment," Nat. Med. 8:841-9 (2002)、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。WTマウスに放射線を照射し、上記のように選択的BMを移植した。Id3 KO(Id1+/+Id3-/-)マウスに対して、3日毎で合計23日にわたる細胞105個の静脈内注射により、選択的なId3コンピテントVEGFR1+BMを移植した。対照動物には腫瘍を伴わずにVEGFR1+細胞を投与した。
【0083】
実施例7-抗体ターゲティング
WTマウスに2×107個のLLCまたはB-16細胞を接種した。VEGFR-1の遮断のために、マウスに対して、VEGFR1(mf-1、IgG1、400μg、ImClone)もしくはVEGFR2(DC101、IgG1、800μg、ImClone)に対するラット抗マウス抗体、またはそれらの組み合わせを第7〜22日の間に48時間毎に腹腔内注射し、その後に第24日に屠殺した。VLA-4のα4サブユニットの遮断のためには、マウスに対して、CD49dに対するラット抗マウス抗体(クローンR1-2、IgG2bκ、200μg、BD Biosciences Pharmingen)を第4日、第8日および第12日に静脈内注射した。動物をクラスター形成の評価のために第14日に屠殺した。腫瘍発生の後期にある転移に対するターゲティングのために、抗α4抗体を第6日、10日、14日、18日および22日に注射し、動物を第24日に屠殺した。すべての群を、実験群と同じスケジュールでの投与を受けたラット抗マウスIgG2aκアイソタイプ対照(KLH/G2a1-1、Southern Biotech)と比較した。
【0084】
実施例8-MMP-9 KO
C57BL6バックグラウンドを有するマウスをJackson Laboratoryから入手した。
【0085】
実施例9-インビトロ凝集アッセイ
第14日に、BM由来のVEGFR1+細胞を、B16細胞が移植されたマウスから単離した。R1+細胞(5×105個)を赤色蛍光(PKH26-GL, Sigma, St. Louis, MO)で染色し、10%FCSを加えたM199培地中を含む0.2%ゼラチン上で培養して、rhVEGF(10ng/mL, R&D Systems)、抗VEGFR1(10μg/ml、mf-1、ImClone)または抗α4(CD49、PS_2、20μg/ml、Southern Biotec)とともに14時間インキュベートした。同じく、腫瘍細胞との14時間のインキュベーションの前に、VEGFR1+細胞とrhVEGF、抗VEGFR1、抗α4との1時間のインキュベーションを行う試験も行った。R1+細胞をB-16またはLLC腫瘍細胞と共培養し、緑色蛍光(PKH2-GL、Sigma)で標識して(Lee et al., "In Situ Labeling of Adherent Cells with PKH26," In Vitro Cell. Dev. Biol.-Animal. 36:4-6 (2000)、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)、凝集および増殖に関して分析した。
【0086】
実施例10-馴化培地試験
B-16またはLLC細胞を18時間培養した無血清培地から、Kessinger et al., "Circulating Factors may be Responsible for Murine Strain-specific Responses to Mobilizing Cytokines," Exp. Hematology. 29:775-778 (2001)、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)に記載された通りに、馴化培地を濾過した(0.22μ)。上で詳述した通りに4週間前にRosa-26 BMTを投与されたWTマウスに対して、CM(300μl)を毎日、9日間にわたって腹腔内注射した。組織をフィブロネクチン(TV-1、Chemicon)およびβ-galに関して染色した。腫瘍の再方向付け試験のためには、黒色腫CM(300μl)またはPIGF(300μl、Peprotec)の腹腔内注射をLLC細胞の皮内移植の2日前に開始し、以後21日間にわたって毎日継続した。マッチさせた腫瘍を伴う対照群および伴わない対照群に対して、無血清培地を投与した。腫瘍の再方向付けを阻害するために、MCMを投与されたLLC腫瘍を有する実験群に対して、抗体ターゲティング試験と同様に抗VEGFR1抗体を注射した。組織を第22日に検査した。上に詳述したように、マッチさせた腫瘍を伴う対照群および伴わない対照群に対しては抗体処理と処理無しのそれぞれを行った。
【0087】
WT動物に対して、黒色腫馴化培地(300μL)を毎日、7日間にわたって注射し、その後にB16黒色腫腫瘍細胞を尾静脈に注射した。MCMまたは無血清RPMIを、B16注射後のマウスに対して毎日投与し、静脈内腫瘍投与から24時間後または4日後に屠殺した。肺をPBSで灌流し、その後にOCT中に凍結包埋させた。
【0088】
実施例11-遊走アッセイ
次に、馴化培地に応答したVEGFR1細胞の遊走について試験した。VEGFR1細胞を上記の通りに単離し、無血清培地中に再懸濁させた1×105個の細胞を、孔径5μmのトランスウェル(Costar、Corning Incorporated)の上方区画に入れた。馴化培地または対応する対照培地を用いて細胞を18時間遊走させた上で、細胞を膜の下側および下方区画から剥離し、血球計算器およびトリパンブルーを用いて6時間毎に細胞数の分析による評価を行った。VEGFR1+細胞に対するB16またはLLC腫瘍細胞の遊走は、以前に記載された通りに孔径12μmのトランスウェルを用いて行った(Redmond et al., "Endothelial Cells Inhibit Flow-induced Smooth Muscle Cell Migration: Role of Plasminogen Activator Inhibitor-1," Circulation 103:597-603 (2001)、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。蛍光標識した腫瘍細胞(PKH2-GL、Sigma)を1×105個として上方チャンバーに播き、1×105個のVEGFR1細胞を、無血清培地の入った下方チャンバーにプレーティングした。上方チャンバーと下方チャンバーとの間に濃度勾配はなかった。分析は、直接的な観察、および倒置蛍光顕微鏡(Nikon Eclipse TE 2000-U)を用いた手作業による200倍視野当たりの細胞数算定により、6時間毎に行った。
【0089】
実施例12-多数の組織におけるフィブロネクチンの定量的PCR分析
以前の記載の通りに(Hashimoto et al., "Bone Marrow-derived Progenitor Cells in Pulmonary Fibrosis." The Journal of Clinical Investigation 113:243-252 (2004)、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)、肺組織をTriZol中にて組織ホモジナイザーでホモジネート化し、RNAを抽出した。フィブロネクチン遺伝子の発現を定量し、以前の記載の通りに(Jensen et al., "The Human Herpes Virus 8-encoded Chemokine Receptor is Required for Angioproliferation in a Murineモデルof Kaposi's Sarcoma," Journal of Immunoiogy 174:3686-94 (2005)、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)、TaqMan遺伝子発現アッセイ(Applied Biosystems)を用いてGAPDHに対して標準化した。
【0090】
実施例13-ケモカインアッセイ
馴化培地および無血清培地ならびに腫瘍由来の血漿を、ELISA(Quantikine、R&D Systems)により、製造元の指示に従って、VEGFおよびPIGF濃度に関して分析した。腫瘍由来血漿はLLCまたはB16腫瘍細胞の14日後にマウスから入手した。
【0091】
実施例14-フローサイトメトリー試験
以前に記載された通りに(Gill et al., "Vascular Trauma Induces Rapid But Transient Mobilization of VEGFR2+AC133+ Endothelial Precursor Cells," Circulation Research 88:167-174 (2001)、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)、末梢血単核細胞を、蛍光結合モノクローナル抗体CD11b(M1/70、PE抗マウス、BD Pharmingen)、Sca-1(E13-161.7、PEおよびFITC抗マウスLy-6A/E、Becton Dickinson)およびVEGFR1(クローンmf-1、FITC、ImClone Systems)とともにインキュベートした。フローサイトメトリーは、以前に記載された通りに、右心室からの注入を介したPBSによる肺の灌流後の右肺全体を小片に刻んで100μmおよび40μmのフィルター(BD Biosciences)に通して単細胞懸濁液としたものに対しても行った。cKitフロー分析については、単細胞懸濁液を入手した後に、細胞をperCP cKitで直接に染色し、その後に固定せずにPBS中に入れ、Coulter FC500細胞計算器で分析した。
【0092】
実施例15-ヒト標本
ヒト標本には、腫瘍、隣接正常部(腫瘍境界域を越えたところ)、遠隔正常部およびリンパ節が含まれる。上記の通りに組織をパラフィン中に包埋して凍結固定し、VEGFR1(FB5、ImClone Systems)およびFlt-1、Calbiochemに対する抗体で染色した。組織試料は承認されたIRB申請書に従って入手し、取り扱った。
【0093】
実施例16-定量的免疫組織化学分析
IP LabおよびAdobe Photoshop 7.0の両方を利用して、ランダムな100倍視野を入手し、β-galまたは免疫組織化学染色に関する標準化された色調範囲を選択することによって分析した。ひとたびこの境界が描写されたところで、ピクしレーションヒストグラム下面積を計算し、総染色面積を総組織面積と比較した。
【0094】
実施例17-統計分析
結果は、平均±標準誤差として表現される。データは、Graphpad Prism統計プログラムを用いたstudent検定および分散分析によって分析した。P値<0.05を有意とした。エラーバーは平均の標準誤差を表す。
【0095】
本出願者らは、原発性腫瘍の皮内注射後のβ-ガラクトシダーゼ+(β-gal+)骨髄(BM)由来細胞の運命を分析した。肺に特異的に転移し、肝臓に稀に転移するルイス肺癌(LLC)腫瘍細胞、またはより広い播種性転移能を有するB16黒色腫腫瘍細胞を用いた。いずれかの型の腫瘍の皮内注射後に、肺、肝臓、脾臓、腎臓および生殖腺を切片化し、β-gal+BM細胞の存在に関して染色するか、またはGFP+BM細胞に関してスクリーニングした。照射後かつ腫瘍移植の前には、マウスの肺にはβ-gal+(0.01%±0.01 β-gal染色/100倍視野)もGFP+BM由来細胞もほとんどまたは全く観察されなかった(図1Aおよび1Bの左パネル)。腫瘍移植後であって腫瘍細胞の到達前である第14日までに、β-gal+(3.2%±1.2 β-gal染色/100倍視野、p<0.05、Studentのt検定による)またはGFP+BM由来細胞の血管外漏出およびクラスター形成が、いずれも将来転移が起こりやすい部位である終末細気管支および遠位肺胞付近で検出されるようになった(図1Aおよび1B、左中パネルおよび挿入図)。第16日までには、組織化された間質要素を20〜100個の細胞を含むβ-gal+クラスターが、将来の転移病変の外形を示すようになる(図1A、右中パネル)。既存のBM由来のクラスターに付随する個々の赤色蛍光性腫瘍細胞が第18日までに認められるようになり(図1B、右中パネル)、それは第23日までに微小転移へと進行する(図1Aおよび1B、右パネル)。β-gal+BM細胞の存在は十分に確立した腫瘍転移の内部であっても維持された(図1A、右パネル挿入図)。
【0096】
実施例18-腫瘍細胞の拡散の前に到達する骨髄由来細胞
腫瘍細胞到達の時期をさらに明確にするために、GFP+骨髄由来細胞および赤色蛍光標識した腫瘍細胞の存在を判定するためのフローサイトメトリー試験に着手した。第8日の前には、肺にはごくわずかなGFP+BM由来細胞が観察される(図1C 左パネルおよび表)。第12日から以後は、BM由来細胞の肺内への遊走がみられ、これはBM由来クラスターの顕微鏡下での観察と時を同じくする(図1C)。これらの細胞の数は増加し、その後、第18日までには腫瘍細胞と合流する(図1C)。第16日以前には、顕微鏡検査およびフローサイトメトリーのいずれによっても肺内に腫瘍細胞は検出されなかった。時間経過とともに、フローサイトメトリーによって肺内で同定される腫瘍細胞の数は増加し、これは顕微鏡画像で見られるように、確立した骨髄由来クラスターの部位での腫瘍細胞の付着および増殖に対応する(図1Bおよび1C)。腫瘍細胞がGFP+BM由来クラスターとともにクラスターを形成する頻度は95%を上回ることが明らかにされた(97%±1.1、図1B、右パネル)。この方法を用いて少数の腫瘍細胞が見逃された可能性はあるものの、培養下にあるB16黒色腫細胞によって馴化された培地を投与されたマウスを用いたさらなる実験では、馴化培地のみで骨髄由来細胞の動員および前転移性ニッチの形成を引き起こしうることが例証されている。転移の尾静脈モデルを用いたところ、馴化培地による刺激後の腫瘍細胞の導入(図1D)は、培地のみ(図1D)と比較して、注射1日後の肺内の腫瘍細胞の数を増加させる(図1D、141.3±10.2個の腫瘍細胞に対して、2.7±0.6個の腫瘍細胞/肺断面、p<0.01、Studentのt検定による)。腫瘍細胞の静脈内注射の4日後までには、転移性の節の頻度ならびにサイズが増大した(207±5.6個の腫瘍細胞/肺断面に比して、14±1.7個の腫瘍細胞/肺断面、p<0.01、Studentのt検定による)。赤色蛍光性腫瘍細胞のGFP+クラスターに対する同時局在分析は、どちらの時点でも93%を上回り、このことはこれらのBM由来細胞が腫瘍細胞の接着および増殖を補助することを示している。したがって、原発性腫瘍によって放出される因子の影響の下で、BM由来細胞は血流中に入り、遠隔性ではあるが特異的な前転移性部位へと動員される。
【0097】
実施例19-腫瘍タイプ特異的であるBM由来細胞クラスターの部位
腫瘍細胞種が体内の特異的な前転移性部位へのBMクラスターの分布を指示するか否かについて調べた(図1E)。LLC腫瘍細胞の皮内注射は、この腫瘍細胞種の転移特異性が原因で、肺(47.5±2.6/100倍視野)および肝臓(10.8±1.1)のみに限定されるBMクラスターの形成をもたらし、精巣、脾臓および腎臓ではクラスターは全く観察されなかった。これに対して、B16黒色腫腫瘍細胞は、この腫瘍が転移する頻度の高い臓器に対応して、肺(103.8±6.9)、肝臓(41.8±2.4)、精巣(36.6±3.1)、脾臓(25±3.2)および腎臓(20.6±1.8)などの多数の臓器でBMクラスターの形成を誘導した(図1E)。さらに、B16黒色腫細胞は、その転移性がより強いことに一致して、LLC腫瘍細胞よりも有意に多くのクラスターを誘導した(p<0.01、Studentのt検定による)。
【0098】
実施例20-これらのBM由来細胞の特性決定による造血前駆細胞の状態の判明
次にBM由来クラスターの細胞組成の特性を決定した。いずれの腫瘍細胞種によって誘導されたクラスターもVEGFR1を発現した(図1F、野生型よりも3.9±0.2の増加)。GFP+BM由来のクラスターはVEGFR1を共発現し(図1F)、これに対して照射のみの後の肺実質ではVEGFR1はほとんど発現されなかった(図1F)。これらの細胞クラスターのさらなる特性決定により、VEGFR1+であるBM由来細胞の大半がCD133(図1G)、CD34(図1G)およびCD117(cKit)を共発現することが判明し(図1Gおよび図1H)、このことからこれらの細胞のサブセットが始原造血細胞起原であることが示唆された。また、骨髄単球性マーカーはCD11b特定の細胞に存在したことから、BM由来クラスターには、ある程度の成熟上の不均一性もみられた。原発性腫瘍移植後の肺内の前駆細胞の分析では、以前に提示された経時推移試験が再現された。フローサイトメトリーによって認められたように、CD117+細胞は、GFP標識された腫瘍細胞よりも前に肺に到達した(図1H)。この初期のVEGFR1+BMクラスターではVEGFR2(図5A)およびCD31(図5A)の発現はみられなかった。さらなる動態試験により、VEGFR2+CEPが、腫瘍細胞の到達と時を同じくしてBM由来クラスターへと遊走することが判明した(図5B)。十分に形成された前転移性ニッチは、骨髄由来VEGFR2+内皮前駆細胞を含む(図5)。これらの所見は、BM由来のVEGFR1+造血細胞が前転移性ニッチを惹起して維持させ、腫瘍転移の惹起および維持のための許容性微小環境をもたらすことを立証するものである。
【0099】
実施例21-自然発生腫瘍モデルで生じるBM由来クラスター
移植された腫瘍に関する所見を、自然発生腫瘍モデルを用いたものと比較した。c-Mycを過剰発現するトランスジェニックマウスを選んだが、これはその早期発現およびリンパ系全体にわたる高悪性度の腫瘍拡散が理由である。生後40日までに、顕著なVEGFR1+クラスターが腫瘍の発現前にリンパ節内に検出され(145.1±16.4個のクラスター/100倍視野、図1I、中央パネルおよび挿入図)、これに対して、野生型同腹子ではクラスターが欠如していることが観察された(0.4±0.3個のクラスター/100倍視野、図1I、左パネル、p<0.001、Studentのt検定による)。これらのクラスターは、肺および肝臓などの他の臓器では観察されなかった。生後4カ月までには、VEGFR1+クラスターは確立したリンパ腫の全体に存続していたが、前転移性状態におけるよりもその程度は小さかった(c-Mycマウスにおける67.8±9.5個のクラスター/100倍視野に対して、同腹子では0.7±0.5個のクラスター/100倍視野、図1I、右パネルおよび挿入図、p<0.001、Studentのt検定による)。VEGFR1+細胞クラスターの周囲のリンパ腫細胞は明らかにVEGFR1を発現しなかった(図1I、右パネル挿入図)。
【0100】
実施例22-ヒト組織において転移の頻度が高い部位に生じるBM由来の細胞クラスター
マウスモデルで得られた、VEGFR1+細胞クラスターの腫瘍特異的形成を例証するデータを検証するために、原発性固形腫瘍を有する患者からのヒト組織を分析した。VEGFR1+クラスターはヒトの原発性腫瘍および転移組織の両方で観察された(図6A;乳癌-腋窩リンパ節、図6C;肺癌、図6E;食道癌)。転移の頻度の高い部位では腫瘍拡散の前に細胞クラスターの増加がみられ、このことからこの組織が悪性化する潜在能力が示唆された(図6、クラスター数/100倍視野;図6B;腋窩リンパ節21±5、図6D;肺19±4、図6F;GE接合部25±4)。悪性腫瘍を有しない患者から入手した正常なヒトリンパ節および肺組織は、VEGFR1+クラスターの形成を示さなかった(図6B、6D挿入図)。
【0101】
実施例23-選択的BM集団のターゲティングにより判明した、転移におけるVEGFR1+細胞の機能的役割
精製されたVEGFR1+BM細胞が前転移性クラスターを惹起する潜在能力を、これらの前駆細胞を照射マウスに選択的に移植することによって評価した。LLC移植から24日後までに、無傷BMを移植された対照マウス(WT)は顕著な肺転移を示し(図2A、左パネル)、十分に確立した血管を伴っていた(図2A、左パネル挿入図)。しかし、VEGFR1+BMの精製された集団を移植されたマウスでは、少数の腫瘍細胞から構成される多数の微小転移が肺全体に形成され(図2A、中央パネル矢印および表、25±9個の微小転移/100倍視野)、異常な血管系がみられた(図2A、中央パネル挿入図)。この結果は、VEGFR1+HPCが前転移性クラスターを惹起することができ、それが小さな転移を形成する腫瘍細胞を引きつけうることを示唆する。これに対して、VEGFR1+細胞を除去したBMは前転移性クラスターを生成することができなかった(図2A右パネルおよび表、p<0.01、一元配置ANOVAによる)。
【0102】
VEGFR1+細胞クラスターの破壊によって十分に確立した腫瘍の転移を阻止しうるか否かという問題に取り組むために、LLCまたはB16腫瘍を接種したマウスを、マウスVEGFR1、VEGFR2またはその両方を特異的に標的とするモノクローナル抗体で処理した。このアプローチによってVEGFR1+HPCの選択的ターゲティングが可能となるが、これはこれらの腫瘍細胞がVEGFR1もVEGFR2も発現しないためである。第24日までに、LLCを有する動物の肺(図2B、左パネルおよび表)またはB16黒色腫を有する動物の脾臓(図2B右パネルおよび挿入図)で見られるように、広範な拡散転移が両方のタイプの腫瘍について顕在化した。抗VEGFR1抗体による処理はそれのみでクラスターの惹起を解消させて転移を予防し(図2Bおよび表、p<0.01、一元配置ANOVAによる)、一方、抗VEGFR2抗体はVEGFR1+クラスターの形成は変化させなかったが、微小転移の進行は予防した(15±11個の微小転移/クラスター/100倍)(図2B、挿入図および表)。この2つの抗体の組み合わせは、抗VEGFR1療法と同様にクラスターの確立を阻止した;しかし、1匹の動物の肺では孤立したB16転移病変が観察された(図2B、挿入図)。総合すると、これらの結果は、VEGFR1+細胞クラスター形成のターゲティングによって腫瘍細胞の接着、増殖および転移拡散を予防しうることを示唆する。
【0103】
実施例24-前転移性ニッチの形成に関与するVLA4、MMP-9およびId3
次に、遊走性HPCが前転移性微小環境との相互作用の結果として細胞クラスターを形成する細胞上および分子上の機序について調べた。インテグリンα4β1(VLA-4)とそのリガンドであるフィブロネクチンとの相互作用は、骨髄ストロマ内部の初期造血細胞(Burger et al., "CXCR4 Chemokine Receptors (CD 184) and α4β1 Integrins Mediate Spontaneous Migration of Human CD34+ Progenitors and Acute Myeloid Leukaemia Cells Beneath Marrow Stromal Cells (pseudoemperipolesis),", British Journal of Haematology 122:579-589 (2003)およびScott et al., "Deletion of α4 Integrins from Adult Hematopoietic Cells Reveals Roles in Homeostasis, Regeneration, and Homing," Molecular and Cellular Biology 23:9349-9360 (2003)、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)および循環下にある成熟白血球(Neeson et al., "Lymphocyte-Facilitated Tumour Cell Adhesion to Endothelial Cells: The Role of High Affinity Leukocyte Integrins," Pathology 35:50-55 (2003)およびJonjic et al., "Molecules Involved in the Adhesion and Cytotoxicity of Activated Monocytes on Endothelial Cells," The Journal of Immunology 148:2080-2083 (1992)、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)の遊走のために必須である。このため、VEGFR1+細胞がインテグリンも発現し、それによってこの細胞種と前転移性ニッチとの相互作用を促進しうるか否かについて評価した。前転移性クラスターにあるVEGFR1+HPCはVLA-4(図3Aおよび挿入図、VEGFR1の共発現)を発現するものの、インテグリンに関しては陰性であることが見いだされた。このことは、これらの細胞上でのVLA-4の発現が、BM由来細胞の前転移性ニッチとの接着を可能にすることを示唆する。クラスター形成の後には、α4β7インテグリンならびにα6β4も骨髄細胞の内部で重要であり、それに付随するストロマは転移ニッチ内部でびまん性に顕著にみられる。造血細胞によって産生されるマトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP-9)などのプロテイナーゼは、cKitを発現する新たに導入された細胞を支えるために可溶性Kit-リガンドおよびVEGF-Aを放出することによって、基底膜を分解させ、局所微小環境を変化させるのに役立つ可能性がある(Hessig et al., "Recruitment of Stem and Progenitor Cells from the Bone Marrow Niche Requires MMP-9 Mediated Release of Kit-ligand," Cell 109:625-37 (2002)およびBergers et al., "Matrix Metalloproteinase-9 Triggers the Angiogenic Switch During Carcinogenesis," Nat Cell Biol 2:737-744 (2000)、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。さらに、フィブロネクチン結合に起因するα4β1シグナル伝達を通じてメタロプロテイナーゼ発現を増強することもできる(Huhtala et al., "Cooperative Signalling by alpha 5 beta 1 and alpha 4 beta I Integrins Regulates Metalloproteinase Gene Expression in Fibroblasts Adhering to Fibronectin," Journal of Cell Biology 129:867-879 (1995)およびYakubenko et al., "Differential Induction of Gelatinase B (MMP-9) and Gelatinase A (MMP-2) in T Lymphocytes Upon alpha(4)beta(1)-mediated Adhesion to VCAM-1 and the CS-1 Peptide of Fibronectin," Exp. Cell Res. 260:3-84 (2000)、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。MMP-9の発現は、前転移性クラスターにおいてVLA-4分布とともに観察され、このことはMMP-9産生がこれらのVEGFR1+HPCにおけるインテグリン結合および活性化の結果である可能性を示唆する(図3A)。これらの所見は、前転移性肺におけるVEGFR1を介したMMP-9発現を示したHiratsukaらの以前の研究に一致し、それを拡張するものである(Hiratsuka et al., "MMP9 Induction by Vascular Endothelial Growth Factor Receptor-1 is Involved in Lung-specific Metastasis," Cancer Cell. 2:289-300 (2002)、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。
【0104】
Id遺伝子のアップレギュレーションは、原発性腫瘍の成長のための前駆細胞の動員に決定的に重要であることが以前に示されている(Ruzinova et al., "Effect of Angiogenesis Inhibition by Id Loss and the Contribution of Bone-marrow-derived Endothelial Cells in Spontaneous Murine Tumours," Cancer Cell. 4:277-289 (2003)、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。VLA-4分布と一致して、発現はId3に関してもクラスター内部で認められた(図3Aおよび挿入図、VEGFR1およびId3の共発現)。この結果は、Id3アップレギュレーションがVEGFR1+細胞の前転移性ニッチへの動員を促進する可能性を示唆する。さらに、特定のインテグリンの発現はId遺伝子の活性化によって調節され、これはBM由来細胞および間質細胞の相互作用、運動性および補充の原因である可能性がある(Ruzinova et al., "Effect of Angiogenesis Inhibition by Id Loss and the Contribution of Bone-marrow-derived Endothelial Cells in Spontaneous Murine Tumours," Cancer Cell. 4:277-289 (2003)、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。
【0105】
前転移性ニッチの確立におけるこれらのタンパク質の機能的役割を確かめるために、VLA-4(抗α4抗体とともに)の発現を阻害するか、MMP-9およびId3ノックアウトマウスにおけるVEGFR1+細胞クラスター形成について調べた。これらのモデルのそれぞれに対して腫瘍を接種したところ、腫瘍移植から3週間後にクラスター形成(図3)および転移拡散の低減が見いだされた。腫瘍接種に応答してId変異マウスの循環中に動員されたVEGFR1+細胞(654個のVEGFR1+CD11b+細胞/μl)が、野生型対照(3,283個のVEGFR1+CD11b+細胞/μl)と比較して減少していることによって例証される、HPCの動員障害が示された(p<0.01、Studentのt検定による、図9)。これはこれらの動物において以前に認められた原発性腫瘍成長の低下を裏づけるものであり、転移表現型の低減を説明するのに役立つ。
【0106】
野生型VEGFR1+細胞がId3-/-マウスにおける転移の欠陥を復旧させる潜在能力について正式に検討するために、Id3コンピテントGFP +VEGFR1+HPCを、LLC腫瘍を有するId3 KOマウスに静脈内注射した。野生型VEGFR1+細胞の導入のみにより、腫瘍移植後の第21日までに、クラスター形成および微小転移が再び確立した(図3B)。顕著なこととして、LLC転移病変には、事前に確立したGFP+BM由来のクラスターが伴っていた(図3B)。これらの所見は、クラスターおよび転移の確立のために必要なVEGFR1+BM由来細胞の機能的役割をさらに強く示すものである。
【0107】
実施例25-VLA-4+BM由来細胞に対する走触性リガンドとして存在する組織実質中のフィブロネクチン
次に、組織特異的リガンドの発現がこれらのBMクラスターの接着および形成を媒介しうるか否かを明らかにするために、原発性腫瘍の注射後かつBM由来のVLA-4+VEGFR1+細胞のホーミングの前に、組織実質を調べた。実際に、LLC注射の後には、免疫組織化学分析および定量的PCRの両方により、肺における将来の転移ニッチの付近で、WT肺におけるベースラインのフィブロネクチン発現と比較してフィブロネクチン発現の増加が第3日から第14日にかけて時間経過に伴って観察された(図3Cおよび3E)。さらに、原発性腫瘍に応答して増殖する(図3)間質細胞のような定在性の線維芽細胞(図3)は、局在性フィブロネクチンに寄与する可能性がある。B16が移植されたマウスに関しては、肺におけるフィブロネクチン発現が、LLCを接種されたマウスと類似した分布で観察された(図3D)。さらに、フィブロネクチンはVEGFR1+クラスターにおいて発現されるように思われる(図3D)。フィブロネクチン発現の増加は、腸および卵管といった、黒色腫馴化培地に曝露された多数の組織では認められず、このことはこれらの部位に対するB16腫瘍の転移性がより高度であることに一致する(p<0.05は、MCMを投与されたマウスからの卵管における、第3〜5日に関するフィブロネクチン発現について、p<0.001は第7〜9日に関して、一元配置ANOVAによるLCM投与またはWT組織との比較、ならびにp<0.001は、MCMを投与されたマウスからの腸組織における第7〜9日のフィブロネクチン発現について、一元配置ANOVAによるLCM投与またはWT組織との比較、図7Aおよび7B)。
【0108】
実施例26-腫瘍細胞の遊走、付着性および増殖を促進するVEGFR1+細胞
VEGFR1+前駆細胞が腫瘍細胞の化学誘引および接着を促進することを確かめるために、腫瘍が移植されたマウスからVEGFR1+細胞を単離して、赤色蛍光(PKH26-G1)で標識した(図8)。緑色蛍光(PKH2-GL)で標識されたB16またはLLC細胞とのインビトロ同時インキュベーションで1時間以内に、造血前駆細胞が凝集して増殖し(150%の増加)、腫瘍細胞の接着および増殖を促進した。これに対して、抗VEGFR1抗体または抗VLA-4抗体のいずれかの存在下であらかじめ培養しておいたVEGFR1+HPCは、この結合親和性および拡大を阻止した(図8A)。さらに、トランスウェル遊走アッセイを行ったところ、骨髄由来VEGFR1+細胞に応答した蛍光標識腫瘍細胞の移動性(29.6±1.4個の腫瘍細胞/200×)は、非VEGFR1細胞(11.2±0.4)および培地のみ(9.9±0.9)よりも増強していた(図8B、p<0.001、一元配置ANOVAによる)。SDF-1/CXCR4軸は、骨髄内の特定のニッチに対するBM前駆細胞のホーミングおよび保持において顕著な役割を果たすことが知られている(Ratajczak et al., "Stem Cell Plasticity Revisted: CXCR4-positive Cells Expressing mRNA for Early Muscle, Liver and Neural Cells 'Hide Out' in the Bone Marrow," Leukemia. 18:29-40 (2004)、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。この軸を利用する多くの生理的プロセスにおける骨髄からの造血幹細胞および前駆細胞の移動と同様に、CXCR4を発現する特定の腫瘍細胞種も、局所ケモカイン勾配に応答してこの様式で遊走しうる(Lapidot et al., "Current Understanding of Stem Cell Mobilization: The Roles of Chemokines, Proteolytic Enzymes, Adhesion Molecules, Cytokines and Stromal Cells," Experimental Hematology. 30:973-981 (2002)、Balkwill、F., "The Significance of Cancer Cell Expression of the Chemokine Receptor CXCR4," Seminars in Cancer Biology. 14:171-179 (2004)およびMuller et al., "Involvement of Chemokine Receptors in Breast Cancer Metastasis," Nature. 410:50-56 (2001)、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。VEGFR1+細胞、線維芽細胞およびフィブロネクチンを含む、十分に形成された前転移性クラスターの内部では(図1A、左パネルに見られるように)、SDF-1(CXCL12)が高発現されるようになった(図8C)。CXCR4は、確立した原発性黒色腫の全体にわたってびまん性パターンで同定されたが、LLCについては「生存性」縁での局在領域であった(図8D)。前転移性ニッチに起原を発するケモカイン勾配の存在は、CXCR4+腫瘍細胞を誘引するのに役立つ可能性がある。これらの所見は、腫瘍タイプによって指示されるフィブロネクチンのアップレギュレーションが、前転移性ニッチの形成のために必要なVLA-4+VEGFR1+造血クラスターの結合を可能にすることを示唆する。さらに、VEGFR1およびVLA-4ならびにSDF-1およびCXCR4の発現を介した、これらのクラスターと腫瘍細胞との間の相互作用は、前転移性ニッチの転移への進行を支える。
【0109】
実施例27-転移拡散の腫瘍特異的パターンを指示するのを助ける腫瘍由来の馴化培地
LLCおよびB16細胞の選択的な転移能力についてさらに調べるために、培養下にある両方の腫瘍細胞種から馴化培地を入手した。LLC-馴化培地(LCM)の腹腔内注射は、培地のみ(図4)と比較して、定在性線維芽細胞からと思われるフィブロネクチンの発現を生じさせ、原発性皮内LLCと類似した様式ではあるがより急速に、BM由来のクラスター形成も生じさせた(図4A)。皮内B16腫瘍の影響と同等ではあるがより加速された形で;黒色腫馴化培地(MCM)は、LCMよりも大きな程度で、肝臓におけるフィブロネクチン発現を指示した(図4B)。MCMはまた、培地のみ(図4B)と比較して、腸(図4Bならびに図7Aおよび7B)で観察されたように、広範囲にわたる臓器において、クラスター形成を伴う線維芽細胞増殖およびフィブロネクチン発現の増強を引き起こす。これは、LLCを有するそれと比較して、B16腫瘍を有する動物において観察されたクラスターの増加と同時並行的に起こる(図1)。MCMがLCMよりも偏在的な様式でクラスター形成を促進すると考えて、続いて、増殖因子がこれらの2つの馴化培地間の転移能力およびプロフィールを説明する一助となるように変化するか否かを調べた(図4C)。腫瘍を有する動物からの血漿よりも高い、高レベルのVEGFが両方の馴化培地群で認められた。しかし、VEGFR1のみを介してシグナルを伝達する胎盤増殖因子(PIGF)のレベルに関しては、2つの馴化培地間で明らかな違いが検出された。MCMおよび黒色腫由来の血漿は、PIGFがほとんどまたは全く認められなかったLCMおよびLLC由来血漿と比較して、有意に高いレベルのPIGFを含む(図4C)。さらに、転移性の低い変異LLCにおいては、悪性度の高い対応物と比較して、馴化培地および血漿についてVEGFおよびPIGFの両方がはるかに低かった。トランスウェルアッセイにおいて、LCMおよびMCMは、他の増殖因子条件と比較してVEGFR1+骨髄由来細胞の遊走を最も効果的に増強した(LCM 55%±0.4、MCM 68.1%±5、培地10.8%±1.7、図4D、p<0.001、一元配置ANOVAによる)。これらの結果を考慮して、MCM中のPIGFなどのサイトカインが、LLC転移を通常ではない転移部位に再方向付けしうるか否かを問いただした。LLC皮内腫瘍移植の前にMCMを腹腔注射によって投与し、以後毎日投与したところ、肝臓および肺から、B16黒色腫が高い頻度で観察される腎臓、脾臓、腸および卵管などの部位へのLLC転移の再方向付けがもたらされた(図4E)。LLC腫瘍移植およびMCM注射を受けたマウスでは、VEGFR1抗体はクラスター形成を阻止し、LLC転移の再方向付けを防止した。これらの結果は、VEGFR1細胞クラスターを伴う馴化培地中に存在する腫瘍特異的ケモカインおよび/またはサイトカインが、転移拡散の基礎をなす複雑で多次元的な生化学的プログラムおよび細胞プログラムにおけるもう1つの決定因子であることを示している。
【0110】
特定の腫瘍のあらかじめ決定された転移部位への転移を指示する厳密な細胞上および分子上の機序は不明である。多くの腫瘍には、特定の部位への転移の偏好性がある。現在のドグマによれば、転移の偏好性は、腫瘍細胞それ自体における固有の分子的違い、ならびに血管系、結合組織および免疫細胞を含む周囲の間質細胞による潜在的な影響を反映すると考えられている(Hynes、R.O., "Metastatic Potential: Generic Predisposition of the Primary Tumour or Rare, Metastatic Variants-or Both?," Cell. 113:821-3 (2003)、Bergers et al., "Benefits of Targeting Both Pericytes and Endothelial Cells in the Tumour Vasculature with Kinase Inhibitors," J Clin Invest. 111:1287-95 (2003)、Fidler、I., "The Organ Microenvironment and Cancer Metastasis," Differentiation. 70:498-505 (2002)、Duda et al., "Differential Transplantability of Tumour-associated Stromal Cells." Cancer Research 64:5920-5924 (2004)、およびFolkman、J., "Role of Anigiogenesis in Tumour Growth and Metastasis," Semin. Oncol. 29:515-8 (2002)、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。以上の結果は、腫瘍転移が、標的臓器内に特定の許容性ニッチを形成させるVEGFR1+細胞の送達による分子的ブックマーキングに依存する、十分に規定された一連の事象によって惹起されるという新たな概念を導入するものである。以上のデータはさらに、腫瘍により分泌される体液性因子の違いが、特定の遠隔臓器における転移拡散を促進することを示唆する。腫瘍移植後の数日以内に、フィブロネクチンは、具体的な原発性腫瘍に応じた、将来の転移部位であることが知られた標的臓器の内部で、特定の場所で定在性の線維芽細胞および線維芽細胞様細胞によってアップレギュレートされるようになった。同時に、以前に記載されたように、造血前駆細胞は骨髄を出て末梢循環に入る(Hessig et al., "Recruitment of Stem and Progenitor Cells from the Bone Marrow Niche Requires MMP-9 Mediated Release of Kit-ligand," Cell. 109:625-37 (2002)、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。フィブロネクチンからのニッチ特異的な方向付けの手かがりの結果として、VLA-4を発現しMMP-9を産生するVEGFR1+HPCは、腫瘍およびVEGFR2+内皮細胞の到達前に、確立した内皮を越えて前転移性ニッチを形成することができる。これらのクラスターは、微小環境を変化させるMMP-9産生、ケモカイン勾配を作り出すSDF-1の発現の増強、ならびに腫瘍細胞の誘引およびニッチへの取込みを可能にするインテグリンアップレギュレーションをもたらすId3活性化を伴い、それによって完全な転移病変を生じさせる。示されたように、VEGFR1抗体による阻害またはVEGFR1+細胞の骨髄からの除去は、前転移性クラスターの形成を、そしてそれ故に転移を防止する。さらに、VEGFR1またはVLA-4の遮断は、造血性クラスター細胞および腫瘍細胞の結合および確立を防止する。Id3ノックアウトマウスへの野生型VEGFR1+細胞の導入による前転移性ニッチおよび転移の復旧は、Id3の発現が、前転移性ニッチの確立のために必須であるVEGFR1+細胞のホーミングのためのロードマップを与える、MMP-9、インテグリンおよびおそらくはケモカインを含む必要な要素の発現を誘導することを示唆する。
【0111】
最近、遠隔臓器への腫瘍の付着および浸潤を補助する炎症細胞の役割が大きく注目されている(Coussens et al., "Inflammation and Cancer," Nature. 420:860-867 (2002)、Borsig et al., "Synergistic Effects of L- and P-selectin in Facilitating Tumour Metastasis can Involve Non-mucin Ligands and Implicate Leukocytes as Enhancers of Metastasis," Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:2193-2198 (2000)、Lin et al., "Colony Stimulating Factor 1 Promoted Progression of Mammary Tumours to Malignancy," J. Exp. Med. 139:727-740 (2001)およびQian et al., "L-selectin can Facilitate Metastasis to Lymph Nodes in a Transgenic Mouse Model Model of Carcinogenesis," Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98:3976-3981 (2002)、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。本研究で同定されたVEGFR1+HPCは、必要な接着分子、プロテイナーゼ、ケモカインおよび成長条件を与えることにより、炎症の生理的経路に共通する特徴を発現し、腫瘍細胞の生着のための誘導性微小環境を作り出す(Bergers et al., "Matrix Metalloproteinase-9 Triggers the Angiogenic Switch During Carcinogenesis," Nat Cell Biol. 2:737-744 (2000)、Muller et al., "Involvement of Chemokine Receptors in Breast Cancer Metastasis," Nature. 410:50-56 (2001)およびSchoppman et al., "Tumour-associated Macrophages Express Lymphatic Endothelial Growth Growth Factors and are Related to Peritumoural Lymphaniogenesis," Am. J. Pathol. 161:947-956 (2002)、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。炎症との類似性にもかかわらず、前転移性ニッチはVEGFR1+前駆細胞集団で認められるように未分化状態を維持する。これは、非新生物細胞集団が将来の転移部位を予示しうることの初の直接的な証拠である。さらに、腫瘍拡散が明らかに認められる前のヒト組織における造血クラスターの同定は、臨床環境における転移の同定および予防を目的とするVEGFR1およびVLA-4に対するターゲティングの適用可能性を明らかに示すものである。この概念は腫瘍病期判定に対して極めて大きな影響を及ぼすと考えられ、アジュバント化学療法の展望を変化させると考えられる。
【0112】
好ましい態様を本明細書において詳細に描写および説明してきたが、関連技術分野の当業者には、本発明の精神を逸脱することなく、さまざまな改変、追加、置換などを行うことができ、これらはそれ故に以下の特許請求の範囲において規定される本発明の範囲に含まれると考えられることが明らかであると考えられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以前の腫瘍形成の部位から離れた部位での癌患者における腫瘍形成を阻害する方法であって、以下の段階を含む方法:
癌患者に対して、以前の腫瘍形成の部位から離れた部位での癌患者における腫瘍形成を阻害するのに有効な条件下で、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質を投与する段階。
【請求項2】
投与が、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の動員が刺激される時に対応する時期に行われる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の動員が、化学療法、ストレス、外科手術、炎症、照射または増殖因子によって刺激される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の動員が化学療法によって刺激される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の動員がストレスによって刺激される、請求項3記載の方法。
【請求項6】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の動員が外科手術によって刺激される、請求項3記載の方法。
【請求項7】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の動員が炎症細胞の動員によって刺激される、請求項3記載の方法。
【請求項8】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の動員が照射によって刺激される、請求項3記載の方法。
【請求項9】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の動員が増殖因子によって刺激される、請求項3記載の方法。
【請求項10】
増殖因子が、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージ刺激因子、および、骨髄細胞の増殖を刺激する成長ホルモンからなる群より選択される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質が血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞と結合する、請求項1記載の方法。
【請求項12】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質が、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の形成を防止または低減する、請求項1記載の方法。
【請求項13】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質が、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞に特異的な抗体またはその結合部分である、請求項1記載の方法。
【請求項14】
ポリクローナル抗体が投与される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
モノクローナル抗体が投与される、請求項13記載の方法。
【請求項16】
抗体の結合部分が投与される、請求項13記載の方法。
【請求項17】
阻害物質が、VLA-4(α4β1)インテグリンと結合できる抗体である、請求項13記載の方法。
【請求項18】
投与がアジュバント治療レジメンの一部である、請求項1記載の方法。
【請求項19】
癌患者における転移を予防する方法であって、以下の段階を含む方法:
癌患者に対して、患者における転移を予防するのに有効な条件下で、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質を投与する段階。
【請求項20】
投与が、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の動員が刺激される時に対応する時期に行われる、請求項19記載の方法。
【請求項21】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の動員が、化学療法、ストレス、外科手術、炎症、照射または増殖因子によって刺激される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の動員が化学療法によって刺激される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の動員がストレスによって刺激される、請求項21記載の方法。
【請求項24】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の動員が外科手術によって刺激される、請求項21記載の方法。
【請求項25】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の動員が炎症細胞の動員によって刺激される、請求項21記載の方法。
【請求項26】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の動員が照射によって刺激される、請求項21記載の方法。
【請求項27】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の動員が増殖因子によって刺激される、請求項21記載の方法。
【請求項28】
増殖因子が、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージ刺激因子、および、骨髄細胞の増殖を刺激する成長ホルモンからなる群より選択される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質が血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞と結合する、請求項19記載の方法。
【請求項30】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質が、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の形成を防止または低減する、請求項19記載の方法。
【請求項31】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質が、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞に特異的な抗体またはその結合部分である、請求項19記載の方法。
【請求項32】
ポリクローナル抗体が投与される、請求項31記載の方法。
【請求項33】
モノクローナル抗体が投与される、請求項31記載の方法。
【請求項34】
抗体の結合部分が投与される、請求項31記載の方法。
【請求項35】
阻害物質が、VLA-4(α4β1)インテグリンと結合できる抗体である、請求項31記載の方法。
【請求項36】
投与がアジュバント治療レジメンの一部である、請求項19記載の方法。
【請求項37】
癌患者における腫瘍形成の阻害または転移の予防に有用な候補化合物を同定する方法であって、以下の段階を含む方法:
被験化合物を提供する段階;
被験化合物を血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞とともにインキュベートする段階;および
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞と結合する被験化合物を、癌患者における腫瘍形成の阻害または転移の予防に有用な候補化合物として同定する段階。
【請求項38】
癌患者における転移をモニタリングする方法であって、以下の段階を含む方法:
患者試料を血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞のレベルに関して評価する段階;および
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞のレベルを血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の別のレベルと比較し、それによって癌患者における転移をモニタリングする段階。
【請求項39】
他のレベルが癌患者における血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の以前のレベルであって、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞のレベルの上昇によって将来の転移が示される、請求項38記載の方法。
【請求項40】
他のレベルが標準的または正常なレベルであって、標準的または正常なレベルを上回る血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞のレベルによって転移が示される、請求項38記載の方法。
【請求項41】
患者試料が組織試料である、請求項38記載の方法。
【請求項42】
患者試料が血液試料である、請求項38記載の方法。
【請求項43】
以下の段階をさらに含む、請求項38記載の方法:
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞のレベルと血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の他のレベルとの比較に基づいて治療薬を投与する段階。
【請求項44】
投与がアジュバント治療レジメンを含む、請求項43記載の方法。
【請求項45】
治療薬が、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞のレベルを血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の他のレベルと比較することに基づいてその強度が選択された化学療法薬である、請求項43記載の方法。
【請求項46】
インビトロで行われる、請求項38記載の方法。
【請求項47】
インビボで行われる、請求項38記載の方法。
【請求項48】
評価および比較が、癌患者における領域の画像化を含む、請求項47記載の方法。
【請求項49】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞に特異的な標識物質を用いて行われる、請求項48記載の方法。
【請求項50】
癌患者に導入された、標識された血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞を用いて行われる、請求項48記載の方法。
【請求項51】
以前の腫瘍形成の部位から離れた部位での対象におけるフィブロネクチン発現を阻害する方法であって、以下の段階を含む方法:
対象に対して、以前の腫瘍形成の部位から離れた部位での対象におけるフィブロネクチン発現を阻害するのに有効な条件下で、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質を投与する段階。
【請求項52】
投与が、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の動員が刺激される時に対応する時期に行われる、請求項51記載の方法。
【請求項53】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質が血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞と結合する、請求項51記載の方法。
【請求項54】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質が、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の形成を防止または低減する、請求項51記載の方法。
【請求項55】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質が、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞に特異的な抗体またはその結合部分である、請求項54記載の方法。
【請求項56】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞に対する抗体。
【請求項1】
以前の腫瘍形成の部位から離れた部位での癌患者における腫瘍形成を阻害する方法であって、以下の段階を含む方法:
癌患者に対して、以前の腫瘍形成の部位から離れた部位での癌患者における腫瘍形成を阻害するのに有効な条件下で、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質を投与する段階。
【請求項2】
投与が、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の動員が刺激される時に対応する時期に行われる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の動員が、化学療法、ストレス、外科手術、炎症、照射または増殖因子によって刺激される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の動員が化学療法によって刺激される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の動員がストレスによって刺激される、請求項3記載の方法。
【請求項6】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の動員が外科手術によって刺激される、請求項3記載の方法。
【請求項7】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の動員が炎症細胞の動員によって刺激される、請求項3記載の方法。
【請求項8】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の動員が照射によって刺激される、請求項3記載の方法。
【請求項9】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の動員が増殖因子によって刺激される、請求項3記載の方法。
【請求項10】
増殖因子が、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージ刺激因子、および、骨髄細胞の増殖を刺激する成長ホルモンからなる群より選択される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質が血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞と結合する、請求項1記載の方法。
【請求項12】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質が、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の形成を防止または低減する、請求項1記載の方法。
【請求項13】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質が、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞に特異的な抗体またはその結合部分である、請求項1記載の方法。
【請求項14】
ポリクローナル抗体が投与される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
モノクローナル抗体が投与される、請求項13記載の方法。
【請求項16】
抗体の結合部分が投与される、請求項13記載の方法。
【請求項17】
阻害物質が、VLA-4(α4β1)インテグリンと結合できる抗体である、請求項13記載の方法。
【請求項18】
投与がアジュバント治療レジメンの一部である、請求項1記載の方法。
【請求項19】
癌患者における転移を予防する方法であって、以下の段階を含む方法:
癌患者に対して、患者における転移を予防するのに有効な条件下で、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質を投与する段階。
【請求項20】
投与が、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の動員が刺激される時に対応する時期に行われる、請求項19記載の方法。
【請求項21】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の動員が、化学療法、ストレス、外科手術、炎症、照射または増殖因子によって刺激される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の動員が化学療法によって刺激される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の動員がストレスによって刺激される、請求項21記載の方法。
【請求項24】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の動員が外科手術によって刺激される、請求項21記載の方法。
【請求項25】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の動員が炎症細胞の動員によって刺激される、請求項21記載の方法。
【請求項26】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の動員が照射によって刺激される、請求項21記載の方法。
【請求項27】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の動員が増殖因子によって刺激される、請求項21記載の方法。
【請求項28】
増殖因子が、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージ刺激因子、および、骨髄細胞の増殖を刺激する成長ホルモンからなる群より選択される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質が血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞と結合する、請求項19記載の方法。
【請求項30】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質が、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の形成を防止または低減する、請求項19記載の方法。
【請求項31】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質が、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞に特異的な抗体またはその結合部分である、請求項19記載の方法。
【請求項32】
ポリクローナル抗体が投与される、請求項31記載の方法。
【請求項33】
モノクローナル抗体が投与される、請求項31記載の方法。
【請求項34】
抗体の結合部分が投与される、請求項31記載の方法。
【請求項35】
阻害物質が、VLA-4(α4β1)インテグリンと結合できる抗体である、請求項31記載の方法。
【請求項36】
投与がアジュバント治療レジメンの一部である、請求項19記載の方法。
【請求項37】
癌患者における腫瘍形成の阻害または転移の予防に有用な候補化合物を同定する方法であって、以下の段階を含む方法:
被験化合物を提供する段階;
被験化合物を血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞とともにインキュベートする段階;および
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞と結合する被験化合物を、癌患者における腫瘍形成の阻害または転移の予防に有用な候補化合物として同定する段階。
【請求項38】
癌患者における転移をモニタリングする方法であって、以下の段階を含む方法:
患者試料を血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞のレベルに関して評価する段階;および
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞のレベルを血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の別のレベルと比較し、それによって癌患者における転移をモニタリングする段階。
【請求項39】
他のレベルが癌患者における血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の以前のレベルであって、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞のレベルの上昇によって将来の転移が示される、請求項38記載の方法。
【請求項40】
他のレベルが標準的または正常なレベルであって、標準的または正常なレベルを上回る血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞のレベルによって転移が示される、請求項38記載の方法。
【請求項41】
患者試料が組織試料である、請求項38記載の方法。
【請求項42】
患者試料が血液試料である、請求項38記載の方法。
【請求項43】
以下の段階をさらに含む、請求項38記載の方法:
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞のレベルと血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の他のレベルとの比較に基づいて治療薬を投与する段階。
【請求項44】
投与がアジュバント治療レジメンを含む、請求項43記載の方法。
【請求項45】
治療薬が、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞のレベルを血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の他のレベルと比較することに基づいてその強度が選択された化学療法薬である、請求項43記載の方法。
【請求項46】
インビトロで行われる、請求項38記載の方法。
【請求項47】
インビボで行われる、請求項38記載の方法。
【請求項48】
評価および比較が、癌患者における領域の画像化を含む、請求項47記載の方法。
【請求項49】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞に特異的な標識物質を用いて行われる、請求項48記載の方法。
【請求項50】
癌患者に導入された、標識された血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞を用いて行われる、請求項48記載の方法。
【請求項51】
以前の腫瘍形成の部位から離れた部位での対象におけるフィブロネクチン発現を阻害する方法であって、以下の段階を含む方法:
対象に対して、以前の腫瘍形成の部位から離れた部位での対象におけるフィブロネクチン発現を阻害するのに有効な条件下で、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質を投与する段階。
【請求項52】
投与が、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の動員が刺激される時に対応する時期に行われる、請求項51記載の方法。
【請求項53】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質が血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞と結合する、請求項51記載の方法。
【請求項54】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質が、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の形成を防止または低減する、請求項51記載の方法。
【請求項55】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞の阻害物質が、血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞に特異的な抗体またはその結合部分である、請求項54記載の方法。
【請求項56】
血管内皮増殖因子受容体1+骨髄由来細胞に対する抗体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−35865(P2013−35865A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−220200(P2012−220200)
【出願日】平成24年10月2日(2012.10.2)
【分割の表示】特願2007−543341(P2007−543341)の分割
【原出願日】平成17年11月21日(2005.11.21)
【出願人】(507164548)コーネル リサーチ ファンデーション インコーポレーティッド (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年10月2日(2012.10.2)
【分割の表示】特願2007−543341(P2007−543341)の分割
【原出願日】平成17年11月21日(2005.11.21)
【出願人】(507164548)コーネル リサーチ ファンデーション インコーポレーティッド (2)
【Fターム(参考)】
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