説明

癌の治療のための化合物および方法

【課題】白血病および固形腫瘍などの癌の治療に有効な有機ヒ素剤の提供。
【解決手段】次の一般式で表される化合物。


XはSまたはSeであり;WはO、Sまたは(R)(R)であり、Rのそれぞれの存在は独立にHまたはC1-2アルキルであり;nは0または1であり;R1およびR2はそれぞれ独立にC1-10アルキルであり;R3は-H、C1-10アルキルまたはC0-6アルキル-COOR6であり;R3'は好ましくはHである。具体的な化合物の一つは次の化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は一般に、抗癌療法の分野に関する。より詳細には、これは、有機ヒ素化合物、ならびに白血病および固形腫瘍などの癌の治療にそれらを用いるための方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
白血病の治療法の進歩にもかかわらず、白血病を有するほとんどの成人患者は依然として疾患の進行のために死亡している。無機化合物である三酸化ヒ素は、再発性または不応性の急性前骨髄球性白血病(APL)を有する患者の治療に対して承認されており、他の型の白血病に対する治療法としても評価が進められている。しかし、中国からの予備的データおよび米国での最近の経験は、三酸化ヒ素が他の血液系癌にも役立つ可能性を示唆している。その結果、抗白血病薬としての三酸化ヒ素の活性が多くの型の白血病で現在調査されている。それらの結果は調査されている白血病の型のうちいくつかの奏効率に関しては好ましいように思われるが、三酸化ヒ素の全身毒性は問題となっている(Soignet et al., 1999;Wiemiket al., 1999;Geissler et al., 1999;Rousselot et al., 1999)。
【0003】
ヒトの使用を目的として製造されている唯一の有機ヒ素剤(OA)であるメラルソプロールは、抗白血病活性に関して評価されている(WO9924029号(特許文献1)、EP1002537号(特許文献2))。残念ながら、この化合物は、トリパノソーマ症の治療のために用いられる濃度では白血病の患者に対する毒性が強すぎる。このため、血液悪性腫瘍および癌全般の治療のために用いることができ、活性が三酸化ヒ素と同程度であるかそれよりも高く、毒性が三酸化ヒ素よりも低いヒ素誘導体を同定する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO9924029号
【特許文献2】EP1002537号
【発明の概要】
【0005】
本発明は、抗癌特性を有する有機ヒ素化合物を提供する。いくつかの態様において、本発明は、式(I)の構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩を提供し、

式中、
XはSまたはSeであり;
WはO、Sまたは(R)(R)であり、Rのそれぞれの存在は独立にHまたはC1-2アルキルであり;
nは0または1であり;
R1およびR2はそれぞれ独立にC1-10アルキルであり;
R3は-H、C1-10アルキルまたはC0-6アルキル-COOR6であり;
R3'はH、アミノ、シアノ、ハロゲン、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、カルボキシル、C1-10アルキル、C1-10アルケニルまたはC1-10アルキニルであって、好ましくはHであり;
R4は-OH、-H、-CH3、アミノ、-OC(O)C1-10アラルキル、-OC(O)C1-10アルキルまたは-OC(O)アリールであり;
R5は-OH、シアノ、C1-10アルコキシ、アミノ、O-アラルキル、-OC(O)C1-10アラルキル、-OC(O)C1-10アルキル、-OC(O)アリールまたはグリシン置換基であり;かつ
R6はHまたはC1-10アルキルである。
【0006】
本発明のもう1つの局面は、塩酸ピリジンと会合している、式(II)の化合物

またはその薬学的に許容される塩であって、その結晶形態にある化合物の融点が125℃を上回るものに関する。
【0007】
ある態様において、有機ヒ素剤は、式(III)の構造を有する化合物であり、

式中、XはSまたはSeであって、好ましくはSであり;
WはO、Sまたは(R)(R)であって(Rのそれぞれの存在は独立にHまたはC1-2アルキルである)、好ましくはOであり;
ZはCHまたはNであり、好ましくはNであり;
R1およびR2は独立にC1-10アルキルであり、好ましくは、R1およびR2はメチル、エチル、プロピルおよびイソプロピルより独立に選択され;
R5は-OH、シアノ、C1-10アルコキシ、アミノ、O-アラルキル、O-アラルキル、-OC(O)C1-10アラルキル、-OC(O)C1-10アルキル、-OC(O)アリールまたはグリシン置換基であり、好ましくはOHであり;
R6はHまたはC1-10アルキルであり;
R7はハロゲン、-OH、C0-6アルキル-COOR6、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、アミノ、アミド、シアノおよびニトロであり;
mは0から4までの整数であり、好ましくは0である。
【0008】
本発明のその他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになると考えられる。しかし、当業者にはこの詳細な説明から本発明の精神および範囲内のさまざまな変更および修正が明らかになると考えられることから、詳細な説明および具体例は、本発明の好ましい態様を示してはいるものの、単なる実例として示されていることが理解される必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
以下の図面は本明細書の一部をなしており、本発明のいくつかの局面をさらに示すために含められる。これらの図の1つまたは複数を、本明細書に提示された具体的な態様の詳細な説明とともに参照することにより、本発明をさらに良く理解することができる。
【図1】指定濃度のS-ジメチルアルシノ-チオコハク酸(MER1)または三酸化ヒ素とともに3日間インキュベートしたヒト白血病細胞株NB4を示している。
【図2】指定濃度のMER1または三酸化ヒ素とともに3日間インキュベートしたヒト白血病細胞株AML2を示している。細胞の生存度はトリパンブルー排除法によって評価した。
【図3A】MER1で処理した場合のヒト白血病細胞株の増殖率を示している。
【図3B】MER1で処理した場合のヒトCNS細胞株の増殖率を示している。
【図3C】MER1で処理した場合のヒト腎癌細胞株の増殖率を示している。
【図3D】MER1で処理した場合のヒト非小細胞肺癌細胞株の増殖率を示している。
【図3E】MER1で処理した場合のヒト黒色腫細胞株の増殖率を示している。
【図3F】MER1で処理した場合のヒト前立腺癌細胞株の増殖率を示している。
【図3G】MER1で処理した場合のヒト結腸癌細胞株の増殖率を示している。
【図3H】MER1で処理した場合のヒト卵巣癌細胞株の増殖率を示している。
【図3I】MER1で処理した場合のヒト乳癌細胞株の増殖率を示している。
【図4】指定濃度のS-ジメチルアルシノ-2-チオ安息香酸(SAL1)とともに3日間インキュベートしたHL60ヒト白血病細胞の細胞生存度を示している。
【図5A】SAL1で処理した場合のヒト白血病細胞株の増殖率を示している。
【図5B】SAL1で処理した場合のヒトCNS癌細胞株の増殖率を示している。
【図5C】SAL1で処理した場合のヒト腎癌細胞株の増殖率を示している。
【図5D】SAL1で処理した場合のヒト非小細胞肺癌細胞株の増殖率を示している。
【図5E】SAL1で処理した場合のヒト黒色腫細胞株の増殖率を示している。
【図5F】SAL1で処理した場合のヒト前立腺癌細胞株の増殖率を示している。
【図5G】SAL1で処理した場合のヒト結腸癌細胞株の増殖率を示している。
【図5H】SAL1で処理した場合のヒト卵巣癌細胞株の増殖率を示している。
【図5I】SAL1で処理した場合のヒト乳癌細胞株の増殖率を示している。
【図6】指定濃度のS-ジメチルアルシノ-グルタチオン(SGLU1)または三酸化ヒ素とともに3日間インキュベートしたNB4細胞の細胞生存度を示している。
【図7】HL60細胞とSGLU1または三酸化ヒ素とを用いて行った5日間のクローン原性アッセイを示している。
【図8A】SGLU1で処理したヒト白血病細胞株の増殖率を示している。
【図8B】SGLU1で処理したヒトCNS細胞株の増殖率を示している。
【図8C】SGLU1で処理したヒト腎癌細胞株の増殖率を示している。
【図8D】SGLU1で処理したヒト非小細胞肺癌細胞株の増殖率を示している。
【図8E】SGLU1で処理したヒト黒色腫細胞株の増殖率を示している。
【図8F】SGLU1で処理したヒト前立腺癌細胞株の増殖率を示している。
【図8G】SGLU1で処理したヒト結腸癌細胞株の増殖率を示している。
【図8H】SGLU1で処理したヒト卵巣癌細胞株の増殖率を示している。
【図8I】SGLU1で処理したヒト乳癌細胞株の増殖率を示している。
【図9】指定濃度のMER1または三酸化ヒ素とともに3日間インキュベートした、急性骨髄性白血病(AML)患者からの単核細胞の細胞生存度を示している。
【図10】指定濃度のMER1または三酸化ヒ素とともに4日間インキュベートした、AML患者からの単核細胞の細胞生存度を示している。
【図11】指定濃度のMER1または三酸化ヒ素とともに5日間インキュベートした、AML患者からの単核細胞の細胞生存度を示している。
【図12】指定濃度のMER1または三酸化ヒ素とともに3日間インキュベートした、慢性骨髄性白血病の急性期(CML-BP)の患者からの単核細胞の細胞生存度を示している。
【図13】指定濃度のMER1または三酸化ヒ素とともに4日間インキュベートした、急性リンパ芽球性白血病(ALL)患者からの単核細胞の細胞生存度を示している。
【図14】指定濃度のMER1または三酸化ヒ素とともに5日間インキュベートした、正常ドナーからの単核細胞の細胞生存度を示している。
【図15】正常ドナー細胞およびMER1または三酸化ヒ素を用いて行った8日間のクローン原性アッセイを示している。
【図16】指定濃度のSGLU1または三酸化ヒ素とともに5日間インキュベートした、慢性リンパ性白血病(CLL)患者からの単核細胞の細胞生存度を示している。
【図17】AML患者からの単核細胞をSGLU1または三酸化ヒ素とともに用いて行った8日間のクローン原性アッセイ。
【図18】正常ドナー細胞とSGLU1または三酸化ヒ素とを用いて行った8日間のクローン原性アッセイを示している。
【図19】HL60細胞およびMER-1によるトリパンブルーアッセイを用いてMER-1形成の安定性を示している。
【図20】MER1で1、2または3日間処理したHL-60細胞におけるアネキシンVアッセイによって評価したアポトーシスを示している。
【図21】MER1で1、2または3日間処理したHL-60細胞に関してヨウ化プロピジウムアッセイによって評価した死細胞数を示している。
【図22】MER1で1、2または3日間処理したHL60細胞におけるトリパンブルー排除法によって評価した細胞生存度を示している。
【図23A】MER1、SGU1または酸化ヒ素で処理したHL-60細胞の48時間時点でのアネキシンVアッセイを示している。
【図23D】MER1、SGU1または酸化ヒ素で処理したHL-60細胞の72時間時点でのアネキシンVアッセイを示している。
【図23B】MER1、SGU1または酸化ヒ素で処理したHL-60細胞の48時間時点でのカスパーゼアッセイ(phi-phi-lux染色)を示している。
【図23E】MER1、SGU1または酸化ヒ素で処理したHL-60細胞の72時間時点でのカスパーゼアッセイを示している。
【図23C】MER1、SGU1または酸化ヒ素で処理したHL-60細胞の48時間時点でのCMXRos/MT-Greenアッセイを示している。
【図23F】MER1、SGU1または酸化ヒ素で処理したHL-60細胞の72時間時点でのCMXRos/MT-Greenアッセイを示している。
【図24】成熟に対する三酸化ヒ素、SGLU1およびMER1の影響に関してアッセイしたNB4細胞を示している。
【図25A】MER1の影響に関してアッセイしたHL60細胞を示している。
【図25B】SGLU1の影響に関してアッセイしたHL60細胞を示している。
【図25C】三酸化ヒ素の影響に関してアッセイしたHL60細胞を示している。
【図26A】PML/Rarα遺伝子の役割を分析するために、亜鉛の存在下および非存在下で三酸化ヒ素によって処理したU937/9PR細胞における3日間のMTTアッセイを示している。
【図26B】PML/Rarα遺伝子の役割を分析するために、亜鉛の存在下および非存在下でSGLU1によって処理したU937/9PR細胞における3日間のMTTアッセイを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の構造を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩:

式中、
XはSまたはSeであり;
WはO、Sまたは(R)(R)であり、Rのそれぞれの存在は独立にHまたはC1-2アルキルであり;
nは0または1であり;
R1およびR2はそれぞれ独立にC1-10アルキルであり;
R3は-H、C1-10アルキルまたはC0-6アルキル-COOR6であり;
R3'はH、アミノ、シアノ、ハロゲン、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、カルボキシル、C1-10アルキル、C1-10アルケニルまたはC1-10アルキニルであり;
R4は-OH、-H、-CH3、アミノ、-OC(O)C1-10アラルキル、-OC(O)C1-10アルキルまたは-OC(O)アリールであり;
R5は-OH、シアノ、C1-6アルコキシ、アミノ、O-C1-10アルキル、O-アラルキル、-OC(O)C1-10アラルキル、-OC(O)C1-10アルキル、-OC(O)アリールまたはグリシン置換基であり;かつ
R6はHまたはC1-10アルキルである。
【請求項2】
Wが(R)(R)であり、Rのそれぞれの存在がHまたはC1-2アルキルである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R3が、COOR6、CH2COOR6、CH2CH2COOR6、CH(CH3)COOR6、CH(CH2CH3)COOR6およびCH2CH2CH2COOR6より選択されるC0-6アルキル-COOR6である、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
R6がC1-10アルキルである、請求項3記載の化合物。
【請求項5】
R3'がアミノ、シアノ、ハロゲン、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、カルボキシル、C1-10アルキル、C1-10アルケニルおよびC1-10アルキニルより選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
R4が-OC(O)C1-10アラルキル、-OC(O)C1-10アルキルおよび-OC(O)アリールより選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
R5がシアノ、C1-6アルコキシ、アミノ、O-C1-10アルキル、O-アラルキル、-OC(O)C1-10アラルキル、-OC(O)C1-10アルキルおよび-OC(O)アリールより選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
XがSであり、nが1である、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
Wが(R)(R)であり、Rのそれぞれの存在がHである、請求項8記載の化合物。
【請求項10】
R1およびR2が同一であり、共にメチル、エチル、プロピルおよびイソプロピルより選択される、請求項9記載の化合物。
【請求項11】
R3およびR3'がいずれもHである、請求項10記載の化合物。
【請求項12】
R4およびR5が、-OH、-OC(O)C1-10アラルキル、-OC(O)C1-10アルキルおよび-OC(O)アリールよりそれぞれ独立に選択される、請求項11記載の化合物。
【請求項13】
R4およびR5が同一であり、共に-OH、-OC(O)C1-10アラルキル、-OC(O)C1-10アルキルおよび-OC(O)アリールより選択される、請求項12記載の化合物。
【請求項14】
R4およびR5がOHである、請求項13記載の化合物。
【請求項15】
R3がC1-10アルキルである、請求項1記載の化合物。
【請求項16】
R3がメチル、エチル、プロピルおよびイソプロピルより選択される、請求項15記載の化合物。
【請求項17】
R3がメチルである、請求項16記載の化合物。
【請求項18】
R4がアミノである、請求項1記載の化合物。
【請求項19】
R4がNH2である、請求項18記載の化合物。
【請求項20】

より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項21】
式(II)の構造を有し、結晶形態における融点が125℃を上回る化合物、またはその薬学的に許容される塩:


【請求項22】
結晶形態における融点が130℃を上回る、請求項21記載の化合物。
【請求項23】
結晶形態における融点が135℃を上回る、請求項22記載の化合物。
【請求項24】
結晶形態における融点が125〜150℃の範囲にある、請求項21記載の化合物。
【請求項25】
結晶形態における融点が130〜145℃の範囲にある、請求項24記載の化合物。
【請求項26】
結晶形態における融点が135〜140℃の範囲にある、請求項25記載の化合物。
【請求項27】
式(II)の化合物のそれぞれの分子が塩酸ピリジンの0.9〜1.1分子と会合している、請求項21記載の化合物。
【請求項28】
式(II)の化合物のそれぞれの分子が塩酸ピリジンの約1.0分子と会合している、請求項21記載の化合物。
【請求項29】
式(II)の化合物が塩酸ピリジンから実質的に遊離している、請求項21記載の化合物。
【請求項30】
式(IV)の構造を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩:

式中、
XはSまたはSeであり;
WはO、Sまたは(R)(R)であり、Rのそれぞれの存在は独立にHまたはC1-2アルキルであり;
ZはCHまたはNであり;
R1およびR2は独立にC1-10アルキルであり、好ましくは、R1およびR2はメチル、エチル、プロピルおよびイソプロピルより独立に選択され;
R5は-OH、シアノ、C1-10アルコキシ、アミノ、O-アラルキル、O-アラルキル、-OC(O)C1-10アラルキル、-OC(O)C1-10アルキル、-OC(O)アリールまたはグリシン置換基であり;
R6はHまたはC1-10アルキルであり;
R7はハロゲン、-OH、C0-6アルキル-COOR6、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、アミノ、アミド、シアノ、およびニトロより選択され;
mは0から4までの整数である。
【請求項31】
Wが(R)(R)であり、Rのそれぞれの存在がHまたはC1-2アルキルである、請求項30記載の化合物。
【請求項32】
R5がシアノ、C1-10アルコキシ、アミノ、O-アラルキル、-OC(O)C1-10アラルキル、-OC(O)C1-10アルキルおよび-OC(O)アリールより選択される、請求項30記載の化合物。
【請求項33】
XがSであり、mが0である、請求項30記載の化合物。
【請求項34】
WがOである、請求項30記載の化合物。
【請求項35】
R1およびR2が、メチル、エチル、プロピルおよびイソプロピルより独立に選択される、請求項30記載の化合物。
【請求項36】
R1およびR2が同一であり、いずれもメチルである、請求項35記載の化合物。
【請求項37】
R5がOHである、請求項36記載の化合物。
【請求項38】

より選択される、請求項30記載の化合物。
【請求項39】
請求項1〜38のいずれか一項記載の化合物の治療的有効量を投与する段階を含む、癌を治療するための方法。
【請求項40】
癌が固形腫瘍を含む、請求項39記載の方法。
【請求項41】
癌が、脳、肺、肝臓、脾臓、腎臓、リンパ節、小腸、膵臓、血液細胞、骨、結腸、胃、乳房、子宮内膜、前立腺、精巣、卵巣、中枢神経系、皮膚、頭頸部、食道または骨髄の癌である、請求項40記載の方法。
【請求項42】
癌が血液系癌である、請求項39記載の方法。
【請求項43】
癌が、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、脊髄形成異常症、骨髄増殖性疾患または不応性貧血である、請求項42記載の方法。
【請求項44】
癌が急性前骨髄球性白血病である、請求項43記載の方法。
【請求項45】
薬学的有効量が0.1〜1000mg/kgである、請求項39記載の方法。
【請求項46】
薬学的有効量が1〜500mg/kgである、請求項45記載の方法。
【請求項47】
薬学的有効量が10〜100mg/kgである、請求項46記載の方法。
【請求項48】
化合物が毎日投与される、請求項39記載の方法。
【請求項49】
化合物が注射によって投与される、請求項39記載の方法。
【請求項50】
付加的な薬剤が患者に投与される、請求項39記載の方法。
【請求項51】
付加的な薬剤が全トランス型レチノイン酸、9-シスレチノイン酸、Am-80またはアスコルビン酸である、請求項50記載の方法。
【請求項52】
請求項1〜38のいずれか一項記載の化合物と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む、薬学的組成物。
【請求項53】
pHが5を上回る水溶液である、請求項52記載の薬学的組成物。
【請求項54】
pHが5から8までの範囲にある水溶液である、請求項53記載の薬学的組成物。
【請求項55】
pHが5から7までの範囲にある水溶液である、請求項54記載の薬学的組成物。
【請求項56】
以下の化合物:


【請求項57】
薬学的に許容される希釈剤または担体、および式(II)の構造を有し、結晶形態における融点が125℃を上回る化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、薬学的組成物。


【図26A】PML/Rarα遺伝子の役割を分析するために、亜鉛の存在下および非存在下でMER1によって処理したU937/9PR細胞における3日間のMTTアッセイを示している。
【図27A】HL60細胞に対する三酸化ヒ素およびGMZ27の細胞傷害性を示している。
【図27B】AML患者からの細胞のコロニー増殖に対するATOおよびGMZ27の影響を示している。
【図28A】アネキシンV結合の評価による、HL60 AML細胞においてSTOおよびGMZ27により誘導されたアポトーシスのフローサイトメトリー評価を示している。
【図28B】カスパーゼ3の活性化の評価による、HL60 AML細胞においてSTOおよびGMZ27により誘導されたアポトーシスのフローサイトメトリー評価を示している。
【図28C】ミトコンドリア膜電位変化の評価による、HL60 AML細胞においてSTOおよびGMZ27により誘導されたアポトーシスのフローサイトメトリー評価を示している。
【図29】HL60 AML細胞においてGMZ27によって影響されるアポトーシス関連タンパク質のウエスタンブロット分析を示している。
【図30A】細胞をBSOで前処理した72時間のMTSアッセイを示している。
【図30B】細胞をDTTで前処理した72時間のMTSアッセイを示している。
【図30C】NACによる前処理の後のスーパーオキシド産生を示している。
【図31A】スーパーオキシド産生をフローサイトメトリーによってモニターした、ATOおよびGMZ27のROS産生を示している。細胞は1時間インキュベートした。
【図31B】スーパーオキシド産生をフローサイトメトリーによって評価した、ATOおよびGMZ27のROS産生を示している。細胞は3時間インキュベートした。
【図32】48時間のインキュベーション期間後のNB4 APL細胞の成熟/分化に対するATOおよびGMZ27の影響を示している。
【図33A】種々の用量のGMZ27で24時間処理したHL60細胞のヨウ化プロピジウム染色を示している。
【図33B】種々の用量のGMZ27で48時間処理したHL60細胞ヨウ化プロピジウム染色を示している。
【図34】正常ドナーからの初代細胞のコロニー増殖に対するATOおよびGMZ27の影響を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な説明
本発明は、さまざまな有機ヒ素化合物を提供する。
【0011】
ある態様において、本発明の有機ヒ素剤は、式(I)またはその薬学的に許容される塩の構造を有し、
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式中、
XはSまたはSeであって、好ましくはSであり;
WはO、Sまたは(R)(R)であって(Rのそれぞれの存在は独立にHまたはC1-2アルキルである)、好ましくはOまたは(R)(R)であり;
nは0または1、好ましくは1であり;
R1およびR2はそれぞれ独立にC1-10アルキルであり、好ましくは、R1およびR2はメチル、エチル、プロピルおよびイソプロピルより独立に選択される;
R3は-H、C1-10アルキルまたはC0-6アルキル-COOR6であり;
R3'はH、アミノ、シアノ、ハロゲン、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、カルボキシル、C1-10アルキル、C1-10アルケニルまたはC1-10アルキニルであり、好ましくはHであり;
R4は-OH、-H、-CH3、アミノ、-OC(O)C1-10アラルキル、-OC(O)C1-10アルキルまたは-OC(O)アリールであり;
R5は-OH、シアノ、C1-10アルコキシ、アミノ、O-アラルキル、-OC(O)C1-10アラルキル、-OC(O)C1-10アルキル、-OC(O)アリールまたはグリシン置換基であり;ならびに
R6はHまたはC1-10アルキルであり、好ましくはHである。
【0012】
ある態様において、Wは(R)(R)であり、Rのそれぞれの存在は独立にHまたはC1-2アルキルである。ある種のこのような態様において、Rのそれぞれの存在はHである。
【0013】
ある態様において、R3は-HまたはC0-6アルキル-COOR6である。ある種のこのような態様において、R3は-COOR6、-CH2COOR6、-CH2CH2COOR6、-CH(CH3)COOR6、-CH(CH2CH3)COOR6または-CH2CH2CH2COOR6より選択され、R6はC1-10アルキルである。
【0014】
ある態様において、R3はC1-10アルキルである。ある種の好ましいこのような態様において、R3はメチル、エチル、プロピルおよびイソプロピルより選択され、好ましくはメチルである。
【0015】
ある態様において、R3'はアミノ、シアノ、ハロゲン、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、カルボキシル、C1-10アルキル、C1-10アルケニルおよびC1-10アルキニルより選択される。好ましいこのような態様において、R3'はアリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、カルボキシル、C1-10アルケニルおよびC1-10アルキニルより選択される。
【0016】
ある態様において、R4は-OH、-H、-CH3、-OC(O)C1-10アラルキル、-OC(O)C1-10アルキルおよび-OC(O)アリールより選択される。ある種のこのような態様において、R4は-OC(O)C1-10アラルキル、-OC(O)C1-10アルキルおよび-OC(O)アリールより選択される。
【0017】
ある態様において、R4はアミノである。ある種のこのような態様において、R4はNH2である。
【0018】
ある態様において、R5はシアノ、C1-10アルコキシ、アミノ、O-アラルキル、-OC(O)C1-10アラルキル、-OC(O)C1-10アルキルおよび-OC(O)アリールより選択される。
【0019】
ある態様において、XはSであり、Wは(R)(R)であって、Rのそれぞれの存在はHであり、nは1であり、R1およびR2はメチル、エチル、プロピルおよびイソプロピルより独立に選択され、R3およびR3'はHであり、R4はOH、-OC(O)C1-10アラルキル、-OC(O)C1-10アルキルおよび-OC(O)アリールより選択され、R5はOH、-OC(O)C1-10アラルキル、OC(O)C1-10アルキルおよび-OC(O)アリールより選択される。ある種のこのような態様において、R1およびR2は同一であり、共にメチル、エチル、プロピルおよびイソプロピルより選択される。
【0020】
ある態様において、XはSであり、WはOであり、nは1、R1およびR2はいずれもメチルであり、R3はHおよびCOOR6より選択され、R3'はHであり、R4はHおよびグルタミン置換基より選択され、R5はOHおよびグリシン置換基より選択される。ある種のこのような態様において、R3はCOOR6であり、R4はHであり、R5はOHであり、R6はHである。
【0021】
ある態様において、式(I)の化合物は、
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より選択される。
【0022】
ある態様において、式(I)の化合物は、
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より選択される。
【0023】
ある態様において、式(I)の化合物は、
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より選択される。
【0024】
本発明のもう1つの局面は、式(II)の化合物
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またはその薬学的に許容される塩に関し、その結晶形態にある化合物の融点は125℃を上回り、より好ましくは130℃を上回り、最も好ましくは135℃を上回る。ある態様において、その結晶形態にある化合物の融点は約125〜150℃の範囲、好ましくは約130〜145℃の範囲、より好ましくは約135〜140℃の範囲にある。式(II)の化合物が塩酸ピリジンと会合している、ある態様において、この2種類の化合物は1:0.9〜1:1.1の比、好ましくは約1:1の比で存在する。ある種のこのような態様において、2種類の化合物はそれぞれの化合物を1分子ずつ含む複合体を形成する。予想外なことに、式(II)の化合物に対する塩酸ピリジンの比を低くすると、塩酸ピリジンの量を増加させた同じヒ素剤と比較して、癌に対する生物活性が維持されることが見いだされた。
【0025】
キラル中心が存在するならば、すべての異性体形態は本発明の範囲内にある。立体化学に関しては、絶対的な立体化学性を決定するためのカーン-インゴールド-プレローグ則に従う。これらの規則は、例えば、「Organic Chemistry」、Fox and Whitesell;Jones and Bartlett Publishers, Boston, MA(1994);Section 5-6, pp 177-178に記載されており、そのセクションは参照として本明細書に組み入れられる。
【0026】
ある態様において、有機ヒ素剤は、式(III)の構造を有する化合物であり、
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式中、
XはSまたはSeである、好ましくはSであり;
WはO、Sまたは(R)(R)であり、Rのそれぞれの存在は独立にHまたはC1-2アルキルであり、好ましくは0であり;
ZはCHまたはNであり;
R1およびR2は独立にC1-10アルキルであり、好ましくは、R1およびR2はメチル、エチル、プロピルおよびイソプロピルより独立に選択される;ならびに
R5は-OH、シアノ、C1-10アルコキシ、アミノ、O-アラルキル、O-アラルキル、-OC(O)C1-10アラルキル、-OC(O)C1-10アルキル、-OC(O)アリールまたはグリシン置換基であり、好ましくはOHであり;
R6はHまたはC1-10アルキルであり;
R7はハロゲン、-OH、C0-6アルキル-COOR6、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、アミノ、アミド、シアノおよびニトロより選択される;
mは0から4までの整数であり、好ましくは0である。
【0027】
ある態様において、Wは(R)(R)であり、Rのそれぞれの存在は独立にHまたはC1-2アルキルである。ある種のこのような態様において、Rのそれぞれの存在はHである。
【0028】
ある態様において、R5はシアノ、C1-10アルコキシ、アミノ、O-アラルキル、-OC(O)C1-10アラルキル、-OC(O)C1-10アルキルおよび-OC(O)アリールより選択される。
【0029】
ある態様において、XはSであり、WはOであり、R1およびR2はメチル、エチル、プロピルおよびイソプロピルより独立に選択され、R5はOHである。ある種のこのような態様において、R1およびR2は同一であり、共にメチル、エチル、プロピルおよびイソプロピルより選択される。ある種のこのような態様において、R1およびR2はいずれもメチルである。
【0030】
ある態様において、ZはNである。
【0031】
ある態様において、ZはCHである。
【0032】
ある態様において、式(III)の化合物は、
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より選択される。
【0033】
ある態様において、式(III)の化合物は、
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である。
【0034】
また別の態様において、有機ヒ素剤は、式(IV)の構造を有する化合物であり、
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式中、
XはSまたはSeであり、好ましくはSであり;
WはO、Sまたは(R)(R)であり、Rのそれぞれの存在は独立にHまたはC1-2アルキルであり、好ましくはOであり;
R1およびR2は独立にC1-10アルキルであり、好ましくは、R1およびR2はメチル、エチル、プロピルおよびイソプロピルより独立に選択される;ならびに
R5は-OH、シアノ、C1-10アルコキシ、アミノ、O-アラルキル、O-アラルキル、-OC(O)C1-10アラルキル、-OC(O)C1-10アルキル、-OC(O)アリールまたはグリシン置換基であり、好ましくはOHであり;
R6はHまたはC1-10アルキルであり;
R7はハロゲン、-OH、C0-6アルキル-COOR6、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、アミノ、アミド、シアノおよびニトロより選択される;
mは0から4までの整数であり、好ましくは0である。
【0035】
ある態様において、Wは(R)(R)であり、Rのそれぞれの存在は独立にHまたはC1-2アルキルである。ある種のこのような態様において、Rのそれぞれの存在はHである。
【0036】
ある態様において、R5はシアノ、C1-10アルコキシ、アミノ、O-アラルキル、-OC(O)C1-10アラルキル、-OC(O)C1-10アルキルおよび-OC(O)アリールより選択される。
【0037】
ある態様において、XはSであり、WはOであり、R1およびR2はメチル、エチル、プロピルおよびイソプロピルより独立に選択され、R5はOHである。ある種のこのような態様において、R1およびR2は同一であり、共にメチル、エチル、プロピルおよびイソプロピルより選択される。ある種のこのような態様において、R1およびR2はいずれもメチルである。
【0038】
ある種の好ましい態様において、式(III)の化合物は以下の構造
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を有する。
【0039】
本発明のもう1つの局面は、実施例13に示され、その内容が全体にわたって参照として本明細書に組み入れられるBanks, C.H., et al.(J. Med. Chem.(1979)22: 572-575)に記載されたものと類似した様式での式(I)の化合物の合成のための方法であって、式
(C1-10アルキル)2As(O)OH
の構造を有する化合物を、pH 3に調整した水/塩酸溶液中に溶解し、二酸化硫黄の流れを溶液中に通過させて、式
(C1-10アルキル)2AsCl
の構造を有する化合物を得て、それを
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(式中、
XはSまたはSeであり、好ましくはSであり;
WはO、Sまたは(R)(R)であり、Rのそれぞれの存在は独立にHまたはC1-2アルキルであり、好ましくはOまたは(R)(R)であり;
nは0または1であり、好ましくは1であり;
R3はH、C1-10アルキルまたはC0-6アルキル-COOR6であり;
R3'は-H、アミノ、シアノ、ハロゲン、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、カルボキシル、C1-10アルキル、C1-10アルケニルまたはC1-10アルキニルであり、好ましくはHであり;
R4は-OH、-H、-CH3、アミノ、-OC(O)C1-10アラルキル、-OC(O)C1-10アルキルまたは-OC(O)アリールであり;
R5は-OH、シアノ、C1-10アルコキシ、アミノ、O-アラルキル、-OC(O)C1-10アラルキル、-OC(O)C1-10アルキル、-OC(O)アリールまたはグリシン置換基であり;および
R6はHまたはC1-10アルキルであり、好ましくはHである)
の構造を有する化合物と反応させ、両方の化合物を、許容される有機溶媒中にあるピリジンで処理して式(I)の化合物を得る方法に関する。
【0040】
ある態様において、Wは(R)(R)であり、Rのそれぞれの存在は独立にHまたはC1-2アルキルである。ある種のこのような態様において、Rのそれぞれの存在はHである。
【0041】
ある態様において、R3は-HまたはC0-6アルキル-COOR6である。ある種のこのような態様において、R3は-COOR6、-CH2COOR6、-CH2CH2COOR6、-CH(CH3)COOR6、-CH(CH2CH3)COOR6または-CH2CH2CH2COOR6より選択され、R6はC1-10アルキルである。
【0042】
ある態様において、R3はC1-10アルキルである。ある種の好ましいこのような態様において、R3はメチル、エチル、プロピルおよびイソプロピルより選択され、好ましくはメチルである。
【0043】
ある態様において、R3'はアミノ、シアノ、ハロゲン、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、カルボキシル、C1-10アルキル、C1-10アルケニルおよびC1-10アルキニルより選択される。好ましいこのような態様において、R3'はアリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、カルボキシル、C1-10アルケニルおよびC1-10アルキニルより選択される。
【0044】
ある態様において、R4は-OH、-H、-CH3、-OC(O)C1-10アラルキル、-OC(O)C1-10アルキルおよび-OC(O)アリールより選択される。ある種のこのような態様において、R4は-OC(O)C1-10アラルキル、-OC(O)C1-10アルキルおよび-OC(O)アリールより選択される。
【0045】
ある態様において、R4はアミノである。ある種のこのような態様において、R4はNH2である。
【0046】
ある態様において、R5はシアノ、C1-10アルコキシ、アミノ、O-アラルキル、-OC(O)C1-10アラルキル、-OC(O)C1-10アルキルおよび-OC(O)アリールより選択される。
【0047】
本発明はさらに、式(I)、式(II)、式(III)もしくは式(IV)またはそれらの薬学的に許容される塩と、薬学的許容される希釈剤または担体とを含む薬学的組成物を提供する。ある態様において、薬学的組成物は、pHが約5を上回る、好ましくは約5〜約8の範囲にある、より好ましくは約5〜約7の範囲にある、水溶液である。
【0048】
本発明のもう1つの局面は、癌の治療のための方法であって、式(I)、式(II)、式(III)または式(IV)の化合物の治療的有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0049】
本発明はまた、癌の治療のための医薬品の製造における、式(I)、式(II)、式(III)もしくは式(IV)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩の使用法にも関する。
【0050】
ある態様において、癌は、脳、肺、肝臓、脾臓、腎臓、リンパ節、小腸、膵臓、血液細胞、骨、結腸、胃、乳房、子宮内膜、前立腺、精巣、卵巣、中枢神経系、皮膚、頭頸部、食道もしくは骨髄の癌などの固形腫瘍、または白血病、急性前骨髄球性白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、脊髄形成異常症、骨髄増殖性疾患もしくは不応性貧血などの血液系癌より選択される。ある種のこのような態様において、癌は、急性白血病および慢性白血病より選択される白血病である。
【0051】
したがって、もう1つの局面において、本発明は、癌の患者を治療する方法であって、患者に対して、式I、式II、式IIIの化合物を含む組成物、または上記の薬学的組成物を投与することを含む。化合物の治療的有効量は、0.1〜1000mg/kg、1〜500mg/kgまたは10〜100mg/kgであってよい。特定の態様において、本方法は、組成物を毎日投与することを含む。さらに、治療方法が多回投与を含みうることも想定されている。本方法は、化合物を注射などによって毎日投与することも含みうる。本明細書中に記載された代替的な投与の経路および方法を用いてもよく、投与様式は主として癌の種類および位置に依存すると考えられる。ある態様において、本方法はさらに、1つまたは複数の付加的な薬剤を患者に投与することを含む。この付加的な薬剤は全トランス型レチノイン酸、9-シスレチノイン酸、Am-80またはアスコルビン酸であってよい。化学療法、放射線療法、遺伝子治療、ホルモン療法、および当技術分野で公知の他の癌治療法といったその他の補助的な癌治療法も、本発明の方法に関連して想定される。
【0052】
局所的、全身性、直接投与および灌流によるものを含め、さまざまな投与方法が想定される。このような方法には、注射、経口的経路、静脈内、動脈内、腫瘍内、腫瘍血管構造に対する投与、腹腔内、気管内、筋肉内、内視鏡的、病変内、経皮的、皮下、局部的、鼻腔内、口腔内、粘膜、肛門性器部、直腸などによる投与が含まれる。
【0053】
定義
「Cx-yアルキル」という用語は、x個〜y個の炭素を鎖内に含む、直鎖アルキル基および分枝鎖アルキル基を含む置換型または非置換型の飽和炭化水素基のことを指し、これにはトリフルオロメチルおよび2,2,2-トリフルオロエチルなどのハロアルキル基が含まれる。C0アルキルは、基が末端位置にあれば水素を表し、内部にあれば結合を表す。「C2-yアルケニル」および「C2-yアルキニル」という用語は、長さおよび可能な置換に関しては上記のアルキルと類似しているが、それぞれ少なくとも1つの二重結合または三重結合を含む、置換型または非置換型の不飽和脂肪族基のことを指す。
【0054】
「C1-6アルコキシ」という用語は、酸素が結合したC1-6アルキル基のことを指す。代表的なアルコキシ基には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、tert-ブトキシなどが含まれる。「エーテル」とは、2つの炭化水素が酸素によって共有結合したもののことである。したがって、アルキルをエーテルにするアルキルの置換基は、アルコキシであるかそれに類似している。
【0055】
「C1-6アラルキル」という用語は、本明細書で用いる場合、アリール基によって置換されたC1-6アルキル基のことを指す。
【0056】
「アリール」という用語は、本明細書で用いる場合、環のそれぞれの原子が炭素である、5員性、6員性および7員性の置換型または非置換型の単環式芳香族基を含む。「アリール」という用語はまた、2つまたはそれ以上の環状リングを有し、隣接する2つの環が2つまたはそれ以上の炭素を共有し、環の少なくとも1つが芳香族であり、例えば、他の環状リングがシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよび/または複素環でありうるような多環式環系も含む。アリール基には、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、フェノール、アニリンなどが含まれる。
【0057】
「薬学的に許容される」という語句は、本明細書において、適切な医学的判断の範囲において、妥当な便益/リスク比に相応して、過度の毒性、刺激、アレルギー反応または他の問題もしくは合併症をもたらさずに、ヒトおよび動物の組織と接触させて用いるのに適している、化合物、材料、組成物および/または剤形のことを指して用いられる。
【0058】
「予防する」という用語は当技術分野で認識されていて、局所再発(例えば、疼痛)などの状態、癌などの疾患、心不全などの症候群複合体または他の任意の医学的病状に関連して用いられる場合には当技術分野で十分に理解されており、これには、組成物を投与されていない対象と比較して、対象における医学的病状の症状の頻度を低下させるかその発現を遅らせる組成物の投与が含まれる。したがって、癌の予防には、例えば、統計学的および/または臨床的に有意な量として、例えば、予防的治療を受けている患者の集団における検出可能な癌性増殖物の数を未治療対照集団と比較して減少させること、および/または治療された集団における検出可能な癌性増殖物の出現を未治療の対照集団に比して遅らせることが含まれる。感染症の予防には、例えば、治療された集団における感染症との診断の数を未治療対照集団に比して減少させること、および/または治療された集団における感染症の症状の発現を未治療対照集団に比して遅らせることが含まれる。疼痛の予防には、例えば、未治療対照集団に比して、治療された集団における対象により自覚される疼痛感覚の強度を低下させること、または代替的には疼痛感覚を遅らせることが含まれる。
【0059】
「予防的または治療的な」治療という用語は当技術分野で認識されており、これには宿主に対する対象組成物の1つまたは複数の投与が含まれる。それが望ましくない病状(例えば、宿主動物の疾患または他の望ましくない状態)の臨床的発現の前に投与されるならば、治療は予防的であり(すなわち、それは望ましくない病状を発症することに対して宿主を防御する)、一方、それが望ましくない病状の発現の後に投与されるならば、治療は治療的である(すなわち、それは既存の望ましくない病状またはその副作用を軽減、改善または安定化することを意図している)。
【0060】
「置換された」という用語は、骨格の1つまたは複数の炭素上の水素を置換する置換基を有する部分のことを指す。「置換」または「により置換された」が、このような置換が置換される原子および置換基の許容原子価に従うこと、ならびに置換によって安定な化合物、例えば、転位、環状化、脱離などによる変換を自然発生的には来さないものが生じることという暗黙の条件を含むことは理解されるであろう。本明細書で用いる場合、「置換された」という用語は、有機化合物のすべての許容置換基を含むことを想定している。幅広い局面において、許容置換基には、有機化合物の非環式および環式、分枝状および非分枝状、炭素環式および複素環式、芳香族性および非芳香族性の置換基が含まれる。適切な有機化合物に関して、許容置換基は1つでも複数でもよく、同じでも異なってもよい。本発明の目的においては、窒素などのヘテロ原子が、水素置換基および/またはヘテロ原子の原子価を満たす本明細書に記載の有機化合物の任意の許容置換基を有してもよい。置換基には、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミルまたはアシルなど)、チオカルボニル(チオエステル、チオアセテートまたはチオホルメートなど)、アルコキシル、ホスホリル、リン酸基、ホスホネート、ホスフィン酸基、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、硫酸基、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキルまたは芳香族性または複素環式芳香族性の部分が含まれる。炭化水素鎖上の置換された部分はそれ自体が適宜置換されうることが当業者には理解されるであろう。
【0061】
本治療方法に関して、化合物の「治療的有効量」とは、所望の投薬レジメンの一部として(哺乳動物、好ましくはヒトに対して)投与された場合に、例えば、任意の医学的治療に対して適用しうる妥当な便益/リスク比で、治療しようとする障害または状態または美容整形的な目的に関する臨床的に許容された基準に従って、症状を緩和する、病状を改善する、または疾病状態の発現を緩徐化する、製剤中の化合物の量のことを指す。
【0062】
本明細書で用いる場合、「治療する」または「治療」という用語は、病状の症状、臨床徴候または基礎にある病態を、対象の病状を改善または安定化するような様式で、好転させる、軽減する、または阻止することを含む。
【0063】
無機ヒ素剤および有機ヒ素剤の毒性の比較
三酸化ヒ素の使用はその毒性のために制約される。これに対してOAははるかに毒性が低く、インビボでの無機ヒ素へのOAへのメチル化は解毒反応であるとみなされているほどである。OAであるモノメチルアルシン酸およびジメチルアルシン酸は、無機ヒ素の主要代謝産物である(Hughes et al., 1998)。三酸化ヒ素を含む無機ヒ素剤は、心血管系、胃腸管、腎臓、皮膚、神経系および血液を含む、多くの臓器系に対してさまざまな影響を及ぼす。無機ヒ素剤は特に肝臓に対する毒性が強く、浸潤、中心壊死および硬変を引き起こす(IARC, 1980:ACGIH, 1991;Beliles et al., 1994;Goyer et al., 1996)。現在では、無機ヒ素化合物がヒトにおける皮膚癌および肺癌の発癌物質であるという十分な証拠がある(Goyer et al., 1996)。
【0064】
任意のヒ素剤の毒性は、体内からのその排出の速度、および組織蓄積の程度に関係している(Beliles et al., 1994)。一般に、毒性の高さは以下の順である:有機ヒ素剤<As5+<As3+(三酸化ヒ素を含む)<アルシン。無機ヒ素剤とは異なり、OAに起因する死亡または重篤な中毒例は文献中には報告されていない。その結果として、メチル化OAの毒性の相対的な低さ、ならびにそれらの迅速な排泄および滞留性の低さから、哺乳動物では無機ヒ素のメチル化は解毒機構であるとみなされている(Beliles et al., 1994;Goyer et al., 1996)。そのよい一例は、三酸化ヒ素を含む無機ヒ素に対する曝露後にほとんどの哺乳動物によって排泄される主たる尿中代謝産物である有機化合物のジメチルアルシン酸のそれである。マウスにおけるインビボ毒性試験では、三酸化ヒ素の腹腔内投与後のLD50(動物の50%が急性毒性のために死亡する用量)は10mg/kgであり(Investigator's Brochure, 1998)、一方、ジメチルアルシン酸の投与後のLD50は500mg/kgであった(MSDS, 1998)。
【0065】
癌治療
本発明の有機ヒ素剤は、すべての固形腫瘍、および白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、脊髄形成異常症または骨髄増殖性疾患を含むすべての血液系癌を含む、さまざまな癌を治療するために用いることができる。OAをまた、他の形式の治療に対して不応性となった血液系癌を治療するために用いることもできる。
【0066】
白血病は、白血球の異常増殖を特徴とする造血組織の悪性新生物であり、癌の4つの主要な型のうち1つである。白血病は、最も顕著に関係する白血球の型によって分類される。急性白血病は主として未分化細胞集団であり、慢性白血病ではより成熟した細胞形態がみられる(WO9924029号)。
【0067】
急性白血病はリンパ芽球性(ALL)および非リンパ芽球性(ANLL)の型に分けられ、FAB(French-American-British)分類に従い、または分化の型および程度に従い、形態学的および細胞化学的な外観によってさらに細分することもできる。特異的なB細胞性およびT細胞性ならびに骨髄性の細胞表面マーカー/抗原を分類に用いることもできる。ALLは主として小児期の疾患であり、一方、急性骨髄性白血病としても知られるANLLは、成人においてより一般的な急性白血病である。
【0068】
慢性白血病は、リンパ性(CLL)および骨髄性(CML)の型に分けられる。CLLは、血液、骨髄およびリンパ系器官における成熟リンパ球の数が増加していることを特徴とする。ほとんどのCLL患者では、B細胞の特徴を備えたリンパ球のクローン性増殖がみられる。CLLは比較的年齢が高い人の疾患である。CMLは、血液および骨髄中のあらゆる分化段階にある顆粒球が主体をなすが、肝臓、脾臓および他の臓器が冒されることもある。本発明のOAによって治療される可能性のあるその他の悪性血液疾患には、以下のものが非限定的に含まれる:脊髄形成異常症、骨髄増殖性疾患、リンパ腫および多発性骨髄腫。
【0069】
薬学的組成物
少なくとも1つの有機ヒ素剤または付加的な有効成分を含む薬学的組成物の製剤は、参照として本明細書に組み入れられる「Remington's Pharmaceutical Sciences」、18th Ed. Mack Printing Company, 1990に例示されているように、本開示に鑑みて当業者には公知であると考えられる。さらに、動物(例えば、ヒト)への投与の場合、製剤が、FDAの生物基準局(Office of Biological Standards)で要求されているような、無菌性、発熱性、全般的な安全性および純度に関する基準を満たす必要があることも理解されるであろう。
【0070】
本明細書で用いる場合、「薬学的に許容される担体」には、任意およびすべての溶媒、分散媒、コーティング剤、界面活性剤、抗酸化物質、保存料(例えば、抗菌薬、抗真菌薬)、等張化剤、吸収遅延剤、塩、保存料、薬物、薬物安定化剤、ゲル、結合剤、添加剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味剤、着香料、色素などの物質ならびにそれらの組み合わせが含まれ、これらは当業者に周知であると考えられる(例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences」、18th Ed. Mack Printing Company, 1990, pp.1289-1329を参照のこと。これは参照として本明細書に組み入れられる)。従来の担体が有効成分と適合しない場合を除き、治療的または薬学的な組成物におけるその使用を想定している。
【0071】
有機ヒ素剤は、それが固体、液体またはエアロゾルのうちいずれの形態で投与されるか、およびそれが注射などの投与経路にとって無菌状態である必要があるか否かに応じて、さまざまな種類の担体と配合することができる。本発明は、静脈内、皮内、動脈内、腹腔内、病変内、頭蓋内、関節内、前立腺内、胸腔内、気管内、鼻内、硝子体内、腟内、直腸内、局所外用性、腫瘍内、筋肉内、腹腔内、皮下、結膜下、小胞内、粘膜性、心膜内、臍帯内、眼内、経口性、局所外用性、局所性、エアロゾル使用、注射、注入、持続注入、標的細胞への直接的な局所潅流により、カテーテルにより、洗浄液により、クリーム剤中に、脂質組成物(例えば、リポソーム)中に、または他の方法もしくは以上の任意の組み合わせによって投与することができ、これは当業者に周知であると考えられる(例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences」、18th Ed. Mack Printing Company, 1990を参照のこと。これは参照として本明細書に組み入れられる)。
【0072】
患者に対して投与される本発明の組成物の実際の投与量は、体重、病状の重症度、治療しようとする疾患の種類、過去または現在の治療的介入、患者の特発性疾患および投与の経路といった身体的および生理的な要因によって決定しうる。投与を担当する医師は、いかなる場合にも、組成物中の有効成分の濃度および個々の対象に対する適切な投与量を決定すると考えられる。
【0073】
ある態様において、薬学的組成物は例えば、有機ヒ素化合物を少なくとも約0.1%含みうる。また別の態様において、有効化合物は単位体の重量の約2%〜約75%、または例えば約25%〜約60%、およびそれらから導き出せる任意の範囲を構成しうる。別の非限定的な例において、用量は1回の投与当たり約0.1mg/kg/体重、0.5mg/kg/体重、1mg/kg/体重、約5mg/kg/体重、約10mg/kg/体重、約20mg/kg/体重、約30mg/kg/体重、約40mg/kg/体重、約50mg/kg/体重、約75mg/kg/体重、約100mg/kg/体重、約200mg/kg/体重、約350mg/kg/体重、約500mg/kg/体重、約750mg/kg/体重〜約1000mg/kg/体重またはそれ以上、およびそれらから導き出せる任意の範囲であってよい。本明細書に列記した数から導き出せる範囲の非限定的な例として、約10mg/kg/体重〜約100mg/kg/体重などの範囲を、上記の数値に基づいて投与することができる。
【0074】
いかなる場合にも、組成物は、1つまたは複数の成分の酸化を遅らせるために種々の抗酸化物質を含みうる。さらに、パラベン(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールまたはそれらの組み合わせを非限定的に含む、種々の抗菌薬および抗真菌薬などの保存料により、微生物の作用を防止することもできる。
【0075】
有機ヒ素剤は、組成物中に遊離塩基、中性形態または塩の形態として配合することができる。薬学的に許容される塩には、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウムもしくは水酸化第二鉄などの無機塩基から生じる遊離カルボキシル基と形成された塩、またはイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジンもしくはプロカインなどの有機塩基から生じる遊離塩基が含まれる。
【0076】
組成物が液体形態にある態様において、担体は、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、脂質(例えば、トリグリセリド、植物油、リポソーム)およびそれらの組み合わせを非限定的に含む溶媒または分散媒であってよい。適切な流動性を、レシチンなどのコーティング剤の使用により;液体ポリオールまたは脂質などの担体中への分散による必要な粒径の維持により;ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤の使用により;またはこのような方法の組み合わせにより、維持することができる。多くの場合には、例えば糖、塩化ナトリウムまたはそれらの組み合わせなどの等張化剤を含めることが好ましいと考えられる。
【0077】
滅菌注射液は、必要量の有効化合物を、必要に応じて、上に挙げた種々の他の成分とともに適切な溶媒中に組み入れた後に、濾過滅菌を行うことによって調製される。一般に、分散液は、滅菌した種々の有効成分を、基本的な分散媒および/または他の成分を含む滅菌媒体中に組み入れることによって調製される。滅菌注射用溶液、懸濁液または乳濁液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、有効成分の粉末のほかに所望の付加的な成分があらかじめ滅菌濾過した液体媒質から得られる、真空乾燥法および凍結乾燥法である。液体媒質は、必要であれば適した緩衝化を行うべきであり、液体希釈剤は十分な食塩水またはグルコースとともに注入する前にまず等張化しておく。高度に濃縮された直接注入用の製剤も想定しており、この場合には極めて急速な浸透を行わせて小さな領域に高濃度の有効物質を送達するために、DMSOを溶媒として用いることが考えられる。
【0078】
組成物は、製造および貯蔵の条件下で安定である上に、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に抗して保存されなければならない。このため、好ましい組成物のpHは約5を上回り、好ましくは約5〜約8であり、より好ましくは約5〜約7である。エンドトキシンによる汚染は、安全なレベルで最小限に、例えば、0.5ng/mgタンパク質未満に保たれる必要があることは理解されるであろう。
【0079】
特定の態様においては、組成物中に吸収を遅らせる物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウム、ゼラチンまたはそれらの組み合わせを用いることにより、注射用組成物の持続的な吸収を行わせることができる。
【0080】
併用療法
有機ヒ素剤を別の作用因子または治療方法、好ましくは別の癌治療法と併用しうることは、本発明の1つの局面である。数分から数週間の範囲の間隔をおいて、有機ヒ素剤を他の作用因子による治療の前または後に用いることができる。他の作用因子および発現構築物を対象に対して別個に適用する態様においては、一般に、作用因子および発現構築物が細胞に対して有利な併用効果を依然として発揮しうるように、各々の送達時点の間に有効な期間が過ぎないように徹底されると考えられる。例えば、このような場合には、細胞、組織または生物体に、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の治療手段を有機ヒ素剤と実質的に同時に(すなわち、1分間未満のうちに)接触させることが同定される。また別の局面において、1つまたは複数の作用因子を、有機ヒ素剤を投与する前および/または後に、約1分、約5分、約10分、約20分、約30分、約45分、約60分、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、約25時間、約26時間、約27時間、約28時間、約29時間、約30時間、約31時間、約32時間、約33時間、約34時間、約35時間、約36時間、約37時間、約38時間、約39時間、約40時間、約41時間、約42時間、約43時間、約44時間、約45時間、約46時間、約47時間〜約48時間またはそれ以上の時間以内に投与してもよい。ある種の別の態様において、作用因子は、有機ヒ素剤を投与する前および/または後に、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日、約13日、約14日、約15日、約16日、約17日、約18日、約19日、約20日〜約21日以内に投与してもよい。しかし、状況によっては、各投与の間に数週間(例えば、1、2、3、4、5、6、7もしくは8週またはそれ以上)の間隔をおき、治療のための期間を大きく延長することが望ましいこともある。
【0081】
有機ヒ素剤を「A」とし、任意の他の治療因子でありうる二次的な作用因子を「B」として、さまざまな組み合わせを用いることができる:
A/B/A B/A/B B/B/A A/A/B A/B/B B/A/A A/B/B/B B/A/B/B
B/B/B/A B/B/A/B A/A/B/B A/B/A/B A/B/B/A B/B/A/A
B/A/B/A B/A/A/B A/A/A/B B/A/A/A A/B/A/A A/A/B/A
【0082】
患者に対する本発明の治療用組成物の投与は、細胞の毒性(あれば)を考慮に入れた上で、化学療法薬の投与のための一般的なプロトコールに従って行われると考えられる。治療サイクルは必要に応じて繰り返すことが予想される。また、さまざまな標準的治療法または補助的癌治療法、ならびに外科的介入を、記載したヒ素剤と組み合わせて適用することも想定される。これらの治療法には、化学療法、放射線療法、免疫療法、遺伝子治療および外科手術が非限定的に含まれる。以下のセクションではいくつかの補助的癌療法について述べる:
【0083】
化学療法
癌治療法はまた、化学物質または放射線に基づく治療法の双方とのさまざまな併用療法も含みうる。併用される化学療法薬には、例えば、シスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトテシン、イホスファミド、メルファラン、クロランブシル、ブスルファン、ニトロソウレア、ダクチノマイシン、ダウノルピシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリコマイシン、マイトマイシン、エトポシド(VP16)、タモキシフェン、ラロキシフェン、エストロゲン受容体結合薬、タキソール、ゲムシタビエン、ナベルビン、ファルネシルプロテイントランスフェラーゼ阻害薬、トランスプラチナ、5-フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチンおよびメトトレキサート、または前記のものの任意の類似体または誘導体変異体が含まれる。
【0084】
放射線療法
DNA損傷を引き起こし、幅広く用いられている他の因子には、γ線、X線、および/または腫瘍細胞に対する放射性同位体の直接送達として一般に知られているものが含まれる。マイクロウェーブおよびUV照射といったその他の形態のDNA損傷性因子も想定している。これらの因子はすべて、DNA、DNAの前駆体、DNAの複製および修復、ならびに染色体の構築および維持に対して広範囲の損傷を引き起こす可能性が高い。X線に関する線量の範囲は、1日量50〜200レントゲンを長期間(3〜4週間)から単回線量2000〜6000レントゲンまでの範囲にわたる。放射性同位体に関する線量の範囲は非常に幅広く、同位体の半減期、放出される放射線の強度および種類、ならびに新生物細胞による取り込みに依存する。「接触される」および「曝露される」という用語は、細胞に対して適用される場合、治療用構築物および化学療法薬もしくは放射線療法薬が標的細胞に対して送達される、または標的細胞に直接並列して配置される工程を記載するために本明細書では用いられる。細胞の死滅または静止を実現するためには、いずれの薬剤も細胞を死滅させる、またはその分裂を阻止するために有効な複合量として細胞に送達される。
【0085】
免疫療法
免疫治療薬は一般に、免疫エフェクター細胞、および癌細胞を標的として破壊する分子の使用に依拠している。免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞の表面にあるある種のマーカーに対して特異的な抗体であってよい。抗体単独でも治療法のエフェクターとしての役割を果たす場合があり、またはそれが他の細胞を動員して実際にはそれに細胞死滅を行わせる場合もある。また、抗体を薬物または毒素(化学療法、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)と結合させ、単にターゲティング薬剤として利用することもできる。または、エフェクターは、腫瘍細胞標的と直接的または間接的に相互作用する表面分子を有するリンパ球であってもよい。種々のエフェクター細胞には細胞傷害性T細胞およびNK細胞が含まれる。
【0086】
免疫療法はこのため、併用療法の一部として、遺伝子治療とともに用いることも可能と考えられる。併用療法に関する一般的なアプローチについては以下に考察している。一般に腫瘍細胞は、ターゲティングに適用しうる、すなわち、他の大半の細胞の表面には存在しない、何らかのマーカーを有していなければならない。多くの腫瘍マーカーが存在し、これらの任意のものが本発明の文脈におけるターゲティングのために適すると思われる。一般的な腫瘍マーカーには、癌胎児性抗原、前立腺特異抗原、尿中腫瘍関連抗原、胎児性抗原、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG-72、HMFG、シアリルルイス抗原、MucA、MucB、PLAP、エストロゲン受容体、ラミニン受容体、erbBおよびp155が含まれる。
【0087】
遺伝子治療
さらにもう1つの態様において、二次的な治療は、治療用ポリヌクレオチドを第1の治療薬の前、後またはそれと同時に投与する二次的な遺伝子治療である。治療薬を、遺伝子産物をコードするベクターとともに送達することには、標的組織に対して複合的な過剰増殖抑制効果があると考えられる。
【0088】
外科手術
癌を有する人の約60%は何らかの種類の外科手術を受けると考えられ、これには予防的、診断的または病期判定用、根治的および姑息的な外科手術が含まれる。根治的外科手術は、本発明の治療法、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子治療、免疫療法および/または代替療法といった他の治療法と併せて用いうる癌治療法である。治癒的外科手術には、癌組織の全体または一部を物理的に除去、摘出および/または破壊する切除術が含まれる。腫瘍切除術とは、腫瘍の少なくとも一部の物理的除去のことを指す。腫瘍切除術のほかに、外科手術による治療法には、レーザー外科手術、冷凍外科手術、電気外科手術および顕微鏡制御外科手術(モース外科手術)が含まれる。さらに、本発明を表在癌、前癌または偶発的な量の正常組織の除去と併用することも想定している。
【実施例】
【0089】
以下の実施例は、本発明の好ましい態様を示すために含められる。以下の実施例において開示される技術が、本発明の実施において十分に機能することが発明者らによって見いだされた技術を代表し、そのため、その実施のための好ましい様式を構成するとみなしうることが当業者には理解されるはずである。しかし、当業者は、本発明の開示に鑑みて、開示された特定の態様にさまざまな変化を加えることができ、それでもなお本発明の精神および範囲から逸脱することなく同様または類似の結果が得られることも理解するはずである。
【0090】
実施例1
S-ジメチルアルシノ-チオコハク酸(MER1)、S-ジメチルアルシノサリチル酸(SAL1)およびS-(ジメチルアルシノ)グルタチオン(SGLU1)の合成
MER-1:メルカプトコハク酸4.5gを、250mLの丸底フラスコ内にある100mLのグリム(1,2-ジメトキシエタン)に加えた。4mLのジメチルクロロアルシン(0.03mol)を滴下させながら添加し、続いて4mLのジエチルアミン(0.04mol)を同じく滴下した。反応混合物を室温で20時間攪拌した。塩酸ジエチルアミンの白色沈殿物が形成され、これを濾過によって分離した。グリム中にあるMER1溶液の容積を減圧下での蒸発によって大きく減少させた。MER1の白色結晶を濾過によって分離し、冷却した蒸留水で洗浄した。続いて無色の結晶性生成物をエタノール-水から再結晶化させ、150℃という一定の融点となるようにした。
【0091】
SAL-1:100mLフラスコ内に、5gの2-メルカプト安息香酸(チオサリチル酸)、75mLのグリム、5mLのジメチルクロロアルシンおよび5mLのジエチルアミンを入れた。混合物を窒素雰囲気下で1時間環流させ、室温で一晩攪拌した。塩酸ジエチルアミンの沈殿物を濾過によって分離した。生成物の結晶が分離するまで、濾液を減圧下でゆっくりと蒸発させた。生成物を含む蒸発後の溶液を氷冷し、冷却溶液を濾過した。生成物の結晶をエタノールから再結晶化させ、97℃という一定の融点となるようにした。
【0092】
SGLU-1:グルタチオン(14.0g、45.6mmol)をグリム中で急速に攪拌しながら、ジメチルクロロアルシン(6.5g、45.6mmol)を滴下させながら添加した。続いてピリジン(6.9g、91.2mmol)をスラリーに添加し、その後に混合物を加熱して環流させた。加熱は直ちに止め、混合物を室温で4時間攪拌した。その結果生じた不溶性固体の単離およびエタノールからの再結晶化により、4が塩酸ピリジン複合体として得られた(収率75%):mp 115-118℃;NMR(D20)δ1.35(s、6H)、1.9-4.1(m's、10H)、7.8-9.0(m、5H);質量スペクトル(m/e)140、125、110、105、79、52、45、36。この材料は、本明細書に記載した実施例では用いられていないが、その全体が参照として本明細書に組み入れられる、Banks, C.H., et al.(J. Med. Chem.(1979) 22: 572-575)に記載された生物アッセイには用いられている。
【0093】
MER-1、SGLU-1およびSAL-1の合成につながった研究は、発明者Ralph Zingaroに対する助成金として、Houston、TexasのRobert A. Welch基金による資金援助を得た。
【0094】
実施例2
インビトロ評価のためのアッセイ
本発明のヒ素剤化合物、組成物および/または製剤に対する癌細胞の応答を判定するために、さまざまなインビトロアッセイを用いた。アッセイした応答のいくつかには、細胞生存度、細胞周期、アポトーシスおよび成熟度が含まれる。本発明者らはまた、本発明のヒ素組成物に対する感受性にとっての癌細胞におけるPML/RARα遺伝子の必要性を評価するためのアッセイもデザインした。以下に提示するものは、これらのアッセイの説明である:
【0095】
スルホロダミンBアッセイ
種々のヒト癌細胞を、マイクロタイタープレート上で、指定濃度のMER1、SAL1またはSGLU1の存在下または非存在下で48時間インキュベートし、その後にスルホロダミンB色素を培養物に添加した。スルホロダミンB色素はタンパク質結合色素であり、生細胞を標識する。結果は、非処理対照細胞と比較した場合の処理細胞の増殖率として報告している(負のデータは細胞死滅を表す)。
【0096】
MTTアッセイおよびトリパンブルーアッセイ
これらのアッセイのためには、白血病患者および正常ドナーの末梢血試料からの単核細胞をフィコール-ハイパック分画によって分離し、DMEM完全培地中に再懸濁させた。または、場合によっては細胞株の細胞を用いた。種々のヒト細胞株からの悪性細胞(通常は5×104個/mL)または白血病患者および健常ドナーの末梢血からの単核細胞(1×106個/mL)を、αMEMまたはRPMI1640中において、さまざまな濃度のMER1、SAL1またはSGLU1の存在下または非存在下でインキュベートした。それぞれの実験条件を3つずつ行った。指定日数(通常3日間)にわたってMER1、SAL1またはSGLU1に曝露させた後に、ウェルに対する色素(MTTまたはトリパンブルーのいずれか)の添加によって細胞生存度を評価した。MTT色素は、ウェル内の生細胞の存在に依存して色調を変化させる。MTT処理下での細胞の生存度は、対照細胞の増殖に対する百分率として評価した。トリパンブルー色素は死細胞内に浸透し、生細胞を顕微鏡下で算定して生存率を評価することができる。
【0097】
クローン原性アッセイ
クローン原性またはコロニー形成は、(正常ドナーまたは白血病患者から)末梢血単核細胞を入手し、それを組換えサイトカインを含む半流動培地中に再懸濁させ、4×104個/0.1mLの密度で、96ウェルマイクロタイタープレートに0.1mL/ウェルを4つずつプレーティングすることによって分析した。5%CO2加湿雰囲気下、37℃でのほぼ10日間のインキュベーション後に、50個を上回る細胞から構成される細胞凝集物を1つのコロニーとして算定した。増殖阻害は、対照(薬剤なしの)試料におけるコロニー増殖と比較したコロニー増殖の百分率として評価した。
【0098】
アポトーシスの分析
アポトーシスの分析には、アポトーシス経路における種々のイベントをアッセイすることにより、3種類の方法を用いた。本発明のヒ素誘導体によって誘導されたアポトーシス細胞の百分率をフローサイトメーターを用いて評価した。アポトーシスに関して細胞を染色する種々の方法を、アポトーシスカスケードの種々の局面を評価するために利用した。
【0099】
1.アネキシンVおよびヨウ化プロピジウム(PI)染色
アネキシンVは細胞膜の外層表面にホスファチジルセリンを発現する細胞と結合し、一方、ヨウ化プロピジウムは細胞膜に損傷を来した細胞の細胞DNAを染色する。これにより、生細胞(どちらの蛍光色素でも染色されない)をアポトーシス細胞(アネキシンVのみによって染色される)および壊死細胞(アネキシンおよびPIの両方によって染色される)と識別することが可能になる。
【0100】
培養下にある細胞を本発明の指定のヒ素剤で指定期間にわたって処理した後に、細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、アネキシンV-FITC(Travigene)を含む100μLの結合緩衝液中に再懸濁させ、暗下で15分間インキュベートした。PIの添加後に細胞をフローサイトメーターで分析した。
【0101】
2.ミトコンドリア膜電位のサイトフルオロメトリー分析
ミトコンドリア膜の電位の変化を評価するため、ヒ素誘導体による指定時間にわたる処理の後に、1μMを下回る濃度のMitoTrackerプローブ中で細胞をインキュベートした。MitoTrackerプローブは原形質膜を介して受動的に拡散し、活性ミトコンドリア中に蓄積する。細胞は、MitoTracker Red CMXRos(Molecular Probes)およびMitoTracker Green FM(Molecular Probes)という2種類の着色剤で染色した。細胞をPBSで洗浄し、MitoTracker色素で染色して、暗下にて37℃で1時間インキュベートした。CMXRosはミトコンドリア膜電位によって駆動されてミトコンドリア内に組み入れられ、チオール残基と反応してチオールエステル共有結合を形成する。MitoTracker Green FM色素はミトコンドリア膜電位とは関係なくミトコンドリア内に選択的に蓄積するため、ミトコンドリア量を判定するための有用なツールとなる。
【0102】
3.カスパーゼ活性の検出
蛍光性基質PhiPhiLux G1D1(Oncoimmunin)を、フローサイトメトリーによってカスパーゼ活性をモニターするために用いた。PhiPhiLux G1D1は、生細胞におけるカスパーゼ3活性およびカスパーゼ3様活性の検出および測定のための基質である。本発明のヒ素誘導体で指定期間にわたって処理した後に、細胞をPBSで洗浄し、5μLの基質溶液中に再懸濁させ、暗下にて37℃で1時間インキュベートした。インキュベーション後に細胞を洗浄し、分析時に壊死細胞を除外するために、フローサイトメトリー分析の数分前にPIを添加した。
【0103】
細胞周期分析
細胞周期は以下の通りに分析した:本発明の種々のヒ素化合物との72時間のインキュベーション後に、細胞(1×106個)をPBSで2回洗浄した。細胞ペレットを、低張溶液(RNアーゼ溶液、Triton X-100、クエン酸ナトリウム、PEG)およびPI(25μg/mL)を含む染色溶液中に再懸濁させた。細胞を暗下にて室温で15分間インキュベートし、その後にそれらをフローサイトメーターにより、CellQuestプログラム(Becton-Dickinson)を用いて分析した。
【0104】
成熟度分析
ヒト急性前リンパ球性白血病細胞株NB4を、白血病細胞の成熟に対する本発明のヒ素剤の効果について試験するために用いた。フィコエリトリン結合抗CD11bモノクローナル抗体(Becton-Dickinson)を、成熟骨髄球のマーカーとして用いた。薬剤との72時間のインキュベーション後に、細胞をPBSで洗浄した。続いて、密度1×106個/mLの細胞を、希釈度1:10のモノクローナル抗体とともに暗下にて室温で15分間インキュベートした。インキュベーション後に細胞をPBSで洗浄し、ペレットを500μLのPBS中に再懸濁させた。非特異的な結合を除外するために、適切なアイソタイプ対照を同じ様式で調製した。細胞をフローサイトメーターを用いて選別し、CellQuest Document Analysisを用いて分析した。
【0105】
PML/Rarαタンパク質の役割
三酸化ヒ素は急性前リンパ球性白血病の治療を目的として承認されており、これはAPL細胞を死滅させるが、その大部分はPML/Rarα遺伝子およびタンパク質の発現に起因する。白血病細胞におけるPML/RARα融合タンパク質の存在が、SGLUおよびMER1に対して観察されている白血病細胞の感受性に寄与するか否かを確かめるために以下の系を用いた。三酸化ヒ素に対する耐性があることが知られているU937細胞に対してPML/RARα遺伝子をトランスフェクトした。トランスフェクト細胞(U937/PR9)はDr. Michael Andreeff(M.D. Anderson Cancer Center)より寄贈いただいた。PML/RARα遺伝子は亜鉛の存在下で機能的になる。U937/PR9細胞株におけるPML/RARα遺伝子のZn2+による誘導性発現が、Grignani et al.(Cell, (1993)74: 423-431)に記載されている。PML/RARα発現を確かめるために、細胞を0.1mM ZnSO4で3時間処理し、その後にヒ素化合物を72時間にわたり添加した。PML/RARα発現は、典型的には、細胞に対する亜鉛の添加から約3時間後に確かめられ、48時間にわたって安定的である。
【0106】
実施例3
MER1、SAL1およびSGLU1の抗癌活性のインビトロ評価
MER1の抗白血病活性を、6種類のヒト白血病細胞株:AML2、AML3およびHL60(AML由来の細胞株)、NB4(APL由来の細胞株)、K562(CML-BP由来の細胞株)およびKBM7(AML由来の細胞株)に対する3日間のMTTアッセイ/トリパンブルー排除法によって評価した。MER1はNB4細胞に対して最も効果的であり、IC50(非処理対照細胞と比較して、細胞の50%の生存を引き起こす濃度)は1μMであった(図1)。MTTアッセイによるAML2細胞およびKBM7細胞の分析ならびにトリパンブルーアッセイによるAML2細胞(図2参照)、AML3細胞、K562細胞およびHL60細胞の分析を含め、他の細胞株のMER1処理で認められたIC50値は1.5〜4μMの範囲であった。この活性は、これらの細胞株に対する三酸化ヒ素の活性と同程度であった(三酸化ヒ素活性の例は図1および図2に示されている)。MER1は、National Institute Of Health(NIH)により、スルホロダミンBアッセイを用いて、インビトロで60種類という一群の腫瘍細胞株に対する抗癌活性についても試験されている(図3)。この化合物はさまざまな腫瘍細胞株に対して低濃度で活性があるという証拠を示し、試験した白血病細胞に対して特にそうであった。1μMというMER1の濃度で、試験した6種類の白血病細胞株のすべてで増殖が有意に遅延した(増殖が20%未満に;図3、最初の図面)。
【0107】
SAL1の抗白血病活性を、2種類のヒト細胞株:HL60細胞(図4に示されている)およびZ138(ALL細胞株)に対する3日間のトリパンブルーアッセイを用いて評価した。SAL1は、NIHにより、スルホロダミンBアッセイを用いて、インビトロで60種類という一群の腫瘍細胞株に対する抗癌活性についても試験されている(図5)。この化合物は、さまざまな腫瘍細胞株に対して低濃度で活性があるという証拠を示した。
【0108】
SGLU1の抗白血病活性は、9種類のヒト白血病細胞株:NB4、CAG(多発性骨髄腫細胞株)、JURKATおよびRAJI(リンパ腫細胞株)、HL60、AML2、AML3、KBM5(CML-BP由来の細胞株)およびKBM7に対する3日間のMTTアッセイによって評価した。細胞株NB4に関する結果は図6に示されている。SGLU1の抗白血病活性は、6種類のヒト白血病細胞株:NB4、CAG、JURKAT、HL60、KBM3(AML細胞株)およびZ119(ALL細胞株)に対する3日間のトリパンブルー排除法によっても評価されており、同様の結果が得られている。図6に示されているように、その活性は三酸化ヒ素の活性と同程度であった。SGLU1の抗白血病活性を、HL60ヒト白血病細胞に対する5日間のクローン原性アッセイによっても評価した(図7)。SGLU1は、NIHにより、スルホロダミンBアッセイを用いて、インビトロで60種類という一群の腫瘍細胞株に対する抗癌活性についても試験されている(図8)。この化合物は、さまざまな腫瘍細胞株に対して低濃度で活性があるという証拠を示した。
【0109】
実施例4
悪性および正常血液細胞に対するMER1およびSGLU1の毒性の判定
MER1を、白血病患者5例(3例はAML、1例はCML-BPおよび1例はALL)からの血液単核細胞(芽球が80%超)に対して試験した(図9〜13)。短期的な細胞培養物では、MER1は三酸化ヒ素と同程度に有効であった(図9、10および12)。さらに、健常ドナー4例からの試料における、正常末梢血単核細胞に対するMER1の毒性も評価した。MTTアッセイによる短期的な細胞懸濁培養物では、白血病患者からの悪性細胞よりも正常細胞に対するMER1の毒性の方が低かった(図14)。最も重要なことに、長期的なクローン原性アッセイでは、MER1は三酸化ヒ素よりも正常細胞に対する毒性が低かった(図15)。
【0110】
SGLU1を、CLL患者1例(図16、これは三酸化ヒ素との比較を示している)およびAML患者2例(図17)を含む、白血病患者3例からの血液単核細胞に対して試験した。長期的なクローン原性アッセイでは、SGLU1は正常細胞に対して三酸化ヒ素よりも毒性が低かった(図18)。図18に示された8日間のクローン原性アッセイに加えて、9日間および13日間のクローン原性アッセイも実施した。
【0111】
実施例5
MER1の製剤化および安定性
MER1はリン酸緩衝水中に溶解した場合に少なくとも2カ月にわたって安定であることを示すデータが、この期間中に行ったインビトロ実験で溶液が同じレベルの細胞傷害活性を保ったことから得られた(図19)。さらに、MER1およびSGLU1の詳細な薬学的評価も行った。
【0112】
I.MER-1の薬学的評価
MER-1は、臨床的状況での投与に対して許容される十分な溶解性および安定性を有することが見いだされた(以下のデータを参照)。これはまた、動物試験に、あるいは前期第I相試験に用いるために溶液を即時に調合しうる程度には十分に安定である。しかし、より大規模な臨床試験に用いるための液体製剤のより大規模なバッチを製造するため、および長期的貯蔵が必要とされる市場での流通のためには、溶液の安定性は十分ではない。これらの用途のためには、使用時に再構成される凍結乾燥製剤が想定される。このような凍結乾燥組成物の調製物は当技術分野で周知である。
【0113】
A.溶解性
MER-1の水への溶解度は約15mg/mLである。0.1N水酸化ナトリウムを用いてpHを6に調製することにより、最大で約150mg/mLというより高いMER-1濃度を実現することができる。エタノールに対するMER-1の溶解度は100mg/mLを上回る。
【0114】
B.溶液のpH
MER-1の水溶液の自然なままのpH値は以下の通りである:
0.1mg/mL pH 3.7
1mg/mL pH 3.1
10mg/mL pH 2.3
【0115】
C.溶液の安定性
0.9%塩化ナトリウム注射液において10mg/mLの濃度で、さまざまなpH値の影響を評価した。pHが2.3(中性pH)の試料ならびに水酸化ナトリウムでpH 5、7.1および8.5に調整した試料を、冷蔵下で3カ月間にわたって評価した。pH 5の試料は相対的に良好な安定性を示し、3カ月後に初期濃度の約89%を保っていた。pH 7.1および8.5の溶液は、14日間後にはそれぞれ約92%および96%を保ったが、それ以降は90%未満に低下した。pH 2.3の試料は7日間は安定していたが、それ以降は沈殿物を生じた。表2を参照のこと。
【0116】
MER-1は低い濃度では水溶液中での安定性が低かったが、濃度が高くなるほど安定性が高くなった。0.1mg/mLの水溶液では、薬剤の約40%がわずか1時間で失われた。0.9%塩化ナトリウム注射液中の濃度を1mg/mLから10mg/mLに高めると、薬剤はより長期間にわたって安定化した。10mg/mLの濃度は冷蔵下で最長3カ月安定であったが、それ以降は許容されない分解が起こった。表3を参照のこと。
【0117】
(表2)0.9%塩化ナトリウム注射液中でのMER-1 10mg/mLのpH安定性プロフィール
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【0118】
(表3)0.9%塩化ナトリウム注射液中のさまざまな濃度でのMER-1溶液の安定性
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a 水中。
b 60分間で約40%の消失が起こった。
c この期間には測定を行わなかった。
【0119】
II.SGLU-1の薬学的評価
SGLU-1は、臨床的状況での投与に対して許容される十分な溶解性および安定性を有することが見いだされた。これはまた、動物試験に、あるいは前期第I相試験に用いるために溶液を即時に調合しうる程度には十分に安定である。しかし、より大規模な臨床試験に用いるための液体製剤のより大規模なバッチを製造するため、および長期的貯蔵が必要とされる市場での流通のためには、溶液の安定性が十分ではない。これらの用途のためには、使用時に再構成される凍結乾燥製剤が想定される。
【0120】
A.溶解性
SGLU-1の水への溶解度は約60mg/mLであった。0.1N水酸化ナトリウムを用いて溶液のpHを高めることにより、より高いSGLU-1濃度が得られた。しかし、この薬剤はアルカリ環境では不安定であるように思われた。SGLU-1はエタノールには溶解しない。
【0121】
B.溶液のpH
SGLU-1の水溶液の自然なままのpH値は以下の通りである:
0.1mg/mL pH 3.9
1mg/mL pH 3.2
2.5mg/mL pH 3.0
60mg/mL pH 2.7
【0122】
C.溶液の安定性
0.9%塩化ナトリウム注射液において2.5mg/mLの濃度でさまざまなpH値の影響を評価した。pHが3(中性pH)の試料ならびに水酸化ナトリウムでpH 5および7に調整した試料を、冷蔵下で30日間にわたって評価した。pH 5の試料は幾分良好な安定性を示し、30日後に初期濃度の約90%を保っていた。pH 3および7の溶液はそれぞれ約84%および82%を保っていた。表4を参照のこと。
【0123】
pH 5に調整した0.9%塩化ナトリウム注射液中の20mg/mLおよび50mg/mLの濃度のSGLU-1に対して安定性試験を行った。60日間にわたる冷蔵下での貯蔵を通じて生じた消失は10%未満であった。安定性の結果は表5に示されている。
【0124】
SGLU-1は濃度が低いほど安定性が低かった。0.1mg/mLの水溶液では、室温で24時間のうちに10%の分解が起こった。
【0125】
(表4)0.9%塩化ナトリウム注射液中でのSGLU-1 2.5mg/mLのpH安定性プロフィール
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【0126】
(表5)4℃の0.9%塩化ナトリウム注射液における濃度20mg/mLおよび50mg/mLのSGLU-1溶液の安定性
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【0127】
実施例6
MER1、SAL1およびSGLU1に関する機序
アポトーシスの誘導、細胞周期に対する影響、成熟の誘導および異常なPML/Rarα融合タンパク質の分解はいずれも、三酸化ヒ素の作用機序であることが示されている。本発明者らは、MER1がHL60ヒト白血病細胞におけるアポトーシスを誘導する能力について検討した(アッセイ期間1〜3日間)。アポトーシスの誘導は、生存細胞の百分率に関して類似した低下を示した(図20、21および22)。MER1およびSGLUの両方を用いた別の試験により、これらの化合物によるアポトーシスの誘導(アネキシンV染色)は、ミトコンドリア膜電位の変化(CMXRos染色)およびカスパーゼの活性化(PhiPhiLux染色)を伴うことが確かめられた。図23A、23B、23C、23D、23Eおよび23Fを参照のこと。
【0128】
三酸化ヒ素はPML/Rarα遺伝子を発現する細胞の成熟を誘導することが報告されている。SGLUおよびMER1が同様の能力を有するか否かを検証するためにNB4細胞(PML/Rarα遺伝子を発現する)を用い、ヒ素剤に対する3日間の曝露後に細胞表面のCD11bの発現をフローサイトメーターによって測定した。CD11bは骨髄性細胞の成熟度マーカーである。データは図24に提示されており、これはSGLUおよびMER1が成熟を誘導しなかったことを示している。本発明の種々のヒ素剤で処理したHL60細胞における細胞周期の擾乱についてフローサイトメトリーおよびヨウ化プロピジウムによる染色によって評価した。SGLUは細胞周期のS期にある細胞の顕著な蓄積を引き起こし、MER1も程度は落ちるものの同様の影響を引き起こすことが見いだされた(図25A、25B)。図25Cは、三酸化ヒ素に対する応答における細胞のS期蓄積を記載している。
【0129】
白血病細胞におけるPML/Rarα融合タンパク質の存在が、SGLUおよびMER1に対して観察されている白血病細胞の感受性に寄与するか否かを確かめるために以下の系を用いた。三酸化ヒ素に対する耐性があることが知られているU937細胞に対してPML/RARα遺伝子をトランスフェクトした。この遺伝子は亜鉛の存在下で機能的になる。このため、トランスフェクトU937細胞(U937/PR9)を、亜鉛の存在下または非存在下で種々のヒ素剤によって処理した。結果は図26A、26Bおよび26Cに示されており、これらは、機能的PML/Rarα遺伝子の存在は細胞が三酸化ヒ素に対して感受性を得るための前提条件ではあるが、SGLUおよびMER1に対する細胞の感受性には全く影響しないことを示している。
【0130】
実施例7
MER1、SAL1およびSGLU1の治療能力のインビボ評価
ヒト白血病の動物モデルは、ヒト白血病を有する重症複合免疫不全(SCID)マウスによって代表させた。このモデルは、動物におけるヒト白血病の増殖が患者で認められるものに類似した様式である点でユニークである。これにより、新たな薬剤のインビボでの有効性をさまざまな投薬レベルおよびスケジュールで迅速に試験する可能性が得られた。さらに、動物の生存度をモニターしうるだけでなく、疾患の播種パターンに対する治療の効果もモニターすることが可能である。SCIDマウスの治療は、典型的にはヒト白血病細胞の接種から2日後に開始した。1種類のヒト白血病細胞株を注入したSCIDマウスにおける初期インビボ実験により、他のマウスモデルならびに初期ヒト試験のためのMER1、SAL1またはSGLU1の投与量およびスケジュールが決定された。
【0131】
動物を毎日モニターし、瀕死状態になった時または試験終了時(通常は対照群の生存期間の2倍)に屠殺した。長期間生存した動物に対して剖検を実施し、HLA-DQαのDNA配列に対して特異的なプライマーを用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、ヒトDNAの存在に関して組織を分析した。白血病は全身性疾患であるため、種々のマウス組織からのDNA中のHLA-DQαについて検査することにより、微小な残存疾患の存在について検討した。
【0132】
SCIDマウスにおけるインビボ治療実験のための前提条件は以下の通りである:1)動物における白血病細胞の生着の確認、および2)被験化合物の急性毒性の判定(最大耐容量の定義)。
【0133】
I.動物における白血病細胞の生着の確認
最初のインビボ実験にはSCIDマウスの4つの群を用いた。1群当たり5匹のマウスに対してさまざまな種類のヒト白血病細胞を腹腔内に接種した:HL60(AML)、KBM5(CML-BP)、KBM7-急性骨髄性白血病およびZ119(ALL)。HL60細胞およびKBM5細胞は優れた生着を示した:HL60群ではすべてのマウスが接種後第31日から第36日までの範囲で死亡し、一方、KBM5群のマウスは第34日から第36日までの範囲で死亡した。生着はヒトHLA-DQαのDNA配列に対するPCRを行うことによって実証した(検査結果はすべてのマウスからのすべての組織で陽性であった)。第100日の時点で、KBM7群ではマウス5匹中4匹、Z119群ではマウス5匹中5匹が依然として生存していた。その日にすべてのマウスを屠殺し、組織をHLA-DQαに対するPCRによって分析した。検査結果は陰性であり、白血病細胞の生着が存在しないことが示された。治療試験のためには同じ種類の代替的な細胞株が必要である。
【0134】
II.被験化合物の急性毒性の判定
毒性試験のためには、免疫能のあるSwiss Websterマウスを用いた。三酸化ヒ素に関するLD50濃度は10mg/kgであることが確認された。
【0135】
A.Swiss-WebsterマウスにおけるSLGU1の簡易毒性試験
SGLU1の毒性を調べるために、Swiss-Websterマウスに対して2種類の試験を行った。第1の試験では、SGLU1を178mg/kg;285mg/kg;および357mg/kgの用量でIP経路を介して投与した。毒性はマウスの死亡率によって測定した。マウスは用量178mg/kgおよび285mg/kgのSGLU1には十分な忍容性があることが見いだされた。この試験のデータは表6にまとめられている。
【0136】
(表6)SLGU1の簡易毒性試験
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【0137】
第2の試験では、体重を測定した各マウスを用いた毒性を、IPおよびIV経路の両方により、用量318mg/kgおよび375mg/kgでSGLU1の投与に関して調べた。これにより、SGLU1に関するLD50濃度は350mg/kgであることが確かめられた。これらの結果は表7にまとめられている。
【0138】
(表7)体重を測定した各マウスを用いたより優れた成績
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【0139】
B.Swiss-WebsterマウスにおけるMER-1の簡易毒性試験
MER-1の毒性を調べるために、Swiss-Websterマウスに対して2種類の試験を行った。第1の試験では、MER-1を用量71mg/kg;107mg/kg;および143mg/kgでIP経路を介して投与した。毒性はマウスの死亡率によって測定した。マウスは用量71mg/kgおよび107mg/kgのMER-1に対して十分な忍容性があり、死亡は皆無であることが見いだされた。この試験のデータは表8にまとめられている。
【0140】
(表8)MER-1の簡易毒性試験
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【0141】
第2の試験では、体重を測定した各マウスを用いた毒性を、IPおよびIV経路の両方により、125mg/kg;156mg/kg;および170mg/kgで、MER-1の投与に関して調べた。これにより、本発明者らは、MER-1に関するLD50濃度は150mg/kgであることを確かめた。これらの結果は表9にまとめられている。
【0142】
(表9)体重を測定した各マウスを用いたより優れた成績
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【0143】
C.Swiss-WebsterマウスにおけるSAL1の簡易毒性試験
以上の実験と同様に、SAL1の簡易毒性試験により、SAL1に関するLD50濃度が50mg/kgであることが確かめられた。
【0144】
実施例8
MER1、SAL1およびSGLU1の薬物動態
MER1、SAL1およびSGLU1の薬物動態的な配置は、尾静脈を介した静脈内投与後のマウスで評価する。以前に決定されたMTD付近の用量でまず試験を行う。血液試料を、薬剤投与後のさまざまなサンプリング時点(0(投与前)、5、10、15、30、45、60分および2、3、4、6、8、12、16、24、48、72時間)で採取する(1つの時点につきマウス8匹)。血液採取のためには、マウスをCO2吸入によって麻酔した後に断頭し、血液を全採血によって採取する。血液試料をヘパリンを含む試験管に集め、遠心処理して血漿を分離し、分析時まで-80℃で保存する。試験を繰り返し、Amicon Centrifreeマイクロパーティションユニットによる血漿の2000g×20分間の遠心処理によって血漿限外濾液を採取する。限外濾液は分析時まで-80℃で保存する。選択した群では、さまざまな組織を死後に採取し、組織への配置の分析のために凍結する。血漿試料および限外濾液試料中のヒ素含有量を黒鉛炉(無炎)原子吸光分析法によって測定する。薬物動態パラメーターを得るために、測定された薬剤濃度をコンパートメント的に分析する。
【0145】
実施例9
毒物学的試験
多回投与毒物学的試験
MER-1およびSGLU-1のマウス群における反復投与に伴う用量規定毒性を明らかにするためにさらにほかの試験を行った。
【0146】
1日につき110、120、130、140および150mg/kg×5を評価するMER1のI.V.多回投与毒物学的試験は以下のようにまとめられる:試験は心臓、肺、肝臓および腎臓の顕微鏡検査を対象とする。冠動脈の中膜過形成は通常、雌性マウスよりも雄性マウスでの頻度が高い自然発生的な病変である。腎臓および肝臓における炎症性病変、例えばリンパ球凝集物は、MER1とは関係しない偶発的所見であると結論づけられた。肝細胞肥大および尿細管の急性壊死は、投与を受けた雌雄両方のマウスで一貫性なく認められた意義不明の病変であった。比較的高用量で雄において観察された汎小葉性肥大は時に微小空胞を伴っており、このことは肝毒性の可能性を示唆する。これらの動物は一般に単回投与後に瀕死状態で屠殺された。MER1の単回投与試験では血管病変は高い頻度で認められたものの、これらの多回投与マウスの肺における血管病変は存在する場合でも一貫性もなく顕著でもなかった。雄性マウスで忍容性のある用量が低く、死亡率が高かったことは、雄の方がこの化合物の毒性作用に対してより感受性が高いことを示唆している。
【0147】
SGLU-1のI.V.多回投与の結果は以下のようにまとめられる:雌雄5匹ずつのマウスに対して、尾静脈を介したSGLUの5回の連日静脈内注射を、50、100、150、200、250、300および350mg/kg/日の用量で行った。生存しているマウスはすべて28日間そのままに保ち、屠殺した上で、指定組織を採取し、ホルマリン固定して検査した。
【0148】
死亡は250、300および350mg/kg/日で起こり、雌性マウスは雄よりも感受性が高かった。顕微鏡観察により、肺、肝臓、胸腺および精巣で化合物に関係する病変が認められた。この試験における雌性マウスの無有害作用レベルは150mg/kgであり、これは200mg/kg/日での雌性マウス5匹中1匹における肝細胞の小葉性肥大に基づく。この試験における雄性マウスに関する無有害作用レベル(NOEL)は100mg/kg/日であり、これは150mg/kg/での雄5匹中1匹における精巣管変性に基づく。
【0149】
実施例10
HPLC分析法の開発およびバリデーション
有機ヒ素剤の使用に関する方法の開発およびバリデーションにはHPLCが用いられる。HPLC法は以下を含む:標準曲線および直線性、再現性(最低で10回の注射)、感度(最小定量可能濃度;最小検出可能濃度)、精度(独立に調製した0.025mg/mL、0.1mg/mL、1mg/mLの3種の溶液を用いるなど)、熱、塩基性溶液、酸性溶液およびH2O2による意図的な分解、ならびに無傷薬剤、バルク不純物および出発材料および分解産物に関するピークの定義。バルク原薬剤を、比較標準ロットにおいて、HPLCによる純度分析、乾燥による損失、旋光性、融点および外観について分析する。
【0150】
実施例11
剤形の開発
有機ヒ素剤の剤形は、Pharmacology Laboratoryによって開発された製剤溶媒システムによって開発される。これは、水性媒質中および濾過に対する安定性を判定すること、さらなる開発のための標的濃度を選択すること、浸透圧およびpHを検査すること、ならびに必要に応じてパッケージおよび閉鎖形状を選択すること、熱安定性を判定すること(オートクレーブ処理)、外観および微粒子量を検査すること、ならびに標的pH値および許容される標的濃度の範囲を決定することを含む。
【0151】
実施例12
臨床試験
本実施例は、ヒ素化合物MER1、SGLUおよびSAL-1、ならびに本発明の組成物またはその医薬製剤を用いたヒト治療プロトコールの開発にかかわる。これらの組成物は、白血病ならびに他の形態の固形癌および腫瘍を含む、さまざまな癌の臨床的治療において有用である。
【0152】
患者の治療およびモニタリングを含む、臨床試験の実施に関するさまざまな要素は、本開示に鑑みて当業者には公知である。以下の情報は、本発明の組成物を用いる臨床試験の設立に用いるための一般的な指針として提示される。
【0153】
第1相臨床試験の候補は、すべての従来の治療法が成功しなかった患者である。MER1、SAL-1またはSGLU-1の医薬製剤を、4週間毎に5日間という初期スケジュールで静脈内に投与する。当業者は、局所的、限局的または全身性の投与を含む任意の方法による投与を含め、病変の性質に応じた適切な任意の代替的な経路によって本発明の治療用製剤を投与してもよいことを理解するであろう。経口的および局部的な適用も想定されている。本発明の組成物は典型的には、標準的な周知の非毒性の生理学的に許容される担体、添加剤および媒質を必要に応じて含む単位投薬式製剤として経口的または非経口的に投与される。本明細書で用いる場合、非経口的という用語は、皮下注射、静脈内、筋肉内または持続注入法を含む。
【0154】
疾患の経過をモニターし、抗腫瘍応答を評価するためには、患者を適切な腫瘍マーカーに関して毎月検査する。薬剤の有効性を評価するためには、以下のパラメーターをモニターする:腫瘍サイズおよび/または癌細胞の骨髄浸潤。患者の進行および治療の有効性をモニターするために用いられる検査には以下が含まれうる:身体所見検査、X線、血液機能およびその他の臨床検査法。第1相試験で投与する用量は、標準的な第1相臨床試験で行われるように漸増させる、すなわち最大耐容量に達するまで用量を徐々に増やす。
【0155】
臨床効果は、許容される指標によって定義することができる。例えば、完全著効は、癌細胞の所見の少なくとも2カ月間にわたる完全消失として定義しうる。一般、部分応答は少なくとも2カ月にわたる癌細胞の50%減少として定義しうる。
【0156】
臨床試験は、本発明の治療薬を単独で用いて、または当技術分野で用いられている他の抗癌薬および他の標準的な癌治療法と併用して行うことができる。本発明の治療用組成物は、他の抗癌薬の前、後またはそれと同時に患者に投与することができる。
【0157】
典型的な治療コースは、個々の患者および当業者に公知の様式で治療される疾患に応じて異なると考えられる。例えば、白血病の患者は4週間サイクルで治療することができるが、その患者に有害作用が観察されればより長い期間を用いてもよく、その患者が治療に希望通り耐えたならばより期間の治療も可能と考えられる。各サイクルは5回の個別の投薬からなるが、これも臨床的状況に応じて異なると思われる。臨床医による選択に即して、レジメンを3週毎の5回の投薬として継続してもよく、またはより頻度の低い形で行うこともできる。当然ながら、これらは治療のための例示的な期間であるに過ぎず、当業者は多くの他の時間コースが可能であることを容易に理解すると考えられる。
【0158】
患者は、以前に化学療法、放射線療法または遺伝子治療を受けていてもよいが、必要ではない。患者は、十分な骨髄機能(末梢の顆粒球の絶対数が2,000個/mm3超および血小板数が100,000個/mm3)、十分な肝機能(ビリルビン1.5mg/dl)および十分な腎機能(クレアチニン1.5mg/dl)を示すことが最適である。
【0159】
1つの態様において、投与は単に、治療用組成物の腫瘍内への注射を伴う。もう1つの態様においては、カテーテルを腫瘍部位に挿入し、腔を所望の期間にわたって連続的に灌流してもよい。
【0160】
当然ながら、上記の治療レジメンを、前臨床試験によって得られた知見に従って改変することもできる。当業者は、本明細書に開示された情報を入手して、本明細書に記載された臨床試験に基づいて治療レジメンを最適化することができると考えられる。
【0161】
実施例13
S-ジメチルアルシノグルタチオンの代替的な合成
以下の手順は、S-ジメチルアルシノグルタチオンの調製の様式を記載している。用いる量を増やしても減らしてもよく、それぞれの比が維持されるならば同じく成功が得られる。
【0162】
ジメチルクロロアルシン
ジメチルアルシン酸、(CH3)2As(O)OHは、Luxembourg Chemical Co., Tel Aviv, Israelから供給を受けた。この製品にはその純度が表記されており、純度99.7%として供給された。ジメチルアルシン酸を水-塩酸中に添加してpH 3とした。二酸化硫黄ガスの流れをこの溶液中に約1時間通過させた。ジメチルクロロアルシンは比重の高い無色の油として分離した。2つの液層、水/(CH3)2AsClを分離用漏斗を用いて分離した。クロロジメチルアルシンをジエチルエーテル中に抽出し、このエーテル溶液を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。乾燥させた溶液を蒸留フラスコに移し、これを徐々に加熱してエーテルを蒸発させた。残った液体であるジメチルクロロアルシンを蒸留によって精製した。106〜109℃で沸騰する画分を採取した。この生成物である無色の油は、1.65ppmで単純な1H NMR共鳴を呈した。
【0163】
S-ジメチルアルシノグルタチオン
500mLフラスコ内に、Aldrich Chemical Co.から純度98%として受け取ったグルタチオン7gを用い、250mLの1,2-ジメトキシエタン中に溶解させた。この溶液に3.3gのジメチルクロロアルシンを添加した。これに続いて3.5gのピリジンを添加した(NaOHペレット上乾燥させた後に再蒸留した)。この溶液を1時間環流させ、その後に室温で3時間攪拌した。
【0164】
所望の生成物であるS-ジメチルアルシノグルタチオンは、塩酸ピリジン複合体として分離された。この固体を濾過によって取り出し、1,2-ジメトキシエタンエタンで十分に洗浄した。続いてこれを無水塩化カルシウム上で真空下で乾燥させた。塩酸S-ジメチルアルシノグルタチオンピリジンの収量は10.3gであり、融点は135〜140℃であった。この材料を以上の実施例2〜12に記載した生物アッセイに用いた。
【0165】
実施例14
S-ジメチルアルシノグルタチオン(GLU)のピリジン塩酸を用いない合成
ジメチルアルシノグルタチオンは、Chen(Chen, G. C. et al., Carbohydrate Res.(1976)50: 53-62)を改良したものを用いて作製され、その内容は全体にわたった参照として本明細書に組み入れられる。手短に述べると、ジチオールビス(ジメチルアルシノグルタミン)を窒素中でジクロロメタン中に溶解させる。テトラメチルジアルシンを溶液に滴下させながら添加し、反応物を窒素中にて室温で一晩攪拌し、続いて空気に1時間曝露させる。続いて混合物を蒸発させて乾燥させ、残留物を水で洗浄し、乾燥させて粗固体を得た上で、それをメタノールから再結晶化させてS-ジメチルアルシノグルタチオンを得る。
【0166】
実施例15
塩酸ピリジンを用いないS-ジメチルアルシノグルタチオン(GLU)の第3の合成
S-ジメチルアルシノグルタチオンは、Cullen et al.(J. Inorg. Biochem.(1984)21: 179-194)の手順を用いて作製され、その内容は全体にわたって参照として本明細書に組み入れられる。手短に述べると、ジメチルアルシン酸およびグルタチオンを窒素雰囲気下で水中に溶解させて攪拌する。その結果得られた溶液を12時間攪拌し、続いて加熱せずに減圧下で蒸発させて乾燥させて固体を得て、それを冷メタノールで抽出する。続いてこのメタノール溶液を減圧下で蒸発させて乾燥させ、その結果生じた固体をメタノール/水から再結晶化させて収集し、乾燥させてS-ジメチルアルシノグルタチオンを得る。
【0167】
実施例16
GMZ27の抗癌活性のインビトロ評価
【0168】
以下の構造
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を有する有機アルシンであるGMZ27を、種々のヒト急性骨髄性白血病(AML)細胞株に対して72時間MTSアッセイで試験したところ、IC50は0.56〜0.86μMであることが見いだされた。この活性は、これらの細胞株に対する三酸化ヒ素の活性よりも高かった(図27A)。続いて、GMZ27の抗白血病活性を、細胞を半流動培地中で増殖させる長期(7日間)コロニー形成アッセイで評価した。GMZ27は、ヒト白血病細胞株および急性または慢性白血病の患者から入手した白血病細胞のいずれに対しても、三酸化ヒ素よりも有意に高い活性を有していた(図27B)。
【0169】
続いて、GMZ27および三酸化ヒ素の抗癌活性の機序を比較した。三酸化ヒ素(ATO)は、APL以外の細胞で、その抗白血病活性を、アポトーシスの誘導、細胞GSH酸化還元系の調節を生じさせる細胞内ROS産生の改変、細胞分化/成熟およびおそらくは細胞周期調節に対する作用を含む、いくつかの機序を介して発揮する。
【0170】
GMZ27はATOよりもアポトーシスを誘導する効力が強かった。これらの結果は、これがミトコンドリア膜電位を変化させ、カスパーゼ9を切断することからミトコンドリア性アポトーシス経路を活性化するが、これはカスパーゼ8を切断することから同じく代替的に外因性経路も活性化することを示している。これはカスパーゼ3活性の誘導、PARPの切断およびアネキシンVと細胞との結合をもたらした(図28および29)。
【0171】
ブチオニンスルホキシミン(BSO)による白血病細胞の処理は、それらのGMZ27に対する感受性を高める;一方、細胞内GSHを高めると思われるジチオトレイトール(DTT)またはN-アセチルシステイン(NAC)による前処理は、細胞の感受性を低下させた(図30)。このことから、GMZ27がATOと同じように、白血病細胞におけるGSH酸化還元系を調節するが、それはATOが行うよりも非常に早くかつより大きな程度であることが示唆された(図31)。
【0172】
GMZ27は低用量では、細胞表面でのCD11b成熟マーカーの誘導によって判断されるように、細胞の分化/成熟を部分的に誘導することが見いだされた。この効果はATOのそれに比べてわずかであった(図32)。GMZ27は細胞周期の進行には影響しなかった(図33)。
【0173】
健常ドナーの末梢血単核細胞に対するGMZ7の毒性は長期コロニー形成アッセイで評価した。GMZ27はATOよりも正常細胞に対する毒性が低かった(図34)。
【0174】
GMZ27の単回注射の毒性を判定するための試験を、正常Swiss-Websterマウスを用いて行った。毒性は死亡率に基づいて測定した。マウスの50%を死滅させるGMZ27の濃度(LD50)は100mg/kgであった。これに対して、ATOのLD50ははるかに低く10mg/kgに過ぎなかった。
【0175】
実施例17
N-(2-S-ジメチルアルシノチオプロピオニル)グリシンの調製
N-(2-メルカプトプロピオニル)グリシン(0.02mol、3.264g)を1,2-メトキシエタン(50mL)中に加え、ジメチルクロロアルシン(0.025mol、3.52g)を滴加した。反応混合物を室温で4時間攪拌した。続いてトリエチルアミン塩酸塩の白色沈殿物を濾過によって分離し、溶液の容積を減圧下での蒸発によって減少させた。その結果得られた残留物をカラムクロマトグラフィーによって精製し、所望の生成物(3.5g)を得た。
【0176】
実施例18
2-(S-ジメチルアルシノ)チオニコチン酸の調製
2-メルカプトニコチン酸(0.02mol、3g)をジクロロメタン(50mL)に加え、ジメチルクロロアルシン(0.025mol、3.52g)を滴加した。反応物を環流させながら4時間攪拌した。続いてジクロロメタンを蒸発によって除去し、残留物をジエチルエーテル(50mL)中に溶解させ、水で洗浄した(3回)。この溶液をNa2SO4上で乾燥させて濾過して、減圧下での濃縮後に所望の生成物を淡黄色の固体として得た。
【0177】
実施例19
L-(+)-2-アミノ-3-(ジメチルアルシノ)チオ-3-メチルブタン酸
L-(+)-2-アミノ-3-メルカプト-3-メチルブタン酸(0.01mol、1.55g)をジクロロメタン(50mL)に加え、ジメチルクロロアルシン(0.015mol、2.1g)入りのジクロロメタン(5mL)を滴加し、その後にトリエチルアミン(1.6g)を滴加した。混合物を4時間攪拌すると、所望の生成物が反応混合物の濾過後に浮遊性の白色結晶性固体として得られた。この結晶性固体をジクロロメタン、酢酸エチルおよびアセトンで逐次洗浄して、所望の生成物(1.6g;mp 107〜109℃)を得た。
【0178】
等価物
当業者は、定型的な範囲の実験により、本明細書に記載された化合物およびその使用方法に対する多くの等価物を認識する、または確認しうると考えられる。このような等価物は、本発明の範囲内に含まれ、以下の特許請求の範囲によってカバーされるとみなされる。当業者はまた、本明細書に記載された態様のすべての組み合わせが本発明の範囲に含まれることを認識するであろう。
【0179】
2002年1月7日に提出された米国特許出願第60/346,492号、および2003年1月7日に提出されたWO 2003/057012号は、それらの全体が参照として本明細書に組み入れられる。以上に引用した参考文献および刊行物はすべて、参照として本明細書に組み入れられる。
【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図3H】
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【図3I】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図5G】
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【図5H】
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【図5I】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図8F】
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【図8G】
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【図8H】
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【図8I】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−51919(P2012−51919A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227543(P2011−227543)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【分割の表示】特願2007−521685(P2007−521685)の分割
【原出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【出願人】(507015631)ザ テキサス エー アンド エム ユニバーシティ システム (2)
【出願人】(500039463)ボード・オブ・リージエンツ,ザ・ユニバーシテイ・オブ・テキサス・システム (115)
【Fターム(参考)】