癌を標的化するための組成物及び方法
【課題】ATPクエン酸リアーゼ阻害剤及び/又はトリカルボキシル酸輸送体阻害剤を用いて癌を有すると同定された個体を治療する方法を提供する。
【解決手段】ATPクエン酸リアーゼ阻害剤及び/又はトリカルボキシル酸輸送体阻害剤を用いて癌細胞内でアポトーシスを誘導する方法、高率の好気性解糖を有するとして癌を同定し、そしてATPクエン酸リアーゼ阻害剤及び/又はトリカルボキシル酸輸送体阻害剤を投与することを含む、癌を有する個体を治療する方法、及び、ATPクエン酸リアーゼ又はトリカルボキシル酸輸送体の発現を阻害する化合物を用いて癌を有する個体を治療する方法。
【解決手段】ATPクエン酸リアーゼ阻害剤及び/又はトリカルボキシル酸輸送体阻害剤を用いて癌細胞内でアポトーシスを誘導する方法、高率の好気性解糖を有するとして癌を同定し、そしてATPクエン酸リアーゼ阻害剤及び/又はトリカルボキシル酸輸送体阻害剤を投与することを含む、癌を有する個体を治療する方法、及び、ATPクエン酸リアーゼ又はトリカルボキシル酸輸送体の発現を阻害する化合物を用いて癌を有する個体を治療する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、クエン酸リアーゼ及び/又はトリカルボキシル酸輸送体の阻害剤を含む組成物及びそのような組成物を用いて癌と診断された患者を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
各年に、百万を超える侵入性の癌が米国のみで報告される。治療における改善及び多くの成功にも拘わらず、癌は、死及び数え切れない苦痛の顕著な原因であり続ける。
【0003】
多数の証拠が示唆することは、癌細胞が、大多数の体細胞のそれらとは明らかに異なる代謝要求性を有することである。癌細胞の代謝要求性の違いは、ある特定の悪性腫瘍、例えば、幼少期の白血病におけるL−アスパラギナーゼにおいて治療上の利点を生かしてきたが、癌細胞の唯一の代謝を生かすための一般化された機構は考案されて(deviced)いない。
【0004】
癌を標的化するための追加の薬剤及び方法に関する要求が残されている。
【発明の概要】
【0005】
発明の概要
本発明は、癌を有する個体(individual)を治療する方法に関し、高率の好気性解糖を有する癌細胞を含む癌のような癌を同定し、そして治療上有効な量のATPクエン酸リアーゼ阻害剤を個体に投与する工程を含む。
【0006】
本発明は、さらに、癌を有すると認定された個体を治療する方法に関する。当該方法は、個体に、1mM未満の濃度にてインビトロアポトーシスアッセイにおいて50%を超える細胞においてアポトーシスを誘導するのに有効な治療上有効な量のATPクエン酸リアーゼ阻害剤を投与する工程を含む。
【0007】
本発明は、さらに、癌細胞においてアポトーシスを誘導する方法に関し、癌細胞においてアポトーシスを誘導するのに有効な量のATPクエン酸リアーゼ阻害剤を癌細胞に送達する工程を含む。ATPクエン酸リアーゼ阻害剤は、1mM未満の濃度にてインビトロアポトーシスアッセイにおいて50%を超える細胞においてアポトーシスを誘導するのに有効である。
【0008】
本発明は、さらに、癌が内生的に合成される脂肪酸に依存しない細胞を含む癌を有すると認定された個体を治療する方法に関する。当該方法は、治療上有効な量のATPクエン酸リアーゼ阻害剤を個体に投与する工程を含む。
【0009】
本発明は、さらに、内生的に合成される脂肪酸に依存しない癌細胞においてアポトーシスを誘導する方法に関する。当該方法は、細胞内でアポトーシスを誘導するのに有効な量のATPクエン酸リアーゼ阻害剤を癌細胞に送達させる工程を含む。
【0010】
本発明は、癌を有すると認定された個体を治療する方法に関する。当該方法は、治療上有効な量のトリカルボキシル酸輸送体阻害剤を個体に投与する工程を含む。
【0011】
本発明は、さらに、癌細胞においてアポトーシスを誘導する方法に関し、細胞においてアポトーシスを誘導するのに有効な量のトリカルボキシル酸輸送体阻害剤を癌細胞に投与する工程を含む。
【0012】
本発明は、さらに、癌を有する個体を治療する方法に関し、高率の好気性解糖を有する癌細胞を含む癌として癌を認定し、そして次に、治療上有効な量のトリカルボキシル酸輸送体阻害剤を個体に投与する工程を含む。
【0013】
本発明は、さらに、癌を有すると認定された個体を治療する方法に関し、ATPクエン酸リアーゼ又はトリカルボキシル酸輸送体の発現を阻害する化合物を治療上有効な量で個体に投与することを含む。
【0014】
本発明は、さらに、抗癌活性を有する化合物を同定する方法に関する。当該方法は、ATPクエン酸リアーゼ又はトリカルボキシル酸輸送体として試験化合物を同定し、そして当該化合物がアポトーシスを誘導するか否かについてアポトーシスアッセイを実施する工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は代謝経路を描写する。
【図2】図2は実施例2において記載された実験で生じたデータを描写する。
【図3】図3は実施例2において記載された実験で生じたデータを描写する。
【図4】図4は発明のいくつかの態様において有用なATPクエン酸リアーゼ阻害剤の構造を開示する。
【図5】図5は実施例2において記載された実験で生じたデータを描写する。
【図6】図6は実施例2において記載された実験で生じたデータを描写する。
【図7】図7は実施例2において記載された実験で生じたデータを描写する。
【図8】図8は実施例2において記載された実験で生じたデータを描写する。
【図9】図9は実施例2において記載された実験で生じたデータを描写する。
【図10】図10は実施例2において記載された実験で生じたデータを描写する。
【図11】図11は実施例2において記載された実験で生じたデータを描写する。
【図12A】図12Aは実施例2において記載された実験で生じたデータを描写する。
【図12B】図12Bは実施例2において記載された実験で生じたデータを描写する。
【図13】図13は実施例2において記載された実験で生じたデータを描写する。
【図14A】図14Aは実施例2において記載された実験で生じたデータを描写する。
【図14B】図14Bは実施例2において記載された実験で生じたデータを描写する。
【図15】図15は実施例2において記載された実験で生じたデータを描写する。
【図16】図16は実施例2において記載された実験で生じたデータを描写する。
【図17】図17は実施例2において記載された実験で生じたデータを描写する。
【図18】図18は実施例2において記載された実験で生じたデータを描写する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
定義
本明細書にて使用される用語「癌を有すると認定された個体」及び「癌患者」は、交換可能に使用され、そして癌を有すると診断された個体を意味する。癌を有する個体を認定するためのよく知られた手段は多数存在する。いくつかの態様において、癌の診断は、PETイメージングを用いて作成されるか又は確認される。発明のいくつかの態様は、癌を有する個体を認定する工程を含む。
【0017】
本明細書にて使用される用語「高率な好気性解糖により特徴付けされる癌」は、その周囲の組織のそれらよりも高率な好気性解糖を呈する細胞を有する癌を意味する。そのような癌細胞は、環境からのグルコースを平均を上回る量で吸収する。高率な好気性解糖により特徴付けされる癌は、PETイメージング技術を用いて、好ましくは18フッ素−デオキシグルコースにより同定できる。そのような試験を用いた腫瘍の陽性検出は、癌が高率な好気性解糖により特徴付けされることを示す。PETの方法論は、Czernin,J.2002 Acta Medica Austriaca 29:162−170に記載されており、引用により本明細書に編入される。
【0018】
本明細書にて使用される用語「ATPクエン酸リアーゼ阻害剤」は、ATPクエン酸リアーゼ活性を阻害することができる化合物を意味する。当該化合物は、小分子、大分子、ペプチド、オリゴヌクレオチド等であり得る。
【0019】
本明細書にて使用される用語「トリカルボキシル酸輸送体阻害剤」は、トリカルボキシル酸輸送体活性を阻害することができる化合物を意味する。当該化合物は、小分子、大分子、ペプチド、オリゴヌクレオチド等であり得る。
【0020】
本明細書にて使用される用語「治療上有効な量」は、治療される患者の、兆候を軽減するか又は妨げるか、腫瘍のサイズを小さくするか、又は寿命を延ばすのに有効な薬剤又は組み合わせの量を意味する。治療上有効な量の決定は、当業者の能力の範囲内で、特に、本明細書に提供された詳細な開示に照らして容易になされる。
【0021】
本明細書にて使用される用語「インビトロアポトーシスアッセイ」は、培養された細胞ないでアポトーシスを誘導する化合物の能力を評価して測定するアッセイを意味する。
高率な好気性解糖を有する癌細胞の代謝及びそのような細胞におけるアポトーシスの誘導
本発明は、多くのヒトの癌が高率の好気性解糖を示すこと、及びこの高率の好気性解糖が生長期の(vegetative)細胞の生存に通常は必要ない特定の代謝酵素に対する癌細胞の増加した依存性を誘導するという観察から生まれる。そのような酵素に対する増加した依存性が、そのような酵素の阻害剤による処理に対して癌細胞を感受性に誘導するか否かを決定する探索が企てられた。それらの環境からのグルコースの過剰な取り込みのために高率の好気性解糖を示す癌細胞の一つの鍵となる特徴は、当該細胞が莫大な量のピルビン酸(pyruvate)を生産することである。そのようなピルビン酸のミトコンドリアマトリックスへの輸送及びピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体によるそのさらなる分解は、トリカルボキシル酸サイクル(TCA)への増加したアセチル−CoAの侵入をもたらす。TCAサイクルにより生産されたNADHが酸化的リン酸化を通した電子の輸送及び細胞性ATPの生産を維持するのに必要な量を超えるなら、連続的なミトコンドリアの高分極及び電子輸送連鎖(electron transport chain)からの増加した酸素種(ROS)の生産が結果として起こり得る。ミトコンドリアの高分極及び電子輸送連鎖からの増加したROS生産は、最終的に、細胞のアポトーシスをもたらす(Vander Heiden,M.G.,et al.Cell,91:627−637,1997;引用により本明細書に編入される)。
【0022】
増加したNADHはTCAサイクルにおいていくつかの酵素のアロステリック阻害剤として作用できるが、癌細胞は、主に、TCAサイクルの第1反応の最終生産物であるクエン酸をサイトゾルに輸送することによりピルビン酸の代謝により生産されるアセチル−CoAの増加した負荷に対処するらしい。クエン酸はアセチル−CoAとオキサロ酢酸の縮合により形成される。結果として生じるクエン酸はミトコンドリアからトリカルボキシル酸輸送体の輸送活性により濃縮勾配の方へ輸送され得る。サイトゾル中では、クエン酸がATPクエン酸リアーゼ(ACL)の活性の結果として再度オキサロ酢酸とアセチル−CoAに変換され得る。サイトゾル中のオキサロ酢酸のさらなる代謝は、細胞合成反応のためのNADH及びピルビン酸を生成し、オキサロ酢酸の再生利用(regeneration)のためにミトコンドリアへ再度輸送され得る。サイトゾルのアセチル−CoAは、1)蛋白質の安定性を増加させるための蛋白質のN−アセチル化のため、2)ヒストン及び転写制御因子のアセチル化による活性クロマチンの維持のため、3)プレニル化及びアシル化による膜蛋白質の脂質修飾のため、及び4)ステロール類、スフィンゴリピド類及びホスホリピド類を含むバルクの脂質の合成のために、生長する細胞により利用されることにより鍵となる生長基質を生成し得る。ペンタニルピロリン酸は、パルミチル化、ゲラニルゲラニル化(geranylgeranylation)又はファルネシル化による蛋白質の脂質修飾のため、並びにスフィンゴミエリンの細胞内合成のために必要である。
【0023】
ATPクエン酸リアーゼの役割は肝臓及び脂肪の組織中のサイトゾルアセチル−CoA及びNADHの生産に制限され、長鎖脂肪酸の生産のためにこれらの組織内で使用されることが示唆されている(図1)(Elshourbagy,N.A.,et al,J Biol Chem,265:1430−1435,1990;Elshourbagy,N.A.,et al.Eur J Biochem,204:491−499,1992,及びFukuda,H.et al.J Biochem(Tokyo),126:437−444,1999、引用により本明細書に各々が編入される)。この総説に一致して、ATPクエン酸リアーゼが主として脂質生成細胞中で発現されることを、様々な研究が示唆した。他の生長期の組織は、当該酵素を全くか又はほとんど発現しない。
【0024】
腫瘍細胞系を特性決定するに際して、生長細胞の特徴が、高いレベルのATPクエン酸リアーゼ活性の誘導であることを発見した。データは、ミトコンドリア高分極及び電子輸送連鎖からのROS生成を阻害することにおけるATPクエン酸リアーゼの役割を示す。さらに、ATPクエン酸リアーゼが肝臓以外の組織においてサイトゾルのアセチル−CoAの合成に関与する主要な酵素であるらしいため、ATPクエン酸リアーゼが細胞の生長に必要であるか否かを決定するための調査が企てられた。単純な生物においては、サイトゾルのアセチル−CoAの主要な生成が酢酸塩を前駆体として用いてアセチル−CoAシンセターゼにより起こる。しかしながら、肝臓の代謝活性のために、相対的にわずかな酢酸塩しか哺乳類組織において細胞の生長には利用可能ではない。蛋白質の合成の要求される増加の結果として、ヒストンのアセチル化により活性クロマチン構造を維持する要求の結果として、パルミチル化、ゲラニルゲラニル化、又はファルネシル化によりシグナルトランスダクション蛋白質の活性化のために特化された蛋白質を生成する要求並びに脂質膜内でスフィンゴミエリン:コレステロールのラフト(rafts)の生成によるシグナリング複合体のアッセンブリーを生成する要求の結果として、生長細胞は高いレベルのアセチル−CoAを必要とする。データは、細胞の生長に要求されるアセチル−CoAのこの高いレベルの生産が、成長因子又はオンコジーン刺激性解糖、クエン酸のミトコンドリアによる増加した生成、及びATPクエン酸リアーゼの活性を必要とすることを示す。これらのデータは、ATPクエン酸リアーゼの阻害が生長を阻害して、形質転換された細胞のミトコンドリア誘導性アポトーシスを導くことを示す。
【0025】
データは、癌細胞の生長を阻害すること及び形質転換された細胞の細胞死を誘導することにおいて、ATPクエン酸リアーゼを阻害する効果の証拠を提供する。さらに、この方法は、非生長性の体細胞がATPクエン酸リアーゼ阻害剤の効果に対して相対的に耐性であること及び非形質転換細胞が細胞サイクルの停止によりATPクエン酸リアーゼの阻害に適合できることにおける選択性の利益を有する。
【0026】
トリカルボキシル酸輸送体の阻害は、癌細胞の生長を阻害するため、及び形質転換された細胞の細胞死を誘導するための、代わりの方法である。そのような阻害は、サイトゾルへのクエン酸の輸送を減少させるか又は阻害し、そして最終的には、細胞のアポトーシスをもたらす上記の条件及び事象を導く。
癌患者のATPクエン酸リアーゼ阻害剤による治療
発明のいくつかの態様は、癌を治療するためのATPクエン酸リアーゼ阻害剤の使用を含む。
【0027】
本発明の態様は、高率の好気性解糖を有するとして同定された癌を有する個体を治療するのに特に有用である。いくつかの態様において、癌を有する個体を治療する方法は、高率の好気性解糖を有するとして癌を最初に同定し、そして次に治療上有効な量のATPクエン酸リアーゼ阻害剤をそのような個体に投与する工程を含む。いくつかの好ましい態様において、高率の好気性解糖を有するという癌の同定は、PETイメージング、好ましくは18フルオロ−デオキシグルコースにより実施される。いくつかの態様において、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤は、1mM未満の濃度においてインビトロにおいてアポトーシスアッセイにて50%より多い細胞にアポトーシスを誘導するのに有効である。好ましい態様において、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤は、50μM未満の濃度においてインビトロのアポトーシスアッセイにて50%より多い細胞にアポトーシスを誘導するのに有効である。
【0028】
本発明のいくつかの態様において、癌を有すると同定された個体を治療する方法は、1mM未満の濃度においてインビトロのアポトーシスアッセイにて50%より多い細胞にアポトーシスを誘導することが知られているATPクエン酸リアーゼ阻害剤を治療上有効な量にてそのような個体に投与することを含む。いくつかの好ましい態様において、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤は、0.1mM未満の濃度においてインビトロのアポトーシスアッセイにて50%より多い細胞にアポトーシスを誘導するのに有効である。いくつかの好ましい態様において、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤は、50μM未満の濃度においてインビトロのアポトーシスアッセイにて50%より多い細胞にアポトーシスを誘導するのに有効である。いくつかの好ましい態様において、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤を投与する前に、癌が高率の好気性解糖により特徴付けされる癌であることを確認する。そうすることの好ましい方法は、PETイメージングであり、好ましくは、18フルオロ−デオキシグルコースを用いる。
【0029】
癌細胞においてアポトーシスを誘導する方法が提供される。当該方法は、細胞においてアポトーシスを誘導するのに有効な量のATPクエン酸リアーゼ阻害剤を癌細胞に送達することを含む。使用されるATPクエン酸リアーゼ阻害剤は、1mM未満の濃度においてインビトロのアポトーシスアッセイにて50%より多い細胞にアポトーシスを誘導するのに有効である。いくつかの好ましい態様において、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤は、0.1mM未満の濃度においてインビトロのアポトーシスアッセイにて50%より多い細胞にアポトーシスを誘導するのに有効である。いくつかの好ましい態様において、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤は、50μM未満の濃度においてインビトロのアポトーシスアッセイにて50%より多い細胞にアポトーシスを誘導するのに有効である。
【0030】
本発明の態様は、好ましくは、内部で合成された脂肪酸に依存しない癌細胞を有する癌を有する患者を治療するのに特に有用である。そのような癌は、ほとんどの癌を含み、そして脂質生産に関連する組織において生じる癌、例えば肝臓癌及び脂肪細胞を含む癌を一般には除く。内部で合成された脂肪酸に依存する癌細胞は、一般には、肝腫瘍、脂肪腫及び脂肪肉腫に限定される。即ち、発明のいくつかの方法は、内部で合成された脂肪に依存しない癌を有する癌患者を治療する方法に関し(即ち、内部で合成される脂肪酸を使用できる癌細胞)、そのような方法は、治療上有効な量のATPクエン酸リアーゼ阻害剤をそのような個体に投与する工程を含む。好ましい態様において、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤は、1mM未満の濃度においてインビトロのアポトーシスアッセイにて50%より多い細胞にアポトーシスを誘導するのに有効であることが知られている。いくつかの好ましい態様において、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤は、0.1mM未満の濃度においてインビトロのアポトーシスアッセイにて50%より多い細胞にアポトーシスを誘導するのに有効である。いくつかの好ましい態様において、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤は、50μM未満の濃度においてインビトロのアポトーシスアッセイにて50%より多い細胞にアポトーシスを誘導するのに有効である。内部で合成される脂肪酸に依存する癌細胞は、一般には、高いレベルの脂肪酸合成酵素を有する。そのような細胞における内部の脂肪酸合成は、典型的には、1分あたり200,000細胞あたりの10fmolesを超えるアセチル−CoAのアシルグリセリドへの取り込み速度にて起こる。いくつかの好ましい態様において、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤を投与する前に、癌が高率の好気性解糖により特徴付けされる癌であることを確認する。そうすることの好ましい方法は、PETイメージングであり、好ましくは、18フルオロ−デオキシグルコースを用いる。
【0031】
内部で合成される脂肪酸に依存しない癌細胞においてアポトーシスを誘導する方法が提供される。当該方法は、細胞においてアポトーシスを誘導するのに有効な量のATPクエン酸リアーゼ阻害剤を癌細胞に送達することを含む。使用されるATPクエン酸リアーゼ阻害剤は、1mM未満の濃度においてインビトロのアポトーシスアッセイにて50%より多い細胞にアポトーシスを誘導するのに有効である。いくつかの好ましい態様において、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤は、0.1mM未満の濃度においてインビトロのアポトーシスアッセイにて50%より多い細胞にアポトーシスを誘導するのに有効である。いくつかの好ましい態様において、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤は、50μM未満の濃度においてインビトロのアポトーシスアッセイにて50%より多い細胞にアポトーシスを誘導するのに有効である。
ATPクエン酸リアーゼ阻害剤
当業界においては、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤の例が多数ある。Gribbleらに対して1995年9月5日に発行された米国特許第5,447,954号、Chengらに対して2002年7月2日に発行された米国特許第6,414,002号、Chengらにより2003年5月8日に公開された米国出願公開番号20030087935 A1、Chengらにより2003年4月10日に公開された米国出願公開番号20030069275 A1、及びBarrow et al.,”Antimycins,Inhibitors of ATP−Citrate Lyase,from a Streptomyces sp.”,Journal of Antibiotics,vol.50,No.9,pp.729(1977)の各々は、引用により本明細書に各々編入され、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤である化合物を開示する。好ましい態様において、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤は、米国特許第5,447,954号において構造Iとして示された式により定義される構造を有する化合物からなる群から選択され、好ましくは、そこに開示されて特別に記載された構造の一つを有する化合物、好ましくはそこに示された実施例中の特別の化合物、好ましくはその中の図4において示された構造を有する化合物である。他の公知の阻害剤は、(−)ヒドロキシクエン酸、(R,S)−S−(3,4−ジカルボキシ−3−ヒドロキシ−3−メチル−ブチル)−CoA、及びS−カルボキシメチル−CoAを含む。
【0032】
化合物がATPクエン酸リアーゼ阻害剤であるか否かの決定は、当業者の範囲内である。ATPクエン酸リアーゼ阻害剤を同定するのに有用なアッセイの例は、Hoffmann GE,et al.Biochem Biophys Acta 1980 Oct 6;620(1):151−8;Szutowicz A,et al.Acta Biochim Pol 1976;23(2−3):227−34;及びSullivan AC,et al.J Biol Chem 1977 Nov 10;252(21)7583−90に記載されたものを含み、各々は引用により本明細書に編入される。化合物がATPクエン酸リアーゼ阻害剤であるかを如何にして決定するかについての一つの例は、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤を単離することである。当該蛋白質は、ATPクエン酸リアーゼが天然に発現される細胞から単離するか、又はATPクエン酸リアーゼ蛋白質の発現を指示するウイルスによる遺伝子構築物のトランスフェクション又は感染により過剰発現する細胞から単離することができる。ATPクエン酸リアーゼをコードするmRNAの核酸配列は、GenBank受け入れ番号U18197であり、引用により本明細書に編入される。さらに、ATPクエン酸リアーゼは、宿主細胞中で組換え発現することもできる。当該蛋白質を単離する際に、当業者は、有力なATPクエン酸リアーゼ阻害剤の存在又は不在下で、好ましくは、陽性及び/又は陰性対照を用いてその活性を測定することができる。活性が、根拠とされた阻害剤の不在下よりも存在下の方が低ければ、その化合物はATPクエン酸リアーゼ阻害剤である。化合物が癌を治療するのに有用なATPクエン酸リアーゼ阻害剤であることを確認するために、日常のアポトーシスアッセイにおいて当該化合物をさらに試験して、その活性がアポトーシスを誘導することを確認及び評価してよい。
トリカルボキシル酸輸送体阻害剤による癌患者の治療
発明のいくつかの態様は、癌を治療するためのトリカルボキシル酸輸送体阻害剤の使用を含む。
【0033】
本発明のいくつかの態様において、癌を有するとして同定された個体を治療する方法は、治療上有効な量のトリカルボキシル酸輸送体阻害剤をそのような個体に投与することを含む。いくつかの態様において、本発明の方法は、内部で合成される脂肪酸に依存しない癌細胞を有する癌を有する患者を治療するのに特に有用である。いくつかの好ましい態様において、トリカルボキシル酸輸送体阻害剤の投与前に、癌が高率の好気性解糖により特徴付けされる癌であることを確認する。そうすることの好ましい方法は、PETイメージングであり、好ましくは、18フルオロ−デオキシグルコースを用いる。
【0034】
癌を有する個体を治療する方法は、高率の好気性解糖を有するとして癌を同定し、そして次に治療上有効な量のトリカルボキシル酸輸送体阻害剤をそのような個体に投与する工程を含む。高率の好気性解糖を有するという癌の同定の好ましい方法は、PETイメージング、好ましくは18フルオロ−デオキシグルコースによる。
【0035】
癌細胞においてアポトーシスを誘導する方法が提供される。当該方法は、細胞においてアポトーシスを誘導するのに有効な量のトリカルボキシル酸輸送体阻害剤を癌細胞に送達することを含む。
トリカルボキシル酸輸送体阻害剤
当業界においては、トリカルボキシル酸輸送体阻害剤の例が多数ある。そのような例は、1,2,3−ベンゼントリカルボキシル酸、イソクエン酸、マレイン酸、ホスホエノールピルビン酸、n−ブチルマロン酸、スルフィドリル試薬、ジエチルピロカルボン酸、2,3−ブタンジオン、フェニルグリオキサル、ピリドキサル、5−ホスフェートジカルボキシル酸、琥珀酸、マレイン酸、オキサロ酢酸、トリカルボキシル酸、イソクエン酸、トリカルバリル酸、及びパルミトイル−CoAを含む。
【0036】
化合物がトリカルボキシル酸輸送体阻害剤であるか否かの決定は、当業者の範囲内である。化合物がトリカルボキシル酸輸送体阻害剤であるかを如何にして決定するかについての一つの例は、トリカルボキシル酸輸送体阻害剤を単離することであり、その方法は、Kaplan et al,J Biol Chem 1990 Aug 5;265(22):13379−85;Zara V et al.Biochem Biophys Res Commun 1996 Jun 25;223(3):508−13;Stipani et al.FEBS Lett 1983 Sep 19;161(2):269−74に開示されており、引用により本明細書に各々編入される。当該蛋白質は、トリカルボキシル酸輸送体が天然に発現される細胞から単離するか、又はトリカルボキシル酸輸送体蛋白質の発現を指示するウイルスによる遺伝子構築物のトランスフェクション又は感染により過剰発現する細胞から単離することができる。さらに、トリカルボキシル酸輸送体は、宿主細胞中で組換え発現することもできる。当該蛋白質を単離する際に、当業者は、有力なトリカルボキシル酸輸送体阻害剤の存在又は不在下で、好ましくは、陽性及び/又は陰性対照を用いてその活性を測定することができる。トリカルボキシル酸輸送体の活性が、根拠とされた阻害剤の不在下よりも存在下の方が低ければ、その化合物はトリカルボキシル酸輸送体阻害剤である。あるいは、細胞又はミトコンドリアを用いてアッセイを実施することができ、Law D et al.Am J Physiol 1992 Jul;263(1 Pt 1):C220−5;及びParadies G et al.Arch Biochem Biophys 1990 May 1;278(2):425−30に記載されているとおりであって、引用により本明細書に各々編入される。化合物が癌を治療するのに有用なトリカルボキシル酸輸送体阻害剤であることを確認するために、日常のアポトーシスアッセイにおいて当該化合物をさらに試験して、その活性がアポトーシスを誘導することを確認及び評価してよい。
アポトーシスアッセイ
アポトーシスは、当業者にはよく知られた多くの手法により検出できる。アポトーシスを検出する方法の例は、限定ではないが、TUNELアッセイ、カスパーゼ活性を測定すること、アネキシン−V染色、等を含む。アポトーシス活性は、実施例1に記載されたアッセイにおいて示されたとおりに測定される。
併用療法
いくつかの態様においては、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤及び/又はトリカルボキシル酸輸送体阻害剤を他の治療剤及び/又は放射線治療を含む治療養生法の一部と同時に投与することができる。
【0037】
治療剤の同時投与は、連続するか又は同時の何れかの逐次服用であり得る。いくつかの態様において、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤及び/又はトリカルボキシル酸輸送体阻害剤は、ひとつを超える追加の治療剤と同時投与する。化学治療剤の例は、共通の、細胞障害性又は細胞増殖抑制性の薬剤、例えば、メトトレキセート(アメトプテリン)、ドクソルビシン(アドリマイシン)、ダウノルビシン、サイトシナラビノシド、エトポシド、5−4フルオロウラシル、メルファラン、クロラムブシル、及び他の窒素マスタード(例えば、シクロホスファミド)、シス−プラチン、ビンデシン(及び他のビンカのアルカロイド類)、マイトマイシン及びブレオマイシンを含む。他の化学治療剤は、プロチオニン(大麦の花のオリゴペプチド)、マクロモマイシン、1,4−ベンゾキノン誘導体及びトレニモンを含む。抗癌性抗生物質、例えば、ヘルセプチン、及び毒素も、他の追加の治療剤の例である。
【0038】
治療養生法は、連続又は同時の何れかによるATPクエン酸リアーゼ阻害剤及び/又はトリカルボキシル酸輸送体阻害剤の逐次服用投与と放射線治療の開始を含み得る。当業者は、適切な放射線治療養生法を容易に処方することができる。Carlos A Perez & Luther W Brady:Principles and Practice of Radiation Oncology,2nd Ed.JB Lippincott Co,Phila.,1992は、、引用により本明細書に編入され、本発明において使用可能な放射線治療のプロトコルとパラメーターを記載する。GBMs(神経膠芽細胞腫、ほとんどの悪性神経膠脳腫瘍)に関しては、Simpson W.J.et al.:Influence of location and extent of surgical resection on survival of patients with glioblastoma multiforms:Results of three consecutive Radiation Therapy Oncology Group(RTOG)clinical trials.Int J Radiat Oncol Biol Phys 26:239−244,1993が引用により本明細書に編入され、本発明の方法において有用な臨床プロトコルを記載する。同様に、Borgelt et al.,The palliation of brain metastases:Final results of the first two studies of the Radiation Therapy Oncology Group.Int J Radiat Oncol Biol Phys 6:1−9,1980が本明細書に編入され、本発明の方法において有用な臨床プロトコルを記載する。いくつかの好ましい態様において、ガンマ照射を用いた放射線治療が提供される。
【0039】
併用療法の一部として使用される場合、治療上有効な量の上記阻害剤は、他の治療手法なしに使用されるなら、有効であるのに必要な用量よりも低い量であるように調節してよい。
【0040】
いくつかの好ましい態様において、発明による薬学組成物による治療は、外科医の介入が先行する。
薬学組成物及び投与経路
薬学組成物は、当業者により、選択された投与様式に依存して選択された組成物を用いて製剤化してよい。適切な薬学上の担体は、Remington’s Pharmaceutical Science,A.Osolの最近の版に記載されており、この分野の標準の参照テキストである。
【0041】
上記薬学組成物を投与することは、当業者に知られている様々な方法の何れかを用いて、遂げられるか又は実施され得る。全身性製剤は、注射、例えば、皮下、静脈内、筋肉内、くも膜下又は腹膜内注射による投与のためにデザインされた製剤並びに経皮、経粘膜、経口又は肺投与のためにデザインされた製剤を含む。
【0042】
注射のためには、発明の化合物を水溶液、好ましくは生理学上適合可能なバッファー、例えばハンクス溶液、リンゲル溶液又は整理食塩水バッファー中に製剤化してよい。当該溶液は、処方剤(formulatory agents)、例えば、懸濁剤、安定剤及び/又は分散剤を含んでよい。注射可能物(injectables)は、滅菌であり、発熱物質フリーである。あるいは、上記化合物は、使用前の、適切な媒質、例えば、滅菌の発熱物質フリーの水による再構成のための、粉末形態であってよい。経粘膜投与のためには、浸透されるバリアに対して適切な浸透剤を処方に使用する。そのような浸透剤は一般に当業界で知られている。
【0043】
非経口投与のためには、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤又はトリカルボキシル酸輸送体阻害剤は、薬学上受容可能な非経口媒質と共に、例えば、溶液、懸濁液、エマルジョン又は凍結乾燥粉末として製剤化することができる。そのような媒質の例は、水、塩溶液、リンゲル溶液、デキストロース溶液、5%ヒト血清アルブミン、リンゲルデキストロース、デキストロースと塩化ナトリウム、乳酸化リンゲルと不揮発性オイル、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、レシチン、落花生油又はゴマ油である。リポソーム及び非水性媒質、例えば不揮発性油を使用してもよい。媒質又は凍結乾燥粉末は、等張性を維持する付加物(例えば、塩化ナトリウム、マニトール)及び化学安定性を維持する付加物(例えば、バッファー及び保存剤)を含んでよい。製剤は、普通に使用される技術により滅菌される。非経口の投薬形態は、水又は別の滅菌担体を用いて調製してよい。例えば、注射による投与のために適した非経口組成物は、1.5重量%の活性成分を0.9%の塩化ナトリウム溶液に溶解することにより調製される。あるいは、当該溶液を凍結乾燥し、そして次に投与直前に適切な溶剤により戻される。
【0044】
薬学上受容可能な担体は、当業者に知られており、限定ではないが、0.01−0.1M、好ましくは0.05Mのリン酸バッファー又は0.8%の塩溶液を含む。静脈内担体は、液体及び栄養素補給剤、電解質補給剤、例えばリンゲルデキストロース等に基づくものを含む。さらに、そのような薬学上受容可能な担体は、水性又は非水性溶液、懸濁液、及びエマルジョンであり得る。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブ油、及び注射可能な有機エステル、例えば、オレイン酸エチルである。水性担体は、水、エタノール、アルコール/水性溶液、グリセロール、エマルジョン又は懸濁液を含み、塩溶液及びバッファー媒質を含む。
【0045】
薬学組成物は、慣用の薬学賦形剤及び化合物化技術を用いて調製できる。経口投薬形態は、処置される患者による経口摂取のための、エリキシル、シロップ、タブレット、ピル、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液等であってよい。典型的な固形賦形剤は、不活性物質、例えば、ラクトース、スターチ、グルコース、セルロース調製剤、例えば、トウモロコシのスターチ、コムギのスターチ、コメのスターチ、ポテトのスターチ、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、ソディウムカルボキシメチルセルロース、及び/又はポリビニルピロリドン(PVP);顆粒化剤;結合剤、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、マニトール等であってよい。カプセルの形態の組成物は、日常の封入手法を用いて製造することができる。例えば、活性成分を含む沈殿物を標準担体を用いて調製し、そして次に堅いゼラチンのカプセル内に充填することができる;あるいは、あらゆる適切な薬学上の担体、例えば、水性ゴム、セルロース、珪酸塩又はオイルを用いて分散液又は懸濁物を調製し、次に、分散液又は懸濁物を柔らかいゼラチンカプセルに充填することができる。一般的な液体の経口賦形剤は、エタノール、グリセロール、グリセリン、非水性溶剤、例えば、ポリエチレングリコール、オイル、又は懸濁剤、保存剤、芳香剤又は発色剤等を含む水を含む。全ての賦形剤は、投薬形態を製造する当業者には知られている慣用の技術を用いて、錠剤分解剤、希釈剤、潤滑剤等を用いて要求により混合してよい。所望なら、錠剤分解剤を加えてよいが、例えば、架橋結合されたポリビニルピロリドン、寒天又はアルギン酸又はその塩、例えば、アルギン酸ナトリウムである。所望なら、固形の投薬形態は、標準の技術を用いて糖を被覆するか又は腸溶被覆(enteric−coated)されてよい。経口の液体調製物、例えば、懸濁液、エリキシル及び溶液、適切な担体、賦形剤又は希釈剤は、水、グリコール、オイル、アルコール等を含む。さらに、芳香剤、保存剤、発色剤等を加えてよい。
【0046】
口内(buccal)投与のためには、上記化合物を、タブレット、トローチ剤などなどの慣用の様式にて製剤化された形態を採ってよい。上記化合物は、直腸又は膣組成物、例えば、座薬又は浣腸剤に製剤化してもよい。典型的な座薬製剤は、結合剤及び/又は潤滑剤、例えば、ポリマー性グリコール類、グリセリド類、ゼラチン類又はココアバター又は他の低融点の植物又は合成のワックス又は脂肪を含む。吸入による投与のためには、本発明による用途のための化合物は、加圧されたパック又は噴霧器からのエアロゾルスプレーの形態で都合よく送達され、適切な推進剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の適切なガスの使用を伴う。加圧されたエアロゾルの場合、計量された量を送達するためにバルブを用意することにより、投薬ユニットを決定してよい。吸入器(inhaler)又は吸入器(insufflator)における使用のための例えばゼラチンのカプセル及びカートリッジは、化合物の粉末混合物及び適切な粉末ベース、例えばラクトース又はスターチを含んで製剤化してよい。
【0047】
製剤は、移植(例えば、皮下又は筋肉内)によるか又は筋肉内注射により投与できる貯蔵物調製物(depot preparation)であってもよい。そのような態様においては、上記化合物を適切なポリマー又は疎水性物質(例えば、受容可能なオイル中のエマルジョンとして)又はイオン交換樹脂と共に、又はゆるやかな溶解性の誘導体として、例えば、ゆるやかな溶解性の塩として、製剤化してよい。
【0048】
あるいは、他の薬学送達システムを用いてよい。リポソーム及びエマルジョンは、使用してよい送達媒体のよく知られた例である。特定の有機溶剤、例えば、ジメチルスルフォキシドを使用してもよいが、通常は多大な毒性を犠牲にする。さらに、上記化合物は、持続性放出システム、例えば、治療剤を含む固形ポリマーの半透過性マトリックスを用いて送達してよい。様々な持続性放出物質が確立されており、当業者にはよく知られている。持続性放出カプセルは、それらの化学特性に依存して、数週間から100日にわたり上記化合物を放出してよい。治療剤の化学特性及び生物学的安定性に依存して、蛋白質の安定化のための追加の戦略を用いてよい。
【0049】
発明において使用される化合物は、巨丸剤注射(bolus injection)又は連続注入により非経口投与のために製剤化してもよく、そしてユニット投薬形態、例えばアンプル、バイアル、小容量注入剤又は予め充填されたシリンジ内、又は付加された保存剤を伴う複数投薬コンテナー内に提供してよい。
【0050】
保存剤及び他の付加物は、例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガス等であることもできる。全ての担体は、必要に応じて崩壊剤、希釈剤、顆粒化剤(granulating agents)、潤滑剤、結合剤などなどと共に当業界で公知の慣用技術を用いて混合することができる。
投薬及び治療養生法
本発明によれば、癌を有すると同定された個体において癌を治療する方法は、そのような個体に、個体において腫瘍細胞内でアポトーシスを誘導するのに十分な量のATPクエン酸リアーゼ阻害剤又はトリカルボキシル酸輸送体阻害剤を送達することにより実施される。そうすることにより、腫瘍細胞は、アポトーシスを経て、腫瘍自体がサイズを減少させるか又は完全に除去される。即ち、アポトーシス誘導投薬においてATPクエン酸リアーゼ阻害剤又はトリカルボキシル酸輸送体阻害剤の投与を含まない治療に比較して、患者の生存が伸びるか、及び/又は生活の質が改善される。本発明は、癌細胞内でアポトーシスを誘導する方法を提供し、アポトーシスを誘導するのに有効な量にて、クエン酸リアーゼ阻害剤又はトリカルボキシル酸輸送体阻害剤をそのような細胞に送達する工程を含む。
【0051】
上で記載された薬学組成物は、個体のからだにおいて薬剤の作用部位に活性薬剤を到達させることができるあらゆる手段により投与してよい。投与される投薬量は、因子:薬力学特性;その投与様式及び投与経路;レシピエントの年齢;健康状態及び体重;兆候の性質及び程度;同時処置の種類;及び処置の頻度に依存して変更される。
【0052】
投与される化合物の量は、処置される被験者、被験者の体重、苦痛の重度、投与の様式及び処方する意志の判定に依存することになる。いくつかの態様において、投薬量の範囲は、約1から3000mg、特に約10から1000mg又は約25から500mgの活性成分を、いくつかの態様においては1日あたり1から4回、平均(70kg)のヒトに関してである。一般には、発明で使用される個々の化合物の活性は変わる。
【0053】
治療効果を維持するために十分な化合物の血漿レベルを提供するために、投薬量及び間隔は個別に調節してよい。通常、活性成分の投薬量は体重kgあたり約1マイクログラムから100ミリグラムであり得る。いくつかの態様において、投薬量は体重kgあたり0.05mgから約200mgである。別の態様においては、有効な投薬量は約0.5mgから約50mgを送達するのに十分な投薬量である。通常は0.01から50ミリグラム、そしていくつかの態様においては0.1から20ミリグラムをキログラムあたり1日に1から6回に分割された投薬であるか又は持続された放出形態において、所望の結果を得るのに有効である。いくつかの態様において、注射による投与のための患者の投薬量は、0.1から5mg/kg/日、好ましくは約0.5から1mg/kg/日の範囲である。治療上有効な血清レベルは複数投薬を毎日投与することにより達成してよい。延長された期間の処置は有効な治療に必要であると認識されよう。
【0054】
いくつかの態様において、経路は、経口投与によるか又は静脈注入によってよい。経口投薬量は、通常、毎日、約0.05から100mg/kgの範囲である。発明において使用されるいくつかの化合物は、1日約0.05から約50mg/kgの範囲にて経口投与してよいが、他は1日0.05から20mg/kgにて投薬してよい。注入投薬量は約1.0から1.0times.104マイクログラム/kg/分の阻害剤の範囲であることができ、数分から数日の範囲の期間にわたり薬学上の担体と混合される。
発現の阻害
本発明は、さらに、ATPクエン酸リアーゼ又はトリカルボキシル酸輸送体の発現を阻害することにより癌を治療する方法に関する。発現の阻害は、アンチセンス、RNAi技術又はリボソームを用いて、癌の中のATPクエン酸リアーゼ又はトリカルボキシル酸輸送体の生産を阻害することができる。当業者は、本明細書に記載されたとおり、発明の様々な態様を実施するために、本明細書に記載された阻害剤の代わりに治療上有効な量のそのような化合物を作成して使用することができる。
種
ヒトに加えて、本発明の方法は、癌を罹患した他の種の動物を治療するために使用してよく、例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ウシ及びヒツジ上を含む。
実施例
【実施例1】
【0055】
実施例1:インビトロアポトーシスアッセイ
処理されたか又は未処理の(0.5−1x106細胞/mlの濃度にて)細胞500μlをFACSチューブに取り出し、50μlの10XアネキシンV結合バッファー(BDバイオサイエンス ファーミンゲン、サンディエゴ、CA)を各チューブに加えた。アネキシンV−FITC(BDバイオサイエンス ファーミンゲン、サンディエゴ、CA)により、4μlのアネキシンV−FITC及びヨウ化プロピジウム(Molecular Probes,Eugene,OR)を最終濃度3μg/ml細胞にて細胞を染色。当該細胞は、好ましくは、造血IL−3依存性細胞系、例えば、異なるトランス遺伝子(Bcl−xL,myrAkt)又はベクター対照プラスミドをトランスフェクトされたIL−3依存性FL5.12 pro−B細胞及びBax−/−Bak−/−ノックアウトマウスの骨髄から単離されたIL−3依存性細胞である。37℃において30分間インキュベートする。初期アポトーシス細胞はアネキシンVに陽性であり、ヨウ化プロピジウムには陰性であるが、後期アポトーシス細胞はアネキシンV及びヨウ化プロピジウムの両方に陽性である。
【実施例2】
【0056】
実施例2
ATPクエン酸活性は転写/翻訳及び翻訳後の機構の両方により増殖細胞内でアップ制御される
細胞増殖の有糸分裂促進物質の刺激に応答したATPクエン酸リアーゼの可能な誘導を調査するために、細胞抽出物中のATPクエン酸リアーゼ(ACL)活性を定量するアッセイを開発した。陽性対照として、細胞増殖ノックアウト誘導のためにIL−3に依存する細胞系の安定なトランスフェクト体も生成した。野生型細胞及びATPクエン酸リアーゼをトランスフェクトされた細胞からのサイトゾル抽出物を、NADHによるオキサロ酢酸のマレイン酸デヒドロゲナーゼにより触媒された還元により測定された、106細胞あたりのATPクエン酸リアーゼ活性のレベルを測定することにより、分析した。NADHの消費は、340nmにおいて反応を監視することにより測定した。5mMのATP及び300μMのCoAの存在下で100μMにおいてクエン酸を提供することによりアッセイを走らせた。陽性対照として、ACL−トランスフェクトされた細胞はATPクエン酸リアーゼ活性において3.5倍の増加を示したことから、アッセイの有効性が証明された(図2)。成長因子IL−3を培養物から取り出したとき、停止(withdrawal)の12時間後に細胞から細胞周期停止を誘導すると、ACL活性の降下がネクター対照とACL−トランスフェクト細胞の両方において観察された。合わせると、これらは、ACL活性が増殖細胞中で誘導されること、及びACLをトランスフェクトされた細胞中のACL活性は翻訳後に有糸分裂活性化細胞に関連した事象の結果として修飾できることを示唆する。
【0057】
以前の研究は、ヒドロキシクエン酸が培養された脂肪及び肝臓細胞において、ATPクエン酸リアーゼ活性の拮抗阻害剤として作用し得ることを示唆した(Berkhout,T.A.,et al.,Biochem J.272:181−186,1990,引用により本明細書に編入する)。結果として、我々は、インターロイキン−3により刺激されたFL5.12細胞の増殖性応答を阻害するヒドロキシクエン酸の能力を調査した。図3において、我々は、ヒドロキシクエン酸のIL−3含有FL5.12培養物への添加が、細胞培養物中の全細胞数及び細胞生存性の漸進性下降を導くことを証明する(図3)。この効果のIC50は、ACL―依存性脂肪酸合成を阻害するヒドロキシクエン酸の効果に近づき、他から報告されたとおりである(Pearce et al.1998)。合わせると、これらのデータは、増殖する細胞が増殖に応答してATPクエン酸リアーゼ活性を誘導するのみならず、ACL活性が成長する有糸分裂促進物質誘導性細胞系の連続する増殖及び生存に必要であることを論じる。
細胞増殖及び細胞生存の阻害はATPクエン酸リアーゼ阻害剤の一般的特性である
ヒドロキシクエン酸の効果がATPクエン酸リアーゼ活性を阻害することにおいてその証明された活性に相当し、ACL活性及び細胞増殖及びアポトーシスの阻害を誘導するのに必要な相対的に高い濃度によりもたらされる混交の(promiscuous)効果ではないことを調査するため、我々は、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤として作用すると最近報告されている一連の化合物による二次的な結果を確認した(図4)。ヒドロキシクエン酸とは対照的に、これらの化合物は、細胞抽出物中でATPクエン酸リアーゼ活性のマイクロモラー阻害剤として作用する。3−カルボキシ−11−(2,4−ジクロロフェニル)−3,5−ジヒドロウンデカン酸(構造に関しては図4を参照)を有糸分裂促進物質で刺激されて約3μMのIC50を有する細胞抽出物に加えたとき、及び細胞を細胞浸透性γ−ラクトン誘導体で処理したとき、約10μMの濃度において細胞増殖が阻害され、そして細胞増殖と細胞生存性の両方が30μMの濃度において阻害された(図6)。固定された造血細胞内の細胞増殖の阻害の再現性を、さらに、独立の細胞クローンを調査することにより調査したところ、細胞増殖が約50%各クローンにおいて10から30μMの間の投薬量にて阻害されたことが証明された(図7)。30μMの濃度の細胞浸透性化合物による処理は、有糸分裂促進物質により刺激された細胞及び増殖形質転換された細胞の培養物のG1抑止に関連しており(図8)、そしてアネキシン−V陽性の素早い誘導(図9)はアネキシンの誘導を示唆する。
癌遺伝子形質転換はACL阻害により感受性の細胞を作る
我々の研究室における以前の研究は、Aktの活性化された変異又は腫瘍サプレッサー機能、PTENの損失の何れかにより形質転換された細胞がそれらの解糖率の劇的なアップ制御を示すことを証明した(Plas et al.2001;Frauwirth et al.2002)。これは、それらが侵入性で転移性の表現型に進むように多くのヒトの悪性腫瘍により証明される特徴であり、そしてWarburgらにより1929年に最初に記載されて、フルオロデオキシグルコースを用いてPETスキャニングの臨床使用の増加により最近広範囲に確認された。Aktによる形質転換がATPクエン酸リアーゼ活性をさらに増加させるか否かを決定するため、我々は、IL−3依存性細胞系の安定なトランスフェクト体、FL5.12を作成し、Aktの構成的に活性化されたバージョンがN末端におけるミリストイル化の添加により生成された。我々は、IL−3存在下で成長させた場合のAkt−形質転換された細胞が、ACL−トランスフェクトされた細胞内で観察されたよりもさらに高いレベルのACL活性を有したことを見いだした(図10)。これは、ACLがAktリン酸化の基質であるということ(Berwick et al.2002)及びAktがACL活性の翻訳後活性化のための一つの分子機構であるかもしれないという他者の最近の報告と一致する。さらに、ACL−及びBcl−xL−トランスフェクトされたクローンとは対照的に、ミリストイル化されたAktによりトランスフェクトされたクローンは、細胞周期からの停止を通常は伴うACL活性の下降に対して耐性である。Akt形質転換された細胞は、非増殖状態においてさえ、高率の解糖を維持する。これが増殖性応答の不在下でさえもACL阻害にそれらを感受性にし続けるか否かを決定するために、我々は、有糸分裂促進物質IL−3の存在又は不在下で、ミリストイル化されたAkt細胞のACL阻害に体する感受性を調査した(図11)。ミリストイル化されたAktをトランスフェクトされた細胞は、細胞がIL−3存在下で成長したか又は細胞周期のG0/G1期がIL−3に対する応答として停止したか否かについて細胞生存性により測定したところ、ACL阻害に対するそれらのIC50に差異は示さない。対照的に、ACL活性を増加させないし且つ成長因子停止(withdrawal)に際してACL活性の下降を示す癌遺伝子Bcl−xLをトランスフェクトされた細胞は、有糸分裂促進物質IL−3の存在又は不在下でACLの阻害に際して細胞死に対する感受性において多大な差異を示す。ATPクエン酸リアーゼのγ−ラクトン阻害剤30μMにおいて、有糸分裂促進物質により誘導された細胞増殖のほぼ完全な阻害があり、そしてアポトーシス性細胞死の誘導がある。対照的に、非成長細胞中の30μMの同じ化合物は相対的に非毒性である。これは、解糖を活性化する癌遺伝子の添加による細胞の癌遺伝子形質転換が、形質転換された細胞のACL活性化に対してのさらに増強された感受性を導くことを示唆する。さらに、活性化に対するこの感受性は細胞周期に非依存性である。
ヒトの腫瘍細胞はACL阻害に対して感受性である
初期ヒト腫瘍由来の細胞系における我々の結果を確認するため、我々は、患者から単離された神経膠芽細胞腫の細胞系を分析した(図12)。2つのそのような神経膠芽細胞腫の細胞系は、LN18とLN229である。これらの2つの腫瘍は培養物及びインビボにおいて類似の成長速度を示すが、LN18はAktの構成的に活性な形態を有するらしく、一方LN229は有糸分裂促進物質の刺激に応答してのみAktを活性化する。血清の不在下で成長させると、増殖する細胞培養物の両方が、ATPクエン酸リアーゼの阻害剤に応答して細胞蓄積の投薬量依存性抑止と細胞生存性の阻害を呈する。Akt形質転換された細胞系に関しては、活性化されたAktを有する神経膠芽細胞腫LN18が、増加した感受性を示した。これがAkt活性に相関するか否かを決定するため、LN229神経膠芽細胞腫の細胞を構成的形態のAktでトランスフェクトし、ATPクエン酸リアーゼの阻害に対するそれらの感受性に関して再度試験した。ミリストイル化されたAktをトランスフェクトされたLN229細胞は、ベクターのみをトランスフェクトされた細胞に比較して、ATPクエン酸リアーゼ阻害に応答してアポトーシスを経ることに対する感度の増加を示した。これらのデータは、ヒトの腫瘍がATPクエン酸リアーゼに応答して細胞成長抑止及びアポトーシスを経ることに感受性を示すこと、及びこの感受性がそのような細胞の好気性解糖を刺激する癌遺伝子によりさらに増強され得ることを確認する。
生長期の細胞はATPクエン酸リアーゼ阻害剤の処理に対して増殖性細胞よりも感受性が低い
ヒトにおける細胞の大多数は生長期であるか又は非増殖状態である。癌治療が治療ウインドーを有するためには、ドラッグが非増殖細胞に対するよりも増殖クローン又は形質転換された細胞に対して高い効果を有することが重要である。これらの問題に、インビトロ培養システムにおいて接近するために、我々は、前アポトーシス(proapoptotic)分子であるBax及びBakの枯渇によりアポトーシスを欠損させた有糸分裂促進物質依存性細胞系の有用性を利用した。IL−3の存在下では、これらの細胞系は、培養において連続して生長するが、IL−3の剥奪に際して、当該細胞は細胞周期から撤退する(withdraw)が、数週は生長期にて生存する。細胞増殖がATPクエン酸リアーゼ阻害に対する細胞の感受性を増加させるか否かを決定するために、我々は、IL−3の存在下で生長させるときに、Bax/Bak−欠損、IL−3依存性細胞系を、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤で処理した(図13)。IL−3に応答した細胞生長はACL阻害に対する細胞の感受性を劇的に増加させた。これらの細胞は、我々が、細胞生長に対するATPクエン酸リアーゼ阻害の効果を二次的に試験することを可能にもさせた。休止しているBax/Bak−欠損細胞をIL−3で処理することにより、それらの生長及び細胞周期への再侵入を誘導した。我々は、投薬量依存性様式のATPクエン酸リアーゼ阻害剤が投薬量依存性様式において有糸分裂促進物質誘導性細胞生長を阻害したことを証明することができた。30μMのSB20499において、これらの細胞系の有糸分裂促進物質誘導性細胞の生長をほぼ完全に阻害した(図14)。さらに、我々は、それらの生長期の対応物に比較したときに、有糸分裂促進物質刺激が、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤の効果に対して静止期の細胞をより感受性にしたことを証明できた。有糸分裂促進物質により処理された生長期細胞は、細胞の生存により測定したところ、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤の処理に対して、選択的に、より感受性になった(図15)。合わせると、これらのデータが示唆するのは、形質転換された細胞が高率の好気性解糖を呈し、そしてアポトーシス性細胞死の誘導の細胞増殖の阻害により明らかにされた、ATPクエン酸リアーゼの阻害に対して高い感受性を示すことである。さらに、非増殖性細胞は、そのような阻害剤の効果に対して相対的な耐性を示し、そして非形質転換細胞は中間の感受性を示すことから、癌の治療においてATPクエン酸リアーゼ阻害剤の効果に関する治療ウインドーが存在することを示唆する。
ATPクエン酸リアーゼ阻害剤の作用の機構
ATPクエン酸リアーゼ阻害剤の作用の分子上の根拠をさらに決定するために、追加の研究に着手した。我々は、Akt−形質転換された細胞がそれらの増殖性及び細胞生存性を維持するために高率の解糖代謝に依存するようになったことを以前に証明した。ATPクエン酸リアーゼ阻害の一つの予測される効果は、サイトゾル中のクエン酸の蓄積(build−up)であり、解糖経路の負のアロステリック制御因子として作用し得る。ATPクエン酸リアーゼ阻害剤による処理がAkt−形質転換された細胞の高率解糖の阻害を導くか否かを試験するために、我々は、ACL阻害剤による簡単な処理が投薬量依存性様式にてAkt−形質転換された細胞の解糖率を抑圧できるか否かを試験した(図16)。高率の解糖を示す形質転換細胞においては、サイトゾル中のATPクエン酸リアーゼの阻害及びクエン酸の蓄積が、これらの細胞に高率の解糖を通してそれらのバイオエネルギーを維持させないかもしれず、即ち、選択的毒性をもたらさないかもしれない。
【0058】
ATPクエン酸リアーゼ阻害剤の二次的な結果は、クエン酸がもはやサイトゾルでは消費され得ず、よって、ミトコンドリアのマトリックスに蓄積することであり、TCAサイクルへの基質の利用可能性を増大させ、即ち、NADHの生成及び電子輸送鎖の活性を増加させることである。これに一致して、我々は、増加した投薬量のATPクエン酸リアーゼ阻害剤により処理された細胞内のミトコンドリアの電位を測定し、ミトコンドリア膜電位に投薬量依存性増加があることを見いだした(図17)。我々は、ミトコンドリアの持続性の高分極がミトコンドリアの膨張及び脂質膜の過酸化を通してアポトーシスを導き得ることを以前に公表した(Vander Heiden et al.1997)。このミトコンドリアの高分極が細胞内のアポトーシスの誘導に先行するか否かを決定するため、我々は、癌遺伝子形態のAktをトランスフェクトされた細胞内のアネキシンV陽性におけるミトコンドリアの高分極の時間経過を試験した。前の図に示したとおり、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤の添加は、ミトコンドリア膜電位の投薬量依存性増加を導く。ミトコンドリアの高分極の最大の誘導の直後に、ミトコンドリアの電位の下降があり、アポトーシス性細胞死の開始の指標であるアネキシンV陽性の誘導に続く(図18)。即ち、解糖刺激及びミトコンドリアの高分極の阻害は、アポトーシスの誘導に対して、処理された細胞を前もって処理するらしい。
結論
上記のデータは、癌細胞が、解糖経路の制御、ミトコンドリアの生理機能、及び細胞成長においてATPクエン酸リアーゼ活性の生成物に関する要求に対しての、機構に基づく効果を通して、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤に対して選択的感受性を示すことを示唆する。さらに、ATPクエン酸リアーゼ阻害に対する感受性は増殖する細胞の方が非増殖細胞よりもはるかに高く、そして好気性解糖の誘導を導く癌遺伝子形質転換を経た細胞において劇的に増強される。我々は、よって、癌の治療におけるATPクエン酸リアーゼ阻害剤の用途を提案し、そしてAktの活性化又はPTENの枯渇を通して形質転換された細胞、PETイメージングにより測定された好気性解糖の増強率を示す細胞、及び転移部位において成長する細胞においてそれが特に有用であることを示唆する。
引用により本明細書に各々編入された引用文献
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【実施例3】
【0063】
実施例3
米国国立がん研究所の癌のアルファベット順のリストは以下を含む:急性リンパ芽球、成人;急性リンパ芽球白血病、小児;急性骨髄性白血病、成人;副腎皮質カルシノーマ;副腎皮質カルシノーマ、小児;AIDS−関連リンパ腫AIDS−関連悪性腫瘍;肛門癌;星状細胞腫、小児小脳;星状細胞腫、小児大脳;胆管癌、肝外;膀胱癌;膀胱癌、小児;骨癌、骨肉腫/悪性繊維状組織球腫(malignant fibrous Histiocytoma);脳幹神経膠腫、小児;脳腫瘍、成人;脳腫瘍、脳幹神経膠腫、小児;脳腫瘍、小脳星状細胞腫、小児;脳腫瘍、大脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、小児;脳腫瘍、上衣細胞腫、小児;脳腫瘍、骨髄腫、小児;脳腫瘍、天膜上始原神経外胚葉腫瘍、小児;脳腫瘍、視覚経路及び視床下部の神経膠腫、小児;脳腫瘍、小児(その他);胸部癌;胸部癌及び妊娠;胸部癌、小児;胸部癌、男性;気管支腺腫(アデノーマ)/カルチノイド、小児;カルチドイド腫瘍、小児;カルチドイド腫瘍、胃腸;カルシノーマ、副腎皮質;カルシノーマ、島細胞;未知の始原のカルシノーマ;中枢神経系リンパ腫、始原;小脳星状細胞腫、小児;大脳星状細胞腫/悪性腫瘍神経膠腫、小児;頸管癌;小児が癌;慢性リンパ球白血病;慢性骨髄性白血病;慢性骨髄増殖性疾患;腱(Tendon)の鞘(Sheaths)の明細胞肉腫;結腸癌;結腸直腸癌、小児;皮膚T−細胞リンパ腫;子宮内膜癌;上衣細胞腫、小児;上皮癌、卵巣;食道癌;食道癌、小児;腫瘍のユーイングファミリー;頭蓋外胚細胞腫瘍、小児;生殖腺外胚細胞腫瘍;肝外胆管癌;目の癌、眼内メラノーマ;目の癌、網膜芽腫;胆嚢癌;胃(腹部)癌;胃(腹部)癌、小児;胃腸カルチノイド腫瘍;胚細胞腫瘍、頭蓋外、小児;胚細胞腫瘍、生殖腺外;胚細胞腫瘍、卵巣;妊娠期間栄養膜腫瘍;神経膠腫、小児脳幹;神経膠腫、小児視覚経路及び視床下部;毛髪細胞白血病;頭部及び頸部の癌;肝細胞(肝臓)癌、成人(始原);肝細胞(肝臓)癌、小児(始原);ホジキンのリンパ腫、成人;ホジキンのリンパ腫、小児;妊娠中のホジキンのリンパ腫;下咽頭癌;視床下部及び視覚経路の神経膠腫、小児;眼内メラノーマ;島細胞カルシノーマ(内分泌膵臓);カポジ肉腫;腎臓癌;喉頭癌;喉頭癌、小児;白血病、急性リンパ芽球、成人;白血病、急性リンパ芽球、小児;白血病、急性骨髄性、成人;白血病、急性骨髄性、小児;白血病、慢性リンパ球性;白血病、慢性骨髄性;白血病、毛髪細胞;唇及び口腔癌;肝臓癌、成人(始原);肝臓癌、小児(始原);肺癌、非小細胞;肺癌、小細胞;リンパ芽球白血病、成人急性;リンパ芽球白血病、小児急性;リンパ球性白血病、慢性;リンパ腫、AIDS−関連;リンパ腫、中枢神経系(始原);リンパ腫、皮膚T−細胞;リンパ腫ホジキン、成人;リンパ腫、ホジキン、小児;リンパ腫、妊娠の間のホジキン;リンパ腫、非ホジキン、成人;リンパ腫、非ホジキン、小児;リンパ腫、妊娠の間の非ホジキン;リンパ腫、始中枢神経系;マクログロブリン血症、ワルデンストローム;男性の胸部癌;悪性腫瘍中皮腫、成人;悪性腫瘍中皮腫、小児;悪性腫瘍胸腺腫;髄芽腫、小児;メラノーマ;メラノーマ、眼内;メルケル細胞カルシノーマ;中皮腫、悪性;オカルト始(Occult Primary)を伴う転移性の偏平上皮頸部癌(Squamous Neck Cancer);集合性(Multiple)内分泌腫瘍形成症候群、小児;集合性骨髄腫/血漿細胞腫瘍形成;骨髄異形成症候群;骨髄性白血病、慢性;骨髄性白血病、小児急性;骨髄腫、集合性;骨髄増殖性疾患、慢性;鼻腔及び鼻腔付近の副鼻腔癌(Sinus Cancer);鼻咽腔癌(Nasopharyngeal Cancer);鼻咽腔癌、小児;神経芽腫;非ホジキンリンパ腫、成人;非ホジキンリンパ腫、小児;妊娠中の非ホジキンリンパ腫;非小細胞肺癌;口腔癌、小児;口腔及び唇の癌;口腔咽頭癌;骨肉腫/骨の悪性繊維性組織球腫;卵巣癌、小児;卵巣上皮癌;卵巣胚細胞腫瘍;卵巣の未発達の(Low)悪性腫瘍潜在性(Potential)腫瘍;膵臓癌;膵臓癌、小児;膵臓癌、島細胞;副鼻腔癌(Sinus Cancer)及び鼻腔癌;上皮小体(Parathyroid)癌、陰茎癌;クロム親和性細胞腫;松果体及び原始神経外胚葉性腫瘍、小児;下垂体腫瘍;血漿細胞腫瘍形成/集合性骨髄腫;プリューロ肺(Pleuropulmonary)芽腫;妊娠及び胸部癌;妊娠及びホジキンリンパ腫;妊娠及び非ホジキンリンパ腫;始原中枢神経系リンパ腫;始原肝臓癌、成人;始原肝臓癌、小児;前立腺癌;直腸癌;腎臓細胞(腎臓)癌;腎臓細胞(腎臓)癌、小児;腎臓骨盤及び尿管、転移性細胞癌;網膜芽腫;横紋筋肉腫、小児;唾液腺癌;唾液腺癌、小児;肉腫、腫瘍のユーイングファミリー;肉腫、カポジ;肉腫(骨肉腫)/骨の悪性繊維性組織球腫;肉腫、横紋筋肉腫、小児;肉腫、柔組織、成人;肉腫、柔組織、小児;セザリー症候群;皮膚癌;皮膚癌、小児;皮膚癌(メラノーマ);皮膚カルシノーマ、メルケル細胞;小細胞肺癌、小腸癌;柔組織肉腫、成人;柔組織肉腫、小児;(Occult Primary)を伴う転移性の偏平上皮頸部癌(Squamous Neck Cancer)、転移性;腹部(胃)癌;腹部(胃)癌、小児;原始神経外胚葉性腫瘍、小児;T−細胞リンパ腫、皮膚;精巣癌;胸腺腫、小児;胸腺腫、悪性;甲状腺癌;甲状腺癌、小児;腎臓の骨盤及び尿管の転移性細胞癌;栄養膜腫瘍、妊娠期間;未知の始原部位、の癌(Cancer of)、小児;小児の異常な癌;尿管及び腎臓骨盤、繊維性細胞の癌;尿管癌;子宮肉腫;膣癌;視覚経路及び視床下部の神経膠腫、小児;外陰部の癌;ワルデンストロームのマクログロブリン血症;及びウイルムズ腫瘍を含む。本発明の方法はそのような種類の癌を治療するのに有用であるかもしれない。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、クエン酸リアーゼ及び/又はトリカルボキシル酸輸送体の阻害剤を含む組成物及びそのような組成物を用いて癌と診断された患者を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
各年に、百万を超える侵入性の癌が米国のみで報告される。治療における改善及び多くの成功にも拘わらず、癌は、死及び数え切れない苦痛の顕著な原因であり続ける。
【0003】
多数の証拠が示唆することは、癌細胞が、大多数の体細胞のそれらとは明らかに異なる代謝要求性を有することである。癌細胞の代謝要求性の違いは、ある特定の悪性腫瘍、例えば、幼少期の白血病におけるL−アスパラギナーゼにおいて治療上の利点を生かしてきたが、癌細胞の唯一の代謝を生かすための一般化された機構は考案されて(deviced)いない。
【0004】
癌を標的化するための追加の薬剤及び方法に関する要求が残されている。
【発明の概要】
【0005】
発明の概要
本発明は、癌を有する個体(individual)を治療する方法に関し、高率の好気性解糖を有する癌細胞を含む癌のような癌を同定し、そして治療上有効な量のATPクエン酸リアーゼ阻害剤を個体に投与する工程を含む。
【0006】
本発明は、さらに、癌を有すると認定された個体を治療する方法に関する。当該方法は、個体に、1mM未満の濃度にてインビトロアポトーシスアッセイにおいて50%を超える細胞においてアポトーシスを誘導するのに有効な治療上有効な量のATPクエン酸リアーゼ阻害剤を投与する工程を含む。
【0007】
本発明は、さらに、癌細胞においてアポトーシスを誘導する方法に関し、癌細胞においてアポトーシスを誘導するのに有効な量のATPクエン酸リアーゼ阻害剤を癌細胞に送達する工程を含む。ATPクエン酸リアーゼ阻害剤は、1mM未満の濃度にてインビトロアポトーシスアッセイにおいて50%を超える細胞においてアポトーシスを誘導するのに有効である。
【0008】
本発明は、さらに、癌が内生的に合成される脂肪酸に依存しない細胞を含む癌を有すると認定された個体を治療する方法に関する。当該方法は、治療上有効な量のATPクエン酸リアーゼ阻害剤を個体に投与する工程を含む。
【0009】
本発明は、さらに、内生的に合成される脂肪酸に依存しない癌細胞においてアポトーシスを誘導する方法に関する。当該方法は、細胞内でアポトーシスを誘導するのに有効な量のATPクエン酸リアーゼ阻害剤を癌細胞に送達させる工程を含む。
【0010】
本発明は、癌を有すると認定された個体を治療する方法に関する。当該方法は、治療上有効な量のトリカルボキシル酸輸送体阻害剤を個体に投与する工程を含む。
【0011】
本発明は、さらに、癌細胞においてアポトーシスを誘導する方法に関し、細胞においてアポトーシスを誘導するのに有効な量のトリカルボキシル酸輸送体阻害剤を癌細胞に投与する工程を含む。
【0012】
本発明は、さらに、癌を有する個体を治療する方法に関し、高率の好気性解糖を有する癌細胞を含む癌として癌を認定し、そして次に、治療上有効な量のトリカルボキシル酸輸送体阻害剤を個体に投与する工程を含む。
【0013】
本発明は、さらに、癌を有すると認定された個体を治療する方法に関し、ATPクエン酸リアーゼ又はトリカルボキシル酸輸送体の発現を阻害する化合物を治療上有効な量で個体に投与することを含む。
【0014】
本発明は、さらに、抗癌活性を有する化合物を同定する方法に関する。当該方法は、ATPクエン酸リアーゼ又はトリカルボキシル酸輸送体として試験化合物を同定し、そして当該化合物がアポトーシスを誘導するか否かについてアポトーシスアッセイを実施する工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は代謝経路を描写する。
【図2】図2は実施例2において記載された実験で生じたデータを描写する。
【図3】図3は実施例2において記載された実験で生じたデータを描写する。
【図4】図4は発明のいくつかの態様において有用なATPクエン酸リアーゼ阻害剤の構造を開示する。
【図5】図5は実施例2において記載された実験で生じたデータを描写する。
【図6】図6は実施例2において記載された実験で生じたデータを描写する。
【図7】図7は実施例2において記載された実験で生じたデータを描写する。
【図8】図8は実施例2において記載された実験で生じたデータを描写する。
【図9】図9は実施例2において記載された実験で生じたデータを描写する。
【図10】図10は実施例2において記載された実験で生じたデータを描写する。
【図11】図11は実施例2において記載された実験で生じたデータを描写する。
【図12A】図12Aは実施例2において記載された実験で生じたデータを描写する。
【図12B】図12Bは実施例2において記載された実験で生じたデータを描写する。
【図13】図13は実施例2において記載された実験で生じたデータを描写する。
【図14A】図14Aは実施例2において記載された実験で生じたデータを描写する。
【図14B】図14Bは実施例2において記載された実験で生じたデータを描写する。
【図15】図15は実施例2において記載された実験で生じたデータを描写する。
【図16】図16は実施例2において記載された実験で生じたデータを描写する。
【図17】図17は実施例2において記載された実験で生じたデータを描写する。
【図18】図18は実施例2において記載された実験で生じたデータを描写する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
定義
本明細書にて使用される用語「癌を有すると認定された個体」及び「癌患者」は、交換可能に使用され、そして癌を有すると診断された個体を意味する。癌を有する個体を認定するためのよく知られた手段は多数存在する。いくつかの態様において、癌の診断は、PETイメージングを用いて作成されるか又は確認される。発明のいくつかの態様は、癌を有する個体を認定する工程を含む。
【0017】
本明細書にて使用される用語「高率な好気性解糖により特徴付けされる癌」は、その周囲の組織のそれらよりも高率な好気性解糖を呈する細胞を有する癌を意味する。そのような癌細胞は、環境からのグルコースを平均を上回る量で吸収する。高率な好気性解糖により特徴付けされる癌は、PETイメージング技術を用いて、好ましくは18フッ素−デオキシグルコースにより同定できる。そのような試験を用いた腫瘍の陽性検出は、癌が高率な好気性解糖により特徴付けされることを示す。PETの方法論は、Czernin,J.2002 Acta Medica Austriaca 29:162−170に記載されており、引用により本明細書に編入される。
【0018】
本明細書にて使用される用語「ATPクエン酸リアーゼ阻害剤」は、ATPクエン酸リアーゼ活性を阻害することができる化合物を意味する。当該化合物は、小分子、大分子、ペプチド、オリゴヌクレオチド等であり得る。
【0019】
本明細書にて使用される用語「トリカルボキシル酸輸送体阻害剤」は、トリカルボキシル酸輸送体活性を阻害することができる化合物を意味する。当該化合物は、小分子、大分子、ペプチド、オリゴヌクレオチド等であり得る。
【0020】
本明細書にて使用される用語「治療上有効な量」は、治療される患者の、兆候を軽減するか又は妨げるか、腫瘍のサイズを小さくするか、又は寿命を延ばすのに有効な薬剤又は組み合わせの量を意味する。治療上有効な量の決定は、当業者の能力の範囲内で、特に、本明細書に提供された詳細な開示に照らして容易になされる。
【0021】
本明細書にて使用される用語「インビトロアポトーシスアッセイ」は、培養された細胞ないでアポトーシスを誘導する化合物の能力を評価して測定するアッセイを意味する。
高率な好気性解糖を有する癌細胞の代謝及びそのような細胞におけるアポトーシスの誘導
本発明は、多くのヒトの癌が高率の好気性解糖を示すこと、及びこの高率の好気性解糖が生長期の(vegetative)細胞の生存に通常は必要ない特定の代謝酵素に対する癌細胞の増加した依存性を誘導するという観察から生まれる。そのような酵素に対する増加した依存性が、そのような酵素の阻害剤による処理に対して癌細胞を感受性に誘導するか否かを決定する探索が企てられた。それらの環境からのグルコースの過剰な取り込みのために高率の好気性解糖を示す癌細胞の一つの鍵となる特徴は、当該細胞が莫大な量のピルビン酸(pyruvate)を生産することである。そのようなピルビン酸のミトコンドリアマトリックスへの輸送及びピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体によるそのさらなる分解は、トリカルボキシル酸サイクル(TCA)への増加したアセチル−CoAの侵入をもたらす。TCAサイクルにより生産されたNADHが酸化的リン酸化を通した電子の輸送及び細胞性ATPの生産を維持するのに必要な量を超えるなら、連続的なミトコンドリアの高分極及び電子輸送連鎖(electron transport chain)からの増加した酸素種(ROS)の生産が結果として起こり得る。ミトコンドリアの高分極及び電子輸送連鎖からの増加したROS生産は、最終的に、細胞のアポトーシスをもたらす(Vander Heiden,M.G.,et al.Cell,91:627−637,1997;引用により本明細書に編入される)。
【0022】
増加したNADHはTCAサイクルにおいていくつかの酵素のアロステリック阻害剤として作用できるが、癌細胞は、主に、TCAサイクルの第1反応の最終生産物であるクエン酸をサイトゾルに輸送することによりピルビン酸の代謝により生産されるアセチル−CoAの増加した負荷に対処するらしい。クエン酸はアセチル−CoAとオキサロ酢酸の縮合により形成される。結果として生じるクエン酸はミトコンドリアからトリカルボキシル酸輸送体の輸送活性により濃縮勾配の方へ輸送され得る。サイトゾル中では、クエン酸がATPクエン酸リアーゼ(ACL)の活性の結果として再度オキサロ酢酸とアセチル−CoAに変換され得る。サイトゾル中のオキサロ酢酸のさらなる代謝は、細胞合成反応のためのNADH及びピルビン酸を生成し、オキサロ酢酸の再生利用(regeneration)のためにミトコンドリアへ再度輸送され得る。サイトゾルのアセチル−CoAは、1)蛋白質の安定性を増加させるための蛋白質のN−アセチル化のため、2)ヒストン及び転写制御因子のアセチル化による活性クロマチンの維持のため、3)プレニル化及びアシル化による膜蛋白質の脂質修飾のため、及び4)ステロール類、スフィンゴリピド類及びホスホリピド類を含むバルクの脂質の合成のために、生長する細胞により利用されることにより鍵となる生長基質を生成し得る。ペンタニルピロリン酸は、パルミチル化、ゲラニルゲラニル化(geranylgeranylation)又はファルネシル化による蛋白質の脂質修飾のため、並びにスフィンゴミエリンの細胞内合成のために必要である。
【0023】
ATPクエン酸リアーゼの役割は肝臓及び脂肪の組織中のサイトゾルアセチル−CoA及びNADHの生産に制限され、長鎖脂肪酸の生産のためにこれらの組織内で使用されることが示唆されている(図1)(Elshourbagy,N.A.,et al,J Biol Chem,265:1430−1435,1990;Elshourbagy,N.A.,et al.Eur J Biochem,204:491−499,1992,及びFukuda,H.et al.J Biochem(Tokyo),126:437−444,1999、引用により本明細書に各々が編入される)。この総説に一致して、ATPクエン酸リアーゼが主として脂質生成細胞中で発現されることを、様々な研究が示唆した。他の生長期の組織は、当該酵素を全くか又はほとんど発現しない。
【0024】
腫瘍細胞系を特性決定するに際して、生長細胞の特徴が、高いレベルのATPクエン酸リアーゼ活性の誘導であることを発見した。データは、ミトコンドリア高分極及び電子輸送連鎖からのROS生成を阻害することにおけるATPクエン酸リアーゼの役割を示す。さらに、ATPクエン酸リアーゼが肝臓以外の組織においてサイトゾルのアセチル−CoAの合成に関与する主要な酵素であるらしいため、ATPクエン酸リアーゼが細胞の生長に必要であるか否かを決定するための調査が企てられた。単純な生物においては、サイトゾルのアセチル−CoAの主要な生成が酢酸塩を前駆体として用いてアセチル−CoAシンセターゼにより起こる。しかしながら、肝臓の代謝活性のために、相対的にわずかな酢酸塩しか哺乳類組織において細胞の生長には利用可能ではない。蛋白質の合成の要求される増加の結果として、ヒストンのアセチル化により活性クロマチン構造を維持する要求の結果として、パルミチル化、ゲラニルゲラニル化、又はファルネシル化によりシグナルトランスダクション蛋白質の活性化のために特化された蛋白質を生成する要求並びに脂質膜内でスフィンゴミエリン:コレステロールのラフト(rafts)の生成によるシグナリング複合体のアッセンブリーを生成する要求の結果として、生長細胞は高いレベルのアセチル−CoAを必要とする。データは、細胞の生長に要求されるアセチル−CoAのこの高いレベルの生産が、成長因子又はオンコジーン刺激性解糖、クエン酸のミトコンドリアによる増加した生成、及びATPクエン酸リアーゼの活性を必要とすることを示す。これらのデータは、ATPクエン酸リアーゼの阻害が生長を阻害して、形質転換された細胞のミトコンドリア誘導性アポトーシスを導くことを示す。
【0025】
データは、癌細胞の生長を阻害すること及び形質転換された細胞の細胞死を誘導することにおいて、ATPクエン酸リアーゼを阻害する効果の証拠を提供する。さらに、この方法は、非生長性の体細胞がATPクエン酸リアーゼ阻害剤の効果に対して相対的に耐性であること及び非形質転換細胞が細胞サイクルの停止によりATPクエン酸リアーゼの阻害に適合できることにおける選択性の利益を有する。
【0026】
トリカルボキシル酸輸送体の阻害は、癌細胞の生長を阻害するため、及び形質転換された細胞の細胞死を誘導するための、代わりの方法である。そのような阻害は、サイトゾルへのクエン酸の輸送を減少させるか又は阻害し、そして最終的には、細胞のアポトーシスをもたらす上記の条件及び事象を導く。
癌患者のATPクエン酸リアーゼ阻害剤による治療
発明のいくつかの態様は、癌を治療するためのATPクエン酸リアーゼ阻害剤の使用を含む。
【0027】
本発明の態様は、高率の好気性解糖を有するとして同定された癌を有する個体を治療するのに特に有用である。いくつかの態様において、癌を有する個体を治療する方法は、高率の好気性解糖を有するとして癌を最初に同定し、そして次に治療上有効な量のATPクエン酸リアーゼ阻害剤をそのような個体に投与する工程を含む。いくつかの好ましい態様において、高率の好気性解糖を有するという癌の同定は、PETイメージング、好ましくは18フルオロ−デオキシグルコースにより実施される。いくつかの態様において、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤は、1mM未満の濃度においてインビトロにおいてアポトーシスアッセイにて50%より多い細胞にアポトーシスを誘導するのに有効である。好ましい態様において、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤は、50μM未満の濃度においてインビトロのアポトーシスアッセイにて50%より多い細胞にアポトーシスを誘導するのに有効である。
【0028】
本発明のいくつかの態様において、癌を有すると同定された個体を治療する方法は、1mM未満の濃度においてインビトロのアポトーシスアッセイにて50%より多い細胞にアポトーシスを誘導することが知られているATPクエン酸リアーゼ阻害剤を治療上有効な量にてそのような個体に投与することを含む。いくつかの好ましい態様において、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤は、0.1mM未満の濃度においてインビトロのアポトーシスアッセイにて50%より多い細胞にアポトーシスを誘導するのに有効である。いくつかの好ましい態様において、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤は、50μM未満の濃度においてインビトロのアポトーシスアッセイにて50%より多い細胞にアポトーシスを誘導するのに有効である。いくつかの好ましい態様において、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤を投与する前に、癌が高率の好気性解糖により特徴付けされる癌であることを確認する。そうすることの好ましい方法は、PETイメージングであり、好ましくは、18フルオロ−デオキシグルコースを用いる。
【0029】
癌細胞においてアポトーシスを誘導する方法が提供される。当該方法は、細胞においてアポトーシスを誘導するのに有効な量のATPクエン酸リアーゼ阻害剤を癌細胞に送達することを含む。使用されるATPクエン酸リアーゼ阻害剤は、1mM未満の濃度においてインビトロのアポトーシスアッセイにて50%より多い細胞にアポトーシスを誘導するのに有効である。いくつかの好ましい態様において、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤は、0.1mM未満の濃度においてインビトロのアポトーシスアッセイにて50%より多い細胞にアポトーシスを誘導するのに有効である。いくつかの好ましい態様において、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤は、50μM未満の濃度においてインビトロのアポトーシスアッセイにて50%より多い細胞にアポトーシスを誘導するのに有効である。
【0030】
本発明の態様は、好ましくは、内部で合成された脂肪酸に依存しない癌細胞を有する癌を有する患者を治療するのに特に有用である。そのような癌は、ほとんどの癌を含み、そして脂質生産に関連する組織において生じる癌、例えば肝臓癌及び脂肪細胞を含む癌を一般には除く。内部で合成された脂肪酸に依存する癌細胞は、一般には、肝腫瘍、脂肪腫及び脂肪肉腫に限定される。即ち、発明のいくつかの方法は、内部で合成された脂肪に依存しない癌を有する癌患者を治療する方法に関し(即ち、内部で合成される脂肪酸を使用できる癌細胞)、そのような方法は、治療上有効な量のATPクエン酸リアーゼ阻害剤をそのような個体に投与する工程を含む。好ましい態様において、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤は、1mM未満の濃度においてインビトロのアポトーシスアッセイにて50%より多い細胞にアポトーシスを誘導するのに有効であることが知られている。いくつかの好ましい態様において、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤は、0.1mM未満の濃度においてインビトロのアポトーシスアッセイにて50%より多い細胞にアポトーシスを誘導するのに有効である。いくつかの好ましい態様において、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤は、50μM未満の濃度においてインビトロのアポトーシスアッセイにて50%より多い細胞にアポトーシスを誘導するのに有効である。内部で合成される脂肪酸に依存する癌細胞は、一般には、高いレベルの脂肪酸合成酵素を有する。そのような細胞における内部の脂肪酸合成は、典型的には、1分あたり200,000細胞あたりの10fmolesを超えるアセチル−CoAのアシルグリセリドへの取り込み速度にて起こる。いくつかの好ましい態様において、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤を投与する前に、癌が高率の好気性解糖により特徴付けされる癌であることを確認する。そうすることの好ましい方法は、PETイメージングであり、好ましくは、18フルオロ−デオキシグルコースを用いる。
【0031】
内部で合成される脂肪酸に依存しない癌細胞においてアポトーシスを誘導する方法が提供される。当該方法は、細胞においてアポトーシスを誘導するのに有効な量のATPクエン酸リアーゼ阻害剤を癌細胞に送達することを含む。使用されるATPクエン酸リアーゼ阻害剤は、1mM未満の濃度においてインビトロのアポトーシスアッセイにて50%より多い細胞にアポトーシスを誘導するのに有効である。いくつかの好ましい態様において、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤は、0.1mM未満の濃度においてインビトロのアポトーシスアッセイにて50%より多い細胞にアポトーシスを誘導するのに有効である。いくつかの好ましい態様において、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤は、50μM未満の濃度においてインビトロのアポトーシスアッセイにて50%より多い細胞にアポトーシスを誘導するのに有効である。
ATPクエン酸リアーゼ阻害剤
当業界においては、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤の例が多数ある。Gribbleらに対して1995年9月5日に発行された米国特許第5,447,954号、Chengらに対して2002年7月2日に発行された米国特許第6,414,002号、Chengらにより2003年5月8日に公開された米国出願公開番号20030087935 A1、Chengらにより2003年4月10日に公開された米国出願公開番号20030069275 A1、及びBarrow et al.,”Antimycins,Inhibitors of ATP−Citrate Lyase,from a Streptomyces sp.”,Journal of Antibiotics,vol.50,No.9,pp.729(1977)の各々は、引用により本明細書に各々編入され、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤である化合物を開示する。好ましい態様において、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤は、米国特許第5,447,954号において構造Iとして示された式により定義される構造を有する化合物からなる群から選択され、好ましくは、そこに開示されて特別に記載された構造の一つを有する化合物、好ましくはそこに示された実施例中の特別の化合物、好ましくはその中の図4において示された構造を有する化合物である。他の公知の阻害剤は、(−)ヒドロキシクエン酸、(R,S)−S−(3,4−ジカルボキシ−3−ヒドロキシ−3−メチル−ブチル)−CoA、及びS−カルボキシメチル−CoAを含む。
【0032】
化合物がATPクエン酸リアーゼ阻害剤であるか否かの決定は、当業者の範囲内である。ATPクエン酸リアーゼ阻害剤を同定するのに有用なアッセイの例は、Hoffmann GE,et al.Biochem Biophys Acta 1980 Oct 6;620(1):151−8;Szutowicz A,et al.Acta Biochim Pol 1976;23(2−3):227−34;及びSullivan AC,et al.J Biol Chem 1977 Nov 10;252(21)7583−90に記載されたものを含み、各々は引用により本明細書に編入される。化合物がATPクエン酸リアーゼ阻害剤であるかを如何にして決定するかについての一つの例は、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤を単離することである。当該蛋白質は、ATPクエン酸リアーゼが天然に発現される細胞から単離するか、又はATPクエン酸リアーゼ蛋白質の発現を指示するウイルスによる遺伝子構築物のトランスフェクション又は感染により過剰発現する細胞から単離することができる。ATPクエン酸リアーゼをコードするmRNAの核酸配列は、GenBank受け入れ番号U18197であり、引用により本明細書に編入される。さらに、ATPクエン酸リアーゼは、宿主細胞中で組換え発現することもできる。当該蛋白質を単離する際に、当業者は、有力なATPクエン酸リアーゼ阻害剤の存在又は不在下で、好ましくは、陽性及び/又は陰性対照を用いてその活性を測定することができる。活性が、根拠とされた阻害剤の不在下よりも存在下の方が低ければ、その化合物はATPクエン酸リアーゼ阻害剤である。化合物が癌を治療するのに有用なATPクエン酸リアーゼ阻害剤であることを確認するために、日常のアポトーシスアッセイにおいて当該化合物をさらに試験して、その活性がアポトーシスを誘導することを確認及び評価してよい。
トリカルボキシル酸輸送体阻害剤による癌患者の治療
発明のいくつかの態様は、癌を治療するためのトリカルボキシル酸輸送体阻害剤の使用を含む。
【0033】
本発明のいくつかの態様において、癌を有するとして同定された個体を治療する方法は、治療上有効な量のトリカルボキシル酸輸送体阻害剤をそのような個体に投与することを含む。いくつかの態様において、本発明の方法は、内部で合成される脂肪酸に依存しない癌細胞を有する癌を有する患者を治療するのに特に有用である。いくつかの好ましい態様において、トリカルボキシル酸輸送体阻害剤の投与前に、癌が高率の好気性解糖により特徴付けされる癌であることを確認する。そうすることの好ましい方法は、PETイメージングであり、好ましくは、18フルオロ−デオキシグルコースを用いる。
【0034】
癌を有する個体を治療する方法は、高率の好気性解糖を有するとして癌を同定し、そして次に治療上有効な量のトリカルボキシル酸輸送体阻害剤をそのような個体に投与する工程を含む。高率の好気性解糖を有するという癌の同定の好ましい方法は、PETイメージング、好ましくは18フルオロ−デオキシグルコースによる。
【0035】
癌細胞においてアポトーシスを誘導する方法が提供される。当該方法は、細胞においてアポトーシスを誘導するのに有効な量のトリカルボキシル酸輸送体阻害剤を癌細胞に送達することを含む。
トリカルボキシル酸輸送体阻害剤
当業界においては、トリカルボキシル酸輸送体阻害剤の例が多数ある。そのような例は、1,2,3−ベンゼントリカルボキシル酸、イソクエン酸、マレイン酸、ホスホエノールピルビン酸、n−ブチルマロン酸、スルフィドリル試薬、ジエチルピロカルボン酸、2,3−ブタンジオン、フェニルグリオキサル、ピリドキサル、5−ホスフェートジカルボキシル酸、琥珀酸、マレイン酸、オキサロ酢酸、トリカルボキシル酸、イソクエン酸、トリカルバリル酸、及びパルミトイル−CoAを含む。
【0036】
化合物がトリカルボキシル酸輸送体阻害剤であるか否かの決定は、当業者の範囲内である。化合物がトリカルボキシル酸輸送体阻害剤であるかを如何にして決定するかについての一つの例は、トリカルボキシル酸輸送体阻害剤を単離することであり、その方法は、Kaplan et al,J Biol Chem 1990 Aug 5;265(22):13379−85;Zara V et al.Biochem Biophys Res Commun 1996 Jun 25;223(3):508−13;Stipani et al.FEBS Lett 1983 Sep 19;161(2):269−74に開示されており、引用により本明細書に各々編入される。当該蛋白質は、トリカルボキシル酸輸送体が天然に発現される細胞から単離するか、又はトリカルボキシル酸輸送体蛋白質の発現を指示するウイルスによる遺伝子構築物のトランスフェクション又は感染により過剰発現する細胞から単離することができる。さらに、トリカルボキシル酸輸送体は、宿主細胞中で組換え発現することもできる。当該蛋白質を単離する際に、当業者は、有力なトリカルボキシル酸輸送体阻害剤の存在又は不在下で、好ましくは、陽性及び/又は陰性対照を用いてその活性を測定することができる。トリカルボキシル酸輸送体の活性が、根拠とされた阻害剤の不在下よりも存在下の方が低ければ、その化合物はトリカルボキシル酸輸送体阻害剤である。あるいは、細胞又はミトコンドリアを用いてアッセイを実施することができ、Law D et al.Am J Physiol 1992 Jul;263(1 Pt 1):C220−5;及びParadies G et al.Arch Biochem Biophys 1990 May 1;278(2):425−30に記載されているとおりであって、引用により本明細書に各々編入される。化合物が癌を治療するのに有用なトリカルボキシル酸輸送体阻害剤であることを確認するために、日常のアポトーシスアッセイにおいて当該化合物をさらに試験して、その活性がアポトーシスを誘導することを確認及び評価してよい。
アポトーシスアッセイ
アポトーシスは、当業者にはよく知られた多くの手法により検出できる。アポトーシスを検出する方法の例は、限定ではないが、TUNELアッセイ、カスパーゼ活性を測定すること、アネキシン−V染色、等を含む。アポトーシス活性は、実施例1に記載されたアッセイにおいて示されたとおりに測定される。
併用療法
いくつかの態様においては、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤及び/又はトリカルボキシル酸輸送体阻害剤を他の治療剤及び/又は放射線治療を含む治療養生法の一部と同時に投与することができる。
【0037】
治療剤の同時投与は、連続するか又は同時の何れかの逐次服用であり得る。いくつかの態様において、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤及び/又はトリカルボキシル酸輸送体阻害剤は、ひとつを超える追加の治療剤と同時投与する。化学治療剤の例は、共通の、細胞障害性又は細胞増殖抑制性の薬剤、例えば、メトトレキセート(アメトプテリン)、ドクソルビシン(アドリマイシン)、ダウノルビシン、サイトシナラビノシド、エトポシド、5−4フルオロウラシル、メルファラン、クロラムブシル、及び他の窒素マスタード(例えば、シクロホスファミド)、シス−プラチン、ビンデシン(及び他のビンカのアルカロイド類)、マイトマイシン及びブレオマイシンを含む。他の化学治療剤は、プロチオニン(大麦の花のオリゴペプチド)、マクロモマイシン、1,4−ベンゾキノン誘導体及びトレニモンを含む。抗癌性抗生物質、例えば、ヘルセプチン、及び毒素も、他の追加の治療剤の例である。
【0038】
治療養生法は、連続又は同時の何れかによるATPクエン酸リアーゼ阻害剤及び/又はトリカルボキシル酸輸送体阻害剤の逐次服用投与と放射線治療の開始を含み得る。当業者は、適切な放射線治療養生法を容易に処方することができる。Carlos A Perez & Luther W Brady:Principles and Practice of Radiation Oncology,2nd Ed.JB Lippincott Co,Phila.,1992は、、引用により本明細書に編入され、本発明において使用可能な放射線治療のプロトコルとパラメーターを記載する。GBMs(神経膠芽細胞腫、ほとんどの悪性神経膠脳腫瘍)に関しては、Simpson W.J.et al.:Influence of location and extent of surgical resection on survival of patients with glioblastoma multiforms:Results of three consecutive Radiation Therapy Oncology Group(RTOG)clinical trials.Int J Radiat Oncol Biol Phys 26:239−244,1993が引用により本明細書に編入され、本発明の方法において有用な臨床プロトコルを記載する。同様に、Borgelt et al.,The palliation of brain metastases:Final results of the first two studies of the Radiation Therapy Oncology Group.Int J Radiat Oncol Biol Phys 6:1−9,1980が本明細書に編入され、本発明の方法において有用な臨床プロトコルを記載する。いくつかの好ましい態様において、ガンマ照射を用いた放射線治療が提供される。
【0039】
併用療法の一部として使用される場合、治療上有効な量の上記阻害剤は、他の治療手法なしに使用されるなら、有効であるのに必要な用量よりも低い量であるように調節してよい。
【0040】
いくつかの好ましい態様において、発明による薬学組成物による治療は、外科医の介入が先行する。
薬学組成物及び投与経路
薬学組成物は、当業者により、選択された投与様式に依存して選択された組成物を用いて製剤化してよい。適切な薬学上の担体は、Remington’s Pharmaceutical Science,A.Osolの最近の版に記載されており、この分野の標準の参照テキストである。
【0041】
上記薬学組成物を投与することは、当業者に知られている様々な方法の何れかを用いて、遂げられるか又は実施され得る。全身性製剤は、注射、例えば、皮下、静脈内、筋肉内、くも膜下又は腹膜内注射による投与のためにデザインされた製剤並びに経皮、経粘膜、経口又は肺投与のためにデザインされた製剤を含む。
【0042】
注射のためには、発明の化合物を水溶液、好ましくは生理学上適合可能なバッファー、例えばハンクス溶液、リンゲル溶液又は整理食塩水バッファー中に製剤化してよい。当該溶液は、処方剤(formulatory agents)、例えば、懸濁剤、安定剤及び/又は分散剤を含んでよい。注射可能物(injectables)は、滅菌であり、発熱物質フリーである。あるいは、上記化合物は、使用前の、適切な媒質、例えば、滅菌の発熱物質フリーの水による再構成のための、粉末形態であってよい。経粘膜投与のためには、浸透されるバリアに対して適切な浸透剤を処方に使用する。そのような浸透剤は一般に当業界で知られている。
【0043】
非経口投与のためには、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤又はトリカルボキシル酸輸送体阻害剤は、薬学上受容可能な非経口媒質と共に、例えば、溶液、懸濁液、エマルジョン又は凍結乾燥粉末として製剤化することができる。そのような媒質の例は、水、塩溶液、リンゲル溶液、デキストロース溶液、5%ヒト血清アルブミン、リンゲルデキストロース、デキストロースと塩化ナトリウム、乳酸化リンゲルと不揮発性オイル、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、レシチン、落花生油又はゴマ油である。リポソーム及び非水性媒質、例えば不揮発性油を使用してもよい。媒質又は凍結乾燥粉末は、等張性を維持する付加物(例えば、塩化ナトリウム、マニトール)及び化学安定性を維持する付加物(例えば、バッファー及び保存剤)を含んでよい。製剤は、普通に使用される技術により滅菌される。非経口の投薬形態は、水又は別の滅菌担体を用いて調製してよい。例えば、注射による投与のために適した非経口組成物は、1.5重量%の活性成分を0.9%の塩化ナトリウム溶液に溶解することにより調製される。あるいは、当該溶液を凍結乾燥し、そして次に投与直前に適切な溶剤により戻される。
【0044】
薬学上受容可能な担体は、当業者に知られており、限定ではないが、0.01−0.1M、好ましくは0.05Mのリン酸バッファー又は0.8%の塩溶液を含む。静脈内担体は、液体及び栄養素補給剤、電解質補給剤、例えばリンゲルデキストロース等に基づくものを含む。さらに、そのような薬学上受容可能な担体は、水性又は非水性溶液、懸濁液、及びエマルジョンであり得る。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブ油、及び注射可能な有機エステル、例えば、オレイン酸エチルである。水性担体は、水、エタノール、アルコール/水性溶液、グリセロール、エマルジョン又は懸濁液を含み、塩溶液及びバッファー媒質を含む。
【0045】
薬学組成物は、慣用の薬学賦形剤及び化合物化技術を用いて調製できる。経口投薬形態は、処置される患者による経口摂取のための、エリキシル、シロップ、タブレット、ピル、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液等であってよい。典型的な固形賦形剤は、不活性物質、例えば、ラクトース、スターチ、グルコース、セルロース調製剤、例えば、トウモロコシのスターチ、コムギのスターチ、コメのスターチ、ポテトのスターチ、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、ソディウムカルボキシメチルセルロース、及び/又はポリビニルピロリドン(PVP);顆粒化剤;結合剤、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、マニトール等であってよい。カプセルの形態の組成物は、日常の封入手法を用いて製造することができる。例えば、活性成分を含む沈殿物を標準担体を用いて調製し、そして次に堅いゼラチンのカプセル内に充填することができる;あるいは、あらゆる適切な薬学上の担体、例えば、水性ゴム、セルロース、珪酸塩又はオイルを用いて分散液又は懸濁物を調製し、次に、分散液又は懸濁物を柔らかいゼラチンカプセルに充填することができる。一般的な液体の経口賦形剤は、エタノール、グリセロール、グリセリン、非水性溶剤、例えば、ポリエチレングリコール、オイル、又は懸濁剤、保存剤、芳香剤又は発色剤等を含む水を含む。全ての賦形剤は、投薬形態を製造する当業者には知られている慣用の技術を用いて、錠剤分解剤、希釈剤、潤滑剤等を用いて要求により混合してよい。所望なら、錠剤分解剤を加えてよいが、例えば、架橋結合されたポリビニルピロリドン、寒天又はアルギン酸又はその塩、例えば、アルギン酸ナトリウムである。所望なら、固形の投薬形態は、標準の技術を用いて糖を被覆するか又は腸溶被覆(enteric−coated)されてよい。経口の液体調製物、例えば、懸濁液、エリキシル及び溶液、適切な担体、賦形剤又は希釈剤は、水、グリコール、オイル、アルコール等を含む。さらに、芳香剤、保存剤、発色剤等を加えてよい。
【0046】
口内(buccal)投与のためには、上記化合物を、タブレット、トローチ剤などなどの慣用の様式にて製剤化された形態を採ってよい。上記化合物は、直腸又は膣組成物、例えば、座薬又は浣腸剤に製剤化してもよい。典型的な座薬製剤は、結合剤及び/又は潤滑剤、例えば、ポリマー性グリコール類、グリセリド類、ゼラチン類又はココアバター又は他の低融点の植物又は合成のワックス又は脂肪を含む。吸入による投与のためには、本発明による用途のための化合物は、加圧されたパック又は噴霧器からのエアロゾルスプレーの形態で都合よく送達され、適切な推進剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の適切なガスの使用を伴う。加圧されたエアロゾルの場合、計量された量を送達するためにバルブを用意することにより、投薬ユニットを決定してよい。吸入器(inhaler)又は吸入器(insufflator)における使用のための例えばゼラチンのカプセル及びカートリッジは、化合物の粉末混合物及び適切な粉末ベース、例えばラクトース又はスターチを含んで製剤化してよい。
【0047】
製剤は、移植(例えば、皮下又は筋肉内)によるか又は筋肉内注射により投与できる貯蔵物調製物(depot preparation)であってもよい。そのような態様においては、上記化合物を適切なポリマー又は疎水性物質(例えば、受容可能なオイル中のエマルジョンとして)又はイオン交換樹脂と共に、又はゆるやかな溶解性の誘導体として、例えば、ゆるやかな溶解性の塩として、製剤化してよい。
【0048】
あるいは、他の薬学送達システムを用いてよい。リポソーム及びエマルジョンは、使用してよい送達媒体のよく知られた例である。特定の有機溶剤、例えば、ジメチルスルフォキシドを使用してもよいが、通常は多大な毒性を犠牲にする。さらに、上記化合物は、持続性放出システム、例えば、治療剤を含む固形ポリマーの半透過性マトリックスを用いて送達してよい。様々な持続性放出物質が確立されており、当業者にはよく知られている。持続性放出カプセルは、それらの化学特性に依存して、数週間から100日にわたり上記化合物を放出してよい。治療剤の化学特性及び生物学的安定性に依存して、蛋白質の安定化のための追加の戦略を用いてよい。
【0049】
発明において使用される化合物は、巨丸剤注射(bolus injection)又は連続注入により非経口投与のために製剤化してもよく、そしてユニット投薬形態、例えばアンプル、バイアル、小容量注入剤又は予め充填されたシリンジ内、又は付加された保存剤を伴う複数投薬コンテナー内に提供してよい。
【0050】
保存剤及び他の付加物は、例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガス等であることもできる。全ての担体は、必要に応じて崩壊剤、希釈剤、顆粒化剤(granulating agents)、潤滑剤、結合剤などなどと共に当業界で公知の慣用技術を用いて混合することができる。
投薬及び治療養生法
本発明によれば、癌を有すると同定された個体において癌を治療する方法は、そのような個体に、個体において腫瘍細胞内でアポトーシスを誘導するのに十分な量のATPクエン酸リアーゼ阻害剤又はトリカルボキシル酸輸送体阻害剤を送達することにより実施される。そうすることにより、腫瘍細胞は、アポトーシスを経て、腫瘍自体がサイズを減少させるか又は完全に除去される。即ち、アポトーシス誘導投薬においてATPクエン酸リアーゼ阻害剤又はトリカルボキシル酸輸送体阻害剤の投与を含まない治療に比較して、患者の生存が伸びるか、及び/又は生活の質が改善される。本発明は、癌細胞内でアポトーシスを誘導する方法を提供し、アポトーシスを誘導するのに有効な量にて、クエン酸リアーゼ阻害剤又はトリカルボキシル酸輸送体阻害剤をそのような細胞に送達する工程を含む。
【0051】
上で記載された薬学組成物は、個体のからだにおいて薬剤の作用部位に活性薬剤を到達させることができるあらゆる手段により投与してよい。投与される投薬量は、因子:薬力学特性;その投与様式及び投与経路;レシピエントの年齢;健康状態及び体重;兆候の性質及び程度;同時処置の種類;及び処置の頻度に依存して変更される。
【0052】
投与される化合物の量は、処置される被験者、被験者の体重、苦痛の重度、投与の様式及び処方する意志の判定に依存することになる。いくつかの態様において、投薬量の範囲は、約1から3000mg、特に約10から1000mg又は約25から500mgの活性成分を、いくつかの態様においては1日あたり1から4回、平均(70kg)のヒトに関してである。一般には、発明で使用される個々の化合物の活性は変わる。
【0053】
治療効果を維持するために十分な化合物の血漿レベルを提供するために、投薬量及び間隔は個別に調節してよい。通常、活性成分の投薬量は体重kgあたり約1マイクログラムから100ミリグラムであり得る。いくつかの態様において、投薬量は体重kgあたり0.05mgから約200mgである。別の態様においては、有効な投薬量は約0.5mgから約50mgを送達するのに十分な投薬量である。通常は0.01から50ミリグラム、そしていくつかの態様においては0.1から20ミリグラムをキログラムあたり1日に1から6回に分割された投薬であるか又は持続された放出形態において、所望の結果を得るのに有効である。いくつかの態様において、注射による投与のための患者の投薬量は、0.1から5mg/kg/日、好ましくは約0.5から1mg/kg/日の範囲である。治療上有効な血清レベルは複数投薬を毎日投与することにより達成してよい。延長された期間の処置は有効な治療に必要であると認識されよう。
【0054】
いくつかの態様において、経路は、経口投与によるか又は静脈注入によってよい。経口投薬量は、通常、毎日、約0.05から100mg/kgの範囲である。発明において使用されるいくつかの化合物は、1日約0.05から約50mg/kgの範囲にて経口投与してよいが、他は1日0.05から20mg/kgにて投薬してよい。注入投薬量は約1.0から1.0times.104マイクログラム/kg/分の阻害剤の範囲であることができ、数分から数日の範囲の期間にわたり薬学上の担体と混合される。
発現の阻害
本発明は、さらに、ATPクエン酸リアーゼ又はトリカルボキシル酸輸送体の発現を阻害することにより癌を治療する方法に関する。発現の阻害は、アンチセンス、RNAi技術又はリボソームを用いて、癌の中のATPクエン酸リアーゼ又はトリカルボキシル酸輸送体の生産を阻害することができる。当業者は、本明細書に記載されたとおり、発明の様々な態様を実施するために、本明細書に記載された阻害剤の代わりに治療上有効な量のそのような化合物を作成して使用することができる。
種
ヒトに加えて、本発明の方法は、癌を罹患した他の種の動物を治療するために使用してよく、例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ウシ及びヒツジ上を含む。
実施例
【実施例1】
【0055】
実施例1:インビトロアポトーシスアッセイ
処理されたか又は未処理の(0.5−1x106細胞/mlの濃度にて)細胞500μlをFACSチューブに取り出し、50μlの10XアネキシンV結合バッファー(BDバイオサイエンス ファーミンゲン、サンディエゴ、CA)を各チューブに加えた。アネキシンV−FITC(BDバイオサイエンス ファーミンゲン、サンディエゴ、CA)により、4μlのアネキシンV−FITC及びヨウ化プロピジウム(Molecular Probes,Eugene,OR)を最終濃度3μg/ml細胞にて細胞を染色。当該細胞は、好ましくは、造血IL−3依存性細胞系、例えば、異なるトランス遺伝子(Bcl−xL,myrAkt)又はベクター対照プラスミドをトランスフェクトされたIL−3依存性FL5.12 pro−B細胞及びBax−/−Bak−/−ノックアウトマウスの骨髄から単離されたIL−3依存性細胞である。37℃において30分間インキュベートする。初期アポトーシス細胞はアネキシンVに陽性であり、ヨウ化プロピジウムには陰性であるが、後期アポトーシス細胞はアネキシンV及びヨウ化プロピジウムの両方に陽性である。
【実施例2】
【0056】
実施例2
ATPクエン酸活性は転写/翻訳及び翻訳後の機構の両方により増殖細胞内でアップ制御される
細胞増殖の有糸分裂促進物質の刺激に応答したATPクエン酸リアーゼの可能な誘導を調査するために、細胞抽出物中のATPクエン酸リアーゼ(ACL)活性を定量するアッセイを開発した。陽性対照として、細胞増殖ノックアウト誘導のためにIL−3に依存する細胞系の安定なトランスフェクト体も生成した。野生型細胞及びATPクエン酸リアーゼをトランスフェクトされた細胞からのサイトゾル抽出物を、NADHによるオキサロ酢酸のマレイン酸デヒドロゲナーゼにより触媒された還元により測定された、106細胞あたりのATPクエン酸リアーゼ活性のレベルを測定することにより、分析した。NADHの消費は、340nmにおいて反応を監視することにより測定した。5mMのATP及び300μMのCoAの存在下で100μMにおいてクエン酸を提供することによりアッセイを走らせた。陽性対照として、ACL−トランスフェクトされた細胞はATPクエン酸リアーゼ活性において3.5倍の増加を示したことから、アッセイの有効性が証明された(図2)。成長因子IL−3を培養物から取り出したとき、停止(withdrawal)の12時間後に細胞から細胞周期停止を誘導すると、ACL活性の降下がネクター対照とACL−トランスフェクト細胞の両方において観察された。合わせると、これらは、ACL活性が増殖細胞中で誘導されること、及びACLをトランスフェクトされた細胞中のACL活性は翻訳後に有糸分裂活性化細胞に関連した事象の結果として修飾できることを示唆する。
【0057】
以前の研究は、ヒドロキシクエン酸が培養された脂肪及び肝臓細胞において、ATPクエン酸リアーゼ活性の拮抗阻害剤として作用し得ることを示唆した(Berkhout,T.A.,et al.,Biochem J.272:181−186,1990,引用により本明細書に編入する)。結果として、我々は、インターロイキン−3により刺激されたFL5.12細胞の増殖性応答を阻害するヒドロキシクエン酸の能力を調査した。図3において、我々は、ヒドロキシクエン酸のIL−3含有FL5.12培養物への添加が、細胞培養物中の全細胞数及び細胞生存性の漸進性下降を導くことを証明する(図3)。この効果のIC50は、ACL―依存性脂肪酸合成を阻害するヒドロキシクエン酸の効果に近づき、他から報告されたとおりである(Pearce et al.1998)。合わせると、これらのデータは、増殖する細胞が増殖に応答してATPクエン酸リアーゼ活性を誘導するのみならず、ACL活性が成長する有糸分裂促進物質誘導性細胞系の連続する増殖及び生存に必要であることを論じる。
細胞増殖及び細胞生存の阻害はATPクエン酸リアーゼ阻害剤の一般的特性である
ヒドロキシクエン酸の効果がATPクエン酸リアーゼ活性を阻害することにおいてその証明された活性に相当し、ACL活性及び細胞増殖及びアポトーシスの阻害を誘導するのに必要な相対的に高い濃度によりもたらされる混交の(promiscuous)効果ではないことを調査するため、我々は、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤として作用すると最近報告されている一連の化合物による二次的な結果を確認した(図4)。ヒドロキシクエン酸とは対照的に、これらの化合物は、細胞抽出物中でATPクエン酸リアーゼ活性のマイクロモラー阻害剤として作用する。3−カルボキシ−11−(2,4−ジクロロフェニル)−3,5−ジヒドロウンデカン酸(構造に関しては図4を参照)を有糸分裂促進物質で刺激されて約3μMのIC50を有する細胞抽出物に加えたとき、及び細胞を細胞浸透性γ−ラクトン誘導体で処理したとき、約10μMの濃度において細胞増殖が阻害され、そして細胞増殖と細胞生存性の両方が30μMの濃度において阻害された(図6)。固定された造血細胞内の細胞増殖の阻害の再現性を、さらに、独立の細胞クローンを調査することにより調査したところ、細胞増殖が約50%各クローンにおいて10から30μMの間の投薬量にて阻害されたことが証明された(図7)。30μMの濃度の細胞浸透性化合物による処理は、有糸分裂促進物質により刺激された細胞及び増殖形質転換された細胞の培養物のG1抑止に関連しており(図8)、そしてアネキシン−V陽性の素早い誘導(図9)はアネキシンの誘導を示唆する。
癌遺伝子形質転換はACL阻害により感受性の細胞を作る
我々の研究室における以前の研究は、Aktの活性化された変異又は腫瘍サプレッサー機能、PTENの損失の何れかにより形質転換された細胞がそれらの解糖率の劇的なアップ制御を示すことを証明した(Plas et al.2001;Frauwirth et al.2002)。これは、それらが侵入性で転移性の表現型に進むように多くのヒトの悪性腫瘍により証明される特徴であり、そしてWarburgらにより1929年に最初に記載されて、フルオロデオキシグルコースを用いてPETスキャニングの臨床使用の増加により最近広範囲に確認された。Aktによる形質転換がATPクエン酸リアーゼ活性をさらに増加させるか否かを決定するため、我々は、IL−3依存性細胞系の安定なトランスフェクト体、FL5.12を作成し、Aktの構成的に活性化されたバージョンがN末端におけるミリストイル化の添加により生成された。我々は、IL−3存在下で成長させた場合のAkt−形質転換された細胞が、ACL−トランスフェクトされた細胞内で観察されたよりもさらに高いレベルのACL活性を有したことを見いだした(図10)。これは、ACLがAktリン酸化の基質であるということ(Berwick et al.2002)及びAktがACL活性の翻訳後活性化のための一つの分子機構であるかもしれないという他者の最近の報告と一致する。さらに、ACL−及びBcl−xL−トランスフェクトされたクローンとは対照的に、ミリストイル化されたAktによりトランスフェクトされたクローンは、細胞周期からの停止を通常は伴うACL活性の下降に対して耐性である。Akt形質転換された細胞は、非増殖状態においてさえ、高率の解糖を維持する。これが増殖性応答の不在下でさえもACL阻害にそれらを感受性にし続けるか否かを決定するために、我々は、有糸分裂促進物質IL−3の存在又は不在下で、ミリストイル化されたAkt細胞のACL阻害に体する感受性を調査した(図11)。ミリストイル化されたAktをトランスフェクトされた細胞は、細胞がIL−3存在下で成長したか又は細胞周期のG0/G1期がIL−3に対する応答として停止したか否かについて細胞生存性により測定したところ、ACL阻害に対するそれらのIC50に差異は示さない。対照的に、ACL活性を増加させないし且つ成長因子停止(withdrawal)に際してACL活性の下降を示す癌遺伝子Bcl−xLをトランスフェクトされた細胞は、有糸分裂促進物質IL−3の存在又は不在下でACLの阻害に際して細胞死に対する感受性において多大な差異を示す。ATPクエン酸リアーゼのγ−ラクトン阻害剤30μMにおいて、有糸分裂促進物質により誘導された細胞増殖のほぼ完全な阻害があり、そしてアポトーシス性細胞死の誘導がある。対照的に、非成長細胞中の30μMの同じ化合物は相対的に非毒性である。これは、解糖を活性化する癌遺伝子の添加による細胞の癌遺伝子形質転換が、形質転換された細胞のACL活性化に対してのさらに増強された感受性を導くことを示唆する。さらに、活性化に対するこの感受性は細胞周期に非依存性である。
ヒトの腫瘍細胞はACL阻害に対して感受性である
初期ヒト腫瘍由来の細胞系における我々の結果を確認するため、我々は、患者から単離された神経膠芽細胞腫の細胞系を分析した(図12)。2つのそのような神経膠芽細胞腫の細胞系は、LN18とLN229である。これらの2つの腫瘍は培養物及びインビボにおいて類似の成長速度を示すが、LN18はAktの構成的に活性な形態を有するらしく、一方LN229は有糸分裂促進物質の刺激に応答してのみAktを活性化する。血清の不在下で成長させると、増殖する細胞培養物の両方が、ATPクエン酸リアーゼの阻害剤に応答して細胞蓄積の投薬量依存性抑止と細胞生存性の阻害を呈する。Akt形質転換された細胞系に関しては、活性化されたAktを有する神経膠芽細胞腫LN18が、増加した感受性を示した。これがAkt活性に相関するか否かを決定するため、LN229神経膠芽細胞腫の細胞を構成的形態のAktでトランスフェクトし、ATPクエン酸リアーゼの阻害に対するそれらの感受性に関して再度試験した。ミリストイル化されたAktをトランスフェクトされたLN229細胞は、ベクターのみをトランスフェクトされた細胞に比較して、ATPクエン酸リアーゼ阻害に応答してアポトーシスを経ることに対する感度の増加を示した。これらのデータは、ヒトの腫瘍がATPクエン酸リアーゼに応答して細胞成長抑止及びアポトーシスを経ることに感受性を示すこと、及びこの感受性がそのような細胞の好気性解糖を刺激する癌遺伝子によりさらに増強され得ることを確認する。
生長期の細胞はATPクエン酸リアーゼ阻害剤の処理に対して増殖性細胞よりも感受性が低い
ヒトにおける細胞の大多数は生長期であるか又は非増殖状態である。癌治療が治療ウインドーを有するためには、ドラッグが非増殖細胞に対するよりも増殖クローン又は形質転換された細胞に対して高い効果を有することが重要である。これらの問題に、インビトロ培養システムにおいて接近するために、我々は、前アポトーシス(proapoptotic)分子であるBax及びBakの枯渇によりアポトーシスを欠損させた有糸分裂促進物質依存性細胞系の有用性を利用した。IL−3の存在下では、これらの細胞系は、培養において連続して生長するが、IL−3の剥奪に際して、当該細胞は細胞周期から撤退する(withdraw)が、数週は生長期にて生存する。細胞増殖がATPクエン酸リアーゼ阻害に対する細胞の感受性を増加させるか否かを決定するために、我々は、IL−3の存在下で生長させるときに、Bax/Bak−欠損、IL−3依存性細胞系を、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤で処理した(図13)。IL−3に応答した細胞生長はACL阻害に対する細胞の感受性を劇的に増加させた。これらの細胞は、我々が、細胞生長に対するATPクエン酸リアーゼ阻害の効果を二次的に試験することを可能にもさせた。休止しているBax/Bak−欠損細胞をIL−3で処理することにより、それらの生長及び細胞周期への再侵入を誘導した。我々は、投薬量依存性様式のATPクエン酸リアーゼ阻害剤が投薬量依存性様式において有糸分裂促進物質誘導性細胞生長を阻害したことを証明することができた。30μMのSB20499において、これらの細胞系の有糸分裂促進物質誘導性細胞の生長をほぼ完全に阻害した(図14)。さらに、我々は、それらの生長期の対応物に比較したときに、有糸分裂促進物質刺激が、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤の効果に対して静止期の細胞をより感受性にしたことを証明できた。有糸分裂促進物質により処理された生長期細胞は、細胞の生存により測定したところ、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤の処理に対して、選択的に、より感受性になった(図15)。合わせると、これらのデータが示唆するのは、形質転換された細胞が高率の好気性解糖を呈し、そしてアポトーシス性細胞死の誘導の細胞増殖の阻害により明らかにされた、ATPクエン酸リアーゼの阻害に対して高い感受性を示すことである。さらに、非増殖性細胞は、そのような阻害剤の効果に対して相対的な耐性を示し、そして非形質転換細胞は中間の感受性を示すことから、癌の治療においてATPクエン酸リアーゼ阻害剤の効果に関する治療ウインドーが存在することを示唆する。
ATPクエン酸リアーゼ阻害剤の作用の機構
ATPクエン酸リアーゼ阻害剤の作用の分子上の根拠をさらに決定するために、追加の研究に着手した。我々は、Akt−形質転換された細胞がそれらの増殖性及び細胞生存性を維持するために高率の解糖代謝に依存するようになったことを以前に証明した。ATPクエン酸リアーゼ阻害の一つの予測される効果は、サイトゾル中のクエン酸の蓄積(build−up)であり、解糖経路の負のアロステリック制御因子として作用し得る。ATPクエン酸リアーゼ阻害剤による処理がAkt−形質転換された細胞の高率解糖の阻害を導くか否かを試験するために、我々は、ACL阻害剤による簡単な処理が投薬量依存性様式にてAkt−形質転換された細胞の解糖率を抑圧できるか否かを試験した(図16)。高率の解糖を示す形質転換細胞においては、サイトゾル中のATPクエン酸リアーゼの阻害及びクエン酸の蓄積が、これらの細胞に高率の解糖を通してそれらのバイオエネルギーを維持させないかもしれず、即ち、選択的毒性をもたらさないかもしれない。
【0058】
ATPクエン酸リアーゼ阻害剤の二次的な結果は、クエン酸がもはやサイトゾルでは消費され得ず、よって、ミトコンドリアのマトリックスに蓄積することであり、TCAサイクルへの基質の利用可能性を増大させ、即ち、NADHの生成及び電子輸送鎖の活性を増加させることである。これに一致して、我々は、増加した投薬量のATPクエン酸リアーゼ阻害剤により処理された細胞内のミトコンドリアの電位を測定し、ミトコンドリア膜電位に投薬量依存性増加があることを見いだした(図17)。我々は、ミトコンドリアの持続性の高分極がミトコンドリアの膨張及び脂質膜の過酸化を通してアポトーシスを導き得ることを以前に公表した(Vander Heiden et al.1997)。このミトコンドリアの高分極が細胞内のアポトーシスの誘導に先行するか否かを決定するため、我々は、癌遺伝子形態のAktをトランスフェクトされた細胞内のアネキシンV陽性におけるミトコンドリアの高分極の時間経過を試験した。前の図に示したとおり、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤の添加は、ミトコンドリア膜電位の投薬量依存性増加を導く。ミトコンドリアの高分極の最大の誘導の直後に、ミトコンドリアの電位の下降があり、アポトーシス性細胞死の開始の指標であるアネキシンV陽性の誘導に続く(図18)。即ち、解糖刺激及びミトコンドリアの高分極の阻害は、アポトーシスの誘導に対して、処理された細胞を前もって処理するらしい。
結論
上記のデータは、癌細胞が、解糖経路の制御、ミトコンドリアの生理機能、及び細胞成長においてATPクエン酸リアーゼ活性の生成物に関する要求に対しての、機構に基づく効果を通して、ATPクエン酸リアーゼ阻害剤に対して選択的感受性を示すことを示唆する。さらに、ATPクエン酸リアーゼ阻害に対する感受性は増殖する細胞の方が非増殖細胞よりもはるかに高く、そして好気性解糖の誘導を導く癌遺伝子形質転換を経た細胞において劇的に増強される。我々は、よって、癌の治療におけるATPクエン酸リアーゼ阻害剤の用途を提案し、そしてAktの活性化又はPTENの枯渇を通して形質転換された細胞、PETイメージングにより測定された好気性解糖の増強率を示す細胞、及び転移部位において成長する細胞においてそれが特に有用であることを示唆する。
引用により本明細書に各々編入された引用文献
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【実施例3】
【0063】
実施例3
米国国立がん研究所の癌のアルファベット順のリストは以下を含む:急性リンパ芽球、成人;急性リンパ芽球白血病、小児;急性骨髄性白血病、成人;副腎皮質カルシノーマ;副腎皮質カルシノーマ、小児;AIDS−関連リンパ腫AIDS−関連悪性腫瘍;肛門癌;星状細胞腫、小児小脳;星状細胞腫、小児大脳;胆管癌、肝外;膀胱癌;膀胱癌、小児;骨癌、骨肉腫/悪性繊維状組織球腫(malignant fibrous Histiocytoma);脳幹神経膠腫、小児;脳腫瘍、成人;脳腫瘍、脳幹神経膠腫、小児;脳腫瘍、小脳星状細胞腫、小児;脳腫瘍、大脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、小児;脳腫瘍、上衣細胞腫、小児;脳腫瘍、骨髄腫、小児;脳腫瘍、天膜上始原神経外胚葉腫瘍、小児;脳腫瘍、視覚経路及び視床下部の神経膠腫、小児;脳腫瘍、小児(その他);胸部癌;胸部癌及び妊娠;胸部癌、小児;胸部癌、男性;気管支腺腫(アデノーマ)/カルチノイド、小児;カルチドイド腫瘍、小児;カルチドイド腫瘍、胃腸;カルシノーマ、副腎皮質;カルシノーマ、島細胞;未知の始原のカルシノーマ;中枢神経系リンパ腫、始原;小脳星状細胞腫、小児;大脳星状細胞腫/悪性腫瘍神経膠腫、小児;頸管癌;小児が癌;慢性リンパ球白血病;慢性骨髄性白血病;慢性骨髄増殖性疾患;腱(Tendon)の鞘(Sheaths)の明細胞肉腫;結腸癌;結腸直腸癌、小児;皮膚T−細胞リンパ腫;子宮内膜癌;上衣細胞腫、小児;上皮癌、卵巣;食道癌;食道癌、小児;腫瘍のユーイングファミリー;頭蓋外胚細胞腫瘍、小児;生殖腺外胚細胞腫瘍;肝外胆管癌;目の癌、眼内メラノーマ;目の癌、網膜芽腫;胆嚢癌;胃(腹部)癌;胃(腹部)癌、小児;胃腸カルチノイド腫瘍;胚細胞腫瘍、頭蓋外、小児;胚細胞腫瘍、生殖腺外;胚細胞腫瘍、卵巣;妊娠期間栄養膜腫瘍;神経膠腫、小児脳幹;神経膠腫、小児視覚経路及び視床下部;毛髪細胞白血病;頭部及び頸部の癌;肝細胞(肝臓)癌、成人(始原);肝細胞(肝臓)癌、小児(始原);ホジキンのリンパ腫、成人;ホジキンのリンパ腫、小児;妊娠中のホジキンのリンパ腫;下咽頭癌;視床下部及び視覚経路の神経膠腫、小児;眼内メラノーマ;島細胞カルシノーマ(内分泌膵臓);カポジ肉腫;腎臓癌;喉頭癌;喉頭癌、小児;白血病、急性リンパ芽球、成人;白血病、急性リンパ芽球、小児;白血病、急性骨髄性、成人;白血病、急性骨髄性、小児;白血病、慢性リンパ球性;白血病、慢性骨髄性;白血病、毛髪細胞;唇及び口腔癌;肝臓癌、成人(始原);肝臓癌、小児(始原);肺癌、非小細胞;肺癌、小細胞;リンパ芽球白血病、成人急性;リンパ芽球白血病、小児急性;リンパ球性白血病、慢性;リンパ腫、AIDS−関連;リンパ腫、中枢神経系(始原);リンパ腫、皮膚T−細胞;リンパ腫ホジキン、成人;リンパ腫、ホジキン、小児;リンパ腫、妊娠の間のホジキン;リンパ腫、非ホジキン、成人;リンパ腫、非ホジキン、小児;リンパ腫、妊娠の間の非ホジキン;リンパ腫、始中枢神経系;マクログロブリン血症、ワルデンストローム;男性の胸部癌;悪性腫瘍中皮腫、成人;悪性腫瘍中皮腫、小児;悪性腫瘍胸腺腫;髄芽腫、小児;メラノーマ;メラノーマ、眼内;メルケル細胞カルシノーマ;中皮腫、悪性;オカルト始(Occult Primary)を伴う転移性の偏平上皮頸部癌(Squamous Neck Cancer);集合性(Multiple)内分泌腫瘍形成症候群、小児;集合性骨髄腫/血漿細胞腫瘍形成;骨髄異形成症候群;骨髄性白血病、慢性;骨髄性白血病、小児急性;骨髄腫、集合性;骨髄増殖性疾患、慢性;鼻腔及び鼻腔付近の副鼻腔癌(Sinus Cancer);鼻咽腔癌(Nasopharyngeal Cancer);鼻咽腔癌、小児;神経芽腫;非ホジキンリンパ腫、成人;非ホジキンリンパ腫、小児;妊娠中の非ホジキンリンパ腫;非小細胞肺癌;口腔癌、小児;口腔及び唇の癌;口腔咽頭癌;骨肉腫/骨の悪性繊維性組織球腫;卵巣癌、小児;卵巣上皮癌;卵巣胚細胞腫瘍;卵巣の未発達の(Low)悪性腫瘍潜在性(Potential)腫瘍;膵臓癌;膵臓癌、小児;膵臓癌、島細胞;副鼻腔癌(Sinus Cancer)及び鼻腔癌;上皮小体(Parathyroid)癌、陰茎癌;クロム親和性細胞腫;松果体及び原始神経外胚葉性腫瘍、小児;下垂体腫瘍;血漿細胞腫瘍形成/集合性骨髄腫;プリューロ肺(Pleuropulmonary)芽腫;妊娠及び胸部癌;妊娠及びホジキンリンパ腫;妊娠及び非ホジキンリンパ腫;始原中枢神経系リンパ腫;始原肝臓癌、成人;始原肝臓癌、小児;前立腺癌;直腸癌;腎臓細胞(腎臓)癌;腎臓細胞(腎臓)癌、小児;腎臓骨盤及び尿管、転移性細胞癌;網膜芽腫;横紋筋肉腫、小児;唾液腺癌;唾液腺癌、小児;肉腫、腫瘍のユーイングファミリー;肉腫、カポジ;肉腫(骨肉腫)/骨の悪性繊維性組織球腫;肉腫、横紋筋肉腫、小児;肉腫、柔組織、成人;肉腫、柔組織、小児;セザリー症候群;皮膚癌;皮膚癌、小児;皮膚癌(メラノーマ);皮膚カルシノーマ、メルケル細胞;小細胞肺癌、小腸癌;柔組織肉腫、成人;柔組織肉腫、小児;(Occult Primary)を伴う転移性の偏平上皮頸部癌(Squamous Neck Cancer)、転移性;腹部(胃)癌;腹部(胃)癌、小児;原始神経外胚葉性腫瘍、小児;T−細胞リンパ腫、皮膚;精巣癌;胸腺腫、小児;胸腺腫、悪性;甲状腺癌;甲状腺癌、小児;腎臓の骨盤及び尿管の転移性細胞癌;栄養膜腫瘍、妊娠期間;未知の始原部位、の癌(Cancer of)、小児;小児の異常な癌;尿管及び腎臓骨盤、繊維性細胞の癌;尿管癌;子宮肉腫;膣癌;視覚経路及び視床下部の神経膠腫、小児;外陰部の癌;ワルデンストロームのマクログロブリン血症;及びウイルムズ腫瘍を含む。本発明の方法はそのような種類の癌を治療するのに有用であるかもしれない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その周囲の組織の好気性解糖よりも高率の好気性解糖を有する癌細胞を有するとして同定された個体を治療するための組成物であって、ここで当該癌は、その周囲の組織の好気性解糖よりも高率の好気性解糖を有する細胞を含む癌として同定されたものであり、
当該組成物は治療的有効量のATPクエン酸リアーゼ阻害剤を含み、ここで該治療的有効量のATPクエン酸リアーゼ阻害剤は、当該癌細胞においてATPリアーゼ活性を阻害して、当該癌細胞におけるクエン酸のオキサロ酢酸およびアセチルCoAへの変換の阻害をもたらすのに十分であり、当該癌細胞にアポトーシスをもたらすのに十分なミトコンドリアの過分極および増加した活性酸素種を導き;または
当該組成物は治療的有効量のトリカルボキシル酸輸送体阻害剤を含み;または
当該組成物は治療的有効量のATPクエン酸リアーゼ阻害剤およびトリカルボキシル酸輸送体阻害剤を含み
これらの組成物のうち二以上が同時投与されてよい、組成物。
【請求項2】
その周囲の組織の好気性解糖よりも高率の好気性解糖を有する癌細胞にアポトーシスを誘導するための組成物であって、ここで当該癌細胞はその周囲の組織の好気性解糖よりも高率の好気性解糖を有するとして同定され;
当該組成物は、当該細胞にアポトーシスを誘導するのに有効なATPクエン酸リアーゼ阻害剤を含む組成物の有効投与量を当該癌細胞に送達し、ここでATPクエン酸リアーゼ阻害剤の当該治療的有効量は、当該癌細胞においてATPリアーゼ活性を阻害して、当該癌細胞におけるクエン酸のオキサロ酢酸およびアセチルCoAへの変換の阻害をもたらすのに十分であり、当該癌細胞にアポトーシスをもたらすのに十分なミトコンドリアの過分極および増加した活性酸素種を導き;または
当該組成物は、当該細胞にアポトーシスを誘導するのに有効な量のトリカルボキシル酸輸送体阻害剤を当該癌細胞に送達し;および/または
当該組成物は、当該細胞にアポトーシスを誘導するのに有効な量のATPクエン酸リアーゼ阻害剤およびトリカルボキシル酸輸送体阻害剤を当該癌細胞に送達する。
【請求項1】
その周囲の組織の好気性解糖よりも高率の好気性解糖を有する癌細胞を有するとして同定された個体を治療するための組成物であって、ここで当該癌は、その周囲の組織の好気性解糖よりも高率の好気性解糖を有する細胞を含む癌として同定されたものであり、
当該組成物は治療的有効量のATPクエン酸リアーゼ阻害剤を含み、ここで該治療的有効量のATPクエン酸リアーゼ阻害剤は、当該癌細胞においてATPリアーゼ活性を阻害して、当該癌細胞におけるクエン酸のオキサロ酢酸およびアセチルCoAへの変換の阻害をもたらすのに十分であり、当該癌細胞にアポトーシスをもたらすのに十分なミトコンドリアの過分極および増加した活性酸素種を導き;または
当該組成物は治療的有効量のトリカルボキシル酸輸送体阻害剤を含み;または
当該組成物は治療的有効量のATPクエン酸リアーゼ阻害剤およびトリカルボキシル酸輸送体阻害剤を含み
これらの組成物のうち二以上が同時投与されてよい、組成物。
【請求項2】
その周囲の組織の好気性解糖よりも高率の好気性解糖を有する癌細胞にアポトーシスを誘導するための組成物であって、ここで当該癌細胞はその周囲の組織の好気性解糖よりも高率の好気性解糖を有するとして同定され;
当該組成物は、当該細胞にアポトーシスを誘導するのに有効なATPクエン酸リアーゼ阻害剤を含む組成物の有効投与量を当該癌細胞に送達し、ここでATPクエン酸リアーゼ阻害剤の当該治療的有効量は、当該癌細胞においてATPリアーゼ活性を阻害して、当該癌細胞におけるクエン酸のオキサロ酢酸およびアセチルCoAへの変換の阻害をもたらすのに十分であり、当該癌細胞にアポトーシスをもたらすのに十分なミトコンドリアの過分極および増加した活性酸素種を導き;または
当該組成物は、当該細胞にアポトーシスを誘導するのに有効な量のトリカルボキシル酸輸送体阻害剤を当該癌細胞に送達し;および/または
当該組成物は、当該細胞にアポトーシスを誘導するのに有効な量のATPクエン酸リアーゼ阻害剤およびトリカルボキシル酸輸送体阻害剤を当該癌細胞に送達する。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−149067(P2012−149067A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−40602(P2012−40602)
【出願日】平成24年2月27日(2012.2.27)
【分割の表示】特願2006−532848(P2006−532848)の分割
【原出願日】平成16年5月7日(2004.5.7)
【出願人】(500429103)ザ・トラスティーズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ペンシルバニア (102)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月27日(2012.2.27)
【分割の表示】特願2006−532848(P2006−532848)の分割
【原出願日】平成16年5月7日(2004.5.7)
【出願人】(500429103)ザ・トラスティーズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ペンシルバニア (102)
【Fターム(参考)】
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