説明

癌を治療するためのアミノ化ヒドロキシキノリン類誘導体

本発明は、転移癌または腫瘍細胞の移動を防止できるアミノ化ヒドロキシキノリンタイプの化合物に関する。このような化合物は癌を治療するために有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌を治療するためのアミノ化ヒドロキシキノリン類誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線療法、腫瘍外科手術、およびワクチン試験などの処置と並んで、腫瘍学で使用される薬剤のかなりの蓄積が利用できるが、実際には標準的な化学療法が、癌細胞に対して全くまたはほとんど特異的でないという事実に付随する特定の欠点にもかかわらず、癌治療において主要な位置を占めることが判明している。
【0003】
それにもかかわらず、既存薬剤の改善または新たな分子の開発のどちらかによる、化学療法分野における分子技術革新は、依然として癌との戦いにおける優先事項である。特定タイプの癌は、特に膠芽細胞腫または癌性膠細胞を患っている患者にとって(6ヶ月生存率15〜20%)、それらの寛解率が低いことから特に恐れられている。例えばシクロホスファミドまたはメトトレキサートなどの臨床的に一般に使用される薬剤は、このタイプの癌に対して効果が皆無であるかまたはほとんどない(非特許文献1)。
【0004】
特定の癌の場合、テモダール(Temodal)(登録商標)は、以下の腫瘍に罹患している患者を治療するための効果的な薬剤であるように見える。
・多形膠芽細胞腫(悪性脳腫瘍のタイプ)。テモダール(Temodal)(登録商標)は、新たに診断された症例で使用される。それは最初に放射線療法と併用され、次に単独使用される。
・例えば多形膠芽細胞腫または再生不能性星細胞腫などの悪性神経膠腫(脳腫瘍)、腫瘍が再発した場合または標準的治療後に悪化した場合。
【0005】
この薬剤の有効性は、その血液脳関門を越える能力に基づく。この関門は、脳脊髄液再生といくつかの選択的能動輸送系との複合作用を通じた脳組織へのアクセスを制限する。これらの系の抑制により、対応する基材の脳への浸透が促進される場合があり、それにより中枢症状発現との医療相互作用が発生する。またそれにより、抗生物質、抗癌剤または向精神薬の脳へのアクセスが改善する可能性がある。
【0006】
この見解を発端に、出願人は最初の段階で、前立腺および腸の癌などの腫瘍、特に膠芽細胞腫を非常に効率的に治療する能力を有する新しい化合物ファミリーを開発しようと努めた。具体的には、同時に健康な細胞に対する細胞毒性を制限しながら、可能な限り低用量で投与できるが、先行技術による製品に少なくとも匹敵する、またはそれよりも優れた抗癌有効性を有する、利用可能な製品を有することが非常に望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Herrlinger et al., Journal of Neuro-oncology, 2005, 71, 295-299
【発明の概要】
【0008】
発明を解決するための手段
【0009】
膠芽細胞腫の特定例では、このような化合物による治療適性のアセスメントは、一般に使用される有効成分が実質的に効果がない膠芽細胞腫細胞系に対する予備試験の使用を通じて、それらの有効性を評価することからなる。これらの試験の文脈で、ヒト細胞系は、タンパク質GFP(緑色蛍光タンパク質)を発現する、形質移入された膠芽細胞腫U87/GFPであった。GFPは、生体環境で使用してもよい高度に効率的な蛍光マーカーであることが知られている。
【0010】
試験の第1のシリーズは、処理された癌細胞(KB3)などの細胞の生存試験に基づいた。試験は適切な操作条件下で、これらの化合物と接触させた後の生存細胞数を測定することからなる。参考試験はこのような化合物の不在下で実施された。
【0011】
試験の第2のシリーズは、これらの化合物が、前述のU87/GFP細胞の増殖および移動を抑制する能力を判定することからなる。このような移動および増殖の阻害は、転移過程を減少させ、または予防することさえも可能にし、それはヒトにおける多くの癌の発生において、最も重要な要素の1つである。
【0012】
これらの予備段階の結果から、出願人は、この化合物ファミリーが上に列挙した能力を示すだけでなく、その他のタイプの癌および腫瘍細胞にもまた作用できることを意外にも発見した。このような細胞は、特に、癌腫、腺癌、肝臓癌、リンパ芽球腫、また肉腫、骨髄腫、黒色腫、および中皮腫である。
【0013】
したがって本発明が目指す目的の1つは、健康な細胞に影響を与えず、または非常に穏やかな影響のみを与えながら、転移の増殖または移動と、細胞、またはより一般的には腫瘍細胞の生存とに関連する疾患を治療または予防する新しい化合物を提供することであった。したがってこれらの化合物は、それらの毒性を制限しながら上述の癌細胞を治療するのに、非常に有利に効果的なはずである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
アミノ化ヒドロキシキノリン誘導体タイプの新しい化合物のクラスは、上に列挙した特性を有する。
【0015】
したがって本発明は、式(I)、
【化1】

[式中、
−CH−NR基は−OH基に対してオルト、メタまたはパラ位にあり、
およびR基の一方は水素原子、C〜C10アルキル基、C〜Cアルケニルまたはアルキニル基または5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基を表し;他方は5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基、アリール基、N、O、およびSから選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでなる−(CH−ヘテロアリール(式中、nは0〜4の整数である)、C〜Cの−(CH−ヘテロシクロアルキル基(式中、ヘテロ原子はN、OまたはSを表し、nは0〜4の整数である)、またはアルキルフェニル(ここに、アルキルがC〜C10を表してフェニル基がF、Br、I、およびClから選択される1または2個のハロゲン原子または−CFによって置換されているかまたは非置換である)を表し;
あるいはRおよびR基の一方は非対称炭素に結合している式(II)、
【化2】

(式中、
、R、R、R、およびRは互いに独立に、水素原子、C〜C10アルキル基、−CF、−NO、N−5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基、F、Br、I、およびClから選択される1または2個のハロゲン原子、または−O−R基(式中、RはC〜Cアルキル基または−CFである)を表し、
XまたはYは水素原子、C〜C10アルキル基、C〜C10アルキル基によって置換されたまたは非置換のアリール、−CFまたは−NOを表す)の基を表し、
およびR基の他方はH原子、tert−ブトキシカルボニル基(Boc)、5−メチレン−8−ヒドロキシキノリンまたは−(CH−フェニル(式中、nは1〜5の整数である)を表し;
またはRおよびR基の一方がY−N−Y’基であり、Yが−(CH−(式中、nは1〜10の整数である)、−(CH−フェニル−(CH−からなる群から選択され、フェニルがF、Br、およびClから選択される1または2個のハロゲン原子によって、またはC〜C10アルキル基によって置換されるかまたは非置換であり、mおよびpがそれぞれ1〜4の整数であり、Y’が5−メチレン−8−ヒドロキシキノリンである場合、他方は水素原子を表し;
またはRおよびR基の一方が−(CH−ナフタレン基(式中、nは1〜10の整数である)を表し、ナフタレン基がC〜C10アルキル基、−CF、および−O−R(式中、RはC〜C10アルキル基である)から選択される1つ以上の基によって置換されるかまたは非置換の場合、他方は水素原子、5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基およびBoc基からなる群から選択され;
またはRおよびRはピペラジンを形成し、その中で環の炭素原子の少なくとも1つがC〜Cアルキル基によって置換され、−CH−NR基の一部でないN原子が5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基によって置換され;
またはRおよびRは非置換の1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカンまたは1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカンを表すポリアザマクロサイクル(サイクラム)を形成し、その中で環の1、4、および8位にあるN原子の少なくとも1つは独立して、Boc基によって、5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基によって、または−(CH−フェニル−(CH−Z(式中、nは1〜10の整数であり、Zは1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカンまたは1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカンのN原子の1つを表す)によって置換され、その中で環の1、4、および8位にある他のN原子は非置換であるか、またはそれぞれ独立して、Boc基によって置換されている]の化合物またはそれらの鏡像異性体、ならびに
5−((1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカン−8−イル)メチル)キノリン−8−オール、
トリ−tert−ブチル12−((8−ヒドロキシキノリン−5−イル)メチル)−1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカン−1,4,8−トリカルボキシラート、
トリ−tert−ブチル11−((8−ヒドロキシキノリン−5−イル)メチル)−1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−1,4,8−トリカルボキシラート、
5−((1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−1−イル)メチル)キノリン−8−オール、
トリ−tert−ブチル11−(3−((4,11−ビス(tert−ブトキシカルボニル)−8−((8−ヒドロキシキノリン−5−イル)メチル)−1,4,8,11−テトラアザシクロ-テトラデカン−1−イル)メチル)ベンジル)−1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−1,4,8−トリカルボキシラート、
5,5’−(プロパン−1,3−ジイルビス(アザンジイル))ビス(メチレン)−ジキノリン−8−オール、
5−((8−(4−((1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−1−イル)メチル)ベンジル)−1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−1−イル−メチル)キノリン−8−オール、
ジ−tert−ブチル4,8−ビス((8−ヒドロキシキノリン−5−イル)メチル)−1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−1,11−ジカルボキシラート、
5,5’−(1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−1,11−ジイル)−ビス(メチレン)ジキノリン−8−オール、
5,5’−(1,4−フェニレンビス(メチレン))ビス(アザンジイル)−ビス(メチレン)ジキノリン−8−オール、
5−(((8−ヒドロキシキノリン−5−イル)(4−メチルベンジル)アミノ)−メチル)キノリン−8−オール、
tert−ブチル8−ヒドロキシキノリン−5−イル(4−メチルベンジル)−カルバメート、
5−((4−メチルベンジルアミノ)メチル)キノリン−8−オール、
5−(ナフタレン−1−イルメチルアミノ)キノリン−8−オール、
5,5’−(ナフタレン−1−イルメチルアザンジイル)ジキノリン−8−オール、
tert−ブチル8−ヒドロキシキノリン−5−イル(ナフタレン−1−イル−メチル)カルバメート、および
5−(((8−ヒドロキシキノリン−5−イル)(4−(トリフルオロメチル)ベンジル)−アミノ)メチル)キノリン−8−オール
に関するものであるが、該化合物から5−((ベンジルアミノ)メチル)キノリン−8−オールは除外される。
【0016】
本発明の一実施様態に従って、好ましい化合物は、
およびR基の一方が水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニルまたはアルキニル基または5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基を表し;他方が5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基、アリール基、N、O、およびSから選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでなる−(CH−ヘテロアリール(式中、nは0〜4の整数である)、C〜Cの−(CH−ヘテロシクロアルキル基(式中、ヘテロ原子はN、OまたはSを表し、nは0〜4の整数である)、またはアルキルフェニル(ここに、アルキルがC〜Cを表して、フェニル基がF、Br、I、およびClから選択される1または2個のハロゲン原子または−CFによって置換されているかまたは非置換である)を表し;
またはRおよびR基の一方が非対称炭素に結合している式(II)、
【化3】

(式中、
、R、R、R、およびRは互いに独立に、水素原子、C〜Cアルキル基、−CF、−NO、N−5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基、F、Br、I、およびClから選択される1または2個のハロゲン原子、または−O−R基(式中、RはC〜Cアルキル基または−CFである)を表し、
XまたはYは水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルキル基によって置換されたまたは非置換のアリール、−CFまたは−NOを表す)の基を表し、
およびR基の他方がH原子、Boc基、5−メチレン−8−ヒドロキシキノリンまたは−(CH−フェニル(式中、nは1〜5の整数である)を表し;
またはRおよびR基の一方がY−N−Y’基であり、Yが−(CH−(式中、nは1〜6の整数である)、−(CH−フェニル−(CH−からなる群から選択され、フェニルがF、Br、およびClから選択される1または2個のハロゲン原子によって、またはC〜Cアルキル基によって置換されるかまたは非置換であり、mおよびpがそれぞれ1〜4の整数であり、Y’が5−メチレン−8−ヒドロキシキノリンである場合、他方が水素原子を表し;
またはRおよびR基の一方が−(CH−ナフタレン基(式中、nは1〜6の整数である)を表し、ナフタレン基がC〜Cアルキル基、−CF、および−O−R(式中、RはC〜Cアルキル基である)から選択される1つ以上の基によって置換されるかまたは非置換の場合、他方が水素原子、5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基およびBoc基からなる群から選択され;
またはRおよびRがピペラジンを形成し、その中で環の炭素原子の少なくとも1つがC〜Cアルキル基によって置換され、−CH−NR基の一部でないN原子が5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基によって置換され;
またはRおよびRが非置換の1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカンまたは1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカンを表すポリアザマクロサイクル(サイクラム)を形成し、その中で環の1、4、および8位にあるN原子の少なくとも1つは独立して、Boc基によって、5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基によって、または−(CH−フェニル−(CH−Z(式中、nは1〜6の整数であり、Zは1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカンまたは1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカンのN原子の1つを表す)によって置換され、その中で環の1、4、および8位にある他のN原子が非置換であり、またはそれぞれ独立して、Boc基によって置換される、式(I)の化合物、それらの鏡像異性体であるが、上で除外される化合物は除かれる。
【0017】
最も好ましくは、式(I)の化合物は、
およびR基の一方が水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニルまたはアルキニル基または5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基を表し;他方が5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基、アリール基、N、O、およびSから選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでなる−(CH−ヘテロアリール(式中、nは0〜3の整数である)、C〜Cの−(CH−ヘテロシクロアルキル基(式中、ヘテロ原子はN、OまたはSを表し、nは0〜3の整数である)、またはアルキルフェニル(ここに、アルキルがC〜Cを表してフェニル基がFおよびIから選択される1または2個のハロゲン原子によって、または−CFによって置換されているかまたは非置換である)を表し;
またはRおよびR基の一方が非対称炭素に結合している式(II)、
【化4】

(式中、
、R、R、R、およびRの1つは、N−5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基を表し、その他のものは水素原子を表し、
XまたはYは水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルキル基によって置換されたまたは非置換のアリール、−CFまたは−NOを表す)の基を表し、
およびR基の他方がH、tert−ブトキシカルボニル(Boc)基、または5−メチレン−8−ヒドロキシキノリンを表し;
またはRおよびR基の一方がY−N−Y’基であり、Yが−(CH−(式中、nは1〜4の整数である)、−(CH−フェニル−(CH−からなる群から選択され、フェニルがF、Br、およびClから選択される1または2個のハロゲン原子によって、またはC〜Cアルキル基によって置換されるかまたは非置換であり、mおよびpがそれぞれ1〜3の整数であり、Y’が5−メチレン−8−ヒドロキシキノリンである場合、他方が水素原子を表し;
またはRおよびR基の一方が−(CH−ナフタレン基(式中、nは1〜4の整数である)を表し、ナフタレン基がC〜Cアルキル基、−CF、および−O−R(式中、RはC〜Cアルキル基である)から選択される1つ以上の基によって置換されるかまたは非置換の場合、他方が水素原子、5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基およびBoc基からなる群から選択され;
またはRおよびRがピペラジンを形成し、その中で環の炭素原子の少なくとも1つがC〜Cアルキル基によって置換され、−CH−NR基の一部でないN原子が5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基によって置換され;
またはRおよびRが非置換の1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカンまたは1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカンを表すポリアザマクロサイクル(サイクラム)を形成し、その中で環の1、4、および8位にあるN原子の少なくとも1つは独立して、Boc基によって、5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基によって、または−(CH−フェニル−(CH−Z(式中、nは1〜4の整数であり、Zは1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカンまたは1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカンのN原子の1つを表す)によって置換され、その中で環の1、4、および8位にある他のN原子が非置換であるか、またはそれぞれ独立して、Boc基によって置換される、式(I)の化合物、それらの鏡像異性体であるが、上で除外される化合物は除かれる。
【0018】
特に好ましい本発明の一実施態様に従って、式(I)の化合物は、5,5’−(ベンジルアザンジイル)ビス(メチレン)ジキノリン−8−オール、5−(((8−ヒドロキシキノリン−5−イル)(4−メチルベンジル)アミノ)−メチル)キノリン−8−オール、tert−ブチル8−ヒドロキシキノリン−5−イル(4−メチルベンジル)−カルバメート、5−(ナフタレン−1−イルメチルアミノ)キノリン−8−オール、5,5’−(ナフタレン−1−イルメチルアザンジイル)ジキノリン−8−オール、tert−ブチル8−ヒドロキシキノリン−5−イル(ナフタレン−1−イル−メチル)カルバメート、および5−(((8−ヒドロキシキノリン−5−イル)(4−トリフルオロメチル)ベンジル)アミノ)メチル)キノリン−8−オールからなる群から選択される。
【0019】
本発明の文脈で、「アリール」という用語は、フェニル、ナフチルまたはクレシルなどの5〜14個の炭素原子を含有する単環式または多環式芳香族炭素ベースの環を意味し、「ヘテロアリール」という用語は、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、フラン、ピラン、チオピランまたはチオフェンなど、N、OおよびSから選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでなるアリールを意味する。
【0020】
本発明はまた、式(I)の化合物、および好ましくは、薬剤として使用するためのそれらを含有する医薬組成物にも関する。
【0021】
前述のように、出願人はこのような化合物が、細胞の増殖および移動を抑制すること、または細胞毒性を通じて作用することのどちらかによって、抗癌特性を示すことを示した。本発明の文脈で、細胞の増殖、生存率、および生存は、式(I)の化合物の抗腫瘍特性を特徴付ける用語である。
【0022】
したがって本発明はまた、抗癌剤としての使用が意図される薬剤を製造するための式(I)、
【化5】

[式中、
−CH−NR基は−OH基に対してオルト、メタまたはパラ位にあり、
およびR基の一方は水素原子、C〜C10アルキル基、C〜Cアルケニルまたはアルキニル基または5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基を表し;他方は5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基、アリール基、N、O、およびSから選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでなる−(CH−ヘテロアリール(式中、nは0〜4の整数である)、C〜Cの−(CH−ヘテロシクロアルキル基(式中、ヘテロ原子はN、OまたはSを表し、nは0〜4の整数である)、またはアルキルフェニル(ここに、アルキルがC〜Cを表して、フェニル基がF、Br、I、およびClから選択される1または2個のハロゲン原子または−CFによって置換されているかまたは非置換である)を表し;
またはRおよびR基の一方は非対称炭素に結合している式(II)、
【化6】

(式中、
、R、R、R、およびRは互いに独立に、水素原子、C〜C10アルキル基、−CF、−NO、N−5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基、F、Br、I、およびClから選択される1または2個のハロゲン原子、または−O−R基(式中、RはC〜Cアルキル基または−CFである)を表し、
XまたはYは水素原子、C〜C10アルキル基、C〜C10アルキル基によって置換されたまたは非置換のアリール、−CFまたは−NOを表す)の基を表し、
およびR基の他方はH原子、tert−ブトキシカルボニル基(Boc)、5−メチレン−8−ヒドロキシキノリンまたは−(CH−フェニル(式中、nは1〜5の整数である)を表し;
またはRおよびR基の一方がY−N−Y’基であり、Yが−(CH−(式中、nは1〜10の整数である)、−(CH−フェニル−(CH−からなる群から選択され、フェニルがF、Br、およびClから選択される1または2個のハロゲン原子によって、またはC〜C10アルキル基によって置換されるかまたは非置換であり、mおよびpがそれぞれ1〜4の整数であり、Y’が5−メチレン−8−ヒドロキシキノリンである場合、他方は水素原子を表し;
またはRおよびR基の一方が−(CH−ナフタレン基(式中、nは1〜10の整数である)を表し、ナフタレン基がC〜C10アルキル基、−CF、および−O−R(式中、RはC〜C10アルキル基である)から選択される1つ以上の基によって置換されるかまたは非置換の場合、他方は水素原子、5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基およびBoc基からなる群から選択され;
またはRおよびRはピペラジンを形成し、該ピペラジンは非置換であるか、または環の炭素原子の少なくとも1つがC〜Cアルキル基によって置換され、−CH−NR基の一部でないN原子が5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基によって置換される;
またはRおよびRは非置換の1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカンまたは1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカンを表すポリアザマクロサイクル(サイクラム)を形成し、その中で環の1、4、および8位にあるN原子の少なくとも1つは独立して、Boc基によって、5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基によって、または−(CH−フェニル−(CH−Z(式中、nは1〜10の整数であり、Zは1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカンまたは1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカンのN原子の1つを表す)によって置換され、その中で環の1、4、および8位にある他のN原子は非置換であり、またはそれぞれ独立して、Boc基によって置換される]の化合物、およびそれらの鏡像異性体の使用にも関する。
【0023】
本発明の一実施様態に従って、抗癌剤として使用することが意図される薬剤を製造するために、
およびR基の一方が水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニルまたはアルキニル基または5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基を表し;他方が5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基、アリール基、N、O、およびSから選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでなる−(CH−ヘテロアリール(式中、nは0〜4の整数である)、C〜Cの−(CH−ヘテロシクロアルキル基(式中、ヘテロ原子はN、OまたはSを表し、nは0〜4の整数である)、またはアルキルフェニル(ここに、アルキルがC〜Cを表して、フェニル基がF、Br、I、およびClから選択される1または2個のハロゲン原子または−CFによって置換されているかまたは非置換である)を表し;
またはRおよびR基の一方が非対称炭素に結合している式(II)、
【化7】

(式中、
、R、R、R、およびRは互いに独立に、水素原子、C〜Cアルキル基、−CF、−NO、N−5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基、F、Br、I、およびClから選択される1または2個のハロゲン原子、または−O−R基(式中、RはC〜Cアルキル基または−CFである)を表し、
XまたはYは水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルキル基によって置換されたまたは非置換のアリール、−CFまたは−NOを表す)の基を表し、
およびR基の他方がH原子、Boc基、5−メチレン−8−ヒドロキシキノリンまたは−(CH−フェニル(式中、nは1〜5の整数である)を表し;
またはRおよびR基の一方がY−N−Y’基であり、Yが−(CH−(式中、nは1〜6の整数である)、−(CH−フェニル−(CH−からなる群から選択され、フェニルがF、Br、およびClから選択される1または2個のハロゲン原子によって、またはC〜Cアルキル基によって置換されるかまたは非置換であり、mおよびpがそれぞれ1〜4の整数であり、Y’が5−メチレン−8−ヒドロキシキノリンである場合、他方が水素原子を表し;
またはRおよびR基の一方が−(CH−ナフタレン基(式中、nは1〜6の整数である)を表し、ナフタレン基がC〜Cアルキル基、−CF、および−O−R(式中、RはC〜Cアルキル基である)から選択される1つ以上の基によって置換されるかまたは非置換の場合、他方が水素原子、5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基およびBoc基からなる群から選択され;
またはRおよびRがピペラジンを形成し、該ピペラジンは非置換であるか、またはその中で環の炭素原子の少なくとも1つがC〜Cアルキル基によって置換され、−CH−NR基の一部でないN原子が5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基によって置換される;
またはRおよびRが非置換の1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカンまたは1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカンを表すポリアザマクロサイクル(サイクラム)を形成し、その中で環の1、4、および8位にあるN原子の少なくとも1つは独立して、Boc基によって、5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基によって、または−(CH−フェニル−(CH−Z(式中、nは1〜6の整数であり、Zは1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカンまたは1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカンのN原子の1つを表す)によって置換され、その中で環の1、4、および8位にある他のN原子が非置換であり、またはそれぞれ独立して、Boc基によって置換される、式(I)の化合物、およびそれらの鏡像異性体を使用することが好ましい。
【0024】
最も好ましくは、抗癌剤として使用することが意図される薬剤を製造するために、
およびR基の一方が水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニルまたはアルキニル基または5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基を表し;他方が5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基、アリール基、N、O、およびSから選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでなる−(CH−ヘテロアリール(式中、nは0〜3の整数である)、C〜Cの−(CH−ヘテロシクロアルキル基(式中、ヘテロ原子はN、OまたはSを表し、nは0〜3の整数である)、またはアルキルフェニル(ここに、アルキルがC〜Cを表してフェニル基がFおよびIから選択される1または2個のハロゲン原子によって、または−CFによって置換されているかまたは非置換である)を表し;
またはRおよびR基の一方が非対称炭素に結合している式(II)、
【化8】

(式中、
、R、R、R、およびRの1つは、N−5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基を表し、その他のものは水素原子を表し、
XまたはYは水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルキル基によって置換されたまたは非置換のアリール、−CFまたは−NOを表す)の基を表し、
およびR基の他方がH原子、tert−ブトキシカルボニル(Boc)基、または5−メチレン−8−ヒドロキシキノリンを表し;
またはRおよびR基の一方がY−N−Y’基であり、Yが−(CH−(式中、nは1〜4の整数である)、−(CH−フェニル−(CH−からなる群から選択され、フェニルがF、Br、およびClから選択される1または2個のハロゲン原子によって、またはC〜Cアルキル基によって置換されるかまたは非置換であり、mおよびpがそれぞれ1〜3の整数であり、Y’が5−メチレン−8−ヒドロキシキノリンである場合、他方が水素原子を表し;
またはRおよびR基の一方が−(CH−ナフタレン基(式中、nは1〜4の整数である)を表し、ナフタレン基がC〜Cアルキル基、−CF、および−O−R(式中、RはC〜Cアルキル基である)から選択される1つ以上の基によって置換されるかまたは非置換の場合、他方が水素原子、5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基およびBoc基からなる群から選択され;
またはRおよびRがピペラジンを形成し、該ピペラジンが非置換であるか、またはその中で環の炭素原子の少なくとも1つがC〜Cアルキル基によって置換され、−CH−NR基の一部でないN原子が5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基によって置換される;
またはRおよびRが非置換の1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカンまたは1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカンを表すポリアザマクロサイクル(サイクラム)を形成し、その中で環の1、4、および8位にあるN原子の少なくとも1つは独立して、Boc基によって、5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基によって、または−(CH−フェニル−(CH−Z(式中、nは1〜4の整数であり、Zは1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカンまたは1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカンのN原子の1つを表す)によって置換され、その中で環の1、4、および8位にある他のN原子が非置換であり、またはそれぞれ独立して、Boc基によって、およびそれらの鏡像異性体によって置換される、式(I)の化合物が利用される。
【0025】
特に好ましい本発明の一実施態様に従って、抗癌剤として使用することが意図される薬剤を製造するために、
5−((1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカン−8−イル)メチル)キノリン−8−オール(化合物I1)、
トリ−tert−ブチル12−((8−ヒドロキシキノリン−5−イル)メチル)−1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカン−1,4,8−トリカルボキシラート(化合物I2)、
トリ−tert−ブチル11−((8−ヒドロキシキノリン−5−イル)メチル)−1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカン−1,4,8−トリカルボキシラート(化合物I3)、
5−((1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−1−イル)メチル)キノリン−8−オール(化合物I4)、
トリ−tert−ブチル11−(3−((4,11−ビス(tert−ブトキシカルボニル)−8−((8−ヒドロキシキノリン−5−イル)メチル)−1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−1−イル)メチル)ベンジル)−1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−1,4,8−トリカルボキシラート(化合物I5)、
5,5’−(プロパン−1,3−ジイルビス(アザンジイル))ビス(メチレン)−ジキノリン−8−オール(化合物I6)、
5−((8−(4−((1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−1−イル)−メチル)ベンジル)−1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−1−イル)−メチル)キノリン−8−オール(化合物I7)、
5,5’−(ピペラジン−1,4−ジイルビス(メチレン))ジキノリン−8−オール(化合物I8)、
ジ−tert−ブチル4,8−ビス((8−ヒドロキシキノリン−5−イル)メチル)−1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−1,11−ジカルボキシラート(化合物I9)、
5,5’−(1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−1,11−ジイル)−ビス(メチレン)ジキノリン−8−オール(化合物I10)、
5,5’−(1,4−フェニレンビス(メチレン))ビス(アザンジイル)−ビス(メチレン)ジキノリン−8−オール(化合物I11)、
5,5’−(ベンジルアザンジイル)ビス(メチレン))ジキノリン−8−オール(化合物I12)、
5−((ベンジルアミノ)メチル)キノリン−8−オール(化合物I13)、
5−(((8−ヒドロキシキノリン−5−イル)(4−メチルベンジル)アミノ)−メチル)キノリン−8−オール(化合物I14)、
tert−ブチル8−ヒドロキシキノリン−5−イル(4−メチルベンジル)−カルバメート(化合物I15)、
5−((4−メチルベンジルアミノ)メチル)キノリン−8−オール(化合物I16)、
5−(ナフタレン−1−イルメチルアミノ)キノリン−8−オール(化合物I17)、
5,5’−(ナフタレン−1−イルメチルアザンジイル)ジキノリン−8−オール(化合物I18)、
tert−ブチル8−ヒドロキシキノリン−5−イル(ナフタレン−1−イル−メチル)カルバメート(化合物I19)、および
5−(((8−ヒドロキシキノリン−5−イル)(4−(トリフルオロメチル)ベンジル)−アミノ)メチル)キノリン−8−オール(化合物I20)
からなる群から選択される式(I)の化合物が使用される。
【0026】
有利には、これらの化合物の治療活性は、膠芽細胞腫、癌腫、肉腫、骨髄腫、黒色腫、および中皮腫などの転移癌または腫瘍細胞の移動および増殖を妨げるそれらの能力にある。さらに特定の細胞にもたらされる細胞毒性もまた確認された。
【0027】
したがってこれらの化合物を口腔癌、腸癌、乳癌、肺癌、前立腺癌、膠芽細胞腫、卵巣腺癌、肝臓癌、およびリンパ芽球腫からなる群から選択される、多くの癌の治療において使用してもよい。
【0028】
一例としてこれらの化合物の上記活性は、口腔癌(KB)、腸癌(HTC116、HT29、およびHTC15)、乳癌(MCF7およびMCF7R)、肺癌(A549)、前立腺癌(PC3)、膠芽細胞腫(SF268)、卵巣腺癌(SK−OV−3)、肝臓癌(HepG2)、リンパ芽球腫(HL60およびK562)などの腫瘍性である、または標準的抗腫瘍剤に対して抵抗性である、異なるヒト細胞系において、および非腫瘍性VEROサル腎臓細胞において実証された。
【0029】
遺伝毒性ストレスによって誘発されるアポトーシスにおいてカスパーゼが重要な役割を果たすこと、および特定の薬剤はミトコンドリア外膜の透過性上昇をもたらしてそれはチトクロームCの放出とカスパーゼの活性化をもたらすことがよく知られていることを考えれば、本発明の化合物はカスパーゼの活性化を誘導する能力を有する。
【0030】
出願人はまた、これらの化合物中の5−メチレン−8−ヒドロキシキノリンタイプの2つの置換基の存在が、抗癌活性に対して重大な影響を及ぼすことを示した。
【0031】
具体的には、意外にも実施例(下記参照)に示すように、ビス−5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン(RおよびR基の一方が5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基を表す式(I)の化合物)は、モノ−5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン等価物よりもはるかに明白な抗癌活性を有する。具体的には、モノ−5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン化合物の代わりにビス−5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン化合物を使用することによって、IC50値(試験された腫瘍細胞の50%が処置を乗り切る反応媒体中の化合物濃度)をはるかにより低い濃度で得ることができる。
【0032】
以下の理論による拘束は望まないが、本発明の化合物の作用機序は、おそらく(NにRおよびR基がある)三級アミンへのプロトン付加と、それに続く化学または生物学的であってもよい求核剤(Nu)のヒドロキシキノリン基のH原子への付加がカルバニオン種を与え、付加とそれに続く共鳴安定化が、C−N結合(NにRおよびR基がある)の切断によって「キノン−メチド中間体」として知られている化学種をもたらすステップを含んでなるとみられる。この中間体は、核酸またはタンパク質などの化学または生物学的基質に対してアルキル化能力を有する場合がある。
【0033】
およびR基の一方が水素原子、C〜C10アルキル基、C〜Cアルケニルまたはアルキニル基または5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基を表し;他方が5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基、アリール基、N、O、およびSから選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでなる−(CH−ヘテロアリール(式中、nは0〜4の整数である)、C〜Cの−(CH−ヘテロシクロアルキル基(式中、ヘテロ原子はN、OまたはSを表し、nは0〜4の整数である)、またはアルキルフェニル(ここに、アルキルがC〜C10を表してフェニル基がF、Br、I、およびClから選択される1または2個のハロゲン原子によって、または−CFによって置換されているかまたは非置換である)を表す式(I)の化合物は、当業者に知られている工程を通じて、特にJ.H. Burckhalter et al., J. Org. Chem., 1961, vol. 26, pp. 4078-4083による出版物に記載の合成に従って調製されてもよい。
【0034】
要約すると、考察される出発原料は、酢酸エチルなどの適切な溶剤に懸濁された5−クロロメチル−8−ヒドロキノリン塩酸塩である。上記のRおよびR基を特定するのに適切なアミノ化化合物が、この懸濁液に添加される。
【0035】
一例としてC〜C10アルカンと、ヘテロ原子がN、OまたはSを表すC〜Cの−(CH−ヘテロシクロアルキル基と、C〜Cアルケニルまたはアルキニル基、アリール基と、N、O、およびSから選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでなる−(CH−ヘテロアリール基(式中、nは0〜4の整数である)と、アルキルフェニル(ここに、フェニル基がF、Br、I、およびClから選択される1または2個のハロゲン原子または−CFによって置換されているかまたは非置換である)と、5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基とを含んでなるアミンに言及できる。得られた混合物を穏やかに撹拌しながら水浴上で加熱する。次に反応生成物を濾過して溶剤で洗浄し、次にそれを蒸発によって除去する。次にこのようにして得られた残留物を石油エーテルなどのアルカンタイプの溶剤から再結晶化する。
【0036】
式(I)
[式中、
第1に、RおよびR基の一方が式(II)の基を表し、その中でR、R、R、R、およびRが互いに独立に、水素原子、C〜C10アルキル基、−CF、−NO、N−5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基、F、Br、I、およびClから選択される1または2個のハロゲン原子、または−O−R基(式中、RはC〜Cアルキル基または−CFである)を表し、
XまたはYが水素原子、C〜C10アルキル基、C〜C10アルキル基によって置換されたまたは非置換のアリール、−CFまたは−NOを表し、
およびR基の他方がH、tert−ブトキシカルボニル(Boc)基、5−メチレン−8−ヒドロキシキノリンまたは−(CH−フェニル(nは1〜5の整数である)を表し、
第2に、RおよびR基の一方が−(CH−ナフタレン基(式中、nは1〜10の整数である)を表し、ナフタレン基がC〜C10アルキル基、−CF、および−O−R(式中、RはC〜C10アルキル基である)から選択される1つ以上の基によって置換されるかまたは非置換の場合、
他方が水素原子、5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基、およびtert−ブトキシカルボニル(Boc)基からなる群から選択される]の化合物の調製は、先行技術で公知の工程に従って実施してもよい。
【0037】
一例として上述の様々な化合物を調製するために、2つの方法を使用してもよい。
【0038】
方法1:KCOなどの弱無機塩基の存在下で、上記のRおよびR基を特徴付けるための化合物に対応する前駆型アミノ基材と、アセトニトリル中の5−クロロメチル−8−ヒドロキシキノリンとを反応させる。濾過および蒸発後、残留物をクエン酸溶液で洗浄し、水相を酢酸エチルなどの適切な溶剤で数回抽出し、次に硫酸マグネシウム上で乾燥させ、次に蒸発させる。次に縮合に由来する8−ヒドロキシキノリン基一置換および二置換化合物を分離し、塩化メチレン、様々なアルカン、特にイソオクタン、およびイソプロピルエーテルなどのこのクロマトグラフィーで一般に使用される様々な溶剤混合物を使用して、シリカゲル上のクロマトグラフィー分離によって単離する。
【0039】
方法2:保護/脱保護による分離
tert−ブトキシカルボニル(Boc)基で保護するステップ後に、8−ヒドロキシキノリン基一置換および二置換誘導体の分離を実施する。一置換誘導体を保護するステップ後に、極性がより高い二置換誘導体は、シリカゲル上のクロマトグラフィーによってBoc基一置換誘導体から容易に分離される。単離された一置換誘導体をBoc基で保護し、次に当業者に知られている様式で酸性媒質中で脱保護する。保護された一置換誘導体は塩酸塩形態になり、それはエチルエーテルからの沈殿によって単離され、濾過後に純粋に単離される。
【0040】
次に単離された化合物をNMR分光法(Hおよび13C)によって、および質量分析法によって同定する。
【0041】
およびR基の一方がY−N−Y’基であり、Yが−(CH)−(式中、nは1〜10の整数である)であり、Y’が5−メチレン−8−ヒドロキシキノリンである場合、他方が水素原子を表し、
およびRが非置換の1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカンまたは1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカンを表すポリアザマクロサイクル(サイクラム)を形成し、その中で環の1、4、および8位にあるN原子の少なくとも1つは独立して、Boc基によって、5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基によって、または−(CH−フェニル−(CH−Z(式中、nは1〜10の整数であり、Zは1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカンまたは1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカンのN原子の1つを表す)によって置換され、その中で環の1、4、および8位にある他のN原子が非置換であり、またはそれぞれ独立して、Boc基によって、およびそれらの鏡像異性体によって置換される、式(I)の化合物は、V. Moret et al., Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 16, 2006, pp. 5988-5992による出版物に記載の様々な合成経路に従って調製されてもよい。
【0042】
より具体的には、RおよびRは1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン基を表すポリアザマクロサイクルを形成し、環の1、4、および8位にあるN原子の1つは独立して−(CH−フェニル−(CH−Z、(式中、nは1〜10の整数であり、Zは1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカンのN原子の1つを表す)によって置換され、環の1、4、および8位にある他方のN原子は非置換であり、またはそれぞれ独立してBoc基によって置換され、合成は次の様式で実施される。
【0043】
出発原料は1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン(3当量)であり、それを塩化メチレンの存在下で、二炭酸ジ−tert−ブチル(1当量)と室温で一晩反応させる。クロマトグラフィー精製後、生成物1,11−ジ−tert−ブトキシ−1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカンが得られる。Dessolin J. et al., J. Med. Chem., 1999, 42, 229-241に記載の方法に従って、Boc基によってサイクラムの窒素原子の三重または四重保護を促進することが可能である。要約すると、Boc基によるサイクラムまたはビサイクラム誘導体の選択的三重保護は、上で示される通り、塩化メチレン中で1当量のサイクラムあたり1.8当量のジ−tert−ブトキシカルボニル試薬を使用して得られる。この場合、Bocによるサイクラムの三重保護は、一重、二重、および四重保護化合物に対して優勢である。
【0044】
さらに窒素原子の1つがBoc基によって置換される1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン化合物(1当量)は、ジメチルホルムアミド(DMF)中で、KCOなどの弱塩基の存在下で、化合物Br−(CH−フェニル−(CH−Br(1当量)と、室温で3日間にわたり縮合反応する。反応は、(CH−フェニル−(CH−Brを遊離窒素(Boc基で置換されていない)にグラフトする。このようにして得られた生成物をKCOなどの弱塩基の存在下で、アセトニトリル中の1,11−ジ−tert−ブトキシ−1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカンと反応させる。次に後者の中間生成物をKCOなどの弱塩基の存在下で、アセトニトリル中の5−クロロメチル−8−ヒドロキシキノリンと反応させる。
【0045】
およびRが1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン基を表すポリアザマクロサイクル(サイクラム)を形成し、その中で環の1、4、および8位にあるN原子の少なくとも1つが−(CH−フェニル−(CH−Zによって置換され、Zは1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカンのN原子の一方を表し、他の窒素原子はBoc基で置換される、式(I)の化合物が、このようにして得られた。
【0046】
これらの化合物上に存在するBoc基は、標準の操作手順に従って、エチルエーテルの存在下、25℃〜70℃の温度で、これらの化合物を酸性媒体と接触させることによって除去してもよい。保護誘導体の脱保護は酸性媒体中で実施され、このようにして一重保護誘導体は塩酸塩形態で得られ、それをエチルエーテルからの沈殿によって単離し、濾過後に純粋単離する。
【0047】
合成は、RおよびRが1,4,8,11−テトラアザシクロペンタデカン基を表すポリアザマクロサイクル(サイクラム)を形成し、環の1、4、および8位にあるN原子の少なくとも1つが−(CH−フェニル−(CH−Z(式中、nは1〜10の整数であり、Zは1,4,8,11−テトラアザシクロペンタデカン基を表す)で置換され、環の1、4、および8位にある他のN原子が非置換であり、またはそれぞれ独立してBoc基で置換される場合と同一様式で実施される。
【0048】
式(I)の化合物中で、RおよびRが非置換の、または環の炭素原子の少なくとも1つがC〜Cアルキル基によって置換され、他のN原子が5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基によって置換されるピペラジンを形成する場合、および
式(I)の化合物中で、RおよびR基の一方がY−N−Y’基であり、Yが−(CH−(式中、nは1〜10の整数である)でY’が5−メチレン−8−ヒドロキシキノリンであり、他方が水素原子を表す場合、
このような化合物は次のようにして調製されてもよい。
【0049】
5−クロロメチル−8−ヒドロキシキノリンと、非置換の、または環の炭素原子の少なくとも1つがC〜Cアルキル基によって置換されるピペラジンとの縮合反応をKCOなどの弱塩基の存在下で、アセトニトリル中のCH−(CHn−1−N−(CHn−1−CHの存在下で、25℃〜70℃の温度で一晩実施する。
【0050】
およびRが非置換の、または環の1、4、および8位にあるN原子の1つがBoc基によって置換される1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカン基を表すポリアザマクロサイクルを形成する式(I)の化合物は、過剰なジイソプロピルエチルアミンの存在下で、非置換の、または環の1、4、および8位にあるN原子の1つがBoc基によって置換される1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカンと、クロロホルムまたは塩化メチレン中の5−クロロメチル−8−ヒドロキシキノリンとを25℃〜70℃の温度で一晩反応させて調製してもよい。Boc基不在の化合物は、上記の標準の操作手順に従って25℃〜70℃の温度で、エチルエーテルの存在下において、これらの化合物を酸性媒体と接触させて得られる。
【0051】
およびRが1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカン基を表すポリアザマクロサイクルを形成し、環の1、4、および8位にあるN原子の1つがBoc基で置換され、別のN原子が5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基によって置換される式(I)の化合物は、有利には上述の通りに合成される。
【0052】
およびRが5または6員環ポリアミンを形成する場合、RおよびR基の一方が−(CH−フェニル−(CH−であり、フェニルがF、BrおよびClから選択される1または2個のハロゲン原子によって、またはC〜Cアルキル基によって置換されるかまたは非置換であり、mおよびpがそれぞれ1〜4の数であり、Y’が5−メチレン−8−ヒドロキシキノリンであれば、他方が水素原子を表し、
およびRが非置換の、またはC〜Cアルキル基によって、または−O−R基(式中、RはC〜C10アルキル基である)によって置換された4〜8員環脂肪族を形成し、または非置換のまたはC〜Cアルキル基によって、またはF、BrおよびClから選択されるハロゲン原子によって置換された場合により水素化されたアリールを形成する場合、このような化合物は、クロロホルムまたは塩化メチレン中の5−クロロメチル−8−ヒドロキシキノリンと、上記のRおよびR基があるアミノ化合物の遊離アミン官能基との縮合反応を使用して、方法1に従って、または上述のMoret et al.による出版物に従って調製してもよい。この反応は、KCOなどの弱塩基の存在下において、25℃〜70℃の温度、好ましくは70℃近くで実施される。
【0053】
これらの化合物の抗癌特性を評価する試験は、次の細胞系を考察して実施される。
【0054】
U−87/GFP細胞では、本発明の化合物(I)の存在下における細胞の増殖と移動のモニターは、比色分析方法(MTS)を通じて実施され、公知の標準プロトコールに従って実施される。本方法では、フランス国マルセイユのトロフォ(Trophos S.A.,Marseilles,France)からのフラッシュ血球計算法の使用を実装した。フラッシュ血球計算法技術には蛍光が関与し、規定の波長で化合物を照射するステップと、別の波長で発する蛍光を記録するステップからなる。この技術をフラッシュ血球計算器を用いて実施し、96ウェル試験プレートに適応させる。この蛍光使用の文脈における励起および放射波長は、485〜495nmの範囲にある。測定される蛍光は、本発明の化合物による処理後に生き残った細胞の量を表す。上記方法の参考文献として、Luby-Phelps K. et al., J. Histochemistry and Cytometry, 2003, 51, 271-274およびModarai B. et al., Circulation, 2005, 111, 2645-2653による出版物が挙げられる。
【0055】
MEM培地(最小必須培地)中で培養されたこれらの同一細胞系に対する本発明の化合物(I)の抗移動活性の判定は、マイクロピペットコーンを使用して細胞叢をスクラッチすることからなる「スクラッチ」技術を通じて実施される。本発明の化合物を含有しない同一細胞との比較によって、抗移動性効果が判定される。コンピュータソフトウェアの手段により、未処理細胞に100%の移動を割り当てる一方で、本発明の化合物(I)の濃度の関数として、細胞遊走によって充填されないままである「スクラッチ」の観察することで、移動の完全停止が判定される。
【0056】
Bajetto et al., Neurochemistry International, 2006, 43, 31-38に記載の標準方法に従って、異なる濃度の本発明の化合物の存在下で、U87/GFP系統の細胞を中96ウェルプレート内で培養する。
【0057】
当業者に知られている標準方法に従って、細胞増殖を判定し定量化する。未処理細胞に100%の増殖を割り当て、同一細胞を本発明の化合物で処理すると100%未満の百分率が得られる。
【0058】
フランス国マルセイユのトロフォ(Trophos S.A.,Marseilles,France)からのフラッシュ血球計算器用を使用した画像診断によって、細胞増殖および移動を判定し、計算は、その使用が当該技術分野で公知であり、上記の2つの効果を互いに独立に判定できるようにする米国のモレキュラー・デバイス(Molecular Devices,USA)からの「メタモルフ(Metamorph)4.6」画像診断シグナル処理ソフトウェアを使用して実施される。
【0059】
癌性KB細胞もまた考察されて、細胞生存度(または生存率)が判定される。この細胞生存度は、Nicholson K.M. et al., British Journal of Cancer, 1999, 81, 423-430の教示に従って判定される。
【0060】
KB細胞は、ヒト癌細胞系KB−3−1である。これらの細胞は、0.11g/lのナトリウムピルビン酸および4.5g/lのグルコースを含有して10%(v/v)ウシ胎仔血清、ペニシリン(32μg/ml)およびストレプトマイシン(50μg/ml)が添加された、シグマ(Sigma)からの培養液「ダルベッコ変性イーグル培地」(DMEM)中で維持される。細胞を単層で培養し、37℃において湿潤雰囲気(95%空気/5%CO)内でインキュベートする。
【0061】
次にジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した本発明の試験化合物の存在下で、上記のKB細胞を6または96ウェルプレート内でインキュベートする。24ウェルプレート内でウェルあたり100〜300細胞の濃度で8日間にわたり細胞を再配分し、次にリーシュマン試薬(メタノール中0.2%)で染色する「コロニー形成アッセイ」試験によって、生存細胞含量を測定する。50細胞を超えるコロニーを顕微鏡下で視覚的に数え、生存率は、本発明の化合物で処理されていない細胞コロニーと比較された前記化合物の存在下で形成されたコロニーで表わされる。IC50値(試験された腫瘍細胞の50%が処置を乗り切る反応媒体中の化合物濃度)の判定により、これらの化合物の有効性の比較が可能になる。
【0062】
2つの細胞増殖および細胞移動試験中に、一般に使用される抗癌誘導体が基準誘導体の役割を果たす。
【0063】
一例として、5−((8−(4−((1,4,8,11−テトラ−アザシクロテトラデカン−1−イル)メチル)ベンジル)−1,4,8,11−テトラ−アザシクロテトラデカン−1−イル)メチル)キノリン−8−オール(化合物I7)およびジ−tert−ブチル4,8−ビス((8−ヒドロキシキノリン−5−イル)メチル)−1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−1,11−ジカルボキシラート(化合物I9)は、それぞれ約0.1μMおよび約0.4μMの濃度に相当する細胞毒性活性IC50をKB細胞に対して有する。これらの2種の化合物は、U87/GFP細胞に対してもまた、2μMで観察される抗増殖性活性を有する。
【0064】
出願人は、本発明の特定の化合物(I)では、KB細胞に対してナノモルオーダーのIC50値を得ることが可能であることすら観察し、これは本発明の化合物(I)が高度に効率的な抗癌剤であることを実証する。
【実施例】
【0065】
実施例1
本実施例は、上述の手順を使用して、U−87/GFP系細胞の増殖と移動(抑制は百分率として表される)、およびKB細胞生存度(細胞毒性測定)を抑制する、本発明の化合物の能力を例示する中間結果を提供する。
【0066】
表1は、本発明の化合物を含有しない基準例と比較した、式(I)の化合物の濃度と関連付けられている百分率値を示す。本発明の化合物(I)の可能な限りの最低濃度に対する百分率が高いほど、本発明の化合物がKB細胞の細胞生存度を抑制する能力はより大きい。
【0067】
【表1】

【0068】
式(I)の他の化合物では、次の結果が得られた(表2および2a)。
【0069】
【表2】

【0070】
【表3】

【0071】
市販化合物AおよびBは、KB細胞に対して10μMの濃度で、細胞生存度を抑制するいかなる能力も示さない。この不活性さは、U87/GFP細胞に対してなおもより大きかった。さらに本実施例は、U87/GFP細胞に対する生体外抗増殖性活性について、本発明の化合物が、テモダール(Temodal)(登録商標)よりもさらに優れた全体的有効性を有することを示す。
【0072】
実施例2
実施例1で得られた結果から、前述のプロトコールに従って、KB細胞系に対するIC50値(表3)の判定が可能であった。
【0073】
KB細胞に対する細胞毒性効果を測定するために、2つの実験を並行して実施した。
【0074】
【表4】

【0075】
表3は、ナノモルオーダーの濃度でIC50値によって表される細胞細胞毒性を得ることが可能であることを示すが、約10ミクロモル程度の値でも許容可能である。
【0076】
I13、I16、およびI34などの化合物に対するI12、I14、およびI20などのように、5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基を1個だけ含有する化合物(モノ−5−メチレン−8−ヒドロキシ−キノリン)と、このような基を2個含有する化合物(ビス−5−メチレン−8−ヒドロキシ−キノリン)とを比較すると、ビス−5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン誘導体は、その他の点で他の全要素が等しければ、モノ−5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン等価物よりも活性がはるかに高いことが見出された。
【0077】
これらの実施例から、出願人は、Rが5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基で、Rが(II)基(式中、XおよびYはH原子を表し、またはXがHでYが−CHであり、R〜Rが異なる置換基を有する)である式(I)の化合物について、これらの置換基の性質および位置が活性に影響を及ぼすことを示した。
【0078】
化合物I12、I14、I20、I29、I30、およびI31を考察すると、フェニル環(I20)に対してパラ位にある−CF基は、このパラ位が−NO(I29)または−CH(I14)のどちらかで占められている場合よりも、より大きな抗癌活性を化合物に与えることが分かる。さらに−CF基(I20)に対するパラ位は、この基がオルト位を占める場合(I30)よりも、活性の観点からはるかにより好ましい。XおよびY基の1つがメチルである場合、抗癌活性の低下が観察されたが、それでもなお極めて許容可能である(I14およびI31)。
【0079】
実施例3
本実施例は、本発明の化合物が、前述の異なる細胞系に対する抗腫瘍活性もまた有することを示すことが意図される。
【0080】
表4は、化合物I14およびI20について得られた、前述のプロトコールに従った異なる細胞系に対するIC50(細胞毒性)の結果を示す。
【0081】
【表5】

【0082】
これらの結果は、本発明の化合物が、様々な腫瘍細胞の治療において確立された抗癌活性を有することを示す。
【0083】
マウスに対する毒性試験は誘導体I20のLD50値が100mg/kgであることを示し、タキソール(Taxol)などの抗癌剤のマウスにおけるLD50が約10mg/kgであることを鑑みて、誘導体I20の比較的低い毒性が実証される。
【0084】
実施例4
本実施例は、本発明の化合物のHL60細胞系(リンパ芽球腫)に対する細胞毒性活性が、カスパーゼ誘導に依存することを示すことが意図される。
【0085】
本実施例では、この効果における化合物I14およびI20の役割を示すため、カスパーゼ3/7ではDEVD、カスパーゼ8ではIEDT、カスパーゼ9ではLEHDの特定製品を使用した。さらにカスパーゼのこの活性を誘導する基準化合物として、コルヒチンを使用した。I14およびI20を1μM、0.1μM、および0.01μMの3つの濃度で試験した。
【0086】
米国のカリビオケム(Calbiochem,USA)から市販される診断用キットを使用して、Margolin et al., J. Biol. Chem. (1997), 272, p. 7223に記載の標準プロトコールに従って、I14およびI20とHL60細胞とを48時間接触させ、実験を実施した。
【0087】
得られた結果は、0.01μM濃度では、I14またはI20のどちらもカスパーゼ3/7の活性化に対して効果がないが、他の2つの濃度(1μMおよび0.1μM)では強力な効果を示すことを示す。しかしI14およびI20は上記の濃度では、カスパーゼ8および9の活性化に対して効果がない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)、
【化1】

[式中、
−CH−NR基は−OH基に対してオルト、メタまたはパラ位にあり、
およびR基の一方は水素原子、C〜C10アルキル基、C〜Cアルケニルまたはアルキニル基または5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基を表し;他方は5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基、アリール基、N、O、およびSから選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでなる−(CH−ヘテロアリール(式中、nは0〜4の整数である)、C〜Cの−(CH−ヘテロシクロアルキル基(式中、ヘテロ原子はN、OまたはSを表し、nは0〜4の整数である)、またはアルキルフェニル(ここに、アルキルがC〜C10を表し、フェニル基がF、Br、I、およびClから選択される1または2個のハロゲン原子または−CFによって置換されているかまたは非置換である)を表し;
またはRおよびR基の一方は非対称炭素に結合している式(II)、
【化2】

(式中、
、R、R、R、およびRは互いに独立に、水素原子、C〜C10アルキル基、−CF、−NO、N−5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基、F、Br、I、およびClから選択される1または2個のハロゲン原子、または−O−R基(式中、RはC〜Cアルキル基または−CFである)を表し、
XまたはYは水素原子、C〜C10アルキル基、C〜C10アルキル基によって置換されたまたは非置換のアリール、−CFまたは−NOを表す)の基を表し、
およびR基の他方はH原子、tert−ブトキシカルボニル基(Boc)、5−メチレン−8−ヒドロキシキノリンまたは−(CH−フェニル(式中、nは1〜5の整数である)を表し;
またはRおよびR基の一方がY−N−Y’基であり、Yが−(CH−(式中、nは1〜10の整数である)、−(CH−フェニル−(CH−からなる群から選択され、フェニルがF、Br、およびClから選択される1または2個のハロゲン原子によって、またはC〜C10アルキル基によって置換されるかまたは非置換であり、mおよびpがそれぞれ1〜4の整数であり、Y’が5−メチレン−8−ヒドロキシキノリンである場合、他方は水素原子を表し;
またはRおよびR基の一方が−(CH−ナフタレン基(式中、nは1〜10の整数である)を表し、ナフタレン基がC〜C10アルキル基、−CF、および−O−R(式中、RはC〜C10アルキル基である)から選択される1つ以上の基によって置換されるかまたは非置換の場合、他方は水素原子、5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基およびBoc基からなる群から選択され;
またはRおよびRはピペラジンを形成し、その中で環の炭素原子の少なくとも1つがC〜Cアルキル基によって置換され、−CH−NR基の一部でないN原子が5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基によって置換され;
またはRおよびRは非置換の1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカンまたは1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカンを表すポリアザマクロサイクル(サイクラム)を形成し、その中で環の1、4、および8位にあるN原子の少なくとも1つは独立して、Boc基によって、5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基によって、または−(CH−フェニル−(CH−Z(式中、nは1〜10の整数であり、Zは1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカンまたは1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカンのN原子の1つを表す)によって置換され、その中で環の1、4、および8位にある他のN原子は非置換であるか、またはそれぞれ独立して、Boc基によって置換されている]の化合物またはそれらの鏡像異性体、あるいは
5−((1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカン−8−イル)メチル)キノリン−8−オール、
トリ−tert−ブチル12−((8−ヒドロキシキノリン−5−イル)メチル)−1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカン−1,4,8−トリカルボキシラート、
トリ−tert−ブチル11−((8−ヒドロキシキノリン−5−イル)メチル)−1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−1,4,8−トリカルボキシラート、
5−((1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−1−イル)メチル)キノリン−8−オール、
トリ−tert−ブチル11−(3−((4,11−ビス(tert−ブトキシカルボニル)−8−((8−ヒドロキシキノリン−5−イル)メチル)−1,4,8,11−テトラアザシクロ-テトラデカン−1−イル)メチル)ベンジル)−1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−1,4,8−トリカルボキシラート、
5,5’−(プロパン−1,3−ジイルビス(アザンジイル))ビス(メチレン)−ジキノリン−8−オール、
5−((8−(4−((1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−1−イル)メチル)ベンジル)−1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−1−イル−メチル)キノリン−8−オール、
ジ−tert−ブチル4,8−ビス((8−ヒドロキシキノリン−5−イル)メチル)−1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−1,11−ジカルボキシラート、
5,5’−(1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−1,11−ジイル)−ビス(メチレン)ジキノリン−8−オール、
5,5’−(1,4−フェニレンビス(メチレン))ビス(アザンジイル)−ビス(メチレン)ジキノリン−8−オール、
5−(((8−ヒドロキシキノリン−5−イル)(4−メチルベンジル)アミノ)−メチル)キノリン−8−オール、
tert−ブチル8−ヒドロキシキノリン−5−イル(4−メチルベンジル)−カルバメート、
5−((4−メチルベンジルアミノ)メチル)キノリン−8−オール、
5−(ナフタレン−1−イルメチルアミノ)キノリン−8−オール、
5,5’−(ナフタレン−1−イルメチルアザンジイル)ジキノリン−8−オール、
tert−ブチル8−ヒドロキシキノリン−5−イル(ナフタレン−1−イル−メチル)カルバメート、および
5−(((8−ヒドロキシキノリン−5−イル)(4−(トリフルオロメチル)ベンジル)−アミノ)メチル)キノリン−8−オール、
ただし、該化合物から5−((ベンジルアミノ)メチル)キノリン−8−オールは除外される。
【請求項2】
およびR基の一方が水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニルまたはアルキニル基または5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基を表し;他方が5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基、アリール基、N、O、およびSから選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでなる−(CH−ヘテロアリール(式中、nは0〜4の整数である)、C〜Cの−(CH−ヘテロシクロアルキル基(式中、ヘテロ原子はN、OまたはSを表し、nは0〜4の整数である)、またはアルキルフェニル(ここに、アルキルがC〜Cを表し、フェニル基がF、Br、I、およびClから選択される1または2個のハロゲン原子または−CFによって置換されているかまたは非置換である)を表し;
またはRおよびR基の一方が非対称炭素に結合している式(II)、
【化3】

(式中、
、R、R、R、およびRは互いに独立に、水素原子、C〜Cアルキル基、−CF、−NO、N−5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基、F、Br、I、およびClから選択される1または2個のハロゲン原子、または−O−R基(式中、RはC〜Cアルキル基または−CFである)を表し、
XまたはYは水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルキル基によって置換されたまたは非置換のアリール、−CFまたは−NOを表す)の基を表し、
およびR基の他方がH原子、Boc基、5−メチレン−8−ヒドロキシキノリンまたは−(CH−フェニル(式中、nは1〜5の整数である)を表し;
またはRおよびR基の一方がY−N−Y’基であり、Yが−(CH−(式中、nは1〜6の整数である)、−(CH−フェニル−(CH−からなる群から選択され、フェニルがF、Br、およびClから選択される1または2個のハロゲン原子によって、またはC〜Cアルキル基によって置換されるかまたは非置換であり、mおよびpがそれぞれ1〜4の整数であり、Y’が5−メチレン−8−ヒドロキシキノリンである場合、他方が水素原子を表し;
またはRおよびR基の一方が−(CH−ナフタレン基(式中、nは1〜6の整数である)を表し、ナフタレン基がC〜Cアルキル基、−CF、および−O−R(式中、RはC〜Cアルキル基である)から選択される1つ以上の基によって置換されるかまたは非置換の場合、他方が水素原子、5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基およびBoc基からなる群から選択され;
またはRおよびRがピペラジンを形成し、該ピペラジンは非置換であるか、またはその中で環の炭素原子の少なくとも1つがC〜Cアルキル基によって置換され、−CH−NR基の一部でないN原子が5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基によって置換される;
またはRおよびRが非置換の1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカンまたは1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカンを表すポリアザマクロサイクル(サイクラム)を形成し、その中で環の1、4、および8位にあるN原子の少なくとも1つが独立して、Boc基によって、5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基によって、または−(CH−フェニル−(CH−Z(式中、nは1〜6の整数であり、Zは1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカンまたは1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカンのN原子の1つを表す)によって置換され、その中で環の1、4、および8位にある他のN原子が非置換であり、またはそれぞれ独立して、Boc基によって置換された、式(I)の化合物またはそれらの鏡像異性体、ただし請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
およびR基の一方が水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニルまたはアルキニル基または5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基を表し;他方が5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基、アリール基、N、O、およびSから選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでなる−(CH−ヘテロアリール(式中、nは0〜3の整数である)、C〜Cの−(CH−ヘテロシクロアルキル基(式中、ヘテロ原子はN、OまたはSを表し、nは0〜3の整数である)、またはアルキルフェニル(ここに、アルキルがC〜Cを表し、フェニル基がFおよびIから選択される1または2個のハロゲン原子または−CFによって置換されているかまたは非置換である)を表し;
またはRおよびR基の一方が非対称炭素に結合している式(II)、
【化4】

(式中、
、R、R、R、およびRの1つは、N−5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基を表し、その他のものは水素原子を表し、
XまたはYは水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルキル基によって置換されたまたは非置換のアリール、−CFまたは−NOを表す)の基を表し、
およびR基の他方がH、tert−ブトキシカルボニル(Boc)基、または5−メチレン−8−ヒドロキシキノリンを表し;
またはRおよびR基の一方がY−N−Y’基であり、Yが−(CH−(式中、nは1〜4の整数である)、−(CH−フェニル−(CH−からなる群から選択され、フェニルがF、Br、およびClから選択される1または2個のハロゲン原子によって、またはC〜Cアルキル基によって置換されるかまたは非置換であり、mおよびpがそれぞれ1〜3の整数であり、Y’が5−メチレン−8−ヒドロキシキノリンである場合、他方が水素原子を表し;
またはRおよびR基の一方が−(CH−ナフタレン基(式中、nは1〜4の整数である)を表し、ナフタレン基がC〜Cアルキル基、−CF、および−O−R(式中、RはC〜Cアルキル基である)から選択される1つ以上の基によって置換されるかまたは非置換の場合、他方が水素原子、5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基およびBoc基からなる群から選択され;
またはRおよびRがピペラジンを形成し、その中で環の炭素原子の少なくとも1つがC〜Cアルキル基によって置換され、−CH−NR基の一部でないN原子が5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基によって置換され;
またはRおよびRが非置換の1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカンまたは1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカンを表すポリアザマクロサイクル(サイクラム)を形成し、その中で環の1、4、および8位にあるN原子の少なくとも1つは独立して、Boc基によって、5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基によって、または−(CH−フェニル−(CH−Z(式中、nは1〜4の整数であり、Zは1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカンまたは1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカンのN原子の1つを表す)によって置換され、その中で環の1、4、および8位にある他のN原子が非置換であるか、またはそれぞれ独立して、Boc基によって置換されている、請求項1または2に記載の式(I)の化合物またはそれらの鏡像異性体、ただし請求項1で除外される化合物を除く。
【請求項4】
5,5’−(ベンジルアザンジイル)ビス(メチレン)ジキノリン−8−オール、
5−(((8−ヒドロキシキノリン−5−イル)(4−メチルベンジル)アミノ)−メチル)キノリン−8−オール、
tert−ブチル8−ヒドロキシキノリン−5−イル(4−メチルベンジル)−カルバメート、
5−(ナフタレン−1−イルメチルアミノ)キノリン−8−オール、
5,5’−(ナフタレン−1−イルメチルアザンジイル)ジキノリン−8−オール、
tert−ブチル8−ヒドロキシキノリン−5−イル(ナフタレン−1−イル−メチル)カルバメート、および
5−(((8−ヒドロキシキノリン−5−イル)(4−トリフルオロメチル)ベンジル)アミノ)メチル)キノリン−8−オール
からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の式(I)の化合物。
【請求項5】
薬剤として使用するための請求項1〜4のいずれか一項で定義される式(I)の化合物。
【請求項6】
抗癌剤としての使用が意図される薬剤を製造するための式(I)、
【化5】

[式中、
−CH−NR基は−OH基に対してオルト、メタまたはパラ位にあり、
およびR基の一方は水素原子、C〜C10アルキル基、C〜Cアルケニルまたはアルキニル基または5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基を表し;他方は5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基、アリール基、N、O、およびSから選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでなる−(CH−ヘテロアリール(式中、nは0〜4の整数である)、C〜Cの−(CH−ヘテロシクロアルキル基(式中、ヘテロ原子はN、OまたはSを表し、nは0〜4の整数である)、またはアルキルフェニル(ここに、アルキルがC〜C10を表し、フェニル基がF、Br、I、およびClから選択される1または2個のハロゲン原子または−CFによって置換されているかまたは非置換である)を表し;
またはRおよびR基の一方は非対称炭素に結合している式(II)、
【化6】

(式中、
、R、R、R、およびRは互いに独立に、水素原子、C〜C10アルキル基、−CF、−NO、N−5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基、F、Br、I、およびClから選択される1または2個のハロゲン原子、または−O−R基(式中、RはC〜Cアルキル基または−CFである)を表し、
XまたはYは水素原子、C〜C10アルキル基、C〜C10アルキル基によって置換されたまたは非置換のアリール、−CFまたは−NOを表す)の基を表し、
およびR基の他方はH原子、tert−ブトキシカルボニル基(Boc)、5−メチレン−8−ヒドロキシキノリンまたは−(CH−フェニル(式中、nは1〜5の整数である)を表し;
またはRおよびR基の一方がY−N−Y’基であり、Yが−(CH−(式中、nは1〜10の整数である)、−(CH−フェニル−(CH−からなる群から選択され、フェニルがF、Br、およびClから選択される1または2個のハロゲン原子によって、またはC〜C10アルキル基によって置換されるかまたは非置換であり、mおよびpがそれぞれ1〜4の整数であり、Y’が5−メチレン−8−ヒドロキシキノリンである場合、他方は水素原子を表し;
またはRおよびR基の一方が−(CH−ナフタレン基(式中、nは1〜10の整数である)を表し、ナフタレン基がC〜C10アルキル基、−CF、および−O−R(式中、RはC〜C10アルキル基である)から選択される1つ以上の基によって置換されるかまたは非置換の場合、他方は水素原子、5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基およびBoc基からなる群から選択され;
またはRおよびRはピペラジンを形成し、該ピペラジンは非置換であるか、または環の炭素原子の少なくとも1つがC〜Cアルキル基によって置換され、−CH−NR基の一部でないN原子が5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基によって置換される;
またはRおよびRは非置換の1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカンまたは1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカンを表すポリアザマクロサイクル(サイクラム)を形成し、その中で環の1、4、および8位にあるN原子の少なくとも1つは独立して、Boc基によって、5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基によって、または−(CH−フェニル−(CH−Z(式中、nは1〜10の整数であり、Zは1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカンまたは1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカンのN原子の1つを表す)によって置換され、その中で環の1、4、および8位にある他のN原子は非置換であるか、またはそれぞれ独立して、Boc基によって置換されている]の化合物またはそれらの鏡像異性体の使用。
【請求項7】
式(I)の化合物のRおよびR基の一方が水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニルまたはアルキニル基または5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基を表し;他方が5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基、アリール基、N、O、およびSから選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでなる−(CH−ヘテロアリール(式中、nは0〜4の整数である)、C〜Cの−(CH−ヘテロシクロアルキル基(式中、ヘテロ原子はN、OまたはSを表し、nは0〜4の整数である)、またはアルキルフェニル(ここに、アルキルがC〜Cを表し、フェニル基がF、Br、I、およびClから選択される1または2個のハロゲン原子または−CFによって置換されているかまたは非置換である)を表し;
またはRおよびR基の一方が非対称炭素に結合している式(II)、
【化7】

(式中、
、R、R、R、およびRは互いに独立に、水素原子、C〜Cアルキル基、−CF、−NO、N−5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基、F、Br、I、およびClから選択される1または2個のハロゲン原子、または−O−R基(式中、RはC〜Cアルキル基または−CFである)を表し、
XまたはYは水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルキル基によって置換されたまたは非置換のアリール、−CFまたは−NOを表す)の基を表し、
およびR基の他方がH、Boc基、5−メチレン−8−ヒドロキシキノリンまたは−(CH−フェニル(式中、nは1〜5の整数である)を表し;
またはRおよびR基の一方がY−N−Y’基であり、Yが−(CH−(式中、nは1〜6の整数である)、−(CH−フェニル−(CH−からなる群から選択され、フェニルがF、Br、およびClから選択される1または2個のハロゲン原子によって、またはC〜Cアルキル基によって置換されるかまたは非置換であり、mおよびpがそれぞれ1〜4の整数であり、Y’が5−メチレン−8−ヒドロキシキノリンである場合、他方が水素原子を表し;
またはRおよびR基の一方が−(CH−ナフタレン基(式中、nは1〜6の整数である)を表し、ナフタレン基がC〜Cアルキル基、−CF、および−O−R(式中、RはC〜Cアルキル基である)から選択される1つ以上の基によって置換されるかまたは非置換の場合、他方が水素原子、5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基およびBoc基からなる群から選択され;
またはRおよびRがピペラジンを形成し、該ピペラジンは非置換であるか、またはその中で環の炭素原子の少なくとも1つがC〜Cアルキル基によって置換され、−CH−NR基の一部でないN原子が5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基によって置換される;
またはRおよびRが非置換の1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカンまたは1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカンを表すポリアザマクロサイクル(サイクラム)を形成し、その中で環の1、4、および8位にあるN原子の少なくとも1つが独立して、Boc基によって、5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基によって、または−(CH−フェニル−(CH−Z(式中、nは1〜6の整数であり、Zは1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカンまたは1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカンのN原子の1つを表す)によって置換され、その中で環の1、4、および8位にある他のN原子が非置換であるか、またはそれぞれ独立して、Boc基によって置換されている、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
式(I)の化合物のRおよびR基の一方が水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニルまたはアルキニル基または5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基を表し;他方が5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基、アリール基、N、O、およびSから選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでなる−(CH−ヘテロアリール(式中、nは0〜3の整数である)、C〜Cの−(CH−ヘテロシクロアルキル基(式中、ヘテロ原子はN、OまたはSを表し、nは0〜3の整数である)、またはアルキルフェニル(ここに、アルキルがC〜Cを表し、フェニル基がFおよびIから選択される1または2個のハロゲン原子または−CFによって置換されているかまたは非置換である)を表し;
またはRおよびR基の一方が非対称炭素に結合している式(II)、
【化8】

(式中、
、R、R、R、およびRの1つは、N−5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基を表し、その他のものは水素原子を表し、
XまたはYは水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルキル基によって置換されたまたは非置換のアリール、−CFまたは−NOを表す)の基を表し、
およびR基の他方がH、tert−ブトキシカルボニル(Boc)基、または5−メチレン−8−ヒドロキシキノリンを表し;
またはRおよびR基の一方がY−N−Y’基であり、Yが−(CH−(式中、nは1〜4の整数である)、−(CH−フェニル−(CH−からなる群から選択され、フェニルがF、BrおよびClから選択される1または2個のハロゲン原子によって、またはC〜Cアルキル基によって置換されるかまたは非置換であり、mおよびpがそれぞれ1〜3の整数であり、Y’が5−メチレン−8−ヒドロキシキノリンである場合、他方が水素原子を表し;
またはRおよびR基の一方が−(CH−ナフタレン基(式中、nは1〜4の整数である)を表し、ナフタレン基がC〜Cアルキル基、−CF、および−O−R(式中、RはC〜Cアルキル基である)から選択される1つ以上の基によって置換されるかまたは非置換の場合、他方が水素原子、5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基およびBoc基からなる群から選択され;
またはRおよびRがピペラジンを形成し、該ピペラジンは非置換であるか、またはその中で環の炭素原子の少なくとも1つがC〜Cアルキル基によって置換され、−CH−NR基の一部でないN原子が5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基によって置換される;
またはRおよびRが非置換の1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカンまたは1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカンを表すポリアザマクロサイクル(サイクラム)を形成し、その中で環の1、4、および8位にあるN原子の少なくとも1つは独立して、Boc基によって、5−メチレン−8−ヒドロキシキノリン基によって、または−(CH−フェニル−(CH−Z(式中、nは1〜4の整数であり、Zは1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカンまたは1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカンのN原子の1つを表す)によって置換され、その中で環の1、4、および8位にある他のN原子が非置換であるか、またはそれぞれ独立して、Boc基によって、およびそれらの鏡像異性体によって置換されている、請求項6または7に記載の使用。
【請求項9】
式(I)の化合物が、
5−((1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカン−8−イル)メチル)キノリン−8−オール、
トリ−tert−ブチル12−((8−ヒドロキシキノリン−5−イル)メチル)−1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカン−1,4,8−トリカルボキシラート、
トリ−tert−ブチル11−((8−ヒドロキシキノリン−5−イル)メチル)−1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−1,4,8−トリカルボキシラート、
5−((1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−1−イル)メチル)キノリン−8−オール、
トリ−tert−ブチル11−(3−((4,11−ビス(tert−ブトキシカルボニル)−8−((8−ヒドロキシキノリン−5−イル)メチル)−1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−1−イル)メチル)ベンジル)−1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−1,4,8−トリカルボキシラート、
5,5’−(プロパン−1,3−ジイルビス(アザンジイル))ビス(メチレン)−ジキノリン−8−オール、
5−((8−(4−((1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−1−イル)メチル)ベンジル)−1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−1−イル)メチル)キノリン−8−オール、
5,5’−(ピペラジン−1,4−ジイルビス(メチレン))ジキノリン−8−オール、
ジ−tert−ブチル4,8−ビス((8−ヒドロキシキノリン−5−イル)メチル)−1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−1,11−ジカルボキシラート、
5,5’−(1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−1,11−ジイル)ビス(メチレン)ジキノリン−8−オール、
5,5’−(1,4−フェニレンビス(メチレン))ビス(アザンジイル)ビス(メチレン)ジキノリン−8−オール、
5,5’−(ベンジルアザンジイル)ビス(メチレン))ジキノリン−8−オール、
5−((ベンジルアミノ)メチル)キノリン−8−オール、
5−(((8−ヒドロキシキノリン−5−イル)(4−メチルベンジル)アミノ)メチル)キノリン−8−オール、
tert−ブチル8−ヒドロキシキノリン−5−イル(4−メチルベンジル)−カルバメート、
5−(4−メチルベンジルアミノ)キノリン−8−オール、
5−(ナフタレン−1−イルメチルアミノ)キノリン−8−オール、
5,5’−(ナフタレン−1−イルメチルアザンジイル)ジキノリン−8−オール、
tert−ブチル8−ヒドロキシキノリン−5−イル(ナフタレン−1−イル−メチル)カルバメート、および
5−(((8−ヒドロキシキノリン−5−イル)(4−(トリフルオロメチル)ベンジル)−アミノ)メチル)キノリン−8−オールからなる群から選択される、請求項6〜8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記化合物が転移癌または腫瘍細胞の移動および増殖を妨げる能力を有する、請求項6〜9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記転移癌または腫瘍細胞が、膠芽細胞腫、癌腫、肉腫、骨髄腫、黒色腫、および中皮腫である、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記癌が、口腔癌、腸癌、乳癌、肺癌、前立腺癌、膠芽細胞腫、卵巣腺癌、肝臓癌、およびリンパ芽球腫からなる群から選択される、請求項6〜11のいずれか一項に記載の使
用。

【公表番号】特表2010−522147(P2010−522147A)
【公表日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−554065(P2009−554065)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【国際出願番号】PCT/FR2008/000399
【国際公開番号】WO2008/135671
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(509263571)ビオファルム・ソシエテ・ア・レスポンサビリテ・リミテ (1)
【Fターム(参考)】