説明

癌を治療するためのベンゾピラノン化合物

本発明は、ベンゾピラノン化合物、ベンゾピラノン化合物を含む組成物、及び癌を治療又は予防する、又は癌細胞若しくは新生細胞の成長を阻害するための方法であって、有効量のベンゾピラノン化合物を、それを必要とする患者に投与することを含む方法に関する。ベンゾピラノン化合物は、その医薬として許容し得る塩を含めて、式(I)を有する。
【化1】


(式中、R1及びnは、本明細書に定められている通りである)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、内容の全体が引用により本明細書に組み込まれている2005年6月24日に出願された米国仮出願第60/693,867号の利益を主張するものである。
【0002】
(1. 本発明の分野)
本発明は、ベンゾピラノン化合物、ベンゾピラノン化合物を含む組成物、及び癌を治療又は予防するためにベンゾピラノン化合物を使用するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(2. 本発明の背景)
(2.1 癌)
癌は、主として、特定の正常組織から導かれた異常細胞の数の増加、これらの異常細胞による隣接組織の侵入、又は悪性細胞の局所リンパ節及び遠方部位へのリンパ又は血液由来拡散(転移)によって特徴づけられる。癌は、小さい新生物発生前の変化から始まり、一定の条件下で新生物形成に進行し得る多工程プロセスであることが臨床データ及び分子生物学の研究によって示されている。新生物病変は、クローンとして進化し、特に新生細胞が宿主の免疫監視から逃れる条件下で侵入、成長、転移及び異質性の能力を増強させ得る。Roitt, L, Brostoff, J及びKale, D.、Immunology, 17.1-17.12(第3版, Mosby, St. Louis, Mo., 1993)。
ほんの数種類の癌を以下に記載する。
他の種類の癌の特性は、医療実務者に良く知られており、医学文献に記載されている。
【0004】
(2.2 脳腫瘍及び脳転移)
毎年約10000件の脳腫瘍が発生しており、毎年約4000件の脊髄腫瘍が発生している(Kornblithらの論文、(1985), Cancer:腫瘍学の原理と実際(Principles and Practice of Oncology), 第2版, DeVita, V., Hellman, S., Rosenberg, S., eds., J. B. Lippincott Company, Philadelphia, Chapter 41:中枢神経系の腫瘍(Neoplasms of the Central Nervous System))。中枢神経系(central nervous system)(CNS)腫瘍は、若年患者における最も一般的な固形腫瘍のグループを含む(同上文献)。膠腫は、すべての原発性CNS腫瘍の約60%を含み、最も一般的な原発性脳腫瘍は、星状細胞腫、髄膜腫、乏突起膠腫及び細胞組織リンパ腫である(同上文献)。膠腫は、脳の大脳半球に通常発生するが、視神経、脳幹又は小脳にも見いだすことができる(脳腫瘍学会;www/tbts.org/primary.htm)。
【0005】
膠腫は、それらが端を発する膠細胞の種類に応じてグループに分類される(同上文献)。最も一般的な種類の膠腫は、星状細胞腫である。これらの腫瘍は、星状細胞と呼ばれる星状膠細胞から発生する。星状細胞腫は、それらの悪性度に応じてグレードが割り当てられる。グレードI及びII星状細胞腫としても知られる低グレード星状細胞腫は、悪性度が最も小さく、比較的ゆっくりと成長し、外科手術を用いてしばしば完全に除去され得る。グレードIII星状細胞腫としても知られる中グレード星状細胞腫は、より急速に成長し、より悪性度が大きい。グレードIII星状細胞腫は、外科手術に続いて放射線及び何らかの化学療法で治療される。グレードIV星状細胞腫としても知られる膠グレード星状細胞腫は、急速に成長し、近くの組織に侵入し、非常に悪性度が大きい。グレードIV星状細胞腫は、通常は外科手術に続いて放射線療法と化学療法の組合せによって治療される。多形性膠芽腫は、グレードIV星状細胞腫であり、最も悪性度が大きく、致命的な原発性脳腫瘍の中に含まれる(同上文献)。
【0006】
従来、星状細胞腫の治療は、腫瘍を除去するための外科手術、そしてその後に続く放射療法を含んでいた。化学療法を放射線療法の前又は後に投与することもできる(Kornblithらの論文、(1985), Cancer:腫瘍学の原理と実際(Principles and Practice of Oncology)、第2版, DeVita, V., Hellman, S., Rosenberg, S., eds., J. B. Lippincott Company, Philadelphia, Chapter 41:中枢神経系の腫瘍(Neoplasms of the Central Nervous System))。多形性膠芽腫を治療するのに同じ外科技術及び原理が適用されてきたが、悪性脳腫瘍が小さいほど、多形成膠芽腫の完全除去を達成するのが困難であった(同上文献)。
【0007】
グレードIV星状細胞腫脳腫瘍であると診断された患者に対する予後は、従来劣っていた。グレードI星状細胞腫に対する治療を受けた人は、一般に、再発することなく10年以上生存することができるが、グレードIV星状細胞腫の患者の平均生存期間は、外科治療後15週間である。グレードIV星状細胞腫は、悪性成長潜在性が高いため、外科治療のみが施された後で1年間生存した患者は5%にすぎず、2年後の生存率はほぼ0%であった。外科治療と放射線治療を組み合わせると、治療から2年後の生存率が約10%に高められる。しかし、5年より長く生存する患者は実質的に存在しない(同上文献)。
【0008】
(2.3 現行の癌治療)
現行では、癌治療は、患者における新生細胞を根絶するための外科手術、化学療法及び/又は放射線治療を含む(例えば、Stockdaleの論文、1998、「癌患者管理の原則(Principles of Cancer Patient Management)」、Scientific American:Medicine, vol. 3, Rubenstein 及び Federman, eds., Chapter 12, Section IV参照)。これらの手法のすべては、患者に対して大きな障害をもたらす。例えば、外科手術は、患者の健康により、禁忌を示され得るか、又は患者にとって許容不可能であり得る。また、外科手術は、新生物組織を完全に除去できない。放射線療法は、新生物組織が正常組織より放射線に対して高い感受性を示す場合にのみ有効であり、放射線療法は、また、深刻な副作用をしばしばもたらし得る(同上文献)。化学療法に関しては、新生物疾病の治療に利用可能な様々な化学療法薬が存在する。しかし、様々な化学療法薬が利用可能であるにもかかわらず、化学療法には多くの障害がある(例えば、Stockdaleの論文、1998、「癌患者管理の原則(Principles of Cancer Patient Management)」、Scientific American Medicine, vol. 3, Rubenstein 及び Federman, eds., ch. 12, sect. 10参照)。ほぼすべての化学療法薬が有毒であり、化学療法は、激しい吐き気、骨髄降下、免疫抑制等を含む重大な、そしてしばしば危険な副作用を引き起こす。また、多くの腫瘍細胞は、多剤抵抗性を通じて化学療法薬に対する抵抗性を有し、又は抵抗性を発達させる。
【0009】
ニトロソ尿素化学療法薬は、脳腫瘍の治療に通常使用されてきた。これらの化合物の重要な特性は、血液脳関門を横断できることである。1-3-ビス-2-クロロエチル-1-ニトロソ尿素(BCNU、カルムスチンとしても知られる)は、これらの化合物のうち臨床的に使用された最初の化合物である。BCNUを外科手術及び/又は放射線治療と併用することは、有益であることが示されたが、多形性膠芽腫脳腫瘍を治療しなかった。また、長期間のニトロソ尿素治療に伴う併発症が報告された(Cohenらの論文、Cancer Treat. Rep. 60, 1257-1261 (1976))。これらの併発症としては、肺線維症、肝臓毒性、腎不全、及びニトロ尿素治療に対応づけられる続発性腫瘍の原因が挙げられる。
【0010】
癌治療におけるエストロゲン受容体モジュレータ:タモキシフェン及びラロキシフェンの使用についても調査された。タモキシフェンは、再発性悪性膠腫の治療を含むヒト臨床検査に使用された(Couldwellらの論文、Clin. Cancer Res. 2, 619-622 (1996))。ラロキシフェンは、ラットモデルにおいて、尾腫瘍の肺への転移を抑制することが示された(Neubauerらの論文、Prostate 27, 220-229 (1995))。
外科手術、放射線療法及び化学療法の治療処置は、グレードIV星状細胞腫脳腫瘍の患者の寿命を幾分延ばす機会を提供するが、各方法に伴うリスクは多い。治療の利点は極めて小さく、治療は、患者の残りの短い寿命のクオリティを著しく低下させ得る。
【0011】
よって、当該技術分野において、上記従来の手法の欠点を克服する抗癌化合物及び治療法に対する明らかな必要性が依然として存在する。
本願のセクション2における任意の参考文献の引用又は確認は、該参考文献が本願に対する先行技術であることを認めるものではない。
【発明の開示】
【0012】
本発明は、式(I)及び(II)の化合物、及びそれらの医薬として許容し得る塩、水和物、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ及び立体異性体に関する:
【化1】

(式中、R1、R2、R3及びnは、以下に定められる通りである)。
【0013】
式(I)及び(II)の化合物、及びそれらの医薬として許容し得る塩、水和物、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ及び立体異性体(それぞれ「ベンゾピラノン化合物」である)は、患者における癌を治療又は予防するのに有用である。
本発明は、また、有効量のベンゾピラノン化合物及び医薬として許容し得る担体又は媒体を含む組成物に関する。該組成物は、患者における癌を治療又は予防するのに有用である。
【0014】
本発明は、さらに、有効量のベンゾピラノン化合物及び医薬として許容し得る担体又は媒体を含む単一単位投与形態に関する。該単一単位投与形態は、患者における癌を治療又は予防するのに有用である。
本発明は、さらに、癌を治療する方法であって、それを必要とする患者に、有効量のベンゾピラノン化合物又はその組成物を投与することを含む方法に関する。
【0015】
本発明は、さらに、癌細胞又は新生細胞の成長を抑制するための方法であって、該細胞を有効量のベンゾピラノン化合物又はその組成物と接触させることを含む方法に関する。
本発明は、さらに、腫瘍、例えば固形腫瘍の成長を抑制するための方法であって、該腫瘍を有効量のベンゾピラノン化合物又はその組成物と接触させることを含む方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(4. 本発明の詳細な説明)
(4.1 定義)
本明細書に用いられているように、「ハロゲン」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを意味する。
本明細書に用いられているように、「トリフルオロメチル」という用語は、−CFを意味する。
【0017】
本明細書に用いられているように、「予防する」、「予防している」及び「予防」という用語は、特定の疾病又は疾患(例えば癌)にかかるリスクの低減を含む。一実施態様において、ベンゾピラノン化合物は、疾病又は疾患(例えば癌)に対する遺伝的素因を有する患者、好ましくはヒト、又は(例えば喫煙、又は1種以上の一定の発癌物質による)環境的要因により特定の疾病又は疾患(例えば癌)のリスクを有する患者、好ましくはヒトに対して予防手段として投与される。
本明細書に用いられているように、「治療する」、「治療している」及び「治療」という用語は、腫瘍又は原発、局所若しくは転移癌細胞又は組織の根絶、除去、改変又は抑制、及び癌の拡散の最小化又は遅延を含む。
【0018】
本明細書に用いられているように、「患者」という用語は、ヒト、サル、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ニワトリ、シチメンチョウ、ウズラ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ又はモルモット等の動物を含むが、それらに限定されない動物、一実施態様において哺乳類、他の実施態様においてヒトを意味する。特定の実施態様において、患者は、幼児、青年又は成人であり得る。特定の実施態様において、患者は、癌にかかっている、又は(例えば遺伝的又は環境的要因により)癌にかかりやすい。さらなる実施態様において、患者は、腫瘍にかかっている、又は(例えば遺伝的又は環境的要因により)腫瘍にかかりやすい。
【0019】
本明細書に用いられているように、ベンゾピラノン化合物とともに用いられる場合の「有効量」という用語は、一実施態様において、本明細書に開示されている疾病又は疾患を治療又は予防するのに有効なベンゾピラノン化合物の量を意味する。
本明細書に用いられている「医薬として許容し得る塩」という語句は、式(I)又は(II)の化合物の酸性又は塩基性基の塩を含むが、それらに限定されない。本質的に塩基性である本方法及び組成物に含まれる化合物は、様々な無機及び有機酸と広範な塩を形成することが可能である。当該塩基性化合物の医薬として許容し得る酸付加塩を調製するのに使用できる酸は、無毒性の酸付加塩、すなわち、硫酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酸クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩及びパモエート(すなわち1,1'-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート))塩を含むが、それらに限定されない、医薬として許容し得るアニオンを含む塩を形成するものが挙げられる。好ましい実施態様において、化合物は、塩酸塩の形態である。アミノ成分を含む本方法及び組成物に含まれる化合物は、上記酸に加えて、様々なアミノ酸と医薬又は化粧品として許容し得る塩を形成することができる。本質的に酸性である本方法及び組成物に含まれる化合物は、様々な医薬又は化粧品として許容し得るカチオンと塩基塩を形成することが可能である。当該塩の例としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩、特にカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、亜鉛、カリウム及び鉄塩が挙げられる。
【0020】
本明細書に用いられているように、「多形体」という用語は、ベンゾピラノン化合物又はその錯体の固体結晶形態を意味する。同一化合物の異なる多形体は、異なる物理、化学及び/又は分光特性を示すことができる。異なる物理特性としては、(例えば熱又は光に対する)安定性、(処方及び製品製造に重要である)圧縮性及び密度、及び(生物学的利用能に影響し得る)分解率が挙げられるが、それらに限定されない。安定性の差は、化学反応性の変化(例えば、投与形態は、ある多形体で構成される場合に他の多形体で構成される場合より急速に脱色するといったような示差的酸化)又は機械特性(例えば、錠剤は、動力学的に好ましい多形体が熱力学的により安定な多形体に変換されると保管時に砕ける)又はその両方(例えば、ある多形体の錠剤は、高湿度でより分解しやすい)に起因し得る。多形体の異なる物理特性は、それらの処理に影響し得る。例えば、ある多形体は、その粒子の形状又は粒径分布により、他の多形体より溶媒和物を形成しやすい、又は微粒子を濾過又は洗浄するのがより困難であり得る。
【0021】
本明細書に用いられているように、「水和物」という用語は、非共有結合分子間力によって結合された化学両論又は非化学両論量の水をさらに含むベンゾピラノン化合物又はその塩を意味する。
本明細書に用いられているように、「包接化合物」という用語は、内部に外来分子(例えば溶媒又は水)が取り込まれた空間(例えば流路)を含む結晶格子の形態であるベンゾピラノン化合物又はその塩を意味する。
【0022】
本明細書に用いられているように、そして他に指定がなければ、「プロドラッグ」という用語は、生物学的条件(インビトロ又はインビボ)下で加水分解、酸化又は反応することができるベンゾピラノン化合物を意味する。プロドラッグの例としては、生物加水分解性アミド、生物加水分解性エステル、生物加水分解性カルバマート、生物加水分解性炭酸塩、生物加水分解性ウレイド及び生物加水分解性リン酸塩類似体等の生物加水分解性成分を含むベンゾピラノン化合物の誘導体及び代謝物質が挙げられるが、それらに限定されない。好ましくは、カルボキシル官能基を有する化合物のプロドラッグは、カルボン酸の低級アルキルエステルである。カルボン酸エステルは、分子上に存在するカルボン酸成分のいずれかをエステル化することによって便利に形成される。プロドラッグは、典型的には、バーガーの医化学及び創来(Burger' Medicinal Chemistry and Drug Discovery)、第6版(Donald J. Abraham ed., 2001, Wiley)、及びプロドラッグの設計及び応用(Design and Application of Prodrugs)(H. Bundgaard ed., 1985, Harwood Academic Publishers Gmfh)に記載されている方法等の良く知られている方法を用いて調製され得る。
【0023】
本明細書に用いられているように、そして他に指定がなければ、「単一単位投与形態」という用語は、錠剤;キャプレット;軟弾性ゼラチンカプセル等のカプセル;カシェ剤;サシュ;トローチ;ロゼンジ;分散液;坐薬;軟膏;パップ剤(湿布剤);ペースト:粉末;包帯剤;クリーム;硬膏;溶液;パッチ;エアロゾル(鼻内噴霧剤又は吸入剤);ゲル;懸濁物(例えば、水性又は非水性液体懸濁物、水中油エマルション又は油中水液体エマルション)、溶液及びエリキシルを含む、患者への経口又は粘膜投与に好適な液体投与形態;患者への非経口投与に好適な液体投与形態;患者への非経口投与に好適な液体投与形態を与えるように復元することができる無菌固体(例えば結晶又は非晶質固体)を含む。本発明の単一単位投与形態は、患者への経口投与、粘膜(例えば、経鼻、舌下、口腔、頬又は直腸)投与、非経口(例えば、皮下、静脈内、ボーラス注射、筋肉内又は動脈内)投与、又は経皮投与に好適である。
【0024】
本明細書に用いられているように、そして特に指定がなければ、「立体異性体」という用語は、ベンゾピラノン化合物の1つの立体異性体は、該ベンゾピラノン化合物の他の立体異性体が実質的に含まないことを意味する。例えば、1つのキラル中心を有する立体異性体として純粋である化合物は、該化合物の反対の鏡像異性体を実質的に含まない。2つのキラル中心を有する立体異性体として純粋である化合物は、該化合物の他の立体異性体を実質的に含まない。典型的な立体異性体として純粋な化合物は、約80重量%を超える該化合物の1つの立体異性体及び約20重量%未満の該化合物の他の立体異性体、より好ましくは約90重量%を超える該化合物の1つの立体異性体及び約10重量%未満の該化合物の他の立体異性体、さらにより好ましくは約95重量%を超える該化合物の1つの立体異性体及び約5重量%未満の該化合物の他の立体異性体、約97重量%を超える該化合物の1つの立体異性体及び約3重量%未満の該化合物の他の立体異性体を含む。
本発明の非限定的な実施態様を例示することを意図する詳細な説明及び例を参照することにより、本発明をより深く理解することができる。
【0025】
(4.2 ベンゾピラノン化合物)
本発明は、式(I)の化合物、及びその医薬として許容し得る塩、水和物、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ及び立体異性体に関する:
【化2】

(式中、R1は、各出現ごとに独立に、ハロゲン又はトリフルオロメチルであり;nは、1、2又は3である)。
【0026】
一実施態様において、nは、1である。
他の実施態様において、nは、2である。
他の実施態様において、nは、3である。
他の実施態様において、R1は、ハロゲンである。
他の実施態様において、R1は、フルオロである。
他の実施態様において、R1は、クロロである。
他の実施態様において、R1は、トリフルオロメチルである。
【0027】
他の実施態様において、nは、1であり、R1は、ハロゲン(例えばフルオロ又はクロロ)である。
他の実施態様において、nは、1であり、R1は、トリフルオロメチルである。
他の実施態様において、nは、2であり、R1は、ハロゲン(例えばクロロ又はフルオロ)である。
他の実施態様において、nは、2であり、R1基は、ハロゲン(例えばクロロ又はフルオロ)であり、他のR1基は、トリフルオロメチルである。
他の実施態様において、nは、3であり、2個のR1基は、ハロゲン(例えばクロロ又はフルオロ)であり、他のR1基は、トリフルオロメチルである。
【0028】
他の実施態様において、式(I)の化合物は、4-(4-(2-(アゼパン-1-イル)エトキシ)ベンジル)-3-(2-クロロ-5-(トリフルオロメチル)フェニル)-7-ヒドロキシ-2H-クロメン-2-オン、4-(4-(2-(アゼパン-1-イル)エトキシ)ベンジル)-3-(2,6-ジクロロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル)-7-ヒドロキシ-2H-クロメン-2-オン、4-(4-(2-(アゼパン-1-イル)エトキシ)ベンジル)-3-(2-クロロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル)-7-ヒドロキシ-2H-クロメン-2-オン又は4-(4-(2-(アゼパン-1-イル)エトキシ)ベンジル)-3-(4-クロロ-2-(トリフルオロメチル)フェニル)-7-ヒドロキシ-2H-クロメン-2-オンを含まない。
【0029】
本発明は、式(II)の化合物、及びその医薬として許容し得る塩、水和物、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ及び立体異性体に関する
【化3】

(式中、R1、R2及びR3は、各出現ごとに独立に、H、ハロゲン又はトリフルオロメチルであり、R1、R2及びR3の少なくとも1つは、ハロゲン又はトリフルオロメチルである)。
【0030】
他の実施態様において、R1、R2及びR3の1つは、ハロゲンである。
他の実施態様において、R1、R2及びR3の1つは、フルオロである。
他の実施態様において、R1、R2及びR3の1つは、クロロである。
他の実施態様において、R1、R2及びR3の1つは、トリフルオロメチルである。
【0031】
他の実施態様において、R1、R2及びR3の2つは、ハロゲンである。
他の実施態様において、R1、R2及びR3の2つは、フルオロである。
他の実施態様において、R1、R2及びR3の2つは、クロロである。
他の実施態様において、R1、R2及びR3の2つは、トリフルオロメチルである。
【0032】
他の実施態様において、R1、R2及びR3は、ハロゲンである。
他の実施態様において、R1、R2及びR3は、フルオロである。
他の実施態様において、R1、R2及びR3は、クロロである。
他の実施態様において、R1、R2及びR3は、トリフルオロメチルである。
【0033】
他の実施態様において、R1、R2及びR3の1つは、ハロゲンであり、他は、Hである。
他の実施態様において、R1、R2及びR3の1つは、トリフルオロメチルであり、他は、Hである。
他の実施態様において、R1、R2及びR3の2つは、ハロゲンであり、他は、Hである。
他の実施態様において、R1、R2及びR3の2つは、ハロゲンであり、他は、トリフルオロメチルである。
【0034】
他の実施態様において、R1、R2及びR3の1つは、ハロゲンであり、R1、R2及びR3の1つは、トリフルオロメチルであり、他は、Hである。
他の実施態様において、R2は、ハロゲン又はCFであり、R1及びR3は、Hである。
他の実施態様において、R1及びR2は、ハロゲンであり、R3は、Hである。
【0035】
例示的なベンゾピラノン化合物を以下の表1に示す。
【表1】

【0036】
(4.3 ベンゾピラノン化合物を得るための方法)
ベンゾピラノン化合物を、当業者が知られている技術を用いることによって得ることができ、また本明細書に開示されている合成経路によって得ることもできる。例えば、式(I)のベンゾピラノン化合物を以下の一般反応スキーム1によって合成することができる。
【化4】

【0037】
下記式の化合物をカルボン酸出発材料として使用して、反応スキーム1に従って式(II)のベンゾピラノン化合物を調製することができる。
【化5】

【0038】
ベンゾピラノン化合物のいくつかは、水又は他の有機溶媒と溶媒和物を形成することができる。当該溶媒和物も同様に本発明の範囲に含まれる。
【0039】
(4.4 ベンゾピラノン化合物の治療及び予防的使用)
ベンゾピラノン化合物は、その活性により、獣医薬及びヒト用医薬に有用である。特に、ベンゾピラノン化合物は、癌の治療及び予防に有用である。
よって、本発明は、癌を治療又は予防するための方法であって、有効量のベンゾピラノン化合物を、それを必要とする患者に投与することを含む方法を提供する。好ましい実施態様において、患者は、ヒトである。他の好ましい実施態様において、ベンゾピラノン化合物は、経口投与される。
【0040】
一実施態様において、癌は、頭、首、眼、口、喉、食道、胸、骨、肺、結腸、直腸、胃、前立腺、乳房、卵巣、子宮、睾丸(又は他の生殖器)、皮膚、甲状腺、血液、リンパ節、腎臓、肝臓、膵臓、脳又は中枢神経系の癌である。
他の実施態様において、癌は転移している。特定の実施態様において、転移癌は、肺(小細胞又は非小細胞)、乳房、未知の原発性腫瘍、黒色腫又は結腸に由来していた。
他の実施態様において、癌は、原発性脳腫瘍である。
【0041】
特定の実施態様において、本発明において治療又は予防される癌としては、原発性頭蓋内中枢神経系腫瘍が挙げられるが、それに限定されない。原発性頭蓋内中枢神経系腫瘍としては、多形性膠芽腫;悪性星状細胞腫;乏突起細胞腫;上衣腫;低グレード星状細胞腫;髄膜腫;間葉腫瘍;下垂体腫瘍;シュヴァン鞘腫等の神経鞘腫;中枢神経系リンパ腫;髄芽腫;原始神経管外胚葉腫;ニューロン及びニューロン/膠腫;頭蓋咽頭腫;胚細胞腫瘍;及び脈絡叢腫瘍が挙げられる。
【0042】
他の実施態様において、本発明において治療又は予防される癌としては、シュヴァン鞘腫、髄膜腫、上衣腫、肉腫、星状細胞腫、膠腫、血管腫瘍、脊索腫及び類上皮腫等の原発性脊髄腫瘍が挙げられるが、それらに限定されない。
他の実施態様において、本発明において治療又は予防される癌としては、肺(小細胞及び非小細胞)、乳房、原発不明、黒色腫及び結腸等の脳転移に係わる原発性腫瘍が挙げられるが、それらに限定されない。
【0043】
他の実施態様において、本発明において治療又は予防される癌としては、乳房、結腸、前立腺、膵臓、卵巣又は子宮の固形腫瘍等の固形腫瘍が挙げられるが、それらに限定されない。他の実施態様において、固形腫瘍は、膠腫又は非小細胞肺癌である。
他の実施態様において、癌は、白血病である。
他の実施態様において、癌は、多剤抵抗性癌(例えば子宮癌)である。
【0044】
(4.5 ベンゾピラノン化合物を含む組成物)
ベンゾピラノン化合物は、患者、例えば獣医用途に対する動物又は臨床用途に対するヒトに投与される場合は、単離された形態であり得る。「単離された」とは、投与の前に、ベンゾピラノン化合物が、合成有機化学反応混合物、又は天然製品供給源、例えば植物物質、組織培養物、細菌液体培地、溶媒、反応物質及び他の製品等の他の成分から分離されることを意味する。一実施態様において、ベンゾピラノン化合物は、従来の技術、例えば、抽出後に、クロマトグラフィー、再結晶化、逆溶剤の添加による沈殿を行う技術、又は他の従来の技術を介して単離される。単離された形態である場合は、ベンゾピラノン化合物は、単離されたベンゾピラノン化合物の少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%又は少なくとも99.9重量%が単一ベンゾピラノン化合物である。「単一ベンゾピラノン化合物」は、ベンゾピラノン化合物の鏡像異性体又はラセミ体を意味する。
【0045】
ベンゾピラノン化合物は、有利には、組成物、一実施態様では医薬組成物の形態で投与される。これらの組成物は、任意の便利な経路、例えば注入又はボーラス注射、上皮又は粘膜皮膚内層(例えば、口内粘膜、直腸及び腸管粘膜)を通じての吸収、又は対流促進薬物送達系(convection-enhanced drug delivery system)によって投与され、他の活性剤と一緒に投与され得る。投与は、全身又は局所的であり得る。様々な送達系、例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセル、カプセルによる封入が知られており、本発明のベンゾピラノン化合物を投与するのに使用され得る。特定の実施態様において、本発明の2種以上のベンゾピラノン化合物が患者に投与される。投与方法としては、皮内、粘膜内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻内、硬膜外、経口、舌下、鼻内、脳内、鞘膜内、経皮、経腸投与、吸入による投与、又は耳、鼻、眼又は皮膚に対する局所投与が挙げられるが、それらに限定されない。好ましい実施態様において、投与は、経口投与である。投与の具体的な形態は、実務者の裁量に委ねられ、一部には癌の具体的な部位に依存し得る。
【0046】
一実施態様において、ベンゾピラノン化合物は、他の治療薬又は予防薬と組み合わせて投与される。特定の実施態様において、治療薬又は予防薬は、化学療法薬である。
他の実施態様において、ベンゾピラノン化合物は、治療が必要な部分に局部的に投与される。これは、例えば、そして限定することを目的とせずに、外科手術中の局部的注入、例えば外科手術後の創傷被覆剤と併用される局部的適用によって、注射によって、カテーテルによって、坐薬によって、或いは多孔質、非多孔質、又はシラスチック膜等の膜若しくは繊維を含むゼラチン材料であるインプラントによって達成され得る。一実施態様において、投与を原発性脳腫瘍又は脳転移の部位(又は前の部位における直接的な注射によって行うことができる。
【0047】
特定の実施態様において、ベンゾピラノン化合物は、脳室内及びクモ膜下注射を含む任意の好適な経路によって中枢神経系に投与される。脳室内注射を、例えば、オマヤレザバー(Ommaya reservoir)等の容器に接続された脳室内カテーテルによって容易にすることができる。
【0048】
例えば、吸入器又は噴霧器の使用、エアロゾル化剤による処方によって、又は炭化フッ素での潅漑又は合成肺界面活性剤によって肺投与を採用することもできる。特定の実施態様において、従来の結着剤及びトリグリセリド等の担体を用いてベンゾピラノン化合物を坐薬として処方することができる。
【0049】
一実施態様において、ベンゾピラノン化合物は、対流促進薬物送達系を介して投与される。他の実施態様において、ベンゾピラノン化合物は、引用により本明細書に全体が組み込まれている米国特許第5,720,720号に記載されているような対流促進薬物送達系を介して投与される。対流促進薬物送達は、注入カテーテルの先端を組織(例えば脳組織)内に配置し、かつ薬物(例えばベンゾピラノン化合物)をカテーテルに供給しながら、注入中にカテーテルの先端から正の圧力勾配を維持することを含む。カテーテルは、薬物を送達し、薬物の送達を通じて所望の圧力勾配を維持するポンプに接続される。薬物送達量は、約1cm以上の注入距離で、典型的には約0.5から約4.0ml/分である。この方法は、薬物の脳及び他の組織、特に固形神経組織への送達に特に有用である。特定の実施態様において、対流促進薬物送達は、成長因子、酵素、抗体、タンパク質複合体及び遺伝ベクター等の高分子量極性分子と組み合わせたベンゾピラノン化合物を脳又は他の組織に送達するのに有用である。これらの実施態様において、流入速度は、約15.0ml/分であり得る。
【0050】
他の実施態様において、本発明のベンゾピラノン化合物を媒体、特にリポソーム(Langer, Science 249:1527-1533 (1990);Treatらの論文、感染症及び癌の治療におけるリポソーム(Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer), Lopez-Berestein 及び Fidler (eds.), Liss, New York, pp. 353-365 (1989);Lopez-Berestein、同上文献、pp. 317-327参照;全体的に同上文献参照)。
【0051】
さらに他の実施態様において、ベンゾピラノン化合物は、徐放系で投与される。一実施態様において、ポンプを使用することができる(Langer、同上;Sefton, CRC Crit. Ref Biomed. Eng. 14:201 (1987);Buchwaldらの論文、Surgery 88:507 (1980);Saudekらの論文、N. Engl. J. Med. 321:574 (1989)参照)。他の実施態様において、重合体材料を使用することができる(徐放の医学的用途(Medical Applications of Controlled Release), Langer 及び Wise (eds.), CRC Pres., Boca Raton, Florida (1974);制御された薬剤の生物学的利用能、ドラッグデザイン及び性能(Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance), Smolen 及び Ball (eds.), Wiley, New York (1984);Ranger 及び Peppas, J. Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61 (1983)参照;Levyらの論文、Science 228:190 (1985);Duringらの論文、Ann. Neurol. 25:351 (1989);Howardらの論文、J. Neurosurg. 71.: 105 (1989)参照)。さらに他の実施態様において、徐放系をベンゾピラノン化合物の標的、例えば脳の近傍に配置することができるため、全身投与物の何分の一程度しか必要でなくなる(例えば、Goodson, 徐放の医学的用途(Medical Applications of Controlled Release), 同上, vol. 2, pp. 115-138 (1984)参照)。Langerによる論文(Science 249:1527-1533 (1990))に論述されている他の徐放系を使用することができる。
本組成物は、患者への適正な投与のための形態を提供するように、好適な量の医薬として許容し得る担体とともに、一実施態様では単離された形態の有効量のベンゾピラノン化合物を含む。
【0052】
一実施態様において、「医薬として許容し得る」という用語は、動物、特にヒトにおける使用について、連邦の監督機関又は州政府に承認されている、又は米国薬局法又は他の広く認識されている薬局法に掲載されていることを意味する。「担体」という用語は、ベンゾピラノン化合物とともに投与される希釈剤、補助剤、賦形剤又は媒体を意味する。当該医薬担体は、水、石油、落花生油、大豆油、鉱油及びゴマ油等の動物、植物及び合成原料を含む油等の液体であり得る。医薬担体は、生理食塩水、アラビアゴム、ゼラチン、デンプン糊、タルク、ケラチン、コロイドシリカ及び尿素等であり得る。また、補助剤、安定剤、増粘剤、潤滑剤及び着色剤を使用することができる。ベンゾピラノン化合物及び医薬として許容し得る担体は、患者に投与される場合は、無菌であり得る。水は、ベンゾピラノン化合物が静脈内投与される場合に有用な担体である。食塩水溶液及びブドウ糖及びグリセロール水溶液を特に注射可能溶液用の液体担体として採用することができる。好適な医薬担体は、デンプン、グルコース、ラクトース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、白墨、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水及びエタノール等の賦形剤をも含む。本組成物は、要望に応じて、少量の湿潤又は乳化剤、又はpH緩衝剤を含むこともできる。
【0053】
本組成物は、溶液、懸濁物、エマルション、錠剤、丸剤、小丸剤、カプセル、液体含有カプセル、粉末、持続放出製剤、坐薬、エマルション、エアロゾル、噴霧剤、懸濁物の形態又は使用に好適な任意の他の形態をとることができる。一実施態様において、医薬担体は、カプセルである(例えば、米国特許第5,698,155号参照)。好適な医薬担体の他の例は、E.W. Martinによる「レミントンの薬学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」(第20版, 2000)に記載されている。
【0054】
一実施態様において、ベンゾピラノン化合物は、ヒトに対する静脈内投与に合わせて構成された医薬組成物として、慣例の順に従って処方される。典型的には、静脈内投与のためのベンゾピラノン化合物は、無菌等張性水性緩衝液中の溶液である。必要に応じて、組成物は、可溶化剤を含むこともできる。静脈内投与のための組成物は、場合によって、注射の部位における痛みを軽減するためのリグノカイン等の局部麻酔剤を含むことができる。一般に、該成分は、単位投与形態で個別に又は混合して、例えば活性剤の量を表示したアンプル又はサシェ等の気密密封容器中の乾燥した凍結乾燥粉末又は無水濃縮物として供給される。ベンゾピラノン化合物は、注入によって投与される場合は、例えば、無菌の医薬グレードの水又は生理食塩水を含む注入ボトルで分配され得る。ベンゾピラノン化合物が注射によって投与される場合は、成分を投与前に混合できるように、注射用水又は食塩水のアンプルを提供することができる。経口送達のための組成物は、例えば、錠剤、ロゼンジ、水性又は油性懸濁物、顆粒、粉末、エマルション、カプセル、シロップ又はエリキシルの形態をとることができる。経口投与組成物は、医薬として良味な調製物を提供するために、場合によって1種以上の薬剤、例えば、果糖、アスパラターム又はサッカリン等の甘味料;ペパーミント、ウィンターグリーン油又はチェリー等の香料;着色剤;及び防腐剤を含むことができる。さらに、錠剤又は丸剤の形態である場合は、胃腸間における崩壊及び吸収を遅らせるために組成物を被覆することにより、長時間にわたって持続的な作用を提供することができる。浸透圧的に活性の駆動化合物を囲む選択的浸透膜も経口投与ベンゾピラノン化合物に好適である。これらの後者の構造において、カプセルを囲む環境からの流体は、駆動化合物に吸収され、膨張して、開口を通じて薬剤又は薬剤組成物を移動させる。これらの送達プラットフォームは、即時放出製剤のスパイクプロフィル(spiked profile)と反対に実質的に0次の送達プロフィルを提供することができる。モノステアリン酸グリセロール又はステアリン酸グリセロール等の時間遅延材料を使用することもできる。経口組成物は、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロース又は炭酸マグネシウム等の標準的な担体を含むことができる。当該担体は、医薬グレードであり得る。
【0055】
癌を治療又は予防するのに有効であるベンゾピラノン化合物の量を、標準的な技術を用いて決定することができる。また、インビトロ又はインビボ検定を場合によって採用して、最適な投与量範囲を特定するのに役立てることができる。有効な投与量は、投与経路、及び疾病又は疾患の重度にも依存し得るため、実務者の判断及び各患者の状況に応じて決定されるべきである。しかし、ベンゾピラノン化合物の有効な経口投与量の一般的な範囲は、約0.5mg/日から約5000mg/日、一実施態様において約500mg/日から約3500mg/日、他の一実施態様において約1000mg/日から約3000mg/日、他の一実施態様において約1500mg/日から約2500mg/日、他の一実施態様において約2000mg/日である。他の実施態様において、静脈内投与に対する有効量は、経口投与量の約10%であり、対流促進薬物投与に対する有効量は、経口投与量の約1%である。勿論、化合物の日投与量を1日のそれぞれの時間に分けて投与することは、しばしば実用的である。しかし、いずれの場合も、投与されるベンゾピラノン化合物の量は、活性成分の溶解度、使用される製剤及び投与経路のような要因に依存することになる。坐薬は、一般には、約0.5重量%から約10重量%の範囲の有効量のベンゾピラノン化合物を含む。経口組成物は、約10%から約95%のベンゾピラノン化合物を含むことができる。本発明のいくつかの実施態様において、経口投与のための好適な有効投与量は、一般には、体重1kg当たりベンゾピラノン化合物が約10〜500mgである。他の実施態様において、有効な経口投与量は、体重1kg当たり約10〜100mg、100〜300mg、300〜900mg又は900〜1500mgである。他の実施態様において、有効な経口投与量は、体重1kg当たり約100〜200mg、200〜300mg、300〜400mg又は400〜500mgである。本発明の他の実施態様において、経口投与のための有効投与量は、一般には、体重1kg当たりベンゾピラノン化合物が1〜7500マイクログラムである。他の実施態様において、有効な経口投与量は、体重1kg当たり約1〜10マイクログラム、10〜30マイクログラム、30〜90マイクログラム又は90〜150マイクログラムである。他の実施態様において、有効な経口投与量は、体重1kg当たり約150〜250マイクログラム、250〜325マイクログラム、325〜450マイクログラム、450〜1000マイクログラム又は1000〜7500マイクログラムである。有効投与量をインビトロ又は動物モデル試験システムから導かれた投与量応答曲線から推定することができる。当該動物モデル及びシステムは、当該技術分野で良く知られている。
【0056】
本発明は、また、1種以上のベンゾピラノン化合物を含む1つ以上の容器を含む医薬パック又はキットを提供する。当該容器には、医薬品又は生物製品の製造、使用又は販売を監督する政府機関によって規定された形態の注意書きが場合によって付随し、その注意書きは、ヒトへの投与についての政府機関による製造、使用又は販売の承認を示す。特定の実施態様において、キットは、ベンゾピラノン化合物の前、後又は同時に投与することができる1種以上の他の化学療法剤を含むこともできる。
【0057】
ベンゾピラノン化合物をヒトへの使用に先立って、所望の治療又は予防活性について、インビトロ、次いでインビボで検定することができる。例えば、インビトロ検定を用いて、特定のベンゾピラノン化合物又はベンゾピラノン化合物の組合せの投与が好ましいかどうかを判断することができる。
【0058】
一実施態様において、患者の組織試料が培養で成長され、ベンゾピラノン化合物と接触又はベンゾピラノン化合物を投与され、ベンゾピラノン化合物の組織試料に対する影響が観察され、非接触組織と比較される。他の実施態様において、細胞培養物の細胞が、ベンゾピラノン化合物と接触され、又はベンゾピラノン化合物を投与される細胞培養モデルが用いられ、ベンゾピラノン化合物の組織試料に対する影響が観察され、非接触細胞培養物と比較される。一般に、非接触細胞と比較して接触細胞の増殖又は生存のレベルが低いと、ベンゾピラノン化合物は、癌を有する患者の治療に有効であることが示される。動物モデルシステムを用いて、当該ベンゾピラノン化合物が有効且つ安全であることを実証することもできる。
【0059】
ベンゾピラノン化合物は、医薬として許容し得る塩の形態をとることができる。医薬として許容し得る塩は、ベンゾピラノン化合物の遊離塩基形態を上記の好適な酸と反応させることによって、有機化学で通常行われているように便利に形成される。塩を中温にて高収率で形成することができ、合成の最終工程で好適な酸性洗浄物からベンゾピラノン化合物の塩形態を単離することによって調製することができる。塩形成酸を無水物、又は含水有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール又はイソプロパノール等のアルカノール;アセトン等のケトン;酢酸エチル等のエステルに溶解させることができる。一方、ベンゾピラノン化合物の遊離塩基形態が望まれる場合は、それを塩基性の最終洗浄工程から単離することができる。塩酸塩を調製するための典型的な技術は、遊離塩基を好適な溶媒に溶解させ、塩化水素ガスを気泡化する前に、その溶液を分子篩等で完全に乾燥させることである。
【0060】
(4.6 さらなる療法)
癌を治療又は予防するための方法であって、有効量のベンゾピラノン化合物を投与することを含む方法は、有効量の他の療法を適用することをさらに含むことができる。他の療法としては、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、骨髄移植、幹細胞置換療法、他の生物学的療法及び免疫療法が挙げられるが、それらに限定されない。
【0061】
一実施態様において、本発明の方法は、アンギオスタチン(プラスミノゲン断片);抗血管形成抗トロンビンIII;アンギオザイム;ABT-627;ベイ12-9566;ベネフィン;ベバシズマブ;BMS-275291;軟骨由来阻害剤(cartilage-derived inhibitor)(CDI);CAI;CD59相補断片;CEP-7055;Col 3;コンブレタスタチンA-4;エンドスタチン(コラーゲンXVIII断片);フィブロネクチン断片;グロ−ベータ;ハロフギノン;ヘパリナーゼ:ヘパリン六糖断片;HMV833;ヒト絨毛性ゴナドトロピン(human chorionic gonadotropin)(hCG);IM-862;インターフェロンアルファ/ベータ/ガンマ;インターフェロン誘導性タンパク質(IP-10);インターロイキン-12;クリングル5(プラスミノゲン断片);マリマスタット;デキサメタソン等の(ただし、それに限定されない)抗炎症ステロイド;メタロプロテイナーゼ阻害剤(TIMP);2-メトキシエストラジオール;MMI 270(CGS 27023A);MoAb IMC-1C11;ネオバスタット;NM-3;パンゼム;PI-88;プラセンタルリボヌクレアーゼ阻害剤;プラスミノゲン活性体阻害剤;血小板因子-4(Platelet factor)(PF4);プリノマスタット;プロラクチン16kD断片;プロリフェリン関連タンパク質(Proliferin-related protein)(PRP);PTK 787/ZK 222594;レチノイドソリマスタット;スクアラミン;SS 3304;SU 5416;SU6668;SU11248;テトラヒドロコルチソール-S;テトラチオモリブデン酸塩;サリドマイド;トロンボスポンジン-1(Thrombospondin)(TSP-1);TNP-470;形質転換成長因子-ベータ(Transforming growth factor-beta)(TGF-b);バスクロスタチン;バソスタチン(カルレティキュリン断片);ZD6126;ZD 6474;ファルネシル転移酵素阻害剤(farnesyl transferase inhibitor)(FTI);及びビスホスホン酸塩(例えば、アレンドロネート、エチドロネート、パミドロネート、リセドロネート、イバンドロネート、ゾレドロネート、オルパドロネート、イカンドロネート又はネリドロネート)等の(ただし、それらに限定されない)血管形成阻害剤を投与することをさらに含む。
【0062】
他の療法は、抗癌薬の投与であり得る。有用な抗癌薬としては、下記のものが上げられるが、これらに限定されない:アシビシン;アクラルビシン;塩酸アコダゾール;アクロニン;アドゼレシン;アルデスロイキン;アルトレタミン;アンボマイシン;酢酸アメタントロン;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;塩酸ビサントレン;ビスナフィドジメシラート;ビゼレシン;硫酸ブレオマイシン;ブレキナルナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベチメル;カルボプラチン;カルムスチン;塩酸カルビシン;カルゼレシン;セデフィンゴール;クロラムブシル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;クリスナトールメシラート;シクロホスファミド;シタラビン;デカルバジン;ダクチノマイシン;塩酸ダウノルビシン;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;デザグアニンメシラート;ジアジクオン;ドセタキセル;ドキソルビシン;塩酸ドキソルビシン;ドロロキシフェン;クエン酸ドロロキシフェン;プリピオン酸ドロモスタノロン;デュアゾマイシン;エダトレキサート;塩酸エフロルニチン;エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロマート;エピプロピジン;塩酸エピルビシン;エルブロゾール;エルビツクス;塩酸エソルビシン;エストラムスチン;リン酸エストラムスチンナトリウム;エタニダゾール;エトポシド;リン酸エトポシド;エトプリン;塩酸ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フロクスリジン;リン酸フルダラビン;フルオロウラシル;フルロシタビン;ホスキドン;ホストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;塩酸ゲムシタビン;ヒドロキシ尿素;塩酸イダルビシン;イホスファミド;イルモホシン;ImiDs(商標);インターロイキンII(組換えインターロイキンII又はrIL2を含む)、インターフェロン-2a;インターフェロンアルファ-2b;インターフェロンアルファ-n1;インターフェロンアルファ-n3;インターフェロンベータ-Ia;インターフェロンガンマ-Ib;イプロプラチン;塩酸イリノテカン;酢酸ランレオチド;レトロゾール:酢酸ロイプロリド;塩酸リアロゾール;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン;塩酸ロソキサントロン;マソプロコル;マイタンシン;塩酸メクロレタミン;酢酸メゲストロール;酢酸メレンゲストロール;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキサート;メトトレキサートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;ミトカルシン;ミトクロミン;ミトギリン;ミトマルシン;ミトマイシン;ミトスペル;ミトタン;塩酸ミトキサントロン;マイコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;パクリタキセル;ペガスパルガーゼ;ペリオマイシン;ペンタムスチン;硫酸ペプロマイシン;ペルホスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;塩酸ピロキサントロン;プリカマイシン;プロメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;塩酸プロカルバジン;プロマイシン;塩酸プロマイシン;ピラゾフリン;リボプリン;ログレチミド;サフィンゴール;塩酸サフィンゴール;SelCID(登録商標);セムスチン;シムトラゼン;スパルホサートナトリウム;スパルソマイシン;塩酸スピロゲルマニウム;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェヌル;タリソマイシン;テコガランナトリウム;テガフル;塩酸テロキサントロン;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;クエン酸トレミフェン;酢酸トレストロン;リン酸トリシリビン;トリメトレキサート;グルクロン酸トリメトレキサート;トリプトレリン;塩酸ツブロゾール;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポリフィン;硫酸ビンブラスチン;硫酸ビンクリスチン;ビンデシン;硫酸ビンデシン;硫酸ビネピジン;硫酸ビングリシナート;硫酸ビンロイロシン;酒石酸ビノレルビン;硫酸ビンロシジン;硫酸ビンゾルジン;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;塩酸ゾルビシンである。他の抗癌剤としては、下記のものがあげられるが、これらに限定されない:20-エピ-1,25ジヒドロキシビタミンD3;5-エチニルウラシル;アビラテロン;アクラルビシン;アシルフルベン;アデシペノール;アドゼレシン;アルデスロイキン;ALL-TKアンタゴニスト;アルトレタミン;アンバムスチン;アミドックス;アミホスチン;アミノレブリン酸;アムルビシン;アムサクリン;アナグレリド;アナストロゾール;アンドログラホリド;血管形成阻害剤;アンタゴニストD;アンタゴニストG;アンタレリクス;抗背方化形態形性タンパク質-1;抗アンドロゲン、前立腺癌;抗エストロゲン;抗ネオプラストン;アフィジコリングリシネート;アポトーシス遺伝子モジュレータ;アポトーシス調節剤;アプリン酸;アラ-CDP-DL-PTBA;アルギニンデアミラーゼ;アスラクリン;アタメスタン;アトリムスチン;アキシナスタチン1;アキシナスタチン2;アキシナスタチン3;アザセトロン;アザトキシン;アザチロシン;バカチンIII誘導体;バラノール;バチマスタット;BCR/ABLアンタゴニスト;ベンゾクロリン;ベンゾイルスタウロスポリン;ベータラクタム誘導体;ベータ-アレチン;ベータクラマイシンB;ベツリニン酸;bFGF阻害剤;ビカルタミド;ビサントレン;ビサジリジニルスペルミン;ビスナフィド;ビストラテンA;ビゼレシン;ブレフレート;ブロピリミン;ブドチタン;ブチオニンスルフォキサミド;カルシポトリオール;カルホスチンC;カンプトテシン誘導体;カナリポクスIL-2;カペシタビン;カルボキサミド-アミノ-トリアゾール;カルボキサミドトリアゾール;CaRest M3;CARN 700;軟骨由来阻害剤;カルゼレシン;カゼインキナーゼ阻害剤(ICOS);カスタノスペルミン;セクロピンB;セトロレリクス;クロルンス(chlorlus);クロロキノキサリンスルホンアミド;シカプロスト;シス-ポリフィリン;クラドリビン;クロミフェン類似体;クロトリマゾール;コリスマイシンA;コリスマイシンB;コンブレタスタチンA4;コンブレタスタチン類似体;コナゲニン;クラムベシジン816;クリスナトール;クリプトフィシン8;クリプトフィシンA誘導体;クラシンA;シクロペンタントラキノン;シクロプラタム;シペマイシン;シタラビンオクホスフェート;細胞溶解因子;シトスタチン;ダクリキシマブ;デシタビン;デヒドロジデムニンB;デスロレリン;デキサメタソン;デキシホスファミド;デキスラゾキサン;デキスベラパミル;ジアジクオン;ジデムニンB;ジドックス;ジエチルノルスペルミン;ジヒドロ-5-アザシチジン;ジヒドロタキソール、9-;ジオキサマイシン;ジフェニルスピロムスチン;ドセタキセル;ドコサノール;ドラセトロン;ドキシフルリジン;ドロロキシフェン;ドロナビノール;デュオカルマイシンSA;エブセレン;エコムスチン;エデルホシン;エドレコロマブ;エフロルニチン;エレメン;エミテフル;エピルビシン;エプリステリド;エストラムスチン類似体;エストロゲンアゴニスト;エストロゲンアンタゴニスト;エタニダゾール;リン酸エトピシド;エキセメスタン;ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フィルグラスチン;フィナステリド;フラボピリドール;フレゼラスチン;フルアステロン;フルダラビン;塩酸フルオロダウノルニシン;ホルフェニメクス;ホルメスタン;ホストリエシン;ホテムスチン;ガドリニウムテキサフィリン;硝酸ガリウム;ガロシタビン;ガニレリクス;ゲラチナーゼ阻害剤;ゲムシタビン;グルタジオン阻害剤;ヘプスルファム;ヘレグリン;ヘキサメチレンビスアセトアミド;ヒペリシン;イバンドロニン酸;イダルビシン;イドキシフェン;イドラマントン;イルモホシン;イロマスタット;イミダゾアクリドン;イミキモド;免疫増強ペプチド;インシュリン様成長因子-1受容体阻害剤;インターフェロンアゴニスト;インターフェロン;インターロイキン;イオベングアン;ヨードドキソルビシン;イポメアノール、4-;イロプラクト;イルソグラジン;イソベンガゾール;イソホモハリコンドリンB;イタセトロン;ジャスプラキノリド;カハラリドF;三酢酸ラメラリン-N;ランレオチド;レイナマイシン;レノグラスチン;硫酸レンチナン;レプトルスタチン;レトロゾール;白血病阻害因子;白血球アルファインターフェロン;ロイプロリド+エストロゲン+プロゲステロン;ロイプロレリン;レバミソール;リアロゾール;直鎖ポリアミン類似体;親油性ジサッカリドペプチド;親油性白金化合物;リソクリナミド7;ロバプラチン;ロンブリシン;ロメトレキソール;ロニダミン;ロソキサントロン;ロバスタチン;ロキソリビン;ルルトテカン;ルテチウムテキサフィリン;リソフィリン;溶解性ペプチド;マイタンシン;マノスタチンA;マリマスタット;マソプロコル;マスピン;マトリリシン阻害剤;マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤;メノガリル;マルバロン;メテレリン;メチオニナーゼ;メトクロプラミド;MIF阻害剤;ミフェスリプトン;ミルテホシン;ミリモスチン;ミスマッチ二本鎖RNA;ミトグアゾン;ミトラクトル;ミトマイシン類似体;ミトナフィド;ミトトキシン線維芽成長因子-サポリン;ミトキサントロン;モファロテン;モルグラモスチン;モノクローナル抗体、ヒト絨毛性ゴナドトロピン;モノホスホリル脂質A+ミコバクテリア細胞壁sk;モピダモル;多剤抵抗性遺伝子阻害剤;多発性腫瘍抑圧遺伝子1に基づく療法;マスタード抗癌薬;ミカペルオキシドB;ミコバクテリア細胞壁抽出物;ミリアポロン;N-アセチルジナリン;N置換ベンズアミド;ナファレリン;ナグレスチプ;ナロキソン+ペンタゾシン;ナパビン;ナフテルピン;ナルトグラスチム;ネダプラチン;ネモルビシン;ネリドロン酸;中性エンドペプチダーゼ;ニルタミド;ニサマイシン;酸化窒素モジュレータ;窒素酸化物酸化防止剤;ニトルリン;O6-ベンジルグアニン;オクトレオチド;オキセノン;オリゴヌクレオチド;オナプリストン;オンダンセトロン;オラシン;経口サイトカイン誘導剤;オルマプラチン;オサテロン;オキサリプラチン;オキサウノマイシン;パクリタキセル;パクリタキセル類似体;パクリタキセル誘導体;パラウアミン;パルミトイルリゾキシン;パミドロン酸;パナキシトリオール;パノミフェン;パラバクチン;パゼリプチン;ペガスパルガーゼ;ペルデシン;ペントサンポリスルフェートナトリウム;ペントスタチン:ペントロゾール;ペルフルブロン;ペルホスファミド;ペリリルアルコール;フェナジノマイシン;酢酸フェニル;ホスファターゼ阻害剤;ピシバニル;塩酸ピロカルピン;ピラルビシン;ピレトレキシム;プラセチンA;プラセチンB;プラスミノゲン活性体阻害剤;白金錯体;白金化合物;白金-トリアミン錯体;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニソン;プロピルビス-アクリドン;プロスタグランジンJ2;プロテアソーム阻害剤;タンパク質Aをベースとした免疫モジュレータ;タンパク質キナーゼC阻害剤; タンパク質キナーゼC阻害剤、ミクロアルガル;タンパク質チロシンホスファターゼ阻害剤;プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤;プルプリン;ピラゾロアクリジン;ピリドキシ化ヘモグロビンポリオキシエチレン複合体;raf-アンタゴニスト;ラルチトレキシド;ラモセトロン;rasファルネシルタンパク質転移酵素阻害剤;ras阻害剤;ras-GAP阻害剤;脱メチル化レテリプチン;レニウムRe 186エチドロネート;リゾキシン;リボザイム;RIIレチナミド;ログレチミド;ロヒツキン;ロムルチド;ロキニメックス;ルビギノンB1;ルボキシル;サフィンゴール;サイントピン;SarCNU;サルコフィトールA;サルグラモスチン;Sdi 1模倣体;セムスチン;セネセンス由来阻害剤1;センスオリゴヌクレオチド;シグナル伝達阻害剤;シグナル伝達モジュレータ;一本鎖抗原結合タンパク質;シゾフィラン;ソブゾキサン;ナトリウムボロカプテート;フェニル酢酸ナトリウム;ソルベロール;ソマトメジン結合タンパク質;ソネルミン;スパルホス酸;スピカマイシンD;スピロムスチン;スプレノペンチン;スポンギスタチン1;スクアラミン;幹細胞阻害剤;幹細胞分裂阻害剤;スチピアミド;ストロメライシン阻害剤;スルフィノシン;超活性血管作動性腸ペプチドアンタゴニスト;スラジスタ;スラミン;スワインソニン;合成グリコサミノグリカン;タリムスチン;タモキシフェンメチオジド;タウロムスチン;タザロテン;テコガランナトリウム;テガフル;テルラピリリウム;テロメラーゼ阻害剤;テモポルフィン;テモゾロミド;テニポシド;テトラクロロデカオキシド;テト
ラゾミン;タリブラスチン;チオコラリン;トロンボポイエチン;トロンボポイエチン模倣体;チマルファシン;チモポイエチン受容体アゴニスト;チモトリアン;チロイド刺激ホルモン;スズエチルエチオプルプリン;チラパザミン;二塩化チタノセン;トプセンチン;トレミフェン;トチポテント幹細胞因子;翻訳阻害剤;トレチノイン;トリアセチルウリジン;トリシリビン;トリメトレキセート;トリプトレリン;トロピセトロン;ツロステリド;チロシンキナーゼ阻害剤;トリホスチン;UBC阻害剤;ウベニメックス;泌尿生殖洞由来成長阻害因子;ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト;バプレオチド;バリオリンB;ベクター系、赤血球遺伝子療法;ベラレソル;ベラミン;バージン;ベルテポルフィン;ビノレルビン;ビンキサルチン;ビタキシン;ボロゾール;ザノテロン;ゼニプラチン;ジラスコルブ;及びジノスタチンスチマラマーである。一実施態様において、抗癌薬は、有効量のサリドマイド又はトポイソメラーゼ阻害剤の投与の前、後又は同時に投与することもできる5-フルオロウラシル又はロイコボリンである。
【0063】
他の療法は、X線、ガンマ線、及び癌細胞を破壊するための他の放射線源の使用を含む放射線療法であり得る。いくつかの実施態様において、放射線治療は、外部ビーム放射、又は放射線が遠隔の供給源から誘導される遠隔治療として施される。他の実施態様において、放射線治療は、内部療法、又は放射性線源が体内の癌細胞又は腫瘍塊の近くに配置される近接照射療法として施される。
【0064】
(4.7 癌及び新生細胞及び疾病の阻害)
当該技術分野で知られている、又は本明細書に記載されている様々な検定を用いて、ベンゾピラノン化合物は、インビトロ及びインビボで細胞増殖、細胞形質転換及び/又は腫瘍化を阻害することを実証することができる。ベンゾピラノン化合物を腫瘍細胞と接触させることによって、当該活性をインビトロ検定で実証することができる。概して、腫瘍細胞は、腫瘍細胞を様々な濃度のベンゾピラノン化合物に接触させ、その後、対照と比較して細胞生存率を測定する。当該検定は、癌細胞系の細胞又は患者の細胞を使用することができる。当該技術分野で良く知られている多くの検定を用いて、当該生存率及び/又は成長率を評価することができる。例えば、癌原遺伝子(例えばfos、myc)若しくは細胞周期マーカー(Rb、cdc2、シクリンA、D1、D2、D3、E等)等の知られている遺伝子の転写、翻訳又は活性の変化を検出することによって、直接的な細胞係数により、(3H)-チミジン取込みを測定することによって細胞増殖を検定することができる。当該タンパク質及びmRNAのレベル及び活性を当該技術分野で良く知られている任意の方法によって測定することができる。例えば、市販の抗体(例えば、多くの細胞周期マーカー抗体は、Santa Cruz Inc.から得られる)を使用して、ウェスタンブロット法又は免疫沈降等の知られている免疫診断法によってタンパク質を定量することができる。例えば、ノーザン分析、RNアーゼ保護又はポリメラーゼ鎖反応を逆転写と併用して、当該技術分野で良く知られており、慣例である方法によってmRNAを定量することができる。トリパンブルー染色、又は当該技術分野で知られている他の細胞死若しくは生存度マーカーを使用することによって細胞生存度を評価することができる。分化を、例えば、形態の変化に基づいて目視評価することができる。
【0065】
当該技術分野で知られている、又は本明細書に記載されている様々な検定を用いて、ベンゾピラノン化合物は、インビトロ及びインビボで、膠腫細胞増殖、細胞形質転換及び腫瘍化を阻害できることを実証することもできる。当該活性は、ベンゾピラノン化合物を膠腫細胞と接触させることによって、当該活性をインビトロ検定で実証することができる(Haroun, R.I.らの論文、J Neurooncol 58:115-23 (2002);Sharma A.らの論文、J. Mol. Neurosci. 17:331-9 (2001);Iwadate Y.らの論文、Int. J. Mol. Med. 10:187-92 (2002))。
【0066】
本発明は、以下の例を含むが、それらに限定されない当該技術分野で知られている様々な技術による細胞周期及び細胞増殖分析に対応する。
一例として、検定としてブロモデオキシウリジン(bromodeoxyuridine)(BRDU)を使用して、増殖細胞を識別することができる。BRDU検定は、BRDUを新たに合成されたDNAに取り込むことによってDNA合成を受ける細胞集団を識別する。次いで、抗BRDU抗体を使用して、新たに合成されたDNAを識別することができる(Hoshinoらの論文、Int. J. Cancer 38:369 (1986);Campanaらの論文、J. Immunol. Meth. 107:79 (1988)参照)。
【0067】
(3H)-チミジン取込みを用いて、細胞増殖を調べることもできる(例えば、Chen, J., Oncogene 13:1395-403 (1996);Jeoung, J., J. Biol. Chem. 270:18367-73 (1995)参照)。この検定は、S-相DNA合成の定量的特徴付けを可能にする。この検定において、DNAを合成する細胞は、(3H)-チミジンを新たに合成されたDNAに取り込むことになる。次いで、シンチレーションカウンタ(例えば、Beckman LS 3800液体シンチレーションカウンタ)における放射線同位体の計数等による当該技術分野の標準的な技術によって取込みを測定することができる。
【0068】
増殖細胞核抗原(proliferating cell nuclear antigen)(PCNA)の検出を用いて、細胞増殖を測定することもできる。PCNAは、その発現が増殖細胞、特に細胞周期の初期G1及びS相において増加する36キロダルトンのタンパク質であるため、増殖細胞に対するマーカーとして機能することができる。陽性細胞は、抗PCNA抗体を使用する免疫染色によって識別される(Liらの論文、Curr. Biol. 6:189-199 (1996);Vassilevらの論文、J. Cell Sci. 108:1205-15 (1995)参照)。
【0069】
細胞集団の試料を経時的に計数すること(例えば毎日細胞計数)によって、細胞増殖を測定することができる。血球計及び光学顕微鏡(例えば、HyLite血球計、Hausser Scientific)を使用して細胞を計数することができる。対象の集団に対する成長曲線を得るために、細胞数を時間に対してプロットすることができる。好ましい実施態様において、この方法で計数された細胞は、生細胞が染料を排除するようにトリパン-ブルー染料(Sigma)と最初に混合され、集団の生存可能メンバーとして計数される。
【0070】
細胞のDNA含有率及び/又は分裂指数を例えば細胞のDNA倍数値に基づいて測定することができる。例えば、細胞周期のG1相は、一般には、2NのDNA倍数値を含む。DNAが複製されたが、有糸分裂を通じて発達しなかった細胞(例えば、S相の細胞)は、2Nより大きく、4Nまでの倍数値のDNA含有率を示すことになる。プロピジウムヨード検定を用いて、倍数値及び細胞周期運動を測定することができる(例えば、Turner, T.らの論文、Prostate 34:175-81 (1998)参照)。或いは、コンピュータ化された微小濃度測定染色システムによる(化学量論的にDNAに結合する)DNAフォイルゲン染色の定量によってDNA倍数性を測定することができる(例えば、Bacus, S., Am. J. Pathol.135:783-92 (1989)参照)。他の実施態様において、DNA含有率を染色体拡散物の調製によって分析することができる(Zabalou, S., Hereditas 120:127-40 (1994);Pardue, Meth. Cell Biol. 44:333-351 (1994))。
【0071】
細胞周期タンパク質(例えば、CycA、CycB、CycE、CycD、cdc2、Cdk4/6、Rb、p21、p27等)の発現は、細胞又は細胞の集団の増殖状態に関する重要な情報を提供する。例えば、抗増殖シグナル伝達路における識別は、p21ciplの誘導によって示され得る。細胞におけるp21発現のレベルの増加は、細胞周期のG1への投入の遅延をもたらす(Harperらの論文、Cell 75:805-816 (1993);Liらの論文、Curr. Biol. 6:189-199 (1996))。市販の特定の抗p21抗体(例えば、Santa Cruz)を使用する免疫染色によってp21誘導を識別することができる。同様に、市販の抗体を使用するウェスタンブロット分析によって、細胞周期タンパク質を調べることができる。他の実施態様において、細胞集団は、細胞周期タンパク質の検出の前に同期される。対象のタンパク質に対する抗体を使用するFACS(蛍光標示式細胞分取器(fluorescence-activated cell sorter))分析によって細胞周期タンパク質を検出することもできる。
【0072】
細胞周期の長さ又は細胞周期の速度の変化の検出を用いて、ベンゾピラノン化合物による細胞増殖の阻害を測定することもできる。一実施態様において、細胞周期の長さは、(例えば、本発明の1種以上のベンゾピラノン化合物と接触された、又は接触されていない細胞を使用して)細胞の集団の倍加時間によって測定される。他の実施態様において、FACS分析は、細胞周期進行の相を分析する、又はG1、S及びG2/M断片を精製するのに用いられる(例えば、Delia, D.らの論文、Oncogene 14:2137-47 (1997)参照)。
【0073】
細胞周期チェックポイントの消滅及び/又は細胞周期チェックポイントの誘導を本明細書に記載されている方法又は当該技術分野で知られている方法によって調べることができる。制限することなく、細胞周期チェックポイントは、一定の細胞事象が特定の順序で生じることを保証する機構である。チェックポイント遺伝子は、初期事象が先に完了することなく後期事象が生じることを可能にする変異によって定義づけられる(Weinert, T., and Hartwell, L., Genetics, 134:63-80 (1993))。細胞周期チェックポイント遺伝子の誘導又は阻害を例えばウェスタンブロット分析又は免疫染色等によって検定することができる。細胞周期チェックポイントの消滅を、特定の事象が先に発生することなく細胞がチェックポイントを進行すること(例えば、ゲノムDNAが完全に複製されることなく有糸分裂に進行すること)によってさらに評価することができる。
【0074】
特定の細胞周期タンパク質の発現の効果に加えて、細胞周期に関与するタンパク質の活性及び翻訳後修飾は、細胞の調節及び増殖状態において不可欠な役割を果たし得る。本発明は、当該技術分多で知られている任意の方法によって翻訳後修飾(リン酸化)の検出を含む検定に対応する。例えば、リン酸化チロシン残基を検出する抗体は、市販されており、それをウェスタンブロット分析に使用して、当該修飾を有するタンパク質を検出することができる。他の実施態様において、ミリスチル化等の修飾を薄層クロマトグラフィー又は逆相h.p.l.c.で検出することができる(例えば、Glover, C., Biochem. J. 250:485-91 (1988);Paige, L., Biochem J. 250:485-91 (1988))。
【0075】
シグナル伝達、及び細胞周期タンパク質及び/又はタンパク質複合体の活性は、キナーゼ活性によってしばしば媒介される。本発明は、ヒストンH1検定等の検定によるキナーゼ活性の分析に対応する(例えば、Delia, D.らの論文、Oncogene 14:2137-47 (1997)参照)。
当該技術分野で良く知られている方法を用いて、ベンゾピラノン化合物は、インビトロで培養細胞における細胞増殖を改変することを実証することもできる。原発性脳腫瘍及び脳転移に対する細胞培養の具体例としては、米国特許第6,194,158号;第6,051,376号及び第6,071,696号に見いだされるモデルが挙げられるが、それらに限定されない。
【0076】
ベンゾピラノン化合物は、インビトロで細胞形質転換(又は悪性表現型への進行)を阻害することを実証することもできる。本実施態様において、形質転換細胞表現型を有する細胞を1種以上のベンゾピラノン化合物と接触させ、形質転換表現型に伴う特性(インビボでの腫瘍化能力に伴うインビトロ特性の集合)の変化、例えば、軟寒天におけるコロニー形性、細胞形態がより丸みを帯びること、基層接着の緩み、接触阻害の低下、付着依存性の低下、プラスミノゲン活性体等のタンパク質分解酵素の放出、糖輸送の増加、血清必要量の減少、又は胎児性抗原の発現等(ただし、それらに限定されない)について調べる(Luriaらの論文、1978, General Virology, 第3版, John Wiley & Sons, New York, pp. 436-446参照)。
【0077】
侵入性の損失又は接着性の低下を用いて、ベンゾピラノン化合物の抗癌効果を実証することもできる。例えば、転移性癌の形性の重要な側面は、疾病の一次的な部位から離脱し、二次的な部位における成長の新規のコロニーを確立する前癌又は癌細胞の能力である。周辺部位に侵入する細胞の能力は、癌状態の潜在性を反映する。侵入性の損失は、例えば、E-カドヘリン媒介細胞間接着の誘導を含む当該技術分野で知られている様々な技術によって測定され得る。当該E-カドヘリン媒介接着は、表現型逆転及び侵入性の損失をもたらし得る。(Hordijkらの論文、Science 278:1464-66 (1997))。
【0078】
侵入性の損失を細胞移動の阻害によってさらに調べることができる。様々な二次元及び三次元細胞マトリックスが市販されている(Calbiochem-Novabiochem Corp.、カリフォルニア州サンディエゴ)。マトリックスの、又はマトリックスへの細胞移動を顕微鏡法、微速度撮影又はビデオグラフィーによって、又は細胞移動の測定が可能な当該技術分野の任意の方法によって調べることができる。関連実施態様において、侵入性の損失は、肝細胞成長因子(hepatocyte growth factor)(HGF)によって調べられる。HGF誘発細胞拡散は、マディン-ダービーイヌ(Madin-Darby canine kidney)(MDCK)細胞等の細胞の侵入性に相関づけられる。この検定は、HGFに応答して細胞拡散活性を損失させた細胞集団を特定する(Hordijkらの論文、Science 278:1464-66 (1997))。
【0079】
或いは、化学走性チャンバ(Neuroprobe/ Precision Biochemicals Inc.、ブリティッシュコロンビア州Vancouver)の細胞移動によって侵入性の損失を測定することができる。当該検定において、化学誘因物質が、チャンバの片側(例えばチャンバ底部)で温置され、細胞が、反対側(例えばチャンバ上部)を分離するフィルタ上に配置される。細胞がチャンバ上部からチャンバ底部に移動するためには、細胞は、フィルタの小孔を活発に移動しなければならない。次いで、移動した細胞の数のチェッカーボード分析を侵入性と相関づけることができる(例えば、Ohnishi, T., Biochem. Biophys. Res. Commun. 193:518-25 (1993)参照)。
【0080】
ベンゾピラノン化合物は、インビボで腫瘍形成を阻害することを実証することもできる。腫瘍化及び転移拡散を含む過剰増殖の膨大な数の動物モデルが、当該技術分野で知られている(第16章「新生物形成の主役(Principles of Neoplasia)」表317-1、ハリソンの主要な内服薬(Harrison 's Principals of Internal Medicine), 第13版, Isselbacherら編集、McGraw-Hill, New York, p. 1814, 及び Lovejoyらの論文、1997, J. Pathol. 181:130-135参照)。原発性脳腫瘍及び脳転移の具体例を、引用により本明細書に組み込まれている米国特許第5,894,018号;第6,028,174号及び第6,203,787号に見いだすことができる。さらに、p53欠損マウスモデル(Donehower, 1996, Semin. Cancer Biol. 7:269-278)、Minマウス(Shoemakerらの論文、Biochem. Biophys. Acta, 1332:F25-F48 (1997))、及びラットの腫瘍に対する免疫応答(Frey, Methods, 12:173-188 (1997))を含む、多くの種類の癌に適用可能な一般的な動物モデルが記載されている。
【0081】
例えば、ベンゾピラノン化合物を試験動物、好ましくは腫瘍を生じやすい試験動物に投与し、続いて、ベンゾピラノン化合物が投与されていない対照と比較して、腫瘍形成の発生率の低下について試験動物を調べることができる。或いは、腫瘍を有する試験動物(例えば、悪性、新生物性又は形質転換細胞の導入によって、又は発癌物質の投与によって腫瘍が誘発された動物)にベンゾピラノン化合物を投与し、続いて、ベンゾピラノン化合物が投与されていない対照動物と比較して、腫瘍退化について試験動物における腫瘍を調べることができる。
【0082】
以下の例示的な実施例は、本発明を理解するのに役立てるために記載されており、本明細書に記載、及び主張されている発明を制限するものではない。
以下の実施例は、本発明の非限定的な態様である。
【実施例】
【0083】
(5. 実施例)
実施例1は、表1に示される例示的なベンゾピラノン化合物である化合物1の合成に関する。以下に記載されているスキームに従って化合物1を調製した。
【0084】
(5.1 実施例1:化合物1の合成)
【化6】

【0085】
【化7】

化合物III.2,4-ジクロロフェニル酢酸(30.0g、147.3mmol、1.0当量、Aldrichより購入)、ケトンI(60.4g、294.6mmol、2.0当量)、炭酸カリウム(101.8g、736.5mmol、5.0当量)及びDMAP(9.0g、73.7mmol、0.5当量)を、撹拌棒が装備された1.0L丸底フラスコに入れた。固体を無水DMF(300mL)に懸濁し、撹拌しながら氷浴で冷却した。1,1'-カルボニル-ジイミダゾール(CDI)(59.7g、368.3mmol、2.5当量、Aldrichより購入)を、粉末漏斗を通じて約15秒間にわたって少しずつ添加した。混合物を室温まで加温し、ガスの発生がなくなるまで撹拌した。反応フラスコに還流コンデンサを装備し、約2.5時間にわたって約98℃に加熱した。LCMSを用いて反応を監視した。溶媒を真空で除去した後に、水(1.0L)を粗生成物に添加し、真空濾過を用いて沈殿を回収した。生成物を約50℃にて高真空下で一晩乾燥させて、黄色固体としての化合物III(44.8g)を与えた。
【0086】
【化8】

化合物IV.粗製化合物III(44.8g)及び炭酸カリウム(87.0g、629mmol、6.0当量)を撹拌棒及びコンデンサが装備された1.0L丸底フラスコに入れた。固体をアセトン(400mL)及びTHF(200mL)に懸濁させた。シリンジを使用して、1,2-ジブロモエタン(54.0mL、629mmol、6.0当量)を添加し、反応混合物を約17時間にわたって約80℃に加熱した。LCMSを用いて反応を監視した。完了すると、反応混合物を濾過し、固体をアセトン(〜200mL)で洗浄し、濾液を真空中で濃縮し、シリカゲルに吸着させた。フラッシュクロマトグラフィー(22:78 EtOAc:Hex)により、白色固体としての化合物IV(13.83g、25.9mmol、2工程で収率25%)を与えた。LCMS(m/z)M+1=533.2。
【0087】
【化9】

化合物V.臭化アルキルV(8.63g、16.2mmol、1.0当量)を撹拌棒及びコンデンサが装備された500mL丸底フラスコに入れ、次いで酢酸(150mL)及び48%水性HBr(150mL)に溶解した。反応混合物を約110℃に加熱し、一晩撹拌した。LCMSを用いて反応を監視した。反応が完了すると、酢酸を真空中で除去し、EtOAc(500mL)を粗生成物に添加し、飽和NaHCO(300mL)で洗浄した。水層をEtOAc(2×200mL)で抽出した。一緒にした有機層を塩水(500mL)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、次いで真空中でシリカゲル上に濃縮させた。フラッシュクロマトグラフィー(40:60 EtOAc:Hex)により、淡黄色固体としての化合物V(6.15g、11.8mmol、収率73%)を与えた。LCMS(m/z)M+1=519.3。
【0088】
【化10】

化合物IV.撹拌棒及びコンデンサが装備された500mL丸底フラスコに中間体V(4.97g、9.55mmol、1.0当量)を入れた。シリンジを使用して、無水THF(200mL)、ヘキサメチレンイミン(3.3mL、28.7mmol、3.0当量)及びトリエチルアミン(5.3mL、38.2mmol、4.0当量)を添加し、反応混合物を16時間にわたって約85℃に加熱した。揮発物を真空中で除去し、粗生成物を約1時間にわたって高真空に曝した。粗製材料をMeOH(60mL)に溶解し、分取液体クロマトグラフィー(20〜100%HO/MeCN、処理13回)を用いて、精製した。生成物含有断片を一緒にし、揮発物を真空中で除去した。得られた材料をEtOAc(800mL)に溶解し、飽和NaHCO(800mL)で洗浄した。層を分離し、水層をEtAOc(2×200mL)で抽出した。有機層を一緒にし、MgSOで乾燥させ、真空中で濃縮して、遊離アミンの淡黄色の固体(3.02g、5.61mmol、59%)を与えた。精製された生成物を無水ジクロロメタン(20mL)に溶解し、2.0NのHClをジエチルエーテルに含めたもの(4.0mL)を添加し、混合物を真空中で濃縮した。1H NMR (d6-DMSO, 400 MHz) δ 10.73 (s, 1H), 10.42 (bs, 1H), 7.74 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.44-7.50 (m, 3H), 7.05 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 6.85 (d, J = 6.8 Hz, 2H), 6.80 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 6.75 (dd, J = 2.4, 8.8 Hz, 1H), 4.31 (m, 2H), 4.03 (d, J = 15.1 Hz, 1H), 3.74 (d, J = 15.1 Hz, 1H), 3.31-3.48 (m, 4H), 3.15-3.22 (m, 2H), 1.80-1.83 (m, 4H), 1.54-1.66 (m, 4H); LCMS (m/z) M+1 = 538.3; 元素分析C30H30NO4Cl3の計算値: C, 62.67; H, 5.26; N, 2.44. 実測値 C, 62.54; H, 5.22; N, 2.25.
【0089】
(5.2 実施例2:細胞増殖検定)
細胞を各細胞型に対する有効密度で96ウェルプレートに播種する(播種密度は、検定の過程にわたって直線的な範囲にあることを確認した)。翌日、細胞を0.2%DMSO中、異なる濃度のベンゾピラノン化合物で処理し、プレートを5%COとともに37℃で3日間保温する。3日間の処理に続いて、増殖率/生存度をMTT検定(接着細胞系)又はアラマーブルー(Alamer Blue)(懸濁細胞株)によって評価する。次いで、吸収/蛍光を測定し、各ベンゾピラノン化合物濃度についてDMSO値の百分率を計算し、活性ベース(ActivityBase)を用いてIC50を計算する。各濃度を3回試験する。
【0090】
(5.3 実施例3:アポトーシス検定)
均質カスパーゼ検定(Homogeneous Caspase Assay)(Roche)を用いてアポトーシスを評価する。細胞を播種し、次いで翌日、0.2%DMSO中10μMのベンゾピラノン化合物で処理する(3回反復)。細胞をベンゾピラノン化合物とともに24時間保温し、次いでカスパーゼ活性について評価する。405nmのOD読取値を得て、3回の処理についてすべての読取値を平均し、DMSO処理細胞と比較する。
【0091】
(5.4 実施例4:インビボ効能研究(U87-MG、HT-29、MDA-MB-231))
腫瘍細胞(U87-MG、HT-29又はMDA-MB-231)(0.1ml PBS中)を雌のC.B-17 SCIDマウス(6〜8週;Charles River)の後脚に皮下注射する。腫瘍細胞播種の7〜10日後に、75〜125mm3の腫瘍を有するマウスを集め、様々なグループに無作為に分ける。ベンゾピラノン化合物をcmc/Tween(水中0.5%カルボキシメチルセルロール+0.05%Tween-80)に含めたものでマウスをi.p.処理する。実験の一部始終にわたってマウスを個々に追跡し、毎週2回ずつすべてのマウスの体重を量り、毎週2回ずつデジタルカリパーによって腫瘍測定を行う。式(W2xL)/2を用いて、腫瘍測定値を計算する。
【0092】
本発明は、本発明のいくつかの態様の例として意図される実施例に開示された具体的な実施態様によって範囲が限定されるものではなく、機能的に同等であるいずれの実施態様も本発明の範囲に含まれる。実際、本明細書に示され、記載されている発明に加えて本発明の様々な変更が、当業者に明らかになり、かつ添付の請求項の範囲に含まれることを意図する。
その開示内容の全体が引用により本明細書に組み込まれているいくつかの参考文献を引用している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式の化合物、又はその医薬として許容し得る塩:
【化1】

(式中、R1は、各出現ごとに独立に、ハロゲン又はトリフルオロメチルであり;nは、1、2又は3である)。
【請求項2】
R1がハロゲンである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
ハロゲンがフルオロである、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
ハロゲンがクロロである、請求項2記載の化合物。
【請求項5】
R1がトリフルオロメチルである、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
nが1である、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
nが2である、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
nが3である、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
下記式を有する化合物、又はその医薬として許容し得る塩:
【化2】


【請求項10】
請求項1記載の化合物、又はその医薬として許容し得る塩、及び医薬として許容し得る担体又は媒体を含む医薬組成物。
【請求項11】
請求項9記載の化合物、又はその医薬として許容し得る塩、及び医薬として許容し得る担体又は媒体を含む医薬組成物。
【請求項12】
請求項1記載の化合物、及び医薬として許容し得る担体、賦形剤又は希釈剤を含む単一単位投与形態。
【請求項13】
経口又は粘膜投与に好適な、請求項12記載の単一単位投与形態。
【請求項14】
非経口投与に好適な、請求項12記載の単一単位投与形態。
【請求項15】
請求項9記載の化合物、及び医薬として許容し得る担体、賦形剤又は希釈剤を含む単一単位投与形態。
【請求項16】
経口又は粘膜投与に好適な、請求項15記載の単一単位投与形態。
【請求項17】
非経口投与に好適な、請求項15記載の単一単位投与形態。
【請求項18】
患者における癌を治療又は予防する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の下記式の化合物、又はその医薬として許容し得る塩を投与することを含む、前記方法:
【化3】

(式中、R1は、各出現ごとに独立に、ハロゲン又はトリフルオロメチルであり;nは、1、2又は3である)。
【請求項19】
R1がハロゲンである、請求項18記載の方法。
【請求項20】
ハロゲンがフルオロである、請求項19記載の方法。
【請求項21】
ハロゲンがクロロである、請求項19記載の方法。
【請求項22】
R1がトリフルオロメチルである、請求項18記載の方法。
【請求項23】
nが1である、請求項18記載の方法。
【請求項24】
nが2である、請求項18記載の方法。
【請求項25】
nは3である、請求項18記載の方法。
【請求項26】
前記癌が原発性脳腫瘍である、請求項18記載の方法。
【請求項27】
前記癌が、頭、首、眼、口、喉、食道、胸、骨、肺、結腸、直腸、胃、前立腺、乳房、卵巣、睾丸又は他の生殖器、皮膚、甲状腺、血液、リンパ節、腎臓、肝臓、膵臓、脳又は中枢神経系の癌である、請求項18記載の方法。
【請求項28】
前記癌が原発性頭蓋内中枢神経系腫瘍である、請求項18記載の方法。
【請求項29】
前記原発性頭蓋内中枢神経系腫瘍が、多形性膠芽腫;悪性星状細胞腫;乏突起細胞腫;上衣腫;低グレード星状細胞腫;髄膜腫;間葉腫瘍;下垂体腫瘍;シュヴァン鞘腫等の神経鞘腫;中枢神経系リンパ腫;髄芽腫;原始神経管外胚葉腫;ニューロン及びニューロン/膠腫;頭蓋咽頭腫;胚細胞腫瘍;又は脈絡叢腫瘍である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記癌が原発性脊髄腫瘍である、請求項18記載の方法。
【請求項31】
前記原発性脊髄腫瘍が、シュヴァン鞘腫、髄膜腫、上衣腫、肉腫、星状細胞腫、膠腫、血管腫瘍、脊索腫又は類上皮腫である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記癌が転移している、請求項18記載の方法。
【請求項33】
前記転移癌が、肺(小細胞及び非小細胞)、乳房、未知の原発性腫瘍、黒色腫又は結腸に由来する、請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記癌が固形腫瘍である、請求項18記載の方法。
【請求項35】
前記固形腫瘍が、乳房、結腸、前立腺、膵臓、卵巣又は子宮の腫瘍である、請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記固体腫瘍が膠腫又は非小細胞肺癌である、請求項34記載の方法。
【請求項37】
前記癌が白血病である、請求項18記載の方法。
【請求項38】
癌細胞又は新生細胞の成長を阻害する方法であって、癌細胞又は新生細胞を有効量の下記式の化合物、又はその医薬として許容し得る塩と接触させることを含む、前記方法:
【化4】

(式中、R1は、各出現ごとに独立に、ハロゲン又はトリフルオロメチルであり;nは、1、2又は3である)。
【請求項39】
R1がハロゲンである、請求項38記載の方法。
【請求項40】
ハロゲンがフルオロである、請求項39記載の方法。
【請求項41】
ハロゲンがクロロである、請求項39記載の方法。
【請求項42】
R1がトリフルオロメチルである、請求項38記載の方法。
【請求項43】
nが1である、請求項38記載の方法。
【請求項44】
nが2である、請求項38記載の方法。
【請求項45】
nが3である、請求項38記載の方法。

【公表番号】特表2008−543944(P2008−543944A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518381(P2008−518381)
【出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際出願番号】PCT/US2006/024279
【国際公開番号】WO2007/002272
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(504135550)シグナル ファーマシューティカルズ,エルエルシー (21)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】