説明

癌を診断するための方法および組成物

【課題】可溶性形態で天然に存在するポリペプチドを検出するために、メソセリ
ン/MPFおよび/またはメソセリン/MPF関連抗原に特異的な抗体を使用し
て、悪性状態の存在をスクリーニングする方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、悪性状態の検出のための組成物および方法に関し、そし
てメソセリンポリペプチド(メソセリン関連抗原(MRA)を含む)の可溶性形
態の発見に関する。特に本発明は、MRAおよびMRA改変体をコードする核酸
配列を提供する。本発明はまた、メソセリンポリペプチドに特異的な抗体と被験
体由来のサンプルにおいて可溶性形態で天然に存在する分子との反応性を検出す
ること、そしてMRAヌクレオチド配列を使用するハイブリダイゼーションスク
リーニングによって、このような被験体における悪性状態の存在についてスクリ
ーニングする方法、ならびに他の関連する利点を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、一般に、癌のような悪性状態(malignant condit
ion)、および特に、卵巣癌のような特定の癌の診断のための方法および組成
物に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
癌は、世界的に約4個体に1個体を冒す広範な範囲の疾患を含む。癌の有害な
影響の重篤度は軽微ではあり得ず、医療政策および医療手順ならびに社会一般に
影響を与える。多くの型の癌の特徴が、悪性細胞の急速かつ制御されない増殖で
あるため、癌へのアプローチを改善する際に重要な問題は、早期の検出および診
断の必要である。悪性状態の存在を診断するための、正確かつ確実な基準を開発
するための多くの試みがなされてきた。特に、腫瘍関連抗原として公知の、血清
学的に定義された抗原性マーカー(これは、癌細胞によって独自に発現されるか
、または悪性状態を有する被験体において顕著に高いレベルで存在するかのいず
れか)の使用に関して試みられてきた。
【0003】
しかし、腫瘍関連抗原の発現の高い異質性(例えば、癌抗原の極度な多様性)
のために、癌の診断に有用なさらなる腫瘍マーカーが必要である。癌関連抗原に
反応性の多くのモノクローナル抗体が公知である(例えば、Papsidero
、1985 Semin.Surg.Oncol.1:171、Allumら、
1986 Surg.Ann.18:41を参照のこと)。これらおよび記載さ
れる他のモノクローナル抗体は、糖タンパク質、糖脂質およびムチンを含む種々
の異なる癌関連抗原に結合する(例えば、Finkら、1984 Prog.C
lin.Pathol.9:121;米国特許第4,737,579号;同第4
,753,894号;同第4,579,827号;同第4,713,352号を
参照のこと)。多くのこのようなモノクローナル抗体は、所定の細胞系統または
組織型起源の、他の腫瘍以外のいくつかの腫瘍において制限された発現を示す腫
瘍関連抗原を認識する。
【0004】
悪性疾患の特定の型を同定するために有用でありそうな腫瘍関連抗原の例は、
比較的わずかしかない。モノクローナル抗体B72.3は、例えば、全てでなけ
れば大半の卵巣癌ならびに圧倒的多数の非小細胞肺癌、結腸癌および乳癌を含む
多くの異なる癌上で選択的に発現される、高分子量(>106Da)の腫瘍関連
ムチン抗原に特異的に結合する(例えば、Johnston、1987 Act
a Cytol.1:537;米国特許第4,612,282号を参照のこと)
。それにもかかわらず、腫瘍の外科的切除に続いてB72.3によって認識され
る、ムチン抗原のような細胞関連腫瘍マーカーの検出は、診断スクリーニングの
ための制限された有用性を有し得、実質的な腫瘍塊の蓄積の前での悪性状態の初
期検出が好ましい。
【0005】
腫瘍関連抗原について外科的に切除された検体をスクリーニングすることによ
る、癌の特定の型の診断の代替は(ここで、侵襲性の手術は、通常、蓄積された
腫瘍塊の検出の後のみに示される)、非侵襲性または最小な侵襲性手順によって
被験体から得られたサンプルにおいて、このような抗原を検出するための組成物
および方法の提供である。卵巣および他の癌において、例えば、現在では、血清または粘膜分泌物のような容易に得られる生物学的流体のサンプル中で検出可能
な多くの可溶性腫瘍関連抗原がある。このようなマーカーの1つは、CA125
であり、これは血流中に流され、血清中で検出可能な、癌関連抗原である(例え
ば、Bastら、1983 N.Eng.J.Med.309:883;Llo
ydら、1997 Int.J.Canc.71:842)。血清および他の生
物学的流体におけるCA125のレベルは、卵巣および他の癌の診断および/ま
たは予後のプロフィールを提供するための試みにおいて、他のマーカー(例えば
、癌胎児抗原(CEA)、扁平上皮癌抗原(SCC)、組織ポリペプチド特異的
抗原(tissue polypeptide specific antig
en)(TPS)、シアリルTNムチン(sialyl TN mucin)(
STN)および胎盤アルカリホスファターゼ(PLAP))のレベルと共に測定
される(例えば、Sarandakouら、1997 Acta Oncol.
36:755;Sarandakouら、1998 Eur.J.Gynaec
ol.Oncol.19:73;Meierら、1997 Anticanc.
Res.17(4B):2945;Kudohら、1999 Gynecol.
Obstet.Invest.47:52;Indら、1997 Br.J.O
bstet.Gynaecol.104:1024;Bellら、1998 B
r.J.Obstet.Gynaecol.105:1136;Cioffiら
、1997 Tumori 83:594;Meierら、1997 Anti
canc.Res.17(4B):2949;Meierら、1997 Ant
icanc.Res.17(4B):3019)。
【0006】
しかし、単独または他の公知の指示薬との組合わせにおける血清CA125の
上昇したレベルは、悪性疾患または卵巣癌のような特定の悪性疾患の決定的な診
断を提供しない。例えば、腟の流体および血清における上昇したCA125、C
EAおよびSCCは、良性の婦人科学的疾患における炎症に最も強く相関し、頸
部癌および生殖管癌に関連する(例えば、Mooreら、1998 Infec
t.Dis.Obstet.Gynecol.6:182;Sarandako
uら、1997、Acta Oncol.36:755)。別の例として、上昇
した血清CA125はまた、神経芽細胞腫に付随し得るが(例えば、Hirok
awaら、1998 Surg.Today 28:349)、とりわけ上昇し
たCEAおよびSCCは、結腸直腸癌に付随し得る(Gebauerら、199
7 Anticanc.Res.17(4B):2939)。従って、多因子診
断スクリーニングにおいて有用なマーカーを含む、使用されるさらなるマーカー
の切実な必要が明らかである(例えば、Sarandakouら、1998;K
udohら、1999;Indら、1997を参照のこと)。
【0007】
分化抗原メソセリン(mesothelin)は、正常な中皮細胞の表面上で
、および上皮卵巣腫瘍および中皮腫を含む特定の癌細胞上でもまた発現される。
CAK1としてもまた公知であるメソセリンは、モノクローナル抗体K−1(M
Ab K−1)とのその反応性によって同定され、これはOVCAR−3卵巣癌
細胞株での免疫後に生成される(Changら、1992 Canc.Res.
52:181;Changら、1992 Int.J.Canc.50:373
;Changら、1992 Int.J.Canc.51:548;Chang
ら、1996 Proc.Nat.Acad.Sci.USA 93:136;
Chowdhuryら、1998 Proc.Nat.Acad.USA 95
:669)。メソセリンは、細胞膜結合のためにC末端グリコシルホスファチジ
ルイノシトール(GPI)結合部位を有する約70kDaの糖タンパク質前駆体
として合成される。この前駆体は、特にタンパク質分解切断によって少なくとも
2つの成分(i)メソセリンポリペプチドファミリーに属する約70kDaのGPI−結合糖タンパク質前駆体のタンパク質分解によって同様に誘導される巨核
球増殖因子(MPF)(Yamaguchiら、1994 J.Biol.Ch
em.296:805;Kojimaら、1995 J.Biol.Chem.
270:21984)として公知の、可溶性の31kDaのポリペプチドに対し
て並外れて高い相同性を有する流れる(shed)N末端の約31kDaポリペ
プチド(Chowdhuryら、1998 Proc.Nat.Acad.Sc
i.USA 95:669)、および(ii)K−1(MAb K−1)認識エ
ピトープを保持する、成熟40kDa GPI−結合した、細胞表面結合C末端
メソセリングリコシル化ポリペプチド(Changら、1996)にプロセスさ
れる。MAb K−1との反応性によって規定される場合、メソセリンは、上皮
卵巣、頸部および食道の腫瘍を含む偏平上皮癌の大部分、ならびに中皮腫に存在
する(Changら、1992 Canc.Res.52:181;Chang
ら、1992 Int.J.Canc.50:373;Changら、1992
Int.J.Canc.51:548;Changら、1996 Proc.
Nat.Acad.Sci.USA 93:136;Chowdhuryら、1
998 Proc.Nat.Acad.Sci.USA 95:669)。MA
b K−1を使用すると、メソセリンは、細胞関連腫瘍マーカーとしてのみ検出
可能であり、そして卵巣癌患者からの血清、またはOVCAR−3細胞によって
馴化された培地においては見出されなかった(Changら、1992 Int
.J.Cancer 50:373)。従って、メソセリンは、特定の悪性状態
と相関する発現パターンにもかかわらず、初期診断スクリーニングのための有用
なマーカーを提供しそうにない。なぜなら、メソセリンの細胞関連および不溶性
の形態のみが公知の方法で検出可能であり得るからである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Changら、1992 Int.J.Cancer 50:373
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の組成物および方法は、可溶性形態で天然に存在するポリペプチドを検
出するために、メソセリン/MPFおよび/またはメソセリン/MPF関連抗原
に特異的な抗体を使用して、悪性状態の存在をスクリーニングする方法を提供す
ることによって、先行技術のこれらの制限を克服し、そして他の関連する利点を
提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本発明は、被験体における悪性状態の存在のスクリーニングにおいて有用な組
成物および方法に関する。特に、本発明は、可溶性メソセリンポリペプチド、ま
たはメソセリンポリペプチドに特異的な少なくとも1つの抗体と反応性の抗原決
定基を有し、可溶性形態で天然に存在する分子が、被験体からの生物学的サンプ
ル中で検出され得るという、予想外の知見に関する。
被験体における悪性状態の存在をスクリーニングする方法を提供することが、
本発明の1つの局面であって、この方法は、被験体由来の生物学的サンプルとメ
ソセリン関連抗原ポリペプチドに特異的な少なくとも1つの抗体とを、この少な
くとも1つの抗体と反応性である抗原決定基へのこの抗体の結合を検出するに十
分な条件および時間の下で接触させて、このサンプル中において可溶性形態で天
然に存在しかつこの抗原決定基を有する分子の、この生物学的サンプル中における存在を決定する工程、および、それから悪性状態の存在を検出する工程を包含
する。いくつかの実施形態において、この生物学的サンプルは血液、血清、漿液
(serosal fluid)、血漿、リンパ、尿、脳脊髄液、唾液、粘膜分
泌物、膣分泌物、腹水(ascites fluid)、胸膜液、囲心腔液(p
ericardial fluid)、腹膜液(peritoneal flu
id)、腹部液(abdominal fluid)、培養培地、馴化培養培地
または洗浄液である。
【0011】
他の特定の実施形態において、メソセリン関連抗原ポリペプチドは、配列番号
1もしくは配列番号2に記載のアミノ酸配列、またはそれらのフラグメントもし
くは誘導体を有するポリペプチドを含む。別の実施形態において、メソセリン関
連抗原ポリペプチド改変体は、スプライス改変体である。
【0012】
本発明の特定の実施形態において、この抗体はポリクローナル抗体を含み、そ
して他の実施形態において、抗体はアフィニティー精製された抗体を含む。特定
の好ましい実施形態において、抗体はモノクローナル抗体を含む。別の実施形態
において、抗体は組換え抗体を含み、そして別の実施形態において、抗体はキメ
ラ抗体を含む。別の実施形態において、抗体はヒト化抗体を含む。別の実施形態
において、抗体は単鎖抗体を含む。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態において、抗体の抗原決定基への結合の検出は、
放射性核種の検出を含む。他の実施形態において、抗体の抗原決定基への結合の
検出は、発蛍光団の検出を含む。別の実施形態において、抗体の抗原決定基への
結合の検出は、アビジン分子とビオチン分子との間の結合事象の検出を含み、そ
して別の実施形態において、抗体の抗原決定基への結合の検出は、ストレプトア
ビジン分子とビオチン分子との間の結合事象の検出を含む。特定の実施形態にお
いて、抗体の抗原決定基への結合の検出は、酵素反応産物の分光光度的検出を含
む。本発明のいくつかの実施形態において、少なくとも1つの抗体は検出可能に
標識され、一方、他の特定の実施形態においては、少なくとも1つの抗体は、検
出可能に標識されず、そして抗体の抗原決定基への結合の検出は間接的である。
【0014】
本発明の特定の実施形態に従って、悪性状態は、腺癌、中皮腫、卵巣癌、膵臓
癌または非小細胞肺癌であり得る。
【0015】
本発明の別の局面は、被験体における悪性状態の存在をスクリーニングする方
法を提供することであって、この方法は、被験体由来の生物学的サンプルと少な
くとも1つの抗体とを、この少なくとも1つの抗体と反応性である抗原決定基へ
のこの抗体の結合を検出するに十分な条件および時間の下で接触させて、このサ
ンプル中において可溶性形態で天然に存在し、かつこの抗原決定基を有する分子
の、この生物学的サンプル中における存在を決定する工程であって、この抗体の
抗原結合部位がOV569、MAb K−1、4H3、3G3または1A6であ
るモノクローナル抗体の免疫特異的結合を競合的に阻害する、工程、および、そ
れから悪性状態の存在を検出する工程を包含する。
【0016】
本発明の別の局面は、被験体における悪性状態の存在をスクリーニングする方
法を提供し、この方法は、被験体由来の生物学的サンプルと少なくとも1つの抗
体とを、この抗体と反応性である抗原決定基へのこの抗体の結合を検出するに十
分な条件および時間の下で接触させて、このサンプル中において可溶性形態で天
然に存在し、かつこの抗原決定基を有する分子の、この生物学的サンプル中にお
ける存在を決定する工程であって、この抗体の抗原結合部位がモノクローナル抗体OV569の免疫特異的結合を競合的に阻害する、工程、および、それから悪
性状態の存在を検出する工程を包含する。
【0017】
本発明のさらに別の局面は、被験体における悪性状態の存在をスクリーニング
する方法を提供し、この方法は、被験体由来の生物学的サンプルとヒトメソセリ
ン関連抗原ポリペプチドに特異的な少なくとも1つの抗体とを、この抗体と反応
性である抗原決定基へのこの少なくとも1つの抗体の結合を検出するに十分な条
件および時間の下で接触させて、このサンプル中において可溶性形態で天然に存
在し、かつこの抗原決定基を有する分子の、この生物学的サンプル中における存
在を決定する工程であって、この少なくとも1つの抗体は、メソセリン関連抗原
に免疫特異的に結合する、工程、および、それから悪性状態の存在を検出する工
程を包含する。特定の実施形態において、メソセリン関連抗原はまた、モノクロ
ーナル抗体MAb K−1と免疫特異的に反応性である。
【0018】
別の局面について、本発明は、被験体における悪性状態の存在をスクリーニン
グする方法を提供し、この方法は、被験体由来の生物学的サンプルとヒトメソセ
リン関連抗原ポリペプチドに特異的な少なくとも1つの抗体とを、この少なくと
も1つの抗体と反応性である抗原決定基へのこの抗体の結合を検出するに十分な
条件および時間の下で接触させて、このサンプル中において可溶性形態で天然に
存在し、かつこの抗原決定基を有する分子の、この生物学的サンプル中における
存在を決定する工程であって、この抗体の抗原結合部位がOV569、MAb
K−1、4H3、3G3または1A6であるモノクローナル抗体の免疫特異的結
合を競合的に阻害する工程であって、この少なくとも1つの抗体は、メソセリン
関連抗原に免疫特異的に結合する、工程、および、それから悪性状態の存在を検
出する工程を包含する。特定の実施形態において、メソセリン関連抗原はまた、
モノクローナル抗体MAb K−1に免疫特異的に反応性である。
【0019】
別の局面について、本発明は、被験体における悪性状態の存在をスクリーニン
グする方法を提供し、この方法は、被験体由来の生物学的サンプルとメソセリン
関連抗原ポリペプチドに特異的な固定された少なくとも1つの第1抗体とを、こ
の固定された少なくとも1つの第1抗体をこのメソセリン関連抗原ポリペプチド
へと特異的に結合させるに十分な条件および時間の下で接触させ、それにより免
疫複合体を形成して、このサンプル中において可溶性形態で天然に存在する分子
の、この生物学的サンプル中における存在を決定する工程;この固定された少な
くとも1つの第1抗体に特異的に結合しない、このサンプル中の成分を除去する
工程;およびこの免疫複合体とメソセリン関連抗原ポリペプチドに特異的な少な
くとも1つの第2抗体とを、このメソセリン関連抗原ポリペプチドへのこの少な
くとも1つの第2抗体の特異的結合を検出するに十分な条件および時間の下で接
触させる工程であって、この少なくとも1つの第2抗体の抗原結合部位は、この
固定された少なくとも1つの第1抗体の抗原結合部位を競合的に阻害しない、工
程、および、それから悪性状態の存在を検出する工程を包含する。
【0020】
さらに別の局面において、本発明は、被験体における悪性状態の存在をスクリ
ーニングする方法を提供し、この方法は、被験体由来の生物学的サンプルとメソ
セリン関連抗原ポリペプチドに特異的な固定された少なくとも1つの第1抗体と
を、この固定された少なくとも1つの第1抗体をこのメソセリン関連抗原ポリペ
プチドへと特異的に結合させるに十分な条件および時間の下で接触させ、それに
より免疫複合体を形成して、このサンプル中において可溶性形態で天然に存在す
る分子の、この生物学的サンプル中における存在を決定する工程であって、この
少なくとも1つの第1抗体の抗原結合部位は、モノクローナル抗体OV569の免疫特異的結合を競合的に阻害する、工程;この固定された少なくとも1つの第
1抗体に特異的に結合しない、このサンプル中の成分を除去する工程;およびこ
の免疫複合体とメソセリン関連抗原ポリペプチドに特異的な少なくとも1つの第
2抗体とを、このメソセリン関連抗原ポリペプチドへのこの少なくとも1つの第
2抗体の特異的結合を検出するに十分な条件および時間の下で接触させる工程で
あって、この少なくとも1つの第2抗体の抗原結合部位は、モノクローナル抗体
OV569の免疫特異的結合を競合的に阻害しない、工程、および、それから悪
性状態の存在を検出する工程を包含する。
【0021】
別の局面において、本発明は、被験体における悪性状態の存在をスクリーニン
グする方法を提供し、この方法は、被験体由来の生物学的サンプルとメソセリン
関連抗原ポリペプチドに特異的な固定された少なくとも1つの第1抗体とを、こ
の固定された少なくとも1つの第1抗体をこのメソセリン関連抗原ポリペプチド
へと特異的に結合させるに十分な条件および時間の下で接触させ、それにより免
疫複合体を形成して、このサンプル中において可溶性形態で天然に存在する分子
の、この生物学的サンプル中における存在を決定する工程であって、この少なく
とも1つの第1抗体の抗原結合部位は、モノクローナル抗体MAb K−1の免
疫特異的結合を競合的に阻害する、工程;この固定された少なくとも1つの第1
抗体に特異的に結合しない、このサンプル中の成分を除去する工程;およびこの
免疫複合体とメソセリン関連抗原ポリペプチドに特異的な少なくとも1つの第2
抗体とを、このメソセリン関連抗原ポリペプチドへのこの少なくとも1つの第2
抗体の特異的結合を検出するに十分な条件および時間の下で接触させる工程であ
って、この少なくとも1つの第2抗体の抗原結合部位は、モノクローナル抗体M
Ab K−1の免疫特異的結合を競合的に阻害しない、工程、および、それから
悪性状態の存在を検出する工程を包含する。
【0022】
特定の実施形態において、本発明の方法は、悪性状態の少なくとも1つの可溶
性マーカーの、サンプル中における存在を決定する工程(ここで、このマーカー
は、癌胎児抗原、CA125、シアリルTN、扁平上皮癌抗原、組織ペプチド抗
原または胎盤アルカリホスファターゼである)をさらに包含する。
【0023】
本発明のさらなる別の局面は、被験体における悪性状態の存在をスクリーニン
グする方法を提供することであって、この方法は、(i)悪性状態を有すると疑
われる第1被験体由来の第1生物学的サンプル、および(ii)悪性状態を有さ
ないことが既知の第2被験体由来の第2生物学的サンプルの各々とメソセリン関
連抗原ポリペプチドに特異的な少なくとも1つの抗体とを、この少なくとも1つ
の抗体と反応性である抗原決定基へのこの抗体の結合を検出するに十分な条件お
よび時間の下で接触させて、このサンプル中において可溶性形態で天然に存在し
、かつこの抗原決定基を有する分子の、この第1生物学的サンプルおよびこの第
2生物学的サンプルの各々における存在を決定する工程、ならびにこの第2生物
学的サンプル中のこの抗原決定基へのこの抗体の検出可能な結合のレベルに対し
て、この第1生物学的サンプル中のこの抗原決定基へのこの抗体の検出可能な結
合のレベルを比較する工程、ならびにそれから悪性状態の存在を検出する工程を
包含する。
【0024】
別の局面において、本発明は、メソセリン関連抗原ポリペプチドに免疫特異的
に結合する抗体の存在を、被験体からの生物学的サンプル中で検出する工程を包
含する、被験体の悪性状態の存在をスクリーニングする方法を提供する。特定の
実施形態において、メソセリン関連抗原ポリペプチドは、配列番号1または配列
番号2あるいは配列番号13のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0025】
別の実施形態について、本発明は、モノクローナル抗体MAb K−1の、メ
ソセリンポリペプチドへの免疫特異的結合を競合的に阻害せず、そしてメソセリ
ン関連抗原ポリペプチド(配列番号1または配列番号2あるいは配列番号13に
記載のアミノ酸配列を含む)に特異的結合するモノクローナル免疫グロブリン可
変領域を含む、ヒトメソセリン関連抗原ポリペプチドに特異的な抗体を提供する
。特定の実施形態において、抗体は融合タンパク質であり、他の特定の実施形態
において、抗体は単鎖抗体である。他の特定の実施形態において、メソセリン関
連抗原ポリペプチドは、グリコシル化メソセリンポリペプチドをさらに含む。別
の実施形態において、メソセリン関連抗原ポリペプチドは、約42〜45キロダ
ルトンの見かけ上の分子量を有する。特定の実施形態において、抗体は、モノク
ローナル抗体OV569、4H3、3G3または1A6である。
【0026】
さらに別の局面において、本発明は、サンプル中に可溶性形態で天然に存在す
る抗体のメソセリン関連抗原ポリペプチドへの結合を検出するのに十分な条件お
よび時間で、検出可能に標識されたメソセリン関連抗原ポリペプチドを、被験体
からの生物学的サンプルに接触させる工程、ならびに、それから悪性状態の存在
を検出する工程を包含する、被験体における悪性状態の存在をスクリーニングす
る方法を提供する。
【0027】
別の局面について、本発明は、メソセリン関連抗原ポリペプチド(このポリペ
プチドは、配列番号1または配列番号2または配列番号13に記載のアミノ酸配
列を含む)をコードする核酸分子、あるいは中程度にストリンジェントな条件下
でメソセリン関連抗原をコードするこのような核酸分子にハイブリダイズし得、
メソセリン関連抗原ポリペプチドをコードする核酸分子である、単離された核酸
分子を提供し、ここで、この単離された核酸分子は、配列番号15に記載のヌク
レオチド配列、配列番号16に記載のヌクレオチド配列、配列番号17に記載の
ヌクレオチド配列、または配列番号18に記載のヌクレオチド配列からなる核酸
分子ではない。特定の実施形態において、本発明は、メソセリン関連抗原ポリペ
プチドをコードする核酸分子に相補的な、少なくとも15個の連続したヌクレオ
チドを含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する。
【0028】
他の実施形態において、本発明は、メソセリン関連抗原ポリペプチドに融合し
たポリペプチド配列を含む、融合タンパク質を提供する。さらなる特定の実施形
態において、ポリペプチドは、酵素またはその改変体もしくはフラグメントであ
る。さらなる特定の実施形態において、メソセリン関連抗原ポリペプチドに融合
したポリペプチド配列は、プロテアーゼによって切断可能である。別の実施形態
において、このポリペプチド配列は、リガンドに対して親和性を有するアフィニ
ティータグポリペプチドである。
【0029】
別の実施形態において、本発明は、上記のようなメソセリン関連抗原ポリペプ
チドをコードする核酸分子に作動可能に連結された、少なくとも1つのプロモー
ターを含む組換え発現構築物を提供する。特定の実施形態において、このプロモ
ーターは、調節プロモーター(regulated promoter)であり
、そして特定の他の実施形態において、このメソセリン関連抗原ポリペプチドは
、第2核酸配列のポリペプチド産物と融合タンパク質として発現される。さらな
る実施形態において、第2核酸配列のポリペプチド産物は、酵素である。別の実
施形態において、この発現構築物は、組換えウイルス性発現構築物である。他の
実施形態に従って、本発明は、本明細書中に提供されるような組換え発現構築物
を含む宿主細胞を提供する。1つの実施形態において、この宿主細胞は、原核生
物細胞であり、そして別の実施形態において、この宿主細胞は、真核生物細胞で
ある。
【0030】
別の局面において、本発明は、組換えメソセリン関連抗原ポリペプチドを生成
する方法を提供し、この方法は、本明細書中に提供されるようなメソセリン関連
抗原ポリペプチドをコードする核酸分子に作動可能に連結された、少なくとも1
つのプロモーターを含む組換え発現構築物を含む宿主細胞を培養することによる
。特定の実施形態において、このプロモーターは、調節プロモーターである。別
の実施形態において、本発明は、組換えメソセリン関連抗原ポリペプチドを生成
する方法を提供し、この方法は、組換えメソセリン関連抗原ポリペプチドの発現
のために本明細書中に提供されたような、組換えウイルス性発現構築物で感染さ
れた宿主細胞を培養することによる。
【0031】
別の実施形態において本発明はまた、サンプル中のメソセリン関連抗原の発現
を検出する方法を提供し、この方法は、上記のようなアンチセンスオリゴヌクレ
オチドを、配列番号13に示されるアミノ酸配列を有するメソセリン関連抗原ポ
リペプチドをコードする核酸配列、またはそのフラグメントもしくは改変体を含
むサンプルと接触させる工程;および、サンプル中でアンチセンスオリゴヌクレ
オチドにハイブリダイズする、メソセリン関連抗原ポリペプチドをコードする核
酸の量を検出し、そしてこれからサンプル中のメソセリン関連抗原の発現を検出
する工程による。別の実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドにハ
イブリダイズする、メソセリン関連抗原ポリペプチドをコードする核酸の量は、
ポリメラーゼ連鎖反応を用いて測定される。別の実施形態において、アンチセン
スオリゴヌクレオチドにハイブリダイズするメソセリン関連抗原ポリペプチドを
コードする核酸の量は、ハイブリダイゼーションアッセイを用いて測定される。
別の実施形態において、このサンプルは、RNA調製物またはcDNA調製物を
含む。
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1) 被験体における悪性状態の存在についてスクリーニングする方法で
あって、以下:
被験体由来の生物学的サンプルとメソセリン関連抗原ポリペプチドに特異的な
少なくとも1つの抗体とを、該少なくとも1つの抗体と反応性である抗原決定基
への該抗体の結合を検出するに十分な条件および時間の下で接触させて、該サン
プル中において可溶性形態で天然に存在しかつ該抗原決定基を有する分子の、該
生物学的サンプル中における存在を決定する工程、
および、それから悪性状態の存在を検出する工程、
を包含する、方法。
(項目2) 前記生物学的サンプルが、血液、血清、漿液、血漿、リンパ、尿、
脳脊髄液、唾液、粘膜分泌物、膣分泌物、腹水、胸膜液、囲心腔液、腹膜液、腹
部液、培養培地、馴化培養培地、および洗浄液からなる群から選択される、項目
1に記載の方法。
(項目3) 前記生物学的サンプルが血清である、項目1に記載の方法。
(項目4) 前記生物学的サンプルが血漿である、項目1に記載の方法。
(項目5) 前記生物学的サンプルが腹水である、項目1に記載の方法。
(項目6) 前記生物学的サンプルが膣分泌物である、項目1に記載の方法。
(項目7) 前記生物学的サンプルが胸膜液である、項目1に記載の方法。
(項目8) 前記メソセリン関連抗原が、配列番号1に示される配列を有するポ
リペプチド、またはそのフラグメントもしくは誘導体を含む、項目1に記載の方
法。
(項目9) 前記メソセリン関連抗原ポリペプチドが、スプライス改変体である
、項目8に記載の方法。
(項目10) 前記メソセリン関連抗原が、配列番号2に示される配列を有する
ポリペプチド、またはそのフラグメントもしくは誘導体を含む、項目1に記載の
方法。
(項目11) 前記メソセリン関連抗原ポリペプチドが、スプライス改変体であ
る、項目10に記載の方法。
(項目12) 前記メソセリン関連抗原ポリペプチドが、メソセリン関連抗原改
変体またはそのフラグメントもしくは誘導体である、項目1に記載の方法。
(項目13) 前記抗体がポリクローナル抗体を含む、項目1に記載の方法。
(項目14) 前記抗体がアフィニティー精製された抗体を含む、項目1に記載
の方法。
(項目15) 前記抗体がモノクローナル抗体を含む、項目1に記載の方法。
(項目16) 前記抗体が組換え抗体を含む、項目1に記載の方法。
(項目17) 前記抗体がキメラ抗体を含む、項目1に記載の方法。
(項目18) 前記抗体がヒト化抗体を含む、項目1に記載の方法。
(項目19) 前記抗体が単鎖抗体を含む、項目1に記載の方法。
(項目20) 抗原決定基への前記抗体の結合の検出が、放射性核種の検出を包
含する、項目1に記載の方法。
(項目21) 抗原決定基への前記抗体の結合の検出が、発蛍光団の検出を包含
する、項目1に記載の方法。
(項目22) 抗原決定基への前記抗体の結合の検出が、アビジン分子とビオチ
ン分子との間の結合事象の検出を包含する、項目1に記載の方法。
(項目23) 抗原決定基への前記抗体の結合の検出が、ストレプトアビジン分
子とビオチン分子との間の結合事象の検出を包含する、項目1に記載の方法。
(項目24) 抗原決定基への前記抗体の結合の検出が、酵素反応の産物の分光
光度的検出を包含する、項目1に記載の方法。
(項目25) 前記少なくとも1つの抗体が検出可能に標識されている、項目1
に記載の方法。
(項目26) 前記少なくとも1つの抗体は検出可能に標識されておらず、そし
てここで抗原決定基への該抗体の結合の検出は間接的である、項目1に記載の方
法。
(項目27) 前記悪性状態が、腺癌、中皮腫、卵巣癌、膵臓癌、および非小細
胞肺癌からなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目28) 被験体における悪性状態の存在についてスクリーニングする方法
であって、以下:
被験体由来の生物学的サンプルと少なくとも1つの抗体とを、該少なくとも1
つの抗体と反応性である抗原決定基への該抗体の結合を検出するに十分な条件お
よび時間の下で接触させて、該サンプル中において可溶性形態で天然に存在し、
かつ該抗原決定基を有する分子の、該生物学的サンプル中における存在を決定す
る工程であって、該抗体の抗原結合部位がOV569、MAb K−1、4H3
、3G3および1A6からなる群から選択されるモノクローナル抗体の免疫特異
的結合を競合的に阻害する、工程、
および、それから悪性状態の存在を検出する工程、
を包含する、方法。
(項目29) 被験体における悪性状態の存在についてスクリーニングする方法
であって、以下:
被験体由来の生物学的サンプルと少なくとも1つの抗体とを、該抗体と反応性
である抗原決定基への該抗体の結合を検出するに十分な条件および時間の下で接
触させて、該サンプル中において可溶性形態で天然に存在し、かつ該抗原決定基
を有する分子の、該生物学的サンプル中における存在を決定する工程であって、
該抗体の抗原結合部位がモノクローナル抗体OV569の免疫特異的結合を競合
的に阻害する、工程
および、それから悪性状態の存在を検出する工程、
を包含する、方法。
(項目30) 被験体における悪性状態の存在についてスクリーニングする方法
であって、以下:
被験体由来の生物学的サンプルとヒトメソセリン関連抗原ポリペプチドに特異
的な少なくとも1つの抗体とを、該抗体と反応性である抗原決定基への該少なく
とも1つの抗体の結合を検出するに十分な条件および時間の下で接触させて、該
サンプル中において可溶性形態で天然に存在し、かつ該抗原決定基を有する分子
の、該生物学的サンプル中における存在を決定する工程であって、
ここで、該少なくとも1つの抗体は、メソセリン関連抗原に免疫特異的に結合
する、工程、
および、それから悪性状態の存在を検出する工程、
を包含する、方法。
(項目31) 前記メソセリン関連抗原がまた、モノクローナル抗体MAb K
−1と免疫特異的に反応性である、項目30に記載の方法。
(項目32) 被験体における悪性状態の存在についてスクリーニングする方法
であって、以下:
被験体由来の生物学的サンプルとヒトメソセリン関連抗原ポリペプチドに特異
的な少なくとも1つの抗体とを、該少なくとも1つの抗体と反応性である抗原決
定基への該抗体の結合を検出するに十分な条件および時間の下で接触させて、該
サンプル中において可溶性形態で天然に存在し、かつ該抗原決定基を有する分子
の、該生物学的サンプル中における存在を決定する工程であって、該抗体の抗原
結合部位がOV569、MAb K−1、4H3、3G3および1A6からなる
群から選択されるモノクローナル抗体の免疫特異的結合を競合的に阻害する、工
程であって
ここで、該少なくとも1つの抗体は、メソセリン関連抗原に免疫特異的に結合
する、工程、
および、それから悪性状態の存在を検出する工程、
を包含する、方法。
(項目33) 前記メソセリン関連抗原がまた、モノクローナル抗体MAb K
−1と免疫特異的に反応性である、項目32に記載の方法。
(項目34) 被験体における悪性状態の存在についてスクリーニングする方法
であって、以下:
被験体由来の生物学的サンプルとメソセリン関連抗原ポリペプチドに特異的な
固定された少なくとも1つの第1抗体とを、該固定された少なくとも1つの第1
抗体を該メソセリン関連抗原ポリペプチドへと特異的に結合させるに十分な条件
および時間の下で接触させ、それにより免疫複合体を形成して、該サンプル中に
おいて可溶性形態で天然に存在する分子の、該生物学的サンプル中における存在
を決定する工程;
該固定された少なくとも1つの第1抗体に特異的に結合しない、該サンプル中
の成分を除去する工程;および
該免疫複合体とメソセリン関連抗原ポリペプチドに特異的な少なくとも1つの
第2抗体とを、該メソセリン関連抗原ポリペプチドへの該少なくとも1つの第2
抗体の特異的結合を検出するに十分な条件および時間の下で接触させる工程であ
って、ここで該少なくとも1つの第2抗体の抗原結合部位は、該固定された少な
くとも1つの第1抗体の抗原結合部位を競合的に阻害しない、工程、
および、それから悪性状態の存在を検出する工程、
を包含する、方法。
(項目35) 被験体における悪性状態の存在についてスクリーニングする方法
であって、以下:
被験体由来の生物学的サンプルとメソセリン関連抗原ポリペプチドに特異的な
固定された少なくとも1つの第1抗体とを、該固定された少なくとも1つの第1
抗体を該メソセリン関連抗原ポリペプチドへと特異的に結合させるに十分な条件
および時間の下で接触させ、それにより免疫複合体を形成して、該サンプル中に
おいて可溶性形態で天然に存在する分子の、該生物学的サンプル中における存在
を決定する工程であって、ここで該少なくとも1つの第1抗体の抗原結合部位は
、モノクローナル抗体OV569の免疫特異的結合を競合的に阻害する、工程、
該固定された少なくとも1つの第1抗体に特異的に結合しない、該サンプル中
の成分を除去する工程;および
該免疫複合体とメソセリン関連抗原ポリペプチドに特異的な少なくとも1つの
第2抗体とを、該メソセリン関連抗原ポリペプチドへの該少なくとも1つの第2
抗体の特異的結合を検出するに十分な条件および時間の下で接触させる工程であ
って、ここで該少なくとも1つの第2抗体の抗原結合部位は、モノクローナル抗
体OV569の免疫特異的結合を競合的に阻害しない、工程、
および、それから悪性状態の存在を検出する工程、
を包含する、方法。
(項目36) 被験体における悪性状態の存在についてスクリーニングする方法
であって、以下:
被験体由来の生物学的サンプルとメソセリン関連抗原ポリペプチドに特異的な
固定された少なくとも1つの第1抗体とを、該固定された少なくとも1つの第1
抗体を該メソセリン関連抗原ポリペプチドへと特異的に結合させるに十分な条件
および時間の下で接触させ、それにより免疫複合体を形成して、該サンプル中に
おいて可溶性形態で天然に存在する分子の、該生物学的サンプル中における存在
を決定する工程であって、ここで該少なくとも1つの第1抗体の抗原結合部位は
、モノクローナル抗体MAb K−1の免疫特異的結合を競合的に阻害する、工
程、
該固定された少なくとも1つの第1抗体に特異的に結合しない、該サンプル中
の成分を除去する工程;および
該免疫複合体とメソセリン関連抗原ポリペプチドに特異的な少なくとも1つの
第2抗体とを、該メソセリン関連抗原ポリペプチドへの該少なくとも1つの第2
抗体の特異的結合を検出するに十分な条件および時間の下で接触させる工程であ
って、ここで該少なくとも1つの第2抗体の抗原結合部位は、モノクローナル抗
体MAb K−1の免疫特異的結合を競合的に阻害しない、工程、
および、それから悪性状態の存在を検出する工程、
を包含する、方法。
(項目37) 項目1〜36のいずれか一項に記載の方法であって、癌胎児抗原
、CA125、シアリルTN、扁平上皮癌抗原、組織ポリペプチド抗原、および
胎盤アルカリホスファターゼからなる群から選択される悪性状態の少なくとも1
つの可溶性マーカーの、前記サンプル中における存在を決定する工程をさらに包
含する、方法。
(項目38) 被験体における悪性状態の存在についてスクリーニングする方法
であって、以下:
(i)悪性状態を有すると疑われる第1被験体由来の第1生物学的サンプル、
および(ii)悪性状態を有さないことが既知の第2被験体由来の第2生物学的
サンプルの各々とメソセリン関連抗原ポリペプチドに特異的な少なくとも1つの
抗体とを、該少なくとも1つの抗体と反応性である抗原決定基への該抗体の結合
を検出するに十分な条件および時間の下で接触させて、該サンプル中において可
溶性形態で天然に存在し、かつ該抗原決定基を有する分子の、該第1生物学的サ
ンプルおよび該第2生物学的サンプルの各々における存在を決定する工程、なら
びに該第2生物学的サンプル中の該抗原決定基への該抗体の検出可能な結合のレ
ベルに対して、該第1生物学的サンプル中の該抗原決定基への該抗体の検出可能
な結合のレベルを比較する工程、ならびにそれから悪性状態の存在を検出する工
程、
を包含する、方法。
(項目39) 被験体における悪性状態の存在についてスクリーニングする方法
であって、以下:
メソセリン関連抗原ポリペプチドに免疫特異的に結合する抗体の存在を該被験
体由来の生物学的サンプル中において検出する工程、
を包含する、方法。
(項目40) 項目39に記載の方法であって、前記メソセリン関連抗原ポリペ
プチドが、配列番号1、配列番号2、および配列番号13からなる群から選択さ
れるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、方法。
(項目41) メソセリン関連抗原ポリペプチドに特異的な抗体であって、以下

メソセリンポリペプチドへのモノクローナル抗体MAb K−1の免疫特異的
結合を競合的に阻害せず、そしてメソセリン関連抗原ポリペプチドに特異的に結
合するモノクローナル免疫グロブリン可変領域であって、ここで該メソセリン関
連抗原ポリペプチドが、配列番号1、配列番号2、および配列番号13からなる
群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、モノクローナル免
疫グロブリン可変領域、
を含む、抗体。
(項目42) 融合タンパク質である、項目41に記載の抗体。
(項目43) 単鎖抗体である、項目41に記載の抗体。
(項目44) 前記メソセリン関連抗原ポリペプチドがグリコシル化されている
、項目41に記載の抗体。
(項目45) 前記メソセリン関連抗原ポリペプチドが、約42〜45キロダル
トンの見かけ上の分子量を有する、項目41に記載の抗体。
(項目46) モノクローナル抗体OV569、4H3、3G3、および1A6
からなる群から選択される、項目41に記載の抗体。
(項目47) 被験体における悪性状態の存在についてスクリーニングする方法
であって、以下:
被験体由来の生物学的サンプルと検出可能に標識されたメソセリン関連抗原ポ
リペプチドとを、該サンプル中において可溶性形態で天然に存在する抗体の該メ
ソセリン関連抗原ポリペプチドへの結合を検出するに十分な条件および時間の下
で接触させる工程、
および、それから悪性状態の存在を検出する工程、
を包含する、方法。
(項目48) 単離された核酸分子であって、該核酸分子は、以下:
(a)メソセリン関連抗原ポリペプチドをコードする核酸分子であって、該ポ
リペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列、配列番号2に示されるアミ
ノ酸配列、および配列番号13に示されるアミノ酸配列からなる群から選択され
るアミノ酸配列を含む、核酸分子;ならびに
(b)中程度にストリンジェントな条件下で(a)の核酸分子に対してハイブ
リダイズし得、そしてメソセリン関連抗原ポリペプチドをコードし得る核酸分子
からなる群から選択され、
ここで、該単離された核酸分子は、配列番号15に示されるヌクレオチド配列
、配列番号16に示されるヌクレオチド配列、配列番号17に示されるヌクレオ
チド配列、および配列番号18に示されるヌクレオチド配列からなる群から選択
されるヌクレオチド配列からなる核酸分子ではない、単離された核酸分子。
(項目49) 項目48に記載の核酸分子に対して相補的な、少なくとも15個
連続したヌクレオチドを含む、アンチセンスオリゴヌクレオチド。
(項目50) メソセリン関連抗原ポリペプチドに融合したポリペプチド配列を
含む、融合タンパク質。
(項目51) 前記ポリペプチドが、酵素またはその改変体もしくはフラグメン
トである、項目50に記載の融合タンパク質。
(項目52) 前記メソセリン関連抗原ポリペプチドに融合したポリペプチド配
列が、プロテアーゼによって切断可能である、項目51に記載の融合タンパク質

(項目53) 前記ポリペプチド配列が、リガンドに対する親和性を有するアフ
ィニティータグポリペプチドである、項目50に記載の融合タンパク質。
(項目54) 項目48に記載の核酸に作動可能に連結された少なくとも1つの
プロモーターを含む、組換え発現構築物。
(項目55) 前記プロモーターが調節プロモーターである、項目54に記載の
発現構築物。
(項目56) 前記メソセリン関連抗原ポリペプチドが、第2核酸配列のポリペ
プチド産物を有する融合タンパク質として発現される、項目54に記載の発現構
築物。
(項目57) 前記第2核酸配列のポリペプチド産物が酵素である、項目56に
記載の発現構築物。
(項目58) 前記発現構築物が組換えウイルス性発現構築物である、項目54
に記載の組換え発現構築物。
(項目59) 項目54〜58のいずれか一項に記載の組換え発現構築物を含む
、宿主細胞。
(項目60) 前記宿主細胞が原核生物細胞である、項目59に記載の宿主細胞

(項目61) 前記宿主細胞が真核生物細胞である、項目59に記載の宿主細胞

(項目62) 組換えメソセリン関連抗原ポリペプチドを生成する方法であって
、以下:
項目48に記載の核酸配列に作動可能に連結された少なくとも1つのプロモー
ターを含む組換え発現構築物を含む宿主細胞を培養する工程、
を包含する、方法。
(項目63) 前記プロモーターが調節プロモーターである、項目62に記載の
方法。
(項目64) 組換えメソセリン関連抗原ポリペプチドを生成する方法であって
、以下:
項目58に記載の組換えウイルス性発現構築物に感染させた宿主細胞を培養す
る工程、
を包含する、方法。
(項目65) サンプル中のメソセリン関連抗原の発現を検出する方法であって
、以下:
(a)項目49に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドと、配列番号13に
示されるアミノ酸配列を有するメソセリン関連抗原ポリペプチド、またはそのフ
ラグメントもしくは改変体をコードする核酸配列を含むサンプルとを接触させる
工程;および
(b)該アンチセンスオリゴヌクレオチドにハイブリダイズするメソセリン関
連抗原ポリペプチドをコードする核酸の、該サンプル中における量を検出する工
程、および、それから該サンプル中のメソセリン関連抗原の発現を検出する工程

を包含する、方法。
(項目66) 前記アンチセンスオリゴヌクレオチドにハイブリダイズするメソ
セリン関連抗原ポリペプチドをコードする核酸の量が、ポリメラーゼ連鎖反応を
使用して決定される、項目65に記載の方法。
(項目67) 前記アンチセンスオリゴヌクレオチドにハイブリダイズするメソ
セリン関連抗原ポリペプチドをコードする核酸の量が、ハイブリダイゼーション
アッセイを使用して決定される、項目65に記載の方法。
(項目68) 前記サンプルがRNA調製物またはcDNA調製物を含む、項目
65に記載の方法。
本発明のこれらの局面および他の局面は、以下の詳細な説明および添付される
図面の参照することによって、明らかになる。さらに、種々の参考文献が本明細
書中に示され、これは、本発明の特定の局面をより詳細に記載し、従ってその全
体が参考として援用される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、モノクローナル抗体OV569によって検出される癌関連抗原のウエスタン免疫ブロットの特徴付けを示す。
【図2】図2は、ELISAにおける、MPFの可溶性(D1hIg)ドメインまたは膜結合(D2hIg)ドメインを含む、ヒト免疫グロブリン定常領域融合タンパク質へのモノクローナル抗体OV569の結合を示す。
【図3】図3は、サンドイッチELISAによる、癌患者由来の血清中の可溶性メソセリンポリペプチドの検出を示す。
【図4】図4は、正常被験体由来および悪性状態と診断された患者由来の血清における可溶性メソセリンポリペプチドの、サンドイッチELISAを用いた検出を示す。
【図5A】図5A〜Bは、メソセリン関連抗原(MRA−1)アミノ酸配列(配列番号1)、およびMRA−1メソセリン関連抗原をコードする核酸配列(配列番号3)を示す。アミノ酸およびヌクレオチド位置は、3個のさらなるN末端アミノ酸(9個のさらなる5’ヌクレオチド)で始まるMRA−2配列(図6A〜B)に従って番号を付けた。太字型の強調は、関連するメソセリン/MPF配列に対する82塩基の挿入である。図5Cは、1文字コードを用いたアミノ酸配列を示す。
【図5B】図5A〜Bは、メソセリン関連抗原(MRA−1)アミノ酸配列(配列番号1)、およびMRA−1メソセリン関連抗原をコードする核酸配列(配列番号3)を示す。アミノ酸およびヌクレオチド位置は、3個のさらなるN末端アミノ酸(9個のさらなる5’ヌクレオチド)で始まるMRA−2配列(図6A〜B)に従って番号を付けた。太字型の強調は、関連するメソセリン/MPF配列に対する82塩基の挿入である。図5Cは、1文字コードを用いたアミノ酸配列を示す。
【図5C】図5A〜Bは、メソセリン関連抗原(MRA−1)アミノ酸配列(配列番号1)、およびMRA−1メソセリン関連抗原をコードする核酸配列(配列番号3)を示す。アミノ酸およびヌクレオチド位置は、3個のさらなるN末端アミノ酸(9個のさらなる5’ヌクレオチド)で始まるMRA−2配列(図6A〜B)に従って番号を付けた。太字型の強調は、関連するメソセリン/MPF配列に対する82塩基の挿入である。図5Cは、1文字コードを用いたアミノ酸配列を示す。
【図6A】図6A〜Bは、メソセリン関連抗原(MRA−2)アミノ酸配列(配列番号2)、およびMRA−2メソセリン関連抗原をコードする核酸配列(配列番号4)を示し、これは、3個のさらなるN末端アミノ酸(9個のさらなる5’ヌクレオチド)で始まる。太字型の強調は、関連するメソセリン/MPF配列に対する82塩基の挿入の80ヌクレオチドである。図6A〜Bは、1文字コードを用いたアミノ酸配列を示す。
【図6B】図6A〜Bは、メソセリン関連抗原(MRA−2)アミノ酸配列(配列番号2)、およびMRA−2メソセリン関連抗原をコードする核酸配列(配列番号4)を示し、これは、3個のさらなるN末端アミノ酸(9個のさらなる5’ヌクレオチド)で始まる。太字型の強調は、関連するメソセリン/MPF配列に対する82塩基の挿入の80ヌクレオチドである。図6A〜Bは、1文字コードを用いたアミノ酸配列を示す。
【図6C】図6A〜Bは、メソセリン関連抗原(MRA−2)アミノ酸配列(配列番号2)、およびMRA−2メソセリン関連抗原をコードする核酸配列(配列番号4)を示し、これは、3個のさらなるN末端アミノ酸(9個のさらなる5’ヌクレオチド)で始まる。太字型の強調は、関連するメソセリン/MPF配列に対する82塩基の挿入の80ヌクレオチドである。図6A〜Bは、1文字コードを用いたアミノ酸配列を示す。
【図7A】図7A〜Bは、このSMRをコードする可溶性メソセリン関連(SMR)抗原アミノ酸配列(配列番号13)および核酸配列(配列番号14)を示す。太字項型の強調は、関連するメソセリン/MPF配列に対する82塩基の挿入である。図7Cは、1文字コードを用いたアミノ酸配列を示す。
【図7B】図7A〜Bは、このSMRをコードする可溶性メソセリン関連(SMR)抗原アミノ酸配列(配列番号13)および核酸配列(配列番号14)を示す。太字項型の強調は、関連するメソセリン/MPF配列に対する82塩基の挿入である。図7Cは、1文字コードを用いたアミノ酸配列を示す。
【図7C】図7A〜Bは、このSMRをコードする可溶性メソセリン関連(SMR)抗原アミノ酸配列(配列番号13)および核酸配列(配列番号14)を示す。太字項型の強調は、関連するメソセリン/MPF配列に対する82塩基の挿入である。図7Cは、1文字コードを用いたアミノ酸配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(発明の詳細な説明)
本発明は、メソセリンポリペプチドとして本明細書中に参照される特定の遺伝
子産物の可溶性形態が被験体中に天然に生じるという予期しない発見に一部関連
し、これには、特定の癌を有する被験体中の増大したレベルのそのような可溶性
メソセリンポリペプチドを含む。従って本発明は、そのような可溶性メソセリン
ポリペプチドの特異的な検出によって、被験体における悪性状態を検出および診
断するための有用な組成物および方法を提供する。
【0034】
以下に詳述するように、本発明の特定の実施形態は、ヒトメソセリンポリペプ
チドに関し、ヒトメソセリンポリペプチドは、本明細書中に記載の新規可溶性メ
ソセリン関連抗原(mesothelin related antigen)
(MRA)ポリペプチドのようなポリペプチドを含み、そしてまた、メソセリン
の細胞表面関連タンパク質(Changら、1996 Proc.Nat.Ac
ad.Sci.USA 93:136)および巨核球増殖因子(megakar
yocyte potentiating factor)(MPF)前駆体の
膜結合タンパク質(Kojimaら、1995 J.Biol.Chem.27
0:21984)を含む。特定の他の実施形態において、本発明は、MRAポリ
ペプチドのフラグメント、誘導体および/またはアナログに関する。簡単に言う
と、本発明の特定の実施形態に従って、被験体由来の生物学的サンプルをヒトメ
ソセリンポリペプチドに特異的な抗体と接触させることによって、被験体におけ
る悪性状態の存在をスクリーニングする方法が提供される。MRAの完全アミノ
酸配列および完全核酸コード配列が、本明細書中に開示され、これには、ポリA
+RNAから誘導される核酸分子でありかつMRAをコードする核酸分子が終止
コドンを欠くという驚くべき知見が含まれる。メソセリン(Changら、19
96)およびMPF(Kojimaら、1995)の完全アミノ酸配列および完
全核酸コード配列は、公知であり、これには、MRAを含む本明細書中に使用さ
れるようなメソセリンポリペプチドに対応するこれらの配列の部分が含まれる。
【0035】
種々のヒト腫瘍細胞株の細胞質ならびに表面上におけるメソセリンポリペプチ
ドの発現は、公知である(例えば、Changら、1996;Kojimaら、
1995;およびその中に引用される参考文献を参照のこと)。このことは、本
明細書中に記載されるように、メソセリンポリペプチドに対して特異的な抗体を
生成するための免疫原としてのそのような細胞の使用を可能にする。ヒトメソセ
リンポリペプチドを特異的に認識するモノクローナル抗体が報告され、そして入
手可能である(Changら、1996;Changら、1992 Int.J
.Cancer 50:373)。あるいは、当業者は、当該分野で周知の方法
論を伴う本発明の技術を使用して、慣用的そして過度の実験を伴わずに、メソセ
リンポリペプチド特異的抗体生成のために宿主を免疫し得、そしてスクリーニン
グし得る。例えば、免疫原として使用され得る特定の腫瘍細胞は、メソセリンポ
リペプチドを発現することが公知であり(例えば、Changら、1996;K
ojimaら、1995;およびその中に引用される参考文献を参照のこと)、
そして候補免疫原性細胞株におけるメソセリンポリペプチドの発現の測定は、本
明細書中に提供されるメソセリンポリペプチドの特徴付けおよび/または報告さ
れるような(例えば、Changら(1996)およびKojimaら(199
5))メソセリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の検出可能な発現
に基づいて達成され得る。
【0036】
本明細書中に開示される可溶性メソセリンポリペプチドの物理化学的特性およ
び免疫化学的特性から、そしてメソセリン関連抗原(MRA)であるメソセリン
ポリペプチドファミリーのメンバーをコードする本明細書中に開示される核酸配
列を用いて、または必要に応じて他のメソセリンポリペプチド(例えば、メソセ
リンまたはMPF)をコードするヌクレオチド配列の報告された特性を使用して
、当業者はまた、周知の方法論に従って、特異的抗体を生成かつ特徴付けるため
に使用され得る組換えメソセリンポリペプチドを調製し得る。メソセリンポリペ
プチドは、適切なプロモーターの制御下で、哺乳動物細胞、酵母、細菌または他
の細胞において発現し得る。無細胞翻訳系はまた、引用される参考文献のメソセ
リンポリペプチドDNAコード領域(Changら、1996;Kojimaら
、1995)からか、または本明細書中に開示されるMRAコード化核酸配列か
ら誘導されるRNAを用いて、そのようなタンパク質を生成するために使用され
得るか、あるいは本明細書中に提供されるMRAアミノ酸配列から推定され得る
ようなタンパク質を生成するために使用され得る。原核生物宿主および真核生物
宿主を用いる使用のための適切なクローニングベクターおよび発現ベクターは、
Sambrookら、Molecular Cloning:A Labora
tory Manual,第2版,Cold Spring Harbor,N
Y(1989)によって記載される。本発明の好ましい実施形態において、メソ
セリンポリペプチドは、哺乳動物細胞で発現される。
【0037】
本発明の核酸は、RNAの形態であり得るかまたはDNAの形態であり得、こ
のDNAは、cDNA、ゲノムDNAおよび合成DNAを含む。DNAは、二本
鎖または一本鎖であり得、そして一本鎖の場合、このDNAはコード鎖または非
コード(アンチセンス)鎖であり得る。本発明に従う使用のためのMRAポリペ
プチドをコードするコード配列は、配列番号3または配列番号4に提供されるコ
ード配列に同一であり得るか、あるいは異なるコード配列(これは遺伝子暗号の
重複性または縮重の結果として、例えばcDNA配列番号3および4と同じMR
Aポリペプチドをコードする)であり得る。従って、本発明は、配列番号1また
は2のアミノ酸配列を有するメソセリン関連抗原ポリペプチドをコードする単離
された核酸分子、またはそのようなMRAポリペプチドをコードする核酸にハイ
ブリダイズし得る核酸分子もしくはそれに相補的な配列を有する核酸配列。
【0038】
改変体は、天然のメソセリン関連抗原ポリペプチドをコードするポリヌクレオ
チド配列もしくはその部分(例えば、配列番号3および4に示される核酸配列な
ど)に対して、好ましくは少なくとも約70%同一性、より好ましくは少なくと
も約80%同一性、そして最も好ましくは少なくとも約90%同一性を示す。パ
ーセント同一性は、当業者に周知のコンピューターアルゴリズム(例えば、Al
ignまたはBLASTアルゴリズム(Altschul,J.Mol.Bio
l.219:555−565,1991;HenikoffおよびHeniko
ff、Proc.Nat.Acad.Sci.USA 89:10915−10
919、1992;これは、NCBIウェブサイト(http://www/n
cbi.nlm.nih.gov/cgi−bin/BLAST)で入手可能で
ある)を使用して配列を比較することによって、容易に決定され得る。デフォル
トパラメーターを使用し得る。
【0039】
特定の改変体は、天然の遺伝子に実質的に相同性である。そのようなポリヌク
レオチド改変体は、中程度にストリンジェントな条件下で、天然のメソセリン関
連抗原をコードする天然に存在するDNAまたはRNA配列(またはその相補配
列)にハイブリダイズし得る。適切な中程度にストリンジェントな条件としては
、例えば、以下の工程またはそれらの等価な工程が挙げられる;5×SSC(0
.5% SDS、1.0mM EDTA(pH 8.0)溶液中での前洗浄;5
0〜65℃で一晩5×SSCでハイブリダイゼーション;続いて65℃において
、2×、0.5×および0.2×SSC(0.1% SDSを含む)の各々で、
20分間2回ずつの洗浄。さらなるストリンジェンシーのために、条件としては
、例えば60℃で15分間、0.1×SSCおよび0.1%SDSで洗浄するか
、またはその等価な条件が挙げられ得る。当業者は、適切にストリンジェントな
ハイブリダイゼーション条件(これは、目的の特定の核酸に対していくらか選択
的である)を生成するための慣用的な事項として変更され得るパラメーターを容
易に理解し、そしてさらに、そのような条件が、特に、例えば配列番号3および
4(これらは、それぞれ、メソセリン関連抗原ポリペプチドMRA−1およびM
RA−2をコードする)として本明細書中に開示される核酸配列のような、ハイ
ブリダイゼーションに関与する特定の核酸配列の機能であり得ることを理解する
。例えば、Ausubelら、Current Protocols in M
olecular Biology,Greene Publishing,1
995(核酸ハイブリダイゼーション条件の選択に関して)もまた参照のこと。
【0040】
MRAポリペプチド(例えば、配列番号1〜2のアミノ酸配列を有するヒトM
RAポリペプチドまたは本発明に従う用途のための任意の他のMRAポリペプチ
ド)をコードする核酸としては、以下が挙げられ得るが、これらに限定されない
:MRAポリペプチドのコード配列のみ;MRAポリペプチドのコード配列およ
びさらなるコード配列;MRAポリペプチドのコード配列(および必要に応じて
さらなるコード配列)ならびに非コード配列(例えば、MRAポリペプチドのコ
ード配列のイントロンまたは非コード配列5’および/もしくは3’(これは、
例えば、調節されるかまたは調節され得るプロモーター、エンハンサー、他の転
写調節配列、リプレッサー結合配列、翻訳調節配列または任意の他の調節核酸配
列であり得る、1つ以上の調節核酸配列をさらに含むが、これらに限定されない
))。従って、用語「MRAポリペプチドをコードする核酸」とは、ポリペプチ
ドのコード配列のみを含む核酸ならびにさらなるコード配列および/または非コ
ード配列を含む核酸を含む。
【0041】
本発明はさらに、本明細書中に記載される核酸の改変体に関し、この核酸は、
MRAポリペプチド(例えば、配列番号1および2の推定アミノ酸配列を有する
ヒトMRAポリペプチド)のフラグメント、アナログおよび誘導体をコードする
。MRAをコードする核酸の改変体は、核酸の天然に存在する対立遺伝子改変体
または天然に存在しない改変体であり得る。当該分野において公知のように、改
変体は、1つ以上のヌクレオチドの置換、欠失または付加(これらのいずれも、
コードされたMRAポリペプチドの機能を実質的に変化させない)を少なくとも
1つ有し得る核酸配列の代替形態(alternat form)である。従っ
て、例えば、本発明は、配列番号1および2に示されるMRAポリペプチドと同
じMRAポリペプチドをコードする核酸、ならびにそのような核酸の改変体(こ
の改変体は、配列番号1または2の任意のポリペプチドのフラグメント、誘導体
またはアナログをコードし得る)を含む。
【0042】
MRAの改変体および誘導体は、MRAポリペプチドをコードするヌクレオチ
ド配列の変異によって得られ得る。天然アミノ酸配列の改変は、任意の多数の従
来法によって達成され得る。変異は、変異配列を含むオリゴヌクレオチドを合成
することによって特定の座位に導入され得、天然配列のフラグメントに対する連
結を可能にする制限部位が隣接する。連結の後、生じた再構成された配列は、所
望のアミノ酸挿入、置換または欠失を有するアナログをコードする。
【0043】
あるいは、オリゴヌクレオチド指向性部位特異的突然変異手順が使用され、改
変された遺伝子が得られ得、ここで、予め決定されたコドンは、置換、欠失また
は挿入によって改変され得る。そのような改変を作製する例示的な方法は、以下
によって開示される:Walderら(Gene 42:133、1986);
Bauerら(Gene 37:73、1985);Craik(BioTec
hniques,1985年1月,12−19);Smithら(Geneti
c Engineering:Principles and Methods
,Plenum Press、1981);Kunkel(Proc.Natl
.Acad.Sci.USA 82:488、1985);Kunkelら(M
ethods in Enzymol.154:367、1987);ならびに
米国特許第4,518,584号および同第4,737,462号。
【0044】
MRAポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメントをコードする核酸
配列に特異的な、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびリボザイムを含むアン
チセンス因子としての使用のための核酸分子の同定;ならびに遺伝子治療のため
の標的化された送達のためのMRA遺伝子をコードするDNAオリゴヌクレオチ
ドの同定は、当該分野において周知の方法を含む。例えば、そのようなオリゴヌ
クレオチドの所望の特性、長さおよび他の特徴が周知である。特定の好ましい実
施形態において、そのようなアンチセンスオリゴヌクレオチドは、本明細書中に
提供されるようなMRAポリペプチドをコードする単離された核酸分子に相補的
な、少なくとも15個連続したヌクレオチドを含む。アンセンスオリゴヌクレオ
チドは、代表的に、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、スルホン、サル
フェート、ケチル、ホスホロジチオエート、ホスホロアミデート、ホスフェート
エステル、および他のそのような連結のような連結を用いることによって、内因
性ヌクレオチド分解性(nucleolytic)酵素による分解に耐性である
ように設計される(例えば、Agrwalら、Tetrehedron Let
t.28:3539−3542(1987);Millerら、J.Am.Ch
em.Soc.93:6657−6665(1971);Stecら、Tetr
ehedron Lett.26:2191−2194(1985);Mood
yら、Nucl.Acids Res.12:4769−4782(1989)
;Uznanskiら、Nucl.Acids Res.(1989);Let
singerら、Tetrahedron 40:137−143(1984)
;Eckstein,Annu.Rev.Biochem.54:367−40
2(1985);Eckstein,Trends Biol.Sci.14:
97−100(1989);Stein:Oligodeoxynucleot
ides.Antisense Inhibitors of Gene Ex
pression,Cohen編、Macmillan Press,Lond
on、97−117頁(1989);Jagerら、Biochemistry
27:7237−7246(1988)を参照のこと)。
【0045】
アンチセンスヌクレオチドは、mRNAまたはDNAのような核酸に配列特異
的な様式で結合するオリゴヌクレオチドである。相補配列を有するmRNAに結
合する場合、アンチセンスは、mRNAの翻訳を阻害する(例えば、米国特許第
5,168,053号(Altmanら);米国特許第5,190,931号(
Inouye)、米国特許第5,135,917号(Burch);米国特許第
5,087,617号(Smith)およびCluselら(1993)Nuc
l.Acids Res.21:3405−3411(これは、亜鈴状アンチセ
ンスオリゴヌクレオチドを記載する)を参照のこと)。三重鎖分子は、二本鎖D
NAに結合する一本鎖DNA鎖が、共直線性の三重鎖分子を形成することをいい
、これによって転写が阻害される(例えば、米国特許第5,176,996号(
Hoganら)を参照し、これは、二重鎖DNA上の標的部位に結合する合成オ
リゴヌクレオチドを作製するための方法を記載する)。
【0046】
本発明のこの実施形態によって、特に有用なアンチセンスヌクレオチドおよび
三重鎖分子は、MRAポリペプチドをコードするmRNAの翻訳阻害が効果的で
あるように、MRAポリペプチドをコードするDNAまたはmRNAのセンス鎖
に相補的であるか、またはこれらに結合する分子である。
【0047】
リボザイムは、mRNAのようなRNA基質を特異的に切断するRNA分子で
あり、細胞性遺伝子発現の特定の阻害または妨害を生じる。RNA鎖の切断およ
び/または連結に関与する、少なくとも5つの公知のリボザイムクラスが存在す
る。リボザイムは、任意のRNA転写物へ標的にされ得、そしてその転写物を触
媒的に切断し得る(例えば、米国特許第5,272,262号;米国特許第5,
144,019号;および米国特許第5,168,053号、同第5,180,
818号、同第5,116,742号、同第5,093,246号(Cechら
)を参照のこと)。本発明の特定の実施形態によって、任意のそのようなMRA
mRNA特異的リボザイム、またはそのようなリボザイムをコードする核酸が
、宿主細胞に送達され、MRA遺伝子発現の阻害に影響を与え得る。従って、リ
ボザイムなどは、真核生物プロモーター(例えば、真核性ウイルスプロモーター
)に連結されたリボザイムをコードするDNAによって宿主細胞に送達され得、
その結果、核への導入の際にリボザイムは直接転写される。
【0048】
アミノ酸残基もしくは配列の種々の付加または置換、あるいは生物学的活性に
必要でない、末端残基もしくは内部残基または末端配列もしくは内部配列の欠失
をコードする等価なDNA構築物がまた、本発明によって含まれる。例えば、生
物学的活性に重要でないCys残基をコードする配列は、変更され得、欠失され
るかまたは他のアミノ酸と置換されるCys残基を生じ、これによって再生にお
ける不正確な分子内ジスルフィド架橋の形成を回避する。他の等価体は、隣接の
二塩基性アミノ酸残基の改変によって調製され得、KEX2プロテアーゼ活性が
存在する酵母系において発現を増強する。EP212,914は、タンパク質に
おけるKEX2プロテアーゼプロセシング部位を不活性化するための、部位特異
的突然変異の使用を開示する。KEX2プロテアーゼプロセシング部位は、隣接
の塩基性残基の出現を排除するために、Arg−Arg、Arg−Lysおよび
Lys−Arg対を変化するための残基の欠失、付加または置換によって不活性
化する。Lys−Lys対は、KEX2切断に対してかなり感受性ではなく、そ
してArg−LysまたはLys−ArgのLys−Lysへの変換は、KEX
2部位における不活性化に対する、保存的かつ好ましいアプローチを表す。
【0049】
適切なDNA配列は、種々の手順によって、選択された宿主細胞に対して適切
な任意の多数の周知のベクターへ、挿入され得る。一般的に、このDNA配列は
、当該分野において公知の手順によって適切な制限エンドヌクレアーゼ部位に挿
入される。酵素学的反応(DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼ、制限エンドヌ
クレアーゼなどを含む)のための、クローニング、DNA単離、増幅および精製
に関する標準的な技術ならびに種々の分離技術は、当業者によって公知かつ通常
使用される技術である。多くの標準的な技術は、例えばAusubelら(19
93 Current Protocols in Molecular Bi
ology,Greene Publ.Assoc.Inc.&John Wi
ley&Sons,Inc.,Boston,MA);Sambrookら(1
989 Molecular Cloning,第2版、Cold Sprin
g Harbor Laboratory,Plainview,NY);およ
び他の箇所に記載される。
【0050】
哺乳動物発現系の例としては、Gluzman、Cell 23:175(1
981)によって記載されるサル腎臓線維芽細胞のCOS−7株、および適合性
のベクターを発現し得る他の細胞株(例えば、C127、3T3、CHO、He
LaおよびBHK細胞株)が挙げられる。哺乳動物発現ベクターは、複製起点、
適切なプロモーターおよびエンハンサー、ならびに任意の必要なリボソーム結合
部位、ポリアデニル化部位、スプライスドナーおよびアクセプター部位、転写終
止配列、および5’隣接非転写領域も含む。例えば、S40スプライス部位およ
びポリアデニル化部位から誘導されるDNA配列が使用され、必要とされる非転
写遺伝子エレメントが得られ得る。宿主細胞ヘの構築物の導入は、当業者に精通
される種々の方法によって効果的にされ得、この方法としては、例えば、リン酸
カルシウムトランスフェクション、DEAE−Dextran媒介トランスフェ
クションまたはエレクトロポレーションが挙げられるが、これらに限定されない
(Davisら、1986 Basic Methods in Molecu
lar Biology)。
【0051】
本発明はさらに、MRA、メソセリン関連抗原ポリペプチドおよび特に悪性状
態を検出するための方法に関する。好ましい実施形態において、悪性腫瘍は、ヒ
トメソセリンポリペプチドに特異的な少なくとも1つの抗体と反応性の抗原決定
基を有する天然に存在する可溶性分子の、生物学的サンプル中における存在を測
定することによって検出される。別の好ましい実施形態において、悪性腫瘍は、
少なくとも1つの天然に存在するMRAポリペプチドの、生物学的サンプル中に
おける存在を測定することによって検出される。本明細書中に提供されるように
、「メソセリン関連抗原ポリペプチド」または「MRAポリペプチド」としては
、以下が挙げられる:配列番号1または2のアミノ酸配列を有する任意のポリペ
プチド(その任意のフラグメント、誘導体またはアナログを含む)を含み、そし
てまた、配列番号3もしくは4を含む核酸分子または配列番号3もしくは4の核
酸分子にハイブリダイズし得る核酸分子によってコードされる任意のポリペプチ
ド(またはそのフラグメント、誘導体またはアナログ)を含む。従って、選択さ
れた、現在開示されたMRAアミノ酸または核酸配列の部分に依存して、MRA
ポリペプチドは、(そうである必要はないが)メソセリンポリペプチドであり得
る。本明細書中に提供されるように、「メソセリンポリペプチド」は、以下のペ
プチド:EVEKTACPSGKKAREIDES (配列番号5)を含むアミ
ノ酸配列、およびMAb K−1(Changら、1996 Proc.Nat
.Acad.Sci.USA 93:136;MAb K−1は、例えば、Si
gnet Laboratories,Inc.,Dedham,MAから入手
可能である)または本明細書中に提供されるようなモノクローナル抗体OV56
9、4H3、3G3、もしくは1A6の免疫特異的結合を競合的に阻害する、抗
原結合部位(antigen combining site)を有する少なく
とも1つの抗体と反応する、少なくとも1つの抗原決定基をさらに有する可溶性
ポリペプチドである。メソセリンポリペプチドは、例えば、本明細書中に提供さ
れるようなメソセリン関連抗原(MRA)ポリペプチドを含み得るか、またはメ
ソセリンそれ自身の細胞表面関連部分(Changら、1996)、MPF前駆
体タンパク質の膜結合部分(Kojimaら、1995 J.Biol.Che
m.270:21984)またはそのようなポリペプチドの任意のフラグメント
、アナログおよび誘導体から誘導され得る。
【0052】
本発明のMRAポリペプチドまたはメソセリンポリペプチドは、未改変ポリペ
プチドであってもよいし、または例えば、グリコシル化、リン酸化、脂肪アシル
化(グリコシルホスファチジルイノシトールアンカー改変などを含む)、ホスフ
ァチジルイノシトール特異的ホスホリパーゼc媒介加水分解などのようなホスホ
リパーゼ切断、プロテアーゼ切断、脱リン酸または共有化学結合の形成または切
断を含む改変のようなタンパク質翻訳後改変の任意の他の型により翻訳後改変さ
れたポリペプチドであってもよい。
【0053】
用語「フラグメント」、「誘導体」、および「アナログ」は、メソセリン関連
抗原ポリペプチドまたは融合タンパク質をいう場合、このようなポリペプチドと
本質的に同じ生物学的機能および/または活性を保持する任意のメソセリン関連
抗原ポリペプチドをいう。従って、アナログは、メソセリン関連抗原ポリペプチ
ドアイソフォーム(例えば、差示的に翻訳後に改変されたメソセリン関連抗原ポ
リペプチドまたはスプライス改変体のような改変体)を含み得る。当該分野で周
知のように、「スプライス改変体」は、RNA転写物の差示的細胞内プロセシン
グから生じるポリペプチドの改変体または代替形態を含む。例えば、2つの異な
るmRNA種は、それらが一方のmRNA種における特定のエキソンに対応する
配列のすべてまたは1部分の封入および他方の種からのその非存在によってのみ
異なる場合、互いのスプライス改変体であり得る。当業者は、他の構造的関係が
、一般にスプライス改変体とみなされるmRNA種との間に存在し得ることを理
解する。メソセリンポリペプチドは、さらに、活性化メソセリンポリペプチドを
生成するために、プロタンパク質部分の切断によって活性化され得るプロタンパ
ク質を含む。
【0054】
MRAポリペプチドまたはメソセリンポリペプチドの、フラグメント、誘導体
およびアナログの、生物学的機能および/または活性としては、本明細書中に開
示されるように、被験体における悪性状態の存在をスクリーニングする方法にお
けるマーカーとして、このようなポリペプチドの使用が挙げられるが、これに限
定される必要はない。例えば、被験体由来のサンプルにおいて、可溶性形態で天
然に存在し、そしてメソセリンポリペプチドに対して特異的な、少なくとも1つ
の抗体と反応性である抗原決定基を有する分子を検出することによって、当業者
は、MRAポリペプチドおよび/またはメソセリンポリペプチドの、生物学的機
能および/または活性をモニターし得る。さらに、特定の実施形態において、ス
クリーニングの本発明方法は、(i)悪性状態を有すると疑われる第1被験体由
来の第1生物学的サンプル、および(ii)悪性状態でないことが既知の第2被
験体由来の第2生物学的サンプルの各々において、可溶性形態で天然に存在し、
そしてメソセリンポリペプチドに対して特異的な、少なくとも1つの抗体と反応
性である抗原決定基を有する検出可能分子の相対量、レベルおよび/または量を
比較することに関することに注目すべきである。従って、生物学的サンプルにお
けるメソセリンポリペプチドの相対量的存在は、メソセリンポリペプチドの生物
学的機能および/または活性であり得るが、このような機能および/または活性
は、そのように限定されるべきではない。
【0055】
MRAポリペプチドまたはメソセリンポリペプチドのフラグメント、誘導体ま
たはアナログは、(i)1つ以上のアミノ酸残基が、保存的アミノ酸残基または
非保存的アミノ酸残基(好ましくは、保存的アミノ酸)に置換されるもの;(i
i)付加的なアミノ酸が、メソセリンポリペプチドと融合されもので、この付加
的なアミノ酸はメソセリンポリペプチドの精製またはプロタンパク質配列に使用
され得るアミノ酸を含む;または(iii)短縮メソセリンポリペプチドであり
得る。このようなフラグメント、誘導体およびアナログは、本明細書中の教示か
ら当業者の範囲内であると考えられる。
【0056】
短縮メソセリンポリペプチドは、全長バージョンに満たないメソセリンポリペ
プチドを含む任意のメソセリンポリペプチド分子であり得る。本発明によって提
供される短縮分子は、短縮された生物学的ポリマーを含み得、そして好ましい本
発明の実施形態において、このような短縮分子は、短縮核酸分子または短縮ポリ
ペプチドであり得る。短縮核酸分子は、既知または記載された核酸分子の全長に
満たない核酸配列を有し、ここでこのような既知または記載の核酸分子は、当業
者がそれを全長分子とみなす限り、天然に存在する核酸分子、合成核酸分子また
は組換え核酸分子であり得る。従って、例えば、遺伝子配列に対応する短縮核酸
分子は、全長に満たない遺伝子を含み、ここでこの遺伝子は、コード配列および
非コード配列、プロモーター、エンハンサーおよび他の調節配列、フランキング
配列など、ならびに遺伝子の1部として認識される、他の機能的配列および非機
能的配列を含む。別の実施形態において、mRNA配列に対応する短縮核酸分子
は、全長に満たないmRNA転写物を含み、この転写物は、種々の翻訳領域およ
び非翻訳領域ならびに他の機能的配列および非機能的配列を含み得る。他の好ま
しい実施形態において、短縮分子は、特定のタンパク質の全長に満たないアミノ
酸配列を含むポリペプチドである。
【0057】
本明細書中で使用される場合、「欠失」は、当業者によって理解されるような
その一般的な意味を有し、そして、例えば、本明細書中で提供される短縮分子の
場合のような対応する全長分子に関連して、1つ以上の、末端領域または非末端
領域のいずれかからの配列の一部を欠く分子をいい得る。核酸分子またはポリペ
プチドのように直線状生物学的ポリマーである短縮分子は、1つ以上の、分子の
末端からの欠失または分子の非末端領域からの欠失のいずれかを有し得、ここで
このような欠失は、1〜1500個連続したヌクレオチドまたはアミノ酸残基、
好ましくは1〜500個連続したヌクレオチドまたはアミノ酸残基およびより好
ましくは1〜300個連続したヌクレオチドまたはアミノ酸残基の欠失であり得
る。
【0058】
当該分野で公知のように、2つのポリペプチド間の「類似性」は、ポリペプチ
ドのアミノ酸配列およびそれらに対する保存的アミノ酸置換基を、第2ポリペプ
チドの配列と比較することによって決定される。2つの、ポリペプチドまたはヌ
クレオチド配列間の類似性、または百分率の同一性でさえ、当業者に周知のコン
ピューターアルゴリズム(例えば、BLASTアルゴリズム(Altschul
,J.Mol.Biol.219:555−565,1991;Henikof
fおよびHenikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA
89:10915−10919,1992)(これはNCBIウェブサイト(h
ttp://www/ncbi.nlm.nih.gov/cgi−bin/B
LAST)において利用可能である))を用いて配列を比較することによって容
易に決定され得る。デフォルト(default)パラメータが使用され得る。
他の有用なコンピューターアルゴリズムの例は、AlignおよびFASTAの
ようなプログラムにおいて使用されるコンピューターアルゴリズムであり、これ
は、例えば、Institut de Genetique Humaine,
Montpellier,FranceのGenestreamインターネット
ウェブサイト(www2.igh.cnrs.fr/home.eng.htm
l)でアクセスされ得、そしてデフォルトパラメータを用いて使用され得る。本
発明のポリペプチドのフラグメントまたは一部は、ペプチド合成によって対応す
る全長ポリペプチドを生成するために使用され得;従って、このフラグメントは
、全長ポリペプチドを生成するための中間体として使用され得る。
【0059】
用語「単離される(た)」は、材料がその元々の環境(例えば、それが天然に
存在する場合の自然環境)から取り出されることを意味する。例えば、天然に存
在していて、生きている動物において存在する、ポリペプチドまたはポリヌクレ
オチドは単離されないが、自然系に共存する材料のいくつかまたは全てから分離
される、同じポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、単離される。このような
ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、組成物の一部であり得、そしてなお、
このような組成物はその天然の環境の一部ではないという点で単離されている。
【0060】
アフィニティー技術は、本発明の使用の方法に従った使用のために、MRAポ
リペプチドおよび/またはメソセリンポリペプチドを単離する範囲で特に有用で
あり、そして分離を行うためにMRAポリペプチドまたはメソセリンポリペプチ
ドとの特異的な結合相互作用を排除する任意の方法を含み得る。例えば、メソセ
リンポリペプチドは、共有結合したオリゴ糖部分を含み得ることから(例えば、
Changら、1996 Proc.Nat.Acad.Sci.USA 93
:136;Changら、1992 Cancer Res.52:181;K
ojimaら、1995 J.Biol Chem.270:21984;Ya
maguchiら、1994 J.Biol.Chem.269:805を参照
のこと)、レクチンによる炭水化物結合(carbohydrate bind
ing)を可能にする条件下で、適切に固定されたレクチンに対する、メソセリ
ンポリペプチドの結合のようなアフィニティー技術は、アフィニティー技術にお
いて特に有用であり得る。他の有用なアフィニティー技術としては、メソセリン
ポリペプチドを単離するための免疫学的技術が挙げられ、この技術は、抗原に対
する抗体の結合部位と複合体に存在する抗原決定基との間の特異的結合の相互作
用に頼る。免疫学的技術としては、免疫アフィニティークロマトグラフィー、免
疫沈降、固相免疫吸着または他の免疫アフィニティーの方法が挙げられるが、こ
れらに限定される必要はない。これらの有用なアフィニティー技術および他の有
用なアフィニティー技術について、例えば、以下を参照せよ:Scopes,R
.K.,Protein Purification:Principles
and Practice,1987,Springer−Verlag,NY
;Weir,D.M.,Handbook of Experimental
Immunology,1986,Blackwell Scientific
,Boston;およびHermanson,G.T.ら,Immobiliz
ed Affinity Ligand Techniques,1992,A
cademic Press,Inc.,California;(これらは、
アフィニティー技術を含む、複合体を単離して、そして特徴付けるための技術に
関する詳細について、本明細書によってそれらの全体が参考として援用される)

【0061】
本明細書中に記載されるように、本発明は、MRAと融合されたポリペプチド
を含む融合タンパク質を提供する。このようなMRA融合タンパク質は、例えば
、MRA融合タンパク質の検出、単離および/または精製(例示の目的であり、
そして限定ではない)を可能にする、付加的な、機能的ポリペプチド配列または
非機能的ポリペプチド配列に融合されたMRAポリペプチド配列の発現を提供す
るために、付加的なコード配列とインフレームで融合されたMRAコード配列を
有する核酸によってコードされる。このようなMRA融合タンパク質は、タンパ
ク質−タンパク質アフィニティー、金属アフィニティーまたは荷電アフィニティ
ーベース(affinity−based)ポリペプチド精製によって、または
プロテアーゼによって切断可能な融合配列を含む融合タンパク質の特異的なプロ
テアーゼ切断によって、MRA融合タンパク質の検出、単離および/または精製
を可能にし、その結果、MRAポリペプチドは、融合タンパク質と分離可能であ
り得る。
【0062】
従って、MRA融合タンパク質は、アフィニティータグポリペプチド配列を含
み得、このMRA融合タンパク質は、リガンドとの特異的アフィニティー相互作
用を介して、MRAの検出および単離を容易にするためにMRAに添加されるポ
リペプチドまたはペプチドをいう。このリガンドは、アフィニティータグが本明
細書中で提供されるような特異的な結合相互作用を介して相互作用し得る、任意
の、分子、レセプター、カウンターレセプター(counterrecepto
r)、抗体などであり得る。このようなペプチドとしては、例えば、ポリ−Hi
sまたは米国特許番号第5,011,912号およびHoppら(1988 B
io/Technology 6:1204に記載される抗原同定ペプチド、も
しくはXPRESSTMエピトープタグ(Invitrogen、Carlsba
d、CA)が挙げられる。このアフィニティー配列は、細菌宿主の場合に、マー
カーと融合された成熟ポリペプチドの精製を提供するために、例えば、pBAD
/His(Invitrogen)またはpQE−9ベクターによって供給され
るようなヘキサヒスチジンタグであってもよいし、または、例えば、哺乳動物宿
主(例えば、COS−7細胞)が使用される場合、アフィニティー配列は、赤血
球凝集素(HA)タグであってもよい。HAタグは、インフルエンザ赤血球凝集
素タンパク質由来のエピトープを規定された抗体に対応する(Wilsonら、
1984 Cell 37:767)。
【0063】
MRA融合タンパク質は、MRAの検出、単離および/または局在を容易にす
るためにMRAに付加された免疫グロビン定常領域ポリペプチドをさらに含み得
る。免疫グロブリン定常領域ポリペプチドは、好ましくは、MRAポリペプチド
のC末端と融合される。抗体由来ポリペプチドの種々の部分(Fcドメインを含
む)と融合された異種ポリペプチドを含む融合タンパク質の一般的な調製が、例
えば、Ashkenaziら(PNAS USA 88:10535,1991
)およびByrnら(Nature 344:677,1990)によって記載
されている。MRA:Fc融合タンパク質をコードする融合遺伝子が、適切な発
現ベクターに挿入される。本発明の特定の実施形態において、MRA:Fc融合
タンパク質は、よく似た抗体分子を集合させることを可能にし得、それから分子
間鎖ジスルフィド結合が、Fcポリペプチド間に形成し、二量体のMRA融合タ
ンパク質を生成する。
【0064】
MRAをコードする配列に、インフレームで結合されたDNA配列によって、
コードされる免疫グロビンV領域ドメインを含む融合ポリペプチドのために、予
め選択された抗原に対する特異的結合アフィニティーを有するMRA融合タンパ
ク質もまた、本発明の範囲内であり、このタンパク質は、本明細書中で提供され
るような、この改変体およびフラグメントを含む。免疫グロビンV領域融合ポリ
ペプチドを有する融合タンパク質の構築についての一般的なストラテジーが、例
えば、EP 0318554;米国特許第5,132,405号;同第5,09
1,513号;および同第5,476,786号において開示される。
【0065】
本発明の核酸はまた、所望されるアフィニティー特性を有する他のポリペプチ
ド(例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼのような酵素)と融合され
たMRAポリペプチドを含む融合タンパク質をコードし得る。別の実施例のよう
に、MRA融合タンパク質はまた、Staphylococcus aureu
sプロテインAポリペプチドと融合されたMRAポリペプチドを含み得;プロテ
インAをコードする核酸および免疫グロブリン定常領域に対してアフィニティー
を有する融合タンパク質を構築することにおけるそれらの使用は、一般に、例え
ば、米国特許第5,100,788号において開示される。MRA融合タンパク
質の構築のための他の有用なアフィニティーポリペプチドとしては、例えば、W
O 89/03422;米国特許第5,489,528号;同第5,672,6
91号;WO 93/24631;米国特許第5,168,049号;同第5,
272,254号および他で開示されるような、ストレプトアビジン融合タンパ
ク質、ならびにアビジン融合タンパク質(例えば、EP 511,747を参照
のこと)が挙げられる。本明細書中および引用された参考文献において提供され
るように、トラッピング(trapping)変異体MRAを含むMRAポリペ
プチド配列は、全長融合ポリペプチドでもよく、そして、あるいは、その改変体
またはフラグメントであってもよい融合ポリペプチド配列と融合され得る。
【0066】
本発明はまた、小胞体(ER)の内腔に存在するようにか、古典的なER G
olgi分泌経路を介して細胞から分泌されるようにか(例えば、von He
ijne,J.Membrane Biol.115:195−201,199
0を参照のこと)、形質膜に取り込まれるようにか、膜貫通細胞表面レセプター
の細胞質ドメインを含む特定の細胞質成分と関係するようにか、または、当業者
が精通する種々の、既知の細胞内タンパク質選別機構(例えば、Rothman
,Nature 372:55−63,1994,Adraniら、1998
J.Biol.Chem.273:10317,および本明細書中に引用される
参考文献を参照のこと)のいずれかによって特定の非細胞位置に指向させるよう
に、細胞核にMRA融合タンパク質を指向するポリペプチド配列を含むそのMR
A融合タンパク質を意図する。従って、これらの実施形態および関連する実施形
態は、本組成物および目的のポリペプチドを、予め規定された細胞内局在、膜局
在または細胞外局在に対して標的化することに関する方法によって包含される。
【0067】
本発明はまた、本発明の核酸を含むベクターおよび構築物、ならびに特に、上
記に提供されるような本発明に従って、MRAポリペプチドをコードする任意の
核酸を含む「組換え発現構築物」;本発明のベクターおよび/または構築物を用
いて遺伝的に操作される宿主細胞ならびに本発明のMRAポリペプチドおよび融
合タンパク質、またはそれらのフラグメントもしくは改変体の、組換え技術によ
る生成に関する。MRAタンパク質は、適切なプロモーターの制御下で、哺乳動
物細胞、酵母、細菌、または他の細胞において発現され得る。無細胞翻訳系はま
た、本発明のDNA構築物に由来するRNAを用いて、このようなタンパク質を
生成するために使用され得る。原核生物宿主および真核生物宿主を用いた使用の
ための適切なクローニングおよび発現ベクターは、例えば、Sambrookら
、Molecular Cloning:A Laboratory Manu
al,第2版,Cold Spring Harbor,New York,(
1989)によって記載される。
【0068】
一般に、組換え発現ベクターは、複製起点および宿主細胞の形質転換を可能に
する選択マーカー(例えば、E.coliのアンピシリン耐性遺伝子およびS.
cerevisiae TRP1遺伝子)、ならびに下流構造配列の転写を指向
する高度に発現される遺伝子由来のプロモーターを含む。このようなプロモータ
ーは、解糖酵素(例えば、とりわけ、3−ホスホグリセレートキナーゼ(PGK
)、α−因子、酸性ホスファターゼ、またはヒートショックタンパク質)をコー
ドするオペロン由来であり得る。異種構造配列は、翻訳開始配列および終結配列
と共に、適切な相に集められる。必要に応じて、異種配列は、所望の特性(例え
ば、発現された組換え産物の安定化または単純化された精製)を与えるN末端同
定ペプチドを含む融合タンパク質をコードし得る。
【0069】
細菌の使用のための有用な発現構築物は、機能的なプロモーターを伴って作動
可能なリーディング相において、適切な翻訳開始シグナルおよび終結シグナルと
共に、所望のタンパク質をコードする構造的なDNA配列を、発現ベクターに挿
入することによって構築される。この構築物は、1つ以上の表現型選択マーカー
および複製起点を含み、ベクター構築物の維持を保証し得、そして、所望される
場合、宿主内で、増幅を提供し得る。形質転換のための適切な原核生物宿主は、
Pseudomonas属、Streptomyces属、およびStaphy
lococcus属内の、E.coli、Bacillus subtilis
、Salmonella typhimuriumおよび種々の種を含むが、他
もまた、選択の問題として使用され得る。任意の他のプラスミドまたは他のベク
ターは、これらが宿主において複製可能であり、そして生存可能である限り、使
用され得る。
【0070】
代表的であるが非限定的な例として、細菌の使用のための有用な発現ベクター
は、周知のクローニングベクターpBR322(ATCC 37017)の遺伝
的要素を含む市販のプラスミド由来の選択マーカーおよび細菌性複製起点を含み
得る。このような市販のベクターとしては、例えば、pKK223−3(Pha
rmacia Fine Chemicals,Uppsala,Sweden
)およびGEM1(Promega Biotec,Madison,Wisc
onsin,USA)が挙げられる。これらのpBR322「骨格」部分は、発
現されるために、適切なプロモーターおよび構造的な配列と組み合わせられる。
【0071】
適切な株の形質転換および適切な細胞密度までの宿主細胞の増殖の後、選択さ
れたプロモーターは、本明細書中で提供されるような調節プロモーターの場合、
適切な手段(例えば、温度変化または化学誘導)によって誘導され、そして細胞
は、付加的な期間培養される。細胞は、代表的に、遠心分離によって回収され、
物理的または化学的手段により破壊され、そして得られた粗抽出物がさらなる精
製のために保持される。タンパク質の発現に使用される微生物細胞は、任意の従
来の方法(凍結融解サイクリング、音波破砕、機械的破壊、または細胞溶解剤の
使用を含む)によって破壊され得;このような方法は、当業者に周知である。
【0072】
従って、例えば、本明細書中で提供されるような本発明の核酸は、MRAポリ
ペプチドを発現するために、組換え発現構築物として種々の発現ベクター構築物
のいずれか1つの中に含まれ得る。このようなベクターおよび構築物としては、
染色体DNA配列、非染色体DNA配列および合成DNA配列(例えば、SV4
0の誘導体;細菌性プラスミド;ファージDNA;バキュロウイルス;酵母プラ
スミド;プラスミドおよびファージDNAの組み合わせに由来するベクター、ウ
イルスDNA(例えば、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、
および仮性狂犬病ウイルス))が挙げられる。しかし、任意の他のベクターは、
宿主において複製可能であり、そして生存可能である限り、組換え発現構築物の
調製のために使用され得る。
【0073】
適切なDNA配列は、種々の手順によってベクターに挿入され得る。一般に、
DNA配列は、当該分野で公知の手順によって、適切な制限エンドヌクレアーゼ
部位に挿入される。クローニング、DNA単離、増幅および精製のための標準的
技術、DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼ、制限エンドヌクレアーゼなどを含
む酵素反応のための標準的な技術、および種々の分離技術は、公知のものであり
、そして当業者によって一般に使用される。多くの標準的技術は、例えば、以下
に記載される:Ausubelら(1993 Current Protoco
ls in Molecular Biology、Greene Publ.
Assoc.Inc.&John Wiley & Sons,Inc.,Bo
ston,MA);Sambrookら(1989 Molecular Cl
oning,第2版,Cold Spring Harbor Laborat
ory,Plainview,NY);Maniatisら(1982 Mol
ecular Cloning,Cold Spring
Harbor Laboratory,Plainview,NY);およびそ
の他。
【0074】
発現ベクターにおけるDNA配列は、少なくとも1つの適切な発現制御配列(
例えば、プロモーターまたは調節プロモーター)に作動可能に連結され、mRN
A合成を指向する。このような制御配列の代表的な例としては、LTRプロモー
ターまたはSV40プロモーター、E.coli lacプロモーターまたはt
rpプロモーター、ファージλPLプロモーターおよび原核生物細胞または真核
生物細胞あるいはそれらのウイルスにおいて遺伝子の発現を制御するために公知
の他のプロモーターが挙げられる。プロモーター領域は、CAT(クロラムフェ
ニコールトランスフェラーゼ)ベクターまたは選択マーカーを有する他のベクタ
ーを用いて任意の所望される遺伝子から選択され得る。2つの適切なベクターは
、pKK232−8およびpCM7である。特定の指定された細菌性プロモータ
ーとしては、lacIプロモーター、lacZプロモーター、T3プロモーター
、T7プロモーター、gptプロモーター、λPRプロモーター、PLプロモータ
ーおよびtrpプロモーターが挙げられる。真核生物プロモーターとしては、C
MV極初期(immediate early)プロモーター、HSVチミジン
キナーゼプロモーター、初期SV40プロモーターおよび後期SV40プロモー
ター、レトロウイルス由来のLTRプロモーター、およびマウスメタロチオネイ
ン−Iプロモーターが挙げられる。適切なベクターおよびプロモーターの選択は
、当業者のレベル内で十分であり、そしてMRAポリペプチドをコードする核酸
に作動可能に連結された少なくとも1つのプロモーターまたは調節プロモーター
を含む特定の特に好ましい組換え発現構築物の調製が、本明細書中に記載される

【0075】
上記のように、特定の実施形態において、ベクターは、レトロウイルスベクタ
ーのようなウイルスベクターであり得る。例えば、レトロウイルスプラスミドベ
クターの由来とされ得るベクターとしては、Moloney Murine L
eukemia Virus、脾臓壊死ウイルス、レトロウイルス(例えば、ラ
ウス肉腫ウイルス、Harvey Sarcoma virus、鳥類白血病ウ
イルス、テナガザルサル(gibbon ape)白血病ウイルス、ヒト免疫不
全ウイルス、アデノウイルス、Myeloproliferative Sar
coma Virus、およびマウス乳腺癌ウイルス)が挙げられるが、これら
に限定されない。
【0076】
ウイルスベクターは、1つ以上のプロモーターを含む。使用され得る適切なプ
ロモーターとしては、レトロウイルスLTR;SV40プロモーター;およびヒ
トサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(Millerら、Biote
chniques 7:980−990(1989)に記載される)、または任
意の他のプロモーター(例えば、ヒストンプロモーター、pol IIIプロモ
ーター、およびβアクチンプロモーターを含むがこれらに限定されない真核生物
細胞性プロモーターのような細胞性プロモーター)が挙げられるがこれらに限定
されない。使用され得る他のウイルスプロモーターとしては、以下が挙げられる
がこれらに限定されない:アデノウイルスプロモーター、チミジンキナーゼ(T
K)プロモーター、およびB19パルボウイルスプロモーター。適切なプロモー
ターの選択は、本明細書中に含まれる教示から当業者に明らかであり、そして調
節プロモーターまたは上記のプロモーターの中のいずれか由来であり得る。
【0077】
レトロウイルスプラスミドベクターは、パッケージング細胞株を形質導入して
、プロデューサー細胞株を形成するために使用される。トランスフェクトされ得
るパッケージング細胞の例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない

【0078】
【化1】

およびMiller、Human Gene Therapy、1:5−14(
1990)において記載されるようなDAN細胞株(これは、その全体が参考と
して本明細書中に援用される)。このベクターは、当該分野で公知の任意の手段
を通じてパッケージング細胞を形質導入し得る。このような手段としては、エレ
クトロポレーション、リポソームの使用、およびリン酸カルシウム沈殿が挙げら
れるがこれらに限定されない。1つの代替において、レトロウイルスプラスミド
ベクターは、リポソームにカプセル化され得るか、または脂質に連結され得、次
いで宿主に投与され得る。
【0079】
プロデューサー細胞株は、MRAポリペプチドまたは融合タンパク質をコード
する核酸配列を含む感染性レトロウイルスベクター粒子を生成する。次いで、こ
のようなレトロベクター粒子は、インビトロまたはインビボのいずれかで真核生
物細胞生物に形質導入するために使用され得る。この形質導入された真核生物細
胞は、MRAポリペプチドまたは融合タンパク質をコードする核酸配列を発現す
る。形質導入され得る真核生物細胞としては、以下が挙げられるがこれらに限定
されない:胚性幹細胞、胚性癌細胞ならびに造血幹細胞、肝細胞、線維芽細胞、
筋芽細胞、ケラチノサイト、内皮細胞、気管上皮細胞および種々の他の培養適応
細胞株。
【0080】
ウイルスベクターが組換えMRA発現構築物を調製するために使用される本発
明の実施形態の別の例は、1つの好ましい実施形態において、MRAポリペプチ
ドまたは融合タンパク質の発現を指向する組換えウイルス性構築物により形質導
入された宿主細胞が、ウイルスの出芽の間にウイルス粒子により取り込まれる宿
主細胞膜の部分に由来する、発現されるMRAポリペプチドまたは融合タンパク
質を含むウイルス粒子を生成し得る。別の好ましい実施形態において、MRAを
コードする核酸配列が、バキュロウイルスシャトルベクター中にクローニングさ
れ、次いでこれが、組換えバキュロウイルス性発現構築物を生成するようにバキ
ュロウイルスと組換えられ、この構築物は、例えば、Baculovirus
Expression Protocols, Methods in Mol
ecular Biology Vol.39,C.D.Richardson
編,Human Press,Totowa,NJ,1995;Piwnica
−Worms,”Expression of Proteins in In
sect Cells Using Baculoviral Vectors
”,第16章第II章:Short Protocols in Molecu
lar Biology,第2版、Ausbelら編、John Wiley
&Sons,New York,New York,1992、16−32〜1
6−48頁に記載されるように、Sf9宿主細胞を感染させるために使用される

【0081】
別の局面において、本発明は、上記の組換えMRA発現構築物を含む宿主細胞
に関する。宿主細胞は、本発明のベクターおよび/または発現構築物で遺伝子操
作(形質導入、形質転換またはトランスフェクト)され、この本発明のベクター
および/または発現構築物は、例えば、クローニングベクター、シャトルベクタ
ーまたは発現構築物であり得る。このベクターまたは構築物は、例えば、プラス
ミド、ウイルス粒子、ファージなどの形態であり得る。この操作された宿主細胞
は、プロモーターを活性するため、形質転換体を選択するため、あるいはMRA
ポリペプチドまたはMRA融合タンパク質をコードする遺伝子のような特定の遺
伝子を増幅するために、適切なように改変された従来の栄養培地にて培養され得
る。発現のために選択された特定の宿主細胞についての培養条件(例えば、温度
、pHなど)は、当業者に容易に明らかである。
【0082】
この宿主細胞は、高等真核生物細胞(例えば、哺乳動物細胞)または下等真核
生物(例えば、酵母細胞)であってもよいし、またはこの宿主細胞は、原核生物
(例えば、細菌細胞)であってもよい。本発明による適切な宿主細胞の代表的例
としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:細菌細胞(E.col
i、Streptomyces、Salmonella typhimuriu
m;真菌細胞(例えば、酵母);昆虫細胞(例えば、Drosophila S
2およびSpodoptera Sf9);動物細胞(例えば、CHO細胞、C
OS細胞または293細胞);アデノウイルス;植物細胞、またはインビトロで
の増殖にすでに適合されたかまたは新規にそのように樹立された適切な任意の細
胞。適切な宿主の選択は、本明細書中の教示から当業者の範囲内にあると見なさ
れる。
【0083】
種々の哺乳動物細胞培養系もまた、組換えタンパク質を発現するために使用さ
れ得る。従って、本発明は、組換えMRAポリペプチドを生成する方法に部分的
に関し、この方法は、MRAをコードする核酸配列に作動可能に連結された少な
くとも1つのプロモーターを含む組換え発現構築物を含む宿主細胞を培養するこ
とによる。特定の実施形態において、このプロモーターは、本明細書中に提供さ
れるような、調節プロモーター(例えば、テトラサイクリン抑制(repres
sible)プロモーター)であり得る。特定の実施形態において、この組換え
発現構築物は、本明細書中で提供されるような組換えウイルス性発現構築物であ
る。哺乳動物発現系の例としては、Gluzman、Cell 23:175(
1981)により記載される、サル腎臓線維芽細胞のCOS−7株、および適合
可能なベクターを発現し得る他の細胞株(例えば、C127細胞株、3T3細胞
株、CHO細胞株、HeLa細胞株およびBHK細胞株)が、挙げられる。哺乳
動物発現ベクターは、複製起点、適切なプロモーターおよびエンハンサーを含み
、また必要な任意のリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライス供給
部位およびスプライス受容部位、転写終結配列、および5’隣接非転写配列(例
えば、MRA発現構築物の調製に関して本明細書中に記載されるような)を含み
、また必要な任意のリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライス供与
部位およびスプライス受容部位、転写終結配列、および5’隣接非転写配列(例
えば、MRA発現構築物の調製に関して本明細書中に記載されるような)を含む
。SV40スプライスに由来するDNA配列、およびポリアデニル化部位は、必
要な非転写遺伝子エレメントを提供するために使用され得る。宿主細胞へのこの
構築物の導入は、当業者が精通する種々の方法により行われ得、その方法として
は、例えば以下が挙げられるがこれらに限定されない:リン酸カルシウムトラン
スフェクション、DEAE−Dextran媒介トランスフェクション、または
エレクトロポレーション(Davisら、1986 Basic Method
s in Molecular Biology)。
【0084】
発現される組換えメソセリン関連抗原ポリペプチド(またはメソセリンポリペ
プチド)、またはそれに由来する融合タンパク質は、インタクトな宿主細胞の形
態;インタクトなオルガネラ(例えば、細胞膜、細胞内小胞または他の細胞内オ
ルガネラ)の形態;または破壊された細胞調製物(細胞ホモジネートまたは細胞
溶解物、単膜リポソームおよび多重膜リポソームまたは他の調製物を含むが、こ
れらに限定されない)の形態で、免疫原として有用であり得る。あるいは、発現
された組換えメソセリン関連抗原ポリペプチド(またはメソセリンポリペプチド
)または融合タンパク質は、硫安沈殿またはエタノール沈殿、酸抽出、アニオン
交換クロマトグラフィーまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロ
ースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティー
クロマトグラフィー(イムノアフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシア
パタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを含む)を含む
方法によって、組換え細胞培養物から回収および精製され得る。タンパク質リフ
ォールディング工程が、成熟タンパク質の立体構造を完成させる際に、必要な場
合は使用され得る。最後に、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が、最終
精製工程のために使用され得る。発現される組換えメソセリン関連抗原ポリペプ
チド(またはメソセリンポリペプチド)または融合タンパク質はまた、慣用的な
抗体スクリーニングのために、多数のアッセイ構成のいずれかにおいて標的抗原
として有用であり得、この慣用的な抗体スクリーニングは、当業者に容易に実施
され得る。
【0085】
従って、本発明の方法において使用される特定の抗体の生成のための免疫原で
あるメソセリン関連抗原ポリペプチド(またはメソセリンポリペプチド)は、天
然に精製された産物、または化学合成手順の産物であり得るか、あるいは原核生
物宿主もしくは好ましくは真核生物宿主から、組換え技術により生成され得る。
組換え生成手順において使用される宿主に依存して、本発明のポリペプチドは、
当該分野で公知であるように、そして本明細書中に提供されるように、グリコシ
ル化され得るか、さもなければ翻訳後修飾され得る。
【0086】
本発明によると、可溶性ヒトメソセリン関連抗原ポリペプチド(またはメソセ
リンポリペプチド)は、被験体または生物学的供給原由来の生物学的サンプル中
で検出され得る。生物学的サンプルは、血液サンプル、生検標本、組織移植片、
器官培養物、生物学的流体、あるいは被験体または生物学的供給原由来の他の任
意の組織調製物もしくは細胞調製物を得ることにより、提供され得る。この被験
体または生物学的供原は、ヒトまたは非ヒト動物の、一次細胞培養物または培養
適合された細胞株(染色体に組み込まれた組換え核酸配列またはエピソーム性の
組換え核酸配列を含み得る、遺伝子操作された細胞株;不朽化細胞株または非不
朽化細胞株;体細胞ハイブリッド細胞株;分化した細胞株または分化し得る細胞
株;形質転換された細胞株などを含むが、これらに限定されない)であり得る。
本発明の特定の好ましい実施形態において、その被験体または生物学的供給原は
、悪性状態を有する疑いがあり得るかまたは悪性状態を有する危険を有する疑い
があり得、そして本発明の特定の好ましい実施形態において、その被験体または
生物学的供給原は、このような疾患の危険がないかまたはこのような疾患の存在
がないことが、既知であり得る。
【0087】
好ましい実施形態において、その生物学的サンプルは、可溶性ヒトメソセリン
関連抗原ポリペプチドを含む、生物学的流体である。生物学的流体は、代表的に
は、生理学的温度で液体であり、そして被験体または生物学的供給原中に存在す
るか、それらから取り出されているか、それらから発現されているか、さもなけ
ればそれらから抽出されている、天然に存在する流体を含み得る。特定の組織、
器官または局在領域に由来する特定の生物学的流体、および特定の他の生物学的
流体は、被験体または生物学的供給原にて、より全体的または全身的に位置し得
る。生物学的流体の例としては、血液、血清、および漿液、血漿、リンパ、尿、
脳脊髄液、唾液、分泌組織および分泌器官の粘膜分泌物、膣分泌物、非固形腫瘍
と関係があるもののような腹水、胸膜液、囲心腔液、腹膜液、腹部液、および他
の体腔の流体などが挙げられる。生物学的流体としてはまた、被験体または生物
学的供給原と接触した液体溶液(例えば、細胞および器官培養培地(細胞または
器官馴化培地を含む)、洗浄液など)が、挙げられ得る。特定の非常に好ましい
実施形態において、この生物学的サンプルは血清であり、そして他の特定の非常
に好ましい実施形態において、この生物学的サンプルは血漿である。他の好まし
い実施形態において、この生物学的サンプルは、無血清液体溶液である。
【0088】
他の特定の好ましい実施形態において、この生物学的サンプルはインタクトな
細胞を含み、そして他の好ましい実施形態において、この生物学的サンプルは、
配列番号1または2に示されるアミノ酸配列を有するメソセリン関連抗原ポリペ
プチドをコードする核酸配列あるいはそのフラグメントあるいはその改変体を含
む、細胞抽出物を含む。
【0089】
サンプル中で「可溶性形態で天然に存在する分子」は、可溶性タンパク質、ポ
リペプチド、ペプチド、アミノ酸、またはそれらの誘導体;脂質、脂肪酸など、
またはそれらの誘導体;炭化水素、糖質などまたはそれらの誘導体;核酸、ヌク
レオチド、ヌクレオシド、プリン、ピリミジンもしくは関連分子またはそれらの
誘導体など;あるいはそれらの任意の組み合わせ(例えば、糖タンパク質、糖脂
質、リポタンパク質、プロテオリピド)、あるいは本明細書中に提供されるよう
な生物学的サンプルの可溶性成分もしくは無細胞成分である、他の任意の生物学
的分子であり得る。「可溶性形態で天然に存在する分子」はさらに、溶液の状態
であるかまたは生物学的サンプル(本明細書中に提供されるような生物学的流体
を含む)中に存在し、そしてインタクトな細胞の表面に結合していない分子をい
う。例えば、可溶性形態で天然に存在する分子とは、以下を含み得るがこれらに
限定されない:溶解物;高分子複合体の成分;細胞から発せられるか、分泌され
るかまたは運び出される物質;コロイド;ミクロ粒子またはナノ粒子または他の
微細懸濁粒子;など。
【0090】
被験体における悪性状態の存在とは、その被験体における形成異常細胞、癌性
細胞および/または形質転換細胞の存在をいい、このような細胞は、例えば、新
形成細胞、腫瘍細胞、非接触阻止細胞または腫瘍形成形質転換細胞などを含む。
限定でなく例示のために、本発明の文脈において、悪性状態はさらに、メソセリ
ン関連抗原ポリペプチド(またはメソセリンポリペプチド)を、このようなポリ
ペプチドのレベルの上昇がその被験体由来の生物学的サンプルにて検出可能であ
るような様式で、分泌し得るか、発し得るか、運び出し得るか、または放出し得
る、癌細胞の被験体中での存在をいい得る。好ましい実施形態において、例えば
、このような癌細胞は、癌細胞のような悪性上皮細胞であり、そして特に好まし
い実施形態において、このような癌細胞は、悪性中皮腫細胞であり、これは、例
えば、胸膜腔、心膜腔、腹膜腔、腹腔および他の体腔の内側で見出される、扁平
上皮細胞の上皮細胞または中皮細胞の形質転換された改変体である。
【0091】
本発明の最も好ましい実施形態において、腫瘍細胞(その存在は悪性状態の存
在を示す)は、卵巣癌細胞(原発性卵巣癌細胞および転移性卵巣癌細胞を含む)
である。卵巣癌を悪性として分類するための基準は、当該分野で周知であり(例
えば、Bellら、1998、Br.J.Obstet.Gynaecol.1
05:1136;Meierら、1997、Anticancer Res.1
7(4B):3019;Meierら、1997、Anticancer Re
s.17(4B):2949;Cioffiら、1997、Tumori 83
:594;およびそれらに引用される参考文献を参照のこと)、原発性腫瘍およ
び転移性腫瘍からのヒト卵巣癌細胞株の樹立および特徴づけも同様に周知である
(例えば、OVCAR−3、Amer.Typr Culture Colle
ction、Manassas,VA;Yuanら、1997、Gynecol
.Oncol.66:378)。他の実施形態において、この悪性状態は、中皮
腫、膵臓癌、非小細胞肺癌または別の形態の癌(扁平上皮細胞癌および腺癌のよ
うな種々の任意の癌を含み、そしてまた、肉腫および血液学的悪性疾患(例えば
、白血病、リンパ腫、骨髄腫など)を含む)であり得る。これらの悪性状態およ
び他の悪性状態の分類は、当業者に公知であり、そして本開示により、MRAポ
リペプチドの存在の決定を含むメソセリンポリペプチドの存在の決定が、このよ
うな悪性状態において過度の実験を伴わずに提供される。
【0092】
本明細書中に提供されるように、被験体における悪性状態の存在についてスク
リーニングする方法は、ヒトメソセリン関連抗原ポリペプチドに特異的な抗体の
使用、またはヒトメソセリンポリペプチドに特異的な抗体の使用を、特徴とし得
る。
【0093】
メソセリン関連抗原ポリペプチド(またはメソセリンポリペプチド)に特異的
な抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体として容易に生成され
るか、または当該分野で周知の方法を使用して望ましい特性を有するように設計
された、遺伝子操作された免疫グロブリン(Ig)として生成され得る。例えば
、限定ではなく例示として、抗体としては、組換えIgG、免疫グロブリン由来
配列を有するキメラ融合タンパク質または「ヒト化」抗体が挙げられ得(例えば
、米国特許第5,693,762号;同第5,585,089号;同第4,81
6,567号;同第5,225,539号;同第5,530,101号;および
それらに引用される参考文献を参照のこと)、これらはすべて、本発明によるヒ
トメソセリンポリペプチドの検出に使用され得る。このような多くの抗体が開示
されており、そして特定の供給原から入手可能であるか、または本明細書中に提
供されるように(下記のようなメソセリンポリペプチドでの免疫によるものを含
む)調製され得る。例えば、本明細書中に提供されるように、メソセリンポリペ
プチドをコードする核酸配列は、メソセリン自体の細胞表面結合部分(Chan
gら、1996)について、そして巨核球増殖因子(MPF)前駆体タンパク質
の膜結合部分(Kojimaら、1995)について、知られており、そして本
開示はさらに、メソセリン関連抗原(MRA)ポリペプチドをコードする核酸配
列を提供し、その結果、当業者は、免疫原としての使用のためにこれらのポリペ
プチドを慣用的に調製し得る。例えば、4H3、3G3および1A6のようなモ
ノクローナル抗体(これらは、以下により詳細に記載される)は、本発明による
特定の方法を実施するために使用され得る。また、上記のように、別の有用な抗
体は、MAb K−1であり、これは、メソセリンポリペプチドと反応性がある
モノクローナル抗体である(Changら、1996、Proc.Natl.A
cad.Sci.USA 93:136;Changら、1992、Int.J
.Cancer 50:373;MAb K−1は、例えば、Signet L
aboratories,Inc.、Dedham、MAから入手可能である)

【0094】
用語「抗体」とは、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、それらのフラ
グメント(例えば、F(ab’)2フラグメントおよびFabフラグメント)、
ならびに任意の、天然に存在する結合パートナーまたは組換え生成された結合パ
ートナー(これらは、メソセリンポリペプチド(例えば、メソセリン、メソセリ
ン関連抗原(MRA)またはMPF)に特異的に結合する分子である)が、挙げ
られる。抗体は、メソセリンポリペプチドと、約104-1以上、好ましくは約
105-1以上、より好ましくは約106-1以上、そしてなおより好ましくは約
107-1以上のKaで結合する場合に、「免疫特異的」に結合するかまたは特
異的に結合すると、規定される。結合パートナーまたは抗体の親和性は、従来技
術(例えば、Scatchardら、Ann.N.Y.Acad.Sci.51
:660(1949)により記載される技術)を使用して、容易に決定され得る
。他のタンパク質をメソセリンポリペプチドの結合パートナーとして決定するこ
とは、他のタンパク質またはポリペプチドと特異的に相互作用するタンパク質を
同定および入手するための多数の公知の方法のいずれかを使用して実施され得、
このような方法は、たとえば、米国特許第5,283,173号および米国特許
第5,468,614号に記載されるような、酵母ツーハイブリッド系、または
等価物である。本発明はまた、メソセリンポリペプチドに特異的に結合する結合
パートナーおよび抗体を調製するための、メソセリンポリペプチドの使用、およ
びメソセリンポリペプチドのアミノ酸配列に基づくペプチドの使用を含む。
【0095】
抗体は、一般的に、当業者に公知の種々の任意の技術によって調製され得る(
例えば、HarlowおよびLane,Antibodies:A Labor
atory Manual,Cold Spring Harbor Labo
ratory,1998を参照のこと)。1つのこのような技術において、メソ
セリンポリペプチドを含む免疫原(例えば、メソセリンポリペプチドをその表面
上に有する細胞)または単離されたメソセリンポリペプチド(例えば、メソセリ
ン、MRAまたはMPF)が、最初に適切な動物(例えば、マウス、ラット、ウ
サギ、ヒツジおよびヤギ)に、好ましくは1回以上のブースター免疫を組み込ん
だ所定のスケジュールに従って注射され、そしてその動物から周期的に採血する
。このメソセリンポリペプチドに特異的なポリクローナル抗体は、次いで、例え
ば、適切な固体支持体に結合したポリペプチドを使用するアフィニティークロマ
トグラフィーによって、このような血清から精製され得る。
【0096】
メソセリンポリペプチドまたはその改変体に特異的なモノクローナル抗体は、
例えば、KohlerおよびMilstein(1976、Eur.J.Imm
unol.6:511〜519)の技術およびそれへの改良を使用して、調製さ
れ得る。手短かには、これらの方法は、所望の特異性(すなわち、目的のメソセ
リンポリペプチドとの反応性)を有する抗体を生成し得る、不朽化細胞株の調製
を包含する。このような細胞株は、例えば、上記のように免疫された動物から得
られた脾細胞から生成され得る。次いでこの脾細胞は、例えば、骨髄腫細胞融合
パートナーとの融合、好ましくはその免疫された動物と相乗作用するものとの融
合によって、不朽化される。例えば、この脾細胞および骨髄腫細胞は、膜融合促
進剤(例えば、ポリエチレングリコールまたは非イオン性界面活性剤)と数分間
混合され得、次いでハイブリッド細胞の増殖を支持するが骨髄腫細胞の増殖は支
持しない選択培地上に、低密度にプレーティングされ得る。好ましい選択技術で
は、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)選択が使用される。
十分な時間の後、通常は約1〜2週間後、ハイブリッドのコロニーが観察される
。単コロニーが選択され、そしてそのポリペプチドに対する結合活性について試
験される。高い反応性および特異性を有するハイブリドーマが、好ましい。メソ
セリンポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体を生成するハイブリ
ドーマが、本発明により意図される。
【0097】
モノクローナル抗体が、増殖するハイブリドーマコロニーの上清から単離され
得る。さらに、種々の技術(例えば、適切な脊椎動物宿主(例えば、マウス)の
腹腔へのハイブリドーマ細胞株の注射)が、収量を増大させるために使用され得
る。次いで、モノクローナル抗体が、腹水または血液から収集され得る。混入物
は、従来技術(例えば、クロマトグラフィー、ゲル濾過、沈殿、および抽出)に
より、その抗体から除去され得る。例えば、抗体は、標準的技術を使用して、固
定プロテインGまたは固定プロテインAにおけるクロマトグラフィーによって、
精製され得る。
【0098】
特定の実施形態において、抗体の抗原結合フラグメントの使用が、好ましくあ
り得る。このようなフラグメントとしては、Fabフラグメントが挙げられ、こ
れは、標準的技術を使用して調製され得る(例えば、Fabフラグメントおよび
Fcフラグメントを生じるようなパパインでの切断による)。このFabフラグ
メントおよびFcフラグメントは、アフィニティークロマトグラフィー(例えば
、固定プロテインAカラムにおいて)によって、標準的技術を使用して分離され
得る。例えば、Weir,D.M.、Handbook of Experim
ental Immunology、1986、Blackwell Scie
ntific,Bostonを参照のこと。
【0099】
種々のエフェクタータンパク質をコードする配列にインフレームで連結された
DNA配列によりコードされる免疫グロブリンV領域ドメインによって調製され
た抗原に特異的な結合親和性を有する多機能性融合タンパク質が、例えば、EP
−B1−0318554、米国特許第5,132,405号、米国特許第5,0
91,513号および米国特許第5,476,786号に開示されるように、当
該分野で公知である。このようなエフェクタータンパク質は、当業者が精通する
種々の任意の技術により融合タンパク質の結合を検出するために使用され得る、
ポリペプチドドメインを含み、そのような技術は、ビオチン模倣(mimeti
c)配列(例えば、Luoら、1998、J.Biotechnol.65:2
25およびその中に引用される参考文献を参照のこと)、検出可能な標識部分に
よる直接の共有結合的改変、特定の標識レポーター分子への非共有結合、検出可
能な基質の酵素的改変、又は固相支持体上での固定(共有結合的または非共有結
合的)を含むが、これらに限定されない。
【0100】
本発明における使用のための単鎖抗体はまた、ファージディスプレイ(例えば
、米国特許第5,223,409号;Schlebuschら、1997、Hy
bridoma 16:47;およびその中で引用された参考文献を参照のこと
)のような方法によって、生成および選択され得る。手短かには、この方法にお
いて、DNA配列が、糸状ファージ(例えば、M13)の遺伝子IIIまたは遺
伝子VIIIに挿入され得る。挿入のためにマルチクローニング部位を有するい
くつかのベクターが、開発されている(McLaffertyら、Gene 1
28:29〜36、1993;ScottおよびSmith、Scinece
249:386〜390、1990;SmithおよびScott、Metho
ds Enzymol.217:228〜257、1993)。その挿入された
DNA配列は、ランダムに生成され得るか、またはメソセリンポリペプチドへの
結合のための既知の結合ドメインの改変体であり得る。単鎖抗体は、この方法を
使用して容易に生成され得る。一般的に、そのインサートは、6〜20アミノ酸
をコードする。その挿入された配列によりコードされるペプチドは、そのバクテ
リオファージの表面上に提示され得る。メソセリンポリペプチドの結合ドメイン
を発現するバクテリオファージは、例えば、当該分野で周知の方法およびCha
ngら(1996、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:1
36)によってかまたはKojimaら(1995、J.Biol.Chem.
270:21984)により開示されたような核酸コード配列を使用して調製さ
れた組換えポリペプチドを、固定メソセリンポリペプチドに結合することによっ
て、選択される。非結合ファージは、代表的には、10mM Tris、1mM
EDTAを含みそして塩を含まないかまたは低塩濃度の洗浄により、除去され
る。結合ファージは、例えば、塩含有緩衝液で溶出される。このNaCl濃度は
、そのファージすべてが溶出されるまで、段階式に増加される。代表的には、フ
ァージ結合の親和性が高いほど、より高い塩濃度によって放出される。溶出され
るファージは、細菌宿主において増殖される。さらなる回の選択が、高い親和性
を有する少数のファージ結合について選択するために実施され得る。次いで、そ
の結合ファージ中のインサートのDNA配列が、決定される。一旦この結合ペプ
チドの推定アミノ酸配列が既知になると、ヒトメソセリンポリペプチドに特異的
な抗体としての本明細書における使用に十分なペプチドが、組換え手段によって
か、または合成によってかのいずれかで、作製され得る。組換え手段は、その抗
体が融合タンパク質として生成される場合に、使用される。そのペプチドはまた
、親和性または結合を最大にするために、2つ以上の類似のペプチドまたは異な
るペプチドの直列型のアレイとして作製され得る。
【0101】
ヒトメソセリンポリペプチドに特異的な抗体と反応性である抗原決定基を検出
するために、この検出試薬は、代表的には抗体であり、これは、本明細書中に記
載されるように調製され得る。サンプル中のポリペプチドを検出するために抗体
を使用するための、当業者に公知の種々のアッセイ形態が存在し、そのアッセイ
は、以下を含むがこれらに限定されない:酵素免疫測定法(ELISA)、ラジ
オイムノアッセイ(RIA)、免疫蛍光定量法、免疫沈降、平衡透析、免疫拡散
法、および他の技術。例えば、HarlowおよびLane、Antibodi
es:A Laboratory Manual,COld Spring H
arbor Laboratory,1988;Weir,D.M.、Hand
book of Experimental Immunology,1986
、Balckwell Scientific,Bostonを参照のこと。例
えば、このアッセイは、ウェスタンブロットの形態にて実施され得、そこで生物
学的サンプル由来のタンパク質調製物が、ゲル電気泳動に供され、適切な膜にト
ランスファーされ、そして抗体と反応させられる。次いで、膜上の抗体の存在が
、当該分野で周知でありそして下記に記載されるように、適切な検出試薬を使用
して検出され得る。
【0102】
別の実施形態において、このアッセイは、標的メソセリンポリペプチドに結合
しそしてそのメソセリンポリペプチドをサンプルの残りから取り出すための、固
体支持体上に固定された抗体の使用を包含する。次いで、結合したメソセリンポ
リペプチドが、別個のメソセリンポリペプチド抗原決定基と反応性である第2抗
体(例えば、検出可能なレポーター部分を含む試薬)を使用して、検出され得る
。非限定的例として、この実施形態によると、別個の抗原決定基を認識する固定
された抗体および第2抗体は、モノクローナル抗体OV569、4H3、3G3
および1A6から選択される本明細書中に記載されるモノクローナル抗体のうち
の任意の2つであり得る。あるいは、競合アッセイが利用され得、そのアッセイ
において、メソセリンポリペプチドが、検出可能なレポーター部分で標識され、
そしてサンプルとの固定された抗体のインキュベーションの後に、固定されたメ
ソセリンポリペプチド特異的抗体に結合させられる。サンプルの成分が抗体への
標識ポリペプチドの結合を阻害する程度は、その固定された抗体とのそのサンプ
ルの反応性の指標であり、結果として、そのサンプル中のメソセリンのレベルの
指標である。
【0103】
固体支持体は当業者に公知の任意の材料であり得、これに抗体が結合され得、
これらの支持体としては、マイクロプレートウェル中の試験ウェル、ニトロセル
ロースフィルターまたは別の適切な膜が挙げられる。あるいは、この支持体は、
ビーズまたはディスクであり得、例えば、ガラス、ファイバーグラス、ラテック
スまたはポリスチレンもしくはポリ塩化ビニルようなプラスチックが挙げられる
。抗体は、当該分野で公知の種々の技術を用いて固体支持体に固定され得、この
技術は特許および科学文献中に詳細に記載されている。
【0104】
特定の好ましい実施形態において、サンプル中のメソセリン関連抗原ポリペプ
チドの検出のためのアッセイは、2抗体サンドイッチアッセイである。このアッ
セイは、最初に固体支持体(通常は、マイクロタイタープレートのウェル)に固
定化されたメソセリン関連抗原ポリペプチドに特異的な抗体(例えば、OV56
9、1A6、3G3または4H3のようなモノクローナル抗体)を生物学的サン
プルと接触させ、その結果、サンプル中に天然に存在し、かつ抗体と反応性であ
る抗原決定基を有する可溶性分子を固定化された抗体に結合させて(室温で30
分間のインキュベーション時間は一般に十分である)、抗原−抗体複合体または
免疫複合体を形成させることにより行い得る。次いで、サンプルの非結合成分は
、固定化された免疫複合体から除去される。次いで、メソセリン関連抗原ポリペ
プチドに対して特異的な第2抗体を添加し、ここで、第2抗体の抗原結合部位は
、固定化された第1抗体の抗原結合部位がメソセリン関連抗原ポリペプチド(例
えば、固体支持体に固定化されたモノクローナル抗体と同じではない、OV56
9、1A6、3G3または4H3のようなモノクローナル抗体)に結合すること
を競合的に阻害しない。第2抗体は、本明細書中に提供されるように検出可能に
標識され得、その結果、この抗体は、直接検出され得る。あるいは、第2抗体は
、検出可能に標識された二次(または「第2段階」)抗抗体の使用により、また
は本明細書中に提供されるように特異的検出試薬を用いて間接的に検出され得る
。本発明の方法は、イムノアッセイの当業者が、2抗体サンドイッチイムノアッ
セイにおいて特定の抗原(例えば、メソセリンポリペプチド)を免疫学的に検出
するために多くの試薬および構成が存在することを理解するように、特定の検出
手順に限定されない。
【0105】
上記の2抗体サンドイッチアッセイを用いる、本発明の特定の好ましい実施形
態において、メソセリン関連抗原ポリペプチドに対して特異的な固定化された第
1抗体は、ポリクローナル抗体であり、そしてメソセリン関連抗原ポリペプチド
に対して特異的な第2抗体はポリクローナル抗体である。本発明の特定の他の実
施形態において、メソセリン関連抗原ポリペプチドに対して特異的な固定化され
た第1抗体はモノクローナル抗体であり、そしてメソセリン関連抗原ポリペプチ
ドに対して特異的な第2抗体はポリクローナル抗体である。本発明の特定の他の
実施形態において、メソセリン関連抗原ポリペプチドに対して特異的な固定化さ
れた第1抗体はポリクローナル抗体であり、そしてメソセリン関連抗原ポリペプ
チドに対して特異的な第2抗体はモノクローナル抗体である。本発明の特定の他
の非常に好ましい実施形態において、メソセリン関連抗原ポリペプチドに対して
特異的な固定化された第1抗体は、モノクローナル抗体であり、そしてメソセリ
ン関連抗原ポリペプチドに対して特異的な第2抗体は、モノクローナル抗体であ
る。例えば、これらの実施形態において、本明細書中で提供されるように、モノ
クローナル抗体4H3、3G3、1A6およびOV569は、メソセリンポリペ
プチド(例えば、MRAポリペプチド)上の異なりかつ非競合性の抗原決定基(
例えば、エピトープ)を認識し、その結果、これらのモノクローナル抗体の任意
の対形式の組み合わせが使用され得る。本発明の他の好ましい実施形態において
、メソセリン関連抗原ポリペプチドに対して特異的な固定化された第1抗体およ
び/またはメソセリン関連抗原ポリペプチドに対して特異的な第2抗体は、当該
分野で公知および本明細書中で言われる任意の種の抗体であり得、例えば、Fa
bフラグメント、F(ab’)2フラグメント、免疫グロブリンV領域融合タン
パク質または単鎖抗体が挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、本発
明が、開示された方法および本願方法において他の抗体形態、フラグメント、誘
導体などの使用を含むことを理解する。
【0106】
特定の特に好ましい実施形態において、第2抗体が検出可能なレポーター部分
または標識(例えば、酵素、色素、放射性核種、発光基、蛍光基またはビオチン
など)を含み得る。固体支持体に結合している第2抗体の量は、特異的な検出可
能なレポーター部分または標識について適切な方法を用いて決定される。放射活
性基については、シンチレーションカウンティングまたはオートラジオグラフィ
ーが一般に適切である。抗体−酵素結合体は、種々のカップリング技術を用いて
調製され得る(概説に関しては、例えば、Scouten,W.H.,Meth
ods in Enzymology 135:30−65,1987を参照の
こと)。分光法を使用して、色素(例えば、酵素反応の比色生成物を含む)、発
光基および蛍光基を検出し得る。ビオチンは、アビジンまたはストレプトアビジ
ンを用いて検出され得、ビオチンは、異なるレポーター基(通常は、放射活性基
または蛍光基または酵素)に連結され得る。酵素レポーター基は、一般に、基質
の添加(一般に特定の期間の間)、次いで分光的、分光光度的、または他の反応
生成物の分析により検出され得る。標準物質および標準的添加物を用い、周知の
技術を使用して、サンプル中のメソセリンポリペプチドのレベルを決定し得る。
【0107】
別の実施形態において、本発明は、本明細書中に提供されるように、生物学的
供給源または被験体由来の生物学的サンプルにおける免疫特異的に反応性の抗体
の検出によって悪性状態の存在についてスクリーニングするためにメソセリン関
連抗原ポリペプチドの使用を企図する。この実施形態に従って、メソセリン関連
抗原ポリペプチド(本明細書中に記載のような短縮型のメソセリン関連抗原ポリ
ペプチドを含むフラグメントまたはその改変体)を検出可能に標識し、そして生
物学的サンプルと接触させて、サンプル中に可溶性形態で天然に存在する抗体の
メソセリン関連抗原ポリペプチドに対する結合を検出する。例えば、メソセリン
関連抗原ポリペプチドは、容易に検出可能な(例えば、放射活性に標識される)
アミノ酸のインビトロ翻訳の間の組み込みのような周知の技術と合わせて、本明
細書中に開示される配列をを使用することにより、または上記の技術のような検
出可能な他のレポーター部分を使用することにより生合成的に標識される。理論
に拘束されることは望まないが、本発明のこの実施形態により、特定のメソセリ
ンポリペプチド(例えば、本明細書中に開示されるMRAポリペプチド)は特に
免疫原性であるペプチドを提供し得、そのためにこのポリペプチドが特異的かつ
検出可能な抗体を生じることを企図し、このポリペプチドは、核酸レベルでコー
ド配列のインフレーム挿入から生じたフレームシフト配列を特徴とする。例えば
、この理論に従って、特定のMRAポリペプチドは、強い(avid)免疫応答
を誘発する「非自己」抗原を示し得る一方、インフレーム挿入がないメソセリン
ポリペプチド(例えば、MPFまたはメソセリン)は、体液性または細胞性免疫
を容易に誘発しない「自己」抗原として免疫系に認められ得る。
【0108】
上記のように、本発明は、一部、ヒトメソセリン関連抗原ポリペプチドの可溶
性形態が被験体に天然に存在する(特定の癌を有する被験体におけるこのような
可溶性メソセリンポリペプチドのレベルの上昇を含む)という驚くべき知見に関
する。
【0109】
本発明に従う、悪性状態の存在についてスクリーニングする方法は、被験体由
来の生物学的サンプル中の1つより多くの腫瘍関連マーカーの検出によりさらに
増強され得る。従って、特定の実施形態において、本発明は、メソセリン関連抗
原ポリペプチドに対して特異的な抗体を用いて天然に存在する可溶性サンプル成
分の反応性を検出することに加えて、当該分野で公知のように、そして本明細書
中に提供されるように確立された方法を用いて、悪性状態の少なくとも1つのさ
らなる可溶性マーカーの検出を含むスクリーニングの方法を提供する。上記のよ
うに、現在、容易に得られた生物学的液体のサンプル中で検出可能な多くの可溶
性腫瘍関連抗原が存在する。これらとしては、CEA、CA125、シアリルT
N、SCC、TPSおよびPLAP(例えば、Bastら,1983 N.En
g.J.Med.309:883;Lloydら,1997 Int.J.Ca
nc.71:842;Sarandakouら,1997 Acta Onco
l.36:755;Sarandakouら,1998 Eur.J.Gyna
ecol.Oncol.19:73;Meierら,1997 Antican
c.Res.17(4B):2945;Kudohら,1999 Gyneco
l.Obstet.Invest.47:52;Indら,1997 Br.J
.Obstet.Gynaecol.104:1024;Bellら、1998
Br.J.Obstet.Gynaecol.105:1136;Cioff
iら,1997 Tumori 83:594;Meierら,1997 An
ticanc.Res.17(4B):2949;Meierら,1997 A
nticanc.Res.17(4B):3019)が挙げられるが、これらに
限定する必要はなく、そして本明細書中で提供されるように、任意の公知のマー
カーをさらに含み得、その存在は、生物学的サンプル中で少なくとも1つの悪性
状態の存在と相関し得る。
【0110】
あるいは、メソセリン関連抗原ポリペプチドをコードする核酸配列は、標準的
なハイブリダイゼーション技術および/またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)
技術を用いて検出され得る。適切なプローブおよびプライマーは、本明細書中に
提供されるメソセリン関連抗原のcDNA配列に基づいて当業者により設計され
得る。一般に、生物学的供給源(例えば、真核生物細胞、細菌、ウイルス、その
ような生物から調製された抽出物および生体内で見出される液体)から得られた
任意の種々のサンプルを用いてアッセイが行われ得る。
【0111】
以下の実施例は例示のためであって、限定するために提供されるものではない

【実施例】
【0112】
(実施例)
(実施例1:メソセリンポリペプチドの対して特異的なモノクローナル抗体O
V569)
本実施例は、卵巣癌由来のヒト悪性腹水細胞で免疫した後のマウスモノクロー
ナル抗体(Mab)OV569の生成を記載する。免疫原として使用するための
細胞は、悪性卵巣癌を有する患者の腹膜腹水から遠心分離により回収し、洗浄し
、そして液体窒素中で使用時まで保存した非分画細胞であった。BALB/cマ
ウス(約3ヶ月齢)を合計7回、14日間隔で1回の免疫あたり1×107の融
解した卵巣癌細胞を免疫した;アジュバントは用いなかった。初回免疫について
は、マウスに腹腔内(i.p.)および皮下(s.c.)の両方に注射したが、
残りの6回の免疫については、融解細胞の注射をi.p.のみで投与した。最終
免疫の4日後、脾臓を1匹のマウスから取り出し、IMDM培養培地(Gibc
o BRL,Grand Island,NY)中に単一細胞懸濁物を形成する
ように細かく切り離し、そして引き続いて、以前に記載のように融合剤として4
0%ポリエチレングリコール(PEG)を用いて(Yehら,1979 Pro
c.Nat.Acad.Sci.USA 76:2927)、脾細胞を骨髄腫細
胞P3x63Ag8.653(CRL1580、ATCC,Rockville
,MD)と融合した。ハイブリダイゼーション後に、融合細胞懸濁物を希釈して
、好ましくは一細胞から生じる低密度培養物を形成し、そして10%ハイブリド
ーマ増殖因子(Igen Inc,Gaithersburg,MO)、10%
ウシ胎仔血清、2% HATおよび0.25%ジェネティシンを含有する選択培
地(Yehら,1979)にて96ウェルプレート(Falcon,Linde
n Park,NY)に播種した。
【0113】
各ウェルからの上清を、免疫に用いた卵巣癌腹水、他の患者由来の培養卵巣癌
細胞、および培養ヒト線維芽細胞に結合し得る抗体の存在について、Douil
lardら(1983 Meth.Enzymol.92:168)に記載のよ
うに酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)を用いてスクリーニング
した。ヒト卵巣細胞に結合するが、培養ヒト線維芽細胞に結合しない抗体を生成
するハイブリドーマを限界希釈により2回クローニングし、上清抗体の卵巣癌細
胞との特異的反応性について(および種々の正常ヒト組織由来の細胞との非反応
性について)再試験し、そしてインビトロで拡大した。抗体をハイブリドーマ上
清から、固定化したプロテインAに対してアフィニティークロマトグラフィー(
RepliGen,Cambridge,MA)により、緩衝液および低pH溶
出、次いで供給元により推奨されるように中和としてリン酸緩衝化生理食塩水(
PBS)を用いて精製し、その後、これらを濾過滅菌し、そして−70度で使用
時まで保存した。
【0114】
卵巣癌細胞に結合するが、正常な線維芽細胞には結合しない1つのこのような
モノクローナルハイブリドーマ抗体を、OV569と名付けた。モノクローナル
抗体(Mab)OV569を、ELISAによりマウスIgG1アイソタイプで
あることを決定した。簡潔には、Immunolon 96ウェルプレート(D
ynatech,Chantilly,VA)のウェルを、異なるマウスIgG
サブクラスに対して特異的なヤギ抗体(Southern Biotech,B
irmingham,AL)(PBS中1μg/ml)を用いて4℃で一晩コー
ティングし、ブロッキングし、そして記載の手順に従ってOV569ハイブリド
ーマ上清の種々の希釈を試験するために使用した(Yehら,1979 Pro
c.Nat.elcad.Sci.USA 76:2927)。
【0115】
(実施例2:OV569により認識される卵巣癌抗原に対して特異的な第2モ
ノクローナル抗体の生成)
ハイブリドーマの第2セットを作製し、Mab OV569により認識される
抗原分子に結合するが、OV569により使用される抗原性エピトープとは異な
るエピトープの認識を介して結合する抗体の生成について選択した。第2Mab
生成を誘発するための免疫原として使用するために、OV569結合抗原を、外
科手術で除去した腫瘍から確立したヒト卵巣癌および肺癌の細胞培養物(例えば
、Hellstromら,1990 Cancer Res.50:2183に
記載されるように)の上清から、または固定化したMAb OV569のカラム
を使用した腹水もしくは胸膜液の採取物からアフィニティー精製した。簡潔には
、1.5gの臭化シアンで活性化したセファロース4B(Sigma,St.L
ouis,MO)に、9.2mgのOV569を添加し、そしてカラムを洗浄し
、そして供給元のプロトコルに従って使用するために平衡化した。抗原が精製さ
れる出発物質(例えば、遠心分離により清澄にされた培養上清)をカラムに通過
させ、その後にカラムを280nmの吸光度を有する物質がカラム溶出液に検出
されなくなるまでPBS(pH7.2)中の0.01M 0.02% NaN3
で洗浄した。次いで、MAb OV569カラムに特異的に結合した可溶性抗原
を、pH2.6溶出緩衝液(0.1M グリシン−HCl−pH2.6、0.1
5M NaCl)を用いて溶出した。溶出液を2mlの容量で採取し、2.5M
Tris−HCl緩衝液(pH8.8)で中和し、そして280nmおよび2
60nmの吸光度の分光光度的測定により定量した。
【0116】
アフィニティー精製したOV569抗原(0.1ml中に30μgのタンパク
質)を、0.1mlのRibiアジュバント(Ribi Immunochem
.Research,Inc.,Hamilton,MT)と混合し、そしてこ
の混合物を、3ヶ月齢のBALB/cマウスにs.c.部位で注射し、14日後
に最初のブースター免疫を行った(このブースター免疫は、i.p.で投与した
)。ブースター免疫については、Ribiアジュバントを、培養したH4013
肺癌細胞(例えば、Hellstromら,1990 Cancer Res.
50:2183により記載されるような方法を用いて確立された癌細胞株)の上
清からOV569アフィニティークロマトグラフィーにより精製した抗原と混合
した。一連の3回のブースター免疫(各14日の間隔を与える)において3回目
の投与の14日後に、マウスをアジュバントなしで静脈内(i.v.)で抗原を
注射することにより最終ブーストを与えた。
【0117】
最終ブーストの3日後に脾臓を取り出し、そして細胞融合をMAb OV56
9について実施例1で上記のように行った。得られたハイブリドーマ細胞の上清
を、従来のELISA方法(Current Protocols in Im
munology,J.E.Coliganら(編)1998 John Wi
ley&Sons,NY)を用いて、プラスチック96ウェルプレート上に固定
化した標的抗原に結合し得る抗体の存在について試験した。標的抗原は、(i)
上記のように調製したアフィニティー精製したOV569抗原(免疫抗原);ま
たは(ii)ヒトIg配列をコードする記載されたベクター(Hollenba
ughら、1995 J.Immunol.Meth.188:1−7)を使用
して免疫グロブリン定常領域に融合し、そしてプロテインA/Gアフィニティー
クロマトグラフィー(ImmunoPure A/G,Pierce Chem
icals,Rockford,IL)により供給元の説明書に従って精製した
メソセリン膜結合タンパク質のアミノ酸294〜628からなる免疫グロブリン
融合タンパク質であるD2hIg(Changら、1996 Proc.Nat
.Acad.Sci.USA 93:136)であった。
【0118】
陽性の上清をELISAにより再試験して反応性を確認し、そして改変したE
LISA結合競合イムノアッセイにおいて引き続きスクリーニングした。簡潔に
は、このアッセイにおいて、OV569結合抗原(上記のようにアフィニティー
精製した)を96ウェルプレートのウェルに固定化した。ウェルに、結合競合イ
ンキュベーション工程(室温で1時間)の間に各陽性ハイブリドーマおよびWe
ir,D.M.,Handbook of Experimental Imm
unology(1986,Blackwell Scientific,Bo
ston)に従ってビオチン化することにより調製した50μl(400ng)
のビオチン化MAb OV569上清を与え、次いでPBSで洗浄し、そして今
出工程を供給元の推奨に従って希釈した50μlのHRP−ストレプトアビジン
(PharMingen,San Diego,CA)を用いて行った。このア
ッセイにより、ビオチン化MAb OV569結合を阻害することができないこ
とによってOV569により認識されるエピトープとは異なるエピトープを認識
するMAbについて選択した。この競合アッセイにおいて試験した上清を、また
、アフィニティー精製したOV569結合抗原でコーティングしたコントロール
プレートの並行セットを用いて試験して、OV569抗原に結合するハイブリド
ーマ抗体を確認した。3つのハイブリドーマ(4H3、3G3、および1A6と
名付けた)を同定した。これらのハイブリドーマは、D2hIgおよび培養した
OV569陽性癌培養上清由来のOV569アフィニティー精製した抗原に結合
し得る抗体を生成し、そしてOV569 MAbと競合しなかった。これら3つ
のハイブリドーマをクローニングし、拡大し、そして同系マウスに移植して、抗
体生成腹水腫瘍を確立した。4H3といわれるIgG1 MAbを、以下に記載
の二重決定基(「サンドイッチELISA」)アッセイにおいてOV569とと
もに使用した。
【0119】
(実施例3:ヒト腫瘍細胞表面でのOV569卵巣癌抗原の発現)
本実施例は、MAb OV569により規定される抗原の発現の免疫組織学的
特徴付けを記載する。イムノペルオキシダーゼ技術(Sternberger,
Immunocytochemistry,104−169頁,John Wi
ley&Sons,Inc.,New York,1979)の改変法を、Ve
ctastain ABC免疫染色試薬システム(Vector Labora
tories,Burlingame,CA)を用いて製造業者の説明書に従っ
て使用した。簡潔には、種々の正常ヒト組織またはヒト腫瘍サンプルを標準的外
科的切除または生検手順により得、そして直ぐに凍結した。この凍結したサンプ
ルを、冷却したミクロトームを用いて切片にし、顕微鏡用ガラススライドの上で
風乾し、冷アセトンで固定し(−20℃で5分間)、そしてPBSで2回洗浄し
、通常マウス血清でブロッキングし(室温で20分間)、次いでアビジン/ビオ
チンブロッキング試薬で処理した。次いで、このスライドを、Vectasta
inブロッキング溶液(Vector Laboratories)で希釈した
一次抗体とともに室温で90分間インキュベートし、そしてPBSで洗浄した。
次いで、スライドを、Vectastainブロッキング溶液で1:150に希
釈したビオチン化ヤギ抗マウスIgG(Southern Biotechno
logy Assoc.,Birmingham,AL)とともに室温で30分
間インキュベートし、そして再びPBSで洗浄した。Vectastain A
BC(「Vector Elite」)西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)
作業溶液を調製し、そして室温で保持した。スライドをこのHRP溶液と共に室
温で30分間インキュベートし、PBSで3回洗浄し、そしてTris緩衝液(
0.05M Tris−HCl−pH7.5、150mM NaCl)中でリン
スした。ジアミノベンザミジン(diaminobenzamidine)(D
AB、Bio−Tek Instruments,Inc.,Winooski
,VT)色素原試薬溶液をVectastain ABCの説明書に従って毎日
調製し、そしてスライドをこの試薬と共に柔らかな光の中で室温で7分間インキ
ュベートした。PBSを添加することにより反応を停止させ、そして二回蒸留し
た水で2回洗浄した。スライドをヘマトキシリン(蒸留水で1:10に希釈した
Bio−Tekヘマトキシリン溶液)で10〜45秒対比染色し、水で3回リン
スし、そして顕微鏡にセットする前に勾配を付けた一連のエタノールを通して脱
水した。
【0120】
このスライドを冷却し、そして独立した研究者が試験し、ディファレンシャル
干渉コントラスト(Nomarski)オプティクスを用いて、Zeissアッ
プライト顕微鏡(Carl Zeiss,Inc.,Thornwood,NY
)で明視野照明下で代表的な顕微鏡視野を写真撮影した。ここで示されるように
、サンプルを、試験した細胞の少なくとも1/3がDAB染色を示した場合に「
陽性」とスコア付けした;「陰性」といわれるサンプルは、同じMAb希釈物を
用いても有意な染色を示さなかった(細胞の5%未満)。表1は、試験した癌標
本の数に対する陽性に染色された癌(「Ca」)標本の比を示す。染色は、腫瘍
細胞の細胞質において見られ、いくらかの場合には細胞表面にもまた染色が見ら
れた。正常(すなわち、非癌性)細胞は、MAb OV569に対して染色が認
められなかった。新生物細胞および間質細胞の両方が腫瘍サンプルにおいて観察
され、そして前者のみがMAb OV569により染色された。正常ヒト組織サ
ンプルを使用した結果を表2に示す。
【0121】
【表1】

【0122】
【表2】

(実施例4:培養したヒト癌細胞表面上のOV569卵巣癌抗原の発現)
本実施例において、癌細胞表面に結合するMAb OV569を、Coult
er Epics C FACS細胞蛍光測定器(Coulter Corp.
,Miami,FL)を用いて、基本的には以前に記載されたとおり(Hell
stromら,1986 Canc.Res.46: 3917)免疫細胞蛍光
フローサイトメトリーにより評価した。上記のように生成した培養接着ヒト癌細
胞(例えば、Hellstromら,1990 Cancer Res.50:
2183)を、培養フラスコからトリプシン/EDTAを用いて取り出し、、遠
心分離(200×g、10分)により2回洗浄し、そして15% FBSを含有
するIMDM培地(GibcoBRL,Grand Island,NY)中の
再懸濁物を、室温で少なくとも1時間、同じ培地中で平衡化した。次いで、細胞
のアリコート(各群について0.5〜1.0×106細胞/0.1ml)を、氷
上に15分間保持し、そして100μlのOV569ハイブリドーマ細胞培養上
清中に4℃で1時間再懸濁した。細胞を染色緩衝液(5%ウシ胎仔血清を含有す
るIMDM培地)で3回洗浄し、そして1群あたり0.1mlのフルオレセイン
結合体化ヤギ抗マウス免疫グロブリン(FITC−GaMIg、BioSour
ce International,Inc.,Camarillo,CA)(
供給元の推奨に従って染色緩衝液で希釈した)中で4℃で30分間再懸濁した。
細胞を再び3回洗浄し、0.5mlの冷却染色緩衝液に再懸濁し、そして分析す
るまで4℃で暗所に保存した。フロー免疫細胞蛍光検出を、Coulter E
pics C FACS細胞蛍光検出器(Coulter Corp.,Mia
mi,FL)を用いて製造業者の説明書に従って行い、順方向および側方の散乱
パラメーター(scatter parameter)をゲート制御(gate
)して、単一細胞の事象を記録した。平均蛍光強度を各サンプルについて決定し
、そして線形蛍光当量(LFE)を、Coulter Epics C FAC
Sに装備されたソフトウェアを用いて計算した。陰性コントロールサンプル(第
1抗体インキュベーション工程の間に無関係の特異性のMAbでインキュベート
した)のLEFで除算した各試験サンプルのLEFにより、特異的に免疫蛍光染
色した細胞の相対的明るさと陰性抗体で染色した細胞の相対的明るさとを比較す
るための比が与えられた。結果を表3に示す。
【0123】
【表3】

(実施例5:OV569卵巣癌抗原を内在化しないヒト癌細胞)
MAb OV569によって規定される抗原が抗原陽性癌細胞によって内在化
され得るか否かを決定するために、免疫蛍光抗体局在化アッセイを、レーザー走
査共焦点顕微鏡を使用して行った。上記(例えば、Hellstromら、19
90 Cancer Res.50:2183)のように、外科手術切除に続い
て培養するために適合されたヒト肺癌細胞(H4013)、または卵巣癌細胞(
H4007)を、10%胎仔ウシ血清を含むIMDM培養培地(Gibco B
RL、Grand Island、NY)で培養し、加湿された大気中、5%C
2、37℃で48時間、ガラススライド(NUNCチャンバカバースリップ、
NUNC、Rochester、NY)に接着させた。免疫蛍光抗体標識化のた
めに、細胞を15分間4℃(細胞表面抗原の内在化には非許容性の温度)で平衡
化させた。FITC結合OV569を、製造業者の勧めに従って、固定化プロテ
インA(RepliGen、Cambridge、MA)上にアフィニティー精
製されたMAb OV569を用いて記載された条件下(Weir,D.M.、
Handbook of Experimental Immunology、
1986、Blackwell Scientific、Boston)で、フ
ルオレセインイソチオシアネート(Sigma、St.Louis、MO)のイ
ンキュベーションによって調製した。FITC−OV569またはネガティブコ
ントロールとしてFITC結合ヤギ抗マウスIgG(Tago、Burling
ame、CA)のいずれかを、各カバースリップをカバーするのに十分な容積で
、4℃で1時間、10μm/mlの濃度で細胞に加えた。結合していない抗体を
、冷たい培養培地を用いてカバースリップを広範囲にリンスすることによって除
いた。次いで、細胞を37℃(特定の細胞表面抗原の内在化を許容する温度)で
、種々の時間インキュベートした(Hellstromら、1990 Canc
.Res.50:2183)。37℃のインキュベーション期間を、冷PBSを
培養物に添加し、そして細胞をPBS中の2%ホルムアルデヒドで15分間室温
で後固定する(post−fixng)ことによって終結した。次いで、各カバ
ースリップを、供給業者の指示に従って抗退色剤ジチオエリスリトール(Sig
ma、St.Louis、MO)、またはVectaStain抗退色試薬(V
ector Laboratories、Burlingame、CA)を用い
て処理した。レーザー走査共焦点顕微鏡イメージを、製造業者の指示に従って、
フルオレセイン検出フィルターを備えたLeica共焦点顕微鏡(Leica、
Inc.、Deerfied、IL)を用いて得た。
【0124】
共焦点イメージは、4℃で抗体に対して曝され、洗浄され、そしてすぐに固定
した、ヒト卵巣癌細胞およびヒト肺癌細胞の表面に対してFITC−MAb O
V569の排他的局在化を示した。FITC−MAb OV569を用いて4℃
で染色された細胞を8時間以上37℃に移した場合、検出可能なFITC−MA
b OV569は、細胞表面に排他的に局在化したままであり、そして細胞質蛍
光染色は観測されなかった。
【0125】
(実施例6:OV569卵巣癌抗原のイムノブロット特徴付け)
この実施例は、ウエスタンイムノブロット分析を使用して、MAb OV56
9によって認識されたヒト癌細胞表面抗原の特徴付けを記載する。
【0126】
溶解物を含むイムノブロット分析用サンプルを、以下のヒト細胞株から調製し
た:H4013肺癌細胞溶解物(図1、レーン5)、OVCAR−3卵巣癌細胞
溶解物(Amer.Type Culture Collection、Man
assas、VA)(図1、レーン7)、および6K腎臓癌細胞溶解物(図1、
レーン8)を、標準的な手順(Current Protocols in I
mmunology、J.E.Coliganら(編)、1998 John
Wiley & Sons、NY)に従って調製した。タンパク質を、製造業者
の指示に従って、Bradford Commassieタンパク質アッセイ試
薬(Pierce Chemicals、Inc.、Rockford、IL)
を使用して定量化した。
【0127】
イムノブロット分析のための他のサンプルは、ヒト患者から誘導され、そして
上の実施例2に記載されたような固定化されたMAb OV569のカラムでア
フィニティー精製された物質を含んだ。これらのサンプルは、卵巣癌を有する患
者からの卵巣癌腹水流体のOV569アフィニティー精製された画分(図1、レ
ーン2)、および肺癌を有すると診断された患者の流体で満たされた胸膜間腔(
interpleural membrane cavity)から収集された
胸膜液のOV569アフィニティー精製された画分(図1、レーン3)を含んだ
。流体サンプル調製およびアフィニティークロマトグラフィーは、それぞれ以下
の実施例7および上の実施例2に記載された通りであった。
【0128】
イムノブロット分析のための他のサンプルは、ヒト癌細胞株から誘導され、そ
して上の実施例2に記載される固定化されたMAb OV569のカラム上にア
フィニティー精製された物質を含んだ。これらのサンプルは、H4013肺癌(
図1、レーン4)、OVCAR−3卵巣癌(ATCC、Manassas、VA
)(図1、レーン6)のOV569アフィニティー精製された画分を含んだ。実
施例2に記載されたD2hIg融合タンパク質もまた分析された(図1、レーン
1)。
【0129】
タンパク質内容物によって標準化された各サンプルを、SDSサンプル緩衝液
(Novex、San Diego、CA)を用いて1:1に希釈し、20μl
(300ng/レーン)を14%Tris−グリシンゲル(Novex、San
Diego、CA)上にロードし、そしてゲルを製造業者の指示に従って、約
1.5時間、125VでSDS電気泳動緩衝液を使用する電気泳動に供した。ゲ
ル電気泳動に続いて、分離されたタンパク質を、Tris−グリシンSDS移動
緩衝液および製造業者によって勧められた電気泳動移動条件を使用して、PVD
F膜(Novex、San Diego、CA)上にエレクトロブロットした。
【0130】
抗体調査の前に、PVDF膜を、室温で1時間、洗浄緩衝液(0.2%Twe
en 20−PBS)中の5%脱脂乳でブロックし、続いて洗浄緩衝液で、10
分間1回、および5分間2回洗浄した。次に、この膜を、1時間室温で、1%脱
脂乳を含む洗浄緩衝液中に3μg/mLまで希釈されたプロテインAアフィニテ
ィー精製MAb OV569の溶液(4.6mg/ml)に浸し、続いて上記の
ように一連の3回の洗浄を行った。特異的に結合されたMAb OV569の検
出は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合二次抗体の化学発光検出を使
用して達成された。手短には、膜を、1%脱脂乳を含む洗浄緩衝液中のHRP標
識ヤギ抗マウスIgG抗体(Zymed Laboratories、Sout
h San Francisco、California)の1:5000希釈
物中で1時間室温でインキュベートし、次いで洗浄緩衝液中にブロットを10分
間1回、次いで5分間4回それぞれ浸すことによって、非結合抗体を除いた。E
CL化学発光基質(ECL−Amersham、Buckinghamshir
e、England)を、供給業者の指示に従って暗い部屋内で1分間この膜に
適用し、続いてX−omat放射線フィルム(Kodak、Rochester
、NY)に手短に曝露した。
【0131】
図1は、MAb OV569を結合することによって検出された、電気泳動的
に分割された種のパターンを示し、これは、種々のヒト癌から誘導されるサンプ
ル中の42〜45kDaの見かけの相対分子量を有する成分を同定する。
【0132】
(実施例7:モノクローナル抗体OV569によって認識されるメソセリン関
連抗原(MRA)、癌抗原は、メソセリンポリペプチドである)
この実施例は、癌患者からの生物学的サンプル中に可溶性形態で天然に存在し
、MAb OV569によってメソセリンポリペプチドとして認識される分子の
同定を記載する。この天然に可溶性のメソセリンポリペプチドは、本明細書中で
、「メソセリン関連抗原」(MRA)と呼ばれる。
【0133】
肺癌を有するとして診断された患者から単回引出し(single draw
ing)によってヘパリン処理されたチューブに収集された胸膜液(2リットル
)を、細胞を除くために遠心分離によって清澄化し、PBSを用いて1:1(v
/v)に希釈し、そして、イムノアフィニティークロマトグラフィーの前に、3
MMフィルターペーパー(Whatman、Clifton、NJ)を通して濾
過した。希釈された胸膜液を、固定化されたMAb OV569のカラムに適用
し、カラムを非結合成分を除去するために洗浄し、そして特異的に結合された物
質を、実施例2に記載されたように溶出し、そして回収した。結合され、そして
溶出された画分を、3mMグリシン−0.2N NaOH中和緩衝液の添加によ
って中和した。プールされ、溶出されたOV569結合物質を、可能性として存
在するシステイン残基による人為的なジスルフィド結合の形成を妨げるために、
数グレインの結晶性ヨードアセトアミド(Sigma、St.Louis、MO
)の添加によってアルキル化し、この物質をSDS−ポリアクリルアミドゲル電
気泳動によって分割し、そしてブロットを、分割ゲルが7.5%ポリアクリルア
ミドを含んだ以外、実施例6に記載された通りに、PVDF膜に移した。PVD
F膜のレーンを、N末端配列分析のために約40kDaの拡散したバンドを局在
化するために、実施例6にまた記載されるとおりにMAb OV569を用いて
、免疫染色した。
【0134】
約40kDaのバンドのアミノ酸配列を、ABI Model 473固相シ
ークエンサー(Applied Biosystems Inc.、Foste
r City、CA)上での逐次的エドマン分解によって分析した。部分配列分
析は、OV569アフィニティー単離された40kDaポリペプチドについて、
以下のN末端アミノ酸配列を明らかにした:
EVEKTACPSGKKAREIDES(配列番号5)
このアミノ酸配列は、メソセリンポリペプチドファミリーの新規な天然に可溶性
のメンバーの部分アミノ酸配列を示す。配列番号5のアミノ酸配列はまた、メソ
セリン(本明細書中に提供されるように天然に可溶性の分子として検出可能でな
い中皮、中皮腫および卵巣癌上に発現される細胞表面差示的抗原(Changら
、1992 Int.J.Canc.50:373;Changら、1996
Proc.Nat.Acad.Sci.USA93:136))の294〜31
2の位置に存在し、本明細書に記載される可溶性OV569結合ポリペプチドは
、「メソセリン関連抗原」(MRA)と呼ばれている。上記のように、配列番号
5のアミノ酸配列はまた、MPF前駆体タンパク質の細胞表面膜結合(すなわち
、本明細書中に提供されるように可溶性ではない)部分に存在する(Kojim
aら、1995 J.Biol.Chem.270:21984)。
【0135】
上記のように、メソセリンおよびMPFは、可溶性で、かつ細胞表面に結合さ
れた生成物にタンパク質分解的にプロセスされる約70kDaの前駆体として合
成される(Changら、1996 Proc.Nat.Acad.Sci.U
SA 93:136;Chowdhuryら、1998 Proc.Nat.A
cad.Sci.USA 95:669;Kojimaら、1995 J.Bi
ol.Chem.270:21984;Yamaguchiら、1994 J.
Biol.Chem.269:805)。OV569エピトープが存在するドメ
イン(可溶性かまたは膜に会合)を同定するために、2人のヒト免疫グロブリン
定常領域融合タンパク質を構築した。D1hIgは、33kDaのMPF可溶性
ドメインを含んだが(Changら、1996;Kojimaら、1995)、
一方、D2hIgは、MPFの44kDa膜結合ドメインを含んだ(Chang
ら、1996;実施例2を参照のこと)。OV569の特異性は、上記のように
従来のELISA法によって試験された。図2に示されるように、OV569は
、D2hIgに結合したが、D1hIgを認識しなかった。
【0136】
(実施例8:患者の悪性滲出液および血清におけるモノクローナル抗体OV5
69によって規定される卵巣癌の検出のためのアッセイ)
この実施例は、MRA、メソセリンポリペプチドファミリーの新規で天然に可
溶性のメンバーの検出のためのサンドイッチELISAイムノアッセイを記載す
る。このアッセイは、MAb OV569およびMAb 4H3を使用し、これ
は、MRA上に存在する別のエピトープに結合する。
【0137】
Maxisorp ImmunoTMプレート(Nalge Nunc Int
ernational、Napeville、IL)のウェルを、炭酸−重炭酸
緩衝液(C−3041、Sigma)の50μl/ウェル中の、プロテインAイ
ムノアフィニティー(ImmunoPure A/G IgG Purific
ation Kit、Pierce Chemicals、Rockford、
Illinois)精製されたMAb 4H3免疫グロブリンの50ngを用い
て4℃で一晩コーティングした。次の日に、ウェルをドレインし、200μl/
ウェルのGSCブロック緩衝液(Genetic Systems Corp.
、Redmond、WA)を用いて室温で2時間ブロックした。次いで、ウェル
を4回、0.1%Tween20(Fischer Chemicals、Fa
irlawn、New Jersey)を含む200μl/ウェルのPBSを用
いて洗浄した。
【0138】
アッセイを開始するために、ブロック緩衝液中に希釈された患者血清の一連の
倍加希釈物(1:40〜1:1280)のウェル当たり100μlを加え、そし
てプレートを1時間室温に保持した。ウェルをPBS−0.1%Tween−2
0を用いて4回洗浄し、その後、50μl/ウェルのビオチン化MAb OV5
69(実施例2に記載されるように調製される)、結合体希釈物(Geneti
c Systems)中の200ng/mlを加え、そして1時間室温でインキ
ュベートさせた。ウェルを再びPBS−Tweenで4回洗浄した。次に、結合
体希釈物中に1:1000に希釈された50μl/ウェルのHRP−ストレプト
アビジン(PharMingen、San Diego、CA)を加え、そして
プレートを室温で45分間維持した。ウェルを4回PBS−Tweenで洗浄し
、そして緩衝化された3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB、
Genetic Systems)および1%(v/v)のHRP−ストレプト
アビジン結合体を15分間加えることによって、発展させた。この反応を2M
2SO4の添加によって停止させ、そしてプレートを、Spectracoun
tマイクロプレート分光光度計(Packard Instrument Co
.、Meriden、CT)を使用して460nmで読んだ。
【0139】
2人の患者由来の陽性コントロール血清サンプルおよび陰性コントロール血清
サンプルを全てのアッセイの中に含んだ。陰性コントロール血清は、健康なボラ
ンティア由来であり、1:40の希釈物で存在する場合、検出可能なシグナルを
与えなかった。陽性コントロール(「c+」)は、卵巣癌を有すると診断された
患者由来であり、そして1:1280以下の希釈物で存在する場合、記載された
アッセイ条件下で容易に検出可能なシグナルを提供した。
【0140】
図3は、MRAの検出のためのサンドイッチELISAイムノアッセイを使用
する代表的な結果を示す。2つのMAb、4H3およびOV569によって認識
される可溶性分子は、2人の卵巣癌患者由来の血清(#2896および#289
7)および肺癌患者由来の血清(#3L)において容易に検出され、そして滴定
可能な反応性として相対的に定量化され得た。陽性コントロール血清(c+)は
また、MRA結合MAbとの反応性を示し、これは希釈因子が増加するにつれて
減少した。
【0141】
卵巣癌を有するとして診断されたさらなる患者由来の血清、および種々の他の
腫瘍を有する患者由来の血清は、MRAの検出のためのサンドイッチELISA
イムノアッセイを使用してアッセイされた。非新生物性疾患を有するさらなる患
者の血清および健康な患者由来の血清もまたこのアッセイを使用して比較された
。結果の要旨は、図4に図式で示される。1:160の血清希釈物において、第
3段階または第4段階の卵巣癌を有した患者由来の30の血清のうちの23は、
健康なボランティア由来の60の血清のうちの0と比較して、有意に上昇した循
環MRAレベルを示した。同じ判断基準を使用して、卵巣癌以外の腫瘍を有する
患者由来の75の血清のうちの25が、MRAサンドイッチELISA中で検出
可能な反応性を示し、陽性血清のうち最高の頻度(66%)は、肺癌を有する患
者において観測された(表4)。非新生物性疾患を有する3人の患者由来の血清
は、MRAサンドイッチELISAにおいてネガティブであった。
【0142】
【表4】

(実施例9:メソセリン関連抗原(MRA−1)をコードする核酸配列の分子
クローニングおよび配列決定)
モノクローナル抗体OV569が、MPFの膜結合ドメイン(D2hIg)を
認識するが、可溶性ドメイン(D1hIg)を認識せず、しかし胸膜液由来の可
溶性ポリペプチドを親和性単離するために使用され得た(実施例7)ので、新規
メソセリン関連抗原(MRA)の正体を決定した。この実施例は、モノクローナ
ル抗体OV569によって規定される抗原からの配列情報を使用する、ヒト前立
腺癌株由来の、MRA、MRA−1をコードするcDNA分子のクローニングお
よび配列決定を記載する。プラスミド単離、コンピテント細胞の生成、形質転換
およびM13操作を、公開された手順に従って行った(Sambrookら、M
olecular Cloning、a Laboratory Manual
、Cold Spring Harbor Laboratory Press
、Cold Spring Harbor、NY、1989)。全RNAを、R
NAgentTMキット(Promega,Inc.、Madison、WI)を
使用してヒト前立腺癌細胞株から単離し(上記のように生成されたHE1P、例
えば、Hellstromら、1990 Cancer Res.50:218
3を参照のこと)、そして、ポリAおよびRNAを、mRNA Separat
orTM(Clontech,Inc.、Palo Alto、CA)を用いて全
RNAから精製した(共に製造業者の勧めに従った)。MarathonTMcD
NA増幅キット(Clontech、Palo Alto、CA)を使用してR
NAを逆転写し、二重鎖cDNAを作製した。この二重鎖cDNAを、供給業者
の指示に従って、MarathonTMキットを備えるアダプターにライゲーショ
ンし、そしてEXPANDTM高忠実度PCRシステム(Roche Molec
ular Biochemicals、Indianapolis、IN)を使
用して増幅した。この増幅のために、第1オリゴヌクレオチドプライマーは、M
arathonTMアダプター配列に特異的であり、そして第2プライマーは、O
V569抗原のN末端配列についてのコード領域[配列番号5]に対応し、そし
てMPF cDNA配列(Kojimaら、1995)から誘導される以下の配
列を有した:
GSP1:5’−−GGAAGTGGAGAAGACAGCCTGTCCTT
C−−3’(配列番号6)
PCR産物を、pGEM−Tベクター(Promega、Madison、WI
)にライゲートし、そしてライゲーション混合物を、DH5αコンピテント細胞
(Life Technologies、Gathersburg、MD)中に
形質転換した(共に、製造業者の指示に従った)。プラスミドを、QIApre
TMスピンミニプレップ(spin miniprep)キット(Qiagen
、Valencia、CA)を使用して形質転換されたDH5α細胞の個々のコ
ロニーから単離し、そしてBigDyeTMターミネーターサイクル(termi
nator cycle)配列決定キット(PE Applied Biosy
stems、Foster City、CA)を使用して配列決定した。10個
のクローンを単離し、これは、MPF cDNA配列(Kojimaら、199
5)と同一の核酸配列を保有する8個、メソセリン(Changら、1996)
と同一の配列を有する1個、および配列決定する際に、核酸配列を明らかにした
1個(図5A〜Bおよび配列番号3)を含み、この核酸配列(図5A〜Bおよび
配列番号3)は、MPFおよびメソセリン配列に関連するが、またMPFコード
配列のヌクレオチド1874(Kojimaら、1995)に対応するヌクレオ
チド位置に82bpの挿入物を含み、これは212bpのフレームシフトを誘導
した。
【0143】
配列分析は、このフレームシフトが、本明細書中においてメソセリン関連抗原
−1(MRA−1)と呼ばれる新規なポリペプチドに対するコード配列において
生じたことを示し、メソセリン関連抗原−1(MRA−1)は、MPFとメソセ
リンの両方とは異なり、親水性C末端テイルを含み、従って、水性の生理学的環
境に可溶性であるようである。MRA−1のC末端98アミノ酸は、MPFまた
はメソセリンのいずれかのC末端領域に見出されるいずれかのアミノ酸配列とは
異なった。驚くことに、この新規タンパク質をコードする核酸配列(配列番号3
)は、停止コドンを含まないが、代わりにポリAテイルに対するポリアデニル化
部位に直接続いた。この停止コドンの欠失は、新生物細胞におけるこの配列の起
源に関連し得る。MRA−1配列は、メソセリンDNA配列に存在するが、MP
F配列には存在しない24bpの挿入物を欠いた点、および単一の塩基の差がM
PFとメソセリンとの間に見出される二つのヌクレオチド位置においてMPFと
同一であった点で、メソセリンよりもMPFにより密接に関連した。MRA−1
ポリペプチド配列(配列番号1)は、図5A〜Bに示される。
【0144】
(実施例10:メソセリン関連抗原(MRA−2)の逆PCR(invers
e PCR)クローニング)
この実施例は、MRA改変体(MRA−2、ヒト結腸癌細胞株由来)をコード
するcDNA分子のクローニングおよび配列決定を記載する。MRA−2は、N
末端において3つのさらなるアミノ酸(FRR)の存在(配列番号2)によって
MRA−1とは異なり、そして以下に記載される様式と同一に様式によって、M
RA−1の完全C末端領域を欠き、その代わりに、MRA−1の残基325に対
応するアミノ酸位置で終結する。プラスミド単離、コンピテント細胞の生成、形
質転換、および関連操作を、出版された手順(Sambrookら、Molec
ular Cloning、a Laboratory Manual、Col
d Spring Harbor Laboratory Press、Col
d Spring Harbor、NY、1989)に従って行った。
【0145】
逆PCR(Zeinerら、1994 Biotechniques 17:
1051)を使用して、上記(例えば、Hellstromら、1990 Ca
ncer Res.50:2183を参照のこと)のように生成された細胞株で
ある、3719の結腸癌由来のMRAをコードする核酸分子をクローニングした
。手短には、全RNA(5mg)を、TrizolTM試薬(GIBCO−BRL
、Grand Island、NY)を使用して、3719の細胞のバルク培養
物から抽出し、供給業者によって指示されるとおりに、ポリA+mRNAをPo
lyATtractTMオリゴ−dTコーティング磁性ビーズ(Promega,
Inc.,Madison、WI)を使用して精製した。第1鎖のcDNA合成
を、実施例9のMRAヌクレオチド配列において同定された82bp挿入物の5
6〜80の位置にてヌクレオチドを含む部分に特異的なオリゴヌクレオチドプラ
イマーを使用して逆転写により開始された:
op56〜80:5’−GCGCTCTGAGTCACCCCTCTCTCTG
−3’(配列番号7)
cDNA第2鎖を、実施例9に記載されるとおりにMarathonTMアダプタ
ープライマーを使用して生成した(Clontech、Palo Alto、C
A)。cDNAを200μlの反応容積中のMarathonTMキットプロトコ
ル(Clontech)を使用して、15℃で24時間それ自身に再ライゲーシ
ョンすることによって環状にし得た。このライゲーション混合物から、5μlの
アリコートを、以下のプライマーを用いるPCR反応のテンプレートとして、使
用した:
mpf f735:AGAAACTTCTGGGACCCCAC(配列番号8)
mpf r290:GGGACGTCACATTCCACTTG(配列番号9)
および以下の入れ子(nested)プライマー:
GSP−25’−GAAGGACAGGCTGTCTTCTCCACTTCCC
−3’(配列番号10)
r80−54 5’−CAGAGAGAGGGGTGACTCAGAGC−
3’(配列番号11)。
【0146】
PCR産物を、BigDyeTMターミネーターサイクル配列決定キット(PE
Applied Biosystems、Foster City、CA)を
使用して配列決定した。得られたDNA配列(配列番号4、図6A〜B)は、配
列番号3の1位のヌクレオチドに対して9のさらなるbpを配置された5’の存
在を除いて、実施例9に記載されたMRA−1 DNA配列(配列番号3)の1
〜978位におけるヌクレオチドと同一であった。これらの9個のヌクレオチド
は、N末端トリペプチドFRPをコードし、これは、本明細書中においてMRA
−2として呼ばれる、配列番号2のアミノ酸1〜3を含む。これらの3つのヌク
レオチドコドンは、メソセリンとその前駆体との間(Changら、1996)
、およびMPFとその前駆体との間(Kojimaら、1995)の切断部位の
コード配列上流に見出される3つのコドンと同一である。従って、推論された可溶性メソセリン関連(SMR)抗原ポリペプチド配列(配列番号13)は、図7
A〜Bに示され、これは、このようなSMRポリペプチドをコードする核酸配列
(配列番号14)である。SMRは、MRA−2において同定されたFRR N
末端トリペプチドおよび上記のように、MRA−1(配列番号1)の全ポリペプ
チド配列(配列番号1)を含み、このC末端は、ポリアデニル化部位に伸長する
が、停止コドンを欠くヌクレオチド配列によってコードされる。
【0147】
(実施例11:卵巣癌細胞株におけるMRAの発現)
この実施例において、ヒト卵巣癌細胞株由来のcDNAライブラリー中のMR
Aコード核酸配列の検出が記載される。RNAは、培養された3997個の卵巣
癌細胞(上記のように生成され、例えばHellstromら、1990 Ca
ncer Res.50:2183を参照のこと)から抽出され、そして製造業
者の指示に従って、MarathonTMcDNA増幅キット(Clontech
、Palo Alto、CA)を使用して逆転写によってcDNAライブラリー
を作製するために使用した。ライブラリーを、pCDNA3−Zeo(InVi
trogen,Inc.,Sandiego,CA)においてクローニングし、
そしてノーザンブロットへのオリゴヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーシ
ョンによってスクリーニングした。以下のオリゴヌクレオチドは、実施例9に記
載されたMRA82ヌクレオチド挿入物の領域に対応して合成される:
i35:5’−CCAGGGCTGGGGGCAGAGCTGGGGGGGC
GTGGAGGTG−3’(配列番号12)。
【0148】
32P]用いたi35の末端標識を、供給業者の指示に従って、Primer
Extension System(Promega、Madison、WI
)を使用して行い、標識オリゴヌクレオチドを使用して、周知の手順に従って、
種々のヒト組織(MTNTMMutitple Tissue Northern
Blot、Cat.No.7760−1、Clontech、Palo Al
to、CA)からの電気泳動的に分離されたRNAサンプルを含むノーザンブロ
ットを調査した。スクリーニングアッセイによって同定された個々のクローンを
選択し、増幅し、そして実施例10に記載されるように配列決定し、卵巣癌細胞
株からのMRA配列を決定する。
【0149】
上記から、本発明の特定の実施形態が本明細書中に例示の目的のために記載さ
れたが、種々の改変が本発明の精神および範囲から逸脱することなしになされ得
ることが理解される。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲による以外制限
されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【公開番号】特開2011−206062(P2011−206062A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−162531(P2011−162531)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【分割の表示】特願2000−601444(P2000−601444)の分割
【原出願日】平成12年2月25日(2000.2.25)
【出願人】(501199036)パシフィック ノースウエスト リサーチ インスティテュート (4)
【Fターム(参考)】