癌マーカーおよび治療ターゲット
ケモカイン受容体CCR4並びにそのリガンドCCL17およびCCL22を、癌の特定および/または癌の段階分けのマーカーとして使用する。CCR4、CCL17およびCCL22のレベルが、悪性腫瘍の進行中に増加するのが見られた。CCR4、CCL17およびCCL22を、抗癌剤での治療の適合性に従って、癌患者の段階分けのマーカーとして使用する。診断特徴の情報は、患者のサンプル中に存在するCCR4、CCL17およびCCL22の1又は複数のレベルを測定することによって得られる。CCR4、CCL17およびCCL22の活性を調節する物質による癌患者の治療方法。CCR4、CCL17およびCCL22の生物活性を調節する物質をスクリーニングする方法は、抗癌剤をもたらす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍学に関し、癌の診断、層化、疾患の段階分けおよび治療方法に関する。従って、本発明の技術分野は、癌の診断及び治療における予測値又は臨床値のマーカー並びに癌の治療のための薬物の使用に関する。また、本発明は活性のある抗癌剤を同定するスクリーニングアッセイに関する。
【背景技術】
【0002】
ケモカイン受容体およびそれらのリガンドは、正常組織の恒常性および疾患における細胞の輸送をもたらし、細胞の運動、侵襲性および生存に影響を与える(参考文献1)。炎症および癌において、病変組織におけるケモカインは血管から内皮細胞基底膜を介して、柔組織への白血球のローリング、繋留および浸潤をもたらす(参考文献2)。
【0003】
CCR4は、18の周知のケモカイン受容体のうちの1つである。概して、ケモカイン受容体は、免疫細胞および腫瘍微小環境において発現し、多くの受容体及びそれらのリガンドが免疫細胞浸潤物中に存在する。
【0004】
多くの癌において、悪性細胞も、特定のケモカイン受容体を発現し、通常、それらの正常な対応細胞では見られない受容体である。転移性癌細胞は、ケモカイン受容体発現白血球の特徴を得ていると考えられ、ケモカインを用いて、元の腫瘍と離れた部位への遊走、該部位での生存を支援する(参考文献3、4、5)。通常、非常に制限された発現パターンを有するケモカイン受容体の癌細胞上の不適切な存在が、特定のケモカイン受容体が異なる転移部位への細胞の拡散及び/または該転移部位における細胞の生存を助ける可能性があるという仮説を支えている(参考文献8)。癌腫、黒色腫および血液系腫瘍血液系腫瘍において、進行した疾患の悪性細胞上でのケモカイン受容体、特にCXCR4およびCCR7の発現は、リンパ節転移の増加、疾患の蔓延の拡大、無病生存率の低下および/または全体の生存と相関する(参考文献6、7、8)。通常、CXCR5はB細胞およびいくつかのT細胞のサブタイプに限定されているが、膵臓癌細胞によっても発現され、肝臓転移の確立に関与している場合には、肝臓が、CXCR5リガンド、CXCL13の生産の場所である(参考文献9)。腸に転移した黒色腫細胞は、CCR9を発現している(参考文献10)。恒常性機能において、CCR9リガンドであるCCL25は、腸にまれなT細胞サブセットを補充する。膵臓癌において、CCR6の発現が見られた(参考文献11)、(参考文献12)。また、CCR6の発現は、CCR3およびCXCR2ともに、ヒトの腎癌でも報告された(参考文献13)。
【0005】
これは、CXCR4を含むいくつかのケモカイン受容体が発癌の後期における腫瘍上皮細胞において上方制御されていることを示し、浸潤と転移の役割を務めていると考えられる。対照的に、CCR4は、いくつかの血液癌、特にT細胞リンパ腫において上方制御されていることが以前報告されている。
【0006】
上述の通り、CXCR4は、多くの進行したヒト癌の悪性細胞においてよく見出されている。さらに、Woernerらは、CXCR4が、グリア芽腫の疾患の初期段階にも存在することを発見した(参考文献14)。しかしながら、リン酸特異的な抗CXCR4抗体を用いて、彼らは、あまり悪性でないグレード1の病変において、受容体の活性化のレベルは非常に低かったことを発見した。
【0007】
概して、悪性細胞のケモカイン受容体の発現は進行した疾患と関連していることが報告されているにもかかわらず、癌の初期及び前浸潤の段階において悪性細胞上でケモカイン受容体が発現するという本技術分野における少数の他の報告もあり、これらすべてはCXCR4に関する。乳癌の大きな組織のアレイの研究(2000以上のサンプル)において、CXCR4発現の細胞質/膜の発現は、非浸潤性乳管癌(DCIS)の67%において報告された(参考文献15)。これは、CXCR4およびそのリガンドCXCL12の両方がDCISで発現していることを示したSchmidらの研究において確認された、(参考文献16)。本発明者らも、境界線上の非浸潤卵巣癌腫瘍の上皮細胞上でCXCR4を発見し、(Kulbeら、投稿準備中)、これは、Pilsらよっても報告されている(参考文献17)。
【0008】
早期癌の上皮細胞において、他のケモカイン受容体の発現に関するデータは入手できなかったが、発癌経路が上皮細胞上のケモカイン受容体発現を誘導できるという証拠がある。RET/PTC1癌遺伝子は、主要な甲状腺細胞の悪性形質転換に必要なものであり、充分なものである(参考文献18)。この癌遺伝子は、機能的なCXCR4の誘導を含む甲状腺細胞における炎症促進性のプログラムを誘導する。胞巣状横紋筋肉腫は、反復性PAX3およびPAX7−FKHR遺伝子融合によって特徴づけられる非常に侵襲性の腫瘍である。PAX3−FKHRの胎児性横紋筋肉腫細胞への移行も、CXCR4発現(Libura、2002#9346)を活性させる。
【0009】
これらすべての研究において、結論は、悪性細胞による特定のケモカイン受容体の獲得は、悪性進行において比較的遅い事象であるのように思われるということであり、CCR4の場合、発現は、固形腫瘍の進行のいかなる段階でも報告されなかった。
【0010】
概して、CCR4発現は、免疫系に制限され、Th2および制御性T細胞のマーカーとして知られている。腫瘍環境において、細胞障害性T細胞および樹状細胞成熟を抑制するようにこの細胞は作用し、それ故に抗腫瘍免疫反応を抑制する。さらに、CCR4は、高い比率の成人性T細胞リンパ腫(ATL)を含む血液系腫瘍において発現していることが示され、皮膚への転移と関連した重要な予後因子であった(参考文献19)、(参考文献20)。このように、CCR4はATLの治療ターゲットとして関心があるものである(参考文献21)、(参考文献22)。成人性T細胞白血病によるCCR4の発現は、皮膚転移と関連しており、そのリガンドであるCCL17およびCCL22は、悪性細胞および皮膚腫瘍微小環境の両方によって産生される(参考文献23)。Ishidaらは、腫瘍細胞に対してADCC活性を誘導し、この疾患において見られる免疫抑制悪性Treg細胞に作用することもできる成人性T細胞リンパ腫の治療のための治療上の抗CCR4モノクローナル抗体を開発した(参考文献24)。
【0011】
CCR4陽性固形腫瘍細胞系の学術研究文献での唯一の報告は、ヒトの肺癌細胞株SBC−5である(参考文献34)。これらの細胞は、CCL22勾配に対して遊走し、骨転移のSBC−5の異種移植片において、CCL22を発現している破骨細胞およびCCR4を発現しているSBC−5細胞の近い共局在があった。主要なヒト腫瘍細胞におけるCCR4発現の報告は全くない。
【0012】
特許文献1は、特に哺乳類における心血管障害、胃腸および肝疾患、炎症性疾患、代謝性疾患、血液疾患、癌疾患、神経疾患、呼吸器病及び再生障害からなる広範囲にわたる疾患の治療への使用の可能性のある薬剤のスクリーニング方法を開示する。スクリーニング法は、CCR4への候補となる薬剤の結合の程度又は他のものを決定する。また、ハウスキーピング遺伝子の発現と比較したCCR4の発現レベルについての広範囲にわたるヒト細胞および組織のスクリーニング方法の説明もある。細胞および組織は、異なる供給源から得られ、単離された少数のものは、癌細胞/組織;例えば、甲状腺、回腸、HeLa、Jurkat、肺および乳癌細胞であった。CCR4の相対的な発現についての結果は、いかなる特定の疾患と関連した識別可能なパターンをまったく示さなかった。実際、試験された腫瘍細胞、例えば甲状腺および回腸の間では、CCR4の相対的な発現レベルが低く、他の非腫瘍細胞はCCR4のより高い相対的な発現レベルを示した。
【0013】
特許文献2は、Monocyte Chemotactic Protein−1(MCP−I/CCL2)、マクロファージ炎症性タンパク質Iα(MIPIα)および/または「RANTES」(Regulated upon Activation, Normal T−cell Expressed and Secreted/CCL5)に結合できるケモカイン受容体を開示する。CCR4のヌクレオチドおよびアミノ酸配列が開示された(CC−CKR−4/K5.5.K5.5およびCC−CKR4はCCR4の別の名前である)。CCR4の発現が、正常なヒト組織の比較的限られた範囲およびT細胞サンプルの範囲において発見された。Tリンパ球を活性することができるか、あるいはリガンドであるMCP−I、MIP−Iαおよび/またはRANTESのケモカイン受容体への結合を阻害することができる薬剤についてのスクリーニングアッセイの一般的な開示がある。スクリーニングによって得られた活性薬剤は、例えば、アレルギーの治療に役立つ可能性があるということがいくらか示唆されている。
【0014】
特許文献3は、CCR4の調節物質の投与による全身性のメモリーT細胞の輸送の調節を提案している。これは、炎症性皮膚疾患の治療として意図されている。CCR4のそのリガンドへの結合を調節することができる物質が、T細胞遊走にどのような影響を与えるかを示す試験管内での(in vitro)試験に用いられた。
【0015】
CCR4に対して反応する抗体が知られている。特許文献4は、特にCCR4の細胞外ドメインと反応性があると言われている組換え体抗体またはその断片を開示する。そのような抗体のポリペプチド配列も開示されている。CCR4陽性細胞と反応し、細胞障害性を有するか、または抗体依存性細胞介在性細胞障害(ADCC)の原因となる抗体も開示されている。これらの抗体は、Th2によって仲介される免疫疾患、または血液癌、特に白血病の治療への使用のために提案されている。
【0016】
特許文献5は、CCR4に特異的に結合することが可能な抗体を開示し、Fc領域におけるN結合型糖鎖複合体を有するCCR4抗体も開示する。CCR4の細胞外ドメインに対する抗体も開示されている。
【0017】
特許文献6は、「ヒトCDRを移植した抗体および断片」を開示する。CCR4に特異的に結合する特定のCDR(相補性決定領域;complementarity determining region)を開示する。抗体は、Th2によって仲介される免疫疾患または血液癌などの癌診断または治療への使用のために提案されている。
【0018】
特許文献7は、CCR4に特異的に結合する組換え抗体を少なくとも一種の他の薬剤と組み合わせて含む薬物を開示する。抗体は、腫瘍、特に造血臓器腫瘍の治療のために提案されている。
【0019】
特許文献8は、CCR4に対する抗体および該抗体の結合と競合することができる抗体を開示する。特定の診断の応用は開示されていない。炎症性障害の治療が提案されている。
【0020】
また、本技術分野において、CCR4受容体に結合する種々の小分子が知られている。
【0021】
特許文献9は、抗CCR4活性を有する小分子の三環系化合物を開示する。
【0022】
特許文献10は、抗CCR4活性を有する小分子の窒素含有複素環化合物を開示する。
【0023】
特許文献11は、CCR4阻害活性を有する特定の化合物を開示する。
【0024】
特許文献12)は、様々なCCR4結合化合物および癌を除く様々な疾患の治療への使用方法を開示する。
【0025】
特許文献13は、CCR4の拮抗剤である化合物を開示する。本出願は、炎症性疾患およびその状況の治療への使用方法を開示する。
【0026】
特許文献14は、CCR4調節因子としてキナゾリン誘導体を開示する。
【0027】
特許文献15は、CCR4調節因子としてピリミジン誘導体を開示する。
【0028】
特許文献16は、CCR4機能制御物質として融合二環式ピリミジン誘導体を開示する。
【0029】
特許文献17は、ケモカイン(特にCCR4)受容体活性を調節するスルホンアミド化合物を開示する。
【0030】
特許文献18は、ケモカイン(特にCCR4)受容体活性を調節するスルホンアミド化合物を開示する。
【0031】
特許文献19は、本技術分野における他の技術、ケモカイン受容体(CCR4を含む)とウイルスとの相互作用を調節することによって細胞のウイルス感染を調節する方法を開示する。
【0032】
特許文献20は、特定のケモカインおよびケモカイン受容体に対する抗体、並びに癌細胞の増殖および転移を阻害するのにそれらを使用する方法を開示する。抗体は、CCR4を除く特定のケモカイン受容体およびそのリガンドに対して産生されたものである。また、腫瘍において特定のケモカインが過剰発現しているかどうか試験する方法も記載され、そのような腫瘍を、過剰発現したケモカインまたはケモカイン受容体に対する抗体を投与することによって治療できることが示唆されている。
【0033】
特許文献21は、「マクロファージ由来のケモカイン(Macrophage Derived Chemokine)(MDC)と名付けたマクロファージ由来C−Cケモカインのヌクレオチド配列およびポリペプチド配列を開示する。MDCはCCL22と同義のものと見られる。TARCはCCL17と同義のものと見られる。MDCタンパク質またはポリペプチド断片の組換えまたは合成による製造方法が記載されている。また、MDCとの反応性を有する抗体に加えて、MDCおよびTARCケモカイン活性の調節因子を同定するアッセイも開示されている。
【0034】
子宮頸癌は、世界で女性に二番目に多く見られる癌である。癌が後期になるまで、多くの場合、症状がなく、それ故、組織病理学で前悪性の変化を検出することが可能なパップスメアを使用する強度の集団スクリーニングの対象である。異常なパップスメアは子宮頸部新形成の可能性を示すが、診断に不十分であり、その後、生体組織検査および付加的な侵襲的手法(「コルポスコピー」)が実行される。英国では全体で、24,000人の女性が、毎年異常なパップスメアを受ける。パップスメアは70%の感度しかないので、子宮頸癌又は前浸潤の病変を有するかなりの割合の女性が、診断されないままである。従って、i)スクリーニングをより自動化し、あまり主観的でないようにし、ii)スクリーニングの感度を改善するのに、より正確なスクリーニング方法が必要とされている。
【0035】
HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染が、大多数の浸潤性子宮頸癌で見られ、1つの方策は、パップスメアと合わせて、E6およびE7等のHPVマーカーが存在するかどうかスクリーニングすることである。しかしながら、性的に活発な集団のHPV感染が高水準であるため(最高80%までの感染歴)、これも、多数の偽陽性を同定するという結果となり、試験の精度をHPV有病率に依存するようにするものである。このように、子宮頸癌の新規バイオマーカーを同定することは、積極的に関心が持たれ続けている。
【0036】
さらに、新規のまたは代わりのバイオマーカーが、他の型の癌に必要とされており、該癌としては、以下の癌タイプ:気管支、鼻咽頭、喉頭、小細胞および非小細胞の肺、皮膚(例えば、黒色腫または基底細胞癌)、脳、膵臓、首、肺、腎臓、肝臓、乳房、結腸、膀胱、食道、胃、子宮頸部、卵巣、生殖細胞および前立腺が挙げられるが、これらに限定されない。ある癌のタイプに特有なバイオマーカーは、他の癌のタイプと共有されている可能性があり、それ故に、バイオマーカーの使用が、関連すると見られていた元の癌のタイプを越えて広がる可能性がある。
【0037】
抗癌治療法を必要とする患者の層形成を可能にする、ある範囲の癌についての改良されたバイオマーカーが必要とされている。
【0038】
癌の段階は、癌がどの程度広がったかという記述子(通常I〜IVの数)である。段階は、多くの場合、腫瘍のサイズ、どの程度深く浸透しているか、隣接した器官に侵入しているかどうか、リンパ節に転移しているかどうか、どれくらいのリンパ節に転移しているか、遠くの器官まで広がっているかどうかを考慮しているものである。癌の段階分けは、診断における段階が生存の最も強力な予測手段であり、治療を、段階に基づいて多くの場合変えるので重要である。
【0039】
治療は疾患段階に直接関連しているので、正しい段階分けは重要である。従って、誤った段階分けは、不適切な治療をもたらし、患者の生存能力の実質的に減少させる。しかしながら、正しい段階分けを達成するのは困難である。病理学者が組織切片を調べる病理学的な段階分けは、特に二つの特有の理由、すなわち視覚での判断および組織のランダムなサンプリングである問題になり得る。「視覚の判断力」とは、スライド上で健康的な細胞と混在した単一の癌細胞を識別することが可能であることである。1個の細胞の見落としは、誤った段階分けを意味し、深刻かつ予期せぬ癌の広がりをもたらす。「組織のランダムなサンプリング」とは、サンプルがランダムに患者のリンパ節から選ばれ、調べられることを指す。リンパ節に存在する癌細胞が、見ていた組織のスライスに偶然存在しない場合、誤った段階分けおよび不適切な治療が起こり得る。
【0040】
既存している抗癌剤を投与する改善した方法を伴うか、または効果的な新規抗癌剤を特定し、試験し、検証することを伴う癌に対する新しい治療が引き続き必要である。存在する有効性を観測する改良された方法および所与の治療措置の過程におけるいずれの新規抗癌剤も引き続き必要である。予測値のデータを生成する改良された方法も必要である。抗癌剤を使用する治療の投与量および頻度は、重要要因である。また、癌の進行段階または患者のグループと関連した抗癌治療を始めるタイミングも重要な要因である。改善された観測方法は、個体として、または遺伝子の、表現型の、もしくは他の特徴によってグループに分けての患者の最適な治療を求めるために必要である。
【0041】
患者の治療の選択におけるバイオマーカーの予後機能の例は、抗癌剤ハーセプチン(トラスツズマブ)の使用である。HER2/neu遺伝子は、ヒト染色体17の長腕(17ql1.2−ql2)に位置するプロトオンコジーンであり、HER2/neuの増幅は、初期乳癌の25−30%で起こる。癌において、HER2/neuからの成長を促進するシグナルは、恒常的に伝達され、細胞の浸潤、生存および脈管形成を促進する。さらに、過剰発現は、癌治療に対する治療上の抵抗性も与える。ハーセプチン(トラスツズマブ)は、受容体HER2/neu(別名ErbB−2)の細胞外セグメントに結合するヒト化モノクローナル抗体であり、HER2/neu受容体が過剰発現する乳癌を治療することにのみ効果的である。予後の役割に加えて患者のハーセプチンへの反応を予測する能力のために、乳房の腫瘍を、免疫組織化学(IHC)、発色性および蛍光のin situハイブリッド形成法(それぞれCISHおよびFISH)を含む種々の技術によって、HER2/neuの過剰発現について定期的にチェックする。
【0042】
また、癌の診断/段階分けの正確かつ信頼の高い方法も必要とされており、抗癌剤をスクリーニングする新規の方法も必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0043】
【特許文献1】国際公開第05106471号パンフレット
【特許文献2】国際公開第9623968号パンフレット
【特許文献3】国際公開第041724A1号パンフレット
【特許文献4】国際公開第0164754号パンフレット
【特許文献5】国際公開第05035582号パンフレット
【特許文献6】国際公開第03018635号パンフレット
【特許文献7】国際公開第05053741号パンフレット
【特許文献8】国際公開第0042074号パンフレット
【特許文献9】国際公開第04007472号パンフレット
【特許文献10】国際公開第05023771号パンフレット
【特許文献11】国際公開第02094264号パンフレット
【特許文献12】国際公開第0230358号パンフレット
【特許文献13】国際公開第0230357号パンフレット
【特許文献14】国際公開第051236976号パンフレット
【特許文献15】国際公開第05085212号パンフレット
【特許文献16】国際公開第05082865号パンフレット
【特許文献17】国際公開第04108717号パンフレット
【特許文献18】欧州特許1633729号明細書
【特許文献19】国際公開第03014153号パンフレット
【特許文献20】国際公開第2004/045526号パンフレット
【特許文献21】国際公開第99/15666号パンフレット
【発明の概要】
【0044】
本発明者らは、驚くべきことに、特定の固形腫瘍ではケモカイン受容体CCR4の発現は、発癌における初期の事象であることを発見した。その上、本発明者らは、腫瘍進行中にCCR4の2つのリガンドであるCCL17およびCCL22の発現が増加することを発見した。
【0045】
本発明は、固形腫瘍サンプル中の、または患者から採取された非血液学的な細胞腫瘍サンプル中の腫瘍細胞によって発現したケモカイン受容体CCR4の量および/または活性を測定するステップを含む癌患者の予測または診断の特徴の情報を得る方法を提供し、CCR4の量及び/又は活性は、予測または診断の特徴の情報を提供する。
【0046】
血液系腫瘍は、血球に由来し、免疫細胞を含む、そして、様々な種の白血病およびリンパ腫を含む。従って、本発明は、血液学的腫瘍に関してではない。
【0047】
本発明が関係している固形または非血液系腫瘍において、CCR4が腫瘍細胞によって発現されている。従って、本発明の方法は、患者の腫瘍細胞(または基準細胞)のサンプルによって発現し、実質的に免疫システムの細胞によってではなく発現したCCR4に関する。CCR4が、浸潤性の免疫細胞などの、望まれていない源由来のいずれの特許腫瘍サンプルにおいても生じる範囲で、本発明に従って測定されたCCR4の量および/または活性は、行われたいかなる測定において、有意でないか、または制御されているのいずれかである。
【0048】
好ましい実施態様において、CCR4活性の基準の量および/またはレベルを、1又は複数の非腫瘍サンプルにおいて測定することができる。少なくとも一つの非腫瘍サンプルを患者から採取してもよい。CCR4活性の基準の量および/またはレベルが患者の非腫瘍細胞から決定される場合、単一の非腫瘍組織のサンプルを患者から採取してもよい。必要に応じて、多数の非腫瘍サンプルが、同じ患者の異なる部位から採取される。従って、基準の量は、患者から採取されるいくつかのサンプルから決定される平均指数であってもよい。
【0049】
他の実施態様において、1又は複数の非腫瘍サンプルを、患者から任意選択的に採取しない。そのようなサンプルは、他の患者から採取され、培養された腫瘍細胞株を含んでもよい。
【0050】
情報を用いて、患者の固形腫瘍または非血液系細胞の腫瘍が、抗癌治療に対して感受性があるかどうかを予測してもよい。本発明の本態様は、好都合なことに、癌患者の層形成を可能にする。これによって、最適な抗癌治療または計画が所与の個々の患者について識別できる。
【0051】
好ましい実施態様において、患者が抗癌治療を受け、治療開始の前後において、患者の固形腫瘍サンプルまたは非血液系腫瘍サンプルにおけるCCR4の量および/または活性を測定してもよく、次に、得られた情報を用いて、患者の固形腫瘍または非血液系細胞腫瘍が抗癌治療に反応したかどうかを決定する。本発明の態様は、好都合なことに、癌患者を観測して、個々の治療が、どのように進行しているかを決定することを可能にする。治療計画の調整は、行われる経過進行に照らして行うことができる。
【0052】
情報を、固形腫瘍または非血液系細胞腫瘍の診断に使用してもよい。
【0053】
情報を用いて、固形腫瘍または非血液系細胞腫瘍を段階分けしてもよい。
【0054】
また、本発明は、患者から採取された固形腫瘍サンプルまたは非血液系細胞腫瘍サンプル中のCCR4のリガンドであるCCL17および/またはCCL22の量および/または活性を測定するステップを含む、腫瘍細胞がケモカイン受容体CCR4を発現している癌患者についての予測又は診断の特徴の情報を得る方法も提供し、CCL17および/またはCCL22の量および/または活性は、予測または診断の特徴の情報を提供する。
【0055】
予測または診断の特徴の情報を、固形腫瘍サンプルまたは非血液系細胞腫瘍サンプル中のCCL17および/またはCCL22の量および/または活性を、CCL17および/またはCCL22の活性の基準の量および/またはレベルと比較することによって得てもよい。
【0056】
CCL17および/またはCCL22の基準の量の活性および/またはレベルを、1又は複数の非腫瘍サンプルで測定してもよい。前記の本発明の形態のように、非腫瘍サンプルは、培養細胞株を含む患者または異なる患者もしくは源から採取してもよい。
【0057】
情報を用いて、患者の固形腫瘍または非血液系細胞腫瘍が、抗癌治療に対し感受性があるかどうかを予測してもよい。
【0058】
更なる任意の実施態様において、患者は抗癌治療を受け、治療開始の前後にCCL17および/またはCCL22の量および/または活性の測定を行い、得られた情報を用いて、患者の固形腫瘍または非血液系細胞腫瘍が抗癌治療に反応したかどうかを決定する。
【0059】
本発明のすべての態様において、特定の抗癌治療は、CCR4の発現又は活性を調節するか、または阻害する物質を含んでもよい。
【0060】
また、本発明は、癌患者における固形腫瘍または非血液系腫瘍によって発現したCCR4の存在を検出するか、または量を測定するためにケモカイン受容体CCR4に対して反応性を有する抗体を使用する方法も提供し、検出または測定した際の腫瘍によって発現したCCR4の存在又は量は、診断の特徴の情報を提供する。
【0061】
本発明は、更に、固形腫瘍または非血液系腫瘍の細胞によるCCR4の発現の量を検出するか、または測定するために、配列番号1の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるオリゴヌクレオチドプライマーまたはプローブを使用する方法を提供し、検出したか、又は測定した際の腫瘍によって発現したCCR4の存在または量は、診断の特徴の情報を提供する。
【0062】
上述した情報の使用方法は、本発明の方法の態様に関連して以上に定義されている。
【0063】
配列番号1の核酸は、特定の配列に限定されないが、まだ生物学的に活性のあるCCR4タンパク質をコードするバリアントを含む。そのようなバリアントとしては、配列番号1と少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列が挙げられる。他のバリアントは、少なくとも95%、任意選択的に少なくとも90%の同一性を有する。配列番号1と少なくとも65%〜少なくとも99%の同一性の範囲が本願明細書において開示される。
【0064】
種々のストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件は、本技術分野における当業者によく知られている。二つの相補的な核酸分子が、互いへのある程度の水素結合を受ける際に核酸分子のハイブリダイゼーションが起こる。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、核酸の周囲の環境条件、ハイブリダイゼーション法の性質、並びに使用した核酸分子の組成および長さによって変化させることができる。ストリンジェンシーの特定の程度を達成するのに必要とされるハイブリダイゼーションの条件についての算出は、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 2001)及びTijssen, Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology - Hybridization with Nucleic Acid Probes Part I5 Chapter 2 (Elsevier, New York, 1993)で述べられている。Tmは、核酸分子の所与の鎖の50%がその相補鎖にハイブリダイズする温度である。以下は、典型的なハイブリダイゼーションの条件の組であるが、これらに制限されない:
【0065】
非常に高いストリンジェンシー条件(少なくとも90%の同一性を共有する配列がハイブリダイズすることを可能にする)
ハイブリダイゼーション:65度で16時間、5×SSC
二回洗浄:それぞれ室温(RT)で15分、2×SSC
二回洗浄:それぞれ65度で20分、0.5×SSC
【0066】
高いストリンジェンシー(少なくとも80%の同一性を共有する配列がハイブリダイズすることを可能にする)
ハイブリダイゼーション:65℃〜70℃で16〜20時間、5×〜6×SSC
二回洗浄:それぞれ室温で5〜20分、2×SSC
二回洗浄:それぞれ55℃〜70℃で30分、1×SSC
【0067】
低いストリンジェンシー(少なくとも50%の同一性を共有する配列がハイブリダイズすることを可能にする)
ハイブリダイゼーション:室温(RT)〜55℃で16〜20時間、6×SSC
少なくとも二回洗浄:それぞれ室温(RT)〜55℃で20〜30分、2×〜3×SSC
【0068】
本発明は、CCR4の発現または活性を調節するか、または阻害する物質の有効量を投与することを含む、CCR4を発現する固形腫瘍または非血液系腫瘍を有する癌患者を治療する方法を含む。
【0069】
物質を、医薬製剤の形態で投与してもよい。適切な製剤は、殺菌した水溶液または非水溶液、懸濁液、およびエマルジョンを含む。組成物は、さらに、本技術分野において既知の助剤または賦形剤を含んでもよく、例えば、Berkow et al., The Merck Manual, 16th edition Merck & Co., Rahman, NJ (1992), Avery's Drug_Treatment: Principles and Practice of Clinical Pharmacology and Therapeutics, 3rd edition, ADIS Press, Ltd., Williams and Wilkins, Baltimore, MD (1987) & Osol (ed.), Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, PA 1324-1341 (1980)を参照されたい。本発明に従って投与される医薬組成物は、好ましくは、個々の用量の形態で与えられる(単位用量)。
【0070】
更に、本発明の方法および使用方法で使用される組成物または薬物は、組成物の効力を高めるのに望ましい塩類、バッファーまたは他の物質を含んでもよい。本発明に従う組成物又は薬物の投与は、局所的でも、全身性でもよい。
【0071】
また、本発明は、固形腫瘍または非血液系腫瘍の治療または予防のためにケモカイン受容体CCR4を調節するか、または阻害する物質を使用することも含む。
【0072】
上述した本発明の方法及び使用方法の態様のすべてにおいて、CCR4の発現または活性を調節するか、または阻害する物質は、
(i)CCR4と結合する抗体;任意選択的に、国際公開第0041724号パンフレット、国際公開第0164754号パンフレット、国際公開第05035582号パンフレット、国際公開第05035582号パンフレット、国際公開第03018635号パンフレット、国際公開第05053741号パンフレット、国際公開第0042074号パンフレットのいずれにて開示されている抗CCR4抗体、または
(ii)CCR4リガンドであるCCL17およびCCL22に結合する抗体;任意選択的に、国際公開第99/15666号パンフレットまたはIshida, T., et al (2004) Clin Cancer Res 10:7529−7539に開示されている抗CCL17または抗CCL22抗体。
(iii)CCR4拮抗剤;任意選択的に、国際公開第04007472号パンフレット、国際公開第05023771号パンフレット、国際公開第02094264号パンフレット、国際公開第0230358号パンフレット、国際公開第0230357号パンフレット、国際公開第05123697号パンフレット6、国際公開第05085212号パンフレット、国際公開第05082865号パンフレット、国際公開第04108717号パンフレット、欧州特許第1633729号、国際公開第03014153号パンフレットに開示されているCCR4拮抗剤
である。
【0073】
活性物質の適切な組成物および製剤は、上述した刊行物に記載されているものを含む。
【0074】
本発明は、更に、患者由来の固形腫瘍または非血液系腫瘍のサンプルから癌患者の予測又は診断の特徴の情報を得るためのキットを提供し、該キットは、CCR4との反応性を有する抗体、CCL17との反応性を有する抗体、CCL22との反応性を有する抗体、およびストリンジェントな条件下で配列番号1とハイブリダイズできるオリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーから選択された少なくとも一つの試薬と、キットの使用者が、サンプル中のCCR4、CCL17およびCCL22の1又は複数の量および/または活性を測定するために、患者由来の固形腫瘍または非血液系腫瘍のサンプルに、試薬を投与するように導く表示とを含む。
【0075】
特定の実施態様では、キットは、1又は複数の非腫瘍細胞の基準のサンプルを含み、表示は一組の説明書であり、キットの使用者が患者のサンプルおよび基準のサンプルの両方におけるCCR4、CCL17およびCCL22の1又は複数の量および/または活性のレベルを測定するように導く。基準のサンプルは、培養された腫瘍細胞または細胞抽出物を含んでもよい。
【0076】
他の実施態様において、表示は、一組の説明書であり、CCR4、CCL17、およびCCL22の1又は複数の基準の量および/または活性のレベルについての基準値を含む。好ましくは、基準値は、癌の状態であるか否かにかかわらず選択された個人または患者由来の非腫瘍サンプル中のCCR4、CCL17、またはCCL22の量および/または活性を測定することによって行われる先の作業によって得られる。そのような先の測定は、培養した非腫瘍ヒト細胞株で行ってもよい。
【0077】
また、本発明は、
i)CCR4を発現し、(a)増殖、(b)遊走、(c)タンパク質もしくはシグナル伝達分子の分泌、または(d)特定の条件下で培養した際の細胞生存性から選択された生物活性を示すことができるか、又は該生物活性を示す最中にある試験細胞を用意するステップと、
ii)一定期間、試験細胞を候補物質に曝すステップと、
iii)試験細胞の生物活性を測定し、それによって、候補物質の非存在下での当該試験細胞の生物活性がないこと又は予測された活性より少ない活性によって、抗癌剤を特定するステップとを含む、
ケモカイン受容体CCR4を発現する固形腫瘍または非血液系腫瘍対して活性を有する抗癌剤をスクリーニングする方法も含む。
【0078】
好適な方法において、試験細胞のコントロールの一定分量を候補物質に曝さず、予想された生物活性を決定するように、コントロール細胞の生物活性を測定する。
【0079】
試験細胞およびいずれのコントロール細胞の生物活性を、CCR4受容体のリガンド、好ましくはCCL17および/またはCCL22の添加によって誘導してもよい。
【0080】
すべての本発明の態様において、固形腫瘍または非血液系腫瘍は、子宮頸部、食道、腎臓、脳、乳房、卵巣、前立腺、胃、または膵臓の癌から選択された癌であってもよい。本発明は、子宮頸部、食道、腎臓、脳、乳房および卵巣の癌に関して、特定の利益を有してもよい。
【0081】
従って、本発明は、患者の腫瘍細胞のサンプル中のCCR4の量または活性を決定することを含む、癌患者が、CCR4発現および/またはCCR4活性を調節する物質による治療に適しているかどうかを決定する方法を提供する。
【0082】
更に、本発明は、患者の腫瘍細胞のサンプル中のCCL17および/またはCCL22の量または活性を決定することを含む、癌患者が、CCL17および/またはCCL22のレベルまたは活性を調節する物質による治療に適しているかどうかを決定する方法を提供する。
【0083】
従って、本発明は、本願明細書において開示される物質を含むCCR4、CCL17および/またはCCL22を調節するか、または阻害する物質による治療への適切性に従って癌患者を層形成するために、CCR4、CCL17および/またはCCL22をバイオマーカーとして使用する方法を提供する。
【0084】
特定の治療薬による治療への癌患者の適切性は、いくつかは相互に関連している多数の要因によって支配されている。患者の年齢、性別、癌の段階、癌の種類、患者の遺伝子構造、食事または喫煙などの生活様式の要因が、所与の治療計画の可能性のある結果にすべて影響することがあり得る。層形成は、通常、グループ内に含まれる複数の患者又は個々の患者のグループについての臨床の結果の点からみて予測を行うことができるようにすることが可能な多数の選択したパラメータに基づいて患者を分類するために行われる。
【0085】
概して、患者の腫瘍サンプル中のCCR4、CCL17および/またはCCL22の1又は複数の増加したレベルまたは活性は、本願明細書において開示された抗癌剤による治療が有益である患者で示された。
【0086】
また、本発明は、患者由来の腫瘍細胞のサンプル中のCCR4の量または活性を決定することを含む、患者における抗癌治療の効率を観測する方法を含む。
【0087】
更に、本発明は、患者由来の腫瘍細胞のサンプル中のCCL17および/またはCCL22の量または活性を決定することを含む、患者における抗癌治療の効率を観測する方法を含む。
【0088】
上述した方法において、腫瘍細胞のサンプリングを、抗癌剤投与の前、その最中、および/またはその後に行ってもよい。
【0089】
また、本発明は、
(a)例えば、国際公開第0041724A1号パンフレット(LELAND STANFORD/LEUKOSITE)に開示されているCCR4調節物質、
(b)例えば、国際公開第0164754号パンフレット(協和発酵工業)、国際公開第05035582号パンフレット(協和発酵工業)、国際公開第03018635号パンフレット(協和発酵工業)、国際公開第05053741号パンフレット(協和発酵工業)もしくは国際公開第0042074号パンフレット(MILLENIUM PHARMACEUTICALS)に開示されている抗CCR4抗体、又は
(c)例えば、国際公開第04007472号パンフレット(小野薬品工業株式会社)、国際公開第05023771号パンフレット(小野薬品工業株式会社)、国際公開第02094264号パンフレット(TULARIK INC.)、国際公開第0230358号パンフレット(TULARTK/CHEMOCENTRYX)、国際公開第0230357号パンフレット(CHEMOCENTRYX)国際公開第051236976号パンフレット(アステラス製薬)国際公開第05082865号パンフレット(山之内製薬)、国際公開第04108717号パンフレット(アストラゼネカ社)、欧州特許第1633729号(アストラゼネカ社)もしくは国際公開第03014153号パンフレット(TOPIGEN PHARMACEUTIQUE INC.)に開示されているCCR4拮抗剤
から選択された物質の投与を含む、本願明細書に記載されている特定の固形腫瘍の予防または治療のための方法も提供する。
【0090】
従って、本発明は、患者由来の腫瘍細胞のサンプル中のCCR4、CCL17および/またはCCL22の活性及び/又は発現のレベルを決定することを含む、CCR4調節物質、抗CCR4抗体、CCR4拮抗剤による治療に感受性のある個体における固形腫瘍を診断する方法も提供する。基準値を考慮する標準化した基準に絶対的に基づくか、または(a)腫瘍/非腫瘍細胞の間の関係もしくは(b)長期にわたる腫瘍細胞の間の関係での相対的な(標準化した)基準に基づく活性および/または発現レベルの増加は、概して、本願明細書において開示する抗CCR4剤による治療に感受性がある腫瘍を示す。
【0091】
本発明は、固形腫瘍の診断または治療への診断の適切さの情報を提供する方法を含み、該方法は、癌と疑われる患者由来の細胞のサンプル中のCCR4、CCL17および/またはCCL22の量または活性を決定することを含む。
【0092】
また、本発明は、個人から得た腫瘍細胞のサンプル中のCCR4のケモカイン受容体またはそのリガンドCCL22もしくはCCL17の1又は複数のレベル決定することを含む、個人における癌を識別するか、または同定する方法を提供し、癌は、固形腫瘍である。
【0093】
好都合なことに、本発明の方法は、識別、または個人の癌の進行、または適切な治療の選択のために個人を層形成する方法で、特に固形腫瘍の、特に固形腫瘍、より詳細には、子宮頸部、食道の癌に加えて、気管支、鼻咽頭、喉頭、小細胞および非小細胞の肺、皮膚(例えば黒色腫または基底細胞癌)、脳、膵臓、首、肺、腎臓、肝臓、乳房、結腸、膀胱、食道、胃、子宮頸部、卵巣、生殖細胞および前立腺の癌からなる群から選択される癌を含む固形腫瘍に関連して、個人における癌を同定するか、もしくは段階分けするか、または適切な治療の選択について個人を層形成する信頼性が高く、より正確な方法を提供する。
【0094】
患者から得られたサンプルは、好ましくは生検サンプルである。生検は、検査のために細胞もしくは組織を除去することを含む医学的試験である。概して、組織を、病理学者による顕微鏡下で調べるか、および/またはタンパク質もしくはRNAレベルを評価するために本技術分野において周知の技術を用いて、化学的に分析してもよい。組織のより小さいサンプルを除去する場合、手法は、部分生検またはコア生検と呼ばれる。すべての塊または疑わしい部分を除去する場合、手法は摘出生検と呼ばれる。組織または流体のサンプルを針で除去する場合、手法は、針吸引生検と呼ばれている。
【0095】
別の実施態様において、サンプルは、本技術分野において周知の他の方法によって、患者から得てもよく、該サンプルとしては、血液、血清、尿、痰、腹水、腹腔内の流体および「スメア」試験によって採取される細胞のサンプルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
血液サンプルは、患者および必要な血液の量の必要性に適した、静脈穿刺によって(例えば、真空収集管または注射器によって)、カテーテル、カニューレ、または指穿刺もしくは踵穿刺によって採取される。血液サンプルを収集したら、保存のために、またはサンプルの分析によって得られるシグナルの精度および/または信頼性を最大にするために、分析の前に処理してもよい(例えば、クエン酸ナトリウム、EDTA、エチルアルコールまたはヘパリンによって)。
【0097】
処理方法(例えば遠心分離および/または濾過)を用いて、血液サンプルを独立して試験される画分に分離してもよい。例えば、血清サンプルは、空気との接触で全血サンプルを凝固させ、凝固した画を遠心分離で除去して、上清として血清を残すことによって得られる。
【0098】
尿サンプルは、好ましくは排尿またはカテーテル法によって集められる。
【0099】
痰サンプルは、咳および/または喀出によって、または気道に挿入した吸引管または針を用いてサンプルを抽出することによって、患者から収集することができる。好ましくは、痰サンプルは、汚染を回避するため、唾液との接触が最小となるべきである。
【0100】
スメア試験(例えば、パパニコロウ試験、パップスメアまたは子宮頚部スメア試験とも呼ばれる)を用いて、患者から細胞をサンプリングする。子宮頚部スメア試験の場合、細胞を、試験する組織の表面から、エールズベリー・スパーテル(Aylesbury spatula)、プラスチック・フロンデッド・「ブルーム」(plastic fronded‘broom')、または他の道具を用いて、収集し、除去する。
【0101】
患者から採取されたサンプルにおいて収集された細胞および/または液体を、直ちに処理してもよいか、または後の処理のための適切な貯蔵媒体に保存してもよい。例えば、子宮頚部スメア試験の場合、細胞は、多くの場合、エタノールを基とした貯蔵媒体において、後の処理および分析のために保存される。サンプル保存のために、またはサンプルの分析で得られるシグナルの精度および/または信頼性を最大にするために処理してもよい。処理方法(例えば遠心分離および/または濾過)を用いて、サンプルを独立して試験される画分に分離してもよい。
【0102】
先にまたは以下に定められるか、又は記載される本発明のすべての方法および使用方法において、癌は、固形腫瘍を引き起こすものである。また、癌は、好ましくは、気管支の、鼻咽頭の、喉頭の、小細胞および非小細胞の肺、皮膚(例えば黒色腫または基底細胞癌)、脳、膵臓の、首、肺、腎臓、肝臓、乳房、結腸、膀胱、食道、胃、子宮頸部、卵巣、生殖細胞および前立腺のものからなる群より選択されるものでもある。より好ましくは、癌は、子宮頸部、食道、腎臓、脳、乳房および卵巣の癌である。
【0103】
他の実施態様において、癌は、上皮性癌、好ましくは扁平上皮癌(SCC)または腺癌であってもよく、より好ましくは、子宮頸部、食道、腎臓、脳、乳房および卵巣の癌から選択されてもよい。
【0104】
好ましい実施態様において、腫瘍細胞によって生じるCCR4および/またはCCL17および/またはCCL22のレベルの増加によって、悪性癌または将来的に悪性となる癌が同定される。
【0105】
非腫瘍細胞で生じたCCR4および/またはCCL17および/またはCCL22の1又は複数のレベルを決定し、腫瘍および非腫瘍細胞におけるレベルを比較してもよい。
【0106】
好ましい実施態様において、CCR4単独のレベルを決定する。他の実施態様において、CCL17またはCCL22単独のレベルを決定する。
【0107】
腫瘍細胞におけるCCR4および/またはCCL17および/またはCCL22のレベルを、あらかじめ定められたレベルと比較してもよい。あらかじめ定められたレベルを、正常な非癌性の組織、初期段階の癌組織、データベースから得られるか、または利用可能な生体物質又はサンプルから直接得られたデータから得てもよい。
【0108】
CCR4および/またはCCL17および/またはCCL22のレベルを決定する様々な方法を、本発明の方法で使用することができる。好ましくは、CCR4および/またはCCL17および/またはCCL22のタンパク質レベルおよび/または活性を、サンプル中のCCR4および/またはCCL17および/またはCCL22の遺伝子産物の基準として使用してもよい。
【0109】
更なる好ましい実施態様において、CCR4および/またはCCL17および/またはCCL22のタンパク質レベルを、それぞれ、CCR4、CCL17およびCCL22に対して反応性を有する抗体、好ましくは、例えばモノクローナル抗体といった特異的な抗体を用いて測定する。
【0110】
特定のタンパク質の位置および量を、顕微鏡検査および組織学的な技術によって検出することができる。サンプル調製、本技術分野において周知の染色および探索を用いて、細胞構造を示すことができ、それと関連した特定のタンパク質を検出することができ、サンプル内でのその位置を見ることができる。
【0111】
組織化学的染色は、本技術分野において周知であり、細胞形態および/またはより特有の細胞構成成分を示すために用いられる。一般的に用いられる染色としては、ヘマトキシリン(核酸およびエルガストプラズムを染色する、青)およびエオシン(弾性繊維および細網繊維染色する、ピンク)が挙げられる。
【0112】
免疫組織化学は、特定のタンパク質に対する抗体を、サンプル中の前記タンパク質の検出のために用いる技術である。サンプルにおける抗原への抗体の結合を、多くの方法で検出できる。
【0113】
ほとんどの標準的な方法は、抗体に、色を変える反応を触媒する酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ)を抱合するものであり、したがって、適切な色素の基質を用いることで、光学顕微鏡下での抗原の位置が視覚化できる。この方法のバリエーションは、抗体が、適切なエネルギー源によって励起された際に、検出可能なシグナルを発するフルオロフォア(例えばFITC、ローダミン、Texas Red)に抱合している免疫蛍光法である。通常、これは、特定の波長の光である。免疫蛍光法は、異なる抗体に付いた多数のフルオロフォアを使用することによって、サンプル内の多数のターゲットの検出が可能となることから、好都合であり、特に、非常に感度が高く、多数のタンパク質間の相互作用も視覚化するために用いることができる共焦点レーザー走査顕微鏡に適している。
【0114】
多くの場合、特定の抗原の検出は、段階を増やし、間接的な方法によって行われる。試験される抗原に対して産生された非標識のまたは非抱合型の「一次」抗体を前記抗原を結合するのに使用する。次に、この「一次」抗体を、検出可能なマーカーに抱合し、一次抗体が産生された種の免疫グロブリンと反応するように産生された「二次」抗体によって検出してよい。
【0115】
抗体を使用するタンパク質レベルの測定は、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法、Enzyme−linked Immunosorbent Assay)、RIA(ラジオイムノアッセイ、Radioimmunoassay)、EMIT(競合的酵素免疫分析法、Enzyme Multiplied Immunoassay Technique)、タンパク質マイクロアレイ分析、フローサイトメトリー、ウェスタンブロッティング、ドットブロット、またはスロットブロッティングなどの技術を使用してもよく、好ましい方法は、定量的なものである。
【0116】
フローサイトメトリーは、流体の流れの中で浮遊している顕微鏡的な粒子を計数し、調べ、分別する技術である。それは、光学および/または電子の検出装置による単一の細胞の流れの物理的および/または化学的な特徴の同時の多数のパラメータの分析可能にするものである。
【0117】
蛍光標示式細胞分取(FACS)は、特殊化した種類のフローサイトメトリーである。それは、生物細胞の不均一な混合物を、特定の光散乱および各細胞の蛍光特徴に基づいて、一度に一つの細胞で2又は3以上の容器に分別する方法を提供する。FACSは、個々の細胞からの蛍光シグナルを迅速、客観的、および定量的な記録に加えて、特に興味のある細胞の物理的な分離をもたらすことから、有用な科学的な道具である。
【0118】
サンプル中の細胞集団は、通常不均一である。細胞間の違いを検出するために、組織化学技術に似た、化学的および免疫化学的技術を用いて、該細胞集団を処理する。抗原の免疫化学的検出を、FITC、Cy5およびGFPなどのフルオロフォアで標識した抗体を用いて行ってもよい。色素(DNA結合色素サイバーグリーンおよびDAPIなど)で細胞を染色することを用いて、サンプル内および間での細胞のサイズまたは細胞周期の段階などの違いを検出してもよい。これらの技術を組み合わせて使用することで、不均一なものの中の異なる細胞に、フローサイトメーターで識別可能である特定の蛍光プロファイルを与えることが可能となる。このようにして、特定の抗原を発現するか、または特定の光散乱プロファイルと関連した細胞を検出し、サンプル集団内のそれらの普及率を測定してもよい。
【0119】
別の方法として、CCR4および/またはCCL17および/またはCCL22のレベルを、サンプル中のCCR4および/またはCCL17および/またはCCL22の遺伝子産物のレベルの基準として、CCR4および/またはCCL17および/またはCCL22をコードするmRNAのレベルを測定することによって決定してもよい。
【0120】
更なる本発明の好ましい実施態様において、mRNAレベルを、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)方法、好ましくは、鋳型が逆転写酵素反応の産物であるqPCR方法(RT−qPCR)で測定する。
【0121】
好ましい実施態様において、サンプルからmRNAを抽出し、qPCRの前に逆転写してcDNAを生産する。
【0122】
他の好ましい実施態様において、CCR4および/またはCCL17および/またはCCL22の転写のレベルを、ヌクレアーゼ保護アッセイを用いて測定し、好ましくは、使用されるプローブが、CCR4および/またはCCL17および/またはCCL22に特異的である。
【0123】
本発明の他の好ましい実施態様において、mRNAレベルを、DNAマイクロアレイを用いて測定する。
【0124】
DNAマイクロアレイ(別名遺伝子もしくはゲノムのチップ、DNAチップまたは遺伝子アレイ)は、一般的に単一遺伝子を示し、化学的に適切なマトリックスへの共有結合によって固体の表面上に配置されている顕微鏡のDNAスポットの収集物である。DNAマイクロアレイを用いる質的または定量的な測定は、高いストリンジェントな条件下でのDNA−DNAまたはDNA−RNAのハイブリダイゼーションの選択的な性質を利用する。フルオロフォアに基づく検出を用いて、定量的な測定値が算出されるハイブリダイゼーションの程度を決定してもよい。
【0125】
好ましい実施態様において、癌は悪性癌である。別の方法として、癌は、将来悪性となる癌であってもよい。本発明の方法は、好都合なことに、患者における癌が進行した段階を同定することができ、それによって、治療の最も適切なコースの特定ができるようになる。
【0126】
本願明細書において先に記載したすべての従属的な態様を含む本発明の方法と一致するように、本発明は、癌の同定および/または段階分けのマーカーとして、CCR4受容体を使用する方法も提供する。CCR4受容体を、抗体で検出してもよく、例えばモノクローナル抗体といった、特異的な抗体が好ましい。
【0127】
同様に、本発明は、癌の同定および/または段階分けのマーカーとして、CCL17リガンドを使用する方法も提供する。CCL17のリガンドを、抗体で検出してもよく、例えばモノクローナル抗体といった、特異的な抗体が好ましい。
【0128】
本発明も、癌の同定および/または段階分けのマーカーとして、CCL22リガンドを使用する方法も提供する。CCL22リガンドを、抗体で検出してもよく、例えばモノクローナル抗体といった、特異的な抗体が好ましい。
【0129】
本発明は、癌を患っている個人を、CCR4および/またはCCL17および/また抗CCL22に対して反応性を有する抗体の有効量で処置することを含む、癌を患っている個人における悪性疾患を治療するか、または予防する方法を含む。したがって、本発明は、癌を患っている個人における癌の治療または予防のための薬物の製造のために、CCR4および/またはCCL17および/またはCCL22に対して反応性を有する抗体を使用する方法を提供する。
【0130】
本発明の更なる実施態様において、CCR4および/またはCCL17および/またはCCL22に対して反応性を有する抗体を、癌の治療または予防のための薬物製造に用いてもよい。
【0131】
好ましい実施態様において、薬物はCCR4に特異的な抗体を含み、モノクローナル抗体であってもよい。
【0132】
本発明の本態様の実施態様は、例えば、国際公開第0154754号パンフレット(協和発酵工業)、国際公開第05035582号パンフレット(協和発酵工業)、国際公開第03018635号パンフレット(協和発酵工業)、国際公開第05052741号パンフレット(協和発酵工業)または国際公開第0042074号パンフレット(MILLENIUM PHARMACEUTICALS)に開示されている抗体である。
【0133】
さらに好ましい実施態様において、薬物は、CCL17に特異的な抗体を含み、モノクローナル抗体であってもよい。
【0134】
さらに好ましい実施態様において、薬物は、CCL22に特異的な抗体を含み、モノクローナル抗体であってもよい。
【0135】
もう一つの実施態様において、薬物は、scFv、F(ab’)2、Fab、FvおよびFd断片からなる群から選択されるFabフラグメントまたはCDR3領域である抗体を含む。
【0136】
抗原結合性断片(Fab断片)は抗原に結合する抗体上の領域である。それは、重鎖および軽鎖の各々の1つの定常ドメインおよび1つの可変ドメインのから成る。これらのドメインは、モノマーのアミノ末端においてパラトープ、すなわち抗原結合部位を形成する。2つの可変ドメインは、それらの特異的な抗原上のエピトープを結合する。
【0137】
FcおよびFab断片を作り出すことができる。パパイン酵素を用いて、免疫グロブリンモノマーを2つのFab断片およびFc断片に切断することができる。ペプシン酵素がヒンジ領域の下で切断し、それ故に、F(ab’)2断片およびFc断片が形成される。重鎖および軽鎖の可変領域を融合して、単鎖可変断片(scFv)を形成することができ、該scFvは、Fabフラグメントの半分のサイズしかないが、親免疫グロブリンの元の特異性を保持する。
【0138】
相補性決定領域(CDR)は、抗原を補完する、抗原受容体(例えば免疫グロブリンおよびT細胞受容体)タンパク質の可変ドメインで見られる短いアミノ酸配列であり、したがって、特定の抗原のへの特異性を有する受容体をもたらすものである。免疫グロブリンおよびT細胞受容体と関連した大部分の配列の変化は、CDR領域で見られ、これらの領域は、時として超可変ドメインと称される。これらの中でも、CDR3は、VJ領域の組換えによってコードされる際に、最も大きな可変性を示す。
【0139】
別の実施態様では、薬物はヒト化抗体またはキメラ抗体である抗体を含む。
【0140】
ヒト化抗体またはキメラ抗体は、外来の抗原に対する免疫反応の臨床的な問題を回避するように組換えDNA技術を用いて合成されるある一種のモノクローナル抗体である。モノクローナル抗体を生産する標準的な手順によってマウス抗体が得られる。マウス抗体がヒト抗体と非常に類似しているにもかかわらず、十分で、ヒト免疫システムがマウス抗体を外来のものと認識するのに充分に違いがあるものであり、急速に循環から該抗体を除去し、全身の炎症効果を引き起こす。
【0141】
ヒト化抗体は、モノクローナルマウス抗体の結合部位をコードするDNAをヒト抗体産生DNAと合併することによって生産することができる。次に、哺乳類細胞の培養を用いて、このDNAを発現させ、純粋にマウスの変種と同程度の免疫原性ではないこれらの一部マウスで一部ヒトである抗体を生産する。
【0142】
細胞特有の抗原にのみ結合するモノクローナル抗体を改変してもよく、好ましくは、ターゲットの癌細胞に対して免疫応答を誘導する。そのようなモノクローナル抗体は、好ましくは毒素、放射性同位元素、サイトカインまたは他の活性を有する抱合体の送達について改変されている。
【0143】
抗体技術の他の態様において、Fab領域を用いて、標的抗原と抱合体またはエフェクターの細胞の両方に結合することができるように二重特異性抗体を設計することができる。また、すべての無傷の抗体は、そのFc領域を用いて細胞受容体は他のタンパク質に結合することができる。
【0144】
また、組換えモノクローナル抗体の生産は、レパートリークローニングまたはファージディスプレイ/イーストディスプレイと称される技術も含むことができる。これらは、マウスよりむしろウイルスまたはイーストを用いて抗体をつくることを伴う。これらの技術は、望ましい特異性を有する抗体を選択できる、わずかに異なるアミノ酸配列を有する抗体のライブラリを作成する免疫グロブリン遺伝子セグメントの急速なクローニングに依存する。このプロセスを用いて、抗体が抗原を認識する特異性を強化し、様々な環境条件における抗体の安定性を変え、抗体の治療効力を増やし、診断の適用における抗体の検出能力を調節することができる。
【0145】
本発明は、CCR4および/またはCCL17および/またはCCL22の小分子阻害剤の有効量で、癌を患っている個人を処置することを含む、癌を患っている個人における悪性疾患を治療するか、または予防する方法を含む。従って、本発明は、癌を患っている個人における治療または予防のための薬物の製造のために、CCR4および/またはCCL17および/またはCCL22の小分子阻害剤を使用する方法を提供する。
【0146】
本発明の本態様の実施態様は、例えば、国際公開第04007472号パンフレット(小野薬品工業株式会社)、国際公開第05023771号パンフレット(小野薬品工業株式会社)、国際公開第02094264号パンフレット(TULARIK INC.)、国際公開第0230358号パンフレット(TULARIK/CHEMOCENTRYX)、国際公開第0230357号パンフレット(CHEMOCENTRYX)、国際公開第05123697号パンフレット6(ASTELLAS PHARMA INC.)、国際公開第05085212号パンフレット(山之内製薬(株))、国際公開第05082865号パンフレット(山之内製薬(株))、国際公開第04108717号パンフレット(ASTRAZENECA AB)、欧州特許第1633729号(ASTRAZENECA AB)または国際公開第03014153号パンフレット(TOPIGEN PHARMACEUTIQUE INC.)に開示されている小分子阻害剤である。
【0147】
また、本発明は、CCR4および/またはCCL17および/またはCCL22の活性を調節する物質の有効量で癌を患っている個人を処置することを含む、癌を患っている個人における悪性疾患を治療するか、または予防する方法も含む。従って、本発明は、癌を患っている個人における癌の治療または予防のための薬物の製造のために、CCR4および/またはCCL17および/またはCCL22活性を調節する物質を使用する方法を提供する。
【0148】
本発明の本態様の実施態様は、例えば、国際公開第0041724号パンフレット(LELAND STANFORD/LEUKOSITE)に開示されている、CCR4を調節する物質である。
【0149】
好適な態様において、本発明の方法および使用方法は、好ましくは、気管支、鼻咽頭、喉頭、小細胞および非小細胞肺、皮膚(例えば黒色腫または基底細胞癌)、脳、膵臓、首、肺、腎臓、肝臓、乳房、結腸、膀胱、食道、胃、子宮頸部、卵巣、生殖細胞および前立腺の癌からなる群から選択される癌の治療のためのものである。より好ましくは、癌は、子宮頸部、食道、腎臓、脳、乳房および卵巣の癌である。
【0150】
特に好適な処置では、癌は、子宮頸癌、好ましくは扁平上皮癌(SCC)である。
【0151】
特に好適な処置では、癌は、食道癌、好ましくは食道扁平上皮癌である。
【0152】
別の態様において、本発明は、
a)CCR4受容体を発現し、増殖が可能であるか、または増殖中である試験細胞を用意するステップと、
b)一定期間、試験細胞を候補物質に曝すステップと、
c)試験細胞の増殖を測定し、それによって、試験細胞のいかなる増殖における減少によって、抗癌剤を特定するか、かつ/または試験細胞の増殖の増加または継続によって、弱いまたは不活性な抗癌剤を特定するステップ
とを含む、抗癌剤をスクリーニングする方法を提供する。
【0153】
他の態様において、本発明は、
a)CCR4受容体を発現し、増殖が可能であるか、または増殖中である試験細胞を具えるステップと、
b)前記細胞の少なくとも第一と第二の一定分量を具えるステップと、
c)前記第一の一定分量を候補物質に一定期間曝すステップと、
d)前記第二の一定分量を候補物質に一定期間曝さないステップと、
e)第一および第二の一定分量において、細胞の増殖の程度を測定し、それによって、第一の一定分量における細胞の増殖が、第二の一定分量における細胞と比較して、減少していることによって、抗癌剤を同定するか、かつ/または第二の一定分量と比較して第一の一定分量における細胞の増殖が増加するか、もしくは継続することによって、弱いまたは不活性な抗癌剤を特定するステップ
とを含む、抗癌剤をスクリーニングする方法を提供する。
【0154】
特定の好ましい実施態様において、好ましくは候補物質に曝す前に、試験細胞は、増殖するように誘導される。
【0155】
他の好ましい実施態様において、試験細胞は、CCR4受容体リガンドの添加によって増殖するように誘導される。
【0156】
別の態様において、本発明は、
a)CCR4を発現する試験細胞を具えるステップと、
b)一定期間試験細胞を候補物質に曝すステップと、
c)分泌されたタンパク質またはシグナル伝達分子のレベルを測定し、それによって、分泌されたタンパク質もしくはシグナル伝達分子のレベルの減少によって、抗癌剤を特定するか、かつ/または分泌されたタンパク質もしくはシグナル伝達分子のレベルが全く減少していないか、もしくは増加していることによって、弱いまたは不活性な抗癌剤を特定するステップ
とを含む、抗癌剤をスクリーニングする方法を提供する。
【0157】
他の態様において、本発明は、
a)CCR4を発現する試験細胞を具えるステップ、
b)前記細胞の少なくとも第一および第二の一定分量を具えるステップと、
c)一定期間、前記第一の一定分量を候補物質に曝すステップと、
d)一定期間、前記第二の一定分量を候補物質に曝さないステップと、
e)第一および第二の一定分量における試験細胞の分泌されたタンパク質またはシグナル伝達分子のレベルを測定し、それによって、第二の一定分量における細胞とを比較して、第一の一定分量における細胞による分泌されたタンパク質またはシグナル伝達分子のレベルが減少していることによって、抗癌剤を特定するか、かつ/または第二の一定分量における細胞とを比較して第一の一定分量における細胞からの分泌された分子またはシグナル伝達分子のレベルがまったく減少していないか、もしくは増加していることによって、弱いまたは不活性な抗癌剤を特定するステップ
とを含む、抗癌剤をスクリーニングする方法を提供する。
【0158】
好ましい実施態様では、分泌されたタンパク質またはシグナル伝達分子は、サイトカインまたはケモカインである。
【0159】
他の好ましい実施態様において、分泌されたタンパク質またはシグナル伝達分子のレベルを、試験細胞を候補物質に曝す前、曝している間、または曝した後のいかなる時点でも測定する。
【0160】
特定の好ましい実施態様において、好ましくは候補物質に曝す前に、試験細胞を、特定のタンパク質または他のシグナル伝達分子、好ましくはケモカインまたはサイトカインを分泌するように誘導する。
【0161】
他の好ましい実施態様において、試験細胞を、CCR4受容体のリガンドの添加によって、特定のタンパク質または他のシグナル伝達分子、好ましくはケモカインまたはサイトカインを分泌するように誘導する。
【0162】
別の態様において、本発明は、
a)CCR4受容体を発現し、遊走できるか、または遊走中である試験細胞を用意するステップ。
b)一定期間、試験細胞を候補物質に曝すステップと。
c)曝すのと同時にまたは曝した後に、細胞の遊走に適した条件を具え、曝した細胞のいかなる遊走をも測定し、曝した細胞における遊走が減少しているか、もしくは全くないことによって、抗癌剤を特定するか、かつ/または試験細胞の遊走が増加しているか、もしくは継続していることによって、弱いまたは不活性な抗癌剤を特定するステップ、
とを含む、抗癌剤をスクリーニングする方法を提供する。
【0163】
抗癌剤をスクリーニングする方法は、
a)CCR4受容体を発現し、遊走できるか、または遊走中である試験細胞を具えるステップと、
b)前記細胞の少なくとも第一および第二の一定分量を具えるステップと、
c)一定期間、前記第一の一定分量を候補物質に曝すステップと、
d)一定期間、前記第二の一定分量を候補物質に曝さないステップと、
e)曝すのと同時にまたは曝した後に、細胞の遊走に適した条件を用意し、第二の一定分量における細胞と比較した第一の一定分量における細胞の遊走の程度を測定し、それによって、遊走が減少しているか、もしくは全くないことによって、抗癌剤を特定するか、かつ/または第二の一定分量における細胞と比較して第一の一定分量における細胞の増殖が増加しているか、もしくは継続していることによって、弱いまたは不活性な抗癌剤を特定するステップ
とを含む。
【0164】
走化性は、体細胞、バクテリア、および他の単細胞のもしくは多細胞の生物が、それらの環境における特定の化学物質にしたがって、運動を導く減少である。これは、バクテリアが、食物分子の最も高い濃度に向かって泳ぐことによって食物(例えばグルコース)を見つけるのに、または毒(例えば、フェノール)から逃げるのに重要である。多細胞生物において、走化性および細胞遊走は、発達に加えて正常な機能にとって極めて重要である。さらに、本技術分野において、動物における走化性および細胞遊走を可能にする機構は、癌の転移の間、妨害することができることが知られている。
【0165】
問題の化学物質のより高い濃度の方へ遊走が向けられている場合、走化性は陽性であると言われ、方向が反対の場合は、陰性であると言われる。
【0166】
走触性において、勾配が可溶性の空間において発達する走化性の古典的な様式とは対照的に、化学遊走物質の勾配が、表面上に示されているか、または表面上に結合している。
【0167】
ネクロタキシス(Necrotaxis)は、化学遊走物質分子が壊死細胞またはアポトーシス細胞から解放されるときに一種の走化性を具現するものである。放出された物質の化学的な特徴に応じて、ネクロタキシスは、細胞を集積するか、または忌避し、このことは、この現象の病態生理学的な重要性を明確に示すものである。
【0168】
特定の好ましい実施態様において、試験細胞を、好ましくは候補物質に曝す前に遊走するように誘導する。
【0169】
他の好ましい実施態様において、試験細胞を、CCR4受容体のリガンドの添加によって遊走するように誘導する。
【0170】
細胞の遊走および細胞の浸潤のアッセイは、多孔性膜またはマトリックスを通って化学遊走物質または成長因子の方に向かって移動する特定の細胞のタイプの能力を測定するものである。細胞の遊走および浸潤は、脈管形成および腫瘍転移における重大なプロセスであってもよい。細胞の浸潤を、適切な培養条件および細胞が移動する適切な多孔性マトリックスを用いて、1又は複数の寸法において測定してもよい。
【0171】
好適なスクリーニング方法に従って、好ましくはマトリゲルのBoyden chamberを使用して、細胞の浸潤を測定してもよい。
【0172】
本願明細書で定められる本発明の方法の態様において、リガンドがCCL17であってもよいか、かつ/またはリガンドがCCL22であってもよい。
【0173】
別の態様において、本発明は、
a)CCR4受容体を発現する癌細胞を具えるステップと、
b)少なくともいくつかの癌細胞の死を引き起こす条件下で癌細胞を培養するステップと、
c)一定期間、試験細胞を候補物質に曝すステップと、
d)癌の試験細胞の死を測定し、それによって、試験細胞における細胞死が増加しないか、またはあまり増加しないことによって、弱いまたは不活性な抗癌剤を特定するか、かつ/または細胞死が増加していることによって、抗癌剤を特定するステップ
とを含む、抗癌剤をスクリーニングする方法を提供する。
【0174】
他の態様において、本発明は、
a)CCR4受容体を発現する癌細胞を用意するステップと、
b)前記細胞の少なくとも第一の一定分量および第二の一定分量を具えるステップと、
c)少なくともいくつかの癌細胞の死を引き起こす条件下で癌細胞を培養するステップと、
d)一定期間、前記第一の一定分量を候補物質に曝すステップと、
e)一定期間、前記第二の一定分量を候補物質に曝さないステップと、
f)第一及び第二の一定分量における癌の試験細胞の死を測定し、第二の一定分量における細胞と比較して、第一の一定分量における細胞死が増加することによって、弱いまたは不活性な抗癌剤を特定するか、かつ/または第二の一定分量における細胞と比較して、第一の一定分量における細胞の死が増加していることによって、抗癌剤を特定するステップと
を含む、抗癌剤をスクリーニングする方法を提供する。
【0175】
他の好ましい実施態様において、試験細胞または癌細胞を、培養条件の変化の前または後に候補物質に曝してもよい。
【0176】
好ましい実施態様または抗癌剤をスクリーニングする方法において、試験細胞または癌細胞は、増殖できるか、または増殖中である。
【0177】
抗癌剤をスクリーニングする方法において、細胞は、腫瘍生検サンプル由来であるか、または子宮頸癌細胞、例えば、C−41(ATCC5 Rockville MD、 USA)もしくはCCR4を内因的に発現していている他の細胞株であってもよい。
【0178】
次に、本発明を実験的な例によって、図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1】正常組織と比較した悪性子宮頸部生検において、CCR4のmRNAの発現が増加していることを示す図である。(A)mRNA発現についてのリボヌクレアーゼプロテクション法(RPA)の後の非腫瘍性(白い棒)および悪性(黒い棒)の子宮頸部組織におけるCCおよびCXCケモカイン受容体のmRNAを発現するサンプルのパーセンテージの概要。(B)非腫瘍性組織サンプル1〜14および悪性組織のRPA:腺癌生検、サンプル1〜4、および扁平上皮癌(SCC)生検、サンプル1〜11。腺癌組織の段階は、以下の通りであった:1〜3、1B1;4、1B2。SCCの段階は、以下の通りであった:1、1A2;2〜8−11、1B1;9、1B2および10、2A。(C)非腫瘍性の相対物と比較したときの上皮およびストローマの区画におけるCCR4遺伝子発現の上方制御。非腫瘍性子宮頸部組織におけるmRNAの発現を、悪性組織のmRNAを比較するために、ベースラインとして用い、値「1」として表わす。
【図2】A)非腫瘍性子宮頸部組織、200×(B)CIN、200×;(C)浸潤性子宮頸部組織、200×のストローマにおける子宮頸部のCCR4のタンパク質発現の悪性進行中のCCR4についての免疫組織化学を示す図である。(D)正常、400×、(E)CBSf、200×:および(F)浸潤性子宮頸癌400×におけるCD68+タンパク質発現。(G)非腫瘍性子宮頸部組織を、200×;(H)CIN、400×;および(I)浸潤性子宮頸癌、400×におけるFoxP3+タンパク質の染色。(I)非腫瘍性、200×(K)CBSf、400×および、(L)浸潤性子宮頸癌、400×における上皮CCR4タンパク質発現。
【図3】子宮頸部の悪性進行の間のCCR4、CD68およびFoxP3陽性細胞についての免疫組織化学スコアを示す図である。(A)正常(n=23)、CIN(n=63)およびSCC(n=45)、再発癌(n=15)、リンパ節転移(n=10)、および腺癌(n=10)における「陽性」×「強度」によって算出した、CCR4について染色している上皮細胞(黒い棒)およびストローマ細胞(白い棒)の総スコア。(B)正常(n=11)、CIN(n=16)、腺癌(n=16)、再発癌(n=24)、およびリンパ節における転移の沈積物(n=11)における腫瘍内および腫瘍周囲のマクロファージの浸潤の平均CD68+スコア(+SE);**p<0.001;*p<0.005。(C)正常(n=11)、CIN(n=16)、SCC(n=44)、腺癌(n=16)、再発癌(n=24)、およびリンパ節における転移の沈積物(n=11)における腫瘍内および腫瘍周囲の制御性T細胞の浸潤の平均FoxP3+スコア(+SE)、*p<0.01。(D)CIN I(n=26)、CIN II(n=19)およびCIN III(n=17)における、「陽性」×「強度」によって算出された上皮細胞(黒い棒)およびストローマの細胞(白い棒)の総CCR4スコア。
【図4】正常な、CINおよびSCCの子宮頸部におけるCCR4リガンドであるCCL22のmRNAおよびタンパク質の発現を示す図である。(A)正常(n=14)およびSCC(n=11)の子宮頸部生検における定量的リアルタイムRT−PCRで評価したCCL22のmRNAの発現レベル、(P=0.43)。(B)非腫瘍性、200×;(C)CIN、200×および(D)SCC5、200×子宮頸部組織におけるCCL22タンパク質の発現。(E)正常(n=16)、CIN(n=17)、SCC(n=19)、および腺癌(n=5)の子宮頸部のサンプルにおける、「陽性×強度」によって算出した上皮細胞(黒い棒)およびストローマ細胞(白い棒)の総CCL22スコア。
【図5】正常な、CINおよびSCCの子宮頸部におけるCCR4リガンドであるCCL17のmRNAおよびタンパク質の発現を示す図である。(A)SCCの子宮頸部生検(n=11)で比較した正常のもの(n=7)における定量的リアルタイムRT−PCRで評価した、CCL17のmRNAの発現レベル(P=0.02)。(B)非腫瘍性、200×;(C)CIN、200×および(D)SCC、200×におけるCCL17のタンパク質の発現。(E)正常(n=21)、CIN(n=33)、SCC(n=20)、及び腺癌(n=4)の子宮頸部のサンプルにおける「陽性×強度」によって算出された上皮細胞(黒い棒)およびストローマの細胞(白い棒)の総CCL17スコア。
【図6】CCR4が、子宮頸癌細胞株C−41において機能を有することを示す図である。(A)CCR4、CCL17およびCCL22のタンパク質の発現(青色線)を、フローサイトメトリーを用いてC−41子宮頸癌細胞株において測定した。C−41によるCCR4の発現/内部移行を、100ng/mLの(B)CCL17および(C)CCL22の刺激後に調べた(青色線は、0分におけるCCR4のコントロールを表わし、オレンジ線は、適切なリガンドによる刺激後のCCR4タンパク質の発現を示す)。(D)CCL17およびCCL22に応答する子宮頸癌細胞C−41の遊走。値は、10回繰り返し測定の平均±SD、* P<0.05、** P< 0.01。(EおよびF)CCL17およびCCL22の1ng/mL、10ng/mLおよび100ng/mLの2、4および6日間の刺激後の次善の条件下でのC−41の成長。6日後、C−41は、10ng/mLのCCL17 10ng/mLのCCL17(P=0.017)、および100ng/mLのCCL17(P=0.044)での刺激後に著しい成長の増大を示したが、1ng/mLのCCL17(P=0.383)では示さなかった。1ng/mL CCL22;(P=0.026)および100ng/mLのCCL22(P=0.043)の刺激も、著しい成長の増大を示したが、10ng/mLのCCL22(P=0.195)では示さなかった。
【図7】正常な(A、×40;D、×40)、過形成性(B、×100)、形成異常(C、×40;D、×40)の食道の上皮細胞および浸潤癌細胞(H、×200)における食道のCCR4の発現の発癌におけるCCR4の発現を示す図である。食道の発癌の最中のストローマにおけるCCR4発現:E、正常な食道(×200);F、形成異常I(×200);G、形成異常III(×200);H 浸潤癌(×200)。
【図8】子宮頸部の悪性進行の間のCCR4陽性のストローマ細胞の免疫組織化学的のスコア付けの結果を示す図である。スコア付けを、CCR4について陽性の細胞の数およびCCR4の染色の強度によって評価した。細胞の数を、15HPFの平均として測定した:0 = CCR4タンパク質発現なし;+1=HPFあたり1〜10のCCR4陽性細胞;+2=HPFあたり10〜20の陽性細胞;+3(HPFあたり21〜30細胞);+4(>30の細胞)。強度を以下のものとして測定した:0=発現なし;1+=軽度の発現;2++=中程度の発現;3+++=強い発現。
【図9】子宮頸部の悪性進行の間のCCR4陽性上皮細胞の免疫組織化学のスコア付けの結果を示す図である。スコア付けを、CCR4について陽性の細胞の数およびCCR4の染色の強度によって評価した。0=上皮細胞上のCCR4タンパク質表現なし;+1=25%以下の区域が、CCR4の発現を有する;+2=26〜50%の細胞が陽性;+3=51〜75%の陽性;+4=76%以上の細胞がCCR4陽性。強度を以下のものとして測定した:0=発現なし;1+=軽度の発現;2++=中程度の発現;3++=強い発現。
【図10a】ヒト組織由来のcDNAライブラリ(Cancer Research UK)を使用することによるより広い範囲の腫瘍におけるCCR4発現のスクリーニングの結果を示す図である。ライブラリは、11の異なる腫瘍のタイプ:肺、結腸、膀胱、胃、膵臓、皮膚、乳房、脳、食道、卵巣および前立腺についての5〜10の腫瘍サンプルおよび2〜5の正常なサンプルから単離されたRNAから生成したcDNAを含む。CCR4のmRNAの発現レベルを、定量的リアルタイムRT−PCRで測定した。
【図10b】ヒト組織由来のcDNAライブラリ(Cancer Research UK)を使用することによるより広い範囲の腫瘍におけるCCR4発現のスクリーニングの結果を示す図である。ライブラリは、11の異なる腫瘍のタイプ:肺、結腸、膀胱、胃、膵臓、皮膚、乳房、脳、食道、卵巣および前立腺についての5〜10の腫瘍サンプルおよび2〜5の正常なサンプルから単離されたRNAから生成したcDNAを含む。CCR4のmRNAの発現レベルを、定量的リアルタイムRT−PCRで測定した。
【図11】子宮頸部細胞株(C41、C33A)および腎癌細胞株(786、A498、CAKI)でのCCR4発現についてのFACS分析の結果を示す図である。点線:アイソタイプが一致したコントロールの抗体;灰色の線:CCR4発現。
【図12】IL−10、TGF−β、およびFGFで24時間刺激した後のC41細胞でのCCR4発現のFACS分析の結果を示す図である。点線:アイソタイプのコントロール;灰色の線:CCR4発現;太線:サイトカイン刺激の後のCCR4発現。
【図13】CCR4のcDNA配列を示す図である。これは、本願明細書において称される配列番号1である。
【発明を実施するための形態】
【0180】
本発明者らは、ケモカイン受容体CCR4の発現が、特定の腫瘍のタイプにおける発癌での初期の事象であることを発見した。通常、組織中に存在する恒常性ケモカインの受容体の上皮での発現は、潜在性の細胞に生存の利益を与える可能性がある。
【0181】
ケモカイン受容体CCR4は、子宮頸部および食道の形成異常の非侵襲性病変で存在する。これは、CCR4陽性の形成異常の領域が、同じ区域における正常な上皮領域に隣接して明らかに見られたいくつかの食道癌サンプルにおいて特に目立っていた(例えば図7CおよびD)。
【0182】
子宮頸部の悪性進行によってケモカイン受容体CCR4が増加した。これは、CCR4陽性のマクロファージおよび制御性T細胞の浸潤の増加のみならず、上皮細胞によるCCR4発現の取得によるものであった。予想外の発見は、上皮内(CIN)病変における非侵襲性上皮細胞に加えて浸潤性癌細胞で、CCR4が強く発現していることであった。CINから侵襲性疾患への進行は、CCR4のリガンドであるCCL17およびCCL22のストローマ細胞の発現の増加と関係しており、これらのケモカインは、CCR4陽性の子宮頸癌細胞株の増殖および遊走を刺激した(例えば図4および図6)。また、CCR4は、食道の癌における形成異常に加えて該癌における浸潤性上皮細胞においても検出され、再び悪性進行の間にはCCL17およびCCL22のレベルが増加した。CCL17およびCCL22の勾配における変化は、前浸潤性から浸潤性の疾患への移行を支援し、潜在性細胞が免疫監視から逃れるのを助ける腫瘍が促進する白血球を引きつける。
【0183】
また、2つのCCR4結合ケモカイン、CCL17およびCCL22は、腫瘍生検における血管およびリンパ管の表面でも見られた。これを定量化することはできなかったが、悪性進行による染色の強度が増加することが事前観察で示された。
【0184】
CCR4システムの他のエレメントは、CCL17およびCCL22に対し高い親和性を有する非シグナル伝達ケモカイン受容体D6である[参考文献18];組織における該D6の存在は、これらのケモカインの勾配に影響すると予測される[参考文献19]。
【0185】
図6は、CCR4受容体が子宮頸癌細胞株C−41において機能を有することを示す。CCR4は、微小環境によって上方制御できる。CCR4陽性および陰性の細胞を、子宮頸部の微小環境に存在することが知られ、受容体が腫瘍細胞上に存在している可能性が高い多くのサイトカイン(TNF−α、TGF−β、IFN−γ、IL−4およびIL−10)に曝した。これらのどれも、CCR4の発現に影響を与えなかった。しかしながら、CCR4のmRNAのレベルは、C−41細胞とマクロファージの共培養によって上方制御されたが、タンパク質レベルは上方制御されなかった。
【0186】
CCR4およびD6は、複雑な異常(異型接合性、同型接合性および遺伝子増幅の損失)によって重大な子宮頸癌腫瘍のサプレッサー遺伝子が位置すると思われるものに近い染色体3p上に位置していることが報告された[参考文献25、26、27]。CCR4もD6もこれらの変化に直接関係していないが[参考文献26]、すぐ近くの遺伝子変異が、それらの制御に影響を及ぼす可能性がある。
【0187】
EBV不死化B細胞は、CCL22に加えてCCL3およびCCL4も分泌する[参考文献28]。EBV癌遺伝子であるLMPIの安定した発現も、B細胞株においてCCL17およびCCL22を誘導し、LMPIによって誘導されたCCL17およびCCL22の発現は、NF−kBによって制御された。EBVによるこれら2つのケモカインの誘導は、悪性細胞が、Th2および制御性T細胞を引きつけることによって、免疫学的監視を逃れるのを助けることが示唆される。他の発癌の変化は、上皮細胞によるCCL17およびCCL22の生産を誘導する可能性がある。
【0188】
本発明者らは、子宮頸癌における単核球の浸潤における2つの成分、特にCD68+マクロファージおよびFoxP3+制御性T細胞の詳細な定量を行った。CCR4陽性の浸潤細胞の密度は、正常な子宮頸部と比較してCINにおいて増加し、SCCおよび腺癌では更に増加していた。CD68+マクロファージは、同じパターンに従っており、我々は、これらがCCR4陽性であることを発見した。マクロファージと悪性細胞間のクロストークは、すべての癌進行の段階で重要であり、悪性細胞の生存に影響し、血管新生のスイッチを支援し、白血球を分極化し、悪性細胞の浸潤を支援する[参考文献29、30、31]。子宮頸部および食道の癌において、ケモカインCCL17およびCCL22は、マクロファージの補充の役割を果たすが、他の癌において、例えば卵巣癌では、CCL2などのケモカインが重要である[参考文献32]。
【0189】
CCL17およびCCL22は、子宮頸部生検法におけるCD68+細胞に平行して増加する制御性T細胞の補充にも重要である。前悪性および悪性の病変への制御性T細胞の補充は、免疫特権を促進する。例えば、ホジキンリンパ腫(HL)において、悪性細胞が、多数のCCR4+FoxP3+リンパ球に囲まれている[参考文献33]。悪性HL細胞によって補充されているこれらの細胞は、悪性細胞がホストの免疫システムから逃れるのに有利な環境をつくる。本発明者らは、これも、子宮頸部および食道癌のケースであると考えている。それ故、CCL17およびCLL22の勾配における変化が、腫瘍細胞の生存および拡散を直接促進するのみならず、腫瘍細胞に生存の因子ももたらすことができる白血球を引き寄せ、腫瘍に対する効果的なホストの反応を防ぐ免疫特権/免疫抑制に寄与する。
【0190】
これらのデータは、上皮CCR4の存在が、前悪性および悪性の両方の子宮頸部の新形成についての非常に感度が高く、かつ非常に特異的なバイオマーカーであることを示す。子宮頸癌の進行におけるCCR4発現の役割はまだ不明であるが、本発明者らのデータは、CCR4が、腫瘍環境内のアポトーシスの刺激からの細胞の保護をもたらす可能性があるのみならず、基底膜の腫瘍細胞の浸潤に必要であることを示唆している。その高い感度および選択性のために、子宮頸癌のすべての段階についての診断バイオマーカーとして使用される可能性がある。
【0191】
その後、本発明者らは、食道腫瘍、炎症と強い関連がある他の腫瘍のタイプの31のサンプルにおけるCCR4の発現についても試験した。IHCによって、CCR4が、いかなる正常な上皮の食道組織において検出できなかったが、すべての前浸潤性および浸潤性病変の上皮細胞に存在することが見出された。その高い感度および選択性のために、CCR4を、食道癌のすべての段階についての診断バイオマーカーとして使用する可能性がある。
【0192】
要約すると、ケモカイン受容体CCR4およびそのリガンドは、子宮頸部、食道、腎臓、脳、卵巣または乳房の癌の悪性進行において増加する。CCR4における変化およびそのリガンドの勾配は、いくらかのプロ腫瘍の意味を有する。第一のCCR4刺激は、潜在性および浸潤性癌細胞の増殖および生存を増加させ、第二に、ケモカイン勾配における変化は、基底膜の浸潤およびその後の悪性細胞の血管またはリンパ系への移動を支援する。最後に、CCL17およびCCL22は、腫瘍成長を促進し、潜在性細胞が免疫学的監視を逃れるのを可能にする、M2マクロファージおよびFoxP3制御性T細胞を含めた、細胞のタイプを引きつける。CCR4およびそのリガンドは、上皮の新形成で有用な診断マーカーおよび治療ターゲットであってもよい。
【0193】
本発明を、以下の材料および方法を用いる実験研究および実施例によって部分的に説明する。
【実施例】
【0194】
子宮頸部組織サンプルおよび食道のサンプル
mRNA研究のために、子宮頸癌患者から15の腫瘍生検(11の扁平上皮癌S1−S11、および4の腺癌、A1−A4)および14の非腫瘍性子宮頸部組織サンプル(N1−N14)を手術中に得られた、液体窒素中で急冷凍結した(snap−frozen)。診断を、Barts and The London NHS Trustの病理学部で行った。患者のサンプルを、FIGO分類法(段階I、II、III、IV)に従って分け、腫瘍生検を、核の非定型性のグレード(1、2、3)の増加、または同様に、中程度に、または弱い分化に伴って分類した。
【0195】
免疫組織化学のために、150人の異なる患者からのパラフィン包埋したサンプル(n=166)を、Barts and The London NHS Trust and the Clinical Centre of Serbia, Belgradeから得た。新鮮なパラフィン包埋されたヒトサンプルへのアクセスは、East London and City Health Authority Research Ethics Subcommitteeの要件を満足するものであった(LREC no. T/02/046)。
【0196】
原発性扁平上皮食道癌を有する31人の患者から切除された標本も、本文に含まれる。これらの患者は、中国の河南省安陽市における食道癌のリスクの高い地域の出身である。すべての患者は、安陽中央病院の外科で、外科的治療を受けた。これらの患者の誰も、手術前に化学療法、放射線療法または免疫調節性治療を受けていない。サンプルは、同じ癌患者の巨視的に癌の部分およびその対応する正常な部分から採取された。組織は、10%の中性緩衝ホルマリンを含むPBSで固定された。
【0197】
RNA抽出およびRNaseプロテクションアッセイ(RPA)
子宮頸部組織生検を、液体窒素で冷やしたミル6750(グレン・クレストン社、スタンモアー)でホモジナイズし、次いでTri Reagent(商標)で可溶化した(シグマ、プール、英国)。抽出したRNAを、10ユニットのDNase(ファルマシア、セイトアルバンズ、英国)で製造業者の説明書に従って処理した。RPAを、Riboquant(登録商標)hCR5およびhCR6鋳型のセット(BD Pharmingen、オックスフォード、英国)並びに[α32P]UTP(アマシャム・インターナショナル社、エールズベリー、英国)を用いて行われた。RNase保護断片を、acrylamide−urea sequencing gel(バイオラドラボレトリー社、ヘメルヘンプステッド、英国)で流し、濾紙に吸着し真空下で乾燥した。オートラジオグラフィを、Kodak Biomax MSフィルムとTranscreen LE intensifying screen(シグマ社)を用いて行った。
【0198】
顕微解剖および遺伝子アレイ
パラフィン包埋された子宮頸部組織を、RNaseのない条件下で切断し、UV処理したPALM(登録商標)膜スライド(PALMS、マイクロレーザーテクノロジー、ドイツ)に乗せた。次に、これらを、キシレン中で脱パラフィン化し、段階的なアルコールで再水和化した。サンプルを、処理前にマイヤーのヘマトキシリン溶液で1分間染色し、脱水し、空気乾燥した。切片を、製造業者のプロトコールに従ってレーザーで顕微解剖した。簡潔に述べると、所定の部分をレーザー顕微解剖し、プロテインキナーゼ(PK)バッファーの入ったマイクロフュージキャップに急速に入れた。およそ505〜5000の細胞を、各セッションで捕獲した。レーザー顕微解剖された細胞を、5μLのPKと混合した100μLのPKバッファーに溶解した。全RNAを、Paraffin block RNA isolation kit(1902、アンビオン、アメリカ合衆国)を用いて、製造業者の説明書に従って抽出した。cDNAを、上記の通りに増幅し、製造業者の説明書に従って、custom−made microfluidic gene array card(PE Applied Biosystems)を用いて分析した。
【0199】
7つの子宮頸部腫瘍サンプルにおける個々の遺伝子の遺伝子発現プロファイルを、5つの正常な子宮頸部サンプルと比較した。正常な上皮またはストローマの細胞サンプルにおける遺伝子発現レベルを、ベースラインの値”1”として用い、腫瘍上皮細胞または腫瘍ストローマ細胞の平均値と比較した。レーザー顕微解剖された腫瘍サンプルは、1A2および2Bの段階からの1のサンプルと、1B1の段階の5つから成る。
【0200】
免疫組織化学
パラフィン包埋切片(4μm)を、CCR4、CCL17およびCCL22について染色した。簡潔に述べると、切片を、キシレン中で脱ワックス化し、エタノール勾配によって脱水した。PBSで洗った後、抗原を、95℃で20分間、Target Retrieval Solution(S1700、DAKO)で曝すか、または電子レンジで9分間、Antigen Unmasking Solution(H−3300、Vector)で曝した。切片を、正常ウサギまたはヤギ血清で30分間ブロックし、一晩4℃で以下の一次抗体条件:CCR4(1:300、ab1669、AbCam、Canbridge)、CCL17(1:50、ab9816−50、AbCam、Cambridge)およびCCL22(1:20、500−P107、Peprotech)でインキュベートした。室温で30分間のビオチン化された二次抗体(抗ヤギまたは抗ウサギIgG、1:200、Vector)によるインキュベート後、抗原を、3、3’−ジアミノベンジジン(DAB;Sigma)で明らかにした。次に、スライドを、ヘマトキシリン対比染色し、乾燥し、乗せた。一次抗体を省略したものを、ネガティブコントロールとして用いた。CCR4抗体の特異性を確認するために、いくつかのCCR4陰性細胞を、このケモカイン受容体のcDNAでトランスフェクトした。CCR4抗体は、トランスフェクトが成功した細胞上でのみ表面タンパク質検出した。
【0201】
二重染色、CD68、FoxP3、SR−A:スコア付け方法およびカテゴリー
非悪性および悪性の上皮細胞でのCCR4、CCL17およびCCL22の発現の評価のために、各々のサンプルを、以下のスコア付けシステムによって半定量的に評価した:0(ポジティブなタンパク質発現なし)、+1(平均して<25%の断面が、陽性発現を有する)、+2(26〜50%)、+3(51〜75%)、+4(>76%)。陽性細胞の強度を、以下の通りに分析された:0(発現なし)、1(軽度の発現)、2(中程度の発現)、3(強い発現)。腫瘍ストローマ(腫瘍内の浸潤の細胞)、および腫瘍の浸潤境界(腫瘍周囲の浸潤の細胞)のCCR4、CCL17およびCCL22発現のスコア付けを、「移動平均」方法に基づいて行った[43]。壊死部分を避けた。合計15の強拡大視野(×400拡大率)を計数した。5つの尺度を、以下の通りに設定した:0=CCR4タンパク質発現なし;+1=HPF当たり1〜10のCCR4陽性細胞;+2=HPF当たり10〜20の陽性細胞;+3(HPF当たり21〜30の細胞);+4(>30の細胞)。全体の染色結果を、「パーセンテージ」×「強度」を算出することで得た。腫瘍および浸潤細におけるIHCスコア付けを、正式の病理学者(YW)によって行なった。
【0202】
子宮頸癌細胞株培養
子宮頸癌細胞株C−41(ATCC、ロックビル、MD、米国)を10%のFCSを補充したDMEM培地で培養した。いくつかの実験において、細胞を、1、10、100または1000ng/mLのCCL17またはCCL22(PeproTech、ロンドン、英国)で刺激した。増殖および遊走を、先に記載した方法を用いて評価した[11]。
【0203】
統計解析
統計的有意差を、ウェルチの修正(Welch's correction)を有する対応のないt検定(Instat software、サンディエゴ、CA)によって評価した。P値が<0.05の場合、有意であるとみなす。
【0204】
実験1−ケモカイン受容体のリボヌクレアーゼプロテクションアッセイ
リボヌクレアーゼプロテクションアッセイ(RPA)を用いて、新鮮な冷凍されたヒト子宮頸部組織の生検における13のケモカイン受容体mRNAをスクリーニングした。図1Aにおける概要のグラフから分かるように、非腫瘍性および悪性の生検の間のいくらかの別個の差異があるケモカイン受容体mRNAの範囲が、子宮頸部組織抽出物において見られた。ケモカイン受容体CCR4は、特に興味深く、悪性子宮頸部には存在したが、非腫瘍性子宮頸部生検由来の抽出物には存在しなかった(図1B)。
【0205】
ストローマ細胞および上皮細胞の混合集団を含むすべての組織抽出物において、ケモカイン受容体発現を試験し、次に、CCR4mRNAの細胞源を調べた。mRNAを、レーザー顕微解剖した正常なおよび悪性の子宮頸部生検のストローマおよび上皮細胞部分から抽出し、半定量的なリアルタイムRT−PCRを使用して、18S rRNAをコントロールとして用いてCCR4発現を分析した。図1Cに示すように、CCR4の悪性組織由来のストローマ部分においてその非腫瘍性の相対物と比較した際にmRNAが上方制御されていた。加えて、予想外に、CCR4のmRNAは、悪性上皮細胞の部分由来の抽出物においても正常な上皮と比較して上方制御されていた。
【0206】
CCR4のmRNAに関してこのように見られたことを更に調査するために、CCR4についての生検の同齢集団を免疫組織化学(IHC)で染色した。150人の異なる患者由来の166のパラフィン包埋子宮頸部組織サンプル:非腫瘍性、n=23;CIN I、n=30;CIN II、n=17;CIN III、n=16;SCC、n=45;再発性腫瘍、n=15;リンパ節転移(LN mets)、(n=10);腺癌(n=10)におけるCCR4タンパク質の発現を評価した。白血球および上皮細胞の両方が、CCR4タンパク質を発現した。結果を定量化するために、IHCスコアを、「陽性」に「強度」をかけることによって算出した(詳細については方法並びに図8および9の説明を参照)。
【0207】
実験2−CCR4タンパク質が、ヒトの子宮頸部生検法における浸潤する白血球で見られる。
図2(AC)に示すように、生検のストローマ部分における白血球がCCR4陽性で染色された。ストローマ部分におけるCCR4陽性についてのIHCのスコアを、図3A(白い棒)にまとめた。非腫瘍性組織は、CCR4の白血球について陰性だった(図2A、3A)。CINサンプルにおいて、より多くのCCR4発現ストローマの細胞があり(図2B、3A)、これは、浸潤性腫瘍性の子宮頸部サンプルにおいてさらに増加した(図2C、3A)。浸潤する白血球でのCCR4の発現の強度も、悪性の進行とともに増加した。非腫瘍性組織において、該強度は軽度であり;CINおよび腺癌において、強度は中程度から強いものであり、浸潤性SCC、再発性腫瘍およびリンパ節転移において、強度は強かった(図8)。
【0208】
ストローマはさまざまな細胞のタイプからなり、試験を、浸潤した細胞のどれがCCR4発現に寄与したかを確認するために行った。マクロファージおよび制御性T細胞がCCR4を発現し、CCR4タンパク質発現を、これら2つの細胞のタイプにおいて調べ、更に、組織生検におけるCD68+マクロファージおよびFoxP3+制御性T細胞の数も計数した。
【0209】
実験3−CCR4陽性マクロファージおよび制御性T細胞が悪性進行とともに増加する。
CD68+マクロファージおよびFoxP3+制御性T細胞の数は、子宮頸部の悪性の進行とともに増加した。図2 D−Iに示すように、正常な子宮頸部の生検においてCD68およびFoxP3細胞はほとんど存在しないが、CINでは数が増加し、両方の細胞のタイプは浸潤癌においては顕著であった。
【0210】
次に、CD68+およびFoxP3+の細胞の数を、それぞれ122および33の生検において計数した。図3Bに示すように、CIN病変の細胞においてCD68+細胞が正常な子宮頸部と比較して、有意に(p<0.001)増加した。13のCD68+細胞の数は、SCC、腺癌、再発性癌およびリンパ節転移において更に増加した(P<0.001、LN metsについてP<0.05、正常な子宮頸部と比較)。FoxP3+細胞に同様な増加が、SCC、腺癌およびリンパ節転移を有する悪性の進行とともに生じ、全て正常な子宮頸部と比較して、FoxP3+浸潤における有意な増加を示した(p<0.01)。
【0211】
CCR4を発現している細胞を浸潤する形質を研究するために、CD68およびFoxP3についての二重免疫組織化学染色を用いて、マクロファージおよび制御性T細胞によるCCR4の細胞表面の発現の評価を行った。これによって、CD68+およびFoxP3+細胞も、CCR4タンパク質を発現していることが確認された(データ示さず)。33のパラフィン包埋組織のサブセットも、スカベンジャー受容体−A(SR−A)タンパク質について染色した(非腫瘍性=10、CIN=10、SCC=10、腺癌=3)。SR−Aは、M2の代わりとして活性化したマクロファージについての細胞表面マーカーである [12]。非腫瘍性病変におけるストローマ細胞において、SR−Aを検出できなかったが、CINおよび浸潤癌において、ある割合のCD−68+細胞が、SR−Aを発現していた(データ示さず)。
【0212】
これからの研究は、第一に、子宮頸部の悪性進行は、CD68+マクロファージおよびFoxP3+制御性T細胞の数の増加に関連していることを示した。これらの細胞は、悪性細胞にプロ腫瘍成長因子を与え、形質転換細胞が免疫学的監視を逃れるのを助ける免疫抑制微小環境を作ることを助けることができる。第二に、これらの結果は、正常な子宮頸部癌と比較して悪性のものにおけるCCR4 mRNAの増加が最初に見られることが、少なくとも一部は、マクロファージおよび制御性T細胞を含めたCCR4を発現している白血球の浸潤の増加によるものであった。
【0213】
しかしながら、レーザー顕微解剖の結果は、CCR4 mRNAが、腫瘍の上皮部分においても増加することを示し、浸潤した白血球でのCCR4タンパク質を評価した際に、ケモカイン受容体もいくつかの上皮細胞上に存在していることが明らかであった(図2BおよびC参照)。これは、予想外で、更なる調査を必要とした。
【0214】
実験4−子宮頸部生検における上皮細胞もCCR4を発現している
非腫瘍性子宮頸部生検において、正常な上皮細胞は、CCR4を発現していなかった(図2A)。しかしながら、90%を超えるCINのケースにおける上皮細胞は、CCR4を発現した(図2Bおよび2E)。96%のSCCサンプルは、CCR4陽性の上皮細胞を有し(図2Cおよび2F)、90%の腺癌サンプルの上皮細胞は、CCR4陽性だった(図2G)。すべての再発性腫瘍およびリンパ節転移における悪性の上皮細胞は、CCR4タンパク質を発現した。上皮細胞上のCCR4タンパク質についてのIHCの結果の詳細のすべてを、図9に示し、図2Dにまとめた(黒い棒)。CCR4発現は、少数の上皮細胞に制限されていなかった。図2E〜Gおよび9は、CINおよび浸潤癌の子宮頸部生検における大部分の悪性上皮細胞がCCR4陽性であったことを示す。
【0215】
CINの異なる段階についてのIHCスコアに関するさらなる詳細を、図2Hに示す。これは、CIN IからIIIへの進行を通して、上皮のCCR4発現が基本的に不変だったことを示すが、ストローマのCCR4レベル、がCIN IからIIIにおいて増加したことを示す。
【0216】
実験5−子宮頸癌進行中のCCR4発現の統計解析
図8および9におけるデータの統計解析は、CIN病変が非腫瘍性子宮頸部組織と比較した際に上皮の区画(P=0.0001)およびストローマの区画(P=0.0001)の両方においてCCR4タンパク質の有意な上方制御を示したことを示す。浸潤性SCCにおけるCCR4発現も、非腫瘍性子宮頸部組織と比較した際に、上皮の区画(P=0.0001)およびストローマの区画(P=0.0001)の両方において有意に増加した。また、腺癌サンプルにもおいても、CCR4が、非腫瘍性子宮頸部組織と比較した際に、上皮細胞(P=0.0006)およびストローマの細胞(P=0.0050)で15上方制御されていた。
【0217】
実験6−悪性の発現によるCCL22 mRNAおよびタンパク質のレベルの変化
正常組織において、CCL22は、マクロファージ、単球、DC、B細胞およびT細胞の生産物である[13、14]。また、CCL22は、上皮組織で見られ;たとえば腸上皮は、TNFαなどの炎症性サイトカインによって更に上方制御できるCCL22を恒常的に生産する[15]。mRNAを、14の正常な子宮頸部、11のSCC及び4の腺の癌生検から単離し、CCL22のレベルを、リアルタイムRT PCRで評価した。図4Aに示すように、CCL22 mRNAレベルが、正常な生検と比較して悪性の組織において低かったが、これは有意なものではなかった(P=0.43)。50人の異なる患者からの合計52のパラフィン包埋の子宮頸部組織サンプルを、CCL22タンパク質について評価した:非腫瘍性、n=16;CIN、n=17;SCC、n=19。すべての子宮頸部生検において、CCL22が、上皮細胞において検出された(図4B〜D)。16の正常なサンプルのうちの14、15/17CIN5、14/19SCCは、CCL22陽性上皮細胞を有していた。すべての生検における浸潤する白血球は、CCL22を含んでいた(図4C、D)。上皮のIHCスコアは、CIN病変からSCCでわずかに下降した(図4E黒い棒)。しかしながら、CCL22についてのストローマのスコアは、正常からCINおよびSCCにわたって増加していた(図4E白い棒)。
【0218】
実験7−悪性の発現によるCCL17のmRNAおよびタンパク質のレベルの変化
正常組織において、CCL17は、脈管およびリンパの内皮細胞で発現していたが、マクロファージ、DCおよびケラチノサイトでも生産された[16、17、55]。mRNAを、14の正常な子宮頸部、11のSCCおよび4の腺癌の生検から単離し、CCL17レベルをリアルタイムRT−PCRによって評価した。図5Aに示すように、CCL17のmRNAのレベルは、正常な子宮頸部と比較してSCCにおいてより高かった。70人の異なる患者由来のパラフィン包埋子宮頸部組織の合計74サンプルを、CCL17タンパク質について評価した:非腫瘍性、n=21;CIN、n=33;SCC、n=20。正常な子宮頸部生検は、上皮およびストローマの両方の少数のサンプルにおいて、低レベルのCCL17を有していた(図5B)。23/33のCINサンプル、および13/20のSCCと比較して、2/19の正常なサンプルのみ、上皮におけるCCL17陽性細胞を有していた。CCL17陽性であるストローマの細胞の数は、正常なサンプルと比較して、CIN(図5C)およびSCC(図5D)において増加した。25/33CINおよび15/20SCCと比較して、21の正常な生検のうち6が、CCL17陽性ストローマ細胞を有していた。上皮およびストローマのCCL17のIHCスコアは、正常な生検と比較して、CINおよびSCCにおいて増加していた(図5E)。個々の生検からのIHCスコアを分析した際に、正常な生検と比較して、CIN(P=0.001)およびSCC(P=0.002)由来のストローマにおけるCCL17のIHCスコアにおいて、統計学的に有意な差異があった。また、正常なものと比較して、CIN(P=0.001)およびSCC(P=0.009)の上皮の領域におけるIHCスコアにおいても差異があった。これらのデータは、上皮内の新形成から浸潤性疾患までの移行によって、ケモカインの勾配が変化したことを示す。
【0219】
実験8−CCR4は、子宮頸癌細胞において機能を有する。
子宮頸癌細胞におけるCCR4発現の生物学的重要性を調査するために、多くの子宮頸癌細胞株(CaSki、Mel 80、HeLa−Ohio、 Hela−S3、Siha、C33A、C41−1)をCCR4発現についてスクリーニングした。細胞株C−41が、細胞表面CCR4を恒常的に発現した(図6A)。FACS分析を用いて、C−41細胞は、細胞表面CCR4を発現したことが示された。この細胞株も、細胞内のCCL22タンパク質を有していたが、他のCCR4リガンドであるCCL17は存在しなかった(図6A)。100ng/mLのCCL22による刺激後、細胞表面CCR4タンパク質は、2時間後にC−41細胞で内部移行し、3時間後に表面に戻った(図6B)。100ng/mLのCCL17で刺激後も、細胞表面CCR4タンパク質は、2時間後にC−41細胞で内部移行し、3時間後に表面に戻った(図6C)。トランスウェル遊走分析アッセイにおいて、C−41細胞は、CCL17およびCCL22の両方に対する典型的なベル型の走化性反応を示した(図6D)。10ng/mLで、CCL17は、有意な遊走を誘導し(P=0.036)、更に、100ng/mLおよび1000ng/mLでも(それぞれP=0.0006およびP=0.0004)誘導した。同様の結果が、10ng/mL(P=0.0081)、100ng/mL(P=0.0009)および1000ng/mL(P=0.0348)のCCL22で見られた。
【0220】
C−41細胞は、CCL17の10ng/mL(P=0.017)または100ng/mL(P=0.044)による刺激後、増殖を増加させた。1ng/mLのCCL22;(P=0.026)、100ng/mLのCCL22(P=0.043)も、C−41細胞の増殖をシミュレートしたが、10ng/mLのCCL22(P=0.195)ではシミュレートしなかった(図5CおよびD)。従って、CCR4は、この子宮頸癌細胞株において機能を有し、生体内でも機能を有する可能性があることが示唆される。
【0221】
実験9−CCR4は、上皮およびストローマの細胞で、食道の悪性の進行の間、発現している。
CCR4の発現およびケモカインリガンドの変化が子宮頸癌に特異的であるかどうか、それらが、炎症と関連するいずれの他の悪性腫瘍においても見られるかどうかは不明であった。食道癌は、腫瘍性の進行の全段階の例が、多くの場合同じ患者から同時に得ることができる上皮癌である。CCR4発現を、食道癌の患者由来の31の標本において調べた。27のケースにおいて、食道の発癌のすべての段階:正常、過形成、形成異常、上皮内癌および浸潤癌が同じ患者由来の生検に存在した。31のケースのうち4のケースは、浸潤癌の部分がない前浸潤の病変を有していた。図7Aに示すように、過形成上皮の基底層の周囲のわずかなCCR4陽性細胞を除けば、検出可能なCCR4発現が、食道の正常な上皮細胞になかった(図7B)。31のケースのうち30のケースにおいて、CCR4タンパク質が前浸潤の病変の全段階における上皮細胞に存在し(図7C、D)、過形成の上皮細胞におけるものより形成異常の病変におけるCCR4発現細胞の強度及びパーセンテージがはるかに高かった。浸潤癌における上皮細胞も、CCR4陽性だった(図7H)。いくつかの場合において、正常な粘膜と異常な粘膜との間の突然の移行があった。(図7C、D)。最も面白いことに、形成異常細胞において、CCR4発現の高いレベルがあったが、表層における細胞および隣接した正常な粘膜は陰性だった。CCR4陽性細胞がストローマにも存在し、パターンが子宮頸癌と同様であった。図7Eに示すように、正常な粘膜下層において、CCR4陽性細胞がわずかであり悪性の進行とともに、ストローマに浸透しているより多くのCCR4陽性細胞があった(図7F−H)。
【0222】
実験10−食道の生検中のCCL17およびCCL22
IHCを用いて、発癌の全段階が各サンプルにおいて存在している23の食道サンプルにおけるCCL17およびCCL22の発現を評価した。概して、CCL17は、正常組織の上皮およびストローマの領域において存在しないが、わずかなCCL17陽性の細胞がストローマおよび少数の過形成の領域にあった。CCL17陽性の上皮またはストローマ細胞を持続しているサンプル数のが、形成異常のものにおいて増加し、浸潤性の領域において最も高く、これらの10/23は、ある程度CCL17陽性を示した。特に、形成異常の上皮の粘膜下層における内皮細胞または血管/リンパ管で、CCL17の免疫反応が強かったが、正常な上皮の粘膜下層ではそうではなかったことが注目された。
【0223】
子宮頸癌で見られたものと同様に、CCL22についてのストローマの陽性レベルも、悪性の進行とともに増加した。1/23サンプルのみ、正常な部分のストローマにおいてCCL22陽性細胞を示したが、形成異常部分および浸潤性の部分では、それぞれ20/23および18/23のサンプルが、ストローマにおいてCCL22陽性細胞を含まれていた。ストローマの細胞のCCL22陽性が、形成異常の程度とともに増加した。23の形成異常Iサンプル中8がストローマにおいてCCL22陽性細胞を有し;これは、23の形成異常IIサンプルうち19、23の形成異常IIIサンプルのうち20に増加した。CCL22が正常な上皮において検出されなかったという点で、子宮頸部の上皮と食道の上皮との間に1つの違いがあったが、CCL22が正常な腸上皮で存在することが報告されている[15]。上皮のCCL22発現は、食道の悪性の進行とともに増加し;0/23サンプルが、正常な部分において陽性であり、2/23の過形成、7/23の形成異常および4/23の浸潤性の部分が、CCL22陽性の上皮細胞を有していた。最後に、浸潤性癌組織のストローマ内の血管のより多くの上皮細胞が、正常及び形成異常の上皮と比較してCCL22の染色について陽性であった。
【0224】
実験11−腫瘍のより広い範囲におけるCCR4発現のスクリーニングの結果
11の異なる腫瘍のタイプ:肺、結腸、膀胱、胃、膵臓、皮膚、乳房、脳、食道、卵巣および前立腺についての5〜10の腫瘍サンプル及び2〜5の正常なサンプルから単離したRNAから生成したcDNAを含む腫瘍のcDNAライブラリ(Cancer Research UK)を使用した。CCR4 mRNAの発現レベルを、定量的なリアルタイムRT−PCRを使用して測定した。
【0225】
CCR4 mRNAの発現レベルは子宮頸部、食道、腎臓、脳、乳房および卵巣の癌において、かなり上昇していた。
【0226】
実験12−子宮頸部および腎癌細胞株におけるCCR4発現の分析
図11は、抗CCR4抗体を使用して、CCR4発現を検出する、子宮頸部(C41、C33A)および腎癌の細胞株における蛍光標示式細胞分取(FACS)分析の結果を示す。すべての細胞株は、CCR4を発現した。図11中の点線は、アイソタイプが一致したコントロールの抗体のデータを示す。
【0227】
実験13−腫瘍細胞による一般的なサイトカインのCCR4発現への効果
腫瘍に存在する最も一般的なサイトカインは、IL−10、TGF−β、FGF、TNF−αである。C41子宮頸癌細胞株を、異なるサイトカイン(IL−10、TNF−α、TGF−β、FGF;20ng/mL)で24時間、培養において刺激した。次に、CCR4の発現を、FACS分析によって決定した。図12に示すように、CCR4は、無刺激の細胞(黒線)と比較した際に、IL−10、TGF−βおよびFGF刺激後(青色線)の陽性細胞のパーセンテージの観点から上方制御されていた。点線は、アイソタイプのコントロールについてのデータを示す。太線は、刺激の後のCCR4発現を示す。結果は、腫瘍微小環境が腫瘍細胞上のCCR4の発現を誘導することができることを示す。
【参考文献】
【0228】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍学に関し、癌の診断、層化、疾患の段階分けおよび治療方法に関する。従って、本発明の技術分野は、癌の診断及び治療における予測値又は臨床値のマーカー並びに癌の治療のための薬物の使用に関する。また、本発明は活性のある抗癌剤を同定するスクリーニングアッセイに関する。
【背景技術】
【0002】
ケモカイン受容体およびそれらのリガンドは、正常組織の恒常性および疾患における細胞の輸送をもたらし、細胞の運動、侵襲性および生存に影響を与える(参考文献1)。炎症および癌において、病変組織におけるケモカインは血管から内皮細胞基底膜を介して、柔組織への白血球のローリング、繋留および浸潤をもたらす(参考文献2)。
【0003】
CCR4は、18の周知のケモカイン受容体のうちの1つである。概して、ケモカイン受容体は、免疫細胞および腫瘍微小環境において発現し、多くの受容体及びそれらのリガンドが免疫細胞浸潤物中に存在する。
【0004】
多くの癌において、悪性細胞も、特定のケモカイン受容体を発現し、通常、それらの正常な対応細胞では見られない受容体である。転移性癌細胞は、ケモカイン受容体発現白血球の特徴を得ていると考えられ、ケモカインを用いて、元の腫瘍と離れた部位への遊走、該部位での生存を支援する(参考文献3、4、5)。通常、非常に制限された発現パターンを有するケモカイン受容体の癌細胞上の不適切な存在が、特定のケモカイン受容体が異なる転移部位への細胞の拡散及び/または該転移部位における細胞の生存を助ける可能性があるという仮説を支えている(参考文献8)。癌腫、黒色腫および血液系腫瘍血液系腫瘍において、進行した疾患の悪性細胞上でのケモカイン受容体、特にCXCR4およびCCR7の発現は、リンパ節転移の増加、疾患の蔓延の拡大、無病生存率の低下および/または全体の生存と相関する(参考文献6、7、8)。通常、CXCR5はB細胞およびいくつかのT細胞のサブタイプに限定されているが、膵臓癌細胞によっても発現され、肝臓転移の確立に関与している場合には、肝臓が、CXCR5リガンド、CXCL13の生産の場所である(参考文献9)。腸に転移した黒色腫細胞は、CCR9を発現している(参考文献10)。恒常性機能において、CCR9リガンドであるCCL25は、腸にまれなT細胞サブセットを補充する。膵臓癌において、CCR6の発現が見られた(参考文献11)、(参考文献12)。また、CCR6の発現は、CCR3およびCXCR2ともに、ヒトの腎癌でも報告された(参考文献13)。
【0005】
これは、CXCR4を含むいくつかのケモカイン受容体が発癌の後期における腫瘍上皮細胞において上方制御されていることを示し、浸潤と転移の役割を務めていると考えられる。対照的に、CCR4は、いくつかの血液癌、特にT細胞リンパ腫において上方制御されていることが以前報告されている。
【0006】
上述の通り、CXCR4は、多くの進行したヒト癌の悪性細胞においてよく見出されている。さらに、Woernerらは、CXCR4が、グリア芽腫の疾患の初期段階にも存在することを発見した(参考文献14)。しかしながら、リン酸特異的な抗CXCR4抗体を用いて、彼らは、あまり悪性でないグレード1の病変において、受容体の活性化のレベルは非常に低かったことを発見した。
【0007】
概して、悪性細胞のケモカイン受容体の発現は進行した疾患と関連していることが報告されているにもかかわらず、癌の初期及び前浸潤の段階において悪性細胞上でケモカイン受容体が発現するという本技術分野における少数の他の報告もあり、これらすべてはCXCR4に関する。乳癌の大きな組織のアレイの研究(2000以上のサンプル)において、CXCR4発現の細胞質/膜の発現は、非浸潤性乳管癌(DCIS)の67%において報告された(参考文献15)。これは、CXCR4およびそのリガンドCXCL12の両方がDCISで発現していることを示したSchmidらの研究において確認された、(参考文献16)。本発明者らも、境界線上の非浸潤卵巣癌腫瘍の上皮細胞上でCXCR4を発見し、(Kulbeら、投稿準備中)、これは、Pilsらよっても報告されている(参考文献17)。
【0008】
早期癌の上皮細胞において、他のケモカイン受容体の発現に関するデータは入手できなかったが、発癌経路が上皮細胞上のケモカイン受容体発現を誘導できるという証拠がある。RET/PTC1癌遺伝子は、主要な甲状腺細胞の悪性形質転換に必要なものであり、充分なものである(参考文献18)。この癌遺伝子は、機能的なCXCR4の誘導を含む甲状腺細胞における炎症促進性のプログラムを誘導する。胞巣状横紋筋肉腫は、反復性PAX3およびPAX7−FKHR遺伝子融合によって特徴づけられる非常に侵襲性の腫瘍である。PAX3−FKHRの胎児性横紋筋肉腫細胞への移行も、CXCR4発現(Libura、2002#9346)を活性させる。
【0009】
これらすべての研究において、結論は、悪性細胞による特定のケモカイン受容体の獲得は、悪性進行において比較的遅い事象であるのように思われるということであり、CCR4の場合、発現は、固形腫瘍の進行のいかなる段階でも報告されなかった。
【0010】
概して、CCR4発現は、免疫系に制限され、Th2および制御性T細胞のマーカーとして知られている。腫瘍環境において、細胞障害性T細胞および樹状細胞成熟を抑制するようにこの細胞は作用し、それ故に抗腫瘍免疫反応を抑制する。さらに、CCR4は、高い比率の成人性T細胞リンパ腫(ATL)を含む血液系腫瘍において発現していることが示され、皮膚への転移と関連した重要な予後因子であった(参考文献19)、(参考文献20)。このように、CCR4はATLの治療ターゲットとして関心があるものである(参考文献21)、(参考文献22)。成人性T細胞白血病によるCCR4の発現は、皮膚転移と関連しており、そのリガンドであるCCL17およびCCL22は、悪性細胞および皮膚腫瘍微小環境の両方によって産生される(参考文献23)。Ishidaらは、腫瘍細胞に対してADCC活性を誘導し、この疾患において見られる免疫抑制悪性Treg細胞に作用することもできる成人性T細胞リンパ腫の治療のための治療上の抗CCR4モノクローナル抗体を開発した(参考文献24)。
【0011】
CCR4陽性固形腫瘍細胞系の学術研究文献での唯一の報告は、ヒトの肺癌細胞株SBC−5である(参考文献34)。これらの細胞は、CCL22勾配に対して遊走し、骨転移のSBC−5の異種移植片において、CCL22を発現している破骨細胞およびCCR4を発現しているSBC−5細胞の近い共局在があった。主要なヒト腫瘍細胞におけるCCR4発現の報告は全くない。
【0012】
特許文献1は、特に哺乳類における心血管障害、胃腸および肝疾患、炎症性疾患、代謝性疾患、血液疾患、癌疾患、神経疾患、呼吸器病及び再生障害からなる広範囲にわたる疾患の治療への使用の可能性のある薬剤のスクリーニング方法を開示する。スクリーニング法は、CCR4への候補となる薬剤の結合の程度又は他のものを決定する。また、ハウスキーピング遺伝子の発現と比較したCCR4の発現レベルについての広範囲にわたるヒト細胞および組織のスクリーニング方法の説明もある。細胞および組織は、異なる供給源から得られ、単離された少数のものは、癌細胞/組織;例えば、甲状腺、回腸、HeLa、Jurkat、肺および乳癌細胞であった。CCR4の相対的な発現についての結果は、いかなる特定の疾患と関連した識別可能なパターンをまったく示さなかった。実際、試験された腫瘍細胞、例えば甲状腺および回腸の間では、CCR4の相対的な発現レベルが低く、他の非腫瘍細胞はCCR4のより高い相対的な発現レベルを示した。
【0013】
特許文献2は、Monocyte Chemotactic Protein−1(MCP−I/CCL2)、マクロファージ炎症性タンパク質Iα(MIPIα)および/または「RANTES」(Regulated upon Activation, Normal T−cell Expressed and Secreted/CCL5)に結合できるケモカイン受容体を開示する。CCR4のヌクレオチドおよびアミノ酸配列が開示された(CC−CKR−4/K5.5.K5.5およびCC−CKR4はCCR4の別の名前である)。CCR4の発現が、正常なヒト組織の比較的限られた範囲およびT細胞サンプルの範囲において発見された。Tリンパ球を活性することができるか、あるいはリガンドであるMCP−I、MIP−Iαおよび/またはRANTESのケモカイン受容体への結合を阻害することができる薬剤についてのスクリーニングアッセイの一般的な開示がある。スクリーニングによって得られた活性薬剤は、例えば、アレルギーの治療に役立つ可能性があるということがいくらか示唆されている。
【0014】
特許文献3は、CCR4の調節物質の投与による全身性のメモリーT細胞の輸送の調節を提案している。これは、炎症性皮膚疾患の治療として意図されている。CCR4のそのリガンドへの結合を調節することができる物質が、T細胞遊走にどのような影響を与えるかを示す試験管内での(in vitro)試験に用いられた。
【0015】
CCR4に対して反応する抗体が知られている。特許文献4は、特にCCR4の細胞外ドメインと反応性があると言われている組換え体抗体またはその断片を開示する。そのような抗体のポリペプチド配列も開示されている。CCR4陽性細胞と反応し、細胞障害性を有するか、または抗体依存性細胞介在性細胞障害(ADCC)の原因となる抗体も開示されている。これらの抗体は、Th2によって仲介される免疫疾患、または血液癌、特に白血病の治療への使用のために提案されている。
【0016】
特許文献5は、CCR4に特異的に結合することが可能な抗体を開示し、Fc領域におけるN結合型糖鎖複合体を有するCCR4抗体も開示する。CCR4の細胞外ドメインに対する抗体も開示されている。
【0017】
特許文献6は、「ヒトCDRを移植した抗体および断片」を開示する。CCR4に特異的に結合する特定のCDR(相補性決定領域;complementarity determining region)を開示する。抗体は、Th2によって仲介される免疫疾患または血液癌などの癌診断または治療への使用のために提案されている。
【0018】
特許文献7は、CCR4に特異的に結合する組換え抗体を少なくとも一種の他の薬剤と組み合わせて含む薬物を開示する。抗体は、腫瘍、特に造血臓器腫瘍の治療のために提案されている。
【0019】
特許文献8は、CCR4に対する抗体および該抗体の結合と競合することができる抗体を開示する。特定の診断の応用は開示されていない。炎症性障害の治療が提案されている。
【0020】
また、本技術分野において、CCR4受容体に結合する種々の小分子が知られている。
【0021】
特許文献9は、抗CCR4活性を有する小分子の三環系化合物を開示する。
【0022】
特許文献10は、抗CCR4活性を有する小分子の窒素含有複素環化合物を開示する。
【0023】
特許文献11は、CCR4阻害活性を有する特定の化合物を開示する。
【0024】
特許文献12)は、様々なCCR4結合化合物および癌を除く様々な疾患の治療への使用方法を開示する。
【0025】
特許文献13は、CCR4の拮抗剤である化合物を開示する。本出願は、炎症性疾患およびその状況の治療への使用方法を開示する。
【0026】
特許文献14は、CCR4調節因子としてキナゾリン誘導体を開示する。
【0027】
特許文献15は、CCR4調節因子としてピリミジン誘導体を開示する。
【0028】
特許文献16は、CCR4機能制御物質として融合二環式ピリミジン誘導体を開示する。
【0029】
特許文献17は、ケモカイン(特にCCR4)受容体活性を調節するスルホンアミド化合物を開示する。
【0030】
特許文献18は、ケモカイン(特にCCR4)受容体活性を調節するスルホンアミド化合物を開示する。
【0031】
特許文献19は、本技術分野における他の技術、ケモカイン受容体(CCR4を含む)とウイルスとの相互作用を調節することによって細胞のウイルス感染を調節する方法を開示する。
【0032】
特許文献20は、特定のケモカインおよびケモカイン受容体に対する抗体、並びに癌細胞の増殖および転移を阻害するのにそれらを使用する方法を開示する。抗体は、CCR4を除く特定のケモカイン受容体およびそのリガンドに対して産生されたものである。また、腫瘍において特定のケモカインが過剰発現しているかどうか試験する方法も記載され、そのような腫瘍を、過剰発現したケモカインまたはケモカイン受容体に対する抗体を投与することによって治療できることが示唆されている。
【0033】
特許文献21は、「マクロファージ由来のケモカイン(Macrophage Derived Chemokine)(MDC)と名付けたマクロファージ由来C−Cケモカインのヌクレオチド配列およびポリペプチド配列を開示する。MDCはCCL22と同義のものと見られる。TARCはCCL17と同義のものと見られる。MDCタンパク質またはポリペプチド断片の組換えまたは合成による製造方法が記載されている。また、MDCとの反応性を有する抗体に加えて、MDCおよびTARCケモカイン活性の調節因子を同定するアッセイも開示されている。
【0034】
子宮頸癌は、世界で女性に二番目に多く見られる癌である。癌が後期になるまで、多くの場合、症状がなく、それ故、組織病理学で前悪性の変化を検出することが可能なパップスメアを使用する強度の集団スクリーニングの対象である。異常なパップスメアは子宮頸部新形成の可能性を示すが、診断に不十分であり、その後、生体組織検査および付加的な侵襲的手法(「コルポスコピー」)が実行される。英国では全体で、24,000人の女性が、毎年異常なパップスメアを受ける。パップスメアは70%の感度しかないので、子宮頸癌又は前浸潤の病変を有するかなりの割合の女性が、診断されないままである。従って、i)スクリーニングをより自動化し、あまり主観的でないようにし、ii)スクリーニングの感度を改善するのに、より正確なスクリーニング方法が必要とされている。
【0035】
HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染が、大多数の浸潤性子宮頸癌で見られ、1つの方策は、パップスメアと合わせて、E6およびE7等のHPVマーカーが存在するかどうかスクリーニングすることである。しかしながら、性的に活発な集団のHPV感染が高水準であるため(最高80%までの感染歴)、これも、多数の偽陽性を同定するという結果となり、試験の精度をHPV有病率に依存するようにするものである。このように、子宮頸癌の新規バイオマーカーを同定することは、積極的に関心が持たれ続けている。
【0036】
さらに、新規のまたは代わりのバイオマーカーが、他の型の癌に必要とされており、該癌としては、以下の癌タイプ:気管支、鼻咽頭、喉頭、小細胞および非小細胞の肺、皮膚(例えば、黒色腫または基底細胞癌)、脳、膵臓、首、肺、腎臓、肝臓、乳房、結腸、膀胱、食道、胃、子宮頸部、卵巣、生殖細胞および前立腺が挙げられるが、これらに限定されない。ある癌のタイプに特有なバイオマーカーは、他の癌のタイプと共有されている可能性があり、それ故に、バイオマーカーの使用が、関連すると見られていた元の癌のタイプを越えて広がる可能性がある。
【0037】
抗癌治療法を必要とする患者の層形成を可能にする、ある範囲の癌についての改良されたバイオマーカーが必要とされている。
【0038】
癌の段階は、癌がどの程度広がったかという記述子(通常I〜IVの数)である。段階は、多くの場合、腫瘍のサイズ、どの程度深く浸透しているか、隣接した器官に侵入しているかどうか、リンパ節に転移しているかどうか、どれくらいのリンパ節に転移しているか、遠くの器官まで広がっているかどうかを考慮しているものである。癌の段階分けは、診断における段階が生存の最も強力な予測手段であり、治療を、段階に基づいて多くの場合変えるので重要である。
【0039】
治療は疾患段階に直接関連しているので、正しい段階分けは重要である。従って、誤った段階分けは、不適切な治療をもたらし、患者の生存能力の実質的に減少させる。しかしながら、正しい段階分けを達成するのは困難である。病理学者が組織切片を調べる病理学的な段階分けは、特に二つの特有の理由、すなわち視覚での判断および組織のランダムなサンプリングである問題になり得る。「視覚の判断力」とは、スライド上で健康的な細胞と混在した単一の癌細胞を識別することが可能であることである。1個の細胞の見落としは、誤った段階分けを意味し、深刻かつ予期せぬ癌の広がりをもたらす。「組織のランダムなサンプリング」とは、サンプルがランダムに患者のリンパ節から選ばれ、調べられることを指す。リンパ節に存在する癌細胞が、見ていた組織のスライスに偶然存在しない場合、誤った段階分けおよび不適切な治療が起こり得る。
【0040】
既存している抗癌剤を投与する改善した方法を伴うか、または効果的な新規抗癌剤を特定し、試験し、検証することを伴う癌に対する新しい治療が引き続き必要である。存在する有効性を観測する改良された方法および所与の治療措置の過程におけるいずれの新規抗癌剤も引き続き必要である。予測値のデータを生成する改良された方法も必要である。抗癌剤を使用する治療の投与量および頻度は、重要要因である。また、癌の進行段階または患者のグループと関連した抗癌治療を始めるタイミングも重要な要因である。改善された観測方法は、個体として、または遺伝子の、表現型の、もしくは他の特徴によってグループに分けての患者の最適な治療を求めるために必要である。
【0041】
患者の治療の選択におけるバイオマーカーの予後機能の例は、抗癌剤ハーセプチン(トラスツズマブ)の使用である。HER2/neu遺伝子は、ヒト染色体17の長腕(17ql1.2−ql2)に位置するプロトオンコジーンであり、HER2/neuの増幅は、初期乳癌の25−30%で起こる。癌において、HER2/neuからの成長を促進するシグナルは、恒常的に伝達され、細胞の浸潤、生存および脈管形成を促進する。さらに、過剰発現は、癌治療に対する治療上の抵抗性も与える。ハーセプチン(トラスツズマブ)は、受容体HER2/neu(別名ErbB−2)の細胞外セグメントに結合するヒト化モノクローナル抗体であり、HER2/neu受容体が過剰発現する乳癌を治療することにのみ効果的である。予後の役割に加えて患者のハーセプチンへの反応を予測する能力のために、乳房の腫瘍を、免疫組織化学(IHC)、発色性および蛍光のin situハイブリッド形成法(それぞれCISHおよびFISH)を含む種々の技術によって、HER2/neuの過剰発現について定期的にチェックする。
【0042】
また、癌の診断/段階分けの正確かつ信頼の高い方法も必要とされており、抗癌剤をスクリーニングする新規の方法も必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0043】
【特許文献1】国際公開第05106471号パンフレット
【特許文献2】国際公開第9623968号パンフレット
【特許文献3】国際公開第041724A1号パンフレット
【特許文献4】国際公開第0164754号パンフレット
【特許文献5】国際公開第05035582号パンフレット
【特許文献6】国際公開第03018635号パンフレット
【特許文献7】国際公開第05053741号パンフレット
【特許文献8】国際公開第0042074号パンフレット
【特許文献9】国際公開第04007472号パンフレット
【特許文献10】国際公開第05023771号パンフレット
【特許文献11】国際公開第02094264号パンフレット
【特許文献12】国際公開第0230358号パンフレット
【特許文献13】国際公開第0230357号パンフレット
【特許文献14】国際公開第051236976号パンフレット
【特許文献15】国際公開第05085212号パンフレット
【特許文献16】国際公開第05082865号パンフレット
【特許文献17】国際公開第04108717号パンフレット
【特許文献18】欧州特許1633729号明細書
【特許文献19】国際公開第03014153号パンフレット
【特許文献20】国際公開第2004/045526号パンフレット
【特許文献21】国際公開第99/15666号パンフレット
【発明の概要】
【0044】
本発明者らは、驚くべきことに、特定の固形腫瘍ではケモカイン受容体CCR4の発現は、発癌における初期の事象であることを発見した。その上、本発明者らは、腫瘍進行中にCCR4の2つのリガンドであるCCL17およびCCL22の発現が増加することを発見した。
【0045】
本発明は、固形腫瘍サンプル中の、または患者から採取された非血液学的な細胞腫瘍サンプル中の腫瘍細胞によって発現したケモカイン受容体CCR4の量および/または活性を測定するステップを含む癌患者の予測または診断の特徴の情報を得る方法を提供し、CCR4の量及び/又は活性は、予測または診断の特徴の情報を提供する。
【0046】
血液系腫瘍は、血球に由来し、免疫細胞を含む、そして、様々な種の白血病およびリンパ腫を含む。従って、本発明は、血液学的腫瘍に関してではない。
【0047】
本発明が関係している固形または非血液系腫瘍において、CCR4が腫瘍細胞によって発現されている。従って、本発明の方法は、患者の腫瘍細胞(または基準細胞)のサンプルによって発現し、実質的に免疫システムの細胞によってではなく発現したCCR4に関する。CCR4が、浸潤性の免疫細胞などの、望まれていない源由来のいずれの特許腫瘍サンプルにおいても生じる範囲で、本発明に従って測定されたCCR4の量および/または活性は、行われたいかなる測定において、有意でないか、または制御されているのいずれかである。
【0048】
好ましい実施態様において、CCR4活性の基準の量および/またはレベルを、1又は複数の非腫瘍サンプルにおいて測定することができる。少なくとも一つの非腫瘍サンプルを患者から採取してもよい。CCR4活性の基準の量および/またはレベルが患者の非腫瘍細胞から決定される場合、単一の非腫瘍組織のサンプルを患者から採取してもよい。必要に応じて、多数の非腫瘍サンプルが、同じ患者の異なる部位から採取される。従って、基準の量は、患者から採取されるいくつかのサンプルから決定される平均指数であってもよい。
【0049】
他の実施態様において、1又は複数の非腫瘍サンプルを、患者から任意選択的に採取しない。そのようなサンプルは、他の患者から採取され、培養された腫瘍細胞株を含んでもよい。
【0050】
情報を用いて、患者の固形腫瘍または非血液系細胞の腫瘍が、抗癌治療に対して感受性があるかどうかを予測してもよい。本発明の本態様は、好都合なことに、癌患者の層形成を可能にする。これによって、最適な抗癌治療または計画が所与の個々の患者について識別できる。
【0051】
好ましい実施態様において、患者が抗癌治療を受け、治療開始の前後において、患者の固形腫瘍サンプルまたは非血液系腫瘍サンプルにおけるCCR4の量および/または活性を測定してもよく、次に、得られた情報を用いて、患者の固形腫瘍または非血液系細胞腫瘍が抗癌治療に反応したかどうかを決定する。本発明の態様は、好都合なことに、癌患者を観測して、個々の治療が、どのように進行しているかを決定することを可能にする。治療計画の調整は、行われる経過進行に照らして行うことができる。
【0052】
情報を、固形腫瘍または非血液系細胞腫瘍の診断に使用してもよい。
【0053】
情報を用いて、固形腫瘍または非血液系細胞腫瘍を段階分けしてもよい。
【0054】
また、本発明は、患者から採取された固形腫瘍サンプルまたは非血液系細胞腫瘍サンプル中のCCR4のリガンドであるCCL17および/またはCCL22の量および/または活性を測定するステップを含む、腫瘍細胞がケモカイン受容体CCR4を発現している癌患者についての予測又は診断の特徴の情報を得る方法も提供し、CCL17および/またはCCL22の量および/または活性は、予測または診断の特徴の情報を提供する。
【0055】
予測または診断の特徴の情報を、固形腫瘍サンプルまたは非血液系細胞腫瘍サンプル中のCCL17および/またはCCL22の量および/または活性を、CCL17および/またはCCL22の活性の基準の量および/またはレベルと比較することによって得てもよい。
【0056】
CCL17および/またはCCL22の基準の量の活性および/またはレベルを、1又は複数の非腫瘍サンプルで測定してもよい。前記の本発明の形態のように、非腫瘍サンプルは、培養細胞株を含む患者または異なる患者もしくは源から採取してもよい。
【0057】
情報を用いて、患者の固形腫瘍または非血液系細胞腫瘍が、抗癌治療に対し感受性があるかどうかを予測してもよい。
【0058】
更なる任意の実施態様において、患者は抗癌治療を受け、治療開始の前後にCCL17および/またはCCL22の量および/または活性の測定を行い、得られた情報を用いて、患者の固形腫瘍または非血液系細胞腫瘍が抗癌治療に反応したかどうかを決定する。
【0059】
本発明のすべての態様において、特定の抗癌治療は、CCR4の発現又は活性を調節するか、または阻害する物質を含んでもよい。
【0060】
また、本発明は、癌患者における固形腫瘍または非血液系腫瘍によって発現したCCR4の存在を検出するか、または量を測定するためにケモカイン受容体CCR4に対して反応性を有する抗体を使用する方法も提供し、検出または測定した際の腫瘍によって発現したCCR4の存在又は量は、診断の特徴の情報を提供する。
【0061】
本発明は、更に、固形腫瘍または非血液系腫瘍の細胞によるCCR4の発現の量を検出するか、または測定するために、配列番号1の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるオリゴヌクレオチドプライマーまたはプローブを使用する方法を提供し、検出したか、又は測定した際の腫瘍によって発現したCCR4の存在または量は、診断の特徴の情報を提供する。
【0062】
上述した情報の使用方法は、本発明の方法の態様に関連して以上に定義されている。
【0063】
配列番号1の核酸は、特定の配列に限定されないが、まだ生物学的に活性のあるCCR4タンパク質をコードするバリアントを含む。そのようなバリアントとしては、配列番号1と少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列が挙げられる。他のバリアントは、少なくとも95%、任意選択的に少なくとも90%の同一性を有する。配列番号1と少なくとも65%〜少なくとも99%の同一性の範囲が本願明細書において開示される。
【0064】
種々のストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件は、本技術分野における当業者によく知られている。二つの相補的な核酸分子が、互いへのある程度の水素結合を受ける際に核酸分子のハイブリダイゼーションが起こる。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、核酸の周囲の環境条件、ハイブリダイゼーション法の性質、並びに使用した核酸分子の組成および長さによって変化させることができる。ストリンジェンシーの特定の程度を達成するのに必要とされるハイブリダイゼーションの条件についての算出は、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 2001)及びTijssen, Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology - Hybridization with Nucleic Acid Probes Part I5 Chapter 2 (Elsevier, New York, 1993)で述べられている。Tmは、核酸分子の所与の鎖の50%がその相補鎖にハイブリダイズする温度である。以下は、典型的なハイブリダイゼーションの条件の組であるが、これらに制限されない:
【0065】
非常に高いストリンジェンシー条件(少なくとも90%の同一性を共有する配列がハイブリダイズすることを可能にする)
ハイブリダイゼーション:65度で16時間、5×SSC
二回洗浄:それぞれ室温(RT)で15分、2×SSC
二回洗浄:それぞれ65度で20分、0.5×SSC
【0066】
高いストリンジェンシー(少なくとも80%の同一性を共有する配列がハイブリダイズすることを可能にする)
ハイブリダイゼーション:65℃〜70℃で16〜20時間、5×〜6×SSC
二回洗浄:それぞれ室温で5〜20分、2×SSC
二回洗浄:それぞれ55℃〜70℃で30分、1×SSC
【0067】
低いストリンジェンシー(少なくとも50%の同一性を共有する配列がハイブリダイズすることを可能にする)
ハイブリダイゼーション:室温(RT)〜55℃で16〜20時間、6×SSC
少なくとも二回洗浄:それぞれ室温(RT)〜55℃で20〜30分、2×〜3×SSC
【0068】
本発明は、CCR4の発現または活性を調節するか、または阻害する物質の有効量を投与することを含む、CCR4を発現する固形腫瘍または非血液系腫瘍を有する癌患者を治療する方法を含む。
【0069】
物質を、医薬製剤の形態で投与してもよい。適切な製剤は、殺菌した水溶液または非水溶液、懸濁液、およびエマルジョンを含む。組成物は、さらに、本技術分野において既知の助剤または賦形剤を含んでもよく、例えば、Berkow et al., The Merck Manual, 16th edition Merck & Co., Rahman, NJ (1992), Avery's Drug_Treatment: Principles and Practice of Clinical Pharmacology and Therapeutics, 3rd edition, ADIS Press, Ltd., Williams and Wilkins, Baltimore, MD (1987) & Osol (ed.), Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, PA 1324-1341 (1980)を参照されたい。本発明に従って投与される医薬組成物は、好ましくは、個々の用量の形態で与えられる(単位用量)。
【0070】
更に、本発明の方法および使用方法で使用される組成物または薬物は、組成物の効力を高めるのに望ましい塩類、バッファーまたは他の物質を含んでもよい。本発明に従う組成物又は薬物の投与は、局所的でも、全身性でもよい。
【0071】
また、本発明は、固形腫瘍または非血液系腫瘍の治療または予防のためにケモカイン受容体CCR4を調節するか、または阻害する物質を使用することも含む。
【0072】
上述した本発明の方法及び使用方法の態様のすべてにおいて、CCR4の発現または活性を調節するか、または阻害する物質は、
(i)CCR4と結合する抗体;任意選択的に、国際公開第0041724号パンフレット、国際公開第0164754号パンフレット、国際公開第05035582号パンフレット、国際公開第05035582号パンフレット、国際公開第03018635号パンフレット、国際公開第05053741号パンフレット、国際公開第0042074号パンフレットのいずれにて開示されている抗CCR4抗体、または
(ii)CCR4リガンドであるCCL17およびCCL22に結合する抗体;任意選択的に、国際公開第99/15666号パンフレットまたはIshida, T., et al (2004) Clin Cancer Res 10:7529−7539に開示されている抗CCL17または抗CCL22抗体。
(iii)CCR4拮抗剤;任意選択的に、国際公開第04007472号パンフレット、国際公開第05023771号パンフレット、国際公開第02094264号パンフレット、国際公開第0230358号パンフレット、国際公開第0230357号パンフレット、国際公開第05123697号パンフレット6、国際公開第05085212号パンフレット、国際公開第05082865号パンフレット、国際公開第04108717号パンフレット、欧州特許第1633729号、国際公開第03014153号パンフレットに開示されているCCR4拮抗剤
である。
【0073】
活性物質の適切な組成物および製剤は、上述した刊行物に記載されているものを含む。
【0074】
本発明は、更に、患者由来の固形腫瘍または非血液系腫瘍のサンプルから癌患者の予測又は診断の特徴の情報を得るためのキットを提供し、該キットは、CCR4との反応性を有する抗体、CCL17との反応性を有する抗体、CCL22との反応性を有する抗体、およびストリンジェントな条件下で配列番号1とハイブリダイズできるオリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーから選択された少なくとも一つの試薬と、キットの使用者が、サンプル中のCCR4、CCL17およびCCL22の1又は複数の量および/または活性を測定するために、患者由来の固形腫瘍または非血液系腫瘍のサンプルに、試薬を投与するように導く表示とを含む。
【0075】
特定の実施態様では、キットは、1又は複数の非腫瘍細胞の基準のサンプルを含み、表示は一組の説明書であり、キットの使用者が患者のサンプルおよび基準のサンプルの両方におけるCCR4、CCL17およびCCL22の1又は複数の量および/または活性のレベルを測定するように導く。基準のサンプルは、培養された腫瘍細胞または細胞抽出物を含んでもよい。
【0076】
他の実施態様において、表示は、一組の説明書であり、CCR4、CCL17、およびCCL22の1又は複数の基準の量および/または活性のレベルについての基準値を含む。好ましくは、基準値は、癌の状態であるか否かにかかわらず選択された個人または患者由来の非腫瘍サンプル中のCCR4、CCL17、またはCCL22の量および/または活性を測定することによって行われる先の作業によって得られる。そのような先の測定は、培養した非腫瘍ヒト細胞株で行ってもよい。
【0077】
また、本発明は、
i)CCR4を発現し、(a)増殖、(b)遊走、(c)タンパク質もしくはシグナル伝達分子の分泌、または(d)特定の条件下で培養した際の細胞生存性から選択された生物活性を示すことができるか、又は該生物活性を示す最中にある試験細胞を用意するステップと、
ii)一定期間、試験細胞を候補物質に曝すステップと、
iii)試験細胞の生物活性を測定し、それによって、候補物質の非存在下での当該試験細胞の生物活性がないこと又は予測された活性より少ない活性によって、抗癌剤を特定するステップとを含む、
ケモカイン受容体CCR4を発現する固形腫瘍または非血液系腫瘍対して活性を有する抗癌剤をスクリーニングする方法も含む。
【0078】
好適な方法において、試験細胞のコントロールの一定分量を候補物質に曝さず、予想された生物活性を決定するように、コントロール細胞の生物活性を測定する。
【0079】
試験細胞およびいずれのコントロール細胞の生物活性を、CCR4受容体のリガンド、好ましくはCCL17および/またはCCL22の添加によって誘導してもよい。
【0080】
すべての本発明の態様において、固形腫瘍または非血液系腫瘍は、子宮頸部、食道、腎臓、脳、乳房、卵巣、前立腺、胃、または膵臓の癌から選択された癌であってもよい。本発明は、子宮頸部、食道、腎臓、脳、乳房および卵巣の癌に関して、特定の利益を有してもよい。
【0081】
従って、本発明は、患者の腫瘍細胞のサンプル中のCCR4の量または活性を決定することを含む、癌患者が、CCR4発現および/またはCCR4活性を調節する物質による治療に適しているかどうかを決定する方法を提供する。
【0082】
更に、本発明は、患者の腫瘍細胞のサンプル中のCCL17および/またはCCL22の量または活性を決定することを含む、癌患者が、CCL17および/またはCCL22のレベルまたは活性を調節する物質による治療に適しているかどうかを決定する方法を提供する。
【0083】
従って、本発明は、本願明細書において開示される物質を含むCCR4、CCL17および/またはCCL22を調節するか、または阻害する物質による治療への適切性に従って癌患者を層形成するために、CCR4、CCL17および/またはCCL22をバイオマーカーとして使用する方法を提供する。
【0084】
特定の治療薬による治療への癌患者の適切性は、いくつかは相互に関連している多数の要因によって支配されている。患者の年齢、性別、癌の段階、癌の種類、患者の遺伝子構造、食事または喫煙などの生活様式の要因が、所与の治療計画の可能性のある結果にすべて影響することがあり得る。層形成は、通常、グループ内に含まれる複数の患者又は個々の患者のグループについての臨床の結果の点からみて予測を行うことができるようにすることが可能な多数の選択したパラメータに基づいて患者を分類するために行われる。
【0085】
概して、患者の腫瘍サンプル中のCCR4、CCL17および/またはCCL22の1又は複数の増加したレベルまたは活性は、本願明細書において開示された抗癌剤による治療が有益である患者で示された。
【0086】
また、本発明は、患者由来の腫瘍細胞のサンプル中のCCR4の量または活性を決定することを含む、患者における抗癌治療の効率を観測する方法を含む。
【0087】
更に、本発明は、患者由来の腫瘍細胞のサンプル中のCCL17および/またはCCL22の量または活性を決定することを含む、患者における抗癌治療の効率を観測する方法を含む。
【0088】
上述した方法において、腫瘍細胞のサンプリングを、抗癌剤投与の前、その最中、および/またはその後に行ってもよい。
【0089】
また、本発明は、
(a)例えば、国際公開第0041724A1号パンフレット(LELAND STANFORD/LEUKOSITE)に開示されているCCR4調節物質、
(b)例えば、国際公開第0164754号パンフレット(協和発酵工業)、国際公開第05035582号パンフレット(協和発酵工業)、国際公開第03018635号パンフレット(協和発酵工業)、国際公開第05053741号パンフレット(協和発酵工業)もしくは国際公開第0042074号パンフレット(MILLENIUM PHARMACEUTICALS)に開示されている抗CCR4抗体、又は
(c)例えば、国際公開第04007472号パンフレット(小野薬品工業株式会社)、国際公開第05023771号パンフレット(小野薬品工業株式会社)、国際公開第02094264号パンフレット(TULARIK INC.)、国際公開第0230358号パンフレット(TULARTK/CHEMOCENTRYX)、国際公開第0230357号パンフレット(CHEMOCENTRYX)国際公開第051236976号パンフレット(アステラス製薬)国際公開第05082865号パンフレット(山之内製薬)、国際公開第04108717号パンフレット(アストラゼネカ社)、欧州特許第1633729号(アストラゼネカ社)もしくは国際公開第03014153号パンフレット(TOPIGEN PHARMACEUTIQUE INC.)に開示されているCCR4拮抗剤
から選択された物質の投与を含む、本願明細書に記載されている特定の固形腫瘍の予防または治療のための方法も提供する。
【0090】
従って、本発明は、患者由来の腫瘍細胞のサンプル中のCCR4、CCL17および/またはCCL22の活性及び/又は発現のレベルを決定することを含む、CCR4調節物質、抗CCR4抗体、CCR4拮抗剤による治療に感受性のある個体における固形腫瘍を診断する方法も提供する。基準値を考慮する標準化した基準に絶対的に基づくか、または(a)腫瘍/非腫瘍細胞の間の関係もしくは(b)長期にわたる腫瘍細胞の間の関係での相対的な(標準化した)基準に基づく活性および/または発現レベルの増加は、概して、本願明細書において開示する抗CCR4剤による治療に感受性がある腫瘍を示す。
【0091】
本発明は、固形腫瘍の診断または治療への診断の適切さの情報を提供する方法を含み、該方法は、癌と疑われる患者由来の細胞のサンプル中のCCR4、CCL17および/またはCCL22の量または活性を決定することを含む。
【0092】
また、本発明は、個人から得た腫瘍細胞のサンプル中のCCR4のケモカイン受容体またはそのリガンドCCL22もしくはCCL17の1又は複数のレベル決定することを含む、個人における癌を識別するか、または同定する方法を提供し、癌は、固形腫瘍である。
【0093】
好都合なことに、本発明の方法は、識別、または個人の癌の進行、または適切な治療の選択のために個人を層形成する方法で、特に固形腫瘍の、特に固形腫瘍、より詳細には、子宮頸部、食道の癌に加えて、気管支、鼻咽頭、喉頭、小細胞および非小細胞の肺、皮膚(例えば黒色腫または基底細胞癌)、脳、膵臓、首、肺、腎臓、肝臓、乳房、結腸、膀胱、食道、胃、子宮頸部、卵巣、生殖細胞および前立腺の癌からなる群から選択される癌を含む固形腫瘍に関連して、個人における癌を同定するか、もしくは段階分けするか、または適切な治療の選択について個人を層形成する信頼性が高く、より正確な方法を提供する。
【0094】
患者から得られたサンプルは、好ましくは生検サンプルである。生検は、検査のために細胞もしくは組織を除去することを含む医学的試験である。概して、組織を、病理学者による顕微鏡下で調べるか、および/またはタンパク質もしくはRNAレベルを評価するために本技術分野において周知の技術を用いて、化学的に分析してもよい。組織のより小さいサンプルを除去する場合、手法は、部分生検またはコア生検と呼ばれる。すべての塊または疑わしい部分を除去する場合、手法は摘出生検と呼ばれる。組織または流体のサンプルを針で除去する場合、手法は、針吸引生検と呼ばれている。
【0095】
別の実施態様において、サンプルは、本技術分野において周知の他の方法によって、患者から得てもよく、該サンプルとしては、血液、血清、尿、痰、腹水、腹腔内の流体および「スメア」試験によって採取される細胞のサンプルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
血液サンプルは、患者および必要な血液の量の必要性に適した、静脈穿刺によって(例えば、真空収集管または注射器によって)、カテーテル、カニューレ、または指穿刺もしくは踵穿刺によって採取される。血液サンプルを収集したら、保存のために、またはサンプルの分析によって得られるシグナルの精度および/または信頼性を最大にするために、分析の前に処理してもよい(例えば、クエン酸ナトリウム、EDTA、エチルアルコールまたはヘパリンによって)。
【0097】
処理方法(例えば遠心分離および/または濾過)を用いて、血液サンプルを独立して試験される画分に分離してもよい。例えば、血清サンプルは、空気との接触で全血サンプルを凝固させ、凝固した画を遠心分離で除去して、上清として血清を残すことによって得られる。
【0098】
尿サンプルは、好ましくは排尿またはカテーテル法によって集められる。
【0099】
痰サンプルは、咳および/または喀出によって、または気道に挿入した吸引管または針を用いてサンプルを抽出することによって、患者から収集することができる。好ましくは、痰サンプルは、汚染を回避するため、唾液との接触が最小となるべきである。
【0100】
スメア試験(例えば、パパニコロウ試験、パップスメアまたは子宮頚部スメア試験とも呼ばれる)を用いて、患者から細胞をサンプリングする。子宮頚部スメア試験の場合、細胞を、試験する組織の表面から、エールズベリー・スパーテル(Aylesbury spatula)、プラスチック・フロンデッド・「ブルーム」(plastic fronded‘broom')、または他の道具を用いて、収集し、除去する。
【0101】
患者から採取されたサンプルにおいて収集された細胞および/または液体を、直ちに処理してもよいか、または後の処理のための適切な貯蔵媒体に保存してもよい。例えば、子宮頚部スメア試験の場合、細胞は、多くの場合、エタノールを基とした貯蔵媒体において、後の処理および分析のために保存される。サンプル保存のために、またはサンプルの分析で得られるシグナルの精度および/または信頼性を最大にするために処理してもよい。処理方法(例えば遠心分離および/または濾過)を用いて、サンプルを独立して試験される画分に分離してもよい。
【0102】
先にまたは以下に定められるか、又は記載される本発明のすべての方法および使用方法において、癌は、固形腫瘍を引き起こすものである。また、癌は、好ましくは、気管支の、鼻咽頭の、喉頭の、小細胞および非小細胞の肺、皮膚(例えば黒色腫または基底細胞癌)、脳、膵臓の、首、肺、腎臓、肝臓、乳房、結腸、膀胱、食道、胃、子宮頸部、卵巣、生殖細胞および前立腺のものからなる群より選択されるものでもある。より好ましくは、癌は、子宮頸部、食道、腎臓、脳、乳房および卵巣の癌である。
【0103】
他の実施態様において、癌は、上皮性癌、好ましくは扁平上皮癌(SCC)または腺癌であってもよく、より好ましくは、子宮頸部、食道、腎臓、脳、乳房および卵巣の癌から選択されてもよい。
【0104】
好ましい実施態様において、腫瘍細胞によって生じるCCR4および/またはCCL17および/またはCCL22のレベルの増加によって、悪性癌または将来的に悪性となる癌が同定される。
【0105】
非腫瘍細胞で生じたCCR4および/またはCCL17および/またはCCL22の1又は複数のレベルを決定し、腫瘍および非腫瘍細胞におけるレベルを比較してもよい。
【0106】
好ましい実施態様において、CCR4単独のレベルを決定する。他の実施態様において、CCL17またはCCL22単独のレベルを決定する。
【0107】
腫瘍細胞におけるCCR4および/またはCCL17および/またはCCL22のレベルを、あらかじめ定められたレベルと比較してもよい。あらかじめ定められたレベルを、正常な非癌性の組織、初期段階の癌組織、データベースから得られるか、または利用可能な生体物質又はサンプルから直接得られたデータから得てもよい。
【0108】
CCR4および/またはCCL17および/またはCCL22のレベルを決定する様々な方法を、本発明の方法で使用することができる。好ましくは、CCR4および/またはCCL17および/またはCCL22のタンパク質レベルおよび/または活性を、サンプル中のCCR4および/またはCCL17および/またはCCL22の遺伝子産物の基準として使用してもよい。
【0109】
更なる好ましい実施態様において、CCR4および/またはCCL17および/またはCCL22のタンパク質レベルを、それぞれ、CCR4、CCL17およびCCL22に対して反応性を有する抗体、好ましくは、例えばモノクローナル抗体といった特異的な抗体を用いて測定する。
【0110】
特定のタンパク質の位置および量を、顕微鏡検査および組織学的な技術によって検出することができる。サンプル調製、本技術分野において周知の染色および探索を用いて、細胞構造を示すことができ、それと関連した特定のタンパク質を検出することができ、サンプル内でのその位置を見ることができる。
【0111】
組織化学的染色は、本技術分野において周知であり、細胞形態および/またはより特有の細胞構成成分を示すために用いられる。一般的に用いられる染色としては、ヘマトキシリン(核酸およびエルガストプラズムを染色する、青)およびエオシン(弾性繊維および細網繊維染色する、ピンク)が挙げられる。
【0112】
免疫組織化学は、特定のタンパク質に対する抗体を、サンプル中の前記タンパク質の検出のために用いる技術である。サンプルにおける抗原への抗体の結合を、多くの方法で検出できる。
【0113】
ほとんどの標準的な方法は、抗体に、色を変える反応を触媒する酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ)を抱合するものであり、したがって、適切な色素の基質を用いることで、光学顕微鏡下での抗原の位置が視覚化できる。この方法のバリエーションは、抗体が、適切なエネルギー源によって励起された際に、検出可能なシグナルを発するフルオロフォア(例えばFITC、ローダミン、Texas Red)に抱合している免疫蛍光法である。通常、これは、特定の波長の光である。免疫蛍光法は、異なる抗体に付いた多数のフルオロフォアを使用することによって、サンプル内の多数のターゲットの検出が可能となることから、好都合であり、特に、非常に感度が高く、多数のタンパク質間の相互作用も視覚化するために用いることができる共焦点レーザー走査顕微鏡に適している。
【0114】
多くの場合、特定の抗原の検出は、段階を増やし、間接的な方法によって行われる。試験される抗原に対して産生された非標識のまたは非抱合型の「一次」抗体を前記抗原を結合するのに使用する。次に、この「一次」抗体を、検出可能なマーカーに抱合し、一次抗体が産生された種の免疫グロブリンと反応するように産生された「二次」抗体によって検出してよい。
【0115】
抗体を使用するタンパク質レベルの測定は、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法、Enzyme−linked Immunosorbent Assay)、RIA(ラジオイムノアッセイ、Radioimmunoassay)、EMIT(競合的酵素免疫分析法、Enzyme Multiplied Immunoassay Technique)、タンパク質マイクロアレイ分析、フローサイトメトリー、ウェスタンブロッティング、ドットブロット、またはスロットブロッティングなどの技術を使用してもよく、好ましい方法は、定量的なものである。
【0116】
フローサイトメトリーは、流体の流れの中で浮遊している顕微鏡的な粒子を計数し、調べ、分別する技術である。それは、光学および/または電子の検出装置による単一の細胞の流れの物理的および/または化学的な特徴の同時の多数のパラメータの分析可能にするものである。
【0117】
蛍光標示式細胞分取(FACS)は、特殊化した種類のフローサイトメトリーである。それは、生物細胞の不均一な混合物を、特定の光散乱および各細胞の蛍光特徴に基づいて、一度に一つの細胞で2又は3以上の容器に分別する方法を提供する。FACSは、個々の細胞からの蛍光シグナルを迅速、客観的、および定量的な記録に加えて、特に興味のある細胞の物理的な分離をもたらすことから、有用な科学的な道具である。
【0118】
サンプル中の細胞集団は、通常不均一である。細胞間の違いを検出するために、組織化学技術に似た、化学的および免疫化学的技術を用いて、該細胞集団を処理する。抗原の免疫化学的検出を、FITC、Cy5およびGFPなどのフルオロフォアで標識した抗体を用いて行ってもよい。色素(DNA結合色素サイバーグリーンおよびDAPIなど)で細胞を染色することを用いて、サンプル内および間での細胞のサイズまたは細胞周期の段階などの違いを検出してもよい。これらの技術を組み合わせて使用することで、不均一なものの中の異なる細胞に、フローサイトメーターで識別可能である特定の蛍光プロファイルを与えることが可能となる。このようにして、特定の抗原を発現するか、または特定の光散乱プロファイルと関連した細胞を検出し、サンプル集団内のそれらの普及率を測定してもよい。
【0119】
別の方法として、CCR4および/またはCCL17および/またはCCL22のレベルを、サンプル中のCCR4および/またはCCL17および/またはCCL22の遺伝子産物のレベルの基準として、CCR4および/またはCCL17および/またはCCL22をコードするmRNAのレベルを測定することによって決定してもよい。
【0120】
更なる本発明の好ましい実施態様において、mRNAレベルを、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)方法、好ましくは、鋳型が逆転写酵素反応の産物であるqPCR方法(RT−qPCR)で測定する。
【0121】
好ましい実施態様において、サンプルからmRNAを抽出し、qPCRの前に逆転写してcDNAを生産する。
【0122】
他の好ましい実施態様において、CCR4および/またはCCL17および/またはCCL22の転写のレベルを、ヌクレアーゼ保護アッセイを用いて測定し、好ましくは、使用されるプローブが、CCR4および/またはCCL17および/またはCCL22に特異的である。
【0123】
本発明の他の好ましい実施態様において、mRNAレベルを、DNAマイクロアレイを用いて測定する。
【0124】
DNAマイクロアレイ(別名遺伝子もしくはゲノムのチップ、DNAチップまたは遺伝子アレイ)は、一般的に単一遺伝子を示し、化学的に適切なマトリックスへの共有結合によって固体の表面上に配置されている顕微鏡のDNAスポットの収集物である。DNAマイクロアレイを用いる質的または定量的な測定は、高いストリンジェントな条件下でのDNA−DNAまたはDNA−RNAのハイブリダイゼーションの選択的な性質を利用する。フルオロフォアに基づく検出を用いて、定量的な測定値が算出されるハイブリダイゼーションの程度を決定してもよい。
【0125】
好ましい実施態様において、癌は悪性癌である。別の方法として、癌は、将来悪性となる癌であってもよい。本発明の方法は、好都合なことに、患者における癌が進行した段階を同定することができ、それによって、治療の最も適切なコースの特定ができるようになる。
【0126】
本願明細書において先に記載したすべての従属的な態様を含む本発明の方法と一致するように、本発明は、癌の同定および/または段階分けのマーカーとして、CCR4受容体を使用する方法も提供する。CCR4受容体を、抗体で検出してもよく、例えばモノクローナル抗体といった、特異的な抗体が好ましい。
【0127】
同様に、本発明は、癌の同定および/または段階分けのマーカーとして、CCL17リガンドを使用する方法も提供する。CCL17のリガンドを、抗体で検出してもよく、例えばモノクローナル抗体といった、特異的な抗体が好ましい。
【0128】
本発明も、癌の同定および/または段階分けのマーカーとして、CCL22リガンドを使用する方法も提供する。CCL22リガンドを、抗体で検出してもよく、例えばモノクローナル抗体といった、特異的な抗体が好ましい。
【0129】
本発明は、癌を患っている個人を、CCR4および/またはCCL17および/また抗CCL22に対して反応性を有する抗体の有効量で処置することを含む、癌を患っている個人における悪性疾患を治療するか、または予防する方法を含む。したがって、本発明は、癌を患っている個人における癌の治療または予防のための薬物の製造のために、CCR4および/またはCCL17および/またはCCL22に対して反応性を有する抗体を使用する方法を提供する。
【0130】
本発明の更なる実施態様において、CCR4および/またはCCL17および/またはCCL22に対して反応性を有する抗体を、癌の治療または予防のための薬物製造に用いてもよい。
【0131】
好ましい実施態様において、薬物はCCR4に特異的な抗体を含み、モノクローナル抗体であってもよい。
【0132】
本発明の本態様の実施態様は、例えば、国際公開第0154754号パンフレット(協和発酵工業)、国際公開第05035582号パンフレット(協和発酵工業)、国際公開第03018635号パンフレット(協和発酵工業)、国際公開第05052741号パンフレット(協和発酵工業)または国際公開第0042074号パンフレット(MILLENIUM PHARMACEUTICALS)に開示されている抗体である。
【0133】
さらに好ましい実施態様において、薬物は、CCL17に特異的な抗体を含み、モノクローナル抗体であってもよい。
【0134】
さらに好ましい実施態様において、薬物は、CCL22に特異的な抗体を含み、モノクローナル抗体であってもよい。
【0135】
もう一つの実施態様において、薬物は、scFv、F(ab’)2、Fab、FvおよびFd断片からなる群から選択されるFabフラグメントまたはCDR3領域である抗体を含む。
【0136】
抗原結合性断片(Fab断片)は抗原に結合する抗体上の領域である。それは、重鎖および軽鎖の各々の1つの定常ドメインおよび1つの可変ドメインのから成る。これらのドメインは、モノマーのアミノ末端においてパラトープ、すなわち抗原結合部位を形成する。2つの可変ドメインは、それらの特異的な抗原上のエピトープを結合する。
【0137】
FcおよびFab断片を作り出すことができる。パパイン酵素を用いて、免疫グロブリンモノマーを2つのFab断片およびFc断片に切断することができる。ペプシン酵素がヒンジ領域の下で切断し、それ故に、F(ab’)2断片およびFc断片が形成される。重鎖および軽鎖の可変領域を融合して、単鎖可変断片(scFv)を形成することができ、該scFvは、Fabフラグメントの半分のサイズしかないが、親免疫グロブリンの元の特異性を保持する。
【0138】
相補性決定領域(CDR)は、抗原を補完する、抗原受容体(例えば免疫グロブリンおよびT細胞受容体)タンパク質の可変ドメインで見られる短いアミノ酸配列であり、したがって、特定の抗原のへの特異性を有する受容体をもたらすものである。免疫グロブリンおよびT細胞受容体と関連した大部分の配列の変化は、CDR領域で見られ、これらの領域は、時として超可変ドメインと称される。これらの中でも、CDR3は、VJ領域の組換えによってコードされる際に、最も大きな可変性を示す。
【0139】
別の実施態様では、薬物はヒト化抗体またはキメラ抗体である抗体を含む。
【0140】
ヒト化抗体またはキメラ抗体は、外来の抗原に対する免疫反応の臨床的な問題を回避するように組換えDNA技術を用いて合成されるある一種のモノクローナル抗体である。モノクローナル抗体を生産する標準的な手順によってマウス抗体が得られる。マウス抗体がヒト抗体と非常に類似しているにもかかわらず、十分で、ヒト免疫システムがマウス抗体を外来のものと認識するのに充分に違いがあるものであり、急速に循環から該抗体を除去し、全身の炎症効果を引き起こす。
【0141】
ヒト化抗体は、モノクローナルマウス抗体の結合部位をコードするDNAをヒト抗体産生DNAと合併することによって生産することができる。次に、哺乳類細胞の培養を用いて、このDNAを発現させ、純粋にマウスの変種と同程度の免疫原性ではないこれらの一部マウスで一部ヒトである抗体を生産する。
【0142】
細胞特有の抗原にのみ結合するモノクローナル抗体を改変してもよく、好ましくは、ターゲットの癌細胞に対して免疫応答を誘導する。そのようなモノクローナル抗体は、好ましくは毒素、放射性同位元素、サイトカインまたは他の活性を有する抱合体の送達について改変されている。
【0143】
抗体技術の他の態様において、Fab領域を用いて、標的抗原と抱合体またはエフェクターの細胞の両方に結合することができるように二重特異性抗体を設計することができる。また、すべての無傷の抗体は、そのFc領域を用いて細胞受容体は他のタンパク質に結合することができる。
【0144】
また、組換えモノクローナル抗体の生産は、レパートリークローニングまたはファージディスプレイ/イーストディスプレイと称される技術も含むことができる。これらは、マウスよりむしろウイルスまたはイーストを用いて抗体をつくることを伴う。これらの技術は、望ましい特異性を有する抗体を選択できる、わずかに異なるアミノ酸配列を有する抗体のライブラリを作成する免疫グロブリン遺伝子セグメントの急速なクローニングに依存する。このプロセスを用いて、抗体が抗原を認識する特異性を強化し、様々な環境条件における抗体の安定性を変え、抗体の治療効力を増やし、診断の適用における抗体の検出能力を調節することができる。
【0145】
本発明は、CCR4および/またはCCL17および/またはCCL22の小分子阻害剤の有効量で、癌を患っている個人を処置することを含む、癌を患っている個人における悪性疾患を治療するか、または予防する方法を含む。従って、本発明は、癌を患っている個人における治療または予防のための薬物の製造のために、CCR4および/またはCCL17および/またはCCL22の小分子阻害剤を使用する方法を提供する。
【0146】
本発明の本態様の実施態様は、例えば、国際公開第04007472号パンフレット(小野薬品工業株式会社)、国際公開第05023771号パンフレット(小野薬品工業株式会社)、国際公開第02094264号パンフレット(TULARIK INC.)、国際公開第0230358号パンフレット(TULARIK/CHEMOCENTRYX)、国際公開第0230357号パンフレット(CHEMOCENTRYX)、国際公開第05123697号パンフレット6(ASTELLAS PHARMA INC.)、国際公開第05085212号パンフレット(山之内製薬(株))、国際公開第05082865号パンフレット(山之内製薬(株))、国際公開第04108717号パンフレット(ASTRAZENECA AB)、欧州特許第1633729号(ASTRAZENECA AB)または国際公開第03014153号パンフレット(TOPIGEN PHARMACEUTIQUE INC.)に開示されている小分子阻害剤である。
【0147】
また、本発明は、CCR4および/またはCCL17および/またはCCL22の活性を調節する物質の有効量で癌を患っている個人を処置することを含む、癌を患っている個人における悪性疾患を治療するか、または予防する方法も含む。従って、本発明は、癌を患っている個人における癌の治療または予防のための薬物の製造のために、CCR4および/またはCCL17および/またはCCL22活性を調節する物質を使用する方法を提供する。
【0148】
本発明の本態様の実施態様は、例えば、国際公開第0041724号パンフレット(LELAND STANFORD/LEUKOSITE)に開示されている、CCR4を調節する物質である。
【0149】
好適な態様において、本発明の方法および使用方法は、好ましくは、気管支、鼻咽頭、喉頭、小細胞および非小細胞肺、皮膚(例えば黒色腫または基底細胞癌)、脳、膵臓、首、肺、腎臓、肝臓、乳房、結腸、膀胱、食道、胃、子宮頸部、卵巣、生殖細胞および前立腺の癌からなる群から選択される癌の治療のためのものである。より好ましくは、癌は、子宮頸部、食道、腎臓、脳、乳房および卵巣の癌である。
【0150】
特に好適な処置では、癌は、子宮頸癌、好ましくは扁平上皮癌(SCC)である。
【0151】
特に好適な処置では、癌は、食道癌、好ましくは食道扁平上皮癌である。
【0152】
別の態様において、本発明は、
a)CCR4受容体を発現し、増殖が可能であるか、または増殖中である試験細胞を用意するステップと、
b)一定期間、試験細胞を候補物質に曝すステップと、
c)試験細胞の増殖を測定し、それによって、試験細胞のいかなる増殖における減少によって、抗癌剤を特定するか、かつ/または試験細胞の増殖の増加または継続によって、弱いまたは不活性な抗癌剤を特定するステップ
とを含む、抗癌剤をスクリーニングする方法を提供する。
【0153】
他の態様において、本発明は、
a)CCR4受容体を発現し、増殖が可能であるか、または増殖中である試験細胞を具えるステップと、
b)前記細胞の少なくとも第一と第二の一定分量を具えるステップと、
c)前記第一の一定分量を候補物質に一定期間曝すステップと、
d)前記第二の一定分量を候補物質に一定期間曝さないステップと、
e)第一および第二の一定分量において、細胞の増殖の程度を測定し、それによって、第一の一定分量における細胞の増殖が、第二の一定分量における細胞と比較して、減少していることによって、抗癌剤を同定するか、かつ/または第二の一定分量と比較して第一の一定分量における細胞の増殖が増加するか、もしくは継続することによって、弱いまたは不活性な抗癌剤を特定するステップ
とを含む、抗癌剤をスクリーニングする方法を提供する。
【0154】
特定の好ましい実施態様において、好ましくは候補物質に曝す前に、試験細胞は、増殖するように誘導される。
【0155】
他の好ましい実施態様において、試験細胞は、CCR4受容体リガンドの添加によって増殖するように誘導される。
【0156】
別の態様において、本発明は、
a)CCR4を発現する試験細胞を具えるステップと、
b)一定期間試験細胞を候補物質に曝すステップと、
c)分泌されたタンパク質またはシグナル伝達分子のレベルを測定し、それによって、分泌されたタンパク質もしくはシグナル伝達分子のレベルの減少によって、抗癌剤を特定するか、かつ/または分泌されたタンパク質もしくはシグナル伝達分子のレベルが全く減少していないか、もしくは増加していることによって、弱いまたは不活性な抗癌剤を特定するステップ
とを含む、抗癌剤をスクリーニングする方法を提供する。
【0157】
他の態様において、本発明は、
a)CCR4を発現する試験細胞を具えるステップ、
b)前記細胞の少なくとも第一および第二の一定分量を具えるステップと、
c)一定期間、前記第一の一定分量を候補物質に曝すステップと、
d)一定期間、前記第二の一定分量を候補物質に曝さないステップと、
e)第一および第二の一定分量における試験細胞の分泌されたタンパク質またはシグナル伝達分子のレベルを測定し、それによって、第二の一定分量における細胞とを比較して、第一の一定分量における細胞による分泌されたタンパク質またはシグナル伝達分子のレベルが減少していることによって、抗癌剤を特定するか、かつ/または第二の一定分量における細胞とを比較して第一の一定分量における細胞からの分泌された分子またはシグナル伝達分子のレベルがまったく減少していないか、もしくは増加していることによって、弱いまたは不活性な抗癌剤を特定するステップ
とを含む、抗癌剤をスクリーニングする方法を提供する。
【0158】
好ましい実施態様では、分泌されたタンパク質またはシグナル伝達分子は、サイトカインまたはケモカインである。
【0159】
他の好ましい実施態様において、分泌されたタンパク質またはシグナル伝達分子のレベルを、試験細胞を候補物質に曝す前、曝している間、または曝した後のいかなる時点でも測定する。
【0160】
特定の好ましい実施態様において、好ましくは候補物質に曝す前に、試験細胞を、特定のタンパク質または他のシグナル伝達分子、好ましくはケモカインまたはサイトカインを分泌するように誘導する。
【0161】
他の好ましい実施態様において、試験細胞を、CCR4受容体のリガンドの添加によって、特定のタンパク質または他のシグナル伝達分子、好ましくはケモカインまたはサイトカインを分泌するように誘導する。
【0162】
別の態様において、本発明は、
a)CCR4受容体を発現し、遊走できるか、または遊走中である試験細胞を用意するステップ。
b)一定期間、試験細胞を候補物質に曝すステップと。
c)曝すのと同時にまたは曝した後に、細胞の遊走に適した条件を具え、曝した細胞のいかなる遊走をも測定し、曝した細胞における遊走が減少しているか、もしくは全くないことによって、抗癌剤を特定するか、かつ/または試験細胞の遊走が増加しているか、もしくは継続していることによって、弱いまたは不活性な抗癌剤を特定するステップ、
とを含む、抗癌剤をスクリーニングする方法を提供する。
【0163】
抗癌剤をスクリーニングする方法は、
a)CCR4受容体を発現し、遊走できるか、または遊走中である試験細胞を具えるステップと、
b)前記細胞の少なくとも第一および第二の一定分量を具えるステップと、
c)一定期間、前記第一の一定分量を候補物質に曝すステップと、
d)一定期間、前記第二の一定分量を候補物質に曝さないステップと、
e)曝すのと同時にまたは曝した後に、細胞の遊走に適した条件を用意し、第二の一定分量における細胞と比較した第一の一定分量における細胞の遊走の程度を測定し、それによって、遊走が減少しているか、もしくは全くないことによって、抗癌剤を特定するか、かつ/または第二の一定分量における細胞と比較して第一の一定分量における細胞の増殖が増加しているか、もしくは継続していることによって、弱いまたは不活性な抗癌剤を特定するステップ
とを含む。
【0164】
走化性は、体細胞、バクテリア、および他の単細胞のもしくは多細胞の生物が、それらの環境における特定の化学物質にしたがって、運動を導く減少である。これは、バクテリアが、食物分子の最も高い濃度に向かって泳ぐことによって食物(例えばグルコース)を見つけるのに、または毒(例えば、フェノール)から逃げるのに重要である。多細胞生物において、走化性および細胞遊走は、発達に加えて正常な機能にとって極めて重要である。さらに、本技術分野において、動物における走化性および細胞遊走を可能にする機構は、癌の転移の間、妨害することができることが知られている。
【0165】
問題の化学物質のより高い濃度の方へ遊走が向けられている場合、走化性は陽性であると言われ、方向が反対の場合は、陰性であると言われる。
【0166】
走触性において、勾配が可溶性の空間において発達する走化性の古典的な様式とは対照的に、化学遊走物質の勾配が、表面上に示されているか、または表面上に結合している。
【0167】
ネクロタキシス(Necrotaxis)は、化学遊走物質分子が壊死細胞またはアポトーシス細胞から解放されるときに一種の走化性を具現するものである。放出された物質の化学的な特徴に応じて、ネクロタキシスは、細胞を集積するか、または忌避し、このことは、この現象の病態生理学的な重要性を明確に示すものである。
【0168】
特定の好ましい実施態様において、試験細胞を、好ましくは候補物質に曝す前に遊走するように誘導する。
【0169】
他の好ましい実施態様において、試験細胞を、CCR4受容体のリガンドの添加によって遊走するように誘導する。
【0170】
細胞の遊走および細胞の浸潤のアッセイは、多孔性膜またはマトリックスを通って化学遊走物質または成長因子の方に向かって移動する特定の細胞のタイプの能力を測定するものである。細胞の遊走および浸潤は、脈管形成および腫瘍転移における重大なプロセスであってもよい。細胞の浸潤を、適切な培養条件および細胞が移動する適切な多孔性マトリックスを用いて、1又は複数の寸法において測定してもよい。
【0171】
好適なスクリーニング方法に従って、好ましくはマトリゲルのBoyden chamberを使用して、細胞の浸潤を測定してもよい。
【0172】
本願明細書で定められる本発明の方法の態様において、リガンドがCCL17であってもよいか、かつ/またはリガンドがCCL22であってもよい。
【0173】
別の態様において、本発明は、
a)CCR4受容体を発現する癌細胞を具えるステップと、
b)少なくともいくつかの癌細胞の死を引き起こす条件下で癌細胞を培養するステップと、
c)一定期間、試験細胞を候補物質に曝すステップと、
d)癌の試験細胞の死を測定し、それによって、試験細胞における細胞死が増加しないか、またはあまり増加しないことによって、弱いまたは不活性な抗癌剤を特定するか、かつ/または細胞死が増加していることによって、抗癌剤を特定するステップ
とを含む、抗癌剤をスクリーニングする方法を提供する。
【0174】
他の態様において、本発明は、
a)CCR4受容体を発現する癌細胞を用意するステップと、
b)前記細胞の少なくとも第一の一定分量および第二の一定分量を具えるステップと、
c)少なくともいくつかの癌細胞の死を引き起こす条件下で癌細胞を培養するステップと、
d)一定期間、前記第一の一定分量を候補物質に曝すステップと、
e)一定期間、前記第二の一定分量を候補物質に曝さないステップと、
f)第一及び第二の一定分量における癌の試験細胞の死を測定し、第二の一定分量における細胞と比較して、第一の一定分量における細胞死が増加することによって、弱いまたは不活性な抗癌剤を特定するか、かつ/または第二の一定分量における細胞と比較して、第一の一定分量における細胞の死が増加していることによって、抗癌剤を特定するステップと
を含む、抗癌剤をスクリーニングする方法を提供する。
【0175】
他の好ましい実施態様において、試験細胞または癌細胞を、培養条件の変化の前または後に候補物質に曝してもよい。
【0176】
好ましい実施態様または抗癌剤をスクリーニングする方法において、試験細胞または癌細胞は、増殖できるか、または増殖中である。
【0177】
抗癌剤をスクリーニングする方法において、細胞は、腫瘍生検サンプル由来であるか、または子宮頸癌細胞、例えば、C−41(ATCC5 Rockville MD、 USA)もしくはCCR4を内因的に発現していている他の細胞株であってもよい。
【0178】
次に、本発明を実験的な例によって、図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1】正常組織と比較した悪性子宮頸部生検において、CCR4のmRNAの発現が増加していることを示す図である。(A)mRNA発現についてのリボヌクレアーゼプロテクション法(RPA)の後の非腫瘍性(白い棒)および悪性(黒い棒)の子宮頸部組織におけるCCおよびCXCケモカイン受容体のmRNAを発現するサンプルのパーセンテージの概要。(B)非腫瘍性組織サンプル1〜14および悪性組織のRPA:腺癌生検、サンプル1〜4、および扁平上皮癌(SCC)生検、サンプル1〜11。腺癌組織の段階は、以下の通りであった:1〜3、1B1;4、1B2。SCCの段階は、以下の通りであった:1、1A2;2〜8−11、1B1;9、1B2および10、2A。(C)非腫瘍性の相対物と比較したときの上皮およびストローマの区画におけるCCR4遺伝子発現の上方制御。非腫瘍性子宮頸部組織におけるmRNAの発現を、悪性組織のmRNAを比較するために、ベースラインとして用い、値「1」として表わす。
【図2】A)非腫瘍性子宮頸部組織、200×(B)CIN、200×;(C)浸潤性子宮頸部組織、200×のストローマにおける子宮頸部のCCR4のタンパク質発現の悪性進行中のCCR4についての免疫組織化学を示す図である。(D)正常、400×、(E)CBSf、200×:および(F)浸潤性子宮頸癌400×におけるCD68+タンパク質発現。(G)非腫瘍性子宮頸部組織を、200×;(H)CIN、400×;および(I)浸潤性子宮頸癌、400×におけるFoxP3+タンパク質の染色。(I)非腫瘍性、200×(K)CBSf、400×および、(L)浸潤性子宮頸癌、400×における上皮CCR4タンパク質発現。
【図3】子宮頸部の悪性進行の間のCCR4、CD68およびFoxP3陽性細胞についての免疫組織化学スコアを示す図である。(A)正常(n=23)、CIN(n=63)およびSCC(n=45)、再発癌(n=15)、リンパ節転移(n=10)、および腺癌(n=10)における「陽性」×「強度」によって算出した、CCR4について染色している上皮細胞(黒い棒)およびストローマ細胞(白い棒)の総スコア。(B)正常(n=11)、CIN(n=16)、腺癌(n=16)、再発癌(n=24)、およびリンパ節における転移の沈積物(n=11)における腫瘍内および腫瘍周囲のマクロファージの浸潤の平均CD68+スコア(+SE);**p<0.001;*p<0.005。(C)正常(n=11)、CIN(n=16)、SCC(n=44)、腺癌(n=16)、再発癌(n=24)、およびリンパ節における転移の沈積物(n=11)における腫瘍内および腫瘍周囲の制御性T細胞の浸潤の平均FoxP3+スコア(+SE)、*p<0.01。(D)CIN I(n=26)、CIN II(n=19)およびCIN III(n=17)における、「陽性」×「強度」によって算出された上皮細胞(黒い棒)およびストローマの細胞(白い棒)の総CCR4スコア。
【図4】正常な、CINおよびSCCの子宮頸部におけるCCR4リガンドであるCCL22のmRNAおよびタンパク質の発現を示す図である。(A)正常(n=14)およびSCC(n=11)の子宮頸部生検における定量的リアルタイムRT−PCRで評価したCCL22のmRNAの発現レベル、(P=0.43)。(B)非腫瘍性、200×;(C)CIN、200×および(D)SCC5、200×子宮頸部組織におけるCCL22タンパク質の発現。(E)正常(n=16)、CIN(n=17)、SCC(n=19)、および腺癌(n=5)の子宮頸部のサンプルにおける、「陽性×強度」によって算出した上皮細胞(黒い棒)およびストローマ細胞(白い棒)の総CCL22スコア。
【図5】正常な、CINおよびSCCの子宮頸部におけるCCR4リガンドであるCCL17のmRNAおよびタンパク質の発現を示す図である。(A)SCCの子宮頸部生検(n=11)で比較した正常のもの(n=7)における定量的リアルタイムRT−PCRで評価した、CCL17のmRNAの発現レベル(P=0.02)。(B)非腫瘍性、200×;(C)CIN、200×および(D)SCC、200×におけるCCL17のタンパク質の発現。(E)正常(n=21)、CIN(n=33)、SCC(n=20)、及び腺癌(n=4)の子宮頸部のサンプルにおける「陽性×強度」によって算出された上皮細胞(黒い棒)およびストローマの細胞(白い棒)の総CCL17スコア。
【図6】CCR4が、子宮頸癌細胞株C−41において機能を有することを示す図である。(A)CCR4、CCL17およびCCL22のタンパク質の発現(青色線)を、フローサイトメトリーを用いてC−41子宮頸癌細胞株において測定した。C−41によるCCR4の発現/内部移行を、100ng/mLの(B)CCL17および(C)CCL22の刺激後に調べた(青色線は、0分におけるCCR4のコントロールを表わし、オレンジ線は、適切なリガンドによる刺激後のCCR4タンパク質の発現を示す)。(D)CCL17およびCCL22に応答する子宮頸癌細胞C−41の遊走。値は、10回繰り返し測定の平均±SD、* P<0.05、** P< 0.01。(EおよびF)CCL17およびCCL22の1ng/mL、10ng/mLおよび100ng/mLの2、4および6日間の刺激後の次善の条件下でのC−41の成長。6日後、C−41は、10ng/mLのCCL17 10ng/mLのCCL17(P=0.017)、および100ng/mLのCCL17(P=0.044)での刺激後に著しい成長の増大を示したが、1ng/mLのCCL17(P=0.383)では示さなかった。1ng/mL CCL22;(P=0.026)および100ng/mLのCCL22(P=0.043)の刺激も、著しい成長の増大を示したが、10ng/mLのCCL22(P=0.195)では示さなかった。
【図7】正常な(A、×40;D、×40)、過形成性(B、×100)、形成異常(C、×40;D、×40)の食道の上皮細胞および浸潤癌細胞(H、×200)における食道のCCR4の発現の発癌におけるCCR4の発現を示す図である。食道の発癌の最中のストローマにおけるCCR4発現:E、正常な食道(×200);F、形成異常I(×200);G、形成異常III(×200);H 浸潤癌(×200)。
【図8】子宮頸部の悪性進行の間のCCR4陽性のストローマ細胞の免疫組織化学的のスコア付けの結果を示す図である。スコア付けを、CCR4について陽性の細胞の数およびCCR4の染色の強度によって評価した。細胞の数を、15HPFの平均として測定した:0 = CCR4タンパク質発現なし;+1=HPFあたり1〜10のCCR4陽性細胞;+2=HPFあたり10〜20の陽性細胞;+3(HPFあたり21〜30細胞);+4(>30の細胞)。強度を以下のものとして測定した:0=発現なし;1+=軽度の発現;2++=中程度の発現;3+++=強い発現。
【図9】子宮頸部の悪性進行の間のCCR4陽性上皮細胞の免疫組織化学のスコア付けの結果を示す図である。スコア付けを、CCR4について陽性の細胞の数およびCCR4の染色の強度によって評価した。0=上皮細胞上のCCR4タンパク質表現なし;+1=25%以下の区域が、CCR4の発現を有する;+2=26〜50%の細胞が陽性;+3=51〜75%の陽性;+4=76%以上の細胞がCCR4陽性。強度を以下のものとして測定した:0=発現なし;1+=軽度の発現;2++=中程度の発現;3++=強い発現。
【図10a】ヒト組織由来のcDNAライブラリ(Cancer Research UK)を使用することによるより広い範囲の腫瘍におけるCCR4発現のスクリーニングの結果を示す図である。ライブラリは、11の異なる腫瘍のタイプ:肺、結腸、膀胱、胃、膵臓、皮膚、乳房、脳、食道、卵巣および前立腺についての5〜10の腫瘍サンプルおよび2〜5の正常なサンプルから単離されたRNAから生成したcDNAを含む。CCR4のmRNAの発現レベルを、定量的リアルタイムRT−PCRで測定した。
【図10b】ヒト組織由来のcDNAライブラリ(Cancer Research UK)を使用することによるより広い範囲の腫瘍におけるCCR4発現のスクリーニングの結果を示す図である。ライブラリは、11の異なる腫瘍のタイプ:肺、結腸、膀胱、胃、膵臓、皮膚、乳房、脳、食道、卵巣および前立腺についての5〜10の腫瘍サンプルおよび2〜5の正常なサンプルから単離されたRNAから生成したcDNAを含む。CCR4のmRNAの発現レベルを、定量的リアルタイムRT−PCRで測定した。
【図11】子宮頸部細胞株(C41、C33A)および腎癌細胞株(786、A498、CAKI)でのCCR4発現についてのFACS分析の結果を示す図である。点線:アイソタイプが一致したコントロールの抗体;灰色の線:CCR4発現。
【図12】IL−10、TGF−β、およびFGFで24時間刺激した後のC41細胞でのCCR4発現のFACS分析の結果を示す図である。点線:アイソタイプのコントロール;灰色の線:CCR4発現;太線:サイトカイン刺激の後のCCR4発現。
【図13】CCR4のcDNA配列を示す図である。これは、本願明細書において称される配列番号1である。
【発明を実施するための形態】
【0180】
本発明者らは、ケモカイン受容体CCR4の発現が、特定の腫瘍のタイプにおける発癌での初期の事象であることを発見した。通常、組織中に存在する恒常性ケモカインの受容体の上皮での発現は、潜在性の細胞に生存の利益を与える可能性がある。
【0181】
ケモカイン受容体CCR4は、子宮頸部および食道の形成異常の非侵襲性病変で存在する。これは、CCR4陽性の形成異常の領域が、同じ区域における正常な上皮領域に隣接して明らかに見られたいくつかの食道癌サンプルにおいて特に目立っていた(例えば図7CおよびD)。
【0182】
子宮頸部の悪性進行によってケモカイン受容体CCR4が増加した。これは、CCR4陽性のマクロファージおよび制御性T細胞の浸潤の増加のみならず、上皮細胞によるCCR4発現の取得によるものであった。予想外の発見は、上皮内(CIN)病変における非侵襲性上皮細胞に加えて浸潤性癌細胞で、CCR4が強く発現していることであった。CINから侵襲性疾患への進行は、CCR4のリガンドであるCCL17およびCCL22のストローマ細胞の発現の増加と関係しており、これらのケモカインは、CCR4陽性の子宮頸癌細胞株の増殖および遊走を刺激した(例えば図4および図6)。また、CCR4は、食道の癌における形成異常に加えて該癌における浸潤性上皮細胞においても検出され、再び悪性進行の間にはCCL17およびCCL22のレベルが増加した。CCL17およびCCL22の勾配における変化は、前浸潤性から浸潤性の疾患への移行を支援し、潜在性細胞が免疫監視から逃れるのを助ける腫瘍が促進する白血球を引きつける。
【0183】
また、2つのCCR4結合ケモカイン、CCL17およびCCL22は、腫瘍生検における血管およびリンパ管の表面でも見られた。これを定量化することはできなかったが、悪性進行による染色の強度が増加することが事前観察で示された。
【0184】
CCR4システムの他のエレメントは、CCL17およびCCL22に対し高い親和性を有する非シグナル伝達ケモカイン受容体D6である[参考文献18];組織における該D6の存在は、これらのケモカインの勾配に影響すると予測される[参考文献19]。
【0185】
図6は、CCR4受容体が子宮頸癌細胞株C−41において機能を有することを示す。CCR4は、微小環境によって上方制御できる。CCR4陽性および陰性の細胞を、子宮頸部の微小環境に存在することが知られ、受容体が腫瘍細胞上に存在している可能性が高い多くのサイトカイン(TNF−α、TGF−β、IFN−γ、IL−4およびIL−10)に曝した。これらのどれも、CCR4の発現に影響を与えなかった。しかしながら、CCR4のmRNAのレベルは、C−41細胞とマクロファージの共培養によって上方制御されたが、タンパク質レベルは上方制御されなかった。
【0186】
CCR4およびD6は、複雑な異常(異型接合性、同型接合性および遺伝子増幅の損失)によって重大な子宮頸癌腫瘍のサプレッサー遺伝子が位置すると思われるものに近い染色体3p上に位置していることが報告された[参考文献25、26、27]。CCR4もD6もこれらの変化に直接関係していないが[参考文献26]、すぐ近くの遺伝子変異が、それらの制御に影響を及ぼす可能性がある。
【0187】
EBV不死化B細胞は、CCL22に加えてCCL3およびCCL4も分泌する[参考文献28]。EBV癌遺伝子であるLMPIの安定した発現も、B細胞株においてCCL17およびCCL22を誘導し、LMPIによって誘導されたCCL17およびCCL22の発現は、NF−kBによって制御された。EBVによるこれら2つのケモカインの誘導は、悪性細胞が、Th2および制御性T細胞を引きつけることによって、免疫学的監視を逃れるのを助けることが示唆される。他の発癌の変化は、上皮細胞によるCCL17およびCCL22の生産を誘導する可能性がある。
【0188】
本発明者らは、子宮頸癌における単核球の浸潤における2つの成分、特にCD68+マクロファージおよびFoxP3+制御性T細胞の詳細な定量を行った。CCR4陽性の浸潤細胞の密度は、正常な子宮頸部と比較してCINにおいて増加し、SCCおよび腺癌では更に増加していた。CD68+マクロファージは、同じパターンに従っており、我々は、これらがCCR4陽性であることを発見した。マクロファージと悪性細胞間のクロストークは、すべての癌進行の段階で重要であり、悪性細胞の生存に影響し、血管新生のスイッチを支援し、白血球を分極化し、悪性細胞の浸潤を支援する[参考文献29、30、31]。子宮頸部および食道の癌において、ケモカインCCL17およびCCL22は、マクロファージの補充の役割を果たすが、他の癌において、例えば卵巣癌では、CCL2などのケモカインが重要である[参考文献32]。
【0189】
CCL17およびCCL22は、子宮頸部生検法におけるCD68+細胞に平行して増加する制御性T細胞の補充にも重要である。前悪性および悪性の病変への制御性T細胞の補充は、免疫特権を促進する。例えば、ホジキンリンパ腫(HL)において、悪性細胞が、多数のCCR4+FoxP3+リンパ球に囲まれている[参考文献33]。悪性HL細胞によって補充されているこれらの細胞は、悪性細胞がホストの免疫システムから逃れるのに有利な環境をつくる。本発明者らは、これも、子宮頸部および食道癌のケースであると考えている。それ故、CCL17およびCLL22の勾配における変化が、腫瘍細胞の生存および拡散を直接促進するのみならず、腫瘍細胞に生存の因子ももたらすことができる白血球を引き寄せ、腫瘍に対する効果的なホストの反応を防ぐ免疫特権/免疫抑制に寄与する。
【0190】
これらのデータは、上皮CCR4の存在が、前悪性および悪性の両方の子宮頸部の新形成についての非常に感度が高く、かつ非常に特異的なバイオマーカーであることを示す。子宮頸癌の進行におけるCCR4発現の役割はまだ不明であるが、本発明者らのデータは、CCR4が、腫瘍環境内のアポトーシスの刺激からの細胞の保護をもたらす可能性があるのみならず、基底膜の腫瘍細胞の浸潤に必要であることを示唆している。その高い感度および選択性のために、子宮頸癌のすべての段階についての診断バイオマーカーとして使用される可能性がある。
【0191】
その後、本発明者らは、食道腫瘍、炎症と強い関連がある他の腫瘍のタイプの31のサンプルにおけるCCR4の発現についても試験した。IHCによって、CCR4が、いかなる正常な上皮の食道組織において検出できなかったが、すべての前浸潤性および浸潤性病変の上皮細胞に存在することが見出された。その高い感度および選択性のために、CCR4を、食道癌のすべての段階についての診断バイオマーカーとして使用する可能性がある。
【0192】
要約すると、ケモカイン受容体CCR4およびそのリガンドは、子宮頸部、食道、腎臓、脳、卵巣または乳房の癌の悪性進行において増加する。CCR4における変化およびそのリガンドの勾配は、いくらかのプロ腫瘍の意味を有する。第一のCCR4刺激は、潜在性および浸潤性癌細胞の増殖および生存を増加させ、第二に、ケモカイン勾配における変化は、基底膜の浸潤およびその後の悪性細胞の血管またはリンパ系への移動を支援する。最後に、CCL17およびCCL22は、腫瘍成長を促進し、潜在性細胞が免疫学的監視を逃れるのを可能にする、M2マクロファージおよびFoxP3制御性T細胞を含めた、細胞のタイプを引きつける。CCR4およびそのリガンドは、上皮の新形成で有用な診断マーカーおよび治療ターゲットであってもよい。
【0193】
本発明を、以下の材料および方法を用いる実験研究および実施例によって部分的に説明する。
【実施例】
【0194】
子宮頸部組織サンプルおよび食道のサンプル
mRNA研究のために、子宮頸癌患者から15の腫瘍生検(11の扁平上皮癌S1−S11、および4の腺癌、A1−A4)および14の非腫瘍性子宮頸部組織サンプル(N1−N14)を手術中に得られた、液体窒素中で急冷凍結した(snap−frozen)。診断を、Barts and The London NHS Trustの病理学部で行った。患者のサンプルを、FIGO分類法(段階I、II、III、IV)に従って分け、腫瘍生検を、核の非定型性のグレード(1、2、3)の増加、または同様に、中程度に、または弱い分化に伴って分類した。
【0195】
免疫組織化学のために、150人の異なる患者からのパラフィン包埋したサンプル(n=166)を、Barts and The London NHS Trust and the Clinical Centre of Serbia, Belgradeから得た。新鮮なパラフィン包埋されたヒトサンプルへのアクセスは、East London and City Health Authority Research Ethics Subcommitteeの要件を満足するものであった(LREC no. T/02/046)。
【0196】
原発性扁平上皮食道癌を有する31人の患者から切除された標本も、本文に含まれる。これらの患者は、中国の河南省安陽市における食道癌のリスクの高い地域の出身である。すべての患者は、安陽中央病院の外科で、外科的治療を受けた。これらの患者の誰も、手術前に化学療法、放射線療法または免疫調節性治療を受けていない。サンプルは、同じ癌患者の巨視的に癌の部分およびその対応する正常な部分から採取された。組織は、10%の中性緩衝ホルマリンを含むPBSで固定された。
【0197】
RNA抽出およびRNaseプロテクションアッセイ(RPA)
子宮頸部組織生検を、液体窒素で冷やしたミル6750(グレン・クレストン社、スタンモアー)でホモジナイズし、次いでTri Reagent(商標)で可溶化した(シグマ、プール、英国)。抽出したRNAを、10ユニットのDNase(ファルマシア、セイトアルバンズ、英国)で製造業者の説明書に従って処理した。RPAを、Riboquant(登録商標)hCR5およびhCR6鋳型のセット(BD Pharmingen、オックスフォード、英国)並びに[α32P]UTP(アマシャム・インターナショナル社、エールズベリー、英国)を用いて行われた。RNase保護断片を、acrylamide−urea sequencing gel(バイオラドラボレトリー社、ヘメルヘンプステッド、英国)で流し、濾紙に吸着し真空下で乾燥した。オートラジオグラフィを、Kodak Biomax MSフィルムとTranscreen LE intensifying screen(シグマ社)を用いて行った。
【0198】
顕微解剖および遺伝子アレイ
パラフィン包埋された子宮頸部組織を、RNaseのない条件下で切断し、UV処理したPALM(登録商標)膜スライド(PALMS、マイクロレーザーテクノロジー、ドイツ)に乗せた。次に、これらを、キシレン中で脱パラフィン化し、段階的なアルコールで再水和化した。サンプルを、処理前にマイヤーのヘマトキシリン溶液で1分間染色し、脱水し、空気乾燥した。切片を、製造業者のプロトコールに従ってレーザーで顕微解剖した。簡潔に述べると、所定の部分をレーザー顕微解剖し、プロテインキナーゼ(PK)バッファーの入ったマイクロフュージキャップに急速に入れた。およそ505〜5000の細胞を、各セッションで捕獲した。レーザー顕微解剖された細胞を、5μLのPKと混合した100μLのPKバッファーに溶解した。全RNAを、Paraffin block RNA isolation kit(1902、アンビオン、アメリカ合衆国)を用いて、製造業者の説明書に従って抽出した。cDNAを、上記の通りに増幅し、製造業者の説明書に従って、custom−made microfluidic gene array card(PE Applied Biosystems)を用いて分析した。
【0199】
7つの子宮頸部腫瘍サンプルにおける個々の遺伝子の遺伝子発現プロファイルを、5つの正常な子宮頸部サンプルと比較した。正常な上皮またはストローマの細胞サンプルにおける遺伝子発現レベルを、ベースラインの値”1”として用い、腫瘍上皮細胞または腫瘍ストローマ細胞の平均値と比較した。レーザー顕微解剖された腫瘍サンプルは、1A2および2Bの段階からの1のサンプルと、1B1の段階の5つから成る。
【0200】
免疫組織化学
パラフィン包埋切片(4μm)を、CCR4、CCL17およびCCL22について染色した。簡潔に述べると、切片を、キシレン中で脱ワックス化し、エタノール勾配によって脱水した。PBSで洗った後、抗原を、95℃で20分間、Target Retrieval Solution(S1700、DAKO)で曝すか、または電子レンジで9分間、Antigen Unmasking Solution(H−3300、Vector)で曝した。切片を、正常ウサギまたはヤギ血清で30分間ブロックし、一晩4℃で以下の一次抗体条件:CCR4(1:300、ab1669、AbCam、Canbridge)、CCL17(1:50、ab9816−50、AbCam、Cambridge)およびCCL22(1:20、500−P107、Peprotech)でインキュベートした。室温で30分間のビオチン化された二次抗体(抗ヤギまたは抗ウサギIgG、1:200、Vector)によるインキュベート後、抗原を、3、3’−ジアミノベンジジン(DAB;Sigma)で明らかにした。次に、スライドを、ヘマトキシリン対比染色し、乾燥し、乗せた。一次抗体を省略したものを、ネガティブコントロールとして用いた。CCR4抗体の特異性を確認するために、いくつかのCCR4陰性細胞を、このケモカイン受容体のcDNAでトランスフェクトした。CCR4抗体は、トランスフェクトが成功した細胞上でのみ表面タンパク質検出した。
【0201】
二重染色、CD68、FoxP3、SR−A:スコア付け方法およびカテゴリー
非悪性および悪性の上皮細胞でのCCR4、CCL17およびCCL22の発現の評価のために、各々のサンプルを、以下のスコア付けシステムによって半定量的に評価した:0(ポジティブなタンパク質発現なし)、+1(平均して<25%の断面が、陽性発現を有する)、+2(26〜50%)、+3(51〜75%)、+4(>76%)。陽性細胞の強度を、以下の通りに分析された:0(発現なし)、1(軽度の発現)、2(中程度の発現)、3(強い発現)。腫瘍ストローマ(腫瘍内の浸潤の細胞)、および腫瘍の浸潤境界(腫瘍周囲の浸潤の細胞)のCCR4、CCL17およびCCL22発現のスコア付けを、「移動平均」方法に基づいて行った[43]。壊死部分を避けた。合計15の強拡大視野(×400拡大率)を計数した。5つの尺度を、以下の通りに設定した:0=CCR4タンパク質発現なし;+1=HPF当たり1〜10のCCR4陽性細胞;+2=HPF当たり10〜20の陽性細胞;+3(HPF当たり21〜30の細胞);+4(>30の細胞)。全体の染色結果を、「パーセンテージ」×「強度」を算出することで得た。腫瘍および浸潤細におけるIHCスコア付けを、正式の病理学者(YW)によって行なった。
【0202】
子宮頸癌細胞株培養
子宮頸癌細胞株C−41(ATCC、ロックビル、MD、米国)を10%のFCSを補充したDMEM培地で培養した。いくつかの実験において、細胞を、1、10、100または1000ng/mLのCCL17またはCCL22(PeproTech、ロンドン、英国)で刺激した。増殖および遊走を、先に記載した方法を用いて評価した[11]。
【0203】
統計解析
統計的有意差を、ウェルチの修正(Welch's correction)を有する対応のないt検定(Instat software、サンディエゴ、CA)によって評価した。P値が<0.05の場合、有意であるとみなす。
【0204】
実験1−ケモカイン受容体のリボヌクレアーゼプロテクションアッセイ
リボヌクレアーゼプロテクションアッセイ(RPA)を用いて、新鮮な冷凍されたヒト子宮頸部組織の生検における13のケモカイン受容体mRNAをスクリーニングした。図1Aにおける概要のグラフから分かるように、非腫瘍性および悪性の生検の間のいくらかの別個の差異があるケモカイン受容体mRNAの範囲が、子宮頸部組織抽出物において見られた。ケモカイン受容体CCR4は、特に興味深く、悪性子宮頸部には存在したが、非腫瘍性子宮頸部生検由来の抽出物には存在しなかった(図1B)。
【0205】
ストローマ細胞および上皮細胞の混合集団を含むすべての組織抽出物において、ケモカイン受容体発現を試験し、次に、CCR4mRNAの細胞源を調べた。mRNAを、レーザー顕微解剖した正常なおよび悪性の子宮頸部生検のストローマおよび上皮細胞部分から抽出し、半定量的なリアルタイムRT−PCRを使用して、18S rRNAをコントロールとして用いてCCR4発現を分析した。図1Cに示すように、CCR4の悪性組織由来のストローマ部分においてその非腫瘍性の相対物と比較した際にmRNAが上方制御されていた。加えて、予想外に、CCR4のmRNAは、悪性上皮細胞の部分由来の抽出物においても正常な上皮と比較して上方制御されていた。
【0206】
CCR4のmRNAに関してこのように見られたことを更に調査するために、CCR4についての生検の同齢集団を免疫組織化学(IHC)で染色した。150人の異なる患者由来の166のパラフィン包埋子宮頸部組織サンプル:非腫瘍性、n=23;CIN I、n=30;CIN II、n=17;CIN III、n=16;SCC、n=45;再発性腫瘍、n=15;リンパ節転移(LN mets)、(n=10);腺癌(n=10)におけるCCR4タンパク質の発現を評価した。白血球および上皮細胞の両方が、CCR4タンパク質を発現した。結果を定量化するために、IHCスコアを、「陽性」に「強度」をかけることによって算出した(詳細については方法並びに図8および9の説明を参照)。
【0207】
実験2−CCR4タンパク質が、ヒトの子宮頸部生検法における浸潤する白血球で見られる。
図2(AC)に示すように、生検のストローマ部分における白血球がCCR4陽性で染色された。ストローマ部分におけるCCR4陽性についてのIHCのスコアを、図3A(白い棒)にまとめた。非腫瘍性組織は、CCR4の白血球について陰性だった(図2A、3A)。CINサンプルにおいて、より多くのCCR4発現ストローマの細胞があり(図2B、3A)、これは、浸潤性腫瘍性の子宮頸部サンプルにおいてさらに増加した(図2C、3A)。浸潤する白血球でのCCR4の発現の強度も、悪性の進行とともに増加した。非腫瘍性組織において、該強度は軽度であり;CINおよび腺癌において、強度は中程度から強いものであり、浸潤性SCC、再発性腫瘍およびリンパ節転移において、強度は強かった(図8)。
【0208】
ストローマはさまざまな細胞のタイプからなり、試験を、浸潤した細胞のどれがCCR4発現に寄与したかを確認するために行った。マクロファージおよび制御性T細胞がCCR4を発現し、CCR4タンパク質発現を、これら2つの細胞のタイプにおいて調べ、更に、組織生検におけるCD68+マクロファージおよびFoxP3+制御性T細胞の数も計数した。
【0209】
実験3−CCR4陽性マクロファージおよび制御性T細胞が悪性進行とともに増加する。
CD68+マクロファージおよびFoxP3+制御性T細胞の数は、子宮頸部の悪性の進行とともに増加した。図2 D−Iに示すように、正常な子宮頸部の生検においてCD68およびFoxP3細胞はほとんど存在しないが、CINでは数が増加し、両方の細胞のタイプは浸潤癌においては顕著であった。
【0210】
次に、CD68+およびFoxP3+の細胞の数を、それぞれ122および33の生検において計数した。図3Bに示すように、CIN病変の細胞においてCD68+細胞が正常な子宮頸部と比較して、有意に(p<0.001)増加した。13のCD68+細胞の数は、SCC、腺癌、再発性癌およびリンパ節転移において更に増加した(P<0.001、LN metsについてP<0.05、正常な子宮頸部と比較)。FoxP3+細胞に同様な増加が、SCC、腺癌およびリンパ節転移を有する悪性の進行とともに生じ、全て正常な子宮頸部と比較して、FoxP3+浸潤における有意な増加を示した(p<0.01)。
【0211】
CCR4を発現している細胞を浸潤する形質を研究するために、CD68およびFoxP3についての二重免疫組織化学染色を用いて、マクロファージおよび制御性T細胞によるCCR4の細胞表面の発現の評価を行った。これによって、CD68+およびFoxP3+細胞も、CCR4タンパク質を発現していることが確認された(データ示さず)。33のパラフィン包埋組織のサブセットも、スカベンジャー受容体−A(SR−A)タンパク質について染色した(非腫瘍性=10、CIN=10、SCC=10、腺癌=3)。SR−Aは、M2の代わりとして活性化したマクロファージについての細胞表面マーカーである [12]。非腫瘍性病変におけるストローマ細胞において、SR−Aを検出できなかったが、CINおよび浸潤癌において、ある割合のCD−68+細胞が、SR−Aを発現していた(データ示さず)。
【0212】
これからの研究は、第一に、子宮頸部の悪性進行は、CD68+マクロファージおよびFoxP3+制御性T細胞の数の増加に関連していることを示した。これらの細胞は、悪性細胞にプロ腫瘍成長因子を与え、形質転換細胞が免疫学的監視を逃れるのを助ける免疫抑制微小環境を作ることを助けることができる。第二に、これらの結果は、正常な子宮頸部癌と比較して悪性のものにおけるCCR4 mRNAの増加が最初に見られることが、少なくとも一部は、マクロファージおよび制御性T細胞を含めたCCR4を発現している白血球の浸潤の増加によるものであった。
【0213】
しかしながら、レーザー顕微解剖の結果は、CCR4 mRNAが、腫瘍の上皮部分においても増加することを示し、浸潤した白血球でのCCR4タンパク質を評価した際に、ケモカイン受容体もいくつかの上皮細胞上に存在していることが明らかであった(図2BおよびC参照)。これは、予想外で、更なる調査を必要とした。
【0214】
実験4−子宮頸部生検における上皮細胞もCCR4を発現している
非腫瘍性子宮頸部生検において、正常な上皮細胞は、CCR4を発現していなかった(図2A)。しかしながら、90%を超えるCINのケースにおける上皮細胞は、CCR4を発現した(図2Bおよび2E)。96%のSCCサンプルは、CCR4陽性の上皮細胞を有し(図2Cおよび2F)、90%の腺癌サンプルの上皮細胞は、CCR4陽性だった(図2G)。すべての再発性腫瘍およびリンパ節転移における悪性の上皮細胞は、CCR4タンパク質を発現した。上皮細胞上のCCR4タンパク質についてのIHCの結果の詳細のすべてを、図9に示し、図2Dにまとめた(黒い棒)。CCR4発現は、少数の上皮細胞に制限されていなかった。図2E〜Gおよび9は、CINおよび浸潤癌の子宮頸部生検における大部分の悪性上皮細胞がCCR4陽性であったことを示す。
【0215】
CINの異なる段階についてのIHCスコアに関するさらなる詳細を、図2Hに示す。これは、CIN IからIIIへの進行を通して、上皮のCCR4発現が基本的に不変だったことを示すが、ストローマのCCR4レベル、がCIN IからIIIにおいて増加したことを示す。
【0216】
実験5−子宮頸癌進行中のCCR4発現の統計解析
図8および9におけるデータの統計解析は、CIN病変が非腫瘍性子宮頸部組織と比較した際に上皮の区画(P=0.0001)およびストローマの区画(P=0.0001)の両方においてCCR4タンパク質の有意な上方制御を示したことを示す。浸潤性SCCにおけるCCR4発現も、非腫瘍性子宮頸部組織と比較した際に、上皮の区画(P=0.0001)およびストローマの区画(P=0.0001)の両方において有意に増加した。また、腺癌サンプルにもおいても、CCR4が、非腫瘍性子宮頸部組織と比較した際に、上皮細胞(P=0.0006)およびストローマの細胞(P=0.0050)で15上方制御されていた。
【0217】
実験6−悪性の発現によるCCL22 mRNAおよびタンパク質のレベルの変化
正常組織において、CCL22は、マクロファージ、単球、DC、B細胞およびT細胞の生産物である[13、14]。また、CCL22は、上皮組織で見られ;たとえば腸上皮は、TNFαなどの炎症性サイトカインによって更に上方制御できるCCL22を恒常的に生産する[15]。mRNAを、14の正常な子宮頸部、11のSCC及び4の腺の癌生検から単離し、CCL22のレベルを、リアルタイムRT PCRで評価した。図4Aに示すように、CCL22 mRNAレベルが、正常な生検と比較して悪性の組織において低かったが、これは有意なものではなかった(P=0.43)。50人の異なる患者からの合計52のパラフィン包埋の子宮頸部組織サンプルを、CCL22タンパク質について評価した:非腫瘍性、n=16;CIN、n=17;SCC、n=19。すべての子宮頸部生検において、CCL22が、上皮細胞において検出された(図4B〜D)。16の正常なサンプルのうちの14、15/17CIN5、14/19SCCは、CCL22陽性上皮細胞を有していた。すべての生検における浸潤する白血球は、CCL22を含んでいた(図4C、D)。上皮のIHCスコアは、CIN病変からSCCでわずかに下降した(図4E黒い棒)。しかしながら、CCL22についてのストローマのスコアは、正常からCINおよびSCCにわたって増加していた(図4E白い棒)。
【0218】
実験7−悪性の発現によるCCL17のmRNAおよびタンパク質のレベルの変化
正常組織において、CCL17は、脈管およびリンパの内皮細胞で発現していたが、マクロファージ、DCおよびケラチノサイトでも生産された[16、17、55]。mRNAを、14の正常な子宮頸部、11のSCCおよび4の腺癌の生検から単離し、CCL17レベルをリアルタイムRT−PCRによって評価した。図5Aに示すように、CCL17のmRNAのレベルは、正常な子宮頸部と比較してSCCにおいてより高かった。70人の異なる患者由来のパラフィン包埋子宮頸部組織の合計74サンプルを、CCL17タンパク質について評価した:非腫瘍性、n=21;CIN、n=33;SCC、n=20。正常な子宮頸部生検は、上皮およびストローマの両方の少数のサンプルにおいて、低レベルのCCL17を有していた(図5B)。23/33のCINサンプル、および13/20のSCCと比較して、2/19の正常なサンプルのみ、上皮におけるCCL17陽性細胞を有していた。CCL17陽性であるストローマの細胞の数は、正常なサンプルと比較して、CIN(図5C)およびSCC(図5D)において増加した。25/33CINおよび15/20SCCと比較して、21の正常な生検のうち6が、CCL17陽性ストローマ細胞を有していた。上皮およびストローマのCCL17のIHCスコアは、正常な生検と比較して、CINおよびSCCにおいて増加していた(図5E)。個々の生検からのIHCスコアを分析した際に、正常な生検と比較して、CIN(P=0.001)およびSCC(P=0.002)由来のストローマにおけるCCL17のIHCスコアにおいて、統計学的に有意な差異があった。また、正常なものと比較して、CIN(P=0.001)およびSCC(P=0.009)の上皮の領域におけるIHCスコアにおいても差異があった。これらのデータは、上皮内の新形成から浸潤性疾患までの移行によって、ケモカインの勾配が変化したことを示す。
【0219】
実験8−CCR4は、子宮頸癌細胞において機能を有する。
子宮頸癌細胞におけるCCR4発現の生物学的重要性を調査するために、多くの子宮頸癌細胞株(CaSki、Mel 80、HeLa−Ohio、 Hela−S3、Siha、C33A、C41−1)をCCR4発現についてスクリーニングした。細胞株C−41が、細胞表面CCR4を恒常的に発現した(図6A)。FACS分析を用いて、C−41細胞は、細胞表面CCR4を発現したことが示された。この細胞株も、細胞内のCCL22タンパク質を有していたが、他のCCR4リガンドであるCCL17は存在しなかった(図6A)。100ng/mLのCCL22による刺激後、細胞表面CCR4タンパク質は、2時間後にC−41細胞で内部移行し、3時間後に表面に戻った(図6B)。100ng/mLのCCL17で刺激後も、細胞表面CCR4タンパク質は、2時間後にC−41細胞で内部移行し、3時間後に表面に戻った(図6C)。トランスウェル遊走分析アッセイにおいて、C−41細胞は、CCL17およびCCL22の両方に対する典型的なベル型の走化性反応を示した(図6D)。10ng/mLで、CCL17は、有意な遊走を誘導し(P=0.036)、更に、100ng/mLおよび1000ng/mLでも(それぞれP=0.0006およびP=0.0004)誘導した。同様の結果が、10ng/mL(P=0.0081)、100ng/mL(P=0.0009)および1000ng/mL(P=0.0348)のCCL22で見られた。
【0220】
C−41細胞は、CCL17の10ng/mL(P=0.017)または100ng/mL(P=0.044)による刺激後、増殖を増加させた。1ng/mLのCCL22;(P=0.026)、100ng/mLのCCL22(P=0.043)も、C−41細胞の増殖をシミュレートしたが、10ng/mLのCCL22(P=0.195)ではシミュレートしなかった(図5CおよびD)。従って、CCR4は、この子宮頸癌細胞株において機能を有し、生体内でも機能を有する可能性があることが示唆される。
【0221】
実験9−CCR4は、上皮およびストローマの細胞で、食道の悪性の進行の間、発現している。
CCR4の発現およびケモカインリガンドの変化が子宮頸癌に特異的であるかどうか、それらが、炎症と関連するいずれの他の悪性腫瘍においても見られるかどうかは不明であった。食道癌は、腫瘍性の進行の全段階の例が、多くの場合同じ患者から同時に得ることができる上皮癌である。CCR4発現を、食道癌の患者由来の31の標本において調べた。27のケースにおいて、食道の発癌のすべての段階:正常、過形成、形成異常、上皮内癌および浸潤癌が同じ患者由来の生検に存在した。31のケースのうち4のケースは、浸潤癌の部分がない前浸潤の病変を有していた。図7Aに示すように、過形成上皮の基底層の周囲のわずかなCCR4陽性細胞を除けば、検出可能なCCR4発現が、食道の正常な上皮細胞になかった(図7B)。31のケースのうち30のケースにおいて、CCR4タンパク質が前浸潤の病変の全段階における上皮細胞に存在し(図7C、D)、過形成の上皮細胞におけるものより形成異常の病変におけるCCR4発現細胞の強度及びパーセンテージがはるかに高かった。浸潤癌における上皮細胞も、CCR4陽性だった(図7H)。いくつかの場合において、正常な粘膜と異常な粘膜との間の突然の移行があった。(図7C、D)。最も面白いことに、形成異常細胞において、CCR4発現の高いレベルがあったが、表層における細胞および隣接した正常な粘膜は陰性だった。CCR4陽性細胞がストローマにも存在し、パターンが子宮頸癌と同様であった。図7Eに示すように、正常な粘膜下層において、CCR4陽性細胞がわずかであり悪性の進行とともに、ストローマに浸透しているより多くのCCR4陽性細胞があった(図7F−H)。
【0222】
実験10−食道の生検中のCCL17およびCCL22
IHCを用いて、発癌の全段階が各サンプルにおいて存在している23の食道サンプルにおけるCCL17およびCCL22の発現を評価した。概して、CCL17は、正常組織の上皮およびストローマの領域において存在しないが、わずかなCCL17陽性の細胞がストローマおよび少数の過形成の領域にあった。CCL17陽性の上皮またはストローマ細胞を持続しているサンプル数のが、形成異常のものにおいて増加し、浸潤性の領域において最も高く、これらの10/23は、ある程度CCL17陽性を示した。特に、形成異常の上皮の粘膜下層における内皮細胞または血管/リンパ管で、CCL17の免疫反応が強かったが、正常な上皮の粘膜下層ではそうではなかったことが注目された。
【0223】
子宮頸癌で見られたものと同様に、CCL22についてのストローマの陽性レベルも、悪性の進行とともに増加した。1/23サンプルのみ、正常な部分のストローマにおいてCCL22陽性細胞を示したが、形成異常部分および浸潤性の部分では、それぞれ20/23および18/23のサンプルが、ストローマにおいてCCL22陽性細胞を含まれていた。ストローマの細胞のCCL22陽性が、形成異常の程度とともに増加した。23の形成異常Iサンプル中8がストローマにおいてCCL22陽性細胞を有し;これは、23の形成異常IIサンプルうち19、23の形成異常IIIサンプルのうち20に増加した。CCL22が正常な上皮において検出されなかったという点で、子宮頸部の上皮と食道の上皮との間に1つの違いがあったが、CCL22が正常な腸上皮で存在することが報告されている[15]。上皮のCCL22発現は、食道の悪性の進行とともに増加し;0/23サンプルが、正常な部分において陽性であり、2/23の過形成、7/23の形成異常および4/23の浸潤性の部分が、CCL22陽性の上皮細胞を有していた。最後に、浸潤性癌組織のストローマ内の血管のより多くの上皮細胞が、正常及び形成異常の上皮と比較してCCL22の染色について陽性であった。
【0224】
実験11−腫瘍のより広い範囲におけるCCR4発現のスクリーニングの結果
11の異なる腫瘍のタイプ:肺、結腸、膀胱、胃、膵臓、皮膚、乳房、脳、食道、卵巣および前立腺についての5〜10の腫瘍サンプル及び2〜5の正常なサンプルから単離したRNAから生成したcDNAを含む腫瘍のcDNAライブラリ(Cancer Research UK)を使用した。CCR4 mRNAの発現レベルを、定量的なリアルタイムRT−PCRを使用して測定した。
【0225】
CCR4 mRNAの発現レベルは子宮頸部、食道、腎臓、脳、乳房および卵巣の癌において、かなり上昇していた。
【0226】
実験12−子宮頸部および腎癌細胞株におけるCCR4発現の分析
図11は、抗CCR4抗体を使用して、CCR4発現を検出する、子宮頸部(C41、C33A)および腎癌の細胞株における蛍光標示式細胞分取(FACS)分析の結果を示す。すべての細胞株は、CCR4を発現した。図11中の点線は、アイソタイプが一致したコントロールの抗体のデータを示す。
【0227】
実験13−腫瘍細胞による一般的なサイトカインのCCR4発現への効果
腫瘍に存在する最も一般的なサイトカインは、IL−10、TGF−β、FGF、TNF−αである。C41子宮頸癌細胞株を、異なるサイトカイン(IL−10、TNF−α、TGF−β、FGF;20ng/mL)で24時間、培養において刺激した。次に、CCR4の発現を、FACS分析によって決定した。図12に示すように、CCR4は、無刺激の細胞(黒線)と比較した際に、IL−10、TGF−βおよびFGF刺激後(青色線)の陽性細胞のパーセンテージの観点から上方制御されていた。点線は、アイソタイプのコントロールについてのデータを示す。太線は、刺激の後のCCR4発現を示す。結果は、腫瘍微小環境が腫瘍細胞上のCCR4の発現を誘導することができることを示す。
【参考文献】
【0228】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形腫瘍サンプル中の、または患者から採取された非血液学的な細胞腫瘍サンプル中の腫瘍細胞によって発現したケモカイン受容体CCR4の量および/または活性を測定するステップを含む癌患者の予測または診断の特徴の情報を得る方法。
【請求項2】
固形腫瘍サンプルまたは非血液系細胞腫瘍サンプルにおけるCCR4の量および/または活性をCCR4の活性の基準の量および/またはレベルと比較することによって、予測または診断の特徴の情報を得る請求項1に記載の方法。
【請求項3】
CCR4活性の基準の量および/またはレベルを1又は複数の非腫瘍サンプルにおいて測定する請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも一つの非腫瘍サンプルを患者から採取する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
1又は複数の非腫瘍サンプルを患者から採取しない請求項3に記載の方法。
【請求項6】
情報を用いて、固形腫瘍または非血液系細胞腫瘍が抗癌治療に対して感受性があるかどうかを予測する請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
患者が抗癌治療を受け、治療開始の前後において、患者の固形腫瘍サンプルまたは非血液系腫瘍サンプルにおけるCCR4の量および/または活性を測定し、得られた情報を用いて、患者の固形腫瘍または非血液系細胞腫瘍が抗癌治療に反応したかどうかを決定する請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
情報を、固形腫瘍または非血液系細胞腫瘍の診断に使用する請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
情報を用いて、固形腫瘍または非血液系細胞腫瘍を段階分けする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
患者から採取された固形腫瘍サンプルまたは非血液系細胞腫瘍サンプル中のCCR4のリガンドであるCCL17および/またはCCL22の量および/または活性を測定するステップを含む、腫瘍細胞がケモカイン受容体CCR4を発現している癌患者についての予測又は診断の特徴の情報を得る方法。
【請求項11】
固形腫瘍サンプルまたは非血液系細胞腫瘍サンプル中のCCL17および/またはCCL22の量および/または活性をCCL17および/またはCCL22の活性の基準の量および/またはレベルと比較することによって、予測または診断の特徴の情報を得る請求項10に記載の方法。
【請求項12】
CCL17および/またはCCL22の基準の量の活性および/またはレベルを1又は複数の非腫瘍サンプルで測定する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも一つの非腫瘍サンプルを患者から採取する請求項12に記載の方法。
【請求項14】
1又は複数の非腫瘍サンプルを患者から採取しない請求項12に記載の方法。
【請求項15】
情報を用いて、患者の固形腫瘍または非血液系細胞腫瘍が抗癌治療に対して感受性であるかどうかを予測する請求項10〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
患者は抗癌治療を受け、治療開始の前後にCCL17および/またはCCL22の量および/または活性の測定を行い、得られた情報を用いて、患者の固形腫瘍または非血液系細胞腫瘍が抗癌治療に反応したかどうかを決定する請求項10〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
抗癌治療は、CCR4の発現又は活性を調節するか、または阻害する物質を含む請求項6、7、15または16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
CCR4の発現または活性を調節するか、または阻害する物質は:
(i)CCR4と結合する抗体;任意選択的に、国際公開第0041724号パンフレット、国際公開第0164754号パンフレット、国際公開第05035582号パンフレット、国際公開第05035582号パンフレット、国際公開第03018635号パンフレット、国際公開第05053741号パンフレット、国際公開第0042074号パンフレットのいずれにて開示されている抗CCR4抗体;または
(ii)CCR4リガンドであるCCL17およびCCL22に結合する抗体;任意選択的に、国際公開第99/15666号パンフレットまたはIshida, T., et al (2004) Clin Cancer Res 10:7529−7539に開示されている抗CCL17または抗CCL22抗体;
(iii)CCR4拮抗剤; 任意選択的に、国際公開第04007472号パンフレット、国際公開第05023771号パンフレット、国際公開第02094264号パンフレット、国際公開第0230358号パンフレット、国際公開第0230357号パンフレット、国際公開第05123697号パンフレット6、国際公開第05085212号パンフレット、国際公開第05082865号パンフレット、国際公開第04108717号パンフレット、欧州特許第1633729号、国際公開第03014153号パンフレットに開示されているCCR4拮抗剤
である請求項17に記載の方法
【請求項19】
固形腫瘍または非血液系腫瘍が、子宮頸部、食道、腎臓、脳、乳房、卵巣、前立腺、胃または膵臓の癌から選択された癌である請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
癌患者における固形腫瘍または非血液系腫瘍によって発現したCCR4の存在を検出するか、または量を測定するためにケモカイン受容体CCR4に対して反応性を有する抗体を使用する方法。
【請求項21】
固形腫瘍または非血液系腫瘍の細胞によるCCR4の発現の量を検出するか、または測定するために、配列番号1にストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるオリゴヌクレオチドプライマーまたはプローブを使用する方法。
【請求項22】
情報を用いて、患者の固形腫瘍または非血液系細胞腫瘍が、抗癌治療;任意選択的に請求項12または請求項13にて定められる活性物質を含む抗癌治療に対して感受性があるかどうかを予測する請求項20または請求項21に記載の使用方法。
【請求項23】
患者が抗癌治療を受け、治療開始の前後において、CCR4の量および/または活性を測定し、得られた情報を用いて、患者の固形腫瘍または非血液系細胞腫瘍が抗癌治療に反応したかどうかを決定する請求項20または請求項21に記載の使用方法。
【請求項24】
情報を、固形腫瘍または非血液系細胞腫瘍の診断に使用する請求項20または請求項21請求項20または請求項21に記載の使用方法。
【請求項25】
情報を用いて、固形腫瘍または非血液系細胞腫瘍を段階分けする請求項20または請求項21に記載の使用方法。
【請求項26】
CCR4の発現または活性を調節するか、または阻害する物質の有効量を投与することを含む、CCR4を発現する固形腫瘍または非血液系腫瘍を有する癌患者を治療する方法。
【請求項27】
CCR4の発現または活性を調節するか、または阻害する物質は、:
(i)CCR4と結合する抗体;任意選択的に、国際公開第0041724号パンフレット、国際公開第0164754号パンフレット、国際公開第05035582号パンフレット、国際公開第05035582号パンフレット、国際公開第03018635号パンフレット、国際公開第05053741号パンフレット、国際公開第0042074号パンフレットのいずれにて開示されている抗CCR4抗体
、または
(ii)CCR4リガンドであるCCL17およびCCL22に結合する抗体;任意選択的に、国際公開第99/15666号パンフレットまたはIshida, T., et al (2004) Clin Cancer Res 10:7529−7539に開示されている抗CCL17または抗CCL22抗体、
(iii)CCR4拮抗剤;任意選択的に、国際公開第04007472号パンフレット、国際公開第05023771号パンフレット、国際公開第02094264号パンフレット、国際公開第0230358号パンフレット、国際公開第0230357号パンフレット、国際公開第05123697号パンフレット6、国際公開第05085212号パンフレット、国際公開第05082865号パンフレット、国際公開第04108717号パンフレット、欧州特許第1633729号、国際公開第03014153号パンフレットに開示されているCCR4拮抗剤
である請求項26に記載の方法。
【請求項28】
固形腫瘍または非血液系腫瘍が、子宮頸部、食道、腎臓、脳、乳房、卵巣、前立腺、胃または膵臓の癌から選択された癌である請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
固形腫瘍または非血液系腫瘍の治療または予防のためにケモカイン受容体CCR4を調節するか、または阻害する物質を使用する方法。
【請求項30】
CCR4の発現または活性を調節するか、または阻害する物質は、
(i)CCR4と結合する抗体;任意選択的に、国際公開第0041724号パンフレット、国際公開第0164754号パンフレット、国際公開第05035582号パンフレット、国際公開第05035582号パンフレット、国際公開第03018635号パンフレット、国際公開第05053741号パンフレット、国際公開第0042074号パンフレットのいずれにて開示されている抗CCR4抗体
、または
(ii)CCR4リガンドであるCCL17およびCCL22に結合する抗体;任意選択的に、国際公開第99/15666号パンフレットまたはIshida, T., et al (2004) Clin Cancer Res 10:7529−7539に開示されている抗CCL17または抗CCL22抗体。
(iii)CCR4拮抗剤;任意選択的に、国際公開第04007472号パンフレット、国際公開第05023771号パンフレット、国際公開第02094264号パンフレット、国際公開第0230358号パンフレット、国際公開第0230357号パンフレット、国際公開第05123697号パンフレット6、国際公開第05085212号パンフレット、国際公開第05082865号パンフレット、国際公開第04108717号パンフレット、欧州特許第1633729号、国際公開第03014153号パンフレットに開示されているCCR4拮抗剤
である請求項29に記載の使用方法。
【請求項31】
固形腫瘍または非血液系腫瘍が、子宮頸部、食道、腎臓、脳、乳房、卵巣、前立腺、胃または膵臓の癌から選択された癌である請求項29または請求項30に記載の使用方法。
【請求項32】
CCR4との反応性を有する抗体、CCL17との反応性を有する抗体、CCL22との反応性を有する抗体、およびストリンジェントな条件下で配列番号1とハイブリダイズできるオリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーから選択された少なくとも一つの試薬と、キットの使用者が、サンプル中のCCR4、CCL17およびCCL22の1又は複数の量および/または活性を測定するために、患者由来の固形腫瘍または非血液系腫瘍のサンプルに、試薬を投与するように導く印
とを含む、患者由来の固形腫瘍または非血液系腫瘍のサンプルから癌患者の予測又は診断の特徴の情報を得るためのキット。
【請求項33】
キットは、1又は複数の非腫瘍細胞の基準のサンプルを含み、印は説明書であり、キットの使用者が患者のサンプルおよび基準のサンプルの両方におけるCCR4、CCL17およびCCL22の1又は複数の量および/または活性のレベルを測定するように導く請求項32に記載キット。
【請求項34】
印は、説明書であり、CCR4、CCLの1又は複数の基準の量および/または活性のレベルについての基準値を含む請求項32に記載のキット。
【請求項35】
i)CCR4を発現し、(a)増殖、(b)遊走、(c)タンパク質もしくはシグナル伝達分子の分泌、または(d)特定の条件下で培養した際の細胞生存性から選択された生物活性を示すことができるか、又は該生物活性を示す最中にある試験細胞を用意するステップと、
ii)一定期間、試験細胞を候補物質に曝すステップと、
iii)試験細胞の生物活性を測定し、それによって、候補物質の非存在下での当該試験細胞の生物活性がないこと又は予測された活性より少ない活性によって、抗癌剤を特定するステップとを含む、
ケモカイン受容体CCR4を発現する固形腫瘍または非血液系腫瘍対して活性を有する抗癌剤をスクリーニングする方法。
【請求項36】
試験細胞のコントロールの一定分量を候補物質に曝さず、予想された生物活性を決定するように、コントロール細胞の生物活性を測定する請求項35に記載の方法。
【請求項37】
試験細胞およびいずれのコントロール細胞の生物活性を、CCR4受容体のリガンド、好ましくはCCL17および/またはCCL22の添加によって誘導する請求項35または請求項36に記載の方法。
【請求項1】
固形腫瘍サンプル中の、または患者から採取された非血液学的な細胞腫瘍サンプル中の腫瘍細胞によって発現したケモカイン受容体CCR4の量および/または活性を測定するステップを含む癌患者の予測または診断の特徴の情報を得る方法。
【請求項2】
固形腫瘍サンプルまたは非血液系細胞腫瘍サンプルにおけるCCR4の量および/または活性をCCR4の活性の基準の量および/またはレベルと比較することによって、予測または診断の特徴の情報を得る請求項1に記載の方法。
【請求項3】
CCR4活性の基準の量および/またはレベルを1又は複数の非腫瘍サンプルにおいて測定する請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも一つの非腫瘍サンプルを患者から採取する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
1又は複数の非腫瘍サンプルを患者から採取しない請求項3に記載の方法。
【請求項6】
情報を用いて、固形腫瘍または非血液系細胞腫瘍が抗癌治療に対して感受性があるかどうかを予測する請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
患者が抗癌治療を受け、治療開始の前後において、患者の固形腫瘍サンプルまたは非血液系腫瘍サンプルにおけるCCR4の量および/または活性を測定し、得られた情報を用いて、患者の固形腫瘍または非血液系細胞腫瘍が抗癌治療に反応したかどうかを決定する請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
情報を、固形腫瘍または非血液系細胞腫瘍の診断に使用する請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
情報を用いて、固形腫瘍または非血液系細胞腫瘍を段階分けする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
患者から採取された固形腫瘍サンプルまたは非血液系細胞腫瘍サンプル中のCCR4のリガンドであるCCL17および/またはCCL22の量および/または活性を測定するステップを含む、腫瘍細胞がケモカイン受容体CCR4を発現している癌患者についての予測又は診断の特徴の情報を得る方法。
【請求項11】
固形腫瘍サンプルまたは非血液系細胞腫瘍サンプル中のCCL17および/またはCCL22の量および/または活性をCCL17および/またはCCL22の活性の基準の量および/またはレベルと比較することによって、予測または診断の特徴の情報を得る請求項10に記載の方法。
【請求項12】
CCL17および/またはCCL22の基準の量の活性および/またはレベルを1又は複数の非腫瘍サンプルで測定する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも一つの非腫瘍サンプルを患者から採取する請求項12に記載の方法。
【請求項14】
1又は複数の非腫瘍サンプルを患者から採取しない請求項12に記載の方法。
【請求項15】
情報を用いて、患者の固形腫瘍または非血液系細胞腫瘍が抗癌治療に対して感受性であるかどうかを予測する請求項10〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
患者は抗癌治療を受け、治療開始の前後にCCL17および/またはCCL22の量および/または活性の測定を行い、得られた情報を用いて、患者の固形腫瘍または非血液系細胞腫瘍が抗癌治療に反応したかどうかを決定する請求項10〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
抗癌治療は、CCR4の発現又は活性を調節するか、または阻害する物質を含む請求項6、7、15または16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
CCR4の発現または活性を調節するか、または阻害する物質は:
(i)CCR4と結合する抗体;任意選択的に、国際公開第0041724号パンフレット、国際公開第0164754号パンフレット、国際公開第05035582号パンフレット、国際公開第05035582号パンフレット、国際公開第03018635号パンフレット、国際公開第05053741号パンフレット、国際公開第0042074号パンフレットのいずれにて開示されている抗CCR4抗体;または
(ii)CCR4リガンドであるCCL17およびCCL22に結合する抗体;任意選択的に、国際公開第99/15666号パンフレットまたはIshida, T., et al (2004) Clin Cancer Res 10:7529−7539に開示されている抗CCL17または抗CCL22抗体;
(iii)CCR4拮抗剤; 任意選択的に、国際公開第04007472号パンフレット、国際公開第05023771号パンフレット、国際公開第02094264号パンフレット、国際公開第0230358号パンフレット、国際公開第0230357号パンフレット、国際公開第05123697号パンフレット6、国際公開第05085212号パンフレット、国際公開第05082865号パンフレット、国際公開第04108717号パンフレット、欧州特許第1633729号、国際公開第03014153号パンフレットに開示されているCCR4拮抗剤
である請求項17に記載の方法
【請求項19】
固形腫瘍または非血液系腫瘍が、子宮頸部、食道、腎臓、脳、乳房、卵巣、前立腺、胃または膵臓の癌から選択された癌である請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
癌患者における固形腫瘍または非血液系腫瘍によって発現したCCR4の存在を検出するか、または量を測定するためにケモカイン受容体CCR4に対して反応性を有する抗体を使用する方法。
【請求項21】
固形腫瘍または非血液系腫瘍の細胞によるCCR4の発現の量を検出するか、または測定するために、配列番号1にストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるオリゴヌクレオチドプライマーまたはプローブを使用する方法。
【請求項22】
情報を用いて、患者の固形腫瘍または非血液系細胞腫瘍が、抗癌治療;任意選択的に請求項12または請求項13にて定められる活性物質を含む抗癌治療に対して感受性があるかどうかを予測する請求項20または請求項21に記載の使用方法。
【請求項23】
患者が抗癌治療を受け、治療開始の前後において、CCR4の量および/または活性を測定し、得られた情報を用いて、患者の固形腫瘍または非血液系細胞腫瘍が抗癌治療に反応したかどうかを決定する請求項20または請求項21に記載の使用方法。
【請求項24】
情報を、固形腫瘍または非血液系細胞腫瘍の診断に使用する請求項20または請求項21請求項20または請求項21に記載の使用方法。
【請求項25】
情報を用いて、固形腫瘍または非血液系細胞腫瘍を段階分けする請求項20または請求項21に記載の使用方法。
【請求項26】
CCR4の発現または活性を調節するか、または阻害する物質の有効量を投与することを含む、CCR4を発現する固形腫瘍または非血液系腫瘍を有する癌患者を治療する方法。
【請求項27】
CCR4の発現または活性を調節するか、または阻害する物質は、:
(i)CCR4と結合する抗体;任意選択的に、国際公開第0041724号パンフレット、国際公開第0164754号パンフレット、国際公開第05035582号パンフレット、国際公開第05035582号パンフレット、国際公開第03018635号パンフレット、国際公開第05053741号パンフレット、国際公開第0042074号パンフレットのいずれにて開示されている抗CCR4抗体
、または
(ii)CCR4リガンドであるCCL17およびCCL22に結合する抗体;任意選択的に、国際公開第99/15666号パンフレットまたはIshida, T., et al (2004) Clin Cancer Res 10:7529−7539に開示されている抗CCL17または抗CCL22抗体、
(iii)CCR4拮抗剤;任意選択的に、国際公開第04007472号パンフレット、国際公開第05023771号パンフレット、国際公開第02094264号パンフレット、国際公開第0230358号パンフレット、国際公開第0230357号パンフレット、国際公開第05123697号パンフレット6、国際公開第05085212号パンフレット、国際公開第05082865号パンフレット、国際公開第04108717号パンフレット、欧州特許第1633729号、国際公開第03014153号パンフレットに開示されているCCR4拮抗剤
である請求項26に記載の方法。
【請求項28】
固形腫瘍または非血液系腫瘍が、子宮頸部、食道、腎臓、脳、乳房、卵巣、前立腺、胃または膵臓の癌から選択された癌である請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
固形腫瘍または非血液系腫瘍の治療または予防のためにケモカイン受容体CCR4を調節するか、または阻害する物質を使用する方法。
【請求項30】
CCR4の発現または活性を調節するか、または阻害する物質は、
(i)CCR4と結合する抗体;任意選択的に、国際公開第0041724号パンフレット、国際公開第0164754号パンフレット、国際公開第05035582号パンフレット、国際公開第05035582号パンフレット、国際公開第03018635号パンフレット、国際公開第05053741号パンフレット、国際公開第0042074号パンフレットのいずれにて開示されている抗CCR4抗体
、または
(ii)CCR4リガンドであるCCL17およびCCL22に結合する抗体;任意選択的に、国際公開第99/15666号パンフレットまたはIshida, T., et al (2004) Clin Cancer Res 10:7529−7539に開示されている抗CCL17または抗CCL22抗体。
(iii)CCR4拮抗剤;任意選択的に、国際公開第04007472号パンフレット、国際公開第05023771号パンフレット、国際公開第02094264号パンフレット、国際公開第0230358号パンフレット、国際公開第0230357号パンフレット、国際公開第05123697号パンフレット6、国際公開第05085212号パンフレット、国際公開第05082865号パンフレット、国際公開第04108717号パンフレット、欧州特許第1633729号、国際公開第03014153号パンフレットに開示されているCCR4拮抗剤
である請求項29に記載の使用方法。
【請求項31】
固形腫瘍または非血液系腫瘍が、子宮頸部、食道、腎臓、脳、乳房、卵巣、前立腺、胃または膵臓の癌から選択された癌である請求項29または請求項30に記載の使用方法。
【請求項32】
CCR4との反応性を有する抗体、CCL17との反応性を有する抗体、CCL22との反応性を有する抗体、およびストリンジェントな条件下で配列番号1とハイブリダイズできるオリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーから選択された少なくとも一つの試薬と、キットの使用者が、サンプル中のCCR4、CCL17およびCCL22の1又は複数の量および/または活性を測定するために、患者由来の固形腫瘍または非血液系腫瘍のサンプルに、試薬を投与するように導く印
とを含む、患者由来の固形腫瘍または非血液系腫瘍のサンプルから癌患者の予測又は診断の特徴の情報を得るためのキット。
【請求項33】
キットは、1又は複数の非腫瘍細胞の基準のサンプルを含み、印は説明書であり、キットの使用者が患者のサンプルおよび基準のサンプルの両方におけるCCR4、CCL17およびCCL22の1又は複数の量および/または活性のレベルを測定するように導く請求項32に記載キット。
【請求項34】
印は、説明書であり、CCR4、CCLの1又は複数の基準の量および/または活性のレベルについての基準値を含む請求項32に記載のキット。
【請求項35】
i)CCR4を発現し、(a)増殖、(b)遊走、(c)タンパク質もしくはシグナル伝達分子の分泌、または(d)特定の条件下で培養した際の細胞生存性から選択された生物活性を示すことができるか、又は該生物活性を示す最中にある試験細胞を用意するステップと、
ii)一定期間、試験細胞を候補物質に曝すステップと、
iii)試験細胞の生物活性を測定し、それによって、候補物質の非存在下での当該試験細胞の生物活性がないこと又は予測された活性より少ない活性によって、抗癌剤を特定するステップとを含む、
ケモカイン受容体CCR4を発現する固形腫瘍または非血液系腫瘍対して活性を有する抗癌剤をスクリーニングする方法。
【請求項36】
試験細胞のコントロールの一定分量を候補物質に曝さず、予想された生物活性を決定するように、コントロール細胞の生物活性を測定する請求項35に記載の方法。
【請求項37】
試験細胞およびいずれのコントロール細胞の生物活性を、CCR4受容体のリガンド、好ましくはCCL17および/またはCCL22の添加によって誘導する請求項35または請求項36に記載の方法。
【図1】
【図2A−2C】
【図2D−2F】
【図2G−2I】
【図2J−2L】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図7G】
【図7H】
【図8】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2A−2C】
【図2D−2F】
【図2G−2I】
【図2J−2L】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図7G】
【図7H】
【図8】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2010−539508(P2010−539508A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525420(P2010−525420)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際出願番号】PCT/GB2008/003160
【国際公開番号】WO2009/037454
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(598176569)キャンサー・リサーチ・テクノロジー・リミテッド (57)
【氏名又は名称原語表記】CANCER RESEARCH TECHNOLOGY LIMITED
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際出願番号】PCT/GB2008/003160
【国際公開番号】WO2009/037454
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(598176569)キャンサー・リサーチ・テクノロジー・リミテッド (57)
【氏名又は名称原語表記】CANCER RESEARCH TECHNOLOGY LIMITED
【Fターム(参考)】
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