説明

癌免疫療法のための組成物及び方法

肝発現ケモカイン(LEC)に連結された癌標的指向分子を含む癌療法剤が提供される。一実施形態において、癌標的指向分子は、インビボで癌細胞又は腫瘍を標的とする抗体である。この癌標的指向分子は、LECと非共有結合的又は共有結合的に結合される。本発明の癌療法剤は、個体において腫瘍のサイズを減少すること若しくは癌細胞の増殖を阻害することによる、及び/又は転移の発生を阻害することによる、個体における癌の治療のために有用である。LEC癌療法剤を使用する治療の有効性は、免疫調節性T細胞の活性を減少することによって、及び/又は免疫T細胞を養子移入することによって増加できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌標的指向分子及び肝発現ケモカイン「LEC」を含む癌療法剤、並びに癌の治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の本発明の背景の議論は、単に読者が本発明を理解する際に補助するために提供され、本発明の先行技術を記載又は構成することを認めるものではない
【0003】
外科手術、放射線療法、及び化学療法は、癌(白血病、固形腫瘍、及び転移腫瘍を含む)の治療のために標準的に受容されている手法である。癌を縮小又は根絶するために、身体の免疫系を直接的又は間接的に使用する免疫療法(時折、生物学的療法、生物療法、又は生物学的応答調節剤療法と呼ばれる)は、従来の癌療法に対する補助療法として長年の間試験されてきた。ヒト免疫系は癌療法のための未開発の資源であり、一旦免疫系の成分が適切に利用されるならば有効な治療が開発できると考えられてきた。鍵となる免疫調節分子及び免疫シグナルが同定され、治療試薬として調製されているので、このような試薬の臨床的有効性は周知の癌モデルを使用して試験できる。免疫療法戦略には、ワクチン、活性化細胞、抗体、サイトカイン、ケモカイン、並びに低分子阻害剤、アンチセンスオリゴヌクレオチドの投与、及び遺伝子治療が含まれる(Mocellinら、Cancer Immunol.& Immunother.(2002)51:583−595;Dyら、J.Clin.Oncol.(2002)20:2881−2894、2002)。
【0004】
サイトカインは、炎症、免疫、分化、細胞分裂、線維症、及び修復に関与する細胞によって産生される細胞外タンパク質メッセンジャー分子である(Smith,K.A.:Blood(1993)81:1414−1423)。TNFα、IL−1α、TGFβ、及びCD40リガンドなどのサイトカインはまた、細胞表面シグナル伝達分子として機能する。他の天然の生物活性分子からサイトカインを区別するサイトカインの特徴は、サイトカインが構成的に産生されるのではなく刺激に応答して生成されることである。サイトカイン遺伝子は高度に誘導性であり、それらのコードするmRNAレベルは、NFκB、NF−AT、及びAP−1などの転写因子による調節を受ける(Oppenheimら、「先天的宿主防御及び適応的免疫におけるサイトカインの役割についての序論(Introduction to the role of cytokines in innate host defense and adaptive immunity)」Cytokine Reference(Oppenheim及びFeldmann編、3〜20頁、2001))。サイトカイン産生は一般的に数時間から数日間続き、且つ短い行動半径を有する。したがって、サイトカインは、全身的に作用するのではなく、主として隣接細胞に作用する。医薬として全身的に投与される場合、サイトカインは、熱、低血圧、頭痛、倦怠感、及び衰弱を含む複数の徴候を引き起こす深刻な毒性を示す。毒性は、サイトカインを臨床的に適切な投薬量で投与することを困難にする。
【0005】
癌療法の認可を得た最初のサイトカインはインターロイキン−2(IL−2)である(Raoら、Annual Rev.Immunol.(1997)15:707−747)。IL−2の第1の役割は、Tリンパ球の成長及び増殖を刺激することであるが、しかし、これは、ナチュラルキラー(NK)細胞、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞、単球、及びマクロファージを含む他の種々の免疫細胞に対して刺激効果を有する(同上)。IL−2は、腎臓癌及びメラノーマの治療においてある程度の見込みを示したのに対して(Silagiら、J.Biol.Response Modifiers.(1986)5:411−422)、これは、身体の血管に対する損傷(毛細血管漏出症候群)を含む深刻な副作用を有し、これが他の癌に対するこの有用性を制限する。IL−2の腫瘍内投与は、全身投与よりもいくぶん有効であるが(Silagiら、J.Biol.Response Modifiers.(1986)5:411−422;Soneら、Oncology(1994)51:170−176)、しかし、腫瘍内投与は播腫性疾患のためには実行可能ではない。
【0006】
Mitchison(Mitchison,N.A.:J Exp Med.(1955)102:157−77)によってほぼ50年前に最初に提示された、腫瘍に対する養子細胞療法の概念は、活性化されたT細胞及び/又はナチュラルキラー細胞の移入を通して癌の撲滅をその目的としている。養子免疫療法は、腫瘍特異的細胞傷害性T細胞が癌患者中に存在するが、このような細胞は初回抗原刺激を受けておらず、且つ/又はその細胞のインビボ機能が損なわれているという信念に基づいている。細胞の初回刺激をするために、末梢T細胞が患者から取り出され、エキソビボで活性化され、次いで再注入される。エキソビボ活性化の工程はまた、患者の腫瘍細胞又は腫瘍細胞ワクチンへの曝露を含み得る。T細胞に基づく養子免疫療法は潜在的に見込みのある癌療法の型を提供するが、これは、この治療を受けた患者の大部分において長期間続く応答を誘導することに失敗した(Lumら、J Immunother.(2001)24:408−19)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
免疫応答を制御及び誘導することに関しては多くのことが判明したが、癌療法に対するより新しく且つより有効な免疫療法的手法についての必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの態様において、本発明は、肝発現ケモカイン(LEC)に連結された癌標的指向分子を含む癌療法剤を提供する。好ましい実施形態において、癌療法剤はLEC/chTNT−3ではない。
【0009】
一実施形態において、癌標的指向分子はインビボで癌細胞又は腫瘍を標的とする抗体である。別の実施形態において、この抗体は腫瘍細胞表面抗原に特異的である。さらに別の実施形態において、この抗体は腫瘍のストローマ成分に特異的である。なおさらに別の実施形態において、この抗体は細胞内抗原、例えば核内抗原に特異的である。後者の場合、抗体は、マウス抗体TNT−1、TNT−2、TNT−3、又はNHS76に基づくヒト化抗体又はヒトキメラ抗体であってもよく、ここで抗体はTNT−3であり、標的指向作用剤はLEC/chTNT−3でない。
【0010】
癌標的指向分子とLECとの間の連結は、共有結合又は非共有結合を通してであってもよい。癌標的指向分子及びLECは化学架橋連結によって、又は遺伝子融合を通して(例えば、組換えDNA技術の適用によって)共有結合で結合できる。後者の手法において、LECは、そのC末端又はN末端から、タンパク質細胞標的指向分子のN末端又はC末端で融合できる。細胞標的指向分子が抗体である場合、LECのC末端が、抗体の軽鎖及び/又は重鎖のN末端に好ましく融合される。
【0011】
本発明の癌療法剤は、癌に罹患している個体における癌の治療のために使用できる。したがって、本発明の別の態様は、個体において腫瘍のサイズを減少するか、又は癌細胞の増殖を阻害する方法であって、有効量の本発明の癌療法剤を投与する工程を包含し、ここで癌療法剤は個体の癌細胞又は腫瘍に局在する。
【0012】
本発明のさらなる態様は、癌に罹患している個体において転移性癌の発生を減少又は阻害する方法であって、有効量の本発明の癌療法剤を個体に投与する工程を包含し、ここで癌療法剤は個体の癌細胞又は腫瘍に局在する。
【0013】
一実施形態において、本発明の癌療法剤を使用する治療の有効性は、個体における免疫調節性T細胞の活性を減少することによって増加し得る。これは、宿主の抗腫瘍免疫応答の抑制を特徴とする免疫調節性T細胞を、エキソビボで除去又はインビボで枯渇化若しくは不活性化することによって達成できる。一実施形態において、免疫調節性T細胞は、免疫調節性T細胞に結合する少なくとも1種の抗体を使用して除去又は枯渇化又は不活性化できる。この抗体はIL−2レセプター、好ましくはCD25に結合し得る。免疫調節性T細胞の活性は、本発明の癌療法剤を投与する前、その間、又はその後で個体中で減少させ得る。
【0014】
別の実施形態において、本発明の癌療法剤を用いる治療はまた、免疫細胞の養子移入を含み得る。これらの免疫細胞は、好ましくは、エキソビボで活性化できるT細胞である。一実施形態において、活性化はIL−2及び/又は抗CD3抗体への曝露によって達成される。別の実施形態において、エキソビボ活性化は、癌細胞又は癌細胞ワクチンへの曝露によって達成される。免疫細胞の養子移入は、本発明の癌療法剤を投与する前、その間、又はその後に行われ得る。ある実施形態において、養子移入は、個体における免疫調節性T細胞の活性を減少させることと組み合わせられ得る。この場合において、養子移入は、免疫調節性T細胞の除去、枯渇化、又は不活性化の後で好ましく行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の1つの態様に従って、「LEC」ケモカインに連結された癌標的指向分子を含む癌療法剤が提供される。このような本発明の癌療法剤(すなわち、LEC癌療法剤)は本発明に従う癌療法のために有用である。
【0016】
用語「癌標的指向分子」とは、インビボで癌細胞に局在化する能力を有する分子をいう。語句「個体において癌細胞に局在化する」(すなわち、「インビボ」)とは、作用剤が腫瘍細胞に結合し得ること、又は腫瘍細胞の近傍に結合し得ることを意味する。癌標的指向分子は癌細胞の表面上のレセプター又はリガンドに結合し得るか、又は癌細胞の細胞内標的に結合し得る(その標的が作用剤に接近可能であるという条件で)。細胞内癌細胞標的への接近可能性は、損なわれている原形質膜を有する癌細胞(例えば、アポトーシス、壊死などを受けている細胞など)において生じ得る。例えば、特定の癌標的指向分子は、損なわれた原形質膜を有さない細胞の細胞内部分に結合し得る。例えば、Porkkaら、Proc Natl Acad Sci USA.(2002)99(11)7444−9を参照のこと。
【0017】
癌標的指向分子はまた、腫瘍中に存在する分子に結合し得る。本明細書中で使用される場合、「腫瘍」は、癌細胞、壊死、並びにストローマを含む。ストローマは、線維芽細胞などの細胞並びに血管及び毛細血管の内皮細胞並びに線維性成分及び非線維性成分から構成される細胞外マトリックスを含む。主要な線維性タンパク質はコラーゲン及びエラスチンである。癌標的指向分子は、腫瘍中の癌細胞を取り囲むストローマに結合することによって腫瘍に標的とする。したがって、癌標的指向分子は、線維芽細胞又は内皮細胞又は細胞外マトリックスの成分に結合することによって癌の近傍を標的とし得る。例えば、Schraaら、Control Release(2002)83(2):241−51;Arapら、Haemostasis(2001)31補遺1:30−1を参照のこと。
【0018】
本発明において有用な癌標的指向分子には、腫瘍特異的抗原又は腫瘍関連抗原に結合する分子が含まれる。用語「腫瘍関連抗原」(TAA)とは、本明細書中で使用される場合、腫瘍細胞上に、誕生後の選択された器官における胎児寿命中の正常細胞上に(胎児性癌抗原)、又は正常細胞上ではあるが、腫瘍細胞上よりもはるかに低濃度で存在するタンパク質を指す。TAAはまた、癌細胞の近傍のストローマ中に存在し得るが、身体の別の箇所のストローマにおいてはより少ない量で発現できる。種々のTAAが記載されており、これにはBRCA−1タンパク質及びBRCA−2タンパク質、HER−2−neu、MUC1などのムチン、インテグリン、サイトカインなどが含まれる。対照的に、腫瘍特異的抗原(TSA)(別名「腫瘍特異的移植抗原」又はTSTA)とは、正常細胞には存在しない、腫瘍細胞発現タンパク質をいう。TSAは通常、感染性ウイルスが細胞を不死化し、且つウイルス抗原を発現させるときに出現する。例示的なウイルスTSAは、HPV16型のE6タンパク質又はE7タンパク質である。ウイルスによって誘導されないTSAは、B細胞リンパ腫上の免疫グロブリンのイディオタイプ又はT細胞リンパ腫上のT細胞レセプター(TCR)であってもよい。
【0019】
本発明の方法を使用して治療可能な癌には、癌腫、肉腫、並びに白血病及びリンパ腫、並びに他の型の癌が含まれる。癌腫には、肺、乳房、結腸、卵巣、前立腺などの癌腫が含まれる。これらの癌は原発性又は転移性であってもよい。白血病及びリンパ腫の場合、本発明の方法で治療可能な癌細胞には、腫瘍の形態のもの並びに骨髄中及び循環中の癌細胞が含まれる。
【0020】
癌標的指向分子には、薬物、有機化合物、ペプチド、ペプチド模倣物などの低分子化合物、並びに糖タンパク質、プロテオグリカン、脂質、糖脂質、リン脂質などの高分子が含まれる。低分子癌標的指向分子は、約5,000ダルトン以下のサイズであってもよい。癌標的指向分子には、抗新生物剤を含む周知の治療化合物を含まれ得る。抗新生物標的指向分子には、パクリタキセル、ダウノルビシン、ドキソルビシン、カルミノマイシン、4’−エピアドリアマイシン、4−デメトキシ−ダウノマイシン、11−デオキシダウノルビシン、13−デオキシダウノルビシン、アドリアマイシン−14−ベンゾエート、アドリアマイシン−14−オクタノエート、アドリアマイシン−14−ナフタレンアセテート、ビンブラスチン、ビンクリスチン、マイトマイシンC、N−メチルマイトマイシンC、ブレオマイシンA2、ジデアザテトラヒドロ葉酸、アミノプテリン、メトトレキサート、コルヒチン、及びシスプラチンなどが含まれ得る。癌標的指向分子にはまた、ジフテリア毒素などの毒素、CSF、GSF、GMCSF、TNFなどのサイトカイン、エリスロポエチン、インターフェロン又はインターロイキンなどの免疫調節物質又はサイトカイン、ニューロペプチド、HGH、FSH、又はLHなどの生殖ホルモン、甲状腺ホルモン、アセチルコリンなどの神経伝達物質、及びエストロゲンレセプターなどのホルモンレセプターが含まれ得る。
【0021】
癌標的指向分子はタンパク質又はペプチドであってもよい。「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」は、アミド結合によって連結されたアミノ酸のポリマーをいうために交換可能に使用される。本明細書中で使用される場合、これらの用語はアミノ酸ポリマーに適用され、ここでは1つ以上のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工の化学アナログである。したがって、タンパク質は、天然のアミノ酸及び非天然のアミノ酸を含み得る。アミノ酸は、ペプチドの結合機能が維持される限り、L型又はD型であってもよい。ペプチドは可変長であってもよいが、一般的には約4から200アミノ酸長の間である。ペプチドはペプチド内の2つの隣接しないアミノ酸の間の分子内結合、例えば、バックボーンからバックボーン、側鎖からバックボーン、及び側鎖から側鎖の環状化を有して、環状であってもよい。環状ペプチドは当該分野において周知の方法によって調製できる。例えば、米国特許第6,013,625号を参照のこと。
【0022】
癌標的指向分子はインテグリンのアンタゴニスト又はアゴニストであってもよい。インテグリンは、細胞接着事象及びシグナル伝達プロセスにおいて機能するヘテロダイマー膜貫通糖タンパク質複合体である。αサブユニット及びβサブユニットを含むインテグリンには、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αIIbβ、αIELbβなどを含む多数の型が含まれる。インテグリンαβは種々の細胞上で発現され、骨基質への破骨細胞の接着、血管平滑筋細胞の移動、及び血管形成を含むいくつかの生物学的に関連する過程を媒介することが示されてきた。インテグリンのための適切な標的指向分子には、RGDペプチド若しくはペプチド模倣物又は非RGDペプチド若しくはペプチド模倣物(例えば、米国特許第5,767,071号及び同第5,780,426号を参照されたい)が含まれ、αβ(VLA−4)、αβ(例えば、米国特許第6,365,619号;Changら、Bioorganic & Medicinal Chem Lett、12:159−163(2002);Linら、Bioorganic & Medicinal Chem Lett、12:133−136(2002)を参照のこと)などの他のインテグリンについても同様である。
【0023】
好ましい癌標的指向分子は抗体である。用語「抗体」は、本明細書中で使用される場合、B細胞の産物である免疫グロブリン及びその改変体、並びにT細胞の産物であるT細胞レセプター(TcR)及びその改変体を含む。免疫グロブリンは、免疫グロブリンκ及びλ、α、γ、δ、ε、及びμ定常領域遺伝子、並びに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子によって実質的にコードされる1種又は複数のポリペプチドを含むタンパク質である。軽鎖はκ又はλのいずれかに分類される。重鎖はγ、μ、α、δ、又はεとして分類され、これらは次にはそれぞれ免疫グロブリンのクラス、IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEを規定する。重鎖のサブクラスもまた公知である。例えば、ヒトにおけるIgG重鎖は、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4のサブクラスのいずれかであってもよい。
【0024】
代表的な免疫グロブリンの構造単位は、テトラマーを含むことが知られている。各テトラマーは2つの同一なポリペプチド鎖の対から構成され、各対は1つの「軽」鎖(約25kD)及び1つの「重」鎖(約50〜70kD)を有する。各鎖のN末端は、主として抗原認識の原因である100から110以上までのアミノ酸の可変領域を規定する。用語可変軽鎖(VL)及び可変重鎖(VH)とは、これらの軽鎖及び重鎖をそれぞれいう。
【0025】
抗体は、完全長の無傷の抗体として、又は種々のペプチダーゼ若しくは化学物質を用いる消化によって産生される十分に特徴付けられた多数の断片として存在する。したがって、例えば、ペプシンは、ヒンジ領域中のジスルフィド結合の下の抗体を消化して、F(ab’)2を産生し、Fabのダイマーそれ自体が、ジスルフィド結合によってVH−CH1に結合された軽鎖である。F(ab’)2は穏やかな条件下でヒンジ領域中のジスルフィド結合を開裂させるために還元でき、それによってF(ab’)2ダイマーをFab’モノマーに転換する。Fab’モノマーは、本質的に、ヒンジ領域の一部を有するFab断片である(他の抗体断片のより詳細な記載については、基礎免疫学(Fundamental Immunology)、W.E.Paul編、Raven Press、N.Y.(1993)を参照のこと)。種々の抗体断片が無傷の抗体の消化によって規定されているのに対して、当業者は、種々の抗体断片のいずれもが化学的又は組換えDNA技術を利用することのいずれかによってデノボ合成できることを認識する。したがって、用語抗体は、本明細書中で使用される場合、抗体全体の改変によって産生されるか若しくはデノボ合成されるかのいずれかの抗体断片、又は組換えDNA方法論を使用して得られる抗体及び断片もまた含む。
【0026】
組換え抗体は、従来の全長抗体、タンパク質分解性消化からの公知の抗体断片、Fv又は単鎖Fv(scFv)などの独特な抗体断片、ドメイン欠失抗体などであってもよい。抗体は、1アミノ酸又は数アミノ酸までの少ないアミノ酸の欠失又は変異を有するドメイン又はポリペプチドを含み得るが、例えば1つ又は複数のドメインの欠失などのより広範な欠失も可能である。
【0027】
Fv抗体は、約50Kdサイズであり、且つ軽鎖及び重鎖の可変領域を含む。単鎖抗体Fv(「scFv」)ポリペプチドは、共有結合したVH:VLヘテロダイマーであり、これは、直接結合されるか又はペプチドをコードするリンカーによって結合されるVH及びVLコード配列を含む核酸から発現できる。Hustonら(1988)Proc.Nat.Acad.Sci.USA、85:5879−5883を参照のこと。天然に凝集したが、化学的には分離している抗体V領域からの軽鎖及び重鎖のポリペプチド鎖をscFv分子に転換するための多数の構造は、抗原結合部位の構造と実質的に類似している三次元構造にフォールディングされる。例えば、米国特許第5,091,513号、同第5,132,405号、及び同第4,956,778号を参照のこと。
【0028】
抗体は、非ヒト抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、又はキメラ抗体であってもよく、後者はヒト抗体配列及び非ヒト抗体配列を含む。当該分野において知られているように、キメラ抗体は、非ヒト定常領域(重鎖、軽鎖、又は両方)をヒト定常領域抗体と交換することによって調製される。例えば、Cabillyらへの米国特許第4,816,567号を参照のこと。マウス抗体などの非ヒト抗体からヒト化抗体を作製する方法もまた周知である(例えば、Winterへの米国特許5,565,332号を参照のこと)。
【0029】
癌標的指向分子は、腫瘍の壊死部分中で接近可能な核抗原を標的とする抗体であってもよい。腫瘍壊死治療(TNT)としても知られる壊死細胞標的指向(参考文献番号1〜5、7、8)は、腫瘍関連細胞表面抗原に結合する抗体を利用する方法とは異なる手法を表し、且つ腫瘍の各型について異なる抗体の使用を必要とする。TNT抗体はすべての細胞において見出される細胞内抗原に結合し、これらの抗原は死滅しつつある細胞によって保持されており、且つ正常組織中にはまれにしか存在しない異常に浸透性である変性中の細胞の存在に起因して、悪性腫瘍において優先的な局在を示す。急速に分裂中の腫瘍はある割合の変性中の細胞又は死滅細胞を含むが、分裂中の細胞を殺傷する試みに注意を集中したので、変性中の成分は大部分無視してきた。腫瘍細胞の消失量の計算は、正常組織とは対照的に、腫瘍細胞分裂の子孫の30〜80%がすぐに変性を受けることを明らかにした。腫瘍においては、不完全な血管系及び損なわれた食細胞応答は、変性中の細胞の蓄積を許容し、長い間病理学者達に悪性腫瘍の典型的な特徴と認識されてきた、大きな領域の壊死の形成を伴うことが多い(Epsteinら、Cancer Res(1988)48:5842−5848)。したがって、腫瘍内での高い割合の死滅しつつある細胞の蓄積は、悪性腫瘍と正常組織の間の主要な区別を構成し、正常組織では、散発性の細胞死が比較的低い比率で起こり、組織からの壊死成分の迅速(数分間以内)且つ秩序立った除去を伴う。変性中の細胞は生存可能な細胞中では観察されない浸透可能な細胞表面膜を有するので、TNT抗体は、腫瘍の壊死領域中に入り且つそれらの細胞内抗原に結合する。これとは反対に、腫瘍の生存可能な領域及び正常組織中では拡散したTNT抗体は結合せずに、通常のクリアランス機構によって除去される。それゆえに、TNT抗体は、腫瘍の壊死領域を特異的に標的とするための有用な手法を提供し、腫瘍の中心コア中に深く位置し得るこれらの領域に診断作用剤及び治療作用剤を送達するために使用できる。TNT抗体は、他の形態の抗体治療から区別される独特な多数の特色を有する。これらの特性のために、TNT抗体は、放射性核種(参考文献番号5、7)、免疫刺激分子(参考文献9〜11)、及び血管浸透性作用剤(参考文献番号12〜15)を癌の治療のために可能にするいくつかの利点を有する。
【0030】
議論されるように、癌療法用の本発明の組成物はLECケモカインを含む。ケモカインは小さく(7〜16kD)、分泌性の、且つ白血球及び樹状細胞の走化性、PMN脱顆粒、並びに血管形成に関与する構造的に関連した可溶性タンパク質である(Mackay CR.Nature Immunol.(2001)2:95−101;Gerardら、Nature Immunol.(2001)2:108−115)。ケモカインは、損傷、アレルゲン、抗原、又は侵入微生物に対する宿主応答の最初の相の間に産生される。ケモカインは、細胞の移動及び活性化の両方を誘導して炎症性病巣に白血球を引き付ける。機能するために、ケモカインは主として損傷又は感染の部位で作られ、それらの小さなサイズのために非常に短い半減期を有する。全身投与が深刻な副作用と関連するので(6)、有効な免疫応答を達成するために腫瘍中のケモカインの高い局所的濃度を得ることは困難である。
【0031】
ケモカインは、C末端の近傍のシステイン残基の配置に基づいて、α(C−X−C)、β(C−C)及びγ(C)のサブグループに分類されており、それらのいくつかは鎖内S−S架橋の形成に関与する。αケモカインは、それらの4つのシステイン残基のうちの最初と2番目の間に挿入された単一のアミノ酸を有するが、これらのシステインはβグループにおいては分離されない。γケモカインは1対のシステインのみを有する。免疫系におけるそれらの重要な役割に起因して、ケモカインは炎症性疾患及び自己免疫疾患(Vaddiら、ケモカインの事実の本(The Chemokine facts book 1997))、HIV(Baroudy BM.「新規な抗レトロウイルス剤としての、HIV−1潜在性を効率的に阻害するCCR5の低分子アンタゴニスト(A Small molecule antagonist of CCR5 that effectively inhibits HIV−1 potential as a novel antiretroviral agent)」7th Conference on Retroviruses and Opportunistic infections、2000)、並びに癌(Myagishiら、J Neuro Sci.(1995))を治療するために利用されてきた。
【0032】
ケモカイン作用の機構は、標的細胞上の種々の膜貫通Gタンパク質共役レセプターへの最初の結合を含む。ケモカインとこれらのGタンパク質共役レセプターとの相互作用は、応答する細胞の表面上で、βインテグリンなどの接着タンパク質の迅速な再構成を引き起こし、それらの内皮細胞(EC)裏層血管壁への接着を容易にする。この接着に続いて、EC間での組織への白血球の移動が起こる。一旦存在すると、炎症性白血球はケモカインの増加する濃度勾配に沿って元々の部位に移動する。損傷又は微生物侵入の部位でのより高いケモカイン濃度に応答して、白血球は、顆粒内容物の放出及びサイトカイン産生の増加などのエフェクター機能を実行するために活性化される。LECはCCR1及びCCR8ケモカインレセプターに結合し且つこれらを活性化する。
【0033】
「肝発現ケモカイン」又は「LEC」(CCL16)(NCC−4、LMC、及びHCC−4、LCC−1、及びモノタクチン−1としても知られる)は、発現配列タグのライブラリーにおいて元々見出され、後に17q染色体にCCケモカインクラスター中でマッピングされた(Naruseら、Genomics(1996)34:236−240)。LECは、健常成体ドナーからの血漿中に比較的高濃度で(0.3−4nM)存在する。LECをコードするヒト遺伝子は約5kbの長さを有し、3つのエキソンを有する。2つの型の転写物(579bp、1503bp)が選択的なポリアデニル化部位を通して生成される。マウスにおけるLEC遺伝子はイントロンの挿入に起因して、その機能を喪失した偽遺伝子である(同上)。
【0034】
ヒトLECをコードするDNAは、ATGコドンで開始して終止コドン(TGA)を含む363塩基を含む(図7;配列番号1を参照のこと)。このDNAは、120アミノ酸のヒトLEC前駆体(図8;配列番号2)をコードし、最初の23アミノ酸は成熟ヒトLECタンパク質(図8;配列番号3)を産生するために発現の間に切断されるシグナルペプチドを表す。
【0035】
LECはヒト単球及び樹状細胞(APC細胞)の両方に対する強力な走化性因子である(Moserら、Nature Immunology(2001)2:123−128;Thelen,M.;Nature Immunology(2001)2:129−134)。LECは、ケモカインレセプターCCR1及びCCR8を通してその活性を媒介する(Howardら、Blood(2000)96:840−845)。LECは一貫して結合し、レセプターCCR1、CCR2、及びCCR5に比較的低い親和性で結合する(Nomiyamaら、Int Immunol.(2001)13(8):1021−9)。ヒト肝細胞は、HepG2などのヒト肝細胞系と同様に、LECを強力に発現する。
【0036】
LECはケモカインの中で独特であり、IL−10での細胞の治療後にそのmRNAレベルを増加及び安定化させる。インビトロ試験は、LECが最大の走化性を誘導するために、接着のために必要とするよりもはるかにより高い濃度を必要とすることを示す(同上)。LECの潜在的な治療的適用は、Giovarelliら(参考文献番号6)によって試験され、彼らは、LECを発現するように操作された哺乳動物癌腫TSA細胞が腫瘍の転移性伝播を阻害し、且つマクロファージ、樹状細胞、T細胞、及びPMNの印象的な浸潤並びにIFN−γ及びIL−12の産生に起因する腫瘍拒絶を誘導することを示した。LECの分泌による腫瘍の拒絶は、CD8リンパ球及び多形核白血球の両方を含む(参考文献番号6)。これらのマウスにおいて、抗腫瘍免疫記憶は、TSA腫瘍チャレンジによって示されるように拒絶後迅速に確立された。
【0037】
用語「LEC」とは、本明細書中で使用される場合、ヒトLECタンパク質配列に実質的に類似であるか、又はその保存性変異を含んだアミノ酸配列を含む。用語「実質的に類似」及び「保存性変異」は、別の生物学的に類似した残基による、アミノ酸残基の置換を示す。保存性変異の例には、イソロイシン、バリン、ロイシン、若しくはメチオニンなどの疎水性残基での別の残基の代わりの置換、又は1つの極性残基での別の残基の代わりの置換(例えば、リジンの代わりのアルギニンでの置換、アスパラギン酸の代わりのグルタミン酸での置換、若しくはアスパラギンの代わりのグルタミンでの置換など)が含まれる。用語「保存性変異」及び「実質的に類似」はまた、置換ポリペプチドに対して惹起された抗体が非置換ポリペプチドともまた免疫反応するという条件で、非置換の親のアミノ酸の代わりに置換アミノ酸の使用を含む。
【0038】
ヒトLECタンパク質に実質的に類似するLECタンパク質は、本発明の癌療法組成物中のヒトLECの代わりに代用できる。実質的に類似のLECタンパク質は、ネイティブヒトLEC配列と、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、及びより好ましくは98%の配列同一性(すなわち、相同性)を共有する。ヒトLECアミノ酸配列に実質的に類似し、且つこの用語が本明細書中で使用される場合に「LEC」タンパク質と見なされるタンパク質はまた、ヒトLECと少なくとも1つの生物学的特性を共有する。LECの生物学的特性には、ケモカインレセプターCCR1若しくはCCR8への結合、又は単球、リンパ球、若しくはPMNのための化学誘引物質としての機能が含まれる。この点に関して、LECはカルシウム動員並びにCCR1及びCCR2を介する走化性を誘導する。LECはまた、カルシウム動員を誘導するが、CCR5を介する走化性はわずかである。
【0039】
相同性及び同一性は、しばしば配列分析ソフトウェアを使用して測定される(例えば、Sequence Analysis Software Package of the Genetics Computer Group、University of Wisconsin Biotechnology Center、1710 University Avenue、Madison、WI53705)。このようなソフトウェアは、種々の欠失、置換、及び他の改変に対して相同性の程度を割り当てることによって類似の配列を一致させる。用語「相同性」及び「同一性」は、2つ又はそれ以上の核酸配列又はポリペプチド配列の文脈において、任意の数の配列比較アルゴリズムを使用して、又は手動のアラインメント及び目視検査によって測定されるように、比較ウィンドウ又は指定された領域にわたって最大の一致のために比較及びアラインされた場合に、同じであるか又は特定のパーセンテージの同じであるアミノ酸残基若しくはヌクレオチドを有する2つ又はそれ以上の配列又はサブ配列をいう。
【0040】
配列比較のために、代表的には、1つの配列が参照配列として働き、これに試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列及び参照配列はコンピュータに入力され、必要な場合、サブ配列座標が指定され、さらに配列アルゴリズムプログラムのパラメータが指定される。デフォルトプログラムパラメータが使用できるか、又は代替的なパラメータが指定できる。次いで、配列比較アルゴリズムが、プログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列についての配列同一性パーセントを計算する。
【0041】
比較のための配列のアラインメントの方法は当該分野において周知である。比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith及びWaterman(1981、Adv.Appl.Math.2:482)の局所的相同性アルゴリズムによって、Needleman及びWunsch(1970、J.Mol.Biol.48:443)の相同性アラインメントアルゴリズムによって、Person及びLipman(1988、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 85:2444)の類似性検索法によって、これらのアルゴリズムのコンピュータによる実行(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Dr.Madison、WIのGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)によって、又は手動のアラインメント及び目視検査によって行われ得る。相同性又は同一性を決定するための他のアルゴリズムには、例えば、上記に加えて以下が含まれる:BLASTプログラム(Basic Local Alignment Search Tool at the National Center for Biological Information)、ALIGN、AMAS(Analysis of Multiply Aligned Sequences)、AMPS(Protein Multiple Sequence Alignment)、ASSET(Aligned Segment Statistical Evaluation Tool)、BANDS、BESTSCOR、BIOSCAN(Biologicalal Sequence Comparative Analysis Node)、BLIMPS(BLocks IMProved Searcher)、FASTA、Intervals & Points、BMB、CLUSTAL V、CLUSTAL W、CONSENSUS、LCONSENSUS、WCONSENSUS、Smith−Watermanアルゴリズム、DARWIN、Las Vegasアルゴリズム、FNAT(Forced Nucleotide Alignment Tool)、Framealign、Framesearch、DYNAMIC、FILTER、FSAP(Fristensky Sequence Analysis Package)、GAP(Global Alignment Program)、GENAL、GIBBS、GenQuest、ISSC(Sensitive Sequence Comparison)、LALIGN(Local Sequence Aligment)、LCP(Local Content Program)、MACAW(Multiple Alignment Construction & Analysis Workbench)、MAP(Multiple Alignment Program)、MBLKP、MBLKN、PIMA(Pattern−Induced Multi−sequence Alignment)、SAGA(Sequence Alignment by Genetic Algorithm)、及びWHAT−IF。このようなアライメントプログラムはまた、実質的に同一の配列を有するポリヌクレオチド配列を同定するためにゲノムデータベースをスクリーニングするために使用できる。例えば、ヒトゲノム配列の実質的な部分は、National Center for Biotechnology Information(NCBI)においてBLAST検索ツールを介する検索のために利用可能である。複数の配列決定されたゲノム及びそれらを分析するための資源に関する情報はまた、NCBIから、そのGenomic Biologyウェブページ上で利用可能である。
【0042】
有用なアルゴリズムの1つの例はBLAST(例えば、BLAST2.0)であり、これは、Altschulら、1977、Nucl.Acids Res.25:3389−3402、及びAltschulら、J.Mol.Biol.1990 215:403−410においてそれぞれ記載されている。BLAST分析を実行するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationを通して公的に利用可能である。このアルゴリズムは、データベース中の同じ長さのワードと位置合わせしたときにある正の値の閾値スコアTと一致又は満足するかのいずれかである、問い合わせ配列中の長さWの短いワードを同定することにより最初に高スコア配列対(HSP)を同定する工程を含む。Tは隣接ワードスコア閾値と呼ばれる(Altschulら、前出、1977及び1990)。これらの最初の隣接ワードのヒットが、それらを含むより長いHSPを見出すための検索を開始するためのシードとして働く。これらのワードヒットが、累積的なアラインメントスコアが増加できる限り、各配列に沿って両方の方向で伸長される。累積スコアは、ヌクレオチド配列については、パラメータM(一致する残基のペアについてのリワードスコア;常に>0)を使用して計算される。アミノ酸配列については、スコアリングマトリックスが、累積スコアを計算するために使用される。各方向におけるワードヒットの伸長は以下の場合に停止する:累積アラインメントスコアがその最大の達成されたスコアから量X低下するとき;1つ又は複数のネガティブスコア残基アラインメントの蓄積に起因して、累積スコアが0以下になるとき;又はいずれかの配列の末端に到達したとき。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、及びXは、アラインメントの感度及び速度を決定する。
【0043】
BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、デフォルトとして、ワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=−4、及び両方の鎖の比較を使用する。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、ワード長(W)3、期待値(E)10、及びBLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff及びHenikoff、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1989)89:10915を参照のこと)アラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=−4、及び両方の鎖の比較を使用する。
【0044】
BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計学的分析を実行する(例えば、Karlin及びAltschul、1993、Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:5873を参照のこと)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの尺度は最小合計確率(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチド配列又はアミノ酸配列間の一致が偶然に起こる確率の指標を提供する。例えば、参照配列核酸に対する試験核酸の比較における最小合計確率が約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、及び最も好ましくは約0.001未満であるならば、核酸が参照配列に類似であると見なされる。
【0045】
癌療法用の本発明の化合物は、LECに連結された癌標的指向分子を含む。癌標的指向分子及びケモカインは、共有結合的又は非共有結合的に連結できる。本明細書中で使用される場合、「連結される」とは、pH、イオン強度、及び浸透ポテンシャルの生理学的条件下で、存在物が互いに平衡状態で結合されることを意味する。共有結合は種々の化学架橋剤のいずれかによってであってもよく、これには例えば、ホモ二官能性又はヘテロ二官能性の架橋剤が含まれ、これらの多くは市販されている(例えば、Pierce Chemical Co.又はSigma Chemical Co.を参照のこと)。架橋は、当該分野において周知の種々の化学物質によって達成でき、これは、例えば、活性化ポリエチレングリコール、アルデヒド、イソシアネート、マレイミドなどが含まれる。
【0046】
癌標的指向分子は、遺伝子融合を通してケモカインに連結でき、そして癌標的指向分子とケモカインの間のポリペプチドリンカー配列を含み得る。リンカーの組成及び長さは、当該分野で周知の方法に従って決定でき、且つ効力について試験できる。このリンカーは、一般的に約3から約15アミノ酸長、より好ましくは約5から約10アミノ酸長であるが、しかしより長いリンカー若しくはより短いリンカーが使用できるか、又はそのリンカーは全体的に免除できる。GlySerリンカーが例示的なリンカーである。さらなる配列もまた、切断部位を組み込むために含まれ得、いくらか後の時点でLECから癌標的指向分子を分離する。したがって、リンカーは、酵素切断のための基質である配列、例えば、エンドペプチダーゼ認識配列を含み得る。
【0047】
タンパク質系癌標的指向分子、LEC又は標的指向分子−LEC融合タンパク質は、当該分野において周知であるように、原核生物細胞又は真核生物細胞におけるなどの組換え発現方法を使用して調製できる(例えば、米国特許第5,116,943号及び同第6,331,415号を参照されたい)。一般的に、タンパク質をコードする核酸は、コードされた産物の高収量発現のために発現ベクターにクローニングできる。この発現ベクターは、プラスミド、ウイルスの一部であってもよいか、又は核酸断片であってもよい。この発現ベクターは、タンパク質をコードする核酸が、プロモーター及び選択的にエンハンサーと作動可能に結合されてクローニングされる発現カセットを含む。この発現カセットはまた、例えば、複製起点、及び/又は染色体組み込みエレメント(例えば、レトロウイルスLTR若しくはアデノ関連ウイルス(AAV)ITRなど)などの他の特徴を含み得る。タンパク質の分泌が所望される場合、シグナル配列をコードするDNAが、タンパク質の成熟アミノ酸をコードする核酸の上流に配置できる。後の精製を容易にするため(例えばヒスチジンタグ)、又はタンパク質を標識する際に補助するために使用できる短いタンパク質配列をコードするDNAが、タンパク質をコードする核酸の内部又はその末端に含まれ得る。
【0048】
LECは、標的指向分子及びLECがそれらの本質的な生物学的活性を保持するという条件で、そのN末端又はC末端から、タンパク質型癌標的指向分子のC末端又はN末端に直接的又は間接的に融合できる。ある場合において、LECは、好ましくは、そのC末端から、タンパク質型癌標的指向分子のN末端に融合される。癌標的指向分子が抗体である場合、LECは、抗体の軽鎖及び/又は重鎖のN末端に融合できる。
【0049】
タンパク質の組換え発現を複製及び補助するための適切な細胞は当該分野において周知である。このような細胞は、必要に応じて、特定の発現ベクターでトランスフェクト又は形質導入でき、且つベクターを含む大量の細胞を、臨床的適用のために十分な量のタンパク質を得るために大規模ファーメンターに播種するために増殖できる。このような細胞には、E.coliなどの原核微生物、又はチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、昆虫細胞などの種々の他の真核生物が含んでもよい。これらの系において外来性遺伝子を発現するための標準的な方法論は当該分野において公知である。
【0050】
本発明の癌療法剤は、癌に罹患した個体において癌の治療のために使用できる。したがって、本発明の別の局面は、個体において腫瘍のサイズを減少するか、又は癌の増殖を阻害する方法であり、この方法は有効量の本発明の組成物を投与する工程を包含し、ここでこの癌療法剤は個体における癌細胞又は腫瘍に局在する。本発明のさらなる態様は、癌に罹患している個体において転移の発生を阻害する方法であり、この方法は有効量の本発明の組成物を投与する工程を包含し、ここでこの癌療法剤は個体における転移性癌細胞に局在する。
【0051】
したがって、本発明の癌療法剤は、個体において腫瘍のサイズを減少させるため、又は癌細胞の増殖を阻害するための医薬の調製において使用され、これは投与のための有効量の医薬を含み、ここでこの癌療法剤は個体における癌細胞又は腫瘍に局在する。1つの態様において、この癌療法剤は、LEC/chTNT−3ではない。本明細書中で使用される場合、用語「LEC/chTNT−3」は、ヒト/マウスキメラTNT−3の重鎖のN末端に、特定のペプチドリンカーを介してそのC末端に融合された天然のLEC配列を含む融合タンパク質をいう。この融合タンパク質の調製は実施例3に記載される。
【0052】
本明細書の癌療法剤を使用する治療の有効性は、個体における免疫調節性T細胞の活性を減少させることによって増加できる。これは、個体において、免疫調節性T細胞をエキソビボで除去することによって、又は免疫調節性T細胞を枯渇化若しくは不活性化することによって達成できる。用語「免疫調節性T細胞」は、本明細書中で使用される場合、宿主抗腫瘍免疫応答を抑制するように、直接的又は間接的に機能するT細胞の集団をいう。免疫調節性T細胞は、CD4、CD25、又は両方のマーカーにポジティブであってもよい。
【0053】
免疫調節性T細胞に関して本明細書中で使用する場合の用語「エキソビボで除去する」とは、免疫調節性T細胞がエキソビボ方法(例えば、フローサイトメトリー細胞分離、カラム又はフィルター分離など)によって個体の循環系から除去される。カラム又はフィルターは、免疫調節性T細胞に結合し得る抗体がそこに結合されていてもよい。免疫調節性T細胞に結合する抗体はまた、フローサイトメトリー装置による除去のためにこのような細胞を同定するために使用できる。免疫調節性T細胞に結合するために適切な抗体には、CD4抗原に特異的な抗体、IL−2レセプターのα鎖サブユニット(すなわちCD25)などが含まれる。抗T細胞抗体の組合せもまた使用できる。CD25に結合するヒト化モノクローナル抗体であるダクリズマブ(Daclizumab)(登録商標)、又は同じ抗体のキメラ型であるバシリキシマブ(Basiliximab)(登録商標)は、Novartis Pharma AGから市販されている。CD4に対する完全ヒト化抗体であるHu−Max−CD4(登録商標)もまた市販されている(GenMab)。
【0054】
用語「免疫調節性T細胞をインビボで枯渇化又は不活性化する」とは、本明細書中で使用される場合、宿主への薬剤の投与後に宿主の抗腫瘍免疫応答を抑制する免疫調節性T細胞の能力の減少をいう。薬剤は、投与されたときに免疫調節性T細胞の損失(すなわち、枯渇化)又は免疫調節性T細胞の抗腫瘍免疫抑制機能の不活性化を引き起こすものである。免疫調節性T細胞を枯渇化又は不活性化することは、上記のように、CD4抗原に特異的な抗体、IL−2レセプターのα鎖サブユニット(すなわちCD25)などの薬剤を投与することによって達成できる。また、γδ免疫調節性T細胞に対する抗体は、このような細胞を枯渇化するため、及び以前に記載されるように抗腫瘍免疫を刺激するために使用できる。Seoら、J.Immunol.(1999)163:242−249を参照のこと。抗CD40リガンドもまた、免疫調節性T細胞を枯渇化又は不活性化するために使用できる。
【0055】
CTLA4Igなどの部分抗体構築物、CTLA−4の融合タンパク質、及び免疫グロブリン(Ig)重鎖のFcは、CD28分子とB7分子の間の相互作用を阻止することを介して、完全なT細胞活性化のための本質的な同時刺激シグナルを阻害するために使用できる。CTLA4Igは、調節性T細胞をT細胞非応答性にする(すなわち、不活性化する)ための医薬として投与できる。Parkら、Pharm Res.(2003)20(8):1239−48を参照のこと。シュードモナス(pseudomonas)外毒素へのIL−2融合物(OnTac)は、調節性T細胞を枯渇化又は不活性化するためのなお別の試薬である。
【0056】
別の手法において、CD8+細胞溶解性Tリンパ球(CTL)腫瘍アネルギーの誘導を妨害する作用剤が投与できる。アネルギー性抗体などのCD137を作動させる作用剤は、それらのコグネイト抗原に再接触する際に、確立されたアネルギー性CTLの腫瘍細胞溶解性機能を回復させるために使用できる。Wilcoxら、Blood(2004)103:177−184を参照されたい。この手法は、腫瘍抗原に対するT細胞寛容を破壊するために使用できる。
【0057】
糖質コルチコイド誘導性腫瘍壊死因子レセプターリガンドをCD4/CD25+免疫調節性T細胞に対して作動させる作用剤は、これらの細胞(GITR)の抑制作用を逆転する。Toneら、PNAS(2003)100:15059−15064。
【0058】
インビボで免疫調節性T細胞を除去し、枯渇化、又は不活性化する方法は、たとえこの方法が宿主抗腫瘍免疫応答を活性に抑制する免疫調節性T細胞以外の細胞を除去する場合でも使用できる。免疫調節性T細胞を除去し、枯渇化、又は不活性化するための労力は、所定の期間の治療の間に複数回実行できる。また、異なる方法が一緒に使用できる(例えば、エキソビボでの細胞除去及びインビボでの枯渇化又は不活性化)。枯渇化又は不活性化のために投与される抗T細胞抗体の量は、移植分野において使用される量と同様であってもよい。例えば、Meisterら、Transplantation(1994)27;58(4):419−23を参照のこと。抗CD−40リガンド。
【0059】
免疫調節性T細胞は、本発明の癌療法剤の投与の前、その間、及び/又はその後に枯渇化又は不活性化できる。免疫調節性T細胞は、好ましくは、本発明の癌療法剤を投与する前に枯渇化される。
【0060】
さらなる態様において、本発明の癌療法のための方法には、抗腫瘍免疫を増強するための免疫細胞への養子移入が含まれる。本明細書中で使用される場合、「養子移入」とは、別の個体から、又は同じ個体からの免疫細胞の投与をいう。これらは好ましくはT細胞であり、これは、エキソビボで活性化でき、抗腫瘍免疫応答を支持する際に機能する能力を増強する。養子移入される免疫細胞は、例えば、IL−2及び/又は抗CD3抗体への曝露を含む、種々の周知の作用剤のいずれかによってエキソビボで活性化できる。エキソビボ活性化はまた、癌細胞ワクチンへの曝露を含み得る。このような癌細胞ワクチンは、処置される個体から、又は完全に別の癌からの、生きているか(しかし複製しない)又は殺傷された癌細胞を構成し得る。このワクチンはまた、癌細胞抽出物、又は癌細胞由来の精製されたワクチン調製物であってもよい。癌細胞ワクチンは当該分野において周知であり、周知の方法に従って調製できる。
【0061】
養子移入されたT細胞は、本発明の癌標的指向分子組成物の投与の前、その間、及び/又はその後で投与できる。養子移入されたT細胞は、好ましくは、本発明の癌標的指向分子組成物の投与後に与えられる。この型の治療において、患者は、IL−2(Lumら、J Immunother.(2001)24:408−19)又は他の作用剤(例えば抗CD3抗体及び抗CD28抗体(June,C.H.:J.Immunother(2001)24(5):389−391))を用いるエキソビボ刺激後にT細胞の複数注入を受ける。
【0062】
一部の実施形態においては、本発明の癌療法剤を使用する療法の有効性は、免疫調節性T細胞のエキソビボでの除去及び/又はインビボでの枯渇化若しくは不活性化の手法を、免疫細胞の養子移入と組み合わせることによって増加できる。このような実施形態において、免疫調節性T細胞を除去し、枯渇化、又は不活性化する工程の後で養子移入することが有利であってもよい。
【0063】
本発明の癌療法剤は、薬学的に許容可能な担体とともに処方された作用剤又は医薬として投与できる。したがって、本発明の化合物は、医薬又は薬学的組成物の製造において使用できる。本発明の薬学的組成物は、溶液として又は非経口投与のための凍結乾燥粉末として処方できる。粉末は、使用前に適切な希釈剤又は他の薬学的に許容可能な担体の付加によって再構築できる。液体処方物は、緩衝化された等張の水溶液であってもよい。粉末はまた、乾燥形態でスプレーできる。適切な希釈剤の例は、通常の等張生理食塩水溶液、標準5%デキストロース水溶液、又は緩衝化酢酸ナトリウム若しくは酢酸アンモニウム溶液である。このような処方物は、非経口投与にとってとりわけ適切であるが、経口投与のためにもまた使用でき、又は秤量された用量で吸入のために計量吸入器若しくは噴霧器に含み得る。ポリビニルピロリドン、ゼラチン、ヒドロキシセルロース、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、マンニトール、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどの賦形剤を加えることが望ましいこともある。
【0064】
代替的には、化合物は、経口投与のためのエマルジョン又はシロップ中で、カプセル化、錠剤化、又は調製できる。薬学的に許容可能な固体又は液体の担体は、組成物を増強若しくは安定化するために、組成物の調製を容易にするために加えられ得る。固体担体には、デンプン、ラクトース、硫酸カルシウム二水和物、石膏、ステアリン酸マグネシウム若しくはステアリン酸、タルク、ペクチン、アカシア、寒天、又はゼラチンが含まれる。液体担体には、シロップ、ピーナッツオイル、オリーブオイル、生理食塩水、及び水が含まれる。この担体はまた、単独で又はワックスとともに、モノステアリン酸グリセリン又はジステアリン酸グリセリンなどの徐放性物質が含まれ得る。固体担体の量は変化するが、好ましくは、投薬量単位当たり約20mgから約1gの間である。薬学的調製物は、錠剤形態については、粉砕、混合、顆粒化、及び必要な場合は圧縮を、或いは硬質ゼラチンカプセル形態については、粉砕、混合、及び充填を含む従来の製薬技術に従って作製される。液体担体が使用される場合、調製物は、シロップ、エリキシル、エマルジョン、又は水溶性若しくは非水溶性懸濁液の形態であってもよい。直腸投与のために、本発明の化合物は、ココアバター、グリセリン、ゼラチン、又はポリエチレングリコールなどの賦形剤と合わせられ得、且つ坐剤に成形できる。
【0065】
本発明の化合物は、他の医学的に有用な薬物又は生物学的作用剤を含むように処方できる。この化合物はまた、本発明の化合物が指向される疾患又は状態のために有用である他の薬物又は生物学的作用剤の投与と組み合わせて投与できる。
【0066】
本明細書中で使用される場合、語句「有効量」とは、そのレシピエントに有益な効果を付与するための十分に高い濃度を提供するために十分な量をいう。任意の特定の患者にとっての特定の治療有効用量レベルは、治療される障害、障害の重篤度、特定の化合物の活性、投与の経路、化合物のクリアランスの速度、治療の期間、化合物と組み合わせて又は同時に使用される薬物、年齢、体重、性別、食餌、及び被験体の一般的な健康、及び医学分野及び化学分野において周知である同様の要因を含む、種々の要因に依存する。「治療有効量」を決定する際に配慮される種々の一般的考慮は当業者に公知であり、例えば、Gilmanら編、グッドマン及びギルマンの治療薬の薬学的基礎(Goodman and Gilman’s:The Pharmacological Bases of Therapeutics)第8版、Pergamon Press、1990;並びにレミングトンの薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)、第17版、Mack Publishing Co.、Easton、Pa.、1990において記載されている。投薬量レベルは、約0.001から100mg/kg/日の範囲内にあり;約0.05から10mg/kg/日の範囲が一般的に適用可能である。化合物は、非経口的に、例えば、血管内、静脈内、動脈内、筋肉内、皮下などで投与できる。投与はまた、経口、鼻腔、直腸、経皮的、又はエアロゾルを介して吸入的であってもよい。本発明の組成物は、ボーラスとして投与してもよく、又はゆっくりと注入してもよい。
【0067】
治療有効用量は、IC50を決定することによって細胞培養アッセイから最初に見積もることができる。次いで、用量は、細胞培養で決定したIC50を含む循環血漿濃度範囲が得られるように、動物モデル中で処方できる。このような情報が使用して、ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定できる。血漿中のレベルは、例えば、HPLCによって測定できる。正確な処方、投与の経路、及び投薬量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選択できる。
【0068】
免疫応答性の個体への本発明の癌療法剤の投与は、癌標的指向分子、LECに対する抗体、又は使用される場合、リンカーへの抗体の産生を生じ得る。本発明の癌療法剤の免疫原性を減少させることは、当該分野において周知の方法によって、例えば、癌標的指向分子、LECに、又は使用されるリンカーに長鎖ポリエチレングリコール(PEG)系スペーサーなどを結合させることによって対処できる。長鎖PEG及び他のポリマーは、外来性エピトープをマスクするそれらの能力について知られており、外来性エピトープを提示する治療タンパク質の免疫原性の減少を生じる(Katreら、J.Immunol.(1990)144、209−213;Francisら、Int.J.Hematol.(1998)68、1−18)。代替的には、又はさらに、抗体標的指向分子結合体を投与された個体は、シクロスポリンA、抗CD3抗体などの免疫抑制剤を投与できる。
【0069】
以下の実施例は本発明を例証するために働く。これらの実施例は、いかなる場合においても本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例】
【0070】
(実施例1)
標的指向ビヒクルとしてのTNT抗体
a.キメラTNT−3
TNTモノクローナル抗体(MAb)を使用して、腫瘍の壊死領域中に局在する変性中の細胞を介して固形腫瘍を標的とした(1)。この手法は、抗原による免疫調整及びその脱落の問題を回避しながら、多様な起源の癌を標的とするために使用できる。3種のキメラTNT MAbが開発された。これらのchTNT−1、chTNT−2、及びchTNT−3は、それぞれ、ヒストンDNA複合体、ヘテロクロマチンDNA、及び一本鎖DNAからなる核内抗原を標的とする(4、5、Khawliら、Cancer Biotherapy & Radiopharmaceuticals(2002)17:359−370)。腫瘍保有マウスにおける各TNT MAbの薬物動態及び生体分布特性が提示されている。3種すべてのキメラTNT MAbは以前に記載されたように産生された(同上)。
【0071】
6週齢の雌性BALB/cマウスを使用してキメラTNT MAbの薬物動態クリアランスを決定した。マウスの群(n=5)に125I−標識したMAb(30〜40μCi/マウス)の腹腔内注射を投与した。chTNT−2は、chTNT−1(T1/2=30.4時間)及びchTNT−3(T1/2=134.2時間)と比較して、最長の循環時間(T1/2=178.7時間)を示した。125I−標識したキメラTNT MAbを固定化Raji細胞とともにインキュベートし、結合した放射能を使用して、Schatchard分析によって親和性定数Kaを計算する親和性結合試験も行った。chTNT−1、chTNT−2、及びchTNT−3の親和性定数は、それぞれ2.5×10−1、1.2×10−1、及び1.4×10−1であった。
【0072】
これらのMAbの組織生体分布を試験するために、MAD109マウス肺腺癌腫瘍モデルを使用した。腫瘍を左側腹皮下で5〜7日間増殖させ、その時点で腫瘍は約1cm直径に達した。各群において、個々のマウスに100μCi/10μgの125I−標識MAbを含む0.1ml接種物を腹腔内注射した。表1に示されるように、chTNT−1、chTNT−2、及びchTNT−3はインビボで異なる生体分布特性を有し、この腫瘍モデルにおいて良好な取り込みを示した。chTNT−2及びchTNT−3については、%注射用量/gはすべての器官においてchTNT−1についてのそれよりも高い傾向があった。しかし、chTNT−1についての腫瘍対血液比は、chTNT−2及びchTNT−3のそれと比較して有意に高かった(筋肉及び腸以外)。これらの結果は、腫瘍保有マウスにおける各キメラTNT MAbのインビボ結合特性を実証する。
【0073】
【表1】

【0074】
画像処理試験を実行して、131I−標識chTNT−3がMAD109腫瘍保有BALB/cマウスに局在することを実証した。1日目及び3日目の画像処理は腫瘍部位における強力なシグナルを示し、このことは、chTNT−3が腫瘍内に局在化し且つそこに保持されることが可能であることを示した。
【0075】
b.ファージディスプレイ由来ヒトTNT−1 MAb NHS76の特徴付け
キメラTNT−1をヒトIgG1及びκ定常領域に対してマウス可変領域を遺伝子操作することによって、親のマウス抗体から初めて開発した。キメラ抗体の挙動はマウス抗体のそれと同様であったが、それが共有する35%の相同性が、ヒト抗マウス抗体(HAMA)応答の潜在能力を可能にする。この問題を回避するために、そのマウス対応物に対する同様の結合特性を示した完全なヒトTNT−1 Mab、NHS76を開発した。NHS76は、Cambridge Antibody Technologies(Cambridge、England)との共同作業で開発し、Raji Burkittリンパ腫細胞核抽出物を使用するラージscFvライブラリーをスクリーニングすることによって誘導した(Sharifiら、Hybridoma and Hybridomics、(2001)20:305−312)。これは、NS0マウスミエローマ細胞系において、Lonza Biologicals,Inc.(Slough、England)から入手したグルタミンシンテターゼ発現系を使用して発現した。
【0076】
chTNT−1に対するこの遺伝子操作したヒト対応物が類似の薬物動態特性、インビボの挙動、及び標的指向能力を有することを実証するために、両方の抗体を並行して厳格に試験した。これらの試験のために、LS174Tヒト結腸腫瘍保有ヌードマウスにおける生体分布分析を実行し、腫瘍及び正常器官における取り込みのレベルを比較した。さらに、マウス画像処理試験(図2)及びオートラジオグラフ試験(図3)を行って、腫瘍の壊死領域における活発な取り込み、並びに生存可能な組織及び器官における不活発な取り込みを実証した。これらの試験のために、生体分布を、125I−標識MAbの静脈内注射の1日、2日、3日、5日、及び7日後に実行した。組織1グラム当たりの注射用量パーセントによって示される1〜7日間の組織生体分布並びに腫瘍対正常器官比は、NHS76のより遅い身体クリアランスを示した。しかし、血液レベルが低下するに従って、腫瘍に残存している抗体の量は、7日までに約3%注射用量/グラムまで正常化された。このことは、chTNT−1についての3日間の腫瘍保持レベルと比較し得る。また、蛍光スクリーンオートラジオグラフィーは、NHS76がLS174T腫瘍の壊死領域を標的とするのに対して、正常組織は比較的乏しく見えることを示した。これらの試験結果は、ヒト化TNT抗体とキメラTNT抗体の両方の比較し得る性質を確認し、ヒトにおける使用のためにNHS76の適切さを実証するための前臨床データを提供する。
【0077】
(実施例2)
サイトカイン融合タンパク質
chTNT−3及びヒトIL−2(参考文献番号12)、マウスIFNγ(参考文献番号9)、ヒトIFNγ及びTNFα(参考文献番号10)、並びにcHTNT−3のC末端部分に遺伝子工学的に連結されたμGM−CSFからなるいくつかの融合タンパク質の産生が記載されている。これらの構築、試験、及びこの構築物を用いる免疫療法実験における使用は、以下に手短に記載される。
【0078】
a.chTNT−3/サイトカイン融合タンパク質の構築、発現、及び精製
chTNT−3(IgG1γ)を、以前に記載されたように構築及び発現させた(参考文献番号5)。NHS76(IgG1κ)の重鎖及び軽鎖の遺伝子を有するプラスミドを、以前に記載されるように産生した(参考文献番号10)。候補scFv抗体を、制限酵素消化、ライゲーション、及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含む標準的な分子生物学技術を使用して、全抗体に転換した。
【0079】
ヒトケモカインLEC遺伝子を、HepG2肝臓癌細胞系からRT−PCRによってクローニングした。次いで、LECの成熟cDNAをPCRによって増幅し、そして抗体リーダー配列の翻訳下でNHS76重鎖遺伝子のN末端に挿入した。次いで、得られる融合遺伝子を発現ベクターpEE12に挿入し、次に軽鎖の挿入を行った(図9)。この構築物を、グルタミンシンテターゼ遺伝子増幅系によってNS0細胞にエレクトロポレーションした。最良の発現クローンを、粗DNAを抗原として使用する培養上清の間接的ELISAアッセイによって選択した。
【0080】
7アミノ酸リンカーペプチドが先行して、ヒトIL−2、IFNγ、又はTNFα cDNAのいずれかを含むPCR断片を、ヒトγ1末端コドンのすぐ下流に事前に付加されたNotI部位に挿入し、TNT−3 VH/ヒトγ1/ヒトサイトカイン融合遺伝子(参考文献番号9、10、12)を産生した。これは、そのC末端にヒトIL−2、マウスIFNγ、又はTNFαを有するキメラTNT−3重鎖からなる融合タンパク質をコードする、発現ベクターpEE12/chTNT−3 HC/hIL−2、pEE12/chTNT−3 HC/muIFNγ、pEE12/chTNT−3 HC/TNFαを生じた。これらの発現ベクターは、キメラTNT−3軽鎖、pEE6/chTNT−3軽鎖についての発現ベクターと同時トランスフェクトした。融合タンパク質を、グルタミンシンテターゼ遺伝子増幅系を使用してNS0マウスミエローマ細胞中で発現させ、8リットルの曝気攪拌タンク培養液から、タンデムプロテインA親和性クロマトグラフィー及びイオン交換クロマトグラフィーによって精製した。
【0081】
キメラ抗体融合タンパク質は、還元SDS−PAGEによって実証されるように適切に構築した。chTNT−3/hIL−2について約25kD及び70kDの2つのバンドに分かれた。これは、その重鎖が約55kDの見かけの分子量を示したchTNT−3と比較して、免疫グロブリン軽鎖及び重鎖とサイトカインとの組合せの分子量に対応する。同様に、chTNT−3/muIFNγについて2つのバンドに分かれ(ある程度の分解が見られる)、約25kD及び70kDのchTNT−3/TNFαは免疫グロブリン軽鎖及び重鎖−サイトカイン融合タンパク質の予想分子量に対応する。muTNT−3/μGM−CSF構築物については、成熟μGM−CSFのcDNA断片を、pEE12発現ベクターのマウスγ2末端コドンのSpeI及びEcoRIに挿入した。次いで、上記のように、PEE12/muTNT−3/μGM−CSFを、pEE6/muTNT−3軽鎖と同時トランスフェクトし、融合タンパク質をNS0マウスミエローマ細胞中で発現させた。SDS−PAGEは、25KD及び70KDのおよその分子量を有する2つのバンドを示し、これは、それぞれ、muTNT−3軽鎖及び重鎖/サイトカインμGM−CSF融合に対応する。
【0082】
b.MAb/サイトカイン融合タンパク質の生物活性
4種の融合タンパク質のサイトカイン部分の各々の生物学的活性を、インビトロアッセイによって決定した。IL−2生物活性は、IL−2依存性CTLL−2細胞の増殖を支持するその能力を試験することによって実証した(Gillisら、J.Immunol.(1978)120:2027−2031)。異なる濃度のchTNT−3/IL−2、chTNT−3、又は組換えヒトIL−2標準を、2×10個のIL−2飢餓CTLL−2細胞とともに20時間、加湿した37℃、5%COインキュベーター中でインキュベートした。細胞を、3H−チミジンで6時間パルス標識し、細胞試料を収集し計数した。次いで、chTNT−3/IL−2の活性を、外挿又はrIL−2曲線によって、IU/mgで決定した。
【0083】
muTNT−3/μGM−CSF融合タンパク質については、μGM−CSF部分の生物学的活性は、サイトカイン依存性細胞系FDC−Pの増殖を支持する能力を測定することによって決定した(Delta−Cruzら、J.Immunol.(2000)165:5112−5121)。手短に述べると、5,000細胞/ウェルのFDC−P1を、8ng/mlから4pg/mlの濃度範囲のμGM−CSF又はmuTNT−3/μGM−CSFの存在下で、96ウェル培養プレートに3ウェルずつピペッティングした。加湿した37℃、5%COインキュベーター中での48時間のインキュベーション後、細胞増殖を、Promega Cell Proliferation Assay Kit(Madison、WI)を使用して比色定量法によって測定した。このアッセイから、muTNT−3/μGM−CSFについてのED50が0.4から1.0ng/mlであることが示された。
【0084】
chTNT−3/muIFNγ融合タンパク質のmuIFNγ部分については、RAW 264.7マウスマクロファージ細胞における一酸化窒素(NO)の誘導を決定するためのアッセイを実行した(Kimら、Journal of Immunological Methods(1996)198:203−209)。細胞を、rmuIFN−γ、chTNT−3、又はchTNT−3/muIFN−γを補充した完全培地中で24時間増殖させ、次に、Griess試薬を使用して、NOの安定な分解産物である亜硝酸(NO)について上清の分析を行った。この方法によると、chTNT−3/muIFN−γ融合タンパク質の比活性は、約450U/μgであると計算された。chTNT−3はこのアッセイにおいて陰性であった。chTNT−3/muIFN−γの生物学的活性もまた、WEHI−3マウス骨髄単球細胞系において、フローサイトメトリーを使用してMHCクラスII分子発現のアップレギュレーションによって測定した。細胞を、組換えmuIFNγ、chTNT−3、又はchTNT−3/muIFN−γを補充した完全培地中で48時間増殖させ、次いで、フローサイトメトリーによってMHCクラスII分子発現についてアッセイした。この方法を使用して、融合タンパク質の比活性は430U/μg(参考文献番号9)であった。対照的に、chTNT−3はMHCクラスIIアップレギュレーションを誘導することができなかった。
【0085】
chTNT−3/huTNFα融合タンパク質について、TNFα部分の生物学的活性を、以前に記載されたように、Hep−2細胞増殖の阻害パーセントによって決定した(Hogan,M.M.「腫瘍壊死因子α及びβの測定(Measurement of Tumor Necrosis Factor α and β)」J.E.Colligan(編)Current Protocols in Immunology.New York:John Wiley & Sons,Inc.6101−6105頁、1993)。手短に述べると、Hep−2ヒト類表皮癌細胞を96ウェル培養プレートに、1×10細胞/ウェルで、10%FCMを含むMEM中に播種する。このプレートを37℃で2〜3時間インキュベートし、さらにrhuTNFα又はchTNT−3/TNFαを段階希釈でプレートに加えた。最大溶解量を決定するために、200ng/mlのシクロヘキシミドを使用した。TNFα試料の付加後、プレートを再度37℃、18時間インキュベートし、次いでPBS(200μl/ウェル)で穏やかに洗浄した。細胞死を改変クリスタルバイオレットアッセイによって定量した。この方法において、chTNT−3/TNFα融合タンパク質は10.8U/μgの比活性を有することが見出された。
【0086】
c.融合タンパク質の免疫反応性及びアビディティー定数
融合タンパク質の免疫反応性を、上記に記載されたように、固定化Rajiリンパ腫細胞への結合によって決定した。すべてのchTNT−3/サイトカイン融合タンパク質は、同様の結合定数(0.5〜1×10−1)を有することが見出され、chTNT−3の結合定数(1.4×10−1)と比較可能であった。これは、chTNT−3の重鎖へのサイトカインの遺伝子連結が抗原結合を有意に妨害しなかったことを示す。
【0087】
d.薬物動態及び生体分布試験
クリアランス試験及び生体分布試験を、すべての融合タンパク質の薬物動態クリアランスの半減期及び腫瘍の取り込みを決定するために実行した。薬物動態試験のために、BALB/cマウスに125I標識した融合タンパク質又は裸の抗体を注射し、注射の時点及びその後の選択された時点での全身活性を微小線量計で測定した。これらの試験結果を図2に示す。クリアランス時間の顕著な違いが、muIFNγ融合タンパク質と、IL−2、TNFα、及びmuGM−CSF融合タンパク質との間に記録される。chTNT−3は、これらの試験において異常に長い半減期を有することが見出された。
【0088】
【表2】

【0089】
生体分布的試験のために、6週齢の雌性BALB/cマウスに、約10個の腫瘍細胞を左側腹に皮下で接種した。5日後、この時点で腫瘍は約0.5〜1cm直径に達し、マウスに125I−標識抗体又は125I−標識抗体/サイトカインを含む0.1mL接種物を静脈内注射した。マウスをペントバルビタールナトリウムの過剰摂取によって屠殺し、上記に示すように、注射の3日後及び7日後に血液、腫瘍、及び選択された器官を取り出し、秤量した。表2に要約されたこれらの試験の結果は、融合タンパク質の迅速なクリアランスの薬物動態効果が、chTNT−3及びchTNT−3/muIFN−γの腫瘍及び正常器官の生体分布が比較された場合に明らかであったことを示す。すべての融合タンパク質の方が、腫瘍の取り込みは、注射の3日後及び7日後の両方でchTNT−3について見られたものよりも有意に低かった。しかし、正常な器官の取り込みを反映し且つサイトカインに起因する可能性のある毒性の指標を適用する腫瘍対器官比は、同等か、又はすべての融合タンパク質の方が、わずかに高い程でさえあった。
【0090】
要約すると、上記のインビトロによる特性決定試験は、すべての融合タンパク質が、抗原に対するそれらの結合親和性、並びにそれらの直接的な細胞傷害性効果及び免疫調節性機能を維持することが可能であったことを実証する。インビボでは、融合タンパク質は、親のchTNT−3よりも実質的に短い全身半減期を有すことが見出されたが、生体分布分析によって示されるように、腫瘍を標的とすることができた。腫瘍中でのそれらの保持及び正常組織からの迅速なクリアランスのために、この融合タンパク質は、chTNT−3と等価か又はそれよりも高い正常組織/腫瘍比を有することが見出された。
【0091】
(実施例3)
ケモカイン融合タンパク質
a.LEC/chTNT−3の構築、発現、及び精製
chTNT−3(IgGκ)の軽鎖遺伝子(pEE6/hCMV−LC)及び重鎖遺伝子(pEE12/HC)を有するプラスミドを、以前に記載されたように産生した(5、12)。ヒトケモカインLEC遺伝子をRT−PCR(Stephensら、Eur.J.Immunol.(2001)31、1247−1254)によってHepG2肝臓癌細胞系から、TRIzol(Invitrogen、Carlsbad、CA)を使用してクローニングし、全RNAを得た。次いで、LECの成熟cDNAを、プライマー5’−TCTAGAATGAAGGTCTCCGAGGCTGCC−3’(配列番号4)及び5’−GCGGCCGCCTG−GGAGTTGAGGAGCTG−3’(配列番号5)を使用するPCRによって増幅し、抗体のリーダー配列の翻訳下で、XbaI及びNotIによって、chTNT−3の重鎖遺伝子のN末端に挿入した。次いで、得られる融合遺伝子を発現ベクターpEE12に挿入し、グルタミンシンテターゼ遺伝子増幅系によって規定されるように、エレクトロポレーションによって、NS0細胞にpEE6/TNT−3軽鎖とともに同時トランスフェクションした。細胞培養培地をトランスフェクションの3週間後に毎週交換し、この時点で最良の発現クローンは、以前に記載されたように(参考文献番号5)、抗原として粗DNAを使用する培養上清の間接的ELISAアッセイによって選択した。大量の融合タンパク質を産生するために、高発現クローンを8リットルの曝気攪拌フラスコ中で、5%熱不活化(68℃で1時間、断続的に攪拌しながら)透析ウシ胎児血清を含む選択培地中で増殖させ、インキュベーション及び融合タンパク質の分解の間にNS0細胞によるタンパク質分解性酵素の誘導を除去した。次いで、分泌された融合タンパク質を、タンデムプロテインA親和性クロマトグラフィー及びイオン交換クロマトグラフィーの手順によって、清澄化細胞培養上清から精製した。融合タンパク質の純度は、還元条件下でのSDS−PAGE電気泳動法によって、及び溶媒系として0.05Mリン酸緩衝液及び0.4M過塩素酸ナトリウム、pH6.1を使用するHPLCによって調べた。精製後、融合タンパク質を0.22μm Nalgene使い捨てフィルターユニットを通して濾過し、分注し、10ml滅菌チューブ中で、長期保存のために−20℃で保存した。
【0092】
LEC遺伝子のC末端は、5アミノ酸(Gly4Ser)リンカーを使用してchTNT−3の重鎖遺伝子のN末端に融合した。融合したLEC/chTNT−3の重鎖(図1)を抗体リーダーの下で翻訳させ、発現した融合タンパク質は以下に示されるようにその生物学的活性を保持していることが見出された。最高のLEC/chTNT−3産生サブクローンは、静置培養において約20μg/ml/10細胞/24時間を分泌した。分子量及び融合タンパク質のアセンブリーをSDS−PAGEによって実証した。これは、キメラ免疫グロブリン重鎖及びLECの合計、並びに抗体軽鎖にそれぞれ対応する、約67kD及び25kDの2つのバンドを示した。構築物の純度をHPLCによって確認し、これは、LEC/chTNT−3が約442sの保持時間の主ピークを有することを示した。これらの分析は、融合タンパク質が−20℃、6カ月間までの保存後でさえ完全なままであることを示した。
【0093】
b.走化性アッセイ
LEC融合タンパク質の生物活性は、96ウェル微小走化性チャンバー(Neuroprobe、Gaithersburg、MD)において製造業者のプロトコールにおいて記載されるように標的細胞の移動を測定することによって実証された。手短に述べると、LEC/chTNT−3、組換えヒトLEC、又は親のchTNT−3を、結合培地(1%BSA及び25nmol/L HEPESを含むRPMI 1640)中で0.39nMから50nMまで段階希釈した(Hedrickら、Blood(1998)91:4242−4247;Zach−Howardら、Blood(2000)96:840−845)。この溶液を微小走化性装置の下側のチャンバー中に配置した。次いで、10THP−1ヒト単球細胞を含む100μLの結合培地を上側のチャンバーに加えて、加湿した5%CO、37℃インキュベーター中での1.5時間のインキュベーション後、移動した細胞のパーセンテージを計算して、移動指数((結合培地に曝露された細胞の平均数)で除算した(ケモカイン及び融合タンパク質に曝露された細胞の平均数))を決定した。すべてのアッセイは3重に実行した。
【0094】
遊離のヒト組換えLEC及び融合タンパク質はTHP−1細胞移動を誘導した。融合タンパク質に曝露されたTHP−1細胞の移動は、1.6nMまで低い濃度で開始し12.5nMでピークに達する、用量依存性であった。遊離のヒト組換えLECは、このアッセイにおいて約25nMの高濃度でピークとなった。親の抗体(chTNT−3)に曝露されたTHP−1細胞はまったく移動を示さず、融合タンパク質のLEC部分の生物学的活性を確証した。
【0095】
c.LEC/chTNT−3の放射性標識及び放射性結合体の安定性
125I−標識された融合タンパク質を、以前に記載されたように(5、7)、改変クロラミン−T法を使用して調製した。手短に述べると、1mCi(37MBq)の放射性ヨード及び20μLのクロラミン−Tの水溶液(2mg/mL)を、100μL PBS中の100μg LEC/chTNT−3を含む5mL試験管に加えた。2分後、20μLのメタ重亜硫酸ナトリウムで溶液をクエンチした。各反応混合物を、Sephadex G−25カラムを使用して精製し、代表的には90〜95%収率を回収した。放射性標識された抗体を注射のためにPBSで希釈し、4℃で保存し、そして放射性標識後2時間以内に投与した。放射性ヨード標識された抗体を、シリカゲル含浸させたグラスファイバーからなる分析用インスタント薄層クロマトグラフィー(ITLC)システム(Gelman Sciences、Ann Arbor、MI)を使用して分析した。細片(2×20cm)を、使用前の110℃、15分間の加熱によって活性化し、1μLの試料をスポットし、風乾し、そしてメタノール/H2O(80:20)を用いて約10cm溶離させ、再度風乾し、半分に切断し、そして結合したタンパク質及び遊離の放射性ヨードを決定するために計数した。ITLC分析は、0のRf値(MAb結合)及び99%より高い放射性化学物質の純度を明らかにした。インビトロ血清安定性もまた、以前に記載されたように評価した(5)。手短に述べると、放射性標識されたMAbをマウス血清中で37℃、48時間インキュベートする。トリクロロ酢酸沈殿及び遠心分離後、MAb結合放射能をγカウンターで測定した。約95%の活性がトリクロロ酢酸沈殿であり、この時間の間では放射性ヨードの放出は実質的に検出されなかった。
【0096】
d.アビディティー決定
精製LEC/chTNT−3のアビディティー定数を決定するために、固定化細胞ラジオイムノアッセイを、以前に記載されたように実行した(12)。手短に述べると、Rajiリンパ腫細胞をPBSで1回洗浄し、EMグレード2%パラホルムアルデヒド(Polysciences、Washington、PA)で室温で10分間固定し、そしてPBSで再度洗浄し、その後0.2%アジ化ナトリウムを含むPBS中で4℃にて保存した。10から110ngの125I−標識LEC/chTNT−3を、10固定化Raji細胞と室温で1時間インキュベートした。この細胞を、1%BSAを含むPBSで3回洗浄して、いかなる未結合の抗体をも除去し、γカウンターで計数した。結合した融合タンパク質の量を、残存する結合した細胞の放射能(cpm)及び融合タンパク質の比活性から決定した。データのScatchardプロット分析を使用して傾きを得た。この傾きから、平衡又はアビディティー定数Kが、式K=−(傾き/n)によって計算された。ここで、nは抗体の価数(IgGについては2)である。LEC/chTNT−3は、chTNT−3(1.4×10−1)と同様の結合定数(1.0×10−1)を有することが見出された(5)。これは、chTNT−3の重鎖の可変領域へのLECの遺伝子連結が抗原結合を有意に妨害しなかったことを示す。
【0097】
e.薬物動態試験及び生体分布試験
6週齢雌性BALB/cマウスを使用して、125I−LEC/chTNT−3の薬物動態クリアランスを決定した。遊離の放射性ヨードの甲状腺の取り込みをブロックするために事前に2〜3日間、飲用水中にヨードカリウムを与えたマウスの群(n=5)に、0.1mL接種物を使用して、125I−標識融合タンパク質(30〜40μCi/マウス)の静脈内注射を投与した。注射の時点及び注射後の選択された時点での全身活性を、CRC−7微小線量計で測定した。データを分析し、PSTRIP薬物動態プログラム(MicroMath,Inc.、Salt Lake City、UT)によって半減期を決定した。結果を平均±標準偏差として表現し、有意なレベル(P値)を、Wilcoxon順位和検定を使用して決定した。これらの試験から、125I−LEC/chTNT−3が3時間±20分(p≦0.01)のT1/2を有することが見出されたことが決定された。
【0098】
腫瘍保有BALB/cマウスの群を、125I−LEC/chTNT−3の生体分布を決定するために使用した。手短に述べると、マウスに10MAD10scを含む0.2mlを、University Animal Care Committee−認可プロトコールを使用して左側腹に注射した。腫瘍を5日間、それらが直径約0.5cmに達するまで増殖させた。次いで、マウスに100μCi/10μgの125I−標識LEC/chTNT−3を含む0.1mL接種物を静脈内注射した。マウスをペントバルビタールナトリウムの過剰摂取によって注射の3時間後、6時間後、12時間後、及び24時間後に屠殺し、そして器官、血液、及び腫瘍を取り出し、且つ秤量し、試料中の放射能をγカウンター中で測定した。各マウスについて、データはパーセント注射用量/グラム(%ID/g)及び腫瘍対器官比として表現した。125I−LEC/chTNT−3は、注射後12時間及び24時間の両方で、2.4%ID/g(p≦0.01)の腫瘍取り込みを実証した。125I−LEC/chTNT−3の迅速なクリアランスはまた、すべての時点における血液及び他の正常組織の大部分での放射能レベルの減少を示し(p≦0.01)、高い腫瘍対器官比を生じた。これらのデータは、放射標識されたLEC/chTNT−3が、腫瘍部位において優秀な保持を伴って腫瘍に特異的に結合することを実証する。
【0099】
(実施例4)
免疫療法試験
a.LEC/chTNT−3治療
6週齢雌性BALB/cマウスの群(n=7)に、University Animal Care Committee−認可プロトコールの下で、約10のMAD109細胞、Colon26細胞、又はRENCA細胞を含む0.2mL接種物を左側腹に皮下注射した。腫瘍を5〜7日間、それらが直径約0.5cmに達するまで増殖させた。次いで、腫瘍保有マウスの群を、LEC/chTNT−3(20μg)、PBS、又はchTNT−3(20μg)を伴う、0.1mL接種物で静脈内治療した。すべての群を1日5回治療し、1日おきに三次元のキャリパー測定によって腫瘍増殖をモニターした。腫瘍体積は式:長さ×幅×高さによって計算された。結果を平均±標準偏差として表現し有意なレベル(P値)を、Wilcoxon順位和検定を使用して決定した。
【0100】
一旦腫瘍が確立されると、マウスを毎日5回、20μgのLEC/chTNT−3で治療した。図2に示されるように、2つのモデルについて、本試験の19日目までのLEC/chTNT−3治療は、未知量の対照と比較して、Colon26腫瘍モデルにおいて55%(p≦0.05)の腫瘍増殖の減少、MAD109腫瘍モデルにおける37%(p≦0.05)の減少、及びRENCA腫瘍モデルにおける42%(p≦0.05)の減少を示した。
【0101】
b.サイトカイン融合タンパク質との併用療法
chTNT−3/サイトカイン融合タンパク質を、COLON26結腸腺癌、MAD109肺腺癌、及び以下の図3において示されるように、RENCA腎臓細胞癌を含むBALB/cマウスの異なる固形腫瘍モデルにおいて試験した。これらの試験のために、6週齢雌性BALB/cマウスに、左側腹に5×10腫瘍細胞を皮下注射した。腫瘍を5〜7日間、それらが直径約0.5cm(0.2cm)に達するまで増殖させ、マウスを群に分け(n=5)、4日間連続して毎日皮下注射した。次いで、腫瘍の増殖を、キャリパー測定によって1日おきに17日目まで追跡し、そこで実験を終了した。0.1ml接種物中の融合タンパク質の用量は、chTNT−3/muGM−CSFがより毒性であり5μg/用量の使用を必要とする以外は、20μgであった。融合タンパク質の組み合わせた使用される場合、これらは0.1mlで接種物を維持するためにあらかじめ混合された。対照群は生理食塩水のみ又は20μgのchTNT−3を受容し、これは、3つの腫瘍モデルの増殖曲線に効果がなかった。4つの個々の実験からの対照群の試験は、増殖曲線が非常に再現性が高いことを示した。図3に示される3つの腫瘍モデルにおけるこれらの実験の結果は、これらのモデルのうちの2つにおいて、chTNT−3/IL−2、chTNT−3/TNFα、及びchTNT−3/IFNγの組合せを受容するマウスが、大部分の腫瘍退行を示し、これは17日目で対照群の約80%であると見積もられることを実証した。個々の融合タンパク質はこれらの腫瘍モデルにおいて様々な有効性の程度を有したが、この組合せ、又はchTNT−3/TNFαの代わりにmuTNT−3/muGM−CSFが置換されたものが最も有効であった。キメラ抗体はこれらの融合タンパク質のいくつかの構築において使用されたので、治療は1回の4日間の期間に限定された。この限定のために、腫瘍は、処置の中断の直後に対照群のペースと同じペースで増殖し始めた。それゆえに、これらの処置治療効果は一過性であり、より持続する効果及び腫瘍の完全な退行のためには第2又は第3の処置過程の追加が必要と思われる。
【0102】
c.LEC/chTNT−3、chTNT−3/サイトカイン融合タンパク質を用いる併用療法
6週齢雌性BALB/cマウスに、約5×10MAD109マウス肺腺癌細胞を皮下接種した。5日後、腫瘍が直径約0.5cmに達し、マウスに、20μgのLEC/chTNT−3単独、又は20μgのTNT−3/IFNγ、chTNT−3/TNFα、chTNT−3/GM−CSF若しくはchTNT−3/IL−2を伴う、0.1mlの接種物を注射した。すべての群を1日5回治療し、1日おきに三次元のキャリパー測定によって腫瘍増殖をモニターした。腫瘍体積は式:長さ×幅×高さによって計算された。結果を平均±標準偏差として表現した。図4において示されるように、LEC/chTNT−3及び4種のchTNT−3サイトカイン融合タンパク質の各々を用いる併用療法は最小限の改善のみを生じたが、chTNT−3/IL−2を含む組合せは17日までに増殖曲線の平板化を示した。
【0103】
(実施例5)
a.LEC/chTNT−3の免疫組織化学及び組織試験
BALB/cマウスの群に、上記のように左側腹に10腫瘍細胞を注射した。腫瘍移植の7日後、マウスを、LEC/chTNT−3(20μg)、PBS、又はTNT−3(20μg)を用いて、1日5回静脈内治療した。次いで、各群からのマウスを、腫瘍移植の10日後、12日後、14日後、及び16日後に屠殺し、腫瘍を切除し、そしてパラフィン包埋のために10%中性緩衝化ホルマリン(VWR Scientific、West Chester、PA)中に固定するか、又は凍結切片のためにO.C.T.化合物(Lab−Tek Products、Naperville、III)中で液体窒素中で急速冷凍するかのいずれかであった。MAD109腫瘍保有マウスからのパラフィン包埋切片を、形態学的試験のために、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色した。免疫組織化学試験のために、Colon26腫瘍保有マウスからの腫瘍の凍結切片を、リンパ、PMN、及び樹状細胞亜集団を染色するための、ビオチン化抗CD4、抗CD8、抗CD11b、抗汎内皮、抗CD11c、抗CD19、抗CD3e、及び抗45R(BD PharMingen、San Diego、CA)抗血清で染色した。次いで切片をHRP−結合体化ストレプトアビジンとともにインキュベートし、比色定量用作用剤で発色させ、その後hr & Eで染色した。顕微鏡による知見を、Optronixデジタルカメラを使用して記録した。
【0104】
ケモカインの抗癌活性は、樹状細胞、PMN、及びリンパ球亜集団の腫瘍への補充、並びにそれらの抗血管形成活性のためである。それゆえに、どの亜集団がLEC/chTNT−3の抗腫瘍活性の原因であったかを同定することは興味深い。このことを達成するために、組織学的試験及び免疫組織化学試験を、治療したマウスから取り出した腫瘍切片上で実行した。驚くべきことに、形態学的試験は、LEC/cgTNT−3治療が、試験された腫瘍試料中で顕著な壊死及び血管のうっ血を誘導することを明らかにした。
【0105】
しかし、治療されたマウス及び対照マウスにおける血管の数は、汎内皮抗体を用いる免疫組織化学染色によって決定されるように、異なっていないことが見出された。LEC/chTNT−3治療腫瘍はまた、これらの切片においてリンパ球の顕著な浸潤を示した。B細胞、T細胞、樹状細胞、及びPMN特異的抗体を用いる組織切片の免疫組織化学染色は、腫瘍に浸潤している亜集団の存在を同定するために使用された。これらの試験のために、Colon26保有BALB/cマウスからの凍結切片を、治療の完了の4日後に(腫瘍移植の16日後に)免疫組織化学染色のために調製した。これらの試験の結果は、LEC/chTNT−3治療腫瘍において、PMN、樹状細胞、B細胞、及びT細胞の浸潤が未治療群よりも高いことを明らかにした。より早い時点で取り出した腫瘍は、樹状細胞及びマクロファージの浸潤が、治療3日目までに最初に観察され、治療の完了の4日後まで腫瘍中に保持されることを示した。対照的に、T細胞(CD4及びCD8)浸潤(15〜20細胞/400倍視野)は、樹状細胞について見られたものほど劇的ではなく、且つ治療の完了の2日後に最初に見られた。PMN及び樹状細胞による浸潤は、これらの試験においておそらく最も劇的な知見であった。
【0106】
b.枯渇化試験
これらの腫瘍モデルの抑制のために部分的な原因であるT細胞の亜集団を評価するために、枯渇化試験を、上記の治療試験とともに実行した。マウスの群に、上記のようにColon26結腸癌を移植し、腫瘍が直径0.5cmに達すると、これらは5日毎に、CD4(0.5mg/用量、クローンGK1.5)、CD8(0.5mg/用量、クローンH35)、又はNK細胞(0.35mg/用量、抗−アシアロ−GM)に特異的な細胞傷害性抗血清を受容し、FACS分析によって示されるように、これらの各々のT細胞亜集団の各々を末梢循環中で<2%まで減少した。特定の亜集団がLEC/chTNT−3免疫療法のための道具であるならば、LEC/chTNT−3によって誘導される観察される腫瘍抑制が妨害され、腫瘍は対照治療マウスと同様の増殖曲線を有する。図5に示されるように、これらの抗血清各々単独による枯渇化は、chTNT−3治療対照の腫瘍の増殖から、その腫瘍の増殖を変化しなかった。対照的に、LEC/chTNT−3治療マウスは、50%より高い阻害を示した。予測されるように、LEC/chTNT−3治療と組み合わせたCD8及びNK枯渇化治療は、LEC/chTNT−3の抗腫瘍活性を無効にし、このことは、これらのリンパ球亜集団がLEC機能において非常に重要であることを示す。対照的に、LEC/chTNT−3治療と組み合わせたCD4枯渇化を受けるマウスは完全な治癒に至り、予想外であり且つ潜在的に非常に意味のある知見である。
【0107】
CD4集団の約10%を表すCD4CD25T細胞が、LEC/chTBT−3と組み合わせて使用される場合に、等しく印象的な結果を生じ得るか否かを決定するために、さらなる枯渇化試験が次に実行された。以下の図6に示されるように、LEC/chTBT−3の使用の前のラットモノクローナル抗体PC61を使用するこれらのT細胞の枯渇化は、BALB/cマウスにおけるColon26腫瘍増殖に対して高度に免疫抑制性であり、これは、このT免疫調節性細胞の小さな集団が、免疫療法の間の免疫反応の抑制原因であることを実証した。これらのすべての実験において、LEC/chTNT−3免疫療法は完全に非毒性であることが見出され、このことは、これらの実験においてある程度の毒性型を実証した、chTNT−3/IL−2、chTNT−3/TNFα、及びmuTNA−3/muGM−CSFの使用に対して顕著な対比をなすことが注目されるべきである。驚くべきことに、PC61が、対照chTNT−3と組み合わせてCD4CD25T細胞を枯渇化するために使用されたときに、Colon26腫瘍は、LEC/chTNT−3単独とほぼ同程度の腫瘍増殖の印象的な減少を示した。しかし、これらの治療群の両方が、それらの移植された腫瘍のマウスを治癒しなかった。完全な且つ持続する寛解は、CD4CD25T細胞枯渇化がLEC/chTNT−3と組み合わせて実行されるまで得られなかった。
【0108】
参考文献リスト:
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2.Chen,F−M、Hansen,E.B.、Taylor,C.R.、及びEpstein A.L.:多核性腫瘍スフェロイドにおけるモノクローナル抗体TNT−1の拡散及び結合(Diffusion and binding of monoclonal anitibody TNT−1 in multicellular tumor spheroids)。J.Natl.Cancer Inst.、83:200−204、1991。
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4.Miller,G.K.、Naeve,G.S.、Gaffar,S.A.、及びEpstein,A.L.:TNT−1及びTNT−2モノクローナル抗体のヒストンに対する結合の免疫学的及び生化学的分析(Immunologic and biochemical analysis of TNT−1 and TNT−2 monoclonal antibody binding to histones)。Hybridoma 12:689−698、1993。
5.Hornick,J.L.、Hu,P.、Khawli,L.A.、Biola,B.H.、Ynn,A.、Sharifi,J.、Taylor,C.R.、及びEpstein,A.L.:chTNT−3/B、固形腫瘍の腫瘍壊死治療のためのDNAを指向する、新規に化学修飾されたキメラモノクローナル抗体(chTNT−3/B,a new chemically modified chimeric monoclonal antibody directed against DNA for the tumor necrosis treatment of solid tumors)。Cancer Biother and Radiopharm 13:255−268、1998。
6.Giovarelli M、Cappello P、Forni G、Salcedo TM、Paul A.、LeFleur DW、Nardelli B、Carlo ED、Lollini P−L、Ruben S、Ullrich S、Garotta G、Musiani P。局所的放出されるLECケモカインによって誘発される腫瘍拒絶及び免疫記憶はAPC、リンパ球、及び顆粒球の印象的補充と関連する(Tumor rejection and immune memory elicited by locally released LEC chemokine are associated with and impressive recruiteent of APCs,lymphocytes,and granulocytes)。J Immunol.164:3200−3206、2000。
7.Sharifi,J.、Khawli,L.A.、Hu,P.、King,S.及びEpstein,A.L.:固形腫瘍の壊死領域を指向するキメラTNT−1に対する、ファージディスプレイ由来モノクローナル抗体(NHS76)対応物(Characterization of a Phage Display−Derived Human Monoclonal,Antibody(NHS76)Counterpart to Chimeric TNT−1 Directed Against Necrotic Regions of Solid Tumors)。Hybridoma and Hybridomics、20:305−312、2001。
8.Chen,F−M.、Epstein,A.L.、Li,Z.、及びTaylor,C.R.:細胞表面抗原(Lym−1)及び細胞内抗原(TNT−1)に対するモノクローナル抗体のディファレンシャルな腫瘍内局在を実証する比較的オートラジオグラフ試験(A comparative autoradiographic study demonstrating differential intra−tumor lacalization of monoclanal antibodies to cell surface(Lym−1)and intracellr(TNT−1)antigens)J.Nucl.Med.、31:1059−1066、1990。
9.Mizokami,M.M.、Hu,P.、Khawli,L.A.及びEpstein,A.L.:固形悪性腫瘍の免疫療法のためのキメラTNT−3抗体−マウス−インターフェロンγ融合タンパク質(Chimeric TNT−3 antibody−murine−interferon−γ fusion protein for the immunotherapy of solid malignancies)。投稿中。
10.Sharifi,J.、Khawli,L.A.、Hu,P.、Epstein,A.L.:ヒトインターフェロンγ及び腫瘍壊死因子αキメラTNT−3融合タンパク質の生成(Generation of human interferon gamma and tumor necrosis alpha chimeric TNT−3 fusion proteins)。Hybridoma and Hyboridomics、21:421−432、2002。
11.Hornick,J.L.、Khawli,L.A.、Hu,P.、Lynch,M.、Anderson,P.M.、及びEpstern,A.L.:B細胞悪性細胞に対する特異性を有する、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子又はインターロイキン−2を含むキメラCLL−1抗体融合タンパク質は、腫瘍指向性を保持しながらエフェクター機能の増強を示す(Chimeric Cll−1 antibody fusion proteins containing granulocyte−macrophage colony−stimulating factor or interleukin−2 with specificity for B−cell malignancies exhibit enhanced effector functions while retaining tumor targeting properties)。Blood 89:4437−4447、1997。
12.Hornick,J.L.、Khawli,L.A.、Hu,P.、Khanna,C.、及びEpstein,A.L:DNAを指向するモノクローナル抗体/インターロイキン−2融合タンパク質は固形腫瘍への治療分子の送達を増強する(A monoclonal antibody/Interleukin−2 fusion protein directed against DNA enhances the delivery of therapeutic molecules to solid tumors)。Clin Cancer Res 5:51−60、1999。
13.LeBerthon,B.、Khawli,L.A.、Miller,G.K.、Charak,B.S.、Amitabha,M.及びEpstein.A.L.:新規な血管作用性インターロイキン−2免疫結合体によって誘導される高分子の腫瘍取り込みの増強(Enhanced tumor uptake of macromolecules induced by a novel vasoactive Interleukin−2 immunoconjugate)。Cancer Res.、51:2694−2698、1991。
14.Khawli,L.A.、Miller,G.K.及びEpstein,A.L.:腫瘍におけるモノクローナル抗体取り込みの増強に対する新規な7つの血管作用性免疫結合体の効果(Effect of seven new vasoactive immunoconjugates on the enhancement of monoclonal antibody uptake in tumors)。Cancer(に対する補遺)、73(3):824−831、1994。
15.Khawli,L.A.、Hornick,J.L.、Sharifi,J.及びEpstein,A.L.:血管作用性免疫結合体を使用するIUdRの化学療法指標の改善(Improving the chemotherapeutic index of IUdR using a vasoactive immunoconjugate)。Radiochimica Acta、79:83−86、1997。
【0109】
本明細書中で言及されたすべての特許及び刊行物は、本発明が属する技術分野の当業者のレベルを示すものである。すべての特許及び刊行物は、あたかも各個々の刊行物が特異的且つ個々に参照として援用されるのと同程度に、参照として本明細書に援用される。
【0110】
本明細書中で適切に例示的に記載した本発明は、本明細書中に具体的に開示されていない任意のエレメント、限定が存在しなくとも実施できる。したがって、例えば、本明細書中の各々の場合において、用語「含む」「から実質的になる」及び「からなる」のいずれかは、他の2つの用語のいずれかと置き換えられ得る。利用されてきた用語及び表現は、記載のためであり且つ限定のためではなく、及び、このような用語及び表現の使用において、示され且つ記載される特徴の任意の等価物を除外する意図は存在しないが、種々の改変が、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲内で可能であることが認識される。したがって、本発明は、好ましい実施形態及び選択的な特徴によって具体的に開示されてきたが、本明細書中に開示される概念の改変及び変異が、当業者によって行われ得ること、並びにこのような改変及び変異が、添付の特許請求の範囲によって規定されるような本発明の範囲内にあると見なされることが理解されるべきである。他の実施形態は、添付の特許請求の範囲に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】LEC/chTNT−3の構築を実証する概略図である。GlySerリンカーはLEC遺伝子とchTNT−3の重鎖可変領域の間に局在する。
【図2】2種のマウス固形腫瘍のLEC/chTNT−3の免疫療法の図である。
【図3】RENCA腎臓癌腫瘍モデルにおけるchTNT−3/サイトカイン融合タンパク質を使用する組合せ免疫療法の図である。各融合タンパク質はサイトカイン部分を列挙することによってチャート中に省略して示す。
【図4】MAD109を有するBALB/cマウスにおけるLEC/chTNT−3及びchTNT−3/サイトカインの併用療法の図である。
【図5】抗CD4+抗血清、抗CD8+抗血清、及び抗NK細胞抗血清との併用療法を示す、LEC/chTNT−3を用いるT細胞枯渇化試験の図である。
【図6】抗CD25+抗血清を示すLEC/chTNT−3を用いるT細胞枯渇化試験の図である。
【図7】例示的なヒトLEC(配列番号1)のヌクレオチド配列の図である。
【図8】例示的なヒトLEC前駆体ケモカイン(配列番号2)及びヒトLEC成熟ケモカイン(配列番号3)のアミノ酸配列の図である。
【図9】NHS76に融合されたLEC遺伝子を発現するための発現ベクターマップの図である。Gly4SerからなるリンカーはLEC遺伝子とNHS76重鎖可変領域との間に挿入された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体において腫瘍のサイズを減少させるか、又は癌細胞の増殖を阻害する方法であって、肝発現ケモカイン(LEC)に連結された癌標的指向分子を含む有効量の癌療法剤を前記個体に投与する工程を含み、前記癌療法剤が前記個体の癌細胞又は腫瘍に局在する方法。
【請求項2】
癌に罹患している個体において転移性癌の発生を減少させるか、又は阻害する方法であって、肝発現ケモカイン(LEC)に連結された癌標的指向分子を含む有効量の癌療法剤を前記個体に投与する工程を含み、前記癌療法剤が前記個体の癌細胞又は腫瘍に局在する方法。
【請求項3】
個体における免疫調節性T細胞の活性を減少させる工程をさらに含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記免疫調節性T細胞の活性を減少させる工程が、個体から免疫調節性T細胞をエキソビボで除去することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記免疫調節性T細胞の活性を減少させる工程が、個体における免疫調節性T細胞をインビボで枯渇化又は不活性化させることを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記免疫調節性T細胞の活性を減少させる工程が、免疫調節性T細胞に結合する少なくとも1種の抗体を使用して達成される、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1種の抗体がIL−2レセプターに特異的である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記IL−2レセプターに特異的な抗体がCD25に特異的な抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記免疫調節性T細胞の活性を減少させる工程が、前記癌療法剤を投与する前に実行される、請求項3から8までのいずれかに記載の方法。
【請求項10】
癌に対する細胞傷害活性を有するT細胞を投与する工程をさらに含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記T細胞を投与する工程が、個体からT細胞を除去し、そのT細胞を活性化し、次いで前記個体に活性化T細胞を投与することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
癌療法剤がLEC/chTNT−3ではないという条件で、肝発現ケモカイン(LEC)に連結された癌標的指向分子を含む、癌療法剤。
【請求項13】
前記癌標的指向分子が抗体である、請求項12に記載の癌療法剤。
【請求項14】
前記抗体が腫瘍細胞表面抗原に特異的である、請求項13に記載の癌療法剤。
【請求項15】
前記抗体が腫瘍のストローマ成分に特異的である、請求項13に記載の癌療法剤。
【請求項16】
前記抗体が細胞内抗原に特異的である、請求項13に記載の癌療法剤。
【請求項17】
前記抗体が核内抗原に特異的である、請求項16に記載の癌療法剤。
【請求項18】
前記抗体が、マウス抗体TNT−1、TNT−2、TNT−3又はNHS76のマウス型、キメラ型、ヒト化型、又はヒト型である、請求項12、13、16、又は17に記載の癌療法剤。
【請求項19】
前記癌標的指向分子及びLECが共有結合で結合されている、請求項12に記載の癌療法剤。
【請求項20】
前記癌標的指向分子が遺伝子融合によってLECに連結されたタンパク質である、請求項12から19までのいずれかに記載の癌療法剤。
【請求項21】
LECがそのC末端で前記癌標的指向分子のN末端に融合される、請求項20に記載の癌療法剤。
【請求項22】
前記癌標的指向分子が抗体であり、且つLECが前記抗体の軽鎖若しくは重鎖のN末端に融合されるか、又はLECが前記抗体の軽鎖及び重鎖のN末端に融合される、請求項12から20までのいずれかに記載の癌療法剤。
【請求項23】
請求項12から22までのいずれかに記載の癌療法剤及び薬学的に許容可能な担体を含む組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−517970(P2006−517970A)
【公表日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503521(P2006−503521)
【出願日】平成16年2月13日(2004.2.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/004116
【国際公開番号】WO2004/074437
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(500279623)ユニバーシティ オブ サザン カリフォルニア (5)
【Fターム(参考)】