癌処置用の抗体−免疫細胞リガンド融合タンパク質
病原細胞上の抗原および免疫細胞に結合するキメラ融合分子を含む癌処置用組成物。分子は、免疫細胞を病原細胞へ方向転換すなわちリダイレクトする。精製された融合タンパク質は、腫瘍細胞表面の抗原、NK細胞等の免疫細胞の細胞表面受容体に結合する能力を示した。キメラ融合タンパク質は腫瘍標的に対して向けられる細胞毒性活性の増加を呈した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医学、免疫学および腫瘍学の分野に関する。詳細には、本発明は癌細胞を死滅させると共に免疫反応を刺激する目的で免疫系を刺激するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
NKG2Dリガンドは、ウイルス感染した細胞や形質転換細胞で発現される誘導性ストレス応答分子である1。NKG2Dリガンドは、自然免疫系および適応免疫系に属するエ
フェクタ細胞上で発現されているC型レクチン様受容体であるNKG2D受容体を活性化し、強力な抗腫瘍応答を備えるのに必要な自然免疫および適応免疫間の有効なリンクを与える2。腫瘍によるNKG2Dリガンドの指向性発現は、多数のマウス腫瘍モデルにおい
て腫瘍退縮につながった3。
【0003】
抗HER2抗体(ハーセプチン(Herceptin))は転移乳癌の処置に認可されている。しかしながらハーセプチンは患者の腫瘍がHER2を発現している少ないパーセントの患者にのみ有効である。抗体ベースの癌治療は、抗体依存的な細胞毒性(ADCC)の活性化によるか、HER2等の標的受容体によるシグナリングに対する直接の作用によるかの少なくとも一方により、腫瘍の破壊につながると考えられる。ADCCは抗癌機構である可能性があり、局所的自然免疫反応の活性化を通じて得られる細胞崩壊能力の増大により活性化エフェクタ細胞の存在下でより有効に誘発され得る。さらに、局所的自然免疫反応の増大は適応性T細胞媒介応答のより効率的なプライミングにつながり得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って癌処置の新規な組成物を開発することが重要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、免疫細胞リガンドと、抗腫瘍抗体の担体ドメインとの両方を有する腫瘍を標的とするキメラ分子の開発に関する。
以下に説明する例証的実施形態では、キメラ分子は、Rae1βに融合された抗HER2/neu抗体由来のIgドメインを有する。
【0006】
好ましい実施形態では、本発明は、抗原結合ドメインと免疫細胞結合ドメインとを有するキメラ融合分子を含む医薬組成物を提供する。好ましくは医薬組成物は癌の処置に使用される。
【0007】
別の好ましい実施形態では、抗原結合ドメインは同抗原結合ドメインの単離抗体または断片を含む。抗原結合ドメインの単離抗体または断片は、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖と、免疫グロブリンの可変領域および定常領域とのうちの少なくとも一方を含む。好ましくは、免疫グロブリンの可変領域はFab、Fab’、F(ab’)2、およびFv断
片を含み、免疫グロブリンの定常領域はCH1、ヒンジ、CH2およびCH3を含む。
【0008】
別の好ましい実施形態では、抗原結合ドメインの単離抗体または断片は、免疫細胞結合ドメインに融合される。本発明によれば、単離抗体は、免疫グロブリン定常領域であるCHI、ヒンジ、CH2またはCH3によって免疫細胞結合ドメインに融合される。好ましく
は単離抗体は、免疫グロブリン定常領域であるCH3により免疫細胞結合ドメインに融合
される。
【0009】
別の好ましい実施形態では、免疫細胞結合は、NK細胞受容体、単球受容体、B細胞表面受容体および/またはT細胞表面受容体に特異的なリガンドである。好ましくは免疫細胞結合ドメインは、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)のためのリガンド(例えばNKG2Dリガンドおよびその変異形)、MHCクラスI αならびにβ鎖)、およびUL16結合タンパク質のうちの少なくとも一つである。
【0010】
別の好ましい実施形態では、UL16結合タンパク質はULBPl、ULBP2、ULBP3およびULBP4から選択される。
別の好ましい実施形態では、キメラ融合タンパク質は乳癌抗原に向けられる。例にはHER2、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、シトクロムP450アイソフォーム 1B1(CYP1B1)CA 27.29、またはCA 15−3抗原、または白血病およびリンパ腫抗原の少なくとも一方(例えば抗CD20、抗CD22、または抗CD52)、または肺または結腸癌抗原に対する抗体配列(例えば抗EGFR)、または前立腺癌抗原(例えばPSMA)が別の特異性の例として含まれる。しかしながら、腫瘍抗原に特異的であればいかなる抗体結合部位を使用してもよい。キメラ融合分子は動物患者への投与に適した医薬担体の内に含むことができる。
【0011】
好ましい実施形態では、NKG2Dリガンドは、胸腫瘍抗原HER2を標的とする抗体−NKG2Dリガンド融合タンパク質を使用して、腫瘍細胞に直接向けられる。
別の好ましい実施形態では、核酸は腫瘍抗原結合ドメインと免疫細胞結合ドメインとを有するキメラ融合分子を発現する。例えば、免疫細胞結合ドメインは配列番号1および2のプライマーを使用してポリメラーゼ連鎖反応により得られる。免疫細胞結合ドメイン核酸は、抗腫瘍抗原結ドメインを発現する核酸配列に好ましくはライゲートされる。
【0012】
別の好ましい実施形態では、動物患者の癌を処置する方法は、腫瘍抗原結合ドメインと免疫細胞結合ドメインとを有するキメラ融合分子を含む医薬組成物を動物患者に投与することを含む。好ましくは、免疫細胞結合ドメインは、NK細胞受容体、単球受容体、B細胞表面受容体およびT細胞表面受容体のうちの少なくとも一つに特異的なリガンドである。例えば免疫細胞結合ドメインは、ナチュラルキラー細胞受容体(NK細胞)に特異的なリガンドである。好ましくは、免疫細胞リガンドはNKG2Dリガンドおよびその変異形、MHCクラスI αならびにβ鎖、およびUL16結合タンパク質のうちの少なくとも一つである。
【0013】
抗体特異性は任意の既知の腫瘍抗原(例えば乳癌におけるHer2/neu、固形腫瘍におけるEGFR、リンパ腫におけるCD20等)に向けることができる。
特段定義がない限り、本明細書で使用されるすべての専門用語は本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味を有する。分子生物学用語の一般に理解されている定義はRiegerら、Glossary of Genetics; Classical and Molecular, 5th edition, Springer-Verlag; New York, 1991およびLewin, Genes V, Oxford University Press: New York, 1994に見出される。
【0014】
本発明を実施または試験するのに本明細書で説明したのと同様または等価な方法および材料を使用することができるが、以下には適切な方法および材料について述べる。本明細書で言及するすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参照文献はその全体が参照により本願に組み込まれる。矛盾する場合は、定義を含めて本明細書が優先される。さらに、以下に論じる特定の実施形態は例示にすぎず、制限を意図しない。
【0015】
図面には現時点の好ましい実施形態を図示するが、本発明をその趣旨および本質的属性から逸脱せずに他の形式で具現化できることは明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1Aは、抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質の構造を示す略図である。図1Bは抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質のSDS−PAGE分析を示すスキャンである。精製IgG3−Rae−1β融合タンパク質を非還元条件で分析した。対照の抗HER2 IgG3が比較用に含まれている。
【0017】
図2は抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質の結合分析を示すヒストグラムである。抗HER2抗体−Rae−1βのRae−1β部分を、新たに単離したNK細胞またはマウスNK細胞系統KY−2細胞上のNKG2Dへの結合について試験した。抗HER2抗体−Rae−1β融合タンパク質、CH3−Rae−1β(赤色塗りつぶし)およびH−Rae−1β(青色のライン)は結合能を示したが、抗HER2 IgG3(緑色のライン)およびアイソタイプ対照(紫色塗りつぶし)は結合しなかった。CH3−Rae−1β(赤色塗りつぶし)およびH−Rae−1β(青色ライン)のいずれもHER2を認識し、Rae−1β部分により検知されたが、抗HER2 IgG3(緑色ライン)およびアイソタイプ対照(紫色塗りつぶし)はRae−1βにより検知されなかった。
【0018】
図3は抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質媒介性のKY−2 NK細胞におけるパーフォリン(perforin)生産の増大を示すヒストグラムである。ヒストグラムは、種々の濃度のHER2 IgG3−CH3−Rae−1β融合タンパク質(0.1μg:青色塗りつぶし、0.5μg:橙色塗りつぶし、2μg:赤色塗りつぶし)、抗HER2 IgG3(2μg:青色ライン)、およびアイソタイプ対照(2μg:黒色ライン)の存在下で培養したIL2(100U)刺激KY−2細胞の細胞内パーフォリン発現を実証している。
【0019】
図4は抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質による腫瘍指向性NK細胞媒介性細胞毒性の増大を示すグラフである。新たに単離されたNEC細胞を抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質(10μg/ウェル、CH−Rae−1β)(赤
色塗りつぶし)、H−Rae−1β(緑色塗りつぶし)、抗HER2 IgG3(10μg/ウェル、紫色塗りつぶし)または対照抗ダンシルIgG3(10μg/ウェル、黒線)の存在下で刺激した。2日後に、NKを、51Cr標識腫瘍細胞系統MC38−HER2を異なるE:T比で用いて丸底の96ウェルプレートで同時培養した。インキュベーションの5時間後に、クロミウムの放出を測定した。3つの異なるドナーの結果を三連ウェルの平均±SE(標準誤差)として示した。
【0020】
図5は、予想分子量を有する抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質が完全に組み立てられたH2L2形式として分泌されたことを示すSDS−PAGEゲルのスキャンである。
【0021】
図6は、抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質の結合のヒストグラムを示す。抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質は、腫瘍細胞表面のHER2+に結合し、Rae−1β融合タンパク質はRae−1β部分によりNKG2D−Fc(ヒトIgG1)融合タンパク質またはNK細胞に表わされるものとしてNKG2D受容体を認識した。ヒンジ−Rae−1βの融合ではCH3−Rae−1βと比較してNKG2Dに対する結合が減少した。
【0022】
図7A−7C、NK細胞媒介性直接溶解を示すグラフである。抗HER2 IgG3(IgG3)およびエフェクタ細胞は、示されたエフェクタ:標的比としてKY−2細胞を用いて腫瘍指向性細胞毒性を少し示した(5−10%)。H−Rae−1β融合タンパク
質は腫瘍指向性細胞毒性をほとんど示さなかった(5%)。標的のCH3−Rae−1β融合とのインキュベーションによりNK細胞の死滅は顕著に増大した(15−59%)。
【0023】
図8Aおよび8BはKY2によるリダイレクト(すなわち方向転換)溶解を示すグラフである。抗HER2 IgG3−CH3−Rae−1βでプライミングされたP815またはJ774細胞をKY−2細胞とインキュベートすると、22%以下のリダイレクトが観察された。この溶解は対照の抗HER2 IgG3(<6%)について観察されたものより大きかった。
【0024】
図9は、MC38−HER2に対する抗HER2 IgG3−CH3−Rae−1βの抗腫瘍活性を示すグラフである。抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質はPBSより大きな程度にC57BL6におけるマウスMC38−HER2の成長を阻止した。
【0025】
(詳細な説明)
免疫細胞を腫瘍へ向けるキメラ融合分子。同融合分子は任意の腫瘍抗原に特異的に設計され、患者に特異的な腫瘍抗原にさらに適合させることが可能である。癌または任意の感染細胞の処置方法が提供される。
定義
本発明に従っておよび本明細書に使用する場合、別段明示的に述べていない限り、以下の用語は以下の意味で定義される。
【0026】
本明細書に使用する場合、単数形は文脈が別段明示しない限り、複数の参照符号を包含している。
「実質的に精製された」とは、その天然環境から除去され、単離または分離され、核酸分子またはタンパク質のことを指す。天然では不随される他の成分が60%、好ましくは約75%、最も好ましくは約90%含まれていない核酸分子またはタンパク質のことを指す。
【0027】
本明細書に使用する場合、「癌」とは哺乳動物で見出されるすべての種類の癌または新生物もしくは悪性腫瘍を指し、それには白血病、リンパ腫、黒色腫、癌腫、および肉腫が含まれるがこれらに限定されるわけではない。癌の例は脳、胸、膵臓、子宮頚、大腸、頭部と頚部、腎臓、肺、非小細胞肺、黒色腫、中皮腫、卵巣、肉腫、胃、子宮および髄芽細胞腫の癌である。
【0028】
本発明による開示された組成物により処置することができるさらなる癌には、例えばホジキン病、非ホジキン病、リンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、乳癌、卵巣癌、肺癌、横紋筋肉腫、原発性血小板血症、原発性マクログロブリン血症、小細胞肺癌、原発性脳腫瘍、胃癌、大腸癌、悪性膵臓島癌、悪性カルチノイド、膀胱癌、前癌性皮膚障害、精巣癌、リンパ腫、甲状腺癌、神経芽細胞腫、食道癌、尿生殖器管癌、悪性高カルシウム血症、子宮頸癌、子宮内膜癌、副腎皮質癌、および前立腺癌が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0029】
本明細書に使用する場合、ポリペプチドの「変異形(バリアント)」とは1または複数のアミノ酸残基によって変更されたアミノ酸配列のことを指す。変異形は「保存的」変化を有する場合があり、その場合、置換されたアミノ酸は同様の構造的および化学的性質を有する(例えばロイシンのイソロイシンへの置換)。より例外的に、変異形は「非保存的」変化を有する場合がある(例えばグリシンのトリプトファンへの置換)。類似の小さな変化はアミノ酸の欠失または挿入もしくはその両方を含み得る。生物活性を失わずにどのアミノ酸残基が置換、挿入、または欠失され得るかを決定する際のガイダンスが、例えば
LASERGENEソフトウェア(DNASTAR)等の当業者に周知のコンピュータプログラムを使用して見出し得る。
【0030】
「変異形」という用語は、ポリヌクレオチド配列の文脈で使用された場合、野生型遺伝子に関連するポリヌクレオチド配列を包含し得る。この定義はさらに、例えば「対立遺伝子」、「スプライス」、「種」、または「多型」の変異形を含んでよい。スプライス変異形は、基準分子に対して有意な同一性を有し得るが、mRNAプロセシング中のエキソンの交互スプライシングによってポリヌクレオチドの数が一般に大きいかまたは小さい。対応するポリペプチドは追加の機能ドメインを有していてもよいし、またはドメインを欠いていてもよい。種変異形はある種から別の種までで変化するポリヌクレオチド配列である。本発明で特に有用なのは野生型標的遺伝子産物の変異形である。変異形は、核酸配列中の少なくとも1つの突然変異に起因してもよいし、その構造または機能が変更されてもされなくてもよい変更されたmRNAまたはポリペプチドに起因してもよい。任意の天然または組み換え遺伝子が、0個、1個または多くの対立遺伝子型を有してもよい。変異形を生じさせる一般的な突然変異の変更は、通常、ヌクレオチドの天然の欠失、追加または置換である。これらのタイプの変更の各々が、単独で生じてもよいし、他の変更と組み合わさって生じてもよいし、所定の配列中に1または複数回生じてもよい。
【0031】
生じるポリペプチドは一般に互いに対して有意なアミノ酸同一性を有するだろう。多型の変異形は、所与の種の個体間の特定の遺伝子のポリヌクレオチド配列における変異である。多型の変異形は、「一塩基多型」(SNP)すなわちポリヌクレオチド配列が1塩基だけ異なるまたは一塩基突然変異を包含し得る。SNPの存在は、例えば、ある人口が感受性対耐性である疾病状態に対する傾向を備えていることを示し得る。
【0032】
「診断の」、「診断された」とは、病理学的条件または病気に罹患している患者の存在または性質を識別することを意味する。診断法はそれらの感度および特異性が異なる。診断アッセイの「感度」は、陽性(「真陽性」のパーセント)のテスト結果が出る疾病個体のパーセンテージである。アッセイにより検知されない疾病個体は「偽陰性」である。病気でなくアッセイで陰性のテスト結果が出る患者は「真陰性」と称され、診断アッセイの分析の「特異性」は1−(偽陽性率)であり、病気でなく陽性のテスト結果が出る個体の割合として「偽陽性」の割合が定義される。特別の診断方法は条件の決定的な診断を提供しない場合もあるが、方法が診断を援助する陽性の表示を提供するならば、それで十分である。
【0033】
用語「患者」または「個体」は本明細書では互換的に使用され、処置される哺乳動物患者のことを指すが、ヒト患者が好まれる。ある場合には、本発明の方法は、マウス、ラットおよびハムスターを含む齧歯類を含むがこれらに限定されない実験動物、獣医学的用途、および疾患動物モデルの開発に用途がある。
【0034】
本明細書に使用する場合、「医薬として許容される」成分は、合理的な利益/危険比と釣り合う過度の副作用(毒性、炎症およびアレルギー反応等)のないヒトおよび/または動物への使用に適した成分である。
【0035】
本明細書に使用する場合、用語「安全かつ有効な量」とは本発明の方法で使用された場合に合理的な利益/危険比と釣り合う過度の副作用(毒性、炎症またはアレルギー反応等)なく所望の治療反応を生み出すのに十分な成分の量のことを指す。「治療上有効な量」とは、所望の治療反応を生み出すのに有効な本発明の化合物の量を意味する。例えば、癌(肉腫またはリンパ腫)の成長または発生を遅延させるのに有効な量、癌を縮小または転移を予防するのに有効な量、もしくはウイルス感染細胞を死滅させるのに有効な量である。特定の安全かつ有効な量または治療上有効な量は、処置されている特定の状態、患者の
心身の状態、処置されている哺乳動物または動物の種類、処置の時間、同時治療(存在する場合)の性質、および使用される特定の剤形、ならびに化合物またはその誘導体の構造に応じて変わるだろう。
【0036】
「処置」は、病気の病体または症状の進展を予防するか変更する意図で行なわれる介入である。従って、「処置」は治療的処置および予防的措置の両方を指す。「処置」は緩和療法をも指し得る。処置を必要とする者には、既に障害を有している者だけでなくその障害がこれから予防される者も含まれる。腫瘍(例えば癌)の処置では、治療薬は腫瘍細胞の病状を直接減少させるか、または腫瘍細胞の他の治療物質による治療(例えば放射線療法および/または化学療法)への感受性を高めてもよい。
【0037】
「癌の処置」は、明細書の全体にわたって、および続く実施例において説明されるが、以下の結果の1つ以上を引き起こすことができる組成物、ベクターおよびペプチドのうちの少なくとも一つの量のことを指す:(1)(i)速度の低下および(ii)完全な成長停止を含む、ある程度の腫瘍成長の阻害;(2)腫瘍細胞数の減少;(3)腫瘍サイズの維持;(4)腫瘍サイズの減小;(5)(i)減少、(ii)速度低下、または(iii)完全な予防を含む、腫瘍細胞の末梢期間への浸潤の阻害;(6)(i)減少、(ii)速度低下、または(iii)完全な予防を含む、転移の阻害;(7)(i)腫瘍サイズの維持、(ii)腫瘍サイズの減小、(iii)腫瘍成長の遅延、(iv)侵襲の減少、速度低下、または予防、もしくは(v)転移の減少、速度低下、または予防、をもたらす抗腫瘍免疫反応の増大、または、(8)障害に関連する1または複数の徴候のある程度の緩和。
【0038】
用語「調整」とは、上述の活性のうちの任意のものが、例えば増大、増強、増大、促進、アゴナイズ(アゴニストとして機能)、低下、減少、抑制、遮断、またはアンタゴナイズ(アゴニストとして機能)されることを意味する。調整は、基準値に対して1倍、2倍、3倍、5倍、10倍、100倍等より大きく活性を増大させることができる。また、調整は基準値より下にその活性を減小させることができる。
【0039】
本明細書に使用する場合、「免疫系の細胞」すなわち「免疫細胞」は、Bリンパ球(B細胞とも呼ばれる)、Tリンパ球(T細胞とも呼ばれる)、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NK)細胞、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞、単球、マクロファージ、好中球、顆粒細胞、マスト細胞、血小板、ランゲルハンス細胞、幹細胞、樹状細胞、末梢血単核細胞、腫瘍浸潤(TIL)細胞、ハイブリドーマを含む遺伝子修飾免疫細胞、薬物修飾免疫細胞、および上記の細胞タイプの誘導体、前駆物質、または前駆細胞を含むが限定されない分析される可能性のあるすべての免疫系の細胞も含む。
【0040】
「活性」、「活性化」または「増強」は、免疫細胞の、応答し、測定可能なレベルで免疫機能を示す能力である。活性化の程度の測定は、先の活性化の結果としてさらに刺激された場合に増強された活性を発現する免疫細胞の能力の定量的評価のことを指す。能力の増強は、免疫細胞が低用量の刺激物質に応答して活性に対して刺激されることを可能にする活性化プロセスの間に生じる、生化学的変化に起因し得る。
【0041】
「免疫細胞の活性」は、本明細書に使用する場合、任意の免疫細胞の活性化のことを指す。測定可能な活性には、(1)DNA応答の測定による細胞増殖;(2)IFN−γ、GM−CSF、またはTNF−α等のサイトカインに対する特異的測定値を有するサイトカインの生産の増強;(3)細胞媒介性の標的死滅または溶解;(4)細胞分化;(5)免疫グロブリン生産;(6)表現型の変化;(7)ケモタキシスを備えた走化性因子に応答する能力を意味する走化性因子またはケモタキシスの生産;(8)他のある免疫細胞種の活性の阻害による免疫抑制;(9)異常な活性化の表示としての特定環境下での活性化
された免疫細胞の断片化を指すアポトーシス;が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
キメラ融合分子
好ましい実施形態では、キメラ融合分子は、免疫細胞および標的腫瘍抗原の両方に結合する。例えば、免疫細胞結合ドメインは、NK細胞、T細胞、B細胞等の特定の免疫細胞上の受容体に対するリガンドである。標的腫瘍抗原結合ドメインは、腫瘍抗原に特異的なポリクローナルまたはモノクローナル抗体に由来することができる。免疫細胞へのキメラ分子の結合は、特定の腫瘍抗原(これに対して腫瘍抗原結合ドメインが特異的)を発現する腫瘍へ免疫細胞を向ける。代わりに、分子は腫瘍結合ドメインを介して特異的腫瘍に結合され、免疫細胞は免疫細胞結合ドメインに結合する。そのため、免疫細胞が活性化され、続いて腫瘍の破壊が起こる。
【0042】
本発明を制限したり解釈したりすることを意味しないが、例証的な実施例として、本願発明者らは、抗体−NKG2Dリガンド融合タンパク質の設計および合成を通じて腫瘍細胞表面にNKG2Dリガンドを送達するよう向ける抗体の能力を利用した。抗体−NKG2Dリガンド融合タンパク質は、抗体ドメイン(例えばEGFR、CD20、PSMA等)の他の腫瘍抗原性特異性を置換することにより悪性腫瘍を処置するために使用することができる。好ましくは、抗体融合分子中のマウスNKG2Gリガンドは、ヒトでテストするためにMHCクラスI−関連鎖AおよびBならびにUL16結合タンパク質(ULBP1、ULBP2、ULBP3、ULBP4)等のヒトNKG2Dリガンドと置換される。腫瘍細胞上へのNKG2Dリガンドの局所的送達および同細胞上での発現は、刺激信号に優勢にNK細胞活性化状態のバランスを有効に回復させ、CD8+T細胞に有力な共刺激
シグナルを与え、有効な抗腫瘍反応を刺激する。
【0043】
NKG2Dリガンドは、ウイルス感染細胞および形質転換細胞上で発現される誘導性ストレス応答分子である。NKG2Dリガンドは、自然免疫系および適応免疫系に属するエフェクタ細胞上で発現されているC型レクチン様受容体であるNKG2D受容体を活性化し、強力な抗腫瘍応答を備えるのに必要な自然免疫および適応免疫間の有効なリンクを与える。NKG2Dリガンドの過剰発現は多くのマウス腫瘍モデル中で腫瘍の退縮につながった。マウス腫瘍モデルに由来する観察とは対照的に、多くのヒト癌上でこれらのリガンドが広範囲に発現していても、マウス腫瘍モデルで見られた予想される腫瘍特異的な自然または適応反応が生じない。この1つの説明は、これらのリガンドの血流への流出と、エフェクタ細胞上のNKG2D受容体のダウンレギュレーションである。これは、腫瘍細胞表面でのこれらのリガンドの表面発現を減少させると同時に、受容体自体の有効性を鈍化させる。腫瘍細胞表面上でのNKG2Dリガンドの過剰発現は、刺激信号に優勢にNK細胞活性化状態のバランスを有効に回復させ、CD8+T細胞に有力な共刺激シグナルを与
え、有効な抗腫瘍反応を刺激する。乳癌に屈する大部分の女性には転移疾病があるため、NKG2Dリガンドを発現するためにマウス実験モデルに有効に使用された直接的形質導入ストラテジーは実用的でない。
【0044】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、例えばNKG2Dリガンドを、転移物において癌細胞表面へ高濃度に局在化させる。
より有効な型のNKG2DリガンドであるRae−1βを生産するために、本願発明者らは抗HER2 IgG3−ヒンジ−Rae−1β融合タンパク質および抗HER2 IgG3−CH3−Rae−1β融合タンパク質を構築し、NK細胞活性化活性を保持しつつ抗体−Rae−1β融合タンパク質が腫瘍発現HER2を標的にする可能性を追求した。
【0045】
抗HER2 IgG3−Rae−1β遺伝子を構築し、マウスP3X63Ag8.653骨髄腫細胞系統にトランスフェクトした。抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タ
ンパク質はタンパク質Aカラムを使用して精製した。予測分子量を有する抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質が、完全に組み立てられたH2L2型(図1A、1B)として分泌された。
【0046】
フローサイトメトリーを使用して、融合タンパク質のRae−1β部分のNKG2D受容体への結合能を調べるために、NKG2Dを発現しているC57BL6またはKY−2細胞(マウスNK細胞系統)から新たに分離したNK細胞に対する結合について、抗HER2抗体−Rae−1β融合タンパク質を試験した(図2)。
【0047】
NKG2Dに結合した抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質はFITC共役抗ヒトIgGにより検知した。抗HER2 IgG3−CH3−Rae−1βは両方のNK細胞に対し抗HER2 IgG3−H−Rae−1βよりも強い結合能を示した。これはC3−Rae−1βとH−Rae−1βの間のコンホメーションの違いと、H−Rae−1βにFc領域がなかったこととの少なくとも一方による結果であり得る。検出抗体(抗ヒトIgG−FITC)はH−Rae−1βをCH3−Rae−1βほど効率的に認識しなかった可能性がある。しかしながら、対照抗体の抗ダンシルIgG3および抗HER2 IgG3はNK細胞に対する結合を示さなかった。
【0048】
抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質もHER2抗原に対する特異的結合能を保持しているかどうかを、HER2を発現している腫瘍細胞ライン(MC38−HER2)で調べた。HER2に結合した抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質を、FITC共役抗マウスRae−1β抗体により検出した(図2)。C3−Rae−1βおよびH−Rae−1βはHER2発現腫瘍細胞に対して等価な結合能を示したが、対照抗体は抗−Rae−1β抗体−FITCで検出されなかった。
【0049】
これらの結果は、抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質が腫瘍細胞を結合し、Rae−1β融合タンパク質がRae−1β部分を介してNK細胞上のNKG2Dに結合するだろうことを示している。NKG2D:Rae−1β相互作用はNK細胞を刺激し、活性化NK細胞から分泌されたパーフォリンまたはグランザイムBにより腫瘍の溶解が起こるだろう。
【0050】
NK細胞中のパーフォリンの発現を刺激する抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質の能力を評価するために、IL−2(100U)で活性化したマウスNK KY−2細胞を、種々の濃度の抗HER2 IgG3−C3−Rae−1β融合タンパク質(0.1μg、0.5μgまたは2μg)および対照(抗HER2 IgG3(2μg)およびアイソタイプ対照(2μg))の存在下で刺激した。抗HER2 IgG3−CH3−Rae−1β融合タンパク質は用量依存的様式(図3)でKY−2細胞のパーフォリン発現を促進する。この結果は、抗HER2 IgG3−CH3−Rae−1β融合タンパク質のRae−1β部分が機能的に正しいことを確認した。
【0051】
抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質がNK細胞の殺腫瘍活性を増大させるかどうかを決定するために、新たに単離したNK細胞を抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質(10μg/ウェル)、抗HER2 IgG3(10μg/ウェル)または対照抗ダンシルIgG3(10μg/ウェル)の存在下で培養した。刺激の2日後、腫瘍細胞系統であるHER2抗原発現MC38(MC38−HER2)に対するNK細胞の細胞毒性可能性を5時間の51Cr放出アッセイで評価した(図4)。
【0052】
抗HER2 IgG3はNK細胞による少量の腫瘍指向性細胞毒性を示したが、抗ダンシルIgG3はほとんど細胞毒性を示さず、これはNK細胞のFcRIIIがADCCに必
要であることを示唆した(図4)。興味深いことに、H−Rae−1融合タンパク質はN
K細胞による腫瘍指向性細胞毒性の改善を少ししか示さなかったが、CH3−Rae−1β融合タンパク質は著しくNK細胞媒介性死滅活性を著しく増大させた(図4)。H−Rae−1融合タンパク質中のFc領域がないことで、H−Rae−1融合タンパク質の細胞毒性活性はC3−Rae−1β融合タンパク質ほど強力ではなかった。これらのデータは、NK細胞による腫瘍指向性細胞毒性に融合抗体のRae−1β部分およびFc領域の両方が重要な役割を果たしていることを示している。
【0053】
必要な結合が保持される限り、NKG2D結合部分は天然NKG2Dリガンド(例えばH−60、Rae1タンパク質、ULBPおよびMICタンパク質、例えばRae1α、Rae1β、Rae1γ、特に天然ヒトMICA、MICB、ULBP1、ULBP2およびULBP3タンパク質)であるか、またはその断片であり得る。他の好ましい受容体にはNCR等の細胞毒性活性化受容体またはNK細胞およびT細胞の表面に見出されるNCRと類似の受容体が含まれるがそれらに限定されるわけではない。
【0054】
別の好ましい実施形態では、本発明の組成物は病原細胞、および病原性因子によって引き起こされた疾病を処置するために使用される。病原細胞の集団は、外因性病原体であるか、例えばウイルス等の外因性病原体を宿す細胞集団であり得る。本発明は細菌、菌類、ウイルス、マイコプラズマおよび寄生動物等の外因性病原体に適用可能である。特に癌を引き起こすウイルスが好ましい。それらはDNAウイルスまたはRNAウイルスであり得る。DNAウイルスおよびRNAウイルスの例には、パピローマウイルス、パルボウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルスおよびワクシニアウイルス等のDNAウイルス、ならびにアレナウィルス、コロナウイルス、ライノウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、インフルエンザウイルス、ピコマウイルス、パラミクソウイルス、レオウイルス、レトロウイルスおよびラブドウイルス等のRNAウイルスが含まれるがこれらに限定されるわけではない。本発明のキメラ融合共役体は、病原体を宿している細胞の表面に病原体特異性抗原が優勢に発現され、抗原に特異的に結合するリガンドに対する受容体として機能する、内因性病原体を宿す細胞集団を対象としてもよい。
【0055】
本発明の方法は、ヒト臨床医学および獣医学的応用のいずれにも使用することができる。したがって、病原体集団を宿し、キメラ組成物で処置されるホスト動物は、ヒトであってもよいし、または獣医学的応用の場合には実験動物、農業用動物、家畜、または野生動物であってもよい。本発明はヒト;齧歯類(例えばマウス、ラット、ハムスター等)、ウサギ、サル、チンパンジー等の実験動物;イヌ、ネコおよびウサギ等の家畜;ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ野獣等の農業用動物;クマ、パンダ、ライオン、トラ、ヒョウ、ゾウ、シマウマ、キリン、ゴリラ、イルカおよびクジラ等の野生動物;を含む宿主動物に適用することができるが、それらに限定されるわけではない。
キメラ組成物は好ましくは宿主動物に非経口的に、例えば、皮内に、皮下に、筋肉内に、腹腔内にまたは静脈内に投与される。代わりに、共役体は他の医学的に有用なプロセスにより宿主動物に投与されてもよく、任意の有効量および放出が延長された剤形を含む適切な治療の剤形を使用することができる。本発明の方法は、腫瘍の外科的除去、放射線療法、化学療法または他の免疫療法を含む生物学的治療と組み合わせて使用されてもよい。免疫療法にはモノクローナル抗体治療、免疫調節因子による処置、免疫エフェクタ細胞の養子免疫導入、造血生長因子、サイトカインによる処置、および予防接種が含まれるがそれらに限定されるわけではない。
他の腫瘍抗原
他の好ましい実施形態では、キメラ融合分子は、白血病およびリンパ腫抗原(例えば抗CD20、抗CD22、または抗CD52)の少なくとも一方、肺または結腸癌抗原(例えば抗EGFR)もしくはまたは前立腺癌抗原(例えばPSMA)に対する抗体配列を別の特異性を有する例として含む。ヒトNKG2Dリガンド配列がマウス配列の代わりに用いられてもよく、MICA、MICB、ULBPまたは他のNKG2Dリガンド由来の配
列、NCRもしくはNK細胞とT細胞の細胞表面に存在する細胞毒性活性化受容体が含まれる。好ましくは、キメラ融合分子は細胞表面の抗原、例えばEGFR、CD20、her2/neu、GD2、GD3、IGF 受容体、her2等に対するものである。
【0056】
本発明によれば、腫瘍標的細胞は、例えば抗原に特異的な抗体を包含することにより、上記組成物による選択的な標的とされる。腫瘍抗原は腫瘍を引き起こすウイルスによる感染の結果であり、この技術を使用して、感染細胞の表面に発現されたウイルス抗原を標的とし得る。腫瘍抗原の非制限的な例には突然変異に起因する腫瘍抗原、例えばαアクチニン−4(肺癌);BCR−ABL融合タンパク質(b3a2)(慢性骨髄白血病);CASP−8(頭頸部扁平上皮癌);β−カテニン(黒色腫);Cdc27(黒色腫);CDK4(黒色腫);dek−can融合タンパク質(骨髄性白血病);伸長因子2(扁平上皮肺癌);ETV6−AML1融合タンパク質(急性リンパ芽球性白血病);LDLR−フコシルトランスフェラーゼAS融合タンパク質(黒色腫);HLA−A2dの局在化ま
たは過剰発現(腎細胞癌);hsp70−2(腎細胞癌);KIAAO205(膀胱腫瘍);MART2(黒色腫);MUM−1f(黒色腫);MUM−2(黒色腫);MUM−3(黒色腫);新PAP(黒色腫);ミオシンクラスI(黒色腫);0S−9g(黒色腫);pml−RARα融合タンパク質(前骨髄性白血病);PTPRK(黒色腫);K−ras(膵臓腺癌);N−ras(黒色腫)。腫瘍分化抗原の例にはCEA(腸癌);gp100/Pmel17(黒色腫);カリクレイン4(前立腺);γグロブリン−A(乳癌);Melan−A/MART−1(黒色腫);PSA(前立腺癌);TRP−1/gp75(黒色腫);TRP−2(黒色腫);チロシナーゼ(黒色腫)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。過剰発現または過少発現される腫瘍抗原には、CPSF(遍在);EphA3;G250/MN/CAIX(胃、肝臓、膵臓);HER−2/neu;腸カルボキシルエステラーゼ(肝臓、腸、腎臓);α−フェトプロテイン(肝臓);M−CSF(肝臓、腎臓);MUC1(腺上皮);p53(遍在);PRAME(精巣、卵巣、子宮内膜、副腎);PSMA(前立腺、CNS、肝臓);RAGE−1(網膜);RU2AS(精巣、腎臓、膀胱);サバイビン(遍在);テロメラーゼ(精巣、胸腺、骨髄、リンパ節);WT1(精巣、卵巣、骨髄、脾臓);CA125(卵巣)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。別の好ましい実施形態では、異常細胞または癌細胞が組成物による標的とされる。例えば、多くの悪性腫瘍は外来DNA(例えばBcr−Abl、Bcl−2、HPV)の存在に関係しており、それらは、選択的な悪性細胞のターゲッティングを可能にするために固有の分子標的(例えば抗原)を提供する。一塩基置換(例えばK−ras、p53)またはメチル化変化の結果として、発現産物をターゲットとするために同アプローチを使用することができる。しかしながら、先に発現されなかった遺伝子産物によっても癌細胞の増殖は引き起こされ得る。これらの遺伝子配列は標的とされ、それにより癌細胞のさらなる発現および最終的な死が阻止される。他の例では、トランスポゾンがそのような調節解除の原因となり、トランスポゾン配列を標的とすることができる(例えばTn5)。
【0057】
本発明は一般に、癌等の疾病および通常発現されていない遺伝子による遺伝子産物の発現、通常発現されている遺伝子の異常な発現、または異常遺伝子の発現を同様に引き起こし得るウイルス、細菌、細胞内および細胞外寄生体、挿入要素、真菌感染等の感染因子により引き起こされる疾病を処置する方法を提供する。
【0058】
本発明の方法は好ましくは、異常細胞増殖または感染伝染因子により引き起こされる疾病の処置または予防のために、特に、患者の肺、心臓、肝臓、前立腺、脳、精巣、胃、小腸、腸(bowel)、脊髄、洞(sinuses)、尿路または卵巣等の組織で起こり得る感染症の処置のために使用される。
【0059】
別の好ましい実施形態では、本発明の組成物は化学療法と共に投与することができる。
そのような化学療法剤は組成物と同時に、組成物よりも前に、または組成物の後に投与することができる。化学療法剤の非制限的な例にはシクロフォスファミド(CTX、25mg/kg/日、経口投与)、タキサン(パクリタクセルまたはドセタクセル)、ブスルファン、シスプラチン、シクロフォスファミド、メトトレキサート、ダウノルビシン、アドリアマイシン、メルファラン、クラドリビン、ビンクリスチン、ビンブラスチンおよびクロラムブチルが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0060】
別の好ましい実施形態では、医薬組成物は患者における腫瘍細胞増殖を阻害し、方法は患者に有効量治療組成物を含む医薬組成物を投与することを含む。腫瘍細胞増殖の阻害には、以下の結果の1つ以上を指す:(1)(i)速度の低下および(ii)完全な成長停止を含む、ある程度の腫瘍成長の阻害;(2)腫瘍細胞数の減少;(3)腫瘍サイズの維持;(4)腫瘍サイズの減小;(5)(i)減少、(ii)速度低下、または(iii)完全な予防を含む、腫瘍細胞の末梢期間への浸潤の阻害;(6)(i)減少、(ii)速度低下、または(iii)完全な予防を含む、転移の阻害;(7)(i)腫瘍サイズの維持、(ii)腫瘍サイズの減小、(iii)腫瘍成長の遅延、(iv)侵襲の減少、速度低下、または予防、もしくは(v)転移の減少、速度低下、または予防、をもたらす抗腫瘍免疫反応の増大、または、(8)障害に関連する1または複数の徴候のある程度の緩和。
【0061】
別の好ましい実施形態では、本発明の組成物は、アジュバント、サイトカイン、および他の抗体等の免疫活性薬化合物と共に投与することができる。例えば化合物は樹状細胞を活性化するために使用されてもよい。樹状細胞は非常に強力なAPC(Banchereau and Steinman, Nature 392:245-251, 1998)であり、予防または治療のための抗腫瘍免疫を誘
発するための生理学的アジュバントとして有効であることが示されている(Timmerman and Levy, Ann. Rev. Med. 50:507-529, 1999参照)。一般に、樹状細胞はそれらの一般的
形状(in situで星形、マーク付け細胞質プロセス(樹状突起)でin vitroにて可視化)
、それらの取り込み能力、それらの高効率で抗原を処置および提示する能力ならびにそれらの天然T細胞反応を活性化する能力に基づいて識別される。樹状細胞は当然ながら、生体内(in vivo)または生体外(ex vivo)で通常樹状細胞上には見出されない特定の細胞表面受容体またはリガンドを発現するよう工学的に作成されてもよく、そのような修飾樹状細胞は本発明の想定内である。樹状細胞の代わりとして、抗原を装填した樹状細胞の分泌小胞(エキソソームと呼ばれる)がワクチン内で使用されてもよい(Zitvogel et al.,
Nature Med. 4:594-600, 1998)。
樹状細胞とその前駆体は、末梢血、骨髄、腫瘍湿潤細胞、腫瘍周囲組織湿潤細胞、リンパ節、脾臓、皮膚、臍帯血または他の適切な組織もしくは流体から得られ得る。例えば、樹状細胞は、末梢血から採取された単球の培養物へGM−CSF、IL−4、IL−13、およびTNFαの少なくとも一つ等のサイトカインの組み合わせを加えることにより生体外で分化させることが可能である。代わりに、末梢血、臍帯血液または骨髄から採取されたCD34陽性細胞が、GM−CSF、IL−3、TNFα、CD40リガンド、LPS、flt3リガンドならびに樹状細胞の分化、成熟および増殖を引き起こす他の化合物の少なくとも一つの組み合わせを培地に加えることにより、樹状細胞へ分化されてもよい。
【0062】
樹状細胞は便宜上「未熟」細胞と「成熟」細胞として分類され、これは2つのよく特徴付けられた発現型を区別する簡単な方法を許容する。しかしながら、この命名法は分化のあらゆる中間段階を除外するものとして解釈されるべきではない。未熟な樹状細胞は抗原の高い取り込みおよび処理能力によりAPCと特徴付けられ、これはFc受容体およびマンノース受容体の高い発現と関連する。成熟した発現型は一般にそれらのマーカの発現がより低いが、クラス1およびクラス11 MHC等のT細胞活性化の原因となる表面分子、接着分子(例えばCD54およびCD11)および同時刺激分子(例えばCD40、CD80、CD86および4−1 BB)の発現は高いことにより特徴付けられる。
【0063】
本組成物と共に使用することができる他の化合物は免疫刺激分子である。いくつかのポリヌクレオチドは免疫刺激特性を有することが実証されている。例えば、ポリ(I,C)はインターフェロン(IFN)生産、マクロファージ活性化およびNK細胞活性化のインデューサであり(Talmadge, J.E., et al.1985. Cancer Res.45:1058; Wiltrout, R. H. et al 1985.J. Biol. Resp.Mod.4:512)、poly(dG,dC)はB細胞の分裂を促進し(Messina, J.P.et al. 1993.Cell.Immunol.147:148)、IFNおよびNK活性を引き
起こす(Tocunaga,T.,Yamamoto,S.,Namba,K.1988.Jpn.J.Cancer Res.79:682)。
【0064】
本発明の方法は、キメラ融合組成物に加えて、内部免疫反応を刺激することが可能な化合物または組成物を宿主に投与することにより行える。そのような化合物または組成物にはサイトカインまたは免疫細胞増殖因子、例えばインターロイキン1−18、幹細胞因子、塩基性FGF、EGF、G−CSF、GM−CSFおよびFLK−2リガンド、HILDA、MIP−1a、TGFα、TGFβ、M−CSF、IFNα、IFNβ、IFNγ、可溶性CD23、LIFおよびそれらの組み合わせが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0065】
治療上有効な上記サイトカインの組み合わせも使用可能である。好ましい実施形態では、例えば、治療上有効量のIL−2(複数回用量の一日の投与計画で約5000IU/用量/日から約500,000IU/用量/日までの範囲)と、IFN−α(例えば複数回用量の一日の投与計画で約7500IU/用量/日から約150,000IU/用量/日までの範囲)を、本発明の組成物と共に使用することができる。別の好ましい実施形態では、IL−2、IFN−αまたはIFN−γ、およびGM−CSFが組み合わせて使用される。好ましくは、IL−2、IL−12、IL−15、IFN−α、IFN−γ、およびGM−CSFならびにその組み合わせを含む使用された治療因子はナチュラルキラー細胞およびT細胞の少なくとも一方を活性化する。代わりに、それの、インターフェロンおよびGM−CSFと組み合わされたインターロイキンを含む、治療因子またはその組み合わせは、マクロファージ、B細胞、好中球、LAK細胞等の他の免疫エフェクタ細胞を活性化してもよい。本発明はさらに、他のインターロイキンとインターフェロンおよびコロニー刺激因子との組み合わせを含む他のサイトカインの有効な組み合わせの使用も想定する。
【0066】
他の好ましい実施形態では、キメラ融合組成物は化学療法剤と共に処置することができる。「化学療法剤」は癌の治療に有用な化合物である。化学療法剤の例には、チオテパおよびシクロスフォスファミド(CYTOXAN(登録商標))等のアルキル化薬;ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファン等のアルキルスルホン酸;ベンゾドパ、カルボコン、メツレドパおよびウレドパ等のアジリジン;アルトレトアミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスファミド、トリエチレンチオホスファミドおよびトリメチルオロメラミンを含むエチレンイミンおよびメチルアメラミン;クロラムブチル、クロルナファジン、クロルホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロールエサミン、メクロールエサミン酸化物塩酸塩、メルファラン、ノベムビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、ウラシルマスタード等のナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン等のニトロソ尿素;アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オーソラマイシンn、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアマイシン、カラビシン、カルノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、プロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシ
ジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン等の抗生物質;メトトレキサートおよび5−フルオロウラシル(5−FU)等の代謝拮抗薬;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート等の葉酸類似体;フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン等プリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5−FU等のピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン等のアンドロゲン;アミノグルエチミド、ミトーテン、トリロスタン等の抗副腎;フロリン酸等の葉酸補充物質;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラバシル;ビサントレン;エダトレキサート;デフォファミン;デメコルチン;ジアジキノン;エルフォルミチン;酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;オキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドヒリン酸;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’ ,2”−トリ
クロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシッド(「Ara−C」);シクロフォスファミド;チオテパ;タキサン、例えばパクリタクセル(TAXOL
(登録商標、Bristol-Myers Squibb Oncology、ニュージャージー州Prinston所在)およ
びドセタキシル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer、フランス国Antony所在
);クロラムブチル;ゲムシタビン;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチンおよびカルボプラチン等のプラチナ類似体;ビンブラスチン;プラチナ;エトポシド(VP−16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセロダ;イバンドロン酸;CPT−11;トポイソメラーゼ阻害剤 RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラミシン;カペシタビン;および上記の物質のいずれかの医薬として許容される塩、酸または誘導体が含まれる。この定義には腫瘍に対するホルモン作用を調節または阻害する抗ホルモン剤も含まれ、それには例えばタモキシフェン、ラロキシフェン、4(5)−イミダゾール、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、およびトレミフェン(Fareston)等の抗エストロゲン薬;およびフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリドおよびゴセレリン等の抗アンドロゲン;ならびに上記の物質のいずれかの医薬として許容される塩、酸または誘導体が挙げられる。
天然細胞毒性受容体(NCR)リガンド分子
別の好ましい実施形態では、本発明は、NCRリガンドドメインおよび担体ドメインの両方を有するキメラ分子を提供する。NCRリガンドドメインは腫瘍細胞毒性を(例えばNK細胞の活性化により)増強し、担体ドメインはキメラ分子への機能的性質を与える。本明細書で説明するキメラ融合分子構築物は、さらなる受容体またはリガンド機能を有してもよく、免疫調節エフェクタ分子またはその断片を有してもよい。
ヒト化抗体
好ましい実施形態では、本発明の抗体はヒト化抗体を含む。ヒト化抗体は、その軽鎖および重鎖遺伝子が異なる種に属する免疫グロブリン可変領域および定常領域遺伝子から通常遺伝工学により構築された構築された抗体である。例えば、マウスモノクローナル抗体由来の遺伝子の可変セグメントが、γ1およびγ3等のヒト定常セグメントにつながれてもよい。このように一般的な治療用キメラ抗体は、マウス抗体由来の抗原結合ドメインとヒト抗体由来の定常またはエフェクタドメインとから構成されたハイブリッドタンパク質であるが、他の哺乳動物種が使用されてもよい。
【0067】
本明細書に使用する場合、用語「ヒト化」免疫グロブリンは、ヒトフレームワーク領域
と、1または複数の非ヒト(通常マウスかラット)免疫グロブリン由来のCDRとを有する免疫グロブリンのことを指す。CDRを提供する非ヒト免疫グロブリンは「ドナー」と呼ばれ、フレームワークを提供するヒト免疫グロブリンは「アクセプター」と呼ばれる。定常領域は存在しなくてもよいが、存在する場合には、定常領域はヒト免疫グロブリンの定常領域と実質的に同一、つまり少なくとも約85−90%、好ましくは約95%以上同一でなければならない。従って、ヒト化免疫グロブリンの部分はすべて、CDR以外は、天然ヒト免疫グロブリン配列の対応する部分と実質的に同一である。「ヒト化抗体」は、ヒト化軽鎖およびヒト化重鎖の免疫グロブリンを含む抗体であり、例えば、キメラ抗体の可変領域全体は非ヒトである。得られたヒト化抗体がCDRを提供するドナー抗体と同じ抗原に結合すると予想されるため、「ヒト化」のプロセスによりドナー抗体が「ヒト化」される。
【0068】
ヒト化抗体が、抗原結合または他の免疫グロブリン機能に実質的に影響を及ぼさない追加の保存的アミノ酸置換を有してもよいことが理解される。保存的置換には、gly、ala;val、ile、leu;asn、glu;asn、gln;ser、thr;lys、arg;およびphe、tyr等の組み合わせがある。
【0069】
ヒト化抗体を含むヒト化免疫グロブリンは遺伝工学により構築された。本願以前に記載されたほとんどのヒト化免疫グロブリンは、特定のヒト免疫グロブリン鎖のフレームワークと同一のフレームワーク、アクセプターおよび非ヒトドナー免疫グロブリン鎖由来の3つのCDRを備えていた。
【0070】
原理は、アクセプターとして、ヒト化されドナー免疫グロブリンに著しく相同な特定のヒト免疫グロブリンからフレームワークが使用されるか、または多くのヒト抗体由来の一致フレームワークを使用する。例えば、マウスの重(軽)鎖の可変領域を、ヒトに対する重(軽)鎖の可変領域とデータバンク(例えばNational Biomedical Research Foundation Protein Identification Resouce)で比較すると、種々のヒト領域に対する相同の範囲が約40%から約60−70%までで非常に典型的に変わることが理解される。アクセプター免疫グロブリンとして、ドナー免疫グロブリンの重(または軽)鎖可変領域に最も相同なヒト重(または軽)鎖可変領域の一つを選択することにより、ドナー免疫グロブリンからヒト化免疫グロブリンまで行く間により少数のアミノ酸しか変更されないだろう。従って繰り返しになるが、理論に束縛されるわけではないが、CDR付近にはそのコンホメーションを歪めるアミノ酸を変更する可能性が少しあると考えられる。さらに、ヒト化免疫グロブリン鎖を有するヒト化抗体の正確な全体形状は、ドナー抗体の形状によりよく類似し、これもCDRを歪める可能性を減らす場合がある。
【0071】
ヒト化抗体は一般に、マウス抗体または場合によってヒト治療に使用されるキメラ抗体よりも以下の利点を有する:エフェクタ部分がヒトであるため、ヒト免疫系の他の部分とより良好に相互作用する(例えば、補足依存性細胞毒性(CDC)または抗体依存性細胞毒性(ADCC)によって標的細胞をより効率的に破壊する);ヒト免疫系はヒト化抗体のフレームワークまたは定常領域を外来のものとして認識しないため、そのような抗体に対する抗体反応は完全に外来のマウス抗体や部分的に外来のキメラ抗体に対してよりも少ないはずである。
【0072】
抗体も遺伝子操作することができる。特に好ましいのは、所望の抗原(例えば腫瘍抗原(例えばHER2))に結合できるようアクセプターヒトフレームワーク領域をコードするDNAセグメントに取り付けられたドナー免疫グロブリン由来の重鎖および軽鎖CDRをコードする組換えDNAセグメントの発現により生産されたヒト化免疫グロブリンである。
【0073】
DNAセグメントは、通常、天然の関連プロモータ領域または異種由来のプロモータ領域を有するヒト化免疫グロブリンコード配列に結合されて作用する発現制御DNA配列をさらに有する。好ましくは、発現制御配列は、真核生物の宿主細胞を形質転換または形質導入することができるベクター中の真核生物のプロモータ系である。しかしながら、原核生物の宿主用の制御配列も使用可能である。一旦ベクターが適切な宿主に組み込まれると、宿主は、高濃度のヌクレオチド配列の発現に適した条件下で培養され、所望に応じて、ヒト化軽鎖、重鎖、軽鎖/重鎖二量体、または完全な抗体、結合断片もしくは他の免疫グロブリン形態の収集および精製が続く(参照により本願に組み込まれるBeychok, Cells of Immunoglobulin Synthesis, Academic Press, New York, (1979),を参照)。
【0074】
ヒト定常領域DNA配列は、種々のヒト細胞から、好ましくは不死化したB細胞(Kabat前掲およびWP87/02671参照)から周知の手順に従って単離可能である。本発明の好まし
い免疫グロブリンを生産するためのCDRは、ヒトT細胞受容体CD3複合体等の所定の抗原に結合可能なモノクローナル抗体に由来し、抗体を生産できる任意の有益な哺乳動物源(ハツカネズミ、ネズミ、ウサギを含む)または他の脊椎動物で周知の方法により生産される。定常領域およびフレームワークDNA配列に適した源細胞および免疫グロブリンの発現および分泌のための宿主細胞は、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC)等の多くの源から得ることができる(参照により本願に組込まれる"Catalogue of Cell
Lines and Hybridomas," sixth edition (1988) Rockville, Md., U.S.A)。
【0075】
天然配列に対する他の「実質的に相同な」修飾免疫グロブリンは、当業者に周知の種々の組換えDNA技術を使用して容易に設計および製造することができる。例えば、フレームワーク領域は、いくつかのアミノ酸の置換、末端および中間の付加、および削除等により一次構造レベルで変更することができる。さらに、種々の異なるヒトフレームワーク領域を、本発明のヒト化免疫グロブリンの基礎として単独でまたは組み合わせて使用してもよい。一般に、遺伝子の修飾は、部位特異的突然変異誘発等の多くの周知技術により容易に達成することができる(いずれも参照により本願に組み込まれるGillman and Smith, Gene, 8, 81-97 (1979)およびS. Roberts et al., Nature, 328, 731-734 (1987)参照)。
【0076】
実質的に相同な免疫グロブリン配列は基準免疫グロブリンタンパク質と少なくとも約85%相同、通常少なくとも約90%、好ましくは少なくとも約95%相同である。
代わりに、主要な抗体構造の部分だけを含み、1または複数の免疫グロブリン活性(例えば補体固定活性)を有するポリペプチド断片が生産されてもよい。そのようなポリペプチド断片は、当該技術分野の周知技術により天然抗体をタンパク質分解で開裂するか、部位特異的突然変異誘発を用いて当業者の周知のベクター内の所望位置に停止コドンを挿入することにより、生産され得る。
【0077】
微生物に加えて、哺乳動物の組織細胞培養物も本発明のポリペプチドを発現および生産するために使用可能である(参照により本願に組み込まれるWinnacker, "From Genes to Clones," VCH Publishers, New York, N. Y. (1987)参照)。インタクトな免疫グロブリ
ンを分泌できる多くの適切な宿主細胞系統が当該技術分野で開発されているため、真核細胞が実際には好ましく、それにはCHO細胞系統、種々のCOS細胞系統、HeLa細胞(好ましくは骨髄腫細胞系統等)、および形質転換B細胞もしくはハイブリドーマが含まれる。これらの細胞のための発現ベクターは、複製開始点、プロモータ、エンハンサ(参照により本願に組み込まれるQueen et al., Immunol. Rev., 89, 49-68 (1986))、リボ
ソーム結合部位等の必要なプロセシング情報部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位および転写終結配列等の発現制御配列を有し得る。好ましい発現制御配列は、免疫グロブリン遺伝子、シミアンウイルス40、アデノウイルス、サイトメガロウイルス、ウシパピローマウィルスおよびその他の等価物に由来するプロモータである。
【0078】
一般に、対象のヒト化抗体は、腫瘍抗原(好ましくはER2/neu)に結合する抗体の可変重鎖配列と可変軽鎖配列をコード化する核酸配列を得、可変重鎖配列および可変軽鎖配列中のCDRを識別し、かかるCDR核酸配列をヒトフレームワーク核酸配列上へ移植することにより生産される。
【0079】
好ましくは、選択されたヒトフレームワークは生体内投与に適していると予想されるもの、すなわち免疫性を示さないものになるだろう。これは、例えば、かかる抗体の生体内での使用に関する先の経験により、およびアミノ酸配列の類似性に関する研究により、決定することができる。後者の方法では、ヒト化される抗体のフレームワーク領域のアミノ酸配列を既知のヒトフレームワーク領域のアミノ酸配列と比較し、親抗体(例えばER2/neuに結合するマウス抗体)のサイズおよび配列と最も類似するサイズおよび配列を有するCDR移植に使用されるヒトフレームワークが選択されるだろう。多数のヒトフレームワーク領域が単離されており、それらの配列が文献に報告されている。例えばKabat
(前掲)を参照。これにより、選択されたヒトフレームワーク領域上に移植された親(例えばマウス)抗体のCDRを含む、得られたCDRが移植された「ヒト化」抗体が、抗原結合構造を備え、およびしたがって親抗体の結合親和力を大いに保持するという可能性を高められる。
【0080】
以下の文献は本発明を実施する際に利用可能な組み換え免疫グロブリンの発現に適した方法およびベクターの代表例である。Weidle et al., Gene, 51:21-29 (1987); Dorai et
al., J. Immunol., 13(12):4232-4241 (1987); De Waele et al., Eur. J. Biochem., 176:287-295 (1988); Colcher et al., Cancer Res., 49:1738-1745 (1989); Wood et al., J. Immunol., 145(a):3011-3016 (1990); Bulens et al., Eur. J. Biochem., 1 95:235-242 (1991); Beggington et al., Biol. Technology, 10:169 (1992); King et al., Biochem. J., 281:317-323 (1992); Page et al., Biol. Technology, 9:64 (1991); King
et al., Biochem. J., 290:723-729 (1993); Chaudary et al., Nature, 339:394- 397 (1989); Jon es et al., Nature, 321:522-525 (1986); Morrison and Oi, Adv. Immunol, 44:65- 92 (1988); Benhar et al., Proc. Natl. Acad. Sd. USA, 91:12051-12055 (1994); Singer et al., J. Immunol, 150:2844-2857 (1993); Cooto et al., Hybridoma, 13(3):215-219 (1994); Queen e t al., Proc. Natl. Acad. ScL USA, 86:10029-10033 (1989); Caron et al., Cancer Res., 32:6761- 6767 (1992); Cotoma et al., J. Immunol. Meth., 152:89-109 (1992)。さらに、組み換え抗体の発現に適したベクターは市販されている。ベクターは、例えば、裸の核酸セグメント、担体関連核酸セグメント、核タンパク質、プラスミド、ウイルス、ウイロイドまたは転位因子である。
【0081】
発現後、得られたヒト化抗体の抗原結合親和性が既知の方法(例えばScatchard分析)
により分析される。特に好ましい実施形態では、ヒト化抗体の抗原結合親和性は親抗体(例えば抗HER2/neu)の抗原結合親和性の少なくとも50%であり、より好ましくはヒト化抗体の親和性は親抗体の親和性の少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約100%、150%、200%または500%である。
【0082】
場合によっては、CDR((例えばHER2/neu等の腫瘍抗原に結合する抗体由来の)を選択されたヒトフレームワーク領域上に移植することにより生産されたヒト化抗体は、HER2/neuに対して所望の親和性を有するヒト化抗体を提供し得る。しかしながら、抗原結合を増強するためには選択されたヒトフレームワークの特定の残基をさらに修飾することが必要であったり望ましかったりする場合がある。いくつかのフレームワーク残基は抗原結合に不可欠であり、または少なくとも抗原結合に影響すると考えられているため、かかる修飾が起こり得る。好ましくは、結合部位の構造を保持するか影響を及ぼす親(例えばマウス)抗体のフレームワーク残基は保持されるだろう。これらの残基は、親抗体またはFabフラグメントのX線結晶回折により識別されてもよく、それにより抗
原結合部位の三次元構造が識別される。また、抗原結合に関与するフレームワーク残基は本願以前に報告されたヒト化マウス抗体配列に基づいて、潜在的に識別可能である。したがって、例えばER2/neu結合を最適化するために、親マウス抗体からかかるフレームワーク残基または他のものを保持することが有益であり得る。好ましくは、かかる方法は得られたヒト化抗体に「ヒト様の」性質を与え、内部を保持し、抗原結合に影響する残基と接触する間にヒト化抗体の免疫原性を低下させるだろう。
【0083】
本発明は、本明細書で述べたヒト化抗体および抗体断片に実質的に相同な変異形および等価物をさらに含む。例えばそれは、保存的置換突然変異、すなわち同様のアミノ酸による1または複数のアミノ酸の置換を含む。例えば、保存的置換とは、あるアミノ酸の、同じ一般的クラス内にある別のアミノ酸での置換を指し、例えば酸性アミノ酸の別の酸性アミノ酸による置換、塩基性アミノ酸の別の塩基性アミノ酸による置換、または中性アミノ酸の別の中性アミノ酸による置換が挙げられる。保存的アミノ酸置換により意図されるものは当該技術分野で周知である。
細胞にキメラ分子を送達する方法
本発明はさらに、細胞にキメラ分子を送達する方法を提供する。本発明のキメラ分子は任意の既知の方法により細胞に送達することができる。例えば、キメラ分子を含有する組成物が、培地に懸濁された細胞に加えられる。代わりに、キメラ分子は、キメラ分子がインサイチュで細胞に結合するように、キメラ分子に結合する受容体を発現している細胞を有する動物に(例えば非経口経路により)投与することができる。例えば、HER2/neuに特異的なIgドメインを特徴とする本発明のキメラ分子は、HER2/neuを過剰発現する腫瘍細胞(例えば乳癌、卵巣癌細胞)に結合するための標的部分として特に適している。
【0084】
組成物の動物への投与
インサイチュで腫瘍細胞を標的とするために、上述の組成物は任意の適切な剤形でヒトを初めとする動物に投与され得る。例えば、腫瘍細胞を標的とする組成物は、生理食塩水または緩衝塩溶液等の医薬として許容される担体または希釈剤中で製剤され得る。適切な担体および希釈剤は投与の態様(mode)と経路および標準的な医薬の実務に基づいて選択することができる。例証的な医薬として許容される担体および希釈剤と同様、医薬製剤の記述もこの分野の標準テキストであるRemington's Pharmaceutical Sciencesや、USP/NF
に見出すことができる。組成物を安定化および/または保存するために組成物に他の物質が添加されてもよい。
【0085】
本発明の組成物は任意の従来の方法により動物に投与可能である。組成物は、例えば内部または外部標的部位への外科的送達により、または血管によりアクセス可能な部位へのカテーテルにより、標的部位に直接投与可能である。他の送達方法、例えばリポソーム送達または組成物を含浸させた装置からの拡散が当該技術分野で周知である。組成物は1回のボーラスで投与されてもよいし、複数回の注射、または持続点滴(例えば静脈内に)により投与されてもよい。非経口投与の場合、組成物は好ましくは滅菌したパイロジェンが存在しない形式に製剤される。
キット
本発明のキットは、解凍するか(任意選択でさらに希釈が続く)または(好ましくは緩衝された)液体ビヒクル中へ懸濁することにより再構成される冷凍または凍結乾燥キメラ分子を含んでいる。キットはさらに、キメラ分子と混合して投与に適した製剤を生成するために、緩衝液および/または賦形剤溶液(液体または冷凍形式の場合)か、緩衝液および/または水により再構成される賦形剤粉末調整物を含んでもよい。したがって、好ましくは、キットに提供される所定量の熱、水、または溶液の添加によって十分な濃度およびpHの製剤が生じ、癌の処置または診断に生体内または試験管内で使用するのに有効であるような濃度で、キメラ分子を含むキットは冷凍され、凍結乾燥され、予め希釈され、ま
たは予め混合される。好ましくは、そのようなキットは癌の処置または検出用のキメラ分子組成物を再構成および使用するための説明書も含むだろう。上記の緩衝液、賦形剤および他の組成物の部分はキットと別々に販売されていてもよいし、一緒に販売されていてもよい。
【0086】
当業者には、本発明のキメラ分子の各々の投薬の最適量および間隔が、処置される状態の性質および程度、投与の形式、経路および部位、ならびに処置される特定の動物により決定され、そのような最適条件を従来の技術によって決定できることが理解される。また、当業者には、投与の最適コース、つまり特定の日数の間の所与の一日当たりの本発明のキメラ分子の投与回数が、処置決定試験の従来のコースを使用して当業者に確認できることも理解される。
【0087】
以下の実施例は例示として与えられており、限定ではない。特定の実施例が提供されているが、上記の説明は例示であって限定的ではない。先に記載された1または複数のいかなる特徴を、本発明の他の実施形態の1または複数のいかなる特徴と、いかなる方法で組み合わせてもよい。さらに、本発明の多くのバリエーションが、明細書を読めば当業者には明らかであろう。したがって、本発明の範囲は上記の説明に関連して決定されるべきでなく、代わりに、特許請求の範囲ならびに均等物の全範囲に関連して決定されるべきである。
【0088】
本願に引用した刊行物および特許文書はすべて各刊行物または特許文書が個別に表示されるのと同じ程度にあらゆる目的で参照により本願に組み込まれる。本文書中の種々の文献を引用することにより、出願人はどの特定の文献も本発明に対する「先行技術」とは認めない。
実施例
実施例1:抗HER2 IgG3−NKG2Dリガンド(Rae−1)融合タンパク質の構築、発現および特徴付け
実験用マウスRae−1β遺伝子は、プライマー 5'-CCCCTCGAGCTCTGGATGATGCACACTCTCTTAGG-3'(配列番号1)および5'-CCCCGAATTCGTTAACCTTTCTTAGAAGTAGAGTGG-3(配列番号2)を使用したPCRによりpCR−Blunt II−TOPO−Rae-1βから得た
。PCR産物はpCR−Blunt II−TOPOにサブクローニングした。サブクロー
ニングされたRae−1β遺伝子をベクターpAT135中のヒトIgG3のヒンジ領域の末端かまたは重鎖不変領域(CH3)のカルボキシル末端にインフレームにライゲートし、Rae−1β重鎖定常領域を、真核生物の選択用のHisD遺伝子を含む発現ベクター(pSV2−his)中の組み換えヒト化モノクローナル抗体4D5−8(rhuMAb HER2、トラスツズマブ、Genentech、カリフォルニア州 San Francisco所在)の
抗HER2可変領域に結合した。
【0089】
抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質構築物は、抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質全体を組み立てるために、抗HER2 κ軽鎖を安定して発現するP3X63Ag8.653骨髄腫細胞に安定的にトランスフェクトした。抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質を[33S]−メチオニンで生合成的に標識し、SDS−PAGEで分析した。セファロース4Bファストフローに固定化したプロテインAを用いて培養上清からRae−1β融合タンパク質を精製し、SDS−PAGEにより分析した。
【0090】
実施例2:抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質の結合分析
フローサイトメトリーを用いて融合タンパク質中のRae−1部分のNKG2D受容体に対する結合能を調べるために、抗HER2抗体−Rae−1β融合タンパク質(10μg)、抗HER2 IgG3(10μg)、およびアイソタイプ対照(10μg、抗ダン
シルIgG3)をC57BL6から新たに単離した0.2×106NK細胞またはKY−
2細胞(マウスNK細胞系統)と4℃で1時間インキュベートした。それらをPBSで2回洗浄した後、NKG2Dに結び付けられた結合抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質を、FITCで共役した抗ヒトIgGにより検出した(4℃で1時間、2μl/サンプル)。蛍光強度はLSRフローサイトメトリーで分析した。抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質がHER2抗原に対する特異的結合能をも保持しているかどうかを、HER2発現MC38腫瘍細胞(MC38−HER2)を用いて調べた。抗HER2抗体−Rae−1β融合タンパク質(10μg)、抗HER2 IgG3(10μg)およびアイソタイプ対照(10μg、抗ダンシルIgG3)を、1×106 M
C38−HER2と4℃で1時間インキュベートした。HER2に結合した抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質を、ラット抗マウスRae−1β抗体およびFITCで共役した抗ラット抗体により検出した。蛍光強度はLSRフローサイトメトリーで分析した。
【0091】
実施例3:抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質を用いたKY−2におけるパーフォリン生産の分析
NK細胞でのパーフォリンの発現を刺激する抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質の能力を評価するために、組織培養プレートをMC38−HER2(0.5x106)でコーティングし、2%パラホルムアルデヒドで30分間固定した。PBSで2
回洗浄した後、IL−2(100U)で培養したKY−2細胞(1x106、マウスNK
細胞系統を、種々の濃度(0.1μg、0.5μgまたは2μg)の抗HER2 IgG3−C3−Rae−1β融合タンパク質および対照の抗HER2 IgG3(2μg)およびアイソタイプコントロール(2μg)で一晩処置した。細胞内のパーフォリン発現を評価するために、KY−2細胞を4時間ブレフェルジンA(10g/ml)で処理し、パーフォリン発現をFITCで共役した抗パーフォリンで分析した。蛍光強度はLSRフローサイトメトリーで分析した。
実施例4:抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質による腫瘍指向性NK細胞媒介性細胞毒性の分析
抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質がNK細胞の殺腫瘍活性を高めるかどうかを決定するために、新たに単離したNK細胞を抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質(10μg/ウェル)、抗HER2 IgG3(10μg/ウェル)または対照抗ダンシルIgG3(10μg/ウェル)の存在下で刺激した。2日後に、NKを、丸底の96ウェルプレート中で異なるE:T比(10:1および50:1)で51Cr標識した腫瘍細胞系統MC38−HER2(1x104)と同時培養した。5時間のイ
ンキュベーションの後、クロムの放出を測定した。2% Triton X-100と共にまたは培地のみと標識した細胞を処理することにより最大かつ自発的な放出がそれぞれ測定された。特異的細胞毒性を以下の式により計算した:特異的溶解(パーセント)=100x((実験による放出(cmp)−自発的放出(cpm))/(最大放出(cpm)−自発的放出(cpm))3つの異なるドナーの結果を平均±標準誤差として示す。
実施例5:乳癌治療用の抗HER2抗体−NKG2Dリガンド融合タンパク質の開発
抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質の構造:予想分子量を有する抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質が、完全に組み立てられたH2L2型として分泌された(図5)。
【0092】
抗−HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質の結合:腫瘍細胞表面のHER2+に結合された抗HER2 IgG3−Rae融合タンパク質およびRae−1β融合タンパク質は、Rae−1β部分によって、NKG2D−Fc(ヒトIgG1)融合タンパク質またはNK細胞上に表示されているNKG2D受容体を認識した。ヒンジ−Rae−1β融合はCH3−Rae−1βと比較してNKG2Dに対する結合が少ないことが示された(図6)。
【0093】
NK細胞媒介性直接溶解(マウスNK細胞KY−2):抗HER2 IgG3(IgG3)およびエフェクタ細胞は、示されたエフェクタ:標的比ではエフェクタとしてKY−2細胞を用いて腫瘍指向性細胞毒性(5−10%)を少し示した。H−Rae−1β融合タンパク質は腫瘍指向性細胞毒性をほとんど示さなかった(5%)。CH3−Rae−1β融合との標的のインキュベーションによりNK細胞媒介性の死滅は顕著に増大した(15−59%)。この結果は、Rae−1βに結合されたインタクトなFc領域を保持するCH3−Rae−1βによるKY−2の溶解活性の増強が、Fc領域を有する抗HER2
IgG3では最小の溶解しか示さなかったため、NKG2D/Rae−1βの相互作用による可能性があることを示した(図7A−7C)。
【0094】
KY2によるリダイレクト溶解:抗HER2 IgG3−CH3−Rae−1βでプライムしたP815またはJ774細胞をKY−2細胞でインキュベートすると、22%以下のリダイレクト溶解が観察された。この溶解は対照抗HER2 IgG3で見られるよりも大きかった(<6%)。これらの結果は、NKG2D/Rae−1β相互作用がFcR+ P815またはJ774細胞の溶解活性に必要であると示唆した(図8A、8B)。
【0095】
MC38−HER2に対する抗HER2 IgG3−CH3−Rae−1βの抗腫瘍活性:抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質は、PBSよりも大きな程度でC57BL6中のマウスMC38−HER2の増殖を阻害した。しかしながら、MC38−HER2腫瘍(2/5)はPBSグループにおいて自発的に退縮した(図9)。
他の実施形態
上記の明細書は多くの詳細を含んでいるが、それらは、本発明の範囲に対する制限としてではなく本発明の好ましい実施形態の例として解釈されるものとする。他の多くのバリエーションが可能である。従って、本発明の範囲は例証された実施形態ではなく特許請求の範囲およびその法的な均等物により決定されるものとする。
【0096】
参考文献
1. Diefenbach A, Jamieson AM, Liu SD, Shastri N, Raulet DH. Ligands for the murine NKG2D receptor: expression by tumor cells and activation of NK cells and macrophages. Nat Immunol. 2000;l:119-126.
2. Diefenbach A, Raulet DH. The innate immune response to tumors and its role in
the induction of T-cell immunity. Immunol Rev. 2002;188:9-21.
3. Diefenbach A, Jensen ER, Jamieson AM, Raulet DH. Rael and H60 ligands of the NKG2D receptor stimulate tumour immunity. Nature. 2001 ;413: 165-171.
4. . Cerwenka A, Baron JL, Lanier LL. Ectopic expression of retinoic acid early inducible- 1 gene (RAE-I) permits natural killer cell-mediated rejection of a MHC class I- bearing tumor in vivo. Proc Natl Acad Sci U S A. 2001 ;98: 11521-11526.
5. Shin SU, Friden P, Moran M, Olson T, Kang YS, Pardridge WM, Morrison SL. Transferrin-antibody fusion proteins are effective in brain targeting. Proc Natl Acad Sci U S A. 1995; 92(7):2820-4.
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1A】抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質の構造を示す略図。
【図1B】抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質のSDS−PAGE分析を示すスキャン。
【図2】抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質の結合分析を示すヒストグラム。
【図3】抗HER2 IgG3−Rae1β融合タンパク質媒介性のKY−2 NK細胞におけるパーフォリン(perforin)生産の増大を示すヒストグラム。
【図4】抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質による腫瘍指向NK細胞媒介性細胞毒性の増大を示すグラフ。
【図5】予想分子量を有する抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質が完全に組み立てられたH2L2形式として分泌されたことを示すSDS−PAGEゲルのスキャン。
【図6】抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質の結合のヒストグラム。
【図7A】NK細胞媒介性直接溶解を示すグラフ。
【図7B】NK細胞媒介性直接溶解を示すグラフ。
【図7C】NK細胞媒介性直接溶解を示すグラフ。
【図8A】KY2によるリダイレクト溶解を示すグラフ。
【図8B】KY2によるリダイレクト溶解を示すグラフ。
【図9】MC38−HER2に対する抗HER2 IgG3−CH3−Rae−1βの抗腫瘍活性を呈すグラフ。
【技術分野】
【0001】
本発明は医学、免疫学および腫瘍学の分野に関する。詳細には、本発明は癌細胞を死滅させると共に免疫反応を刺激する目的で免疫系を刺激するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
NKG2Dリガンドは、ウイルス感染した細胞や形質転換細胞で発現される誘導性ストレス応答分子である1。NKG2Dリガンドは、自然免疫系および適応免疫系に属するエ
フェクタ細胞上で発現されているC型レクチン様受容体であるNKG2D受容体を活性化し、強力な抗腫瘍応答を備えるのに必要な自然免疫および適応免疫間の有効なリンクを与える2。腫瘍によるNKG2Dリガンドの指向性発現は、多数のマウス腫瘍モデルにおい
て腫瘍退縮につながった3。
【0003】
抗HER2抗体(ハーセプチン(Herceptin))は転移乳癌の処置に認可されている。しかしながらハーセプチンは患者の腫瘍がHER2を発現している少ないパーセントの患者にのみ有効である。抗体ベースの癌治療は、抗体依存的な細胞毒性(ADCC)の活性化によるか、HER2等の標的受容体によるシグナリングに対する直接の作用によるかの少なくとも一方により、腫瘍の破壊につながると考えられる。ADCCは抗癌機構である可能性があり、局所的自然免疫反応の活性化を通じて得られる細胞崩壊能力の増大により活性化エフェクタ細胞の存在下でより有効に誘発され得る。さらに、局所的自然免疫反応の増大は適応性T細胞媒介応答のより効率的なプライミングにつながり得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って癌処置の新規な組成物を開発することが重要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、免疫細胞リガンドと、抗腫瘍抗体の担体ドメインとの両方を有する腫瘍を標的とするキメラ分子の開発に関する。
以下に説明する例証的実施形態では、キメラ分子は、Rae1βに融合された抗HER2/neu抗体由来のIgドメインを有する。
【0006】
好ましい実施形態では、本発明は、抗原結合ドメインと免疫細胞結合ドメインとを有するキメラ融合分子を含む医薬組成物を提供する。好ましくは医薬組成物は癌の処置に使用される。
【0007】
別の好ましい実施形態では、抗原結合ドメインは同抗原結合ドメインの単離抗体または断片を含む。抗原結合ドメインの単離抗体または断片は、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖と、免疫グロブリンの可変領域および定常領域とのうちの少なくとも一方を含む。好ましくは、免疫グロブリンの可変領域はFab、Fab’、F(ab’)2、およびFv断
片を含み、免疫グロブリンの定常領域はCH1、ヒンジ、CH2およびCH3を含む。
【0008】
別の好ましい実施形態では、抗原結合ドメインの単離抗体または断片は、免疫細胞結合ドメインに融合される。本発明によれば、単離抗体は、免疫グロブリン定常領域であるCHI、ヒンジ、CH2またはCH3によって免疫細胞結合ドメインに融合される。好ましく
は単離抗体は、免疫グロブリン定常領域であるCH3により免疫細胞結合ドメインに融合
される。
【0009】
別の好ましい実施形態では、免疫細胞結合は、NK細胞受容体、単球受容体、B細胞表面受容体および/またはT細胞表面受容体に特異的なリガンドである。好ましくは免疫細胞結合ドメインは、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)のためのリガンド(例えばNKG2Dリガンドおよびその変異形)、MHCクラスI αならびにβ鎖)、およびUL16結合タンパク質のうちの少なくとも一つである。
【0010】
別の好ましい実施形態では、UL16結合タンパク質はULBPl、ULBP2、ULBP3およびULBP4から選択される。
別の好ましい実施形態では、キメラ融合タンパク質は乳癌抗原に向けられる。例にはHER2、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、シトクロムP450アイソフォーム 1B1(CYP1B1)CA 27.29、またはCA 15−3抗原、または白血病およびリンパ腫抗原の少なくとも一方(例えば抗CD20、抗CD22、または抗CD52)、または肺または結腸癌抗原に対する抗体配列(例えば抗EGFR)、または前立腺癌抗原(例えばPSMA)が別の特異性の例として含まれる。しかしながら、腫瘍抗原に特異的であればいかなる抗体結合部位を使用してもよい。キメラ融合分子は動物患者への投与に適した医薬担体の内に含むことができる。
【0011】
好ましい実施形態では、NKG2Dリガンドは、胸腫瘍抗原HER2を標的とする抗体−NKG2Dリガンド融合タンパク質を使用して、腫瘍細胞に直接向けられる。
別の好ましい実施形態では、核酸は腫瘍抗原結合ドメインと免疫細胞結合ドメインとを有するキメラ融合分子を発現する。例えば、免疫細胞結合ドメインは配列番号1および2のプライマーを使用してポリメラーゼ連鎖反応により得られる。免疫細胞結合ドメイン核酸は、抗腫瘍抗原結ドメインを発現する核酸配列に好ましくはライゲートされる。
【0012】
別の好ましい実施形態では、動物患者の癌を処置する方法は、腫瘍抗原結合ドメインと免疫細胞結合ドメインとを有するキメラ融合分子を含む医薬組成物を動物患者に投与することを含む。好ましくは、免疫細胞結合ドメインは、NK細胞受容体、単球受容体、B細胞表面受容体およびT細胞表面受容体のうちの少なくとも一つに特異的なリガンドである。例えば免疫細胞結合ドメインは、ナチュラルキラー細胞受容体(NK細胞)に特異的なリガンドである。好ましくは、免疫細胞リガンドはNKG2Dリガンドおよびその変異形、MHCクラスI αならびにβ鎖、およびUL16結合タンパク質のうちの少なくとも一つである。
【0013】
抗体特異性は任意の既知の腫瘍抗原(例えば乳癌におけるHer2/neu、固形腫瘍におけるEGFR、リンパ腫におけるCD20等)に向けることができる。
特段定義がない限り、本明細書で使用されるすべての専門用語は本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味を有する。分子生物学用語の一般に理解されている定義はRiegerら、Glossary of Genetics; Classical and Molecular, 5th edition, Springer-Verlag; New York, 1991およびLewin, Genes V, Oxford University Press: New York, 1994に見出される。
【0014】
本発明を実施または試験するのに本明細書で説明したのと同様または等価な方法および材料を使用することができるが、以下には適切な方法および材料について述べる。本明細書で言及するすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参照文献はその全体が参照により本願に組み込まれる。矛盾する場合は、定義を含めて本明細書が優先される。さらに、以下に論じる特定の実施形態は例示にすぎず、制限を意図しない。
【0015】
図面には現時点の好ましい実施形態を図示するが、本発明をその趣旨および本質的属性から逸脱せずに他の形式で具現化できることは明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1Aは、抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質の構造を示す略図である。図1Bは抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質のSDS−PAGE分析を示すスキャンである。精製IgG3−Rae−1β融合タンパク質を非還元条件で分析した。対照の抗HER2 IgG3が比較用に含まれている。
【0017】
図2は抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質の結合分析を示すヒストグラムである。抗HER2抗体−Rae−1βのRae−1β部分を、新たに単離したNK細胞またはマウスNK細胞系統KY−2細胞上のNKG2Dへの結合について試験した。抗HER2抗体−Rae−1β融合タンパク質、CH3−Rae−1β(赤色塗りつぶし)およびH−Rae−1β(青色のライン)は結合能を示したが、抗HER2 IgG3(緑色のライン)およびアイソタイプ対照(紫色塗りつぶし)は結合しなかった。CH3−Rae−1β(赤色塗りつぶし)およびH−Rae−1β(青色ライン)のいずれもHER2を認識し、Rae−1β部分により検知されたが、抗HER2 IgG3(緑色ライン)およびアイソタイプ対照(紫色塗りつぶし)はRae−1βにより検知されなかった。
【0018】
図3は抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質媒介性のKY−2 NK細胞におけるパーフォリン(perforin)生産の増大を示すヒストグラムである。ヒストグラムは、種々の濃度のHER2 IgG3−CH3−Rae−1β融合タンパク質(0.1μg:青色塗りつぶし、0.5μg:橙色塗りつぶし、2μg:赤色塗りつぶし)、抗HER2 IgG3(2μg:青色ライン)、およびアイソタイプ対照(2μg:黒色ライン)の存在下で培養したIL2(100U)刺激KY−2細胞の細胞内パーフォリン発現を実証している。
【0019】
図4は抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質による腫瘍指向性NK細胞媒介性細胞毒性の増大を示すグラフである。新たに単離されたNEC細胞を抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質(10μg/ウェル、CH−Rae−1β)(赤
色塗りつぶし)、H−Rae−1β(緑色塗りつぶし)、抗HER2 IgG3(10μg/ウェル、紫色塗りつぶし)または対照抗ダンシルIgG3(10μg/ウェル、黒線)の存在下で刺激した。2日後に、NKを、51Cr標識腫瘍細胞系統MC38−HER2を異なるE:T比で用いて丸底の96ウェルプレートで同時培養した。インキュベーションの5時間後に、クロミウムの放出を測定した。3つの異なるドナーの結果を三連ウェルの平均±SE(標準誤差)として示した。
【0020】
図5は、予想分子量を有する抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質が完全に組み立てられたH2L2形式として分泌されたことを示すSDS−PAGEゲルのスキャンである。
【0021】
図6は、抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質の結合のヒストグラムを示す。抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質は、腫瘍細胞表面のHER2+に結合し、Rae−1β融合タンパク質はRae−1β部分によりNKG2D−Fc(ヒトIgG1)融合タンパク質またはNK細胞に表わされるものとしてNKG2D受容体を認識した。ヒンジ−Rae−1βの融合ではCH3−Rae−1βと比較してNKG2Dに対する結合が減少した。
【0022】
図7A−7C、NK細胞媒介性直接溶解を示すグラフである。抗HER2 IgG3(IgG3)およびエフェクタ細胞は、示されたエフェクタ:標的比としてKY−2細胞を用いて腫瘍指向性細胞毒性を少し示した(5−10%)。H−Rae−1β融合タンパク
質は腫瘍指向性細胞毒性をほとんど示さなかった(5%)。標的のCH3−Rae−1β融合とのインキュベーションによりNK細胞の死滅は顕著に増大した(15−59%)。
【0023】
図8Aおよび8BはKY2によるリダイレクト(すなわち方向転換)溶解を示すグラフである。抗HER2 IgG3−CH3−Rae−1βでプライミングされたP815またはJ774細胞をKY−2細胞とインキュベートすると、22%以下のリダイレクトが観察された。この溶解は対照の抗HER2 IgG3(<6%)について観察されたものより大きかった。
【0024】
図9は、MC38−HER2に対する抗HER2 IgG3−CH3−Rae−1βの抗腫瘍活性を示すグラフである。抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質はPBSより大きな程度にC57BL6におけるマウスMC38−HER2の成長を阻止した。
【0025】
(詳細な説明)
免疫細胞を腫瘍へ向けるキメラ融合分子。同融合分子は任意の腫瘍抗原に特異的に設計され、患者に特異的な腫瘍抗原にさらに適合させることが可能である。癌または任意の感染細胞の処置方法が提供される。
定義
本発明に従っておよび本明細書に使用する場合、別段明示的に述べていない限り、以下の用語は以下の意味で定義される。
【0026】
本明細書に使用する場合、単数形は文脈が別段明示しない限り、複数の参照符号を包含している。
「実質的に精製された」とは、その天然環境から除去され、単離または分離され、核酸分子またはタンパク質のことを指す。天然では不随される他の成分が60%、好ましくは約75%、最も好ましくは約90%含まれていない核酸分子またはタンパク質のことを指す。
【0027】
本明細書に使用する場合、「癌」とは哺乳動物で見出されるすべての種類の癌または新生物もしくは悪性腫瘍を指し、それには白血病、リンパ腫、黒色腫、癌腫、および肉腫が含まれるがこれらに限定されるわけではない。癌の例は脳、胸、膵臓、子宮頚、大腸、頭部と頚部、腎臓、肺、非小細胞肺、黒色腫、中皮腫、卵巣、肉腫、胃、子宮および髄芽細胞腫の癌である。
【0028】
本発明による開示された組成物により処置することができるさらなる癌には、例えばホジキン病、非ホジキン病、リンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、乳癌、卵巣癌、肺癌、横紋筋肉腫、原発性血小板血症、原発性マクログロブリン血症、小細胞肺癌、原発性脳腫瘍、胃癌、大腸癌、悪性膵臓島癌、悪性カルチノイド、膀胱癌、前癌性皮膚障害、精巣癌、リンパ腫、甲状腺癌、神経芽細胞腫、食道癌、尿生殖器管癌、悪性高カルシウム血症、子宮頸癌、子宮内膜癌、副腎皮質癌、および前立腺癌が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0029】
本明細書に使用する場合、ポリペプチドの「変異形(バリアント)」とは1または複数のアミノ酸残基によって変更されたアミノ酸配列のことを指す。変異形は「保存的」変化を有する場合があり、その場合、置換されたアミノ酸は同様の構造的および化学的性質を有する(例えばロイシンのイソロイシンへの置換)。より例外的に、変異形は「非保存的」変化を有する場合がある(例えばグリシンのトリプトファンへの置換)。類似の小さな変化はアミノ酸の欠失または挿入もしくはその両方を含み得る。生物活性を失わずにどのアミノ酸残基が置換、挿入、または欠失され得るかを決定する際のガイダンスが、例えば
LASERGENEソフトウェア(DNASTAR)等の当業者に周知のコンピュータプログラムを使用して見出し得る。
【0030】
「変異形」という用語は、ポリヌクレオチド配列の文脈で使用された場合、野生型遺伝子に関連するポリヌクレオチド配列を包含し得る。この定義はさらに、例えば「対立遺伝子」、「スプライス」、「種」、または「多型」の変異形を含んでよい。スプライス変異形は、基準分子に対して有意な同一性を有し得るが、mRNAプロセシング中のエキソンの交互スプライシングによってポリヌクレオチドの数が一般に大きいかまたは小さい。対応するポリペプチドは追加の機能ドメインを有していてもよいし、またはドメインを欠いていてもよい。種変異形はある種から別の種までで変化するポリヌクレオチド配列である。本発明で特に有用なのは野生型標的遺伝子産物の変異形である。変異形は、核酸配列中の少なくとも1つの突然変異に起因してもよいし、その構造または機能が変更されてもされなくてもよい変更されたmRNAまたはポリペプチドに起因してもよい。任意の天然または組み換え遺伝子が、0個、1個または多くの対立遺伝子型を有してもよい。変異形を生じさせる一般的な突然変異の変更は、通常、ヌクレオチドの天然の欠失、追加または置換である。これらのタイプの変更の各々が、単独で生じてもよいし、他の変更と組み合わさって生じてもよいし、所定の配列中に1または複数回生じてもよい。
【0031】
生じるポリペプチドは一般に互いに対して有意なアミノ酸同一性を有するだろう。多型の変異形は、所与の種の個体間の特定の遺伝子のポリヌクレオチド配列における変異である。多型の変異形は、「一塩基多型」(SNP)すなわちポリヌクレオチド配列が1塩基だけ異なるまたは一塩基突然変異を包含し得る。SNPの存在は、例えば、ある人口が感受性対耐性である疾病状態に対する傾向を備えていることを示し得る。
【0032】
「診断の」、「診断された」とは、病理学的条件または病気に罹患している患者の存在または性質を識別することを意味する。診断法はそれらの感度および特異性が異なる。診断アッセイの「感度」は、陽性(「真陽性」のパーセント)のテスト結果が出る疾病個体のパーセンテージである。アッセイにより検知されない疾病個体は「偽陰性」である。病気でなくアッセイで陰性のテスト結果が出る患者は「真陰性」と称され、診断アッセイの分析の「特異性」は1−(偽陽性率)であり、病気でなく陽性のテスト結果が出る個体の割合として「偽陽性」の割合が定義される。特別の診断方法は条件の決定的な診断を提供しない場合もあるが、方法が診断を援助する陽性の表示を提供するならば、それで十分である。
【0033】
用語「患者」または「個体」は本明細書では互換的に使用され、処置される哺乳動物患者のことを指すが、ヒト患者が好まれる。ある場合には、本発明の方法は、マウス、ラットおよびハムスターを含む齧歯類を含むがこれらに限定されない実験動物、獣医学的用途、および疾患動物モデルの開発に用途がある。
【0034】
本明細書に使用する場合、「医薬として許容される」成分は、合理的な利益/危険比と釣り合う過度の副作用(毒性、炎症およびアレルギー反応等)のないヒトおよび/または動物への使用に適した成分である。
【0035】
本明細書に使用する場合、用語「安全かつ有効な量」とは本発明の方法で使用された場合に合理的な利益/危険比と釣り合う過度の副作用(毒性、炎症またはアレルギー反応等)なく所望の治療反応を生み出すのに十分な成分の量のことを指す。「治療上有効な量」とは、所望の治療反応を生み出すのに有効な本発明の化合物の量を意味する。例えば、癌(肉腫またはリンパ腫)の成長または発生を遅延させるのに有効な量、癌を縮小または転移を予防するのに有効な量、もしくはウイルス感染細胞を死滅させるのに有効な量である。特定の安全かつ有効な量または治療上有効な量は、処置されている特定の状態、患者の
心身の状態、処置されている哺乳動物または動物の種類、処置の時間、同時治療(存在する場合)の性質、および使用される特定の剤形、ならびに化合物またはその誘導体の構造に応じて変わるだろう。
【0036】
「処置」は、病気の病体または症状の進展を予防するか変更する意図で行なわれる介入である。従って、「処置」は治療的処置および予防的措置の両方を指す。「処置」は緩和療法をも指し得る。処置を必要とする者には、既に障害を有している者だけでなくその障害がこれから予防される者も含まれる。腫瘍(例えば癌)の処置では、治療薬は腫瘍細胞の病状を直接減少させるか、または腫瘍細胞の他の治療物質による治療(例えば放射線療法および/または化学療法)への感受性を高めてもよい。
【0037】
「癌の処置」は、明細書の全体にわたって、および続く実施例において説明されるが、以下の結果の1つ以上を引き起こすことができる組成物、ベクターおよびペプチドのうちの少なくとも一つの量のことを指す:(1)(i)速度の低下および(ii)完全な成長停止を含む、ある程度の腫瘍成長の阻害;(2)腫瘍細胞数の減少;(3)腫瘍サイズの維持;(4)腫瘍サイズの減小;(5)(i)減少、(ii)速度低下、または(iii)完全な予防を含む、腫瘍細胞の末梢期間への浸潤の阻害;(6)(i)減少、(ii)速度低下、または(iii)完全な予防を含む、転移の阻害;(7)(i)腫瘍サイズの維持、(ii)腫瘍サイズの減小、(iii)腫瘍成長の遅延、(iv)侵襲の減少、速度低下、または予防、もしくは(v)転移の減少、速度低下、または予防、をもたらす抗腫瘍免疫反応の増大、または、(8)障害に関連する1または複数の徴候のある程度の緩和。
【0038】
用語「調整」とは、上述の活性のうちの任意のものが、例えば増大、増強、増大、促進、アゴナイズ(アゴニストとして機能)、低下、減少、抑制、遮断、またはアンタゴナイズ(アゴニストとして機能)されることを意味する。調整は、基準値に対して1倍、2倍、3倍、5倍、10倍、100倍等より大きく活性を増大させることができる。また、調整は基準値より下にその活性を減小させることができる。
【0039】
本明細書に使用する場合、「免疫系の細胞」すなわち「免疫細胞」は、Bリンパ球(B細胞とも呼ばれる)、Tリンパ球(T細胞とも呼ばれる)、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NK)細胞、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞、単球、マクロファージ、好中球、顆粒細胞、マスト細胞、血小板、ランゲルハンス細胞、幹細胞、樹状細胞、末梢血単核細胞、腫瘍浸潤(TIL)細胞、ハイブリドーマを含む遺伝子修飾免疫細胞、薬物修飾免疫細胞、および上記の細胞タイプの誘導体、前駆物質、または前駆細胞を含むが限定されない分析される可能性のあるすべての免疫系の細胞も含む。
【0040】
「活性」、「活性化」または「増強」は、免疫細胞の、応答し、測定可能なレベルで免疫機能を示す能力である。活性化の程度の測定は、先の活性化の結果としてさらに刺激された場合に増強された活性を発現する免疫細胞の能力の定量的評価のことを指す。能力の増強は、免疫細胞が低用量の刺激物質に応答して活性に対して刺激されることを可能にする活性化プロセスの間に生じる、生化学的変化に起因し得る。
【0041】
「免疫細胞の活性」は、本明細書に使用する場合、任意の免疫細胞の活性化のことを指す。測定可能な活性には、(1)DNA応答の測定による細胞増殖;(2)IFN−γ、GM−CSF、またはTNF−α等のサイトカインに対する特異的測定値を有するサイトカインの生産の増強;(3)細胞媒介性の標的死滅または溶解;(4)細胞分化;(5)免疫グロブリン生産;(6)表現型の変化;(7)ケモタキシスを備えた走化性因子に応答する能力を意味する走化性因子またはケモタキシスの生産;(8)他のある免疫細胞種の活性の阻害による免疫抑制;(9)異常な活性化の表示としての特定環境下での活性化
された免疫細胞の断片化を指すアポトーシス;が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
キメラ融合分子
好ましい実施形態では、キメラ融合分子は、免疫細胞および標的腫瘍抗原の両方に結合する。例えば、免疫細胞結合ドメインは、NK細胞、T細胞、B細胞等の特定の免疫細胞上の受容体に対するリガンドである。標的腫瘍抗原結合ドメインは、腫瘍抗原に特異的なポリクローナルまたはモノクローナル抗体に由来することができる。免疫細胞へのキメラ分子の結合は、特定の腫瘍抗原(これに対して腫瘍抗原結合ドメインが特異的)を発現する腫瘍へ免疫細胞を向ける。代わりに、分子は腫瘍結合ドメインを介して特異的腫瘍に結合され、免疫細胞は免疫細胞結合ドメインに結合する。そのため、免疫細胞が活性化され、続いて腫瘍の破壊が起こる。
【0042】
本発明を制限したり解釈したりすることを意味しないが、例証的な実施例として、本願発明者らは、抗体−NKG2Dリガンド融合タンパク質の設計および合成を通じて腫瘍細胞表面にNKG2Dリガンドを送達するよう向ける抗体の能力を利用した。抗体−NKG2Dリガンド融合タンパク質は、抗体ドメイン(例えばEGFR、CD20、PSMA等)の他の腫瘍抗原性特異性を置換することにより悪性腫瘍を処置するために使用することができる。好ましくは、抗体融合分子中のマウスNKG2Gリガンドは、ヒトでテストするためにMHCクラスI−関連鎖AおよびBならびにUL16結合タンパク質(ULBP1、ULBP2、ULBP3、ULBP4)等のヒトNKG2Dリガンドと置換される。腫瘍細胞上へのNKG2Dリガンドの局所的送達および同細胞上での発現は、刺激信号に優勢にNK細胞活性化状態のバランスを有効に回復させ、CD8+T細胞に有力な共刺激
シグナルを与え、有効な抗腫瘍反応を刺激する。
【0043】
NKG2Dリガンドは、ウイルス感染細胞および形質転換細胞上で発現される誘導性ストレス応答分子である。NKG2Dリガンドは、自然免疫系および適応免疫系に属するエフェクタ細胞上で発現されているC型レクチン様受容体であるNKG2D受容体を活性化し、強力な抗腫瘍応答を備えるのに必要な自然免疫および適応免疫間の有効なリンクを与える。NKG2Dリガンドの過剰発現は多くのマウス腫瘍モデル中で腫瘍の退縮につながった。マウス腫瘍モデルに由来する観察とは対照的に、多くのヒト癌上でこれらのリガンドが広範囲に発現していても、マウス腫瘍モデルで見られた予想される腫瘍特異的な自然または適応反応が生じない。この1つの説明は、これらのリガンドの血流への流出と、エフェクタ細胞上のNKG2D受容体のダウンレギュレーションである。これは、腫瘍細胞表面でのこれらのリガンドの表面発現を減少させると同時に、受容体自体の有効性を鈍化させる。腫瘍細胞表面上でのNKG2Dリガンドの過剰発現は、刺激信号に優勢にNK細胞活性化状態のバランスを有効に回復させ、CD8+T細胞に有力な共刺激シグナルを与
え、有効な抗腫瘍反応を刺激する。乳癌に屈する大部分の女性には転移疾病があるため、NKG2Dリガンドを発現するためにマウス実験モデルに有効に使用された直接的形質導入ストラテジーは実用的でない。
【0044】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、例えばNKG2Dリガンドを、転移物において癌細胞表面へ高濃度に局在化させる。
より有効な型のNKG2DリガンドであるRae−1βを生産するために、本願発明者らは抗HER2 IgG3−ヒンジ−Rae−1β融合タンパク質および抗HER2 IgG3−CH3−Rae−1β融合タンパク質を構築し、NK細胞活性化活性を保持しつつ抗体−Rae−1β融合タンパク質が腫瘍発現HER2を標的にする可能性を追求した。
【0045】
抗HER2 IgG3−Rae−1β遺伝子を構築し、マウスP3X63Ag8.653骨髄腫細胞系統にトランスフェクトした。抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タ
ンパク質はタンパク質Aカラムを使用して精製した。予測分子量を有する抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質が、完全に組み立てられたH2L2型(図1A、1B)として分泌された。
【0046】
フローサイトメトリーを使用して、融合タンパク質のRae−1β部分のNKG2D受容体への結合能を調べるために、NKG2Dを発現しているC57BL6またはKY−2細胞(マウスNK細胞系統)から新たに分離したNK細胞に対する結合について、抗HER2抗体−Rae−1β融合タンパク質を試験した(図2)。
【0047】
NKG2Dに結合した抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質はFITC共役抗ヒトIgGにより検知した。抗HER2 IgG3−CH3−Rae−1βは両方のNK細胞に対し抗HER2 IgG3−H−Rae−1βよりも強い結合能を示した。これはC3−Rae−1βとH−Rae−1βの間のコンホメーションの違いと、H−Rae−1βにFc領域がなかったこととの少なくとも一方による結果であり得る。検出抗体(抗ヒトIgG−FITC)はH−Rae−1βをCH3−Rae−1βほど効率的に認識しなかった可能性がある。しかしながら、対照抗体の抗ダンシルIgG3および抗HER2 IgG3はNK細胞に対する結合を示さなかった。
【0048】
抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質もHER2抗原に対する特異的結合能を保持しているかどうかを、HER2を発現している腫瘍細胞ライン(MC38−HER2)で調べた。HER2に結合した抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質を、FITC共役抗マウスRae−1β抗体により検出した(図2)。C3−Rae−1βおよびH−Rae−1βはHER2発現腫瘍細胞に対して等価な結合能を示したが、対照抗体は抗−Rae−1β抗体−FITCで検出されなかった。
【0049】
これらの結果は、抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質が腫瘍細胞を結合し、Rae−1β融合タンパク質がRae−1β部分を介してNK細胞上のNKG2Dに結合するだろうことを示している。NKG2D:Rae−1β相互作用はNK細胞を刺激し、活性化NK細胞から分泌されたパーフォリンまたはグランザイムBにより腫瘍の溶解が起こるだろう。
【0050】
NK細胞中のパーフォリンの発現を刺激する抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質の能力を評価するために、IL−2(100U)で活性化したマウスNK KY−2細胞を、種々の濃度の抗HER2 IgG3−C3−Rae−1β融合タンパク質(0.1μg、0.5μgまたは2μg)および対照(抗HER2 IgG3(2μg)およびアイソタイプ対照(2μg))の存在下で刺激した。抗HER2 IgG3−CH3−Rae−1β融合タンパク質は用量依存的様式(図3)でKY−2細胞のパーフォリン発現を促進する。この結果は、抗HER2 IgG3−CH3−Rae−1β融合タンパク質のRae−1β部分が機能的に正しいことを確認した。
【0051】
抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質がNK細胞の殺腫瘍活性を増大させるかどうかを決定するために、新たに単離したNK細胞を抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質(10μg/ウェル)、抗HER2 IgG3(10μg/ウェル)または対照抗ダンシルIgG3(10μg/ウェル)の存在下で培養した。刺激の2日後、腫瘍細胞系統であるHER2抗原発現MC38(MC38−HER2)に対するNK細胞の細胞毒性可能性を5時間の51Cr放出アッセイで評価した(図4)。
【0052】
抗HER2 IgG3はNK細胞による少量の腫瘍指向性細胞毒性を示したが、抗ダンシルIgG3はほとんど細胞毒性を示さず、これはNK細胞のFcRIIIがADCCに必
要であることを示唆した(図4)。興味深いことに、H−Rae−1融合タンパク質はN
K細胞による腫瘍指向性細胞毒性の改善を少ししか示さなかったが、CH3−Rae−1β融合タンパク質は著しくNK細胞媒介性死滅活性を著しく増大させた(図4)。H−Rae−1融合タンパク質中のFc領域がないことで、H−Rae−1融合タンパク質の細胞毒性活性はC3−Rae−1β融合タンパク質ほど強力ではなかった。これらのデータは、NK細胞による腫瘍指向性細胞毒性に融合抗体のRae−1β部分およびFc領域の両方が重要な役割を果たしていることを示している。
【0053】
必要な結合が保持される限り、NKG2D結合部分は天然NKG2Dリガンド(例えばH−60、Rae1タンパク質、ULBPおよびMICタンパク質、例えばRae1α、Rae1β、Rae1γ、特に天然ヒトMICA、MICB、ULBP1、ULBP2およびULBP3タンパク質)であるか、またはその断片であり得る。他の好ましい受容体にはNCR等の細胞毒性活性化受容体またはNK細胞およびT細胞の表面に見出されるNCRと類似の受容体が含まれるがそれらに限定されるわけではない。
【0054】
別の好ましい実施形態では、本発明の組成物は病原細胞、および病原性因子によって引き起こされた疾病を処置するために使用される。病原細胞の集団は、外因性病原体であるか、例えばウイルス等の外因性病原体を宿す細胞集団であり得る。本発明は細菌、菌類、ウイルス、マイコプラズマおよび寄生動物等の外因性病原体に適用可能である。特に癌を引き起こすウイルスが好ましい。それらはDNAウイルスまたはRNAウイルスであり得る。DNAウイルスおよびRNAウイルスの例には、パピローマウイルス、パルボウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルスおよびワクシニアウイルス等のDNAウイルス、ならびにアレナウィルス、コロナウイルス、ライノウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、インフルエンザウイルス、ピコマウイルス、パラミクソウイルス、レオウイルス、レトロウイルスおよびラブドウイルス等のRNAウイルスが含まれるがこれらに限定されるわけではない。本発明のキメラ融合共役体は、病原体を宿している細胞の表面に病原体特異性抗原が優勢に発現され、抗原に特異的に結合するリガンドに対する受容体として機能する、内因性病原体を宿す細胞集団を対象としてもよい。
【0055】
本発明の方法は、ヒト臨床医学および獣医学的応用のいずれにも使用することができる。したがって、病原体集団を宿し、キメラ組成物で処置されるホスト動物は、ヒトであってもよいし、または獣医学的応用の場合には実験動物、農業用動物、家畜、または野生動物であってもよい。本発明はヒト;齧歯類(例えばマウス、ラット、ハムスター等)、ウサギ、サル、チンパンジー等の実験動物;イヌ、ネコおよびウサギ等の家畜;ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ野獣等の農業用動物;クマ、パンダ、ライオン、トラ、ヒョウ、ゾウ、シマウマ、キリン、ゴリラ、イルカおよびクジラ等の野生動物;を含む宿主動物に適用することができるが、それらに限定されるわけではない。
キメラ組成物は好ましくは宿主動物に非経口的に、例えば、皮内に、皮下に、筋肉内に、腹腔内にまたは静脈内に投与される。代わりに、共役体は他の医学的に有用なプロセスにより宿主動物に投与されてもよく、任意の有効量および放出が延長された剤形を含む適切な治療の剤形を使用することができる。本発明の方法は、腫瘍の外科的除去、放射線療法、化学療法または他の免疫療法を含む生物学的治療と組み合わせて使用されてもよい。免疫療法にはモノクローナル抗体治療、免疫調節因子による処置、免疫エフェクタ細胞の養子免疫導入、造血生長因子、サイトカインによる処置、および予防接種が含まれるがそれらに限定されるわけではない。
他の腫瘍抗原
他の好ましい実施形態では、キメラ融合分子は、白血病およびリンパ腫抗原(例えば抗CD20、抗CD22、または抗CD52)の少なくとも一方、肺または結腸癌抗原(例えば抗EGFR)もしくはまたは前立腺癌抗原(例えばPSMA)に対する抗体配列を別の特異性を有する例として含む。ヒトNKG2Dリガンド配列がマウス配列の代わりに用いられてもよく、MICA、MICB、ULBPまたは他のNKG2Dリガンド由来の配
列、NCRもしくはNK細胞とT細胞の細胞表面に存在する細胞毒性活性化受容体が含まれる。好ましくは、キメラ融合分子は細胞表面の抗原、例えばEGFR、CD20、her2/neu、GD2、GD3、IGF 受容体、her2等に対するものである。
【0056】
本発明によれば、腫瘍標的細胞は、例えば抗原に特異的な抗体を包含することにより、上記組成物による選択的な標的とされる。腫瘍抗原は腫瘍を引き起こすウイルスによる感染の結果であり、この技術を使用して、感染細胞の表面に発現されたウイルス抗原を標的とし得る。腫瘍抗原の非制限的な例には突然変異に起因する腫瘍抗原、例えばαアクチニン−4(肺癌);BCR−ABL融合タンパク質(b3a2)(慢性骨髄白血病);CASP−8(頭頸部扁平上皮癌);β−カテニン(黒色腫);Cdc27(黒色腫);CDK4(黒色腫);dek−can融合タンパク質(骨髄性白血病);伸長因子2(扁平上皮肺癌);ETV6−AML1融合タンパク質(急性リンパ芽球性白血病);LDLR−フコシルトランスフェラーゼAS融合タンパク質(黒色腫);HLA−A2dの局在化ま
たは過剰発現(腎細胞癌);hsp70−2(腎細胞癌);KIAAO205(膀胱腫瘍);MART2(黒色腫);MUM−1f(黒色腫);MUM−2(黒色腫);MUM−3(黒色腫);新PAP(黒色腫);ミオシンクラスI(黒色腫);0S−9g(黒色腫);pml−RARα融合タンパク質(前骨髄性白血病);PTPRK(黒色腫);K−ras(膵臓腺癌);N−ras(黒色腫)。腫瘍分化抗原の例にはCEA(腸癌);gp100/Pmel17(黒色腫);カリクレイン4(前立腺);γグロブリン−A(乳癌);Melan−A/MART−1(黒色腫);PSA(前立腺癌);TRP−1/gp75(黒色腫);TRP−2(黒色腫);チロシナーゼ(黒色腫)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。過剰発現または過少発現される腫瘍抗原には、CPSF(遍在);EphA3;G250/MN/CAIX(胃、肝臓、膵臓);HER−2/neu;腸カルボキシルエステラーゼ(肝臓、腸、腎臓);α−フェトプロテイン(肝臓);M−CSF(肝臓、腎臓);MUC1(腺上皮);p53(遍在);PRAME(精巣、卵巣、子宮内膜、副腎);PSMA(前立腺、CNS、肝臓);RAGE−1(網膜);RU2AS(精巣、腎臓、膀胱);サバイビン(遍在);テロメラーゼ(精巣、胸腺、骨髄、リンパ節);WT1(精巣、卵巣、骨髄、脾臓);CA125(卵巣)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。別の好ましい実施形態では、異常細胞または癌細胞が組成物による標的とされる。例えば、多くの悪性腫瘍は外来DNA(例えばBcr−Abl、Bcl−2、HPV)の存在に関係しており、それらは、選択的な悪性細胞のターゲッティングを可能にするために固有の分子標的(例えば抗原)を提供する。一塩基置換(例えばK−ras、p53)またはメチル化変化の結果として、発現産物をターゲットとするために同アプローチを使用することができる。しかしながら、先に発現されなかった遺伝子産物によっても癌細胞の増殖は引き起こされ得る。これらの遺伝子配列は標的とされ、それにより癌細胞のさらなる発現および最終的な死が阻止される。他の例では、トランスポゾンがそのような調節解除の原因となり、トランスポゾン配列を標的とすることができる(例えばTn5)。
【0057】
本発明は一般に、癌等の疾病および通常発現されていない遺伝子による遺伝子産物の発現、通常発現されている遺伝子の異常な発現、または異常遺伝子の発現を同様に引き起こし得るウイルス、細菌、細胞内および細胞外寄生体、挿入要素、真菌感染等の感染因子により引き起こされる疾病を処置する方法を提供する。
【0058】
本発明の方法は好ましくは、異常細胞増殖または感染伝染因子により引き起こされる疾病の処置または予防のために、特に、患者の肺、心臓、肝臓、前立腺、脳、精巣、胃、小腸、腸(bowel)、脊髄、洞(sinuses)、尿路または卵巣等の組織で起こり得る感染症の処置のために使用される。
【0059】
別の好ましい実施形態では、本発明の組成物は化学療法と共に投与することができる。
そのような化学療法剤は組成物と同時に、組成物よりも前に、または組成物の後に投与することができる。化学療法剤の非制限的な例にはシクロフォスファミド(CTX、25mg/kg/日、経口投与)、タキサン(パクリタクセルまたはドセタクセル)、ブスルファン、シスプラチン、シクロフォスファミド、メトトレキサート、ダウノルビシン、アドリアマイシン、メルファラン、クラドリビン、ビンクリスチン、ビンブラスチンおよびクロラムブチルが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0060】
別の好ましい実施形態では、医薬組成物は患者における腫瘍細胞増殖を阻害し、方法は患者に有効量治療組成物を含む医薬組成物を投与することを含む。腫瘍細胞増殖の阻害には、以下の結果の1つ以上を指す:(1)(i)速度の低下および(ii)完全な成長停止を含む、ある程度の腫瘍成長の阻害;(2)腫瘍細胞数の減少;(3)腫瘍サイズの維持;(4)腫瘍サイズの減小;(5)(i)減少、(ii)速度低下、または(iii)完全な予防を含む、腫瘍細胞の末梢期間への浸潤の阻害;(6)(i)減少、(ii)速度低下、または(iii)完全な予防を含む、転移の阻害;(7)(i)腫瘍サイズの維持、(ii)腫瘍サイズの減小、(iii)腫瘍成長の遅延、(iv)侵襲の減少、速度低下、または予防、もしくは(v)転移の減少、速度低下、または予防、をもたらす抗腫瘍免疫反応の増大、または、(8)障害に関連する1または複数の徴候のある程度の緩和。
【0061】
別の好ましい実施形態では、本発明の組成物は、アジュバント、サイトカイン、および他の抗体等の免疫活性薬化合物と共に投与することができる。例えば化合物は樹状細胞を活性化するために使用されてもよい。樹状細胞は非常に強力なAPC(Banchereau and Steinman, Nature 392:245-251, 1998)であり、予防または治療のための抗腫瘍免疫を誘
発するための生理学的アジュバントとして有効であることが示されている(Timmerman and Levy, Ann. Rev. Med. 50:507-529, 1999参照)。一般に、樹状細胞はそれらの一般的
形状(in situで星形、マーク付け細胞質プロセス(樹状突起)でin vitroにて可視化)
、それらの取り込み能力、それらの高効率で抗原を処置および提示する能力ならびにそれらの天然T細胞反応を活性化する能力に基づいて識別される。樹状細胞は当然ながら、生体内(in vivo)または生体外(ex vivo)で通常樹状細胞上には見出されない特定の細胞表面受容体またはリガンドを発現するよう工学的に作成されてもよく、そのような修飾樹状細胞は本発明の想定内である。樹状細胞の代わりとして、抗原を装填した樹状細胞の分泌小胞(エキソソームと呼ばれる)がワクチン内で使用されてもよい(Zitvogel et al.,
Nature Med. 4:594-600, 1998)。
樹状細胞とその前駆体は、末梢血、骨髄、腫瘍湿潤細胞、腫瘍周囲組織湿潤細胞、リンパ節、脾臓、皮膚、臍帯血または他の適切な組織もしくは流体から得られ得る。例えば、樹状細胞は、末梢血から採取された単球の培養物へGM−CSF、IL−4、IL−13、およびTNFαの少なくとも一つ等のサイトカインの組み合わせを加えることにより生体外で分化させることが可能である。代わりに、末梢血、臍帯血液または骨髄から採取されたCD34陽性細胞が、GM−CSF、IL−3、TNFα、CD40リガンド、LPS、flt3リガンドならびに樹状細胞の分化、成熟および増殖を引き起こす他の化合物の少なくとも一つの組み合わせを培地に加えることにより、樹状細胞へ分化されてもよい。
【0062】
樹状細胞は便宜上「未熟」細胞と「成熟」細胞として分類され、これは2つのよく特徴付けられた発現型を区別する簡単な方法を許容する。しかしながら、この命名法は分化のあらゆる中間段階を除外するものとして解釈されるべきではない。未熟な樹状細胞は抗原の高い取り込みおよび処理能力によりAPCと特徴付けられ、これはFc受容体およびマンノース受容体の高い発現と関連する。成熟した発現型は一般にそれらのマーカの発現がより低いが、クラス1およびクラス11 MHC等のT細胞活性化の原因となる表面分子、接着分子(例えばCD54およびCD11)および同時刺激分子(例えばCD40、CD80、CD86および4−1 BB)の発現は高いことにより特徴付けられる。
【0063】
本組成物と共に使用することができる他の化合物は免疫刺激分子である。いくつかのポリヌクレオチドは免疫刺激特性を有することが実証されている。例えば、ポリ(I,C)はインターフェロン(IFN)生産、マクロファージ活性化およびNK細胞活性化のインデューサであり(Talmadge, J.E., et al.1985. Cancer Res.45:1058; Wiltrout, R. H. et al 1985.J. Biol. Resp.Mod.4:512)、poly(dG,dC)はB細胞の分裂を促進し(Messina, J.P.et al. 1993.Cell.Immunol.147:148)、IFNおよびNK活性を引き
起こす(Tocunaga,T.,Yamamoto,S.,Namba,K.1988.Jpn.J.Cancer Res.79:682)。
【0064】
本発明の方法は、キメラ融合組成物に加えて、内部免疫反応を刺激することが可能な化合物または組成物を宿主に投与することにより行える。そのような化合物または組成物にはサイトカインまたは免疫細胞増殖因子、例えばインターロイキン1−18、幹細胞因子、塩基性FGF、EGF、G−CSF、GM−CSFおよびFLK−2リガンド、HILDA、MIP−1a、TGFα、TGFβ、M−CSF、IFNα、IFNβ、IFNγ、可溶性CD23、LIFおよびそれらの組み合わせが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0065】
治療上有効な上記サイトカインの組み合わせも使用可能である。好ましい実施形態では、例えば、治療上有効量のIL−2(複数回用量の一日の投与計画で約5000IU/用量/日から約500,000IU/用量/日までの範囲)と、IFN−α(例えば複数回用量の一日の投与計画で約7500IU/用量/日から約150,000IU/用量/日までの範囲)を、本発明の組成物と共に使用することができる。別の好ましい実施形態では、IL−2、IFN−αまたはIFN−γ、およびGM−CSFが組み合わせて使用される。好ましくは、IL−2、IL−12、IL−15、IFN−α、IFN−γ、およびGM−CSFならびにその組み合わせを含む使用された治療因子はナチュラルキラー細胞およびT細胞の少なくとも一方を活性化する。代わりに、それの、インターフェロンおよびGM−CSFと組み合わされたインターロイキンを含む、治療因子またはその組み合わせは、マクロファージ、B細胞、好中球、LAK細胞等の他の免疫エフェクタ細胞を活性化してもよい。本発明はさらに、他のインターロイキンとインターフェロンおよびコロニー刺激因子との組み合わせを含む他のサイトカインの有効な組み合わせの使用も想定する。
【0066】
他の好ましい実施形態では、キメラ融合組成物は化学療法剤と共に処置することができる。「化学療法剤」は癌の治療に有用な化合物である。化学療法剤の例には、チオテパおよびシクロスフォスファミド(CYTOXAN(登録商標))等のアルキル化薬;ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファン等のアルキルスルホン酸;ベンゾドパ、カルボコン、メツレドパおよびウレドパ等のアジリジン;アルトレトアミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスファミド、トリエチレンチオホスファミドおよびトリメチルオロメラミンを含むエチレンイミンおよびメチルアメラミン;クロラムブチル、クロルナファジン、クロルホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロールエサミン、メクロールエサミン酸化物塩酸塩、メルファラン、ノベムビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、ウラシルマスタード等のナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン等のニトロソ尿素;アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オーソラマイシンn、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアマイシン、カラビシン、カルノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、プロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシ
ジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン等の抗生物質;メトトレキサートおよび5−フルオロウラシル(5−FU)等の代謝拮抗薬;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート等の葉酸類似体;フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン等プリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5−FU等のピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン等のアンドロゲン;アミノグルエチミド、ミトーテン、トリロスタン等の抗副腎;フロリン酸等の葉酸補充物質;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラバシル;ビサントレン;エダトレキサート;デフォファミン;デメコルチン;ジアジキノン;エルフォルミチン;酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;オキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドヒリン酸;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’ ,2”−トリ
クロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシッド(「Ara−C」);シクロフォスファミド;チオテパ;タキサン、例えばパクリタクセル(TAXOL
(登録商標、Bristol-Myers Squibb Oncology、ニュージャージー州Prinston所在)およ
びドセタキシル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer、フランス国Antony所在
);クロラムブチル;ゲムシタビン;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチンおよびカルボプラチン等のプラチナ類似体;ビンブラスチン;プラチナ;エトポシド(VP−16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセロダ;イバンドロン酸;CPT−11;トポイソメラーゼ阻害剤 RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラミシン;カペシタビン;および上記の物質のいずれかの医薬として許容される塩、酸または誘導体が含まれる。この定義には腫瘍に対するホルモン作用を調節または阻害する抗ホルモン剤も含まれ、それには例えばタモキシフェン、ラロキシフェン、4(5)−イミダゾール、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、およびトレミフェン(Fareston)等の抗エストロゲン薬;およびフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリドおよびゴセレリン等の抗アンドロゲン;ならびに上記の物質のいずれかの医薬として許容される塩、酸または誘導体が挙げられる。
天然細胞毒性受容体(NCR)リガンド分子
別の好ましい実施形態では、本発明は、NCRリガンドドメインおよび担体ドメインの両方を有するキメラ分子を提供する。NCRリガンドドメインは腫瘍細胞毒性を(例えばNK細胞の活性化により)増強し、担体ドメインはキメラ分子への機能的性質を与える。本明細書で説明するキメラ融合分子構築物は、さらなる受容体またはリガンド機能を有してもよく、免疫調節エフェクタ分子またはその断片を有してもよい。
ヒト化抗体
好ましい実施形態では、本発明の抗体はヒト化抗体を含む。ヒト化抗体は、その軽鎖および重鎖遺伝子が異なる種に属する免疫グロブリン可変領域および定常領域遺伝子から通常遺伝工学により構築された構築された抗体である。例えば、マウスモノクローナル抗体由来の遺伝子の可変セグメントが、γ1およびγ3等のヒト定常セグメントにつながれてもよい。このように一般的な治療用キメラ抗体は、マウス抗体由来の抗原結合ドメインとヒト抗体由来の定常またはエフェクタドメインとから構成されたハイブリッドタンパク質であるが、他の哺乳動物種が使用されてもよい。
【0067】
本明細書に使用する場合、用語「ヒト化」免疫グロブリンは、ヒトフレームワーク領域
と、1または複数の非ヒト(通常マウスかラット)免疫グロブリン由来のCDRとを有する免疫グロブリンのことを指す。CDRを提供する非ヒト免疫グロブリンは「ドナー」と呼ばれ、フレームワークを提供するヒト免疫グロブリンは「アクセプター」と呼ばれる。定常領域は存在しなくてもよいが、存在する場合には、定常領域はヒト免疫グロブリンの定常領域と実質的に同一、つまり少なくとも約85−90%、好ましくは約95%以上同一でなければならない。従って、ヒト化免疫グロブリンの部分はすべて、CDR以外は、天然ヒト免疫グロブリン配列の対応する部分と実質的に同一である。「ヒト化抗体」は、ヒト化軽鎖およびヒト化重鎖の免疫グロブリンを含む抗体であり、例えば、キメラ抗体の可変領域全体は非ヒトである。得られたヒト化抗体がCDRを提供するドナー抗体と同じ抗原に結合すると予想されるため、「ヒト化」のプロセスによりドナー抗体が「ヒト化」される。
【0068】
ヒト化抗体が、抗原結合または他の免疫グロブリン機能に実質的に影響を及ぼさない追加の保存的アミノ酸置換を有してもよいことが理解される。保存的置換には、gly、ala;val、ile、leu;asn、glu;asn、gln;ser、thr;lys、arg;およびphe、tyr等の組み合わせがある。
【0069】
ヒト化抗体を含むヒト化免疫グロブリンは遺伝工学により構築された。本願以前に記載されたほとんどのヒト化免疫グロブリンは、特定のヒト免疫グロブリン鎖のフレームワークと同一のフレームワーク、アクセプターおよび非ヒトドナー免疫グロブリン鎖由来の3つのCDRを備えていた。
【0070】
原理は、アクセプターとして、ヒト化されドナー免疫グロブリンに著しく相同な特定のヒト免疫グロブリンからフレームワークが使用されるか、または多くのヒト抗体由来の一致フレームワークを使用する。例えば、マウスの重(軽)鎖の可変領域を、ヒトに対する重(軽)鎖の可変領域とデータバンク(例えばNational Biomedical Research Foundation Protein Identification Resouce)で比較すると、種々のヒト領域に対する相同の範囲が約40%から約60−70%までで非常に典型的に変わることが理解される。アクセプター免疫グロブリンとして、ドナー免疫グロブリンの重(または軽)鎖可変領域に最も相同なヒト重(または軽)鎖可変領域の一つを選択することにより、ドナー免疫グロブリンからヒト化免疫グロブリンまで行く間により少数のアミノ酸しか変更されないだろう。従って繰り返しになるが、理論に束縛されるわけではないが、CDR付近にはそのコンホメーションを歪めるアミノ酸を変更する可能性が少しあると考えられる。さらに、ヒト化免疫グロブリン鎖を有するヒト化抗体の正確な全体形状は、ドナー抗体の形状によりよく類似し、これもCDRを歪める可能性を減らす場合がある。
【0071】
ヒト化抗体は一般に、マウス抗体または場合によってヒト治療に使用されるキメラ抗体よりも以下の利点を有する:エフェクタ部分がヒトであるため、ヒト免疫系の他の部分とより良好に相互作用する(例えば、補足依存性細胞毒性(CDC)または抗体依存性細胞毒性(ADCC)によって標的細胞をより効率的に破壊する);ヒト免疫系はヒト化抗体のフレームワークまたは定常領域を外来のものとして認識しないため、そのような抗体に対する抗体反応は完全に外来のマウス抗体や部分的に外来のキメラ抗体に対してよりも少ないはずである。
【0072】
抗体も遺伝子操作することができる。特に好ましいのは、所望の抗原(例えば腫瘍抗原(例えばHER2))に結合できるようアクセプターヒトフレームワーク領域をコードするDNAセグメントに取り付けられたドナー免疫グロブリン由来の重鎖および軽鎖CDRをコードする組換えDNAセグメントの発現により生産されたヒト化免疫グロブリンである。
【0073】
DNAセグメントは、通常、天然の関連プロモータ領域または異種由来のプロモータ領域を有するヒト化免疫グロブリンコード配列に結合されて作用する発現制御DNA配列をさらに有する。好ましくは、発現制御配列は、真核生物の宿主細胞を形質転換または形質導入することができるベクター中の真核生物のプロモータ系である。しかしながら、原核生物の宿主用の制御配列も使用可能である。一旦ベクターが適切な宿主に組み込まれると、宿主は、高濃度のヌクレオチド配列の発現に適した条件下で培養され、所望に応じて、ヒト化軽鎖、重鎖、軽鎖/重鎖二量体、または完全な抗体、結合断片もしくは他の免疫グロブリン形態の収集および精製が続く(参照により本願に組み込まれるBeychok, Cells of Immunoglobulin Synthesis, Academic Press, New York, (1979),を参照)。
【0074】
ヒト定常領域DNA配列は、種々のヒト細胞から、好ましくは不死化したB細胞(Kabat前掲およびWP87/02671参照)から周知の手順に従って単離可能である。本発明の好まし
い免疫グロブリンを生産するためのCDRは、ヒトT細胞受容体CD3複合体等の所定の抗原に結合可能なモノクローナル抗体に由来し、抗体を生産できる任意の有益な哺乳動物源(ハツカネズミ、ネズミ、ウサギを含む)または他の脊椎動物で周知の方法により生産される。定常領域およびフレームワークDNA配列に適した源細胞および免疫グロブリンの発現および分泌のための宿主細胞は、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC)等の多くの源から得ることができる(参照により本願に組込まれる"Catalogue of Cell
Lines and Hybridomas," sixth edition (1988) Rockville, Md., U.S.A)。
【0075】
天然配列に対する他の「実質的に相同な」修飾免疫グロブリンは、当業者に周知の種々の組換えDNA技術を使用して容易に設計および製造することができる。例えば、フレームワーク領域は、いくつかのアミノ酸の置換、末端および中間の付加、および削除等により一次構造レベルで変更することができる。さらに、種々の異なるヒトフレームワーク領域を、本発明のヒト化免疫グロブリンの基礎として単独でまたは組み合わせて使用してもよい。一般に、遺伝子の修飾は、部位特異的突然変異誘発等の多くの周知技術により容易に達成することができる(いずれも参照により本願に組み込まれるGillman and Smith, Gene, 8, 81-97 (1979)およびS. Roberts et al., Nature, 328, 731-734 (1987)参照)。
【0076】
実質的に相同な免疫グロブリン配列は基準免疫グロブリンタンパク質と少なくとも約85%相同、通常少なくとも約90%、好ましくは少なくとも約95%相同である。
代わりに、主要な抗体構造の部分だけを含み、1または複数の免疫グロブリン活性(例えば補体固定活性)を有するポリペプチド断片が生産されてもよい。そのようなポリペプチド断片は、当該技術分野の周知技術により天然抗体をタンパク質分解で開裂するか、部位特異的突然変異誘発を用いて当業者の周知のベクター内の所望位置に停止コドンを挿入することにより、生産され得る。
【0077】
微生物に加えて、哺乳動物の組織細胞培養物も本発明のポリペプチドを発現および生産するために使用可能である(参照により本願に組み込まれるWinnacker, "From Genes to Clones," VCH Publishers, New York, N. Y. (1987)参照)。インタクトな免疫グロブリ
ンを分泌できる多くの適切な宿主細胞系統が当該技術分野で開発されているため、真核細胞が実際には好ましく、それにはCHO細胞系統、種々のCOS細胞系統、HeLa細胞(好ましくは骨髄腫細胞系統等)、および形質転換B細胞もしくはハイブリドーマが含まれる。これらの細胞のための発現ベクターは、複製開始点、プロモータ、エンハンサ(参照により本願に組み込まれるQueen et al., Immunol. Rev., 89, 49-68 (1986))、リボ
ソーム結合部位等の必要なプロセシング情報部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位および転写終結配列等の発現制御配列を有し得る。好ましい発現制御配列は、免疫グロブリン遺伝子、シミアンウイルス40、アデノウイルス、サイトメガロウイルス、ウシパピローマウィルスおよびその他の等価物に由来するプロモータである。
【0078】
一般に、対象のヒト化抗体は、腫瘍抗原(好ましくはER2/neu)に結合する抗体の可変重鎖配列と可変軽鎖配列をコード化する核酸配列を得、可変重鎖配列および可変軽鎖配列中のCDRを識別し、かかるCDR核酸配列をヒトフレームワーク核酸配列上へ移植することにより生産される。
【0079】
好ましくは、選択されたヒトフレームワークは生体内投与に適していると予想されるもの、すなわち免疫性を示さないものになるだろう。これは、例えば、かかる抗体の生体内での使用に関する先の経験により、およびアミノ酸配列の類似性に関する研究により、決定することができる。後者の方法では、ヒト化される抗体のフレームワーク領域のアミノ酸配列を既知のヒトフレームワーク領域のアミノ酸配列と比較し、親抗体(例えばER2/neuに結合するマウス抗体)のサイズおよび配列と最も類似するサイズおよび配列を有するCDR移植に使用されるヒトフレームワークが選択されるだろう。多数のヒトフレームワーク領域が単離されており、それらの配列が文献に報告されている。例えばKabat
(前掲)を参照。これにより、選択されたヒトフレームワーク領域上に移植された親(例えばマウス)抗体のCDRを含む、得られたCDRが移植された「ヒト化」抗体が、抗原結合構造を備え、およびしたがって親抗体の結合親和力を大いに保持するという可能性を高められる。
【0080】
以下の文献は本発明を実施する際に利用可能な組み換え免疫グロブリンの発現に適した方法およびベクターの代表例である。Weidle et al., Gene, 51:21-29 (1987); Dorai et
al., J. Immunol., 13(12):4232-4241 (1987); De Waele et al., Eur. J. Biochem., 176:287-295 (1988); Colcher et al., Cancer Res., 49:1738-1745 (1989); Wood et al., J. Immunol., 145(a):3011-3016 (1990); Bulens et al., Eur. J. Biochem., 1 95:235-242 (1991); Beggington et al., Biol. Technology, 10:169 (1992); King et al., Biochem. J., 281:317-323 (1992); Page et al., Biol. Technology, 9:64 (1991); King
et al., Biochem. J., 290:723-729 (1993); Chaudary et al., Nature, 339:394- 397 (1989); Jon es et al., Nature, 321:522-525 (1986); Morrison and Oi, Adv. Immunol, 44:65- 92 (1988); Benhar et al., Proc. Natl. Acad. Sd. USA, 91:12051-12055 (1994); Singer et al., J. Immunol, 150:2844-2857 (1993); Cooto et al., Hybridoma, 13(3):215-219 (1994); Queen e t al., Proc. Natl. Acad. ScL USA, 86:10029-10033 (1989); Caron et al., Cancer Res., 32:6761- 6767 (1992); Cotoma et al., J. Immunol. Meth., 152:89-109 (1992)。さらに、組み換え抗体の発現に適したベクターは市販されている。ベクターは、例えば、裸の核酸セグメント、担体関連核酸セグメント、核タンパク質、プラスミド、ウイルス、ウイロイドまたは転位因子である。
【0081】
発現後、得られたヒト化抗体の抗原結合親和性が既知の方法(例えばScatchard分析)
により分析される。特に好ましい実施形態では、ヒト化抗体の抗原結合親和性は親抗体(例えば抗HER2/neu)の抗原結合親和性の少なくとも50%であり、より好ましくはヒト化抗体の親和性は親抗体の親和性の少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約100%、150%、200%または500%である。
【0082】
場合によっては、CDR((例えばHER2/neu等の腫瘍抗原に結合する抗体由来の)を選択されたヒトフレームワーク領域上に移植することにより生産されたヒト化抗体は、HER2/neuに対して所望の親和性を有するヒト化抗体を提供し得る。しかしながら、抗原結合を増強するためには選択されたヒトフレームワークの特定の残基をさらに修飾することが必要であったり望ましかったりする場合がある。いくつかのフレームワーク残基は抗原結合に不可欠であり、または少なくとも抗原結合に影響すると考えられているため、かかる修飾が起こり得る。好ましくは、結合部位の構造を保持するか影響を及ぼす親(例えばマウス)抗体のフレームワーク残基は保持されるだろう。これらの残基は、親抗体またはFabフラグメントのX線結晶回折により識別されてもよく、それにより抗
原結合部位の三次元構造が識別される。また、抗原結合に関与するフレームワーク残基は本願以前に報告されたヒト化マウス抗体配列に基づいて、潜在的に識別可能である。したがって、例えばER2/neu結合を最適化するために、親マウス抗体からかかるフレームワーク残基または他のものを保持することが有益であり得る。好ましくは、かかる方法は得られたヒト化抗体に「ヒト様の」性質を与え、内部を保持し、抗原結合に影響する残基と接触する間にヒト化抗体の免疫原性を低下させるだろう。
【0083】
本発明は、本明細書で述べたヒト化抗体および抗体断片に実質的に相同な変異形および等価物をさらに含む。例えばそれは、保存的置換突然変異、すなわち同様のアミノ酸による1または複数のアミノ酸の置換を含む。例えば、保存的置換とは、あるアミノ酸の、同じ一般的クラス内にある別のアミノ酸での置換を指し、例えば酸性アミノ酸の別の酸性アミノ酸による置換、塩基性アミノ酸の別の塩基性アミノ酸による置換、または中性アミノ酸の別の中性アミノ酸による置換が挙げられる。保存的アミノ酸置換により意図されるものは当該技術分野で周知である。
細胞にキメラ分子を送達する方法
本発明はさらに、細胞にキメラ分子を送達する方法を提供する。本発明のキメラ分子は任意の既知の方法により細胞に送達することができる。例えば、キメラ分子を含有する組成物が、培地に懸濁された細胞に加えられる。代わりに、キメラ分子は、キメラ分子がインサイチュで細胞に結合するように、キメラ分子に結合する受容体を発現している細胞を有する動物に(例えば非経口経路により)投与することができる。例えば、HER2/neuに特異的なIgドメインを特徴とする本発明のキメラ分子は、HER2/neuを過剰発現する腫瘍細胞(例えば乳癌、卵巣癌細胞)に結合するための標的部分として特に適している。
【0084】
組成物の動物への投与
インサイチュで腫瘍細胞を標的とするために、上述の組成物は任意の適切な剤形でヒトを初めとする動物に投与され得る。例えば、腫瘍細胞を標的とする組成物は、生理食塩水または緩衝塩溶液等の医薬として許容される担体または希釈剤中で製剤され得る。適切な担体および希釈剤は投与の態様(mode)と経路および標準的な医薬の実務に基づいて選択することができる。例証的な医薬として許容される担体および希釈剤と同様、医薬製剤の記述もこの分野の標準テキストであるRemington's Pharmaceutical Sciencesや、USP/NF
に見出すことができる。組成物を安定化および/または保存するために組成物に他の物質が添加されてもよい。
【0085】
本発明の組成物は任意の従来の方法により動物に投与可能である。組成物は、例えば内部または外部標的部位への外科的送達により、または血管によりアクセス可能な部位へのカテーテルにより、標的部位に直接投与可能である。他の送達方法、例えばリポソーム送達または組成物を含浸させた装置からの拡散が当該技術分野で周知である。組成物は1回のボーラスで投与されてもよいし、複数回の注射、または持続点滴(例えば静脈内に)により投与されてもよい。非経口投与の場合、組成物は好ましくは滅菌したパイロジェンが存在しない形式に製剤される。
キット
本発明のキットは、解凍するか(任意選択でさらに希釈が続く)または(好ましくは緩衝された)液体ビヒクル中へ懸濁することにより再構成される冷凍または凍結乾燥キメラ分子を含んでいる。キットはさらに、キメラ分子と混合して投与に適した製剤を生成するために、緩衝液および/または賦形剤溶液(液体または冷凍形式の場合)か、緩衝液および/または水により再構成される賦形剤粉末調整物を含んでもよい。したがって、好ましくは、キットに提供される所定量の熱、水、または溶液の添加によって十分な濃度およびpHの製剤が生じ、癌の処置または診断に生体内または試験管内で使用するのに有効であるような濃度で、キメラ分子を含むキットは冷凍され、凍結乾燥され、予め希釈され、ま
たは予め混合される。好ましくは、そのようなキットは癌の処置または検出用のキメラ分子組成物を再構成および使用するための説明書も含むだろう。上記の緩衝液、賦形剤および他の組成物の部分はキットと別々に販売されていてもよいし、一緒に販売されていてもよい。
【0086】
当業者には、本発明のキメラ分子の各々の投薬の最適量および間隔が、処置される状態の性質および程度、投与の形式、経路および部位、ならびに処置される特定の動物により決定され、そのような最適条件を従来の技術によって決定できることが理解される。また、当業者には、投与の最適コース、つまり特定の日数の間の所与の一日当たりの本発明のキメラ分子の投与回数が、処置決定試験の従来のコースを使用して当業者に確認できることも理解される。
【0087】
以下の実施例は例示として与えられており、限定ではない。特定の実施例が提供されているが、上記の説明は例示であって限定的ではない。先に記載された1または複数のいかなる特徴を、本発明の他の実施形態の1または複数のいかなる特徴と、いかなる方法で組み合わせてもよい。さらに、本発明の多くのバリエーションが、明細書を読めば当業者には明らかであろう。したがって、本発明の範囲は上記の説明に関連して決定されるべきでなく、代わりに、特許請求の範囲ならびに均等物の全範囲に関連して決定されるべきである。
【0088】
本願に引用した刊行物および特許文書はすべて各刊行物または特許文書が個別に表示されるのと同じ程度にあらゆる目的で参照により本願に組み込まれる。本文書中の種々の文献を引用することにより、出願人はどの特定の文献も本発明に対する「先行技術」とは認めない。
実施例
実施例1:抗HER2 IgG3−NKG2Dリガンド(Rae−1)融合タンパク質の構築、発現および特徴付け
実験用マウスRae−1β遺伝子は、プライマー 5'-CCCCTCGAGCTCTGGATGATGCACACTCTCTTAGG-3'(配列番号1)および5'-CCCCGAATTCGTTAACCTTTCTTAGAAGTAGAGTGG-3(配列番号2)を使用したPCRによりpCR−Blunt II−TOPO−Rae-1βから得た
。PCR産物はpCR−Blunt II−TOPOにサブクローニングした。サブクロー
ニングされたRae−1β遺伝子をベクターpAT135中のヒトIgG3のヒンジ領域の末端かまたは重鎖不変領域(CH3)のカルボキシル末端にインフレームにライゲートし、Rae−1β重鎖定常領域を、真核生物の選択用のHisD遺伝子を含む発現ベクター(pSV2−his)中の組み換えヒト化モノクローナル抗体4D5−8(rhuMAb HER2、トラスツズマブ、Genentech、カリフォルニア州 San Francisco所在)の
抗HER2可変領域に結合した。
【0089】
抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質構築物は、抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質全体を組み立てるために、抗HER2 κ軽鎖を安定して発現するP3X63Ag8.653骨髄腫細胞に安定的にトランスフェクトした。抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質を[33S]−メチオニンで生合成的に標識し、SDS−PAGEで分析した。セファロース4Bファストフローに固定化したプロテインAを用いて培養上清からRae−1β融合タンパク質を精製し、SDS−PAGEにより分析した。
【0090】
実施例2:抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質の結合分析
フローサイトメトリーを用いて融合タンパク質中のRae−1部分のNKG2D受容体に対する結合能を調べるために、抗HER2抗体−Rae−1β融合タンパク質(10μg)、抗HER2 IgG3(10μg)、およびアイソタイプ対照(10μg、抗ダン
シルIgG3)をC57BL6から新たに単離した0.2×106NK細胞またはKY−
2細胞(マウスNK細胞系統)と4℃で1時間インキュベートした。それらをPBSで2回洗浄した後、NKG2Dに結び付けられた結合抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質を、FITCで共役した抗ヒトIgGにより検出した(4℃で1時間、2μl/サンプル)。蛍光強度はLSRフローサイトメトリーで分析した。抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質がHER2抗原に対する特異的結合能をも保持しているかどうかを、HER2発現MC38腫瘍細胞(MC38−HER2)を用いて調べた。抗HER2抗体−Rae−1β融合タンパク質(10μg)、抗HER2 IgG3(10μg)およびアイソタイプ対照(10μg、抗ダンシルIgG3)を、1×106 M
C38−HER2と4℃で1時間インキュベートした。HER2に結合した抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質を、ラット抗マウスRae−1β抗体およびFITCで共役した抗ラット抗体により検出した。蛍光強度はLSRフローサイトメトリーで分析した。
【0091】
実施例3:抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質を用いたKY−2におけるパーフォリン生産の分析
NK細胞でのパーフォリンの発現を刺激する抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質の能力を評価するために、組織培養プレートをMC38−HER2(0.5x106)でコーティングし、2%パラホルムアルデヒドで30分間固定した。PBSで2
回洗浄した後、IL−2(100U)で培養したKY−2細胞(1x106、マウスNK
細胞系統を、種々の濃度(0.1μg、0.5μgまたは2μg)の抗HER2 IgG3−C3−Rae−1β融合タンパク質および対照の抗HER2 IgG3(2μg)およびアイソタイプコントロール(2μg)で一晩処置した。細胞内のパーフォリン発現を評価するために、KY−2細胞を4時間ブレフェルジンA(10g/ml)で処理し、パーフォリン発現をFITCで共役した抗パーフォリンで分析した。蛍光強度はLSRフローサイトメトリーで分析した。
実施例4:抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質による腫瘍指向性NK細胞媒介性細胞毒性の分析
抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質がNK細胞の殺腫瘍活性を高めるかどうかを決定するために、新たに単離したNK細胞を抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質(10μg/ウェル)、抗HER2 IgG3(10μg/ウェル)または対照抗ダンシルIgG3(10μg/ウェル)の存在下で刺激した。2日後に、NKを、丸底の96ウェルプレート中で異なるE:T比(10:1および50:1)で51Cr標識した腫瘍細胞系統MC38−HER2(1x104)と同時培養した。5時間のイ
ンキュベーションの後、クロムの放出を測定した。2% Triton X-100と共にまたは培地のみと標識した細胞を処理することにより最大かつ自発的な放出がそれぞれ測定された。特異的細胞毒性を以下の式により計算した:特異的溶解(パーセント)=100x((実験による放出(cmp)−自発的放出(cpm))/(最大放出(cpm)−自発的放出(cpm))3つの異なるドナーの結果を平均±標準誤差として示す。
実施例5:乳癌治療用の抗HER2抗体−NKG2Dリガンド融合タンパク質の開発
抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質の構造:予想分子量を有する抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質が、完全に組み立てられたH2L2型として分泌された(図5)。
【0092】
抗−HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質の結合:腫瘍細胞表面のHER2+に結合された抗HER2 IgG3−Rae融合タンパク質およびRae−1β融合タンパク質は、Rae−1β部分によって、NKG2D−Fc(ヒトIgG1)融合タンパク質またはNK細胞上に表示されているNKG2D受容体を認識した。ヒンジ−Rae−1β融合はCH3−Rae−1βと比較してNKG2Dに対する結合が少ないことが示された(図6)。
【0093】
NK細胞媒介性直接溶解(マウスNK細胞KY−2):抗HER2 IgG3(IgG3)およびエフェクタ細胞は、示されたエフェクタ:標的比ではエフェクタとしてKY−2細胞を用いて腫瘍指向性細胞毒性(5−10%)を少し示した。H−Rae−1β融合タンパク質は腫瘍指向性細胞毒性をほとんど示さなかった(5%)。CH3−Rae−1β融合との標的のインキュベーションによりNK細胞媒介性の死滅は顕著に増大した(15−59%)。この結果は、Rae−1βに結合されたインタクトなFc領域を保持するCH3−Rae−1βによるKY−2の溶解活性の増強が、Fc領域を有する抗HER2
IgG3では最小の溶解しか示さなかったため、NKG2D/Rae−1βの相互作用による可能性があることを示した(図7A−7C)。
【0094】
KY2によるリダイレクト溶解:抗HER2 IgG3−CH3−Rae−1βでプライムしたP815またはJ774細胞をKY−2細胞でインキュベートすると、22%以下のリダイレクト溶解が観察された。この溶解は対照抗HER2 IgG3で見られるよりも大きかった(<6%)。これらの結果は、NKG2D/Rae−1β相互作用がFcR+ P815またはJ774細胞の溶解活性に必要であると示唆した(図8A、8B)。
【0095】
MC38−HER2に対する抗HER2 IgG3−CH3−Rae−1βの抗腫瘍活性:抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質は、PBSよりも大きな程度でC57BL6中のマウスMC38−HER2の増殖を阻害した。しかしながら、MC38−HER2腫瘍(2/5)はPBSグループにおいて自発的に退縮した(図9)。
他の実施形態
上記の明細書は多くの詳細を含んでいるが、それらは、本発明の範囲に対する制限としてではなく本発明の好ましい実施形態の例として解釈されるものとする。他の多くのバリエーションが可能である。従って、本発明の範囲は例証された実施形態ではなく特許請求の範囲およびその法的な均等物により決定されるものとする。
【0096】
参考文献
1. Diefenbach A, Jamieson AM, Liu SD, Shastri N, Raulet DH. Ligands for the murine NKG2D receptor: expression by tumor cells and activation of NK cells and macrophages. Nat Immunol. 2000;l:119-126.
2. Diefenbach A, Raulet DH. The innate immune response to tumors and its role in
the induction of T-cell immunity. Immunol Rev. 2002;188:9-21.
3. Diefenbach A, Jensen ER, Jamieson AM, Raulet DH. Rael and H60 ligands of the NKG2D receptor stimulate tumour immunity. Nature. 2001 ;413: 165-171.
4. . Cerwenka A, Baron JL, Lanier LL. Ectopic expression of retinoic acid early inducible- 1 gene (RAE-I) permits natural killer cell-mediated rejection of a MHC class I- bearing tumor in vivo. Proc Natl Acad Sci U S A. 2001 ;98: 11521-11526.
5. Shin SU, Friden P, Moran M, Olson T, Kang YS, Pardridge WM, Morrison SL. Transferrin-antibody fusion proteins are effective in brain targeting. Proc Natl Acad Sci U S A. 1995; 92(7):2820-4.
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1A】抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質の構造を示す略図。
【図1B】抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質のSDS−PAGE分析を示すスキャン。
【図2】抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質の結合分析を示すヒストグラム。
【図3】抗HER2 IgG3−Rae1β融合タンパク質媒介性のKY−2 NK細胞におけるパーフォリン(perforin)生産の増大を示すヒストグラム。
【図4】抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質による腫瘍指向NK細胞媒介性細胞毒性の増大を示すグラフ。
【図5】予想分子量を有する抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質が完全に組み立てられたH2L2形式として分泌されたことを示すSDS−PAGEゲルのスキャン。
【図6】抗HER2 IgG3−Rae−1β融合タンパク質の結合のヒストグラム。
【図7A】NK細胞媒介性直接溶解を示すグラフ。
【図7B】NK細胞媒介性直接溶解を示すグラフ。
【図7C】NK細胞媒介性直接溶解を示すグラフ。
【図8A】KY2によるリダイレクト溶解を示すグラフ。
【図8B】KY2によるリダイレクト溶解を示すグラフ。
【図9】MC38−HER2に対する抗HER2 IgG3−CH3−Rae−1βの抗腫瘍活性を呈すグラフ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍抗原結合ドメインと免疫細胞結合ドメインとを有するキメラ融合分子を含む組成物。
【請求項2】
抗原結合ドメインは同抗原結合ドメインの単離抗体または断片を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
単離抗体は免疫グロブリン可変領域および定常領域を含む請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記抗原結合ドメインの単離抗体または断片は免疫細胞結合ドメインに融合されている請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
免疫細胞結合ドメインが免疫グロブリン定常領域であるヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4のCH1、ヒンジ、CH2またはCH3ドメインを介して融合されている請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
免疫細胞結合ドメインはNK細胞受容体、単球受容体、B細胞表面受容体およびT細胞表面受容体のうちの少なくとも一つに特異的なリガンドである請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
免疫細胞結合はナチュラルキラー細胞受容体(NK細胞)に特異的なリガンドである請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
免疫細胞リガンドはNKG2Dリガンドならびにその変異形、MHCクラスI αならびにβ鎖、およびUL16結合タンパク質のうちの少なくとも一つである請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
UL16結合タンパク質はULBP1、ULBP2、ULBP3およびULBP4から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
抗腫瘍抗原結合ドメインはモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体のうちの少なくとも一方の可変領域である請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
腫瘍抗原はHER2、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、シトクロムP450アイソフォーム1B1(CYP1B1)CA 27.29、CA 15−3抗原、または白血病およびリンパ腫抗原の少なくとも一方(例えば抗CD20、抗CD22または抗CD52)、または肺または結腸癌抗原に対する抗体配列(例えば抗EGFR)、または前立腺癌抗原(例えばPSMA)を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
キメラ分子は医薬担体内に含まれる請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
キメラ融合分子は抗HER2 IgG3−Rae−1β−である請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
腫瘍抗原結合ドメインと免疫細胞結合ドメインとを有するキメラ融合分子を発現する核酸。
【請求項15】
免疫細胞結合ドメインは配列番号1および2のプライマーを使用してポリメラーゼ連鎖反応により得られる請求項14に記載の核酸。
【請求項16】
免疫細胞結合ドメイン核酸は抗体の抗腫瘍抗原結合ドメインを発現する核酸配列にライゲ
ートされる請求項14に記載の核酸。
【請求項17】
動物患者の癌を処置する方法であって、腫瘍抗原結合ドメインと免疫細胞結合ドメインとを有するキメラ融合分子を含む医薬組成物を動物患者に投与することを含む方法。
【請求項18】
免疫細胞結合ドメインはNK細胞受容体、単球受容体、B細胞表面受容体およびT細胞表面受容体のうちの少なくとも一つに特異的なリガンドである請求項17に記載の方法。
【請求項19】
免疫細胞結合ドメインはナチュラルキラー細胞受容体(NK細胞)に特異的なリガンドである請求項17に記載の方法。
【請求項20】
免疫細胞リガンドはNKG2Dリガンドならびにその変異形、MHCクラスI αならびにβ鎖、およびUL16結合タンパク質のうちの少なくとも一つである請求項17に記載の方法。
【請求項21】
腫瘍抗原はHER2、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、シトクロムP450アイソフォーム1B1(CYP1B1)CA 27.29、CA 15−3抗原、または白血病およびリンパ腫抗原の少なくとも一方(例えば抗CD20、抗CD22または抗CD52)、または肺または結腸癌抗原に対する抗体配列(例えば抗EGFR)、または前立腺癌抗原(例えばPSMA)を含む請求項17に記載の方法。
【請求項1】
腫瘍抗原結合ドメインと免疫細胞結合ドメインとを有するキメラ融合分子を含む組成物。
【請求項2】
抗原結合ドメインは同抗原結合ドメインの単離抗体または断片を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
単離抗体は免疫グロブリン可変領域および定常領域を含む請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記抗原結合ドメインの単離抗体または断片は免疫細胞結合ドメインに融合されている請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
免疫細胞結合ドメインが免疫グロブリン定常領域であるヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4のCH1、ヒンジ、CH2またはCH3ドメインを介して融合されている請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
免疫細胞結合ドメインはNK細胞受容体、単球受容体、B細胞表面受容体およびT細胞表面受容体のうちの少なくとも一つに特異的なリガンドである請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
免疫細胞結合はナチュラルキラー細胞受容体(NK細胞)に特異的なリガンドである請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
免疫細胞リガンドはNKG2Dリガンドならびにその変異形、MHCクラスI αならびにβ鎖、およびUL16結合タンパク質のうちの少なくとも一つである請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
UL16結合タンパク質はULBP1、ULBP2、ULBP3およびULBP4から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
抗腫瘍抗原結合ドメインはモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体のうちの少なくとも一方の可変領域である請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
腫瘍抗原はHER2、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、シトクロムP450アイソフォーム1B1(CYP1B1)CA 27.29、CA 15−3抗原、または白血病およびリンパ腫抗原の少なくとも一方(例えば抗CD20、抗CD22または抗CD52)、または肺または結腸癌抗原に対する抗体配列(例えば抗EGFR)、または前立腺癌抗原(例えばPSMA)を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
キメラ分子は医薬担体内に含まれる請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
キメラ融合分子は抗HER2 IgG3−Rae−1β−である請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
腫瘍抗原結合ドメインと免疫細胞結合ドメインとを有するキメラ融合分子を発現する核酸。
【請求項15】
免疫細胞結合ドメインは配列番号1および2のプライマーを使用してポリメラーゼ連鎖反応により得られる請求項14に記載の核酸。
【請求項16】
免疫細胞結合ドメイン核酸は抗体の抗腫瘍抗原結合ドメインを発現する核酸配列にライゲ
ートされる請求項14に記載の核酸。
【請求項17】
動物患者の癌を処置する方法であって、腫瘍抗原結合ドメインと免疫細胞結合ドメインとを有するキメラ融合分子を含む医薬組成物を動物患者に投与することを含む方法。
【請求項18】
免疫細胞結合ドメインはNK細胞受容体、単球受容体、B細胞表面受容体およびT細胞表面受容体のうちの少なくとも一つに特異的なリガンドである請求項17に記載の方法。
【請求項19】
免疫細胞結合ドメインはナチュラルキラー細胞受容体(NK細胞)に特異的なリガンドである請求項17に記載の方法。
【請求項20】
免疫細胞リガンドはNKG2Dリガンドならびにその変異形、MHCクラスI αならびにβ鎖、およびUL16結合タンパク質のうちの少なくとも一つである請求項17に記載の方法。
【請求項21】
腫瘍抗原はHER2、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、シトクロムP450アイソフォーム1B1(CYP1B1)CA 27.29、CA 15−3抗原、または白血病およびリンパ腫抗原の少なくとも一方(例えば抗CD20、抗CD22または抗CD52)、または肺または結腸癌抗原に対する抗体配列(例えば抗EGFR)、または前立腺癌抗原(例えばPSMA)を含む請求項17に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【公表番号】特表2009−500346(P2009−500346A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519629(P2008−519629)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2006/025658
【国際公開番号】WO2007/002905
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(591279353)ユニバーシティー・オブ・マイアミ (5)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF MIAMI
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2006/025658
【国際公開番号】WO2007/002905
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(591279353)ユニバーシティー・オブ・マイアミ (5)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF MIAMI
【Fターム(参考)】
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