説明

癌患者における化学療法に対する応答を測定するために腫瘍のRNA完全性を用いる方法

癌性腫瘍は、化学療法剤に対する応答が極めて多様である。現在、投与の間または投与後に、化学療法レジメンに対する腫瘍の応答性のレベルを確実に評価することは難しい。化学療法剤に対する腫瘍の感受性のバイオマーカーはこれまでのところわかっていない。そのようなバイオマーカーは、非応答性の患者の同定を促進し、そしてこのような患者は、他のおそらくより有効なレジメンへと変更される可能性がある。本発明は、化学療法剤に対する腫瘍の応答性を測定するための方法を提供し、本方法において、RNAが化学療法の前、間、および後に患者の腫瘍細胞から単離される。RNAの品質は、キャピラリー電気泳動およびRNA完全性の数値(RIN)の割り当てによって測定することができる。化学療法の間および/または後のRIN値は、腫瘍の応答性レベルに反比例する。腫瘍RINは、化学療法に対する腫瘍応答性の容易にアクセスできるバイオマーカーである。腫瘍RINはまた、化学療法レジメンの有効性を評価するためにも用いられてよい。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、化学療法の前、間、および後に腫瘍細胞のRNA完全性を比較することによって、化学療法に対する腫瘍の応答を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
癌は、細胞の制御されない悪性の成長である。転移と呼ばれるプロセスにおいて、癌性細胞は、リンパおよび/または循環系を通して、その起源部位から体内の遠隔部位に広がることができる。転移は、癌を有する人の第一の死因である(Bockhorn, M. et al., Lancet Oncol. 8 (2007) 444-448)。
【0003】
手術、放射線療法、および化学療法を含む、癌を処置または制御するために用いられる多くの方法がある。手術および放射線療法は典型的に、非転移性の癌性腫瘍(癌性細胞で構成される異常な成長)を除去するために用いられる。しかし、転移癌が存在すると、原発腫瘍(手術の前または後)および体中の二次腫瘍の成長と戦うために全身化学療法レジメンを用いることが必要となる。乳癌において、有効な全身化学療法剤には、アントラサイクリン(典型的にドキソルビシンまたはエピルビシン)、タキサン(パクリタキセルまたはドセタキセル)、ヌクレオシド類似体(5-フルオロウラシル)、およびアルキル化剤(シクロホスファミド)が含まれる(Parissenti, A.M. et al. Anticancer Drugs 18 (2007) 499-523)。アントラサイクリンは、急速に分裂する腫瘍細胞において、トポイソメラーゼII(「topo II」)によるDNAの巻き戻しを破壊して、DNA鎖の間にインターカレートして、DNA損傷を引き起こし、それによってDNA複製を妨害する。一方、タキサンは、微小管の脱重合を阻害して、それによって細胞周期を分裂期で停止させて、その後アポトーシスを誘導する(Distefano, M. et al., Int. J. Cancer 72 (1997) 844-850;Moos, P.J. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 95 (1998)3896-3901)。ヌクレオシド類似体である5-フルオロウラシルは、dUMPからdTMPへの変換を阻害するが、アルキル化剤であるシクロホスファミドは、DNAと共有結合を形成する(Parker, W.B. et al., Pharmacol Ther. 48 (1990) 381-395;Bignold, L.P., Anticancer Res. 26 (2006) 1327-1336)。これらの後者の2つの薬剤は、S期の急速に分裂する細胞のDNA複製を妨害する(Zijlstra, J. G. et al. Oncol. Tumor Pharmacother. 7 (1990)11-18;Richardson, D.S. et al., Blood Rev. 11 (1997) 201-223;Capranico, G. et al., Chem. Biol. Interact. 72 (1989) 113-123;Chazard,M. et al., Bull. Cancer 81 (1994) 173-181)。
【0004】
化学療法において用いられるほとんどの薬剤は、非常に細胞障害性であり、健康な正常細胞(特に、それらが急速に分裂している場合)および癌性細胞の双方を破壊する。そのため、化学療法剤は、免疫抑制、悪心および嘔吐、ならびに心毒性などの有意な副作用を引き起こす。これらの副作用は、患者のクオリティオブライフに有意な負の効果を有しうる。
【0005】
化学療法剤に対する腫瘍の応答は、一部の患者では薬物の効能を阻害する薬物耐性機序が存在するため、患者の間で広く異なりうる。薬物耐性は、「内因性」(すなわち、腫瘍において既に存在する)でありうるか、または化学療法剤に対する持続的な曝露を通して「獲得」されうる。インビトロで化学療法剤に対する腫瘍細胞の応答性の低下において役割を果たす多数の機序が同定されている。アントラサイクリンおよびタキサンの場合、これらには、薬物輸送体(たとえば、P-糖タンパク質)および多剤耐性タンパク質の過剰発現、トポイソメラーゼIIαのダウンレギュレーション、細胞周期調節因子タンパク質p53における変異、チミジンシンターゼまたは薬物抱合酵素であるグルタチオンS-トランスフェラーゼの合成の増加、およびチューブリンのαまたはβ鎖をコードする遺伝子における変異の蓄積が含まれる(Juliano, R.L. et al., Biochim. Biophys. Acta 455 (1976)152-162;Beck, W.T. et al. Cancer Res. 39 (1979) 2070-2076;Cole, S.P. et al., Science 258 (1992) 1650-1654;Fry, A.M. et al., Cancer Res. 51 (1991) 6592-6595;Giaccone, G. et al. Cancer Res. 52 (1992) 1666-1674;Balcer-Kubiczek, E.K. et al. Radiat. Res. 142 (1995) 256-262;Aas, T. et al., Nat. Med. 2 (1996) 811-814;Batist, G. et al., J. Biol. Chem. 261 (1986) 15544-15549;Batist, G. et al., Biochem. Pharmacol. 35 (1986) 2257-2259;Harris, A.L. et al., Acta Oncol. 31 (1992) 205-213;Cabral, F. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 78 (1981) 4388-4391;Schibler, M.J. et al., J. Cell Biol. 113 (1991) 605-614)。
【0006】
最近、ゲノムプロファイリングアプローチにより、乳腺腫瘍細胞における薬物耐性の獲得に関連する遺伝子および機序に対して重要な洞察が提供されている(Parissenti, A.M. et al., Anticancer Drugs 18 (2007) 499-523;Villeneuve, D.J. et al., Breast Cancer Res. Treat. 96 (2006) 17-39)。
【0007】
内因性または後天性の薬物耐性の多数かつ多様な機序が存在することにより、所定の化学療法レジメンに対してどの患者が応答するか、および処置を通してこの応答が持続するか否かを同定することが非常に困難となる。ある患者では、感受性のある腫瘍が、化学療法の間に退縮または萎縮して、化学療法後に退縮し続ける可能性がある。他の患者では、耐性腫瘍が、処置中および処置後の双方で化学療法に対して非応答性でありうる。最後に、腫瘍は一部の患者では、化学療法の際に退縮するが、化学療法が終了した後にその当初の状態に戻る(または成長し続ける)可能性がある。
【0008】
投与前に、または薬物投与後初期に、所定の化学療法剤または物質に対する腫瘍の応答性のレベルを測定することができれば、非常に有益となるであろう。たとえば、アントラサイクリンに基づく化学療法後にパクリタキセルおよびドセタキセルに応答するのはそれぞれ、乳癌患者の33%および35.4%に過ぎない(Seidman, A.D. et al., J. Clin. Oncol. 13 (1995) 1152-1159;Ando, M. et al., J. Clin. Oncol. 19 (2001) 336-342)。しかし、癌患者における化学療法感受性腫瘍と化学療法耐性腫瘍とを区別することができるバイオマーカーはまだ同定されていない。このように、細胞障害剤を含む化学療法レジメンを受ける癌患者に関して、腫瘍が化学療法の処置中に応答しているか否か、または腫瘍の生存能力が処置後に無くなっているか否かを判定する方法は現在のところない。その結果、癌患者は、自身の腫瘍が実際にこれらの物質に応答するか否かを知ることなく、細胞障害剤の投与による重度の負の副作用を経験する。
【0009】
したがって、患者の必要性に最適の特異的レジメンを患者に合わせて作るために、特定の化学療法剤(およびその併用)に対する腫瘍の応答性レベルを迅速かつ正確に評価する方法が必要である。化学療法剤に対する感受性または耐性の指標がさらに必要である。
【発明の概要】
【0010】
本発明の広い局面に従って、
(a)患者に1種または複数種の化学療法剤を一定期間投与する段階;
(b)化学療法剤が投与される期間の前、間、および後に該患者の腫瘍からRNAを抽出する段階;
(c)各時点に由来する抽出されたRNAのRNA品質を測定する段階;
を含む、1つまたは複数の癌性腫瘍を有する患者における1種または複数の化学療法剤に対する腫瘍の応答性を測定する方法を提供し、本方法では、該期間においてRNA品質が低下すれば腫瘍が該化学療法剤に対して応答性であることが示される。
【0011】
本発明の1つの態様において、RNA品質は28S rRNAおよび18S rRNAの強度値の比として測定され、該比は、抽出されたRNAのゲル電気泳動、該ゲルのエチジウムブロミド染色、および紫外光下で可視化された28S rRNAおよび18S rRNAの強度の比の算出によって得られる。
【0012】
本発明の別の態様において、RNA品質は、抽出されたRNAのキャピラリー電気泳動および電気泳動において分離された様々なRNAの定量によって測定される。好ましくは、RNA品質は、RNA完全性の数値(RIN)として定量され、RINは、抽出されたRNA内に存在する様々なRNAの量のアルゴリズムによる評価によって算出される。
【0013】
複数の化学療法剤を患者に投与してもよい。化学療法剤は、アントラサイクリンおよびタキサン化学療法剤からなる群より選択されうる。好ましくは、化学療法剤は、アントラサイクリンおよびタキサンを含む。本発明の1つの態様において、エピルビシンおよびドセタキセルが、化学療法レジメンにおいて用いられる。
【0014】
さらに別の好ましい態様において、RNAは、患者の腫瘍の1つまたは複数のコア生検材料から抽出される。好ましくは、コア生検材料は、コンピューター断層撮影法(CT)、x線、超音波、および磁気共鳴画像法(MRI)などの画像誘導手段によって得られる。次に、RNA品質を、腫瘍の1つまたは複数のコア生検材料から測定する。
【0015】
本発明の別の態様において、RNA品質の低下の程度は、腫瘍の応答性に比例し、腫瘍の応答性は、対応する腫瘍のひろがりおよび/または細胞充実度の低下、ならびに患者の臨床応答によって評価してもよい。
【0016】
本発明の別の態様において、処置後のRINが3以下である患者は、化学療法剤に対して応答性であると同定され、処置後のRINが3以上である患者は化学療法剤に対して非応答性であると同定される。
【0017】
本発明のさらに別の局面において、1種または複数種の化学療法剤に対する患者の応答性を測定するための腫瘍のRNA品質の使用が提供され、腫瘍細胞のRNA品質は、化学療法剤の投与前に測定されて、1種または複数種の化学療法剤の投与後の腫瘍細胞のRNA品質と比較され、1種または複数種の化学療法剤の投与後にRNA品質が低下すれば患者が該化学療法剤に対して応答性であることが示される。好ましい態様において、腫瘍のRNA品質は、RNA完全性の値(RIN)として定量される。この態様において、上記使用は、化学療法剤の投与前に患者から得られた腫瘍細胞の第一のRINを測定する段階、および第一のRINを、1種または複数種の化学療法剤の投与の間および/または後に測定された腫瘍細胞のRINと比較する段階を含み、1種または複数種の化学療法剤の投与の間および/または後でRINが低下すれば患者が該1種または複数種の化学療法剤に対して応答性であることが示される。
【0018】
本発明の利点は、RNA完全性の数値(RIN)として定量される腫瘍のRNA品質が、1種または複数種の化学療法剤を伴う特定の化学療法レジメンに対する腫瘍の応答性の容易にアクセスできるバイオマーカーである点である。
【0019】
現在公知の腫瘍の応答性を測定する方法は、一般的に病理学者などの人オペレーターによる、コア生検材料の固定および染色された切片の顕微鏡写真の視覚的解釈を必要とする。そのような方法は、オペレーターの主観的解釈に依存して、これは人によって多様となる可能性がある。そのような方法はまた、人為的誤差を受けやすい。腫瘍RINは、正確かつ再現性がある腫瘍の応答性に関する定量的バイオマーカーであることから、腫瘍RINの評価は、所定の化学療法レジメンに対する腫瘍の応答性を評価する現在公知の方法に対して有意な利点を提供する。
【0020】
本発明の別の利点は、腫瘍RINの評価を自動的手段で行うことができる点である。自動的手段は、ハイスループットスクリーニングを伴うことができ、それによって腫瘍RINの迅速な評価が可能となる。このように、腫瘍RINの迅速な評価によって、所定の化学療法レジメンに対する患者の腫瘍の応答性レベルを迅速かつ正確に評価することが可能となる。
【0021】
本発明の別の利点は、腫瘍細胞のRIN値が化学療法剤の投与レベルに相関する可能性があり、したがって患者の必要性または応答レベルに合わせて化学療法レジメンを調整することが可能となる点である。
【0022】
本発明の他のおよびさらなる利点および特徴は、添付の図面と組み合わせて考慮して、その態様の以下の詳細な説明から当業者に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明は、以下である図面を参照して本発明の態様の以下の詳細な説明からさらに理解されるであろう。
【図1】腫瘍RNA完全性(RIN)の値とRNA品質との関係を証明する、キャピラリー電気泳動後の腫瘍RNA調製物の代表的な一連の電気泳動図である。
【図2】エピルビシン/ドセタキセル化学療法による処置前、処置中、および処置後のMA.22患者50人の用量レベル毎の腫瘍のRNA完全性(RIN)の値のグラフである。
【図3】エピルビシン/ドセタキセル化学療法による処置前、処置中、および処置後のMA.22患者の腫瘍RNAプロフィールの典型的な変化パターンを示す一連の電気泳動図である。
【図4】エピルビシン/ドセタキセル化学療法による処置前、処置中、および処置後のMA.22患者の腫瘍RIN値の典型的な変化パターンを示す一連のヒストグラムである。
【図5】エピルビシン/ドセタキセル化学療法による処置前、処置中、および処置後の代表的なMA.22患者の画像誘導コア生検材料のヘマトキシリン/エオジン染色切片の顕微鏡写真を示す。
【図6】エピルビシン/ドセタキセル化学療法による処置前、処置中、および処置後の様々な薬物用量レベルでの、MA.22患者50人の病理学的完全寛解(pCR)(破線)と腫瘍RINの最大値との関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
態様の詳細な説明
リボ核酸(RNA)は、真核細胞内での機能的タンパク質への遺伝情報の翻訳において多数の本質的な役割を果たしている。mRNAは、遺伝子のプロセシングされた転写物であり、これは特異的タンパク質に翻訳されるためにリボソームに結合する。他のRNAは、リボソームの必須の部分を形成するか(rRNA)、またはタンパク質合成におけるアミノ酸の担体(tRNA)として作用する。
【0025】
細胞RNAレベルは、転写経路とRNA分解経路との間のバランスを維持しながら、正確に調節される。細胞には、細胞内のRNA品質をモニターするための監視システムが存在するという証拠が増えつつある。これらの監視システムは、多様な欠陥RNAを細胞から取り除くために、RNA分解経路にカップリングしている(Houseley, J. et al., Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 7 (2006) 529-539;Parker, R. et al., Nat. Struct. Mol. Biol. 11 (2004) 121-127)。欠陥RNAには、不適切にプロセシングされた一次転写物と、翻訳終止コドンを欠損する、未成熟な終止コドンを含有する、またはナンセンスコドンを含有するmRNAとが含まれる。加えて、RNA分解は、アポトーシス(プログラムされた細胞死)の顕著な特徴であるという証拠がある。アポトーシス誘導物質は、細胞においてRNA分解を誘導することが示されている(King, K.L. et al, Cell Death. Differ. 7 (2000) 994-1001;Bakhanashvili, M. et al., J. Mol. Med. (2007))。特に、化学療法剤、特に活性酸素種を生成する化学療法剤は、多様な欠陥RNAが産生されて上記のRNA分解経路が活性化されるように、DNAおよび/またはRNAに対して十分な損傷を誘導する可能性がある。
【0026】
様々な細胞RNAが細胞機能において果たす決定的な役割を考慮すると、RNAのタイプおよびその細胞内濃度は、遺伝子発現およびタンパク質産生などの細胞活性に対して有意な量の情報を提供することができる。このように、所定の時期に細胞内で何が起こっているかに関する「スナップショット」を得るために、細胞RNAを抽出することが望ましい。次に、抽出されたRNAを用いてcDNAを発現ベクターにクローニングして、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によってmRNA転写物を、およびハイスループットRT-PCRまたはマイクロアレイ試験によって遺伝子発現プロファイリングを同定および定量することができる。しかし、RNAは、環境中のいたるところに存在するRNアーゼ酵素によって広範囲の分解を受けやすいことから、RNA品質または完全性を評価することは、上記の応用を行う前に不可欠である。RNAの「品質」または「完全性」(本明細書全体を通して互換的に用いられる)は、このように細胞からの抽出後のRNAの状態を指す。高いRNA品質は、抽出後のRNAの分解がほとんどまたは全くないことを意味すると考えられ、一方低いRNA品質は、抽出されたRNAが有意な分解から全分解を示すことを意味する。
【0027】
従来は、RNA品質または完全性は、ゲル電気泳動および該ゲルのエチジウムブロミドによる染色後の紫外光下でのRNAバンドの可視化によって評価していた。典型的には、28S rRNAおよび18S rRNAのバンドの強度値をフィルムのデンシトメトリーによって測定して、28S/18S rRNA比を算出する。28S/18S rRNA比が約2.0またはそれより高い場合、RNAは高い品質であると見なされる。しかし、上記のアプローチは、人オペレーターによる、ゲルの解釈および/またはフィルムのデンシトメトリーに依存していることから、主観的であり、異なるオペレーターの間で結果を再現することが困難である。加えて、このアプローチでは大量のRNAも必要であり、分析にとって十分なRNAを得ることが難しくなる。
【0028】
最近、特に、必要なRNAの量がナノグラムに過ぎないことから、RNAの完全性を評価するためにマイクロキャピラリー電気泳動がますます用いられている。そのようなプラットフォームの1つである Agilent(登録商標)2100バイオアナライザ(Agilent Technologies, Inc., U.S.A.)は、マイクロ流体技術を用いて、自動的に再現可能な様式でRNAの電気泳動分離を行う(Mueller, O. et al., Electrophoresis 21 (2000) 128-134)。Agilent(登録商標)2100バイオアナライザは、特にキャピラリー電気泳動後の各試料に関するRNA完全性の数値(RIN)を算出するAgilent(登録商標)バイオアナライザ用ソフトウェアが開発された後に、RNA品質を評価するために多くの研究所において現在用いられている(Schroeder, A. et al., BMC. Mol. Biol. 7 (2006) 3;Imbeaud, S. et al. Nucl. Acids Res. (2005), 33, 6, e56, 1-12)。このソフトウェアは、所定のRNA試料の電気泳動図における多数のRNAの量を定量して、この評価に基づいてRIN値を割り当てるアルゴリズムを組み入れている。最近の研究は、RINがRNA品質を確実に測定することに関して28S/18S rRNA比より優れていることを示唆している(Schroeder, A. et al., BMC. Mol. Biol. 7 (2006)3;Weis, S. et al., J. Neurosci. Methods 165 (2007) 198-209;Strand, C. et al., BMC. Mol. Biol. 8 (2007)38)。RINは、乳腺および他の臓器における腫瘍が含まれる哺乳動物細胞株および組織におけるRNA品質の評価のための最善の方法として現れつつある(Fleige, S. et al., Biotechnol. Lett. 28 (2006) 1601-1613;Strand, C. et al., BMC. Mol. Biol. 8 (2007) 38)。
【0029】
今では、腫瘍のRNA品質によって測定される場合、特にそのRIN値を用いて測定される場合、RNA品質または完全性が、細胞生存率の直接的な尺度として用いることができることが発見されている。
【0030】
腫瘍生検材料の組を、ペグフィルグラスチム補助療法と共にエピルビシン/ドセタキセル化学療法レジメンを受けている乳癌患者50人から採取した(実施例2を参照されたい)。2つの腫瘍生検材料を各患者から3回の時点で、すなわち化学療法による処置の前(処置前)、間(処置中)および後(処置後)に採取して、各患者に関して生検材料を2組形成した(各組は、処置前、処置中、および処置後の生検材料で構成された)。1つの組の生検材料をRNA品質に関して分析して(すなわち、RIN値の測定)、他の組の生検材料を、乳癌の予後にとって重要であることが知られている特異的腫瘍マーカータンパク質のレベルを測定するための免疫組織化学分析、%腫瘍細胞充実度、および顕微鏡写真に供した。腫瘍のRINを、化学療法処置の間に起こった腫瘍マーカータンパク質(実施例2(d))、腫瘍細胞充実度(実施例2(f))、および顕微鏡写真(実施例2(g))において観察された変化と比較して、腫瘍RINと観察された変化の間の統計学的に有意な相関に関して分析した。最後に、腫瘍RINを患者の観察された臨床応答と比較した。
【0031】
腫瘍細胞のRNA完全性の劇的な低下が、薬物感受性腫瘍において化学療法後に起こることが観察されたが、薬物耐性腫瘍は高いRNA完全性を保持することが観察され、疾患の進行および患者の予後不良が起こった。実施例2(b)において記したように、高い薬物用量レベルは、処置の過程における腫瘍RINの大きい負の変化に強く関連した。同様に、低い薬物用量レベルは、腫瘍RINのいくらかのまたは小さい低下に相関した。このことは、腫瘍RINの低下が、これらの患者における化学療法薬物応答に直接関連することを示唆した。処置後の腫瘍のひろがり(細胞充実度)と腫瘍のRIN値との間には、強い正の相関が見いだされた(実施例2(e)を参照されたい)。すなわち、腫瘍のひろがりの低下は腫瘍のRINの低下と比例した。最後に、処置後に測定された腫瘍RINは、化学療法に対する腫瘍の応答および観察された臨床応答の正確な予測因子であることが見いだされた(実施例2(f)、(g)を参照されたい)。
【0032】
癌患者における特異的化学療法レジメンに対する腫瘍の応答は、このようにレジメンが腫瘍のRNA品質(完全性)の低下を誘導することができるか否かをモニターすることによって有効に測定されうる。
【0033】
腫瘍のRNA完全性は、キャピラリー電気泳動の後にRIN値の割り当てによって測定されうる。化学療法による腫瘍RIN値の低下は、応答性の腫瘍を示しているが、腫瘍RIN値にほとんど変化がなければ、腫瘍が選択されたレジメンに対して耐性であることを示唆するであろう。
【0034】
化学療法レジメンに対する癌患者の応答性を測定するために、化学療法レジメンの投与の際に少なくとも2回の異なる時点で患者の腫瘍からRNAを抽出する。好ましくは、化学療法レジメンの投与前、レジメンの間、および/または終了後に腫瘍からRNAを抽出する。
【0035】
化学療法レジメンは、1種の化学療法剤または複数種の化学療法剤の併用から構成することができ、それぞれの物質の用量は時間と共に変化してもよい。
【0036】
再現性および精度を改善するために、腫瘍細胞は好ましくは1つまたは複数の画像誘導による生検材料において収集される。再現性および精度をさらに改善するために3つまたはそれより多い画像誘導による生検材料を腫瘍から収集する。画像誘導による生検材料は、コンピューター断層撮影(CT)、x線、超音波、および磁気共鳴画像法(MRI)などの画像誘導手段によって得られる。
【0037】
次に、抽出されたRNAの品質を測定する。これは、先に記したように28S/18S rRNAの比を得る段階などの従来の手段によって行うことができる。しかし、RNA品質は好ましくは、抽出されたRNAのキャピラリー電気泳動および得られた電気泳動図におけるRNAの定量によって測定される。Agilent(登録商標)2100バイオアナライザ(Agilent Technologies, Inc., U.S.A.)などの自動分析システムは、そのようなシステムが電気泳動図を評価して、RNA完全性の数値(RIN)として所定のRNA試料の品質を定量することができることから、この測定を行うために好ましい。Agilent(登録商標)2100バイオアナライザは、バイオアナライザに関連するソフトウェアに組み入れられているアルゴリズムを用いて、RINを算出する(Schroeder, A. et al., BMC. Mol. Biol. 7 (2006) 3;Imbeaud, S. et al. Nucl. Acids Res. (2005), 33, 6, e56, 1-12)。得られたRIN値は、オペレーターが異なっても再現性があり、デジタル処理することができる。その上、Agilent(登録商標)2100バイオアナライザなどの自動分析システムは、RNA試料の迅速なハイスループット分析を可能にする。このように、所定の化学療法レジメンに対する患者の応答性を、化学療法レジメンの間または後に測定することができ、腫瘍の応答が検出されない場合にはレジメンを変更してもよい。これは、化学療法レジメンに対して応答せず、おそらく疾患が進行する高いリスクを有するであろう患者を同定することから、非常に有用である。
【0038】
次に、化学療法レジメンの投与前に収集された腫瘍細胞のRIN値を、レジメンの開始後、すなわち、化学療法レジメンの間および/または終了後に収集された腫瘍細胞の1つまたは複数のRIN値と比較する。患者が処置の間に腫瘍RNA完全性の変化を示さない場合(実施例2において記される応答パターンA)、患者の腫瘍は、用いられる化学療法レジメンに対して耐性であると見なされるであろう。患者は、化学療法レジメンに対して非応答性であると見なされ、すなわち腫瘍進行のリスクが高いと見なされ、予後は不良であると見なされるであろう。次に、用量レベルの変更および/または投与される化学療法剤のタイプの変更などの、代わりの化学療法レジメンまたは処置プロトコールを検討することができる。本明細書において概要した方法は、新しいレジメンに対する応答性を測定するために繰り返すことができ、このようにして患者の応答に従って化学療法レジメンを患者に合わせて調整することができる。
【0039】
患者が、処置中および処置後の双方で腫瘍RNA完全性の劇的な低下(>50%)を示す場合(実施例2において記される応答パターンC)、患者は化学療法に応答したと見なされ、腫瘍進行のリスクはより低いであろう。患者の予後は良好であると見なされるであろう。ゼロに近い腫瘍のRIN値は、化学療法に対する応答、および腫瘍進行の低リスクを大いに示しているであろう。
【0040】
患者が処置後に限って腫瘍のRNA完全性の劇的な低下を示す場合(実施例2において記される応答パターンB)、患者は化学療法に応答したと見なされ、腫瘍進行のリスクはより低いであろう。患者の予後は良好であると見なされるであろう。
【0041】
患者が処置中に限って腫瘍RNA完全性の劇的な変化を示す場合、患者は治療に応答する可能性が高く、疾患再発のリスクはより低いであろう。これは、処置後に高い「腫瘍」RNA完全性に戻るにもかかわらず、処置後の高い品質のRNAが、病変に浸潤した正常組織に由来する可能性があるためである。しかし、腫瘍が処置後に再発した可能性はある。
【0042】
本発明の好ましい態様のさらなる詳細を、添付の特許請求の範囲に関して非制限的であると理解される以下の実施例において例証する。
【0043】
実施例1:材料および方法
(a)乳腺組織コア生検材料からの総RNAの単離
RNAは、QIAGEN(登録商標)RNAeasy(登録商標)ミニキット(Qiagen GmbH, Germany)を用いて患者の腫瘍コア生検材料から単離した。RNA単離プロトコールを、Qiagen GmbHによって公表されたプロトコール(Qiagen GmbH, Germanyから無料で入手可能;同様にhttp://wwwl.qiagen.com/literature/handbooks/literature.aspx?id=l000291でも入手可能)からわずかに改変した。
【0044】
患者の腫瘍の画像誘導による針コア生検材料を患者から採取して、腫瘍の細胞充実度を測定するためにスライドガラスに対して直ちにタッチ調製(touch prepare)し、コア生検材料をその後の分析のためにドライアイス上で瞬間凍結した。凍結したコア生検材料を、エッペンドルフチューブにおいてβ-ME(10μlを1 mlに)を含有するRLT緩衝液0.5 mlの中に直ちに入れた。RLT緩衝液中の生検材料を、Coreless(商標)モーターホモジナイザーによって5分間ホモジナイズした(Kontes Glass Company, U.S.A., カタログ番号:749540-0000)。
【0045】
溶解物を、RNアーゼを含まないシリンジに装着された20ゲージ針(直径0.9 mm)の中に少なくとも5回通過させた。試料を、冷蔵微量遠心機において4℃で3分間高速で遠心して、上清を新しいチューブに移した。
【0046】
70%エタノール1容量(500μl)を上清に加えて、試料を繰り返しピペッティングすることによって十分に混合した。何らかの溶解物がホモジナイゼーションの際に失われた場合、エタノールの容積をそれに従って調整した。いくつかの試料においてエタノールの添加後に形成された目に見える沈殿物は、RNA単離技法に影響を及ぼさなかった。
【0047】
任意の沈殿物が含まれる最大で700μlの試料を、RNeasy(登録商標)ミニカラムに加えて、2 ml収集管に入れた。カラムを〜8000×g(〜10,000 rpm)で15秒間遠心して、フロースルーを捨てた。試料の残りをカラムに加えて、カラムを再度遠心した。
【0048】
700μlの緩衝液RW1をRNeasy(登録商標)カラムに加えて、カラムを〜8000×g(〜10,000 rpm)で15秒間遠心して、カラムを洗浄した。フロースルーを捨てた。
【0049】
RNeasy(登録商標)カラムを新しい2 ml収集管に移して、緩衝液RPE 500μlをカラムに添加した。カラムを〜8000×g(〜10,000 rpm)で15秒間遠心して、カラムを洗浄した。フロースルーを捨てた。
【0050】
RNeasy(登録商標)カラムを新しい2 ml収集管に移して、古い収集管およびフロースルーを捨てた。カラムを再度微量遠心機において最高速度で1分間遠心して、収集管とフロースルーを再度捨てた。
【0051】
結合したRNAを溶出するために、RNeasy(登録商標)カラムを新しい1.5 ml収集管に移した。RNアーゼを含まない水30μlをカラムに直接添加して、カラムを〜8000×g(〜10,000 rpm)で1分間遠心した。
【0052】
試料に関してより高い総RNA濃度を得るために、段階8からの溶出液を用いて第二の溶出段階を行った。
【0053】
次に、RNAの濃度および品質をAgilent(登録商標)2100バイオアナライザおよび関連ソフトウェアを用いてチェックした。
【0054】
(b)RNAの量およびRNAの完全性の測定
腫瘍のコア生検材料からの総RNA試料を、RNA 6000 Nano Lapchips(商標)(Agilent Technologies, Inc.)に加えて、Agilent(登録商標)2100バイオアナライザを用いるキャピラリー電気泳動に供した。Agilent(登録商標)2100バイオアナライザ(Agilent Technologies, Inc.)のプロトコール(Agilent(登録商標)2100バイオアナライザユーザーズガイド、2003年11月編、マニュアルパート番号G2946-90000、Agilent Technologies, Inc.、http://www.chem.agilent.com/temp/rad4DEAE/00000725.PDFで入手可能)に従った。
【0055】
試料中のRNAの量およびRNA品質(RNAの完全性)を、Agilent(登録商標)2100バイオアナライザに関連するコンピューターソフトウェア(ソフトウェアおよび添付のマニュアルは、Agilent Technologies Inc.から無料で入手可能であり、同様にhttp://www.chem.agilent.com/scripts/generic.asp?lpage=52241&indcol=N&prodcol=Yからも入手可能である)に組み入れられている、Schroederらによって開示されるRINアルゴリズムを用いて測定した(Schroeder, A. et al. "The RIN: an RNA integrity number for assigning integrity values to RNA measurements", BMC. Mol. Biol. 7 (2006) 3.)。
【0056】
実施例2: 乳癌患者におけるRNA完全性の数値(RIN)と腫瘍RNA品質の測定
(a)化学療法臨床試験における乳癌患者からの腫瘍生検試料
乳癌患者を化学療法剤で処置することによって、腫瘍RNAの分解が起こるか否かを試験するために、腫瘍の画像誘導によるコア生検材料6個を、局所進行または炎症性乳癌患者50人からエピルビシン/ドセタキセル化学療法による処置前、処置中、および処置後に得た。患者は、National Cancer Institute of Canada Clinical Trials Group(グループ「MA.22」と呼ばれる)が主催する国の臨床試験の患者であり、エピルビシンとドセタキセルの双方の用量レベルを増加させながら処置され、この治療に関連する好中球減少症を低減するためにペグフィルグラスチムの補助療法を受けた。化学療法を標準的な投与レジメン(アームA)において3週間毎に適用した。この試験において用いた用量レベルを表1において示す。このレジメンの最大認容量は、用量レベル6、すなわち105 mg/m2エピルビシンおよび75 mg/m2ドセタキセルであった(表1、スケジュールAを参照されたい)。
【0057】
(表1)

表1:National Cancer Institute of Canadaによる臨床試験(MA.22)に関連する3週間毎(スケジュールA)または2週間毎(スケジュールB)のレジメンのいずれかを用いて局所進行/炎症性乳癌患者に投与されたエピルビシン、ドセタキセル、およびペグフィルグラスチムの用量レベル。
【0058】

【0059】
スキーム1において記したように、各患者から採取した生検材料6個中3個を、RNA品質の試験のために新鮮凍結して、残りを、エストロゲン受容体ER(Novacastra(登録商標)クローン6G11、Leica Microsystems, Germany)、プロゲステロン受容体PR(Novacastra(登録商標)クローン16、Leica Microsystems, Germany)、トポイソメラーゼII(「Topo II」;クローンSWT3D1、Dako Denmark A/S)、およびヒト上皮細胞増殖因子受容体2(「Her2」;Zymed(登録商標)TAB250、Invitrogen Corp., U.S.A.)が含まれる特異的腫瘍マーカーレベルの評価のためにホルマリンで固定した。RNeasy(登録商標)ミニキット(Qiagen GmbH, Germany)を用いて、新鮮凍結したコア生検材料の2つからRNAを単離して、その後、試料のRNA品質を、Agilent(登録商標)2100バイオアナライザを用いるキャピラリー電気泳動によって評価した。バイオアナライザは、試料中の特異的RNAの量を定量して、各試料にRNA完全性の数値(RIN)を割り当てた。図1において示されるように、腫瘍RNA調製物のキャピラリー電気泳動後の電気泳動図の検分によって可視化される場合、RINの程度はRNA完全性の確実な尺度であることが観察され、すなわち28S rRNAおよび18S rRNAバンドの強度は、RIN値が低下すると顕著に低下した。
【0060】
(b)RNA完全性の変化と薬物用量レベルとの関連
患者のコア生検材料から単離されたRNAの平均コアRIN値を、これらの値が、エピルビシン/ドセタキセル化学療法に応答して低下したか否か、および薬物用量レベルとRIN低下の程度の間に関係があるか否かを判定するために評価した。患者の処置前の平均腫瘍RIN値にばらつきがあったが、それらが5.0未満であることはほとんどなく、患者50人全員からのデータを評価した場合、平均値は6.5であった(表2)。RINとベースライン薬物用量との関連を一元配置ANOVAを用いて評価した。
【0061】
予想されたように、患者がまだ化学療法を適用されていないことを考慮すると、腫瘍RINの程度とベースラインでの薬物用量レベルの間に関連はなかった(p=0.45)。対照的に、RIN値は、処置中の薬物用量レベルに有意にかつ負に相関した(p=0.04)。腫瘍RINのいくらかのまたは小さい低下が、低用量の薬物を投与した患者において観察されたが、高用量を投与された患者は、腫瘍RINの劇的な低下を示した(図2)。少数の患者ではあるが(n=3)、腫瘍のRIN値に及ぼす化学療法の効果は、用量レベル7に曝露された腫瘍に関して特に明らかであり、RIN平均値は処置中および処置後の試料においてゼロであったが、処置前試料では5.0であった(表2)。全ての用量に対する処置中のRIN値の平均値は3.8であった。処置後の腫瘍のRIN値の平均値は、4.2であり、同様に化学療法後の腫瘍のRNA完全性の有意な低下を示唆している。腫瘍RIN値と薬物用量レベルの間に類似の負の関係が処置後に観察されたが、境界域の有意性であった(p=0.06)(図3)。処置後の境界域の有意値は、可能性がある2つの現象の結果である可能性がある:腫瘍細胞集団は、化学療法剤が循環中から消失した後に回復するか(疾患の再発が起こる)、または腫瘍が正常な組織および/または細胞タイプに浸潤されるようになった。いずれの場合においても、腫瘍のRIN値は増加すると予想され、腫瘍のRNA品質において化学療法が誘発する変化を検出する能力は低下するであろう。
【0062】
(表2)

表2−表1において示される用量レベルでのエピルビシン/ドセタキセル化学療法による処置前、処置中、および処置後のMA.22臨床試験の患者に関する腫瘍のRIN値。1 患者数(N)=1である場合、平均値の推定値よりむしろその患者のRINの値を提供する。2 N=2の場合、95%信頼限界の推定値の代わりにRINの値の範囲を提供する。3 上付き文字3は、ゼロでの切り捨てを示す。
【0063】
(c)患者のエピルビシン/ドセタキセル化学療法による処置中のRNA完全性の変化パターン
図3は、キャピラリー電気泳動後の電気泳動図の視覚的検査によって評価したエピルビシン/ドセタキセル化学療法の間のMA.22患者において観察された腫瘍RNA品質の変化パターンを示す。患者は、RNA品質の変化なし(パターンA)、処置中に限られるRNA品質の一時的な低下(パターンD)、処置後に限られるRNA品質の強い低下(パターンB)、または処置中および処置後でのRNA品質の劇的な低下(パターンC)を示した。少数の患者に関して、腫瘍のRNA品質は、全ての時点で不良であり(パターンE)、その原因は不明であった。これらのパターンはまた、化学療法前、療法中、および療法後の対応する患者のRIN値に反映された(図4)。パターンBおよびCを示す腫瘍を有する患者は、化学療法に対する応答者であると考えられ(患者の〜55%)、パターンAおよびCを示す腫瘍を有する患者は処置に対する非応答者であると考えられた(患者の〜37%)。
【0064】
(d)トポイソメラーゼIIレベルと腫瘍のRNA完全性との関係
免疫組織化学アプローチを用いて、乳癌の予後にとって重要であることが知られている特異的腫瘍マーカータンパク質のベースラインレベルを測定して、発現を公知の標準物質に対する陽性染色の百分率として評価した。免疫組織化学によって評価されるタンパク質には、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、ヒト上皮細胞増殖因子受容体2(Her2)、およびトポイソメラーゼII(「topo II」)が含まれた。特異的腫瘍マーカーの処置前レベルと様々な時点でのRIN値との関連を、対称性を改善してデータの分散を安定化させるためのデータ変換を行ってまたは行わずに、スピアマンおよびピアソンの相関係数を算出することによって評価した。全ての患者に関して、topo IIの高い処置前レベルは、処置前の高い腫瘍RINに有意に関連した(表3;p値は、0.01〜0.03)。高い処置前RIN値と高い処置前topo IIレベルとの関連から、高いtopo II発現を有する細胞が非常に生存率が高く、急速に増殖して、高い品質のRNAを産生することが示唆された。この関連はまた、処置後においても明白であった(表3を参照されたい)。処置後に高いRIN値(すなわち高い品質のRNA)を有する腫瘍は、化学療法に応答しない非常に生存率の高い腫瘍、または腫瘍に浸潤した健康な正常組織を表すと考えられた。Her2、ER、またはPRの処置前レベルと、処置前または処置後のRIN値との間には関連が見られなかった(データは示していない)。
【0065】
(表3)

表3−化学療法前(ベースライン)、処置中、および処置後のMA.22患者に関する腫瘍のRNA完全性の数値(RIN)とトポイソメラーゼII発現との関係。%トポイソメラーゼII発現は、トポイソメラーゼIIα特異的抗体によって患者からの腫瘍コア生検材料の固定切片をプローブする免疫組織化学実験を通して、病理学者によって測定された。データは、データの分散に関して制御するために、変換値または未変換値を用いて評価した。ピアソンおよびスピアマンの相関係数を求め、統計学的有意性を示すp値を太字で強調する。
【0066】
(e)腫瘍のRIN値と腫瘍の細胞充実度の間の関係
患者における薬物応答の1つの測定は、治療後の病変を含む腫瘍細胞数の減少の大きさを評価する段階を伴う。以下の表4において要約されるように、RIN値の変化は、腫瘍の細胞充実度の値の様々な変化パターンに対応した。全体として、全体的な腫瘍のひろがりまたは細胞充実度が、処置中に90.94%±2.17%から50.69%±5.79%に、および処置後に39.6%±5.78%へと低下したことを考慮すると(表4を参照されたい)、患者は、化学療法に対して有意な応答を示した。以下の応答パターンを示した患者を以下のようにA群からE群に入れた:(A)腫瘍の細胞充実度の変化なし;(B)処置後に限られる腫瘍細胞充実度の強い低下;(C)処置中および処置後の腫瘍細胞充実度の劇的な低下;ならびに(D)処置中に限られる腫瘍細胞充実度の一時的な低下。データが不完全な患者をE群に入れた。患者全員を同時に評価したところ、細胞充実度の統計学的に有意な低下が化学療法中および化学療法後に観察された。
【0067】
(表4)処置中または処置後の腫瘍細胞充実度の強い低下によって測定された、エピルビシン/ドセタキセル化学療法に対するMA.22患者の応答の変動



【0068】
処置中のRIN値の変化パターンと腫瘍の細胞充実度の値の間の強い一致を考慮して、RINの変化が患者における処置応答(腫瘍のひろがりまたは細胞充実度の変化によって測定)の正確な反映であるか否かを調べるために、腫瘍RIN値を評価した。処置前、処置中、および処置後のコア生検材料における腫瘍細胞の百分率とコア生検材料のRIN最大値の関係を分析して表5に要約した。
【0069】
(表5)化学療法前(ベースライン)、処置中、および処置後のMA.22患者に関する腫瘍のRNA完全性の数値(RIN)と腫瘍のひろがりとの関係。腫瘍のひろがり(%細胞充実度)は、ヘマトキシリン/エオジンによって染色された、患者からの腫瘍コア生検材料の固定された切片の顕微鏡による可視化を通して病理学者によって測定された。データの分散に関して制御するために変換値または未変換値を用いて、データを評価した。ピアソンおよびスピアマンの相関係数の双方を測定して、統計学的有意性を示すp値を太字で強調した。

【0070】
表5において示されるように、処置後の腫瘍のひろがりの値とRIN値の間には非常に強い正の関係が存在した(p値は、スピアマンの係数またはピアソンの係数を算出したか否か、および対称性を改善して分散を安定化するためにデータを変換したか否かに応じて0.0003〜0.004の範囲であった)。RIN値と化学療法に対する患者の応答(腫瘍の細胞充実度レベルによって測定)との間の強い相関は、おそらく腫瘍RINに及ぼす化学療法剤の効果が処置の中間点で十分に実現されなかったことから、処置中には観察されなかった。
【0071】
A群(CAMN-006;CAMN-018)、B群(CAMN-009)、C群(CAMN-047)、およびD群(CAMN-030)のそれぞれの患者からの処置前、処置中、および処置後の腫瘍の切片の顕微鏡写真を図6に示す。図5において見られるように、観察された腫瘍の細胞充実度レベルは、腫瘍のRINにおいて観察された変化に対応した。
【0072】
(f)化学療法に対する腫瘍の応答を同定する腫瘍のRIN値の能力
その腫瘍が化学療法に応答している患者(処置後の腫瘍の細胞充実度10%によって決定される)を、処置後の腫瘍RIN最大値が3.1であることによって正確に同定できるか否かを知るために、収集されたRIN値を調べた。E群を除く全ての処置前の腫瘍のコア生検材料の平均RIN値の半分を表すことから、RIN値3.1を選択した(先の表4を参照されたい)。表6(以下を参照されたい)において示されるように、処置後の腫瘍RIN値の平均値3.1以下を有する患者は、患者20人中19人において処置後の腫瘍細胞充実度<10%を有した(95%の一致)。その上、処置後の腫瘍RIN値>3.0を有した患者25人中16人は、処置後の腫瘍細胞充実度の値10%を有する(64%の一致)。このように、特異的なカットオフ値を考慮すると、特に応答者に関して処置後のRIN値と処置後の腫瘍細胞充実度の値の間には良好な相関があった。しかし、腫瘍の細胞充実度レベルが高い(50%)と観察されかつRIN値がゼロであった4例では、この相関に相違が起こった。乳腺腫瘍は不均一であることが知られていることから、腫瘍のいくつかの領域は高い腫瘍細胞充実度を有するが、他の領域はそうではなく、このように腫瘍RINと腫瘍細胞充実度の間の不一致が起こる可能性がある。または、これは、細胞形態を保持しているが完全に加水分解されたRNAを有する生育不能な腫瘍細胞による可能性がある。ゆえに、腫瘍RIN測定は、腫瘍RINが機能的バイオマーカーとして役立つことから、化学療法剤に対する腫瘍の応答の測定において腫瘍の細胞充実度の測定より優れている可能性がある。
【0073】
(表6)MA.22患者におけるエピルビシン/ドセタキセル化学療法に対する応答(腫瘍の細胞充実度の10%への低下によって判定される)を予測する腫瘍RIN最大値の能力。RIN最大値は各患者からの2つの独立した腫瘍コア生検材料から単離されたRNAから得られた2つのRIN値の最高値である。有意な値は以下のように表示される:
a 処置後のRIN最大値の3.1への低下は、症例20例中19例において応答者を正確に同定した(一致は95%であった);
b 3.1より上の腫瘍RIN最大値は、症例25例中16例において非応答者を正確に同定した(精度64%);
c RIN最大値と腫瘍細胞充実度との相違。



【0074】
(g)腫瘍のRNA完全性と化学療法に対する臨床応答との関係
腫瘍のRNA完全性と疾患に対する実際の臨床応答との関係は、化学療法剤に対する応答のバイオマーカーとして機能するための腫瘍RNA完全性の有用性の重要な尺度であると見なされたことから、該関係を調べた。
【0075】
化学療法処置に対する患者の応答を多様な様式で測定した。患者は、処置後に腫瘍が明白に存在しない場合に臨床的完全寛解(CR)を得ると見なされた。体積が50%より大きく減少した腫瘍は、治療に対して部分寛解(PR)を得ると見なされた。大きさの変化を示さなかった腫瘍を有する患者は、安定疾患(SD)を有すると分類されたが、新たな腫瘍を有するまたはその腫瘍の大きさが増加した患者は、進行疾患(PD)を有すると言えた。顕微鏡的に疾患の完全寛解を有する患者は、病理学的完全寛解(pCR)を示したと見なされた。化学療法に対する患者の応答に関する上記の定義を用いて、腫瘍RNA平均値または腫瘍RNA最大値と、治療に対する臨床応答との関係を分析した。一方または双方が臨床応答と最も大きな相関性を有する可能性があることから、RIN平均値およびRIN最大値の双方を算出した。MA.22患者において、患者13人はCRを得ることが観察されたが、患者37人は、非応答者であると見なされた(PR、SD、またはPD)。患者50人中7人のみがpCRを示した。特に、処置後の低い腫瘍RIN平均値は、CRに有意に関連し(p=0.01)、低いRIN最大値は処置中のpCRに関連したが(p=0.01)、処置後では関連しなかった(p=0.28)。
【0076】
図6は、処置前、処置中、および処置後の時点の各患者に関する腫瘍RIN最大値を示す。エピルビシン/ドセタキセル化学療法後にpCRを示した患者を破線で示す。化学療法後にpCRを有した患者は全て、処置中の腫瘍RIN最大値の低下を示した。その上、pCR、および腫瘍RINの低下はいずれも、高い薬物用量レベル(レベル5またはそれより高い)に曝露された患者において優先的に観察された。
【0077】
治療後にpCRを示す患者に関して、腫瘍RIN最大値の強い低下が処置中に観察されたが、疾患の顕微鏡的な完全寛解にもかかわらず、腫瘍RIN値は増加または同じままであることが認められた。処置中にRINの初期低下が観察された後、腫瘍RIN値は、多くのMA.22患者に関して処置後に増加した。これは、乳腺腫瘍が不均一であることから、測定された腫瘍RINが、任意の正常な乳腺組織および他の細胞タイプが含まれる腫瘍を含む全ての細胞のRNA品質を反映したという事実による可能性がある。表4において示されるように、処置前の患者の腫瘍の大多数の腫瘍細胞充実度は非常に高かった(90.94±2.17)。
【0078】
先に提供したように、処置中に観察されたRIN値の強い低下は、特に腫瘍細胞におけるRNAおよびRNA品質のロスを反映した。結果を考慮すると、低い腫瘍RIN値は処置中のpCRに相関すると予想されるであろう。しかし、化学療法剤が処置後に患者の循環系から消失すると、正常な乳腺および他の組織が、もはや検出可能な腫瘍細胞充実度を有しない治療応答者の病変に浸潤する可能性がある。よって、処置後の病変から単離されたRNAは、正常細胞および腫瘍細胞の双方に由来する可能性があり、処置後の高い腫瘍RIN値は疾患の再発を必ずしも示さない可能性がある。これは、患者を処置中に評価した場合に、低い腫瘍RIN最大値とpCRの関係が最も有意である理由を説明する可能性がある。さらに、これは、処置後の腫瘍RIN値が、エピルビシン/ドセタキセル化学療法に対する応答者を予測することに関して、非応答者を予測することよりも信頼できることの理由であるかも知れない。たとえ処置後の腫瘍生検材料に、予測されるように非腫瘍細胞が含まれていても、エピルビシン/ドセタキセル化学療法に応答する患者(特にpCR)は、処置中または処置後に腫瘍RINの強い低下を示す患者であろう。
【0079】
実施例3:化学療法レジメンに対する癌患者の応答性を測定するための腫瘍のRNA品質の使用
実施例1の方法に従って、化学療法レジメンの適用の間の2回以上の異なる時点、化学療法レジメンの適用前、およびレジメンの間および/または終了後に、1つまたは複数の腫瘍を有する癌患者の腫瘍細胞からRNAを抽出する。
【0080】
腫瘍細胞を1つまたは複数の画像誘導による生検材料において収集する。画像誘導による生検材料は、コンピューター断層撮影(CT)、x線、超音波、および磁気共鳴画像法(MRI)などの画像誘導手段によって得られる。
【0081】
抽出されたRNAの品質を、抽出されたRNAのキャピラリー電気泳動および得られた電気泳動図におけるRNAの定量によって測定する。RNAの各試料に関するRNA完全性の値(RIN)を得るために、Agilent(登録商標)2100バイオアナライザ(Agilent Technologies, Inc., U.S.A.)などの自動分析システムを、RNA品質の測定を行うために用いる(Schroeder, A. et al., BMC. Mol. Biol. 7 (2006) 3;Imbeaud, S. et al. Nucl. Acids Res. (2005), 33, 6, e56, 1-12)。
【0082】
化学療法レジメンの適用前に収集した腫瘍細胞のRIN値を、レジメンの実施後に、すなわちレジメンの間および/または化学療法レジメンの終了後に収集した腫瘍細胞の1つまたは複数のRIN値と比較する。患者が処置の間に腫瘍のRNA完全性に変化を示さない場合(実施例2において記された応答パターンA)、患者の腫瘍は用いた化学療法レジメンに対して耐性であると見なされるであろう。患者は、腫瘍の進行に関して高リスクであると考えられ、予後は不良であると考えられるであろう。代わりの化学療法レジメンまたは処置プロトコールを考慮すべきである。本明細書において概要した方法は、新しいレジメンに対する応答性を測定するために繰り返すことができる。
【0083】
患者が、処置中および処置後の双方において腫瘍RNA完全性の劇的な低下(>50%)を示す場合(実施例2において記された応答パターンC)、患者は化学療法に応答したと見なされ、腫瘍進行のリスクは低いであろう。患者の予後は良好であると見なされるであろう。ゼロに近い腫瘍RIN値は、化学療法に対する応答、および腫瘍進行の低リスクを大いに示しているであろう。
【0084】
患者が処置後に限って腫瘍RNA完全性の劇的な低下を示す場合(実施例2において記された応答パターンB)、患者は化学療法に応答して腫瘍の進行に関して低リスクであると見なされるであろう。患者の予後は良好であると見なされるであろう。
【0085】
患者が処置中に限って腫瘍RNAの完全性の劇的な変化を示す場合、患者はおそらく治療に反応して、疾患再発のリスクは低いであろう。これは、処置後の高いRNA品質が、処置後の高い「腫瘍」RNA完全性に戻るにもかかわらず、病変に浸潤した正常組織に由来する可能性があるためである。しかし、この場合、腫瘍が処置後に再発した可能性はある。
【0086】
上記の本発明の特定の態様に対して多数の改変、変更、および適合を行ってもよく、それらも以下の特許請求の範囲において定義される本発明の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)患者に1種または複数種の化学療法剤を一定期間投与する段階;
(b)化学療法剤を投与する期間の前、間、および後に該患者の腫瘍からRNAを抽出する段階;
(c)各時点に由来する抽出されたRNAのRNA品質を測定する段階
を含む、1つまたは複数の癌性腫瘍を有する患者における1種または複数の化学療法剤に対する腫瘍の応答性を測定する方法であって、該期間にわたってRNA品質が低下すれば腫瘍が該化学療法剤に対して応答性であることが示される、方法。
【請求項2】
RNA品質の低下の大きさが腫瘍の応答性に比例する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
RNA品質が28S rRNAおよび18S rRNAの強度値の比として測定され、該比が、抽出されたRNAのゲル電気泳動、該ゲルのエチジウムブロミド染色、および紫外光下で可視化された28S rRNAおよび18S rRNAの強度の比の算出によって得られる、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
RNA品質が、抽出されたRNAのキャピラリー電気泳動によって測定される、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
RNA品質がRNA完全性の値(RIN)として定量される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
3以下の処置後RINを有する患者が化学療法剤に対して応答性であると同定される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
3以上の処置後RINを有する患者が化学療法剤に対して非応答性であると同定される、請求項5記載の方法。
【請求項8】
RNAが腫瘍の1つまたは複数のコア生検材料から抽出される、請求項1〜7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
腫瘍の3つ以上のコア生検材料を得る、請求項8記載の方法。
【請求項10】
1つまたは複数の生検材料が画像誘導手段によって得られる、請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
画像誘導手段が、コンピューター断層撮影法(CT)、x線、超音波、および磁気共鳴画像法(MRI)からなる群より選択される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
化学療法剤がアントラサイクリンおよびタキサンからなる群より選択される、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
複数の化学療法剤が投与される、請求項1〜12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
化学療法剤がアントラサイクリンおよびタキサンを含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
化学療法剤がエピルビシンおよびドセタキセルである、請求項14記載の方法。
【請求項16】
化学療法剤の投与前に患者から得られた腫瘍細胞のRNA品質を測定する段階、および
1種または複数種の化学療法剤の投与後に測定された腫瘍細胞のRNA品質と比較する段階
を含む、1つまたは複数の癌性腫瘍を有する患者における1つまたは複数の化学療法剤に対する患者の応答性を測定するための腫瘍細胞のRNA品質の使用であって、
1種または複数種の化学療法剤の投与後のRNA品質が低下すれば患者が該化学療法剤に対して応答性であることが示される、使用。
【請求項17】
RNA品質が抽出されたRNAのキャピラリー電気泳動によって測定される、請求項16記載の使用。
【請求項18】
RNA品質が、RNA完全性の数値(RIN)として定量される、請求項17記載の使用。
【請求項19】
RNA品質が、28S rRNAおよび18S rRNAの強度値の比として定量され、該比が、抽出されたRNAのゲル電気泳動、該ゲルのエチジウムブロミド染色、および紫外光下で可視化された28S rRNAおよび18S rRNAの強度の比の算出によって得られる、請求項16記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−537647(P2010−537647A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523246(P2010−523246)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【国際出願番号】PCT/CA2008/001561
【国際公開番号】WO2009/030029
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(510060512)ローレンシャン ユニバーシティー (1)
【Fターム(参考)】