説明

癌抗原TMEFF2に対する抗体及びそれらの使用

【課題】癌、特に転移性の癌の診断及び予後及び効果的治療に使用可能な抗体の提供。
【解決手段】癌に関わるTMEFF2タンパク質に対して特異的に結合する抗体の同定及び生成。該抗体が、蛍光標識、放射性同位体及び細胞傷害性化学物質(アウリスタチン)からなる群から選択されるエフェクター成分と結合している抗体。また該抗体が、抗体断片、ヒト化抗体であり、ATCC受託番号PTA−4127を有する細胞株により産生される抗体からなる群から選ばれる抗体。前立腺癌を治療するために特に有用である医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2002年3月8日に出願されたUSSN60/362,837及び2002年12月27日に出願されたUSSN60/436,812の優先権を主張し、それらは本明細書中に援用される。
【0002】
本発明は癌に関わるTMEFF2タンパク質に対して特異的に結合する抗体の同定及び生成に関連し;そして、癌の診断、予後及び治療における、かかる抗体及びそれらを含んで成る組成物の使用に関連する。
【背景技術】
【0003】
前立腺癌は、北米及び北欧において最も高い頻度で診断される癌であり、そして男性の癌による死亡の第2番目に有力な原因である。前立腺特異的抗原(PSA)に対する血清試験を使用する前立腺癌の早期検出により、当該疾患の治療が劇的に向上した(Oestering、1992、J.Am.Med.Assoc.vol.226.pp2236〜2232、DiVitaら(1997)Cancer:Principles and Practice of Oncology、第5版、Lippincott-Raven出版)。前立腺癌の治療は主に、外科的な前立腺摘除術、放射線療法、アンドロゲンアブレーション療法及び化学療法から成る。多くの前立腺癌が有効に治療されているが、現在の療法は全て生活の質を縮小する深刻な副作用を伴う。例えば、転移性疾患を伴う患者は往々にして、アンドロゲンアブレーション療法で治療されている。化学的又は外科的去勢は、症候性転移前立腺癌のために、50年を超えて行われてきた一次処置である。このような睾丸アンドロゲン除去療法は、通常、疾患の安定化及び後退(80%の患者において)をもたらす一方で、転移性前立腺癌の進行は最終的に展開する(Panvichainら、Cancer control vol.3(No.6):pp.493〜500(1996);Afrin及びStuart、1994、J.S.C.Med.Assoc.vol.90.pp.231〜236)。転移性疾患は現在治癒不可能であると考えられている。従って、治療の一次目的は、延命すること及び生活の質を向上させることとなる(Raga、Cancer Control vol.5(No.6):pp.513〜521(1998))。
【0004】
明らかに、新規治療標的及び診断マーカーの同定は、前立腺癌の現在の治療法を向上させるために欠かすことができない。分子医学の現在の発展により、様々な免疫療法又は小分子戦略の標的として働きうる腫瘍特異的細胞表層抗原における注目が高まった。免疫療法戦略のために適切な抗原は、癌組織において非常に発現しており且つ理想的には正常な成人組織では発現していないべきである。1つのかかる抗原は、TMFEFF2である。
【0005】
TMEFF2抗原は、2つのホリスタチン様ドメイン及び保存されたEGF様ドメインを含む。このタンパク質をコードする遺伝子は、最初に、ヒトの脳のcDNAライブラリーから特性決定され(Uchidaら(1999)、Biochem.Biophys.Res.Commun.vol.266:pp.536〜602を参照のこと)、そして後者はヒト胎児脳cDNAライブラリー(Horieら(2000)、Genomics.vol.67:pp.146〜152を参照のこと)から単離された。そしてまた、例えば、Online Mendelian Inheritance in Man、No.605734;Unigene Cluster Hs.22791;LocusLink23761;などのサイトをも参照のこと。TMEFF2は、トモレグリン(tomregulin)、TR、過形成ポリープ症遺伝子1、HPP1、及びTENB2にも言及されている。TMEFF2の核酸配列は、ATCCアクセスNo.AF264150、AB0046064、AB017269、及びAF179274によって同定されうる。TMEFF2のアミノ酸配列は、ATCCアクセスNo.AAF91397、BAA90820、BAA87897及びAAD55776によって同定されうる。TMEFF2 UniGene Cluster ID No.はhs.22791であり、Locuslink ID No.は、23671及びOMIM ID No.は605734である。
【0006】
遺伝子は所定の癌症状において関わってもいる。Youngら、(2001)Proc.Nat'l Acad.Sci.USA vol.98:pp.265〜270は、結腸直腸ポリープの発現を報じている。Glynne-Jonesら(2001)Int.J.Cancer vol.94:pp.178〜184は前立腺癌のためのマーカーとしてそれを報じている。
【0007】
手術、放射線療法、及び化学療法は、癌が局在化している場合、潜在的に治療効果がある。従って、癌の早期検出は、治療のための積極的な予後のために重要である。
【0008】
従って、癌、特に転移性の癌の診断及び予後及び効果的治療のための使用できうる抗体が所望されるだろう。従って、本明細書中で提供されているものは、所定の癌の診断、予後、及び治療において使用できうる組成物及び方法である。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、驚くほど十分に内在化(internalized)され、そして治療目的のための複合抗原を作製するため特に有用である抗TMEFF2抗体を提供する。いくつかの実施態様において、本発明の抗体は、癌及び他の増殖性症状、例えば、良性増殖症状を伴うと診断される人々における治療で有用である。1つの観点において、本発明の抗体は、前立腺の増殖性の症状、例えば、良性前立腺肥大及び前立腺癌を治療するために使用できうる。他の観点において、本発明の抗体は、脳の悪性及び良性の増殖性症状、例えば、グリア細胞芽腫、乏突起細胞腫、未分化星状腫、髄膜腫、髄芽腫、及び神経芽細胞腫を治療するために使用できうる。
【0010】
詳細に、本発明は、TMEFF2発現細胞に対する選択的細胞傷害因子として特に有用である抗TMEFF2抗体を提供する。理論にとらわれることなく、本発明の抗体は、細胞傷害成分と結合された場合、TEMFF2エピトープを認識し、内在化の増加を生じそして、それによって細胞死滅を増強すると考えられている。
【0011】
本発明は、TEMFF2#19(ATCCアクセスNo.PTA-4127)のTMEFF2に対する結合を完全に阻害する抗体を提供する。ある実施態様において、前記抗体は更にエフェクター成分に対して結合している。このエフェクター成分は標識(例えば、蛍光標識など)又は細胞傷害性成分(例えば、放射性同位体又は細胞傷害性化学物質)であって良い。細胞傷害化学物質の例は、アウリスタチン(auristatin)である。
【0012】
本発明の抗体は、抗体全体又は抗体の断片でありうる。いくつかの実施態様において、免疫グロブリンはヒト化抗体である。本発明の抗体の例は、TMEFF2#19(ATCCアクセスNo.PTA-4127)である。
【0013】
本発明は、医薬的に許容できる賦形剤及び本発明の抗体を含んで成る医薬組成物をも提供する。これらの実施態様において、前記抗体は更にエフェクター成分に対して複合化(conjugated)されていて良い。エフェクター成分は、標識(例えば、蛍光標識など)又は細胞傷害性成分(例えば、放射性同位体又は細胞傷害性化学物質)であって良い。細胞傷害性化学物質の例は、アウリスタチン(auristatin)である。この医薬組成物中の抗体は、抗体全体又は抗体の断片でありうる。いくつかの実施態様において、免疫グロブリンはヒト化抗体である。本発明の抗体の例は、TMEFF2#19(ATCCアクセスNo.PTA-4127)である。
【0014】
本発明は更に、本発明の免疫グロブリンを使用する免疫アッセイを供する。これらの方法は、生物学的試料と本発明の抗体を接触せしめることによって患者に由来する生物試料中で前立腺癌細胞を検出することを伴う。本発明の固体は典型的に、蛍光標識などの標識に対して結合している。
【0015】
本発明は、前立腺癌に関連した細胞の増殖を阻害する方法を供する。この方法は、細胞と本発明の抗体を接触せしめることを含んで成る。多くの場合、癌細胞は、患者、典型的にはヒトの中にある。患者は、転移性前立腺癌を治療するために治療計画を受けるかあるいは前立腺癌を有する可能性を診断をされうる。
【0016】
本発明は、TMEFF2に対する抗体により前立腺癌を治療する方法をも供し、ここで前記前立腺癌は、一次前立腺癌、転移性前立腺癌、局所進行性の前立腺癌、アンドロゲン非依存性前立腺癌、新補助療法で治療されてきた前立腺癌、及び新補助療法による治療に対して抵抗性である前立腺癌からなる群から選択されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、TMEFF2に対する抗体を使用することで所定の癌を治療、診断及び予後するための新規試薬及び方法を提供する。詳細には、本発明は、TMEFF2発現細胞に対する選択的細胞傷害因子として特に有用である抗TMEFF2抗体を提供する。理論にとらわれることなく、本発明の抗体は、細胞傷害成分と結合している場合、TMEFF2エピトープを認識し、内在化の増加を生じ、そしてそれによって細胞死滅を増強する。加えて、本発明の抗体は、それらがグリコシル化されていない形態のタンパク質を認識するから有用である。グリコシル化されたタンパク質の部分を認識する抗体は、発現したタンパク質の一部のみを認識するからこのことは有利である。本発明は、ある部分において、およそ100のハイブリドーマ上清の分析に基づいている。高親和性結合を示す抗体のエピトープマッピングは、競合的結合分析を通じて行われた。この方法を使用することで、多くの個々のエピトープを認識する抗体が同定されている。次いで、抗体はin vitroでTMEFF2依存性細胞死について評価されている。これらの方法を使用することで、有意に細胞死を促す抗体が同定されている。
【0018】
定義
「抗体」とは、抗原を特異的に結合及び認識する、免疫グロブリン遺伝子由来のフレームワーク領域、又はそれらの断片を含んで成るポリペプチドを意味する。認識される免疫グロブリン遺伝子としては、κ、λ、α、γ、δ、ε及びμ定常領域遺伝子、並びに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が挙げられる。軽鎖はκ又はλのいずれかにクラス分けされている。重鎖はγ、μ、α、δ、又はεにクラス分けされ、それらは順に免疫グロブリンクラス、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgEにそれぞれクラス分けされる。典型的に、抗体の抗原結合領域又はその機能的に同等な領域は、結合の特異性及び親和性において最も重要であるだろう。例えば、Paul、Fundamental Immunologyを参照のこと。しかし、組換え方法は、キメラ化するため及びクラス及びエフェクター機能の変化を起こすために存在する。
【0019】
典型的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は、4つのポリペプチドのテトラマーを含んで成る。各テトラマーは、2つの同一なポリペプチド鎖のペアからなり、各ペアは1つの「軽」(約25kD)及び1つの「重」鎖(約50〜70kD)を有する。各鎖のN末端により、抗原認識のために主として働く約100〜110以上のアミノ酸の可変領域が規定される。用語、可変軽鎖(VL)及び可変重鎖(VH)は、それぞれ、これら重鎖及び軽鎖を意味する。
【0020】
抗体は、例えば、完全な免疫グロブリンとしてかあるいは様々なペプチドによる消化によって生み出された十分に特性決定された多くの断片として存在する。従って、例えば、ペプシンは、ヒンジ領域におけるジスルフィド結合の下で抗体を消化し、F(ab’)2を生み出し、Fabのダイマーはそれ自身は、ジスルフィド結合によってVH-CH1に対して結合した軽鎖である。このF(ab’)2は、ヒンジ領域におけるジスルフィド結合を破壊し、それによって当該F(ab’)2ダイマーをFab’モノマーに転換させるために穏和な条件下で還元されて良い。このFab’モノマーは本質的にヒンジ領域の部分を伴うFabである(Fundamental Immunology(Paul出版、第3版、1993)を参照のこと)。様々な抗体断片が、完全抗体の消化の観点から規定されているが、当業者は、かかる断片が化学的に又は組換えDNA法を使用することによってde novoで合成されて良いことを理解するだろう。従って、用語、抗体、とは本明細書中で使用されている場合、完全抗体の修飾によって生産された抗体断片、もしくは組換えDNA法を使用することでde novoで合成されたもの(例えば、単鎖Fv)もしくはファージディスプレーライブラリー(例えば、McCaffertyら、(1990)Nature、vol.348:pp.552〜554)を使用することで同定されたものが挙げられることをも理解するだろう。
【0021】
抗体、例えば、組換え抗体、モノクローナル抗体、又はポリクローナル抗体の調製に関して、当業界で公知の多くの技術が使用できうる(例えば、Kohler及びMilstein(1975)Nature Vol.256:pp.495〜497;Kozborら(1983)Immunology Today 4:72;Coleら、pp.77〜76 Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy(1985);Coligan(1991)Current Protocols in Immunology;Harlow及びLane(1988)Atibodies:A Laboratory Manual;及びGoding(1986)Monoclonal Antibodies:Principles and Practice(第2版)を参照のこと)。単鎖抗体を生産するための技術(米国特許第4,946,778号)は、本発明のポリペプチドに対する抗体を生産するために適合せしめることができうる。そしてまた、トランスジェニックマウス、又は他の生物、他の生物、例えば哺乳動物も、ヒト化抗体を発現させるために使用されて良い。代わりに、ファージディスプレー技術を、選定の抗原に対して特異的に結合する抗体及びヘテロメリックFab断片を同定するために使用できうる(McCaffertyら(1990)Nature、vol.348:pp.552〜554;Marksら(1992)Biotechnology Vol.10、pp.779〜783を参照のこと)。
【0022】
「キメラ抗体」とは、抗体分子であり、ここで(a)1又は複数の定常領域又はそれらの部分は、抗原結合部位(可変領域)が、異なる又は変化したクラスの定常領域、エフェクター機能及び/又は種、又はキメラ抗体に対して新たなる特性を与える全く異なる分子、例えば、酵素、毒素、ホルモン、増殖因子、薬物などに対して結合するように変化させられている、置換されている、又は交換されている;又は(b)可変領域、又はそれらの部分が変化させられている、置換されている又は異なるもしくは変化した抗原特異性を有する可変領域と交換されている。
【0023】
「エピトープ」又は「抗原決定基」とは、抗体が結合する抗原上の部位である。エピトープは、タンパク質の三次折りたたみによって並列した連続するアミノ酸又は非連続するアミノ酸の両方から形成されうる。連続するアミノ酸から形成されたエピトープは典型的に、変性剤に曝されることによっても維持されており、一方で、三次折りたたみによって形成されたエピトープは典型的に変性溶媒による処理により失われる。エピトープは、典型的に3以上、一層通常は、5又は8〜10個のアミノ酸を独特のスパイラル構造中に含む。エピトープのスパイラル構造を特定する方法は、例えば、X線結晶学及び2次原核磁気共鳴が挙げられる。例えば、「Epitope Mapping Protocols」Morris(1996年版)Method in Molecular Biology vol.66を参照のこと。
【0024】
用語「TMEFF2」タンパク質又は「TMEFF2ポリヌクレオチド」とは、核酸及びポリペプチド多型変異体、アレル、突然変異体、並びに種間相同物:(1)約60%超のヌクレオチド配列の同一性、65%、70%、75%、80%、85%、90%、好適には91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%以上のヌクレオチド配列の同一性を、好適には約25、50、100、200、500、1000以上のヌクレオチドの領域に渡る領域において、配列番号:1のヌクレオチド配列に対して有するヌクレオチド配列を有する;(2)配列番号:1のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含んで成る免疫原及びそれらの保存的修飾された変異体に対して生じた抗体、例えばポリクローナル抗体に対して結合する;(3)ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下で、ある核酸配列、又は配列番号:1のそれらの補体及び保存的修飾されたそれらの変異体に対して特異的にハイブリダイズする;又は(4)約60%超のヌクレオチド配列の同一性、65%、70%、75%、80%、85%、90%、好適には91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%以上のヌクレオチド配列の同一性を、好適には約25、50、100、200以上のアミノ酸の領域に渡り、配列番号:2のアミノ酸配列に対して有するアミノ酸配列を有するもの意味する。ポリヌクレオチド及びポリペプチド配列は、典型的に哺乳動物、例えば、霊長類、例えばヒト;げっ歯類、例えばラット、マウス、ハムスター;ウシ;ブタ、ウマ、ヤギ、又は他の動物に由来するがそれらに限定はされない。「TMEFF2ポリペプチド」及び「TMEFF2ポリヌクレオチド」としては、天然に生じる形態又は組換えの形態の両方が挙げられる。多くの様々な変異体が同定されている。LocusLink23671を参照のこと。
【0025】
「完全長」TMEFF2タンパク質又は核酸とは、前立腺癌のポリペプチドもしくはポリヌクレオチド配列又はそれらの変異体を意味し、1以上の天然に生じる野生型TMEFF2ポリヌクレオチドもしくはポリペプチド配列中に通常含まれる全ての要素を含む。例えば、完全長TMEFF2核酸は典型的に、完全長の、天然に生じるタンパク質をコードするための全エキソンを含んで成る。「完全長」とは、翻訳後プロセシングもしくはスプライシング、例えば選択的スプライシングの前、もしくは後の様々な段階でありうる。
【0026】
「生物試料」とは、本明細書中で使用されている場合、例えば、核酸又はTMEFF2タンパク質などのポリペプチド、ポリヌクレオチドもしくは転写産物を含む生物学的な組織もしくは流体の試料を意味する。かかる試料としては、霊長類、例えばヒト、げっ歯類、例えばマウス及びラットから単離された組織が挙げあられるがそれらに限定はされない。生物試料としては、生検及び検死試料などの組織の切片、組織学的な目的のために採取した凍結切片、血液、血漿、血清、唾液、便、涙、粘液、毛髪、皮膚なども挙げられる。生物試料としては、外植片及び患者の組織に由来する初代及び/又は形質転換した培養細胞物が挙げられる。生物試料は、典型的に、真核生物、最も好適には、哺乳類の、霊長類、例えば、チンパンジー又はヒト;ウシ;イヌ;ネコ;げっ歯類、例えば、天竺ネズミ、ラット、マウス;ウサギ;もしくはトリ;爬虫類;もしくは魚類から獲得されている。
【0027】
「生物試料を提供すること」とは、本発明において記載された方法中で使用するための生物試料を獲得することを意味する。往々にして、このことは動物から試料の細胞を取り出すことによって行われるだろうが、予め単離された細胞(例えば、他人によって、別な時にて、及び/又は他の目的のために単離された)によって、又はin vivoで本発明の方法を行うことによって達成されても良い。処置してある又は前歴がわかっている(outocome history)アーカイブ組織が特に有用であろう。
【0028】
用語「前立腺癌のステージ」又はその文法的に同等な用語は、癌の規模を意味し、そしてそれの本来の部位を越えて拡散しているかどうかを意味する。前立腺癌は一般に4つのステージ、小及び局在化(ステージ1)〜組織周囲への拡散(ステージ3及び4)に分けられる。もし癌が体の他の部分へと拡散していれば、これは二次前立腺癌(又は転移性前立腺癌)として認知される。前立腺癌をステージ分けする2つの系がありAmerican Urological Associationの常用の系及び前立腺血清抗原(PSA)試験による前立腺癌の検出に基づく新たな系である。この新たな系はTumor、Nodes and Metastasis. System又はTNMとして知られている。
【0029】
常用のAUA系において、ステージAは臨床的に疑わしくない前立腺癌に対応する。ステージBは、前立腺に限定された(局在化した)腫瘍に対応する。ステージCは前立腺鞘の外側にある腫瘍に対応し、そしてステージDは骨盤リンパ節中への転移に対応する。ステージD2は、遠距離にあるリンパ節、器官、軟組織又は骨へと侵入する遠距離転移癌である。
【0030】
TNM系において、ステージは次のようなものが挙げられる。T1:腫瘍が前立腺の中にあり、そして小さすぎて直腸検査の間には検出されないが、PSA試験のような試験により検出されうる。T2:腫瘍が前立腺内にあるがデジタル直腸検査の間に触知されるかあるいは超音波により現されるほど十分に大きい。往々にして症状はない。T3/T4:癌が前立腺を越えて周辺組織へと侵入している。これは局所的に進行した前立腺癌として知られている。T1及びT2腫瘍は早期前立腺癌として知られている。T3及びT4は局所的に進行した前立腺癌として知られている。もしリンパ節、骨又は体の他の部分が影響を受けていたら、これは二次又は転移性癌とよばれる。「局所的に進行した前立腺癌」とは、転移のいくつかの証拠、又は転移が進行している前立腺癌を意味する。
【0031】
用語「新補助療法」とは「新補助アンドロゲン遮断療法」としても知られており、手術前に薬物を遮断する補助ホルモンを与えることによって前立腺癌を治療することを意味する。
【0032】
用語「同一」又は%「同一」とは、2以上の核酸又はポリペプチド配列の関係から、以下に記載のデフォルトパラメータによるBLAST又はBLAST2.0配列比較アルゴリズムを使用することによって、又は手動配列決定及び視覚調査(例えば、NCBI webサイト http://ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/など)によって測定した場合、同じであるかあるいは所定の%のアミノ酸残基又は同じ(約60%の同一性、好適には70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%以上の同一性を、所定の領域に渡り、比較ウィンドウもしくは指定領域に渡り最大の対応性で比較及び配置した場合に、有する)であるヌクレオチド配列を有する2以上の配列又はサブ配列を意味する。次いで、かかる配列は「実質上同一である」といわれる。この定義は、試験配列の補体(complement)を意味するかあるいは、それに対して適合せしめられて良い。この定義は、欠失及び/又は付加を有する配列、並びに置換を有するもの、並びに天然に生じる例えば、多型又はアレル変異体、及び人工変異体をも含む。下に記載されているように、好適なアルゴリズムはギャップなどを説明できる。好適に、同一性は長さで約25アミノ酸又はヌクレオチド以上である領域に渡り、又は好適には長さで50〜100アミノ酸又はヌクレオチド以上である領域に渡り存在する。
【0033】
配列の比較に関して、典型的に、1つの配列が参照配列として働き、それに対して試験配列が比較されている。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験及び参照配列はコンピューター中に入れられており、もし必要ならば、サブ配列座標が設計され、そして配列アルゴリズムプログラムパラメーターが設計される。好適にデフォルトプログラムパラメーターが使用されて良い、又は代わりのパラメーターが設計されて良い。次いで、配列比較アルゴリズムが、プログラムパラメーターに基づき、参照配列に対する試験配列の%配列同一性を計算する。
【0034】
「比較ウィンドウ」とは、本明細書中で使用されている場合、典型的に、約20〜600、通常は約50〜約200、一層通常は約100〜約150からなる群から選択された所定数の連続する位置のうちの1つのセグメントに対する参照を含み、ここである配列が同数の連続する位置の参照配列に対して、この2つの配列が至適に配置された後に比較されうる。比較のために配列を配置する方法は当業界で公知である。比較のための配列の至適な配置は、以下の方法によって行われて良い。それは例えば、Smith及びWatermanの局所ホモロジーアルゴリズム(1988)Adv.Appl.Math vol.2:p.482、Needleman及びWunschのホモロジー配列アルゴリズム(1970)J.Mol.Biol.vol.48:p.443、Pearson及びLipmanの類似性の調査方法(1988)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA vol.85:p.2444、こらのアルゴリズムのコンピューター化された実施(GAP、BESTFIT、FASTA、及びWisconsin Genetics Software PackageにおけるTFASTA、Genetics Computer group、575 Sicience Dr.Madison、WI)又は手動配置及び視覚化調査(例えば、Ausubelら、(1995年版及び補遺)Current Protcols in Molecular biologyを参照のこと)である。
【0035】
%配列同一性及び配列類似性を決定するために適しているアルゴリズムの好適な例としては、BLAST及びBLAST2.0アルゴリズムが挙げられ、それらはAltschulら(1977)Nuc.Acid Res.vol.25:pp.3389〜3302及びAltschulら(1990)J.Mob.Biol.vol.215:pp.403〜410に記載されている。本発明の核酸及びタンパク質に関して%同一性を決定するために、本明細書中に記載されているパラメーターでBALST及びBALST2.0が使用されている。BLAST解析を行うためのソフトウェアは公にNational Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)から入手可能である。このアルゴリズムは、調査する配列における長さWの短いワード(それは、データベース配列中で同じ長さのワードと共に配置された場合、いくつかの正値化された閾値スコアTとマッチ又は満足する)を同定することによって最初に、ハイスコア配列ペア(HSP)を同定することを伴う。Tは、隣接ワードスコア閾値に言及される(上記Altschulら)。これらの初期隣接ワードヒットは、サーチャーがより長いHSPを含むそれらを発見させるための種として働く。このワードヒットは、累積配置スコアが増え得る限り各配列に沿って両方向に延びる。累積スコアは、例えば、ヌクレオチド配列、パラメーターM(マッチする残基のペアに関するリワードスコア;通常は>0)及びN(ミスマッチする残基に関するペナルティースコア;通常は<0)を使用することで計算されている。アミノ酸配列に関して、スコアリング行列は、累積スコアを計算するために使用されている。各方向におけるワードヒットの延長は以下の場合中断される。それは、累積配置スコアが、最大達成値からの数量Xによって低下する場合;1又は複数のネガティブスコアリング残基配置の集積により累積スコアが0以下になる場合;又はいずれの配列の末端に到達した場合である。BLASTアルゴリズムパラメーターのW、T及びXが配置することの感度と速度を決定する。BLASTINプログラム(ヌクレオチド配列のため)は、デフォルトとして11のワード長(W)、10の期待値(E)、M=5、N=−4及び両標準の比較を使用する。アミノ酸配列に関して、BLASTPプログラムは、デフォルトとして3のワード長、10の期待値(E)、及び50のBLOSUM62スコアリング行列(Henikoff及びHenikoff(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA vol.89:10915を参照のこと)配置(B)、10の期待値(E)、M=5、N=−4及び両標準の比較を使用する。
【0036】
BLASTアルゴリズムは2つの配列の間での類似性の統計解析(例えば、Karlin及びAltschul(1993)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA vol.90:pp.5873〜5787)をも行う。BLASTによって供される類似性の一つの基準は、最小合計確率(P(N))であり、それにより2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列の間でのマッチが偶然生じる可能性の同定が供される。例えば、核酸は、もしこの最小合計確率が、参照核酸に対して、試験核酸との比較において約0.2未満、一層好適には約0.01未満、そして最も好適には約0.001未満である場合に参照配列に類似していると考えられる。Log値は大きな負の数字、例えば、5、10、20、30、40、40、70、90、110、150、170などでありうる。
【0037】
2つの核酸配列又はポリペプチドが実質上同一である目安は、以下に記載のように、第一の核酸によってコードされたポリペプチドが、第二の核酸によってコードされたポリペプチドに対して生じた抗体と免疫学上交差反応性があることである。従って、典型的に、ポリペプチドは第二のポリペプチドに対して実質上同一であり、ここで2つのペプチドは保存的置換によってのみ異なる。2つの核酸が実質上同一である他の目安は、以下に記載のように、2つの分子又はそれらの補体が互いにストリンジェント条件下でハイブリダイズすることである。更に2つの核酸配列が実質上同一である他の目安は、当該配列を増幅するために同じ配列を使用できうることである。
【0038】
「宿主細胞」とは、発現ベクターを含み、そして発現ベクターの複製又は発現を支持する天然に生じる細胞又は形質転換細胞である。宿主細胞は、培養細胞、外植片、in vivo細胞などであって良い。宿主細胞は、大腸菌(E.coli)などの原核細胞、又は酵母、昆虫、両生類などの真核細胞、又はCHO、HeLaなどの哺乳類細胞であって良い(American Type Culture Collection catalog又はwebサイト、www.atcc.orgを参照のこと)。
【0039】
用語「単離」、「精製」又は「生物学的に純粋」とは、物質がその天然の状態で発見された場合にそれに通常付随する成分を実質上又は本質的に含まない物質を意味する。純度及び均一性は典型的に、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又は高性能液体クロマトグラフィーなどの分析化学技術を使用することで決定されている。調製物中に存在する優占物質であるタンパク質又は核酸は実質上精製されている。詳細に、単離された核酸は、天然に遺伝子に隣接し且つ当該遺伝子によってコードされる以外のタンパク質をコードするいくつかのオープンリーディングプレームから分離されている。用語「精製」とは、ある実施態様において、電気泳動ゲル中で本質的に1つのバンドを生じる核酸又はタンパク質を規定する。好適に、それは、核酸又はタンパク質が85%以上、一層好適には95%以上、そして最も好適には99%以上好適であることを意味する。「精製(purify)」又は「精製(purification)」は他の実施態様において、精製されるべき組成物から1以上の夾雑物を取り除くことを意味する。この意味において、精製は精製される化合物が相同的、例えば100%純粋であることを要さない。
【0040】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」とは、アミノ酸残基のポリマーを意味するために本明細書中交互に使用されている。この用語は、1又は複数のアミノ酸残基が、対応する天然に生じるアミノ酸の人工化学的ミメチクス(mimetics)であるアミノ酸のポリマー、並びに天然に生じるアミノ酸ポリマーであって修飾された残基を含むもの、並びに天然に生じないアミノ酸ポリマーに対して適用することができる。
【0041】
用語「アミノ酸」とは天然に生じるアミノ酸及び合成アミノ酸、並びに天然に生じるアミノ酸に対して機能が類似するアミノ酸類似物及びアミノ酸ミメチクスを意味する。天然に生じるアミノ酸は、遺伝暗号によってコードされるもの、並びに後で修飾されたアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸塩、及びO-フォスフォセリンである。アミノ酸類似物とは、天然に生じるアミノ酸と同じ基本化学構造を有し、例えば、水素、カルボキシル基、アミノ基、及びR基に対してα炭素が結合している化合物、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを意味する。かかる類似物は修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)又は修飾されたペプチド骨格を有しうるが、天然に生じるアミノ酸と同じ基本的化学構造を維持する。アミノ酸ミメチクスとは、アミノ酸の一般の化学構造とは異なっている構造を有するが、その機能は天然に生じるアミノ酸に類似する化学化合物を意味する。
【0042】
アミノ酸は、本明細書中、通常知られている3文字表記によってかあるいはIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨された1文字表記によって参照されて良い。ヌクレオチドも同様に、それら通常受け入れられている1文字表記を参照されて良い。
【0043】
「保存的修飾された変異体」は、核酸及びアミノ酸の配列の両方に当てはまる。特定の核酸配列に関して、保存的修飾された変異体とは、同一及び本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸を意味するかあるいはここで核酸がアミノ酸配列をコードしない、本質的に同一又は関連した、例えば天然に連続している配列を意味する。遺伝暗号の縮重により、多くの機能的に同一の核酸が大部分のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG及びGCUは全てアミノ酸アラニンをコードする。従って、アラニンがコドンによって指定されている全ての位置で、コドンは、コードされるポリペプチドを変化させることなく対応する記載された他のコドンへと変化されて良い。かかる核酸変異は「サイレント変異」であり、それは保存的に修飾された変異体の1つの種である。本明細書中、ポリペプチドをコードする核酸配列は、当該核酸のサイレント変異をも記載する。当業者は、所定の背景において、核酸中の各コドン(AUG(通常はメチオニンのためだけのコドン)、TGG(通常はトリプトファンのためだけのコドン)以外)は、機能的に同一の分子を得るために修飾されて良いことを認識するだろう。従って、ポリペプチドをコードする核酸のサイレント変異は、往々にして、発現産物に関して記載の配列中で内在的であるが、実際のプローブ配列に関してはそうではない。
【0044】
アミノ酸配列に関して、当業者は、核酸、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質の配列に対する個々の置換、欠失又は付加(1つのアミノ酸あるいはコードされる配列において小%のアミノ酸を変化、付加又は欠失せしめる)は、「保存的修飾された変異体」(この変化は、化学的に類似するアミノ酸によるアミノ酸の置換をもたらす)であることを認識するだろう。機能的に類似するアミノ酸を提供する保存的置換の表は当業界で公知である。かかる保存的修飾された変異体には本発明の多型変異体、種間相同物、及びアレルが加えられ、それらを排除しない。典型的に、保存的置換は互いに:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リシン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、トレオニン(T);及び8)システイン(C)、メチオニン(M)である(例えば、Creighton(1984)Proteinsを参照のこと)
【0045】
ポリペプチド構造などのマクロ分子構造は、様々な構成レベルから記載されて良い。このような構成の一般論議に関しては、Albertsら(1994)Mokecular Biology of cell(第3版)、及びCantor及びSchimmel(1980)Biophysical Chemistry Part1:The Conformation of Biological Macromoleculesを参照のこと。「一次構造」とは特定のペプチドのアミノ酸配列を意味する。「二次構造」とは、ポリペプチド内で局所的に整列した三次構造を意味する。これらの構造は通常ドメインとして知られている。ドメインは、往々にしてポリペプチドの小型単位(compact unit)を形成するポリペプチドの部分であり、そして典型的には25〜およそ500アミノ酸長である。局所ドメインは、延びたβシート及びαヘリックスなどのより低次の構成物(lesser organization)の部分によって形成される。「三次構造」とはポリペプチドモノマーの完全なる三次構造を意味する。「四次構造」とは、通常、個々の三次単位が非共有結合することによって形成された三次構造を意味する。異方性用語はエネルギー用語として知られている。
【0046】
「標識」又は「検出可能成分」とは、分光、光化学、生化学、免疫化学、化学、又は他の物理的な手段によって検出可能である手段である。例えば、有用な標識としては、蛍光色素、高電子密度試薬、酵素(例えば、通常ELISAにおいて使用されているもの)、ビオチン、ジゴキシゲニン、又はハプテン及びタンパク質もしくは、放射性標識をペプチド中に入れることによって検出可能に作られる又は当該ペプチドと特異的に反応する抗体を検出するために使用される他の実態が挙げられる。放射性標識は、例えば、3H、14C、32P、35S又は125Iである。ある場合において、特に本発明のタンパク質に対する抗体を使用する場合、放射性同位体は、以下に記載のように、毒性成分として使用されている。標識は、TMEFF2核酸、タンパク質及び抗体中に任意の位置で組み込まれて良い。抗体を標識に対して結合させるための使用される当業界で公知の方法は、Hunterら、(1962)Nature vol.144:p.954;Davidら(1974)Biochemistry vol.13:p1014;Painら(1981)J.Immunol.Meth.vol.40:p.219及びNygren(1982)J.Histochem.and Cytochem. vol.30:p.407による方法が挙げられる。放射性標識したペプチド又は放射性標識した抗体組成物の寿命は、放射性標識したペプチド又は抗体及びそれを安定化させそしてそれを分解から保護する物質を加えることによって延長されうる。放射性標識されたペプチド又は抗体を安定化する物質又は物質の組み合わせは、米国特許第5,961,955号に開示されている。
【0047】
「エフェクター」もしくは「エフェクター成分(moiety)」もしくは「エフェクター成分(component)」とは、抗体に対して、リンカーもしくは化学結合により共有的に、又はイオン、van der Waals 、静電気、もしくは水素結合により非共有的に結合する分子である。「エフェクター」は様々な分子であって良く、例えば、放射性化合物、蛍光化合物、酵素又は基質、標識、例えば、エピトープ標識、毒素など検出成分;活性化可能成分、化学療法因子;リパーゼ;抗生物質;又は例えば、β放射線「ハード(hard)」を放つ放射性同位体である。
【0048】
用語「組換え」とは、例えば、細胞、もしくは核酸、タンパク質、もしくはベクターに関する参照として使用されている場合、細胞、核酸、タンパク質もしくはベクターが、相同的な核酸もしくはタンパク質の導入又は天然核酸もしくはタンパク質の変化によって修飾されているかあるいは、当該細胞はそのようにして修飾された細胞に由来することを示す。従って、例えば、組換え細胞は、細胞の天然(非組換え)形態内で発見されていない遺伝子を発現するかあるいは本来、異常に発現する、発現している又は全く発現していない天然遺伝子を発現する。用語「組換え核酸」とは、本明細書中では、一般に、通常は、in vivoで核酸の操作、例えば、天然には通常発見されない形態でポリメラーゼ及びエンドヌクレアーゼを使用することによって形成された核酸を意味する。この方法において、様々な配列の作用可能式結合が達成されている。従って、単離された直鎖形態の核酸、又は通常は結合していないDNA分子をライゲーションすることによってin vitroで形成された発現ベクターは、どちらも本発明の目的ために考えられた組み換え体である。一度、組み換え核酸が作製されて、宿主細胞中又は生物内に再導入されれば、それは組み換えなしに、例えば、in vitro操作ではなく宿主細胞のin vivo細胞機構を使用することで複製されることが理解されるだろう。しかし、一度組み換えにより生産されたかかる核酸は、後で組み換えによらずに複製されるが、尚本発明の目的のために考えられた組み換えである。類似して、「組み換えタンパク質」とは、組み換え技術、例えば、上記のように組み換え核酸の発現を使用することにより作製されたタンパク質である。
【0049】
用語「異種」とは、核酸の部分に関して使用された場合、2以上のサブ配列であって、通常は、天然には同関係において発見されていないサブ配列を含んで成る核酸を示す。例えば、核酸は、典型的に組み換えによって生産されており、例えば、新たなる機能的核酸を作製するために配置された非類縁遺伝子に由来する2以上の配列、例えば、ある源に由来するプロモーター及び他の源に由来するコーディング領域を有する。類似して、異種タンパク質は、往々にして、2以上の配列であって、天然には、同関係において発見されない配列(例えば、融合タンパク質)を意味するだろう。
【0050】
「プロモーター」とは、核酸の転写を指示する核酸のコントロール配列のアレーとして規定されている。本明細書中で使用されている場合、プロモーターは、転写の開始部位に近い必須核酸配列、例えば、ポリメラーゼII形のプロモーターの場合、TATAエレメントを含む。プロモーターは、任意に、遠位エンハンサー又はリプレッサーエレメントを含み、それは転写の開始部位から数千ベースペア程度に位置していて良い。「構成性」プロモーターとは大抵の環境的及び発育的条件下で活性を有するプロモーターである。「誘導性」プロモーターとは、環境的及び発育的調節下で活性を有するプロモーターである。用語「作用可能式」とは、核酸発現制御配列(例えば、プロモーター、又は転写因子結合部位のアレー)と第二核酸配列間の機能的結合を意味し、ここで当該発現制御配列が、第二核酸配列に対応する核酸の転写を指示する。
【0051】
「発現ベクター」とは、組み換え又は合成によって生成され、宿主細胞中で特定の核酸の転写を可能にする一式の特定の核酸エレメントを伴う核酸構築体である。発現ベクターは、プラスミド、ウィルスの一部、又は核酸の断片でありうる。典型的に、発現ベクターとしては、プロモーターに対して作用可能式に連結した転写される核酸が挙げられる。
【0052】
表現、抗体と「特異的(又は選択的)に結合する」又は「特異的(又は選択的)免疫反応する」とは、タンパク質又はペプチドに言及する場合、タンパク質及び他の生物学の異種集団中で、当該タンパク質の存在を決定するような結合反応を意味する。従って、指定の免疫アッセイ条件下で、特異的な抗体は特定のタンパク質配列に対して、2倍以上のバックグランドで、そして一層典型的には10〜100倍のバックグランドで結合する。
【0053】
かかる条件下での抗体に対する特異的結合には、特定のタンパク質に対し選定の特異性を有する抗体が必要となる。例えば、特定のタンパク質、多型変異体、アレル、オーソロガス、及び保存的修飾された変異体、もしくはスプライス変異体、又はそれらの部分に対して生成されたポリクローナル抗体は、TMEFF2との特異的な免疫反応性がありそして他のタンパク質とはないポリクローナル抗体のみを獲得するように選択されて良い。このような選択は、他の分子と交差反応する抗体を取り除くことによって達成されうる。特定のタンパク質と特異的に免疫反応する抗体を選択するために様々な免疫アッセイ形式が使用されて良い。例えば、固層ELISA免疫アッセイは、タンパク質と特異的免疫反応する抗体を選択するために慣用的に使用されている(例えば、Harlow及びLane(1988)抗体:A Laboratory Manual for description of immunoassay formats and conditions that can be used to deterine specific immunoreactivityを参照のこと)。
【0054】
「腫瘍細胞」とは、前癌状態、癌状態、及び腫瘍における正常な細胞を意味する。
【0055】
「癌細胞」、「形質転換した」細胞又は組織培養における「形質転換」とは、必ずしも新たな遺伝物質の摂取を伴わない、突然の又は誘導された表現形の変化を意味する。形質転換は、形質転換ウィルスによる感染及び新たなゲノムDNAの組み込み、又は外来DNAの摂取により生じうるが、突然に又は内生遺伝子を突然変異せしめる、突然変異原への曝露の後にも生じうる。形質転換は、表現形の変化、例えば、細胞の不死化、異常増殖制御、非形態学的変化、及び/又は悪性腫瘍にも関連する(例えば、Freshney(1994)Culture of Animal cell:A Manual of Basic Technique(第3版)を参照のこと)。
【0056】
TMEFF2ポリペプチドの核酸からの発現
本発明の核酸は、以下に記載のように、本発明の抗体を生成するために使用できうるTMEFF2ポリペプチドを発現する様々な発現ベクターを作製するために使用できうる。発現ベクター及び組み換えDNA技術は当業者に周知(例えば、上記Ausubel並びにFernandez及びHoefflerら(1999年版)Gene Expression Systemsを参照のこと)であり、そしてタンパク質を発現するために使用されている。発現ベクターは、自己複製型染色体外ベクターかあるいは宿主ゲノム中に入り込むベクターでありうる。一般に、これらの発現ベクターとしては、TMEFF2タンパク質をコードする核酸に対して作用可能式に連結する転写及び翻訳調節核酸が挙げられる。用語「制御配列」とは、特定の宿主生物中で作用可能式に連結したコーディング配列を発現させるために使用されるDNA配列を意味する。真核生物に適した制御配列としては、例えば、プロモーター、任意にオペレーター配列、及びリボソーム結合部位が挙げられる。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、及びエンハンサーを活用するために公知である。
【0057】
核酸は、他の核酸配列と機能的関係に配置された場合「作用可能式に連結」している。例えば、プレ配列又は分泌リーダー配列のためのDNAは、ポリペプチドのためのDNAに対して、もしそれが、当該ポリペプチドの分泌に関わるプレタンパク質として発現するなら、作用可能式に連結しており;プロモーター又はエンハンサーは、もしそれが、配列の転写に影響を及ぼすならコーディング配列に対して作用可能式に連結しており;又はリボソーム結合部位は、もしそれが翻訳を促すように配置されているなら、コーディング配列に対して作用可能式に連結されている。一般に、「作用可能式に連結する」とは、連結されるDNA配列が連続しており、そして分泌リーダーの場合、連続的であり及び読み枠にある。しかし、エンハンサーは連続的である必要がない。連結は典型的に都合良い制限部位によって達成されている。もし、かかる部位が存在しなければ、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーが常用の実施に伴い使用される。転写及び翻訳調節核酸は、一般に、TMEFF2タンパク質を発現させるために使用される宿主細胞に対して適切であろう。様々な種類の適切な発現ベクター、及び適切な調節配列が様々な宿主細胞のために当業界で公知である。
【0058】
一般に、転写及び翻訳調節配列としては、プロモーター配列、リボソーム結合部位、転写開始及び停止配列、翻訳開始及び停止配列、及びエンハンサー又はアクチベーター配列が挙げられるがそれらに限定されない。好適な実施態様において、調節配列としては、プロモーター並びに転写開始及び停止配列が挙げられる。
【0059】
プロモーター配列は、構成性又は誘導性プロモーターのいずれかをコードする。プロモーターは天然に生じるプロモーターであるかあるいはハイブリッド型のプロモーターでありうる。複数のプロモーターのエレメントを組み合わせるハイブリッドプロモーターは当業界で公知であり、そして本発明において有用である。
【0060】
加えて、発現ベクターは更なるエレメントを含んで成りうる。例えば、発現ベクターは、2つの複製系を有し、従って、それは2つの生物、例えば、発現のために哺乳類又は昆虫細胞中でそしてクローニング及び増幅のために原核宿主中で維持されることが可能である。更に、発現ベクターを完全化させるために、当該発現ベクターは宿主細胞ゲノムに対して相同的な1以上の配列、及び好適には発現構築体に隣接する2つの相同配列を含む。完全ベクターは、適切な相同配列をベクター中に含ませるために選択することによって宿主細胞中の特異的な座に対して向けられうる。ベクターを完全化するための構築体は、当業界で公知である(例えば、上記Fernandez及びHoefflerを参照のこと)。
【0061】
加えて、好適な実施態様において、発現ベクターは、形質転換された宿主細胞の選択を可能にする選択的マーカー遺伝子を含む。選択遺伝子は当業界で公知であり、使用される宿主細胞とともに様々だろう。
【0062】
本発明のTMEFF2タンパク質は、TMEFF2タンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターにより形質転換された宿主細胞を、TMEFF2タンパク質の発現を誘導又は生じさせるために適切な条件下で培養することによって生産されている。TMEFF2タンパク質発現のために適切な条件は、発現ベクター及び宿主細胞の選択により様々だろうし、そして当業者により慣用の実験及び至適化を介して容易に確認されるだろう。例えば、発現ベクター中で構成性プロモーターを使用するには、宿主細胞の成長及び増殖が必要であり、一方で、誘導性プロモーターの使用には、誘導のために適切な増殖条件が必要となる。加えて、いくつかの実施態様において、収穫のタイミングが重要となる。例えば、昆虫細胞発現において使用されるバキュロウィルス系は、溶解ウィルスであり、従って、収穫時期の選択が産物収率のために重要でありうる。
【0063】
適切な宿主細胞としては、酵母、細菌、古細菌、真菌、並びに昆虫及び動物細胞、例えば哺乳類細胞が挙げられる。特に注目なのは、サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)及び他の酵母、大腸菌、バチルス・サブチリス(Bacillus Subtilis)、Sf9細胞、C129細胞、293細胞、ニューロスポーラ(Neurospora)、BHK、CHO、COS、Hela、HUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)、THP1細胞(マクロファージ細胞株)及び様々な他のヒト細胞及び細胞株である。
【0064】
好適な実施態様において、TMEFF2タンパク質は、哺乳類細胞中で発現されている。哺乳類発現系も、当業界で公知であり、そしてレトロウィルス及びアデノウィルス系が挙げられる。1つの発現ベクター系は、一般に、PCT/US97/01019及びPCT/US97/01048(これらはどちらも明らかに本明細書中に組み込まれている)に記載されたレトロウィルスベクター系である。哺乳類プロモーターの特定の使用は、哺乳類ウィルス遺伝子に由来するプロモーターであり、その理由は、ウィルス遺伝子は往々にして高次発現し、そして宿主の幅が広いからである。例えば、SV40初期プロモーター、マウス哺乳動物腫瘍ウィルスLTRプロモーター、アデノウィルス主用後期プロモーター、ヘルペスシンプレックスウィルスプロモーター、及びCMVプロモーターが挙げられる(例えば、上記Fernandez及びHoefflerを参照のこと)。典型的に、哺乳類細胞によって認識される転写終結及びポリアデニル化配列は、転写停止コドンに対して3’側に位置する調節領域であり、従って、プロモーターエレメントと一緒に、コーディング配列に隣接する。転写ターミネーター及びポリアデニル化シグナルの例としては、SV40に由来するものが挙げられる。
【0065】
外来核酸を哺乳類宿主、並びに他の宿主中に導入する方法は、当業界で公知であり、そして使用される宿主により様々であろう。技術としては、デキストラン介在トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン(polybrene)介在トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、ウィルスインフェクション、リポソーム中での1又は数個のポリヌクレオチドの封入、及びDNAの核中へ直接マイクロインジェクションが挙げられる。
【0066】
ある実施態様において、TMEFF2タンパク質はウィルス系中で発現している。細菌発現系が当業界で周知である。バクテリオファージに由来するプロモーターも当業界で公知である。加えて、合成プロモーター及びハイブリッドプロモーターも有用であり;例えば、tacプロモーターは、trp及びlacプロモーター配列のハイブリッドである。更に、細菌プロモーターとしては、細菌RNAポリメラーゼに対して結合して転写を開始する能力を有する細菌に由来しないプロモーターを天然に生じるプロモーターが挙げられる。機能的プロモーター配列に加えて、効率的リボソーム結合部位が所望されている。発現ベクターは、TMEFF2タンパク質の細菌中での分泌を担うシグナルペプチド配列をも含みうる。このタンパク質は、増殖培地中に分泌される(グラム陽性細菌)又は細胞の内膜と外膜の間に位置するペリプラズム空間に分泌される(グラム陰性細菌)。細菌発現ベクターは、形質転換した細菌株の選択を可能にする選択可能マーカー遺伝子をも含みうる。適切な選択遺伝子としては、細菌を、アンピシリン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、カナマイシン、ネオマイシン及びテトラサイクリンに対して耐性たらしめる遺伝子が挙げられる。選択可能マーカーとしては、生合成遺伝子、例えば、ヒスチジン、トリプトファン及びロイシン合成経路におけるものが挙げられる。これらの成分は、発現ベクター中に集成される。細菌のための発現ベクターは当業界で公知であり、そしてとりわけ、バチルス・サブチリス、大腸菌、ストレプトコッカス・クレミロス(Streptococcus cremoris)、及びストレプトコッカス・リビダンス(Streptococcus・lividans)(例えば上記Fernandez及びHoefflerを参照のこと)のためのベクターが挙げられる。細菌発現ベクターは、当業界で公知の方法、例えば、塩化カルシウム処理、エレクトロポレーションなどを使用することで細菌細胞中に形質転換される。
【0067】
ある実施態様において、TMEFF2ポリペプチドは昆虫細胞中で生産されている。昆虫細胞を形質転換させるための発現ベクター、詳細には、バキュロウィルスベースの発現ベクターは当業界で公知である。
【0068】
TMEFF2ポリペプチドも酵母細胞中で生産されうる。酵母発現系は当業界で公知であり、そして、サッカロミセス・セレビジアエ、カンジダ・アルビカンス及びC.マルトーサ(C.maltosa)、ハンセニュラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クルイベロミセス・フラジリス(Kluyveromyces fragilis)及びK.ラクチス(K.lactis)、ピチア・グイレリモンンジィ(Pichia Guillerimondii)及びP.パストリス(P.pastoris)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、及びヤロウィア・リポリチカ(Yarrowia lopolytica)のための発現ベクターが挙げられる。
【0069】
TMEFF2ポリペプチドは、当業界で周知の技術を使用することで、融合タンパク質として作製されても良い。従って、モノクローナル抗体を生成するために、所望のエピトープが小さければ、TMEFF2タンパク質は、免疫源を形成するために、担体タンパク質に対して融合されて良い。代わりに、TMEFF2タンパク質は、発現を増やすため、又は他の理由で融合タンパク質として作製されて良い。例えば、TMEFF2タンパク質が、TMEFF2ペプチドである場合、当該ペプチドをコードする核酸は、発現させる目的のために、他の核酸に対して連結されて良い。
【0070】
TMEFF2ポリペプチドは、発現後、典型的に精製又は単離されている。TMEFF2タンパク質は、どのような他のタンパク質が試料中に存在するかどうか依存して、当業界で公知の様々な方法により単離又は精製されうる。標準的な精製方法としては、電気泳動、分子、免疫及びクロマログラフィー技術、例えば、イオン交換、疎水性、親和性、及び逆相HPLCクロマトグラフィー、及びクロマトフォーカシングが挙げられる。例えば、TMEFF2タンパク質は、標準的な抗TMEFF2タンパク質抗体カラムを使用することで精製されうる。タンパク質濃度との関係において、限外ろ過及びダイアフィルトレーションも有用である。適切な精製技術に関する一般技術に関して、Scopes、Protein Purification(1982)を参照のこと。精製の程度は必然的にTMEFF2タンパク質の用途に依存して変わるだろう。いくつかの場合、必然的に精製は不要だろう。
【0071】
当業者は、発現したタンパク質は、野生型TMEFF2配列を有する必要はないが、野生型配列に比べて誘導体又は変異体でありうることを認識するだろう。これらの変異体は、典型的に、1又は複数の3つのクラス:置換、挿入又は欠失変異体に分けられる。通常、これらの変異体は、カセットもしくはPCR突然変異誘発もしくは他の技術を使用することで、変異体をコードするDNAを生産し、そしてこの後、上に概説した組み換え培養細胞中でDNAを発現するタンパク質をコードするDNAのヌクレオチドにおける部位特異的突然変異誘発によって調製されている。しかし、最大で約100〜150残基を有する変異タンパク質断片が、確立された技術を使用するin vitro合成によって調製されうる。アミノ酸配列変異体は、変異体の所定の性質であって、TMEFF2タンパク質アミノ酸配列の天然に生じるアレル又は種間変異体とは異なる性質を決める特徴を有する。変異体は典型的に、天然に生ずる類似体と同じ定量的生物活性を示すが、以下で概略が十分に示されているように、変更された特徴を有するように選択されても良い。
【0072】
本発明のTMEFF2タンパク質は、他の、異種ポリペプチド又はアミノ酸配列に対して融合されたTMEFF2ポリペプチドを含んで成るキメラ分子を形成する方法で修飾されても良い。1つの実施態様において、かかるキメラ分子は、TMEFF2ポリペプチドと標識ポリペプチド(抗標識抗体が選択的に結合できるエピトープを提供する)の融合を含んで成る。エピトープ標識は一般に、TMEFF2ポリペプチドのアミノ末端又はカルボキシル末端に配置されている。TMEFF2ポリペプチドのかかるエピトープ標識した形態の存在は、当該標識ポリペプチドに対する抗体を使用することで発見されうる。そしてまた、エピトープ標識の提供により、抗標識抗体を使用する親和性精製又はエピトープ標識に対して結合する他の種類の親和性マトリクスによって、TMEFF2ポリペプチドを容易に精製することを可能にする。代わりの実施態様において、キメラ分子はTMEFF2ポリペプチドと免疫グロブリン又は免疫グロブリンの特定の領域との融合を含んで成りうる。キメラ分子の二価形態のために、かかる融合はIgG分子のFc領域に対してできうる。
【0073】
様々な標識ポリペプチド及びそれらの個別の抗体が当業界で公知である。例えば、ポリ-ヒスチジン(poly-his)又はポリ-ヒスチジン-グリシン(poly-his-gly)標識;HIS6及び金属キレート化標識、flu HA標識ポリペプチド及びその抗体12CA5(Fieldら、(1988)Mol.Cell.Biol.vol.pp.2159〜2165);c-myc標識及びそれらに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7及び9E10抗体(Evanら、(1985)Molecular and Cellular Biology vol.5:pp.3610〜3616);及びヘルペスシンプレックスウィルス糖タンパク質D(gD)標識及びその抗体(Pabroskyら、(1990)Protein Engineering vol.3(No.6):pp.547〜553)が挙げられる。他の標識ポリペプチドとしては、FLAGペプチド(Hoppら、(1988)BioTechnology vol.6:pp.1204〜1210);KT3エピトープペプチド(Martinら、(1992)Sicience vol.255:pp.192〜194);チュブリンエピトープペプチド(Skinnerら、(1991)J.Biol.Chem.vol.266:pp.15163〜15166);及びT7遺伝子10タンパク質ペプチド標識(Lutz-Freyermuthら(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA vol.87:pp.6393〜6397を参照のことが挙げられる。
【0074】
癌タンパク質に対する抗体
一度TMEFF2タンパク質が生産されると、それは抗体、例えば、免疫療法又は免疫診断のための抗体を生成するために使用される。上に記したように、本発明の抗体は、TMEFF2#19(ATCCアクセスNo.PTA-4127)によって認識されるのと同じようなエピトープを認識する。他の抗体と同じエピトープを認識する特定の抗体の能力は、典型的に、ある抗体の、抗原に対して第二の抗体が結合するのを競合的に阻害する能力によって決定される。多数の競合結合アッセイが、2つの抗体間におけるのと同じ抗原に対する競合を測定するために使用できうる。アッセイの例は、下に例を記載した、Biacoreアッセイである。これらのアッセイにおいて、簡潔に、結合部位は構造的な見地から、反応物の能力、例えば異なる抗体の、他の抗体の結合を阻害する能力を試験することによってマッピングされる。2つ連続して抗体試料を十分な濃度で注入することで、同じ結合エピトープに対し、競合する抗体のペアを同定することができる。抗体試料は、各注入により有意な飽和に達する潜在性を有するべきだ。第二抗体注入物の正味結合は結合エピトープ分析を表示するものである。2つの反応レベルは、異なるエピトープによる、非競合性結合に対する完全競合性結合の境界を説明するために使用することができうる。同一及び異なる結合エピトープの結合に比較しての第二抗体注入物の結合反応の相対量は、エピトープオーバーラップの程度を決定する。
【0075】
当業界で公知の他の常用の免疫アッセイが本発明中で使用されて良い。例えば、抗体は、サンドイッチERISAアッセイを使用することで、それらが結合するエピトープによって分類分けされて良い。これは、ウェルの表層を覆うためにキャプチャー抗体を使用することによって行われる。次いで、亜飽和濃度(subsaturating concentration)の標識された抗原がキャプチャー表層に対して加えられる。このタンパク質は、特異的抗体:エピトープ相互作用により抗体に対して結合するだろう。洗浄後、検出可能成分(例えば、HRP、検出抗体として規定されている標識された抗体を伴う)が共有結合している第二抗体がELISAに対して加えられる。もしこの抗体が、キャプチャー抗体と同じエピトープを認識すれば、それは、特定のエピトープがもはや結合のために使用できないのと同じように、標的タンパク質に対して結合することができないだろう。しかし、この第二抗体が標的タンパク質上の異なるエピトープを認識するなら、それは結合することができるだろうし、そしてこの結合は、対応する基質を使用し活性のレベル(従って結合した抗体)を定量化することによって検出することができるだろう。このバックグランドは、キャプチャー及び検出抗体の両方としての単一抗体を使用することによって規定され、一方で、最大シグナルは、抗原特異的抗体でキャプチャリングすること及び抗原上の標識に対する抗体で検出することによって確立されて良い。バックグランド及び最大シグナルを参照として使用することによって、抗体を、エピトープ特異性を特定するために、ペア様態様において評価できうる。
【0076】
第一抗体は、上記の任意のアッセイを使用することで、もし第二抗体の、抗原に対する結合率が、当該第一抗体の存在下で30%以上、通常は、約40%、50%、60%又は75%以上、そして約90%以上低下しているなら第二抗体の結合を競合的に阻害すると考えられる。
【0077】
ポリクローナル抗体を調製するための方法は、当業者に公知である(例えば、上記Coligan:及び上記Harlow及びLaneを参照のこと)。ポリクローナル抗体は哺乳動物中、例えば、免疫化因子、及びもし所望されればアジュバントの1又は複数の注射によって哺乳動物中で生成されている。典型的に、免疫化因子及び/又はアジュバントは多重皮下注射又は腹腔内注射によって哺乳動物中に注射されるだろう。免疫化因子としては、図の核酸もしくはその断片もしくはそれらの融合タンパク質によってコードされたタンパク質が挙げられうる。それは、免疫化因子を、免疫化される動物中で免疫原性であることが知られているタンパク質に対して結合させるために有用である。かかる免疫原性タンパク質の例としては、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、及びダイズトリプシン阻害物質が挙げられるが、それらに限定されない。使用されて良いアジュバントの例としては、Freund’s完全アジュバント及びMPL-TDMアジュバント(モノホスホリル脂質A、合成トレハロースジコリノミコレート)が挙げられる。免疫化プロトコールは当業者によって必要異常の実験によることなく選択されて良い。
【0078】
抗体は、代わりに、モノクローナル抗体であって良い。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、例えばKohler及びMilstein(1975)Nature vol.256:p.495によって記載されたものを使用することで調製されて良い。ハイブリドーマ法において、マウス、ハムスター、又は他の適切な宿主動物が、典型的に免疫化因子により免疫化され、当該免疫化因子に対して特異的に結合するだろう抗体を生産するかあるいは生産できるリンパ球を誘導する。代わりに、リンパ球は、in vitroで免疫化されて良い。免疫化因子としては、典型的に、表1〜2の核酸によってコードされたポリペプチド、その断片、又はその融合タンパク質が挙げられる。一般に、末梢血液リンパ球(「PBL」)は、もしヒト起源の細胞が所望される場合に使用され、又は脾臓細胞もしくはリンパ節細胞は、もしヒト以外の哺乳類源が所望されている場合に使用される。次いで、リンパ球は、適当な融合剤、例えば、ポリエチレングリコールを使用することで、不死化した細胞株と融合され、ハイブリドーマ細胞が形成される(pp.59〜103、Goding(1986)Monoclonal Antibodies:Principals and Practiceを参照のこと)。不死化した細胞株は、通常、形質転換した哺乳類細胞、詳細には、げっ歯類、ウシ、及びヒト由来の骨髄腫細胞である。通常はラット又はマウスの骨髄腫細胞株が使用されている。ハイブリドーマ細胞は、特に、融合されていない不死化細胞の増殖又は生存を阻害する1又は複数の物質を好適に含む適切な培養培地中で培養されうる。例えば、もし親細胞が酵素ヒポキサンチングアニジンフォスフォリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠けば、ハイブリドーマのための培養培地は、典型的にヒポキサンチン、アミノタンパク質、及びチミジンを含む(「HAT培地」)だろうし、それらの物質はHGPRT-欠損細胞の増殖を妨げる。
【0079】
1つの実施態様において、抗体は、特異的抗体である。二重特異性抗体は、モノクローナル抗体、好適には、ヒト又はヒト化された抗体、2以上の異なる抗原に対する結合特異性を有する抗体又は同じ抗原上2つのエピトープに対して結合特異性を有する抗体である。1つの実施態様において、1つの抗原特異性は、TMEFF2タンパク質に対するものであり、そして他は任意の前立腺癌抗原に対するものである。代わりに、テトラマー型技術が多価試薬を生成しうる。
【0080】
好適な実施態様において、TMEFF2タンパク質に対する抗体は、前立腺癌を低減又は除去することができる。即ち、抗TMEFF2抗体(ポリクローナル抗体又は好適にはモノクローナル抗体のいずれか)を前立腺癌組織(又はTMEFF2を含む細胞)に対して加えることにより、前立腺癌が低減又は取り除かれうる。一般に、活性、増殖、サイズなどにおける25%以上の減少、特に好適には約50%以上、そして非常に特に好適には約95〜100%の減少が好適である。
【0081】
好適な実施態様において、TMEFF2タンパク質に対する抗体は、ヒト化抗体(例えば、Xenerex Biosciences Medarex Inc.、Abgenix、Inc.、Protein Design Lab、Inc.)である。ヒト以外(マウスなど)の抗体のヒト化形態は、ヒト以外の免疫グロブリンに由来する最小配列を含む免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はその断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2又は抗体の他の抗原結合配列)のキメラ分子である。ヒト化抗体としては、ヒト免疫グロブリン(受容者抗体)が挙げられ、ここで受容者の相補性決定領域(CDR)に由来する残基は、所望の特異性、選択性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット又はウサギなどのヒト以外の種のCDR(供与者抗体)に由来する残基によって置換されている。ある場合、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応するヒト以外の残基によって置換されている。ヒト化抗体は、受容者抗体においても、取り込まれたCDRもしくはフレームワーク配列のいずれにおいても発見されていない残基をも含んで良い。一般に、ヒト化抗体は、実質上、1以上、典型的には2つの可変領域(ここで、CDR領域の全て又は実質上全てがヒト以外の免疫グロブリンのものに対応し、そして全て又は実質的に全てのフレームワーク(FR)領域がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものに対応する)の全てを含んで成るだろう。ヒト化された抗体は、少なくとも、任意に免疫グロブリン定常領域(Fc)の部分、典型的には、ヒト免疫グロブリンの部分(Jonesら、(1986)Nature vol.321:pp.522〜525;Riechmannら、(1998)Nature、vol.332:pp323〜329;及びPresta(1992)Curr.Op.Stuct.Biol. vol.2:pp.593〜596)をも含んで成るだろう。ヒト化は本質的に、以下の方法により、げっ歯類CDR又はCDR配列を対応するヒト抗体の配列に置換することによって行われて良い。その方法とは:Winter及び協力者(Jonesら(1986)、Nature vol.321:pp.522〜525;Riechmannら(1988)Nature vol.332:pp.323〜327;Verhoyenら(1988)、Science vol.239:pp.1534〜1536)の方法である。従って、かかるヒト化された抗体は、キメラ抗体(米国特許第4,846,567号)であり、ここで完全ヒト可変領域より実質上少ない部分が、ヒト以外の種に由来する対応する配列によって置換されている。
【0082】
ヒト抗体は様々な当業界で公知の技術を使用することで生産されて良く、その方法としては、ファージディスプレーライブラリー(Hoogeboom及びWinter(1991)J.Mol.Biol.vol.227:p.381;Marksら(1991)J.Mol.Biol.vol.222:p.581)が挙げられる。Coleら、及びBoernerらの技術もヒトモノクローナル抗体を調製するために使用可能である(Coleら(1985) Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy p.77;及びBoenerら、(1999)J.Immunol.vol.147(No.1):pp.86〜95を参照のこと)。類似して、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン座をトランスジェニック動物、例えば、内生免疫グロブリン遺伝子を部分的又は完全に不活性化されているマウス中へと導入することによって作製できうる。チャレンジによって、ヒト抗体の生産が確認され、それは全て、例えば、遺伝子再配置、集成、及び抗体レパートリーについてヒトで確認されるのと非常に似ている。この方法は、例えば、米国特許第5,545,807号;第5,545,806号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,661,016号及び以下の科学刊行物:Marksら(1992)Bio/Technology vol.10:779〜783;Lonbergら(1994)Nature vol.368;pp.856〜859;Morrison(1994)Nature vol.368:pp.812〜13;Fishwildら(1996)Nature Biotechnology vol.14pp.845〜51;Neuberger(1996)Nature Biotechnology 14:826;及びLonberg及びHuzer(1995)Intern.Rev.Immunol.vol.13:pp.65〜93に記載さている。
【0083】
免疫療法とは、TMEFF2タンパク質に対して生じた抗体で前立腺癌を治療することを意味する。本明細書中で使用された場合、免疫療法は、受動的又は積極的でありうる。本明細書中に記載の受動的免疫療法は、抗体の、受容者(患者)に対する受動的輸送である。積極的免疫療法は、受容者(患者)における抗体及び/又はT細胞反応の誘導である。免疫反応の誘導は、患者に対して、抗原であって、それに対して抗体が生産される抗原を提供したことの結果である。当業者によって理解されるように、抗原は、それに対する抗体が受容者において所望されるように注射すること、又は受容者と抗原を発現することができる核酸を抗原の発現に適した条件と接触せしめ、免疫反応をもたらすことによって供されうる。
【0084】
ある実施態様において、抗体は、エフェクター成分に対して結合されている。このエフェクター成分は、任意の数の分子、例えば、放射性同位体標識又は蛍光標識などの分子であって良いかあるいは治療分子であって良い。1つの観点において、治療成分は、TMEFF2タンパク質の活性を調節する小成分である。他の観点において、治療分子は、TMEFF2タンパク質と結合しているかあるいは非常に近接した分子の活性を調節する。
【0085】
他の実施態様において、治療成分は細胞傷害性因子である。この方法において、前立腺癌組織又は細胞に対し細胞傷害因子を向ける(targeting)ことで、害を受けた(afflicted)細胞の数が減り、それにてよって、前立腺癌に関連した症状が減ることになる。細胞傷害性因子は多数あり、そして多彩であり、限定ではないが、細胞傷害薬もしくは毒素もしくはかかる毒素の活性断片が挙げられる。適切な毒素及びそれらの対応する断片としては、ジフテリアA鎖、エキソトキシンA鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、クルシン(curcin)、クロチン、フェノマイシン、エノマイシン、アウリスタチンなどが挙げられる。細胞傷害因子としては、放射性同位体を、前立腺癌タンパク質に対して生成された抗体に結合せしめることによって作製された放射性化学物質、又は放射性核種を、抗体に対して共有結合させたキレート剤に対して結合せしめることが挙げられる。治療成分を膜貫通型前立腺癌タンパク質の標的とせしめることは、前立腺癌の害を受けた領域において治療成分の局所濃度を高めるために働くのみならず、当該治療成分に関連する有害な副作用を減らすためにも働く。
【0086】
本発明の抗体の結合親和性
標的抗原に対する結合親和性は、典型的に、標準的な抗体-抗原アッセイ、例えば、Biacore競合アッセイ、飽和アッセイ、又は免疫アッセイ、例えば、ELISAもしくはRIAによって測定もしくは決定される。
【0087】
かかるアッセイは、抗体の解離定数を決定するために使用できうる。用語「解離定数」とは、抗原に対する抗体の親和性を意味する。抗体と抗原との間での結合の特異性は、もし抗体の解離定数(KD=1/K、式中、Kは親和定数である)が、<1μM、好適には<100nM、そして最も好適には<0.1nMであれば存在する。抗体分子は典型的に、より低い範囲でKDを有するだろう。KD=[Ab−Ag]/[Ab][Ag](式中、[Ab]は抗体の平衡における濃度、[Ag]は抗原の平衡における濃度であり、そして[Ab−Ag]は抗体-抗原複合体の平衡における濃度である)。典型的に、抗原と抗体との間での結合相互反応には、可逆性非共有結合、例えば、静電引力、Van der Waals力及び水素結合が挙げられる。
【0088】
本発明の抗体は特異的にTMEFF2タンパク質に対して結合する。本明細書中「特異的に結合する」とは、タンパク質に対して抗体が、約0.1mM以上、一層通常は、約1μM以上、好適には約0.1μM以上、そして最も好適には0.01μM以上のKDで結合することを意味する。
【0089】
免疫アッセイ
本発明の抗体は、任意の多くの十分に認知された免疫学的結合アッセイ(例えば、売国特許4,366,241号;4,376,110号;4,517288号;及び4,837,168号を参照のこと)を使用し、TMEFF2又はTMEFF2発現細胞を検出することができうる。一般的な免疫アッセイの概説については、Asai(1993年版)Method in Cell Biology Vol.37、Academic Press、New York;Stites&Terr(1991年版)Basic and Clinical Immunology 第7版をも参照のこと。
【0090】
従って、本発明はTMEFF2を発現する細胞を検出する方法を供する。1つの方法において、生検が対象者に対して行われ、そして回収された組織がin vitroで試験されている。次いで、前記組織又は当該組織に由来する細胞が回収され、本発明の抗TMEFF2抗体と接触せしめられる。全ての免疫複合体が生検下試料中でTMEFF2タンパク質の存在を示す。かかる検出を促すために、抗体は、放射性標識されて良いかあるいは、検出可能標識である放射性同位体標識などエフェクター分子に対して結合せしめられて良い。他の方法において、細胞は典型的な画像化システムを使用することでin vivoで検出できうる。次いで、標識の局在化が、当該標識を検出するための任意の公知の方法によって特定される。診断画像を視覚化する常用の方法が使用されて良い。例えば、MRIのために常磁性アイソトープが使用できうる。抗体の内在化は、細胞外結合(循環除去に関連した細胞外酵素環境によって除去されやすいだろう)によって供される生物の寿命を延長を超えるために重要でありうる。
【0091】
TMEFF2タンパク質は、標準的な免疫アッセイ方法及び本発明の抗体を使用することでも検出できうる。標準的な方法としては、例えば、放射免疫測定法、サンドウィッチ免疫アッセイ(ELISAなど)、蛍光免疫アッセイ、ウェスタンブロット、親和性クロマトグラフィー(固層に対して結合した親和性リガンド)、及び標識した抗体によるin situ検出が挙げられるがそれらに限定はされない。
【0092】
医薬及びワクチン組成物の投与
本発明の抗体は医薬組成物において処方されて良い。従って、本発明は治療上有効な量の抗TMEFF2抗体を投与するための方法及び組成物をも提供する。的確な量は治療の目的に依存するだろうし、そして公知の技術を使用する当業者により確認されるだろう。例えば、Anselら、(1999)Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery;Lieberman(1992)Pharmaceutical Dosage Forms(Vol.1〜3)、Dekker、ISBN 0824770846、082476918X、082471692、082471698;Lloyd(1999)The Art、Science and Technology of Pharmaceutical Compounding Amer Pharm.Assn.;and Picker(1999)Dosage Calculations Thomsonを参照のこと。癌分解、全身対局所デリバリー、及び新タンパク質合成の速度の調整、並びに年齢、体重、一般的な健康、性別、食事、投与の時間、薬物相互作用及び症度は必須であり、そして当業者による実験によって確認可能であろう。更に組成物の使用並びに前立腺癌を診断及び治療する方法を更に開示するU.S.S.N09/687,576は、本明細書中、参照によって組み込まれている。
【0093】
本発明の目的の「患者」には、ヒト及び他の動物、特に哺乳動物が含まれる。従って、本方法は、ヒト治療及び獣医用途の両方に対して適用可能である。好適な実施態様において、患者は、哺乳動物、好適には霊長類であり、そして最も好適な本発明の実施態様において患者はヒトである。
【0094】
本発明の抗体の投与は、上で論じた様々な経路において行うことができ、その経路は、経口、皮下、静脈内、鼻腔内、経皮、腹腔内、筋内、肺内、膣内、直腸内、又は眼内が挙げられるが、それらに限定はされない。
【0095】
本発明の医薬組成物は、患者に対する投与に適した形態における本発明の抗体を含んで成る。好適な実施態様において、医薬組成物は、水溶性形態であり、例えば、医薬的に許容できる塩として存在し、それは酸及び塩基付加塩の両方を含むことを意味する。「医薬的に許容できる酸付加塩」とは、無機酸の例えば、塩化水素酸、塩化臭素酸、硫酸、硝酸、リン酸など、並びに有機酸の例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンルホン酸、サリチル酸などで形成されている生物学的有効な遊離塩基を維持し且つ生物学的ではない又は本来不都合であるものを意味する。「医薬的に許容できる塩基付加塩」としては、無機塩基、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウムなどに由来するものが挙げられる。特に、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、及びマグネシウム塩が好適である。医薬的に許容できる有機性非毒性塩基としては、第一、第二及び第三アミン、置換されたアミン、例えば、天然に生じる置換されたアミン、環状アミン及び塩基性イオン交換樹脂、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トレチルアミン、トリプロピルアミン、及びエタノールアミンの塩が挙げられる。
【0096】
医薬組成物としては、1又は複数の以下の:担体タンパク質:例えば、血清アルブミン;緩衝剤;充填剤;例えば、微結晶性セルロース、ラクトース、コーンスターチ及び他のデンプン;結合剤;甘味料及び他の風味剤;着色剤;及びポリエチレングリコールが挙げられる。
【0097】
医薬組成物は、投与の方法に依存して様々な単位投与形態において投与されて良い。例えば、経口投与のために適した単位投与形態としては、粉末、錠剤、ピル、カプセル及びロゼンジが挙げられるがそれらに限定されない。抗体が経口的に投与される場合には、消化から保護されるべきだと認識されている。このことは、典型的に、その分子と組成物を複合体化せしめ酸による加水分解及び酵素による加水分解に対して耐性にすること、又はその分子を適切に耐性担体、例えば、リポソームもしくはタンパク質保護バリアー中に詰め込むことのいずれかによって達成される。因子を消化から保護する手段は当業者に公知である。
【0098】
投与のための組成物は通常、医薬的に許容できる担体、好適には水性担体中に溶かされた本発明の抗体を含んで成るだろう。様々な水性担体、例えば塩類緩衝液などが使用できうる。これらの溶液は、滅菌されており且つ一般に不都合な事項を伴わない。これらの組成物は、常用の当業界で周知の技術によって滅菌されて良い。この組成物は、医薬的に許容できる補助物質を、必要に応じ、生理的条件に近づけるため、例えば、pH調節剤及び緩衝剤、毒性調節剤、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどを含みうる。これらの製剤中での活性剤の濃度は、非常に幅広く多形であって良く、流体の体積、粘度、体重など選定の投与の特定の態様及び患者の要請に基づいて予め選択されるだろう(例えば、(1980)Remington’s Pharmceutical Science(第18版);及びHardmanら(2001年版)Goodman及びGilman:The Pharmacological Basis of Therapeutics)を参照のこと)。
【0099】
従って、静脈内投与のための典型的な医薬組成物は、患者につき一日あたり約0.1〜10mgでありうる。特に、薬物が、隔離された部位に対して投与されそして血流中に入らない場合、例えば、体空隙(body cabity)又は器官の内腔に入る場合、約0.1から最大で約100mg/患者/日の投与量が使用されて良い。有意により高い投与量が局所投与において可能である。非経口投与可能組成物を調製するための実際の方法は当業者に周知であり、例えば、上記Remington’s Pharmceutical Science並びにGoodman及びGilman:The Pharmacological Basis of Therapeutics)を参照のこと。
【0100】
本発明の抗体を含む組成物は治療又は予防処置のために投与されて良い。治療用途において、組成物は、疾患(癌など)で苦しむ患者に対して、当該疾患及びその合併症を治療又は少なくとも部分的に阻む量で投与される。このことを達成するのに十分な量は、「治療上有効な量」として規定されている。この使用のための有効な量は疾患の症度及び患者の健康の全体的な状態により変わるだろう。この組成物の単一又は多重投与は、必要に応じて且つ患者によって寛容された場合、投与量及び頻度に依存して投与されうる。全ての事象において、組成物は、患者を有効に治療するために十分な量の本発明の因子を提供するべきだ。哺乳動物における癌の進行を予防又は減速せしめることができる調節物質の量は、「予防的に有効な投与量」に言及される。予防処置のために必要となる詳細な投与量は哺乳動物の医学的条件及び病歴、特に予防される癌、並びに他の因子、例えば、年齢、重量、性別、投与経路、効率などに依存するだろう。かかる予防処置は、例えば、従来癌を有していた哺乳動物において癌の再発を予防するため、又は有意な進行性癌を有する可能性がある哺乳動物において使用されて良い。
【0101】
本発明の前立腺癌タンパク質調節化合物は、単独でもしくは更なる前立腺癌調節化合物もしくは他の治療因子、例えば、抗癌剤又は治療を伴い投与されて良いことが理解されるだろう。
【0102】
いくつかの実施態様において、本発明の抗体は、所望の治療組成物(例えば、抗癌剤)を標的細胞(例えば、前立腺癌細胞)に対してデリバリーするために標的化リポソームを調製するのに使用されて良い。抗腫瘍薬物の標的化デリバリーのための免疫リポソームの調製及び使用は、Mastrobattistaら(1999)Advanced Drug Delivery Reviews Vol.40:pp.103〜127を参照のこと。
【0103】
リポソームは脂質二重層に基づくベシクル構造物である。それらは、20nm程度の小ささであり、且つ直径は10μm程度の大きさである。それらは、ユニラメラ(たった1つの二重層が水性コアを取り囲む)又はマルチラメラ(いくつかの二重層が集中的に水性コアの方に向けられている)でありうる。本発明のリポソームは、標準的なベシクル形成脂質から形成されており、その脂質としては、ベシクル形成脂質は一般に、中性及び負に帯電したリン脂質及びステロール、例えばコレステロールが挙げられる。脂質の選択は、一般に、例えば、血流中でのリポソームのサイズ及び安定性を考慮することによって導かれる。
【0104】
様々な標的因子(例えば、本発明のモノクローナル抗体)を使用するリポソームの標的化は、当業者に周知である(例えば、米国特許第4,957,773号及び4,603,044号を参照のこと)。標的因子をリポソームに対して結合せしめるために標準的な方法が使用できうる。抗体標的化されたリポソームは、例えば、タンパク質Aを組み込むリポソームを使用することで構築できうる。例えば、Renneisenら(1990)J.Biol.Chem.Vol.265:pp.16337〜16342;及びLeonettiら(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA Vol.87:pp.2448〜2451を参照のこと。
【0105】
様々な方法がリポソームを調製するために使用可能であり、例えばSzokaら(1980)Ann.Rev.Biophys.Bioeng Vol.9:p.467;米国特許第4,235,871号;4,501,728号及び4,837,028号に記載されている。1つの方法により異種サイズの多ラメラベシクルが生み出される。この方法において、ベシクル形成脂質は、適切な有機溶媒もしくは溶媒系中に溶かされており、そして真空もしくは不活性ガス中で乾燥され薄い脂質の膜を形成する。もし所望されれば、この膜は、適切な溶媒、例えば、tertブタノール中に再度溶かされ、そして凍結乾燥されて一層均一な脂質混合物(より容易に水和された粉末様形態における)を形成する。この膜は、標的化薬物及び標的化成分(抗体)の水性溶液で覆われ、そして水和が、典型的に15〜60分に渡り撹拌しながら可能になる。生じる多ラメラベシクルのサイズ分布は、脂質を一層激しく撹拌する条件下で水和することによってかあるいはデオキシコール酸塩などの可溶化デタージェントを加えることによって、より小さいサイズのほうへとシフトさせることができうる。
【0106】
診断及び/又は予後用途において使用するためのキット
診断、調査、及び上に示された治療用途において使用するために、キットも本発明によって提供されている。診断及び調査用途において、かかるキットは以下の:アッセイ試薬、緩衝剤、及び本発明のTMEFF2特異的抗体のいずれか又は全部を含みうる。治療製品は、無菌塩類溶液及び他の医薬的に許容できるエマルション及び懸濁塩基を含みうる。
【0107】
加えて、キットには、本発明の方法を実施するための指示(例えば、プロトコル)を含む説明資料が含まれうる。説明資料は典型的に、手書又は印刷の説明資料が挙げられるがそれらに限定はされない。かかる説明を保存しそれらをエンドユーザーにつなぐことができる媒体は本発明によって熟考されている。かかる媒体としては、電気保存媒体(磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(例えば、CD-ROM)などが挙げられる。かかる媒体には、かかる説明資料を提供するインターネットサイトに対するアドレスも含まれうる。
【実施例】
【0108】
実施例1
BIAcore(登録商標)によって測定した場合に、共有結合により固定されたTMEFF2-FLAGタンパク質に対する結合についてのオフレート(off rate)(Kd)基づいて、約100の初期集合から約12の抗TMEFF2ハイブリドーマ上清を選択した。最も低い解離速度定数を示す上清を、よりラージスケール精製のために選択した。抗体TMEFF2#19、TMEFF2#10、TMEFF2#18、TMEFF2#20、TMEFF2#21の可変領域の配列を表1に示す。全抗原濃度範囲に渡りTMEFF2-FLAGに対する結合を測定することにより、各精製された抗体についての動力学的評価を行った。次いで、BIAapplication Handbook Biacore AB、BIAapplications Hndbook、AB版、1998、Application Notes、Note 101(June 1995);Daissら(1994)Methods:companion to Methods in Enzymology Vol.6 pp.143〜156に記載されている世界的に適合された手順(global fitting procedure)を使用することにより親和定数(KD)を決定した。加えて、ペア様エピトープマッピングを競合的結合分析により行った。これを、TMEFF2-FLAG表層を飽和量の1つの試料抗体に対して曝露せしめ、そして第二番目に注入された抗体の反応レベルを測定することによって達成した。この方法を使用することで、多くの個々のエピトープを認識する抗体を更なる研究のために選択した。
【0109】
目的の各抗体を、ドラスタチン10誘導体である合成毒素アウリスタチン(Int.J.Oncol.Vol.15:pp.367〜72(1999))(pAE)に対して共有結合させ、in vitroにおいてTMEFF2依存性細胞死を評価した。先ず数日に渡り線形に細胞増殖をする細胞密度を最初に測定することによって、細胞死アッセイ(Proc.Nat’l Acad.Sci.USA Vol.93:pp.8618〜23(1996))を実施した。次いで、分裂する細胞の集団を、複数の濃度の、毒素結合TMEFF2抗体(又はネガティブコントロール)と1時間に渡りインキューベートし、しかる後に抗体の除去及び穏やかな洗浄した。4日後、Clltiter96アッセイ(Promega)を使用することによって細胞の生存性を決定した。この方法において、安定してTMEFF2(PC3-TMEFF2)を発現する前立腺癌細胞株を発現しない親細胞株(PC3)と比較した。
【0110】
BIAcoreによって測定した場合、異なるエピトープに対応する2つの抗体を、in vitroで細胞の生存に影響するそれらの能力について評価した。これらの抗体の1つ、TMEFF2#19-pAEは、PC3-TMEFF2細胞における細胞死を見掛け上有意に促すが、親細胞株においては有意に促すことはない。他の抗体、#21-pAPも細胞死を示すが、幾分#19-pAEに劣る。PC3細胞中で細胞表層マーカーを認識しないネガティブコントロール抗体、TIB-pAEは、どちらの細胞株中でも細胞の生存に影響を及ぼさない。加えて、他の前立腺癌細胞株であって、少量の表層TMEFF2を発現することが特定されているLnCAPは、TIB-pAEに比べて#19-pAEに対して感受性であることをも示した。これらの結果により、#19-pAEが有力であり且つTMEFF2発現細胞に対する選択細胞傷害因子であることが示された。
【表1】

【表2】

【表3】

【0111】
TMEFF2#19抗体を用いたFACS分析によって評価した場合に、比較的少量のTMEFF2タンパク質を癌細胞株の細胞表層上で検出することができる。従って、毒素を結合させた#19抗体の、この標的を特異的に発現する細胞を殺傷することにおける効果は驚くべきものであった。しかし、内在化されるべき特異的抗体:標的組み合わせの能力を評価するために計画された実験により、殺傷における毒素結合抗TMEFF2抗体の有効性を説明する新たなるデータが得られた。この特定の標的タンパク質は、信じられないほど速い速度で内在化することが明らかになった。これらの内在化実験において、TMEFF2を発現する細胞を様々な温度、そして様々な時間で、抗TMEFF2抗体の存在下でインキュベーションした。細胞を、抗TMEFF2抗体と4℃で1時間に渡りインキュベーションした後、細胞を洗浄して更に、蛍光標識した抗マウス抗体とインキュベーションした。蛍光顕微鏡によって、細胞表面におけるTMEFF2に対する特異的抗体結合が低いレベルであることが確認された。対照的に、細胞を、37℃で1時間に渡り、タンパク質の往来(trafficking)及び内在化を可能にする温度でインキュベーションし、次いで透過処理して蛍光標識した抗マウス抗体で染色する場合、大部分の蛍光が細胞内で検出される。かかるデータは、特異的な抗体:標的の組み合わせが内在化されていることを示しており、この結果は、さらに検出工程の前に細胞を酸洗浄工程に供することにより確認することができる。酸洗浄は、細胞表層に尚も存在する全てのタンパク質を取り除き、後方の内在化された抗体:標的タンパク質のみを残す。他の抗体:標的組合せ、例えば、ヘルセプチン:Her2及び抗エプヒリン3:エプヒリンA3とは対照的に、これらの実験は、特異的抗TMEFF2抗体によって認識されるTMEFF2タンパク質は、非常に急速に内在化されることが示され、そしてまた細胞表層タンパク質のほぼ完全な内在化が1時間以内に確認されている。TMEFF2の驚くべき効率的な内在化を示すこれらのデータは、毒素結合抗TMEFF2抗体の殺傷効率を説明する。
【0112】
実施例2
上記標準的な技術を使用することで、ヒト化TMEFF2#19抗体を生成した。4つのヒト化重鎖可変領域及び3つのヒト化軽鎖可変領域の配列を表2に示している。重鎖及び軽鎖可変領域は、結合部位を組み合わせるため、及び試験した組み合わせのなかで、結合親和性を維持するために使用されて良い。これらの抗体を、in vivoマウスモデルにおいてin vivoでの腫瘍細胞の増殖を阻害するために使用できうる。
【表4】

【表5】

【0113】
実施例3:アウリスタチンEを結合させた抗TMEFF2抗体は前立腺癌腫瘍をin vivoで標的として殺す
TMEFF2遺伝子は高度且つ特異的に臨床前立腺癌試料中で発現している。TMEFF2遺伝子のタンパク質産物が前立腺癌を治療するための治療標的であることを証明するために、ヒト前立腺癌細胞株LNCAPをSCID(重度免疫欠損合併)マウスにおいてモデル化した。遺伝子発現解析により、TMEFF2が、組織培養中、プラスチック上で増殖したLNCAP細胞において、そしてまたSCIDマウスの外植腫瘍として増殖させた場合も、非常に良く発現していることが示された。
【0114】
毒素を結合させた抗TMEFF2抗体(#19-pMMVCAE)のin vivo効果を特定するために、LNCAP細胞をSCIDマウス中、外植腫瘍として増殖させた。腫瘍が所定のサイズ(平均100mm3)に到達した後、動物を3つの群に分け、そしてa)コントロールビヒクル、b)#19-pMMVCAE、又はc)イソ型コントロールMMVCAE(LNCAP細胞の表層上で分子を認識しない抗体)のいずれかによる処理に供した。結合抗体を0.25mg/kgの薬物当量(約5mg/kgの抗体薬物結合体)で使用し、そして4日間隔で投与した。腫瘍サイズを週2回測定した。動物の体重を、実験全体にわたって測定し、そして血清PSA(前立腺特異的抗原)レベルを実験中様々な実験間隔で測定した。
【0115】
結果により、#19-pMMVCAEによる処理はLNCAP腫瘍増殖を有意に減らしたことが示された。実際には、確立されたLNCAP腫瘍は、サイズを減らし(100mm3未満)、血清PSA(前立腺腫瘍量の代替マーカー)レベルを有意に下げ(<10ng/ml)、しかも動物の体重は安定なままであり且つ動物は見掛け上健康になった。このことは、コントロールビヒクル又はイソ型コントロールMMVCAEを受けたマウスとは対照的である。これらのマウスにおいて腫瘍は急速に増え、腫瘍を移植した50〜60日後に、そして腫瘍のサイズが腫瘍移植前より巨大(>500mm3)になったので屠殺した。さらに、当該実験動物はかなり体重が減少し、見掛け上瀕死の状態になり、そして有意に高い血清PSAレベルを有していた(>350ng/ml)。LNCAP腫瘍を患うマウスを、ヒト化#19-pMMVCAE(例2を参照)により処理することにより、マウス抗体で処理した場合と類似する結果、例えば定着した腫瘍後退、血清PSAレベルの低下、及び動物の見掛け上の健康、が確認された。
【0116】
これらの結果は、TMEFF2タンパク質が前立腺癌及びTMEFF2発現を示す他の前立腺疾患(例えば、良性前立腺過形成−BPH)を治療するための新規治療標的であることを示す。実際に、抗TMEFF2治療は、前立腺癌及びBPH患者のより一層有効な治療を可能にし、しかも手術、放射線及び化学療法による治療の必要性を減らすことだろう。
【0117】
実施例4:臨床試料におけるTMEFF2の免疫組織化学的分析により前立腺癌における有意なタンパク質発現が示される
前立腺癌患者中で、標的TMEFF2タンパク質がどのようにして広がるのかを特定するために、免疫組織化学(ICW)を、局所前立腺癌を示す患者(Gleason等級 3〜5)の前立腺全摘出術に由来する臨床標本に対して行った。加えて、前立腺癌の少数のリンパ節転移及び進行したD2ステージ前立腺癌試料を分析した。
【0118】
これらの臨床試料に対してIHCを行うために、TMEFF2に対して向けられたモノクローナル抗体(クローン#19)を前立腺癌標本の組織マイクロアレー及び個々のスライド上で使用した。組織マイクロアレーを、1.0mmの組織コア生検を培地密度組織マイクロアレー(Beecher Instruments、Silver Spring、MD)中へと、Kononeらによって記載された技術((1998)Nature Med vol.4:pp.884〜847)を使用して、組み込むことによって生成した。前立腺全摘出術パラフィン供与体のヘマトキシリン及びエオシン染色した鋳型片塊を結節性再生の領域及び病理学者による癌の領域について印をつけた。これらの片をガイドとして使用し、癌に隣接する(癌から2cm以下)結節性再生のコア1〜2個及び癌のコア2〜4個を、各前立腺全摘出術標本の各パラフィン供与体塊から収集し、そして直接受容者アレー塊中に導入した。コアは、それぞれ癌において示される一次、二次及び三次Gleasonパターンに由来するものを伴う。正常な前立腺、リンパ節転移標本、及びD2ステージ標本を常用の組織片として載せた。
【0119】
TMEFF2を染色するための免疫組織化学(IHC)を、慣用的な処理をした、パラフィン包埋組織標本に行った。これらの標本の4μmの切片を切断し、Superfrost Plus接着スライド(Lomb Scientific、Sydney、Australia)上に載せ、そして対流オーブン中75℃で2時間に渡り加熱して、スライドに対する接着を促した。LNCAP及びPC-3前立腺癌細胞株のパラフィン包埋ペレットをそれぞれ、ポジティブ及びネガティブコントロールとして使用した。切片のワックスを落とし、そしてEDTA/クエン酸緩衝剤中でアンマスキングする目に再水和させ、次いで抗TMEFF2抗体で染色した。抗TMEFF2シグナルを、液体3,3’−ジアミノベンジリデンPlus(DAKO corporation、Carpinteria、CA)を基質として伴うDAKO En Vision Plus Labeled Polymer(DAKO Corporation Carpinteria CA)を使用することで検出した。対比染色をヘマトキシリン及びScottの青色染色溶液を使用することで行った。全TMEFF2免疫染色は細胞質染色性であり、そして染色の強度を、細胞質染色顆粒の密度により段階的に、ネガティブ、弱、適度、又は強として分けた。
【0120】
結果から抗TMEFF2染色は、専ら核のない前立腺上皮細胞の細胞質及び膜又はストロマ染色に限られていることが示された。良性前立腺組織は、正常な前立腺標本にて確認されるような弱〜適度ないくつかのTMEFF2発現及び良性前立腺過形成(BPH試料)において確認される弱〜適度な染色を示した。癌に隣接する過形成の領域における発現も、試験した多くの場合において適度な染色を示した。前立腺癌集団(n=241)は、176の場合において強染色を示し、これは、前立腺癌患者の大部分がTMEFF2の発現を示していることを証明している。TMEFF2陽性は、局所的に進行した疾患(D2ステージ)場合の4/6及びリンパ節転移病巣の3/5においても検出され、この標的の発現が進行したステージの疾患において維持されていることを示す。
【0121】
正常な非前立腺体組織のTMEFF2タンパク質に関する免疫染色の強度は、転写プロファイリングにおいて検出されたRNA発現のレベルと一貫している。脳のみがTMEFF2発現のレベルが低かった。以下の正常な組織では発現の検出がなかった。それは、膀胱、頸部、小腸、脊髄、子宮筋層、すい臓、皮膚、結腸、肝臓、心臓、腎臓、精巣、肺、副腎、骨格筋、脾臓及びリンパ節である。このデータは、TMEFF2の前立腺及び前立腺癌特異性を裏付ける。
【0122】
これらの結果は、TMEFF2発現腫瘍細胞の抗体薬物結合体が介在する死滅と組み合わせて、TMEFF2が前立腺癌を治療するために優れた治療標的であることを示す。
【0123】
実施例5:前立腺癌のアンドロゲン非依存性の開始を遅延するため及び/又はアンドロゲン非依存性疾患の治療をするためのTMEFF2抗体の使用
前立腺癌はホルモンにより調節される疾患であり、男性に生涯の晩年において影響を及ぼす。進行したケースの場合は、治療されていない前立腺癌がリンパ節及び骨に転移する。かかる場合における現在の治療は、化学的又は外科的ホルモンアブレーション療法によって腫瘍を養うアンドロゲン増殖刺激物質を阻害することからなる(Galbraith及びDuchesne、(1997)Eur.J.Cancer Vol.33:pp.545〜554)。抗アンドロゲン治療の残念な結果とは、アンドロゲン非依存性癌が進行することである。アンドロゲンにより調節される遺伝子、例えば、前立腺特異的抗原(PSA)をコードする遺伝子は、ホルモンアブレーション療法によりオフになるが、腫瘍がアンドロゲン-非依存性になると再出現する(Akakuuraら(1993)Cancer、Vol.pp.2782〜2790)。
【0124】
アンドロゲン非依存性前立腺癌に対するアンドロゲン依存性前立腺癌の進行を研究するために、ヒトCWR22前立腺癌異種移植片モデルをヌードマウス(Pretlowら、(1993)J.Natl.Cancer Inst.Vol.85:pp.394〜398を参照のこと)において増殖させた。このCWR22異種移植片はオスのヌードマウスで増殖させた場合アンドロゲン依存性である。アンドロゲン非依存性サブ細胞株は、オスのマウスにおいて最初にアンドロゲン依存性腫瘍を確立することによって誘導できうる。次いで、増殖刺激物質(アンドロゲン)の一次源を除去し、腫瘍後退をもたらすためにマウスを去勢した。3〜4月以内で、分子事象が腫瘍再発を促し、そしてアンドロゲン非依存性腫瘍として増殖し始める。例えば、Nagabhushanら、(1996)Cancer Res.Vol.56:pp.3042〜3046;Amlerら、(2000)Cancer Res.Vol.60:pp.6134〜6141;及びBubendorfら(1999)J.Natl.Cancer Inst.Vol.91:pp.1758〜1764を参照のこと。
【0125】
CWR22異種移植片モデルを使用することで、我々は、転移、アンドロゲン依存性〜アンドロゲン非依存性、の間に生じる遺伝子発現の変化(WO02098358を参照のこと)を予め観測しておいた。腫瘍をオスのヌードマウスにおいて皮下的に増殖させた。腫瘍を去勢後の様々な時間で収穫した。時間点は、去勢後0〜125日に及ぶ。去勢により腫瘍後退がもたらされた。120日以後、腫瘍が再発し、そしてアンドロゲンの不在下で増殖を開始した。
【0126】
収穫した腫瘍の遺伝子発現プロファイリングを、Eos Hu03オリゴヌクレオチドマイクロアレー(Affymetrix Eos Hu03)を使用することで達成した。我々の結果は、アンドロゲンアブレーション療法に関連し有意な遺伝子発現変化を示した数百の遺伝子を同定した。いくつかの遺伝子は、CWR22腫瘍(去勢前及び去勢後1〜5日)のアンドロゲン依存性増殖段階に関係し、そしていくつかの遺伝子は、アンドロゲン後退段階(去勢後10〜82日、腫瘍後退及び/又は腫瘍増殖静止状態を特徴とする)に関連し、そしていくつかの遺伝子はCWR22のアンドロゲン非依存性増殖(去生後120日超)に関連した。WO2098358を参照のこと。
【0127】
TMEFF2をコードする遺伝子は、アンドロゲン後退実験の全体を通して高い発現レベルを示した。最も高い発現レベルは、アンドロゲン依存性CWR22異種移植片(TMEFF2タンパク質の存在に関する免疫組織化学によって確認した)において、そしてアンドロゲン非依存性CWR22腫瘍新生(去生後120日超)で確認された。しかしなお、より低い、有意な発現が去勢後10〜82日後(アンドロゲン後退段階)に腫瘍において検出された。
【0128】
アンドロゲン非依存性前立腺癌を予防するために、CWR22腫瘍を抱えるマウスを、アンドロゲンアブレーション療法の後、アウリスタチンEに対して結合させた抗TMEFF2抗体(#19-pMMVCAE)で処理した。この目的は、アンドロゲン後退期(去勢後10〜82日後)の間に#19-pMMVCAEにより後去勢処理することで、アンドロゲン非依存性CWR22腫瘍増殖が始まるのが遅延することを示すことである。CWR22腫瘍は、オス免疫欠損マウスにおいて2〜3週に渡り増殖した。次いで、マウスを、去勢し腫瘍後退を誘導してアンドロゲン後退期に入れた。去生の20日後、腫瘍を、例3に記載のように#19-pMMVCAEで処理した。#19-pMMVCAEの有意な効果は、それ自身、アンドロゲン非依存性の開始を遅延した(例えば、去勢後5月以上)ことで明らかである。このことにより、アンドロゲンアブレーション療法により治療されている、進行ステージの前立腺癌患者は、ヒト化#19-pMMVCAEでの治療されることにより非常に恩恵を被るだろうことが示唆されるだろう。これらの患者は、アンドロゲンアブレーション療法の後、少なくともより長い生存時間を非常に満喫するだろうし、そして前立腺癌の完治の可能性もある。
【0129】
#19-pMMVCAE治療の有意ではない効果の理由は、いくつかの潜在的な要因にある。それは:(a)CWR22異種移植片腫瘍がアウリスタチンEに対して耐性でありうる;(b)腫瘍細胞がアンドロゲン後退期の間効率的に#19-pMMVCAEを内在化しない可能性がある;又は(c)TMEFF2タンパク質発現がアンドロゲン後退期の間有意に減少しうる、ことである。これらの問題を解決するために治療の変更が有効である。
【0130】
アンドロゲン非依存性前立腺癌を治療するために、CWR22腫瘍を抱えるマウスを、アンドロゲン非依存性の開始の時に#19-pMMVCAEで処理した。この目的は、アンドロゲン非依存性の出現(去勢後>120日)の間に#19-pMMVCAEで去勢後処理をすることで、アンドロゲン依存性CWR22腫瘍の後退がもたらされるだろうことを示すことである。CWR22腫瘍は、オス免疫欠損マウス中2〜3週に渡り増殖する。次いで、このマウスを、去勢し腫瘍後退を誘導してアンドロゲン後退期に入れた。10日後、腫瘍はアンドロゲン非依存性態様で増殖し始め、これらの腫瘍を例3に記載のように#19-pMMVCAEで処理した。#19-pMMVCAEの有意な効果は、それ自身、アンドロゲン非依存性腫瘍の後退において明らかであろう。このことは、アンドロゲンアブレーション療法により治療されており、そしてアンドロゲン非依存性腫瘍増殖の形態における再発及び転移を患う患者は、ヒト化#19-pMMVCAEでの処理により非常に恩恵を被るだろうことが示唆されるだろう。代替治療を現在有さないこれらの患者は、アンドロゲン非依存性前立腺癌の出現後、少なくともより長い生存時間を非常に満喫するだろうし、そしてこの疾患の完治の可能性もあるだろう。
【0131】
上記の例は、本発明の範囲を限定することなく、例示の目的のために記載されていることが理解されるだろう。全ての刊行物、一連のアクセスNo.、及び本明細書中で引用された患者は、あたかも各個々の刊行物又は特許出願が特異的且つ個別に参照によって組み込まれるように、本明細書中参照によって組み込まれている。
【0132】
全てのUniGeneクラスターID NO.(http://www.ncbi.nlm.gov/unigeneを参照のこと)及びアクセスNo.は本明細書中、GenBank配列データベースについでであり、そしてアクセスNo.は、本明細書中、参照によって組み込まれている、GenBankは当業界で公知であり、例えば、Bensonら(1998)Nucleic Acid Reserch Vol.26:pp.1〜7を参照のこと。配列は、他のデータベース、例えば、European Molecular Biology Laboratory(EMBL)及びDNA Database of Japan(DDBJ)からも入手可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TMEFF2に対するTMEFF2#19の結合を競合阻害する抗体。
【請求項2】
前記抗体が、蛍光標識、放射性同位体及び細胞傷害性化学物質からなる群から選択されるエフェクター成分に対して更に結合している、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記細胞傷害性化学物質がアウリスタチン(auristatin)である、請求項2に記載の抗体。
【請求項4】
前記抗体が、抗体断片、ヒト化抗体、及びTMEFF2#19からなる群から選択される、請求項1に記載の抗体。
【請求項5】
前記TMEFF2#19が癌細胞上にある、請求項1に記載の抗体。
【請求項6】
医薬的に許容できる賦形剤及び請求項1に記載の抗体を含んで成る医薬組成物。
【請求項7】
前記抗体が、蛍光標識、放射性同位体及び細胞傷害性化学物質からなる群から選択されるエフェクター成分に対して更に結合している、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記細胞傷害性化学物質がアウリスタチンである、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記抗体がヒト化抗体である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記抗体がTMEFF2#19である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前立腺癌細胞を患者由来の生物試料中で検出する方法であって、当該生物試料と請求項1に記載の抗体を接触せしめることを含んで成る方法。
【請求項12】
前記抗体が蛍光標識に対して更に結合している、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前立腺癌に関連した細胞の増殖を阻害する方法であって、当該細胞と請求項1に記載の抗体を接触せしめる段階含んで成る方法。
【請求項14】
前記抗体が抗体断片である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記前立腺癌細胞が患者の中にある請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記患者が霊長類である請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記患者が、転移性前立腺癌を治療するための治療計画を経験している、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記患者が転移性前立腺癌を有する疑いがある、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
配列番号:22、配列番号:24、配列番号:26、もしくは配列番号:28、配列番号:30、配列番号:32、もしくは配列番号:34を含んで成る抗体。
【請求項20】
エフェクター化合物に対して更に結合している、請求項19に記載の抗体。
【請求項21】
前記抗体が、配列番号:21、配列番号:23、配列番号:25、配列番号:27、配列番号:29、配列番号:31、及び配列番号:33によってコードされたタンパク質を含んで成る、請求項19に記載の抗体。
【請求項22】
医薬的に許容できる賦形剤及び請求項19に記載の抗体を含んで成る医薬組成物。
【請求項23】
癌細胞を患者由来の生物試料中で検出する方法であって、当該生物試料と請求項19に記載の抗体を接触せしめることを含んで成る方法。
【請求項24】
前立腺癌に関連した細胞の増殖を阻害する方法であって、当該細胞と請求項19に記載の抗体を接触せしめる段階を含んで成る方法。
【請求項25】
前立腺癌をTMEFF2に対する抗体で治療する方法であって、当該前立腺癌が、一次前立腺癌、転移性前立腺癌、局所的に進行した前立腺癌、アンドロゲン非依存性前立腺癌、新補助療法により治療されてきた前立腺癌、及び新補助療法による治療に対して抵抗性のある前立腺癌からなる群から選択される方法。

【公開番号】特開2011−121950(P2011−121950A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−280694(P2010−280694)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【分割の表示】特願2003−574131(P2003−574131)の分割
【原出願日】平成15年3月7日(2003.3.7)
【出願人】(509189086)アボット バイオセラピューティクス コーポレイション (11)
【Fターム(参考)】