説明

癌標的性に優れたタンパク質複合体及びその製造方法

【課題】
癌標的性に優れたタンパク質複合体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
本発明は、水系で自己集合体を形成して、30〜400nmの大きさのナノ粒子を形成するアルブミン−胆汁酸複合体及びその製造方法に関するものである。本発明のアルブミン−胆汁酸複合体は、癌標的性が優秀で、疎水性抗癌剤封入が可能であり、近赤外線蛍光体が結合された形態で製造することができるので、癌診断または治療のための新規ナノ粒子造影剤及びナノ粒子薬物伝達システムに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌標的性に優れたタンパク質複合体及びその製造方法、より詳細には、水系で自己集合体(self-aggregates)を形成して30〜500nmサイズのナノ粒子を形成する、アルブミン−胆汁酸複合体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルブミン(albumin)は、血液内で20日以上循環する非常に安定したタンパク質で、既存の低分子化学薬物、タンパク質または抗体などを化学的にアルブミンに結合させて多様な薬物の生体内安定性を高める薬物伝達システム(Drug Delivery System)に使用されている。代表的な疎水性抗癌剤であるドキソルビシン(doxorubicin)(非特許文献1)やメソトレキセート(methotrexate)(MTX)(非特許文献2)などが、化学的にアルブミンに結合して癌標的性を高め、薬物の血液内安定性を高めることについて、研究が進行された。
【0003】
アルブミンを使用した薬物伝達体は、アルブミンが癌組織に高い標的性を有する特性を利用したものである。アルブミンに蛍光体を付けたり放射線同位元素を付けたりして癌組織を有する小動物を映像化して、多量のアルブミンが癌組織に選択的に蓄積することが分かり(非特許文献3)、これは癌組織周辺の拡張された血管で発生する増進された透過性及び停滞性(the enhanced permeability and retention;EPR)効果によって現れることが分かる。ゆえに、多様な抗癌剤、タンパク質または抗体によってアルブミンを化学的に修飾する場合、純粋な薬物より血液内で循環時間が増加して、特に癌組織での蓄積効率が優れた結果が報告された(非特許文献4)。
【0004】
しかし、アルブミンに抗癌剤を化学的に修飾する時、抗癌剤が化学的に結合して抗癌剤の抗癌効果が減少したり、アルブミンで抗癌剤が分解されるメカニズムが明確に解明されていないので、多様な抗癌剤の誘導体が発生する問題があり、アルブミンの固有な特性を維持するためには、化学的に修飾する抗癌剤の数が、アルブミン分子当り1〜3個に制限される問題点がある(非特許文献4)。
【0005】
最近、このような問題点を解決するために、アメリカン・バイオサイエンス(American BioSciences)社は、疎水性抗癌剤であるパクリタキセル(Paclitaxel)をアルブミンにジェット気流を使用して物理的に封入し、100〜200nmの大きさを有するナノ粒子薬物伝達体を開発してFDAの承認を受け、現在、乳癌の転移癌治療用にアブラキサン(Abraxane)という商品名で販売をしている。開発されたアルブミンナノパーティクル薬物伝達体は、癌組織に対する標的性に優れ、薬物の治療効果も大きく改善した。
【0006】
以上のことに鑑みて、本発明者等は、既存のアルブミンを使用した薬物伝達体が有している副作用を克服するための方法を研究した結果、アルブミンに胆汁酸である5β−コラン酸(5β-cholanic acid)を化学的に修飾して、30〜400nmの粒子サイズを有するアルブミンナノ粒子を開発した。前記開発したアルブミン−胆汁酸複合体は、既存アルブミン(2〜5nm)より粒子度が10〜100倍程度増加したナノ粒子であり、癌組織に対する標的性が大きく向上し、自己集合体を形成して、該自己集合体内部に疎水性抗癌剤を物理的に含むようにしてミセルの長所を有することにより、癌診断または治療のための新規ナノ粒子造影剤及びナノ粒子薬物伝達システムとしての利用が可能であることを明らかにすることで本発明を完成した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Cancer Research,1993年,第53巻,4238−4242頁
【非特許文献2】Anticancer Drugs,1997年,第8巻,835−844頁
【非特許文献3】Cancer Research,1986年,第46巻,6387−6392頁
【非特許文献4】Journal of Controlled Release,2008年,第132巻,171−183頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、人体内で存在して生体適合性に優れたアルブミンを基本素材に使用して製造した癌標的性が優秀で疎水性抗癌剤の封入が可能なアルブミン−胆汁酸複合体、及びそれを使用した抗癌剤伝達体及び癌診断造影剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は、親水性アルブミンと疎水性胆汁酸で構成され、水溶液で自己集合体を形成する薬物伝達用アルブミン−胆汁酸複合体を提供する。
【0010】
また、本発明は、
1)親水性アルブミンを水溶性溶媒に溶解してアルブミン溶液を製造する工程、
2)疎水性胆汁酸を有機溶媒に溶解して胆汁酸溶液を製造する工程、
3)前記工程1)のアルブミン溶液に、工程2)の胆汁酸溶液を加えた後、撹拌して反応液を製造する工程、及び
4)前記工程3)の反応液を透析して未反応胆汁酸を除去した後、凍結乾燥する工程
を含む、前記アルブミン−胆汁酸複合体の製造方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記アルブミン−胆汁酸複合体の薬物伝達体の製造における使用を提供する。
【0012】
また、本発明は、
1)前記アルブミン−胆汁酸複合体に抗癌剤を封入させる工程、及び
2)前記抗癌剤が封入されたアルブミン−胆汁酸複合体を個体に投与する工程
を含む癌治療方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、前記アルブミン−胆汁酸複合体に近赤外線蛍光体が結合されたアルブミン−胆汁酸−近赤外線蛍光体複合体を含む癌診断用造影剤を提供する。
【0014】
また、本発明は、
1)前記造影剤を個体に投与する工程、及び
2)近赤外線を照射して癌組織を映像化する工程
を含む癌診断方法を提供する。
【0015】
併せて、本発明は、前記アルブミン−胆汁酸−近赤外線蛍光体複合体の癌診断用造影剤の製造における使用を提供する。
【0016】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0017】
本発明は、親水性アルブミンと疎水性胆汁酸で構成され、水溶液で自己集合体を形成する薬物伝達用アルブミン−胆汁酸複合体を提供する。
【0018】
前記アルブミン−胆汁酸複合体は、アルブミンのリジン基のアミノ基(−NH)と胆汁酸のカルボキシル基(−COOH)とが、ペプチド結合する構造を有することが好ましいが、これに限定されない。
【0019】
本発明のアルブミン−胆汁酸複合体は、さらに近赤外線蛍光体が結合されたアルブミン−胆汁酸−近赤外線蛍光体複合体を形成することが好ましいが、これに限定されない。
【0020】
前記近赤外線蛍光体は、シアニン(Cyanine;Cy)、フルオレセイン(fluorescein)、テトラメチルローダミン(tetramethylrhodamine)、ボデピー(BODIPY)及びアレクサ(Alexa)からなる群から選択される1または2以上であることが好ましく、Cy5.5であることがさらに好ましいが、これに限定されない。
【0021】
本発明のアルブミン−胆汁酸−近赤外線蛍光体複合体は、下記の構造式で示すものが好ましいが、これに限定されない。
【0022】
【化1】

【0023】
前記式において、Aはアルブミンのリジン基を表わし、
Bはアルブミンのリジン基に結合された胆汁酸を表わし、Cは胆汁酸に結合された近赤外線蛍光体を表わし、
Dは追加的な結合物質であり、例えば、造影剤に使用される場合、放射線同位元素またはガドリニウム金属イオンなどを表示するものである。また、aはアルブミンタンパク質内のリジン基の数を示して1〜59の値を有し、bは胆汁酸が結合した数を示して1〜59の値を有し、cは近赤外線蛍光体が結合した数を示して1〜10の値を有し、dは追加的な結合物質が結合した数を示して0〜10の値を有する。
【0024】
前記アルブミンは、ヒトアルブミン(human albumin)、その断片またはその変異体であることが好ましいが、これに限定されない。アルブミンは、人体内で存在して生体適合性が優秀であり、生体内の安定性が優秀で血液内での生体分布度が高くて十分な時間、癌組織に継続的に蓄積する特性を有する。特に、アルブミンは、タンパク質内に多くのリジン基を含んでいて、多様な抗癌剤、蛍光剤または放射性同位元素などの化学的修飾が容易である。
【0025】
前記胆汁酸は、疎水性物質であり、下記[化学式1]の5β−コラン酸であることが好ましいが、これに限定されず、デオキシコール酸(deoxycholic acid)、タウロデオキシコール酸(taurodeoxycholic acid)、タウロコール酸(taurocholic acid)及びグリコケノデオキシコール酸(glycochenodeoxycholic acid)からなる胆汁酸誘導体群から選択される1または2以上を使用することが可能である。
【0026】
【化2】

【0027】
本発明のアルブミン−胆汁酸複合体は、アルブミンの親水性基と胆汁酸の疎水性基による両親媒性によって、水系でミセルと類似の球形自己集合体を形成することができる。
【0028】
本発明のアルブミン−胆汁酸複合体は、ナノ粒子の直径が20nm〜500nmの範囲である粒子サイズであることが好ましく、30nm〜400nmの範囲である粒子サイズであることがさらに好ましいが、これに限定されない。前記アルブミン−胆汁酸複合体の粒子サイズは、含有される胆汁酸の量によって決定され、胆汁酸はアルブミン重量対比10〜50重量%で含まれ得る。
【0029】
本発明のアルブミン−胆汁酸複合体は、疎水性抗癌剤を含むことができる。
【0030】
本発明のアルブミン−胆汁酸複合体の内部は、疎水性胆汁酸で成り立っていて、胆汁酸の一部の親水性部分は、アルブミンと結合しているので、アルブミン−胆汁酸複合体の内部は疎水性が非常に強い。これを利用して、アルブミン−胆汁酸複合体の内部には疎水性抗癌剤が入り易いので、アルブミン−胆汁酸複合体内部に物理的に抗癌剤を含ませることができる。アルブミン−胆汁酸複合体を構成する内部物質と内部に入る抗癌剤の性質が疎水性で、非常に類似しているので、化学的結合では制限されている薬物含有量を増やすことができ、その効果は、他の伝達体より非常に優れている。
【0031】
本発明のアルブミン−胆汁酸複合体の内部に物理的に含まれ得る抗癌剤として、すべての種類の疎水性抗癌剤を使用することができ、具体的な例としては、ドセタキセル(Docetaxel)、シスプラチン(cis-platin)、カンプトテシン(camptothecin)、パクリタキセル(paclitaxel)、タモキシフェン(Tamoxifen)、アナストロゾール(Anastrozole)、グリベック(Gleevec)、5−フルオロウラシル(5−FU)、フロクスウリジン(Floxuridine)、リュープロリド(Leuprolide)、フルタミド(Flutamide)、ゾレドロネート(Zoledronate)、ドキソルビシン(Doxorubicin)、ビンクリスチン(Vincristine)、ゲムシタビン(Gemcitabine)、ストレプトゾシン(Streptozocin)、カルボプラチン(Carboplatin)、トポテカン(Topotecan)、ベロテカン(Belotecan)、イリノテカン(Irinotecan)、ビノレルビン(Vinorelbine)、ヒドロキシウレア(hydroxyurea)、バルルビシン(Valrubicin)、レチノイン酸(retinoic acid)系列、メソトレキセート(Methotrexate)、メクロレタミン(Mechlorethamine)、クロラムブシル(Chlorambucil)、ブスルファン(Busulfan)、ドキシフルリジン(Doxifluridine)、ヴィンブラスチン(Vinblastin)、マイトマイシン(Mitomycin)、プレドニソン(Prednisone)、テストステロン(Testosterone)、ミトキサントロン(Mitoxantron)、アスピリン(aspirin)、サリチル酸(salicylates)、イブプロフェン(ibuprofen)、ナプロキセン(naproxen)、フェノプロフェン(fenoprofen)、インドメタシン(indomethacin)、フェニルタゾン(phenyltazone)、シクロホスファミド(cyclophosphamide)、デキサメタゾン(dexamethasone)、プレドニゾロン(prednisolone)、セレコキシブ(celecoxib)、バルデコキシブ(valdecoxib)、ニメスリド(nimesulide)、コルチゾン(cortisone)及びコルチコステロイド(corticosteroid)からなる群から選択される1または2以上であることが好ましいが、それに限定されない。
【0032】
本発明者等は、アルブミン−胆汁酸−Cy5.5複合体の疎水性抗癌剤の封入効果を調べるため、アルブミン−胆汁酸−Cy5.5複合体を溶解した溶液とタキソール(Taxol)を溶解した溶液を混合、撹拌及び遠心分離した後、定量した。その結果、本発明のアルブミン−胆汁酸−Cy5.5複合体は、30〜50%の抗癌剤封入効率を示し、胆汁酸の濃度によって抗癌剤の封入効率が調節された。
【0033】
本発明のアルブミン−胆汁酸複合体は、純粋アルブミンに比べて顕著な癌標的特異性を有する。
【0034】
本発明者等は、アルブミン−胆汁酸−Cy5.5複合体の癌組織内蓄積効果を調べるために、アルブミン及びアルブミン−胆汁酸−Cy5.5をそれぞれ皮膚癌細胞が注入されたマウスに静脈注射した後、一定時間が経過した後、近赤外線の照射を実施した。その結果、本発明のアルブミン−胆汁酸−Cy5.5誘導体は、純粋アルブミンに比べて癌蓄積効率が大きく改善し、胆汁酸の濃度によって癌蓄積効率が調節された。
【0035】
したがって、本発明のアルブミン−胆汁酸複合体は、生体適合性に優れ、水溶液状態で容易にナノ粒子を形成して、アルブミンに化学的に修飾した疎水性コラン酸の濃度によって、ナノ粒子の大きさ、抗癌剤封入効率及び癌蓄積効率の調節が可能で、疎水性抗癌剤を容易に封入して癌組織内蓄積効率が優れているので、癌診断または癌治療の新しい薬物伝達システムの成分に使用することができることが分かった。
【0036】
また、本発明は、
1)親水性アルブミンを水溶性溶媒に溶解してアルブミン溶液を製造する工程、
2)疎水性胆汁酸を有機溶媒に溶解して胆汁酸溶液を製造する工程、
3)前記工程1)のアルブミン溶液に工程2)の胆汁酸溶液を加えた後、撹拌して反応液を製造する工程、及び
4)前記工程3)の反応液を透析して未反応胆汁酸を除去した後、凍結乾燥する工程
を含む前記アルブミン−胆汁酸複合体の製造方法を提供する。
【0037】
前記製造方法において、工程1)の親水性アルブミンは、生分解性、生体適合性が優れた天然高分子である水溶性アルブミンであることが好ましく、ヒトアルブミン、その断片またはその変異体であることがより好ましいが、これに限定されない。
【0038】
前記水溶性溶媒では、親水性アルブミンを溶解することができるすべての水溶性溶媒が使用可能であり、水を使用することが好ましい。前記アルブミンは、水溶性溶媒100mlに対して830〜840mg添加することが好ましいが、これに限定されない。
【0039】
前記製造方法において、工程2)の疎水性胆汁酸は、すべての胆汁酸類が使用可能であり、前記[化学式1]の5β−コラン酸を使用することが好ましい。前記有機溶媒では、疎水性胆汁酸を溶解することができるすべての有機溶媒が使用可能であり、メタノールを使用することが好ましい。前記胆汁酸は、有機溶媒100mlに対して6〜60mg添加することが好ましいが、これに限定されない。
【0040】
前記製造方法において、工程3)の反応は、胆汁酸溶液をアルブミン溶液にゆっくり滴下した後、それを撹拌することが好ましいが、これに限定されない。ここで、胆汁酸とアルブミンを結合させるための触媒剤を使用することができ、前記触媒剤として、1−エチル−3−(3−ジメチル−アミノプロピル)カルボジイミド[1-ethyl-3-(3-dimethyl-aminopropyl)carbodiimide;EDC]または、N−ヒドロスクシンイミド(N-hydrosuccinimide;NHS)を使用することが好ましいが、これに限定されない。前記触媒剤としてEDCを使用する場合は、前記胆汁酸に対して0.9〜1.1重量倍使用して、NHSはEDC使用量の1.4〜1.6重量倍使用するのが好ましいが、これに限定されない。前記触媒剤を胆汁酸とアルブミンの反応液に加えて15〜30時間撹拌することが好ましく、20〜25時間撹拌することがより好ましいが、これに限定されない。これは、反応時間が前記範囲を逸脱すると、胆汁酸とアルブミンの結合が効果的に成り立たなくなり得るからである。
【0041】
前記で製造された工程3)の反応液に、抗癌剤を有機溶媒に溶解した抗癌剤溶液を滴下させて本発明の自己集合体を形成するアルブミン−胆汁酸複合体内部に抗癌剤を封入する工程をさらに含むことができる。
【0042】
前記アルブミン−胆汁酸複合体内部に封入する抗癌剤として、すべての種類の疎水性抗癌剤を使用することができ、具体的な例としては、ドセタキセル、シスプラチン、カンプトテシン、パクリタキセル、タモキシフェン、アナストロゾール、グリベック、5−フルオロウラシル(5−FU)、フロクスウリジン、リュープロリド、フルタミド、ゾレドロネート、ドキソルビシン、ビンクリスチン、ゲムシタビン、ストレプトゾシン、カルボプラチン、トポテカン、ベロテカン、イリノテカン、ビノレルビン、ヒドロキシウレア、バルルビシン、レチノイン酸系列、メソトレキセート、メクロレタミン、クロラムブシル、ブスルファン、ドキシフルリジン、ヴィンブラスチン、マイトマイシン、プレドニソン、テストステロン、ミトキサントロン、アスピリン、サリチル酸、イブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、インドメタシン、フェニルタゾン、シクロホスファミド、デキサメタゾン、プレドニゾロン、セレコキシブ、バルデコキシブ、ニメスリド、コルチゾン及びコルチコステロイドからなる群から選択される1または2以上であることが好ましいが、それに限定されない。ここで、抗癌剤を溶解する溶媒として前記抗癌剤を溶解することができるすべての溶媒が可能であり、エチルアルコールを使用することが好ましい。
【0043】
本発明のアルブミン−胆汁酸複合体内部に抗癌剤を物理的に封入する方法は、化学的結合時の最大封入率が10%程度に制限されていることに比べて、封入率が30〜50%と顕著に高く、化学的結合時の限界を克服して薬物含有量を大幅に増やすことができる。
【0044】
前記製造方法において、工程4)の透析は、通常の方法によって実施することができ、未反応胆汁酸が除去された反応液は、凍結乾燥の工程をさらに経て、本発明のアルブミン−胆汁酸複合体を製造することができる。
【0045】
前記で製造された工程4)のアルブミン−胆汁酸複合体に近赤外線蛍光体を結合させてアルブミン−胆汁酸−近赤外線蛍光体複合体を製造する工程をさらに含むことができる。
【0046】
前記アルブミン−胆汁酸複合体を溶媒に溶解したアルブミン−胆汁酸複合体溶液に、近赤外線蛍光体を溶媒に溶解した溶液を滴下及び撹拌した後、液体クロマトグラフィーで分離した後、凍結乾燥する工程を含んでアルブミン−胆汁酸−近赤外線蛍光体複合体を製造することが好ましいが、これに限定されない。
【0047】
前記近赤外線蛍光体は、シアニン(Cy)、フルオレセイン、テトラメチルローダミン、ボデピー及びアレクサからなる群から選択される1または2以上であることが好ましく、Cy5.5であることがさらに好ましいが、これに限定されない。
【0048】
前記アルブミン−胆汁酸複合体及び近赤外線蛍光体を溶解した溶媒は、PBSであることが好ましいが、これに限定されない。前記近赤外線蛍光体は、アルブミン−胆汁酸複合体に対して、2重量部〜5重量部を使用することが好ましいが、これに限定されない。
【0049】
また、本発明は、前記アルブミン−胆汁酸複合体の薬物伝達体の製造における使用を提供する。
【0050】
前記薬物は、抗癌剤であることが好ましく、前記抗癌剤は、アルブミン−胆汁酸複合体の内部に物理的に含まれ得るすべての種類の疎水性抗癌剤を使用することができる。
【0051】
本発明のアルブミン−胆汁酸複合体は、親水性アルブミンと疎水性胆汁酸で構成され、水溶液で自己集合体を形成し、内部に疎水性抗癌剤を封入することができ、優れた癌特異性を有するので、抗癌剤伝達体の製造において構成成分として使用することができる。
【0052】
また、本発明は、
1)前記アルブミン−胆汁酸複合体に抗癌剤を封入させる工程、及び
2)前記抗癌剤が封入されたアルブミン−胆汁酸複合体を個体に投与する工程
を含む癌治療方法を提供する。
【0053】
本発明のアルブミン−胆汁酸複合体は、親水性アルブミンと疎水性胆汁酸で構成され、水溶液で自己集合体を形成し、内部に疎水性抗癌剤を封入することができ、優れた癌特異性を有するので、抗癌剤伝達体として使用することができる。
【0054】
一般的に自己集合体は、親水性基と疎水性基とを有した両親媒性分子が水溶液で会合して形成する球形集合体で、親水性基は球形集合体の外部に疎水性基は内部に集まるようになる[Adv. Drug Deliv. Rev.,1996年,第21巻,107頁]。したがって、疎水性を有する多くの抗癌剤を効率的に伝達する体系に広く使用されている。このような自己集合体を形成する両親媒性高分子を使用した薬物伝達方法は、標的細胞に対する選択性を充分に示しながら正常細胞への毒性を顕著に減らして、長期間薬物が持続的に放出されるようにする薬物伝達体系として、癌を治療する新しい概念の治療法の研究に使用することができる。
【0055】
したがって、本発明のアルブミン−胆汁酸複合体内部に疎水性抗癌剤が封入された剤形は、一般低分子量の抗癌剤よりEPR効果によって癌組織に対する選択性が高く、より多い量が癌組織に蓄積されて効果的に抗癌作用を発揮することができる長所があり、主鎖に使用された親水性アルブミンと結合した疎水性胆汁酸によって、水溶液でミセルと類似の球形自己集合体を自発的に形成して抗癌剤の伝達体として標的指向的で、持続的薬物放出が可能な高い抗癌効果を発揮することができる薬剤として、癌治療に有用である。
【0056】
また、本発明は、親水性アルブミンと疎水性胆汁酸で構成され、水溶液で自己集合体を形成し、内部に疎水性抗癌剤を封入することができるアルブミン−胆汁酸複合体に近赤外線蛍光体が結合された、アルブミン−胆汁酸−近赤外線蛍光体複合体を含む癌診断用造影剤を提供する。
【0057】
前記近赤外線蛍光体は、シアニン(Cy)、フルオレセイン、テトラメチルローダミン、ボデピー及びアレクサからなる群から選択される1または2以上であることが好ましく、Cy5.5であることがさらに好ましいが、これに限定されない。
【0058】
前記癌診断造影剤は、放射線同位元素、量子ドット(quantum dot)及びMRI造影剤をさらに含むことができ、これに限定されないで一般的な造影剤に含むことができる物質は、すべて含むことができる。
【0059】
また、本発明は、
1)前記造影剤を個体に投与する工程、及び
2)近赤外線を照射して癌組織を映像化する工程
を含む癌診断方法を提供する。
【0060】
本発明のアルブミン−胆汁酸−近赤外線蛍光体複合体は、純粋アルブミンより巨大なナノ粒子を形成することで、癌組織のEPR効果によって癌組織に対する選択性が高くて癌組織の蓄積効率が優秀であり、生体内の滞留期間が既存アルブミンより顕著に長いという長所がある。また、近赤外線蛍光フィルターによって近赤外線蛍光が発生して、近赤外線、PET/SPECT、及びCCDカメラによって生体内映像が可能であり、近赤外線照射時、1mmの小さな癌の早期診断が可能なので、新規造影剤として癌の診断に有用である。
【0061】
併せて、本発明は、前記アルブミン−胆汁酸−近赤外線蛍光体複合体の癌診断用造影剤の製造における使用を提供する。
【0062】
本発明のアルブミン−胆汁酸複合体は、純粋アルブミンより巨大なナノ粒子を形成することで、癌組織のEPR効果によって癌組織に対する選択性が高くて癌組織の蓄積効率が優秀であり、生体内の滞留期間が既存アルブミンより顕著に長いという長所がある。また、近赤外線蛍光フィルターによって近赤外線蛍光が発生して、近赤外線、PET/SPECT、及びCCDカメラによって生体内で映像が可能であり、近赤外線照射時、1mmの小さな癌の早期診断が可能なので、癌診断用造影剤の製造において構成成分に使用することができる。
【発明の効果】
【0063】
本発明のアルブミン−胆汁酸複合体は、純粋アルブミンより巨大なナノ粒子を形成してEPR効果によって癌組織に対する選択性が高くて癌組織の蓄積効率が優秀で、生体内の滞留期間が既存アルブミンより大きく増加して、水系で自己集合体を形成して疎水性抗癌剤の封入が可能で薬物伝達体として活用が可能であり、近赤外線蛍光体を結合して、小さな癌の早期診断が可能なので、癌組織の長期的な映像及び治療に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は、アルブミン−胆汁酸複合体の製造方法を示した図である。
【図2】図2は、アルブミン−胆汁酸−Cy5.5複合体の近赤外線蛍光分光光度計を使用した近赤外線蛍光検出結果を示した図である。
【図3】図3は、アルブミン−胆汁酸−Cy5.5複合体内の胆汁酸である5β−コラン酸の比重増加に対する、アルブミン−胆汁酸−Cy5.5複合体の粒子サイズの変化を示したグラフである。
【図4】図4は、透過電子顕微鏡(TEM)を使用して水系におけるアルブミン−胆汁酸−Cy5.5複合体の粒子形態を示した図である。
【図5】図5は、アルブミン−胆汁酸−Cy5.5複合体を、癌組織が生成されたマウスに静脈注射した後、近赤外線蛍光分光光度計を使用して癌組織内蓄積効果を測定した結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
以下、本発明を実施例によってさらに詳しく説明する。
但し、下記の実施例は、本発明を例示するだけであって、本発明の範囲がこれによって限定されるものではない。
【0066】
<実施例1>アルブミン−胆汁酸(5β−コラン酸)−Cy5.5複合体の製造
本発明者等は、500mgのアルブミンを60mlの水に溶解して、90mlのメタノールを加えてアルブミン溶液を製造し、胆汁酸として前記[化学式1]で表わされる5β−コラン酸をアルブミンに対する質量比10〜100%(6mg〜60mg)で、10%単位で各々100mlのメタノールに添加した。化学反応の触媒として、1−エチル−3−(3−ジメチル−アミノプロピル)カルボジイミド(EDC)とN−ヒドロスクシンイミド(NHS)を胆汁酸のモル濃度の1.5倍を50mlのメタノールに溶解して反応液に加えた後、常温で24時間撹拌した。以後、前記反応液を2日間透析して、未反応5β−コラン酸を除去した後、凍結乾燥して、本発明のアルブミン−胆汁酸複合体を製造した(図1)。
【0067】
生体内で癌標的性を測定するために、前記各々製造した5mgのアルブミン−胆汁酸複合体を0.8mlのPBS(phosphate buffer saline)に溶解して、2重量%の近赤外線蛍光対であるCy5.5のモノ反応性ヒドロキシスクシンイミドエステル(monoreactive hydroxysuccinimide ester)(Cy−5.5−NHS)をPBS 0.2mlに溶解した。アルブミン−胆汁酸が入っている溶液を撹拌しながら、Cy−5.5−NHS溶液を滴下した。混合液を銀箔紙で包んで遮光した後、1時間常温で撹拌した。反応物をFPLC(fast protein liquid chromatography)で分離して[移動率:0.7ml/分,分画溶離剤:1ml,675nm(cy)、280nm(アルブミン)波長]凍結乾燥してアルブミン−胆汁酸−Cy5.5複合体を製造した。
【0068】
前記の反応で、アルブミンに胆汁酸を50%以上反応させたアルブミン−胆汁酸複合体は、PBS溶液で過度な疎水性のため分散しないで沈澱するので、下記実施例で使用を除外した。
【0069】
<実施例2>アルブミン−胆汁酸−Cy5.5複合体のナノ粒子特性分析
本発明者等は、前記<実施例1>で製造したアルブミン−胆汁酸−Cy5.5複合体の光学的特性を観察するために、それぞれのアルブミン−胆汁酸−Cy5.5複合体1mgを1mLのPBSに溶解した後、近赤外線蛍光分光光度計(fluorescence spectrophotometer,F-7000 model, HITACHI high technologies corporation)を使用して測定した。
【0070】
その結果、図2にみられるように、本発明のアルブミン−胆汁酸−Cy5.5複合体は、近赤外線蛍光フィルターで近赤外線蛍光が発生することを観察した(図2)。
【0071】
また、アルブミン−胆汁酸−Cy5.5複合体内の胆汁酸である5β−コラン酸の比重増加によるアルブミンナノ粒子の大きさの変化を観察するために、アルブミン−胆汁酸−Cy5.5複合体1mgをPBS(1ml)に溶解して動的光散乱法(DLS:dynamic light scattering,127 model,Brookhaven instruments corporation BIC)を使用して、各複合体の粒子度を測定した。
【0072】
その結果、図3にみられるように、5β−コラン酸のアルブミンに対する質量比が10%である時、直径が約30ナノメートル(nm)粒子サイズだった。また、前記質量比が40%になるまで質量比に比例してナノ粒子の大きさが増加し、40%の時に直径が約400nm粒子サイズだった。前記質量比が40%以後は、ナノ粒子の大きさが増加しなかった(図3)。したがって、アルブミン内の胆汁酸濃度が増加するにつれて、30nmから400nmの大きさの粒子度を有するナノ粒子が製造された。
【0073】
また、製造されたアルブミン−胆汁酸−Cy5.5複合体の水溶液状態で粒子形態を観察するために、透過電子顕微鏡(transmission electron microscopy;TEM,PHILIPS)を使用して観察した。
【0074】
その結果、図4にみられるように、本発明のアルブミン−胆汁酸−Cy5.5複合体は、水溶液状態で非常に均一な粒子形態を示した(図4)。
【0075】
<実施例3>アルブミン−胆汁酸−Cy5.5複合体の薬物封入効率
本発明者等は、前記<実施例1>で製造したアルブミン−胆汁酸−Cy5.5複合体の疎水性抗癌剤の封入率を測定するために、下記のように実験した。各々のアルブミン−胆汁酸−Cy5.5複合体5mgをPBS5mlに溶解して、タキソール0.5mg(10%)をメタノール0.5ml(総体積10%以内のメタノールを使用する)に溶解する。二つの溶液を撹拌後、充分に撹拌した後、超音波分解(sonication)5分、3時間撹拌、透析(MWCO 12000〜14000)した後、2000rpmで15分間遠心分離した後、上澄み液を凍結乾燥した。封入物1mgを計ってメタノール1mlに溶解し、超音波分解を10分行なった後、12時間撹拌した。前記溶液を10000rpmで15分間遠心分離して、上澄み液を0.45ミクロメーターフィルターでろ過して、HPLC(高性能液体クロマトグラフィー)で定量した。
【0076】
その結果、本発明のアルブミン−胆汁酸−Cy5.5複合体に封入することができる抗癌剤の定量は、30〜50%の封入効率を示した。
【0077】
<実施例4>アルブミン−胆汁酸−Cy5.5複合体の癌組織蓄積効果評価
本発明者等は、前記<実施例1>で製造したアルブミン−胆汁酸−Cy5.5複合体の癌組織内蓄積効果を測定するために、下記のように実験を行なった。対照群としてアルブミンを、実験群としてアルブミン−胆汁酸−Cy5.5複合体(胆汁酸のアルブミンに対する質量比がそれぞれ10wt%及び20wt%)のナノ粒子溶液(5mg/kg)100μlをそれぞれ皮膚癌細胞が注入されたネズミ(SCC-7 cell, balb-c nude mouse,中央実験動物)に静脈注射した後、一定時間(1時間、6時間、12時間、24時間、及び48時間)が経過後、近赤外線蛍光分光光度計(fluorescence spectrophotometer, F-7000 model, HITACHI high technologies corporation)を使用して、近赤外線の照射を実施して1cm以下の小さな癌組織映像を獲得した。
【0078】
その結果、20wt%の胆汁酸が結合されたアルブミン−胆汁酸−Cy5.5複合体の場合、純粋なアルブミンより癌組織内に顕著に多く蓄積されることが示された(図5)。したがって、本発明のアルブミン−胆汁酸−Cy5.5複合体は、アルブミンに比べて癌蓄積効率が大きく改善し、癌標的性を使用した抗癌剤伝達及び癌診断に使用できることが分かった。
【0079】
<実施例5>疎水性抗癌剤を含むアルブミン−胆汁酸−Cy5.5複合体の抗癌効果測定
本発明者等は、前記<実施例3>で製造したタキソールを含むアルブミン−胆汁酸−Cy5.5複合体の抗癌効果を測定するために、下記のように実験を行なった。マウス黒色腫皮膚癌細胞(B16F10)を移植した黒色腫マウス(C57BL/6)に、本発明のタキソールを含むアルブミン−胆汁酸−Cy5.5複合体をそれぞれ20mg/kgまたは50mg/kgを21日間投与した後、実験動物の体重を測定した。その後、摘出した腫瘍の大きさを測定した。ここで、比較群としてタキソールを含むクレモポアEL(polyethoxylated castor oil derivatives, BASF社)を使用し、陰性対照群として食塩水を使用した。
【0080】
その結果、食塩水のみを投与した陰性対照群マウスの腫瘍の大きさは、時間が経つにつれて増加したが、本発明のタキソールを含むアルブミン−胆汁酸−Cy5.5複合体またはタキソールを含むクレモポアELを投与した実験動物の腫瘍の大きさは、9日を前後して大きさの変化がほとんど現れなかった。また、タキソールを含むアルブミン−胆汁酸−Cy5.5複合体の投与量が高いほど、腫瘍の大きさが大きく増加しなかった。体重に対する結果でも、これと類似の傾向を示した。したがって、本発明のアルブミン−胆汁酸−Cy5.5複合体は、抗癌剤伝達体に使用できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明のアルブミン−胆汁酸複合体は、疎水性抗癌剤を封入して、抗癌剤のナノ粒子薬物伝達体に使用することができ、近赤外線蛍光体を結合して癌診断造影剤に使用することができる。これは、今後の癌診断または治療のための新規ナノ粒子造影剤及びナノ粒子薬物伝達システム開発に活用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性アルブミンと疎水性胆汁酸で構成され、水溶液で自己集合体を形成する、薬物伝達用アルブミン−胆汁酸複合体。
【請求項2】
アルブミンのリジン基のアミノ基(−NH)と胆汁酸のカルボキシル基(−COOH)とがペプチド結合することを特徴とする、請求項1に記載のアルブミン−胆汁酸複合体。
【請求項3】
アルブミンが、ヒトアルブミン、その断片またはその変異体であることを特徴とする、請求項1に記載の薬物伝達用アルブミン−胆汁酸複合体。
【請求項4】
胆汁酸が、5β−コラン酸であることを特徴とする、請求項1に記載のアルブミン−胆汁酸複合体。
【請求項5】
アルブミン−胆汁酸複合体が、胆汁酸の重量部に比例して粒子サイズが増加し、直径が30〜400nmの範囲の粒子サイズを有することを特徴とする、請求項1に記載のアルブミン−胆汁酸複合体。
【請求項6】
薬物が、疎水性抗癌剤であることを特徴とする、請求項1に記載のアルブミン−胆汁酸複合体。
【請求項7】
疎水性抗癌剤が、ドセタキセル、シスプラチン、カンプトテシン、パクリタキセル、タモキシフェン、アナストロゾール、グリベック、5−フルオロウラシル(5−FU)、フロクスウリジン、リュープロリド、フルタミド、ゾレドロネート、ドキソルビシン、ビンクリスチン、ゲムシタビン、ストレプトゾシン、カルボプラチン、トポテカン、ベロテカン、イリノテカン、ビノレルビン、ヒドロキシウレア、バルルビシン、レチノイン酸系列、メソトレキセート、メクロレタミン、クロラムブシル、ブスルファン、ドキシフルリジン、ヴィンブラスチン、マイトマイシン、プレドニソン、テストステロン、ミトキサントロン、アスピリン、サリチル酸、イブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、インドメタシン、フェニルタゾン、シクロホスファミド、デキサメタゾン、プレドニゾロン、セレコキシブ、バルデコキシブ、ニメスリド、コルチゾン及びコルチコステロイドからなる群から選択される1または2以上であることを特徴とする、請求項6に記載のアルブミン−胆汁酸複合体。
【請求項8】
アルブミン−胆汁酸複合体にさらに近赤外線蛍光体が結合された、請求項1に記載のアルブミン−胆汁酸複合体。
【請求項9】
近赤外線蛍光体が、シアニン(Cy)、フルオレセイン、テトラメチルローダミン、ボデピー及びアレクサからなる群から選択される1または2以上であることを特徴とする、請求項8に記載の薬物伝達用アルブミン−胆汁酸複合体。
【請求項10】
近赤外線蛍光体が、Cy5.5であることを特徴とする、請求項8に記載のアルブミン−胆汁酸複合体。
【請求項11】
アルブミン−胆汁酸複合体の内部にさらに疎水性抗癌剤が封入されることを特徴とする、請求項1に記載のアルブミン−胆汁酸複合体。
【請求項12】
1)親水性アルブミンを水溶性溶媒に溶解した後、有機溶媒を加えてアルブミン溶液を製造する工程、
2)疎水性胆汁酸を有機溶媒に溶解して胆汁酸溶液を製造する工程、
3)前記工程1)のアルブミン溶液に工程2)の胆汁酸溶液を加えた後、撹拌して反応液を製造する工程、及び
4)前記工程3)の反応液を透析して未反応胆汁酸を除去した後、凍結乾燥する工程
を含む、請求項1に記載のアルブミン−胆汁酸複合体の製造方法。
【請求項13】
工程1)のアルブミンが、ヒトアルブミン、その断片またはその変異体であることを特徴とする、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
工程1)の水溶性溶媒が、水であることを特徴とする、請求項12に記載の製造方法。
【請求項15】
工程2)の胆汁酸が、5β−コラン酸であることを特徴とする、請求項12に記載の製造方法。
【請求項16】
工程1)及び工程2)の有機溶媒が、メタノールであることを特徴とする、請求項12に記載の製造方法。
【請求項17】
請求項1に記載のアルブミン−胆汁酸複合体の薬物伝達体の製造における使用。
【請求項18】
請求項1に記載のアルブミン−胆汁酸複合体に抗癌剤を封入させてなる、癌治療のための薬物伝達システム。
【請求項19】
請求項1に記載のアルブミン−胆汁酸複合体に近赤外線蛍光体が結合されたアルブミン−胆汁酸−近赤外線蛍光体複合体を含む癌診断用造影剤。
【請求項20】
近赤外線蛍光体が、シアニン(Cy)、フルオレセイン、テトラメチルローダミン、ボデピー及びアレクサからなる群から選択される1または2以上であることを特徴とする、請求項19に記載の造影剤。
【請求項21】
近赤外線蛍光体が、Cy5.5であることを特徴とする、請求項19に記載の造影剤。
【請求項22】
放射線同位元素、量子ドットまたはMRI造影剤をさらに含むことを特徴とする、請求項19に記載の造影剤。
【請求項23】
請求項19に記載の造影剤を投与した個体に照射した近赤外線により癌組織を映像化する工程を含む癌検出方法。
【請求項24】
請求項8に記載のアルブミン−胆汁酸複合体の癌診断用造影剤の製造における使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−189373(P2010−189373A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102647(P2009−102647)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(304039548)コリア・インスティテュート・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー (36)
【Fターム(参考)】