説明

癌治療のための医薬品およびその使用

本発明は、抗癌複合体の製造方法と同様に、抗癌複合体および医薬組成物または前記複合体を含むキットを開示する。本発明の前記抗癌複合体は、生体内で代謝的に安定であり、癌の治療および抗癌剤の製造のために最終的には利用可能なものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンドスタチンを含み、生理活性があり且つ代謝的に安定な複合体、およびその徐放性製剤、ならびに、それらの調製方法に関する。本発明は、また、前述の複合体または徐放性製剤を含む医薬組成物およびキットを提供する。本発明は、また、癌を予防、診断、治療するための、エンドスタチン複合体、徐放性製剤、医薬組成物、およびキットの使用、ならびに抗癌剤調製のためのエンドスタチン複合体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
血管新生とは、現存する血管からの新しい毛細血管の成長を意味する。癌細胞の成長および移行は、血管新生に依存し、そのため、癌の血管内皮細胞を癌治療の標的とみなすことは、癌治療のための新しい戦略を提供する(非特許文献1)。
【0003】
エンドスタチンは、コラーゲンXVIIIのC末端の20kDaの切断断片である。1997年に、ハーバード大学のFolkman教授らは、血管内皮細胞の増殖、移行、および生体内での血管形成への阻害活性を持つ血管内皮腫細胞の培地内に、このタンパク質を発見した。さらなる実験により、前記組み換えエンドスタチンは、マウスでの種々の癌の成長および転移を阻害でき、薬剤耐性を誘導しない癌でさえ、治療可能なことが明らかになった。エンドスタチンの前記活性の基礎となる機構は、血管内皮細胞の成長阻害による癌組織内の血管新生の抑制である。その結果、癌は、成長に必要な栄養および酸素を得られず、成長の阻害または壊死が起こる(非特許文献2、3)。遺伝子操作により調製されるヒト組み換えエンドスタチンは、抗癌複合体に発展し、臨床試験で癌の成長に有効な阻害効果を示す。中国では、それは、非小細胞肺癌の臨床試験において、極めて優れた抗癌効果を示す。
【0004】
化学的薬剤と比較すると、ポリペプチドおよびタンパク質の薬剤は、低い毒性/副作用、および、薬剤耐性がほとんど無い等の利点を有する。より高い活性、生物学的な有効性、生体内での低分解性を達成するために、前記タンパク質薬剤は、通常、静脈内に投与される。しかし、この状況では、低分子量のタンパク質薬剤の半減期は非常に短いが、その理由は、分解だけではなく、腎臓を介した迅速な除去にもよる。血液中では、タンパク質の水力半径がアルブミンよりも大きい場合、あるいはタンパク質の分子量が66kDaよりも大きい場合、そのタンパク質は、循環システムにおいて、安定に保たれる。しかし、より低分子量のタンパク質は、糸球体を介して血液から迅速に除去されうる。このように、血液中で低分子量タンパク質の有効な治療濃度を維持するために、頻繁な注射または連続的な注入が必要となる。このような治療により治療効果を達成できたが、それによって、患者には不便さおよび痛みをもたらし、治療のコストも増大する。一方では、長期間の薬剤投与により、例えば、免疫反応等の副作用が起こる可能性がある。
【0005】
【非特許文献1】Folkman J. N Engl J Med 1971; 285:1182-1186
【非特許文献2】Folkman J.ら、Cell 1997; 88:277-285
【非特許文献3】Folkman J.ら、Nature 1997; 390:404-407
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
タンパク質薬剤として、エンドスタチンは、また、生体内での短い半減期および高い除去率という欠点を有する。現在、エンドスタチンは、静脈内への頻繁な注射または注入により投与され、一般的には連日、長期間にわたり、それは、患者の心理面および経済面の両方における重い負担を意味する。本発明の目的は、エンドスタチンの代謝的特徴の改善であり、その結果、生体内でのより高い安定性、より長い半減期、さらには、より高い治癒効果を生じ、それによって治療の頻度およびコストを低減し、患者の負担を減少させる可能性がある。
【0007】
高分子重合体を使用したタンパク質の修飾は、半減期、免疫学的特質、毒物学的特質のような薬剤の動的特質を変化させて制御する一般的な方法である。タンパク質修飾に使用する高分子重合体は、他に比べて、優れた水溶性、優れた生体適合性を有するべきであり、免疫原性は、ほとんどまたは全く持つべきではない。ポリエチレングリコールは、主流のタンパク質修飾分子である。前記ポリエチレングリコールは、両親媒性の特質を有し、水だけでなく、大部分の有機溶媒に溶解可能である。一方、ポリエチレングリコールは、無毒性、無免疫原性で、水溶性が高いため、アメリカ合衆国のFDAと同様に中国のSFDAを含む多くの国の医薬品局により、薬剤調製用の高分子重合体として認可されている。例えば、前記ポリエチレングリコールのような高分子重合体とタンパク質とを結合させることにより、タンパク質の生体内での安定性を増大させ、非特異的な吸収および抗原性を減少させることができる。いったん前記複合体がある分子量に達すると、腎臓による除去率は効果的に減少する。これは、タンパク質薬剤の生体内半減期を延長させる効果的手段である(Frokjaer S.ら、Nat. Rev. Drug Discov. 2005 Apr 4(4): 298-306; Harris JM.ら、Nat. Rev. Drug Discov. 2003 Mar 2(3): 214-21)。ポリエチレングリコール修飾における反応部位として当初使用されたアミノ基は、主にタンパク質N末端のα−アミノ基と、リジン残基側鎖のε−アミノ基であった。その反応産物は、一つもしくは複数のPEG分子と結合したタンパク質分子である。リジン残基側鎖のε−アミノ基修飾は、非特異的な反応部位のために、修飾された異性体を生成する可能性がある。
【0008】
近年、タンパク質N末端のα−アミノ基と、リジン残基側鎖のε−アミノ基との等電点の違いに着目して、タンパク質N末端を特異的に修飾するポリエチレングリコール修飾剤が開発されており、その結果、同一部位が修飾された均一な修飾産物を得ることが可能である。ポリエチレングリコール修飾を受ける他のタンパク質部位は、システイン残基のメルカプト基である。一般的に、メルカプト基の数は、タンパク質のアミノ基の数よりも少ないため、メルカプト基修飾は、より特異的である。遺伝子工学的手法を用いれば、特異的修飾部位として提供するために、今や、タンパク質の任意の位置にシステインの導入が可能である。しかし、修飾部位としてのシステインの導入は、また、一定の制限を有する。なぜなら、システイン残基を既に含むタンパク質にとっては、これによりジスルフィド結合の誤ったペア形成が生じる、または、そのようなタンパク質は、再生困難になる可能性があるからである。さらに、タンパク質のカルボキシル基もまた修飾部位として頻繁に用いられる(Veronese FMら、Drug Discov. Today. 2005 Nov 1;10(21):1451-8.)。ポリエチレングリコールによる修飾技術は、PEG−アスパラギナーゼ(Graham ML Adv. Drug Deliv. Rev. 55, 1293-1302 Avramis Vassilios I.ら、WO9939732およびUS6689762)、PEG−アデノシンデアミナーゼ(Levy Yら、J. Pediatr. 113, 312-317; Davis Sら、ClinExp. Immunol. 46: 649-652; Hershfield MSら、N Engl J Med 316 : 589-596)、ならびに、PEG−インターフェロンα2aおよびPEG−インターフェロンα2b等(Bailon Pら、C. Bioconjug. Chem. 12, 195-202,Wang YSら、Adv. Drug Deliv. Rev. 54, 547-570,Meng Xiantaiら、WO2005077421, Van Vlasselaer Peterら、WO2004076474, Ballon Pascal Sebastlanら、US2004030101, Karasiewicz Robertら、EP0593868)のPEG−インターフェロンを含む複数のタンパク質薬剤で使用が成功している。
【0009】
他の代表的な高分子修飾剤は、グルカン、ポリスクロース、でんぷん、ポリアラニン、エタン二酸とマロン酸との共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリ1,3−ジオキソラン、エチレンとマレイン酸ヒドラジドとの共重合体、ポリシアル酸、シクロデキストリン等を含む。
【0010】
タンパク質薬剤の半減期の他の延長方法は、タンパク質薬剤の分子量を増加させるためのキャリアーとして使用される血中タンパク質またはその断片を、前記タンパク質薬剤と結合または融合させる。例えば、免疫グロブリンのFc断片は、後者の半減期を延長するために、ターゲットタンパク質と結合させてもよい。例えば、この戦略は、Notch1受容体タンパク質(Kitajewsky Janら、WO2005111072)、エリスロポエチン(EPO)(Gillies Stephen D.ら、WO2005063808)、ヒトソマトロピン(Kim Young Minら、WO2005047337)等に用いられている。血漿アルブミンは、一般的に用いられる他の結合キャリアーであり、抗生物質、抗炎症剤および抗酸化剤(Ezrin Alan Mら、WO0117568, Otagiri Masakiら、EP1571212)等のようなタンパク質に用いられている。
【0011】
in vitroで前記タンパク質薬剤を血中タンパク質キャリアーと直接結合させることに加えて、薬剤タンパク質に、生体内分子への化学的反応活性または高い親和性を与えるために、薬剤タンパク質のin vitroでの修飾も可能である。これにより、前記薬剤タンパク質は、体内に入って血中成分との反応が可能になり、より長い半減期を有する巨大分子または化合物を形成する。一例は、血中タンパク質または細胞表面タンパク質のメルカプト基と反応できるマレイミドを持つ活性基で修飾された、抗ウイルス作用の小ペプチド抗RSVである(Bridon Dominique P.ら、WO0069902)。他の例は、生体内アルブミンへのタンパク質の親和性を増大させるために、前記タンパク質表面のアミノ酸残基へのアシル化反応による脂肪酸の導入である。血中に投与されると、前記タンパク質は、アルブミンとより大きな複合体を形成でき、それにより、前記タンパク質の半減期は延長される。前記方法は、長期間作用するインスリンの製造に用いられている(Kurtzhals P.ら、Biochem. J. (1995) 312, 725-731; Frokjaer S.ら、Nat Rev Drug Discov. 2005 Apr;4(4):298-306)。
【0012】
徐放性製剤は、タンパク質薬剤の生体内半減期の他の延長方法である。前記タンパク質薬剤は、タンパク質をキャリアーから緩やかに放出させ、それにより安定な生体内薬剤濃度を維持するために、医薬用キャリアー内に配置される。一般的に使用される徐放性製剤には、ヒドロゲル、マイクロカプセル、マイクロバルーン、微小浸透圧ポンプ、リポソーム等が含まれる(Peppas NAら、Eur. J. Pharm. Biopharm. 50, 27-46 (2000); Packhaeuser CBら、Eur. J. Pharm. Biopharm. 58, 445-455 (2004); Metselaar JMら、Mini Rev. Med. Chem. 4, 319-329 (2002))。リポソームは、二重膜構造を有する中空球体形の極微粒子である。前記二重膜は、両親媒性分子から構成されており、前記両親媒性分子の大部分はリン脂質であり、親水性の内室を形成する。前記親水性タンパク質薬剤は、前記リポソームの前記内室に封入されているため、生体内での緩やかな放出が可能であり、血中での前記タンパク質薬剤濃度を維持し、前記半減期を延長する。具体例は、神経成長因子(Hou Xinpuら、CN1616087)およびヘモグロビン(Farmer Martha Cら、US4911929)等である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、修飾剤とエンドスタチンとにより形成される複合体を提供する。前記修飾剤は、エンドスタチンの半減期を延長可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明で使用される前記修飾剤は、共有結合を介してエンドスタチンに結合されてもよい。前記修飾剤は、巨大分子、タンパク質分子もしくはそれらの断片、ペプチド、小分子またはその他の化合物から選択されてもよい。本発明に使用できる巨大分子には、例えば、平均分子量が1,000から100,000Da、好ましくは5,000から40,000Daの範囲のポリエチレングリコールが含まれる。
【0015】
本発明の一実施形態において、前記複合体は、一つ以上のポリエチレングリコール分子に結合したエンドスタチン分子である。
【0016】
ポリエチレングリコールとエンドスタチンとにより形成される本発明の前記複合体において、前記結合部位は、エンドスタチンにおける、N末端のα−アミノ基、リジン残基側鎖のε−アミノ基、システイン残基側鎖のメルカプト基、アスパラギン酸残基側鎖のカルボキシル基、グルタミン酸残基側鎖のカルボキシル基またはそれらの組合せである。前記結合部位は、好ましくは、エンドスタチンN末端のα−アミノ基である。
【0017】
本発明の前記複合体の一実施形態において、エンドスタチン分子は、一つ以上のポリエチレングリコール分子と、前記エンドスタチン分子N末端のα−アミノ基、または、野生型エンドスタチンの75番目、95番目、106番目、117番目もしくは183番目のリジン残基に対応するリジン残基側鎖のε−アミノ基、またはそれらの組合せの部位で結合する。
【0018】
本発明の前記複合体の一実施形態において、前記エンドスタチン分子は、付加されたシステイン残基側鎖のメルカプト基で一つ以上のポリエチレングリコール分子と結合しており、前記付加されたシステイン残基は、前記エンドスタチン分子のN末端、C末端または内部領域に、システイン残基またはシステイン残基を含むペプチド鎖の付加により導入される。
【0019】
本発明の前記複合体の一実施形態において、エンドスタチン分子は、前記エンドスタチン分子のアスパラギン酸またはグルタミン酸残基側鎖のカルボキシル基で、一つ以上のポリエチレングリコール分子と結合している。
【0020】
本発明の複合体に使用できるタンパク質は、アルブミン、免疫グロブリン、サイロキシン結合性タンパク質、トランスサイレチン、トランスフェリン、フィブリノゲンおよびそれらの断片からなる群から選択される。
【0021】
本発明の一実施形態において、前記複合体は、一つ以上のアルブミンにエンドスタチン一分子が結合することにより形成される。前記複合体は、化学的修飾、融合発現または他の方法を介して得られてもよい。好ましくは、アルブミンはヒト血清アルブミンまたはその断片である。本発明の他の実施形態において、複合体は、エンドスタチン一分子が、一つ以上の免疫グロブリンFc断片に結合することにより形成される。前記複合体は、化学的修飾または融合発現または他の方法のいずれを介して得られてもよい。好ましくは、前記Fc断片は、ヒト免疫グロブリンIgGのFc領域の断片である。
【0022】
本発明の前記複合体は、また、小分子または小ペプチドまたは他の化合物で修飾されたエンドスタチンを含み、前記修飾されたエンドスタチンは、生体内で他の分子または成分と、反応または結合可能であり、それにより、修飾されたエンドスタチンは、生体内の他の分子または成分とのより大きな複合体を形成できる。前記修飾されたエンドスタチンは、血液成分のアミノ基、水酸基またはメルカプト基と共有結合を形成できる反応基を含む。前記反応基は、例えば、アルブミンのメルカプト基のような血液成分と反応可能なマレイミドであってもよい。このようにして、本発明の前記複合体は、アルブミンまたは免疫グロブリンのようないくつかの血液成分に強い親和性を有し、より大きな複合体の形成を可能にする。
【0023】
本発明の前記複合体は、また、他の分子または小ペプチドで修飾されたエンドスタチンを含む。例えば、前記エンドスタチンは、グリコシル化、リン酸化またはアシル化された産物であってもよく、その修飾部位は、本来のタンパク質配列に存在するアミノ酸残基、または、変異により発生したアミノ酸残基である。
【0024】
修飾剤とエンドスタチンとにより形成される本発明の前記複合体は、また、非共有相互作用を介した修飾剤のエンドスタチンとの結合により形成される複合体であってもよい。前記修飾剤は、タンパク質、小分子または他の化合物であってもよい。
【0025】
本発明の前記複合体は、生体適合キャリアーを有する徐放性製剤を形成してもよい。前記徐放性製剤は、マイクロカプセル、ヒドロゲル、マイクロスフェア、微小浸透圧ポンプまたはリポソームからなる群から選択される形態であってもよい。
【0026】
本発明の前記複合体または徐放性製剤に含まれる前記エンドスタチンは、ヒト、ネズミ科または他の哺乳類起源のものであってもよい。
【0027】
本発明の具体的な一実施形態において、前記複合体または徐放性製剤中に含まれる前記エンドスタチンは、野生型のヒトエンドスタチンであり、配列番号1に示す配列を有する天然に存在する形態である。前記複合体または徐放性製剤中に含まれるエンドスタチンをE. coliに発現させる場合、前記野生型組み換えヒトエンドスタチンは、配列番号2に示す配列を有する。N末端のメチオニンは、E. coli発現時に時々欠損するため、対応する組み換えヒトエンドスタチンは、配列番号1に示す配列を有する。
【0028】
本発明の前記複合体または徐放性製剤において、エンドスタチンは、エンドスタチンの活性断片、変異体、誘導体、異性体またはそれらの組合せであってもよい。好ましくは、本発明の複合体または徐放性製剤において、前記エンドスタチン断片は、配列番号3、配列番号4または配列番号5に示す配列を有するペプチドである。本発明の一実施形態において、前記エンドスタチン誘導体は、野生型エンドスタチンのN末端またはC末端への長さ1から15アミノ酸のペプチド付加により形成される。例えば、本発明の前記複合体または徐放性製剤において、前記エンドスタチン誘導体は、野生型ヒトエンドスタチンN末端への9つのアミノ酸HisタグMGGSHHHHH付加により形成されるため、前記誘導体は、配列番号6に示す配列を有する。前記誘導体をE. coliに発現させるとき、N末端のメチオニンは時々部分的に欠損するため、対応する誘導体は、配列番号7に示す配列を有してもよい。
【0029】
本発明は、また、本発明の複合体または徐放性製剤および薬学上許容できるキャリアーを含む医薬組成物を提供する。本発明は、本発明の前記複合体、組成物または徐放性製剤、およびそれらの使用説明書を含むキットを提供する。
【0030】
本発明は、また、前述のエンドスタチンを含む複合体の製造方法を提供する。前記方法は、活性化ポリエチレングリコールをエンドスタチンと混合し、溶液、温度、pHおよび反応モル比を含む適切な条件下で反応させる工程を含む。好ましくは、前記方法で使用されるpHは、pH3〜10である。前述の方法では、前記複合体は、例えば、陽イオン交換カラムまたはゲルろ過により精製してもよい。
【0031】
本発明は、また、癌の予防、診断および治療、ならびに、異常な血管新生により生じるヒトの組織または器官の障害によって特徴づけられる他の疾患の予防、診断および治療における、前述のエンドスタチンを含む複合体、徐放性製剤、医薬組成物またはキットの使用法を提供する。
【0032】
本発明は、また、エンドスタチンの生体内半減期の延長方法を提供する。前記方法は、エンドスタチンとエンドスタチンの生体内半減期を延長できる修飾剤との間で、複合体を形成させる工程を含む、または、エンドスタチンもしくはエンドスタチンを含む複合体、および生体適合物質を含む徐放性製剤を提供する工程を含む。
【0033】
本発明のこれらおよび他の側面は、後述の発明の詳細な説明で明らかにされる。前述の一般的な説明および後述の詳細な説明は、実施例と同様に、説明目的のために過ぎず、本発明の範囲の限定を意図していないことは、理解されるべきである。
【0034】
図1は、野生型ヒトエンドスタチンのアミノ酸配列を示す(配列番号1)。
図2は、E. coliのある菌株に発現させた野生型ヒトエンドスタチン(配列番号2)のアミノ酸配列を示す。N末端のメチオニン残基は、時には欠損してもよい。この場合、N末端のメチオニンを欠損したエンドスタチンの配列は、配列番号1の配列を有する。
図3は、エンドスタチンの生物学的活性断片のアミノ酸配列を示す(配列番号3)。
図4は、エンドスタチンの他の生物学的活性断片のアミノ酸配列を示す(配列番号4)。
図5は、エンドスタチンの他の生物学的活性断片のアミノ酸配列を示す(配列番号5)。
図6は、N末端に付加的なアミノ酸を有する生物学的に活性なエンドスタチンのアミノ酸配列を示す(配列番号6、図6A)。N末端のメチオニンは、時には発現後、部分的に欠損してもよい。この場合、N末端のメチオニンを欠損したエンドスタチンは、配列番号7(図6B)のアミノ酸配列を有する。
図7は、配列番号2の配列を有する組み換えヒトエンドスタチンのN末端への20kDaのポリエチレングリコールの結合を示す。反応前および反応後の溶液をSDS−PAGE検出に供した。レーン1、20kDaのポリエチレングリコールで修飾されたエンドスタチン、レーン2、未修飾のエンドスタチン、レーン3、タンパク質マーカーである。
図8は、配列番号6の配列を有する組み換えヒトエンドスタチンのN末端への20kDaのポリエチレングリコールの結合を示す。修飾前および修飾後の溶液をSDS−PAGE検出に供した。レーン1、未修飾のエンドスタチン、レーン2、20kDaのポリエチレングリコールで修飾されたエンドスタチン、レーン3、タンパク質マーカーである。
図9は、20kDaのポリエチレングリコールでN末端が修飾された配列番号2の配列を有する組み換えヒトエンドスタチンの陽イオン交換カラムSP精製を示す。タンパク質を陽イオン交換カラムSPに結合させ、塩化ナトリウム勾配溶液で溶出し、最終的には還元条件下でのSDS−PAGE検出に供した。レーン1、精製前、レーン2、フロースルー、レーン3〜10、回収した溶出画分。
図10は、配列番号6の配列を有し、20kDaのポリエチレングリコールでN末端が修飾された組み換えヒトエンドスタチンの陽イオン交換カラムSP精製を示す。タンパク質を陽イオン交換カラムSPに結合させ、塩化ナトリウム勾配溶液で溶出し、最終的には還元条件下でのSDS−PAGEでの検出に供した。レーン1、精製前、レーン2、フロースルー、レーン3〜8、回収した溶出画分。
図11は、40kDaのポリエチレングリコールでN末端が修飾された配列番号2の配列を有する組み換えヒトエンドスタチンの陽イオン交換カラムSP精製を示す。タンパク質を陽イオン交換カラムSPに結合させ、塩化ナトリウム勾配溶液で溶出し、最終的には還元条件下でのSDS−PAGEでの検出に供した。レーン1、精製前、レーン2、フロースルー、レーン3〜10、回収した溶出画分。
図12は、20kDaのポリエチレングリコールがN末端に結合した組み換えヒトエンドスタチンの血管内皮細胞の移行阻害活性を示す。配列2:配列番号2のエンドスタチン;PEG−配列2:20kDaのポリエチレングリコールで修飾された配列番号2のエンドスタチン;配列6:配列番号6のエンドスタチン;PEG−配列6:20kDaのポリエチレングリコールで修飾された配列番号6のエンドスタチン。
図13は、20kDaのポリエチレングリコールがN末端に結合した組み換えヒトエンドスタチンのマウス内の肉腫S180阻害活性を示す。配列2:配列番号2のエンドスタチンの連日投与;PEG−配列2―1:20kDaのポリエチレングリコールで修飾された配列番号2のエンドスタチンの連日投与;PEG−配列2―2:20kDaのポリエチレングリコールで修飾された配列番号2のエンドスタチンの1日おきの投与;PEG−配列2―3:20kDaのポリエチレングリコールで修飾された配列番号2のエンドスタチンの3日ごとの投与;配列6:配列番号6のエンドスタチンの連日投与;PEG−配列6―1:20kDaのポリエチレングリコールで修飾された配列番号6のエンドスタチンの連日投与;PEG−配列6―2:20kDaのポリエチレングリコールで修飾された配列番号6のエンドスタチンの1日おきの投与;PEG−配列6―3:20kDaのポリエチレングリコールで修飾された配列番号6のエンドスタチンの3日ごとの投与。
図14は、20kDaのポリエチレングリコールでチロシン残基側鎖のε−アミノ基が修飾された配列番号6の配列を有する組み換えヒトエンドスタチンのゲルろ過精製を示す。レーン1、充填したサンプル;レーン2〜10、回収した溶出画分。
図15は、20kDaのポリエチレングリコールでチロシン残基側鎖のε−アミノ基が修飾された配列番号6の配列を有する組み換えヒトエンドスタチンの陽イオン交換カラムCM精製を示す。レーン1、充填したサンプル;レーン2、フロースルー;レーン3〜8、回収した溶出画分。
【0035】
発明の詳細な説明
本発明は、より長い半減期を有するエンドスタチン製品を提供する。それは、未修飾のエンドスタチンよりも、生体内での代謝の安定性、長い半減期を示す一方、新しい血管形成の阻害活性を維持する。好ましくは、本発明で使用されるエンドスタチンは、ヒトエンドスタチンである。
【0036】
本発明の一実施形態は、修飾剤とエンドスタチンとにより形成される複合体に関する。本発明における「複合体」という言葉は、安定した複合体を形成するために、前記エンドスタチンと修飾剤とが、共有結合または非共有結合のいずれかで結合されている、修飾されたエンドスタチンをいう。したがって、「修飾」は、共有または非共有結合のいずれを介しても達成できる。前記修飾剤は、エンドスタチンに化学的に結合可能であり、または、エンドスタチンとの融合物の一部として発現可能である。好ましい実施形態において、前記修飾は、部位特異的で、例えば、受容体への結合等のエンドスタチンの生物学的活性に影響しない。この修飾された製品は、抗血管新生活性を維持し、未修飾のエンドスタチンよりも、血中での高い代謝安定性、長い半減期を示し、したがって、抗血管形成または抗癌複合体として使用可能である。前記修飾剤は、生体適合性を有し、エンドスタチンの半減期を増加できる、一つ以上の巨大分子重合体、タンパク質もしくはその断片、ペプチドまたは他の化学的化合物であってもよい。
【0037】
前述の巨大分子重合体は、それ自身の生物学的活性を有していても有していなくてもよい。適切な巨大分子重合体は、ポリエチレンアルコール、ポリエーテル化合物、ポリビニルピロリドン、ポリアミノ酸、ジビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体、N−(2−ヒドロキシプロピル)−メタクリルアミド、多糖、ポリオキシエチル化ポリオール、ヘパリンまたはその断片、ポリ−アルキル−エチレングリコールおよびその誘導体、ポリ−アルキル−エチレングリコールとその誘導体との共重合体、ポリビニルエチルエーテル、a,P−ポリ((2−ヒドロキシエチル)−DL−アスパルタミド、ポリカルボン酸、ポリオキシエチレン−オキシメチレン、ポリアクリロイルモルホリン、アミノ化合物と酸化オレフィンとの共重合体、ポリヒアルロン酸、ポリオキシラン、エタン二酸とマロン酸との共重合体、ポリ(1,3−ジオキソラン)、エチレンとマレイン酸ヒドラジドとの共重合体、ポリシアル酸、シクロデキストリン等を含むが、それらには限定されない。
【0038】
前述のポリエチレンアルコールは、ポリエチレングリコール(モノメトキシポリエチレングリコール、モノヒドロキシポリエチレングリコール)、ポリビニルアルコール、ポリアリルアルコール、ポリブテンアルコールおよびそれらの誘導体を含むが、それらには限定されない。好ましい実施形態において、前記修飾剤は、ポリエチレングリコールである。より好ましい実施形態において、ポリエチレングリコールは、モノメトキシポリエチレングリコールである。
【0039】
前述のポリエーテル化合物は、ポリアルキレングリコール(HO((CHO)H)、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン(HO((CHO)H)、ポリビニルアルコール((CHCHOH))およびそれらの誘導体を含むが、それらには制限されない。
【0040】
前述のポリアミノ酸は、例えば、ポリアラニン等の一種類のアミノ酸の重合体および二種以上のアミノ酸の共重合体を含むが、それらには制限されない。
【0041】
前述の多糖は、例えば、硫酸デキストラン、セルロースおよびその誘導体(メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースを含む)、でんぷんおよびその誘導体、ポリスクロース等のグルコサンおよびその誘導体を含むが、それらには制限されない。
【0042】
本発明の修飾のキャリアーとして使用される好ましいタンパク質分子は、天然に存在するタンパク質またはその断片で、サイロキシン結合性タンパク質、トランスサイレチン、トランスフェリン、フィブリノゲン、免疫グロブリン、アルブミンおよびそれらの断片を含むが、それらには制限されない。好ましいキャリアータンパク質は、ヒトのタンパク質である。前述のタンパク質断片とは、キャリアータンパク質として機能する活性を依然有するタンパク質の部分をいう。
【0043】
エンドスタチンは、共有結合を介して直接的または間接的に前記修飾剤に結合される。直接的な結合とは、エンドスタチンの一つのアミノ酸が、ペプチド結合またはジスルフィド架橋を介してキャリアータンパク質の一つのアミノ酸に直接結合されることを意味する。間接的な結合とは、エンドスタチンが、一つ以上の化学基を介してキャリアータンパク質に結合されることを意味する。
【0044】
ポリエチレングリコールでのエンドスタチンの修飾に関していくつかの報告がある。Guoying Mou(2005)およびShenglin Yang(2005)の報告では、平均分子量6kDaまたは10kDaを有するPEG分子でエンドスタチンを修飾すると、前記修飾剤は、リジン残基側鎖のε−アミノ基に結合されるため、その産物は、複数部位が修飾された産物の混合物であった。ある一定範囲の分子量の産物を得るために、前記産物は、分子ふるいまたはイオン交換クロマトグラフィーにより精製できるが、そのような修飾剤の反応性に富む性質のために、修飾部位およびタンパク質の構造の非均一性のようないくつかの欠点が依然存在する。さらに、タンパク質の前記複数部位での修飾により、内部のアミノ酸の構造が変化する結果、前記タンパク質の活性が低下する。生物学的な製品では、製品の均一性は、免疫原性と同様に毒性を減少させるために非常に重要である。加えて、混合物の場合、異なるバッチ間での同一の品質および効力の安定性を保証することもまた困難である。したがって、成分の一貫性、構造の均一性および活性の安定性を保証する方法は、薬品のデザインおよび調製において、重要な点であり、解決すべき問題である。
【0045】
本発明の一実施形態において、ポリエチレングリコール(PEG)で修飾されたエンドスタチンは、エンドスタチン一分子が、共有結合により一つ以上のPEG分子に結合するという点で特徴づけられる。エンドスタチンの前記結合部位は、N末端α−アミノ基、リジン残基側鎖のε−アミノ基、システイン残基のメルカプト基、アスパラギン酸残基側鎖のカルボキシル基、グルタミン酸残基側鎖のカルボキシル基のうち一つまたはそれらの組合せであってもよい。結合に使用するポリエチレングリコールは、1,000〜100,000Da、好ましくは5,000〜40,000Daの平均分子量を有し、線状または分岐状のいずれでもよい。本明細書では、ポリエチレングリコールの分子量とは、平均分子量のことをいう。
【0046】
PEG修飾により、前記薬剤の薬物動態的性質が、改良される可能性があるが、そのような修飾は、巨大分子薬剤の前記生物的活性も減少させる可能性がある。この主な理由は、異なる修飾部位が、異なる構造変化という結果をもたらす可能性があり、前記薬剤の活性部位を遮蔽する可能性があるからである(Veronese F.ら、Drug Discovery Today, 10, 21, 2005)。例えば、異なるPEGで修飾した後、異なって修飾されたインターフェロンβ1bの前記活性は低下し、前記修飾分子の最大活性は、未修飾分子の活性の71%に相当するレベルに達するに過ぎず、いくつかの修飾タンパク質は、ほとんど全く活性を示さない。そのため、PEG修飾は、薬剤の薬物動態的性質を変化させるが、結果としてそれは薬剤の前記活性をも損なう可能性がある。したがって、生体内で全般的に最適な結果を達成するためには、選択時に修飾の過程および修飾剤の両面を考慮に入れる。本発明の一実施形態において、N末端特異的PEG化剤(mPEG-ButyrALD、Nektar社)が、組み換えヒトエンドスタチン修飾に使用される。これにより、前記タンパク質N末端のα−アミノ基で一つの組み換えエンドスタチンにPEG一分子が結合することによって形成される製品が生じる。同一のN末端PEG化剤を使用して修飾されたインターフェロンβ1bが、in vitro試験で未修飾タンパク質の70%の活性しか示さなかったという報告がされた(Filpula D.ら、Bioconjugate Chem. 2006, 17, 618-630)。しかし、本発明において、我々は、N末端が修飾されたエンドスタチンの有効性は、驚くべきことに内皮細胞の移行を阻害するに際して、未修飾タンパク質の2倍以上に達することを見いだした。修飾後のエンドスタチンの前記生物学的活性の顕著な増加が示されたが、まだ報告されていない。しかし、G Mouら(2005)により、エンドスタチンの複数部位の修飾は、in vitroの試験での活性の低下を結果的に生じることが報告された。これは、関連文献における修飾エンドスタチンと比較して、本発明の製品のin vitroでの活性が、はるかに優れていることを示す。一方、構造解析で示されたように、ヒト野生型エンドスタチンN末端に、1番目、3番目、11番目、76番目のアミノ酸からなる亜鉛結合部位が見いだされた。これらの部位が、ヒトエンドスタチンの安定性および活性に重要であり、エンドスタチンが受容体と結合して活性を発揮するための、ヒトエンドスタチンの結合部位を形成することが報告されている(Ding, Y. H., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95, 10443-10448; Hohenester, E., EMBO J. 17, 1656-1664; Boehm, T., Biochem. Biophys. Res. Commun. 252, 190-194; Ricard-Blum, S., J. Biol. Chem. 279, 2927-2936; Tjin Tham Sjin, R. M., Cancer Res. 65(9): 3656-63)。PEGは大きい分子量および大きい空間的障害を有するので、タンパク質の修飾は活性部位で起こるべきではないと提案されている。さもなければ、これはタンパク質の構造を大きく破壊する可能性があり、続いてタンパク質の活性を損なう可能性がある。しかし、本発明の製品は、活性の低下を回避するだけでなく、予想外のより高い活性をも示す。
【0047】
本発明の一実施形態において、エンドスタチンは、タンパク質またはペプチドに結合し、それは、エンドスタチン一分子が、一つ以上のタンパク質またはペプチドに、直接的または間接的に結合することで特徴づけられる。エンドスタチンが、より多くのキャリアータンパク質と結合する場合、選択されたキャリアータンパク質は、同一でも異なってもよい。好ましくは、前記キャリアータンパク質は、天然に存在するタンパク質またはその断片である。好ましい実施形態において、修飾のために選択された前記キャリアータンパク質は、ヒト血清アルブミンまたはその断片である。他の好ましい実施形態において、前記キャリアータンパク質は、ヒト免疫グロブリンIgGのFc断片である。
【0048】
本発明の他の実施形態において、前記修飾剤は、エンドスタチンを含む前記複合体が、特定の血中成分と反応する、または、高い親和性を有することを可能にするような、小分子または小ペプチドまたは他の化合物である。具体的な実施形態において、前記製品は、反応活性基を有し、共有結合を形成するためにアミノ基、カルボキシル基またはメルカプト基と反応可能である。他の具体的な実施形態において、前記製品の活性基が、アルブミンのような血液成分のメルカプト基と反応可能なマレイミドである。他の具体的な実施形態において、前記製品は、アルブミンまたは免疫グロブリンのようないくつかの血液成分に強い親和性を有し、より大きな複合体を形成可能とする。
【0049】
本発明の他の実施形態において、小分子または小ペプチドで修飾されたエンドスタチンは、グリコシル化、リン酸化またはアシル化されていてもよい。前記修飾部位は、タンパク質に元々存在していたアミノ酸残基、または、変異により生じたアミノ酸残基であってもよい。前記複合体の分子量はそれほど大きくはないが、前記修飾がエンドスタチンの特徴を変化させるために、前記複合体の半減期は長くなる。
【0050】
本発明の他の実施形態において、エンドスタチンを含む前記複合体は、エンドスタチンと、タンパク質や小分子のような修飾剤との間の非共有相互作用を介して形成される複合体である。この複合体は、血管新生を阻害する活性を有し、エンドスタチンよりも長い生体内半減期を有する。
【0051】
本発明の他の実施形態は、エンドスタチンを含む徐放性製剤に関する。前記徐放性製剤は、エンドスタチンまたは任意の前述の複合体および生体適合物質からなる。この組成中のエンドスタチンは、依然生物学的活性を有し、同時に、前記薬剤の薬物動態学上の性質を変化させる前記キャリアーのために、その生体内半減期は延長される。前記徐放性製剤は、マイクロカプセル、ヒドロゲル、マイクロビーズ、微小浸透圧ポンプおよびリポソーム等であってもよいが、それらには制限されない。
【0052】
本発明は、また、前述のエンドスタチンを含む複合体または徐放性製剤、および薬学上許容できるキャリアーを含む医薬組成物を提供する。さらに、本発明は、また、前述のエンドスタチンを含む複合体または徐放性製剤と使用説明書とを含むキットを提供する。
【0053】
この発明で使用される前記薬学上許容できるキャリアーは、選択された服用量および濃度で接触しても細胞または哺乳類に無毒なキャリアー、賦形剤または安定化剤を含む。一般的に使用される生理学的に許容できるキャリアーは、水溶性のpH緩衝液である。生理学的に許容できるキャリアーの例は、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液および他の有機酸緩衝液のような溶液;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量のポリペプチド(10残基以下);血清アルブミン、グルチンもしくは免疫グロブリンのようなタンパク質;ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンもしくはリジンのようなアミノ酸;単糖、二糖およびグルコース、マンノースもしくはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAのようなキレート剤;マンニトールもしくはソルビトールのような糖アルコール;ナトリウムイオンのような塩を形成する対イオン;ならびに/またはTween(登録商標)、PEG、PLURONICS(登録商標)のような非イオン性界面活性剤を含む。好ましくは、前記賦形剤は、殺菌されており、通常は望ましくない物質は含まれていない。これらの組成は、通常の殺菌技術により、殺菌できる。
【0054】
本発明は、また、前述のエンドスタチン製品の調製方法に関する。具体的には、本発明は、活性化PEGをエンドスタチンと混合し、溶液、温度、pHおよび反応モル比を含む適切な条件下で反応させ、陽イオン交換カラムまたは分子ふるいを使用して、結合した製品を精製する工程を含む、PEG化エンドスタチンの調製方法を提供する。好ましくは、この反応のpHは、pH3〜10である。
【0055】
本発明は、また、癌の予防、診断および治療における、前述のエンドスタチンを含む複合体、徐放性製剤、医薬組成物またはキットの使用法をも提供する。本発明の前記方法で治療するに適した癌は、肺癌、神経内分泌腫瘍、大腸癌、骨肉腫、肝癌、胃癌、膵臓癌、口腔癌、乳癌、前立腺癌、リンパ腫、食道癌、口腔癌、鼻咽腔癌、子宮頸癌、肉腫、腎臓癌、胆道癌、悪性黒色腫等を含むが、それらには制限されない。
【0056】
本発明は、また、抗癌剤の調製における、前述のエンドスタチンを含む複合体、医薬組成物または徐放性製剤の使用法を提供する。
【0057】
本発明は、また、制限されないが、異常な血管新生により生じる組織もしくは器官の障害によって特徴づけられる疾患の予防、診断、治療のための前述のエンドスタチンを含む複合体、徐放性製剤、医薬組成物またはキットの使用、または、そのような疾患の治療のための医薬品調製における使用を提供する。
【0058】
本発明によると、前記投与経路は、静脈内注射、静脈内注入、皮下注射、筋内注射、腹腔内注射、経皮吸収、皮下への埋め込み、肝動脈注射、経口投与、経鼻投与、口腔粘膜投与、眼内投与、直腸投与、膣内投与および他の臨床上許容できる経路からなる群から選択される。
【0059】
本発明は、また、エンドスタチンとエンドスタチンの生体内半減期を延長可能な修飾剤との間で複合体を形成する工程、および、エンドスタチンを含む徐放性製剤を調製する工程を含む、エンドスタチンの半減期の延長方法を提供する。
【0060】
我々の実験データは、本発明の製品、すなわち、エンドスタチンN末端へのPEGの結合により形成される複合体は、内皮細胞の移行および癌成長を阻害する活性を有することを示す。この複合体は、未修飾のエンドスタチンと比較すると、有意に高い活性を示した。さらに、薬物動態研究により、この修飾された産物の生体内での代謝が効果的に減速され、その半減期が延長されたことが明らかになった。
【0061】
他に指定されない限り、本明細書で使用されるエンドスタチンは、ヒト、ネズミ科または他の哺乳類由来のものであってもよい。好ましい実施形態において、前記エンドスタチンは、ヒトエンドスタチンである。他に指定されない限り、本明細書で使用されるエンドスタチンは、野生型エンドスタチン、すなわち天然に存在する形態;または生物的に活性のある変異体、断片、異性体もしくはそれらの誘導体、またはそれらの組合せであってもよい。エンドスタチンは、動物細胞での発現で得られ、または、酵母もしくはE. Coliから発酵およびさらなる精製により得られる。動物細胞に発現させた野生型ヒトエンドスタチンのアミノ酸配列を、配列番号1に示す。酵母に発現させた組み換えヒトエンドスタチンは、配列番号1に示すアミノ酸配列を有してもよいし、または、N末端に10アミノ酸以下の追加もしくは欠損を有する配列番号1の配列を有してもよい。E. Coliに発現させた組み換えヒトエンドスタチンのアミノ酸配列を配列番号2に示すが、発現後にN末端のメチオニンが、時には欠失することがあり、これが起こったときは、結果生じた組み換えヒトエンドスタチンは、配列番号1に示す配列を有する。
【0062】
エンドスタチンの変異体とは、アミノ酸の置換、欠失または挿入の導入により得られるエンドスタチン分子をいう。エンドスタチンの断片とは、配列番号1または配列番号2の配列の部分をいう。前記断片は、例えば、酵素による切断、遺伝子操作での発現、またはポリペプチド合成により得られてもよい。例えば、配列番号3、配列番号4または配列番号5の配列を有する前記断片は、固形癌を阻害する活性を有すると報告された(Cattaneo MGら、Experimental Cell Research 283 (2003) 230-236; Tjin Tham Sjin RMら、Cancer Research (2005) 65(9) 3656-3663)。エンドスタチンの異性体とは、野生型エンドスタチンと同一のアミノ酸配列を有するが、2次もしくは3次のタンパク質構造の違い、または局所アミノ酸の光学活性の変化を含めた、異なる構造を持つ分子をいう。前記異性体は、天然に生じる変異体であってもよいし、または、人工的なデザインにより得られてもよい。エンドスタチン誘導体とは、野生型エンドスタチンの修飾により生じる産物をいう。修飾とは、リン酸分子または炭水化物分子のような一つ以上の小分子または20アミノ酸未満のオリゴペプチドを、タンパク質の任意のアミノ酸において、前記タンパク質に共有結合することをいう。好ましい実施形態において、Hisタグ(MGGSHHHHH)を含む9アミノ酸のペプチド鎖をヒトエンドスタチンN末端に付加し、この派生したエンドスタチンは、配列番号6の配列を有する(Luo Yongzhangら、US2004110671)。E. Coliに発現させるとき、そのN末端のメチオニンが、時には欠失することがあり、これが起こったときは、結果として生じるN末端のメチオニンを欠いた組み換えヒトエンドスタチンの誘導体は、配列番号7の配列を有する。活性変異体、断片、異性体または誘導体の組合せとは、前記製品が、前述の修飾を2つ以上同時に有することを意味し、制限されないが、例えば、断片の変異体または修飾された変異体等である。
【実施例】
【0063】
実施例1:組み換えヒトエンドスタチンN末端への20kDaのPEGの結合
本実施例で使用した組み換えヒトエンドスタチンは、配列番号2および配列番号6の配列を有する組み換えヒトエンドスタチンを含む。具体的には、組み換えヒトエンドスタチン(Protgen社)を30mM酢酸ナトリウム溶液、pH5.5に透析した。タンパク質濃度は、UV分光光度計(Agilent Technologies社)を用いて280nmの吸光度測定により決定し、2mg/mlに調整した。タンパク質N末端を特異的に修飾する20kDaのPEG(mPEG-ButyrALD 20kDa、Nektar社)を、共有結合に使用した。具体的には、この20kDaPEG(固体)80mgを、20mlのタンパク質溶液(40mgのタンパク質を含む)に加え、PEG固体が完全に溶けるまで混合液を室温で攪拌した。PEGとエンドスタチンとのモル比は2:1とした。還元剤としてCHBNNa(Sigma社)を最終濃度20mMになるように加え、最終的に前記溶液のpH値を5に調整した。室温で10時間静置した後、80%以上のエンドスタチンが、モノPEG化により修飾された。これは、PEG一分子が、エンドスタチン一分子に、エンドスタチンのN末端α−アミノ基で共有結合されていることを意味する。少量のエンドスタチンだけが、複数部位で非特異的に修飾された。前記反応液は、カラムクロマトグラフィーにより直接的に精製できる。反応前後の溶液の電気泳動による解析を、図7および8に示す。
【0064】
実施例2:20kDaのPEGでN末端が修飾された組み換えヒトエンドスタチンの陽イオン交換SPカラムによる精製
本実施例で使用した組み換えヒトエンドスタチンは、配列番号2および配列番号6の配列を有する組み換えヒトエンドスタチンを含む。具体的には、20kDaのPEGで修飾されたヒトエンドスタチンは、SPクロマトグラフィーカラム(Amersham社)で精製した。混合溶液のpH値を、反応後に6に調整した。前記サンプルは、10mMリン酸塩を含むpH6.0の緩衝液であらかじめ平衡化したカラムに充填した。前記サンプルを充填した後、10mMリン酸塩および1M塩化ナトリウムを含むpH6.0の緩衝液で勾配的溶出を行った。最小限の充填に起因して、浸透および洗浄の間に、前記反応に関与しなかったPEGのピークが出現した。溶出ピークは、複数部位が修飾されたエンドスタチン、一部位が修飾されたエンドスタチン、および未修飾のエンドスタチンの順番で出現した。異なる画分は、280nmでの吸光度にしたがって回収できる。精製の結果を、図9および10に示す。
【0065】
実施例3:組み換えヒトエンドスタチンN末端への40kDaのPEGの結合
本実施例で使用した組み換えヒトエンドスタチンは、配列番号2および配列番号6の配列を有する組み換えヒトエンドスタチンを含む。具体的には、前記組み換えヒトエンドスタチンは、30mM酢酸ナトリウム溶液、pH5.5に透析した。タンパク質濃度は、UV分光光度計を用いて波長280nmで測定し、2.5mg/mlに調整した。タンパク質N末端を特異的に修飾する40kDaのPEG(mPEG-ButyrALD 40kDa、Nektar社)を共有結合に使用した。具体的には、この40kDaのPEG(固体)160mgを20mlのタンパク質溶液(40mgのタンパク質を含む)に加え、PEGが完全に溶けるまで前記溶液を室温で攪拌した。PEGとエンドスタチンとのモル比は、2:1とした。その後、還元剤としてCHBNNa(Sigma社)を濃度20mMになるように加え、最終的に、溶液のpH値を5に調整した。室温で10時間静置した後、80%以上のエンドスタチンが、モノPEG化により修飾された。すなわち、PEG一分子が、エンドスタチン一分子にタンパク質のN末端α−アミノ基で共有結合した。少量のエンドスタチンだけが、複数部位で非特異的に修飾された。前記反応液は、カラムクロマトグラフィーにより直接的に精製できる。
【0066】
実施例4:40kDaのPEGでN末端が修飾された組み換えヒトエンドスタチンの陽イオン交換SPカラムによる精製
本実施例で使用した組み換えヒトエンドスタチンは、配列番号2および配列番号6の配列を有する組み換えヒトエンドスタチンを含む。具体的には、40kDaのPEGで修飾されたヒトエンドスタチンを、SPクロマトグラフィーカラム(Amersham社)で精製した。反応後、混合溶液のpH値を6に調整した。10mMリン酸塩を含むpH6.0の緩衝液であらかじめ平衡化したカラムに、前記サンプルを充填した。前記サンプルの充填後、10mMリン酸塩および1M塩化ナトリウムを含むpH6.0の緩衝液で勾配的溶出を行った。最小限の充填により、浸透および洗浄の間に、反応に関与しなかったPEGのピークが、複数部位が修飾されたエンドスタチン、一部位が修飾されたエンドスタチン、および未修飾のエンドスタチンの順番で出現した。280nmでの吸光度にしたがって、異なる画分を回収できる。配列番号2の配列を有する組み換えヒトエンドスタチンの精製の結果を、図11に示す。配列番号6の配列を有する組み換えヒトエンドスタチンの精製の結果は、配列番号2のそれと類似する(データは示さない)。
【0067】
実施例5:20kDaのPEGがN末端に共有結合した組み換えヒトエンドスタチンの血中での延長された有効性
本実施例で使用した組み換えヒトエンドスタチンは、配列番号2および配列番号6の配列を有する組み換えヒトエンドスタチンを含む。PEG修飾および未修飾の組み換えヒトエンドスタチンタンパク質の生体内半減期をそれぞれ測定することにより、PEG修飾された組み換えヒトエンドスタチンの延長された有効性を評価した。6匹の健康な昆明マウス(約25g)(Vitalriver実験動物センター)を3つの群に分け、群あたり3匹のマウスとした。そして、前記マウスに、それぞれ未修飾または20kDaのPEGでN末端が修飾された組み換えヒトエンドスタチン(Protgen社)を、投薬量15mg/体重kgで、尾部静脈を介して注射した。そして、2、10、30分、1、2、4、8、16、24、36、48および72時間で、血液サンプルを尾部静脈から採取した。それから、血漿を回収し、PEG修飾または未修飾のエンドスタチンの濃度を、それぞれサンドウィッチELISAにより測定した。20kDaのPEGで修飾を受けると、配列番号2の配列を有する組み換えヒトエンドスタチンの半減期は、マウス中で平均4.8時間から平均16時間へと増加し、配列番号6の配列を有する組み換えヒトエンドスタチンの半減期は、マウス中で平均7.5時間から平均16時間へと増加したことが、薬物動態解析により明らかになった。これらの結果により、高分子量のPEGを組み換えヒトエンドスタチンに結合させることによって、前記エンドスタチンの生体内半減期が効果的に増加し、有効性を延長できることが示された。
【0068】
実施例6:20kDaのPEGがN末端に結合した組み換えヒトエンドスタチンの血管内皮細胞移行阻害活性
本実施例で使用した組み換えヒトエンドスタチンは、配列番号2および配列番号6の配列を有する組み換えヒトエンドスタチンを含む。具体的には、10%血清含有DMEM培地(Hyclone社)で、ヒト微小血管内皮細胞(HMEC)を対数期まで培養した。そして、前記細胞を12時間血清饑餓状態に置いた。トリプシン(Sigma社)消化後、細胞移行の測定のために、wellごとに10000細胞をプレートに加えた。移行アッセイの条件は、DMEM培地、1%血清および10ng/mlのbFGF(Sigma社)および抗生物質(ストレプトマイシンおよびアンピシリン、いずれも10μg/ml、Sigma社)を含む。治療群には、修飾または未修飾のエンドスタチン30μg/mlを細胞に加えた。37℃で8時間培養後、プレートの前記細胞を1%グルタルアルデヒドで固定した。そして、メンブレン上層の移行しなかった細胞を除去し、下層の細胞をヘマトキシレンで染色した。顕微鏡(Olympus社)下で細胞数を数えた。一つのプレート上の三つの異なる視野の細胞を数え、阻害率を算出した。その結果、配列番号2の配列を有する組み換えヒトエンドスタチンでは、前記細胞移行阻害率は42%であるが、修飾されたエンドスタチンでは、前記細胞移行阻害率は90%であることが示された。配列番号6の配列の組み換えヒトエンドスタチンでは、前記細胞移行阻害率は45%であるが、修飾されたエンドスタチンでは、前記阻害率は90%であった。上記の結果により、PEGでのエンドスタチン修飾は、その生物学的活性を維持するだけでなく、大きく促進することが示された。前記実験結果を、図12に示す。
【0069】
実施例7:20kDaのPEGがN末端に結合した組み換えヒトエンドスタチンのマウス癌モデルの治療における活性
本実施例で使用した組み換えヒトエンドスタチンは、配列番号2および配列番号6の配列を有する組み換えヒトエンドスタチンを含む。20kDaのPEGで修飾されたエンドスタチンのマウスS180癌の生体内阻害活性を観察するために、実験を行った。約20gの昆明マウスを本実験に使用した。マウスの腋窩に、マウスあたり2×10細胞のS180肉腫細胞(中国細胞バンクQK10952)を植え付けた。そして、翌日前記マウスをランダムに群に分け、群あたり8匹のマウスとした。前記群は、ネガティブコントロール群(通常の生理食塩水)、ポジティブコントロール群(エンドスタチン、1.5mg/体重kg、連日)、3つの治療群(PEGで修飾されたエンドスタチン、1.5mg/体重kg、それぞれ連日、1日おき、3日ごと)を含む。治療は、尾部静脈注射により行った。投与は、10日間続けた。11日目に前記マウスを殺し、癌の重量を測定し、次のように算出する癌阻害率により有効性を評価した。
癌阻害率=[(ネガティブコントロール群の癌重量−治療群の癌重量)/ネガティブコントロール群の癌重量]×100%
配列番号2の配列を有する組み換えヒトエンドスタチンは、連日、1日おき、および3日ごとに治療した群では、前記癌阻害率が、それぞれ47%、53%および40%であるのに、ポジティブコントロール群の前記癌阻害率は、34%であることが、前記実験結果により明らかになった。配列番号6の配列を有し、N末端に付加的なアミノ酸がある組み換えヒトエンドスタチンは、連日、1日おき、および3日ごとに治療した群では、前記癌阻害率が、それぞれ45%、57%および50%であるのに対し、ポジティブコントロール群の前記癌阻害率は、40%であることが、前記実験結果により明らかになった。修飾された組み換えヒトエンドスタチンは、実際に生体内で抗癌活性を有し、また、生体内代謝率が低いため、前記修飾組み換えヒトエンドスタチンの活性は、前記未修飾組み換えヒトエンドスタチンの活性よりも高いことが、前記結果により示された。さらに、延長された間隔で投与された場合でさえ、それは、前記未修飾組み換えヒトエンドスタチンより高い有効性を依然維持できる。前記実験結果を、図13に示す。
【0070】
実施例8:組み換えヒトエンドスタチンのリジン残基側鎖におけるε−アミノ基の20kDaのPEGによる修飾
本実施例で使用した組み換えヒトエンドスタチンは、配列番号2および配列番号6の配列を有する組み換えヒトエンドスタチンを含む。具体的には、前記組み換えヒトエンドスタチンは、30mMリン酸緩衝液、pH7.8で透析した。タンパク質濃度は、UV分光光度計により波長280nmで測定し、そして2mg/mlに調整した。リジン残基側鎖のε−アミノ基を修飾する20kDaのPEG(mPEG-SPA 20kDa、Nektar社)を加え、PEGとタンパク質とのモル比を8:1とした。前記組み換えヒトエンドスタチンは、迅速に修飾でき、30分間室温に置いた後、80%のエンドスタチンが修飾されていた。修飾された産物の量は、反応時間に応じて増加したが、反応速度は、1時間後に低下した。前記産物は、主にモノPEG化およびマルチPEG化されたエンドスタチンである。前記反応液は、カラムクロマトグラフィーにより直接的に精製できる。
【0071】
実施例9:20kDaのPEGによりリジン残基側鎖のε−アミノ基が修飾された組み換えヒトエンドスタチンの分子ふるい精製
本実施例で使用した組み換えヒトエンドスタチンは、配列番号2および配列番号6の配列を有する組み換えヒトエンドスタチンを含む。20kDaのPEGで修飾されたエンドスタチンを分子ふるいで精製した。反応後、混合液のpH値を7.4に調整した。20mMリン酸塩および100mM塩化ナトリウムを含むpH7.4の緩衝液であらかじめ平衡化したカラムに、前記サンプルを充填した。UV分光光度計を使用して280nmでの吸光度にしたがって、異なる画分を回収できる。配列番号6の配列を有する修飾されたエンドスタチンの精製の結果を、図14に示す。
【0072】
実施例10:20kDaのPEGによりリジン残基側鎖のε−アミノ基が修飾された組み換えヒトエンドスタチンのイオン交換クロマトグラフィー精製
本実施例で使用した組み換えヒトエンドスタチンは、配列番号2および配列番号6の配列を有する組み換えヒトエンドスタチンを含む。20kDaのPEGとエンドスタチンとの複合体をCMクロマトグラフィーカラムで精製した。反応後、混合液のpH値を6.5に調整した。10mMリン酸塩を含むpH6.5の緩衝液であらかじめ平衡化したカラムに、前記サンプルを充填した。前記サンプルの充填後、10mMリン酸塩および1M塩化ナトリウムを含むpH6.5の緩衝液で勾配的溶出を行った。最小限の充填により、浸透および洗浄の間に、反応に関与しなかったPEGのピークが出現した。溶出のピークは、複数部位が修飾されたエンドスタチン、一部位が修飾されたエンドスタチン、および未修飾のエンドスタチンの順番で出現した。280nmの吸光度にしたがって、異なる画分を回収できる。配列番号6の配列を有するエンドスタチンの修飾産物の精製結果を、図15に示す。
【0073】
実施例11:マウス癌モデルの治療における、20kDaのPEGでN末端が修飾された組み換えヒトエンドスタチンの活性
本実施例で使用した組み換えヒトエンドスタチンは、配列番号6の配列を有する。実験では、20kDaのPEG(mPEG-ButyrALD 20kDa、Nektar社)で修飾されたエンドスタチンを、間隔を増加させて投与し、マウスにおけるS180癌の成長に対する、生体内での阻害活性を観察した。昆明マウス(20g)を本実験に使用した。前記マウスの腋窩に、マウスあたり2×10細胞のS180肉腫細胞(中国細胞バンクQK10952)を植え付けた。そして、翌日前記マウスをランダムに群に分け、群あたり8匹のマウスとした。前記群は、ネガティブコントロール群(通常の生理食塩水)、ポジティブコントロール群(エンドスタチン、1.5mg/体重kg、5日ごとに投与)、4つの治療群(PEGで修飾したエンドスタチン、1.5mg/体重kg、それぞれ5日ごと、7日ごと、10日ごとまたは14日ごとに投与)を含む。治療は、尾部静脈注射により行った。投与は、14日間続けた。15日目に前記マウスを殺し、癌の重量を測定し、次のように算出する癌阻害率により治療の有効性を評価した。
癌阻害率=[(ネガティブコントロール群の癌重量−治療群の癌重量)/ネガティブコントロール群の癌重量]×100%
配列番号6の配列を有し、N末端に付加的なアミノ酸のある組み換えヒトエンドスタチンは、5日ごと、7日ごと、10日ごとまたは14日ごとに治療した群では、前記癌阻害率が、それぞれ56.4%、37.1%および31.8%および0%であるのに対し、ポジティブコントロール群の前記癌阻害率は34%であることが、前記実験結果により明らかになった。これにより、修飾組み換えヒトエンドスタチンは、10日間もの間隔で投与した場合でさえ、生体内での癌成長阻害活性を依然発揮できることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は、野生型ヒトエンドスタチンのアミノ酸配列を示す(配列番号1)。
【図2】図2は、E. coliのある菌株に発現させた野生型ヒトエンドスタチン(配列番号2)のアミノ酸配列を示す。N末端のメチオニン残基は、時には欠損してもよい。この場合、N末端のメチオニンを欠損したエンドスタチンの配列は、配列番号1の配列を有する。
【図3】図3は、エンドスタチンの生物学的活性断片のアミノ酸配列を示す(配列番号3)。
【図4】図4は、エンドスタチンの他の生物学的活性断片のアミノ酸配列を示す(配列番号4)。
【図5】図5は、エンドスタチンの他の生物学的活性断片のアミノ酸配列を示す(配列番号5)。
【図6】図6は、N末端に付加的なアミノ酸を有する生物学的に活性なエンドスタチンのアミノ酸配列を示す(配列番号6、図6A)。N末端のメチオニンは、時には発現後、部分的に欠損してもよい。この場合、N末端のメチオニンを欠損したエンドスタチンは、配列番号7(図6B)のアミノ酸配列を有する。
【図7】図7は、配列番号2の配列を有する組み換えヒトエンドスタチンのN末端への20kDaのポリエチレングリコールの結合を示す。反応前および反応後の溶液をSDS−PAGE検出に供した。レーン1、20kDaのポリエチレングリコールで修飾されたエンドスタチン、レーン2、未修飾のエンドスタチン、レーン3、タンパク質マーカーである。
【図8】図8は、配列番号6の配列を有する組み換えヒトエンドスタチンのN末端への20kDaのポリエチレングリコールの結合を示す。修飾前および修飾後の溶液をSDS−PAGE検出に供した。レーン1、未修飾のエンドスタチン、レーン2、20kDaのポリエチレングリコールで修飾されたエンドスタチン、レーン3、タンパク質マーカーである。
【図9】図9は、20kDaのポリエチレングリコールでN末端が修飾された配列番号2の配列を有する組み換えヒトエンドスタチンの陽イオン交換カラムSP精製を示す。タンパク質を陽イオン交換カラムSPに結合させ、塩化ナトリウム勾配溶液で溶出し、最終的には還元条件下でのSDS−PAGE検出に供した。レーン1、精製前、レーン2、フロースルー、レーン3〜10、回収した溶出画分。
【図10】図10は、配列番号6の配列を有し、20kDaのポリエチレングリコールでN末端が修飾された組み換えヒトエンドスタチンの陽イオン交換カラムSP精製を示す。タンパク質を陽イオン交換カラムSPに結合させ、塩化ナトリウム勾配溶液で溶出し、最終的には還元条件下でのSDS−PAGEでの検出に供した。レーン1、精製前、レーン2、フロースルー、レーン3〜8、回収した溶出画分。
【図11】図11は、40kDaのポリエチレングリコールでN末端が修飾された配列番号2の配列を有する組み換えヒトエンドスタチンの陽イオン交換カラムSP精製を示す。タンパク質を陽イオン交換カラムSPに結合させ、塩化ナトリウム勾配溶液で溶出し、最終的には還元条件下でのSDS−PAGEでの検出に供した。レーン1、精製前、レーン2、フロースルー、レーン3〜10、回収した溶出画分。
【図12】図12は、20kDaのポリエチレングリコールがN末端に結合した組み換えヒトエンドスタチンの血管内皮細胞の移行阻害活性を示す。配列2:配列番号2のエンドスタチン;PEG−配列2:20kDaのポリエチレングリコールで修飾された配列番号2のエンドスタチン;配列6:配列番号6のエンドスタチン;PEG−配列6:20kDaのポリエチレングリコールで修飾された配列番号6のエンドスタチン。
【図13】図13は、20kDaのポリエチレングリコールがN末端に結合した組み換えヒトエンドスタチンのマウス内の肉腫S180阻害活性を示す。配列2:配列番号2のエンドスタチンの連日投与;PEG−配列2―1:20kDaのポリエチレングリコールで修飾された配列番号2のエンドスタチンの連日投与;PEG−配列2―2:20kDaのポリエチレングリコールで修飾された配列番号2のエンドスタチンの1日おきの投与;PEG−配列2―3:20kDaのポリエチレングリコールで修飾された配列番号2のエンドスタチンの3日ごとの投与;配列6:配列番号6のエンドスタチンの連日投与;PEG−配列6―1:20kDaのポリエチレングリコールで修飾された配列番号6のエンドスタチンの連日投与;PEG−配列6―2:20kDaのポリエチレングリコールで修飾された配列番号6のエンドスタチンの1日おきの投与;PEG−配列6―3:20kDaのポリエチレングリコールで修飾された配列番号6のエンドスタチンの3日ごとの投与。
【図14】図14は、20kDaのポリエチレングリコールでチロシン残基側鎖のε−アミノ基が修飾された配列番号6の配列を有する組み換えヒトエンドスタチンのゲルろ過精製を示す。レーン1、充填したサンプル;レーン2〜10、回収した溶出画分。
【図15】図15は、20kDaのポリエチレングリコールでチロシン残基側鎖のε−アミノ基が修飾された配列番号6の配列を有する組み換えヒトエンドスタチンの陽イオン交換カラムCM精製を示す。レーン1、充填したサンプル;レーン2、フロースルー;レーン3〜8、回収した溶出画分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
修飾剤とエンドスタチンとにより形成される複合体であって、前記修飾剤が、前記エンドスタチンの生体内半減期を延長可能である複合体。
【請求項2】
前記修飾剤が、前記エンドスタチンに共有結合されている、請求項1記載の複合体。
【請求項3】
前記修飾剤が、巨大分子重合体、タンパク質もしくはその断片、ペプチド、小分子または他の化学物質からなる群から選択される、請求項2記載の複合体。
【請求項4】
前記巨大分子重合体が、ポリエチレンアルコール、ポリエーテル化合物、ポリビニルピロリドン、ポリアミノ酸、ジビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体、N−(2−ヒドロキシプロピル)−メタクリルアミド、硫酸デキストラン、セルロースおよびセルロース誘導体(メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースを含む)のようなデキストラングルカン誘導体、でんぷんおよびでんぷん誘導体、ポリエチレンスクロース、ポリオキシエチル化ポリオール、ヘパリンもしくはヘパリン断片、ポリ−アルキル−エチレングリコールおよびその誘導体、ポリ−アルキル−エチレングリコールとその誘導体との共重合体、ポリビニルエチルエーテル、a,P−ポリ[(2−ヒドロキシエチル)−DL−アスパルタミド]、ポリカルボン酸、ポリオキシエチレン−オキシメチレン、ポリアクリロイルモルホリン、アミノ化合物と酸化オレフィンとの共重合体、ポリヒアルロン酸、ポリオキシラン、エタン二酸とマロン酸との共重合体、ポリ(1,3−ジオキソラン)、エチレンとマレイン酸ヒドラジドとの共重合体、ポリシアル酸、シクロデキストリンまたは他の薬学上許容できる重合体からなる群から選択される、請求項3記載の複合体。
【請求項5】
前記ポリエーテル化合物が、HO((CHO)H、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキシド(HO((CHO)H)、ポリビニルアルコール((CHCHOH))またはそれらの誘導体からなる群から選択される、請求項4記載の複合体。
【請求項6】
前記ポリエチレンアルコールが、ポリエチレングリコール(モノメトキシポリエチレングリコールおよびモノヒドロキシポリエチレングリコールを含む)、ポリビニルアルコール、ポリプロピレンアルコール、ポリブテノールまたはそれらの誘導体からなる群から選択される、請求項4記載の複合体。
【請求項7】
前記ポリエチレンアルコールが、ポリエチレングリコールである、請求項6記載の複合体。
【請求項8】
前記ポリエチレングリコールが、モノメトキシポリエチレングリコールである、請求項7記載の複合体。
【請求項9】
エンドスタチン一分子が、一つ以上のポリエチレングリコール分子と結合している、請求項7または8記載の複合体。
【請求項10】
前記エンドスタチンが、N末端アミノ酸残基のα−アミノ基、リジン残基側鎖のε−アミノ基、システイン残基のメルカプト基、アスパラギン酸残基側鎖のカルボキシル基、グルタミン酸残基側鎖のカルボキシル基、またはそれらの組合せからなる群から選択される前記エンドスタチンにおける部位で、ポリエチレングリコールと結合している、請求項7から9のいずれか一項記載の複合体。
【請求項11】
エンドスタチン一分子が、前記エンドスタチン分子N末端のα−アミノ基でポリエチレングリコール一分子と結合している、請求項7から10のいずれか一項記載の複合体。
【請求項12】
前記エンドスタチン分子が、一つ以上のポリエチレングリコール分子と、前記エンドスタチン分子N末端のα−アミノ基、または、野生型エンドスタチンの75番目、95番目、106番目、117番目もしくは183番目のリジン残基に対応するリジン残基側鎖のε−アミノ基、またはそれらの組合せで結合している、請求項7から10のいずれか一項記載の複合体。
【請求項13】
前記エンドスタチン分子が、一つ以上のポリエチレングリコール分子と、前記エンドスタチン分子の付加されたシステイン残基側鎖のメルカプト基で結合し、前記付加されたシステイン残基が、前記エンドスタチン分子のN末端、C末端または内部領域に、システインまたはシステインを含むペプチド鎖の付加により導入されている、請求項7から10のいずれか一項記載の複合体。
【請求項14】
前記エンドスタチン分子が、一つ以上のポリエチレングリコール分子と、前記エンドスタチン分子のアスパラギン酸残基またはグルタミン酸残基側鎖のカルボキシル基で結合している、請求項7から10のいずれか一項記載の複合体。
【請求項15】
前記ポリエチレングリコール分子が、線状または分岐状である、請求項7から14のいずれか一項記載の複合体。
【請求項16】
前記ポリエチレングリコール分子が、1,000から100,000Da、好ましくは5,000から40,000Daの範囲の平均分子量を有する、請求項7から14のいずれか一項記載の複合体。
【請求項17】
前記タンパク質が、アルブミン、免疫グロブリン、甲状腺ホルモン結合性タンパク質、トランスサイレチン、トランスフェリン、フィブリノゲンまたはそれらの断片からなる群から選択される、請求項3記載の複合体。
【請求項18】
エンドスタチン一分子が、一つ以上のアルブミン分子、好ましくはヒト血清アルブミンまたはその断片と結合している、請求項17記載の複合体。
【請求項19】
前記エンドスタチン分子が、一つ以上の免疫グロブリンFc断片、好ましくはヒト免疫グロブリンIgGのFc断片と結合している、請求項17記載の複合体。
【請求項20】
前記エンドスタチン分子が、小分子または小ペプチドまたは他の化合物と結合しており、前記複合体が、生体内の他の分子または成分と、反応または結合可能であり、それにより、前記複合体が、生体内の他の分子または成分と、より大きな複合体を形成可能である、請求項3記載の複合体。
【請求項21】
前記複合体が、血液成分のアミノ基、水酸基またはメルカプト基と共有結合を形成可能な反応基を含む、請求項20記載の複合体。
【請求項22】
前記反応基が、アルブミンのような血液成分のメルカプト基と反応可能なマレイミドである、請求項21記載の複合体。
【請求項23】
前記複合体が、アルブミンまたは免疫グロブリンのようないくつかの血液成分に強い親和性を有し、それにより、より大きな複合体を形成可能である、請求項20記載の複合体。
【請求項24】
前記複合体が、グリコシル化、リン酸化もしくはアシル化されたエンドスタチン分子のような、小分子または小ペプチドで修飾されたエンドスタチン分子であって、前記修飾部位が、野生型タンパク質に存在するアミノ酸残基、または、変異により生じたアミノ酸残基である、請求項3記載の複合体。
【請求項25】
前記修飾剤が、非共有相互作用を介して前記エンドスタチン分子と結合し、前記修飾剤が、タンパク質、小分子または他の化学物質である、請求項1記載の複合体。
【請求項26】
生体適合物質と、エンドスタチンまたは請求項1から25のいずれか一項記載の複合体とにより形成される徐放性製剤。
【請求項27】
前記徐放性製剤が、マイクロカプセル、ヒドロゲル、マイクロスフェア、微小浸透圧ポンプまたはリポソームからなる群から選択される形態である、請求項26記載の徐放性製剤。
【請求項28】
前記エンドスタチンが、ヒト、ネズミ科または他の哺乳類由来である、請求項1から25のいずれか一項記載の複合体、または、請求項26もしくは27記載の徐放性製剤。
【請求項29】
前記エンドスタチンが、配列番号1に示す配列を有する野生型ヒトエンドスタチンである、請求項1から25のいずれか一項記載の複合体、または、請求項26もしくは27記載の徐放性製剤。
【請求項30】
前記野生型ヒトエンドスタチンが、E. coliでの発現時に配列番号2または配列番号1に示す配列を有する、請求項1から25のいずれか一項記載の複合体、または、請求項26もしくは27記載の徐放性製剤。
【請求項31】
前記エンドスタチンが、エンドスタチンの活性断片、変異体、誘導体、異性体またはそれらの組合せである、請求項1から25のいずれか一項記載の複合体、または、請求項26もしくは27記載の徐放性製剤。
【請求項32】
前記エンドスタチン断片が、配列番号3、配列番号4または配列番号5に示す配列を有するペプチドである、請求項31の複合体または徐放性製剤。
【請求項33】
前記エンドスタチン誘導体が、野生型エンドスタチンのN末端またはC末端への長さ1から15アミノ酸のペプチド付加により形成される、請求項31記載の複合体または徐放性製剤。
【請求項34】
前記エンドスタチン誘導体が、野生型ヒトエンドスタチンN末端に9つのアミノ酸であるHisタグMGGSHHHHHの付加により形成される、請求項33記載の複合体または徐放性製剤。
【請求項35】
請求項1から34のいずれか一項記載の複合体または徐放性製剤と薬学上許容できるキャリアーとを含む医薬組成物。
【請求項36】
前記薬学上許容できるキャリアーが、リン酸、クエン酸または他の有機酸の緩衝液のような水溶性のpH緩衝液;アスコルビン酸または他の抗酸化剤;低分子量のポリペプチド(10残基以下);血清アルブミン、グルチン、免疫グロブリンまたは他のタンパク質;ポリビニルピロリドンまたは他の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、リジンまたは他のアミノ酸;単糖、二糖、グルコース、マンノース、デキストリンまたは他の炭水化物;EDTAまたは他のキレート剤;マンニトール、ソルビトールまたは他の糖アルコール;ナトリウムイオンまたは他の塩を形成する対イオン;Tween(登録商標)、PEG、PLURONICS(登録商標)または他の非イオン性界面活性剤である、請求項35記載の医薬組成物。
【請求項37】
請求項1から36のいずれか一項記載の複合体、徐放性製剤または医薬組成物、およびその使用説明書を含むキット。
【請求項38】
請求項7から16のいずれか一項記載のポリエチレングリコールで修飾されたエンドスタチンとその使用説明書とを含むキット。
【請求項39】
活性化ポリエチレングリコールとエンドスタチンとを混合して、溶液、温度、pHおよび反応モル比を含む適切な条件下で反応させる工程を含む、請求項7から16のいずれか一項記載のエンドスタチンを含む複合体の調製方法。
【請求項40】
前記pHが、pH3〜10である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
陽イオン交換カラムを使用して前記複合体を精製する工程を含む、請求項7から16のいずれか一項記載のエンドスタチンを含む複合体の調製方法。
【請求項42】
ゲルろ過を使用して前記複合体を精製する工程を含む、請求項7から16のいずれか一項記載のエンドスタチンを含む複合体の調製方法。
【請求項43】
癌の予防、診断および治療における、請求項1から38のいずれか一項記載のエンドスタチンを含む複合体、医薬組成物、徐放性製剤またはキットの使用。
【請求項44】
前記癌が、肺癌、神経内分泌腫瘍、大腸癌、骨肉腫、肝癌、胃癌、膵臓癌、口腔癌、乳癌、前立腺癌、リンパ腫、食道癌、口腔癌、鼻咽腔癌、子宮頸癌、肉腫、腎臓癌、胆道癌、悪性黒色腫または他の癌から選択される、請求項43記載の使用。
【請求項45】
異常な血管新生により生じる組織または器官の障害によって特徴づけられる疾患の予防、診断および治療における、請求項1から38のいずれか一項記載のエンドスタチンを含む複合体、徐放性製剤、医薬組成物またはキットの使用。
【請求項46】
前記投与経路が、静脈内注射、静脈管内投与、皮下注射、筋内注射、腹腔内注射、皮下への埋め込み、経皮吸収、肝動脈注射、経口投与、経鼻投与、口腔粘膜投与、眼内投与、直腸投与、膣内投与および他の臨床上許容できる経路からなる群から選択される、請求項43から45のいずれか一項記載の使用。
【請求項47】
癌の治療のための医薬品の調製における、請求項1から36のいずれか一項記載のエンドスタチンを含む複合体、徐放性製剤または医薬組成物の使用。
【請求項48】
異常な血管新生により生じる組織または器官の障害によって特徴づけられる疾患の治療のための医薬品の調製における、請求項1から36のいずれか一項記載のエンドスタチンを含む複合体、徐放性製剤または医薬組成物の使用。
【請求項49】
エンドスタチンと、エンドスタチンの生体内半減期を延長可能な修飾剤との間で複合体を形成させる工程を含む、エンドスタチンの半減期の延長方法。
【請求項50】
エンドスタチンまたはエンドスタチンを含む複合体、および生体適合物質を使用して徐放性製剤を形成する工程を含む、エンドスタチンの半減期の延長方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2009−523743(P2009−523743A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−550619(P2008−550619)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【国際出願番号】PCT/CN2007/000204
【国際公開番号】WO2007/082483
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(506259634)清華大学 (13)
【出願人】(507369132)北京普▲羅▼吉生物科技▲発▼展有限公司 (5)
【氏名又は名称原語表記】Protgen Ltd.
【Fターム(参考)】