説明

癌治療のためのDNA損傷修復阻害剤

本発明は、塩基除去修復経路の阻害が、HR依存的DNA DSB修復を欠損する細胞に選択的に致死性があるという知見に関する。塩基除去修復の成分(PARPなど)を標的とする阻害剤を用いたHR依存的DNA DSB修復を欠損する癌の治療に関する方法及び手段が本明細書中に提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌細胞、特に、相同組換え(HR)依存的なDNA二本鎖切断(DSB)修復を欠損する癌細胞中への細胞致死性の導入に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞中のDNA損傷の有効な修復は、損傷を感知した後、損傷シグナルを下流エフェクターへと伝達し、細胞周期チェックポイントで停止し、DNA損傷を修復する機序によるものである。細胞は、種々のDNA損傷の修復を媒介するシグナル及びエフェクターからなるいくつかの異なる経路を含んでいる。これらの経路には、塩基除去修復(BER)、相同組換え(HR)依存的DNA二本鎖切断(DSB)修復、非相同末端結合(NHEJ)、ヌクレオチド除去修復(NER)、塩基除去修復(BER)、及びミスマッチ修復(MMR)が含まれる。様々なDNA修復経路間の相互作用及び相互依存性は、未だ十分には理解されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者らは、たとえばポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)の阻害によるBER経路の阻害が、HR依存的DNA DSB修復経路を欠損する癌細胞に対して選択的に致死性であることを発見した。このことは、癌状態の治療において重要な意味を有する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様は、HR依存的DNA DSB修復活性を欠損する癌の個体における治療に使用するための医薬の製造における塩基除去修復経路の阻害剤の使用を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
個体における癌の治療方法は、前記個体へ塩基除去修復経路の阻害剤を投与するステップを含んでよく、前記癌は、HR依存的DNA DSB修復経路を欠損するものである。
【0006】
癌は、前記の第二の修復経路によってDNAを修復する能力が正常細胞と比べて低下又は消失している1又は複数の癌細胞を含み得る。
【0007】
HR依存的DNA DSB修復経路は、DNAの二本鎖切断(DSB)を相同的な機序によって修復して、切れ目のないDNAヘリックスを再構成する(K. K. Khanna及びS. P. Jackson, Nat. Genet. 27(3): 247-254 (2001))。HR依存的DNA DSB修復経路の成分には、ATM(NM_000051)、RAD51(NM_002875)、RAD51L1(NM_002877)、RAD51C(NM_002876)、RAD51L3(NM_002878)、DMC1(NM_007068)、XRCC2(NM_005431)、XRCC3(NM_005432)、RAD52(NM_002879)、RAD54L(NM_003579)、RAD54B(NM_012415)、BRCA1(NM_007295)、BRCA2(NM_000059)、RAD50(NM_005732)、MRE11A(NM_005590)、及びNBS1(NM_002485)が挙げられる。HR依存的DNA DSB修復経路に関与する他のタンパク質としては、EMSYなどの調節因子が挙げられる(Hughes-Daviesら、Cell, Vol 115, pp 523-535)。
【0008】
塩基除去修復(BER)経路は、DNA一本鎖切断及びギャップを修復し、特定の損傷塩基を除去する。DNAヘリックス中のギャップは、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)及びリガーゼの連続する作用によって埋められる(K. K. Khanna及びS. P. Jackson, Nat. Genet., 27(3): 247-254 (2001)、F. Dantzerら、Biochemistry 39, 7559-69 2000、J. H. Hoeijmakers, Nature 411 366-74 (2001))。塩基除去修復の阻害剤は、塩基除去修復経路の成分のいずれか1を阻害し得るものである。BER経路の成分には、UNG(NM_003362)、SMUG1(NM_014311)、MBD4(NM_003925)、TDG(NM_003211)、OGG1(NM_002542)、MYH(NM_012222)、NTHL1(NM_002528)、MPG(NM_002434)、NEIL1(NM_024608)、NEIL2(NM_145043)、NEIL3(NM_018248)、APE1(NM_001641)、APE2(NM_014481)、LIG3(NM_013975)、XRCC1(NM_006297)、ADPRT(PARP1)(NM_0016718)、及びADPRTL2(PARP2)(NP_005475)が挙げられる。
【0009】
BER阻害剤は、HR依存的DNA DSB修復が欠損している癌の治療に、DNA損傷剤と組み合わせて使用することができる。DNA損傷剤は、BER阻害剤なしでは、細胞にとって致死的でない投与量又は処方で使用することが好ましい。適切なDNA損傷化学療法剤について以下で述べる。
【0010】
一部の好ましい実施形態では、哺乳動物酵素であるポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)の阻害剤(D'Amoursら、(1999) Biochem. J. 342: 249-268)を使用することができる。すなわち、PARP阻害剤は、HR依存的DNA DSB修復を欠損する癌の治療に使用することができる。
【0011】
個体におけるHR依存的DNA DSB修復を欠損する癌の治療方法は、前記個体へPARP阻害剤を投与することを含んでよい。
【0012】
PARP阻害剤は、HR依存的DNA DSB修復を欠損する癌の個体における治療に使用するための医薬の製造の際に使用することができる。
【0013】
PARP阻害剤について以下でより詳細に述べる。
【0014】
HR依存的DNA DSB修復を欠損する癌は、その経路によってDNA DSBを修復する能力が、正常細胞と比べて低下又は消失している1又は複数の癌細胞を含み、又はそれからなるものでよく、すなわち、HR依存的DNA DSB修復経路の活性が、1又は複数の癌細胞で低下又は消滅している可能性がある。
【0015】
HR依存的DNA DSB修復経路の1又は複数の成分の活性は、HR依存的DNA DSB修復を欠損する癌を有する個体の1又は複数の癌細胞で消滅していて構わない。HR依存的DNA DSB修復経路の成分は、当技術分野で十分に特徴付けられており(たとえば、Woodら(2001) Science 291 1284-1289を参照のこと)、先に挙げた成分がそれに含まれる。
【0016】
一部の好ましい実施形態では、癌細胞は、BRCA1及び/又はBRCA2欠損表現型を有するものでよく、すなわち、癌細胞のBRCA1及び/又はBRCA2活性は、低下又は消滅している。この表現型を有する癌細胞は、BRCA1及び/又はBRCA2を欠損しているものでよく、すなわち、癌細胞のBRCA1及び/又はBRCA2の発現及び/又は活性が、たとえばコード核酸の突然変異若しくは多形性によって、又は調節因子をコードする遺伝子、たとえばBRCA2調節因子をコードするEMSY遺伝子の突然変異若しくは多形性によって低下又は消滅していてよい(Hughes-Daviesら、Cell, Vol 115, pp523-535)。
【0017】
BRCA1及びBRCA2は既知の腫瘍抑制因子であり、その野生型アレルは、ヘテロ接合性保持者の腫瘍で失われていることが多い(Jasin M. Oncogene. 2002年12月16日;21(58):8981-93; Tuttら、Trends Mol Med. (2002)8(12):571-6)。BRCA1及び/又はBRCA2突然変異と乳癌との関連は、当技術分野で十分に特徴付けられている(Radice P J Exp Clin Cancer Res. 2002年9月;21(3 Suppl):9-12)。BRCA2結合因子をコードするEMSY遺伝子の増幅が、乳癌及び卵巣癌と関連付けられることも知られている。
【0018】
BRCA1及び/又はBRCA2の突然変異の保持者は、卵巣、前立腺、及び膵臓の癌のリスクも高くなっている。
【0019】
一部の実施形態では、個体の癌状態は、HR依存的DNA DSB修復を欠損する癌であると以前に確認されているものでありうる。
【0020】
他の実施形態では、本明細書に記載の方法は、個体の癌状態がHR依存的DNA DSB修復を欠損していることを確認するステップを含むことができる。
【0021】
癌は、たとえば、個体から採取したサンプルの1又は複数の癌細胞のHR依存的DNA DSB修復経路の活性を測定し、又はその経路の1又は複数の成分の活性を測定することによって、HR依存的DNA DSB修復を欠損する癌であると確認することができる。活性は、好ましくは同じ組織からの正常(すなわち、癌でない)細胞を基準として決定することができる。
【0022】
HR依存的DNA DSB修復経路の活性は、DNA損傷剤又はPARP阻害剤に応答して起こる、核中にRad51を含む焦点の形成を測定して決定することができる。HR依存的DNA DSB修復経路を欠損する細胞は、そのような焦点を生成する能力がない。Rad51焦点が存在するかどうかは、標準の免疫蛍光技術を使用して判定することができる。HR依存的DNA DSB修復経路の活性を測定する他の方法としては、IR、及び鎖間架橋試薬、DSB誘発剤(トポイソメラーゼI及びII阻害剤)などの化学療法剤に対する感受性、並びにウエスタンブロット分析、免疫組織学、染色体異常、酵素若しくはDNA結合アッセイ、及びプラスミド系アッセイの使用を挙げることができる。
【0023】
一部の実施形態では、個体の癌細胞中に、HR依存的DNA DSB修復経路の成分であるポリペプチドをコードする核酸の1又は複数の変化、たとえば、多形性又は突然変異が存在するかどうかを判定することにより、癌が、HR依存的DNA DSB修復経路を欠損していると確認することができる。
【0024】
突然変異や多形性などの配列の変化には、野生型ヌクレオチド配列に対する1若しくは複数のヌクレオチドの欠失、挿入、又は置換を含めることができる。一部の実施形態では、変化は、遺伝子増幅、たとえば、EMSY遺伝子(CAD22881;遺伝子記号C11ORF30)の増幅でありうる。1又は複数の変化は、核酸配列のコード領域又は非コード領域にあるものでよく、HR依存的DNA DSB修復経路の成分であるポリペプチドの発現又は機能を低下又は消失させるものとしうる。言い換えれば、変異体核酸は、たとえば、調節エレメントの活性が変更されることで、活性が低下若しくは消滅している変異体ポリペプチドをコードしていてもよいし、又は細胞内でほとんど若しくはまったく発現されない野生型ポリペプチドをコードしていてもよい。変異体核酸は、野生型配列に対して1、2、3、4又はそれ以上の突然変異又は多形性を有するものでよい。
【0025】
HR依存的DNA DSB修復経路の成分をコードする核酸中に1又は複数の変化が存在するかどうかは、試験サンプルの1又は複数の細胞で、1又は複数の突然変異又は多形性を含むコード核酸配列の存在を検出するか、又はその核酸配列によってコードされる変異体構成ポリペプチドの存在を検出することによって判定できる。
【0026】
個体から採取したサンプル中に特定の核酸配列、たとえば、HR依存的DNA DSB修復経路成分の発現又は活性を低下又は消滅させる突然変異又は多形性を有する核酸配列が存在するか否かを判定するには、様々な方法が利用可能である。その上、個体又はサンプルの核酸の配列決定を行った後は、もとの核酸それ自体にたよることなく、配列情報を確保し、その後探索することができる。すなわち、たとえば、配列分析ソフトウェアを使用して、配列情報データベースを走査することで、配列の変更又は突然変異を同定することができる。
【0027】
本発明の一部の態様に従う方法は、オリゴヌクレオチドプローブが、サンプルから得た核酸、たとえば、ゲノムDNA、RNA、又はcDNAに結合するかどうかの判定を含むものでもよい。プローブは、1若しくは複数の突然変異若しくは多形性を含む核酸配列に特異的に結合し、1若しくは複数の突然変異若しくは多形性を含まない核酸配列に特異的に結合しない核酸配列、又はその逆の核酸配列を含むものでよい。
【0028】
オリゴヌクレオチドプローブは、標識を含むものでよく、プローブの結合は、標識の存在を検出して判定することができる。
【0029】
方法は、1又は複数(たとえば2個)のオリゴヌクレオチドプローブ又はプライマーによる標的核酸とのハイブリダイゼーションを含むものでよい。核酸が二本鎖DNAである場合では、ハイブリダイゼーションは一般に、先に変性させて一本鎖DNAを生成してから行う。ハイブリダイゼーションは、PCR手順の一部としてのものでも、又はPCRを含まない検出手順の一部としてのものでもよい。一例となる手順は、PCRとストリンジェンシーの低いハイブリダイゼーションとの組合せでもよいはずである。
【0030】
プローブによる標的核酸(たとえばDNA)への結合は、様々な技術のいずれかを当業者の自由裁量で使用して測定することができる。たとえば、プローブは、放射能、蛍光、又は酵素によって標識されていてよい。プローブの標識を用いない他の方法には、制限断片長多形の調査、PCRを使用する増幅、RNアーゼによる切断、及び対立遺伝子特異的なオリゴヌクレオチドによる検出が含まれる。検出は、標準のサザンブロット法を用いるものでよい。たとえば、DNAを細胞から抽出し、種々の制限酵素で消化することができる。次いで、制限断片をアガロースゲル上での電気泳動によって分離した後、変性させ、ニトロセルロースフィルターに移すことができる。標識されたプローブをフィルター上のDNA断片にハイブリダイズさせ、結合したかどうかを判定することができる。
【0031】
当業者ならば、オリゴヌクレオチドの長さ及び塩基組成、温度などの要因を考慮しながら、選択的なハイブリダイゼーションに適する、所望のストリンジェンシーの条件をうまく用いることができる。
【0032】
17〜30個の塩基からなるオリゴヌクレオチドに適する選択的ハイブリダイゼーションの条件には、6×SSC中、42℃での終夜のハイブリダイゼーション、及び6×SSC中、42℃から65℃へと上昇していく一連の温度での洗浄を含む。
【0033】
他の適切な条件及びプロトコルは、「Molecular Cloning: a Laboratory Manual: 3rd edition」、Sambrook & Russell(2001年)、Cold Spring Harbor Laboratory Press NY及び「Current Protocols in Molecular Biology」、Ausubelら編、John Wiley & Sons(1992年)に記載されている。
【0034】
核酸は、ゲノムDNA、RNA、若しくはcDNA、又はその増幅された領域でよく、配列決定すると、そこに多形性又は突然変異が存在するかどうかを確認又は決定することができる。多形性又は突然変異は、上述のような成分のデータベース配列から得られる配列と比較して同定することができる。特に、ポリペプチド成分の機能の消滅又は損失を引き起こす1又は複数の多形性又は突然変異、したがって全体としてHR依存的DNA DSB修復経路が存在するかどうかを決定することができる。
【0035】
配列決定は、ある範囲の標準技術のいずれか1を使用して実施することができる。増幅産物の配列決定は、たとえば、イソプロパノール沈殿、再懸濁、及びTaqFS+Dye terminator配列決定キットを使用する配列決定を利用しうる。伸長産物をABI377 DNA配列決定装置による電気泳動にかけ、Sequence Navigatorソフトウェアを使用してデータを分析することができる。
【0036】
1組又は複数のプライマー対を使用する、PCRなどの特異的増幅反応を使用すると、核酸配列内の対象の領域、たとえば、突然変異又は多形性を含む疑いのある配列部分を増幅することができて好都合である。次いで、増幅された核酸を先のように配列決定し、かつ/又はHR依存的DNA DSB修復経路成分の発現若しくは活性を低下若しくは消滅させる突然変異若しくは多形性が存在するか否かを決定する他の任意の手段で試験することができる。
【0037】
適切な増幅反応としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(たとえば、"PCR protocols; A Guide to Methods and Applications", Innisら編、1990, Academic Press, New York、Mullisら、Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol., 51:263, (1987)、Ehrlich (eds), "PCR technology", Stockton Press, NY, 1989、及びEhrlichら、Science, 252:1643-1650, (1991)に総説がある)が挙げられる。
【0038】
一部の実施形態では、EMSYなどのHR依存的DNA DSB修復経路成分の正又は負の調節因子の発現又は活性のレベルを評価することで、癌がHR依存的DNA DSB修復を欠損していることを確認することができる。発現レベルは、たとえば、ウエスタンブロット、ELISA、RT−PCR、核酸ハイブリダイゼーション、又は核型分析によって決定することができる。
【0039】
一部の好ましい実施形態では、個体は、突然変異や多形性など、BRCA1及び/若しくはBRCA2又はその調節因子の1又は複数の変化についてヘテロ接合性である。BRCA1及びBRCA2の変化の検出は、当技術分野で周知であり、たとえば、EP699754号、EP705903号、Neuhausen S. L.及びOstrander E. A. Genet. Test (1992) 1, 75-83、Chappnis, P. O. 及びFoulkes, W. D. Cancer Treat Res (2002) 107, 29-59、Janatova Mら、Neoplasma. 2003: 50(4):246-50、Jancarkova N Ceska Gynekol. 2003 68(1): 11-6に記載されている。BRCA2結合因子EMSYが増幅されているかどうかの判定については、Hughes-Daviesら、Cell 115 523-535に記載されている。
【0040】
癌に関連した突然変異及び多形性は、変異体(すなわち、突然変異体又はアレル変異体)ポリペプチドの存在を検出することによって、タンパク質レベルで検出してもよい。
【0041】
個体からのサンプル中の癌細胞がHR依存的DNA DSB修復を欠損していることを確認する方法は、サンプルをその経路の変異体(たとえば突然変異体)ポリペプチド成分に対する特異的な結合メンバーと接触させるステップと、その特異的結合メンバーがサンプルに結合したかどうかを判定するステップとを含むものでありうる。特異的結合メンバーのサンプルへの結合は、サンプル内の細胞中にHR依存的DNA DSB修復経路の変異体ポリペプチド成分が存在することの指標となり得る。
【0042】
本発明の態様で使用するのに好ましい特異的結合分子には、抗体及びそのフラグメント若しくは誘導体(「抗体分子」)が含まれる。
【0043】
抗体などの結合メンバーの正常サンプル及び試験サンプルに対する反応性は、任意の適切な手段によって測定することができる。個々のレポーター分子によるタグ付加は1の手段である。レポーター分子は、検出可能な、好ましくは測定可能なシグナルを直接又は間接的に発するものでよい。レポーター分子の結合は、直接又は間接的なものでよく、たとえばペプチド結合による共有結合によるものでも、又は共有結合によらないものでもよい。ペプチド結合による結合は、結合性分子(たとえば抗体)及びレポーター分子をコードする遺伝子融合物の組換え発現の結果として生じるものでよい。
【0044】
結合を判定する方式は、本発明の特徴ではなく、当業者ならば、その優先度及び一般知識に従って適切な方式を選択することができる。
【0045】
癌細胞は、一般に正常細胞と比べて異常な増殖を特徴とし、通常は癌状態の個体の中で塊又は腫瘍を形成する。
【0046】
本明細書で述べる、HR依存的DNA DSB修復経路を欠損する癌状態には、任意の種類の固形癌又は悪性リンパ腫、特に白血病、肉腫、皮膚癌、膀胱癌、乳癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、直腸結腸癌、子宮頚癌、肝癌、頭頚部癌、食道癌、膵臓癌、腎癌、胃癌、及び脳腫瘍(cerebral cancer)を含めることができる。一部の実施形態では、癌状態は、乳癌、卵巣癌、膵臓癌、又は前立腺癌でありうる。癌は、家族性でも散発性でもよい。
【0047】
個体から採取されるサンプルは、1又は複数の細胞を含む組織サンプル、たとえば、上述のような癌組織、又はたとえば対照として使用するための非癌組織からの生検材料でよい。
【0048】
本発明の方法は、たとえば治療の作用経過を判定するために、癌状態の個体の評価を行うのに有用な場合もある。癌の個体の評価方法は、
個体から採取した癌細胞が、正常細胞と比べてHR依存的DNA DSB修復が欠損していることを確認するステップと、
前記個体への投与に適するBER経路阻害剤を準備するステップと
を含みうる。
【0049】
一部の好ましい実施形態では、BER経路阻害剤は、PARP阻害剤である。PARP阻害剤については、以下でより詳細に述べる。癌状態の評価方法は、
個体から採取した癌細胞が、正常細胞と比べてHR依存的DNA DSB修復が欠損していることを確認するステップと、
前記個体への投与に適するPARP阻害剤を準備するステップと
を含みうる。
【0050】
一部の好ましい実施形態では、HR依存的DNA DSB修復を欠損していることが確認された癌細胞は、BRCA1又はBRCA2を欠損する表現型でありうる。
【0051】
個体は、HR依存的DNA DSB修復を欠損する癌の素因を有する者であってもよい。本発明の方法及び手段は、そのような個体に特に有用である。
【0052】
個体は、たとえば、HR依存的DNA DSB修復経路の成分をコードする核酸、たとえば、上述の成分をコードする核酸の突然変異又は多形性についてヘテロ接合性であるものでよい。
【0053】
個体における癌の治療方法は、
前記個体にBER経路阻害剤を投与するステップを含み、
前記個体は、HR依存的DNA DSB修復経路の成分をコードする遺伝子の突然変異又は多形性についてヘテロ接合性であるものとしうる。
【0054】
BER阻害剤は、HR依存的DNA DSB修復経路の遺伝子の突然変異についてヘテロ接合性である個体における癌治療に使用するための医薬の製造の際に使用することができ、また塩基除去修復阻害剤はHR依存的DNA DSB修復経路の成分をコードする遺伝子の突然変異についてヘテロ接合性である個体における癌治療に使用することができる。
【0055】
一部の好ましい実施形態では、HR依存的DNA DSB修復経路の成分をコードする遺伝子の突然変異又は多形性についてヘテロ接合性である個体は、BRCA1及び/又はBRCA2の突然変異又は多形性についてヘテロ接合性であるものでもよい。
【0056】
本明細書に記載の方法での使用に適するBER阻害剤は、有機小分子、ペプチド、核酸など、BER経路の1又は複数の成分の活性を阻害し、低減し、又は消滅させるどんな化合物又は存在でもよい。
【0057】
一部の実施形態では、BER阻害剤は、酵素ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)の活性を低減又は消滅させるものでよい。
【0058】
用語PARPとは、本明細書では、文脈による別段の規定がない限り、PARP1(EC2.4.2.30、Genbank番号:M32721)及び/又はPARP2(Ameら、J. Biol. Chem. (1999) 274 15504-15511、Genbank番号:AJ236912)を指す。
【0059】
既知のPARP阻害剤であって、本発明に従って用いることができる化合物の例としては以下のものが含まれる。
【0060】
1.ニコチンアミド類、例えば5−メチルニコチンアミド及びO−(2−ヒドロキシ−3−ピペリジノ−プロピル)−3−カルボン酸アミドキシム、並びにその類似体及び誘導体。
【0061】
2.ベンズアミド類、例えば3−置換ベンズアミド類(3−アミノベンズアミド、3−ヒドロキシベンズアミド、3−ニトロソベンズアミド、3−メトキシベンズアミド及び3−クロロプロカインアミドなど)、4−アミノベンズアミド、1,5−ジ[(3−カルバモイルフェニル)アミノカルボニルオキシ]ペンタン、並びにその類似体及び誘導体。
【0062】
3.イソキノリノン類及びジヒドロイソキノリノン類、例えば2H−イソキノリン−1−オン類、3H−キナゾリン−4−オン類、5−置換ジヒドロイソキノリノン類(5−ヒドロキシジヒドロイソキノリノン、5−メチルジヒドロイソキノリノン及び5−ヒドロキシイソキノリノンなど)、5−アミノイソキノリン−1−オン、5−ジヒドロキシイソキノリノン、3,4ジヒドロイソキノリン−1(2H)−オン類(3,4ジヒドロ−5−メトキシ−イソキノリン−1(2H)−オン及び3,4ジヒドロ−5−メチル−1(2H)イソキノリノンなど)、イソキノリン−1(2H)−オン類、4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−ij]キノリン−6−オン類、1,6,−ナフチリジン−5(6H)−オン類、1,8−ナフタルイミド類(4−アミノ−1,8−ナフタルイミドなど)、イソキノリノン、3,4−ジヒドロ−5−[4−1(1−ピペリジニル)ブトキシ]−1(2H)−イソキノリノン、2,3−ジヒドロベンゾ[de]イソキノリン−1−オン、1−11b−ジヒドロ−[2H]ベンゾピラノ[4,3,2−de]イソキノリン−3−オン、四環ラクタム類、例えば、ベンズピラノイソキノリノン類(ベンゾピラノ[4,3,2−de]イソキノリノンなど)、並びにその類似体及び誘導体。
【0063】
4.ベンズイミダゾール類及びインドール類、例えばベンゾキサゾール−4−カルボキサミド類、ベンズイミダゾール−4−カルボキサミド類(2−置換ベンゾキサゾール4−カルボキサミド類及び2−置換ベンズイミダゾール4−カルボキサミド類、例えば2−アリールベンズイミダゾール4−カルボキサミド類及び2−シクロアルキルベンズイミダゾール−4−カルボキサミド類など、2−(4−ヒドロキシフェニル)ベンズイミダゾール4−カルボキサミドを含む)、キノキサリンカルボキサミド類、イミダゾピリジンカルボキサミド類、2−フェニルインドール類、2−置換ベンゾキサゾール(2−フェニルベンゾキサゾール及び2−(3−メトキシフェニル)ベンゾキサゾールなど)、2−置換ベンズイミダゾール類(2−フェニルベンズイミダゾール及び2−(3−メトキシフェニル)ベンズイミダゾール、1,3,4,5テトラヒドロ−アゼピノ[5,4,3−cd]インドール−6−オンなど)、アゼピノインドール類及びアゼピノインドロン類(1,5ジヒドロ−アゼピノ[4,5,6−cd]インドリン−6−オン及びジヒドロジアザピノインドリノンなど)、3−置換ジヒドロジアザピノインドリノン類(3−(4−トリフルオロメチルフェニル)−ジヒドロジアザピノインドリノン、テトラヒドロジアザピノインドリノン及び5,6,−ジヒドロイミダゾ[4,5,1−j,k][1,4]ベンゾジアゾピン−7(4H)−オンなど)、2−フェニル−5,6−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピン−7(4H)−オン及び2,3,ジヒドロ−イソインドール−1−オン、並びにその類似体及び誘導体。
【0064】
5.フタラジン−1(2H)−オン類及びキナゾリノン類、例えば4−ヒドロキシキナゾリン、フタラジノン、5−メトキシ−4−メチル−1(2)フタラジノン類、4−置換フタラジノン類、4−(1−ピペラジニル)−1(2H)−フタラジノン、四環ベンゾピラノ[4,3,2−de]フタラジノン類及び四環インデノ[1,2,3−de]フタラジノン類、並びに2−置換キナゾリノン類(8−ヒドロキシ−2−メチルキナゾリン−4−(3H)オンなど)、三環フタラジノン類及び2−アミノフタルヒドラジド、並びにその類似体及び誘導体。
【0065】
6.イソインドリノン類、並びにその類似体及び誘導体。
【0066】
7.フェナントリジン類及びフェナントリジノン類、例えば5[H]フェナントリジン−6−オン、置換5[H]フェナントリジン−6−オン類、特に2−,3−置換5[H]フェナントリジン−6−オン類及び6(5H)フェナントリジノン類のスルホンアミド/カルバミド誘導体、チエノ[2,3−c]イソキノロン類(例えば9−アミノチエノ[2,3−c]イソキノロン及び9−ヒドロキシチエノ[2,3−c]イソキノロン、9−メトキシチエノ[2,3−c]イソキノロンなど)、N−(6−オキソ−5,6−ジヒドロフェナントリジン−2−イル]−2−(N,N−ジメチルアミノ}アセトアミド、置換4,9−ジヒドロシクロペンタ[lmn]フェナントリジン−5−オン類、並びにその類似体及び誘導体。
【0067】
8.ベンゾピロン類、例えば1,2−ベンゾピロン、6−ニトロソベンゾピロン、6−ニトロソ1,2−ベンゾピロン、及び5−ヨード−6−アミノベンゾピロン、並びにその類似体及び誘導体。
【0068】
9.不飽和ヒドロキシム酸誘導体、例えばO−(3−ピペリジノ−2−ヒドロキシ−1−プロピル)ニコチン酸アミドキシム、並びにその類似体及び誘導体。
【0069】
10.ピリダジン類、例えば縮合ピリダジン類、並びにその類似体及び誘導体。
【0070】
11.他の化合物、例えばカフェイン、テオフィリン、及びチミジン、並びにその類似体及び誘導体。
【0071】
さらなるPARP阻害剤は、例えば米国特許第6,635,642号、米国特許第5,587,384号、WO2003080581号、WO2003070707号、WO2003055865号、WO2003057145号、WO2003051879号、米国特許第6514983号、WO2003007959号、米国特許第6426415号、WO2003007959号、WO2002094790号、WO2002068407号、米国特許第6476048号、WO2001090077号、WO2001085687号、WO2001085686号、WO2001079184号、WO2001057038号、WO2001023390号、WO2001021615号、WO2001016136号、WO2001012199号、WO9524379号、Banasik et al. J. Biol. Chem., 267:3, 1569-75 (1992)、Banasik et al. Molec. Cell. Biochem. 138:185-97 (1994))、Cosi (2002) Expert Opin. Ther. Patents 12 (7)、及びSouthan & Szabo (2003) Curr Med Chem 10 321-340並びにこれに引用されている参照文献に記載されている。
【0072】
好適なPARP阻害剤の好ましいクラスの1としては、フタラジノン類、例えばWO02/36576号に記載されているような1(2H)−フタラジノン及びその誘導体が挙げられる。特に、下記式:
【化1】

【0073】
の化合物、並びにその異性体、塩、溶媒和物、化学的保護形態及びプロドラッグをPARPの阻害に用いることができる。上記式中、
A及びBは一緒に、任意により置換されていてもよい縮合芳香環を表し、
は−L−Rにより表され、該式中、Lは下記式:
−(CHn1−Qn2−(CHn3
〔式中、n、n及びnはそれぞれ0、1、2及び3から選択され、n、n及びnの合計は1、2又は3であり、QはO、S、NH、C(=O)又は−CR−から選択され、ここでR及びRは、独立して水素、ハロゲン又は任意により置換されていてもよいC1−7アルキルから選択されるか、あるいはそれらが結合する炭素原子と一緒に、飽和(C3−7シクロアルキル基)又は不飽和(C3−7シクロアルケニル基)であってよいC3−7環状アルキル基を形成するか、あるいはR及びRの一方がRにおける原子と結合して、R及びRがQ、−(CHn3−(存在する場合)及びRの一部に結合する炭素原子を含む不飽和C3−7シクロアルケニル基を形成する〕
であり、
は任意により置換されていてもよいC5−20アリールであり、
は、水素、任意により置換されていてもよいC1−7アルキル、C3−20複素環、並びにC5−20アリール、ヒドロキシ、エーテル、ニトロ、アミノ、アミド、チオール、チオエーテル、スルホキシド及びスルホンから選択される。
【0074】
好ましくは、下記式:
【化2】

【0075】
の化合物、又はその異性体、塩、溶媒和物、化学的保護形態若しくはプロドラッグをPARPの阻害に用いることができ、上記式中、
A及びBは一緒に、任意により置換されていてもよい縮合芳香環を表し、
は−CH−Rであり、
は任意により置換されていてもよいフェニルであり、
は水素である。
【0076】
いくつかの好ましい実施形態において、図2に示されるKU−0058684又はKU−0058948の構造を有する化合物、又はその異性体、塩、溶媒和物、化学的保護形態若しくはプロドラッグをPARPの阻害に用いることができる。
【0077】
好適なPARP阻害剤は、市販のものであってもよいし、あるいは公知の出発物質から公知の方法によって合成してもよい(例えば、Suto et al. Anticancer Drug Des. 6:107-17 (1991)参照)。
【0078】
塩基除去修復阻害剤の別のクラスとしては、BER経路の成分のペプチド断片が挙げられる。例えば、PARP配列のペプチド断片を用いてPARPを阻害し、それによりBER経路の活性を低減する又は無効にすることができる。ペプチド断片は、上記成分の公開されている配列、例えば公開されているPARP配列(アクセッション番号NM_001618)を用いて、化学合成によりその全体を又は一部を生成することができる。ペプチド断片は、その方法の概要が広く入手可能である(例えば、J.M. Stewart and J.D. Young, Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd edition, Pierce Chemical Company, Rockford, Illinois (1984);M. Bodanzsky and A. Bodanzsky, The Practice of Peptide Synthesis, Springer Verlag, New York (1984);Applied Biosystems 430A Users Manual, ABI Inc., Foster City, California)十分に確立されている標準的な液体ペプチド合成法(又は好ましくは固相ペプチド合成法)に従って容易に調製することができ、あるいは溶液中で、液相法により、又は固相、液相及び液体化学の任意の組み合わせにより、例えば最初に別々のペプチド部分を合成し、続いて所望又は適当であれば、存在する保護基を除去し、個々の炭酸若しくはスルホン酸又はそのそれぞれの誘導体の反応によって残基Xを導入することによって、調製することも可能である。
【0079】
BER経路の成分(PARPなど)を阻害するための他の候補化合物は、その成分の3次元構造のモデル化に基づいて、合理的薬物設計法を用いることによって、特定の分子形状、サイズ及び電荷特性を有する候補化合物を得ることが可能である。候補阻害剤は、例えば、上記成分を阻害するペプチド断片又は他の化合物の「機能的類似体」でありうる。機能的類似体は、対象のペプチド又は他の化合物と同じ機能的活性を有する、すなわち、DNA修復経路成分の相互作用又は活性を妨害可能なものである。そのような類似体の例としては、上記成分の別の成分との接触領域(特に重要と考えられるアミノ酸残基の配置)の3次元構造と類似するようにモデル化された化学化合物が挙げられる。
【0080】
好適なBER経路阻害剤の別のクラスとしては、BER経路の成分、例えばPARP(アクセッション番号NM_001618)のアミノ酸配列の一部若しくは全体をコードする核酸、又はその相補配列であって、活性ポリペプチドの産生をダウンレギュレートすることにより活性又は機能を阻害するものが挙げられる。
【0081】
例えば、PARP活性の阻害は、慣用的な方法、例えばドットブロット(Affar EB et al Anal Biochem. 1998;259(2):280-3)、及びPARPがポリADP−リボース鎖を形成する活性を直接測定するBERアッセイ(例えばトリチウム化基質NADによる放射性アッセイ、又はPARP活性によって形成されるポリマー鎖に対する特異的抗体を用いて測定する)(K.J. Dillon et al, Journal of Biomolecular Screening, 8(3): 347-352 (2003))を用いて測定することができる。
【0082】
例えば、BER経路成分の発現は、アンチセンス又はRNAi技術を用いて阻害することができる。これらの遺伝子発現をダウンレギュレートする手法の使用は、現在、当技術分野で十分に確立されている。
【0083】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、核酸、プレ−mRNA又は成熟mRNAの相補配列にハイブリダイズして塩基除去修復経路成分の産生を妨害して、その発現が低減するか又は完全に若しくは実質的に完全に抑止されるように設計される。コード配列の標的化に加えて、アンチセンス技術は、遺伝子の制御配列、例えば5’フランキング配列内を標的化するために用いてもよく、それによりアンチセンスオリゴヌクレオチドは発現制御配列を妨害しうる。アンチセンス配列の構築とそれらの使用は、例えばPeyman and Ulman, Chemical Reviews, 90:543-584, (1990)及びCrooke, Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 32:329-376, (1992)に記載されている。
【0084】
オリゴヌクレオチドは、投与のためにin vitroで生成してもよいし又はexvivoで生成してもよく、あるいはアンチセンスRNAをダウンレギュレーションが望まれる細胞内でin vivoで生成させてもよい。従って、二本鎖DNAは、DNAのアンチセンス鎖の転写によって、標的遺伝子のセンス鎖から転写される正常mRNAに対して相補的なRNAが生じるように、プロモーターの制御下に「逆配向」に配置することができる。相補的なアンチセンスRNA配列は、続いてmRNAと結合して二本鎖を形成し、それが標的遺伝子からタンパク質への内因性mRNAの翻訳を阻害すると考えられる。これが実際の作用機構であるか否かは依然として不明確である。しかしながら、この技術が機能するという事実は確立されている。
【0085】
逆配向のコード配列に対応する完全な配列を用いる必要はない。例えば、十分な長さの断片を用いることができる。当業者には、アンチセンス阻害のレベルを最適化するように遺伝子のコード配列又はフランキング配列の種々のサイズ及び種々の部分に由来する断片からスクリーニングすることが慣用的である。開始メチオニンコドンATGを、おそらく開始コドンの1又はそれ以上のヌクレオチドの上流に含有させることが有利でありうる。好適な断片は、約14〜23ヌクレオチド、例えば約15、16又は17ヌクレオチドを有しうる。
【0086】
アンチセンス法の代替として、センス(すなわち標的遺伝子と同じ)配向に挿入された標的遺伝子の全体又は一部のコピーを用いて、共抑制により標的遺伝子の発現を低減させることができる(Angell & Baulcombe (1997) The EMBO Journal 16,12:3675-3684; 及びVoinnet & Baulcombe (1997) Nature 389: p 553)。二本鎖RNA(dsRNA)は、センス又はアンチセンス鎖単独のいずれよりも遺伝子サイレンシングにおいてさらに有効であることが見出されている(Fire A. et al Nature 391, (1998))。dsRNAにより媒介されるサイレンシングは、遺伝子特異的であり、RNAインターフェアランス(RNAi)と呼ばれることが多い。
【0087】
RNAインターフェアランスは、2段階のプロセスである。第1に、dsRNAが細胞内で切断されて、5’末端リン酸と3’の短い突出部(約2塩基)を有する約21〜23塩基長の小さな干渉RNA(siRNA)が生じる。そのsiRNAは、破壊のために特異的に対応のmRNA配列に標的化する(Zamore P.D. Nature Structural Biology, 8, 9, 746-750, (2001))。
【0088】
RNAiはまた、3’突出末端を有する同じ構造の化学合成されたsiRNA二本鎖を用いることによって効率的に誘導されうる(Zamore PD et al Cell, 101, 25-33, (2000))。合成siRNA二本鎖は、広範な哺乳動物細胞系における内因性及び異種遺伝子の発現を特異的に抑制することが示されている(Elbashir SM. et al. Nature, 411, 494-498, (2001))。
【0089】
他の可能性としては、転写時に、核酸を特異的部位で切断し、それゆえ遺伝子発現に影響を及ぼすのにも有効なリボザイムを生成する核酸を用いることがある。リボザイムの技術背景の参考文献としては、Kashani-Sabet and Scanlon, 1995, Cancer Gene Therapy, 2(3): 213-223、及びMercola and Cohen, 1995, Cancer Gene Therapy, 2(1), 47-59が挙げられる。
【0090】
本発明の方法は、BER阻害剤、例えばPARP阻害剤を個体に投与することを含みうる。これは、HR依存的DNA DSB修復を欠損する癌状態を有する個体を同定した後に行いうる。
【0091】
該活性化合物を単独で投与することは可能ではあるが、その化合物を、上記で定義した活性化合物の少なくとも1種を、1種以上の製薬上許容される担体、佐剤、賦形剤、希釈剤、充填剤、バッファー、安定化剤、保存剤、滑沢剤、又はその他の当業者に周知の物質、及び任意で他の治療薬又は予防薬と共に含む医薬組成物(例えば、製剤)として提示することが好ましい。
【0092】
上述の塩基除去修復阻害剤、例えば1種以上の本明細書に記載の製薬上許容される担体、賦形剤、バッファー、佐剤、安定化剤又は他の物質と共に混合された阻害剤を含む医薬組成物を、本明細書に記載の方法において用いることができる。
【0093】
本明細書で用いる「製薬上許容される」という用語は、化合物、物質、組成物、及び/又は投与剤形であって、健全な医学的判断で認めうる範囲内にあり、過剰な毒性、刺激性、アレルギー反応、又はその他の問題若しくは合併症をもたらさず被験体(例えばヒト)の組織との接触のための使用に適しており、妥当な利益/危険性比を示すものであることを意味する。担体、賦形剤などの各々はまた、製剤中の他の成分と適合しうるという意味でも「許容される」ものでなければならない。
【0094】
適切な担体、賦形剤などについては、標準的な製薬の教科書、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第18版, Mack Publishing Company, Easton, PA., 1990中に記載されている。
【0095】
該製剤は単位投与剤形で都合よく提供することができ、製薬業界で周知のいずれかの方法によって調製することができる。そのような方法は、該活性化合物を1種以上の補助成分からなる担体と会合させるステップを含む。一般的には、該製剤は、該活性化合物を液状担体若しくは微粉化した固体担体、又はその双方と均一に十分に会合させ、次いで必要に応じて生成物を成形することによって調製される。
【0096】
製剤は、液剤、溶剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤、シロップ剤、錠剤、ロゼンジ、顆粒剤、粉剤、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、アンプル剤、坐剤、ペッサリー、軟膏、ゲル剤、ペースト、クリーム、噴霧剤、ミスト、フォーム、ローション、オイル、ボーラス剤、舐剤、又はエアロゾルの形態とすることができる。
【0097】
BER阻害剤又は該阻害剤を含む医薬組成物は、任意の都合のよい投与経路により被験体に投与することができる。投与経路は、全身/末梢に、又は所望の作用部位に対してであるかどうかにかかわらず、例えば限定されるものではないが、経口(例えば摂取により)、局所(例えば経皮、鼻腔内、眼内、口腔内及び舌下)、経肺(例えば、例としてエアロゾルを用いて、例として口若しくは鼻から、吸入若しくは吸送療法により)、直腸内、経膣内、非経口、例えば注射(皮下、皮内、筋肉内、静脈内、動脈内、心腔内、くも膜下腔内、髄腔内、嚢内、被膜下、眼窩内、腹腔内、気管内、表皮下、関節内、くも膜下、及び胸骨内、デポーの移植により(例えば皮下又は筋肉内)が挙げられる。
【0098】
経口投与(例えば摂取により)に適した製剤は、別個の単位として提供することができ、それは例えば、カプセル、カシェ剤、若しくは錠剤で、各々が定量の該活性化合物を含有しているもの;粉末剤又は顆粒剤;水性若しくは非水性液体中の溶剤若しくは懸濁剤;又は水中油型乳剤若しくは油中水型乳剤;ボーラス剤;舐剤;又はペーストなどである。
【0099】
錠剤は、例えば圧縮又は成形などの従来法で任意で1種以上の補助成分と共に作製することができる。圧縮錠剤は、適切な機械中で、粉末や顆粒などの自由流動体とした該活性化合物を圧縮する、任意で1種以上の結合剤(例えば、ポビドン、ゼラチン、アラビアゴム、ソルビトール、トラガカント、ヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤若しくは希釈剤(例えば、乳糖、微晶質セルロース、リン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ);崩壊剤(例えば、グリコール酸ナトリウムデンプン、架橋ポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム);界面活性剤又は分散剤又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム);及び保存剤(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸プロピル、ソルビン酸)と混合して圧縮することによって調製することができる。成形錠剤は、不活性の液状希釈剤で湿潤化した粉末の化合物の混合物を適切な機械中で成形することによって作製することができる。錠剤は任意でコーティング又は切れ目を入れることができ、また、錠剤に含まれる該活性化合物の遅延放出若しくは制御放出が行われるように、例えば、所望の放出プロフィールを得るためにヒドロキシプロピルメチルセルロースを様々な割合で用いることによって製剤化することができる。錠剤は任意で腸溶性コーティングを施したものとすることができ、胃ではなく腸の一部で放出するようにすることができる。
【0100】
非経口投与(例えば、皮膚、皮下、筋肉内、静脈内、及び皮内注射を含む注射)に適した製剤としては、さらに、抗酸化剤、バッファー、保存剤、安定化剤、静菌剤、及び該製剤を、意図しているレシピエントの血液と等張とする溶質などを含んでいてよい、水性及び非水性の等張で発熱性物質不含の無菌の注射用液体;並びに、懸濁剤及び増粘剤を含んでいてよい、水性及び非水性無菌懸濁液;並びに該化合物が血液成分若しくは1以上の器官に標的化されるよう設計されているリポソーム又はその他の微粒子系、が挙げられる。このような製剤中に用いられる適切な等張のビヒクルの例としては、注射用塩化ナトリウム水溶液、リンゲル液、又は乳酸加リンゲル注射液が挙げられる。典型的には、その液体中の活性化合物の濃度は約1ng/mLから約10μg/mL、例えば約10ng/mLから約1μg/mLである。該製剤は単位投与量又は多数回投与量の密封容器、例えば、アンプル及びバイアルに入れた形で提供することができ、無菌の液状担体、例えば注射用水を使用直前に添加することのみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)された条件で保存することができる。即時使用の注射用溶液及び懸濁液は無菌の粉末、顆粒、及び錠剤から調製することができる。製剤はリポソーム又はその他の微粒子系の形態とすることができ、それらは該活性化合物が血液成分若しくは1以上の器官に標的化されるよう設計されている。
【0101】
当業者であれば、該活性化合物、及び該活性化合物を含む組成物の適切な投与量は、患者毎に異なることが理解されよう。最適な投与量の決定は、通常は本発明の治療の治療上の有益性のレベルと有害な副作用の危険性とのバランスを取ることを必要とする。選択された投与量のレベルは様々な因子によって変わり、そのような因子としては、限定されるものではないが、その特定の化合物の活性、投与経路、投与時間、該化合物の排泄速度、治療期間、組み合わせて用いられるその他の薬剤、化合物、及び/又は物質、並びに患者の年齢、性別、体重、状態、一般的健康状態、及び病歴が挙げられる。一般的には投与量は作用部位で有害な副作用を実質的に起こすことなく所望の効果を達成できるような局所濃度が選択されるが、化合物の量と投与経路は究極的には医師の裁量で決定されることとなる。
【0102】
BER経路阻害剤を含む組成物は、癌細胞DNAに損傷を与える標準的な化学療法と組み合わせて本明細書に記載の方法で用いることができる。好適な薬剤としては、トポイソメラーゼI及びII活性の阻害剤(カムプトテシンなど)、イリノテカン、トポテカン及びルビテカンなどの薬剤、アルキル化剤(テモゾロミド及びDTIC(ダカルバジン)など)、並びに白金薬剤(シスプラチン、シスプラチン−ドキソルビシン−シクロホスファミド、カルボプラチン及びカルボプラチン−パクリタキセルなど)が挙げられる。
【0103】
他の好適な化学療法剤としては、ドキソルビシン−シクロホスファミド、カペシタビン、シクロホスファミド−メトトレキセート−5−フルオロウラシル、ドセタキセル、5−フロウラシル−エピルビシン−シクロホスファミド、パクリタキセル、ビノレルビン、エトポシド、PEG付加リポソームドキソルビシン、及びトポテカンが挙げられる。
【0104】
かかる薬剤を用いた個体の処置は当技術分野で周知である。
【0105】
in vivoの投与は1回の投与で、持続的投与で、又は治療の全期間にわたって間欠的に(例えば、適切な間隔をおいて分割した投与量で)行うことができる。最も効果的な投与方法と投与量を決定するための方法は当業者にはよく知られており、治療に用いる製剤、治療の目的、治療しようとする標的の細胞、及び治療しようとする被験体によって異なる。単回又は複数回の投与は治療担当医師によって選択された投与量及び投与パターンで行うことができる。
【0106】
通常は、該活性化合物の適切な投与量は、被験体の体重1kgあたり1日に約100μgから約250mgの範囲である。該活性化合物が塩、エステル、プロドラッグなどである場合には、投与量は親化合物に基づいて計算され、用いられる実際の重量は相応に増加する。
【0107】
本発明の方法はまた、個体における癌状態の調査及び評価において有用でありうる。
【0108】
癌状態におけるHR依存的DNA DSB修復経路の活性を評価する方法は、
塩基除去修復阻害剤を上記状態を有する個体から採取した癌細胞サンプルと接触させるステップ、及び
対照サンプルと比較して上記サンプル中の細胞死の量を測定するステップ
を含みうる。
【0109】
HR依存的DNA DSB修復活性のレベルが正常な対照細胞と比較して上記サンプル中の細胞死が増大していることは、上記癌がHR依存的DNA DSB修復を欠損することを示す。
【0110】
個体は、癌状態を有しているものであり、サンプルは、癌細胞サンプル、例えば腫瘍生検に由来するものでありうる。
【0111】
好ましい実施形態において、塩基除去修復阻害剤はPARP阻害剤である。従って、癌状態におけるHR依存的DNA DSB修復を評価する方法は、
PARP阻害剤を癌状態を有する個体から採取した癌細胞サンプルと接触させるステップ、及び
対照サンプルと比較して上記サンプル中の細胞死の量を測定するステップ
を含みうる。
【0112】
対照細胞と比較して上記サンプルの細胞におけるPARP阻害剤に対する感受性が増大していることは、上記癌がHR依存的DNA DSB修復活性を欠損することを示す。
【0113】
PARP阻害剤に対する感受性の増大は、癌細胞が、BRCA1又はBRCA2欠損表現型、例えばBRCA1又はBRCA1発現又は活性の低減又は消失を有することを示しうる。
【0114】
HR依存的DNA DSB修復活性を欠損すると同定された癌状態、例えばBRCA1又はBRCA2欠損表現型を有する状態は、そのような状態を特異的に対象とする治療に供することができる。好適な治療としては、DNA架橋剤、例えばマイトマイシンC、シスプラチン又はカルボプラチンなどの使用が挙げられる。
【0115】
上記方法を用いて、HRを標的とする治療、例えばBRCA1又はBRCA2欠損表現型を有する癌に特異的な治療に対する、個体の癌状態の応答を予測しうる。
【0116】
HR依存的DNA DSB修復を欠損する癌を標的とする治療に対する、個体の癌状態の応答の予測方法は、
BER阻害剤、例えばPARP阻害剤を、癌状態を有する個体から採取した癌細胞サンプルと接触させるステップ、及び
対照サンプルと比較して上記サンプル中の細胞死の量を測定するステップ
を含みうる。
【0117】
HR依存的DNA DSB修復活性のレベルが正常な対照細胞と比較して上記サンプル中の細胞死が増大していること(PARP阻害剤に対する感受性の増大)は、上記癌が上記治療に対して応答性であることを示す。
【0118】
HR依存的DNA DSB修復を欠損する癌、例えばBRCA1又はBRCA2欠損癌を標的とする治療としては、例えばDNA架橋剤(マイトマイシンC、シスプラチン又はカルボプラチンなど)が挙げられる。
【0119】
本発明の他の態様は、塩基除去修復を欠損する癌の治療における、HR依存的DNA DSB修復の阻害剤の使用に関する。
【0120】
個体における塩基除去修復を欠損する癌の治療方法は、
HR依存的DNA DSB修復経路阻害剤を上記個体に投与するステップ
を含みうる。
【0121】
HR依存的DNA DSB修復経路阻害剤は、個体における塩基除去修復を欠損する癌の治療において使用するための医薬の製造において用いることができる。
【0122】
HR依存的DNA DSB修復の阻害剤は、上述した1又はそれ以上の経路成分の阻害剤を含みうる。好適な阻害剤としては、ATM阻害剤が挙げられる。
【0123】
ATM阻害剤は、例えば式I:
【化3】

【0124】
〔式中、
YはO又はSのいずれかであり、
及びRは独立して、水素、任意により置換されていてもよいC1−7アルキル基、C3−20複素環基、又はC5−20アリール基であるか、あるいはそれらが結合する窒素原子と共に、4〜8個の環原子を有し任意により置換されていてもよい複素環を形成してもよく、
は、任意により置換されていてもよいC5−20カルボアリール基とエーテル架橋若しくはチオエーテル架橋により結合したフェニル基;フェニル基;及びさらなる架橋基により任意に連結されていてもよい、任意により置換されていてもよいC5−20カルボアリール基(両方の基上のエーテル架橋若しくはチオエーテル架橋に隣接して結合して、フェニル基及びC5−20カルボアリール基の両方と縮合した任意により置換されていてもよいC5−7酸素若しくは硫黄含有複素環を形成する);さらに任意により置換されていてもよいフェニル基〕
の化合物、又はその異性体、塩、溶媒和物、化学的保護形態若しくはプロドラッグでありうる。
【0125】
かかる阻害剤は、WO03/070726号にさらに詳細に記載されている。
【0126】
他の阻害剤としては、HR依存的DNA DSB修復の成分のペプチジル断片であり、上述の核酸をコードするものが挙げられる。
【0127】
癌状態は、上述の方法を使用してBER活性を欠損することが確認されたものでよい。
【0128】
ここからは、本発明の態様を、限定するものではなく例として、以下で述べる添付の図面及び実験による実例に即して説明する。当業者には、別の態様及び実施形態が明らかとなろう。
【0129】
本発明の様々なパラメーター及び特徴は先に述べている。疑いを回避するために、それらのパラメーター及び特徴のすべての組合せ及び副次的な組合せが本発明に含まれることを述べておく。
【0130】
本明細書で言及するすべての文書は、参照により本明細書に組み入れられる。
【実施例】
【0131】
材料及び方法
RNA干渉
次のRNAi標的配列、すなわち、(i)マウスParp1 5'-GCGGAGUACGCCAAGUCCA-3'、(ii)スクランブル対照5'-CAUGCCUGAUCCGCUAGUC-3'を発現させる遺伝子特異的なpSUPER(T. R. Brummelkampら、Science 296, 550-3 (2002))構築物を作製した。
【0132】
CMV IEプロモーター及びeCFP(強化型シアン蛍光タンパク質)を含む1.6kbの断片を、pECFP−Mito(Invitrogen)から、得られたpSUPER構築物のSapI部位にサブクローニングし、pSUPER−eCFP−Parp1及びpSUPER−eCFP−controlを作製した。Lipofectamine2000(Invitrogen)を製造者の使用説明書に従って使用しながら、D3 ES細胞にこれらのプラスミドをトランスフェクトした。トランスフェクトしてから48時間後、20mMトリスpH8、200mM NaCl、1mM EDTA、0.5%(v/v)NP40、10%(v/v)グリセロール、及びプロテアーゼ阻害剤からなる緩衝液を使用して、全体の細胞溶解物を作製した。各溶解物30μgをBis−Tris Acetate Acrylamide Pre Cast Gels(Novex)上で電気泳動にかけ、Trans−Blot Nitrocellulose(Biorad)上にブロットした。ウサギポリクローナル抗PARP−1抗体(Cell Signalling、カタログ番号9542)又はウサギ抗GFP/CFP抗血清(Invitrogen、カタログ番号R970-01)を用いてブロットを検出した後、抗ウサギIgG−HRPとの2回目のハイブリダイゼーションを行い、その後ECL(商標)(英国Amersham)を使用して化学発光を検出した。
【0133】
PARPの小分子阻害剤:
PARP阻害剤をWO02/36576号に記載のとおりに合成した。化学阻害剤は、DMSOに10mMで溶解させ、−20℃の暗所で保管した。
【0134】
細胞系
VC8細胞及びマウスBrca2 BACを補完した誘導体は、M. Kraakman-van der Zwetら、Mol Cell Biol 22, 669-79 (2002)に記載されているとおりのものとした。Brca2機能を欠損するES細胞は、以前から記載されている(Tuttら、(2002) EMBO Rep 3, 255-60)。Brca1を欠損するES細胞の構築は、以前から確認されているが(Forayら、(2003) Embo J 22 2860-71)、他でも記載があるであろう。HBL100細胞にpSUPER BRCA1 RNAiプラスミドをトランスフェクトし、ジェネテシンを用いて3週間かけて選択した。ノーザンブロットによって分析してBRCA1が発現されているかどうかを基準にクローンを選択した。
【0135】
クローン原性アッセイ
Parp1 RNAノックダウンに対する感受性を測定するために、0.1%ゼラチンでコートした組織培養皿で維持したES細胞に、pSUPER−eCFP−Parp1又はpSUPER−eCFP−controlを、抗生物質ブラストサイジン(pEF−Bsd、Invitrogen)への耐性を示すベクターと共に先のようにトランスフェクトした。トランスフェクトしてから24時間後、細胞をトリプシン処理し、6ウェルプレートに播いた。トランスフェクトしてから48時間後、ブラストサイジンでの処理を開始し、細胞に3日毎に与え直した。10〜14日後、細胞をPBSで洗浄し、メタノールで固定し、クリスタルバイオレットで染色した。細胞を約50個より多くを含むコロニーをカウントした。
【0136】
化学阻害剤に対する感受性を測定するために、指数関数的に増殖させた細胞培養物をトリプシン処理し、様々な密度で6ウェルプレートのマイトマイシンC不活性化マウス胚性線維芽細胞上に播き、適切な場合では、18時間後に阻害剤で処理した。連続的暴露のために、細胞に新鮮な培地及び阻害剤を4日毎に与え直した。定期的に暴露するために、阻害剤を指定の期間にわたって加え、次いで細胞を洗浄し、新鮮な培地を与え直した。10〜14日後、細胞をPBSで洗浄し、メタノールで固定し、クリスタルバイオレットで染色した。細胞を約50個より多くを含むコロニーをカウントした。実験は、少なくとも3回3連で実施した。
【0137】
FACS分析
DNA含有量の測定では、細胞を70%のエタノールで固定し、RnアーゼA及びヨウ化プロピジウム(PI)と共にインキュベートし、FACSCalibur(Becton Dickinson)によって分析した。ホスホ−ヒストンH3分析では、細胞を70%エタノールで固定し、0.25%トリトンX−100で透過性にし、抗ホスホ−ヒストンH3抗体(Upstate Biotechnology)と共に3時間、次いでFITC−抗ウサギIgG(Serotec)と共に30分間インキュベートした。FACS分析のための処理は先のとおりである。
【0138】
アポトーシス分析
細胞をトリプシン処理し、培養上清及び培地洗浄物を保持した。これらをプールし、細胞を冷PBS−Aで洗浄した後、結合用緩衝液(10mM HEPES、140mM NaCl、2.5mM CaCl(pH7.4))に1×10細胞/mlで再懸濁させた。100μlの懸濁液を暗所で5μlのアネキシンV−FITC(BD Biosciences)/0.1μgのヨウ化プロピジウムと共に15分間室温でインキュベートし、400μlの結合用緩衝液を加え、FACS Calibur(BD Biosciences)によって直ちに分析した。
【0139】
Rad51焦点の形成
ES細胞を、PBS中4%パラホルムアルデヒドで固定した様々な濃度のPARP阻害剤中で48時間培養し、PBS中0.2%トリトンX100で透過性にした。細胞を、ウサギ抗Rad51ポリクローナル抗体(Ab551922、BD-Pharmingen、英国オックスフォード)の100倍希釈物で染色した。洗浄した後、一次抗体をAlexa Fluor−555ヤギ抗ウサギIgG(Alexa)で可視化し、核をTO−PRO−3ヨウ化物(Molecular Probes)で可視化した。Leica TCS−SP2共焦点顕微鏡を使用してRad51焦点を視覚化し、定量した。
【0140】
コメットアッセイ
VC8細胞及びVC8−BAC細胞をプレートに播いてから24時間後に、1μM KU0058684で30時間処理した。それ以降の作業はすべて暗所で実施した。記載されているとおり(Lemay及びWood, 1999)、細胞をPBSで洗浄摩砕してからコメット分析を行った。LMPアガロース(PBS中0.5%)に懸濁させた細胞を、コメットスライド(Trevigen、米国ゲーサーズバーグ)上に広げ、固まるまで4℃に置いておいてから、2.5M NaCl、100mM EDTA、10mMトリス塩基、1%ラウリルサルコシン酸ナトリウム、0.01%トリトンX−100中で45分間可溶化した。スライドを5分間かけてTBEにトランスファーしてから、18Vで15分間の電気泳動にかけた。次いで、スライドを100%エタノールで5分間かけて固定し、風乾した後、SYBRグリーン色素を加え、フルオレセインフィルター(Nikon)を使用して落射蛍光によって可視化した。Nikonを供給元とするLucia G画像処理パッケージのコメットソフトウェアモジュールを使用してコメットを分析した。3回の独立した実験それぞれについてデータ点あたり50コメットを調べ、平均テールモーメントを算出した。
【0141】
有糸分裂染色体分析
ES細胞をゼラチン上に播き、24時間かけて化学阻害剤で処理した後、1時間コルセミド処理した。細胞を収集し、固定し、スライドに滴下し、乾燥させ、DAPIで染色した後、顕微鏡で染色体を分析した。
【0142】
ES細胞の異種移植片及びKU0058684による処置
ES細胞由来の腫瘍(奇形腫)は、2×10個のES細胞を6〜8週齢の胸腺欠損BALB/cヌード(nu/nu)マウスに皮下注射して生成した。20匹のマウスにBrca2を欠損するES細胞を注射し、同等の集団に同質遺伝子野生型細胞を注射した。細胞を注射してから2日後、KU0058684又はビヒクルでの処置を開始した。3日間続けて、2回分のKU0058684(又はビヒクル)をそれぞれ動物1kgあたり15mgの投与量で6時間の間隔をおいて腹腔内投与した。次いでこの処置を5日間休止し、次いでさらに3日続けて(前のように)再開した。腫瘍の増殖を最低0.3cmの体積からモニターした。図16のデータは、合計40匹を使用する2件の別個の実験を表すものである。
【0143】
BRCA1細胞欠損系統の生成
MCF7スクランブル細胞系及びMCF7−3.23細胞系は、MCF7乳腺癌細胞に遺伝子特異的なpSUPER構築物を安定にトランスフェクトして作製した。次のRNAi標的配列、すなわち、(i)ヒトBRCA1 5'-GGAACCTGTCTCCACAAAG-3'、(ii)スクランブル対照5'-CATGCCTGATCCGCTAGTC-3'を発現させる遺伝子特異的なpSUPER構築物を作製した。ヒトEF1aプロモーター及びブラストサイジン耐性遺伝子(bsd)を含む1.8kb断片を、pEFBsd(Invitrogen)から、得られたpSUPER構築物のSapI部位にサブクローニングし、pSUPER−Bsd−BRCA1及びpSUPER−Bsd−scrambledを作製した。FuGene6(Roche)を製造者の使用説明書に従って使用しながら、MCF7細胞にこれらのプラスミドをトランスフェクトした。ブラストサイジン中で選択した後、耐性クローンをリアルタイムPCRによって、BRCA1 mRNAのサイレンシングについて評価した(Egawaら、Oncology. 2001; 61(4): 293-8、Egawaら、Int J Cancer. 2001年7月;95(4):255-9)。BRCA1 mRNAのレベルが低下しているクローンを(ブラストサイジン選択を行いながら)8継代にわたって培養し、リアルタイムアッセイを繰り返した。細胞系MCF7−3.23は、構築物pSUPER−Bsd−scrambledを有するMCF7クローンの30%しかBRCA1を発現しないことが示された。
【0144】
結果
siRNAによるParp1タンパク質レベルの低下
H1プロモーター(T. R. Brummelkampら、Science 296, 550-3 (2002))の制御下でParp1特異的なsiRNAを発現させ、CMV IEプロモーターの制御下で強化型シアン蛍光タンパク質(eCFP)を発現させるプラスミド(pSUPER−eCFP−Parp1)を、D3マウス胚幹細胞にトランスフェクトした。対照として、無関係のスクランブルsiRNAを発現させるプラスミドpSUPER−eCFP−controlを別途トランスフェクトした。トランスフェクトしてから48時間後、細胞溶解物を調製し、ウェスタンブロッティングによって分析した。ブロットをポリクローナル抗PARP−1抗体又は抗GFP/CFP抗血清で検出した。
【0145】
PARP1特異的siRNA発現細胞中のPARP1レベルは、対照細胞中のPARP1レベルよりもはるかに低いことが認められた。eCFPのレベルは、Parp1 siRNA発現細胞中でも対照細胞中でも同様であった。
【0146】
Parp1特異的siRNAによるノックダウン後のBRCA1欠損及びBRCA2欠損細胞の生存度の低下
野生型、Brca1−/−、及びBrca2−/−のマウス胚幹(ES)細胞に、pSUPER−eCFP−Parp1又はpSUPER−eCFP−controlを10:1の比でブラストサイジン耐性をコードするプラスミドpEF−Bsdと共にトランスフェクトした。ブラストサイジン耐性クローンを選択し、定量した。結果は、pSUPER−eCFP−controlトランスフェクト後のコロニー数に対するpSUPER−eCFP−Parp1トランスフェクト後のコロニー数をプロットした図1に示す。エラーバーは、平均周辺の一標準偏差に等しい。
【0147】
対照siRNAを使用してトランスフェクション効率について補正を行った後、Brca1欠損及びBrca2欠損のどちらのES細胞の生存度も、Parp1の発現が阻害されたときかなり低下したことは明らかであった。
【0148】
化学PARP阻害剤処理後のBRCA1欠損及びBRCA2欠損細胞の生存度の低下
Parp活性の化学阻害剤を使用して、先に認められたBrca1欠損及びBrca2欠損細胞の選択的な阻害を確認した。2種の異なるPARP阻害剤KU0058684及びKU0058948と、活性は弱いが化学的に同類の化合物KU0051529を使用した(図2)。これらの新規なPARP阻害剤は、フタラジン−1−オンのコアを中核とし、PARP基質NADの競合的阻害剤である。KU0058684及びKU0058948は、タンパク質PARP−1及びPARP−2のポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ活性の強力かつ特異的な阻害剤であり、1μMまでの濃度ではヴォールトPARP、タンキラーゼ、又はPARP−3を阻害しない。逆に、KU0051529は、化学的に同類であるにもかかわらず、これらの酵素の阻害では約250分の1の効果しかもたない。
【0149】
KU0058684、KU0058948、及びKU0051529を使用して、Brca1又はBrca2を欠損する細胞の、PARP活性の阻害に対する感受性を調べた。クローン原性アッセイでは、Brca1欠損及びBrca2欠損のどちらの細胞系も、この点を除いて同質遺伝子的な細胞と比べるとKU0058684及びKU0058948に対する感受性が極めて高かったことが示された(図3、図4)。KU0058684のSF50(細胞の50%が生存する投与量)は、Brca1では3.5×10−8M、Brca2では1.5×10−8Mであり、野生型の細胞では3.5×10−8M程度であった。これは、Brca1及びBrca2突然変異細胞では、野生型と比べてそれぞれ57倍及び133倍感受性が高まっていたということである。Brca2を欠損するチャイニーズハムスター卵巣細胞でも同様の結果が得られ、Brca2が補完された誘導体と比べて感受性が1000倍以上高まっていたことが示された(図14及び図15)。Brca1及びBrca2突然変異細胞のKU0058948に対する感受性は、KU0058684さえも凌ぐものであった。対照的に、KU0051529は、野生型Brca1又はBrca2を欠く細胞に対して、野生型細胞と比べると選択的な効果を及ぼさなかった。このことは、siRNAデータと共に、感受性の機序が特にPARPの阻害によるものであることを示している。どの阻害剤も、Brca1又はBrca2突然変異についてヘテロ接合性である細胞に対して選択的な効果を及ぼさなかったことは注目に値する。
【0150】
Brca1欠損及びBrca2欠損細胞のクローン原性生存に対するKU0058684の効果の時間経過依存性
細胞を、規定された時間をかけて異なる濃度のKU0058684に暴露した。次いで阻害剤を除去し、クローン原性アッセイを使用して効果を測定した。KU0058684のクローンの増殖に対する阻害効果は、比較的短い暴露時間、すなわち4時間後に明らかとなり、24時間の暴露によって本質的に完全なものになった(図5及び図6)。PARP阻害効果は、短い暴露の後に阻害剤なしで10〜14日置いても増殖を妨げるので、可逆的であることがわかった。
【0151】
細胞周期の停止についてのPARP阻害の影響
FACS分析を使用して、PARP阻害が細胞周期の停止をもたらしたかどうかを判定した。細胞を様々な時間をかけてKU0058684に暴露し、次いでBrdUで標識し、細胞周期の各期の細胞の割合を調べた。結果は図7及び図8に示す。KU0058684は、細胞の完全な停止状態を誘発することが認められ、四倍体DNA含有量から、細胞周期のG期又はM期での停止状態であることが示唆された。この停止状態をさらに特徴付けるために、細胞の分析を、DNA含有量、及びM期のマーカーであるリン酸化ヒストンH3について行った。この停止状態をさらに特徴付けるために、細胞の分析を、DNA含有量、及びM期のマーカーであるリン酸化ヒストンH3について行った。(図12及び図13)。停止状態にある細胞の大半は、抗ホスホヒストンH3抗体によって標識されず、細胞の大半がG2で停止したことが示唆された。
【0152】
Rad51焦点の形成
Brca依存的二本鎖切断修復の1の証明は、Rad51を含む核中の焦点の形成である。KU0058684が野生型細胞並びにBrca1欠損及びBrca2欠損細胞中でRad51焦点を引き出す能力を調査した。
【0153】
野生型細胞、並びにBrca1欠損及びBrca2欠損ES細胞を、48時間かけて異なる濃度のKU0058684に暴露した。次いで、Tarsounasによって記載されているとおりに細胞を固定し、RAD51焦点の染色を行った(Tarsounas Mら、Oncogene. 2003 22(8):1115-23)。
【0154】
野生型ES細胞では、KU0058684が用量依存的にRad51焦点の形成を引き起こした(図9)。対照的に、Brca1欠損又はBrca2欠損細胞では焦点が誘導されなかった。この後者の発見は、DNA損傷剤がBrca1欠損又はBrca2欠損細胞中ではRad51焦点形成を引き起こし得ないという以前からの観察と一致する。
【0155】
したがって、KU0058684は、二本鎖DNA切断などの損傷又は二本鎖DNA切断へと変性する損傷を引き起こし、これらの損傷は、Rad51を含みBrca1及びBrca2を必要とする複合体によって修復されることがわかる。重要なことであるが、KU0051529は、同等の用量でRad51焦点形成を引き起こさず、感受性の機序の特異性が強調された。
【0156】
コメットアッセイ
PARP活性の阻害がDNA二本鎖切断を生じるかどうかを判定するために、Brca2突然変異細胞及びその同質遺伝子対応物で中性コメットアッセイを実施した。結果を図10に示す。1μM KU0058684に30時間暴露した後、Brca2欠損VC8細胞のテールモーメントは4.7倍に増大し、補完VC8−BAC系統ではテールモーメントの有意な増大がなかった。この結果は、PARPiによって引き起こされたDNA二本鎖切断が、Brca2欠損系統では修復されないままであることを示すものである。
【0157】
有糸分裂染色体分析
Brca1欠損及びBrca2欠損細胞の有糸分裂染色体を調べると、KU0058684処置が頻繁に重大な異常をもたらしたことが明らかになった。それらには、染色分体切断、並びに三放射状及び四放射状の染色体が含まれる。これらの表現型は、姉妹染色分体遺伝子の変換によって二本鎖切断が修復されていないこと、並びにそれに代わるエラープローン経路の使用が多くなっていることの指標となる。
【0158】
ES細胞の異種移植片及びKU0058684による処置
同質遺伝子ES細胞及びBrca2欠損ES細胞由来の腫瘍(奇形腫)を上述のように胸腺欠損BALB/cヌード(nu/nu)マウス中に生成させた。
【0159】
野生型及びBrca2欠損異種移植片腫瘍の増殖に対するKU0058684の効果を測定し、その結果を図16に示す。
【0160】
KU0058684は、Brca2欠損腫瘍の増殖を野生型腫瘍と比べて劇的に低減することが認められた。
【0161】
BRCA1細胞欠損系統におけるPARP阻害効果
MCF7スクランブル細胞系及びMCF7−3.23細胞系を上述のように生成した。MCF7−3.23は、BRCA1をMCF7スクランブルの30%だけ発現することがわかった。
【0162】
MCF7スクランブル細胞及びMCF7−3.23細胞をKU0058684及びKU0051529で処理し、細胞の生存度を測定した(図17及び図18)。KU0058684は、強力なPARP阻害剤であり、KU0051529はそれよりも効果が弱い。
【0163】
MCF7スクランブル細胞もMCF7−3.23細胞も、KU0051529に対して有意な感受性を示さなかった(図18)。しかし、両方の細胞系がKU0058684に対して感受性であった。
【0164】
MCF7−3.23細胞は、KU0058684に対する感受性がMCF7スクランブル細胞よりも有意に高いことがわかった。
【0165】
PARPのHR依存的DNA DSB経路との相互作用
本発明の範囲をいかようにも限定することなく、PARPとHR依存的DNA DSB経路の相互作用について考えられるモデルを図11に示す。
【0166】
DNA一本鎖切断(SSB)は、酸化的損傷及びその修復のために形成する。Parp−1 PARポリメラーゼ活性を阻害すると、XRCC1骨格タンパク質の動員、及びその後DNAポリメラーゼによるSSBギャップの補充が妨げられる(図11A)。
【0167】
多数のSSBが残り、DNA複製フォークと接触する。SSBの箇所に鋳型鎖がないために、DSBになり、位置によっては複製フォークの崩壊を引き起こすこともある(図11B)。
【0168】
損傷のない姉妹染色分体鋳型が近くにあると、RAD51でコートされた一本鎖DNAフィラメントが姉妹染色分体に侵入し、姉妹染色分体の組換え修復が開始されるようになる。この過程は、BRCA1及びBRCA2に依存しており、複数のRAD51核焦点の形成を伴う。崩壊した複製フォークは、同様の機序によって再出発することができる(図11C)。
【0169】
組換え中間体のホリデー接合点が分割されると、姉妹染色分体交換(SCE)が起こる場合もある。Parp−1阻害の際に余分な数のSSBが複製フォークと接触すると、SCEが増加することになる(図11D)。
【0170】
機能的BRCA1又はBRCA2が存在しないと、RAD51焦点形成及び姉妹染色分体組換えがひどく損なわれる。過剰の未修復SSBは、DNA複製の際にDNA DSBを生じ、姉妹染色分体組換えは起こらない。これらは、染色分体が切断され、未修復のままとなるか又はエラープローンRAD51依存性の機序によって修復されて、複雑な染色体の再配列が引き起こされる。これらの細胞は、G2/M DNA損傷チェックポイントに差し掛かるときに停止状態になり、さらに永久に停止状態になり、又はアポトーシスに至る(図11E)。
【0171】
本明細書で示すRNAiデータは、KU0051529が有効でなかったという観察と共に、PARP阻害が、観察された感受性誘発効果の一因であることを示すものである。
【0172】
PARP阻害には、通常は姉妹染色分体交換(SCE)によって修復される損傷が含まれる(Wang ZQら、(1997) Genes Dev. Vol. 11(18):2347-58並びに'From DNA damage and stress signalling to cell death' G. de Murcia及びS. Shall編、Oxford University Press (2000))。PARP阻害は、SCEを増進させることがわかっているが、DSBの遺伝子変換の増進を相伴わず、したがって、Rad51依存的な組換え経路は全体として強化されない(Schultz Nら、2003, Nucleic Acids Research; vol.31 (17): 4959-4964)。
【0173】
本明細書に記載の人工的致死手法は、a)BRCAキャリアの腫瘍、b)HR依存的DNA DSB修復の他の成分が欠損している腫瘍のどちらの治療でも有用となり得る。
【0174】
BRCA突然変異のキャリアでは、発症年齢及び腫瘍病理が異なることが記載されているとはいえ、治療は、現在のところ散発性疾患の患者と同じものである。本発明は、これらの腫瘍に対する新しい手法を提供するものである。
【0175】
意味深いことに、ヘテロ接合に対する効果は認められなかった。このことは、たとえばBRCA1/2突然変異を含むHR依存的DNA DSB修復経路突然変異のヘテロ接合キャリアにおける記載した方法の治療用途にとって重要である。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】Parp1レベルの低下が、野生型細胞と比べてBRCA1及びBRCA2突然変異細胞の生存度を低下させることを示す。
【図2】PARP阻害剤KU0058684、KU0058948、及びKU0051529、並びにPARP−1酵素活性に対するそのIC50を示す図である。
【図3】PARP阻害剤に暴露した細胞のクローン原性生存曲線を示す。PARP阻害剤(KU0058684(上)、KU0058948(中)、KU0051529(下))に連続的に暴露したBrca1野生型(11CO:■)、Brca1ヘテロ接合性(Cre6:黒三角)、及びBrca1欠損(Cre10:●)の各ES細胞を示す。エラーバーは、平均の標準誤差を表す。
【図4】PARP阻害剤に暴露した細胞のクローン原性生存曲線を示す。PARP阻害剤(KU0058684(上)、KU0058948(中)、KU0051529(下))に連続的に暴露したBrca2野生型(D3:■)、Brca2ヘテロ接合性(Cre6:黒三角)、及びBrca2欠損(Cre24:●)の各ES細胞を示す。エラーバーは、平均の標準誤差を表す。
【図5】KU0058684に1時間、4時間、及び24時間暴露した後のクローン原性生存曲線を示す。KU0058684に1時間(上)、4時間(中)、及び24時間(右)暴露した後のBrca1野生型(11CO:■)、Brca1ヘテロ接合性(Cre6:黒三角)、及びBrca1欠損(Cre10:●)の各ES細胞を示す。エラーバーは、平均の標準誤差を表す。
【図6】KU0058684に1時間、4時間、及び24時間暴露した後のクローン原性生存曲線を示す。KU0058684に1時間(上)、4時間(中)、及び24時間(右)暴露した後のBrca2野生型(D3:■)、Brca2ヘテロ接合性(Cre6:黒三角)、及びBrca2欠損(Cre24:●)の各ES細胞を示す。エラーバーは、平均の標準誤差を表す。
【図7】PARP阻害剤で処理したBRCA−1及びBRCA−2突然変異細胞におけるPARP阻害が、G2/Mでの停止を増大したことを示す。0nM(左)、10nM(中)、又は1μM(右)のKU0058684で24時間処理し、FACSによって分析したBrca1野生型(11CO:上)及びBrca1突然変異(Cre10:下)細胞を示す。
【図8】PARP阻害剤で処理したBRCA−1及びBRCA−2突然変異細胞におけるPARP阻害が、G2/Mでの停止を増大したことを示す。0nM(左)、10nM(中)、又は1μM(右)のKU0058684で24時間処理し、FACSによって分析したBrca2野生型(D3)及びBrca2突然変異(Cre24)細胞を示す。
【図9】野生型細胞でのPARP阻害によって誘発されるがBrca1又はBrca2欠損細胞では誘発されないRad51焦点形成の定量分析を示す。
【図10】BRCA2−/−VC8及びBRCA2補完VC8−BACの中性コメット分析を示す。KU0058684(1μM)による30時間の処理によって、BRCA2−/−細胞ではテールモーメントの増大が認められるが、BRCA2補完系統ではテールモーメントの有意な増大が認められないことから判断されるように、DNA DSBを有意な増大が誘導される。3回の独立した実験の平均データに+/−SEMが示され、各実験で50コメットのテールモーメントの得点が付けられる。
【図11】BRCA1突然変異及びBRCA2突然変異細胞に対するPARP阻害の選択的効果について考えられるモデルを示す図である。
【図12】0nM(左)、10nM(中)、又は1μM(右)のKU0058684で24時間処理し、FACSによって分析したBrca1野生型(11CO:上)及びBrca1突然変異(Cre10:)ES細胞と、Brca2野生型(D3)及びBrca2突然変異(Cre24)細胞についてのホスホ−ヒストンH3 FACSデータを示す。
【図13】0μM、100μM、1nM、及び10nM(それぞれ左から右)のKU0058684で24時間処理したVC8細胞及びVC8BAC細胞についてのホスホ−ヒストンH3 FACSを示す。
【図14】BRCA1及びBRCA2の機能を欠いている他の細胞におけるPARP阻害の効果の分析を示す。PARP阻害剤(KU0058684:上、KU0058948:中、及びKU0051529:下)に連続的に暴露したBrca2欠損(V−C8:■)及びBrca2補完(V−C8 BAC+:黒三角)細胞のクローン原性生存曲線を示す。
【図15】BRCA1及びBRCA2の機能を欠いている他の細胞におけるPARP阻害の効果の分析を示す。KU0058684に1時間(上)、4時間(中)、及び24時間(下)暴露した後のBrca2欠損(V−C8:■)及びBrca2補完(V−C8 BAC+:黒三角)細胞のクローン原性生存曲線を示す。エラーバーは、平均の標準誤差を表す。
【図16】ES異種移植片における腫瘍生成及びKU0058684処置の効果を示す。点線はビヒクル処置した野生型、太い実線は薬物KU0058684処置した野生型、実線はビヒクル処置したBrca2欠損、破線はKU0058684処置したBrca2欠損を示す。
【図17】一定範囲の濃度のPARP阻害剤KU0058684に12〜14日間連続的に暴露したBRCA1野生型(MCF7スクランブル)及びBRCA1サイレンシング型(MCF7−3.23)細胞のクローン生存曲線を示す。阻害剤の対数濃度を細胞の対数生存率に対してプロットしてある。エラーバーは、平均の標準誤差を表す。
【図18】一定範囲の濃度のPARP阻害剤KU0051529に12〜14日間連続的に暴露したBRCA1野生型(MCF7スクランブル)及びBRCA1サイレンシング型(MCF7−3.23)細胞のクローン生存曲線を示す。阻害剤の対数濃度を細胞の対数生存率に対してプロットしてある。エラーバーは、平均の標準誤差を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体における癌の治療に使用するための医薬の製造における塩基除去修復(BER)経路の阻害剤の使用であって、前記癌は、HR依存的DNA DSB修復経路を欠損しているものである、上記使用。
【請求項2】
前記癌が、HRによってDNA DSBを修復する能力が正常細胞と比べて低下又は消失している1又は複数の癌細胞を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記癌細胞が、BRCA1又はBRCA2を欠損する表現型を有する、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記癌細胞がBRCA1又はBRCA2を欠損している、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記癌細胞が、BRCA1又はBRCA2の突然変異についてホモ接合性である、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記個体が、HR依存的DNA DSB修復経路の成分をコードする遺伝子の突然変異についてヘテロ接合性である、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記個体は、BRCA1及び/又はBRCA2の突然変異についてヘテロ接合性である、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記癌が、乳癌、卵巣癌、膵臓癌、又は前立腺癌である、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
BER阻害剤がBER経路の成分のペプチド断片である、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
BER阻害剤が、BER経路の成分のアミノ酸配列の全部若しくは一部をコードする核酸、又はその相補配列である、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
BER阻害剤がPARPの活性を阻害する、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記BER阻害剤が、ニコチンアミド類、ベンズアミド類、イソキノリノン類、ジヒドロイソキノリノン類、ベンゾイミダゾール類、インドール類、フタラジン−1(2H)−オン類、キナゾリノン類、イソインドリノン類、フェナントリジン類、ベンゾピロン類、不飽和ヒドロキシム酸誘導体、カフェイン、テオフィリン、及びチミジン、並びにこれらの類似体及び誘導体からなる群から選択される、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記BER阻害剤がフタラジン−1(2H)−オン又はその類似体若しくは誘導体である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記BER阻害剤がPARPのペプチド断片である、請求項11に記載の使用。
【請求項15】
前記BER阻害剤が、PARPの一部若しくは全部をコードする核酸、又はその相補配列である、請求項11に記載の使用。
【請求項16】
前記医薬が、DNA損傷化学療法剤をさらに含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
前記治療が、DNA損傷化学療法剤の投与をさらに含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
個体における癌の治療方法であって、前記個体へBER経路の阻害剤を投与するステップを含み、前記癌は、HR依存的DNA DSB修復経路を欠損しているものである、上記方法。
【請求項19】
個体がHR依存的DNA DSB修復経路を欠損している癌状態であることを確認するステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記個体へDNA損傷化学療法剤を投与するステップを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
癌状態の個体の評価方法であって、
個体から採取した癌細胞が、正常細胞と比べてHR依存的DNA DSB修復経路を欠損していることを確認するステップと、
前記個体への投与に適するBER経路阻害剤を準備するステップと
を含む方法。
【請求項22】
前記個体への投与に適するDNA損傷化学療法剤を準備するステップを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記癌が、HRによってDNA DSBを修復する能力が正常細胞と比べて低下又は消失している1又は複数の癌細胞を含む、請求項18から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記癌細胞が、BRCA1又はBRCA2を欠損する表現型を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記癌細胞がBRCA1又はBRCA2を欠損している、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記癌細胞は、BRCA1又はBRCA2の突然変異についてホモ接合性である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
個体からの癌細胞のHR依存的DNA DSB修復活性を正常細胞と比較して判定することにより、前記癌がHR依存的DNA DSB修復を欠損する癌であることを確認する、請求項19から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
個体からの癌細胞中に、HR依存的DNA DSB修復経路の成分をコードする核酸配列の1又は複数の突然変異又は多形性が存在するかどうかを判定することにより、前記癌がHR依存的DSB修復を欠損する癌であることを確認する、請求項19から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記癌が、乳癌、卵巣癌、膵臓癌、又は前立腺癌である、請求項18から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記個体が、HR依存的DNA DSB修復経路の成分をコードする遺伝子の突然変異についてヘテロ接合性である、請求項18から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記個体が、BRCA1及び/又はBRCA2の突然変異についてヘテロ接合性である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
BER阻害剤がBER経路の成分のペプチド断片である、請求項18から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
BER阻害剤が、BER経路の成分のアミノ酸配列の全部若しくは一部をコードする核酸、又はその相補配列である、請求項18から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
BER阻害剤がPARP活性を阻害する、請求項18から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記塩基除去修復阻害剤が、ニコチンアミド類、ベンズアミド類、イソキノリノン類、ジヒドロイソキノリノン類、ベンゾイミダゾール類、インドール類、フタラジン−1(2H)−オン類、キナゾリノン類、イソインドリノン類、フェナントリジン類、ベンゾピロン類、不飽和ヒドロキシム酸誘導体、カフェイン、テオフィリン、及びチミジン、並びにこれらの類似体及び誘導体からなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記BER阻害剤がフタラジン−1(2H)−オン又はその類似体若しくは誘導体である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記阻害剤がPARPのペプチド断片である、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記BER阻害剤が、PARPアミノ酸配列の一部若しくは全部をコードする核酸、又はその相補配列である、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
個体における癌の治療方法であって、
前記個体へBER阻害剤を投与するステップを含み、
前記個体は、HR依存的DNA DSB修復経路の成分をコードする遺伝子の突然変異についてヘテロ接合性である、上記方法。
【請求項40】
前記癌が、HRによってDNA DSBを修復する能力が正常細胞と比べて低下又は消失している1又は複数の癌細胞を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
個体が、BRCA1又はBRCA2の突然変異についてヘテロ接合性である、請求項39又は請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記癌細胞が、BRCA1又はBRCA2を欠損する表現型を有する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記癌細胞が、BRCA1又はBRCA2の突然変異についてホモ接合性である、請求項38に記載の方法。
【請求項44】
前記癌が、乳癌、卵巣癌、膵臓癌、又は前立腺癌である、請求項39から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
BER阻害剤がBER経路の成分のペプチド断片である、請求項39から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
BER阻害剤が、BER経路の成分のアミノ酸配列の全部若しくは一部をコードする核酸、又はその相補配列である、請求項39から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
BER阻害剤がPARPを阻害する、請求項39から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記BER阻害剤が、ニコチンアミド類、ベンズアミド類、イソキノリノン類、ジヒドロイソキノリノン類、ベンゾイミダゾール類、インドール類、フタラジン−1(2H)−オン類、キナゾリノン類、イソインドリノン類、フェナントリジン類、ベンゾピロン類、不飽和ヒドロキシム酸誘導体、カフェイン、テオフィリン、及びチミジン、並びにこれらの類似体及び誘導体からなる群から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記BER阻害剤がフタラジン−1(2H)−オン又はその類似体若しくは誘導体である、請求項48に記載の使用。
【請求項50】
前記BER阻害剤がPARPのペプチド断片である、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記PARP阻害剤が、PARPアミノ酸配列の一部若しくは全部をコードする核酸、又はその相補配列である、請求項47に記載の方法。
【請求項52】
前記個体へDNA損傷化学療法剤を投与するステップを含む、請求項39から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
HR依存的DNA DSB修復経路の遺伝子の突然変異についてヘテロ接合性である個体における癌治療に使用するための医薬の製造におけるBER経路阻害剤の使用。
【請求項54】
HR依存的DNA DSB修復経路の遺伝子の突然変異についてヘテロ接合性である個体における癌治療に使用するためのBER経路阻害剤。
【請求項55】
HR依存的DNA DSB修復経路を欠損している癌の治療に使用するためのBER経路阻害剤。
【請求項56】
個体の癌状態におけるHR依存的DNA DSB修復経路の活性の評価方法であって、
BER阻害剤と癌状態の患者から採取した癌細胞サンプルとを接触させるステップと、
前記サンプル中の細胞死の量を測定するステップと
を含む方法。
【請求項57】
BER阻害剤がBER経路の成分のペプチド断片である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
BER阻害剤が、BER経路の成分のアミノ酸配列の全部若しくは一部をコードする核酸、又はその相補配列である、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
BERの阻害剤がPARP阻害剤である、請求項56から58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記BER阻害剤が、ニコチンアミド類、ベンズアミド類、イソキノリノン類、ジヒドロイソキノリノン類、ベンゾイミダゾール類、インドール類、フタラジン−1(2H)−オン類、キナゾリノン類、イソインドリノン類、フェナントリジン類、ベンゾピロン類、不飽和ヒドロキシム酸誘導体、カフェイン、テオフィリン、及びチミジン、並びにこれらの類似体及び誘導体からなる群から選択される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記PARP阻害剤がフタラジン−1(2H)−オン又はその類似体若しくは誘導体である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記PARP阻害剤がPARP配列のペプチド断片である、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
前記PARP阻害剤が、PARPアミノ酸配列の一部若しくは全部をコードする核酸、又はその相補配列である、請求項59に記載の方法。
【請求項64】
癌がHR依存的DNA DSB修復を欠損していることを確認する、請求項56から63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
癌がBRCA1又はBRCA2を欠損する表現型を有することを確認する、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
HR依存的DNA DSB修復を欠損する癌を標的とする治療に対する、個体の癌状態の応答を予測する方法であって、
BER阻害剤と癌状態の個体から採取した癌細胞サンプルとを接触させるステップと、
前記サンプル中の細胞死の量を測定するステップと
を含む方法。
【請求項67】
実質的に添付の図面に記載のとおりかつそれに準拠したBER阻害剤の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2007−516241(P2007−516241A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540625(P2006−540625)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【国際出願番号】PCT/GB2004/005025
【国際公開番号】WO2005/053662
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(503160629)クドス ファーマシューティカルズ リミテッド (23)
【出願人】(504052958)ザ インスティチュート オブ キャンサー リサーチ,ロイヤル キャンサー ホスピタル (7)
【Fターム(参考)】