説明

癌治療用ワクチンの製造方法

【課題】組織パイオプシー由来のハプテン化ワクチンの製造方法の提供。
【解決手段】組織バイオプシーの入手、肺癌腫瘍細胞または細胞同等物の単離、細胞の照射、細胞のハプテン化及び細胞の凍結保存を含む癌治療用ワクチンの製造方法

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
[0001] 本発明は無菌の癌ワクチンの製造方法に関する。このワクチンは、ハプテン修飾された腫瘍細胞および抽出物を含み、ハプテン修飾された腫瘍細胞または腫瘍細胞抽出物を含む組成物を、このような治療を必要とする患者に、治療に効果的な量を投与することによって癌の治療に有用である。
【0002】
発明の背景
[0002] 1960年代、腫瘍細胞が、正常細胞には存在しない腫瘍特異的抗原(tumor-specific antigens: TSA)とよばれる特異的抗原を保持していること、またこれらの抗原への免疫応答により個体が腫瘍を拒絶することができることが理論づけられた。のちに、TSAへの免疫応答は細胞に新しい免疫学的決定因子を導入することで増加出来ると示唆された(Mitchison、Transplant. Proc., 1970, 2:92)。このような「ヘルパー決定因子」は、例えば、ハプテン、タンパク質、ウィルス外被抗原、移植抗原、または異種細胞抗原であってもよく、腫瘍細胞集団に導入されることが出来る。臨床的に、目標はヘルパー決定因子に対する免疫性反応を誘発し、それによって付随するTSA量の増加をさせるとともに腫瘍細胞を破壊することであった。
【0003】
[0003] Fujiwaraら(J. Immunol., 1984, 132:1571)は、特定のハプテン化腫瘍細胞、すなわち、トリニトロフェニル(TNP)を、ハプテンとして抱合させた腫瘍細胞は、マウスがハプテン特異的なサプレッサーT細胞の非存在下においてもハプテンに最初に感作する場合に、マウスの系において、無修飾の腫瘍細胞と比較して全身性免疫を誘発することを示した。Floodら(J. Immunol., 1987, 138:3573)は、TNPと抱合させ、紫外線で誘発した「リグレッサー(regressor)」腫瘍で免疫化下マウスは、TNPと抱合されなければ非免疫原性である、TNPで抱合された「プログレッサー(progressor)」腫瘍を拒絶出来たことを示した。さらに、これらのマウスは、抱合していない「プログレッサー」腫瘍の接種に対してもその後抵抗性が見られた。他の実験系において、Fujiwaraら(J. Immunol., 1984, 133:510)は、シクロホスファミド(cyclophosphamide)で前処理した後にトリニトロクロロベンゼン(trinitrochlorobenzene: TNCB)で感作させたマウスが、腫瘍細胞のin situでのハプテン化により、大きな(10 mm)腫瘍を治療出来ることを示し;さらにこれらの動物は非抱合型腫瘍細胞の接種に対して特異的に抵抗性があった。
【0004】
[0004] 無修飾組織と交差反応するT細胞の存在が、近年実証されている。クラスIのMHC(主要組織適合抗原複合体)拘束性T細胞クローンは、MHCに関連する、TNP修飾「自己」ペプチドに応答するTNP修飾同系リンパ球で免疫されたマウスから生じた(Ortmann, Bら、 J. Immunol., 1992, 148:1445)。さらに、TNP修飾リンパ球を用いたマウスの免疫化は、脾臓T細胞の発生を引き起こし、二次的な増殖反応およびTNP修飾細胞への細胞傷害性応答をin vitroにおいて示すことが確立されている(Shearer, G. M. Eur. J. Immunol., 1974, 4:527)。無修飾の自己由来細胞に応答するDNP(ジニトロフェノール)またはTNPで修飾された自己由来細胞で免疫化されることによって誘発するリンパ球の潜在力は、2つの臨床的な問題(1. 薬剤性誘導自己免疫疾患、および2. 癌免疫療法)に関連するかもしれないため、かなりの重要性がある。前者に関しては、経口摂取された薬が、正常組織タンパク質と結合して免疫原性複合体を形成して、それがT細胞によって認識されるハプテンと同様に作用することが示唆されている(Tsutsui, H., et al., J. Immunol., 1992, 149:706)。次に、自己免疫疾患、例えば、全身性エリテマトーデスは、不快感を与える薬の退薬後でさえも、発生し、また持続する場合がある。これは、無修飾の組織と交差反応するTリンパ球が、最終的に産生されていることを意味する。
【0005】
[0005] 一次抗原のKLH(keyhole limpet hemocyanin、キーホールリンペットヘモシアニン)で感作する3日前に、高用量(1000 mg/M2)または低用量(300 mg/M2)でシクロホスファミドを投与すると、、その抗原に対する遅延型過敏症の獲得が明らかに増大する(Berdら、Cancer Res., 1982, 42:4862; Cancer Res., 1984, 44:1275)。低用量によるシクロホスファミド前処理は、自己由来メラノーマワクチンを注射することに応答して転移性黒色腫患者に自己由来メラノーマ細胞への遅延型過敏症を発生させる(Berdら、Cancer Res., 1986, 46:2572; Cancer Invest., 1988, 6:335)。シクロホスファミドの投与が、末梢血リンパ球非特異的Tサプレッサー機能の減少を引き起こし(Berdら、Cancer Res., 1984, 44:5439; Cancer Res., 1987, 47:3317)、この理由はおそらくCD4+、CD45R+サプレッサーインデューサーT細胞の枯渇によると考えられる(Berdら、Cancer Res., 1988, 48:1671)。
【0006】
[0006] ヒトの癌治療の従来の試みは、不成功か、あるいは部分的な成功のみであり、またしばしば望ましくない副作用が起きている。様々な免疫学的な理論を基礎とした癌治療の試みもまた、不成功に終わっている。
【0007】
本発明においては、以下の発明を提供することを目的とする:
(1) 患者に投与するための肺癌ワクチンを製造するための方法であって:
(a)組織サンプルから肺癌腫瘍細胞または細胞同等物を機械的に分離すること;
(b)前記腫瘍細胞または細胞同等物に照射すること;
(c)前記腫瘍細胞または細胞同等物をハプテン化すること;および
(d)凍結用培地中に前記腫瘍細胞を懸濁すること;
を含む前記方法。
(2) 前記肺癌腫瘍細胞または細胞同等物が、一次非小細胞肺癌腫瘍細胞または細胞同等物である、(1)に記載の方法。
(3) 前記ワクチンが、1ミリリットルあたり約25×106個の腫瘍細胞または細胞同等物を含む、(1)に記載の方法。
(4) 前記ワクチンが、250マイクロリットルに分注されて凍結される、(1)に記載の方法。
(5) 前記ワクチンが、患者に投与される前にカルメット・ゲラン桿菌(BCG)を添加される、(4)に記載の方法。
(6) 前記凍結培地が、約7から約10パーセントのHSA、および約7から約8パーセントのショ糖を含む、(1)に記載の方法。
(7) 肺癌を治療するための方法であって:
(a)肺癌腫瘍細胞または細胞同等物を含む第一の組成物を投与すること;
(b)前記第一の組成物の投与の約一週間後にシクロホスファミド投与をすること;
(c)前記シクロホスファミド投与の約3日後からはじめて、一週間に一回、肺癌腫瘍細胞または細胞同等物およびBCGを含む第二の組成物を約6週間の投与期間の間投与すること;
を含み、前記第二組成物中のBCG濃度を投薬期間にわたり減少させる、前記方法。
(8) 前記腫瘍細胞または細胞同等物が、一次非小細胞肺腫瘍細胞または細胞同等物である、(7)に記載の方法。
(9) 前記第二組成物の1回目および2回目の投与のBCG濃度が、約1×106から約8×106CFUである、(7)に記載の方法。
(10) 前記第二組成物の3回目および4回目の投与のBCG濃度が、約1×105から約8×105CFUである、(7)に記載の方法。
(11) 前記第二組成物の5回目および6回目の投与のBCG濃度が、約1×104から約8×104CFUである、(7)に記載の方法。
【0008】
詳細な説明
[0007] 本発明には、組織由来のワクチンの調製方法が含まれる。本発明の一態様で、方法は以下に列挙した順序のステップに従って行うことを含む。
1. 組織サンプルを入手する;
2. 組織サンプルから細胞を抽出する;
3. 細胞に照射する;
4. 細胞をハプテンで修飾する;および
5. バイアルに細胞を分注する。
【0009】
[0008] 他の態様として、この方法は細胞をバイアルに分注したのちに、さらに凍結保存のステップを含む。
[0009] 本発明の態様において、細胞照射はより免疫原性の高い細胞にする。本発明の一態様において、ハプテン化のプロセスは細胞の代謝を抑えるため、したがって照射はハプテン化の前に行う。単一用量のバイアルへの細胞の分注および選択肢としての最終段階での細胞の凍結保存は、長期間保存および細胞のそれぞれのバッチの品質管理を可能にする。最終段階での細胞を凍結保存してもよく、これは商業的および調整に有利である。
【0010】
[0010] 組織および細胞型
[0011] 本発明は組織由来のワクチンの調製に関する。ワクチンの調製に用いられる組織型には、以下の組織:皮膚、血液、血清、唾液、痰、尿、粘液、骨髄、リンパ、肺、肝臓、腎臓、筋肉、直腸、結腸、乳房、前立腺、卵巣、精巣、リンパ節、または他の組織、を含むことができるが、これらに制限されない。
【0011】
[0012] 組織サンプルの入手
[0013] 本発明の一態様において、組織サンプルは患者から単離される。本発明の態様において、組織サンプルは当該技術分野で公知の標準的な技術、例えばバイオプシーにより単離される。一態様において、組織サンプルは腫瘍から得られる。他の態様において、組織サンプルは腫瘍を切除することにより得られる。他の態様において、組織サンプルは腫瘍である。本発明の一態様において、組織サンプルは悪性または前悪性腫瘍である。他の態様において、組織サンプルは癌細胞を有していると疑いのある患者由来の固体または液体の組織サンプルで、全部分または部分的な腫瘍、唾液、痰、粘液、骨髄、血清、血液、尿、リンパ、または涙を含むがこれらに制限されない。
【0012】
[0014] 一態様において、腫瘍から処理された組織サンプルは、直径が約1センチメートルかそれ以上である。他の態様において、腫瘍から処理された組織サンプルは直径が約1.5センチメートルかそれ以上である(約1.8グラム)。さらに他の例では、腫瘍から処理された組織サンプルは直径が約1.8センチメートルかそれ以上である(約3グラム)。他の例では、腫瘍から処理された腫瘍組織は直径が約2センチメートルかそれ以上である(約4.2グラム)。他の態様において、腫瘍組織は直径が約5センチメートルから約10センチメートル、またはそれ以上である。
【0013】
[0015] 本発明の一態様において、液体組織サンプルは約1ミリリットルかそれ以上である。他の態様において、液体組織サンプルは約1パイント(473.2ミリリットル)である。他の態様において、液体組織サンプルは約10ミリリットルから約1リットルである。他の態様において、液体組織サンプルは約100ミリリットルから約500ミリリットルである。
【0014】
[0016] 本発明の一態様において、患者から得られる組織サンプルは、本発明のワクチンを製造するのに必要な細胞数または細胞投下物を生成するために十分に大きい。他の態様において、患者から得られる組織サンプルは、in vitroでの細胞培養を開始するのに充分な量を回収する。
【0015】
[0017] 細胞抽出
[0018] 本発明の一態様において、細胞または細胞同等物は、組織サンプルから抽出される。本発明の一態様において、その組織は腫瘍である。本発明の一態様において、その細胞または細胞同等物は、機械的に分離された組織から抽出される。機械的な分離には、組織を小片に切断すること、組織を細かく切ること、および/または組織をメッシュに通すことが含まれるがこれらに限定されない。本発明の一態様において、細胞は約200×gから約500×gで約7分間から30分間遠心分離することにより、ペレット状にされる。本発明の一態様において、その細胞または細胞同等物は、約300×g(約1100 rpm)で約7分間遠心分離することによってペレット状にされる。本発明の一態様において、上清は吸引され、細胞はHank's平衡塩類溶液(HBSS;Hank's balanced salt solution)中で再懸濁される。本発明の一態様において、HBSSには、HSA(human serum albumin: ヒト血清アルブミン)が含まれる。本発明の一態様において、HSAの量は約0.05%から約5%である。本発明の一態様において、HBSSには、広域抗生物質が含まれる。一態様において、抗生物質はフルオロキノロンである。他の態様において、抗生物質はゲンタマイシンである。他の態様において、ゲンタマイシン濃度は1ミリリットルあたり約50マイクログラムである。
【0016】
[0019] 本発明の一態様において、細胞または細胞同等物は酵素による分解によって組織から単離される。一態様において、酵素はコラゲナーゼ、DNase、またはこれらの組み合わせが用いられてもよい。
【0017】
[0020] 本発明の一態様において、腫瘍細胞は、HBSSおよび広域抗生物質を含む培地中で保存され、または/および輸送される。一態様において、広域抗生物質はフルオロキノロンである。他の態様において、広域抗生物質はゲンタマイシンである。本発明の一態様において、HBSSの%(v/v)は約95%から約99.5%で、広域抗生物質の%(v/v)は約0.5%から約5%である。他の態様において、HBSSの%(v/v)は約99.5%で、抗生物質の%(v/v)は約0.5%である。
【0018】
[0021] 細胞の照射
[0022] 本発明の一態様において、単離された細胞はガンマ線照射をされた。Gamacell 100 Elite(MDS Nordion社、Ontario、カナダ)は細胞にガンマ線照射を行うのに必要な設備の一つの例である。他の態様において、細胞はX線照射をされた。細胞がX線でどのような照射をされるかの一つの例は、X線装置Faxitron Model X-650の使用である。他の慣用電圧照射装置(orthovoltage irradiation)もまた本発明に有用である。本発明の一態様において、単離された細胞は、約5から250グレイ(Gy)で照射される。他の態様において、細胞は約10から150 Gyで照射される。他の態様において、細胞は約20から100 Gyで照射される。さらに他の態様において、細胞は約25 Gy(2500 cGy)で照射される。
【0019】
[0023] どのような特定の理論にも縛られず、腫瘍細胞の照射は、免疫系に追加免疫を供給して、免疫強化を引き起こすと考えられる。一例として、細胞はハプテン化の前に照射される。
【0020】
[0024] 細胞のハプテン化
[0025] 本発明の一態様において、細胞がハプテン化される。一態様において、ハプテンは、例えばジニトロフェニル(DNP)であってもよい。他のハプテンには、トリニトロフェニル(TNP)、N-ヨードアセチル-N’-(-5-スルホン酸1-ナフチル)エチレンジアミン、トリニトロベンゼンスルホン酸、フルオレッセインイソチオシアネート、ヒ酸ベンゼンイソチオシアネート、トリニトロベンゼンスルホン酸、スルファニル酸、アルサニル酸、ジニトロベンゼン-S-マスタードが含まれるが、これらに限定されない。本発明の一態様において、ハプテンの組み合わせもまた腫瘍細胞への抱合化に用いられてもよい。
【0021】
[0026] 本発明の一態様において、ハプテン化のプロセスは、タンパク質の非存在下で行われる。タンパク質の存在下では、DNPは、細胞の代わりにタンパク質に結合する。本発明の一態様において、細胞は遠心分離されペレット状にされる。他の態様において、細胞は利用者が必要とする濃度(細胞数/mL)となるようにHBSS中で再懸濁される。他の態様において、細胞を最適にハプテン化するために必要とされるジニトロフルオロベンゼン(DNFB)溶液の量が、計算される。一態様において、DNFBを細胞懸濁液に約0.5 mMの濃度に加える。他の態様において、細胞およびDNFBは、約10分間から約50分間、約15℃から約40℃の温度でインキュベートされる。他の態様において、細胞は遠心分離され、またHSAを含むHBSS中で再懸濁される。一態様において、HSAは約0.05%から約5%の量で含まれる。他の態様において、HSAは約1%の量で含まれる。他の態様において、HSAは約0.1%の量で含まれる。本発明の一態様において、ハプテン化のプロセスは下記の通りである:細胞は、約300×g(約1100 rpm)、約7分間から約12分間の遠心分離によってペレット状にされる。HBSS(タンパク質または血清を含まない)が、細胞ペレットに加えられ、細胞濃度は1ミリリットルあたり約5×106個の細胞数にする。本発明の一態様において、各1ミリリットルの細胞懸濁液それぞれに、約0.1ミリリットルのジニトロフルオロベンゼン(DNFB)溶液(約0.5 mM)が加えられた。本発明の一態様において、DNFBのこの量は、10×106個までの細胞をハプテン化出来る。
【0022】
[0027] 一態様において、細胞懸濁液は混合され、また室温で30分間インキュベートされ、10分ごとに穏やかに混合される。細胞はそのあとHSAを含むHBSSで2回洗浄される。一態様において、HSAは約0.05%から約5%のいずれかの濃度で含まれる。本発明の一態様において、HSAは過剰なDNPを吸収する。
【0023】
[0028] 本発明の一態様において、ハプテン修飾された細胞はフローサイトメトリーを用いることによって同定される。他の態様において、ハプテン修飾された細胞はELISAまたは分光光度計による細胞可溶化物の解析、ガス−液体クロマトグラフィー、または質量分析のような方法を用いて同定される。
【0024】
[0029] ハプテン化培地、ハプテン化および細胞照射の方法は、米国出願第08/203,004号、10/260,119号、10/025,195号、米国公開第2002-0009496号、2003-0068337号、2003-0170756号、2003-0165518号、2003-0064080号、および米国特許第6,403,104号、6,458,369号、6,333,028号、5,290,551号(それら全体を参考文献として本明細書中に援用する)中に開示されている。
【0025】
[0030] 本発明の一態様において、細胞をハプテン化した後に、細胞は凍結用培地中で再懸濁される。一態様において、凍結用培地はショ糖を含む。一態様において、ショ糖は約0%(w/v)から20%(w/v)含まれる。他の態様において、ショ糖は約8%含まれる(w/v)。他の態様において、凍結用培地はHSAを含む。一態様において、25%濃度(w/v)のHSAは、凍結溶媒中に約0%(v/v)から約50%(v/v)含まれる。他の態様において、25%濃度(w/v)のHSAは凍結培地中に約37%(v/v)含まれる。他の態様において、凍結用培地の残りはHBSSである。
【0026】
[0031] 細胞の分注
[0032] 本発明の一態様において、細胞は単一用量のバイアルに分注される。一態様において、細胞の用量は、少なくとも104個の腫瘍細胞または細胞同等物である。他の態様において、細胞の用量は少なくとも105個の腫瘍細胞または細胞同等物で、他の態様において、細胞の用量は少なくとも106個の腫瘍細胞または細胞同等物である。一態様において、用量は約105から約2.5×107個の細胞または細胞同等物、他の態様において、約5×105個の細胞または細胞同等物、他の態様において、約2.5×106個の細胞または細胞同等物、他の態様において、約5×106個の細胞または細胞同等物を含む。他の態様において、用量は約7.5×106個までの細胞または細胞同等物を含む。他の態様において、用量は約20×106個までの細胞または細胞同等物を含む。
【0027】
[0033] 細胞の凍結保存
[0034] 本発明の一態様において、細胞または細胞同等物は凍結保存される。他の態様において、細胞または細胞同等物はハプテン化の後即時に用いられる。本発明の一態様において、凍結用培地には、HBSS、約7-10%のHSAおよび約7-8%のショ糖が含まれる。他の態様において、凍結用培地には、HBSS、約7-10%のHSAおよびジメチルスルホキシド(DMSO)を含む。本発明一態様において、細胞または細胞同等物は−80℃での液体窒素下で貯蔵される。他の態様において、細胞は−80℃のフリーザーで貯蔵される。本発明の一態様において、細胞または細胞同等物はステップダウン凍結保存チャンバー内で貯蔵される。本発明の一態様において、細胞または細胞同等物は−80℃で9ヶ月までは安定である。他の態様において、細胞または細胞同等物は−80℃で6ヶ月までは安定である。
【0028】
[0035] その他の添加物
[0036] 本発明の一態様において、他の組成物は、患者に対して投与する前に解凍後のワクチンと併用投与されてもよい。本発明の目的のため、併用投与には、一緒に(すなわち同時に)投与すること、および連続して投与することが含まれる。これらの添加物には、アジュバント、サイトカイン、および薬剤的に許容出来る希釈液が含まれるがこれらに制限されない。
【0029】
[0037] 本発明の一態様において、ワクチンはアジュバントと併用投与される。一態様において、ワクチンの初回量はアジュバントと併用投与されない。他の態様において、ワクチンの初回量はアジュバントと併用投与される。薬物送達において有用な、例えば生理食塩水など(これには限定されない)のいずれかのこれまでに知られている水溶性媒体が、本発明に従い、キャリアとして用いられてもよい。さらに、当業者に知られているいずれかのアジュバントが、本発明の送達に有用であってもよい。本発明の一態様において、アジュバントは、本発明の腫瘍細胞調製物に対して免疫応答を増大させる性質を持つ。本発明で有用なアジュバントには、カルメット・ゲラン桿菌(Bacille Calmette-Guerin; BCG)、合成アジュバント、Quillaja saponariaの樹皮から精製された均質サポニンから構成されるQS-21、コリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)(McCuneら、Cancer、1979 43:1619)、一般的なサポニン、解毒化エンドトキシンおよびサイトカイン、例えばIL-2、IL-4、ガンマインターフェロン(IFN-ガンマ)、IL-12、IL-15、IL-27、GM-CSFやそれらの組み合わせ、が含まれる。本発明の一態様において、アジュバントはBCGである。本発明の一態様において、アジュバントは、約0.1×106から約20×106コロニー形成単位(colony forming units; CFU)の量でワクチンとともに投与される。
【0030】
[0038] 本発明の一態様において、本発明に有用なサイトカインには、IL-2、IL-4、IL-12、IL-27、IFN-ガンマ、GM-CSF、およびそれらの組み合わせが含まれる。本発明の一態様において、本発明のワクチンは、化学療法、照射、抗体、オリゴヌクレオチド配列、およびアンチセンスオリゴヌクレオチド配列を含む(しかし、これらに制限されない)他の癌治療と組み合わせて用いられる。
【0031】
[0039] 本発明の一態様において、本発明のワクチンは、投与の意図されたルートおよび標準的な医薬実務に関して選択された、薬剤的に許容出来るキャリアとの混合物中にて投与される。本発明の一態様において、薬用量は患者の体重および臨床的な状態に関して設定される。活性成分のキャリアに対する比例割合は、企図された薬用量と同様、組成物の化学的性質、組成物の溶解度、組成物の安定性に自然に依存する。本発明の他の態様において、薬用量は、ワクチン中にて投与される細胞または細胞同等物の数に関して設定される。
【0032】
[0040] 本発明には、前記方法で調製されたワクチンを使用する癌治療のための方法が含まれる。この方法には、このようなワクチンを必要とする腫瘍に苦しむ患者に効果的な量のワクチンを投与することが含まれる。
【0033】
[0041] 転移性癌および原発性癌、ならびに固形腫瘍および非固形腫瘍を含む、いずれかの悪性腫瘍を、本発明にしたがって治療することができる。一態様において、癌腫を含む固形腫瘍および造血器悪性腫瘍を含む非固形腫瘍は、本発明のワクチンによって治療可能である。他の態様において、本発明のワクチンで治療可能な癌腫には、腺癌および上皮性癌腫が含まれるが、これらに制限されない。さらに他の態様において、白血病、リンパ腫、および多発性骨髄腫を含む(しかし、これらに制限されない)造血器悪性腫瘍は、本発明のワクチンで治療可能である。以下は、本発明の方法に従って調製されたワクチンにより治療可能な癌の限定的ではない例である:卵巣癌、進行卵巣癌、白血病、急性骨髄性白血病、結腸癌、肝転移結腸癌、直腸癌、大腸癌、メラノーマ、乳癌、肺癌、腎臓癌、および前立腺癌が挙げられる。他の態様において、ステージI、II、III、またはIVの癌は、本発明にしたがって治療される。他の態様において、ステージIIIの癌は、本発明にしたがって治療される。さらに他の態様において、ステージIVの癌は、本発明にしたがって治療される。他の態様において、癌で苦しむほ乳類は、本発明にしたがって治療される。他の態様において、癌で苦しむヒトは、本発明にしたがって治療される。
【0034】
[0042] 本発明の一態様において、本発明のワクチン組成物は、皮内、静脈内、腹腔内、筋肉内、または皮下投与に適した剤形でパッケージング。他の態様において、剤形は本発明のワクチンの投与時に、例えば適した希釈液により、再構成される本発明のワクチンを含んでもよい。
【0035】
[0043] 本発明の一態様において、本発明のワクチンは、接種および注射、例えば皮内、静脈内、腹腔内、筋肉内、および皮下を含む、適したルートで投与される。本発明の一態様において、一人の患者に、各ワクチン治療あたり複数の投与部位があってもよい。例えば、ワクチン組成物は、投与あたり一箇所、二箇所、または三箇所の近接部位に皮内注射により投与されてもよい。本発明の一態様において、ワクチン組成物は、上腕部または脚部上に投与される。
【0036】
[0044] 本発明の一態様において、本発明のワクチン組成物の投与前に、患者は、皮膚へのハプテン適用により腫瘍細胞を修飾するために用いられるハプテンについて免疫される。一態様において、ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)は患者を免疫化するために使われる。本発明の一態様において、患者はワクチン投与前にハプテンに対して免疫化をされない。
【0037】
[0045] 本発明の一態様において、シクロホスファミド(CY)薬は、腫瘍細胞に対する免疫応答を増大させるため、各ワクチンを投与される前に、数日間投与されてもよい。他の態様において、CYは初回のワクチン投与前のみに投与される。
【0038】
[0046] 本発明の一態様において、ワクチン接種プロトコルは以下の通りである。
【0039】
【表1】

【0040】
[0047] 実施例
[0048] 実施例1:ワクチンの調製
[0049] 原発性非小細胞肺癌(NSCLC)腫瘍は、手術を受けた19人の患者(10症例の腺癌、8症例の扁平上皮癌、1症例の大細胞癌)から得られた。16の腫瘍がステージI、1つの腫瘍がステージII、および2つの腫瘍がステージIIIAであった。腫瘍は標準の方法で外科的に切除され、またそれぞれの腫瘍の一部は切除された。切除された腫瘍の一部は滅菌容器に入れられ、4℃でAVAX Technologies社(リヨン、フランス)に輸送された。
【0041】
[0050] ワクチンは、本発明の方法を用いてAVAXで調製された。腫瘍細胞は機械的な分離によって抽出された。バイオプシーは50ミリリットルのHank's Buffered Salt Solution(HBSS)で洗浄された。バイオプシーは小片に切断され、10ミリリットルのHBSS中に入れられた。この小片は1ウェルあたり3ミリリットルのHBSS/ヒト血清アルブミン(HSA)/ゲンタマイシンを入れたNETWELLストレーナーに移された。HSA濃度は約0.1%から約1%で、ゲンタマイシン濃度は1ミリリットルあたり約50マイクログラムである。その後細胞は、無菌のシリンジプランジャーを使用して、ストレーナーに押しつけられた。ストレーナーは2ミリリットルのHBSS/HSA/ゲンタマイシン溶液で二回洗浄された。細胞は回収され、細胞懸濁液の量はHBSSで30ミリリットルに調整された。
【0042】
[0051] 腫瘍細胞は、その後X線装置FaxitronモデルX-650を用い、2500 cGyで照射された。照射に引き続き、腫瘍細胞は、約300×gで約7分間遠心分離され、HBSSで二回洗浄された。量および細胞濃度は、HBSSを用いて1ミリリットルあたり25×106個に調整された。2ミリリットルの細胞懸濁液が採取され、DTH投与のため別のチューブに移され、そして4℃で保存された。
【0043】
[0052] 細胞は、ハプテンDNPで修飾された。10容量の細胞懸濁液あたり1容量のハプテン化培地が細胞懸濁液に加えられ、30分間室温でインキュベートされた。ハプテン化培地には、約0.5 mMのジニトロフルオロベンゼン(DNFB)溶液が含まれた。細胞懸濁液は、その後約300×gで約7分間遠心分離された。細胞は、HBSS/1%HSAで二回洗浄された。細胞は、HBSSを約7-10%のHSAおよび約7-8%のショ糖とともに含む凍結用培地に、1ミリリットルあたり細胞数が25×106の濃度になるように再懸濁された。およそ250マイクロリットルの細胞懸濁液(細胞数約5.0×106)は、それぞれの凍結保存チューブに移され、チューブは−80℃のフリーザーに置かれた。
【0044】
[0053] ワクチンは、その後、臨床治験で投与に充分な量を測定され、およびリンパ球混入の測定をされた。
[0054] DNP修飾ワクチンの充分な量を、13から19個の腫瘍から製造した。少なくとも3グラムの腫瘍組織(直径約1.8 cm)が得られれば、臨床治験において投与するのに充分な量のワクチンが100%製造出来る。フローサイトメトリー解析は全てのワクチンがDNP修飾されていること、およびワクチン中のリンパ球の混入(中央値で20%、範囲は3-37%)がメラノーマリンパ節転移から製造されたDNP-ワクチンにおいて以前に観察された場合と比べて低いことを明らかにした。全てのNSCLCワクチンは、14日間の無菌アッセイにより、好気性菌および嫌気性菌を含まなかった。エンドトキシンはどのワクチンサンプルにおいても検出されなかった。
【0045】
[0055] この実施例はNSCLC腫瘍から産生されたワクチンが非常に清浄で無菌であり、どのようなバイオ負荷の問題も存在しないことを示す。
[0056] 実施例2:ワクチンでの肺癌治療
[0057] A、BおよびCの3つの患者群は、癌治療のためのDNP-修飾ワクチンの有効性を判定するためにテストされる。グループAは一回のワクチン接種あたり5×105個の細胞の投与を受け、グループBは一回のワクチン接種あたり2.5×106個の細胞の投与を受け、グループCは一回のワクチン接種あたり5×106個の細胞の投与を受ける。各患者は、以下に示す投薬チャート上の投薬番号1のおよそ14日前に、DTHについて試験される。DTH試験は、投薬番号6の約2 1/2週間後に繰り返される。DTHの読みとりの後、各患者は以下に明記された投薬スケジュールに従う。各患者の臨床評価が行われる。
【0046】
【表2】

【0047】
[0058] 自己由来癌細胞へのワクチン投与後のDTH試験は、DNP修飾および非修飾の両方で、細胞への感受性を判定するために行われる。二次的なエンドポイント、例えば無再発性生存および全生存などが、ワクチンの有効性を判定するために測定される。
【0048】
[0059] 当技術分野の専門家であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、多数の変更やバリエーションが本発明の発明品で作られることは明らかであろう。したがって、本発明は、添付された請求項およびそれと同等物の範囲中に含まれる、本発明の変更とバリエーションを保護することが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に投与するための肺癌ワクチンを製造するための方法であって:
(a)組織サンプルから肺癌腫瘍細胞または細胞同等物を機械的に分離すること;
(b)前記腫瘍細胞または細胞同等物に照射すること;
(c)前記腫瘍細胞または細胞同等物をハプテン化すること;および
(d)凍結用培地中に前記腫瘍細胞を懸濁すること;
を含む前記方法。

【公開番号】特開2012−229243(P2012−229243A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−153842(P2012−153842)
【出願日】平成24年7月9日(2012.7.9)
【分割の表示】特願2007−551377(P2007−551377)の分割
【原出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(504455355)アバクス・テクノロジーズ・インコーポレーテッド (3)
【Fターム(参考)】