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癌治療用医薬
説明

癌治療用医薬

本発明は、インスリン様成長因子−I(IGF−I)およびインスリン様成長因子−II(IGF−II)の活性を阻害する物質を用い、癌治療効果を相乗的に増大させた癌治療用医薬を提供することを課題とする。 本発明によれば、IGF−IおよびIGF−IIの活性を阻害する物質を含み、放射線照射と併用して投与するための癌治療用医薬;IGF−IおよびIGF−IIの活性を阻害する物質と抗腫瘍活性を有する物質とを組み合わせてなる癌治療用医薬が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、インスリン様成長因子−I(IGF−I)およびインスリン様成長因子−II(IGF−II)の活性を阻害する物質を含み、放射線照射と併用して投与するための癌治療用医薬、およびインスリン様成長因子−I(IGF−I)およびインスリン様成長因子−II(IGF−II)の活性を阻害する物質と抗腫瘍活性を有する物質とを組み合わせてなる癌治療用医薬に関する。
【背景技術】
インスリン様成長因子(insulin−like growth factor;以下、IGFと表記する)は約70個のアミノ酸配列からなるペプチドホルモンであり、プロインスリンと類似した構造をとり、分子内に3個のジスルフィド結合を有する。IGFには、構造が類似する2種類のペプチドが存在し、インスリン様成長因子−I(IGF−I)およびインスリン様成長因子−II(IGF−II)と呼ばれている。IGF−Iは成長ホルモンの刺激により、主に肝臓で合成・分泌され、軟骨の形成、タンパク質合成、細胞の増殖や分化を促進するなど動物の成長促進に重要な機能を担う。一方、IGF−IIは胎児期の器官形成や発達に関与する。IGFの生理作用は骨や筋肉に存在するIGF受容体(IGF receptor;IGF−Rと表記する)を介して発揮される。また、IGF結合蛋白質(IGF−binding protein;以下、IGFBPと表記する)と呼ばれる蛋白質が存在し、IGFの作用を促進的あるいは抑制的に制御していることが知られている。
IGF−IおよびIGF−IIは、ともに多数の癌細胞(肉腫、白血病、前立腺癌、乳癌、肺癌、胃癌、食道癌、肝臓癌、膵臓癌、腎臓癌、甲状腺癌、脳腫瘍、卵巣癌、子宮癌)に対して強い増殖促進作用を有し、多くの癌細胞において過剰発現が認められている。
IGFと癌の関連性は、これまで臨床学的・疫学的研究から検討されており、癌の罹患率と血中IGF濃度の高さに正に相関があることがわかっている。従って、IGF−IおよびIGF−IIを含めてIGF−ファミリータンパク質(IGF、IGF−R、IGFBP)は、癌の発生・増殖に重要な役割を果たしており、インスリン、IGF−IおよびIGF−IIの増殖因子とインスリン受容体、IGF−IRおよびIGF−IRの受容体、ならびにIGFBPが複雑に絡み合って疾患を制御している。すなわち、これらの相互作用の一部を阻害しても疾患を完全に抑制することが困難である。
これまでIGFに対する抗体、すなわち抗IGF抗体としては、既にいくつかの抗体が報告されている。代表的なヒトIGF−Iに対する抗体(抗hIGF−I抗体)としては、sm1.2が報告されている(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,81,2389−2392,1984)。sm1.2は、hIGF−IIと40%程度の交差反応性を有していること、1〜2μg/mLの濃度でウェスタンブロッティング法により、100ngのhIGF−Iを検出可能であること、10〜30μg/mLの濃度で20ng/mLのhIGF−Iによるマウス繊維芽細胞株BALB/c3T3の増殖を阻害すること、が明らかとなっている(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,81,2389−2392,1984、Journal of Clinical Investigation,99,2961−2970,1997)。
その他、抗hIGF−I抗体としては、Va59−SmC121があり、該抗体は、ヒトインスリンおよびhIGF−IIとは反応しないこと、hIGF−Iの10〜12番目のLeu−Val−Aspを含むペプチドを認識すること、125I−hIGF−Iを用いたラジオイムノアッセイでは、1ng/mLのhIGF−Iの検出感度を示したことが報告されている(Journal of Endocrinology,125,327−335,1990)。41/81は、hIGF−IIとは3%の反応性を有しており、また、125I−hIGF−Iを用いたラジオイムノアッセイでは、1ng/mLのhIGF−Iの検出感度を示す(FEBS Letters,149,109−112,1982)。35I17は、hIGF−IIと0.5%程度の交差反応性を有していること、1μg/mLの濃度でのウェスタンブロッティング法により、1μgのhIGF−Iを検出可能であること、12μg/mL以上の濃度でhIGF−Iによるマウス繊維芽細胞株BALB/c3T3の増殖を完全に阻害すること、30μg/mLの濃度で1μg/mLのhIGF−IによるhIGF−IRの自己リン酸化を阻害すること、また、125I−hIGF−Iを用いたラジオイムノアッセイでは、0.1nMのhIGF−Iの検出感度を示すことが報告されている(Hybridoma,16,513−518,1997)。BPL−M23は、hIGF−Iに対して10.5litres/nmolの結合活性を示し、一方、hIGF−IIおよびヒトインスリンには、それぞれ0.8%および0.0001%の交差反応性を示すこと、ヤギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウサギのIGFとは反応性を示すが、ラットおよびマウスのIGFとは反応しないこと、ラット脂肪細胞に対するhIGF−Iによる脂肪形成を抑制することが報告されている(Journal of Molecular Endocrinology,2,201−206,1989)。7A1、1B3、4C1、5A7は、hIGF−IのCおよびDドメインの異なるエピトープを認識すること、hIGF−IIとはそれぞれ6.6%、0.83%、12%、1.2%の交差反応性を示すことが報告されている(Hybridoma,12,737−744,1993)。3D1/2/1は、ヒトおよびモルモットのIGF−Iとは反応を示すが、ウサギ、ラット、マウスのIGF−Iとは反応しないこと、hIGF−IIとは、7%の交差反応性を示すことが報告されている(Journal of Clinical and Metabolism,54,474−476,1982)。
代表的なヒトIGF−IIに対する抗体(抗hIGF−II抗体)としては、S1F2が報告されている。S1F2は、hIGF−Iと10%程度の交差反応性を有していること、1μg/mLの濃度でのウェスタンブロッティング法により、10〜100ngのhIGF−IIを検出可能であること、100μg/mLの濃度で100ng/mLのhIGF−IIによるヒト繊維芽細胞のDNA合成促進作用を阻害することが明らかとなっている(Diabetes Research and Clinical Practice,7,S21−S27,1989、Endocrinology,124,870−877,1989)。2H11、2B11、ID5、ID9は、hIGF−IIと反応し、hIGF−Iとは反応しないこと、競合酵素免疫測定法(以下、ELISAと表記する)により、1ng/mLのhIGF−IIを定量可能であることが報告されている(特開平5−252987号)。
しかしながら、インスリン様成長因子−I(IGF−I)およびインスリン様成長因子−II(IGF−II)の両方に結合し、両方の活性を阻害する抗体はこれまでのところ知られていない。
また、上述の性質を有する抗体の他の癌療法との併用効果についても知られていない。
【発明の開示】
本発明の課題は、インスリン様成長因子−I(IGF−I)およびインスリン様成長因子−II(IGF−II)の活性を阻害する物質を用い、癌治療効果を相乗的に増大させた癌治療用医薬、癌治療方法を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、インスリン様成長因子−I(IGF−I)およびインスリン様成長因子−II(IGF−II)の活性を阻害する物質を放射線照射または抗腫瘍活性を有する物質と併用することにより、癌治療効果を増大できること見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、以下の(1)〜(15)の発明を包含する。
(1)インスリン様成長因子−I(IGF−I)およびインスリン様成長因子−II(IGF−II)の活性を阻害する物質を含み、放射線照射と併用して投与するための癌治療用医薬。
(2)放射線照射が、癌治療用医薬の投与時または投与前後に、単回または複数回行われる、(1)に記載の癌治療用医薬。
(3)インスリン様成長因子−I(IGF−I)およびインスリン様成長因子−II(IGF−II)の活性を阻害する物質と抗腫瘍活性を有する物質とを組み合わせてなる癌治療用医薬。
(4)インスリン様成長因子−I(IGF−I)およびインスリン様成長因子−II(IGF−II)の活性を阻害する物質と抗腫瘍活性を有する物質とを、同時に又は逐次的に投与するための(3)に記載の癌治療用医薬。
(5)インスリン様成長因子−I(IGF−I)およびインスリン様成長因子−II(IGF−II)の活性を阻害する物質が、以下の(a)〜(d)からなる群より選ばれる、(1)から(4)のいずれかに記載の癌治療用医薬。
(a)IGF−IおよびIGF−IIに特異的に結合し、IGF−IおよびIGF−IIの活性を阻害する抗体または抗体断片
(b)IGF−Iに特異的に結合し、IGF−Iの活性を阻害する抗体または抗体断片、およびIGF−IIに特異的に結合し、IGF−IIの活性を阻害する抗体または抗体断片を含む組成物
(c)IGF−Iに特異的に結合し、IGF−Iの活性を阻害する抗体または抗体断片、およびIGF−IIに特異的に結合し、IGF−IIの活性を阻害する抗体または抗体断片を組み合わせてなる組成物
(d)IGF−Iに特異的に結合し、IGF−Iの活性を阻害する抗体または抗体断片、およびIGF−IIに特異的に結合し、IGF−IIの活性を阻害する抗体または抗体断片の複合体
(6)抗体がモノクローナル抗体である、(5)に記載の癌治療用医薬。
(7)モノクローナル抗体が、ハイブリドーマKM1468(FERM BP−7978)より生産されるモノクローナル抗体が結合するエピトープに結合するモノクローナル抗体である、(6)に記載の癌治療用医薬。
(8)抗体断片が、Fab、Fab’、F(ab’)、一本鎖抗体(scFv)、二量体化可変領域(Diabody)、ジスルフィド安定化可変領域(dsFv)およびCDRを含むペプチドからなる群から選ばれる抗体断片である、(5)〜(7)のいずれかに記載の癌治療用医薬。
(9)抗腫瘍活性を有する物質が、蛋白質または低分子の薬剤である(1)〜(8)に記載の医薬。
(10)蛋白質が、抗体またはサイトカインである、(9)に記載の医薬。
(11)低分子の薬剤が、DNAアルキル化剤、DNA合成阻害剤、白金製剤型DNA架橋剤、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼI阻害剤、トポイソメラーゼII阻害剤、チューブリン作用薬、ホルモン拮抗薬、アロマターゼ阻害剤、免疫調節剤、免疫抑制剤、ステロイド型抗炎症剤、非ステロイド型抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、分化誘導剤、プロテオソーム阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、アデノシンデアミナーゼ阻害剤、血管新生阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、ビスホスホネート製剤、Hsp90阻害剤、キネシンEg5阻害剤、セリンスレオニンキナーゼ阻害剤ならびにこれらの化合物の誘導体からなる群から選ばれる薬剤である、(9)に記載の医薬。
(12)哺乳動物に対し、インスリン様成長因子−I(IGF−I)およびインスリン様成長因子−II(IGF−II)の活性を阻害する物質の有効量を、放射線照射と併用して投与することを特徴とする、癌の治療方法。
(13)放射線照射が、癌治療用医薬の投与時または投与前後に、単回または複数回行われる、(12)に記載の癌の治療方法。
(14)哺乳動物に対し、インスリン様成長因子−I(IGF−I)およびインスリン様成長因子−II(IGF−II)の活性を阻害する物質の有効量と、抗腫瘍活性を有する物質の有効量とを組み合わせて投与することを特徴とする、癌の治療方法。
(15)インスリン様成長因子−I(IGF−I)およびインスリン様成長因子−II(IGF−II)の活性を阻害する物質の有効量と、抗腫瘍活性を有する物質の有効量とを、同時に又は逐次的に投与することを特徴とする、(14)に記載の癌の治療方法。
【図面の簡単な説明】
図1は、モノクローナル抗体のhIGF−Iに対する特異的な反応性を示す(結合ELISA)。横軸は、抗体と抗原の組み合わせを、縦軸は結合活性(OD415)を示す。
図2は、モノクローナル抗体の液相系における天然の立体構造を有するhIGF−Iに対する反応性を示す(競合ELISA)。横軸は添加したhIGF−I濃度を、縦軸は結合活性(OD415)を示す。
図3は、抗体KM1468およびsm1.2のhIGF−Iに対する反応を示す。横軸は抗体濃度(μg/mL)、縦軸は結合活性(OD415)を示す。○はKM1468、□はsm1.2の反応性をそれぞれ示す。
図4は、抗体KM1468およびsm1.2のhIGF−Iに対する結合における各種因子による阻害活性を示す。横軸は各種因子濃度(μg/mL)、縦軸は結合活性(%)を示す。AはhIGF−I、BはhIGF−II、Cはヒトインスリン、DはmIGF−Iによるそれぞれの活性を示す。○はKM1468、□はsm1.2の反応性をそれぞれ示す。
図5は、抗体KM1468、sm1.2およびS1F2のhIGFおよびヒトインスリンによるヒト乳癌細胞株MCF7の増殖に対する影響を示す。Aは各因子による細胞増殖活性を示す。横軸は各種因子濃度(μg/mL)、縦軸は増殖(OD450)を示す。○はhIGF−I、●はhIGF−II、□はヒトインスリンの活性をそれぞれ示す。BはhIGF−I、CはhIGF−II、Dはヒトインスリンによる増殖活性に対する各種抗体の影響を示す。横軸は抗体濃度(μg/mL)、縦軸は増殖(OD450)を示す。細点線は抗体非添加時の増殖を、点線は各因子非添加時の増殖を示す。○はKM1468、□はsm1.2、■はS1F2の活性をそれぞれ示す。
図6は、抗体KM1468、sm1.2およびS1F2のhIGFおよびヒトインスリンによるヒト大腸癌細胞株HT−29の増殖に対する影響を示す。Aは各因子による細胞増殖活性を示す。横軸は各種因子濃度(ng/mL)、縦軸は増殖(OD450)を示す。○はhIGF−I、●はhIGF−II、□はヒトインスリンの活性をそれぞれ示す。BはhIGF−I、CはhIGF−II、Dはヒトインスリンによる増殖活性に対する各種抗体の影響を示す。横軸は抗体濃度(μg/mL)、縦軸は増殖(OD450)を示す。細点線は抗体非添加時の増殖を、点線は各因子非添加時の増殖を示す。○はKM1468、□はsm1.2、■はS1F2の活性をそれぞれ示す。
図7は、抗体KM1468、sm1.2およびS1F2のhIGFおよびヒトインスリンによるヒト骨肉腫細胞株MG63の増殖に対する影響を示す。Aは各因子による細胞増殖活性を示す。横軸は各種因子濃度(ng/mL)、縦軸は増殖(OD450)を示す。○はhIGF−I、●はhIGF−II、□はヒトインスリンの活性をそれぞれ示す。BはhIGF−I、CはhIGF−II、Dはヒトインスリンによる増殖活性に対する各種抗体の影響を示す。横軸は抗体濃度(μg/mL)、縦軸は増殖(OD450)を示す。細点線は抗体非添加時の増殖を、点線は各因子非添加時の増殖を示す。○はKM1468、□はsm1.2、■はS1F2の活性をそれぞれ示す。
図8は、抗体KM1468のhIGF−Iに対する結合における各種ペプチドによる阻害活性を示す。横軸は各種ペプチド濃度(μg/mL)、縦軸は結合活性(%)を示す。用いた各種ペプチドについては、図中に示した。
以下、本発明を詳細に説明する。本願は、2003年9月24日に出願された日本国特許出願2003−332346号の優先権を主張するものであり、該特許出願の明細書及び/又は図面に記載される内容を包含する
I.本発明の癌治療用医薬および癌治療方法
本発明の癌治療用医薬は、インスリン様成長因子−I(IGF−I)およびインスリン様成長因子−II(IGF−II)の活性を阻害する物質を含み、放射線照射と併用して投与するための癌治療用医薬である。
本発明の癌治療用医薬はまた、インスリン様成長因子−I(IGF−I)およびインスリン様成長因子−II(IGF−II)の活性を阻害する物質と、抗腫瘍活性を有する物質とを組み合わせてなる癌治療用医薬である。
本発明の癌治療用医薬において、「IGF−IおよびIGF−IIの活性を阻害する物質」は、単一の物質であってもよく、複数の物質からなる組成物であってもよく、複数の物質からなる組成物の場合にはそれぞれの物質を同時にまた別々に使用してもよい。
IGF−IおよびIGF−IIの活性を阻害する物質としては、
(a)IGF−IおよびIGF−IIに特異的に結合し、IGF−IおよびIGF−IIの活性を阻害する抗体または抗体断片
(b)IGF−Iに特異的に結合し、IGF−Iの活性を阻害する抗体または抗体断片、およびIGF−IIに特異的に結合し、IGF−IIの活性を阻害する抗体または抗体断片を含む組成物
(c)IGF−Iに特異的に結合し、IGF−Iの活性を阻害する抗体または抗体断片、およびIGF−IIに特異的に結合し、IGF−IIの活性を阻害する抗体または抗体断片を組み合わせてなる組成物
(d)IGF−Iに特異的に結合し、IGF−Iの活性を阻害する抗体または抗体断片、およびIGF−IIに特異的に結合し、IGF−IIの活性を阻害する抗体または抗体断片の複合体
などがあげられる。
上記の「IGF−IおよびIGF−IIの活性を阻害する」とは、IGF−IおよびIGF−IIが有するいずれかの活性を阻害することをいうが、具体的には、IGF−IおよびIGF−IIが有する細胞増殖促進活性を阻害することがあげられる。
本発明で使用される「IGF−IおよびIGF−IIに特異的に結合し、IGF−IおよびIGF−IIの活性を阻害する抗体または抗体断片」とは、IGF−IとIGF−IIの両方に特異的に結合し、かつIGF−IとIGF−IIの両方の活性を阻害する抗体または抗体断片をいう。具体的には、天然型IGF−Iおよび天然型IGF−IIに存在するエピトープを認識する抗体または抗体断片、IGF−IおよびIGF−IIの立体構造を認識する抗体または抗体断片などがあげられる。
本発明で使用される上記の抗体または抗体断片は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれであってもよいが、好ましくはモノクローナル抗体である。また、モノクローナル抗体としては、「ハイブリドーマが産生する抗体」、「遺伝子組換え抗体」、それらの抗体断片なども含まれる。ここで、「遺伝子組換え抗体」としては、ヒト化抗体、ヒト抗体などがあげられ、また、「ヒト化抗体」としては、ヒト型キメラ抗体、ヒト型相補性決定領域(以下、CDRと表記する)移植抗体などがあげられる。「ハイブリドーマ」とは、ヒト以外の哺乳動物に抗原を免疫して取得されたB細胞と、ミエローマ細胞とを細胞融合させて得られる、所望の抗原特異性を有したモノクローナル抗体を生産する細胞をいう。
「ヒト型キメラ抗体」とは、ヒト以外の動物の抗体の重鎖可変領域(以下、VHと表記する)および軽鎖可変領域(以下、VLと表記する)とヒト抗体の重鎖定常領域(以下、CHと表記する)および軽鎖定常領域(以下、CLと表記する)とからなる抗体をいう。ヒト型キメラ抗体のCHとしては、ヒトイムノグロブリン(以下、hIgと表記する)に属すればいかなるものでもよいが、hIgGクラスのものが好適であり、さらにhIgGクラスに属するhIgG1、hIgG2、hIgG3、hIgG4といったサブクラスのいずれも用いることができる。また、ヒト型キメラ抗体のCLとしては、hIgに属すればいずれのものでもよく、κクラスあるいはλクラスのものを用いることができる。また、ヒト以外の動物としては、マウス、ラット、ハムスター、ラビットなどがあげられる。
「ヒト型CDR移植抗体」とは、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDRをヒト抗体のVHおよびVLの適切な位置に移植した抗体をいう。本発明のヒト型CDR移植抗体は、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDRを任意のヒト抗体のVHおよびVLのフレームワーク(以下、FRと表記する)と連結したV領域をコードするcDNAを設計、構築し、ヒト抗体のCHおよびCLをコードするcDNAを有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト型CDR移植抗体発現ベクターを構築し、動物細胞へ導入することにより発現させ、製造することができる。
ヒト型CDR移植抗体のCHとしては、hIgに属すればいかなるものでもよいが、hIgGクラスのものが好適であり、さらにhIgGクラスに属するhIgG1、hIgG2、hIgG3、hIgG4といったサブクラスのいずれも用いることができる。また、ヒト型CDR移植抗体のCLとしては、hIgに属すればいずれのものでもよく、κクラスあるいはλクラスのものを用いることができる。
「ヒト抗体」とは、元来、ヒト体内に天然に存在する抗体をいうが、最近の遺伝子工学的、細胞工学的、発生工学的な技術の進歩により作製されたヒト抗体ファージライブラリーおよびヒト抗体産生トランスジェニック動物から得られる抗体なども含まれる。ヒト体内に存在する抗体は、例えば、ヒト末梢血リンパ球を単離してEBウイルスなどを感染させて不死化し、クローニングすることにより該抗体を産生するリンパ球を取得し、そして該リンパ球を培養し、該培養上清中から該抗体を精製することにより得ることができる。ヒト抗体ファージライブラリーは、ヒトB細胞から調製した抗体遺伝子をファージ遺伝子に挿入することによりFab、scFvなどの抗体断片をファージ表面に発現させたライブラリーである。該ライブラリーより、抗原を固定化した基質に対する結合活性を指標として所望の抗原結合活性を有する抗体断片を表面に発現しているファージを回収することができる。該抗体断片は、さらに、遺伝子工学的手法により2本の完全なH鎖および2本の完全なL鎖からなるヒト抗体分子へも変換することができる。ヒト抗体産生トランスジェニック動物は、ヒト抗体遺伝子が細胞内に組込まれた動物を意味する。具体的には、例えば、マウスES細胞へヒト抗体遺伝子を導入し、該ES細胞をマウスの初期胚へ移植後、発生させることによりヒト抗体産生トランスジェニックマウスを作製することができる。ヒト抗体産生トランスジェニック動物からのヒト抗体の作製方法は、通常のヒト以外の動物で行われているハイブリドーマ作製方法によりヒト抗体産生ハイブリドーマを取得し、培養することで培養上清中にヒト抗体を生成蓄積させることができる。
本発明において好ましく使用できる抗体または抗体断片としては、ハイブリドーマKM1468(FERM BP−7978)が生産するモノクローナル抗体KM1468、ハイブリドーマKM1468(FERM BP−7978)が生産するモノクローナル抗体KM1468が結合するエピトープに結合するモノクローナル抗体、またはhIGF−Iに反応し、約40%hIGF−IIにも交差反応する抗hIGF−Iモノクローナル抗体sm1.2(Upstate Biology社)、抗hIGF−Iモノクローナル抗体sm1.2(Upstate Biology社)が結合するエピトープに結合するモノクローナル抗体、さらに、上述のモノクローナル抗体が有するVHおよびVLのCDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列を含む遺伝子組換え抗体または抗体断片などがあげられる。
「IGF−Iに特異的に結合し、IGF−Iの活性を阻害する抗体または抗体断片、およびIGF−IIに特異的に結合し、IGF−IIの活性を阻害する抗体または抗体断片を含む組成物」としては、IGF−Iの活性を阻害する抗体または抗体断片のいずれかと、IGF−IIの活性を阻害する抗体または抗体断片のいずれかを含む組成物であればいかなるものでもよい。
ここで用いる「IGF−Iに特異的に結合し、IGF−Iの活性を阻害する抗体または抗体断片」とは、IGF−Iに特異的に結合するが、IGF−IIに特異的に結合しない(交差反応性がない)抗体をいい、例えば、マウスIGF−1(以下mIGF−Iと表記する)に対する抗体であるAF791(R&D社製)、ヒトIGF−I(以下hIGF−Iと表記する)に対するモノクローナル抗体である56408(R&D社製)、M23/ILG1−001(Biogenesis社製)、AF791が結合するエピトープに結合するモノクローナル抗体、56408が結合するエピトープに結合するモノクローナル抗体、M23/ILG1−001が結合するエピトープに結合するモノクローナル抗体、さらに、上述のモノクローナル抗体が有するVHおよびVLのCDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列を含む遺伝子組換え抗体または抗体断片などがあげられる。
また、「IGF−IIに特異的に結合し、IGF−IIの活性を阻害する抗体または抗体断片」とは、IGF−IIに特異的に結合するが、IGF−Iに特異的に結合しない(交差反応性がない)抗体をいい、例えば、mIGF−IIに対する抗体であるAF792(R &D社製)、hIGF−IIに対するモノクローナル抗体であるS1F2(Upstate Biology社製)、AF792が結合するエピトープに結合するモノクローナル抗体、S1F2が結合するエピトープに結合するモノクローナル抗体、さらに、上述のモノクローナル抗体が有するVHおよびVLのCDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列を含む遺伝子組換え抗体または抗体断片などがあげられる。
「IGF−Iに特異的に結合し、IGF−Iの活性を阻害する抗体または抗体断片、およびIGF−IIに特異的に結合し、IGF−IIの活性を阻害する抗体または抗体断片を組み合わせてなる組成物」とは、「IGF−Iに特異的に結合し、IGF−Iの活性を阻害する抗体または抗体断片」を含む剤と、「IGF−IIに特異的に結合し、IGF−IIの活性を阻害する抗体または抗体断片」を含む剤を別々に調製し、これらの剤を組み合わせて同時にまたは逐次的に用いるための組成物をいう。
「IGF−Iに特異的に結合し、IGF−Iの活性を阻害する抗体または抗体断片、およびIGF−IIに特異的に結合し、IGF−IIの活性を阻害する抗体または抗体断片の複合体」としては、IGF−Iの活性を阻害する抗体または抗体断片のいずれかと、IGF−IIの活性を阻害する抗体または抗体断片のいずれかとを結合させることにより得られる複合体であればいかなるものでもよい。具体的には、上記の二種類の抗体または抗体断片を下記の手段で結合させた抗体複合体があげられる。
抗体の結合方法としては、化学的に結合させる方法、または蛋白質工学的手法を用いる方法があげられる。
化学的に結合させる方法としては、二種類の抗体分子をN−succinimidyl−3−(2−pyridyldithiol)−propionateやS−acetylmercaptosuccinic acid anhydrideなどの架橋剤を用いて結合する方法などがあげられる。
蛋白質工学的な手法を用いる結合方法としては、蛋白質工学的手法を用いて複数個の抗体あるいは抗体断片を結合した形で発現させられる方法があれば、いかなる方法でも用いることができる。蛋白質工学的手法を用いる結合方法で作製される抗体複合体としては、二種類のscFvを適当なリンカーを介して結合させた分子、二種類の抗体Fab’断片を適当なリンカーを介して結合させた分子、二種類のscFvをN末端とC末端に連結したFc融合蛋白質、二種類のscFvを連結したFc融合蛋白質のヘテロ分子、diabody、diabodyがN末端あるいはC末端に連結したFc融合蛋白質などがあげられる。
本発明で使用される抗体断片としては、Fab、Fab’、F(ab’)、scFv、diabody、dsFvおよびCDRを含むペプチドなどがあげられる。
Fabは、IgG型抗体分子を蛋白質分解酵素パパインで処理して得られる断片のうち(H鎖の224番目のアミノ酸残基で切断される)、H鎖のN末端側約半分とL鎖全体がジスルフィド結合で結合した分子量約5万の抗原結合活性を有する抗体断片である。
本発明で使用されるFabは、抗体を蛋白質分解酵素パパインで処理して得ることができる。または、該抗体のFabをコードするDNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、Fabを製造することができる。
F(ab’)は、IgG型抗体分子を蛋白質分解酵素ペプシンで処理して得られる断片のうち(H鎖の234番目のアミノ酸残基で切断される)、Fabがヒンジ領域のジスルフィド結合を介して結合されたものよりやや大きい、分子量約10万の抗原結合活性を有する抗体断片である。
本発明で使用されるF(ab’)は、抗体を蛋白質分解酵素ペプシンで処理して得ることができる。または、下記のFab’をチオエーテル結合あるいはジスルフィド結合させ、作製することができる。
Fab’は、上記F(ab’)のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断した分子量約5万の抗原結合活性を有する抗体断片である。
本発明で使用されるFab’は、F(ab’)を還元剤ジチオスレイトール処理して得ることができる。または、該抗体のFab’断片をコードするDNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、Fab’を製造することができる。
scFvは、1本のVHと1本のVLとを適当なペプチドリンカー(以下、Pと表記する)を用いて連結した、VH−P−VLないしはVL−P−VHポリペプチドで、抗原結合活性を有する抗体断片である。
本発明で使用されるscFvは、抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、scFvをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、scFvを製造することができる。
diabodyは、scFvが二量体化した抗体断片で、二価の抗原結合活性を有する抗体断片である。二価の抗原結合活性は、同一とすることもできるし、一方を異なる抗原結合活性とすることもできる。本発明で使用されるdiabodyは、抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、scFvをコードするDNAをリンカーのアミノ酸配列の長さが8残基以下となるように構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、diabodyを製造することができる。
dsFvは、VHおよびVL中のそれぞれ1アミノ酸残基をシステイン残基に置換したポリペプチドを該システイン残基間のジスルフィド結合を介して結合させたものをいう。システイン残基に置換するアミノ酸残基はReiterらにより示された方法(Protein Engineering,7,697−704,1994)に従って、抗体の立体構造予測に基づいて選択することができる。本発明で使用されるdsFvは、抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、dsFvをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、dsFvを製造することができる。
CDRを含むペプチドは、VHまたはVLのCDRの少なくとも1領域以上を含んで構成される。複数のCDRを含むペプチドは、直接または適当なペプチドリンカーを介して結合させることができる。本発明で使用されるCDRを含むペプチドは、抗体のVHおよびVLのCDRをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、CDRを含むペプチドを製造することができる。また、CDRを含むペプチドは、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)などの化学合成法によって製造することもできる。
本発明で使用される抗体または抗体断片は、ELISA(Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Chapter 14,1988;Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press Limited,1996)、IGF−IおよびIGF−IIによる細胞増殖に対する阻害活性(Cancer Research,48,4083−4092,1988)などを測定することにより、in vitroでのIGF−IおよびIGF−IIに対する結合活性、IGF−IおよびIGF−IIの活性を阻害する活性を評価することができる。
本発明の一態様として、上記のIGF−IおよびIGF−IIの活性を阻害する物質に放射線照射を併用する場合、放射線は、前記物質を含む医薬の投与時または投与前後に、単回または複数回行うことができる。また、放射線照射は、1回の照射量として、1Gy〜10Gy、好ましくは2〜5Gy、より好ましくは4Gyがあげられる。複数回の照射を行う際は、1回の照射量を分割して照射すればよい。
本発明において、放射線照射とはX線、γ線などの光子(電磁波)照射、電子線、陽子線、重粒子線などの粒子線照射を含む広い概念をいう。
本発明の他の態様として、上記のIGF−IおよびIGF−IIの活性を阻害する物質に抗腫瘍活性を有する物質を併用する場合、抗腫瘍活性を有する物質としては、蛋白質又は低分子の薬剤などが包含される。
ここで、「抗腫瘍活性」とは、悪性腫瘍の組織又は細胞に対する選択的な増殖抑制作用や傷害作用、腫瘍組織又は細胞の縮小や消失作用を含み、最も広義に解釈するものとする。
蛋白質としては、限定はされないが、抗体またはサイトカインなどが挙げられる。
サイトカインとしては、インターフェロン−α、β、γ、腫瘍壊死因子(TNF)−α、リンフォトキシン、インターロイキン−1、2、3、4、7、8、12、15、18、21、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、顆粒球−マクロファージ−コロニー刺激因子(GM−CSF)、インターフェロン−γ誘導性蛋白質−10(IP−10)、フラクタルカインなどが挙げられる。また、成長ホルモン受容体拮抗薬などの蛋白質製剤なども包含される。
抗体としては、腫瘍細胞に発現する抗原、もしくは腫瘍細胞の増殖や転移など、腫瘍の病態形成に関わる抗原に対する抗体であればいかなるものでも良いが、例としてはインターロイキン6(IL−6)受容体、GD2、GD3、GM2、HER2、CD20、CD22、CD33、CD52、MAGE、HM1.24、副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)、塩基性線維芽細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子8、塩基性繊維芽細胞増殖因子受容体、線維芽細胞増殖因子8受容体、上皮細胞成長因子受容体(EGFR)、上皮性細胞接着分子(EpCam)、インスリン様増殖因子、インスリン様増殖因子受容体、PMSA、血管内皮細胞増殖因子、血管内皮細胞増殖因子受容体などに対する抗体が挙げられる。
なお、上記の抗体の具体例としては、本発明の範囲を限定するものではないが、抗IL−6受容体抗体はアンチ・キャンサー・リサーチ(Anticancer Res.),18,1217(1998)、抗GD2抗体はアンチ・キャンサー・リサーチ(Anticancer Res.),13,331(1993)、抗GD3抗体はキャンサー・イムノロジー・イムノセラピー(Cancer Immunol.Immunother.),36,260(1993)、抗GM2抗体はキャンサー・リサーチ(Cancer Res.),54,1511(1994)、抗HER2抗体はプロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc.Natl.Acad.Sci.USA),89,4285(1992)、抗CD20抗体はブラッド(Blood),83,435(1994)、抗CD22抗体としてはセミナーズ・イン・オンコロジー(Semmin.Oncol.),30,253(2003)、抗CD33抗体はジャーナル・オブ・クリニカル・オンコロジー(J.Clin.Oncol.),19,3244(2001)、抗CD52抗体はプロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc.Natl.Acad.Sci.USA),89,4285(1992)、抗MAGE抗体はブリティッシュ・ジャーナル・オブ・キャンサー(British J.Cancer),83,493(2000)、抗HM1.24抗体はモレキュラー・イムノロジー(Molecular Immunol.),36,387(1999)、抗副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)抗体はキャンサー(Cancer),88,2909(2000)、抗線維芽細胞増殖因子8抗体はプロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc.Natl.Acad.Sci.USA),86,9911(1989)、抗線維芽細胞増殖因子8受容体抗体はジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.),265,16455(1990)、抗上皮細胞成長因子受容体抗体はキャンサー・リサーチ(Cancer Res.),59,1236(1999)、抗上皮性細胞接着分子抗体はプロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc.Natl.Acad.Sci.USA),76,1438(1979)、抗インスリン様増殖因子抗体はジャーナル・オブ・ニューロサイエンス・リサーチ(J.Neurosci.Res.),40,647(1995)、抗インスリン様増殖因子受容体抗体はジャーナル・オブ・ニューロサイエンス・リサーチ(J.Neurosci.Res.),40,647(1995)、抗PMSA抗体はジャーナル・オブ・ウロロジー(J.Urology),160,2396(1998)、抗血管内皮細胞増殖因子抗体はキャンサー・リサーチ(Cancer Res.),57,4593(1997)、抗血管内皮細胞増殖因子受容体抗体はオンコジーン(Oncogene),19,2138(2000)などに記載の抗体が挙げられる。
具体的な抗体名としては、ハーセプチン(Herceptin)、リツキサン(Rituxan)、キャンパス(Campath)、アバスチン(Avastin)、ベクサー(Bexxar)、リンフォサイド(LymphoCide)、マイロターグ(Mylotarg)、パノレックス(Panorex)、ゼバリン(Zevalin)[ネイチャー・レビューズ・キャンサー(Nat.Rev.Cancer),1,118(2001)]などが挙げられる。
低分子の薬剤としては、限定はされないが、例えば、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、ダカルバジン、プロカルバジン、ニムスチン、カルムスチン、ロムスチン、エストラムスチン、ブスルファン、チオテパなどのDNAアルキル化剤;ブレオマイシン、ペプロマイシン、マイトマイシンC、ミトキサントロンなどのDNA合成阻害剤;シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチンなどの白金製剤型DNA架橋剤;5−フルオロウラシル、カペシタビン、メトトレキセート、ゲムシタビン、フルダラビン、シラタビン、クラドリビン、メルカプトプリン、ヒドロキシカルバミド、Ara−Cなどの代謝拮抗剤;イリノテカン、ノギテカンなどのトポイソメラーゼI阻害剤;ドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシドなどのトポイソメラーゼII阻害剤;ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、パクリタキセル、ドセタキセルなどのチューブリン作用薬;タモキシフェン、ゴセレリン、リュープロレリン、フルタミドなどのホルモン拮抗薬;アナストロゾール、ファドロゾール、レトロゾール、エキセメスタンなどのアロマターゼ阻害剤;金チオマレート、D−ペニシラミン、ブシラミン、サリドマイドなどの免疫調節剤;アザチオプリン、ミゾリビン、シクロスポリン、ラパマイシンなどの免疫抑制剤;ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾンなどのステロイド型抗炎症剤;アスピリン、インドメタシン、セレコキシブなどの非ステロイド型抗炎症剤;クロルフェニラミン、クレマスチンなどの抗ヒスタミン剤;トレチノイン、ベキサロテン、砒素などの分化誘導剤;ボルテゾミブなどのプロテオソーム阻害剤;ゲフィチニブ(EGFR阻害剤)、エルロチニブ(EGFR阻害剤)、イマチニブ(Abl阻害剤)、Flt3阻害剤、ZD6474(VEGFR阻害剤)、PD17034(FGFR阻害剤)などのチロシンキナーゼ阻害剤;ペントスタチンなどのアデノシンデアミナーゼ阻害剤;ラディシコール、17−アリルアミノ−17−デメトキシゲルダナマイシンなどのHsp90阻害剤;血管新生阻害剤;ヒストンデアセチラーゼ阻害剤;マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤;ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤;ビスホスホネート製剤;キネシンEg5阻害剤;UCN−01、ラパマイシンなどのセリンスレオニンキナーゼ阻害剤ならびにこれらの化合物の誘導体などがあげられる。
上記の薬剤のうち、好ましくはシスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、5−フルオロウラシル、イリノテカン、パクリタキセル、ゲフィチニブ、メルファラン、ドキソルビシン、ボルテゾミブ、ラパマイシン、ハーセプチン、ミトキサントロン、デキサメタゾン、UCN−01、プレドニゾロン、サリドマイドがあげられ、より好ましくはメルファラン、シスプラチン、ミトキサントロン、イリノテカン、ラパマイシン、デキサメタゾン、UCN−01などがあげられる。
「IGF−IおよびIGF−IIの活性を阻害する物質と抗腫瘍活性を有する物質とを組み合わせてなる癌治療用医薬」とは、「IGF−IおよびIGF−IIの活性を阻害する物質」またはその製剤と、「抗腫瘍活性を有する物質」またはその製剤とを、投与対象に同時に投与するための、または、時間差をおいて逐次的に投与するための医薬をいう。
すなわち、上記医薬の投与形態としては、投与時に「IGF−IおよびIGF−IIの活性を阻害する物質」と「抗腫瘍活性を有する物質」とが組み合わされていればよい。例えば、(i)「IGF−IおよびIGF−IIの活性を阻害する物質」と「抗腫瘍活性を有する物質」とを同時に製剤化して得られる単一の製剤の投与、(ii)「IGF−IおよびIGF−IIの活性を阻害する物質」と「抗腫瘍活性を有する物質」とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での同時投与、(iii)「IGF−IおよびIGF−IIの活性を阻害する物質」と「抗腫瘍活性を有する物質」とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での時間差をおいての投与、例えば、「IGF−IおよびIGF−IIの活性を阻害する物質」、「抗腫瘍活性を有する物質の順序での投与、あるいは逆の順序での投与、(iv)「IGF−IおよびIGF−IIの活性を阻害する物質」と「抗腫瘍活性を有する物質」とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での同時投与、(v)「IGF−IおよびIGF−IIの活性を阻害する物質」と「抗腫瘍活性を有する物質」とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での時間差をおいての投与などが挙げられる。
時間差をおいて投与する場合、その時間差は投与する有効成分、剤型、投与方法などにより異なる。
本発明の癌治療用医薬の投与量は、併用する放射線照射の有無、併用する「抗腫瘍活性を有する物質」の種類、症状の程度、投与方法、投与対象の年齢・性別・体重、治療期間などによって異なり、特に限定はされないが、通常哺乳動物1日当たり10μg/kg〜10mg/kgである。
本発明の癌治療用医薬の対象疾患としては、各種悪性及び良性腫瘍、例えば、悪性黒色腫、悪性リンパ腫、消化器癌、肺癌、食道癌、胃癌、大腸癌、直腸癌、結腸癌、尿管腫瘍、胆嚢癌、胆管癌、胆道癌、乳癌、肝臓癌、膵臓癌、睾丸腫瘍、上顎癌、舌癌、口唇癌、口腔癌、咽頭癌、喉頭癌、卵巣癌、子宮癌、前立腺癌、甲状腺癌、脳腫瘍、カポジ肉腫、血管腫、白血病、真性多血症、神経芽腫、網膜芽腫、骨髄腫、膀胱腫、肉腫、骨肉腫、筋肉腫、皮膚癌、腎臓癌、泌尿器癌、小児癌、神経膠腫などがあげられる。
本発明の癌治療用医薬は、特に、「hIGF依存性増殖癌」による腫瘍抑制に有効である。「hIGF依存性増殖癌」とは、hIGF存在下で増殖し、hIGF濃度に依存して増殖度が増加する癌のことをいい、たとえば前立腺癌、大腸癌、乳癌、骨肉腫、骨髄腫などがあげられる。
本発明の癌治療用医薬は、IGF−IおよびIGF−IIの活性を阻害する物質と抗腫瘍活性を有する物質とをそれぞれ単独で有効成分として含む医薬であってもよいし、両物質を混合させたものを有効成分として含む医薬であってもよいが、通常は薬理学的に許容される一つあるいはそれ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られる任意の方法により製造した医薬製剤として提供するのが望ましい。好ましくは水、あるいは食塩、グリシン、グルコース、ヒトアルブミン等の水溶液等の水性担体に溶解した無菌的な溶液が用いられる。また、製剤溶液を生理的条件に近づけるための緩衝化剤や等張化剤のような、薬理学的に許容される添加剤、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化カリウム、クエン酸ナトリウム等を添加することもできる。また、凍結乾燥して貯蔵し、使用時に適当な溶媒に溶解させて用いることもできる。
本発明の癌治療用医薬の投与経路は、治療に際し最も効果的なものを使用するのが望ましく、経口投与、あるいは口腔内、気道内、直腸内、皮下、筋肉内および静脈内等の非経口投与をあげることができるが、静脈内投与が好ましい。
経口投与に適当な製剤としては、乳剤、シロップ剤、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤等があげられる。例えば乳剤およびシロップ剤のような液体調製物は、水、ショ糖、ソルビトール、果糖等の糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ごま油、オリーブ油、大豆油などの油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミント等のフレーバー類等を添加剤として用いて製造できる。カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤等は、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニトール等の賦形剤、デンプン、アルギン酸ナトリウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン等の結合剤、脂肪酸エステル等の界面活性剤、グリセリン等の可塑剤等を添加剤として用いて製造できる。
非経口投与に適当な製剤としては、注射剤、座剤、噴霧剤等があげられる。例えば、注射剤は、塩溶液、ブドウ糖溶液、あるいは両者の混合物からなる担体等を用いて調製する。座剤はカカオ脂、水素化脂肪またはカルボン酸等の担体を用いて調製される。また、噴霧剤は該阻害物質そのもの、ないしは受容者の口腔および気道粘膜を刺激せず、かつ該阻害物質を微細な粒子として分散させ吸収を容易にさせる担体等を用いて調製する。担体として具体的には乳糖、グリセリン等が例示される。該阻害物質および用いる担体の性質により、エアロゾル、ドライパウダー等の製剤が可能である。また、これらの非経口剤においても経口剤で添加剤として例示した成分を添加することもできる。
本発明によれば、哺乳動物に対し、IGF−IおよびIGF−IIの活性を阻害する物質の有効量と、抗腫瘍活性を有する物質の有効量とを組み合わせて投与することを特徴とする、癌の治療方法、ならびに、IGF−IおよびIGF−IIの活性を阻害する物質の有効量と、抗腫瘍活性を有する物質の有効量とを、同時に又は逐次的に投与することを特徴とする、癌の治療方法もまた提供される。
ここで、「哺乳動物」とは、癌を有するヒト、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、ブタ等の哺乳動物をいい、「有効量」とは、増殖中の癌細胞に対する上記物質の投与によって、癌細胞の増殖の停止、腫瘤サイズの縮小又は消失をもたらす量をいう。
II.本発明の癌治療用医薬に使用する抗体または抗体断片の調製
以下に、本発明で使用される、IGF−IおよびIGF−IIに特異的に結合し、かつIGF−IおよびIGF−IIの活性を阻害する物質の一つである、IGF−IおよびIGF−IIに特異的に結合し、かつIGF−IおよびIGF−IIの活性を阻害する抗体または抗体断片の作製方法ならびに活性評価について記す。
1.IGFに対するハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体の作製
(1)抗原の調製
IGFをコードするcDNAを含む発現ベクターを大腸菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞などに導入、発現させ、組換え型IGF蛋白質を得、これを抗原に用いることができる。あるいは、IGF部分配列を有する合成ペプチドを抗原に用いることもできる。
抗原用部分ペプチドとしては、5〜30残基程度の蛋白質部分配列が選択される。変性していない天然の構造を有している状態の該蛋白質を認識する抗体を取得するためには、立体構造上蛋白質の表面に存在している部分配列を抗原ペプチドとして選択する必要がある。立体構造上蛋白質表面に存在する部分は、ジェネティック・マック(Genetyx Mac)など市販の蛋白質配列解析ソフトを用い、親水性の高い部分配列を予測することで推測することができる。すなわち、一般的に親水性の低い部分は立体構造上蛋白質の内部に存在する場合が多く、親水性の高い部分は蛋白質表面に存在する場合が多いためである。また、蛋白質のN末端、C末端は蛋白質表面に存在する場合が多い。しかしながら、このように選択した部分ペプチドが目的通りの抗体を確立する抗原となるとは限らない。
部分ペプチドには蛋白質と架橋するために、システインを末端に付加する。蛋白質の内部配列を部分ペプチドとして選択した場合には、必要に応じペプチドのN末端はアセチル化、C末端はアミド化する。部分ペプチドは一般的な液相、固相ペプチド合成法およびそれらを適宜組み合わせる方法、またはそれらに準じる方法によって合成することができる(The Peptides,Analysis,Synthesis,Biology,Vol.1,1979;Vol.2,1980;Vol.3,1981,Academic Press;ペプチド合成の基礎と実験、丸善、1985;続医薬品の開発、第14巻、ペプチド合成、廣川書店、1991;International Journal of Peptide &Protein Research,35,161−214,1990)。また、自動ペプチド合成機を用いることもできる。ペプチド合成機によるペプチドの合成は、島津製作所製ペプチド合成機、Applied Biosystems,Inc.社(以下、ABI社と表記する)製ペプチド合成機、Advanced ChemTech Inc.社(以下、ACT社と表記する)製ペプチド合成機などの市販のペプチド合成機上で、適当に側鎖を保護したNα−Fmoc−アミノ酸あるいはNα−Boc−アミノ酸などを用い、それぞれの合成プログラムに従って実施することができる。
原料となる保護アミノ酸および担体樹脂は、ABI社、島津製作所、国産化学(株)、Nova Biochem社、渡辺化学(株)、ACT社またはペプチド研究所(株)などから入手することができる。また、原料となる保護アミノ酸、保護有機酸、保護有機アミンは報告されている合成法に従って、あるいはそれに準じて合成することができる(The Peptides,Analysis,Synthesis,Biology,Vol.1,1979;Vol.2,1980;Vol.3,1981,Academic Press;ペプチド合成の基礎と実験、丸善、1985;続医薬品の開発、第14巻、ペプチド合成、廣川書店、1991;International Journal of Peptide &Protein Research,35,161−214,1990)。
(2)動物の免疫と抗体産生細胞の調製
免疫に用いる動物としては、マウス、ラット、ハムスター、ラビットなどハイブリドーマを作製することが可能であれば、いかなるものでもよい。下記に、マウスおよびラットを用いる例について説明する。
3〜20週令のマウスまたはラットに、上記1(1)で調製した抗原を免疫し、その動物の脾臓、リンパ節、末梢血より抗体産生細胞を採取する。免疫は、動物の皮下、静脈内または腹腔内に適当なアジュバントとともに抗原を数回投与することにより行う。アジュバントとしては、フロインドの完全アジュバント(Complete Freund’s Adjuvant)または、水酸化アルミニウムゲルと百日咳菌ワクチンなどがあげられる。また、ウシ血清アルブミン(以下、BSAと表記する)やKeyhole Limpet Hemocyanin(以下、KLHと表記する)などのキャリア蛋白質とコンジュゲートを作製し、これを免疫原として用いることができる。各抗原の投与後3〜7日目に免疫動物の眼底静脈叢あるいは尾静脈より採血し、抗原として用いたhIGFに対する反応性をELISAなどで確認し、その血清が十分な抗体価を示したマウスまたはラットを抗体産生細胞の供給源とする。抗原の最終投与後3〜7日目に、免疫したマウスまたはラットより公知の方法(Antibodies−A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988)に準じて脾臓などを摘出し、抗体産生細胞と骨髄腫細胞とを融合させる。
(3)骨髄腫細胞の調製
骨髄腫細胞としては、マウスから得られた株化細胞である8−アザグアニン耐性骨髄腫細胞株P3−X63Ag8−U1(P3−U1)(European Journal of Immunology,6,511−519,1976)、SP2/0−Ag14(SP−2)(Nature,276,269−270,1978)、P3−X63−Ag8653(653)(Journal of Immunology,123,1548−1550,1979)、P3−X63−Ag8(X63)(Nature,256,495−497,1975)など、in vitroで増殖可能な骨髄腫細胞であればいかなるものでもよい。これらの細胞株の培養および継代については公知の方法(Antibodies−A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988)に従い、細胞融合時までに2×10個以上の細胞数を確保する。
(4)細胞融合
上記で得られた抗体産生細胞と骨髄腫細胞とを洗浄したのち、ポリエチレングリコール−1000(以下、PEG−1000と表記する)などの細胞凝集性媒体を加え、細胞を融合させ、培地中に懸濁する。細胞の洗浄にはModified Eagle’s Medium(以下、MEMと表記する)またはPhosphate Buffered Saline(以下、PBSと表記する)などを用いる。また、融合細胞を懸濁する培地としては、目的の融合細胞のみを選択的に得られるように、HAT培地{通常培地[RPMI−1640培地に1.5mMグルタミン、50μM 2−メルカプトエタノール、10μg/mLジェンタマイシンおよび10%牛胎児血清(以下、FBSと表記する)を加えた培地]に0.1mMヒポキサンチン、15μMチミジンおよび0.4μMアミノプテリンを加えた培地}を用いる。
培養後、培養上清の一部を取り、ELISAにより抗原蛋白質に反応し、非抗原蛋白質に反応しないサンプルを選択する。次いで、限界希釈法により単一細胞化を行い、ELISAにより安定して高い抗体価の認められたものをモノクローナル抗体産生ハイブリドーマとして選択する。
(5)ハイブリドーマの選択
抗hIGFモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの選択は、公知の方法(Antibodies−A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988)に従い、以下に述べるELISAにより行う。これらの方法により、後述する抗hIGFキメラ抗体、抗hIGF CDR移植抗体またはそれらの抗体断片を産生する形質転換株の培養上清中に含まれる抗体あるいはすべての精製抗体の結合活性を測定することができる。
ELISA
抗原を96穴ELISAプレートに固定化し、ハイブリドーマなどの培養上清あるいは精製抗体を第一抗体として反応させる。第一抗体反応後、プレートを洗浄して第二抗体を添加する。第二抗体としては、第一抗体を認識することができる抗体を、ビオチン、酵素、化学発光物質あるいは放射性同位元素などで標識した抗体を用いる。具体的にはハイブリドーマ作製の際にマウスを用いたのであれば、第二抗体としてはマウス抗体を認識できる抗体を用いる。反応後、第二抗体の標識物質に応じた反応を行ない、抗原に特異的に反応するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマとして選択する。
当該ハイブリドーマの具体例としては、ハイブリドーマKM1468などがあげられる。ハイブリドーマKM1468は、平成14年3月26日付けで独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6 郵便番号305−8566)にFERM BP−7978として寄託されている。
(6)モノクローナル抗体の精製
0.5mLのプリスタン(2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン)を腹腔内投与し、2週間飼育した8〜10週令のマウスまたはヌードマウスに、1(4)で得られた抗hIGFモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ細胞5×10〜2×10細胞/匹を腹腔内に注射する。10〜21日間でハイブリドーマは腹水癌化する。該マウスまたはヌードマウスから腹水を採取し、遠心分離、40〜50%飽和硫酸アンモニウムによる塩析、カプリル酸沈殿法、DEAE−セファロースカラム、プロテインA−カラムあるいはセルロファインGSL2000(生化学工業社製)のカラムなどを用いて、IgGあるいはIgM画分を回収し、精製モノクローナル抗体とする。
精製モノクローナル抗体のサブクラスの決定は、マウスモノクローナル抗体タイピングキットまたはラットモノクローナル抗体タイピングキットなどを用いて行うことができる。蛋白質濃度は、ローリー法あるいは280nmでの吸光度より算出することができる。
抗体のサブクラスとは、クラス内のアイソタイプのことで、マウスでは、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、ヒトでは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4があげられる。
(7)モノクローナル抗体の活性評価
(7−1)hIGFへの結合活性評価
培養上清中あるいは精製した抗hIGFモノクローナル抗体のhIGFに対する結合活性は、上記1(5)のELISAおよび表面プラズモン共鳴(Journal of Immunological Methods,145,229−240,1991)などにより測定することができる。また、hIGFおよびhIGFの部分ペプチドを用いた競合ELISAにより、hIGFとの反応性および抗原エピトープを解析することができる。抗体がhIGFの立体構造を認識しているか否かは、通常行われる立体構造的解析法、あるいは種々の免疫学的測定法を組み合わせることにより、推測することができる。立体構造解析法としては、例えば、X線結晶解析、核磁気共鳴法などがあげられる。種々の免疫学的測定法を組み合わせる方法としては、例えば、非変性状態の抗原に対するELISA法と変性状態の抗原に対するELISA法を組み合わせる方法があげられる。このとき、非変性状態の抗原にのみ反応性を示す抗体は、抗原の立体構造を認識している可能性が高いものと推測できる。非変性状態の抗原に対するELISA法とは、液層中で非変性抗原と抗体を反応させるELISA法などがあげられる。変性状態の抗原に対するELISA法としては、抗原がもとの立体構造を保持していない状態で抗体を反応させるELISA法であればいずれでもよく、例えば、疎水性の反応プレート上に直接固定化した抗原や、適当な長さに消化した部分ペプチドなどに対するELISA法があげられる。
本発明で使用される抗体は、該結合活性測定法または競合ELISAにより、hIGF−IIに対する結合活性とhIGF−Iに対する結合活性とを有する抗体を選択することにより取得することができる。
また、hIGF依存的な増殖を示す細胞株に対する影響を検討することにより、in vitroにおけるhIGFの活性を阻害する活性を測定することができる。hIGF−IまたはhIGF−II依存的な増殖を示す細胞株としては、ヒト乳癌細胞株MCF7(ATCC HTB−22)、ヒト大腸癌細胞株HT−29(ATCC HTB−38)などがあげられる。
さらに、マウスなどの動物を用いてhIGF依存的な細胞増殖測定系を確立し、該測定系に対する影響を検討することにより、in vivoにおけるhIGFの活性を阻害する活性を測定することができる。
2.IGFに対するヒト以外の動物のポリクローナル抗体の作製
ポリクローナル抗体は、上記1.(2)に示された方法で免疫を施した動物のうち、その血清が十分な抗体価を示した動物の血清から調製することができる。
即ち、該動物から回収した血液から遠心分離法により分画した血清、あるいは該血清から常法に従って免疫グロブリン画分を精製し、ポリクローナル抗体を調製することができる。該ポリクローナル抗体の活性は、上記1.(7)に記載の方法により、抗原に対する結合活性を評価することができる。
3.ヒト化抗体の作製
(1)ヒト化抗体発現用ベクターの構築
ヒト化抗体発現用ベクターとしては、ヒト抗体のCHおよび/またはCLをコードする遺伝子が組み込まれた動物細胞用発現ベクターであればいかなるものでもよい。ヒト化抗体発現用ベクターは、動物細胞用発現ベクターにヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子をそれぞれクローニングすることにより構築することができる。
ヒト抗体のC領域は任意のヒト抗体のCHおよびCLであることができ、例えば、ヒト抗体のH鎖のIgG1サブクラスのC領域(以下、hCγ1と表記する)およびヒト抗体のL鎖のκクラスのC領域(以下、hCκと表記する)などがあげられる。ヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子としてはエキソンとイントロンからなる染色体DNAを用いることができ、また、cDNAを用いることもできる。
動物細胞用発現ベクターとしては、ヒト抗体のC領域をコードする遺伝子を組込み発現できるものであればいかなるものでも用いることができる。例えば、pAGE107(Cytotechnology,3,133−140,1990)、pAGE103(Journal of Biochemistry,101,1307−1310,1987)、pHSG274(Gene,27,223−232,1984)、pKCR(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,78,1527−1531,1981)、pSG1βd2−4(Cytotechnology,4,173−180,1990)などがあげられる。動物細胞用発現ベクターに用いるプロモーターとエンハンサーとしては、SV40の初期プロモーターとエンハンサー(Journal of Biochemistry,101,1307−1310,1987)、モロニーマウス白血病ウイルスのLTRプロモーターとエンハンサー(Biochemical & Biophysical Research Communications,149,960−968,1987)、イムノグロブリンH鎖のプロモーター(Cell,41,479−487,1985)とエンハンサー(Cell,33,717−728,1983)などがあげられる。
ヒト化抗体発現用ベクターは、抗体H鎖およびL鎖が別々のベクター上に存在するタイプあるいは同一のベクター上に存在するタイプ(以下、タンデム型と表記する)のどちらでも用いることができるが、ヒト化抗体発現ベクターの構築の容易さ、動物細胞への導入の容易さ、動物細胞内での抗体H鎖およびL鎖の発現量のバランスが均衡するなどの点からタンデム型のヒト化抗体発現用ベクターの方が好ましい(Journal of Immunological Methods,167,271−278,1994)。タンデム型のヒト化抗体発現用ベクターとしては、pKANTEX93(WO97/10354)、pEE18(Hybridoma,17,559−567,1998)などがあげられる。
構築したヒト化抗体発現用ベクターは、ヒト型キメラ抗体およびヒト型CDR移植抗体の動物細胞での発現に使用できる。
(2)ヒト以外の動物の抗体のV領域をコードするcDNAの取得およびアミノ酸配列の解析
ヒト以外の動物の抗体、例えば、マウス抗体のVHおよびVLをコードするcDNAは以下のようにして取得する。
マウス抗体などを産生するハイブリドーマよりmRNAを抽出し、cDNAを合成する。合成したcDNAをファージあるいはプラスミドなどのベクターにクローニングしてcDNAライブラリーを作製する。該ライブラリーより、マウス抗体のC領域部分あるいはV領域部分をプローブとして用い、VHをコードするcDNAを有する組換えファージあるいは組換えプラスミドおよびVLをコードするcDNAを有する組換えファージあるいは組換えプラスミドをそれぞれ単離する。組換えファージあるいは組換えプラスミド上の目的とするマウス抗体のVHおよびVLの全塩基配列を決定し、塩基配列よりVHおよびVLの全アミノ酸配列を推定する。
ヒト以外の動物としては、マウス、ラット、ハムスター、ラビットなど、ハイブリドーマを作製することが可能であれば、いかなるものも用いることができる。
ハイブリドーマから全RNAを調製する方法としては、チオシアン酸グアニジン−トリフルオロ酢酸セシウム法(Methods in Enzymology,154,3−28,1987)、また全RNAからmRNAを調製する方法としては、オリゴ(dT)固定化セルロースカラム法(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Lab.Press New York,1989)などがあげられる。また、ハイブリドーマからmRNAを調製するキットとしては、Fast Track mRNA Isolation Kit(Invitrogen社製)、Quick Prep mRNA Purification Kit(Pharmacia社製)などがあげられる。
cDNAの合成およびcDNAライブラリー作製法としては、常法(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Lab.Press New York,1989;Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1−34)、あるいは市販のキット、例えば、Super ScriptTMPlasmid System for cDNA Synthesis and Plasmid Cloning(GIBCO BRL社製)やZAP−cDNA Synthesis Kit(Stratagene社製)を用いる方法などがあげられる。
cDNAライブラリーの作製の際、ハイブリドーマから抽出したmRNAを鋳型として合成したcDNAを組み込むベクターは、該cDNAを組み込めるベクターであればいかなるものでも用いることができる。例えば、ZAP Express(Strategies,5,58−61,1992)、pBluescript II SK(+)(Nucleic Acids Research,17,9494,1989)、λZAP II(Stratagene社製)、λgt10、λgt11(DNA Cloning:A Practical Approach,I,49,1985)、Lambda BlueMid(Clontech社製)、λExCell、pT7T3 18U(Pharmacia社製)、pcD2(Molecular & Cellular Biology,3,280−289,1983)およびpUC18(Gene,33,103−119,1985)などのファージあるいはプラスミドベクターが用いられる。
ファージあるいはプラスミドベクターにより構築されるcDNAライブラリーを導入する大腸菌としては該cDNAライブラリーを導入、発現および維持できるものであればいかなるものでも用いることができる。例えば、XL1−Blue MRF’(Journal of Biotechnology,23,271−289,1992)、C600(Genetics,59,177−190,1968)、Y1088、Y1090(Science,222,778−782,1983)、NM522(Journal of Molecular Biology,166,1−19,1983)、K802(Journal of Molecular Biology,16,118−133,1966)およびJM105(Gene,38,275−276,1985)などが用いられる。
cDNAライブラリーからのヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLをコードするcDNAクローンの選択法としては、放射性同位元素あるいは蛍光標識したプローブを用いたコロニー・ハイブリダイゼーション法あるいはプラーク・ハイブリダイゼーション法(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Lab.Press New York,1989)により選択することができる。また、プライマーを調製し、mRNAから合成したcDNAあるいはcDNAライブラリーを鋳型として、Polymerase Chain Reaction(以下、PCR法と表記する;Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Lab.Press New York,1989;Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1−34)によりVHおよびVLをコードするcDNAを調製することもできる。
上記方法により選択されたcDNAを、適当な制限酵素等で切断後、pBluescript SK(−)(Stratagene社製)などのプラスミドベクターにクローニングし、通常用いられる塩基配列解析方法、例えば、ジデオキシ法(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,74,5463−5467,1977)などの反応を行い、塩基配列自動分析装置ABI PRISM 377(ABI社製)などを用いて解析することで該cDNAの塩基配列を決定することができる。
決定した塩基配列からVHおよびVLの全アミノ酸配列を推定し、既知の抗体のVHおよびVLの全アミノ酸配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services,1991)と比較することにより、取得したcDNAが分泌のためのシグナル配列を含む抗体のVHおよびVLの完全なアミノ酸配列をコードしているかを確認することができる。シグナル配列を含む抗体のVHおよびVLの完全なアミノ酸配列に関しては、既知の抗体のVHおよびVLの全アミノ酸配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services,1991)と比較することにより、シグナル配列の長さおよびN末端アミノ酸配列を推定でき、さらにはそれらが属するサブグループを知ることができる。また、VHおよびVLの各CDRのアミノ酸配列についても、既知の抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services,1991)と比較することによって見出すことができる。
さらに、VHおよびVLの完全なアミノ酸配列を用いて任意のデータベース、例えば、SWISS−PROTやPIP−Proteinなどに対してBLAST法(Journal of Molecular Biology,215,403−410,1990)などの配列の相同性検索を行い、配列の新規性を検討することができる。
(3)ヒト型キメラ抗体発現ベクターの構築
上記2(1)に記載のヒト化抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子の上流に、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLをコードするcDNAをクローニングし、ヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築することができる。例えば、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLの3’末端側の塩基配列とヒト抗体のCHおよびCLの5’末端側の塩基配列とから成り、かつ適当な制限酵素の認識配列を両端に有する合成DNAとそれぞれ連結し、それぞれを上記2(1)に記載のヒト化抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子の上流にそれらが適切な形で発現するようにクローニングし、ヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築することができる。また、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを含むプラスミドを鋳型として、5’末端に適当な制限酵素の認識配列を有するプライマーを用いてPCR法によりVHおよびVLをコードするcDNAを増幅し、それぞれを上記2(1)に記載のヒト化抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子の上流にそれらが適切な形で発現するようにクローニングし、ヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築することができる。
(4)ヒト型CDR移植抗体のV領域をコードするcDNAの構築
ヒト型CDR移植抗体のVHおよびVLをコードするcDNAは、以下のようにして構築することができる。まず、目的のヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDRのアミノ酸配列を移植するヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列を選択する。ヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列としては、ヒト抗体由来のものであれば、いかなるものでも用いることができる。例えば、Protein Data Bankなどのデータベースに登録されているヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列、ヒト抗体のVHおよびVLのFRの各サブグループの共通アミノ酸配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services,1991)などがあげられるが、その中でも、十分な活性を有するヒト型CDR移植抗体を作製するためには、目的のヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列とできるだけ高い相同性(少なくとも60%以上)を有するアミノ酸配列を選択することが望ましい。次に、選択したヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列に目的のヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDRのアミノ酸配列を移植し、ヒト型CDR移植抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列を設計する。設計したアミノ酸配列を抗体の遺伝子の塩基配列に見られるコドンの使用頻度(Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services,1991)を考慮して塩基配列に変換し、ヒト型CDR移植抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列をコードする塩基配列を設計する。設計した塩基配列に基づき、100塩基前後の長さからなる数本の合成DNAを合成し、それらを用いてPCR法を行う。この場合、PCRでの反応効率および合成可能なDNAの長さから、VH、VLとも6本の合成DNAを設計することが好ましい。
また、両端に位置する合成DNAの5’末端に適当な制限酵素の認識配列を導入することで、上記2(1)で構築したヒト化抗体発現用ベクターに容易にクローニングすることができる。PCR反応後、増幅産物をpBluescript SK(−)(Stratagene社製)などのプラスミドにクローニングし、上記2(2)に記載の方法により、塩基配列を決定し、所望のヒト型CDR移植抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するプラスミドを取得する。
(5)ヒト型CDR移植抗体のV領域のアミノ酸配列の改変
ヒト型CDR移植抗体は、目的のヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDRのみをヒト抗体のVHおよびVLのFRに移植しただけでは、その抗原結合活性は元のヒト以外の動物の抗体に比べて低下してしまうことが知られている(BIO/TECHNOLOGY,9,266−271,1991)。この原因としては、元のヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLでは、CDRのみならず、FRのいくつかのアミノ酸残基が直接的あるいは間接的に抗原結合活性に関与しており、それらアミノ酸残基がCDRの移植に伴い、ヒト抗体のVHおよびVLのFRの異なるアミノ酸残基へと変化してしまうことが考えられている。この問題を解決するため、ヒト型CDR移植抗体では、ヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列の中で、直接抗原との結合に関与しているアミノ酸残基やCDRのアミノ酸残基と相互作用したり、抗体の立体構造を維持し、間接的に抗原との結合に関与しているアミノ酸残基を同定し、それらを元のヒト以外の動物の抗体に見出されるアミノ酸残基に改変し、低下した抗原結合活性を上昇させることが行われている(BIO/TECHNOLOGY,9,266−271,1991)。ヒト型CDR移植抗体の作製においては、それら抗原結合活性に関わるFRのアミノ酸残基を如何に効率よく同定するかが、最も重要な点であり、そのためにX線結晶解析(Journal of Molecular Biology,112,535−542,1977)あるいはコンピューターモデリング(Protein Engineering,7,1501−1507,1994)などによる抗体の立体構造の構築および解析が行われている。これら抗体の立体構造の情報は、ヒト型CDR移植抗体の作製に多くの有益な情報をもたらして来たが、その一方、あらゆる抗体に適応可能なヒト型CDR移植抗体の作製法は未だ確立されておらず、現状ではそれぞれの抗体について数種の改変体を作製し、それぞれの抗原結合活性との相関を検討するなどの種々の試行錯誤が必要である。
ヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸残基の改変は、改変用合成DNAを用いて上記2(4)に記載のPCR法を行うことにより、達成できる。PCR後の増幅産物について上記2(2)に記載の方法により、塩基配列を決定し、目的の改変が施されたことを確認する。
(6)ヒト型CDR移植抗体発現ベクターの構築
上記2(1)に記載のヒト化抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子の上流に、上記2(4)および(5)で構築したヒト型CDR移植抗体のVHおよびVLをコードするcDNAをクローニングし、ヒト型CDR移植抗体発現ベクターを構築することができる。例えば、上記2(4)および(5)でヒト型CDR移植抗体のVHおよびVLを構築する際に用いる合成DNAのうち、両端に位置する合成DNAの5’末端に適当な制限酵素の認識配列を導入することで、上記2(1)に記載のヒト化抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子の上流にそれらが適切な形で発現するようにクローニングすることができる。
(7)ヒト化抗体の一過性発現
作製した多種類のヒト化抗体の抗原結合活性を効率的に評価するために、上記2(3)および(6)に記載のヒト化抗体発現ベクター、あるいはそれらを改変した発現ベクターを用いてヒト化抗体の一過性発現を行うことができる。発現ベクターを導入する宿主細胞としては、ヒト化抗体を発現できる宿主細胞であれば、いかなる細胞でも用いることができるが、その発現量の高さから、COS−7細胞(ATCC CRL1651)が一般に用いられる(Methods in Nucleic Acids Research,CRC press,283,1991)。COS−7細胞への発現ベクターの導入法としては、DEAE−デキストラン法(Methods in Nucleic Acids Research,CRC press,283,1991)、リポフェクション法(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United Statesof America,84,7413−7417,1987)などがあげられる。発現ベクターの導入後、培養上清中のヒト化抗体の発現量及び抗原結合活性はELISA(Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Chapter 14,1988;Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press Limited,1996)などにより測定できる。
(8)ヒト化抗体の安定発現
上記2(3)および(6)に記載のヒト化抗体発現ベクターを適当な宿主細胞に導入することによりヒト化抗体を安定に発現する形質転換細胞を得ることができる。宿主細胞への発現ベクターの導入法としては、エレクトロポレーション法(Cytotechnology,3,133−140,1990)などがあげられる。ヒト化抗体発現ベクターを導入する宿主細胞としては、ヒト化抗体を発現させることができる宿主細胞であれば、いかなる細胞でも用いることができる。例えば、マウスSP2/0−Ag14細胞(ATCC CRL1581)、マウスP3X63−Ag8.653細胞(ATCC CRL1580)、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(以下、dhfrと表記する)が欠損したCHO細胞(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,77,4216−4220,1980)、ラットYB2/3HL.P2.G11.16Ag.20細胞(ATCC CRL1662、以下、YB2/0細胞と表記する)などがあげられる。
発現ベクターの導入後、ヒト化抗体を安定に発現する形質転換体は、特開平2−257891に開示されている方法に従い、G418 sulfate(以下、G418と表記する)などの薬剤を含む動物細胞培養用培地で培養することにより選択できる。動物細胞培養用培地としては、RPMI1640培地(日水製薬社製)、GIT培地(日本製薬社製)、EX−CELL302培地(JRH社製)、IMDM(GIBCO BRL社製)、Hybridoma−SFM(GIBCO BRL社製)、またはこれら培地にFBSなどの各種添加物を添加した培地などを用いることができる。得られた形質転換細胞を培地中で培養することで培養上清中にヒト化抗体を発現蓄積させることができる。培養上清中のヒト化抗体の発現量および抗原結合活性は、ELISAにより測定できる。また、形質転換細胞は、特開平2−257891に開示されている方法に従い、dhfr増幅系などを利用してヒト化抗体の発現量を上昇させることができる。
ヒト化抗体は、形質転換細胞の培養上清よりプロテインAカラムを用いて精製することができる(Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Chapter 8,1988;Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press Limited,1996)。また、その他に通常、蛋白質の精製で用いられる精製方法を使用することができる。例えば、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィーおよび限外濾過等を組み合わせて行い、精製することができる。精製したヒト化抗体のH鎖、L鎖あるいは抗体分子全体の分子量は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(以下、PAGEと表記する:Nature,227,680−685,1970)やウェスタンブロッティング法(Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Chapter 12,1988;Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press Limited,1996)などで測定することができる。
(9)ヒト化抗体の活性評価
ヒト化抗体の活性評価は、上記1(7)と同様にして行うことができる。
4.抗体断片の作製
抗体断片は、上記1および2に記載の抗hIGF抗体をもとに遺伝子工学的手法あるいは蛋白質化学的手法により、作製することができる。
遺伝子工学的手法としては、目的の抗体断片をコードする遺伝子を構築し、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、大腸菌などの適当な宿主を用いて発現、精製を行うなどの方法があげられる。
蛋白質化学的手法としては、ペプシン、パパインなどの蛋白質分解酵素を用いた部位特異的切断、精製などの方法があげられる。
抗体断片として、Fab、F(ab’)、Fab’、scFv、diabody、dsFv、CDRを含むペプチドの製造法について以下に具体的に説明する。
(1)Fabの作製
Fabは、蛋白質化学的にはIgGを蛋白質分解酵素パパインで処理することにより、作製することができる。パパインの処理後は、元の抗体がプロテインA結合性を有するIgGサブクラスであれば、プロテインAカラムに通すことで、IgG分子やFc断片と分離し、均一なFabとして回収することができる(Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,third edition,1995)。プロテインA結合性を持たないIgGサブクラスの抗体の場合は、イオン交換クロマトグラフィーにより、Fabは低塩濃度で溶出される画分中に回収することができる(Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,third edition,1995)。また、Fabは遺伝子工学的には、多くは大腸菌を用いて、また、昆虫細胞や動物細胞などを用いて作製することができる。例えば、上記2(2)、2(4)および2(5)に記載の抗体のV領域をコードするDNAを、Fab発現用ベクターにクローニングし、Fab発現ベクターを作製することができる。Fab発現用ベクターとしては、Fab用のDNAを組み込み発現できるものであればいかなるものも用いることができる。例えば、pIT106(Science,240,1041−1043,1988)などがあげられる。Fab発現ベクターを適当な大腸菌に導入し、封入体あるいはペリプラズムにFabを生成蓄積させることができる。封入体からは、通常蛋白質で用いられるリフォールディング法により、活性のあるFabとすることができ、また、ペリプラズムに発現させた場合は、培養上清中に活性を持ったFabが漏出する。リフォールディング後あるいは培養上清からは、抗原を結合させたカラムを用いることにより、均一なFabを精製することができる(Antibody Engineering,A Practical Guide,W.H.Freeman and Company,1992)。
(2)F(ab’)の作製
F(ab’)は、蛋白質化学的にはIgGを蛋白質分解酵素ペプシンで処理することにより、作製することができる。ペプシンの処理後は、Fabと同様の精製操作により、均一なF(ab’)として回収することができる(Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,third edition,Academic Press,1995)。また、下記3(3)に記載のFab’をo−PDMやビスマレイミドヘキサンなどのようなマレイミドで処理し、チオエーテル結合させる方法や、DTNB[5,5’−dithiobis(2−nitrobenzoic acid)]で処理し、S−S結合させる方法によっても作製することができる(Antibody Engineering,A Practical Approach,IRL PRESS,1996)。
(3)Fab’の作製
Fab’は、上記3(2)に記載のF(ab’)をジチオスレイトールなどの還元剤で処理して得ることができる。また、Fab’は遺伝子工学的には、多くは大腸菌、また、昆虫細胞や動物細胞などを用いて作製することができる。例えば、上記2(2)、2(4)および2(5)に記載の抗体のV領域をコードするDNAを、Fab’発現用ベクターにクローニングし、Fab’発現ベクターを作製することができる。Fab’発現用ベクターとしては、Fab’用のDNAを組み込み発現できるものであればいかなるものも用いることができる。例えば、pAK19(BIO/TECHNOLOGY,10,163−167,1992)などがあげられる。Fab’発現ベクターを適当な大腸菌に導入し、封入体あるいはペリプラズムにFab’を生成蓄積させることができる。封入体からは、通常蛋白質で用いられるリフォールディング法により、活性のあるFab’とすることができ、また、ペリプラズムに発現させた場合は、リゾチームによる部分消化、浸透圧ショック、ソニケーションなどの処理により菌を破砕し、菌体外へ回収させることができる。リフォールディング後あるいは菌の破砕液からは、プロテインGカラムなどを用いることにより、均一なFab’を精製することができる(Antibody Engineering,A Practical Approach,IRL PRESS,1996)。
(4)scFvの作製
scFvは遺伝子工学的には、ファージまたは大腸菌、また、昆虫細胞や動物細胞などを用いて作製することができる。例えば、上記2(2)、2(4)および2(5)に記載の抗体のV領域をコードするDNAを、scFv発現用ベクターにクローニングし、scFv発現ベクターを作製することができる。scFv発現用ベクターとしては、scFvのDNAを組み込み発現できるものであればいかなるものも用いることができる。例えば、pCANTAB5E(Pharmacia社製)、pHFA(Human Antibodies &Hybridomas,5,48−56,1994)などがあげられる。scFv発現ベクターを適当な大腸菌に導入し、ヘルパーファージを感染させることで、ファージ表面にscFvがファージ表面蛋白質と融合した形で発現するファージを得ることができる。また、scFv発現ベクターを導入した大腸菌の封入体あるいはペリプラズムにscFvを生成蓄積させることができる。封入体からは、通常蛋白質で用いられるリフォールディング法により、活性のあるscFvとすることができ、また、ペリプラズムに発現させた場合は、リゾチームによる部分消化、浸透圧ショック、ソニケーションなどの処理により菌を破砕し、菌体外へ回収することができる。リフォールディング後あるいは菌の破砕液からは、陽イオン交換クロマトグラフィーなどを用いることにより、均一なscFvを精製することができる(Antibody Engineering,A Practical Approach,IRL PRESS,1996)。
(5)diabodyの作製
diabodyは遺伝子工学的には、多くは大腸菌、また、昆虫細胞や動物細胞などを用いて作製することができる。例えば、上記2(2)、2(4)および2(5)に記載の抗体のVHとVLをリンカーがコードするアミノ酸残基が8残基以下となるように連結したDNAを作製し、diabody発現用ベクターにクローニングし、diabody発現ベクターを作製することができる。diabody発現用ベクターとしては、diabodyのDNAを組み込み発現できるものであればいかなるものも用いることができる。例えば、pCANTAB5E(Pharmacia社製)、pHFA(Human Antibodies Hybridomas,5,48,1994)などがあげられる。diabody発現ベクターを導入した大腸菌の封入体あるいはペリプラズムにdiabodyを生成蓄積させることができる。封入体からは、通常蛋白質で用いられるリフォールディング法により、活性のあるdiabodyとすることができ、また、ペリプラズムに発現させた場合は、リゾチームによる部分消化、浸透圧ショック、ソニケーションなどの処理により菌を破砕し、菌体外へ回収することができる。リフォールディング後あるいは菌の破砕液からは、陽イオン交換クロマトグラフィーなどを用いることにより、均一なscFvを精製することができる(Antibody Engineering,A Practical Approach,IRL PRESS,1996)。
(6)dsFvの作製
dsFvは遺伝子工学的には、多くは大腸菌、また、昆虫細胞や動物細胞などを用いて作製することができる。まず、上記2(2)、2(4)および2(5)に記載の抗体のVHおよびVLをコードするDNAの適当な位置に変異を導入し、コードするアミノ酸残基がシステインに置換されたDNAを作製する。作製した各DNAをdsFv発現用ベクターにクローニングし、VHおよびVLの発現ベクターを作製することができる。dsFv発現用ベクターとしては、dsFv用のDNAを組み込み発現できるものであればいかなるものも用いることができる。例えば、pULI9(Protein Engineering,7,697−704,1994)などがあげられる。VHおよびVLの発現ベクターを適当な大腸菌に導入し、封入体あるいはペリプラズムにdsFvを生成蓄積させることができる。封入体あるいはペリプラズムからVHおよびVLを得、混合し、通常蛋白質で用いられるリフォールディング法により、活性のあるdsFvとすることができる。リフォールディング後は、イオン交換クロマトグラフィーおよびゲル濾過などにより、さらに精製することができる(Protein Engineering,7,697−704,1994)。
(7)CDRペプチドの作製
CDRを含むペプチドは、Fmoc法あるいはtBoc法等の化学合成法によって作製することができる。また、CDRを含むペプチドをコードするDNAを作製し、作製したDNAを適当な発現用ベクターにクローニングし、CDRペプチド発現ベクターを作製することができる。発現用ベクターとしては、CDRペプチドをコードするDNAを組み込み発現できるものであればいかなるものも用いることができる。例えば、pLEX(Invitrogen社製)、pAX4a+(Invitrogen社製)などがあげられる。発現ベクターを適当な大腸菌に導入し、封入体あるいはペリプラズムにを生成蓄積させることができる。封入体あるいはペリプラズムからCDRペプチドを得、イオン交換クロマトグラフィーおよびゲル濾過などにより、精製することができる(Protein Engineering,7,697−704,1994)。
(8)抗体断片の活性評価
精製した抗体断片の活性評価は、上記1(7)と同様にして行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を何ら限定するものでない。
(実施例1) 放射線と抗IGF−1モノクローナル抗体との併用効果の検討
類表皮癌細胞株A431細胞(ATCC CRL−1555)を10cmディッシュで培養し、70%コンフルエントになった状態で、後記参考例1で作製されたハイブリドーマFERM BP−7978により生産されたIGF−IおよびIGF−IIに結合し、IGF−IおよびIGF−IIの活性を阻害するモノクローナル抗体(以下、抗IGFモノクローナル抗体と称す)KM1468を最終濃度100ng/mLになるようにディッシュに添加したのち、4GyのX線を照射した。その際にあらかじめX線照射しないディッシュもX線非照射の細胞として残した。X線照射30分後に、A431細胞をトリプシン処理によりディッシュからはがし、A431細胞を回収した。さらに10000個/ディッシュの細胞密度で、培養開始時に最終濃度100ng/mLになるように抗IGFモノクローナル抗体KM1468を添加し10日間培養した。培養後、形成されるコロニー数を測定した。コロニー数の相対値を下記表1に示す。

X線非照射に比べ、X線照射単独ではコロニー数は約50%に低下した。抗IGFモノクローナル抗体KM1468を添加することで、コロニー数は20%以下に減少した。以上のことから、放射線と抗IGF−1モノクローナル抗体との併用は、癌治療に有用であることが確認された。
(実施例2) 低分子薬剤と抗IGF−1モノクローナル抗体との併用効果の検討
96ウェル培養用プレートに、段階的に希釈した薬剤と段階的に希釈した抗IGFモノクローナル抗体KM1468とを50μL/ウェルずつ加えた。さらに、多発性骨髄腫細胞株LP−1細胞(DSMZ ACC41)を100μL/ウェル(10000個)ずつ加えて37℃で3日間培養した。培養後、細胞増殖試薬WST−1(Roche社製)を20μL/ウェルずつ加えて37℃で2〜3時間培養し、マイクロプレートリーダーM−SPmax250(Molecular Devices社製)でOD450を測定した。薬剤の増殖阻害濃度は、細胞のみを添加したときのOD450を100%としたときの相対値で表した。薬剤のみあるいは抗体のみを添加したときの5〜70%増殖阻害濃度(IC〜IC70)、および薬剤と抗体とを併用したときのIC50、IC70をそれぞれ算出し、併用効果についてアイソボログラム法(International Journal of Radiation Oncology,Biology,Physics,5,85−91,1979)を用いて解析した。併用した薬剤としては、メルファラン、ニムスチン、ドキソルビシン、ミトキサントロン、ビノレルビン、エトポシド、パクリタキセル、デキサメタゾン、5−フルオロウラシル、メトトレキセート、ゲムシタビン、シスプラチン、サリドマイド、7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシン(イリノテカンの活性体;以下、SN−38と略記する;Cancer Research,50,1715−1721,1990)、ラパマイシン、ラディシコール、17−アリルアミノ−17−デメトキシゲルダナマイシン(以下、17AAGと略記する;Cancer Chemotherapy & Pharmacology,42,273−279,1998)、UCN−01(Journal of Antibiotics,40,1782−1784,1987)、PD173074(EMBO Journal,17,5896−5904,1998)、ZD6474(Cancer Research,62,4645−4655,2002)、N−(3−amino−propyl)−N−[1−(3−benzyl−7−chloro−4−oxo−3,4−dihydro−quinazolin−2−yl)−2−methyl−propyl]−4−methyl−benzamide(GlaxoSmithKline社、WO01/98278、WO03/070701)、NQuinolin−3−yl−N−(3,4,5−trimethoxyphenyl)pyrimidine−2,4−diamine(Amgen社、WO03/018021)をそれぞれ用いた。
低分子の薬剤と抗IGFモノクローナル抗体との併用は、いずれも癌治療に有用であることが確認された。
(実施例3)低分子薬剤と抗IGF−1モノクローナル抗体との併用における投与方法の検討 96ウェル培養用プレートに、多発性骨髄腫細胞株LP−1細胞(DSMZ ACC41)を100μL/ウェル(10000個)播種し、ドキソルビシンと抗IGFモノクローナル抗体KM1468とを添加して、37℃で3日間培養した。ドキソルビシンとKM1468との培地への添加は、以下の3つの方法で行った。
方法1:1日目にドキソルビシンのみを添加した培地150μLで細胞を培養し、2日目と3日目にドキソルビシンとKM1468とを添加した培地200μLで細胞を培養した。
方法2:1日目にKM1468のみを添加した培地150μLで細胞を培養し、2日目と3日目にドキソルビシンとKM1468とを添加した培地200μLで培養した。
方法3:ドキソルビシンとKM1468とを含む培地(1日目の培地量は150μL、2日目と3日目は各200μL)で3日間、細胞を培養した。
上述のいずれの方法において、ドキソルビシンとKM1468の最終濃度が1μmol/Lおよび1μg/mLとなるように添加した。
培養後、細胞増殖試薬WST−1(Roche社製)を20μL/ウェルずつ加えて37℃で2〜3時間培養し、マイクロプレートリーダーM−SPmax250(Molecular Devices社製)でOD450を測定した。薬剤処理後の生存細胞数は、細胞のみを添加したときのOD450を100%としたときの相対値でそれぞれ表した。結果を下記表2に示す。


いずれ投与方法の場合においても、単独より併用したときのほうが細胞の増殖が強く阻害された。以上より、低分子の薬剤と抗IGFモノクローナル抗体とのいずれの投与方法においても、癌治療に有用であることが確認された。
(参考例1) 抗hIGFモノクローナル抗体の作製
(1)動物の免疫と抗体産生細胞の調製
組換え型hIGF−I(R&D社製)は、免疫原性を高める目的で以下の方法でメチル化BSA(SIGMA社製)とのコンジュゲートを作製し、免疫原とした。すなわち、2回蒸留水に溶解したメチル化BSAを、メチル化BSA:hIGF−I=1:4(重量比)になるように4℃で混合し、10秒間ボルテックスミキサーで攪拌した。その後、連結針付きシリンジを用いて完全フロインドアジュバントあるいは不完全フロインドアジュバントと容量比1:1で混合し、免疫原(以下、メチル化BSA−hIGF−Iと表記する)とした。
5週令雌SDラットに、完全フロインドアジュバントを用いて上記のように調製したメチル化BSA−hIGF−I(hIGF−Iの100μg相当量)を投与し、2週間後より不完全フロインドアジュバントを用いて同様に調製した免疫原を1週間に1回、計4回投与した。
眼底静脈叢より採血し、その血清中の抗体価を参考例1(4)に示す結合ELISAで調べ、十分な抗体価を示したラットから最終免疫3日後に脾臓を摘出した。
脾臓をMEM培地(日水製薬社製)中で細断し、ピンセットでほぐし、遠心分離(1200rpm、5分間)した後、上清を捨て、トリス−塩化アンモニウム緩衝液(pH7.65)で1〜2分間処理し、赤血球を除去し、MEMで3回洗浄し、細胞融合に用いた。
(2)マウス骨髄腫細胞の調製
8−アザグアニン耐性マウス骨髄腫細胞株P3−U1を通常培地で培養し、細胞融合時に2×10以上の細胞を確保し、細胞融合に親株として供した。
(3)ハイブリドーマの作製
参考例1(1)で得られたラット脾細胞と(2)で得られた骨髄腫細胞とを10:1になるよう混合し、遠心分離(1200rpm、5分間)した後、上清を捨て、沈澱した細胞に37℃で攪拌しながら、10個のラット脾細胞あたり0.2〜1.0mLの融合培地(2gのPEG−1000、2mLのMEM、0.7mLのジメチルスルホキシドの混液)を加え、1〜2分間毎に1〜2mLのMEMを数回加えた後、さらに、MEMを加えて全量が50mLになるようにした。遠心分離(900rpm、5分間)した後、上清を捨て、緩やかに細胞をほぐした後、100mLのHAT培地に懸濁した。
この懸濁液を96ウェル培養用プレートに100μL/ウェルずつ分注し、5%COインキュベーター中、37℃で10〜14日間培養した。この培養上清を参考例1(4)に示す結合ELISAを用いて、メチル化BSA−hIGF−Iに反応して、陰性対照であるメチル化BSA−BSA[BSAを用いて上記参考例1(1)と同様の反応を行い作製したコンジュゲート]に反応しないウェルを選び、さらにHT培地と通常培地に換え、2回の単一細胞化を行い、抗hIGF−Iモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを確立した。
その結果、図1に示した反応性を有するKM1468、KM1469、KM1470、KM1471、KM1472およびKM1473の6クローンのハイブリドーマを取得した。各ハイブリドーマが産生する抗体のサブクラスを、サブクラスタイピングキットを用いたELISAにより検討した結果、いずれもIgG2bであった。
(4)モノクローナル抗体の選択(結合ELISA)
ELISAプレートに固定化する抗原としては、参考例1(1)で作製したメチル化BSA−hIGF−Iおよび陰性対照としてメチル化BSA−BSAを用いた。96ウェルELISAプレート(Greiner社製)に、上述の抗原をhIGF−IあるいはBSAの濃度として10μg/mLで50μL/ウェルで分注し、4℃で一晩放置して吸着させた。PBSで洗浄後、1%BSAを含むPBS(以下、BSA−PBSと表記する)を100μL/ウェルで加え、室温で1時間反応させて残存する活性基をブロックした。BSA−PBSを捨て、被免疫ラット抗血清、抗hIGF−Iモノクローナル抗体産生ハイブリドーマの培養上清あるいは精製した抗hIGF−Iモノクローナル抗体を50μL/ウェルで分注し、室温で2時間反応させた。反応後、各ウェルを0.05%Tween20を含むPBS(以下、Tween−PBSと表記する)で洗浄後、4000倍に希釈したペルオキシダーゼ標識ウサギ抗ラットIg抗体(DAKO社製)を二次抗体として50μL/ウェルで加えて室温で1時間反応させた。反応後、Tween−PBSで洗浄後、ABTS基質液[2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)アンモニウムの0.55gを1Lの0.1Mクエン酸緩衝液(pH4.2)に溶解し、使用直前に過酸化水素水を1μL/mLで添加した溶液]を50μL/ウェルで加えて発色させ、415nmの吸光度(以下、OD415と表記する)をプレートリーダーEmax(Molecular Devices社製)を用いて測定した。
(5)モノクローナル抗体の精製
プリスタン処理した8週令Balb/cヌード雌マウスに参考例1(3)で得られたハイブリドーマクローンを5〜20×10細胞/匹でそれぞれ腹腔内注射した。10〜21日後に、ハイブリドーマが腹水癌化したマウスから、腹水を採取(1〜8mL/匹)し、遠心分離(3000rpm、5分間)して固形分を除去した。その後、カプリル酸沈殿法(Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988)によりIgG画分を精製し、精製モノクローナル抗体とした。
(参考例2)抗hIGFモノクローナル抗体の反応性の検討
(1)hIGF−Iの天然の立体構造に対する反応性
参考例1(3)で選択された抗hIGFモノクローナル抗体の液相系における天然の立体構造を保つhIGF−Iに対する反応性を、下記に示す競合ELISAで調べた。
参考例1(4)に示した、参考例1(1)で作製したメチル化BSA−hIGF−Iを固定化したプレートを準備し、20μg/mLより5倍希釈で段階的に希釈したhIGF−Iを50μL/ウェルで分注後、抗hIGFモノクローナル抗体の精製抗体を希釈した溶液(KM1468:6.0μg/mL、KM1470:1.0μg/mL、KM1471:0.16μg/mL、KM1472:7.0μg/mL、KM1473:1.2μg/mL)を50μL/ウェルで分注し、混合して室温で2時間反応させた。反応後、Tween−PBSで洗浄後、4000倍に希釈したペルオキシダーゼ標識ウサギ抗ラットIg抗体(DAKO社製)を50μL/ウェルで加えて室温で1時間反応させた。反応後、Tween−PBSで洗浄後、ABTS基質液[2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)アンモニウムの0.55gを1Lの0.1Mクエン酸緩衝液(pH4.2)に溶解し、使用直前に過酸化水素水を1μL/mLで添加した溶液]を50μL/ウェルで加えて発色させ、OD415をプレートリーダーEmax(Molecular Devices社製)を用いて測定した。
図2に示したように、本発明の6種の抗hIGFモノクローナル抗体はいずれもhIGF−Iの天然の立体構造に反応性を示した。また、本系において、最も高い感度を示したKM1468を用いた場合、液相系に含まれる16ng/mLまでの濃度の天然の立体構造を有するhIGF−Iを検出可能であった。
(2)抗hIGFモノクローナル抗体のhIGFファミリーに対する反応性
精製した抗hIGFモノクローナル抗体KM1468(以下、抗体KM1468と記す)のhIGFに対する反応性を検討した。図3に、参考例1(4)に示した結合ELISAにより、抗体KM1468および市販の抗hIGF−I抗体であるsm1.2(Upstate biotechnology社製)のhIGF−Iとの反応性を検討した結果を示した(抗体濃度は、30μg/mLから3倍希釈で段階的に希釈)。ただし、sm1.2の場合は、二次抗体として2000倍に希釈したペルオキシダーゼ標識ウサギ抗マウスIg抗体(DAKO社製)を用いた。図3に示したように、いずれの抗体も抗体濃度依存的なhIGF−I結合活性を示したが、その活性の強さは、抗体KM1468の方が高かった。
次に、各抗体のhIGF−Iに対する結合におけるhIGF−I(Pepro Tech EC社製)、hIGF−II(Pepro Tech EC社製)、ヒトインスリン(和光純薬社製)およびmIGF−I(Pepro Tech EC社製)による阻害活性を以下に示した競合ELISAで検討した。
参考例1(4)に示したように抗原を固定化したプレートを準備し、4.0μg/mLに希釈した各種抗体を50μL/ウェルで分注後、20μg/mLより3倍希釈で段階的に希釈したhIGF−IあるいはhIGF−II、または、10μg/mLより5倍希釈で段階的に希釈したヒトインスリンあるいはmIGF−Iを50μL/ウェルで分注し、混合して室温で1時間反応させた。反応後、Tween−PBSで洗浄し、KM1468の場合は、4000倍に希釈したペルオキシダーゼ標識ウサギ抗ラットIg抗体(DAKO社製)、sm1.2の場合は、2000倍に希釈したペルオキシダーゼ標識ウサギ抗マウスIg抗体(DAKO社製)を50μL/ウェルで加えて室温で1時間反応させた。反応後、Tween−PBSで洗浄し、ABTS基質液[2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)アンモニウムの0.55gを1Lの0.1Mクエン酸緩衝液(pH4.2)に溶解し、使用直前に過酸化水素水を1μL/mLで添加した溶液]を50μL/ウェルで加えて発色させ、OD415をプレートリーダーEmax(Molecular Devices社製)を用いて測定した。結果は、抗体のみを添加した時のOD415を100として相対値(%)で表示した。結果を図4に示した。図4に示したように、抗体KM1468のhIGF−Iに対する結合は、hIGF−I(図4A)およびhIGF−II(図4B)で強く阻害され、hIGF−Iによる結合の50%阻害の濃度(inhibition concentration50;以下、IC50と表記する)は約0.3μg/mL(約39nM)、hIGF−IIによるIC50は約0.4μg/mL(約58nM)と同程度の値を示した。一方、ヒトインスリンおよびmIGF−Iでは阻害は認められなかった。以上の結果から、抗体KM1468は、hIGF−IとhIGF−IIの両方に特異的、かつ同程度の強さで反応することが明らかとなった。市販の抗IGF−I抗体であるsm1.2のhIGF−Iに対する結合は、hIGF−I(図4A)により強く阻害され、hIGF−II(図4B)による阻害活性は弱かった。sm1.2のhIGF−IによるIC50は約1.2μg/mL(約156nM)であったのに対し、hIGF−IIによるIC50は>10μg/mL(>1.45μM)であった。一方、ヒトインスリンおよびmIGF−Iでは阻害は認められなかった。
(3)抗hIGFモノクローナル抗体のhIGF依存性細胞増殖に対する影響
精製した抗体KM1468のhIGF依存性細胞増殖に対する影響を検討した。抗体としては、KM1468、市販の抗hIGF−I抗体であるsm1.2(Upstate biotechnology社製)および市販の抗hIGF−II抗体であるS1F2(Upstate biotechnology社製)を用いた。
ヒト乳癌細胞株MCF7(ATCC HTB−22)、ヒト大腸癌細胞株HT−29(ATCC HTB−38)あるいはヒト骨肉腫細胞株MG−63(ATCC CRL−1427)をTF/BSA培地[D−MEM/F−12(Gibco BRL社製)に10μg/mLのヒトトランスフェリン(Gibco BRL社製)、200μg/mLのBSAを添加した培地]で0.5〜1×10細胞/mLに調製し、96ウェル培養用プレートに100μL/ウェルで分注した。さらに、TF/BSA培地で各種濃度に希釈したhIGF−I、hIGF−IIあるいはヒトインスリンの各因子を50μL/ウェルで、TF/BSA培地で各種濃度に希釈した各抗体を50μL/ウェルで添加し、37℃、5%COインキュベーター内で5日間培養した。培養後、細胞増殖試薬WST−1(Roche社製)を20μL/ウェルで分注し、さらに、37℃、5%COインキュベーター内で2.5〜4時間培養した後に、OD450nmの吸光度(以下、OD450と表記する)をプレートリーダーEmax(Molecular Devices社製)を用いて測定した。
図5Aには、ヒト乳癌細胞株MCF7の各因子による増殖曲線を示した。さらに、図5Bには、40ng/mLのhIGF−I存在下、図5Cには、100ng/mLのhIGF−IIの存在下、図5Dには、100ng/mLのヒトインスリン存在下での、各抗体添加時の増殖を示した。図5に示したように、KM1468は、hIGF−IおよびhIGF−IIによる細胞増殖を同程度に強く阻害し、その活性は、市販の抗hIGF−I抗体であるsm1.2および市販の抗hIGF−II抗体であるS1F2よりも高かった。一方、ヒトインスリンによる増殖に対しては、いずれの抗体も影響を与えなかった。以上の結果は、参考例2(2)の競合ELISAで認められた各抗体の結合特異性と良く相関しており、また、各抗体の結合により、hIGF−IおよびhIGF−IIの活性が阻害されることを明確に示したものである。
図6Aには、ヒト大腸癌細胞株HT−29の各因子による増殖曲線を示した。さらに、図6Bには、10ng/mLのhIGF−I存在下、図6Cには、10ng/mLのhIGF−IIの存在下、図6Dには、20ng/mLのヒトインスリン存在下での、各抗体添加時の増殖を示した。
図6に示したように、KM1468は、hIGF−IおよびhIGF−IIによる細胞増殖を同程度に強く阻害し、その活性は、市販の抗hIGF−I抗体であるsm1.2および市販の抗hIGF−II抗体であるS1F2よりも高かった。一方、ヒトインスリンによる増殖に対しては、いずれの抗体も影響を与えなかった。以上の結果は、参考例2(2)の競合ELISAで認められた結合特異性と良く相関しており、また、各抗体の結合により、hIGF−IおよびhIGF−IIの活性が阻害されることを明確に示したものである。さらに、図6BのKM1468、図6CのKM1468およびS1F2を反応させた場合には、hIGF−IおよびhIGF−IIを添加しない場合よりも細胞増殖が抑制された。このことから、HT−29細胞は、自らhIGF−IおよびhIGF−IIを産生して増殖しており、その増殖効果も抗体の添加によって阻害できることが明らかとなった。
図7Aには、ヒト骨肉腫細胞株MG−63の各因子による増殖曲線を示した。さらに、図7Bには、20ng/mLのhIGF−I存在下、図7Cには、20ng/mLのhIGF−IIの存在下、図7Dには、20ng/mLのヒトインスリン存在下での、各抗体添加時の増殖を示した。図7に示したように、KM1468は、hIGF−IおよびhIGF−IIによる細胞増殖を同程度に強く阻害し、その活性は、市販の抗hIGF−I抗体であるsm1.2および市販の抗hIGF−II抗体であるS1F2よりも高かった。一方、ヒトインスリンによる増殖に対しては、いずれの抗体も影響を与えなかった。以上の結果は、参考例2(2)の競合ELISAで認められた結合特異性と良く相関しており、また、各抗体の結合により、各因子の機能が阻害されることを明確に示したものである。
(参考例3)抗hIGFモノクローナル抗体の抗原認識部位の解析
(1)hIGF−Iの部分ペプチドの合成
WO01/64754に記載の方法に従って、hIGF−Iの部分ペプチドを合成した。合成したペプチドは、hIGF−Iの1−18番目(配列番号1;以下、p1−18と表記する)、14−30番目(配列番号2;以下、p14−30と表記する)、24−35番目(配列番号3;以下、p24−35と表記する)、29−41番目(配列番号4;以下、p29−41と表記する)、36−47番目(配列番号5;以下、p36−47と表記する)、41−56番目(配列番号6;以下、p41−56と表記する)、52−70番目(配列番号7;以下、p52−70と表記する)、53−61番目(配列番号8;以下、p53−61と表記する)、61−70番目(配列番号9;以下、p61−70と表記する)に相当するペプチドであり、hIGF−Iの全長を網羅するように設計した。上記ペプチドにおいては、内部に存在するCysについては、SerあるいはAlaに置換した配列を合成した。また、41−56番目に相当する配列については、内部のCysを有する配列(配列番号10;以下、p41−56Cと表記する)も合成した。
(2)抗hIGFモノクローナル抗体の抗原認識部位の解析
上記(1)で合成した各種ペプチドを用いて、抗hIGFラット抗体KM1468の抗原認識部位の解析を以下に示す競合ELISAで検討した。
参考例1(4)に示したように抗原を固定化したプレートを準備し、4.0μg/mLに希釈した各種抗体を50μL/ウェルで分注後、50μg/mLより3倍希釈で段階的に希釈した各種ペプチド溶液の単独あるいは種々の組合せ、あるいはhIGF−Iを50μL/ウェルで分注し、混合して室温で1時間反応させた。反応後、Tween−PBSで洗浄後、4000倍に希釈したペルオキシダーゼ標識ウサギ抗ラットIg抗体(DAKO社製)を50μL/ウェルで加えて室温で1時間反応させた。反応後、Tween−PBSで洗浄後、ABTS基質液[2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)アンモニウムの0.55gを1Lの0.1Mクエン酸緩衝液(pH4.2)に溶解し、使用直前に過酸化水素水を1μL/mLで添加した溶液]を50μL/ウェルで加えて発色させ、OD415をプレートリーダーEmax(Molecular Devices社製)を用いて測定した。結果は、抗体のみを添加した時のOD415を100とした相対値(%)で表示した。結果を図8に示した。図8に示したように、KM1468のhIGF−Iに対する結合は、hIGF−Iにより濃度依存的に阻害されたが、各種ペプチドでは、単独あるいは組合せに拘わらず、阻害活性は認められなかった。以上の結果は、KM1468が、hIGF−Iの単なるアミノ酸一次配列ではなく、hIGF−Iの立体構造を認識していることを強く示唆する結果である。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書に組み入れるものとする。
【産業上の利用可能性】
本発明の癌治療用医薬は、インスリン様成長因子−I(IGF−I)およびインスリン様成長因子−II(IGF−II)の活性を阻害する物質と、放射線照射又は抗腫瘍活性を有する物質と組み合わせることにより、それぞれを単独で投与する場合に比べて癌治療効果を増強させることができる。このような併用治療によれば、単独で投与する場合に比べて薬物の投与量を軽減できること、患者の症状(癌の種類、癌の重篤度)に応じて併用物質を選択することができること、作用機序の異なる併用物質を選択することにより治療期間の持続が図れること、などの有利な効果が得られる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
インスリン様成長因子−I(IGF−I)およびインスリン様成長因子−II(IGF−II)の活性を阻害する物質を含み、放射線照射と併用して投与するための癌治療用医薬。
【請求項2】
放射線照射が、癌治療用医薬の投与時または投与前後に、単回または複数回行われる、請求項1に記載の癌治療用医薬。
【請求項3】
インスリン様成長因子−I(IGF−I)およびインスリン様成長因子−II(IGF−II)の活性を阻害する物質と抗腫瘍活性を有する物質とを組み合わせてなる癌治療用医薬。
【請求項4】
インスリン様成長因子−I(IGF−I)およびインスリン様成長因子−II(IGF−II)の活性を阻害する物質と抗腫瘍活性を有する物質とを、同時に又は逐次的に投与するための請求項3に記載の癌治療用医薬。
【請求項5】
インスリン様成長因子−I(IGF−I)およびインスリン様成長因子−II(IGF−II)の活性を阻害する物質が、以下の(a)〜(d)からなる群より選ばれる、請求項1から4のいずれか1項に記載の癌治療用医薬。
(a)IGF−IおよびIGF−IIに特異的に結合し、IGF−IおよびIGF−IIの活性を阻害する抗体または抗体断片
(b)IGF−Iに特異的に結合し、IGF−Iの活性を阻害する抗体または抗体断片、およびIGF−IIに特異的に結合し、IGF−IIの活性を阻害する抗体または抗体断片を含む組成物
(c)IGF−Iに特異的に結合し、IGF−Iの活性を阻害する抗体または抗体断片、およびIGF−IIに特異的に結合し、IGF−IIの活性を阻害する抗体または抗体断片を組み合わせてなる組成物
(d)IGF−Iに特異的に結合し、IGF−Iの活性を阻害する抗体または抗体断片、およびIGF−IIに特異的に結合し、IGF−IIの活性を阻害する抗体または抗体断片の複合体
【請求項6】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項5に記載の癌治療用医薬。
【請求項7】
モノクローナル抗体が、ハイブリドーマKM1468(FERM BP−7978)より生産されるモノクローナル抗体が結合するエピトープに結合するモノクローナル抗体である、請求項6に記載の癌治療用医薬。
【請求項8】
抗体断片が、Fab、Fab’、F(ab’)、一本鎖抗体(scFv)、二量体化可変領域(Diabody)、ジスルフィド安定化可変領域(dsFv)およびCDRを含むペプチドからなる群から選ばれる抗体断片である、請求項5〜7のいずれか1項に記載の癌治療用医薬。
【請求項9】
抗腫瘍活性を有する物質が、蛋白質または低分子の薬剤である請求項1〜8に記載の医薬。
【請求項10】
蛋白質が、抗体またはサイトカインである、請求項9に記載の医薬。
【請求項11】
低分子の薬剤が、DNAアルキル化剤、DNA合成阻害剤、白金製剤型DNA架橋剤、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼI阻害剤、トポイソメラーゼII阻害剤、チューブリン作用薬、ホルモン拮抗薬、アロマターゼ阻害剤、免疫調節剤、免疫抑制剤、ステロイド型抗炎症剤、非ステロイド型抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、分化誘導剤、プロテオソーム阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、アデノシンデアミナーゼ阻害剤、血管新生阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、ビスホスホネート製剤、Hsp90阻害剤、キネシンEg5阻害剤、セリンスレオニンキナーゼ阻害剤ならびにこれらの化合物の誘導体からなる群から選ばれる薬剤である、請求項9記載の医薬。
【請求項12】
哺乳動物に対し、インスリン様成長因子−I(IGF−I)およびインスリン様成長因子−II(IGF−II)の活性を阻害する物質の有効量を、放射線照射と併用して投与することを特徴とする、癌の治療方法。
【請求項13】
放射線照射が、癌治療用医薬の投与時または投与前後に、単回または複数回行われる、請求項12に記載の癌の治療方法。
【請求項14】
哺乳動物に対し、インスリン様成長因子−I(IGF−I)およびインスリン様成長因子−II(IGF−II)の活性を阻害する物質の有効量と、抗腫瘍活性を有する物質の有効量とを組み合わせて投与することを特徴とする、癌の治療方法。
【請求項15】
インスリン様成長因子−I(IGF−I)およびインスリン様成長因子−II(IGF−II)の活性を阻害する物質の有効量と、抗腫瘍活性を有する物質の有効量とを、同時に又は逐次的に投与することを特徴とする、請求項14に記載の癌の治療方法。

【国際公開番号】WO2005/027970
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【発行日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514151(P2005−514151)
【国際出願番号】PCT/JP2004/014452
【国際出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000001029)協和醗酵工業株式会社 (276)
【出願人】(590001452)国立がんセンター総長 (80)
【Fターム(参考)】