説明

癌治療組成物及び方法

本発明はC14orf78、MYBL2、UBE2SおよびUBE2Tから成る群から選択されるCX遺伝子に対する二本鎖核酸分子を投与することによる癌の治療方法を特徴とする。本発明はまた、上記方法において有効な分子またはベクターを含む組成物だけでなく、二本鎖核酸分子およびそれをコードするベクターを含む産物を特徴とする。本発明の方法は、肺癌、乳癌、膀胱癌、食道癌、前立腺癌、胆管細胞癌および精巣精上皮腫を含む癌の治療に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2007年6月27日に提出された米国特許仮出願第60/937,616号の恩典を主張し、その内容は全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
技術分野
本発明は、生物科学の分野、より具体的には癌研究の分野に関する。特に、本発明はC14orf78、MYBL2、UBE2SおよびUBE2T遺伝子の群から選択されたCX遺伝子発現を阻害する二本鎖核酸分子、ならびにそれらを含む組成物に関する。本発明はさらに上記分子または組成物を用いた癌治療方法に関する。
【背景技術】
【0003】
膵臓癌 (膵管腺癌)
膵管腺癌(PDAC)は、西欧世界において癌死の第4の主要な原因であり、5年生存率がわずか4%である、一般的な悪性腫瘍の中で最悪の死亡率の1つを示す(DiMagno EP et al., Gastroenterology 1999 Dec, 117(6): 1464-84; Zervos EE et al., Cancer Control 2004 Jan-Feb, 11(1): 23-31; Jemal A et al., CA Cancer J Clin 2003 Jan-Feb, 53(1): 5-26)。米国だけでおおよそ30,700人の患者が膵臓癌と診断され、約30,000人が本疾患で死亡するであろうと推定されている(Jemal A et al., CA Cancer J Clin 2003 Jan-Feb, 53(1): 5-26)。PDAC患者の大多数が進行期で診断されるため、利用できる治療法はいずれも有効ではない。外科的切除は現時点で唯一、治癒の可能性のある治療方法であるが、術後のPDAC患者の80%から90%は再発し、そしてこの疾患で死亡する(DiMagno EP et al., Gastroenterology 1999 Dec, 117(6): 1464-84; Zervos EE et al., Cancer Control 2004 Jan-Feb, 11(1): 23-31)。手術、および放射線を併用するまたはしない5-フルオロウラシル(5-FU)またはゲムシタビンを含む化学療法におけるいくつかの手法は、患者の生活の質を改善することができる(DiMagno EP et al., Gastroenterology 1999 Dec, 117(6): 1464-84; Zervos EE et al., Cancer Control 2004 Jan-Feb, 11(1): 23-31)。しかし、PDACが極めて進行性が強く、化学療法抵抗性であるため、これらの治療方法は長期生存に限られた効果を示すのみである。このほぼ絶望的な状況を克服するため、分子標的を同定することによるPDACの新規分子治療方法の開発は緊急に優先すべき事項である。
【0004】
肺癌
肺癌は世界的にみて癌による死亡の主要な原因であり、非小細胞肺癌(NSCLC)はそのような症例のほぼ80%を占める(Greenlee RT et al., CA Cancer J Clin 2001 Jan-Feb, 51(1): 15-36)。肺癌の発症および進行に関連した多くの遺伝子的変化が報告されているが、正確な分子機序は依然として不明である(Sozzi G, Eur J Cancer 2001 Oct, 37 Suppl 7: S63-73)。この10年の間に、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビンおよびビノレルビンのような、新たに開発された化学療法薬は、進行性肺癌患者の治療に複数の選択肢を提供し始めたが、これらの治療方法はそれぞれ、シスプラチンに基づく治療方法と比較して、わずかな延命効果を与えるに過ぎない(Kelly K et al., J Clin Oncol 2001 Jul 1, 19(13): 3210-8; Schiller JH et al., N Engl J Med 2002 Jan 10, 346(2): 92-8)。したがって、例えば分子を標的とした薬物や抗体及び癌ワクチンなどの新しい治療戦略が懸命に探索されている。
【0005】
他の肺癌の型と比較して、小細胞肺癌(SCLC)は診断時には広範囲にわたって汎発している傾向が高くかつ進行性が強く、急成長、高浸潤および転移によって臨床的に特徴付けられる(Ihde DC, N Engl J Med 1992 Nov 12, 327(20): 1434-41)。SCLCは一般的に肺の神経内分泌腫瘍の範囲に分類され、SCLCの開始は神経冠由来であると考えられる。SCLCは最初は、化学療法および放射線療法に感受性であるが、残念ながらそれらの多くはどの治療方法に対しても抵抗性になる。
【0006】
乳癌
世界中で100万人の女性が毎年乳癌と診断されている。タモキシフェンまたはトレミフェンなどの抗エストロゲン剤によるアジュバントホルモン療法は通常、年齢、閉経状態、腋窩リンパ節の関与または腫瘍サイズに関らず有効であるため、エストロゲン受容体(ER)陽性乳癌は一般的に良好な予後を有する。非ステロイド性第3世代アロマターゼ阻害薬によるエストロゲン抑制療法は、ER陽性の進行性乳癌を有する閉経後女性の内分泌療法に対してタモキシフェンよりもさらに有効である(Nabholtz JM et al., J Clin Oncol 2000 Nov 15, 18(22): 3758-67; Mouridsen H et al., J Clin Oncol 2001 May 15, 19(10): 2596-606)。これらの薬剤は有意な臨床的価値がある一方、化学抵抗性が極めて一般的に発生するという内分泌療法の重大な制限が残る。内分泌療法に最初は応答するほとんどのER陽性乳癌は、抗エストロゲン療法に対する抵抗性を獲得し、ER陰性腫瘍へ転換する。残念なことに、ER陰性乳癌は抗エストロゲン不応答だけでなく、より進行性の高い傾向にある(Goldhirsch A et al., J Clin Oncol 2003 Sep 1, 21(17): 3357-65, Epub 2003 Jul 7)。チロシンキナーゼ阻害剤を含む、多数の標的療法がこの疾患のために研究されてきたが(Gee JM et al., Endocrinology 2003 Nov, 144(11): 5105-17, Epub 2003 Aug 7; Moulder SL & Arteaga CL, Clin Breast Cancer 2003 Jun, 4(2): 142-5; Okubo S et al., Br J Cancer 2004 Jan 12, 90(1): 236-44; Schneeweiss A et al., Anticancer Drugs 2004 Mar, 15(3): 235-8; Warburton C et al., Clin Cancer Res 2004 Apr 1, 10(7): 2512-24)、しかし、治療を受けた患者の一部は重篤な副作用に苦しんでいて、有望な結果はこれまでのところ、限られた数の患者にのみ達成されていた。
【0007】
膀胱癌
膀胱癌はヒト集団において2番目に多くみられる泌尿生殖器腫瘍であり、全世界で毎年261,000件の新たな症例が発生している。ほとんどの膀胱癌は表在性疾患であり、症例の50%から75%で再発する可能性がある(Heney NM et al., J Urol 1983 Dec, 130(6): 1083-6)。したがって、この癌の進行中の罹患率は、その初期の発生率をはるかに上回る。さらに、これら症例の15%から25%のみが進行する可能性があるが、さらに25%の症例は初期症状で浸潤している(Kaye KW & Lange PH, J Urol 1982 Jul, 128(1): 31-3)。そのため、この癌は高度な調査が必要とされる。根治的膀胱切除は今のところ、筋層浸潤性膀胱癌以外の局所的膀胱癌を有する患者を治療するための一般的な治療方法と見なされているが、そのような患者の約50%は膀胱切除後2年以内に転移を発症し、その後その疾患により死亡する(Sternberg CN, Ann Oncol 1995 Feb, 6(2): 113-26)。
【0008】
食道癌
食道における癌は、太平洋諸国において特に世界的な悪性腫瘍である。外科手術が、切除可能な局所進行性疾患を有する患者の治療の標準的手段のままである。治癒的切除は症例の50%で可能であるが、いまだ局所的または遠位の病変が切除後に多く見られる(Tepper J, J Clin Oncol 2000 Feb, 18(3): 453-4)。5年後生存率は外科手術を行った第III相および第IV相患者の約30%のみである。いくつかのアジュバント集学的治療が、局所および全身性疾患を制御するために試みられてきた(Coia LR et al., J Clin Oncol, 2000 Feb, 18(3): 455-62; Pouliquen X et al., Ann Surg 1996 Feb, 223(2): 127-33)。しかし、切除不能および再発した食道癌は、現在有効な化学療法または放射線治療方法に対し抵抗性となる可能性があり、全体的な生存において、これらの療法の明確な利点はほとんどない。したがって、分子標的療法などの新たに有効な治療手段の開発が治療様式を拡大するために必要とされている。
【0009】
前立腺癌
前立腺癌は男性で最も多い悪性腫瘍であり、米国および欧州における癌関連死の2番目に主要な原因であり(Gronberg H, Lancet 2003 Mar 8, 361(9360): 859-64)、先進国ではおそらく西洋式の食事の普及および高齢者人口の増加のために、前立腺癌の発生率が極めて増加している(Hsing AW & Devesa SS, Epidemiol Rev 2001, 23(1): 3-13; Feldman BJ & Feldman D, Nat Rev Cancer 2001 Oct, 1(1): 34-45)。外科的療法および放射線療法はその局所的疾患には効果的であるが、治療を受けた前立腺癌患者のおよそ30%はなお疾患の再発に苦しむ(Han M et al., J Urol 2001 Aug, 166(2): 416-9; Isaacs W et al., Cancer Cell 2002 Aug, 2(2): 113-6)。再発または進行性疾患の患者のほとんどは、前立腺癌が比較的初期段階では通常アンドロゲン依存性であるため、アンドロゲン除去療法によく反応する。しかし、かれらはたいていアンドロゲン非依存性型を獲得し、アンドロゲン除去療法に対してまったくまたは非常に乏しい反応を示す。現時点で、進行性または再発したアンドロゲン非依存性前立腺癌に適用できる有効な抗癌剤または抗癌療法はない。そのため、前立腺腫瘍形成またはホルモン不応答の分子メカニズムに基づく新たな治療法の開発が緊急かつ切実に望まれている。
【0010】
精巣精上皮腫
精巣胚細胞腫瘍(TGCT)は男性の全ての癌の約1-2%を占め、20-40歳代の男性に見られる最も一般的な癌であり(Chaganti, R.et al. Cancer Res., 60: 1475-1482, 2000.)、その発生率は過去数十年の間顕著に増加してきた(Bergstorm, R., et al. J Natl. Cancer Inst., 88: 727-733, 1996.,3; Zheng, T., et al. Int. J. Cancer, 65: 723-729, 1996.)。TGCTは未分化胚細胞に類似している精上皮腫と、どちらかの経路で分化する能力によって胚および胚外組織の両方に類似している非精上皮腫の2つの主要な組織学的型に分類される(Smiraglia, D.J., et al. Oncogene, 21: 3909-3916, 2002.)。精上皮腫はTGCTの最も一般的な組織学的精巣腫瘍であり、全てのTGCTの約60%から65%を占める(Richie, J.P. et al. Cambell's Urology Seventh Edition, pp2411-2452. Philadelphia: W.B Sauders Co., 1998)。現在、アルファ-フェトプロテイン(AFP)、ヒトベータ-サブユニット絨毛性ゴナドトロピン(HCGベータ)および乳酸脱水素酵素(LDH)がTGCTの診断腫瘍マーカーとして使用されている(Van Brussel, J.P. and Mikisch, G.H.J. BJU International, 83: 910-917, 1999)。しかし、精上皮腫の特異的治療標的は同定されていない。
【0011】
胆管細胞癌
胆管細胞癌は1840年にDurand-Fardelによって最初に記載された胆道上皮由来の悪性腫瘍である。今日、診断および治療には至っていない。一つには、閉塞性の症状を有する進行性疾患になるまでは相対的に珍しくかつ臨床的な症状がないため、診断は難しい。胆肝細胞癌の世界的な発生率は、過去30年間で増加している。主に局地的な環境危険因子が原因で、この疾患の患者数の顕著な地理的変動が見られる。外科的切除が唯一の根治治療のままであり、優先順位が高いものとしては、診断方法の改善と、一度上記疾患が疑われた場合の切除のための臨床的な病期分類とがある。積極的な外科的管理につながる近年の傾向により、予後は改善されている。化学療法、一時的ステント植込み術、放射線照射は、切除不可能な患者、手術後再発した患者、および外科的処置を拒否する患者のために準備される。近年の、全身性多剤併用化学療法およびネオアジュバント放射線化学療法を用いた試験は有望であるが、さらなる研究を必要とする。
【0012】
大腸癌
大腸癌は先進諸国における癌死の主要な原因である。具体的に、米国では毎年130,000例を超える結腸直腸癌の新規症例が報告されている。大腸癌は癌全体の約15%を占める。これらの中で、約5%が遺伝性の遺伝子欠損に直接関係している。多くの患者が癌の発症前に前癌性大腸または直腸ポリープという診断を受けている。多くの小さい結腸直腸ポリープは良性であるが、いくつかのタイプは癌へと進行する可能性がある。最も広く用いられている結腸直腸癌のスクリーニング試験は、結腸鏡検査である。この方法は、疑わしい増殖を可視化するため、および/または組織生検を行うために用いられる。典型的に、組織生検材料を組織学的に調べて、生検を行った細胞の顕微鏡所見に基づいて診断を下す。しかしながら、この方法は、主観的な結果を生じることと、前癌状態を非常に早期に検出するために用いることができないことから限界がある。非常に初期段階の結腸直腸癌または前悪性病変を検出するための、高感度、特異的、かつ簡便な診断システムの開発は、それによってこの疾患を最終的に根絶しうることから非常に望ましい。
【0013】
RNAi
RNA干渉は、二本鎖RNA(dsRNA)および低分子ヘアピン型RNA(shRNA)などの低分子干渉RNA(siRNA)、二本鎖DNA/RNA(dsD/RNA)および低分子ヘアピン型DNA/RNA(shD/RNA)などの低分子干渉DNA/RNA(siD/RNA)を含む、二本鎖核酸分子の異なる種によって細胞内に誘導される。RNAiにおいて、二本鎖核酸分子の一方の鎖は、標的遺伝子転写物(mRNA)におけるヌクレオチド配列と同一または実質的に同一であるポリヌクレオチド配列を有し、二本鎖核酸分子のもう一方の鎖はそれと相補的な配列を有する。理論に拘束されることなく、一度二本鎖核酸分子が細胞に導入されるか、あるいはRNアーゼIII様酵素によって細胞内でより長い二本鎖核酸分子から生成されると、二本鎖核酸分子はRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)として知られるタンパク質複合体と結合することが認容されている。RISCはそれからmRNAに対する低分子二本鎖核酸分子を導き、ここで二本鎖核酸分子の2つの鎖が分離し、アンチセンス鎖がmRNAと結合し、ヌクレアーゼが二本鎖核酸分子のアンチセンス鎖を結合する部位でmRNAを開裂する(Hammond SM et al., Nature 2000 Mar 16, 404(6775): 293-6)。上記mRNAは細胞ヌクレアーゼによってその後、さらに分解される。低分子ヘアピン型は強力なRNAi誘因であり、二本鎖核酸分子よりもより効果的であろうことが幾つかの例において示されている(Siolas D et al., Nat Biotechnol 2005 Feb, 23(2): 227-31, Epub 2004 Dec 26)。shRNAは化学合成によって組換え方法と同様に産生されうる。
【0014】
近年、遺伝子特異的siRNAを用いた癌治療方法の新規アプローチが臨床試験において実施された(Bumcrot D et al., Nat Chem Biol 2006 Dec, 2(12): 711-9)。RNAiは主要な技術基盤の中で地位を得た(Putral LN et al., Drug News Perspect 2006 Jul-Aug, 19(6): 317-24; Frantz S, Nat Rev Drug Discov 2006 Jul, 5(7): 528-9; Dykxhoorn DM et al., Gene Ther 2006 Mar, 13(6): 541-52)。
【0015】
アテロコラーゲン、siRNAの新規送達ツール
コラーゲンは多様な結合組織で認められる、三重らせん線維タンパク質である。ペプシン処理によって得られるアテロコラーゲンは、抗原性に関係するテロペプチドから遊離するため、非常に低い免疫原性を示す(Stenzel KH, et al. Annu. Rev. Biophys Bioeng., 1974; 3: 231-53)。さらに、アテロコラーゲンは細胞取り込み、ヌクレアーゼ抵抗性ならびに遺伝子およびオリゴヌクレオチドの持続放出を増大する(Ochiya T, et al. Curr. Gene Ther., 2001; 1: 31-52)。アテロコラーゲンは、インビボで移植する場合に、低毒性および低免疫原性を示す優れた特性を有する(Ochiya T, et al. Curr. Gene Ther., 2001; 1: 31-52; Sano A, et al. Adv. Drug Deliv. Rev., 2003; 55: 1651-77)。Ochiyaらの近年の研究は、アテロコラーゲンがsiRNAの担体として利用可能であることを示した(Minakuchi Y, et al. Nucleic Acids Res. 2004; 32: e109; Takeshita F, et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2005 August 23; 102: 12177-82)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】DiMagno EP et al., Gastroenterology 1999 Dec, 117(6): 1464-84
【非特許文献2】Zervos EE et al., Cancer Control 2004 Jan-Feb, 11(1): 23-31
【非特許文献3】Jemal A et al., CA Cancer J Clin 2003 Jan-Feb, 53(1): 5-26
【非特許文献4】Greenlee RT et al., CA Cancer J Clin 2001 Jan-Feb, 51(1): 15-36
【非特許文献5】Sozzi G, Eur J Cancer 2001 Oct, 37 Suppl 7: S63-73
【非特許文献6】Kelly K et al., J Clin Oncol 2001 Jul 1, 19(13): 3210-8
【非特許文献7】Schiller JH et al., N Engl J Med 2002 Jan 10, 346(2): 92-8
【非特許文献8】Ihde DC, N Engl J Med 1992 Nov 12, 327(20): 1434-41
【非特許文献9】Nabholtz JM et al., J Clin Oncol 2000 Nov 15, 18(22):3758-67
【非特許文献10】Mouridsen H et al., J Clin Oncol 2001 May 15, 19(10): 2596-606
【非特許文献11】Goldhirsch A et al., J Clin Oncol 2003 Sep 1, 21(17): 3357-65, Epub 2003 Jul 7
【非特許文献12】Gee JM et al., Endocrinology 2003 Nov, 144(11): 5105-17, Epub 2003 Aug 7
【非特許文献13】Moulder SL & Arteaga CL, Clin Breast Cancer 2003 Jun, 4(2): 142-5
【非特許文献14】Okubo S et al., Br J Cancer 2004 Jan 12, 90(1): 236-44
【非特許文献15】Schneeweiss A et al., Anticancer Drugs 2004 Mar, 15(3): 235-8
【非特許文献16】Warburton C et al., Clin Cancer Res 2004 Apr 1, 10(7): 2512-24
【非特許文献17】Heney NM et al., J Urol 1983 Dec, 130(6): 1083-6
【非特許文献18】Kaye KW & Lange PH, J Urol 1982 Jul, 128(1): 31-3
【非特許文献19】Sternberg CN, Ann Oncol 1995 Feb, 6(2): 113-26
【非特許文献20】Tepper J, J Clin Oncol 2000 Feb, 18(3): 453-4
【非特許文献21】Coia LR et al., J Clin Oncol, 2000 Feb, 18(3): 455-62
【非特許文献22】Pouliquen X et al., Ann Surg 1996 Feb, 223(2): 127-33
【非特許文献23】Gronberg H, Lancet 2003 Mar 8, 361(9360): 859-64
【非特許文献24】Hsing AW & Devesa SS, Epidemiol Rev 2001, 23(1): 3-13
【非特許文献25】Feldman BJ & Feldman D, Nat Rev Cancer 2001 Oct, 1(1): 34-45
【非特許文献26】Han M et al., J Urol 2001 Aug, 166(2): 416-9
【非特許文献27】Isaacs W et al., Cancer Cell 2002 Aug, 2(2): 113-6
【非特許文献28】Chaganti, R.et al. Cancer Res., 60: 1475-1482, 2000
【非特許文献29】Bergstorm, R., et al. J Natl. Cancer Inst., 88: 727-733, 1996.,3
【非特許文献30】Zheng, T., et al. Int. J. Cancer, 65: 723-729, 1996.
【非特許文献31】Smiraglia, D.J., et al. Oncogene, 21: 3909-3916, 2002.
【非特許文献32】Richie, J.P. et al. Cambell's Urology Seventh Edition, pp2411-2452. Philadelphia: W.B Sauders Co., 1998
【非特許文献33】Van Brussel, J.P. and Mikisch, G.H.J. BJU International, 83: 910-917, 1999
【非特許文献34】Hammond SM et al., Nature 2000 Mar 16, 404(6775): 293-6
【非特許文献35】Siolas D et al., Nat Biotechnol 2005 Feb, 23(2): 227-31,Epub 2004 Dec 26
【非特許文献36】Bumcrot D et al., Nat Chem Biol 2006 Dec, 2(12): 711-9
【非特許文献37】Putral LN et al., Drug News Perspect 2006 Jul-Aug, 19(6): 317-24
【非特許文献38】Frantz S, Nat Rev Drug Discov 2006 Jul, 5(7): 528-9
【非特許文献39】Dykxhoorn DM et al., Gene Ther 2006 Mar, 13(6): 541-52
【非特許文献40】Stenzel KH, et al. Annu. Rev. Biophys Bioeng., 1974; 3: 231-53
【非特許文献41】Ochiya T, et al. Curr. Gene Ther., 2001; 1: 31-52
【非特許文献42】Sano A, et al. Adv. Drug Deliv. Rev., 2003; 55: 1651-77
【非特許文献43】Minakuchi Y, et al. Nucleic Acids Res. 2004; 32: e109
【非特許文献44】Takeshita F, et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2005 August 23; 102: 12177-82
【発明の概要】
【0017】
本発明は、特異的配列(具体的にはSEQ ID NO:47から57)を含む二本鎖核酸分子が、膵臓癌、肺癌、乳癌、膀胱癌、食道癌、前立腺癌、精巣精上皮腫、大腸癌および胆管細胞癌を含む種々の癌細胞の細胞増殖阻害に有効であるという発見に基づく。特に、C14orf78、MYBL2、UBE2SおよびUBE2T遺伝子を標的とした低分子干渉RNA(siRNA)は本発明により提供される。
【0018】
本発明の態様によると、二本鎖核酸分子はベクター中にコードされ、インビボおよびインビトロのどちらにおいてもベクターから発現することができる。
【0019】
本発明の二本鎖核酸分子およびベクターは、標的遺伝子(C14orf78、MYBL2、UBE2SまたはUBE2T遺伝子)を発現する細胞の細胞増殖を阻害する能力を有する。したがって、本発明は本発明の二本鎖核酸分子またはベクターを投与することによって細胞増殖を阻害し癌を治療するための方法を提供する。上記方法は、1つ以上の二本鎖核酸分子またはベクターを含む組成物の対象への投与を含む。
【0020】
本発明の他の態様は、本発明の二本鎖核酸分子またはベクターの少なくとも1つを含む癌治療のための組成物に関連する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】治療標的の候補としてスクリーニングされた4つの遺伝子のプロファイル。スクリーニングは標的遺伝子を発現する細胞の検出をするためにRT-PCR解析で行った。(a):C14orf78、(b):MYBL2、(c):UBE2S、および(d):UBE2T。
【図2】C14orf78遺伝子に対して最適化されたsiRNA配列のRNAi活性測定。siRNAの遺伝子サイレシング活性、増殖抑制効果および非特異的細胞死誘導能力を、C14orf78遺伝子を内在的に発現する細胞、PK-1 (a)およびPanc.02.03 (b)を用いて評価した。(c) RNAi反応の特異性はSK-BR3(C14orf48遺伝子を低レベルで発現するかまたは発現しない細胞株)を用いて評価した。
【図3】MYBL2遺伝子に対して最適化されたsiRNA配列のRNAi活性測定。siRNAの遺伝子サイレシング活性、増殖抑制効果および非特異的細胞死誘導能力を、MYBL2遺伝子を内在的に発現する細胞、H358 (a)およびTE-9 (b)を用いて評価した。(c) RNAi反応の特異性はSAEC(MYBL2遺伝子を低レベルで発現するかまたは発現しない細胞株)を用いて評価した。
【図4】UBE2S遺伝子に対して最適化されたsiRNA配列のRNAi活性測定。siRNAの遺伝子サイレシング活性、増殖抑制効果および非特異的細胞死誘導能力を、UBE2S遺伝子を内在的に発現する細胞、MCF-7 (a)、PK-1 (b)およびSW780 (c)を用いて評価した。(d) RNAi反応の特異性はHMEC (UBE2S遺伝子を低レベルで発現するかまたは発現しない細胞株)を用いて評価した。
【図5−1】UBE2T遺伝子に対して最適化されたsiRNA配列のRNAi活性測定。siRNAの遺伝子サイレシング活性、増殖抑制効果および非特異的細胞死誘導能力を、UBE2T遺伝子を内在的に発現する細胞、MCF-7 (a), A549 (b)を用いて評価した。
【図5−2】UBE2T遺伝子に対して最適化されたsiRNA配列のRNAi活性測定。siRNAの遺伝子サイレシング活性、増殖抑制効果および非特異的細胞死誘導能力を、UBE2T遺伝子を内在的に発現する細胞、SW780 (c)およびDU145 (d)を用いて評価した。(e) RNAi反応の特異性はHMEC (UBE2T遺伝子を低レベルで発現するかまたは発現しない細胞株)を用いて評価した。
【図6−1】4つの標的遺伝子に対する各siRNAのインビボ抗腫瘍活性。(a)LipoTrust(商標)SRに封入した各MYBL2 siRNA(C7、C13およびC15)または対照としてルシフェラーゼsiRNAを腫瘍内投与により、異種移植マウスに投与した。7日目で相対的な腫瘍サイズは、各MYBL2 siRNAによって有意に抑制された。これらの実験は5連で実施した。エラーバーは平均+/-SDを表す。*および**はそれぞれp<0.05およびp<0.01を意味する(スチューデントのt検定)。
【図6−2】4つの標的遺伝子に対する各siRNAのインビボ抗腫瘍活性。(b)異種移植マウスに、アテロコラーゲンと、MYBL2(C16)、C14orf78(C8、C10、C11およびC24)、UBE2S(C8およびC9)、UBE2T(C10)およびルシフェラーゼ(対照)に対する各siRNAとの複合体を腫瘍内投与により投与した。7日目で相対的な腫瘍サイズまたは腫瘍体積は、MYBL2、C14orf78、UBE2SおよびUBE2Tに対する各siRNAによって有意に抑制された。エラーバーは平均+/-SDを表す。*および**はそれぞれp<0.05およびp<0.01を意味する(スチューデントのt検定)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[発明の開示]
同定された癌治療候補物質のプロファイル
C14orf78遺伝子((Genbankアクセッション番号XM_290629; SEQ ID NO: 1)は、分子量668kDaの巨大タンパク質(SEQ ID NO: 2; 以後、「C14orf78タンパク質」とする)をコードしている。C14orf78およびAHNAK1タンパク質は前述したように同じファミリーに属している(Komuro A et al., Proc Natl Acad Sci USA 2004 Mar 23, 101(12): 4053-8, Epub 2004 Mar 8)。このサイズのAHNAK1タンパク質は、間期の核に局在する分化関連タンパク質である。近年の研究は、アドレナリン作動薬による心筋細胞の刺激が、膜結合型AHNAK1タンパク質のリン酸化を活性化することを報告した(Komuro A et al., Proc Natl Acad Sci USA 2004 Mar 23, 101(12): 4053-8, Epub 2004 Mar 8)。リン酸化されたAHNAK1タンパク質は、L型電位調節カルシウムチャネルの2つの異なるサブユニットに対する抗体と共沈降し、該タンパク質がカルシウムチャネルと結合していることを示唆している(Komuro A et al., Proc Natl Acad Sci USA 2004 Mar 23, 101(12): 4053-8, Epub 2004 Mar 8)。
【0023】
他の報告ではAHNAK1ノックアウトマウスのフェノタイプにおいて、明らかな異常が全く認められないことがわかり(Komuro A et al., Proc Natl Acad Sci USA 2004 Mar 23, 101(12): 4053-8, Epub 2004 Mar 8)、AHNAK1がこれまでのところ細胞増殖および分化にとって必須因子ではないことを示している。
【0024】
MYBL2遺伝子にコードされるタンパク質(GenBankアクセッション番号NM_002466; SEQ ID NO: 3はSEQ ID NO: 4をコードしている)は、細胞増殖、分化およびアポトーシスに作用する細胞周期進行に関与している転写因子として機能する(Oh IH & Reddy EP, Oncogene 1999 May 13, 18(19): 3017-33; Weston K, Curr Opin Genet Dev 1998 Feb, 8(1): 76-81)。MYBL2タンパク質はまた、遺伝子転写の活性化因子または抑制因子のどちらかとして作用することが示されている(Klempnauer KH & Sippel AE, EMBO J 1987 Sep, 6(9): 2719-25; Biedenkapp H et al., Nature 1988 Oct 27, 335(6193): 835-7; Nomura N et al., Nucleic Acids Res 1988 Dec 9, 16(23): 11075-89)。MYBL2タンパク質活性がS期にCDK2/ cyclin A複合体によって刺激される一方で、MYBL2遺伝子発現は以前にE2F依存的メカニズムによって増殖細胞を制限することが報告されている(Robinson C et al., Oncogene 1996 May 2, 12(9): 1855-64)。細胞分裂におけるMYBL2タンパク質の機能は、cyclin B1遺伝子発現を制御するその能力に少なくとも一部は関連している(Okada M et al., EMBO J 2002 Feb 15, 21(4): 675-84.)。
【0025】
UBE2S遺伝子(GenBankアクセッション番号NM_014501; SEQ ID NO: 5はSEQ ID NO: 6をコードしている)およびUBE2T遺伝子(GenBankアクセッション番号NM_014176; SEQ ID NO: 7 はSEQ ID NO: 8をコードしている)によってコードされる両タンパク質は、1つのユビキチン結合酵素E2触媒ドメインを有し、タンパク質分解経路に寄与するユビキチン結合酵素であると考えられている。近年の研究は、推定ユビキチンE2リガーゼであるUBE2Sタンパク質は、分解のため特異的にpVHL(フォンヒッペル‐リンダウタンパク質)を標的とし、UBE2S遺伝子の過剰発現は細胞増殖を顕著に促進することを明らかにした(Ohh M Cancer Cell 2006 Aug, 10(2): 95-7; Jung CR et al., Nat Med 2006 Jul, 12(7): 809-16, Epub 2006 Jul 2)。
【0026】
pVHLは、正常酸素圧条件下における低酸素誘導因子-1アルファ(HIF-1 alpha)をユビキチン化する、ユビキチンリガーゼE3複合体の基質認識モジュールとして機能する。HIF-1アルファは正常酸素圧の間は正常に分解されるが、低酸素下ではタンパク質分解機構から逃れる。このHIF-1アルファの異常な蓄積は、腫瘍の血管新生のような代謝的適応、細胞生存のための代謝、細胞の増殖および分化に関連する標的遺伝子の活性化を惹起する(Semenza GL, Trends Mol Med 2001 Aug, 7(8): 345-50; Pugh CW & Ratcliffe PJ, Nat Med 2003 Jun, 9(6): 677-84)。そのため、UBE2Sタンパク質によるユビキチン経路を介したpVHLの欠乏は異常なHIF-1アルファ蓄積を引き起こし、結果的に癌細胞増殖を促進しうる。
【0027】
タンパク質のユビキチン化はATP依存的経路を介して生じる。最初の段階はATPを要求し、ユビキチンはユビキチン活性化酵素(E1)にそのC末端グリシン残基を介したチオエステル結合によって結合する。ユビキチンはその後、トランス-チオールエステル化によってユビキチン結合酵素(E2)に移動し、さらに、標的タンパク質のリジン残基のイプシロンアミノ基に移動し、それは通常ユビキチンタンパク質リガーゼ(E3)によって促進される。結合したユビキチン自身は、ユビキチン化基質として役立ち、繰り返されたユビキチン化はポリユビキチン鎖の形成を導く。ポリユビキチン化された標的タンパク質は26Sプロテアソームに移行される。ユビキチン-26Sプロテアソーム(UPS)経路は、正常および誤って折り畳まれた細胞質または膜タンパク質が分解される、真核細胞の主要なメカニズムである。
【0028】
定義
本明細書中で使用する「1つ(a、an)」及び「その(the)」という用語は、別途特に示されない限り、「少なくとも1つ」を意味する。癌で発現差のある遺伝子は、本明細書中で集合的に「CX遺伝子」、「CX核酸」または「CXポリヌクレオチド」と呼び、また同遺伝子にコードされた対応ポリペプチドは「CXポリペプチド」または「CXタンパク質」と呼ぶ。本発明において、CX遺伝子は巨大タンパク質(以下「C14orf78タンパク質」と呼ぶ、SEQ ID NO: 2)をコードするC14orf78遺伝子(「C14orf78」とも呼び、GenBankアクセッション番号XM_290629、SEQ ID NO: 1)、SEQ ID NO: 4の配列を有するタンパク質(以下「MYBL2タンパク質」と呼ぶ)をコードするMYBL2遺伝子(「MYBL2」とも呼び、 GenBank アクセッション番号 NM_002466、SEQ ID NO: 3)、SEQ ID NO: 6の配列を有するタンパク質(以下「UBE2Sタンパク質」と呼ぶ)をコードするUBE2S遺伝子(「UBE2S」とも呼び、GenBankアクセッション番号 NM_014501、SEQ ID NO: 5)およびSEQ ID NO: 8の配列を有するタンパク質(以下「UBE2Tタンパク質」と呼ぶ)をコードするUBE2T遺伝子(「UBE2T」とも呼び、GenBankアクセッション番号NM_014176、SEQ ID NO: 7)から成る群から選択される。本明細書において、これらCX遺伝子は「標的遺伝子」とも呼ばれ、その中に少なくとも1つの標的配列を含む。
【0029】
標的配列はCX遺伝子内のヌクレオチド配列であり、本発明の二本鎖核酸分子がそれらに結合すると、全mRNAの翻訳が抑制される。CX遺伝子を発現する細胞において、標的配列に一致する配列を含む二本鎖ポリヌクレオチドがCX遺伝子の発現を阻害する場合、CX遺伝子内のヌクレオチド配列は標的配列を決定することができる。本発明によると、以下の配列は標的配列としての機能が見出された。
C14orf78遺伝子;
ヌクレオチド
SEQ ID NO: 1の13846-13864 (SEQ ID NO: 47)、
13909-13927 (SEQ ID NO: 48)、
14001-14019 (SEQ ID NO: 49)、および
14647-14665 (SEQ ID NO: 50)、
MYBL2遺伝子;
ヌクレオチド
SEQ ID NO: 3の977-995 (SEQ ID NO: 51)、
1938-1956 (SEQ ID NO: 52)、
1940-1958 (SEQ ID NO: 53)、および
1995-2013 (SEQ ID NO: 54)、
UBE2S遺伝子;
ヌクレオチド
SEQ ID NO: 5の706-724 (SEQ ID NO: 55)および
528-546 (SEQ ID NO: 56)、ならびに
UBE2T遺伝子:
ヌクレオチド
SEQ ID NO: 7の148-166 (SEQ ID NO: 57)。
【0030】
本明細書で使用する、「生物」という用語は少なくとも1つの細胞から成る任意の生き物を意味する。生物は、例えば真核単細胞のような単純なものでもよく、ヒトを含む哺乳動物のような複雑なものでもよい。
【0031】
本明細書で使用する、用語「生物学的試料」は生物全体またはその組織、細胞もしくは構成部分(例えば、これらに限定されないが、血液、粘液、リンパ液、滑液、脳脊髄液、唾液、羊水、臍帯血、尿、膣液および精液を含む体液)のサブセットを意味する。「生物学的試料」は、さらに生物全体またはその細胞、組織もしくは構成部分のサブセットから調製されたホモジネート、溶解産物、細胞培養物、または組織培養物、あるいはその画分または一部を意味する。最後に、「生物学的試料」は、タンパク質またはポリヌクレオチドなどの細胞成分を含む、生物を増殖させた栄養培地またはゲルなどの培地を意味する。
【0032】
用語「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」は、特に示されなければ本明細書において互換的に用いられ、それらの一般的に受け入れられている一文字コードによって表される。本用語は、一つ以上の核酸がエステル結合によりつながれている核酸(ヌクレオチド)ポリマーに適用される。ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、DNA、RNAまたはそれらの組み合わせから成り得る。
【0033】
本明細書で使用する、用語「単離した二本鎖核酸分子」は、例えば低分子干渉RNA(siRNA、例えば二本鎖リボ核酸(dsRNA)または低分子ヘアピンRNA(shRNA))、および低分子干渉DNA/RNA(siD/R-NA、例えばDNAおよびRNAのキメラ二本鎖(dsD/R-NA)または低分子ヘアピンDNAおよびRNAのキメラ(shD/R-NA))を含む標的遺伝子の発現を阻害する核酸分子を意味する。
【0034】
本明細書で使用する、用語「siRNA」は標的mRNAの翻訳を阻止する二本鎖RNA分子を意味する。RNAを転写する鋳型がDNAである技法を含め、細胞にsiRNAを導入する標準的な技法が用いられる。siRNAはCXセンス核酸配列(「センス鎖」とも言う)、CXアンチセンス核酸配列(「アンチセンス鎖」とも言う)またはその両方を含む。siRNAは、1つの転写産物が、例えばヘアピンのように標的遺伝子のセンスおよび相補的アンチセンス核酸配列の両方を有するように構築されてもよい。siRNAはdsRNAまたはshRNAでもよい。
【0035】
本明細書で使用される、用語「dsRNA」は、互いに相補的な配列を含み、相補的配列を介して互いにアニーリングして二本鎖RNA分子を形成している2つのRNA分子の構築物を意味する。二つの鎖のヌクレオチド配列は、標的遺伝子配列のタンパク質をコードする配列から選択される「センス」または「アンチセンス」RNAだけでなく、標的遺伝子の非コード領域から選択されるヌクレオチド配列を有するRNA分子も含んでよい。
【0036】
本明細書で使用する、用語「shRNA」は、互いに相補的な第一領域と第二領域(すなわちセンス鎖とアンチセンス鎖)を含み、ステムループ構造を有するsiRNAを意味する。領域の相補性と配向性の程度は、領域間で塩基が対を形成するのに十分であり、第一領域と第二領域はループ領域によって連結され、ループはループ領域内のヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)間の塩基対形成の欠如に起因する。shRNAのループ領域とは、センス鎖とアンチセンス鎖の間に介在する一本鎖領域であり、「介在性一本鎖」と称されることもある。
【0037】
本明細書で使用する、用語「siD/R-NA」はRNAとDNAの両方で構成され、RNAおよびDNAのハイブリッドおよびキメラを含み、標的mRNAの翻訳を阻止する二本鎖ポリヌクレオチド分子を意味する。本明細書において、ハイブリッドは、DNAで構成されたポリヌクレオチドおよびRNAで構成されたポリヌクレオチドが互いにハイブリダイズして二本鎖核酸分子を形成している分子を指し、一方キメラは、二本鎖分子を構成する鎖の一方または両方がRNAおよびDNAを含み得ることを示す。siD/R-NAを細胞に導入する標準的な技術が用いられる。本発明において、そのような二本鎖核酸分子は二本鎖分子を意味する。siD/R-NAはCXセンス核酸配列(「センス鎖」とも称される)、CXアンチセンス核酸配列(「アンチセンス鎖」とも称される)、または両方を含む。siD/R-NAは、単一の転写産物が、例えばヘアピンのように、標的遺伝子に由来するセンスおよび相補的アンチセンス核酸配列の両方を有するように構築されてもよい。siD/R-NAはdsD/R-NAまたはshD/R-NAのいずれかであってもよい。
【0038】
本明細書で使用する、用語「dsD/R-NA」は、互いに相補的な配列を含み、相補的配列を介して互いにアニーリングして二本鎖ポリヌクレオチド分子を形成している2つの分子の構築物を意味する。二つの鎖のヌクレオチド配列は、標的遺伝子配列のタンパク質をコードする配列から選択される「センス」または「アンチセンス」ポリヌクレオチド配列だけでなく、標的遺伝子の非コード領域から選択されるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドも含んでよい。dsD/R-NAを構成する2つの分子の一方または両方が、RNAとDNAの両方から構成される(キメラ分子)か、またはそうでなければ分子の一方が、RNAで構成され、他方がDNAで構成される(ハイブリッド二本鎖)。
【0039】
本明細書で使用する、用語「shD/R-NA」は、互いに相補的な第一領域と第二領域(すなわちセンス鎖とアンチセンス鎖)を含み、ステムループ構造を有するsiD/R-NAを意味する。領域の相補性と配向性の程度は、領域間で塩基が対を形成するのに十分であり、第一領域と第二領域はループ領域によって連結され、ループはループ領域内のヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)間の塩基対形成の欠如をもたらす。shD/R-NAのループ領域とは、センス鎖とアンチセンス鎖の間に介在する一本鎖領域であり、「介在性一本鎖」と称されることもある。
【0040】
本明細書で使用される、「単離された核酸」は本来の環境(例えば自然発生する場合の自然環境)から取り出され、その自然状態から合成的に変化させた核酸である。本発明において、単離された核酸はDNA、RNAおよびそれらの誘導体を含む。
【0041】
本明細書で使用される、用語「CX遺伝子関連疾患」は、対応正常組織と比較してCX遺伝子の過剰発現によって特徴付けられる疾患を意味し、例えば膵臓癌、肺癌、乳癌、膀胱癌、食道癌、前立腺癌、精巣精上皮腫、大腸癌および胆管細胞癌を含む。
【0042】
本明細書において、細胞増殖の阻害は、未処理細胞と比較して、標的遺伝子を自然に発現している細胞がより低い速度で増殖するか、生存率が低下していることを意味する。細胞増殖は従来の増殖アッセイ、例えばcell analyzer1000を用いたアッセイによって測定することができる。
【0043】
概要
非哺乳動物細胞において、二本鎖RNA(dsRNA)は、遺伝子発現に対して強力かつ特異的なサイレシング効果を発揮することが示されており、これはRNA干渉(RNAi)と呼ばれている(Sharp PA, Genes Dev 1999 Jan 15, 13(2): 139-41)。dsRNAは、RNアーゼIIIモチーフを含む酵素によって、低分子干渉RNA(siRNA)と呼ばれる20から23ヌクレオチドに処理される。siRNAは多成分のヌクレアーゼ複合体によって相補的mRNAを特異的に標的とする(Hammond SM et al., Nature 2000 Mar 16, 404(6775): 293-6; Hannon GJ, Nature 2002 Jul 11, 418(6894): 244-51)。哺乳動物細胞において、相補的ヌクレオチド19個と、チミジンまたはウリジンの3’末端非相補的二量体とを有する20または21量体dsRNAから成るsiRNAは、遺伝子発現の全体的な変化を誘導することなく、遺伝子特異的ノックダウン効果を有することが示されている(Elbashir SM et al., Nature 2001 May 24, 411(6836): 494-8)。さらに、低分子核RNA(snRNA)U6またはポリメラーゼIIIH1-RNAプロモーターを含むプラスミドは、III型クラスのRNAポリメラーゼIIIを動員するような低分子RNAを効率よく産生し、したがって、その標的mRNAを恒常的に抑制することができる(Miyagishi M & Taira K, Nat Biotechnol 2002 May, 20(5): 497-500; Brummelkamp TR et al., Science 2002 Apr 19, 296(5567): 550-3, Epub 2002 Mar 21)。
【0044】
本発明は、細胞増殖阻害方法を特徴としている。細胞増殖はCX遺伝子に対する二本鎖核酸分子と細胞を接触させることによって阻害される。CX遺伝子間では、C14orf78は臨床膵臓癌18症例のうち11症例、臨床胆管細胞癌25症例のうち14症例、非小細胞肺癌37症例のうち10症例で過剰発現(T/N比>=5)し、MYBL2は癌の様々な領域で過剰発現している、すなわち臨床膀胱癌34症例のうち18症例、食道癌64症例のうち29症例、非小細胞肺癌(NSCLC)37症例のうち18症例、臨床膵臓癌18症例のうち6症例、および小細胞肺癌(SCLC)15症例のうち14症例で上方制御されている(比>=5)ことが明らかになり、UBE2Sは、SCLCの全ての症例、膀胱癌34症例のうち29症例、乳癌81症例のうち27症例、前立腺癌59症例のうち18症例、大腸癌48症例のうち11症例、胆管細胞癌25症例のうち9症例、膵臓癌18症例のうち12症例で過剰発現しており、UBE2Tも様々な型の腫瘍、すなわち胆管細胞癌25症例のうち12症例、SCLC 25症例のうち12症例、膀胱癌34症例のうち23症例、乳癌81症例のうち28症例、NSCLC 37症例のうち13症例、食道癌64症例のうち14症例、前立腺癌59症例のうち15症例で増大した発現を示した(表2)。CX遺伝子を発現する細胞の増殖は、各標的遺伝子に対する本発明の二本鎖核酸分子を用いて阻害することができる。
【0045】
上記方法は、例えば細胞の癌化の結果として、CX遺伝子発現が上方制御されている細胞での遺伝子発現を変化させることに使用される。標的細胞におけるCX遺伝子転写物への二本鎖核酸分子の結合は、結果としてその細胞によるCXタンパク質産生を減少させ、細胞増殖を阻害する。
【0046】
二本鎖核酸分子
分子が標的mRNAにハイブリダイズするCX遺伝子に対する二本鎖核酸分子は、該遺伝子の正常単鎖mRNA転写物と結合し、その結果翻訳を妨げ、タンパク質発現を阻害することにより、CX遺伝子にコードされるCXタンパク質産生を減少または阻害する。PK-1およびPanc.02.03膵臓癌細胞株におけるC14orf78の発現は、4つの異なるdsRNAによって阻害され(図2a、b)、NSCLC(H358)と食道癌(TE-9)細胞株におけるMYBL2の発現は4つの異なるdsRNAによって阻害され(図3a、b)、乳癌(MCF7)、膵臓癌(PK-1)および膀胱癌(SW780)細胞株におけるUBE2Sの発現は2つの異なるdsRNAによって阻害され(図4a-c)、乳癌(MCF7)、NSCLC(A549)、膀胱癌(SW780)、および前立腺癌(DU-145)細胞株におけるUBE2Tの発現は1つのdsRNAによって阻害された(図5a-d)。
【0047】
従って本発明は、該遺伝子発現細胞に導入した場合、CX遺伝子の発現を阻害する能力を有する、単離された二本鎖核酸分子を提供する。二本鎖核酸分子の標的配列は以下に述べるsiRNA設計アルゴリズムによって設計される。
【0048】
C14orf78標的配列は、例えばSEQ ID NO: 1の、
ヌクレオチド
13846-13864 (SEQ ID NO: 47)、
13909-13927 (SEQ ID NO: 48)、
14001-14019 (SEQ ID NO: 49)、または
14647-14665 (SEQ ID NO: 50)を含み、
MYBL2標的配列は、例えばSEQ ID NO: 3の、
ヌクレオチド
977-995 (SEQ ID NO: 51) 、
1938-1956 (SEQ ID NO: 52)、
1940-1958 (SEQ ID NO: 53)、または
1995-2013 (SEQ ID NO: 54)を含み、
UBE2S標的配列は、例えばSEQ ID NO: 5の、
ヌクレオチド
706-724 (SEQ ID NO: 55)または
528-546 (SEQ ID NO: 56)を含み、ならびに
UBE2T標的配列は、例えばSEQ ID NO: 7の、
ヌクレオチド
148-166 (SEQ ID NO: 57)を含む。
【0049】
具体的に、本発明は以下の二本鎖核酸分子[1]から[17]を提供する。
[1] 細胞に導入された場合に、C14orf78、MYBL2、UBE2SおよびUBE2Tから成る群から選択されるCX遺伝子の発現と該CX遺伝子を発現する細胞の増殖とを阻害する、単離された二本鎖核酸分子であって、互いにハイブリダイズして二本鎖核酸分子を形成するセンス鎖とそれに相補的なアンチセンス鎖を含み、SEQ ID NO: 47から57から成る群から選択される配列を標的とする、単離された二本鎖核酸分子;
[2] 上記センス鎖がSEQ ID NO: 47から57から成る群から選択される標的配列と一致する配列を含む、[1]の単離された二本鎖核酸分子;
[3] 約100ヌクレオチド長未満を有する、[2]の二本鎖核酸分子;
[4] 約75ヌクレオチド長未満を有する、[3]の二本鎖核酸分子;
[5] 約50ヌクレオチド長未満を有する、[4]の二本鎖核酸分子;
[6] 約25ヌクレオチド長未満を有する、[5]の二本鎖核酸分子;
[7] 約19から約25ヌクレオチドの間の長さを有する、[6]の二本鎖核酸分子;
[8] 介在性一本鎖によって連結しているセンス鎖とアンチセンス鎖の両方を含む単一のポリヌクレオチドから成る、[1]の二本鎖核酸分子;
[9] 一般式5'-[A]-[B]-[A']-3'を有し、[A]はSEQ ID NO: 47から57から成る群から選択される標的配列に対応する配列を含むセンス鎖であり、[B]は3から23ヌクレオチドから成る介在性単鎖であり、[A']は[A]に対する相補的配列を含むアンチセンス鎖である、[8]の二本鎖核酸分子;
[10] RNAを含む、[1]の二本鎖核酸分子;
[11] DNAとRNAの両方を含む、[1]の二本鎖核酸分子;
[12] DNAポリヌクレオチドとRNAポリヌクレオチドのハイブリッドである、[11]の二本鎖核酸分子;
[13] センス鎖及びアンチセンス鎖がそれぞれDNAとRNAから成る、[12]の二本鎖核酸分子;
[14] DNAとRNAのキメラである、[11]の二本鎖核酸分子;
[15] センス鎖における標的配列またはその相補的配列の5'末端に隣接する領域、および/あるいはアンチセンス鎖における標的配列または相補的配列の3'末端に隣接する領域がRNAから成る、[14]の二本鎖核酸分子;
[16] 隣接領域が9から13ヌクレオチドから成る、[15]の二本鎖核酸分子;および
[17] 3'オーバーハングを含む、[1]の二本鎖核酸分子。
本発明の二本鎖核酸分子をさらに詳細に以下に述べる。
【0050】
細胞内で標的遺伝子発現阻害能を有する二本鎖核酸分子の設計方法は公知である(例えば米国特許第6,506,559号参照。その全体が参照として本明細書に組み入れられる)。例えば、siRNA設計用コンピュータプログラムはAmbionウェブサイトから入手可能である(http://www.ambion.com/techlib/misc/siRNA_finder.html)。コンピュータプログラムは以下のプロトコルに基づいた二本鎖核酸分子の標的ヌクレオチド配列を選択する。
【0051】
標的部位の選択
1、転写物のAUG開始コドンから始めて、AAジヌクレオチド配列を求めて下流にスキャンする。潜在的なsiRNA標的部位として、個々のAAおよび3’側に隣接する19ヌクレオチドの出現を記録する。Tuschlらは5’および3’非翻訳領域(UTR)および開始コドン近傍(75塩基以内)の領域が、調節タンパク質結合部位においてより豊富である可能性があることから、これらに対してsiRNAを設計することを推奨しておらず、UTR結合タンパク質および/または翻訳開始複合体は、siRNAエンドヌクレアーゼ複合体の結合を妨げる可能性がある。
2、潜在的な標的部位を適切なゲノムデータベース(ヒト、マウス、ラット等)と比較し、他のコード配列に対して有意な相同性をもついかなる標的部位も検討対象から除く。基本的に、NCBIサーバ(www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)において見いだされる、BLASTが使用される(Altschul SF et al., Nucleic Acids Res 1997 Sep 1, 25(17): 3389-402)。
3、合成に適した標的配列を選択する。評価する遺伝子の長さに沿っていくつかの標的配列を選択するのが典型的である。
【0052】
プロトコルに従って、本発明の単離された二本鎖核酸分子の標的配列は以下のように設計された。
C14orf78遺伝子のSEQ ID NO: 1の、
ヌクレオチド
13846-13864 (SEQ ID NO: 47)、
13909-13927 (SEQ ID NO: 48)、
14001-14019 (SEQ ID NO: 49)、および
14647-14665 (SEQ ID NO: 50);
MYBL2遺伝子のSEQ ID NO: 3の、
ヌクレオチド
977-995 (SEQ ID NO: 51)、
1938-1956 (SEQ ID NO: 52)、
1940-1958 (SEQ ID NO: 53)、および
1995-2013 (SEQ ID NO: 54);
UBE2S遺伝子のSEQ ID NO: 5の、
ヌクレオチド
706-724 (SEQ ID NO: 55)および
528-546 (SEQ ID NO: 56);ならびに
UBE2T遺伝子のSEQ ID NO: 7の、
ヌクレオチド
148-166 (SEQ ID NO: 57)。
【0053】
上述の標的配列を標的とする二本鎖核酸分子は、標的遺伝子を発現する細胞の増殖を抑制する能力をそれぞれ検討された。従って、本発明は以下からなる群から選択されるいずれかの配列を標的とする二本鎖核酸分子を提供する。
C14orf78遺伝子のSEQ ID NO: 1の、
ヌクレオチド
13846-13864 (SEQ ID NO: 47)、
13909-13927 (SEQ ID NO: 48)、
14001-14019 (SEQ ID NO: 49)、および
14647-14665 (SEQ ID NO: 50);
MYBL2遺伝子のSEQ ID NO: 3の、
ヌクレオチド
977-995 (SEQ ID NO: 51)、
1938-1956 (SEQ ID NO: 52)、
1940-1958 (SEQ ID NO: 53)、および
1995-2013 (SEQ ID NO: 54);
UBE2S遺伝子のSEQ ID NO: 5の、
ヌクレオチド
706-724 (SEQ ID NO: 55)および
528-546 (SEQ ID NO: 56);ならびに
UBE2T遺伝子のSEQ ID NO: 7の、
ヌクレオチド
148-166 (SEQ ID NO: 57)。
【0054】
本発明の二本鎖核酸分子は、単鎖標的CX遺伝子配列に向けられ、もしくは複数の標的CX遺伝子配列に向けることもできる。
【0055】
CX遺伝子配列を標的とする上記のうち1つを標的とする本発明の二本鎖核酸分子は、標的配列の核酸配列に対応する配列および/または標的配列に対する相補的配列のいずれか一つを含む、単離されたポリヌクレオチドを含む。例えば、上記標的配列を標的とする二本鎖核酸分子は、標的配列およびその相補的配列に相当するヌクレオチド配列を含む。本発明において、二本鎖核酸分子がRNAを含む、あるいはRNAから成る場合、標的配列におけるヌクレオチドt(チミン)はu(ウラシル)で置換される。C14orf78遺伝子を標的とするオリゴヌクレオチドの例は、SEQ ID NO: 1の13846-13864 (SEQ ID NO: 47)、13909-13927 (SEQ ID NO: 48)、14001-14019 (SEQ ID NO: 49)または14647-14665 (SEQ ID NO: 50) ヌクレオチド配列に相当する配列およびこれらのヌクレオチドに相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドを含み、MYBL2遺伝子を標的とするポリヌクレオチドはSEQ ID NO: 3の977-995 (SEQ ID NO: 51)、1938-1956 (SEQ ID NO: 52)、1940-1958 (SEQ ID NO: 53)または1995-2013 (SEQ ID NO: 54)のヌクレオチド配列に相当する配列およびこれらのヌクレオチドに相補的な配列を含むポリヌクレオチドを含み、UBE2S遺伝子を標的とするポリヌクレオチドはSEQ ID NO: 5の706-724 (SEQ ID NO: 55) または 528-546 (SEQ ID NO: 56)のヌクレオチド配列に相当する配列およびこれらのヌクレオチドに相補的な配列を含むポリヌクレオチドを含み、ならびにUBE2T遺伝子を標的とするポリヌクレオチドはSEQ ID NO: 7の148-166 (SEQ ID NO: 57)のヌクレオチド配列に相当する配列およびこれらのヌクレオチドに相補的な配列を含む。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されず、改変された分子がCX遺伝子の発現抑制する能力を保持する限り、上述の核酸配列における軽微な改変は許容される。本明細書において、核酸配列における「軽微な改変」とは該配列に対する核酸の一つ、二つまたは数個の置換、欠失、付加または挿入を指す。
【0056】
本発明によれば、本発明の二本鎖核酸分子は実施例において利用された方法を用いてその能力を検討することができる。実施例において、CX遺伝子のmRNAの様々な部分のセンス鎖またはそれらに相補的なアンチセンス鎖を含む二本鎖核酸分子は、標準方法に従って、癌細胞(例えば膵臓癌細胞のPK-1細胞株およびPanc.02.03細胞株、肺癌細胞のH358細胞株およびA549細胞株、食道癌細胞のTE-9細胞株、乳癌細胞のMCF-7細胞株、膀胱癌細胞のSW780細胞株ならびに前立腺癌細胞のDU145細胞株を使用)におけるCX遺伝子産物の産生を減少する能力をインビトロで検討された。さらに、例えば候補分子の非存在下で培養された細胞と比較して、候補二本鎖核酸分子と接触させた細胞におけるCX遺伝子産物の減少は、例えばCXタンパク質に対する抗体を用いたウエスタンブロット解析または実施例1、項目「半定量的RT-PCR」で述べられているCX mRNAに対するプライマーを用いたRT-PCRで検出することができる。インビトロセルベースアッセイにおいて、CX遺伝子産物の産生を減少させる配列は、次に、細胞増殖に対する阻害効果を検討されうる。また、インビトロセルベースアッセイにおける細胞増殖を阻害する配列は、減少したCX産物の産生と減少した癌細胞増殖を確認するため、癌を有する動物、例えばヌードマウス異種移植片モデルを用いてインビボでの能力を検討することができる。
【0057】
単離したポリヌクレオチドがRNAまたはその誘導体である場合、ヌクレオチド配列において塩基「t」は「u」に置換されるべきである。本明細書で使用されるように、用語「相補的」は、ポリヌクレオチドのヌクレオチド単位の間のワトソン‐クリックまたはフーグスティーン塩基対形成を指し、用語「結合」は二つのポリヌクレオチド間の物理的または化学的相互作用を意味する。ポリヌクレオチドが改変されたヌクレオチドおよび/または非ホスホジエステル結合を含む場合、これらのポリヌクレオチドは同じ様式で相互に結合してもよい。一般的に、相補的ポリヌクレオチド配列は、ミスマッチがほとんどまたは全くない安定した二本鎖を形成するのに適した条件下でハイブリダイズする。さらに、本発明の単離されたポリヌクレオチドのセンス鎖およびアンチセンス鎖は、ハイブリダイゼーションによって二本鎖核酸分子またはヘアピンループ構造を形成することができる。好ましい態様において、該二本鎖は10マッチ毎に1個を超えないミスマッチを含むに過ぎない。特に好ましい態様において、二本鎖の鎖が十分に相補的である場合、該二本鎖はミスマッチを含まない。
【0058】
上記ポリヌクレオチドはC14orf78の15958ヌクレオチド長未満、MYBL2の2731ヌクレオチド長未満、UBE2Sの1207ヌクレオチド長未満、およびUBE2Tの927ヌクレオチド長未満である。例えば、該ポリヌクレオチドは該遺伝子全ての長さにおいて500、200、100、75、50または25ヌクレオチド長未満である。本発明の単離されたポリヌクレオチドはCX遺伝子に対する二本鎖核酸分子を形成するため、あるいは二本鎖核酸分子をコードする鋳型DNAを調製するために有効である。該ポリヌクレオチドが二本鎖核酸分子を形成するために用いられる場合、該ポリヌクレオチドは19ヌクレオチド以上、好ましくは21ヌクレオチド以上であり、およびさらに好ましくは約19から25ヌクレオチドの間の長さを有する。
【0059】
本発明の二本鎖核酸分子は一つ以上の修飾ヌクレオチドおよび/または非ホスホジエステル結合を含んでもよい。当技術分野で周知の化学的修飾は二本鎖核酸分子の安定性、有効性、および/または細胞への取り込みを向上させることができる。当業者は本分子に組み込むことができる他のタイプの化学的改変を理解するであろう(WO03/070744; WO2005/045037)。一実施態様では、修飾は分解に対する耐性または取り込みを向上させるのに利用することができる。そのような改変の例は、ホスホロチオエート結合、2’-O-メチルリボヌクレオチド(特に二本鎖核酸分子のセンス鎖におけるもの)、2’-デオキシ-フルオロリボヌクレオチド、2’-デオキシリボヌクレオチド、「ユニバーサル塩基」ヌクレオチド、5’-C-メチルヌクレオチド、および逆位デオキシ脱塩基残基の取り込み(inverted deoxyabasic residue incorporation)を含む(US20060122137)。他の実施態様では、修飾は二本鎖核酸分子の安定性を向上させるまたはターゲッティング効率を向上させるために用いることができる。修飾は、二本鎖核酸分子の二本の相補鎖間の化学的架橋結合、二本鎖核酸分子の1つの鎖の3’または5’末端の化学修飾、糖鎖修飾、核酸塩基修飾及び/または骨格修飾、2-フルオロ修飾リボヌクレオチドおよび2’-デオキシリボヌクレオチドを含む(WO2004/029212)。他の実施態様では、修飾は標的mRNA及び/または相補的な二本鎖核酸分子鎖において、相補的なヌクレオチドに対する親和性を増大または減少させるのに用いることができる(WO2005/044976)。例えば、非修飾ピリミジンヌクレオチドは、2-チオ、5-アルキニル、5-メチルまたは5-プロピニルピリミジンと置換され得る。さらに、非修飾プリンは、7-deza、7-alkyi又は7-alkenyiプリンに置換され得る。他の実施態様では、二本鎖核酸分子が3’オーバーハングを有する二本鎖核酸分子である場合、3’末端ヌクレオチドオーバーハンギングヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチドにより置換され得る(Elbashir SM et al., Genes Dev 2001 Jan 15, 15(2): 188-200)。更なる詳細については、US20060234970のような公開文書が利用可能である。本発明は、これらの実施例に限定されず、結果として生じる分子が標的遺伝子の発現を阻害する能力を保持する限り、本発明の二本鎖核酸分子に対して、如何なる公知の化学修飾も行い得る。
【0060】
さらに、本発明の二本鎖核酸分子は、DNA及びRNAの双方を含んでもよい。例えば、dsD/R-NA又はshD/R-NAである。特に、DNA鎖とRNA鎖のハイブリッドポリヌクレオチド又はDNA-RNAキメラポリヌクレオチドは、増大した安定性を示す。DNAとRNAとの混合、すなわち、DNA鎖(ポリヌクレオチド)とRNA鎖(ポリヌクレオチド)からなるハイブリッド型二本鎖核酸分子、いずれか又は両方の一本鎖(ポリヌクレオチド)においてDNA及びRNAの両方を含むキメラ型二本鎖核酸分子又は同種のものが、二本鎖核酸分子の安定性を向上させるために形成されてもよい。DNA鎖とRNA鎖のハイブリッドは、標的遺伝子発現細胞に導入されたときに該遺伝子の発現を阻害する活性を有する限り、センス鎖がDNAでありアンチセンス鎖がRNAであるハイブリッドか、又はその逆のハイブリッドのいずれであってもよい。好ましくは、センス鎖ポリヌクレオチドがDNAであり、アンチセンス鎖ポリヌクレオチドがRNAである。同様に、標的遺伝子発現細胞に導入されたときに当該遺伝子の発現を阻害する活性を有する限り、キメラ型二本鎖核酸分子は、センス鎖とアンチセンス鎖の双方がDNAとRNAから構成されるか、又はセンス鎖とアンチセンス鎖のいずれか一方がDNAとRNAから構成されるか、いずれであってもよい。二本鎖核酸分子の安定性を向上させるために、分子は、できるだけ多くのDNAを含むことが好ましく、一方、標的遺伝子の発現阻害を誘導するためには、分子は、十分な発現阻害を誘導する範囲内のRNAであることを要求される。キメラ型二本鎖核酸分子の好ましい実施例は、二本鎖核酸分子の上流部分領域(すなわち、センス鎖又はアンチセンス鎖内の標的配列又はその相補配列に隣接する領域)がRNAである。好ましくは、上流部分領域は、センス鎖の5’側(5’末端)とアンチセンス鎖の3’側(3’末端)を指す。
【0061】
すなわち、いくつかの実施態様においては、アンチセンス鎖の3’末端隣接領域、あるいは、センス鎖の5’末端隣接領域とアンチセンス鎖の3’末端隣接領域の両方がRNAから構成される。例えば、本発明のキメラ又はハイブリッド型二本鎖核酸分子は、以下の組み合わせを含む。
センス鎖: 5’-[---DNA---]-3’
3’-(RNA)-[DNA]-5’ :アンチセンス鎖、
センス鎖: 5’-(RNA)-[DNA]-3’
3’-(RNA)-[DNA]-5’ :アンチセンス鎖、及び
センス鎖: 5’-(RNA)-[DNA]-3’
3’-(---RNA---)-5’ :アンチセンス鎖。
【0062】
上流部分領域は、二本鎖核酸分子のセンス鎖又はアンチセンス鎖内の標的配列又はその相補配列の末端から数えて9〜13ヌクレオチドからなるドメインであることが好ましい。さらに、当該キメラ型二本鎖核酸分子の好ましい例は、ポリヌクレオチドの少なくとも上流側半分の領域(センス鎖の5’側領域とアンチセンス鎖の3’側領域)がRNAであって、他の半分がDNAである19〜21ヌクレオチドの鎖長を有する二本鎖核酸分子を含む。当該キメラ型二本鎖核酸分子において、標的遺伝子の発現阻害効果は、アンチセンス鎖全体がRNAである場合と比較してはるかに高い(US20050004064)。
【0063】
本発明において、二本鎖核酸分子はヘアピン構造を形成してもよい。例えば、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)及びDNAとRNAからなる低分子ヘアピン型(shD/R-NA)である。shRNA又はshD/R-NAは、タイトなヘアピンカーブを形成するRNA配列又はRNAとDNAとの混合配列であり、それは、RNA干渉を介して遺伝子発現を停止させるために用いることができる。shRNA又はshD/R-NAは、一本鎖上にセンス標的配列とアンチセンス標的配列とを含み、それらの配列は、ループ配列によって分離されている。通常、ヘアピン構造は、dsRNA又はdsD/R-NA内で細胞機構により切断され、その後、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に結合する。この複合体は、dsRNAまたはdsD/R-NAの標的配列とマッチするmRNAと結合し、かつそのmRNAを切断する。
【0064】
ヘアピンループ構造を形成するために、任意のヌクレオチド配列からなるループ配列が、センス配列とアンチセンス配列との間に配置され得る。それゆえ、本発明は、一般式5’-[A]-[B]-[A’]-3’を有する二本鎖核酸分子もまた提供する。式中[A]は標的配列に相当する配列を含むセンス鎖であり、[B]は介在性一本鎖であり、[A']は[A]の相補配列を含むアンチセンス鎖である。標的配列は例えば以下から成る群から選択され得る。
C14orf78のSEQ ID NO: 1の、
ヌクレオチド
13846-13864 (SEQ ID NO: 47)、
13909-13927 (SEQ ID NO: 48)、
14001-14019 (SEQ ID NO: 49)、または
14647-14665 (SEQ ID NO: 50);
MYBL2のSEQ ID NO: 3の、
ヌクレオチド
977-995 (SEQ ID NO: 51)、
1938-1956 (SEQ ID NO: 52)、
1940-1958 (SEQ ID NO: 53)、または
1995-2013 (SEQ ID NO: 54);
UBE2SのSEQ ID NO: 5の、
ヌクレオチド
706-724 (SEQ ID NO: 55)、または
528-546 (SEQ ID NO: 56);
UBE2TのSEQ ID NO: 7の、
ヌクレオチド
148-166 (SEQ ID NO: 57)。
【0065】
本発明はこれらの実施例に限定されず、二本鎖核酸分子が標的とするCX遺伝子の発現を抑制する能力を保持する限り、[A]における標的配列はこれらの実施例の配列から修飾され得る。領域[B]から成るループを形成するため、領域[A]は[A']にハイブリダイズする。介在性一本鎖部分[B]、すなわちループ配列は好ましくは3〜23ヌクレオチド長であり得る。例えば、ループ配列は以下の配列から成る群から選択することができる(http://www.ambion.com/techlib/tb/tb_506.html)。さらに、23ヌクレオチドから成るループ配列もまた、活性のあるsiRNAを提供する(Jacque JM et al., Nature 2002 Jul 25, 418(6896): 435-8, Epub 2002 Jun 26):
CCC、CCACC、またはCCACACC: Jacque JM et al., Nature 2002 Jul 25, 418(6896): 435-8, Epub 2002 Jun 26;
UUCG: Lee NS et al., Nat Biotechnol 2002 May, 20(5): 500-5; Fruscoloni P et al., Proc Natl Acad Sci USA 2003 Feb 18, 100(4): 1639-44, Epub 2003 Feb 10;および
UUCAAGAGA: Dykxhoorn DM et al., Nat Rev Mol Cell Biol 2003 Jun, 4(6): 457-67.
【0066】
典型的な、本発明のヘアピンループ構造を有する好ましい二本鎖核酸分子を以下に示す。以下の構造において、ループ配列はAUG、CCC 、UUCG 、CCACC 、CTCGAG 、AAGCUU、CCACACCおよびUUCAAGAGAから成る群から選択することができるが、本発明はそれに限定されない。
gauaugccaucccagauuu-[B]-aaaucugggauggcauauc (標的配列SEQ ID NO: 47);
gucaaauuccccaaauuaa-[B]-uuaauuuggggaauuugac (標的配列SEQ ID NO: 48);
guguccagaggccaauauu-[B]-aauauuggccucuggacac (標的配列SEQ ID NO: 49);
ggcagggcuccaaaagaca-[B]-ugucuuuuggagcccugcc (標的配列SEQ ID NO: 50);
ggagcccaucgguacagau-[B]-aucuguaccgaugggcucc (標的配列SEQ ID NO: 51);
cggcggagccccaucaaga-[B]-ucuugauggggcuccgccg (標的配列SEQ ID NO: 52);
gcggagccccaucaagaaa-[B]-uuucuugauggggcuccgc (標的配列SEQ ID NO: 53);
gaugugaagcugaugaugu-[B]-acaucaucagcuucacauc (標的配列SEQ ID NO: 54);
ugcugaccaucaagugccu-[B]-aggcacuugauggucagca (標的配列SEQ ID NO: 55);
ccauaugcuggaggucugu-[B]-acagaccuccagcauaugg (標的配列SEQ ID NO: 56); および
agagagagcugcacauguu-[B]-aacaugugcagcucucucu (標的配列SEQ ID NO: 57)。
【0067】
さらに、二本鎖核酸分子の阻害活性を増強するために、ヌクレオチド「u」を3’オーバーハングとして、標的配列のアンチセンス鎖の3’末端に付加することができる。付加される「u」の数は少なくとも2個であり、通常、2〜10個、好ましくは2〜5個である。付加された「u」は、二本鎖核酸分子のアンチセンス鎖の3’末端において一本鎖を形成する。
【0068】
二本鎖核酸分子の調製方法は特に限定されないが、当技術分野で公知の化学合成方法を使用するのが好ましい。化学合成方法によると、センスおよびアンチセンス一本鎖ポリヌクレオチドは、二本鎖核酸分子を得る適切な方法によって別々に合成され、その後互いにアニールする。アニーリングの具体的な例は、合成された一本鎖ポリヌクレオチドが少なくとも約3:7、より好ましくは4:6、および最も好ましくは実質的に等モル量のモル比(すなわち、約5:5のモル比)で混合されることを含む。次に、混合液を二本鎖核酸分子が分離する温度まで温め、その後徐々に冷却する。アニールした二本鎖ポリヌクレオチドは当技術分野で公知の通常用いられる方法で精製することができる。精製方法の例は、アガロースゲル電気泳動を利用する方法、または、例えば適切な酵素での分解など、残った一本鎖ポリヌクレオチドが任意で除去される方法を含む。
【0069】
CX配列に隣接する調節配列は、独立してまたは時間的もしくは空間的様式でその発現を調節することができるように、同一あるいは異なっていてもよい。CX遺伝子鋳型を、低分子核RNA(snRNA)U6またはヒトH1 RNAプロモーター由来のRNA polIII転写単位を含むベクターへクローニングすることによって、二本鎖核酸分子を細胞内で転写させることができる。
【0070】
ベクター
本発明はまた、本明細書に記載される一つ以上の二本鎖核酸分子を含むベクター、およびそのベクターを含む細胞も含む。本発明のベクターは、好ましくは発現可能な型で本発明の二本鎖核酸分子をコードする。本明細書において、用語「発現可能な型」は細胞に導入する場合、そのベクターがその分子を発現することを示す。好ましい態様において、ベクターは二本鎖核酸分子の発現に必要な調節要素を含む。本発明のそのようなベクターは本発明の二本鎖核酸分子産生に使用してもよく、または直接癌治療のための活性成分として使用することができる。
【0071】
本発明のベクターは、例えば、両方の鎖の発現を許容するような方法で(DNA分子の転写によって)、調節配列がCX配列に機能的に連結している発現ベクター内にCX配列をクローニングすることにより、作製することができる(Lee NS et al., Nat Biotechnol 2002 May, 20(5): 500-5)。例えば、mRNAに対してアンチセンスであるRNA分子は第一プロモーター(例えば、クローニングされたDNAの3’末端に隣接するプロモーター配列)によって転写され、mRNAに対してセンス鎖であるRNA分子は、第二プロモーター(例えば、クローニングされたDNAの5’末端に隣接するプロモーター配列)によって転写される。センス鎖とアンチセンス鎖は、インビボでハイブリダイズして、該遺伝子をサイレンシングする二本鎖核酸分子構築物を生成する。あるいは、それぞれ二本鎖核酸分子のセンス鎖とアンチセンス鎖をコードする二つのベクター構築物が、センス鎖とアンチセンス鎖をそれぞれ発現するため、およびその後二本鎖核酸分子構築物を形成するために利用される。さらに、クローニングされた配列は二次構造(例えばヘアピン)を有する構築物、すなわち、標的遺伝子のセンス配列および相補的アンチセンス配列の両方を含むベクターの単一の転写産物をコードすることができる。
【0072】
本発明のベクターは、標的細胞のゲノムへ安定的な挿入を成し遂げるために用意することもできる(相同的組み換えカセットベクターの説明に関してThomas KR & Capecchi MR, Cell 1987, 51: 503-12を参照)。例えば、Wolff et al., Science 1990, 247: 1465-8、米国特許第5,580,859号; 第5,589,466号; 第5,804,566号; 第5,739,118号; 第5,736,524号; 第5,679,647号;およびWO 98/04720を参照されたい。DNAベースの送達技術の例は、「裸のDNA」、促進性(ブピバカイン、ポリマー、ペプチド媒介)送達、カチオン脂質複合体、および粒子媒介(「遺伝子銃」)または圧力媒介送達(例えば、米国特許第5,922,687号を参照)を含む。
【0073】
本発明のベクターは、例えば、ウイルス性ベクターまたは細菌性ベクターであってもよい。発現ベクターの例は、ワクチニアまたは鶏痘など、弱毒ウイルス宿主を含む(米国特許第4,722,848号を参照)。このアプローチは例えば二本鎖核酸分子をコードするヌクレオチド配列を発現するベクターとして、ワクチニアウイルスの使用を含む。標的遺伝子を発現する細胞に導入する場合、組換えワクチニアウイルスは該分子を発現し、それによって細胞の増殖を抑制する。使用可能なベクターの他の例は、カルメット・ゲラン桿菌(BCG)を含む。BCGベクターはStover et al., Nature 1991, 351: 456-60に記載されている。他のベクターの広い多様性は、二本鎖核酸分子の治療的投与と産生のために使用される。例えば、アデノおよびアデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、チフス菌ベクター、解毒した炭疽毒素ベクターなどを含む。例えばShata et al., Mol Med Today 2000, 6: 66-71; Shedlock et al., J Leukoc Biol 2000, 68: 793-806; and Hipp et al., In Vivo 2000, 14: 571-85.を参照されたい。
【0074】
癌の治療方法
本発明において、C14orf78に対する4つの異なるdsRNA、MYBL2に対する4つの異なるdsRNA、UBE2Sに対する2つの異なるdsRNA及びUBE2Tに対する1つのdsRNAは、その細胞増殖を阻害する能力を検討するために構築された。C14orf78に対する4つのdsRNAは全て、PK-1およびPanc.02.03などの該遺伝子を発現する細胞において、細胞増殖の抑制と一致して、該遺伝子発現を効果的にノックダウンした(図2a、b)。一方、C14orf78非発現細胞株である、SK-BR-3におけるこれらのdsRNAでは有意な変化は見られなかった(図2c)。MYBL2に対する4つのdsRNAは全て、NSCLC(H358)および食道癌(TE-9)細胞株などの該遺伝子発現細胞においてその発現レベルと細胞増殖活性を著しく減少させた(図3a、b)。一方、MYBL2非発現細胞株である、正常小気道上皮細胞(SAEC)では増殖阻害は検出することができなかった(図3c)。UBE2Sに対する2つのdsRNAは、乳癌(MCF7)、膵臓癌(PK-1)、および膀胱癌(SW780)細胞株などの該遺伝子発現細胞において、その発現レベルと細胞生存率を著しく減少させ(図4a-c)、UBE2Tに対する1つのdsRNAは、乳癌(MCF7)、NSCLC(A549)、膀胱癌(SW780)および前立腺癌(DU-145)細胞株などの、該遺伝子発現細胞において該遺伝子の発現を効果的に抑制した(図5a-d)。一方、UBE2SおよびUBE2Tの両方を発現しない細胞株である、HMEC(正常乳房上皮細胞)では増殖阻害は検出されなかった(図4d、5e)。したがって、CX遺伝子に対するそれぞれ全てのdsRNAでの処理は、インビボでの癌進行を効果的に阻害した(図6aおよびb)。
【0075】
癌細胞の細胞増殖を阻害する本発明の二本鎖核酸分子とベクターのそのような能力は、それらを癌治療のための方法に使用できることを示す。したがって、本発明は、CX遺伝子に対する二本鎖核酸分子または該分子を発現するベクターを投与することによって、CX遺伝子を過剰発現するという特徴を伴う癌を有する患者を治療する方法を提供する。
【0076】
実際、CX遺伝子は対応する正常組織と比較して、癌組織で過剰発現していることが確認された。例えば、C14orf78は膵臓癌18症例のうち11症例、胆管細胞癌25症例のうち14症例、および非小細胞肺癌37症例のうち10症例と、臨床試料で過剰発現していた(T/N 比>=5)。MYBL2は多様な領域の癌で過剰発現していることが明らかにされた。すなわち膵臓癌18症例のうち6症例、臨床膀胱癌34症例のうち18症例、食道癌64症例のうち29症例、非小細胞肺癌(NSCLC)37症例のうち18症例、および小細胞肺癌(SCLC)15症例のうち14症例で上方制御されていた(比>=5)。UBE2SはSCLC全症例、膀胱癌34症例のうち29症例、乳癌81症例のうち27症例、胆管細胞癌25症例のうち9症例、前立腺癌59症例のうち18症例、大腸癌48症例のうち11症例、および膵臓癌18症例のうち12症例と、臨床試料において過剰発現していた。ならびにUBE2Sと類似したタンパク質、ユビキチンE2リガーゼ様UBE2T遺伝子も、多様な型の癌で発現の増大を示した。すなわち胆管細胞癌25症例のうち12症例、SCLC 15症例のうち12症例、膀胱癌34症例のうち23症例、乳癌81症例のうち28症例、NSCLC 37症例のうち13症例、食道癌64症例のうち14症例、および前立腺癌59症例のうち15症例である(表2)。
【0077】
本発明において、その発現レベルを抑制することによって細胞成長または細胞増殖の阻害効果が誘導されるCX遺伝子が同定される。該遺伝子を発現する細胞の細胞増殖は、これらの遺伝子発現を抑制することによって阻害され得る。本発明によるCX遺伝子は以下のいくつかの癌で上方制御されていることが報告された。
C14orf78
膵臓癌(WO2004/31412)
MYBL2
膀胱癌 (WO2006/085684)
食道癌 (WO2007/013671)
NSCLC (WO2004/031413)
膵臓癌 (WO2004/31412)
SCLC (WO2007/013665)
精巣精上皮腫(WO2004/031410)
UBE2S
膀胱癌 (WO2006/085684)
乳癌 (WO2005/028676)
膵臓癌 (WO2004/31412)
前立腺癌 (WO2004/031414)
SCLC (WO2007/013665)
UBE2T
膀胱癌 (WO2006/085684)
乳癌 (WO2005/028676)
食道癌 (WO2007/013671)
NSCLC (WO2004/031413)
SCLC (WO2007/031413)
したがって、好ましい態様において、本発明はC14orf78、MYB2L、UBE2S、およびUBE2Tから成る群から選択されるCX遺伝子の阻害によってこれらの癌を治療または予防する方法を提供する。
【0078】
例えば、本発明は、二本鎖核酸分子を形成するため、互いにハイブリダイズしているセンス鎖およびそれに相補的なアンチセンス鎖を含む、少なくとも一つの単離された二本鎖核酸分子を投与する段階を含む、膵臓癌、胆管細胞癌および非小細胞肺癌から成る群から選択される癌を治療する方法を提供する。該センス鎖はSEQ ID No: 47から50 (C14orf78)から成る群から選択される標的配列に相当する配列を含む。
【0079】
本発明はさらに、二本鎖核酸分子を形成するため、互いにハイブリダイズしているセンス鎖およびそれに相補的なアンチセンス鎖を含む、少なくとも一つの単離された二本鎖核酸分子を投与する段階を含む、膵臓癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、食道癌および精巣精上皮腫から成る群から選択される癌を治療する方法を提供する。該センス鎖はSEQ ID No: 51から54 (MYBL2)から成る群から選択される標的配列に相当する配列を含む。
【0080】
また、本発明は二本鎖核酸分子を形成するため、互いにハイブリダイズしているセンス鎖およびそれに相補的なアンチセンス鎖を含む、少なくとも一つの単離された二本鎖核酸分子を投与する段階を含む、膵臓癌、乳癌、小細胞肺癌、膀胱癌、胆管細胞癌、大腸癌および前立腺癌から成る群から選択される癌を治療する方法も提供する。該センス鎖はSEQ ID No: 55から56 (UBE2S)から成る群から選択される標的配列を含む。
【0081】
さらに、本発明は二本鎖核酸分子を形成するため、互いにハイブリダイズしているセンス鎖およびそれに相補的なアンチセンス鎖を含む、少なくとも一つの単離された二本鎖核酸分子を投与する段階を含む、乳癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、胆管細胞癌、前立腺癌および食道癌から成る群から選択される癌を治療する方法も提供する。該センス鎖は標的配列SEQ ID No: 57 (UBE2T)を含む。
【0082】
したがって、本発明の方法は、CX遺伝子関連疾患、例えば膵臓癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、乳癌、膀胱癌、食道癌、前立腺癌、大腸癌および/または胆管細胞癌などに罹患している、あるいは発症するリスクのある患者のCX遺伝子発現を阻害することに使用され得る。好ましくは、C14orf78に対する二本鎖核酸分子とそれらを発現するベクターは、膵臓癌、胆管細胞癌および/または非小細胞肺癌の治療に使用することができ、MYBL2に対する二本鎖核酸分子とそれらを発現するベクターは、膀胱癌、食道癌、精巣精上皮腫、非小細胞肺癌、膵臓癌および/または小細胞肺癌の治療に使用することができ、UBE2Sに対する二本鎖核酸分子とそれらを発現するベクターは、小細胞肺癌、膀胱癌、乳癌、胆管細胞癌、前立腺癌、大腸癌および/または膵臓癌の治療に使用することができ、ならびにUBE2Tに対する二本鎖核酸分子とそれらを発現するベクターは、胆管細胞癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、乳癌、食道癌および/または前立腺癌の治療に使用することができる。
【0083】
具体的には、本発明は以下の[1]から[29]の方法を提供する。
[1] CX遺伝子を過剰発現する細胞において、該遺伝子発現を阻害する少なくとも一つの単離された二本鎖核酸分子を投与する段階を含む、癌を治療するための方法であって、CX遺伝子がC14orf78、MYBL2、UBE2SおよびUBE2Tから成る群から選択され、二本鎖核酸分子が、二本鎖核酸分子を形成するために互いにハイブリダイズしたセンス鎖とそれに相補的なアンチセンス鎖を含みかつSEQ ID NO: 47 から57から成る群から選択される配列を標的とする、方法。
[2] センス鎖がSEQ ID NO: 47から57から成る群から選択される標的配列に相当する配列を含む、[1]の方法。
[3] 細胞が癌細胞である、[1]の方法。
[4] 治療される癌が、膵臓癌、肺癌、乳癌、膀胱癌、食道癌、精巣精上皮腫、前立腺癌、大腸癌または胆管細胞癌の群から選択される、[1]の方法。
[5] 肺癌が非小細胞肺癌または小細胞肺癌の群から選択される、[4]の方法。
[6] 選択されるCX遺伝子がC14orf78である場合、治療される癌が、膵臓癌、胆管細胞癌または非小細胞肺癌の群から選択される、[1]の方法。
[7] 選択されるCX遺伝子がMYBL2である場合、治療される癌が、膵臓癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、食道癌または精巣精上皮腫である、[1]の方法。
[8] 選択されるCX遺伝子がUBE2Sである場合、治療される癌が、膵臓癌、乳癌、小細胞肺癌、膀胱癌、胆管細胞癌、前立腺癌または大腸癌の群から選択される、[1]の方法。
[9] 選択されるCX遺伝子がUBE2Tである場合、治療される癌が、乳癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、胆管細胞癌、前立腺癌または食道癌である、[1]の方法。
[10] 複数種の二本鎖核酸分子を投与する、[1]の方法。
[11] 複数種の二本鎖核酸分子が同じ遺伝子を標的とする、[10]の方法。
[12] 二本鎖核酸分子が約100ヌクレオチド未満の長さを有する、[2]の方法。
[13] 二本鎖核酸分子が75ヌクレオチド未満の長さを有する、[12]の方法。
[14] 二本鎖核酸分子が約50ヌクレオチド未満の長さを有する、[13]の方法。
[15] 二本鎖核酸分子が約25ヌクレオチド未満の長さを有する、[14]の方法。
[16] 二本鎖核酸分子が約19から約25ヌクレオチド長を有する、[15]の方法。
[17] 二本鎖核酸分子が、介在性一本鎖によって結合しているセンス鎖とアンチセンス鎖の両方を含む単一のポリヌクレオチドから成る、[1]の方法。
[18] 二本鎖核酸分子が一般式5'-[A]-[B]-[A']-3'を有し、式中、[A]がSEQ ID NO:47から57から成る群から選択される標的配列に相当する配列を含むセンス鎖であり、[B]が3から23ヌクレオチドから成る介在性一本鎖であり、[A’]が[A]に相補的な配列を含むアンチセンス鎖である、[17]の方法。
[19] 二本鎖核酸分子がRNAを含む、[1]の方法。
[20] 二本鎖核酸分子がDNAとRNAを両方含む、[1]の方法。
[21] 二本鎖核酸分子がDNAポリヌクレオチドとRNAポリヌクレオチドのハイブリッドである、[20]の方法。
[22] センス鎖とアンチセンス鎖ポリヌクレオチドがそれぞれDNAとRNAから成る、[21]の方法。
[23] 二本鎖核酸分子がDNAとRNAのキメラである、[20]の方法。
[24] センスポリヌクレオチドとアンチセンスポリヌクレオチドの一方または両方の5’末端に隣接する領域がRNAから成る、[23]の方法。
[25] 隣接領域が9から13ヌクレオチドから成る、[24]の方法。
[26] 二本鎖核酸分子が3’オーバーハングを含む、[1]の方法。
[27] 二本鎖核酸分子がベクターによってコードされる、[1]の方法。
[28] ベクターによってコードされた二本鎖核酸分子が一般式5'-[A]-[B]-[A']-3'を有し、式中、[A]がSEQ ID NO:47から57から成る群から選択される標的配列に相当する配列を含むセンス鎖であり、[B]が3から23ヌクレオチドから成る介在性一本鎖であり、[A’]が[A]に相補的な配列を含むアンチセンス鎖である、[27]の方法。
[29] 二本鎖核酸分子が組成物に含まれ、該組成物が分子に加えてトランスフェクション促進剤と薬学的に許容される担体を含む、[1]の方法。
本発明の方法は以下により詳細に記載されるであろう。
【0084】
CX遺伝子を発現する細胞の増殖は、CX遺伝子に対する二本鎖核酸分子、上記分子を発現するベクター、またはそれを含む組成物と細胞を接触させることにより阻害される。細胞にさらに、トランスフェクション剤を接触させる。適したトランスフェクション剤は当技術分野で公知である。「細胞増殖の阻害」という用語は、該分子に曝されていない細胞と比較して、細胞が低い速度で増殖するか、または生存率が低下していることを示す。細胞増殖は、Cell Analyzer 1000の使用およびMTT細胞増殖アッセイのような、当技術分野で公知の方法によって測定される。
【0085】
本発明の二本鎖核酸分子の標的遺伝子を細胞が発現、または過剰発現している限り、本発明の方法によって、いかなる種類の細胞の増殖でも阻害し得る。典型的な細胞は癌細胞を含む。より具体的には、膵臓癌細胞、肺癌細胞、乳癌細胞、膀胱癌細胞、食道癌細胞、前立腺癌細胞、精巣精上皮腫細胞、大腸癌細胞および胆管細胞癌細胞である。
【0086】
したがって、C14orf78、MYBL2、UBE2SまたはUBE2Tに関連した疾患に罹患、または発症のリスクのある患者は、本発明の少なくとも一つの二本鎖核酸分子、該分子の少なくとも一つを発現する少なくとも一つのベクター、あるいは該分子を少なくとも一つ含む少なくとも一つの組成物の投与によって治療され得る。例えば、癌患者、具体的には膵臓癌、肺癌、乳癌、膀胱癌、食道癌、前立腺癌、精巣精上皮腫、大腸癌および/または胆管細胞癌の患者が本発明の方法によって治療され得る。癌のタイプは診断された腫瘍の特定の型に従って、標準的な方法によって特定され得る。膵臓癌は、例えば、磁気共鳴画像法、コンピュータ断層撮影、超音波、または生検によって診断することができる。肺癌は、例えば胸部X線撮影、コンピュータ断層撮影、磁気共鳴画像、気管支鏡検査、針生検または骨スキャンによって診断することができる。乳癌は、例えば臨床検査、画像診断(乳房X線撮影像、乳腺超音波、磁気共鳴画像など)または生検によって診断することができる。膀胱癌は、例えば、NMP22(登録商標)BladderChek(登録商標)、尿検査、尿細胞診、または尿培養によって診断することができる。食道癌は、例えば、針穿刺吸引、生検、血液検査または画像検査、食道鏡検査によって診断することができる。精巣精上皮腫または前立腺癌は、例えば、直腸指診、経直腸超音波、前立腺特異抗原(PSA)および前立腺酸性フォスファターゼ(PAP)試験、腫瘍生検または骨スキャンによって診断することができる。胆管細胞癌は、例えば、肝肥大、断層撮影、超音波または生検によって診断することができる。大腸癌は、例えば、血便、大腸内視鏡検査、軟性S状結腸鏡検査、CEAアッセイ、CTスキャンバリウム注腸二重造影、断層撮影または生検によって診断することができる。より好ましくは、本発明の方法により治療される患者は、RT-PCRまたは免疫測定法により、患者由来の生検中のCX遺伝子発現を検出することによって選択される。好ましくは、本発明の治療前に、例えば、免疫化学的解析またはRT-PCRなどの当技術分野において公知の方法によって、対象由来の生検組織のCX遺伝子の過剰発現を確認する。
【0087】
本発明の、細胞増殖の阻害方法およびそれによる癌治療方法によれば、複数種の二本鎖核酸分子(あるいはそれを発現するベクターまたはそれを含む組成物)を投与する場合、各分子を同じ標的配列に向けることができ、あるいは同じCX遺伝子内または異なるCX遺伝子で異なる標的配列に向けることもできる。例えば、上記方法は、CX遺伝子1、2、3または4個に対する二本鎖核酸分子を利用し得る。または、例えば、上記方法は、同じCX遺伝子内の1、2、3、4、5個またはそれ以上の標的配列に対する二本鎖核酸分子を利用し得る。
【0088】
細胞増殖を阻害するため、本発明の二本鎖核酸分子は、対応するmRNA転写物と該分子の結合を成し遂げるような形態で、細胞に直接導入することができる。または、上述したように、二本鎖核酸分子をコードするDNAをベクターとして細胞に導入することができる。二本鎖核酸分子およびベクターを細胞へ導入するため、FuGENE(Roche diagnostics)、Lipofectamine 2000 (Invitrogen)、Oligofectamine (Invitrogen)、およびNucleofector (Wako pure Chemical)などのトランスフェクション促進剤を使用し得る。
【0089】
対象におけるCX遺伝子発現の減少、癌の大きさの減少、または増殖、罹患率、転移能の阻害のような、臨床的有効性が導かれる場合に、治療は有効であると判定される。治療が予防的に適用される場合、「有効な」とは癌形成を遅らせるか若しくは防止する、または癌の臨床症状を予防若しくは緩和することを意味する。有効性は特定の腫瘍タイプを診断または治療するための任意の公知の方法により決定される。
【0090】
本発明の二本鎖核酸分子は、半化学量論的な量で、標的mRNA(C14orf78、MYBL2、UBE2SまたはUBE2T)を分解すると理解される。いかなる理論にも拘束されず、本発明の二本鎖核酸分子は触媒のように、標的mRNAの分解を生じると信じられている。したがって、標準的な癌治療方法と比較して、非常に少量の二本鎖核酸分子を、治療効果を発現させるために、癌の場所またはその近くへ送達する必要がある。
【0091】
当技術分野における当業者は、投与対象に投与するため、体重、年齢、性別、疾患のタイプ、症状、対象の他の条件のような要因を考慮して、本発明の二本鎖核酸分子の有効量、投与経路、投与は局所的か全身的かを容易に決定することができる。典型的に、本発明の二本鎖核酸分子の有効量は、約1ナノモル(nM)から約100nM、好ましくは約2nMから約50nM、より好ましくは約2.5nMから10nMの癌部分またはその付近での細胞内濃度を含む。より大きな量または少ない量の二本鎖核酸分子を投与できることも企図されている。
【0092】
本発明の方法は、例えば、膵臓癌、肺癌、乳癌、膀胱癌、食道癌、前立腺癌、精巣精上皮腫、大腸癌および胆管細胞癌のような、癌の成長または転移の阻害に使用することができる。具体的には、C14orf78の標的配列を含む二本鎖核酸分子(すなわちSEQ ID NO: 47から50)は膵臓癌、胆管細胞癌および非小細胞肺癌の治療に特に好ましく、MYBL2の標的配列を含む二本鎖核酸分子(すなわちSEQ ID NO: 51から54)は膵臓癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、食道癌、および精巣精上皮腫の治療に特に好ましく、UBE2Sの標的配列を含む二本鎖核酸分子(すなわちSEQ ID NO: 55と 56)は膵臓癌、乳癌、小細胞肺癌、膀胱癌、胆管細胞癌、前立腺癌および大腸癌の治療に特に好ましく、UBE2Tの標的配列を含む二本鎖核酸分子(すなわちSEQ ID NO: 55)は乳癌、胆管細胞癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、前立腺癌および食道癌の治療に特に好ましい。
【0093】
癌治療のために、本発明の二本鎖核酸分子は、二本鎖核酸分子とは異なる薬剤と組み合わせて対象に投与することもできる。また、本発明の二本鎖核酸分子は癌治療のために設計されたその他の治療方法と組み合わせて患者に投与することもできる。例えば、本発明の二本鎖核酸分子は、癌治療または癌転移の予防のために現在使用されている治療方法と組み合わせて投与することもできる(例えば、放射線療法、外科手術および、シスプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、5-フルオロウラシル、アドリアマイシン、ダウロルビシンまたはタモキシフェンなどの化学療法薬を用いた治療)。
【0094】
本発明の方法において、二本鎖核酸分子は、デリバリー試薬と組み合わせた裸の二本鎖核酸分子として、または二本鎖核酸分子を発現する組換えプラスミドもしくはウイルスベクターとしてのいずれかで対象に投与することもできる。
【0095】
本発明の二本鎖核酸分子と組み合わせて投与するための適切なデリバリー試薬は、Mirus Transit TKO脂溶性試薬、LipoTrust(商標)SR、リポフェクチン、リポフェクタミン、セルフェクチン、またはポリカチオン(例えばポリリジン)、またはリポソーム、またはコラーゲン、アテロコラーゲンを含む。好ましいデリバリー試薬はリポソームである。
【0096】
リポソームは、網膜または腫瘍組織などの特定の組織へ二本鎖核酸分子の送達を補助することができ、二本鎖核酸分子の血中半減期を増大することもできる。本発明の使用に適したリポソームは、標準的な小胞形成脂質から形成され、一般的に中性または負に荷電したリン脂質および、コレステロールのようなステロールを含む。脂質の選択は、通常、所望するリポソームの大きさおよび血流におけるリポソームの半減期のような要素を考慮して導かれる。リポソームを調製するための様々な方法が公知であり、例えばSzoka et al., Ann Rev Biophys Bioeng 1980, 9: 467; 米国特許第4,235,871号; 第4,501,728号; 第4,837,028号; 第5,019,369号はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0097】
好ましくは、本発明の二本鎖核酸分子を被包するリポソームは、癌の部位へリポソームを送達できるリガンド分子を含む。腫瘍または血管上皮細胞に広く見られる受容体へ結合するリガンド、例えば、腫瘍抗原または上皮細胞表面抗原に結合するモノクローナル抗体が好ましい。
【0098】
特に好ましくは、本発明の二本鎖核酸分子を被包するリポソームは、例えば構造の表面に結合するオプソニン化阻害部分を有することによって、単核マクロファージおよび細網内皮系によるクリアランスを避けるように、修飾される。一態様において、本発明のリポソームはオプソニン化阻害部分とリガンドの両方を含み得る。
【0099】
本発明のリポソームの調製に使用するオプソニン化阻害部分は、リポソーム膜に結合する、典型的な巨大疎水性ポリマーである。本明細書で使用されるように、例えば脂溶性アンカーの膜自身への挿入によって、あるいは膜脂質の活性基に直接結合することによって膜へ化学的または物理的に付着する場合、オプソニン化阻害部分はリポソーム膜に「結合」する。これらのオプソニン化阻害疎水性ポリマーは、保護的な表層を形成し、マクロファージ単球系(「MMS」)および細網内皮系(「RES」)によるリポソームの取り込みを有意に減少させる。例えば米国特許第4,920,016号に記載されており、その全体の開示は参照として本明細書に組み入れられる。オプソニン化阻害部分で修飾されたリポソームは、したがって、修飾されていないリポソームよりもかなり長く血液循環に残る。この理由のため、上記リポソームは「ステルス」リポソームと呼ばれることがある。
【0100】
ステルスリポソームは多孔性または「漏出性」微小血管系によって供給される組織において蓄積することが知られている。したがって、そのような微小血管系の欠損によって特徴付けられる標的組織、例えば固形癌は、これらのリポソームが効率的に蓄積するだろう。Gabizon et al., Proc Natl Acad Sci USA 1988, 18: 6949-53を参照されたい。また、RESによる取り込みの減少は、肝臓と脾臓の著しい蓄積を防ぐことにより、ステルスリポソームの毒性を低下させる。したがって、オプソニン化阻害部分で修飾された本発明のリポソームは、本発明の二本鎖核酸分子を腫瘍細胞へ送達することができる。
【0101】
リポソームの修飾に適したオプソニン化阻害部分は、好ましくは約500から約40,000ダルトン、より好ましくは約2,000から約20,000ダルトンの分子量を有する水溶性ポリマーである。そのようなポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール(PPG)誘導体を含む。例えば、メトキシPEGまたはPPG、およびPEGまたはPPGステアリン酸;ポリアクリルアミドまたはポリN-ビニルピロリドンのような合成ポリマー;直鎖状、分枝、あるいは樹状ポリアミドアミン;ポリアクリル酸;ガングリオシドGM1のようなガングリオシドと同じく、カルボキシル基またはアミノ基が化学的に結合したポリビニルアルコールおよびポリキシリトールのようなポリアルコールである。PEG、メトキシPEG、またはメトキシPPG、あるいはその誘導体の共重合体も適している。また、オプソニン化を阻害するポリマーは、PEGとポリアミノ酸、多糖類、ポリアミドアミン、ポリエチレンアミンもしくはポリヌクレオチドのいずれかとのブロックコポリマーであり得る。オプソニン化を阻害するポリマーは、アミノ酸またはカルボン酸を含む天然の多糖類、例えば、ガラクツロン酸、グルクロン酸、マンヌロン酸、ヒアルロン酸、ペクチン酸、ノイラミン酸、アルギン酸、カラゲニン;アミノ化多糖類またはオリゴ糖(直鎖状あるいは分枝);または炭酸の誘導体とカルボキシル基の結合の結果生じたものを反応させた、カルボキシル化多糖類またはオリゴ糖であり得る。
【0102】
好ましくは、オプソニン化阻害部分はPEG、PPGまたはそれらの誘導体である。PEGまたはPEG誘導体で修飾されたリポソームは「PEG化リポソーム」とも呼ばれる。
【0103】
オプソニン化阻害部分は、多数の公知技術のいずれか一つによってリポソーム膜へ結合することができる。例えば、PEGのN-ヒドロキシスクシンイミドエステルは、ホスファチジルエタノールアミン脂溶性アンカーに結合することができ、その後膜へ結合する。同様に、デキストランポリマーは、例えばテトラヒドロフランと水が60度で30:12の割合の溶媒混合液とNa(CN)BH3とを用いた還元的アミノ化を介したステアリルアミン脂溶性アンカーで誘導体化され得る。
【0104】
本発明の二本鎖核酸分子を発現するベクターは上記で考察されている。本発明の二本鎖核酸分子を少なくとも一つ発現するそのようなベクターは、直接または、Mirus Transit LT1脂溶性試薬、LipoTrust(商標)SR、リポフェクチン、リポフェクタミン、セルフェクチン、ポリカチオン(例えばポリリジン)またはリポソーム、またはコラーゲン、アテロコラーゲンなどの適切なデリバリー試薬と組み合わせて投与することもできる。本発明の二本鎖核酸分子を発現する、組換えウイルスベクターを患者の癌の領域へ送達する方法は、本技術分野の技術の範囲内である。
【0105】
本発明の二本鎖核酸分子は、二本鎖核酸分子を癌領域へ送達するのに適したいずれかの方法で対象へ投与できる。例えば、二本鎖核酸分子は遺伝子銃、エレクトロポレーション、あるいは他の適切な非経口的または腸内投与経路によって投与することができる。
【0106】
適切な腸内投与経路は、経口、直腸または鼻腔内送達を含む。適切な非経口投与経路は、静脈内投与(例えば静脈内ボーラス注射、静脈注入、動脈内ボーラス注射、動脈注入および脈管構造へのカテーテル点滴)、組織周囲および組織内注入(例えば腫瘍周囲および腫瘍内注射、網膜内注射、または網膜下注射)、皮下注射または皮下注入を含む沈着(浸透圧ポンプによって等)、癌の領域または部位周囲への直接的な処置、例えばカテーテルまたは他の留置手段(例えば、網膜小丸薬または坐薬または、多孔性、非多孔性あるいはゼラチン状物質を含む植込錠)、および吸入を含む。二本鎖核酸分子あるいはベクターの注射または注入は癌の部位あるいはその周辺へ投与することが好ましい。
【0107】
本発明の二本鎖核酸分子は単一の用量あるいは複数の用量で投与できる。本発明の二本鎖核酸分子の投与が注入である場合、注入は単回持続用量または複数回注入によって投与できる。組織への直接的な薬剤の注射は、癌の部位または癌周囲が好ましい。癌組織または癌周囲への複数回の注射は、特に好ましい。
【0108】
当業者は、本発明の二本鎖核酸分子を投与対象へ投与するため、適切な投与計画を直ぐに決定することもできる。例えば、二本鎖核酸分子は対象に一回投与することができ、例えば、癌の部位またはその周囲へ単回注射あるいは沈着として投与できる。あるいは、二本鎖核酸分子は、約3〜約28日、より好ましくは約7〜約10日間、一日当たり一回または二回、対象へ投与できる。好ましい投与計画においては、二本鎖核酸分子は7日間一日一回、癌の部位またはその周囲へ注射される。投与計画が複数回投与を含む場合、対象に投与される二本鎖核酸分子の有効量は、全投与計画で投与された二本鎖核酸分子の全量を含み得ることが理解されよう。
【0109】
組成物
さらに、本発明は本二本鎖核酸分子あるいはその分子をコードするベクターを少なくとも一つ含む医薬組成物を提供する。特に、本発明は以下の[1]から[29]の組成物を提供する。
[1] CX遺伝子を過剰発現する細胞の該遺伝子発現を阻害する少なくとも一つの単離された二本鎖核酸分子を含む癌治療のための組成物であって、CX遺伝子がC14orf78、MYBL2、UBE2SおよびUBE2Tから成る群から選択され、該分子が、互いにハイブリダイズして二本鎖核酸分子を形成するセンス鎖およびそれと相補的なアンチセンス鎖を含みかつSEQ ID NO:47から57から成る群から選択される配列を標的とする、組成物。
[2] センス鎖がSEQ ID NO: 47から57から成る群から選択される標的配列に相当する配列を含む、[1]の癌治療のための組成物。
[3] 細胞が癌細胞である、[1]の組成物。
[4] 治療される癌が膵臓癌、肺癌、乳癌、膀胱癌、食道癌、前立腺癌、精巣精上皮腫、大腸癌および胆管細胞癌の群から選択される、[1]の組成物。
[5] 肺癌が非小細胞肺癌または小細胞肺癌である、[4]の組成物。
[6] 選択されたCX遺伝子がC14orf78の場合、治療される癌が膵臓癌、胆管細胞癌または非小細胞肺癌の群から選択される、[1]の組成物。
[7] 選択されたCX遺伝子がMYBL2の場合、治療される癌が膵臓癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、食道癌または精巣精上皮腫の群から選択される、[1]の組成物。
[8] 選択されたCX遺伝子がUBE2Sの場合、治療される癌が膵臓癌、乳癌、小細胞肺癌、膀胱癌、大腸癌、胆管細胞癌または前立腺癌の群から選択される、[1]の組成物。
[9] 選択されたCX遺伝子がUBE2Tの場合、治療される癌が乳癌、胆管細胞癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、前立腺癌または食道癌の群から選択される、[1]の組成物。
[10] 組成物が複数種の二本鎖核酸分子を含む、[1]の組成物。
[11] 複数種の二本鎖核酸分子が同じ遺伝子を標的とする、[10]の組成物。
[12] 二本鎖核酸分子が約100ヌクレオチド未満の長さを有する、[2]の組成物。
[13] 二本鎖核酸分子が約75ヌクレオチド未満の長さを有する、[12]の組成物。
[14] 二本鎖核酸分子が約50ヌクレオチド未満の長さを有する、[13]の組成物。
[15] 二本鎖核酸分子が約25ヌクレオチド未満の長さを有する、[14]の組成物。
[16] 二本鎖核酸分子が約19から約25ヌクレオチドの間の長さを有する、[15]の組成物。
[17] 二本鎖核酸分子が、介在性一本鎖で結合したセンス鎖およびアンチセンス鎖を含む、単一のポリヌクレオチドから成る、[2]の組成物。
[18] 二本鎖核酸分子が一般式5'-[A]-[B]-[A']-3'を有し、[A]がSEQ ID NO: 47から57から成る群から選択される標的配列に相当する配列を含むセンス鎖であり、[B]が3から23ヌクレオチドから成る介在性一本鎖であり、[A']が[A]の相補的配列を含むアンチセンス鎖である、[17]の組成物。
[19] 二本鎖核酸分子がRNAを含む、[2]の組成物。
[20] 二本鎖核酸分子がDNAおよびRNAを含む、[2]の組成物。
[21] 二本鎖核酸分子がDNAポリヌクレオチドとRNAポリヌクレオチドのハイブリッドである、[20]の組成物。
[22] センス鎖とアンチセンス鎖ポリヌクレオチドがそれぞれDNAとRNAから成る、[21]の組成物。
[23] 二本鎖核酸分子がDNAとRNAのキメラである、[20]の組成物。
[24] 少なくとも、センスとアンチセンスポリヌクレオチドのどちらかまたは両方の5’末端隣接領域がRNAから成る、[23]の組成物。
[25] 隣接領域が9から13ヌクレオチドから成る、[24]の組成物。
[26] 二本鎖核酸分子が3’オーバーハングを含む、[2]の組成物。
[27] 二本鎖核酸分子がベクターによってコードされ、組成物に含まれる、[2]の組成物。
[28] 二本鎖核酸分子が一般式5'-[A]-[B]-[A']-3'を有し、[A]がSEQ ID NO: 47から57から成る群から選択される標的配列に相当する配列を含むセンス鎖であり、[B]が3から23ヌクレオチドから成る介在性一本鎖であり、[A']が[A]の相補的配列を含むアンチセンス鎖である、[27]の組成物。
[29] トランスフェクション促進剤と薬学的に許容される担体を含む、[2]の組成物。
【0110】
本発明の二本鎖核酸分子は、好ましくは、当技術分野で公知の技術に従って、対象に投与する前に医薬組成物として製剤化される。本発明の医薬組成物は、少なくとも滅菌およびパイロジェンフリーの状態で特徴付けられる。本明細書で用いられるように、「薬学的製剤」はヒトおよび動物の使用のための製剤を含む。本発明の医薬組成物の調製方法は、例えば、その全体が参照として本明細書に組み入れられる、Remington's Pharmaceutical Science, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa. (1985),に記載されているように、当技術分野の技術の範囲内である。
【0111】
本薬学的製剤は、本発明の二本鎖核酸分子またはそれをコードするベクターを少なくとも一つ含み(例えば、0.1‐90%重量)、あるいは生理的に許容される担体培地と混合された、上記分子の生理的に許容される塩を含む。好ましい生理的に許容される担体培地は、水、緩衝水、通常の生理的食塩水、0.4%生理的食塩水、0.3%グリシン、ヒアルロン酸などである。
【0112】
本発明によれば、上記組成物は複数種の二本鎖核酸分子を含み得る。各分子は同じCX遺伝子または異なるCX遺伝子内で、同じ標的配列または異なる標的配列に向けてもよい。例えば、上記組成物は1、2、3または4個のCX遺伝子に向けられた二本鎖核酸分子を含んでもよい。または、例えば、上記組成物は、同じCX遺伝子内の1個、2個、3個、4個、5個またはそれ以上の標的配列に向けられた二本鎖核酸分子を含んでもよい。
【0113】
さらに、本組成物は1つまたは複数の二本鎖核酸分子をコードするベクターを含んでもよい。例えば、上記ベクターは本二本鎖核酸分子の1つ、2つあるいは幾つかの種類をコードし得る。また、本組成物は、各ベクターが異なる二本鎖核酸分子をコードする、複数種のベクターを含んでもよい。
【0114】
さらに、本二本鎖核酸分子は本組成物中で、リポソームとして含まれ得る。リポソームの詳細は「癌治療の方法」の項を参照されたい。
【0115】
本発明の医薬組成物はまた、従来の薬学的賦形剤および/または添加剤を含み得る。適切な薬学的賦形剤は、安定化剤、抗酸化剤、浸透圧調節剤、緩衝液、およびpH調節剤を含む。適切な添加剤は、生理学的に適合する緩衝液(例えば、トロメタミン塩酸塩)、キレートの添加(例えば、DTPAまたはDTPAビスアマイド等)、またはカルシウムキレート複合体(例えば、カルシウムDTPA、CaNaDTPAビスアマイド)、または任意でカルシウムあるいはナトリウム塩(例えば、塩化カルシウム、アスコルビン酸カルシウム、グルコン酸カルシウムまたは乳酸カルシウム)の添加を含む。本発明の医薬組成物は、液剤での使用のために包装することができ、あるいは凍結乾燥することもできる。
【0116】
固形組成物には、従来の無毒な固相担体が使用できる。例えば、薬剤グレードのマンニトール、乳酸、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石、セルロース、グルコース、ショ糖、炭酸マグネシウムなどである。
【0117】
例えば、経口投与のための固形医薬組成物は、上記に挙げられた任意の担体および賦形剤と、10-95%、好ましくは25-75%の本発明の一つ以上の二本鎖核酸分子とを含むことができる。エアロゾル(吸入)投与のための医薬組成物は、上述したようなリポソームに被包された一つ以上の本発明の二本鎖核酸分子0.01-20重量%、好ましくは1-10重量%と、噴霧剤とを含むことができる。担体は、例えば鼻腔内送達のためのレシチンなどを所望により含むこともできる。
【0118】
上記に加えて、本組成物は、本二本鎖核酸分子のインビボでの機能を阻害しない限り、他の薬学的活性成分を含んでよい。例えば、上記組成物は癌治療のために従来用いられてきた、化学療法薬を含んでもよい。
【0119】
他の態様において、本発明はまた、CX遺伝子を発現する癌の治療のための、医薬組成物の製造における、本発明の二本鎖核酸分子の使用を提供する。例えば、本発明は、CX遺伝子を発現する癌の治療のための医薬組成物の製造のための、CX遺伝子を過剰発現する細胞内でCX遺伝子の発現を阻害する二本鎖核酸分子の使用に関連する。CX遺伝子はC14orf78、MYBL2、UBE2SおよびUBE2Tから成る群から選択され、該分子は、互いにハイブリダイズして二本鎖核酸分子を形成するセンス鎖およびそれと相補的なアンチセンス鎖を含みかつSEQ ID NO: 47‐57から成る群から選択された配列を標的とする。
【0120】
また、本発明はさらに、CX遺伝子を発現する癌を治療するための医薬組成物を製造するための方法およびプロセスを提供する。該方法またはプロセスは、薬学的あるいは生理学的に許容される担体と、CX遺伝子を過剰発現する細胞内でCX遺伝子の発現を阻害する二本鎖核酸分子を製剤化するための工程を含む。CX遺伝子はC14orf78、MYBL2、UBE2SおよびUBE2Tから成る群から選択され、該分子は活性成分として、互いにハイブリダイズして二本鎖核酸分子を形成するセンス鎖とそれと相補的なアンチセンス鎖を含みかつSEQ ID NO:47‐57からなる群から選択される配列を標的とする。
【0121】
他の態様において、本発明はまた、CX遺伝子を発現する癌の治療のための薬学的組成物を製造する方法またはプロセスを提供する。該方法またはプロセスは、薬学的または生理学的に許容される担体と活性成分を投与する工程を含む。活性成分は、CX遺伝子を過剰発現した細胞においてCX遺伝子の発現を阻害する二本鎖核酸分子であり、CX遺伝子はC14orf78、MYBL2、UBE2SおよびUBE2Tから成る群から選択され、該分子は、互いにハイブリダイズして二本鎖核酸分子を形成するセンス鎖とそれと相補的なアンチセンス鎖を含みかつSEQ ID NO:47‐57からなる群から選択される配列を標的とする。
【0122】
実施例
本発明は以下の実施例においてさらに詳細に説明されているが、請求項において説明された本発明の範囲を限定するものではない。
[実施例1]一般的方法
組織の調製
臨床の膀胱癌、胆管細胞癌、大腸癌、食道癌、前立腺癌、小細胞肺癌(SCLC)、膵臓癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、および乳癌試料は、外科的切除をした34人(膀胱癌)、25人(胆管細胞癌)、48人(大腸癌)、64人(食道癌)、59人(前立腺癌)、15人(SCLC)、18人(膵臓癌)、37人(NSCLC)、81人(乳癌)から手術前同意を得た後に入手した。
【0123】
cDNAマイクロアレイ
cDNAマイクロアレイスライドの作製は他で説明されている(Zembutsu H et al., Cancer Res 2002 Jan 15, 62(2): 518-2.; Nishidate T et al., Int J Oncol 2004 Oct, 25(4): 797-819)。様々な癌発現プロファイル解析のため、本発明者らは23,040個(大腸癌、軟組織肉腫、および精巣精上皮腫、前立腺癌)または27,648個(乳癌および膀胱癌)または36,864個(膵臓癌、NSCLC、SCLCおよび食道癌)のcDNAスポットを含むスライドの二つ組みセットを調製し、実験的変動を減少させた。簡潔には、癌発現解析のため、全RNAが腫瘍を有する患者およびそれに相当する正常組織から抽出された。T7ベースのRNA増幅は、マイクロアレイ実験のためにRNAの適切な量を得るために実施された。増幅したRNAの一定分量は、適切な量のCy5-dCTPまたはCy3-dCTP(Amersham Biosciences, Buckinghamshire, United Kingdom)で逆転写により標識された。
【0124】
ハイブリダイゼーション、洗浄および検出は以前に記載されたように実施された(Zembutsu H et al., Cancer Res 2002 Jan 15, 62(2): 518-27; Nishidate T et al., Int J Oncol 2004 Oct, 25(4): 797-819)。癌(膵臓癌、NSCLCおよび乳癌)で通常上方制御される遺伝子を検出するため、マイクロアレイの全ての遺伝子の全体的な発現パターンが最初にスクリーニングされ、検査された癌症例の20%以上に存在する、5.0倍以上の発現比を有する遺伝子を選択した。最終的に、高度に特異的に癌を標的とする治療標的を得るため、本発明者らは、正常ヒト組織のインハウス発現データベースを参照することによって、正常組織では発現していない遺伝子を選択した。
【0125】
細胞株および細胞培養
本発明者らは、肺癌、乳癌、膵臓癌、および正常上皮細胞株を調製し、インビトロアッセイおよび標的遺伝子発現レベルを評価するためのmRNAの抽出用にそれらを適切な培地で維持した。肺癌細胞株: A549、EBC-1、H1373、H1435、H1650、H1666、H1781、H1793、H2170、H226、H358、H520、H522、H596、PC-14、SK-LU-1、SW900,およびSBC5; 乳癌細胞株: BT-20、BT-474、BT-549、HCC1143、HCC1500、HCC1599、HCC1937、MCF-7、MDA-MB-453、MDA-MB-453S、SK-BR-3、T47D、および ZR-75-1; 膵臓癌細胞株: capan-1、capan-2、HPAF-II、KLM-1、KP-1N、MiaPaCa-2、Panc.02.03、PK-1、PK-45P、PK-59、PK-9、SUIT-2、および Panc-1; ならびに正常上皮細胞株: 小気道上皮細胞(SAEC)および哺乳類上皮細胞 (HMEC)。
【0126】
半定量的RT-PCR
選択した遺伝子は、正常器官(心臓、肝臓、肺および腎臓)、癌細胞株、それに相当する正常組織および正常上皮細胞株における発現レベルに関して半定量的RT-PCR実験によって評価した。具体的には、各細胞株、正常器官およびsiRNAを導入した細胞からのmRNA 3μgの一定分量をオリゴd(T)16プライマー(Roche)とSuperscript II (Invitrogen)を用いて一本鎖cDNAに逆転写した。アルファ-アクチン(ACTB)、ベータ2マイクログロブリン(ベータ2MG)およびチューブリンアルファ3(TUBA3)の発現は、肺癌、乳癌および膵臓癌それぞれの内部対照として用いた。インターフェロン誘導膜貫通型タンパク質1(IFITM1)は、各siRNAの非特異的活性の指標として用いた。PCR反応は、増幅の直線期内に産物強度を保証するサイクル数に最適化された。各cDNA混合物は、以下のようなプライマーセットによるその後のPCR増幅のために希釈した。
C14orf78:
順方向プライマー: 5'-GAGAAGGAAGAGGGTGAACTGAT-3' (SEQ ID NO: 9);
逆方向プライマー: 5'-CAGTGGACATGGATAGATGAGAA-3' (SEQ ID NO: 10);
MYBL2:
順方向プライマー: 5'-GAAGCCACTTCACGACACCT-3' (SEQ ID NO: 11);
逆方向プライマー: 5'-ATCCTAAGCAGGGTCTGAGATG-3' (SEQ ID NO: 12);
UBE2S:
順方向プライマー: 5'-TACTTCCTGACCAAGATCTTCCA-3' (SEQ ID NO: 13);
逆方向プライマー: 5'-TTAGAGACAGAGTTGGAGGGAGG-3' (SEQ ID NO: 14);
UBE2T:
順方向プライマー: 5'-CAAATATTAGGTGGAGCCAACAC-3' (SEQ ID NO: 15);
逆方向プライマー: 5'-TAGATCACCTTGGCAAAGAACAC-3' (SEQ ID NO: 16);
ACTB:
順方向プライマー: 5'-AGGATGCAGAAGGAGATCAC-3' (SEQ ID NO: 17);
逆方向プライマー: 5'-AGAAAGGGTGTAACGCAACT-3' (SEQ ID NO: 18);
ベータ2MG:
順方向プライマー: 5'-CACCCCCACTGAAAAAGATGA-3' (SEQ ID NO: 19);
逆方向プライマー: 5'-TACCTGTGGAGCAACCTGC-3' (SEQ ID NO: 20);
TUBA3:
順方向プライマー: 5'-AAGGATTATGAGGAGGTTGGTGT-3' (SEQ ID NO: 21);
逆方向プライマー: 5'-CTTGGGTCTGTAACAAAGCATTC-3' (SEQ ID NO: 22);
IFITM1:
順方向プライマー: 5'-GATCAACATCCACAGCGAGA-3' (SEQ ID NO: 23);
逆方向プライマー: 5'-TGTCACAGAGCCGAATACCA-3' (SEQ ID NO: 24)。
【0127】
RNAi実験
4つの候補遺伝子(C14orf78、MYBL2、UBE2SおよびUBE2T)に対するdsRNAオリゴ10 pmol/ウェルを、Lipofectamine2000(商標)(Invitrogen)を用いて、96ウェルマイクロタイタープレート(Becton Dickinson)上で、標的遺伝子を発現する癌細胞と対照細胞へトランスフェクションした。培養細胞の初期濃度は各細胞株により異なっていた。例えば、PK-1 (3,000-4,000細胞/ウェル)、SK-BR-3 (4,000細胞/ウェル)、H358 (5,000-6,000細胞/ウェル)、SAEC (9,000細胞/ウェル)、MCF-7 (2,500-3,500 細胞/ウェル)およびHMEC (7,000細胞/ウェル)である。SiControl I (Dharmacon)は、siRNAの特異性とは独立して誘導される細胞死の誤解釈を避けるため、陰性対照として用いた。SiTox (Dharmacon)はトランスフェクション効率を確認するため、陽性対照として用いた。各候補標的配列の様々な遺伝子特異的siRNA配列は、治療薬として配列を最適化するため、試験された。トランスフェクション後、各siRNAは癌細胞におけるその増殖抑制効果を検討された。siRNAの標的遺伝子をノックダウンする能力はRT-PCRによって解析した。siRNAの非特異的活性は、一般的な二本鎖RNA導入で誘発されるインターフェロン応答に対する指標である、IFITM1の上方制御をモニタリングすることで確認した。
【0128】
インビボsiRNA処理
スクリーニングされたMYBL2遺伝子に対する4つのsiRNA(C7、C13またはC15)をLipoTrust(商標)SRの脂質構造(Hokkaido System Science)に封入し、H358異種移植マウスへ3日毎に腫瘍内部へ注入した。簡潔には、各siRNA 50μg/mLをLipoTrust(商標)SR 0.5μmol/mLと混合し、所望のsiRNAを被包したリポソームを形成するため、静かに超音波処理を行った。リポソーム/siRNA 400μLはヒト肺癌細胞を皮下移植したマウスの癌治療に用いられた。腫瘍成長の減少は毎日モニターされた。また、C14orf78(C8、C10、C11およびC24)、MYBL2(C16)、UBE2S(C8 とC9)およびUBE2T(C10)に対するスクリーニングされたsiRNA配列は、担体としてアテロコラーゲン(AteloGene(商標), KOKEN)を用いて、その治療可能性を評価された。AteloGene(商標)等量とsiRNA 10μMは、回転子(4rpm)を用いて摂氏4度で20分間、互いに静かに混合させた。次に、混合液は気泡を取り除くため、摂氏4度で1分間遠心分離した(10,000 rpm)。混合液200μLはマウスの肩で、3日ごとに腫瘍内部へ注入された。siRNAの抗癌作用は、どちらの場合も最初の注入から7日目に評価した。
【0129】
細胞増殖アッセイ
カルセインで可視化された生細胞の濃度は、INセルアナライザー1000(GE Healthcare Bio-Science KK)を用いて、siRNAトランスフェクションから48時間、72時間、96時間または120時間後に評価した。
【0130】
[実施例2]正常器官で発現がないあるいは低く、臨床の癌試料において上方制御された遺伝子のスクリーニング
cDNAマイクロアレイ解析は上述のように実施した(Zembutsu H et al., Cancer Res 2002 Jan 15, 62(2): 518-27; Nishidate T et al., Int J Oncol 2004 Oct, 25(4): 797-819)。癌組織と対応する正常上皮の間の発現パターンの比較により、臨床の癌組織で一般的に上方制御されている遺伝子を選択した。次に、半定量的RT-PCR解析が、癌細胞株では高度な発現が検出されるが、対応する正常器官と正常重要器官では検出されない癌特異的遺伝子を選択するため、実施された(図1)。正常器官で高度に発現している遺伝子は、治療において阻害される標的遺伝子として使用される場合、想定される致命的な副作用の誘導を避けるため、排除される。
【0131】
[実施例3]候補物質のためのカスタマイズされたsiRNAの設計
各候補遺伝子のsiRNA配列は、siRNAの候補配列を選択するため、Ambion, Inc.ウェブサイト(http://www.ambion.com/techlib/misc/siRNA_finder.html)で入手可能なsiRNA設計ツールを用いて設計した(Tuschl T et al., Genes Dev 1999 Dec 15, 13(24): 3191-7)。各siRNAは癌細胞および対照細胞へ導入され、細胞増殖の抑制に最も効果的な配列を得るため、相対的な細胞生存率が評価された(表1)。
【0132】
(表1)4種の候補遺伝子に対して設計したsiRNA配列

【0133】
[実施例4]遺伝子特異的siRNAの最適化とそのサイレシング特異性の評価
C14orf78は、膵臓癌18症例中11例、胆管細胞癌25症例中14例、および非小細胞肺癌37症例中10例 (表2)といったように、臨床試料において過剰発現しているため(T/N 比>=5)、膵臓癌の治療標的である。C14orf78に対して最適化されたsiRNA全て(C8、C10、C11およびC24)、細胞増殖の抑制と一致して、PK-1とPanc.02.03における遺伝子発現を効率的にノックダウンした(図2a、b)。本発明者らはさらに、上記遺伝子に対する二本鎖RNA(dsRNA)によってインターフェロン経路の活性化を検討した。インターフェロン誘導膜貫通型タンパク質1(IFITM1)は、二本鎖RNAの導入により、結果として好ましくない非特異的細胞死となる、インターフェロン応答の指標である。この発明において、IFITM1の発現はほとんど一致して変化していなかった(図2a、b)。さらに、C14orf78遺伝子を低レベルで発現または発現していない細胞株であるSK-BR-3の増殖は、siRNAの注入によって有意な変化は示さなかった(図2c)。したがって、C14orf78に対する本siRNAの特異性が確認された。
【0134】
MYBL2遺伝子は多様な癌において過剰発現していることが明らかにされた。具体的には、上記遺伝子は、膀胱癌34症例中18例、食道癌64症例中29例、非小細胞肺癌(NSCLC)37症例中18例、膵臓癌18症例中6例、および小細胞肺癌(SCLC)15症例中14例といったように、臨床試料で上方制御されていた(比>=5)(表2)。さらに、MYBL2遺伝子は精巣精上皮腫でも上方制御していることが報告されている(WO2004/031410)。最近の報告では、MYBL2タンパク質は、細胞周期の進行に関連する転写因子として機能することが示されている(Garcia P & Frampton J, J Cell Sci 2006 Apr 15, 119(Pt 8): 1483-93, Epub 2006 Mar 21)。cDNAマイクロアレイによって得られた発現プロファイルと、MYBL2の既存の報告は、上記遺伝子の過剰発現が細胞増殖を刺激し、癌の様々なタイプの発癌または腫瘍形成に寄与することを示唆している。siRNAによって誘導された増殖抑制はかなり厳密で、特異的siRNAに限定されたが、MYBL2に対してスクリーニングされたsiRNA(C7、C13、C15およびC16)は全て、NSCLC(H358)と食道癌(TE-9)細胞株において遺伝子発現レベルと細胞増殖を有意に減少させた(図3a、b)。実際、インターフェロン反応の活性化は観察することができなかった(図3a、b)。さらに、増殖阻害は、MYBL2非発現細胞株である正常小気道上皮細胞(SAEC)でも観察することができなかった(図3c)。したがって、MYBL2遺伝子はNSCLCだけでなく、SCLC、食道癌、膀胱癌、精巣精上皮腫および膵臓癌でもsiRNA治療の優れた標的である。したがって、本発明のMYBL2特異的siRNAはこれらの癌の治療のために強力な手段として役立つ。
【0135】
UBE2S遺伝子は臨床試料において過剰発現していた。SCLCの全症例、膀胱癌34症例中29例、乳癌81症例中27例、胆管細胞癌25症例中9例、前立腺癌59症例中18例、大腸癌48症例中11例、および膵臓癌18症例中12例である(表2)。ユビキチンE2リガーゼ様タンパク質をコードするUBE2S遺伝子と同様に、胆管細胞癌25症例中12例、SCLC 15症例中12例、膀胱癌34症例中23例、乳癌81症例中28例、NSCLC 37症例中13例、食道癌64症例中14例および前立腺癌59症例中15例といったように、UBE2T遺伝子も様々な型の癌で発現の増加を示した(表2)。UBE2Sに対して選択されたsiRNA(C8とC9)は、乳癌(MCF7)、膵臓癌(PK-1)および膀胱癌(SW780)細胞株においてその遺伝子発現レベルと細胞生存率を有意に減少させた(図4a-c)。インターフェロン反応活性は観察できなかった(図4a-c)。したがって、二本鎖RNA導入による所望されない非特異的細胞死は、本siRNAによって誘導されるようには見えない。同様に、UBE2Tに対するsiRNA(C10)は、乳癌(MCF7)、NSCLC(A549)、膀胱癌(SW780)、および前立腺癌(DU-145)における遺伝子発現を効果的に抑制した(図5-1a-b、5-2c-d)。さらに、UBE2SもUBE2Tも発現しない細胞株であるHMEC(正常乳腺上皮細胞)では、増殖阻害の検出は観察されなかった(図4d、5-2e)。したがって、UBE2SはSCLC、乳癌、膵臓癌、膀胱癌、大腸癌、胆管細胞癌および前立腺癌を含む広く多様な癌の治療標的であり、UBE2Tは肺癌、膀胱癌、乳癌、胆管細胞癌、食道癌および前立腺癌の標的である。
【0136】
(表2)cDNAマイクロアレイデータベースからの臨床癌組織における、スクリーニングされた遺伝子の過剰発現(T/N比>=5)頻度

【0137】
[実施例5]標的遺伝子に対するスクリーニングされたsiRNAのインビボ治療効果
スクリーニングされたsiRNAは、インビボモデルを用いてその治療的有効性を評価した。MYBL2 siRNA (C7、C13、C15およびC16)は、市販のリポソームまたはアテロコラーゲンに封入され、H358細胞を移植したヌードマウスへ腫瘍内注射された。それらsiRNAによる治療的有効性は、毎日腫瘍サイズの推移をモニタリングすることによって評価した。LipoTrust(商標)SRに封入したMYBL2 siRNA(C7、C13およびC15)で処理した7日目の腫瘍サイズは、対照と比較して有意に抑制されていた(* p<0.05、** p<0.01: スチューデントのt検定)(図6-1a)。他方では、腫瘍モデルマウスに腫瘍内注射した場合、MYBL2(C16)、C14orf78(C8、C10、C11およびC24)、UBE2S(C8およびC9)ならびにUBE2T(C10)に対するsiRNAとアテロコラーゲンの複合体は、対照siRNAと比較して腫瘍成長を顕著に抑制した。有意な差異と+/- SDはまた、スチューデントのt検定で算出された(* p<0.05; ** p<0.01) (図6-2b)。したがって、スクリーニングされた、C14orf78、MYBL2、UBE2SおよびUBE2Tに対する全てのsiRNAは、多様な癌の有望な治療剤となり得る。
【0138】
考察
近年、遺伝子特異的なsiRNAを用いた癌治療の新しいアプローチが臨床試験で使用されている(Bumcrot D et al., Nat Chem Biol 2006 Dec, 2(12): 711-9)。RNAiは主要な技術基盤の間に、既に地位を得たかのように見える(Putral LN et al., Drug News Perspect 2006 Jul-Aug, 19(6): 317-24; Frantz S, Nat Rev Drug Discov 2006 Jul, 5(7): 528-9; Dykxhoorn DM et al., Gene Ther 2006 Mar, 13(6): 541-52)。
【0139】
上述したように(「一般方法」参照)、本発明者らは癌でのみ発現し、正常器官では発現していない遺伝子を同定した。本発明の二本鎖核酸分子が治療に使用される場合、標的遺伝子の発現パターンは、かなり限定的な動態で癌に高度に特異的であるため、重篤な副作用が生じる可能性はないだろう。したがって、癌特異的遺伝子を標的とする本発明の二本鎖核酸分子は、有害な副作用がまったくない抗癌剤の開発のために強力な手段である。
【0140】
C14orf78タンパク質は、6,287アミノ酸残基から成り、PDZドメインを有する巨大膜状タンパク質である。C14orf78タンパク質のファミリータンパク質であるAHNAK1タンパク質のPDZドメインは、L型電位制御カルシウムチャネルのサブユニットに結合している。したがって、C14orf78タンパク質のPDZドメインは、カルシウム輸送に関連するものを含む、いくつかのチャネルタンパク質のC末端残基と相互作用すると推定されてきた(Komuro A et al., Proc Natl Acad Sci USA 2004 Mar 23, 101(12): 4053-8, Epub 2004 Mar 8)。既に上述したように、AHNAK1ヌルマウスはその表現型において異常を示さず、AHNAK1タンパク質は細胞の発生または増殖に必須ではないことが確定された。しかし、C14orf78ノックアウトマウスの表現型における報告はない(Komuro A et al., Proc Natl Acad Sci USA 2004 Mar 23, 101(12): 4053-8, Epub 2004 Mar 8)。したがって、C14orf78タンパク質が細胞の発生と増殖において重要な役割を果たしているかどうかは不明である。本発明において、C14prf78タンパク質は膵臓癌細胞株の細胞増殖または生存に不可欠な因子として示された。悪性PDACの治療のため、本発明はC14orf78遺伝子を標的とするsiRNAを含む治療剤を提供する。
【0141】
ゲノムワイドcDNAマイクロアレイによって同定された、多くの過剰発現した遺伝子の間で(Kikuchi T et al., Oncogene 2003 Apr 10, 22(14): 2192-205)、MYBL2遺伝子が、cDNAマイクロアレイによって検出された癌細胞における明らかなシグナル強度(正常肺と比較して5倍以上)の理由から、さらなる詳細な解析のために選択された。正常成人組織において限定された発現は、治療の副作用を考慮すると、癌の治療のためのsiRNAの標的として使用する分子にとって重要な要素である。さらに、様々な臨床の癌の遺伝子発現プロファイルのインハウスデータベースは、下記に記載されるように、膀胱癌、食道癌、NSCLC、SCLC、膵臓癌(「結果」を参照)、および軟部組織肉腫(データ示さず)および精巣腫瘍(「結果」を参照)におけるMYBL2遺伝子の有意な過剰発現(比>=5)を明らかにした。MYBL2ヌル(-/-)マウスの従来の研究は、MYBL2タンパク質が胚発生に必須であることを示した。死んだマウスは約E4.5であった(Tanaka Y et al., J Biol Chem 1999 Oct 1, 274(40): 28067-70)。MYBL2遺伝子発現は正常成人組織ではほとんど検出されなかったが、胚性組織および癌において大量の発現が確認された。そのため、MYBL2遺伝子は発癌および腫瘍形成に関連し、有害な副作用のリスクが低い、広い多様な癌の治療の良好な分子標的として役立つ可能性がある。
【0142】
UBE2TとUBE2Sタンパク質の両方ともUBCcドメイン(ユビキチン結合酵素E2、触媒ドメインホモログ)を含むことがSMARTプログラム (http://smart.embl-heidelberg.de/) によって予測され、これは二つのタンパク質がモノユビキチン化を介した潜在的なE2ユビキチン酵素活性を有し、乳癌の腫瘍形成に関連することを示唆した。多くの従来の研究は、E3リガーゼの分解が結果として癌の進行となることを報告しており(Yen L et al., Cancer Res 2006 Dec 1, 66(23): 11279-86; Ohh M, Neoplasia 2006 Aug, 8(8): 623-9; Lisztwan J et al., Genes Dev 1999 Jul 15, 13(14): 1822-33)、E2リガーゼが癌の進行に関連する可能性があることを示す報告はわずかしかない(Jung CR et al., Nat Med 2006 Jul, 12(7): 809-16, Epub 2006 Jul 2; Okamoto Y et al., Cancer Res 2003 Jul 15, 63(14): 4167-73)。既存の研究は、UBE2ファミリータンパク質(UBE2s)が、タンパク質分解経路に寄与する、推定ユビキチン結合酵素(E2リガーゼ)であることを報告している。しかし、癌におけるUBE2sの機能の詳細は未だ明らかではなく、それらがタンパク質分解経路におけるE2リガーゼ活性を有するのみか、またはインビボでの他の特性を有するかを明らかにする研究が待望されている。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明者らは、C14orf78、MYBL2、UBE2SおよびUBE2T遺伝子を特異的に標的とする二本鎖核酸分子によって、細胞増殖が抑制されることを示した。したがって、これらの新規二本鎖核酸分子は抗癌剤の開発のための有用な候補である。例えば、C14orf78、MYBL2、UBE2SまたはUBE2Tタンパク質の発現を防止するか、またはその活性を阻止する物質は、抗癌剤として、特に肺癌、乳癌、膀胱癌、胆管細胞癌、食道癌、前立腺癌または精巣精上皮腫の治療のための抗癌剤として治療的有用性を示す可能性がある。
【0144】
本発明はその特定の態様を参照して詳細に記載されているが、ここにおいて、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の変更および改変がなされる可能性があることは、当業者にとって明白であろう。本明細書において言及した全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全体が参照として本明細書に組み入れられる。矛盾する場合は、定義を含めて本明細書が優先する。さらに、材料、方法、および実施例は説明目的に限られ、制限するものであるとは解釈されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞に導入された場合に、C14orf78、MYBL2、UBE2SおよびUBE2Tからなる群から選択されるCX遺伝子の発現と該CX遺伝子を発現する細胞の細胞増殖とを阻害する、単離された二本鎖核酸分子であって、SEQ ID NO: 47から57から成る群から選択される配列を標的とする、単離された二本鎖核酸分子。
【請求項2】
SEQ ID NO: 47から57から成る群から選択される標的配列に一致する配列を含むセンス鎖を有する、請求項1記載の単離された二本鎖核酸分子。
【請求項3】
約19から約25ヌクレオチドの間の長さを有する、請求項2記載の二本鎖核酸分子。
【請求項4】
介在性一本鎖によって結合したセンス鎖とアンチセンス鎖を両方含む単一のポリヌクレオチドから成る、請求項1記載の二本鎖核酸分子。
【請求項5】
一般式5'-[A]-[B]-[A']-3'を有する二本鎖核酸分子であって、[A]がSEQ ID NO: 47から57から成る群から選択される標的配列に一致する配列を含むセンス鎖であり、[B]が3から23ヌクレオチドから成る介在性の一本鎖であり、かつ[A']が[A]と相補的な配列を含むアンチセンス鎖である、請求項4記載の二本鎖核酸分子。
【請求項6】
3’オーバーハングを含む、請求項1記載の二本鎖核酸分子。
【請求項7】
請求項1記載の二本鎖核酸分子を発現するベクター。
【請求項8】
二本鎖核酸分子が、一般式5'-[A]-[B]-[A']-3'を有し、[A]がSEQ ID NO: 47から57から成る群から選択される標的配列に一致する配列を含むセンス鎖であり、[B]が3から23ヌクレオチドから成る介在性の一本鎖であり、かつ[A']が[A]と相補的な配列を含むアンチセンス鎖である、請求項7記載のベクター。
【請求項9】
CX遺伝子を過剰発現する細胞でCX遺伝子の発現を阻害する少なくとも一つの単離された二本鎖核酸分子を投与する段階を含む、癌を治療するための方法であって、CX遺伝子がC14orf78、MYBL2、UBE2SおよびUBE2Tからなる群から選択され、二本鎖核酸分子がSEQ ID NO: 47から57から成る群から選択される配列を標的とする、方法。
【請求項10】
センス鎖がSEQ ID NO: 47から57から成る群から選択される標的配列に一致する配列を含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
治療される癌が、以下から成る群から選択される、請求項9記載の方法:
(i) 選択されたCX遺伝子がC14orf78である場合、膵臓癌、胆管細胞癌および非小細胞肺癌、
(ii) 選択されたCX遺伝子がMYBL2である場合、膵臓癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、食道癌および精巣精上皮腫、
(iii) 選択されたCX遺伝子がUBE2Sである場合、膵臓癌、乳癌、前立腺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、胆管細胞癌および大腸癌、
(iv) 選択されたCX遺伝子がUBE2Tである場合、乳癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、胆管細胞癌、前立腺癌および食道癌。
【請求項12】
一つ以上の二本鎖核酸分子が投与される、請求項9記載の方法。
【請求項13】
二本鎖核酸分子が長さ約19から約25ヌクレオチドを有する、請求項10記載の方法。
【請求項14】
二本鎖核酸分子が、介在性一本鎖により結合したセンス鎖とアンチセンス鎖を含む単一のポリヌクレオチドから成る、請求項9記載の方法。
【請求項15】
二本鎖核酸分子が一般式5'-[A]-[B]-[A']-3'を有し、[A]がSEQ ID NO: 47から57から成る群から選択される標的配列に一致する配列を含むセンス鎖であり、[B]が3から23ヌクレオチドから成る介在性の一本鎖であり、かつ[A']が[A]と相補的な配列を含むアンチセンス鎖である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
二本鎖核酸分子が3’オーバーハングを含む、請求項9記載の方法。
【請求項17】
二本鎖核酸分子がベクターによってコードされる、請求項9記載の方法。
【請求項18】
ベクターによってコードされる二本鎖核酸分子が一般式5'-[A]-[B]-[A']-3'を有し、[A]がSEQ ID NO: 47から57から成る群から選択される標的配列に一致する配列を含むセンス鎖であり、[B]が3から23ヌクレオチドから成る介在性の一本鎖であり、かつ[A']が[A]と相補的な配列を含むアンチセンス鎖である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
二本鎖核酸分子が、該分子に加えてトランスフェクション促進剤と薬学上許容される担体をさらに含む組成物に含まれる、請求項9記載の方法。
【請求項20】
CX遺伝子を過剰発現する細胞でCX遺伝子の発現を阻害する少なくとも一つの精製された二本鎖核酸分子を含む、癌を治療するための組成物であって、CX遺伝子がC14orf78、MYBL2、UBE2SおよびUBE2Tからなる群から選択され、二本鎖核酸分子がSEQ ID NO: 47から57から成る群から選択される配列を標的とする、組成物。
【請求項21】
二本鎖核酸分子がSEQ ID NO: 47から57から成る群から選択される標的配列に一致する配列を含むセンス鎖を有する、請求項20記載の組成物。
【請求項22】
治療される癌が以下から成る群から選択される、請求項20記載の組成物:
(i) 選択されたCX遺伝子がC14orf78である場合、膵臓癌、胆管細胞癌および非小細胞肺癌、
(ii) 選択されたCX遺伝子がMYBL2である場合、膵臓癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、食道癌および精巣精上皮腫、
(iii) 選択されたCX遺伝子がUBE2Sである場合、膵臓癌、乳癌、胆管細胞癌、前立腺癌、小細胞肺癌、膀胱癌および大腸癌、
(iv) 選択されたCX遺伝子がUBE2Tである場合、乳癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、胆管細胞癌、前立腺癌および食道癌。
【請求項23】
組成物が二本鎖核酸分子を一つ以上含む、請求項20記載の組成物。
【請求項24】
二本鎖核酸分子が約19から約25ヌクレオチドの長さを有する、請求項21記載の組成物。
【請求項25】
二本鎖核酸分子が介在性一本鎖により結合したセンス鎖とアンチセンス鎖を含む単一のポリヌクレオチドから成る、請求項20記載の組成物。
【請求項26】
二本鎖核酸分子が一般式5'-[A]-[B]-[A']-3'を有し、[A]がSEQ ID NO: 47から57から成る群から選択される標的配列に一致する配列を含むセンス鎖配列であり、[B]が3から23ヌクレオチドから成る介在性の一本鎖であり、かつ[A']が[A]と相補的な配列を含むアンチセンス鎖である、請求項25記載の組成物。
【請求項27】
二本鎖核酸分子が3’オーバーハングを含む、請求項20記載の組成物。
【請求項28】
二本鎖核酸分子がベクターによってコードされ、組成物に含まれる、請求項20記載の組成物。
【請求項29】
二本鎖核酸分子が一般式5'-[A]-[B]-[A']-3'を有し、[A]がSEQ ID NO: 47から57から成る群から選択される標的配列に一致する配列を含むセンス鎖であり、[B]が3から23ヌクレオチドから成る介在性の一本鎖であり、かつ[A']が[A]と相補的な配列を含むアンチセンス鎖である、請求項28記載の組成物。
【請求項30】
組成物がトランスフェクション促進剤と薬学上許容される担体を含む、請求項20記載の組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5−1】
image rotate

【図5−2】
image rotate

【図6−1】
image rotate

【図6−2】
image rotate


【公表番号】特表2010−531133(P2010−531133A)
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552961(P2009−552961)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際出願番号】PCT/JP2008/001665
【国際公開番号】WO2009/001562
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(502240113)オンコセラピー・サイエンス株式会社 (142)
【Fターム(参考)】