説明

癌用抗新生血管系調製物

【課題】様々な抗血管新生因子および血管新生に対して直接使用される化学療法薬を提供することを課題とする。
【解決手段】腫瘍関連新生血管系に対する細胞性免疫応答を誘導するための免疫原性組成物であって、前記組成物は、腫瘍関連新生血管系によって発現される抗原に相当する少なくとも1つの免疫原を含む、組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
癌治療は生物医学の前進にも関わらず依然として取組み甲斐がある。近年、かなりの将来性を示す2つのアプローチ:治療用ワクチンおよび抗血管新生について記載されている。
【背景技術】
【0002】
治療用ワクチンは、癌性組織が概してある特定の抗原(集約的に腫瘍関連抗原(TuAA))を優先的に発現するという観察に依るものである。TuAAとしては、通常癌が由来する組織により選択的に発現されるタンパク質(分化抗原(differentiation antigen))、発達の種々の段階に関連したタンパク質(腫瘍胎児性抗原および癌−精巣抗原)、異常染色体再配列により創出されるタンパク質、または発癌性ウイルスに由来するタンパク質が挙げられる。次に、腫瘍細胞を死滅させることが可能な、細胞性免疫、特に細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を刺激するように意図されるワクチン中の免疫原として、これらのTuAA、またはそれらの断片を使用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
抗血管新生アプローチは、腫瘍がその継続性成長を支持するために血液供給を補充することが必要であることを利用する。これを成し遂げるために、腫瘍は、新たな血管の成長を促進する血管新生因子を分泌する。抗血管新生アプローチは、腫瘍の栄養分の供給を崩壊させて、腫瘍を死滅させるか、または少なくとも腫瘍の成長を制限させることにねらいを定めている。このアプローチでの試みは、様々な抗血管新生因子および血管新生に対して直接使用される化学療法薬を探し求めている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書中に開示する本発明は、腫瘍関連新生血管系(TuNV)を標的とする細胞性免疫応答を刺激するように設計した組成物に関する。本発明の一実施形態では、上記組成物はCTL応答を刺激する。かかる組成物は、標的抗原の1つまたは複数のエピトープを包含し得る。この実施形態のある態様は具体的に、ハウスキーピングエピトープを包含し、別の態様は具体的に、免疫エピトープまたはエピトープクラスターを包含し、別の態様は具体的に、ハウスキーピングおよび免疫エピトープを組み合わせる。
【0005】
本発明の実施形態は、上記組成物の標的抗原としての、前立腺特異的膜抗原(PSMA)の使用に関する。この実施形態の態様は、直接ポリペプチドとして、またはエピトープの発現を付与することが可能な核酸として提供される、PSMAに由来する様々なエピトープを包含する。他の実施形態は、他のTuNV関連抗原の使用に関する。
【0006】
本発明の他の実施形態では、組成物は、単一配合物または治療方法に両供給源に由来する免疫原を組み合わせることで、癌性細胞により発現されるTuNVおよびTuAAの両方に対して誘導される。
【0007】
本発明の組成物の前臨床評価は、移植ヒト皮膚微小血管内皮細胞(HDMEC)から形成される微小血管を保有するSCIDマウスへの免疫化T細胞の養子移入を用いて成し遂げることができる。前臨床評価はまた、マウスとヒトとの間で保存されるエピトープから構成される組成物で免疫化したHLAトランスジェニックマウスの使用により成し遂げることができる。
【0008】
本発明の実施形態は、細胞媒介性免疫を評価する方法に関する。本方法は、免疫不全の哺
乳動物に血管細胞を移植する工程と、上記哺乳動物において免疫応答を確立する工程と、上記哺乳動物における細胞性免疫を判定するための特徴をアッセイする工程とを含み得る。上記細胞性免疫は、例えば、新生血管系抗原に対して誘導され得る。上記新生血管系抗原は、例えば、腫瘍関連新生血管系で優先的に発現され得、また好ましい実施形態では、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、血管内皮成長因子受容体2(VEGFR2)等であり得る。上記確立する工程は、例えば、上記哺乳動物へのT細胞の養子移入により、また上記哺乳動物を抗原と接触させること等により達成され得る。上記細胞性免疫は、細胞傷害性Tリンパ球により媒介され得る。上記血管細胞は、例えば、ヒト皮膚微小血管内皮細胞(HDMEC)、テロメラーゼで形質転換された内皮細胞等のような血管内皮細胞であり得る。上記免疫不全の哺乳動物は、例えば、SCIDマウスのようなマウスであり得る。上記特徴づける工程は、例えば、血管形成、血管崩壊、血管密度、および宿主哺乳動物の血液を運搬する血管の比率等のようなパラメータを評価することを含み得る。
【0009】
本方法は、上記マウスに腫瘍細胞または腫瘍組織を移植する工程をさらに含む。上記特徴づける工程は、例えば、腫瘍の存在、腫瘍成長、腫瘍の大きさ、腫瘍出現の速度、腫瘍樹立を阻害または防止するのに必要とされるワクチンの用量、腫瘍血管形成、および該腫瘍内の壊死組織の比率等のようなパラメータを評価することを含み得る。
【0010】
本方法は、第1群の哺乳動物および第2群の哺乳動物を供給する工程と、上記第1群において細胞性免疫を確立する工程と、上記第2群において細胞性免疫を差次的に確立する工程と、上記第1群の哺乳動物から得られる結果を、上記第2群の哺乳動物から得られる結果と比較する工程とをさらに含み得る。上記第1群の上記細胞性免疫は、例えば、ナイーブ免疫および無関係エピトープに対する免疫等を含み得る。
【0011】
他の実施形態は、細胞性免疫を評価する方法に関し、新生血管系抗原に対して誘導される免疫を含む。本方法は、MHCトランスジェニック哺乳動物にMHCトランスジェニック腫瘍細胞を移植または注射する工程と、上記哺乳動物において免疫応答を確立する工程と、上記哺乳動物における細胞性免疫を判定するための特徴をアッセイする工程とを含み得る。上記MHCトランスジェニック哺乳動物は、例えば、HLA−A2トランスジェニック哺乳動物のようなHLAトランスジェニック哺乳動物であり得る。好ましい実施形態では、上記哺乳動物はマウスであり得る。上記細胞性免疫は、ワクチン接種により確立され得、好ましい実施形態では、上記ワクチン接種は、例えば、上記腫瘍細胞の移入の前に、移入と同時に、または移入後に行われ得る。好ましい実施形態では、上記細胞性免疫は、細胞傷害性Tリンパ球により媒介され得る。上記新生血管系抗原は、腫瘍関連新生血管系により優先的に発現され得、また腫瘍関連抗原でもあり得る。好ましくは、上記抗原は、フィブロネクチンのED−Bドメインであり得る。上記特徴づける工程は、例えば、腫瘍の存在、腫瘍成長、腫瘍の大きさ、腫瘍出現の速度、腫瘍樹立を阻害または防止するのに必要とされるワクチンの用量、腫瘍血管形成、該腫瘍内の壊死細胞の比率等を含むパラメータを評価することを含み得る。本方法は、第1群の哺乳動物および第2群の哺乳動物を供給する工程と、上記第1群において細胞性免疫を確立する工程と、上記第2群において細胞性免疫を差次的に確立する工程と、上記第1群の哺乳動物から得られる結果を、上記第2群の哺乳動物から得られる結果と比較する工程とをさらに含み得る。上記第1群の上記細胞性免疫は、ナイーブ免疫、無関係エピトープに対する免疫等を含み得る。
【0012】
さらなる実施形態は、腫瘍関連新生血管系により差次的に発現される抗原に対して誘導される細胞性免疫応答を誘発するように哺乳動物を免疫化する工程を含む、腫瘍性疾患を治療する方法に関する。上記差次的に発現される抗原は、例えば、前立腺特異的膜抗原、血管内皮成長因子受容体2(VEGFR2)等のようなタンパク質であり得る。他の好ましい実施形態では、上記抗原はフィブロネクチンのED−Bドメインであり得る。上記免疫化は、例えば、上記タンパク質の配列に由来する少なくとも1つのペプチド、上記タンパ
ク質またはペプチドの発現を付与することが可能な核酸等を用いて実施され得る。上記少なくとも1つのペプチドは、例えば、ハウスキーピングエピトープを含み得、好ましい実施形態では、上記ハウスキーピングエピトープと共通C末端であり得る。本方法は、免疫エピトープを含む少なくとも1つのさらなるペプチドをさらに含み得る。本方法は、上記哺乳動物が癌性細胞に対して直接的に活性な抗腫瘍療法で治療されるさらなる工程を含み得る。上記抗腫瘍療法は、腫瘍関連抗原に対する免疫化であり得る。好ましくは、上記細胞性免疫応答はCTL応答を含み得る。
【0013】
他の実施形態は免疫学的組成物に関する。免疫学的組成物は、腫瘍関連新生血管系により発現される抗原に相当する少なくとも1つの免疫原を含み得、上記組成物は、細胞性免疫応答を誘発することができる。上記免疫原は、レシピエントと同種の細胞に関連しない免疫原であり得る。上記抗原は、例えば、前立腺特異的膜抗原、血管内皮成長因子受容体2(VEGFR2)等のようなタンパク質であり得る。他の好ましい実施形態では、上記抗原はフィブロネクチンのED−Bドメインであり得る。上記免疫原は少なくとも1つのペプチドを含み得る。上記組成物は、上記抗原の発現を付与することが可能な核酸を含み得、上記抗原はタンパク質またはペプチドである。上記組成物は、ハウスキーピングエピトープを含む少なくとも1つのペプチドを含み得、また好ましい実施形態では、上記少なくとも1つのペプチドは、上記ハウスキーピングエピトープと共通C末端であり得る。また、上記組成物は、免疫エピトープを含む少なくとも1つのペプチドをさらに含み得る。上記組成物は、腫瘍関連抗原に相当する少なくとも1つの免疫原を含み得る。好ましい実施形態では、上記細胞性免疫応答はCTL応答を含み得る。
【0014】
実施形態は、抗腫瘍ワクチン設計の方法に関する。本方法は、腫瘍関連新生血管系により差次的に発現される抗原を同定する工程と、上記抗原の構成成分をワクチンに組み込む工程とを含み得る。上記構成成分は、例えば、上記抗原のポリペプチド断片、上記抗原または上記抗原の断片をコードする核酸等を含み得る。
【0015】
さらなる実施形態は、研究モデルを作製する方法に関する。本方法は、免疫不全の哺乳動物に血管細胞および腫瘍細胞を移植することを含み得る。上記腫瘍細胞および血管細胞は、互いに隣接して移植され得る。上記血管細胞は、例えば、HDMECのような血管内皮細胞であり得る。好ましい実施形態では、上記血管内皮細胞はテロメラーゼで形質転換され得る。上記免疫不全の哺乳動物は、例えば、SCIDマウスのようなマウスであり得る。
【0016】
他の実施形態は、研究モデルに関する。上記研究モデルは、免疫不全の哺乳動物を含み得る。上記哺乳動物は、移植血管細胞および移植腫瘍細胞を含み得る。上記血管細胞および上記腫瘍細胞は互いに隣接して移植され得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】PSMA163-192プロテアソーム消化物のT=60分の時点のアリコットのN末端プールシーケンシングの結果を示す図である。
【図1B】PSMA163-192プロテアソーム消化物のT=60分の時点のアリコットのN末端プールシーケンシングの結果を示す図である。
【図1C】PSMA163-192プロテアソーム消化物のT=60分の時点のアリコットのN末端プールシーケンシングの結果を示す図である。
【図2】HLA−A2:PSMA168-177、およびHLA−A2:PSMA288-297に関する結合曲線を、対照とともに示す図である。
【図3】PSMA281-310プロテアソーム消化物のT=60分の時点のアリコットのN末端プールシーケンシングの結果を示す図である。
【図4】HLA−A2:PSMA461-469、HLA−A2:PSMA460-469、およびHLA−A2:PSMA663-671に関する結合曲線を、対照とともに示す図である。
【図5】PSMA463-471反応性HLA−A1+CD8+T細胞を検出する(γ)−IFNベースのELISPOTアッセイの結果を示す図である。
【図6】HLA−A1制限認識を実証する、抗HLA−A1mAbによる図10で使用されるT細胞の反応性の阻止を示す図である。
【図7】HLA−A2:PSMA663-671に関する結合曲線を、対照とともに示す図である。
【図8】HLA−A2:PSMA662-671に関する結合曲線を、対照とともに示す図である。
【図9】ED−B 29−38ペプチドで免疫化したHHD−A2マウスからのCTLによるエピトープ特異的溶解を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書中に開示する本発明の実施形態は、組成物、組成物またはワクチンの設計の方法、および腫瘍の新生血管系に対して誘導される細胞性免疫応答、好ましくはT細胞応答、より好ましくはCTL応答の生成に関する治療方法を提供する。かかる方法および組成物は、癌の治療および防止に特に有用である。他の実施形態は組成物評価モデルに関する。
【0019】
組成物、組成物設計、および組成物を用いた治療
本発明の実施形態は、腫瘍新生血管系(TuNV)に対して誘導される細胞性免疫応答、特にT細胞応答、具体的にCTL応答の生成のための、ワクチンを含む免疫学的組成物に関する。「腫瘍新生血管系」は、広範囲に、腫瘍塊中またはその周辺に見られる任意の血管系、腫瘍成長を支持するか、またはそれに必要な血管系等を包含することを意味する。本明細書中の論考は、概して腫瘍および腫瘍新生血管系について言及するが、本発明の実施形態はまた、不適切な血管新生に関連した他の状態または病状に適用することができることを留意すべきであり、このことを当業者は理解されよう。
【0020】
これまで、抗腫瘍ワクチンの設計は、悪性細胞自体により発現される抗原に集中してきた。しかしながら、大きな腫瘍は複雑な構造であり、単に細胞の均質塊ではない。すべての細胞、特に迅速に成長する細胞は、栄養分(酸素、グルコース、アミノ酸等)の供給、ならびに代謝的に活性でありかつ無傷のままであるための代謝廃棄物除去の手段を必要とする。これは通常、身体の様々な器官からの血液およびリンパの流れにより達成される。細胞レベルでは、身体の組織は、毛細血管(そこから栄養分および廃棄産物が拡散により周辺細胞と交換され得る小血管)の微細ネットワークにより浸透される。拡散は比較的短距離に有効である。毛細血管床が広範囲であるため、概して細胞はせいぜい毛細血管から数細胞離れたところに位置されるにすぎない。腫瘍が単にその悪性細胞の繁殖により成長する場合、塊の内部のこれらの細胞はすぐに自分自身を支えることが不可能となる。実際に、血管新生化していない腫瘍の内部は壊死組織を含有することが多い。したがって、無抑制で成長するために、腫瘍は、新たな血管の内部成長を促進する因子、すなわちTuNVを分泌する。TuNVは壊死組織を他の組織と区別する抗原を発現するため、癌性細胞自体を直接標的とする代わりに、TuNVに対して誘導される治療用組成物で癌を治療することができる。適切なTuNV抗原は、例えば概して新生血管系で、またはTuNVにより優先的に発現されるものを包含し得る。
【0021】
本発明の幾つかの実施形態では、上記組成物は、例えばエピトープペプチド(単数または複数)を包含することができる。エピトープクラスターおよびタンパク質断片に包埋された免疫エピトープを提供してもよい。適正なC末端を有するハウスキーピングエピトープを提供することができる。本発明の他の実施形態では、上記組成物は、例えばpAPC上でのこれらのエピトープの発現を付与することが可能な核酸を含むことができる。
【0022】
好ましい実施形態では、上記組成物は、治療される哺乳動物のリンパ系に直接投与することができる。このことは、ポリペプチドおよび核酸両方のベースの組成物に適用させることができる。このタイプの投与方法および関連技術は、1999年9月1日に出願された米国特許出願第09/380,534号、および2001年2月2日に出願されたそれらの一部継続出願である米国特許出願第09/776,232(ともに、「CTL応答を誘導する方法(A METHOD OF INDUCING A CTL RESPONSE)」という表題)に開示されている。
【0023】
好ましい実施形態では、本発明の組成物の作用による腫瘍中の血管の崩壊により、腫瘍中の細胞すべてを排除することができる。しかしながら、微小転移巣を含む小腫瘍は通常血管新生化されない。さらに、代わりとして腫瘍塊に浸透するチャネルを介した血流に依ると思われる血管新生化されていない腫瘍が報告されている(Maniotis, A.J., et al. Am. J. Pathol. 155: 739-752, 1999)。したがって、他の実施形態では、上記組成物は概して、癌細胞すべてを根絶し得ない腫瘍制御剤として有効である。したがって、本発明は、腫瘍を排除するため、腫瘍成長を制御するため、腫瘍組織量を減少させるため、臨床状態全体を改善するため等のツールを提供する。幾つかの実施形態では、癌性細胞を直接標的とする他の治療とこれらの組成物を組み合わせることが望ましい場合もある。さらに、内皮細胞および癌細胞の両方から構成される腫瘍中の血管系は本質的にモザイクであり得る証拠が存在する(Chang, Y.S., et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:14608-14613, 2000)。したがって、本発明の幾つかの実施形態では、組成物治療行程の後に生物または化学療法剤の投与を行うことができる。特に好ましい実施形態では、治療は、抗TuNV組成物の投与と同時に、またはその後に、TuAA指向性組成物を投与することを包含することができる。
【0024】
上述のように、組成物に適切なTuNV抗原は、例えば概して新生血管系で、またはTuNVにより優先的に発現されるものを包含することができる。TuAAを発見するための様々な技法が当該技術分野で既知である。これらの技法の例としては、ディファレンシャルハイブリダイゼーションおよびサブトラクティブハイブリダイゼーション(マイクロアレイの使用を含む)、発現クローニング、SAGE(遺伝子発現の段階解析)、SEREX(組換え発現クローニングによる抗原の血清学的同定)、in situ RT−PCT、免疫組織化学(PSMAの場合のような)、EST解析、バルク組織、切片組織、および/または顕微解剖組織の種々の使用等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの方法および他の方法の利用は、免疫学的組成物の抗原として使用され得る標的細胞内に含まれる遺伝子および遺伝子産物を同定するのに必要な技法を当業者に提供する。その技法は、標的細胞が癌細胞であるか、または内皮細胞であるかどうかに関わらず、TuAA発見に適用可能である。任意の同定された抗原をエピトープに関して精査することができ、それを本発明の実施形態に使用することができる。
【0025】
血管系の内層を構成する内皮細胞は、ハウスキーピングプロテアソームを発現することができる。したがって、内皮細胞を標的とする組成物は、ハウスキーピングプロテアソームの消化産物に相当するペプチド(すなわち、ハウスキーピングエピトープ)、またはペプチドの発現を付与する核酸から構成され得る。免疫系の活性化細胞により分泌されるIFN−γ(ガンマ)は、標的細胞中の免疫プロテアソームの発現を誘発することができる。一般に、免疫プロテアソームは、プロフェッショナル抗原提示細胞(pAPC)において構成的である。したがって、標的細胞が内部に存在する状態に関わらず、標的細胞を認識することが可能なCTLが確実に存在するために、CTL誘発組成物中に免疫エピトープまたはエピトープクラスターを包含することが有用であり得る。これは、抗原提示機能を容易に呈する内皮細胞を用いた場合に特に真実であり得る。これらの概念は、2000年4月28日に出願された米国特許出願第09/560,465号、2001年11月7日に出願された同第10/005,905号、およびその継続出願である2001年12月7日に出願された米国特許出願第 号(代理人整理番号CTLIMM.21CP1C)(
これらはそれぞれ、「抗原提示細胞におけるエピトープ同調(EPITOPE SYNCHRONIZATION IN ANTIGEN PRESENTING CELLS)」という表題である)により詳細に説明されている。
【0026】
上述のように、免疫学的組成物(好ましい実施形態ではワクチンを含む)は、例えばTuNV抗原およびエピトープを含むことができる。エピトープは、1つまたは複数のハウスキーピングエピトープおよび/または1つまたは複数の免疫エピトープを含むことができる。上記組成物に有用な特定エピトープは、2000年4月28日に出願された「エピトープ発見方法(METHOD OF EPITOPE DISCOVERY)」という表題の米国特許出願第09/561,074号に開示される方法を用いて同定することができる。例えば、幾つかのMHC制限要素に結合することが既知であるか、またはそれが予測されるペプチド配列を、共通C末端であるものを同定するために、プロテアソーム消化により産生される断片と比較することができる。
【0027】
ED−BおよびPSMAのエピトープを含む本発明の実施形態のための有用なエピトープの例は、2002年3月7日に本出願と同日付けで出願された「エピトープ配列(EPITOPE
SEQUENCES)」という表題の米国仮特許出願第 号(代理人整理番号CTLIMM.027PR)、ならびにそれぞれ「エピトープ配列(EPITOPE SEQUENCES)」という表題の2001年4月6日に出願された出願番号第60/282,211号、および2001年11月7日に出願された出願番号第60/337,017号の2つの米国仮特許出願に開示されている。これらの出願はそれぞれ、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0028】
PSMAは、幾つかの実施形態で標的とされ得るTuAAの一例である。PSMAは、ほとんどの腫瘍型の新生血管系で発現されるが、正常組織の血管内皮によって発現されない(Chang, S.M. et al., Cancer Res. 59(13):3192-8, 1999; Clin Cancer Res. 10:2674-81, 1999)。PSMAは膜抗原であり、したがって、モノクローナル抗体(mAb)によりPSMA発現TuNVを攻撃することが可能であり得る。しかしながら、癌治療におけるmAbの有効性は、当初予想されていたよりも困難であることが証明されている。さらに、他の抗原がTuNVに関連することが発見されているように、抗原の多くは血管系表面で発現されないことが証明され、抗原をmAb攻撃しにくいようにしている。
【0029】
他方で、T細胞、特にCTLは、主要組織適合性複合体(MHC)制限抗原提示の過程により細胞の内部構成成分の発現を監視する。T細胞活性化ワクチンおよび自己抗原に対する組成物の有効性を判定するためのパラメータは難解である。適切なエピトープ選択に関する重要な特徴およびパラメータの幾つかは、2001年4月28日に出願した「抗原提示細胞におけるエピトープ同調(EPITOPE SYNCHRONIZATION IN ANTIGEN PRESENTING CELLS)」という表題の米国特許出願第09/560,465号、2001年4月28日に出願された「エピトープ発見方法(METHOD OF EPITOPE DISCOVERY)」という表題の米国特許出願第09/561,074号、および2001年4月28日に出願された「エピトープクラスター(EPITOPE CLUSTERS)」という表題の米国特許出願第09/561,571号に開示されている。エピトープ同調を促進するDNAワクチン設計の特徴は、2001年4月28日に出願された「標的関連抗原のエピトープをコードする発現ベクター(EXPRESSION VECTORS ENCODING EPITOPES OF TARGET-ASSOCIATED ANTIGENS)」という表題の米国特許出願第09/561,572号、および2001年11月7日に出願された「標的関連抗原のエピトープをコードする発現ベクターおよびそれらの設計方法(EXPRESSION VECTORS ENCODING EPITOPES OF TARGET-ASSOCIATED ANTIGENS AND METHODS FOR THEIR DESIGN)」という表題の米国仮出願第60/336,968号に開示されている。ワクチン送達の特に有効な手段は、1999年9月1日に出願された米国特許出願第09/380,534号、およびその一部継続出願である2001年2月2日に出願された米国特許出願第09/776,232号(ともに、「CTL応答を誘導する方法(A METHOD OF INDUCING A CTL RESPONSE)」という表題)に記載されている。上述の参照文献はそれぞれ、その全体が参
照により本明細書に援用される。
【0030】
実施形態で使用することができるTuNV抗原の別の例は、フィブロネクチン、好ましくはED−Bドメインである。フィブロネクチンは、発生上調節性の選択的スプライシングを受け、ED−Bドメインは主に癌胎児性組織で使用される単一エクソンによりコードされる。Matsuura, H. and S. Hakomori Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:6517-6521, 1985; Carnemolla, B. et al. J. Cell Biol. 108:1139-1148, 1989; Loridon-Rosa, B. et al. Cancer Res. 50:1608-1612, 1990; Nicolo, G. et al. Cell Differ. Dev. 32:401-408, 1990: Borsi, L. et al. Exp. Cell Res. 199:98-105, 1992; Oyama, F. et al. Cancer Res. 53:2005-2011, 1993; Mandel, U et al. APMIS 102:695-702, 1994; Farnoud, M.R. et al. Int. J. Cancer 61:27-34, 1995; Pujuguet, P. et al. Am. J. Pathol. 148:579-592, 1996; Gabler, U. et al. Heart 75:358-362, 1996; Chevalier, X. Br. J. Rheumatol. 35:407-415, 1996; Midulla, M. Cancer Res. 60:164-169, 2000。
【0031】
ED−Bドメインはまた、新生血管系のフィブロネクチンでも発現される。Kaczmarek, J. et al. Int. J. Cancer 59:11-16, 1994; Castellani, P. et al. Int. J. Cancer 59:612-618, 1994; Neri, D. et al. Nat. Biotech. 15:1271-1275, 1997; Karelina, T.V. and A.Z. Eisen Cancer Detect. Prev. 22:438-444, 1998; Tarli, L. et al. Blood 94:192-198, 1999; Castellani, P. et al. Acta Neurochir. (Wien) 142:277-282, 2000。癌胎児性ドメインとして、ED−Bドメインは、TuNVにより発現されるほかに、腫瘍性細胞により発現されるフィブロネクチンで一般に見出される。したがって、ED−Bドメインを標的とするCTL誘発性組成物は、2つの作用機序:腫瘍細胞の直接溶解、およびTuNVの崩壊による腫瘍血液供給の崩壊を示すことができる。
【0032】
フィブロネクチンED−Bドメインの発現が腫瘍関連新生血管系および正常新生血管系の両方で報告されている(Castellani, P. et al. Int. J. Cancer 59:612-618, 1994)ことに留意すべきである。したがって、フィブロネクチンED−Bドメイン、または同様に発現される抗原に基づく組成物は、不適切な血管新生に関連した他の状態に対して有効であり得る。さらに、この組成物を使用中止した後に、CTL活性がすぐに減衰しうるため、正常な血管新生の妨害を最低限にすることができる。
【0033】
免疫原組成物に関する他の標的としては、成長因子受容体(血管細胞と関連したものを含む)が挙げられる。かかる例の1つは、血管内皮成長因子受容体2(VEGFR2)である。米国特許第6,342,221号には、VEGFおよびVEGFR2の論考が含まれている。血管細胞と関連した任意の他の抗原またはタンパク質(現在既知であるもの、およびまだ同定されていないものを含む)が免疫原組成物に対する標的であり得ることは当業者に理解されよう。
【0034】
動物モデル、モデルの作製方法、および組成物評価
上述の考察に基づいて設計される組成物は、様々な標的に対して有効である。しかしながら、さらなる評価は、いかなるときでも、しかし好ましくは前臨床環境で容易に実行することができる。例えば、かかる評価は、組成物設計をさらに助長するために使用することができる。本発明の他の実施形態は、免疫原組成物を評価する方法に関する。本発明の組成物は、組成物評価用の動物モデルを用いて、当業者が容易に評価することができる。例えば、以下のルーチンな手順に従って、当業者はTuNV組成物を迅速かつ効率的に評価することができる。したがって、本明細書中に記載するモデルまたは手引きを用いて、当業者は、ほとんどまたは全く実験なしで任意のTuNV抗原に関して任意のTuNV組成物を評価することができる。さらなる実施形態は、動物研究モデルを作製する方法に関する。他の実施形態は、研究モデル動物に関する。これらの実施形態は以下でより詳細に記載する。
【0035】
異種移植ヒト血管系ベースのモデル
実施形態によっては、ヒト微細血管形成のメカニズムを研究するためのモデル系に関するものもある。例えば、幾つかの実施形態では、モデル系は組成物の前臨床評価に使用することができる。モデルは、SCIDマウスへの、MATRIGEL(Becton Dickinson)と混合したテロメラーゼ形質転換ヒト皮膚微小血管内皮細胞(HDMEC)の皮下移植を含む。テロメラーゼ形質転換HCMECの皮下移植は、Yang, J. et al. Nature Biotech 19:219-224, 2001に記載されている。本発明の組成物により活性化されるT細胞を、例えばかかる移植マウスに養子移入させることができ、かかるヒト微小血管を破壊するか、またはその形成を防止するT細胞の能力を評価することができる。他の実施形態では、マウスに直接ワクチン接種して評価することができる。また、さらなる実施形態では、モデル系は、他の種由来のDMECおよび種適合性テロメラーゼを置換することで、およびヒト系に関して以下に記載するものに類似した試薬を用いることで、非ヒト種で有効な組成物を試験するのにさらに適応させることができる。
【0036】
試験される組成物のエピトープを提示するMHC制限要素は、好ましくは、マウスに移植されたHDMEC系によって共有される。T細胞は、ヒトT細胞のin vitro免疫化により、またはHLAトランスジェニックマウスの免疫化(この手順は当業者に既知であり、その例は上記の援用される特許出願において提供される)により得ることができる。HLAトランスジェニックマウスにおいて生成されるT細胞の使用により、養子移入されるT細胞と宿主との間の遺伝的背景の適合が可能となり、それにより結果の解釈を複雑にし得る同種異系または異種反応の可能性を低減させる。しかしながら、利用可能なマウス系統に応じて、これは、同じ遺伝的背景上でHLA導入遺伝子およびSCID表現型を獲得するために交雑させることが必要であり得る。代替的には、所望の集団を富化するために、またはクローンを樹立するために、1回または複数回のin vitro刺激を、ドナーT細胞(ヒトまたはマウス)に施すことができ、それにより望ましくない反応性を同様に回避する。
【0037】
in vitro免疫化のための技法は、当業者で既知である(例えば、Stauss et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:7871-7875, 1992; Salgaller et al. Cancer Res. 55:4972-4979, 1995; Tsai et al., J. Immunol. 158:1796-1802, 1997; およびChung et al., J. Immunother. 22:279-287, 1999)。in vivoであってもin vitroであっても、いったん生成されれば、十分数のかかるT細胞は、本発明の組成物および/またはサイトカイン(例えば、Kurokawa, T. et al., Int. J. Cancer 91:749-746, 2001を参照)または他の分裂促進因子を用いた刺激によりin vitroで増殖させることで得ることができる。これらのT細胞は、1つまたは複数のエピトープを認識するクローンまたはポリクローナル集団を構成することができる。好ましい実施形態では、およそ105〜108個程度の細胞が、マウスにおける養子移入実験のために移入される(例えば、Drobyski, W.R. et al. Blood 97:2506-2513, 2001; Seeley B.M. et al. Otolaryngol. Head Neck Surg. 124:436-441, 2001; Kanwar, J.R. et al. Cancer Res. 61: 1948-1956, 2001を参照)。クローンおよびそうでなければより富化された集団は、一般により少数の細胞の移入を必要とする。
【0038】
T細胞の移入は、HDMECの移植または樹立の直前に、それと同時に、またはその後に行うことができる。組成物の有効性を評価するために評価することができるパラメータとしては、血管形成、血管密度の変化、およびマウス血液を運搬する能力(Yang等に記載されるような)等が挙げられる。評価は、テロメラーゼ形質転換HDMECの移植後の1週間程度の初期に、かつ少なくとも6週間程度の長さで、好ましくは2週間後に、およびT細胞移植の1日〜6週間後に、好ましくは1〜3週間後に実施することができる。一般に、評価は、ナイーブ(偽免疫化を含む)または無関係エピトープ反応性T細胞を施したマ
ウスと、標的抗原と反応性を有するT細胞を施したマウスとの比較を包含することができる。
【0039】
関連抗原は、概して新生血管系で、またはTuNVにより優先的に発現され得る。発現は、免疫組織化学およびRT−PCRを含む当該技術分野で既知の様々な技法により確認することができる。例えば、腫瘍細胞をHDMECと一緒に移植することができる。これは、TuNVにより優先的に発現される抗原の発現を誘発するという結果をもたらすことができる。一例では、これは、HDMEC含有MATRIGEL移植片に隣接して一塊の腫瘍組織を移植することにより、移植片部位に腫瘍細胞を注射することにより、HDMEC含有MATRIGEL移植片に隣接して腫瘍細胞含有MATRIGELを移植することにより、腫瘍細胞およびHDMECの両方を同じMATRIGEL移植片に組み込むことにより、あるいは任意の他の適切な方法により成し遂げることができる。上述のように、幾つかの実施形態では、腫瘍細胞は血管細胞と一緒に移植することができる。こうして作製された動物は、研究モデルとして使用することができる。さらなる変形形態は当業者に明らかであろう。
【0040】
HLAトランスジェニック動物モデル
ヒトとモデル種との間で、配列および/または発現プロフィールにおいて保存される抗原に関して、HLAトランスジェニック系統により別のアプローチ、すなわち同系腫瘍に対抗するためのモデル動物のワクチン接種が可能である。フィブロネクチンのED−Bドメインは、それが血管新生のマーカーであり、またヒトおよびマウスの両方において同一のアミノ酸配列を有するため、かかる機会を提供する(Nilsson, F. et al. Cancer Res. 61:711-716, 2001)。さらに、HLA−A2トランスジェニックマウスの系統由来の自発性腫瘍組織を単離および繁殖させた。エピトープ発見および選択、ならびにCTL誘発性組成物に関する組成物設計および送達については上述されている。
【0041】
腫瘍細胞系であるM1は、自発性唾液腺嚢胞腺癌に由来するものである。M1腫瘍細胞系およびこれの使用方法は、「HLAトランスジェニックマウス腫瘍細胞系(AN HLA-TRANSGENIC MURINE TUMOR CELL LINE)」という表題の2001年3月7日に、本出願と同日付けで出願された米国仮出願第 号、代理人整理番号CTLIMM.028PRに開示されている。腫瘍細胞系は、S. Pascolo他(J. Exp. Med. 185:2043-2051, 1997)のHHD−A2トランスジェニックマウス系統の個体で発生することができる。これらのマウスは、ヒトβ(ベータ)2−ミクログロブリンを含む1つの単鎖クラスI分子、ならびにマウスクラスI分子H2Dbに由来する分子と平衡を保ったHLA−A2.1のα1(アルファ−1)、およびα2(アルファ−2)ドメインを発現する。腫瘍塊を、通常1〜3週間以内に、腫瘍が再成長する新たな個体に移植することができ、3mmの塊は3cmにまで成長する。あるいは、腫瘍組織を分解して、in vitroで成長させることができる。収集時に、腫瘍細胞を頸部または腹部に皮下注射(1〜3日連日で2.5×106個の細胞)することができ、初期継代細胞に関してはおよそ5〜12週間のうちに目に見える腫瘍を生じることができる。細胞がin vitroで成長するのにより良好に適応されるようになった後、1×106個〜1×107個の細胞の単回注射により10日のうちに目に見える腫瘍がもたらせる。一般に、初期腫瘍は唾液腺の付近で一貫して出現するが、二次腫瘍はまた、様々な場所(腎臓、肺、肝臓および腹筋を含む)にも出現することができる。
【0042】
組成物の有効性を評価するために、組成物の予測メカニズムに応じて、腫瘍の樹立前に、それと同時に、またはその後に組成物を投与することができる。幾つかの種類の減量技法(例えば、手術)とともに使用されることを意図した治療用組成物に関しては、同時投与が適切であり得る。治療が始まる前に腫瘍がより良好に樹立されるほど、試験はより厳しくなる。
【0043】
両方の動物評価モデルについて、ヒト組成物の試験に関して記載してきた。しかしながら、獣医学的組成物の用途は類似しており、種適合性内皮細胞、MHC、TuAA等の置換を要するだけである。
【0044】
以下の実施例は単なる説明の目的を意図しており、いかなる場合でも本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0045】
本明細書中に開示するすでに同定した抗原PSMAおよびED−Bを用いて前臨床研究を実施した。研究結果より、優れた候補エピトープが明らかとなった。以下の表9を参照されたい。
【0046】
実施例1.1
クラスター解析(PSMA163-192
前立腺特異的膜抗原由来のA1エピトープクラスターであるPSMA168-190(配列番号4)を含有するペプチドAFSPQGMPEGDLVYVNYARTEDFFKLERDM、すなわちPSMA163-192(配列番号3)を、433A ABIペプチド合成機により標準的な固相F−moc化学を用いて合成した。側鎖の脱保護および樹脂からの切り出しの後、まずギ酸中に溶解した後、30%酢酸に希釈したペプチドを、以下の条件:4ml/分の流速で線形AB勾配(5% B/分)(ここで、溶離液Aは0.1%TFA水であり、溶離液Bはアセトニトリル中の0.1%TFAである)で、逆相分取HPLC C4カラムに流した。質量解析法により判断される場合の予測ペプチドを含有する16.642分の時点の分画をプールして、凍結乾燥した。次に、本質的に上述に記載するように、ペプチドをプロテアソーム消化および質量解析法に付した。質量スペクトルから目立ったピークを表1にまとめる。
【0047】
【表1】

【0048】
N末端プール配列解析
プロテアソーム消化の1時間の時点でのアリコット1つを、ABI 473Aタンパク質シーケンサー(Applied Biosystems, Foster City, CA)によるN末端アミノ酸配列解析に付した。切断部位および切断効率の決定は、配列サイクル、タンパク質シーケンサーの反復収率、および解析配列中に特有のアミノ酸の相対収率に基づいていた。すなわち、特有の(解析配列中で)残基Xがn番目のサイクルのみに見られる場合、切断部位は、N末端方向でその前のn−1残基に存在する。配列に対する質量の帰属における任意の多義性を解析するのを助長するほかに、これらのデータはまた、質量解析法よりも、様々な断片の相対収率のより信頼性の高い指標を提供する。
【0049】
PSMA163-192(配列番号3)に関して、このプールシーケンシングは、V177および幾つかの少量の切断部位後に、特にY179の1つ後に単一の主要切断部位を支持する。図1A〜図1Cに呈示した結果を参照することにより、以下の:
基質のN末端の存在を示す3番目のサイクルのS、
基質のN末端の存在を示す5番目のサイクルのQ、
177後の切断を示す1番目のサイクルのN、
175後の切断を示す3番目のサイクルのN(表1中の断片176−192に留意されたい)、
177後の切断を示す5番目のサイクルのT、
181、A180、およびY179後のますます共通の切断を示す1〜3番目のサイクルのT(これらの最後のみが質量解析法により検出されるピークに相当する、163−179および180−192、表1参照。他のものの非存在は、それらが質量スペクトルで検査されたものよりも小さな断片上に存在することを示し得る)、
それぞれ、E183、Y179、およびV177後の切断を示す4番目、8番目、および10番目のサイクルのK(それらはすべて、質量解析法により観察される断片に相当する、表1参照)、
それぞれ、基質のN末端の存在、およびV177後の切断を示す1番目、および3番目のサイクルのA、
基質のN末端の存在を示す4番目、および8番目のサイクルのP、
基質のN末端の存在を示す6番目、および10番目のサイクルのG
基質のN末端の存在、および/またはF185後の切断を示す7番目のサイクルのM、
177後の切断を示す15番目のサイクルのM、
191後の切断を示すことができる1番目サイクル(表1参照)、
177後の切断を示す4番目、および13番目のサイクルのR、
179後の切断を示す2番目、および11番目のサイクルのR、
それぞれ、V175、M169後の切断、および基質のN末端の存在を示す2番目、6番目、および13番目のサイクルのV(表1の176および170から開始する断片に留意されたい)、
それぞれ、V175、V177後の切断、および基質のN末端の存在を示す1番目、2番目、および14番目のサイクルのY、
それぞれ、V177後の切断、および基質のN末端の存在を示す11番目、および12番目のサイクルのL、
が明らかであり、他のデータとほとんど一致する解釈である。質量解析法の結果を比べることにより、2番目、5番目、および9番目のサイクルのLは、それぞれF186、E183、またはM169、およびY179の切断と一致することがわかる。表1を参照されたい。
【0050】
エピトープ同定
SYFPEITHIまたはNIHアルゴリズムによりHLAを結合すると予測される8〜10アミノ酸長の配列と共通C末端の断片をさらなる解析のために選択した。手順の消化工程および予測工程は、任意の順序で有用に実施することができる。本明細書に記載のプロテアソーム消化に使用される基質ペプチドを、予測HLA−A1結合配列を包含するように具体的に設計したが、消化の実際の生成物を、他のMHC分子への実際の結合または予測結合に関する事実後に検査することができる。選択した結果を表2に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
HLA−A*0201結合アッセイ:
HLA−A2.1への候補エピトープPSMA168-177、すなわちGMPEGDLVYV(配列番号6)の結合を、Stauss他の方法(Proc Natl Acad Sci USA 89(17):7871-5(1992))の変更形態を用いてアッセイした。具体的には、表面上でMHC分子を発現しないか、または不安定なMHC分子を発現するT2細胞を、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)で2度洗浄し、3μg/mlのヒトβ2ミクログロブリン(Sigma, St. Louis, MO)を補充し、かつ800、400、200、100、50、25、12.5、および6.25μg/mlのペプチドを添加した無血清AIM−V培地(Life Technologies社、 Rockville, MD)中で、3×105個の細胞/200μl/ウェルにて96ウェル平底プレート中で一晩培養した。再度ピペットで取ることによりペプチドを細胞と混合した後、プレートに分布させ(あるいはペプチドを個々のウェルに添加することができる)、プレートを2分間穏やかに振った。37℃にて5%CO2インキュベータ中でインキュベーションを行った。翌日、無血清RPMI培地で2度洗浄することにより未結合ペプチドを除去し、飽和量の抗クラスI HLAモノクローナル抗体であるフルオレセインイソチオシアネート(FITC)結合抗HLA A2,A28(One Lambda, Canoga Park, CA)を添加した。4℃で30分間インキュベーションした後、0.5%BSA、0.05%(w/v)アジ化ナトリウムを補充したPBS(pH7.4〜7.6)(染色緩衝液)で細胞を3回洗浄した(あるいは、W6/32(Sigma)を、抗クラスI HLAモノクローナル抗体として使用し
、細胞を染色緩衝液で洗浄した後、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)結合ヤギF(ab')抗マウスIgG(Sigma)とともに4℃で30分間インキュベートし、前述通りに3回洗浄することができる)。細胞を染色緩衝液0.5ml中に再懸濁させた。ペプチド結合により安定化される表面HLA−A2.1分子の解析を、FACScan(Becton Dickinson, San Jose, CA)を用いてフローサイトメトリーにより実施した。フローサイトメトリーが即時に実施されない場合、1/4量の2%パラホルムアルデヒドを添加して、暗所で4℃にて保管することで細胞を固定することができる。
【0053】
図2に見られるように、このエピトープは、陽性対照ペプチドよりも一層低い濃度で有意な結合を示す。このアッセイで(および本開示全体にわたって)対照として使用したMelan−AペプチドであるELAGIGILTV(配列番号106)は、実際には自然配列(EAAGIGILTV、配列番号107)の変異体であり、このアッセイで高親和性を示す。既知のA2.1結合物質であるFLPSDYFPSV(HBV18-27、配列番号107)もまた、陽性対照として使用した。HLA−B44結合ペプチドであるAEMGKYSFY(配列番号109)は、陰性対照として使用した。陰性対照から得られる蛍光は、ペプチドをアッセイで使用しなかった場合に得られるシグナルと類似していた。陽性および陰性対照ペプチドは、Current Protocols in Immunology p.18.3.2, Johon Wiley and Sons, New York, 1998の表18.3.1から選択した。
【0054】
実施例1.2
クラスター解析(PSMA281-310
前立腺特異的膜抗原由来のA1エピトープクラスターであるPSMA283-307(配列番号19)を含有する別のペプチドRGIAEAVGLPSIPVHPIGYYDAQKLLEKMG、すなわちPSMA281-310(配列番号18)を、433A ABIペプチド合成機により標準的な固相F−moc化学を用いて合成した。側鎖の脱保護および樹脂からの切り出しの後、ddH20中のペプチドを、以下の条件:4ml/分の流速で線形AB勾配(5% B/分)(ここで、溶離液Aは0.1%TFA水であり、溶離液Bはアセトニトリル中の0.1%TFAである)で、逆相分取HPLC C18カラムに流した。質量解析法により判断される場合の予測ペプチドを含有する17.061分の時点の分画をプールして、凍結乾燥した。次に、本質的に上述に記載するように、ペプチドをプロテアソーム消化および質量解析法に付した。質量スペクトルから目立ったピークを表3にまとめる。
【0055】
【表3】

【0056】
N末端プール配列解析
プロテアソーム消化の1時間の時点でのアリコット1つ(上記実施例3.3参照)を、ABI 473Aタンパク質シーケンサー(Applied Biosystems, Foster City, CA)によるN末端アミノ酸配列解析に付した。切断部位および切断効率の決定は、配列サイクル、タンパク質シーケンサーの反復収率、および解析配列中に特有のアミノ酸の相対収率に基づいていた。すなわち、特有の(解析配列中で)残基Xがn番目のサイクルのみに見られる場合、切断部位は、N末端方向でその前のn−1残基に存在する。配列に対する質量の帰属における任意の多義性を解析するのを助長するほかに、これらのデータはまた、質量解析法よりも、様々な断片の相対収率のより信頼性の高い指標を提供する。
【0057】
PSMA281-310(配列番号18)に関して、このプールシーケンシングは、少量の他の切断部位の中でもV287およびI297後の2つの主要な切断部位を支持する。図3に示した結果を参照することにより、以下の:
それぞれ、V287後の切断、および基質のN末端の存在を示す4番目、および11番目のサイクルのS、
287後の切断を示す8番目のサイクルのH(10および11から見られる高さの低下に対する位置9および10でのピーク高さの減衰の欠如は、シーケンシング反応で潜伏を表すピークではなく、A286およびE285後の切断も同様に支持することができる)、
それぞれ、Y299、I297、およびV294後の切断を示す2番目、4番目、および7番目のサイクルのD(この最後の切断は、表4中の断片のいずれにおいても、あるいは以下の注釈における代替的帰属においても観察されない)、
297後の切断を示す6番目のサイクルのQ、
それぞれ、Y299、およびI297後の切断を示す10番目、および12番目のサイクルのM、
とが明らかである。
【0058】
エピトープ同定
SYFPEITHIまたはNIHアルゴリズムによりHLAを結合すると予測される8〜10アミノ酸長の配列と共C末端の断片をさらなる研究のために選択した。手順の消化工程および予測工程は、任意の順序で有用に実施することができる。本明細書に記載のプロテアソーム消化に使用される基質ペプチドを、予測HLA−A1結合配列を包含するように具体的に設計したが、消化の実際の生成物を、他のMHC分子への実際の結合または予測結合に関する事実後に検査することができる。選択した結果を表4に示す。
【0059】
【表4】

【0060】
表4に見られるように、エピトープに対する確証配列のN末端付加は、多くの場合、同じか、または異なるMHC制限要素にとって依然として有用であり、さらにはより良好なエピトープを生成することができる。例えばHLA−A*0201との(G)LPSIPVHPIの対形成に留意されたい。ここではHLA−B7、−B*5101、およびCw*0401に関するエピトープを創出するために、N末端調整(trimming)に依存することで幾つかのMHC型とともに有用なワクチンとして10量体を使用することができる。
【0061】
HLA−A*0201結合アッセイ:
HLA−A*0201結合研究を、上記実施例1.1に本質的に記載するように、PSMA288-297、すなわちGLPSIPVHPI(配列番号21)を用いて実施した。図2に見られるように、このエピトープは、陽性対照ペプチドよりも一層低い濃度で有意な結合を示す。
【0062】
実施例1.3
クラスター解析(PSMA454-481
前立腺特異的膜抗原由来のエピトープクラスターを含有する、別のペプチドSSIEGNYTLRVDCTPLMYSLVHLTKEL、すなわちPSMA454-481(配列番号28)を、MPSにより合成し(純度>95%)、上述に記載するように、プロテアソーム消化および質量解析法に付した。質量スペクトルから目立ったピークを表5にまとめる。
【0063】
【表5】

【0064】
エピトープ同定
SYFPEITHIまたはNIHアルゴリズムによりHLAを結合すると予測される8〜10アミノ酸長の配列と共通C末端の断片をさらなる研究のために選択した。手順の消化工程および予測工程は、任意の順序で有用に実施することができる。本明細書に記載のプロテアソーム消化に使用される基質ペプチドを、予測HLA−A2.1結合配列を包含するように具体的に設計したが、消化の実際の生成物を、他のMHC分子への実際の結合または予測結合に関する事実後に検査することができる。選択した結果を表6に示す。
【0065】
【表6】

【0066】
表6に見られるように、エピトープに対する確証配列のN末端付加は、多くの場合、同じか、または異なるMHC制限要素にとって依然として有用であり、さらにはより良好なエピトープを生成することができる。例えばHLA−B*2702/5との(L)RVDCTPLMY(配列番号35および(36))の対形成に留意されたい。ここでは、10量体は解離の実質的予測半減期を有し、共C末端の9量体は有さない。SIEGNYTLRV(配列番号30)の場合、エピトープを創出するために、N末端調整に依存することで、HLA−B*5101とともに有用なワクチンとして使用することができる予測HLA−A*0201エピトープにも留意されたい。
【0067】
HLA−A*0201結合アッセイ:
HLA−A*0201結合研究を、上記実施例1.1に本質的に記載するように、PSMA460-469、すなわちYTLRVDCTPL(配列番号33)を用いて実施した。図4に見られるように、このエピトープは、陽性対照ペプチドとして使用される既知のA2.1結合物質FLPSDYFPSV(HBV18-27、配列番号108)と同程度にHLA−A2.1を結合することがわかった。加えて、PSMA461-469(配列番号32)もほぼ同様に結合する。
【0068】
ELISPOT解析:PSMA463-471(配列番号35)
ニトロセルロースで裏打ちしたマイクロタイタープレートのウェルを、コーティング緩衝液(35mM 炭酸水素ナトリウム、15mM 炭酸ナトリウム、pH9.5)中の4μg/mlマウス抗ヒト−IFNモノクローナル抗体50μl/ウェルを用いて、4℃で一晩
インキュベートすることで、捕捉抗体でコーティングした。未結合の抗体を、PBSで5分間、4回洗浄することで除去した。次に、膜上の未結合部位を、10%血清を有するRPMI培地200μl/ウェルを添加して、室温で1時間インキュベートすることによりブロックした。1:3の段階希釈物の抗原刺激CD8+T細胞を、100μl/ウェルを用いてマイクロタイタープレートのウェルに播種し、2×105個の細胞/ウェルから開始した(先述の抗原刺激は、本質的にScheibenbogen, C. et al. Int. J. Cancer 71:932-936, 1997(これは、その全体が参照により本明細書に援用される)に記載されている)。PSMA462-471(配列番号36)を最終濃度10μg/ml、IL−2を最終濃度100U/mlとなるように添加し、細胞を5%CO2水飽和雰囲気下で37℃にて40時間培養した。このインキュベーション後、0.05%ツイーン(Tween)−20を含有するPBS(PBS−ツイーン)200μl/ウェルで6回、プレートを洗浄した。検出抗体であるPBS+10%ウシ胎児血清中の2g/mlビオチン化マウス抗ヒト−IFNモノクローナル抗体50μl/ウェルを添加して、プレートを室温で2時間インキュベートした。未結合検出抗体を、PBS−ツイーン200μlで4回洗浄することで除去した。アビジン結合ホースラディッシュペルオキシダーゼ(Pharmingen, San Diego, CA)100μlを各ウェルに添加して、室温で1時間インキュベートした。未結合酵素を、PBS−ツイーン200μlで6回洗浄することで除去した。N,N−ジメチルホルムアミド2.5ml中に3−アミノ−9−エチルカルバゾールの20mgタブレットを溶解させ、その溶液を0.05M リン酸−クエン酸緩衝液(pH5.0)47.5mlに添加することで基質を調製した。30%H2225μlを基質溶液に添加した直後に、100μl/ウェルで基質を分布させ、室温でプレートをインキュベートした。発色(一般に15〜30分)後、プレートを水で洗浄することで反応を停止した。プレートを風乾し、立体顕微鏡を用いてスポットを計数した。
【0069】
図5は、自家樹状細胞とペプチドとを有するHLA−A1+CD8+T細胞の培養物中で予め生成されたPSMA463-471(配列番号35)反応性HLA−A1+CD8+T細胞の検出を示す。ペプチドなしの培養物からは反応性が検出されない(データは示さず)。この場合では、ペプチド反応性T細胞が2.2×104分の1〜6.7×104分の1の頻度で培養物に存在することが観察され得る。これがまさにHLA−A1制限応答であるということは、抗HLA−A1モノクローナル抗体の、−IFN産生を阻止する能力により実証される。図6を参照されたい。
【0070】
実施例1.4
クラスター解析(PSMA653-687
前立腺特異的膜抗原由来のA2エピトープクラスター、すなわちPSMA660-681(配列番号38)を含有する、別のペプチドFDKSNPIVLRMMNDQLMFLERAFIDPLGLPDRPFY、すなわちPSMA653-687(配列番号37)を、MPSにより合成し(純度>95%)、上述に記載するように、プロテアソーム消化および質量解析法に付した。質量スペクトルから目立ったピークを表7にまとめる。
【0071】
【表7】

【0072】
エピトープ同定
SYFPEITHIまたはNIHアルゴリズムによりHLAを結合すると予測される8〜10アミノ酸長の配列と共C末端の断片をさらなる研究のために選択した。手順の消化工程および予測工程は、任意の順序で有用に実施することができる。本明細書に記載のプロテアソーム消化に使用される基質ペプチドを、予測HLA−A2.1結合配列を包含するように具体的に設計したが、消化の実際の生成物を、他のMHC分子への実際の結合または予測結合に関する事実後に検査することができる。選択した結果を表8に示す。
【0073】
【表8】

【0074】
表8に見られるように、エピトープに対する確証配列のN末端付加は、同じか、または異なるMHC制限要素にとって依然として有用であり、さらにはより良好なエピトープを生成することができる。例えばHLA−A*02との(R)MMNDQLMFL(配列番号39および(40))の対形成に留意されたい。ここでは、10量体は実質的予測される結合の可能性を有している。
【0075】
HLA−A*0201結合アッセイ
HLA−A*0201結合研究を、上記実施例1.1に本質的に記載するように、PSMA663-671(配列番号39)およびPSMA662-671、すなわちRMMNDQLMFL(配列番号67)を用いて実施した。図4、図7、および図8に見られるように、このエピトープは、陽性対照ペプチド(FLPSDYFPSV(HBV18-27)、配列番号108)よりも一層低い濃度で有意な結合を示す。平行して行ってはいないが、対照との比較は、PSMA662-671(これは、親和性に関してMelanAペプチドに似ている)がこれらの2つのPSMAペプチドのより優れた結合活性を有することを示唆する。
【実施例2】
【0076】
多施設臨床研究を、本明細書中に開示する組成物を用いて実施する。研究の結果から、前記組成物が固形腫瘍を減量するのに、および概して抗血管新生活性を誘発するのに有用かつ有効であることがわかる。
【実施例3】
【0077】
標的抗原反応性CTLの異種移植ヒト血管系モデル生成におけるPSMA組成物の評価
A.マウスのin vivo免疫化
HHD1トランスジェニックA*0201マウス(Pascolo, S., et al. J. Exp. Med. 185:2043-2051, 1997)を麻酔して、IFA(不完全フロイントアジュバント)50μlで乳化させたPBS中にPSMA288-297(配列番号21)100nmolおよびHTLエピトープペプチド20μgを含有する100μlを用いて、外側尾静脈を避けて、尾の基部に皮下注射した。
【0078】
B.刺激細胞(LPS芽細胞)の調製
免疫化マウスの各群に関して2匹のナイーブマウスからの脾臓を用いて、非免疫化マウスを屠殺して、それらの胴体をアルコールに入れた。滅菌装置を用いて、マウスの左側(下中切開面)上の皮膚の最上部皮膚層を切り開いて、腹膜を露出させた。腹膜をアルコールで飽和させて、脾臓を無菌摘出した。脾臓を無血清培地の入ったペトリ皿に載せた。脾臓
をつぶすために3mlシリンジからの滅菌プランジャーを用いて、脾細胞を単離した。細胞を無血清培地の入った50mlコニカル管中に収集し、皿を十分にすすいだ。細胞を遠心分離し(12000rpm、7分)、RPMIで一度洗浄した。新鮮な脾細胞を、RPMI−10%FCS(ウシ胎児血清)中に1ml当たり1×106個の細胞の濃度に再懸濁させた。25g/mlリポ多糖および7μg/ml硫酸デキストランを添加した。T−75フラスコ中で、37℃にて5%CO2を用いて3日間、細胞をインキュベートした。脾臓芽細胞を50ml管に収集し、ペレット化し(12,000rpm、7分)、RPMI中に3×107個/mlで再懸濁させた。芽細胞を、50μg/mlのプライミングペプチドを用いて室温で4時間パルス化し、25μg/mlで37℃にて20分間マイトマイシンC処理し、DMEMで3回洗浄した。
【0079】
C.in vitro刺激
芽細胞のLPS刺激の3日後、およびペプチド負荷と同じ日に、プライミングしたマウスを屠殺して(免疫化の14日目)、上述のように脾臓を取り出した。3×106個の脾細胞を、10%FCS、5×10-5Mβ(ベータ)−メルカプトエタノール、100μg/mlストレプトマイシン、および100IU/mlペニシリンを補充したDMEM培地中で、37℃にて、5%CO2を用いて、24ウェルプレートにおいて1×106個のLPS芽細胞/ウェルとともに共存培養した。3日目に、培養物に5%(vol/vol)ConA上清を供給し、7日目には移入させることができる。CTLのアリコットはまた、活性を保証するための標準的なクロム放出アッセイで試験される。
【0080】
移植および養子移入
EGM−2VM培地10μl(Clonetics, San Diego, CA)中の1×106個のテロメラーゼ形質転換HDMECを、MATRIGEL(Becton Dickinson)0.5mlと氷上で混合する。混合物を、SCIDマウスの胸郭の腹側正中線に沿って25ゲージ針により皮下注射する。1週間後、0.2ml中の1×107個のT細胞(標的エピトープ反応性または偽免疫化)を静脈内注射する(あるいは、それらを腹腔内注射することができる)。
【0081】
評価(微小形態測定)
移入の1週間後および2週間後に、移植片を取り出し、10%緩衝液中で一晩固定し、パラフィンに包埋し、切片化する。抗ヒトIV型コラーゲンIgGおよび蛍光標識した二次抗体を用いたヒトの微細血管の免疫蛍光検出のために、脱パラフィン(deparaffinize)して、10mMクエン酸(pH6.0)中で薄い切片を2×7分間マイクロ波処理(micorwave)することで抗原を回復する。血管密度は、移植片1つ当たり少なくとも3つの切片から、5個の別個のランダムに選択した20倍視野で観察される陽性染色された環状構造の平均数の関数として評価される。
【実施例4】
【0082】
HLAトランスジェニックマウスモデルにおけるフィブロネクチンED−Bワクチン
A.腫瘍の樹立
10%血清を加えた完全RPMI中で成長させたM1腫瘍細胞を培養し、遠心分離により収集し、PBSで洗浄した。細胞を5×106個の細胞/mlでPBS中に懸濁させて、懸濁液0.5ml(初期継代)を腹部に皮下注射した。
【0083】
B.ワクチン接種
HLA−A2制限フィブロネクチンED−Bドメイン由来ハウスキーピングエプトープ、例えばED−B29-38(配列番号103)をコードするヌクレオチド配列を、適切なワクチンベクター(例えば、pVAX1(Invitrogen Inc, Carlsbad, CA)、または2001年4月28日に出願された「標的関連抗原のエピトープをコードする発現ベクター(EXPRESSION VECTORS ENCODING EPITOPES OF TARGET-ASSOCIATED ANTIGENS)」という表題の米国特
許出願第09/561,572号に記載されるベクターの1つに挿入する。HHD−A2マウスに、PBS中のベクター0μg、2μg、10μg、50μg、100μg、および200μgを、1日おきに8日間にわたって(4回注射)、各注射に関して側を交互に鼡径リンパに結節内注射する(マウスまたはマウス群当たり単回投与量)。一連の注射は、腫瘍細胞注射の日、その2週間前、ならびにその4週間後および10週間後に始める。
【0084】
C.評価
腫瘍注射のおよそ12週間後に、ワクチンのかわりに賦形剤を施したマウスにおいて目に見える腫瘍が観察される。ワクチンの有効性を、同じ時間枠で腫瘍を発達させることができないワクチン接種した動物の比率、同じ時点での腫瘍の相対的大きさ、ワクチン接種した動物で腫瘍が出現するまでの遅延、および腫瘍の樹立を阻害または防止するのに必要とされる組成物サイクルの用量および組成物サイクル数として表す。
【0085】
D.代替スケジュール
より攻撃的な後期継代M1細胞の利用性により、より短縮した実験スケジュールが可能である。代わりに、1×106個の細胞の腫瘍細胞接種の日、その1週間および2週間前、ならびに3日後または4日後に、マウスにワクチン接種する。ワクチンの有効性は、腫瘍細胞接種のおよそ10日後に評価する。
【0086】
E.ペプチドによる免疫化
完全フロイントアジュバント中のED−B29−38(配列番号103)でHHD−A2マウスを免疫化し、脾臓細胞を回集し、標準的な方法論を用いてin vitroで再刺激した。生じたCTLは、HLA−A2+であるペプチドパルス化T2細胞を特異的に溶解することが可能であった(図9)。
【実施例5】
【0087】
エピトープおよびエピトープクラスター
表9〜18は、本発明による組成物の構築において有用であり得るPSMAおよびED−B由来のエピトープならびにエピトープクラスターを開示する。
【0088】
【表9】


【表10】

【表11】

【表12】

【表13】

【表14】

【表15】

【表16】

【表17】

【表18】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍関連新生血管系に対する細胞性免疫応答を誘導するための免疫原性組成物であって、
前記組成物は、腫瘍関連新生血管系によって発現される抗原に相当する少なくとも1つの免疫原を含む、
組成物。
【請求項2】
前記免疫原はレシピエントと同種の細胞に関連しない、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記抗原はタンパク質である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記タンパク質は前立腺特異的膜抗原(PSMA)である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記抗原はフィブロネクチンのED−Bドメインである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記抗原は、血管内皮成長因子受容体2(VEGFR2)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記免疫原は少なくとも1つのペプチドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つのペプチドはハウスキーピングエピトープを含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つのペプチドは、前記ハウスキーピングエピトープと共通C末端である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
免疫エピトープを含む少なくとも1つのペプチドをさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記抗原の少なくとも一部の発現を付与することが可能な核酸を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記細胞性免疫応答はCTL応答を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
腫瘍関連抗原に相当する少なくとも1つの第2免疫原をさらに含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記抗原に由来する少なくとも1つの免疫エピトープを含む第2免疫原をさらに含む、請求項8又は9に記載の組成物。
【請求項15】
新生血管抗原に対する細胞性免疫応答を誘導するための医薬であって、
前記医薬は新生血管抗原に相当する少なくとも一つの免疫原を含み、
前記新生血管抗原は、腫瘍関連新生血管系によって発現されるものであり、
前立腺特異的膜抗原(PSMA)、フィブロネクチンのED−Bドメイン(ED−B)及び血管内皮成長因子受容体2(VEGFR2)からなる群から選択される、
医薬。
【請求項16】
血管新生抗原と腫瘍関連抗原に対して誘導された細胞性免疫応答を通じた腫瘍性疾患の
治療のための医薬であって、
前記医薬は新生血管抗原に相当する少なくとも1つの第1免疫原と腫瘍関連抗原に相当する少なくとも1つの第2免疫原を含み、
前記新生血管抗原は、腫瘍関連新生血管系によって発現される、
医薬。
【請求項17】
血管新生抗原に対して誘導された細胞性免疫応答を通じた腫瘍性疾患の治療のための医薬であって、
前記医薬は新生血管抗原に由来する少なくとも1つのハウスキーピングエピトープを含む第1免疫原と前記新生血管抗原に由来する少なくとも1つの免疫エピトープを含む第2免疫原を含み、
前記新生血管抗原は腫瘍関連新生血管系によって発現される、
医薬。
【請求項18】
血管新生抗原に対して誘導された細胞性免疫応答を通じた腫瘍性疾患の治療のための医薬であって、
前記医薬は新生血管抗原に由来する少なくとも1つのハウスキーピングエピトープを含む免疫原を含み、
前記新生血管抗原は、腫瘍関連新生血管系によって発現される、
医薬。
【請求項19】
前記免疫原はレシピエントと同種の細胞に関連しない、請求項15〜18のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項20】
前記免疫原は、タンパク質又はそのフラグメントを含む、請求項15〜19のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項21】
前記新生血管抗原は前立腺特異的膜抗原(PSMA)である、請求項15〜18のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項22】
前記新生血管抗原はフィブロネクチンのED−Bドメインである、請求項15〜18のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項23】
前記血管新生抗原は、血管内皮成長因子受容体2(VEGFR2)である、請求項15〜18のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項24】
前記免疫原は、前記タンパク質の配列に由来する少なくとも1つのペプチドを含む、請求項20に記載の医薬。
【請求項25】
前記少なくとも1つのペプチドはハウスキーピングエピトープを含む、請求項24に記載の医薬。
【請求項26】
前記少なくとも1つのペプチドは、前記ハウスキーピングエピトープと共通C末端である、請求項25に記載の医薬。
【請求項27】
前記少なくとも1つのペプチドは免疫エピトープを含む、請求項24に記載の医薬。
【請求項28】
前記免疫原の少なくとも一部の発現を付与することが可能な核酸を含む、請求項15〜27のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項29】
前記細胞性免疫応答はCTL応答を含む、請求項15〜28のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項30】
前記第1免疫原と前記第2免疫原は同一である、請求項17に記載の医薬。
【請求項31】
前記医薬が、癌性細胞に対して直接的に活性な抗腫瘍療法剤として使用するためのものである、請求項15〜30のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項32】
前記抗腫瘍療法剤は、腫瘍関連抗原に対する免疫応答を誘導する、請求項31に記載の医薬。
【請求項33】
前記細胞性免疫応答は検出される、請求項15〜31のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項34】
前記細胞性免疫応答の検出は、腫瘍増殖抑制、腫瘍サイズの縮小、腫瘍転移の抑制又は哺乳動物の平均余命の延長の検出を含む、請求項33に記載の医薬。
【請求項35】
前記細胞性免疫応答の検出は、サイトカインアッセイ、クロム放出アッセイ、免疫蛍光アッセイ、細胞障害性Tリンパ球(CTL)アッセイ、エリスポット(Elispot)アッセイ及び哺乳動物の健康状態の観察からなる群から選択されるアッセイを含む、請求項33に記載の医薬。
【請求項36】
腫瘍性疾患の治療のための医薬であって、
前記医薬は新生血管抗原に対する細胞性免疫応答を誘導するための手段を含み、
前記新生血管抗原は、腫瘍関連新生血管系によって発現され、
前記血管新生抗原は、前立腺特異的抗原(PSMA)、フィブロネクチンのED−Bドメイン(ED−B)及び血管内皮成長因子受容体2(VEGFR2)からなる群から選択される、
医薬。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−98980(P2011−98980A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24307(P2011−24307)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【分割の表示】特願2002−569085(P2002−569085)の分割
【原出願日】平成14年3月7日(2002.3.7)
【出願人】(503208552)マンカインド コーポレイション (50)
【Fターム(参考)】