説明

癌細胞のEg5阻害剤に対する感受性を判定する方法

2以上のヒト癌細胞株についてEg5阻害剤に対する感受性と少なくとも1以上のヒト遺伝子の発現量とを測定し、その発現量とEg5阻害剤に対する感受性との間に相関のある遺伝子を、Eg5阻害剤に対する感受性に関わる遺伝子として同定する方法。同定されたEg5阻害剤に対する感受性に関わる遺伝子の中から1以上の遺伝子を選択し、癌細胞における、選択した遺伝子の発現量を測定し、その発現量に応じた点数を割り当てることにより、その癌細胞のEg5阻害剤に対する感受性を判定する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、癌細胞のEg5阻害剤に対する感受性に関わる遺伝子を同定する方法、癌患者のEg5阻害剤に対する感受性を判定する方法、および癌細胞のEg5阻害剤に対する感受性を増強させる物質をスクリーニングする方法に関する。
【背景技術】
種々の抗癌剤による癌化学療法は、癌の治療において最も重要な方法の一つである。抗癌剤によって有効な治療を行うためには、患者における抗癌剤に対する感受性を予測し、適切な薬剤を選抜することが重要である。抗癌剤に対する感受性を決定している遺伝子を見出すことは、感受性予測のための一つの方法である。今までに多くの遺伝子が複数の抗癌剤に対する感受性の決定因子として報告されてきた。例えば、薬剤トランスポーターであるMDR1(J.Biol.Chem.,265,506−514,1990)およびMRP2(Cancer Res.,57,3537−3547,1997;Cancer Res.,56,4124−4129,1996)、薬物代謝酵素であるチトクロームP450(以下、CYPと略す)ファミリー(Curr.Pharm.Des.,,1335−1347,2002)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(J.Biol.Chem.,261,15544−15549,1986)、N−アセチルトランスフェラーゼ(Pharmacogenomics,,349−366,2002)などである。さらに、各々の抗癌剤に対する感受性を規定している遺伝子として例えば以下のものが報告されている。γ−グルタミルヒドロラーゼ(Biochemistry,12,3923−3927,1973,)およびジヒドロ葉酸レダクターゼ(Cancer,57,1912−1917,1986)はメトトレキセートに対する耐性因子である。また、チミジレートシンターゼ(J.Clin.Oncol.,,1653−1664,1988)、メタロチオネイン(Cancer Treat.Res.,57,233−249,1991)およびシチジンデアミナーゼ(Cancer,40,509−518,1977)の活性増強は、それぞれ5−フルオロウラシル、シスプラチン、シトシンアラビノシドに対する抵抗性因子である。DT−ジアフォラーゼの活性増強は、マイトマイシンCに対する感受性因子である(Cancer Res.,52,6936−6939,1992)。このように、多くの遺伝子が抗癌剤に対する感受性を決定する遺伝子として知られている。しかし、これらの既知の遺伝子だけでは抗癌剤に対する感受性を説明するには不十分であり、さらなる研究が求められている。
一方で、抗癌剤に対する感受性の予測あるいは抗癌剤に対する感受性に関与する遺伝子の予測を、cDNAマイクロアレイやSNPsなどの解析を用いて行う試みも進んでいる。ヒト癌細胞株パネルやヒト癌のゼノグラフトでの遺伝子発現と抗癌剤に対する感受性との相関の解析も報告されている(Nat.Genet.,24,236−244,2000年;Cancer Res.,62,518−527,2002;Cancer Res.,62,1139−1147,2002;Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,98,10787−10792,2001;特開2003−61678)。これらの研究で見出された遺伝子は、抗癌剤に対する感受性予測のマーカーとして使用することができる。さらに、これらの遺伝子のうちの一部は、実際に抗癌剤に対する感受性を決定している可能性がある。
紡錘体機能は細胞分裂時(細胞周期M期)における中心体の局在や染色体の正確な分離に必須であり、その機能の阻害は、正常な細胞分裂を阻害し癌細胞に細胞死を誘導することが知られている。
M期キネシンはM期紡錘体制御に関わる蛋白質であり、細胞周期のM期進行において必須の役割を担っている。これら蛋白質は、ATP加水分解により生じたエネルギーを利用して、微小管に沿って蛋白質を移動させる機能を有しており、一般に「分子モーター」と呼ばれる機能蛋白質の一群である。M期においては、紡錘体の伸長と維持および紡錘体極と呼ばれる構造体形成に深く関わっており、さらに紡錘体微小管に沿った染色体の移動を通して、正しい細胞分裂の進行を制御している。
Eg5は、進化上保存されたサブファミリーを形成するM期キネシンの一つである。ヒト正常組織におけるEg5の発現は、精巣や胸腺などに限定されることが知られており、また、癌患者組織を解析した結果より、非癌部に比べ癌部において高い発現を示すことが報告されている(US6414121;Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,99,4465−4470,2002)。
したがってM期キネシンEg5は新規M期作用薬の標的分子として重要であり、その阻害剤は癌などの細胞増殖制御の異常が原因となる疾患の治療剤として有望と考えられる。Eg5阻害活性を示す化合物としては、モナストロール(monastrol)(Science,286,971−974,1999)、キナゾリン誘導体(WO01/98278)、フェナチアジン誘導体(WO02/057244)、トリフェニルメタン誘導体(WO02/056880)、ジヒドロピリミジン誘導体(WO02/079149;WO02/079169)などが報告されている。
M期紡錘体の構成分子である微小管に作用する抗癌剤の薬剤感受性に関与する因子としては、タキサン類に属するパクリタキセル(paclitaxel)に対しては薬剤トランスポーターであるMDR1などが報告され(Curr.Cancer Drug Targets,,1−19,2003;Cancer Res.,63,1515−1519,2003)、DNAマイクロアレイを用いた網羅的な解析も行われている(Cancer Res.,63,2200−2205,2003)。またビンカアルカロイド系に属するビンクリスチン(vincristine)に対しては別のトランスポーターであるMRP1などが報告されている(Clin.Cancer Res.,,673−680,1999)。しかしながら、Eg5阻害剤の感受性の予測あるいはEg5阻害剤に対する感受性に関与する遺伝子の予測を行った報告は現在までにない。
一方、抗腫瘍活性を示すチアジアゾリン誘導体が知られている(WO03/051854)。また、白血病の治療に有効なシステイン誘導体が知られている(J.Med.Chem.,13,414−418,1970;J.Med.Chem.,15,13−16,1972)。
【発明の開示】
本発明の課題は、癌細胞のEg5阻害剤に対する感受性に関わる遺伝子を同定する方法、およびそれらの遺伝子を利用して癌細胞のEg5阻害剤に対する感受性を判定する方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討し、先ず、38細胞株よりなるヒト癌細胞株パネルにおいて、Eg5阻害剤に対する感受性と119種類のヒト遺伝子の発現量を測定した。そして特に肺癌由来の26株において、発現がEg5阻害剤に対する感受性と相関のある19遺伝子を選抜した。また、本発明者らは、それらの遺伝子の発現量から癌細胞のEg5阻害剤に対する感受性を予測する統計学的なモデルを構築し、さらに予測に用いる遺伝子の数を11までに減少させたモデルの構築にも成功した。
このモデルを利用し、選抜された少数の遺伝子の発現を調べることで、癌患者の抗癌剤に対する感受性を判定する方法を提供することが可能になった。さらに、それらの遺伝子の発現を増加あるいは減少させることで、抗癌剤に対する感受性を増強させる方法、ならびにそれらの抗癌剤に対する感受性を増強させる物質をスクリーニングする方法を提供することが可能になった。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、以下の(1)から(54)に関する。
(1) 以下の(a)〜(c)の工程
(a)2以上のヒト癌細胞株について、Eg5阻害剤に対する感受性および1以上のヒト遺伝子の発現量を測定する工程、
(b)工程(a)で発現量を測定した遺伝子ごとに、各細胞株における該遺伝子の発現量と該細胞株のEg5阻害剤に対する感受性との相関とを解析する工程、
(c)工程(b)で相関のあった遺伝子を選抜する工程、
を含む、癌細胞のEg5阻害剤に対する感受性に関わる遺伝子を同定する方法。
(2) 工程(a)で測定に用いるヒト癌細胞株が、A549、Calu−1、Calu−3、NCI−H23、NCI−H69、NCI−H226、NCI−H345、N417、NCI−H460、NCI−H596、NCI−H1299、SBC−3、PC−14、PC−14/DTX、PC−14/CDDP、MRC−5、IMR−90、EBC−1、NCI−H292、SHP−77、NCI−H441、NCI−H838、A427、NCI−H522、Calu−6およびPC−9からなる肺癌由来の細胞株、Colo205、HT−29、HCT116、SW480、DLD−1およびWiDrからなる大腸癌由来の細胞株、PANC−1、MIA PaCa−2、ASPC−1およびBxPC−3からなる膵臓癌由来の細胞株、SK−OV−3およびOVCAR−3からなる卵巣癌由来の細胞株からなる群から選択される全てあるいは一部の細胞株である、(1)に記載の方法。
(3) 選択される細胞株が、A549、Calu−1、Calu−3、NCI−H23、NCI−H69、NCI−H226、NCI−H345、N417、NCI−H460、NCI−H596、NCI−H1299、SBC−3、PC−14、PC−14/DTX、PC−14/CDDP、MRC−5、IMR−90、EBC−1、NCI−H292、SHP−77、NCI−H441、NCI−H838、A427、NCI−H522、Calu−6およびPC−9からなる肺癌由来の細胞株から選択される全てあるいは一部の細胞株である、(2)に記載の方法。
(4) 工程(a)で測定に用いるヒト癌細胞株が、1つの特定の臓器に由来する癌細胞株である(1)に記載の方法。
(5) 1つの特定の臓器が肺である(4)に記載の方法。
(6) 感受性の強さを測定するEg5阻害剤が、一般式(I)

<式中、
およびRは同一または異なって、水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表し、
は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換の複素環基、−C(=W)R[式中、Wは酸素原子または硫黄原子を表し、Rは水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換の複素環基、−NR(式中、RおよびRは同一または異なって、水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表すか、またはRとRが隣接する窒素原子と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成する)、−OR(式中、Rは置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表す)または−SR10(式中、R10は前記のRと同義である)を表す]、−NR1112{式中、R11およびR12は同一または異なって、水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基または−C(=O)R13[式中、R13は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換の複素環基、−NR7A8A(式中、R7AおよびR8Aはそれぞれ前記のRおよびRと同義である)、−OR9A(式中、R9Aは前記のRと同義である)または−SR10A(式中、R10Aは前記のRと同義である)を表す]を表す}または−SO14(式中、R14は前記のRと同義である)を表すか、またはRとRが隣接する窒素原子と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成し、
は置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表すか、またはRとRが一緒になって−(CR15A15Bm1−Q−(CR15C15Dm2−{式中、Qは単結合、置換もしくは非置換のフェニレンまたはシクロアルキレンを表し、m1およびm2は同一または異なって0〜4の整数を表すが、m1とm2は同時に0とはならず、R15A、R15B、R15CおよびR15Dは同一または異なって、水素原子、ハロゲン、置換もしくは非置換の低級アルキル、−OR16[式中、R16は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換の複素環基、−CONR7B8B(式中、R7BおよびR8Bは同一または異なって、水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表すか、またはR7BとR8Bが隣接する窒素原子と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成する)、−SONR7C8C(式中R7CおよびR8Cはそれぞれ前記のR7BおよびR8Bと同義である)または−COR17(式中、R17は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表す)を表す]、−NR1819[式中、R18およびR19は同一または異なって、水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換の複素環基、−COR20(式中、R20は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換の複素環基、置換もしくは非置換の低級アルコキシ、置換もしくは非置換のアリールオキシ、アミノ、置換もしくは非置換の低級アルキルアミノ、置換もしくは非置換のジ低級アルキルアミノまたは置換もしくは非置換のアリールアミノを表す)または−SO21(式中、R21は置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表す)を表す]または−CO22(式中、R22は前記のR17と同義である)を表すか、またはR15AとR15BまたはR15CとR15Dが一緒になって酸素原子を表し、m1またはm2が2以上の整数であるとき、それぞれのH15A、R15B、R15CおよびR15Dは同一でも異なっていてもよく、隣接するふたつの炭素原子に結合するR15A、R15B、R15CおよびR15Dはそれぞれ一緒になって結合を形成してもよい}を表し、
は水素原子または−C(=W)R23(式中、WおよびR23はそれぞれ前記のWおよびRと同義である)を表す>で表されるチアジアゾリン誘導体またはその薬理学的に許容される塩である、(1)から(5)のいずれか1項に記載の方法。
(7) Rが水素原子であり、Rが−C(=O)R6A(式中、R6Aは低級アルキルを表す)であり、Rが−C(=O)R23A(式中、R23Aは低級アルキルを表す)であり、Rが置換低級アルキルであり、Rがフェニルである(6)に記載の方法。
(8) Rが−(CHnaNHSO(式中、naは1または2であり、Rは置換もしくは非置換の低級アルキルを表す)である(6)または(7)に記載の方法。
(9) 一般式(I)で表されるチアジアゾリン誘導体が下記式(A)〜(C)および(E)〜(P)で表される化合物からなる群から選択される化合物である(6)に記載の方法。

(10) 感受性の強さを測定するEg5阻害剤が、一般式(II)

(式中、R24は置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の芳香族複素環基を表し、R25およびR26は同一または異なって、水素原子、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシ、カルボキシ、もしくはヒドロキシメチルを表すか、またはR25とR26が一緒になって酸素原子、硫黄原子または結合を表す)で表されるシステイン誘導体またはその薬理学的に許容される塩である、(1)から(5)のいずれか1項に記載の方法。
(11) システイン誘導体がL−システイン誘導体である(10)に記載の方法。
(12) R24がフェニル、4−メチルフェニル、2−ナフチル、4−ピリジル、または1,3−ベンゾジオキソール−5−イルであり、R25およびR26が同一または異なって、水素原子、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシ、カルボキシ、またはヒドロキシメチルである(10)または(11)に記載の方法。
(13) 感受性の強さを測定するEg5阻害剤が、下記式(Q)で表される化合物またはその薬理学的に許容される塩である、(1)から(5)のいずれか1項に記載の方法。

(14) 以下の(a)〜(e)の工程
(a)(1)から(13)のいずれか1項に記載の方法により同定された遺伝子から1以上の遺伝子を選択し、その発現量に応じた点数を決定する工程、
(b)被験癌細胞について、工程(a)で選択された遺伝子の発現量を測定する工程、
(c)各遺伝子について、工程(b)で測定した発現量に基づき、工程(a)で決定した点数を割り当てる工程、
(d)選択された全遺伝子についての割り当てられた点数から、被験癌細胞のEg5阻害剤に対する感受性の指標となる数値を求める工程、
(e)あらかじめ決定した閾値と(d)で得られた数値とを比較する工程、
を含む、癌細胞のEg5阻害剤に対する感受性を判定する方法。
(15) 工程(a)で選択する遺伝子が、以下の(i)〜(xix)それぞれの遺伝子からなる遺伝子群から選択される1以上の遺伝子である(14)に記載の方法。
(i)チトクロームP450・ファミリー24・サブファミリーA・ポリペプチド1(CYP24A1)
(ii)レプチン受容体遺伝子関連蛋白質(OBRGRP)
(iii)B因子(BF)
(iv)アデニンホスホリボシルトラスフェラーゼ(APRT)
(v)バキュロウイルスIAPリピート含有蛋白質(BIRC3)
(vi)シーケストソーム1(SQSTM1)
(vii)腫瘍壊死因子α誘導蛋白質2(TNFAIP2)
(viii)膜内在性蛋白質2B(ITM2B)
(ix)ATP結合カセット・サブファミリーC・メンバー2(ABCC2)
(x)アネキシンA3(ANXA3)
(xi)相同配列3含有ファミリー・メンバー3(FAM3C)
(xii)ATP結合カセット・サブファミリーC・メンバー3(ABCC3)
(xiii)仮想蛋白質BC007436(BC007436)
(xiv)微小管関連蛋白質1B(MAP1B)
(xv)サイクリンB1(CCNB1)
(xvi)ヒートショック90kDa蛋白質1α(HSPCA)
(xvii)サイクリンB2(CCNB2)
(xviii)仮想蛋白質FLJ23269(FLJ23269)
(xix)溶質キャリアー・ファミリー12・メンバー2(SLC12A2)
(16) (a)の工程で選択される遺伝子が、CYP24A1、OBRGRP、APRT、TNFAIP2、ITM2B、ABCC2、BC007436、MAP1B、HSPCA、CCNB2およびFLJ23269である(15)に記載の方法。
(17) Eg5阻害剤が、(6)から(9)のいずれか1項に記載のチアジアゾリン誘導体またはその薬理学的に許容される塩である(14)から(16)のいずれか1項に記載の方法。
(18) Eg5阻害剤が、(10)から(12)のいずれか1項に記載のシステイン誘導体またはその薬理学的に許容される塩である(14)から(16)のいずれか1項に記載の方法。
(19) Eg5阻害剤が、(13)に記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩である(14)から(16)のいずれか1項に記載の方法。
(20) 癌細胞が肺癌細胞である(14)から(19)のいずれか1項に記載の方法。
(21) 遺伝子の発現量の測定を、該遺伝子の転写産物であるmRNAをDNAマイクロアレイにより定量することにより行う、(1)から(20)のいずれか1項に記載の方法。
(22) 遺伝子の発現量の測定を、該遺伝子の転写産物であるmRNAを定量的PCRにより定量することにより行う、(1)から(20)のいずれか1項に記載の方法。
(23) 遺伝子の発現量の測定を、該遺伝子の転写産物であるmRNAをノーザンブロットにより定量することにより行う、(1)から(20)のいずれか1項に記載の方法。
(24) (22)に記載の方法において使用するための、該mRNAに相補的なオリゴヌクレオチドを含む、mRNAの定量試薬。
(25) 遺伝子の発現量の測定を、該遺伝子の遺伝子産物である蛋白質を免疫化学的方法により定量することにより行う、(1)から(20)のいずれか1項に記載の方法。
(26) 遺伝子の発現量の測定を、該遺伝子の遺伝子産物である蛋白質をELISAにより定量することにより行う、(25)に記載の方法。
(27) 遺伝子の発現量の測定を、該遺伝子の遺伝子産物である蛋白質をウエスタンブロットにより定量することにより行う、(25)に記載の方法。
(28) (25)から(27)のいずれか1項に記載の方法において使用するための、該蛋白質に対する抗体を含む免疫測定試薬。
(29) BC007436、MAP1B、CCNB1、HSPCA、CCNB2、FLJ23269およびSLC12A2からなる群から選択される単独又は複数の遺伝子であって、癌細胞に強制発現させることによってEg5阻害剤に対する感受性を増強させる活性を示す遺伝子または該遺伝子がコードする蛋白質を含有する、Eg5阻害剤に対する感受性増強薬。
(30) 細胞が肺癌細胞である(29)に記載の感受性増強薬。
(31) Eg5阻害剤が(6)から(9)のいずれか1項に記載のチアジアゾリン誘導体またはその薬理学的に許容される塩である(29)または(30)に記載の感受性増強薬。
(32) Eg5阻害剤が(10)から(12)のいずれか1項に記載のシステイン誘導体またはその薬理学的に許容される塩である(29)または(30)に記載の感受性増強薬。
(33) Eg5阻害剤が(13)に記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩である(29)または(30)に記載の感受性増強薬。
(34) 細胞に試験物質を添加し、該細胞におけるBC007436、MAP1B、CCNB1、HSPCA、CCNB2、FLJ23269およびSLC12A2からなる群から選択される少なくとも1以上の遺伝子の発現量を測定し、試験物質を添加しない場合の該遺伝子の発現量と比較して該遺伝子の発現を増加させる物質を、Eg5阻害剤に対する感受性を増強させる候補物質として選択する、Eg5阻害剤に対する感受性を増強させる物質のスクリーニング方法。
(35) 細胞が肺癌細胞である(34)に記載のスクリーニング方法。
(36) Eg5阻害剤が(6)から(9)のいずれか1項に記載のチアジアゾリン誘導体またはその薬理学的に許容される塩である(34)または(35)に記載のスクリーニング方法。
(37) Eg5阻害剤が(10)から(12)のいずれか1項に記載のシステイン誘導体またはその薬理学的に許容される塩である(34)または(35)に記載のスクリーニング方法。
(38) Eg5阻害剤が(13)に記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩である(34)または(35)に記載のスクリーニング方法。
(39) CYP24A1、OBRGRP、BF、APRT、BIRC3、SQSTM1、TNFAIP2、ITM2B、ABCC2、ANXA3、FAM3CおよびABCC3からなる群から選択される単独又は複数の遺伝子であって、癌細胞において該遺伝子の発現を抑制することで、Eg5阻害剤に対する感受性を増強させる活性を示す遺伝子の発現を抑制するsiRNAもしくはアンチセンスポリヌクレオチド。
(40) 癌細胞が肺癌細胞である(39)に記載のsiRNAもしくはアンチセンスポリヌクレオチド。
(41) Eg5阻害剤が(6)から(9)のいずれか1項に記載のチアジアゾリン誘導体またはその薬理学的に許容される塩である(39)または(40)に記載のsiRNAもしくはアンチセンスポリヌクレオチド。
(42) Eg5阻害剤が(10)から(12)のいずれか1項に記載のシステイン誘導体またはその薬理学的に許容される塩である(39)または(40)に記載のsiRNAもしくはアンチセンスポリヌクレオチド。
(43) Eg5阻害剤が(13)に記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩である(39)または(40)に記載のsiRNAもしくはアンチセンスポリヌクレオチド。
(44) (39)から(43)のいずれか1項に記載のsiRNAもしくはアンチセンスポリヌクレオチドを発現するベクター。
(45) (39)から(43)のいずれか1項に記載のsiRNAもしくはアンチセンスポリヌクレオチドまたは(44)に記載のベクターを含有する、Eg5阻害剤に対する感受性増強薬。
(46) CYP24A1、OBRGRP、BF、APRT、BIRC3、SQSTM1、TNFAIP2、ITM2B、ABCC2、ANXA3、FAM3CおよびABCC3から選択されるいずれかの遺伝子であって、癌細胞において該遺伝子の発現を抑制することで、Eg5阻害剤に対する感受性を増強させる活性を示す遺伝子にコードされる蛋白質に対する抗体を含有する、Eg5阻害剤に対する感受性増強薬。
(47) Eg5阻害剤が(6)から(9)のいずれか1項に記載のチアジアゾリン誘導体またはその薬理学的に許容される塩である(46)に記載の感受性増強薬。
(48) Eg5阻害剤が(10)から(12)のいずれか1項に記載のシステイン誘導体またはその薬理学的に許容される塩である(46)に記載の感受性増強薬。
(49) Eg5阻害剤が(13)に記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩である(46)に記載の感受性増強薬。
(50) 細胞に試験物質を添加し、該細胞におけるCYP24A1、OBRGRP、BF、APRT、BIRC3、SQSTM1、TNFAIP2、ITM2B、ABCC2、ANXA3、FAM3CおよびABCC3からなる群から選択される少なくとも1以上の遺伝子の発現量を測定し、試験物質を添加しない場合の該遺伝子の発現量と比較して該遺伝子の発現を減少させる物質を、Eg5阻害剤に対する感受性を増強させる候補物質として選択する、Eg5阻害剤に対する感受性を増強させる物質のスクリーニング方法。
(51) 細胞が肺癌細胞である(50)に記載のスクリーニング方法。
(52) Eg5阻害剤が(6)から(9)のいずれか1項に記載のチアジアゾリン誘導体またはその薬理学的に許容される塩である(50)または(51)に記載のスクリーニング方法。
(53) Eg5阻害剤が(10)から(12)のいずれか1項に記載のシステイン誘導体またはその薬理学的に許容される塩である(50)または(51)に記載のスクリーニング方法。
(54) Eg5阻害剤が(13)に記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩である(50)または(51)に記載のスクリーニング方法。
以下、一般式(I)で表される化合物を化合物(I)といい、一般式(II)で表される化合物を化合物(II)という。さらに一般式(A)で表される化合物を化合物Aという。他の式番号の化合物についても同様である。
以下に本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
(A)癌細胞のEg5阻害剤に対する感受性に関わる遺伝子を同定する方法
本発明のEg5阻害剤に対する感受性に関与する遺伝子の同定方法には、以下の(a)〜(c)の工程が含まれる。
(a)2以上のヒト癌細胞株について、Eg5阻害剤に対する感受性および1以上のヒト遺伝子の発現量を測定する工程
(b)工程(a)で発現量を測定した遺伝子ごとに、各細胞株における該遺伝子の発現量と該細胞株のEg5阻害剤に対する感受性との相関とを解析する工程
(c)工程(b)で相関のあった遺伝子を選抜する工程
(1)ヒト癌細胞株
本発明で測定に用いるヒト癌細胞株は、ヒト由来の癌細胞株であれば、いずれの細胞株でもよいが、細胞株の種類が多いほど、上記工程(b)の相関解析の際に、得られた相関値が有意である可能性が高くなるので好ましい。具体的な細胞株のパネルとしては、肺癌由来の26細胞株であるA549、Calu−1、Calu−3、NCI−H23、NCI−H69、NCI−H226、NCI−H345、N417、NCI−H460、NCI−H596、NCI−H1299、SBC−3、PC−14、PC−14/DTX、PC−14/CDDP、MRC−5、IMR−90、EBC−1、NCI−H292、SHP−77、NCI−H441、NCI−H838、A427、NCI−H522、Calu−6およびPC−9、大腸癌由来の6細胞株であるColo205、HT−29、HCT116、SW480、DLD−1およびWiDr、膵臓癌由来の4細胞株であるPANC−1、MIA PaCa−2、AsPC−1およびBxPC−3、卵巣癌由来の2細胞株であるSK−OV−3およびOVCAR−3の細胞株からなるパネルの全部あるいは一部を用いることができる。
また、臓器により、発現する遺伝子およびその遺伝子の機能の細胞に対する重要性が異なるので、癌細胞が由来する臓器によって、Eg5阻害剤に対する感受性に関与する遺伝子が異なることが考えられる。したがって、測定に用いる細胞株を、1つの特定の臓器に由来する癌細胞株にすることにより、その臓器の癌細胞のEg5阻害剤に対する感受性により特異的に関与する遺伝子を同定することができる。たとえば、Eg5阻害剤を肺癌の治療に用いる場合のように、肺癌細胞のEg5阻害剤の感受性に関する遺伝子を特に同定したい場合、肺癌細胞株だけ、例えば、肺癌由来の26細胞株であるA549、Calu−1、Calu−3、NCI−H23、NCI−H69、NCI−H226、NCI−H345、N417、NCI−H460、NCI−H596、NCI−H1299、SBC−3、PC−14、PC−14/DTX、PC−14/CDDP、MRC−5、IMR−90、EBC−1、NCI−H292、SHP−77、NCI−H441NCI−H838、A427、NCI−H522、Calu−6およびPC−9の全部あるいは一部を用いて測定を行うことにより、肺癌細胞のEg5阻害剤の感受性に関する遺伝子を同定することができる。
(2)Eg5阻害剤
本発明で用いるEg5阻害剤は、Eg5阻害作用を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、WO2004/092147に記載の化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩、化合物(II)またはその薬理学的に許容される塩、WO01/030768、WO01/098278などに記載の化合物Q(SB−715992)またはその薬理学的に許容される塩、WO02/057244、WO03/094839、WO03/097053、WO03/103575、WO03/106426、WO04/006865、WO04/009036、WO04/024086、WO04/032840、WO04/034972、WO03/039460、WO03/049527、WO03/050122、WO03/050064、WO03/049678、WO03/049679、WO03/079973、WO03/099211、WO03/105855、WO04/037171、WO04/039774、WO04/058700、WO04/058148、WO02/078639、WO02/079149、WO02/079169、WO03/099286、WO04/078758などに記載の化合物などがあげられ、好ましくは化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩、化合物(II)またはその薬理学的に許容される塩、化合物Qまたはその薬理学的に許容される塩などがあげられる。
一般式(I)および(II)の各基の定義において、
(i)低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルキルアミノおよびジ低級アルキルアミノの低級アルキル部分としては、例えば直鎖または分岐状の炭素数1〜10のアルキル、具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなどがあげられる。
ジ低級アルキルアミノの2つの低級アルキル部分は、同一でも異なっていてもよい。
(ii)低級アルケニルとしては、例えば直鎖または分岐状の炭素数2〜8のアルケニル、具体的にはビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニルなどがあげられる。
(iii)低級アルキニルとしては、例えば直鎖または分岐状の炭素数2〜8のアルキニル、具体的にはエチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニルなどがあげられる。
(iv)シクロアルキルとしては、例えば炭素数3〜8のシクロアルキル、具体的にはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどがあげられる。
(v)アリール、アリールオキシおよびアリールアミノのアリール部分としては、例えばフェニル、ナフチルなどがあげられる。
(vi)複素環基としては、例えば脂肪族複素環基、芳香族複素環基などがあげられる。脂肪族複素環基としては、例えば窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む5員または6員の単環性脂肪族複素環基、3〜8員の環が縮合した二環または三環性で窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む縮環性脂肪族複素環基などがあげられ、具体的にはピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピペリジノ、モルホリノ、オキサゾリニル、ジオキソラニル、テトラヒドロピラニル、1−デカヒドロキシイソキノリニルなどがあげられる。芳香族複素環基としては、例えば窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む5員または6員の単環性芳香族複素環基、3〜8員の環が縮合した二環または三環性で窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む縮環性芳香族複素環基などがあげられ、具体的にはフリル、チエニル、ベンゾチエニル、ピロリル、ピリジル、ピラジニル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、ピリミジニル、インドリル、イソインドリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、キノリル、イソキノリル、キナゾリニル、ピラニル、1,3−ベンゾジオキソール−5−イルなどがあげられる。
(vii)芳香族複素環基としては、上記(vi)であげた芳香族複素環基があげられる。
(viii)隣接する窒素原子と一緒になって形成される複素環基としては、例えば少なくとも1個の窒素原子を含む脂肪族複素環基などがあげられる。該少なくとも1個の窒素原子を含む脂肪族複素環基は、酸素原子、硫黄原子または他の窒素原子を含んでもいてよく、例えばピロリジニル、モルホリノ、チオモルホリノ、ピラゾリジニル、ピペリジノ、ピペラジニル、ホモピペラジニル、アジリジニル、アゼチジニル、ペルヒドロアゼピニル、ペルヒドロアゾシニル、スクシンイミジル、ピロリドニル、グルタルイミジル、ピペリドニルなどがあげられる。
(ix)シクロアルキレンとしては、例えば炭素数3〜8のシクロアルキレン、具体的にはシクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、シクロヘプチレン、シクロオクチレンなどがあげられる。
(x)フェニレンとしては、1,4−フェニレン、1,3−フェニレンまたは1,2−フェニレンがあげられる。
(xi)ハロゲンはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素の各原子を意味する。
(xii)置換低級アルキル、置換低級アルコキシ、置換低級アルケニル、置換低級アルキニル、置換シクロアルキル、置換低級アルキルアミノおよび置換ジ低級アルキルアミノにおける置換基としては、同一または異なって例えば置換数1〜3の、ハロゲン、ヒドロキシ、オキソ、ニトロ、アジド、シクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール(該置換アリールにおける置換基は後記の置換アリールにおける置換基(xiv)と同義である)、置換もしくは非置換の複素環基(該置換複素環基における置換基は後記の置換複素環基における置換基(xv)と同義である)、−CONR2728<式中、R27およびR28は同一または異なって、水素原子、ヒドロキシ、置換もしくは非置換の低級アルキル{該置換低級アルキルにおける置換基としては、同一または異なって例えば置換数1〜3の、ヒドロキシ、低級アルコキシ、オキソ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、置換もしくは非置換のアリール(該置換アリールにおける置換基は、後記の置換アリールにおける置換基(xiv)と同義である)、置換もしくは非置換の複素環基(該置換複素環基における置換基は、後記置換複素環基における置換基(xv)と同義である)、低級アルカノイル、置換もしくは非置換のアロイル(該置換アロイルにおける置換基は、後記置換アリールにおける置換基(xiv)と同義である)、ハロゲン、−CONR2930[式中、R29およびR30は同一または異なって、水素原子、ヒドロキシ、置換もしくは非置換の低級アルキル(該置換低級アルキルにおける置換基(a)としては、同一または異なって例えば置換数1〜3の、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルコキシ、オキソ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、アリール、複素環基、アミノ、低級アルキルアミノ、ジ低級アルキルアミノなどがあげられる)、低級アルケニル、低級アルキニル、シクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール(該置換アリールにおける置換基は、後記置換アリールにおける置換基(xiv)と同義である)、置換もしくは非置換の複素環基(該置換複素環基における置換基は、後記置換複素環基における置換基(xv)と同義である)、置換もしくは非置換のアロイル(該置換アロイルにおける置換基は、後記置換アリールにおける置換基(xiv)と同義である)またはアラルキルオキシカルボニルを表すか、またはR29とR30が隣接する窒素原子と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基(該隣接する窒素原子と一緒になって形成される置換複素環基における置換基は後記の隣接する窒素原子と一緒になって形成される置換複素環基における置換基(xv)と同義である)を形成する]、−NR3132[式中、R31およびR32は同一または異なって、水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル(該置換低級アルキルにおける置換基は前記置換低級アルキルにおける置換基(a)と同義である)、低級アルケニル、低級アルキニル、シクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール(該置換アリールにおける置換基は後記の置換アリールにおける置換基(xiv)と同義である)置換もしくは非置換の複素環基(該置換複素環基における置換基は後記の置換複素環基における置換基(xv)と同義である)、置換もしくは非置換の低級アルカノイル(該置換低級アルカノイルにおける置換基は、前記の置換低級アルキルにおける置換基(a)と同義である)、置換もしくは非置換のアロイル(該置換アロイルにおける置換基は前記置換低級アリールにおける置換基(xiv)と同義である)またはアラルキルオキシカルボニルを表すか、またはR31とR32が隣接する窒素原子と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基(該隣接する窒素原子と一緒になって形成される置換複素環基における置換基は後記の隣接する窒素原子と一緒になって形成される置換複素環基における置換基(xv)と同義である)を形成する]などがあげられる}、置換もしくは非置換の低級アルケニル(該置換低級アルケニルにおける置換基は、前記の置換低級アルキルにおける置換基(a)と同義である)、置換もしくは非置換の低級アルキニル(該置換低級アルキニルにおける置換基は、前記の置換低級アルキルにおける置換基(a)と同義である)、置換もしくは非置換のシクロアルキル(該置換シクロアルキルにおける置換基は、前記の置換低級アルキルにおける置換基(a)と同義である)、置換もしくは非置換のアリール(該置換アリールにおける置換基は、後記の置換アリールにおける置換基(xiv)と同義である)、置換もしくは非置換の複素環基(該置換複素環基における置換基は、後記置換複素環基における置換基(xv)と同義である)、置換もしくは非置換の低級アルコキシ(該置換低級アルコキシにおける置換基は、前記の置換低級アルキルにおける置換基(a)と同義である)、置換もしくは非置換の低級アルカノイル(該置換低級アルカノイルにおける置換基は、前記の置換低級アルキルにおける置換基(a)と同義である)、置換もしくは非置換のアロイル(該置換アロイルにおける置換基は、後記置換アリールにおける置換基(xiv)と同義である)、置換もしくは非置換のアリールオキシカルボニル(該置換アリールオキシカルボニルにおける置換基は、後記置換アリールにおける置換基(xiv)と同義である)またはアラルキルオキシカルボニルを表すか、またはR27とR28が隣接する窒素原子と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基(該隣接する窒素原子と一緒になって形成される置換複素環基における置換基は後記の隣接する窒素原子と一緒になって形成される置換複素環基における置換基(xv)と同義である)を形成する>、−CO33{式中、R33は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル[該置換低級アルキルにおける置換基(b)としては、同一または異なって例えば置換数1〜3の、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルコキシ、オキソ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、置換もしくは非置換のアリール(該置換アリールにおける置換基は後記の置換アリールにおける置換基(xiv)と同義である)、置換もしくは非置換の複素環基(該置換複素環基における置換基は後記の置換複素環基における置換基(xv)と同義である)、−CONR3435(式中、R34およびR35はそれぞれ前記R29およびR30と同義である)、−NR3637(式中、R36およびR37はそれぞれ前記R31およびR32と同義である)などがあげられる]置換もしくは非置換の低級アルケニル(該置換低級アルケニルにおける置換基は、前記の置換低級アルキルにおける置換基(b)と同義である)、置換もしくは非置換の低級アルキニル(該置換低級アルキニルにおける置換基は、前記の置換低級アルキルにおける置換基(b)と同義である)、置換もしくは非置換のシクロアルキル(該置換シクロアルキルにおける置換基は、前記の置換低級アルキルにおける置換基(b)と同義である)、置換もしくは非置換のアリール(該置換アリールにおける置換基は後記の置換アリールにおける置換基(xiv)と同義である)または置換もしくは非置換の複素環基(該置換複素環基における置換基は後記の置換複素環基における置換基(xv)と同義である)を表す}、−COR38(式中、R38は前記R33と同義である)、−NR3940<式中、R39およびR40は同一または異なって、水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル{該置換低級アルキルにおける置換基(c)としては、同一または異なって例えば置換数1〜3の、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルコキシ、オキソ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、置換もしくは非置換のアリール(該置換アリールにおける置換基は後記の置換アリールにおける置換基(xiv)と同義である)、置換もしくは非置換の複素環基(該置換複素環基における置換基は後記の置換複素環基における置換基(xv)と同義である)、−O(CHCHO)41(式中、nは1〜15の整数を表し、R41は低級アルキルを表す)、−CONR4243(式中、R42およびR43はそれぞれ前記R29およびR30と同義である)、−SO44[式中、R44は低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、置換もしくは非置換のアリール(該置換アリールにおける置換基は後記の置換アリールにおける置換基(xiv)と同義である)または置換もしくは非置換の複素環基(該置換複素環基における置換基は後記の置換複素環基における置換基(xv)と同義である)を表す]、−NR4546(式中、R45およびR46はそれぞれ前記R31およびR32と同義である)などがあげられる}、置換もしくは非置換の低級アルケニル(該置換低級アルケニルにおける置換基は、前記の置換低級アルキルにおける置換基(c)と同義である)、置換もしくは非置換の低級アルキニル(該置換低級アルキニルにおける置換基は、前記の置換低級アルキルにおける置換基(c)と同義である)、置換もしくは非置換のシクロアルキル(該置換シクロアルキルにおける置換基は、前記の置換低級アルキルにおける置換基(c)と同義である)、置換もしくは非置換のアリール(該置換アリールにおける置換基は後記の置換アリールにおける置換基(xiv)と同義である)、置換もしくは非置換の複素環基(該置換複素環基における置換基は後記の置換複素環基における置換基(xv)と同義である)、置換もしくは非置換の低級アルカノイル(該置換低級アルカノイルにおける置換基は、前記の置換低級アルキルにおける置換基(c)と同義である)、−COR47{式中、R47は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル(該置換低級アルキルにおける置換基は前記置換低級アルキルにおける置換基(c)と同義である)、置換もしくは非置換の低級アルケニル(該置換低級アルケニルにおける置換基は、前記の置換低級アルキルにおける置換基(c)と同義である)、置換もしくは非置換の低級アルキニル(該置換低級アルキニルにおける置換基は、前記の置換低級アルキルにおける置換基(c)と同義である)、置換もしくは非置換のシクロアルキル(該置換シクロアルキルにおける置換基は、前記の置換低級アルキルにおける置換基(c)と同義である)、置換もしくは非置換のアリール(該置換アリールにおける置換基は後記の置換アリールにおける置換基(xiv)と同義である)、置換もしくは非置換の複素環基(該置換複素環基における置換基は後記置換複素環基における置換基(xv)と同義である)、−NR4849(式中、R48およびR49はそれぞれ前記のR31およびR32と同義である)または−OR50[式中、R50は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル(該置換低級アルキルにおける置換基は前記置換低級アルキルにおける置換基(c)と同義である)、低級アルケニル、低級アルキニル、シクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール(該置換アリールにおける置換基は後記の置換アリールにおける置換基(xiv)と同義である)または置換もしくは非置換の複素環基(該置換複素環基における置換基は後記置換複素環基における置換基(xv)と同義である)を表す]を表す}または−SO51(式中、R51は前記R47と同義である)を表すか、またはR39とR40が隣接する窒素原子と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基(該隣接する窒素原子と一緒になって形成される置換複素環基における置換基は後記の隣接する窒素原子と一緒になって形成される置換複素環基における置換基(xv)と同義である)を形成する>、−N525354(式中、R52およびR53は同一または異なって、低級アルキルを表すか、またはR52とR53が隣接する窒素原子と一緒になって複素環基を形成し、R54は低級アルキルを表し、Xは塩素、臭素またはヨウ素の各原子を表す)、−OR55{式中、R55は置換もしくは非置換の低級アルキル(該置換低級アルキルにおける置換基(c)は、前記の置換低級アルキルにおける置換基(c)と同義である)、置換もしくは非置換の低級アルケニル(該置換低級アルケニルにおける置換基は、前記の置換低級アルキルにおける置換基(c)と同義である)、置換もしくは非置換の低級アルキニル(該置換低級アルキニルにおける置換基は、前記の置換低級アルキルにおける置換基(c)と同義である)、置換もしくは非置換のシクロアルキル(該置換シクロアルキルにおける置換基は、前記の置換低級アルキルにおける置換基(c)と同義である)、置換もしくは非置換のアリール(該置換アリールにおける置換基は後記の置換アリールにおける置換基(xiv)と同義である)、置換もしくは非置換の複素環基(該置換複素環基における置換基は後記の置換複素環基における置換基(xv)と同義である)または−COR56(式中、R56は前記R47と同義である)を表す}、−SR57(式中、R57は前記R55と同義である)、−SO58[式中、R58は置換もしくは非置換の低級アルキル(該置換低級アルキルにおける置換基は前記置換低級アルキルにおける置換基(c)と同義である)、置換もしくは非置換の低級アルケニル(該置換低級アルケニルにおける置換基は、前記の置換低級アルキルにおける置換基(c)と同義である)、置換もしくは非置換の低級アルキニル(該置換低級アルキニルにおける置換基は、前記の置換低級アルキルにおける置換基(c)と同義である)、置換もしくは非置換のシクロアルキル(該置換シクロアルキルにおける置換基は、前記の置換低級アルキルにおける置換基(c)と同義である)、置換もしくは非置換のアリール(該置換アリールにおける置換基は後記の置換アリールにおける置換基(xiv)と同義である)、置換もしくは非置換の複素環基(該置換複素環基における置換基は後記の置換複素環基における置換基(xv)と同義である)または−NR5960(式中、R59およびR60はそれぞれ前記R31およびR32と同義である)を表す]−OSO61(式中、R61は前記R58と同義である)などがあげられる。
ここで示した低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルコキシカルボニル、低級アルキルアミノ、ジ低級アルキルアミノおよび低級アルカノイルの低級アルキル部分、低級アルケニル、低級アルキニル、シクロアルキル、アリール、アロイルおよびアリールオキシカルボニルのアリール部分、複素環基、隣接する窒素原子と一緒になって形成される複素環基ならびにハロゲンは、それぞれ前記低級アルキル(i)、低級アルケニル(ii)、低級アルキニル(iii)、シクロアルキル(iv)、アリール(v)、複素環基(vi)、隣接する窒素原子と一緒になって形成される複素環基(viii)およびハロゲン(xi)と同義である。また、ここで示したアラルキルオキシカルボニルのアラルキル部分(xiii)としては、例えば炭素数7〜15のアラルキル、具体的にはベンジル、フェネチル、ベンズヒドリル、ナフチルメチルなどがあげられる。
(xiv)置換アリール、置換アリールオキシ、置換アリールアミノ、置換フェニレン、置換複素環基のうちの置換芳香族複素環基および置換芳香族複素環基における置換基としては、同一または異なって例えば置換数1〜3の、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、ホルミル、メチレンジオキシ、置換もしくは非置換の低級アルキル(該置換低級アルキルにおける置換基(d)としては、同一または異なって例えば置換数1〜3の、ハロゲン、オキソ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、アミノ、低級アルキルアミノ、ジ低級アルキルアミノ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アリール、複素環基などがあげられる)、置換もしくは非置換の低級アルケニル(該置換低級アルケニルにおける置換基は、前記の置換低級アルキルにおける置換基(d)と同義である)、置換もしくは非置換の低級アルキニル(該置換低級アルキニルにおける置換基は、前記の置換低級アルキルにおける置換基(d)と同義である)、置換もしくは非置換のシクロアルキル(該置換シクロアルキルにおける置換基は、前記の置換低級アルキルにおける置換基(d)と同義である)、置換もしくは非置換の低級アルコキシ(該置換低級アルコキシにおける置換基は、前記の置換低級アルキルにおける置換基(d)と同義である)、置換もしくは非置換の低級アルキルチオ(該置換低級アルキルチオにおける置換基は、前記の置換低級アルキルにおける置換基(d)と同義である)、アミノ、置換もしくは非置換の低級アルキルアミノ(該置換低級アルキルアミノにおける置換基は、前記の置換低級アルキルにおける置換基(d)と同義である)、置換もしくは非置換のジ低級アルキルアミノ(該置換ジ低級アルキルアミノにおける置換基は、前記の置換低級アルキルにおける置換基(d)と同義である)、置換もしくは非置換の低級アルカノイル(該置換低級アルカノイルにおける置換基は、前記の置換低級アルキルにおける置換基(d)と同義である)、置換もしくは非置換の低級アルカノイルオキシ(該置換低級アルカノイルオキシにおける置換基は、前記の置換低級アルキルにおける置換基(d)と同義である)、置換もしくは非置換の低級アルカノイルアミノ(該置換低級アルカノイルアミノにおける置換基は、前記の置換低級アルキルにおける置換基(d)と同義である)、置換もしくは非置換の低級アルカノイルチオ(該置換低級アルカノイルチオにおける置換基は、前記の置換低級アルキルにおける置換基(d)と同義である)、置換もしくは非置換の低級アルキルアミノカルボニル(該置換低級アルキルアミノカルボニルにおける置換基は、前記の置換低級アルキルにおける置換基(d)と同義である)、置換もしくは非置換の低級アルキルアミノカルボニルオキシ(該置換低級アルキルアミノカルボニルオキシにおける置換基は、前記の置換低級アルキルにおける置換基(d)と同義である)、置換もしくは非置換のジ低級アルキルアミノカルボニル(該置換ジ低級アルキルアミノカルボニルにおける置換基は、前記の置換低級アルキルにおける置換基(d)と同義である)、置換もしくは非置換の低級アルコキシカルボニル(該置換低級アルコキシカルボニルにおける置換基は、前記の置換低級アルキルにおける置換基(d)と同義である)、置換もしくは非置換のジ低級アルキルアミノカルボニルオキシ(該置換ジ低級アルキルアミノカルボニルオキシにおける置換基は、前記の置換低級アルキルにおける置換基(d)と同義である)、置換もしくは非置換のアリール(該置換、アリールにおける置換基(e)としては、同一または異なって例えば置換数1〜3の、ハロゲン、ヒドロキシ、低級アルコキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、アミノ、低級アルキルアミノ、ジ低級アルキルアミノなどがあげられる)、置換もしくは非置換の複素環基(該置換複素環基における置換基は、前記の置換アリールにおける置換基(e)と同義である)、置換もしくは非置換のアリールスルホニル(該置換アリールスルホニルにおける置換基は前記の置換アリールにおける置換基(e)と同義である)、置換もしくは非置換のアリールオキシ(該置換アリールオキシにおける置換基は、前記の置換アリールにおける置換基(e)と同義である)、置換もしくは非置換のアリールアミノ(該置換アリールアミノにおける置換基は、前記の置換アリールにおける置換基(e)と同義である)、置換もしくは非置換のアリールチオ(該置換アリールチオにおける置換基は、前記の置換アリールにおける置換基(e)と同義である)、置換もしくは非置換のアロイル(該置換アロイルにおける置換基は、前記の置換アリールにおける置換基(e)と同義である)、置換もしくは非置換のアロイルオキシ(該置換アロイルオキシにおける置換基は、前記の置換アリールにおける置換基(e)と同義である)、置換もしくは非置換のアロイルチオ(該置換アロイルチオにおける置換基は、前記の置換アリールにおける置換基(e)と同義である)、置換もしくは非置換のアロイルアミノ(該置換アロイルアミノにおける置換基は、前記の置換アリールにおける置換基(e)と同義である)、置換もしくは非置換の複素環アミノ(該置換複素環アミノにおける置換基は、前記の置換アリールにおける置換基(e)と同義である)、置換もしくは非置換の複素環オキシ(該置換複素環オキシにおける置換基は、前記の置換アリールにおける置換基(e)と同義である)、置換もしくは非置換の複素環チオ(該置換複素環チオにおける置換基は、前記の置換アリールにおける置換基(e)と同義である)などがあげられる。
ここで示した低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルキルチオ、低級アルキルアミノ、ジ低級アルキルアミノ(該ジ低級アルキルアミノの2つの低級アルキル部分は、同一でも異なっていてもよい)、低級アルカノイル、低級アルカノイルオキシ、低級アルカノイルアミノ、低級アルカノイルチオ、低級アルキルアミノカルボニル、低級アルキルアミノカルボニルオキシ、ジ低級アルキルアミノカルボニル(該ジ低級アルキルアミノカルボニルの2つの低級アルキル部分は、同一でも異なっていてもよい)、ジ低級アルキルアミノカルボニルオキシ(該ジ低級アルキルアミノカルボニルオキシの2つの低級アルキル部分は、同一でも異なっていてもよい)、低級アルコキシカルボニルおよびジ低級アルキルアミノカルボニルオキシ(該ジ低級アルキルアミノカルボニルオキシの2つの低級アルキル部分は、同一でも異なっていてもよい)の低級アルキル部分は前記の低級アルキル(i)と同義であり低級アルケニル、低級アルキニル、シクロアルキルおよびハロゲンはそれぞれ前記の低級アルケニル(ii)、低級アルキニル(iii)、シクロアルキル(iv)およびハロゲン(xi)と同義である。さらにここで示したアリール、アリールスルホニル、アリールオキシ、アリールチオ、アリールアミノ、アロイル、アロイルオキシ、アロイルチオおよびアロイルアミノのアリール部分は前記のアリール(v)と同義であり、複素環基、複素環アミノ、複素環オキシおよび複素環チオの複素環基部分は前記の複素環基(vi)と同義である。
(xv)置換複素環基のうちの置換脂肪族複素環基および隣接する窒素原子と一緒になって形成される置換複素環基における置換基としては、前記置換アリールにおける置換基(xiv)の定義であげた基に加え、オキソなどがあげられる。
化合物(I)、(II)およびQの薬理学的に許容される塩は、例えば薬理学的に許容される酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩などを包含する。化合物(I)、(II)およびQの薬理学的に許容される酸付加塩としては、例えば塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩などの無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩などの有機酸塩などがあげられ、薬理学的に許容される金属塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩などがあげられ、薬理学的に許容されるアンモニウム塩としては、例えばアンモニウム、テトラメチルアンモニウムなどの塩があげられ、薬理学的に許容される有機アミン付加塩としては、例えばモルホリン、ピペリジンなどの付加塩があげられ、薬理学的に許容されるアミノ酸付加塩としては、例えばリジン、グリシン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸などの付加塩があげられる。
化合物(I)は、WO03/051854またはWO2004/092147に記載の方法、あるいはそれに準じて製造することができる。
化合物(II)は、J.Med.Chem.,13,414−418,1970またはJ.Med.Chem.,15,13−16,1972に記載の方法、あるいはそれらに準じて製造することができる。
化合物Qは、例えばWO03/070701に記載の方法またはそれに準じて製造することができる。
化合物(I)、(II)およびQの中には、位置異性体、幾何異性体、光学異性体、互変異性体などの立体異性体が存在し得るものもあるが、本発明の遺伝子を同定する方法などには、これらを含め、全ての可能な異性体およびそれらの混合物を使用することができる。
化合物(I)、(II)およびQの塩を取得したいとき、化合物(I)、(II)およびQが塩の形で得られるときはそのまま精製すればよく、また、遊離の形で得られるときは、化合物(I)、(II)およびQを適当な溶媒に溶解または懸濁し、酸または塩基を加えることにより塩を形成させて単離、精製すればよい。
また、化合物(I)、(II)およびQならびにその薬理学的に許容される塩は、水または各種溶媒との付加物の形で存在することもあるが、これらの付加物も本発明の遺伝子を同定する方法などに使用することができる。
化合物(I)および(II)の具体例を第1表および第2表に示す。


次に、化合物(I)および化合物(II)のEg5阻害作用について、試験例を用いて説明する。
試験例1 免疫細胞化学染色によるM期細胞表現型解析
免疫細胞化学染色によるM期細胞表現型解析は文献(Oncogene,19,5303−5313,2000)を参考にして実施した。ヒト肺癌細胞株A549(ATCC番号:CCL−185)を被験化合物とともに17時間培養した。リン酸緩衝溶液(PBS)で洗浄後、−20℃で保冷したメタノールで1分間処理し、細胞を固定化した。PBSで洗浄後、0.2%トリトン−X(Triton−X)を含むPBSで15分間浸透化した。PBSで洗浄後、ブロッキング溶液(1%ウシ胎児血清を含むPBS)で30分間ブロッキングし、1次抗体溶液{0.2%マウスモノクローナル抗α−チューブリン抗体〔シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)社、カタログ番号T9026〕および0.2%ウサギ抗γ−チューブリン抗体(シグマ・アルドリッチ社、カタログ番号T3559)を含むブロッキング溶液}と30分間反応させた。PBSで洗浄後、2次抗体溶液{0.025%アレクサ・フロー(Alexa Fluor)546結合抗マウスIgG抗体〔モレキュラープローブズ(Molecular Probes)社、カタログ番号A−11030〕、0.5%アレクサ・フロー488結合抗ウサギIgG抗体(モレキュラープローブズ社、カタログ番号A−11034)および1μmol/lヘキスト(Hoechst)33342を含むブロッキング溶液}と30分間反応させ、微小管、中心体および染色体を可視化した。倒立蛍光顕微鏡を用いてM期の細胞の表現型を観察した。被験化合物として化合物Aまたは化合物D〔アクロス(Acros)社〕を用いた場合、化合物Aおよび化合物DによりM期に集積した細胞は、単星状微小管(モナストラル・マイクロチューブル・アレイ)、単極性中心体(モノポーラー・スピンドル)、環状に分布した染色体の局在、という特徴的な表現型を示した。このようなM期の表現型は文献に記載されたEg5に対する中和抗体(Cell,83,1159−1169,1995)やEg5特異的阻害剤モナストロール(Science,286,971−974,1999)で処理した細胞と同様な表現型であった。
以上の結果から、化合物Aおよび化合物DはEg5を阻害することが示唆された。
試験例2 Eg5の酵素活性に対する阻害試験
全長ヒトEg5組換体の調製は文献(Cell,83,1159−1169,1995)を参考にして実施した。HisタグをN末端に融合した全長ヒトEg5を発現するバキュロウイルスをスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)Sf9昆虫細胞に感染させ、培養後、培養液を遠心して細胞を回収した。回収した細胞をバッファーに懸濁し、遠心により上清を回収した。上清をニッケルアガロースカラムに通塔し、HisタグをN末端に融合したEg5をアフィニティー精製して部分精製標品を取得した。
Eg5のATPase活性の測定は文献(EMBO J.,13,751−757,1994;Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,89,4884−4887,1992)を参考にして実施した。段階的に希釈した被験化合物とともに、25mmol/lピペラジンN,N’−ビス(エタンスルホン酸)(PIPES)/KOH(pH6.8)、1mmol/lエチレングリコールビス(2−アミノエチルエーテル)四酢酸(EGTA)、2mmol/l MgCl、1mmol/lジチオトレイトール(DTT)、5μmol/lパクリタキセル、100μg/mlウシ血清アルブミン、25μg/mlチューブリン〔サイトスケルトン(Cytoskeleton)社、カタログ番号TL238〕、200μmol/l 2−アミノ−6−メルカプト−7−メチルプリンリボサイド(MESG substrate、モレキュラープローブズ社、カタログ番号E−6646)、1U/mlプリンヌクレオシドホスホリラーゼ(モレキュラープローブズ社、カタログ番号E−6646)、1mmol/l ATP、12.5μg/ml Eg5部分精製標品から構成される反応溶液で酵素反応を行った。酵素反応は30℃で30分間実施した。ATPase活性の指標となる360nmでの吸光度をプレートリーダー〔モレキュラーデバイス(Molecular Devices)社、SpectraMax 340PC384〕で測定した。Eg5存在下、化合物非存在下での吸光度を100%、Eg5非存在下、化合物非存在下の吸光度を0%として相対活性を計算し、IC50値を算出した。
被験化合物として化合物Aまたは化合物Dを用いて測定した場合、化合物Aおよび化合物Dは濃度依存的にEg5のATPase活性を阻害し、そのIC50値は化合物Aが2μmol/l、化合物Dは0.8μmol/lであった。
以上、試験例1および試験例2の結果から、化合物Aおよび化合物DはEg5阻害作用を有することが示された。すなわち、化合物(I)および化合物(II)はEg5阻害剤として利用できることが示された。
(3)抗癌剤に対する感受性の測定法
本発明における、癌細胞の抗癌剤に対する感受性の測定法としては、Eg5阻害剤と(1)のヒト癌細胞を一定期間接触させた後、該細胞について、生細胞数、DNA合成速度または総蛋白質量を測定する方法があげられる。感受性は例えば、種々の濃度のEg5阻害剤について上記の測定を行い、Eg5阻害剤の濃度と測定値との相関を表す検量線を作成し、Eg5阻害剤を接触させなかった細胞について同様に測定したときの値を100%としたときの50%に相当する値を与えるEg5阻害剤の濃度(GI50)、またはGI50の濃度をmol/lで表したときのその対数(log10GI50)もしくは−log10GI50で表すことができる。生細胞数は、MTT法(J.Immunol.Methods,65,55−63,1983)、XTT法(J.Immunol.Methods,142,257−265,1991)などの発色反応を利用した方法で測定することができる。また、DNA合成速度は、Hで標識したチミジンの細胞への取り込みを測定することなどにより、測定することができる。総蛋白質量は、スルフォローダミンBアッセイ法などにより測定できる。
(4)遺伝子の発現量の測定
本発明における遺伝子の発現量の測定は、遺伝子の転写産物であるmRNAまたは遺伝子産物である蛋白質を定量することにより行うことができる。
(i)RNAまたは蛋白質の抽出
(1)のヒト癌細胞株から以下の一般的な方法でRNAまたは蛋白質を抽出できる。RNAの場合、例えばトリゾル(TRIZOL)試薬〔インビトロジェン(Invitrogen)社〕を用いた場合、添付の操作法に従って行えばよい。蛋白質の場合、例えばThe Protein Handbook,Humana Press(1996)などの成書に従って行えばよい。
(ii)mRNAの定量
mRNAの定量は(1)で抽出したRNAを測定試料として、DNAマイクロアレイ、ノーザンブロット解析、RT−PCRなどの技術により行うことができる。また、RT−PCRにおいて使用するための、該RNAに相補的なポリヌクレオチドを含む、RNAの定量試薬も本発明の範囲に含まれる。
(iii)蛋白質の定量
蛋白質の定量は特異的抗体を用いた免疫化学的定量法によって行うことができる。蛋白質に対する抗体は、例えば成書Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1988)に記載の方法に従って、モノクローナル抗体あるいはポリクローナル抗体を作製することができる。また、市販の抗体が利用可能な場合は、特異性を確認の上、使用することもできる。得られた抗体を用いて、成書(例えば「酵素免疫測定法」医学書院(1982))に記載の方法に従って、ELISAあるいはRIA、ウェスタンブロットを行い、蛋白質を定量することができる。また、上記の方法において使用するための、該蛋白質に対する抗体を含む免疫測定試薬も本発明の範囲に含まれる。
遺伝子の発現量は、上記(ii)または(iii)の方法で測定された、一定量のRNAまたは蛋白質あたりのシグナル強度またはその対数で表される。RT−PCRの一種であるリアルタイムPCRでmRNAを定量した場合は、増幅反応が対数的に進行する、あるシグナル強度に達するまでの反応サイクル数(Ct値)で表すこともできる。
(5)遺伝子の選抜
本発明では、各遺伝子ごとに、各細胞株における発現量と該細胞株のEg5阻害剤に対する感受性との相関を解析し、その発現量と細胞株のEg5阻害剤に対する感受性との間に相関のある遺伝子を選抜する。ここで行なう相関解析は、遺伝子の発現量およびEg5阻害剤に対する感受性がシグナル強度の対数、Ct値、GI50の対数などで表される場合には、その数値は正規分布になると仮定し、例えばピアソンの相関係数(以下、単に相関係数ともいう)を計算することによって行うことができる。相関の有無は、相関係数が0であるかどうかで決定され、相関係数が0の場合は相関はなく、0でなければ相関があるといえる。また、相関係数は1から−1の間の値を取るが、相関係数の絶対値が1に近いほど相関が高く、0に近いほど相関が低いといえる。なお、得られた相関係数の有意性は、帰無仮説に基づいて標本数から求められるP値(母集団の相関係数が0になる確率)により検定できる。例えば、P値<0.05であれば、その相関係数は5%の有意水準で有意であるといえる。 以上のようにして選抜される、その発現量がEg5阻害剤に対する感受性と負の相関のある遺伝子、すなわちEg5阻害剤に対する感受性が高い細胞ほどその発現量が低い遺伝子(以下、耐性遺伝子ともいう)の例として、以下の12遺伝子があげられる。
(i)CYP24A1:チトクロームP450・ファミリー24・サブファミリーA・ポリペプチド1(NM_000782)
(ii)OBRGRP:レプチン受容体遺伝子関連蛋白質(NM_017526)
(iii)BF:B因子(NM_001710)
(iv)APRT:アデニンホスホリボシルトラスフェラーゼ(NM_000485)
(v)BIRC3:バキュロウイルスIAPリピート含有蛋白質(NM_001165)
(vi)SQSTM1:シーケストソーム1(NM_003900)
(vii)TNFAIP2:腫瘍壊死因子α誘導蛋白質2(NM_006291)
(viii)ITM2B:膜内在性蛋白質2B(NM_021999)
(ix)ABCC2:ATP結合カセット・サブファミリーC・メンバー2(NM_000392)
(x)ANXA3:アネキシンA3(NM_005139)
(xi)FAM3C:相同配列3含有ファミリー・メンバー3(NM_014888)
(xii)ABCC3:ATP結合カセット・サブファミリーC・メンバー3(NM_003786)
また、正の相関のある遺伝子、すなわちEg5阻害剤に対する感受性が高い細胞ほどその発現量も高い遺伝子(以下、感受性遺伝子ともいう)の例として、以下の7遺伝子があげられる。
(i)BCO07436:仮想蛋白質BC007436(XM_037317)
(ii)MAP1B:微小管関連蛋白質1B(NM_005909)
(iii)CCNB1:サイクリンB1(NM_031966)
(iv)HSPCA:ヒートショック90kDa蛋白質1α(BC023006)
(v)CCNB2:サイクリンB2(NM_004701)
(vii)FLJ23269:仮想蛋白質FLJ23269(AK026922)
(vii)SLC12A2:溶質キャリアー・ファミリー12・メンバー2(NM_001046)
これらの遺伝子は、かっこ内に示したDNA配列データーベースGenBankの登録番号の配列を有する遺伝子として規定される。
あるEg5阻害剤を用いて、その発現量がEg5阻害剤に対する感受性と相関のある遺伝子と同定された遺伝子は、そのEg5阻害剤だけでなく、他のEg5阻害剤に対する感受性とも相関のある遺伝子と考えられる。
(B)癌細胞のEg5阻害剤に対する感受性を判定する方法
本発明はさらに、癌細胞のEg5阻害剤に対する感受性を判定する方法を提供する。判定の方法としては、以下の(a)〜(e)の工程を含む方法があげられる。
(a)上記(A)の方法により同定した遺伝子から1以上の遺伝子を選択し、その発現量に対応した点数を決定する工程
(b)感受性を判定する癌細胞における該遺伝子の発現量を測定する工程
(c)各遺伝子について、工程(b)で測定した発現量に基づき、工程(a)で決定した点数を割り当てる工程
(d)選択された全遺伝子について割り当てられた点数から感受性の指標となる数値を求める工程
(e)予め決定した閾値と(d)で求めた数値とを比較することにより、Eg5阻害剤に対する感受性を判定するという工程
上記点数の決定、感受性の指標となる数値の計算、閾値との比較は、重回帰分析、判別分析、SVM(サポートベクターマシン)法、主成分分析、自己組織化マップ法などの多変量解析の手法(SASによる実験データの解析、竹内啓監修、東京大学出版会、1990などに記載)を用いることで行うことができる。
以下に、重回帰分析を用いた場合の各工程を説明する。選択した遺伝子がn個、Eg5阻害剤に対する感受性Yを−log10GI50で、各遺伝子の発現量をCt値あるいはシグナル強度の対数で表した場合、重回帰分析モデルでは、遺伝子の発現量Xを説明変量として、以下の式1で目的変量である感受性Yを表すことができる。
Y=a+a+・・・・+a+b (式1)
Y:目的変量(感受性:−log10GI50
、X、…X:説明変量(遺伝子の発現量:Ct値あるいはシグナル強度の対数)
、a、…a:偏回帰係数
b:定数項
以下、各遺伝子の発現量をCt値で表した場合で説明するが、シグナル強度の対数を用いた場合もCt値の代わりにシグナル強度の対数を用いて同様にして判定を行うことができる。
この式にn+1種類の細胞株についての感受性Y(−log10GI50)および各遺伝子の発現量X、X、…X(Ct値)を実測した値をそれぞれ代入することにより、n+1個の一次線形多項式を作成し、これらの一次線形多項式を解くことにより、各遺伝子についての偏回帰係数a、a、…aおよび定数項bを求めることができる。この方法で用いる遺伝子は、上記(A)の方法により同定した遺伝子群から、任意に選ぶことができるが、Cp統計量、自由度調整ずみ決定係数、赤池の情報量基準などの基準用の統計量を最適化の指標として、指標が小さくなるように遺伝子を選択していくことが望ましい。このようにして、Eg5阻害剤に対する感受性の予測に重要な遺伝子を選択することにより、複雑さを抑えながら、予測精度を上げること、すなわち最適化を行うことができる。重回帰分析モデルの場合、各遺伝子の点数は、上記で得られた偏回帰係数と遺伝子の発現量の積として表される。
重回帰分析モデルを最適化した場合に選択される、Eg5阻害剤に対する感受性の予測に重要な遺伝子の例としては、(A)で選抜された発現量とEg5阻害剤に対する感受性との間に相関がある遺伝子としてあげた19遺伝子から選択された、CYP24A1、OBRGRP、APRT、TNFAIP2、ITM2B、ABCC2、BC007436、MAP1B、HSPCA、CCNB2およびFLJ23269があげられる。
以上のようにして選択した遺伝子の、感受性を判定する癌細胞における発現量(Ct値)は、上記(A)(3)に記載した方法により測定することができる。得られた各遺伝子のCt値から、上述した各遺伝子の点数、すなわち上記で得られた偏回帰係数aとそのCt値の積を割り当てる。式1に基づき、割り当てられた各遺伝子の点数の合計に定数項bの値を加えることにより、感受性の指標となる数値−log10GI50が求められる。したがって、−log10GI50の閾値として、例えば、上記(A)の遺伝子の選抜の際に測定した、各癌細胞の感受性の指標となる数値(−log10GI50)の平均値など、適当なある数値を設定し、その閾値と比較することにより、癌細胞のEg5阻害剤に対する感受性を判定することができる。
癌細胞として、癌患者から生検などにより取り出した癌組織由来の癌細胞を用いることにより、その癌患者の癌細胞のEg5阻害剤に対する感受性を判定することができる。その癌患者由来の癌細胞が、Eg5阻害剤に感受性が高いと判定された場合に、Eg5阻害剤を治療に用いることにより、効果的に治療を行うことができる。
(C)癌細胞の感受性を規定する遺伝子の選択
(A)の方法によりEg5阻害剤に対する感受性と相関があると判断された遺伝子が、実際に感受性を規定しているか、すなわち遺伝子の発現量を変化させることによりEg5阻害剤に対する感受性を変化させることができるかを調べるには、以下の方法を用いることができる。
(1)遺伝子の強制発現
(A)で選抜された発現量とEg5阻害剤に対する感受性との間に正の相関がある遺伝子群から選ばれた遺伝子蛋白質コード領域を含むcDNAを適当な動物細胞の発現ベクターに挿入し、得られた発現ベクターを癌細胞に導入することで、該遺伝子を強制発現させその発現量を上げることができる。この癌細胞にEg5阻害剤を添加しEg5阻害剤に対する感受性を測定する。発現ベクターを導入しない場合と比較してEg5阻害剤に対する感受性が高くなる場合には、その遺伝子は癌細胞のEg5阻害剤に対する感受性を規定する遺伝子であり、その発現量を上げることにより、癌細胞のEg5阻害剤に対する感受性を増強することができる遺伝子であることがわかる。
発現ベクターとして、例えば、pEGFP−C2〔クロンテック(Clontech)社〕、pAGE107(特開平3−22979;Cytotechnology,,133−140,1990)、pAS3−3(特開平2−227075)、pCDM8(Nature,329,840−842,1987)、pCMV−Tag1〔ストラタジーン(Stratagene)社〕、pcDNA3.1(+)(インビトロジェン社)、pREP4(インビトロジェン社)、pMSG〔アマシャム・バイオサイエンス(Amersham Biosciences)社〕、pAMo(J.Biol.Chem.,268,22782−22787,1993)などを例示することができる。
組換えベクターの導入方法としては、動物細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法(Cytotechnology,,133−140,1990)、リン酸カルシウム法(特開平2−227075)、リポフェクション法(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,84,7413−7417,1987)などをあげることができる。
(2)遺伝子の発現抑制
(A)で選抜された発現量とEg5阻害剤に対する感受性との間に負の相関がある遺伝子群から選ばれた遺伝子に対応するアンチセンスポリヌクレオチド、siRNA、またはアンチセンスポリヌクレオチドもしくはsiRNAの発現ベクターを癌細胞に導入することで、該遺伝子の発現を抑制し、その発現量を下げることができる。この癌細胞にEg5阻害剤を添加し、Eg5阻害剤に対する感受性を測定する。遺伝子発現を抑制しない場合と比較してEg5阻害剤に対する感受性が高くなる場合には、その遺伝子は癌細胞のEg5阻害剤に対する感受性を規定する遺伝子であり、その発現量を下げることにより、癌細胞のEg5阻害剤に対する感受性を増強することができる遺伝子であることがわかる。
siRNA、アンチセンスポリヌクレオチド、またはsiRNAもしくはアンチセンスポリヌクレオチドの発現ベクターは下記(E)に記載に基づいて作製および癌細胞への導入を行うことができる。
(D)Eg5阻害剤に対する感受性増強薬(i)
(A)で選抜された発現量とEg5阻害剤に対する感受性の間に正の相関がある遺伝子、例えばBC007436、MAP1B、CCNB1、HSPCA、CCNB2、FLJ23269およびSLC12A2の中から選択される単独または複数の遺伝子であって、上記(C)の(1)に記載した方法により癌細胞に強制発現させることによってEg5阻害剤に対する感受性を増強させる活性を示す遺伝子を含有する遺伝子治療薬は、該Eg5阻害剤に対する感受性増強薬として用いることができる。また、該遺伝子の強制発現の結果、癌細胞における該遺伝子がコードする蛋白質の量が増加することにより、Eg5阻害剤に対する感受性が増強されると考えられるので、該遺伝子がコードする蛋白質を含有する蛋白製剤は、Eg5阻害剤に対する感受性増強薬として使用することができる。
上記したEg5阻害剤に対する感受性を増強させる活性を示す遺伝子または該遺伝子がコードする蛋白質は、Eg5阻害剤に対する感受性増強薬として単独で用いることが可能ではあるが、通常は薬理学的に許容される一つあるいはそれ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られる任意の方法により製造した医薬製剤として用いることが望ましい。このような医薬製剤の詳細については、本明細書中の(G)に後記する。
(E)Eg5阻害剤に対する感受性増強薬(ii)
(A)で選抜された発現量とEg5阻害剤に対する感受性の間に負の相関がある遺伝子、例えばCYP24A1、OBRGRP、BF、APRT、BIRC3、SQSTM1、TNFAIP2、ITM2B、ABCC2、ANXA3、FAM3CおよびABCC3の中から選択される単独または複数の遺伝子であって、癌細胞において該遺伝子の発現を抑制することで、Eg5阻害剤に対する感受性を増強させる活性を示す遺伝子の発現を抑制するsiRNAもしくはアンチセンスポリヌクレオチドまたは該siRNAもしくはアンチセンスポリヌクレオチドを発現するベクターは、Eg5阻害剤に対する感受性増強薬として使用することができる。また、その感受性の増強は、該遺伝子がコードする蛋白質の機能が関与していると考えられるので、該遺伝子がコードする蛋白質に対する抗体、好ましくは該蛋白質の機能を抑制する中和抗体を含有する薬剤は、該Eg5阻害剤に対する感受性増強薬として用いることができる。
次に本発明で用いるsiRNAについて説明する。siRNAとは、ある標的遺伝子のmRNAの一部の配列とその相補的な配列を含む短い二本鎖RNAであり、RNAi(RNA interference)により、該遺伝子の発現を抑制できるものをいう。siRNAの配列は、mRNAの塩基配列から文献(Genes Dev.,13,3191−3197,1999)の条件に基づいて適宜設計することができる。好ましくは、mRNAの翻訳領域中の開始コドンより50〜100塩基下流の領域中で、AAに続く19塩基、GC含量が30〜70%、より好ましくは50%前後の配列を選択する。選択した19塩基の配列および相補的な配列それぞれの3’端にTTを付加した配列を有する2本のRNAをDNA合成機により合成し、アニーリングすることによりsiRNAを作製できる。また、pSilencer 1.0−U6〔アンビオン(Ambion)社〕、pSUPER〔オリゴエンジン(OligoEngine)社〕などのsiRNA発現用ベクターに上記の選択した19塩基の配列に相当するDNAを挿入することにより、該遺伝子の発現を抑制できるsiRNAを発現するベクターを作製することができる。
また、本発明で用いるアンチセンスポリヌクレオチドとは、標的遺伝子の塩基配列中の連続した15塩基以上の配列と相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチドである。ポリヌクレオチドとしては、DNA、RNA、ポリヌクレオチドの誘導体が含まれる。ポリヌクレオチド誘導体としては、ポリヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスフォロチオエート結合に変換されたポリヌクレオチド誘導体、ポリヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスフォアミデート結合に変換されたポリヌクレオチド誘導体、ポリヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合がペプチド核酸結合に変換されたポリヌクレオチド誘導体、ポリヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換されたポリヌクレオチド誘導体、ポリヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換されたポリヌクレオチド誘導体、ポリヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換されたポリヌクレオチド誘導体、ポリヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシンで置換されたポリヌクレオチド誘導体、ポリヌクレオチド中のリボースが2’−o−プロピルリボースで置換されたポリヌクレオチド誘導体、あるいはポリヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換されたポリヌクレオチド誘導体などをあげることができる。
アンチセンスRNA/DNA技術(バイオサイエンスとインダストリー,50,322,1992;化学,46,681,1991;Biotechnology,,358−362,1992;Trends Biotechnol.,10,87−91,1992;Trends Biotechnol.,10,152−158,1992;細胞工学,16,1463(1997))、トリプル・ヘリックス技術(Trends Biotechnol.,10,132−136,1992)に基づき、上記のアンチセンスポリヌクレオチドを癌細胞に投与することにより、癌細胞での標的遺伝子の転写または翻訳を抑制し、その結果、標的遺伝子の発現を抑制することができる。特に標的遺伝子のポリペプチドをコードする領域の開始コドンを含む15〜100塩基と相補的な塩基配列が好ましい。また、デオキシリボヌクレアーゼ、リボヌクレアーゼによる分解を受けないポリヌクレオチド誘導体が好ましい。
アンチセンスポリヌクレオチドは、市販のDNA合成機、WO93/20095、WO02/10185に記載した方法などを用いて製造することができる。また、(C)の(1)の遺伝子の強制発現に用いる発現ベクターのプロモーターの下流に標的遺伝子を逆向きにつなげた組換え体ベクターを作製し、この組換え体ベクターを癌細胞に導入することにより、細胞内でアンチセンスRNAを発現することができる。
蛋白質に対する抗体は(A)(4)(iii)に記載したような当業者に公知の方法により取得することができる。該蛋白質の機能を抑制する中和抗体は、該蛋白質に対する抗体と該蛋白質とを結合させて該蛋白質の機能を測定し、抗体を結合させない場合と比較して、該蛋白質の機能が抑制されるような抗体を、該蛋白質に対する抗体の中から選択することにより得ることができる。
上記した各種Eg5阻害剤に対する感受性を増強させる活性を示すsiRNAもしくはアンチセンスポリヌクレオチド、該siRNAもしくはアンチセンスポリヌクレオチドを発現するベクターならびに抗体は、Eg5阻害剤に対する感受性増強薬として単独で用いることが可能ではあるが、通常は薬理学的に許容される一つあるいはそれ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られる任意の方法により製造した医薬製剤として用いることが望ましい。このような医薬製剤の詳細については、本明細書中の(G)に後記する。
(F)Eg5阻害剤に対する感受性を増強させる物質のスクリーニング方法
細胞に試験物質を投与して、(A)で選抜されたその発現量とEg5阻害剤に対する感受性との間に正の相関がある遺伝子、例えばBC007436、MAP1B、CCNB1、HSPCA、CCNB2、FLJ23269およびSLC12A2から選択される1つ以上の遺伝子の発現量を測定し、試験物質を投与しない場合の発現量と比較し、該遺伝子の発現量が上昇する物質を選択することにより、Eg5阻害剤に対する感受性を増強させる物質の候補物質をスクリーニングすることができる。特に、遺伝子が(C)の(1)に記載の方法で選択されたEg5阻害剤に対する感受性を規定する遺伝子である場合には、この方法によりEg5阻害剤に対する感受性を増強させる物質をスクリーニングすることができる。
また、細胞に試験物質を投与して、(A)で選抜されたその発現量とEg5阻害剤に対する感受性との間に負の相関がある遺伝子、例えばCYP24A1、OBRGRP、BF、APRT、BIRC3、SQSTM1、TNFAIP2、ITM2B、ABCC2、ANXA3、FAM3CおよびABCC3から選択される1つ以上の遺伝子の発現量を測定し、試験物質を投与しない場合の発現量と比較し、該遺伝子の発現量が減少する物質を選択することにより、Eg5阻害剤に対する感受性を増強させる物質の候補物質をスクリーニングすることができる。特に、遺伝子が(C)の(2)に記載の方法で選択されたEg5阻害剤に対する感受性を規定する遺伝子である場合には、この方法によりEg5阻害剤に対する感受性を増強させる物質をスクリーニングすることができる。
これらの物質がEg5阻害剤に対する感受性を増強させることは、癌細胞にこれらの物質を投与し、そのEg5阻害剤に対する感受性を測定して、物質を投与しない場合の感受性と比較することにより確認できる。
遺伝子の発現量は、細胞として、癌細胞、特に測定する遺伝子を選抜する際に用いたヒト癌細胞株パネルの中から選択した癌細胞株を用い、(A)の(3)に記載した方法で、該遺伝子のmRNAや該遺伝子がコードする蛋白質量を測定することにより測定できる。あるいは、以下のようにして、発現量を測定する遺伝子の発現制御領域を含むレポーター発現細胞を作製し、該細胞におけるレポーター遺伝子の発現量を、目的の遺伝子の発現量として測定することができる。レポーター発現細胞は、ヒトゲノムDNAから発現量を測定する遺伝子のコード領域の上流に存在する発現制御領域を単離し、適当な動物細胞用の発現ベクターの外来遺伝子発現用のプロモーターを除いて、代わりにその発現制御領域を挿入し、その下流に適当なレポーター遺伝子に結合したベクターを細胞に導入して作製することができる。レポーター遺伝子としてはホタルルシフェラーゼ遺伝子、緑色蛍光蛋白質(GFP)遺伝子、β−ガラクトシダーゼ遺伝子などを用いることができる。レポーター遺伝子の発現量の測定は、ルシフェラーゼやβ−ガラクトシダーゼの酵素活性により発光または発色する基質を利用した発光量または発色量の測定、GFPの発する蛍光量の測定により行うことができる。
被験試料としては、合成化合物、天然に存在する蛋白質、人工的に合成された蛋白質、ペプチド、糖質、脂質、これらの修飾体、誘導体を、また哺乳動物(例えばマウス、ラット、モルモット、ハムスター、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、サル、ヒトなど)の尿、体液、組織抽出物、細胞培養上清、細胞抽出物を、更に、非ペプチド性化合物、発酵生産物、植物その他の生物の抽出物などをあげることができる。
上記した本発明のスクリーニング方法により取得される物質は、Eg5阻害剤に対する感受性増強薬として有用である。
(G)本発明のEg5阻害剤に対する感受性増強薬の医薬製剤
本明細書中の上記(D)、(E)および(F)に記載した通りの各種の遺伝子、蛋白質、抗体および物質などはEg5阻害剤に対する感受性増強薬として単独で用いることも可能ではあるが、通常は各種の医薬製剤として提供するのが望ましい。また、それら医薬製剤は、動物または人に使用されるものである。
本発明に係わる医薬製剤は、上記の活性成分またはその薬理学的に許容される塩を単独で、あるいは任意の他の治療のための有効成分との混合物として含有することができる。また、それら医薬製剤は、活性成分を薬理学的に許容される一種またはそれ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られている任意の方法により製造される。
投与経路としては、予防または治療に際し最も効果的なものを使用するのが望ましく、経口または、例えば静脈内などの非経口をあげることができる。
投与形態としては、例えば錠剤、注射剤などがあげられる。
経口投与に適当な例えば錠剤などは、乳糖、マンニットなどの賦形剤、澱粉などの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、ヒドロキシプロピルセルロースなどの結合剤、脂肪酸エステルなどの界面活性剤、グリセリンなどの可塑剤などを添加剤として用いて製造できる。
非経口投与に適当な製剤は好ましくは受容者の血液と等張である活性化合物を含む滅菌水性剤からなる。例えば、注射剤の場合は、塩溶液、ブドウ糖溶液または塩水とブドウ糖溶液の混合物からなる担体などを用いて注射用の溶液を調製する。また、これらの非経口剤においても経口剤で例示した賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、界面活性剤、可塑剤および希釈剤、防腐剤、フレーバー類などから選択される1種もしくはそれ以上の補助成分を添加することもできる。
上記の活性成分またはその薬理学的に許容される塩は、上記の目的で用いる場合、通常、全身的または局所的に、経口または非経口の形で投与される。投与量および投与回数は、投与形態、患者の年齢、体重、治療すべき症状の性質もしくは重篤度などにより異なるが、通常経口の場合、成人1人あたり、1回につき0.01〜1000mg、好ましくは0.05〜500mgの範囲で、1日1回ないし数回投与する。静脈内投与などの非経口投与の場合、通常成人一人当り0.001〜1000mg、好ましくは0.01〜300mgを一日一回ないし数回投与するか、または1日1〜24時間の範囲で静脈内に持続投与する。しかしながら、これら投与量および投与回数に関しては、前述の種々の条件により変動する。
また、Eg5阻害剤に対する感受性増強のための有効成分としてDNAやRNAなどの核酸を利用する遺伝子治療剤の場合には、該DNAまたはRNAを単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、上記に記載した常法に従って製剤化、処方および投与する方法、あるいは非ウイルス遺伝子移入法により投与する方法を使用することができる。
組換えウイルスベクターは、以下に記載の方法に従い作製することができる。
有効成分として使用するDNA(以下、対象DNAとも称する)の断片を調製する。該DNA断片をウイルスベクター内のプロモーターの下流に挿入することにより、組換えウイルスベクターを造成する。
RNAウイルスベクターの場合には、対象DNAに相同なRNA断片を調製し、それらをウイルスベクター内のプロモーターの下流に挿入することにより、組換えウイルスを造成する。RNA断片は、2本鎖のほか、ウイルスベクターの種類に応じて、センス鎖もしくはアンチセンス鎖のどちらか一方の鎖を選択する。例えば、レトロウイルスベクターの場合は、センス鎖に相同なRNAを、センスウイルスベクターの場合には、アンチセンス鎖に相同なRNAを選択する。
該組換えウイルスベクターを、該ベクターに適合したパッケージング細胞に導入する。パッケージング細胞としては、ウイルスのパッケージングに必要な蛋白質をコードする遺伝子の少なくとも1つを欠損している組換えウイルスベクターの該欠損する蛋白質を補給できる細胞であればいかなるものでもよい。例えば、ヒト腎臓由来のHEK293細胞、マウス繊維芽細胞NIH3T3などを用いることができる。パッケージング細胞で補給する蛋白質としては、レトロウイルスベクターの場合はマウスレトロウイルス由来のgag、pol、envなど、レンチウイルスベクターの場合はHIV由来のgag、pol、env、vpr、vpu、vif、tat、rev、nefなど、アデノウイルスベクターの場合はアデノウイルス由来のE1A、E1Bなど、アデノ随伴ウイルスの場合はRep(p5、p19、p40)、Vp(Cap)などの蛋白質があげられる。
ウイルスベクターとしては、上記パッケージング細胞において組換えウイルスが生産でき、標的細胞で対象DNAを転写できる位置にプロモーターを含有しているものが用いられる。プラスミドベクターとしてはMFG(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92,6733−6737,1995)、pBabePuro(Nucleic Acids Res.,18,3587−3596,1990)、LL−CG、CL−CG、CS−CG、CLG(J.Virol.,72,8150−8157,1998)、pAdex1(Nucleic Acids Res.,23,3816−3821,1995)などが用いられる。プロモーターとしては、ヒト組織中で機能するものであればいずれも用いることができ、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)のIE(immediate early)遺伝子のプロモーター、SV40の初期プロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショック蛋白質プロモーター、SRαプロモーターなどをあげることができる。また、ヒトCMVのIE遺伝子のエンハンサーをプロモーターと共に用いてもよい。
パッケージング細胞への組換えウイルスベクターの導入法としては、例えば、リン酸カルシウム法(特開平2−227075)、リポフェクション法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,7413−7417,1987)などをあげることができる。
また、上記組換えウイルスベクターの投与方法としては、上記の方法に加え、リポソームデリバリーを用いる直接的イン・ビボ(in vivo)遺伝子移入と組み合わせることにより、患者の癌組織にウイルスベクターを指向させるようにすることもできる。すなわち、適当なサイズの対象DNAを、アデノウイルス・ヘキソン蛋白質に特異的なポリリジン−コンジュゲート抗体と組み合わせてコンプレックスを作製し、得られたコンプレックスをアデノウイルスベクターに結合させることにより、ウイルスベクターを調製することができる。該ウイルスベクターは安定に標的細胞に到達し、エンドソームにより細胞内に取り込まれ、細胞内で分解され効率的に遺伝子を発現させることができる。
本発明においては、対象DNAあるいはsiRNAもしくはアンチセンスポリヌクレオチドを発現するベクターは非ウイルス遺伝子移入法によっても病巣に輸送することができる。
当該分野で公知の非ウイルス遺伝子移入法には、リン酸カルシウム共沈法(Virology,52,456−467,1973;Science,209,1414−1422,1980)、マイクロインジェクション法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77,5399−5403,1980;Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77,7380−7384,1980;Cell,27,223−231,1981;Nature,294,92−94,1981)、リポソー厶を介した膜融合−介在移入法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,7413−7417,1987;Biochemistry,28,9508−9514,1989;J.Biol.Chem.,264,12126−12129,1989;Hum.Gene Ther.,,267−275,1992;Science,249,1285−1288,1990;Circulation,83,2007−2011,1992)あるいは直接DNA取り込みおよび受容体を介したDNA移入法(Science,247,1465−1468,1990;J.Biol.Chem.,266,14338−14342,1991;Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87,3655−3659,1990;J.Biol.Chem.,264,16985−16987,1989;BioTechniques,11,474−485,1991;Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87,3410−3414,1990;Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88,4255−4259,1991;Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87,4033−4037,1990;Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88,8850−8854,1991;Hum.Gene Ther.,,147−154,1991)などをあげることができる。
リポソームを介した膜融合−介在移入法ではリポソーム調製物を標的とする組織に直接投与することにより、当該組織の局所的な遺伝子の取り込みおよび発現が可能である。DNAを患者の癌組織に直接標的化するには、直接DNA取り込み技術が好ましい。受容体を介したDNA移入は、例えば、ポリリジンを介して、蛋白質リガンドにDNA(通常、共有的に閉環したスーパーコイル化プラスミドの形態をとる)をコンジュゲートすることによって行う。リガンドは、標的細胞または組織の細胞表面上の対応するリガンド受容体の存在に基づいて選択する。当該リガンド−DNAコンジュゲートは、所望により、血管に直接注射することができ、受容体結合およびDNA−蛋白質コンプレックスの内在化が起こる標的組織に指向し得る。DNAの細胞内破壊を防止するために、アデノウイルスを同時感染させて、エンドソーム機能を崩壊させることもできる。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例1】
ヒト38細胞株パネルからなるEg5阻害剤に対する感受性試験
細胞株としては、第3表に示す肺癌由来細胞株26株、大腸癌由来細胞株6株、膵臓癌由来細胞株4株、卵巣癌由来細胞株2株からなる38種類を用いた。入手先のATCCはアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)、JCRBはJCRB(Japanese Collection of Research Bioresources)細胞バンク、西尾は国立がんセンターの西尾先生からの供与を表す。

全ての細胞株はRPMI1640(日水製薬製)培地(10%ウシ胎児血清、100単位/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンを含む)中で、37℃、5%CO存在下で培養した。
96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルに、各培養細胞を0.05mlずつ分注した。炭酸ガスインキュベーター内で24時間、37℃で培養後、上記培地により適宜希釈した薬剤を各ウェルに0.05mlずつ加え、炭酸ガスインキュベーター内で37℃、72時間培養した。薬剤としては、Eg5阻害剤として化合物Aおよび化合物D、対照とする微小管作用薬としてパクリタキセルおよびビノレルビンの4種を用いた。
各ウェルの細胞数の測定には、細胞増殖キットII〔Cell Proliferation Kit II、ロシュ・ダイアグノスティックス(Roche Diagnostics)社〕を用いた。各ウェルにキットの発色反応試薬を50μl添加後、炭酸ガスインキュベーター内で3時間、37℃で保温した後、マイクロプレートリーダー(M−Spmax250、和光純薬製)により、測定波長490nmの吸光度から対照波長655nmの吸光度を差し引いた吸光度差を測定し、細胞数の指標とした。薬剤を添加しない場合の吸光度差に対する各薬剤濃度での吸光度差の比を算出し、細胞生存率とした。マイクロプレートリーダー付属の解析ソフト ソフトマックス・プロ(SOFTmax PRO、和光純薬社)を用いて、検討した薬剤濃度とその細胞生存率から、以下に示す計算式により4−パラメーターロジスティック検量線を作成し、GI50値(Y=50%のときのXの値、単位mol/l)を算出した。
Y={(A−D)/(1+(X/C))}+D、X:薬剤濃度(mol/l)、Y:細胞生存率(%)
用いた4種の薬剤の38細胞株のそれぞれに対する−log10GI50の値(小数点以下2けたまで)を第4表に示す。

【実施例2】
ヒト38細胞株パネルの遺伝子発現プロファイルの取得
第3表に示したヒト38癌細胞株について第5−1表〜第5−4表に示す119種類のヒト遺伝子の発現を、以下の方法に従い定量的RT−PCR法により調べた。第5−1表〜第5−4表の遺伝子名の略称は、ヒトゲノム解析機構(HUGO)遺伝子命名委員会(Gene Nomenclature Committee)が認めた遺伝子の記号(gene symbol)がある場合は、それを用いた。




(1)cDNA合成
第3表に示したヒト38細胞株を実施例1と同様に培養し、対数増殖期に細胞を回収し、全RNAをRNイージー〔RNeasy、キアゲン(QIAGEN)社〕を用いて抽出した。
cDNA合成はRT−PCR用スーパースクリプト第1鎖合成システム(SuperScript First−strand Synthesis System for RT−PCR、インビトロジェン社)を用い、添付のマニュアルに従い、以下のように行った。取得した全RNA 5μgに対して10mmol/l dNTPs 1μlおよび0.5μg/μlオリゴ(dT)12−181μlを添加し、ジエチルピロカーボネート(DEPC)処理をした水で9μlにフィルアップした。65℃で5分間加熱変性後、氷上で急冷し1分以上静置し、10×RTバッファー2μl、25mmol/l MgCl4μl、0.1mol/l DTT 2μlおよびリボヌクレアーゼアウト(RNaseOUT)1μlを添加し、42℃で2分間保温した。さらにスーパースクリプトII逆転写酵素(Superscript II RTase)1μl(50単位)を加えて42℃で50分間の逆転写反応を行い、70℃で15分間加熱し、酵素を失活させた。この後、リボヌクレアーゼH 1μlを添加して37℃で20分間の反応後、水で希釈し全量を1mlとした。以下の定量的RT−PCRの反応系には、さらに5倍希釈した溶液10μlを用いた。
(2)定量的RT−PCRによる遺伝子発現の測定
試薬は全てFor Real Time PCR TaKaRa Ex Taq R−PCR Version(宝酒造)を用いた。1サンプルあたり、10×R−PCRバッファー(Mg2+不含)2.0μl、250mmol/l Mg2+溶液0.2μl、10mmol/l dNTPs 0.6μl、1/2500希釈サイバー・グリーン(SYBR Green)I 1.0μl、4μmol/l遺伝子特異的プライマー各1.5μl、ExTaq R−PCR 0.2μl、HO 3μlからなる反応液を調製後、96ウェルPCRプレートに10μlずつ分注した。各遺伝子特異的なプライマーは第5−1〜第5−4表の配列番号に示すものを用いた。さらに鋳型として(1)で調製したcDNA 10μlを添加しピペッティングにより撹拌した。隙間のないようにプレートをシールし、リアルタイムPCRに供した。
リアルタイムPCRはABI配列検出システム〔ABI PRISM 7700、アプライドバイオシステムズ(Applied Biosystem)社〕を製品説明書に従って使用し、95℃で5分間加熱後、95℃で1分間(変性)、55〜60℃で1分間(アニーリング)、72℃で1〜2分間(伸長)の反応サイクルを45サイクル繰り返し、72℃で5分間加熱する条件(アニーリング温度、伸長時間は遺伝子により異なる)でPCRを行った。
得られた結果から、各遺伝子についてバックグラウンド補正後のシグナル強度が1,000に達するサイクル数(Ct値)を求め、発現量の指標とした。このシグナル強度は増幅反応が対数的に進行し、どのようなサンプルでもプラトーに達しない条件として設定した。Ct値が小さい方が発現量が高いことを示し、Ct値差1の違いは理論的に約2倍の発現差があるものとして解釈できる。第6−1表〜第6−9表に、以上のようにして得られた38細胞株の119遺伝子についてのバックグラウンド補正後のCt値(小数点以下2桁まで)を、遺伝子発現プロファイルとして示した。なお、第6−7表〜第6−9表の「平均」は、各遺伝子のCt値の38細胞株間の平均値を示す。遺伝子は第5−1〜第5−4表の略称で表した。









【実施例3】
遺伝子発現プロファイルとEg5阻害剤に対する感受性の相関解析
Eg5阻害剤に対する感受性に関係する遺伝子群を探索するため、実施例1で得られたEg5阻害剤に対する感受性のデータと実施例2で得られた遺伝子発現プロファイルのデータを統合し、その相関解析を行った。同じ組織由来の細胞株毎に解析することが重要であると考え、肺癌由来26細胞株についての、実施例2の第6−1表〜第6−6表に示した119遺伝子の発現プロファイルと実施例1の第4表に示したEg5阻害剤を含む4種の薬剤に対する感受性のデータを用いて、以下に示す計算式で計算されるピアソンの相関係数rの計算を行った。

ここで、xは細胞iにおける遺伝子xのバックグラウンド補正後のCt値(Ct)であり、遺伝子xの発現量を示す。yは細胞iにおける薬剤yのGI50値(GI50y)の対数に−1を掛けたもの(−log10GI50y)であり、細胞iの薬剤yに対する感受性を示す。xは遺伝子xの発現量(Ct)の細胞株間の平均値を示し、yは薬剤yに対する感受性(−log10GI50y)の細胞株間の平均値を示す。各遺伝子の発現量と各薬剤に対する感受性との相関係数rを第7−1表〜第7−3表に示す。各遺伝子は第5−1表〜第5−4表の略称で示した。



相関係数rは−1から1までの値をとりうるが、0から離れ、1に近いほど遺伝子xの発現量と薬剤yに対する感受性に正の相関が、−1に近いほど負の相関があることを示す。Eg5阻害剤に対する感受性に関与する遺伝子として、その発現量と化合物Aに対する感受性との相関係数rの絶対値が0.33以上(rが「−0.33と等しいかより小さい」かまたは「0.33と等しいかより大きい」)を示す遺伝子19種を選抜した。第8表に、このようにして選抜された19遺伝子の各薬剤における相関係数を示した。感受性・耐性の欄は、化合物Aにおける相関係数rが負の数で、化合物Aに対する感受性が低い、つまり耐性が高い細胞株ほど発現量が高い遺伝子には「耐性」を、化合物Aにおける相関係数rが正の数で、化合物Aに対する感受性が高いほど、発現量が高い遺伝子には「感受性」を記載した。

第8表に示す通り、7種の遺伝子が感受性遺伝子(感受性の高い細胞株で高発現している遺伝子)、12種の遺伝子が耐性遺伝子(感受性の低い細胞株で高発現している遺伝子)として選抜された。これら全ての遺伝子が、化合物Dにおいても相関係数の値の符号が一致しており、うち17種(感受性7種中6種、耐性12種中11種)については、化合物Dにおいても相関係数の絶対値が0.33以上であった。以上の結果と、化合物Aと化合物Dの構造に共通性はないことを考え合せると、第8表に示した選抜された19遺伝子は、Eg5阻害剤という共通の作用機構を有する化合物群の薬剤感受性に一般的に関与する遺伝子であると考えられる。一方、Eg5阻害活性を有さないパクリタキセルおよびビノレルビンについてはBIRC3のみが共通に高い相関係数の絶対値を示したのみであり、Eg5阻害剤とは異なる薬剤感受性決定機構が存在することが示唆された。
これら遺伝子のうち、耐性遺伝子であるBIRC3は細胞死を抑制する遺伝子として知られ、感受性遺伝子であるCCNB1、CCNB2は細胞周期に関係する遺伝子である。また、ABCC2、ABCC3といった薬剤トランスポーター遺伝子、乳癌での高発現が報告されているチトクロームP450ファミリーに属するCYP24A1が含まれていた。
これらの遺伝子群はEg5阻害剤に対する感受性予測のマーカーとして利用できるものを含む他、あるものは実際にEg5阻害剤に対する感受性を規定していると考えられる。
【実施例4】
Eg5感受性相関遺伝子による感受性予測モデルの構築
(1)統計モデルの適用
Eg5阻害剤に対する感受性に相関する遺伝子の発現量と肺癌由来細胞株のEg5阻害剤に対する感受性の関係から統計モデルを構築し、遺伝子発現量から感受性を予測するモデルとした。統計モデルとしては重回帰モデルを用いた。一般的な重回帰モデル式を式1として示す。式1に、(n+1)個の標本の説明変量と目的変量それぞれの実際の値を導入した(n+1)個の一次線形多項式を解くことにより各項の偏回帰係数a、a、…aおよび定数項bを決定することができる。得られた偏回帰係数a、a、…aおよび定数項bを用いた式1に、説明変量の値X、X、…Xを代入することにより、目的変量の予測値Yを計算することができる。
Y=a+a+・・・・+a+b (式1)
Y:目的変量
、X、…X:説明変量
、a、…a:偏回帰係数
b:定数項
上記の重回帰モデル式の目的変量に肺癌細胞株のEg5阻害剤に対する感受性、説明変量にEg5阻害剤に対する感受性と相関する遺伝子の発現量を適用することで感受性予測モデルとした。具体的には、遺伝子の発現量としてはCt値を、Eg5阻害剤に対する感受性としては、−log10GI50値を用いた。
(2)肺癌由来細胞における感受性相関遺伝子による感受性予測モデルの構築と評価
(i)初期モデルの構築
実施例3で選抜された肺由来細胞株の感受性に相関する19遺伝子(第8表)の、肺癌20細胞株A549、NCI−H23、NCI−H69、NCI−H226、NCI−H345、NCI−H460、NCI−H596、NCI−H1299、PC−14/DTX、PC−14/CDDP、MRC−5、IMR−90、EBC−1、NCI−H292、NCI−H441、NCI−H838、A427、NCI−H522、Calu−6およびPC−9におけるCt値と、同じ肺癌20細胞株の−log10GI50値を(1)の重回帰モデルに適用した。得られる20個の一次線形多項式を解くことにより各偏回帰係数項および定数項を決定した。第9表に、決定された各遺伝子の偏回帰係数を示した。なお、定数項bの値は0であった。得られた式を初期重回帰モデルAとした。遺伝子iに割り当てられる点数は、i項の偏回帰係数aと遺伝子iのCt値(Ct)の積aCtで表される。ある細胞について、上記の19遺伝子それぞれの点数aCt、aCt、…a19Ct19の合計とbの値から、該細胞のEg5阻害剤に対する感受性の予測値−log10GI50を計算できる。

(ii)最適化モデルの構築
(i)で構築された初期モデルは、説明変量の数が19個と多いため、複雑である。この初期モデルに対し、重回帰モデルを最適化することにより目的変量の予測に重要な説明変量を選択し、モデルの複雑さを抑えながら、予測精度を上げることができる。モデルの最適化の指標としては、Cp統計量(「すぐわかる統計用語」石村貞夫著、東京図書)用いた。具体的には統計解析ソフト「S−Plus2000」((株)数理システム)上でステップワイズ線形回帰法(S_PLUS2000ユーザーズガイド)を実行することで、初期モデルに対し説明変量を1つずつ除いた場合のモデルについての各偏回帰係数項を決定し、その結果からCp統計量を計算し、Cp統計量の値がより小さいモデルをよりすぐれたモデルとして選択することを繰り返すことにより、モデルの最適化を行った。これにより、説明変量の数を8少なくした、11遺伝子からなる肺癌最適化モデルA’が構築された。最適化モデルA’で選択された説明変量となる遺伝子と偏回帰係数の値を第10表に示す。なお、定数項bの値は0であった。

(iii)モデルの評価
実施例1の肺癌細胞株中、モデル構築に用いなかった6細胞株(Calu−1、Calu−3、N417、SBC−3、PC−14およびSHP−77)の遺伝子発現量を、(ii)で構築した最適化モデルA’に適用することで6細胞株のEg5阻害剤に対する感受性の予測値を計算し、残差(実測値−予測値)を見ることで本最適化モデルA’の評価を行った。最適化モデルA’で決定した各11遺伝子の偏回帰係数aと、実施例2で測定した各遺伝子の発現量(Ct値)から各遺伝子の点数(aとCtの積)を計算し、これらの点数から感受性(−Log10GI50値)の予測値を計算した(第11表)。この予測値と実施例1の第4表に示した−Log10GI50値の実測値を比較したところ、6株中4株(Calu−1、Calu−3、N417およびSBC−3)で−log10GI50値の残差の絶対値が0.3以下で、また6株の残差の絶対値の平均=0.22であり、残差の少ない良い予測値が得られていた(第11表)。したがって、本最適化モデルA’が肺癌細胞のEg5阻害剤に対する感受性予測に有効であることが示された。

(3)他の癌種への応用
実施例1のヒト38細胞株中、肺癌以外の他の癌腫12細胞株(大腸癌6株:COLO205、HT−29、HCT116、SW480、DLD−1およびWiDr、すい臓癌4株:PANC−1、MIA PaCa−2、AsPC−1、BxPC−3、卵巣癌2株:SK−OV−3およびOVCAR−3)の遺伝子発現量を実施例4(2)で構築した肺癌最適化モデルA’に適用することで12細胞株のEg5阻害剤に対する感受性の予測値を計算し、残差を見ることで本最適化モデルA’の評価を行った。肺癌最適化モデルA’で決定した各11遺伝子の偏回帰係数aと、実施例2で測定した各遺伝子の発現量(Ct値)から各遺伝子の点数(aとCtの積)を計算し、これらの点数から感受性(−Log10GI50値)の予測値を計算した。この予測値と実施例1の第4表に示した−Log10GI50値の実測値を比較したところ、12株中7株で−log10GI50値の残差の絶対値が0.3以下で、また12株の残差の絶対値の平均=0.28であり、肺癌細胞株に近い予測精度が得られていた(第12−1表および第12−2表)。したがって、肺癌を基に作成された本モデルが肺癌のみならず、他の癌腫のEg5阻害剤に対する感受性予測にも有効であることが示された。


【実施例5】
選抜されたEg5感受性関与遺伝子のヒト臨床癌組織における発現
実施例3で示した遺伝子発現プロファイルと感受性の相関解析の実験結果から選抜された19遺伝子中の14遺伝子(CYP24A1、OBRGRP、BF、APRT、BIRC3、TNFAIP2、ITM2B、ABCC2、ANXA3、FAM3C、ABCC3、BC007436、MAP1B、CCNB1、HSPCA、CCNB2およびFLJ23269)およびポジティブコントロールとしてハウスキーピング遺伝子であるGAPDについて、ヒト癌組織における発現をリアルタイムRT−PCR法によって解析した。
クロンテック社市販の同一患者に由来する癌および正常組織のcDNA〔Matched cDNA Pairs、ヒト卵巣1〜5、A〜E(計10サンプル)、ヒト乳房4、A〜E(計6サンプル)〕を用いて解析を行った。リアルタイムPCR法は実施例2に示した方法で行った。コントロールとして、鋳型をいれずに代わりに水を用いたものも行った。
結果は実施例1と同様にして求めたCt値で示した。卵巣cDNAの結果を第13表に、乳房cDNAの結果を第14表に示す。各遺伝子の上段は、正常組織での発現量、下段は癌組織での発現量を示す。


ABCC2を除く13種の遺伝子群では調べた卵巣癌、乳癌組織のほぼ全てにおいて40以下のCt値を示した。このことは、これらの癌組織で調べた遺伝子が発現していることを意味している。
今回の解析結果より、14種中13種の遺伝子で癌組織での発現が認められた。従って、今回選択された第8表に示した19遺伝子のヒト癌組織での発現を調べることで、Eg5阻害剤に対する感受性の予測に利用できると考えられる。
【産業上の利用可能性】
本発明により、癌患者より取り出された癌細胞および癌細胞株における、Eg5阻害剤に対する感受性を予測する遺伝子を選抜することができ、それらの遺伝子を用いた癌細胞のEg5阻害剤に対する感受性の判定が可能となる。また、それらの遺伝子を用いて、あるいはそれら遺伝子の発現を制御することにより、癌細胞のEg5阻害剤に対する感受性を増強することが可能となる。その結果、Eg5阻害剤による癌の治療を効果的に行うことができる。
【配列表フリーテキスト】
配列番号1−発明者:篠原 史一;大林 正也;吉田 哲郎
発明者:辻田 徹也;中井 龍一郎
発明者:山下 順範

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)〜(c)の工程
(a)2以上のヒト癌細胞株について、Eg5阻害剤に対する感受性および1以上のヒト遺伝子の発現量を測定する工程、
(b)工程(a)で発現量を測定した遺伝子ごとに、各細胞株における該遺伝子の発現量と該細胞株のEg5阻害剤に対する感受性との相関とを解析する工程、
(c)工程(b)で相関のあった遺伝子を選抜する工程、
を含む、癌細胞のEg5阻害剤に対する感受性に関わる遺伝子を同定する方法。
【請求項2】
工程(a)で測定に用いるヒト癌細胞株が、A549、Calu−1、Calu−3、NCI−H23、NCI−H69、NCI−H226、NCI−H345、N417、NCI−H460、NCI−H596、NCI−H1299、SBC−3、PC−14、PC−14/DTX、PC−14/CDDP、MRC−5、IMR−90、EBC−1、NCI−H292、SHP−77、NCI−H441、NCI−H838、A427、NCI−H522、Calu−6およびPC−9からなる肺癌由来の細胞株、Colo205、HT−29、HCT116、SW480、DLD−1およびWiDrからなる大腸癌由来の細胞株、PANC−1、MIA PaCa−2、AsPC−1およびBxPC−3からなる膵臓癌由来の細胞株、SK−OV−3およびOVCAR−3からなる卵巣癌由来の細胞株からなる群から選択される全てあるいは一部の細胞株である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
選択される細胞株が、A549、Calu−1、Calu−3、NCI−H23、NCI−H69、NCI−H226、NCI−H345、N417、NCI−H460、NCI−H596、NCI−H1299、SBC−3、PC−14、PC−14/DTX、PC−14/CDDP、MRC−5、IMR−90、EBC−1、NCI−H292、SHP−77、NCI−H441、NCI−H838、A427、NCI−H522、Calu−6およびPC−9からなる肺癌由来の細胞株から選択される全てあるいは一部の細胞株である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(a)で測定に用いるヒト癌細胞株が、1つの特定の臓器に由来する癌細胞株である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
1つの特定の臓器が肺である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
感受性の強さを測定するEg5阻害剤が、一般式(I)

<式中、
およびRは同一または異なって、水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表し、
は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換の複素環基、−C(=W)R[式中、Wは酸素原子または硫黄原子を表し、Rは水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換の複素環基、−NR(式中、RおよびRは同一または異なって、水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表すか、またはRとRが隣接する窒素原子と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成する)、−OR(式中、Rは置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表す)または−SR10(式中、R10は前記のRと同義である)を表す]、−NR1112{式中、R11およびR12は同一または異なって、水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基または−C(=O)R13[式中、R13は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換の複素環基、−NR7A8A(式中、R7AおよびR8Aはそれぞれ前記のRおよびRと同義である)、−OR9A(式中、R9Aは前記のRと同義である)または−SR10A(式中、R10Aは前記のRと同義である)を表す]を表す}または−SO14(式中、R14は前記のRと同義である)を表すか、またはRとRが隣接する窒素原子と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成し、
は置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表すか、またはRとRが一緒になって−(CR15A15Bm1−Q−(CR15C15Dm2−{式中、Qは単結合、置換もしくは非置換のフェニレンまたはシクロアルキレンを表し、m1およびm2は同一または異なって0〜4の整数を表すが、m1とm2は同時に0とはならず、R15A、R15B、R15CおよびR15Dは同一または異なって、水素原子、ハロゲン、置換もしくは非置換の低級アルキル、−OR16[式中、R16は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換の複素環基、−CONR7B8B(式中、R7BおよびR8Bは同一または異なって、水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表すか、またはR7BとR8Bが隣接する窒素原子と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成する)、−SONR7C8C(式中R7CおよびR8Cはそれぞれ前記のR7BおよびR8Bと同義である)または−COR17(式中、R17は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表す)を表す]、−NR1819[式中、R18およびR19は同一または異なって、水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換の複素環基、−COR20(式中、R20は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換の複素環基、置換もしくは非置換の低級アルコキシ、置換もしくは非置換のアリールオキシ、アミノ、置換もしくは非置換の低級アルキルアミノ、置換もしくは非置換のジ低級アルキルアミノまたは置換もしくは非置換のアリールアミノを表す)または−SO21(式中、R21は置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表す)を表す]または−CO22(式中、R22は前記のR17と同義である)を表すか、またはR15A15BまたはR15CとR15Dが一緒になって酸素原子を表し、m1またはm2が2以上の整数であるとき、それぞれのR15A、R15B、R15CおよびR15Dは同一でも異なっていてもよく、隣接するふたつの炭素原子に結合するR15A、R15B、R15CおよびR15Dはそれぞれ一緒になって結合を形成してもよい}を表し、
は水素原子または−C(=W)R23(式中、WおよびR23はそれぞれ前記のWおよびRと同義である)を表す>で表されるチアジアゾリン誘導体またはその薬理学的に許容される塩である、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
が水素原子であり、Rが−C(=O)R6A(式中、R6Aは低級アルキルを表す)であり、Rが−C(=O)R23A(式中、R23Aは低級アルキルを表す)であり、Rが置換低級アルキルであり、Rがフェニルである請求項6に記載の方法。
【請求項8】
が−(CHnaNHSO(式中、naは1または2であり、Rは置換もしくは非置換の低級アルキルを表す)である請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
一般式(I)で表されるチアジアゾリン誘導体が下記式(A)〜(C)および(E)〜(P)で表される化合物からなる群から選択される化合物である請求項6に記載の方法。

【請求項10】
感受性の強さを測定するEg5阻害剤が、一般式(II)

(式中、R24は置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の芳香族複素環基を表し、R25およびR26は同一または異なって、水素原子、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシ、カルボキシ、もしくはヒドロキシメチルを表すか、またはR25とR26が一緒になって酸素原子、硫黄原子または結合を表す)で表されるシステイン誘導体またはその薬理学的に許容される塩である、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
システイン誘導体がL−システイン誘導体である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
24がフェニル、4−メチルフェニル、2−ナフチル、4−ピリジル、または1,3−ベンゾジオキソール−5−イルであり、R25およびR26が同一または異なって、水素原子、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシ、カルボキシ、またはヒドロキシメチルである請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
感受性の強さを測定するEg5阻害剤が、下記式(Q)で表される化合物またはその薬理学的に許容される塩である、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。

【請求項14】
以下の(a)〜(e)の工程
(a)請求項1から13のいずれか1項に記載の方法により同定された遺伝子から1以上の遺伝子を選択し、その発現量に応じた点数を決定する工程、
(b)被験癌細胞について、工程(a)で選択された遺伝子の発現量を測定する工程、
(c)各遺伝子について、工程(b)で測定した発現量に基づき、工程(a)で決定した点数を割り当てる工程、
(d)選択された全遺伝子についての割り当てられた点数から、被験癌細胞のEg5阻害剤に対する感受性の指標となる数値を求める工程、
(e)あらかじめ決定した閾値と(d)で得られた数値とを比較する工程、
を含む、癌細胞のEg5阻害剤に対する感受性を判定する方法。
【請求項15】
工程(a)で選択する遺伝子が、以下の(i)〜(xix)それぞれの遺伝子からなる遺伝子群から選択される1以上の遺伝子である請求項14に記載の方法。
(i)チトクロームP450・ファミリー24・サブファミリーA・ポリペプチド1(CYP24A1)
(ii)レプチン受容体遺伝子関連蛋白質(OBRGRP)
(iii)B因子(BF)
(iv)アデニンホスホリボシルトラスフェラーゼ(APRT)
(v)バキュロウイルスIAPリピート含有蛋白質(BIRC3)
(vi)シーケストソーム1(SQSTM1)
(vii)腫瘍壊死因子α誘導蛋白質2(TNFAIP2)
(viii)膜内在性蛋白質2B(ITM2B)
(ix)ATP結合カセット・サブファミリーC・メンバー2(ABCC2)
(x)アネキシンA3(ANXA3)
(xi)相同配列3含有ファミリー・メンバー3(FAM3C)
(xii)ATP結合カセット・サブファミリーC・メンバー3(ABCC3)
(xiii)仮想蛋白質BC007436(BC007436)
(xiv)微小管関連蛋白質1B(MAP1B)
(xv)サイクリンB1(CCNB1)
(xvi)ヒートショック90kDa蛋白質1α(HSPCA)
(xvii)サイクリンB2(CCNB2)
(xviii)仮想蛋白質FLJ23269(FLJ23269)
(xix)溶質キャリアー・ファミリー12・メンバー2(SLC12A2)
【請求項16】
(a)の工程で選択される遺伝子が、CYP24A1、OBRGRP、APRT、TNFAIP2、ITM2B、ABCC2、BC007436、MAP1B、HSPCA、CCNB2およびFLJ23269である請求項15に記載の方法。
【請求項17】
Eg5阻害剤が、請求項6から9のいずれか1項に記載のチアジアゾリン誘導体またはその薬理学的に許容される塩である請求項14から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
Eg5阻害剤が、請求項10から12のいずれか1項に記載のシステイン誘導体またはその薬理学的に許容される塩である請求項14から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
Eg5阻害剤が、請求項13に記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩である請求項14から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
癌細胞が肺癌細胞である請求項14から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
遺伝子の発現量の測定を、該遺伝子の転写産物であるmRNAをDNAマイクロアレイにより定量することにより行う、請求項1から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
遺伝子の発現量の測定を、該遺伝子の転写産物であるmRNAを定量的PCRにより定量することにより行う、請求項1から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
遺伝子の発現量の測定を、該遺伝子の転写産物であるmRNAをノーザンブロットにより定量することにより行う、請求項1から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
請求項22に記載の方法において使用するための、該mRNAに相補的なオリゴヌクレオチドを含む、mRNAの定量試薬。
【請求項25】
遺伝子の発現量の測定を、該遺伝子の遺伝子産物である蛋白質を免疫化学的方法により定量することにより行う、請求項1から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
遺伝子の発現量の測定を、該遺伝子の遺伝子産物である蛋白質をELISAにより定量することにより行う、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
遺伝子の発現量の測定を、該遺伝子の遺伝子産物である蛋白質をウエスタンブロットにより定量することにより行う、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
請求項25から27のいずれか1項に記載の方法において使用するための、該蛋白質に対する抗体を含む免疫測定試薬。
【請求項29】
BC007436、MAP1B、CCNB1、HSPCA、CCNB2、FLJ23269およびSLC12A2からなる群から選択される単独又は複数の遺伝子であって、癌細胞に強制発現させることによってEg5阻害剤に対する感受性を増強させる活性を示す遺伝子または該遺伝子がコードする蛋白質を含有する、Eg5阻害剤に対する感受性増強薬。
【請求項30】
細胞が肺癌細胞である請求項29に記載の感受性増強薬。
【請求項31】
Eg5阻害剤が請求項6から9のいずれか1項に記載のチアジアゾリン誘導体またはその薬理学的に許容される塩である請求項29または30に記載の感受性増強薬。
【請求項32】
Eg5阻害剤が請求項10から12のいずれか1項に記載のシステイン誘導体またはその薬理学的に許容される塩である請求項29または30に記載の感受性増強薬。
【請求項33】
Eg5阻害剤が請求項13に記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩である請求項29または30に記載の感受性増強薬。
【請求項34】
細胞に試験物質を添加し、該細胞におけるBC007436、MAP1B、CCNB1、HSPCA、CCNB2、FLJ23269およびSLC12A2からなる群から選択される少なくとも1以上の遺伝子の発現量を測定し、試験物質を添加しない場合の該遺伝子の発現量と比較して該遺伝子の発現を増加させる物質を、Eg5阻害剤に対する感受性を増強させる候補物質として選択する、Eg5阻害剤に対する感受性を増強させる物質のスクリーニング方法。
【請求項35】
細胞が肺癌細胞である請求項34に記載のスクリーニング方法。
【請求項36】
Eg5阻害剤が請求項6から9のいずれか1項に記載のチアジアゾリン誘導体またはその薬理学的に許容される塩である請求項34または35に記載のスクリーニング方法。
【請求項37】
Eg5阻害剤が請求項10から12のいずれか1項に記載のシステイン誘導体またはその薬理学的に許容される塩である請求項34または35に記載のスクリーニング方法。
【請求項38】
Eg5阻害剤が請求項13に記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩である請求項34または35に記載のスクリーニング方法。
【請求項39】
CYP24A1、OBRGRP、BF、APRT、BIRC3、SQSTM1、TNFAIP2、ITM2B、ABCC2、ANXA3、FAM3CおよびABCC3からなる群から選択される単独又は複数の遺伝子であって、癌細胞において該遺伝子の発現を抑制することで、Eg5阻害剤に対する感受性を増強させる活性を示す遺伝子の発現を抑制するsiRNAもしくはアンチセンスポリヌクレオチド。
【請求項40】
癌細胞が肺癌細胞である請求項39に記載のsiRNAもしくはアンチセンスポリヌクレオチド。
【請求項41】
Eg5阻害剤が請求項6から9のいずれか1項に記載のチアジアゾリン誘導体またはその薬理学的に許容される塩である請求項39または40に記載のsiRNAもしくはアンチセンスポリヌクレオチド。
【請求項42】
Eg5阻害剤が請求項10から12のいずれか1項に記載のシステイン誘導体またはその薬理学的に許容される塩である請求項39または40に記載のsiRNAもしくはアンチセンスポリヌクレオチド。
【請求項43】
Eg5阻害剤が請求項13に記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩である請求項39または40に記載のsiRNAもしくはアンチセンスポリヌクレオチド。
【請求項44】
請求項39から43のいずれか1項に記載のsiRNAもしくはアンチセンスポリヌクレオチドを発現するベクター。
【請求項45】
請求項39から43のいずれか1項に記載のsiRNAもしくはアンチセンスポリヌクレオチドまたは請求項44に記載のベクターを含有する、Eg5阻害剤に対する感受性増強薬。
【請求項46】
CYP24A1、OBRGRP、BF、APRT、BIRC3、SQSTM1、TNFAIP2、ITM2B、ABCC2、ANXA3、FAM3CおよびABCC3から選択されるいずれかの遺伝子であって、癌細胞において該遺伝子の発現を抑制することで、Eg5阻害剤に対する感受性を増強させる活性を示す遺伝子にコードされる蛋白質に対する抗体を含有する、Eg5阻害剤に対する感受性増強薬。
【請求項47】
Eg5阻害剤が請求項6から9のいずれか1項に記載のチアジアゾリン誘導体またはその薬理学的に許容される塩である請求項46に記載の感受性増強薬。
【請求項48】
Eg5阻害剤が請求項10から12のいずれか1項に記載のシステイン誘導体またはその薬理学的に許容される塩である請求項46に記載の感受性増強薬。
【請求項49】
Eg5阻害剤が請求項13に記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩である請求項46に記載の感受性増強薬。
【請求項50】
細胞に試験物質を添加し、該細胞におけるCYP24A1、OBRGRP、BF、APRT、BIRC3、SQSTM1、TNFAIP2、ITM2B、ABCC2、ANXA3、FAM3CおよびABCC3からなる群から選択される少なくとも1以上の遺伝子の発現量を測定し、試験物質を添加しない場合の該遺伝子の発現量と比較して該遺伝子の発現を減少させる物質を、Eg5阻害剤に対する感受性を増強させる候補物質として選択する、Eg5阻害剤に対する感受性を増強させる物質のスクリーニング方法。
【請求項51】
細胞が肺癌細胞である請求項50に記載のスクリーニング方法。
【請求項52】
Eg5阻害剤が請求項6から9のいずれか1項に記載のチアジアゾリン誘導体またはその薬理学的に許容される塩である請求項50または51に記載のスクリーニング方法。
【請求項53】
Eg5阻害剤が請求項10から12のいずれか1項に記載のシステイン誘導体またはその薬理学的に許容される塩である請求項50または51に記載のスクリーニング方法。
【請求項54】
Eg5阻害剤が請求項13に記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩である請求項50または51に記載のスクリーニング方法。

【国際公開番号】WO2005/061707
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【発行日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516541(P2005−516541)
【国際出願番号】PCT/JP2004/019783
【国際出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000001029)協和醗酵工業株式会社 (276)
【Fターム(参考)】