説明

癌診断および処置のための放射性医薬品

キレーター(DOTAGA)(1−(1−カルボキシ−3−カルボキシ−プロピル)−4,7,10−(カルボキシメチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン、DOTASA(1−(1−カルボキシ−2−カルボキシ−エチル)−4,7,10−(カルボキシメチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロ−ドデカン、またはキレーター(DOTA)[1,4,7,10−テトラアザシクロ−ドデカン−1,4,7,10−テトラ(酢酸)]と、サブスタンスPおよびその類似体に基づいた、放射性核種標識コンジュゲートは、脳腫瘍、特にグリア細胞腫の標的化および処置において有用な放射性医薬品物質である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬学的担体、および適切な放射性核種で標識されている、有効量の、1−(1,3−カルボキシ−プロピル)−4,7,10−(カルボキシメチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン(キレーターDOTAGA)、1−(1,2−カルボキシエチル)−4,7,10−(カルボキシメチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン(キレーターDOTASA)、または1,4,7,10−テトラアザシクロ−ドデカン−1,4,7,10−テトラ酢酸(キレーターDOTA)とのサブスタンスP類似体コンジュゲートを含む薬学的組成物;脳腫瘍の標的化および処置におけるその使用または脳腫瘍の標的化および処置における対応する標識サブスタンスPコンジュゲートの使用;適切な放射性核種で標識した、DOTAGA、DOTASA、またはDOTAを含むサブスタンスP類似体コンジュゲート;および、DOTAGA、DOTASA、またはDOTAおよびそのt−ブチルエステルを含むサブスタンスP類似体コンジュゲートに関する。
【0002】
サブスタンスPは、天然の11−アミノ酸神経ペプチドであり、タキキニンとして知られる生物活性神経ペプチドのファミリーに属する[Payan(1989)Ann.Rev.Med.40、341]。このウンデカペプチドのアミノ酸配列は、H−Arg1−Pro2−Lys3−Pro4−Gln5−Gln6−Phe7−Phe8−Gly9−Leu10−Met11−NH2と同定された。
【0003】
WO92/18536において、ニューロキニン1受容体に選択的親和性を有する標識小ペプチド、例えばサブスタンスPおよび類似誘導体を含む組成物を投与し、その生体をアッセイすることにより、恒温動物の生体において、ニューロキニン1(NK1)受容体を有する組織、例えばNK1受容体を有する腫瘍を検出し腫瘍に局在化する方法が記載されている。さらに、該発明は、悪性腫瘍、例えばグリア細胞腫、小細胞肺癌およびその他の治療処置の方法にも関する。
【0004】
J.Fichnaらは、Bioconjugate Chem.2003、p.3-17において、診断造影のための標的特異的放射能標識ペプチドの合成、および、放射性医薬品としての適用可能性を要約している。様々なキレート形成分子を含む様々なペプチドおよびコンジュゲートが挙げられているが、DOTAまたはDOTAGAとサブスタンスPおよびその類似体の組合せは記載されておらず、この放射能標識コンジュゲートによる脳腫瘍の処置に関する指摘は全くなされていない。
【0005】
プロキレーター(エステル)およびキレーター(酸)DOTA1,4,7,10−テトラアザシクロ−ドデカン−1,4,7−トリス(酢酸−t−ブチルエステル)−10−酢酸が、Chem.Eur.J.1995、5、No.7、Seiten1974-1981に記載されている。
【0006】
放射能標識サモスタチンをベースにしたコンジュゲートである、拡散性のソマトスタチン類似体111In/90Y標識−DOTA0−D−Phe1−Tyr3−オクトレオチド(DOTATOC)を用いての局所領域の調節性ペプチド受容体標的化に関する成功裏の研究により、初めて、インビボで、ヒト脳腫瘍患者において、DOTATOCが低いナノモル範囲でSSTR−2(ソマトスタチンサブタイプ2受容体)への高い結合親和性を有することが示され、これはA.Merioら(1999)Clin.Cancer Res.5、1025-1033により報告されている。さらに、S.Hoferらは、Swiss Med.Weekly 2001、131:640-644において、症候性の低グレードのグリア細胞腫に対処するための、局所注入した安定な放射性コンジュゲート90Y標識DOTA0−D−Phe1−Tyr3−オクトレオチド(DOTATOC)を使用した拡散性近接照射療法(dBT)の効果を報告している。
【0007】
WO02/24235において、エフェクター分子のコンジュゲートの調製に使用される1−(1−カルボキシ−3−カルボ−tert.−ブトキシプロピル)−4,7,10−(カルボ−tert.−ブトキシ−メチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン(プロキレーターDOTAGA)、および、1−(1,3−カルボキシ−プロピル)−4,7,10−(カルボキシ−メチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン(キレーターDOTAGA)の調製が記載されている。エフェクター分子としては、これらの生物活性ペプチドのN末端に結合している、オクトレオチドまたはCCKなどのペプチドが提唱されている。サブスタンスPとのコンジュゲートも挙げられているが、調製されておらず、それ故、例証されていない。前記コンジュゲートは、診断適用(111In、67/68Ga)および内部放射能治療適用(90Y、177Lu)の両方のために放射性核種で標識されていてもよい。公報は、より良好な標識収率および高い安定性を付与する、オクトレオチドおよびオクトレオテートコンジュゲート、例えばDOTATOCに焦点を当てている。脳腫瘍、例えばグリア細胞腫の処置は記載されていない。
【0008】
NK−1受容体が脳腫瘍において発現されており、サブスタンスPおよびその類似体と、キレーターDOTAGA、DOTASA、またはDOTAとに基づいた放射能標識コンジュゲートへの結合に適用できること、そして、前記コンジュゲートは、腫瘍、特に脳腫瘍、例えばグリア細胞腫への標的化および処置において、キレート剤を含むまたは含まない、DOTATOC、放射能標識サブスタンスP、サブスタンスPおよび類似体およびサポリン、および他の小さな放射能標識ペプチドよりも、はるかにより効果的であることが驚くべきことに判明した。また、金属複合体形成が短時間で達成されること、そして、前記複合体がより高い化学的安定性を有し、従って、組織または体液に遊離放射性核種が混入することが回避されることが驚くべきことに判明した。サブスタンスPをベースにした放射能標識コンジュゲートは、内部放射能診断および放射能治療として適用するのに十分な意外に長い血清半減期を示す。サブスタンスP類似体に基づいたコンジュゲートの血清安定性は、NK1受容体への結合親和性を望ましくない程度まで減少させることなく、さらに高まっている。サブスタンスP類似体を使用した場合には、結合親和性がさらに向上する場合もある。また、11位のメチオニンは、標識(スルホキシドを形成)後に酸化感受性(放射線分解)となること、そして、前記酸化は、メチオニンをメチオニンスルホンで置き換えることにより抑制でき、これにより結合親和性は、実質的に維持できるか、またはサブスタンスP配列のさらなるアミノ酸置換でさらに向上させることができることが判明した。また、サブスタンスPに基づいた放射能標識コンジュゲートは、投与後に拡散でき、腫瘍細胞巣または周辺病変に浸潤でき、よって、検出および処置できることが驚くべきことに判明した。
【0009】
本発明の第一の目的は、キレーター−R−Arg1−Pro2−Lys3−Pro4−Gln5−Gln6−Phe7−Phe8−Gly9−Leu10−Met11−NH2という略称を有し、式I:
【化11】


(式中、
Rは、−CH2−C(O)−、−C(CO2H)CH2CH2−C(O)−、または−C(CO2H)CH2−C(O)−である)
で示される化合物、あるいはサブスタンスPのアミノ酸配列において以下の修飾:
a)Met11の、−NH−CH(CH2CH2−SO2−CH3)−C(O)−(Met(O2)11)、−NH−CH(CH2CH2−SO−CH3)−C(O)−(Met(O)11)、または−NH−CH[CH(CH3)CH2CH3]−C(O)−(Ile11)による置き換え、
b)Leu10の、−NH−CH[CH(CH3)CH2CH3)−C(O)−(Ile10)による置き換え、
c)Gly9の、−N(CH3)−CH2−C(O)−(Sar9)による置き換え、
d)Phe7もしくはPhe8またはPhe7およびPhe8の両方の、式:
【化12】


で示される残基による置き換え、
e)Lys3の、式:
【化13】


で示される残基による置き換え、
f)配列Arg1−Pro2−Lys3−Pro4−Gln5の1〜5アミノ酸のトランケーション、または
g)配列Arg1−Pro2−Lys3−Pro4−Gln5の1〜5アミノ酸の、−N(CH3)−CH2−C(O)−(Sar)による置き換え、
の少なくとも1個を有する式Iの類似体を含む、サブスタンスPとキレーター分子の放射性核種で標識されたコンジュゲートの、脳腫瘍、特にグリア細胞腫の標的化または処置のための放射性医薬品または放射性診断製剤における活性成分としての使用であって、前記コンジュゲートは、アクチニウム−225、ビスマス−212、ビスマス−213、鉛−203、銅−64、銅−67、ガリウム−66、ガリウム−67、ガリウム−68、ルテチウム−177、インジウム−111、インジウム−113、イットリウム−86およびイットリウム−90、ジスプロシウム162、ジスプロシウム165、ジスプロシウム167、ホルミウム−166、プラセオジミウム−142、プラセオジミウム−143、プロメチウム−149、ならびにテルビウム−149からなる群より選択された放射性核種で標識されている。
【0010】
テトラアザマクロ環残基に結合している式IのRが、−CH2−C(O)−である場合、キレーターDOTAと略称され;テトラアザマクロ環残基に結合している式IのRが、−C(CO2H)CH2CH2−C(O)−である場合、キレーターDOTAGAと略称され;テトラアザ環残基に結合している式IのRが、−C(CO2H)CH2−C(O)−である場合、キレーターDOTASAと略称される。キレーター部分のカルボン酸基が、例えばt−ブタノールを用いてエステル化されている場合、残基は、プロキレーターと称される。プロキレーターは、固相合成中におけるペプチドへの簡便な結合に使用できる。
【0011】
本発明の文脈において標識とは、キレーター残基のカルボン酸基および窒素原子へ放射性核種が結合することを意味し、放射性核種塩におけるアニオンは、金属イオンの原子価に従って置換され、これは実質的に金属(III)または金属(II)イオンである。
【0012】
アミノ酸の修飾に使用した略称は、以下で説明されている:Met(O)は、メチオニン−スルホキシドであり;Met(O2)は、メチオニン−スルホンであり;Ileは、イソロイシンであり;Sarは、サルコシンであり;2−Thiは、3−(2−チエニル)−アラニンであり;3−BzThiは、3−(3−ベンゾチエニル)−アラニンであり;2−Nalは、3−(2−ナフチル)−アラニンであり;1−Nalは、3−(1−ナフチル)−アラニンであり;Chaは、シクロヘキシル−アラニンであり;Argは、アルギニンであり;Ornは、オルニチンであり;Pheglyは、フェニルグリシンである。
【0013】
本発明の好ましい実施形態において、式Iの残基Rは、−CH2−C(O)−を意味する。
【0014】
さらなる好ましい実施形態において、式Iのアミノ酸配列は、式:
【表3】


に対応する。
【0015】
別の好ましい実施形態において、式Iの化合物は、天然サブスタンスP配列の11位において、メチオニン残基の代わりに、式−NH−CH(CH2CH2−SO2−CH3)−C(O)−のメチオニンスルホン残基を含む。メチオニン残基は、酸化されやすく/空気中で特に放射性核種での標識過程中により容易に酸化され、これにより一貫しない最終生成物が得られることが判明した。メチオニンの代わりにメチオニンスルホンを使用した場合には、非一貫性を回避できる。
【0016】
式Iの別の好ましいサブスタンスP類似体コンジュゲートは、天然サブスタンスP配列の9位のグリシン残基が、式−N(CH3)−CH2−C(O)−のサルコシン残基で置き換えられたものである。
【0017】
式Iの別の好ましいサブスタンスP類似体コンジュゲートは、天然サブスタンスP配列の7位もしくは8位またはその両方の位置におけるフェニルアラニン残基が、式:
【化14】


で示される3−(2−チエニル)−アラニン残基により置換されたものである。
【0018】
式Iの別の好ましいサブスタンスP類似体コンジュゲートは、天然サブスタンスP配列の8位のフェニルアラニン残基が、3−(2−チエニル)−アラニンで置き換えられ、9位のグリシン残基がサルコシン残基で置き換えられているものである。
【0019】
式Iの別の好ましいサブスタンスP類似体コンジュゲートは、天然サブスタンスP配列の11位のメチオニン残基が、メチオニンスルホン残基により置き換えられ、天然サブスタンスP配列の8位のフェニルアラニン残基が、3−(2−チエニル)−アラニン残基により置き換えられているか、または9位のグリシン残基がサルコシン残基により置き換えられているものである。
【0020】
前記したように8位が修飾されている、式IのサブスタンスP類似体コンジュゲートは、それぞれ、はるかに良好な血清安定性またはより低いペプチダーゼ感受性を示す。前記したように7位、8位、9位および/または11位が修飾されている、式IのサブスタンスP類似体コンジュゲートはまた、天然サブスタンスPに比べて、NK−1受容体に対して満足のいく高い結合親和性を示す。なぜなら、IC50値の測定でオートラジオグラフィーにより検出できるからであり、これは、0.1〜50、好ましくは0.5〜20、より好ましくは0.7〜10であり得る。
【0021】
より好ましい実施形態において、式Iのアミノ酸配列は、式:
【表4】


に対応する。
【0022】
特に好ましい実施形態において、式Iのアミノ酸配列は、式:
【表5】


に対応し、なぜなら、これらの化合物は、顕著な酸化安定性および血清安定性ならびに非常に高い結合親和性を示し、これは、天然サブスタンスP配列と同等であるか、または高くさえある。
【0023】
アミノ末端に結合したキレーターDOTAGA、DOTASAまたはDOTAのいずれかを有する、前記した式Iのコンジュゲートおよび好ましい放射性コンジュゲートは、インジウム−111標識サブスタンスPまたは類似体による慣用的なシンチグラフィーを使用した、あるいはトレーサーであるガリウム−68、ガリウム−66、イットリウム−86、または銅−64によるポジトロンエミッショントモグラフィーを使用した、診断的調査に有用である。診断ペプチドベクターは、局所領域または全身に適用できる。
【0024】
治療的処置のために、キレーターDOTAGA、DOTASAまたはDOTAのいずれかを含む前記した式Iのコンジュゲートおよび類似体コンジュゲートを、例えば、α線放出アイソトープ、例えばビスマス−213、アクチニウム−225、およびβ線放出物質イットリウム−90およびルテチウム−177で標識できる。
【0025】
本発明の別の態様は、宿主に少なくとも1種の式Iの化合物または式Iの類似体を投与し、脳腫瘍、例えばグリア細胞腫に罹患した宿主における脳腫瘍に標的化し、脳腫瘍およびその周辺病変に局在化または処置する方法を提供する。この方法は、脳腫瘍およびその周辺病変の検出および治療処置に特に有用である。
【0026】
本発明の目的はまた、哺乳動物における脳腫瘍に標的化し、脳腫瘍およびその周辺病変に局在化または処置するための、治療法または診断法であって、そのような治療の必要な哺乳動物に、有効量の式Iの放射性核種標識サブスタンスPコンジュゲートまたはその類似体を投与することを含む、方法である。
【0027】
本発明の別の目的は、ヒト脳腫瘍を診断または処置するために、宿主に、式Iの放射性核種標識サブスタンスPコンジュゲートまたはその類似体を投与することを含む、宿主に、式Iの放射性核種標識サブスタンスPコンジュゲートまたはその類似体を送達する方法である。
【0028】
本発明のさらなる目的は、ヒトなどの哺乳動物における脳腫瘍およびその周辺病変の検出および治療処置に有用な医薬品の製造における、式Iの放射性核種標識サブスタンスPコンジュゲートまたはその類似体;および、医学療法における式Iの放射性核種標識サブスタンスPコンジュゲートまたはその類似体の使用である。
【0029】
本発明のさらなる目的は、サブスタンスPまたはサブスタンスP類似体とキレーター分子とのコンジュゲートであり、ここでサブスタンスPコンジュゲートは、キレーター−R−Arg1−Pro2−Lys3−Pro4−Gln5−Gln6−Phe7−Phe8−Gly9−Leu10−Met11−NH2という略称を有し、式I:
【化15】


(式中、
Rは、−CH2−C(O)−、−C(CO2H)CH2CH2−C(O)−、または−C(CO2H)CH2−C(O)−であり、ただし、コンジュゲートがサブスタンスP配列を含む場合には、Rは、−CH2−C(O)−である)
で示される化合物、ならびにサブスタンスPのアミノ酸配列において以下の修飾:
a)Met11の、−NH−CH(CH2CH2−SO2−CH3)−C(O)−(Met(O2)11)、−NH−CH(CH2CH2−SO−CH3)−C(O)−(Met(O)11)、または−NH−CH[CH(CH3)CH2CH3)−C(O)−(Ile11)による置き換え、
b)Leu10の、−NH−CH[CH(CH3)CH2CH3)−C(O)−(Ile10)による置き換え、
c)Gly9の、−N(CH3)−CH2−C(O)−(Sar9)による置き換え、
d)Phe7もしくはPhe8またはPhe7およびPhe8の両方の、式:
【化16】


で示される残基による置き換え、
e)Lys3の、式:
【化17】


で示される残基による置き換え、
f)配列Arg1−Pro2−Lys3−Pro4−Gln5の1〜5アミノ酸のトランケーション、または
g)配列Arg1−Pro2−Lys3−Pro4−Gln5の1〜5アミノ酸の、−N(CH3)−CH2−C(O)−(Sar)による置き換え、
の少なくとも1個を有する式Iの類似体を含み、前記コンジュゲートは、標識されていないか、または、アクチニウム−225、ビスマス−212、ビスマス−213、鉛−203、銅−64、銅−67、ガリウム−66、ガリウム−67、ガリウム−68、ルテチウム−177、インジウム−111、インジウム−113、イットリウム−86およびイットリウム−90、ジスプロシウム162、ジスプロシウム165、ジスプロシウム167、ホルミウム−166、プラセオジミウム−142、プラセオジミウム−143、プロメチウム−149、ならびにテルビウム−149からなる群より選択された放射性核種で標識されている。
【0030】
本発明のまたさらなる目的は、(a)少なくとも1種の薬学的担体および(b)少なくとも1種のサブスタンスPまたはサブスタンスP類似体とキレーター分子とのコンジュゲートを含む、組成物であり、ここでサブスタンスPコンジュゲートは、キレーター−R−Arg1−Pro2−Lys3−Pro4−Gln5−Gln6−Phe7−Phe8−Gly9−Leu10−Met11−NH2という略称を有し、式I:
【化18】


(式中、
Rは、−CH2−C(O)−、−C(CO2H)CH2CH2−C(O)−、または−C(CO2H)CH2−C(O)−であり、ただし、コンジュゲートがサブスタンスP配列を含む場合には、Rは、−CH2−C(O)−である)
で示される化合物、ならびにサブスタンスPのアミノ酸配列において以下の修飾:
a)Met11の、−NH−CH(CH2CH2−SO2−CH3)−C(O)−(Met(O2)11)、−NH−CH(CH2CH2−SO−CH3)−C(O)−(Met(O)11)、または−NH−CH[CH(CH3)CH2CH3)−C(O)−(Ile11)による置き換え、
b)Leu10の、−NH−CH[CH(CH3)CH2CH3)−C(O)−(Ile10)による置き換え、
c)Gly9の、−N(CH3)−CH2−C(O)−(Sar9)による置き換え、
d)Phe7もしくはPhe8またはPhe7およびPhe8の両方の、式:
【化19】


で示される残基による置き換え、
e)Lys3の、式:
【化20】


で示される残基による置き換え、
f)配列Arg1−Pro2−Lys3−Pro4−Gln5の1〜5アミノ酸のトランケーション、または
g)配列Arg1−Pro2−Lys3−Pro4−Gln5の1〜5アミノ酸の、−N(CH3)−CH2−C(O)−(Sar)による置き換え、
の少なくとも1個を有する式Iの類似体(前記した類似体の好ましい実施形態を含む)を含み、前記コンジュゲートは、アクチニウム−225、ビスマス−212、ビスマス−213、鉛−203、銅−64、銅−67、ガリウム−66、ガリウム−67、ガリウム−68、ルテチウム−177、インジウム−111、インジウム−113、イットリウム−86およびイットリウム−90、ジスプロシウム162、ジスプロシウム165、ジスプロシウム167、ホルミウム−166、プラセオジミウム−142、プラセオジミウム−143、プロメチウム−149、ならびにテルビウム−149からなる群より選択された放射性核種で標識されている。
【0031】
本発明は、式Iの放射性核種標識コンジュゲートおよびその類似体の薬学的に許容されうる塩および複合体、ならびに、式Iの非標識コンジュゲートおよびその類似体の薬学的に許容されうる塩および複合体を含む。塩は、無機酸で形成されても、有機酸で形成されてもよい。適切な無機酸の例は、塩酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、およびホウ酸である。適切な有機酸の例は、酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、安息香酸、グリコール酸、乳酸、クエン酸、およびマンデル酸である。例えばアルカリ金属水酸化物、およびアンモニアからの水酸化物、ヒドロキシエチルアミン、ヒドラジン、メチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ヒドロキシエチルアミン、モルホリン、ピペラジンならびにグアニジンのような無機塩基または有機塩基から、塩を形成してもよい。
【0032】
放射性核種標識コンジュゲートは、粉末(微細化粒子)、顆粒、懸濁液または溶液として薬学的製剤中に使用しても、または、他の薬学的に許容されうる成分と一緒に合わせ、成分を混合し、場合により細かく分割し、その後、例えば硬または軟ゼラチンカプセルからなるカプセルに充填するか、経皮パッチを調製するか、錠剤、丸剤またはトローチ剤に圧縮するか、あるいは溶液、懸濁液、エリキシルおよびシロップ用の担体に懸濁または溶解してもよい。コーティングを圧縮後に適用して丸剤を形成してもよい。
【0033】
様々なタイプの製剤における薬学的に許容されうる成分は、公知であり、例えば、様々な製剤タイプ用の、天然または合成ポリマーなどの結合剤、溶媒、賦形剤、潤滑剤、界面活性剤、甘味剤および芳香剤、コーティング材料、保存剤、染料、増粘剤、補助剤、抗微生物剤、安定剤、浸透圧調節剤および他の担体であり得る。
【0034】
脳腫瘍の標的化および処置のための、式Iの放射性核種標識サブスタンスPコンジュゲートおよびその類似体は、あらゆる既知の経路により投与し得、静脈内経路、動脈内経路、皮膚内経路、皮下経路、経口経路、頬側経路、筋肉内経路、肛門経路、経皮経路、皮内経路、くも膜下腔内経路などからなる群より選択され得る。
【0035】
1つの好ましい実施形態において、薬学的担体は、液体であり、薬学的組成物は、懸濁液、エマルション、好ましくは溶液の形態である。
【0036】
液体担体の例は、水、アルコール、例えばエタノール、グリセロール、プロピレングリコール、液状ポリエチレングリコール、トリアセチンおよび油であり、これは、単独で使用しても、または、少なくとも2種の成分との組合せで使用してもよい。
【0037】
製剤中の放射性核種標識コンジュゲートの量は、実質的に、製剤のタイプおよび投与期間中の所望の用量に依存する。量は、薬学的組成物に対して、0.01〜40重量%、好ましくは0.1〜25重量%、より好ましくは0.5〜15重量%であり得る。
【0038】
無菌溶液または懸濁液である液体薬学的組成物は、筋肉内、髄腔内、気管内、硬膜外、腹腔内または皮下注入用に使用できる。無菌溶液はまた、静脈内にも投与できる。コンジュゲートは、無菌固体組成物として調製してもよく、これは、滅菌水、生理食塩水、または他の適切な無菌注射用媒体を使用して投与時に溶解または懸濁(拡散)してもよい。
【0039】
特に好ましいのは、局所領域適用のための、本発明に従って使用する拡散性ペプチドベクターの局所注入である。放射性医薬品を、定位にインプラントされた心室カテーテルに、または、カプセル(このカプセルからカテーテルにより腫瘍中心に至る)に、または、切除腔に注入する(また中心静脈穿刺デバイス(port-a-cath-device)とも呼ばれる)。多くの異なる市販のカプセルおよびカテーテルをこの目的のために使用することができる。
【0040】
切除されていない主要な腫瘍塊では、カテーテルの先端部を、腫瘍の推定的な中心部分へと中心を合わせなければならず、これは通常、3次元定位計画装置(3-dimensional stereotactic planning system)を使用して達成できる。標的部位から離れて、くも膜下腔、硬膜下腔、硬膜外腔、または皮下腔へとカテーテルの外側に沿って逆流する問題を制御するために、カテーテル挿入から最初の適用までの間に、少なくとも1日間、好ましくは数日間待つことが重要である。この現象は、放射性医薬品の適用前に、浸透圧性利尿薬および高用量のデキサメタゾンを使用して、上昇した頭蓋内圧を低下させることによりさらに減少させることができる。固形の切除されていない場合では、1〜2時間かけて5〜10mlの容量を連続注入することができる注入ポンプを利用して、ゆっくりとした注入技術を使用する。この技術は、サイズが原因で拡散しない大きな分子の浸透が可能となるようにさらによりゆっくりとした注入速度を使用する脳実質への巨大分子のいわゆる「逆流増強送達(convection enhanced delivery)」とは異なる。本発明に従って使用するコンジュゲートは、実質的に小さな薬物(1〜2kDa)であり、高い拡散特性を示す。広い腫瘍領域におよぶ、さらには脳梁から他の半球までおよぶ拡散が、本発明に従って使用する放射性医薬品2〜3mlをボーラス注射した30分後以内に繰り返し観察された。
【0041】
放射性核種標識サブスタンスPコンジュゲートおよびその類似体は、単独で、または、他の薬学的に活性な物質と組み合わせて使用できる。他の薬学的に活性な化合物との組合せの場合、2種以上の成分の一定の組合せ(例えば部分からなるキット)を、当業者にはすでに既知のように調製し、前記コンジュゲートおよび任意の他の活性な化合物を、脳腫瘍および/または処置、例えばグリア細胞腫の標的化および処置において一般的な、相加的な、または好ましくは相乗的な効果が可能となる間隔で投与する。
【0042】
任意の処置措置において、放射性核種標識サブスタンスPコンジュゲートおよびその類似体の薬学的組成物は、患者に、単独で投与しても、または、2種以上の標的化毒素、他の治療剤または組成物(例えば、免疫抑制剤、耐容性誘導剤、増強剤、および副作用軽減剤を含む)を含むカクテルで投与してもよい。特に好ましい副作用軽減剤は、宿主のアレルギー反応を抑制するのに有用なものである。好ましい免疫抑制剤には、プレドニゾン、DECADRON(Merck、Sharp and Dohme、West Point、Pa.)、シクロホスファミド、シクロスポリン、6−メルカプトプリン、メトトキレサート、アザチオプリン、およびγグロブリン、またはその組合せが含まれる。好ましい増強剤には、モネンシン、塩化アンモニウム、ペルヘキシリン、ベラパミルアマンタジン、およびクロロキンが含まれる。全てのこれらの薬剤は、一般的に許容される効果的な用量範囲で投与される。
【0043】
投与する最適な用量は、当業者により決定され得、特定の標的および使用する化合物、調製物の強度、投与形態、および疾患状態の進行度により変更する。対象の年齢、体重、性別、食事および投与時刻を含む、処置する対象に依存する他の因子により、この特別な目的のために用量を調整する必要がでてくるだろう。コンジュゲートおよび場合により追加的な薬学的薬剤の投与は、連続的にまたは断続的に行ない得る。
【0044】
処置において、適切な用量レベルは、一般に、約0.001〜50mg/kg(患者体重)/日であり、これは単回用量で投与しても、複数回用量で投与してもよい。好ましくは、用量レベルは、約0.005〜約25mg/kg/日であり、より好ましくは約0.01〜約10mg/kg/日であり、さらに最も好ましくは約0.05〜1mg/kg/日である。
【0045】
サブスタンスPコンジュゲート、その類似体、およびサブスタンスPの放射性核種標識コンジュゲートおよびその類似体は、通常好ましい合成様式としての一般的な側鎖保護形で、標準的な固相合成(SPPS)に従って、既知の方法で調製される。
【0046】
固相ペプチド合成(SPPS)は、例えばFmoc(9−フルオレンメトキシカルボニル)戦略を使用して、アプライド・バイオシステムズ・モデル431Aまたは432Aペプチドシンセサイザーで実施し得る。追随した一般的な原理および方法は、当分野において公知である。より正確な記載については、「フルオレンメトキシカルボニル−ポリアミド固相合成:一般的な合成および開発」−第3章「固体ペプチド合成:実践的なアプローチ」、E.AthertonおよびR.C.Sheppard、Information Press Ltd.Oxford、U.K.(1989)に言及されている。
【0047】
得られたウンデカペプチド(サブスタンスPまたは類似体)を、例えば、プロキレーターDOTAGA(Bu)4、DOTASA(Bu)4、またはDOTA(Bu)3と結合させる。レジンから切断し、場合により脱保護した後、生成物を、分取HPLCにより、99.5%より高い純度まで精製し得る。
【0048】
得られたサブスタンスPコンジュゲートおよび類似体コンジュゲートを、場合により脱保護しまたは脱保護しテトラアザ環残基に結合したカルボン酸基を形成した後に、既知の方法で放射性核種で標識し得る。標識は、水溶液中、脱保護コンジュゲートを、ハロゲン化物(塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩)、硫酸塩、硝酸塩、スルホン酸塩、例えばフェニルまたはトルイルスルホン酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、またはシュウ酸塩などの、無機酸または有機酸からの放射性核種塩と接触させることにより行ない得る。
【0049】
本発明は、以下の実施例でさらに説明され、ここでサブスタンスPコンジュゲート、その類似体、およびサブスタンスPの放射性核種標識コンジュゲートおよびその類似体の合成および適用が、より詳しく記載されている。
【0050】
A)サブスタンスPコンジュゲートおよびサブスタンスP類似体コンジュゲートの調製
a)ペプチド合成のための一般的な調製手順
すでに前記したように、ペプチドは、fmoc戦略(fmoc=9−フルオレニルメトキシカルボニル)を使用して、固相で合成した。N末端アミドを得るために、RinkアミドMBHAレジンを使用した。合成は、RINK Engineering、Bubendorf、スイスの半自動ペプチド合成機で実施した。この合成機は、1〜10個までの反応容器を備えていた。アミノ酸は、Novabiochem AG、Laeufelfingen、スイスから購入した。全ての試薬は、Fluka Chemie GmbH、Buchs、スイスから購入した。
【0051】
一般に、理論的に0.7mmol/gのレジンをのせた1当量のRink−アミドMBHAレジンを、リアクターに加えた。ジメチルホルムアミド(DMF)をリアクターに加え、15分間振とうして、レジンを膨潤させた。溶媒を除去した後、再び一部のDMFを2分間以内で加えた。予め膨潤したレジンに、20%ピペリジンのDMF溶液を5分間以内に加えて、レジンからfmoc保護を除去した。このステップを5分以内に一度繰り返し、その後再び12分以内に繰り返した。この手順後に、固相を、2回、0.5分間DMFで洗浄し、再度1回1分間DMFで洗浄した。ピペリジン溶液および最後の3回の洗浄のDMF溶液を収集し、エタノール(EtOH)で充填し500mlとした。この溶液からアリコートを採取して、除去されたfmoc保護基の量を分光光学的に決定した。それ故、300nmでの溶液の吸光度を決定し、元のfmoc量を計算した。
【0052】
fmoc−アミノ酸誘導体を固相に結合させる前に、レジンを、2回、2分間、N−メチル−ピロリジノン(NMP)で洗浄した。一方では、3当量のfmoc保護アミノ酸誘導体を、3.3当量の1−ヒドロキシベンゾトリアゾールおよび3.3当量のN,N′−ジイソプロピルカルボジイミドと一緒に、NMPに溶かし、45分間インキュベートした。その後、この結合溶液を固相に加え、約5当量のN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を加えることにより、pHを7〜8の数値に調整した。反応液を、穏やかに振とうしながら、90分間インキュベートした。反応溶液を除去した後、固相を、2回、DMFで1分間洗浄した。反応は、カイザーテストを実施して制御した:約10ビーズの固相を、5回、エタノールで洗浄した。20gフェノールの10mlエタノール溶液を、1mlの0.01M KCNの49mlピリジン溶液の1mlと混合した。50μlのこの混合物を、ビーズに加え、500gのニンヒドリンの10mlエタノール溶液10μlを加えた。ビーズを、10分間、95℃で加熱した。青いビーズにより、残りの遊離アミノ官能基が示された。
【0053】
最初のアミノ酸の結合後、以下のfmoc−アミノ酸を、類似の方法であるがしかし僅かに異なる時間プログラムで結合させた。それ故、合成機を、以下の表に記載のようにプログラム化した。
【表6】

【0054】
全てのアミノ酸を、N末端fmoc保護誘導体として使用した。リジンは、側鎖アミノ官能基上でtert−ブトキシカルボニル(Boc)保護基を付して使用した。アルギニンは、側鎖の2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロ−ベンゾフラン−5−スルホニル(Pbf)で保護して使用した。ペプチド合成を単一のリアクターで実施する場合、各アミノ酸の結合後にカイザーテストを行なった。カイザーテストにより残留する遊離アミノ官能基が示された場合、アミノ酸の結合を繰り返した。
【0055】
全ての所望のペプチド配列を構築した後、固相を、5回、イソプロパノールで洗浄し、その後、各1分間5回ジエチルエーテルで洗浄した。5分間の一定の空気流により、固相を乾燥した。
【0056】
b)プロキレーターDOTAGA(Bu)4およびDOTA(Bu)3との結合
プロキレーターDOTAGA(Bu)4を、WO02/24235(H.R.Maeckeら)に記載のように合成した。DOTA(Bu)3は、Macrocyclics Inc.、ダラス、米国で購入した。プロキレーターを結合する前に、N末端fmoc保護を、レジン結合ペプチドから除去した。それ故、それを15分間DMF中で膨潤させ、再び2分間DMFで洗浄し、その後2回20%ピペリジンのDMF溶液で5分間処理した。その後、固相を、さらに12分間この溶液で処理し、2回0.5分間DMFで洗浄し、さらに1分間再びDMFで洗浄した。ピペリジン処理および続くDMF洗浄からの溶液を収集して、切断されたfmoc基の含量を決定した。
【0057】
2当量のプロキレーターおよび1.2当量のO−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N′,N′−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)をDMFに溶かし、45分間インキュベートした。この後、2当量のDIPEAを溶液に加えた。その後、この反応溶液を固相に加え、2分後、反応液のpHを制御し、必要であれば、いくらかのより多くのDIPEAを加えることにより7〜8の間の数値に調整した。反応混合物を一晩振とうした。溶液を除去した後、固相を2回DMFで2分間洗浄し、5回イソプロパノールで洗浄し、5回ジエチルエーテルで1分間洗浄した。その後、空気流で10分間乾燥した。
【0058】
c)脱保護、切断、および精製
固相を、フリットを備えたシリンジに加えた。91%トリフルオロ酢酸(TFA)、5%チオアニソール、3%水、および1%トリイソプロピルシランの溶液を加え、シリンジを1時間攪拌した。その後、溶液をポリプロピレンチューブに注いだ。この溶液に、50%ジイソプロピルエーテルおよび50%石油エーテルの混合物を加えた。30分間、チューブを−20℃で冷却した。沈降物を、1006gで5分間のチューブの遠心分離により収集し、溶媒をデカントした。一方で、シリンジ中の固相を、再度、上の脱保護溶液で2時間処理した。脱保護溶液を、すでに得られた沈降物に加え、固体をこれで希釈した。さらに3時間脱保護した後、粗生成物を再度沈降させ、冷却し、遠心分離にかけ、デカントにより溶媒から分離した。その後、粗生成物を、一晩真空(<100mbar)で保持して、残留溶媒を除去した。
【0059】
粗生成物を、アセトニトリル:水=1:1の混合物に溶かし、Macherey-Nagel VP Nucleosil 100-5C18、21×250mmで分取HPLCにより精製した。実施した溶出勾配は、以下であった:A=アセトニトリル、B=0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)水溶液;流速=15ml/分:0分、15%A;25分、50%A;26分、100%A;28分、100%A;30分、15%A。主ピークを収集し、蒸発乾固した。定性HPLCおよび質量分析(MALDI−TOF−MS)により分析した。Macherey-Nagel CC250/4Nucleosil 120-3C18カラムを、以下の溶出勾配を使用して分析分離に使用した:A=アセトニトリル、B=0.1%TFA水溶液;流速=0.75ml/分;0分、90%A;20分、40%A;23分、0%A;24分、0%A;27分、90%A。
【0060】
以下のコンジュゲートを調製した:
【0061】
DOTAGAは、
【化21】


で示される残基を意味し、DOTAは、
【化22】


で示される残基を意味する。
【0062】
実施例A1:
DOTAGA−Arg1−Pro2−Lys3−Pro4−Gln5−Gln6−Phe7−Phe8−Gly9−Leu10−Met11−NH2
DOTAGA−サブスタンスP:C821282222S、計算値(m/z):1806.1、実測値1807.2;R:29.8。
【0063】
実施例A2:
DOTA−Arg1−Pro2−Lys3−Pro4−Gln5−Gln6−Phe7−Phe8−Gly9−Leu10−Met(O2)11−NH2
DOTA−[Met(O2)11]−サブスタンスP:C791262222S、計算値(m/z):1766.9、実測値1766.2;R:26.0。
【0064】
実施例A3:
DOTA−Arg1−Pro2−Lys3−Pro4−Gln5−Gln6−Phe7−Phe8−Sar9−Leu10−Met11−NH2
DOTA−[Sar9]−サブスタンスP:C801282222S、計算値(m/z):1748.9、実測値1748.5;R:28.03。
【0065】
実施例A4:
DOTA−Arg1−Pro2−Lys3−Pro4−Gln5−Gln6−Phe7−Thi8−Gly9−Leu10−Met11−NH2
DOTA−[Thi8]−サブスタンスP:C7712422202、計算値(m/z):1740.9、実測値1740.7;R:27.87。
【0066】
実施例A5:
DOTA−Arg1−Pro2−Lys3−Pro4−Gln5−Gln6−Thi7−Phe8−Gly9−Leu10−Met11−NH2
DOTA−[Thi8]−サブスタンスP:C7712422202、計算値(m/z):1740.9、実測値1740.6;R:27.66。
【0067】
実施例A6:
DOTA−Arg1−Pro2−Lys3−Pro4−Gln5−Gln6−Phe7−Phe8−Sar9−Leu10−Met(O2)11−NH2
DOTA−[Sar9、Met(O2)11]−サブスタンスP:C801282222S、計算値(m/z):1780.9、実測値1780.1;R:25.34。
【0068】
実施例A7:
DOTA−Arg1−Pro2−Lys3−Pro4−Gln5−Gln6−Phe7−Thi8−Gly9−Leu10−Met(O2)11−NH2
DOTA−[Thi8、Met(O2)11]−サブスタンスP:C771242222S、計算値(m/z):1772.9、実測値1772.7;R:25.34。
【0069】
実施例A8:
DOTA−Arg1−Pro2−Lys3−Pro4−Gln5−Gln6−Phe7−Thi8−Sar9−Leu10−Met11−NH2
DOTA−[Thi8、Sar9]−サブスタンスP:C7812622202、計算値(m/z):1754.9、実測値1754.9;R:26.70。
【0070】
実施例A9:
DOTA−Arg1−Pro2−Lys3−Pro4−Gln5−Gln6−Thi7−Thi8−Gly9−Leu10−Met11−NH2
DOTA−[Thi7、Thi8]−サブスタンスP:C7512222203、計算値(m/z):1746.8、実測値1746.4;R:27.29。
【0071】
B)放射性核種標識コンジュゲートの調製
一般的手順
90Y−/111In−DOTAGA−サブスタンスP:キレーター−ペプチドコンジュゲート水溶液の無菌の30μgアリコートに、30mCi90YCl3水溶液または0.5mCi111InCl3水溶液を加え、無菌0.4M NaOAc−緩衝液(pH5)で500μlまで充填した。この溶液を、30分間95℃まで加熱し、15分間室温まで冷却した。この溶液を、生理的NaCl溶液で1mlまで希釈した。その試料を、非結合放射性核種の含量を決定するために、放射性HPLCで制御した。90Y−DOTAGA−サブスタンスPを使用して、少量の酸化生成物90Y−DOTAGA−[Met(O)11]−サブスタンスPが形成されたことが判明した。定性HPLCを、実施例A(c)で記載したように実施した。
【0072】
以下の放射性核種標識コンジュゲートを調製した:
【0073】
実施例B1:
111In−DOTAGA−Arg1−Pro2−Lys3−Pro4−Gln5−Gln6−Phe7−Phe8−Gly9−Leu10−Met11−NH2
111In−DOTAGA−サブスタンスP:
82125InN2222S計算値(m/z):1916.81、実測値:1917.6(M+H)、R:29.80
【0074】
実施例B2:
90Y−DOTAGA−Arg1−Pro2−Lys3−Pro4−Gln5−Gln6−Phe7−Phe8−Gly9−Leu10−Met11−NH2
90Y−DOTAGA−サブスタンスP
【0075】
実施例B3:
111In−DOTA−Arg1−Pro2−Lys3−Pro4−Gln5−Gln6−Phe7−Phe8−Gly9−Leu10−Met(O2)11−NH2
111In−DOTA−[Met(O2)11]−サブスタンスP
【0076】
実施例B4:
111In−DOTA−Arg1−Pro2−Lys3−Pro4−Gln5−Gln6−Phe7−Phe8−Sar9−Leu10−Met11−NH2
111In−DOTA−[Sar9]−サブスタンスP
【0077】
実施例B5:
111In−DOTA−Arg1−Pro2−Lys3−Pro4−Gln5−Gln6−Phe7−Thi8−Gly9−Leu10−Met11−NH2
111In−DOTA−[Thi8]−サブスタンスP
【0078】
実施例B6:
111In−DOTA−Arg1−Pro2−Lys3−Pro4−Gln5−Gln6−Thi7−Phe8−Gly9−Leu10−Met11−NH2
111In−DOTA−[Thi8]−サブスタンスP
【0079】
実施例B7:
111In−DOTA−Arg1−Pro2−Lys3−Pro4−Gln5−Gln6−Phe7−Phe8−Sar9−Leu10−Met(O2)11−NH2
111In−DOTA−[Sar9、Met(O2)11]−サブスタンスP
【0080】
実施例B8:
111In−DOTA−Arg1−Pro2−Lys3−Pro4−Gln5−Gln6−Phe7−Thi8−Gly9−Leu10−Met(O2)11−NH2
111In−DOTA−[Thi8、Met(O2)11]−サブスタンスP
【0081】
実施例B9:
111In−DOTA−Arg1−Pro2−Lys3−Pro4−Gln5−Gln6−Phe7−Thi8−Sar9−Leu10−Met11−NH2
111In−DOTA−[Thi8、Sar9]−サブスタンスP
【0082】
実施例B10:
111In−DOTA−Arg1−Pro2−Lys3−Pro4−Gln5−Gln6−Thi7−Thi8−Gly9−Leu10−Met11−NH2
111In−DOTA−[Thi7、Thi8]−サブスタンスP
【0083】
実施例B11:標識プロトコル
B)で記載したような一般的手順を50℃で繰り返し、90YCl3の結合を、規定された反応時間の後に検出した。以下の表の結果から、反応は、約15分後に完了したと判断できることが理解できる。
【表7】

【0084】
C)適用実施例
実施例C1:一般的観察
ウンデカペプチドである放射性核種サブスタンスPコンジュゲートおよびその類似体を、一般的な側鎖保護形で、標準的な固相合成(SPPS)に従って調製し、得られたペプチドをプロキレーターDOTAGA(Bu)4に結合させた。切断およびその後の脱保護後に、DOTAGA−サブスタンスPおよび類似体を、分取HPLCにより、95%より高い純度まで精製した。得られたサブスタンスPおよび類似体コンジュゲートを滅菌し、その後、例えば、アスコルビン酸(2g/10ml)および2,5−ジヒドロキシ安息香酸(370mg/19ml)を含むpH5.0に調整した0.4M酢酸ナトリウム緩衝液を使用して、前記したような放射性核種塩、例えば造影のための111InCl3(1回の適用につき18MBq)および90YCl3(37MBq/μgDOTAGA−サブスタンスP)で標識した。
【0085】
標識はまた、Ac−225/Bi−213発生物質から得られる非常に見込みのあるα線放出物質である213Biを用いて実施できた。標識収率は、Y−90およびIn−111と同じ範囲であったが(>95%)、Bi−213は、僅か47分間という短い半減期を示した。
【0086】
標識過程中に、HPLCクロマトグラム上で第二ピークが同定され、これは標識過程中の放射線分解の生成物としての90Y/111In−DOTAGA−[Met(O)11]−サブスタンスPであると同定された。残念なことに、この誘導体は、非酸化物質に比べて11倍低いNK1受容体に対する結合親和性を示した。大量の還元剤(例えばアスコルビン酸)を緩衝液に添加することによってさえ、望ましくない酸化は完全に抑制できなかった。一方で、合成した誘導体90Y/111In−DOTAGA−またはDOTA−[Sar9、Met(O2)11]−サブスタンスPは、スルホキシド誘導体よりも極めて高い親和性を示した(天然配列よりも2倍未満低い)。従って、ペプチド配列の11位のMet(O2)を、親和性を有意に低下させることなく導入でき、最終的に来る酸化問題は解消されることが明確に示された。
【0087】
患者からの異なるCSF(脳脊髄液)吸引液中で90Y−DOTAGA−サブスタンスPをインキュベートするインビトロ実験によるさらなる安定性試験を実行した。CSFプローブの「品質」に関連した放射性ペプチド分解の有意差を実証できた。吸引液が無色であり透明な外見であれば(血液を含まない)、標識コンジュゲートは数時間安定であり、一方、目に見えて血清の混入した吸引液では、前記物質は、5時間以内に完全に分解した。
【0088】
この酵素分解はまた、0〜24時間(腹腔内注射)後の異なる尿試料および1週間(腹腔内注射)後のCSF吸引液に見られるように、患者において大きな影響があった。全ての試料は、血清の混入したCSFプローブを用いてのインビトロ実験と同じ2つの放射活性代謝物を示した。尿中の放射活性の定量によりまた、DOTAGA−サブスタンスPの代謝物に結合した適用した90Yの非常に急速な洗浄除去が示された。
【0089】
実施例C2:安定性試験(競合的キレーターDTPAへの放射性核種の転移)
90Y−DOTAGA−サブスタンスPを、pH7の水に溶かし、105過剰のジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)と混合した。無傷の放射性核種の量を、特定の時間の後に決定した。高い安定性を示す結果を、以下の表に示した。
【表8】

【0090】
実施例C3:血清に対する代謝安定性
表に記載したような111Y標識化合物を、血清と接触させ、無傷な割合の量を、特定の時間の後に決定した。修飾されたサブスタンスPコンジュゲートのより高い安定性を示す結果を、以下の表に示した。
【表9】

【0091】
実施例C4:NK−1受容体に対する結合親和性
インビトロオートラジオグラフィーを、NK1受容体を発現している腫瘍組織を用いて実施した。使用した放射性リガンドは、125I−Bolton−Hunter-SPであった。置換実験を、0.1nMから1,000nMの範囲の濃度で、示した表に列挙した種々の化合物を用いて、連続切片において実施した。IC50値を、10個の放射能標識した別個のサブスタンスP類似体から計算し、天然SPと比較した。結果を、以下の表に示した。
【表10】

【0092】
実施例C5:ソマトスタチン標的化系とニューロキニン−1(NK−1)標的化系を比較した初期脳腫瘍における受容体オートラジオグラフィー
実施した初期グリア細胞腫の代表例の免疫組織化学的試験により、正常脳組織上でのソマトスタチン受容体のバックグラウンド発現のために、多くの場合、腫瘍浸潤脳組織と正常脳の間の区別が実質的に不可能であることが示された。この観察にも関わらず、In−111DOTATOCシンチグラムにより、MRIで可視化されるように、腫瘍区画に、注入された放射性医薬品が限局していることが示された。これは、腫瘍内の細胞外組織構築の無秩序な構造と、非浸潤脳組織と比較した浸潤脳により最もよく説明され得た。Bakayは、彼の刊行物(Brain 1970、93、693-698)において、正常脳では約5%の細胞外空間を含むのに対して、脳腫瘍組織の特定容量の20〜40%を細胞外空間が占め得ることを示した。物理的に言えば、腫瘍は、利用可能なエネルギーを利用して増殖し浸潤し、そして正常脳組織がするように(エントロピーの法則)分子構築の次元を最大限にしない。グリア芽細胞腫においてのニューロキニン−1受容体の一貫した高い発現が記載されているが、また低等級および中等級のグリア細胞腫においても記載されている。従って、ソマトスタチン/DOTATOCとサブスタンスP/NK−1系の間の比較オートラジオグラフィック試験を実施して、脳腫瘍における局所領域療法のための最善の標的化化合物を規定した。たった1つの上皮腫の例外を除いて、NK−1受容体の発現は、等級II〜IVの大半のグリア細胞腫において少なくとも同等またはより高い。結果により、サブスタンスP/NK−1系をソマトスタチン/DOTATOC系と容易に置き換えることで、明らかにより好ましい腫瘍対脳バックグラウンドの比により優れた応答を生じることが教義された。
【0093】
実施例C6:90Y−DOTAGA−サブスタンスP処置を用いた予備試験
以下のサブスタンスP予備試験において、生検のみとその後の90Y−DOTAGA−サブスタンスP(処置)を含む4症例(全ての症例において、開放手術が第一処置選択肢として賢明とは思われない深部または遍在的に位置する腫瘍を有する)、および開放肉眼的全切除およびその後の放射性核種コンジュゲート近接照射療法を含む5症例が含まれた。対照として作用できる第三の群として、実質的に治療選択肢がこれ以上残っていないいわゆる標準的な措置により処置されていた5つの進行症例が含まれた。これは非対照予備試験であるので、20年より昔に実行され公開された唯一の無作為な大規模グリア細胞腫検査の結果に依拠しなければならなかった(Walkerら、1980、N Engl J Med)。生検のみの場合、平均生存度は、さらなる処置を行なわない場合には約9週間であった。この予備試験の4症例の場合、全患者が少なくとも2ヶ月間から9ヶ月間まで生き延び、特殊な場合では、さらに、顕著な部分的応答を示しさえした。その後に内部放射性核種コンジュゲート近接照射療法を行なった切除した5症例では、全体的な生存度は、期待されたよりも明らかに長く、14ヶ月から26ヶ月の範囲であった。過去症例として作用する1970年代の唯一の大規模な無作為検査によれば、切除のみにより、約4ヶ月間の生存が期待されるが、切除に加えて外的ビーム放射性療法により、約9.5ヶ月間の平均生存度がもたらされた。極めて顕著なことには、全生存数は、時間軸上でこれらの期待される数値よりも右に位置しており、これは、コンジュゲートY−90DOTAGAサブスタンスPが純水溶液よりも確かにより効果的である強い示唆と考えることができる。
【0094】
データのこのような解釈は、90Y−DOTAGA−サブスタンスP単独療法を使用して、切除不可能な左側視床グリア芽細胞腫(ここでは80%を超えるグリア芽細胞腫の容量減少が観察された)で得られた、印象的な部分応答(症例W.M.)によりさらに支持された。局所グリア細胞腫療法における重要な問題は、浸潤腫瘍細胞巣または周辺病変に到達できるかどうかであった。111In−DOTAGA−サブスタンスPを用いた照射症例では、4cmの遠位周辺病変において拡散性が示され、これは区画腔への腔内注射後に見えるようになった。良好な標識化にも関わらず、周辺病変は、Y−90サブスタンスPでは制御できなかった。この症例は、標的を標識できたとしても、狭い範囲をもつ放射性核種は、この病変をはるかにより根治する可能性が高いことを証明する。これに対し、現在のα線放出物質(μm範囲)および狭い範囲のβ線放出物質(例えばLu−177、1〜2mm)は、浸襲性腫瘍細胞クラスターの処置において優れていることが証明された。現在使用される散逸性Y−90(範囲3〜6mm)は、かさ高い病変により適していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キレーター−R−Arg1−Pro2−Lys3−Pro4−Gln5−Gln6−Phe7−Phe8−Gly9−Leu10−Met11−NH2という略称を有し、式I:
【化1】


(式中、
Rは、−CH2−C(O)−、−C(CO2H)CH2CH2−C(O)−、または−C(CO2H)CH2−C(O)−である)
で示される化合物、あるいはサブスタンスPのアミノ酸配列において以下の修飾:
a)Met11の、−NH−CH(CH2CH2−SO2−CH3)−C(O)−(Met(O2)11)、−NH−CH(CH2CH2−SO−CH3)−C(O)−(Met(O)11)、または−NH−CH[CH(CH3)CH2CH3]−C(O)−(Ile11)による置き換え、
b)Leu10の、−NH−CH[CH(CH3)CH2CH3)−C(O)−(Ile10)による置き換え、
c)Gly9の、−N(CH3)−CH2−C(O)−(Sar9)による置き換え、
d)Phe7もしくはPhe8またはPhe7およびPhe8の両方の、式:
【化2】


で示される残基による置き換え、
e)Lys3の、式:
【化3】


で示される残基による置き換え、
f)配列Arg1−Pro2−Lys3−Pro4−Gln5の1〜5アミノ酸のトランケーション、または
g)配列Arg1−Pro2−Lys3−Pro4−Gln5の1〜5アミノ酸の、−N(CH3)−CH2−C(O)−(Sar)による置き換え、
の少なくとも1個を有する式Iの類似体を含む、サブスタンスPとキレーター分子の放射性核種標識コンジュゲートの、脳腫瘍、特にグリア細胞腫の標的化または処置のための放射性医薬品または放射性診断製剤における活性成分としての使用であって、
前記コンジュゲートは、アクチニウム−225、ビスマス−212、ビスマス−213、鉛−203、銅−64、銅−67、ガリウム−66、ガリウム−67、ガリウム−68、ルテチウム−177、インジウム−111、インジウム−113、イットリウム−86およびイットリウム−90、ジスプロシウム162、ジスプロシウム165、ジスプロシウム167、ホルミウム−166、プラセオジミウム−142、プラセオジミウム−143、プロメチウム−149、ならびにテルビウム−149からなる群より選択された放射性核種で標識されている、前記使用。
【請求項2】
式Iのアミノ酸配列が、式:
【表1】


に対応する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
式Iの化合物が、天然サブスタンスP配列の11位において、メチオニン残基の代わりに、式−NH−CH(CH2CH2−SO2−CH3)−C(O)−のメチオニンスルホン残基を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
天然サブスタンスP配列の9位のグリシン残基が、式−N(CH3)−CH2−C(O)−のサルコシン残基により置き換えられている、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
天然サブスタンスP配列の7位もしくは8位またはその両方の位置におけるフェニルアラニン残基が、式
【化4】


で示される3−(2−チエニル)−アラニン残基により置き換えられている、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
天然サブスタンスP配列の8位のフェニルアラニン残基が、3−(2−チエニル)−アラニンにより置き換えられ、9位のグリシン残基が、サルコシン残基により置き換えられている、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
天然サブスタンスP配列の11位のメチオニン残基が、メチオニンスルホン残基により置き換えられ、かつ天然サブスタンスP配列の8位のフェニルアラニン残基が、3−(2−チエニル)−アラニン残基により置き換えられているか、または9位のグリシン残基が、サルコシン残基により置き換えられている、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
式Iのアミノ酸配列が、式:
【表2】


に対応する、請求項1に記載の使用。
【請求項9】
式Iのアミノ酸配列が、式:
a)Arg−Pro−Lys−Pro−Gln−Gln−Phe−Phe−Sar−Leu−Met(O2)−NH2、または
b)Arg−Pro−Lys−Pro−Gln−Gln−Phe−Thi−Gly−Leu−Met(O2)−NH2に対応する、請求項1に記載の使用。
【請求項10】
宿主に少なくとも1種の式Iの化合物または式Iの化合物の類似体を投与し、脳腫瘍、例えばグリア細胞腫に罹患した宿主における脳腫瘍に標的化し、脳腫瘍およびその周辺病変に局在化または処置する方法。
【請求項11】
哺乳動物における脳腫瘍に標的化し、脳腫瘍およびその周辺病変に局在化または処置するための、治療方法または診断方法であって、そのような治療の必要な哺乳動物に、有効量の式Iの放射性核種標識サブスタンスPコンジュゲートまたはその類似体を投与することを含む、方法。
【請求項12】
宿主に、式Iの放射性核種標識サブスタンスPコンジュゲートまたはその類似体を投与することを含む、宿主に、式Iの放射性核種標識サブスタンスPコンジュゲートまたはその類似体を送達する方法。
【請求項13】
ヒトなどの哺乳動物における脳腫瘍およびその周辺病変の検出および治療処置に有用な医薬品の製造における、式Iの放射性核種標識サブスタンスPコンジュゲートまたはその類似体の使用。
【請求項14】
医学療法における式Iの放射性核種標識サブスタンスPコンジュゲートまたはその類似体。
【請求項15】
サブスタンスPコンジュゲートは、キレーター−R−Arg1−Pro2−Lys3−Pro4−Gln5−Gln6−Phe7−Phe8−Gly9−Leu10−Met11−NH2という略称を有し、式I:
【化5】


(式中、
Rは、−CH2−C(O)−、−C(CO2H)CH2CH2−C(O)−、または−C(CO2H)CH2−C(O)−であり、ただし、コンジュゲートがサブスタンスP配列を含む場合には、Rは、−CH2−C(O)−である)
で示される化合物、ならびにサブスタンスPのアミノ酸配列において以下の修飾:
a)Met11の、−NH−CH(CH2CH2−SO2−CH3)−C(O)−(Met(O2)11)、−NH−CH(CH2CH2−SO−CH3)−C(O)−(Met(O)11)、または−NH−CH[CH(CH3)CH2CH3)−C(O)−(Ile11)による置き換え、
b)Leu10の、−NH−CH[CH(CH3)CH2CH3)−C(O)−(Ile10)によるで置き換え、
c)Gly9の、−N(CH3)−CH2−C(O)−(Sar9)による置き換え、
d)Phe7もしくはPhe8またはPhe7およびPhe8の両方の、式:
【化6】


で示される残基による置き換え、
e)Lys3の、式:
【化7】


で示される残基による置き換え、
f)配列Arg1−Pro2−Lys3−Pro4−Gln5の1〜5アミノ酸のトランケーション、または
g)配列Arg1−Pro2−Lys3−Pro4−Gln5の1〜5アミノ酸の、−N(CH3)−CH2−C(O)−(Sar)による置き換え、
の少なくとも1個を有する式Iの類似体を含む、サブスタンスP類似体とキレーター分子とのコンジュゲートであって、
前記コンジュゲートは、標識されていないか、または、アクチニウム−225、ビスマス−212、ビスマス−213、鉛−203、銅−64、銅−67、ガリウム−66、ガリウム−67、ガリウム−68、ルテチウム−177、インジウム−111、インジウム−113、イットリウム−86およびイットリウム−90、ジスプロシウム162、ジスプロシウム165、ジスプロシウム167、ホルミウム−166、プラセオジミウム−142、プラセオジミウム−143、プロメチウム−149、およびテルビウム−149からなる群より選択された放射性核種で標識されている、前記コンジュゲート。
【請求項16】
(a)少なくとも1種の薬学的担体および(b)サブスタンスPまたはサブスタンスP類似体とキレーター分子との少なくとも1種のコンジュゲートを含む、組成物であって、サブスタンスPコンジュゲートは、キレーター−R−Arg1−Pro2−Lys3−Pro4−Gln5−Gln6−Phe7−Phe8−Gly9−Leu10−Met11−NH2という略称を有し、式I:
【化8】


(式中、
Rは、−CH2−C(O)−、−C(CO2H)CH2CH2−C(O)−、または−C(CO2H)CH2−C(O)−であり、ただし、コンジュゲートがサブスタンスP配列を含む場合には、Rは、−CH2−C(O)−である)
で示される化合物、ならびにサブスタンスPのアミノ酸配列において以下の修飾:
a)Met11の、−NH−CH(CH2CH2−SO2−CH3)−C(O)−(Met(O2)11)、−NH−CH(CH2CH2−SO−CH3)−C(O)−(Met(O)11)、または−NH−CH[CH(CH3)CH2CH3)−C(O)−(Ile11)による置き換え、
b)Leu10の、−NH−CH[CH(CH3)CH2CH3)−C(O)−(Ile10)による置き換え、
c)Gly9の、−N(CH3)−CH2−C(O)−(Sar9)による置き換え、
d)Phe7もしくはPhe8またはPhe7およびPhe8の両方の、式:
【化9】


で示される残基による置き換え、
e)Lys3の、式:
【化10】


で示される残基による置き換え、
f)配列Arg1−Pro2−Lys3−Pro4−Gln5の1〜5アミノ酸のトランケーション、または
g)配列Arg1−Pro2−Lys3−Pro4−Gln5の1〜5アミノ酸の、−N(CH3)−CH2−C(O)−(Sar)による置き換え、
の少なくとも1個を有する式Iの類似体を含み、
前記コンジュゲートは、アクチニウム−225、ビスマス−212、ビスマス−213、鉛−203、銅−64、銅−67、ガリウム−66、ガリウム−67、ガリウム−68、ルテチウム−177、インジウム−111、インジウム−113、イットリウム−86およびイットリウム−90、ジスプロシウム162、ジスプロシウム165、ジスプロシウム167、ホルミウム−166、プラセオジミウム−142、プラセオジミウム−143、プロメチウム−149、ならびにテルビウム−149からなる群より選択された放射性核種で標識されている、前記組成物。

【公表番号】特表2007−527366(P2007−527366A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505475(P2006−505475)
【出願日】平成16年3月18日(2004.3.18)
【国際出願番号】PCT/EP2004/050329
【国際公開番号】WO2004/082722
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(505353515)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITATSSPITAL BASEL
【出願人】(505353504)
【氏名又は名称原語表記】Universitat Bern
【Fターム(参考)】