説明

癌診断のための方法、システム、および組成物

本発明は、中枢神経系(CNS)、例えば、脳脊髄液、脳もしくは脊髄組織試料、または他の生体液における遺伝子またはタンパク質発現の変化を検出することによって、非中枢神経系(非CNS)癌を診断するための方法、システムおよび組成物を特徴とする。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、癌のリスク評価、同定、診断、予後診断、および/またはモニタリング、ならびに早期治療的介入のための、方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
早期診断および同時に行われる早期治療的介入がほとんどのヒト疾患の治療および/または管理の成功の鍵となることは自明である。しかし、多くの疾患は、現在、病的過程がすでに進行してしまってからしか診断することができないか、または診断されない。例えば、多くの固形腫瘍は触診または組織イメージング技法によって可視化できるようになるまでは(すなわち、固形腫瘍のサイズが少なくとも0.5cmとなるまで)、通常臨床的に検出不可能であり、それまでに何年も異常増殖が存在しているという可能性がある。同様に、糖尿病(空腹時血漿血糖値上昇または高血糖)の診断基準は、耐糖能障害(高血糖の根本原因)がすでに存在する場合に、疾患を同定する。別の例では、関節リウマチ(RA)は、関節硬直および関節痛の存在ならびに陽性のリウマチ因子の存在によって診断され、RAを示す因子は全てすでに存在し、進行している可能性がある。
【0003】
神経系の1つの主な機能は、ある閾値に到達する信号を感知し反応することにより、恒常性を維持することである。中枢神経系(CNS)は、免疫系等の以前は無関係とみなされていた他の系から出る信号を感知し反応することができる(Besedovsky and del Rey, Endocr. Rev. 17(1):64−102(1996)(非特許文献1)、Tracey, Nature 420(6917):853−859(2002)(非特許文献2)、Blalock, J. Intern. Med. 257(2):126−138(2005)(非特許文献3)、Ader et al., Lancet 345(8942):99−103(1995)(非特許文献4)、Steinman, Nat. Immunol. 5(6)575−581(2004)(非特許文献5))。例えば、脳は、免疫性末梢信号を感知し、視床下部−下垂体−副腎軸の活性化により反応することができ、その結果、進行中の免疫応答の調整をもたらす(Besedovsky et al., Science 221, 564(1983)(非特許文献6); A. V. Turnbull, C. L. Rivier, Physiol. Rev. 79,1(1999)(非特許文献7))。末梢信号は、液性、または迷走神経活性化等の、近年発見された神経経路により脳に影響を与えることができ、CNSと末梢との間の伝達の新しい経路が、いまだに発見されていないという考えを支持する(Tracey, Nature 420(6917):853−859(2002)(非特許文献8); Goehler et al., Auton. Neurosci. 85(1−3):49−59(2000)(非特許文献9))。
【0004】
癌は、先進工業国において、いまだに主な死亡原因である。患者生存の大幅な改善は、主に、まだ除去が可能である早期疾病検出により達成されており、可能な限り早期の段階に癌の存在を検出する必要性を強調する(Etzioni et al., Nat. Rev. Cancer 3(4):243−252(2003)(非特許文献10))。
【0005】
癌の進行は、高いゲノムの不安定性および高い突然変異率により特徴付けられ、各突然変異は、新しい遺伝子クローンを生成する(Khong and Restifo, Nat. Immunol. 3(11):999−1005(2002)(非特許文献11))。
【0006】
機能的ゲノミクスおよびプロテオミクス等の高スループットスクリーニング方法の開発は、種々の疾患に関連する分子を探索する新たな生物学的基盤を提供している。マイクロアレイ分析に基づいた遺伝子−発現プロファイルは、肺癌患者の生存率を予測するのに幾分か有用となっている(Beer et al., Nat. Med. 8(8):816−24(2002)(非特許文献12))。同様の方法は、併用化学療法後のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の臨床成績を予測するのに有用であると言われた遺伝子群を同定した(Shipp et al., Nat. Med. 8(1):68−74(2002)(非特許文献13))。また、卵巣癌患者または前立腺癌患者と非癌ボランティアのプロテオミクスプロファイルの比較は、早期癌検出に有用である可能性のある一連の血清タンパク質を提供すると言われた(Petricoin et al., Lancet 359(9306):572−7(2002)(非特許文献14); Petricoin et al., J.Natl. Cancer Inst. 94(20):1576−8(2002)(非特許文献15))。
【0007】
現在では、癌のほとんどの機能的ゲノミクス研究は、患者から得られる癌試料を使用して、(ゲノミクスまたはプロテオミクス方法によって)癌関連遺伝子発現プロファイルを生成している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Besedovsky and del Rey, Endocr. Rev. 17(1):64−102(1996)
【非特許文献2】Tracey, Nature 420(6917):853−859(2002)
【非特許文献3】Blalock, J. Intern. Med. 257(2):126−138(2005)
【非特許文献4】Ader et al., Lancet 345(8942):99−103(1995)
【非特許文献5】Steinman, Nat. Immunol. 5(6)575−581(2004)
【非特許文献6】Besedovsky et al., Science 221, 564(1983)
【非特許文献7】A. V. Turnbull, C. L. Rivier, Physiol. Rev. 79,1(1999)
【非特許文献8】Tracey, Nature 420(6917):853−859(2002)
【非特許文献9】Goehler et al., Auton. Neurosci. 85(1−3):49−59(2000)
【非特許文献10】Etzioni et al., Nat. Rev. Cancer 3(4):243−252(2003)
【非特許文献11】Khong and Restifo, Nat. Immunol. 3(11):999−1005(2002)
【非特許文献12】Beer et al., Nat. Med. 8(8):816−24(2002)
【非特許文献13】Shipp et al., Nat. Med. 8(1):68−74(2002)
【非特許文献14】Petricoin et al., Lancet 359(9306):572−7(2002)
【非特許文献15】Petricoin et al., J.Natl. Cancer Inst. 94(20):1576−8(2002)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に記載する方法およびシステムは、少なくとも一部で、中枢神経系(CNS)が、末梢(非CNS)癌の存在に応答した遺伝子発現の特定の変化(例えば、遺伝子発現パターンの変化)を示すという発見に基づいている。いかなる理論にも拘束されないが、本発明者らは、CNS、例えば、脳の遺伝子発現の特定の変化は、癌発症の早期段階、例えば、疾患が臨床的に検出可能になる前および/または対象が症状を呈す前に、末梢癌の存在に応答して生じると考えている。したがって、本明細書に記載のCNSの遺伝子発現の変化またはパターンを分析することによって、末梢癌を早期段階において診断し、早期治療的介入の標的とすることができる。
【0010】
一態様において、本発明は、対象における非中枢神経系(非CNS)癌を診断するための方法を提供する。方法は、図5A〜5I、11A、12、もしくは21〜23Cのうちの1つ以上に記載する遺伝子またはその相同物、および任意で図5Jまたは11Bに記載する1つ以上の遺伝子より選択される、5つ以上の遺伝子を含む、基準遺伝子発現プロファイルを提供するステップと、対象のCNS試料中の基準遺伝子発現プロファイルの全ての遺伝子の発現を検出するステップを含む、対象の遺伝子発現プロファイルを生成するステップと、対象の遺伝子発現プロファイルを基準遺伝子発現プロファイルと比較するステップとを含む。対象の遺伝子発現プロファイルと基準遺伝子発現プロファイルの一致は、対象が非CNS癌を有しているか、または発症する可能性が高いことを示す。一部の実施形態において、該方法はまた、1人以上の健康な被験体に対応する対照遺伝子発現プロファイルを提供するステップと、対象の遺伝子発現プロファイルを対照遺伝子発現プロファイルと比較するステップであって、対象の遺伝子発現プロファイルと対照遺伝子発現プロファイルの一致は、対象が非CNS癌を有さず、非CNS癌を発症する可能性が低いことを示す、ステップと、を含む。
【0011】
一部の実施形態においては、CNS試料は、脳からの1つ以上の細胞、例えば、視床下部、中脳、および前前頭皮質からの細胞の試料である。一部の実施形態においては、脳細胞は、視床下部からのものである。
【0012】
一部の実施形態においては、2つ以上の基準遺伝子発現プロファイルが使用され、それぞれは、異なる非CNS癌に特異的である。
【0013】
一部の実施形態においては、非CNS癌は、肺癌、結腸癌、および乳癌からなる群より選択される。一部の実施形態においては、非CNS癌は、直径0.5cm未満の固形腫瘍である。
【0014】
一部の実施形態においては、基準遺伝子発現プロファイルは、図5A〜5I、11A、12、および21A〜23Cのうちの1つ以上に記載するいずれかの遺伝子、またはその相同物より選択される、10個以上の遺伝子を含む。
【0015】
遺伝子発現は、当技術分野で既知のいかなる方法をも使用して検出されることが可能であり、好適な実施形態においては、遺伝子発現は、マイクロアレイアッセイを使用して検出される。
【0016】
一部の実施形態においては、対象は、ヒトであり、基準遺伝子発現プロファイルは、図55A〜5I、11A、12、および21A〜23Cに記載する遺伝子の、1つ以上のヒト相同物を含む。対象は、癌の家族歴を有し得、画像分析で評価されたときに癌の臨床徴候を欠く可能性があり、および/またはBRCA1、BRCA2、hMSH2、hMLH1、もしくはhMSH6遺伝子等の非CNS癌を発症するリスクが高いことに関連する遺伝子の保有者であり得る。
【0017】
一部の実施形態において、該方法は、比較するステップの結果の記録を生成するステップと、任意で、対象、医療提供者または他の当事者に記録を伝達するステップと、をさらに含む。
【0018】
一部の実施形態においては、基準遺伝子発現プロファイルは、以下の遺伝子群:Tbxa2r、Atxn2、Cntn2、Oxt、Gabarapl2、Unc84a、Atp5k、Bmp15、Kin、Nadk、Avp、Indo、Pomc、Ptgs2、Npy、およびその相同物より選択される、1つ以上の遺伝子の発現データを含み、対象の遺伝子発現プロファイルと基準遺伝子発現プロファイルの一致は、対象が、非CNS肺癌を有しているか、発症する可能性が高いことを示す。
【0019】
一部の実施形態においては、基準遺伝子発現プロファイルは、以下の遺伝子群:Avp、Indo、Pomc、Npy、Ptgs2、およびその相同物より選択される、1つ以上の遺伝子の発現データを含み、対象の遺伝子発現プロファイルと基準遺伝子発現プロファイルの一致は、対象が、非CNS乳癌を有しているか、または発症する可能性が高いことを示す。
【0020】
一部の実施形態においては、基準遺伝子発現プロファイルは、以下の遺伝子群:Avp、Indo、Mc4r、Mc5r、Pomc、Ptgs2、Npy、およびその相同物より選択される、1つ以上の遺伝子の発現データを含み、対象の遺伝子発現プロファイルと基準遺伝子発現プロファイルの一致は、対象が、非CNS結腸癌を有しているか、または発症する可能性が高いことを示す。
【0021】
別の態様において、本発明は、非中枢神経系(非CNS)癌の存在に対応する基準遺伝子発現プロファイルを特徴とする。プロファイルは、図5A〜5I、11A、12、または21A〜23Cのうちの1つ以上に記載するいずれかの遺伝子、および任意で図5Jまたは11Bのうちの1つまたは両方に記載するいずれかの遺伝子より選択される、5つ以上の遺伝子、例えば、10、12、20、30、40、または50個の遺伝子の発現データを含むことができる。
【0022】
一部の実施形態においては、基準遺伝子発現プロファイルは、図5A〜5I、11A、12、および21A〜23Cのうちの1つ以上に記載するいずれかの遺伝子より選択される、5つ以上の遺伝子の発現データを含む。
【0023】
一部の実施形態においては、基準遺伝子発現プロファイルは、以下の遺伝子群:Tbxa2r、Atxn2、Cntn2、Oxt、Gabarapl2、Unc84a、Atp5k、Bmp15、Kin、Nadk、Avp、Indo、Pomc、Ptgs2、Npy、およびその相同物より選択される、1つ以上の遺伝子の発現データを含み、非中枢神経系(非CNS)癌は、肺癌である。一部の実施形態においては、基準遺伝子発現プロファイルは、以下の遺伝子群:Tbxa2r、Atxn2、Cntn2、Oxt、Gabarapl2、Unc84a、Atp5k、Bmp15、Kin、Nadk、Avp、Indo、Pomc、Ptgs2、Npy、およびその相同物より選択される、5つ以上の遺伝子の発現データを含み、非中枢神経系(非CNS)癌は、肺癌である。
【0024】
一部の実施形態においては、基準遺伝子発現プロファイルは、以下の遺伝子群:Avp、Indo、Pomc、Npy、Ptgs2、およびその相同物より選択される、1つ以上の遺伝子の発現データを含み、非中枢神経系(非CNS)癌は、乳癌である。一部の実施形態においては、基準遺伝子発現プロファイルは、Avp、Indo、Pomc、Npy、Ptgs2、およびその相同物の発現データを含み、非中枢神経系(非CNS)癌は、乳癌である。
【0025】
一部の実施形態においては、基準遺伝子発現プロファイルは、以下の遺伝子群:Avp、Indo、Mc4r、Mc5r、Pomc、Ptgs2、Npy、およびその相同物より選択される、1つ以上の遺伝子の発現データを含み、非中枢神経系(非CNS)癌は、結腸癌である。一部の実施形態においては、基準遺伝子発現プロファイルは、以下の遺伝子群:Avp、Indo、Mc4r、Mc5r、Pomc、Ptgs2、Npy、およびその相同物より選択される、5つ以上の遺伝子の発現データを含む。
【0026】
さらなる態様において、本発明は、本明細書に記載する基準遺伝子発現プロファイルに対応するデータセットを含む、コンピュータが読み取り可能な媒体を提供する。
【0027】
付加的な態様において、本発明は、対象における非中枢神経系(非CNS)癌を診断するためのシステムを特徴とする。該システムは、
中枢神経系(CNS)試料を得るためのサンプリング装置と、
CNS試料中の1つ以上の遺伝子の遺伝子発現データを生成する遺伝子発現検出装置、またはCNS中の1つ以上の遺伝子の遺伝子発現の画像を得、1つ以上の遺伝子の遺伝子発現データを生成するためのイメージング装置と、
特定の非CNS癌に対する、本明細書に記載される、基準遺伝子発現プロファイルと、
遺伝子発現データを受信し、基準遺伝子発現プロファイルと比較する比較器
とを含む。
【0028】
さらに別の態様において、本発明は、対象における非中枢神経系(非CNS)癌を診断するための方法を提供する。該方法は、図5A〜5I、11A、12、および21A〜23Cのうちの1つ以上に記載するいずれかの遺伝子、および任意で図5Jまたは11Bのうちの1つまたは両方に記載するいずれかの遺伝子より選択される5つ以上の遺伝子を含む、基準遺伝子発現プロファイルを提供するステップと、対象のCNS試料(例えば、脳脊髄液(CSF)試料)中の基準遺伝子発現プロファイルの全ての遺伝子によりコードされる、タンパク質の発現を検出するステップを含む、対象の発現プロファイルを生成するステップと、対象の発現プロファイルを基準遺伝子発現プロファイルと比較するステップとを含む。対象の発現プロファイルと基準遺伝子発現プロファイルの一致は、対象が、非CNS癌を有しているか、または発症する可能性が高いことを示す。
【0029】
一部の実施形態においては、2つ以上の基準遺伝子発現プロファイルが使用され、それぞれは異なる非CNS癌に特異的である。
【0030】
一部の実施形態においては、非CNS癌は、肺癌、結腸癌、および乳癌からなる群より選択される。
【0031】
一部の実施形態においては、非CNS癌は、直径0.5cm未満の固形腫瘍である。
【0032】
一部の実施形態においては、基準遺伝子発現プロファイルは、図5A〜5I、11A、12、および21A〜23Cのうちの1つ以上に記載するいずれかの遺伝子またはその相同物より選択される、5つ以上の遺伝子を含む。
【0033】
一部の実施形態においては、該方法はまた、1体以上の健康な被験体に対応する対照遺伝子発現プロファイルを得るステップと、対象の発現プロファイルを対照遺伝子発現プロファイルと比較するステップであって、対象の発現プロファイルと対照遺伝子発現プロファイルの一致は、対象が非CNS癌を有さず、非CNS癌を発症しないであろうということを示す、ステップと、を含む。
【0034】
一部の実施形態においては、対象は、ヒトであり、基準遺伝子発現プロファイルは、図5A〜5I、11A、12、および21A〜23Cに記載する遺伝子の1つ以上のヒト相同物を含む。
【0035】
対象は、癌の家族歴を有し得、画像分析で評価されたときに癌の臨床徴候を欠く可能性があり、および/またはBRCA1、BRCA2、hMSH2、hMLH1、またはhMSH6遺伝子等の非CNS癌を発症するリスクが高いことに関連する遺伝子の保有者であり得る。
【0036】
請求項30に記載の方法は、比較するステップの結果の記録を生成するステップと、任意で、対象、医療提供者または他の当事者に記録を伝達するステップと、をさらに含む。
【0037】
一部の実施形態においては、基準遺伝子発現プロファイルは、以下の遺伝子群:Tbxa2r、Atxn2、Cntn2、Oxt、Gabarapl2、Unc84a、Atp5k、Bmp15、Kin、Nadk、Avp、Indo、Pomc、Ptgs2、Npy、およびその相同物より選択される、1つ以上の遺伝子の発現データを含み、対象の遺伝子発現プロファイルと基準遺伝子発現プロファイルの一致は、対象が、非CNS肺癌を有しているか、または発症する可能性が高いことを示す。
【0038】
一部の実施形態においては、基準遺伝子発現プロファイルは、以下の遺伝子群:Avp、Indo、Pomc、Npy、Ptgs2、およびその相同物より選択される、1つ以上の遺伝子の発現データを含み、対象の遺伝子発現プロファイルと基準遺伝子発現プロファイルの一致は、対象が、非CNS乳癌を有しているか、または発症する可能性が高いことを示す。
【0039】
一部の実施形態においては、基準遺伝子発現プロファイルは、以下の遺伝子群:Avp、Indo、Mc4r、Mc5r、Pomc、Ptgs2、Npy、およびその相同物より選択される、1つ以上の遺伝子の発現データを含み、対象の遺伝子発現プロファイルと基準遺伝子発現プロファイルの一致は、対象が、非CNS結腸癌を有しているか、または発症する可能性が高いことを示す。
【0040】
別の態様において、本発明は、対象における非中枢神経系(非CNS)癌を診断するための方法を特徴とする。該方法は、Atxn2、Gabarapl2、Atp5k、Gpr109a、およびKinからなる群より選択される5つ以上の遺伝子を含む、基準遺伝子発現プロファイルを提供するステップと、対象の血液試料中の基準遺伝子発現プロファイルの全ての遺伝子の発現を検出するステップを含む、対象の遺伝子発現プロファイルを生成するステップと、対象の遺伝子発現プロファイルを基準遺伝子発現プロファイルと比較するステップとを含む。対象の遺伝子発現プロファイルと基準遺伝子発現プロファイルの一致は、対象が、非CNS癌を有しているか、または発症する可能性が高いことを示す。
【0041】
なおさらなる態様において、本発明は、対象における非中枢神経系(非CNS)癌を診断するための方法を提供する。該方法は、表1に記載する遺伝子より選択される5つ以上のタンパク質を含む、基準タンパク質発現プロファイルを提供するステップと、対象の脳脊髄液(CSF)試料中の基準タンパク質発現プロファイルの全てのタンパク質の発現を検出するステップを含む、対象のタンパク質発現プロファイルを生成するステップと、対象のタンパク質発現プロファイルを基準タンパク質発現プロファイルと比較するステップとを含む。対象のタンパク質発現プロファイルと基準タンパク質発現プロファイルの一致は、対象が、非CNS癌を有しているか、または発症する可能性が高いことを示す。
【0042】
本明細書に記載する方法は、特に、種々の疾患のリスク評価のため、疾病の早期検出および診断のため、疾病の進行のモニタリングのため、疾病の治療効果のモニタリングのため、および/または臨床状態の評価のために有用である。
【0043】
本明細書において使用する「疾患」または「疾病」は、生体または細胞、組織もしくは器官の一部の健康を脅かす状態の変化である。2つの用語は、疾患の極早期段階(例えば、対象または医療提供者によって検出できない可能性があるが、疾病過程を開始している生体の早期変化)を含む全ての疾患段階を含むことを意味する。例えば、「疾患」および「疾病」という用語は、新生物または腫瘍が形成される前の異常増殖期、および例えば、関節リウマチの発症において、炎症が現れる前の抗原に対する早期免疫応答を含む。
【0044】
本明細書において使用する「異常増殖」または「癌」は、正常な細胞の増殖を通常は誘発しないと考えられる、または正常な細胞の増殖を停止すると考えられる条件下における細胞の未制御かつ進行性の増殖である。異常増殖は、組織の新たな異常な増殖である、「新生物」の形成を生じる可能性がある。異常に増殖する細胞が塊を形成すると、新生物は、一般に、「腫瘍」と称される。新生物または癌は、良性または悪性となり得る。
【0045】
「対象」は、考えられる癌の存在について試験されるヒトまたは動物である。動物は、哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ウシもしくはヤギ等の家畜、実験用齧歯動物(例えば、マウス、ラット、モルモットまたはハムスター)等の実験動物、ウサギ、または実験用霊長類、例えば、チンパンジーもしくはサルであることが可能である。
【0046】
本明細書において使用する「一致する(matches)、(matching)」または「一致(match)」という用語は、発現プロファイルの比較に関する場合、対象の発現プロファイルの遺伝子の少なくとも75%が、差次的に発現されることを意味する。差次的発現の方向に関するデータが、基準発現プロファイルに含まれる場合、「一致」は、対象の発現プロファイルの遺伝子の少なくとも75%が、基準発現プロファイルの遺伝子と同じ方法で上方または下方制御されていることを意味する。例えば、基準発現プロファイルにおいて遺伝子1〜5が上方制御されており、遺伝子6〜10が下方制御されている場合には、遺伝子1〜10が下方制御されている対象のプロファイルは一致していないと考えられるが、遺伝子1、2、3、4および6が上方制御されており、遺伝子5、7、8、9および10が下方制御されている対象のプロファイルは一致していると考えられる。
【0047】
「高レベルの一致」は、遺伝子の少なくとも75%が、基準発現プロファイルの遺伝子の発現レベルの少なくともプラスまたはマイナス50%(または発現レベルの比のLog2)内にあることを意味する。例えば、以下の基準発現プロファイルを仮定する。遺伝子Aでは、疾患が存在しない場合の発現レベルに対する疾患が存在する場合の発現レベルのLog2比は+0.4であり、遺伝子Bでは、比は−0.4であり、遺伝子Cでは、比は+0.2であり、および遺伝子Dでは、比は−0.2である。対象のプロファイルの遺伝子A、B、C(基準プロファイルの遺伝子の75%)が、それらの基準プロファイルの遺伝子に対する比の±50%内であるため、以下の値(A=+0.3、B=−0.3、C=+0.1、D=+0.3)を有する対象のプロファイルは、高レベルの一致である。
【0048】
本明細書に記載するものと同様または等価な方法および材料を、本発明を実施または試験する際に使用することができるが、好適な方法および材料を以下に記載する。本明細書に記載する全ての刊行物、特許出願、特許および他の参照文献は全体の内容が参照により本明細書に組み入れられる。矛盾がある場合には、定義を含む本明細書が優先する。また、材料、方法および実施例は例示的にすぎず、限定をする意図はない。
【0049】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明、図面および特許請求の範囲により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】異なる腫瘍細胞(肺、乳房、および結腸)の注射後の異なる経過時点における、マウスのCNSにおいて差次的に発現される遺伝子の数をそれらのそれぞれの対照と比較して示す表である。この表のデータは、複数の分散分析(ANOVA)テストにより得られ、1つのテストが各経過時点に対応する。表は、差次的に発現される遺伝子の数(遺伝子の列)、上方制御された差次的に発現される遺伝子の割合(上方の列)、平均倍率変化(倍率の列)、ならびに第5および第95パーセンタイルを示す。データは、>1.2の倍率変化を示す遺伝子に対応する。
【図2】生物学的反復の標準誤差により評価されたグラフの形態によるデータセットの品質の分析を示す、一連のグラフである。グラフは、種々の疾病モデル、すなわち、肺癌(図2A)、乳癌(図2B)、結腸癌(図2C)、および関節炎(図2D)に対する、log10標準誤差(ASE)の絶対値およびそれらの中央値の密度分布を示す。「Ht」は、視床下部を意味し、「Cx」は、前前頭皮質を意味し、「Mb」は、中脳を意味し、「Li」は、肝臓を意味する。
【図3】腫瘍細胞を注射したマウスに差次的に発現される遺伝子の数をそれらのそれぞれの対照と比較して示す表である。差次的に発現される遺伝子は、本明細書に記載されているように選択された(初期分析)。表は、差次的に発現される遺伝子の数(遺伝子の行)、上方制御された遺伝子の割合(上方の行)、平均倍率変化(倍率の行)、ならびに第5および第95パーセンタイルを示す。データは、>1.2の倍率変化を示す遺伝子に対応する。
【図4】癌細胞を注射したマウスに差次的に発現される遺伝子の数をそれらのそれぞれの対照と比較して示す表である。選択された遺伝子は、一方向のみに変化した発現を示す遺伝子に対応する(第2のより限定的な分析)。表は、差次的に発現される遺伝子の数(遺伝子の行)、上方制御された遺伝子の割合(上方の行)、平均倍率変化(倍率の行)、ならびに第5および第95パーセンタイルを示す。データは、>1.2の倍率変化を示す遺伝子に対応する(遺伝子選択に関するさらなる詳細については、実験方法を参照)。
【図5】(図5A−I)癌細胞を注射したマウスの脳に差次的に発現される遺伝子の表である。この表に含めるために選択される遺伝子は、より限定的な分析(実施例3に記載する)において、一方向のみ(すなわち、上または下)に変化した発現を示す遺伝子に対応する。各表は、以下のようなある脳領域に差次的に発現される遺伝子を含む。5A〜C、皮質;5D〜F、視床下部;および5G〜I、中脳。マウスは、結腸癌細胞(5A、5D、および5G)、乳癌細胞(5B、5E、および5H)、または肺(5C、5F、および5I)癌細胞を注射された。(図5J)癌細胞を注射したマウスに差次的に発現されるさらなる遺伝子の一連の表である。この表に含めるために選択される遺伝子は、対データのANOVAを使用して、より限定的な分析(実施例3に記載する)において、一方向のみに変化した発現を示す遺伝子に対応する。Ht、視床下部;ct、皮質;mb、中脳。
【図6】3つの癌モデルに対応する異なる脳領域および肝臓データセットの誤り発見率(Fals Discovery Rate:FDR;q値)を示す、一連のグラフである。発現レベルにおいて>1.2の倍率変化を示す遺伝子は、それらの差次的発現のp値に応じてランクごとに分類された。図は、このランク付けされたリストから推定されるq値を示す。Cx:前前頭皮質、Ht:視床下部、Mb:中脳、Li:肝臓。
【図7A】リアルタイムPCRによるマイクロアレイデータの確証を示す、棒グラフである。肺癌モデルの視床下部に対応する遺伝子は、基準1または2により選択され、それらの倍率変化に応じてグループ化された。棒は、確証された経過時点の割合を表し、棒上の数字は、アッセイした経過時点の数を示す。
【図7B】3つの脳領域に対する、肺、乳房、および結腸癌モデルの共通部分を示す、一連のベン図である。数字は、第2のより限定的な分析中に差次的に発現される遺伝子の数を示す。*p<0.05、**p<0.01 フィッシャーの直接確率検定。
【図8】(8A−C)視床下部試料の一連の3つの二次元クラスター分析である。(8A)これらの腫瘍モデル間で差次的に応答する遺伝子に基づいた、肺および結腸癌モデルから得られる視床下部試料の階層的クラスター分析である。対にしたモデル間で差次的に応答する遺伝子のサブセットに基づいた、(8B)乳房および肺癌モデル、ならびに(8C)結腸および乳癌モデルからの試料の階層的クラスター分析である。各列は、試料を表し、各行は、単一遺伝子を表す。グレースケールは、倍率変化を割合(%)として表す。試料の2つの主要なクラスターは、試料軸に属する階層ツリーの第1の枝分かれにより定義される。試料標識は、癌モデルおよび経過時点を示す。(8D−F)図8A〜図8Cに示す視床下部試料のクラスター分析で同定される遺伝子を記載する表である。8D、結腸対乳房;8E、結腸対肺;8F、乳房対肺。
【図9】(9A−C)一連の3つの二次元クラスター分析である。皮質試料は、対にした癌モデル間で差次的に応答する遺伝子のサブセットに基づいて、(A)乳房および肺癌モデル、(B)結腸および肺癌モデル、ならびに(C)乳房および結腸癌モデルから得られた。各列は、試料を表し、各行は、単一遺伝子を表す。グレースケールは、倍率変化を割合(%)として表す。試料の2つの主要クラスターは、試料軸に属する階層ツリーの第1の枝分かれにより定義される。試料標識は、癌モデルおよび経過時点を示す。(9D−F)図9A〜図9Cに示す視床下部試料のクラスター分析において同定される遺伝子を記載する表である。9D、結腸対乳房;9E、結腸対肺;9F、乳房対肺。
【図10】一連の3つの二次元クラスター分析である。中脳試料は、対にした癌モデル間で差次的に応答する遺伝子のサブセットに基づいて、(A)乳房および肺癌モデル,(B)結腸および肺癌モデル、ならびに(C)乳房および結腸癌モデルから得られた。各列は、試料を表し、各行は、単一遺伝子を表す。グレースケールは、倍率変化を割合(%)として表す。試料の2つの主要クラスターは、試料軸に属する階層ツリーの第1の枝分かれにより定義される。試料標識は、癌モデルおよび経過時点を示す。
【図11】リアルタイムPCRにより確証された、肺、乳房、および結腸癌細胞を注射したマウスの視床下部、前前頭皮質、および中脳より選択される遺伝子の表である。これらの表中の遺伝子は、施設内でプリントされた10Kオリゴヌクレオチドアレイ(p<0.05)から得られた。11Aおよび11Bの列の定義は、以下の通りである。領域:試料が得られた脳領域、モデル:癌モデル、遺伝子座:Entrez遺伝子数(=locuslink数)の番号(各遺伝子に対して同定される固有番号)、倍率:倍率変化(%)、p値:ANOVAにより推定されるp値(<0.05であるべきである)、遺伝子:Entrez遺伝子データベースからの遺伝子記号、説明:Entrez遺伝子データベースからの遺伝子の説明、遺伝子座(ホモ):HomoloGeneデータベースから得られるヒト相同物に対するEntrez遺伝子数(=locuslink数)、遺伝子(ホモ):ヒト相同物に対する遺伝子記号。
【図12】リアルタイムPCRによりアッセイした遺伝子の表である。これらの表中の遺伝子は、施設内でプリントされた10Kオリゴヌクレオチドアレイには存在しなかったが、疾病行動として既知の行動状態に関与することが知られている。データは、平均の平均±標準誤差として表現される。列の定義:領域:試料が得られた脳領域、モデル:癌モデル、遺伝子座:Entrez遺伝子数(=locuslink数)の番号(各遺伝子に対して同定される固有番号)、倍率:倍率変化(%)、p値:ANOVAにより推定されるp値(<0.05であるべきである)、遺伝子:Entrez遺伝子データベースからの遺伝子記号、説明:Entrez遺伝子データベースからの遺伝子の説明、遺伝子座(ホモ):HomoloGeneデータベースから得られるヒト相同物に対するEntrez遺伝子数(=locuslink数)、遺伝子(ホモ):ヒト相同物に対する遺伝子記号。
【図13】行動テストの結果を示す棒グラフである。(13A)腫瘍細胞の注射後の異なる経過時点において、マウスによりチューブから移された(掘られた)ペレットの平均重量。1群当たりn=9匹の動物。(13B)腫瘍細胞の注射後9日目に行われた強制水泳試験。Y軸は、不動状態までの時間(秒)を示す。1群当たりn=7匹の動物。
【図14】(14A−C)一連の3つの二次元クラスター分析である。視床下部試料は、異なる対にしたモデル間で差次的に応答する遺伝子のサブセットに基づいて、(14A)関節炎および肺癌モデル、(14B)関節炎、および乳癌モデル、ならびに(14C)関節炎および結腸癌モデルから得られた。各列は、試料を表し、各行は、単一遺伝子を表す。グレースケールは、倍率変化を割合(%)として表す。試料の2つの主要クラスターは、試料軸に属する階層ツリーの第1の枝分かれにより定義される。試料標識は、癌モデルおよび経過時点を示す。(14D−G)関節炎および癌モデル間で視床下部に差次的に発現される遺伝子の表である。14D、関節炎対結腸;14E、関節炎対肺;14F、関節炎対乳房;14G、関節炎対結腸、肺、および乳房。列の定義:遺伝子座:Entrez遺伝子数(=locuslink数)の番号(各遺伝子に対して同定される固有番号)、遺伝子:Entrez遺伝子データベースからの遺伝子記号、説明:Entrez遺伝子データベースからの遺伝子の説明、遺伝子座(ホモ):HomoloGeneデータベースから得られるヒト相同物に対するEntrez遺伝子数(=locuslink数)、遺伝子(ホモ):ヒト相同物に対する遺伝子記号。
【図15】(15A−C)一連の3つの二次元クラスター分析である。皮質試料は、異なる対にしたモデル間で差次的に応答する遺伝子のサブセットに基づいて、(15A)関節炎および肺癌モデル、(15B)関節炎および乳癌モデル、ならびに(15C)関節炎および結腸癌モデルから得られた。各列は、試料を表し、各行は、単一遺伝子を表す。グレースケールは、倍率変化を割合(%)として表す。試料の2つの主要クラスターは、試料軸に属する階層ツリーの第1の枝分かれにより定義される。試料標識は、癌モデルおよび経過時点を示す。(15D−G)関節炎および癌モデル間で皮質に差次的に発現される遺伝子の表である。15D、関節炎対結腸;15E、関節炎対肺;15F、関節炎対乳房;15G、関節炎対結腸、肺、および乳房。列の定義は、図14D〜Gと同様である。
【図16】(16A−C)一連の3つの二次元クラスター分析である。中脳試料は、異なる対にしたモデル間で差次的に応答する遺伝子のサブセットに基づいて、(A)関節炎および肺癌モデル、(B)関節炎および乳癌モデル、ならびに(C)関節炎および結腸癌モデルから得られた。各列は、試料を表し、各行は、単一遺伝子を表す。グレースケールは、倍率変化を割合(%)として表す。試料の2つの主要クラスターは、試料軸に属する階層ツリーの第1の枝分かれにより定義される。試料標識は、癌モデルおよび経過時点を示す。(16D−G)関節炎および癌モデル間で中脳に差次的に発現される遺伝子の表である。156、関節炎対結腸;16E、関節炎対肺;16F、関節炎対乳房;16G、関節炎対結腸、肺、および乳房。列の定義は、図14D〜Gと同様である。
【図17】(17A)視床下部試料の階層的クラスター分析は、各一対比較からの10個の上位にランク付けされた遺伝子に基づいて、関節炎および癌モデルから得られた。各列は、試料を表し、各行は、単一遺伝子を表す。グレースケールは、倍率変化を割合(%)として表す。白線は、試料の優性クラスターへの細分を示す。試料標識は、疾病モデルおよび経過時点を示す。(17B−D)p値<0.05および倍率>20%を有するいずれかの関節炎モデルに対して変化する、各領域より選択される遺伝子の表であるが、それが両方のモデルにおいて変化する場合は、変化は同一方向でなければならず、例えば、少なくとも1つの経過時点において変化した遺伝子、2つ以上の経過時点において変化した遺伝子は、同一方向に変化していなければならない(すなわち、必ず上方または下方制御されている)。列の定義:遺伝子座:Entrez遺伝子数(=locuslink数)の番号(各遺伝子に対して同定される固有番号)、C57およびDBA:各関節炎モデル(C57BL/6またはDBA/1)に対する倍率変化(%)、最大:いずれかの関節炎モデルに対する最大倍率変化(>20であるべきである)、p値:ANOVAにより推定されるp値(<0.05であるべきである)、遺伝子:Entrez遺伝子データベースからの遺伝子記号、説明:Entrez遺伝子データベースからの遺伝子の説明、遺伝子座(ホモ):HomoloGeneデータベースから得られるヒト相同物に対するEntrez遺伝子数(=locuslink数)、遺伝子(ホモ):ヒト相同物に対する遺伝子記号。
【図18】関節炎モデルに対応する異なる脳領域データセットに対する誤り発見率(FDR;q値)を示すグラフである。発現レベルにおいて20%を上回る倍率変化を示す遺伝子は、それらの差次的発現のp値に応じてランクごとに分類された。図は、このランク付けされたリストから推定されるq値を示す。Cx:前前頭皮質、Ht:視床下部、Mb:中脳。
【図19】(19A,D,G)差次的に発現される遺伝子が豊富なGene Ontology Consortiaデータベース(GO)遺伝子セットを示す、有向非巡回グラフ(DAG)である。黒丸は、p<0.05における差次的遺伝子セットを表す。強度は、平均倍率変化を各遺伝子セットについての割合として示す(p<0.05、GSEA)。白丸は、非差次的遺伝子セットを示す(p0.05)。密接に関係した遺伝子セットは、3つの経過時点にわたって同色でハイライトされるカテゴリ(上部標識)にグループ化された。最先端遺伝子(LEG)は、選択された末端遺伝子セットから同定された。(19B,E,H)成人の脳におけるそれらの生物学的機能に応じて、手動でグループ化されたLEGを示す棒グラフである。(19C,F,I)特定の信号伝達経路に属する「ニューロン結合」機能に対応する、遺伝子の数を図示する棒グラフである。水平棒は、信号伝達経路を示し、サイズは、遺伝子量に比例する。(19J−L)乳癌(19J)、結腸癌(19K)、および肺癌(19L)に対する差次的遺伝子オントロジーセットからの視床下部最先端遺伝子の表である。列の定義:遺伝子座:Entrez遺伝子数(=locuslink数)の番号(各遺伝子に対して同定される固有番号)、倍率:倍率変化(%)、p.値:ANOVAにより推定されるp値(<0.05であるべきである)、遺伝子:Entrez遺伝子データベースからの遺伝子記号、説明:Entrez遺伝子データベースからの遺伝子の説明、遺伝子座(ホモ):HomoloGeneデータベースから得られるヒト相同物に対するEntrez遺伝子数(=locuslink数)、遺伝子(ホモ):ヒト相同物に対する遺伝子記号。
【図20】癌に応答して脳に差次的に発現される個々の遺伝子のリストである。このリストは、異なる癌モデルを区別する遺伝子発現プロファイルに対するもの(図11〜図12)を除いて、前のリスト(図5、8〜10、および14〜16)のうちの少なくとも1つに存在する遺伝子を含む。遺伝子の合計数:999。列の定義:遺伝子座:Entrez遺伝子数(=locuslink数)の番号(各遺伝子に対して同定される固有番号)、遺伝子:Entrez遺伝子データベースからの遺伝子記号、説明:Entrez遺伝子データベースからの遺伝子の説明、遺伝子座(ホモ):HomoloGeneデータベースから得られるヒト相同物に対するEntrez遺伝子数(=locuslink数)、遺伝子(ホモ):ヒト相同物に対する遺伝子記号。
【図21】各腫瘍の種類(結腸)に対する50個の最有力候補遺伝子のリストである。これらのリストは、本明細書に記載するリストから作成されており、対としたデータに対するANOVAを使用して、リアルタイムPCRおよび図5により確証された遺伝子を含む。列の定義:遺伝子座:Entrez遺伝子数(=locuslink数)の番号(各遺伝子に対して同定される固有番号)、遺伝子:Entrez遺伝子データベースからの遺伝子記号、説明:Entrez遺伝子データベースからの遺伝子の説明、遺伝子座(ホモ):HomoloGeneデータベースから得られるヒト相同物に対するEntrez遺伝子数(=locuslink数)、遺伝子(ホモ):ヒト相同物に対する遺伝子記号。
【図22】各腫瘍の種類(肺)に対する50個の最有力候補遺伝子のリストである。これらのリストは、本明細書に記載するリストから作成されており、対としたデータに対するANOVAを使用して、リアルタイムPCRおよび図5により確証された遺伝子を含む。列の定義:遺伝子座:Entrez遺伝子数(=locuslink数)の番号(各遺伝子に対して同定される固有番号)、遺伝子:Entrez遺伝子データベースからの遺伝子記号、説明:Entrez遺伝子データベースからの遺伝子の説明、遺伝子座(ホモ):HomoloGeneデータベースから得られるヒト相同物に対するEntrez遺伝子数(=locuslink数)、遺伝子(ホモ):ヒト相同物に対する遺伝子記号。
【図23】各腫瘍の種類(乳房)に対する50個の最有力候補遺伝子のリストである。これらのリストは、本明細書に記載するリストから作成されており、対としたデータに対するANOVAを使用して、リアルタイムPCRおよび図5により確証された遺伝子を含む。列の定義:遺伝子座:Entrez遺伝子数(=locuslink数)の番号(各遺伝子に対して同定される固有番号)、遺伝子:Entrez遺伝子データベースからの遺伝子記号、説明:Entrez遺伝子データベースからの遺伝子の説明、遺伝子座(ホモ):HomoloGeneデータベースから得られるヒト相同物に対するEntrez遺伝子数(=locuslink数)、遺伝子(ホモ):ヒト相同物に対する遺伝子記号。
【発明を実施するための形態】
【0051】
詳細な説明
本明細書に記載する方法は、一部には、癌の早期段階の(癌出現の数時間以内、数日以内、数週間以内または数ヶ月以内の場合もある)末梢(非CNS)組織または器官を同定する(例えば、診断するまたはモニタする)ために、CNSにおける遺伝子発現の検出に依拠している。疾病の早期同定および/または診断は、早期治療的介入の機会を提供し、癌が過度に進行する、または攻撃的になる前に癌を標的とする。
【0052】
一般的な方法
CNSは、強度または機能的関連性によって、内部恒常性を変更する可能性のある任意の内部または外部刺激に対する生体の応答に関与する。この機能の一部として、CNSおよび免疫系は、適宜、相互作用して適切な免疫応答を得る。
【0053】
免疫応答は、神経および液性機序を介して脳に影響を与える。神経機序は、主に、迷走神経の活動に関係する。18(3):130−1366(1995); Wang et al., Nature 421(6921):384−388(2003))。液性機構には、例えば、サトカイン介在による神経発火率の上昇など、脳構造上に直接働きかける、サトカイン介在の作用が挙げられる。(Rothwell and Hopkins, Trends Neurosci. 18)3:130−1366(1995)、Wang et al., Nature 421 )6921:384−833(2003))。一例において、末梢サイトカインは迷走神経に結合して、活性化し、脳の孤束および視床下部の核のニューロンを活性化することが示されている(Watkins and Maier, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96(14):7710−7713(1999))。
【0054】
末梢からの液性信号は、脳への強力なメッセンジャーとして作用する。脳内のサイトカインは、末梢よりはるかに低用量で作用を発揮することができる。例えば、100pg〜10ngの用量のインターロイキン−1(IL−1)の脳内投与は、体温、胃の機能、代謝の増加および挙動変化の最大限の変化を誘発するが、末梢に投与した際、同様の応答を誘発するためには数マイクログラムのこのサイトカインが必要である(Rothwell and Hopkins,(1995)、前記)。
【0055】
内部免疫信号を感知すると、脳は種々の様態で反応する。免疫信号に対するCNS応答のパラダイムの一つは、視床下部−脳下垂体−副腎軸等の神経内分泌軸の活性化である。この軸が活性化されると、糖質コルチコイドが遊離され、進行中の免疫応答を10分未満で調節することができる。迷走神経切離は、サイトカインの腹腔内投与後、視床下部下垂体副腎軸の活性化を弱めることが示されている(Watkins and Maier,(1999)、前記)。このフィードバック機序は生理学的関連性が高い。すなわち、末梢におけるサイトカイン放出による糖質コルチコイド産生の阻害により、通常、生物は死亡する(Besedovsky and del Rey, Endocr. Rev. 17(1):64−102(1996))。
【0056】
脳はまた、外部環境から免疫および他の系に影響する信号も感知することができる。例えば、ストレス反応の誘発により、糖質コルチコイドを放出し、進行中の免疫応答を弱くし得る。免疫系に対するストレスの影響は、動物モデルおよびヒトにおいて十分に証明されている(Deinzer et al., Int. J. Psychophysiol. 37(3):219−32(2000); Marshall et al., Brain Behav. Immun. 12(4):297−307(1998); Benschop et al., FASEB J. 10(4):517−24(1996); Sheridan et al., Ann. N.Y. Acad. Sci. 840:803−8(1998))。また、黙想またはヨガ等の精神/肉体介入が免疫系に影響を与える可能性があるという逸話的および予備的な証拠がある(Cassileth, CA Cancer J. Clin. 49(6):362−75(1999))。
【0057】
本新規方法は、末梢癌および他の疾患を早期段階において検出する方法として、CNSのこの自然の反応を利用する。いかなる理論によっても限定するのではないが、本明細書に記載する該方法は、一部には、癌進行の発症の早期段階において末梢(非CNS)疾患からの「アラーム信号」の存在をCNSが感知するという発見に基づいている。したがって、本明細書に記載する該方法は、CNS、例えば、ヒト等の対象からのCNS試料の遺伝子発現を検出することによって、末梢癌を診断するステップに関する。一態様において、非CNS癌は、癌の進行が生体内で開始されてから、数時間、数週間、または数ヶ月以内に、脳の遺伝子発現の特定のプロファイル(例えば、脳の視床下部、皮質、および/または中脳領域に発現されるような、図5、12、および13における遺伝子より選択される遺伝子のプロファイル)に基づいて同定することができる。一部の実施形態においては、非CNS癌は、癌の進行が生体内で開始されるが、癌が臨床的に検出可能になる、および/または増悪期になる前に、脳の遺伝子発現プロファイルに基づいて同定することができる。
【0058】
癌発症
臨床的に検出可能な腫瘍塊は、異常であるが、免疫監視を逃れ、免疫系の攻撃を受けない細胞を含むことが一般に認められている。腫瘍の進行時には、細胞は、特に、組織適合性抗原の下方制御等の表現型変化に反映される高い突然変異率によって特徴付けられる。したがって、腫瘍は、クローン選択、および細胞を所定の治療に対して抵抗性にする突然変異を有する細胞クローンの腫瘍塊からの増殖によって特定の治療に抵抗性となることがある。腫瘍細胞クローンの「自然淘汰」は、所定の割合で生じ、免疫系からの成長および逸脱を促進する遺伝的および後成的特徴を有する悪性細胞が出現する。平均悪性度は10,000を超える突然変異を含むと推定される(Stoler et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 96(26):15121−6(1999))。したがって、確立された癌の抗原プロファイルは、超早期段階の細胞の遺伝子型および表現型を反映しないと結論付けることができる。さらに、確立された癌に存在する腫瘍抗原および生物において誘導することができる応答は早期段階の腫瘍細胞によって誘導される抗原および応答と異なると考えることが妥当である。本明細書に記載する新規方法は、これらの障害にもかかわらず、このような早期段階の腫瘍細胞を検出することができる。
【0059】
一部の新生物、例えば、一部の癌は、それらが従来の既知の技術を使用して臨床的に検出可能になる、および/またはそれらが悪性になる前に、長期間(例えば、1、2、5、10、15、20、または25年間)増殖する可能性がある。この期間は、悪性腫瘍が現在の方法によって検出可能になる前に、癌細胞を検出するための驚くほど長い機会を提供する。この期間中に、腫瘍細胞は、それらのゲノムの不安定性の結果として分子レベルのいくつかの改変を受ける。
【0060】
それぞれの遺伝的変化は、おそらく増殖に選択的であるおよび/または先天性および適応免疫応答を回復し、活性化する新たな「アラーム信号」を誘発することができる。簡単には、腫瘍が臨床的に検出可能になる前に、10〜15年の腫瘍形成期間中に10,000のアラーム信号が作成される。
【0061】
遺伝子発現を検出する方法
CNSにおける遺伝子発現は、生体外、例えば、単離したCNS試料において、または生体内において、例えば、生体内におけるイメージング技法を使用して検出することができる。
【0062】
中枢神経系(CNS)試料
CNSは、脳(脳神経を含む)および脊髄を指す。CNS試料は、例えば、脳もしくは脊髄の細胞もしくは組織、または脳室および脊髄の中心管を満たす脳脊髄液(CSF)試料であり得る。
【0063】
遺伝子発現の検出が対象から単離されたCNS試料において実施される場合には、CNS試料は、当業者が利用可能なあらゆる方法によって得ることができる。例えば、CNS細胞または組織試料は、例えば、針生検または開放性外科的切開によって脳から得ることができる。脳のイメージングを実施して、脳に進入する針またはメスの正確な位置決めを決定することができる。
【0064】
定位生検として知られる一例では、弱い沈静または全身麻酔下にある患者の頭蓋骨に小さい穴を開け、コンピュータ断層撮影法(CT)または磁気共鳴イメージング(MRI)スキャン等のコンピュータ支援式イメージング技法によってガイドして針を脳組織に挿入する。針を使用して細胞試料を取り出し、通常のアッセイ、例えば、本明細書に記載する遺伝子発現アッセイによってその遺伝子発現を検出することができる。別の例において、CSF試料は、腰椎穿刺等の通常の方法によって得ることができる。この手技は、例えば、局所麻酔下で外来で実施することができる。
【0065】
CNS試料に特定の遺伝子発現アッセイを実施するのに必要な細胞数またはCSF量は異なるが、PCRに基づいた技法等のいくつかの技法では、極少数の細胞、例えば、10〜100細胞程度しか必要としない(Klein et al., Nat. Biotechnol. 20(4):387−92(2002))。CNS試料は本明細書に記載する診断試験にすぐ使用しても、または例えば、冷蔵もしくは冷凍保存しても、および/または診断試験を実施する施設に輸送してもよい。
【0066】
核酸を使用する方法
一実施形態において、本明細書に記載する方法は、(RNA、mRNA、DNA、cDNAまたは遺伝子に対応する他の核酸等の)ポリヌクレオチドを検出する遺伝子発現を検出する技法を使用する。核酸を使用して遺伝子発現を検出する多数の方法が存在すること、および任意の好適な検出方法を使用することができることが当業者に理解されよう。典型的なアッセイ様式は核酸ハイブリダイゼーションを使用し、例えば、1)核ラン−オン(nuclear run−on)アッセイ、2)スロットブロットアッセイ、3)ノーザンブロットアッセイ、4)磁気粒子分離、5)核酸もしくはDNAアレイもしくはチップ(以下にもさらに詳細に考察されている)、6)逆ノーザンブロットアッセイ、7)ドットブロットアッセイ、8)インサイチューハイブリダイゼーション、9)RNase保護アッセイ、10)リガーゼ連鎖反応、11)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、12)逆転写酵素(RT)−PCR、および13)ディファレンシャルディスプレイRT−PCR(DDRT−PCR)またはこれらの方法の任意の2つ以上の任意の組み合わせが挙げられる。このようなアッセイは、検出される特定の核酸の存在またはレベルを検出、同定またはモニタするために、放射性標識、酵素標識、化学発光標識、蛍光標識または他の好適な標識等の検出可能な標識を使用することができる。このような技法および標識は当技術分野において既知であり、当業者が広範に利用することができる。
【0067】
一実施形態において、被験対象のCNS試料から単離したmRNAに、配列パネルの1つ以上のメンバーに対応する多数のDNAプローブをハイブリダイゼーションすることによって、RNase保護アッセイを本明細書に記載する方法に使用することができる。CNS試料の1つ以上の遺伝子の発現プロファイルを基準遺伝子発現プロファイル、例えば、基底状態の発現パターンまたは他の陰性もしくは陽性対照(例えば、末梢疾病がないことが既知の患者のプロファイル、または被験対象の特定の疾患がないことが既知の対象由来の標準的もしくは平均プロファイル)と比較することができる。一例において、試験CNS試料の遺伝子発現プロファイルを、非CNS異常増殖の存在に関連する基準遺伝子発現プロファイルと比較する。試験遺伝子発現プロファイルが基準遺伝子発現プロファイルに一致する場合には、対象は非CNS異常増殖疾患を有するまたはそれを発症するリスクにあることを示す。
【0068】
本明細書に記載する方法はまた、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用する方法にも好適である。PCRを使用する方法は、RT−PCR(米国特許第4,683,202号)、リガーゼ連鎖反応(Barany, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:189−193,1991)、自己持続配列複製(3SR)(self−sustained sequence replication)(Guatelli et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:1874−1878, 1990)、転写増幅システム(Kwoh et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,86:1173−1177)、Qベータレプリカーゼ(Lizardi et al., BioTechnology,6:1197,1988)、ローリングサイクル複製(Lizardi et al.,米国特許第5,854,033号)または任意の他の核酸増幅方法を含み、当技術分野において既知の技法を使用する増幅分子の検出が続く。CNS試料において発現されたmRNAのPCR増幅は、試料から単離したmRNAから直接、あるいは、そのようなmRNAから逆転写されたcDNAから行なうことができる。次いで、増幅した核酸を関心対象の特定のプローブ、例えば、本明細書に記載するCNS遺伝子のプローブにハイブリダイゼーションしてその発現を判定することができる。プローブをアレイ、例えば、本明細書に記載するアレイのアドレスに配置することができる。このような方法は日常的であり、特にコンピュータ制御式試薬分注および信号検出を使用する自動システムへ日常的に適応することができる。例えば、Klein et al., Nat. Biotechnol. 20(4):387−92(2002)を参照されたい。
【0069】
別の実施形態においては、特定の遺伝子に対応するmRNAの存在またはレベルを検出するために、インサイチュー方法が使用される。このような方法では、CNS細胞または組織試料を調製/処理して、支持体、典型的にはガラススライドに固定し、次いでプローブ(例えば、本明細書に記載するCNS遺伝子のプローブ)と接触させることができる。
【0070】
さらに別の実施形態において、米国特許第5,695,937号に記載する遺伝子発現の連続分析を使用して、本明細書に記載するCNS遺伝子の転写物レベルを検出する。
【0071】
ポリペプチドを使用する方法
他の実施形態において、本明細書に記載する方法は、遺伝子がコードする遺伝子産物(ポリペプチド)遺伝子を検出するまたはポリペプチドの活性、例えば、酵素活性を検出する遺伝子発現を検出する技法を使用する。このような方法は、CNS細胞から、例えば、CSFに分泌されるポリペプチドをコードする遺伝子の発現を検出するのに特に有利である。
【0072】
種々の方法を使用してCNS遺伝子がコードするタンパク質のレベルを求めることができる。一般に、これらの方法は、(脳細胞試料またはCSF試料等の)CNS試料と関心対象のタンパク質に選択的に結合する抗体等の試薬を接触させるステップを含む。一実施形態において、抗体は検出可能な標識を有する。抗体はポリクローナル抗体、またはさらに好ましくはモノクローナルであり得る。無傷の抗体またはその断片(例えば、FabまたはF(ab’)2)を使用することができる。プローブまたは抗体に関して「標識した」という用語は、プローブまたは抗体に検出可能な物質を結合する(すなわち、物理的に結合する)ことによるプローブまたは抗体の直接的な標識化、および検出可能な物質との反応によるプローブまたは抗体の間接的な標識化を含むことが意図される。生体外および生体内においてCNS試料のCNS遺伝子産物を検出するために、そのような検出方法を使用することができる。
【0073】
生体外技法には、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫沈降法、免疫蛍光法、酵素免疫測定法(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ウェスタンブロット分析およびLuminex(商標)xMAP(商標)検出アッセイ等の免疫測定法が挙げられる。 標的分析物を標識抗体と固相支持体に固定した抗体の間に「サンドイッチ」する「サンドイッチ」タイプのアッセイである免疫測定法もある。アッセイは、固定した抗体に結合した抗原標識抗体複合体の存在および量を観察することによって読み取られる。
【0074】
本明細書に記載する方法に有用な別の免疫測定法は、「競合」タイプの免疫測定法であり、そこでは、固相表面に結合した抗体と、未知量の抗原分析物および同一種類の標識抗原を含有する試料(例えば、CSF試料)を接触させる。次いで、固相表面に結合した標識抗原の量を求め、試料中の抗原分析物の量の相対的な測定値を提供する。このような免疫測定法は、使用が便利であるように「ディップスティック」様式(例えば、フロースルーまたは移動式のディップスティック設計)で容易に実施される。ディップスティックを使用するアッセイは、任意で、陰性または陽性の内部対照を含む。数多くの種類のディップスティック免疫測定法が当技術分野において既知であり、例えば、米国特許第5,656,448号、第4,366,241号、および第4,770,853号に記載されている。他の実施形態において、抗体を使用するアッセイはアレイ様式で実施される。例えば、CNS試料を標識、例えば、ビオチン化し、次いで抗体、例えば、抗体アレイ上に位置付けられている抗体に接触させる。例えば、蛍光標識に結合したアビジンで試料を検出することができる。
【0075】
生体内技法は、例えば、検出対象の遺伝子産物に結合する標識抗体を対象(例えば、CSF)に導入するステップを含む。抗体は、例えば、対象における存在および位置を標準的なイメージング技法によって検出することができる放射性マーカーで標識することができる。
【0076】
特定のCNS遺伝子産物を検出するために使用されるポリクローナルおよびモノクローナル抗体は入手可能な場合もある。例えば、本明細書に記載するCNSマーカー遺伝子の多くの市販の抗体が存在する。または、当業者は、通常の技法を使用して診断アッセイに使用するのに好適な抗体を作製することができる。特定の標的を検出するためにポリクローナルおよびモノクローナル抗体を作製し、使用する方法は、例えば、Harlow et al., Using Antibodies:A Laboratory Manual:Portable Protocol I. Cold Spring Harbor Laboratory(December 1, 1998)において記述されている。改変された抗体および抗原結合性抗体断片(例えば、キメラ抗体、再構成抗体、ヒト化抗体またはそれらの断片、例えば、Fab’、Fab、F(ab’)2断片);または生合成抗体(例えば、1本鎖抗体、単一ドメイン抗体(DAB)、Fv、1本鎖Fv(scFv)等を作製する方法は当技術分野において既知であり、例えば、Zola, Monoclonal Antibodies:Preparation and Use of Monoclonal Antibodies and Engineered Antibody Derivatives, Springer, Verlag(December 15, 2000;第1版)に見出すことができる。
【0077】
CNS遺伝子発現のイメージング
一実施形態において、本明細書に記載する方法は、CNSにおける遺伝子発現を画像化する、例えば、遺伝子発現を非侵襲的に画像化する技法を使用する。例えば、血液脳関門(BBB)を越えて栄養物を輸送するために存在する担体輸送システム等の内因性BBB輸送システムを介して、標識プローブを脳に標的化することにより、標的遺伝子の発現を検出することができる標識プローブを、血液脳関門(BBB)を通じて脳内に送達することができる。同様に、受容体媒介性の経細胞輸送システムを作動して、インスリン、トランスフェリンまたはインスリン様成長因子等の循環ペプチドを、血液脳関門(BBB)を越えて輸送する。これらの内因性ペプチドは、「輸送ペプチド」または「分子的なトロイの木馬」として作用して本明細書に記載する標識診断プローブを、BBBを越えて通過させることができる。次いで、既知の脳イメージング技法によって標識を検出することができる。このような方法は、例えば、米国特許第6,372,250号に記載される。他の実施形態において、Shi et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97(26):14709−14(2000)、およびLee et al.,J.Nucl.Med. 43(7):948−56(2002)は、BBBを通過するためにアンチセンス放射性医薬品と薬物標的化技術を合わせて使用して生体内において脳における遺伝子発現を画像化することを記載している。
【0078】
標的遺伝子の発現を検出することができる標識プローブを脳内に送達する他の方法は、例えば、米国特許第5,720,720号に記載されている。この特許は、高流動微量注入により脳内に(遺伝子産物を画像化するための標識抗体等の)薬剤を送達する方法を記載している。
【0079】
生体液中のCNS遺伝子発現の変化の検出
CNSにおける遺伝子の活性化により、離れた部位、例えば、血液、尿または精液(すなわち、CSF以外の体液)等の体液における遺伝子産物の測定可能な変化を生ずることがある。例えば、大脳皮質、海馬、嗅内(entorrhinal)皮質、視床の一部、基底核、小脳、および網様体は自律神経系の出力に影響することが既知である(Kandel et al.,Principles of Neural Science、第3版、Appleton & Lange)。このような影響により、自律神経節または神経支配されている器官における遺伝子発現のmRNAまたはタンパク質レベルの測定可能な変化を生じ得る。この種の相互作用の一例は、末梢におけるサイトカイン放出による迷走神経活性化の免疫調節作用である(Tracy,Nature,420:853−9,2002)。
【0080】
加えて、一部の実施形態においては、CNSにおける遺伝子の活性化は、血中のCNSタンパク質レベル、すなわち、CNS組織に発現し、血流中に行き着くタンパク質を測定することにより検出することができる。例えば、CNSのニューロンは、視床下部、下垂体、副腎、性腺、または甲状腺軸等のいくつかの神経内分泌軸を介して血中へのホルモンの放出を誘発することができる(Besedovsky and del Rey, Endocr. Rev. 17:1−39,(1996))。脳の細胞外液は、くも膜絨毛を通過して脳から血液に、ならびにある種の脳神経(主に嗅神経)および脊髄神経根神経節を通ってリンパ液に排出される。脳または脳脊髄液の異なる領域に注射したタンパク質の最低14〜47%はリンパ液を通過する。したがって、CSFマーカーはリンパ液、血液または血清中に排出され、リンパ液、血液または血清中で検出することができる。血中に見られるこのようなマーカーは濃縮されてもよく、それによって血液成分の腎臓による選択的なろ過により尿中で検出可能になり得る。
【0081】
CNSは、自律神経系および内分泌系を介して精巣に関連している。脳内の遺伝子の活性の変化によって視床下部−下垂体−性腺軸の活動または精巣の神経支配が変更されると、このような変化は、精子等の精巣に関連する体液中で検出できると考えられる。例えば、脊髄損傷患者は、精子の組成が変化することが示されている(Naderi and Safarinejad, Clin. Endocrinol. 58(2):177−84(2003)参照)。
【0082】
日常的な方法を使用して、CNSにおける遺伝子発現の変化の結果である、末梢体液等の末梢組織における遺伝子産物を同定することができる。例えば、候補マーカー遺伝子を実験動物の脳において崩壊することができる。野生型動物(すなわち、候補マーカー遺伝子が崩壊されていない動物)と比較した、実験動物の末梢組織における候補遺伝子の発現の変化は、末梢組織における候補分子の発現がCNSにおける遺伝子発現の変化に関連していることを示す。
【0083】
一部の実施形態においては、血中に検出されるCNS遺伝子産物は、以下表1のに記載するものを含む。
【0084】
アレイ
本明細書に記載する方法は、当技術分野において既知の方法により、核酸またはタンパク質アレイ、例えば、核酸および/またはタンパク質「チップ」用に容易に適応させられる。典型的な実施形態において、アレイチップは、多数のCNS遺伝子の発現を検出するための多数のプローブ(例えば、DNAプローブおよび/または抗体プローブ)を含む。一実施形態において、特定のチップ上のプローブは、CNS試料を採取した対象に非CNS異常増殖が存在する場合には、各クラスターが特定の遺伝子発現プロファイルに関連する遺伝子の1つ以上の特定のパネルまたは「クラスター」のメンバーを検出するように選択される。チップは、固相平面支持体、例えば、ガラス、金属またはナイロン上の離れた所定の位置(アドレスまたは「スポット」)に固定(係留)された数十、数百または数千の個々のプローブを含むことができる。アレイはマクロアレイ、またはマイクロアレイであり得、その差はスポットのサイズである。マクロアレイは、直径約300ミクロン以上のスポットを有し、ゲルまたはブロットスキャナーを使用して画像化することができる。マイクロアレイは、直径300ミクロン未満、典型的には200ミクロン未満のスポットを有する。
【0085】
本明細書に記載する方法において遺伝子発現プロファイルを分析および比較するためには、核酸アレイは、本明細書内の表または図面に記載される少なくとも4つ、例えば、少なくとも10、20、40、60、80または100のCNS遺伝子の核酸プローブを使用して構築することができる。このようなアレイは対照プローブ(すなわち、陰性試料、例えば、非CNS疾患が認められない対象の試料において発現が影響を受けないことが予想される遺伝子のプローブ)を含み得る。典型的には、このような対照または「正常な」非疾病試料は健康なボランティアから得られる。健康なボランティアの長期経時研究を実施して、対照試料が、疾病を生じない個体由来のものであることを確認することができる。このような研究は、対照遺伝子発現プロファイルのデータベースの生データを提供する。 そのようなデータベースは、本方法に使用することができる正常または対照「基準」プロファイル源を提供する。対照試料はまた、診断対象の疾患に関連のない死因で死亡した個体(例えば、不慮の外傷で死亡した個体)の死後に得ることもできる。このような場合には、死後試料は死後できるだけ早く、例えば、死後3時間以内に採取するべきである。
【0086】
関心対象の組織、例えば、脳、脊髄またはCSF試料の総mRNAに相当する標識cDNA集団を、好適なハイブリダイゼーション条件下でDNAアレイと接触させる。例えば、固相支持体上の特定のアドレスにおける蛍光によって、cDNAとアレイの配列とのハイブリダイゼーションを検出する。このように、特定の対象または対象群のCNS試料における遺伝子発現パターンを表す蛍光パターンが得られる。これらの遺伝子発現パターンはデジタル化して、コンピュータ分析および比較のために電子的に保存することができる。例えば、アレイを使用して、試験対象の個体におけるCNS遺伝子の発現と、例えば、デジタルデータベースに電子的に保存されている1つ以上の基準遺伝子発現プロファイルを比較することができ、この場合、基準遺伝子発現プロファイルは末梢異常増殖または他の疾患の有(陽性対照)またはなし(陰性対照)に関連する。
【0087】
一部の実施形態において、cDNAが、アレイを作製するためのプローブとして使用される。好適なcDNAは、従来のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技法によって得ることができる。cDNAの長さは20〜2,000ヌクレオチド、例えば、100〜1,000ヌクレオチドであり得る。cDNAを作製するための当技術分野において既知の他の方法を使用することができる。例えば、クローニングした配列の逆転写を使用することができる(例えば、Sambrook et al., eds., Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989に記載されている)。cDNAプローブを好適な固相支持体(基板)、例えば、コーティングしたガラス顕微鏡スライドの特定の所定の位置(アドレス)に二次元格子状に配置または設置する(「プリントする」または「スポットする」)。少容量、例えば、5ナノリッターの濃縮DNA溶液を各スポットに使用する。スポッティングは、業者の取扱説明書に従い、市販のマイクロスポッティング装置(配列マシーンまたは格子形成ロボットと呼ばれる場合もある)により行なうことができる。DNAアレイを作製するための固相支持体および装置の市販業者には、BioRobotics Ltd., Cambridge, UK;Corning Science Products Division, Acton, MA;GENPAK Inc., Stony Brook, NY;SciMatrix, Inc., Durham, NC;およびTeleChem International, Sunnyvale, CAが挙げられる。
【0088】
cDNAは任意の好適な方法によって固相支持体に結合することができる。一般に、結合は共有結合である。DNA分子を固相支持体に共有結合するのに好適な方法には、アミノ架橋およびUV架橋が挙げられる。cDNAアレイの構築に関する手引きは、例えば、DeRisi et al., Nature Genetics 14:457−460(1996)、Khan et al., Electrophoresis 20:223−229(1999);Lockhart et al., Nature Biotechnol. 14:1675−1680(1996)を参照されたい。
【0089】
本明細書に記載される方法の一部の実施形態において、アレイの固定DNAプローブは合成オリゴヌクレオチドである。cDNAに関して本明細書に記載する技法を使用して、事前に作製したオリゴヌクレオチドをスポットして、DNAアレイを作製することができる。しかし、一般に、オリゴヌクレオチドは固相支持体上に直接合成される。オリゴヌクレオチドアレイを合成するための方法は、当技術分野において既知である。例えば、Fodor et al.,米国特許第5,744,305号を参照されたい。オリゴヌクレオチドの配列は、検出対象の特定の遺伝子の配列の一部を表す。一般に、オリゴヌクレオチドの長さは10〜50ヌクレオチド、例えば、15、20、25、30、35、40または45ヌクレオチドである。
【0090】
アプタマーアレイも本発明の方法に有用である。アプタマーは、ハイブリダイゼーションではなく、三次元配座に基づいて特定の標的分子に結合する核酸分子である。アプタマーは、例えば、オリゴヌクレオチドの最初の異種集団を合成し、次いで特定の標的分子にしっかりと結合するオリゴヌクレオチドを集団から選択することによって選択される。特定の標的分子に結合するアプタマーが同定されたら、生物学分野および他の分野において既知の種々の技法を使用して、例えば、クローニングおよびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、次いで転写によって複製することができる。標的分子は核酸、タンパク質、ペプチド、小有機または無機化合物および場合によっては、微生物全体であり得る。
【0091】
オリゴヌクレオチドの異種集団の合成およびその集団からのアプタマーの選択は、試験管内進化法(Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment)またはSELEXとして既知の手法を使用して実施することができる。SELEX方法は、例えば、Gold et al.,米国特許第5,270,163号および第5,567,588号、Fitzwater et al., Methods in Enzymology, 267:275−301(1996)、ならびにEllington and Szostak, Nature 346:818−22(1990)に記載されている。簡単に説明すると、異種DNAオリゴマー集団を合成して、アプタマーの生体外選択のための候補オリゴマーを提供する。この最初のDNAオリゴ集団は、長さ15〜100ヌクレオチドのランダム配列に長さ10〜50ヌクレオチドの一定の5’および3’配列が隣接しているセットである。一定領域はPCRプライマーハイブリダイゼーションの部位を提供し、一実施においてRNAポリメラーゼによる転写開始部位を提供し、RNAオリゴマーの集団を作製する。一定部位はまた、選択したアプタマーをクローニングするための制限部位も有する。一定領域の多数の例をアプタマー進化に使用することができる。例えば、Conrad et al., Methods in Enzymology, 267:336−83(1996)、Ciesiolka et al., Methods in Enzymology, 267:315−35(1996)、およびFitzwater,(1996)、前記参照。
【0092】
アプタマーは、一般に、5〜100サイクルの手法で選択される。各サイクルにおいて、オリゴマーは標的分子に結合され、それらが結合している標的を単離することによって精製し、標的から放出し、次いで20〜30世代のPCR増幅によって複製する。
【0093】
アプタマー選択は、生物学における機能の進化的選択に類似している。異種オリゴヌクレオチド集団に上記のアプタマー選択手法を実施することは、連続的に複製中の生物学的な集団に、機能についての10〜20の厳しい選択事象を実施することと類似しており、各選択は20〜30世代の複製分だけ離れている。
【0094】
異種性は、例えば、アプタマー選択手法の開始時にだけ導入し、複製過程全体には導入しない。または、異種性をアプタマー選択手法の後期段階に導入することができる。
【0095】
例えば、2’−フルオロ−リボヌクレオチドオリゴマー、NH2−置換およびOCH3−置換リボースアプタマーならびにデオキシリボーズアプタマーを含む種々のオリゴマーをアプタマー選択に使用することができる。RNAおよびDNA集団は、同様に、任意の種類の標的分子に結合するように構成されたアプタマーを提供することができる。Griffiths et al., EMBO J. 13:3245−60(1994)を参照されたい。
【0096】
2’−フルオロ−リボヌクレオチドオリゴマーの使用は、未置換のリボ−またはデオキシリボ−オリゴヌクレオチドで得られるものより10〜100倍結合親和性を増加すると考えられる。例えば、Pagratis et al., Nature Biotechnology 15(1):68−73(1997)を参照されたい。このような修飾塩基は追加の結合相互作用を提供し、アプタマーの二次構造の安定性を増す。これらの修飾はまたアプタマーをヌクレアーゼ耐性にし、これはシステムの実世界への適用に対する大きな利点である。例えば、上記のLin et al. Nuc. Acids Res. 22:5229−34(1994)、Pagratis,(1997)を参照されたい。
【0097】
本発明において、アプタマーは、CNSマーカー遺伝子に対応するmRNA、cDNAまたはタンパク質を検出するために使用することができる。
【0098】
本発明の一部の実施形態において、動物モデルCNS遺伝子のヒト相同物のプローブ(例えば、核酸プローブ、抗体またはアプタマー)を本発明の検出方法に使用する。他の実施形態において、検出に使用するプローブは遺伝子の高度に保存されている領域、例えば、相同マウスとヒト配列の間で高度に保存されている配列からなる。
【0099】
試料調製および分析
一般に、CNS細胞または組織のmRNAは、特定の遺伝子を表して作製されるcDNAの相対量が試料中のmRNAの相対量を反映するような条件下においてcDNAに逆転写される。比較ハイブリダイゼーション法は、関心対象の遺伝子の配列にハイブリダイゼーションする対応するcDNAの量によって示される、2つの組織試料中の種々の特定のmRNAの量を比較することを含む。
【0100】
cDNAを作製するために使用するmRNAは、一般に、他の細胞内容物および成分から単離される。mRNAを単離する有用な方法は2段階法である。第1の段階では、総RNAを単離する。第2の段階は、固相支持体、例えば、クロマトグラフィーカラムまたは磁気ビーズに結合したオリゴ(dT)分子にmRNAのポリ(A)テイルをハイブリダイゼーションすることに基づく。総RNA単離およびmRNA単離は当技術分野において既知であり、例えば、業者の取扱説明書により市販のキットを使用して実施することができる。同様に、単離したmRNAからのcDNAの合成は当技術分野において既知であり、業者の取扱説明書により市販のキットを使用して実施することができる。cDNAの蛍光標識化は、蛍光標識したデオキシヌクレオチド、例えば、Cy5−dUTPまたはCy3−dUTPをcDNA合成反応に加えることによって実施することができる。DNAアレイで分析するためのmRNAの単離および蛍光標識したcDNAの合成に関する手引きは、例えば、Ross et al.,Nature Genetics 24:227−235(2000)を参照されたい。
【0101】
DNAアレイのハイブリダイゼーションおよび洗浄、ハイブリダイゼーションの検出ならびにデータ分析の従来の技法は、必要以上の実験を行わないで新規方法に使用することができる。DNAアレイをスキャンし、データを分析するためのハードウェアおよびソフトウェアの市販業者には、Cartesian Technologies, Inc.(Irvine,CA)、GSI Lumonics(Watertown,MA)、Genetic Microsystems Inc.(Woburn,MA)、およびScanalytics, Inc.(Fairfax,VA)が挙げられる。
【0102】
他の実施形態において、1つ以上のCNS遺伝子の発現レベルは、アッセイ対象のCNS試料の細胞に存在するタンパク質の存在および/またはレベルに反映される。CNS試料中のタンパク質の存在またはレベルは通常の方法によって検出することができる。例えば、CNS試料(例えば、CSF試料)は、2次元(2D)PAGE等のゲル電気泳動技法によって分析することができる。タンパク質スポットが2D−PAGEゲルで分離されたら、例えば、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型法(MALDI−TOF)およびエレクトロスプレーイオン化(ESI)によって差次的に発現されるスポットを同定することができる。この方法をペプチド分析に使用して、試料中の特定のタンパク質のフィンガープリントを提供することもできる。
【0103】
第2のプロテオミクス方法は、質量分析法によってCSF試料等のCNS試料を直接分析することによってプロテオミクススペクトルを得ることに関係し得る。例えば、表面増強レーザー脱離イオン化飛行時間型(SELDI−TOF)分析を実施して、CNS試料のプロテオミクスパターンを作製することができる。SELDI−TOF分析は、正常者と疾病患者を識別するクラスターパターンを同定することができることが示されている。Paweletz et al., Dis. Markers, 17(4):301−7(2001)を参照されたい。
【0104】
発現プロファイルの生成
本明細書に記載する方法に使用する遺伝子発現プロファイルは2つ以上のCNS遺伝子またはタンパク質の発現パターンである。場合によっては、発現プロファイルは、5、10、25、50、100、200、500、またはそれ以上の遺伝子またはタンパク質の発現パターンであることができる。本明細書において使用する「基準遺伝子発現プロファイル」は2つ以上のCNS遺伝子の発現の特徴的なパターン(データセット)(例えば、上方制御または下方制御および/または発現のレベル)であり、この場合、発現のパターンは特定の疾患のリスクまたは存在に関連する(例えば、疾患が認められない人の発現レベルに対する特定の疾患に関連する発現レベルの比)。特徴的なプロファイルと特定の疾患の関連は、CNS遺伝子またはタンパク質の発現データを生成して分析し、CNS遺伝子またはタンパク質の発現の特定のパターン(例えば、陰性対照と比較したときの特定の遺伝子の遺伝子発現の相対的な増加および/または低下)と特定の臨床状態の関連を同定することによって求められる。例えば、基準遺伝子発現プロファイルは遺伝子のセット(本明細書において遺伝子の「パネル」または「クラスター」とも称される)のデータであり得、そこでは、セットの各遺伝子は、特定の末梢疾患または任意の末梢疾患に関連する場合には下方制御または上方制御される。
【0105】
基準プロファイルはパネルの2つ以上の遺伝子の遺伝子発現の値、例えば、相対値を含み得、そこでは、パネルの少なくとも1つの遺伝子は下方制御され、少なくとも1つの遺伝子は上方制御される。
【0106】
非CNS癌(または乳癌、肺癌または結腸癌等の特定の種類の非CNS癌)に関連する例示的な遺伝子発現プロファイルを図5A〜5I、11A、12、および21A〜23Cに示す。基準遺伝子発現プロファイルは、これらの図に示す遺伝子または遺伝子産物の少なくとも一部のデータを含み得る。例えば、肺癌に関連する基準遺伝子発現プロファイルは、図5A5I、11A、12、および21A〜23Cに癌のCNSマーカーとして記載する1、2、5、10、20、30、40、50またはそれ以上の遺伝子または遺伝子産物の差次的な発現の値を含むことができる。一部の実施形態においては、プロファイルは、図5Jおよび/または11Bに記載する遺伝子に対する値を含む。図5A〜Jは、マウスが肺、結腸、または乳癌細胞のいずれかを接種された後、18、72、または192時間経過時に、脳に差次的に発現される遺伝子の表である。図11A〜Bは、リアルタイムPCRにより差次的に発現されると確証された、肺癌細胞を注射したマウスの視床下部試料からのある遺伝子の表である。図12は、疾病行動として既知の行動状態に関与することが知られ、実施例2および3で使用される10Kオリゴヌクレオチドアレイに表されないが、癌細胞の接種後に脳に差次的に発現されることがわかっている、遺伝子の表である。図21A〜23Cは、各種類の癌に対する最有力候補遺伝子のリストである。
【0107】
基準プロファイルは、本明細書に記載する実施例1に例示するように、実験動物における非CNS疾病の存在に応答するCNSの遺伝子発現パターンの変化を検出し、実験試料においてあるパターンで差次的に発現される遺伝子および遺伝子クラスターのヒト相同物を同定することによって生成することができる。
【0108】
基準遺伝子発現プロファイルは、ヒトCNS遺伝子発現データを評価することによっても得ることができる。例えば、数十、数百または数千人のCNS遺伝子発現データを入手し、例えば、電子的、例えば、デジタル処理して保存されているデータベースを作成し、維持する。個体を追跡調査し、例えば、癌の臨床状態に関して比較的長期間にわたって(例えば、少なくとも5年、10年、15年、20年、30年、50年以上または生涯にわたって)評価することができる。例えば、CNS遺伝子発現データを入手してから5年、10年、15年、20年、30年または50年後に特定の疾病を発症した個体の発現プロファイルを、疾病が認められていない個体の発現プロファイルと比較する。1つの臨床タイプの疾患を発症した個体と別の臨床タイプの疾患を発症した個体間、または早い年齢において疾病を発症した個体と遅い年齢で疾病を発症した個体間の同様の比較を実施する。これらの分析は、異なる病期の疾病、例えば、異なる病期の異常増殖または異なる種類の腫瘍に関連する特定の基準CNS遺伝子発現プロファイルを提供する。「対照遺伝子発現プロファイル」は、健康(正常)個体または動物モデルにおける所定のセットの遺伝子のプロファイルである。
【0109】
基準および対照遺伝子発現プロファイルは、典型的には、電子デジタル形式、例えば、CD、ディスク、DVD、ハードドライブ、コンピュータメモリまたはメモリカード等のコンピュータが読み取り可能な媒体に保存され、また対象の性別、疾患の種類および病期、年齢群ならびに人種等の識別情報を伴う。
【0110】
「対象遺伝子発現プロファイル」は、癌の存在について被験対象のCNS試料から得られる。まず、本明細書に記載するように、脳針生検(脳細胞試料)または腰椎穿刺(CSF)等の通常の手段によってCNS試料、例えば、脳細胞試料またはCSF試料を対象から得る。次いで、遺伝子またはタンパク質発現を検出する方法、例えば、本明細書に記載する遺伝子またはタンパク質発現を検出する任意の方法に使用するために試料を調製する。一実施形態において、総RNAを試料から調製し、本明細書に記載する核酸アレイアッセイに使用するためのcDNAに逆転写することができる。別の実施形態において、本明細書に記載する抗体アッセイに使用するために総タンパク質を試料から調製する。次いで、調製した試料を、試験試料を比較する1つ以上の特定基準遺伝子発現プロファイルのCNS遺伝子または遺伝子産物のクラスターまたはパネルに対応するCNS遺伝子または遺伝子産物の少なくとも1つのクラスターまたはパネルの発現レベル(または抗体アレイの場合にはタンパク質レベル)を検出することができるアレイ(例えば、抗体または核酸アレイ)と接触させることができる。例えば、対象から調製したCNS試料を、本明細書、例えば、図面5A〜5I、11A、12、および21A〜23Cに示す遺伝子の2つ以上、例えば、2〜150、10〜50または20〜30の抗体プローブを含有する核酸プローブまたは抗体アレイを含有する核酸アレイと接触させることができる。一部の実施形態において、アレイは5A〜5I、11A、12、および21A〜23Cのいずれかに開示する特定のクラスターのマーカー遺伝子の各々のプローブを含有することができる。一部の実施形態においては、アレイは、図5Jおよび/または11Bにおける1つ以上のマーカー遺伝子のプローブも含む。
【0111】
アレイアッセイの結果は、アレイ上の各位置(各プローブ)についての蛍光検出および結合した抗体またはハイブリダイゼーションした核酸の測定等の通常の技法によって得られる。次いで、アレイ上の各抗体またはプローブによってCNS試料中で検出される各ポリペプチドまたは遺伝子のレベルの値のデータセットを生成することができる。データセットは、患者の識別子および検出される発現またはタンパク質の実際のレベルおよび/または相対的なレベル等の情報を含むことができる。このようなデータセットを対象発現プロファイルとして直接使用してもまたは基準プロファイルの様式に匹敵する様式にデータセットを変換することができる。
【0112】
対象遺伝子発現プロファイルが生成されたら、本明細書に記載するように対象プロファイルを基準発現プロファイルと比較することができる。
【0113】
発現プロファイルの分析
新規方法およびシステムにより、試験対象の発現プロファイルを、特定の疾患の存在に関連する基準遺伝子発現プロファイルおよび/または特定の非CNS疾患が認められないことに関連する対照(「正常」)遺伝子発現プロファイルと比較することによって試験対象を評価することができる。多数のボランティアにおけるCNS遺伝子発現の長期経時研究を実施して、疾病を発症しない個体に関連する対照発現プロファイルまたは疾病を発症する個体の基準プロファイルを同定し、確認する。このような研究は、本発明の方法に使用することができる陰性および陽性対照発現プロファイルのデータベースの生データを提供する。
【0114】
「対象」および「基準」プロファイルは、本明細書に記載する方法により得ることができる。一実施形態において、該方法は、対象から(医療提供者または他者から直接または間接的に)CNS試料を得るステップと、試料から発現プロファイルを生成するステップと、対象の発現プロファイルを1つ以上の対照および/または基準プロファイルと比較するステップ、および/または対象のプロファイルと最も類似した基準プロファイルを選択するステップと、を含む。
【0115】
他の検出方法の場合と同様に、プロファイルに基づいたアッセイは症状の発症前(この場合には診断である)、治療前(この場合には予後である)または治療経過中(この場合にはモニタとして作用する)に実施することができる。
【0116】
種々の通常の統計学的手段を使用して、2つの発現プロファイルを比較することができる。考えられる1つの測定基準は、2つのプロファイル間の差である距離ベクトルである。対象および基準プロファイルの各々は多次元ベクトルとして表され、各次元はプロファイルの値、例えばパネルの特定の遺伝子の発現の値である。対象プロファイルおよび基準または対照プロファイルは、2つのプロファイルが上記の「一致」の条件を満たす場合、「一致」するとされる。対象および基準プロファイルが一致する場合には、対象は、基準プロファイルが関連する末梢疾患を有すると同定することができる。対象および正常対照プロファイルが一致する場合には、対象に末梢疾患は認められないと考えられる。
【0117】
一実施形態において、パターン認識ソフトウェアを使用して、マッチングプロファイルを同定する。信号対ノイズ比、相関分析、およびANOVAのような、一変量の伝統的な統計手法(Golub et al. Science 286:531−7(1999), van’t Veer et al. Nature 415:530−6(2002), Pavlidis, P. Methods 31:282−9(2003))、またはGenes@Workソフトウェアパッケージ(IBM Corp.)に実装されるSPLASH(tructural attern ocalization nalysis by equential istograms)アルゴリズムのような、特定の多変量技法(Lepre, et al. Bioinformatics 20:1033−44(2004))を使用して、これらのプロファイルを得ることができる。
【0118】
別の一実施形態において、遺伝子発現プロファイルは、最近傍分類子を適用することによる定量パターン比較によって解析される。最近傍分類子に基づいて、順列由来の分布と共に、基準遺伝子発現パターンによって規定されるクラスに属する各対象プロファイルの確立を推定するために使用することができるスコアを規定する(Jelinek(2003)、前記参照)。
【0119】
対象、医療提供者または関心を有する他の当事者に紙または電子形態で伝達することができる診断試験の結果は、対象の発現プロファイル自体、対象の発現プロファイルを別のプロファイルと比較した結果またはこれらのいずれかの記述子であることが可能である。伝達は、コンピュータネットワークで(例えば、搬送波に組み込まれたコンピュータデータ信号等のコンピュータ伝送の形態で)実施することができる。 新規システムはまた、以下のステップを実行するための実行可能なコードを有する(CD、ディスク、またはハードドライブ等の)コンピュータが読み取り可能な媒体を含む。対象の発現プロファイルを受信するステップ、基準発現プロファイルのデータベースにアクセスするステップ、およびi)対象の発現プロファイルに最も類似した一致基準プロファイルを選択するステップ、またはii)対象の発現プロファイルと少なくとも1つの基準プロファイルの類似性に対する、少なくとも1つの比較スコアを決定するステップのいずれか。対象の発現プロファイルおよび基準発現プロファイルは各々、同定された遺伝子もしくは遺伝子産物の1つ以上の発現レベルまたはそれらがコードするタンパク質のレベルを示す値を含む。
【0120】
予測医療
本明細書に記載する方法は、一般に予測医療分野において有用であり、さらに具体的には、診断および予後アッセイ、異常増殖の進行のモニタリング、または例えば、臨床試験における治療に対する応答のモニタリングに有用である。例えば、異常増殖の他の、例えば臨床徴候がない状態で、対象が超早期異常増殖を有するかどうかを判定することができる。本発明の方法は、例えば、癌を除去するための手術または治療を受けたことがある患者に特に有用であり、この場合には、本発明の方法は再発もしくは転移をモニタするために使用することができると思われ、本発明の方法は、例えば、環境的要因により癌の発生頻度が高い地域に生活している人または疾病(例えば、糖尿病、喘息または癌)の家族歴を有する個体または疾病感受性遺伝子、例えば、癌感受性遺伝子(例えば、BRCA1またはBRCA2、hMSH2、MLH1、MSH2またはMSH6)の保有者である個体に特に有用である。 他の癌感受性遺伝子は、The Genetic Basis of Human Cancer, 2nd edition(Vogelstein and Kinzler, Eds.), McGraw−Hill Professional(2002)に記載される。このような個体は、本明細書に記載する方法を使用して評価することができる。
【0121】
例えば、場合によっては、疾病を発症するリスクが高い場合(例えば、個体が癌の強い家族歴を有する場合、または個体が癌感受性遺伝子を保有するもしくは癌のリスクが高い地域で生活している場合)には、個体は生涯にわたって定期的(例えば、10年ごと、5年ごとまたは毎年)評価され得る。
【0122】
非CNS疾患を診断するシステム
対象における非中枢神経系(非CNS)疾患を診断するためのシステムは、以下の要素を含むことができる。CNS試料を得るためのサンプリング装置、遺伝子発現検出装置、基準遺伝子発現プロファイル、およびCNS試料中の1つ以上の遺伝子の遺伝子発現を基準遺伝子発現プロファイルと比較するための手段(例えば、比較器)。
【0123】
サンプリング装置は、低侵襲的技法、例えば、脳外科的手術によってCNS試料を獲得する。低侵襲性脳外科的技法には、他の技法の中でも、コンピュータ支援式定位固定、術中超音波、脳マッピングおよび神経内視鏡が挙げられる。定位固定は、外部基準目印および神経構造を表示するイメージング技法を用いて脳内の任意の領域にナビゲートする(navigating)システムを指す。
【0124】
または、「試料」は、実際の試料を採取するのではなく、例えば、脳における遺伝子発現を画像化することによって取得することができる。脳のイメージングは、他の方法の中でも、コンピュータ断層スキャン(CT)、磁気共鳴イメージング(MRI)またはポジトロン放出断層撮影(PET)によって実施することができる。これらの方法由来の信号は、脳内の任意の標的地点までの軌道および深さをコンピュータが算出して提供することができる基準点を提供する。Cosman−Roberts−Wells(CRW)システムを含む最新の定位固定システムをMRIおよび脳の血管造営位置に使用することができる。術中超音波は単独で使用、または定位固定と併用使用することができる。術中小音波を使用して、硬膜切開前に脳室等の組織を同定することができる。超音波プローブを使用して、深部病変の針生検を先導し、CNS試料を獲得することもできる。剛性および可撓性の光ファイバー内視鏡を使用して、低侵襲的技法を使用して脳試料を得ることができる。レーザーおよび(生検器具を含む)種々の他の器具を取り付けて使用することができる。腰椎穿刺によって脳脊髄液を得るサンプリング装置も上記に記載するイメージング方法のいずれかによって先導することができる。
【0125】
遺伝子発現検出装置は、核酸を使用する方法、アレイならびに試料調製および分析の副題で本明細書に記載するものを含む。比較器は、本明細書に記載するパターン認識ソフトウェアを搭載したコンピュータであり得る。
【0126】
コンピュータが読み取り可能な媒体
別の態様において、新規システムは、複数のデジタルコード化されたデータレコードまたはデータセットを有するコンピュータが読み取り可能な媒体を特徴とする。データレコードまたはデータセットは各々CNS遺伝子発現レベルを示す値および試料の記述子を含む。記述子は、例えば、識別子(例えば、試料を入手する患者の識別子、例えば、復号表にアクセスする者によってのみ患者の情報に対応させることができる名前または参照コード)、発現レベルがあるレベルに到達しているまたはあるレベル以下に低下している事象において下される診断または実施される治療であり得る。データレコードは、関連する遺伝子の発現レベルを示す値も含み得る(例えば、データレコードは遺伝子「クラスター」の複数の遺伝子の各々の値を含んでもよく、この場合、クラスターの遺伝子の特定の基準遺伝子発現は非CNS疾患に関連する)。データレコードはまた、対照遺伝子(例えば、発現が対照試料において変化されないまたは発現が診断上非CNS疾患に関連がない遺伝子)の値を含む。データレコードは、例えば、表((例えばオラクル(Oracle)またはサイベース(Sybase)データベース環境のSQLデータベースなどの)関係型データベースのようなデータベースの一部である表)や、リストなど、多様な方法で構造化することができる。
【0127】
他の種からの相同配列の単離
本明細書に記載する方法に有用な遺伝子のヒト相同物は、図5A〜5I、11A、12、および21A〜23Cに記載され、GenBankおよびインターネットで利用可能な他の公共のデータベースに見られる。
【0128】
CNSマーカー遺伝子およびそれらの産物のヒト相同物(例えば、ヒト以外の実験動物における実験によって同定されるCNSマーカー遺伝子のヒト相同物)は、本明細書に記載する方法の種々の実施形態に有用である。本明細書に提供されるCNSマーカー遺伝子のほとんどのヒト相同物は既知である。ヒト相同物が同定されていない場合では、いくつかの標準的な方法を使用してこのような遺伝子を同定することができる。これらの方法には、マウスマーカー遺伝子核酸配列によるヒトライブラリーの低緊縮度ハイブリダイゼーションスクリーン、マウスマーカー遺伝子由来の縮重オリゴヌクレオチドでプライミングしたヒトDNA配列のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、二重ハイブリッドスクリーン、および相同配列のデータベーススクリーンが挙げられる。
【0129】
化学療法剤
一実施形態において、本明細書に記載する方法は、例えば、新生物が生じる前、新生物が臨床的に検出可能になる前および/または腫瘍が悪性になる前に早期段階に対象における非CNS異常増殖の存在を同定または診断することができる。したがって、本明細書に記載する方法によって検出される新生物は、一般に腫瘍細胞を標的とする、または特に特定の腫瘍細胞を標的とする薬剤による治療を受けることができる。一実施形態において、対象を化学療法剤で治療することができる。本明細書において使用する化学療法剤は、異常増殖の治療に使用される化学治療剤または化学治療薬を意味する。抗癌作用を発揮するという意味において、他の化合物を形式上化学療法剤として記述することができるが、簡単にするためにこの用語を使用する。数多くの例示的な化学療法剤を以下に記載する。
【0130】
好適な化学療法剤には、抗チューブリン/抗微小管薬、例えば、パクリタキセル、タキソール、タモキシフェン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、タキソテール;トポイソメラーゼI阻害剤、例えば、トポテカン、カンプトテシン、ドキソルビシン、エトポシド、ミトキサントロン、ダウノルビシン、イダルビシン、テニポシド、アムサクリン、エピルビシン、マーバロン(merbarone)、塩酸ピロキサントロン(piroxantrone);代謝拮抗剤、例えば、5−フルオロウラシル(5−FU)、メトトレキセート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、リン酸フルダラビン、シタラビン/Ara−C、トリメトレキセート、ゲムシタビン、アシビシン(acivicin)、アラノシン、ピラゾフリン、N−ホスホルアセチル−L−アスパレート=PALA、ペントスタチン、5−アザシチジン、5−アザ2’−デオキシシチジン、アラ−A、クラドリビン、5−フルオロウリジン、FUDR、チアゾフリン、N−[5−[N−(3,4−ジヒドロ−2−メチル−4−オキソキナゾリン−6−イルメチル)−N−メチルアミノ]−2−テノイル]−L−グルタミン酸;アルキル化剤、例えば、シスプラチン、カルボプラチン、マイトマイシンC、BCNU=カルムスチン、メルファラン、チオテパ、ブスルファン、クロラムブシル、プリカマイシン、デカルバジン、リン酸イホスファミド、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、ウラシルマスタードおよびピポブロマン、4−イポメアノール;エストロゲン調節剤、例えば、ラロキシフェン;ピロキシカム;9−シスレチノイン酸が挙げられる。
【0131】
選択した化学療法剤の好適な用量は、当業者に既知である。例えば、薬剤がドキソルビシンである場合には、好適な用量は、患者の皮膚表面積あたり30mg/mを含んでもよく、1週間間隔で2回静脈内投与される。しかし、当業者は、投与経路、投与回数、投与時期および用量を適宜容易に調節することができる。これらの点を考慮すると、一般的に、所定の化学療法剤の好適な用量は、10mg/mから約500mg/mであり、さらに好ましくは、患者の皮膚表面積あたり50mg/mから約250mg/mである(平均的な体格の成人の皮膚表面は、約1.8mである)。このような用量は、選択した特定の薬物または薬剤に応じて調節することができるが、例えば、静脈内、皮内、直接部位注射、腹腔内、経鼻的等を含む任意の好適な経路によって投与することができる。投与は適宜反復することができる。
【0132】
一実施形態において、本明細書に記載する方法は、新生物が生じる前、新生物が臨床的に検出可能になる前および/または腫瘍が悪性になる前に早期段階に対象における非CNS異常増殖の存在を同定または診断することができるので、化学療法剤の用量は、新生物、例えば、癌が、腫瘍塊の可視化または触診等の臨床方法によって検出または診断された後に典型的に使用される用量より少なくてもよい。
【0133】
治療標的のスクリーニング
非CNS癌のCNSマーカー遺伝子、例えば、本明細書に記載するCNSマーカー遺伝子は、癌の存在を「感知する」だけでなく、応答、例えば、抗腫瘍応答を形成することによって癌の存在への応答に活発に関与することができる。または、CNSマーカー遺伝子は、癌の進行を促進することによって、例えば、新生物の増殖を誘発するまたは新生物の悪性転換を促進することによって非CNS癌の存在に応答し得る。治療方法として、CNSにおいて前者の種類の遺伝子の発現または活性を促進するおよび/または後者の種類の遺伝子の活性の発現を阻害することが望まれると考えられる。したがって、CNSマーカー遺伝子が特定の癌を抑制または促進する応答を形成するかどうかにかかわらず、その同定は癌の進行を阻害する標的を提供し得る。
【0134】
治療標的であるとも考えられるこのようなCNSマーカー遺伝子を同定する方法は、阻害応答を示さない動物と比較して、疾病に対する阻害応答を示す動物において差次的に発現されるCNS遺伝子を同定することである。例えば、実験動物には、インターロイキン(IL)、例えば、IL−12を発現する腫瘍誘発細胞(例えば、CT26等の結腸癌細胞)を注射することができる。IL−12を発現するように遺伝子操作された腫瘍細胞の注射は、Th1免疫介在性腫瘍拒絶を誘発することが知られている(Adris et al., Cancer Res. 60(23):6696−703(2000))。対照マウスには、IL−12を発現しない腫瘍細胞を注射することができる。注射後の様々な経過時点において、CNSの遺伝子発現は、本明細書に記載されているように、例えば、マイクロアレイ分析により動物において分析される。このように、動物のCNS(例えば、脳)において具体的に「スイッチオン」および「スイッチオフ」する遺伝子を同定することができる。これらの遺伝子には、ILの存在に応答するものがある。他は、抗腫瘍免疫応答の「刺激」に活発に関与する遺伝子に対応する。この方法は、抗腫瘍免疫応答の刺激に関与することができる任意のインターロイキン遺伝子に使用することができる。抗腫瘍応答を「刺激する」ことに活発に関与する脳遺伝子の同定は、例えば、遺伝子もしくは遺伝産物を直接使用することによって、またはそれらの活性を遮断もしくは刺激する薬剤をスクリーニングすることによって治療的介入の標的を提供する。
【0135】
治療標的であると考えられるCNS遺伝子を同定する第2の方法は、特定の遺伝子に脳特異的欠損(例えば、ノックアウト)を有する遺伝子組換え動物(例えば、ノックアウトマウス)を使用することによる。多大な数のCNS特異的ノックアウトマウスが現在当業者に利用可能であり(例えば、Jackson Laboratoryウェブサイト、神経生物学に使用する数多くのJAX(登録商標)マウスモデルを記載している)、さらに多くのものが日常的に利用可能になることが予想され得る。非CNS疾病に対するCNS応答の役割は、(例えば、癌、RA、喘息または肥満について本明細書に記載するように)ノックアウトマウスに疾患を誘発し、疾病の結果を評価することによって、脳ノックアウト動物を入手または作製することができる任意の特定の遺伝子について確立することができる。
【0136】
治療標的でもあると考えられるCNSマーカー遺伝子および遺伝子産物は、図5A〜5I、11A、12、および21A〜23Cに記載される。これらの遺伝子は細胞信号伝達に関与する分子(例えば、成長因子、ホルモン、サイトカインおよびそれらの受容体)であるか、またはそれらをコードし、検討した腫瘍の各々において差次的に発現されるマーカーでもある。
【0137】
ワクチン
本明細書に記載する方法はまた、予防的なワクチンの標的を提供する。疾病を「感知する」脳遺伝子セットは、既知または未知リガンドの受容体を含み得る。疾病細胞は、脳由来の抗疾病応答の誘発を阻害するこのようなリガンドを産生する可能性がある。このような例では、抗疾病応答に関与するCNS遺伝子を同定することにより、脳において疾病応答を阻害するように影響する可能性のある疾病細胞によって分泌される遺伝子産物を同定することができる。これらの産物を標的とする遺伝子ワクチンは実行可能な治療法になると考えられる。
【0138】
非CNS疾患を治療する際の予防的なワクチン接種のためのCNS標的を同定する一方法は以下の通りである。実験腫瘍モデルにおいて抗疾病応答、例えば、腫瘍の場合には、IL−12媒介性抗腫瘍応答を示す動物から(本明細書に上記するもの等の技術を使用して)CNS遺伝子発現プロファイルを得るステップ。腫瘍を「感知する」遺伝子のクラスターから、IL−12の存在下において、それらの発現レベルを変化させるものがあることが予想される。この遺伝子のサブセットは、抗腫瘍応答の「生成」に関与するものである可能性がある。この遺伝子のサブセットは予測可能な調節因子を有する可能性がある。例えば、IL−12の存在下において非CNS遺伝子に応答して発現プロファイルを変化するCNS遺伝子が受容体である場合には、このような受容体の遺伝子発現の変化はそのリガンドによって引き起こされる可能性があることを予想することができると考えられる。したがって、予防的な遺伝子ワクチンは、このようなリガンドに対するメモリー応答を形成するように設計することができると考えられる。
【0139】
第2の実験方法は、腫瘍細胞の非腫瘍形成投与(例えば、異常増殖が生体内に存在するが、新生物はまだ形成されていない状態)に応答して活性を変化するCNS遺伝子を同定することに関係し得る。上記に説明するように、このサブセットのCNS遺伝子から活性の変化を生ずる調節遺伝子を予測することができる。腫瘍細胞由来となり得るこのような調節遺伝子は、末梢生体における最初の腫瘍由来のアラーム信号となる可能性がある。したがって、予防的な遺伝子ワクチンは、このような遺伝子にメモリー応答を形成するように設計することができると考えられる。
【0140】
ワクチンは、例えば、標的対象の遺伝子に対応するポリペプチドまたは核酸であり得る。本明細書に記載するワクチンは、水、生理食塩水、Tris−EDTA(TE)緩衝液等の生理学的に適応可能な溶液またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて個体に投与または接種することができる。それらはまた、取り込みを促進するまたは接種部位に免疫系細胞を招集する能力を有する物質(例えば、促進剤およびアジュバント)の存在下で投与することができる。ワクチンは多数の投与様式および投与経路を有する。それらは皮内(ID)、筋肉内(IM)で投与することができ、どちからの経路によって、それらは針注射、遺伝子銃または無針ジェット注射によって投与することができる(例えば、Biojector(商標)、Bioject Inc., Portland,OR)。他の投与様式には、経口、静脈内、腹腔内、肺内、硝子体内および皮下接種が挙げられる。局所接種も可能であり、粘膜ワクチンと称することができる。これらには、例えば、鼻腔内、眼球、口腔、膣または直腸局所経路が挙げられる。これらの局所経路による送達は点鼻剤、点眼剤、吸入剤、坐剤またはミクロスフェアによるものであることが可能である。
【0141】
以下の実施例は例示的にすぎず、限定する意図はない。
【0142】
実施例
実施例1:癌に関連するCNS発現プロファイル予備研究
脳が、末梢における初期の腫瘍増殖の感知することができるかどうかを確立するために、ルイス肺、CT−26結腸、および4T1乳房の発癌性細胞が同種マウスに注射され、異なる脳領域におけるトランスクリプトームが評価された。内部環境の監視における機能的関連性により、視床下部が選択され、連合領域であるために前前頭皮質が、また恒常性の基本パラメータの調節の役割により中脳が、選択された。
【0143】
生体内研究−腫瘍モデル
CT−26.WT結腸癌およびLL/2(LLC1)肺癌をDMEM中で増殖し、4T1乳房癌細胞を、加湿チャンバおよび5%CO中で、10%FBSおよび抗生物質を含むRPMI中で増殖させた。American Type Culture Collection(ATCC,Manassas,VA)から、全ての細胞を得た。食餌および水は随時摂取させて、ケージあたり5匹の動物を入れ、HEPAフィルター付きエアーラック(Tecniplast,Italy)で飼育した8週齢のマウスに、悪性細胞を皮下注射した。雄Balb/Cマウスに、300μlのPBS中の1×10のCT−26.WT細胞を注射し、雌Balb/Cマウスは、第1および第2の乳腺間に100μlのPBS中の1×10の4T−1細胞を受け、C57BL/6雄マウスに、300μlのPBS中の1×10のLL/2(LLC1)細胞を注射した。
【0144】
明白な対照細胞がない場合は、シャム対照マウスに対応する容量のPBSを注射した。正常細胞の注射は、不適切な部位に注射されると死に、最終的にアノイキスによる死の信号を送るため、信頼できる対照とはみなされなかった。したがって、各異なる腫瘍の種類が、他の腫瘍の種類に対する対照となった。
【0145】
対応する経過時点(18、72、または192時間)において、マウスを頸部脱臼により犠牲にし、視床下部、前前頭皮質、および中脳領域を切開した。同時に、肝臓を取り出した。領域は全て速やかにドライアイスで凍結し、RNA抽出時まで−80℃で保存した。
【0146】
米国国立衛生研究所(National Institute of Health)の実験動物の使用に関する規則の規定および基準に従い、全ての動物処置を実行した。Institute Leloirの倫理委員会により、動物実験は承認された。
【0147】
マイクロアレイ研究
TRIzol試薬(Invitrogen,Carlsbad,CA)を使用して、総RNAを抽出した。MicroPoly(A)Pureキット(Ambion,Austin,Texas)を使用して、総RNAからポリA+RNAを得た。オリゴdTプライマーおよびランダムプライマーによって、両方ともaa−dUTP(Sigma Co., St Louis, MO)の存在下で、Superscript II RT(Invitrogen)を使用して、RNAを逆転写した。cDNAをエタノール沈殿し、4.5μlの0.1MNaHCO(pH9.0)に再懸濁し、4.5μlの染料(Cy3またはCy5)と混合し、DMSO(Amersham Pharmacia, Sweden)に再懸濁し、室温において暗所で1時間インキュベーションした。製造業者の使用説明書に従い、以下の変更を加えて、SNAP Gel Purification Kit(Invitrogen)を使用して、プローブを精製した。最初のステップ:500μlのローディング緩衝液(70%イソプロパノール中の2.25M グアニジンHCl)を試料に添加し、試料を、SNAPカラムに置き、第1の遠心分離前に4分間インキュベーションした。Virtek Chipreader Arrayer(Virtek Vision International Inc. Ontario, Canada)を使用して、50−merのマウス10K Oligo Set(MWG, Germany)を、UltraGAPSスライド(Corning,Acton,MA)上にプリントした。プリントされたスライドを2X SSC、0.1%SDS、1%BSA中において、42℃でプレハイブリダイゼーションを行なった。標識プローブを、30%ホルムアミドを含むハイブリダイゼーション緩衝液と混合し、42℃で終夜ハイブリダイゼーションを行なった。
【0148】
データ取得および画像処理
分解10μm、ピクセルの深さ16ビットで、Chip−Reader(Bio−Rad,Hercules,CA)でスライドをスキャンし、VersArray(商標) Analyzerソフトウェア v4.5(BioRad)で画像を分析した。
【0149】
データフィルタリングおよび正規化
データ処理は全て、R System v2.2.1(ワールドワイドウェブ上のr−project.orgで入手可能な、R Project for Statistical Computing)下で実行した。ダスト由来データポイント(75ピクセル未満のサイズのスポットまたは80%未満の平均から中央値の相関のスポット(Tran et al., Nucleic Acids Res. 30(12):e54(2002))、飽和データポイント(20%を上回る飽和ピクセルの割合のスポット)、および低信号データポイント(1.2未満の信号対バックグラウンド比のスポット)を排除するために、データをフィルタリングした。3D正規化方法により、強度および空間関連バイアスを同時に補正した。簡潔に述べると、スポットi(M=log/G)のスポット強度の比を、非線形回帰の残余に置き換え、M=f(x,y,A)であり、(x,y)は、スライドにおけるスポットiの位置であり、Aは、平均スポット強度、すなわち、A=1/2・log/Gである。Rシステムのloess関数を用いて、局所的に重み付けした3D多項式表面回帰を実行した。
【0150】
反復したスライド間のデータ統合および発現セット生成
染料交換(技術的)反復からのM値を、それらの品質スコア(QC)で重み付けし平均化した。QCを、(0,1]の範囲になるようにスケーリングされたスポット周囲に対するスポット面積の比として画定した。各試料が同一の中央絶対偏差を有するように、得られる発現セットをスケール正規化した(Smyth and Speed, Methods 31(4):265−73(2003))。
【0151】
結果
癌細胞接種は、これらの研究の必要条件である、100%のマウスに腫瘍増殖をもたらした。少量の転写物の損失を誘発する可能性があるRNA試料の増幅を防止するために、および技術上の変動に対して制御するために、15匹のマウスプールから、それぞれの生物学的反復を得た。対照マウスには、ビヒクルのみを注射した。実験の開始後18、72、および192時間経過時に、マウスを犠牲にし、プリントされた10Kオリゴヌクレオチドアレイ上の反復染料交換設計を使用して、脳の転写プロファイルを分析した(実験設計の理論的根拠に関しては、以下の実験方法を参照)。
【0152】
複数の分散分析(ANOVA)テストを実行し、各経過時点に対して1つのテストであった。その早期段階における増殖する癌等の慢性刺激から予想される通り、それらのそれぞれの対照と比較される、悪性細胞を注射したマウス間の転写物レベルは、中程度の振幅の変化を呈した(最大で200%)。図1は、3つの実験モデル(肺、乳房、および結腸)の結果を示す。各実験モデルに対して、3つの異なる経過時点(18、72、および192時間)において、視床下部、前前頭皮質、および中脳から試料を採取した。各経過時点における各試料を有する各癌モデルに対して、ANOVAテストを実行した。図1は、ANOVAテストを使用して差次的に発現されることがわかった遺伝子の数、上方制御された差次的に発現される遺伝子の割合、差次的に発現される遺伝子の平均倍率変化、および倍率変化データの第5および第95パーセンタイル値を示す。図1からわかるように、192時間経過時において結腸癌モデルマウスの中脳に発現した遺伝子は、発現レベルにおいて最大で200%の変化(第95パーセンタイル値)を示した。
【0153】
興味深いことに、睡眠と覚醒との間の認識機能障害および皮質変化に続く海馬の変化等の、非急性状態に暴露されるマウスの脳に実行されたトランスクリプトーム分析において、転写物レベルの中程度の変化も見られた(Cirelli et al., Neuron 41(1):35−43(2004); Blalock et al., J. Neurosci. 23(9):3807−19(2003))。
【0154】
転写物の変化は、肺癌細胞を注射したマウスの視床下部において、最も多くの差次的に発現される遺伝子が見られたことを示す(図1)。加えて、結腸癌モデルにおいて、差次的に発現される遺伝子の数が、3つの経過時点において均等に分布したのに対して、肺および乳癌モデルにおいては、18時間経過時において最も多くの差次的に発現される遺伝子を示した(図1)。
【0155】
生物学的反復試料の標準誤差により、各データセットの品質を評価し、異なる癌モデルに対するlog10標準誤差(ASE)の絶対値の密度分布およびそれらの中央値をグラフにした。生物学的反復にわたって各遺伝子に対するASEを計算した。異なるデータセットの品質の差は見られず、脳領域と癌モデルとの間の認められた差は、システム生物学を反映することを示す(図2A〜図2D)。結果は、異なるデータセットの品質の差がなかったことを示す。したがって、異なる脳領域において同定される、異なる量の差次的に発現される遺伝子は、人為的な結果であるのではなく、腫瘍の存在を感知する異なる脳領域の能力を反映する。
【0156】
総合すると、これらの結果は、末梢における悪性細胞の存在の脳による迅速な認識があることを示す。
【0157】
実施例2:癌に関連するCNS発現プロファイルの研究
3つの経過時点のいずれかにおいて差次的に発現される遺伝子を同定するために、混合モデルANOVAデザインを使用して、より完全な研究を行った。いずれかの経過時点において統計的に有意な変化を有する遺伝子を、さらなる分析のために選択した。図3は、3つの実験モデル(肺、乳房、および結腸)の結果を示す。各実験モデルに対して、3つの異なる経過時点(18、72、および192時間)において、視床下部、前前頭皮質、および中脳から試料を採取した。各癌モデルおよび脳領域に対して、ANOVAテストを実行した。図3は、ANOVAテストを使用して差次的に発現されることがわかった遺伝子の数、上方制御された差次的に発現される遺伝子の割合、差次的に発現される遺伝子の平均倍率変化、および倍率変化データの第5および第95パーセンタイル値を示す。
【0158】
生物学的反復試料の分析
各経過時点において、少なくとも4つの生物学的反復を実行した。差次的に発現される遺伝子の同定に対して、反復なしで、治療と称する因子(レベル:腫瘍および対照)ならびに実験と称するランダム効果(レベル:1〜4)による、混合効果実験設計を用いた。治療因子に対する統計的有意性をANOVAにより推定した(P. Pavlidis, Methods 31, 282(2003))。この設計は、多数の一方向ANOVAまたはt−検定と比較した場合、選択性の損失なしによりよい感度を有するため、いずれかの経過時点において因子治療により影響される遺伝子の同定に対して、多数のANOVAテストを実行する代わりに、前設計に因子時間(レベル:18、72、および192時間)を追加することを決定した(P. Pavlidis, W. S. Noble, Genome Biol. 2, 42(2001))。同一方向にそれらの発現レベルを変化させた遺伝子を同定するために、例えば、少なくとも1つの経過時点に変化した遺伝子、2つ以上の経過時点において変化した遺伝子は、同一方向に変化していなければならない(すなわち、必ず上方または下方制御されている)、治療間の平均差に対する統計的有意性をANOVAにより評価した。
【0159】
2つ以上の腫瘍モデルにより共有される差次的に発現される遺伝子の数が、偶然によってのみ、予想された量よりも有意に高かったかどうかを評価するために、フィッシャーの直接確率検定を使用した。
【0160】
実施例3:実施例2における研究のより限定的な分析
より限定的な分析において、1つの経過時点において上方制御を示すが、異なる経過時点において下方制御を示す遺伝子を排除した。2つの経過時点において上方制御を示したが、第3の経過時点において変化を示さなかった遺伝子は、より限定的な分析に加えられた遺伝子である。図4は、このより限定的な選択プロセスの結果を示す。図3および図4を比較することからわかるように、このより限定的な選択プロセスにより約半分の遺伝子が排除された。図5A〜図5Jは、この第2のより限定的な選択プロセスにより同定された遺伝子の全ての表である。
【0161】
実施例4:肺癌モデルにおける視床下部のリアルタイムPCR確証研究
リアルタイムPCR確証研究は、以下の2つの主な理由により、肺癌群の視床下部領域に焦点を置いた。(a)遺伝子発現の最大の変化を有する領域のうちの1つであったこと(図1および図4を参照)、および(b)統計的有意性に従いランクごとに分類される遺伝子に対する誤り発見率の分析(Benjamini et al., Behav. Brain Res. 125(1−2):279−84(2001))が、視床下部領域全体、特に、肺癌モデルが、最も多い差次的に発現される遺伝子を示したことを確認した。
【0162】
腫瘍細胞増殖により、他の器官が、遺伝子発現の変化を示す可能性があるかどうかを研究するために、マウスに癌細胞を注射し、肝臓における転写物レベルを評価した。図6A〜図6Cは、肺癌細胞(6A)、乳癌細胞(6B)、または結腸癌細胞(6C)の注射後に、差次的に発現されると同定される遺伝子の数(x軸)の関数として、評価された誤り発見の割合(y軸)を示す。0.2に設定された倍率発見の任意のカットオフによる誤り発見率分析は、肝臓において3つの差次的に発現される遺伝子のみを示し(図6A〜図6C)、それは、肺癌モデルにおいて選択された約200の視床下部遺伝子、または全ての脳領域および腫瘍モデルをプールした場合の60を上回る平均遺伝子とは極めて対照的である(図6)。30%を上回る肝臓マイクロアレイの振幅の変化を示す、全ての注釈付き遺伝子を確証するために、リアルタイムPCRを使用した。マイクロアレイデータにおいて差次的に発現された11個の遺伝子のうち、機能不明の亜鉛フィンガー遺伝子(Zfand2a)の配列のみが確証された。
【0163】
それらの変化の振幅とは無関係に、マイクロアレイにおけるそれらのp値の有意性に従い、リアルタイムPCR確証研究に対する試料を選択した。この選択方法は、リアルタイムPCRによる55%の確証をもたらした。確証の百分率は、>1.3倍のみの振幅の変化が考慮された場合、83%に上昇した。図7Aは、5%を上回る倍率変化(1.05)を含む百分率の倍率変化に従いグループ化された、リアルタイムPCR確証研究の結果を示す。実施例2の実験において5%を上回る倍率変化を示した遺伝子のうち、55%の29個の遺伝子が、リアルタイムPCRにより確証された。実施例3において5%を上回る倍率変化を示した遺伝子のうち、55%の22個の遺伝子が、リアルタイムPCRにより確証された。リアルタイムPCRによる確証の程度は、脳における低レベルの差次的発現に関してすでに報告されたものと同様であった(Wurmbach et al., Methods 31(4):306−16(2003))。
【0164】
実施例2および3における実験間で、確証の程度は非常に類似していたため(図7A)、それらが、癌増殖のモニタリングのためのより信頼できる候補であるだろうという考えに基づいて、一方向のみに変化した発現を示す遺伝子のリストにより、残りの実験を行った(第2のより限定的な分析)。
【0165】
リアルタイムPCR
製造業者の使用説明書に従い、オリゴ(dT)12−18(Invitrogen)、およびSuperscript II RNaseH Reverse Transcriptase(Invitrogen)を使用して、0.5μgのmRNAを逆転写した。37℃で15分間、2μlの2.5M NaOHでインキュベーションすることにより、mRNAの分解を行った。10μlの2M HEPESフリー酸で反応液を中和し、次いでcDNA沈殿した。Oligreen ssDNA Quantitation Reagent(Invitrogen)を使用して、cDNAの定量化を実行した。Primer3プログラム(www−genome.wi.mit.edu)を使用してプライマーを設計し、Invitrogenから入手した。iCycler IQリアルタイム検出システム(Bio−Rad)の96ウェル光学プレートにおいてSYBR Green I(Invitrogen)を使用して、遺伝子を2つのハウスキーピング遺伝子(β2ミクログロブリンおよびβアクチン)と比較することによって、確証のために分析した各遺伝子を分析した。各25μlの反応物に対して、1μlのcDNA希釈液、2.5μlの10X PCR緩衝液、1.5μlの50mM MgCl、0.75μlの10mM dNTPミックス、0.5μlの各プライマー(10μM)、0.75μlのSYBR Green I(1:1000希釈)、0.25μlの10mg/mlBSA、0.25μlのRoxリファレンス色素(Invitrogen)、0.25μlのグリセロール、および0.25μlのプラチナムTaq DNA ポリメラーゼ(Invitrogen)を使用した。PCR条件は以下のように設定した。94℃において2.5分、ならびに94℃において45秒、59℃において30秒、および72℃において15秒を40サイクル。全ての試料の融解曲線を必ず実行した。2〜4回、各回をトリプリケートで、各標的遺伝子を評価した。次いで、正常化対両方のハウスキーピング遺伝子の平均を実行した。統計的有意性をANOVAにより評価した。
【0166】
実施例5:実施例3において選択された遺伝子のベン図分析
実施例3において選択された遺伝子のベン図は、肺および乳癌モデルの視床下部および中脳データを比較した場合、統計的に有意な数の共有遺伝子を示した。図7Bは、肺癌モデルマウスの視床下部に差次的に発現された12個の遺伝子が、乳癌モデルマウスの視床下部にも差次的に発現されたことを示す。図7Bはまた、肺癌モデルマウスの中脳に差次的に発現された8つの遺伝子が、乳癌モデルマウスの中脳にも差次的に発現されたことを示す。これらのデータは、脳が、末梢腫瘍細胞に応答して、特有の領域において遺伝子発現レベルを変化させることを示す。
【0167】
実施例6:2つの癌モデル間を区別する差次的に発現される遺伝子のサブセットの調査
対となる癌モデルを区別し得る、差次的に発現される遺伝子のサブセットの調査を行った。図8Aは、33個の差次的に発現される遺伝子(行)に基づいた、肺および結腸癌モデルから得られる20個の視床下部試料のクラスタリング(列)を示す。同様に、図8は、乳房および肺癌モデル(図8B)から、および結腸および乳癌モデル(図8C)から得られる、視床下部試料のクラスタリングを示す。図9は、乳房および肺癌モデル(図9A)から、結腸および肺モデル(図9B)から、および乳房および結腸モデル(図9C)から得られる、皮質試料のクラスタリングを示す。図10は、乳房および肺癌モデル(図10A)から、結腸および肺モデル(図10B)から、および乳房および結腸モデル(図10C)から得られる、中脳試料のクラスタリングを示す。これらの図において、異なる領域における階層的クラスタリング分析の大部分の第1の枝分かれは、対となる癌モデルを正確に分離し、異なる癌を区別する脳の遺伝子発現特性の存在を示す。加えて、視床下部領域はまた、肺および結腸癌(ROC−スコア:0.98、p<0.0001)、ならびに結腸および乳癌(ROC−スコア:1、p<0.0001)を区別するための、統計的に有意な予測能力を示した。
【0168】
階層的クラスター分析
実験全体にわたって同一方向にそれらの発現レベルを変化させた遺伝子のリストから(p<0.05、上記の生物学的反復の分析の項を参照)、腫瘍モデル間で差次的に応答するものを選択した(p<0.01、t−検定)。40%未満の欠測値を有する実験試料、および20%未満の欠測値を有する遺伝子のみを分析に加えた。ユークリッド距離計算のために、Ms=(M-エラー!オブジェクトは編集フィールドコードから作成できません。)/SD(M)として、データをスケーリングし、SDは、標準偏差である。Wardの最小分散集積方法を使用して、クラスター分析を実行した(J. A. Hartigan, Clustering Algorithms. John Wiley & Sons Inc, New York, 1975, pp. 366)。
【0169】
予測能力推定
リーブ−ワン−アウト(LOO)クロス確証を実行した。n個の試料がある場合、順に全ての試料に対して、残りのn−1個の試料に関して分類子をトレーニングし、次いで、除外された試料に関して得られる仮説を試験した。重み付けした伝統的なk−最近傍(knn)法(以下の重み付けk−最近傍を参照)で分類を実現した。LOOプロセスは、n仮説出力値を生成し、クラスを予測するために、所定の検出閾値τと比較した。τを変化させることにより、受信者動作特性(ROC)曲線と呼ばれる、分類の感度対1−特異性の曲線を、描くことができる。ROC曲線(ROC−スコア)下の領域は、分類子の分離能力の測定値である。非常に好ましい分類子は、1に近いROC−スコアを有し、好ましくない分類子は、約0.5のROC−スコアを有する。クラス標識の無作為の10,000の順列により生成されるヌルモデルから、ROC−スコアの統計的有意性を推定した。認められたスコアを上回る無作為化ROCスコアの割合として、認められたROC−スコアのp値を算出した。
【0170】
重み付け最近傍(wNN)
分類に有用な変数(遺伝子)をトレーニングセットより選択した(以下の変数選択の項を参照)。次いで、Yの標準偏差で変数を除することにより、トレーニングセット(Y)およびテストセット(X)を正規化した。次いで、クラスiに属するトレーニングセットの試料yおよびテスト試料xのそれぞれの間のユークリッド距離d(y,x)を計算した。Gauss核関数s−1(2π)−1/2 exp(−d/(2s))により、距離を重量(w)に変換し、sは、距離dの標準偏差である。wNN分類子をトレーニングするために全ての試料を使用して、決定関数f(x)を構築したため、k=Mである(以下に定義される通り)。クラス0に属するxの推定投票スコアとして仮説出力値:

を生成し、lは、クラス標識のベクトルであり、mは、クラス0に属する試料の量である。したがって、クラスに対する投票スコアは、
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であり、mおよびmは、クラス0および1のそれぞれに属する試料の量であり、M=m+mである。
【0171】
このようにして、決定関数は、D(x)=f(x)/f(x)であり、D(x)>1である場合は、xは、クラス1に割り当てられ、D(x)<1である場合は、xは、クラス0に割り当てられる。
【0172】
変数選択
分類に好適な変数(遺伝子)を選択するために、LOOプロセスにおいてROC−スコアを最大化する遺伝子セットを求めてトレーニングセットを検索した。簡潔に述べると、t−検定を使用して、クラス間のそれらの差次的発現に従い、遺伝子をランク順序付けした。このランク付けリストの始めから、2個の遺伝子から始まり最大で100個の遺伝子である、遺伝子を連続追加することにより、分類子における遺伝子数を最適化した。トレーニングセットで実行したLOOで計算したROC−スコアにより、遺伝子の各セットに対して、正しい分類の指数を推定した。ROC−スコアを最大化する遺伝子の最少数を、分類に有用となるように選択した。
【0173】
実施例7:差次的に発現される遺伝子の機能カテゴリへのグループ化
マイクロアレイ情報の生物学的意義を理解するために、不偏Gene Ontology Consortiaデータベース(GO)(M. Ashburner et al., Nat. Genet. 25, 25(2000))の機能分類を使用して、差次的に発現される遺伝子を機能カテゴリにグループ化し、さらに、遺伝子集合濃縮解析(Gene Set Enrichment Analysis、GSEA)(A. Subramanian et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA,(2005))を使用して分析した。GSEAは、任意のカットオフなしで全ての遺伝子を考察し、平均的な個々の変化が低い場合であっても、著しい活性の変化を集合的に示す遺伝子セットを同定する。分析は、視床下部領域に焦点を合わせた。各腫瘍の種類とそれらのそれぞれの対照の間で差次的に発現される遺伝子が豊富な機能遺伝子セットを同定した。機能カテゴリが、密接に関係した生物学的プロセスであった場合、それらをさらにグループ化した。p<0.05における機能カテゴリの全体的な分析は、異なる癌モデル間で共有される統計的に有意な遺伝子セットを発見しなかった。この追加の種類の分析は、腫瘍保有マウスに差次的に発現される遺伝子ファミリーの同定を可能にする。この分析は、差次的に発現される遺伝子間の機能関係に基づいており、文献で認められており、他の手段により検出されない関連遺伝子に関する追加情報を提供し得る。しかしながら、有向非巡回GOグラフを実行した後に遺伝子セットをカテゴリにグループ化することにより、3つのモデルにより共有される同様の生物学的プロセスの存在が明らかにされた(図19A〜図19I)。これら共通のプロセスが、共通の生物学的機能を有する遺伝子に関与するかどうかを調査するために、最先端遺伝子サブセットを同定した(A. Subramanian et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA,(2005))。この分析(図19J〜図19L)は、「ニューロン結合」としてグループ化された軸索ガイダンスならびに細胞骨格およびシナプスリモデリング(図19B、図19E、図19H、および図19J〜図19L)等の、同様の生物学的プロセスを反映した3つの癌モデルにより共有される遺伝子を同定し、これは、TGFβ/BMP、wnt、ヘッジホッグ、およびNotch信号伝達分子(図19C,図19Fおよび図19I)等の、位置合図としての役割を果たす遺伝子ファミリーのメンバーを含んでいた(de Wit, J. & Verhaagen, J.(2003)Prog. Neurobiol. 71, 249−67、Crowner et al.(2003)Curr. Biol. 13, 967−72.)。肺癌モデルの経時的分析は、18時間経過時におけるTGFβ/BMP経路の上方制御、72時間経過時におけるWnt経路、および192時間経過時におけるNotch経路の活性化に関連する「ニューロン結合」の増加を示す(図19Cおよび図19J〜図19L)。乳房および結腸癌モデルにおいて、3つの経路およびヘッジホッグ信号伝達経路も活性化された(図19Fおよび図19I)。肺癌モデルとは対照的に、「ニューロン結合」は下方制御されたか、または結腸および乳癌のそれぞれにおいて変化を示さず、これらの信号伝達経路が、追加の生物学的プロセスにも関与する可能性があることを示唆する(図19J〜図19L)。注目すべきは、アレイが、少なくとも30個の追加の信号伝達経路に対応する遺伝子配列を含んでいたという事実にもかかわらず、GSEA分析が、追加の信号伝達経路の有意な変化を得なかったことである。追加の最先端遺伝子は、肺および乳癌モデルにおける「免疫応答」、ならびに3つのモデルにおける「疾病応答」に関連する転写物を含む(図19B、図19E、図19H、および図19J〜図19L)。肺および結腸癌モデルにおける「アポトーシス」の下方制御、ならびに乳房および結腸癌モデルにおける「シナプス活性」における下方制御も認められた(図19B、図19E、図19H、および図19J〜図19L)。最後に、最先端遺伝子の35%から40%は、非関連の、または未知の生物学的機能を示した(図19A〜図19Lの混合型を参照)。
【0174】
リアルタイムPCRにより確証された遺伝子の分析は、ニューロン発症および活性に関与する遺伝子を示した(GSEA分析における明らかに表された生物学的カテゴリ)。図11は、リアルタイムPCRにより確証された遺伝子の表である。これらの遺伝子には、ニューロン発症および活性に関与するものもある。これらの遺伝子は、ミエリン恒常性に関与するトロンボキサンA2受容体(Blackman et al., J. Biol. Chem. 273(1):475−83(1998))、ドーパミン作動性伝達に関与するアタキシン−2(Boesch et al., Mov. Disord. 19(11):1320−1325(2004)、Wullner et al., Arch. Neurol. 62(8):1280−5(2005))、およびシナプス活性に関与するコンタクチン2、オキシトシン、およびGABAArapl2(Furley et al., Cell 61(1):157−70(1990)、Theodosis et al., Neurochem. Int. 45(4):491−501(2004)、Okazaki et al., Brain Res. Mol. Brain Res. 85(1−2):1−12(2000))を含んでいた。興味深いことに、トロンボキサンA2受容体およびオキシトシンは、炎症/免疫関連プロセス、GSEA分析にも過剰に存在する生物学的カテゴリ、および疾病行動として既知の行動状態にも割り当てられ得る。この状態は、進行中の疾病の対処に集中するために、動物およびヒトの行動優先順位を変化させるが、重要なことに、異なる研究は、この行動状態と検討された癌の進行の間の強い関連性を提供した(Konsman et al., Trends Neurosci. 25(3):154−9(2002))。
【0175】
遺伝子注釈および遺伝子集合濃縮解析
Entrez Gene(ワールドワイドウェブ上のncbi.nlm.nih.gov/entrezで入手可能)、およびMouse Genome Informatics(ワールドワイドウェブ上のinformatics.jax.orgで入手可能)から遺伝子情報を得た。Gene Ontology(GO)データベースのBiological Process(BP)オントロジー(Ashburner et al., Nat. Genet. 25(1):25−9(2000))から機能遺伝子セットを生成した。GO R−パッケージに実装されるGene Ontology Annotationデータベース(GOA)(Camon et al., Nucleic Acids Res. 32(Database issue):D262−6(2004))から、Entrez Gene数からGO−BPカテゴリへのマッピングを得た。t−検定により推定される差次的発現に対するそれらのp値に従い、遺伝子をランク順序付けした。遺伝子集合濃縮解析アルゴリズム(Subramanian et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102(43):15545−50(2005))を使用して、遺伝子ランク付けリストの上部に過剰に存在する遺伝子セットを同定した。遺伝子を10,000回順列することにより、すなわち、遺伝子がそれらのサイズを維持しながらもセットに無作為に割り当てられることにより、統計的有意性(公称p値)を推定した。差分ノードは、統計的に有意なGO−BPセット(p<0.05)を意味する。
【0176】
実施例8:疾病行動として既知の行動状態に関連する遺伝子の研究
実施例1、2、および3に使用されるアレイにおいて存在しなかったが、疾病行動に関与することが知られる遺伝子発現を研究した。
【0177】
図12は、疾病行動に関与することが知られているが、上記に実施例に使用されるマイクロアレイに存在しない遺伝子、ならびに少なくとも1つの経過時点、1つの脳領域、および1つの癌モデルに差次的に発現されることが、リアルタイムPCRにより確証されている遺伝子の表である。例えば、3つの癌の種類を注射したマウスの視床下部および皮質におけるシクロ−オキシゲナーゼ−2(ptgs−2)のレベルは、上方制御されたことがわかった(乳癌モデルの皮質において18時間経過時で+17.3%、結腸癌モデルの視床下部において18時間経過時で+9.8%、および肺癌モデルの視床下部において72時間経過時で+14.3%、図12を参照)。
【0178】
サイトカイン機能の干渉による疾病行動の減弱に関与する遺伝子の転写物レベルは、異なる腫瘍モデルを注射したマウスの視床下部において下方制御された。例えば、全てのモデルにおいてプロオピオメラノコルチン−アルファ(Pomc1)、肺および乳癌細胞においてアルギニンバソプレシン、ならびに結腸癌細胞のみにおいておよびメラノコルチン受容体4および5−(Mc4rおよびMc5r)が減少した(図12)。サイトカイン、IGF−1、IL−1βおよびTNF−αの疾病行動関連群に対しては、何の転写物レベルの変化も認められなかった。これらのデータは、疾病行動を発症しやすい分子環境の生成を示す。
【0179】
加えて、全ての腫瘍モデルの視床下部におけるインドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ(Indo)の発現の減少(図12)は、癌関連悪液質に関連する神経伝達物質であるセロトニンを生成するための、トリプトファンのより大きい接近性を示す可能性があり(Konsman et al., Trends Neurosci. 25(3):154−159(2002); Laviano et al., Nutrition 18(1):100−105(2002))、悪液質をもたらす分子変化が、臨床症状が検出される前に早期に開始される可能性があることを示唆する。最後に、18時間経過時における初期の増加後に、ニューロペプチドY(Npy)転写物レベルは、乳房および肺癌細胞を注射したマウスの皮質領域において正常に戻るか、もしくは減少したが、結腸癌においては、かなり後の192時間経過時において減少が認められた(図12)。NpyおよびMcrレベルの減少はまた、変化した摂食行動および癌発症においてのちに起こるストレスへの反応に先行する可能性がある(Heilig and Thorsell, Rev. Neurosci. 13(1):85−94(2002))。
【0180】
実施例9:腫瘍保有動物の行動研究
疾病行動に関連する遺伝子発現は、穴掘りおよび水泳試験により分析されるように、腫瘍保有動物における行動変化は伴わなかった。
【0181】
穴掘り
記載される通りこの試験を実行した(Guenther et al, Eur. J. Neurosci. 14(2):401−409(2001))。簡潔に述べると、暗期の開始の少なくとも2時間前に、ペレットを充填したプラスチックチューブ(長さ20cm、直径4cm)を含む個々のプラスチックケージにマウスを入れた。ケージの床に下部閉鎖端を置いた。ケージの床の3cm上にネジで開口端を支持し、内容物が非意図的に移動することを防止した。チューブを300グラムのペレットで充填した。チューブに残ったペレットの重量を16時間経過時に測定し、そこから移動した(穴が掘られた)重量を計算した。
【0182】
強制水泳試験
水(24±1℃)を最大で15cmの深さまで充填したシリンダー(直径19cmおよび高さ25cm)にマウスを別々に入れた。不動状態になるまでの時間を記録した(Petit−Demouliere et al., Psychopharmacology(Berl)177(3):245−55(2005))。マウスが、浮遊度を維持するために最小限の移動のみをする場合の不動状態を考察した。実験が終わった後に、タオルでマウスを乾かし、ケージに戻した。
【0183】
結果
図13A〜図13Bは、腫瘍保有マウスおよび正常対照マウスの行動テストの結果を示す。結果は、腫瘍保有マウスおよび対照マウスに対して、実質的に同様である。
【0184】
これらの結果は、行動変化が見られるずっと前に、脳が、ある遺伝子の発現プロファイルを調節し得ることを示唆する。
【0185】
実施例10:関節リウマチおよび癌モデル間の比較
癌に対する脳の分子応答の特異性をさらに評価するために、癌以外の慢性疾病の遺伝子発現を評価した。DBA/1およびC57ブラックマウスにおける2つの関節リウマチ(RA)のモデルを使用した。疾病の極早期段階、すなわち、両方のモデルにおける免疫化/追加免疫の1週間後に、脳試料を得た。マイクロアレイ分析は、対照マウスと比較して、視床下部、前前頭皮質、および中脳のそれぞれにおいて、>1.2の倍率変化を有する、89、73、および104個の差次的に発現される遺伝子を同定した。モデル間のデータの比較は、癌細胞を注射したマウスおよびRA−マウスが、非有意な数の差次的に発現される遺伝子を共有したことを示した。階層的クラスタリング分析は、第1の枝分かれが、各癌モデルに対応する対となる試料から、全ての関節炎試料を正確に分離したことを示した。(図14A〜図14C、図15A〜15C、および図16A〜図16C)。
【0186】
同様の分析は、マウスのRA群と3つの癌モデルの間の6つの考えられる対による比較のそれぞれにおける、10個の上位にランク付けされた視床下部遺伝子を考察した。図17A〜図17Bは、この分析において、関節炎のうちの100%および癌モデル試料のうちの100%が、第1のクラスタリングの枝分かれにおいて分かれたことを示す。第2の枝分かれは、乳癌試料のうちの100%、7つの結腸癌試料のうちの1つ、および12個の肺癌試料のうちの3つを含んでいた(図17A)。最後に、第3の枝分かれは、肺癌試料から結腸癌試料の残りを分離した(図17A)。皮質および中脳領域は、異なる試料の区別において視床下部ほど有効ではなかった。ROC−スコアの計算は、前前頭皮質データが、RAおよび乳癌モデル(ROC−スコア:0.8333p<0.001)、ならびにRAおよび肺癌モデル(ROC−スコア:0.8013、p<0.001)の区別に対して、統計的に有意な予測能力を示したことを示した。これは、RAおよび結腸癌モデル(ROC−スコア:0.9107p<0.001)、ならびにRAおよび乳癌モデル(ROC−スコア:1、p<0.001)を区別することができた視床下部と同等の結果である。誤り発見率分析により、中脳は、最も多い差次的に発現される遺伝子を示したが、中脳は、2つの慢性疾病モデルを区別するための予測能力を示さなかった(図18)。視床下部試料のGSEA分析は、RAおよび癌モデル間で統計的に有意な共有遺伝子セットを示さなかった。図17B〜図17Dは、<0.05のp値および>20%の倍率を有するいずれかの関節炎モデルに対して変化する各領域より選択される遺伝子のリストであり、両方のモデルにおいて変化する遺伝子に対して、変化は同一方向でなければならない。
【0187】
生体内研究−関節炎モデル
免疫化手法:1日目および21日目に、同量の完全フロイントアジュバント(CFA, Sigma Co)と混合した、2mg/mlニワトリII型コラーゲン0.1mlを、10〜12週齢のDBA/1およびC57BL/6雄マウスの尾の付け根に皮内注射した。
【0188】
CFAのみをシャム治療した動物に注射した。24日目に、LPS(リポ多糖、0.1mlのPBS中40μg、Sigma Co.)をマウスに腹腔内注射し、1週間後(31日目)に、早期疾病の徴候を示すマウスを頸部脱臼により犠牲にし、視床下部、前前頭皮質、および中脳を切開した。関節炎の発症は、免疫化の3週間後に足の腫脹として肉眼で見られた。この免疫化手法を使用すると、マウスの73から90%が、関節炎を発症した。関節炎の臨床的特徴は、2日に1回カリパスを使用して足の腫脹および腫脹した足の数を評価することによりモニタされ得る(Taylor et al, Eur. J. Immunol. 25(3):763−9(1995))。
【0189】
介入がより成功裏に実行されることが多い時期の癌の早期検出は、大きな課題を残す。本明細書に記載する研究の目的は、末梢から発する信号の既知のインテグレーター(integrater)としてのCNSが、癌の進行を検出することができたかどうかを立証することであった。本研究は、癌細胞の注射の18時間後という早期に見られる、変化する遺伝子発現レベルにより、脳が、実際に末梢腫瘍の存在に応答することを示す。単一遺伝子および遺伝子セット分析は、各癌モデルに対する分子特徴が特異的であることを示した。加えて、脳は、癌モデルにおいて認められたものとは異なる、特定の遺伝子プロファイルを有するRA等の別の慢性疾病の早期発症を認識する。対照的に、肝臓等の末梢器官は、本質的には、腫瘍の存在を検出することができなかった。最後に、視床下部は、慢性末梢疾病から発する極早期信号をより効果的に検出および判別することができる領域のように思われた。
【0190】
実施例11:CSFにおける差次的に発現されるタンパク質の同定
この実施例に記載する実験は、本明細書に記載されているような癌に関連する差次的CNS遺伝子発現が、CSFにおける異なるタンパク質の存在とも関連があるかどうかを決定するために設計された。
【0191】
実施例1に記載されるように、生体内研究を行った。注射後24時間および9日間後に、30匹の動物の同一群(腫瘍注射された15匹および15匹の対照)からCSF試料を得た。各腫瘍の種類に対して、4つの独立した実験を行った。
【0192】
CSF抽出のために、動物に麻酔をかけ、27Gバタフライによる第4脳室の穿刺によりCSFを得た。各実験群からのCSF試料をプールした。CSF試料をTCA/アセトンで沈殿し、適切な量の溶解緩衝液(Urea 7M、Tiourea 2M、CHAPS 4%、TCEP−HCl 2mM)に再懸濁させ、室温で1時間撹拌しながらインキュベーションし、−80℃で保管した。
【0193】
2−D分析を実行するために、試料を適切な量の補水液に再懸濁し、およびカップローディング法により、終夜再水和された11cmのpH3〜10のIPGストリップ(GE Healthcare, Piscataway, NJ)に添加した。製造業者の使用説明書に従い、Ettan IPGphor等電点電気泳動システム(GE Healthcare, Piscataway, NJ)で、等電点電気泳動(IEF)を実行した。IEF後に、1%DTTを含む平衡緩衝液(50mMのTris−HCl、6Mの尿素、30%v/vグリセロール、2%SDS、0.005%ブロモフェノールブルー)で15分間ストリップをインキュベーションし、続いて、平衡緩衝液中4%ヨードアセトアミドで、さらに15分間インキュベーションした。Bio−rad Miniprotean III システム(Bio−Rad, Hercules, CA)で二次元(SDS−PAGE)を実行した。
【0194】
データ分析、統計、およびタンパク質同定:
CyproRubi(Sigma, St. Louis, MO)染色ゲルを画像スキャナでスキャンし、Image Master 2D Elite 3.10ソフトウェアで分析した(両方ともGE Healthcare, Piscataway, NJから)。スポットを自動的に検出し、手動で編集し、ゲル間で一致させた。R−System V2.1.1下で正規化および推定統計を行った。質量分析に適合する硝酸銀染色を使用して、タンパク質を検出した。
【0195】
結果
増加あるいは減少すると同定されるタンパク質を表1に記載する。
【0196】
(表1)CSFにおいて差次的に存在するタンパク質
遺伝子座 定義
P28665 ムリノグロブリン−1前駆体(MuG1)
BAA23958 TCRベータ鎖
BAE28703 名前の付けられていないタンパク質産物
AAA40942 アルファ−1 III型コラーゲン
XP_995007 亜鉛フィンガータンパク質235(亜鉛フィンガ ータンパク質93)(Zfp−93)と同様
XP_576394 グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素と同様
P16617 ホスホグリセリン酸キナーゼ1
BAE26325 名前の付けられていないタンパク質産物
AAH85098 エノラーゼ1、アルファ非ニューロン
NP_033931 炭酸脱水酵素2
BAB27362 名前の付けられていないタンパク質産物
AAH62957 Cpタンパク質
AAH43338 補体成分 3
XP_223362 mKIAA1458タンパク質と同様
【0197】
これらの結果は、恐らく本明細書に記載されているようなCNSにおいて、おそらく差次的遺伝子発現の結果として、健康な動物にではなく、癌を有する動物のCSF中に存在するタンパク質の差次的パターンがあることを示す。
【0198】
実施例12:血中の差次的に発現されるCNSタンパク質の同定
この実施例に記載する実験は、本明細書に記載されているような癌に関連する差次的CNS遺伝子発現が、移植したマウスの血中の異なるタンパク質の存在とも関連があるかどうかを決定するために設計された。
【0199】
実施例1に記載されるように、生体内研究を行った。EDTA10%を有する50ml円錐ファルコンチューブに血液を採取した。溶解緩衝液(KHCO 10mM、NHCl 150mM、EDTA 0.1mM pH=8)を1mlの血液あたり150mlの溶解緩衝液の割合で添加した。時々撹拌しながら15分間室温(RT)で試料をインキュベーションし、次いで、300×gでRTで15分間遠心分離した。製造業者の使用説明書に従い、上清を捨て、ペレットを500μlのTrizol(商標)試薬(Invitrogen)でホモジナイズし、総RNAを分離した。製造業者の使用説明書に従い、RNAをDNaseで処理し、RNeasyミニキット(Qiagen)で精製した。リアルタイムPCR実験を実施例4にあるように行った。
【0200】
表2に示される結果は、健康な動物とは対照的に、癌を有する動物の血中に存在する遺伝子発現の差次的パターンを示す。
【0201】
(表2)血液試料中の確証された遺伝子

遺伝子 GenBank 倍率変化(%) p値 経過時点
Acc.# (時間)
Atxn2 NM_009125 -106.38 0.020 18
Gabarapl2 NM_026693 -237.23 6.37E-06 18
Gabarapl2 NM_026693 +59.42 0.028 192
Atp5k NM_007507 -1004.77 0.003 18
Atp5k NM_007507 -54.99 0.041 72
Gpr109a NM_030701 -279.9 0.039 18
Kin X58472 -1796.78 0.031 18
【0202】
他の実施形態
本発明の数多くの実施形態が記載されている。しかしながら、本発明の精神および範囲から逸脱することなく種々の変更を加えることができることが理解されると考えられる。したがって、他の実施形態は以下の特許請求の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における非中枢神経系(非CNS)癌を診断する方法であって、
図5A〜5I、11A、12、もしくは21A〜23Cのうちの1つもしくは複数に記載される遺伝子またはその相同物、および任意で図5Jまたは11Bに記載される1つまたは複数の遺伝子より選択される、5つまたはそれ以上の遺伝子を含む、基準遺伝子発現プロファイルを提供する段階、
前記対象のCNS試料中における、前記基準遺伝子発現プロファイルの全ての遺伝子の発現を検出することを含む、対象の遺伝子発現プロファイルを生成する段階、ならびに
前記対象の遺伝子発現プロファイルを前記基準遺伝子発現プロファイルと比較する段階
を含み、
前記対象の遺伝子発現プロファイルと前記基準遺伝子発現プロファイルの一致は、前記対象が、非CNS癌を有しているか、または発症する可能性が高いことを示す、方法。
【請求項2】
前記CNS試料は、脳からの1つまたは複数の細胞の試料である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
脳細胞が、視床下部、中脳、および前前頭皮質からの細胞からなる群より選択される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
脳細胞が、視床下部より選択される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
2つまたはそれ以上の基準遺伝子発現プロファイルが使用され、それぞれが、異なる非CNS癌に特異的である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
非CNS癌が、肺癌、結腸癌、および乳癌からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
非CNS癌が、直径0.5cm未満の固形腫瘍である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記基準遺伝子発現プロファイルが、図5A〜5I、11A、12、および21A〜23Cのうちの1つもしくは複数に記載される任意の遺伝子またはその相同物より選択される、10個またはそれ以上の遺伝子を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
1体または複数の健康な被験体に対応する対照遺伝子発現プロファイルを提供する段階、および
前記対象の遺伝子発現プロファイルを前記対照遺伝子発現プロファイルと比較する段階
をさらに含み、
前記対象の遺伝子発現プロファイルと前記対照遺伝子発現プロファイルの一致は、前記対象が、非CNS癌を有さず、かつ発症する可能性が低いことを示す、請求項1記載の方法。
【請求項10】
遺伝子発現が、マイクロアレイアッセイを使用して検出される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記対象がヒトであり、かつ前記基準遺伝子発現プロファイルが、図55A〜5I、11A、12、および21A〜23Cに記載される遺伝子の1つまたは複数のヒト相同物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記対象が、癌の家族歴を有する、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記対象が、画像分析で評価された際に癌の臨床徴候を欠く、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記対象が、疾患を発症するリスクが高いことに関連する遺伝子の保有者である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記対象が、BRCA1、BRCA2、hMSH2、hMLHlまたはhMSH6遺伝子の保有者である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
比較する段階の結果の記録を生成する段階、および
任意で、前記対象、医療提供者、または他の当事者に前記記録を伝達する段階
をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項17】
前記基準遺伝子発現プロファイルが、以下の遺伝子群:Tbxa2r、Atxn2、Cntn2、Oxt、Gabarapl2、Unc84a、Atp5k、Bmp15、Kin、Nadk、Avp、Indo、Pomc、Ptgs2、Npy、およびその相同物より選択される1つまたは複数の遺伝子の発現データを含み;かつ前記対象の遺伝子発現プロファイルと前記基準遺伝子発現プロファイルの一致は、前記対象が、非CNS肺癌を有しているか、または発症する可能性が高いことを示す、請求項1記載の方法。
【請求項18】
前記基準遺伝子発現プロファイルが、以下の遺伝子群:Avp、Indo、Pomc、Npy、Ptgs2、およびその相同物より選択される1つ以上の遺伝子の発現データを含み;かつ前記対象の遺伝子発現プロファイルと前記基準遺伝子発現プロファイルの一致は、前記対象が、非CNS乳癌を有しているか、または発症する可能性が高いことを示す、請求項1記載の方法。
【請求項19】
前記基準遺伝子発現プロファイルが、以下の遺伝子群:Avp、Indo、Mc4r、Mc5r、Pomc、Ptgs2、Npy、およびその相同物より選択される1つまたは複数の遺伝子の発現データを含み;かつ前記対象の遺伝子発現プロファイルと前記基準遺伝子発現プロファイルの一致は、前記対象が、非CNS結腸癌を有しているか、または発症する可能性が高いことを示す、請求項1記載の方法。
【請求項20】
図5A〜5I、11A、12、または21A〜23Cのうちの1つまたは複数に記載される任意の遺伝子、および任意で図5Jまたは11Bのうちの1つまたは両方に記載される任意の遺伝子より選択される、5つまたはそれ以上の遺伝子の発現データを含む、非中枢神経系(非CNS)癌の存在に対応する、基準遺伝子発現プロファイル。
【請求項21】
図5A〜5I、11A、12、および21A〜23Cのうちの1つまたは複数に記載される任意の遺伝子より選択される、5つまたはそれ以上の遺伝子の発現データを含む、請求項20記載の基準遺伝子発現プロファイル。
【請求項22】
以下の遺伝子群:Tbxa2r、Atxn2、Cntn2、Oxt、Gabarapl2、Unc84a、Atp5k、Bmp15、Kin、Nadk、Avp、Indo、Pomc、Ptgs2、Npy、およびその相同物より選択される、1つまたは複数の遺伝子の発現データを含み;かつ前記非中枢神経系(非CNS)癌が、肺癌である、請求項20記載の基準遺伝子発現プロファイル。
【請求項23】
以下の遺伝子群:Tbxa2r、Atxn2、Cntn2、Oxt、Gabarapl2、Unc84a、Atp5k、Bmp15、Kin、Nadk、Avp、Indo、Pomc、Ptgs2、Npy、およびその相同物より選択される、5つまたはそれ以上の遺伝子の発現データを含み;かつ前記非中枢神経系(非CNS)癌が、肺癌である、請求項22記載の基準遺伝子発現プロファイル。
【請求項24】
以下の遺伝子群:Avp、Indo、Pomc、Npy、Ptgs2、およびその相同物より選択される、1つまたは複数の遺伝子の発現データを含み;かつ前記非中枢神経系(非CNS)癌が、乳癌である、請求項20記載の基準遺伝子発現プロファイル。
【請求項25】
Avp、Indo、Pomc、Npy、Ptgs2、およびその相同物の発現データを含み;かつ前記非中枢神経系(非CNS)癌が、乳癌である、請求項24記載の基準遺伝子発現プロファイル。
【請求項26】
以下の遺伝子群:Avp、Indo、Mc4r、Mc5r、Pomc、Ptgs2、Npy、およびその相同物より選択される、1つまたは複数の遺伝子の発現データを含み;かつ前記非中枢神経系(非CNS)癌が、結腸癌である、請求項20記載の基準遺伝子発現プロファイル。
【請求項27】
以下の遺伝子群:Avp、Indo、Mc4r、Mc5r、Pomc、Ptgs2、Npy、およびその相同物より選択される、5つまたはそれ以上の遺伝子の発現データを含む、請求項26記載の基準遺伝子発現プロファイル。
【請求項28】
請求項20記載の基準遺伝子発現プロファイルに対応するデータセットを含む、コンピュータが読み取り可能な媒体。
【請求項29】
中枢神経系(CNS)試料を得るためのサンプリング装置と、
前記CNS試料における1つまたは複数の遺伝子の遺伝子発現データを生成する遺伝子発現検出装置、またはCNSにおける1つまたは複数の遺伝子の遺伝子発現の画像を得、かつ前記1つまたは複数の遺伝子の遺伝子発現データを生成するためのイメージング装置と、
特定の非CNS癌に対する、請求項20記載の基準遺伝子発現プロファイルと、
前記遺伝子発現データを受信し、かつ前記基準遺伝子発現プロファイルと比較する比較器
とを含む、対象における非中枢神経系(非CNS)癌を診断するためのシステム。
【請求項30】
対象における非中枢神経系(非CNS)癌を診断する方法であって、
図5A〜5I、11A、12、および21A〜23Cのうちの1つまたは複数に記載される任意の遺伝子、および任意で図5Jまたは11Bのうちの1つまたは両方に記載される任意の遺伝子より選択される、5つまたはそれ以上の遺伝子を含む、基準遺伝子発現プロファイルを提供する段階、
前記対象のCNS試料中における、前記基準遺伝子発現プロファイルの全ての遺伝子によりコードされるタンパク質の発現を検出することを含む、対象の発現プロファイルを生成する段階、ならびに
前記対象の発現プロファイルを前記基準遺伝子発現プロファイルと比較する段階、
を含み、
前記対象の発現プロファイルと前記基準遺伝子発現プロファイルの一致は、前記対象が、非CNS癌を有しているか、または発症する可能性が高いことを示す、方法。
【請求項31】
前記CNS試料は、脳脊髄液(CSF)試料である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
2つまたはそれ以上の基準遺伝子発現プロファイルが使用され、それぞれが、異なる非CNS癌に特異的である、請求項30記載の方法。
【請求項33】
非CNS癌が、肺癌、結腸癌、および乳癌からなる群より選択される、請求項30記載の方法。
【請求項34】
非CNS癌が、直径0.5cm未満の固形腫瘍である、請求項30記載の方法。
【請求項35】
前記基準遺伝子発現プロファイルが、図5A〜5I、11A、12、および21A〜23Cのうちの1つまたは複数に記載される任意の遺伝子またはその相同物より選択される、5つまたはそれ以上の遺伝子を含む、請求項30記載の方法。
【請求項36】
1体または複数の健康な被験体に対応する対照遺伝子発現プロファイルを得る段階、および
前記対象の発現プロファイルを前記対照遺伝子発現プロファイルを比較する段階
をさらに含み、
前記対象の発現プロファイルと前記対照遺伝子発現プロファイルの一致は、前記対象が、非CNS癌を有さず、かつ発症する可能性が低いことを示す、請求項30記載の方法。
【請求項37】
前記対象がヒトであり、かつ前記基準遺伝子発現プロファイルが、図5A〜5I、11A、12、および21A〜23Cに記載される遺伝子の1つまたは複数のヒト相同物を含む、請求項30記載の方法。
【請求項38】
前記対象が、癌の家族歴を有する、請求項30記載の方法。
【請求項39】
前記対象が、画像分析で評価された際に癌の臨床徴候を欠く、請求項30記載の方法。
【請求項40】
前記対象が、疾患を発症するリスクが高いことに関連する遺伝子の保有者である、請求項30記載の方法。
【請求項41】
前記対象が、BRCA1、BRCA2、hMSH2、hMLHlまたはhMSH6遺伝子の保有者である、請求項30記載の方法。
【請求項42】
比較する段階の結果の記録を生成する段階、および
任意で、前記対象、医療提供者または他の当事者に記録を伝達する段階
をさらに含む、請求項30記載の方法。
【請求項43】
前記基準遺伝子発現プロファイルが、以下の遺伝子群:Tbxa2r、Atxn2、Cntn2、Oxt、Gabarapl2、Unc84a、Atp5k、Bmp15、Kin、Nadk、Avp、Indo、Pomc、Ptgs2、Npy、およびその相同物より選択される、1つまたは複数の遺伝子の発現データを含み;かつ前記対象の遺伝子発現プロファイルと前記基準遺伝子発現プロファイルの一致は、前記対象が、非CNS肺癌を有しているか、または発症する可能性が高いことを示す、請求項30記載の方法。
【請求項44】
前記基準遺伝子発現プロファイルが、以下の遺伝子群:Avp、Indo、Pomc、Npy、Ptgs2、およびその相同物より選択される、1つまたは複数の遺伝子の発現データを含み;かつ前記対象の遺伝子発現プロファイルと前記基準遺伝子発現プロファイルの一致は、前記対象が、非CNS乳癌を有しているか、または発症する可能性が高いことを示す、請求項30記載の方法。
【請求項45】
前記基準遺伝子発現プロファイルが、以下の遺伝子群:Avp、Indo、Mc4r、Mc5r、Pomc、Ptgs2、Npy、およびその相同物より選択される、1つ以上の遺伝子の発現データを含み;かつ前記対象の遺伝子発現プロファイルと前記基準遺伝子発現プロファイルの一致は、前記対象が、非CNS結腸癌を有しているか、または発症する可能性が高いことを示す、請求項30記載の方法。
【請求項46】
対象における非中枢神経系(非CNS)癌を診断する方法であって、
Atxn2、Gabarapl2、Atp5k、Gpr109a、およびKinからなる群より選択される5つまたはそれ以上の遺伝子を含む、基準遺伝子発現プロファイルを提供する段階、
前記対象の血液試料中における、前記基準遺伝子発現プロファイルの全ての遺伝子の発現を検出することを含む、対象の遺伝子発現プロファイルを生成する段階、ならびに
前記対象の遺伝子発現プロファイルを前記基準遺伝子発現プロファイルと比較する段階
を含み、
前記対象の遺伝子発現プロファイルと前記基準遺伝子発現プロファイルの一致は、前記対象が、非CNS癌を有しているか、または発症する可能性が高いことを示す、方法。
【請求項47】
対象における非中枢神経系(非CNS)癌を診断する方法であって、
表1に記載される遺伝子より選択される5つまたはそれ以上のタンパク質を含む、基準タンパク質発現プロファイルを提供する段階、
前記対象の脳脊髄液(CSF)試料中における、前記基準タンパク質発現プロファイルの全てのタンパク質の発現を検出することを含む、対象のタンパク質発現プロファイルを生成する段階、および
前記対象のタンパク質発現プロファイルを前記基準タンパク質発現プロファイルと比較する段階
を含み、
前記対象のタンパク質発現プロファイルと前記基準タンパク質発現プロファイルの一致は、前記対象が、非CNS癌を有しているか、または発症する可能性が高いことを示す、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B−1】
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【図5B−2】
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【図5C−1】
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【図5C−2】
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【図5C−3】
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【図5C−4】
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【図5D−1】
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【図5D−2】
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【図5D−3】
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【図5E−1】
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【図5E−2】
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【図5E−3】
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【図5E−4】
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【図5F−1】
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【図5F−2】
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【図5F−3】
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【図5F−4】
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【図5F−5】
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【図5G−1】
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【図5G−2】
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【図5G−3】
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【図5H−1】
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【図5H−2】
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【図5H−3】
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【図5I−1】
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【図5I−2】
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【図5I−3】
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【図5J−1】
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【図5J−2】
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【図5J−3】
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【図5J−4】
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【図5J−5】
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【図5J−6】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E−1】
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【図8E−2】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D−1】
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【図9D−2】
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【図9E−1】
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【図9E−2】
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【図9F】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D−1】
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【図10D−2】
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【図10E】
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【図10F】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D−1】
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【図14D−2】
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【図14E−1】
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【図14E−2】
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【図14E−3】
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【図14F−1】
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【図14F−2】
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【図14G−1】
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【図14G−2】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【図15E−1】
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【図15E−2】
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【図15F−1】
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【図15F−2】
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【図15G−1】
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【図15G−2】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図16D−1】
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【図16D−2】
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【図16E−1】
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【図16E−2】
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【図16F−1】
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【図16F−2】
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【図16G−1】
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【図16G−2】
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【図17A】
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【図17B−1】
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【図17B−2】
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【図17B−3】
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【図17B−4】
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【図17C−1】
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【図17C−2】
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【図17C−3】
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【図17C−4】
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【図17C−5】
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【図17C−6】
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【図17D−1】
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【図17D−2】
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【図17D−3】
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【図17D−4】
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【図17D−5】
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【図17D−6】
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【図18】
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【図19A−C】
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【図19D−F】
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【図19G−I】
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【図19J−1】
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【図19J−2】
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【図19J−3】
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【図19J−4】
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【図19J−5】
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【図19J−6】
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【図19J−7】
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【図19J−8】
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【図19J−9】
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【図19K−1】
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【図19K−2】
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【図19K−3】
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【図19K−4】
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【図19K−5】
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【図19K−6】
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【図19K−7】
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【図19K−8】
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【図19K−9】
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【図19K−10】
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【図19K−11】
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【図19L−1】
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【図19L−2】
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【図19L−3】
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【図19L−4】
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【図19L−5】
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【図19L−6】
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【図20−1】
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【図20−2】
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【図20−3】
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【図20−4】
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【図20−5】
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【図20−6】
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【図20−7】
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【図20−8】
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【図20−9】
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【図20−10】
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【図20−11】
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【図20−12】
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【図20−13】
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【図20−14】
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【図20−15】
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【図20−16】
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【図20−17】
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【図20−18】
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【図20−19】
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【図20−20】
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【図20−21】
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【図20−22】
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【図20−23】
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【図20−24】
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【図20−25】
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【図20−26】
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【図20−27】
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【図20−28】
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【図20−29】
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【図20−30】
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【図20−31】
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【図20−32】
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【図20−33】
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【図20−34】
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【図20−35】
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【図20−36】
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【図21A】
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【図21B】
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【図21C】
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【図22A】
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【図22B】
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【図23A】
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【図23B】
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【図23C】
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【公表番号】特表2010−509909(P2010−509909A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536825(P2009−536825)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際出願番号】PCT/IB2007/004629
【国際公開番号】WO2009/037527
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(506005156)ジェントロン リミテッド ライアビリティー カンパニー (2)
【Fターム(参考)】