癌遺伝子の発見のための組成物および方法
本発明は、癌を発症するように遺伝子的に改変されたトランスジェニックな非ヒト哺乳類動物を特徴とする。本発明はまた、染色体的に不安定な動物モデルを用いてヒトの癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子エレメントを同定するための方法に関する。そのような遺伝子的改変に関する情報を使用して、癌治療の結果を予測し、治療効果を最大限にするために患者集団を階層化することができる。1つの態様において、本発明は、癌を発症するように遺伝子的に改変された非ヒトトランスジェニック哺乳類を提供し、この非トランスジェニック哺乳類は、この哺乳類に由来する癌細胞のゲノムが、遺伝子改変を有さない哺乳類における染色体構造異常の頻度よりも少なくとも5倍高い頻度において染色体構造異常を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
この出願は、2007年5月21日に出願された米国仮出願第60/931,294号(この内容は、その全体が参考として本明細書に援用される)の利益およびそれに対する優先権を主張する。
【0002】
(政府支援)
本明細書に記載される研究は、認定番号CA84628(RO1)およびCA84313(UO1)により全体および部分において資金援助されている。合衆国政府は、本発明における特定の権利を有する場合がある。
【0003】
本発明は、一般的に癌遺伝子の発見のためのゲノム不安定な動物癌モデルの使用に関する。
【背景技術】
【0004】
癌は、突然変異の確率論的な獲得により駆動され、そして自然の選択により形状付与される遺伝的疾患である。多くのヒト癌の特徴であるゲノムの不安定性は、これらの突然変異を拡大し、調節不能な成長に至る臨界的な障壁を細胞が乗り越えることができるようにし、そしてこのため、悪性への転換における決定的事象を予測することになる。ゲノムの不安定性は、染色体異常、例えば転座および増幅により顕在化する。腫瘍進行の過程の間にどのようにして、かついつ、有意なゲノム不安定性が生じるか、そしてその時点の後に癌が治癒できるのか、またはなお含有されるのかが極めて重要で、大部分が未解決の問題となっている。
【0005】
ヒト癌腫に関する動物モデルは、癌の治療の検討および開発のための価値ある手段である。自身のゲノムに取り込まれた癌遺伝子または抑制された腫瘍サプレッサー遺伝子を有するネズミモデルは、ヒト癌の研究のために広範に使用されている。しかしながら、ヒト癌遺伝子発見の取り組みの指針となるネズミモデルの最大の利用に対する障害は、大部分の標準的な癌の遺伝子操作マウスモデルの相対的に良性の細胞遺伝的なプロファイルである(例えば、非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4参照)。これらのモデルはヒト癌の多くの型に関連する全般的な染色体異常を反映していない。
【0006】
ヒト癌の過剰な染色体不安定性をより緊密に模倣している、数種の癌易発症性のネズミモデルが最近開発されている。例えば、Artandi等は、テロメラーゼ定義p53突然変異体マウスモデルにおける上皮癌の発症を記載しており(非特許文献5);Zhu等は、p53および非相同末端結合(NHEJ)の両方が欠損しているマウスモデルにおける癌遺伝子の転座および増幅を記載しており(非特許文献6);Olive等は、優性p53突然変異体対立遺伝子を有するリー・フラウメニ症候群マウスモデルを記載しており(非特許文献7);Lang等は、p53ミスセンス突然変異を有するリー・フラウメニ症候群マウスモデルを記載しており(非特許文献8);そしてHingorani等は、TP53およびKRAS2の突然変異体型を発現する膵臓腺管癌のマウスモデルを記載している(非特許文献9)。しかしながら、これらのマウスモデルにおける染色体異常の頻度は相対的に低値であり、そしてトランスジェニックマウスは必ずしも悪性の癌を発症しない。癌ゲノム解析を促進するためには、ヒト癌に匹敵する頻度の染色体異常を有する、癌を発症するように遺伝子的に改変された新しい哺乳類モデルを作成する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】N.Bardeesy等、Proc Natl Acad Sci USA(2006)103(15),5947
【非特許文献2】M.Kim等、Cell(2006)125(7),1269
【非特許文献3】L.Zender等、Cell(2006)125(7),1253
【非特許文献4】A.Sweet−Cordero等、Genes Chromosomes Cancer(2006)45(4),338
【非特許文献5】Artandi等、Nature(2000)406(6796),641
【非特許文献6】Zhu等、Cell(2002)109(7),811
【非特許文献7】Olive等、Cell(2004)119(6),847
【非特許文献8】Lang等、Cell(2004)119(6),861
【非特許文献9】Hingorani等、Cancer Cell(2005)7(5),469
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
高度に再配列され突然変異された癌ゲノムは、癌の過程を駆動する病因事象の同定における重大な難点を呈している。本明細書において、本発明者等は、癌遺伝子の発見における動物モデルの利用性および癌関連コピー数変化における異種間のオーバーラップの程度を評価するために、染色体不安定性を有するリンパ腫易発症性のマウスを操作した。ターゲティングされた再配列決定との統合で、本発明者等の比較癌ゲノム試験によって、ヒトT細胞急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫(T−ALL)における共通して欠失または突然変異された腫瘍サプレッサーとしてFBXW7およびPTENを同定した。より一般的には、ネズミ癌は、ヒトT−ALLのみならず造血系、間葉系および上皮系型の多様な腫瘍中に存在する改変にシンテニーな遺伝子座をターゲティングする広範な再発性のクローン増幅および欠失を獲得する。即ちこれらの結果は、ネズミおよびヒトの腫瘍は、悪性の表現型に向かって進化するに従い、オーソロガスな遺伝子事象により駆動される共通の生物学的過程を経験しているという見解を裏付けている。ゲノム事象の高度に一致する性質は、ヒト癌において生物学的に関連性のある駆動事象の発見におけるゲノム不安定な動物癌モデルの使用を促すものである。
【0009】
1つの態様において、本発明は、癌を発症するように遺伝子的に改変された非ヒトトランスジェニック哺乳類であって、哺乳類に由来する癌細胞のゲノムが、遺伝子改変を有さないそのような哺乳類における染色体構造異常の頻度よりも少なくとも5倍高い頻度において染色体構造異常を含むような、非トランスジェニック哺乳類を提供する。特定の実施形態においては、哺乳類はげっ歯類である。特定の実施形態においては、哺乳類はマウスである。
【0010】
特定の実施形態においては、哺乳類は、DNA修復機能に関与する蛋白質(例えば非相同末端結合(NHEJ)に関与する蛋白質、相同組み換えに関与する蛋白質、またはDNA修復ヘリカーゼ)をコードする1つ以上の遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子、およびテロメア長を合成および維持する成分をコードする1つ以上の遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子の操作された不活性化を含む。あるいは、哺乳類は、DNA修復機能に関与する蛋白質をコードする1つ以上の遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子、および、DNA損傷チェックポイント蛋白質をコードする1つ以上の遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子の操作された不活性化を含んでよい。あるいは、哺乳類は、DNA損傷チェックポイント蛋白質をコードする1つ以上の遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子、およびテロメア長を合成および維持する成分をコードする1つ以上の遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子の操作された不活性化を含んでよい。
【0011】
特定の実施形態においては、哺乳類のゲノムは更に、活性化された癌遺伝子、不活性化された腫瘍抑制遺伝子、またはそれらの両方のような、少なくとも1つの追加的な癌促進性の改変を含む。
【0012】
別の態様において、ヒト癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子エレメントの同定のための目的の染色体領域を同定する方法であって、染色体不安定性を生じるように操作された非ヒト哺乳類由来の癌細胞の集団におけるDNAコピー数の変化を同定する工程を含む、方法を提供する。DNAコピー数の変化の染色体領域は、ヒト癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子エレメントの同定のための目的の染色体領域である。
【0013】
特定の実施形態においては、DNAコピー数の変化は、非ヒト哺乳類由来の2つ以上の癌細胞において再発性である。DNAコピー数の変化はDNAの増加またはDNAの減少であり得る。
【0014】
別の態様において、ヒト癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子エレメントの同定のための目的の染色体領域を同定する方法であって、染色体不安定性を生じるように操作された非ヒト哺乳類由来の癌細胞の集団における染色体構造異常を同定する工程を含む、方法を提供する。染色体構造異常を含有する染色体領域は、ヒト癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子エレメントを同定するための目的の染色体領域である。
【0015】
特定の実施形態においては、該方法は更に、(1)非ヒト哺乳類由来の癌細胞の集団におけるDNAコピー数の変化を同定する工程、および(2)染色体構造異常およびDNAコピー数の変化を含有する非ヒト哺乳類の癌細胞のゲノム内の染色体領域を同定する工程を含む。染色体構造異常およびDNAコピー数の変化を含有する染色体領域は、ヒト癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子エレメントの同定のための目的の染色体領域である。特定の実施形態においては、該方法は更に、DNAコピー数の変化の均一なコピー数のセグメントの境界を測定する工程を含む。
【0016】
別の態様において、本発明は、潜在的にヒトの癌に関連する遺伝子を同定するための方法であって、以下の工程:(a)目的の染色体領域(例えばヒト癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子エレメントを含むもの)を同定すること;(b)非ヒト哺乳類における目的の染色体領域内部の遺伝子または遺伝子エレメントを同定すること;および、(c)工程(b)において同定された遺伝子または遺伝子エレメントに相当するヒト遺伝子または遺伝子エレメントを同定することを含む、方法を提供する。ヒト遺伝子または遺伝子エレメントは潜在的にヒトの癌に関連する遺伝子または遺伝子エレメントである。特定の実施形態においては、ヒト遺伝子は工程(b)において同定された遺伝子または遺伝子エレメントに対してオーソロガス、パラロガス、または相同である。特定の実施形態においては、該方法は更に、工程(b)において同定された非ヒト哺乳類の遺伝子または遺伝子エレメント、工程(c)において同定されたヒト遺伝子または遺伝子エレメント、またはそれらの両方における突然変異を検出する工程を含む。
【0017】
別の態様において、本発明は、潜在的にヒト癌に関連する遺伝子または遺伝子エレメントを同定する方法であって、以下の工程:(a)ゲノム不安定性を生じるように操作された非ヒト哺乳類に由来する癌細胞の集団におけるDNAコピー数の変化を検出すること、(b)工程(a)において検出されたDNAコピー数の変化の境界内部に位置する遺伝子または遺伝子エレメントを同定すること、および(c)工程(b)において同定された遺伝子または遺伝子エレメントに相当し、そしてヒト癌細胞中のDNAコピー数の変化、または染色体構造異常の境界内部に位置するヒト遺伝子または遺伝子エレメントを同定することを含む、方法を提供する。工程(c)において同定されたヒト遺伝子または遺伝子エレメントは、ヒト癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子エレメントである。
【0018】
別の態様において、本発明は、潜在的にヒト癌に関連する遺伝子または遺伝子エレメントを同定する方法であって、以下の工程:(a)ゲノム染色体不安定性を生じるように操作された非ヒト哺乳類に由来する癌細胞の集団における染色体構造異常を検出すること、(b)工程(a)において検出された染色体構造異常の部位に位置する遺伝子または遺伝子エレメントを同定すること、および(c)工程(b)において同定された遺伝子または遺伝子エレメントに相当し、そしてヒト癌細胞中のDNAコピー数の変化の境界内部に、または染色体構造異常の部位に位置するヒト遺伝子または遺伝子エレメントを同定することを含む、方法を提供する。工程(c)において同定されたヒト遺伝子または遺伝子エレメントは、ヒト癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子エレメントである。特定の実施形態においては、該方法は更に、工程(b)において同定された非ヒト哺乳類の遺伝子または遺伝子エレメント、工程(c)において同定されたヒト遺伝子または遺伝子エレメント、またはそれらの両方における突然変異を検出する工程を含む。
【0019】
特定の実施形態においては、該方法は、再発性の遺伝子コピー数の変化の最小共通領域(MCR)を定義する工程を更に含む。特定の実施形態においては、MCRは2つ以上の試料の間のオーバーラップの境界により定義される。特定の実施形態においては、MCRは、ある単一の腫瘍の少なくとも1つの他の腫瘍におけるより大きい改変のバックグラウンドに対する境界により定義される。
【0020】
別の態様において、本発明は、γ−セクレターゼ阻害剤療法に対して低下した応答を有する場合がある、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T−ALL)を有する対象を同定するための方法であって、該対象に由来する腫瘍細胞におけるFBXW7の発現または活性を検出することを含む、方法を提供する。対照と比較した場合のEBXW7の低下した発現または活性は、該対象がγ−セクレターゼ阻害剤療法に対して低下した応答を有する場合があることを示している。
【0021】
特定の実施形態においては、該方法は更に、対象に由来する腫瘍細胞中のNOTCH1の発現または活性を検出することを含む。対照と比較した場合のNOTCH1の上昇した発現または活性は、該対象がγ−セクレターゼ阻害剤療法に対して低下した応答を有する場合があることを示している。
【0022】
別の態様において、本発明は、PI3K経路阻害剤での治療から利益を被る場合がある、T−ALLを有する対象を同定するための方法であって、該対象に由来する腫瘍細胞中のPTENの発現または活性を検出することを含む、方法を提供する。対照と比較した場合のPTENの低下した発現または活性は、該対象がPI3K阻害剤での治療から利益を被る場合があることを示している。特定の実施形態においては、該方法は更にPI3K阻害剤で該対象を治療することを含む。
【0023】
別の態様において、本発明は、対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有するかどうかを評価する方法であって、該対象に由来する生物学的試料における、表1の増幅されたMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを測定することを含む、方法を提供する。対照と比較した場合の遺伝子の発現または活性の上昇は、該対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有することを示している。あるいは、対照と比較した場合に、表1の欠失したMCR中に位置する癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルの低下がある場合は、低下した発現または活性のレベルはまた、該対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有することを示している。
【0024】
別の態様において、本発明は、対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有するかどうかを評価する方法であって、該方法が、該対象に由来する生物学的試料における、表1に列挙した少なくとも1つの増幅された最小共通領域(MCR)のコピー数を測定することを含む、方法を提供する。MCRの正常なコピー数と比較した場合の試料中のMCRの増大したコピー数は、該対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有することを示している。あるいは、MCRの正常なコピー数と比較した場合の試料中の欠失したMCR(同じく表1に列挙)の減少したコピー数は、該対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有することを示している。MCRの正常なコピー数は、典型的には染色体当たり1つである。
【0025】
別の態様において、本発明は、対象における癌の進行をモニタリングするための方法であって、該方法が以下の工程:a)表1に列挙する癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを、第1の時点において該対象由来の生物学的試料中で測定すること;b)その後の時点において工程a)を反復すること;およびc)工程a)およびb)における遺伝子の発現または活性を比較すること、そしてそれから該対象における癌の進行をモニタリングすることを含む、方法を提供する。
【0026】
別の態様において、本発明は、対象における癌を治療するための試験薬剤の薬効を評価する方法であって、以下の工程:a)試験薬剤の存在下、該対象由来の生物学的試料中の表1の増幅されたMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを測定すること;およびb)試験薬剤の非存在下、該対象由来の生物学的試料中の遺伝子の発現または活性のレベルを測定することを含む、方法試験薬剤を提供する。工程(b)と比較した場合の工程(a)における遺伝子の低下した発現または活性は、該対象における癌を治療するための試験薬剤の潜在的な薬効を示している。あるいは、試験薬剤が表1における欠失したMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性を上昇させる場合、該試験薬剤はまた、該対象における癌を治療するために潜在的に有効である。
【0027】
別の態様において、本発明は、対象における癌を治療するための療法の効力を評価する方法であって、以下の工程:a)該対象に療法の少なくとも一部分を提供する前に、該対象由来の生物学的試料中の表1の増幅されたMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを測定すること;およびb)該療法の一部分の提供の後の該対象由来の生物学的試料中の遺伝子の発現または活性のレベルを測定することを含む、方法を提供する。工程(b)と比較した場合の工程(a)における遺伝子の低下した発現または活性は、該対象における癌を治療するための療法の効力を示している。あるいは、療法が表1における欠失したMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性を上昇させる場合、該療法はまた、対象における癌を治療するために潜在的に有効である。
【0028】
別の態様において、本発明は癌に罹患した対象を治療する方法であって、表1の増幅されたMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを低下させる薬剤を該対象に投与することを含む、方法を提供する。あるいは、本発明は、癌に罹患した対象を治療する方法であって、表1の欠失したMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを上昇させる薬剤を該対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0029】
特定の実施形態においては、該薬剤は、表1に列挙する癌遺伝子または候補癌遺伝子に特異的に結合する抗体もしくはその抗原結合フラグメントである。
【0030】
別の態様において、本発明は、対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有するかどうかを評価する方法であって、該対象に由来する生物学的試料における、表5に列挙した少なくとも1つの最小共通領域(MCR)のコピー数を測定することを含む、方法を提供する。MCRの正常なコピー数と比較した場合の、試料中のMCRのコピー数の変化は、該対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有することを示している。MCRの正常なコピー数は、典型的には染色体当たり1つである。
【0031】
特定の実施形態においては、癌はリンパ腫である。特定の実施形態においては、リンパ腫はT−ALLである。
【0032】
別の態様において、本発明は、ゲノム不安定性非ヒト哺乳類モデル(本発明のゲノム不安定性マウスモデルを包含する)を用いて同定されたMCRのコピー数を、MCRの正常なコピー数と比較することにより、対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有するかどうかを評価する方法を提供する。MCRの正常なコピー数は、典型的には染色体当たり1つである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1A】TKO腫瘍のスペクトル核型(SKY)プロファイル。テロメア機能不全を伴うか伴わない、選択されたTKO腫瘍に関する代表的な中期のGバンドおよびSKY画像。図1Aは、G0(mTerc+/+または+/−)を示し、図1Bは、G1−G4(mTerc−/−)TKO腫瘍を示す。写真はテロメア機能不全を有するTKO腫瘍における染色体構造異常の頻度の全体的上昇を示す。非相互転座および染色体フラグメントは矢印で示す。図1Cは、合成ネズミTKO(左;A689)およびヒト(右;HPB−ALL)TCRB欠失の代表的なアレイCGHのLog2比のプロットを示す。Y軸、コピー数のlog2比(通常はlog2=0に設定);この軸に対して増幅は上、欠失は下となる;X軸、染色体位置。
【図1B】TKO腫瘍のスペクトル核型(SKY)プロファイル。テロメア機能不全を伴うか伴わない、選択されたTKO腫瘍に関する代表的な中期のGバンドおよびSKY画像。図1Aは、G0(mTerc+/+または+/−)を示し、図1Bは、G1−G4(mTerc−/−)TKO腫瘍を示す。写真はテロメア機能不全を有するTKO腫瘍における染色体構造異常の頻度の全体的上昇を示す。非相互転座および染色体フラグメントは矢印で示す。図1Cは、合成ネズミTKO(左;A689)およびヒト(右;HPB−ALL)TCRB欠失の代表的なアレイCGHのLog2比のプロットを示す。Y軸、コピー数のlog2比(通常はlog2=0に設定);この軸に対して増幅は上、欠失は下となる;X軸、染色体位置。
【図1C】TKO腫瘍のスペクトル核型(SKY)プロファイル。テロメア機能不全を伴うか伴わない、選択されたTKO腫瘍に関する代表的な中期のGバンドおよびSKY画像。図1Aは、G0(mTerc+/+または+/−)を示し、図1Bは、G1−G4(mTerc−/−)TKO腫瘍を示す。写真はテロメア機能不全を有するTKO腫瘍における染色体構造異常の頻度の全体的上昇を示す。非相互転座および染色体フラグメントは矢印で示す。図1Cは、合成ネズミTKO(左;A689)およびヒト(右;HPB−ALL)TCRB欠失の代表的なアレイCGHのLog2比のプロットを示す。Y軸、コピー数のlog2比(通常はlog2=0に設定);この軸に対して増幅は上、欠失は下となる;X軸、染色体位置。
【図2】TKOモデルの特性化。図2Aは、p53野生型、ヘテロ接合およびヌルバックグラウンドに対するG3−G4TKOマウスに関する胸腺リンパ腫非含有生存のKaplan−Meier曲線を示すグラフである。図2Bは、PCRを用いたp53に関するヘテロ接合性の損失を示す;N、正常;T、腫瘍。図2Cは、細胞表面マーカーCD4およびCD8に対する抗体を用いたTKO腫瘍の代表的FACSプロファイルである。図2Dは、G0(上)およびG1−G4(下)の胸腺リンパ腫からの中期スプレッドより得られた代表的なSKY画像である。等しい数量の中期スプレッド(90)のうち、4533染色体当たり410異常(9%)がG0で観察されたのに対し、G1−C4TKO腫瘍では3659中1254(34%)であった。倍数性のレベルには有意差は観察されなかった。図2Eは、G0(青)およびG1−G4(赤)の胸腺リンパ腫におけるSKYにより検出された細胞遺伝的異常の総数の定量を示すプロットである。暗色は非相互転座を示す事象の比率を示し、そして明色は二動原体/ロバートソニアン様再配列を表す比率を示す。図2Fは、35TKOリンパ腫に関するアレイCGHにより定義されたCNAの再発プロットである。X軸は各染色体の物理的位置を示し、そしてY軸はコピー数の変化を示す腫瘍の%を示す。各遺伝子座の獲得、増幅、損失および欠失を保有している腫瘍のパーセントを以下のスキームにより、即ち暗赤色(log2比による獲得=>0.3)および緑色(log2比による損失<=−0.3)を明赤色(log2比による増幅=>0.6)および明緑色(log2比による欠失<=−0.6)とともにプロットする。Tcrβ、Tcrα/δ、およびTcrγにおける生理学的に関連性のあるCNAの位置は矢印で示し、そして本文中考察した他の遺伝子座(Notch1、Pten)はアスタリスクで示す。
【図3A】Notch1アレイCGHおよびSKY。図3Aは、Notch1の3’末端をターゲティングする限局的増幅を示すネズミTKOリンパ腫A1052に由来する代表的なアレイCHGHlog2比プロット、およびその領域における他の遺伝子に相対的なその位置を示す(http://genome.ucsc.edu/,NBCI mouse build34)。Y軸、コピー数のlog2比(通常はlog2=0に設定);この軸に対して増幅は上、欠失は下となる;X軸、染色体位置。図3Bは、Notch1の3’末端をターゲティングする染色体2増幅を保有するネズミTKO腫瘍A1052およびA895細胞のSKY解析である。上側パネル:矢印で標示したネズミ染色体2の関与する非相互転座を示す、記載された腫瘍に由来する中期スプレッド;アスタリスクは異常なバンドchr2A3を示す。下側パネル:記載されるように、染色体2および他の染色体の関与する個々の再配列した染色体の代表的SKY画像。各パネルは、記載した再配列染色体に関するそのままのスペクトル画像(左)、DAPI画像(中)、およびコンピューター解釈スペクトル画像(右)の複合物である。図3Cは、FISHを用いたNotch1においてオーバーラップしている2つの近接BACプローブを分離する切断点を示す。赤シグナル、BACプローブRP24−369L23;緑シグナル、BACプローブRP23−412O13。
【図3B】Notch1アレイCGHおよびSKY。図3Aは、Notch1の3’末端をターゲティングする限局的増幅を示すネズミTKOリンパ腫A1052に由来する代表的なアレイCHGHlog2比プロット、およびその領域における他の遺伝子に相対的なその位置を示す(http://genome.ucsc.edu/,NBCI mouse build34)。Y軸、コピー数のlog2比(通常はlog2=0に設定);この軸に対して増幅は上、欠失は下となる;X軸、染色体位置。図3Bは、Notch1の3’末端をターゲティングする染色体2増幅を保有するネズミTKO腫瘍A1052およびA895細胞のSKY解析である。上側パネル:矢印で標示したネズミ染色体2の関与する非相互転座を示す、記載された腫瘍に由来する中期スプレッド;アスタリスクは異常なバンドchr2A3を示す。下側パネル:記載されるように、染色体2および他の染色体の関与する個々の再配列した染色体の代表的SKY画像。各パネルは、記載した再配列染色体に関するそのままのスペクトル画像(左)、DAPI画像(中)、およびコンピューター解釈スペクトル画像(右)の複合物である。図3Cは、FISHを用いたNotch1においてオーバーラップしている2つの近接BACプローブを分離する切断点を示す。赤シグナル、BACプローブRP24−369L23;緑シグナル、BACプローブRP23−412O13。
【図3C】Notch1アレイCGHおよびSKY。図3Aは、Notch1の3’末端をターゲティングする限局的増幅を示すネズミTKOリンパ腫A1052に由来する代表的なアレイCHGHlog2比プロット、およびその領域における他の遺伝子に相対的なその位置を示す(http://genome.ucsc.edu/,NBCI mouse build34)。Y軸、コピー数のlog2比(通常はlog2=0に設定);この軸に対して増幅は上、欠失は下となる;X軸、染色体位置。図3Bは、Notch1の3’末端をターゲティングする染色体2増幅を保有するネズミTKO腫瘍A1052およびA895細胞のSKY解析である。上側パネル:矢印で標示したネズミ染色体2の関与する非相互転座を示す、記載された腫瘍に由来する中期スプレッド;アスタリスクは異常なバンドchr2A3を示す。下側パネル:記載されるように、染色体2および他の染色体の関与する個々の再配列した染色体の代表的SKY画像。各パネルは、記載した再配列染色体に関するそのままのスペクトル画像(左)、DAPI画像(中)、およびコンピューター解釈スペクトル画像(右)の複合物である。図3Cは、FISHを用いたNotch1においてオーバーラップしている2つの近接BACプローブを分離する切断点を示す。赤シグナル、BACプローブRP24−369L23;緑シグナル、BACプローブRP23−412O13。
【図4A】ネズミおよびヒトT−ALLの両方におけるNOTCH1改変。図4Aは、ネズミTKOおよびヒトT−ALL腫瘍におけるNotch1に影響する配列改変の位置のグラフ表示である。各マーカーは個々の細胞系統/患者を示す。図4Bは、ネズミ完全長Notch1(FL;上)、切断された活性Notch1(V1744;中)およびチューブリン負荷対照(下)のウエスタンブロット解析を示す。高レベルの活性化Notch1蛋白質が多くのTKO腫瘍、例えば3’転座(青色:A577、A1052、A1251)およびトランケーション欠失突然変異(赤色:A494、A1040)を保有するものにおいて発現され、これらにおいてはより急速に遊走するV1744型が著明である。ヒトALL−SIL(左)および正常マウス胸腺(右)を対照に対して負荷した。図4Cは、高レベルのNotch1mRNAは、TKO腫瘍の発現プロファイルにより評価されるように、Notch1蛋白質の公知の下流標的の高いmRNAレベルと相関していることを示している。各バーは個々のプローブセットを示す。図4Bに示す通り、青字の試料はNotch1の近傍の3’転座を保有しており、赤字の試料はトランケーション欠失突然変異を保有していることを示す。
【図4B】ネズミおよびヒトT−ALLの両方におけるNOTCH1改変。図4Aは、ネズミTKOおよびヒトT−ALL腫瘍におけるNotch1に影響する配列改変の位置のグラフ表示である。各マーカーは個々の細胞系統/患者を示す。図4Bは、ネズミ完全長Notch1(FL;上)、切断された活性Notch1(V1744;中)およびチューブリン負荷対照(下)のウエスタンブロット解析を示す。高レベルの活性化Notch1蛋白質が多くのTKO腫瘍、例えば3’転座(青色:A577、A1052、A1251)およびトランケーション欠失突然変異(赤色:A494、A1040)を保有するものにおいて発現され、これらにおいてはより急速に遊走するV1744型が著明である。ヒトALL−SIL(左)および正常マウス胸腺(右)を対照に対して負荷した。図4Cは、高レベルのNotch1mRNAは、TKO腫瘍の発現プロファイルにより評価されるように、Notch1蛋白質の公知の下流標的の高いmRNAレベルと相関していることを示している。各バーは個々のプローブセットを示す。図4Bに示す通り、青字の試料はNotch1の近傍の3’転座を保有しており、赤字の試料はトランケーション欠失突然変異を保有していることを示す。
【図4C】ネズミおよびヒトT−ALLの両方におけるNOTCH1改変。図4Aは、ネズミTKOおよびヒトT−ALL腫瘍におけるNotch1に影響する配列改変の位置のグラフ表示である。各マーカーは個々の細胞系統/患者を示す。図4Bは、ネズミ完全長Notch1(FL;上)、切断された活性Notch1(V1744;中)およびチューブリン負荷対照(下)のウエスタンブロット解析を示す。高レベルの活性化Notch1蛋白質が多くのTKO腫瘍、例えば3’転座(青色:A577、A1052、A1251)およびトランケーション欠失突然変異(赤色:A494、A1040)を保有するものにおいて発現され、これらにおいてはより急速に遊走するV1744型が著明である。ヒトALL−SIL(左)および正常マウス胸腺(右)を対照に対して負荷した。図4Cは、高レベルのNotch1mRNAは、TKO腫瘍の発現プロファイルにより評価されるように、Notch1蛋白質の公知の下流標的の高いmRNAレベルと相関していることを示している。各バーは個々のプローブセットを示す。図4Bに示す通り、青字の試料はNotch1の近傍の3’転座を保有しており、赤字の試料はトランケーション欠失突然変異を保有していることを示す。
【図5A】FBXW7改変はヒトT−ALLにおいて共通であり、そしてネズミTKO腫瘍において保存されている。図5Aは、マウスTKOおよびヒトT−ALL細胞系統の両方においてFBXW7の欠失をもたらすCNAの保存を示す、log2比アレイCGHプロットのグループであり、Fbxw7のゲノム位置は緑色で示す。Y軸、コピー数のlog2比(通常はlog2=0に設定);この軸に対して増幅は上、欠失は下となる;X軸、染色体位置。図5Bは、記載したネズミTKO腫瘍におけるリアルタイムqPCRにより評価した場合の、マウスFbxw7 mRNAの相対的発現レベルを示す。図5Cは、ヒトT−ALL患者および細胞系統のパネルにおいて同定されたヒトFBXW7における突然変異の位置のグラフ表示である。各マーカーは個々の細胞系統/患者を示す。
【図5B】FBXW7改変はヒトT−ALLにおいて共通であり、そしてネズミTKO腫瘍において保存されている。図5Aは、マウスTKOおよびヒトT−ALL細胞系統の両方においてFBXW7の欠失をもたらすCNAの保存を示す、log2比アレイCGHプロットのグループであり、Fbxw7のゲノム位置は緑色で示す。Y軸、コピー数のlog2比(通常はlog2=0に設定);この軸に対して増幅は上、欠失は下となる;X軸、染色体位置。図5Bは、記載したネズミTKO腫瘍におけるリアルタイムqPCRにより評価した場合の、マウスFbxw7 mRNAの相対的発現レベルを示す。図5Cは、ヒトT−ALL患者および細胞系統のパネルにおいて同定されたヒトFBXW7における突然変異の位置のグラフ表示である。各マーカーは個々の細胞系統/患者を示す。
【図5C】FBXW7改変はヒトT−ALLにおいて共通であり、そしてネズミTKO腫瘍において保存されている。図5Aは、マウスTKOおよびヒトT−ALL細胞系統の両方においてFBXW7の欠失をもたらすCNAの保存を示す、log2比アレイCGHプロットのグループであり、Fbxw7のゲノム位置は緑色で示す。Y軸、コピー数のlog2比(通常はlog2=0に設定);この軸に対して増幅は上、欠失は下となる;X軸、染色体位置。図5Bは、記載したネズミTKO腫瘍におけるリアルタイムqPCRにより評価した場合の、マウスFbxw7 mRNAの相対的発現レベルを示す。図5Cは、ヒトT−ALL患者および細胞系統のパネルにおいて同定されたヒトFBXW7における突然変異の位置のグラフ表示である。各マーカーは個々の細胞系統/患者を示す
【図6A】TKO腫瘍におけるPtenの限局的欠失。図6Aは、Ptenを包含する限局的欠失を呈しているTKOリンパ腫に由来する代表的なアレイCGHlog2比プロット、およびその領域における他の遺伝子に相対的なその位置を示す(http://genome.ucsc.edu/,NBCImouse build34)。Y軸、コピー数のlog2比(通常はlog2=0に設定);この軸に対して増幅は上、欠失は下となる;X軸、染色体位置。図6Bは、リアルタイムqPCRの結果(数種の腫瘍における欠失を示す)を総括したものであり、記載した領域に対するプライマーセット(矢印)およびアレイCGH60量体オリゴプローブ(Agilent 44K アレイ)の位置を用いたリアルタイムqPCRをグラフに表示している。A494は欠失の証拠を有さない対照として示す。
【図6B】TKO腫瘍におけるPtenの限局的欠失。図6Aは、Ptenを包含する限局的欠失を呈しているTKOリンパ腫に由来する代表的なアレイCGHlog2比プロット、およびその領域における他の遺伝子に相対的なその位置を示す(http://genome.ucsc.edu/,NBCImouse build34)。Y軸、コピー数のlog2比(通常はlog2=0に設定);この軸に対して増幅は上、欠失は下となる;X軸、染色体位置。図6Bは、リアルタイムqPCRの結果(数種の腫瘍における欠失を示す)を総括したものであり、記載した領域に対するプライマーセット(矢印)およびアレイCGH60量体オリゴプローブ(Agilent 44K アレイ)の位置を用いたリアルタイムqPCRをグラフに表示している。A494は欠失の証拠を有さない対照として示す。
【図7】ヒトおよびマウスT−ALLにおけるPTEN遺伝子改変の保存。図7Aは、マウスTKOおよびヒトT−ALL細胞系統の両方における、PTENの欠失をもたらすCNAの保存を示すlog2比アレイCGHプロットのグループであり、Ptenのゲノム位置は緑色で示す。Y軸、コピー数のlog2比(通常はlog2=0に設定);この軸に対して増幅は上、欠失は下となる;X軸、染色体位置。図7Bは、ネズミTKOおよびヒトT−ALL細胞系統のパネルにおけるPTEN、ホスホAkt、およびAktの発現レベルを示すウエスタンブロット解析を示す。BE13およびPEERは同一分類群系統である。負荷対照としてチューブリンを同時にプローブした。赤色の試料は確認された配列の突然変異を保有しており、青色の試料はCGH検出欠失を保有している。図7Cは、ネズミTKO腫瘍におけるPten−Akt軸の他のメンバーに対するCNAの効果を示すlog2比アレイCGHプロットのグループである。各遺伝子(Akt1、Tsc1)の位置は緑色で示す。
【図8】Pten突然変異/欠失を有するTKO細胞は、薬物トリシリビンによるホスホAktの阻害に対して感受性である。細胞を3連でプレーティングし、そして48時間トリシリビンまたはビヒクル単独の記載用量に曝露し、そして次に生細胞に関してMTS試験により定量した。生存細胞の画分をビヒクル単独における生存(1に設定)と相対比較しながらプロットする。腫瘍A1040は野生型のPten発現を保持しており、そしてA1005はPtenの1コピーにおける点突然変異を保有しているのに対し、細胞系統A577、A1240、A1252、およびA494はPten発現に関して欠損性である。
【図9】ネズミTKOリンパ腫および多様な起源のヒト腫瘍のゲノム改変間の多大なオーバーラップ。図9Aは、異種間のオーバーラップの統計学的解析の結果を総括したものである。本発明者等は、記載した腫瘍の型に由来するヒトアレイCGHプロファイルを入手した。本発明者等は、更に実施例のセクション(特に実施例4)に記載したようにMCRを定義した。各セットの特徴をパネルの左側部分に列挙する。相当するヒトCGHデータセットとのシンテニーなオーバーラップを有するTKO MCR(amp、増幅;del、欠失)の数をパネルの右側に記載し、各々に対するp値は10,000順列に基づく。図9Bは、1つまたは多数のヒト腫瘍型(セグメントの異なる色で示す)において同定されたシンテニーなオーバーラップを有するTKO MCR(各セグメント内に記載)の数のPieチャート表示のグループである;左、増幅;右、欠失。例えば、図9A中の61シンテニー増幅のうち21が2つの異なるヒト腫瘍CGHデータセット中に観察された。図9Cは、ネズミTKO MCRおよびT−ALL、多発性骨髄腫、または固形腫瘍(神経膠芽細胞腫、黒色腫、および膵臓、肺、および結腸の腺腫)のヒト癌由来のMCRの間のオーバーラップの程度のベン図表示のグループである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(発明の詳細な説明)
癌関連遺伝子および治療上の癌標的の発見のために用いられるインビボの癌モデルは、典型的には良性の染色体プロファイル、即ちほぼ正常な染色体安定性を有する癌細胞を生じる。これとは対照的に、天然に存在するヒト癌においては、癌細胞ゲノムは、染色体構造異常により明らかなように、広範な不安定性を呈する。従って、本発明は脱安定化されたゲノム(「ゲノム不安定」)を有するインビボの癌モデルを提供する。
【0035】
本発明のゲノム不安定モデルに由来する癌細胞のゲノムは、ヒト癌細胞ゲノムにより呈される染色体不安定性を模倣している。従って、本発明のゲノム不安定癌モデルは、ヒトの癌の開始、維持および進行に関与する遺伝子および遺伝子エレメントの発見のために多大な利益を与える。モデルに由来する癌細胞における染色体異常、特に再発性の異常は、「良性」の染色体プロファイルを有する癌モデルにおいては不可能である癌における染色体事象の検討を可能にする。そのような染色体異常はまた、癌関連エレメントを保有する可能性がより高いゲノムの特定の領域に着目させるものである。ヒト癌の多数の型における場合を反映している染色体の事象および遺伝子の事象を発生させるゲノム不安定マウス癌モデルの本明細書における有効性は、ヒト癌に関連する癌関連遺伝子および治療上の標的の発見のための重要な新しい手段を与える。ヒト癌に関連する遺伝子および遺伝子エレメントを発見するためにそれ自体有用であるが、本発明のゲノム不安定モデルはまた、既知の癌モデルを包含する他の癌モデルを確立するためのバックグラウンドとして使用することもできる。既知の癌遺伝子および/または腫瘍サプレッサーにおける遺伝子改変を本発明のゲノム不安定モデルに重ね合わせることにより、天然に存在する癌をより緊密に複写する改良されたモデルが提供される。より重要な点としては、本発明のゲノム不安定モデルは、共有されている染色体および遺伝子の事象を同定するためのヒト癌ゲノムとの異種間比較を可能にする。そのような共有されている事象は、癌関連遺伝子および治療標的の発見のための強力な指針を与える。
【0036】
1.定義
本明細書および実施形態を通じて、「含む」またはその変形、例えば「含んでいる」などの単語は、記載した整数または整数の群の包含を意味しており、任意の他の整数または整数の群の除外を意味するわけではないと理解されたい。
【0037】
本明細書において特段の記載が無い限り、本発明に関連して使用される科学技術用語は、当業者により一般的に理解されている意味を有するものとする。更にまた、文脈により別様に必要とされない限り、単数表記は複数表記を含み、複数表記は単数表記を含むものとする。一般的に、本明細書に記載される細胞および組織の培養、分子生物学、細胞および癌の生物学、ウィルス学、免疫学、微生物学、遺伝学ならびに蛋白質および核酸の化学に関連して使用される命名法およびその手法は、当該分野で良く知られているものであり、かつ使用されているものである。
【0038】
2.動物モデル
癌の最も標準的な遺伝子操作されているマウスモデルは、比較的良性の細胞遺伝プロファイルを有する。これらのゲノム的に安定なモデルは、癌におけるヒトのゲノムに典型的な広範な染色体不安定性を反映しない。最も「ゲノム安定な」ネズミ腫瘍モデルにおいて、ゲノム当たり約20〜40の染色体異常、または染色体当たり0.1未満の染色体再配列が検出されていることが報告されている。
【0039】
従って、1つの態様において、本発明は、癌を発症するように遺伝子的に改変された非ヒト動物であって、この場合、動物に由来する癌細胞のゲノムは、ヒト癌細胞において見られるものに近似または合致する染色体構造異常の頻度により明らかなように、増強された染色体不安定性を呈する。種々の実施形態において、非ヒト動物モデル由来の癌細胞の集団における染色体構造異常の頻度は、遺伝子改変を有さないそのような哺乳類における染色体構造異常の頻度よりも少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、または10倍高値であり、これはゲノム当たり、または染色体当たりの何れを基本として定義されるかに関わらない。
【0040】
染色体異常の頻度は、ゲノム当たりもしくは染色体当たりのそのような異常の平均数、またはゲノム当たりの染色体異常の特定の型の平均数、または特定の染色体における異常の平均数に基づくことができる。染色体異常を計測する方法は当該分野で知られており(例えばR.C.O’Hagan等、Cancer Res 63(17),5352(2003);N.Bardeesy等、Proc Natl Acad Sci USA 103(15),5947(2006);M.Kim等、Cell 125(7),1269(2006);L.Zender等、Cell 125(7),1253(2006)参照)、そして後述において更に開示する。本発明のゲノム不安定非ヒト動物モデルに由来する癌細胞は、上記したパラメーターの少なくとも1つまで、上記したゲノム脱安定化機序を欠いている同等の非ヒト動物モデルから誘導された細胞と比較して、染色体異常の増大した頻度を有することになる。
【0041】
染色体構造異常は、DNAの増加または損失、DNA増幅、DNA欠失、およびDNA転座に起因する何れかの染色体異常であってよい。例示される染色体構造異常は、例えば姉妹染色分体交換、多中心染色体、反転、獲得、損失、相互および非相互転座(NRT)、相同および/または非相同染色体のp−pロバートソン様転座、p−q染色体アーム融合、ならびにq−q染色体アーム融合を包含する。
【0042】
本発明のゲノム不安定動物モデルの遺伝子改変は、動物を癌易罹患性とし、かつゲノム構造またはゲノム安定性に影響する何れかの遺伝子または遺伝子エレメントであり得るので、そのようなゲノム脱安定化機序を欠いている同等の動物モデルにおけるゲノムおよび/または染色体と比較して、動物において発症する癌のゲノムおよび/または染色体における染色体構造異常の上昇した頻度により明らかなように、改変がゲノムを脱安定化する。遺伝子エレメントは、マイクロRNAのような蛋白質産物を産生するように翻訳されないDNA、発現制御配列、例えばDNA転写因子結合部位、RNA転写開始部位、プロモーター、エンハンサー、応答エレメント等を包含する。一部の実施形態においては、遺伝子改変は、染色体構造の安定性または一体性に関与する遺伝子または遺伝子エレメントを不活性化する。不活性化は、遺伝子または遺伝子エレメントを直接不活性化することによるか、発現を抑制することによるか、または、核酸産物、例えばRNAもしくは蛋白質遺伝子産物であり得る遺伝子産物の活性を不活性化または阻害することによるかであってよい。
【0043】
一部の実施形態においては、遺伝子改変は、DNA修復に関与する1つ以上の遺伝子または遺伝子エレメントの少なくとも1つの対立遺伝子の不活性化、およびDNA損傷チェックポイントに関与する1つ以上の遺伝子または遺伝子エレメントの少なくとも1つの対立遺伝子の不活性化を含む。一部の実施形態においては、遺伝子改変は更にテロメア維持に関与する遺伝子または遺伝子エレメントの少なくとも1つの対立遺伝子の不活性化を含む。上記実施形態の何れかにおいて、DNA修復関連、DNA修復チェックポイント関連および/またはテロメア維持関連の遺伝子または遺伝子エレメントの両方の対立遺伝子が不活性化されてよい。
【0044】
DNA修復またはDNA損傷チェックポイントに関与する何れかの遺伝子または遺伝子エレメントを、本発明のゲノム不安定モデルにおいて不活性化することができる。ヒトおよび他の哺乳類における多くのそのような遺伝子および遺伝子エレメントは、当業者の知る通りとなる。例えばR.D.Wood等、Human DNA Repair Genes,Science,291:1284−1289(February 2001);R A Bulman,S D Bouffler,R CoxおよびT A Dragani,Locations of DNA Damage Response and Repair Genes in the Mouse and Corerelation with Cancer Risk Modifiers,National Radiological Protection Board Report,October 2004(ISBN 0−85951−544−3)を参照。マウスDNA修復遺伝子データベースは、UK Health Protection Agencyのウエブサイトにおいて入手できる。
【0045】
それらは例えば塩基除去修復(BER)蛋白質をコードする遺伝子、例えばung、smug1、mbd4、tdg、off1、myh、nth1、mpg、ape1、ape2、lig3、xrcc1、adprt、adprtl2およびadprtl3またはその種相同体;ミスマッチ除去修復蛋白質、例えばmsh2、msh3、msh4、msh5、msh6、pms1、pms3、mlh1、mlh3、pms2l3およびpms2l4またはその種相同体;ヌクレオチド除去修復(NER)蛋白質、非相同性末端結合(NHEJ)蛋白質、相同組み換え蛋白質、DNAポリメラーゼ、編集およびプロセシングヌクレアーゼならびにDNA修復ヘリカーゼ等を包含する。上記Wood等を参照。
【0046】
例示されるNHEJ蛋白質は、リガーゼ4、XRCC4、H2AX、DNAPKcs、Ku70、Ku80、Artemis、Cernunnos/XLF、MRE11、NBS1およびRAD50を包含する。例示される相同組み換え蛋白質は、RAD51、RAD52、RAD54、XRCC3、RAD51C、BRCA1、BRCA2(FANCD1)、FANCA、FANCB、FANCC、FANCD2;FANCE、FANCF、FANCG、FANCJ(BRIP1/BACH1)、FANCL、およびFANCMを包含する。例示されるDNA修復ヘリカーゼは、BLMおよびWRNを包含する。
【0047】
DNA損傷チェックポイントに関与する何れかの遺伝子または遺伝子エレメントを、本発明のゲノム不安定モデルにおいて使用できる。多くのそのような遺伝子および遺伝子エレメントに関する情報は容易に入手でき、そして当業者に良く知られているものとなる。例示されるDNAチェックポイント蛋白質は、センサー蛋白質、例えばRAD1、RAD9、RAD17、HUS1、MRE11、Rad50、およびNBS1;メディエーター、例えばATRIP;ホスホイノシチド3−キナーゼ関連キナーゼ(PIKK)ファミリー蛋白質、例えばATM、ATR、SMG−1およびDNA−PK;チェックポイントキナーゼ、例えばChk1およびChk2;エフェクター蛋白質、例えばp53、p63、p73、CDC25A、BおよびC、p21および14−3−3β、γ、ξ、σ、ε、η、τAPC;BRCA1、MDM2、MDM4、NBS1、RAD24、RAD25、RAD50、MDC1、SMC1、およびクラスピンを包含する。
【0048】
本発明のゲノム不安定モデルの1つの実施形態において、非ヒトトランスジェニック動物は更に、テロメア長を合成または維持することに関与する1つ以上の遺伝子または遺伝子エレメントの少なくとも1つの対立遺伝子の操作された不活性化を含む。一部の実施形態においては、非ヒトトランスジェニック哺乳類は、例えばテロメラーゼ逆転写酵素、Tert、またはテロメラーゼRNA(Terc)の不活性化により、低下したテロメラーゼ活性のために操作される。一部の実施形態においては、遺伝子改変は、キャッピング機能のようなテロメア構造に影響する蛋白質の活性を低下させる。テロメア構造に影響する例示される蛋白質は、TRF1、TRF2、POT1a、POT1b、RAP1、TIN2、およびTPP1を包含する。
【0049】
本発明の非ヒトゲノム不安定モデルは、何れかの動物、例えば魚類、鳥類、哺乳類、爬虫類、両生類であってよい。好ましくは、該動物は哺乳類、例えばげっ歯類、霊長類、ネコ、イヌ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ウシである。好ましい実施形態においては、該哺乳類はマウスである。
【0050】
本発明のゲノム不安定動物モデルは、細胞の全てまたは一部分のみがゲノム不安定性を生じさせる遺伝子改変を含む動物を含む。一部の実施形態においては、該動物の生殖細胞が遺伝子改変を含む。
【0051】
一部の実施形態においては、ゲノム不安定モデルはatm、tercもしくはp54またはこれらの遺伝子の何れかの組み合わせの対立遺伝子の一方またはそれらの両方の不活性化を含む。特定の実施形態においては、3遺伝子全ての対立遺伝子の一方またはそれらの両方が不活性化される。一部の実施形態においては、atmの両方の対立遺伝子が不活性化される。特定の実施形態においては、3遺伝子全ての両方の対立遺伝子が不活性化される。
【0052】
同様に本発明に包含されるものは、本発明のゲノム不安定モデルに由来する組織および細胞、例えば体細胞、生殖細胞、幹細胞、例えば胚性幹細胞、分化した細胞および未分化の細胞である。該細胞は癌細胞、非癌細胞、または前癌細胞であってよい。
【0053】
本発明のゲノム不安定動物モデルにおける遺伝子または遺伝子エレメントの不活性化は、何れかの手段により達成することができ、その大部分が当業者に良く知られている。そのような手段は、遺伝子もしくは遺伝子エレメントの全てもしくは部分の欠失、または遺伝子もしくは遺伝子エレメント内への不活性化突然変異(病変)の導入を包含する。遺伝子または遺伝子エレメントの全てまたは一部分の欠失は、ノックアウトによるもの、例えば相同組み換えまたはCreリコンビナーゼ(例えばCre−Lox系)を用いる手法によるものであってよい。ノックアウトを包含する欠失は、条件的ノックアウトであることができ、その場合、核酸配列の改変は、例えば遺伝子改変を促進する物質への動物の曝露、遺伝子部位における組み換えを促進する酵素(例えばCre−lox系におけるCre)の導入、または遺伝子改変を指向するための他の方法により、生じることができる。条件的または構成的ノックアウトは組織特異的、時間特異的(例えば特定の発達段階の間に生じる)またはそれらの両方であることができる。
【0054】
不活性化突然変異は何れかの手段を用いて導入してよく、その大部分は良く知られている。そのような方法は、例えば相同組み換えまたはPCRを用いた部位指向性の突然変異誘発を包含する。そのような突然変異は、遺伝子の5’未翻訳領域(UTR)内、例えば発現制御領域内、コーディング領域内(イントロンもしくはエクソン)、または3’UTR内に導入してよい。
【0055】
遺伝子または遺伝子エレメントの発現または活性はまた、何れかの手段、限定しないが例えばRNA干渉、アンチセンス、例えば3重らせん形成、ならびにリボザイム、例えばRNアーゼP、リードザイム、ヘアピンリボザイムおよびハンマーヘッドリボザイムにより達成し得る。
【0056】
一部の実施形態においては、本発明のゲノム不安定動物モデルは、更に1つ以上の追加的な癌誘発性の遺伝子改変、限定しないが例えば、1つ以上の活性化された癌遺伝子の導入、1つ以上の癌遺伝子の発現を増大させる改変、1つ以上の腫瘍サプレッサーのターゲティングされた不活性化、または上記の組み合わせを含む。そのような追加的な癌誘発性の改変は、誘導性、組織特異性、時間特異性、または3者の何れかの組み合わせであってよい。例えば、癌遺伝子は、転写の5’−3’方向において、特定の組織型における遺伝子発現に関連する転写および翻訳の開始領域、癌遺伝子、および宿主動物において機能性である転写および翻訳の終止領域を包含する発現カセットを用いてゲノム内に導入できる。1つ以上のイントロンも存在してよい。目的の癌遺伝子に加えて、検出可能なマーカー、例えばGFP(およびその変異体)、ルシフェラーゼ、およびlacZを場合により癌遺伝子に作動可能に連結させ、そして同時発現させてよい。同様に、腫瘍サプレッサー遺伝子を例えば遺伝子ターゲティング技術を用いて不活性化してよい。
【0057】
本明細書に記載するゲノム不安定動物モデル内に追加的癌誘発性改変を導入することは、癌遺伝子発見の強力な手段をもたらす。例えば、膵臓におけるKrasの活性化およびp53の突然変異は、ヒトにおける膵臓癌を誘発することが知られている。膵臓特異的Kras活性化、p53活性化(および場合により低下したテロメア機能)を有するゲノム不安定モデルは、ヒトにおける膵臓癌遺伝子の発見を大きく促進することになる。
【0058】
ゲノム不安定モデルにおける癌は、何れかの型の癌、例えば癌腫、肉腫、骨髄腫、白血病、リンパ腫または混合型の癌である。癌は、何れかの組織型、例えば上皮組織、間葉組織、神経組織および造血組織から生じ、そして身体の何れかの臓器または組織中に位置することができる。染色体異常の頻度は、上記した癌の何れかに由来する細胞において測定することができ、そして原発腫瘍、二次腫瘍、転移腫瘍、癌になるように当業者により導入された追加的癌遺伝子の活性化および腫瘍サプレッサー遺伝子の不活性化を介してインビトロで遺伝子的に操作された前記ゲノム的に不安定なモデルから誘導された腫瘍再発性の恐らくは正常な細胞に由来することができる。
【0059】
本発明のゲノム不安定マウスモデルは何れかの癌、限定しないが例えば、末端部黒子黒色腫、光線角化症、腺癌、腺様嚢胞癌、腺腫、腺肉腫、腺扁平上皮癌、副腎皮質癌、エイズ関連リンパ腫、肛門癌、退形成型神経膠腫、星状細胞腫瘍、星状細胞腫、バルトリン腺癌腫、基底細胞癌、胆道癌、骨癌、胆管癌、膀胱癌、脳幹神経膠腫、脳腫瘍、乳癌、気管支腺癌腫、毛細管癌腫、カルチノイド、癌腫、癌肉腫、海綿状、中枢神経系のリンパ腫、大脳星状細胞腫、子宮頸癌、結合組織癌、胆管癌、軟骨肉腫、脈絡叢乳頭腫/癌腫、明細胞癌腫、結腸癌、結腸直腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、嚢胞腺腫、内胚葉洞腫瘍、子宮内膜過形成、子宮内膜間質部肉腫、類内膜腺癌、上衣、上衣細胞腫、類上皮、食道癌、ユーイング肉腫、生殖腺外生殖細胞腫瘍、眼癌、線維層、限局性結節過形成、胆嚢癌、神経節膠腫、胃癌、ガストリノーマ、生殖細胞腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍、多形性神経膠芽細胞腫、神経膠腫、グルカゴノーマ、頭部頸部癌、血管芽腫、血管内皮種、血管腫、肝細胞腺腫、肝臓腺腫症、肝細胞癌、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、視床下部および視路の神経膠腫、小児、インスリノーマ、上皮内新生物、上皮間扁平上皮細胞新生物、眼内黒色腫、上皮内新生物、侵襲性扁平上皮細胞癌腫、大細胞癌腫、島細胞癌腫、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭癌、平滑筋肉腫、悪性黒子黒色腫、白血病関連障害、口唇および口腔の癌、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、悪性中皮腫、悪性胸腺腫、髄芽細胞腫、髄上皮腫、黒色腫、髄膜、メルケル細胞癌腫、中皮、転移癌腫、粘液性類表皮癌、多発性骨髄腫/プラズマ細胞新生物、菌状息肉腫、骨髄形成異常症候群、骨髄増殖性障害、鼻腔および副鼻腔の癌、鼻咽頭癌、神経芽腫、神経線維腫症、神経上皮腺癌結節黒色腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、燕麦細胞癌、稀突起神経膠、稀星状細胞腫、口腔癌、口腔咽頭癌、骨肉腫、膵臓ポリペプチド、卵巣癌、卵巣生殖細胞腫瘍、膵臓癌、乳頭血清腺癌、松果体細胞、下垂体腫瘍、プラズマ細胞腫、偽肉腫、肺芽腫、上皮小体癌、陰茎癌、褐色細胞腫、松果体およびテント上未分化神経外胚葉性腫瘍、下垂体腫瘍、プラズマ細胞新生物、胸膜肺芽腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、呼吸系の癌、網膜芽腫、横紋筋肉腫、肉腫、漿液癌腫、皮膚癌、小細胞癌腫、小腸癌、軟組織癌腫、ソマトスタチン分泌腫瘍、扁平上皮癌腫、扁平上皮細胞癌、胃癌、間質腫瘍、中皮下、表在拡大型黒色腫、テント上未分化神経外胚葉性腫瘍、精巣癌、甲状腺癌、未分化癌腫、尿道癌、子宮肉腫、ブドウ膜黒色腫、いぼ状癌、膣癌、ビポーマ、外陰部癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、十分に分化された癌腫、ならびにウイルムス腫瘍を発症してよい。
【0060】
本明細書に記載する動物モデルは、典型的にはトランスジェニック技術を用いて得られる。トランスジェニック技術は当該分野で良く知られている。例えば、トランスジェニックマウスは多くの方法において製造できる。主題のトランスジェニック動物を作成するための例示される方法は、接合体の注入によるものである。この方法は、例えば米国特許4,736,866に記載されている。該方法では、受精卵または接合体にDNAを注入し、そして次に疑似妊娠母体中で該卵を発生させる。接合体は同じ系統の雌雄動物を用いるか、または異なる系統の雌雄動物から得ることができる。出生したトランスジェニック動物は始祖と称され、そしてそれを育種することにより同じDNA挿入を有するより多くの動物を製造する。トランスジェニック動物を作成するこの方法において、外因性のDNAは典型的には、非相同性の組み換え事象により、ゲノム内にランダムに組み込まれる。DNAの数千コピーに対して1つがゲノム内の1部位において組み込まれる場合がある。
【0061】
3.癌関連遺伝子を同定する方法
別の態様において、本発明は、本発明のゲノム不安定モデルを利用してヒトにおける癌の開始、維持および/または進行に関与する遺伝子および遺伝子エレメントを同定するための方法を提供する。遺伝子の発見および同定の方法は、ゲノム不安定マウスモデルにおける癌細胞中の染色体構造異常、コピー数変化および突然変異が、ヒト癌細胞におけるシンテニー対応物(即ち進化的に関連する染色体領域において生じるもの)を有するという、本明細書に記載された驚くべき発見に基づいている。
【0062】
従って、1つの実施形態において、本発明は、ヒト癌に潜在的に関連する遺伝子の同定のための目的の染色体領域を同定する方法であって、上記した非ヒトゲノム不安定哺乳類由来の癌細胞の集団におけるDNAコピー数の変化を同定する工程を含む、方法を提供する。DNAコピー数変化が生じている染色体領域が、ヒト癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子エレメント(例えばマイクロRNA)の同定のための目的の染色体領域である。
【0063】
DNAコピー数変化はDNAの増加(例えばゲノム領域の増幅)またはDNAの減少(例えばゲノム領域の欠失)であってよい。特定のゲノム領域のコピー数を評価する方法は当該分野で良く知られており、そしてハイブリダイゼーションおよび増幅系のアッセイを包含する。本発明の方法によれば、DNAコピー数変化は,比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)(二重チャンネルハイブリダイゼーションプロファイリングおよび単一チャンネルハイブリダイゼーションプロファイリング(例えばSNP−CGH)の両方を含む)のようなコピー数プロファイリングを用いて同定してよい。他の適当な方法、例えば蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)、PCR、核酸配列決定、およびヘテロ接合性損失(LOH)解析を本発明に従って使用してよい。
【0064】
本発明の1つの実施形態において、ゲノム中のDNAコピー数変化はコピー数プロファイリングにより測定する。
【0065】
本発明の一部の実施形態においては、DNAコピー数変化はCGHを用いて同定する。比較ゲノムハイブリダイゼーション法においては、核酸の「試験」収集物(例えば腫瘍または癌性の細胞に由来)を第1の標識で標識し、第2の収集物(例えば正常細胞または組織に由来)を第2の標識で標識する。核酸のハイブリダイゼーションの比は、アレイ中の各繊維に結合した第1および第2の標識の比により測定される。例えば、試験収集物中の遺伝子増幅に起因する2標識からのシグナルの比における差が検出され、そして比は使用する特異的プローブに相当する遺伝子コピー数の尺度を与える。DNAコピー数の変化の細胞遺伝的表示は、CGHにより作成することができ、これは示差的に標識された試験および参照のゲノムDNAに由来する染色体の長さに沿った蛍光の比を与える。
【0066】
本発明の一部の実施形態においては、DNAコピー数変化は、マイクロアレイ系CGH(アレイCGH)により解析される。マイクロアレイ技術は高い分解能を与える。例えば、伝統的なCGHは一般的に20Mbの限定されたマッピング分解能を有するのに対し、マイクロアレイ系CGHにおいては示差的に標識された試験および参照のゲノムDNAの蛍光の比がDNAコピー数変化の遺伝子座毎の尺度を与え、これにより上昇したマッピング分解能が達成される。種々のマイクロアレイ法の詳細は、文献に見出すことができる。例えば、米国特許6,232,068;Pollack等、Nat.Genet.23(1):41−6(1999),Pastinen(1997)Genome Res.7:606−614;Jackson(1996)Nature Biotechnology 14:1685;Chee(1995)Science 274:610;WO96/17953,Pinkel等(1998)Nature Genetics 20:207−211等を参照。
【0067】
CGHアレイを製造するために使用するDNAは重要ではない。例えば、アレイはゲノムDNA、例えば所望の遺伝子を含有するゲノムまたは遺伝子そのものの一部分の高分解能スキャンを可能にするオーバーラップクローンを包含できる。ゲノム核酸は、例えばHAC、MAC、YAC、BAC、PAC、PIs、コスミド、プラスミド、ゲノムクローンのインターAlu PCR産物、ゲノムクローンの制限切断物、cDNAクローン、増幅(例えばPCR)産物等から得ることができる。アレイはまた、オリゴヌクレオチド合成技術を用いて得ることもできる。例えば、高密度オリゴヌクレオチドアレイの光指向性コンビナトリアル合成は、米国特許5,143,854およびPCT特許公開WO90/15070およびWO92/10092を参照。
【0068】
ハイブリダイゼーションアッセイの感度は、検出された標的核酸を増幅する核酸増幅系の使用を介して増大させてよい。そのような系の例は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)系およびリガーゼ連鎖反応(LCR)系を包含する。他の適当な方法は、核酸配列系増幅(NASBAO,Cangene,Mississauga,Ontario)およびQベータレプリカーゼ系を包含する。
【0069】
本発明の1つの実施形態において、ゲノム中のDNAコピー数変化は、単一ヌクレオチド多形(SNP)−CGHのような単一チャンネルプロファイリングにより測定される。伝統的なCGHデータは、2対立遺伝子に相当する2つのチャンネル強度データよりなる。参照と対象試料の間の正規化された強度の比較が、伝統的アレイCGHの根幹である。単一チャンネルプロファイリング(例えばSNP−CGH)は、2つの遺伝子タイピングパラメーター、即ち正規化された強度の尺度および対立遺伝子比の組み合わせを解析する点において異なっている。総括すれば、これらのパラメーターは、染色体異常のより高感度で正確なプロファイルを与える。SNP−CGHはまた、異常を起こしている遺伝子座の遺伝子情報(ハプロタイプ)を提供する。重要な点として、SNP−CGHは、アレイCGHでは検出できなかった遺伝子変換のようなコピーニュートラルなLOH事象を同定する能力を有する。
【0070】
別の実施形態においては、FISHを使用することによりゲノム中のDNAコピー数変化を測定する。蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)は当業者に知られている(Angerer,1987 Meth.Enzymol.152:649参照)。一般的に、インサイチュハイブリダイゼーションは以下の主要な工程、即ち(1)分析すべき組織または生物学的構造の固定;(2)標的DNAの接触し易さを増大するため、および非特異的結合を低減するための生物学的構造のハイブリダイゼーション前の処理;(3)生物学的構造または組織における核酸への核酸の混合物のハイブリダイゼーション;(4)ハイブリダイゼーション中に結合しない核酸フラグメントを除去するためのハイブリダイゼーション後の洗浄、ならびに(5)ハイブリダイズした核酸フラグメントの検出、を含む。
【0071】
典型的なインサイチュハイブリダイゼーションアッセイにおいては、細胞または組織の切片を固体支持体、典型的にはスライドガラスに固定化する。核酸をプローブする場合、細胞は典型的には熱またはアルカリで変性する。次に細胞を中温度でハイブリダイゼーション溶液に接触させることにより、蛋白質をコードする核酸配列に特異的な標識されたプローブのアニーリングを可能にする。次に標的物(例えば細胞)を典型的には所定のストリンジェンシーにおいて、または漸増ストリンジェンシーにおいて適切なシグナル/ノイズ比が得られるまで洗浄する。
【0072】
そのような用途において使用されるプローブは、典型的には例えば放射性同位体または蛍光レポーターにより標識される。好ましいプローブは、ストリンジェントな条件下で、標的核酸への特異的ハイブリダイゼーションを可能にするために十分な長さ、例えば約50、100、または200ヌクレオチド〜約1000以上のヌクレオチドである。
【0073】
一部の用途においては、反復配列のハイブリダイゼーション能力をブロックすることが必要である。即ち、一部の実施形態においては、tRNA、ヒトゲノムDNA、またはCot−1DNAを用いて非特異的ハイブリダイゼーションをブロックする。
【0074】
別の実施形態においては、サザンブロッティングを用いてゲノム中のDNAコピー数変化を測定する。サザンブロッティングを実施するための方法は当業者に知られている(例えば、Current Protocols in Molecular Biology,Chapter19,Ausubel等編、Greene Publishing and Wiley−Interscience,New York,1995またはSambrook等、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2dEd.vol.1−3,Cold Spring Harbor Press,NY,1989参照)。そのようなアッセイにおいて、ゲノムDNA(典型的にはフラグメント化し、電気泳動ゲル上で分離される)を標的領域に対して特異的なプローブにハイブリダイズする。標的領域に対するプローブから得られたハイブリダイゼーションシグナルの強度を正常なゲノムDNA(例えば同じまたは関連する細胞、組織、臓器等に由来するゲノムDNA)の解析で得られた対照プローブシグナルと比較することにより、標的核酸の相対的なコピー数の推定が可能となる。
【0075】
1つの実施形態において、増幅系アッセイ、例えばPCRを用いることによりゲノムのDNAコピー数変化を測定する。そのような増幅系アッセイにおいては、コピー数変化の起こったゲノム領域は増幅反応における鋳型として機能する。定量的増幅において、増幅産物の量は、元試料における鋳型の量に比例することになる。適切な対照との比較により、ゲノム領域のコピー数の尺度が与えられる。
【0076】
「定量的」増幅の方法は当業者に良く知られている。例えば、定量的PCRでは、同じプライマーを使用して対照配列の既知量を同時共増幅する。これによりPCR反応を調整するために使用してよい内標準が得られる。定量的PCRに関する詳細なプロトコルは、例えばInnis等(1990)PCR Protocols,A Guide to Methods and Applications,Academic Press,Inc.N.Y.に記載されている。
【0077】
リアルタイムPCRは、DNAコピー数変化を測定するために本発明の方法において使用できる(例えば、Gibson等、Genome Research 6:995−1001,1996;Heid等、Genome Research 6:986−994,1996を参照)。リアルタイムPCRは、増幅中のPCR産物の蓄積のレベルを評価する。DNAコピー数を計測するためには、全ゲノムDNAを試料から単離する。リアルタイムPCRは、例えばPerkin Elmer/Applied Biosystems(Foster City,Calif.)7700Prismの機材を用いて実施できる。合致するプライマーおよび蛍光プローブは、例えばPerkin Elmer/Applied Biosystems(Foster City,Calif.)により提供されるプライマー発現プログラムを用いて目的の遺伝子に対して設計できる。プライマーおよびプローブの最適な濃度は、まず当業者によって測定することができ、そして対照(例えばベータアクチン)プライマーおよびプローブは、例えばPerkin Elmer/Applied Biosystems(Foster City,Calif.)から商業的に入手してよい。試料中の目的の特異的核酸の量を定量するためには、対照を用いて標準曲線を作成する。標準曲線はアッセイにおいて使用される目的の核酸の初期濃度に関連するリアルタイムPCRにおいて測定されるCt値を用いて求めてよい。目的の遺伝子の10〜106コピーの範囲の標準希釈物で一般的には十分である。更にまた、標準曲線は対照配列に関して作成する。これにより、比較目的のための対照の量に対する組織試料における目的の核酸の初期含有量の標準化が可能となる。
【0078】
TaqManプローブを用いたリアルタイム定量的PCRの方法は、当該分野で良く知られている。リアルタイム定量的PCRの詳細なプロトコルは、例えばRNAに関してはGibson等、1996,A novel method for real time quantitative RT−PCR.Genome Res,10:995−1001;そしてDNAに関してはHeid等、1996,Real time quantitative PCR.Genome Res.,10:986−994に記載されている。
【0079】
TaqMan系のアッセイはまた、DNAコピー数変化に関して特定のゲノム領域を定量するために使用できる。TaqMan系のアッセイは、5’蛍光染料および3’クエンチング剤を含有する蛍光発生オリゴヌクレオチドプローブを使用している。プローブはPCR産物にハイブリダイズするが、それ自体は、3’末端におけるブロッキング剤のために伸長され得ない。PCR産物を後のサイクルにおいて増幅する場合、ポリメラーゼ、例えばAmpliTaqの5’ヌクレアーゼ活性は、TaqManプローブの切断をもたらす。この切断は、5’蛍光染料と3’クエンチング剤を分離し、これにより増幅の関数としての蛍光の増大をもたらす(例えばhttp://www2.perkin−elmer.com参照)。
【0080】
他の適当な増幅方法は、限定しないが例えばリガーゼ連鎖反応(LCR)(WuおよびWallace(1989)Genomics 4:560,Landegren等(1988)Science 241:1077、ならびにBarringer等(1990)Gene 89:117参照)、転写増幅(Kwoh等(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173)、自己持続性配列複製(Guatelli等(1990)Proc.Nat.Acad.Sci.USA87:1874)、ドットPCR、およびリンカーアダプターPCR等を包含する。
【0081】
1つの実施形態において、DNA配列決定を使用してゲノム中のDNAコピー数変化を測定する。DNA配列決定のための方法は当業者に知られている。
【0082】
1つの実施形態において、核タイピング(例えばスペクトル核タイピング、SKY)を用いることによりゲノム中の染色体構造異常を測定する。核タイピングのための方法は当業者に知られている。例えば、SKYのためには、1つの染色体のユニークな領域に対して各々相補であるDNAプローブの収集物を作成し、そして特定の染色体のために設計された蛍光色素で標識してよい。DNAの増幅、欠失、転座または他の構造異常は、プローブの蛍光放出に基づいて測定してよい。
【0083】
特定の実施形態においては、本発明の2つ以上のゲノム不安定動物モデルに由来する腫瘍試料をDNAコピー数変化に関して解析し、そして少なくとも2つの試料においてコピー数変化が起こっている共通のゲノム領域を同定する。そのような再発性のDNAコピー数変化が特に有利である。
【0084】
再発性のDNAコピー数変化の最小共通領域(MCR)は、2つ以上の試料のコピー数変化を比較する場合に定義してよい。1つの実施形態において、MCRは2試料の間のオーバーラップの境界により、または少なくとも1つの他の腫瘍におけるより大きい改変のバックグラウンドに対する単一の腫瘍の境界により定義される。
【0085】
MCRを測定するための方法は当該分野で知られている(例えば、D.R.Carrasco等、Cancer Cell 9(4),313(2006);A.J.Aguirre等、Proc Natl Acad Sci USA 101(24),9067(2004)参照)。慨すれば、「セグメント化された」データセットは、均一なコピー数セグメント境界を測定すること、そして次にプローブを含有するセグメントの平均log2比で各プローブに関するそのままのlog2比を置き換えることにより作成した。次に最小コピー数変化(CNA)を示している閾値を選択することによりノイズを除去する。例えば、プラットホームに関する2倍変化のメジアンlog2比を閾値として選択してよい。例示される実施形態においては、CNAを示す閾値は±0.6(Agilent 22K a−CGHプラットホーム)および±0.8(Agilent 44K/244K a−CGHプラットホーム)であり、そしてMCRの幅は10Mb未満である。
【0086】
MCRの境界は、サザンブロッティングまたはPCRのような当該分野で知られている。何れかの方法によりマッピングできる。
【0087】
MCR内に位置する遺伝子および遺伝子エレメントは、潜在的にはヒト癌に関連し、そしてそのような遺伝子および遺伝子エレメントは、追加的な解析に付すことにより更に特性化できる。例えば、アレイCGHで最初に同定された遺伝子を定量的に増幅してよい。同定されたゲノムDNAまたは相当するRNAの何れかの定量的増幅で、DNAの獲得または損失を確認できる。あるいは、配列が蛋白質をコードしている場合は、mRNAレベル、蛋白質レベル、またはコードされた蛋白質の活性レベルを計測してよい。対照と比較した場合のRNA/蛋白質/活性レベルの上昇は、DNA増幅を確認するものであり、対照と比較した場合のRNA/蛋白質/活性レベルの低下は、DNA欠失を確認するものである。
【0088】
初期スクリーニングを介して同定された遺伝子または遺伝子エレメントを再配列決定することにより、増幅または欠失を確認し得る。更にまた、DNA配列決定および蛋白質発現プロファイリングを用いることにより、腫瘍形成性に関連し得る遺伝子突然変異を同定し得る。
【0089】
別の態様において、本発明は、ヒト癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子エレメントの同定のための目的の染色体領域を同定する方法であって、本発明のゲノム不安定動物モデルに由来する癌細胞の集団における染色体構造異常を同定する工程を含む、方法を提供する。染色体構造異常を含有する染色体領域は、ヒト癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子エレメントの同定のための目的の染色体領域である。
【0090】
一部の実施形態においては、染色体構造異常はSKYのような核タイピングを用いて検出する。一部の実施形態においては、該方法は更に上記したようにDNAコピー数変化を測定することを含む。染色体構造異常およびDNAコピー数変化の両方を含有する染色体領域は、ヒト癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子エレメントの同定のための目的の染色体領域である。
【0091】
別の態様において、本発明は、潜在的にヒトの癌に関連する遺伝子または遺伝子エレメントを同定する方法であって、以下の工程、即ち(a)本明細書に記載するように目的の染色体領域を同定すること;(b)非ヒト哺乳類における目的の染色体領域内部の遺伝子または遺伝子エレメントを同定すること;および(c)工程(b)において同定された遺伝子または遺伝子エレメントに相当するヒト遺伝子または遺伝子エレメントを同定することを含む、方法を提供する。
【0092】
更にまた、多くの公的および私的なデータベースが癌遺伝子の情報を提供しており(例えばSanger’s Cancer Gene Census,http://www.sanger.ac.uk/genetics/CGP/Census)、そして該情報を使用して特定の染色体領域に既知癌遺伝子をマッピングしてよい。
【0093】
遺伝子または遺伝子エレメントがヒト癌に潜在的に関連することがわかった場合、相当するヒト遺伝子は相同体マッピング、オーソログマッピング、パラログマッピング等の方法により同定してよい。本明細書においては、相同体は共通の先祖のDNA配列に由来する家系により第2の遺伝子に関連付けられた遺伝子であり、オーソログは種分化により共通の先祖遺伝子から進化した異なる種における遺伝子であり、そしてパラログはゲノム内部の重複により関連付けられた遺伝子である。
【0094】
1つの実施形態において、ヒト相同体は例えばNCBIホモロジーンウェブサイト、
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=homologeneを用いることにより同定される。
【0095】
一部の実施形態においては、該方法は更に、同定された非ヒト遺伝子または遺伝子エレメント中の突然変異を検出することを含む。別の実施形態においては、相当するヒト遺伝子または遺伝子エレメント中の突然変異を同定する。別の実施形態においては、非ヒト遺伝子または遺伝子エレメントおよびヒト遺伝子または遺伝子エレメントの両方における突然変異を同定し、そしてその突然変異を比較する。
【0096】
別の態様において、本発明は、潜在的にヒト癌に関連する遺伝子または遺伝子エレメントを同定する方法であって、以下の工程、即ち(a)非ヒト哺乳類に由来する癌細胞の集団におけるDNAコピー数の変化を検出すること、ここで非ヒト哺乳類のゲノムはゲノム不安定性を生じるように操作される、(b)工程(a)において検出されたDNAコピー数の変化の境界内部に位置する遺伝子または遺伝子エレメントを同定すること、(c)工程(b)において同定された遺伝子または遺伝子エレメントに相当し、そしてヒト癌細胞中のDNAコピー数の変化、または染色体構造異常の境界内部に位置するヒト遺伝子または遺伝子エレメントを同定することを含む、方法を提供する。工程(c)において同定されたヒト遺伝子または遺伝子エレメントは、ヒト癌に潜在的に関連する。
【0097】
コピー数変化または染色体構造異常を検出するための方法は、上記詳述した通りである。コピー数変化の境界内部に位置する遺伝子または遺伝子エレメントを同定するための方法もまた、上記詳述した通りである。
【0098】
1つの実施形態において、本発明の非ヒト動物モデルにおけるコピー数変化または染色体構造異常は、ヒト癌細胞におけるコピー数変化または染色体構造異常と比較される。潜在的に関連するヒト癌関連遺伝子または遺伝子エレメントは、シンテニーに基づいて同定される。シンテニーは、関連する種の間の遺伝子の保存された順序および方向を説明するものである。非ヒト動物モデルとヒト癌のシンテニーな染色体領域の比較は、腫瘍形成における特定の遺伝子改変の保存された性質を明らかにする場合がある。
【0099】
シンテニーに基づいた異種間の比較はいくつかの利点を有する。第1は目的の染色体領域を狭小化する能力であり、特定のゲノム改変がある種において他の種よりもより限局的となり、そして異種間比較がそのような種特異的事象を排除する場合がある。第2に、最少共通領域(MCR)が典型的には多くの遺伝子を含有し、シンテニー領域の異種間比較は、非ヒト哺乳類(特にマウス)とヒトとの間のゲノムのシンテニー領域が相対的に小区分中にある場合があるため、遺伝子の数を低減するための効率的な方法をもたらす。シンテニーMCR内部に位置する遺伝子は、ヒト癌に高度に関連している場合がある。
【0100】
別の態様において、本発明は、潜在的にヒト癌に関連する遺伝子または遺伝子エレメントを同定する方法であって、以下の工程、即ち(a)非ヒト哺乳類に由来する癌細胞の集団における染色体構造異常を検出すること、ここで非ヒト哺乳類のゲノムはゲノム不安定性を生じるように操作される、(b)工程(a)において検出されたコピー数変化の境界内に位置する遺伝子または遺伝子エレメントを同定すること、(c)工程(b)において同定された遺伝子または遺伝子エレメントに相当し、そしてヒト癌細胞中のコピー数変化、または染色体構造異常の境界内部に位置するヒト遺伝子または遺伝子エレメントを同定することを含む、方法を提供する。工程(c)において同定されたヒト遺伝子または遺伝子エレメントは、ヒト癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子である。
【0101】
4.診断および治療方法
1つの態様において、本発明は、FBXW7の不活性化がヒトT細胞悪性疾患に関連するという発見に基づき、γ−セクレターゼ阻害剤療法への低下または上昇した応答を有する場合のある、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T−ALL)を有する対象を同定するための方法を提供する。
【0102】
1つの実施形態において、γ−セクレターゼ阻害剤療法への低下した応答を有する場合のある、T−ALLを有する対象を同定するための方法は、FBXW7の発現レベルまたは活性レベルを対象由来の癌細胞において検出することを含み、対照と比較した場合のFBXW7の低下した発現/活性は、対象がγ−セクレターゼ阻害剤療法への低下した応答を有する場合があることを示している。癌細胞におけるNOTCH1の発現または活性レベルもまた同時に測定してよく、対照と比較した場合のNOTCH1の上昇した発現/活性は更に、対象がγ−セクレターゼ阻害剤療法への低下した応答を有する場合があることを示している。逆に、対照と比較した場合のFBXW7の上昇した発現/活性(場合によりNOTCH1の低下した発現/活性と共に)は、対象がγ−セクレターゼ阻害剤療法に対して感受性である場合があることを示している。
【0103】
γ−セクレターゼは少なくとも4種の蛋白質、即ちプレセニリン(プレセニリン1または2)、ニカストリン、PEN−2およびAPH−1よりなる複合体である。数種の蛋白質がγ−セクレターゼ切断のための基質として同定されており、NotchおよびNotchリガンドであるDelta1およびJagged2、ErbB4、CD44、およびE−カドヘリンが包含される(Wong,G.T.等、J.Biol.Chem.Vol.279,Issue 13,12876−12882,March 26,2004)。γ−セクレターゼによるNotchの切断がもっとも広範に研究されている。Notchは細胞の成長および系統の特異化、特に胚発生の間の調節において進化的に保存された役割を果たしている。Notchは数種のリガンド(Delta、JaggedおよびSerrate)により活性化され、そして次に一連のリガンド依存性および非依存性の切断により蛋白質分解的にプロセシングされる。γ−セクレターゼは末端切断事象(S3切断)を触媒し、これはNotch細胞内ドメイン(NICD)として知られているフラグメントを放出する。次にNICDフラグメントが核に転座し、そこで核転写因子として作動する。NotchS3切断におけるその役割から予測されるように、γ−セクレターゼ阻害剤はインビトロのNICD産生をブロックすることが分かっている。インビボにおいては、Notchの機能はTおよびBリンパ球の適切な分化のために重要であると考えられ、そしてγ−セクレターゼ阻害剤は胸腺細胞数を低減し、そして胎児胸腺臓器培養における早期の段階において胸腺細胞の分化をブロックする。
【0104】
FBXW7遺伝子(hCDC4とも称する)は、染色体の安定性の制御に関与すると考えられているE3ユビキチンリガーゼの重要な成分をコードする(Mao J.等、Nature 432,775−779(2004))。FBXW7は細胞内NOTCH1のPESTドメインへの結合を担っており、ユビキチン化およびプロテアソームによる分解をもたらす。ヒトT−ALLにおけるNOTCH1およびFBXW7中のPESTドメイン突然変異間には、統計学的に有意な逆相関が存在するため、FBXW7の低減した発現/活性を有するT−ALL細胞は、γ−セクレターゼ阻害剤に応答する可能性は低くなる。
【0105】
癌療法の頻発する問題点の1つは、寛解中(手術、化学療法、放射線療法、またはそれらの組み合わせによる初期治療の後)の患者が再発を経験する場合があるという点である。これらの患者における再発癌は、多くは見掛け上効を奏した初期の治療に対して抵抗性である場合が多い。実際、疾患を最初に診断された患者における特定の癌は、従来の癌療法に対して、そのような治療に先ず曝露されていなくても、すでに抵抗性である場合がある。γ−セクレターゼ阻害剤療法は、患者にとって身体的に疲弊をもたらす場合がある。セクレターゼ阻害剤の副作用は体重減少、胃腸管構造の変化、壊死細胞破砕物の蓄積、腺窩部の拡張および炎症細胞の浸潤、吐き気、嘔吐、虚弱、下痢、白血球数の上昇、および食道障害を包含する(Siemers E等、2005 May−Jun;28(3):126−32;Wong,GT等、J Biol Chem 2004 Mar 26;279(13):12876−82)。即ち、化学療法による治療から癌患者が利益を被るかどうかを治療の開始に先立って調べる必要がある。
【0106】
1つの実施形態において、癌患者は癌細胞試料中のFBXW7、および場合によりNOTCH1の発現レベルに基づいてスクリーニングされる。
【0107】
FBXW7またはNOTCH1の発現レベルはDNAレベル、mRNAレベル、蛋白質レベル、活性レベル、または遺伝子もしくは蛋白質の発現のデータに反映されるかそれより誘導される他の量により計測し得る。例えば、遺伝子改変はFBXW7の低下した発現をもたらし得る。共通の遺伝子改変は、ゲノムからの少なくとも1つのFBXW7遺伝子の欠失、またはFBXW7遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子における突然変異を包含する。突然変異はミスセンス突然変異;ナンセンス突然変異;1つ以上のヌクレオチドの挿入、欠失、または置換;5’末端(未翻訳領域またはコーディング領域の何れか)、3’末端(未翻訳領域またはコーディング領域の何れか)、またはそれらの両方からのトランケーション;5’未翻訳領域、3’未翻訳領域、コーディング領域(これはアミノ酸変化をもたらす)、または3者の組み合わせにおける1つ以上のヌクレオチドの置換であってよい。例示される遺伝子改変は、FBXW7の第3のWD40ドメインまたは第4のWD40ドメインにおける突然変異、G423V、R465C、R465H、R479L、R479Q、R505CおよびD527G突然変異を包含する。遺伝子改変はまた、NOTCH1遺伝子の転座またはコピー数増幅のような、Notch1の上昇した発現をもたらす場合がある。
【0108】
FBXW7またはNOTCH1のmRNAレベルは、何れかの当該分野で知られた方法、例えばPCR、ノーザンブロッティング、RNアーゼ保護アッセイ、またはマイクロアレイハイブリダイゼーションを用いて計測し得る。例えば、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応、別称定量的リアルタイムPCR(QRT−PCR)または動的ポリメラーゼ連鎖反応が、標的遺伝子のmRNAレベルを計測するために当該分野で広範に使用されている。QRT−PCR操作法は、ポリメラーゼ連鎖反応の一般的パターンに従うが、DNAは増幅の各ラウンドの後に定量される。2つの通常の定量方法は、2本鎖DNAとインターカレートする蛍光染料および相補DNAとハイブリダイズした場合に蛍光性となる改変されたDNAオリゴヌクレオチドを使用する。QRT−PCRは、少量のメッセンジャーRNA(mRNA)を定量するために逆転写ポリメラーゼ連鎖反応と組み合わせることができ、これにより特定の時点において、または特定の細胞または組織の型において、相対的な遺伝子発現を定量することが可能になる。
【0109】
FBXW7またはNOTCH1の発現レベルはまた、何れかの当該分野で知られた方法を用いて蛋白質レベルにより計測し得る。蛋白質定量のための伝統的な方法論は、2−Dゲル電気泳動、質量スペクトル解析および抗体結合を包含する。生物学的試料中の標的蛋白質レベルをアッセイするために頻繁に使用されている方法は、抗体系の手法、例えばイムノブロッティング(ウエスタンブロッティング)、免疫組織学的アッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、または蛋白質チップを包含する。ゲル電気泳動、免疫沈降および質量スペクトル解析は標準的手法を用いて実施し得る。更にまた、NOTCH1発現は、細胞における切断核内(ICN)型のNOTCH1蛋白質の検出により計測し得る。
【0110】
FBXW7またはNOTCH1の発現レベルはまた、NOTCH1の転写活性またはFBXW7のリガーゼ活性のような当該分野で知られた方法を用いて遺伝子産物の活性レベルにより計測し得る。例えば、NOTCH1活性は、ICNのNOTCH1の上昇した結合により計測し得る。あるいは、NOTCH1の転写下流標的の発現レベルをNOTCH1活性の指標、例えばc−Myc、PTCRA、Hes1等として計測し得る。
【0111】
特定の実施形態においては、対照に対してFBXW7またはNOTCH1の発現/活性レベルを比較することが有用である。対照は、定量的な形態(例えば数、比、パーセンテージ、グラフ等)または定性的な形態(例えばゲルまたはブロット上のバンド強度等)におけるFBXW7またはNOTCH1の発現レベルの計測であってよい。種々の対照を使用し得る。対象に由来する同じ細胞型の非癌細胞からのFBXW7またはNOTCH1の発現のレベルを、対照として使用し得る。健常個体に由来する同じ細胞型からのFBXW7またはNOTCH1の発現のレベルもまた、対照として使用し得る。あるいは、対照は、治療前のある時点または治療過程の早期の期間において、治療されている個体に由来するFBXW7またはNOTCH1の発現レベルであり得る。更に他の対照は、データベース(例えば表、電子データベース、スプレッドシート等)中に存在する発現レベルまたは予め決定された閾値を包含し得る。
【0112】
本発明は更に、γ−セクレターゼ阻害剤による治療に対して感受性となる可能性のある、T−ALL対象(上記方法を用いて同定)を治療する方法であって、γ−セクレターゼ阻害剤を患者に投与することを含む、方法を開示する。γ−セクレターゼ阻害剤は当該分野で知られており、例示されるγ−セクレターゼ阻害剤は、LY450139ジヒドレートおよびLY411575を包含する。
【0113】
本発明は更に、FBXW7の低下した発現/活性を有することになるT−ALL対象(上記方法を用いて同定)を、FBXW7の発現/活性を上昇させる薬剤を用いて治療する方法を開示する。該薬剤は、組み換えFBXW7蛋白質またはその機能的に活性なフラグメントもしくは誘導体、FBXW7蛋白質またはその機能的に活性なフラグメントもしくは誘導体をコードする核酸、またはFBXW7を活性化する薬剤であってよい。「機能的に活性な」FBXW7フラグメントまたは誘導体は、抗原性または免疫原性の活性、天然の細胞性物質に結合する能力等、完全長の野生型FBXW7蛋白質に関連する1つ以上の機能的活性を呈する。FBXW7蛋白質、誘導体およびフラグメントの機能的活性は、当業者に知られた種々の方法によりアッセイされ得る(Current Protocols in Protein Science,Coligan等編、John Wiley&Sons,Inc.Somerset,N.J.(1998))。
【0114】
別の態様において、本発明は、PTEN活性化がヒトT細胞悪性疾患に関連するという発見に基づき、ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)経路阻害剤での治療から利益を被る場合がある、T−ALLを有する対象を同定するための方法を提供する。
【0115】
PTENは細胞周期を調節する腫瘍サプレッサー遺伝子として特性化されている。PTENはホスファチジルイノシトール(3,4,5)−トリホスフェート(PIP3)の3’ホスフェート基を除去することにより、ホスホジエステラーゼおよびPI3K/AKT経路の阻害剤として機能する。PTENが不活性化される場合、PIP3の増大した産生がAKT(蛋白質キナーゼB)を活性化する。AKT経路は細胞の増殖、成長、生存、および運動性を増強することにより、そしてアポトーシスを抑制することにより、腫瘍の進行を促進する。AKTはホスホイノシチド依存性キナーゼPDK1、即ちPI3Kにより活性化される酵素により触媒される2つのホスホリル化事象により活性化される。
【0116】
1つの実施形態において、PI3K経路阻害剤による治療から利益を被る場合がある、T−ALLを有する対象を同定するための方法は、PTENの発現レベルまたは活性レベルを対象由来の腫瘍細胞において検出することを含む。対照と比較した場合のFBXW7の低下した発現/活性は、対象がPI3K阻害剤療法から利益を被る可能性があることを示している。
【0117】
対象由来の癌細胞中のホスホAKTレベルはまた同時に測定してよく、対照と比較した場合の上昇したホスホAKTレベルは、更に対象がPI3K阻害剤療法から利益を被る可能性があることを示している。
【0118】
PTENの発現レベルは、DNAレベル、mRNAレベル、蛋白質レベル、活性レベル、または遺伝子もしくは蛋白質の発現のデータに反映されるかそれより誘導される他の量により計測し得る。例えば、遺伝子改変はPTENの低下した発現をもたらし得る。共通の遺伝子改変は、ゲノムからの少なくとも1つのPTEN遺伝子の欠失、またはPTEN遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子における突然変異を包含する。突然変異はミスセンス突然変異;ナンセンス突然変異;1つ以上のヌクレオチドの挿入、欠失、または置換;5’末端(未翻訳領域またはコーディング領域の何れか)、3’末端(未翻訳領域またはコーディング領域の何れか)、またはそれらの両方からのトランケーション;5’未翻訳領域、3’未翻訳領域、コーディング領域(これはアミノ酸変化をもたらす)、または3者の組み合わせにおける1つ以上のヌクレオチドの置換であってよい。
【0119】
PTENの発現レベルはまた、何れかの当該分野で知られた方法、例えばPCR、ノーザンブロッティング、RNアーゼ保護アッセイ、またはマイクロアレイハイブリダイゼーションを用いて、mRNAレベルにより計測し得る。
【0120】
PTENの発現レベルはまた、何れかの当該分野で知られた方法、例えば2−Dゲル電気泳動、質量スペクトル解析および抗体結合を用いて、蛋白質レベルにより計測し得る。
【0121】
PTENの発現レベルはまた、何れかの当該分野で知られた方法、例えばホスファターゼ活性の計測を用いてPTENの活性レベルにより計測し得る。更にまた、PI3K/AKT経路に関与する他の蛋白質の発現または活性もまた、PTEN活性の代理として計測し得る。例えば、癌におけるホスホAKTレベルは、一般的にPTEN活性を反映しており、従ってPTEN活性に関するマーカーとして計測し得る。
【0122】
特定の実施形態においては、対照を使用してPTENの発現/活性レベルを比較し得る。上記において詳述したように、対照は、対象に由来する同じ型の非癌細胞、健常個体由来の同じ細胞型から誘導されるか、予め測定された値等であってよい。
【0123】
本発明は更に、PI3K阻害剤での治療から利益を被る場合がある、T−ALL対象(上記方法を用いて同定)を治療する方法であって、PI3K阻害剤を患者に投与することを含む、方法を提供する。PI3K阻害剤は当該分野で良く知られている(例えばPinna,LAおよびCohen,PTW(編)Inhibitors of Protein Kinases and Protein Phosphates,Springer(2004)およびAbelson,JN,Simon,MI,Hunter,T,Sefton,BM(編)Methods in Enzymology,Volume 201:Protein Phosphorylation,Part B:Analysis of Protein Phosphorylation,Protein Kinase Inhibitors,and Protein Academic Press(2007))。
【0124】
本発明は更に、PTENの低下した発現/活性を有することになるT−ALL対象(上記方法を用いて同定)をPTENの発現/活性を上昇させる薬剤を用いて治療する方法を開示する。該薬剤は、組み換えPTEN蛋白質またはその機能的に活性なフラグメントもしくは誘導体、PTEN蛋白質またはその機能的に活性なフラグメントもしくは誘導体をコードする核酸、またはPTENを活性化する薬剤であってよい。
【0125】
別の態様において、本発明は、対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有するかどうかを評価する方法であって、対象に由来する生物学的試料における、表1の増幅されたMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを測定することを含む、方法を提供する。対照と比較した場合の遺伝子の発現または活性の上昇は、対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有することを示している。あるいは、対照と比較して、表1の欠失したMCR中に位置する癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性に低下がある場合は、低下した発現または活性のレベルもまた、対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有することを示している。
【0126】
別の態様において、本発明は対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有するかどうかを評価する方法を提供し、該方法は、対象に由来する生物学的試料における、表1に列挙した少なくとも1つの増幅された最小共通領域(MCR)のコピー数を測定することを含む。MCRの正常なコピー数と比較した場合の試料中のMCRの増大したコピー数は、対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有することを示している。あるいは、MCRの正常なコピー数と比較した場合の試料中の欠失したMCR(やはり表1に列挙)の低下したコピー数もまた、対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有することを示している。MCRの正常なコピー数は、典型的には染色体当たり1つである。
【0127】
別の態様において、本発明は、対象における癌の進行をモニタリングするための方法を提供し、該方法は、以下の工程:a)表1に列挙する癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを、第1の時点における対象由来の生物学的試料中で測定すること;b)その後の時点において工程a)を反復すること;およびc)工程a)およびb)における遺伝子の発現または活性を比較すること、そしてそれから対象における癌の進行をモニタリングすることを含む。
【0128】
別の態様において、本発明は、対象における癌を治療するための試験薬剤の薬効を評価する方法であって、以下の工程:a)試験薬剤の存在下、対象由来の生物学的試料中の表1の増幅されたMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを測定すること;およびb)試験薬剤の非存在下、対象由来の生物学的試料中の遺伝子の発現または活性のレベルを測定することを含む、方法を提供する。工程(b)と比較した場合の工程(a)における遺伝子の低下した発現または活性は、対象における癌を治療するための試験薬剤の潜在的な薬効を示している。あるいは、試験薬剤が表1の欠失したMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性を上昇させる場合、試験薬剤はやはり対象における癌を治療するために潜在的に有効である。
【0129】
別の態様において、本発明は、対象における癌を治療するための療法の効力を評価する方法を提供し、該方法は以下の工程:a)対象に少なくとも一部分の療法を提供する前に、対象由来の生物学的試料中の、表1の増幅されたMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを測定すること;および、b)療法の一部分を提供した後に、対象由来の生物学的試料中の遺伝子の発現または活性のレベルを測定することを含む。工程(b)と比較した場合の工程(a)における遺伝子の低下した発現または活性は、対象における癌を治療するための療法の効力を示している。あるいは、療法が表1の欠失したMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性を上昇させる場合、該療法はやはり対象における癌を治療するために潜在的に有効である。
【0130】
別の態様において、本発明は、癌に罹患した対象を治療する方法であって、表1の増幅されたMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを低下させる薬剤を対象に投与することを含む、方法を提供する。あるいは、本発明は、癌に罹患した対象を治療する方法であって、表1の欠失したMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを上昇させる薬剤を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0131】
特定の実施形態においては、薬剤は、表1に列挙する癌遺伝子または候補癌遺伝子に特異的に結合する抗体もしくはその抗原結合フラグメントである。場合により、該抗体は毒素、または化学療法剤にコンジュゲートし得る。
【0132】
あるいは、薬剤は、表1における増幅されたMCR中の癌遺伝子もしくは候補癌遺伝子の発現を阻害するRNA干渉分子(例えばshRNAまたはsiRNA分子)、または表1における増幅されたMCR中の癌遺伝子もしくは候補癌遺伝子に相補なアンチセンスRNA分子であってよい。
【0133】
あるいは、薬剤はペプチドまたはペプチドミメティック、小型有機分子、またはアプタマーであってよい。
【0134】
好ましくは、剤は製薬上許容しうる製剤で投与される。
【0135】
別の態様において、本発明は、対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有するかどうかを評価する方法を提供し、該方法は、対象に由来する生物学的試料における、表5に列挙した少なくとも1つの最小共通領域(MCR)のコピー数を測定することを含む。MCRの正常なコピー数と比較した場合の、試料中のMCRのコピー数の変化は、対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有することを示している。MCRの正常なコピー数は、典型的には染色体当たり1つである。
【0136】
特定の実施形態においては、癌はリンパ腫である。特定の実施形態においては、リンパ腫はT−ALLである。
【0137】
別の態様において、本発明は、ゲノム不安定非ヒト哺乳類モデル(例えば本発明のゲノム不安定マウスモデル)を用いて同定されたMCRのコピー数をMCRの正常なコピー数と比較することにより、対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有するかどうかを評価する方法を提供する。MCRの正常なコピー数は、典型的には染色体当たり1つである。
【実施例】
【0138】
実施例1:高度に複雑なゲノムを有するネズミT細胞リンパ腫の形成および特性化
本実施例においては、本発明者等はp53依存性の態様においてTリンパ腫形成を起こすためにAtm不全およびテロメア機能不全のゲノム不安定化作用を組み合わせるネズミリンパ腫モデル系を作成した。
【0139】
本発明者等はmTercAtmp53ヘテロ接合マウスを異種繁殖させ、それらを病原体非含有の状態において維持した。本発明者等はmTerc、Atmおよびp53のヌル対立遺伝子を異種交配させることにより、この「3重」突然変異体コロニーから種々の遺伝子型の組み合わせを作成した(簡便のために、以降、このコロニーに由来する全遺伝子型につき「TKO」と記載する)。
【0140】
本発明者等は1日おきに疾患健康の徴候に関して動物をモニタリングした。瀕死状態の動物は安楽死させ、完全な剖検に付し;死亡状態で発見されたマウスは特にリンパ腫の徴候に関して検死した。本発明者等は認可されたIACUCプロトコルに従って全動物の使用および操作を実施した。腫瘍をTKOマウスから採取し、以下の態様において分配した。1区分はDNAおよびRNA抽出のために瞬間凍結し、第2の部分は組織学的検査用に処理し、そして残余の部分はインビトロ培養用に凝集解離させた。腫瘍細胞の懸濁液は50μMのベータメルカプトエタノール、10%Cosmicウシ血清(HyClone)、0.5ng/mL組み換えIL−2、および4ng/mL組み換えIL−7(両方ともPeprotechより入手)を添加したRPMI中に維持した。腫瘍細胞はCD4、CD8、CD3、およびB220/CD45R(eBioscience)に対する抗体で免疫染色し、そしてFACS分析を行った。
【0141】
本発明者等はPureGeneキットにより製造元(Gentra Systems)の説明書に従ってDNA凍結腫瘍を作成した。本発明者等はTrizol(Invitrogen)により製造元の説明書に従って初期抽出によりRNAを作成した。次にペレト化した全RNAをRQ1 DNase(Promega)で消化し、その後、RNA精製カラム(Gentra)を通して精製した。蛋白質は、30秒間超音波バス中の超音波処理の後、溶解緩衝液(Cell Signaling Technologyによる)中で凝集解離することにより、細胞系統または腫瘍小片の何れかより入手した。溶解物を遠心分離して清澄化した後に、製造元の説明書(BioRad Protein Assay)に従って定量し、そして4〜12%NuPageゲル(Invitrogen)上で分離した。
【0142】
本発明者等の観察によれば、p53+/−またはp53−/−であるTKOマウスがp53に関して野生型であるTKO動物と相対比較してより短い潜伏期間およびより高値の浸透度において致死的リンパ腫により死亡した(図2A)。更にまた、p53に関してヘテロ接合であるTKOマウスに由来するリンパ腫は14標本(検査した15標本中)においてホモ接合性への減数を示し(図2B)、この場合のリンパ腫形成の間にp53を不活性化する強力な遺伝子的圧力を示していた。表現型的には、これらのTKO腫瘍はCD4+/CD8+(一般性は低いがCD4−/CD8−または混合型の単独/二重陽性)リンパ腫細胞による胸腺構造の消去を有する従来のAtm−/−マウスモデルにおけるリンパ腫を模倣していた(図2C)。総括すれば、遺伝子的および分子的な観察結果は、Atm非依存性p53依存性テロメアチェックポイントはリンパ腫の発達を制約するために作動することを強力に示唆している。
【0143】
染色体再配列を定量するために、本発明者等はSpectral Karyotype(SKY)分析を以下のプロトコルに従って使用した。中期のプリパレーションは典型的には、樹立後48時間以内に得たが、数例においては細胞系統の樹立が良好な品質の中期を得るために必要であった。採取した細胞は15分間105mMKCl低張性緩衝液中でインキュベートした後、3:1メタノール:酢酸中で固定化した。スペクトル核タイピングはSkyPaint KitおよびSkyView分析用ソフトウエア(Applied Spectral Imaging,Carlsbad,CA)を用いながら製造元のプロトコルに従って実施した。染色体異常はCommittee on Standard Genetic Nomenclature for Miceの規則を用いながら定義した。G0およびG1−G4細胞遺伝学的特徴の間のT検定による比較は各セットにつき90SKYプロファイルに基づく(TKOリンパ腫の各々に対して10中期スプレッド)。
【0144】
図1、図2D、および表3は9テロメア不全(G1−G4mTerc−/−)TKOリンパ腫および9テロメア見損傷(G0mTerc+/+またはmTerc+/−)TKOリンパ腫における染色体再配列のSKY分析を総括したものである。G0腫瘍と相対比較して、G1−G4TKOリンパ腫は、多中心染色体の多重度、非相互転座(NRT)、相同および/または非相同染色体のp−pロバートソン様転座、p−q融合、およびq−q融合を包含する種々の型の染色体構造異常の全体的に高値の頻度を示していた(それぞれ染色体当たり0.34対0.09、p<0.0001、t検定)。染色体毎に検査した場合、数種の染色体(特に2、6、8、14、15、16、17および19)はG0TKO腫瘍と相対比較してG1−G4において有意に高値の2動原体およびロバートソニアン様の再配列事象に関与していた(p<0.05;t検定;図2E)。特定の理論に制約されないが、TKOモデルにおけるこれらの染色体再配列の再発性の非ランダムの性質は、テロメア機能不全に対して耐容性であり、および/またはリンパ腫の発達において起因的役割を果たすための順応機序を与えている可能性がある(例えば染色体2、下記参照)。
【0145】
実施例2:TKOリンパ腫はヒトT細胞悪性疾患におけるものに対してシンテニーのゲノム改変を保有している。
【0146】
ネズミリンパ腫易罹患性TKO不安定性モデルにおける、そしてヒトT−ALLおよび他の癌におけるシンテニーオーバーラップの程度を評価するために、本発明者等は多数のゲノム分析技術を適用しそして統合することにより、T−ALLおよび多様なセットの主要なヒト癌との比較のために癌関連改変を調査した。
【0147】
シンテニーは種の間で保存された遺伝子の順序および方向を説明するものである。染色体再配列により誘発されるシンテニーの破壊は、分岐進化の指標である。TKOマウスモデルおよびヒトT−ALLのシンテニー染色体領域の比較は、腫瘍形成における特定の遺伝子改変の保存された性質を明らかにする場合がある。
【0148】
TKOリンパ腫は複雑な非相互転座(NRT)の多数を保有していたため、本発明者等はこれらのゲノム不安定腫瘍が増大した数の再発性の増幅および欠失を保有するかどうか調べることを試みた。この目的のために、本発明者等は35TKO腫瘍(表3)および比較のための26ヒトT−ALL細胞系統および腫瘍(表4Aおよび4B)に関する高分解能のゲノムワイドのアレイCGHのプロファイルを編集した
本実施例および実施例3〜7において使用したT−ALL細胞系統を表4Aに列挙する。サブセットは記載する通りアレイCGH(後に詳述)および再配列決定の両方に付した。
【0149】
本発明者等は本実施例において臨床ヒトT−ALL試料の2コホートを使用した。8試料(表4B)のコホートは、Dana−Farber Cancer Institute研究00−001において治療されたT−ALLを有する小児科患者から診断時においてインフォームドコンセントおよびIRB認可とともに入手した低温保存されたリンパ芽球またはリンパ芽球細胞溶解物よりなるものであった。本発明者等はこれらの試料をゲノムワイドのアレイCGHプロファイリングに付した。
【0150】
ゲノムワイドのアレイCGHプロファイリングのために、本発明者等は以下のプロトコルを使用した。ゲノムDNAプロセシング、標識およびAgilent CGHアレイへのハイブリダイゼーションは製造元のプロトコルに従って実施した(http://www.home.agilent.com/agilent/home.jspx)。ネズミ腫瘍は個々のマッチした正常DNA(例えば同じ個体に由来する同じ細胞型の非腫瘍細胞)、または、入手できない場合は、マッチする系統バックグラウンドのプールされたDNAに対して、プロファイリングした。標識されたDNAを、マウスに関しては44Kまたは244Kのマイクロアレイ、そしてヒトに関しては22Kおよび44Kのマイクロアレイ上にハイブリダイズした。マウス44Kアレイは42,404の60量体エレメントを含有し、それに対してユニークなマップ位置が定義されていた(National Center for Biotechnology Information,mouse Build34)。マッピングされたエレメントの間のメジアン間隔は21.8kbであり、間隔の97.1%は<0.3メガ塩基(Mb)であり、99.3%が<1Mbであった。244Kアレイは224,641エレメントを含有し、それらに対して同じマウスゲノムビルドに基づいてユニークなマップ位置が定義されていた。ヒト22Kアレイは発現プロファイリングのために設計された22,500エレメントを含有し、それらに対して、マッピングされたエレメント間のメジアン間隔54.8kbで、16,097のユニークなマップ位置が定義されていた。ヒト44Kマイクロアレイは42,494の60量体オリゴヌクレオチドプローブを含有し、それに対してユニークなマップ位置が定義されていた(National Center for Biotechnology Information,Human Build35)。244Kアレイは226,932の60量体オリゴヌクレオチドプローブを含有し、それらに対して同じヒトゲノムビルドに基づいてユニークなマップ位置が定義されていた。
【0151】
244K密度アレイ上で形成されたプロファイルは44Kマイクロアレイ上の同じ42Kプローブに関して抽出することにより2つの異なるプラットホーム上で形成されたプロファイルの組み合わせを可能とした。スキャンされた画像の蛍光比を規格化し、そして2つの対形成(染料交換)の平均として計算し、そして生データにおける変化点の有意性を決定するために順列を使用するアルゴリズムであるCircular Binary Segmentationに基づいてコピー数プロファイルを作成した(A.B.Olshen等、Biostatistics5(4),557(2004))。
【0152】
TKOプロファイルは局所的および限局的な性質のもの両方の再発CNAを呈している全染色体との顕著なゲノム複合性を明らかにしていた(図2F)。多くのCNAは高度に再発性であり、試料の40%超において観察された(例えばマウス染色体1、2、3、4、5、9、10、12、14、15、16、および17上の異なる領域をターゲティングするアンプリコン;および6、11、12、13、14、16、および19上の欠失)。ゲノム改変のこれらのパターンは再配列事象におけるこれらの染色体の優勢な関与を示すSKY分析と十分相応していた。このプラットホームの頑健性および分解能を実証するものとして、T細胞受容体(Tcr)遺伝子座の高度に再発性の生理学的欠失がクローンCD4/CD8陽性T細胞に関して予測された通り容易に検出され(図2F、矢印)、例えば染色体6Tcrβ遺伝子座は28/35腫瘍における限局的欠失、並びに染色体14Tcrα/Tcrδ遺伝子座および染色体13Tcrδ遺伝子座の限局的欠失を維持していた(図1C;図2F)。
【0153】
これらの再発性ゲノム事象およびこの不安定性モデルの病因的関連性は、数種の独立したTKO腫瘍における染色体2に関する高増幅性のゲノム事象の統合的アレイCGHおよびSKY分析により裏付けられる。これらのCNAはアレイCGHにより定義される共通の境界を共有しており、そしてSKYにより異なる相手染色体を有する染色体2のA3バンドが関与する再発性NRTを含有していた(図3)。
【0154】
実施例3:TKOマウスモデルにおける頻発するNOTCH1再配列
TKOモデルにおける、そしてヒトT−Allにおけるゲノム事象を更に比較するために、本発明者等はNOTCH1、FBXW7およびPTENの再配列決定のための38ヒト臨床標本(表4C)の別個のシリーズを使用した(実施例5〜6参照)。これらのT−ALL試料はRoyal Free Hospital,Londonにおいて診断された8人の小児および青年、および、MRC UKALL−XII治験に参加した30人の成人患者から収集した。適切なインフォームドコンセントを患者(18歳より年長の場合)またはその保護者(18歳未満の場合)より入手し、そして研究はEthics Committeeの認可を得ている。
【0155】
1.HPLCおよび配列決定。遺伝子突然変異の状態は変性高速液体クロマトグラフィー(例えばM.R.Mansour等、Leukemia20(3),537(2006)参照)、および2方向配列決定により樹立した。慨すれば、ゲノムDNAをQiagen(Hilden,Germany)のゲノム精製キットを用いながら抽出した。PCRプライマーはエクソンおよびフランキングするイントロン配列を増幅するように設計した。PCR増幅および直接配列決定は当該分野で知られた方法に従って実施した(詳細はH.Davies等、Cancer Res65(17),7591(2005)参照)。配列トレースを手動分析とソフトウエア系分析の組み合わせを用いて分析し、その際、正常からの偏位は2つのオーバーラップする配列トレースの存在(1つの正常対立遺伝子および1つの突然変異体対立遺伝子のDNA配列の存在を示す)、または正常から偏位している単一の配列トレースの存在(突然変異体DNA対立遺伝子のみの存在を示す)により示される。全ての変異体は第2の独立した増幅PCR産物の2方向配列決定により確認した。
【0156】
2.発現プロファイリング。ビオチニル化標的cRNAをTKOモデルに由来する全試料RNAから作成し、そして正常対照ネズミ胸腺RNAに対するマウスオリゴヌクレオチドプローブアレイ(マウス発生オリゴマイクロアレイ、Agilent,Palo Alto,CA)に製造元のプロトコルに従ってハイブリダイズした。各遺伝子の発現値はマウスゲノムのNational Center for Biotechnology Information Build34に基づいてゲノム位置にマッピングした。
【0157】
3.リアルタイムPCR。遺伝子遺伝子座を確認するために、Applied BiosystemsまたはStratagene MX3000リアルタイムサーモサイクラー上で3連の各腫瘍の操作から得られた2ngのDNAを用いながら、QuantitectSYBRグリーンキット(Qiagen USA,Valencia,CA)によりリアルタイムPCRを実施した。各3連の操作は2回実施し;定量は標準曲線法を用いて実施し、そして組み合わせた操作に関する平均の倍数変化を計算した。プライマー配列は表8に記載する。
【0158】
4.ウエスタンブロッティング。ウエスタンブロットは以下の抗体、即ちPTEN(9552)、Akt(9272)、ホスホ−Akt(9271)、Notch1、活性化Notch1Val1744(2421)(Cell Signaling Technology,Ipswich,MA)、およびチューブリン(Sigma Chemical,St.Loius,MO)を使用しながら製造元の説明書に従ってPVDF膜上の清澄化された腫瘍溶解物に対して実施し、そしてHRP標識二次抗体(Pierce;Rockford,IL)および増強化学ルミネセンス基質で発色させた。
【0159】
5.NOTCH1の共通境界分析。CNAの共通境界の詳細な構造的分析により、4つのTKO腫瘍におけるNotch1遺伝子の3’領域に近接する再配列を有するNotch1遺伝子座改変、および2つの追加的腫瘍におけるNotch1を包含する限局的増幅が明らかになった(図3;データ示さず)。C末端構造的改変および点突然変異によるNotch1の活性化はヒトT−ALLのシグネチャー事象である(A.P.Weng等、Science306(5694),269(2004)、F.Radtke等、Nat Immunol5(3),247(2004),L.W.Ellisen等、Cell66(4),649(1991)参照)。TKO試料中の再配列の構造はヒトT−ALLにおけるNOTCH1転座を厳密に反映していなかったが(L.W.Ellisen等、Cell66(4),649(1991))、Notch1を含むそれらの共通の共有境界はTKO腫瘍の潜在的関連性を示唆していた。従って、本発明者等はNotch1の再配列決定をこの遺伝子座においてゲノム再配列の証拠を有さない数種のTKOリンパ腫において実施し、そしてNotch1PESTおよびヘテロ2量化(HD)ドメインにおけるトランケーション挿入/欠失突然変異および非保存的なアミノ酸置換、並びにPESTドメインをコードするエクソン34内部の遺伝子内379bp欠失の1例を明らかにしている(試料A1040)(図4A;表3)。この突然変異スペクトルは、PESTおよびHDドメインがNOTCH1突然変異の2つのホットスポットであることから、ヒトT−ALLにおいて観察されたものと同様である(図4A、後述参照)(A.P.Weng等、Science306(5694),269(2004)。生化学的には種々の型のゲノム再配列、遺伝子内欠失および突然変異がNotch1の活性化を促進し、それは、Notch1蛋白質の完全長蛋白質および活性な切断型(V1744)を検出するように設計されたウエスタンブロットアッセイ(図4B)により、および、Notch1のmRNAレベルと良好な相関をしめしたPtcra、Hes1、Dtx1、およびCd3eを包含する数種のNotch1転写標的のアップレギュレーションを示す転写プロファイル(F.Radtke等、Nat Immunol5(3),247(2004))(図4C)により明らかにされている。
【0160】
実施例4:コピー数変化の最少共通領域内の遺伝子のオーソログマッピングによる種間シンテニーの測定
本実施例において、本発明者等は更にCNAの最少共通領域を定義し、そして特性化することによりTKOマウスモデルにおけるCNAを評価した。
【0161】
シンテニーは種の間で保存された遺伝子の順序および方向を説明するものである。染色体再配列により誘発されるシンテニーの破壊は、分岐進化の指標である。TKOマウスモデルおよびヒトT−ALLのシンテニー染色体領域の比較は、腫瘍形成における特定の遺伝子改変の保存された性質を明らかにする場合がある。
【0162】
TCR遺伝子座の生理学的欠失およびNotch1のゲノムおよび突然変異の事象のヒト様パターンを観察したことにより、本発明者等は、コピー数変化の最小共通領域(MCR)内部に居留する遺伝子のオーソログマッピングを用いながらヒトT−ALLにおけるCNAに対してシンテニーの遺伝子座をターゲティングするCNAをTKOモデルの高度に不安定なゲノムがもたらす程度を評価することとした。
【0163】
1.MCRの定義。この比較を容易にするために、本発明者等は先ず、CNA幅≦10Mbおよび振幅>0.75(log2尺度)の基準と共に確立されたアルゴリズムによりTKOゲノムにおけるMCRを定義した(例えばD.R.Carrasco等、Cancer Cell9(4),313(2006);A.J.Aguirre等、Proc Natl Acad Sci USA101(24)、9067(2004)参照)。慨すれば、「セグメント化された」データセットは、Olshen(A.B.Olshen等、Biostatistics5(4),557(2004))の方法に従って均一なコピー数セグメント境界を決定すること、そして次にプローブを含有するセグメントの平均log2比で各プローブに関する生のlog2比を置き換えることにより作成した。22Kおよび44Kのプロファイルに関しては、最小CNAを示している閾値をそれぞれ±0.15および±0.3に選択した。CNAを示している閾値をそれぞれ±0.4および±0.6に選択した。高い閾値を22Kプロファイルに比較する44Kプロファイルに対して使用することによりプラットホームの性能におけるシグナル対ノイズの検出の差に関して調節した。実施例3〜6に関しては、本発明者等は22Kおよび44Kのプロファイルに関してそれぞれ、±0.60および±0.75のlog2比により定義される究極のCNA事象を示すために少なくとも1つの試料を必要とすることにより最小共通領域(MCR)を選択し、そしてMCRの幅は10Mb未満とする。
【0164】
2.相同体マッピング。本発明者等はNCBI HOMOLOGENEデータベースを使用しながらマウスTKO MCR内部のCNAの染色体構造変化の領域において遺伝子のヒト相同体を同定した。並行して本発明者等は7ヒト腫瘍データセット(膵臓、神経膠芽細胞腫、黒色腫、肺、結腸直腸および多発性骨髄腫)中のCNAを同定した。次にヒト相同体遺伝子リストを用いることにより7ヒト腫瘍データセットの各々のCNA内の遺伝子とマージした。
【0165】
3.癌遺伝子マッピング。癌遺伝子マッピングのために、マウス相同体をSanger’s Cancer Gene Census55(http:/www.sanger.ac.uk/genetics/CGP/Census)に基づいて入手した。次にマウス癌遺伝子をTKOのMCRにマッピングした。
【0166】
本発明者等は増幅および欠失用にそれぞれ2.12Mb(0.15〜9.82Mb)および2.33Mb(0.77〜9.6Mb)の平均サイズの160MCRのリストを入手した(表5)。ゲノム改変のこの頻度は大部分のヒト癌ゲノムのもの(例えば図9A)と同等程度であり、そして大部分の遺伝子操作された「ゲノム安定な」ネズミ腫瘍モデルにおいて検出された典型的な20〜40事象よりも有意に高値であった(例えばR.C.O’Hagan等、Cancer Res63(17),5352(2003);N.Bardeesy等、Proc Natl Acad Sci USA103(15)、5947(2006);M.Kim等、Cell125(7),1269(2006);L.Zender等、Cell125(7),1253(2006))。ヒトT−ALLにおける同様に定義されたMCRリストと比較した場合、160MCR中18(11%)がヒト相応物中に存在する定義されたゲノム事象とオーバーラップしていた(表1)。
【0167】
表1において、ヒトT−ALLデータセット中のMCRとのシンテニーオーバーラップを有する各々のネズミTKO MCRを、その染色体位置(細胞バンド/Chr)および塩基番号(開始および終了、Mb単位)に沿って、増幅および欠失により分離しながら列挙する。各MCRの最小サイズはbpで示す。ピーク比は各MCRに関する最大log2アレイCGH比を指す。RecはMCRを定義した腫瘍の数を指す。増幅されたMCRおよび欠失したMCRに位置する癌遺伝子および候補癌遺伝子も列挙する。これらの癌遺伝子および候補癌遺伝子に関するNCBIアクセッション番号および識別番号を表9に列挙する。
【0168】
マウスTKOと異なる組織学的な型のヒト癌の各々との間のMCRオーバーラップの統計学的有意性を計算するために、本発明者等は、偶然のみにより同程度の2ゲノム間オーバーラップを達成する予測される頻度を求めるために、順列試験を実施した。詳しくは、本発明者等は、実際のTKOゲノムと同じ数量およびサイズの増幅MCRを相当する染色体中に含有する刺激マウスゲノムをランダムに形成し、ヒト癌ゲノムの各々に対して同様のセットを作成した。マウスと各ヒトゲノムとの間のオーバーラップしている増幅の数を計算して保存した。このシミュレーション過程を10,000回反復した。次に増幅オーバーラップの有意性に関するp値を、10,000順列の間に実際に観察されたものと同等以上の程度のオーバーラップを無作為に達成する頻度を10,000で割ることにより、計算した。欠失のオーバーラップに関するp値を同様の態様において計算した。
【0169】
本発明者等はこの程度のオーバーラップは偶然により達成されなかったと結論した。第1に、統計学的有意性(欠失および増幅に関して、それぞれp=0.001および0.004)がこの結論を裏付けており、これは種間オーバーラップの有意性を有効化するための厳格な順列試験により示されている。第2に、本発明者等はこれらの同定されたシンテニーMCR内部に存在するCrebbp、Ikaros、およびAblのようなT−ALL生物学において既に知られているか関与している数種の遺伝子を同定した。総括すれば、これらのデータはこの操作されたネズミモデルの関連するヒト癌への関連性、およびその有用性を裏付けている。
【0170】
実施例5:T−ALLにおける頻繁なFbxw7の不活性化
本実施例において、本発明者等はTKOマウスモデルにおける頻繁な不活性化または欠失の標的としてFbxw7遺伝子を同定した。
【0171】
本発明者等は最小Notch1発現を有する数種のTKO腫瘍が上昇したNotch4またはJagged1(Notchリガンド)mRNAレベルを呈したことを観察した(データ示さず)。この観察事例を検討するために、本発明者等はNotch経路における既知成分のゲノムおよび発現の状況のより詳細な検査を実施した。Notchシグナリング系の4つの中核的エレメントはNotch受容体、DSL(Delta、Serrate、Lag−2)リガンド、CSL(CBF1、ヘアレスのサプレッサー、Lag−1)転写補助因子、および標的遺伝子を包含する。リガンド結合時にはNotchシグナリングはCSLを転写リプレッサから転写活性化物質に変換する。TKO試料A577はFbxw7遺伝子を包含するシンテニーMCRを保有している2つの腫瘍の1つであった(MCR#18、表1)。ヒトT−ALLにおいて、単一プローブ事象を有する1例を含む限局的なFBXW7の欠失が検出された(図5A、右パネル)。究極的に限局的であるものの、種にわたるシンテニーのオーバーラップは、そのような欠失事象がコピー数の多形を表しているという可能性を低めた。実際、ヒトT−ALL臨床標本(n=38)および細胞系統(n=23)のコホートにおけるFBXW7の再配列決定は(表4A、4C、6)は、FBXW7がヒト細胞系統の11/23(48%)および臨床試料の11/38(29%)において突然変異または欠失していることを明らかにし、この遺伝子をヒトT−ALLにおいて最も一般的に突然変異しているものの1つとした(表2)。24中19のTKOリンパ腫における非新生物性の胸腺と相対比較した場合のFbxw7の低減した発現(図5B)と合致して、ヒトT−ALLにおけるこれらのFBXW7突然変異は優勢にはミスセンスの突然変異であり、そして蛋白質の第3および第4のWD40ドメインの進化的に保存された残基において特にクラスタリングしていた(図5C)。更にまた、完全緩解した患者数人からのマッチした正常骨髄におけるFBXW7の再配列決定によれば、2つの最も頻繁に突然変異した位置(R465,R479)は体細胞的に獲得されており(データ示さず);同様に、同定された突然変異の何れも公的なSNPデータベース中には存在しておらず、これらの突然変異は性質的には体細胞性であったという可能性を実証した。最後に、21中19の突然変異がヘテロ接合性であり、Fbxw7がハプロ不全性の腫瘍サプレッサー遺伝子として機能する場合があるという以前の報告と合致している。
【0172】
FBXW7は細胞内NOTCH1のPESTドメインの結合を担っているE3ユビキチンリガーゼの重要な成分であり、ユビキチン化およびプロテオソームによる分解をもたらす(N.Gupta−Rossi等、J.Biol Chem 276(37),34371(2001);C.Oberg等、J.Biol Chem 276(38),35847(2001);G.Wu等、Mol Cell Biol 21(21),7403(2001))。ヒトT−ALLにおけるPESTドメイン突然変異は細胞内NOTCH1の半減期を延長すると考えられており、FBXW7機能の損失がこの経路に対する同様の作用を誘発する可能性を生じさせている。これに着目して、本発明者等は更にNOTCH1突然変異に関してヒト細胞系統および臨床試料を特性化した(表2;表4A、4C、6)。興味深いことに、NOTCH1(HD−N、HD−CおよびPESTドメイン)の既知の機能的突然変異とFBXW7突然変異との間には関連性がなかった(p=0.16)。しかしながらNOTCH1突然変異を有する試料のうち、FBXW7突然変異は、突然変異したPESTドメインを有する試料(4/19;21%)において、HD−NまたはHD−Cドメインのみの突然変異を有する試料(13/20;65%;フィッシャーの正確確立検定によりp=0.009)よりも低い頻度で見られた。この観察結果の説明の1つとして、FBXW7およびNOTCH1のPESTドメインの突然変異は同じ分解経路をターゲティングしており、そして両方の成分を突然変異させることからは白血病の大多数に与えられる選択的利点は殆ど無いことが挙げられる。同時に、NOTCH1とFBXW7の相互排他性の欠如はNOTCHシグナリング以外の経路に対するFBXW7による非オーバーラップ活性を示唆している可能性がある。
【0173】
実施例6:Pten不活性化はマウスおよびヒトのT細胞悪性疾患における共通の事象である。
【0174】
本実施例においては、本発明者等はTKOマウスモデルにおける頻発する不活性化または欠失の標的としてPten遺伝子を同定した。
【0175】
Pten遺伝子に集中する染色体19上の限局的欠失はTKOリンパ腫における最も共通したゲノム事象であった(表1、図2F)。リアルタイムPCR評価と組み合わせたアレイCGHを用いながら本発明者等は15/35(43%)TKOリンパ腫におけるPtenのホモ接合欠失を明らかにした(図6、図7A)。PTENはよく知られた腫瘍サプレッサーであり、そしてネズミ胸腺におけるその不活性化はT細胞腫瘍を発生させることがわかっている(A.Suzuki等、Curr Biol8(21),1169(1998))。相応して、アレイCGHでは、26中4つのヒトT−ALL試料(2細胞系統および2原発腫瘍)が持続性のPTEN遺伝子座再配列を有していることが確認された。更にまた、61のT−ALLの細胞系統および臨床標本を再度配列決定したところ(表4)、9例において不活性化PTEN突然変異(これらの何れも公的なSNPデータベースには記載されていない)が明らかになったが、NOTCH1突然変異の状態との相関は不明であった(表2、表6)。更にまた、本発明者等はPTEN突然変異が臨床標本(2/38;5.2%)よりも細胞系統(7/23;30.4%)においてより頻繁に起こることを観察した(表6)。これらの臨床標本は新しく診断された症例から誘導されたのに対し、細胞系統は主に回帰例から樹立されていることから、特定の理論に制約されないが、突然変異頻度におけるこの差は、PTEN不活性化は、他の可能性よりも、進行に伴うより後期の事象であることを示唆している可能性がある。
【0176】
これらのゲノムおよび遺伝子の改変に加えて、TKOおよびヒトT−ALL試料のノーザンおよびウエスタンブロット分析およびトランスクリプトームのプロファイリングによれば、上昇したホスホAKTを有する低値〜検出不可能のPTEN発現(図7B、データ示さず)を有する腫瘍のより広範な収集が明らかになった。低PTEN発現に加えて、限局的Akt1増幅およびTsc1損失が2つのTKO試料に存在したことにより明らかにされる通りAKT活性化を駆動する追加的機序が存在すると考えられる(図7Cl;データ示さず)。最後に、TKOリンパ腫におけるPtenの状態の生物学的有意性は、Aktホスホリル化をブロックすることが知られており、そしてAkt経路に対して依存性の細胞を抑制することが示されている薬物であるトリシリビンに応答したPten依存的態様におけるAkt阻害に対するそれらの感受性(図8)により裏付けられる。慨すれば、20,000個の細胞を96穴フォーマットにおいて3連でプレーティングし、そして37℃の5%CO2において2日間、種々の用量のトリシリビン(BioMol,Plymouth Meeting、PA)または等価な濃度のビヒクル(DMSO;Sigma Chemicals,St.Louis,MO)とともに標準的な培地中でインキュベートした。インキュベーション期間の終了時において、細胞の増殖をMTSアッセイ(AqueousOne Cell Titer System;Promega,Madison,WI)で定量し、そして吸光度をOD490で読み取った。等価な量のDMSO単独における細胞系統の増殖に対して相対的な細胞増殖をプロットした。各細胞系統および用量に対して3〜5回実験を反復した。図8に示す通り、Ptenの突然変異または欠失を有するTKO細胞はトリシビンに対して感受性であった。
【0177】
実施例7:多様なヒト癌とのTKOゲノムの広範な比較
実施例3〜6において、出願人等はTKOマウスモデルを用いながらFbxw7およびPtenを同定および特性化した。Fbxw7およびPtenは両方とも以前より腫瘍サプレッサー遺伝子として同定されている。よって、ヒトT−ALLにおいて突然変異された状態におけるそれらの同定は、出願人等の方策に関わる原理の証明をもたらしており、そして、本明細書に記載したマウスモデルが癌遺伝子発見のための強力な手段を提供することを明らかにしている。本実施例においては、出願人等は種間ゲノム分析を他のヒト癌にまで拡張した。
【0178】
上記した種間比較によりT細胞起源の癌における多くの一致した疾患が示されたが、この不安定性モデルが非造血系悪性疾患を含む多くの癌型への基本的関連性(例えばテロメア機能不全およびp53突然変異)の機序によりもたらされるという事実は、他のヒト癌への潜在的に広範な関連性を示唆している。重要な例は、PTENが多数の癌型49,50に関する真の腫瘍サプレッサーであるという点において、上記Ptenの例が該当する。このことを評価するために、本発明者等は種間比較ゲノム分析を、多発性骨髄腫(n=67)53、神経膠芽細胞腫(n=38)(未公開)および黒色腫(n=123)(未公開)、並びに膵臓の腺癌(n=30)(未公開)、肺(n=63)54および結腸(n=74)(未公開)を包含する造血系、間葉系および上皮系の起源の6つの他のヒト癌型(n=421)に拡張した。
【0179】
これらの癌の型の各々の同様に定義されたMCRリスト(即ちMCR幅≦10Mb;実施例4および図5A参照)に対して比較した場合、出願人等は、TKOゲノムにおける160MCR中102(61増幅および41欠失)(64%)が1つのヒトアレイCGHデータセットにおける少なくとも1つのMCRとマッチしていることを発見し(図5A)、この程度のオーバーラップの非ランダム性を実証する強力な統計学的有意性が伴っていた。これらのシンテニー事象の遺伝子的関連性における信頼性は更に、これらのシンテニーMCRの半数超(61増幅中38、即ち62%;41欠失中22、即ち53%)が2つ以上のヒト腫瘍型において再発しているMCRとオーバーラップしていたという観察事例により裏付けられた(図5B)。更にまた、TKO MCRのかなりの割合が非造血系の起源のヒト腫瘍において進化的に保存されている(図5C)。シンテニーヒットを有する61増幅中、その58(95%)が固形腫瘍において観察されたのに対し、残余3例は黒色腫において固有に観察された(図5C)。同様に、41シンテニー欠失中33(80%)が固形腫瘍中に存在していた(図5C)。特に、出願人等は、p53が7ヒト癌型中5つにおいて欠失MCR中に存在していたのに対し、Mycは6ヒト癌とオーバーラップしていた増幅の標的であったことを発見した。多様なヒト癌とのこの多大なオーバーラップは予測外であった。
【0180】
次に出願人等は、これらのTKOゲノム事象に関して追加的レベルの有効化を行うために、これらのシンテニーMCRが既知癌遺伝子をターゲティングするかどうかを調べた。癌遺伝子センサス55上に列挙されている363遺伝子のうち、237遺伝子がNCBIホモロジーンに基づくマウス相同体を有している(実施例4参照)。これらのうち、24の既知癌遺伝子が104シンテニーMCRの1つの内部に居留していることがわかった(表7)。これらには増幅における17の癌遺伝子および欠失における7腫瘍サプレッサーを包含していた。これらのシンテニーMCRの大部分は既知癌遺伝子を含有しておらず、シンテニーMCRの居留遺伝子に着目した再配列決定は、FBXW7およびPTENの例により裏付けられる命題であるヒト癌における体性の突然変異を同定するための高収率の戦略を与えるかもしれないという強力な可能性を生じさせる。
【0181】
本発明の種々の態様の実施は、特段の記載が無い限り、当業者の知る範囲の細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組み換えDNA、および免疫学の従来の手法を使用してよい。そのような手法は文献に詳細に説明されている。例えば以下を参照のこと:Molecular Cloning A Laboratory Manual,第2版、Sambrook,Fritsch and Maniatis編(Cold Spring Harbor Laboratory Press:1989);DNA Cloning,IおよびII巻(D.N.Glover編、1985);Current Protocols in Molecular Biology,Ausubel等、Greene Publishing Associates(1992および2003の補遺);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984);Mullis等、米国特許第4,683,195号;Nucleic Acid Hybridization(B.D.Hames&S.J.Higgins編、1984);Transcription And Translation(B.D.Hames&S.J.Higgins編、1984);Culture Of Animal Cells(R.I.Freshney,Alan R.Liss,Inc.1987);Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press,1986);B.Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);the treatise,Methods In Enzymology(Academic Press,Inc.N.Y.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(J.H.Miller and M.P.Calos編、1987,Cold Spring Harbor Laboratory);Methods In Enzymology,Vols.154 and 155(Wu等編),Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(Mayer and Walker編、Academic Press,London,1987);Handbook Of Experimental Immunology,第I−IV巻(D.M.Weir and C.C.Blackwell編、1986);Manipulating the Mouse Embryo,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.1986);Coffin等、Retroviruses, Cold Spring Harbor Laboratory Press;Cold Spring Harbor,N.Y.(1997);Bast等、Cancer Medicine,第5版、Frei,Emil編、BC Decker Inc.Hamilton,Canada(2000);Lodish等、Molecular Cell Biology,第4版、W.H.Freeman&Co.New York(2000);Griffiths等、Introduction to Genetic Analysis,第7版、W.H.Freeman&Co.New York(1999);Gilbert等、Developmental Biology,第6版、Sinauer Associates,Inc.Sunderland,MA(2000);およびCooper,The Cell−A Molecular Approach,第2版、Sinauer Associates,Inc.Sunderland,MA(2000)。本明細書において引用した全ての特許、特許出願および参考文献は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0182】
【化1】
【0183】
【化2】
【0184】
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【0247】
【表1−1】
【0248】
【表1−2】
【0249】
【表2】
【0250】
【表3−1】
【0251】
【表3−2】
【0252】
【表4】
【0253】
【表5−1】
【0254】
【表5−2】
【0255】
【表5−3】
【0256】
【表6−1】
【0257】
【表6−2】
【0258】
【表7】
【0259】
【表8】
【0260】
【表9】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
この出願は、2007年5月21日に出願された米国仮出願第60/931,294号(この内容は、その全体が参考として本明細書に援用される)の利益およびそれに対する優先権を主張する。
【0002】
(政府支援)
本明細書に記載される研究は、認定番号CA84628(RO1)およびCA84313(UO1)により全体および部分において資金援助されている。合衆国政府は、本発明における特定の権利を有する場合がある。
【0003】
本発明は、一般的に癌遺伝子の発見のためのゲノム不安定な動物癌モデルの使用に関する。
【背景技術】
【0004】
癌は、突然変異の確率論的な獲得により駆動され、そして自然の選択により形状付与される遺伝的疾患である。多くのヒト癌の特徴であるゲノムの不安定性は、これらの突然変異を拡大し、調節不能な成長に至る臨界的な障壁を細胞が乗り越えることができるようにし、そしてこのため、悪性への転換における決定的事象を予測することになる。ゲノムの不安定性は、染色体異常、例えば転座および増幅により顕在化する。腫瘍進行の過程の間にどのようにして、かついつ、有意なゲノム不安定性が生じるか、そしてその時点の後に癌が治癒できるのか、またはなお含有されるのかが極めて重要で、大部分が未解決の問題となっている。
【0005】
ヒト癌腫に関する動物モデルは、癌の治療の検討および開発のための価値ある手段である。自身のゲノムに取り込まれた癌遺伝子または抑制された腫瘍サプレッサー遺伝子を有するネズミモデルは、ヒト癌の研究のために広範に使用されている。しかしながら、ヒト癌遺伝子発見の取り組みの指針となるネズミモデルの最大の利用に対する障害は、大部分の標準的な癌の遺伝子操作マウスモデルの相対的に良性の細胞遺伝的なプロファイルである(例えば、非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4参照)。これらのモデルはヒト癌の多くの型に関連する全般的な染色体異常を反映していない。
【0006】
ヒト癌の過剰な染色体不安定性をより緊密に模倣している、数種の癌易発症性のネズミモデルが最近開発されている。例えば、Artandi等は、テロメラーゼ定義p53突然変異体マウスモデルにおける上皮癌の発症を記載しており(非特許文献5);Zhu等は、p53および非相同末端結合(NHEJ)の両方が欠損しているマウスモデルにおける癌遺伝子の転座および増幅を記載しており(非特許文献6);Olive等は、優性p53突然変異体対立遺伝子を有するリー・フラウメニ症候群マウスモデルを記載しており(非特許文献7);Lang等は、p53ミスセンス突然変異を有するリー・フラウメニ症候群マウスモデルを記載しており(非特許文献8);そしてHingorani等は、TP53およびKRAS2の突然変異体型を発現する膵臓腺管癌のマウスモデルを記載している(非特許文献9)。しかしながら、これらのマウスモデルにおける染色体異常の頻度は相対的に低値であり、そしてトランスジェニックマウスは必ずしも悪性の癌を発症しない。癌ゲノム解析を促進するためには、ヒト癌に匹敵する頻度の染色体異常を有する、癌を発症するように遺伝子的に改変された新しい哺乳類モデルを作成する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】N.Bardeesy等、Proc Natl Acad Sci USA(2006)103(15),5947
【非特許文献2】M.Kim等、Cell(2006)125(7),1269
【非特許文献3】L.Zender等、Cell(2006)125(7),1253
【非特許文献4】A.Sweet−Cordero等、Genes Chromosomes Cancer(2006)45(4),338
【非特許文献5】Artandi等、Nature(2000)406(6796),641
【非特許文献6】Zhu等、Cell(2002)109(7),811
【非特許文献7】Olive等、Cell(2004)119(6),847
【非特許文献8】Lang等、Cell(2004)119(6),861
【非特許文献9】Hingorani等、Cancer Cell(2005)7(5),469
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
高度に再配列され突然変異された癌ゲノムは、癌の過程を駆動する病因事象の同定における重大な難点を呈している。本明細書において、本発明者等は、癌遺伝子の発見における動物モデルの利用性および癌関連コピー数変化における異種間のオーバーラップの程度を評価するために、染色体不安定性を有するリンパ腫易発症性のマウスを操作した。ターゲティングされた再配列決定との統合で、本発明者等の比較癌ゲノム試験によって、ヒトT細胞急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫(T−ALL)における共通して欠失または突然変異された腫瘍サプレッサーとしてFBXW7およびPTENを同定した。より一般的には、ネズミ癌は、ヒトT−ALLのみならず造血系、間葉系および上皮系型の多様な腫瘍中に存在する改変にシンテニーな遺伝子座をターゲティングする広範な再発性のクローン増幅および欠失を獲得する。即ちこれらの結果は、ネズミおよびヒトの腫瘍は、悪性の表現型に向かって進化するに従い、オーソロガスな遺伝子事象により駆動される共通の生物学的過程を経験しているという見解を裏付けている。ゲノム事象の高度に一致する性質は、ヒト癌において生物学的に関連性のある駆動事象の発見におけるゲノム不安定な動物癌モデルの使用を促すものである。
【0009】
1つの態様において、本発明は、癌を発症するように遺伝子的に改変された非ヒトトランスジェニック哺乳類であって、哺乳類に由来する癌細胞のゲノムが、遺伝子改変を有さないそのような哺乳類における染色体構造異常の頻度よりも少なくとも5倍高い頻度において染色体構造異常を含むような、非トランスジェニック哺乳類を提供する。特定の実施形態においては、哺乳類はげっ歯類である。特定の実施形態においては、哺乳類はマウスである。
【0010】
特定の実施形態においては、哺乳類は、DNA修復機能に関与する蛋白質(例えば非相同末端結合(NHEJ)に関与する蛋白質、相同組み換えに関与する蛋白質、またはDNA修復ヘリカーゼ)をコードする1つ以上の遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子、およびテロメア長を合成および維持する成分をコードする1つ以上の遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子の操作された不活性化を含む。あるいは、哺乳類は、DNA修復機能に関与する蛋白質をコードする1つ以上の遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子、および、DNA損傷チェックポイント蛋白質をコードする1つ以上の遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子の操作された不活性化を含んでよい。あるいは、哺乳類は、DNA損傷チェックポイント蛋白質をコードする1つ以上の遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子、およびテロメア長を合成および維持する成分をコードする1つ以上の遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子の操作された不活性化を含んでよい。
【0011】
特定の実施形態においては、哺乳類のゲノムは更に、活性化された癌遺伝子、不活性化された腫瘍抑制遺伝子、またはそれらの両方のような、少なくとも1つの追加的な癌促進性の改変を含む。
【0012】
別の態様において、ヒト癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子エレメントの同定のための目的の染色体領域を同定する方法であって、染色体不安定性を生じるように操作された非ヒト哺乳類由来の癌細胞の集団におけるDNAコピー数の変化を同定する工程を含む、方法を提供する。DNAコピー数の変化の染色体領域は、ヒト癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子エレメントの同定のための目的の染色体領域である。
【0013】
特定の実施形態においては、DNAコピー数の変化は、非ヒト哺乳類由来の2つ以上の癌細胞において再発性である。DNAコピー数の変化はDNAの増加またはDNAの減少であり得る。
【0014】
別の態様において、ヒト癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子エレメントの同定のための目的の染色体領域を同定する方法であって、染色体不安定性を生じるように操作された非ヒト哺乳類由来の癌細胞の集団における染色体構造異常を同定する工程を含む、方法を提供する。染色体構造異常を含有する染色体領域は、ヒト癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子エレメントを同定するための目的の染色体領域である。
【0015】
特定の実施形態においては、該方法は更に、(1)非ヒト哺乳類由来の癌細胞の集団におけるDNAコピー数の変化を同定する工程、および(2)染色体構造異常およびDNAコピー数の変化を含有する非ヒト哺乳類の癌細胞のゲノム内の染色体領域を同定する工程を含む。染色体構造異常およびDNAコピー数の変化を含有する染色体領域は、ヒト癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子エレメントの同定のための目的の染色体領域である。特定の実施形態においては、該方法は更に、DNAコピー数の変化の均一なコピー数のセグメントの境界を測定する工程を含む。
【0016】
別の態様において、本発明は、潜在的にヒトの癌に関連する遺伝子を同定するための方法であって、以下の工程:(a)目的の染色体領域(例えばヒト癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子エレメントを含むもの)を同定すること;(b)非ヒト哺乳類における目的の染色体領域内部の遺伝子または遺伝子エレメントを同定すること;および、(c)工程(b)において同定された遺伝子または遺伝子エレメントに相当するヒト遺伝子または遺伝子エレメントを同定することを含む、方法を提供する。ヒト遺伝子または遺伝子エレメントは潜在的にヒトの癌に関連する遺伝子または遺伝子エレメントである。特定の実施形態においては、ヒト遺伝子は工程(b)において同定された遺伝子または遺伝子エレメントに対してオーソロガス、パラロガス、または相同である。特定の実施形態においては、該方法は更に、工程(b)において同定された非ヒト哺乳類の遺伝子または遺伝子エレメント、工程(c)において同定されたヒト遺伝子または遺伝子エレメント、またはそれらの両方における突然変異を検出する工程を含む。
【0017】
別の態様において、本発明は、潜在的にヒト癌に関連する遺伝子または遺伝子エレメントを同定する方法であって、以下の工程:(a)ゲノム不安定性を生じるように操作された非ヒト哺乳類に由来する癌細胞の集団におけるDNAコピー数の変化を検出すること、(b)工程(a)において検出されたDNAコピー数の変化の境界内部に位置する遺伝子または遺伝子エレメントを同定すること、および(c)工程(b)において同定された遺伝子または遺伝子エレメントに相当し、そしてヒト癌細胞中のDNAコピー数の変化、または染色体構造異常の境界内部に位置するヒト遺伝子または遺伝子エレメントを同定することを含む、方法を提供する。工程(c)において同定されたヒト遺伝子または遺伝子エレメントは、ヒト癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子エレメントである。
【0018】
別の態様において、本発明は、潜在的にヒト癌に関連する遺伝子または遺伝子エレメントを同定する方法であって、以下の工程:(a)ゲノム染色体不安定性を生じるように操作された非ヒト哺乳類に由来する癌細胞の集団における染色体構造異常を検出すること、(b)工程(a)において検出された染色体構造異常の部位に位置する遺伝子または遺伝子エレメントを同定すること、および(c)工程(b)において同定された遺伝子または遺伝子エレメントに相当し、そしてヒト癌細胞中のDNAコピー数の変化の境界内部に、または染色体構造異常の部位に位置するヒト遺伝子または遺伝子エレメントを同定することを含む、方法を提供する。工程(c)において同定されたヒト遺伝子または遺伝子エレメントは、ヒト癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子エレメントである。特定の実施形態においては、該方法は更に、工程(b)において同定された非ヒト哺乳類の遺伝子または遺伝子エレメント、工程(c)において同定されたヒト遺伝子または遺伝子エレメント、またはそれらの両方における突然変異を検出する工程を含む。
【0019】
特定の実施形態においては、該方法は、再発性の遺伝子コピー数の変化の最小共通領域(MCR)を定義する工程を更に含む。特定の実施形態においては、MCRは2つ以上の試料の間のオーバーラップの境界により定義される。特定の実施形態においては、MCRは、ある単一の腫瘍の少なくとも1つの他の腫瘍におけるより大きい改変のバックグラウンドに対する境界により定義される。
【0020】
別の態様において、本発明は、γ−セクレターゼ阻害剤療法に対して低下した応答を有する場合がある、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T−ALL)を有する対象を同定するための方法であって、該対象に由来する腫瘍細胞におけるFBXW7の発現または活性を検出することを含む、方法を提供する。対照と比較した場合のEBXW7の低下した発現または活性は、該対象がγ−セクレターゼ阻害剤療法に対して低下した応答を有する場合があることを示している。
【0021】
特定の実施形態においては、該方法は更に、対象に由来する腫瘍細胞中のNOTCH1の発現または活性を検出することを含む。対照と比較した場合のNOTCH1の上昇した発現または活性は、該対象がγ−セクレターゼ阻害剤療法に対して低下した応答を有する場合があることを示している。
【0022】
別の態様において、本発明は、PI3K経路阻害剤での治療から利益を被る場合がある、T−ALLを有する対象を同定するための方法であって、該対象に由来する腫瘍細胞中のPTENの発現または活性を検出することを含む、方法を提供する。対照と比較した場合のPTENの低下した発現または活性は、該対象がPI3K阻害剤での治療から利益を被る場合があることを示している。特定の実施形態においては、該方法は更にPI3K阻害剤で該対象を治療することを含む。
【0023】
別の態様において、本発明は、対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有するかどうかを評価する方法であって、該対象に由来する生物学的試料における、表1の増幅されたMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを測定することを含む、方法を提供する。対照と比較した場合の遺伝子の発現または活性の上昇は、該対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有することを示している。あるいは、対照と比較した場合に、表1の欠失したMCR中に位置する癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルの低下がある場合は、低下した発現または活性のレベルはまた、該対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有することを示している。
【0024】
別の態様において、本発明は、対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有するかどうかを評価する方法であって、該方法が、該対象に由来する生物学的試料における、表1に列挙した少なくとも1つの増幅された最小共通領域(MCR)のコピー数を測定することを含む、方法を提供する。MCRの正常なコピー数と比較した場合の試料中のMCRの増大したコピー数は、該対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有することを示している。あるいは、MCRの正常なコピー数と比較した場合の試料中の欠失したMCR(同じく表1に列挙)の減少したコピー数は、該対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有することを示している。MCRの正常なコピー数は、典型的には染色体当たり1つである。
【0025】
別の態様において、本発明は、対象における癌の進行をモニタリングするための方法であって、該方法が以下の工程:a)表1に列挙する癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを、第1の時点において該対象由来の生物学的試料中で測定すること;b)その後の時点において工程a)を反復すること;およびc)工程a)およびb)における遺伝子の発現または活性を比較すること、そしてそれから該対象における癌の進行をモニタリングすることを含む、方法を提供する。
【0026】
別の態様において、本発明は、対象における癌を治療するための試験薬剤の薬効を評価する方法であって、以下の工程:a)試験薬剤の存在下、該対象由来の生物学的試料中の表1の増幅されたMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを測定すること;およびb)試験薬剤の非存在下、該対象由来の生物学的試料中の遺伝子の発現または活性のレベルを測定することを含む、方法試験薬剤を提供する。工程(b)と比較した場合の工程(a)における遺伝子の低下した発現または活性は、該対象における癌を治療するための試験薬剤の潜在的な薬効を示している。あるいは、試験薬剤が表1における欠失したMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性を上昇させる場合、該試験薬剤はまた、該対象における癌を治療するために潜在的に有効である。
【0027】
別の態様において、本発明は、対象における癌を治療するための療法の効力を評価する方法であって、以下の工程:a)該対象に療法の少なくとも一部分を提供する前に、該対象由来の生物学的試料中の表1の増幅されたMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを測定すること;およびb)該療法の一部分の提供の後の該対象由来の生物学的試料中の遺伝子の発現または活性のレベルを測定することを含む、方法を提供する。工程(b)と比較した場合の工程(a)における遺伝子の低下した発現または活性は、該対象における癌を治療するための療法の効力を示している。あるいは、療法が表1における欠失したMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性を上昇させる場合、該療法はまた、対象における癌を治療するために潜在的に有効である。
【0028】
別の態様において、本発明は癌に罹患した対象を治療する方法であって、表1の増幅されたMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを低下させる薬剤を該対象に投与することを含む、方法を提供する。あるいは、本発明は、癌に罹患した対象を治療する方法であって、表1の欠失したMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを上昇させる薬剤を該対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0029】
特定の実施形態においては、該薬剤は、表1に列挙する癌遺伝子または候補癌遺伝子に特異的に結合する抗体もしくはその抗原結合フラグメントである。
【0030】
別の態様において、本発明は、対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有するかどうかを評価する方法であって、該対象に由来する生物学的試料における、表5に列挙した少なくとも1つの最小共通領域(MCR)のコピー数を測定することを含む、方法を提供する。MCRの正常なコピー数と比較した場合の、試料中のMCRのコピー数の変化は、該対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有することを示している。MCRの正常なコピー数は、典型的には染色体当たり1つである。
【0031】
特定の実施形態においては、癌はリンパ腫である。特定の実施形態においては、リンパ腫はT−ALLである。
【0032】
別の態様において、本発明は、ゲノム不安定性非ヒト哺乳類モデル(本発明のゲノム不安定性マウスモデルを包含する)を用いて同定されたMCRのコピー数を、MCRの正常なコピー数と比較することにより、対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有するかどうかを評価する方法を提供する。MCRの正常なコピー数は、典型的には染色体当たり1つである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1A】TKO腫瘍のスペクトル核型(SKY)プロファイル。テロメア機能不全を伴うか伴わない、選択されたTKO腫瘍に関する代表的な中期のGバンドおよびSKY画像。図1Aは、G0(mTerc+/+または+/−)を示し、図1Bは、G1−G4(mTerc−/−)TKO腫瘍を示す。写真はテロメア機能不全を有するTKO腫瘍における染色体構造異常の頻度の全体的上昇を示す。非相互転座および染色体フラグメントは矢印で示す。図1Cは、合成ネズミTKO(左;A689)およびヒト(右;HPB−ALL)TCRB欠失の代表的なアレイCGHのLog2比のプロットを示す。Y軸、コピー数のlog2比(通常はlog2=0に設定);この軸に対して増幅は上、欠失は下となる;X軸、染色体位置。
【図1B】TKO腫瘍のスペクトル核型(SKY)プロファイル。テロメア機能不全を伴うか伴わない、選択されたTKO腫瘍に関する代表的な中期のGバンドおよびSKY画像。図1Aは、G0(mTerc+/+または+/−)を示し、図1Bは、G1−G4(mTerc−/−)TKO腫瘍を示す。写真はテロメア機能不全を有するTKO腫瘍における染色体構造異常の頻度の全体的上昇を示す。非相互転座および染色体フラグメントは矢印で示す。図1Cは、合成ネズミTKO(左;A689)およびヒト(右;HPB−ALL)TCRB欠失の代表的なアレイCGHのLog2比のプロットを示す。Y軸、コピー数のlog2比(通常はlog2=0に設定);この軸に対して増幅は上、欠失は下となる;X軸、染色体位置。
【図1C】TKO腫瘍のスペクトル核型(SKY)プロファイル。テロメア機能不全を伴うか伴わない、選択されたTKO腫瘍に関する代表的な中期のGバンドおよびSKY画像。図1Aは、G0(mTerc+/+または+/−)を示し、図1Bは、G1−G4(mTerc−/−)TKO腫瘍を示す。写真はテロメア機能不全を有するTKO腫瘍における染色体構造異常の頻度の全体的上昇を示す。非相互転座および染色体フラグメントは矢印で示す。図1Cは、合成ネズミTKO(左;A689)およびヒト(右;HPB−ALL)TCRB欠失の代表的なアレイCGHのLog2比のプロットを示す。Y軸、コピー数のlog2比(通常はlog2=0に設定);この軸に対して増幅は上、欠失は下となる;X軸、染色体位置。
【図2】TKOモデルの特性化。図2Aは、p53野生型、ヘテロ接合およびヌルバックグラウンドに対するG3−G4TKOマウスに関する胸腺リンパ腫非含有生存のKaplan−Meier曲線を示すグラフである。図2Bは、PCRを用いたp53に関するヘテロ接合性の損失を示す;N、正常;T、腫瘍。図2Cは、細胞表面マーカーCD4およびCD8に対する抗体を用いたTKO腫瘍の代表的FACSプロファイルである。図2Dは、G0(上)およびG1−G4(下)の胸腺リンパ腫からの中期スプレッドより得られた代表的なSKY画像である。等しい数量の中期スプレッド(90)のうち、4533染色体当たり410異常(9%)がG0で観察されたのに対し、G1−C4TKO腫瘍では3659中1254(34%)であった。倍数性のレベルには有意差は観察されなかった。図2Eは、G0(青)およびG1−G4(赤)の胸腺リンパ腫におけるSKYにより検出された細胞遺伝的異常の総数の定量を示すプロットである。暗色は非相互転座を示す事象の比率を示し、そして明色は二動原体/ロバートソニアン様再配列を表す比率を示す。図2Fは、35TKOリンパ腫に関するアレイCGHにより定義されたCNAの再発プロットである。X軸は各染色体の物理的位置を示し、そしてY軸はコピー数の変化を示す腫瘍の%を示す。各遺伝子座の獲得、増幅、損失および欠失を保有している腫瘍のパーセントを以下のスキームにより、即ち暗赤色(log2比による獲得=>0.3)および緑色(log2比による損失<=−0.3)を明赤色(log2比による増幅=>0.6)および明緑色(log2比による欠失<=−0.6)とともにプロットする。Tcrβ、Tcrα/δ、およびTcrγにおける生理学的に関連性のあるCNAの位置は矢印で示し、そして本文中考察した他の遺伝子座(Notch1、Pten)はアスタリスクで示す。
【図3A】Notch1アレイCGHおよびSKY。図3Aは、Notch1の3’末端をターゲティングする限局的増幅を示すネズミTKOリンパ腫A1052に由来する代表的なアレイCHGHlog2比プロット、およびその領域における他の遺伝子に相対的なその位置を示す(http://genome.ucsc.edu/,NBCI mouse build34)。Y軸、コピー数のlog2比(通常はlog2=0に設定);この軸に対して増幅は上、欠失は下となる;X軸、染色体位置。図3Bは、Notch1の3’末端をターゲティングする染色体2増幅を保有するネズミTKO腫瘍A1052およびA895細胞のSKY解析である。上側パネル:矢印で標示したネズミ染色体2の関与する非相互転座を示す、記載された腫瘍に由来する中期スプレッド;アスタリスクは異常なバンドchr2A3を示す。下側パネル:記載されるように、染色体2および他の染色体の関与する個々の再配列した染色体の代表的SKY画像。各パネルは、記載した再配列染色体に関するそのままのスペクトル画像(左)、DAPI画像(中)、およびコンピューター解釈スペクトル画像(右)の複合物である。図3Cは、FISHを用いたNotch1においてオーバーラップしている2つの近接BACプローブを分離する切断点を示す。赤シグナル、BACプローブRP24−369L23;緑シグナル、BACプローブRP23−412O13。
【図3B】Notch1アレイCGHおよびSKY。図3Aは、Notch1の3’末端をターゲティングする限局的増幅を示すネズミTKOリンパ腫A1052に由来する代表的なアレイCHGHlog2比プロット、およびその領域における他の遺伝子に相対的なその位置を示す(http://genome.ucsc.edu/,NBCI mouse build34)。Y軸、コピー数のlog2比(通常はlog2=0に設定);この軸に対して増幅は上、欠失は下となる;X軸、染色体位置。図3Bは、Notch1の3’末端をターゲティングする染色体2増幅を保有するネズミTKO腫瘍A1052およびA895細胞のSKY解析である。上側パネル:矢印で標示したネズミ染色体2の関与する非相互転座を示す、記載された腫瘍に由来する中期スプレッド;アスタリスクは異常なバンドchr2A3を示す。下側パネル:記載されるように、染色体2および他の染色体の関与する個々の再配列した染色体の代表的SKY画像。各パネルは、記載した再配列染色体に関するそのままのスペクトル画像(左)、DAPI画像(中)、およびコンピューター解釈スペクトル画像(右)の複合物である。図3Cは、FISHを用いたNotch1においてオーバーラップしている2つの近接BACプローブを分離する切断点を示す。赤シグナル、BACプローブRP24−369L23;緑シグナル、BACプローブRP23−412O13。
【図3C】Notch1アレイCGHおよびSKY。図3Aは、Notch1の3’末端をターゲティングする限局的増幅を示すネズミTKOリンパ腫A1052に由来する代表的なアレイCHGHlog2比プロット、およびその領域における他の遺伝子に相対的なその位置を示す(http://genome.ucsc.edu/,NBCI mouse build34)。Y軸、コピー数のlog2比(通常はlog2=0に設定);この軸に対して増幅は上、欠失は下となる;X軸、染色体位置。図3Bは、Notch1の3’末端をターゲティングする染色体2増幅を保有するネズミTKO腫瘍A1052およびA895細胞のSKY解析である。上側パネル:矢印で標示したネズミ染色体2の関与する非相互転座を示す、記載された腫瘍に由来する中期スプレッド;アスタリスクは異常なバンドchr2A3を示す。下側パネル:記載されるように、染色体2および他の染色体の関与する個々の再配列した染色体の代表的SKY画像。各パネルは、記載した再配列染色体に関するそのままのスペクトル画像(左)、DAPI画像(中)、およびコンピューター解釈スペクトル画像(右)の複合物である。図3Cは、FISHを用いたNotch1においてオーバーラップしている2つの近接BACプローブを分離する切断点を示す。赤シグナル、BACプローブRP24−369L23;緑シグナル、BACプローブRP23−412O13。
【図4A】ネズミおよびヒトT−ALLの両方におけるNOTCH1改変。図4Aは、ネズミTKOおよびヒトT−ALL腫瘍におけるNotch1に影響する配列改変の位置のグラフ表示である。各マーカーは個々の細胞系統/患者を示す。図4Bは、ネズミ完全長Notch1(FL;上)、切断された活性Notch1(V1744;中)およびチューブリン負荷対照(下)のウエスタンブロット解析を示す。高レベルの活性化Notch1蛋白質が多くのTKO腫瘍、例えば3’転座(青色:A577、A1052、A1251)およびトランケーション欠失突然変異(赤色:A494、A1040)を保有するものにおいて発現され、これらにおいてはより急速に遊走するV1744型が著明である。ヒトALL−SIL(左)および正常マウス胸腺(右)を対照に対して負荷した。図4Cは、高レベルのNotch1mRNAは、TKO腫瘍の発現プロファイルにより評価されるように、Notch1蛋白質の公知の下流標的の高いmRNAレベルと相関していることを示している。各バーは個々のプローブセットを示す。図4Bに示す通り、青字の試料はNotch1の近傍の3’転座を保有しており、赤字の試料はトランケーション欠失突然変異を保有していることを示す。
【図4B】ネズミおよびヒトT−ALLの両方におけるNOTCH1改変。図4Aは、ネズミTKOおよびヒトT−ALL腫瘍におけるNotch1に影響する配列改変の位置のグラフ表示である。各マーカーは個々の細胞系統/患者を示す。図4Bは、ネズミ完全長Notch1(FL;上)、切断された活性Notch1(V1744;中)およびチューブリン負荷対照(下)のウエスタンブロット解析を示す。高レベルの活性化Notch1蛋白質が多くのTKO腫瘍、例えば3’転座(青色:A577、A1052、A1251)およびトランケーション欠失突然変異(赤色:A494、A1040)を保有するものにおいて発現され、これらにおいてはより急速に遊走するV1744型が著明である。ヒトALL−SIL(左)および正常マウス胸腺(右)を対照に対して負荷した。図4Cは、高レベルのNotch1mRNAは、TKO腫瘍の発現プロファイルにより評価されるように、Notch1蛋白質の公知の下流標的の高いmRNAレベルと相関していることを示している。各バーは個々のプローブセットを示す。図4Bに示す通り、青字の試料はNotch1の近傍の3’転座を保有しており、赤字の試料はトランケーション欠失突然変異を保有していることを示す。
【図4C】ネズミおよびヒトT−ALLの両方におけるNOTCH1改変。図4Aは、ネズミTKOおよびヒトT−ALL腫瘍におけるNotch1に影響する配列改変の位置のグラフ表示である。各マーカーは個々の細胞系統/患者を示す。図4Bは、ネズミ完全長Notch1(FL;上)、切断された活性Notch1(V1744;中)およびチューブリン負荷対照(下)のウエスタンブロット解析を示す。高レベルの活性化Notch1蛋白質が多くのTKO腫瘍、例えば3’転座(青色:A577、A1052、A1251)およびトランケーション欠失突然変異(赤色:A494、A1040)を保有するものにおいて発現され、これらにおいてはより急速に遊走するV1744型が著明である。ヒトALL−SIL(左)および正常マウス胸腺(右)を対照に対して負荷した。図4Cは、高レベルのNotch1mRNAは、TKO腫瘍の発現プロファイルにより評価されるように、Notch1蛋白質の公知の下流標的の高いmRNAレベルと相関していることを示している。各バーは個々のプローブセットを示す。図4Bに示す通り、青字の試料はNotch1の近傍の3’転座を保有しており、赤字の試料はトランケーション欠失突然変異を保有していることを示す。
【図5A】FBXW7改変はヒトT−ALLにおいて共通であり、そしてネズミTKO腫瘍において保存されている。図5Aは、マウスTKOおよびヒトT−ALL細胞系統の両方においてFBXW7の欠失をもたらすCNAの保存を示す、log2比アレイCGHプロットのグループであり、Fbxw7のゲノム位置は緑色で示す。Y軸、コピー数のlog2比(通常はlog2=0に設定);この軸に対して増幅は上、欠失は下となる;X軸、染色体位置。図5Bは、記載したネズミTKO腫瘍におけるリアルタイムqPCRにより評価した場合の、マウスFbxw7 mRNAの相対的発現レベルを示す。図5Cは、ヒトT−ALL患者および細胞系統のパネルにおいて同定されたヒトFBXW7における突然変異の位置のグラフ表示である。各マーカーは個々の細胞系統/患者を示す。
【図5B】FBXW7改変はヒトT−ALLにおいて共通であり、そしてネズミTKO腫瘍において保存されている。図5Aは、マウスTKOおよびヒトT−ALL細胞系統の両方においてFBXW7の欠失をもたらすCNAの保存を示す、log2比アレイCGHプロットのグループであり、Fbxw7のゲノム位置は緑色で示す。Y軸、コピー数のlog2比(通常はlog2=0に設定);この軸に対して増幅は上、欠失は下となる;X軸、染色体位置。図5Bは、記載したネズミTKO腫瘍におけるリアルタイムqPCRにより評価した場合の、マウスFbxw7 mRNAの相対的発現レベルを示す。図5Cは、ヒトT−ALL患者および細胞系統のパネルにおいて同定されたヒトFBXW7における突然変異の位置のグラフ表示である。各マーカーは個々の細胞系統/患者を示す。
【図5C】FBXW7改変はヒトT−ALLにおいて共通であり、そしてネズミTKO腫瘍において保存されている。図5Aは、マウスTKOおよびヒトT−ALL細胞系統の両方においてFBXW7の欠失をもたらすCNAの保存を示す、log2比アレイCGHプロットのグループであり、Fbxw7のゲノム位置は緑色で示す。Y軸、コピー数のlog2比(通常はlog2=0に設定);この軸に対して増幅は上、欠失は下となる;X軸、染色体位置。図5Bは、記載したネズミTKO腫瘍におけるリアルタイムqPCRにより評価した場合の、マウスFbxw7 mRNAの相対的発現レベルを示す。図5Cは、ヒトT−ALL患者および細胞系統のパネルにおいて同定されたヒトFBXW7における突然変異の位置のグラフ表示である。各マーカーは個々の細胞系統/患者を示す
【図6A】TKO腫瘍におけるPtenの限局的欠失。図6Aは、Ptenを包含する限局的欠失を呈しているTKOリンパ腫に由来する代表的なアレイCGHlog2比プロット、およびその領域における他の遺伝子に相対的なその位置を示す(http://genome.ucsc.edu/,NBCImouse build34)。Y軸、コピー数のlog2比(通常はlog2=0に設定);この軸に対して増幅は上、欠失は下となる;X軸、染色体位置。図6Bは、リアルタイムqPCRの結果(数種の腫瘍における欠失を示す)を総括したものであり、記載した領域に対するプライマーセット(矢印)およびアレイCGH60量体オリゴプローブ(Agilent 44K アレイ)の位置を用いたリアルタイムqPCRをグラフに表示している。A494は欠失の証拠を有さない対照として示す。
【図6B】TKO腫瘍におけるPtenの限局的欠失。図6Aは、Ptenを包含する限局的欠失を呈しているTKOリンパ腫に由来する代表的なアレイCGHlog2比プロット、およびその領域における他の遺伝子に相対的なその位置を示す(http://genome.ucsc.edu/,NBCImouse build34)。Y軸、コピー数のlog2比(通常はlog2=0に設定);この軸に対して増幅は上、欠失は下となる;X軸、染色体位置。図6Bは、リアルタイムqPCRの結果(数種の腫瘍における欠失を示す)を総括したものであり、記載した領域に対するプライマーセット(矢印)およびアレイCGH60量体オリゴプローブ(Agilent 44K アレイ)の位置を用いたリアルタイムqPCRをグラフに表示している。A494は欠失の証拠を有さない対照として示す。
【図7】ヒトおよびマウスT−ALLにおけるPTEN遺伝子改変の保存。図7Aは、マウスTKOおよびヒトT−ALL細胞系統の両方における、PTENの欠失をもたらすCNAの保存を示すlog2比アレイCGHプロットのグループであり、Ptenのゲノム位置は緑色で示す。Y軸、コピー数のlog2比(通常はlog2=0に設定);この軸に対して増幅は上、欠失は下となる;X軸、染色体位置。図7Bは、ネズミTKOおよびヒトT−ALL細胞系統のパネルにおけるPTEN、ホスホAkt、およびAktの発現レベルを示すウエスタンブロット解析を示す。BE13およびPEERは同一分類群系統である。負荷対照としてチューブリンを同時にプローブした。赤色の試料は確認された配列の突然変異を保有しており、青色の試料はCGH検出欠失を保有している。図7Cは、ネズミTKO腫瘍におけるPten−Akt軸の他のメンバーに対するCNAの効果を示すlog2比アレイCGHプロットのグループである。各遺伝子(Akt1、Tsc1)の位置は緑色で示す。
【図8】Pten突然変異/欠失を有するTKO細胞は、薬物トリシリビンによるホスホAktの阻害に対して感受性である。細胞を3連でプレーティングし、そして48時間トリシリビンまたはビヒクル単独の記載用量に曝露し、そして次に生細胞に関してMTS試験により定量した。生存細胞の画分をビヒクル単独における生存(1に設定)と相対比較しながらプロットする。腫瘍A1040は野生型のPten発現を保持しており、そしてA1005はPtenの1コピーにおける点突然変異を保有しているのに対し、細胞系統A577、A1240、A1252、およびA494はPten発現に関して欠損性である。
【図9】ネズミTKOリンパ腫および多様な起源のヒト腫瘍のゲノム改変間の多大なオーバーラップ。図9Aは、異種間のオーバーラップの統計学的解析の結果を総括したものである。本発明者等は、記載した腫瘍の型に由来するヒトアレイCGHプロファイルを入手した。本発明者等は、更に実施例のセクション(特に実施例4)に記載したようにMCRを定義した。各セットの特徴をパネルの左側部分に列挙する。相当するヒトCGHデータセットとのシンテニーなオーバーラップを有するTKO MCR(amp、増幅;del、欠失)の数をパネルの右側に記載し、各々に対するp値は10,000順列に基づく。図9Bは、1つまたは多数のヒト腫瘍型(セグメントの異なる色で示す)において同定されたシンテニーなオーバーラップを有するTKO MCR(各セグメント内に記載)の数のPieチャート表示のグループである;左、増幅;右、欠失。例えば、図9A中の61シンテニー増幅のうち21が2つの異なるヒト腫瘍CGHデータセット中に観察された。図9Cは、ネズミTKO MCRおよびT−ALL、多発性骨髄腫、または固形腫瘍(神経膠芽細胞腫、黒色腫、および膵臓、肺、および結腸の腺腫)のヒト癌由来のMCRの間のオーバーラップの程度のベン図表示のグループである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(発明の詳細な説明)
癌関連遺伝子および治療上の癌標的の発見のために用いられるインビボの癌モデルは、典型的には良性の染色体プロファイル、即ちほぼ正常な染色体安定性を有する癌細胞を生じる。これとは対照的に、天然に存在するヒト癌においては、癌細胞ゲノムは、染色体構造異常により明らかなように、広範な不安定性を呈する。従って、本発明は脱安定化されたゲノム(「ゲノム不安定」)を有するインビボの癌モデルを提供する。
【0035】
本発明のゲノム不安定モデルに由来する癌細胞のゲノムは、ヒト癌細胞ゲノムにより呈される染色体不安定性を模倣している。従って、本発明のゲノム不安定癌モデルは、ヒトの癌の開始、維持および進行に関与する遺伝子および遺伝子エレメントの発見のために多大な利益を与える。モデルに由来する癌細胞における染色体異常、特に再発性の異常は、「良性」の染色体プロファイルを有する癌モデルにおいては不可能である癌における染色体事象の検討を可能にする。そのような染色体異常はまた、癌関連エレメントを保有する可能性がより高いゲノムの特定の領域に着目させるものである。ヒト癌の多数の型における場合を反映している染色体の事象および遺伝子の事象を発生させるゲノム不安定マウス癌モデルの本明細書における有効性は、ヒト癌に関連する癌関連遺伝子および治療上の標的の発見のための重要な新しい手段を与える。ヒト癌に関連する遺伝子および遺伝子エレメントを発見するためにそれ自体有用であるが、本発明のゲノム不安定モデルはまた、既知の癌モデルを包含する他の癌モデルを確立するためのバックグラウンドとして使用することもできる。既知の癌遺伝子および/または腫瘍サプレッサーにおける遺伝子改変を本発明のゲノム不安定モデルに重ね合わせることにより、天然に存在する癌をより緊密に複写する改良されたモデルが提供される。より重要な点としては、本発明のゲノム不安定モデルは、共有されている染色体および遺伝子の事象を同定するためのヒト癌ゲノムとの異種間比較を可能にする。そのような共有されている事象は、癌関連遺伝子および治療標的の発見のための強力な指針を与える。
【0036】
1.定義
本明細書および実施形態を通じて、「含む」またはその変形、例えば「含んでいる」などの単語は、記載した整数または整数の群の包含を意味しており、任意の他の整数または整数の群の除外を意味するわけではないと理解されたい。
【0037】
本明細書において特段の記載が無い限り、本発明に関連して使用される科学技術用語は、当業者により一般的に理解されている意味を有するものとする。更にまた、文脈により別様に必要とされない限り、単数表記は複数表記を含み、複数表記は単数表記を含むものとする。一般的に、本明細書に記載される細胞および組織の培養、分子生物学、細胞および癌の生物学、ウィルス学、免疫学、微生物学、遺伝学ならびに蛋白質および核酸の化学に関連して使用される命名法およびその手法は、当該分野で良く知られているものであり、かつ使用されているものである。
【0038】
2.動物モデル
癌の最も標準的な遺伝子操作されているマウスモデルは、比較的良性の細胞遺伝プロファイルを有する。これらのゲノム的に安定なモデルは、癌におけるヒトのゲノムに典型的な広範な染色体不安定性を反映しない。最も「ゲノム安定な」ネズミ腫瘍モデルにおいて、ゲノム当たり約20〜40の染色体異常、または染色体当たり0.1未満の染色体再配列が検出されていることが報告されている。
【0039】
従って、1つの態様において、本発明は、癌を発症するように遺伝子的に改変された非ヒト動物であって、この場合、動物に由来する癌細胞のゲノムは、ヒト癌細胞において見られるものに近似または合致する染色体構造異常の頻度により明らかなように、増強された染色体不安定性を呈する。種々の実施形態において、非ヒト動物モデル由来の癌細胞の集団における染色体構造異常の頻度は、遺伝子改変を有さないそのような哺乳類における染色体構造異常の頻度よりも少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、または10倍高値であり、これはゲノム当たり、または染色体当たりの何れを基本として定義されるかに関わらない。
【0040】
染色体異常の頻度は、ゲノム当たりもしくは染色体当たりのそのような異常の平均数、またはゲノム当たりの染色体異常の特定の型の平均数、または特定の染色体における異常の平均数に基づくことができる。染色体異常を計測する方法は当該分野で知られており(例えばR.C.O’Hagan等、Cancer Res 63(17),5352(2003);N.Bardeesy等、Proc Natl Acad Sci USA 103(15),5947(2006);M.Kim等、Cell 125(7),1269(2006);L.Zender等、Cell 125(7),1253(2006)参照)、そして後述において更に開示する。本発明のゲノム不安定非ヒト動物モデルに由来する癌細胞は、上記したパラメーターの少なくとも1つまで、上記したゲノム脱安定化機序を欠いている同等の非ヒト動物モデルから誘導された細胞と比較して、染色体異常の増大した頻度を有することになる。
【0041】
染色体構造異常は、DNAの増加または損失、DNA増幅、DNA欠失、およびDNA転座に起因する何れかの染色体異常であってよい。例示される染色体構造異常は、例えば姉妹染色分体交換、多中心染色体、反転、獲得、損失、相互および非相互転座(NRT)、相同および/または非相同染色体のp−pロバートソン様転座、p−q染色体アーム融合、ならびにq−q染色体アーム融合を包含する。
【0042】
本発明のゲノム不安定動物モデルの遺伝子改変は、動物を癌易罹患性とし、かつゲノム構造またはゲノム安定性に影響する何れかの遺伝子または遺伝子エレメントであり得るので、そのようなゲノム脱安定化機序を欠いている同等の動物モデルにおけるゲノムおよび/または染色体と比較して、動物において発症する癌のゲノムおよび/または染色体における染色体構造異常の上昇した頻度により明らかなように、改変がゲノムを脱安定化する。遺伝子エレメントは、マイクロRNAのような蛋白質産物を産生するように翻訳されないDNA、発現制御配列、例えばDNA転写因子結合部位、RNA転写開始部位、プロモーター、エンハンサー、応答エレメント等を包含する。一部の実施形態においては、遺伝子改変は、染色体構造の安定性または一体性に関与する遺伝子または遺伝子エレメントを不活性化する。不活性化は、遺伝子または遺伝子エレメントを直接不活性化することによるか、発現を抑制することによるか、または、核酸産物、例えばRNAもしくは蛋白質遺伝子産物であり得る遺伝子産物の活性を不活性化または阻害することによるかであってよい。
【0043】
一部の実施形態においては、遺伝子改変は、DNA修復に関与する1つ以上の遺伝子または遺伝子エレメントの少なくとも1つの対立遺伝子の不活性化、およびDNA損傷チェックポイントに関与する1つ以上の遺伝子または遺伝子エレメントの少なくとも1つの対立遺伝子の不活性化を含む。一部の実施形態においては、遺伝子改変は更にテロメア維持に関与する遺伝子または遺伝子エレメントの少なくとも1つの対立遺伝子の不活性化を含む。上記実施形態の何れかにおいて、DNA修復関連、DNA修復チェックポイント関連および/またはテロメア維持関連の遺伝子または遺伝子エレメントの両方の対立遺伝子が不活性化されてよい。
【0044】
DNA修復またはDNA損傷チェックポイントに関与する何れかの遺伝子または遺伝子エレメントを、本発明のゲノム不安定モデルにおいて不活性化することができる。ヒトおよび他の哺乳類における多くのそのような遺伝子および遺伝子エレメントは、当業者の知る通りとなる。例えばR.D.Wood等、Human DNA Repair Genes,Science,291:1284−1289(February 2001);R A Bulman,S D Bouffler,R CoxおよびT A Dragani,Locations of DNA Damage Response and Repair Genes in the Mouse and Corerelation with Cancer Risk Modifiers,National Radiological Protection Board Report,October 2004(ISBN 0−85951−544−3)を参照。マウスDNA修復遺伝子データベースは、UK Health Protection Agencyのウエブサイトにおいて入手できる。
【0045】
それらは例えば塩基除去修復(BER)蛋白質をコードする遺伝子、例えばung、smug1、mbd4、tdg、off1、myh、nth1、mpg、ape1、ape2、lig3、xrcc1、adprt、adprtl2およびadprtl3またはその種相同体;ミスマッチ除去修復蛋白質、例えばmsh2、msh3、msh4、msh5、msh6、pms1、pms3、mlh1、mlh3、pms2l3およびpms2l4またはその種相同体;ヌクレオチド除去修復(NER)蛋白質、非相同性末端結合(NHEJ)蛋白質、相同組み換え蛋白質、DNAポリメラーゼ、編集およびプロセシングヌクレアーゼならびにDNA修復ヘリカーゼ等を包含する。上記Wood等を参照。
【0046】
例示されるNHEJ蛋白質は、リガーゼ4、XRCC4、H2AX、DNAPKcs、Ku70、Ku80、Artemis、Cernunnos/XLF、MRE11、NBS1およびRAD50を包含する。例示される相同組み換え蛋白質は、RAD51、RAD52、RAD54、XRCC3、RAD51C、BRCA1、BRCA2(FANCD1)、FANCA、FANCB、FANCC、FANCD2;FANCE、FANCF、FANCG、FANCJ(BRIP1/BACH1)、FANCL、およびFANCMを包含する。例示されるDNA修復ヘリカーゼは、BLMおよびWRNを包含する。
【0047】
DNA損傷チェックポイントに関与する何れかの遺伝子または遺伝子エレメントを、本発明のゲノム不安定モデルにおいて使用できる。多くのそのような遺伝子および遺伝子エレメントに関する情報は容易に入手でき、そして当業者に良く知られているものとなる。例示されるDNAチェックポイント蛋白質は、センサー蛋白質、例えばRAD1、RAD9、RAD17、HUS1、MRE11、Rad50、およびNBS1;メディエーター、例えばATRIP;ホスホイノシチド3−キナーゼ関連キナーゼ(PIKK)ファミリー蛋白質、例えばATM、ATR、SMG−1およびDNA−PK;チェックポイントキナーゼ、例えばChk1およびChk2;エフェクター蛋白質、例えばp53、p63、p73、CDC25A、BおよびC、p21および14−3−3β、γ、ξ、σ、ε、η、τAPC;BRCA1、MDM2、MDM4、NBS1、RAD24、RAD25、RAD50、MDC1、SMC1、およびクラスピンを包含する。
【0048】
本発明のゲノム不安定モデルの1つの実施形態において、非ヒトトランスジェニック動物は更に、テロメア長を合成または維持することに関与する1つ以上の遺伝子または遺伝子エレメントの少なくとも1つの対立遺伝子の操作された不活性化を含む。一部の実施形態においては、非ヒトトランスジェニック哺乳類は、例えばテロメラーゼ逆転写酵素、Tert、またはテロメラーゼRNA(Terc)の不活性化により、低下したテロメラーゼ活性のために操作される。一部の実施形態においては、遺伝子改変は、キャッピング機能のようなテロメア構造に影響する蛋白質の活性を低下させる。テロメア構造に影響する例示される蛋白質は、TRF1、TRF2、POT1a、POT1b、RAP1、TIN2、およびTPP1を包含する。
【0049】
本発明の非ヒトゲノム不安定モデルは、何れかの動物、例えば魚類、鳥類、哺乳類、爬虫類、両生類であってよい。好ましくは、該動物は哺乳類、例えばげっ歯類、霊長類、ネコ、イヌ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ウシである。好ましい実施形態においては、該哺乳類はマウスである。
【0050】
本発明のゲノム不安定動物モデルは、細胞の全てまたは一部分のみがゲノム不安定性を生じさせる遺伝子改変を含む動物を含む。一部の実施形態においては、該動物の生殖細胞が遺伝子改変を含む。
【0051】
一部の実施形態においては、ゲノム不安定モデルはatm、tercもしくはp54またはこれらの遺伝子の何れかの組み合わせの対立遺伝子の一方またはそれらの両方の不活性化を含む。特定の実施形態においては、3遺伝子全ての対立遺伝子の一方またはそれらの両方が不活性化される。一部の実施形態においては、atmの両方の対立遺伝子が不活性化される。特定の実施形態においては、3遺伝子全ての両方の対立遺伝子が不活性化される。
【0052】
同様に本発明に包含されるものは、本発明のゲノム不安定モデルに由来する組織および細胞、例えば体細胞、生殖細胞、幹細胞、例えば胚性幹細胞、分化した細胞および未分化の細胞である。該細胞は癌細胞、非癌細胞、または前癌細胞であってよい。
【0053】
本発明のゲノム不安定動物モデルにおける遺伝子または遺伝子エレメントの不活性化は、何れかの手段により達成することができ、その大部分が当業者に良く知られている。そのような手段は、遺伝子もしくは遺伝子エレメントの全てもしくは部分の欠失、または遺伝子もしくは遺伝子エレメント内への不活性化突然変異(病変)の導入を包含する。遺伝子または遺伝子エレメントの全てまたは一部分の欠失は、ノックアウトによるもの、例えば相同組み換えまたはCreリコンビナーゼ(例えばCre−Lox系)を用いる手法によるものであってよい。ノックアウトを包含する欠失は、条件的ノックアウトであることができ、その場合、核酸配列の改変は、例えば遺伝子改変を促進する物質への動物の曝露、遺伝子部位における組み換えを促進する酵素(例えばCre−lox系におけるCre)の導入、または遺伝子改変を指向するための他の方法により、生じることができる。条件的または構成的ノックアウトは組織特異的、時間特異的(例えば特定の発達段階の間に生じる)またはそれらの両方であることができる。
【0054】
不活性化突然変異は何れかの手段を用いて導入してよく、その大部分は良く知られている。そのような方法は、例えば相同組み換えまたはPCRを用いた部位指向性の突然変異誘発を包含する。そのような突然変異は、遺伝子の5’未翻訳領域(UTR)内、例えば発現制御領域内、コーディング領域内(イントロンもしくはエクソン)、または3’UTR内に導入してよい。
【0055】
遺伝子または遺伝子エレメントの発現または活性はまた、何れかの手段、限定しないが例えばRNA干渉、アンチセンス、例えば3重らせん形成、ならびにリボザイム、例えばRNアーゼP、リードザイム、ヘアピンリボザイムおよびハンマーヘッドリボザイムにより達成し得る。
【0056】
一部の実施形態においては、本発明のゲノム不安定動物モデルは、更に1つ以上の追加的な癌誘発性の遺伝子改変、限定しないが例えば、1つ以上の活性化された癌遺伝子の導入、1つ以上の癌遺伝子の発現を増大させる改変、1つ以上の腫瘍サプレッサーのターゲティングされた不活性化、または上記の組み合わせを含む。そのような追加的な癌誘発性の改変は、誘導性、組織特異性、時間特異性、または3者の何れかの組み合わせであってよい。例えば、癌遺伝子は、転写の5’−3’方向において、特定の組織型における遺伝子発現に関連する転写および翻訳の開始領域、癌遺伝子、および宿主動物において機能性である転写および翻訳の終止領域を包含する発現カセットを用いてゲノム内に導入できる。1つ以上のイントロンも存在してよい。目的の癌遺伝子に加えて、検出可能なマーカー、例えばGFP(およびその変異体)、ルシフェラーゼ、およびlacZを場合により癌遺伝子に作動可能に連結させ、そして同時発現させてよい。同様に、腫瘍サプレッサー遺伝子を例えば遺伝子ターゲティング技術を用いて不活性化してよい。
【0057】
本明細書に記載するゲノム不安定動物モデル内に追加的癌誘発性改変を導入することは、癌遺伝子発見の強力な手段をもたらす。例えば、膵臓におけるKrasの活性化およびp53の突然変異は、ヒトにおける膵臓癌を誘発することが知られている。膵臓特異的Kras活性化、p53活性化(および場合により低下したテロメア機能)を有するゲノム不安定モデルは、ヒトにおける膵臓癌遺伝子の発見を大きく促進することになる。
【0058】
ゲノム不安定モデルにおける癌は、何れかの型の癌、例えば癌腫、肉腫、骨髄腫、白血病、リンパ腫または混合型の癌である。癌は、何れかの組織型、例えば上皮組織、間葉組織、神経組織および造血組織から生じ、そして身体の何れかの臓器または組織中に位置することができる。染色体異常の頻度は、上記した癌の何れかに由来する細胞において測定することができ、そして原発腫瘍、二次腫瘍、転移腫瘍、癌になるように当業者により導入された追加的癌遺伝子の活性化および腫瘍サプレッサー遺伝子の不活性化を介してインビトロで遺伝子的に操作された前記ゲノム的に不安定なモデルから誘導された腫瘍再発性の恐らくは正常な細胞に由来することができる。
【0059】
本発明のゲノム不安定マウスモデルは何れかの癌、限定しないが例えば、末端部黒子黒色腫、光線角化症、腺癌、腺様嚢胞癌、腺腫、腺肉腫、腺扁平上皮癌、副腎皮質癌、エイズ関連リンパ腫、肛門癌、退形成型神経膠腫、星状細胞腫瘍、星状細胞腫、バルトリン腺癌腫、基底細胞癌、胆道癌、骨癌、胆管癌、膀胱癌、脳幹神経膠腫、脳腫瘍、乳癌、気管支腺癌腫、毛細管癌腫、カルチノイド、癌腫、癌肉腫、海綿状、中枢神経系のリンパ腫、大脳星状細胞腫、子宮頸癌、結合組織癌、胆管癌、軟骨肉腫、脈絡叢乳頭腫/癌腫、明細胞癌腫、結腸癌、結腸直腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、嚢胞腺腫、内胚葉洞腫瘍、子宮内膜過形成、子宮内膜間質部肉腫、類内膜腺癌、上衣、上衣細胞腫、類上皮、食道癌、ユーイング肉腫、生殖腺外生殖細胞腫瘍、眼癌、線維層、限局性結節過形成、胆嚢癌、神経節膠腫、胃癌、ガストリノーマ、生殖細胞腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍、多形性神経膠芽細胞腫、神経膠腫、グルカゴノーマ、頭部頸部癌、血管芽腫、血管内皮種、血管腫、肝細胞腺腫、肝臓腺腫症、肝細胞癌、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、視床下部および視路の神経膠腫、小児、インスリノーマ、上皮内新生物、上皮間扁平上皮細胞新生物、眼内黒色腫、上皮内新生物、侵襲性扁平上皮細胞癌腫、大細胞癌腫、島細胞癌腫、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭癌、平滑筋肉腫、悪性黒子黒色腫、白血病関連障害、口唇および口腔の癌、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、悪性中皮腫、悪性胸腺腫、髄芽細胞腫、髄上皮腫、黒色腫、髄膜、メルケル細胞癌腫、中皮、転移癌腫、粘液性類表皮癌、多発性骨髄腫/プラズマ細胞新生物、菌状息肉腫、骨髄形成異常症候群、骨髄増殖性障害、鼻腔および副鼻腔の癌、鼻咽頭癌、神経芽腫、神経線維腫症、神経上皮腺癌結節黒色腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、燕麦細胞癌、稀突起神経膠、稀星状細胞腫、口腔癌、口腔咽頭癌、骨肉腫、膵臓ポリペプチド、卵巣癌、卵巣生殖細胞腫瘍、膵臓癌、乳頭血清腺癌、松果体細胞、下垂体腫瘍、プラズマ細胞腫、偽肉腫、肺芽腫、上皮小体癌、陰茎癌、褐色細胞腫、松果体およびテント上未分化神経外胚葉性腫瘍、下垂体腫瘍、プラズマ細胞新生物、胸膜肺芽腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、呼吸系の癌、網膜芽腫、横紋筋肉腫、肉腫、漿液癌腫、皮膚癌、小細胞癌腫、小腸癌、軟組織癌腫、ソマトスタチン分泌腫瘍、扁平上皮癌腫、扁平上皮細胞癌、胃癌、間質腫瘍、中皮下、表在拡大型黒色腫、テント上未分化神経外胚葉性腫瘍、精巣癌、甲状腺癌、未分化癌腫、尿道癌、子宮肉腫、ブドウ膜黒色腫、いぼ状癌、膣癌、ビポーマ、外陰部癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、十分に分化された癌腫、ならびにウイルムス腫瘍を発症してよい。
【0060】
本明細書に記載する動物モデルは、典型的にはトランスジェニック技術を用いて得られる。トランスジェニック技術は当該分野で良く知られている。例えば、トランスジェニックマウスは多くの方法において製造できる。主題のトランスジェニック動物を作成するための例示される方法は、接合体の注入によるものである。この方法は、例えば米国特許4,736,866に記載されている。該方法では、受精卵または接合体にDNAを注入し、そして次に疑似妊娠母体中で該卵を発生させる。接合体は同じ系統の雌雄動物を用いるか、または異なる系統の雌雄動物から得ることができる。出生したトランスジェニック動物は始祖と称され、そしてそれを育種することにより同じDNA挿入を有するより多くの動物を製造する。トランスジェニック動物を作成するこの方法において、外因性のDNAは典型的には、非相同性の組み換え事象により、ゲノム内にランダムに組み込まれる。DNAの数千コピーに対して1つがゲノム内の1部位において組み込まれる場合がある。
【0061】
3.癌関連遺伝子を同定する方法
別の態様において、本発明は、本発明のゲノム不安定モデルを利用してヒトにおける癌の開始、維持および/または進行に関与する遺伝子および遺伝子エレメントを同定するための方法を提供する。遺伝子の発見および同定の方法は、ゲノム不安定マウスモデルにおける癌細胞中の染色体構造異常、コピー数変化および突然変異が、ヒト癌細胞におけるシンテニー対応物(即ち進化的に関連する染色体領域において生じるもの)を有するという、本明細書に記載された驚くべき発見に基づいている。
【0062】
従って、1つの実施形態において、本発明は、ヒト癌に潜在的に関連する遺伝子の同定のための目的の染色体領域を同定する方法であって、上記した非ヒトゲノム不安定哺乳類由来の癌細胞の集団におけるDNAコピー数の変化を同定する工程を含む、方法を提供する。DNAコピー数変化が生じている染色体領域が、ヒト癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子エレメント(例えばマイクロRNA)の同定のための目的の染色体領域である。
【0063】
DNAコピー数変化はDNAの増加(例えばゲノム領域の増幅)またはDNAの減少(例えばゲノム領域の欠失)であってよい。特定のゲノム領域のコピー数を評価する方法は当該分野で良く知られており、そしてハイブリダイゼーションおよび増幅系のアッセイを包含する。本発明の方法によれば、DNAコピー数変化は,比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)(二重チャンネルハイブリダイゼーションプロファイリングおよび単一チャンネルハイブリダイゼーションプロファイリング(例えばSNP−CGH)の両方を含む)のようなコピー数プロファイリングを用いて同定してよい。他の適当な方法、例えば蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)、PCR、核酸配列決定、およびヘテロ接合性損失(LOH)解析を本発明に従って使用してよい。
【0064】
本発明の1つの実施形態において、ゲノム中のDNAコピー数変化はコピー数プロファイリングにより測定する。
【0065】
本発明の一部の実施形態においては、DNAコピー数変化はCGHを用いて同定する。比較ゲノムハイブリダイゼーション法においては、核酸の「試験」収集物(例えば腫瘍または癌性の細胞に由来)を第1の標識で標識し、第2の収集物(例えば正常細胞または組織に由来)を第2の標識で標識する。核酸のハイブリダイゼーションの比は、アレイ中の各繊維に結合した第1および第2の標識の比により測定される。例えば、試験収集物中の遺伝子増幅に起因する2標識からのシグナルの比における差が検出され、そして比は使用する特異的プローブに相当する遺伝子コピー数の尺度を与える。DNAコピー数の変化の細胞遺伝的表示は、CGHにより作成することができ、これは示差的に標識された試験および参照のゲノムDNAに由来する染色体の長さに沿った蛍光の比を与える。
【0066】
本発明の一部の実施形態においては、DNAコピー数変化は、マイクロアレイ系CGH(アレイCGH)により解析される。マイクロアレイ技術は高い分解能を与える。例えば、伝統的なCGHは一般的に20Mbの限定されたマッピング分解能を有するのに対し、マイクロアレイ系CGHにおいては示差的に標識された試験および参照のゲノムDNAの蛍光の比がDNAコピー数変化の遺伝子座毎の尺度を与え、これにより上昇したマッピング分解能が達成される。種々のマイクロアレイ法の詳細は、文献に見出すことができる。例えば、米国特許6,232,068;Pollack等、Nat.Genet.23(1):41−6(1999),Pastinen(1997)Genome Res.7:606−614;Jackson(1996)Nature Biotechnology 14:1685;Chee(1995)Science 274:610;WO96/17953,Pinkel等(1998)Nature Genetics 20:207−211等を参照。
【0067】
CGHアレイを製造するために使用するDNAは重要ではない。例えば、アレイはゲノムDNA、例えば所望の遺伝子を含有するゲノムまたは遺伝子そのものの一部分の高分解能スキャンを可能にするオーバーラップクローンを包含できる。ゲノム核酸は、例えばHAC、MAC、YAC、BAC、PAC、PIs、コスミド、プラスミド、ゲノムクローンのインターAlu PCR産物、ゲノムクローンの制限切断物、cDNAクローン、増幅(例えばPCR)産物等から得ることができる。アレイはまた、オリゴヌクレオチド合成技術を用いて得ることもできる。例えば、高密度オリゴヌクレオチドアレイの光指向性コンビナトリアル合成は、米国特許5,143,854およびPCT特許公開WO90/15070およびWO92/10092を参照。
【0068】
ハイブリダイゼーションアッセイの感度は、検出された標的核酸を増幅する核酸増幅系の使用を介して増大させてよい。そのような系の例は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)系およびリガーゼ連鎖反応(LCR)系を包含する。他の適当な方法は、核酸配列系増幅(NASBAO,Cangene,Mississauga,Ontario)およびQベータレプリカーゼ系を包含する。
【0069】
本発明の1つの実施形態において、ゲノム中のDNAコピー数変化は、単一ヌクレオチド多形(SNP)−CGHのような単一チャンネルプロファイリングにより測定される。伝統的なCGHデータは、2対立遺伝子に相当する2つのチャンネル強度データよりなる。参照と対象試料の間の正規化された強度の比較が、伝統的アレイCGHの根幹である。単一チャンネルプロファイリング(例えばSNP−CGH)は、2つの遺伝子タイピングパラメーター、即ち正規化された強度の尺度および対立遺伝子比の組み合わせを解析する点において異なっている。総括すれば、これらのパラメーターは、染色体異常のより高感度で正確なプロファイルを与える。SNP−CGHはまた、異常を起こしている遺伝子座の遺伝子情報(ハプロタイプ)を提供する。重要な点として、SNP−CGHは、アレイCGHでは検出できなかった遺伝子変換のようなコピーニュートラルなLOH事象を同定する能力を有する。
【0070】
別の実施形態においては、FISHを使用することによりゲノム中のDNAコピー数変化を測定する。蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)は当業者に知られている(Angerer,1987 Meth.Enzymol.152:649参照)。一般的に、インサイチュハイブリダイゼーションは以下の主要な工程、即ち(1)分析すべき組織または生物学的構造の固定;(2)標的DNAの接触し易さを増大するため、および非特異的結合を低減するための生物学的構造のハイブリダイゼーション前の処理;(3)生物学的構造または組織における核酸への核酸の混合物のハイブリダイゼーション;(4)ハイブリダイゼーション中に結合しない核酸フラグメントを除去するためのハイブリダイゼーション後の洗浄、ならびに(5)ハイブリダイズした核酸フラグメントの検出、を含む。
【0071】
典型的なインサイチュハイブリダイゼーションアッセイにおいては、細胞または組織の切片を固体支持体、典型的にはスライドガラスに固定化する。核酸をプローブする場合、細胞は典型的には熱またはアルカリで変性する。次に細胞を中温度でハイブリダイゼーション溶液に接触させることにより、蛋白質をコードする核酸配列に特異的な標識されたプローブのアニーリングを可能にする。次に標的物(例えば細胞)を典型的には所定のストリンジェンシーにおいて、または漸増ストリンジェンシーにおいて適切なシグナル/ノイズ比が得られるまで洗浄する。
【0072】
そのような用途において使用されるプローブは、典型的には例えば放射性同位体または蛍光レポーターにより標識される。好ましいプローブは、ストリンジェントな条件下で、標的核酸への特異的ハイブリダイゼーションを可能にするために十分な長さ、例えば約50、100、または200ヌクレオチド〜約1000以上のヌクレオチドである。
【0073】
一部の用途においては、反復配列のハイブリダイゼーション能力をブロックすることが必要である。即ち、一部の実施形態においては、tRNA、ヒトゲノムDNA、またはCot−1DNAを用いて非特異的ハイブリダイゼーションをブロックする。
【0074】
別の実施形態においては、サザンブロッティングを用いてゲノム中のDNAコピー数変化を測定する。サザンブロッティングを実施するための方法は当業者に知られている(例えば、Current Protocols in Molecular Biology,Chapter19,Ausubel等編、Greene Publishing and Wiley−Interscience,New York,1995またはSambrook等、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2dEd.vol.1−3,Cold Spring Harbor Press,NY,1989参照)。そのようなアッセイにおいて、ゲノムDNA(典型的にはフラグメント化し、電気泳動ゲル上で分離される)を標的領域に対して特異的なプローブにハイブリダイズする。標的領域に対するプローブから得られたハイブリダイゼーションシグナルの強度を正常なゲノムDNA(例えば同じまたは関連する細胞、組織、臓器等に由来するゲノムDNA)の解析で得られた対照プローブシグナルと比較することにより、標的核酸の相対的なコピー数の推定が可能となる。
【0075】
1つの実施形態において、増幅系アッセイ、例えばPCRを用いることによりゲノムのDNAコピー数変化を測定する。そのような増幅系アッセイにおいては、コピー数変化の起こったゲノム領域は増幅反応における鋳型として機能する。定量的増幅において、増幅産物の量は、元試料における鋳型の量に比例することになる。適切な対照との比較により、ゲノム領域のコピー数の尺度が与えられる。
【0076】
「定量的」増幅の方法は当業者に良く知られている。例えば、定量的PCRでは、同じプライマーを使用して対照配列の既知量を同時共増幅する。これによりPCR反応を調整するために使用してよい内標準が得られる。定量的PCRに関する詳細なプロトコルは、例えばInnis等(1990)PCR Protocols,A Guide to Methods and Applications,Academic Press,Inc.N.Y.に記載されている。
【0077】
リアルタイムPCRは、DNAコピー数変化を測定するために本発明の方法において使用できる(例えば、Gibson等、Genome Research 6:995−1001,1996;Heid等、Genome Research 6:986−994,1996を参照)。リアルタイムPCRは、増幅中のPCR産物の蓄積のレベルを評価する。DNAコピー数を計測するためには、全ゲノムDNAを試料から単離する。リアルタイムPCRは、例えばPerkin Elmer/Applied Biosystems(Foster City,Calif.)7700Prismの機材を用いて実施できる。合致するプライマーおよび蛍光プローブは、例えばPerkin Elmer/Applied Biosystems(Foster City,Calif.)により提供されるプライマー発現プログラムを用いて目的の遺伝子に対して設計できる。プライマーおよびプローブの最適な濃度は、まず当業者によって測定することができ、そして対照(例えばベータアクチン)プライマーおよびプローブは、例えばPerkin Elmer/Applied Biosystems(Foster City,Calif.)から商業的に入手してよい。試料中の目的の特異的核酸の量を定量するためには、対照を用いて標準曲線を作成する。標準曲線はアッセイにおいて使用される目的の核酸の初期濃度に関連するリアルタイムPCRにおいて測定されるCt値を用いて求めてよい。目的の遺伝子の10〜106コピーの範囲の標準希釈物で一般的には十分である。更にまた、標準曲線は対照配列に関して作成する。これにより、比較目的のための対照の量に対する組織試料における目的の核酸の初期含有量の標準化が可能となる。
【0078】
TaqManプローブを用いたリアルタイム定量的PCRの方法は、当該分野で良く知られている。リアルタイム定量的PCRの詳細なプロトコルは、例えばRNAに関してはGibson等、1996,A novel method for real time quantitative RT−PCR.Genome Res,10:995−1001;そしてDNAに関してはHeid等、1996,Real time quantitative PCR.Genome Res.,10:986−994に記載されている。
【0079】
TaqMan系のアッセイはまた、DNAコピー数変化に関して特定のゲノム領域を定量するために使用できる。TaqMan系のアッセイは、5’蛍光染料および3’クエンチング剤を含有する蛍光発生オリゴヌクレオチドプローブを使用している。プローブはPCR産物にハイブリダイズするが、それ自体は、3’末端におけるブロッキング剤のために伸長され得ない。PCR産物を後のサイクルにおいて増幅する場合、ポリメラーゼ、例えばAmpliTaqの5’ヌクレアーゼ活性は、TaqManプローブの切断をもたらす。この切断は、5’蛍光染料と3’クエンチング剤を分離し、これにより増幅の関数としての蛍光の増大をもたらす(例えばhttp://www2.perkin−elmer.com参照)。
【0080】
他の適当な増幅方法は、限定しないが例えばリガーゼ連鎖反応(LCR)(WuおよびWallace(1989)Genomics 4:560,Landegren等(1988)Science 241:1077、ならびにBarringer等(1990)Gene 89:117参照)、転写増幅(Kwoh等(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173)、自己持続性配列複製(Guatelli等(1990)Proc.Nat.Acad.Sci.USA87:1874)、ドットPCR、およびリンカーアダプターPCR等を包含する。
【0081】
1つの実施形態において、DNA配列決定を使用してゲノム中のDNAコピー数変化を測定する。DNA配列決定のための方法は当業者に知られている。
【0082】
1つの実施形態において、核タイピング(例えばスペクトル核タイピング、SKY)を用いることによりゲノム中の染色体構造異常を測定する。核タイピングのための方法は当業者に知られている。例えば、SKYのためには、1つの染色体のユニークな領域に対して各々相補であるDNAプローブの収集物を作成し、そして特定の染色体のために設計された蛍光色素で標識してよい。DNAの増幅、欠失、転座または他の構造異常は、プローブの蛍光放出に基づいて測定してよい。
【0083】
特定の実施形態においては、本発明の2つ以上のゲノム不安定動物モデルに由来する腫瘍試料をDNAコピー数変化に関して解析し、そして少なくとも2つの試料においてコピー数変化が起こっている共通のゲノム領域を同定する。そのような再発性のDNAコピー数変化が特に有利である。
【0084】
再発性のDNAコピー数変化の最小共通領域(MCR)は、2つ以上の試料のコピー数変化を比較する場合に定義してよい。1つの実施形態において、MCRは2試料の間のオーバーラップの境界により、または少なくとも1つの他の腫瘍におけるより大きい改変のバックグラウンドに対する単一の腫瘍の境界により定義される。
【0085】
MCRを測定するための方法は当該分野で知られている(例えば、D.R.Carrasco等、Cancer Cell 9(4),313(2006);A.J.Aguirre等、Proc Natl Acad Sci USA 101(24),9067(2004)参照)。慨すれば、「セグメント化された」データセットは、均一なコピー数セグメント境界を測定すること、そして次にプローブを含有するセグメントの平均log2比で各プローブに関するそのままのlog2比を置き換えることにより作成した。次に最小コピー数変化(CNA)を示している閾値を選択することによりノイズを除去する。例えば、プラットホームに関する2倍変化のメジアンlog2比を閾値として選択してよい。例示される実施形態においては、CNAを示す閾値は±0.6(Agilent 22K a−CGHプラットホーム)および±0.8(Agilent 44K/244K a−CGHプラットホーム)であり、そしてMCRの幅は10Mb未満である。
【0086】
MCRの境界は、サザンブロッティングまたはPCRのような当該分野で知られている。何れかの方法によりマッピングできる。
【0087】
MCR内に位置する遺伝子および遺伝子エレメントは、潜在的にはヒト癌に関連し、そしてそのような遺伝子および遺伝子エレメントは、追加的な解析に付すことにより更に特性化できる。例えば、アレイCGHで最初に同定された遺伝子を定量的に増幅してよい。同定されたゲノムDNAまたは相当するRNAの何れかの定量的増幅で、DNAの獲得または損失を確認できる。あるいは、配列が蛋白質をコードしている場合は、mRNAレベル、蛋白質レベル、またはコードされた蛋白質の活性レベルを計測してよい。対照と比較した場合のRNA/蛋白質/活性レベルの上昇は、DNA増幅を確認するものであり、対照と比較した場合のRNA/蛋白質/活性レベルの低下は、DNA欠失を確認するものである。
【0088】
初期スクリーニングを介して同定された遺伝子または遺伝子エレメントを再配列決定することにより、増幅または欠失を確認し得る。更にまた、DNA配列決定および蛋白質発現プロファイリングを用いることにより、腫瘍形成性に関連し得る遺伝子突然変異を同定し得る。
【0089】
別の態様において、本発明は、ヒト癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子エレメントの同定のための目的の染色体領域を同定する方法であって、本発明のゲノム不安定動物モデルに由来する癌細胞の集団における染色体構造異常を同定する工程を含む、方法を提供する。染色体構造異常を含有する染色体領域は、ヒト癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子エレメントの同定のための目的の染色体領域である。
【0090】
一部の実施形態においては、染色体構造異常はSKYのような核タイピングを用いて検出する。一部の実施形態においては、該方法は更に上記したようにDNAコピー数変化を測定することを含む。染色体構造異常およびDNAコピー数変化の両方を含有する染色体領域は、ヒト癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子エレメントの同定のための目的の染色体領域である。
【0091】
別の態様において、本発明は、潜在的にヒトの癌に関連する遺伝子または遺伝子エレメントを同定する方法であって、以下の工程、即ち(a)本明細書に記載するように目的の染色体領域を同定すること;(b)非ヒト哺乳類における目的の染色体領域内部の遺伝子または遺伝子エレメントを同定すること;および(c)工程(b)において同定された遺伝子または遺伝子エレメントに相当するヒト遺伝子または遺伝子エレメントを同定することを含む、方法を提供する。
【0092】
更にまた、多くの公的および私的なデータベースが癌遺伝子の情報を提供しており(例えばSanger’s Cancer Gene Census,http://www.sanger.ac.uk/genetics/CGP/Census)、そして該情報を使用して特定の染色体領域に既知癌遺伝子をマッピングしてよい。
【0093】
遺伝子または遺伝子エレメントがヒト癌に潜在的に関連することがわかった場合、相当するヒト遺伝子は相同体マッピング、オーソログマッピング、パラログマッピング等の方法により同定してよい。本明細書においては、相同体は共通の先祖のDNA配列に由来する家系により第2の遺伝子に関連付けられた遺伝子であり、オーソログは種分化により共通の先祖遺伝子から進化した異なる種における遺伝子であり、そしてパラログはゲノム内部の重複により関連付けられた遺伝子である。
【0094】
1つの実施形態において、ヒト相同体は例えばNCBIホモロジーンウェブサイト、
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=homologeneを用いることにより同定される。
【0095】
一部の実施形態においては、該方法は更に、同定された非ヒト遺伝子または遺伝子エレメント中の突然変異を検出することを含む。別の実施形態においては、相当するヒト遺伝子または遺伝子エレメント中の突然変異を同定する。別の実施形態においては、非ヒト遺伝子または遺伝子エレメントおよびヒト遺伝子または遺伝子エレメントの両方における突然変異を同定し、そしてその突然変異を比較する。
【0096】
別の態様において、本発明は、潜在的にヒト癌に関連する遺伝子または遺伝子エレメントを同定する方法であって、以下の工程、即ち(a)非ヒト哺乳類に由来する癌細胞の集団におけるDNAコピー数の変化を検出すること、ここで非ヒト哺乳類のゲノムはゲノム不安定性を生じるように操作される、(b)工程(a)において検出されたDNAコピー数の変化の境界内部に位置する遺伝子または遺伝子エレメントを同定すること、(c)工程(b)において同定された遺伝子または遺伝子エレメントに相当し、そしてヒト癌細胞中のDNAコピー数の変化、または染色体構造異常の境界内部に位置するヒト遺伝子または遺伝子エレメントを同定することを含む、方法を提供する。工程(c)において同定されたヒト遺伝子または遺伝子エレメントは、ヒト癌に潜在的に関連する。
【0097】
コピー数変化または染色体構造異常を検出するための方法は、上記詳述した通りである。コピー数変化の境界内部に位置する遺伝子または遺伝子エレメントを同定するための方法もまた、上記詳述した通りである。
【0098】
1つの実施形態において、本発明の非ヒト動物モデルにおけるコピー数変化または染色体構造異常は、ヒト癌細胞におけるコピー数変化または染色体構造異常と比較される。潜在的に関連するヒト癌関連遺伝子または遺伝子エレメントは、シンテニーに基づいて同定される。シンテニーは、関連する種の間の遺伝子の保存された順序および方向を説明するものである。非ヒト動物モデルとヒト癌のシンテニーな染色体領域の比較は、腫瘍形成における特定の遺伝子改変の保存された性質を明らかにする場合がある。
【0099】
シンテニーに基づいた異種間の比較はいくつかの利点を有する。第1は目的の染色体領域を狭小化する能力であり、特定のゲノム改変がある種において他の種よりもより限局的となり、そして異種間比較がそのような種特異的事象を排除する場合がある。第2に、最少共通領域(MCR)が典型的には多くの遺伝子を含有し、シンテニー領域の異種間比較は、非ヒト哺乳類(特にマウス)とヒトとの間のゲノムのシンテニー領域が相対的に小区分中にある場合があるため、遺伝子の数を低減するための効率的な方法をもたらす。シンテニーMCR内部に位置する遺伝子は、ヒト癌に高度に関連している場合がある。
【0100】
別の態様において、本発明は、潜在的にヒト癌に関連する遺伝子または遺伝子エレメントを同定する方法であって、以下の工程、即ち(a)非ヒト哺乳類に由来する癌細胞の集団における染色体構造異常を検出すること、ここで非ヒト哺乳類のゲノムはゲノム不安定性を生じるように操作される、(b)工程(a)において検出されたコピー数変化の境界内に位置する遺伝子または遺伝子エレメントを同定すること、(c)工程(b)において同定された遺伝子または遺伝子エレメントに相当し、そしてヒト癌細胞中のコピー数変化、または染色体構造異常の境界内部に位置するヒト遺伝子または遺伝子エレメントを同定することを含む、方法を提供する。工程(c)において同定されたヒト遺伝子または遺伝子エレメントは、ヒト癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子である。
【0101】
4.診断および治療方法
1つの態様において、本発明は、FBXW7の不活性化がヒトT細胞悪性疾患に関連するという発見に基づき、γ−セクレターゼ阻害剤療法への低下または上昇した応答を有する場合のある、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T−ALL)を有する対象を同定するための方法を提供する。
【0102】
1つの実施形態において、γ−セクレターゼ阻害剤療法への低下した応答を有する場合のある、T−ALLを有する対象を同定するための方法は、FBXW7の発現レベルまたは活性レベルを対象由来の癌細胞において検出することを含み、対照と比較した場合のFBXW7の低下した発現/活性は、対象がγ−セクレターゼ阻害剤療法への低下した応答を有する場合があることを示している。癌細胞におけるNOTCH1の発現または活性レベルもまた同時に測定してよく、対照と比較した場合のNOTCH1の上昇した発現/活性は更に、対象がγ−セクレターゼ阻害剤療法への低下した応答を有する場合があることを示している。逆に、対照と比較した場合のFBXW7の上昇した発現/活性(場合によりNOTCH1の低下した発現/活性と共に)は、対象がγ−セクレターゼ阻害剤療法に対して感受性である場合があることを示している。
【0103】
γ−セクレターゼは少なくとも4種の蛋白質、即ちプレセニリン(プレセニリン1または2)、ニカストリン、PEN−2およびAPH−1よりなる複合体である。数種の蛋白質がγ−セクレターゼ切断のための基質として同定されており、NotchおよびNotchリガンドであるDelta1およびJagged2、ErbB4、CD44、およびE−カドヘリンが包含される(Wong,G.T.等、J.Biol.Chem.Vol.279,Issue 13,12876−12882,March 26,2004)。γ−セクレターゼによるNotchの切断がもっとも広範に研究されている。Notchは細胞の成長および系統の特異化、特に胚発生の間の調節において進化的に保存された役割を果たしている。Notchは数種のリガンド(Delta、JaggedおよびSerrate)により活性化され、そして次に一連のリガンド依存性および非依存性の切断により蛋白質分解的にプロセシングされる。γ−セクレターゼは末端切断事象(S3切断)を触媒し、これはNotch細胞内ドメイン(NICD)として知られているフラグメントを放出する。次にNICDフラグメントが核に転座し、そこで核転写因子として作動する。NotchS3切断におけるその役割から予測されるように、γ−セクレターゼ阻害剤はインビトロのNICD産生をブロックすることが分かっている。インビボにおいては、Notchの機能はTおよびBリンパ球の適切な分化のために重要であると考えられ、そしてγ−セクレターゼ阻害剤は胸腺細胞数を低減し、そして胎児胸腺臓器培養における早期の段階において胸腺細胞の分化をブロックする。
【0104】
FBXW7遺伝子(hCDC4とも称する)は、染色体の安定性の制御に関与すると考えられているE3ユビキチンリガーゼの重要な成分をコードする(Mao J.等、Nature 432,775−779(2004))。FBXW7は細胞内NOTCH1のPESTドメインへの結合を担っており、ユビキチン化およびプロテアソームによる分解をもたらす。ヒトT−ALLにおけるNOTCH1およびFBXW7中のPESTドメイン突然変異間には、統計学的に有意な逆相関が存在するため、FBXW7の低減した発現/活性を有するT−ALL細胞は、γ−セクレターゼ阻害剤に応答する可能性は低くなる。
【0105】
癌療法の頻発する問題点の1つは、寛解中(手術、化学療法、放射線療法、またはそれらの組み合わせによる初期治療の後)の患者が再発を経験する場合があるという点である。これらの患者における再発癌は、多くは見掛け上効を奏した初期の治療に対して抵抗性である場合が多い。実際、疾患を最初に診断された患者における特定の癌は、従来の癌療法に対して、そのような治療に先ず曝露されていなくても、すでに抵抗性である場合がある。γ−セクレターゼ阻害剤療法は、患者にとって身体的に疲弊をもたらす場合がある。セクレターゼ阻害剤の副作用は体重減少、胃腸管構造の変化、壊死細胞破砕物の蓄積、腺窩部の拡張および炎症細胞の浸潤、吐き気、嘔吐、虚弱、下痢、白血球数の上昇、および食道障害を包含する(Siemers E等、2005 May−Jun;28(3):126−32;Wong,GT等、J Biol Chem 2004 Mar 26;279(13):12876−82)。即ち、化学療法による治療から癌患者が利益を被るかどうかを治療の開始に先立って調べる必要がある。
【0106】
1つの実施形態において、癌患者は癌細胞試料中のFBXW7、および場合によりNOTCH1の発現レベルに基づいてスクリーニングされる。
【0107】
FBXW7またはNOTCH1の発現レベルはDNAレベル、mRNAレベル、蛋白質レベル、活性レベル、または遺伝子もしくは蛋白質の発現のデータに反映されるかそれより誘導される他の量により計測し得る。例えば、遺伝子改変はFBXW7の低下した発現をもたらし得る。共通の遺伝子改変は、ゲノムからの少なくとも1つのFBXW7遺伝子の欠失、またはFBXW7遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子における突然変異を包含する。突然変異はミスセンス突然変異;ナンセンス突然変異;1つ以上のヌクレオチドの挿入、欠失、または置換;5’末端(未翻訳領域またはコーディング領域の何れか)、3’末端(未翻訳領域またはコーディング領域の何れか)、またはそれらの両方からのトランケーション;5’未翻訳領域、3’未翻訳領域、コーディング領域(これはアミノ酸変化をもたらす)、または3者の組み合わせにおける1つ以上のヌクレオチドの置換であってよい。例示される遺伝子改変は、FBXW7の第3のWD40ドメインまたは第4のWD40ドメインにおける突然変異、G423V、R465C、R465H、R479L、R479Q、R505CおよびD527G突然変異を包含する。遺伝子改変はまた、NOTCH1遺伝子の転座またはコピー数増幅のような、Notch1の上昇した発現をもたらす場合がある。
【0108】
FBXW7またはNOTCH1のmRNAレベルは、何れかの当該分野で知られた方法、例えばPCR、ノーザンブロッティング、RNアーゼ保護アッセイ、またはマイクロアレイハイブリダイゼーションを用いて計測し得る。例えば、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応、別称定量的リアルタイムPCR(QRT−PCR)または動的ポリメラーゼ連鎖反応が、標的遺伝子のmRNAレベルを計測するために当該分野で広範に使用されている。QRT−PCR操作法は、ポリメラーゼ連鎖反応の一般的パターンに従うが、DNAは増幅の各ラウンドの後に定量される。2つの通常の定量方法は、2本鎖DNAとインターカレートする蛍光染料および相補DNAとハイブリダイズした場合に蛍光性となる改変されたDNAオリゴヌクレオチドを使用する。QRT−PCRは、少量のメッセンジャーRNA(mRNA)を定量するために逆転写ポリメラーゼ連鎖反応と組み合わせることができ、これにより特定の時点において、または特定の細胞または組織の型において、相対的な遺伝子発現を定量することが可能になる。
【0109】
FBXW7またはNOTCH1の発現レベルはまた、何れかの当該分野で知られた方法を用いて蛋白質レベルにより計測し得る。蛋白質定量のための伝統的な方法論は、2−Dゲル電気泳動、質量スペクトル解析および抗体結合を包含する。生物学的試料中の標的蛋白質レベルをアッセイするために頻繁に使用されている方法は、抗体系の手法、例えばイムノブロッティング(ウエスタンブロッティング)、免疫組織学的アッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、または蛋白質チップを包含する。ゲル電気泳動、免疫沈降および質量スペクトル解析は標準的手法を用いて実施し得る。更にまた、NOTCH1発現は、細胞における切断核内(ICN)型のNOTCH1蛋白質の検出により計測し得る。
【0110】
FBXW7またはNOTCH1の発現レベルはまた、NOTCH1の転写活性またはFBXW7のリガーゼ活性のような当該分野で知られた方法を用いて遺伝子産物の活性レベルにより計測し得る。例えば、NOTCH1活性は、ICNのNOTCH1の上昇した結合により計測し得る。あるいは、NOTCH1の転写下流標的の発現レベルをNOTCH1活性の指標、例えばc−Myc、PTCRA、Hes1等として計測し得る。
【0111】
特定の実施形態においては、対照に対してFBXW7またはNOTCH1の発現/活性レベルを比較することが有用である。対照は、定量的な形態(例えば数、比、パーセンテージ、グラフ等)または定性的な形態(例えばゲルまたはブロット上のバンド強度等)におけるFBXW7またはNOTCH1の発現レベルの計測であってよい。種々の対照を使用し得る。対象に由来する同じ細胞型の非癌細胞からのFBXW7またはNOTCH1の発現のレベルを、対照として使用し得る。健常個体に由来する同じ細胞型からのFBXW7またはNOTCH1の発現のレベルもまた、対照として使用し得る。あるいは、対照は、治療前のある時点または治療過程の早期の期間において、治療されている個体に由来するFBXW7またはNOTCH1の発現レベルであり得る。更に他の対照は、データベース(例えば表、電子データベース、スプレッドシート等)中に存在する発現レベルまたは予め決定された閾値を包含し得る。
【0112】
本発明は更に、γ−セクレターゼ阻害剤による治療に対して感受性となる可能性のある、T−ALL対象(上記方法を用いて同定)を治療する方法であって、γ−セクレターゼ阻害剤を患者に投与することを含む、方法を開示する。γ−セクレターゼ阻害剤は当該分野で知られており、例示されるγ−セクレターゼ阻害剤は、LY450139ジヒドレートおよびLY411575を包含する。
【0113】
本発明は更に、FBXW7の低下した発現/活性を有することになるT−ALL対象(上記方法を用いて同定)を、FBXW7の発現/活性を上昇させる薬剤を用いて治療する方法を開示する。該薬剤は、組み換えFBXW7蛋白質またはその機能的に活性なフラグメントもしくは誘導体、FBXW7蛋白質またはその機能的に活性なフラグメントもしくは誘導体をコードする核酸、またはFBXW7を活性化する薬剤であってよい。「機能的に活性な」FBXW7フラグメントまたは誘導体は、抗原性または免疫原性の活性、天然の細胞性物質に結合する能力等、完全長の野生型FBXW7蛋白質に関連する1つ以上の機能的活性を呈する。FBXW7蛋白質、誘導体およびフラグメントの機能的活性は、当業者に知られた種々の方法によりアッセイされ得る(Current Protocols in Protein Science,Coligan等編、John Wiley&Sons,Inc.Somerset,N.J.(1998))。
【0114】
別の態様において、本発明は、PTEN活性化がヒトT細胞悪性疾患に関連するという発見に基づき、ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)経路阻害剤での治療から利益を被る場合がある、T−ALLを有する対象を同定するための方法を提供する。
【0115】
PTENは細胞周期を調節する腫瘍サプレッサー遺伝子として特性化されている。PTENはホスファチジルイノシトール(3,4,5)−トリホスフェート(PIP3)の3’ホスフェート基を除去することにより、ホスホジエステラーゼおよびPI3K/AKT経路の阻害剤として機能する。PTENが不活性化される場合、PIP3の増大した産生がAKT(蛋白質キナーゼB)を活性化する。AKT経路は細胞の増殖、成長、生存、および運動性を増強することにより、そしてアポトーシスを抑制することにより、腫瘍の進行を促進する。AKTはホスホイノシチド依存性キナーゼPDK1、即ちPI3Kにより活性化される酵素により触媒される2つのホスホリル化事象により活性化される。
【0116】
1つの実施形態において、PI3K経路阻害剤による治療から利益を被る場合がある、T−ALLを有する対象を同定するための方法は、PTENの発現レベルまたは活性レベルを対象由来の腫瘍細胞において検出することを含む。対照と比較した場合のFBXW7の低下した発現/活性は、対象がPI3K阻害剤療法から利益を被る可能性があることを示している。
【0117】
対象由来の癌細胞中のホスホAKTレベルはまた同時に測定してよく、対照と比較した場合の上昇したホスホAKTレベルは、更に対象がPI3K阻害剤療法から利益を被る可能性があることを示している。
【0118】
PTENの発現レベルは、DNAレベル、mRNAレベル、蛋白質レベル、活性レベル、または遺伝子もしくは蛋白質の発現のデータに反映されるかそれより誘導される他の量により計測し得る。例えば、遺伝子改変はPTENの低下した発現をもたらし得る。共通の遺伝子改変は、ゲノムからの少なくとも1つのPTEN遺伝子の欠失、またはPTEN遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子における突然変異を包含する。突然変異はミスセンス突然変異;ナンセンス突然変異;1つ以上のヌクレオチドの挿入、欠失、または置換;5’末端(未翻訳領域またはコーディング領域の何れか)、3’末端(未翻訳領域またはコーディング領域の何れか)、またはそれらの両方からのトランケーション;5’未翻訳領域、3’未翻訳領域、コーディング領域(これはアミノ酸変化をもたらす)、または3者の組み合わせにおける1つ以上のヌクレオチドの置換であってよい。
【0119】
PTENの発現レベルはまた、何れかの当該分野で知られた方法、例えばPCR、ノーザンブロッティング、RNアーゼ保護アッセイ、またはマイクロアレイハイブリダイゼーションを用いて、mRNAレベルにより計測し得る。
【0120】
PTENの発現レベルはまた、何れかの当該分野で知られた方法、例えば2−Dゲル電気泳動、質量スペクトル解析および抗体結合を用いて、蛋白質レベルにより計測し得る。
【0121】
PTENの発現レベルはまた、何れかの当該分野で知られた方法、例えばホスファターゼ活性の計測を用いてPTENの活性レベルにより計測し得る。更にまた、PI3K/AKT経路に関与する他の蛋白質の発現または活性もまた、PTEN活性の代理として計測し得る。例えば、癌におけるホスホAKTレベルは、一般的にPTEN活性を反映しており、従ってPTEN活性に関するマーカーとして計測し得る。
【0122】
特定の実施形態においては、対照を使用してPTENの発現/活性レベルを比較し得る。上記において詳述したように、対照は、対象に由来する同じ型の非癌細胞、健常個体由来の同じ細胞型から誘導されるか、予め測定された値等であってよい。
【0123】
本発明は更に、PI3K阻害剤での治療から利益を被る場合がある、T−ALL対象(上記方法を用いて同定)を治療する方法であって、PI3K阻害剤を患者に投与することを含む、方法を提供する。PI3K阻害剤は当該分野で良く知られている(例えばPinna,LAおよびCohen,PTW(編)Inhibitors of Protein Kinases and Protein Phosphates,Springer(2004)およびAbelson,JN,Simon,MI,Hunter,T,Sefton,BM(編)Methods in Enzymology,Volume 201:Protein Phosphorylation,Part B:Analysis of Protein Phosphorylation,Protein Kinase Inhibitors,and Protein Academic Press(2007))。
【0124】
本発明は更に、PTENの低下した発現/活性を有することになるT−ALL対象(上記方法を用いて同定)をPTENの発現/活性を上昇させる薬剤を用いて治療する方法を開示する。該薬剤は、組み換えPTEN蛋白質またはその機能的に活性なフラグメントもしくは誘導体、PTEN蛋白質またはその機能的に活性なフラグメントもしくは誘導体をコードする核酸、またはPTENを活性化する薬剤であってよい。
【0125】
別の態様において、本発明は、対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有するかどうかを評価する方法であって、対象に由来する生物学的試料における、表1の増幅されたMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを測定することを含む、方法を提供する。対照と比較した場合の遺伝子の発現または活性の上昇は、対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有することを示している。あるいは、対照と比較して、表1の欠失したMCR中に位置する癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性に低下がある場合は、低下した発現または活性のレベルもまた、対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有することを示している。
【0126】
別の態様において、本発明は対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有するかどうかを評価する方法を提供し、該方法は、対象に由来する生物学的試料における、表1に列挙した少なくとも1つの増幅された最小共通領域(MCR)のコピー数を測定することを含む。MCRの正常なコピー数と比較した場合の試料中のMCRの増大したコピー数は、対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有することを示している。あるいは、MCRの正常なコピー数と比較した場合の試料中の欠失したMCR(やはり表1に列挙)の低下したコピー数もまた、対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有することを示している。MCRの正常なコピー数は、典型的には染色体当たり1つである。
【0127】
別の態様において、本発明は、対象における癌の進行をモニタリングするための方法を提供し、該方法は、以下の工程:a)表1に列挙する癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを、第1の時点における対象由来の生物学的試料中で測定すること;b)その後の時点において工程a)を反復すること;およびc)工程a)およびb)における遺伝子の発現または活性を比較すること、そしてそれから対象における癌の進行をモニタリングすることを含む。
【0128】
別の態様において、本発明は、対象における癌を治療するための試験薬剤の薬効を評価する方法であって、以下の工程:a)試験薬剤の存在下、対象由来の生物学的試料中の表1の増幅されたMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを測定すること;およびb)試験薬剤の非存在下、対象由来の生物学的試料中の遺伝子の発現または活性のレベルを測定することを含む、方法を提供する。工程(b)と比較した場合の工程(a)における遺伝子の低下した発現または活性は、対象における癌を治療するための試験薬剤の潜在的な薬効を示している。あるいは、試験薬剤が表1の欠失したMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性を上昇させる場合、試験薬剤はやはり対象における癌を治療するために潜在的に有効である。
【0129】
別の態様において、本発明は、対象における癌を治療するための療法の効力を評価する方法を提供し、該方法は以下の工程:a)対象に少なくとも一部分の療法を提供する前に、対象由来の生物学的試料中の、表1の増幅されたMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを測定すること;および、b)療法の一部分を提供した後に、対象由来の生物学的試料中の遺伝子の発現または活性のレベルを測定することを含む。工程(b)と比較した場合の工程(a)における遺伝子の低下した発現または活性は、対象における癌を治療するための療法の効力を示している。あるいは、療法が表1の欠失したMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性を上昇させる場合、該療法はやはり対象における癌を治療するために潜在的に有効である。
【0130】
別の態様において、本発明は、癌に罹患した対象を治療する方法であって、表1の増幅されたMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを低下させる薬剤を対象に投与することを含む、方法を提供する。あるいは、本発明は、癌に罹患した対象を治療する方法であって、表1の欠失したMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを上昇させる薬剤を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0131】
特定の実施形態においては、薬剤は、表1に列挙する癌遺伝子または候補癌遺伝子に特異的に結合する抗体もしくはその抗原結合フラグメントである。場合により、該抗体は毒素、または化学療法剤にコンジュゲートし得る。
【0132】
あるいは、薬剤は、表1における増幅されたMCR中の癌遺伝子もしくは候補癌遺伝子の発現を阻害するRNA干渉分子(例えばshRNAまたはsiRNA分子)、または表1における増幅されたMCR中の癌遺伝子もしくは候補癌遺伝子に相補なアンチセンスRNA分子であってよい。
【0133】
あるいは、薬剤はペプチドまたはペプチドミメティック、小型有機分子、またはアプタマーであってよい。
【0134】
好ましくは、剤は製薬上許容しうる製剤で投与される。
【0135】
別の態様において、本発明は、対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有するかどうかを評価する方法を提供し、該方法は、対象に由来する生物学的試料における、表5に列挙した少なくとも1つの最小共通領域(MCR)のコピー数を測定することを含む。MCRの正常なコピー数と比較した場合の、試料中のMCRのコピー数の変化は、対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有することを示している。MCRの正常なコピー数は、典型的には染色体当たり1つである。
【0136】
特定の実施形態においては、癌はリンパ腫である。特定の実施形態においては、リンパ腫はT−ALLである。
【0137】
別の態様において、本発明は、ゲノム不安定非ヒト哺乳類モデル(例えば本発明のゲノム不安定マウスモデル)を用いて同定されたMCRのコピー数をMCRの正常なコピー数と比較することにより、対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有するかどうかを評価する方法を提供する。MCRの正常なコピー数は、典型的には染色体当たり1つである。
【実施例】
【0138】
実施例1:高度に複雑なゲノムを有するネズミT細胞リンパ腫の形成および特性化
本実施例においては、本発明者等はp53依存性の態様においてTリンパ腫形成を起こすためにAtm不全およびテロメア機能不全のゲノム不安定化作用を組み合わせるネズミリンパ腫モデル系を作成した。
【0139】
本発明者等はmTercAtmp53ヘテロ接合マウスを異種繁殖させ、それらを病原体非含有の状態において維持した。本発明者等はmTerc、Atmおよびp53のヌル対立遺伝子を異種交配させることにより、この「3重」突然変異体コロニーから種々の遺伝子型の組み合わせを作成した(簡便のために、以降、このコロニーに由来する全遺伝子型につき「TKO」と記載する)。
【0140】
本発明者等は1日おきに疾患健康の徴候に関して動物をモニタリングした。瀕死状態の動物は安楽死させ、完全な剖検に付し;死亡状態で発見されたマウスは特にリンパ腫の徴候に関して検死した。本発明者等は認可されたIACUCプロトコルに従って全動物の使用および操作を実施した。腫瘍をTKOマウスから採取し、以下の態様において分配した。1区分はDNAおよびRNA抽出のために瞬間凍結し、第2の部分は組織学的検査用に処理し、そして残余の部分はインビトロ培養用に凝集解離させた。腫瘍細胞の懸濁液は50μMのベータメルカプトエタノール、10%Cosmicウシ血清(HyClone)、0.5ng/mL組み換えIL−2、および4ng/mL組み換えIL−7(両方ともPeprotechより入手)を添加したRPMI中に維持した。腫瘍細胞はCD4、CD8、CD3、およびB220/CD45R(eBioscience)に対する抗体で免疫染色し、そしてFACS分析を行った。
【0141】
本発明者等はPureGeneキットにより製造元(Gentra Systems)の説明書に従ってDNA凍結腫瘍を作成した。本発明者等はTrizol(Invitrogen)により製造元の説明書に従って初期抽出によりRNAを作成した。次にペレト化した全RNAをRQ1 DNase(Promega)で消化し、その後、RNA精製カラム(Gentra)を通して精製した。蛋白質は、30秒間超音波バス中の超音波処理の後、溶解緩衝液(Cell Signaling Technologyによる)中で凝集解離することにより、細胞系統または腫瘍小片の何れかより入手した。溶解物を遠心分離して清澄化した後に、製造元の説明書(BioRad Protein Assay)に従って定量し、そして4〜12%NuPageゲル(Invitrogen)上で分離した。
【0142】
本発明者等の観察によれば、p53+/−またはp53−/−であるTKOマウスがp53に関して野生型であるTKO動物と相対比較してより短い潜伏期間およびより高値の浸透度において致死的リンパ腫により死亡した(図2A)。更にまた、p53に関してヘテロ接合であるTKOマウスに由来するリンパ腫は14標本(検査した15標本中)においてホモ接合性への減数を示し(図2B)、この場合のリンパ腫形成の間にp53を不活性化する強力な遺伝子的圧力を示していた。表現型的には、これらのTKO腫瘍はCD4+/CD8+(一般性は低いがCD4−/CD8−または混合型の単独/二重陽性)リンパ腫細胞による胸腺構造の消去を有する従来のAtm−/−マウスモデルにおけるリンパ腫を模倣していた(図2C)。総括すれば、遺伝子的および分子的な観察結果は、Atm非依存性p53依存性テロメアチェックポイントはリンパ腫の発達を制約するために作動することを強力に示唆している。
【0143】
染色体再配列を定量するために、本発明者等はSpectral Karyotype(SKY)分析を以下のプロトコルに従って使用した。中期のプリパレーションは典型的には、樹立後48時間以内に得たが、数例においては細胞系統の樹立が良好な品質の中期を得るために必要であった。採取した細胞は15分間105mMKCl低張性緩衝液中でインキュベートした後、3:1メタノール:酢酸中で固定化した。スペクトル核タイピングはSkyPaint KitおよびSkyView分析用ソフトウエア(Applied Spectral Imaging,Carlsbad,CA)を用いながら製造元のプロトコルに従って実施した。染色体異常はCommittee on Standard Genetic Nomenclature for Miceの規則を用いながら定義した。G0およびG1−G4細胞遺伝学的特徴の間のT検定による比較は各セットにつき90SKYプロファイルに基づく(TKOリンパ腫の各々に対して10中期スプレッド)。
【0144】
図1、図2D、および表3は9テロメア不全(G1−G4mTerc−/−)TKOリンパ腫および9テロメア見損傷(G0mTerc+/+またはmTerc+/−)TKOリンパ腫における染色体再配列のSKY分析を総括したものである。G0腫瘍と相対比較して、G1−G4TKOリンパ腫は、多中心染色体の多重度、非相互転座(NRT)、相同および/または非相同染色体のp−pロバートソン様転座、p−q融合、およびq−q融合を包含する種々の型の染色体構造異常の全体的に高値の頻度を示していた(それぞれ染色体当たり0.34対0.09、p<0.0001、t検定)。染色体毎に検査した場合、数種の染色体(特に2、6、8、14、15、16、17および19)はG0TKO腫瘍と相対比較してG1−G4において有意に高値の2動原体およびロバートソニアン様の再配列事象に関与していた(p<0.05;t検定;図2E)。特定の理論に制約されないが、TKOモデルにおけるこれらの染色体再配列の再発性の非ランダムの性質は、テロメア機能不全に対して耐容性であり、および/またはリンパ腫の発達において起因的役割を果たすための順応機序を与えている可能性がある(例えば染色体2、下記参照)。
【0145】
実施例2:TKOリンパ腫はヒトT細胞悪性疾患におけるものに対してシンテニーのゲノム改変を保有している。
【0146】
ネズミリンパ腫易罹患性TKO不安定性モデルにおける、そしてヒトT−ALLおよび他の癌におけるシンテニーオーバーラップの程度を評価するために、本発明者等は多数のゲノム分析技術を適用しそして統合することにより、T−ALLおよび多様なセットの主要なヒト癌との比較のために癌関連改変を調査した。
【0147】
シンテニーは種の間で保存された遺伝子の順序および方向を説明するものである。染色体再配列により誘発されるシンテニーの破壊は、分岐進化の指標である。TKOマウスモデルおよびヒトT−ALLのシンテニー染色体領域の比較は、腫瘍形成における特定の遺伝子改変の保存された性質を明らかにする場合がある。
【0148】
TKOリンパ腫は複雑な非相互転座(NRT)の多数を保有していたため、本発明者等はこれらのゲノム不安定腫瘍が増大した数の再発性の増幅および欠失を保有するかどうか調べることを試みた。この目的のために、本発明者等は35TKO腫瘍(表3)および比較のための26ヒトT−ALL細胞系統および腫瘍(表4Aおよび4B)に関する高分解能のゲノムワイドのアレイCGHのプロファイルを編集した
本実施例および実施例3〜7において使用したT−ALL細胞系統を表4Aに列挙する。サブセットは記載する通りアレイCGH(後に詳述)および再配列決定の両方に付した。
【0149】
本発明者等は本実施例において臨床ヒトT−ALL試料の2コホートを使用した。8試料(表4B)のコホートは、Dana−Farber Cancer Institute研究00−001において治療されたT−ALLを有する小児科患者から診断時においてインフォームドコンセントおよびIRB認可とともに入手した低温保存されたリンパ芽球またはリンパ芽球細胞溶解物よりなるものであった。本発明者等はこれらの試料をゲノムワイドのアレイCGHプロファイリングに付した。
【0150】
ゲノムワイドのアレイCGHプロファイリングのために、本発明者等は以下のプロトコルを使用した。ゲノムDNAプロセシング、標識およびAgilent CGHアレイへのハイブリダイゼーションは製造元のプロトコルに従って実施した(http://www.home.agilent.com/agilent/home.jspx)。ネズミ腫瘍は個々のマッチした正常DNA(例えば同じ個体に由来する同じ細胞型の非腫瘍細胞)、または、入手できない場合は、マッチする系統バックグラウンドのプールされたDNAに対して、プロファイリングした。標識されたDNAを、マウスに関しては44Kまたは244Kのマイクロアレイ、そしてヒトに関しては22Kおよび44Kのマイクロアレイ上にハイブリダイズした。マウス44Kアレイは42,404の60量体エレメントを含有し、それに対してユニークなマップ位置が定義されていた(National Center for Biotechnology Information,mouse Build34)。マッピングされたエレメントの間のメジアン間隔は21.8kbであり、間隔の97.1%は<0.3メガ塩基(Mb)であり、99.3%が<1Mbであった。244Kアレイは224,641エレメントを含有し、それらに対して同じマウスゲノムビルドに基づいてユニークなマップ位置が定義されていた。ヒト22Kアレイは発現プロファイリングのために設計された22,500エレメントを含有し、それらに対して、マッピングされたエレメント間のメジアン間隔54.8kbで、16,097のユニークなマップ位置が定義されていた。ヒト44Kマイクロアレイは42,494の60量体オリゴヌクレオチドプローブを含有し、それに対してユニークなマップ位置が定義されていた(National Center for Biotechnology Information,Human Build35)。244Kアレイは226,932の60量体オリゴヌクレオチドプローブを含有し、それらに対して同じヒトゲノムビルドに基づいてユニークなマップ位置が定義されていた。
【0151】
244K密度アレイ上で形成されたプロファイルは44Kマイクロアレイ上の同じ42Kプローブに関して抽出することにより2つの異なるプラットホーム上で形成されたプロファイルの組み合わせを可能とした。スキャンされた画像の蛍光比を規格化し、そして2つの対形成(染料交換)の平均として計算し、そして生データにおける変化点の有意性を決定するために順列を使用するアルゴリズムであるCircular Binary Segmentationに基づいてコピー数プロファイルを作成した(A.B.Olshen等、Biostatistics5(4),557(2004))。
【0152】
TKOプロファイルは局所的および限局的な性質のもの両方の再発CNAを呈している全染色体との顕著なゲノム複合性を明らかにしていた(図2F)。多くのCNAは高度に再発性であり、試料の40%超において観察された(例えばマウス染色体1、2、3、4、5、9、10、12、14、15、16、および17上の異なる領域をターゲティングするアンプリコン;および6、11、12、13、14、16、および19上の欠失)。ゲノム改変のこれらのパターンは再配列事象におけるこれらの染色体の優勢な関与を示すSKY分析と十分相応していた。このプラットホームの頑健性および分解能を実証するものとして、T細胞受容体(Tcr)遺伝子座の高度に再発性の生理学的欠失がクローンCD4/CD8陽性T細胞に関して予測された通り容易に検出され(図2F、矢印)、例えば染色体6Tcrβ遺伝子座は28/35腫瘍における限局的欠失、並びに染色体14Tcrα/Tcrδ遺伝子座および染色体13Tcrδ遺伝子座の限局的欠失を維持していた(図1C;図2F)。
【0153】
これらの再発性ゲノム事象およびこの不安定性モデルの病因的関連性は、数種の独立したTKO腫瘍における染色体2に関する高増幅性のゲノム事象の統合的アレイCGHおよびSKY分析により裏付けられる。これらのCNAはアレイCGHにより定義される共通の境界を共有しており、そしてSKYにより異なる相手染色体を有する染色体2のA3バンドが関与する再発性NRTを含有していた(図3)。
【0154】
実施例3:TKOマウスモデルにおける頻発するNOTCH1再配列
TKOモデルにおける、そしてヒトT−Allにおけるゲノム事象を更に比較するために、本発明者等はNOTCH1、FBXW7およびPTENの再配列決定のための38ヒト臨床標本(表4C)の別個のシリーズを使用した(実施例5〜6参照)。これらのT−ALL試料はRoyal Free Hospital,Londonにおいて診断された8人の小児および青年、および、MRC UKALL−XII治験に参加した30人の成人患者から収集した。適切なインフォームドコンセントを患者(18歳より年長の場合)またはその保護者(18歳未満の場合)より入手し、そして研究はEthics Committeeの認可を得ている。
【0155】
1.HPLCおよび配列決定。遺伝子突然変異の状態は変性高速液体クロマトグラフィー(例えばM.R.Mansour等、Leukemia20(3),537(2006)参照)、および2方向配列決定により樹立した。慨すれば、ゲノムDNAをQiagen(Hilden,Germany)のゲノム精製キットを用いながら抽出した。PCRプライマーはエクソンおよびフランキングするイントロン配列を増幅するように設計した。PCR増幅および直接配列決定は当該分野で知られた方法に従って実施した(詳細はH.Davies等、Cancer Res65(17),7591(2005)参照)。配列トレースを手動分析とソフトウエア系分析の組み合わせを用いて分析し、その際、正常からの偏位は2つのオーバーラップする配列トレースの存在(1つの正常対立遺伝子および1つの突然変異体対立遺伝子のDNA配列の存在を示す)、または正常から偏位している単一の配列トレースの存在(突然変異体DNA対立遺伝子のみの存在を示す)により示される。全ての変異体は第2の独立した増幅PCR産物の2方向配列決定により確認した。
【0156】
2.発現プロファイリング。ビオチニル化標的cRNAをTKOモデルに由来する全試料RNAから作成し、そして正常対照ネズミ胸腺RNAに対するマウスオリゴヌクレオチドプローブアレイ(マウス発生オリゴマイクロアレイ、Agilent,Palo Alto,CA)に製造元のプロトコルに従ってハイブリダイズした。各遺伝子の発現値はマウスゲノムのNational Center for Biotechnology Information Build34に基づいてゲノム位置にマッピングした。
【0157】
3.リアルタイムPCR。遺伝子遺伝子座を確認するために、Applied BiosystemsまたはStratagene MX3000リアルタイムサーモサイクラー上で3連の各腫瘍の操作から得られた2ngのDNAを用いながら、QuantitectSYBRグリーンキット(Qiagen USA,Valencia,CA)によりリアルタイムPCRを実施した。各3連の操作は2回実施し;定量は標準曲線法を用いて実施し、そして組み合わせた操作に関する平均の倍数変化を計算した。プライマー配列は表8に記載する。
【0158】
4.ウエスタンブロッティング。ウエスタンブロットは以下の抗体、即ちPTEN(9552)、Akt(9272)、ホスホ−Akt(9271)、Notch1、活性化Notch1Val1744(2421)(Cell Signaling Technology,Ipswich,MA)、およびチューブリン(Sigma Chemical,St.Loius,MO)を使用しながら製造元の説明書に従ってPVDF膜上の清澄化された腫瘍溶解物に対して実施し、そしてHRP標識二次抗体(Pierce;Rockford,IL)および増強化学ルミネセンス基質で発色させた。
【0159】
5.NOTCH1の共通境界分析。CNAの共通境界の詳細な構造的分析により、4つのTKO腫瘍におけるNotch1遺伝子の3’領域に近接する再配列を有するNotch1遺伝子座改変、および2つの追加的腫瘍におけるNotch1を包含する限局的増幅が明らかになった(図3;データ示さず)。C末端構造的改変および点突然変異によるNotch1の活性化はヒトT−ALLのシグネチャー事象である(A.P.Weng等、Science306(5694),269(2004)、F.Radtke等、Nat Immunol5(3),247(2004),L.W.Ellisen等、Cell66(4),649(1991)参照)。TKO試料中の再配列の構造はヒトT−ALLにおけるNOTCH1転座を厳密に反映していなかったが(L.W.Ellisen等、Cell66(4),649(1991))、Notch1を含むそれらの共通の共有境界はTKO腫瘍の潜在的関連性を示唆していた。従って、本発明者等はNotch1の再配列決定をこの遺伝子座においてゲノム再配列の証拠を有さない数種のTKOリンパ腫において実施し、そしてNotch1PESTおよびヘテロ2量化(HD)ドメインにおけるトランケーション挿入/欠失突然変異および非保存的なアミノ酸置換、並びにPESTドメインをコードするエクソン34内部の遺伝子内379bp欠失の1例を明らかにしている(試料A1040)(図4A;表3)。この突然変異スペクトルは、PESTおよびHDドメインがNOTCH1突然変異の2つのホットスポットであることから、ヒトT−ALLにおいて観察されたものと同様である(図4A、後述参照)(A.P.Weng等、Science306(5694),269(2004)。生化学的には種々の型のゲノム再配列、遺伝子内欠失および突然変異がNotch1の活性化を促進し、それは、Notch1蛋白質の完全長蛋白質および活性な切断型(V1744)を検出するように設計されたウエスタンブロットアッセイ(図4B)により、および、Notch1のmRNAレベルと良好な相関をしめしたPtcra、Hes1、Dtx1、およびCd3eを包含する数種のNotch1転写標的のアップレギュレーションを示す転写プロファイル(F.Radtke等、Nat Immunol5(3),247(2004))(図4C)により明らかにされている。
【0160】
実施例4:コピー数変化の最少共通領域内の遺伝子のオーソログマッピングによる種間シンテニーの測定
本実施例において、本発明者等は更にCNAの最少共通領域を定義し、そして特性化することによりTKOマウスモデルにおけるCNAを評価した。
【0161】
シンテニーは種の間で保存された遺伝子の順序および方向を説明するものである。染色体再配列により誘発されるシンテニーの破壊は、分岐進化の指標である。TKOマウスモデルおよびヒトT−ALLのシンテニー染色体領域の比較は、腫瘍形成における特定の遺伝子改変の保存された性質を明らかにする場合がある。
【0162】
TCR遺伝子座の生理学的欠失およびNotch1のゲノムおよび突然変異の事象のヒト様パターンを観察したことにより、本発明者等は、コピー数変化の最小共通領域(MCR)内部に居留する遺伝子のオーソログマッピングを用いながらヒトT−ALLにおけるCNAに対してシンテニーの遺伝子座をターゲティングするCNAをTKOモデルの高度に不安定なゲノムがもたらす程度を評価することとした。
【0163】
1.MCRの定義。この比較を容易にするために、本発明者等は先ず、CNA幅≦10Mbおよび振幅>0.75(log2尺度)の基準と共に確立されたアルゴリズムによりTKOゲノムにおけるMCRを定義した(例えばD.R.Carrasco等、Cancer Cell9(4),313(2006);A.J.Aguirre等、Proc Natl Acad Sci USA101(24)、9067(2004)参照)。慨すれば、「セグメント化された」データセットは、Olshen(A.B.Olshen等、Biostatistics5(4),557(2004))の方法に従って均一なコピー数セグメント境界を決定すること、そして次にプローブを含有するセグメントの平均log2比で各プローブに関する生のlog2比を置き換えることにより作成した。22Kおよび44Kのプロファイルに関しては、最小CNAを示している閾値をそれぞれ±0.15および±0.3に選択した。CNAを示している閾値をそれぞれ±0.4および±0.6に選択した。高い閾値を22Kプロファイルに比較する44Kプロファイルに対して使用することによりプラットホームの性能におけるシグナル対ノイズの検出の差に関して調節した。実施例3〜6に関しては、本発明者等は22Kおよび44Kのプロファイルに関してそれぞれ、±0.60および±0.75のlog2比により定義される究極のCNA事象を示すために少なくとも1つの試料を必要とすることにより最小共通領域(MCR)を選択し、そしてMCRの幅は10Mb未満とする。
【0164】
2.相同体マッピング。本発明者等はNCBI HOMOLOGENEデータベースを使用しながらマウスTKO MCR内部のCNAの染色体構造変化の領域において遺伝子のヒト相同体を同定した。並行して本発明者等は7ヒト腫瘍データセット(膵臓、神経膠芽細胞腫、黒色腫、肺、結腸直腸および多発性骨髄腫)中のCNAを同定した。次にヒト相同体遺伝子リストを用いることにより7ヒト腫瘍データセットの各々のCNA内の遺伝子とマージした。
【0165】
3.癌遺伝子マッピング。癌遺伝子マッピングのために、マウス相同体をSanger’s Cancer Gene Census55(http:/www.sanger.ac.uk/genetics/CGP/Census)に基づいて入手した。次にマウス癌遺伝子をTKOのMCRにマッピングした。
【0166】
本発明者等は増幅および欠失用にそれぞれ2.12Mb(0.15〜9.82Mb)および2.33Mb(0.77〜9.6Mb)の平均サイズの160MCRのリストを入手した(表5)。ゲノム改変のこの頻度は大部分のヒト癌ゲノムのもの(例えば図9A)と同等程度であり、そして大部分の遺伝子操作された「ゲノム安定な」ネズミ腫瘍モデルにおいて検出された典型的な20〜40事象よりも有意に高値であった(例えばR.C.O’Hagan等、Cancer Res63(17),5352(2003);N.Bardeesy等、Proc Natl Acad Sci USA103(15)、5947(2006);M.Kim等、Cell125(7),1269(2006);L.Zender等、Cell125(7),1253(2006))。ヒトT−ALLにおける同様に定義されたMCRリストと比較した場合、160MCR中18(11%)がヒト相応物中に存在する定義されたゲノム事象とオーバーラップしていた(表1)。
【0167】
表1において、ヒトT−ALLデータセット中のMCRとのシンテニーオーバーラップを有する各々のネズミTKO MCRを、その染色体位置(細胞バンド/Chr)および塩基番号(開始および終了、Mb単位)に沿って、増幅および欠失により分離しながら列挙する。各MCRの最小サイズはbpで示す。ピーク比は各MCRに関する最大log2アレイCGH比を指す。RecはMCRを定義した腫瘍の数を指す。増幅されたMCRおよび欠失したMCRに位置する癌遺伝子および候補癌遺伝子も列挙する。これらの癌遺伝子および候補癌遺伝子に関するNCBIアクセッション番号および識別番号を表9に列挙する。
【0168】
マウスTKOと異なる組織学的な型のヒト癌の各々との間のMCRオーバーラップの統計学的有意性を計算するために、本発明者等は、偶然のみにより同程度の2ゲノム間オーバーラップを達成する予測される頻度を求めるために、順列試験を実施した。詳しくは、本発明者等は、実際のTKOゲノムと同じ数量およびサイズの増幅MCRを相当する染色体中に含有する刺激マウスゲノムをランダムに形成し、ヒト癌ゲノムの各々に対して同様のセットを作成した。マウスと各ヒトゲノムとの間のオーバーラップしている増幅の数を計算して保存した。このシミュレーション過程を10,000回反復した。次に増幅オーバーラップの有意性に関するp値を、10,000順列の間に実際に観察されたものと同等以上の程度のオーバーラップを無作為に達成する頻度を10,000で割ることにより、計算した。欠失のオーバーラップに関するp値を同様の態様において計算した。
【0169】
本発明者等はこの程度のオーバーラップは偶然により達成されなかったと結論した。第1に、統計学的有意性(欠失および増幅に関して、それぞれp=0.001および0.004)がこの結論を裏付けており、これは種間オーバーラップの有意性を有効化するための厳格な順列試験により示されている。第2に、本発明者等はこれらの同定されたシンテニーMCR内部に存在するCrebbp、Ikaros、およびAblのようなT−ALL生物学において既に知られているか関与している数種の遺伝子を同定した。総括すれば、これらのデータはこの操作されたネズミモデルの関連するヒト癌への関連性、およびその有用性を裏付けている。
【0170】
実施例5:T−ALLにおける頻繁なFbxw7の不活性化
本実施例において、本発明者等はTKOマウスモデルにおける頻繁な不活性化または欠失の標的としてFbxw7遺伝子を同定した。
【0171】
本発明者等は最小Notch1発現を有する数種のTKO腫瘍が上昇したNotch4またはJagged1(Notchリガンド)mRNAレベルを呈したことを観察した(データ示さず)。この観察事例を検討するために、本発明者等はNotch経路における既知成分のゲノムおよび発現の状況のより詳細な検査を実施した。Notchシグナリング系の4つの中核的エレメントはNotch受容体、DSL(Delta、Serrate、Lag−2)リガンド、CSL(CBF1、ヘアレスのサプレッサー、Lag−1)転写補助因子、および標的遺伝子を包含する。リガンド結合時にはNotchシグナリングはCSLを転写リプレッサから転写活性化物質に変換する。TKO試料A577はFbxw7遺伝子を包含するシンテニーMCRを保有している2つの腫瘍の1つであった(MCR#18、表1)。ヒトT−ALLにおいて、単一プローブ事象を有する1例を含む限局的なFBXW7の欠失が検出された(図5A、右パネル)。究極的に限局的であるものの、種にわたるシンテニーのオーバーラップは、そのような欠失事象がコピー数の多形を表しているという可能性を低めた。実際、ヒトT−ALL臨床標本(n=38)および細胞系統(n=23)のコホートにおけるFBXW7の再配列決定は(表4A、4C、6)は、FBXW7がヒト細胞系統の11/23(48%)および臨床試料の11/38(29%)において突然変異または欠失していることを明らかにし、この遺伝子をヒトT−ALLにおいて最も一般的に突然変異しているものの1つとした(表2)。24中19のTKOリンパ腫における非新生物性の胸腺と相対比較した場合のFbxw7の低減した発現(図5B)と合致して、ヒトT−ALLにおけるこれらのFBXW7突然変異は優勢にはミスセンスの突然変異であり、そして蛋白質の第3および第4のWD40ドメインの進化的に保存された残基において特にクラスタリングしていた(図5C)。更にまた、完全緩解した患者数人からのマッチした正常骨髄におけるFBXW7の再配列決定によれば、2つの最も頻繁に突然変異した位置(R465,R479)は体細胞的に獲得されており(データ示さず);同様に、同定された突然変異の何れも公的なSNPデータベース中には存在しておらず、これらの突然変異は性質的には体細胞性であったという可能性を実証した。最後に、21中19の突然変異がヘテロ接合性であり、Fbxw7がハプロ不全性の腫瘍サプレッサー遺伝子として機能する場合があるという以前の報告と合致している。
【0172】
FBXW7は細胞内NOTCH1のPESTドメインの結合を担っているE3ユビキチンリガーゼの重要な成分であり、ユビキチン化およびプロテオソームによる分解をもたらす(N.Gupta−Rossi等、J.Biol Chem 276(37),34371(2001);C.Oberg等、J.Biol Chem 276(38),35847(2001);G.Wu等、Mol Cell Biol 21(21),7403(2001))。ヒトT−ALLにおけるPESTドメイン突然変異は細胞内NOTCH1の半減期を延長すると考えられており、FBXW7機能の損失がこの経路に対する同様の作用を誘発する可能性を生じさせている。これに着目して、本発明者等は更にNOTCH1突然変異に関してヒト細胞系統および臨床試料を特性化した(表2;表4A、4C、6)。興味深いことに、NOTCH1(HD−N、HD−CおよびPESTドメイン)の既知の機能的突然変異とFBXW7突然変異との間には関連性がなかった(p=0.16)。しかしながらNOTCH1突然変異を有する試料のうち、FBXW7突然変異は、突然変異したPESTドメインを有する試料(4/19;21%)において、HD−NまたはHD−Cドメインのみの突然変異を有する試料(13/20;65%;フィッシャーの正確確立検定によりp=0.009)よりも低い頻度で見られた。この観察結果の説明の1つとして、FBXW7およびNOTCH1のPESTドメインの突然変異は同じ分解経路をターゲティングしており、そして両方の成分を突然変異させることからは白血病の大多数に与えられる選択的利点は殆ど無いことが挙げられる。同時に、NOTCH1とFBXW7の相互排他性の欠如はNOTCHシグナリング以外の経路に対するFBXW7による非オーバーラップ活性を示唆している可能性がある。
【0173】
実施例6:Pten不活性化はマウスおよびヒトのT細胞悪性疾患における共通の事象である。
【0174】
本実施例においては、本発明者等はTKOマウスモデルにおける頻発する不活性化または欠失の標的としてPten遺伝子を同定した。
【0175】
Pten遺伝子に集中する染色体19上の限局的欠失はTKOリンパ腫における最も共通したゲノム事象であった(表1、図2F)。リアルタイムPCR評価と組み合わせたアレイCGHを用いながら本発明者等は15/35(43%)TKOリンパ腫におけるPtenのホモ接合欠失を明らかにした(図6、図7A)。PTENはよく知られた腫瘍サプレッサーであり、そしてネズミ胸腺におけるその不活性化はT細胞腫瘍を発生させることがわかっている(A.Suzuki等、Curr Biol8(21),1169(1998))。相応して、アレイCGHでは、26中4つのヒトT−ALL試料(2細胞系統および2原発腫瘍)が持続性のPTEN遺伝子座再配列を有していることが確認された。更にまた、61のT−ALLの細胞系統および臨床標本を再度配列決定したところ(表4)、9例において不活性化PTEN突然変異(これらの何れも公的なSNPデータベースには記載されていない)が明らかになったが、NOTCH1突然変異の状態との相関は不明であった(表2、表6)。更にまた、本発明者等はPTEN突然変異が臨床標本(2/38;5.2%)よりも細胞系統(7/23;30.4%)においてより頻繁に起こることを観察した(表6)。これらの臨床標本は新しく診断された症例から誘導されたのに対し、細胞系統は主に回帰例から樹立されていることから、特定の理論に制約されないが、突然変異頻度におけるこの差は、PTEN不活性化は、他の可能性よりも、進行に伴うより後期の事象であることを示唆している可能性がある。
【0176】
これらのゲノムおよび遺伝子の改変に加えて、TKOおよびヒトT−ALL試料のノーザンおよびウエスタンブロット分析およびトランスクリプトームのプロファイリングによれば、上昇したホスホAKTを有する低値〜検出不可能のPTEN発現(図7B、データ示さず)を有する腫瘍のより広範な収集が明らかになった。低PTEN発現に加えて、限局的Akt1増幅およびTsc1損失が2つのTKO試料に存在したことにより明らかにされる通りAKT活性化を駆動する追加的機序が存在すると考えられる(図7Cl;データ示さず)。最後に、TKOリンパ腫におけるPtenの状態の生物学的有意性は、Aktホスホリル化をブロックすることが知られており、そしてAkt経路に対して依存性の細胞を抑制することが示されている薬物であるトリシリビンに応答したPten依存的態様におけるAkt阻害に対するそれらの感受性(図8)により裏付けられる。慨すれば、20,000個の細胞を96穴フォーマットにおいて3連でプレーティングし、そして37℃の5%CO2において2日間、種々の用量のトリシリビン(BioMol,Plymouth Meeting、PA)または等価な濃度のビヒクル(DMSO;Sigma Chemicals,St.Louis,MO)とともに標準的な培地中でインキュベートした。インキュベーション期間の終了時において、細胞の増殖をMTSアッセイ(AqueousOne Cell Titer System;Promega,Madison,WI)で定量し、そして吸光度をOD490で読み取った。等価な量のDMSO単独における細胞系統の増殖に対して相対的な細胞増殖をプロットした。各細胞系統および用量に対して3〜5回実験を反復した。図8に示す通り、Ptenの突然変異または欠失を有するTKO細胞はトリシビンに対して感受性であった。
【0177】
実施例7:多様なヒト癌とのTKOゲノムの広範な比較
実施例3〜6において、出願人等はTKOマウスモデルを用いながらFbxw7およびPtenを同定および特性化した。Fbxw7およびPtenは両方とも以前より腫瘍サプレッサー遺伝子として同定されている。よって、ヒトT−ALLにおいて突然変異された状態におけるそれらの同定は、出願人等の方策に関わる原理の証明をもたらしており、そして、本明細書に記載したマウスモデルが癌遺伝子発見のための強力な手段を提供することを明らかにしている。本実施例においては、出願人等は種間ゲノム分析を他のヒト癌にまで拡張した。
【0178】
上記した種間比較によりT細胞起源の癌における多くの一致した疾患が示されたが、この不安定性モデルが非造血系悪性疾患を含む多くの癌型への基本的関連性(例えばテロメア機能不全およびp53突然変異)の機序によりもたらされるという事実は、他のヒト癌への潜在的に広範な関連性を示唆している。重要な例は、PTENが多数の癌型49,50に関する真の腫瘍サプレッサーであるという点において、上記Ptenの例が該当する。このことを評価するために、本発明者等は種間比較ゲノム分析を、多発性骨髄腫(n=67)53、神経膠芽細胞腫(n=38)(未公開)および黒色腫(n=123)(未公開)、並びに膵臓の腺癌(n=30)(未公開)、肺(n=63)54および結腸(n=74)(未公開)を包含する造血系、間葉系および上皮系の起源の6つの他のヒト癌型(n=421)に拡張した。
【0179】
これらの癌の型の各々の同様に定義されたMCRリスト(即ちMCR幅≦10Mb;実施例4および図5A参照)に対して比較した場合、出願人等は、TKOゲノムにおける160MCR中102(61増幅および41欠失)(64%)が1つのヒトアレイCGHデータセットにおける少なくとも1つのMCRとマッチしていることを発見し(図5A)、この程度のオーバーラップの非ランダム性を実証する強力な統計学的有意性が伴っていた。これらのシンテニー事象の遺伝子的関連性における信頼性は更に、これらのシンテニーMCRの半数超(61増幅中38、即ち62%;41欠失中22、即ち53%)が2つ以上のヒト腫瘍型において再発しているMCRとオーバーラップしていたという観察事例により裏付けられた(図5B)。更にまた、TKO MCRのかなりの割合が非造血系の起源のヒト腫瘍において進化的に保存されている(図5C)。シンテニーヒットを有する61増幅中、その58(95%)が固形腫瘍において観察されたのに対し、残余3例は黒色腫において固有に観察された(図5C)。同様に、41シンテニー欠失中33(80%)が固形腫瘍中に存在していた(図5C)。特に、出願人等は、p53が7ヒト癌型中5つにおいて欠失MCR中に存在していたのに対し、Mycは6ヒト癌とオーバーラップしていた増幅の標的であったことを発見した。多様なヒト癌とのこの多大なオーバーラップは予測外であった。
【0180】
次に出願人等は、これらのTKOゲノム事象に関して追加的レベルの有効化を行うために、これらのシンテニーMCRが既知癌遺伝子をターゲティングするかどうかを調べた。癌遺伝子センサス55上に列挙されている363遺伝子のうち、237遺伝子がNCBIホモロジーンに基づくマウス相同体を有している(実施例4参照)。これらのうち、24の既知癌遺伝子が104シンテニーMCRの1つの内部に居留していることがわかった(表7)。これらには増幅における17の癌遺伝子および欠失における7腫瘍サプレッサーを包含していた。これらのシンテニーMCRの大部分は既知癌遺伝子を含有しておらず、シンテニーMCRの居留遺伝子に着目した再配列決定は、FBXW7およびPTENの例により裏付けられる命題であるヒト癌における体性の突然変異を同定するための高収率の戦略を与えるかもしれないという強力な可能性を生じさせる。
【0181】
本発明の種々の態様の実施は、特段の記載が無い限り、当業者の知る範囲の細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組み換えDNA、および免疫学の従来の手法を使用してよい。そのような手法は文献に詳細に説明されている。例えば以下を参照のこと:Molecular Cloning A Laboratory Manual,第2版、Sambrook,Fritsch and Maniatis編(Cold Spring Harbor Laboratory Press:1989);DNA Cloning,IおよびII巻(D.N.Glover編、1985);Current Protocols in Molecular Biology,Ausubel等、Greene Publishing Associates(1992および2003の補遺);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984);Mullis等、米国特許第4,683,195号;Nucleic Acid Hybridization(B.D.Hames&S.J.Higgins編、1984);Transcription And Translation(B.D.Hames&S.J.Higgins編、1984);Culture Of Animal Cells(R.I.Freshney,Alan R.Liss,Inc.1987);Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press,1986);B.Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);the treatise,Methods In Enzymology(Academic Press,Inc.N.Y.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(J.H.Miller and M.P.Calos編、1987,Cold Spring Harbor Laboratory);Methods In Enzymology,Vols.154 and 155(Wu等編),Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(Mayer and Walker編、Academic Press,London,1987);Handbook Of Experimental Immunology,第I−IV巻(D.M.Weir and C.C.Blackwell編、1986);Manipulating the Mouse Embryo,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.1986);Coffin等、Retroviruses, Cold Spring Harbor Laboratory Press;Cold Spring Harbor,N.Y.(1997);Bast等、Cancer Medicine,第5版、Frei,Emil編、BC Decker Inc.Hamilton,Canada(2000);Lodish等、Molecular Cell Biology,第4版、W.H.Freeman&Co.New York(2000);Griffiths等、Introduction to Genetic Analysis,第7版、W.H.Freeman&Co.New York(1999);Gilbert等、Developmental Biology,第6版、Sinauer Associates,Inc.Sunderland,MA(2000);およびCooper,The Cell−A Molecular Approach,第2版、Sinauer Associates,Inc.Sunderland,MA(2000)。本明細書において引用した全ての特許、特許出願および参考文献は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0182】
【化1】
【0183】
【化2】
【0184】
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【0245】
【化64】
【0246】
【化65】
【0247】
【表1−1】
【0248】
【表1−2】
【0249】
【表2】
【0250】
【表3−1】
【0251】
【表3−2】
【0252】
【表4】
【0253】
【表5−1】
【0254】
【表5−2】
【0255】
【表5−3】
【0256】
【表6−1】
【0257】
【表6−2】
【0258】
【表7】
【0259】
【表8】
【0260】
【表9】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌を発症するように遺伝子的に改変された非ヒトトランスジェニック哺乳類であって、該哺乳類に由来する癌細胞のゲノムが、遺伝子改変を有さないそのような哺乳類における染色体構造異常の頻度よりも少なくとも5倍高い頻度において染色体構造異常を含む、哺乳類。
【請求項2】
げっ歯類である、請求項1記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項3】
マウスである、請求項1記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項4】
下記:
(a)DNA修復機能に関与する蛋白質をコードする1つ以上の遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子およびテロメア長を合成し、そして維持する成分をコードする1つ以上の遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子;または、
(b)DNA修復機能に関与する蛋白質をコードする1つ以上の遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子およびDNA損傷チェックポイント蛋白質をコードする1つ以上の遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子;または、
(c)DNA損傷チェックポイント蛋白質をコードする1つ以上の遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子およびテロメア長を合成し、そして維持する成分をコードする1つ以上の遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子;
の操作された不活性化を含む、請求項1記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項5】
前記DNA修復機能に関与する蛋白質をコードする1つ以上の遺伝子が、非相同性の末端結合(NHEJ)に関与する蛋白質、相同組み換えに関与する蛋白質、およびDNA修復ヘリカーゼからなる群より選択される、請求項4記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項6】
前記関与する蛋白質がリガーゼ4、XRCC4、H2AX、DNAPKcs、Ku70、Ku80、Artemis、Cernunnos/XLF、MRE11、NBS1、およびRAD50からなる群より選択されるNHEJである、請求項5記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項7】
前記相同組み換えに関与する蛋白質がRAD51、RAD52、RAD54、XRCC3、RAD51C、BRCA1、BRCA2(FANCD1)、FANCA、FANCB、FANCC、FANCD2;FANCE、FANCF、FANCG、FANCJ(BRIP1/BACH1)、FANCL、およびFANCMからなる群より選択される、請求項5記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項8】
前記DNA修復ヘリカーゼが、BLMおよびWRNからなる群より選択される、請求項5記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項9】
前記DNA損傷チェックポイント蛋白質をコードする1つ以上の遺伝子がp53、p21、APC、ATM、ATR、BRCA1、MDM2、MDM4、CHK1、CHK2、MRE11、NBS1、RAD50、MDC1、SMC1、ATRIP、およびクラスピンからなる群より選択される、請求項4記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項10】
テロメア長を合成または維持する成分をコードする1つ以上の遺伝子が、テロメア構造を維持する蛋白質である、請求項4記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項11】
前記テロメア構造を維持する蛋白質がTRF1、TRF2、POT1a、POT1b、RAP1、TIN2、およびTPP1からなる群より選択される、請求項10記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項12】
前記哺乳類が低下したテロメラーゼ活性のために操作される、請求項1記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項13】
テロメラーゼ逆転写酵素(tert)遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子が不活性化される、請求項4または12記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項14】
前記テロメラーゼ逆転写酵素(tert)遺伝子の両方の対立遺伝子が不活性化される、請求項13記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項15】
テロメラーゼRNA(terc)遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子が不活性化される、請求項4または12記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項16】
前記テロメラーゼRNA(terc)遺伝子の両方の対立遺伝子が不活性化される、請求項15記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項17】
p53の少なくとも1つの対立遺伝子が不活性化される、請求項1、12または15の何れか1項に記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項18】
p53の両方の対立遺伝子が不活性化される、請求項17記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項19】
毛細血管拡張性運動失調突然変異(atm)遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子が不活性化される、請求項1、12、15または17の何れか1項に記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項20】
毛細血管拡張性運動失調突然変異(atm)遺伝子の両方の対立遺伝子が不活性化される、請求項1、12、15または17の何れか1項に記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項21】
前記哺乳類のゲノムが少なくとも1つの追加的な癌促進性の改変を含む、請求項1記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項22】
前記少なくとも1つの追加的な癌促進性の改変が活性化された癌遺伝子、不活性化された腫瘍抑制遺伝子、またはそれらの両方である、請求項21記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項23】
前記活性化された癌遺伝子または前記不活性化された腫瘍抑制遺伝子が組み換え遺伝子である、請求項22記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項24】
追加的な癌生成性の改変が誘導性である、請求項21記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項25】
前記追加的な癌生成性の改変が組織特異性である、請求項21記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項26】
前記追加的な癌生成性の改変がKras活性化である、請求項22、24、または25記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項27】
Krasの活性化が膵臓特異的である、請求項26記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項28】
ヒト癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子エレメントの同定のための目的の染色体領域を同定する方法であって、非ヒト哺乳類由来の癌細胞の集団におけるDNAコピー数の変化を同定する工程を含み、該非ヒト哺乳類のゲノムが、染色体不安定性を生じるように操作され、該DNAコピー数の変化の染色体領域が、ヒト癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子エレメントの同定のための目的の染色体領域である、方法。
【請求項29】
前記DNAコピー数の変化が再発性である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記DNAコピー数の変化の再発が少なくとも2回である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記DNAコピー数の変化がDNAの増加である、請求項28記載の方法。
【請求項32】
前記DNAコピー数の変化がDNAの減少である、請求項28記載の方法。
【請求項33】
前記非ヒト哺乳類のゲノムを操作して、
(a)DNA修復機能に関与する蛋白質をコードする1つ以上の遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子およびテロメア長を合成し、そして維持する成分をコードする1つ以上の遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子;または、
(b)DNA修復機能に関与する蛋白質をコードする1つ以上の遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子およびDNA損傷チェックポイント蛋白質をコードする1つ以上の遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子;または、
(c)DNA損傷チェックポイント蛋白質をコードする1つ以上の遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子およびテロメア長を合成し、そして維持する成分をコードする1つ以上の遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子;
を不活性化する、請求項28記載の方法。
【請求項34】
前記DNA修復機能に関与する蛋白質をコードする1つ以上の遺伝子が、非相同性の末端結合(NHEJ)に関与する蛋白質、相同組み換えに関与する蛋白質、およびDNA修復ヘリカーゼからなる群より選択される、請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記NHEJに関与する蛋白質がリガーゼ4、XRCC4、H2AX、DNAPKcs、Ku70、Ku80、Artemis、Cernunnos/XLF、MRE11、NBS1、およびRAD50からなる群より選択される、請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記相同組み換えに関与する蛋白質がRAD51、RAD52、RAD54、XRCC3、RAD51C、BRCA1、BRCA2(FANCD1)、FANCA、FANCB、FANCC、FANCD2;FANCE、FANCF、FANCG、FANCJ(BRIP1/BACH1)、FANCL、およびFANCMからなる群より選択される、請求項34記載の方法。
【請求項37】
前記DNA修復ヘリカーゼが、BLMおよびWRNからなる群より選択される、請求項34記載の方法。
【請求項38】
前記DNA損傷チェックポイント蛋白質をコードする1つ以上の遺伝子がp53、p21、APC、ATM、ATR、BRCA1、MDM2、MDM4、CHK1、CHK2、MRE11、NBS1、RAD50、MDC1、SMC1、ATRIP、およびクラスピンからなる群より選択される、請求項33記載の方法。
【請求項39】
テロメア長を合成または維持する成分をコードする1つ以上の遺伝子が、テロメア構造を維持する蛋白質である、請求項33記載の方法。
【請求項40】
前記テロメア構造を維持する蛋白質がTRF1、TRF2、POT1a、POT1b、RAP1、TIN2、およびTPP1からなる群より選択される、請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記非ヒトトランスジェニック哺乳類が、低下したテロメラーゼ活性のために操作される、請求項28記載の方法。
【請求項42】
テロメラーゼ逆転写酵素(tert)遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子が、前記非ヒトトランスジェニック哺乳類において不活性化される、請求項33または41記載の方法。
【請求項43】
前記テロメラーゼ逆転写酵素遺伝子の両方の対立遺伝子が、前記非ヒトトランスジェニック哺乳類において不活性化される、請求項42記載の方法。
【請求項44】
テロメラーゼRNA(terc)遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子が不活性化される、請求項33または41記載の方法。
【請求項45】
テロメラーゼRNA遺伝子の両方の対立遺伝子が不活性化される、請求項44記載の方法。
【請求項46】
p53の少なくとも1つの対立遺伝子が、前記非ヒトトランスジェニック哺乳類において不活性化される、請求項28、33、39、41、42または44の何れか1項に記載の方法。
【請求項47】
p53の両方の対立遺伝子が、前記非ヒトトランスジェニック哺乳類において不活性化される、請求項46記載の方法。
【請求項48】
毛細血管拡張性運動失調突然変異(atm)遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子が、前記非ヒトトランスジェニック哺乳類において不活性化される、請求項28、33、39、44または46の何れか1項に記載の方法。
【請求項49】
毛細血管拡張性運動失調突然変異(atm)遺伝子の両方の対立遺伝子が、前記非ヒトトランスジェニック哺乳類において不活性化される、請求項48の何れか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記非ヒトトランスジェニック哺乳類のゲノムが、追加的な癌促進性の改変を含む、請求項28記載の方法。
【請求項51】
前記追加的な癌促進性の改変が、活性化された癌遺伝子、不活性化された腫瘍抑制遺伝子、またはそれらの両方である、請求項50記載の方法。
【請求項52】
前記活性化された癌遺伝子または該不活性化された腫瘍抑制遺伝子が組み換え遺伝子である、請求項51記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項53】
追加的な癌生成性の改変が誘導性である、請求項50記載の方法。
【請求項54】
前記追加的な癌生成性の改変が組織特異性である、請求項50記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項55】
前記追加的な癌生成性の改変がKras活性化である、請求項51、53または54記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項56】
Krasの活性化が膵臓特異的である、請求項55記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項57】
前記非ヒト哺乳類由来の癌細胞が固形腫瘍に由来する、請求項28記載の方法。
【請求項58】
前記固形腫瘍が造血系、間葉系または上皮系の起源のものである、請求項57記載の方法。
【請求項59】
前記非ヒト哺乳類由来の癌細胞が非固形腫瘍由来である、請求項28記載の方法。
【請求項60】
前記非ヒト哺乳類由来の癌細胞が、末端部黒子黒色腫、光線角化症、腺癌、腺様嚢胞癌、腺腫、腺肉腫、腺扁平上皮癌、副腎皮質癌、エイズ関連リンパ腫、肛門癌、退形成型神経膠腫、星状細胞腫瘍、星状細胞腫、バルトリン腺癌腫、基底細胞癌、胆道癌、骨癌、胆管癌、膀胱癌、脳幹神経膠腫、脳腫瘍、乳癌、気管支腺癌腫、毛細管癌腫、カルチノイド、癌腫、癌肉腫、海綿状、中枢神経系のリンパ腫、大脳星状細胞腫、子宮頸癌、結合組織癌、胆管癌、軟骨肉腫、脈絡叢乳頭腫/癌腫、明細胞癌腫、結腸癌、結腸直腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、嚢胞腺腫、内胚葉洞腫瘍、子宮内膜過形成、子宮内膜間質部肉腫、類内膜腺癌、上衣、上衣細胞腫、類上皮、食道癌、ユーイング肉腫、生殖腺外生殖細胞腫瘍、眼癌、線維層、限局性結節過形成、胆嚢癌、神経節膠腫、胃癌、ガストリノーマ、生殖細胞腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍、多形性神経膠芽細胞腫、神経膠腫、グルカゴノーマ、頭部頸部癌、血管芽腫、血管内皮種、血管腫、肝細胞腺腫、肝臓腺腫症、肝細胞癌、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、視床下部および視路の神経膠腫、小児、インスリノーマ、上皮内新生物、上皮間扁平上皮細胞新生物、眼内黒色腫、上皮内新生物、侵襲性扁平上皮細胞癌腫、大細胞癌腫、島細胞癌腫、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭癌、平滑筋肉腫、悪性黒子黒色腫、白血病関連障害、口唇および口腔の癌、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、悪性中皮腫、悪性胸腺腫、髄芽細胞腫、髄上皮腫、黒色腫、髄膜、メルケル細胞癌腫、中皮、転移癌腫、粘液性類表皮癌、多発性骨髄腫/プラズマ細胞新生物、菌状息肉腫、骨髄形成異常症候群、骨髄増殖性障害、鼻腔および副鼻腔の癌、鼻咽頭癌、神経芽腫、神経線維腫症、神経上皮腺癌結節黒色腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、燕麦細胞癌、稀突起神経膠、稀星状細胞腫、口腔癌、口腔咽頭癌、骨肉腫、膵臓ポリペプチド、卵巣癌、卵巣生殖細胞腫瘍、膵臓癌、乳頭血清腺癌、松果体細胞、下垂体腫瘍、プラズマ細胞腫、偽肉腫、肺芽腫、上皮小体癌、陰茎癌、褐色細胞腫、松果体およびテント上未分化神経外胚葉性腫瘍、下垂体腫瘍、プラズマ細胞新生物、胸膜肺芽腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、呼吸系の癌、網膜芽腫、横紋筋肉腫、肉腫、漿液癌腫、皮膚癌、小細胞癌腫、小腸癌、軟組織癌腫、ソマトスタチン分泌腫瘍、扁平上皮癌腫、扁平上皮細胞癌、胃癌、間質腫瘍、中皮下、表在拡大型黒色腫、テント上未分化神経外胚葉性腫瘍、精巣癌、甲状腺癌、未分化癌腫、尿道癌、子宮肉腫、ブドウ膜黒色腫、いぼ状癌、膣癌、ビポーマ、外陰部癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、十分に分化された癌腫、ならびにウイルムス腫瘍からなる群より選択される癌の型に由来する、請求項28記載の方法。
【請求項61】
前記非ヒト哺乳類がマウスである、請求項28記載の方法。
【請求項62】
ヒト癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子エレメントの同定のための目的の染色体領域を同定する方法であって、非ヒト哺乳類由来の癌細胞の集団における染色体構造異常を同定する工程を含み、該非ヒト哺乳類のゲノムが染色体不安定性を生じるように操作され、該染色体構造異常を含有する染色体領域が、ヒト癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子エレメントの同定のための目的の染色体領域である、方法。
【請求項63】
前記非ヒト哺乳類由来の癌細胞の集団におけるDNAコピー数の変化を同定する工程、および染色体構造異常およびDNAコピー数の変化を含有する該非ヒト哺乳類の癌細胞のゲノム内の染色体領域を同定する工程を更に含み、染色体構造異常およびDNAコピー数の変化を含有する該染色体領域が、ヒト癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子エレメントの同定のための目的の染色体領域である、請求項62記載の方法。
【請求項64】
前記DNAコピー数の変化が再発性である、請求項63記載の方法。
【請求項65】
前記DNAコピー数の変化の再発が少なくとも2回である、請求項64記載の方法。
【請求項66】
前記DNAコピー数の変化の均一なコピー数セグメント境界を測定する工程を更に含む、請求項28または63記載の方法。
【請求項67】
前記DNAコピー数の変化が再発性である、請求項66記載の方法。
【請求項68】
潜在的にヒトの癌に関連する遺伝子を同定するための方法であって、以下:
(a)請求項28、62または63の方法により目的の染色体領域を同定する工程;
(b)非ヒト哺乳類における目的の染色体領域内部の遺伝子または遺伝子エレメントを同定する工程;および、
(c)工程(b)において同定された遺伝子または遺伝子エレメントに相当するヒト遺伝子または遺伝子エレメントを同定する工程;
を含み、該ヒト遺伝子または遺伝子エレメントが、潜在的にヒトの癌に関連する遺伝子または遺伝子エレメントである、方法。
【請求項69】
前記ヒト遺伝子が工程(b)において同定された遺伝子または遺伝子エレメントに対してオーソロガス、パラロガス、または相同である、請求項68記載の方法。
【請求項70】
工程(b)において同定された非ヒト哺乳類の遺伝子または遺伝子エレメント、工程(c)において同定されたヒト遺伝子または遺伝子エレメント、またはそれらの両方における突然変異を検出する工程を更に含む、請求項68記載の方法。
【請求項71】
潜在的にヒト癌に関連する遺伝子または遺伝子エレメントを同定する方法であって、以下:
(a)非ヒト哺乳類に由来する癌細胞の集団におけるDNAコピー数の変化を検出する工程であって、ここで該非ヒト哺乳類のゲノムはゲノム不安定性を生じるように操作される、工程;
(b)工程(a)において検出されたDNAコピー数の変化の境界内部に位置する遺伝子または遺伝子エレメントを同定する工程;
(c)工程(b)において同定された遺伝子または遺伝子エレメントに相当し、そしてヒト癌細胞中のDNAコピー数の変化、または染色体構造異常の境界内部に位置するヒト遺伝子または遺伝子エレメントを同定する工程;
を含み、工程(c)において同定されたヒト遺伝子または遺伝子エレメントが、ヒト癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子エレメントである、方法。
【請求項72】
前記DNAコピー数の変化が再発性である、請求項71記載の方法。
【請求項73】
潜在的にヒト癌に関連する遺伝子または遺伝子エレメントを同定する方法であって、以下:
(a)非ヒト哺乳類に由来する癌細胞の集団における染色体構造異常を検出する工程であって、ここで該非ヒト哺乳類のゲノムはゲノム不安定性を生じるように操作される、工程;
(b)工程(a)において検出された染色体構造異常の部位に位置する遺伝子または遺伝子エレメントを同定する工程;
(c)工程(b)において同定された遺伝子または遺伝子エレメントに相当し、そしてヒト癌細胞中のDNAコピー数の変化の境界内部、または染色体構造異常の部位に位置するヒト遺伝子または遺伝子エレメントを同定する工程;
を含み、工程(c)において同定されたヒト遺伝子または遺伝子エレメントが、ヒト癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子エレメントである、方法。
【請求項74】
工程(b)において同定された非ヒト哺乳類の遺伝子または遺伝子エレメント、工程(c)において同定されたヒト遺伝子または遺伝子エレメント、またはそれらの両方における突然変異を検出する工程を更に含む、請求項71または73記載の方法。
【請求項75】
コピー数のプロファイリング、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)、PCR、および核酸配列決定からなる群より選択される技術を用いて、前記DNAコピー数の変化を同定する、請求項28、63、71または73の何れか1項に記載の方法。
【請求項76】
前記コピー数のプロファイリングが比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)である、請求項75記載の方法。
【請求項77】
前記CGHが、単一チャンネルハイブリダイゼーションプロファイリングまたは二重チャンネルハイブリダイゼーションプロファイリングである、請求項76記載の方法。
【請求項78】
前記CGHがアレイCGHである、請求項76記載の方法。
【請求項79】
前記CGHが単一ヌクレオチド多形(SNP)CGHである、請求項76記載の方法。
【請求項80】
再発性の遺伝子コピー数の変化の最小共通領域(MCR)を定義する工程を更に含む、請求項28、63、71または73の何れか1項に記載の方法。
【請求項81】
前記MCRが2試料間のオーバーラップの境界により定義される、請求項80記載の方法。
【請求項82】
前記MCRが、ある単一の腫瘍の、少なくとも1つの他の腫瘍におけるより大きい改変のバックグラウンドに対する境界により定義される、請求項80記載の方法。
【請求項83】
前記MCRが10Mb未満である、請求項80記載の方法。
【請求項84】
前記MCRが、±0.15(log2尺度)の最小のコピー数の変化の幅を有する、請求項80記載の方法。
【請求項85】
前記染色体構造異常がスペクトル核タイピング(SKY)を用いて検出される、請求項62、71、または73に記載の方法。
【請求項86】
γ−セクレターゼ阻害剤療法に対して低下した応答を有する場合がある、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T−ALL)を有する対象を同定するための方法であって、該対象に由来する腫瘍細胞におけるFBXW7の発現または活性を検出することを含み、ここで対照と比較した場合のFBXW7の低下した発現または活性が、該対象がγ−セクレターゼ阻害剤療法に対して低下した応答を有する場合があることを示す、方法。
【請求項87】
前記対象がヒトである、請求項86記載の方法。
【請求項88】
前記対象に由来する腫瘍細胞中のNOTCH1の発現または活性を検出することを更に含み、ここで対照と比較した場合のNOTCH1の上昇した発現または活性が、該対象がγ−セクレターゼ阻害剤療法に対して低下した応答を有する場合があることを示す、請求項86記載の方法。
【請求項89】
前記対照が、前記対象に由来する同じ細胞型の非腫瘍細胞である、請求項86または88記載の方法。
【請求項90】
FBXW7の発現または活性の低下が、FBXW7遺伝子の遺伝子改変により引き起こされる、請求項86記載の方法。
【請求項91】
FBXW7遺伝子の遺伝子改変が、少なくとも1つのFBXW7遺伝子の欠失である、請求項90記載の方法。
【請求項92】
前記FBXW7遺伝子の遺伝子改変が、FBXW7遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子における突然変異である、請求項90記載の方法。
【請求項93】
FBXW7遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子における突然変異が、1つ以上のヌクレオチドの挿入または欠失である、請求項92記載の方法。
【請求項94】
1つ以上のヌクレオチドの欠失が、少なくとも1つのFBXW7遺伝子の5’末端、3’末端またはそれらの両方からのトランケーションをもたらす、請求項93記載の方法。
【請求項95】
前記挿入または欠失が、FBXW7遺伝子の5’未翻訳領域、3’未翻訳領域、またはコーディング領域において生じる、請求項93記載の方法。
【請求項96】
FBXW7遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子における突然変異が、1つ以上のヌクレオチドの置換である、請求項92記載の方法。
【請求項97】
前記置換がFBXW7遺伝子の5’未翻訳領域、3’未翻訳領域、またはコーディング領域において生じ、そして該コーディング領域における置換はアミノ酸変化をもたらす、請求項96記載の方法。
【請求項98】
FBXW7遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子における突然変異が、ミスセンス突然変異またはナンセンス突然変異である、請求項92記載の方法。
【請求項99】
FBXW7遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子における突然変異が、該FBXW7遺伝子の第3のWD40ドメインまたは第4のWD40ドメインにある、請求項92記載の方法。
【請求項100】
FBXW7遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子における突然変異が、G423V、R465C、R465H、R479L、R479Q、R505CおよびD527Gからなる群より選択される、請求項92記載の方法。
【請求項101】
低下したFBXW7発現が、前記腫瘍細胞におけるFBXW7 mRNAレベルを計測することにより測定される、請求項86記載の方法。
【請求項102】
低下したFBXW7発現が、前記腫瘍細胞におけるFBXW7蛋白質レベルを計測することにより測定される、請求項86記載の方法。
【請求項103】
低下したFBXW7発現が、前記腫瘍細胞におけるFBXW7活性レベルを計測することにより測定される、請求項86記載の方法。
【請求項104】
上昇したNOTCH1発現が、前記腫瘍細胞におけるNOTCH1 mRNAレベルを計測することにより測定される、請求項88記載の方法。
【請求項105】
上昇したNOTCH1発現が、前記腫瘍細胞におけるNOTCH1蛋白質レベルを計測することにより測定される、請求項88記載の方法。
【請求項106】
上昇したNOTCH1発現が、細胞における切断核内(ICN)型のNOTCH1蛋白質の検出;NOTCH1により調節される標的遺伝子へのICNのNOTCH1の上昇した結合の検出により計測される、請求項88記載の方法。
【請求項107】
上昇したNOTCH1発現が、前記腫瘍細胞におけるNOTCH1活性レベルを計測することにより測定される、請求項88記載の方法。
【請求項108】
FBXW7の発現を上昇させる薬剤で前記対象を治療することを更に含む、請求項86記載の方法。
【請求項109】
前記薬剤が組み換えFBXW7蛋白質またはその機能的に活性なフラグメントもしくは誘導体である、請求項108記載の方法。
【請求項110】
前記薬剤がFBXW7蛋白質またはその機能的に活性なフラグメントもしくは誘導体をコードする核酸である、請求項108記載の方法。
【請求項111】
PI3K経路阻害剤での治療から利益を被る場合がある、T−ALLを有する対象を同定するための方法であって、該対象に由来する腫瘍細胞中のPTENの発現または活性を検出することを含み、ここで対照と比較した場合のPTENの低下した発現または活性が、該対象がPI3K阻害剤での治療から利益を被る場合があることを示す、方法。
【請求項112】
前記対象がヒトである、請求項111記載の方法。
【請求項113】
前記PTENの発現または活性の低下が、PTEN遺伝子の遺伝子改変により引き起こされる、請求項111記載の方法。
【請求項114】
前記PTEN遺伝子の遺伝子改変が、少なくとも1つのPTEN遺伝子の欠失である、請求項113記載の方法。
【請求項115】
前記PTEN遺伝子の遺伝子改変が、PTEN遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子における突然変異である、請求項113記載の方法。
【請求項116】
前記PTEN遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子における突然変異が、1つ以上のヌクレオチドの挿入または欠失である、請求項115記載の方法。
【請求項117】
前記1つ以上のヌクレオチドの欠失が、少なくとも1つのPTEN遺伝子の5’末端、3’末端またはそれらの両方からのトランケーションをもたらす、請求項116記載の方法。
【請求項118】
前記挿入または欠失が、PTEN遺伝子の5’未翻訳領域、3’未翻訳領域、またはコーディング領域において生じる、請求項116記載の方法。
【請求項119】
前記PTEN遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子における突然変異が、1つ以上のヌクレオチドの置換である、請求項115記載の方法。
【請求項120】
前記置換がPTEN遺伝子の5’未翻訳領域、3’未翻訳領域、またはコーディング領域において生じ、そして該コーディング領域における置換はアミノ酸変化をもたらす、請求項119記載の方法。
【請求項121】
低下したPTEN発現が、前記腫瘍細胞におけるPTEN mRNAレベルを計測することにより測定される、請求項111記載の方法。
【請求項122】
低下したPTEN発現が、前記腫瘍細胞におけるPTEN蛋白質レベルを計測することにより測定される、請求項111記載の方法。
【請求項123】
低下したPTEN発現が、前記腫瘍細胞におけるPTEN活性レベルを計測することにより測定される、請求項111記載の方法。
【請求項124】
前記対象に由来する腫瘍細胞中のホスホAKTレベルを検出することを更に含み、ここで対照と比較した場合の上昇したホスホAKTレベルが、該対象がPI3K阻害剤での治療から利益を被る場合があることを示す、請求項111記載の方法。
【請求項125】
前記対照が、該対象に由来する同じ細胞型の非腫瘍細胞である、請求項111または124記載の方法。
【請求項126】
PTENの発現を上昇させる薬剤で前記対象を治療することを更に含む、請求項111記載の方法。
【請求項127】
前記薬剤が、組み換えPTEN蛋白質またはその機能的に活性なフラグメントもしくは誘導体である、請求項126記載の方法。
【請求項128】
前記薬剤が、PTEN蛋白質またはその機能的に活性なフラグメントもしくは誘導体をコードする核酸である、請求項126記載の方法。
【請求項129】
PI3K阻害剤で前記対象を治療することを更に含む、請求項111記載の方法。
【請求項130】
対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有するかどうかを評価する方法であって、該対象に由来する生物学的試料における、表1の増幅されたMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを計測することを含み、ここで対照と比較した場合の該遺伝子の発現または活性の上昇が、該対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有することを示す、方法。
【請求項131】
対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有するかどうかを評価する方法であって、該対象に由来する生物学的試料における、表1の欠失したMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを計測することを含み、ここで対照と比較した場合の該遺伝子の発現または活性の低下が、該対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有することを示す、方法。
【請求項132】
前記癌がリンパ腫である、請求項130または131記載の方法。
【請求項133】
前記リンパ腫がT−ALLである、請求項132記載の方法。
【請求項134】
対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有するかどうかを評価する方法であって、該方法が、該対象に由来する生物学的試料における、表1に列挙した少なくとも1つの増幅された最小共通領域(MCR)のコピー数を測定することを含み、ここで該MCRの正常なコピー数と比較した場合の該試料中の該MCRの増大したコピー数が、該対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有することを示す、方法。
【請求項135】
対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有するかどうかを評価する方法であって、該方法が、該対象に由来する生物学的試料における、表1に列挙した少なくとも1つの欠失した最小共通領域(MCR)のコピー数を測定することを含み、ここで該MCRの正常なコピー数と比較した場合の該試料中の該MCRの減少したコピー数が、該対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有することを示す、方法。
【請求項136】
前記癌がリンパ腫である、請求項134または135記載の方法。
【請求項137】
前記リンパ腫がT−ALLである、請求項136記載の方法。
【請求項138】
対象における癌の進行をモニタリングするための方法であって、該方法が、以下:
a)表1に列挙する癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを、第1の時点における該対象由来の生物学的試料中で測定する工程;
b)その後の時点において工程a)を反復する工程;および、
c)工程a)およびb)における遺伝子の発現または活性を比較し、そしてそれから該対象における癌の進行をモニタリングする工程;
を含む、方法。
【請求項139】
前記癌がリンパ腫である、請求項138記載の方法。
【請求項140】
前記リンパ腫がT−ALLである、請求項139記載の方法。
【請求項141】
対象における癌を治療するための試験薬剤の薬効を評価する方法であって、該方法が、以下:
a)該試験薬剤の存在下、該対象由来の生物学的試料中の表1の増幅されたMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを測定する工程;および、
b)該試験薬剤の非存在下、該対象由来の生物学的試料中の該遺伝子の発現または活性のレベルを測定する工程;
を含み、ここで工程(b)と比較した場合の工程(a)における該遺伝子の低下した発現または活性が、該対象における該癌を治療するための該試験薬剤の潜在的な薬効を示す、方法。
【請求項142】
対象における癌を治療するための試験薬剤の薬効を評価する方法であって、該方法が、以下:
a)該試験薬剤の存在下、該対象由来の生物学的試料中の表1の欠失したMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを測定する工程;および、
b)該試験薬剤の非存在下、該対象由来の生物学的試料中の該遺伝子の発現または活性のレベルを測定する工程;
を含み、ここで工程(b)と比較した場合の工程(a)における該遺伝子の上昇した発現または活性が、該対象における該癌を治療するための該試験薬剤の潜在的な薬効を示す、方法。
【請求項143】
前記癌がリンパ腫である、請求項141または142記載の方法。
【請求項144】
前記リンパ腫がT−ALLである、請求項143記載の方法。
【請求項145】
対象における癌を治療するための療法の効力を評価する方法であって、該方法が、以下:
a)該対象に該療法の少なくとも一部分を提供する前に、該対象由来の生物学的試料中の表1の増幅されたMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを測定する工程;および、
b)該療法の一部分の提供の後の該対象由来の生物学的試料中の該遺伝子の発現または活性のレベルを測定する工程;
を含み、ここで工程(b)と比較した場合の工程(a)における該遺伝子の低下した発現または活性が、該対象における該癌を治療するための該療法の潜在的な効力を示す、方法。
【請求項146】
対象における癌を治療するための療法の効力を評価する方法であって、該方法が、以下:
a)該対象に該療法の少なくとも一部分を提供する前に、該対象由来の生物学的試料中の表1の欠失したMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを測定する工程;および、
b)該療法の一部分の提供の後の該対象由来の生物学的試料中の該遺伝子の発現または活性のレベルを測定する工程;
を含み、ここで工程(b)と比較した場合の工程(a)における該遺伝子の上昇した発現または活性が、該対象における該癌を治療するための該療法の潜在的な効力を示す、方法。
【請求項147】
前記癌がリンパ腫である、請求項145または146記載の方法。
【請求項148】
前記リンパ腫がT−ALLである、請求項147記載の方法。
【請求項149】
癌に罹患した対象を治療する方法であって、表1の増幅されたMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを低下させる薬剤を該対象に投与することを含む、方法。
【請求項150】
癌に罹患した対象を治療する方法であって、表1の欠失したMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを上昇させる薬剤を該対象に投与することを含む、方法。
【請求項151】
前記癌がリンパ腫である、請求項149または150記載の方法。
【請求項152】
前記リンパ腫がT−ALLである、請求項151記載の方法。
【請求項153】
前記薬剤が、表1に列挙する癌遺伝子または候補癌遺伝子に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントである、請求項149または150記載の方法。
【請求項154】
対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有するかどうかを評価する方法であって、該方法が、該対象に由来する生物学的試料における、表5に列挙した少なくとも1つの最小共通領域(MCR)のコピー数を測定することを含み、ここで該MCRの正常なコピー数と比較した場合の該試料中の該MCRのコピー数の変化が、該対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有することを示す、方法。
【請求項155】
前記癌がリンパ腫である、請求項154記載の方法。
【請求項156】
前記リンパ腫がT−ALLである、請求項155記載の方法。
【請求項1】
癌を発症するように遺伝子的に改変された非ヒトトランスジェニック哺乳類であって、該哺乳類に由来する癌細胞のゲノムが、遺伝子改変を有さないそのような哺乳類における染色体構造異常の頻度よりも少なくとも5倍高い頻度において染色体構造異常を含む、哺乳類。
【請求項2】
げっ歯類である、請求項1記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項3】
マウスである、請求項1記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項4】
下記:
(a)DNA修復機能に関与する蛋白質をコードする1つ以上の遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子およびテロメア長を合成し、そして維持する成分をコードする1つ以上の遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子;または、
(b)DNA修復機能に関与する蛋白質をコードする1つ以上の遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子およびDNA損傷チェックポイント蛋白質をコードする1つ以上の遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子;または、
(c)DNA損傷チェックポイント蛋白質をコードする1つ以上の遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子およびテロメア長を合成し、そして維持する成分をコードする1つ以上の遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子;
の操作された不活性化を含む、請求項1記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項5】
前記DNA修復機能に関与する蛋白質をコードする1つ以上の遺伝子が、非相同性の末端結合(NHEJ)に関与する蛋白質、相同組み換えに関与する蛋白質、およびDNA修復ヘリカーゼからなる群より選択される、請求項4記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項6】
前記関与する蛋白質がリガーゼ4、XRCC4、H2AX、DNAPKcs、Ku70、Ku80、Artemis、Cernunnos/XLF、MRE11、NBS1、およびRAD50からなる群より選択されるNHEJである、請求項5記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項7】
前記相同組み換えに関与する蛋白質がRAD51、RAD52、RAD54、XRCC3、RAD51C、BRCA1、BRCA2(FANCD1)、FANCA、FANCB、FANCC、FANCD2;FANCE、FANCF、FANCG、FANCJ(BRIP1/BACH1)、FANCL、およびFANCMからなる群より選択される、請求項5記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項8】
前記DNA修復ヘリカーゼが、BLMおよびWRNからなる群より選択される、請求項5記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項9】
前記DNA損傷チェックポイント蛋白質をコードする1つ以上の遺伝子がp53、p21、APC、ATM、ATR、BRCA1、MDM2、MDM4、CHK1、CHK2、MRE11、NBS1、RAD50、MDC1、SMC1、ATRIP、およびクラスピンからなる群より選択される、請求項4記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項10】
テロメア長を合成または維持する成分をコードする1つ以上の遺伝子が、テロメア構造を維持する蛋白質である、請求項4記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項11】
前記テロメア構造を維持する蛋白質がTRF1、TRF2、POT1a、POT1b、RAP1、TIN2、およびTPP1からなる群より選択される、請求項10記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項12】
前記哺乳類が低下したテロメラーゼ活性のために操作される、請求項1記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項13】
テロメラーゼ逆転写酵素(tert)遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子が不活性化される、請求項4または12記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項14】
前記テロメラーゼ逆転写酵素(tert)遺伝子の両方の対立遺伝子が不活性化される、請求項13記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項15】
テロメラーゼRNA(terc)遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子が不活性化される、請求項4または12記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項16】
前記テロメラーゼRNA(terc)遺伝子の両方の対立遺伝子が不活性化される、請求項15記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項17】
p53の少なくとも1つの対立遺伝子が不活性化される、請求項1、12または15の何れか1項に記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項18】
p53の両方の対立遺伝子が不活性化される、請求項17記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項19】
毛細血管拡張性運動失調突然変異(atm)遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子が不活性化される、請求項1、12、15または17の何れか1項に記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項20】
毛細血管拡張性運動失調突然変異(atm)遺伝子の両方の対立遺伝子が不活性化される、請求項1、12、15または17の何れか1項に記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項21】
前記哺乳類のゲノムが少なくとも1つの追加的な癌促進性の改変を含む、請求項1記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項22】
前記少なくとも1つの追加的な癌促進性の改変が活性化された癌遺伝子、不活性化された腫瘍抑制遺伝子、またはそれらの両方である、請求項21記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項23】
前記活性化された癌遺伝子または前記不活性化された腫瘍抑制遺伝子が組み換え遺伝子である、請求項22記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項24】
追加的な癌生成性の改変が誘導性である、請求項21記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項25】
前記追加的な癌生成性の改変が組織特異性である、請求項21記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項26】
前記追加的な癌生成性の改変がKras活性化である、請求項22、24、または25記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項27】
Krasの活性化が膵臓特異的である、請求項26記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項28】
ヒト癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子エレメントの同定のための目的の染色体領域を同定する方法であって、非ヒト哺乳類由来の癌細胞の集団におけるDNAコピー数の変化を同定する工程を含み、該非ヒト哺乳類のゲノムが、染色体不安定性を生じるように操作され、該DNAコピー数の変化の染色体領域が、ヒト癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子エレメントの同定のための目的の染色体領域である、方法。
【請求項29】
前記DNAコピー数の変化が再発性である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記DNAコピー数の変化の再発が少なくとも2回である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記DNAコピー数の変化がDNAの増加である、請求項28記載の方法。
【請求項32】
前記DNAコピー数の変化がDNAの減少である、請求項28記載の方法。
【請求項33】
前記非ヒト哺乳類のゲノムを操作して、
(a)DNA修復機能に関与する蛋白質をコードする1つ以上の遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子およびテロメア長を合成し、そして維持する成分をコードする1つ以上の遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子;または、
(b)DNA修復機能に関与する蛋白質をコードする1つ以上の遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子およびDNA損傷チェックポイント蛋白質をコードする1つ以上の遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子;または、
(c)DNA損傷チェックポイント蛋白質をコードする1つ以上の遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子およびテロメア長を合成し、そして維持する成分をコードする1つ以上の遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子;
を不活性化する、請求項28記載の方法。
【請求項34】
前記DNA修復機能に関与する蛋白質をコードする1つ以上の遺伝子が、非相同性の末端結合(NHEJ)に関与する蛋白質、相同組み換えに関与する蛋白質、およびDNA修復ヘリカーゼからなる群より選択される、請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記NHEJに関与する蛋白質がリガーゼ4、XRCC4、H2AX、DNAPKcs、Ku70、Ku80、Artemis、Cernunnos/XLF、MRE11、NBS1、およびRAD50からなる群より選択される、請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記相同組み換えに関与する蛋白質がRAD51、RAD52、RAD54、XRCC3、RAD51C、BRCA1、BRCA2(FANCD1)、FANCA、FANCB、FANCC、FANCD2;FANCE、FANCF、FANCG、FANCJ(BRIP1/BACH1)、FANCL、およびFANCMからなる群より選択される、請求項34記載の方法。
【請求項37】
前記DNA修復ヘリカーゼが、BLMおよびWRNからなる群より選択される、請求項34記載の方法。
【請求項38】
前記DNA損傷チェックポイント蛋白質をコードする1つ以上の遺伝子がp53、p21、APC、ATM、ATR、BRCA1、MDM2、MDM4、CHK1、CHK2、MRE11、NBS1、RAD50、MDC1、SMC1、ATRIP、およびクラスピンからなる群より選択される、請求項33記載の方法。
【請求項39】
テロメア長を合成または維持する成分をコードする1つ以上の遺伝子が、テロメア構造を維持する蛋白質である、請求項33記載の方法。
【請求項40】
前記テロメア構造を維持する蛋白質がTRF1、TRF2、POT1a、POT1b、RAP1、TIN2、およびTPP1からなる群より選択される、請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記非ヒトトランスジェニック哺乳類が、低下したテロメラーゼ活性のために操作される、請求項28記載の方法。
【請求項42】
テロメラーゼ逆転写酵素(tert)遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子が、前記非ヒトトランスジェニック哺乳類において不活性化される、請求項33または41記載の方法。
【請求項43】
前記テロメラーゼ逆転写酵素遺伝子の両方の対立遺伝子が、前記非ヒトトランスジェニック哺乳類において不活性化される、請求項42記載の方法。
【請求項44】
テロメラーゼRNA(terc)遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子が不活性化される、請求項33または41記載の方法。
【請求項45】
テロメラーゼRNA遺伝子の両方の対立遺伝子が不活性化される、請求項44記載の方法。
【請求項46】
p53の少なくとも1つの対立遺伝子が、前記非ヒトトランスジェニック哺乳類において不活性化される、請求項28、33、39、41、42または44の何れか1項に記載の方法。
【請求項47】
p53の両方の対立遺伝子が、前記非ヒトトランスジェニック哺乳類において不活性化される、請求項46記載の方法。
【請求項48】
毛細血管拡張性運動失調突然変異(atm)遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子が、前記非ヒトトランスジェニック哺乳類において不活性化される、請求項28、33、39、44または46の何れか1項に記載の方法。
【請求項49】
毛細血管拡張性運動失調突然変異(atm)遺伝子の両方の対立遺伝子が、前記非ヒトトランスジェニック哺乳類において不活性化される、請求項48の何れか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記非ヒトトランスジェニック哺乳類のゲノムが、追加的な癌促進性の改変を含む、請求項28記載の方法。
【請求項51】
前記追加的な癌促進性の改変が、活性化された癌遺伝子、不活性化された腫瘍抑制遺伝子、またはそれらの両方である、請求項50記載の方法。
【請求項52】
前記活性化された癌遺伝子または該不活性化された腫瘍抑制遺伝子が組み換え遺伝子である、請求項51記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項53】
追加的な癌生成性の改変が誘導性である、請求項50記載の方法。
【請求項54】
前記追加的な癌生成性の改変が組織特異性である、請求項50記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項55】
前記追加的な癌生成性の改変がKras活性化である、請求項51、53または54記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項56】
Krasの活性化が膵臓特異的である、請求項55記載の非ヒトトランスジェニック哺乳類。
【請求項57】
前記非ヒト哺乳類由来の癌細胞が固形腫瘍に由来する、請求項28記載の方法。
【請求項58】
前記固形腫瘍が造血系、間葉系または上皮系の起源のものである、請求項57記載の方法。
【請求項59】
前記非ヒト哺乳類由来の癌細胞が非固形腫瘍由来である、請求項28記載の方法。
【請求項60】
前記非ヒト哺乳類由来の癌細胞が、末端部黒子黒色腫、光線角化症、腺癌、腺様嚢胞癌、腺腫、腺肉腫、腺扁平上皮癌、副腎皮質癌、エイズ関連リンパ腫、肛門癌、退形成型神経膠腫、星状細胞腫瘍、星状細胞腫、バルトリン腺癌腫、基底細胞癌、胆道癌、骨癌、胆管癌、膀胱癌、脳幹神経膠腫、脳腫瘍、乳癌、気管支腺癌腫、毛細管癌腫、カルチノイド、癌腫、癌肉腫、海綿状、中枢神経系のリンパ腫、大脳星状細胞腫、子宮頸癌、結合組織癌、胆管癌、軟骨肉腫、脈絡叢乳頭腫/癌腫、明細胞癌腫、結腸癌、結腸直腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、嚢胞腺腫、内胚葉洞腫瘍、子宮内膜過形成、子宮内膜間質部肉腫、類内膜腺癌、上衣、上衣細胞腫、類上皮、食道癌、ユーイング肉腫、生殖腺外生殖細胞腫瘍、眼癌、線維層、限局性結節過形成、胆嚢癌、神経節膠腫、胃癌、ガストリノーマ、生殖細胞腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍、多形性神経膠芽細胞腫、神経膠腫、グルカゴノーマ、頭部頸部癌、血管芽腫、血管内皮種、血管腫、肝細胞腺腫、肝臓腺腫症、肝細胞癌、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、視床下部および視路の神経膠腫、小児、インスリノーマ、上皮内新生物、上皮間扁平上皮細胞新生物、眼内黒色腫、上皮内新生物、侵襲性扁平上皮細胞癌腫、大細胞癌腫、島細胞癌腫、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭癌、平滑筋肉腫、悪性黒子黒色腫、白血病関連障害、口唇および口腔の癌、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、悪性中皮腫、悪性胸腺腫、髄芽細胞腫、髄上皮腫、黒色腫、髄膜、メルケル細胞癌腫、中皮、転移癌腫、粘液性類表皮癌、多発性骨髄腫/プラズマ細胞新生物、菌状息肉腫、骨髄形成異常症候群、骨髄増殖性障害、鼻腔および副鼻腔の癌、鼻咽頭癌、神経芽腫、神経線維腫症、神経上皮腺癌結節黒色腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、燕麦細胞癌、稀突起神経膠、稀星状細胞腫、口腔癌、口腔咽頭癌、骨肉腫、膵臓ポリペプチド、卵巣癌、卵巣生殖細胞腫瘍、膵臓癌、乳頭血清腺癌、松果体細胞、下垂体腫瘍、プラズマ細胞腫、偽肉腫、肺芽腫、上皮小体癌、陰茎癌、褐色細胞腫、松果体およびテント上未分化神経外胚葉性腫瘍、下垂体腫瘍、プラズマ細胞新生物、胸膜肺芽腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、呼吸系の癌、網膜芽腫、横紋筋肉腫、肉腫、漿液癌腫、皮膚癌、小細胞癌腫、小腸癌、軟組織癌腫、ソマトスタチン分泌腫瘍、扁平上皮癌腫、扁平上皮細胞癌、胃癌、間質腫瘍、中皮下、表在拡大型黒色腫、テント上未分化神経外胚葉性腫瘍、精巣癌、甲状腺癌、未分化癌腫、尿道癌、子宮肉腫、ブドウ膜黒色腫、いぼ状癌、膣癌、ビポーマ、外陰部癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、十分に分化された癌腫、ならびにウイルムス腫瘍からなる群より選択される癌の型に由来する、請求項28記載の方法。
【請求項61】
前記非ヒト哺乳類がマウスである、請求項28記載の方法。
【請求項62】
ヒト癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子エレメントの同定のための目的の染色体領域を同定する方法であって、非ヒト哺乳類由来の癌細胞の集団における染色体構造異常を同定する工程を含み、該非ヒト哺乳類のゲノムが染色体不安定性を生じるように操作され、該染色体構造異常を含有する染色体領域が、ヒト癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子エレメントの同定のための目的の染色体領域である、方法。
【請求項63】
前記非ヒト哺乳類由来の癌細胞の集団におけるDNAコピー数の変化を同定する工程、および染色体構造異常およびDNAコピー数の変化を含有する該非ヒト哺乳類の癌細胞のゲノム内の染色体領域を同定する工程を更に含み、染色体構造異常およびDNAコピー数の変化を含有する該染色体領域が、ヒト癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子エレメントの同定のための目的の染色体領域である、請求項62記載の方法。
【請求項64】
前記DNAコピー数の変化が再発性である、請求項63記載の方法。
【請求項65】
前記DNAコピー数の変化の再発が少なくとも2回である、請求項64記載の方法。
【請求項66】
前記DNAコピー数の変化の均一なコピー数セグメント境界を測定する工程を更に含む、請求項28または63記載の方法。
【請求項67】
前記DNAコピー数の変化が再発性である、請求項66記載の方法。
【請求項68】
潜在的にヒトの癌に関連する遺伝子を同定するための方法であって、以下:
(a)請求項28、62または63の方法により目的の染色体領域を同定する工程;
(b)非ヒト哺乳類における目的の染色体領域内部の遺伝子または遺伝子エレメントを同定する工程;および、
(c)工程(b)において同定された遺伝子または遺伝子エレメントに相当するヒト遺伝子または遺伝子エレメントを同定する工程;
を含み、該ヒト遺伝子または遺伝子エレメントが、潜在的にヒトの癌に関連する遺伝子または遺伝子エレメントである、方法。
【請求項69】
前記ヒト遺伝子が工程(b)において同定された遺伝子または遺伝子エレメントに対してオーソロガス、パラロガス、または相同である、請求項68記載の方法。
【請求項70】
工程(b)において同定された非ヒト哺乳類の遺伝子または遺伝子エレメント、工程(c)において同定されたヒト遺伝子または遺伝子エレメント、またはそれらの両方における突然変異を検出する工程を更に含む、請求項68記載の方法。
【請求項71】
潜在的にヒト癌に関連する遺伝子または遺伝子エレメントを同定する方法であって、以下:
(a)非ヒト哺乳類に由来する癌細胞の集団におけるDNAコピー数の変化を検出する工程であって、ここで該非ヒト哺乳類のゲノムはゲノム不安定性を生じるように操作される、工程;
(b)工程(a)において検出されたDNAコピー数の変化の境界内部に位置する遺伝子または遺伝子エレメントを同定する工程;
(c)工程(b)において同定された遺伝子または遺伝子エレメントに相当し、そしてヒト癌細胞中のDNAコピー数の変化、または染色体構造異常の境界内部に位置するヒト遺伝子または遺伝子エレメントを同定する工程;
を含み、工程(c)において同定されたヒト遺伝子または遺伝子エレメントが、ヒト癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子エレメントである、方法。
【請求項72】
前記DNAコピー数の変化が再発性である、請求項71記載の方法。
【請求項73】
潜在的にヒト癌に関連する遺伝子または遺伝子エレメントを同定する方法であって、以下:
(a)非ヒト哺乳類に由来する癌細胞の集団における染色体構造異常を検出する工程であって、ここで該非ヒト哺乳類のゲノムはゲノム不安定性を生じるように操作される、工程;
(b)工程(a)において検出された染色体構造異常の部位に位置する遺伝子または遺伝子エレメントを同定する工程;
(c)工程(b)において同定された遺伝子または遺伝子エレメントに相当し、そしてヒト癌細胞中のDNAコピー数の変化の境界内部、または染色体構造異常の部位に位置するヒト遺伝子または遺伝子エレメントを同定する工程;
を含み、工程(c)において同定されたヒト遺伝子または遺伝子エレメントが、ヒト癌に潜在的に関連する遺伝子または遺伝子エレメントである、方法。
【請求項74】
工程(b)において同定された非ヒト哺乳類の遺伝子または遺伝子エレメント、工程(c)において同定されたヒト遺伝子または遺伝子エレメント、またはそれらの両方における突然変異を検出する工程を更に含む、請求項71または73記載の方法。
【請求項75】
コピー数のプロファイリング、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)、PCR、および核酸配列決定からなる群より選択される技術を用いて、前記DNAコピー数の変化を同定する、請求項28、63、71または73の何れか1項に記載の方法。
【請求項76】
前記コピー数のプロファイリングが比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)である、請求項75記載の方法。
【請求項77】
前記CGHが、単一チャンネルハイブリダイゼーションプロファイリングまたは二重チャンネルハイブリダイゼーションプロファイリングである、請求項76記載の方法。
【請求項78】
前記CGHがアレイCGHである、請求項76記載の方法。
【請求項79】
前記CGHが単一ヌクレオチド多形(SNP)CGHである、請求項76記載の方法。
【請求項80】
再発性の遺伝子コピー数の変化の最小共通領域(MCR)を定義する工程を更に含む、請求項28、63、71または73の何れか1項に記載の方法。
【請求項81】
前記MCRが2試料間のオーバーラップの境界により定義される、請求項80記載の方法。
【請求項82】
前記MCRが、ある単一の腫瘍の、少なくとも1つの他の腫瘍におけるより大きい改変のバックグラウンドに対する境界により定義される、請求項80記載の方法。
【請求項83】
前記MCRが10Mb未満である、請求項80記載の方法。
【請求項84】
前記MCRが、±0.15(log2尺度)の最小のコピー数の変化の幅を有する、請求項80記載の方法。
【請求項85】
前記染色体構造異常がスペクトル核タイピング(SKY)を用いて検出される、請求項62、71、または73に記載の方法。
【請求項86】
γ−セクレターゼ阻害剤療法に対して低下した応答を有する場合がある、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T−ALL)を有する対象を同定するための方法であって、該対象に由来する腫瘍細胞におけるFBXW7の発現または活性を検出することを含み、ここで対照と比較した場合のFBXW7の低下した発現または活性が、該対象がγ−セクレターゼ阻害剤療法に対して低下した応答を有する場合があることを示す、方法。
【請求項87】
前記対象がヒトである、請求項86記載の方法。
【請求項88】
前記対象に由来する腫瘍細胞中のNOTCH1の発現または活性を検出することを更に含み、ここで対照と比較した場合のNOTCH1の上昇した発現または活性が、該対象がγ−セクレターゼ阻害剤療法に対して低下した応答を有する場合があることを示す、請求項86記載の方法。
【請求項89】
前記対照が、前記対象に由来する同じ細胞型の非腫瘍細胞である、請求項86または88記載の方法。
【請求項90】
FBXW7の発現または活性の低下が、FBXW7遺伝子の遺伝子改変により引き起こされる、請求項86記載の方法。
【請求項91】
FBXW7遺伝子の遺伝子改変が、少なくとも1つのFBXW7遺伝子の欠失である、請求項90記載の方法。
【請求項92】
前記FBXW7遺伝子の遺伝子改変が、FBXW7遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子における突然変異である、請求項90記載の方法。
【請求項93】
FBXW7遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子における突然変異が、1つ以上のヌクレオチドの挿入または欠失である、請求項92記載の方法。
【請求項94】
1つ以上のヌクレオチドの欠失が、少なくとも1つのFBXW7遺伝子の5’末端、3’末端またはそれらの両方からのトランケーションをもたらす、請求項93記載の方法。
【請求項95】
前記挿入または欠失が、FBXW7遺伝子の5’未翻訳領域、3’未翻訳領域、またはコーディング領域において生じる、請求項93記載の方法。
【請求項96】
FBXW7遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子における突然変異が、1つ以上のヌクレオチドの置換である、請求項92記載の方法。
【請求項97】
前記置換がFBXW7遺伝子の5’未翻訳領域、3’未翻訳領域、またはコーディング領域において生じ、そして該コーディング領域における置換はアミノ酸変化をもたらす、請求項96記載の方法。
【請求項98】
FBXW7遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子における突然変異が、ミスセンス突然変異またはナンセンス突然変異である、請求項92記載の方法。
【請求項99】
FBXW7遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子における突然変異が、該FBXW7遺伝子の第3のWD40ドメインまたは第4のWD40ドメインにある、請求項92記載の方法。
【請求項100】
FBXW7遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子における突然変異が、G423V、R465C、R465H、R479L、R479Q、R505CおよびD527Gからなる群より選択される、請求項92記載の方法。
【請求項101】
低下したFBXW7発現が、前記腫瘍細胞におけるFBXW7 mRNAレベルを計測することにより測定される、請求項86記載の方法。
【請求項102】
低下したFBXW7発現が、前記腫瘍細胞におけるFBXW7蛋白質レベルを計測することにより測定される、請求項86記載の方法。
【請求項103】
低下したFBXW7発現が、前記腫瘍細胞におけるFBXW7活性レベルを計測することにより測定される、請求項86記載の方法。
【請求項104】
上昇したNOTCH1発現が、前記腫瘍細胞におけるNOTCH1 mRNAレベルを計測することにより測定される、請求項88記載の方法。
【請求項105】
上昇したNOTCH1発現が、前記腫瘍細胞におけるNOTCH1蛋白質レベルを計測することにより測定される、請求項88記載の方法。
【請求項106】
上昇したNOTCH1発現が、細胞における切断核内(ICN)型のNOTCH1蛋白質の検出;NOTCH1により調節される標的遺伝子へのICNのNOTCH1の上昇した結合の検出により計測される、請求項88記載の方法。
【請求項107】
上昇したNOTCH1発現が、前記腫瘍細胞におけるNOTCH1活性レベルを計測することにより測定される、請求項88記載の方法。
【請求項108】
FBXW7の発現を上昇させる薬剤で前記対象を治療することを更に含む、請求項86記載の方法。
【請求項109】
前記薬剤が組み換えFBXW7蛋白質またはその機能的に活性なフラグメントもしくは誘導体である、請求項108記載の方法。
【請求項110】
前記薬剤がFBXW7蛋白質またはその機能的に活性なフラグメントもしくは誘導体をコードする核酸である、請求項108記載の方法。
【請求項111】
PI3K経路阻害剤での治療から利益を被る場合がある、T−ALLを有する対象を同定するための方法であって、該対象に由来する腫瘍細胞中のPTENの発現または活性を検出することを含み、ここで対照と比較した場合のPTENの低下した発現または活性が、該対象がPI3K阻害剤での治療から利益を被る場合があることを示す、方法。
【請求項112】
前記対象がヒトである、請求項111記載の方法。
【請求項113】
前記PTENの発現または活性の低下が、PTEN遺伝子の遺伝子改変により引き起こされる、請求項111記載の方法。
【請求項114】
前記PTEN遺伝子の遺伝子改変が、少なくとも1つのPTEN遺伝子の欠失である、請求項113記載の方法。
【請求項115】
前記PTEN遺伝子の遺伝子改変が、PTEN遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子における突然変異である、請求項113記載の方法。
【請求項116】
前記PTEN遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子における突然変異が、1つ以上のヌクレオチドの挿入または欠失である、請求項115記載の方法。
【請求項117】
前記1つ以上のヌクレオチドの欠失が、少なくとも1つのPTEN遺伝子の5’末端、3’末端またはそれらの両方からのトランケーションをもたらす、請求項116記載の方法。
【請求項118】
前記挿入または欠失が、PTEN遺伝子の5’未翻訳領域、3’未翻訳領域、またはコーディング領域において生じる、請求項116記載の方法。
【請求項119】
前記PTEN遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子における突然変異が、1つ以上のヌクレオチドの置換である、請求項115記載の方法。
【請求項120】
前記置換がPTEN遺伝子の5’未翻訳領域、3’未翻訳領域、またはコーディング領域において生じ、そして該コーディング領域における置換はアミノ酸変化をもたらす、請求項119記載の方法。
【請求項121】
低下したPTEN発現が、前記腫瘍細胞におけるPTEN mRNAレベルを計測することにより測定される、請求項111記載の方法。
【請求項122】
低下したPTEN発現が、前記腫瘍細胞におけるPTEN蛋白質レベルを計測することにより測定される、請求項111記載の方法。
【請求項123】
低下したPTEN発現が、前記腫瘍細胞におけるPTEN活性レベルを計測することにより測定される、請求項111記載の方法。
【請求項124】
前記対象に由来する腫瘍細胞中のホスホAKTレベルを検出することを更に含み、ここで対照と比較した場合の上昇したホスホAKTレベルが、該対象がPI3K阻害剤での治療から利益を被る場合があることを示す、請求項111記載の方法。
【請求項125】
前記対照が、該対象に由来する同じ細胞型の非腫瘍細胞である、請求項111または124記載の方法。
【請求項126】
PTENの発現を上昇させる薬剤で前記対象を治療することを更に含む、請求項111記載の方法。
【請求項127】
前記薬剤が、組み換えPTEN蛋白質またはその機能的に活性なフラグメントもしくは誘導体である、請求項126記載の方法。
【請求項128】
前記薬剤が、PTEN蛋白質またはその機能的に活性なフラグメントもしくは誘導体をコードする核酸である、請求項126記載の方法。
【請求項129】
PI3K阻害剤で前記対象を治療することを更に含む、請求項111記載の方法。
【請求項130】
対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有するかどうかを評価する方法であって、該対象に由来する生物学的試料における、表1の増幅されたMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを計測することを含み、ここで対照と比較した場合の該遺伝子の発現または活性の上昇が、該対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有することを示す、方法。
【請求項131】
対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有するかどうかを評価する方法であって、該対象に由来する生物学的試料における、表1の欠失したMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを計測することを含み、ここで対照と比較した場合の該遺伝子の発現または活性の低下が、該対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有することを示す、方法。
【請求項132】
前記癌がリンパ腫である、請求項130または131記載の方法。
【請求項133】
前記リンパ腫がT−ALLである、請求項132記載の方法。
【請求項134】
対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有するかどうかを評価する方法であって、該方法が、該対象に由来する生物学的試料における、表1に列挙した少なくとも1つの増幅された最小共通領域(MCR)のコピー数を測定することを含み、ここで該MCRの正常なコピー数と比較した場合の該試料中の該MCRの増大したコピー数が、該対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有することを示す、方法。
【請求項135】
対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有するかどうかを評価する方法であって、該方法が、該対象に由来する生物学的試料における、表1に列挙した少なくとも1つの欠失した最小共通領域(MCR)のコピー数を測定することを含み、ここで該MCRの正常なコピー数と比較した場合の該試料中の該MCRの減少したコピー数が、該対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有することを示す、方法。
【請求項136】
前記癌がリンパ腫である、請求項134または135記載の方法。
【請求項137】
前記リンパ腫がT−ALLである、請求項136記載の方法。
【請求項138】
対象における癌の進行をモニタリングするための方法であって、該方法が、以下:
a)表1に列挙する癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを、第1の時点における該対象由来の生物学的試料中で測定する工程;
b)その後の時点において工程a)を反復する工程;および、
c)工程a)およびb)における遺伝子の発現または活性を比較し、そしてそれから該対象における癌の進行をモニタリングする工程;
を含む、方法。
【請求項139】
前記癌がリンパ腫である、請求項138記載の方法。
【請求項140】
前記リンパ腫がT−ALLである、請求項139記載の方法。
【請求項141】
対象における癌を治療するための試験薬剤の薬効を評価する方法であって、該方法が、以下:
a)該試験薬剤の存在下、該対象由来の生物学的試料中の表1の増幅されたMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを測定する工程;および、
b)該試験薬剤の非存在下、該対象由来の生物学的試料中の該遺伝子の発現または活性のレベルを測定する工程;
を含み、ここで工程(b)と比較した場合の工程(a)における該遺伝子の低下した発現または活性が、該対象における該癌を治療するための該試験薬剤の潜在的な薬効を示す、方法。
【請求項142】
対象における癌を治療するための試験薬剤の薬効を評価する方法であって、該方法が、以下:
a)該試験薬剤の存在下、該対象由来の生物学的試料中の表1の欠失したMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを測定する工程;および、
b)該試験薬剤の非存在下、該対象由来の生物学的試料中の該遺伝子の発現または活性のレベルを測定する工程;
を含み、ここで工程(b)と比較した場合の工程(a)における該遺伝子の上昇した発現または活性が、該対象における該癌を治療するための該試験薬剤の潜在的な薬効を示す、方法。
【請求項143】
前記癌がリンパ腫である、請求項141または142記載の方法。
【請求項144】
前記リンパ腫がT−ALLである、請求項143記載の方法。
【請求項145】
対象における癌を治療するための療法の効力を評価する方法であって、該方法が、以下:
a)該対象に該療法の少なくとも一部分を提供する前に、該対象由来の生物学的試料中の表1の増幅されたMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを測定する工程;および、
b)該療法の一部分の提供の後の該対象由来の生物学的試料中の該遺伝子の発現または活性のレベルを測定する工程;
を含み、ここで工程(b)と比較した場合の工程(a)における該遺伝子の低下した発現または活性が、該対象における該癌を治療するための該療法の潜在的な効力を示す、方法。
【請求項146】
対象における癌を治療するための療法の効力を評価する方法であって、該方法が、以下:
a)該対象に該療法の少なくとも一部分を提供する前に、該対象由来の生物学的試料中の表1の欠失したMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを測定する工程;および、
b)該療法の一部分の提供の後の該対象由来の生物学的試料中の該遺伝子の発現または活性のレベルを測定する工程;
を含み、ここで工程(b)と比較した場合の工程(a)における該遺伝子の上昇した発現または活性が、該対象における該癌を治療するための該療法の潜在的な効力を示す、方法。
【請求項147】
前記癌がリンパ腫である、請求項145または146記載の方法。
【請求項148】
前記リンパ腫がT−ALLである、請求項147記載の方法。
【請求項149】
癌に罹患した対象を治療する方法であって、表1の増幅されたMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを低下させる薬剤を該対象に投与することを含む、方法。
【請求項150】
癌に罹患した対象を治療する方法であって、表1の欠失したMCR中に位置する少なくとも1つの癌遺伝子または候補癌遺伝子の発現または活性のレベルを上昇させる薬剤を該対象に投与することを含む、方法。
【請求項151】
前記癌がリンパ腫である、請求項149または150記載の方法。
【請求項152】
前記リンパ腫がT−ALLである、請求項151記載の方法。
【請求項153】
前記薬剤が、表1に列挙する癌遺伝子または候補癌遺伝子に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントである、請求項149または150記載の方法。
【請求項154】
対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有するかどうかを評価する方法であって、該方法が、該対象に由来する生物学的試料における、表5に列挙した少なくとも1つの最小共通領域(MCR)のコピー数を測定することを含み、ここで該MCRの正常なコピー数と比較した場合の該試料中の該MCRのコピー数の変化が、該対象が癌に罹患しているか、または癌を発症する危険性を有することを示す、方法。
【請求項155】
前記癌がリンパ腫である、請求項154記載の方法。
【請求項156】
前記リンパ腫がT−ALLである、請求項155記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図3A】
【図3B】
【図4B】
【図4C】
【図1C】
【図2】
【図3C】
【図4A】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図1B】
【図3A】
【図3B】
【図4B】
【図4C】
【図1C】
【図2】
【図3C】
【図4A】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2010−529834(P2010−529834A)
【公表日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509387(P2010−509387)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/006583
【国際公開番号】WO2008/153743
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(500122857)デイナ ファーバー キャンサー インスティチュート,インコーポレイテッド (11)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/006583
【国際公開番号】WO2008/153743
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(500122857)デイナ ファーバー キャンサー インスティチュート,インコーポレイテッド (11)
【Fターム(参考)】
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