癌関連遺伝子ファミリー
本発明は、一般には、癌患者から得たヒト組織における遺伝子発現の変化に関する。具体的には、本発明は、乳房、結腸、食道、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、卵巣、膵臓、前立腺、直腸および/または胃の癌組織における発現が、対応する正常組織における発現に比べて異なるヒト遺伝子に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌患者から得たヒト組織における遺伝子発現の変化に関する。具体的には、本発明は、乳房、結腸、食道、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、卵巣、膵臓、前立腺、直腸および/または胃の癌組織における発現が、対応する正常組織における発現に比べて異なるヒト遺伝子に関する。
【背景技術】
【0002】
米国においては、新たに癌と診断される例が100万例を超え、約50万人が癌で死亡している。癌の原因は数多く、また遺伝的体質、環境の影響、感染性の行為者(infectious agents)および加齢を始めとして、多岐にわたっている。これらが制御経路とその下流の奏功器経路を広範に脱線させて、正常細胞を癌性のものにトランスフォームさせる。細胞生理におけるいくつかの必須の改変(alteration)が、集団的に悪性の増殖、即ち増殖シグナルの自給、増殖抑制シグナルに対する非感受性、プログラムされた細胞死の回避、無限複製能、持続した血管形成および組織の浸潤・転移を指令する(HanahanおよびWeinberg、(2000)Cell 100:57−70)。
【0003】
今日までに、研究者たちは、癌発症の土台となると考えられる多くの遺伝子上の改変を同定することができた。これらの遺伝子上の改変には、癌遺伝子の増幅、および癌抑制遺伝子の欠損をもたらす変異が含まれる。癌遺伝子は初め、ウィルスが媒介し、その標的細胞にトランスフォーメーションを起こさせる遺伝子として同定された。主要なクラスのウィルス性癌遺伝子は、正常な細胞機能に関連する細胞性の対応物(counterparts)を有する。その細胞性の遺伝子は癌原遺伝子と呼ばれ、ある場合には、細胞内におけるその変異や以上が、癌形成に関連する。癌遺伝子の発生は、細胞性の癌原遺伝子が不適切に活性化される機能の獲得を示している。これには、タンパク質における変異性の変化、構成的活性化、過剰発現または発現の適時停止失敗が含まれうる。約100種の癌遺伝子が同定されている。癌遺伝子の例にはras、fos、myc、ablおよびmybが含まれるが、これらに限定されない(Ponder(2001)、Nature 411:336−341)。癌抑制遺伝子は、その野生型対立遺伝子(alleles)において、異常な細胞増殖を抑制するタンパク質を発現する。癌抑制タンパク質をコードする遺伝子が変異または消滅すると、結果として生じる変異タンパク質または癌抑制タンパク質発現の完全な欠損により、細胞増殖を正しく制御することができず、異常な細胞増殖が起こりうる(特に、細胞制御機構に対する損傷が既に存在していれば)。よく研究されているヒトの癌および癌細胞株には、癌抑制遺伝子が欠損していたり、機能を失っているものが多い。癌抑制遺伝子の例としては網膜芽細胞腫感受性遺伝子(またはRB遺伝子)、p53遺伝子、結腸癌消失(the deletion in colon carcinoma)(DCC)遺伝子および神経線維腫症1型(NF−1)癌抑制遺伝子(Weinberg(1991)、Science 254:1138−1146)が挙げられるが、これらに限定されない。癌抑制遺伝子の機能欠失または不活性化は、相当数のヒトの癌のイニシエーションおよび/または進行において、中心的な役割を果たしている可能性がある。
【0004】
ゲノム全体の発現プロファイルを利用して、癌の分類、薬物標的の同定、診断マーカーの同定および/または化学療法による治療結果の更なる洞察を行うと、種々の癌を治療するためのより有効な戦略の設計を容易にすることができる。癌のサブタイプを同定するのに遺伝子の発現パターンを用いた初期的な研究はむしろ、興味をそそるような結果をもたらしている(Perouら(1999)、Proc Natl Acad Sci USA 96:9212−9217;Golubら(1999)、Science 286:531−537;Alizadehら(2000)、Nature 403:503−511;Alonら(1999)、Proc Natl Acad Sci USA 96:6745−6750;Bittnerら(2000)、Nature 406:536−540;およびPerouら(2000)、Nature 406:747−752を参照)。遺伝子発現のプロファイリングによるB細胞リンパ腫の分子的分類は、臨床的に区別されるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫のサブグループを明らかにした(前記Alizadehらの論文を参照)。乳癌においては、限られた数の遺伝子(8,102遺伝子)を用いた研究により、癌が遺伝子発現プロファイルに基づくサブタイプに分類されており、この研究によって、乳癌に関連する分子表現型の多様性が示されている(前記Perouらの論文を参照)。更に、発現プロファイリングにより、研究者は、何千もの遺伝子に関し、組織特異的な発現レベルをマッピングすることができるようになった(Alonら(1999)、Proc Natl Acad Sci USA 96:6745−6750;Iyerら(1999)、Science 283:83−87;Khanら(1998)、Cancer Res 58:5009−5013;Leeら(1999)、Science 285:1390−1393;Wangら(1999)、Gene 229:101−108;およびWhitneyら(1999)、Ann Neurol 46:425−428)。これらの研究により、発現プロファイルは、癌などのヒトの疾患の診断における改善をもたらすために、また改良された治療戦略の開発に利用しうることが示されてはいるが、更なる研究が必要である。
【0005】
【特許文献1】国際出願公開公報第WO 95/11755号
【特許文献2】米国特許第4,908,773号
【特許文献3】米国特許第5,884,230号
【特許文献4】米国特許第5,873,052号
【特許文献5】米国特許第5,331,573号
【特許文献6】米国特許第5,888,738号
【特許文献7】米国特許第5,399,346号
【特許文献8】米国特許第4,736,866号
【特許文献9】米国特許第5,602,307号
【特許文献10】米国特許第5,728,915号
【特許文献11】米国特許第5,731,490号
【特許文献12】米国特許第5,723,719号
【特許文献13】米国特許第5,731,489号
【特許文献14】米国特許第5,720,936号
【特許文献15】米国特許第5,489,743号
【特許文献16】米国特許第5,143,854号
【特許文献17】国際出願公開公報第WO 90/15070号
【特許文献18】国際出願公開公報第WO 92/10092号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
癌は、多種類の組織と複数の病因論的要素に由来するものであるがゆえに多様且つ不均一ではあるが、この根源的な変わりやすさは、あらゆる癌の発症においてその集中(convergence)が必須である、比較的少数の臨界的な事象にかかっている(lies)ことが示唆されている(EvanおよびVousden(2001)、Nature 411:342−348)。従って、癌の発症・増殖に関連する臨界的な分子マーカーを同定するため、数多くの様々な癌における、広範な遺伝子発現レベルの変化を包括的な検討する必要がある。当該技術において、癌のより正確な診断を可能にする物質および方法に対する必要性が依然として存在する。加えて、当該技術において、この疾患を効果的に治療しうる治療方法およびそのための薬物を同定する方法に対する必要性が依然として存在する。本発明は、これらおよびその他の必要性に応じたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、癌組織における発現が、正常組織に比べて異なる新規な遺伝子(以降、各々LFG1、LFG2、LFG3、LFG4、LFG5およびLFG6と称する)に基づくものである。本発明は、SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13または15の配列を含んでなる単離された核酸分子、およびその相補体を含む。
本発明は更に、1つ以上の発現制御要素と機能しうるように結合されている核酸分子(前記核酸分子を含んでなるベクターを含む)を含む。本発明は更に、本発明の核酸分子を含むよう形質転換された宿主細胞、および本発明の核酸分子により形質転換された宿主細胞を、前記タンパク質が発現される条件下で培養する工程を含むことを特徴とするタンパク質の製造方法を含む。
【0008】
本発明は更に、
SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16のアミノ酸配列を含んでなる単離されたポリペプチド;
配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16の、少なくとも10個のアミノ酸よりなる断片を含んでなる単離されたポリペプチド;
配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16の、保存的な(conservative)アミノ酸置換体を含んでなる単離されたポリペプチド;および
配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16の、自然発生アミノ酸配列変異体を含んでなる単離されたポリペプチド
よりなる群から選択される単離されたポリペプチドを提供する。本発明のポリペプチドはまた、配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16に対して、アミノ酸配列同一性が約50%以上、約60%以上、約70%以上または約75%以上(好ましくは、配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16に対して、アミノ酸配列同一性が約80%以上、より好ましくは約90〜95%以上、最も好ましくは約95〜98%以上)であるポリペプチドを含む。
【0009】
本発明は更に、本発明のポリペプチドファミリーの他の要素の同定方法を提供する。具体的には、LFG1、LFG2、LFG3、LFG4、LFG5およびLFG6タンパク質ファミリーの他の要素をコードする核酸分子を同定する方法において、SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13または15の核酸配列をプローブとして用いる、またはPCRプライマーの生成に用いることができる。
本発明は更に、本発明のポリペプチドと特異的に結合する単離された抗体または抗原結合性抗体断片(モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を含む)を提供する。
【0010】
本発明は更に、本発明のタンパク質をコードする核酸分子の発現を調節する薬物の同定方法であって、
前記核酸を発現する細胞を、薬物に暴露させる工程;および
前記薬物が、前記核酸の発現を調節するか否かを決定する工程
を含んでなり、それらによって前記タンパク質をコードする核酸分子の発現を調節する薬物を同定することを特徴とする薬物の同定方法を提供する。
【0011】
本発明は更に、本発明のタンパク質のレベル、または少なくとも1つの活性を調節する薬物の同定方法であって、
前記タンパク質を発現する細胞を、薬物に暴露させる工程;および
前記薬物が、前記タンパク質のレベル、または少なくとも1つの活性を調節するか否かを決定する工程
を含んでなり、それらによって前記タンパク質のレベル、または少なくとも1つの活性を調節する薬物を同定することを特徴とする薬物の同定方法を提供する。
【0012】
本発明は更に、本発明のタンパク質をコードする核酸分子の発現の調節方法であって、前記タンパク質をコードする核酸分子の発現を調節する薬物を、有効量で投与する工程を含むことを特徴とする発現の調節方法を提供する。本発明はまた、本発明のタンパク質の少なくとも1つの活性の調節方法であって、本発明のタンパク質の少なくとも1つの活性を調節する薬物を、有効量で投与する工程を含むことを特徴とする活性の調節方法を提供する。
【0013】
本発明は更に、本発明のタンパク質の結合パートナー(binding partners)の同定方法であって、
前記タンパク質を、結合パートナーの可能性のある物質に暴露させる工程;および
前記物質が、前記タンパク質と結合するか否かを決定する工程
を含んでなり、それらによって前記タンパク質の結合パートナーを同定することを特徴とする結合パートナーの同定方法を提供する。
【0014】
本発明は更に、本発明のタンパク質の結合パートナーとの会合を阻害または調節しうる薬物の同定方法を提供する。具体的には、本発明のタンパク質(またはその断片)および結合パートナーを試験薬物に接触させ、次いで前記試験薬物が、前記タンパク質と結合パートナーの結合を阻害または減少するか否かを決定することにより、ある薬物を、本発明のタンパク質の結合パートナーとの会合を阻害、減少または調節する能力に関して試験することができる。
【0015】
本発明は更に、本発明のタンパク質と、その1種以上の結合パートナーの会合を減少または阻害する方法であって、前記結合パートナーと前記タンパク質の結合を減少または阻害する薬物を、有効量で投与する工程を含むことを特徴とする方法を提供する。この方法では、本発明のタンパク質または結合パートナーと結合する薬物を用いることができる。
本発明の他の態様によれば、本発明のタンパク質を、リガンド、治療薬その他のタイプの化学小分子を提供するための、合理的なドラッグデザインの出発点として用いることができる。或いは、上記スクリーニングアッセイにより同定された小分子その他の化合物は、合理的なドラッグデザインにおける「リード化合物」として役立つ場合がある。
【0016】
本発明は更に、癌の治療方法であって、癌性細胞に対し、プロモーター要素またはエンハンサー要素と機能しうるように結合した、本発明の核酸分子を含んでなる遺伝子構築物を挿入して、前記核酸分子の発現が、前記癌を抑制するようにする工程を含む治療方法に関する。
本発明は更に、本発明の核酸分子を含むよう修飾されたヒトではないトランスジェニック動物、または、変異核酸分子を含むよう修飾されて、コードされた本発明のポリペプチドの発現が妨げられているヒトではないトランスジェニック動物を含む。
【0017】
本発明はまた、SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13または15の配列を全部または一部含んでなる遺伝子の全体または一部が、ゲノムからノックアウトされまたは欠失しているヒトではないトランスジェニック動物を含む。
本発明は更に、癌の診断方法であって、被験者から組織、血液、尿その他の試料を取得し、次いで本発明の核酸分子または本発明のポリペプチドの発現レベルを測定する工程を含む診断方法を提供する。
【0018】
本発明は更に、希釈剤、並びに
SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16のアミノ酸配列を含んでなる単離されたポリペプチド;
配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16の、少なくとも10個のアミノ酸よりなる断片を含んでなる単離されたポリペプチド;
配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16の、保存的なアミノ酸置換体を含んでなる単離されたポリペプチド;
配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16の、自然発生アミノ酸配列変異体;および
配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16に対して、アミノ酸配列同一性が約50%以上、約60%以上、約70%以上または約75%以上(好ましくは、配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16に対して、アミノ酸配列同一性が約80%以上、より好ましくは約90〜95%以上、最も好ましくは約95〜98%以上)である単離されたポリペプチド
よりなる群から選択されるポリペプチドまたはタンパク質
を含んでなる組成物を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
I.一般的記載
本発明は、部分的には、ヒト癌性組織における発現が、ヒト正常組織における発現に比べて異なる新規な遺伝子ファミリーの同定に基づくものである。これらの遺伝子ファミリーは、配列SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13および15のヒトcDNAに対応する。
本発明の遺伝子およびタンパク質は、癌を検出したり、試料中の癌腫を正常組織から区別するための診断薬またはマーカーとして利用しうる。それらはまた、遺伝子発現または活性を調節する薬物の標的としても役立つ。例えば、癌の増殖に関連する生物学的過程(癌の過形成的(hyperplastic)過程を含む)を調節する薬物を同定しうる。
【0020】
II.特定の実施形態
A.癌関連タンパク質
本発明は、単離されたタンパク質、タンパク質の対立遺伝子変異体(allelic variants)およびタンパク質の保存的なアミノ酸置換体を提供する。本明細書において、「タンパク質」または「ポリペプチド」とは、一つには、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16に記載のヒトアミノ酸配列を有するタンパク質をいう。これらの用語はまた、自然発生対立遺伝子変異体、および具体的に上記されたアミノ酸配列と若干異なるアミノ酸配列を有するタンパク質をいう。対立遺伝子変異体は、上記のアミノ酸配列と若干異なるアミノ酸配列を有するが、これらのタンパク質が関連するものと同じ、または類似の生物学的機能を依然として有している。
【0021】
本明細書において、ヒトアミノ酸配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16に関連するタンパク質のファミリーとは、ヒトに加え、生物から単離されたタンパク質をいう。これらのタンパク質に関連するタンパク質のファミリーの他の要素を同定・単離するのに用いられる方法については後述する。
本発明のタンパク質は、好ましくは単離された形態にある。本明細書においては、物理的、機械的または化学的方法を用いて、タンパク質に通常付随する細胞構成分からタンパク質を分離しているときに、タンパク質が単離されているという。当業者は、単離されたタンパク質を、通常の精製方法を用いて容易に得ることができる。
【0022】
本発明のタンパク質は更に、配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16の挿入、欠失または保存的なアミノ酸置換変異を含む。本明細書において、「保存的な変異」とは、タンパク質の生物学的機能に悪影響を及ぼさないアミノ酸配列の改変をいう。改変された配列がタンパク質の関連する生物学的機能を妨げ、または破壊するとき、置換、挿入または欠失がタンパク質に悪影響を及ぼすという。例えば、ある場合においては、タンパク質の総電荷、構造または疎水性/親水性を、生物活性に悪影響を及ぼすことなく改変しうる。従って、アミノ酸配列を改変し、タンパク質の生物活性に悪影響を及ぼすことなく、ペプチドを例えばより親水性または疎水性にすることができる。
【0023】
通常、対立遺伝子変異体、保存的な置換変異体およびタンパク質ファミリーの要素は、配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16に対して、アミノ酸配列同一性が約50%以上、約60%以上、約70%以上または約75%以上(より好ましくは、配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16に対して、アミノ酸配列同一性が約80%以上、更に好ましくは約90〜95%以上、最も好ましくは約95〜98%以上)であるアミノ酸配列を有する。本明細書において、そのような配列における「同一性」または「相同性(homology)」とは、候補配列(必要に応じて、相同性の比率が最大となるよう、配列を一直線にし、切れ目を入れた後のもので、保存的な置換は一切、配列同一性の一部とは見なさない)における、配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16と同一のアミノ酸残基の比率と定義される(同等のパラメータに関し、セクションBを参照されたい)。融合タンパク質や、N末端、C末端または内部におけるペプチド配列の延長、欠失または挿入は、相同性に影響すると解釈しない。
【0024】
従って、本発明のタンパク質は、
配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16に開示されるアミノ酸配列を有する分子;
これらのタンパク質の約3、4、5、6、10、15、20、25、30、35またはそれ以上のアミノ酸残基からなる連続した配列を有するその断片;
開示されるコーディング配列のN末端、C末端または内部に、1つ以上のアミノ酸残基が挿入されたアミノ酸配列変異体;および
1つ以上の残基が置換された、開示される配列のアミノ酸配列変異体、または上記で定義されたその断片
を含む。そのような断片(ペプチドまたはポリペプチドとも称する)には、抗原性領域、タンパク質の機能性領域(既知タンパク質ドメインに対応するアミノ酸配列の領域として同定される)や、明白な親水性を有する領域が含まれていてもよい。それらの領域はいずれも、一般に入手可能なタンパク質配列解析ソフトウェア(例えば、MacVector(Oxford Molecular社製))を用いて、容易に同定しうる。
【0025】
予想される変異には更に、所定の突然変異(例えば、相同的組替え、部位特異的またはPCR突然変異誘発、および他の動物種(ウサギ、マウス、ラット、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマおよびヒト以外の霊長目の種が含まれるが、これらに限定されない)によるもの)を含むものや、タンパク質ファミリーにおける対立遺伝子変異その他の自然発生変異、タンパク質が、置換、化学的、酵素的その他の適切な手段により、天然アミノ酸以外の部位(例えば、酵素や放射性同位元素などの検出可能な部位)による共有結合性の修飾を受けた誘導体が含まれる。
【0026】
本発明は更に、希釈剤および本発明のタンパク質またはポリペプチドを含んでなる組成物を提供する。適切な希釈剤は水性または非水性の溶媒、またはそれらの組み合わせであってよく、また、タンパク質またはポリペプチドの安定性、溶解性、活性および/または保存に寄与する付加的な成分、例えば水溶性の塩やグリセロールを含んでいてもよい。
【0027】
以下に記載するように、タンパク質ファミリーの要素は、
(1)タンパク質のレベル、または少なくとも1つの活性を調節する薬物の同定に;
(2)タンパク質の結合パートナーの同定に;
(3)モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を生じる抗原として;
(4)治療薬または治療標的として;また
(5)癌の診断薬またはマーカーとして
利用することができる。
【0028】
B.核酸分子
本発明は更に、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16の配列を有するタンパク質、および本明細書に記載のその関連タンパク質をコードする、好ましくは単離された形態の核酸分子を提供する。本明細書において、「核酸」とは、
・上記に定義したタンパク質またはペプチドをコードする;
・そのようなペプチドをコードする核酸配列に相補的な;
・配列SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13または15の核酸と、適切な厳密な(stringent)条件下でハイブリダイズし、安定な結合を維持する;
・SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16のペプチド配列と、約50%以上、約60%以上、約70%以上または約75%以上(より好ましくは約80%以上、更に好ましくは約90〜95%以上、最も好ましくは約95〜98%以上)を共有するポリペプチドをコードする;または
・配列SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13または15のオープンリーディングフレームに対して、ヌクレオチド配列同一性が約50%以上、約60%以上、約70%以上または約75%以上(より好ましくは約80%以上、更に好ましくは約90〜95%以上、最も好ましくは約95〜98%以上)である
RNAまたはDNAと定義される。
【0029】
本発明は更に、配列SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13または15の相補体と特異的にハイブリダイズする単離された核酸分子、特に、オープンリーディングフレーム全体と特異的にハイブリダイズする分子を含む。配列SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13または15の相補体と特異的にハイブリダイズするそのような分子は、典型的には、厳密なハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする。
【0030】
具体的に予測されるのは、ゲノムDNA,cDNA、mRNA、アンチセンス分子に加え、天然由来でも合成品でもよい、他方の骨格(alternative backbones)に基づく、または他方の塩基(alternative bases)を含む核酸である。しかし、そのようなハイブリダイズする、または相補的な核酸は更に、本発明のタンパク質をコードする核酸、本発明のタンパク質をコードする核酸と適切な厳密な条件下でハイブリダイズする、または本発明のタンパク質をコードする核酸と相補的な核酸を含む、あらゆる従来技術の核酸に対し新規であって容易ではないと定義される。
【0031】
ヌクレオチドまたはアミノ酸配列レベルでの相同性または同一性は、配列類似性探索(sequence similarity searching)に合わせた、blastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastxプログラムに用いられるアルゴリズムを用いるBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)解析によって測定することができる(Altschulら(1997)、Nucleic Acids Res. 25:3389−3402およびKarlinら(1990)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264−2268、これらはいずれも参照により全体が本明細書に組み入れられる)。BLASTプログラムに用いられるアプローチは、まず、クエリー(query)配列とデータベース配列の間の類似セグメントを熟慮(ギャップありまたはなしで)し、次いで、同定された適合箇所全ての統計的有意性を評価し、最後に、それらの適合箇所のうちあらかじめ選択した有意性のしきい値(threshold)を満足するもののみを合計する、というものである。配列データベースの類似性探索における基本的な事項の議論については、Altschulらの文献(Altschulら(1994)、Nat. Genet. 6:119−129)を参照されたい。この文献は参照により全体が本明細書に組み入れられる。ヒストグラム、記述、整列、期待値(即ち、データベース配列に対する適合箇所の報告のための、統計的有意性のしきい値)、カットオフ、行列およびフィルター(低複雑度)の探索パラメータは、デフォルトの設定とする。blastp、blastx、blastn、tblastnおよびtblastxが用いるデフォルトのスコアリング行列(scoring matrix)は、長さが85ヌクレオチドまたはアミノ酸を超えるクエリー配列について推奨される、BLOSUM62行列である(Henikoffら(1992)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915−10919、この文献は参照により全体が本明細書に組み入れられる)。
【0032】
blastnに関しては、N(ミスマッチ残基に対するペナルティースコア)に対するM(適合箇所の残基一組あたりの報酬スコア(reward score))の比によってスコアリング行列を設定する。MとNのデフォルト値は各々5および−4である。blastnの4つのパラメータは、Q=10(ギャップ形成ペナルティー(gap creation penalty))、R=10(ギャップ延長ペナルティー(gap extension penalty))、wink=1(クエリーに沿ったウィンク位置毎の(at every winkth position)ワードヒット(word hits)を生成する)およびgapw=16(ウィンドウ幅(その範囲内でギャップ付きの整列を行う)を設定する)のように調節される。Blastpの同等のパラメータ設定は、Q=9、R=2、wink=1およびgapw=32であった。配列間のBestfit比較(GCG package version 10.0において可能)では、DNAのパラメータであるGAP=50(ギャップ形成ペナルティー)およびLEN=3(ギャップ延長ペナルティー)を用い、タンパク質の比較における同等の設定は、GAP=8およびLEN=2である。
【0033】
「厳密な条件」とは、(1)洗浄に低いイオン強度および高温を用いる条件(例えば、0.015M NaCl/0.0015M クエン酸ナトリウム/0.1% SDS、50℃)、または(2)ハイブリダイゼーション中に変性剤(例えばホルムアミド)を用いる条件(例えば、50%(vol/vol)ホルムアミド(0.1%ウシ血清アルブミンを含む)/0.1%フィコール/0.1%ポリビニルピロリドン/750mM NaClおよび75mM クエン酸ナトリウムを含む50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)、42℃)を言う。他の例は、50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl、0.075M クエン酸ナトリウム)、50mM リン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1% ピロリン酸ナトリウム、5×Denhardt溶液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1% SDSおよび10%硫酸デキストラン中、42℃でハイブリダイゼーションを行い、0.2×SSCおよび0.1% SDS中、42℃で洗浄を行うことである。当業者であれば、厳密度条件を適宜決定・変更し、明瞭かつ検出可能なハイブリダイゼーションシグナルを得ることを容易に行うことができる。好ましい分子は、配列SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13または15の相補体と上記の条件下でハイブリダイズし、機能性または全長タンパク質をコードするものである。ハイブリダイズするより好ましい分子は、配列SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13または15のオープンリーディングフレームの相補鎖と上記の条件下でハイブリダイズするものである。
本明細書においては、核酸分子が他のポリペプチドをコードする混入核酸分子から実質的に分離されているとき、核酸分子が「単離されている」という。
【0034】
本発明は更に、開示される核酸分子の断片を提供する。本明細書において、核酸分子の断片とは、コードしている、またはコードしていない配列の小さな一部をいう。断片のサイズは意図する用途によって決まる。例えば、タンパク質の活性部分をコードするように断片を選択する場合、断片は、タンパク質の機能性領域をコードするに足る大きさである必要がある。例えば、推定される抗原性領域に対応するペプチドをコードする断片を調製する場合もある。断片が核酸プローブまたはPCRプライマーとして用いられるものであるならば、プロービング/プライミング中に偽の陽性が比較的少数となるように断片長を選択する(セクションGにおける考察を参照)。
【0035】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)用のプローブまたは特定プライマーとして、または本発明のタンパク質をコードする遺伝子配列を合成するのに用いられる、本発明の核酸分子の断片(即ち合成オリゴヌクレオチド)は、化学的手法(例えば、ホスホルアミダイト法(Matteucciら(1981)、J. Am. Chem. Soc. 103:3185−3191))、または自動化合成法により容易に合成することができる。加えて、より大きなDNAセグメントは、公知の方法、例えば、遺伝子の種々のモジュラーセグメント(modular segments)を定義する一群のオリゴヌクレオチドを合成し、次いでそのオリゴヌクレオチドを結合し、完全な修飾遺伝子を構築することにより容易に調製することができる。
【0036】
本発明の核酸分子を更に修飾して、診断、プローブを目的とする検出可能なラベルを含むようにしてもよい。そのような種々のラベルが当該技術分野において知られており、本明細書に記載のコード分子に対して容易に用いることができる。適切なラベルには、ビオチン、放射能ラベルまたは蛍光ラベルされたヌクレオチドなどが含まれるが、それらに限定されない。そのような何らかのラベルを用いて、本発明の核酸分子のラベル化変異体を得ることは、当業者であれば容易に行うことができる。
【0037】
C.他の関連核酸分子の単離
上記のように、SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13または15の配列を有する核酸分子の同定・キャラクタリゼーションは、当業者に対し、本明細書に記載の配列のみならず、タンパク質ファミリーの他の要素をコードする核酸分子の単離を可能にする。更に、ここに開示される核酸分子は、当業者に対し、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16の配列を有するタンパク質のみならず、タンパク質ファミリーの他の要素をコードする核酸分子の単離を可能にする。
【0038】
例えば、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16のアミノ酸配列を用いて、適切な細胞から調製した発現ライブラリーをスクリーニングするための抗体プローブを生成することは、当業者であれば容易に行うことができる。典型的には、精製タンパク質(下記のような)で免疫した哺乳類(例えばウサギ)からのポリクローナル抗血清や、モノクローナル抗体を用いて、哺乳類cDNAまたはゲノム発現ライブラリー(例えばラムダgtllライブラリー)をプローブし、タンパク質ファミリーの他の要素についての適切なコード配列を得ることができる。クローン化cDNA配列は、融合タンパク質として、それ自身の制御配列を用いて直接に、または、酵素の発現に用いる特定の宿主に対して適切な制御配列を用いる構築物によって発現させることができる。
【0039】
或いは、本明細書に記載のコード配列の一部を合成してプローブとして用い、何らかの哺乳類生物から、タンパク質ファミリーの要素をコードするDNAを回収することができる。約18〜20ヌクレオチド(一続きの(stretch)約6〜7アミノ酸をコードする)を含むオリゴマーを調製し、ゲノムDNAまたはcDNAライブラリーをスクリーニングするのに用いて、厳密な条件下、または過度なレベルの偽の陽性を排除するのに十分な厳密度のある条件下でのハイブリダイゼーションを得る
【0040】
更に、PCRに用いるオリゴヌクレオチドプライマー対を調製して、コーディング核酸分子を選択的にクローニングすることができる。そのようなPCRプライマーを用いるための、PCR変性/アニール/延長サイクルは、当該分野において公知であり、他のコーディング核酸分子の単離にも容易に適合させることができる。
【0041】
既存のゲノムその他の配列情報中において、何らかの利用可能なコンピューター手法(PSI−BLAST(Altschulら(1997)、Nucl. Acids Res. 25:3389−3402)、PHI−BLAST(Zhangら(1998)、Nucl. Acids Res. 26:3986−3990)、3D−PSSM(Kellyら(2000)、J. Mol. Biol. 299:499−520)その他のコンピューター解析法(Shiら(1999)、Biochem.Biophys.Res.Commun. 262:132−138、およびMatsunamiら(2000)、Nature 404:601−604)が含まれるが、それらに限定されない)を用いて、タンパク質ファミリーの他の要素をコードする核酸分子が同定されることもありうる。
【0042】
D.核酸分子を含むrDNA
本発明は更に、コーディング配列を含む組み換えDNA分子(rDNA)を提供する。本明細書において「rDNA分子」とは、in situで分子操作(molecular manipulation)に付されたDNA分子をいう。rDNA分子を生成する方法は、当該分野において公知であり、例えばSambrookら、Molecular Cloning− A Laboratory Manual, Third Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 2001を参照されたい。好ましいrDNA分子においては、コーディングDNA配列が発現制御配列および/またはベクター配列と機能しうるように結合されている。
【0043】
本発明のタンパク質ファミリーコーディング配列が機能しうるように結合されるベクター配列および/または発現制御配列の選択は、当該分野において知られているように、所望の機能特性(例えば、タンパク質の発現や、形質転換すべき宿主細胞)に直接的に依存する。本発明が予期する(contemplated)ベクターは、rDNA分子に含まれる構造遺伝子の、少なくとも複製および宿主染色体への挿入、好ましくは更に発現を指揮することができる。
機能しうるように結合したタンパク質コーディング配列の発現を調節するために用いられる発現制御要素は、当該分野において公知であり、これには誘導可能(inducible)プロモーター、構成(constitutive)プロモーター、分泌シグナルその他の制御要素が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、誘導可能プロモーターは容易に制御されるもの、例えば宿主の培地中の栄養分に敏感に反応するものである。
【0044】
一実施形態において、コーディング核酸分子を含むベクターは、原核細胞性レプリコン、即ち、組み換えDNA分子により形質転換された原核宿主細胞(例えば細菌宿主細胞)における、染色体外でのその組み換えDNA分子の自主的な複製および保全を指揮する能力を有するDNA配列を含む。そのようなレプリコンは、当該分野において公知である。更に、原核細胞性レプリコンを含むベクターは、その発現が検出可能なマーカー、例えば薬剤耐性をもたらす(confers)遺伝子をも含んでいてよい。典型的な細菌薬剤耐性遺伝子は、アンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコールまたはテトラサイクリンに対する耐性をもたらすものである。
【0045】
原核細胞性レプリコンを含むベクターは更に、細菌宿主細胞(例えば大腸菌)におけるコーディング配列の発現(転写および翻訳)を指揮する能力を有する原核細胞性またはバクテリオファージプロモーターを含んでいてもよい。プロモーターは、RNAポリメラーゼの結合および翻訳の発生を許可するDNA配列により形成された発現制御要素である。細菌宿主に適合するプロモーター配列は、典型的には、本発明のDNAセグメントの挿入に便利な制限部位を含むプラスミドベクター中に提供される。そのようなベクターの典型的なものは、BioRad Laboratories社(カリフォルニア州リッチモンド)より入手可能なpUC8、pUC9、pBR322およびpBR329、並びにPharmacia社(ニュージャージー州ピスキャタウェイ(Piscataway))より入手可能なpPLおよびpKK223である。
【0046】
真核細胞に適合する、好ましくは脊椎動物細胞に適合する発現ベクターは、コーディング配列を含むrDNA分子の形成にも利用できる。真核細胞発現ベクター(ウィルスベクターを含む)は、当該分野において公知であり、いくつかの商業的供給源より入手可能である。典型的には、そのようなベクターは、所望のDNAセグメントの挿入に便利な制限部位を含んで提供される。そのようなベクターの典型的なものは、pSVLおよびpKSV−10(Pharmacia社)、pBPV−1/pML2d(International Biotechnologies, Inc.社)、本明細書に記載のベクターpCDM8その他同様の真核細胞発現ベクターである。必要であれば、組織特異的プロモーターを含むようベクターを修飾してもよい。
【0047】
本発明の組み換えDNA分子の構築に用いる真核細胞発現ベクターは更に、真核細胞内で有効な選択マーカー、好ましくは薬剤耐性選択マーカーを含んでいてもよい。好ましい薬剤耐性マーカーは、その発現がネオマイシン耐性をもたらす遺伝子である、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(neo)遺伝子である(Southernら(1982)、J. Mol. Anal. Genet. 1:327−341)。或いは、選択マーカーは別個のプラスミド上に存在していてもよい。そして、2種のベクターを共トランスフェクション(co−transfection)により宿主細胞に導入し、選択マーカーに対して適切な薬剤中で培養することにより選択する。
【0048】
E.外因性の(Exogenously Supplied)コーディング核酸分子を含む宿主細胞
本発明は更に、本発明のタンパク質をコードする核酸分子で形質転換された宿主細胞を提供する。宿主細胞は、原核細胞、真核細胞のいずれでもよい。本発明のタンパク質の発現に有用な真核細胞は、細胞株が細胞培養法に適合性を有し、また発現ベクターの増殖および遺伝子産物の発現にも適合性を有する限り、特に限定されない。好ましい真核宿主細胞には、酵母、昆虫および哺乳動物細胞(好ましくは脊椎動物細胞、例えばマウス、ラット、サルまたはヒト細胞株から得られるもの)が含まれるが、これらに限定されない。好ましい真核宿主細胞には、チャイニーズハムスター卵巣細胞(ATCCよりCCL61として入手可能なもの)、NIHスイスマウス胚細胞(NIH/3T3)(ATCCよりCRL1658として入手可能なもの)、新生児ハムスター腎細胞(BHK)および同様の真核細胞組織培養細胞株が含まれる。
本発明のタンパク質をコードするrDNA分子の発現は、あらゆる原核細胞性宿主を用いて行うことができる。好ましい原核細胞性宿主は大腸菌である。
【0049】
本発明のrDNA分子による適切な宿主細胞の形質転換は、公知の方法(典型的には、使用するベクターと使用する宿主系に依存する)により達成することができる。原核細胞性宿主細胞の形質転換に関しては、典型的には電気穿孔法(electroporation)および塩処理法を用いる(例えば、Cohenら(1972)、Proc.Natl.Acad.Sci. USA 69:2110および上記Sambrookらを参照)。rDNAを含むベクターによる脊椎動物細胞の形質転換に関しては、典型的には電気穿孔法や、カチオン性脂質または塩処理法を用いる(例えば、Grahamら(1973)、Virol. 52:456;およびWiglerら(1979)、Proc.Natl.Acad.Sci. USA 76:1373−1376を参照)。
【0050】
成功裡に形質転換された(即ち、本発明のrDNA分子を含む)細胞の同定は、選択マーカーに関する選択を初めとする公知の方法により可能である。例えば、本発明のrDNAの導入により生じた細胞をクローン化して、単一コロニーを形成することができる。
これらのコロニーから得た細胞を培養し、溶解して、Southern(1975)、J.Mol.Biol. 98:503やBerentら(1985)、Biotech. 3:208に記載の方法などの方法によりそのDNA含量を試験し、rDNAの存在を調べたり、細胞から生成したタンパク質を免疫学的手法により試験することができる。
【0051】
F.rDNA分子を用いる組み替えタンパク質の製造
本発明は更に、本明細書に記載の核酸分子を用いて、本発明のタンパク質を製造する方法を提供する。一般的に言って、組み替え型タンパク質の製造には、下記の工程が含まれる。
まず、本発明のタンパク質をコードする核酸分子、例えば、SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13または15の配列、或いは、
配列SEQ ID NO:1における第390〜4883番目または第390〜4880番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:3における第12〜4907番目または第12〜4904番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:5における第424〜1911番目または第424〜1908番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:7における第405〜1838番目または第405〜1835番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:9における第89〜1153番目または第89〜1150番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:11における第223〜1572番目または第223〜1569番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:13における第418〜1395番目または第418〜1392番目のヌクレオチド;或いは
配列SEQ ID NO:15における第271〜1434番目または第271〜1431番目のヌクレオチド
を含んでなる(或いは、本質的にそれらからなる、またはそれらからなる)核酸分子を得る。コーディング配列がイントロンにより途切れていなければ、これらはオープンリーディングフレームであるから、何らかの宿主における発現に直接に適切である。
【0052】
次いで、好ましくは、核酸分子を、上記のような適切な制御配列と結合させて、タンパク質オープンリーディングフレームを含む発現ユニットを形成する。発現ユニットを用いて適切な宿主を形質転換させ、形質転換させた宿主を、組み替えタンパク質の産生を可能にする条件下で培養する。場合により、組み替えタンパク質を培地または細胞から単離するが、ある種の不純物が許容しうるものであるような場合、タンパク質の回収・精製が不要な場合もある。
【0053】
前記の工程は、種々の方法で実施することができる。例えば、所望のコーディング配列をゲノム断片から取得し、適切な宿主において直接用いてもよい。種々の宿主において機能しうる発現ベクターの構築は、上記のような適切なレプリコンおよび制御配列を用いて達成される。制御配列、発現ベクターおよび形質転換方法は、遺伝子の発現に用いる宿主細胞の種類に依存し、過去に詳細に検討されている。コーディング配列の末尾に適切な制限部位を追加し(通常ではそれを利用できない場合)、これらのベクターを挿入するために切断しうる(excisable)遺伝子を提供してもよい。当該分野において使用が知られる何らかの宿主/発現系を、本発明の核酸分子に適合させて、組み替えタンパク質を製造することは、当業者であれば容易に行うことができる。
【0054】
G.癌に関連する遺伝子をコードする核酸の発現を調節する薬物の同定方法
本発明の他の実施形態は、本発明のタンパク質(例えば、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16のアミノ酸配列を有するタンパク質)をコードする核酸の発現を調節する薬物の同定方法を提供する。そのような試験には、本発明の核酸の発現レベル変化を監視するための、利用可能なあらゆる手段を利用してよい。本明細書においては、ある薬物が、細胞内における核酸の発現を上方または下方調整しうる場合、その薬物は本発明の核酸の発現を調節するという。
【0055】
1つの試験様式では、
配列SEQ ID NO:1における第390〜4883番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:3における第12〜4907番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:5における第424〜1911番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:7における第405〜1838番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:9における第89〜1153番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:11における第223〜1572番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:13における第418〜1395番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:15における第271〜1434番目のヌクレオチド;および/または
5‘および/または3’制御要素によって定義されるオープンリーディングフレーム内からのヌクレオチドと、試験可能な何らかの融合パートナー(fusion partner)の間でのレポーター遺伝子融合体(reporter gene fusions)を含む細胞株を調製してよい。試験可能な融合パートナーは数多く知られており、容易に入手可能である。これには、ホタルルシフェラーゼ遺伝子およびクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子(Alamら(1990)、Anal.Biochem. 188:245−254)が含まれる。次いで、レポーター遺伝子融合体を含む細胞株を、適切な条件下、試験すべき薬物に適切な時間だけ曝露する。薬物に曝露した試料とコントロール試料の間で、レポーター遺伝子の発現に差があることで、本発明の核酸の発現を調節する薬物が同定される。
【0056】
更なる試験様式を用いて、薬物の、本発明のタンパク質(例えば、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16のアミノ酸配列を有するタンパク質)をコードする核酸の発現を調節する能力を監視してもよい。例えば、上記したように、本発明の核酸に対するハイブリダイゼーションにより、mRNAの発現を直接的に監視してもよい。適切な条件下、細胞株を試験すべき薬物に適切な時間だけ曝露し、標準的な手順(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning − A Laboratory Manual, Third Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 2001に開示されているもの)により、全RNAまたはmRNAを単離する。
【0057】
好ましい細胞は、ヒト由来の細胞、例えば、癌患者から得た生検組織または培養細胞である。ATCC乳管癌(breast ductal carcinoma)細胞株(カタログ番号CRL−2320、CRL−2338およびCRL−7345)、ATCC回腸結腸腺癌(colorectal adenocarcinoma)細胞株(カタログ番号CCL−222、CCL−224、CCL−225、CCL−234、CRL−7159およびCRL−7184)、ATCC腎細胞腫(kidney clear cell carcinoma)細胞株(カタログ番号HTB−46およびHTB−47)、ATCC腎細胞腺癌(renal cell adenocarcinoma)細胞株(カタログ番号CRL−1611、CRL−1932およびCRL−1933)、ATCC肝細胞癌細胞株(カタログ番号CRL−2233、CRL−2234およびHB−8065)、ATCC肺腺癌(lung adenocarcinoma)細胞株(カタログ番号CRL−5944、CRL−7380およびCRL−5907)、ATCCリンパ腫細胞株(カタログ番号CRL−7936、CRL−7264およびCRL−7507)、ATCC卵巣腺癌(ovary adenocarcinoma)細胞株(カタログ番号HTB−161、HTB−75およびHTB−76)、ATCC膵臓腺癌(pancreas adenocarcinoma)細胞株(カタログ番号CRL−1687、CRL−2119およびHTP−79)、前立腺癌細胞株(カタログ番号CRL−1435、CRL−2422およびCRL−2220)、ATCC胃腺癌(gastric adenocarcinoma)細胞株(カタログ番号CRL−1739、CRL−1863およびCRL−1864)等の細胞株を利用してもよい。或いは、入手可能な他の細胞または細胞株を利用してもよい。
【0058】
薬物に暴露した細胞と対照細胞の間の、RNA発現レベルの差を検出するためのプローブは、本発明の核酸から調製しうる。厳密度の高い条件下では標的核酸としかハイブリダイズしないプローブを設計することが、必須ではないが好ましい厳密度の高い条件下では、相補性の高い核酸ハイブリッドだけが形成される。従って、ハイブリッドを形成するために、2本の核酸鎖間に存在すべき相補性の程度は、試験条件の厳密度によって決まる。プローブ/標的ハイブリッドとプローブ/非標的ハイブリッドの間の安定度の差が最大となるように、厳密度を選択すべきである。
【0059】
プローブは、本発明の核酸から、当該分野において既知の方法により設計しうる。例えば、プローブのG+C含量とプローブ長は、プローブの標的配列への結合に影響する。プローブの特異性を最適化する方法は、上記Sambrookら、またはAusubelら、Short Protocols in Molecular Biology, Fourth Ed., John Wiley & Sons, Inc., New York, 1999において、一般に入手可能である。
【0060】
各プローブに対し必要に応じて、ハイブリダイゼーション条件を既知の(例えば、上記SambrookらおよびAusubelらに記載の)方法により修飾する。総細胞RNA、またはポリA−RNA用にエンリッチしたRNAのハイブリダイゼーションは、あらゆる可能な様式で達成しうる。例えば、総細胞RNA、またはポリA−RNAをエンリッチしたRNAを固相担体に固定し、その固相担体を、少なくとも1種の本発明の配列、またはその一部を含んでなる少なくとも1種のプローブに、そのプローブが特異的にハイブリダイズする条件下で暴露することができる。或いは、少なくとも1種の本発明の配列、またはその一部を含んでなる核酸断片を、固相担体、例えばシリコンチップ、または多孔性ガラスのウェハーや膜に固定することもできる。次いで固相担体を、総細胞RNA、または試料から得たポリA−RNAに、固定した配列が特異的にハイブリダイズする条件下で暴露することができる。そのような固相担体およびハイブリダイゼーション方法は、広範囲に利用可能である。例えば、特許文献1(Beattie(1995))に開示されるものである。あるプローブの、未処理の細胞母集団(population)と、薬物に暴露した細胞の母集団に対する、特異的にハイブリダイズする能力を試験することにより、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16の配列を有するタンパク質をコードする核酸の発現を上方または下方調整する薬物が同定される。
【0061】
mRNAの定性および定量分析のためのハイブリダイゼーションはまた、RNase保護試験(RPA、Maら(1996)、Methods 10: 273−238を参照)を用いて行ってもよい。簡単に言うと、遺伝子産物をコードするcDNAと、ファージ特異的DNA依存性RNAポリメラーゼプロモーター(例えば、T7、T3またはSP6RNAポリメラーゼ)を含んでなる発現媒体(expression vehicle)を、cDNA分子の3’末端側、ファージプロモーターの下流側で直線化する(linearized)。次いでそのような直線化分子を、in vitro転写による、cDNAのラベル化アンチセンス転写物合成の鋳型に用いる。次いでラベル化転写物を、単離したRNA混合物(即ち、総RNAまたは分画したRNA)と、80%ホルムアミド、40mM Pipes(pH 6.4)、0.4M NaClおよび1mM EDTAを含んでなる緩衝液中、45℃で終夜インキュベートしてハイブリダイズさせる。次いで、得られたハイブリッドを、40μg/ml リボヌクレアーゼAおよび2μg/ml リボヌクレアーゼを含んでなる緩衝液中で消化する。外来の(extraneous)タンパク質を不活性化・抽出した後、解析のため試料を尿素/ポリアクリルアミドゲルにかける。
【0062】
別の試験では、本遺伝子産物の発現に影響する薬物を同定するため、本発明の遺伝子産物を生理的に発現する細胞または細胞株をまず同定する。そのように同定された細胞および/または細胞株は、必要な細胞性装置(cellular machinery)を含み、適切な表面形質導入機構(surface transduction mechanisms)および/または細胞質性カスケード(cytosolic cascades)により、薬物の外因性の接触についての、転写装置の忠実な調節が維持されると考えられる。また、そのような細胞または細胞株は、本遺伝子産物(本遺伝子産物に固有の、1つ以上の抗原性断片と融合している)をコードする構造遺伝子の、機能しうる、翻訳されないプロモーターを含有する5’末端を含んでなる発現媒体(例えばプラスミドまたはウィルスベクター)構築物により形質導入またはトランスフェクションされ、前記断片は、前記プロモーターの転写制御下にあり、ポリペプチド(その分子量が、天然のポリペプチドと区別しうるか、免疫学的に区別されるタグその他の検出可能なマーカーを更に含んでいてよい)として発現される。そのような方法は、当該分野において公知である(前記Sambrookらを参照)。
【0063】
次いで、先に概説した、形質導入またはトランスフェクションされた細胞または細胞株を、適切な条件下で薬物と接触させる。例えば、薬物は薬学的に許容される賦形剤に含まれ、水性生理的緩衝液(例えば、生理的pHのリン酸緩衝食塩水(PBS)、生理的pHのEagles緩衝塩類溶液(BSS)、血清を含むPBSまたはBSS、或いはPBSおよび/またはBSSおよび血清を含み、37℃でインキュベートされる調節された媒体)に含まれる細胞と接触する。前記条件は、当業者が必要と考えるように調節しうる。細胞を薬物と接触させるのに続き、前記細胞を破砕して(disrupted)、細胞破砕物のポリペプチドを分画し、ポリペプチド画分をプールして抗体と接触させ、更に免疫学的試験(ELISA、免疫沈降法またはウェスタンブロット)で処理されるようにする。「薬物と接触した」試料から単離されたタンパク質のプールを、賦形剤だけを細胞と接触させたコントロールの試料と比較し、「薬物と接触した」試料から免疫学的に生成される信号が、コントロールに比べ増加または減少していることを利用して、薬物の有効性を識別する。
【0064】
H.癌関連タンパク質のレベル、または少なくとも1つの活性を調節する薬物の同定方法
本発明の他の実施形態は、本発明のタンパク質(例えば、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16のアミノ酸配列を有するタンパク質)のレベル、または少なくとも1つの活性を調節する薬物の同定方法を提供する。そのような方法または試験には、所望の活性を監視または検出するための、あらゆる手段を利用してよく、癌を治療する薬物の同定に特に有用である。
【0065】
1様式においては、試験すべき薬物に曝露された1つの細胞母集団における、曝露されていないコントロール細胞母集団との間で比較しての、本発明のタンパク質の相対量を試験しうる。この様式においては、プローブ(例えば特異的抗体)を用いて、異なる細胞母集団における、タンパク質発現の差を監視する。細胞株または細胞母集団を、適切な条件下で、試験すべき薬物に適切な時間だけ曝露する。曝露した細胞株または細胞母集団と、コントロールの曝露されていない細胞株または細胞母集団から、細胞破砕物を調製しうる。次いで、プローブ(例えば特異的抗体)を用いて細胞破砕物を分析する。
【0066】
抗体プローブは、適切な免疫プロトコルに従い、長さが十分であれば、本発明のペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質(或いは、所望であれば、または免疫性を増強するために必要であれば、適当な担体と複合化させる)で適切な哺乳動物宿主を免疫することにより調製される。担体(例えば、BSA、KLHその他の担体タンパク質)との免疫複合体の調製方法は、当該分野において公知である。ある状況においては、例えばカルボジイミド試薬を用いる直接的複合化が有効なこともあり、他の場合には、ハプテンへのアクセス可能性(accessibility)をもたらすため、結合(linking)試薬(例えば、Pierce Chemical Co.社(イリノイ州ロックフォード))が供給するものが望ましいこともある。例えば、担体との結合を促進するために、ハプテンペプチドを、アミノ末端、カルボキシ末端のどちらからでもシステイン残基で伸長したり、システイン残基を散在させたりすることができる。免疫原の投与は、一般的には、当該分野でよく理解されているように、適切なアジュバントを用いて、適当な時間をかけて注射することにより行うことができる。免疫スケジュールの間、抗体形成の十分さを決定するために、抗体の力価(titers)を測定する。
【0067】
ある用途では、この方法で得られるポリクローナル抗血清が満足なものである場合もあるが、医薬組成物としては、モノクローナル製剤の利用が好ましい。所望のモノクローナル抗体を分泌する不死化細胞株は、一般に知られるように、リンパ球または脾臓細胞の不死化を行う、標準法(KohlerおよびMilstein(1975)、Nature 256:495−497)またはその変法により調製しうる。所望の抗体を分泌する不死化細胞株のスクリーニングは、ペプチドハプテン、ポリペプチドまたはタンパク質を抗原とするイムノアッセイにより行う。所望の抗体を分泌する適切な不死化細胞株が同定されたら、細胞の培養は、in vitroで行ってもよく、腹水(ascites fluid)中での産生により行ってもよい。
【0068】
次いで、培養上清または腹水上清から所望のモノクローナル抗体を回収する。完全な抗体もそうであるが、免疫学的に重要な(抗原と結合する)部位を含むモノクローナル抗体またはポリクローナル抗血清の断片も、アンタゴニストとして使用できる。特に治療という状況では、免疫学的に反応性の(抗原と結合する)抗体断片(例えば、Fab、Fab´またはF(ab´)2断片)の使用が好ましい場合がしばしばある。これは、これらの断片は通常、イムノグロブリン全体に比べ免疫原性が少ないからである。
抗体または抗原性断片はまた、現行の技術を用いて、組み替えの手法により製造することもできる。タンパク質の所望の領域に特異的に結合する抗体の領域はまた、複数の種に由来するキメラ(例えばヒト化抗体)の状態で製造することもできる
【0069】
上記の方法で試験する薬物は、無作為に選択してもよく、合理的に選択または設計してもよい。本明細書においては、本発明のタンパク質(それのみ、またはそれに関連する基質、結合パートナー等と共に)に関連して含まれる特定の配列を考慮することなく、無作為に薬物を選択する場合、その薬物を無作為に選択するという。無作為に選択された薬物の例は、化学物質ライブラリー(chemical library)、ペプチドコンビナトリアルライブラリー(peptide combinatorial library)または生物の増殖ブロス(growth broth)の使用である。
【0070】
本明細書においては、薬物を無作為でなく、標的部位の配列および/または薬物の作用に関連するそのコンホメーションを考慮して選択する場合、その薬物を合理的に選択または設計するという。これらの部位を構成するペプチド配列を利用して、薬物を合理的に選択または設計することができる。例えば、合理的に選択されたペプチド薬物は、何らかの機能的コンセンサス部位と同じアミノ酸配列のペプチドか、その誘導体であってよい。
【0071】
本発明の薬物は、例えばペプチド、低分子物質(small molecules)、ビタミン誘導体および炭水化物であってもよい。優性ネガティブタンパク質(Dominant negative proteins)、これらのタンパク質をコードするDNA、これらのタンパク質に対する抗体、これらのタンパク質のペプチド断片またはこれらのタンパク質の模倣物(mimics)を細胞に導入し、機能に影響を与えてもよい。本明細書で用いられる「模倣物」とは、ペプチド分子の領域(1箇所または数箇所)を修飾し、化学的に親ペプチドとは異なるが、局所解剖学的(topographically)および機能的には親ペプチドと類似した構造を提供することをいう(Grant in:Molecular Biology and Biotechnology,Meyers,ed.,pp.659−664,VCH Publishers,Inc.,New York,1995を参照)。当業者は、本発明の薬物の構造的特性に関して制限がないことを容易に認識することができる。
【0072】
本発明のペプチド薬物は、当該分野において知られている、標準的な固相(または溶液相)ペプチド合成法により調製することができる。更に、これらのペプチドをコードするDNAは、市販のオリゴヌクレオチド合成装置を用いて合成してもよく、標準的な組み替え合成系を用いて組み替えにより製造してもよい。遺伝子にコードされていないアミノ酸が含まれている場合、固相ペプチド合成による製造が必要となる。
【0073】
本発明の他のクラスの薬物は、本発明のタンパク質の臨界的な部位(例えば、本明細書に言う細胞質(cytoplasmic)ドメイン、スペーサードメイン、α−ヘリックスコイルを成すコイルドメイン(α−helical coiled−coil domain)または受容体ドメイン)に対して免疫反応性を有する抗体である。抗体薬物は、適切な哺乳動物被験者を、抗体の標的となることを意図したタンパク質のそれらの部位を、免疫原性領域として含むペプチドにより免疫して得られる。
【0074】
I.癌関連タンパク質の発現、または少なくとも1つの活性を調節する薬物の用途
実施例において提供されているように、本発明のタンパク質(例えば、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16のアミノ酸配列を有するタンパク質)および核酸は、癌性組織における発現が異なる。タンパク質の発現、またはタンパク質の少なくとも1種の活性を上方または下方に調整或いは調節する薬物、例えばアゴニストまたはアンタゴニストを用いて、これらのタンパク質の機能および活性に関連する生物学的および病理学的プロセスを調節してもよい。これには、本発明の相同体および類似体を用いて同定された薬物が含まれる。
【0075】
本明細書においては、本発明のタンパク質によって仲介される病理学的または生物学的プロセスを調節することを必要とする限り、被験者はあらゆる哺乳類でありうる。用語「哺乳類」は、哺乳綱に属する個体と定義される。本発明は、特にヒトである被験者の治療において有用である。
【0076】
病理学的プロセスとは、有害な効果をもたらす範疇の生物学的プロセスをいう。例えば、本発明のタンパク質の発現は、細胞増殖または過形成に関連している可能性がある。本明細書においては、薬物がプロセスの程度または深刻度(severity)を減少する場合、その薬物を病理学的プロセスを調節するという。例えば、本発明のタンパク質の発現または少なくとも1つの活性を、何らかの方法で上方または下方に調整或いは調節する薬物の投与によって、癌を阻害しうるか、疾患の進行を調節しうる。
【0077】
本発明の薬物は、単独で提供することもでき、特定の病理学的プロセスを調節する他の薬物と組み合わせて提供することもできる。例えば、本発明の薬物を、他の既知薬物と組み合わせて投与することができる。本明細書においては、2種の薬物を同時に投与する場合、またはそれらが同時に機能するような様式で独立に投与する場合、「2種の薬物を組み合わせて投与する」という。
【0078】
本発明の薬物は、非経口(parenteral)、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮またはバッカル経路で投与しうる。或いは、または同時に、経口経路でも投与しうる。投与量は、被投与者の年齢、健康状態および体重、並行している処置の種類(あれば)、処置の頻度並びに所望の効果の性質による。
本発明は更に、本発明のタンパク質の発現または少なくとも1種の活性を調節する薬物を1種以上含有する組成物を提供する。個々に必要とされるものは変動するが、各成分の有効量の最適範囲の決定は、当該技術の範囲内である。典型的な投与量は、体重1kgあたり0.1〜100μgである。好ましい投与量は、体重1kgあたり0.1〜10μgからなる。最も好ましい投与量は、体重1kgあたり0.1〜1μgからなる。
【0079】
本発明の組成物は、薬理学的に活性な薬物に加え、活性化合物を加工して作用部位への送達のために薬学的に用いうる製剤とすることを容易にする賦形剤または補助剤からなる、薬学的に許容される適切な担体を含んでいてもよい。非経口投与用の適切な処方は、水溶性の形態(例えば水溶性の塩)にある活性化合物の水溶液を含む。加えて、適切な注射用油性懸濁液としての活性化合物の懸濁液を投与してもよい。適切な親油性溶媒または媒体には、脂肪油(例えばゴマ油)、合成脂肪酸エステル(例えばオレイン酸エチル)またはトリグリセリドが含まれる。注射用水性懸濁液は、懸濁液の粘度を増加する物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよび/またはデキストランを含んでいてもよい。懸濁液は任意に、安定剤も含んでいてよい。細胞への送達のために、リポソームを用いて薬物をカプセル化(encapsulate)してもよい。
【0080】
本発明によれば、全身投与用の医薬処方物は、腸内、非経口または局所用に処方しうる。実際、これら3種の処方を全て同時に用い、活性成分の全身投与を達成してもよい。
経口投与用の適切な処方には、硬または軟ゼラチンカプセル、丸薬、錠剤(コーティング錠を含む)、エリキシル剤、懸濁液、シロップまたは吸入剤(これらの徐放型(controlled release forms)も)が含まれる。
【0081】
本発明の方法を実施するに際し、本発明の化合物を単独で用いてもよく、複数種組み合わせて用いてもよく、他の治療薬または診断薬と組み合わせて用いてもよい。ある好ましい実施形態においては、本発明の化合物を、これらの状態に対して、一般に許容されている医療の実践に従い典型的に規定されている他の化合物と同時に投与してもよい。本発明の化合物は、通常は哺乳類(例えばヒト、ヒツジ、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、ラット、マウスなど)に対しin vivoで、またはin vitroで用いることができる。
【0082】
J.結合パートナーの同定方法
本発明の他の実施形態は、本発明のタンパク質の結合パートナーを単離・同定する方法を提供する。一般には、本発明のタンパク質を、タンパク質の結合パートナーである可能性のあるもの、または細胞の抽出物や画分と、タンパク質の結合パートナーである可能性のあるものが本発明のタンパク質と会合しうる条件下で混合する。混合後、本発明のタンパク質と会合したペプチド、ポリペプチドその他の分子を、混合物から分離する。次いで、本発明のタンパク質と結合している結合パートナーを除去し、更に解析することができる。結合パートナーの単離・同定には、全長タンパク質、例えば、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16の全長アミノ酸配列を有するタンパク質を用いることができる。或いは、そのタンパク質の断片を用いることができる。
【0083】
本明細書において、細胞抽出物とは、溶解または破砕した細胞から作成した調合物(preparation)または画分をいう。細胞抽出物の好ましい起源は、ヒトの癌またはトランスフォームした細胞、例えば、癌から得た生検組織または組織培養細胞である。或いは、正常な組織または入手可能な細胞株から細胞抽出物を調製してもよい。
【0084】
細胞の抽出物は、種々の方法により得ることができる。細胞の破砕は、物理的または化学的破砕方法のどちらを用いて行ってもよい。物理的破砕方法の例には、超音波処理および機械的せん断が含まれるが、これらに限定されない。化学的溶解方法の例には、界面活性剤(detergent)による溶解および酵素による溶解が含まれるが、これらに限定されない。本発明において用いる抽出物を得るために、細胞抽出物の調製方法を適合させることは、当業者であれば容易に行うことができる。
【0085】
細胞の抽出物が得られれば、抽出物を、本発明のタンパク質と、タンパク質と結合パートナーの会合が起こりうる条件下で混合する。種々の方法を用いることができるが、ヒト細胞の細胞質に見られる条件に極めて類似した条件が最も好ましい。浸透圧、pH、温度、細胞抽出物濃度などの特性を変更して、タンパク質と結合パートナーの会合を最適化してもよい。
【0086】
適当な条件下での混合の後、結合複合体を混合物から分離する。混合物の分離には種々の手法を用いることができる。例えば、本発明のタンパク質に特異的な抗体を用いて、結合パートナーとの複合体を免疫沈降させることができる。或いは、標準的な化学的分離法、例えばクロマトグラフィーや密度/沈降遠心分離法を用いることができる。
抽出物に見られる非会合細胞性成分を除去した後、従来の方法を用いて複合体から結合パートナーを解離させることができる。例えば、混合物の塩濃度やpHを変えることにより解離を達成することができる。
【0087】
会合した結合パートナーとの対を、混合した抽出物から分離するのを促進するため、本発明のタンパク質を固相担体に固定することができる。例えば、ニトロセルロースマトリクスやアクリルビーズにタンパク質を付着させることができる。タンパク質を固相担体に付着させることは、ペプチド/結合パートナーの対を、抽出物に見られる他の成分から分離するのを促進する。同定される結合パートナーは、単一のタンパク質であることもあり、2種以上のタンパク質で構成される複合体であることもある。或いは、結合パートナーの同定をTakayamaら(1997)、Methods Mol.Biol. 69:171−184またはSauderら(1996)、J.Gen.Virol. 77:991−99の手順によるFar−Westernアッセイを用いて行ってもよく、エピトープタグ付きタンパク質(epitope tagged proteins)またはGST融合タンパク質を用いて行ってもよい。
【0088】
或いは、酵母2ハイブリッド系その他のin vivoタンパク質−タンパク質検出系で、本発明の核酸分子を用いることができる。酵母2ハイブリッド系は、他のタンパク質のパートナーを同定するのに利用されてきたもので、本明細書に記載の核酸分子を用いるように適合させることは容易である。
【0089】
K.癌関連タンパク質の結合パートナーの用途
上記の方法により得られる、本発明のタンパク質の結合パートナーや、その相同体および類似体は、ひとたび単離すれば、種々の目的に利用できる。当該分野において知られる手法を用いて、結合パートナーと結合する抗体を生成するのに、結合パートナーを用いることができる。結合パートナーと結合する抗体は、本発明のタンパク質の活性の検査に、本発明のタンパク質により仲介される生物学的または病理学的プロセスを調節する薬物として、または結合パートナーの精製に用いることができる。これらの用途は以降に詳述する。
【0090】
L.結合パートナーと癌関連タンパク質の会合を阻害する薬物の同定方法
本発明の他の実施形態は、本発明のタンパク質と結合パートナーの会合を減少または阻害する薬物の同定方法を提供する。具体的には、本発明のタンパク質を、試験すべき薬物の存在下および非存在下で結合パートナーと混合する。タンパク質の会合が可能な条件で混合した後、2種の混合物を分析・比較し、薬物が本発明のタンパク質と結合パートナーの会合を減少または阻害したか否かを決定する。本発明のタンパク質と結合パートナーの会合を減少または阻害する薬物は、試験すべき薬物を含む試料中に生じる会合の量の減少として同定される。
【0091】
本明細書においては、ある薬物の存在が、結合パートナーが本発明のタンパク質と会合する程度を減少させる、またはそれを妨げるとき、その薬物は本発明のタンパク質と結合パートナーの会合を減少または阻害するという。あるクラスの薬物は、結合パートナーと結合することによって会合を減少または阻害するが、別のクラスの薬物は、本発明のタンパク質と結合することによって会合を減少または阻害する。
【0092】
上記の試験に用いる結合パートナーは、単離され十分に特徴付けられたものでもよく、本発明のタンパク質と結合する部分的に特徴付けられたものでもよく、細胞抽出物中に存在することが同定されたものでもよい。結合パートナーが同定可能な特性(例えば分子量)を有している限り、本試験を行うことができることは、当業者にとって明らかである。
【0093】
上記の方法で試験する薬物は、無作為に選択してもよく、合理的に選択または設計してもよい。本明細書においては、本発明のタンパク質と結合パートナーの会合に関連して含まれる特定の配列を考慮することなく、無作為に薬物を選択する場合、その薬物を無作為に選択するという。無作為に選択された薬物の例は、化学物質ライブラリー、ペプチドコンビナトリアルライブラリーまたは生物の増殖ブロスの使用である。
【0094】
本明細書においては、薬物を無作為でなく、標的部位の配列および/または薬物の作用に関連するそのコンホメーションを考慮して選択する場合、その薬物を合理的に選択または設計するという。結合パートナーと本発明のタンパク質の接触部位を構成するペプチド配列を利用して、薬物を合理的に選択または設計することができる。例えば、合理的に選択されたペプチド薬物は、本発明のタンパク質における、結合パートナーとの接触部位と同じアミノ酸配列のペプチドであってよい。そのような薬物は、結合パートナーと結合することによって、本発明のタンパク質と結合パートナーの会合を減少または阻害する。
本発明の薬物は、例えばペプチド、低分子物質、ビタミン誘導体および炭水化物であってもよい。当業者は、本発明の薬物の構造的特性に関して制限がないことを容易に認識することができる。
【0095】
本発明のあるクラスの薬物は、そのアミノ酸配列が、本発明のタンパク質のアミノ酸配列に基づいて選択されたペプチド薬物である。本発明のペプチド薬物は、当該分野において知られている、標準的な固相(または溶液相)ペプチド合成法により調製することができる。更に、これらのペプチドをコードするDNAは、市販のオリゴヌクレオチド合成装置を用いて合成してもよく、標準的な組み替え合成系を用いて組み替えにより製造してもよい。遺伝子にコードされていないアミノ酸が含まれている場合、固相ペプチド合成による製造が必要となる。
【0096】
本発明の他のクラスの薬物は、本発明のタンパク質または結合パートナーの臨界的な部位に対して免疫反応性を有する抗体である。上記のように、抗体は、適切な哺乳動物被験者を、抗体の標的となることを意図した、本発明のタンパク質または結合パートナーのそれらの部位を、免疫原性領域として含むペプチドにより免疫して得られる。臨界的な部位には、本発明のタンパク質と結合パートナーの会合に関与する接触部位が含まれる。
【0097】
下記で検討するが、本発明のタンパク質の活性に関与する、重要な最小限の残基の配列が、2ハイブリッドスクリーニングや、関連分子である可能性のある物質の同定における餌(bait)として有効に利用しうる、機能性直鎖状ドメインを定義する。そのような断片の利用は、全長分子の利用に比べ、スクリーニングの特異性を有意に向上するので好ましい。同様に、この直鎖状配列はまた、アフィニティーマトリクスとして、生化学的なアフィニティー精製法を用いる結合タンパク質の単離のためにも利用しうる。
【0098】
M.結合パートナーと癌関連タンパク質の会合を阻害する薬物の用途
実施例において提供されているように、本発明のタンパク質(例えば、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16のアミノ酸配列を有するタンパク質)および核酸は、癌性組織における発現が異なる。本発明のタンパク質の、結合パートナーとの相互作用を減少または阻害する薬物(同タンパク質の相同体および類似体を用いて同定されたものを含む)を用いて、これらのタンパク質の機能および活性に関連する生物学的および病理学的プロセスを調節してもよい。
【0099】
本明細書においては、本発明のタンパク質によって仲介される病理学的または生物学的プロセスを調節することを必要とする限り、被験者はあらゆる哺乳類でありうる。用語「哺乳類」は、哺乳綱に属する個体を意味する。本発明は、特にヒトである被験者の治療において有用である。
【0100】
病理学的プロセスとは、有害な効果をもたらす範疇の生物学的プロセスをいう。例えば、本発明のタンパク質の発現は、細胞増殖または過形成に関連している可能性がある。本明細書においては、薬物がプロセスの程度または深刻度を減少する場合、その薬物を病理学的プロセスを調節するという。例えば、本発明のタンパク質の、結合パートナーとの相互作用を減少または阻害する薬物薬物の投与によって、癌を阻害しうるか、疾患の進行を調節しうる。
【0101】
本発明の薬物は、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮またはバッカル経路で投与しうる。或いは、または同時に、経口経路でも投与しうる。投与量は、被投与者の年齢、健康状態および体重、並行している処置の種類(あれば)、処置の頻度並びに所望の効果の性質による。
本発明は更に、本発明のタンパク質と結合パートナーの会合を阻害する薬物を1種以上含有する組成物を提供する。個々に必要とされるものは変動するが、各成分の有効量の最適範囲の決定は、当該技術の範囲内である。典型的な投与量は、体重1kgあたり0.1〜100μgである。好ましい投与量は、体重1kgあたり0.1〜10μgからなる。最も好ましい投与量は、体重1kgあたり0.1〜1μgからなる。
【0102】
本発明の組成物は、薬理学的に活性な薬物に加え、活性化合物を加工して作用部位への送達のために薬学的に用いうる製剤とすることを容易にする賦形剤および補助剤からなる、薬学的に許容される適切な担体を含んでいてもよい。非経口投与用の適切な処方は、水溶性の形態(例えば水溶性の塩)にある活性化合物の水溶液を含む。加えて、適切な注射用油性懸濁液としての活性化合物の懸濁液を投与してもよい。適切な親油性溶媒または媒体には、脂肪油(例えばゴマ油)、合成脂肪酸エステル(例えばオレイン酸エチル)またはトリグリセリドが含まれる。注射用水性懸濁液は、懸濁液の粘度を増加する物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよび/またはデキストランを含んでいてもよい。懸濁液は任意に、安定剤も含んでいてよい。細胞への送達のために、リポソームを用いて薬物をカプセル化してもよい。
【0103】
本発明によれば、全身投与用の医薬処方物は、腸内、非経口または局所用に処方しうる。実際、これら3種の処方を全て同時に用い、活性成分の全身投与を達成してもよい。
経口投与用の適切な処方には、硬または軟ゼラチンカプセル、丸薬、錠剤(コーティング錠を含む)、エリキシル剤、懸濁液、シロップまたは吸入剤(これらの徐放型も)が含まれる。
【0104】
本発明の方法を実施するに際し、本発明の化合物を単独で用いてもよく、複数種組み合わせて用いてもよく、他の治療薬または診断薬と組み合わせて用いてもよい。ある好ましい実施形態においては、本発明の化合物を、これらの状態に対して、一般に許容されている医療の実践に従い典型的に規定されている他の化合物と同時に投与してもよい。本発明の化合物は、通常は哺乳類(例えばヒト、ヒツジ、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、ラット、マウスなど)に対しin vivoで、またはin vitroで用いることができる。
【0105】
N.合理的なドラッグデザインとコンビナトリアルケミストリー
本発明は更に、合理的なドラッグデザインとコンビナトリアルケミストリーを含む。当業者は、適切な方法を認識し、本発明の態様を、癌治療に向けて開発しうる化合物の同定に利用・活用(utilize and exploit)する。ポリペプチドに関する合理的なドラッグデザインでは、設計した薬物が相互作用する第一のペプチドを同定・定義し、その第一の標的ペプチドを用いて、第二のペプチドに対する要件を定義することが必要である。そのような定義された要件に関し、全てまたは実質的に全ての定義された要件を満たす、適切なペプチドまたは非ペプチドを見出す、または調製することができる。合理的なドラッグデザインの1つの目標は、例えばより強力な(または強力でない)形態のリガンドである薬物を形作るために、関心ある生物活性ポリペプチド、またはそれらと相互作用する低分子(例えばアゴニスト、アンタゴニストおよびヌル(null)化合物)の、構造的または機能的類似体を製造することである(例えば、Hodgson(1991)、Bio.Technology 9:19−21を参照)。コンビナトリアルケミストリーは、薬物や材料を、以前に可能だったよりも迅速且つ安価に見出すことを目的として、化合物を1つずつではなくまとめて合成し、その生物活性を試験することの科学である。コンピューター支援によるタンパク質モデリングや薬物発見におけるアプローチの開発により、近年、合理的なドラッグデザインとコンビナトリアルケミストリーはより緊密に関連付けられてきている(例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5および特許文献6を参照)。
【0106】
コンピューターグラフィックスの登場(advent)により、合理的なドラッグデザインとコンビナトリアルケミストリーのためのツールとしての、分子モデリングの利用が劇的に増加している。コンピュータースクリーン上で分子を3次元で見ることができるのみならず、巨大分子(例えば酵素や受容体)と、合理的に設計した試験すべき誘導体分子の相互作用を調べることもできる(Boorman(1992)、Chem.Eng.News 70:18−26を参照)。今や、膨大な数の使いやすい(user−friendly)ソフトウェアおよびハードウェアが入手可能であり、事実上全ての製薬会社が、合理的なドラッグデザインのためのコンピューターモデリンググループを有している。例えば、Molecular Simulations Inc.社(www.msi.com)は、いくつかの洗練されたプログラムを販売しており、これにより利用者は、アミノ酸配列から開始して、タンパク質またはポリペプチドの2次元または3次元モデルを構築し、これを他の2次元または3次元モデルと比較し、化合物、薬物およびペプチドの相互作用を、3次元モデル上リアルタイムで解析することが可能となる。従って、本発明のいくつかの実施形態においては、治療的相互作用が予測・設計できるよう、本発明のタンパク質や、これと相互作用する分子(包括的には「結合パートナー」と称し、例えば抗タンパク質抗体)の領域、これらの分子の断片や誘導体を、他の分子、例えばペプチド、ペプチド模倣物および化学物質を、ソフトウェアを用いて比較する(分子モデリングについての考察は、Schneider(1998)、Genetic Engineering News December: page 20;Tempczykら(1997)、Molecular Simulations Inc. Solutions April;およびButenhof(1998)、Molecular Simulations Inc. Case Notes (August 1998)を参照)。
【0107】
O.遺伝子治療
他の実施形態においては、タンパク質の機能および活性に関連する生物学的または病理学的プロセスを調節する手段として、遺伝子治療を用いることができる。これは、癌性細胞に対し、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16の配列を全部または少なくとも一部含んでなるタンパク質をコードする遺伝子構築物、或いはプロモーター要素またはエンハンサー要素と機能しうるように結合した、配列SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13または15の非コード領域を全部または一部含んでなる遺伝子構築物を挿入して、前記タンパク質の発現が、前記癌を抑制するようにする工程であって、前記プロモーター要素またはエンハンサー要素は、前記遺伝子構築物を調節するプロモーター要素またはエンハンサー要素である工程を含む。
【0108】
前記構築物において、前記タンパク質の発現は、何らかの適切なプロモーター(例えば、ヒトサイトメガロウィルス(CMV)、サル(simian)ウィルス40(SV40)またはメタロチオネインプロモーター)により指揮でき、また何らかの適切な哺乳類の調節要素により調節できる。例えば、所望により、神経細胞、T細胞またはB細胞において遺伝子の発現を優先的に指揮することが知られるエンハンサーを用い、発現を指揮してもよい。使用するエンハンサーには、その発現が組織または細胞に特異的であると特徴付けられたものが含まれうるが、これらに限定されない。或いは、治療性構築物としてLFG1、LFG2、LFG3、LFG4、LFG5またはLFG6のゲノム性クローン(例えば、上記本発明の核酸分子とのハイブリダイゼーションによるその単離に次いで)を用いる場合には、関連(cognate)調節配列、または所望により異種起源由来の調節配列(上記プロモーターおよび調節配列はいずれも含まれる)によって調節を仲介してもよい。
【0109】
癌性細胞への構築物の挿入は、例えばウィルスまたはプラスミドベクターを用いて、in vivoで達成される。そのような方法は、in vitroでの利用にも適用しうる。従って、本発明の方法は、細胞をex vivoで遺伝的に修飾し、宿主に投与する、遺伝子修飾をin vivoで、いくらかの数の適当な方法(このような治療に特に適するベクターを含む)を用いて行うなど、種々の形態の遺伝子治療に容易に適用可能である。
【0110】
レトロウィルスウィルスベクター、アデノウィルスベクター、アデノ関連(adeno−associated)ウィルスベクターその他、癌に関連することがよくある細胞(例えば上皮細胞)に対し適切な向性(tropism)を有するウィルスベクターを、治療性遺伝子構築物用の遺伝子転移移送システム(gene transfer delivery system)として利用してよい。この目的に有用な数多くのベクターが一般に知られている(Cozzi PJら(2002)、Prostate,53(2):95−100;Bitzer M, Lauer U.(2002)、Dtsch Med Wochenschr. 127(31−32):1623−1624;MezzinaおよびDanos(2002)、Trends Genet.8:241−256; Loserら(2002)、Curr.Gene Ther. 2:161−171;PfeiferおよびVerma(2001)、Annu.Rev.Genomics Hum.Genet. 2:177−211)。レトロウィルスウィルスベクターは特によく開発されており、臨床環境(settings)でも用いられている(特許文献7(Andersonら(1995))。癌になっていると考えられる細胞等(otherwise)に治療性DNAを導入するのに、非ウィルス的アプローチを用いてもよい(Jeschkeら(2002)、Curr.Gene Ther.1:267−278;Wuら(1988)、J.Biol.Chem. 263:14621−14624;Wuら(1989)、J.Biol.Chem. 264:16985−16987)。例えば、ニューロン、T細胞またはB細胞に対し、リポフェクション、アシアロオロソムコイド−ポリリジン複合体(conjugation)、または、あまり好ましくないが外科的条件下でのマイクロインジェクションにより、遺伝子を導入してもよい。
上記のいずれの適用方法に関しても、治療性核酸構築物を、好ましくは癌発生箇所に(例えば注射により)適用する。しかし、癌発生箇所周辺の組織、または癌になっていると考えられる細胞への供給を行う血管に適用してもよい。
【0111】
P.トランスジェニック動物
SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13または15のcDNA配列;
SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16のポリペプチド配列をコードするオープンリーディングフレーム;または
3、4、5、6、10、15、20、25、30、35またはそれ以上のアミノ酸残基の連続した配列を有するそれらの断片
に対応する変異、ノックアウトまたは修飾遺伝子を含むトランスジェニック動物もまた、本発明に含まれる。トランスジェニック動物は、遺伝的に修飾され、実験的に組み替え、外来またはクローン化遺伝物質が移入された動物である。そのような遺伝物質は、しばしば「トランスジーン(transgene)」と呼ばれる。トランスジーンの核酸配列(この場合には、SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13または15の配列の形態)は、そのようにしなければその特定の核酸配列が見出されることのないゲノムの遺伝子座と、トランスジーンの通常の遺伝子座のどちらに統合(integrated)してもよい。トランスジーンを構成する核酸配列が由来するゲノムは、同種のものであってもよく、標的動物とは別種のものであってもよい。
【0112】
ある実施形態においては、配列SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13または15を含んでなる遺伝子の全体または一部が欠失しているトランスジェニック動物を構築してもよい。配列SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13または15に対応する遺伝子が1つ以上のイントロンを含む場合、遺伝子全体(全てのエキソン、イントロンおよび調節配列)が欠失していてもよい。或いは、遺伝子全体よりも少ない欠失が生じていてもよい。例えば、本発明のタンパク質の修飾版を発現する動物を作出するよう、単一のエキソンおよび/またはイントロンが欠失していてもよい。
【0113】
用語「生殖細胞系列トランスジェニック動物(germ cell line transgenic animal)」とは、遺伝的改変や遺伝情報が生殖細胞系列に導入されることにより、トランスジェニック動物の遺伝情報を子孫に伝える能力が与えられているトランスジェニック動物をいう。そのような子孫が実際、その改変や遺伝情報を有していれば、それらもまたトランスジェニック動物である。
【0114】
遺伝的改変や遺伝情報は、レシピエント(recipient)が属する種にとって外来のものでもよく、特定個体のレシピエントにとってのみの外来のものでもよく、レシピエントが既に有している遺伝情報であってもよい。最後の場合においては、改変または導入された遺伝子は、元々の遺伝子と発現が異なっていてもよい。
【0115】
トランスジェニック動物は、トランスフェクション、電気穿孔法、マイクロインジェクション、胚性幹細胞における遺伝子ターゲッティング並びに組み替えウィルス(またはレトロウィルス)感染を初めとする、種々異なった方法で作成することができる(例えば特許文献8;特許文献9;Mullinsら(1993)、Hypertension 22: 630−633;Breninら(1997)、Surg.Oncol.6: 99−110;Recombinant Gene Expression Protocols(Methods in Molecular Biology, Vol. 62),Tuan,ed.,Humana Press,Totowa,NJ,1997を参照)。
【0116】
数多くの組み替えまたはトランスジェニックマウスが作成されており、これには
・活性化された癌遺伝子配列を有するもの(特許文献8);
・サルSV40 T−抗原を発現するもの(特許文献10);
・インターフェロン調節因子1(IRF−1)の発現がみられないもの(特許文献11);
・ドーパミン神経の機能不全(dopaminergic dysfunction)を示すもの(特許文献12);
・血圧調整に関与する少なくとも1種のヒト遺伝子を発現するもの(特許文献13);
・自然発生のアルツハイマー病でみられる状態との高い類似性を示すもの(特許文献14);
・細胞接着を仲介する能力の低いもの(特許文献9);
・ウシ成長ホルモン遺伝子を有するもの(Clutterら(1996)、Genetics 143:1753−1760);および
・ヒトの完全な抗体反応を生じる能力を有するもの(McCarthy(1997)、Lancet 349:405)
が含まれる。
【0117】
大半のトランスジェニック実験では、依然としてマウスやラットが動物の選択肢であるが、他の動物種が好ましい、またはそれが必要な場合すらある。トランスジェニックの手順は、ヒツジ、ヤギ、ブタ、イヌ、ネコ、サル、チンパンジー、ハムスター、ウサギ、ウシ、モルモットなど、マウス以外の動物に対しても成功裡に用いられている(例えばKimら(1997)らMol.Reprod.Dev. 46:515−526;Houdebine(1995)、Reprod.Nutr.Dev. 35:609−617;Petters(1994)、Reprod.Fertil.Dev. 6:643−645;Schniekeら(1997)、Science 278:2130−2133;およびAmoah(1997)、J.Animal Sci. 75:578−585を参照)。
【0118】
組み替えの可能な哺乳類細胞への遺伝子断片の導入は、複数の核酸分子での同時形質転換に有利な(favors)あらゆる方法で行うことができる。トランスジェニック動物の作成手順の詳細は、当業者であれば容易に入手できるが、これには特許文献15および特許文献9の開示が含まれる。
【0119】
Q.診断方法
本発明の遺伝子およびタンパク質は、癌組織での発現が正常組織に比して異なるので、本発明の遺伝子およびタンパク質を用いて癌を診断または監視したり、疾患の進行を追跡したり、非癌性組織試料から癌性組織を区別することができる。本発明の遺伝子およびタンパク質を用いて癌を診断する手段の一つには、生きている被験者から組織を取得することが含まれる。
【0120】
本発明の核酸およびタンパク質を検出する試験は、入手可能なあらゆる様式のものであってよい。典型的な核酸分子用の試験には、ハイブリダイゼーションまたはPCRに基づく様式のものが含まれる。本発明のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを検出する典型的な試験には、入手可能なあらゆる様式による抗体プローブの利用、例えばin situ結合試験等が含まれる(Harlow & Lane,Antibodies − A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1988を参照)。好ましい実施形態においては、試験は適切な対照を用いて行う。
【0121】
一般に、その実施形態が核酸ベースの試験か、タンパク質ベースの試験かによって本発明の診断を分類することができる。ある種の診断試験は、本発明の核酸またはタンパク質における、癌性の異常に関与する変異または多型を検出する。他の診断試験は、罹患生物(例えば癌の)における本発明のRNAまたはタンパク質のレベルに類似した、被検生物における本発明のRNAまたはタンパク質のレベルを検出すること、または非罹患生物におけるRNAまたはタンパク質のレベルと異なる、被検生物におけるRNAまたはタンパク質のレベルを検出することにより、タンパク質活性の欠陥を同定・区別する。
【0122】
加えて、タンパク質の活性またはレベルの異常の迅速な検出・同定を考慮して、下記の態様に記載の試薬と方法を組み合わせたキットの製造も予期される。診断キットには、本発明のタンパク質の変異型を特異的に検出する核酸プローブ、抗体またはその組み合わせ、或いは本発明の1種以上のタンパク質のについてのRNAまたはタンパク質の発現レベル測定に用いることができる核酸プローブ、抗体またはその組み合わせが含まれていてよい。これらのキットの検出成分は、典型的には以下の試薬と組み合わせて供給される。DNA、RNAまたはタンパク質を吸着するか、さもなければそれと結合する担体がしばしば供給される。入手可能な担体には、ニトロセルロース、ナイロン、または、正に荷電した置換基の集まり(array)を有することで特徴付けることができる誘導体化ナイロンの膜が含まれる。これらのキットにおいて、制限酵素、対照試薬(control reagents)、緩衝液、増幅酵素および非ヒトポリヌクレオチド(ウシ胸腺またはサケ精子DNAなど)のうち1種以上を供給することができる。
【0123】
核酸ベースの有用な診断手法には、直接DNA配列決定、グラジエントゲル電気泳動、サザンブロット分析、一本鎖高次構造分析、RNAse保護試験、ドットブロット分析、核酸増幅、対立遺伝子特異的PCRおよびこれらのアプローチの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。これらの分析の出発点は、生物学的試料から単離または精製された核酸である。組織生検も良好な試料源をもたらすことが予期される。試料から核酸を抽出し、これをDNA増幅手法、例えばプライマーを用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅することができる。多型の存在を確認するための利用可能な方法は、当業者であれば容易に認識される。加えて、本発明のこの態様に関しては、当該技術において知られる何らかのアドレス指定可能な(addressable)アレイ技術を用いることができる。ポリヌクレオチドアレイの特定の1実施形態は、Genechips(登録商標)として知られ、特許文献16、特許文献17および特許文献18に一般に記載されている。
【0124】
広範なラベルおよび複合化手法が当業者には知られており、種々の核酸試験に利用することができる。ハイブリダイゼーションまたはPCRのためのラベル化核酸の製造方法には、オリゴラベル化(oligolabeling)、ニック翻訳(nick translation)、末端ラベル化(end−labeling)、ラベル化ヌクレオチドを用いるPCR増幅を初めとするいくつかの方法があるが、これらに限定されない。或いは、mRNAプローブを製造するために、本発明のタンパク質をコードする核酸を、ベクターにクローン化することができる。そのようなベクターは当該分野において知られており、市販されており、また適切なRNAポリメラーゼ(例えばT7、T3またはSP6)およびラベル化ヌクレオチドを添加して、in vitroでのRNAプローブに利用することができる。多くの会社(Pharmacia Biotech社(ニュージャージー州ピスキャタウェイ)、Promega社(ウィスコンシン州マディソン)、U.S. Biochemical Corp社(オハイオ州クリーブランド)など)が、市販キットおよびこれらの手順に関するプロトコールを提供している。適切なレポーター分子またはラベルには、放射性核種、酵素、蛍光、化学発光、クロモゲン試薬(chromogenic agents)、また基質、補因子、インヒビター、磁性粒子等が含まれる。
【0125】
タンパク質ベースの好ましい診断では、本発明の抗体を、整えられた(ordered)アレイ中の担体に付着させる。このとき、担体の互いに重複しない領域を区別するために、複数種の抗体を付着させる。タンパク質ベースの診断である利用可能な試験は、当業者には容易に認識される。タンパク質を生物学的試料より取得し、従来のアプローチ(放射活性、比色、蛍光など)によりラベルする。本発明の変異体および/または野生型タンパク質の、既知濃度のラベルした標準品を用いて、研究者は試料中の本発明のタンパク質の濃度を正確に測定し、この情報から、特定形態のタンパク質の発現レベルを評価することができる。デンシトメトリーにおける従来法を用いて、そのようなタンパク質の濃度または発現レベルをより正確に測定することもできる。これらのアプローチはまた、高処理能力の診断分析における当業者には知られる技術により容易に自動化される。先に詳述した通り、本発明のこの態様については、当該技術において知られる何らかのアドレス指定可能なアレイ技術を用いることができ、またこれにより、抗体結合パターンと診断情報を最大化する試みにおいて、チップ上にタンパク質アレイを示すことができる。
【0126】
先に考察した通り、本発明の遺伝子またはタンパク質における多型の存在または検出が、生物における癌または類似の疾患の診断をもたらす場合がある。更なる実施形態は、本発明の遺伝子またはタンパク質の多型による(polymorphic)変異体に対して特異的な検出成分(抗体など)を含んでなる診断キットの調製を含む。検出成分は、典型的には以下の1種以上の試薬と組み合わせて供給される。RNAまたはタンパク質を吸着するか、さもなければそれと結合する担体がしばしば供給される。この目的の入手可能な担体には、ニトロセルロース、ナイロン、または、正に荷電した置換基の集まりを有することで特徴付けることができる誘導体化ナイロンの膜、並びにGenechips(登録商標)およびその等価物が含まれるが、これらに限定されない。これらのキットにおいて、1種以上の酵素(逆転写酵素および/またはTaqポリメラーゼなど)を供給することができる。dNTP類、緩衝液または非ヒトポリヌクレオチド(ウシ胸腺またはサケ精子DNAなど)も同様である。キット試験での結果は、健康管理業者(healthcare provider)や診断研究所において解釈することができる。或いは、診断キットは個人に対して自己診断のために製造・販売される。
【0127】
多型の有無による疾患の診断に加え、癌関連のある種の疾患は、特定組織における本発明のタンパク質または遺伝子の偏った(skewed)レベル、または本発明のタンパク質の発現の異常パターンに起因している。例えば、種々の組織における発現のレベルを監視することにより、診断を行う、または疾患状態を同定することができる。同様に、本発明の種々のタンパク質の、特定組織における発現レベルの比(例えば、発現のパターン)を測定することにより、健康状態または疾患を予測することができる。癌を発症した個人と、健常な個人から得た種々の組織における、本発明のタンパク質の発現のレベルを測定する。これらの数値をデータベースに記録することができ、またそれを試験した個人から得た数値と比較することができる。加えて、健常な個人と罹患した個人の両者から得た種々の組織における、発現の比またはパターンをデータベースに記録する。これらの解析結果を「疾患状態プロファイル」と称し、ある疾患状態プロファイル(例えば健常な、または罹患した個人からの)を、試験すべき個人からの疾患状態プロファイルと比較することにより、臨床医は疾患の有無を迅速に診断することができる。
【0128】
上記の核酸ベースまたはタンパク質ベースの診断手法は、組織における本発明の遺伝子またはタンパク質の発現のレベル、量または比を検出するのに用いることができる。例えば定量的ノーザンハイブリダイゼーション、in situ解析、免疫組織化学、ELISA、遺伝子チップアレイ技術、PCRおよびウェスタンブロットを通じて、本発明の特定のタンパク質(野生型変異型)に対するRNAまたはタンパク質の発現の量またはレベルを迅速に測定することができ、この情報から、発現の比を確認することができる。或いは、分析すべき本発明のタンパク質が、現在は未知であるが、上記の相同性領域を1つ以上有することに基づき同定される、ファミリーの要素であることもある。
【0129】
これ以上の記載はなくとも、当業者は、これまでの記載および以降の具体例を用いて、本発明の化合物を製造・利用し、クレームされた方法を実施できると考えられる。従って、上記の実用的な例は、本発明の好ましい態様を具体的に指摘するものであり、いかなる面においても、他の開示を限定するものとは解釈されない。
【実施例】
【0130】
実施例1:癌において発現の異なるmRNAの同定−1
癌生検と正常組織の間の遺伝子発現における包括的な変化を、Gene Logic, Inc.社(メリーランド州Gaithersburg)のGeneExpress Oncology Datasuite(登録商標)を用いて調べた。データベースは、多数の異なる臓器から得た正常および癌組織に由来する、Affymetrix Human Genome U95アレイを用いて生成させた遺伝子発現プロファイルを含む。データベース中の組織試料のうち、本出願人らは、乳房、結腸、食道、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、卵巣、膵臓、前立腺、直腸および胃より得た正常および癌組織の組み合わせの発現プロファイルを解析した。
【0131】
Affymetrix Human Genome U95アレイは、63,175組のプローブを含んでいる。1組のプローブは、1つの転写物(遺伝子またはcDNAクローン)を検出するためのプローブの組であり、通常オリゴヌクレオチドプローブ16〜20対からなる。これらのプローブ対には、パーフェクトマッチの組とミスマッチの組が含まれ、平均の差の計算にはその両方が必要である。平均の差は、転写物の発現レベルの相対的な指標として役立つもので、各プローブ対についての強度差の尺度であり、パーフェクトマッチの強度からミスマッチの強度を差し引いて算出される。これは、プローブ対間のハイブリダイゼーションにおける可変性や、蛍光強度に影響する恐れのある他の擬似ハイブリダイゼーション(hybridization artifacts)を考慮したものである。計算した平均の差の数値を用いて、各遺伝子につき「不在」(=検出されない)、「存在」(=検出される)または「境界的(marginal)」(=明瞭な「不在」または「存在」でない)との絶対的判定(absolute call)を行う。
【0132】
癌性組織と正常組織の間の発現の差を、以下の統計的手法により測定した。
(1)各プローブの組について、Affymetrix Microarray Suite(v4.0)により、平均の差の値と絶対的判定を求める。
(2)所与の(given)試料の組において、MatLabプログラム(The MathWorks,Inc.社、マサチューセッツ州Natick)を用いる主成分分析(PCA)によって、組織試料中のアウトライヤーを検出した。PCAで用いたデータポイントは、無作為に選択したプローブの組(5,000〜6,000組)における平均の差であった。以降の解析からアウトライヤーを除外した。
(3)GeneExpressプログラムの倍率変化解析ツール(Fold Change Analysis tool)を用いて、遺伝子発現の変動を解析した。癌性試料の組における各遺伝子についての平均の差の平均値を、正常試料の組における同遺伝子についての平均の差の平均値と比較して、倍率変化(癌性/正常)を計算した。発現レベルにおいて3倍以上の増加または減少の見られる遺伝子を得た。分散分析試験(Analysis of Variance Test)により測定したp値が0.05以下のとき、遺伝子を解析に含めた(Steelら、Principles and Procedures of Statistics:A Biometrical Approach,Third Ed.,McGraw−Hill,1997)。
(4)5種以上の異なる癌において発現に差の見られる遺伝子を選択した。
【0133】
チップデータの解析により、正常組織からの試料に比べ、癌性組織からの試料では、マーカーLFG1の発現が有意に上方調整されていることが示された。LFG1(SEQ ID NO:1または3)の発現レベルは、Affymetrix GeneChips(登録商標)U95上のチップ配列断片no.91875_s_atにより測定できる。91875_s_at配列は、EST AI053741に由来する。種々の悪性腫瘍における91875_s_atの発現レベルを、対照の正常組織と比較して表1に示す(倍率変化、変化の方向性(上方または下方調整)およびp値も示す)。癌性試料の組における平均の差の幾何平均を、正常試料の組における平均の差の幾何平均と比較して、倍率変化(癌性/正常)を計算した。倍率変化が1.5を超えるものを有意とした(Wodickaら(1997)、Nature Biotech. 15:1359−1367)。各種の組織に関しての、「存在」、「不在」または「境界的」と判定された試料数も、その試料の組の総試料数と共に、表1に示されている。これらのデータは、LFG1の上方調整が癌の診断に役立つものでありうることを示している。
【0134】
【表1】
【0135】
GeneChipの発現結果(チップ配列断片no.91875_s_atに対する試料の結合により測定)を、Taqman(登録商標)試験(Perkin−Elmer社)を用いる定量的RT−PCR(Q−RT−PCR)により確認した。試験には、特定Affymetrix断片(91875_s_at)の配列情報ファイルに基づいて設計したPCRプライマー(5´−GCTGAAGCAGGAAAATCGCTT−3´(SEQ ID NO:17)および5´−TGAGACGGAGTCTCACTCGGT−3´(SEQ ID NO:18))を用いた。各RNA試料(総RNA:10ng)中の、参照遺伝子に対する標的遺伝子の試験を行った。この目的で、対照プライマーとして役立つ、CTBP1(C末端結合タンパク1)遺伝子に特異的なプライマー(5´−GTTTTTCCTAATTTTGGCATGAAC−3´(SEQ ID NO:19)および5´−CGCCCAAGCTTTTCCTTTT−3´(SEQ ID NO:20))を用いた。このアプローチは、CTBP1のサイクル閾値(Ct)に対しての標的mRNAのCtとして測定される相対発現をもたらす。試料パネルには、結腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、胃および膵臓からの、正常および癌組織の全RNAの対が含まれていた(Ambion, Inc.社、テキサス州Austin)。Q−RT−PCRデータは、正常試料に対しての、癌におけるLFG1の上方調整を立証するものであった。
【0136】
実施例2:発現の異なるmRNA種に対応する全長ヒトcDNA(LFG1)のクローニング
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)と、ヒト心臓由来のcDNAライブラリー(ResGen社、アラバマ州Huntsville)を用いるcDNA末端迅速増幅(rapid amplification of cDNA ends)(RACE)により、配列SEQ ID NO:1または3を有する全長cDNAを取得した。Human Genome Browser(カリフォルニア大学、Santa Cruz)を用いて予測した、91875_s_atの配列を含む遺伝子に基づいて、PCR用(5´−CACCCTTTGCCTCTGTCACTTCCGCA−3´(SEQ ID NO:21)、5´−GCTGGAGCACCAGGACTGCATTG−3´(SEQ ID NO:22)、5´−GGAGCTGAGCAGCAGTGTAATGAA−3´(SEQ ID NO:23)、5´−GAGGCCTGCCTGAAGGAGGAGCTTC−3´(SEQ ID NO:24)、5´−TCTGGAAGTAGTGCAGACGCCTCAGG−3´(SEQ ID NO:25)、5´−AGCCAACGTCGGCTTTGTTATCCAGC−3´(SEQ ID NO:26)、5´−GCTGTCAGATATGATGGTTCTGGAC−3´(SEQ ID NO:27)、5´−CCAGCCTCACCACTGTTGGGTTGC−3´(SEQ ID NO:28)、5´−CATTCTCTGAGCTGTATTAGTGT−3´(SEQ ID NO:29)、5´−CCTGAGCTGGAATGACCTGCA−3´(SEQ ID NO:30)、5´−CTTTGTGTTGGCTGCAGCCACA−3´(SEQ ID NO:31)、5´−TGAGGAGAGACTTTGCTGACTGGT−3´(SEQ ID NO:32)、5´−GTCCTGTCTGGCGGTGCCGA−3´(SEQ ID NO:33)、5´−GCTCCAGGATCCCCTGTCACCTGGGCCTTCTGCCTTTTGGCT−3´(SEQ ID NO:34)、5´−CCATATGGAGAGGAGAGCAGCGGGCCCA−3´(SEQ ID NO:35)、5´−GAAGGAGGAACATGGAGAGGAGA−3´(SEQ ID NO:36)、5´−CCATATGCCCCGGGTAGTCTACTGCAT−3´ (SEQ ID NO:37)および5´−GTCGACTCGAGTCACTTCCGCAAAAACTTCTTG−3´(SEQ ID NO:38))およびRACE用(5´−TCCATTCCGAAGGCTCTCCTCC−3´(SEQ ID NO:39)、5´−GTCTGTGTGACGGAAATGTAAGC−3´(SEQ ID NO:40)および5´−GAAGGTCGAAGGCAGACCGATGT−3´(SEQ ID NO:41))の遺伝子特異的なオリゴマー(oligos)を設計した。これらのプライマーを用いて増幅した産物を、Topo Cloning System(Invitrogen社、カリフォルニア州Carlsbad)を用いてPCR4−Topoベクターに組み込み、次いで配列決定を行った。
【0137】
上記で検出された、調節に差のあるmRNAに対応する全長ヒトcDNAのヌクレオチド配列を、SEQ ID NO:1および3に記載する。前者では、cDNAは5293塩基対を含んでなる。後者では、cDNAは5317塩基対を含んでなる。
cDNAヌクレオチド配列SEQ ID NO:1内のオープンリーディングフレーム(第390〜4880番目(停止コドンを含めて第390〜4883番目)のヌクレオチド)は、1497アミノ酸からなるタンパク質をコードする。SEQ ID NO:1がコードする、予測されるタンパク質に対応するアミノ酸配列を、SEQ ID NO:2に記載する。図2は、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列の、Kyte−Doolittle値(KyteおよびDoolittle(1982)、J.Mol.Biol. 157:105−142)を用いた疎水性解析の結果を示す。上記のように、親水性領域は抗原性ペプチドの製造に用いうる。
【0138】
cDNAヌクレオチド配列SEQ ID NO:3内のオープンリーディングフレーム(第12〜4904番目(停止コドンを含めて第12〜4907番目)のヌクレオチド)は、1631アミノ酸からなるタンパク質をコードする。SEQ ID NO:3がコードする、予測されるタンパク質に対応するアミノ酸配列を、SEQ ID NO:4に記載する。図3は、SEQ ID NO:4のアミノ酸配列の、Kyte−Doolittle値(KyteおよびDoolittle(1982)、J.Mol.Biol. 157:105−142)を用いた疎水性解析の結果を示す。上記のように、親水性領域は抗原性ペプチドの製造に用いうる。
SEQ ID NO:2のタンパク質配列は、SEQ ID NO:4のそれと同一である。ただし、SEQ ID NO:2には、SEQ ID NO:4のN末端側の初めの134アミノ酸がないことを除く。
【0139】
配列SEQ ID NO:2および4は、カルポニン相同性ドメイン(SEQ ID NO:4の第38〜145番目のアミノ酸)、IQカルモジュリン結合ドメイン(SEQ ID NO:2の第629〜646番目のアミノ酸およびSEQ ID NO:4の第763〜780番目のアミノ酸)、RasGAPドメイン(SEQ ID NO:2の第858〜1195番目のアミノ酸およびSEQ ID NO:4の第992〜1329番目のアミノ酸)およびRasGAP C末端ドメイン(SEQ ID NO:2の第1298〜1421番目のアミノ酸およびSEQ ID NO:4の第1432〜1555番目のアミノ酸)を含んでいる。配列SEQ ID NO:2および4は、IQGAPタンパク(Weissbachら(1994)、J Biol Chem 269:20517−20521;およびBrillら(1996)、Mol Cell Biol 16:4869−4878)と類似している。IQGAPは、細胞骨格構造、細胞−細胞接着および増殖シグナル伝達(proliferation signaling)に関与するタンパク質と結合し、その機能を調節する(Fukadaら(2002)、Cell 109:1−20;Briggsら(2002)、J Biol Chem 277:7453−7465;およびMcCallumら(1998)、J Biol Chem 273:22537−22544)。IQGAP欠損マウスは、野性型に比べ、胃増殖遅延(late−onset gastric hyperplasia)の有意な増加を示した(Liら(2000)、Mol Cell Biol 20:697−701)。
【0140】
LFG1に対応するmRNA転写物のサイズを測定するため、ノーザンブロットによる分析を行った。種々のヒト組織由来の全RNAを含むノーザンブロット(Human 12−Lane MTN Blot、Clontech社、カリフォルニア州Palo Alto)を用い、91875_s_at配列を含むESTを、ランダムプライマー法により放射活性ラベルし、ブロットのプローブに用いた。50%ホルムアミド、5×SSPE、0.1% SDS、5×Denhardt溶液および0.2mg/mlニシン精子DNA中、42℃でブロットのハイブリダイゼーションを行い、0.1% SDSを含む0.2×SSCで、室温で洗浄した。ノーザンブロットにより、この遺伝子に対する3種の転写物が示され、そのサイズは約7.2kbおよび6.3kbであった。これは、LFG1クローン(配列SEQ ID NO:1および3)のサイズに対応する。
【0141】
実施例3:癌において発現の異なるmRNAの同定−2
マーカーLFG1に替えてマーカーLFG2を用いた以外は、実施例1の方法を繰り返した。
チップデータの解析により、正常組織からの試料に比べ、癌性組織からの試料では、マーカーLFG2の発現が有意に下方調整されていることが示された。LFG2(SEQ ID NO:5)の発現レベルは、Affymetrix GeneChips(登録商標)U95上のチップ配列断片no.82941_atにより測定できる。82941_at配列は、EST AI277612に由来する。種々の悪性腫瘍における82941_atの発現レベルを、対照の正常組織と比較して表2に示す(倍率変化、変化の方向性(上方または下方調整)およびp値も示す)。癌性試料の組における平均の差の幾何平均を、正常試料の組における平均の差の幾何平均と比較して、倍率変化(癌性/正常)を計算した。倍率変化が1.5を超えるものを有意とした(Wodickaら(1997)、Nature Biotech. 15:1359−1367)。各種の組織に関しての、「存在」、「不在」または「境界的」と判定された試料数も、その試料の組の総試料数と共に、表2に示されている。これらのデータは、LFG2の下方調整が癌の診断に役立つものでありうることを示している。
【0142】
【表2】
【0143】
GeneChipの発現結果(チップ配列断片no.82941_atに対する試料の結合により測定)を、Taqman(登録商標)試験(Perkin−Elmer社)を用いる定量的RT−PCR(Q−RT−PCR)により確認した。試験には、Affymetrix断片(82941_at)を含むESTの配列情報ファイルに基づいて設計したPCRプライマー(5´−GAATGTGTCAGAGACAAGTGCAGC−3´(SEQ ID NO:42)および5´−TGTAGAAACTCTTGGACTAATGGAGG−3´(SEQ ID NO:43))を用いた。各RNA試料(総RNA:10ng)中の、参照遺伝子に対する標的遺伝子の試験を行った。この目的で、対照プライマーとして役立つ、CTBP1(C末端結合タンパク1)遺伝子に特異的なプライマー(5´−GTTTTTCCTAATTTTGGCATGAAC−3´(SEQ ID NO:19)および5´−CGCCCAAGCTTTTCCTTTT−3´(SEQ ID NO:20))を用いた。このアプローチは、CTBP1のサイクル閾値(Ct)に対しての標的mRNAのCtとして測定される相対発現をもたらす。試料パネルには、結腸、肝臓、肺、卵巣および胃からの、正常および癌組織の全RNAの対が含まれていた(Ambion, Inc.社、テキサス州Austin)。Q−RT−PCRデータは、正常試料に対しての、癌におけるLFG2の下方調整を立証するものであった。
【0144】
実施例4:発現の異なるmRNA種に対応する全長ヒトcDNA(LFG2)のクローニング
GeneTrapper試験(Life Technologies社、メリーランド州Rockville)を用いるオリゴプリング(oligo−pulling)法により、配列SEQ ID NO:5を有する全長cDNAを取得した。簡単に言えば、82941_at配列を含むESTの配列に基づいて、遺伝子特異的なオリゴマー(5´−GAATGTGTCAGAGACAAGTGCAGC−3´(SEQ ID NO:42))を設計した。オリゴマーをビオチンでラベルし、これを用いて、あまり差のなかった胃腺癌ライブラリー由来の1本鎖プラスミドDNA(cDNA組み替え体)(NCI CGAP Gas4)(ResGen社、アラバマ州Huntsville)5μgとのハイブリダイゼーションを、Sambrookらの手順に従って行った。ハイブリダイズしたcDNAを、ストレプトアビジンを結合させたビーズにより分離し、加熱により溶出させた。溶出したcDNAを二本鎖プラスミドDNAに変換し、これを用いて大腸菌(DH10B)細胞を形質転換して、最長のcDNAをスクリーニングした。遺伝子特異的なプライマーを用いるPCRにより陽性の選択を確認した後、cDNAをDNA配列決定に付した。
【0145】
上記で検出された、調節に差のあるmRNAに対応する全長ヒトcDNAのヌクレオチド配列を、SEQ ID NO:5に記載する。cDNAは、3608塩基対を含んでなる。
cDNAヌクレオチド配列SEQ ID NO:5内のオープンリーディングフレーム(第424〜1908番目(停止コドンを含めて第424〜1911番目)のヌクレオチド)は、495アミノ酸からなるタンパク質をコードする。SEQ ID NO:5がコードする、予測されるタンパク質に対応するアミノ酸配列を、SEQ ID NO:6に記載する。
【0146】
配列SEQ ID NO:6は、スカベンジャー受容体との相同性を有する。これは、選択されたポリアニオン性リガンドのエンドサイトーシス、アポトーシス細胞または細菌の食作用、細胞接着およびアテローム性動脈硬化の発症に関与する(Peiserら(2002)、Curr.Opin.Immunol. 14:123−128;およびResnickら(1994)、Trends Biol.Sci. 19:5−8)。公開されているスカベンジャー受容体の研究に基づくと、配列SEQ ID NO:6は、細胞質ドメイン(第1〜35番目のアミノ酸)、膜貫通ドメイン(第36〜58番目のアミノ酸)、α−ヘリックスコイルを成すコイルドメイン(第90〜301番目のアミノ酸)、コラーゲン様ドメイン(第305〜380番目のアミノ酸)およびスカベンジャー受容体システインリッチ(SRCR)ドメイン(第393〜493番目のアミノ酸)を含んでいる。SRCRドメインは、6つのシステイン残基を含み(第418、431、462、472、482および492番目のアミノ酸)、これらはドメイン内ジスルフィド結合に関与している可能性がある。配列SEQ ID NO:6はまた、マウス相同体(GenBank Accession No. BC016096)との相同性を示す。これは、連続する全配列に対して70%の同一性を示す。
【0147】
図4は、SEQ ID NO:6のアミノ酸配列の、Kyte−Doolittle値(KyteおよびDoolittle(1982)、J.Mol.Biol. 157:105−142)を用いた疎水性解析の結果を示す。上記のように、親水性領域は抗原性ペプチドの製造に用いうる。
【0148】
LFG2に対応するmRNA転写物のサイズを測定するため、ノーザンブロットによる分析を行った。種々のヒト組織由来の全RNAを含むノーザンブロット(Human MTN Blot、Clontech社、カリフォルニア州Palo Alto)を用い、82941_at配列を含むESTを、ランダムプライマー法により放射活性ラベルし、ブロットのプローブに用いた。50%ホルムアミド、5×SSPE、0.1% SDS、5×Denhardt溶液および0.2mg/mlニシン精子DNA中、42℃でブロットのハイブリダイゼーションを行い、0.1% SDSを含む0.2×SSCで、室温で洗浄した。ノーザンブロットにより、この遺伝子に対する単一の転写物が示され、そのサイズは約3.7kbであった。これは、LFG2クローン(配列SEQ ID NO:5)のサイズに対応する。
【0149】
実施例5:癌において発現の異なるmRNAの同定−3
マーカーLFG1に替えてマーカーLFG3を用いた以外は、実施例1の方法を繰り返した。
チップデータの解析により、正常組織からの試料に比べ、癌性組織からの試料では、マーカーLFG3の発現が有意に下方調整されていることが示された。LFG3(SEQ ID NO:7)の発現レベルは、Affymetrix GeneChips(登録商標)U95上のチップ配列断片no.46104_atにより測定できる。46104_at配列は、EST AA772055に由来する。種々の悪性腫瘍における46104_atの発現レベルを、対照の正常組織と比較して表3に示す(倍率変化、変化の方向性(上方または下方調整)およびp値も示す)。癌性試料の組における平均の差の幾何平均を、正常試料の組における平均の差の幾何平均と比較して、倍率変化(癌性/正常)を計算した。倍率変化が1.5を超えるものを有意とした(Wodickaら(1997)、Nature Biotech. 15:1359−1367)。各種の組織に関しての、「存在」、「不在」または「境界的」と判定された試料数も、その試料の組の総試料数と共に、表3に示されている。これらのデータは、LFG3の下方調整が癌の診断に役立つものでありうることを示している。
【0150】
【表3】
【0151】
GeneChipの発現結果(チップ配列断片no.46104_atに対する試料の結合により測定)を、Taqman(登録商標)試験(Perkin−Elmer社)を用いる定量的RT−PCR(Q−RT−PCR)により確認した。試験には、Affymetrix断片(46104_at)を含むESTの配列情報ファイルに基づいて設計したPCRプライマー(5´−GTATGCATCAGAATTCCCTATAGATCTTT−3´(SEQ ID NO:44)および5´−TAGATGTTTGGGCAACAGCCT−3´(SEQ ID NO:45))を用いた。各RNA試料(総RNA:10ng)中の、参照遺伝子に対する標的遺伝子の試験を行った。この目的で、対照プライマーとして役立つ、CTBP1(C末端結合タンパク1)遺伝子に特異的なプライマー(5´−GTTTTTCCTAATTTTGGCATGAAC−3´(SEQ ID NO:19)および5´−CGCCCAAGCTTTTCCTTTT−3´(SEQ ID NO:20))を用いた。このアプローチは、CTBP1のサイクル閾値(Ct)に対しての標的mRNAのCtとして測定される相対発現をもたらす。試料パネルには、結腸、腎臓、卵巣、膵臓および胃からの、正常および癌組織の全RNAの対が含まれていた(Ambion, Inc.社、テキサス州Austin)。Q−RT−PCRデータは、正常試料に対しての、癌におけるLFG3の下方調整を立証するものであった。
【0152】
実施例6:発現の異なるmRNA種に対応する全長ヒトcDNA(LFG3)のクローニング
GeneTrapper試験(Life Technologies社、メリーランド州Rockville)を用いるオリゴプリング法により、配列SEQ ID NO:7を有する全長cDNAを取得した。簡単に言えば、46104_at配列を含むESTの配列に基づいて、遺伝子特異的なオリゴマー(5´−GTATGCATCAGAATTCCCTATAGATCTTT−3´(SEQ ID NO:44))を設計した。オリゴマーをビオチンでラベルし、これを用いて、ヒト胎児腎臓由来の1本鎖プラスミドDNA(cDNA組み替え体)(ResGen社、アラバマ州Huntsville)5μgとのハイブリダイゼーションを、Sambrookらの手順に従って行った。ハイブリダイズしたcDNAを、ストレプトアビジンを結合させたビーズにより分離し、加熱により溶出させた。溶出したcDNAを二本鎖プラスミドDNAに変換し、これを用いて大腸菌(DH10B)細胞を形質転換して、最長のcDNAをスクリーニングした。遺伝子特異的なプライマーを用いるPCRにより陽性の選択を確認した後、cDNAをDNA配列決定に付した。LFG3の5´末端は、ヒト胎児腎臓より調製したcDNA(Clontech社、カリフォルニア州Palo Alto)および遺伝子特異的なプライマー(5´−TTCCTTCACCAAAGGCATCCAGCCATTCTATG−3´(SEQ ID NO:46))を用いるcDNA末端迅速増幅(RACE)により同定した。
【0153】
上記で検出された、調節に差のあるmRNAに対応する全長ヒトcDNAのヌクレオチド配列を、SEQ ID NO:7に記載する。cDNAは、3162塩基対を含んでなる。
cDNAヌクレオチド配列SEQ ID NO:7内のオープンリーディングフレーム(第405〜1835番目(停止コドンを含めて第405〜1838番目)のヌクレオチド)は、477アミノ酸からなるタンパク質をコードする。SEQ ID NO:7がコードする、予測されるタンパク質に対応するアミノ酸配列を、SEQ ID NO:8に記載する。
【0154】
配列SEQ ID NO:8は、モノカルボキシレート輸送タンパク質(MCTs)に類似しており、膜貫通ドメインと予想されるものを10個(第10〜29、80〜99、107〜128、140〜160、274〜295、312〜332、339〜360、363〜384、396〜416および433〜451番目のアミノ酸)有している。MCTタンパク質は、モノカルボキシレート(乳酸イオン、ピルビン酸イオン、分枝オキソ酸、ケトン体、β−ヒドロキシ酪酸イオン、酢酸イオンなど)の促進輸送を触媒する(HalestrapおよびPrice(1999)、Biochem.J. 343:281−299)。8種の既知モノカルボキシレート輸送タンパク質に対する、配列SEQ ID NO:8の類似性の比を表4にまとめる。
【0155】
【表4】
【0156】
図5は、SEQ ID NO:8のアミノ酸配列の、Kyte−Doolittle値(KyteおよびDoolittle(1982)、J.Mol.Biol. 157:105−142)を用いた疎水性解析の結果を示す。上記のように、親水性領域は抗原性ペプチドの製造に用いうる。
【0157】
LFG3に対応するmRNA転写物のサイズを測定するため、ノーザンブロットによる分析を行った。種々のヒト組織由来の全RNAを含むノーザンブロット(Human 12−Lane MTN Blot、Clontech社、カリフォルニア州Palo Alto)を用い、46104_at配列を含むESTを、ランダムプライマー法により放射活性ラベルし、ブロットのプローブに用いた。50%ホルムアミド、5×SSPE、0.1% SDS、5×Denhardt溶液および0.2mg/mlニシン精子DNA中、42℃でブロットのハイブリダイゼーションを行い、0.1% SDSを含む0.2×SSCで、室温で洗浄した。ノーザンブロットにより、この遺伝子に対する単一の転写物が示され、そのサイズは約4.2kbであった。これは、LFG3クローン(配列SEQ ID NO:7)のサイズに対応する。
【0158】
実施例7:癌において発現の異なるmRNAの同定−4
マーカーLFG1に替えてマーカーLFG4を用いた以外は、実施例1の方法を繰り返した。
チップデータの解析により、正常組織からの試料に比べ、癌性組織からの試料では、マーカーLFG4の発現が有意に下方調整されていることが示された。LFG4(SEQ ID NO:9)の発現レベルは、Affymetrix GeneChips(登録商標)U95上のチップ配列断片no.62158_atにより測定できる。62158_at配列は、EST AI123532に由来する。種々の悪性腫瘍における62158_atの発現レベルを、対照の正常組織と比較して表5に示す(倍率変化、変化の方向性(上方または下方調整)およびp値も示す)。癌性試料の組における平均の差の幾何平均を、正常試料の組における平均の差の幾何平均と比較して、倍率変化(癌性/正常)を計算した。倍率変化が1.5を超えるものを有意とした(Wodickaら(1997)、Nature Biotech. 15:1359−1367)。各種の組織に関しての、「存在」、「不在」または「境界的」と判定された試料数も、その試料の組の総試料数と共に、表5に示されている。これらのデータは、LFG4の下方調整が癌の診断に役立つものでありうることを示している。
【0159】
【表5】
【0160】
GeneChipの発現結果(チップ配列断片no.62158_atに対する試料の結合により測定)を、Taqman(登録商標)試験(Perkin−Elmer社)を用いる定量的RT−PCR(Q−RT−PCR)により確認した。試験には、Affymetrix断片(62158_at)を含むESTの配列情報ファイルに基づいて設計したPCRプライマー(5´−AAATGTCTGATTACCCCATTTTATCAGT−3´(SEQ ID NO:47)および5´−TAATCCTGAAATGAACAGCTAACA−3´(SEQ ID NO:48))を用いた。各RNA試料(総RNA:10ng)中の、参照遺伝子に対する標的遺伝子の試験を行った。この目的で、対照プライマーとして役立つ、CTBP1(C末端結合タンパク1)遺伝子に特異的なプライマー(5´−GTTTTTCCTAATTTTGGCATGAAC−3´(SEQ ID NO:19)および5´−CGCCCAAGCTTTTCCTTTT−3´(SEQ ID NO:20))を用いた。このアプローチは、CTBP1のサイクル閾値(Ct)に対しての標的mRNAのCtとして測定される相対発現をもたらす。試料パネルには、結腸、肝臓、肺、卵巣、膵臓および胃からの、正常および癌組織の全RNAの対が含まれていた(Ambion, Inc.社、テキサス州Austin)。Q−RT−PCRデータは、正常試料に対しての、癌におけるLFG4の下方調整を立証するものであった。
【0161】
実施例8:発現の異なるmRNA種に対応する全長ヒトcDNA(LFG4)のクローニング
cDNA末端迅速増幅(RACE)により、配列SEQ ID NO:9を有する全長cDNAを取得した。簡単に言えば、62158_at配列を含むESTの配列に基づいて、遺伝子特異的なオリゴマー(5´−TAATGTTAGAGTAACAGCATTTTCCTTCAA−3´(SEQ ID NO:49)および5´−TGCCCCACACTAACTCAGTTCTTGTGATG−3´(SEQ ID NO:50))を設計した。これらのオリゴマーを用いて、ヒト脳より調製したcDNA(Clontech社、カリフォルニア州Palo Alto)のPCT増幅を行った。これらのプライマーを用いて増幅した産物を、Topo Cloning System(Invitrogen社、カリフォルニア州Carlsbad)を用いてPCR4−Topoベクターに組み込み、次いで配列決定を行った。
【0162】
上記で検出された、調節に差のあるmRNAに対応する全長ヒトcDNAのヌクレオチド配列を、SEQ ID NO:9に記載する。cDNAは、4891塩基対を含んでなる。
cDNAヌクレオチド配列SEQ ID NO:9内のオープンリーディングフレーム(第89〜1150番目(停止コドンを含めて第89〜1153番目)のヌクレオチド)は、354アミノ酸からなるタンパク質をコードする。SEQ ID NO:9がコードする、予測されるタンパク質に対応するアミノ酸配列を、SEQ ID NO:10に記載する。
【0163】
配列SEQ ID NO:10は、ラットキロンおよびニワトリニューロトラクチンに類似している(Funatsuら(1999)、J Biol Chem 274:8224−8230;およびMargら(1999)、J Cell Biol 145:865−876)。タンパク質配列解析により、分泌シグナルペプチド(第1〜33番目のアミノ酸)、3つのイムノグロブリンドメイン(第47〜136、145〜208および231〜312番目のアミノ酸)、および6つのN−結合型グリコシル化部位と推定される部位(第73、155、275、286、294および307番目のアミノ酸)が明らかとなった。キロン/ニューロトラクチンは、イムノグロブリンスーパーファミリーのIgLONサブファミリーの要素である。IgLON類は、神経突起伸展を修飾すると考えられ、分子−分子接着や認識において役割を果たしているらしい、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)結合型細胞接着分子のファミリーである(Miyateら(2000)、J Comparative Neurol 424:74−85)。
【0164】
図6は、SEQ ID NO:10のアミノ酸配列の、Kyte−Doolittle値(KyteおよびDoolittle(1982)、J.Mol.Biol. 157:105−142)を用いた疎水性解析の結果を示す。上記のように、親水性領域は抗原性ペプチドの製造に用いうる。このヒドロパシープロット(hydropathy plot)は、C末端に疎水性領域の存在を示している。GPIアンカー型タンパク質の場合、GPIアンカーの付加はC末端疎水性領域の切断後に起こることが知られている。GPIアンカー付加部位と推定される部位が見出された(第324番目のアミノ酸であるGly)。
【0165】
LFG4に対応するmRNA転写物のサイズを測定するため、ノーザンブロットによる分析を行った。種々のヒト組織由来の全RNAを含むノーザンブロット(Human 12−Lane MTN Blot、Clontech社、カリフォルニア州Palo Alto)を用い、62158_at配列を含むESTを、ランダムプライマー法により放射活性ラベルし、ブロットのプローブに用いた。50%ホルムアミド、5×SSPE、0.1% SDS、5×Denhardt溶液および0.2mg/mlニシン精子DNA中、42℃でブロットのハイブリダイゼーションを行い、0.1% SDSを含む0.2×SSCで、室温で洗浄した。ノーザンブロットにより、この遺伝子に対する単一の転写物が示され、そのサイズは約5.4kbであった。これは、LFG4クローン(配列SEQ ID NO:9)のサイズに対応する。
【0166】
実施例9:癌において発現の異なるmRNAの同定−5
マーカーLFG1に替えてマーカーLFG5を用いた以外は、実施例1の方法を繰り返した。
チップデータの解析により、正常組織からの試料に比べ、癌性組織からの試料では、マーカーLFG5の発現が有意に下方調整されていることが示された。LFG5(SEQ ID NO:11)の発現レベルは、Affymetrix GeneChips(登録商標)U95上のチップ配列断片no.46659_atにより測定できる。種々の悪性腫瘍における46659_atの発現レベルを、対照の正常組織と比較して表6に示す(倍率変化、変化の方向性(上方または下方調整)およびp値も示す)。癌性試料の組における平均の差の幾何平均を、正常試料の組における平均の差の幾何平均と比較して、倍率変化(癌性/正常)を計算した。各種の組織に関しての、「存在」、「不在」または「境界的」と判定された試料数も、その試料の組の総試料数と共に、表6に示されている。これらのデータは、LFG5の調整の差が癌の診断に役立つものでありうることを示している。
【0167】
【表6】
【0168】
GeneChipの発現結果(チップ配列断片no.46659_atに対する試料の結合により測定)を、Taqman(登録商標)試験(Perkin−Elmer社)を用いる定量的RT−PCR(Q−RT−PCR)により確認した。試験には、特定Affymetrix断片(46659_at)の配列情報ファイルに基づいて設計したPCRプライマー(5´−AAGGCTTTATCAGGTCTGCATATAGAATC−3´(SEQ ID NO:51)および5´−GCAAAGAACCCTAATGCTATTTATCAGC−3´(SEQ ID NO:52))を用いた。各RNA試料(総RNA:10ng)中の、参照遺伝子に対する標的遺伝子の試験を行った。この目的で、対照プライマーとして役立つ、CTBP1(C末端結合タンパク1)遺伝子に特異的なプライマー(5´−GTTTTTCCTAATTTTGGCATGAAC−3´(SEQ ID NO:19)および5´−CGCCCAAGCTTTTCCTTTT−3´(SEQ ID NO:20))を用いた。このアプローチは、CTBP1のサイクル閾値(Ct)に対しての標的mRNAのCtとして測定される相対発現をもたらす。試料パネルには、腎臓、肺、卵巣および膵臓からの、正常および癌組織の全RNAの対が含まれていた(Ambion, Inc.社、テキサス州Austin)。Q−RT−PCRデータは、正常試料に対しての、癌におけるLFG5の調整の差を立証するものであった。
【0169】
実施例10:発現の異なるmRNA種に対応する全長ヒトcDNA(LFG5)のクローニング
GeneTrapper試験(Life Technologies社、メリーランド州Rockville)を用いるオリゴプリング法により、配列SEQ ID NO:11を有する全長cDNAを取得した。簡単に言えば、46659_at配列を含むESTの配列に基づいて、遺伝子特異的なオリゴマー(5´−GAGAAGACCAGGGAAGAAGCAG−3´(SEQ ID NO:53))を設計した。オリゴマーをビオチンでラベルし、これを用いて、ヒト心臓ライブラリー由来の1本鎖プラスミドDNA(cDNA組み替え体)(NCI CGAP Gas4)(ResGen社、アラバマ州Huntsville)5μgとのハイブリダイゼーションを、Sambrookらの手順に従って行った。ハイブリダイズしたcDNAを、ストレプトアビジンを結合させたビーズにより分離し、加熱により溶出させた。溶出したcDNAを二本鎖プラスミドDNAに変換し、これを用いて大腸菌(DH10B)細胞を形質転換して、最長のcDNAをスクリーニングした。遺伝子特異的なプライマーを用いるPCRにより陽性の選択を確認した後、cDNAをDNA配列決定に付した。
【0170】
上記で検出された、調節に差のあるmRNAに対応する全長ヒトcDNAのヌクレオチド配列を、SEQ ID NO:11に記載する。cDNAは、3098塩基対を含んでなる。
cDNAヌクレオチド配列SEQ ID NO:11内のオープンリーディングフレーム(第223〜1569番目(停止コドンを含めて第223〜1572番目)のヌクレオチド)は、449アミノ酸からなるタンパク質をコードする。SEQ ID NO:11がコードする、予測されるタンパク質に対応するアミノ酸配列を、SEQ ID NO:12に記載する。
【0171】
配列SEQ ID NO:12は、チミジル酸キナーゼドメイン(第257〜438番目のアミノ酸)を含んでいる。チミジル酸キナーゼは、RNAおよびDNA合成のためのヌクレオチド合成において役割を果たし、治療用ヌクレオシドおよびヌクレオチド類似体の薬理学的活性化において必要とされる、ヌクレオチドモノリン酸キナーゼ類(NMPKs)の要素である(Van Rompayら(2000)、Pharmacology & Therapeutics 87:189−198)。配列SEQ ID NO:12は、マクロファージ活性化の際に誘導されるマウスチミジル酸キナーゼ(GenBank Accession No. NM_020557)との相同性を示す(LeeおよびO´Brien(1995)、J Immunol. 154:6094−6102)。これは、連続する全配列に対して63%の同一性を示す。
【0172】
図7は、SEQ ID NO:12のアミノ酸配列の、Kyte−Doolittle値(KyteおよびDoolittle(1982)、J.Mol.Biol. 157:105−142)を用いた疎水性解析の結果を示す。上記のように、親水性領域は抗原性ペプチドの製造に用いうる。
【0173】
LFG5に対応するmRNA転写物のサイズを測定するため、ノーザンブロットによる分析を行った。種々のヒト組織由来の全RNAを含むノーザンブロット(Human MTN Blot、Clontech社、カリフォルニア州Palo Alto)を用い、82941_at配列を含むESTを、ランダムプライマー法により放射活性ラベルし、ブロットのプローブに用いた。50%ホルムアミド、5×SSPE、0.1% SDS、5×Denhardt溶液および0.2mg/mlニシン精子DNA中、42℃でブロットのハイブリダイゼーションを行い、0.1% SDSを含む0.2×SSCで、室温で洗浄した。ノーザンブロットにより、この遺伝子に対する単一の転写物が示され、そのサイズは約3.0kbであった。これは、LFG5クローン(配列SEQ ID NO:11)のサイズに対応する。
【0174】
実施例11:癌において発現の異なるmRNAの同定−6
マーカーLFG1に替えてマーカーLFG6を用いた以外は、実施例1の方法を繰り返した。
チップデータの解析により、正常組織からの試料に比べ、癌性組織からの試料では、マーカーLFG6の発現が有意に上方調整されていることが示された。LFG6(SEQ ID NO:13または15)の発現レベルは、Affymetrix GeneChips(登録商標)U95上のチップ配列断片no.44103_atにより測定できる。44103_at配列は、EST AA865614に由来する。種々の悪性腫瘍における44103_atの発現レベルを、対照の正常組織と比較して表7に示す(倍率変化、変化の方向性(上方または下方調整)およびp値も示す)。癌性試料の組における平均の差の幾何平均を、正常試料の組における平均の差の幾何平均と比較して、倍率変化(癌性/正常)を計算した。倍率変化が1.5を超えるものを有意とした(Wodickaら(1997)、Nature Biotech. 15:1359−1367)。各種の組織に関しての、「存在」、「不在」または「境界的」と判定された試料数も、その試料の組の総試料数と共に、表7に示されている。これらのデータは、LFG6の上方調整が癌の診断に役立つものでありうることを示している。
【0175】
【表7】
【0176】
GeneChipの発現結果(チップ配列断片no.44103_atに対する試料の結合により測定)を、Taqman(登録商標)試験(Perkin−Elmer社)を用いる定量的RT−PCR(Q−RT−PCR)により確認した。試験には、特定Affymetrix断片(44103_at)の配列情報ファイルに基づいて設計したPCRプライマー(5´−GGACGGGGAACTTGGACGC−3´(SEQ ID NO:54)および5´−AAGTGCAGGGCCTCTGGGTG−3´(SEQ ID NO:55))を用いた。各RNA試料(総RNA:10ng)中の、参照遺伝子に対する標的遺伝子の試験を行った。この目的で、対照プライマーとして役立つ、CTBP1(C末端結合タンパク1)遺伝子に特異的なプライマー(5´−GTTTTTCCTAATTTTGGCATGAAC−3´(SEQ ID NO:19)および5´−CGCCCAAGCTTTTCCTTTT−3´(SEQ ID NO:20))を用いた。このアプローチは、CTBP1のサイクル閾値(Ct)に対しての標的mRNAのCtとして測定される相対発現をもたらす。試料パネルには、肝臓および卵巣からの、正常および癌組織の全RNAの対が含まれていた(Ambion, Inc.社、テキサス州Austin)。Q−RT−PCRデータは、正常試料に対しての、癌におけるLFG6の上方調整を立証するものであった。
【0177】
実施例12:発現の異なるmRNA種に対応する全長ヒトcDNA(LFG6)のクローニング
GeneTrapper試験(Life Technologies社、メリーランド州Rockville)を用いるオリゴプリング法により、配列SEQ ID NO:13または15を有する全長cDNAを取得した。簡単に言えば、44103_at配列を含むESTの配列に基づいて、遺伝子特異的なオリゴマー(5´−CGCTGGGTCATCGGACGGT−3´(SEQ ID NO:56))を設計した。オリゴマーをビオチンでラベルし、これを用いて、十分に差があった胃腺癌ライブラリー由来の1本鎖プラスミドDNA(cDNA組み替え体)(NCI CGAP Gas4)(ResGen社、アラバマ州Huntsville)5μgとのハイブリダイゼーションを、Sambrookらの手順に従って行った。ハイブリダイズしたcDNAを、ストレプトアビジンを結合させたビーズにより分離し、加熱により溶出させた。溶出したcDNAを二本鎖プラスミドDNAに変換し、これを用いて大腸菌(DH10B)細胞を形質転換して、最長のcDNAをスクリーニングした。遺伝子特異的なプライマーを用いるPCRにより陽性の選択を確認した後、cDNAをDNA配列決定に付した。
【0178】
上記で検出された、調節に差のあるmRNAに対応する全長ヒトcDNAのヌクレオチド配列を、SEQ ID NO:13および15に記載する。前者では、cDNAは1893塩基対を含んでなる。後者では、cDNAは1597塩基対を含んでなる。
cDNAヌクレオチド配列SEQ ID NO:13内のオープンリーディングフレーム(第418〜1392番目(停止コドンを含めて第418〜1395番目)のヌクレオチド)は、325アミノ酸からなるタンパク質をコードする。SEQ ID NO:13がコードする、予測されるタンパク質に対応するアミノ酸配列を、SEQ ID NO:14に記載する。図9は、SEQ ID NO:14のアミノ酸配列の、Kyte−Doolittle値(KyteおよびDoolittle(1982)、J.Mol.Biol. 157:105−142)を用いた疎水性解析の結果を示す。上記のように、親水性領域は抗原性ペプチドの製造に用いうる。
【0179】
cDNAヌクレオチド配列SEQ ID NO:15内のオープンリーディングフレーム(第271〜1431番目(停止コドンを含めて第271〜1434番目)のヌクレオチド)は、387アミノ酸からなるタンパク質をコードする。SEQ ID NO:15がコードする、予測されるタンパク質に対応するアミノ酸配列を、SEQ ID NO:16に記載する。図10は、SEQ ID NO:16のアミノ酸配列の、Kyte−Doolittle値(KyteおよびDoolittle(1982)、J.Mol.Biol. 157:105−142)を用いた疎水性解析の結果を示す。上記のように、親水性領域は抗原性ペプチドの製造に用いうる。
【0180】
配列SEQ ID NO:14および16は、ユビキチン相同(UBQ)ドメイン(第239〜300番目のアミノ酸)を含んでいる。SEQ ID NO:14および16は、ラットシャーピンタンパク質に類似している(Limら(2001)、Mol Cell Neurosci 17:385−397)。シャーピンは、特殊化した細胞結合における、細胞骨格複合体の構成や細胞内シグナル伝達において機能するシャンクタンパク質の、アンキリンリピートと直接に相互作用する(ShengおよびKim(2000)、J Cell Sci 113:1851−1856)。
【0181】
LFG6に対応するmRNA転写物のサイズを測定するため、ノーザンブロットによる分析を行った。種々のヒト組織由来の全RNAを含むノーザンブロット(Human 12−Lane MTN Blot、Clontech社、カリフォルニア州Palo Alto)を用い、44103_at配列を含むESTを、ランダムプライマー法により放射活性ラベルし、ブロットのプローブに用いた。50%ホルムアミド、5×SSPE、0.1% SDS、5×Denhardt溶液および0.2mg/mlニシン精子DNA中、42℃でブロットのハイブリダイゼーションを行い、0.1% SDSを含む0.2×SSCで、室温で洗浄した。ノーザンブロットにより、この遺伝子に対する3種の転写物が示され、そのサイズは約2.2kb、1.5kbおよび1.2kbであった。これは、LFG6クローン(配列SEQ ID NO:13および15)のサイズに対応する。
【0182】
上記実施例を参照して本発明を詳細に記載したが、本発明の精神から逸脱することなく種々の変更を行うことが可能であると理解される。従って、本発明は特許請求の範囲によってのみ限定される。本出願において引用されている特許、特許出願および出版物はいずれも、その全体が引用により本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】LFG1クローン2種の、相対的な並び位置(alignment positions)を示す図である。
【図2】LFG1−クローンA(SEQ ID NO:2)のオープンリーディングフレームがコードするタンパク質の疎水性プロットである。解析はKyte−Doolittleの方法によって行った。
【図3】LFG1−クローンB(SEQ ID NO:4)のオープンリーディングフレームがコードするタンパク質の疎水性プロットである。解析はKyte−Doolittleの方法によって行った。
【図4】LFG2(SEQ ID NO:6)のオープンリーディングフレームがコードするタンパク質の疎水性プロットである。解析はKyte−Doolittleの方法によって行った。
【図5】LFG3(SEQ ID NO:8)のオープンリーディングフレームがコードするタンパク質の疎水性プロットである。解析はKyte−Doolittleの方法によって行った。
【図6】LFG4(SEQ ID NO:10)のオープンリーディングフレームがコードするタンパク質の疎水性プロットである。解析はKyte−Doolittleの方法によって行った。
【図7】LFG5(SEQ ID NO:12)のオープンリーディングフレームがコードするタンパク質の疎水性プロットである。解析はKyte−Doolittleの方法によって行った。
【図8】LFG6クローン2種の、相対的な並び位置を示す図である。
【図9】LFG6−#20(SEQ ID NO:14)のオープンリーディングフレームがコードするタンパク質の疎水性プロットである。解析はKyte−Doolittleの方法によって行った。
【図10】LFG6−#46(SEQ ID NO:16)のオープンリーディングフレームがコードするタンパク質の疎水性プロットである。解析はKyte−Doolittleの方法によって行った。
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌患者から得たヒト組織における遺伝子発現の変化に関する。具体的には、本発明は、乳房、結腸、食道、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、卵巣、膵臓、前立腺、直腸および/または胃の癌組織における発現が、対応する正常組織における発現に比べて異なるヒト遺伝子に関する。
【背景技術】
【0002】
米国においては、新たに癌と診断される例が100万例を超え、約50万人が癌で死亡している。癌の原因は数多く、また遺伝的体質、環境の影響、感染性の行為者(infectious agents)および加齢を始めとして、多岐にわたっている。これらが制御経路とその下流の奏功器経路を広範に脱線させて、正常細胞を癌性のものにトランスフォームさせる。細胞生理におけるいくつかの必須の改変(alteration)が、集団的に悪性の増殖、即ち増殖シグナルの自給、増殖抑制シグナルに対する非感受性、プログラムされた細胞死の回避、無限複製能、持続した血管形成および組織の浸潤・転移を指令する(HanahanおよびWeinberg、(2000)Cell 100:57−70)。
【0003】
今日までに、研究者たちは、癌発症の土台となると考えられる多くの遺伝子上の改変を同定することができた。これらの遺伝子上の改変には、癌遺伝子の増幅、および癌抑制遺伝子の欠損をもたらす変異が含まれる。癌遺伝子は初め、ウィルスが媒介し、その標的細胞にトランスフォーメーションを起こさせる遺伝子として同定された。主要なクラスのウィルス性癌遺伝子は、正常な細胞機能に関連する細胞性の対応物(counterparts)を有する。その細胞性の遺伝子は癌原遺伝子と呼ばれ、ある場合には、細胞内におけるその変異や以上が、癌形成に関連する。癌遺伝子の発生は、細胞性の癌原遺伝子が不適切に活性化される機能の獲得を示している。これには、タンパク質における変異性の変化、構成的活性化、過剰発現または発現の適時停止失敗が含まれうる。約100種の癌遺伝子が同定されている。癌遺伝子の例にはras、fos、myc、ablおよびmybが含まれるが、これらに限定されない(Ponder(2001)、Nature 411:336−341)。癌抑制遺伝子は、その野生型対立遺伝子(alleles)において、異常な細胞増殖を抑制するタンパク質を発現する。癌抑制タンパク質をコードする遺伝子が変異または消滅すると、結果として生じる変異タンパク質または癌抑制タンパク質発現の完全な欠損により、細胞増殖を正しく制御することができず、異常な細胞増殖が起こりうる(特に、細胞制御機構に対する損傷が既に存在していれば)。よく研究されているヒトの癌および癌細胞株には、癌抑制遺伝子が欠損していたり、機能を失っているものが多い。癌抑制遺伝子の例としては網膜芽細胞腫感受性遺伝子(またはRB遺伝子)、p53遺伝子、結腸癌消失(the deletion in colon carcinoma)(DCC)遺伝子および神経線維腫症1型(NF−1)癌抑制遺伝子(Weinberg(1991)、Science 254:1138−1146)が挙げられるが、これらに限定されない。癌抑制遺伝子の機能欠失または不活性化は、相当数のヒトの癌のイニシエーションおよび/または進行において、中心的な役割を果たしている可能性がある。
【0004】
ゲノム全体の発現プロファイルを利用して、癌の分類、薬物標的の同定、診断マーカーの同定および/または化学療法による治療結果の更なる洞察を行うと、種々の癌を治療するためのより有効な戦略の設計を容易にすることができる。癌のサブタイプを同定するのに遺伝子の発現パターンを用いた初期的な研究はむしろ、興味をそそるような結果をもたらしている(Perouら(1999)、Proc Natl Acad Sci USA 96:9212−9217;Golubら(1999)、Science 286:531−537;Alizadehら(2000)、Nature 403:503−511;Alonら(1999)、Proc Natl Acad Sci USA 96:6745−6750;Bittnerら(2000)、Nature 406:536−540;およびPerouら(2000)、Nature 406:747−752を参照)。遺伝子発現のプロファイリングによるB細胞リンパ腫の分子的分類は、臨床的に区別されるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫のサブグループを明らかにした(前記Alizadehらの論文を参照)。乳癌においては、限られた数の遺伝子(8,102遺伝子)を用いた研究により、癌が遺伝子発現プロファイルに基づくサブタイプに分類されており、この研究によって、乳癌に関連する分子表現型の多様性が示されている(前記Perouらの論文を参照)。更に、発現プロファイリングにより、研究者は、何千もの遺伝子に関し、組織特異的な発現レベルをマッピングすることができるようになった(Alonら(1999)、Proc Natl Acad Sci USA 96:6745−6750;Iyerら(1999)、Science 283:83−87;Khanら(1998)、Cancer Res 58:5009−5013;Leeら(1999)、Science 285:1390−1393;Wangら(1999)、Gene 229:101−108;およびWhitneyら(1999)、Ann Neurol 46:425−428)。これらの研究により、発現プロファイルは、癌などのヒトの疾患の診断における改善をもたらすために、また改良された治療戦略の開発に利用しうることが示されてはいるが、更なる研究が必要である。
【0005】
【特許文献1】国際出願公開公報第WO 95/11755号
【特許文献2】米国特許第4,908,773号
【特許文献3】米国特許第5,884,230号
【特許文献4】米国特許第5,873,052号
【特許文献5】米国特許第5,331,573号
【特許文献6】米国特許第5,888,738号
【特許文献7】米国特許第5,399,346号
【特許文献8】米国特許第4,736,866号
【特許文献9】米国特許第5,602,307号
【特許文献10】米国特許第5,728,915号
【特許文献11】米国特許第5,731,490号
【特許文献12】米国特許第5,723,719号
【特許文献13】米国特許第5,731,489号
【特許文献14】米国特許第5,720,936号
【特許文献15】米国特許第5,489,743号
【特許文献16】米国特許第5,143,854号
【特許文献17】国際出願公開公報第WO 90/15070号
【特許文献18】国際出願公開公報第WO 92/10092号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
癌は、多種類の組織と複数の病因論的要素に由来するものであるがゆえに多様且つ不均一ではあるが、この根源的な変わりやすさは、あらゆる癌の発症においてその集中(convergence)が必須である、比較的少数の臨界的な事象にかかっている(lies)ことが示唆されている(EvanおよびVousden(2001)、Nature 411:342−348)。従って、癌の発症・増殖に関連する臨界的な分子マーカーを同定するため、数多くの様々な癌における、広範な遺伝子発現レベルの変化を包括的な検討する必要がある。当該技術において、癌のより正確な診断を可能にする物質および方法に対する必要性が依然として存在する。加えて、当該技術において、この疾患を効果的に治療しうる治療方法およびそのための薬物を同定する方法に対する必要性が依然として存在する。本発明は、これらおよびその他の必要性に応じたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、癌組織における発現が、正常組織に比べて異なる新規な遺伝子(以降、各々LFG1、LFG2、LFG3、LFG4、LFG5およびLFG6と称する)に基づくものである。本発明は、SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13または15の配列を含んでなる単離された核酸分子、およびその相補体を含む。
本発明は更に、1つ以上の発現制御要素と機能しうるように結合されている核酸分子(前記核酸分子を含んでなるベクターを含む)を含む。本発明は更に、本発明の核酸分子を含むよう形質転換された宿主細胞、および本発明の核酸分子により形質転換された宿主細胞を、前記タンパク質が発現される条件下で培養する工程を含むことを特徴とするタンパク質の製造方法を含む。
【0008】
本発明は更に、
SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16のアミノ酸配列を含んでなる単離されたポリペプチド;
配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16の、少なくとも10個のアミノ酸よりなる断片を含んでなる単離されたポリペプチド;
配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16の、保存的な(conservative)アミノ酸置換体を含んでなる単離されたポリペプチド;および
配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16の、自然発生アミノ酸配列変異体を含んでなる単離されたポリペプチド
よりなる群から選択される単離されたポリペプチドを提供する。本発明のポリペプチドはまた、配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16に対して、アミノ酸配列同一性が約50%以上、約60%以上、約70%以上または約75%以上(好ましくは、配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16に対して、アミノ酸配列同一性が約80%以上、より好ましくは約90〜95%以上、最も好ましくは約95〜98%以上)であるポリペプチドを含む。
【0009】
本発明は更に、本発明のポリペプチドファミリーの他の要素の同定方法を提供する。具体的には、LFG1、LFG2、LFG3、LFG4、LFG5およびLFG6タンパク質ファミリーの他の要素をコードする核酸分子を同定する方法において、SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13または15の核酸配列をプローブとして用いる、またはPCRプライマーの生成に用いることができる。
本発明は更に、本発明のポリペプチドと特異的に結合する単離された抗体または抗原結合性抗体断片(モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を含む)を提供する。
【0010】
本発明は更に、本発明のタンパク質をコードする核酸分子の発現を調節する薬物の同定方法であって、
前記核酸を発現する細胞を、薬物に暴露させる工程;および
前記薬物が、前記核酸の発現を調節するか否かを決定する工程
を含んでなり、それらによって前記タンパク質をコードする核酸分子の発現を調節する薬物を同定することを特徴とする薬物の同定方法を提供する。
【0011】
本発明は更に、本発明のタンパク質のレベル、または少なくとも1つの活性を調節する薬物の同定方法であって、
前記タンパク質を発現する細胞を、薬物に暴露させる工程;および
前記薬物が、前記タンパク質のレベル、または少なくとも1つの活性を調節するか否かを決定する工程
を含んでなり、それらによって前記タンパク質のレベル、または少なくとも1つの活性を調節する薬物を同定することを特徴とする薬物の同定方法を提供する。
【0012】
本発明は更に、本発明のタンパク質をコードする核酸分子の発現の調節方法であって、前記タンパク質をコードする核酸分子の発現を調節する薬物を、有効量で投与する工程を含むことを特徴とする発現の調節方法を提供する。本発明はまた、本発明のタンパク質の少なくとも1つの活性の調節方法であって、本発明のタンパク質の少なくとも1つの活性を調節する薬物を、有効量で投与する工程を含むことを特徴とする活性の調節方法を提供する。
【0013】
本発明は更に、本発明のタンパク質の結合パートナー(binding partners)の同定方法であって、
前記タンパク質を、結合パートナーの可能性のある物質に暴露させる工程;および
前記物質が、前記タンパク質と結合するか否かを決定する工程
を含んでなり、それらによって前記タンパク質の結合パートナーを同定することを特徴とする結合パートナーの同定方法を提供する。
【0014】
本発明は更に、本発明のタンパク質の結合パートナーとの会合を阻害または調節しうる薬物の同定方法を提供する。具体的には、本発明のタンパク質(またはその断片)および結合パートナーを試験薬物に接触させ、次いで前記試験薬物が、前記タンパク質と結合パートナーの結合を阻害または減少するか否かを決定することにより、ある薬物を、本発明のタンパク質の結合パートナーとの会合を阻害、減少または調節する能力に関して試験することができる。
【0015】
本発明は更に、本発明のタンパク質と、その1種以上の結合パートナーの会合を減少または阻害する方法であって、前記結合パートナーと前記タンパク質の結合を減少または阻害する薬物を、有効量で投与する工程を含むことを特徴とする方法を提供する。この方法では、本発明のタンパク質または結合パートナーと結合する薬物を用いることができる。
本発明の他の態様によれば、本発明のタンパク質を、リガンド、治療薬その他のタイプの化学小分子を提供するための、合理的なドラッグデザインの出発点として用いることができる。或いは、上記スクリーニングアッセイにより同定された小分子その他の化合物は、合理的なドラッグデザインにおける「リード化合物」として役立つ場合がある。
【0016】
本発明は更に、癌の治療方法であって、癌性細胞に対し、プロモーター要素またはエンハンサー要素と機能しうるように結合した、本発明の核酸分子を含んでなる遺伝子構築物を挿入して、前記核酸分子の発現が、前記癌を抑制するようにする工程を含む治療方法に関する。
本発明は更に、本発明の核酸分子を含むよう修飾されたヒトではないトランスジェニック動物、または、変異核酸分子を含むよう修飾されて、コードされた本発明のポリペプチドの発現が妨げられているヒトではないトランスジェニック動物を含む。
【0017】
本発明はまた、SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13または15の配列を全部または一部含んでなる遺伝子の全体または一部が、ゲノムからノックアウトされまたは欠失しているヒトではないトランスジェニック動物を含む。
本発明は更に、癌の診断方法であって、被験者から組織、血液、尿その他の試料を取得し、次いで本発明の核酸分子または本発明のポリペプチドの発現レベルを測定する工程を含む診断方法を提供する。
【0018】
本発明は更に、希釈剤、並びに
SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16のアミノ酸配列を含んでなる単離されたポリペプチド;
配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16の、少なくとも10個のアミノ酸よりなる断片を含んでなる単離されたポリペプチド;
配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16の、保存的なアミノ酸置換体を含んでなる単離されたポリペプチド;
配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16の、自然発生アミノ酸配列変異体;および
配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16に対して、アミノ酸配列同一性が約50%以上、約60%以上、約70%以上または約75%以上(好ましくは、配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16に対して、アミノ酸配列同一性が約80%以上、より好ましくは約90〜95%以上、最も好ましくは約95〜98%以上)である単離されたポリペプチド
よりなる群から選択されるポリペプチドまたはタンパク質
を含んでなる組成物を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
I.一般的記載
本発明は、部分的には、ヒト癌性組織における発現が、ヒト正常組織における発現に比べて異なる新規な遺伝子ファミリーの同定に基づくものである。これらの遺伝子ファミリーは、配列SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13および15のヒトcDNAに対応する。
本発明の遺伝子およびタンパク質は、癌を検出したり、試料中の癌腫を正常組織から区別するための診断薬またはマーカーとして利用しうる。それらはまた、遺伝子発現または活性を調節する薬物の標的としても役立つ。例えば、癌の増殖に関連する生物学的過程(癌の過形成的(hyperplastic)過程を含む)を調節する薬物を同定しうる。
【0020】
II.特定の実施形態
A.癌関連タンパク質
本発明は、単離されたタンパク質、タンパク質の対立遺伝子変異体(allelic variants)およびタンパク質の保存的なアミノ酸置換体を提供する。本明細書において、「タンパク質」または「ポリペプチド」とは、一つには、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16に記載のヒトアミノ酸配列を有するタンパク質をいう。これらの用語はまた、自然発生対立遺伝子変異体、および具体的に上記されたアミノ酸配列と若干異なるアミノ酸配列を有するタンパク質をいう。対立遺伝子変異体は、上記のアミノ酸配列と若干異なるアミノ酸配列を有するが、これらのタンパク質が関連するものと同じ、または類似の生物学的機能を依然として有している。
【0021】
本明細書において、ヒトアミノ酸配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16に関連するタンパク質のファミリーとは、ヒトに加え、生物から単離されたタンパク質をいう。これらのタンパク質に関連するタンパク質のファミリーの他の要素を同定・単離するのに用いられる方法については後述する。
本発明のタンパク質は、好ましくは単離された形態にある。本明細書においては、物理的、機械的または化学的方法を用いて、タンパク質に通常付随する細胞構成分からタンパク質を分離しているときに、タンパク質が単離されているという。当業者は、単離されたタンパク質を、通常の精製方法を用いて容易に得ることができる。
【0022】
本発明のタンパク質は更に、配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16の挿入、欠失または保存的なアミノ酸置換変異を含む。本明細書において、「保存的な変異」とは、タンパク質の生物学的機能に悪影響を及ぼさないアミノ酸配列の改変をいう。改変された配列がタンパク質の関連する生物学的機能を妨げ、または破壊するとき、置換、挿入または欠失がタンパク質に悪影響を及ぼすという。例えば、ある場合においては、タンパク質の総電荷、構造または疎水性/親水性を、生物活性に悪影響を及ぼすことなく改変しうる。従って、アミノ酸配列を改変し、タンパク質の生物活性に悪影響を及ぼすことなく、ペプチドを例えばより親水性または疎水性にすることができる。
【0023】
通常、対立遺伝子変異体、保存的な置換変異体およびタンパク質ファミリーの要素は、配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16に対して、アミノ酸配列同一性が約50%以上、約60%以上、約70%以上または約75%以上(より好ましくは、配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16に対して、アミノ酸配列同一性が約80%以上、更に好ましくは約90〜95%以上、最も好ましくは約95〜98%以上)であるアミノ酸配列を有する。本明細書において、そのような配列における「同一性」または「相同性(homology)」とは、候補配列(必要に応じて、相同性の比率が最大となるよう、配列を一直線にし、切れ目を入れた後のもので、保存的な置換は一切、配列同一性の一部とは見なさない)における、配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16と同一のアミノ酸残基の比率と定義される(同等のパラメータに関し、セクションBを参照されたい)。融合タンパク質や、N末端、C末端または内部におけるペプチド配列の延長、欠失または挿入は、相同性に影響すると解釈しない。
【0024】
従って、本発明のタンパク質は、
配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16に開示されるアミノ酸配列を有する分子;
これらのタンパク質の約3、4、5、6、10、15、20、25、30、35またはそれ以上のアミノ酸残基からなる連続した配列を有するその断片;
開示されるコーディング配列のN末端、C末端または内部に、1つ以上のアミノ酸残基が挿入されたアミノ酸配列変異体;および
1つ以上の残基が置換された、開示される配列のアミノ酸配列変異体、または上記で定義されたその断片
を含む。そのような断片(ペプチドまたはポリペプチドとも称する)には、抗原性領域、タンパク質の機能性領域(既知タンパク質ドメインに対応するアミノ酸配列の領域として同定される)や、明白な親水性を有する領域が含まれていてもよい。それらの領域はいずれも、一般に入手可能なタンパク質配列解析ソフトウェア(例えば、MacVector(Oxford Molecular社製))を用いて、容易に同定しうる。
【0025】
予想される変異には更に、所定の突然変異(例えば、相同的組替え、部位特異的またはPCR突然変異誘発、および他の動物種(ウサギ、マウス、ラット、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマおよびヒト以外の霊長目の種が含まれるが、これらに限定されない)によるもの)を含むものや、タンパク質ファミリーにおける対立遺伝子変異その他の自然発生変異、タンパク質が、置換、化学的、酵素的その他の適切な手段により、天然アミノ酸以外の部位(例えば、酵素や放射性同位元素などの検出可能な部位)による共有結合性の修飾を受けた誘導体が含まれる。
【0026】
本発明は更に、希釈剤および本発明のタンパク質またはポリペプチドを含んでなる組成物を提供する。適切な希釈剤は水性または非水性の溶媒、またはそれらの組み合わせであってよく、また、タンパク質またはポリペプチドの安定性、溶解性、活性および/または保存に寄与する付加的な成分、例えば水溶性の塩やグリセロールを含んでいてもよい。
【0027】
以下に記載するように、タンパク質ファミリーの要素は、
(1)タンパク質のレベル、または少なくとも1つの活性を調節する薬物の同定に;
(2)タンパク質の結合パートナーの同定に;
(3)モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を生じる抗原として;
(4)治療薬または治療標的として;また
(5)癌の診断薬またはマーカーとして
利用することができる。
【0028】
B.核酸分子
本発明は更に、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16の配列を有するタンパク質、および本明細書に記載のその関連タンパク質をコードする、好ましくは単離された形態の核酸分子を提供する。本明細書において、「核酸」とは、
・上記に定義したタンパク質またはペプチドをコードする;
・そのようなペプチドをコードする核酸配列に相補的な;
・配列SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13または15の核酸と、適切な厳密な(stringent)条件下でハイブリダイズし、安定な結合を維持する;
・SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16のペプチド配列と、約50%以上、約60%以上、約70%以上または約75%以上(より好ましくは約80%以上、更に好ましくは約90〜95%以上、最も好ましくは約95〜98%以上)を共有するポリペプチドをコードする;または
・配列SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13または15のオープンリーディングフレームに対して、ヌクレオチド配列同一性が約50%以上、約60%以上、約70%以上または約75%以上(より好ましくは約80%以上、更に好ましくは約90〜95%以上、最も好ましくは約95〜98%以上)である
RNAまたはDNAと定義される。
【0029】
本発明は更に、配列SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13または15の相補体と特異的にハイブリダイズする単離された核酸分子、特に、オープンリーディングフレーム全体と特異的にハイブリダイズする分子を含む。配列SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13または15の相補体と特異的にハイブリダイズするそのような分子は、典型的には、厳密なハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする。
【0030】
具体的に予測されるのは、ゲノムDNA,cDNA、mRNA、アンチセンス分子に加え、天然由来でも合成品でもよい、他方の骨格(alternative backbones)に基づく、または他方の塩基(alternative bases)を含む核酸である。しかし、そのようなハイブリダイズする、または相補的な核酸は更に、本発明のタンパク質をコードする核酸、本発明のタンパク質をコードする核酸と適切な厳密な条件下でハイブリダイズする、または本発明のタンパク質をコードする核酸と相補的な核酸を含む、あらゆる従来技術の核酸に対し新規であって容易ではないと定義される。
【0031】
ヌクレオチドまたはアミノ酸配列レベルでの相同性または同一性は、配列類似性探索(sequence similarity searching)に合わせた、blastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastxプログラムに用いられるアルゴリズムを用いるBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)解析によって測定することができる(Altschulら(1997)、Nucleic Acids Res. 25:3389−3402およびKarlinら(1990)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264−2268、これらはいずれも参照により全体が本明細書に組み入れられる)。BLASTプログラムに用いられるアプローチは、まず、クエリー(query)配列とデータベース配列の間の類似セグメントを熟慮(ギャップありまたはなしで)し、次いで、同定された適合箇所全ての統計的有意性を評価し、最後に、それらの適合箇所のうちあらかじめ選択した有意性のしきい値(threshold)を満足するもののみを合計する、というものである。配列データベースの類似性探索における基本的な事項の議論については、Altschulらの文献(Altschulら(1994)、Nat. Genet. 6:119−129)を参照されたい。この文献は参照により全体が本明細書に組み入れられる。ヒストグラム、記述、整列、期待値(即ち、データベース配列に対する適合箇所の報告のための、統計的有意性のしきい値)、カットオフ、行列およびフィルター(低複雑度)の探索パラメータは、デフォルトの設定とする。blastp、blastx、blastn、tblastnおよびtblastxが用いるデフォルトのスコアリング行列(scoring matrix)は、長さが85ヌクレオチドまたはアミノ酸を超えるクエリー配列について推奨される、BLOSUM62行列である(Henikoffら(1992)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915−10919、この文献は参照により全体が本明細書に組み入れられる)。
【0032】
blastnに関しては、N(ミスマッチ残基に対するペナルティースコア)に対するM(適合箇所の残基一組あたりの報酬スコア(reward score))の比によってスコアリング行列を設定する。MとNのデフォルト値は各々5および−4である。blastnの4つのパラメータは、Q=10(ギャップ形成ペナルティー(gap creation penalty))、R=10(ギャップ延長ペナルティー(gap extension penalty))、wink=1(クエリーに沿ったウィンク位置毎の(at every winkth position)ワードヒット(word hits)を生成する)およびgapw=16(ウィンドウ幅(その範囲内でギャップ付きの整列を行う)を設定する)のように調節される。Blastpの同等のパラメータ設定は、Q=9、R=2、wink=1およびgapw=32であった。配列間のBestfit比較(GCG package version 10.0において可能)では、DNAのパラメータであるGAP=50(ギャップ形成ペナルティー)およびLEN=3(ギャップ延長ペナルティー)を用い、タンパク質の比較における同等の設定は、GAP=8およびLEN=2である。
【0033】
「厳密な条件」とは、(1)洗浄に低いイオン強度および高温を用いる条件(例えば、0.015M NaCl/0.0015M クエン酸ナトリウム/0.1% SDS、50℃)、または(2)ハイブリダイゼーション中に変性剤(例えばホルムアミド)を用いる条件(例えば、50%(vol/vol)ホルムアミド(0.1%ウシ血清アルブミンを含む)/0.1%フィコール/0.1%ポリビニルピロリドン/750mM NaClおよび75mM クエン酸ナトリウムを含む50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)、42℃)を言う。他の例は、50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl、0.075M クエン酸ナトリウム)、50mM リン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1% ピロリン酸ナトリウム、5×Denhardt溶液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1% SDSおよび10%硫酸デキストラン中、42℃でハイブリダイゼーションを行い、0.2×SSCおよび0.1% SDS中、42℃で洗浄を行うことである。当業者であれば、厳密度条件を適宜決定・変更し、明瞭かつ検出可能なハイブリダイゼーションシグナルを得ることを容易に行うことができる。好ましい分子は、配列SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13または15の相補体と上記の条件下でハイブリダイズし、機能性または全長タンパク質をコードするものである。ハイブリダイズするより好ましい分子は、配列SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13または15のオープンリーディングフレームの相補鎖と上記の条件下でハイブリダイズするものである。
本明細書においては、核酸分子が他のポリペプチドをコードする混入核酸分子から実質的に分離されているとき、核酸分子が「単離されている」という。
【0034】
本発明は更に、開示される核酸分子の断片を提供する。本明細書において、核酸分子の断片とは、コードしている、またはコードしていない配列の小さな一部をいう。断片のサイズは意図する用途によって決まる。例えば、タンパク質の活性部分をコードするように断片を選択する場合、断片は、タンパク質の機能性領域をコードするに足る大きさである必要がある。例えば、推定される抗原性領域に対応するペプチドをコードする断片を調製する場合もある。断片が核酸プローブまたはPCRプライマーとして用いられるものであるならば、プロービング/プライミング中に偽の陽性が比較的少数となるように断片長を選択する(セクションGにおける考察を参照)。
【0035】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)用のプローブまたは特定プライマーとして、または本発明のタンパク質をコードする遺伝子配列を合成するのに用いられる、本発明の核酸分子の断片(即ち合成オリゴヌクレオチド)は、化学的手法(例えば、ホスホルアミダイト法(Matteucciら(1981)、J. Am. Chem. Soc. 103:3185−3191))、または自動化合成法により容易に合成することができる。加えて、より大きなDNAセグメントは、公知の方法、例えば、遺伝子の種々のモジュラーセグメント(modular segments)を定義する一群のオリゴヌクレオチドを合成し、次いでそのオリゴヌクレオチドを結合し、完全な修飾遺伝子を構築することにより容易に調製することができる。
【0036】
本発明の核酸分子を更に修飾して、診断、プローブを目的とする検出可能なラベルを含むようにしてもよい。そのような種々のラベルが当該技術分野において知られており、本明細書に記載のコード分子に対して容易に用いることができる。適切なラベルには、ビオチン、放射能ラベルまたは蛍光ラベルされたヌクレオチドなどが含まれるが、それらに限定されない。そのような何らかのラベルを用いて、本発明の核酸分子のラベル化変異体を得ることは、当業者であれば容易に行うことができる。
【0037】
C.他の関連核酸分子の単離
上記のように、SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13または15の配列を有する核酸分子の同定・キャラクタリゼーションは、当業者に対し、本明細書に記載の配列のみならず、タンパク質ファミリーの他の要素をコードする核酸分子の単離を可能にする。更に、ここに開示される核酸分子は、当業者に対し、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16の配列を有するタンパク質のみならず、タンパク質ファミリーの他の要素をコードする核酸分子の単離を可能にする。
【0038】
例えば、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16のアミノ酸配列を用いて、適切な細胞から調製した発現ライブラリーをスクリーニングするための抗体プローブを生成することは、当業者であれば容易に行うことができる。典型的には、精製タンパク質(下記のような)で免疫した哺乳類(例えばウサギ)からのポリクローナル抗血清や、モノクローナル抗体を用いて、哺乳類cDNAまたはゲノム発現ライブラリー(例えばラムダgtllライブラリー)をプローブし、タンパク質ファミリーの他の要素についての適切なコード配列を得ることができる。クローン化cDNA配列は、融合タンパク質として、それ自身の制御配列を用いて直接に、または、酵素の発現に用いる特定の宿主に対して適切な制御配列を用いる構築物によって発現させることができる。
【0039】
或いは、本明細書に記載のコード配列の一部を合成してプローブとして用い、何らかの哺乳類生物から、タンパク質ファミリーの要素をコードするDNAを回収することができる。約18〜20ヌクレオチド(一続きの(stretch)約6〜7アミノ酸をコードする)を含むオリゴマーを調製し、ゲノムDNAまたはcDNAライブラリーをスクリーニングするのに用いて、厳密な条件下、または過度なレベルの偽の陽性を排除するのに十分な厳密度のある条件下でのハイブリダイゼーションを得る
【0040】
更に、PCRに用いるオリゴヌクレオチドプライマー対を調製して、コーディング核酸分子を選択的にクローニングすることができる。そのようなPCRプライマーを用いるための、PCR変性/アニール/延長サイクルは、当該分野において公知であり、他のコーディング核酸分子の単離にも容易に適合させることができる。
【0041】
既存のゲノムその他の配列情報中において、何らかの利用可能なコンピューター手法(PSI−BLAST(Altschulら(1997)、Nucl. Acids Res. 25:3389−3402)、PHI−BLAST(Zhangら(1998)、Nucl. Acids Res. 26:3986−3990)、3D−PSSM(Kellyら(2000)、J. Mol. Biol. 299:499−520)その他のコンピューター解析法(Shiら(1999)、Biochem.Biophys.Res.Commun. 262:132−138、およびMatsunamiら(2000)、Nature 404:601−604)が含まれるが、それらに限定されない)を用いて、タンパク質ファミリーの他の要素をコードする核酸分子が同定されることもありうる。
【0042】
D.核酸分子を含むrDNA
本発明は更に、コーディング配列を含む組み換えDNA分子(rDNA)を提供する。本明細書において「rDNA分子」とは、in situで分子操作(molecular manipulation)に付されたDNA分子をいう。rDNA分子を生成する方法は、当該分野において公知であり、例えばSambrookら、Molecular Cloning− A Laboratory Manual, Third Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 2001を参照されたい。好ましいrDNA分子においては、コーディングDNA配列が発現制御配列および/またはベクター配列と機能しうるように結合されている。
【0043】
本発明のタンパク質ファミリーコーディング配列が機能しうるように結合されるベクター配列および/または発現制御配列の選択は、当該分野において知られているように、所望の機能特性(例えば、タンパク質の発現や、形質転換すべき宿主細胞)に直接的に依存する。本発明が予期する(contemplated)ベクターは、rDNA分子に含まれる構造遺伝子の、少なくとも複製および宿主染色体への挿入、好ましくは更に発現を指揮することができる。
機能しうるように結合したタンパク質コーディング配列の発現を調節するために用いられる発現制御要素は、当該分野において公知であり、これには誘導可能(inducible)プロモーター、構成(constitutive)プロモーター、分泌シグナルその他の制御要素が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、誘導可能プロモーターは容易に制御されるもの、例えば宿主の培地中の栄養分に敏感に反応するものである。
【0044】
一実施形態において、コーディング核酸分子を含むベクターは、原核細胞性レプリコン、即ち、組み換えDNA分子により形質転換された原核宿主細胞(例えば細菌宿主細胞)における、染色体外でのその組み換えDNA分子の自主的な複製および保全を指揮する能力を有するDNA配列を含む。そのようなレプリコンは、当該分野において公知である。更に、原核細胞性レプリコンを含むベクターは、その発現が検出可能なマーカー、例えば薬剤耐性をもたらす(confers)遺伝子をも含んでいてよい。典型的な細菌薬剤耐性遺伝子は、アンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコールまたはテトラサイクリンに対する耐性をもたらすものである。
【0045】
原核細胞性レプリコンを含むベクターは更に、細菌宿主細胞(例えば大腸菌)におけるコーディング配列の発現(転写および翻訳)を指揮する能力を有する原核細胞性またはバクテリオファージプロモーターを含んでいてもよい。プロモーターは、RNAポリメラーゼの結合および翻訳の発生を許可するDNA配列により形成された発現制御要素である。細菌宿主に適合するプロモーター配列は、典型的には、本発明のDNAセグメントの挿入に便利な制限部位を含むプラスミドベクター中に提供される。そのようなベクターの典型的なものは、BioRad Laboratories社(カリフォルニア州リッチモンド)より入手可能なpUC8、pUC9、pBR322およびpBR329、並びにPharmacia社(ニュージャージー州ピスキャタウェイ(Piscataway))より入手可能なpPLおよびpKK223である。
【0046】
真核細胞に適合する、好ましくは脊椎動物細胞に適合する発現ベクターは、コーディング配列を含むrDNA分子の形成にも利用できる。真核細胞発現ベクター(ウィルスベクターを含む)は、当該分野において公知であり、いくつかの商業的供給源より入手可能である。典型的には、そのようなベクターは、所望のDNAセグメントの挿入に便利な制限部位を含んで提供される。そのようなベクターの典型的なものは、pSVLおよびpKSV−10(Pharmacia社)、pBPV−1/pML2d(International Biotechnologies, Inc.社)、本明細書に記載のベクターpCDM8その他同様の真核細胞発現ベクターである。必要であれば、組織特異的プロモーターを含むようベクターを修飾してもよい。
【0047】
本発明の組み換えDNA分子の構築に用いる真核細胞発現ベクターは更に、真核細胞内で有効な選択マーカー、好ましくは薬剤耐性選択マーカーを含んでいてもよい。好ましい薬剤耐性マーカーは、その発現がネオマイシン耐性をもたらす遺伝子である、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(neo)遺伝子である(Southernら(1982)、J. Mol. Anal. Genet. 1:327−341)。或いは、選択マーカーは別個のプラスミド上に存在していてもよい。そして、2種のベクターを共トランスフェクション(co−transfection)により宿主細胞に導入し、選択マーカーに対して適切な薬剤中で培養することにより選択する。
【0048】
E.外因性の(Exogenously Supplied)コーディング核酸分子を含む宿主細胞
本発明は更に、本発明のタンパク質をコードする核酸分子で形質転換された宿主細胞を提供する。宿主細胞は、原核細胞、真核細胞のいずれでもよい。本発明のタンパク質の発現に有用な真核細胞は、細胞株が細胞培養法に適合性を有し、また発現ベクターの増殖および遺伝子産物の発現にも適合性を有する限り、特に限定されない。好ましい真核宿主細胞には、酵母、昆虫および哺乳動物細胞(好ましくは脊椎動物細胞、例えばマウス、ラット、サルまたはヒト細胞株から得られるもの)が含まれるが、これらに限定されない。好ましい真核宿主細胞には、チャイニーズハムスター卵巣細胞(ATCCよりCCL61として入手可能なもの)、NIHスイスマウス胚細胞(NIH/3T3)(ATCCよりCRL1658として入手可能なもの)、新生児ハムスター腎細胞(BHK)および同様の真核細胞組織培養細胞株が含まれる。
本発明のタンパク質をコードするrDNA分子の発現は、あらゆる原核細胞性宿主を用いて行うことができる。好ましい原核細胞性宿主は大腸菌である。
【0049】
本発明のrDNA分子による適切な宿主細胞の形質転換は、公知の方法(典型的には、使用するベクターと使用する宿主系に依存する)により達成することができる。原核細胞性宿主細胞の形質転換に関しては、典型的には電気穿孔法(electroporation)および塩処理法を用いる(例えば、Cohenら(1972)、Proc.Natl.Acad.Sci. USA 69:2110および上記Sambrookらを参照)。rDNAを含むベクターによる脊椎動物細胞の形質転換に関しては、典型的には電気穿孔法や、カチオン性脂質または塩処理法を用いる(例えば、Grahamら(1973)、Virol. 52:456;およびWiglerら(1979)、Proc.Natl.Acad.Sci. USA 76:1373−1376を参照)。
【0050】
成功裡に形質転換された(即ち、本発明のrDNA分子を含む)細胞の同定は、選択マーカーに関する選択を初めとする公知の方法により可能である。例えば、本発明のrDNAの導入により生じた細胞をクローン化して、単一コロニーを形成することができる。
これらのコロニーから得た細胞を培養し、溶解して、Southern(1975)、J.Mol.Biol. 98:503やBerentら(1985)、Biotech. 3:208に記載の方法などの方法によりそのDNA含量を試験し、rDNAの存在を調べたり、細胞から生成したタンパク質を免疫学的手法により試験することができる。
【0051】
F.rDNA分子を用いる組み替えタンパク質の製造
本発明は更に、本明細書に記載の核酸分子を用いて、本発明のタンパク質を製造する方法を提供する。一般的に言って、組み替え型タンパク質の製造には、下記の工程が含まれる。
まず、本発明のタンパク質をコードする核酸分子、例えば、SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13または15の配列、或いは、
配列SEQ ID NO:1における第390〜4883番目または第390〜4880番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:3における第12〜4907番目または第12〜4904番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:5における第424〜1911番目または第424〜1908番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:7における第405〜1838番目または第405〜1835番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:9における第89〜1153番目または第89〜1150番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:11における第223〜1572番目または第223〜1569番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:13における第418〜1395番目または第418〜1392番目のヌクレオチド;或いは
配列SEQ ID NO:15における第271〜1434番目または第271〜1431番目のヌクレオチド
を含んでなる(或いは、本質的にそれらからなる、またはそれらからなる)核酸分子を得る。コーディング配列がイントロンにより途切れていなければ、これらはオープンリーディングフレームであるから、何らかの宿主における発現に直接に適切である。
【0052】
次いで、好ましくは、核酸分子を、上記のような適切な制御配列と結合させて、タンパク質オープンリーディングフレームを含む発現ユニットを形成する。発現ユニットを用いて適切な宿主を形質転換させ、形質転換させた宿主を、組み替えタンパク質の産生を可能にする条件下で培養する。場合により、組み替えタンパク質を培地または細胞から単離するが、ある種の不純物が許容しうるものであるような場合、タンパク質の回収・精製が不要な場合もある。
【0053】
前記の工程は、種々の方法で実施することができる。例えば、所望のコーディング配列をゲノム断片から取得し、適切な宿主において直接用いてもよい。種々の宿主において機能しうる発現ベクターの構築は、上記のような適切なレプリコンおよび制御配列を用いて達成される。制御配列、発現ベクターおよび形質転換方法は、遺伝子の発現に用いる宿主細胞の種類に依存し、過去に詳細に検討されている。コーディング配列の末尾に適切な制限部位を追加し(通常ではそれを利用できない場合)、これらのベクターを挿入するために切断しうる(excisable)遺伝子を提供してもよい。当該分野において使用が知られる何らかの宿主/発現系を、本発明の核酸分子に適合させて、組み替えタンパク質を製造することは、当業者であれば容易に行うことができる。
【0054】
G.癌に関連する遺伝子をコードする核酸の発現を調節する薬物の同定方法
本発明の他の実施形態は、本発明のタンパク質(例えば、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16のアミノ酸配列を有するタンパク質)をコードする核酸の発現を調節する薬物の同定方法を提供する。そのような試験には、本発明の核酸の発現レベル変化を監視するための、利用可能なあらゆる手段を利用してよい。本明細書においては、ある薬物が、細胞内における核酸の発現を上方または下方調整しうる場合、その薬物は本発明の核酸の発現を調節するという。
【0055】
1つの試験様式では、
配列SEQ ID NO:1における第390〜4883番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:3における第12〜4907番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:5における第424〜1911番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:7における第405〜1838番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:9における第89〜1153番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:11における第223〜1572番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:13における第418〜1395番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:15における第271〜1434番目のヌクレオチド;および/または
5‘および/または3’制御要素によって定義されるオープンリーディングフレーム内からのヌクレオチドと、試験可能な何らかの融合パートナー(fusion partner)の間でのレポーター遺伝子融合体(reporter gene fusions)を含む細胞株を調製してよい。試験可能な融合パートナーは数多く知られており、容易に入手可能である。これには、ホタルルシフェラーゼ遺伝子およびクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子(Alamら(1990)、Anal.Biochem. 188:245−254)が含まれる。次いで、レポーター遺伝子融合体を含む細胞株を、適切な条件下、試験すべき薬物に適切な時間だけ曝露する。薬物に曝露した試料とコントロール試料の間で、レポーター遺伝子の発現に差があることで、本発明の核酸の発現を調節する薬物が同定される。
【0056】
更なる試験様式を用いて、薬物の、本発明のタンパク質(例えば、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16のアミノ酸配列を有するタンパク質)をコードする核酸の発現を調節する能力を監視してもよい。例えば、上記したように、本発明の核酸に対するハイブリダイゼーションにより、mRNAの発現を直接的に監視してもよい。適切な条件下、細胞株を試験すべき薬物に適切な時間だけ曝露し、標準的な手順(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning − A Laboratory Manual, Third Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 2001に開示されているもの)により、全RNAまたはmRNAを単離する。
【0057】
好ましい細胞は、ヒト由来の細胞、例えば、癌患者から得た生検組織または培養細胞である。ATCC乳管癌(breast ductal carcinoma)細胞株(カタログ番号CRL−2320、CRL−2338およびCRL−7345)、ATCC回腸結腸腺癌(colorectal adenocarcinoma)細胞株(カタログ番号CCL−222、CCL−224、CCL−225、CCL−234、CRL−7159およびCRL−7184)、ATCC腎細胞腫(kidney clear cell carcinoma)細胞株(カタログ番号HTB−46およびHTB−47)、ATCC腎細胞腺癌(renal cell adenocarcinoma)細胞株(カタログ番号CRL−1611、CRL−1932およびCRL−1933)、ATCC肝細胞癌細胞株(カタログ番号CRL−2233、CRL−2234およびHB−8065)、ATCC肺腺癌(lung adenocarcinoma)細胞株(カタログ番号CRL−5944、CRL−7380およびCRL−5907)、ATCCリンパ腫細胞株(カタログ番号CRL−7936、CRL−7264およびCRL−7507)、ATCC卵巣腺癌(ovary adenocarcinoma)細胞株(カタログ番号HTB−161、HTB−75およびHTB−76)、ATCC膵臓腺癌(pancreas adenocarcinoma)細胞株(カタログ番号CRL−1687、CRL−2119およびHTP−79)、前立腺癌細胞株(カタログ番号CRL−1435、CRL−2422およびCRL−2220)、ATCC胃腺癌(gastric adenocarcinoma)細胞株(カタログ番号CRL−1739、CRL−1863およびCRL−1864)等の細胞株を利用してもよい。或いは、入手可能な他の細胞または細胞株を利用してもよい。
【0058】
薬物に暴露した細胞と対照細胞の間の、RNA発現レベルの差を検出するためのプローブは、本発明の核酸から調製しうる。厳密度の高い条件下では標的核酸としかハイブリダイズしないプローブを設計することが、必須ではないが好ましい厳密度の高い条件下では、相補性の高い核酸ハイブリッドだけが形成される。従って、ハイブリッドを形成するために、2本の核酸鎖間に存在すべき相補性の程度は、試験条件の厳密度によって決まる。プローブ/標的ハイブリッドとプローブ/非標的ハイブリッドの間の安定度の差が最大となるように、厳密度を選択すべきである。
【0059】
プローブは、本発明の核酸から、当該分野において既知の方法により設計しうる。例えば、プローブのG+C含量とプローブ長は、プローブの標的配列への結合に影響する。プローブの特異性を最適化する方法は、上記Sambrookら、またはAusubelら、Short Protocols in Molecular Biology, Fourth Ed., John Wiley & Sons, Inc., New York, 1999において、一般に入手可能である。
【0060】
各プローブに対し必要に応じて、ハイブリダイゼーション条件を既知の(例えば、上記SambrookらおよびAusubelらに記載の)方法により修飾する。総細胞RNA、またはポリA−RNA用にエンリッチしたRNAのハイブリダイゼーションは、あらゆる可能な様式で達成しうる。例えば、総細胞RNA、またはポリA−RNAをエンリッチしたRNAを固相担体に固定し、その固相担体を、少なくとも1種の本発明の配列、またはその一部を含んでなる少なくとも1種のプローブに、そのプローブが特異的にハイブリダイズする条件下で暴露することができる。或いは、少なくとも1種の本発明の配列、またはその一部を含んでなる核酸断片を、固相担体、例えばシリコンチップ、または多孔性ガラスのウェハーや膜に固定することもできる。次いで固相担体を、総細胞RNA、または試料から得たポリA−RNAに、固定した配列が特異的にハイブリダイズする条件下で暴露することができる。そのような固相担体およびハイブリダイゼーション方法は、広範囲に利用可能である。例えば、特許文献1(Beattie(1995))に開示されるものである。あるプローブの、未処理の細胞母集団(population)と、薬物に暴露した細胞の母集団に対する、特異的にハイブリダイズする能力を試験することにより、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16の配列を有するタンパク質をコードする核酸の発現を上方または下方調整する薬物が同定される。
【0061】
mRNAの定性および定量分析のためのハイブリダイゼーションはまた、RNase保護試験(RPA、Maら(1996)、Methods 10: 273−238を参照)を用いて行ってもよい。簡単に言うと、遺伝子産物をコードするcDNAと、ファージ特異的DNA依存性RNAポリメラーゼプロモーター(例えば、T7、T3またはSP6RNAポリメラーゼ)を含んでなる発現媒体(expression vehicle)を、cDNA分子の3’末端側、ファージプロモーターの下流側で直線化する(linearized)。次いでそのような直線化分子を、in vitro転写による、cDNAのラベル化アンチセンス転写物合成の鋳型に用いる。次いでラベル化転写物を、単離したRNA混合物(即ち、総RNAまたは分画したRNA)と、80%ホルムアミド、40mM Pipes(pH 6.4)、0.4M NaClおよび1mM EDTAを含んでなる緩衝液中、45℃で終夜インキュベートしてハイブリダイズさせる。次いで、得られたハイブリッドを、40μg/ml リボヌクレアーゼAおよび2μg/ml リボヌクレアーゼを含んでなる緩衝液中で消化する。外来の(extraneous)タンパク質を不活性化・抽出した後、解析のため試料を尿素/ポリアクリルアミドゲルにかける。
【0062】
別の試験では、本遺伝子産物の発現に影響する薬物を同定するため、本発明の遺伝子産物を生理的に発現する細胞または細胞株をまず同定する。そのように同定された細胞および/または細胞株は、必要な細胞性装置(cellular machinery)を含み、適切な表面形質導入機構(surface transduction mechanisms)および/または細胞質性カスケード(cytosolic cascades)により、薬物の外因性の接触についての、転写装置の忠実な調節が維持されると考えられる。また、そのような細胞または細胞株は、本遺伝子産物(本遺伝子産物に固有の、1つ以上の抗原性断片と融合している)をコードする構造遺伝子の、機能しうる、翻訳されないプロモーターを含有する5’末端を含んでなる発現媒体(例えばプラスミドまたはウィルスベクター)構築物により形質導入またはトランスフェクションされ、前記断片は、前記プロモーターの転写制御下にあり、ポリペプチド(その分子量が、天然のポリペプチドと区別しうるか、免疫学的に区別されるタグその他の検出可能なマーカーを更に含んでいてよい)として発現される。そのような方法は、当該分野において公知である(前記Sambrookらを参照)。
【0063】
次いで、先に概説した、形質導入またはトランスフェクションされた細胞または細胞株を、適切な条件下で薬物と接触させる。例えば、薬物は薬学的に許容される賦形剤に含まれ、水性生理的緩衝液(例えば、生理的pHのリン酸緩衝食塩水(PBS)、生理的pHのEagles緩衝塩類溶液(BSS)、血清を含むPBSまたはBSS、或いはPBSおよび/またはBSSおよび血清を含み、37℃でインキュベートされる調節された媒体)に含まれる細胞と接触する。前記条件は、当業者が必要と考えるように調節しうる。細胞を薬物と接触させるのに続き、前記細胞を破砕して(disrupted)、細胞破砕物のポリペプチドを分画し、ポリペプチド画分をプールして抗体と接触させ、更に免疫学的試験(ELISA、免疫沈降法またはウェスタンブロット)で処理されるようにする。「薬物と接触した」試料から単離されたタンパク質のプールを、賦形剤だけを細胞と接触させたコントロールの試料と比較し、「薬物と接触した」試料から免疫学的に生成される信号が、コントロールに比べ増加または減少していることを利用して、薬物の有効性を識別する。
【0064】
H.癌関連タンパク質のレベル、または少なくとも1つの活性を調節する薬物の同定方法
本発明の他の実施形態は、本発明のタンパク質(例えば、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16のアミノ酸配列を有するタンパク質)のレベル、または少なくとも1つの活性を調節する薬物の同定方法を提供する。そのような方法または試験には、所望の活性を監視または検出するための、あらゆる手段を利用してよく、癌を治療する薬物の同定に特に有用である。
【0065】
1様式においては、試験すべき薬物に曝露された1つの細胞母集団における、曝露されていないコントロール細胞母集団との間で比較しての、本発明のタンパク質の相対量を試験しうる。この様式においては、プローブ(例えば特異的抗体)を用いて、異なる細胞母集団における、タンパク質発現の差を監視する。細胞株または細胞母集団を、適切な条件下で、試験すべき薬物に適切な時間だけ曝露する。曝露した細胞株または細胞母集団と、コントロールの曝露されていない細胞株または細胞母集団から、細胞破砕物を調製しうる。次いで、プローブ(例えば特異的抗体)を用いて細胞破砕物を分析する。
【0066】
抗体プローブは、適切な免疫プロトコルに従い、長さが十分であれば、本発明のペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質(或いは、所望であれば、または免疫性を増強するために必要であれば、適当な担体と複合化させる)で適切な哺乳動物宿主を免疫することにより調製される。担体(例えば、BSA、KLHその他の担体タンパク質)との免疫複合体の調製方法は、当該分野において公知である。ある状況においては、例えばカルボジイミド試薬を用いる直接的複合化が有効なこともあり、他の場合には、ハプテンへのアクセス可能性(accessibility)をもたらすため、結合(linking)試薬(例えば、Pierce Chemical Co.社(イリノイ州ロックフォード))が供給するものが望ましいこともある。例えば、担体との結合を促進するために、ハプテンペプチドを、アミノ末端、カルボキシ末端のどちらからでもシステイン残基で伸長したり、システイン残基を散在させたりすることができる。免疫原の投与は、一般的には、当該分野でよく理解されているように、適切なアジュバントを用いて、適当な時間をかけて注射することにより行うことができる。免疫スケジュールの間、抗体形成の十分さを決定するために、抗体の力価(titers)を測定する。
【0067】
ある用途では、この方法で得られるポリクローナル抗血清が満足なものである場合もあるが、医薬組成物としては、モノクローナル製剤の利用が好ましい。所望のモノクローナル抗体を分泌する不死化細胞株は、一般に知られるように、リンパ球または脾臓細胞の不死化を行う、標準法(KohlerおよびMilstein(1975)、Nature 256:495−497)またはその変法により調製しうる。所望の抗体を分泌する不死化細胞株のスクリーニングは、ペプチドハプテン、ポリペプチドまたはタンパク質を抗原とするイムノアッセイにより行う。所望の抗体を分泌する適切な不死化細胞株が同定されたら、細胞の培養は、in vitroで行ってもよく、腹水(ascites fluid)中での産生により行ってもよい。
【0068】
次いで、培養上清または腹水上清から所望のモノクローナル抗体を回収する。完全な抗体もそうであるが、免疫学的に重要な(抗原と結合する)部位を含むモノクローナル抗体またはポリクローナル抗血清の断片も、アンタゴニストとして使用できる。特に治療という状況では、免疫学的に反応性の(抗原と結合する)抗体断片(例えば、Fab、Fab´またはF(ab´)2断片)の使用が好ましい場合がしばしばある。これは、これらの断片は通常、イムノグロブリン全体に比べ免疫原性が少ないからである。
抗体または抗原性断片はまた、現行の技術を用いて、組み替えの手法により製造することもできる。タンパク質の所望の領域に特異的に結合する抗体の領域はまた、複数の種に由来するキメラ(例えばヒト化抗体)の状態で製造することもできる
【0069】
上記の方法で試験する薬物は、無作為に選択してもよく、合理的に選択または設計してもよい。本明細書においては、本発明のタンパク質(それのみ、またはそれに関連する基質、結合パートナー等と共に)に関連して含まれる特定の配列を考慮することなく、無作為に薬物を選択する場合、その薬物を無作為に選択するという。無作為に選択された薬物の例は、化学物質ライブラリー(chemical library)、ペプチドコンビナトリアルライブラリー(peptide combinatorial library)または生物の増殖ブロス(growth broth)の使用である。
【0070】
本明細書においては、薬物を無作為でなく、標的部位の配列および/または薬物の作用に関連するそのコンホメーションを考慮して選択する場合、その薬物を合理的に選択または設計するという。これらの部位を構成するペプチド配列を利用して、薬物を合理的に選択または設計することができる。例えば、合理的に選択されたペプチド薬物は、何らかの機能的コンセンサス部位と同じアミノ酸配列のペプチドか、その誘導体であってよい。
【0071】
本発明の薬物は、例えばペプチド、低分子物質(small molecules)、ビタミン誘導体および炭水化物であってもよい。優性ネガティブタンパク質(Dominant negative proteins)、これらのタンパク質をコードするDNA、これらのタンパク質に対する抗体、これらのタンパク質のペプチド断片またはこれらのタンパク質の模倣物(mimics)を細胞に導入し、機能に影響を与えてもよい。本明細書で用いられる「模倣物」とは、ペプチド分子の領域(1箇所または数箇所)を修飾し、化学的に親ペプチドとは異なるが、局所解剖学的(topographically)および機能的には親ペプチドと類似した構造を提供することをいう(Grant in:Molecular Biology and Biotechnology,Meyers,ed.,pp.659−664,VCH Publishers,Inc.,New York,1995を参照)。当業者は、本発明の薬物の構造的特性に関して制限がないことを容易に認識することができる。
【0072】
本発明のペプチド薬物は、当該分野において知られている、標準的な固相(または溶液相)ペプチド合成法により調製することができる。更に、これらのペプチドをコードするDNAは、市販のオリゴヌクレオチド合成装置を用いて合成してもよく、標準的な組み替え合成系を用いて組み替えにより製造してもよい。遺伝子にコードされていないアミノ酸が含まれている場合、固相ペプチド合成による製造が必要となる。
【0073】
本発明の他のクラスの薬物は、本発明のタンパク質の臨界的な部位(例えば、本明細書に言う細胞質(cytoplasmic)ドメイン、スペーサードメイン、α−ヘリックスコイルを成すコイルドメイン(α−helical coiled−coil domain)または受容体ドメイン)に対して免疫反応性を有する抗体である。抗体薬物は、適切な哺乳動物被験者を、抗体の標的となることを意図したタンパク質のそれらの部位を、免疫原性領域として含むペプチドにより免疫して得られる。
【0074】
I.癌関連タンパク質の発現、または少なくとも1つの活性を調節する薬物の用途
実施例において提供されているように、本発明のタンパク質(例えば、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16のアミノ酸配列を有するタンパク質)および核酸は、癌性組織における発現が異なる。タンパク質の発現、またはタンパク質の少なくとも1種の活性を上方または下方に調整或いは調節する薬物、例えばアゴニストまたはアンタゴニストを用いて、これらのタンパク質の機能および活性に関連する生物学的および病理学的プロセスを調節してもよい。これには、本発明の相同体および類似体を用いて同定された薬物が含まれる。
【0075】
本明細書においては、本発明のタンパク質によって仲介される病理学的または生物学的プロセスを調節することを必要とする限り、被験者はあらゆる哺乳類でありうる。用語「哺乳類」は、哺乳綱に属する個体と定義される。本発明は、特にヒトである被験者の治療において有用である。
【0076】
病理学的プロセスとは、有害な効果をもたらす範疇の生物学的プロセスをいう。例えば、本発明のタンパク質の発現は、細胞増殖または過形成に関連している可能性がある。本明細書においては、薬物がプロセスの程度または深刻度(severity)を減少する場合、その薬物を病理学的プロセスを調節するという。例えば、本発明のタンパク質の発現または少なくとも1つの活性を、何らかの方法で上方または下方に調整或いは調節する薬物の投与によって、癌を阻害しうるか、疾患の進行を調節しうる。
【0077】
本発明の薬物は、単独で提供することもでき、特定の病理学的プロセスを調節する他の薬物と組み合わせて提供することもできる。例えば、本発明の薬物を、他の既知薬物と組み合わせて投与することができる。本明細書においては、2種の薬物を同時に投与する場合、またはそれらが同時に機能するような様式で独立に投与する場合、「2種の薬物を組み合わせて投与する」という。
【0078】
本発明の薬物は、非経口(parenteral)、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮またはバッカル経路で投与しうる。或いは、または同時に、経口経路でも投与しうる。投与量は、被投与者の年齢、健康状態および体重、並行している処置の種類(あれば)、処置の頻度並びに所望の効果の性質による。
本発明は更に、本発明のタンパク質の発現または少なくとも1種の活性を調節する薬物を1種以上含有する組成物を提供する。個々に必要とされるものは変動するが、各成分の有効量の最適範囲の決定は、当該技術の範囲内である。典型的な投与量は、体重1kgあたり0.1〜100μgである。好ましい投与量は、体重1kgあたり0.1〜10μgからなる。最も好ましい投与量は、体重1kgあたり0.1〜1μgからなる。
【0079】
本発明の組成物は、薬理学的に活性な薬物に加え、活性化合物を加工して作用部位への送達のために薬学的に用いうる製剤とすることを容易にする賦形剤または補助剤からなる、薬学的に許容される適切な担体を含んでいてもよい。非経口投与用の適切な処方は、水溶性の形態(例えば水溶性の塩)にある活性化合物の水溶液を含む。加えて、適切な注射用油性懸濁液としての活性化合物の懸濁液を投与してもよい。適切な親油性溶媒または媒体には、脂肪油(例えばゴマ油)、合成脂肪酸エステル(例えばオレイン酸エチル)またはトリグリセリドが含まれる。注射用水性懸濁液は、懸濁液の粘度を増加する物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよび/またはデキストランを含んでいてもよい。懸濁液は任意に、安定剤も含んでいてよい。細胞への送達のために、リポソームを用いて薬物をカプセル化(encapsulate)してもよい。
【0080】
本発明によれば、全身投与用の医薬処方物は、腸内、非経口または局所用に処方しうる。実際、これら3種の処方を全て同時に用い、活性成分の全身投与を達成してもよい。
経口投与用の適切な処方には、硬または軟ゼラチンカプセル、丸薬、錠剤(コーティング錠を含む)、エリキシル剤、懸濁液、シロップまたは吸入剤(これらの徐放型(controlled release forms)も)が含まれる。
【0081】
本発明の方法を実施するに際し、本発明の化合物を単独で用いてもよく、複数種組み合わせて用いてもよく、他の治療薬または診断薬と組み合わせて用いてもよい。ある好ましい実施形態においては、本発明の化合物を、これらの状態に対して、一般に許容されている医療の実践に従い典型的に規定されている他の化合物と同時に投与してもよい。本発明の化合物は、通常は哺乳類(例えばヒト、ヒツジ、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、ラット、マウスなど)に対しin vivoで、またはin vitroで用いることができる。
【0082】
J.結合パートナーの同定方法
本発明の他の実施形態は、本発明のタンパク質の結合パートナーを単離・同定する方法を提供する。一般には、本発明のタンパク質を、タンパク質の結合パートナーである可能性のあるもの、または細胞の抽出物や画分と、タンパク質の結合パートナーである可能性のあるものが本発明のタンパク質と会合しうる条件下で混合する。混合後、本発明のタンパク質と会合したペプチド、ポリペプチドその他の分子を、混合物から分離する。次いで、本発明のタンパク質と結合している結合パートナーを除去し、更に解析することができる。結合パートナーの単離・同定には、全長タンパク質、例えば、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16の全長アミノ酸配列を有するタンパク質を用いることができる。或いは、そのタンパク質の断片を用いることができる。
【0083】
本明細書において、細胞抽出物とは、溶解または破砕した細胞から作成した調合物(preparation)または画分をいう。細胞抽出物の好ましい起源は、ヒトの癌またはトランスフォームした細胞、例えば、癌から得た生検組織または組織培養細胞である。或いは、正常な組織または入手可能な細胞株から細胞抽出物を調製してもよい。
【0084】
細胞の抽出物は、種々の方法により得ることができる。細胞の破砕は、物理的または化学的破砕方法のどちらを用いて行ってもよい。物理的破砕方法の例には、超音波処理および機械的せん断が含まれるが、これらに限定されない。化学的溶解方法の例には、界面活性剤(detergent)による溶解および酵素による溶解が含まれるが、これらに限定されない。本発明において用いる抽出物を得るために、細胞抽出物の調製方法を適合させることは、当業者であれば容易に行うことができる。
【0085】
細胞の抽出物が得られれば、抽出物を、本発明のタンパク質と、タンパク質と結合パートナーの会合が起こりうる条件下で混合する。種々の方法を用いることができるが、ヒト細胞の細胞質に見られる条件に極めて類似した条件が最も好ましい。浸透圧、pH、温度、細胞抽出物濃度などの特性を変更して、タンパク質と結合パートナーの会合を最適化してもよい。
【0086】
適当な条件下での混合の後、結合複合体を混合物から分離する。混合物の分離には種々の手法を用いることができる。例えば、本発明のタンパク質に特異的な抗体を用いて、結合パートナーとの複合体を免疫沈降させることができる。或いは、標準的な化学的分離法、例えばクロマトグラフィーや密度/沈降遠心分離法を用いることができる。
抽出物に見られる非会合細胞性成分を除去した後、従来の方法を用いて複合体から結合パートナーを解離させることができる。例えば、混合物の塩濃度やpHを変えることにより解離を達成することができる。
【0087】
会合した結合パートナーとの対を、混合した抽出物から分離するのを促進するため、本発明のタンパク質を固相担体に固定することができる。例えば、ニトロセルロースマトリクスやアクリルビーズにタンパク質を付着させることができる。タンパク質を固相担体に付着させることは、ペプチド/結合パートナーの対を、抽出物に見られる他の成分から分離するのを促進する。同定される結合パートナーは、単一のタンパク質であることもあり、2種以上のタンパク質で構成される複合体であることもある。或いは、結合パートナーの同定をTakayamaら(1997)、Methods Mol.Biol. 69:171−184またはSauderら(1996)、J.Gen.Virol. 77:991−99の手順によるFar−Westernアッセイを用いて行ってもよく、エピトープタグ付きタンパク質(epitope tagged proteins)またはGST融合タンパク質を用いて行ってもよい。
【0088】
或いは、酵母2ハイブリッド系その他のin vivoタンパク質−タンパク質検出系で、本発明の核酸分子を用いることができる。酵母2ハイブリッド系は、他のタンパク質のパートナーを同定するのに利用されてきたもので、本明細書に記載の核酸分子を用いるように適合させることは容易である。
【0089】
K.癌関連タンパク質の結合パートナーの用途
上記の方法により得られる、本発明のタンパク質の結合パートナーや、その相同体および類似体は、ひとたび単離すれば、種々の目的に利用できる。当該分野において知られる手法を用いて、結合パートナーと結合する抗体を生成するのに、結合パートナーを用いることができる。結合パートナーと結合する抗体は、本発明のタンパク質の活性の検査に、本発明のタンパク質により仲介される生物学的または病理学的プロセスを調節する薬物として、または結合パートナーの精製に用いることができる。これらの用途は以降に詳述する。
【0090】
L.結合パートナーと癌関連タンパク質の会合を阻害する薬物の同定方法
本発明の他の実施形態は、本発明のタンパク質と結合パートナーの会合を減少または阻害する薬物の同定方法を提供する。具体的には、本発明のタンパク質を、試験すべき薬物の存在下および非存在下で結合パートナーと混合する。タンパク質の会合が可能な条件で混合した後、2種の混合物を分析・比較し、薬物が本発明のタンパク質と結合パートナーの会合を減少または阻害したか否かを決定する。本発明のタンパク質と結合パートナーの会合を減少または阻害する薬物は、試験すべき薬物を含む試料中に生じる会合の量の減少として同定される。
【0091】
本明細書においては、ある薬物の存在が、結合パートナーが本発明のタンパク質と会合する程度を減少させる、またはそれを妨げるとき、その薬物は本発明のタンパク質と結合パートナーの会合を減少または阻害するという。あるクラスの薬物は、結合パートナーと結合することによって会合を減少または阻害するが、別のクラスの薬物は、本発明のタンパク質と結合することによって会合を減少または阻害する。
【0092】
上記の試験に用いる結合パートナーは、単離され十分に特徴付けられたものでもよく、本発明のタンパク質と結合する部分的に特徴付けられたものでもよく、細胞抽出物中に存在することが同定されたものでもよい。結合パートナーが同定可能な特性(例えば分子量)を有している限り、本試験を行うことができることは、当業者にとって明らかである。
【0093】
上記の方法で試験する薬物は、無作為に選択してもよく、合理的に選択または設計してもよい。本明細書においては、本発明のタンパク質と結合パートナーの会合に関連して含まれる特定の配列を考慮することなく、無作為に薬物を選択する場合、その薬物を無作為に選択するという。無作為に選択された薬物の例は、化学物質ライブラリー、ペプチドコンビナトリアルライブラリーまたは生物の増殖ブロスの使用である。
【0094】
本明細書においては、薬物を無作為でなく、標的部位の配列および/または薬物の作用に関連するそのコンホメーションを考慮して選択する場合、その薬物を合理的に選択または設計するという。結合パートナーと本発明のタンパク質の接触部位を構成するペプチド配列を利用して、薬物を合理的に選択または設計することができる。例えば、合理的に選択されたペプチド薬物は、本発明のタンパク質における、結合パートナーとの接触部位と同じアミノ酸配列のペプチドであってよい。そのような薬物は、結合パートナーと結合することによって、本発明のタンパク質と結合パートナーの会合を減少または阻害する。
本発明の薬物は、例えばペプチド、低分子物質、ビタミン誘導体および炭水化物であってもよい。当業者は、本発明の薬物の構造的特性に関して制限がないことを容易に認識することができる。
【0095】
本発明のあるクラスの薬物は、そのアミノ酸配列が、本発明のタンパク質のアミノ酸配列に基づいて選択されたペプチド薬物である。本発明のペプチド薬物は、当該分野において知られている、標準的な固相(または溶液相)ペプチド合成法により調製することができる。更に、これらのペプチドをコードするDNAは、市販のオリゴヌクレオチド合成装置を用いて合成してもよく、標準的な組み替え合成系を用いて組み替えにより製造してもよい。遺伝子にコードされていないアミノ酸が含まれている場合、固相ペプチド合成による製造が必要となる。
【0096】
本発明の他のクラスの薬物は、本発明のタンパク質または結合パートナーの臨界的な部位に対して免疫反応性を有する抗体である。上記のように、抗体は、適切な哺乳動物被験者を、抗体の標的となることを意図した、本発明のタンパク質または結合パートナーのそれらの部位を、免疫原性領域として含むペプチドにより免疫して得られる。臨界的な部位には、本発明のタンパク質と結合パートナーの会合に関与する接触部位が含まれる。
【0097】
下記で検討するが、本発明のタンパク質の活性に関与する、重要な最小限の残基の配列が、2ハイブリッドスクリーニングや、関連分子である可能性のある物質の同定における餌(bait)として有効に利用しうる、機能性直鎖状ドメインを定義する。そのような断片の利用は、全長分子の利用に比べ、スクリーニングの特異性を有意に向上するので好ましい。同様に、この直鎖状配列はまた、アフィニティーマトリクスとして、生化学的なアフィニティー精製法を用いる結合タンパク質の単離のためにも利用しうる。
【0098】
M.結合パートナーと癌関連タンパク質の会合を阻害する薬物の用途
実施例において提供されているように、本発明のタンパク質(例えば、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16のアミノ酸配列を有するタンパク質)および核酸は、癌性組織における発現が異なる。本発明のタンパク質の、結合パートナーとの相互作用を減少または阻害する薬物(同タンパク質の相同体および類似体を用いて同定されたものを含む)を用いて、これらのタンパク質の機能および活性に関連する生物学的および病理学的プロセスを調節してもよい。
【0099】
本明細書においては、本発明のタンパク質によって仲介される病理学的または生物学的プロセスを調節することを必要とする限り、被験者はあらゆる哺乳類でありうる。用語「哺乳類」は、哺乳綱に属する個体を意味する。本発明は、特にヒトである被験者の治療において有用である。
【0100】
病理学的プロセスとは、有害な効果をもたらす範疇の生物学的プロセスをいう。例えば、本発明のタンパク質の発現は、細胞増殖または過形成に関連している可能性がある。本明細書においては、薬物がプロセスの程度または深刻度を減少する場合、その薬物を病理学的プロセスを調節するという。例えば、本発明のタンパク質の、結合パートナーとの相互作用を減少または阻害する薬物薬物の投与によって、癌を阻害しうるか、疾患の進行を調節しうる。
【0101】
本発明の薬物は、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮またはバッカル経路で投与しうる。或いは、または同時に、経口経路でも投与しうる。投与量は、被投与者の年齢、健康状態および体重、並行している処置の種類(あれば)、処置の頻度並びに所望の効果の性質による。
本発明は更に、本発明のタンパク質と結合パートナーの会合を阻害する薬物を1種以上含有する組成物を提供する。個々に必要とされるものは変動するが、各成分の有効量の最適範囲の決定は、当該技術の範囲内である。典型的な投与量は、体重1kgあたり0.1〜100μgである。好ましい投与量は、体重1kgあたり0.1〜10μgからなる。最も好ましい投与量は、体重1kgあたり0.1〜1μgからなる。
【0102】
本発明の組成物は、薬理学的に活性な薬物に加え、活性化合物を加工して作用部位への送達のために薬学的に用いうる製剤とすることを容易にする賦形剤および補助剤からなる、薬学的に許容される適切な担体を含んでいてもよい。非経口投与用の適切な処方は、水溶性の形態(例えば水溶性の塩)にある活性化合物の水溶液を含む。加えて、適切な注射用油性懸濁液としての活性化合物の懸濁液を投与してもよい。適切な親油性溶媒または媒体には、脂肪油(例えばゴマ油)、合成脂肪酸エステル(例えばオレイン酸エチル)またはトリグリセリドが含まれる。注射用水性懸濁液は、懸濁液の粘度を増加する物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよび/またはデキストランを含んでいてもよい。懸濁液は任意に、安定剤も含んでいてよい。細胞への送達のために、リポソームを用いて薬物をカプセル化してもよい。
【0103】
本発明によれば、全身投与用の医薬処方物は、腸内、非経口または局所用に処方しうる。実際、これら3種の処方を全て同時に用い、活性成分の全身投与を達成してもよい。
経口投与用の適切な処方には、硬または軟ゼラチンカプセル、丸薬、錠剤(コーティング錠を含む)、エリキシル剤、懸濁液、シロップまたは吸入剤(これらの徐放型も)が含まれる。
【0104】
本発明の方法を実施するに際し、本発明の化合物を単独で用いてもよく、複数種組み合わせて用いてもよく、他の治療薬または診断薬と組み合わせて用いてもよい。ある好ましい実施形態においては、本発明の化合物を、これらの状態に対して、一般に許容されている医療の実践に従い典型的に規定されている他の化合物と同時に投与してもよい。本発明の化合物は、通常は哺乳類(例えばヒト、ヒツジ、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、ラット、マウスなど)に対しin vivoで、またはin vitroで用いることができる。
【0105】
N.合理的なドラッグデザインとコンビナトリアルケミストリー
本発明は更に、合理的なドラッグデザインとコンビナトリアルケミストリーを含む。当業者は、適切な方法を認識し、本発明の態様を、癌治療に向けて開発しうる化合物の同定に利用・活用(utilize and exploit)する。ポリペプチドに関する合理的なドラッグデザインでは、設計した薬物が相互作用する第一のペプチドを同定・定義し、その第一の標的ペプチドを用いて、第二のペプチドに対する要件を定義することが必要である。そのような定義された要件に関し、全てまたは実質的に全ての定義された要件を満たす、適切なペプチドまたは非ペプチドを見出す、または調製することができる。合理的なドラッグデザインの1つの目標は、例えばより強力な(または強力でない)形態のリガンドである薬物を形作るために、関心ある生物活性ポリペプチド、またはそれらと相互作用する低分子(例えばアゴニスト、アンタゴニストおよびヌル(null)化合物)の、構造的または機能的類似体を製造することである(例えば、Hodgson(1991)、Bio.Technology 9:19−21を参照)。コンビナトリアルケミストリーは、薬物や材料を、以前に可能だったよりも迅速且つ安価に見出すことを目的として、化合物を1つずつではなくまとめて合成し、その生物活性を試験することの科学である。コンピューター支援によるタンパク質モデリングや薬物発見におけるアプローチの開発により、近年、合理的なドラッグデザインとコンビナトリアルケミストリーはより緊密に関連付けられてきている(例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5および特許文献6を参照)。
【0106】
コンピューターグラフィックスの登場(advent)により、合理的なドラッグデザインとコンビナトリアルケミストリーのためのツールとしての、分子モデリングの利用が劇的に増加している。コンピュータースクリーン上で分子を3次元で見ることができるのみならず、巨大分子(例えば酵素や受容体)と、合理的に設計した試験すべき誘導体分子の相互作用を調べることもできる(Boorman(1992)、Chem.Eng.News 70:18−26を参照)。今や、膨大な数の使いやすい(user−friendly)ソフトウェアおよびハードウェアが入手可能であり、事実上全ての製薬会社が、合理的なドラッグデザインのためのコンピューターモデリンググループを有している。例えば、Molecular Simulations Inc.社(www.msi.com)は、いくつかの洗練されたプログラムを販売しており、これにより利用者は、アミノ酸配列から開始して、タンパク質またはポリペプチドの2次元または3次元モデルを構築し、これを他の2次元または3次元モデルと比較し、化合物、薬物およびペプチドの相互作用を、3次元モデル上リアルタイムで解析することが可能となる。従って、本発明のいくつかの実施形態においては、治療的相互作用が予測・設計できるよう、本発明のタンパク質や、これと相互作用する分子(包括的には「結合パートナー」と称し、例えば抗タンパク質抗体)の領域、これらの分子の断片や誘導体を、他の分子、例えばペプチド、ペプチド模倣物および化学物質を、ソフトウェアを用いて比較する(分子モデリングについての考察は、Schneider(1998)、Genetic Engineering News December: page 20;Tempczykら(1997)、Molecular Simulations Inc. Solutions April;およびButenhof(1998)、Molecular Simulations Inc. Case Notes (August 1998)を参照)。
【0107】
O.遺伝子治療
他の実施形態においては、タンパク質の機能および活性に関連する生物学的または病理学的プロセスを調節する手段として、遺伝子治療を用いることができる。これは、癌性細胞に対し、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16の配列を全部または少なくとも一部含んでなるタンパク質をコードする遺伝子構築物、或いはプロモーター要素またはエンハンサー要素と機能しうるように結合した、配列SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13または15の非コード領域を全部または一部含んでなる遺伝子構築物を挿入して、前記タンパク質の発現が、前記癌を抑制するようにする工程であって、前記プロモーター要素またはエンハンサー要素は、前記遺伝子構築物を調節するプロモーター要素またはエンハンサー要素である工程を含む。
【0108】
前記構築物において、前記タンパク質の発現は、何らかの適切なプロモーター(例えば、ヒトサイトメガロウィルス(CMV)、サル(simian)ウィルス40(SV40)またはメタロチオネインプロモーター)により指揮でき、また何らかの適切な哺乳類の調節要素により調節できる。例えば、所望により、神経細胞、T細胞またはB細胞において遺伝子の発現を優先的に指揮することが知られるエンハンサーを用い、発現を指揮してもよい。使用するエンハンサーには、その発現が組織または細胞に特異的であると特徴付けられたものが含まれうるが、これらに限定されない。或いは、治療性構築物としてLFG1、LFG2、LFG3、LFG4、LFG5またはLFG6のゲノム性クローン(例えば、上記本発明の核酸分子とのハイブリダイゼーションによるその単離に次いで)を用いる場合には、関連(cognate)調節配列、または所望により異種起源由来の調節配列(上記プロモーターおよび調節配列はいずれも含まれる)によって調節を仲介してもよい。
【0109】
癌性細胞への構築物の挿入は、例えばウィルスまたはプラスミドベクターを用いて、in vivoで達成される。そのような方法は、in vitroでの利用にも適用しうる。従って、本発明の方法は、細胞をex vivoで遺伝的に修飾し、宿主に投与する、遺伝子修飾をin vivoで、いくらかの数の適当な方法(このような治療に特に適するベクターを含む)を用いて行うなど、種々の形態の遺伝子治療に容易に適用可能である。
【0110】
レトロウィルスウィルスベクター、アデノウィルスベクター、アデノ関連(adeno−associated)ウィルスベクターその他、癌に関連することがよくある細胞(例えば上皮細胞)に対し適切な向性(tropism)を有するウィルスベクターを、治療性遺伝子構築物用の遺伝子転移移送システム(gene transfer delivery system)として利用してよい。この目的に有用な数多くのベクターが一般に知られている(Cozzi PJら(2002)、Prostate,53(2):95−100;Bitzer M, Lauer U.(2002)、Dtsch Med Wochenschr. 127(31−32):1623−1624;MezzinaおよびDanos(2002)、Trends Genet.8:241−256; Loserら(2002)、Curr.Gene Ther. 2:161−171;PfeiferおよびVerma(2001)、Annu.Rev.Genomics Hum.Genet. 2:177−211)。レトロウィルスウィルスベクターは特によく開発されており、臨床環境(settings)でも用いられている(特許文献7(Andersonら(1995))。癌になっていると考えられる細胞等(otherwise)に治療性DNAを導入するのに、非ウィルス的アプローチを用いてもよい(Jeschkeら(2002)、Curr.Gene Ther.1:267−278;Wuら(1988)、J.Biol.Chem. 263:14621−14624;Wuら(1989)、J.Biol.Chem. 264:16985−16987)。例えば、ニューロン、T細胞またはB細胞に対し、リポフェクション、アシアロオロソムコイド−ポリリジン複合体(conjugation)、または、あまり好ましくないが外科的条件下でのマイクロインジェクションにより、遺伝子を導入してもよい。
上記のいずれの適用方法に関しても、治療性核酸構築物を、好ましくは癌発生箇所に(例えば注射により)適用する。しかし、癌発生箇所周辺の組織、または癌になっていると考えられる細胞への供給を行う血管に適用してもよい。
【0111】
P.トランスジェニック動物
SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13または15のcDNA配列;
SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16のポリペプチド配列をコードするオープンリーディングフレーム;または
3、4、5、6、10、15、20、25、30、35またはそれ以上のアミノ酸残基の連続した配列を有するそれらの断片
に対応する変異、ノックアウトまたは修飾遺伝子を含むトランスジェニック動物もまた、本発明に含まれる。トランスジェニック動物は、遺伝的に修飾され、実験的に組み替え、外来またはクローン化遺伝物質が移入された動物である。そのような遺伝物質は、しばしば「トランスジーン(transgene)」と呼ばれる。トランスジーンの核酸配列(この場合には、SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13または15の配列の形態)は、そのようにしなければその特定の核酸配列が見出されることのないゲノムの遺伝子座と、トランスジーンの通常の遺伝子座のどちらに統合(integrated)してもよい。トランスジーンを構成する核酸配列が由来するゲノムは、同種のものであってもよく、標的動物とは別種のものであってもよい。
【0112】
ある実施形態においては、配列SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13または15を含んでなる遺伝子の全体または一部が欠失しているトランスジェニック動物を構築してもよい。配列SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13または15に対応する遺伝子が1つ以上のイントロンを含む場合、遺伝子全体(全てのエキソン、イントロンおよび調節配列)が欠失していてもよい。或いは、遺伝子全体よりも少ない欠失が生じていてもよい。例えば、本発明のタンパク質の修飾版を発現する動物を作出するよう、単一のエキソンおよび/またはイントロンが欠失していてもよい。
【0113】
用語「生殖細胞系列トランスジェニック動物(germ cell line transgenic animal)」とは、遺伝的改変や遺伝情報が生殖細胞系列に導入されることにより、トランスジェニック動物の遺伝情報を子孫に伝える能力が与えられているトランスジェニック動物をいう。そのような子孫が実際、その改変や遺伝情報を有していれば、それらもまたトランスジェニック動物である。
【0114】
遺伝的改変や遺伝情報は、レシピエント(recipient)が属する種にとって外来のものでもよく、特定個体のレシピエントにとってのみの外来のものでもよく、レシピエントが既に有している遺伝情報であってもよい。最後の場合においては、改変または導入された遺伝子は、元々の遺伝子と発現が異なっていてもよい。
【0115】
トランスジェニック動物は、トランスフェクション、電気穿孔法、マイクロインジェクション、胚性幹細胞における遺伝子ターゲッティング並びに組み替えウィルス(またはレトロウィルス)感染を初めとする、種々異なった方法で作成することができる(例えば特許文献8;特許文献9;Mullinsら(1993)、Hypertension 22: 630−633;Breninら(1997)、Surg.Oncol.6: 99−110;Recombinant Gene Expression Protocols(Methods in Molecular Biology, Vol. 62),Tuan,ed.,Humana Press,Totowa,NJ,1997を参照)。
【0116】
数多くの組み替えまたはトランスジェニックマウスが作成されており、これには
・活性化された癌遺伝子配列を有するもの(特許文献8);
・サルSV40 T−抗原を発現するもの(特許文献10);
・インターフェロン調節因子1(IRF−1)の発現がみられないもの(特許文献11);
・ドーパミン神経の機能不全(dopaminergic dysfunction)を示すもの(特許文献12);
・血圧調整に関与する少なくとも1種のヒト遺伝子を発現するもの(特許文献13);
・自然発生のアルツハイマー病でみられる状態との高い類似性を示すもの(特許文献14);
・細胞接着を仲介する能力の低いもの(特許文献9);
・ウシ成長ホルモン遺伝子を有するもの(Clutterら(1996)、Genetics 143:1753−1760);および
・ヒトの完全な抗体反応を生じる能力を有するもの(McCarthy(1997)、Lancet 349:405)
が含まれる。
【0117】
大半のトランスジェニック実験では、依然としてマウスやラットが動物の選択肢であるが、他の動物種が好ましい、またはそれが必要な場合すらある。トランスジェニックの手順は、ヒツジ、ヤギ、ブタ、イヌ、ネコ、サル、チンパンジー、ハムスター、ウサギ、ウシ、モルモットなど、マウス以外の動物に対しても成功裡に用いられている(例えばKimら(1997)らMol.Reprod.Dev. 46:515−526;Houdebine(1995)、Reprod.Nutr.Dev. 35:609−617;Petters(1994)、Reprod.Fertil.Dev. 6:643−645;Schniekeら(1997)、Science 278:2130−2133;およびAmoah(1997)、J.Animal Sci. 75:578−585を参照)。
【0118】
組み替えの可能な哺乳類細胞への遺伝子断片の導入は、複数の核酸分子での同時形質転換に有利な(favors)あらゆる方法で行うことができる。トランスジェニック動物の作成手順の詳細は、当業者であれば容易に入手できるが、これには特許文献15および特許文献9の開示が含まれる。
【0119】
Q.診断方法
本発明の遺伝子およびタンパク質は、癌組織での発現が正常組織に比して異なるので、本発明の遺伝子およびタンパク質を用いて癌を診断または監視したり、疾患の進行を追跡したり、非癌性組織試料から癌性組織を区別することができる。本発明の遺伝子およびタンパク質を用いて癌を診断する手段の一つには、生きている被験者から組織を取得することが含まれる。
【0120】
本発明の核酸およびタンパク質を検出する試験は、入手可能なあらゆる様式のものであってよい。典型的な核酸分子用の試験には、ハイブリダイゼーションまたはPCRに基づく様式のものが含まれる。本発明のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを検出する典型的な試験には、入手可能なあらゆる様式による抗体プローブの利用、例えばin situ結合試験等が含まれる(Harlow & Lane,Antibodies − A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1988を参照)。好ましい実施形態においては、試験は適切な対照を用いて行う。
【0121】
一般に、その実施形態が核酸ベースの試験か、タンパク質ベースの試験かによって本発明の診断を分類することができる。ある種の診断試験は、本発明の核酸またはタンパク質における、癌性の異常に関与する変異または多型を検出する。他の診断試験は、罹患生物(例えば癌の)における本発明のRNAまたはタンパク質のレベルに類似した、被検生物における本発明のRNAまたはタンパク質のレベルを検出すること、または非罹患生物におけるRNAまたはタンパク質のレベルと異なる、被検生物におけるRNAまたはタンパク質のレベルを検出することにより、タンパク質活性の欠陥を同定・区別する。
【0122】
加えて、タンパク質の活性またはレベルの異常の迅速な検出・同定を考慮して、下記の態様に記載の試薬と方法を組み合わせたキットの製造も予期される。診断キットには、本発明のタンパク質の変異型を特異的に検出する核酸プローブ、抗体またはその組み合わせ、或いは本発明の1種以上のタンパク質のについてのRNAまたはタンパク質の発現レベル測定に用いることができる核酸プローブ、抗体またはその組み合わせが含まれていてよい。これらのキットの検出成分は、典型的には以下の試薬と組み合わせて供給される。DNA、RNAまたはタンパク質を吸着するか、さもなければそれと結合する担体がしばしば供給される。入手可能な担体には、ニトロセルロース、ナイロン、または、正に荷電した置換基の集まり(array)を有することで特徴付けることができる誘導体化ナイロンの膜が含まれる。これらのキットにおいて、制限酵素、対照試薬(control reagents)、緩衝液、増幅酵素および非ヒトポリヌクレオチド(ウシ胸腺またはサケ精子DNAなど)のうち1種以上を供給することができる。
【0123】
核酸ベースの有用な診断手法には、直接DNA配列決定、グラジエントゲル電気泳動、サザンブロット分析、一本鎖高次構造分析、RNAse保護試験、ドットブロット分析、核酸増幅、対立遺伝子特異的PCRおよびこれらのアプローチの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。これらの分析の出発点は、生物学的試料から単離または精製された核酸である。組織生検も良好な試料源をもたらすことが予期される。試料から核酸を抽出し、これをDNA増幅手法、例えばプライマーを用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅することができる。多型の存在を確認するための利用可能な方法は、当業者であれば容易に認識される。加えて、本発明のこの態様に関しては、当該技術において知られる何らかのアドレス指定可能な(addressable)アレイ技術を用いることができる。ポリヌクレオチドアレイの特定の1実施形態は、Genechips(登録商標)として知られ、特許文献16、特許文献17および特許文献18に一般に記載されている。
【0124】
広範なラベルおよび複合化手法が当業者には知られており、種々の核酸試験に利用することができる。ハイブリダイゼーションまたはPCRのためのラベル化核酸の製造方法には、オリゴラベル化(oligolabeling)、ニック翻訳(nick translation)、末端ラベル化(end−labeling)、ラベル化ヌクレオチドを用いるPCR増幅を初めとするいくつかの方法があるが、これらに限定されない。或いは、mRNAプローブを製造するために、本発明のタンパク質をコードする核酸を、ベクターにクローン化することができる。そのようなベクターは当該分野において知られており、市販されており、また適切なRNAポリメラーゼ(例えばT7、T3またはSP6)およびラベル化ヌクレオチドを添加して、in vitroでのRNAプローブに利用することができる。多くの会社(Pharmacia Biotech社(ニュージャージー州ピスキャタウェイ)、Promega社(ウィスコンシン州マディソン)、U.S. Biochemical Corp社(オハイオ州クリーブランド)など)が、市販キットおよびこれらの手順に関するプロトコールを提供している。適切なレポーター分子またはラベルには、放射性核種、酵素、蛍光、化学発光、クロモゲン試薬(chromogenic agents)、また基質、補因子、インヒビター、磁性粒子等が含まれる。
【0125】
タンパク質ベースの好ましい診断では、本発明の抗体を、整えられた(ordered)アレイ中の担体に付着させる。このとき、担体の互いに重複しない領域を区別するために、複数種の抗体を付着させる。タンパク質ベースの診断である利用可能な試験は、当業者には容易に認識される。タンパク質を生物学的試料より取得し、従来のアプローチ(放射活性、比色、蛍光など)によりラベルする。本発明の変異体および/または野生型タンパク質の、既知濃度のラベルした標準品を用いて、研究者は試料中の本発明のタンパク質の濃度を正確に測定し、この情報から、特定形態のタンパク質の発現レベルを評価することができる。デンシトメトリーにおける従来法を用いて、そのようなタンパク質の濃度または発現レベルをより正確に測定することもできる。これらのアプローチはまた、高処理能力の診断分析における当業者には知られる技術により容易に自動化される。先に詳述した通り、本発明のこの態様については、当該技術において知られる何らかのアドレス指定可能なアレイ技術を用いることができ、またこれにより、抗体結合パターンと診断情報を最大化する試みにおいて、チップ上にタンパク質アレイを示すことができる。
【0126】
先に考察した通り、本発明の遺伝子またはタンパク質における多型の存在または検出が、生物における癌または類似の疾患の診断をもたらす場合がある。更なる実施形態は、本発明の遺伝子またはタンパク質の多型による(polymorphic)変異体に対して特異的な検出成分(抗体など)を含んでなる診断キットの調製を含む。検出成分は、典型的には以下の1種以上の試薬と組み合わせて供給される。RNAまたはタンパク質を吸着するか、さもなければそれと結合する担体がしばしば供給される。この目的の入手可能な担体には、ニトロセルロース、ナイロン、または、正に荷電した置換基の集まりを有することで特徴付けることができる誘導体化ナイロンの膜、並びにGenechips(登録商標)およびその等価物が含まれるが、これらに限定されない。これらのキットにおいて、1種以上の酵素(逆転写酵素および/またはTaqポリメラーゼなど)を供給することができる。dNTP類、緩衝液または非ヒトポリヌクレオチド(ウシ胸腺またはサケ精子DNAなど)も同様である。キット試験での結果は、健康管理業者(healthcare provider)や診断研究所において解釈することができる。或いは、診断キットは個人に対して自己診断のために製造・販売される。
【0127】
多型の有無による疾患の診断に加え、癌関連のある種の疾患は、特定組織における本発明のタンパク質または遺伝子の偏った(skewed)レベル、または本発明のタンパク質の発現の異常パターンに起因している。例えば、種々の組織における発現のレベルを監視することにより、診断を行う、または疾患状態を同定することができる。同様に、本発明の種々のタンパク質の、特定組織における発現レベルの比(例えば、発現のパターン)を測定することにより、健康状態または疾患を予測することができる。癌を発症した個人と、健常な個人から得た種々の組織における、本発明のタンパク質の発現のレベルを測定する。これらの数値をデータベースに記録することができ、またそれを試験した個人から得た数値と比較することができる。加えて、健常な個人と罹患した個人の両者から得た種々の組織における、発現の比またはパターンをデータベースに記録する。これらの解析結果を「疾患状態プロファイル」と称し、ある疾患状態プロファイル(例えば健常な、または罹患した個人からの)を、試験すべき個人からの疾患状態プロファイルと比較することにより、臨床医は疾患の有無を迅速に診断することができる。
【0128】
上記の核酸ベースまたはタンパク質ベースの診断手法は、組織における本発明の遺伝子またはタンパク質の発現のレベル、量または比を検出するのに用いることができる。例えば定量的ノーザンハイブリダイゼーション、in situ解析、免疫組織化学、ELISA、遺伝子チップアレイ技術、PCRおよびウェスタンブロットを通じて、本発明の特定のタンパク質(野生型変異型)に対するRNAまたはタンパク質の発現の量またはレベルを迅速に測定することができ、この情報から、発現の比を確認することができる。或いは、分析すべき本発明のタンパク質が、現在は未知であるが、上記の相同性領域を1つ以上有することに基づき同定される、ファミリーの要素であることもある。
【0129】
これ以上の記載はなくとも、当業者は、これまでの記載および以降の具体例を用いて、本発明の化合物を製造・利用し、クレームされた方法を実施できると考えられる。従って、上記の実用的な例は、本発明の好ましい態様を具体的に指摘するものであり、いかなる面においても、他の開示を限定するものとは解釈されない。
【実施例】
【0130】
実施例1:癌において発現の異なるmRNAの同定−1
癌生検と正常組織の間の遺伝子発現における包括的な変化を、Gene Logic, Inc.社(メリーランド州Gaithersburg)のGeneExpress Oncology Datasuite(登録商標)を用いて調べた。データベースは、多数の異なる臓器から得た正常および癌組織に由来する、Affymetrix Human Genome U95アレイを用いて生成させた遺伝子発現プロファイルを含む。データベース中の組織試料のうち、本出願人らは、乳房、結腸、食道、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、卵巣、膵臓、前立腺、直腸および胃より得た正常および癌組織の組み合わせの発現プロファイルを解析した。
【0131】
Affymetrix Human Genome U95アレイは、63,175組のプローブを含んでいる。1組のプローブは、1つの転写物(遺伝子またはcDNAクローン)を検出するためのプローブの組であり、通常オリゴヌクレオチドプローブ16〜20対からなる。これらのプローブ対には、パーフェクトマッチの組とミスマッチの組が含まれ、平均の差の計算にはその両方が必要である。平均の差は、転写物の発現レベルの相対的な指標として役立つもので、各プローブ対についての強度差の尺度であり、パーフェクトマッチの強度からミスマッチの強度を差し引いて算出される。これは、プローブ対間のハイブリダイゼーションにおける可変性や、蛍光強度に影響する恐れのある他の擬似ハイブリダイゼーション(hybridization artifacts)を考慮したものである。計算した平均の差の数値を用いて、各遺伝子につき「不在」(=検出されない)、「存在」(=検出される)または「境界的(marginal)」(=明瞭な「不在」または「存在」でない)との絶対的判定(absolute call)を行う。
【0132】
癌性組織と正常組織の間の発現の差を、以下の統計的手法により測定した。
(1)各プローブの組について、Affymetrix Microarray Suite(v4.0)により、平均の差の値と絶対的判定を求める。
(2)所与の(given)試料の組において、MatLabプログラム(The MathWorks,Inc.社、マサチューセッツ州Natick)を用いる主成分分析(PCA)によって、組織試料中のアウトライヤーを検出した。PCAで用いたデータポイントは、無作為に選択したプローブの組(5,000〜6,000組)における平均の差であった。以降の解析からアウトライヤーを除外した。
(3)GeneExpressプログラムの倍率変化解析ツール(Fold Change Analysis tool)を用いて、遺伝子発現の変動を解析した。癌性試料の組における各遺伝子についての平均の差の平均値を、正常試料の組における同遺伝子についての平均の差の平均値と比較して、倍率変化(癌性/正常)を計算した。発現レベルにおいて3倍以上の増加または減少の見られる遺伝子を得た。分散分析試験(Analysis of Variance Test)により測定したp値が0.05以下のとき、遺伝子を解析に含めた(Steelら、Principles and Procedures of Statistics:A Biometrical Approach,Third Ed.,McGraw−Hill,1997)。
(4)5種以上の異なる癌において発現に差の見られる遺伝子を選択した。
【0133】
チップデータの解析により、正常組織からの試料に比べ、癌性組織からの試料では、マーカーLFG1の発現が有意に上方調整されていることが示された。LFG1(SEQ ID NO:1または3)の発現レベルは、Affymetrix GeneChips(登録商標)U95上のチップ配列断片no.91875_s_atにより測定できる。91875_s_at配列は、EST AI053741に由来する。種々の悪性腫瘍における91875_s_atの発現レベルを、対照の正常組織と比較して表1に示す(倍率変化、変化の方向性(上方または下方調整)およびp値も示す)。癌性試料の組における平均の差の幾何平均を、正常試料の組における平均の差の幾何平均と比較して、倍率変化(癌性/正常)を計算した。倍率変化が1.5を超えるものを有意とした(Wodickaら(1997)、Nature Biotech. 15:1359−1367)。各種の組織に関しての、「存在」、「不在」または「境界的」と判定された試料数も、その試料の組の総試料数と共に、表1に示されている。これらのデータは、LFG1の上方調整が癌の診断に役立つものでありうることを示している。
【0134】
【表1】
【0135】
GeneChipの発現結果(チップ配列断片no.91875_s_atに対する試料の結合により測定)を、Taqman(登録商標)試験(Perkin−Elmer社)を用いる定量的RT−PCR(Q−RT−PCR)により確認した。試験には、特定Affymetrix断片(91875_s_at)の配列情報ファイルに基づいて設計したPCRプライマー(5´−GCTGAAGCAGGAAAATCGCTT−3´(SEQ ID NO:17)および5´−TGAGACGGAGTCTCACTCGGT−3´(SEQ ID NO:18))を用いた。各RNA試料(総RNA:10ng)中の、参照遺伝子に対する標的遺伝子の試験を行った。この目的で、対照プライマーとして役立つ、CTBP1(C末端結合タンパク1)遺伝子に特異的なプライマー(5´−GTTTTTCCTAATTTTGGCATGAAC−3´(SEQ ID NO:19)および5´−CGCCCAAGCTTTTCCTTTT−3´(SEQ ID NO:20))を用いた。このアプローチは、CTBP1のサイクル閾値(Ct)に対しての標的mRNAのCtとして測定される相対発現をもたらす。試料パネルには、結腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、胃および膵臓からの、正常および癌組織の全RNAの対が含まれていた(Ambion, Inc.社、テキサス州Austin)。Q−RT−PCRデータは、正常試料に対しての、癌におけるLFG1の上方調整を立証するものであった。
【0136】
実施例2:発現の異なるmRNA種に対応する全長ヒトcDNA(LFG1)のクローニング
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)と、ヒト心臓由来のcDNAライブラリー(ResGen社、アラバマ州Huntsville)を用いるcDNA末端迅速増幅(rapid amplification of cDNA ends)(RACE)により、配列SEQ ID NO:1または3を有する全長cDNAを取得した。Human Genome Browser(カリフォルニア大学、Santa Cruz)を用いて予測した、91875_s_atの配列を含む遺伝子に基づいて、PCR用(5´−CACCCTTTGCCTCTGTCACTTCCGCA−3´(SEQ ID NO:21)、5´−GCTGGAGCACCAGGACTGCATTG−3´(SEQ ID NO:22)、5´−GGAGCTGAGCAGCAGTGTAATGAA−3´(SEQ ID NO:23)、5´−GAGGCCTGCCTGAAGGAGGAGCTTC−3´(SEQ ID NO:24)、5´−TCTGGAAGTAGTGCAGACGCCTCAGG−3´(SEQ ID NO:25)、5´−AGCCAACGTCGGCTTTGTTATCCAGC−3´(SEQ ID NO:26)、5´−GCTGTCAGATATGATGGTTCTGGAC−3´(SEQ ID NO:27)、5´−CCAGCCTCACCACTGTTGGGTTGC−3´(SEQ ID NO:28)、5´−CATTCTCTGAGCTGTATTAGTGT−3´(SEQ ID NO:29)、5´−CCTGAGCTGGAATGACCTGCA−3´(SEQ ID NO:30)、5´−CTTTGTGTTGGCTGCAGCCACA−3´(SEQ ID NO:31)、5´−TGAGGAGAGACTTTGCTGACTGGT−3´(SEQ ID NO:32)、5´−GTCCTGTCTGGCGGTGCCGA−3´(SEQ ID NO:33)、5´−GCTCCAGGATCCCCTGTCACCTGGGCCTTCTGCCTTTTGGCT−3´(SEQ ID NO:34)、5´−CCATATGGAGAGGAGAGCAGCGGGCCCA−3´(SEQ ID NO:35)、5´−GAAGGAGGAACATGGAGAGGAGA−3´(SEQ ID NO:36)、5´−CCATATGCCCCGGGTAGTCTACTGCAT−3´ (SEQ ID NO:37)および5´−GTCGACTCGAGTCACTTCCGCAAAAACTTCTTG−3´(SEQ ID NO:38))およびRACE用(5´−TCCATTCCGAAGGCTCTCCTCC−3´(SEQ ID NO:39)、5´−GTCTGTGTGACGGAAATGTAAGC−3´(SEQ ID NO:40)および5´−GAAGGTCGAAGGCAGACCGATGT−3´(SEQ ID NO:41))の遺伝子特異的なオリゴマー(oligos)を設計した。これらのプライマーを用いて増幅した産物を、Topo Cloning System(Invitrogen社、カリフォルニア州Carlsbad)を用いてPCR4−Topoベクターに組み込み、次いで配列決定を行った。
【0137】
上記で検出された、調節に差のあるmRNAに対応する全長ヒトcDNAのヌクレオチド配列を、SEQ ID NO:1および3に記載する。前者では、cDNAは5293塩基対を含んでなる。後者では、cDNAは5317塩基対を含んでなる。
cDNAヌクレオチド配列SEQ ID NO:1内のオープンリーディングフレーム(第390〜4880番目(停止コドンを含めて第390〜4883番目)のヌクレオチド)は、1497アミノ酸からなるタンパク質をコードする。SEQ ID NO:1がコードする、予測されるタンパク質に対応するアミノ酸配列を、SEQ ID NO:2に記載する。図2は、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列の、Kyte−Doolittle値(KyteおよびDoolittle(1982)、J.Mol.Biol. 157:105−142)を用いた疎水性解析の結果を示す。上記のように、親水性領域は抗原性ペプチドの製造に用いうる。
【0138】
cDNAヌクレオチド配列SEQ ID NO:3内のオープンリーディングフレーム(第12〜4904番目(停止コドンを含めて第12〜4907番目)のヌクレオチド)は、1631アミノ酸からなるタンパク質をコードする。SEQ ID NO:3がコードする、予測されるタンパク質に対応するアミノ酸配列を、SEQ ID NO:4に記載する。図3は、SEQ ID NO:4のアミノ酸配列の、Kyte−Doolittle値(KyteおよびDoolittle(1982)、J.Mol.Biol. 157:105−142)を用いた疎水性解析の結果を示す。上記のように、親水性領域は抗原性ペプチドの製造に用いうる。
SEQ ID NO:2のタンパク質配列は、SEQ ID NO:4のそれと同一である。ただし、SEQ ID NO:2には、SEQ ID NO:4のN末端側の初めの134アミノ酸がないことを除く。
【0139】
配列SEQ ID NO:2および4は、カルポニン相同性ドメイン(SEQ ID NO:4の第38〜145番目のアミノ酸)、IQカルモジュリン結合ドメイン(SEQ ID NO:2の第629〜646番目のアミノ酸およびSEQ ID NO:4の第763〜780番目のアミノ酸)、RasGAPドメイン(SEQ ID NO:2の第858〜1195番目のアミノ酸およびSEQ ID NO:4の第992〜1329番目のアミノ酸)およびRasGAP C末端ドメイン(SEQ ID NO:2の第1298〜1421番目のアミノ酸およびSEQ ID NO:4の第1432〜1555番目のアミノ酸)を含んでいる。配列SEQ ID NO:2および4は、IQGAPタンパク(Weissbachら(1994)、J Biol Chem 269:20517−20521;およびBrillら(1996)、Mol Cell Biol 16:4869−4878)と類似している。IQGAPは、細胞骨格構造、細胞−細胞接着および増殖シグナル伝達(proliferation signaling)に関与するタンパク質と結合し、その機能を調節する(Fukadaら(2002)、Cell 109:1−20;Briggsら(2002)、J Biol Chem 277:7453−7465;およびMcCallumら(1998)、J Biol Chem 273:22537−22544)。IQGAP欠損マウスは、野性型に比べ、胃増殖遅延(late−onset gastric hyperplasia)の有意な増加を示した(Liら(2000)、Mol Cell Biol 20:697−701)。
【0140】
LFG1に対応するmRNA転写物のサイズを測定するため、ノーザンブロットによる分析を行った。種々のヒト組織由来の全RNAを含むノーザンブロット(Human 12−Lane MTN Blot、Clontech社、カリフォルニア州Palo Alto)を用い、91875_s_at配列を含むESTを、ランダムプライマー法により放射活性ラベルし、ブロットのプローブに用いた。50%ホルムアミド、5×SSPE、0.1% SDS、5×Denhardt溶液および0.2mg/mlニシン精子DNA中、42℃でブロットのハイブリダイゼーションを行い、0.1% SDSを含む0.2×SSCで、室温で洗浄した。ノーザンブロットにより、この遺伝子に対する3種の転写物が示され、そのサイズは約7.2kbおよび6.3kbであった。これは、LFG1クローン(配列SEQ ID NO:1および3)のサイズに対応する。
【0141】
実施例3:癌において発現の異なるmRNAの同定−2
マーカーLFG1に替えてマーカーLFG2を用いた以外は、実施例1の方法を繰り返した。
チップデータの解析により、正常組織からの試料に比べ、癌性組織からの試料では、マーカーLFG2の発現が有意に下方調整されていることが示された。LFG2(SEQ ID NO:5)の発現レベルは、Affymetrix GeneChips(登録商標)U95上のチップ配列断片no.82941_atにより測定できる。82941_at配列は、EST AI277612に由来する。種々の悪性腫瘍における82941_atの発現レベルを、対照の正常組織と比較して表2に示す(倍率変化、変化の方向性(上方または下方調整)およびp値も示す)。癌性試料の組における平均の差の幾何平均を、正常試料の組における平均の差の幾何平均と比較して、倍率変化(癌性/正常)を計算した。倍率変化が1.5を超えるものを有意とした(Wodickaら(1997)、Nature Biotech. 15:1359−1367)。各種の組織に関しての、「存在」、「不在」または「境界的」と判定された試料数も、その試料の組の総試料数と共に、表2に示されている。これらのデータは、LFG2の下方調整が癌の診断に役立つものでありうることを示している。
【0142】
【表2】
【0143】
GeneChipの発現結果(チップ配列断片no.82941_atに対する試料の結合により測定)を、Taqman(登録商標)試験(Perkin−Elmer社)を用いる定量的RT−PCR(Q−RT−PCR)により確認した。試験には、Affymetrix断片(82941_at)を含むESTの配列情報ファイルに基づいて設計したPCRプライマー(5´−GAATGTGTCAGAGACAAGTGCAGC−3´(SEQ ID NO:42)および5´−TGTAGAAACTCTTGGACTAATGGAGG−3´(SEQ ID NO:43))を用いた。各RNA試料(総RNA:10ng)中の、参照遺伝子に対する標的遺伝子の試験を行った。この目的で、対照プライマーとして役立つ、CTBP1(C末端結合タンパク1)遺伝子に特異的なプライマー(5´−GTTTTTCCTAATTTTGGCATGAAC−3´(SEQ ID NO:19)および5´−CGCCCAAGCTTTTCCTTTT−3´(SEQ ID NO:20))を用いた。このアプローチは、CTBP1のサイクル閾値(Ct)に対しての標的mRNAのCtとして測定される相対発現をもたらす。試料パネルには、結腸、肝臓、肺、卵巣および胃からの、正常および癌組織の全RNAの対が含まれていた(Ambion, Inc.社、テキサス州Austin)。Q−RT−PCRデータは、正常試料に対しての、癌におけるLFG2の下方調整を立証するものであった。
【0144】
実施例4:発現の異なるmRNA種に対応する全長ヒトcDNA(LFG2)のクローニング
GeneTrapper試験(Life Technologies社、メリーランド州Rockville)を用いるオリゴプリング(oligo−pulling)法により、配列SEQ ID NO:5を有する全長cDNAを取得した。簡単に言えば、82941_at配列を含むESTの配列に基づいて、遺伝子特異的なオリゴマー(5´−GAATGTGTCAGAGACAAGTGCAGC−3´(SEQ ID NO:42))を設計した。オリゴマーをビオチンでラベルし、これを用いて、あまり差のなかった胃腺癌ライブラリー由来の1本鎖プラスミドDNA(cDNA組み替え体)(NCI CGAP Gas4)(ResGen社、アラバマ州Huntsville)5μgとのハイブリダイゼーションを、Sambrookらの手順に従って行った。ハイブリダイズしたcDNAを、ストレプトアビジンを結合させたビーズにより分離し、加熱により溶出させた。溶出したcDNAを二本鎖プラスミドDNAに変換し、これを用いて大腸菌(DH10B)細胞を形質転換して、最長のcDNAをスクリーニングした。遺伝子特異的なプライマーを用いるPCRにより陽性の選択を確認した後、cDNAをDNA配列決定に付した。
【0145】
上記で検出された、調節に差のあるmRNAに対応する全長ヒトcDNAのヌクレオチド配列を、SEQ ID NO:5に記載する。cDNAは、3608塩基対を含んでなる。
cDNAヌクレオチド配列SEQ ID NO:5内のオープンリーディングフレーム(第424〜1908番目(停止コドンを含めて第424〜1911番目)のヌクレオチド)は、495アミノ酸からなるタンパク質をコードする。SEQ ID NO:5がコードする、予測されるタンパク質に対応するアミノ酸配列を、SEQ ID NO:6に記載する。
【0146】
配列SEQ ID NO:6は、スカベンジャー受容体との相同性を有する。これは、選択されたポリアニオン性リガンドのエンドサイトーシス、アポトーシス細胞または細菌の食作用、細胞接着およびアテローム性動脈硬化の発症に関与する(Peiserら(2002)、Curr.Opin.Immunol. 14:123−128;およびResnickら(1994)、Trends Biol.Sci. 19:5−8)。公開されているスカベンジャー受容体の研究に基づくと、配列SEQ ID NO:6は、細胞質ドメイン(第1〜35番目のアミノ酸)、膜貫通ドメイン(第36〜58番目のアミノ酸)、α−ヘリックスコイルを成すコイルドメイン(第90〜301番目のアミノ酸)、コラーゲン様ドメイン(第305〜380番目のアミノ酸)およびスカベンジャー受容体システインリッチ(SRCR)ドメイン(第393〜493番目のアミノ酸)を含んでいる。SRCRドメインは、6つのシステイン残基を含み(第418、431、462、472、482および492番目のアミノ酸)、これらはドメイン内ジスルフィド結合に関与している可能性がある。配列SEQ ID NO:6はまた、マウス相同体(GenBank Accession No. BC016096)との相同性を示す。これは、連続する全配列に対して70%の同一性を示す。
【0147】
図4は、SEQ ID NO:6のアミノ酸配列の、Kyte−Doolittle値(KyteおよびDoolittle(1982)、J.Mol.Biol. 157:105−142)を用いた疎水性解析の結果を示す。上記のように、親水性領域は抗原性ペプチドの製造に用いうる。
【0148】
LFG2に対応するmRNA転写物のサイズを測定するため、ノーザンブロットによる分析を行った。種々のヒト組織由来の全RNAを含むノーザンブロット(Human MTN Blot、Clontech社、カリフォルニア州Palo Alto)を用い、82941_at配列を含むESTを、ランダムプライマー法により放射活性ラベルし、ブロットのプローブに用いた。50%ホルムアミド、5×SSPE、0.1% SDS、5×Denhardt溶液および0.2mg/mlニシン精子DNA中、42℃でブロットのハイブリダイゼーションを行い、0.1% SDSを含む0.2×SSCで、室温で洗浄した。ノーザンブロットにより、この遺伝子に対する単一の転写物が示され、そのサイズは約3.7kbであった。これは、LFG2クローン(配列SEQ ID NO:5)のサイズに対応する。
【0149】
実施例5:癌において発現の異なるmRNAの同定−3
マーカーLFG1に替えてマーカーLFG3を用いた以外は、実施例1の方法を繰り返した。
チップデータの解析により、正常組織からの試料に比べ、癌性組織からの試料では、マーカーLFG3の発現が有意に下方調整されていることが示された。LFG3(SEQ ID NO:7)の発現レベルは、Affymetrix GeneChips(登録商標)U95上のチップ配列断片no.46104_atにより測定できる。46104_at配列は、EST AA772055に由来する。種々の悪性腫瘍における46104_atの発現レベルを、対照の正常組織と比較して表3に示す(倍率変化、変化の方向性(上方または下方調整)およびp値も示す)。癌性試料の組における平均の差の幾何平均を、正常試料の組における平均の差の幾何平均と比較して、倍率変化(癌性/正常)を計算した。倍率変化が1.5を超えるものを有意とした(Wodickaら(1997)、Nature Biotech. 15:1359−1367)。各種の組織に関しての、「存在」、「不在」または「境界的」と判定された試料数も、その試料の組の総試料数と共に、表3に示されている。これらのデータは、LFG3の下方調整が癌の診断に役立つものでありうることを示している。
【0150】
【表3】
【0151】
GeneChipの発現結果(チップ配列断片no.46104_atに対する試料の結合により測定)を、Taqman(登録商標)試験(Perkin−Elmer社)を用いる定量的RT−PCR(Q−RT−PCR)により確認した。試験には、Affymetrix断片(46104_at)を含むESTの配列情報ファイルに基づいて設計したPCRプライマー(5´−GTATGCATCAGAATTCCCTATAGATCTTT−3´(SEQ ID NO:44)および5´−TAGATGTTTGGGCAACAGCCT−3´(SEQ ID NO:45))を用いた。各RNA試料(総RNA:10ng)中の、参照遺伝子に対する標的遺伝子の試験を行った。この目的で、対照プライマーとして役立つ、CTBP1(C末端結合タンパク1)遺伝子に特異的なプライマー(5´−GTTTTTCCTAATTTTGGCATGAAC−3´(SEQ ID NO:19)および5´−CGCCCAAGCTTTTCCTTTT−3´(SEQ ID NO:20))を用いた。このアプローチは、CTBP1のサイクル閾値(Ct)に対しての標的mRNAのCtとして測定される相対発現をもたらす。試料パネルには、結腸、腎臓、卵巣、膵臓および胃からの、正常および癌組織の全RNAの対が含まれていた(Ambion, Inc.社、テキサス州Austin)。Q−RT−PCRデータは、正常試料に対しての、癌におけるLFG3の下方調整を立証するものであった。
【0152】
実施例6:発現の異なるmRNA種に対応する全長ヒトcDNA(LFG3)のクローニング
GeneTrapper試験(Life Technologies社、メリーランド州Rockville)を用いるオリゴプリング法により、配列SEQ ID NO:7を有する全長cDNAを取得した。簡単に言えば、46104_at配列を含むESTの配列に基づいて、遺伝子特異的なオリゴマー(5´−GTATGCATCAGAATTCCCTATAGATCTTT−3´(SEQ ID NO:44))を設計した。オリゴマーをビオチンでラベルし、これを用いて、ヒト胎児腎臓由来の1本鎖プラスミドDNA(cDNA組み替え体)(ResGen社、アラバマ州Huntsville)5μgとのハイブリダイゼーションを、Sambrookらの手順に従って行った。ハイブリダイズしたcDNAを、ストレプトアビジンを結合させたビーズにより分離し、加熱により溶出させた。溶出したcDNAを二本鎖プラスミドDNAに変換し、これを用いて大腸菌(DH10B)細胞を形質転換して、最長のcDNAをスクリーニングした。遺伝子特異的なプライマーを用いるPCRにより陽性の選択を確認した後、cDNAをDNA配列決定に付した。LFG3の5´末端は、ヒト胎児腎臓より調製したcDNA(Clontech社、カリフォルニア州Palo Alto)および遺伝子特異的なプライマー(5´−TTCCTTCACCAAAGGCATCCAGCCATTCTATG−3´(SEQ ID NO:46))を用いるcDNA末端迅速増幅(RACE)により同定した。
【0153】
上記で検出された、調節に差のあるmRNAに対応する全長ヒトcDNAのヌクレオチド配列を、SEQ ID NO:7に記載する。cDNAは、3162塩基対を含んでなる。
cDNAヌクレオチド配列SEQ ID NO:7内のオープンリーディングフレーム(第405〜1835番目(停止コドンを含めて第405〜1838番目)のヌクレオチド)は、477アミノ酸からなるタンパク質をコードする。SEQ ID NO:7がコードする、予測されるタンパク質に対応するアミノ酸配列を、SEQ ID NO:8に記載する。
【0154】
配列SEQ ID NO:8は、モノカルボキシレート輸送タンパク質(MCTs)に類似しており、膜貫通ドメインと予想されるものを10個(第10〜29、80〜99、107〜128、140〜160、274〜295、312〜332、339〜360、363〜384、396〜416および433〜451番目のアミノ酸)有している。MCTタンパク質は、モノカルボキシレート(乳酸イオン、ピルビン酸イオン、分枝オキソ酸、ケトン体、β−ヒドロキシ酪酸イオン、酢酸イオンなど)の促進輸送を触媒する(HalestrapおよびPrice(1999)、Biochem.J. 343:281−299)。8種の既知モノカルボキシレート輸送タンパク質に対する、配列SEQ ID NO:8の類似性の比を表4にまとめる。
【0155】
【表4】
【0156】
図5は、SEQ ID NO:8のアミノ酸配列の、Kyte−Doolittle値(KyteおよびDoolittle(1982)、J.Mol.Biol. 157:105−142)を用いた疎水性解析の結果を示す。上記のように、親水性領域は抗原性ペプチドの製造に用いうる。
【0157】
LFG3に対応するmRNA転写物のサイズを測定するため、ノーザンブロットによる分析を行った。種々のヒト組織由来の全RNAを含むノーザンブロット(Human 12−Lane MTN Blot、Clontech社、カリフォルニア州Palo Alto)を用い、46104_at配列を含むESTを、ランダムプライマー法により放射活性ラベルし、ブロットのプローブに用いた。50%ホルムアミド、5×SSPE、0.1% SDS、5×Denhardt溶液および0.2mg/mlニシン精子DNA中、42℃でブロットのハイブリダイゼーションを行い、0.1% SDSを含む0.2×SSCで、室温で洗浄した。ノーザンブロットにより、この遺伝子に対する単一の転写物が示され、そのサイズは約4.2kbであった。これは、LFG3クローン(配列SEQ ID NO:7)のサイズに対応する。
【0158】
実施例7:癌において発現の異なるmRNAの同定−4
マーカーLFG1に替えてマーカーLFG4を用いた以外は、実施例1の方法を繰り返した。
チップデータの解析により、正常組織からの試料に比べ、癌性組織からの試料では、マーカーLFG4の発現が有意に下方調整されていることが示された。LFG4(SEQ ID NO:9)の発現レベルは、Affymetrix GeneChips(登録商標)U95上のチップ配列断片no.62158_atにより測定できる。62158_at配列は、EST AI123532に由来する。種々の悪性腫瘍における62158_atの発現レベルを、対照の正常組織と比較して表5に示す(倍率変化、変化の方向性(上方または下方調整)およびp値も示す)。癌性試料の組における平均の差の幾何平均を、正常試料の組における平均の差の幾何平均と比較して、倍率変化(癌性/正常)を計算した。倍率変化が1.5を超えるものを有意とした(Wodickaら(1997)、Nature Biotech. 15:1359−1367)。各種の組織に関しての、「存在」、「不在」または「境界的」と判定された試料数も、その試料の組の総試料数と共に、表5に示されている。これらのデータは、LFG4の下方調整が癌の診断に役立つものでありうることを示している。
【0159】
【表5】
【0160】
GeneChipの発現結果(チップ配列断片no.62158_atに対する試料の結合により測定)を、Taqman(登録商標)試験(Perkin−Elmer社)を用いる定量的RT−PCR(Q−RT−PCR)により確認した。試験には、Affymetrix断片(62158_at)を含むESTの配列情報ファイルに基づいて設計したPCRプライマー(5´−AAATGTCTGATTACCCCATTTTATCAGT−3´(SEQ ID NO:47)および5´−TAATCCTGAAATGAACAGCTAACA−3´(SEQ ID NO:48))を用いた。各RNA試料(総RNA:10ng)中の、参照遺伝子に対する標的遺伝子の試験を行った。この目的で、対照プライマーとして役立つ、CTBP1(C末端結合タンパク1)遺伝子に特異的なプライマー(5´−GTTTTTCCTAATTTTGGCATGAAC−3´(SEQ ID NO:19)および5´−CGCCCAAGCTTTTCCTTTT−3´(SEQ ID NO:20))を用いた。このアプローチは、CTBP1のサイクル閾値(Ct)に対しての標的mRNAのCtとして測定される相対発現をもたらす。試料パネルには、結腸、肝臓、肺、卵巣、膵臓および胃からの、正常および癌組織の全RNAの対が含まれていた(Ambion, Inc.社、テキサス州Austin)。Q−RT−PCRデータは、正常試料に対しての、癌におけるLFG4の下方調整を立証するものであった。
【0161】
実施例8:発現の異なるmRNA種に対応する全長ヒトcDNA(LFG4)のクローニング
cDNA末端迅速増幅(RACE)により、配列SEQ ID NO:9を有する全長cDNAを取得した。簡単に言えば、62158_at配列を含むESTの配列に基づいて、遺伝子特異的なオリゴマー(5´−TAATGTTAGAGTAACAGCATTTTCCTTCAA−3´(SEQ ID NO:49)および5´−TGCCCCACACTAACTCAGTTCTTGTGATG−3´(SEQ ID NO:50))を設計した。これらのオリゴマーを用いて、ヒト脳より調製したcDNA(Clontech社、カリフォルニア州Palo Alto)のPCT増幅を行った。これらのプライマーを用いて増幅した産物を、Topo Cloning System(Invitrogen社、カリフォルニア州Carlsbad)を用いてPCR4−Topoベクターに組み込み、次いで配列決定を行った。
【0162】
上記で検出された、調節に差のあるmRNAに対応する全長ヒトcDNAのヌクレオチド配列を、SEQ ID NO:9に記載する。cDNAは、4891塩基対を含んでなる。
cDNAヌクレオチド配列SEQ ID NO:9内のオープンリーディングフレーム(第89〜1150番目(停止コドンを含めて第89〜1153番目)のヌクレオチド)は、354アミノ酸からなるタンパク質をコードする。SEQ ID NO:9がコードする、予測されるタンパク質に対応するアミノ酸配列を、SEQ ID NO:10に記載する。
【0163】
配列SEQ ID NO:10は、ラットキロンおよびニワトリニューロトラクチンに類似している(Funatsuら(1999)、J Biol Chem 274:8224−8230;およびMargら(1999)、J Cell Biol 145:865−876)。タンパク質配列解析により、分泌シグナルペプチド(第1〜33番目のアミノ酸)、3つのイムノグロブリンドメイン(第47〜136、145〜208および231〜312番目のアミノ酸)、および6つのN−結合型グリコシル化部位と推定される部位(第73、155、275、286、294および307番目のアミノ酸)が明らかとなった。キロン/ニューロトラクチンは、イムノグロブリンスーパーファミリーのIgLONサブファミリーの要素である。IgLON類は、神経突起伸展を修飾すると考えられ、分子−分子接着や認識において役割を果たしているらしい、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)結合型細胞接着分子のファミリーである(Miyateら(2000)、J Comparative Neurol 424:74−85)。
【0164】
図6は、SEQ ID NO:10のアミノ酸配列の、Kyte−Doolittle値(KyteおよびDoolittle(1982)、J.Mol.Biol. 157:105−142)を用いた疎水性解析の結果を示す。上記のように、親水性領域は抗原性ペプチドの製造に用いうる。このヒドロパシープロット(hydropathy plot)は、C末端に疎水性領域の存在を示している。GPIアンカー型タンパク質の場合、GPIアンカーの付加はC末端疎水性領域の切断後に起こることが知られている。GPIアンカー付加部位と推定される部位が見出された(第324番目のアミノ酸であるGly)。
【0165】
LFG4に対応するmRNA転写物のサイズを測定するため、ノーザンブロットによる分析を行った。種々のヒト組織由来の全RNAを含むノーザンブロット(Human 12−Lane MTN Blot、Clontech社、カリフォルニア州Palo Alto)を用い、62158_at配列を含むESTを、ランダムプライマー法により放射活性ラベルし、ブロットのプローブに用いた。50%ホルムアミド、5×SSPE、0.1% SDS、5×Denhardt溶液および0.2mg/mlニシン精子DNA中、42℃でブロットのハイブリダイゼーションを行い、0.1% SDSを含む0.2×SSCで、室温で洗浄した。ノーザンブロットにより、この遺伝子に対する単一の転写物が示され、そのサイズは約5.4kbであった。これは、LFG4クローン(配列SEQ ID NO:9)のサイズに対応する。
【0166】
実施例9:癌において発現の異なるmRNAの同定−5
マーカーLFG1に替えてマーカーLFG5を用いた以外は、実施例1の方法を繰り返した。
チップデータの解析により、正常組織からの試料に比べ、癌性組織からの試料では、マーカーLFG5の発現が有意に下方調整されていることが示された。LFG5(SEQ ID NO:11)の発現レベルは、Affymetrix GeneChips(登録商標)U95上のチップ配列断片no.46659_atにより測定できる。種々の悪性腫瘍における46659_atの発現レベルを、対照の正常組織と比較して表6に示す(倍率変化、変化の方向性(上方または下方調整)およびp値も示す)。癌性試料の組における平均の差の幾何平均を、正常試料の組における平均の差の幾何平均と比較して、倍率変化(癌性/正常)を計算した。各種の組織に関しての、「存在」、「不在」または「境界的」と判定された試料数も、その試料の組の総試料数と共に、表6に示されている。これらのデータは、LFG5の調整の差が癌の診断に役立つものでありうることを示している。
【0167】
【表6】
【0168】
GeneChipの発現結果(チップ配列断片no.46659_atに対する試料の結合により測定)を、Taqman(登録商標)試験(Perkin−Elmer社)を用いる定量的RT−PCR(Q−RT−PCR)により確認した。試験には、特定Affymetrix断片(46659_at)の配列情報ファイルに基づいて設計したPCRプライマー(5´−AAGGCTTTATCAGGTCTGCATATAGAATC−3´(SEQ ID NO:51)および5´−GCAAAGAACCCTAATGCTATTTATCAGC−3´(SEQ ID NO:52))を用いた。各RNA試料(総RNA:10ng)中の、参照遺伝子に対する標的遺伝子の試験を行った。この目的で、対照プライマーとして役立つ、CTBP1(C末端結合タンパク1)遺伝子に特異的なプライマー(5´−GTTTTTCCTAATTTTGGCATGAAC−3´(SEQ ID NO:19)および5´−CGCCCAAGCTTTTCCTTTT−3´(SEQ ID NO:20))を用いた。このアプローチは、CTBP1のサイクル閾値(Ct)に対しての標的mRNAのCtとして測定される相対発現をもたらす。試料パネルには、腎臓、肺、卵巣および膵臓からの、正常および癌組織の全RNAの対が含まれていた(Ambion, Inc.社、テキサス州Austin)。Q−RT−PCRデータは、正常試料に対しての、癌におけるLFG5の調整の差を立証するものであった。
【0169】
実施例10:発現の異なるmRNA種に対応する全長ヒトcDNA(LFG5)のクローニング
GeneTrapper試験(Life Technologies社、メリーランド州Rockville)を用いるオリゴプリング法により、配列SEQ ID NO:11を有する全長cDNAを取得した。簡単に言えば、46659_at配列を含むESTの配列に基づいて、遺伝子特異的なオリゴマー(5´−GAGAAGACCAGGGAAGAAGCAG−3´(SEQ ID NO:53))を設計した。オリゴマーをビオチンでラベルし、これを用いて、ヒト心臓ライブラリー由来の1本鎖プラスミドDNA(cDNA組み替え体)(NCI CGAP Gas4)(ResGen社、アラバマ州Huntsville)5μgとのハイブリダイゼーションを、Sambrookらの手順に従って行った。ハイブリダイズしたcDNAを、ストレプトアビジンを結合させたビーズにより分離し、加熱により溶出させた。溶出したcDNAを二本鎖プラスミドDNAに変換し、これを用いて大腸菌(DH10B)細胞を形質転換して、最長のcDNAをスクリーニングした。遺伝子特異的なプライマーを用いるPCRにより陽性の選択を確認した後、cDNAをDNA配列決定に付した。
【0170】
上記で検出された、調節に差のあるmRNAに対応する全長ヒトcDNAのヌクレオチド配列を、SEQ ID NO:11に記載する。cDNAは、3098塩基対を含んでなる。
cDNAヌクレオチド配列SEQ ID NO:11内のオープンリーディングフレーム(第223〜1569番目(停止コドンを含めて第223〜1572番目)のヌクレオチド)は、449アミノ酸からなるタンパク質をコードする。SEQ ID NO:11がコードする、予測されるタンパク質に対応するアミノ酸配列を、SEQ ID NO:12に記載する。
【0171】
配列SEQ ID NO:12は、チミジル酸キナーゼドメイン(第257〜438番目のアミノ酸)を含んでいる。チミジル酸キナーゼは、RNAおよびDNA合成のためのヌクレオチド合成において役割を果たし、治療用ヌクレオシドおよびヌクレオチド類似体の薬理学的活性化において必要とされる、ヌクレオチドモノリン酸キナーゼ類(NMPKs)の要素である(Van Rompayら(2000)、Pharmacology & Therapeutics 87:189−198)。配列SEQ ID NO:12は、マクロファージ活性化の際に誘導されるマウスチミジル酸キナーゼ(GenBank Accession No. NM_020557)との相同性を示す(LeeおよびO´Brien(1995)、J Immunol. 154:6094−6102)。これは、連続する全配列に対して63%の同一性を示す。
【0172】
図7は、SEQ ID NO:12のアミノ酸配列の、Kyte−Doolittle値(KyteおよびDoolittle(1982)、J.Mol.Biol. 157:105−142)を用いた疎水性解析の結果を示す。上記のように、親水性領域は抗原性ペプチドの製造に用いうる。
【0173】
LFG5に対応するmRNA転写物のサイズを測定するため、ノーザンブロットによる分析を行った。種々のヒト組織由来の全RNAを含むノーザンブロット(Human MTN Blot、Clontech社、カリフォルニア州Palo Alto)を用い、82941_at配列を含むESTを、ランダムプライマー法により放射活性ラベルし、ブロットのプローブに用いた。50%ホルムアミド、5×SSPE、0.1% SDS、5×Denhardt溶液および0.2mg/mlニシン精子DNA中、42℃でブロットのハイブリダイゼーションを行い、0.1% SDSを含む0.2×SSCで、室温で洗浄した。ノーザンブロットにより、この遺伝子に対する単一の転写物が示され、そのサイズは約3.0kbであった。これは、LFG5クローン(配列SEQ ID NO:11)のサイズに対応する。
【0174】
実施例11:癌において発現の異なるmRNAの同定−6
マーカーLFG1に替えてマーカーLFG6を用いた以外は、実施例1の方法を繰り返した。
チップデータの解析により、正常組織からの試料に比べ、癌性組織からの試料では、マーカーLFG6の発現が有意に上方調整されていることが示された。LFG6(SEQ ID NO:13または15)の発現レベルは、Affymetrix GeneChips(登録商標)U95上のチップ配列断片no.44103_atにより測定できる。44103_at配列は、EST AA865614に由来する。種々の悪性腫瘍における44103_atの発現レベルを、対照の正常組織と比較して表7に示す(倍率変化、変化の方向性(上方または下方調整)およびp値も示す)。癌性試料の組における平均の差の幾何平均を、正常試料の組における平均の差の幾何平均と比較して、倍率変化(癌性/正常)を計算した。倍率変化が1.5を超えるものを有意とした(Wodickaら(1997)、Nature Biotech. 15:1359−1367)。各種の組織に関しての、「存在」、「不在」または「境界的」と判定された試料数も、その試料の組の総試料数と共に、表7に示されている。これらのデータは、LFG6の上方調整が癌の診断に役立つものでありうることを示している。
【0175】
【表7】
【0176】
GeneChipの発現結果(チップ配列断片no.44103_atに対する試料の結合により測定)を、Taqman(登録商標)試験(Perkin−Elmer社)を用いる定量的RT−PCR(Q−RT−PCR)により確認した。試験には、特定Affymetrix断片(44103_at)の配列情報ファイルに基づいて設計したPCRプライマー(5´−GGACGGGGAACTTGGACGC−3´(SEQ ID NO:54)および5´−AAGTGCAGGGCCTCTGGGTG−3´(SEQ ID NO:55))を用いた。各RNA試料(総RNA:10ng)中の、参照遺伝子に対する標的遺伝子の試験を行った。この目的で、対照プライマーとして役立つ、CTBP1(C末端結合タンパク1)遺伝子に特異的なプライマー(5´−GTTTTTCCTAATTTTGGCATGAAC−3´(SEQ ID NO:19)および5´−CGCCCAAGCTTTTCCTTTT−3´(SEQ ID NO:20))を用いた。このアプローチは、CTBP1のサイクル閾値(Ct)に対しての標的mRNAのCtとして測定される相対発現をもたらす。試料パネルには、肝臓および卵巣からの、正常および癌組織の全RNAの対が含まれていた(Ambion, Inc.社、テキサス州Austin)。Q−RT−PCRデータは、正常試料に対しての、癌におけるLFG6の上方調整を立証するものであった。
【0177】
実施例12:発現の異なるmRNA種に対応する全長ヒトcDNA(LFG6)のクローニング
GeneTrapper試験(Life Technologies社、メリーランド州Rockville)を用いるオリゴプリング法により、配列SEQ ID NO:13または15を有する全長cDNAを取得した。簡単に言えば、44103_at配列を含むESTの配列に基づいて、遺伝子特異的なオリゴマー(5´−CGCTGGGTCATCGGACGGT−3´(SEQ ID NO:56))を設計した。オリゴマーをビオチンでラベルし、これを用いて、十分に差があった胃腺癌ライブラリー由来の1本鎖プラスミドDNA(cDNA組み替え体)(NCI CGAP Gas4)(ResGen社、アラバマ州Huntsville)5μgとのハイブリダイゼーションを、Sambrookらの手順に従って行った。ハイブリダイズしたcDNAを、ストレプトアビジンを結合させたビーズにより分離し、加熱により溶出させた。溶出したcDNAを二本鎖プラスミドDNAに変換し、これを用いて大腸菌(DH10B)細胞を形質転換して、最長のcDNAをスクリーニングした。遺伝子特異的なプライマーを用いるPCRにより陽性の選択を確認した後、cDNAをDNA配列決定に付した。
【0178】
上記で検出された、調節に差のあるmRNAに対応する全長ヒトcDNAのヌクレオチド配列を、SEQ ID NO:13および15に記載する。前者では、cDNAは1893塩基対を含んでなる。後者では、cDNAは1597塩基対を含んでなる。
cDNAヌクレオチド配列SEQ ID NO:13内のオープンリーディングフレーム(第418〜1392番目(停止コドンを含めて第418〜1395番目)のヌクレオチド)は、325アミノ酸からなるタンパク質をコードする。SEQ ID NO:13がコードする、予測されるタンパク質に対応するアミノ酸配列を、SEQ ID NO:14に記載する。図9は、SEQ ID NO:14のアミノ酸配列の、Kyte−Doolittle値(KyteおよびDoolittle(1982)、J.Mol.Biol. 157:105−142)を用いた疎水性解析の結果を示す。上記のように、親水性領域は抗原性ペプチドの製造に用いうる。
【0179】
cDNAヌクレオチド配列SEQ ID NO:15内のオープンリーディングフレーム(第271〜1431番目(停止コドンを含めて第271〜1434番目)のヌクレオチド)は、387アミノ酸からなるタンパク質をコードする。SEQ ID NO:15がコードする、予測されるタンパク質に対応するアミノ酸配列を、SEQ ID NO:16に記載する。図10は、SEQ ID NO:16のアミノ酸配列の、Kyte−Doolittle値(KyteおよびDoolittle(1982)、J.Mol.Biol. 157:105−142)を用いた疎水性解析の結果を示す。上記のように、親水性領域は抗原性ペプチドの製造に用いうる。
【0180】
配列SEQ ID NO:14および16は、ユビキチン相同(UBQ)ドメイン(第239〜300番目のアミノ酸)を含んでいる。SEQ ID NO:14および16は、ラットシャーピンタンパク質に類似している(Limら(2001)、Mol Cell Neurosci 17:385−397)。シャーピンは、特殊化した細胞結合における、細胞骨格複合体の構成や細胞内シグナル伝達において機能するシャンクタンパク質の、アンキリンリピートと直接に相互作用する(ShengおよびKim(2000)、J Cell Sci 113:1851−1856)。
【0181】
LFG6に対応するmRNA転写物のサイズを測定するため、ノーザンブロットによる分析を行った。種々のヒト組織由来の全RNAを含むノーザンブロット(Human 12−Lane MTN Blot、Clontech社、カリフォルニア州Palo Alto)を用い、44103_at配列を含むESTを、ランダムプライマー法により放射活性ラベルし、ブロットのプローブに用いた。50%ホルムアミド、5×SSPE、0.1% SDS、5×Denhardt溶液および0.2mg/mlニシン精子DNA中、42℃でブロットのハイブリダイゼーションを行い、0.1% SDSを含む0.2×SSCで、室温で洗浄した。ノーザンブロットにより、この遺伝子に対する3種の転写物が示され、そのサイズは約2.2kb、1.5kbおよび1.2kbであった。これは、LFG6クローン(配列SEQ ID NO:13および15)のサイズに対応する。
【0182】
上記実施例を参照して本発明を詳細に記載したが、本発明の精神から逸脱することなく種々の変更を行うことが可能であると理解される。従って、本発明は特許請求の範囲によってのみ限定される。本出願において引用されている特許、特許出願および出版物はいずれも、その全体が引用により本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】LFG1クローン2種の、相対的な並び位置(alignment positions)を示す図である。
【図2】LFG1−クローンA(SEQ ID NO:2)のオープンリーディングフレームがコードするタンパク質の疎水性プロットである。解析はKyte−Doolittleの方法によって行った。
【図3】LFG1−クローンB(SEQ ID NO:4)のオープンリーディングフレームがコードするタンパク質の疎水性プロットである。解析はKyte−Doolittleの方法によって行った。
【図4】LFG2(SEQ ID NO:6)のオープンリーディングフレームがコードするタンパク質の疎水性プロットである。解析はKyte−Doolittleの方法によって行った。
【図5】LFG3(SEQ ID NO:8)のオープンリーディングフレームがコードするタンパク質の疎水性プロットである。解析はKyte−Doolittleの方法によって行った。
【図6】LFG4(SEQ ID NO:10)のオープンリーディングフレームがコードするタンパク質の疎水性プロットである。解析はKyte−Doolittleの方法によって行った。
【図7】LFG5(SEQ ID NO:12)のオープンリーディングフレームがコードするタンパク質の疎水性プロットである。解析はKyte−Doolittleの方法によって行った。
【図8】LFG6クローン2種の、相対的な並び位置を示す図である。
【図9】LFG6−#20(SEQ ID NO:14)のオープンリーディングフレームがコードするタンパク質の疎水性プロットである。解析はKyte−Doolittleの方法によって行った。
【図10】LFG6−#46(SEQ ID NO:16)のオープンリーディングフレームがコードするタンパク質の疎水性プロットである。解析はKyte−Doolittleの方法によって行った。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13または15の配列を含んでなる単離された核酸分子;
(b)SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16の配列をコードする単離された核酸分子;
(c)癌において発現され、SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13または15の連続する全配列に対して、ヌクレオチド配列同一性が75%以上であるタンパク質をコードする単離された核酸分子;および
(d)前記(a)、(b)または(c)の核酸分子の相補体を含んでなる単離された核酸分子
よりなる群から選択される単離された核酸分子。
【請求項2】
配列SEQ ID NO:1における第390〜4880番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:3における第12〜4904番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:5における第424〜1908番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:7における第405〜1835番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:9における第89〜1150番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:11における第223〜1569番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:13における第418〜1392番目のヌクレオチド;または
配列SEQ ID NO:15における第271〜1431番目のヌクレオチド
を含んでなることを特徴とする請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項3】
配列SEQ ID NO:1における第390〜4883番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:3における第12〜4907番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:5における第424〜1911番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:7における第405〜1838番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:9における第89〜1153番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:11における第223〜1572番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:13における第418〜1395番目のヌクレオチド;または
配列SEQ ID NO:15における第271〜1434番目のヌクレオチド
を含んでなることを特徴とする請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項4】
配列SEQ ID NO:1における第390〜4883番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:3における第12〜4907番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:5における第424〜1908番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:7における第405〜1835番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:9における第89〜1153番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:11における第223〜1569番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:13における第418〜1395番目のヌクレオチド;または
配列SEQ ID NO:15における第271〜1434番目のヌクレオチド
よりなることを特徴とする請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項5】
1つ以上の発現制御要素と機能しうるように結合されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の単離された核酸分子。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の単離された核酸分子を含んでなるベクター。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の核酸分子を含むよう形質転換された宿主細胞。
【請求項8】
請求項6に記載のベクターを含んでなる宿主細胞。
【請求項9】
原核宿主細胞および真核宿主細胞よりなる群から選択されることを特徴とする請求項8に記載の宿主細胞。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれかに記載の核酸分子により形質転換された宿主細胞を、前記核酸分子にコードされるタンパク質が発現される条件下で培養する工程を含むことを特徴とするポリペプチドの製造方法。
【請求項11】
前記宿主細胞は、原核宿主細胞および真核宿主細胞よりなる群から選択されることを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
請求項10に記載の製造方法により製造される単離されたポリペプチド。
【請求項13】
SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質;および
配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16に対して、アミノ酸配列同一性が75%以上であるタンパク質
よりなる群から選択される単離されたポリペプチドまたはタンパク質。
【請求項14】
請求項13に記載のタンパク質と結合する単離された抗体または抗原結合性抗体断片。
【請求項15】
モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であることを特徴とする請求項14に記載の抗体。
【請求項16】
請求項13に記載のタンパク質をコードする核酸の発現を調節する薬物の同定方法であって、
前記核酸を発現する細胞を、薬物に暴露させる工程;および
前記薬物が、前記核酸の発現を調節するか否かを決定する工程
を含んでなり、それらによって前記タンパク質をコードする核酸の発現を調節する薬物を同定することを特徴とする薬物の同定方法。
【請求項17】
請求項13に記載のタンパク質のレベル、または少なくとも1つの活性を調節する薬物の同定方法であって、
前記タンパク質を発現する細胞を、薬物に暴露させる工程;および
前記薬物が、前記タンパク質のレベル、または少なくとも1つの活性を調節するか否かを決定する工程
を含んでなり、それらによって前記タンパク質のレベル、または少なくとも1つの活性を調節する薬物を同定することを特徴とする薬物の同定方法。
【請求項18】
前記薬物は、前記タンパク質の1つの活性を調節することを特徴とする請求項17に記載の薬物の同定方法。
【請求項19】
請求項13に記載のタンパク質をコードする核酸の発現の調節方法であって、前記タンパク質をコードする核酸の発現を調節する薬物を、有効量で投与する工程を含むことを特徴とする発現の調節方法。
【請求項20】
請求項13に記載のタンパク質の少なくとも1つの活性の調節方法であって、前記タンパク質の少なくとも1つの活性を調節する薬物を、有効量で投与する工程を含むことを特徴とする活性の調節方法。
【請求項21】
請求項13に記載のタンパク質の結合パートナーの同定方法であって、
前記タンパク質を、結合パートナーの可能性のある物質に暴露させる工程;および
前記物質が、前記タンパク質と結合するか否かを決定する工程
を含んでなり、それらによって前記タンパク質の結合パートナーを同定することを特徴とする結合パートナーの同定方法。
【請求項22】
請求項21に記載の結合パートナーと、請求項13に記載のタンパク質の間の相互作用を調節する薬物の同定方法であって、
前記タンパク質を、前記結合パートナーと共に薬物に暴露させる工程;および
前記薬物が、前記結合パートナーと前記タンパク質の会合を調節するか否かを決定する工程
を含んでなり、それらによって前記結合パートナーと前記タンパク質の会合を調節する薬物を同定することを特徴とする薬物の同定方法。
【請求項23】
請求項21に記載の結合パートナーと、請求項13に記載のタンパク質の間の相互作用の調節方法であって、前記結合パートナーと前記タンパク質の会合を調節する薬物を、有効量で投与する工程を含むことを特徴とする相互作用の調節方法。
【請求項24】
請求項1〜4のいずれかに記載の核酸分子を含むよう修飾されたヒトではないトランスジェニック動物。
【請求項25】
前記核酸分子は、コードされるタンパク質の発現を妨げる変異を含むことを特徴とする請求項24に記載のトランスジェニック動物。
【請求項26】
被験者における病気状態の治療方法であって、病的な細胞に対し、プロモーター要素またはエンハンサー要素と結合した、請求項1〜4のいずれかに記載の単離された核酸分子を含んでなる遺伝子構築物を挿入して、前記核酸分子の発現が、前記病気を抑制するようにする工程を含む病気状態の治療方法。
【請求項27】
前記病的な細胞に対する挿入をin vivoで完了することを特徴とする請求項26に記載の病気状態の治療方法。
【請求項28】
前記病的な細胞に対する挿入は、ウィルス性またはプラスミド性薬物の使用を更に含み、in vitroまたはin vivoのいずれかで完了されることを特徴とする請求項26に記載の病気状態の治療方法。
【請求項29】
請求項1〜4のいずれかに記載の核酸分子、または請求項13に記載のタンパク質の発現レベルを測定する工程を含む、被験者における病気状態の診断方法。
【請求項30】
前記病気状態は、癌であることを特徴とする請求項26または29に記載の方法。
【請求項31】
前記病気状態は、悪性腫瘍であることを特徴とする請求項26または29に記載の方法。
【請求項32】
前記悪性腫瘍は、乳房、結腸、食道、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、卵巣、膵臓、前立腺、直腸および/または胃に生じることを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
希釈剤、並びに
SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16のアミノ酸配列を含んでなる単離されたポリペプチド;
配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16の、少なくとも10個のアミノ酸よりなる断片を含んでなる単離されたポリペプチド;
配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16の、保存的なアミノ酸置換体を含んでなる単離されたポリペプチド;
配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16の、自然発生アミノ酸配列変異体を含んでなる単離されたポリペプチド;および
配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16に対して、アミノ酸配列同一性が75%以上である単離されたポリペプチド
よりなる群から選択されるポリペプチドまたはタンパク質
を含んでなる組成物。
【請求項1】
(a)SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13または15の配列を含んでなる単離された核酸分子;
(b)SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16の配列をコードする単離された核酸分子;
(c)癌において発現され、SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13または15の連続する全配列に対して、ヌクレオチド配列同一性が75%以上であるタンパク質をコードする単離された核酸分子;および
(d)前記(a)、(b)または(c)の核酸分子の相補体を含んでなる単離された核酸分子
よりなる群から選択される単離された核酸分子。
【請求項2】
配列SEQ ID NO:1における第390〜4880番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:3における第12〜4904番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:5における第424〜1908番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:7における第405〜1835番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:9における第89〜1150番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:11における第223〜1569番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:13における第418〜1392番目のヌクレオチド;または
配列SEQ ID NO:15における第271〜1431番目のヌクレオチド
を含んでなることを特徴とする請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項3】
配列SEQ ID NO:1における第390〜4883番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:3における第12〜4907番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:5における第424〜1911番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:7における第405〜1838番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:9における第89〜1153番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:11における第223〜1572番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:13における第418〜1395番目のヌクレオチド;または
配列SEQ ID NO:15における第271〜1434番目のヌクレオチド
を含んでなることを特徴とする請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項4】
配列SEQ ID NO:1における第390〜4883番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:3における第12〜4907番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:5における第424〜1908番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:7における第405〜1835番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:9における第89〜1153番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:11における第223〜1569番目のヌクレオチド;
配列SEQ ID NO:13における第418〜1395番目のヌクレオチド;または
配列SEQ ID NO:15における第271〜1434番目のヌクレオチド
よりなることを特徴とする請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項5】
1つ以上の発現制御要素と機能しうるように結合されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の単離された核酸分子。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の単離された核酸分子を含んでなるベクター。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の核酸分子を含むよう形質転換された宿主細胞。
【請求項8】
請求項6に記載のベクターを含んでなる宿主細胞。
【請求項9】
原核宿主細胞および真核宿主細胞よりなる群から選択されることを特徴とする請求項8に記載の宿主細胞。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれかに記載の核酸分子により形質転換された宿主細胞を、前記核酸分子にコードされるタンパク質が発現される条件下で培養する工程を含むことを特徴とするポリペプチドの製造方法。
【請求項11】
前記宿主細胞は、原核宿主細胞および真核宿主細胞よりなる群から選択されることを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
請求項10に記載の製造方法により製造される単離されたポリペプチド。
【請求項13】
SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質;および
配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16に対して、アミノ酸配列同一性が75%以上であるタンパク質
よりなる群から選択される単離されたポリペプチドまたはタンパク質。
【請求項14】
請求項13に記載のタンパク質と結合する単離された抗体または抗原結合性抗体断片。
【請求項15】
モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であることを特徴とする請求項14に記載の抗体。
【請求項16】
請求項13に記載のタンパク質をコードする核酸の発現を調節する薬物の同定方法であって、
前記核酸を発現する細胞を、薬物に暴露させる工程;および
前記薬物が、前記核酸の発現を調節するか否かを決定する工程
を含んでなり、それらによって前記タンパク質をコードする核酸の発現を調節する薬物を同定することを特徴とする薬物の同定方法。
【請求項17】
請求項13に記載のタンパク質のレベル、または少なくとも1つの活性を調節する薬物の同定方法であって、
前記タンパク質を発現する細胞を、薬物に暴露させる工程;および
前記薬物が、前記タンパク質のレベル、または少なくとも1つの活性を調節するか否かを決定する工程
を含んでなり、それらによって前記タンパク質のレベル、または少なくとも1つの活性を調節する薬物を同定することを特徴とする薬物の同定方法。
【請求項18】
前記薬物は、前記タンパク質の1つの活性を調節することを特徴とする請求項17に記載の薬物の同定方法。
【請求項19】
請求項13に記載のタンパク質をコードする核酸の発現の調節方法であって、前記タンパク質をコードする核酸の発現を調節する薬物を、有効量で投与する工程を含むことを特徴とする発現の調節方法。
【請求項20】
請求項13に記載のタンパク質の少なくとも1つの活性の調節方法であって、前記タンパク質の少なくとも1つの活性を調節する薬物を、有効量で投与する工程を含むことを特徴とする活性の調節方法。
【請求項21】
請求項13に記載のタンパク質の結合パートナーの同定方法であって、
前記タンパク質を、結合パートナーの可能性のある物質に暴露させる工程;および
前記物質が、前記タンパク質と結合するか否かを決定する工程
を含んでなり、それらによって前記タンパク質の結合パートナーを同定することを特徴とする結合パートナーの同定方法。
【請求項22】
請求項21に記載の結合パートナーと、請求項13に記載のタンパク質の間の相互作用を調節する薬物の同定方法であって、
前記タンパク質を、前記結合パートナーと共に薬物に暴露させる工程;および
前記薬物が、前記結合パートナーと前記タンパク質の会合を調節するか否かを決定する工程
を含んでなり、それらによって前記結合パートナーと前記タンパク質の会合を調節する薬物を同定することを特徴とする薬物の同定方法。
【請求項23】
請求項21に記載の結合パートナーと、請求項13に記載のタンパク質の間の相互作用の調節方法であって、前記結合パートナーと前記タンパク質の会合を調節する薬物を、有効量で投与する工程を含むことを特徴とする相互作用の調節方法。
【請求項24】
請求項1〜4のいずれかに記載の核酸分子を含むよう修飾されたヒトではないトランスジェニック動物。
【請求項25】
前記核酸分子は、コードされるタンパク質の発現を妨げる変異を含むことを特徴とする請求項24に記載のトランスジェニック動物。
【請求項26】
被験者における病気状態の治療方法であって、病的な細胞に対し、プロモーター要素またはエンハンサー要素と結合した、請求項1〜4のいずれかに記載の単離された核酸分子を含んでなる遺伝子構築物を挿入して、前記核酸分子の発現が、前記病気を抑制するようにする工程を含む病気状態の治療方法。
【請求項27】
前記病的な細胞に対する挿入をin vivoで完了することを特徴とする請求項26に記載の病気状態の治療方法。
【請求項28】
前記病的な細胞に対する挿入は、ウィルス性またはプラスミド性薬物の使用を更に含み、in vitroまたはin vivoのいずれかで完了されることを特徴とする請求項26に記載の病気状態の治療方法。
【請求項29】
請求項1〜4のいずれかに記載の核酸分子、または請求項13に記載のタンパク質の発現レベルを測定する工程を含む、被験者における病気状態の診断方法。
【請求項30】
前記病気状態は、癌であることを特徴とする請求項26または29に記載の方法。
【請求項31】
前記病気状態は、悪性腫瘍であることを特徴とする請求項26または29に記載の方法。
【請求項32】
前記悪性腫瘍は、乳房、結腸、食道、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、卵巣、膵臓、前立腺、直腸および/または胃に生じることを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
希釈剤、並びに
SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16のアミノ酸配列を含んでなる単離されたポリペプチド;
配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16の、少なくとも10個のアミノ酸よりなる断片を含んでなる単離されたポリペプチド;
配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16の、保存的なアミノ酸置換体を含んでなる単離されたポリペプチド;
配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16の、自然発生アミノ酸配列変異体を含んでなる単離されたポリペプチド;および
配列SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14または16に対して、アミノ酸配列同一性が75%以上である単離されたポリペプチド
よりなる群から選択されるポリペプチドまたはタンパク質
を含んでなる組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2006−512923(P2006−512923A)
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−501365(P2005−501365)
【出願日】平成15年10月16日(2003.10.16)
【国際出願番号】PCT/KR2003/002161
【国際公開番号】WO2004/035789
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(503430614)エルジー ライフサイエンス リミテッド (6)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年10月16日(2003.10.16)
【国際出願番号】PCT/KR2003/002161
【国際公開番号】WO2004/035789
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(503430614)エルジー ライフサイエンス リミテッド (6)
【Fターム(参考)】
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