説明

発光スクリーン用樹脂組成物

【構成】 一般式1、例えば式3



の7-アミノクマリン誘導体を含有する紫外線発光スクリーン用樹脂組成物。
【効果】 透明性が高く、可視光下では無色で、紫外線の照射下では青色〜緑色または赤色に発色する紫外線発光スクリーンを提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、通常の可視光下で無色〜黄色であり、光照射下では青色〜緑色及び赤色に発色する発光スクリーンに用いる樹脂組成物を提供するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】発光性の無機化合物を用いる発光スクリーンは数多く提案されている(例えば、特開昭49-89688、特開昭49-122490 、特開昭53-33986、特開昭55- 149375、特開昭56-8485 、特開昭57-23676など) 。
【0003】そこで用いられる蛍光体は、無機系のイオンまたは酸化物であり、樹脂中に添加した場合には透明性がなく、白濁した状態で使用しなければならない。従って、励起光に用いる光線は前面から照射しなければ明るい表示はできないが、前面からの照射では反射光によって目をいためる危険性が高い。そこで後面から照射できる透明樹脂スクリーンが強く要望されている。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記の状況に鑑み、可視光または紫外光によって青色〜緑色及び赤色の発光を示し、樹脂への溶解性の高い、蛍光体について鋭意検討した結果、7-アミノクマリン誘導体が満足できる性能を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】すなわち、本発明は、一般式(1)
【化2】


で表される発光性化合物を含む発光スクリーン用樹脂組成物である。
【0006】以下に本発明を更に詳細に説明する。本発明の発光性化合物は、前記一般式(1)で表されるものであり、一般式(1)中のR1 およびR2 の具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、イソロプロピル基等のアルキル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基等のアルコキシアルキル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基等のヒドロキシアルキル基、ベンジル基、2-フェニルエチル基等のアラルキル基、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基、メトキシカルボニルエチル基等のアルコキシカルボニルアルキル基、メチルカルボキシエチル基、エチルカルボキシエチル基、プロピルカルボキシエチル基等のアルキルカルボキシアルキル基、またR1 、R2 が互いに結合した環状の置換基として、下記の構造を挙げることができる。-(CH2)4-、 -(CH2)5- 、-CH2CH2-O-CH2CH2- 、 -CH2CH2NHCH2CH2-
【0007】一方、R3 、R4 の具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基等のアルキル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基等のアルコキシアルキル基、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基等のヒドロキシアルキル基、フエニル基、4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、2−メトキシフェニル基等のアリール基、ベンジル基、2-フェニルエチル基等のアラルキル基、フェノキシメチル基、2-フェノキシエチル基、3-フェノキシプロピル基等のアリールオキシアルキル基、ベンジルオキシメチル基、ベンジルオキシエチル基、ベンジルオキシプロピル基等のアラルキルオキシアルキル基、アセチルメチル基、エチルカルボニルメチル基、プロピルカルボニルメチル基、アセチルエチル基等のアルキルカルボニルアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等のアルコキシ基、メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、エトキシエトキシ基等のアルコキシアルコキシ基、アセチル基、エチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基等のアルキルカルボニル基、ベンゾイル基、ナフタレン-1- カルボニル基等のアリールカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、(2- フェニルエチルオキシ) カルボニル基等のアラルキルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、(P- エチルフェノキシ) カルボニル基等のアリールオキシカルボニル基、アセチルオキシ基、エチルカルボキシ基等のアルキルカルボキシ基、ベンゾイルオキシ基、1-ナフチルカルボキシ基等のアリールカルボキシ基、シアノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
【0008】またBの具体例としては水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基等のアルキル基、アセチル基、エチルカルボニル基、イソブチルカルボニル基等のアルキルカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、フェニル基、4- メチルフェニル基、2- クロロフェニル基、3- メトキシフェニル基等のアリール基、ベンゾイル基、P-メチルベンゾイル基、2-ナフチルカルボニル基等のアリールカルボニル基、フェノキシカルボニル基、(2- メチルフェノキシ) カルボニル基、1-ナフチルオキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基等のアルコキシカルボニルアルキル基、オキサゾール-2- イル基、チアゾール-2- イル基、ベンゾオキサゾール-2- イル基、ベンゾチアゾール-2- イル基、ベンゾイミダゾール-2- イル基等のヘテロ環を挙げることができ、Aの具体例としては、酸素原子又はNH基が挙げられる。
【0009】一般式(1)の化合物は、4-アミノサリチルアルデヒド誘導体と酢酸誘導体又は酢酸エステル誘導体をピロリジンのような塩基存在下、N,N-ジメチルホルムアミドのような極性有機溶媒中で反応させることにより容易に合成することができる。
【0010】本発明に用いることができる樹脂類は光学的に透明であるもので、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂、ポリメタアクリレートおよびその共重合体、ポリ酢酸ビニル、セルロース類、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレンおよびその共重合体、エポキシ樹脂、ハロゲン化していてもよいビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート樹脂およびその共重合体、ナイロン樹脂、ポリウレタンなどが挙げられる。
【0011】一般式(1)で表される発光性化合物を樹脂に混入しスクリーンを作成する方法としては、該発光性化合物を1種又はそれ以上を樹脂モノマーに溶解し、その後樹脂を重合する方法、樹脂に溶解し射出成形する方法、樹脂と一緒に有機溶剤に溶解し、溶剤を蒸発させる方法等があげられる。
【0012】本発明において、樹脂中の上記発光性化合物の濃度は、樹脂の透明性が失われない限度内にあればよいが、一般には樹脂に対して0.001 〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%である。
【0013】
【作用および効果】従来の無機系発光性化合物を用いた発光スクリーンでは得られなかった透明性を本発明のスクリーンは有し、且つ、強発光性のスクリーンが本発明の7-アミノクマリン誘導体を含む樹脂組成物によって得ることができ、実用上極めて価値あるものである。
【0014】
【実施例】以下に、実施例により本発明の発光スクリーン用樹脂組成物についてさらに詳しく説明する。なお、例中の「部」は「重量部」を示す。
【0015】実施例1次式
【化3】


で示される3-( ベンゾチアゾール-2- イル)-7-ジエチルアミノ- クマリン0.2 部をメチルメタクリレート100 部に溶解し、アゾビスイソブチロニトリルを重合開始剤として用いキャスト重合して樹脂板を作製した。本樹脂スクリーンは300 nm〜500nm の光を照射すると、鮮やかな緑色発光色を呈した。日本分光社製蛍光光度計FP−770 を用いて、この樹脂スクリーンの発光スペクトルおよび励起スペクトルを測定したところ、発光極大波長は520nm 、励起極大波長410 nmであった。また、本スクリーンを屋外にて1ケ月放置したが殆ど初期状態と発光強度は同じで、樹脂の劣化も見られなかった。
【0016】実施例2次式
【化4】


で示される7-( エチルアミノ)-6-メチル-4-(トリフルオロメチル) クマリン0.2部、ポリスチレン100 部を混合し、200 ℃にて溶解し、射出成形器にて樹脂スクリーンを作成した。本樹脂スクリーンは紫外線照射下で鮮やかな青色を呈し、サンシャインウェザーメーターによる300 時間の耐光性テスト後の発光強度低下はわずかに0.2 %であり、優れた安定性能を示した。
【0017】実施例3次式
【化5】


で示される 3-(エトキシカルボニル)-7-( ジエチルアミノ) クマリン0.1 部、ポリビニルブチラール樹脂1部をテトラヒドロフラン100 部に溶解し、平滑なガラス面上に塗布後、常圧下溶媒であるテトラヒドロフランを徐々に蒸発させてキャストスクリーンを得た。本樹脂スクリーンも実施例2同様、青色高発光性で優れた安定性能を示した。
【0018】実施例4次式
【化6】


3-( ベンゾチアゾール-2- イル)-4-シアノ-7- (ジエチルアミノ) クマリン0.03部、ポリビニルブチラール樹脂3部をトルエン20部、メチルエチルケトン10部の混合溶媒に溶解し、平滑なガラス面上にて溶媒を常圧下蒸発させながらキャストスクリーンを得た。本樹脂スクリーンは300 〜550mm の光を照射すると、鮮やかな赤色発光色を呈した。日本分光社製蛍光光度計FP−770 を用いて、この樹脂スクリーンの発光スペクトルおよび励起スペクトルを測定したところ、発光極大波長は615nm 、励起極大波長は490nm であった。また、本スクリーンを屋外にて1ケ月放置したが、殆ど初期状態と発光強度は同じで樹脂の劣化も見られなかった。
【0019】実施例5〜55本発明スクリーンに用いることが可能なクマリン誘導体を表1から表12に挙げ、それぞれの化合物でスクリーンを作成した。これらのスクリーンに光照射すると鮮明な発光色を呈した。また、本スクリーンを屋外に1 カ月放置したが殆ど初期状態と発光強度は同じで、樹脂の劣化も見られなかった。
【表1】


【表2】


【表3】


【表4】


【表5】


【表6】


【表7】


【表8】


【表9】


【表10】


【表11】


【表12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】 一般式(1)
【化1】


〔式中、R1 およびR2 は、それぞれ同一または独立に水素原子、アルキル基、アルコキシアルキル基、アルケニル基、ヒドロキシアルキル基、アラルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基または、アルキルカルボキシアルキル基を示し、互いに結合して環状を示していてもよく、R3 およびR4 は、それぞれ同一または独立に水素原子、アルキル基、アルコキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシアルキル基、アラルキルオキシアルキル基、アルキルカルボニルアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボキシ基、アリールカルボキシ基、シアノ基、ハロゲン原子またはトリフルオロメチル基を示し、Bは水素原子、アルキル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリール基、アリールカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基またはヘテロ環基を示し、Aは酸素原子またはNH基を示す〕で表される発光性化合物を少なくとも1種含むことを特徴とする発光スクリーン用樹脂組成物。

【公開番号】特開平5−263072
【公開日】平成5年(1993)10月12日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−70851
【出願日】平成3年(1991)4月3日
【出願人】(000003126)三井東圧化学株式会社 (49)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)